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1959-03-17 第31回国会 衆議院 建設委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十七日(火曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 堀川 恭平君    理事 瀬戸山三男君 理事 二階堂 進君    理事 三鍋 義三君       荒舩清十郎君    井原 岸高君       川崎末五郎君    砂原  格君       田中 角榮君    小川 豊明君       島上善五郎君    東海林 稔君       塚本 三郎君    武藤 武雄君       山中 吾郎君  出席政府委員         法制局参事官         (第二部長)  野木 新一君         建設政務次官  徳安 實藏君         建 設 技 官         (住宅局長)  稗田  治君  委員外出席者         参  考  人         (東京大学教授         (社会科学研究         所))     有泉  亨君         参  考  人         (東京都営住宅         自治会連合組織         渉外部長)   岡田 将穂君         参  考  人         (横浜建築局         長)      内藤 亮一君         参  考  人         (東京建築局         長)      中井新一郎君         参  考  人         (久留米住宅協         議会議長)   林田 哲夫君         専  門  員 山口 乾治君     ————————————— 三月十三日  委員橋本正之君、兒玉末男君及び東海林稔君辞  任につき、その補欠として賀屋興宣君、本島百  合子君及び原彪君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員原彪君及び本島百合子君辞任につき、その  補欠として東海林稔君及び兒玉末男君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 三月十三日  建築基準法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二五号)(参議院送付)  土地区画整理法の一部を改正する法律案内閣  提出第一四六号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公営住宅法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二二号)      ————◇—————
  2. 堀川恭平

    堀川委員長 これより会議を開きます。  公営住宅法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。  本日は、お手元に配付してあります名簿の通り、五人の参考人及び建設省当局法制局第二部長の御出席を願っております。  まず本案に対する御意見参考人方々よりお伺いし、その後参考人並びに政府当局に質疑を行うことといたします。  ここで、一言ごあいさつ申し上げます。参考人方々には、御多忙中当委員会のため御出席をいただき、まことにありがとうございました。委員一同にかわりまして、厚くお礼を申し上げます。どうぞ腹蔵なく御意見の御開陳をお願いいたします。  なお参考のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、参考人が発言なさろうとする場合には、必ず委員長の許可を得ることになっております。また委員参考人に質疑することができるが、参考人委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、これより本案に対する御意見を順次お述べいただくことといたします。なお時間の都合がございますので、できるだけ一人五、六分の予定にてお願いいたしたいと存じます。有泉亨さん。
  3. 有泉亨

    有泉参考人 私は、きょうただ一人の当事者でない参考人だそうですが、片寄らない一般の世論を代表した御意見を申し上げられるかどうか、はなはだ心もとないのですが、短かい時間なので、技術的なことはおきまして、私の考えているところを御参考までに申し上げます。  大体住居というのは、今日の低賃金のところでは、なかなか個人、各人が自分で処理できない。従って、国なり地方公共団体が十分に予算を組んで、低額所得者のためにもっとたくさん公営住宅を供給してほしいということ、これは第一に申し上げておきたいのです。ただ住居というのは、このごろですと、いなか都会と違いましょうが、父祖伝来の家というふうな考え方ではなくて、必要に応じて回転していくものだというふうに考える。都会で借家に住んでいても、結婚したばかりでしたら小さい家を借りますし、子供がふえれば大きな家へ移っていく。そしてまた子供がみな独立して別居すれば、また小じんまりした家に移るという、そういう回転考えられていいのではないか。自分自分の家を持っているような人は自分で処理しましょうが、自分の所有でない家に住んでいる場合には、回転するのが普通だ。特に近ごろですと、アパート住まいということになりますから、都会では特にそうですが、アパートはそうむやみに改造して大きくするわけにいかないことを考え合せますと、初めは、独身寮というようなところへ学校を出て勤めると住むことになりましょうし、結婚すれば、小家族を収容するところへ入る。子供が大ぜいになれば、十五坪、二十坪のところへ越す。住居設備の方をそうむやみに大きくしたり小さくしたりできないという住居の性格の方からも、これはやっぱり動くということが一般に必要になってきている、こう思うのです。いなか事情が違いましょうが、住宅問題がしわ寄せしてくるのは都会なわけで、都会では、そういう移転ということをやはり一般に覚悟しなければならない、これが現実だと思うのです。  それから第二番目には、住宅問題は大体低額所得者にしわ寄せされてきている。金がたくさんある人は、なるほど土地は上って入手しにくいですが、何とか土地を手に入れて自分でも処理しましょうし、金融公庫から金を借りるというふうな手だてもつけましょうし、自分で何とかやれるわけですが、何ともやれない人たちのところへしわ寄せしてきている、こう思うのです。そこで、そういう人たちのために、まさに公営住宅とか——公営住宅が一番主要なものになると思いますが、公団住宅にせよ、協会住宅にせよ、あるいは金融公庫にせよ、程度が違いますが、一番低額所得者のために建てられたという目的がはっきりしているのは、公営住宅だと思うのです。そこで公営住宅は、住宅を供給するというほかに、もう一つ低額所得者住宅を供給するという意味合いが非常に強い。家賃にしても、ほかと比べて、公団住宅公庫住宅と比べても、住居費というものはずっと低くて済んでいるわけです。そこで、今の二つの点を組み合せてみますと、私は公営住宅というのは、やはり低額所得者のために回転すべきものではないか、だから、できれば今住んでいる人が、所得が上っていきましたら、なるべくよそを探して出ていくということ、その出ていくにしては、今非常に住宅政策が貧困だという攻撃もありましょうし、住宅が足りない、足りないといってなかなか解決しない。イギリスなどの例ですと、たしか戦後三百万戸くらい建ったうち、二百万戸くらいが何らかの形で国の世話で建ったもの、あと百万戸が自分で建てたものだと思いますが、日本は、実はそこまでいっていないように思います。そういう意味で、まだ住宅難があるので、動けといっても動けないという事情があると思いますが、しかし、やはり公営住宅収入少い人のためであって、あとにまだ収入が少くて入りたい人がたくさん待っているということを考えますと、収入がある程度上ったら、行く先を探してかわってもらいたい。公営住宅は、むろんアパートだけに限りませんで、木造や何かもありますし、ことに戦後、一時居住者に譲り渡すという政策がとられたものですから、現に住んでいる人たちがそれを当てにして改造したり、庭を作ったりということで、そこに落ちついてしまった、半ば自分のもののようなつもりになられた節が相当あると思うのです。そういうところに対しては、ここで急に動かすということは非常に気の毒でしょうが、プリンシプルとしては、やはり所得が上っていく、そして公営住宅を売り渡さないという方針——私は売り渡さない方がいいと思いますが、そういう方針が立ってきた以上は、原則としては、やはり回転をしていくというのがいいのじゃないか。そういう意味で、今度のこの改正案は、私は賛成なんです。  そのほかに、今度の法案は、古く建てた安い家賃を少し引き上げて、入っている人の間の不公平をなくすということも、大きな柱として一つ入っているようですが、その点も、私はあまり急激な変化でないということを条件に、やはりいつかやらなくてはならないことであるし、この際やっていいのじゃないかと思います。戦後という時期はもう済んだという説があるのですが、戦後しばらくは、大体爆弾が当った家、焼夷弾で焼けた家は運が悪かったので、焼け残った人と焼けた人というふうな、くじに当ったり、くじに当らなかったりというような運不運というものは、しばらくはそのまま認められてきたと思うのですけれども、次第にわれわれの生活が落ちついてくると、たまたまたまじに当った。たとえば一年、二年違いでくじに当った。そうすると、ほとんど近接したところに住んでいる人が、ひどい場合には三倍にもなる家賃を一方では払うし、一方では安い家賃で住んでいるということは、やはり公平ではない。特に昭和二十五、六年までの家賃は非常に低いですから、その後の収入にスケールさせてみると、ここである程度修正を施しても、そんなにひどい負担にならないのではないか。そういう修正は、全体の住宅政策の方をないがしろにして、部分的な弥縫策だという非難もあるかと思いますが、しかし与えられた条件の中で、不公平がもし非常にひどく起きているものならば、部分的にでも修正するということは、していいのではないか。そうしてだんだん平常な状態に持ち込むということが必要だと思うのです。  そこで、少し技術的なこともついでに申し上げますと、出た法案を数日前にいただいて読んでみまして、これは、あとで御質問があればお答えもいたしますが、二十一条の二に、三年以上引き続いて住宅に住んでいる者で、その人の収入一定基準を超過している、入居資格のときの制限を越えている、こういう者は明け渡せ、こうありますが、これは全文を読んでみますと、精神規定にすぎないようになっております。というのは、管理者明け渡しを請求できる理由の中に、この二十一条の二については何も触れていない。たしか二十二条が、明け渡しを請求できる理由になっていたと思いますが、そこのところが、この二十一条の二に対応して改正されておりませんから、従って精神規定にすぎなくなっている。家賃割増し立ちきのいかんにかかわらず——立ちのいてしまえば問題はないのですが、立ちのかなければ割増しの方がされ、家賃が四割ないし八割ふえる。しかし明け渡しの方は、精神規定にすぎないということになりますと、一般的に受ける感じは、家賃を高く出せば公営住宅に住んでおれる、今までの二種の場合に四割増し、一種の場合に八割増し以下で定められる割増しを出せば、いつまででもおれる。法律上は、明け渡してくれという理由になっている二十二条の方へ入れておりませんから、どうもそうなるのです。これは、初めに言いました公営住宅というものを回転していきたいという趣旨とは、一歩後退しているように思うのです。そこで、私案を申し上げますと、これは一定の時期に——この案の中には、あまりはっきりしていないのですが、ちょうど固定資産税は一月一日の名義で調べますが、たとえば七月末とか八月末とか、どこかの一定の時期に毎年収入調査をする。そのとき一定のものを越えていた場合には、移転をするように努力を始めて、たとえば一年とか、非常に引っ越しが困難であれば二年とか、そういう余裕を置いてはどうか。余裕を置くかわりには、出ていくことに努力をする。どうしても出ていくことに努力をしない人には、出ていってくれということが言える。そういうふうにした方が明確ではないか。今のままですと、たとえば収入三万二千円の人でも資格があるのですから、入居できますが、翌年はもう三万三千円になる。そうすると、すぐ出ていけという仕組みにはなっておりません。三年間はおれるという仕組みにはなっておりますけれども、三年目のところですぐ出なくちゃならない。収入が上ると、たちまち義務づけがある。しかし、その義務づけは精神規定であって、何か圧迫は受けるという状況が起きるわけです。そういう義務づけが生ずる期間に少しゆとりを置いて、そのゆとりのある時期を経過したら、今度は出ていかなければならぬというふうにされた方が明確ではないかというふうに思います。  なお、先ほどちょっと触れましたが、古くから入ったアパートでない戸建ちの家で、譲渡当てにした——ある時期で譲渡がとまっているわけですが、きわどいところでとまってしまったような人で、家の改良もしているし修理もきれいにしているというふうな方には、できれば何か特例などを考えられてはいかがか。アパートの場合と回転しなければならぬという事情が少し違うので、そういうふうに例外を認めたらどうかと考えるわけです。どうも時間が少し超過いたしましたが、この程度で……。
  4. 堀川恭平

    堀川委員長 御苦労さまです。  次は岡田将穂さん。
  5. 岡田将穂

    岡田参考人 私岡田将穂でございます。都営住宅に入居しております者の代表でございまして、現在東京都営住宅自治会連合組織渉外部長をいたしております。  本案につきまして、私どもあとう限りの検討もいたしたわけでございますが、その上に立ちまして反対意見を申し上げたいと存じます。  理由といたしまして、最初に概要だけ申し上げたいと思います。法案の各条項につきましては、後ほど申し上げることにいたしたいと存じますが、まず要点といたしまして、家賃の不均衡是正による値上げの点でございますが、この点につきましては、不均衡是正に名をかりまして値上げをされる、こういうような受け取り方をわれわれの方はいたします。もしそうであるならば、これは一般家賃の上昇を誘発するおそれもあるのではないか、またひいては諸物価の高騰をも刺激することになるのではないか、こういうふうに考えるわけです。御存じの通り現行法におきましても、維持、管理等物価の変動による変更のことはうたってあるわけでございます。  それから次に、一番問題になります収入超過者に対する措置でございますが、収入超過者は、現住住宅を明け渡すよう努めなければならない、こういうような考え方は、いわゆる居住権を無視するところの思想に基いているものではないかというふうに解するわけでございます。われわれは国民の一人といたしまして、与えられている居住権を侵されるのではないか、こういうような見地立ちまして、絶対反対の意思を表明するものでございます。  それから割増金徴収の件でございます。すなわち超過収入者から割増し家賃をとるということにつきましては、住宅政策は、住宅建設とともに地域的集団社会の形成を条件づけている現状につきまして、わずかばかりの超過収入、これも例外に属する場合もあるかと存じますが、こういうようなわずかな超過収入理由にいたしまして、割増し家賃徴収によって、せっかく生活安定の緒についた国民をまた不安の中に投げ入れるというようなことになろうと思います。しかも個人生活の格づけを公定することは、集団生活の平和を乱しますし、また共同地域社会を害することにもなり、住宅政策基本目的であるところの国民生活の安定と社会福祉の増進を阻害することになろう、このように考えるわけでございます。よって公営住宅法制定見地立ちまして、また住宅政策現状がまだその目的の半ばにも達していない現在の過程にありまして、政策責任現住者、すなわち住んでいる現住者低額所得者との相互扶助的責任に転嫁しまして、あるいはまだ入っておらない未入居者を、現住者が締め出しているかのような考え方は納得ができないわけでございます。住宅政策は、あくまでも自力建設の力のない庶民のための政策内容を充実されまして、単なる建築政策にとどまらないで、本来の社会政策的な内容を助長されるよう、私たち現住者の立場ばかりではなくて、いわゆる庶民大衆といたしまして申し上げたいと思います。こういうような点について、今回の法案は、文字の上の改正ももちろん多々ございますが、しかしこの法案を貫くところのものの考え方というものは、たとえば例になります二十一条の二の収入超過者に対する措置等、こういうようなところであるとか、あるいは先ほど申し上げましたところの、この中に入りますけれども割増金の問題でございますとか、こういうような、居住している者にとってはまことにつらいとでも申しますか、ひどいとでも申しますか、こういうようなことはかなり明確にうたっておりますが、その他の条項につきましては、現行法そのままでも実施できるのではないかという点が多々あるわけでございます。この点について、私どもは十年以上の居住生活をいたしておる者も多数あるわけでございます。そうした中におきまして、私どもはつぶさに公営住宅住居についての経験を持っておるわけでございます。決して私たちは、立法に携わったり何かするものではございませんけれども、住んでおるということについては経験者であるということは、明確に申し上げられるわけでございます。こういうような観点からいたしまして、住まっておる者としては、ああやってもらいたい、こうやってもらいたいという点はございます。家は、建てただけで住めるというものではございません。アパートにいたしましても、それから木造にいたしましてもそうでございますが、住めるようにいろいろ工夫をいたします。しかし自力でできる者もありますし、それからできない者もある。公営住宅法にうたってあるところの、やらなければならないような事柄も、現在実施されていないものがあるようにわれわれは考えます。そうしたならば、今回のこの法案を作る趣旨は一体どこにあったのか、なぜ公営住宅法の一部改正に関する法律案を出さなければならないのだろう、現在あるところの公営住宅法を十分に活用されて、しかしまだそれではいけない、こういうようなことならば、私どももあるいは納得するかもしれないのでございますけれども、居住している者から見ますと、あるいは言葉が妥当でないかもしれませんけれども、ずいぶんやりっぱなしのような感じを受けるわけでございます。こういうような点と、それからもう一つは、現在入っている者は、家を愛しております。自分が住まっている家でございますからして、これを何とか大事に使っていこう、また現行法にもありますように、木造の場合等については、将来これを払い下げをしてもらえるであろう、こういう住民感情を持っているわけでございます。だから、よけいに大事にするわけであります。こういうふうにして十年も住んできている多数の居住者は、寝耳に水のように、お前たち収入一定基準額を越えれば出て行かなければならない。なるほどここに書いてありますところの法案文字によりますと、そういう受け取り方も、あるいはこの法案によりますと、文字通りに解した場合には強行規定ではない、こういうふうにも受け取れましょう。しかし国会において法律を作った場合におきまして、それでは各地方自治団体においてこれを解釈されまして実行に移す場合に、いろいろな解釈のしようも出てくるのではあるまいか、こういうようなことも考えた場合に、住まっている者は、非常な不安に現在陥れられているわけでございます。  その他申し上げたいこともたくさんございますが、要点だけ申し上げた次第でございまして、言葉足らない点多々あろうと存じますので、皆様方からいろいろ御質問いただけるならば、幸いと考えているものでございます。
  6. 堀川恭平

  7. 内藤亮一

    内藤参考人 私は、横浜建築局長内藤亮一でございます。今回の公営住宅法の一部改正法律案につきましての私の考えを、ただいま委員長さんから冒頭に、腹蔵なくということでありましたが、腹蔵なく申し上げたいと思います。  公営住宅法の第一条に、公営住宅とは、低額所得者のための住宅である、こういうことがはっきりうたってあるのでございます。しからば、低額所得者とはどういう方が低額所得者であるかということでございますが、これは、いろいろ見方が違うと思います。法律にはっきりしてございません。ただ低額所得者であります。そこで私の考えを申しますと、現在いろいろ国会で御審議いただいていると思いますが、税法上標準世帯年収三十二万円以下は所得税を取らない、免税するというふうに——私の記憶が間違いなければ、新聞なんかで見ているわけでございますから、間違いがあるかもしれませんが、そういうふうに承わっております。一方、私も新聞で見ただけでございますが、社会党の政策としては年収三十六万円、標準世帯月収平均三万円までは所得税は取らないのだというような政策がうたわれておるようであります。もちろん四万円、五万円の収入の方でも、自分低額所得者だという方もありましょう。しかしながら私の考えといたしましては、現在においては年収三十二万円から三十六万円くらいが低額所得者である、こういうふうに解釈しておるのでございます。そこで、しからば公営住宅の現在入居者を調べてみますと、もちろん非常にお気の毒な方もあり、家賃を免除しておるものもございます。一方、横浜市は約四万八千の住宅を管理しておりますが、その一割のサンプル調査を最近いたしたのでございますが、それによりますと、第二種公営住宅、これは、三分の二国庫補助がございまして、きわめて低額の方に入っていただくための住宅でございます。それが二万五千円以上の収入がある、つまり二万五千円以上の収入がある方は、第一種住宅にほんとうは入っていただきたい。そういう方が、百四十七戸のうち三十八戸でございますから、二五%であります。特に四万四千円以上の方が五世帯ある。私は、四万四千円以上は、現在の段階においては低額所得者とはいえない。高額所得者ではございませんが、まあ中額所得者考えております。それから第一種住宅三百四十一戸のうち、三万二千円以上の収入の方が八十五戸、二四%であります。それから四万円以上の方が一割、四万四千円以上の方が二十三戸、そこで大体において、少くとも一割ないし二割の居住者は、私の考えによれば、低額所得者をどこまでで切るか、むずかしいところでございますが、低額所得者でない方が入っておられる。こういうことを考えますと、現在の公営住宅のやり方は、法律第一条の目的に違反しておるとまでは申しませんけれども趣旨に合ってない、そういうような住宅政策をやっておるわけでございます。これは、皆様方御承知のことと思いますけれども欧米低額所得者住宅政策は、家賃補助でございます。大体において私の知ったところは、イギリス、アメリカ、あるいはイタリア、西独、大体家賃補助のように聞いております。そこで、中には、今までは三万円の収入があっても、失業したために、新しく職を得たところは二万円しか収入がない——収入の下る方もあり、上り方の著しい方もあり、これらは欧米では、家賃補助の形式でございますから、収入が上れば家賃補助を打ち切る、あるいは半分に減らす、逆に収入が下れば、家賃補助をふやしていく、もっと合理主義をもっていけば、そういうような政策をとるのがいいんじゃないかと思います。わが国の公営住宅法は、そういう方策を最初からとっておりません。今回の改正にはそういう根本に触れられませんが、今後はだんだんそういう方面にいくべきじゃないかと、私自身は思うわけでございます。そこで、生活保護あるいは母子寮——母子寮なんかも一つ住宅政策でございますが、母子家庭も、これはいいことかどうかわかりませんけれども子供が十八才以上になると、一定期間を置いて出なければならない。これは、私は自分で所管いたしておりませんので、半年たって出るのかどうか知りません。またわれわれが納める税金でも、前年度の収入によって翌年の税金が変るわけでございます。収入の少かった年は税金も少い。収入が多くなれば税金もふえる。また生活保護も、もし本人の何かによって就職をして、収入がある程度確保できたという場合は、生活保護を打ち切られる、こういうのが社会福祉の原則でございます。これは、公平の見地からいえば、そういうことになるのではないかと思うわけでございます。しかしながら住宅は 一ぺん居住された方は簡単には出られない、これは当然でございます。中には引っ越したいけれども子供の学校の年度途中で変りたくない。三月を終って、四月から新しい学校に入りたいという場合もございましょう。そこで、若干の猶予期間は当然でございますが、先ほど有泉先生もおっしゃいましたけれども収入が上って住宅公団に申し込むことができる、そういう方は、できるだけ住宅公団の方に——住宅公団は、三万二千円以上の方は申し込めるわけでございますから、なるべく公団住宅に入っていただく。しかし、法律で強制はしないというのが、現在御審議をいただいておる公営住宅法でございます。そこで、できるだけ努めていただく。問題は、そのくらい収入が上ったら家賃をふやす、割増しをいただくということは居住者にとっては、これはもう家賃は安い方がよいわけでございますが、欧米のやっておる家賃補助の性質からいえば、これはある程度妥当な線で、家賃の増額もやむを得ないのではないか、こう思っておるわけでございます。一方、私どものところには非常に低額者で住宅に困っておられる方があるわけでございます。特に全日自労の方が暮れに来られまして、われわれは九千円の収入がないのだ、七、八千円しかない、ところが市では、第二種住宅を九千円以上、一万六千円以下という入居条件にしたのはけしからぬ、五、六千円の者も入れるべきだという御意見があるわけでございます。これは、ごもっともでございます。そういう方は、家賃をむしろ減額すべきである。そういう家賃建設省の基準によってはじくと、第二種住宅で千三百円の家賃になるわけでございますが、これらは、八百円くらいの家賃に減額すべきである。最近またある方が、これはどこかの工員をやっておられる方でありますが、事故によって一家の支柱である主人がなくなって、あとは未亡人と主人の姉と子供二人、これは民生委員の方から、しばらく職ができるまで家賃を減免してくれ、こういう申し出がございまして、私どもは、一月以内に上司にも決裁を得まして、生活保護法によって補助費をいただけるよう手続中である。それまでの千三百円の家賃を、すぐさま免除しております。こういうふうに、困った方には家賃を下げていく。また幸いにして収入の上った方は、もちろん収入が上っても、この程度ではA今まで苦しかったのがやっと楽になった程度だ、まだまだ十分でない、こういう御意見もありますから、千円上ったから翌月から上げるということは非常識でありますけれども、三万円の収入が、かりに三万三千円になったといった場合には、翌月からというのは極端でございますが、毎年一度所得税の調査において、市民税の調査なりで、大体その方の収入はきまるわけでございます。それによって翌年から家賃を余分にいただく、あるいは著しく高額になった方で、四万円、五万円という方は、これは住宅公団の方に入っていただいて、より困った方——横浜市でも、現在市営住宅に入っていただいておる方が、先ほど申しましたように四千八百世帯、一方毎回六、七千の方が申し込んでおられて、それらは五十人あるいは三十人に一人しかくじで当らない。五へんも六ぺんも待っておる方があるわけであります。そういうより低額の方になるべくかわっていただくというのが趣旨でございますから、かねがね地方公共団体は、そういうことを希望しておったわけであります。もっとも住宅公団は高過ぎる、公営住宅との差があまりにもきつ過ぎる、こういう御意見はあると思います。公営住宅は、第一種の鉄筋コンクリートでも三千円足らず。ところが住宅公団になりますと、五千円のものは非常に少くなりまして、先ほど申しましたように、六千円ではあまりにも差がきつ過ぎるわけでございます。ですから、これは直接公営住宅法の一部改正とは関係がありませんが、私をもって言わしむれば、住宅公団も、御承知のように無利子の政府資金、それから民間資金、両方でやっておるわけであります。だからやはり四千円、五千円という、無利子の金でいわゆる中額所得者——低額所得者でないけれども、まあ四万円、五万円、あるいは三万五千円から四万五千円くらいの方の住宅、もう少し安く、一方住宅公団は、勤労者であれば月収の制限はないわけであります。中には六、七万円の相当高額所得者と思われる方も、住宅公団に申し込んでおられるわけでございます。そういう方は、民間資金による住宅にかえていただいて、家賃七千円でも八千円でもよろしい、そういうふうに二段がまえをすれば、公営住宅から住宅公団の住宅への優先入居が、スムーズにいくのではないか、こういうふうに思っておるわけであります。  いずれにいたしましても、昨年全国の国勢調査の付属調査として、住宅調査が行われました。年の六、七月ごろには、その調査の結果もできるように聞いております。そこで、それらの結果を待ちまして、やはり低額所得者には公営住宅中額所得者には公団住宅というように、日本の住宅政策一つの再編成をしなければならぬ。今回の改正は、そういう根本には私は触れてないと思っております。どちらかといえば、非常に低姿勢な法案である。私は、本来いえば、もっとはっきりやってもいいのじゃないかと思うわけでございますけれども、先ほど都営住宅入居者の方からお話がありましたように、住宅の問題は、ちょっと税金を納めて、前年度収入がふえたから本年度はふやすといったように、簡単にはいかない問題もございます。そこで、政府案は少し低姿勢であり、なまぬるいように思いますけれども、実際問題としては、この程度で今回は改正していただいてやっていくのがいいのじゃないかと思っているわけでございます。  くれぐれも申し上げますが、われわれ地方公共団体の者は、低額所得者の方の住宅は、これは一生懸命に建てたい。ただ、住宅公団へも申し込める方の住宅、つまり中額所得者住宅住宅公団にやっていただく。その片棒を地方公共団体がかつぐつもりはないのであります。だから、低額所得者の方のための住宅である、中額所得者住宅公団の住宅になるべく入っていただく。もっとも根本的には、これはちょっと余談になりますけれども新聞で見ますと、一橋大学の中山先生、中労委の会長でございますけれども国民、特に低額所得者の賃金が二倍になるような政策、根本は、勤労者の賃金が上ればだんだん住宅難は解決するということですが、しかしそんな、今の収入がかりに二倍になりましても、やはり世の中には恵まれない世帯があるわけでございます。そういう恵まれない世帯が今後の公営住宅の問題である、それらの解決に当るべきだ、これは将来ともそういうようなふうに向っていくべきであろうと思っているわけでございます。  いろいろ申し上げましたが、結論は、今回の改正案は、われわれがふだんから要望いたしておりましたところが若干織り込んである。まだ十分ではございませんが、しかしわれわれの立場からだけで法案は制定さるべきものではないと思います。まあこの程度のものが法律として制定されるということは、結論において横浜市の建築局では希望しておるわけでございます。
  8. 堀川恭平

  9. 中井新一郎

    ○中井参考人 東京都の建築局長の中井でございます。  事業主体側の立場といたしましては、ただいま横浜建築局長からも申されたのでございますが、われわれも大要において同感でございます。それで、一つ変った面から申し上げたいと存ずるのでございますが、東京都におきまする住宅現状を申しますれば、最近数年間におきましては、どうやらまあ現在町中で建っております建物とさほどの遜色のないものが建っておると存じております。戦争直後建ちましたものは、建物そのものも貧弱でございましたが、屋外の施設等につきまして、あるいは給水施設あるいは排水施設が非常に貧弱でございました。これが、年を経るたびにそういうものの施設自身も老廃いたしますし、また外部に建って参りまする建物がだんだん質のいいものが建って参るわけでございます。さようのことから、居住者皆様方からは、これはもう私どもが当然いたすべきはずの修繕、それ以上に修繕をしてほしいとか、あるいはただいま申し上げましたような給排水施設の改良、こういうものの御要望が非常に多かったのでございます。現在もまだ多いのでございますが、さようなことに対処いたしまするために、都といたしましては非常に多大の、私どもは営繕費と申しますが、改良費、修善費、かようなものを含めましたものを毎年計上いたしましては、修繕改良に努めて参ったわけでございます。そういう経過を振り返ってみますれば、家賃として、家賃の中に修繕費としてちょうだいいたしておりましたもの以上に非常に多くの修繕費を使っておるわけでございます。また共同施設等につきましても、かなりの施設をいたして参っておるのでございます。このような結果が積り積って参りまして、私どもといたしましては、将来に対する住宅の修繕費に対する積み立てが実はほとんど使い果しておると申してもよい情勢であります。そのために、早晩私どもといたしましては、それぞれの住宅家賃値上げをしていただかなければならない状態に立ち至っておったわけでございます。また一方では、都内におきまして都営住宅に入居を希望されておられまする方々は、概算いたしまして十七、八万に上ると存じておるのでございます。御承知のように、私ども東京じゅうで、住宅不足は三十八万戸と踏んでおるのでございますが、そのうちで実際に都営住宅に入りたい希望を持っておられまする方が、ただいま申し上げました十七、八万と踏んでおるわけでございます。これは、私どもは第一種住宅につきましては登録制をいたしてございます。第二種につきましては、まだ登録制を実施するには至っておりませんが、大体一回の募集に三、四万の応募者があるので、かような数を踏んでおるのでございますが、これに対しまして、私どもは最近年間に七千戸の住宅を建てて参っておりますが、これを年に五回ばかり公募をいたしまして、入居をしていただいておりますが、そのつど平均いたしまして、一戸に四十人あるいは五十人の申し込みがあって、そのうちのただ一人の方に入居していただいておる、かような情勢でございます。これは、大体私どもで出しまする家賃の支払い能力ありと御自身でお考えになって申し込まれる方でございますが、まだこのほかに、三十八万戸の中の七、八万戸の、非常に悪い住宅条件でおられる方々の中には、経済的に家賃を払えないために悩んでいらっしゃる、申し込みもできない方がおられるわけでございます。かような方々のためには、東京都はここ数年来、最初は三十年でございましたか、五百戸だけを都の費用で、国庫の補助を受けることなく、千円前後のものを建てましてございますが、三十一年以降は、国庫の補助をいただきまする都営住宅の中で、特別に普通の採算を割りまして、千円から、アパートにおきましては千六百円くらいまでの家賃のものを、三十三年度は千戸、三十四年度では千二百戸を計画いたしてございますが、さような特別に安いものを出しまして、普通の家賃の負担にたえない方々の便宜をはかっておるのでございます。かようなことも、その数を非常に多く要求をされておりながら、これを都の単なる負担で将来続けて参りますことにつきましては、同様非常に大きな財政的な圧迫を感じておるのでございます。かような情勢でございますので、修繕費に必要な家賃をちょうだいするため、あるいは改良の結果家賃値上げをいたしますため、今般国がその限度を示されまして、これらの事務に間違いのないように示されるということは非常にけっこうなことだと存じますし、ただいまも申し上げましたように、低収入方々のために公営住宅を開放して参ると申しますか、言葉はあまりうまくはございませんが、そのようなために、収入の多い、多少とも余裕のある方には他の住宅に移っていただく、さようなことのない場合には、割増金をちょうだいする。それを財源にいたしまして、家賃の低減をはかっていく、こういうようなことは都の財政の現状から見まして、まことにけっこうなことだと存ずる次第でございます。もちろん居住者の方の中には、家賃値上げになる方もあるのでございますから、まことにお気の毒とは存じますが、これは、現在入居者の中でも、私ども想像いたしますところでは、さほど大きな数ではございませんし、また実際に家賃の負担にたえない方には、減免の道も開かれるのでございますから、こういうことのために公営住宅の管理が合理化されまして、その姿勢を正すことによりまして、公営住宅が将来ますます数多く建って参りまする原動力になる、かよう信じまして、今般の法律改正は、まことにけっこうなものであろうと存ずる次第でございます。  ただ、私どものお願いといたしましては家賃の負担にたえない方には減免を現にいたしてございますし、今後もやって参るわけでございますが、他の住宅に移られる方、これは都の現状から見て参りまして、一般の民間住宅にこれを探すというのはなかなかむずかしいことでございますので、あるいは国の施策によります公団の住宅へなり、あるいは金融公庫のごやっかいになってございまする住宅協会等の住宅に優先入居のできるようなお取り計らいをぜひお願い申し上げたいと存ずる次第でございます。
  10. 堀川恭平

    堀川委員長 次は林田哲夫君。
  11. 林田哲夫

    ○林田参考人 北多摩地区公営住宅連絡協議会の林田でございます。  本日は、公営住宅入居者の立場から、今回提出されました公営住宅法改正案に対しまして反対をする趣旨を申し述べさしていただきたいと存じます。  私ども居住者の立場から申し上げたいことは、現在の公営住宅に住んでおる人たちはどういうふうな環境に置かれておるかということから申し上げていきたいと思います。身近な例でございますけれども、私が現在の公営住宅に入りましたのは、昭和二十八年でございますが、入って一月もしないうちに、下水の水があふれ出しました。それから入った翌日気がついたことですが、私の家の四畳半の押し入れの天井がない、二月か三月の間に雨戸が締らない、あるいは台所に電灯の設備がない、こういう苦情が、わずか二十六軒の住宅の中でひんぴんとして起って参ったのであります。そして都庁の方へ修繕の陳情に参りましたけれども、ナシのつぶてで、一向音さたがないのであります。公営住宅法の第十五条には、少くとも住宅内部の問題については遅滞なく修理をしなければならないという規定があるはずでございますけれども、私ども住宅の場合には、この公営住宅法十五条の義務規定を少くとも二年半はほっておかれたのであります。それからあふれ出しました下水の問題につきましては、昭和三十四年の現在に至るまでなお解決を見ておりません。この点につきましては、ここにおられます中井建築局長にもしばしばお願いをいたしまして、最近どうやら総合的な排水計画をやっていただくということにはなりましたけれども、本日現在では、まだ解決がついていないのでございます。私どもの居住している地区の例をとりましても、そういうことがございます。まだまだ近所にはひどい例がありまして、昭和二十四年に入居して以来、一度も修理を受けたことのないという住宅もあるのでございます。これは、田無第一という住宅でございますけれども、天井には直径一尺ぐらいの穴があいておる。そして住宅全体は、もうぼろぼろになりまして、まことにひどい状態である。こういうふうなことが、この間も私どもの会の席上で明らかにされましたが、それに類するような事例は、まだまだたくさんあるのでございます。居住者といたしましては、一日も早くそういった問題を解決してもらいたいというふうに考えているのでございますけれども、こういった点につきましては、全般的にまだ解決を見ていないようでございます。そのような状態の中におかれまして、今回公営住宅法改正という形で一律に値上げをするという案が持ち出されたのでございます。居住者としては寝耳に水でありまして、まことにびっくりした次第でございます。いろいろ新聞その他に発表されます資料によって調べましたところ、昔建てた住宅は値段が安いから、そして最近建てた住宅は値段が高いから、その不均衡をならすのであるという理由で、一律に値上げをはかろうということだと聞いております。そういたしますと、先ほどの田無あたりの例にいたしましても、昭和二十四年に入ってから一回の修理も受けたことがない。しかし家はいたみ雨は漏る、こういうことだと、ほうっておくわけにいかないので、居住者みずから金を出して修理をいたしております。それで、相当な修理費がかかっているわけであります。これは、東京都だけの問題ではなくて、全国的にこういうふうな問題はたくさんあるだろうと思います。今まで居住者は、自分の費用を出して修繕費につぎ込んできております。しかも法律において、修理の義務は明らかに規定されておるのです。非常な矛盾ではないかと私考えるのであります。そういう矛盾の上に、今回の値上げというものが一方的に持ってこられましたことに対しまして、居住者といたしまして非常にふんまんを感ずる次第でございます。しかも建設省の提案されました公営住宅法の提案理由の説明というものによりますと、居住者は必ずしも貧乏なものばかりではない、先ほど横浜建築局長のお話もございました。何か若干のパーセンテージをあげて説明しておられたようでございます。しかしながら、これは横浜四千八百世帯といわれますところの対象においてさようなことが申されたのでございますけれども、全国に公営住宅というのは、約五十六万戸あるように聞いております。その五十六万戸に対して、建設省はどのような手段を尽して調査されたか。決して貧乏な人ばかりではないと言われるが、この提案理由によりますと、他方においては、入居者収入が増加し、すでに低額所得者とはいえないものが、依然として低廉な家賃公営住宅に入居している事態がそこに見受けられる、こういうふうに申されておるのでございますけれども、この相当というのは、一体どういうふうな資料によってお調べになったのかということを私どもはお伺いしたいと思う。少くとも私どもは、こういうような調査というものは一回も受けたことはございません。これは関係者のお話を聞きますと、都営住宅の中には、必ずしも貧乏人ばかりではない、中には自家用車を乗り回しているのもあるじゃないか、こういうことを申されますけれども、それは、全国に五十六万戸世帯の中には、自家用車の一台くらいは持っているのもおるかもしれない。自家用車といっても、ピンからキリまでございまして、二万円から三万円で買える自家用車もあるのです。そういうものがかりにあったといたしましても、表面に現われたごく一部の例をとらえて、居住者はすでに裕福である、こういうふうな結論を出されることは、ことに心外であるというふうに考える次第であります。従いまして、私たちは、この相当という根拠を一つ教えていただきたい、かように考えております。  次に、昔建った住宅と今の住宅との間に相当な格差がある、こういうことでございますけれども、この格差が存在することは、私たちも認めます。しかしながら、これまた新聞あたりに出ましたように、昭和二十二年の家賃の平均は三百三十円、昭和三十二年の家賃の平均は約三千円である。これだけの格差が実際あるかどうかについては、私は疑問を持っております。というのは、昭和二十二年度、それから二十三年度に建設されました住宅は、払い下げの対象になっておりまして、当然すでにもう払い下げということが確定しておらねばならない部分である、かように考えております。これは、また建設省あるいは都庁の方々に言わせますれば、決してそういうことはないとおっしゃるかもしれませんけれども、事実昭和二十八年ごろまでに公営住宅の申し込みをしたときは、係員の人から、これは五年たったら払い下げになるんだということは、全部聞かされておるのです。当初の方針は少くともそうであったのです。五年たったらどんどん払い下げてやって、その払い下げた金で新しく住宅を建てる、こういうことになっておったことは、私たちが一番よく知っているのです。申し込みに行ったときに、当って運がよかったな、五年たったら自分のものになりますよ。こういうことは、みんな言われているわけです。だから、工合の悪いところが出てきたときには、それを楽しみにして、自分で金を出して修繕をやっておる、こういうことであります。ところが、昭和二十四年に建設省の通達が出まして、払い下げは全部ストップだということになりまして、二十四、五年くらいから、払い下げがストップされておりますけれども、しかし二十二、三年程度に建てられた住宅は、大体払い下げの対象になっております。実際そういう点から見ますと、格差というのは、二十四年度くらいの住宅からの家賃というものが問題にされなければならないと思うのでございますが、昭和二十四年に建築されました家賃の平均は、三百三十円というような安いものではなくて、二十二年の平均は千三円にまで上っております。従いまして若干の格差があるといたしましても、建設省が言われるような大きな差はないとわれわれとしては言えるのではないかと思っております。しかも、そういう形で、二十九年度に見合うように一律に値上げをするという形で持って参りますと、この公営住宅に入っておる人たちは、非常に生活程度が低い人が多いわけでございます。そして建設された場所が非常に郊外で、不便なところに建てられておる。郊外電車、私鉄をおりて、それからバスに乗って、バスをおりて今度は二十分くらい歩く、畑のまん中に建った住宅というのがあるわけです。北多摩にもそういうところが何カ所かございます。そういうところから都内に通勤しておる人たちは、ただでさえ収入が少い中で、生計費、食費なんかがたくさんかかります。そこに加えて交通費がかさむ、交通費がかさむ上に、住宅がぼろであるから修繕費も自分で出さなければならぬ。言っていってもなかなかやってくれない。雨が降ったら、ほったらかすわけに行きませんから、そういう金も出さざるを得ない。そこに持っていって、昔建てた住宅だから、一律に値上げするということになりますと、居住者の立場としては立つ瀬がない、こういうように考えざるを得ないのであります。しかも提案の理由によりますと、ちょっと感じたところでは、公営住宅に入っておる人たちは、一般国民に比べて非常に優遇されておる、その中で一部金持ちが住宅にあぐらをかいておって、ほんとうに困っておる者が入れない、こういう理由でありますが、これは、一般国民から見まして、不当に国民感情を刺激する表現だと思う。正しい調査に基いて正確な資料が出て、それでこういうふうな形容をされるならばまだやむを得ないのでございますけれども、われわれとしては、そういうふうな調査を受けた覚えもございませんし、また建設省としても、そこまでこまかくお調べに行ったことはないのじゃないかと思います。それで、こういうふうなことを言われますとすれば、私どもとしては、ほんとうに迷惑なことでございますので、少くともこの実態調査というものだけは至急にやっていただきたいと思う。  それからまたこの法律改正するまでの経過といたしまして、建設省は、住宅対策審議会あたりの御意見を非常に重く見ておられますけれども、われわれ居住者意見というものは、全然入っておらないような感じがするのであります。いやしくも公営住宅の問題について改正を施すということであるならば、公営住宅居住者意見というものを聞いて、それをもとにしてやっていただくということが一番大切ではないかと思うのでございますけれども、この点につきまして、建設省の方々としては、私ども意見を十分くんでいただいたということは言えないと思います。非常に残念なことだと思っております。大体以上が提案理由に対する問題点でございます。  次に、改正案の内部の個々の問題について若干意見を申し上げてみたいと思います。  今度の改正案によりますと、払い下げというものは、よほど特殊な事情がない限りやらないのだ、こういうことになるそうでございますけれども、これは居住者として非常に困るのでございます。修繕はやらない、払い下げは特殊の事情のあるものしかやらないということになりますと、一体今まで修理費にかけた金はどこに行くのか、そういう問題が出て参ります。われわれといたしましては、払い下げの問題は、一つ家を国民に与える、こういう趣旨で、そうして政府が損をしない範囲で大いにやっていっていただきたい、かように思うわけであります。払い下げはしない、修繕はしないということでは、入っておる者はほんとうにたまらないのであります。それから割増金の問題でございますけれども、この増割金というのは、はなはだ筋の通らない性質の金でございます。公営住宅家賃のきめ方というのは、公営住宅法の中にもありますように、総建築費の中から地代を除きました、そういう純建築費、それに二十年分の金利というものを加え、管理事務費を加え、修繕料を加えて、それを耐用年数で割ったものの月割り、これが家賃というふうになっております。従来の公営住宅法におきましては、少くとも権利金に類するものは一切取ってはいけない、こういう規定があったはずであります。ところが、今度わけのわからない割増金に類する性質のものが出てきたことは、私どもにとっては全く納得がいかないのであります。先ほどから東京都の中井建築局長のお話を聞いております。あるいは横浜内藤さんのお話も聞きましたが、家賃値上げというものは、修繕費を埋めるためにやむを得ないのじゃないか、こういうお考えのように見受けたのでございますけれども、修繕費というものは、公営住宅家賃をきめるときに当然織り込んでおるものであります。しかもこの公営住宅家賃の料率といいますのは、公営住宅法が制定当時におきましては、百分の一・七二五、これは木造住宅の場合でございますけれども、百分の一・七二五という料率を織り込んでおります。ところが現在この料率は、木造住宅の場合、百分の二・二というふうに上げられております。いつ上げられたかは存じませんけれども、これは、最近の物価値上げというものにかんがみてやむを得ないのではないかと思いますけれども、とにかくそういうふうな形で織り込んでおるわけです。従って、修理費が間に合わないから家賃を上げるのだということであるならば、この家賃の中に織り込んだ料率だけを改正すればいいじゃないか、かように考えるわけです。材木とか、床の板とか天井板とか、そういうものにまで割増金のとばっちりをかけることはないじゃないか。修繕費が足りなければ、修繕費の料率を改正すればよろしい。これは、何も法律改正する問題ではなくて、政令の改正で十分間に合う、こういうことを特に私どもとしては申し上げたいわけでございます。  それから先ほどの各局長方のお話の中にも出て参りましたけれども余裕のある者は公団住宅に入ってもらいたい、こういうお話でございます。しかしながら、公団住宅公営住宅家賃というものは非常に大きな差がございます。私の調べましたところでは、昭和三十三年度、大体最高五千円くらいの差がある。少いところでも二千五百円、それだけの差がございます。この五千円の差を飛び越えて、一挙に公団住宅に入れる居住者というものはないのです。中には自家用車族があるかもしれません、そういう者は入れるかもしれませんけれども、これは、何も憲法に抵触するかしないかというようなきわどいところまでの法律改正して、そうして無理やり出なさいと言わなくても、そういう人たち公団住宅の方へ、あきましたから行きなさいと言えば、喜んで飛んでいきますよ。これは、決して法律改正する問題じゃないと思うのです。  それから先ほどもちょっと触れましたように、この改正法案が制定されました過程に、居住者意見というものは全然反映されておりません。今後も住宅対策審議会の役割というものは、特に大きくなるであろうと考えておりますけれども、そういうところへも、公営住宅から代表を送り込むようにしてもらいたいとこの際希望するわけでございます。住宅対策審議会の役割といたしましては、何も公営住宅の問題だけに限ったことはないのでございますけれども、しかしながら公団住宅建設の問題にいたしましても、これは、やはり公営住宅との関連においてやるということが大事なことだろうと思います。また公営住宅自体の問題も、国民住宅事情というものに対して非常に大きなウエートを占めておりますから、その中で居住者意見というものを十分反映していって差しつかえないのじゃないか、かように考えるわけであります。  それからまた、私たち居住者は、自分たち意見だけを主張するのではなくて、やはり国民全体の住宅事情というものもあわせて考えていかなければならぬと思っておるのです。それで私たちは、公営住宅に入っておりますけれども、入れないで困っておる人たちがたくさんおられる、これはよく知っておるのです。よく知っておりますけれども、ここで私たち建設省の方の意見の違うところは、建設省の方は、提案理由で、不当にたくさんの収入がある人が公営住宅にあぐらをかいておるから、たくさんの人たちが困っておる、こういう主張をなさっておるが、ここが私たちと違うのです。中には自家用車族があるかもしれませんけれども、それはわずかなもので、一万人に一人あるかないかであります。ところ、が日本全体で住宅に困っておる人は、おそらく百万か百五十万。だから、公営住宅の中でそういうあぐらをかいておる自家用車族を出したからといって、日本の住宅事情そのものが解決するかというと、それは違うと思うのです。もっと根本的に、ほんとうに低額所得者のために——その低額所得者というのは、公営住宅に入っておるのは、一応安定した収入人たちが入っておるのです。ほんとうに困っておるのは、不安定な収入の階層の人たちが困っておるのです。だから、こういう人たちのために、ただ同様の住宅をもっともっと建ててやる必要があるのじゃないか。私十三日の委員会を傍聴いたしまして、建設省の局長さんが、約千戸くらいの低家賃住宅を建てる予定である、こういう御答弁をなさったのを聞いたのでございますが、百万人も困っておるのに千戸くらい建てたって、これはほんとうにスズメの涙、焼石に水です。そのはね返りで、公営住宅に入っておる者で、ほんとうに収入のある者があるのだからあれを出せと言われたのでは、居住者としては立つ瀬がない。日本の住宅政策というものは、やはりそういう不安定所得者の住宅難を解決するという点にまず政策の目を向けていっていただきたい、かように考えるわけです。  それに関連いたしまして申し上げたいことは、この各事業主体の中に、組織的な不正入居があるのではないか、こういう疑問であります。これは、公営住宅の入居の基準というものがありまして、建設省で一定基準を作って、各都道府県は、その基準に基いて入居の公募をする、こういう条件になっておるのでございますけれども、中には自分の県、あるいは都、あるいは府、そういった職員を優先的に入居させている例が非常に多い、東京都の場合も、そういう例があるのではないか。どこの住宅へ行きましても、必ず東京都の職員が管理人という形でおるのです。私は、ここに建設省で出された資料を持っております。昭和二十六年に、住宅監理員及び住宅管理人の公営住宅優先入居について、こういうような通牒が出ております。この中で、公営住宅に優先的に入居を認めることは、たとい条例にその根拠のある場合といえども違法であることはもちろんである、こういうことがはっきり出ておるのです。ところがどうも東京都の場合は、公営住宅に対して自分の職員を優先的に入居を認めておるのじゃないかという疑いがあるのです。もしこういうことが事実であるならば、一つこれは、御調査願わなければ明言はできないのでありますけれども、もし事実であるならば、建設省あるいは事業主体は、すみやかにそういう対策を講ずべきではないか、かように考えております。そういう不正入居がもしあるとすれば、そういう人たちの数の方が、中にごく一部にある自家用車族の数よりもはるかに多いということは、これは私は、責任を持って言えることだと思います。  また各事業主体並びに建設省におかれましては、この公営住宅の監理員並びに管理人の指導というものをもっと十分にやっていただきたい、かように考えております。各住宅に配属されておりますところの監理員と管理人というものの性格は、おのずから異なるのでございますけれども、その性格は往々にして混同いたしまして、管理人が住宅居住者を指導するというような傾向が非常に強いわけであります。そしてこの存在が、居住者の組織と団結というものに対して非常に悪い影響を与えております。この点を、建設省並びに各事業主体におかれましては一つ十分に御考慮願いたいと思います。そして正しい指導を行われまして、管理人も居住者の一員である、そういう態度におかれましてその業務を指導されることを望むわけであります。さらに一歩を進めまして、各事業主体の職員が管理人になるのではなくて、居住者の中から管理人を選びなさい、こういうことを私は申し上げたい。そのように十分御検討願って、実現をお願いしたい、かように考える次第であります。
  12. 堀川恭平

    堀川委員長 参考人の方に申し上げますが、実は参考人の方でお昼から帰る人がありますので、また質問にお答えになるなりいたしましても、この程度でちょっと打ち切っていただきたい。
  13. 林田哲夫

    ○林田参考人 ただいまお話がございましたので、私ども居住者として申し上げたいことはまだまだたくさんございますけれども、それはまた御質問がございましたならば、それに関連してお話を申し上げることといたしまして、最後に私が申し上げたいことは、今度の公営住宅法改正は、表面的には一部の改正であるというふうに言われておりますけれども、実質的には、法律の精神を全面的に改悪するものである、かように私どもは了解しておるのであります。従いまして、私ども居住者といたしましても、この公営住宅法に対して注文をつけたいところはたくさんあるわけであります。たとえば、この際申し上げておきたいのでありますけれども、事業主体が法律にきめられた義務を不履行であった場合、先ほどの修理の義務を行わなかった場合など、その制裁方法が現在非常に明確を欠いております。補助金の停止とか、あるいは一部返還だとか、そういうことを言っておりますけれども、それは、実際問題としてできない。やったら居住者が困るのです。ですから、事業主体が義務を不履行だった場合は、その事業主体に罰金を課してもらいたい、その金で、共同施設の建築であるとか、あるいは修繕であるとか、そういうことも徹底的にやっていただきたい、こういうふうな主張を最後にいたしておきます。  そういうこともございますので、一応この改正案は廃案にしていただきまして、あらためて居住者意見を聞いて、ほんとうにみんなのためになる公営住宅法というものを作り直していただきたい、かように考える次第でございます。
  14. 堀川恭平

    堀川委員長 以上で、五人の参考人の方の御意見は終りました。  これよりこの五人の方に対する質疑を行うことにいたします。なお本日は、内閣法制局第二部長野木さんも来ております。なお横浜建築局長は、午後から市会があるので、もうすぐ帰りたいというお話でありますので、内藤さんに御質疑がある人は、一つ先にやっていただきたい、かように存じます。
  15. 武藤武雄

    ○武藤委員 最初に、東京都の建築局長にお伺いしたいのですが、自民党さんの方はどういう見解でいるか知りませんが、われわれは都や市側の建築局長には、こちらで管理や何かについてお尋ねをしたいということで来ていただいたのですが、だいぶとうとうと賛成意見を述べられたので、どうもわれわれの要求した線とはだいぶ違っております。都の建築局長さんは、賛成意見の中で、非常に住宅の修繕やら営繕やら、あるいは新しい低額所得者の特別の住宅建設をする、いろいろなことで、用意された住宅関係の資金を使い果たして、財政的に非常に因っておる。そういうときに、政府がこういう家賃修正、あるいは割増し家賃徴収等のため条項をつけたので、その見地からも非常に望ましいことで、われわれは非常に賛成だ。こういうことでありますが、都の建築局長として、現在の法律が施行された場合に、前には家賃の一斉値上げ考えざるを得なかったということでありますが、その意見を聞いてみますと、これをやることによって、一般値上げ条件になるというふうにお考えの重点があっての御発言か、それとも、これをやれば、どのくらいの財政的余裕があるということを考えて賛成の意見を述べられたのか、後者の方であれば、一つどのくらいの財源的余裕ができることになるのか、お聞きいたします。
  16. 中井新一郎

    ○中井参考人 法律改正によりまして、どの程度を限度とされるかということにつきましては、私どもは実は何ら詳しいことを伺っておらないのでございます。その結果、私どもがどれだけの増収になるということは、申し上げられない、わからないのでございますが、私どもは、先ほども申し上上げましたように、最近建てまする住宅基準が、従前のものに比較いたしまして、特に屋外の給水、排水施設が向上いたしております。こういうようなものにやって参りますためには、私どもは現在持っておりまする予算を、修繕——これは改良も含めてでございますが、その予算を二倍近くにいたしたい、かように考えておるわけでございますが、私ども居住者の御要望にこたえまして、住宅を現在のレベルまで引き上げまするのには、大体現在私どもは、一億数千万円の営繕費をもって年間の修理、改良に当ってございますが、ほぼそれに同額に近いものをつけ加えたい、かようなものを数年間続けて参りますれば、大体御満足のいくような設備が整うのじゃないか、かように考えておる次第でございます。
  17. 武藤武雄

    ○武藤委員 その家賃の一斉値上げという点はどうですか。
  18. 中井新一郎

    ○中井参考人 家賃の一斉値上げというものではございませんで……。
  19. 武藤武雄

    ○武藤委員 いや、考えざるを得なかった、こう言っている。
  20. 中井新一郎

    ○中井参考人 先ほど一斉値上げと申しましたのならば、私訂正させていただきたいと思います。これは、やはり古く建ちまして、現在に比べて建設費が非常に安いときに建ったものの中に含まれておりまする修繕費が少い、そういうようなものについて適宜に上げて参るべきものでございますから、さよう訂正させていただきます。
  21. 武藤武雄

    ○武藤委員 先ほどの参考意見の開陳の中に、どうも都は修繕、営繕等についてはほとんどかまってくれない、こういうことがあり、私もひんぴんと各代表、陳情の方から聞いておるのであります。ところがまた一説によりますと、内容を的確に調べたわけではないからわかりませんけれども家賃の保証金として三カ月程度とっておる大体の金額が、十四、五億から二十億くらい財源としてあるのではないかという意見もあるのです。それで、これを特別会計にして、新しい住宅建設とか、あるいは営繕等に回したらどうかという声がだいぶ強いのですけれども、どうも都は、それを一般会計にして、どうしても特別会計を設定しないというのですけれども、一体その間の事情はどうなっておるのか。
  22. 中井新一郎

    ○中井参考人 敷金は現在二億前後であろうと存じております。現在は特別会計にはいたしてございませんが、今般の改正を機に、そういうふうに努力はいたしたいと考えておる次第でございます。
  23. 武藤武雄

    ○武藤委員 改正が行われないと特別会計にはできないという理由は、どういう理由ですか。
  24. 中井新一郎

    ○中井参考人 さようなことは申し上げてございませんで……。
  25. 武藤武雄

    ○武藤委員 差しつかえないわけですね。  それから先ほど管理制度について、参考人意見があったのですが、私どももたびたびそういう意見を聞いておるのでありますけれども、実際の数字を調べたわけではありませんから、的確なことは言えませんが、大体の趨勢として、東京都の職員が優先入居という格好で、東京都の公営住宅に入っておる数が三千名近くに達しておるのではないかという節もあるのであります。一つの例は、東京都の幡ケ谷アパートですが、五十六世帯の中に四人もいわゆる管理人という格好で優先入居しておる、こういうことがいわれておるのでありますが、この実態はどうなのか、ちょっとお聞きいたします。
  26. 中井新一郎

    ○中井参考人 管理人の総数につきまして、ただいま三千名に達しておるのではないかというお話がございましたが、一月末におきまして、管理人の数は千六百九十九名でございます。大体四十数戸に対して一人の割合でございます。中にはこれよりか多い戸数を受け持っておるものもございますし、団地の大きさによりまして小さいものもあるわけでございます。
  27. 武藤武雄

    ○武藤委員 ちょっと関連して質問しますが、千六百九十九名だということでありますが、これ以外に、都職員で管理人という名目で入って、しかもその後管理人をやめたという格好で、依然として優先入居のままでいる者はありませんか。
  28. 中井新一郎

    ○中井参考人 その職員が死んだとか、あるいは病気であるとか、あるいは家族で留守を守っておる者がないとかというために、管理人をやめました者がおよそ百七十名ございます。そのうち、これは当然出るべきものでございますから、出ました者が百名近くございまして、現在諸般の事情で行く先を見つけられませんで残っておる者が、約七十名でございます。
  29. 武藤武雄

    ○武藤委員 同じように関連して質問しますが、東京都がこういう管理人を必要だというのは、おそらく公団住宅の場合の管理人制度ということから関連して、補助管理人という格好で置いておるというお話でありますが、公団の場合には、明らかに別個に家を作って置くという規定になっておるわけですが、その法律をうまく利用したのではないかと思うのでありますけれども、管理人制度というものが実際に家屋の管理になっておるのかどうか。最近いろいろ事情を調べてみますと、非常に名ばかりの管理人が大半ではないかという批判があるのであります。家賃徴収などは、もちろん本人が通帳制にして持っていくところが大半でありまして、管理人が家賃を集めるというようなことはほとんど行われていない。また入居者に対しましても、公営住宅法でははっきりと条文で規定をされておりまして、入居者自分が出るからといって、ほかの者を勝手に入れることはできない、公募をする建前になっています。特に事業主体が認めた場合は別でありますけれども、それ以外は公募をしなければならぬということにはっきり規定されている。それから公営住宅の中で、商売等の店舗に使うようなことはもちろんいけないとはっきり書いてあります。しかし、まれではございますけれども、そういうことも黙認の形で、公然と行われておる。こういうことも、私はたくさん耳にするのであります。それから管理人が公営住宅の管理をやめていた場合に、あと当然公募しなければならぬことになっておるのに、それもいつの間にか公募のないうちに入っているという、いろいろ管理の欠陥が指摘されておりますけれども、そういうのを聞いてみますと、何か管理人というものは全く名目的な存在で、実際に住宅の管理等に対しては責任を持っていないのではないか、こう思うのでありますが、実態はどうですか。
  30. 中井新一郎

    ○中井参考人 さような例もないことはなかったのでございますが、大部分の管理人におきましては、その職務を十分果しておるわけでございます。災害時等におきましては、管理人が常住しておりますことが非常に居住者の皆様の利益になっておると存じますし、われわれもまたそう考えておるのでございます。何しろ数多くの建物を管理いたしておりますので、中には自分がのくときに親戚の者、あるいは親戚と称しいかがわしい者を入れようというような例もあるにはあるわけであります。そういうときには、やはり顔を見知っておるということが非常に重要なことでございますので、私どもは、何らかの方法で五十世帯に一人、四十世帯に一人というような割合で、常時そこに住んでおりまして、居住者皆様方との連絡ができるということが都営住宅の管理の現状ではぜひ必要なことであると考えておるわけでございます。従前、ただいまお話のございましたような間違いを起した者もあるのでございますが、これは、管理人をやめさせまして、他に転出させる等適当な処置をとっておるわけでございますから、御了承いただきたいと存じます。
  31. 武藤武雄

    ○武藤委員 これは、東京都の建設局長だけに言ってもしようがないことでありますけれども、やはりそういう管理人は、おのずと、政府の今度の立法の趣旨から言うなれば、低所得者が政府の大幅な援助を受けて住宅に入っておる、それが、給与が上ったことによって不合理だということで出てもらうとか、割増し家賃をとるとか言っておるのですから、当然東京都の職員は、管理に必要ならば、東京都で別個に管理者住宅を建てて管理をさせるべきであって、それを、この政府のとっておる低額所得者公営住宅の中に、単に管理制度がうまくいくからというようなことで、名目をつけて入居をさせること自体が間違いだと思うのです。これはおそらく全国にそういう例がたくさんあると思いますから、全体として直さなければならないので、東京都の局長さんにだけ言っても無理だと思いますけれども、一応そういう点を言っておきます。  それから先ほど言った修繕やその他に対して、東京都の場合には、特に非常に冷淡だ、何回言ってもほとんど問題にされないという点ですけれども、その他の住宅の地帯でも、盛んにそういうことが言われている。それで、単に予算が少いということだけでそういうことができないのか、それとも、先ほどのお話を聞いておりますと、何かほとんどやる気がないようにもとれるのでありますけれども、どうなっているのですか。
  32. 中井新一郎

    ○中井参考人 さきの点でございますが、ただ管理の都合だけのために都の職員を優先入居さしているのではございませんで、都の内部で、やはり住宅の困窮者を登録いたしておきまして、適当に抽選をしてやっているわけであります。御参考までに申し上げるのでございますが、先ほど外部の入居者の抽せん率が四十から五十分の一だと申し上げたのでありますが、現在内部でやっておりますものも、四十人に一人ぐらいの割合で入っております者で、入っております者も、住宅困窮者の一人であるということを一つ申し上げておきたいと思います。  それから修繕をどうするかというお話でございます。先ほど申し上げましたのは、財政の圧迫を感じているということを申し上げたので、これ以上今後やらないという意味のものではないのでございます。むしろこの機会に、直すべきものはすみやかに直して、ちょうだいするものをいたしたい、かような考えでございます。なお修繕をやってくれないというお話でございますが、重要なものは、多少時間的にズレはございましても、やって参ったつもりでございます。修繕をやってくれないとおっしゃる中には、この井戸がまずくなったから掘り直してくれとか、あるいは最近近所に建ちますものは、簡易水道をやっているのでございますが、それに直してくれとか、あるいは下水が詰まったから直してくれとか、現在の公営住宅法で見ますれば改良と申すべきものに対して、これを修繕してくれという御要望が非常に多いのでございます。私どもの例では、年間陳情をいただいておりますものを一応調べてみますれば、その三分の一は修繕に当りますが、陳情の三分の二は改良と申すべきもので、特にそういうものまでもやったり、なお今後よけいやるためには、やはり財源的な配慮も、長く続けて参りますためには必要だと存じているのでございます。
  33. 武藤武雄

    ○武藤委員 あとまだあるようですから、私はこれで終りますが、局長さんのお答えだけでは納得がいかないので、これは、ここでお願いする筋合いでありませんが、職員の入居者の月収とか、あるいは公募の状況とか、もう少し詳しいことを資料でお願いしたいと思います。
  34. 中井新一郎

    ○中井参考人 承知いたしました。
  35. 堀川恭平

    堀川委員長 それでは、次は山中吾郎君。
  36. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 中井局長にちょっとお伺いします。私聞いておりますと、有泉先生と局長さんのお話は、非常に冷たい御説のように感じたのです。住宅政策そのものは、非常にあたたかい政策住宅政策政策だと思っておったのですが、お話を聞いておりますと、非常に筋が通った合理的、その合理的というものの中に、何か住宅政策に合わないような合理性を感じたのであります。しかし局長さんのお話のどこかに、住宅明け渡しについては、非常に無理だというふうな考えがひそかにあったので、私その局長の本心をお聞きいたしたい。お話をしておられるのには、家賃値上げが必要だということについては、都の建設行政の予算関係から必要性を腹の中でお考えになって、そのまま率直な御意見があったように思うのです。しかし家賃を上げるということについての御説明があって、最後に、明け渡しもやはり必要であるという結論だけおつけになっておる。局長は、家賃は予算その他の関係で、修繕費不足の状況にあるから、そのやり方についてはいろいろ論議研究をしなければならぬけれども明け渡しということが都の住宅政策において正しいかということをお考えになっていないように私は説明を聞いておるのですが、その辺、率直に住宅政策の立場から、いま一度御意見をお伺いいたしたい。
  37. 中井新一郎

    ○中井参考人 明け渡しをどう考えているかという御質問でございますが、率直に申しまして、収入の限度を越えた方には、私は明け渡していただきたいと存じておる次第であります。私ども考え方の重点といたしましては、公団住宅へ入る資格、これは家賃負担のことも考えてでございますが、それを持っておる方には、みずから明け渡していただきまして、都の現状では、まだまだ都営住宅に入りたい方、あるいは都営住宅に入るべくして家賃の払えない方も多いのでございますから、そちらの方へ譲っていただければ非常にけっこうだと感じておる次第でございます。
  38. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 けっこうだということなので、法的に強制するというようなことは、局長は正しいとは思っておられないのでしょう。公務員が——局長も公務員住宅に入っておられると思うのですけれども、都の役人も、そうしてあなたも俸給は高い。そのときに、給与が高いから外へ出ていきなさいというようなことは、お住みになっている気持から、出るはずはない。役人の場合は、給与が高いほどいい住宅に入っているのでしょう。それでも、出ていけということはどれだけ人間に大きい影響を与えるかということは住宅政策を担当する人にはおわかりになっていると思う。修繕費を必要とするので、政府はもうけてはならぬが、補助金を出し、そういうものについて住宅の緩和をはかるということで、あとあとへと新しい住宅を建ていく政策、これに協力するという意味において、足りない場合は、修繕費その他についての家賃についての政策の変更は、これはお考えになるだろうと思うのですが、みずから住宅に住んでおる心理というものは、局長であり大臣であっても——これは大臣は別でしょうが、給与が安いときに住宅に入れておって、高くなったら公務員住宅を出しますか。そういう自分の居住に対する心理状態を体験されておられて、今度こういう場合に、そういう考えをお持ちにならないのだろうか。何かそこに別な、だれかに頼まれておるかどうか知りませんが、その考え方を私はどうしてもいま一度お聞きいたしたい。
  39. 中井新一郎

    ○中井参考人 希望といたしましては、出ることのないようにいたしたいと存じます。しかし、私この職におりまして考えますことは、都営住宅——公営住宅一般がさようだと思うのでございますが、やはりここ何年かの間にどんどん家が建ちまして、大部分の住宅困窮者に都営住宅を与えられるのでなければ、ただいまのような法改正のための御趣旨も、現状としてやむを得ないのではないかと存じておる次第でございます。
  40. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 それは、今思いつきでおっしゃったのだろうと思うのですが、もう少し緩和すれば、住宅の求めが少くなるから、もっといいところに、黙っておっても自由に出ていきますね。今は出るにも出られない。住宅というものは、日本人の精神的安定の基本的なものだと思います。従って、こういう法改正明け渡しを勧奨することができるような法律は、今こそ作ってはならない。それで、あなたは給料は何ぼか知りませんが、六万、七万、もっとあると思うのですよ。それなら役人としては、こういう法改正に対する賛成は、みずから住宅を出てから主張すべきだと思います。私はそう思う。私はハッパも何もかけてないのです。住宅政策は、福祉政策のいわゆる憲法に保障された最低文化生活を保障するところからきているものですから、この法改正に賛成される建築局長は、どうも理解できないのですが、どうですか。
  41. 中井新一郎

    ○中井参考人 どう申し上げたらいいかと思いますが、ほんとうのことを言えとおっしゃるならば、私は出たのでございます。出たから、法律を通してやろうとおっしゃるならば、それはそうしていただきたい。これは証人がいらっしゃいますから、どうぞこの点は、一つお聞き合せいただきたいと思います。
  42. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 個人としては大いに尊敬いたします。そういう局長は、何万という役人の中に、ほとんど万人に一人くらいの人だと思うのです。それで、あなたのそういう個人的気持はよくわかるので、あなたに対しては私は敬意を表します。しかし凡々たる凡夫の一般居住者に対する政策でありますから、あなたは神のごとき精神をお持ちになっておるけれども、神のごとき精神で居住者にしいるようなことはまた別問題だと思いますので、その点、よくお考え願わなければならぬと思うのです。これは一片の思いつきの改正だ。私は、家賃を上げるということについては反対しておるのではない。引き渡すというようなことは、完全に住宅政策の本質を没却するようなものだと思うので、もう一度お考え願わなければならぬ。  次に、有泉先生にお伺いいたしたいのですが、家の観念が、父祖伝来の家の考え方から変更してきた、回転性というのが、現代の家の観念に移ってきたというお話ですが、それは有泉先生のような、近代的な合理的な精神というものが住生活の中に入り込んだ人の、ごくまれな、日本の国民のトップ・レベルの人たちの観念でお考えになっておるのではないか。やはり現代のわれわれ一般国民の観念というものの中には、その自分の家の中でいつまでもおって、庭に花を植えてその花を楽しむ、時には木を植えて、そうして自分の家という感じで定住したいというふうな感情が、日本国民の家に対する考えではないかと思うのですが、いかがなものですか。
  43. 有泉亨

    有泉参考人 私がトップ・レベルかどうか、そうでないと思うのですが、法律家で、少し特殊な考え方をしておるのかもしれません。戦後民法が改正になりまして、たとえば相続にしても均分相続ということになった。私は幸いにしておやじからもらったのですが、自分の家に住んでおる。ところが私が死にますと、子供が四人いますけれども、この四人の共同相続——それでほかに大した財産はありませんから、家ということなんです。そうすると、私は、子供たちに、あなたたち、もうこの家をだれかがもらうとなるとけんかになりかねませんし、これはどこかへ引っ越す。もっと徹底すれば、私が年をとってまだ生きているうちに、自分はどこかへ引っ越して、子供たち子供たちで独立させる、そういうふうに考えておりますが、これは一連の問題だと思うのです。だから、いなかでは、先ほどもお断わりしたように、まだ墓がありますし、それからそこに住んでいて、これを動くということはとても大へんなことなんですけれども都会では、やはり考えを切りかえなくちゃならないのじゃないか。何もトップ・レベル——私に限らないで、そういうことになるんじゃないか。それで、嫁をもらって同居できるという家は、東京では、今建っている公営住宅にはないでしょう。そうすると、子供はそれぞれ独立してどこかへ行くので、そこに相変らずいるということはないのじゃないかということが一つです。そこで、そうなると、これは実際に入っている給与住宅などについても同じことが言える。さっき独身寮ということが言われたけれども、給与住宅の場合は、会社がたくさん住宅を持っていて、給与住宅に入る、独身寮に入る、それから二人もののところに入る、それから少し大きなところへ行って、しまいに会社が売り渡す場合、戸建てですと売り渡しますけれどもアパートですと、やはりやめると出ていかなければならないという回転をしているので、そこから出発をしているのです。ですから、これは大きなプリンシプルを考えているのでして、一番しまいにお断わりしたように、それからさっき居住者の代表が言われたように、公営住宅の売り渡しというものを当てにしていた人たちが相当あるのですね、ことに戸建ての場合には。だから、そういうところで、何か緩和される措置が必要だと思いますし、とられたらいいと思います。  それからもう一つは、これはこの案では取り入れられておりませんが、私は、実は住宅対策審議会に出ております。そこで少し議論をいたしました。住宅対策審議会に公営住宅居住者委員の方がおられなかったということを私は気がつきませんで、はなはだ申しわけないと思って聞いておりましたが、しかしそのときに言いましたのは、入居資格が最高で三万二千円と押えておりますが、この三万二千円というものは動かないものではなく、インフレによっては動くものだと思いますし、それから今度出ていかなければならない収入というものは、少し違ってもいいんじゃないかと思います。ということで、住宅対策審議会では四万円ということを主張したのです。かりに二割かけますと四万円になりますが、三万二千円のものが応募できるわけですね、応募して入れるわけですが、入ると、これは日本の今の賃金水準の趨勢からいうと、たちまち三万二千円をオーバーします。そうすると、二年か三年の居住しかできないということになる。ですから、出ていかなければならないところは、どこかもう少し緩和するとか、そういうような緩和の措置は適当になさった方がいいんじゃないか。私個人意見はそうですが、しかし原則として、やはり回転するものじゃないか。都会地の、ほかにいっぱい困っている人がいるということを考えますと、今の状況では、原則としては回転する、こう考えております。
  44. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 先ほど有泉先生は、祖先伝来の家という観念はなくなったというお言葉だった。それで、祖先伝来の家に住むという観念は、私どもはもうなくなっております。従って、親が住んでいても、自分は別の家に住む。しかし、自分は一生自分の家に住みたいという国民の家に対する感情は変らないと思うのです。私の家内でも、やっぱり最後まで自分の家に住みたいと言っているのです。あっちこっち動くのはいやだ、少々高くても住みなれた方がよい。隣近所にも人間関係ができておりますから、そこに住宅政策考えが入らないと、先生のおっしゃる、学問的な原則として現在の家は回転性を帯びておる、従って明け渡しの制度が法律改正理由としては成り立つというのでは、ずいぶん飛躍があると思う、具体的の法改正の立法問題の理由としてお述べになっておるのには。従って、法改正理由として非常に冷たい学者の考え方が入って、そうしてその法改正の審議会における意見一つになっておられる。今お話しされた、ああいう人たち住宅対策審議会の委員になっておれば、そういう先生の原則的なお考えと、住宅居住者のいわゆる心理とが一緒になって、もっと具体的な、しかも実際に合う法律案が出るのではなかったか、そういう審議会の構成の中に、こういう法案が出てくる欠陥があると思ったのです。  その次に、お話の中に、第一条の解釈からいっても、当然に所得が上った者は、住む資格がなくなって、出るべきだというお考えを述べられたですね。私は、第一条をもう一度お読み願いたいと思うのです。「住宅に困窮する低所得者」と書いてある。住宅困窮者ということが第一にあって、その次に低所得者とあって、そして低家賃で賃貸すると書いてある。しかし、その前に、最低の文化生活を営む住宅を供給するという大眼目を書いておる。そこで、この低所得者というのは入居の資格で、給与が上ったら居住する資格がなくなるという意味は少しもないと思う。そのときに入居する者が低所得者なら、入居して住むことができる、そういう者に供給するのです。あと所得が上るに応じて、あるいは住宅政策の中において家賃を上げるということは、この法律の精神にあるかもしれないけれども、入ったあとで、給与が高くなったら居住する資格を喪失するという思想を、第一条には少しもないはずであります。それは政府は、当然に第一条に、所得が高くなると、もう居住権がなくなるのだ、明け渡されることは当然、そういうようになるというふうにお話の中にあった。当然に第一条においては、はっきりと、低所得者は居住権がなくなるというふうな御説明に聞えたのです。私は、どうもその解釈はおかしく思うのですが、誤まっておられないでしょうか。
  45. 有泉亨

    有泉参考人 住宅に困窮することと低額所得者であることが、二つの要件だと思います。そうしてこの第一条からは、入るときだけの要件だと私は考えておりません。住宅に困窮した者には、国また別に公団住宅とか金融公庫とか、その他の施策をしておるのでして、低額所得者のための施設としては、ほかにまだ母子寮とか、いろいろなものがございましょうけれども、主としてこの法律公営住宅が供給されておる、こういうことを考えますと、低額所得者だというその資格を失えば、要件がなくなれば、筋としてはやはり回転、出ていって低額所得者に譲るべきではないか。問題は、その譲ることが、行く先が詰まっていてなかなか簡単にいかないということにあるのであって、そこで、あまり長くなりますから……。
  46. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 そこで、有泉先生と私あとでゆっくりお話をしなければならぬと思うのですが、その解釈の中に、住宅に困窮したる者と書けば、適切なる家賃で支給すると書くだろう思う。住宅に困窮しておる低所得者に低家賃をもって支給すると書いてあるので、だから入居する資格は、そのときに住宅に困窮して、そうして安い賃金でおる者を入れる。あとで変更するのは、所得が高くなれば、低家賃から低をとってしまうという、そこに私は第一条の精神があると思う。明け渡しというふうなところに持ってこられたときに、先生は、家というものに回転性という一つの学問的な原則を最初に立てられて、次に第一条の解釈に持ってこられておるので、私は、これは住宅政策の精神を基本とした法律ですから、その法の基本的な福祉政策とい精神を基礎にして第一条を解釈するのが正しいと思うのですが、回転性という学問的な一つのお考えから解釈が入ってきたので、非常に冷たい、明け渡すことは当然だというふうな解釈をされた。その点について、この法律についての解釈としては、私は決して最も正しい解釈とは受け取れないのです。それだけでこの法案が出てくるときに審議会で御主張されて、有力な影響力を与えて出ておるとすれば、私はもう一度審議会で論議していただかなければならぬと思います。まあいずれにしても、私はそう思うのです。  それから、法制局の第二部長がおられるので、その法律問題をお聞きいたしたいのですが、時間がないようでありますから、次にお聞きすることにいたしたいと思います。
  47. 堀川恭平

    堀川委員長 島上君。
  48. 島上善五郎

    ○島上委員 この法案には、問題点がたくさんありますけれども、きょうは参考人の御意見ですし、それから時間がありませんから、私はほんの一部分、参考人に、必要な点だけを御質問しておきまして、建設省に対する質問はまたあとでゆっくりします。  私は、この一定限度を越えたものに対しては明け渡しをさせるということは、今同僚から質問された点もありますが、それ以外に、この公営住宅法と大きく矛盾するのではないかということを考えるのです。これは御承知のように、第二十四条には、「事業主体は、政令で定めるところにより、公営住宅又は共同施設がその耐用年限の四分の一を経過したときは、建設大臣の承認を得て、当該公営住宅又は共同施設を入居者入居者の組織する団体又は営利を目的としない法人に譲渡することができる。」こういう条文があります。先ほど参考人の御意見にもありましたが、入った人は、五年以上たてばやがて譲渡してもらえる、今までがそうであったし、これからもそうであろう。こういう期待をもって、事業主体が修理をしてくれないものを、自分の金を出して修理をする、こうおっしゃいましたが、私は、それは事実だと思うのです。やがてこれは自分たちに譲ってもらえる、こういう期待を持っているから、夜店に行って小さな植木を買ってきて、大きくなるのを楽しみにしたりしていると思う。ところが一定の限度の収入を越えると明け渡さなければならぬということになると、これと非常に矛盾すると思う。これは、さっき有泉先生もおっしゃいましたが、三万二千円が入居資格である、しかし二、三年たてば、三万五千円なり四万円になるのは当然ですから、これは二、三年たてば出ていかなければならぬということになって、こういう点から、私は法的に見て、第二十四条の精神と明け渡しをさせるということとは大きく矛盾すると思う。その点、いかがですか、有泉先生にお願いいたします。
  49. 有泉亨

    有泉参考人 二十四条がどういう趣旨のものか、私も明確に勉強しておりませんが、これは一応管理者側がそれを譲り渡すことができる、やろうと思えばできる、管理者側の方針によって譲り渡さないこともできる。今度の改正では、特別な事情がなければ譲り渡さない、こういう方針になったようですが、私は、さっきの繰り返しになりますが、譲り渡さないという根本方針には賛成で、その賛成の理由は、持ち家は別ですが、貸家というのは、なるべく公共施設、公共団体なり国なりが持っていて貸すべきではないか、民間貸家というものは、どうせ建ちませんから。そういう基本的な考えを持っているのです。イギリスの労働党なんか、御承知と思いますが、貸家を全部地方の公共団体に買わせて、そして全部を公営住宅にしろというふうなことも言っておるようです。そういうふうに考えるものですから、農地を売り渡してあまり工合がよくなかったのと同じように、基本方針としては、公営住宅を譲り渡さない方がよくはないか。それを当てにされた方に対しては非常にお気の毒ですが、そして、そういうふうに期待させたということは、まずかったと思うのですが、そういう目でこれを見ますと、これは、やろうと思えばできるのであって、やらなくても、この公営住宅法の精神に反するということはない。だから公営住宅法の精神は、やらなくてもいいわけですから、さっき第一条について御質問がありましたが、第一条に異論があるとしても、低額所得者というのが住んでいる条件でもあるというふうに読めば、やはり回転をする、こういうことになるかと思います。
  50. 島上善五郎

    ○島上委員 都の建築局長に伺いますが、収入限度を越えたものを明け渡させるということですが、三万二千円から三万五千円になった、あるいは四万円になった、この収入の上っつらの金額だけを見て、それでその人の生活が豊かであり、余裕があるというふうに判断はできないと思う。家族が多いとか病人があるとか、その他支出が多いところは、四万円とっておってもきゅうきゅうしておる者がありましょうし、また三万二千円しかとっていないけれども、あるいは三万円しかとっていないけれども、病人もなくて掛りが少い、数も少い、こういうようなものは、当然生活内容の実態としてはあり得る。ですから、私は収入金額の上っつらを見て、一定限度の収入を越えたからというようなことは、その点にも非常に問題があると思う。かりにこの法律が通ったとすれば、運用の面でそういうことを考慮して、実態に合うようにやれるかどうか、私は非常に困難だと思うのです。どうしよう、管理者として。
  51. 中井新一郎

    ○中井参考人 東京都の現状におきましては、その限度を越えた方が全部御自身で、あるいは役所があっせんをいたしまして出ていけ、こういうふうな考えではございません。あるそれぞれの条件に適合された方が自主的に出ていかれるものだ、実際はそう考えております。
  52. 島上善五郎

    ○島上委員 その御自身で自主的に出ていくのでしたら、法律できめる必要は何もないわけです。法律できめるところに問題がある。これはあなたに聞いてもあれですから、私は提案者にまた意見を聞きますけれども、あなたがおっしゃるように、収入がふえたから自主的に御自身で越そうというなら、これはけっこうな話です。私は、越せる人をいつまでもここにおれと拘束したら、これこそ問題だと思う。この点はあなたに別に伺いません。  あなたに伺いたいことは、先ほどの入居者参考人の御意見とあなたの公述の内容とで、一つ大へん食い違っているところがある。それは、入居者の方の御意見によりますと、修理があまりやられていない、あまりというよりは、ほとんどやられていない。こういうお話を、さっき具体的に例をあげて、下水の話やらいろいろされました。下水の水が漏れたり、雨戸が締まらなくなったり、台所に電灯がなかったり、その他たくさん苦情がある。二十四年に入居して以来、一度も修理を受けたこともないというような事実もあるし、天井に直径一尺もある大きな穴があいている、そういうようなこともある。しかるに、何度お願いしても修理をやってもらえないということです。ところが、あなたの御意見ですと、多大の修繕費をかけて改良に努めてきた、共同施設もかなりやってきた、こういうようなことをもっと詳しくおっしゃいましたね。そこで伺いますが、私の聞いておるところによりますと、こういう数字が出ております、これは、たしか都議会で質問したときに、あなたの方でお答えになった数字ではないかと思いますが、私の記憶によりますと、公営住宅法第十五条の修繕の義務を課せられたもので、現にやっていない件数が東京都で三百四十二件、金額にして一億四千八百三十一万円余り、それから修理のすでに終ったものは六百八十七件で、金額にして四千百九十八万三千三百円、やった方は一戸当り六万一千五百円、やらない方は一戸当り四十二万三千円、こういうような数字が都議会で質問されたときに出た数字と私聞いております。全然やらぬということもなかろうけれども、どちらかというと、この十五条の精神からいってやらなければならぬ性質のもので、今なおやっていない件数の方が、金額にしてはかなり多い数字が出ておるようですが、もし資料がありましたら、この点を数字的に御説明願いたい。
  53. 中井新一郎

    ○中井参考人 正確に申し上げますれば、住宅の修繕から改良を含めました陳情の数が、施行いたしておりませんものが、本年度末におきまして三百四十二件、それに要しまする費用が、大まかに申しまして大体一億五千万円と見ております。そのほかに改良と申しますもので、私どもがいたしたいと考えておりますものが約四億五千万円、このほかに、まだ数年間にやって参りまして、ほぼ同額のものが出て参ると考えてございますので、これをある年度計画によって完成いたして参りますれば、現在建てて参りまする住宅とほぼ同程度のものに昔の質の悪いものを引き上げられる、こういう計画でございます。
  54. 島上善五郎

    ○島上委員 その計画を実施するのに、家賃値上げをしなければ方法がないというふうにお考えですか。
  55. 中井新一郎

    ○中井参考人 現在では、すでにやりましたものの見返りという意味も含めまして、家賃値上げは早晩いたすべきものと考えております。
  56. 島上善五郎

    ○島上委員 早晩いたすべきものではなくて、家賃値上げ以外に財源を求める方法がないとお考えですか。それと、家賃値上げによってそれが十分足りる、こういう数字が出て参りますか。
  57. 中井新一郎

    ○中井参考人 公営住宅も採算をとるものでございますから、その内部でやりまする以上、家賃値上げをするよりほかないと存じております。
  58. 島上善五郎

    ○島上委員 これは、入居者の代表の岡田君でも林田君でもよろしいのですが、それから建築局長に聞きたいのですが、私の考えが間違っておれば別ですけれども、民間の場合でも公団の場合でも同様ですが、家賃というものは、建築費とか修理費とか税金とか地代とか、そういうものが算定の基礎になっておると思う。入っておる入居者収入に比例して家賃を算定するというのは、少くとも日本の今までの家賃というものの考え方ではないはずです。たとえば公団住宅でも五千三百円、五千八百円、六千円という家賃がありますが、五千八百円というのは、その人の収入に比例した家賃ではない。その公団住宅を建てた経費、地代、税金その他管理費等から算出して出た家賃なんです。家賃というものの考え方は、少くとも今までは、民間の場合でも公営の場合でも公庫の場合でも、いずれもそうであったと思う。収入に比例して家賃をきめるというきめ方は、かつて日本にはなかったと思う。もし今度のこの改正通りますれば、その観念が、少くとも公営住宅のこの部分に関する限りは、がらっと変ってくる。あなたは収入が三万五千円だから家賃は二千円、四万円だから二千三百円だ、こういうふうになってくると、今までの家賃の観念とがらっと変ってくる。それが正しいということになれば、公団住宅にも、やがては民間の家賃にも、そういう考え方が適用されるということになるかもしれぬと思う。繰り返すようですが、家賃というものは、今言ったように建築費用とか、民間の場合には税金だとか、地代とか、管理費とか、そういうものが基礎になって、そこから家賃幾らという算定が出てくると思う。この基礎を変えようという考え方にあなたは賛成なさるか。入居者の代表の方は、こういう考え方に対してどうお考えになっておるか。同じ家だったら、同じ家賃を払うのが当然じゃないか。甲の人は千五百円の家賃を払っておる、乙の人は収入が多いから二千円だ、丙はもっと多いから二千五百円だということは、今までの家賃の観念からしますれば不当だと考えますが、どうですか。
  59. 中井新一郎

    ○中井参考人 お尋ねが非常に影響の深いと申しますか、深いところにあるので、私もどの程度にお答え申し上げていいかと存じますが、ただいまの都営住宅入居者収入現状、またその外に待っておられます多くの困窮者、こういうようなものを考えて参りますときには、公営住宅で申しますれば、下が一万六千円、その次が三万二千円、建設省の試案では、次に四万円というものを考えられまして、それを関所といたしまして、その範囲内でできるだけのバランスをとっていかれようというやり方、これは、私は傾向としてけっこうなことだと存じておるわけでございます。
  60. 岡田将穂

    岡田参考人 先ほどの御質問についてでございますが、私ども居住しておる者といたしまして、いまだかつて収入によって——入居者収入を調査するなり何なり、それによって家を建てておるということは伺っておりません。また今までの日本の慣習とでも申しますか、慣例とでも申しますか、家を建てて賃貸しをする場合に、その家は家賃幾ら幾らということは必ず言っております。しかし、それに合わない場合は、その人は入ることができないし、それにマッチすれば入る、こういうような形が現在までとられてきております。こういうような点からいたしまして、今回の法改正の根本的な考え方というものが、居住者にとりましては納得できないし、会得もできません。私も江東区の深川豊洲の都営住宅に十年以上住まわしていただいておりますが、約四百戸ほど都営住宅がある団地でございまして、木造でございます。こういうところに住んでおりまして、つぶさに都営住宅居住者現状であるとか、いかにあるべきかということについては、十年前から居住者の会を作りまして、会長なども長らくやっておりますので、存じておるわけであります。いずれにいたしましても、これは単に豊洲のみならず、局長さんも御存じのように、東京都内には、公営住宅法に書いてあるいわゆる一種並びに二種がございますが、これらの修理の点につきましても、それから指導義務につきましても、局長さんの言われるほどよくは参っておりません。逆に申しまして、たとえば私のところを例にとって申し上げますと、すでに根本は腐っておる、それから雨戸はだめになってしまっておるので、自分で入れております。窓にしてもそうでございます。参りましたときには水道さえなかった。水を小学校へもらいに行っておった。天びん棒をかついで水をくんでおった。そういうようなアシの中に建った都営住宅でも、当時われわれとしては非常にうれしかったわけです。それが次第々々に人の住めるようになって参りました。家があるということと人が住めるということとは、若干の相違があると思います。これは、先ほど他の居住者参考人が具体的に話をされておりますけれども、あれでもほんの一部であると私は考えます。その事例を提示しろといわれると、ここにおられる中井局長さんといたしましても、答弁に苦しむ事例があるのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。しかし、われわれは、先ほどからいろいろ御説のあります通りに、都営住宅に入れてもらえたというので喜んでいるわけです。今回の法律改正趣旨というものが、日本の住居に対する根本的なる改良であるなら幸いだけれども、いわゆる改悪である。こういうようなことをもしやられて、居住者がその実情を知ったならば、黙っている人は、私は少しおかしい方ではないだろうかというふうに考えるわけであります。小鳥でもねぐらをゆすぶられますと、大騒ぎをいたします。夜鳥をとってはいけないということを、私どもは昔からいわれております。小鳥でさえそうでございます。ましていわんや、われわれ東京に住み、あるいは日本の国内におって、そしてとにかく入るときには、先ほどもお話がありましたけれども、ここへ入ったならば、まあ自分で焼くとか、失火で焼くとか、あるいは類焼をこうむるとか、あるいは家がだめになってしまうというような場合には、その家については住めないかもしれないけれども、とにかく何か悪いことをしない限りはいさしてもらえるんだ、こういう考えで入っておるのであります。しかも、先ほどのお話のように、払い下げもされるであろうという考えで入っておったのでございますからして、こういうような住民感情と申しますか、社会通念上から見ましても、決しておかしいことではない。これを急に、先ほど有泉先生のお話もございましたが、居住者の入っていない審議会において、つまり経験者を入れないところの審議会においてもしお作りになったというのであると、これは、公営住宅法第一条、あるいはその他の条文を貫くところの公営住宅法の精神というものと若干乖離するものではないか。私どもは、ここで諸先生を前にお願いすると申しますか、実情を訴えておるのでございまして、ほんとうのことを申しておるわけでございますので、先ほど島上先生の御質問の点につきましては、同感でございます。
  61. 島上善五郎

    ○島上委員 岡田君の御答弁は、少しほかのことに触れているので、焦点がぼけているような気がする。特に家賃に対する考え方です。欧米住宅政策みたいに、家賃補助という考え方ならば別ですけれども、日本の場合には家賃ですから、家賃補助という住宅政策ではなくして、家賃を取るという考へ方の上に立っておる。それが、そこに入居している者の収入所得によって家賃に格差をつけるというので、今までの家賃考え方と根本的に変った考え方をとることが、私は重大問題だと思う。それでは、林田君から簡単にその点だけ御答弁願いたい。
  62. 林田哲夫

    ○林田参考人 島上先生の御質問の要旨に、簡単にお答えしたいと思います。  私たち居住者は、その生計費の中において食費の占める割合が非常に大きいわけです。つまりエンゲル係数が高いわけです。公営住宅に住んでいる人たちは、その上にさらに、公営住宅建設のときのいろいろな事情が重なりまして、非常に不便なところに建っているケースが多いわけです。たとえば東京の場合でも、約六万戸の公営住宅のうちの一万五千戸以上が三多摩の方に集中しておる。おそらく二万戸くらいあるじゃないかと思いますけれども、そういう状況にあるわけです。従って、エンゲル係数の非常に高い上に、交通費がそこへかさんでくるのであります。そういたしますと、ただでさえ所得の低い居住者にとって、残りの部分というものは、つまり服装、こういったところへかける金がない。その他一般の文化的欲求を満たすための金、そういうところへかける余裕というものはほとんどないわけです。そういうところへ、収入がふえたからといって割増金的なものを加算されますと、これは非常に困ってくるわけです。もともと食べるだけで精一ぱいだという状況にありますので、そこへもってきて交通費が非常にかさみます。さっきお答え申しましたように、バスをおりて二十分というようなところがあります。バスに乗って、私鉄に乗って、それからまた国鉄の電車に乗ってくる、こういうところがあるわけです。極端な例ですけれども、それに類するところが非常に多いわけです。
  63. 堀川恭平

    堀川委員長 答弁者に申し上げますが、島上君の質疑に対してのみ、簡単に言って下さい。
  64. 林田哲夫

    ○林田参考人 はい。そういうふうに困っておる状態のところにおきまして、収入が若干ふえたからといって、それに応ずる値上げをされるということは、居住者にとりましては、まことに耐えがたいことであるということを申し上げます。  それから欧米の例を先ほどもとられましたけれども欧米の場合と日本の場合とでは、同じ勤労者でありましても、その収入に非常な格差があるわけでございます。アメリカあたりでは、女の子のタイピスト、こういう人の収入が、六万円から十二万円くらい取っておるのです。ところがわれわれは四十近くになって、やっと二万円あるかないかという差がございます。そこへ持ってきて、若干の収入がふえたからといって、それに見合う値上げをされるということは、居住者にとっては、はなはだ迷惑千万だということを申し上げたいと思います。
  65. 二階堂進

    ○二階堂委員 時間もありませんから、私は簡単にお尋ねをいたして、また簡単に御答弁願いたいと思います。  有泉先生にちょっとお答え願いたいと思いますが、先ほど来意見陳述者の方々の御意見の中に、今回の改正は、住宅対策審議会の方にも意見を聞いておられるわけですが、この中に、公営住宅に入っておる者の意見が全然反映されていないのは遺憾だ、こういうものをまとめて審議会の中に入れて、意見を切りかえて出直すべきじゃないかという御議論がございますが、これは、先生は学識経験者の中から第三者的立場でお入りになっておると思うのですが、全然こういう立場の人たちのことを考慮に入れていない答申に基いて、こういうものが出てきておるということをお考えになっておるかどうか、この点が一点であります。  もう一つは、きょうこの法案改正反対される方々の御意見の中に、私が聞いておりまして非常に考えさせられることは、公営住宅は、御承知の通り、国の相当な負担が支出されておるわけであります。これは一般公団住宅とか、あるいは金融公庫住宅とか、一般の民間の貸家とかいうものの性格と違うわけであります。三分の二ないし二分の一の国民から集めた税金がかかっておる。そういうことを考えますならば、やはり特に公営住宅は、所得の低い方々住宅難を緩和するために建ててある住宅なんですが、こういうような考え方が、どうも私は心の中に入れられておらないのじゃないか、こういうような気がしてならないと思うのです。いろいろ現在住宅の絶対数が不足しておる今日、こういう法律改正をやろうとすれば、これは住宅政策の根本等についていろんな議論が出るのは当然なんです。しかし、そういう考慮を一面考えながら、今申し上げましたように、公営住宅には相当国民の税金が支出されておるのです。従って、その国民の税金の恩恵を低額所得者の方が受けておるわけなんです。その受けておるという考え方を、もう少し私は持ってもらっていいんじゃないか、こういう気持がいたします。これは、憲法の中にも、人間の個人の権利の規定もあれば、義務の規定もあります。当然この公営住宅の中には、国民の税金によって相当恩恵をこうむっておるのでありますから、その所得も相当ふえた方は、また所得の足らない、住宅に困っている人があられるのであるからして、自分もそういう人のために、ある高い住宅自分の方から直っていくというふうにお考えになるのは、自然でなければならないと思っておるし、また政府の施策としては、やはり一面はそういうことも考えていっていいんじゃないか。ただ自分公営住宅に入る資格があるんだ、自分が入ったのは当然の権利だという、こういう権利的な考え方のみを強く持たれて、一般住宅に不足しておる、悩んでおる低額所得者のためにも、公共的な立場において考えなければならぬという考え方は、非常に少いのじゃないかというようなことも、私は意見を聞いておって察知するのですが、こういうような権利と義務という関係の考え方が、憲法の基本的な考え方の中にもあると同様に、私はそういうことも、一面やはりこの公営住宅入っておる方々がお考え願うことが至当ではなかろうか。政府の今回の改正の意図の中には、そういう面も多少あるのではないか、またあっていいのではないかというふうにも私は考えるわけですが、この点について、どういうふうにお考えになりますか。  第三点は割増金、これは、一体ほんとうの法律上の家賃考えるべきかどうか、法制局の方もおられますが、この点なんです。私は、先ほど申しましたように、公団住宅とか、あるいは公庫住宅というものは、相当民間資金も借りておるわけですから、そういう一般の民間の家賃なんかの考え方と、公営住宅に対する今回政府が考えております割増金というような家賃的なものの考え方とは、少し考えを変えていくべきではないか、こういうふうに考えるのですが、これは、法律上割り切って家賃考えるべきか、あるいは私が今申し上げましたようなことを、多少加味して考えるのが至当か、この三点だけをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  66. 有泉亨

    有泉参考人 これは、建設省の住宅局長の方からお答えいただいた方がいいと思いますけれども、正確には存じませんが、住宅対策審議会には、労働組合の代表者が二人か出ておりまして、それで、ほかに出られた委員も、明け渡すというのはずいぶん大へんなことではないかという議論をいたしました。ですから、そこでの議論は十分でなかったとは思いません。そうしていろいろの説を建設省の方で参考にされ、あるいは答申などを参考にされながら出したので、今度の立ちのきについては、非常に含みのあるような規定になったものだと思います。私自身は、少し強硬論の方だったのですが、ただ、さっき、一点くらいは関係の方にいろいろ考えを伺えばよかったなと思いましたから、そういうことを申し上げたのであります。  それから公営住宅は、公団や公庫で建てた協会住宅などとも違うし、一般の貸家とも違うという点は、おっしゃる通りだと思う。日本の公営住宅は、ことにそうだという気がするのですが、外国の場合は、公営住宅でも、実はコマーシャル・ベースで家賃がきまっておって、それに家賃補助というような格好にいっておると思うのです。ですから、一定の利回りで計算しておいて、それが払えない人には金を出してやるという格好、そういうのを入れますから、困っている間は金を出してやる、困らないということならば普通の家賃になってしまって、あとに待っている人のウエーティング・リストで、待っている人の数などもそれほどひどくないので、明け渡しということにはなってないと思います。日本の場合、特殊な事情があるように思うのです。ただ公営住宅公団住宅その他のものとでは、今の現実の仕組みは非常に違う、こう思います。  それから割増し家賃ということについてですが、私はある意味では、先ほどほかの委員の方からお話があったように、大へん重要な問題を提起しておる。収入に応じて家賃を払う、こういうアイデアが入ってきておる。そのこと自体を私はいいことだと考えますので、詳しい法律論、テクニック、たとえば今取っている家賃が使用料であるのか、家賃であるのかということには議論があります。従って、今払っているのが家賃なのかどうかという議論もあるのですけれども、その辺を一応どっちかきめますと、それがそうなら、割増しのものも同じ性質だろうと私は思います。性質がここで特に変るとは思わない。ここで割増し家賃だけが特に特別な性質でないということは、逆に言えば、収入に応じて家賃を取るというアイデアがここに入ってきて、画期的な法律になる、こういうふうに考えます。
  67. 堀川恭平

    堀川委員長 参考人方々には、長時間ありがとうございました。  本日はこの程度にいたしまして、次会は明十八日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時二十一分散会