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1959-03-18 第31回国会 衆議院 建設委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十八日(水曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 堀川 恭平君    理事 佐藤虎次郎君 理事 瀬戸山三男君    理事 二階堂 進君 理事 上林與市郎君    理事 三鍋 義三君       逢澤  寛君    井原 岸高君       川崎末五郎君    砂原  格君       橋本 正之君    石川 次夫君       島上善五郎君    東海林 稔君       塚本 三郎君    武藤 武雄君       山中 吾郎君  出席国務大臣         建 設 大 臣 遠藤 三郎君  出席政府委員         法務局参事官         (第二部長)  野木 新一君         建設政務次官  徳安 實藏君         建 設 技 官         (住宅局長)  稗田  治君  委員外出席者         議     員 櫻井 奎夫君         専  門  員 山口 乾治君     ————————————— 三月十七日  委員賀屋興宣君辞任につき、その補欠として橋  本正之君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月十七日  下久保ダム建設に伴う太田部部落交通確保等  に関する請願荒舩清十郎紹介)(第二三二  五号)  宅地建物取引業法の一部改正に関する請願(荒  舩清十郎紹介)(第二三二七号)  同(岡崎英城紹介)(第二四六九号)  古川筋上部高速道路計画反対に関する請願(  田中榮一君外一名紹介)(第二三四二号)  二級国道飯田浜松線整備促進に関する請願(  中村幸八君紹介)(第二四四二号)  公営住宅法の一部を改正する法律案反対に関す  る請願山花秀雄紹介)(第二四四三号)  国、県道鹿児島霧島間等整備促進に関する  請願池田清志紹介)(第二四六八号)  特定多目的ダム法関係府県に関する請願(堤  康次郎君外四名紹介)(第二五四一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地盤沈下対策特別措置法案櫻井奎夫君外十一  名提出衆法第五一号)  公営住宅法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二二号)      ————◇—————
  2. 堀川恭平

    堀川委員長 これより会議を開きます。  まず地盤沈下対策特別措置法案議題といたします。  まず提案理由の説明を聴取いたします。櫻井奎夫君。     —————————————
  3. 櫻井奎夫

    櫻井奎夫君 ただいま議題となりました地盤沈下対策特別措置法案につきまして、その提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  近年来地盤沈下による直接、間接の災害が続出しており、まことに憂うべき実情にあります。たとえば新潟市においてはここ十数年間に一メートル数十センチをこえる沈下が記録され、港湾施設等の一部は、すでに水中に没し、また市街地においても、その直接の災害が現われているのであります。しかも今日、地盤沈下の速度はますます著しく、最近の三カ月間においては二十センチをこえているのであります。  かかる実情のため、地域住民ははかり知れない損害をこうむり、不安におののいているのであります。これがため国及び地方公共団体は、国土保全と民生安定に関する諸事業を急速に進めてきているのでありますが、その対策事業量増加の結果、関係地方自治体財政はきわめて窮迫し、地方自治体負担能力の限度からして、地盤沈下対策に関する不可欠の事業の一部放棄のやむなき事態をすら招来するものと考えます。  かかる観点よりして、地盤沈下対策事業に要する経費について国の負担割合引き上げを講ずる必要があり、また地盤沈下が近年特に発展せる諸産業とも関連のあること等、地盤沈下の特質を考えあわせ、地盤沈下に対する総合的な解決をはかるため、必要なる措置を講ずる必要があると考え、今回提案する運びに至った次第でございます。  以下この法案内容につきまして、その概略を御説明申し上げます。この法案骨子は大体において、次の三つの点よりなっております。  すなわち、その第一は地盤沈下に関する調査を行うことであり、その結果に基いて地盤沈下対策地域指定することであります。第二は、地盤沈下による災害を防除するための公共土木施設等に要する経費についての国の負担割合引き上げることであります。第三は、地盤沈下そのものを防止するため、これが原因となっている事業あるいは行為について規制を加えるということであります。以上三点がこの法案骨子でありまして、第一条目的は、これらの三つの点を掲げ、もって国土保全と民生の安定をはかることといたしました。  次に第二条から第五条までは、ただいま申し上げました第一の点に関することであり、地盤沈下による災害及び防災に関する調査建設大臣が行うことを規定し、その調査に基いて、建設大臣は、都道府県知事意見を聞き、関係大臣と協議して、地盤沈下対策地域指定することができることといたしました。  第六条及び第七条は先に述べました第二の点であり、地盤沈下事業に要する経費についての国の負担割合引き上げ規定し、この適用については一応地盤沈下対策地域指定があった場合には、その指定のあった年度の翌年度から引き上げ措置を行うこととしておるのでありますが、昭和三十四年度に限り、本年十二月三十一日まで指定があった場合においては本年度予算にかかる事業から引き上げることとし、附則第二項においてこれを規定いたしました。  次に第八条は、原因者負担について規定いたしました。これは地盤沈下原因が明白になった場合においてはこれらの原因となった事業または行為をした者に対し経費の一部を負担させることは当然と考えまして、これを定めた次第であります。  第九条及び第十条は、さきに申し上げました第三の点でありまして、原因が明白になった場合におけるこれらの原因となった事業または行為を、地盤沈下そのものを防止する観点より規制を加えるということであります。かつその実情に最も精通している都道府県知事がそれらの事業等禁止または制限をなし得るようにいたしました。ただし、地域指定の際、すでに行政庁認可または許可を受けて行なっているものについては、その認可または許可にかかる事業または行為について監督権限を有する行政庁禁止または制限措置をとらせることが妥当であるという考えに基き、都道府県知事よりその措置をとるよう関係行政庁に要求できることとしております。これが第十条の規定であります。  次に第十一条以下は以上の規定に基く訴願及び両罰の規定であります。  本法案昭和三十四年四月一日より施行することといたしました。これに要する経費は初年度三十億円程度増加の見込みであります。  以上がこの法案提出いたしました理由及び内容概略であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  4. 堀川恭平

    堀川委員長 次に、公営住宅法の一部を改正する法律案議題として審議を進めます。武藤武雄君。
  5. 武藤武雄

    武藤委員 ほんとうしばらくぶり大臣おいでになりました。今まである程度次官を通じまして御答弁のあった点もありますけれども、非常に重大な点でありますと、次官は、それは総理大臣または大臣の国の根本的政策でありますからということでありますから、きょうは大臣おいでになっておりますから、御質問したいと思います。  まず最初に、住宅政策基本について御所見をただしたいと思いますが、先般からいろいろと住宅に入る階層別の分布について、どうも政府調査努力が足りなかった、ほんとうにどういう階層住宅に入っており、どういう階層ほんとう住宅というものを望んでおるか、そういう意味のこまかい分析がなされていなかったのじゃないか。次官の御答弁によりますと、何か六月ごろまでには資料ができ上るので、その結果、内容をよく見て検討を開始したいということでありますが、従来は、そういう検討が非常に足りなかった。それで、今までの質問なり答弁を見ましても、結局公団なりあるいは協会等住宅申し込み等については、割合競争率というのは少いけれども、公営住宅ということになりますと、全国的に見ても五十倍から六十倍近い競争率がある。これは、当然そういった低額所得者人たちほんとう住宅に困っておるという現象だと思うのです。東京都内なんかを見ましても、依然として住宅の絶対不足のために、昼一畳当り千円なんという家賃は当然のことであります。しかも入るときには、なおかつ何万という権利金なり敷金をとられて入っておる。家を借りるのにさえも高ねの花だというのが、現在の住宅事情だと思うのであります。そこで、結局今後の政府住宅政策として、今まで質問なり答弁なりに出ました内容等考えてみまして、やはりこの際政府は、日本の政府のやる住宅政策というものは、根本的に大転換をする必要があるんではないか。結局政府のやる住宅政策基本は、公営住宅一本の重点に変えるべきだと思うのです。そしてできるだけ低額所得者を、ほんとう住宅に困っておって入れない者、家を借りようとしても借りられない者、そういうものを中心にして住宅政策考えて、一般住宅事情の緩和については、できるだけ住宅を建てるという意欲を増すいろいろな政策政府考えるべきだと思うのです。それは、もちろん資金の面において、あるいは場合によっては、許すならば一定期間固定資産税の免除をするなり、とにかくそういったいろいろの保護施策考えて、一般住宅建設意欲を促進させる。しかし政府のやる住宅政策というものは、低額所得者層中心とする公営住宅というものに最大の基本を置いて考えていく、こういう住宅政策に大転換をすべきだと思うのであります。次官は、だいぶ同意のような御答弁をされたのでありますが、大臣の意を伺っておきたい。
  6. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 住宅政策基本問題についてのお尋ねでありましたが、私は武藤委員と大体同じ考え方を持っております。そこで私は、昨年三十四年度計画をするに当りまして、住宅事情はどうなっておるかということを、一番重要な問題として取り上げてみておったのであります。ところが昨年三十四年度計画をいたします当時におきましては、実は三十年の何月かに調査をいたしました資料しかなかったのであります。三十年の調査に基いて三十一年、三十二年やりまして、三十三年まで参りました。そこで、三十四年以降は新しい調査に基いてやるべきだと思いましたけれども、実際問題としてそれが間に合わなかったのであります。あれは昨年の何月でしたか、十月だったと思いますが、調査をいたしまして、それが何かことしの六月か七月ごろ結果が出てくるそうであります。その結果によって、住宅事情によくマッチするような住宅政策を立てなければならぬ、こういうふうに考えております。そこで今回の三十四年度住宅計画を立てます場合に、一応三十年の調査を基礎にして立てたのでありますが、これは、ざっくばらんに申し上げますと、それぞれの階層における住宅必要量需要量というものが出ております。その需要量に正しく反映するような住宅建設をやっていくことが一番正しいのであります。ところがその需要量というものは、きわめて数字的な結果が出ておるのでありまして、そこに質的な判断が欠けておるのであります。量的には何ぼ、何ぼという数は出てくるのでありますけれども、質的な判断をすることが非常に困難であります。しかし、私は大きな筋として、低家賃住宅重点を置かなくてはならぬ、こういうことを考えて、低家賃住宅建設に相当はっきりしたニュアンスを出した考えで進めて参りました。しかしそれにいたしましても、これははっきりした数字が出ておりませんし、今までのいきさつもありまして、一挙に急展開をすることが非常に困難でありました。私はもうざっくばらんに申し上げます。そこで、今回の三十四年度計画におきましては、実は私の思うような計画はできなかったのであります。現実に妥協せざるを得なかったのであります。しかし三十五年以降の計画については、昨年調査した結果に待って、十分量的な考慮を払うと同時に、質的な考慮も払って、ほんとうに必要な階層に対して住宅を供給してやる、こういう面への大きな転換をすべきであろう、こう思うわけであります。従って、武藤委員のおっしゃることと大体において私も同じ考え方を持っております。ただ私は、先ごろから事務当局に命じておるのでありますが、その計画を立てることはいろいろな今までのいきさつというものを断ち切っていかなければならぬ点もありますし、今までの住宅計画に対して、それぞれのコンストラクションというものができておりますから、それを思い切ってぶち破って、そして一つの新しい計画に進まなくちゃならぬということになりますから、さっそく調査を命じておるわけであります。そして今年の八月か九月ごろになりますと、三十五年度計画が始まりますから、それまでに間に合うように、どの程度まで私の考え方がはっきり出てこれるか、これは事務当局にも非常に努力してもらうつもりでありますが、そういうことで、今せっかく三十五年度計画準備を始めておる段階でありますので、御了承いただきたいと存じます。
  7. 武藤武雄

    武藤委員 趣旨において賛成だという御意見であります。しかも、具体的な資料が出次第に三十五年度計画に着手をしたいという大臣の御意見でありますから、一つ誠意を持って取り組んでいただきたいと思います。  それからもう一つ住宅政策基本について大臣所見をお伺いしたいのでありますけれども、結局今までの住宅政策というものは、大体において給料生活者を主体とした住宅政策に大半の重点が置かれて参ったのであります。しかし一方、目を転じて農村に参りますと、農村住宅というのは御承知のように、もう先祖伝来、何代も続いた住宅が多いのでございます。何世紀前といわれるほどの古い住宅に入っておって、生活環境衛生環境からいっても、前時代的な生活をしているのが農村の家の問題だろうと思うのです。従いまして、最近農村生活文化の向上とか、新農村生活運動とかいわれておりますけれども、われわれは、農村に一歩入って参りまして、あのひどい住宅をながめ、やはり政府住宅政策というものも、単に給料労働者だけにとどまるのでなくて、こういった最もおくれておる農村住宅政策にも、もっともあたたかい目を向けてやっていいのではなかろうか。その場合に農村住宅は、御承知のように、一般勤労者住宅といゆわる家構造そのものが違っております。これは、作業の面からいいましても、あるいは肥料を作る建前からいいましても、いろいろな面で、家の構造も違ってくると思います。従いまして、農村には農村の特殊の住宅規模というものが必要ではないかと思うのであります。そうなりますと、やはり政府農村住宅に対する対策も、別個のものが必要になってくると思うのであります。一般的には、住宅金融公庫なんかを通じて、別に農村は区別をしていないのだということでありますけれども、実際には、これは利用することのできない現状になっておると思うのであります。従いまして、やはり給料生活者中心とする公営住宅政策のようなものをそのまま農村に当てはめることは、いろいろ問題がありましょうけれども、とにかく何らかの政府のあたたかい施策によって、あの前時代的な住居を、少しでも文化的な水準まで上げられるように、住宅の面から特に考えていくべきだと思うのです。そういうことについて、何か御考慮がありましょうか。
  8. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 ただいまのお尋ねの問題についても、私は全く同感であります。御承知のように、戦後非常に住宅が不足いたしましたのは、戦災で、主として都市面戦災によって失われた住宅補充の問題が大きな問題でありました。その補充もだいぶ進んで参りまして、終戦後約五百万戸の家ができているわけであります。しかしもちろんまだ足りないのでありますから、都市面においてもやらなければなりませんが、農村の方の住宅問題についても、視角を変えて、住宅政策というものをもう少し幅を広くやっていかなければならぬ段階にきていると私は思います。御承知のように、今農村住宅の問題については、生活改善普及員というものがおりまして、農林省が主としてこれを指導しているのでありますが、生活改善を進めて参りますと、当然住宅問題にぶち当ってくるのであります。そういう面からも住宅問題の啓蒙もやっておりますけれども、やはりこれは大きな住宅政策の一環として、建設省が力を入れていかなければならぬ問題であると私は思います。そこで、今お話しのように、ただいまの住宅政策でも、農村住宅までやることはできるようになっておりますけれども、実際問題としては、この建前が、農村の方にはなかなかうまく適用されないような建前になっておりますので、そういう問題をも今後は含めて検討して参りたいと思うのであります。農村が非常に古い住宅を持って、ちっとも改善されておらないという事情は、私特に農業問題を専攻して参りました事情もありまして、よく知っているつもりであります。農村住宅問題に対しても、これから建設省住宅政策は幅広くやっていかなければならぬと思っている次第でございます。
  9. 武藤武雄

    武藤委員 次いで私は、公営住宅居住者について、きのう実地視察等もやったわけでありますけれども、特に今度の公営住宅法改正——法案内容についてはあとから山中委員の方から質問があると思いますけれども、結局一定基準収入額を越したことによって住宅を明け渡す努力をしなければならぬということになるわけでありますけれども、これは、山中委員も指摘しているように、明らかに政府が、低額所得者に対して住宅を与えてやるという従来のあたたかい意味住宅政策から大幅に後退して、多少生活がよくなったから、もうここに入れておくわけにはいかぬ、こういう何か非常に機械的な、冷たい住宅政策転換しているような気がするのであります。表面は、ほかの低額所得者住宅を与えなければならぬという美名を使っておりますけれども、実際には、居住権をほとんど無視した形において法案準備が行われたと思うのであります。実際に現地の住宅を見てみましても、これは管理制度——あとから管理制度について質問をいたしますけれども、管理制度の欠陥もあろうかと思いますけれども、たとえばきのう回って参りましたあの木造住宅等の場合を考えてみましても、ほとんどがもう二十二年、三十三年当時に建てた住宅ばかりで、相当老朽をしております。廊下なんかも、もう縁が落ちたりなんかしておりますし、雨漏りも相当あるようであります。ところが、そういう住宅修理等について聞いてみると、もう全然頭から、管理人に相談したってしようがない、これは自分で直さなければならぬのだ、あんなところに持っていったって問題にも何にもならぬ、こういうことで、雨漏りも、縁側でも何でもみずから修理をしている。これは、一つ行政に対する信頼性がないことも原因がありましょうけれども、とにかくそれに十年も十一年も入っていると、もう自分の家だという愛着心があって、みずからの乏しい家計の中からやりくりをしてでも、そういうことをやっておる。それからまた庭の構造なり垣根構造なりを見てみましても、やはり営々として自分生活環境をよくしようという意味の、別な意味での投資が行われておると思う。そういうふうに、もう非常にその住宅に対する愛着というものを考えておるのであります。そこで、あなたたちは少し収入がよくなったから、今度はここは出てもらうことに法律改正になるかもしれない、これはとんでも話だということなんです。われわれは、もうこれだけ長い間住まっておるのだから、当然もう自分の家に政府はしてくれる時期が間もなくくるのだ、こう本気に考えておるのだ。だから、自分で一生懸命直したり、垣根を作ったりしておるのだ。こういうことをどこへ行っても訴えるのでありますけれども、現在の公営住宅法によっても、本人に対する譲渡はできるようになっていますけれども、ごく特殊な場合に限ってのみこれが許されるようになっておると思う。従いまして、私は、住宅政策基本は、できるだけ住宅を建てることのできない国民に、やはりみずからの住宅を持たしてやるというところに政府住宅政策基本がなければならぬと思うのであります。ただ単に、それはもう回転をしてやるのだということでは、ほんとう意味住宅政策にならぬのではないかと思います。ただ場所によっては、非常に土地の関係で、現在のような宅地に恵まれない点においては、その宅地を、建て方によっては十倍も二十倍も回転できるというような特殊の場合は、それはあり得ましょう。しかし、やはり住宅政策基本としては、できるだけ事情が許すならば、愛着を感じておるその居住者に家を与えてやる。むろん政府が大へんな損をするということは事実でありましょうけれども、できるだけ出費を少くして家を与えてやるということで、やはり努力をすべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  10. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 ただいま御指摘の問題については、住宅政策が非常に大きな後退になるのではないかということをおっしゃるのでありますけれども、私はそう思わないのであります。これは、非常な前進だと私は思っておるのであります。といいますのはただいま政府予算も十分にあり、金融の方も十分にできますならば、すべての人に安い住宅を提供することをやらなければならぬことは当然でありますけれども、御承知のような財政事情でもありますし、金融事情でもございます。限られた資金でもって住宅を作っておるというのが現実事情でございます。そういうことになりますと、多数の低所得者が、家がほしいけれどもどうしても家に入れない、こういう人たちがたくさんあるのでありまして、こういう人たちに家を少しでも多く与えてやりたいというのが、今度のこの住宅法改正一つのねらいでございます。もちろん今まで入っておった人が、その家に対して強い愛着を持っていることも、よくわかります。そうして、できればそれを長く維持させ、自分のものにさせてあげることが、住宅政策としては最も望ましいことでありますけれども、それをやって参りますと、その当初一定の条件を持った者が家に入る。ある程度収入を持った以下の者が第一種、第二種の方に入る、こういうふうにきめてあるのに、だんだんその人も成長し、収入もふえて参って、もう少し家賃の高いところに入ることができるのに、そこにがんばっておられますと、全然入ることができないで、低俸給生活者が非常に困っている、こういう状態が出てくるのでありまして、ぜひそこは、国民全体を一視同仁に見て、負担能力がある者は少しずつ負担をして下さい、そうして、それも一般住宅家賃等よりはるかに安い値段であるからしんぼうして下さい、そうして、もしもう少し高いところに入ることができる人が、俸給が上ってきた人があるならば、その人は、一つできるだけ自分の力でもってやっていただいて、入れない人に譲っていただく、これが全く一視同仁に見た正しい行き方だと私は思うのであります。しかしそういう場合でも、今日まだ住宅事情が非常に逼迫しておるのでありますから、さあ、あなたは月給が上ったから出ていきなさいと執達吏をいきなり向けるような、そういうむごいやり方はしないつもりであります。あなたはもし出ていかれるならば一つお願いしたい、こういうことで、住宅がない者に、入る所がないけれどもお前出ていけ、執達吏を向けるぞというような、そういう建前はとらない考えであります。誠心的に一つお願いしたい、協力していただきたい、こういう建前住宅政策を進めていく考えでありますから、どうか、住宅政策は非常に後退したというようにお考えいただかないで、これはまさに非常に大きな前進だというようにお考えいただきたいと思います。
  11. 武藤武雄

    武藤委員 大臣住宅政策の非常な進歩だという、その進歩に対する考え方ですけれども、住宅をあけて低額所得者を入れてやるということにきたのだという意味の進歩ということにとるのではないかと思います。ところが絶対量が不足している日本の住宅政策から見ますれば、そこを立ちのく人に住宅を与えないで立ちのかせるわけにはいかない。     〔委員長退席、二階堂委員長代理着席〕 必ず公団住宅を用意しなければならぬ。しかも公団住宅は、政府のいわゆる援助する額は確かに少い。しかし建設費そのものは、公営住宅よりもなおかつ多くの建設費を必要とする。全体の資金の量が少くて住宅が建てられない。そういうときに、お前は少し収入が上ったからほかの公営住宅に入れ、そのことが住宅緩和になるんだ、前進になるんだということになりますと、逆に今度入れてやる方は、もっと高い資金を出して住宅を建ててやらなければならぬ。これで果して住宅の緩和になりますか。一方では、この間の説明では公団住宅の方は競争率が非常に少いといっても、やはり依然として二十倍なり二十五倍の希望者があるということを、局長は説明されておる。そうすると、結局その方にやはり割り込んでいって押えなければならぬ。全体の住宅の数はちっとも変らない。しかもかえって逆に高い建設費を必要とする住宅を建ててやらなければならぬ、一体これは前進ですか。それなら、その資金があるならば、それで安い公営住宅を作ったらどうですか。一つも私は前進ではないと思います。
  12. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 その点については、私はこう考えておるのです。住宅は、第二種公営住宅程度住宅の理想的なものと考えないのであります。公団がやっている程度のものまでずっと全部上げていきたい、金もこれからだんだん作っていく、だんだんいい住宅を作っていくんだ。そうしていい住宅に入れる人は、それだけのサラリーの得られる人は、なるべくそこに入っていただいて、どうしてもいい住宅にまだ入れない人は、第二種の公営のようなものにだんだん入っていくというふうにグレーディングをつけて、その前後を、公営住宅からさらに上った公団住宅程度まで持っていくようにするというのを理想に考えておりますから、それの理想への一歩前進だから一歩前進だ、こういうふうに申し上げたわけであります。
  13. 武藤武雄

    武藤委員 だいぶ自民党さんの考え方と違うようですから……。結局大臣の非常な進歩だというのは、政府住宅政策に使う金が少くて済むようになるから非常な進歩だ、結論はそういうことになるのです。ですから私どもは、そういう意味にはとってないのであります。やはり現状において、きのうあたりも回ってみましたけれども、確かに六百円、あるいは木造、もちろん四戸建ですけれども、八百八十円などという家賃で入っている人もありますけれども、その人たち収入を聞いてみますと、確かに入ったときより上っていますと言っています。しかし、上っていますからあなたはここを出ていかなければならぬ、今度は公団住宅に入って、六千円なり八千円なり家賃を払ってもらわなければならぬ。とんでもない、そんなことをしたら一体どうなるか、これからそんなことになったらばとんでないことになる。それが、やはり偽わらざる今の生活の環境だと思うのです。日本のエンゲル係数のあり方を見ても、まだまだ食糧費に四〇%以上も使っておる現状では、決してそう社会的に余裕があるものではないと思うのです。ただ現実に建っておる公団住宅が、そういう高い家賃を払っても入るからいいじゃないか——現状では、しかしこれは住む家が絶対量がないというので、やむにやまれず入っていると思うのです。決して余裕があって、楽々出せるから入っておるのではなくて、もう借りようにも住みようもなくて、絶対量が足りないために、仕方なく入っているのが今日の現状だと思うのです。もう少しそういうことを真剣に考え住宅を建てられる必要があると思うのです。見解の相違もだいぶあるようでありますから、意見を申し上げておきます。  それから管理制度の問題について、ちょっと大臣質問したいのでありますけれども、きのうもいろいろ回ってみましたけれども、東京都の建築局長さんのお話を聞きますと、監理員というものが絶対必要だ、こういうことで答弁をいたしております。確かにこの公営住宅法の中にも、二十三条に「事業主体は、公営住宅及び共同施設の管理に関する事務をつかさどり、公営住宅及びその環境を良好な状態に維持するよう入居者に必要な指導を与えるために公営住宅監理員を置かなければならない。」と書いてあります。「公営住宅監理員は、事業主体の長がその職員のうちから命ずる。」こう書いてあります。ところが実際に回ってみると、こういう法律に定められたような監理員の仕事をしているところは、ほとんどないといっていいんじゃないかと思うのです、聞いてみると。また住民の方も、管理人というものは、そんなことをしてくれるものだとは思っていないようであります。これは、行政に対する一つの信頼感の問題だと思うのです。そういう中で、東京都だけでも、きのうの向う側の答弁だけでありますから、その数字が正しいかどうかわかりませんが、とにかく東京都の職員で、千六百九十九名の監理員が今住宅に入っておる。それからやめた者は百七十名、そのうち百名は出たけれども、七十名はまだ残っておる。こういうのがきのうの都の建築局長の答えであったわけでありますけれども、結局公営住宅に対してこういう二千名に近い管理人を各団地ごとに置いて、これには優先的に入居権を与えておる。きのうの説明でも、やはり都の職員の中で生活に困っておる者が殺到して、だいぶ競争率が激しいのだということを言っておりますけれども、これはどうもそのまま受け取りかねるのであります。しかも、その監理員は、ほんとうの監理員の業務をやっていない、これが現実だと思うのであります。調べた結果はそうであります。それで私は管理員制度はこの際根本的に考える必要があるのではないか、優先入居をさせることはやめるべきだと思うのであります。公団の場合は、はっきりと管理人は別な事務所を作らなければならぬということを運営としてきめておるようでありますけれども、別にこの法案内容にも、監理員を優先的に入居させなければならないということは、どこにも書いてありません。これは、法律に便乗して入れておるのだと思うのであります。従いまして、こういう管理人制度というものは、今のような格好の管理人制度をこの際やめて、実際何もやってない、家賃もちゃんと通帳によって本人が持っていって、それをただ都に運ぶだけの仕事になっておるようであります。でありますから、管理人制度を根本的に改めて、やはり方法としていろいろあると思いますが、一つの思いつきでありますけれども、二百戸なら二百戸の一つ住宅地帯があれば——都の説明によりますと、常に顔見知りになっていないと、不正入居を押えることができないということに理由をつけておるようでありますから、そこに管理事務所を別個に置いて、そこに事務員を置いて、その者が全体の住宅を見張っておるということにすれば、こういう膨大な数の人が優先入居をしたり、居住者側からそういう批判を浴びたりすることがなくなるのではないか。そういう監理員制度について、建設省はもう少し考えてみる必要があるのではないかと思うのですが、いかがですか。
  14. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 管理の問題については、私は非常に問題があると思っております。といいますのは終戦後だいぶ政府援助の住宅もできて参ったのでありますが、今までは住宅建設に専念をしておりまして、実ははっきりいいますと、管理の方があまり合理的に行われておらなかったということは、率直に認めてよいと思うのです。私も、政府関係住宅をだいぶ見て歩きました。問題は今後は管理の問題にあるということをはっきり認識しておるつもりでありまして、従って、最近はいろいろな機関を通して、管理人に相当する者の教育をするといいますか、新しい住宅管理の方法についていろいろ研究したり、相互に練り合ったりしておるわけであります。しかし、それでも必ずしも十分だと私どもは思いません。お話のような点は確かにあると思うのであります。ただ管理人の優先入居というお話でしたけれども、優先入居という建前になっていないのであります。実際はそうなっておるか知りませんが、建前はなっておりません。それから四、五十戸に一人々々の管理人を置くことになっておるようでありますが、その管理のやり方については、お話のような点が確かにあると思いますので、十分一つこの機会に検討してみたいと思います。それ以上の管理の実際のやり方等については住宅局長からまたお答えしたいと思うのでありますが、大きな方針としては、住宅管理の問題については、この際に、もうこの段階に来まして、相当改善をし、新しい工夫をしなければならぬ、十分考えていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  15. 稗田治

    ○稗田政府委員 管理制度につきましては、今回御審議を願っております一部改正についても、管理の合理化という線を貫いておるわけでございまして、それによりまして、実際の管理の運営を十分よくできるようにしたいという考えでございます。それで、管理人の設置基準等についても、この法律案が成立しましたときに新たに定めまして、地方の事業主体を指導するつもりでおるわけでございます。  それから管理人の優先入居でございますが、これは、昨日も参考人の方が、建設省から出されました通牒を読み上げました通り、従来から優先入居ということは、建設省としては認めておらないわけでございます。この場合におきましても、都の職員の中の住宅困窮者の中で、しかも公営住宅法に合った収入水準以下の者を管理人として募集しまして、四十倍、五十倍という中から当せんした者が入っておる、それで管理人になっておるというような状態でございます。従いまして、都の職員の中から募集しておるわけですけれども、必ずしも公募の精神には反しないのではないかと考えておるわけでございますけれども、なお一般的にいろいろ誤解を招くおそれもございますから、今後東京都の取扱いにつきましては、建設省としても十分指導していきたいというように考えておるわけでございます。なおいろいろ管理人の職責につきまして、公金等を扱う場合がございますので、それで建設省は、公募して抽せんに当った者から選定するようには指導しておるわけでございますけれども、そういった公金を扱うような管理人については、できるだけ職員を充てるようにということを言っておるのでございまして、募集した中から職員を選んで管理人指定するようにというような通牒を出しておったわけでございます。今後におきましても、いろいろ誤解を生ずるおそれもございますから、十分指導して参りたいと思います。
  16. 武藤武雄

    武藤委員 あとがあるようでありますから、私はこれだけで終りまして、あとはまた次会に譲りたいと思いますが、政府の今度の公営住宅法の一部改正の中で、家賃の調整をやりたいということが一つの要素になっておると思いますが、その家賃の調整の仕方について、一言聞いておきたいと思います。結局、きのうも東京都の建設局長、あるいは横浜の建設局長あたりの受け取り方はこの法案が施行されると、財政的に今まで非常に困っておったのが、相当余裕が出てくるような期待を持っておるような公述をされて、賛成たというようなことを言われておったようでございますけれども、政府考えておる家賃の調整が、そういうふうに家賃の絶対額を上げて、財政的余裕を得ようというところにねらいがあるのか、それとも昭和二十年、二十三年という入った当時の家賃の構成と今の構成とにあまりにも不合理がある、だから、この不合理の点を直したいのだ、たとえば今新しくできる住宅は、非常に建設基準が高くなって、やはり高額の家賃を課せざるを得ない、従って、これは何らかの形で上の方を少し引き下げて、そうして今の状態と非常にそぐわない家賃の規模については多少引き上げるというふうな意味の調整を考えておるのか、それとも財政的余裕を見ることを一つのねらいとして絶対の家賃引き上げ考えておるのか、この点を一つお聞きしたい。
  17. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 ただいまのお尋ねの点については当然不合理の調整に重点を置いておるのでございます。家賃の絶対額を上げて、家賃のレベルを上げていこうという考えは毛頭ありません。終戦直後の住宅については、今と比較しまして非常な不合理がございます。そうしてその不合理を是正して、一方低家賃住宅の方へそれを回していくというように、不合理の是正を考えておるのでありまして、家賃のレベルを上げて、そこから財源を捻出しようというような考えは毛頭ないのであります。御了承いただきたいと思います。
  18. 砂原格

    ○砂原委員 関連して……。大臣お尋ねしてみたいのでありますけれども、この住宅問題については、政府計画をされるだけではとうてい住民の希望を満たすことはでき得ないと思う。従って、公庫の金を借りて住宅建設をしたいという希望は、一応自分収入がかりに三万円とか四万円ある人であったら、何とかして公庫の金を借りてでも自分住宅建設をしていきたいという希望を持っておるのは、お互いの共通の心理だと思います。そこで、公庫の金を借りることは借りられるけれども、さて建てようとする場合に、土地の問題で行き詰まってしまう。土地を借りようといってみたところで、このごろ土地を持っている人が容易に貸してくれない。そうなれば、せっかく自分には公庫の融資を受けて建設をするだけの能力はあっても、土地に行き詰まってどうにもならないというような人が、私は全国的に非常に多いと思うのであります。住宅地域の一万円もする土地の価格のところへ自分が永久に住む家を建てることは、とうてい引き合わないわけです。そこで、各地の県とかあるいは都において埋め立てなどをいろいろやっておるのであります。その埋め立てをしております土地を、せっかく埋め立てても工業地帯になったり、あるいは倉庫地帯にされたりする。企業家の手によって、何千坪というように大口に買い占められてしまって、その地域には全然割り込むことができない。その価格は、埋め立てをした場合は、高いところでもせいぜい二千円か五千円程度のものなんです。しかるにそういうところは、一つの企業家によって買い占められて、住宅政策の方では何ら打つ手がないというように考えられるのでありますが、こういう場合に、たとえば埋め立てをする土地の一部を集団的に三千円とか五千円というふうに、最初に認可をするときに住宅地域に指定をしておいて、そうして埋め立てた実費の金額で、たとえば三千五百円とか四千円という程度で、一般住宅を作ろうとする人に分譲してやる。坪数は最高五十坪程度として、三十坪、五十坪程度にして、これを区画して与えるというような方法をおとりになるなら、おそらく私は、公庫の金を借りながら、また一部自己の資金をつぎ込むならば住宅の問題も非常に緩和するのではないか、かように考えます。高級な土地を求めたいのは共通の心理であろうと思うのでありますが、今後埋め立てなどを行おうとする場合に、必ず住宅地域をその中に何千坪かを取り入れることを、許可のときに建設省の方から指示をしておくというような方法をとって、この住宅難の問題を解決せられる御意思がないか、この点を伺いたいと思います。
  19. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 宅地の問題は、非常に困難な問題でありまして、住宅政策を進めます場合に、私どもが最も悩んでおる問題の一つでございます。従いまして、住宅公団にも宅地造成の仕事をやらせることにいたしまして、第一期計画三百万坪、第二期計画は二百二十五万坪、第三期計画七十五万坪、これを大体昭和三十四年度にはそれぞれ完成するようにしたいということで今進めておるわけであります。公庫住宅につきましても、宅地の取得の融資をするというようなこともあわせてやっております。宅地造成のことも援助することにしておるわけであります。しかし、こういうことをやりましても、なかなか膨大な需要がありますために思うように参りません。そこで、御承知のように、今回この国会を通過いたしました、首都圏への過度の人口集中を排除するために、大きな工場や学校などを建設することを制限する法律を通していただいたのであります。それと同時に、うらはらをなす衛星都市の建設をしまして、そして宅地の需要を広く分散をしていこう、衛星都市の方面へ宅地の需要を振り向けていくというような考慮も同時に払っておりますけれどもこれとても、十分な解決にはならないのであります。お話しのように、たとえば東京湾の埋め立てをする場合に、同時に宅地を提供するようにという条件をつけることも一つの問題でありますが、一方において工場用地がまだ足りない。工場用地と宅地と、その両方にらみ合せて土地の合理的な利用をはかっていかなければなりませんので、場合によってはおっしゃるようなことも考えられると思いますけれども、さしあたりは、埋め立ては大部分は工場用地として使われておる、こういうようなことであります。  しかし私は、これから先私の申し上げることは、私の今考えておる構想にすぎないのでありますが、東京の都市計画を進めていきます場合に、宅地が非常に足りない、工場用地が足りないのでありますから、大体東京湾の埋め立て可能の部分、水深五メートル五〇程度の土地の埋め立てをやって参りますと、四千万坪くらいの土地ができます。この四千万坪くらいの土地を埋め立てをしまして、大きな工業都市を作ったらどうか。それには、下水道も完備されておるし、上水道も完備されておる、道路も完備されておる工業都市を作り、しかしそれには工業用水が必要であり、上水が必要でありますから、同時に利根川の大きな治水、利水計画とあわせて、一体をなした大開発計画を立てていくときがきておるのではないか、その大きな計画のもとに調査機関を設けて、大開発調査会というものを設けて、法律の基礎の上に、住宅問題をある程度解決すると同時に、工業用地も解決していくのだ、いわゆるニュー・タウンの建設もやっていくのだというような構想でいったらどうかということで、せっかく今事務当局調査法案準備をさせておるわけであります。できれば通常国会のころまでにその準備をして、調査法案を通常国会に提案をし、御審議を願って、十年なり二十年なり先に住宅問題、工場用地問題等を相当根本的に解決する方策を考えたらどうか、こういうふうな考えで、今調査を進めております。住宅問題は、非常に困難な問題でありますので、あらゆる手を打っていかなければなりませんが、いかなる機会でも必ずそれをとらえて、住宅問題の解決に資するようにして参りたい。御意見のような点についても、十分考えて参りたいと思います。
  20. 石川次夫

    ○石川委員 関連して。先ほど大臣から、量的な需要じゃなくて、質的な需要を調べて住宅政策転換をはかるというお話があって、非常にわれわれも賛成なんです。それで、ちょっと調査の仕方といいますか、それについて要望を一言申し上げておきたい。というのは、私の身近な点で、非常に狭い範囲かもしれませんけれども、一つの例として申し上げますが、戦時中に塩だきをやって、雨露をしのぐだけのバラックに住んでいる部落があった。そういうところにいって、千円以下くらいの低家賃住宅に住みかえる意思がないかということを聞きますと、非常にそれを要望しているわけです。ところが、県あたりにいきますと、そういう数字は全然出ておらない。従って、県の方とかあるいは官庁の関係調査というのは、収入の安定しているような人だけを対象とするという傾向があって、積極的な親心が欠けているというのか、あるいは維持費的に非常に調査が困難だという理由に基くのか、その辺はわかりませんけれども、私がちょっと勘で感じた程度でいきますと、およそ一けたか二けたぐらいずれているのじゃないか。低家賃住宅の需要という面の調査においては、欠けるところがあるというふうな感じが非常に強くするわけです。従って、数字に出た面だけでいいますと、質的な需要を調べるとはいいながら、そういう質的な調査というものが行き届かないというふうな懸念が非常に強いので、調査の方法について、あと一歩技術的な方法で調査して、そういった定収入のあるという人たちだけでなくて、収入が非常に乏しくて、ああいうところに家を貸したのでは大へんだ、家賃が回収できないかもしらぬということであったのでは、これはほんとうに親心のある政治とはいえない。そういうところまで手を伸ばすということをやらないと、正しい意味での質的な需要というものは出てこないということを、私は端的に感じるわけです。その点を、ぜひ今後の調査に当っては十分に注意していただきたいということを御要望申し上げます。
  21. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 御指摘の点は、十分に注意して参りたいと思います。  先ほど武藤委員にもお答えしたのでありますが、私は、低家賃住宅の問題は、大きくいって四つあると思う。第一の問題は、生活保護の関係を、大体東京では、生活保護の住居費として千二百円程度を予定しております。地方では約千円であります。それ以下の階層は、これは社会政策の面で、生活保護の方の面で扱っていく。この問題は、厚生省と十分打ち合せまして、その面まで住宅政策というものは広げなければならぬと思います。  それから第二の問題は、農村住宅の問題でございます。これは、武藤委員に私がお答えしたところでありますが、農村住宅についても幅を広げていく。  第三の問題は、いゆわるオーソドックスの低家賃住宅をいかにして供給するか。その基礎としての実際の実情調査というものを、質的な考慮を払ってやっていく、それを心棒にしてこれらの問題を解決していくということが、住宅政策基本にならなくちゃならぬ。こういうふうに考えて、今せっかく勉強中でございます。御指摘の点は、十分考えて注意して参りたいと思います。
  22. 二階堂進

    ○二階堂委員長代理 山中吾郎君。
  23. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私、この法案内容について、住宅政策基本的な考え方とある矛盾を感ずるのであります。その点について、大臣基本的なことを聞きたい。  この法案は現在住んでおる人にとっては、一種の既得権の侵害を含むような感じもするような意味で、重要な法案だと思うのです。よほど慎重に、まじめに審議をして、これは成立するなら成立するにしても、よほど考えるべきで、簡単にきめてやるなんということは、民主主義の精神に反する。それで大臣は、現在の公営住宅法改正法案、全部お読み願っておりますか。
  24. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 実は全部読んでないのであります。読んでおりませんけれども、私は、こういう考え建設大臣の仕事をやっておるのであります。事務的なことは、事務当局に一切私はまかせてあります。しかし政治的な判断は私がする、常識的な判断は私がするのであります。その問題点はこうしなさい、ああしなさい、それだけはびしっと私がやっております。事務的問題は、一切事務当局にまかせることにしております。御了承願います。
  25. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、この法案を読むことは事務的なことではないと思います。この法律は、住民の権利に対して大きな影響を与えるので、非常に重大なものでして、一度はお読みを願わなければならない。そういう政治的識見でお答え願うことが、必ずこの法案に対する正しい判断として出てこられることは、大臣の識見能力からいって間違いないとは思いますけれども、一応そういう意味で申し上げたわけです。  この住宅政策基本的な精神は、絶対量の住宅の不足を充足するということと、それから住宅の質を向上せしめる、この二つの目的がある。現行法の第一条には、そういう精神が出ておると思うのです。最低の文化生活を営むに適する住宅を供給する、そして住宅に困窮する低所得者に支給するということが入っておるのですから、二つあると思う。そして政府の方で、そういう困窮者に建ててやって、その人たちにくれてやるんだという思想が入っている。大臣は、住宅政策の精神というか、どういうふうに住宅政策の本質というものをお考えになっておるか。この法案に非常に重要な関係があります。
  26. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 住宅政策基本的な考え方は、御指摘のように、第一は住宅不足の絶対量を充足していく、すべての人に住宅を与えるということ。第二は、その住宅は、文化的な生活をなし得るということを目標にして、何でも入ればどんなきたない住宅でもかまわないというのではなくて、文化的な生活を営むにふさわしい住宅を与える、これが二つの大きな柱だと思っております。
  27. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大臣と私の意見は、完全にその点一致したわけです。そういう点からいって、この現行法は、そういう立法の精神がずっと流れているように思うのです。たとえば家賃を決定する第十二条を見ますと、公営住宅家賃については、建設費を基礎にして、二十年間を期間として、利率六分以下で、その住宅にかけた費用を償却することを基礎にして家賃をきめておるわけです。従って、償却をすればその居住者にやるんだという思想が、家賃の決定の中に入っているのではないか。それを今度の改正案にはそういう現行法の基本的精神と完全に相反する、出ていけという思想が入っていると思うのです。従って、先ほど大臣は、前進とおっしゃいましたけれども、私は、住宅政策の精神からいったら、非常な後退ではないかと思うのです。これは、言葉のマジックで私は言っているのではないのです。これはもっと実質的に、住宅政策基本精神からいって、一部改正によってだんだん基本精神がずれていくような改正は、これは改正ではなくて、改悪だと私は思うのです。家賃の決定の思想と、その中へ明け渡しという部分を加える今度の改正の立法思想とは、矛盾があると私は思うのですが、大臣はいかがですか。
  28. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 住宅局長からお答えをさせます。
  29. 稗田治

    ○稗田政府委員 御承知のように、公営住宅は、低額所得者に低廉な家賃で家を賃貸する、つまり公営住宅の成立の当時を考えますと、戦前は、都市におきましては七、八割というのが借家であったわけでございますけれども、戦後事情が変りまして、借家というのは採算がとれないものですから、ほとんど建たないという状態であったわけでございます。そこで、自力建設のできない方々、あるいは民間の高い家賃の家に入れない方々を救済するために、借家を低廉な家賃低額所得者に供給しようという考えであったわけでございます。従いまして、もちろん現行法の規定の中に、耐用年限の四分の一が過ぎた場合に譲渡できるということが書いてあるわけでございますが、これは、管理上むしろ入居者に渡した方が妥当であるという場合には、事業主体は譲渡することができるということをきめてあるわけでございまして、賃貸住宅を供給していくというのが公営住宅法の根本でございます。従いまして、これは譲渡処分を建前とするということには相ならぬというふうに考えておるわけでございます。
  30. 山中吾郎

    山中(吾)委員 局長の話では何か無理にこじつけて解釈をされておるように思うわけでございます。公営住宅というものは、営利住宅じゃないのです。もう一度十二条を読んでみますと、「公営住宅家賃は、政令で定めるところにより、当該公営住宅建設に要する費用を期間二十年以上、利率年六分以下で毎年元利均等に償却するものとして算出した額に修繕費、管理事務費及び損害保険料を加えたものの月割額を限度として、事業主体が定める。」これでずっと通ってしまえば、建ててやったり、その修繕費を加えて、全部政府が出したもの、個人では資力がないから、先に二十年かあるいは十年前に政府が金を貸してやって、入れておるのだ、そうして償却してしまったらくれてやるのだという思想がそこに考えられると思うのです。それを、全部取ってしまってから家賃を取っておったら営利住宅になる。そういう思想があるから、今局長の言われた二十四条の耐用年限の四分の一を経過したときは譲渡することができるという思想が、そこに流れてきておると思う。その自然の思想がここに出ておるのですから、この法全体の思想は、やはり途中から、収入が上ればある程度家賃を上げるということについては、私の良心から絶対反対はしておりません。しかし出て行けという思想を入れるということは、最初の法律の精神を無視しておる。こういうものは民主政治の後退ですよ。自民党とか社会党とかではありません、どちらも民主主義を標榜しておるのですから。こういう思いつきの法律改正案は、私は好きでない。もっと居住者の心理というものを考えて、最初の法律の精神を伸ばしていくのでなければ、私は前進とは言えない。そうしてこの法律の精神が、改正のときにはどういう表現でいっているかというと、十一条の二に、「事業主体は、常に公営住宅及び共同施設の状況に留意し、その管理を適正かつ合理的に」——適正と合理的という内容のない抽象的な美しい言葉でこの改正の精神がうたわれておるのですが、こういう抽象的な内容のない改正の言葉は、私は、いつもそういう言葉の陰に、基本的な精神をずらしていくような、いわゆる肩すかし法案が出てくると思うのです。そういうことは、お互いにもっと掘り下げていかなければならない。局長の今お話しになっているのは、やはりこの精神からいって違いますよ。譲渡することができるということは、やはり譲ってやるというふうな思想がここにずっと自然に流れている。これを逆に持っていくのは、私はおかしいのじゃないかと思う。そうでしょう、もう一度お伺いいたします。
  31. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 その当時の詳しいことは、私は存じませんが、考え方としましては、個々の個人に政府が補助金を出していくということはしない。個々の個人に補助金を出すような格好になって参りますと、非常に不公平が出て参ります。でありますから、個々の個人には補助金を出さない。従って、公営住宅に対しては非常な補助をしておるわけでありますが、公営住宅家賃の算定の基礎には、補助金を入れていないのであります。補助金を除いた部分の建設費についての家賃の算定をしておるわけであります。その建前が、最初から、補助金を除いた建設費を償却すれば、それはその人のものになるのだという建前でなくて、賃貸住宅を提供していくのだ、こういう建前になっておるわけであります。従って譲渡する場合には、管理上の見地から見まして、これは譲渡した方がよろしいというときに譲渡する建前になっておる、こういうふうに私は理解しております。
  32. 山中吾郎

    山中(吾)委員 管理上の便宜的な考え方で譲渡するというふうな冷たい解釈は、私はこの公営住宅法にないと思うのです。  そこで、この改正法の明け渡しという思想ですね。三年たったあとに明け渡しの努力義務を一切背負わしていくということは、——住宅の不安というものは、ほんとうに精神的に大きい影響があるから、生活不安の基本的な条件であると思うのですが、そういう明け渡しの努力義務を三年の後に負わすということは、この公営住宅の今ずっと申し上げたような精神からは相反するのじゃないか。それをこの改正法案からおとりになる——大臣の日ごろの人生観、世界観ならば、こういうのは賛成される法案でないと思うですが、いかがですか。
  33. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 そこのところは、こういうふうに考えております。明け渡しの義務というものを背負い込んで、長い間暗い気持でその家に入っているというような状態を続けていくことは、これは不自然であります。でありますから、その人の収入にふさわしいような家を提供して、だんだんレベルを上げていくような方向へ持っていって、いきなり立ちのけというようなばかなことはやらないようにしよう。あなたは、この程度家賃の家へ入ることができるのですから、一つ入れない人に譲ってやってくれませんか、こういうふうな話し合いでいくような仕組みでいきたい、こういうふうに考えておるのであります。
  34. 山中吾郎

    山中(吾)委員 法律規定しているから言うのです。それならば、お互いの話し合いでいくならば、法というものの外で、行政上実際上の方針としてすべきではないか。この住宅というものは、私は自分考えるのですが、その住宅の隣との人間関係が離れがたいとてもいい環境の場合には、単なる住宅の問題でない。その人の人間関係を含んで、住宅に対する愛着と、そこにおりたいという気持があるのです。あるいは逆に隣と非常に仲が悪いならば、出た方がその人のためならきっと出るでしょう。しかし、どうしてもこの環境は離れたくない、子供の教育も考える、そういうことを含んでくる場合に、今のような合理的という言葉で、住宅だけ人間生活から切り離して出ていけというようなことを法律に盛り込むことは、現在の政治思想からは、こういうものを法律化してはいけないのではないか、私はこう思うのです。
  35. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 その問題は、一種の人生観に基いたいろいろな議論になると思うのでありますが、私は、住宅問題についてはこういうふうな考え方を持っておるのであります。この第一次の五カ年計画が終りまして、その次の五カ年計画くらいをやって参りますれば、大体住宅不足という問題が解決してくるのではないか。もちろん問題はたくさん残って参りますが、それから先の住宅政策というものの方向は、だんだん変っていくべき性質を持っておるのではなかろうか。従って、それまでの過渡的な問題としては、非常に恵まれない、家がない人をなるべく入れていきまして、そして広く住宅不足の人たちに入ってもらうような仕組み、しかも無理なく入れるような仕組みを一つ考えていくことが、全体としては非常に円満にいくのではないか、こういう考え方を持っておるわけであります。法律に書くのはいかぬじゃないかという御指摘であります。この点は、私もずいぶん考えてみたのでありますけれども、法律に書いて強制するのはいかぬけれども、精神的な意味で、こういうことになるぞという宣言をするような意味法律条項というものは、必ずしも悪くないのではないか。あなたは、もう段階が上の段階にきておるのだ、こういうことの宣言であります。それと同時に、新たに入る家を考えて、一つ明けていただいて、そして家賃の安い家にしか入れない人に入ってもらうようにしようじゃないか。こういうことの話し合いの場を作っていく一つのきっかけを作っていくというふうに私は考えておるわけであります。
  36. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大臣は、そういうふうにさっとお考えになっておるから、こういう法案が出るのです。もう少し実際に住んでおる人の気持を考えてみますと、たとえば三年のうちに明け渡し努力義務を規定しておるわけですが、住宅に対する精神的な強制というものは、非常に不安を感ずると私は思う。しかも三カ年になりますと、たとえば入居したとき三万円の月給取りが、三年したら幾ら昇給します、まあ定期昇給が普通に行われて、年に千円ずつで三千円しか収入は上らない、それで、入居の日から所得が三千円上った、そのときから明け渡しの努力義務を負わされるというときに、庶民の住宅心理というものは非常に酷薄なものだと思う。それから十年たってみなさい、十年たって千円ずつ上って一万円です。一生懸命働いてようやく一万円になったとき、外に出て一万円の家賃に入ったら、十年、一万円の努力は水泡に帰するでしょう。こういうことを考えたときに、こういう法案は、簡単に出すものじゃないと思うのです。国会議員だってそうでしょう。今宿舎を出ろと言われたら、私は困りますよ、そういう不安を与える。住宅というものは、単なる低額所得者に対する保護政策だけではないと思う。もっと国民の思想にまで影響する問題だと思うのです。そういう意味において、私は簡単に改正されておる明け渡しのことについては、どうしても承服できない。ほんとう大臣の心の底は反対だと思いますが、どうでしょう。
  37. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 いや、私の心の底は賛成なんであります。これでいくことが一番いいと思っておるわけです。ただ私の考え方は、この法律全体からにじみ出ておると思うのですが、たとえば三万円を一つの境にいたしまして、三万一千円になったらすぐ出ろというような、そんなことではない。そこのところは非常に幅を広くして、ルーズといえばルーズでありますけれども、そこは今おっしゃるような住宅に対する感情等もありますから、それをぎちぎちにやっていくようなことにならないように、住宅問題というものは生活の基礎になっておるのでありますから、今までの愛着もございますし、だんだん年数を経ていくに従って、条件もいろいろ重なってきておるのでありますから、あまりぎちぎちなことはいけない。大体の基準を置いて、その前後相当な幅を持って、この辺にきたらば、もう普通の家賃の他の住宅を提供いたしますから、一つどうですかというふうな話し合いをしていく、これで、私はすこぶる円満にいくのじゃないか、これが住宅政策としては非常にいい行き方ではないかというふうに信じておるわけであります。
  38. 山中吾郎

    山中(吾)委員 今の大臣の思想では、法律は要らないという答弁と私には思われる。法律によらないで話し合いでいくという、むしろ逆な方向に改正する思想だと思う。一歩譲っても、三年後ではほんとうに無理だと思うのです。一般の勤労者の三年後の収益の上り方というものは、どんなものですか、法律には三年後の努力義務が書いてあるのですが。
  39. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 三年たてば、すぐみんな義務を負うというのじゃなくて、三年たって、そのときに一定の三万二千円なら三万二千円をこえておれば、そういう問題に入ってくる、こういう意味でありまして、そこはあまりぎちぎちに考えないで、住宅問題ですから一つの目標を掲げて、一つの話し合いのきっかけができる、そういう精神的な義務を持ってくるんだ、こういうふうにお考えいただけたらいいかと思います。
  40. 山中吾郎

    山中(吾)委員 二十一条の二をお読みになっておられないようですから、読みます。私はまじめに全部見ているのです。ふまじめじゃないのですよ。居住者のことを考えて、追い出すということは封建的な村八分の思想に結びついてくるし、日本人には、ある人が少しよくなるとすぐ引きおろすとか、嫉妬する心理があるのです。そういう心理が、どうかするとそういう法改正に入ってくると思のです。それで私は申し上げるのですが、「公営住宅の入居者は、当該公営住宅に引き続き三年以上入居している場合において政令で定める基準をこえる収入のあるときは、当該公営住宅を明け渡すように努めなければならない。」国民がこの法律を読んだときに、何にも感じないで、ああいい法律だ、あたたかい法律だと思うかというと、とんでもない、非常に脅迫的な感じがすると思うのです。法律を作る立場でなくて、法律を守る国民の立場からこれを見ますときに、そう思うのですが、いかがですか。
  41. 稗田治

    ○稗田政府委員 二十一条の二におきまして「政令で定める基準をこえる収入のあるときは、」こう申しておりますのは、現在考えております段階では、入居者の収入の基準に大体バランスさせようというわけでございます。ですから入居したときの、現在でございますと、二種で一万六千円とか、一種で三万二千円以下というのがございますが、そういった収入基準に見合った収入超過者の収入の基準を政令で考えようというわけでございまして、とにかく入った以上三年たったら、どなたも昇給したら出ていけ、こういう問題ではないわけでございます。たとえば三万二千円でありますと、三万二千円を出るか出ないかという境の人だけが明け渡しの努力義務を課せられたり、あるいは割増し賃料をとられるということがいろいろ起きるわけでございます。それで、現在第一種公営住宅におきましてわれわれの方で抽出しました資料から推定いたしますと、第一種公営住宅の入居者のうちの一割近くが、この収入の基準を上回っておるんではないかというふうに推定しておるわけでございます。
  42. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、三年居住したあと、その居住者の中で明け渡しをした方がいいと考える場合は、入居のときにすでに不正入居しておる者くらいじゃないかと思うのです。入居のときに厳正にしないで、情実で入れて、その不合理を今度はこれによって修正しようとすれば、私は非常によろしくない改正だと思う。三カ年の間に、出てもらった方がいいとかいうような収益になるはずはない。だから、入居のときに不正入居なのだと私は思うのですが、どうでしょうか。
  43. 稗田治

    ○稗田政府委員 現在の法律におきましても、不正入居の場合は、はっきり明け渡しの請求ができるようになっております。ですから、各事業主体におきまして、不正入居がありました場合は、明け渡しの請求を現在やっております。また政令でこれを定めるわけで、今後の問題になるわけでございますが、たとえば三万二千円ということで上限を引きましても、低額の所得階層にとりましては、絶対にそこにいかないといったような方もあるわけでございますし、また収入がふえましても、同時に三年もたつうちには、子供もできる方もあるわけであります。従いまして、そういった扶養親属につきましては、控除額も考えておるわけでございます。
  44. 山中吾郎

    山中(吾)委員 三年たって収益が上って、子供も生まれるということまでよく御理解なさっておるならば、どうしてこういう法律を出されたのか、ますます私にはわからないのですが、こういう精神的規定と言うが、精神的圧迫規定です。居住者の心理というものは非常に不安になる、どこか不安定になる、自分の家だと思うから修理自分でやる、住宅愛着を感じて修理もするのです。  それから、公務員住宅のことをお互いに考えなければならぬと思うのです。給与は相当高い高級の役人であっても、やはり住宅があるということが、どれだけ精神的な安定感を持たせて職務に忠実に従事する一つの根拠になっているか。そうして公務員住宅の場合には、給与が高くなれば出ていくという政策をとっていない、ますますいいところに入るでしょう。これは、やはり人間の住宅に対する精神というものを考えておるから、こういう公務員住宅の制度がある。従って一般庶民に対する住宅政策も、自分の立場と相手の立場を一緒に考えていったときに、こういう法案は出すべきものでないのだ。私の考えはそういう考えなのですが、これは、一たん出したからといって、途中で直すことがどうしていけないのですか。何か形式的権威を考えていて……。
  45. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 私は、かねがね申し上げておりますように、非常にざっくばらんに、これはいかぬと思うことはいつでも修正いたします。しかし、この問題は、この方がいいと私は考えておる。ぜひ一つ御理解いただきたいと思う。
  46. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 関連。第二十一条の二の規定について、大臣一つ考えといいますか、こういうことはできないかということをお尋ねしたい。今山中委員の御意見、あるいは御議論を聞いておりましたが、私の考えでは、提案された政府も同じ考えだと思うのですけれども、二十一条の二の規定は、いわゆる公営住宅制度——先ほど山中委員が、公営住宅法の第一条を読み上げられましたが、その第一条の目的の、いわゆる公営住宅の精神をここにほんとうに貫こうという趣旨の規定が第二十一条の二の改正案だと思う。条文を読むまでもありませんが、公営住宅というのは、残念ながら日本の経済が思うようにいきませんので、いわゆる低額所得者が相当多い。その後戦争等によって家が少くなって、どなたもお考えのように、家は人間の生活上一番大切なところでありますから、自分の力によって家ができないいわゆる低額所得者に、何とかして国の力によって安い家賃の家を貸しましょう、これがこの法律の根本精神であります。しかし現実にやってみると、全体の家が満足に全部建ってしまえば、これはけっこうでありますけれども、それはなかなか理想通りに参りません。従って、だんだんいわゆる低額所得でなくなった人々がその家に入っておるということは、この法律を制定いたしまして、いわゆる公営住宅を設けた趣旨から逸脱しておる。それを直そう。だから、相当の収入がふえて、いわゆるこの基準以上になった人々は公営住宅にお入りになる趣旨から多少はずれておるから、一つ何とかお考えを願いたい。こういうふうになってくるのであって、世間でいわれておりますように、そこに住んでおりますといろいろ友だちもできたり、あるいは地理的条件で、そう簡単に動くのも困難であるというお説も各方面で聞き、この委員会でも聞きます。これもまた人間の社会の常でありますから、そういう人は残念ながら、公営住宅低額所得者に低家賃でお願いするのであるが、あなたは力があるから、そういう特別な事情がありますれば、一つ多少の家賃の増額をお願いして、あなたの御希望の通りにおやり下さい。これが第二項で、これは非常に公営住宅の精神をまっすぐに貫いておる規定だと思うのです。そこでこの第二十一条の二の規定は、自分だけのことを考えないで、やはりほかの低額所得者のことを考えて、お互いに公平に平等な世の中を作りましょうという規定ですから、私は、社会党の諸君も大賛成の精神の規定だと思うのです。そこで、入っておられる方の努力をお願いしておる。それから事業主体については、ただ出て下さい、出る努力をなさいではいかぬから、できるだけ移られる住宅をあっせんする等の努力をすることになっております。  そこで、私がこの際大臣に聞きたいのは、事業主体は、いわゆる地方公共団体でありますから、大いに努力をしてもらわなくてはなりませんが、政府でもう一つ努力すべき点がありはせぬか、というのは、だんだん収入が多くなってきて、もう公営住宅というような、ああいう集団的なところにおりたくない、これはすべて人間の心理状態であります。一生一代小さいながらも自分の家をかまえたい。それにはまたそれだけの資金がないのだ。そこに住宅金融公庫の制度ができておりますが、これも資金に限度がありますから、申し込み数になかなか満足に応じられない。従って抽せん等にも応じられない。そういうことで、ある程度の資本金があって、土地の用意もでき、場合によっては敷地の資金も貸しますが、やりたいという熱望を持っておるけれども、なおかつそれも実現できない、こういう実情大臣御存じの通り。そこで、公営住宅法の精神を貫くために、こういう規定ができるのでありましょうが、努力を願う場合に、事業主体も努力をいたしまして、こういう場合に、私は移ります、この際もうほかに移るよりも、自分である程度資金を出して、住宅金融公庫の金を借りて、一生一代一つ自分の家を建てましょう、そうして公営住宅の精神に沿って、他の低額所得者に私のあとは使ってもらうようにいたしましょう、これは、共同社会のほんとうの気持です。そういう場合には、住宅金融公庫は、そういう証明のある人には優先的に貸すという制度を作ったらどうか、これは事業主体の努力ではなくして、政府努力すべき点です。その点はどうでしょうか。
  47. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 政府としては、当然そういう方々のめんどうを見ていかなくちゃならぬのであります。事業主体にできるだけそのあっせんをさせるという建前を、ここでは明らかにしておるのでありますが、住宅金融公庫の金を無条件で優先的にそういう人にやるということになりますと、これは、また一方において非常に公平、不公平の議論が出てくる問題でありまして、今まで公営住宅の恩恵に浴した人がさらにまた政府から恩恵を受けるということに対して、非常に疑問が出てくるのじゃないかと思う。しかしこの点は、御意見でありますので、私ども十分研究をしてみたいと思います。今直ちにそういたしますということを、はなはだ遺憾でありますけれども申し上げかねるわけでございます。
  48. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 大臣のお答えになった通りだろうと思います。公営住宅に入っておるだけでも、これは失礼でありますけれども、国民全体の金を出し合ってそういう低額所得者に安い家賃で貸していることで、国民全体の恩恵に浴している。それだけのことは公営住宅に入っている人はよく考えてもらわなければならぬ。権利だけを主張する、自分のところはけしからぬというような陳情を私どもよく受けますけれども、国民全体のなけなしの金を出し合って助けてもらっておるのだという精神が抜けたら、公営住宅の精神を論ずる資格はないと思うのですが、そういう意味において、大臣は、その上にさらにまた住宅金融公庫の金も優先的にするということについては、他の人々との権衡上から、これまた不公平じゃないかという御心配もあると思います。それもそれでありますけれども、どうか、一つ今の問題をよく検討してもらって、全部というわけじゃないでしょうが、こうやって出ていかなければならない、この際建てましょうというような人には、やはりある程度の道をあけてやらないと、ただ出ていきなさいばかりでは、これは、法律を作ってそれで済むということでないと思うので、今そうしましょうということもなかなか問題だと思いますけれども、御検討を願っておきます。
  49. 島上善五郎

    ○島上委員 私は、またこの次の機会にゆっくり全般について御質問申し上げますが、一つ大事な点があるので、関連して伺います。  今瀬戸山君が言われるように、道をあけるということは必要なわけです。そこで、その道をあける方法として、住宅金融公庫の金を優先的に貸したらどうかという御議論、これは必ずしも道をあけるということになりません。現在では、土地を手に入れるということは困難ですし、頭金を相当用意しなければ建てられませんから、土地も世話をし、十割全部貸すというなら、これは道をあけることになるかもしれませんが、今の制度ではよしんば優先的に貸したところで、道をあけることになりません。瀬戸山君の名案のようですけれども、実は必ずしも名案ではないということを、残念ながら私は言わざるを得ません。しいて道をあけるということを考えるならば、私はこの明け渡しの義務を負わせる法律には反対です。こういう法律を作ることは、先ほど同僚の山中君が言いましたように、精神的に非常に大きな重荷を負わせるのです。きのう行きました際にも、収入がふえたら出なければならぬ、これは大へんだと、みんな奥さん連中が心配している。あなたの先ほどの答弁は非常にやわらかい。そんなものじゃない、話し合いをする機会を作るのだという。けれども、そういう精神でいくならば、法律は必要ないと思うのです。それで、今御承知のように、公団住宅というのがある。かりに自分収入がふえて、第一種、第二種から出てほかの住宅に移ろうとすれば、公団住宅しかないのです。あっせんということは、おそらく公団住宅のことをさしていると思うのですが、ところが、公団住宅家賃は、今の第一種のごく最近建った耐火建築の家賃に比べましても、ほぼ倍です。三万二千円からかりに三万五千円になって、収入が三千円ふえた者が、倍の家賃のところに行きましたならば、ふえた分は全部家賃に投じなければならぬ、こういう状態なんです。これが四千円程度の——公団住宅も最初は最高四千円どまりという趣旨で発足したのですよ。今は七千円以上八千円近くになっておる。こういう現状ですから、最近の耐火建築の三千四百円というような家賃の第一種に入っておる人が、もう少し奮発した程度家賃で容易に入れる道があるならば、その話し合いということも、私は割に円満にいく可能性もあると思うのです。しかしその場合といえども、法律にすることは賛成じゃありませんけれども、問題はその道がないということなんです。今三千五百円で入っているのを三千八百円とか四千円であるならば、それは道があるということは言えるし、穏やかに話し合いができるのです。倍額の家賃に入ることは、容易なことじゃありません。そういう道が全然ないのに、きわめて穏やかに話し合いができるような答弁をされて、それでそういう今の法律改正なんということは私は少しきつい言葉で言いますけれども、一種のごまかしじゃないかと思う。あなたが穏やかに答弁されることに、私どもは非常に好感を持っております。それならば、そういうような改正にしてもらわぬことには、あなたの穏やかな答弁とこの法律改正とは一致しない。それから穏やかな話し合いでいくような道が全然ないということです。現在そういう道がないということを、よくお考え願わなければ、この法律改正は大へんな結果を生むということを、私どもは心配せざるを得ないわけであります。
  50. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 ごまかしでも何でもないのでありまして、第二種住宅の方で条件からはずれてきた者は、それをまた第一種の方へあっせんをするとか、それからまた公団住宅の方へ入りたい者については、これは場合によっては省令の改正等をやりまして、公団の住宅家賃が平均して五千円ぐらいになっておるし、安いのもありますから、そこは話し合いでいけるんじゃないか。公団住宅へ入る者と、第一種住宅に入れる者と、それぞれそのときの状況によって話し合いでやっていったらどうか、こういうふうに思うわけであります。
  51. 島上善五郎

    ○島上委員 私は、関連ですから、これだけにしておきますが、第一種住宅へ入っておる者が三万二千円をこえたときには、限度を越えるということになるわけです。その人たちがかりに引っ越すとしますれば、公団住宅しかないのですよ。公団住宅には安いところもあると言いますけれども、最近建っている公団住宅はみんな七千円以上ですよ。そうしますと、第一種の比較的新しい耐火建築に入っている人でも、一挙に家賃が倍近くになるということです。そういうことでは、せっかく努力して収入がふえましても、そのふえた分が新しい家賃に全部食われてしまうという結果になるわけであります。それは、収入が三万二千円から一挙に五万円になるわけじゃないので、三万三千円あるいは三万五千円、三万八千円、こういう状況ですから、そうなれば、せいぜい三千円か五千円ふえたその収入の全部か、もしくは大部分が新しく引っ越した家賃に食われてしまう、そういう結果になりますので、これは、生活に大へんな負担になるわけです。安い家賃なんていうけれども、これは最初に建った公団住宅家賃であって、そこへ入るということは、政令を改正しても何でも非常に困難だと思う。あっせんすることになれば、最近建った、あるいはこれから建てる家の入居についての便宜だと思いますので、そうしますれば、どうしても家賃は今までの倍近くになる。そうして所得収入のふえた全部か、もしくは大部分が新しい家賃のために食われてしまう、こういうことでは、円満に話し合いをつける道があるということは言えないと思うのです。円満に話し合いをつける道がふさがれている、それが現状だということです。こういう現状のもとにおいて、こういう法律が作られるということは、精神的に不安を与えるばかりではなく、生活の上にも経済の上にも非常に大きな負担になるわけです。ですから、先ほど大臣が御答弁されたような、穏やかに話し合いが進むというものではない、現状はそういうものではないということを指摘せざるを得ないわけです。まあ私は関連ですから、これで終りますけれども……。
  52. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 なお、今の御指摘の中に、第一種公営住宅と公団住宅との間に非常に段差があるようなお話ですが、東京あたりは第一種公営住宅も四千円ぐらいになっている。それから公団住宅は平均して五千円くらいになっている。
  53. 島上善五郎

    ○島上委員 五千円じゃないですよ。
  54. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 全国平均であります。
  55. 島上善五郎

    ○島上委員 それは、独身者のものも入れて平均するからです。平均は七千円ぐらいです。
  56. 遠藤三郎

    遠藤国務大臣 詳しいことは住宅局長から答えていただきます。それで、そう大きな段差はないのであります。まああんまり無理な計画はしておらないつもりなんですが、一つ……。
  57. 三鍋義三

    ○三鍋委員 これは、私たちが一番心配しておったことが現実の問題として出てきた姿だ、こう思うのです。たとえば三十年でしたか、住宅公団ができましたときに、今まん中にすわっておられる二階堂委員、それから瀬戸山委員も、この政府住宅対策に対しまして非常に痛烈な批判をなさっておったのであります。それは、根本的な住宅対策というものを考えたときに、公営住宅というものに重点を置いていくべきであるという、そういう御趣旨であったと思いますし、日本社会党も、そういう立場で、日本住宅公団の法案審議のときに主張して参ったのであります。その私たちが心配しておった問題が今起きている。ずっと追い詰められて、のっぴきならないようになってから、何かそこを一つ切り抜けていこうとして苦心をしたあげく出てきたのが、こういった改正案となって出てきた、こう思うのであります。そこで、きょうはもう時間も過ぎましたから、私たちは、やはりもう少し住宅現実の問題、実態を把握したいと思うのです。たとえば今島上委員からもお話しになりましたように、公団住宅とそれから公営住宅のこの問題でありますが、ここに私は、やはり実際大きな断層が出てきておると思う。大臣は、今そうではないというふうに御答弁になりましたけれども、そうであれば、そうではないといった資料をやはり私は一つこの次の委員会までに出していただきたい。  それからもう一つ住宅公団の実際の進捗状況、これは、私今まで二回ぐらいお願いしておったのだけれども、いまだに出てきておらないのです。初めからのずうっと進捗状況ですね、これはどのように計画通りにいってるかという問題、それから家賃の実際の状況にいたしましても、ずいぶん初めの竹山建設大臣のときのお考えと実際に違ってきておるわけですね。そういった全国平均と、それからおもだった標準となる家賃の状況、こういったものを、もう少し私たちがこの法案審議する上において一つよく調べて、そうしていろいろと意見を述べてくるといったようなそういう親切さがやはりなければならぬと思いますから、そういう点、一つよろしく資料提出をお願いいたしたいと思います。
  58. 稗田治

    ○稗田政府委員 公団住宅の最近行われております家賃公営住宅家賃との比較表を整えまして、後日お届けいたします。なお公団の設立して以後の全体の事業の進捗状況も、あわせて御報告申し上げます。
  59. 山中吾郎

    山中(吾)委員 法制局第二部長が、この間も来てもらって、質問しないでむだに出席ばかりしてもらっておりますので、きょう一言だけ、この法律についての私の疑問をお聞きしたいのですが、こういうことです。この法律の第一条に、「住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸する」という目的を書いております。そして入居者資格というのが十七条にあるわけです。それで、所得が低いということは入居の資格で、居住の継続条件とはこの法律ではなっていないのじゃないか。所得が多くなったならば居住する権利を喪失するという思想でなしに、この法律全体の解釈では、低所得というものは入居の条件だ、それで、所得が上ることによって居住する権利がなくなっていくというようないわゆる居住継続条件というのは、この現行法では規定してないでしょう。その解釈を一つお伺いいたします。
  60. 野木新一

    ○野木政府委員 現行法の解釈でございますが、第一条でこの法律の目的をうたってございまして、「住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することにより、」云々と書いてございます。この法律の目的という第一条におきましては、要件としては住宅に困窮する者、それから低額所得者、この二つがやはり柱になっておるのではないかと存ずる次第であります。そして今度は、こういう目的のもとにあとの細部の構造はどうなっておるかということは、ずっと二条以下に書いてあるわけでございますが、現行法の建前として、御指摘の十七条はしからばどういうことであるか、この点につきましては、若干議論もあるようでございますが、やはり現在の解釈といたしましては、十七条自体としては入居の際の資格で、その後の継続条件ということを必ずしもはっきりうたっておるのではないではないかというように今解釈されているのではないかと存じます。またそれで、低額所得者というのは入居のときの条件である、入居後低額所得者でなくなったというものについて、あと規定のどこかに処置が書いてあるかというと、それについては必ずしも書いてありませんで、現行法はその点は触れてない、そういう解釈になるのではないかと存ずる次第であります。
  61. 山中吾郎

    山中(吾)委員 法制局の解釈だから、権威ある解釈として私はお聞きしておったわけですが、それではあまりあいまいだと思うのです。この法律の解釈、低所得というのは入居の資格なんです。継続条件ではないと私は思うのです。今大体そういう解釈ですね。今はっきりしてないとおっしゃったけれども、あとで所得が多くなったならば、第一条の低所得という条件はなくなってくるのです。だから、今度ある程度割増賃というようなものを見ている。全体の法の解釈の中に、低所得というものは入居資格であって、居住継続条件ではないのだ、従って所得がふえた場合には、合理的な立場において、ある程度の割増賃というふうなものがここに法思想として出てきておる。だから、私がお尋ねしておるのは、法理的にも明け渡しの努力義務を与えるということは、最初の現行法の基本精神と全く逆な原理が入ってきているのではないかということで、法律的にも疑義があるということを申し上げているのですが、どうでしょう。
  62. 野木新一

    ○野木政府委員 その点でありますが、現行法といたしましては、一条で目的を掲げまして、そのほか各条でその具体的のことを書いておるわけであります。それで、十七条におきましては、おそらく低所得者ということは、やはり入居の際の条件だと解した方が適当だろうと存じます。しかしながら、入居後のことはどうかといいますと、その点については、現行法は触れていません。それだから、それを、たとえば今度の改正法である程度補充する、手を加えるわけでありますが、それが今度は第一条の趣旨に反するかといいますと、そうではありませんで、第一条はもっと広く書いてあるわけでありますから、そしてあとは現行法の建前としてはその効果を一々書いてあるわけでありまして、入った後に所得がふえたというときには、法律的にどういう効果を生ずるかという点につきましては、別に触れてないわけです。触れてない点を補充するという程度でありますから、別に一条との関連におきまして、一条の趣旨に反するということはないと存じます。ただそういう立法政策がよいかどうかという点は、これは先ほどここで拝聴いたしておりましたが、それこそまさに政策の問題でありまして、一条との法律的な関連におきましては、これは形式上の問題でありまして、かりに一条に反するというならば、一条に一部手を加えて、一部改正法案でもこれは可能だと思います。かりに一条に反するといっても、全部書き直して改正しなければならぬ、そういう問題ではないと存じます。まして今の場合におきましては、一条の字句には触れるまでのことはなくて、現在現行法で触れてはないが、それを書き添えるかどうかという問題でありますから、そういう意味におきましても、一条との関係において矛盾するというようなことは、法律形式的には出てこないのではなかろうかと存ずる次第であります。
  63. 山中吾郎

    山中(吾)委員 あなたの法解釈は、ほんとうに研究されてやっておられますか。それは、二十二条に「公営住宅の明渡」の条項があるのです。それには「不正の行為によって入居したとき。」とか、「家賃を三月以上滞納したとき。」とか、いろいろこういうときのみ明け渡しの請求をすることができるということが、この法律全体の思想の中にあるのです。従って、低所得というものは結局入居資格であって、入ったならば、やはり一定の既得権、居住権というものは、一応この法律の中に含まれておって、管理規則に違反した場合にのみ、つまり明け渡しの二十二条がある。これは、たとえば公務員住宅のような場合には、公務員という身分が継続条件になっていると思うのです。役人が官舎に入っておる、そのときに、公務員の身分を有することが入居条件であると同時に継続条件、だから、退職した場合は出ていかなければならない、それでも、実際は二年くらいがんばっておるでしょう。しかし、それは今ここでは触れない。触れないが、こういう庶民を相手にして、低所得者住宅を与えて救済して、それで公営住宅というものは目的を果して終りなんだ、従って入居資格だけにしてある。そこで二十二条との関係からいっても、この明け渡しの努力義務の規定をぽつんと持ってくるということは、法律全体の立法精神というものが狂ってくるのではないかと思う。これは、立法政策を言っておるのではない、純粋の法律論としてそう思うのですが、どうですか。
  64. 野木新一

    ○野木政府委員 御質問の趣旨は、よくわかりました。私も、立法政策の云云の点は、私の領分でありませんから申し述べません。純粋の法律的な立場から議論しておるわけでありますが、それにいたしましても、十七条が入居の際の条件だというふうに私が解釈いたしましたのは、御指摘の二十二条などを見ましても、別にこれは明け渡しということに書いてないわけです。そういうわけで、現行法の建前は、なるほど今言ったように、低所得者ということが入居の際の条件で、その後低所得者でなくなっても直ちに明け渡しの義務が生ずる、そういう建前にはなっておりません。しかしながら、第一条の趣旨から論じますと、「住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸する」そういう大目的がありますので、この目的から見ると、低額所得者でなくなったものに対して、立法政策的にいろいろ議論があるとしても、やはりある程度努力目的というようなものを課するのは、この目的から逸脱した、そういうものではない。立法的にいっても、形式的にいっても、一部改正の形で——政策的にはいろいろ議論もあるかもしれませんが、法律の通常行われているテクニックといたしまして、必ずしも非常に例外的なとんでもないことをやった、そういうような御批判を受けるとか、おしかりを受けることはないのではないかと存ずるのであります。
  65. 山中吾郎

    山中(吾)委員 法の解釈は、やはりその法の精神から解釈する、住宅政策の本質というものは、解釈の重要な資料だと思います。そこで、住宅困窮者に住宅を支給するということが大体この法の根本精神ですから、その次に、低所得者に対しては安い家賃で貸すという第二の目的が入っている。それで、入居したあとに所得が多くなれば、低家賃という条件はなくしていくということは、この第一条の精神に反しないと私は思うのです。しかし、出ていけというやつは、これは住宅政策の本質からいって、第一条の精神に反するんじゃないですか。あなたはそう言ったんですから、説は曲げないでしょう。この法解釈の立場は、住宅政策の本質、公営住宅法基本精神、住宅難緩和という思想からきたそういう精神も含めて正しい。この法精神の中から解釈するならば、私は私の解釈が正しいと思っているのです。私は、きょうはこれで質問を終りますが、ここで議論するために、みんなの前で喜んでしているわけではありませんので、あとでまた聞きたいと思います。そういう解釈——十八世紀の古い自由思想よりも現代の民法の生活権、いわゆる二十世紀の基本権を持っているという新憲法の精神を、ここで重要資料にすべきだと私は思う。そういう点からいって、あなたの思想は、旧憲法的解釈にだんだん行ってしまう。生活権という基本的な思想を盛っている新憲法のもとに生まれてくる法律ですから、この法律基本思想は、新憲法の思想の中から解釈をしていかなければならぬ。学説としてはA学説あり、B学説、C学説あると思いますけれども、いずれの学説が新憲法のもとにおける法解釈の立場かといったら、私の方がずっと正しいだろうと思います。  以上で、私はきょうの質問は打ち切ります。
  66. 野木新一

    ○野木政府委員 だんだん御質問を承わっておりますと、結局第一条の解釈になると思います。第一条におきましては、法律の目的を見ますと、住宅に困窮する者に対して貸すという点だけか前面にうたわれておるように存ずるのでありますが、第一条をよく読んでみますと、要件としては、今の問題点の関連から考えますと、住宅に困窮する者という要件を備えていなければならないし、低額所得者であるという要件も備えていなければならぬ、こういう二つの要件がここではうたってあるわけでありまして、その意味では、低額所得者でなくなった者に対して賃貸するという場合に、多少の制限を加えておるということで、第一条の二つの要件のうちの一つが満たされないわけです。その意味で、第一条の趣旨にまっ正面から反する、そういうような御議論にはなっていかないということを申し上げておる次第であります。
  67. 二階堂進

    ○二階堂委員長代理 次会は、明後二十日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五分散会