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1959-03-20 第31回国会 衆議院 建設委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 堀川 恭平君    理事 木村 守江君 理事 瀬戸山三男君    理事 二階堂 進君 理事 上林與市郎君    理事 三鍋 義三君       逢澤  寛君    井原 岸高君       川崎末五郎君    田中 角榮君       橋本 正之君    村瀬 宣親君       島上善五郎君    武藤 武雄君       山中 吾郎君  出席国務大臣         建 設 大 臣 遠藤 三郎君  出席政府委員         法制局参事官         (第二部長)  野木 新一君         建設政務次官  徳安 實藏君         建 設 技 官         (住宅局長)  稗田  治君  委員外出席者         専  門  員 山口 乾治君     ————————————— 三月二十日  委員橋本正之辞任につき、その補欠として大  久保留次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大久保留次郎辞任につき、その補欠とし  て橋本正之君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公営住宅法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二二号)      ————◇—————
  2. 堀川恭平

    堀川委員長 これより会議を開きます。  公営住宅法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。まず住宅局長より発言を求められております。これを許します。稗田住宅局長
  3. 稗田治

    稗田政府委員 先日の委員会におきまして三鍋委員より求められました資料を、本日提出いたしました。  まず公団住宅建設進捗状況でございますが、お手元に配付してございます「公団住宅年度別建設完了戸数」という一枚刷りの表がございますが、これは、本年の一月末現在の実績でございます。三十年から三十二年まで、計画戸数は、賃貸住宅が四万六千戸、分譲住宅が三万二千戸でございまして、合せて七万八千戸でございます。これの竣工いたしました戸数は、その右の欄にございますように、七万三千四百八十七戸でございまして、進捗比率は、三十二年度までの全体の戸数の九四・二%でございます。  なお、備考のところにございますように、三十二年度工事中の建物が本年の五月末には完了すると期待されますので、大体五月ごろには、三十二年度までのものは一〇〇%竣工することに相なるわけでございます。  三十三年度事業におきましては、賃貸が二万戸、分譲が一万戸、合せて三万戸でございます。このうち竣工いたしましたのは三千七百六十戸でございます。竣工しました比率は一二・五%でございまして、これは、三万戸全部につきまして工事発注は終っております。現在の出来高の進捗率は、計画戸数に対しまして五九・七%というような工合になっておるわけでございます。  次に、公団住宅家賃公営住宅家賃でございますが、「公営住宅公団住宅との家賃比較表」というのが一枚刷りでございます。御承知のように公団賃貸住宅は、四つの大きな地域東京大阪名古屋福岡といったような大都市を中心とする地域に建てておりますので、それとの比較上、公営住宅におきましても四つ都市住宅比較したわけでございます。それで、御承知のように、公団住宅耐火構造住宅のみになっておりますので、質の比較上のこともありますので、公営住宅におきましても、第一種の中層耐火構造家賃を選んだわけであります。  東京におきましては、公営住宅は十二坪でございまして、これが、建てました場所なり、あるいは建築費違い等によりまして多少の差異はあるわけでございますが、第一種が三千五百五十円から四千円でございます。公団住宅におきましては、東京支所管内では十二・一坪のものから十三・五七坪のものと坪数が大きくなっておるわけでございますが、これが五千百円から六千三百円という幅の間におさまっておるわけでございます。  大阪におきましては、十二坪の公営住宅が二千七百円から二千八百円でございまして、公団におきましては、十二・九一坪から十三・二一坪と、坪数は開いてございますが、五千百円から五千七百円でございます。  名古屋地区におきましては、公営は同じく十二坪でございますが、三千六百円から三千九百円、公団住宅におきましては、坪数は十三・七坪から十五・九三坪と開いてございますが、四千六百二十円から五千四百五十円でございます。  福岡におきましては、公営は同じく坪数は十二坪でございますが、二千八百五十円、公団住宅におきましては、坪数は十二・九六坪から十三・六九坪というように開いてございますが、四千五百円から五千四百円というようになっておるわけでございます。  大体これは、予算の単価ではじいただけでは、いろいろ実際の家賃地域的な開きもできますので、ここにあげましたのは、三十二年度建設されました実際の住宅家賃から拾った実例でございます。  なお、公団住宅におきましては、寝室に使える部屋二つあって、それにダイニングキッチン浴室がついた形式のものでございます。それから公営は、二つ寝室と台所、場合によりましてはダイニングキッチンにも使えるものでございますけれども原則といたしましては、浴室はついてございません。そういうように家賃の差はございますけれども住宅質そのものにおきましても、公団住宅の方が少しよくなっておるわけでございます。  簡単でございますけれども……。
  4. 堀川恭平

    堀川委員長 それでは、本案に対する質疑を続行いたします。三鍋義三君。
  5. 三鍋義三

    三鍋委員 ただいま局長さんから資料に対する御説明を願ったのでありますが、この建設完了戸数資料の中で、三十三年度分は一〇〇%もう発注ができておる、こういうのでございますが、現在は五九・七%ができているという実績を出しておるわけでありますが、あとの見込みは、大体いつごろまでに全部建設できる見通しを持っておられるか、それをお聞きしたいと思います。
  6. 稗田治

    稗田政府委員 御承知のように、公団住宅は大団地形式をとっておるものと、それから市街地の中に併存、つまりげたばきの形で建設されるものと、種類を大別すれば二つに分れるわけでございますか、大団地のものにおきましては、着工いたしましてから、経済速度を使いましてやっていくと、八カ月から十カ月くらいどうしてもかかるわけでございます。それから市街地のものにつきましては、分譲住宅その他におきましても、個所的に非常に地盤の悪いところに当りますと、相当基礎工事に期間がかかるということになりますので、十一カ月くらい竣工までにかかるというようなものがあるわけでございます。従いまして、これは一月の末ですでに発注は全部終っておるわけでございますので、三十四年の年末程度までにはほぼ完了するのではないかというように考えておるわけでございます。
  7. 三鍋義三

    三鍋委員 それから、この公営住宅公団住宅家賃比較表資料でありますが、これで見ますと、公団の場合東京は六千三百円が最高ということになっておるのですが、これ以上の家賃をとっているところはありませんか。
  8. 稗田治

    稗田政府委員 ここに公団住宅家賃として拾いました分は、賃貸向きの普通の一般の形として建てましたものを拾い上げたわけでございます。これは、公営住宅家賃との比較上あげたものでございますから、大体全般の性格を表わしておるところの公団住宅家賃を載せたものでございます。場所によりまして、先ほど申しましたような併存形式を使ったげたばき住宅で、市街地の非常に便利なところへ進出していきました高さの高い高層形式を使ったものの中には、一部これよりも高い家賃のものはございます。しかしこれは、公団賃貸住宅の全体の戸数に占める割合は非常に少いはずでございます。ただ場所が非常に便利な、目立つ場所に進出してきておりますので、新聞その他等にもそういう高い家賃が非常に目につきますので、出てくるわけでございますけれども、そういうものは、なお住宅規模等も非常にふくれておりまして、ここにあげましたのは二寝室のものを拾ったわけでございますけれども、三寝室というようなことはなりまして、坪数はずっと大きくなっておるわけでございます。全体に占める戸数割合というのは、ほとんど問題にならないほど小さな比率になっておるわけでございます。
  9. 三鍋義三

    三鍋委員 いわゆる市街地げたばき住宅で、一番高い家賃はどのくらいですか、それから坪数関係もお聞かせ願いたいと思います。
  10. 稗田治

    稗田政府委員 一番高い賃貸住宅と申しますと、大阪西長堀高層建築としまして建てたものの中に、一万九千三百五十円というのがございます。それから東京におきましては晴海埠頭に、これも高層エレベーターつきのアパートが一棟建っておりますが、その中に一万三千三百五十円というのがございます。これは、非常に家賃そのものも高いわけでございますが、坪数も、西長堀のは二十八坪七合八勺、晴海のは十九坪八合八勺というように非常に大きな規模のものでございます。もちろん晴海においても西長堀におきましても、これはいろいろの部屋組み合せのものができておりまして、その一番高いのがそういうものがあると申し上げたわけでございます。西長堀等におきましても五千円とか、そういう家賃のものも入っておるわけでございます。  それからこういった地下とも十一階建のものを建てますると、まず鉄骨造にする。日本では、六階以上くらいからは鉄筋コンクリートでなしに、鉄骨造にしなければ地震の応力上無理な点がございますので、鉄骨が入るということと、エレベーターをつけなければならないというように、そういった鉄の高度利用につきまとう別な建設費用が重なってくるわけであります。それで、比較家賃も高くなるわけでございますけれども、やはり今後の日本の宅地事情なり、都市計画的な都市の形態というものを考えます場合に、こういうような非常に建設費の高くつく形式のものであっても、そういうものを試験的に実施しながら改良を加えて、また建設費のコストを下げていくというようなことも研究していかなければならないというので、これらの特別家賃の高いものにおきましては、試験的な意味で実施しておるというわけでございます。
  11. 三鍋義三

    三鍋委員 試験的にやっておられるのでありますから、そう大した戸数ではないと思うのですが、どれくらいこういった範疇に入るものが現在建設されておるか、それをちょっとお聞きしたいと思います。
  12. 稗田治

    稗田政府委員 今の西長堀戸数でございますが、西長堀は一棟に二百戸ございまして、今の最高のものの占める割合は二十戸、一割程度でございます。それから晴海は百六十八戸でございまして、家賃の高いものは、そのうち一万二千円から一万三千五百円程度のものが百二十戸ほど占めてございます。
  13. 三鍋義三

    三鍋委員 試験的にとおっしゃるから、私一応理解したいのでありますが、どうも公団の趣旨とだいぶかけ離れて建てておるように考えます。私は、ただいま資料についての御質問を申し上げておるのでありまして、公営住宅進捗状況について、何かおわかりになっておりましたら御説明願いたいと思います。
  14. 稗田治

    稗田政府委員 公営住宅進捗状況でございますが、ごく最近のがございませんで、三十二年の十二月末現在でございます。全計画戸数の約九七%が発注が終って着工済みでございます。そのうち竣工してございますのが二五%でございます。
  15. 堀川恭平

  16. 島上善五郎

    島上委員 大臣にぜひ伺っておきたいこともあるのですが、大臣はまだ見えませんから、大臣に関する部分は見えるまで保留して、質問が多少前後いたしますが、お伺いいたします。  それで、まず最初に次官にお伺いしますが、政府住宅政策は、本年度二十一万一千戸、民間自力建設合せてたしか五十六万戸ということでございますが、その内容を検討してみますと、ほんとうに現在住宅に困っている人を対象としたものは、公営住宅の四万九千戸、もちろん金融公庫住宅公団その他もそうでないと私ははっきり断定するわけではありませんけれども、今御答弁がありましたように、住宅公団家賃が非常に高くなって、三万五千円以上の月収のある者でないと入居できない、こういう状態になってきておる。金融公庫に至っては、頭金を少くとも二十万くらい用意しなければ、幾ら金を貸してもらっても手のつけようがないという状態ですから、これは、伺ってみれば一そうはっきりすると思うのですが、私どもの調べた範囲では、ほんとう住宅に困っている階層というものは、大体所得からいえば二万円前後から三万円どまりの人か、あるいは二万円以下の人、これらの勤労者が一番困っておるのではないか、こう判断されるのです。そうだとするならば、この困っている人に住宅を提供するのはわずかに公営住宅の四万九千戸。私はこの前大臣にも伺ったのですが、政府の二十一万一千戸という住宅建設重点は、ことしはこういうことになったので、これは大臣もみずから認めておるように、自分の思うことが当初の考え通りいかなかったと言っておりましたが、住宅政策重点は、今私が言ったように、収入でいえば月収せいぜい三万円まで、それ以下の人々対象として、そこに住宅政策重点を置くべきではないか、こう考えるのですが、一つ次官からその点をまず伺います。
  17. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいまの御質問、ごもっともでございます。私どもも就任以来、その方針で鋭意努力して参ったわけでございますが、本年度三十四年度予算編成に当りましても、極力そうした方針を堅持して努力はいたしましたが、大幅にそうした気持を織り込むことができなかったことをまことに遺憾に思います。しかし、しばしば大臣もここで申し上げていますように、私どもの見解はただいまのお話と同一でございますから、次の年度予算編成に当りましては、近く住宅に関する調査等も完成いたしますので、そうした点をよく参考にいたしまして、社会政策的な意味を十二分に織り込んで、住宅政策というものを再検討して確立したいという考え方で、ただいま一生懸命で努力いたしておりますから、御了承いただきたいと思います。
  18. 島上善五郎

    島上委員 住宅公団については、まだたくさん質問がありますから、また別途御質問することにして、きょうは公営住宅に限定して質問をしたいと思います。  今の御答弁の通りやって下さるならば、私ども非常にけっこうだと思う。そこで、念のため伺っておきますが、まだ来年度についてのこまかい計画をお立てにならないのは、無理もないと思いますが、本年度公営住宅については、当初どの程度のことを建設省でお考えになっておったか、それから来年度以降についてはどのくらいずつふやしていこうというのか、これは調査の結果がまだはっきり出ないということですから、大まかな考えでけっこうですが、今の御答弁からしますれば、来年度以降は当然ふやしていこうという御方針のようでありますが、どの程度ふやしていこうという考えか、伺いたいと思います。
  19. 稗田治

    稗田政府委員 公営住宅におきましては、御承知のように国会で御承認願いました、公営住宅の三カ年計画というものがあるわけでございます。それで三十四年度は、三カ年計画の二年度に当るわけでございまして、三カ年計画の全体の戸数は、十五万七千戸ということに相なっているわけでございます。当初の第一年度が四万七千戸でございまして、三十四年度の当初の計画と申しますのは、予算要求の段階においてどのくらい要求したかというお尋ねかと思いますが、三十四年度の当初大蔵当局要求いたしましたのは、私の記憶しておるところでは、五万一千戸であったというように覚えております。これが四万九千という戸数になりましたので、その点は私も今後大いに努力したいと考えておるわけであります。従いまして、三カ年計画の三十五年にどのくらい伸ばすかということになりますと、三カ年計画の最後の年になりますので、六万一千戸というような戸数が三カ年計画残戸数になるわけでございます。第一期の三カ年計画は六九%の達成率でございました。第二期は九二%の達成率であったわけでございます。第三期の三カ年計画につきましては、一〇〇%の完遂を目途に今後大いに努力したいというふうに考えておるわけでございます。
  20. 島上善五郎

    島上委員 これは、あるいは少し御無理な注文かもしれませんが、三カ年計画を、今のお話のように三十五年度六万一千戸で一応完了する、その三カ年計画を完了した後については、どういうお考えをお持ちですか。
  21. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいま局長から説明したと思いますが、三十年度住宅事情調査いたしました当時の住宅難世帯の数が、大体二百七十万戸くらいでございまして、これを収入階層分布状況によって分けてみますと、第二種公営住宅に該当する一万六千円以下くらいな収入階層、それから第一種公営住宅三万二千円以下の階層及び公庫公団賃借住宅二万五千円以上、こういうような対象をきめまして調査いたしましたところが、大体三、四、三というような状態になったそうでございます。そういう比率になりまして、一応政府施策住宅政策を立ててあるわけでございます。従って、急にこの施策を中途で根本的に変えることが困難な事情もございまして、昨年私どもが就任いたしましてからは、先ほど島上委員お話のような考え方で検討をいたしたのでございますけれども、にわかにこうした当初立てました原則を急角度に変更することが困難な事情でございまして、しかし、多少でもその片鱗を織り込みたいということで、低額所得者住宅の供給を、少しばかりでございますが、きめたわけでございます。しかし、今後におきましては、すでにだいぶ住宅も充足されて参ったような関係もございますし、金さえあれば、収入の多い方は、民間自力建設の方に依存していただいていいというような情勢もだんだん醸成して参りましたので、今後は、基本的なこうした考え方を根本的に変える時代が来たではないかということを考えておりますので、先ほど申し上げましたような調査の実態が近く判明いたしますのを基礎にして、過去の住宅政策の基本的な考え方考え直そう、再検討しよう、こういう考え方でございます。従って、今後しからば三十五年度からの予算には、低額所得者対象とする社会保障、あるいは社会政策的な見地を織り込んだものをどのくらい建てるかということにつきましては、今おそらくは数字的にここで申し上げることは困難かと思います。しかし、お説のような点につきましては、おそらく何人も異存のないただいまの考え方であろうと思いますので、そうした、近いうちにできます調査基礎にいたしまして、急角度ほんとうに低家賃でなければお困りになる階層に、社会政策的な見地を十分に織り込んだ住宅政策を確立しようという考え方は、おそらく建設省全部の意見でもございますすし、また委員各位の御意見を聞きましても、他の方面の世論を聞きましても、そうした説が非常に強うございますので、おそらくは三十五年度予算編成に当りましては、相当に御期待に沿える数字をお示しすることができるだろう、かように考えておりまして、ただいま即刻数字を申し上げることはあるいは困難と思いますが、これは一つ御了承いただきたいと思います。
  22. 島上善五郎

    島上委員 三十五年度は六万一千戸、三十六年度以降ははっきりは言われないが、そういういわばほんとうに困っている下層階級公営住宅方面重点を置かれるという考えはわかりました。それでけっこうだと思いますが、そうだとするならば、明年度以降公営住宅建設戸数相当数ふえる、こう期待しても間違いではない。そういう点から考えますならば、今度のこの新しい法律によって、私はあとでも詳しく質問しますが、かなり無理をして明け渡しをさせなければならぬという理由がだんだん希薄になってくるような気かするわけです。問題は、今日要求しておる数に対して、建設戸数が少いというところに一番大きな問題があると思う。要求に対して戸数が少いから、現在入っている人を明け渡しさせようという問題が起ってくるわけだろうと思うのです。その戸数相当数ふえるというならば、現在入っている者を、そう無理をしなくてもよいということになるのではないか。特に今度の法律によりますれば、三年先ですから、そうすると、昭和三十七年ごろから明け渡しについては効力を発生するわけでしょう。そうでしょう。
  23. 徳安實藏

    徳安政府委員 そういうことです。
  24. 島上善五郎

    島上委員 そうなりますと、今三十五年、六年、七年、相当先にいくと戸数が建つということになれば、無理をして三十七年度あたりから明け渡しをさせなくてもいいというような状態が、今より緩和してくるということは言い得ると思う。先般同僚委員質問に対しての御答弁の中に、現在の五十六万戸中、明け渡し努力対象考えられるのは七万四千世帯である、こういうふうに御答弁があったと思うのですが、一体この七万四千世帯というのは、何か的確な調査に基いたものですか、どうですか、その点を……。
  25. 稗田治

    稗田政府委員 七万四千世帯が、大体現在考えておる政令の基準を越えるものであるというような推定しておるわけでございます。現在の推定をなお詳しく申しますと、第二種住宅に現在入っておられて、第二種公営住宅資格を越えてしまったという方が三割あるわけでございます。それから第一種公営住宅の中で、大体一割見当が第一種公営住宅入居資格を越えてしまったということになっておるわけでございます。それで、その両方で七万四千世帯と申し上げたわけでございます。第二種公営住宅に入っておる方につきましては、公営住宅から出ていっていただくように努力するというのではございませんで、これは、第一種公営住宅の方に移しかえるというわけでございます。それからもちろんわれわれがこの法案に織り込んでありますのは、明け渡しをするように努力しなければならないというように、努力義務、精神的な規定を入れたわけでございます。明け渡し請求とははっきり違うわけでございます。従いまして、御当人が意思に反してまで強制されるということは絶対ないわけでございます。その点は、明け渡し請求とははっきり法律的に違うわけでございます。あっせんする方の事業主体努力義務でございますが、これも、ぜひ自分は第一種の方に移りたい、あるいは公団の方に入りたいからあっせんしてくれないかという場合にあっせんをする、あるいはまた五万円とか六万円とかというふうな方が入っておるという場合に、あなたはもう公団住宅の方も話をつけてあげましたから、そちらへ行ったらいかがですかというような勧奨をするという程度でございまして、それでも、御本人が、ここでけっこうだという場合には、そこにおっていただくということに結果としてはなるわけでございます。  今の第一種公営住宅で一割、第二種公営住宅で三割程度資格収入基準を越えておるという点につきまして、どの程度調査をしたかということになるわけでございますが、これは御承知のように、公営住宅事業主体というのは、全国で約千くらいございます。従いまして、悉皆調査というのは非常に困難でございます。これは抽出調査をした、それによって類推したわけでございます。なお、そういった法律上の精神的な義務規定が働きますのも三年後のことでございますので、現在の収入状態がそのまま三年後に同じような形で行っておるかどうかというようなことも、これは確言はできないわけでございます。従いまして、七万四千というのは、われわれが現在大体そういう抽出調査から、その程度の方々がそのころもまだおるじゃないかというような類推でございます。
  26. 島上善五郎

    島上委員 そうだといたしますと、この推定も、私はどれだけ確実なものであるかということに対しましては、大へん疑問があると思いますが、かりにこの推定を一応基礎に置くとしましても、そのうちの三割は第二種から第一種に移る人々である、第一種から明け渡してもらうという人々対象は一割であるというようになると、その数はきわめてわずかなものだと思います。その一割を大体どの程度推定しておるかということと、それからその推定のうち、今言ったように強制ではありませんから、精神的な明け渡し義務程度のものですから、この法律によって実際明け渡してもらえると推定される戸数は、どのくらいを予定しておりますか。
  27. 稗田治

    稗田政府委員 お答え申し上げます。今申し上げましたように、今度の改正法律規定されたところの明け渡し努力義務を課せられる世帯は、類推でございますので正確な数字ではございませんのと、三年後の状況がどういうことになっておるかということも、今から的確に申し上げることも不可能なわけでございます。それでわれわれとしましては、それでは実際これによってどのくらい戸数があくか、つまり低額所得者のためにあくかというような戸数につきましても、これは、なかなか三年後の状態そのものも的確に想像することが困難なものですから、ちょっとわからないわけでございますが、若干の方々は、むしろこういうようなことによって、なお省令等を改正しまして、公団への入居を円滑にしていただけるということであれば、これをチャンスに自分の住生活の向上をはかろうという方も、若干出てくるのではないかということでありまして、その若干の戸数が何戸であるかということまでは考えておらないわけでございます。ただわれわれとしまして、今度の法律にこういう規定を入れましたのは、公営住宅の本来の趣旨から考えまして、もう少し公営住宅の性格をはっきりさせる、させたことによって全体の住宅政策の中に占める公営住宅の位置づけというものを明確にいたしまして、その上にこの公営住宅戸数をふやしていこうというように考えたわけでございます。
  28. 島上善五郎

    島上委員 第一種に入っている人々で、収入が四万、五万と上った者については、おそらく今までも自発的に他に移転した者は相当あると思うのです。相当といってもどのくらいの戸数か、私には全然見当がつきませんけれども、だいぶあるのではないかと思います。そういう点はおわかりですか。
  29. 稗田治

    稗田政府委員 公団が建てております四大地区におきましても、相当戸数が建てられておるわけでございますけれども、自発的にどのくらい移るだろうかということは的確に存じておりません。ただ、公団住宅も発足しましてから三年度を過ぎるところでございますけれども、その割に、大体公営住宅にまだ一割くらいの資格を越えた形の者が現におるという事情から考えますと、やはり自分の居住水準を引き上げようという努力は、家賃の増加等を伴いますので、ただほうっておくだけではなかなかそうならぬのじゃないか。また公募で入れるということに相なっておりますので、せっかく行きたいという方が、公団住宅にはずれるというようなこともあるわけでございます。そういう点を円滑にいたそうというように考えたわけでございます。
  30. 島上善五郎

    島上委員 この「明け渡すように努めなければならない。」という第二十一条の二の改正でございますが、今御答弁がありましたように、明け渡し請求とは違うわけですし、強制力を持ってないし、いわば精神的なものです。ところがこういうふうに法律になりますと、この法律から受ける入居者の感じというものは、私はかなり大きな精神的な圧迫を受けると思うのです。個人的に強い人は、何と言われてもこういう法律だけではちっともこたえないという人もあるかもしれない。しかし一般的に、特に家庭の婦人などは、やはり法律でこういうふうになると、年中明け渡しの協力義務を負わされておる、こういう精神的な負担を受けることになると思う。それでいて、この法律による効果が実際どれだけ期待できるかということになると、私は十分期待できないのじゃないかと思う。もしこういう法律ができたからといって、かなり強く事業主体が勧奨すると、効果がいずれ出てくるかもしれませんが、強く勧めるということは、そこで行き過ぎが起るという危険性が発生するわけです。せんだって大臣は、同僚議員の質問に対しまして、行き過ぎないようにする、円満に話し合いの上で、一方では住宅公団をあっせんして入居できるように世話してやって、円満に移転できるようにしようということならば、ここで法律にあえてこういうふうにしなくとも、私は行政措置でできることではないかと思う。法律にして、一般の正直な弱い人々には大きな精神的負担をかけて、実効は大して期待ができない、こういうことになる。こういうふうに私は考えますので、あえてここで改正しなければならないという強い理由は、どうしても理解できないのです。どうですか、非常に大きな実効を、行き過ぎをしないで期待することはできますか。
  31. 徳安實藏

    徳安政府委員 低額所得者の問題でありますが、これは、先般来からしばしば御質疑がございますように、見解の相違とは思いますけれども、私ども考え方は、あの第一条の条件というものは、入居する際だけの条件ではない。そのワクの人に入っていただくという精神だという工合に解釈するわけでありますが、そうだからといって、法律で、あそこを出ねばならぬ人も、こういう人は出てもらうのだという条項に、収入がふえたときには出るのだということがないわけでありまして、これは、やはり今の大きな世論といいますか、流れと申しますか、憲法の精神と申しますか、そういうものをくんでおるのと、もう一面は、もうすでにワクがきまっているのだから、それをきめなくても、ワクからはみ出た人は出るのだという、最初からそういう観念であの法律ができたのか、まあ両方だろうと思うのです、私ども法律を作ったときにおりませんでしたけれども。そこで、ただ低額所得者のこのワクの中に人に住宅を供給するのだという精神から申しますと、そのワクから出た方には、何らかそこにけじめだけはつけておかぬといけないんじゃないかという考え方で、やはりああした精神的な義務を一応つけておく。しかし先ほどお話しのように、大臣も私どもも、行き過ぎするような勧奨をいたしましたり、ただ法律にこう書いてあるから出ろ出ろ、今月から出なさいとか来月から出なさいとか、行き場のない人にそういうふうな精神的負担をかけるようなことはしない。これはもう十分指導いたしまして、そういうことのないようにいたしたい。そのかわり、そういう方には少し家賃をふやしていただくという気持で、ふやしてさえいただければ、おっていただいてもいいのだということはあとに十分書いてあるのでありまして、けじめをつけるだけの条項でありまして、そんなに大きな負担をかけて、何でもかんでも出てもらわなければならぬという考え方は毛頭ないのであります。そこに私ども考え方がございます。しかし法律をこしらえますと、えてして役人というものは、法律をこしらえたときの精神を忘れてしまって、その法律だけを守って勧奨しましたり、行き過ぎをしましたりする者が間々おりますから、これは一つお互いに、この法律を今度改正さしていただく際の皆さんの御質疑等は、十分地方公共団体等にも徹底させまして、そうした行き過ぎのないように、私どもの精神を十分にくんで善処いたすように努力するつもりでありまして、決してその効果をうんと出して、うんと入れるというそういう大それた考えは毛頭持っておりません。これは、十分に地方公共団体に徹底させるようにいたしますから、皆さんの方でもぜひ御監視を願いまして、行き過ぎや何かありましたら御注意を願って、そうしてそういう方々に精神的な大きな不安を与えないように御注意いただきたい。私どもの方も、これは十分注意をいたします。
  32. 島上善五郎

    島上委員 行き過ぎがないように十分御注意されるのはけっこうです。私が言うのは、こういうふうに法律にきめますと、入居者の受ける精神的な負担というもの、特に家庭の婦人の人々は、うちはもう三万二千円こえたから引っ越さなければならぬ、引っ越さなければならぬということが始終頭の中にこびりついている。移転をするということは、単に収入の面だけでは割り切れない問題がどうしてもあるのです。勤め先等の距離の関係とか、子供の学校の問題であるとか、いろいろなそういう生活上の都合も関連しておって、移転ができないという場合もしばしばあるのです。ですから、移転ということはなかなか容易じゃない。容易じゃないけれども、こういうふうに法律できめますと、明け渡さなければならぬということが始終頭の中にこびりついて、相当精神的な負担になる。そうしてその反面、一体この法律によって、今あなたが言ったような行き過ぎをしない運営をするとすれば、大した実効は上らぬ、効果は上らぬ、こういうことになるわけです。精神的な負担を入居者に与えておいて、実際の効果は大して上らぬ、こういうふうになるならば、何もここでわざわざしなくてもいいではないかという議論が、私は出てくると思うのです。それから今のお答えを聞いておりますと、一つ大きな矛盾があると思うのです。公営住宅というものは、これからこれまでの収入の人が入るものなのだという一定のワクがある、そのワクを明確にするのだ、これは百歩譲って、それはよろしいと仮定しましょう。ワクを明確にする、このワクを越えておる者は、しかし家賃を上げればいいのだ、家賃を負担しさえすればいいのだということには、私は矛盾があると思うのです。公営住宅は、ここからここまでのワクの人が入る住宅なのだ、徹頭徹尾それを押し通すならば、それはそれとして筋が通っている。この法律でいきますと、極端にいえば、十万円になっても、どかない者はどうすることもできないということにたりかねない。たとえば、私は今明け渡し努力をしております、方々を探しております、しかし勤務地との関係や、子供の教育の関係やで適当な家がないからといって言いのがれをしておれば、それはどうすることもできないということになる。ですから、これだけのワクの者が入るのだということを、筋を通してはっきりさせるためだ、とこうおっしゃるのですが、はっきりさせようとするならば、そのワクをはなはだしく越えた者はほんとうにどかすならば、筋はそれではっきりするわけです。ところがそうじゃない、私は、この法律ほんとうのねらいはその次だと思うのです。つまり家賃の値上げ、家賃の値上げがほんとうのねらいじゃないかと思うのです。どうでしょう。この方は、この法律ができますると、直ちに実効が上ります、効果が上りますよ。前の明け渡しの方は、一体私は実効は上らぬと思う。これは、やってみなければわからぬですけれども、少くとも行き過ぎをしない、厳に行き過ぎを慎しむというならば、これは大して実効は上らない。第二の方の家賃の〇・四ないし〇・八の方は、これは、この法律ができますとすぐやれるのですが、これがほんとうのねらいではないかと思うのですが、どうですか。
  33. 徳安實藏

    徳安政府委員 この問題に対しまして専門の諸君の御意見を伺い、また住宅対策審議会等の御意見等も聞いて善処したわけでありますが、この審議会等の御意見のいきさつを聞きますと、ただいま島上先生のお話のように、この際はっきりさして、もうワク以外の方は出てもらうべきではないか、国家の補助を受けていく階級ではもうすでになくなっているという考え方で、第一条の精神が一つのワクだということを考えますならば、それから外に出た人には、この際もう出ていただいた方がいいというように、はっきりこの際きめるべきだという議論が相当強かったということは、先般も御報告した通りでございまして、そういう御意見もあるのでございます。あるのでありますが、しかし現在の世相並びに住宅難等から考えまして、そうした厳格なことをするということは実情に即しないということで、といってこれを全然ぼかしてしまって、いつまでもただ入居するときの資格条件だ、たとい収入は幾らあっても、もうそのままでおっていいのだという考え方でもいけないのじゃないか。やはり一応ここにけじめをつけまして、そうして、そういう方々には、居すわりをするという考え方ではいけません、それは今お話しのように、良心的に恥じられる点もありましょうし、不安も考えられましょうが、そういう精神的な不安をお互いに感じ、感じさせられますが、しかしこちらできめました割増しといいますか、そうした金を払ってさえ下されば、平気で別にそうした不安なしに、そのままでお住まいになっておっても、別に追い出したり、あるいは法律制裁で処置するということは絶対ないわけでございますから、ただ一応のけじめだけはこの際つけて、そうして、もし学校の関係であるとか、あるいはまた勤め先の関係でございますとか、収入はうんとふえたけれども、どうもここを出るわけにはいかないという方には、それは当然でありますから、割増しさえ払っていただければ、一つの権利としてそこにおっていただいても、何もそれを追い出すという法的措置はとらないわけでありますから、そういう点については、良心的に御不安や恥じる点は一つもないと思います。ただ、家賃をたくさん払わない、そうしてそこに居すわるという観念であれば別ですけれども、そういうことがないわけですから、金さえ払っていただけば。ただ、それがために、そんなにたくさん出る者がないならば、実効はないじゃないかというお話がございますけれども、一応この建前から言いますれば、あろうとなかろうと、大体そこでけじめをつけて、そして中には、そうした観念で、収入も増加したから、学校の関係、通勤の関係等も大した苦痛はないから、もう少しいい家に行こう。家賃は少し払ってもいいから、もっといいところに行こうといって、みずから進んでお出になる方もあろうと思います。ですから、そういう方の心のきめ方についても、何か一つけじめして、ゆるいひもでも締めておいた方がいいのじゃなかろうかという考え方でありまして、決して今の方々に不安を与えるようなことはいたさない。これは、大臣もしばしば言っておりますように、そういう考え方でございますし、また政府施策によって建ちまする住宅等につきまして、お出になりましたら、そちらの方にごあっせんするとか、全然目当てもないのに、さあ出なさい、さあ出なさいということは絶対するはずはありません。一部では、こういう法律ができると、少し給料が上って度を越えると、毎月々々管理人が来て、さあ出ろ、さあ出ろというのじゃないかという御懸念があるということも聞きましたけれども、そういうことは絶対ないと思います。そういうことは、運用面において遺憾なきを期したいと思いますので、一つ御安心をいただきたいと思います。
  34. 島上善五郎

    島上委員 そこでワクをきめる、けじめをつける、ただし家賃を負担してもらえばいいんだ、こういうようなことは、あなた方が今まで説明しておる提案理由の中でも、あるいは法律の中でもはっきり書いておる公営住宅の趣旨と少し違ってくるのじゃないか。この中には、御承知のように、一条の目的にはちゃんと、「住宅に困窮する低額所得者」こうなっておる。あなた方は、三万二千円をこえた者は低額所得者でないという。この定義にもいろいろ議論がありますけれども、あとでまた質問しますが、三万二千円をこえた者は低額所得者でないという、こういう見解をとっておるわけですから、その低額所得者でない者も、家賃さえ二割増し負担するならばかまわぬということならば、その家賃を取ることに重点が移ってしまって、低額所得者という方に重点がない、こういうことになりはしませんか。家賃の負担さえすれば高額所得者でもよろしいということになれば、この法律にいう低額所得者ということに重点がなくて、家賃を取るということに重点が移っていく、こういうことになりませんか。
  35. 徳安實藏

    徳安政府委員 もしこの定義に当てはまる以外の者は出るべきだということに御賛成が願えて、そうしてそういう方はどんどん出して、まだ非常に困っておる方がたくさんおるのですから、そういう方をどんどん入れろ、そういう工合にぜひしろというお話てございますれば、そういう御議論も多いのですから、あるいはそういうふうにすることも一つの方法かと思います。ただ現実の問題としては、たとい少しぐらい収入が増加いたしましても、出ろと言っても、出るに家のない現状であり、先ほどお話しのように、就職の関係、あるいは学校等の関係で、収入は増加いたしまして、その負担は耐え得るといたしましても、自分の周囲の関係から、しばらくそこから出るわけにいかないような家庭的の事情がある方もございますから、そういう方には、やむなき便法としてそういうことを考えよう。それも、そのまま安い家賃でおっていただいたのでは、御本人もつらかろうと思いますから、そういう方には特別の方法として、少し家賃をたくさん出していただいて、そうして気安くおっていただこう。しかし自分が出ようというお気持の方には、もちろんどんどん出ていただいて、もっと困っておる方に入っていただく。あるいはそうした少しでも収入の道をふやすということは、決してぜいたくという意味ではございませんで、その得ました金で、今度は、ほんとう家賃も払えないようなもっと低額所得者がございますから そういう方々を少しでも補いをつけて、そういう方に向けてあげるという方面にその金を使いたい。また皆さんの方の、いわゆる公共的な、みんなが共用されるような福利施設にもそういう金を使いたいという形でございまして、決して余分に家主である地方公共団体がふところをふやすというような考え方で取ろうという考えではないのであります。社会政策的な見地から、そういう金をできるだけ均霑して、皆さんに福利増進のためにも使っていただき、またすでに定めた金額を納めることすらできないような低所得者があったり、また非常に気の毒な方がありますから、そういう方も、地方公共団体で条例の定めるところによって救い上げていこう、そういう方面に金を使おう、そういう考え方でありまして、その金の使い道につきましても厳重に指示してある通りでありますので、決してむやみやたらに地方公共団体が使う、家賃さえ取ればいいのだ、こういう精神でございませんので、その点はぜひ御了承いただきたいと思います。
  36. 島上善五郎

    島上委員 どうも私は、その間の矛盾を感じてしようがない。低い人たちの入居の道を開くため、今入ろうと希望しておってもなかなか入れない、そういう人たちの入居を容易にするためならば、もっと相当強く追い出さなければ容易になりません。かりに、さっき言った七万四千戸のうち、第一種に属するものがどのくらいあるか知りませんが、かりに三万としまして、その三万のうち相当数出てもらわなければならない、三万のうち一万五千出てもらえば、一万五千は下の方から入ってこれるという勘定になるわけです。しかし、入居を容易にするためと、こう称しておきながら、こっちは家賃さえ出してもらえば、おってもらってけっこうだ、こういうことになれば、入居を容易にするという道は開けないじゃないですか。家賃収入はふえますよ、その方の効果は上りますよ、しかし、入居を容易にするという方はちっとも効果が上らぬじゃないですか。そういう道は開けないじゃないですか、どうですか。家賃を出してもらいさえすれば、おってもらってけっこうです。こういうことならば、入居を容易にするという道はどこで開けますか。開けない。入居を容易にするには、私はむしろ現在の建築の戸数を来年度、再来年度だんだんふやしていきますから、しかもこれは三年先でなければ効果が上らないのですから、三年先には、もっと戸数をその実態に合うようにふやしていくならば、そこで入居を容易にすることはできますけれども家賃を出してもらいさえすれば出なくてもけっこうだというのなら、そこから入居の道を開くということは不可能です。家賃収入をふやすということは簡単にできます。そこで私は、ほんとうのねらいは家賃を値上げすることではないか。ほんとうのねらいはそこだと正直におっしゃるならば、これはまたおのずから別の議論がありますよ。
  37. 徳安實藏

    徳安政府委員 今いろいろ御意見がございますが、私どもの精神は、先ほどから申し上げておる通りでございまして、ただ家賃を値上げする、たくさんの家賃を取るという考え方ではございません。またそこにお入りになっておる方が、家賃さえ上げて下さればもうけっこうでございます、おって下さいという精神でもないのです。実際は、先ほど申したように、やむなくそういう方には、むしろ低額所得者の入られる家に、収入がうんとふえてもそこにおいでになるのは居づらかろうという考えもございますので、そういう方には出ていただきたいし、勧奨もしたいのですけれども、しかし住宅難の今日においては、そういう法の精神、いわゆる第一条における低額所得者ということをかりに厳格に守るということになりますと、それこそ多数の方々に大へんな御迷惑をかけることになりますから、守れという説もございますけれども、その中間をとりまして、守れといっても守り得ない現在の実情から、そういう方々にやむなき一つの方法としては、そういうことでむしろあまり不安なしにおっていただこう、こう考えておりまして、どうぞけっこうですから、家賃さえ上げて下されば出る必要は一つもございませんという考え方でもないのであります。できれば進んで出ていただきたいのでございますが、これは今の実情が許しませんから、許さないのに安い家賃でおっていただいても、良心的にも居ずらかろうと思うのです。ですから、収入がふえたら少しくらい増されても払いましょうと言って下さる方には、現在この住宅難の解消せられない今日において、無理な移転などについて強制的なことはいたしません、こういう考え方でございます。
  38. 島上善五郎

    島上委員 私は、何も厳格にワクを守りなさいと言っているのじゃないのです。厳格にワクを守るべしという議論が非常に審議会であった。それから、ワクをはっきりしておきたいという精神からこういう法律にしたというお話だから言ったわけですけれども、現在ワクを守って明け渡しさせられないという事情であることは、あなたのおっしゃる通りです。それから、三万二千円をこえるものは直ちに高額所得者であるということになるかならぬかは、これは大いに議論のあるところで、私はそうではないと思うのです。三万二千円をこえたものは、極端に言えば三万二千五百円でもワクをこえたことになるのです。三万五千円でもそうです。さっき住宅公団家賃の御説明がありましたが、この比較を見ますと、最近できた公営住宅家賃の一番高いところと公団住宅比較家賃の低いところと接近さしているのです。そういう数字が出ている。ところが公団住宅は、最近新しく建つたびに家賃が高くなっております。入居資格基準も高く上っています。現在公団住宅に入っている者にとっては、東京比較的接近しているように見えますけれども名古屋大阪の場合を見ますと、ちょうど倍になっています。東京でも、公営住宅最高公団住宅の最低では千百円の開きがある。二千円以上の開きはどうしても見なければならぬのです。そうすると、三万二千円の人が三万五千円になったことによって、お前はもう基準をこえたからということになれば、ふえた分の収入を全部新しい家賃に入れなければならぬ、こういう結果になるわけです。いわば生活に脅威を感じないで容易に引っ越せるような場所がないということが一つ大きな問題なのです。そういう状況なんです。だから、私はワクを厳格に守って明け渡しを強行しろなどということは毛頭言ってない。それとは反対のことを言っているのです。ただこの法律から見ますと、この明け渡しは軽く精神的な義務を課しているだけで、これでは実際の効果は期待できないのです。そうして一番効果が上るのは、家賃がふえるということです。だから私はさっきから言っているように、この法律は、家賃を増額するというところに大きな重点がある。今の公営住宅法第一条の精神によって、低額所得者を厳格に入居させるということよりも、あなた方の解釈による、低額所得者でなくなった、高額所得者になった者でも、家賃を四割増しで負担すればよろしいという、そっちの方に重点がだんだん移ってきている。そうだとするならば、それはそういうことで私ども議論しますよ。実際はそうなんです。そこに私は問題があると思う。せんだって大臣答弁によりますと、この法律の改正は、国の財政負担を云々というところに考えを持っているのではない、こういうことを言っているんです。正確な御答弁を申しますと、武藤君の質問に対して、ただいまお尋ねの点は、不合理の調整に重点がおかれており、財政面についてのことは、毛頭考えておりません。こう言っているのです。ところがもし不合理の調整だけであるならば、現行法でもできるんです。現行法の第十三条に「物価の変動に伴い家賃を変更する必要があると認めるとき。」「公営住宅相互の間における家賃の均衡上必要があると認めるとき。」「公営住宅について改良を施したとき。」ということがありますから、不合理の是正ならば、私はこれでできると思う。今あなた方が考えたのは、収入によって家賃をふやそうというところにあるんだと思う。単なる不合理の調整だけでなくて、財政面に相当のものを期待している、これがほんとうではないかと思う。四割といったら大へんな増額ですよ、二千円のものが八百円値上げになり、三千円のものが千二百円増額になるのですから。一体この法律が実施されまして、対象になっております第一種、第二種の住宅七万四千戸について、家賃が四割ないし八割増額されましたら、年収どのくらいになるか。その点は計算しておいたと思うのですが、その数字をちょっとお聞かせ願いたい。
  39. 稗田治

    稗田政府委員 収入増がどのくらいになるかという類推でございますが、これは三年後のことでございますので、正確には申し上げにくいわけでございますが、三年後にもし今日の状態で一種の方に一割、二種の方に三割というような形で進んでおる、それで出ていかないという状態であれば、全国に分布しております各事業主体公営住宅全部を集計いたしますと、年間四億四千五百万円ほどの増収が考えられるのではないかということでございます。  なお先ほど、三万二千円という収入公団家賃の負担状況の比率の問題が出ておったわけでございますが、現行法で三万二千円と言っておりますけれども、現行法によりますと、扶養親族について千円ずつを控除することになっておるわけであります。公営住宅の平均の家族構成は四人前後でございます。ですから、扶養親族が三人あると考えられるわけであります。なお現行におきましては、入居するときに、六カ月の収入を月割りにする、臨時収入は含まないということになっておるのであります。そういうような臨時収入をFIES等の調査によって集計してみますと、一六%くらいが考えられる。そういうことを入れますと、平均家族構成では月額四万一千六百六十六円という収入の方を限度としておるわけでございます。これは、FIESの調査によりますと、勤労世帯数の八三%に当っておるわけでございます。  なお今回の改正案が成立いたしますれば、政令の段階になるわけでございますが、現在考えておりますのは、やはり扶養親族につきましては控除額が同じように一千円とする、それから勤労控除額というものを考えようということにしておるわけでございます。そのかわり臨時収入も加える、年総額から勤労控除額を考えるということにするわけでございます。そうしますと、今申し上げましたような同じ世帯構成のものでは、月額にしますと、実際は四万一千八百円という月収の者が限度になる、こういうわけでございます。これも同じく勤労世帯数の約八三%に該当するわけでございます。従いまして、勤労世帯の八三%というところまで公営住宅で救済されることになっておるわけでございます。上の方の一七%が今明け渡し努力義務を課せられるかどうかという問題でございます。それで、先ほどの明け渡し努力義務と割増し賃料の関係は不即不離でございまして、これは一諸に読んでいただきたいのでございます。別々にこちらが効果がある、こちらが効果があるということではなしに、同じ条文に一号、二号というように分けて考えてございますので、これは不即不離でございまして、どちらも非常に意味を持っておるわけでございます。それで実効のことでございますが、たとえば、現在公団住宅自分の勤務場所に非常に便利なところにできた、学校も子供にはその方が都合がいい、申し込んだけれども当らない、行きたくても行けないという方があるわけでございます。今度こういうように努力義務を課することによって、一方におきまして、公団住宅の入居等についての建設省令の改正を考えておるわけです。そうして公団住宅も、そういうような入居の入れかえが円滑に行くように省令を改正しようというように考えておるわけでございますので、実効は、そういうところでかなり上ってくるというように考えておるわけでございます。われわれこういった努力義務を課し、割増し賃料を入れましたのも、要するに政府施策住宅は、公営公庫公団という三つの大きな柱があるわけでございますけれども、この三者のバランスというものを重点考えなくちゃいかぬ。その中で、公営住宅がどういうような位置を占めておるか、そこを明確にしたいというので、明確にするためには明け渡し努力義務、あるいは割増し賃料ということも入れなければいけないというように考えたわけでございます。
  40. 島上善五郎

    島上委員 今大臣がいないから、この点はまだあとに保留しておきますが、どうも実際は、大臣答弁と食い違っておるのです。たとえばこの提案理由を見ましても「このままの家賃では、適切な維持修繕ができないばかりでなく、」云々と「このままの家賃では、適切な維持修繕ができない」ということを先に言っているのです。「できないばかりでなく、最近建設された公営住宅家賃に比しその差が著しく、」云々となっている。このままの家賃では適切な維持修繕ができない。別の言葉で言えば、家賃を値上げしなければ適切な維持修繕ができない、この適切な維持修繕をやるために値上げするのだ、こういうことにどうしてもなるのです。そうして年間四億四千五百万円も上るのですから大へんな金額です。これは、財政の面については毛頭考えておりませんということになりますか。これは、大臣が来たときにもう一度あなたに聞きますけれども
  41. 稗田治

    稗田政府委員 ただいまの御質疑につきまして正確に申し上げますと、ただいま明け渡しにからんだ割り増し賃料だけの話でございましたので、そういうふうに申しておったわけでございますけれども、今回の法律案には、もう一つ別なのがあるわけでございます。二つに分れておるわけでございます。その一つは、公営住宅の初期に建てましたものと今日建てます公営住宅家賃が不均衡になった。家賃の負担能力から考えまして、もはや建設当初にきめた家賃というものが、勤労所得階層に対する妥当な家賃としての意味を失っておるというのが最初にあるわけでございます。しかも、それが維持管理に十分な家賃であれば別でございますけれども建設当初当初非常に物価の推移がございましたために、非常な低額でそのままくぎづけになっておる戸数があるわけでございます。それを木造におきましては二十九年度耐火構造におきましては二十六年度、その家賃基準にしてそこに近づけよう。それと同じにするわけではございませんけれども、近づけさせて一応の均衡をとろう。その収入を修繕の費用に回そうというわけでございまして、割増し賃料の方は、修繕に回そうという考えではございませんで、これは、先ほど政務次官がお答え申し上げましたように、新しく入ってくる居住者であって、しかも公営住宅の二種の家賃でもちょっとつらい、それでは払い切れないというので、初めから申し込みを断念されるような方もあるわけでございます。そういう方に門戸を開くために、減額をしたり、あるいは当初の家賃を低くきめたりする、そういう財源に回そうというわけでございます。従いまして、古い公営住宅家賃の不均衡を直すというのと割増し賃料とは全然別でございます。
  42. 島上善五郎

    島上委員 そうしますと、新たに二種に入ろうと希望しておる者で、二種の家賃さえ払えない者がある、それはその通りです。そういう人々に減額する。そういう方面に回すといたしましたならば、今後は第二種に新たに入る者に対して、入居資格に達しない者でも入居資格基準を引き下げて入れますか、あるいは家賃を初めから引き下げて入れますか。
  43. 稗田治

    稗田政府委員 御承知のように、第一種公営住宅におきましては、家賃の六倍から十五倍であって、先ほどの控除額等を差し引きまして三万二千円という限度になっておりますので、家賃の六倍ということで下の限度があるわけでございますけれども、第二種公営住宅におきましては、一万六千円以下ということで、家賃の何倍ということも政令では規定していないわけでございます。従いまして、これはずっと下の階層でも、門戸は一応開けたように法律上はなっておるわけでございます。ただ事業主体の方におきましては、一応公営住宅の経営もやっていく関係上、ところによりますと、八千円以下の方はだめだとか、あるいは家賃の六倍なければだめだというようなことを、財政上からそういう制限を加えておった事業主体が間々あったわけでございます。それにつきまして、今後そういうような下限を設けることは撤廃させよう。それで、当初からある比率をもちまして、そういった一万円前後のなかなか家賃も払いにくいという方のために門戸を開かせようというわけでございます。
  44. 島上善五郎

    島上委員 現行法でも、入居してから病気になったとか、失業したとか、その他不幸な事態が発生して家賃が払い切れぬという場合には、減免の措置ができるようになっている、現行法でもそうなっている。それを新たに現行法以上に、今の第二種に入れない人々にも容易に入れるようにするには、そこのところをはっきりしなければ、この四億四千五百万円の金を使いますといっても、実際上は、現行法の範囲内で減免する人々に使うということになってしまうと私は思うのです。今のような御答弁の範囲では、この四億四千五百万円が、それらの人々のためにはっきり使うんだということはどうしても信用できない。
  45. 稗田治

    稗田政府委員 現行法による家賃の減免の規定は、仰せのごとく、そういうように事業主体で使っておったわけでございます。それで、新しく入る入居者についてのようにあの文面ではなかなか読み取りにくいというので、今回におきましては、そこも多少修正を加えまして、意味をはっきりさせたわけでございます。  それからもう一つは二十条でございますが、今回の改正案におきましては、「建設大臣は、公営住宅家賃、第十七条各号の条件以外の入居者の具備すべき条件又は入居者の選考方法が著しく適正を欠くと認めるときは、理由を示して、当該事業主体に対してその変更を命ずることができる。」というように、二十条におきまして、地方における十七条による条例の条件その他につきましても、建設大臣が規制できるようにいたしたわけでございます。
  46. 島上善五郎

    島上委員 これは、どうしても大臣に聞きたいことですけれども、まあ次官にお伺いしますが、大きな問題が一つあるんです。家賃というものは——法律にもちゃんと家賃となっているんですから、住宅公団の場合でも、公営住宅の場合でも、民間の場合でも、少くとも今までの家賃を取り立てる基準と申しますか、家賃を算定する基準というものがあった。それは、住宅公団の場合には建築費とか、固定資産税とか、管理費とか、そういうものを年賦に割って利子を計算して、そこから算出したものです。公営住宅の場合には、政府及び地方公共団体の補助金を除いて、それで二十年、年六分以内、こういうことで修繕費や管理費を含めて算出しておりますね。これは法律でちゃんとしております。民間の場合には、もちろん建築費とか、地代とか、税金とか、それに若干の利益を見込んで、そういうところから家賃を算出しているのですね、今まではそうなんです。これは動かすことのできない事実だ。外国の例のことは、私はここで申しませんが、今まで日本では、収入に応じて家賃がきまるというのは前例がないと思うのです。たとえば住宅公団の例で見ましょう、同じ家だけれども、あなたは五万円あるから八千円だ、あなたは四万五千円だから七千五百円だ、あなたは四万円だから七千円だ、こういう家賃のきめ方はいまだかつてない。今度収入に応じておそらく——第一種の場合四割までというんですから、一割の人もあるかもしれませんし、二割五分の人もあるかもしれません、三割、四割の人もあるかもしれません、収入に応じてですから。そうすると、家賃の割増し賃料といっておりますが、この割増し賃料、要するに家賃の増額に関する限りは、収入に応じて家賃をきめる。家によって家賃をきめるというんではなくて、住んでいる人の収入によって家賃をきめる、こういうことになっているわけですが、家賃に対する考え方を、そういうふうに政府は切りかえるお考えですか。
  47. 徳安實藏

    徳安政府委員 近いうちに大臣が来ますから、私の答弁で満足できない点は、大臣にお聞き願いたいと思いますが、家賃のきめ方につきましては、前段でお話しの通りであります。私どもは、それを変える意思はございません。ただ今の場合は、先ほど申し上げましたように家賃には違いありませんが、いわゆるワクの外に出た諸君に対する一つの臨時的な処置でございまして、これは、先ほど申し上げましたように、国の保護によって建てた住宅、つまり国から金が入っている住宅、こういうものに対しましては、ただいまの公営住宅やあるいは公団住宅に対する計算の基礎は、そういう国から入りました金なんかに対する利子なんというものは全然考えずに、計算されておるのであります。初めからそういうものが入っておりますれば別でありますが、初めから入ってないのであります。ですから、そういうもう収入がふえてワクの外に出るような収入のある人には、政府の方から出ておる金に対しても、無利子であげたような金でも、たとえば無利子でないような計算をしていってもいいのじゃないかという気持が多少ございまして、あまり高いことはいたしません、それと見合う程度の段階をつけましていたすわけでございます。これは、民間人が建てましたら、もちろん正当な家賃になると思います。そういうものは、今の公営住宅では、政府から出ております金なんかに対する利子や償却は考えずに出ておる計算でございますから、ワクの外に出た以上は、もうそういうものも幾分加味してもよかろうというような考え方基礎にして段階をつけたのでございます。もちろん家賃をきめる根本観念は、先ほどお話しのような精神でいっておりますから、これは、今後といえども変るはずはないと思います。ただ、今のように特別割増料をいただくというのは臨時的な処置で、その臨時的な処置も、決して法外に出ておるわけではありません。政府の方から出ております金などに対する、いわゆる補助金等に対する金利だとか償却だとか、そういうものを全然見積っておりませんから、もうそういう資格に該当をしない人からは、そういうものを多少加味していただいてもいいじゃないかという気持をもって、この段階をつけたという工合に御了承を願いたいと思います。その内容につきましては、一つ局長から説明いたします。
  48. 稗田治

    稗田政府委員 御承知のように、公営住宅におきましては、第一種、第二種という家賃の差があるわけでございます。これは、所得階層別によって家賃に差ができておるわけでございます。これは、補助金が三分の二とか二分の一とかいうので、そういう家賃になる仕組みになっておりまして、所得階層に見合う家賃住宅を供給するのに、大ざっぱではございますけれども、現在国は第一種、第二種というように分けてやっておるわけでございます。たとえば予算坪数でございますと、これは平均坪数でございますが、第二種は大体八坪、第一種は十坪くらいでございますけれども、これは事業主体でいろいろ組み合せて振り分けもできるわけでございます。ですから、第二種公営住宅におきましても、十坪くらいのも場合によってはできておるわけでございます。ですから、同じ規模のものが、そういった所得階層別によって別な家賃で供給されておるわけでございます。今回公営住宅の、われわれが入居の基準を越えたと考えた方々に対しましては、国の二分の一なり三分の二の補助金を差し引いてまで家賃計算をすることは、少し均衡を失するのじゃないかというので、その補助金の一部を抜いたというような形でございます。しかしこれは、一般の補助金を抜いて全建設費に対する市中金利で家賃を計算するかということになりますと、公団住宅は、御承知のように勤労者住宅困窮者に対して供給しておるのでございますけれども公団家賃は、全体の建設費に対しまして、償却費は四分一厘というような計算でやっておるわけでございます。なお公団住宅におきましては、所得制限はしてございません。ですから、公営住宅の入居者といえども公団住宅所得制限のない利回りよりも引き上げるというのは、これは、やはり国民の負担の均衡からいって妥当ではないと考えまして、公団の全体の建設資金の利回りよりもよけいとってはいけないというのが、この〇・四なり〇・八という限度でございます。これは上の限度を示したわけでございます。しかしながら、いきなり千円ふえたから急に二割増しとか四割増しというようなことも、実情には沿わないだろうというので、法律上は最高の限度を示して、それ以下にしなければならぬとしておきまして、あとは事業主体の方で実情に合うように——あるいはまた政令に入れる場合もあるかと思いますけれども、実情に沿うように、その人の所得に応じた無理のない家賃にしていこうというふうに考えておるわけでございます。
  49. 島上善五郎

    島上委員 ワクを越えた人は、政府及び公共団体の補助金の恩恵に浴する資格がない、だから政府及び地方公共団体の補助金に相当する部分の負担をしてもらう、こういうのでもないのですね。それなら、それはそれとしての一応の筋はあると思うのです。是認するわけではないけれども、一応の理屈だと思うのです。一部分とか幾分かとか、抽象的なことを言っていますが、この四%ないし八%は、政府及び地方公共団体の補助金の一体どのくらいに該当するか、そういう算定をなさったかどうか。
  50. 稗田治

    稗田政府委員 もちろん二割増し、四割増し、あるいは八割増しというのも近似値でございますから、どの場合にもぴったりその数字が一致するわけではございませんけれども、大体全建設費を四分一厘ということで家賃計算をすればということで、その近似値をとったわけでございます。なお公団住宅におきましては、勤労者であって住宅困窮者であれば、収入は上の方は別に制限してないわけでございます。ですから、公営住宅の入居者といえども収入がふえたからといって、一方に国の政策とし公団住宅があって、そこが四分一厘で利回りをやっている場合に、これを全体の建設費の六分なり八分なりにするということはバランスがくずれるということで、四分一厘以下というように考えたわけでございます。それでは、これを建設費の四分一厘に見合う補助金制度でやったらどういうことになるかと申しますと、補助金制度を生かしてやれば、三割弱の補助金がなお入っておる家賃になると思います。
  51. 島上善五郎

    島上委員 私は今の家賃の問題については、どうしても大臣に聞かなければならぬ。これは、収入によって家賃を負担するという考え方に切りかえるとすれば、公団住宅家賃にも当然影響してきますから、この点は、この次に大臣が見えたときまで私は保留しておきます。
  52. 堀川恭平

    堀川委員長 山中吾郎君。
  53. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 次官にお伺いいたしますが、先ほど次官のお答えの中に、この法律の第一条は、やはり低所得者は継続する条件と解釈すると言われたのですが、わざわざ前に法制局の権威者に来ていただいて、含んでいるかどうか聞いたら、これは入っていない、継続条件という規定は第一条にはない、そのあとの入居の資格として規定しておる、継続条件というのは、この現行法には規定はしていないというふうに言われたのですが、そこのところがあまり自由に解釈されては、せっかく法制局に来てもらっても困る。何も規定がないというふうに答弁されたのですが……。
  54. 徳安實藏

    徳安政府委員 私は法律家でないから、あまり詳しいことはわからないということを、先ほどから申し上げたのでありますが、私の見解は……。
  55. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 この間の法制局の答弁と違っているのですよ。
  56. 徳安實藏

    徳安政府委員 違っていないように思うのですが、聞き違いじゃないでしょうか。
  57. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 先ほど次官は、第一条の中の低所得というものは、居住する継続の条件だとわれわれは解釈しておる、こうおっしゃったのです。前に法制局の部長は、そういう規定はここに欠けておるのだ、ないのだ、こういうように答えられておるわけです。それでは部長の方から聞きます。
  58. 野木新一

    ○野木政府委員 私の説明の仕方が十分でなかったために、そのようにお聞き取りになられたかもしれませんが、私の趣旨といたしましては、第一条はこの法律の目的をうたいまして、「住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃賃貸することにより、」そういう大目的をうたっておるのでありまして、この規定だけからは、果してこれが継続要件か、あるいは入居承認だけのことを考えておるのか、それは出てこないわけであります。従って、これは広いわけであります。従って、あとでこの目的を達成するための具体的な措置として、各条にいろいろなことを規定しておるが、その各条の規定においては、これを継続的要件とするための具体的の規定、そういうものは欠けておる、しかし各条に入れれば、もちろん第一条は入れ得る広い範囲は持っておる、そういうことが目的ですから。そういう趣旨で私は申し上げたつもりであります。それで、おそらく矛盾はしていないのじゃないかと思います。
  59. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 法制局では、継続条件を各条項に入れれば継続条件になる、現行のままでは継続条件という規定はない。ところが次官の方は、継続条件だと解釈しますとおっしゃいますから、私は非常に危険だと思うのです。それだから、いつでも追い出すということがこの法律にあると解釈されておりますから、そこで簡単に明け渡し義務が入ってくる、私はそうでないと思う。公営住宅の精神は、もっとあたたかいものだと思う。低所得者であれば入ることができるのです。一たん与えたものをまた奪い取るというような思想は、入っていないのだと思います。なぜかと言いますと、今までの建設計画でも、現在足らない不足数を計算して、何カ年計画を立てておるわけで、その中に入った者がまた何割か出ていくことを計算して、現在の建築不足数から差し引いて計画を立てていないのです。入れたものは、その分だけ充足をした、これだけ足らぬから何カ年計画で建てていく。だからこの法律の思想は、所得が少い住宅困窮者を入れるということで、あとはとにかく足らぬ分だけ作ってみんなに充足していくという思想は、間違いなくあると思うのです。今の法制局の部長も、第一条はそういう解釈はしておられない。第一条は広いものだから、そういうものを入れれば出てくるかもしれぬということなんで、最初から第一条そのものに継続条件という思想は入っていない。実際の取扱いとしては私はそうだと思う。ちょっと違うでしょう。
  60. 野木新一

    ○野木政府委員 結局建設省のおっしゃることと違いはないと存じます。ほとんどそのまま解釈いたしまして、法律各条には法律の具体的効果をうたっておるわけですから、具体的効果といたしましては、低額所得が上った場合には、出ていけという具体的効果をうたった規定はないわけであります。現行法の一条の趣旨から言えば、書こうと思えば、第一条の範囲内で書けたわけでありますけれども、そこまでやらなくとも、最初のときはこの程度のことをやっておけばいいというので、それだけの措置を規定してあるわけであります。従って今度、今までやっただけでは足りないから、低額所得者でなくなった場合にはすぐ出てもらうような規定を置こうということは、第一条のとにかく低額所得者に低廉な家賃住宅を供給するという目的からは逸脱してない、あるいは公営住宅法の施行の実情にかんがみていろいろ手を入れていくという際には、あるいは一応趣旨のうちに、必要なればそこまでできるということは内在しておる。しかし現行法は、各条において具体的にそういうところの措置は規定してない、そういうことを私申し上げたわけでありまして、結局趣旨としては違わないものではないかと存ずる次第であります。
  61. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 もう一度研究していただきたいのです。私にとっては大事なことなんですよ。第一条には、継続条件ということははっきりと明記してないと私は解釈する。あなたも明記してあるとは言ってない。そうして十七条には、入居者の資格だけがあり、一方には譲渡する制度まで道をあけてある。そういう全体の法の思想から、この法律の立法精神は、一定の収益がふえた場合には家賃を上げるという思想は入っておるけれども、出て行けという思想は入ってない。今一度それを研究してもらいたい。  それから大臣が来られましたが、この間御答弁された中に、ちょっと気にかかることがあるのです。法律改正をお読みになったとかお読みにならないとか、あるいは事務的なものだからとおっしゃいましたけれども、ここは立法の府ですから、改正法を見ないで第六感的に間違いなく判断するとおっしゃったのですが、ことに居住者の権利に関するものですから、事務とおっしゃる言葉は、何か非常に誤解を受けるように思うのです。私はあとで気にかかって仕方がなかった、もう一度ここで、どういうお気持で言われたか、お聞きいたしたい。
  62. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 法案を出す以上、私は一通り目を通しております。
  63. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 この間は見ないとおっしゃった。
  64. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 こまかいことはあまり読んでいない。こまかいことは、法律の専門家にお願いしていきたい、こういう考えでおりますから、要点だけはつかまえて、常識的に解決すべきものは解決していく、政治的な判断は私がやる、事務的ないろんな解釈だとか、法律論のようなものは、それぞれの専門家にお願いする、こういう態度でいるわけであります。
  65. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 それでけっこうですが、もう少し法改正というものは、内容的にやはり大臣も検討していただく必要があるのではないか。  一例を申し上げますけれども、二十一条に新しく加えられた明け渡し努力義務ですが、これは何らの大した拘束力はないというのですけれども、そのあとに、事業主体はあっせんをする義務を与えておる一節があるのです。必要があると認めるときは、あっせんをする、だから、事業主体は、勝手に必要がないといってしまえば、あっせんする義務はないわけです。ただ出ていけということだけは言える。あっせんをするということは、必要と認めるときということしか言葉が入っていない。こういう中に、私はこの法律の非常に冷酷な性格が執行部面に出てくるので、この辺は、やっぱり一応大臣に見ていただかないと、住民に対して非常に冷たい法律が、気のつかないときに生まれてきている。一たん法律ができれば非常に影響が多いので、私も法律というものはおそろしいものだと思いますので申し上げたのです。  それから局長でけっこうですが、第一項に努力義務を与える、第二項に、先ほど説明されたように、割増賃料は一体的だと答弁された、一体的だということは、その通りだと思うのです。三年以上居住しておって、努力義務を与えられた、そして出ない限りは、割増賃料を課すという処罰的な思想がここに入っていると思うのです。一体的に規定しているのです。そこのところを説明していただきたい。
  66. 稗田治

    稗田政府委員 これは、すでに国から二分の一なり三分の二の補助金の入った形で計算された家賃で住む資格はないということでございますので、従いまして、正当な公営住宅の本来あるべき家賃でおる資格がないということを表現しておるわけでございます。なおこの割増し賃料につきましても、決して罰則というようなことを考えておらないわけでございます。罰則であれば、むしろこれは、市中家賃のところまで上げるべきがほんとうじゃないかと思うのでございます。つまり高い家賃にして、片方では精神義務であっても、経済的にとてもたまらなくて出ていくということにすれば、それは罰則的な家賃になるかと思うのでございますけれども、この場合は、公団住宅であるとか、住宅金融公庫の協会住宅といったような家賃との均衡も考えまして、それを最高限度にしておるわけでございます。先ほど申しましたように〇・四倍とか、〇・八倍と申しますけれども、なおこれは資金構成におきましては、全体四分一厘見当の家賃でございますし、これをまた同じ方式で、補助金の形式で直せば、三割弱の補助金が入ったような家賃ということでございまして、決して罰則というのではないわけでございます。
  67. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 額が少いから罰でないと言いますが、罰金は十円もありますからね、額に関係ないと思う。思想的に罰則の思想が入ってくる。私の言うのは額に関係ないのです。なぜかと申しますと、割増金を払えば努力義務を解消するというならばわかりますけれども、割増金をとって、また努力義務をその人は死ぬまで継続している。これは罰則だと思う。こんなずるいことをしないで、片方は精神的に出ていくような思想を打ち立てる。その努力義務を課しながら、割増金も両方を課しておる。どっちか一つならばわかります。だから私は罰則的思想じゃないかと思う。
  68. 稗田治

    稗田政府委員 われわれは、そういうようには考えませんで、国の恩典なり地方公共団体の恩典が、従来の家賃のままでおるほど資格はもうないというように考えて、戻したわけでございます。
  69. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 そこで第一条に、次官の解釈するように、低所得が継続条件だという思想が前提になっているから、ずっと一連の冷たい改正が流れておると思う。たとえば、この間高輪なら高輪を見せてもらいましたが、あの集団建築、あそこは一つの新しい地域社会を形成するという思想が入っている。その中に住んで、いろいろの人間関係が出てきて、そこで居住して一つの部落のようなものができて、そこに一つのいろいろいい風習もできる。従ってああいう集団建築というふうなものは——やはり家賃は高くするということは、私は最初から反対とは言っていません、人をどんどん変えていくというふうな思想とはすでに合わないのじゃないか。それから子供たちが仲よく遊ぶようになった。ある学校に行ったときに、その学校を転校させるということは、それは親としては非常に悲しいことです。そういうことを含んで、私は住宅というものは、非常に貧しい人を救うために作ったのであって、あと十年努力して、一万、二万よけいとった場合でも、そこに安心して生活をさしてやるというのが、ほんとう住宅の供給思想だろうと思うのです。そういうことをもう少し考えていただかないと、単なる明け渡し義務というのは有名無実だというけれども、私は重要な影響を与えるものだと思っているんです。もう一つは譲渡思想、必要によってまた譲ってやるという思想がだんだんとなくなっていく、そう思うんですか、住宅政策というのは、とにかく今ない者にあてがって、そして不足数を何カ年計画で充足していくという予算をとってやっているんですから、出たものを差し引いて計画戸数を減らすということになれば、この間大臣は前進と言ったけれども、私は住宅政策の後退の刺激にしかならない。大蔵省は、こういう方針でいきますと、明け渡し努力していないじゃないか、補助金を減らすと、建設省は押えられるだけだと思う。
  70. 稗田治

    稗田政府委員 まず公営住宅の入れかえの問題でございますが、つまり国から非常に恩典のある低家賃公営住宅に入っていて、資格のない方はできるだけ席をあけていただくように努力していただきたいということが一つ。  それから先ほど申しましたように、勤労所得階層の八三%は公営住宅の入居の資格で救えるわけです。あと一七%の上層の階級だけになるわけでございます。それで、御承知のように、公営住宅は、われわれはもちろん国民の住水準を上げるということで毎年努力は続けておりますけれども、これが補助事業で、国から税金で多額の補助金が入っていくということにおきまして、おのずから社会政策的にある限度を考えなくちゃならないわけでございます。従いまして、規模の増大等におきましても、未来永劫そこに住んでいただくというような規模で現実には供給されていないわけでございます。家族構成も、だんだんと世帯が成長して参り、孫もできるということになりますと、あの公営住宅ではなかなか住んでいただけないわけでございます。従いまして、所得が上るというようなことになってくれば、家族構成もかなりふえて参りますから、そういう方は、それぞれ所得に見合った適当な住宅に、自分でも多少家賃を足して努力して入っていただくというのが、ほんとうじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  71. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 極端な例をあなたは出すから、変になるんですが、大ぜい家族ができてくれば、自然狭ければ出ていく。これは、居住者の自由にまかすべきだと私は言うのです。そこにおれという拘束を与えることもいけないが、出ていけという拘束もいけないと思う。今のような極端な例を出しては話がおかしくなる。私は、この明け渡し努力義務というようなものは、そういう意味において、住宅政策の精神からずれるということを申し上げて、これは改めてほしいんです。  それから大臣にお聞きいたしたいんですが、建設計画というものはスピードというものが大事だと思う。三カ年計画で完成するものが十カ年で完成したのでは、福祉政策としてはほとんど意味がない。こういう法律ができ、明け渡し努力義務というものが入りますと、すでに局の方では、三年後には七万戸くらいは出る可能性があると計算をされている。そうすると、きっとその分だけは住宅の困窮者は減るという計算は、財政当局はすると思うのです。また建設当局も、住宅困窮の率がその分だけ緩和したというので、その急速にやるべきものがだんだんとスピードをおろす刺激になる、それが行政上必ず出てくると私は思う。それから大蔵省では、先ほど言いましたように、七万世帯が出ていけば、七万世帯だけ要らないじゃないかということも出てくるのではないか。そこで私は、こういう法律を作れば、建設省の立場から見てスピードを弛緩せしめ、大蔵省との折衝を困難にする刺激にしかならないと思う。それを第一に心配をするわけです。  だから、どうしたらいいかというと、割増金というものの収益を全部貧しい人のための新しい建築に提供して使ってくれるというのならば、居住者を喜んで説得し、啓蒙し、社会全体の発展のために国民思想の啓蒙もできる。だから私は、この中の明け渡しという改正は、どこから見てもプラスはないんだ、マイナスじゃないかと思うので、力説しているわけなんですが、大臣ほんとうのところを一つお聞きしたい。いつものように、適当に政治的にお答えなさらないで、こういう問題はもう少し真剣に掘り下げたいので、お聞きしているんです。
  72. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 先ほど来、山中委員法律解釈、その他この法案全体についての御意見を伺っておったのでありますが、非常に鋭い観察をされ、私ども非常に教えられるところがあります。ただ、法律論としてはりっぱな法律論でありますけれども、これは遺憾ながら少数論じゃないかという感じがして、私は聞いておったのであります。  今お尋ねの一番の点は、このために低家賃住宅を作るという政府の熱意が減殺されはしないか、これは、私ども最も警戒しなければならぬところでありまして、そういうことになったのでは、この法律の目的が全く達成されないのじゃないか。御承知のように、今低家賃住宅が非常に不足であります。もう一日も早く低俸給生活者のために住宅を供給しなければならぬのでございますけれども、遺憾ながら財政が思うように参りません。でありますから、一つの理想的な住宅体系というものを完成するまでの過渡的な措置として、一日も早く低所得者に住宅を供給してやるというやり方というものは、今の事態においては全く適した、タイムリーな方策であると私はかたく信じておるわけであります。これは、決して政治的にものを考えておるわけでも何でもございません。これがたくさんの低俸給生活者の要望に合うものであると私は思うのであります。それは、この明け渡し義務を受ける若干の人たちから見ますと、うるさいことだというふうに思われるかもしれませんけれども、それは国全体の、しかも低俸給生活者全体をながめてどうするかということで、お互いに譲るべきところは譲っていって、そして全体の最大幸福のために一つ協力していこうというような気持におそらくなって下さる、よくこの趣旨を徹底して参りますならば、公営住宅の入居者の人たちも必ず協力して下さる、こういう考えで、このやり方というものには必ず共鳴していただけるだろうという確信を持って、この案を提案しておるようなわけでございます。
  73. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 確信が全然反対の確信なものだから、平行線で仕方がないのですが、もう一つは、出た人は、自分で新築しない限り、またどこか民間の住宅をふさぐことになりまして、住宅困難の絶対量というものは、こういう法律のできることによって二重三重に後退するのではないかと思うのです。明け渡しは、大体ある程度収益が上るのですから、ある住宅の中では、一定の期間がきたら全部最初の入居のときの低所得からレベルが上ってくる、そうすると、全部出なければならぬ住宅集団もたくさん出ると思う。そこで私は、精神衛生上非常によろしくないものが出ると思うので、これだけはどうしても私の考えは変りそうにない。とにかく御検討願いたいと思うのです。  そこで、法制局の部長さんに伺いますが、公営住宅法における家賃の性格を一つ御説明願いたい。
  74. 野木新一

    ○野木政府委員 抽象的に家賃の性格と申されますと、どういうふうになりますか、公営住宅の場合は、公営住宅を使用収益させたその対価としてお金を払う、その払うお金が家賃だ、こういうことになると思います。
  75. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私のお聞きしているのは、営造物の使用料がいわゆる民間の家賃なのかどうか、こういうことなんです。
  76. 野木新一

    ○野木政府委員 そういう意味の性格論でしたら、これは今非常に争いといいますか、正直なところを申し上げますと、説が分れているところでございます。これはずっと昔になりますが、一つ考えは、営造物の使用料ということだけではなしに、営造物の使用料だから、具体的な効果として、強制徴収ができるという、そこに結びつく考え一つ。そうではなしに、かりに営造物の使用料としても、やはりそれは家賃として、民法上の普通の民間の家賃と使用関係は同じだ、同じような法律関係は同じような法律規制に従うべきだ、従ってやはりそれは民法の強制執行でいくべきだ、こういう考え方と、結局具体的効果の分れているのはそこだろうと思います。そういう考えとがあるわけであります。これはずっと前、私が法制局に入る前ですが、法制意見局の意見では、今の点につきましては、家賃は滞納処分に準ずるような強制徴収はできない、普通の民法の裁判に訴えて強制執行するようにしろ、こういう考え方が出ております。これに対しては、実際当局の方で反対の意見を持っているようであります。学界におきましても、議論が分れておるようでありまして、私の聞くところでは、田中一郎先生その他有力な先生は、今言った滞納処分的の強制徴収はできる、そういう性質の使用料じゃないのじゃないか、そういう説が有力のように聞いておりますが、正直に申し上げますと、今のように説が分れているわけであります。しかしこれは、どちらにいたしましても、滞納処分的のものができるかできないかという点が一番具体的な効果でありまして、それ以外の点では大して響かないのじゃないかと存じます。
  77. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 前に言って、研究していただいてお聞きすれば、ほんとうによかったが、私は改正に関係のあるものをお聞きしている。さっき島上さんから質問があったのですが、一般の民間の家賃の場合と考えれば、その居住者の収入によって格差をつけるということはおかしくなってくる。改正の中には、割増金は収入によって格差をつける思想が入っている。しかし営造物の使用料という性格を持っていれば、収入によって格差をつけるということは、法の目的によってきまるのですから、こういう社会福祉政策だから、妥当な論としていくわけですね。ところが家賃と書いてありますし、それから一方に、居住者と事業主体の契約できめるのじゃなしに、この法律の十二条できめているわけです。そこで、この法改正で家賃という思想を変更してしまうのは大へんな法理的欠陥ですから、この疑問に対して別な方向から論議しなければならぬ、そういうことなんですが、何か……。
  78. 野木新一

    ○野木政府委員 家賃の性格に関する御質問が別の焦点にあるようであります。その点から考えてみますと、家賃の一番典型的なものが民法上の賃貸借契約、それから借家法に補足規定があるが、そういうような私法上の家賃であります。これは、需要供給の原則によって家賃が決定されるということになると存じます。大きな家でも特に安く貸す、自由契約によるわけですから、これは別にかまわぬと思います。しかしながら、公営住宅なり、あるいは公団住宅でも同じですが、特殊の社会的見地から立法せられておりまして、この家賃の決定につきましては一種の規定があります。そういう意味で、民法上の家賃とは少し違う、そういうことは言えます。これは使用料とかなんとかにかかわらず、家賃といったって、そういうような家賃の決定の一つ基準があります。民法上の家賃にはそういう基準はない。そういう点では明らかに性格が違います。  それから、たとえば今度の明け渡し義務というような点につきましても、それぞれこれは公益的の必要から、民法にない章を置いているわけでありまして、その限りにおきまして、それぞれの家賃の性質が形成されてくる、修正されてくるという点はあると思います。そういう点においては違うと言えると思いますが、単に抽象的に家賃の本質論は何か、それだから努力義務を置いてはいかぬとか、割増し的の賃料を置くのは家賃の本質に反するとか、あるいはそれがまた先ほど論じました強制徴収関係に響いていくとか、これは、抽象的な観念的な本質論からはそういうことが出てきませんで、具体的に家賃にどういう性格を持たせるか、そういう具体的の立法政策、立法できめるべき問題ではないかと存じます。
  79. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私も、具体的にこの法規定に即して申し上げておるのです。抽象的な家賃というような、別にそんな学説を論じているわけではないのです。従って、この家賃のきめ方を見ますと、法律の十二条によって一方的にきめているから、使用料的な性格がここにあると思うのです。ところが一方に別な条文では、家賃の変更というようなところに、物価の変動によって変えられる、それは、民間家賃に準ずるような性格を、これまたこの法律の中の一方の法律規定している。具体的にこの住宅法における家賃の性格は、契約上のとにかく家賃でないことは明らかである、使用料みたいな気もする。論議はいつも混乱しまして、そして住居者の収入に応じてこの家賃の格差をつけるということは、家賃という思想がどこかあるものだから工合が悪い。だから、変な割増し賃料というような文字を持ってきたような感じもするし、建設省の中にも、思想統一ができていないじゃないかと思って、法制局に今お聞きしておるわけなんです。この法律全部を見ていただいてからでないと、やはり論議が、かえって部長の方が抽象的になる、まだ見ていただいてないのですね。
  80. 野木新一

    ○野木政府委員 先生の御質問が、非常に法理的にむずかしい問題に触れておりますので、はなはだ御納得のいくようなうまい説明はなかなかむずかしいわけでありますが、もちろん私、改正案の条文も現行法も読んでおります。抽象的に使用料か、普通の家賃かという議論は、あまり議論してもさしてこの点には実益がないじゃないかと存ずるわけでありますが、たとえば、具体的に家賃の決定の基準について、現行法に多少修正を加えた割増し家賃、こういう点についても、具体的に法律規定しておる。これは、現行の公営住宅法における家賃と全く矛盾するかというと、矛盾するわけではない。やはり一種の家賃、広い意味家賃で、使用収益の対価である。しかもそれは、たとえば、一般人に対して住宅を使用収益させることに対する対価として受け取るものであって、自由意思で契約するものでありますが、家賃の決定が一方的に保険契約と同じように——保険契約は、一種の自由意思で契約するわけですが、保険料などは一方的にきめられる。一種の附合契約といいますか、それに類したような契約で、家賃法律なり、法律に基くいろいろなものによってきまる。こういう点については、今言ったように、民法上の普通の家賃と違うということはいえます。さりとて今度作った割増し家賃というものは家賃でない、広い意味の性質の家賃でないということを論ずることは、そう大した実益がないじゃないかと存ずるのであります。
  81. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 家賃、使用料の性格をはっきり認識しないものだから、明け渡し努力義務という規定を作って、それに対して割増金というものを持ってこないとつじつまか合わないので、こういう改正案ができたんじゃないかと私は思うので、この改正に直接関係があるのでお聞きしておったのです。そうでなくて、営造物の使用料という観念ならば、相手に非常に精神的な圧迫を加えるような明け渡し努力義務なんというものは、持ってくる必要がないのじゃないか。最初から、その生活収入に応じて、社会福祉的な使用料をきめていただかなければならぬ。  そこで大臣、そういう使用料か家賃かはっきりしないために、技術的に何か明け渡し義務が入って、それに対する半分懲罰的な意味の割増金が入ってくるというような、そういうことを私疑ってきたのです。たとえば、いなかに行きますと、保育所というのがありますが、保育所に入所する場合に、非常に貧しいのはただで入れて、その次は二百円、豊かなところは七百円とって社会政策というものをやっているわけですね。公営住宅法の思想もそういうものなんで、だから非常に貧乏な者はただで入れる、そうしてある程度収入に応じて格差をつけるということが本質的な思想じゃないか。ところが家賃という言葉をここに使って、そうして家賃という性格のものは、収入によって差を持ってはいかぬという思想が流れてきて、技術的に何か冷たい法律のようなテクニックが入ってきたというのは、建設省において、この法の全体の精神というものをもっとはっきりつかんでくれないからそうなるんじゃないかということを、私は盛んにいろいろの角度から申し上げておるわけです。大臣のお考え一つお聞きしたいのです。
  82. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 この改正案が非常に冷たい冷たい、こうおっしゃられるのですけれども、そんなに冷たくないです。非常にあたたかいものなんでございます。この法案が通りました場合の実際の運用につきましても、御指摘のような点は十分考えて参りまして、無理のないような運営をして参れば、あなたの御注意の点も生きていくんじゃないかと思うのであります。精神としては、決して冷たくないということを一つ御了解いただきたいと思います。
  83. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 最後に、ここにあるところの家賃と書いている性格を、統一してあとでお答え願いたいと思います。そうでないと、規定の仕方が違ってきますし、無理が出てくると思います。
  84. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 この法律家賃と書いておりますが、使用料と書きましても家賃と書きましても、その内容、性格を明らかにしておるわけでありますから、言葉は違ってもいいようなものだと私は考えているわけであります。しかし御指摘の点もありますので、家賃の問題については十分検討いたしまして、そうして一般の人にわかりやすいような説明もしなければならぬと思いますし、理解もしていただかなければならぬと思いますから、十分研究して参りたいと思います。
  85. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 これで終りにいたしますけれども、今私数回にわたって申し上げたことを一つ検討していただいて、あとで執行面になってきたときに、想像しないようないろいろの混乱が出る。たとえば一つの集団におりまして、ある者は明け渡し努力義務を受け、ある者は受けてないような扱いをして、あいつは出ていかなければならぬのにおるというようなことで、集団生活に関してもずいぶん悪い影響を与える。いつもほかから何か非難されるような気持でおるというようなことも出て参りますし、集団の部落形成ですから、うかうかすると村八分みたいになる。そういうことも考えて申し上げているので、やはりこれは、まじめに検討していただく問題だと思うのです。以上で終ります。
  86. 堀川恭平

    堀川委員長 武藤武雄君。
  87. 武藤武雄

    ○武藤委員 最初に、大臣に御質問いたしますが、この前大臣は、私の質問に答えまして、今度の家賃の調整、あるいは割増し賃料といろいろ出ておりますけれども、これは新しい住宅を建てる場合の、いわゆる住宅政策の財源にするというような考えでやっておるのかと質問したら、そういう財源にする考えは毛頭ない。こういう御答弁でしたが、先ほどの局長お話だと、三年後にこの法案の効力が実際に発生する場合に、一体年間どのくらいの家賃の増収になるかという質問があったときに、大体四億四千五百万程度の増収になる見込みだ。こういうお話ですが、これは大へんな金額でありまして、第一種、第二種の公営住宅家賃の平均をかりに二千円と押えましても、二十二万五千戸の一カ月分のまるまるの家賃の増収になるということでありまして、これは、財源にならないということはない、大へんな財源だと思いますが、一体、財源にはしないという大臣のお答えと、ただいまの局長の説明とは、どういう関係になるのですか。
  88. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 このいわゆる財源は、低家賃住宅を供給するため、計算上はもう少し高い家賃になるものを安くする、その財源に使っていく。その財源が上ってきたものを、ほかの方に持っていくなんという考えは全然ございません。その財源でもって一方安い住宅を供給していく、家賃を安くしていくのだ、こういうことで初めて世間も納得してくれることであろうし、政府としても、そういう考えを一貫していく必要がある、こういう考えでおるわけであります。
  89. 武藤武雄

    ○武藤委員 あまりこの問題で時間をとりたくありませんから、簡単に申しますが、先ほど局長も、特に最低基準家賃で入る可能性のない者の補助家賃の財源にするのだということでありますけれども、しかし、これは新しい住宅を建てる場合の財源にするということについては間違いないのでございまして、この間私が質問をしたときのように、その当時は合理的だと思った家賃が、現状においては非常に不合理になっている、しかも新しい住宅は、土地の値上りその他が非常に大きいために割高になってきている、そういうものの調整という意味考えていいのかどうかと聞いたら、その通りだということですが、今のお答えですと、新しい低家賃住宅対策の財源にするということですから、多少私の質問とは違っておると思いますが、財源になることについては間違いない。  その次に、最近宅地の問題が非常にやかましくなって参りました。特に土地ブローカー等が、新しい住宅団地を見つけるというようなことになりますと、早くもそれに感づいて買い占めをやる、こういうのが非常に多いと思います。そこにまた、ある場合には汚職等も発生しておると思う。従って新しい宅地政策として、たとえば、かりに東京都のこことここは宅地として適当であるという一応の指定がされた場合に、しかもその中に、工場敷地でも何でもない、明らかに宅地として、たとえば値上りとかいい条件とかで、だれが考えても遊休の土地であると思われる宅地が相当散在しておる。そういうものに対して何らかの規制をする考えがあるかどうか。だれが見ても明らかに住宅地であり、しかも宅地としてそれを所有しておって、それによって利益をはかろうとしていることが明らかである場合に、そういう遊休宅地に対して、たとえば税金を課して、そういう宅地を持ってブローカーをやろうとしても、それは実際には採算に合わないというような、一つの新しい宅地対策を考えられておるかどうか。それは社会党の思想だと言われれば別でありますけれども一つお伺いをしておきます。
  90. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 それは、社会党の思想でも何でもない、きわめて大事な問題でありまして、私どももこの問題を少し掘り下げて研究をしてみなくちゃならぬ、こう思っております。御承知のように、宅地造成をやったり、あるいはげたばき住宅をやったりして、宅地の立体的な利用方法などを講じて参っておるのでありますが、なかなか思うように進展いたしません。宅地の需要がどんどんふえて、供給がそれに伴わないために、年々宅地の価格が上って参りました。住宅問題としては、非常に大きな問題が宅地問題に横たわっておる、これが御承知のような実情でございます。そこで、いわゆる遊休土地をある程度強制的に利用させる、あるいは今御指摘のように、税金をとるというようなことも一つ考えでありまして、これは、前々から議論になっておった点でありますけれども、問題は非常に複雑であり、深刻な問題になって参ります。そこで私は、先般来、この問題について本格的な検討をしてみなさいと、事務的な検討を今要請しておるわけです。従って、その検討の結果、何らかのいい結論が出て参りましたならば、この問題について手をつけてみたいと私は思っております。
  91. 武藤武雄

    ○武藤委員 その次に、私は、この前も都の建設局長が来たときに質問したのでありますが、三カ月の保証金をとっておるのでありますけれども、実際にこの間現地視察をしてみますと、古い住宅になりますと、修繕、修理等はほとんどなされてない。管理人もやろうとする意思は全然ない。また住んでおる住民の方も、もうどうせ言ったって取り上げてくれない、だから言ったってしょうがない、長い間住まっておって、自分のうちみたいなものだから、自分で直そうということで、実際にも自分で直しておる。どこに行ってもそう言っております。結局都の方に持っていくと、財源がないというのでけっ飛ばされる。たとえばはっきりと公営住宅法の中にも、一定の戸数の場合には、遊園地だとか共同浴場だとか集合所を建てるとか、建設省の省令でも、百戸以上の場合には集会所を建てるようなことが基準として打ち出されておるわけであります。そういうことがほとんどなされてない。持っていっても、財源がないというようなことでけっ飛ばされる。しかも家賃の中には、そういうものもちゃんと修繕費まで含めて入っておるわけですけれども、なされていない。従って私は、この保証金等は、全国一本で特別会計でも組んで、そういうものに対する財源としてもはっきり区別するように——都なんか、今まで何回言ってもやっていない。今後はやるつもりですと、この間局長は言っておりましたけれども、つもりですではなかなか安心できないので、建設省として、すべてこの保証金は一つ特別会計として、それらの財源に充てるように、はっきり指導監督をすべきだと思うのですが、いかがですか。
  92. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 あなたの御意見のような意見も、しばしば私は聞いておったのであります。これまたいろいろ問題がございます。十分一つどもも、管理問題は一般の問題の一環として研究してみたいと思います。
  93. 武藤武雄

    ○武藤委員 団地の付帯施設なんかの場合に、これは管理制度の欠陥ですから、私はこの間全面的に検討してもらいたい、こう言いましたけれども、中には住民がどうしても集会所が必要だというので、仕方がないから、共同で一つ勤労奉仕でやろうじゃないかということで、それでもある程度援助が必要なので、東京都下の事例ですけれども、市の方に言ったところが、市でも、なるほどそうだ、それは建てなければならぬというので協力してくれているにもかかわらず、都の方は、だめだ、絶対建てちゃいかぬ、どうしても建てるのなら、それは不法占拠として起訴するといようなことでおどかしているらしいのですけれども、とにかく管理の問題については、もっともっと検討していただきたいと思います。  それから建築の場合に、どうも規格に合わない建築が非常に多い。これは、大体われわれの回ったのが古い建築ですから、現状はあるいは厳重にやっておるとおっしゃるかもしれませんが、規格に合わない建築が平然として行われておる。従って、こういう手抜きとか、あるいは建築の不正とかに対しては、もっと目を光らして監督をするように、規格に合わない場合には、どしどし修繕なり建て直しなりをやるように、あるところなんか、壁の中の桟を抜いてしまったりというような建物もあるようですけれども、それらを一つどしどし厳重な監督をするように、もう少し指導してやる必要があると思う。今はそういうことはないと、あるいはおっしゃるかもしれませんが……。
  94. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 御指摘のような問題がいろいろあると思います。ことに管理の不行き届き、不合理等もたくさんありますし、今の建築そのものについての問題もたくさんあることを聞いております。これらを総合的に検討いたしまして、問題を一つ一つ解決していくようにしたいと考えます。
  95. 三鍋義三

    三鍋委員 政府当局、自民党の方も、社会党がずいぶんしつこく食い下っているようにあるいはお考えになるかもしれませんが、これは、まじめに考えれば考えるほど非常な問題点があるのでやっておるのでありまして、この点、一つ御理解していただきたいと思うのです。  私は、やはり問題は絶対量が不足だというところにあると思う。これが相当のところに行けば、こんなことを私たちは心配する必要はない。これは、大臣に今後もうんと御心配願わなければならぬと思うのでありますが、資料をいただきまして——公営住宅公団住宅との間に一つの断層、空白地帯ができておることは明らかなんですね。この埋め合せをどうするかということも、やはり今度の公営住宅の改正と非常に密接な関係があると思うのでありますが、こういう点をどのように解決していかれようとするのか。つまり第一種からその収入によって出ていかなければならない精神規定を受ける立場の人が、どこへ出ていくかということを考えましたときに、この空白地帯、断層をどう埋めるかという問題を、やはり真剣に考えてあげなければならぬのではないかと思うのであります。その点について、大臣のお考えをお聞きしたい。  もう一つ、先ほど住宅局長からの、公団住宅家賃の最低、最高資料に対する補足説明の中で、これはずいぶん逸脱していきつつあるのじゃないかという点を感じたのでありますが、大体公営住宅にいたしましても、こうやって東京は三千五百円から四千円、大阪名古屋福岡資料に出ておりますが、公団住宅法を通すときの竹山建設大臣の御答弁では、三千円台の家賃というのがそのめどだったのです。ところが公営住宅がすでにこういうところへ行っておるのです。そして、公団は、六千三百円とか六千円とか五千七百円、こういうふうに行きまして、今研究的にと住宅局長はおっしゃったけれども、これはどうですかね。公団としてこの一万九千三百五十円とか一万三千五百円とかいったような、そして建坪も大きいし、げたばき住宅の特殊なケースではありますが、こういうところへ力を入れていく前に、もっと実際の住宅困窮者という建前から考えましたときに、住宅政策としては少しずれているうとで思のす。これはずっとできてきて、ある程度満たされた後の問題としては、私は否定しないのでありますけれども、絶対量が不足しておる現段階においての考え方、やり方としては、どうも納得がいかないと思うのであります。今後こういう方面相当力を入れていかれるとすれば、これはやはり考えていただかなければならないと思うのであります。それで、大臣にお聞きしたいのは、空白地帯をどうするか、それからこういった方向に、研究的とはいえ、住宅公団設立の趣旨からずっと離れたところに法解釈がなされて逸脱していっておる点、こういう点に対する大臣のお考えをお聞きいたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  96. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 住宅建設方針の問題として、御指摘のようにある程度の段差ができており、空白地帯ができておることを、私は率直に認めます。しかし、これは三十年ごろからの経済事情の変動もありまして、その後の状況について生きたタイムリーな修正を加えることができなかったために、こういうふうになっておるのじゃないかと思うのであります。再三私が国会でも申し上げておりますように、昨年の十月調査をいたしました住宅事情の詳しい調査が、今年の六月か七月ごろには完成いたしますので、それを基礎にいたしまして、空白を埋める問題、あるいは非常に高過ぎるような住宅建設の問題、低家賃住宅が非常に足りない、その必要に対してこたえる問題等、総合的な一貫した住宅政策の検討をしてみたらどうだろうかということで、今せっかく準備を進めておるような次第でございます。大体八月か九月ごろ、三十五年度予算編成が始まりますから、そのころまでに一つのめどをつけて、どの程度まで大きな転換ができますか、一つやってみたいと思っておるわけであります。ただ、ここに掲示してありますように非常に高い、六千三百円の家賃公団住宅もできておるようでありますけれども、こういうものをやめてしまうか、なお若干は認めていくかという問題も、これは一つの議論になると思います。といいますのは、一方において建設省は、キリギリスのかごみたいなつまらない家ばかり作っておる、もう少しがっちりした家を作れという声が高い。一方においては、何でもいいから入れる家を早く与えろという声が非常に強い。そういう住宅不足を来たしておる百四十万戸ないし百五十万戸の需要者の声をよく聞き、しかもそれの質的な分析をいたしまして、国民全体の要望にこたえるような住宅政策の転換をしていったらどうか、その調査に基いた合理的な住宅政策の再検討をしたらどうだろうか、ニュアンスをはっきり出していくような住宅政策の方向づけをしたらどうか、こういうふうに考えておる次第であります。御趣旨のようなことはよくわかっておりますから、十分考えていきたいと思っております。
  97. 三鍋義三

    三鍋委員 こういうふうに言うと、皮肉に聞えるかもしれないけれども、どうもそのときの大臣は、みんなそのつど、十分いろいろ研究して、対策を立てていきたいというようなことを言われるのでありまして、今度の遠藤さんは、ほんとう考えてやっていただけるのだと私は信頼申し上げるのでありますが、これは、一つぜひ真剣にやっていただきたいのです。今ごろ、十分総合的に研究してやるというのは、私はおそいと思うのです。しかし大臣は、そういう気持で、真剣に誠実にやろうとおっしゃるのでありますから、これは一つ御期待申し上げたいと思うのであります。とにかく住宅に困窮しておる階層というのは、もうあらゆる階層があるわけなのです。私がいつもここで申し上げているのは、病院へ、二人の患者が同時に運び込まれた、そのとき一人は、診断の結果慢性胃腸病であった、一人は急性盲腸炎であった、こういう場合にどちらを先にやるか。(「それは盲腸だよ」と呼ぶ者あり)それは盲腸ですよ。そこで、この根本的な考え方を忘れないでやっていただきたい。そうすれば、この改正問題も、こんな深刻な論争にならぬと思うのです。一番困っておるのはどの階層であるか、まず盲腸患者を手術して、それから慢性胃腸病なり、あるいはその他の患者を診察して治療してあげるという、根本的な考えを失わないよう、真剣にやっていただきたいと思います。終ります。
  98. 堀川恭平

    堀川委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は二十四日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時二十二分散会