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1959-02-06 第31回国会 衆議院 議院運営委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月六日(金曜日)     午後三時三十三分開議  出席委員    委員長 江崎 真澄君    理事 荒舩清十郎君 理事 松澤 雄藏君    理事 三和 精一君 理事 山村新治郎君    理事 池田 禎治君 理事 佐々木良作君    理事 山本 幸一君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       佐々木盛雄君    佐藤虎次郎君       原田  憲君    福家 俊一君       毛利 松平君    木下  哲君       小林  進君    小牧 次生君       下平 正一君    八木  昇君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         大蔵政務次官  山中 貞則君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君  委員外出席者         議     長 加藤鐐五郎君         副  議  長 正木  清君         事 務 総 長 鈴木 隆夫君     ————————————— 二月六日  委員古川丈吉辞任につき、その補欠として福  家俊一君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員福家俊一辞任につき、その補欠として古  川丈吉君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  決議案取扱の件  本会議において趣旨説明を聴取する議案の件  昭和三十四年度一般会計予算補正(第1号)の  取扱の件  次回の本会議等の件      ————◇—————
  2. 江崎真澄

    江崎委員長 これより会議を開きます。  日本社会党河野密君外十二名から提出されました、国際労働条約第八十七号批准に関する決議案取扱いについてでありますが、本決議案取扱いにつきましては、前回の委員会においては留保となっております。いかがいたしまするか、御協議を願います。  この際、倉石労働大臣が出席されておりますが、関連して御質問がございますか。
  3. 八木昇

    八木(昇)委員 議運委員会でございますので、あまりILO問題の中味に深く立ち入って御質問したいとは思わないのでございますけれでも、二、三点について、ちょっとお伺いしたいと思います。  ILOの八十七号条約批准問題に関しましては、もうすでに国際的には二年近く問題になっておるんだと思うのです。それで、労働大臣御自身としてはどういうお考えなんでしょうか、今国会中にこの批准をおやりになるお考えであるかどうか、端的にそれをお伺いしたいと思います。非常におくれているものですから、私どもも、がまんがならないようなわけで、やむなく決議案を提出しているという事情でございます。
  4. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お尋ねの八十七号条約につきましては、労働大臣諮問機関であります労働問題懇談会相談をかけておって、それは前内閣の石田労働大臣のときでありますが、その答申を待って、政府はその意見を尊重して政府考え方をきめたい、こういう方針であります。仄聞するところによりますと、その総会答申というものは、今月の十八日か十九日に総会が行われて、大体結論が出るだろう、こういうふうに聞いております。それで政府としては、やはり専門家集まりである労働問題懇談会結論を尊重して態度をきめるという考えでありますから、私どもは、それが出るまでは何とも申し上げかねる、こういうことであります。
  5. 八木昇

    八木(昇)委員 そういうお答えでは、実は非常に不満なわけなんです。といいますのは、これが国際的に問題になりましたのは、もう一昨年の六月のILO総会であると思います。そのときに、すでに政府相当はっきりした言質をこの総会で与えておるわけです。条約批准については、労使とも相談をして検討するという趣旨にのっとって、労働問題懇談会を作って善処したい、それから時を経ること一年七カ月以上です。こういうような事情にあるわけです。そこで、ILOの八十七号条約というものは、一番中心的な条約であって、今日国内の各界どこを見ましても、八十七号条約批准そのものについて異論を唱えている向きはほとんどないと思う。これに関連して国内法を一体どういうふうに整備すればいいかということについては、若干議論が分れておることは事実でございます。そういう意味からいけば、これは、どうしても今国会批准をしないということになりますれば、途中で臨時国会があるかどうか、かりにあるとしましても、相当先へ延びていくということになるわけでありますが、その点はどういうふうにお考えですか。労懇結論はともかく、八十七号条約批准について何か異論を差しはさむような結論が出てくるということは、全然あり得ないわけです。その点一つ明確にしていただきたいと思います。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 今のお話の中で、労働問題懇談会というのは、八十七号条約が問題になったから作ったものではないのでありまして、これは、たしか小坂労働大臣のころできたのであります。それが中絶しておったのを、私のこの前の任期のときにこれをまた復活しておる。そうして労政一般について相談をいたしておったのであります。たまたま八十七号条約の問題について政府検討を要するということで、石田労働大臣が付託した、こういうことであります。そこで、今懇談会結論がもうどういうものが出るかわかっているんだというお話でありましたけれども、それは初耳でありまして、私には全然どういうものが出るか、そんたくを許さないことであります。昨日も予算委員会で、もう結論はわかっているではないかという話でありましたが、子供が生まれない前に、男が生まれるのか女が生まれるのかそれはわからない、やはり出てからきめるべきものである、そういうことでありますから、やはり結論が出てみませんと、前大臣以来申し上げておりましたような、政府としての結論をつけるわけにいかないし、また批准手続は御承知のように国会承認を求めるということでありますから、そのためには、結論が出ましたときには、これは内輪のことではありますけれども専門家の皆さんの前ですから率直に申し上げますならば、やはり政府の与党の方々にも一応御相談をかけて、そこで承認を受くべき多数の人々了解を得るということでなければ、手続は進行いたしませんから、どういう結論が出るか、出たものによって一つ相談をして、政府態度決定したい、こういうことを言っております。
  7. 八木昇

    八木(昇)委員 それは、言葉の先だけでの弁解はいろいろございますでしょう。しかし、八十七号条約批准しなければならぬという内外の状態へきておることは、だれの目にももう明らかなんです。同時に、かの公労法の四条三項でございますか、これを削除したり、そういったふうのことは——だれかれを問わず、そこら辺の結論は、全然論議のないところであることは、ごく客観的に見て実は明らかだと思う。  そこでもう一点お伺いしたいのは、今日本政府のやり方は、国際的に全く孤立化し、国際的に非常な非難を浴びているという点について、一体道義的にどういう心理状態でおられるのか、私どもちょっと了解に苦しむのです。と申しますのは、御承知のように、去年になりますが、十一月の例の百四十回の理事会でもって決議が採択をされて、非常に強い抗議的な申し入れが向うから日本政府へきておるわけです。さらに重要なのは、今年の六月の総会で、ILO理事会議長候補に、ジュネーヴの日本河崎公使が一人立候補をされておるやに聞いておる。ところが、八十七号条約批准しないような日本政府が、こういう候補を立ててきても、少くとも労働者側は一致してこれに対しては反対をするということを、イギリスの代表のロバート氏ですか、から提案があって、すでにその態度決定をしておるわけであります。しかも、理事会議長候補は、河崎氏のほかにはどこも立っておらない。こういう状態考えますと、非常な醜態をそのときにさらすということは、実は明らかであろうと思うわけです。それと同時に、今月の二十六日にも、再度自由人権委員会が開かれて、日本政府態度について相当激しい究明が行われるということも聞いておるわけですが、そういうふうな状況に対して、政府は一対どういうお考えを持っておられるのか、この際、一つはっきりしていただきたいと思います。
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ほかの委員会でもなかったような専門的なお尋ねでありますが、大体今日のILOに参加している国は、八十カ国であります。その勧告、それから条約等で約百近いものがある。数ははっきり記憶しておりませんが、その八十カ国の中で、その参加している条約批准した、平均率は二三・一、すなわち二十三条約というわけであります。日本は、二十四条約批准しており、八十カ国の中で、上から四番目ですか、五番目ですかに批准をしておるわけであります。アメリカのごときは、七つしか批准しておりません。もちろん、今の問題の八十七号条約批准もしておりませんけれども国際信義に反するとか何とかいって、特にアメリカが攻撃を受けているという事例は、御承知のようにありません。アメリカ批准しないというのは、州法に抵触するということで困っているようなわけでありますが、われわれは、そういうことは一つ参考資料に過ぎないので、原則としては、政府がしばしば申しておりますように、ILO機構には全面的に協力するという建前をとっておりますし、昨年、一昨年もすでに二つの条約の寄託をいたしておるようなわけであります。そこで原則的には、できるだけ多く条約批准したい。ただしかし、御承知のように、本条約八十七号というものは、日本が脱退しておる最中に締結された条約でありますが、その後終戦後に復帰をいたしまして、その復帰に際しましては、われわれはできるだけ協力したいという建前をとっておるのでありますから、できるだけ批准をしたい。そういう意味労働問題懇談会に付議をした、こういうことでありますが、御承知のように、この八十七号条約というのは、労働者が自由に団結する権限を制限してはならない、こういう趣旨であります。もちろん、日本では民間産業はそういう制限はありませんが、公共企業体労働者というものは、四条三項で、その企業従業員でなければ組合員になれない。従って、役員にもなれない。私ども終戦後代議士になりました当時、公労法が制定されますときの現状というものは、原案の中には本来四条三項みたいなものはなかったのであります。あの公労法制定のときに、よく八木さん御存じだと思いますが、いわゆる二・一ストのあとを受けたマッカーサー声明によって、公企体というものがでぎて、急いで公共企業体等労働関係法というものができた。そのときに原案になかったのに、それを入れるようになりましたのは、国鉄経営者も当時の労働組合国鉄従業員も、ともどもにこれは入れてもらいたいという要望があって、その当時は労働委員会でありますが、労働委員会でああいうものが入るようになった。その趣旨は、当時レッド・パージでパージされました共産党が、非常国鉄労組に強かった。それで民同派でありました当時の国鉄労働組合幹部は、どうしてもこういうものは排除する方がいいんだという考え方に立って、経営者とともどもわれわれにあれはある方がいいんだという主張をされた。それで、私どもは四条三項というものを入れました。その後しかしわれわれは、労働法体系全般から見て、今までいろいろあれには疑義もありましたけれども、そのままになっておりました。八十七号条約を研究してきて、これはやはり何とかしなければなるまいというので、一昨年公労法改正のときにも問題になったのでありますが、当時はまだこれは置く方がいいということでありました。最近になりまして、公共企業体等従業員諸君の中で、違法行為があったということで解雇された者、この人たちが解雇されると組合に残れないということで、こういう方々から、まず、その外の方のILO条約というものの批准が行われれば、解雇された三役も組合役員として残っていられるんだというふうな見地に立って、非常にこれが強く要望されるようになってきた。現実の姿はそういうことであります。そのことのいい悪いということは別問題として、政府はやはり八十七号条約というふうなものも、でき得べくんば早く批准をした方がいいという考え方は持っておるわけでありますけれども、それにしても、先ほどちょっとお触れになりました公労法等関係もありますので、やはり専門家集まりである労働問題懇談会の御意見を承わって、それを尊重して政府の腹をきめたい、こういうことでありますから、時間がかかっておりましても、それは、非常に専門家たちが熱心に二年あまり検討を続けてくれた、その結論が本月中に出る、こういうわけでありますから、私どもとしては、その出るのを待って善処いたしたい、こういうふうに考えております。
  9. 八木昇

    八木(昇)委員 私がお伺いしたい点は、今いろいろと労働大臣が言われましたけれども、実際戦後このILO日本が入ることについて非常な努力をしたところの国際自由労連オルデンプルーク書記長あたりが、非常に非難をしておるんですね。国際自由労連は、イギリスとかアメリカ労働組合が大体主勢力になっておって、労働大臣としては、国際労働戦線としては自由労連の方を好ましく思っておられるだろうと思うのですけれども、これが非常に激しい非難をしておられる。特にIO条約の中で、八十七号条約というのは基本的なものであって、ほかのものは、その国の実状によって多少のずれがございますけれども、八十七号は各国とも早急に批准すべきであるという決議に当って、世界各国が全部賛成をしたのに、日本河崎公使がたった一人棄権をしたなんというのは、まことに醜態ではございませんか。ですから、そういう点からいいましても、これは早急にやっていただかなければならぬ。そこで伺いたい点は、労懇結論を待つ待つと言われるのですが、それでは、その労懇結論が出たならば、その線に沿って、幸いこの国会は五月の初旬まであるのですから、この国会中に批准、並びにできれば国内法の可能な部分から、その整備を終るということをやるお考えでございますか。
  10. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 その労懇というものの答申が、どういう形でどういうことをいってくるか、われわれは全然わからないのであります。従って、それを拝見した上で、政府としての態度決定したい。二年もやっておって、今月その結論が出るというのですから、そこで、私どもはその結論を待って、どういうものが出るかによって、政府として態度決定したい、こういうわけであります。
  11. 八木昇

    八木(昇)委員 そういう政府態度であるから、われわれは決議案を出さざるを得ないのです。  それでは最後に一点伺いますが、もしこの国会批准並びに国内法整備ができなかった場合に、ここまで国際情勢がなってきているのに、これから先、一体どうして政府はそういう国際情勢の中を通り抜けようとされるのであるか、そういう御自信が何かおありですか。
  12. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御承知のように、結社の自由委員会で、日本法律の中には、労働者の自由なる団結を阻害するおそれのあるものがある、こういうものについては注意を喚起するという委員会の御決議があって、それを理事会提案された。理事会はそれを採択した。それで、日本政府に向って理事会から、目下ILO条約八十七号に関して労働問題懇談会というものに付議しているそうだから、その結論が出たならば理事会に通報してもらいたい、こういうことを言ってきておられます。今あなたのお話は、何か国際的に非常に悪いことでもしておって、日本が糾弾されているようなお話でありますけれども、私どもは、さように理解しておらないのであります。それで、今の労働問題懇談会結論が出たらそれを通報せよということを、ILO事務局から言ってきていることに対しては、忠実にこれを通報すると同時に、私どもは、原則としてILO条約はできるだけ一つでも多く批准したいという精神でありますから、そういう精神にのっとって、労懇答申を尊重して態度決定したい、こういうわけでありますから、御了承願いたい。
  13. 小林進

    小林(進)委員 ここでは、決議案取扱いについて労働大臣気持を聞きたいというのですから、内容問題には私は触れませんけれども、今度の国会でも、本会議場で山花さんが質問しておる。予算委員会でも、きのうからやっておる。社会労働委員会でもやっておる。みなあなたの答弁は、労懇答申によってきめる、今白紙だとおっしゃるのですが、この国会だけでも三回、去年の三月の二十八日の国会でも、総理大臣みずからが、やはり労懇結論に基いて直ちにきめますよと言った。労懇結論はいつごろ出るのだと聞くと、おそくも八月には出るはずですから、早急にやりますということを総理大臣みずからが言っておる。これは国内の問題ならいいけれども、国際的な事案だから、総理大臣労働大臣が、労懇結論がすぐ出るような話をしながら、一年も二年もそれをずるずる持ってきて、今度の国会になったら、本会議でも、予算委員会でも、社会労働委員会でも、みなこね回しているのに、議運でもそういう通り一ぺんのごあいさつでは、われわれは了承できない。議運では、手続を聞いているのです。各委員会でもみ合っている問題を受けて、あなたの腹を聞いている。こういう決議案は取り下げた方が、国際的に映りもよし、世間の映りもいいから、すなおにやっていきたいが、しかし、あなたが言われるように、労懇に名をかりて、去年の八月ごろ出ますという総理大臣言葉であったが、この先また一年も二年も引っぱられるというような、そういう悪意のある考え方でおやりになるならば、われわれは、いやでもこの決議案をここできめてもらって、本会議でやらなければならぬ。ほんとうにあなたの心の底から、今度は本式でやりますから、決議案をお出しにならなくてもいいという、何かわれわれにヒントを与えるような言葉が得られるなら、われわれはこの手続を省略していきたい、こういうことできょう議運に来ていただいているのですから、予算委員会や本会議における通り一ぺんの答弁でなしに、議運に来たら議運らしい答弁をして下さい。
  14. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 一年も二年も引っぱるというお話でありましたが、小林さんもよく御存じのように、私は、いつ出るなんということを申したこともありません。同時にまた、今度は二月十八日か十九日に総会を開く。御承知のように中山伊知郎君が会長であって、いわゆる第三者的な人々、総評の太田議長メンバーでありますし、全労会議の和田君もメンバーである。労働関係については斯界の大家ばかり集めて、その人たちが御都合でいろいろに日をきめられて今日に至っているのでありまして、政府は、いつやれとかなんとか、そういうことを干渉すべき権能も全然ありませんし、また、先生方に全く一任しているのでありまして、しかも、先ほど八木さんからも、あなたからも、答申は大体きまっているようなことをおっしゃいますけれども、裁判所の判決みたいなものをわれわれがそんたくするというわけにいきませんので、出たら尊重して態度決定する、こういうのでありますから……。
  15. 小林進

    小林(進)委員 ともかく、あなたは労懇が何か絶対的なものであるようにおっしゃいますけれども、これはあなたの一つ諮問機関です。こんなものは、あなたが事を決意されるときの参考資料を作るだけにすぎない。だから、それを隠れみのにして、何か絶対的なものであるようにおっしゃることもいかぬし、しかも、その内容を聞けば、中山さんは会長立場で、あなたの気持にどうもひもをつけられたような、非常に進退両難に陥って困っているということですけれども、あなたが気に入って、新たに任命された前田多聞さんも、もはや世界情勢が今日ここにきているのであるから、早急にこれは批准をすべきであるという強硬な意見を吐いておられる。われわれのところにも入っているくらいですから、あなたのところには全部入っているはずです。まして、今太田君や労働組合幹部諸君が、何もこの批准をちゅうちょするわけはない。それは三拝九拝、手を合せて拝んででも早く批准してもらいたい気持でいることはわかっておると思う。労懇結論は、その意味においてもわかっておる。わからないのはあなたのなまぬるい気持だけなんですから、その気持を明確に示してもらいたい。大臣に、私は労懇結論を聞いているんじゃない。あなたの決意をここで聞かしてもらいたい。それによって私ども議運態度決定したい、こういうのであります。
  16. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 かつて数年前に米窪滿亮君と私と提案者になりまして、ILO条約はあとう限り数多くすみやかに批准すべしという決議案を衆議院で提案いたしまして、その趣旨説明を私がやったのであります。個人的に考えてみましたならば、政府立場を離れても、ILO条約はやはりできるだけ批准して協力すべきだという信念に変りはないのでありますが、前大臣のときに、とにかく労働問題懇談会という、権威者がそろったものがあるのだから、そこで御相談をしてもらおうということで付議して、今日に至っているのでありまして、もういよいよ生まれる月がここに来ているのです。その生まれたものを見てから、名前をつけたり、将来の方針をきめる、こういうことは当りまえなことではないか。どういうものが出るだろうから、どういうことをするなんという——第一出るものはもちろんわかりませんし、どういうものが出たらどうするなんということを労働大臣として言うことは、はなはだ失礼でありますから、前々から申し上げているように、その趣旨を尊重して態度決定する、これで一つ御了承願います。
  17. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 関連しますけれども倉石さんは趣旨賛成だというお話だが、政府関係なしに議会というものは意思を議決できるわけですから、もしこの決議案が出ましたら、あなたはどういう態度をとられますか。
  18. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私は、国会意思というものはもちろん尊重すべきものであると思いますから、それに従うのは当りまえでありますけれども、やはり私ども気持から申しますと、せっかく今まで正常な労働運動というものをうまくやっていこうということで労懇が努力しているのでありますから、それが無期限でどうなるかわからぬということではないのでありまして、十八、九日に態度決定することになっているという報告を受けているものですから、それを待って善処したい、そういう考えであります。
  19. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 大臣としてのお立場はそうでしょう。しかし、もしこの決議案がここに提案されたら、大臣立場とは別に、今度は議員としてどういう態度をとられるわけですか。
  20. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 議員としては、やはりそれぞれの機関もありましょうから、その議場においての処置は、党の決定に従うつもりであります。
  21. 池田禎治

    池田(禎)委員 労働大臣にはなはだどうも恐縮ですが、労働問題懇談会というのは、何でやっているのですか。法律ですか。
  22. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは、さっき申しましたように、小坂労働大臣の時代に、労政一般についてときどき難問題がありますから、そういうときには一つ相談を願う、しかも労使、公益、三者の権威者を集めてやるわけでありますから、労働大臣諮問機関として労働省にあるわけであります。
  23. 池田禎治

    池田(禎)委員 何か省令というものでもないのですか。
  24. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 はっきりは存じませんけれども、これは法律による審議会ではないわけです。
  25. 池田禎治

    池田(禎)委員 今、あなたのお答えとしてはまことにそつのないお答えをなさいましたけれども、そういうものであるとするならば、これは重大な疑問がある。あなたほどの労働行政の権威ある人が、労懇に名をかりて、一年でも二年でも、結論が出るまでは、——そういうことは詭弁です。政府の特殊な事情において、これはどうしなければならぬという意思表示をなさるなら、それは正直でいいと思う。私も、率直に言って、今月の十八日とか十九日に労懇結論を出すというなら、そうやいやい言いませんけれども政府は、総理であろうと、労働大臣であろうと、歴代の方が、国際条約批准については誠意を持って尊重していかなければならぬということを唱えておる。そうだとするならば、その精神を行動の上に起さなければだめです。たとい労懇が第三者をもって構成されるといえども、内容についてどうせよとあなた方が指示せぬでも、結論を急いでくれと言うことは、決して不可能ではない。それは干渉することではない。あなたの先ほど来のお話を聞いていると、きわめてそつのない御答弁ではあるけれども、ちっとも誠意がない答弁である。そういうことでは困る。十八日か十九日というものを、今さら急げとは言いませんけれども、今言っているそのお考え方なり答弁というものは、労懇に名をかりて、労働行政の責任あるものが、何ら責任をもっておらない。これは少しも怠慢ではないか。ただ、それが非常に長年月を要する問題であるとするならば、これは私もあえて言いません。けれども、機会あるごとに、政府あるいは労働大臣は、この国際条約批准については尊重するということを申し述べてきた。言葉の上ではそうであって、行動の上では何らこれを尊重していないというところに、議論が出る。この点は、将来といえどもそういう怠慢なことだけは、あなたは率直に認めなければならぬ。労懇結論がなければやらないというのでは、極端な議論をするならば、労懇がもう一年先に延ばしたとすればどうしますか。これを待望している人々ないし国際信義の上からいっても、これをやらなければならぬということを主張しているのである。そうでない、政府の見解は違う、こういう条約は別に急がないのだ、尊重する必要はないのだというのなら、所見が違うのですから、これはいい。全く同感でございますと言いながら、その実においては、労懇に名をかりて、その結論政府みずからの自主性のあるものを出さないということは、これは権威ある労働大臣としては、きわめて首尾一貫せざる御答弁だと私は思う。いかがですか。
  26. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 皆さんお忙しくて、労働問題だけに専念しておいでになりませんで、この問題だけすっと取り上げられると、そういうふうに映るかもしれませんけれども、これは私の時代になって討議したものではなくて、前大臣のときから検討しておるのであります。しかも、御承知のように、石井東大教授が小委員長になりまして、これもやはり労働組合連合体の責任者なども参加して、石井小委員長報告というものが先般提出されているのであります。そういうことについて、総会にそういうものが提案される前には、それぞれ組合立場経営者立場、公益委員立場で、総会においてどういうことを論議するかということを検討もしておられるようでありますから、私は、それに名をかりてということでないのでありまして、これはできるだけすみやかに議決をしてもらって、われわれに聞かしてもらいたい。石井報告を読んで見ましても、かりに批准をするとなれば、どういうふうなことをやらなければならないかということについて、いろいろ参考意見を出しておられますから、やはりああいう権威者に十分な御検討を願って、そうしてわれわれのような不勉強な労働大臣というものは、それを参考にして勉強していく、こういうのでありますから、労懇結論を待って政府は善処いたしたい、こういうふうに考えております。
  27. 池田禎治

    池田(禎)委員 労懇が、十八日か十九日に総会を開いて、そこで結論を出すということは明確ですか。あなたの先ほどのきわめて巧妙な御答弁では、仄聞するところによるとというようなお話ですが、見通しはどうですか。
  28. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 この間石井小委員長の報告がありましたときに、承わりますと、この次の総会はいつやろうかということの相談があったそうでありますが、当初二十日という話があったそうです。ところが、国会も開かれていることだし、でき得べくんば一日も早い方を望む、こういうようなことをお願いして、結局、それじゃ万障繰り合せて十八日ごろにやりたい、こういうことのようでありますから、大体そこでは結論が出て、答申がなされるのではないか、こういうふうに考えております。
  29. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 ただいま労働大臣の御答弁で、大体今月中には労働問題懇談会結論が出るとみてよろしゅうございますか。
  30. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 大体そうだと思います。
  31. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 そこで社会党さんに申し上げますが、今月には出るという見通しだ、こういうことでございますから、それによって、わが党といたしましては、なるべく早く結論を出していただきまして、批准をしていただきたい、こう希望いたします。そういうことでございますから、どうぞこの決議案取扱いは、それまで保留せられますことを社会党さんにお願いしたいと思います。
  32. 池田禎治

    池田(禎)委員 労働大臣には、私ども手続上の問題を伺っているのであって、その労働大臣答弁を満足するかどうかについては、これは本院がぎめることですから、この点は、あらためて私の方は党として相談した上で態度をきめたいと思います。
  33. 江崎真澄

    江崎委員長 それでは、だんだんの御質疑もございましたが、本決議案は、本日のところ留保することにいたしたいと思います。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 江崎真澄

    江崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  35. 江崎真澄

    江崎委員長 次に、本会議において趣旨説明を聴取する議案についてでありますが、日本社会党から申し出のありました、内閣提出にかかる物品税法の一部を改正する法律案につきましては、前回の委員会において留保となっておりましたが、いかがいたしますか、御協議を願います。
  36. 池田禎治

    池田(禎)委員 わが党といたしましては、これは今国会における重要法案の一つであると思いまして、当然本会議において、政府趣旨説明を伺い、わが党から質問を出したい、こういう強い要望があります。これは、本日の国会対策におきましても、重ねて確認をされたことでありますので、私どもとしては、話い合いをもって譲歩する、そういうことは今日もはや不可能な状態であります。どうしても自由民主党の方でそれは認めないというなら、私ども残念ながら、採決をもってしてでもこのことの可否を明らかにしてもらわないと、話し合いをもって譲るというわけに参りません。
  37. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 おそらく荒舩理事から、本会議説明は反対だというお説があると予測して言うのですが、実は御承知のように、この物品税の改正については三年越しの問題なんです。これは両党で非常に問題になって、私もその一人ですが、結局政府と両党との束で、ほんとうは昨年物品税改正が行われるはずであったが、それが一年延びてきた。しかも、この物品税改正に伴う関係者というのは、中小企業者、商売人全部ですから、実に膨大な人数です。それでこういう問題は、特に委員会でももちろん慎重審議をやってもらわなければなりませんが、政府態度を本会議を通じて明確にして、やはりこれが国会においても非常に重要な問題として扱われたということが、国民の何人にも知られることの方が、自民党も社会党も得策なんですね。国会で、これはこれほど重要に扱ってくれているのだ、われわれの要求を非常に重要に扱ってくれているのだという意味で、国民に選ばれたわれわれがそういう意思表示をしてやった方がいいことなんですよ。その意味において、荒舩さんは反対の意見を出されるだろうが、ぜひ一つ御了承を願いたいと思う。
  38. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 ただいま山本さんから、きわめてりっぱなお言葉がございましたが、これはそれぞれの委員会で研究されておるし、議論もあることであろうと思いますので、あらためて趣旨説明を本会議で聴取するという必要は、わが党としてはない、こう思いますので、採決でなく、でき得れば、一つこれはぜひおやめ願うようにお願いしたいと思います。
  39. 山村新治郎

    ○山村(新)委員 この問題につきましては、昨日の委員会におきましても、両党の意見が述べられましたが、私ども、いずれの法案も重要ならざる法案は一つもないと考えております。従って、どの法案も軽重はなかなかつけがたい問題でございますが、ただ、本会議において趣旨説明をするという問題になりますと、おのずから政治常識上程度がありまして、この程度のものをやりますと、ほとんどの法案を本会議上において説明をしなければならぬという結果に相なるおそれがございます。そうなりますと、せっかく国会の正常化が叫ばれておる折柄、国会の権威にもかかわることでございますから、ぜひこの点は、一つわが党の委員の主張するように、社会党の方でも折れていただきたいと思います。どうしても社会党として話し合いができないといたしますれば、この程度で採決に入りまして、きめていただきたいと思います。この法案に対する趣旨説明を聴取することには、わが党といたしましては反対でございます、こういうことを申し上げておきます。
  40. 池田禎治

    池田(禎)委員 これは、きのう議論をして、その間にわれわれの方もずいぶんお願いをしたのですが、与党の方でお聞き入れがなかったのですから、これ以上は、譲り合うという形でいくならば、われわれは残念ながらできない。それはいいのですが、こういう趣旨のものを本会議に上程すると、国会の権威にかかわるとか、国会の正常化にどうとか、そういうことは、私は一言訂正を求めておかなければならぬ。国会の正常化ということは、いわゆる混乱に陥るというようなことを避けるために行われた事柄であって、国会の権威というならば、私は、できるだけのものを本会議でやって、そうして言論の府としての事実を示すということが当然だと思う。私は、採決で敗れることはやむを得ませんが、国会の正常化の美名に名をかりて、言論の府たるものが言論を抑圧するがごときことは、私どもとしては同意のできない点でございますから、この点だけは私は強く申し上げておきます。
  41. 山村新治郎

    ○山村(新)委員 池田さんのただいまのお話は、一応ごもっともでございますが、実際問題といたしまして、各種の法案を全部本会議において趣旨説明をするということになると、本会議の権威というものがなくなってくることは当然でございますから、その見地から私は申し上げたのでございまして、私といたしましては、その立場を取り消すつもりはございません。しかし、別に大きな考えの隔たりはないようでございますから、ここで直ちに採決によって決せられるように願います。
  42. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それは工合が悪い。社会党は、これまでも御承知のように、重要だと思って、そうして特に国民のためにこれは説明を行なった方がいいというものについて、要求をしておる。片っ端から言うておるのではない。先ほど池田さんが言うたように、本来、重要なものは趣旨説明をするのが筋なんでしょう。だから、特別に趣旨説明をしてはならない、趣旨説明はしたくないという理由があるならば、私どもを納得させるような説明を承わって初めてわれわれがおり得るか、おり得ないかということになるわけです。だから、筋道が完全にさかさまですから、われわれを納得させるように説明して下さい。
  43. 山村新治郎

    ○山村(新)委員 私は、さかさまではないかと思います。委員会においても、十分趣旨説明はできると思います。元来、今の国会委員会中心主義です。そういう点からいいますと、本会議でもってむやみに趣旨説明を求めるということになると、かえって国会が混乱に陥る危険が多分にある。その意味において、ただいま申し上げたことは、何ら取り消すことはいたしません。
  44. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 この問題はいろいろ議論のやりとりもあるようでございますが、この法案もきわめて重要な法案だと思います。しかし、委員会の制度がございまして、委員会で十分政府趣旨を述べ、あるいは質問を願ってやられることをお願いしたいと思いまして、この問題につきましては、遺憾ながら社会党さんと意見が違うようでございます。はなはだ不本意ですが、どうぞ採決によっておきめ願いたいと思います。
  45. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 採決は反対しませんが、これは一つ山村さんに聞いてもらいたいのですが、重要法案という定義ですね。大野伴睦さんが議長のときに本会議趣旨説明の再度の道を開いたのですが、重要法案という定義は、なかなか問題があるわけです。これは、法律が大きいからとか小さいからとか、あるいは予算を伴う関係が非常に大きいとか、予算を伴っていないとか、そういうことでなしに、解釈の仕方があると思います。私の一般的な、常識的な解釈でいけば、やはりこの間の警職法のうよな、砕いて言えば、国民生活に重大な関連のあるもの、あるいは法律が非常に大きくて、全議員になるべく周知徹底させた方がいいもの——もちろん、これは委員会で審議しますよ。それから、議員の手元には法律案が配られますよ。先ほどの倉石労働大臣ではないが、あなた方は非常に御多忙で、労働問題については、あまり研究をしておられぬというようなお言葉があった。私は、それは認められると思う。われわれは、それぞれの委員会において、それぞれ専門な仕事をしておるのですから、全部を知ることは容易でないと思います。従って、大きな法律案であるとか、複雑な内容を持った法律案であるとか、または国民の生活に重大な影響をもたらす法案は、本会議で内容を説明するのがあたりまえだと思う。その意味において、物品税は、複雑、多岐、広範にわたっておる。そういう点からいけば、専門的な委員会で議論はするけれども、全議員に、まず読むより先に聞かせる、それから読ませる、こういうやり方からいっても、まじめにこういう問題は取り上げるべきだ。しかし、あなた方が理屈抜きに反対されるならば、やむを得ません、採決も私は反対いたしません。ただし、原則論だけは認めてもらいたい。
  46. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 山本さんの御意見は、よくわかっております。また、物品税の改正ということは、非常に種類も多いし、多岐にわたることでありまして、これは決して重要法案でないとは、私は申し上げません。しかしながら、さっき申し上げるように、種類も多いし、多岐にわたることでございますから、十分一つ当該委員会におきまして御検討願う、こういうことにいたしまして、この趣旨説明を本会議において聴取するということは、ぜひ取りやめていただくようにお願いしたいと思います。不本意でも、採決できめることにお願いいたします。
  47. 江崎真澄

    江崎委員長 それでは、御意見が分れて一致しないようでありますから、やむを得ず採決をいたします。
  48. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 議事進行。今の問題に関連して、原則論が出ておりましたが、その原則論を一応話し合ったあとでなければ、筋が通らない。本会議趣旨説明を聞く案件についての原則が、自由民主党と社会党との間に根本的な違いがあるとするならば、そんなものは話し合いもへったくれもない。
  49. 江崎真澄

    江崎委員長 それは今荒船理事から、山本さんの発言は一応ごもっともだということで肯定されましたから、その言葉一つ了解を願っておきたいと思います。  それでは、やむを得ず採決をいたします。本件は、本会議においてその趣旨説明を聴取することに賛成の諸君の挙手を願います。     〔賛成者挙手〕     —————————————
  50. 江崎真澄

    江崎委員長 挙手少数。よって、本件については、本会議においてその趣旨説明を聴取しないことと決定いたしました。
  51. 江崎真澄

    江崎委員長 次に、昭和三十四年度一般会計予算補正第一号の取り扱いについてであります。昨日に引き続き御協議願います。この際、政府から佐藤大蔵大臣、山中大蔵政務次官、酒井為替局長、石原主計局長が出席いたされております。
  52. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 大蔵大臣に御質問を申し上げる前に、私はぜひ要望申し上げたいのですが、昨日会議熱心のあまり、予算委員会から引き戻すという両党の話し合いについてもまだ手続をしておりませんので、この際、前に委員長から、そういう点についての御報告を願いたいと思います。
  53. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 ただいま山本さんから御発言がございましたので、その点本委員会において議決を願いまして、取り戻すということに決定を願いたいと思います。わが党も賛成いたします。
  54. 江崎真澄

    江崎委員長 それでは、昭和三十四年度一般会計予算補正(第1号)の取り扱いにつきましては、これまでのお話し合いの経緯にかんがみまして、この際、議長においてその付託を取り戻されるようお取り計らい願うことといたしたいと存じます。御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 江崎真澄

    江崎委員長 御異議なしと認め、さように決定いたします。     —————————————
  56. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 大蔵大臣にきのうからの成り行き上お尋ねいたしますが、私もしろうとですから、従ってさらにくろうとの人から質問願えると思います。ただ、昨日官房長官から、今回の補正予算についての手続について、経過をお聞きしました。その経緯については、あまり私は間違いないと思う。ただ、問題として依然として残ったことは、これが適法なりやいなやという問題でありまして、そこで今お聞きのように、本委員会は正式に予算委員会付託を取り消して、あらためて、その取り扱いを協議するということになった。これはお聞きの通りです。それで私がまずお尋ねを申し上げたいことは、今後の補正予算は、財政法二十九条の規定によってあなたの方で手続をなさったのですが、まず第一に御質問申し上げることは、この財政法第二十九条の規定で手続をなさった場合に、昨年の十二月三十一日に閣議で御決定になった概算予算というものを根拠におやりになったのか、それとも、この一月二十三日予算作成のその日を根拠にしておやりになったのか、それをまず一つ伺いたいと思います。
  57. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大へん御迷惑をかけて、その点おわび申し上げます。申すまでもなく、予算編成には、概算も閣議決定をいたしますが、最終的には一月二十三日に編成いたしまして、また提出案件として決定をいたしまして、二十三日の最終閣議決定で予算ができ上ったのでございます。
  58. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 そうすると、今大蔵大臣承知通りに、予算編成上の根本的な原則は、財政法の十四条がこれを規定しております。これを読み上げますと「歳入歳出は、すべて、これを予算に編入しなければならない。」こう規定しております。これをさらに具体的に申し上げますならば、すなわち総計予算主義を明らかにしてもらうこと、これが第一の要件だと思うのです。従って、予算作成前の予見し得る一切の歳入歳出は、ことごとくその年度の予算に計上する必要がある。こういうことを財政法十四条は規定しておるわけです。その財政法十四条のいわゆる根本原則にのっとっていきますと、私は予算作成という言葉は、すなわち概算も含み、それから一月二十三日の作成も含んでおる。概算作成も含んでおるが、正式決定の作成も含んでおる、こう私は解釈しておるのですが、あなたの御意見はいかがですか。
  59. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 概算ももちろん含んでおりますし、また二十三日の最終決定—この二十三日に予算編成をいたします際は、ただいま申されるような原則にのっとって予算を編成いたすわけでございます。私は全くしろうとでございますから、その点はよく事務当局とも相談をいたしまして、その編成には誤りなきを期しておるのであります。
  60. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 そうすると、今大蔵大臣のお言葉で明確になったのですが、財政法の十四条の規定は、原則は、いわゆる予算作成という言葉は、概算も含んでおるのだ。  そこで、次にお尋ねしたいのですが、昨日も山中政務次官及び官房長官からそれぞれ御答弁をいただいたのでありますけれども、今回の国際通貨基金とそれから世銀の追加増資、これは御承知通り、昨年の十月すでに問題になっておりまして、それぞれ議論がせられておって、その結果十二月十九日の理事会でこれが取り上げられて、なお、二十九日に理事会はこの案の決定を確認いたしております。従って、日本が追加出資をする分については、一番おそくとも二十九日には予見し得たわけですね。予見し得たとするならば、なぜ当初予算に予見し得たことを組まれなかったのか、この点がまず第一に疑問が起きるのであります。
  61. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 問題は、ただいま御指摘になりましたように、予見し得た事項ではないか、また予見したらどうして一般本予算に組まないのかということだろうと思います。これは扱い方といたしまして、いろいろ私どもも苦心をいたした点でございます。実は大へん苦慮をいたしたのでございます。予算を二通り作ることも、また今回のようにすぐ引き続いて提案することも、これは異例です。また、事柄が事柄でありますだけに、どういうように処置したらいいか、実は相当工夫いたしたつもりであります。ことに今回の増資割当につきましては、日本としては相当多額の割当を引き受ける意向を事前に漏らしております。いわゆる平均のところではない割当まで要求をいたしておりますので、問題はそこにあるわけであります。今お話になりましたように、昨年の十月にインドで増資を決議し、それからさらにその増資の総会決議に基きまして、もう昨日もお話したことだと思いますが、十二月十九日に理事会が報告及び決議案を作り、十二月二十二日に、今度は各総務あてに、割当決定の投票開始の通知をしておるということでございます。日本賛成投票をいたしましたのは一月二十六日という経過でありますし、最後に一月二十九日になりまして——二十九日のところではまだ法定の投票数を得ておりませんが、三十一日になりますと、おおむね法定の投票率まで票を獲得ができたということでございます。この経過は、昨日詳しく申し上げたことだと思います。そこで私どもが非常に心配をいたしましたことは、ただいま申し上げますように、日本が非常に強く要望しておることで、できるだけ早く予算に計上することの方が日本の意向といいますか、これをはっきりさす上においても有効じゃないか、さらにまた財政法上の根本から見ても、それも差しつかえないことじゃないか、こういう議論も省内ではもちろんいたしたのであります。しかしながら、事柄がIMFや世銀でありますし、また参加国も非常に多いことでございます。しかも、日本が普通のクォーターより以上の割当を受けるということでございますので、事前にその種の手続をとるということは、加盟国に対しましても礼儀を失すことじゃないか。また、財政法的に考えてみますと、世銀がこれを決定したというだけで、もう予見し得る必要な支出だということも、やや早計な感じがする。はっきり申しますならば、五分の四なり、あるいは四分の三なりの投票数をIMFや世銀でとったときが、はっきり予算を提出するといいますか、組む義務を生ずるといいますか、そのときに確度とでも申しますか、これが非常に強くなる。予見はなるほどできますけれども、予見の確度を確かめるのには、この程度まで待つ方がよろしいんじゃないか、それが、同時に多数の参加国に対しましても、礼を失しないゆえんじゃないか。そこで、実は大へん手続は複雑になると考えましたが、やむを得ず、本予算に計上しないで、補正で組むことにいたしたのであります。  同時に、もう一つ御了承をお願いしたいのは、在来の補正予算が出ておりますのは、大体予算編成後に生じた事由によって補正予算を組みますけれども、本予算の総括質問の最中に補正予算を出したような例は、実はないのであります。ことに払い込みの実際の時期は相当おくれるのでありますから、十分審議をいただくといたしましても、総括質問中に出すということは一体どうだろうかということも、実は考えたのであります。先ほど来申しますように、IMFや世銀の多数の加盟国の諸君も賛成してくれたものだ、こういうことであれば、やはり事前からもいろいろの御議論があるようなことでもあるし、また異例には属することのようだが、予算編成後にはっきり生じた事由によって補正予算を組むんだから、これは一日も早く提案して、皆様の御審議も得、同時にまた関係諸国に対しても日本の熱意を示すことが本筋だろうというので、非常に率直な、実は編成なり取扱い方をいたしたわけであります。
  62. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 大蔵大臣はなかなか詳しく御説明をなされたわけですが、そこでちょっと簡単にお尋ねしたい。昨年十二月二十九日にIMFの理事会が増資案を決定したわけです。その結果、日本、西独、カナダ、これらの国に対して特別増資額が認められたことは間違いございませんね。
  63. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この理事会で増資の総額を決定した、そうして、それをどういうふうに割り振りをするかという案をきめたということでございます。
  64. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 ですから、その時に同時に日本や西独は、いわゆる特別増額を認められたわけですね。
  65. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 さようであります。
  66. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 今大蔵大臣の説明によると、さらに予見の確実性を見るために、二月二日の決定以後に出したんだ、こういうことですが、予見とは何ぞやということをお聞きしたいのです。
  67. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 なかなかむずかしいお尋ねのように私にもなにするのですが、法律的に考えますと、一応の準備があり、また同時に、私どもも強く希望しておるとすれば、この増資割当を受けるということは、一応予見できるといえるでしょう。ただ問題は、特別な増加割当を受け得るかどうかという問題が一つ残っておるのでございます。ことに当時の状況は、もっと率直に申しますと、日本に対する割当がそう簡単にすらすらと実はいったわけではないのでありまして、相当問題もあったのであります。従いまして、理事会決定だけでは、実は相当心配の面もなきにしもあらずということでございました。そういうこともさることですが、私どもが主として意を用いましたのは、この理事国の諸君も、非常に日本の扱い方について意を用いてくれておるようでございますし、特に日本の増加割当というものについては、在来の日本のグループであるセイロンやタイやビルマ等も、いろいろ意見を持っている問題でもありますので、事前にこれを刺激することは非常にまずいじゃないか、最終的な投票を得た、そう動かないところ、それまでは実はこれをしまっておく方が望ましいんじゃないかという感じを、実は強くいたしたわけであります。
  68. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 今の後段の話ですね。少しわかるようなわからぬような気もいたしますけれども、その前の前段の話ですね。私は、今適法であるか違法であるかという専門的な論争をしようとは思わないのです。ただ予算というものの常識的、原則的な考え方からしますと、大体予算編成の際に予見し得るものは、すべて本予算の中になるべく入れるようにするというのが、私は原則だと思うのです。従いまして、御承知のように、問題があるような賠償関係の費用なんかでも、もっともっと不確定なもの、もっともっと予見しがたいものも、大がい入れるわけですね。それであるのにかかわらず、どうして確からしさという点からいうならば、最も確からしい要素の整っておったものだと思われる—時間的にもっと先に起り得べきもの、及びその内容がなお予見しにくいものについても、今度の予算にも含まれておりますね。それであるのに、これだけを特別に切り離して、すぐ近いうちに、なお先のよりもっと明確にわかるようなものを、なぜここに抽出されたのか。国際的な、あるいはその他の関係で特別の理由があるならば、御説明願いたいのですけれども、確からしさという点からいわれるならば、どうも私は納得しがたいのです。
  69. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 佐々木さんの言われるように、予算編成はできるだけ総合的といいますか、総体のもので作るという原則は、私ども全然同感で、その考え方で予算の編成をいたしております。ただいま賠償の問題を例にあげられましたが、賠償の場合ですと、相手国に対して日本が賠償の義務をはっきり持っておりますし、賠償は、相手国に対する賠償協定から申しましても、当然予算に計上する責任があると思います。しかし、今度のこの点は、そういう意味佐々木さんも御了承だと思いますが、今回のIMFや世銀の増資割当になりますと、こういう権利義務の関係は、実はまだないわけであります。先ほど来問題になっております、理事会決定したと申しましても、理事会では総務会に諮る事務的な案を作ったというだけでありまして、本来の仕事は、総務会が決定する事柄でございます。そう考えて参りますと、理事会決定だけでは、私ども、当方の希望は希望ではございますが、もうすでに予算に計上すべき理由が非常にはっきりいたした、こういうことはいかがかと実は思うのです。これは大へんこまかな議論をしてまことに恐縮ですが、そういうことを一点考えます。  それからもう一つは、先ほど来申しますように、何と申しましても、多数の国が加盟しておる。そういうものに対しての敬意なり、また日本の増資が特段の割当であるという点をも勘案いたしまして、扱い方はできるだけ慎重にした。その点が、それでは予算編成上の財政法上にいうところのものに正面から違反しているのか、違反していないのかと申しますと、私は違反していないだろう、こういうふうに思いますし、先ほど来御議論があります、予見し得る事項と言い得るかどうか、その辺にも、実は多分に御意見はおありだと思います。実は私、これも率直に申しますが、この問題は、今日出たわけではございませんし、本予算が新聞等に出ております場合に、すでにあとで出てくるこの増資の方の補正予算をどうするかということをいち早く新聞が報道しておりますように、私どもはこの扱い方についてはよほど苦心をいたしまして、いかに処置するか——結局ただいま申し上げますような財政法の原則から見ても、これは違法じゃないようだし、また国際儀礼的に考えても、またそれを実現さす上から見ても、むしろ時期をおくらす方が本筋だ、こういうような論断を実はいたした次第であります。
  70. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 そうすると、予見の中でも特に確度の強い立場を選んだとあなたはおっしゃる。従って、政府としては財政法違反でない、こう御主張なさるわけですが、そのことはまず別にして、今度は逆に見た場合に、昨年の十二月、IMFの理事会決定したときに、すでに予見されておりますね。従って、当初予算に組もうと思えば組めたことも事実ですね。組もうと思えば組めたということもいえますね。
  71. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その通りです。
  72. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 それでは、私さらに突っ込んでお聞きしたいのですが、今大蔵大臣の御答弁でいけば、同じ予見でも、確度の強化されたものと、そうでないものとの予見の相違がある。従って、財政法違反じゃない、こうおっしゃる。そういう議論でいけば、あなたの御説明のように、最終確定というものは、九月十五日までに国際基金の方は同意をしなければならない、世銀の方は九月一日までに同意をしなければならぬということになっておるわけです。従って、それが一番確定性のあるものですね。ところが、それまで待っておったんでは、これは問題でありましょう。しかし、だからといって、いろいろ国会の中で議論のあるような期日におやりにならなくても、それは、本予算が処置された後に手続されても、九月十五日までの同意には十分間に合うじゃないか、こういう解釈もできるんですが、それならむしろ、その方が同じ予見でも、もっと確度が強くなるんじゃないか、こういう議論も成り立つのですが、いかがですか。
  73. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど、本予算に組もうとしたら組めるという実はお話をいたしましたが、これは正確に申せば、組もうとしてよほど確実性の薄いものでも計上するということになれば——こういう非常な希望的な意見でございますので、これはあとに問題が起らないでもないと思いますから、少しこれは理屈ぼい話であったと思います。私組もうと思えば組めるということを申したのは、これは説明が不十分でありましたから、その点は補足説明をさしていただきます。  そこで、第二段の問題でございますが、問題は、御指摘になりましたように、総務会の五分の四以上の賛成投票を得ました場合に、この参加国である日本がそういう決定をお引き受けしますということを言って、それで初めて成立するというのが建前であります。幾ら総務会が日本の割当はこれこれだと申しましても、日本自身が引き受けないといえば、それはもちろん成立するわけのものじゃない。当事国が賛成するというか、同意をするというか、それは日本意思でございます。そこで私が申し上げたいのは、ただいま申し上げるような事由で補正予算を組みました。この補正予算の提出の時期そのものは、いろいろ御議論がおありだろうと思いますが、私の考えるところでは、一日も早く当事国の意思を明確にする意味において、補正予算を組んで、ちゃんと政府自身の意向が明確になり、さらに国会の協賛を早い時期に得ることができますなら、これは、日本国の同意があるということの証左でもあるのでございますし、ことに今回は、IMFや世銀の当局等相当日本について好意的な処置も取っております。できるだけ早くそういうこちらの意思をはっきりさす方がいいんだ。もちろん、直接この総会に参加国の同意を表明すること、さらに引き続いて払い込みをすること、これは必要でございますが、一日も早く国内手続を終了することが望ましい、実はかように考えまして、先ほどから御了承を得たように、異例な案を実は提案しておるわけでございます。
  74. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 私は、その答弁ではちょっと了解しかねるのですが、要するに、九月十五日あるいは九月一日の最終同意の日でなければ、確定性はないわけですね。その前のものはすべて予見なんですよ。だとするならば、一番最初に予見せられた、昨年の本予算の概算が決定する前の予見をもって本予算に組み入れることが、私は財政法十四条の原則からいって正しいと思っている、この点はいかがです。あなたはさっき、組もうと思ったら組まれるとおっしゃったじゃないですか。
  75. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その組もうと思ったら組めると言ったのは、先ほど補足して追加説明いたしましたようなわけでありますから、御了承をいただきたい。  それから、今言われます九月云々は、日本自身が同意を表明する最終時期でございます。私は、最終時期までほっとくことはない。これは、もう総務会自身は五分の四以上の投票を得ておりますから、その方はでき上っておる。この投票の結果を受けるか受けないかというのは、日本だけの意思できまるわけです。だから、この意味におきまして、日本自身はそれをお受けしますという意思表示の段階である。補正予算を提案し、さらにまた、国会承認といいますか、協賛を得る、議決を得る、こういう手続を取りたいというのが、私がただいま申し上げたような次第でございます。
  76. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 私は、どうもその点了解しかねるのですがね。要するに、一番確実な最終的な確定性のあるものは、やはり九月一日、九月十五日のそれぞれの基金あるいは、世銀の同意のあった後に、さらにまた割当総額の七五とか八〇%以上がなければならない、こうなっておるのですから、ほんとうの確定性はそこにあると思うのです。だとするならば、あくまでも予見ということをもって補正予算が組めることになっておるんだから、昨年の当初予算の概算作成のときに組み入れるべきことが妥当なり。それを、ことさらに二月二日の理事会の終了後に持ち越された。しかも、そのことが、あなたがさきにお認めになったように、衆議院には前例がございません。本予算を提出せられてわずか二日、議論の盛りに、早くいえば三日目に補正予算を出されるというような前例はない。参議院にはございます。ともあれ、そういうような異例な措置、しかも、両党それぞれ疑義のある問題、あるいは専門家もそれぞれ新聞を通じてこの疑義をついております。また、政府与党の中においてすらも、財政法に詳しい人は、一応疑義ありということをおっしゃってみえることは、私ども耳にしております、そういう疑義のあるものを、なぜことさらにそのような手続をなさったのか、この点について私どもはどうしても了解することができないのです。
  77. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その提出的の法律的な問題は、専門的な国会の方で十分御検討をいただき、政府提案が、一応予算委員会にも付託されたものと思います。  そこで、ただいま山本さんのお話の割当額の調整の規定でございますが、これは十分お読み下されば、理事会できめただけでは意味のないことは、先ほど申した通りであります。各国一票持っている総務会の投票で、初めてこの増資割当額というものはきまる。この増資割当額がきまっただけでは、それが直ちに効力を発生するというわけのものでなくて、日本に対する割当については、日本自身が同意をすることが必要である。これは五分の四を得ているのですから、もちろんその他の国の同意はもう必要ではございません。そういたしますと、日本がこれに同意をするかしないかという、日本の同意の最終的なものは、この規定にあります期日になってくるわけです。私どもは、この増資割当を強く要望もしておったのです。そこで、これが正式に同意を表明し得るような事態を作りたい。そのためには、先ほど来申しているように予算化して、その予算が成立する、それで初めて払い込みができる素地ができるのですから、そういう事態を作りたいというのが私ども気持なんです。それで、現実に同意をするときと言われましても、裏づけなしには私ども同意できるわけでない。それで、今日予算を提案している、こういう順序に実はなっているのであります。そうすると、その時期をできるだけおくらしたらどうかと、国会では非常に異例な事態でないかということでございますが、その点をいろいろ検討してみますと、これは予算編成後に生じた事由、いわゆる財政法二十九条ですか、それによれば、これは補正を組むことになる。これは別に、補正の提出の時期等について、とやかくのことは規定はいたしておりません。扱い上の問題だけだと思います。そこで、国会においても十分御審議をいただいて、これは別に問題なしに、国会もちゃんとその扱いをされているという状態になっているのでございます。しかし、もちろん補正予算でございますから、本予算の審議の合間というか、あるいは後というか、適当なときにあわせて御審議を賜わる、こういうことに相なるだろう、かように考えているのであります。特に急ぎましたゆえんは、二月二日までに五分の四以上の賛成を得た。私どもは、各国に対しましても、その好意ある処置に対して、一日も早く予算を提案することが望ましいことでないか、こういうので、率直に出したわけでございます。
  78. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 その点私と幾分見解が違うのです。財政法二十九条に基いていけば、当然第一要件は、予算作成後に生じた事由、こう規定いたしておりますが、昨年の十二月三十一日が概算予算の閣議決定でありますから、その前に予見し得たという見解は、私は、いまだに変えるわけにいかない。そこで、その点は財政法をさらに私どもも深く研究しまして、この委員会で、その点についての議論をいたしたいと存じます。  ただ、もう一つお尋ね申し上げたいことは、これは一つの政治論になるかもしれませんけれども、あなたも御承知のように、予算委員会に自動的にこれが付託されまして、それが両党間で議論になってお聞きのように、議運に差し戻しを食ったわけです。そこで私どもは、いやな思いだけれども、議論をしなければならぬ、こういうところにきているわけです。そのように、この問題についてはそれぞれ疑義を生じているわけです。しかも、このことによって両党の国会運営にすらも支障を来たしていることは、あなたも御承知だろうと思う。そこで、そういう国会運営の支障という重大な事柄を無理やりに突き破ってまでも、どうして早く補正予算を出さなければならぬのか。かりに百歩譲歩していても、当初予算が処置せられると同時にこれを提出なさっても、時間的に決しておそくない。しかも、そのことが国際信義に反するとか、あるいはあなたの方で同意されるについての支障を来たすというなら別問題ですが、私は、どうしても支障を来たさないと思っております。何かそこに無理があるような気がする。政治的に見ても、その点はどういう見解をお持ちでしょうか。
  79. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど非常に率直な扱い方のお話をいたしたのであります。ただいま山本さんのお話は、もっとゆっくりあとで出してもいいじゃないかというふうにもとれる御意見のように思いますが、おそらく、おそく出したらおそく出したで、また議論が出てくるんじゃないか。ことに、そういう言い方をすることは大へん失礼なようですが、この問題は、先ほど来御議論にもなっているように、確実度の問題は別としても、昨年来の問題じゃないか、こういうことでたびたび御指摘をいただいておりますが、それほど周知といいますか、当方が非常に強く要望している問題だということだけは、わかっていると思います。従いまして、二月二日というものが過ぎて、それから後時期がおくれるということは、先ほど来申すように、国際的にも非常に支障があるばかりでなく、国内的にもこれは忠実な扱い方でない、かようにみずから考えている次第であります。
  80. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 一つだけお伺いして、あとは予算委員会でなお聞きしたいと思うのですが、先ほど来私が申しました点、特に十四条の原則が最近だんだん薄れつつあるということについて、私は非常に疑問を持っているわけです。その意味で、先ほど私がちょっと例を賠償という問題について申し上げましたが、賠償のことはこうだと、すぐ答弁されました。そこで私は、あとを追いませんから、一言だけはっきり聞いておきたい。今度提案されている三十四年度予算案の中に、この事項よりも、より確かでないものは、それならば、ないと言い切れますか。
  81. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 なかなかむずかしいお尋ねのように思いますが、私どもは、この問題は、確実性の問題プラス先ほど来申す国際的な礼譲の問題だということと、あわせて扱い方をきめたわけでございます。財政的な問題から見まして、予見し得るかいなかというだけの議論でも実はないのでありますし、それならば、真正面から見まして、十四条の規定に違反するのかどうか、こういうふうに考えますと、どうも補正予算で組んでも、十四条にまっこうから反対するものでないような解釈を実はとったのでございます。もちろん、問題によりましては、いろいろ国会内で御審議いただきまして、不幸にして可決を見ないものも生ずるかもしれませんけれども、予算に関する限り、十分検討いたしまして、その確実性という点については、私ども十分責任を持って案を組んでいるつもりでございます。
  82. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 確定の問題プラス・アルファと言われましたが、大体大蔵省というのは、利口な人ばかりおって、いい知恵ばかり出されるために、すみからすみまで全部理屈で構成されることについて、私は疑義がある。今出されている予算の中に、いろいろな問題があり得ると思う。従って、確からしさという問題であるならば、これでほんとうに終始し得るかどうかということになれば、私は相当問題があるだろうと思う。その論議は、予算委員会でやりましょう。従って、特別にこれを引っぱり出すということについて、確からしさの問題もあるが、ここに重点があると言われるなら、それはそれで私は認めてもいいと思う。あるいは別の問題にしてもいい。今出されている本予算が、これが一番確定な要素が多いのだというふうに、問題をきちっと組まれるから、私どもはそのまま納得しかねている。これは答弁は要りませんが、扱い方について、確からしさの問題については、十分に本予算との関係で、後の委員会で私は承わりたいと思います。
  83. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 答弁は要らないとおっしゃいますが、実はただいまの佐々木さんのお話ですが、先ほど来何度も申し上げましたように、財政法的な立場からの問題と、さらにこれが、IMF、世銀ということで、多数の加盟国が取り扱う問題であるということと、あわせて実は処理いたし、しかも、昨年の夏以来、政府自身が特別増資を非常に強く要望しているというようなことも勘案いたしまして、いかなる時期にいかなることが望ましいか、本予算の当時から、これでは非常に苦心し、工夫して実は参っておるのでありまして、その点は重ねて御披露いたします。
  84. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 最後に、念のためにお尋ねしておきますが、今あなたのおっしゃったことはよくわかる。なるべく早い方が、対国際的な信用上にも、あるいは日本が要求した意味からいっても、好ましいことでしょう。けれども、一面において、疑義があるといって、そのことが国会運営上に紛争を来たしているなら、これまた問題があると思う。そういうことが聞えることによって、かえって対国際的な信用をなくしたり、せっかく日本が要求したものについての意義を浅くすると私は思う。従って、私は、この際あなたが補正予算を撤回せられて、本予算が成立した後にお出しになった方が、対国際的な信用上からいっても、もっといいと思うのですが、その点はどうですか。
  85. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今さら撤回をいたしますれば、それこそ大へんな疑義を生じます。ぜひどうかよろしくお願いいたします。
  86. 江崎真澄

    江崎委員長 本件の今後の取扱いにつきましては、後日さらに御協議願うことといたしまして、本日はこの程度にとどめたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 江崎真澄

    江崎委員長 御異議がないようでございますから、さよう決定いたします。     —————————————
  88. 江崎真澄

    江崎委員長 次に、次回の本会議の件についてでありますが、次回の本会議は、昨日の委員会において、来たる十日、火曜日、定刻から開会することに決定されております。従いまして、次回の委員会は、十日午前十一時から理事会を開き、理事会散会後に委員会を開会することといたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時六分散会