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1959-03-10 第31回国会 衆議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十日(火曜日)     午後一時二十七分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 岩本 信行君 理事 佐々木盛雄君    理事 床次 徳二君 理事 松本 七郎君       小林 絹治君    椎熊 三郎君       千葉 三郎君    福家 俊一君       福田 篤泰君    前尾繁三郎君       森下 國雄君    山村新治郎君       大西 正道君    高田 富之君       帆足  計君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  竹内 俊吉君         外務事務官         (大臣官房長) 内田 藤雄君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         郵政事務官         (郵務局次長) 曽山 克巳君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月九日  委員平塚常次郎君辞任につき、その補欠として  福家俊一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月九日  関税及び貿易に関する一般協定の新第三表(ブ  ラジル譲許表)の作成のための交渉に関する  議定書締結について承認を求めるの件(条約  第六号)  日本国カンボディアとの間の経済及び技術協  力協定締結について承認を求めるの件(条約  第七号)  日本国ユーゴースラヴィア連邦人民共和国と  の間の通商航海条約締結について承認を求め  るの件(条約第八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国とアメリカ合衆国との間の小包郵便約定  の締結について承認を求めるの件(条約第一  号)  千九百五十八年の国際砂糖協定締結について  承認を求めるの件(条約第五号)  関税及び貿易に関する一般協定の新第三表(ブ  ラジル譲許表)の作成のための交渉に関する  議定書締結について承認を求めるの件(条約  第六号)  日本国カンボディアとの間の経済及び技術協  力協定締結について承認を求めるの件(条約  第七号)  日本国ユーゴースラヴィア連邦人民共和国と  の間の通商航海条約締結について承認を求め  るの件(条約第八号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関して調査を進めます。外務大臣より発言を求めておられますので、これを許します。
  3. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般予算委員会におきまして、加藤勘議員より、インドネシアにおける新聞その他で記事の掲載してあるようなものがあったならば、報告をしてもらいたいということであります。その御要求によりまして、その翌日電報を打ちまして、黄田大使から概要次のごとき電報が来ておりますので、御報告申し上げます。  加藤勘議員よりのお尋ねの新聞記事は、二月二十六日でなく、二月十九日のビンタン・チモール紙上に掲載されておりまして、その概要としては、賠償による船舶の取得が正規のルートから逸脱して行われたこと、及び木下商店の売り値が日本における市場価格より高かったのは、木下商店日イ首脳部とコネクションを持っているためであろうという趣旨記事を掲載し、さらに社説では、日本において賠償に関する不正の疑いが問題となっているが、同様の不正がインドネシア側においても皆無とは言えないだろうから、賠償がその本来の精神から逸脱して、不正の利益の追求の具となることを防止するためには、イ政府消費物資賠償に充てることをやめ、また政党の力をかりて賠償の分け前にあずかろうとする連中の策動を封じなければならぬと論じております。  なお黄田大使報告によれば、ジャカルタ諸新聞は、日本国会審議の模様に関する東京電を割に大きく掲載しておりますが、特に独自の記事を載せておりますものは少く、二、三の地方紙がスキャンダルが事実でないことを望む、ないしは単にイ側注意を怠らぬようにとの趣旨を述べるにとどまっている由であります。  以上が黄田大使からの公電でございます。
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。松本七郎君。
  5. 松本七郎

    松本(七)委員 きょうは条約審議を続けるわけでございますが、その中でも、日米間の小包郵便約定についてはかなり問題点があるようでございますので、これらについて十分質問をしたいと思います。  ただその前に、緊急的に二、三質問しておきたいと思いますのは、これは実はこの前の委員会帆足議員からもちょっと触れた問題でございますが、最近、久保田大使ベトナムへ帰任されて、政府が何か賠償交渉についての訓令を与えたということが報道されております。その訓令内容が問題なのでありますが、この前の委員会帆足委員の、この賠償については先走ったことをやらないようにという要望に対して、外務大臣からは、決して先走りはしないんだという御答弁がありましたが、実は私どもの聞くところでは、問題になっておる最恵国待遇をこの賠償協定の中に明記しなくとも、宣言の形でこれがなされればベトナム賠償協定締結調印にまで運ぼうという方針で、新たな訓令久保田大使に与えられたというふうに聞いておるのでございますが、その真偽のほどを伺っておきたいと思います。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般、久保田大使が打ち合せのために帰朝されておりまして、現地側交渉の実情を聞きますと同時に、それに対する若干の注意を与えて帰しましたことは事実であります。また同時にわれわれとしてはその扱い方を相当慎重にすべきでありまして、むろん相手方との交渉でありますから決定的にどうなるかはまだわかりませんし、この十八日からアジア公館長会議を開始いたしますので、そのときにあらためて向う側の意向を十分了した上で帰ってきて相談しようという打ち合せをして帰したわけであります。特に改まった訓令というようなものを持っては参りません。
  7. 松本七郎

    松本(七)委員 改まった訓令の有無は別といたしまして、政府のこれに臨む態度として、協定の中にはっきり最恵国待遇を明記しなければならないとお考えか、あるいは協定の中に入れなくとも宣言の形で先方が了承すればこれでもいいという方針で臨まれるのか、いずれでしょうか。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 交渉相手のあることでありますから、その交渉経過によって決定さるべきことだと思いますけれども、必ずしも政府条約の中に入れるということにこだわってはおりません。
  9. 松本七郎

    松本(七)委員 その点が今度は新しい問題になってくると思うのです。今までは協定の中に入れることを建前にして交渉されておった。それが、必ずしも協定でなくともいい、宣言の形でもいいということになると、これはもちろん交渉だから、それに対する態度先方と当ってみなければならないということになりますけれども、しかし考えられるのは、ベトナム側とすれば、最恵国待遇というのはどこにも与えておらないからなるべくこれを避けたい、避けたいが協定の中にはっきりすることは、拘束されるから向うはきらうでしょうけれども拘束力のないものならば向うは応ずる可能性があると思うのです。向うの今までの言い分からすればですね。そうなればこれは宣言の形で持ち出して、先方がこれを応諾するということになると、これは拘束力のないことをむしろ裏書きすることになると思う。そういう危険なやり方を必ずしも協定に含めなくてもいいんだという考え方でやられるとすると、この最恵国待遇は実質はとれないで、単なる宣言のような形で名目的なもので妥結に運ぶのじゃないかという心配がここにまた出てくるわけであります。この点に対するお考えはどうなんです。宣言でも拘束されるという建前でそういう考えが出たのか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題については、初めから条約に入れる入れないということを必ずしも定めておったわけではないのでありまして、御承知のようにベトナムとしてはいかなる国に対しても今日まで与えておりませんし、相当強固に拒否しております。従ってわれわれ交渉に当りましては、その問題は相当慎重に扱わなければならぬし、また扱うことによってやはりこの問題は最終的に議論のあることだ、こう考えております。従ってこれらの問題をどういうふうに扱いますかということは問題であろうと思いますし、今後の折衝にもよることだろうと思います。ただその精神を生かして両国がその線に沿って将来行き得る形が実質的にとり得るならば、いずれの形でも適当ではないかと思っておるのは、初めからのわれわれの考え方であります。
  11. 松本七郎

    松本(七)委員 これは委員会としても、ベトナム賠償そのものがもっと慎重に検討されなければならぬという考えで、いずれ参考人その他を呼ぶことに決定しておりますから、今後なお十分時間をかけて質問したいと思います。きょうはこの程度にしておきたいと思います。  その次は、在日朝鮮人帰国の問題であります。きのう社会党の方から代表外務大臣にお目にかかってお話したことが、新聞では必ずしも意見が一致しておらないような報道がきょうなされておったのです。私どもとしては、外務大臣としても直接に日赤とそれから朝鮮赤十字が話し合うことを了承されたように報告を受けておるものですが、この点はどうなんですか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 帆足さんが私のところへおいでになりました。そうして社会党としても国際赤十字において確認をしてもらうという線はくずしてないのです、与野党とも同じ線である、ただこの扱いにおいてはゆとりを持ってもらえたらいいのじゃないか、こういうお話がありました。私も昨日社会党が、新聞紙上で見ますように、またあなた方がおいでになってお話になるように、そういう国際赤十字はできるだけ寛容にやるという趣旨を貫いておられることは、われわれと同じ考え方なんです。むろん今一番問題になっておりますことは、帰国者意思確認というものはとかく政治的に誤解をされがちであって、その点はやはり国際赤十字をして確認させるのが一番いいのだと思って、そういう意味においてはあなた方と考えが違わないことは幸いである。むろんジュネーブに朝鮮赤十字が行ったときに、日本赤十字の人はそこにだれか必ず立会人がいなければならぬというほど厳格には考えておるわけでもない。そういう意味ゆとりという意味は、むろん国際赤十字井上外事部長に善処していただけるものと考えておるというので、別段食い違いはなかったように私は考えておるわけなんです。
  13. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、確認しておきたいのは、国際赤十字委員会がいろいろな世話をやる、しかし下打ち合せあるいはその他必要に応じて日本赤十字朝鮮赤十字が直接話し合うこともとめはしない、差しつかえないという点を確認しておきたいのです。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国際赤十字にお願いをしてそのあっせんのもとにすべていく、また国際赤十字意思確認をするという点については、おいでいただいたときのお話もその線を逸脱したとは思っておりません。今申し上げましたように、国際赤十字あっせんをして会見をする場合に必ずしも常時立ち合っておるとか——あるいは電話で連絡する場合もありましょうし、そういう意味において何も国際赤十字会議の席上でしか会わないという意味ではないということだったと思います。私もそういうことは話し合いの途中でそうあるべきだと思います。電話で打ち合せをする場合もありましょうから、そういう意味でございます。
  15. 松本七郎

    松本(七)委員 それから国際赤十字朝鮮赤十字が来なければ、そこを舞台としないならば、この帰国問題は見込みがないというような発言井上外事部長がやっておられるのですが、ああいう発言をされるのは非常に時期が早いと思うのです。まだ北鮮側意向もすっかり固まっているわけではない。国際赤十字自身があまりに政治的考慮を持って韓国側のああいう態度を気にして、政治的紛争には巻き込まれたくないというような意向を持っておると、これは人道問題として解決するという最初の建前が、国際赤十字自身によってくつがえされることになります。人道上解決するとするならばなおさらのこと、あらゆる政治問題とは切り離して、国際赤十字自身があくまでもこれを支持するという態度を明確にして、調査その他にしても帰国を妨害するようなやり方は極力回避するというような態度を一貫してとってくれるのでなければ、私は本来日本政府がこれを人道問題として解決するという趣旨は貫徹できないと思うのです。政治とは別に人道問題として解決する以上は、韓国側から妨害がくることは当然予想されておったのだから、それをいかにして排除するか。やはり人道問題として解決するという線を、国際赤十字を通じてどこまでも貫くという明確な態度がここに打ち出されないと、国際赤十字がどうも韓国側に気がねして消極的な態度が出たときに、何が何でも北鮮側をここに呼んで、国際赤十字舞台にしてやるのでなければ一切の道は閉ざされるというような態度では、当初の人道問題として解決するという道は変な方向に曲ってしまうと思うのです。こういう点を今後明確な態度で貫いていただきたいと思うのですが、この点の信念をもう一度確認しておきたい。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは、国際赤十字に依頼をいたしております。また国際赤十字がいろいろな考慮をして、北鮮側にも連絡をいたしておるようでございます。最終的決定はまだ何もいたしておりません。従ってわれわれとしては、国際赤十字動きについて今とかくの批判をすることは避けたいと思いますし、できるだけ国際赤十字がそうした労をとってくれて円満に参りますように念願いたしております。  井上外事部長新聞特派員等に話しました言動につきましては、果してあの記事の通りの強さで言ったのであろうかどうであろうかということは、何もきておりませんからわかりませんけれども、おそらくああいう発言をしたとは必ずしも思えないと考えております。
  17. 大西正道

    大西委員 それに関連しまして、今この帰還が実現するかしないかということは、一にかかって北鮮赤十字出方いかんにあるということを言っておられるのでありますが、私どももこの際北鮮赤十字が弾力的な態度国際赤十字あっせんのもとに話し合いを進められることを願うのであります。そういう日本国民意思北鮮政府当局者に十分納得させるために、もしここに国民使節的なものが北鮮に参って、日本政府並びに国民のこの問題に対する気持を向うに十分伝えて、そして向う考えをさらに一歩前進せしめるということは、今非常に大事な問題であろうと思うのであります。もしここに国民使節的なものが行くといたしますれば、政府はこれに対して十分なる援助と許可を与えるべきであろうと思うのでありますが、この点いかが思いますか。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在の段階におきましては、まだ国際赤十字の関与しておる状態、あるいは北鮮考え方等を聞いておる段階でありまして、私から今すぐに国民使節というものを派遣することの可否につきましては申し上げかねると思います。しかし事態がいろいろになってきますれば、やはりわれわれとしてこの問題が円滑に進行するような最善の方法はできるだけとって参りたいと思っております。今どういう形のものがいいか悪いかということは、ちょっと申し上げかねるわけであります。
  19. 大西正道

    大西委員 今松本委員からのだめ押しがあったわけでありますが、一方では北鮮帰還の問題を取り上げる、一方においては釜山抑留者帰還を促進するわれわれの立場は、いずれもこれは人道問題であるから同時に解決すべき問題だ、こういうことなんであります。ところが韓国側考え方を見ますと、これはたびたびの政府責任者言明によりますと、北鮮帰還をこの際日本政府が思いとどまるならば釜山抑留者を帰す問題について考慮してもよろしい、日韓交渉もこの問題が解決されなければ、つまり北鮮帰還の問題で日本政府態度を変更しなければもう再開されないのだ、柳公使言明によりますと、藤山外務大臣外務大臣である以上は、日韓会談はやらぬということを言っておるのであります。このことは別な機会に私はまた追及したいと思うが、実に重大な問題である。いまだかつて外国の出先が一国の外務大臣に対して、こういうふうな内政干渉的なことを言ったことはないと私は思う。こういう意味で非常に重大な事柄でありますが、この問題について外務大臣はどのように考えておられるかということをあわせて聞きたいのであるが、それよりも韓国態度がそういうふうな態度である以上、一方で国際赤十字釜山抑留者を帰すという問題に調査団を派遣するとかという態度をとって参りますと、これは非常に問題がむずかしくなる。簡単に考えれば、北鮮帰還の問題と釜山抑留者帰還の問題とは二律背反と申しますか、天びんにがかった問題のように韓国側においては扱われております。われわれはそうではない。それで、ここで私の非常に心配することは、政府内部にも俗に親韓派といわれる李承晩と非常に密接な人たちがあって、藤山外務大臣も非常にこれに対しては迷惑しておられるのであるが、こういう人たちがある閣内の事情考えますと、下手をすると北鮮赤十字あっせんを今渋っているというこの事実をとらえてこの問題については日本政府のもう一応の立場は手を打ったのだから、これがまとまらないのは仕方がない、それでは話を一歩進めて韓国政府話し合いをして、そして北鮮帰還の問題を実現しようじゃないか、こういうふうに北鮮帰還の問題と韓国釜山抑留者の問題を天びんにかけ、すりかえるというような危険が私はあるのではないかと思うのであります。いずれも重大な問題であります。この問題につきましては私どもは甲乙をつけないのであります。むしろ釜山抑留者帰還の問題は、同胞の問題として重大に考えているのだが、この北鮮帰還の今軌道に乗った問題は、決して軌道をはずすべきではないと考えますときに、今松本委員心配しておりましたように、この問題を天びんにかけ、すりかえるというようなことのないように、この問題はあくまで別個に、関連させないで進んでいく、いかような誘惑があっても決して北鮮帰還の問題は所信を曲げない、こういうことを外務大臣はこの際はっきりと言明される必要があろうと考えるのであります。国民心配事であります。明快な御答弁を願いたいと思います。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 北鮮帰還の問題と釜山におきます抑留者問題とは、全然別個な問題として扱っておりますことは、申すまでもないことであります。従いまして、釜山抑留者の問題に対する国際赤十字ボアシェ委員長に対する要請も、別個の形で手紙を差し出したわけであります。でありますから、これが全く別個の問題であるということは申すまでもないのでありまして、私どもは両方を別個の問題として取り扱っていくことに今後とも変りはないわけであります。  なお、韓国側のいろいろな言説の問題等につきましては、われわれも当分、なるべくおとなの態度で行きたい、こう思っております。そういうことを考えておるわけであります。
  21. 松本七郎

    松本(七)委員 もう一つ緊急の問題を御質問したいのですが、きょう国際連合信託統治理事会カメルーン問題が採決される運びになっておると聞いておる。来年一月カメルーン独立することをすでに決定しておるわけでございますが、カメルーン国民としては、独立という重大な事態に直面して、今の議会を一応解散して、そうして独立の前に総選挙を行うべきである、こういう要求がありまして、これを国際連合アラブ連合中心になり、その他八カ国が原案を出して、独立前に総選挙をやる。そうして完全な独立国として、独立後は国連にも加盟するという方向で打ち出したのですが、これに対して、日本インドその他セイロンなどと一緒になって修正案を出しておるのですね。この修正案内容は、独立前に選挙をやることを回避して、独立後に選挙をやることになっておるというのです。こうなりますと、インドはカシミール問題その他をかかえておるために、特にフランスと妥協したのであろうと言われているのですが、せっかく先般ギニアの国連加盟のときには日本が賛成してくれて、非常にアフリカ諸国日本を高く評価して日本の信頼は高まっておった。それがこのカメルーン問題で原案に反対して修正案インド一緒になって出そうという動きのために、日本頼むに足らずというような声がアフリカ諸国に非常に起っておる。これはすでに櫻内委員長にも去年ですか、カメルーン代表自身が陳情したこともあるのでございますけれども、きょういよいよ採決になろうというときに、日本がそういう動きをしてきたのについては、やはり確信のある説明をしていただかなければ、今後のアジアアフリカの一員としての国連外交に私は大きな不信を招く結果になるのではないかと思う。その経過を明らかにしていただきたいのと、もう一つは、これと似たようなことですが、アルジェリア代表部が今非公式にできておる。このことについては、アルジェリアとしては、旧植民地それから新しいアジアアフリカにおける民族運動についての最近の日本藤山外交といいますか——理解が深い、同情してもらっておるという点は、高く買われておるようです。ところが具体的な行動になると、どうもはっきりしない点が多いという批評がある。これは私はやつぱりカメルーン問題でも出てくるのではないかと思いますが、アルジェリア代表藤山外務大臣に面会を求めたか、あるいは今後のアジアアフリカ外交についての要望あるいは質問というようなものをすでに出しておると聞いておるのですが、ナシのつぶてで、さっぱり外務大臣からは返事も来ないというようなことで、向うも非公式な代表部ですから、儀典課を窓口にしてやらなければならぬということは十分了解しておるようですけれども、いわゆる非公式な代表部でも認められている以上は、そういう重要な民族運動にかかわる問題について藤山外務大臣に何らかの問い合せをして、半年近くも返事をしないで放置しておくのは、私はやはり非礼だと思うのです。何らかの返事をされるおつもりがあるかどうか、この二つを伺っておきたいと思います。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 カメルーンの問題につきましては、いろいろ問題があろうかと思います。しかしカメルーン独立することについて、それを日本は重視しておるのでありましてその経過の問題につきましていろいろ議論があるところだと思います。われわれとしては、インド話し合いながら、松平大使のところでこれに善処いたしておりまして、そういう意味において御議論はいろいろあろうかと思いますけれども独立する場合に、前に総選挙をやるということ自体政府が何党にあるかというようなことはむしろ問題が小さいのでありまして、独立すること自体をサポートしていくことには変りはないわけであります。おそらくインドもそういう考えではないかと思います。なお詳細の経過につきましては、いずれ御報告申し上げたいと思います。  なお、アルジェリア独立政府代表者というものが日本に来ておりますことは事実であります。私ども非公式に会うことについては、別段異議を持っておりません。しかしこれらの適当な時期に会うということについて、別に惜しんでおるわけではございません。
  23. 松本七郎

    松本(七)委員 それは独立中心考えると言われるけれども向う事情を聞いてみると、今の国会政府のもとで独立を迎えれば、第一そのまますぐフランス連合に入ってしまうというのです。そうすると国連加盟の問題が一つ残る。それからチュニジアの例を引いて非常に心配されておるのは、やはり一九五六年に行われたカメルーンにおける選挙は、植民地に対する基本法中心に、これが審議のために行われた選挙である。この基本法というのは、もうすでに通ってしまっているはずです。その任務がすでに終っているのと、チュニジアで問題になったように、独立した後に選挙をやるといっても、実際にはほおかむりをして選挙をやらないで、行政府を非常に強くして国民意思を弾圧するというようなことが向うの方ではあり得るのです。そういう点を非常に心配して、やはり独立前にはっきり選挙をやって、人民の意思を表明さしてもらいたいというのが向うの希望なんですから、そういう内容をもう少し慎重に、国連外交においては検討される必要があるんじゃないかと私は思うのです。そういう点は後ほどさらに補足の御説明があれば伺いますけれども、もう少し慎重に扱っていただきたいということを要望しておきたいと思います。
  24. 帆足計

    帆足委員 ただいまの両委員質問に関連いたしまして、この際外務大臣にただしたいのですが、韓国並びに朝鮮人民民主主義共和国をめぐります帰国の問題は、私は、外務大臣の良識ある御措置によって次第に今後軌道に乗るものであるという楽観的見通しを持っておるのでありますが、ただいまの問題について、関連しまして一つお尋ねし、確かめておきたいと思います。と申しますのは、在日朝鮮人帰国にからみまして、問題点がありましたのは、一つは航路の安全の問題でございましたけれども、これはもはや北方の領海を選び、適切な航路をたどりますならば、そうして人道の問題に対して、ことさらに反撃を加えることはあり得ないという国際通念に従いまして、問題はあるまいと存じますが、問題はただ帰国調査の問題であります。この在日朝鮮人帰国の問題は、正常な朝鮮居留民の自由意志による自由な帰国でありますから、一般のフランス人、アメリカ人、スイッツル人が自由に帰国することと、法的取扱いにおいては何ら異なるところなく、今日においても三々五々航路次第では帰国することができるのでございます。ただここに問題がありますのは、集団的に帰国し、そのための便宜を、国内的には正常な便宜をはかり、また国際的には集団的帰国のための船を受け入れ国側が用船するというような問題にからみまして、日本政府がかくも多数の朝鮮人をふるさとに帰すには、左右両翼の圧力が加わっていやしないかという誤解を解きまして、これは人道的な、国際法に基く正常なる帰国であるということをただ立証するために国際赤十字の理解とモラル・サポートとを必要とする、こういう問題であろうと私は思います。従いまして、六十万の朝鮮人諸君の生活をなでくり回して、お前は北か南かというような調査をする自主的調査機関が必要だということではなくして、この帰国意思届出の手続がだれが見ても公正に、順序正しく、非難の打ちどころのないように行われておるかということを赤十字がよく検討し、そして国際赤十字確認してもらうというほどの問題であろうと思います。これは申すまでもないことでありますけれども、昨日の東京新聞に出ておりました井上外事部長発言——井上さんが人道の立場から非常に御苦労されておりますことはもちろん認めますけれども、ただ言葉の端に、何か非常に膨大な調査機関を作り、全責任を赤十字が負って、六十万の朝鮮人諸君をなで回すような印象を与える、そういう誤解を生ずるような表現がありまして、その調査機関を認めないならばこれは御破算であるというような、電報のことでございますから、あるいは多分誤まり伝えられておることであろうとは存じますけれども、私はそういう誤解を生んでいることは事実であろうと思います。従いまして葛西副社長が参るとしまするならば、一つ外務省の公正な見地を、そして国際赤十字にはモラル・サポートを求めておる、日本政府または日本赤十字朝鮮の諸君に対してあくまで自由意思による帰国のすなおな手続を行なっていることを確認してもらうにとどまる、その趣旨をやっぱり明確にして葛西さんに出発していただきたいと思うのですが、内外の誤解も多少生んでおるようでございますから、この際外務大臣からその意のあるところを伺っておきたいと思います。
  25. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今帆足委員のお述べになっておられました考え方は、政府のとっております考え方と大体違っておらぬのであります。六十万の朝鮮人に一人々々全部当って意思を聞くわけに参らぬことはむろんであります。従って国際赤十字に依頼いたしましたのも、問題がある場合に国際赤十字確認をしてくれる——何か日本がじゃま者を無理に集団的に追い出すというような印象は、この問題を扱います上に一番困るわけであります。そうでないような形で、やはり全く本人の自由意思日本を去っていきたいのだ、また去っていく人に対しては、便宜を与えるのだという立場をとっておるわけであります。従って国際赤十字がその仕事を受諾してくれますれば、むろん国内の問題としては日本赤十字なり日本赤十字の各地の支部なりがこれを扱い、数人の人がそれを監視すると申しますか、そういう形において国際赤十字が関与することだけだと思います。そういう点については井上外事部長も十分わかっておりまして、何か膨大な機関を作って、そして日本に数十人あるいは数百人を持ってきてそれをやるというような大きな負担を要求しておるわけではございません。今のお話のように三々五々帰る人は帰れるわけであります。ただ集団的に帰る場合に、そういう集団という形において何か誤解が起っては意思確認ができないわけでありますから、そういう意味で扱っておることを御了承願います。
  26. 帆足計

    帆足委員 ただいまの外務大臣の御答弁でありますならば問題はない、順調に進むであろうことを私は期待いたします。ただこの問題にからみまして公安調査庁が、国に帰りたいという朝鮮人の数は四万人程度であろうというような荒唐無稽な、あるいは寝床の中で考え出したようなことを御発表になり、またそれを裏づけするために、巡査の古手のようなのにところどころ朝鮮人の住んでおる部落を回らしたというようなことがありまして、多分ごく例外の、ごく小範囲に限られたことでありますので、それほど取り上げるに足らぬことであろうとは思いますけれども、それもやはり大きく伝えられまして、そういう越権行為をされては困るということもあったのでないかと私は思います。公安調査庁の諸君は一つ自粛せられて、公安を乱さないように国策に沿うように御注意をしていただきたいと思うのであります。こういうことでございますから、葛西副社長に政府のただいまのお気持を正しく国際赤十字に伝えていただくことを切望いたしまして、ただいまの外務大臣の御答弁はわれわれも了承いたしておきます。
  27. 櫻内義雄

  28. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はこの際一つ緊急に質問をいたしておきたい。それは日ソ漁業交渉に関する問題でありますが、目下行われております日ソ漁業交渉で、去る六日の本会議でソ連側から提案いたしました新しい漁区の規制区域を設けるというような問題、日本側からいうならば、これは昭和三十一年の日ソ漁業協定精神を根本からじゅうりんするような新しい提案をなしてきたわけであります。今や日ソ漁業の問題は重大な難関に逢着をいたしておると思います。これについて少し御質問したいと思いますが、今度ソ連側の提案して参りましたものによりますと、規制区域内にさらに三つの操業区域を新しく設けて、そのほかは全部禁漁区にしてしまう、つまり現行の条約の規制区域の八割までを禁漁区にしてしまうわけであります。かようにいたしますと、三十一年に日ソ漁業協定締結いたしましたのは、公海自由の原則からいえばやや日本としても承服できないところはありましたが、しかし、サケ、マス魚族資源の保護という立場から一定の区域を認めたわけでありますが、今度の新しい提案によりますると、この辺一帯は完全にソ連の私有物であるかのごとき立場をとりまして、日本の漁業を完全に締め出してしまう、こういうことになるわけであります。もともと日ソの漁業協定というものは魚族を長く保存することによって、長く日本の漁業ができるようにという立場に立って結ばれたものだと思います。ところが今度のソ連の提案によりますと、全く日本の漁業を締め出してしまうという形になるわけであります。従って今回のソ連の提案は、三十一年の日ソ漁業協定の根本精神並びにその内容に違反するといいますか、全くそれを根底からくつがえすものである、こういうふうにわれわれは考えるわけでありますが、外務当局はどういうふうなお考えでこの問題に臨んでおられるか、まず基本的な考え方を承わりたいと思います。
  29. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話のありましたように今回のソ連側の提案というものは、農林大臣の表現をもってすれば奇々怪々と言われておりますけれども、不思議な提案だと思います。漁業協定できめられております範囲内にさらに小さなワクを三カ所作りまして、それを作ったばかりでなく、その中で終期と始期というものを非常に縮めて提案してきておるのであります。おそらくそうした状況下では三万トンもとれないのではないかというようなことがいわれております。われわれとして、日本政府としてその種の提案を応諾するわけにいかぬことはむろんでありまするし、御指摘のようにあるいは漁業協定自身の精神にも違反することが起り得るような問題であろうかと思うのであります。ただこれらにつきまして今委員会が進行をいたしておりますので、委員会で討議をいたしておりますから、その結果がどうなりますかはここ一両日では軽々に判断はいたしかねると思います。しかしながらこうしたことがあくまでも主張されるという限りにおいては、日本政府として相当な決心を持ってこれに当って参らなければならぬと現在考えております。農林大臣とも緊密な連絡をとりながらこれに対処していきたい、こう思っております。
  30. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 全く文字通り乱暴な提案で、私たちはこの新しい提案を見ますと、全く数年前の漁業協定そのものを根底からくつがえしたものであるということに私は驚かざるを得ないわけでありますが、これからそれではソ連側の提案して参りました新しい三つの操業区域などについて、資源についての論争などをまた科学的にやるということになりますと、勢いソ連側の常套手段でありまする引き延ばしの戦術などに乗ぜられてしまって、目前に迫った五月の出漁期に間に合わぬというようなことにもなりかねないと思うわけでありますが、私はこの水かけ論に終る可能性の非常に強い資源論争など、これから本会議委員会で繰り返すということは、全くソ連の術中に陥るだけであって、結論を出すことはきわめて困難な問題であるし、また大して意味のない問題ではなかろうかと考えるわけでありますが、それらの点についてどういう態度でお臨みになるのか、それを承わりたいと思うのであります。
  31. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 漁業委員会の性質といたしまして、今日まで小委員会その他も設けまして資源論争を続けてきております。その終局は、結局において日本とソ連とが必ずしも資源論争において意見が一致しておりません。従ってそれは一応一致しない限度において規制の問題に入ってきたわけであります。規制の問題に入りますと、今回の問題を持ち出してきたわけであります。従ってお説のように今後むろん理由の説明等としては、あるいは日ソ両国とも資源的な観点からの説明もいたすではありましょうけれども、この段階に入ってきますれば資源論争だけにとらわれておりましては、問題は解決しないものであります。おのずから政治的な問題として扱われて参ることに相なろうかと思っております。
  32. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 今回のソ連の提案は、おそらくソ連の漁獲量についての将来自分たちの立場を非常に有利にしておこうという考え方から出たものと思われるわけでありますが、この新しい提案を見ますと、日本としてこれに何らかの妥協を示すというような余地はないのではないか、かように私は考えるわけでありますが、外務省とされましては、この提案に対して何らかの妥協の可能性があるというふうなお考えでもお持ちでありますかどうか。
  33. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 外務省におきましても農林省におきましても、このままの形で妥協し得るとは全然考えておりません。ソ連側がどういう意味でこうした提案をしてきたか、その点についてただいま論争をいたしておるわけであります。しかしながらソ連側のこうした提案に対して、終局的にはやはり何らかの形で決意を持って政治的解決をはかるより方法はないと考えております。
  34. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 現行条約の根本をくつがえすような妥協に応ぜられないことは当然だと私は思います。わずか二、三年前に締結した条約を根本からくつがえすような新しい提案をしてくる、また日本がそれに乗っかっていくというようなことになりますと、全く日本が一方的にものほしさのためにほんろうされるわけであります。私はやはり基本条約の線を逸脱するようないかなる妥協にも日本政府は応ずべきでない、かような強い見解を持っておるものであります。そこで万一この交渉が決裂をいたしましたというときにおきましては、この現行条約に基いて日本が一方的に出漁いたしましても、これは決して違法なことではない、またその権利は当然日本側にあるものである、こういうふうに考えるわけでありますが、いかがでありますか。
  35. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 内容的な問題は農林省が検討いたしておりますが、条約上の関係においては今いったような点について外務省としても検討を始めております。
  36. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 最後に一つ確認をいたしておきますが、先刻来藤山さんがおっしゃったことは現行条約の根本をくつがえすようないかなる妥協にも応じない、こういうふうにおっしゃったと私は思うのでありますが、そうでございますか。
  37. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現行条約の根本的という範囲がどういうことになるかしりませんけれども、少くも現行条約を数年前に作りまして、日本北鮮におけるサケ、マスの漁獲を確保していく、しかも毎年委員会を作ってソ連に話し合いをしていくというその精神からいえば、今回の提案というものは非常にほど遠いものである、その精神からは非常に逸脱しておるように考えております。従ってそれに対してどう対処して参るかという問題について、条約上の関係等についてはただいま十分な研究をしなければならぬと思いまして研究をいたしております。
  38. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 ただいまのソ連側のこの提案というものは、全く現行条約を根底からくつがえすものであると私たちは考えるわけであります。従ってソ連側が現在提案をして参りましたことを、一歩も退かないであくまでもこれを強硬に主張して参ったときに、場合によっては日本側との見解が一致しないために決裂をするということも私はあり得ることだ、またそうすることがときに独立国家として当然のなすべき道であるとも私は考えるわけであります。さような点についてはいかにお考えになりますか。
  39. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 必らずしも決裂を目的として交渉をすることはいかがかと思うのでありまして、できるだけむろん話し合いをまとめるということに考えていくべきが当然だと思います。ただ、しかし条約精神に違反しあるいは日本が負担し切れないような要求をのんでまで話し合いを進めていくということは、相当無理があると思います。従ってそういう場合にとるべき方法等については、われわれとしても条約の上からいかに対処すべきかということを研究しておるということを申し上げておきます。
  40. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はこれで質問を打ち切りますが、どうか、従来の日本の対ソ外交を見ておりますと、常に何らかのえさを日本の目の前で見せびらかすことによってこの困っておる日本というものをたくみに操って、ソ連の目的を達成して参ったように私は思います。どうか今後は一つあまり日本の権威を失墜しあるいは独立国としての体面に関するようなことまで忍んで、そうしてソ連のいうことは強いものに巻かれろ、魚の一尾でもとれたらよろしいというふうなものの考え方というものは、もうそろそろやめるべきときじゃなかろうかと思います。従ってどうかソ連側の主張が理不尽きわまるものである限りにおきましては、厳然として現に日ソの漁業条約というものは生きておるわけでありますから、その根本の精神に立脚して、むしろソ連側の理不尽なる主張に対して完膚なきまでにこれを反駁をする。そしてあくまでも日本の主張を貫徹をする。場合によっては、ソ連側がわが正しい主張を認めないときにおいては、交渉の決裂もあえて辞するものではないというきぜんたる態度をもって私は臨んでいただきたいと思います。またそうすることが、かえって将来ロソの外交交渉を円満に、かつ日本に有利に進め得るものだと私は思うのであります。従来の対ソ外交の、私の言葉から申しますならば、やや卑屈な軟弱だ思われるような態度を一つ清算して、きぜんたる態度をもって臨んでいただきたいと思います。  最後に、私は藤山さんが、もしこの協定の中の細目にわたって御承知でなければ、関係しておられまする欧亜局長でもけっこうでありますが、条約上の立場から言うのでありますけれども、万一不幸にしてこの日ソ漁業交渉が決裂をいたしましたときに、日本が現行条約に基いて出漁するということは、何ら違法なことではない、かように考えるわけでありまするが、この点はいかがでございますか。
  41. 金山政英

    ○金山政府委員 御承知のように、条約には毎年漁獲量を相談してきめるということが附属書に書いてございます。それでございますから、両国政府としてはできるだけ妥結に至るように努力することが必要であると思うのでありますが、不幸にして最後までどうしても妥結に至らない場合には、一般にあらゆる観点から見て合理的な、あるいは前の実績とか、そういうものを勘案いたしまして、日本として当然あそこで魚がとれるだけの量は取るということを宣言して出漁をすることも、あるいは最後の段階としてはやむを得ないかもしれません。しかしそういうことになることはできるだけ避けるために、今の規制措置の問題にいたしましても、日本の科学的基礎によりまして、六日のソ連の提案に対して反対提案をいたしておる次第であります。従いまして、この提案が科学的な基礎において討論されるということによりまして、最後には総漁獲量の問題の結論が出てくると私は今は信じております。しかし最後にそういうことになりました場合には、これは国際的な影響もあることでありますから、慎重に考慮しなければなりませんが、国際的な世論に対して、それが納得し得るような手段において日本の利益を保護していかなければならない、こう考えております。
  42. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もう一つ伺っておきますが、新しい漁区を設定するということについては、農林省も外務省も日本側としては絶対反対をなさっているのでありましょうが、今のソ連の提案から申しますと、私はなかなか総漁獲量の決定まで持っていくことが困難ではないか、かように思うわけであります。今のお話によると、やや楽観のようなあれも見えるわけでありますが、その点で新しい区域の設定には断じてとことんまで反対しなければならぬ、こういう方針かどうかということを明確にしておいていただきたいと思います。それから、今申しまするように、これで私は打ち切りますが、どうかあまり安易な妥協をしないで、筋を通した——日本は今漁民も困っております。貧弱ではありますが、筋の通った外交交渉をしていただきたいということを特にお願いしておく次第であります。
  43. 金山政英

    ○金山政府委員 昨年のオホーツク海の問題のときにも、ソ連側が、沿岸の漁業が危殆に瀕しているので去年からでもやめてもらいたいということを申しまして、ソ連側の科学的根拠を日本側としては信用いたしまして、オホーツク海の問題をきめたわけでございます。今度の問題にいたしましても、先方は御承知のような海域の一八%にすぎない操業区域を指定してきているわけでありますが、これについては、ただいまきのうからも委員会におきまして、ソ連側の科学的根拠はどこにあるか、いかなる理由でそういうドラスティックな措置をとらなければならぬ必要があるのかということを、強く科学的根拠から先方を追及しているわけであります。従いまして、ソ連の委員はこの問題について科学的な説明をしなければならないわけでありますが、日本側の従来やっております根拠によりますと、現在とられている禁止区域、これはカムチャッカの沿岸、千島に沿って四十海里ないし二十海里を規定してございますが、それさえも不必要に大きいというふうに日本の漁業の専門家は申しておるわけでありまして、日本側の反対提案は、魚族の保護のためには河川の河口に保護地域を設ければいいのではないかという、むしろ現在の禁止区域の規制措置よりもさらに自由な提案をいたしているわけでありまして今後いろいろ議論はあると思いますが、その議論によってだんだんとこの問題はほぐれてくるものと私は考えております。
  44. 岩本信行

    ○岩本委員 安保条約の改正につきましては、外務大臣が奔走中、尽力中ということで、いずれ決定を見ると存じますが、これをめぐりまして、行政協定の全面的改正を必要とする、こういう議論と、行政協定の方はこの場合ほうっておけ、一部の改正にとどめる、こういう議論とがあります。そこで安保条約考え方については、外務大臣もたびたびお話があって、そのきめ方がどうなるかは別といたしまして、われわれの方でもわかっておるわけでございます。しかし行政協定の問題につきましては、政府として、欲を言えばこういうふうに改めたいが、さしあたっては何としてもこれだけは改めたい、こういうような考え方があるのだと思うわけであります。なお、安保条約とともにするか、別段の交渉にするか、こういうようなことはいろいろきまっていこうと存じますが、とりあえず安保条約改正と同一な時期に同一な方法で全面改定を要望するという声もあるわけであります。そこでさしあたりこれは絶対直したいという場所はどこか、そしてまた欲を言えば、日本立場からいえばこれこれは直しておきたい、こういうふうに考えられる面はどこか。このことについて外務委員会の方でも、行政協定問題についてはあまり今まで触れておりませんが、だんだん安保条約の改定が進むにつれまして、どうやってもこの問題をともに尋ねてわれわれも研究せにゃならぬ、こういう段階に参ったと考える次第でございまして、この際ただいま申しましたように日本立場から言えば、ほんとうはこう直したいのだという点と、そうでなくてさしあたりこれだけは直したいという点について御説明を願っておきたいと存じます。
  45. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 行政協定の問題につきましては、御説のように全面的な改定をして締結すべきだというのと、問題が事務的にもいろいろ複雑であって十分検討を要するのであるから、さしあたり重要なところを変更して、そうしてゆるゆる検討の上で改正に着手すべきだ、こういう御議論と大別して二つあるように思います。私の考えておりますのは、少くとも行政協定二十四条、二十五条のB項である防衛分担金の問題、これはぜひ持ち出して、何とか二十四条の削除と防衛分担金の免除というものをアメリカ側に強く話をして参りたいと思っております。その他の条項については、もちろん国民生活にも深く関係を持っている条項が多いのでありますが、ただ全面的改定という言葉を使われますけれども、必ずしも全条にわたって一条々々全部改正する必要はない、またできない問題があると思います。従ってそれらの問題については改正できるものと、それから精神は必ずしも間違っていないのだけれども、表現上の問題とか、それからぜひとも改正を要するような点と三つに分けてこれが考えられるわけでありまして、全面的改定と申しましても全部が改定されるわけではなしに、当然何らかの部分は現行が残っていくことはむろんだと思います。そういう意味において部分的改定をするということに対して、各省その他とも十分協議をいたさなければならぬのでありまして、今にわかにどちらをとるかということは申し上げかねますし、これまたアメリカと若干の交渉をしてみませんといけない点もありますし、また時間的にこれらの問題をどう扱っていくかという時間の問題にも関連してくるわけであります。将来慎重に検討していって、検討の上で改正していくということ、あるいはできるだけ今の時期に改正されるものはして調印するという二つの方法があるわけであります。われわれとしては今申し上げたような二十四条、二十五条のB項の二つはぜひとも交渉に乗せていきたいという希望を持っておりますが、あとの点につきましては、なお内容等も検討をいたしておりますし、それらの点についていまだ最後的な方針を私としてはきめておりませんし、またアメリカと若干の折衝をした上で、その状態も見ながら最後的な決心をきめて参りたい、こう思っております。
  46. 岩本信行

    ○岩本委員 方向がわかりましたが、そのうち二十四条は削除、二十五条B項の問題、これはぜひともという考え方をとっておられる。そのうちで防衛分担金、これは防衛分担金を日本も負担しない、向うからも出させないという方向にあるわけでありましょうか。そのことを尋ねる趣旨のものは、防衛分担金なるものが少いほどよろしいということは初めからわかっているわけでございますが、たとえば日本の駐留軍労務者の給料というものが、防衛分担金の支出のかなり大きな部分を占めておる。従って別の言葉で申しますと、終戦以来この防衛分担金があったために失業救済が相当にできたという言い方さえできるわけでございますけれども、しかしそういう支出の方は別の方向考えて、とりあえず分担金は全面なくそう、こういう方向にございますかどうか伺いたい。
  47. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 防衛分担金の問題と雇用の問題とは、直接今つながってくるとは思っておりません。むろんアメリカ側がここで使います費用をある程度分担するわけでありますから、それが還元されて向うの使っておる費用の中へいろいろ区分はされると思いますけれども、直接の関係はないと思います。
  48. 岩本信行

    ○岩本委員 直接の関係いかんはしばらくおきまして、防衛分担金を全面削除の方向へ持っていこうというのですか、軽減の方向べ持っていこうというのですか。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 大体防衛分担金を全面的に取りやめてもらいたいという交渉をしていきたい、こう思っております。
  50. 岩本信行

    ○岩本委員 このことについてもうすでに若干の交渉をされたと思うのですが、見通しはどんなふうでありますか。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 なかなかむずかしいとは思いますけれども、できるだけ一つ努力をして貫徹していくようにやって参りたい、こう思っております。
  52. 櫻内義雄

    櫻内委員長 関税及び貿易に関する一般協定の新第三表(ブラジル譲許表)の作成のための交渉に関する議定書締結について承認を求めるの件、日本国カンボディアとの間の経済及び技術協力協定締結について承認を求めるの件及び日本国ユーゴースラヴィア連邦人民共和国との間の通商航海条約締結について承認を求めるの件、以上三件を一括議題とし、政府側より順次趣旨説明を聴取いたします。竹内外務政務次官
  53. 竹内俊吉

    ○竹内(俊)政府委員 ただいま議題となりました三件について提案理由を御説明いたします。  まず関税及び貿易に関する一般協定の新第三表(ブラジル譲許表)の作成のための交渉に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして御説明いたします。  この議定書は、ブラジルの新関税法制定に伴い、これに見合う新しい同国のガット関税譲許表作成する必要が生じ、そのための関税交渉会議がわが国を含む二十五カ国参加のもとに昨年ジュネーブにおいて開催され、その結果作成されたものであります。  従来、ブラジルはガット第三十五条の規定をわが国に対して援用しておりましたのでわが国は同国とガット関係になく、同国との間では関税交渉を行なっておりませんでしたが、ブラジルは一九五七年八月二十二日にこれが援用を撤回しましたので同国と関税交渉を行うことが可能となり、前記関税交渉会議がジュネーブにおいて開催された機会をとらえ、わが国もこれに参加してブラジル交渉を行うことといたしました。  わが国とブラジルとの関税交渉は、ガット締約国がそれぞれの関税障壁を除去または緩和し、もって国際通商を一そう促進することを目的として行われ、わが国は、この交渉においてブラジルから十四税目の関税譲許を獲得するとともに、同国に対して二税目の譲許を与えておりますが、これが実施に移されますならば、関税引き下げの面からする両国の貿易量の増大に寄与することが期待されます。  この議定書に掲げられているわが国の関税譲許は、わが国がこれを適用する旨の通告をガット書記局長に対して行うことによりわが国について効力を生ずることになっております。わが国の交渉相手国たるブラジルも、近くこの適用通告を行い交渉の結果である新たな関税譲許をガット締約国に対して適用することが予想されており、わが国としてもすみやかにこれを行う必要があります。以上の理由によりこのたびこの議定書を提出して御承認を仰ぐ次第であります。  なお、この議定書国会提出に際しまして、日本語の文書としては議定書の本文及びわが国の譲許表のみを提出し、他の国の譲許表については正文を配布申し上げるとともに、邦文で説明書を作成して御審議の参考にするという措置をとらせていただきました。これは昭和三十一年第二十五回国会にお旧いて御承認のあったガットの第六譲許追加議定書提出の際の手続にならわせていただきましたものでありまして、他国の譲許表がわが国の権利義務に直接の関係がないからであります。このように、第二十五回国会の例にならいましてわが国に実質的に関係ある部分についてのみ、日本語の訳文を提出させていただくことといたしました点について御了承を得たいと存じます。  以上の事情を御了察され、御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望する次第であります。  次に日本国とカンボジアとの間の経済及び技術協力協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  カンボジア王国政府は、昭和二十九年十一月にわが国に対する賠償請求権の放棄を通告して参りました。同国のこの好意に報いるため、政府は同年十二月、カンボジア王国政府に対し、同国の経済開発の援助を目的とする技術援助を与え、かつ経済その他の分野で協力実現のための措置をとる用意があることを通報いたしました。その後昭和三十二年六月に至り、カンボジア王国政府は、農業牧畜の開発についてわが国の援助を受けたい旨の希望を明らかにし、また同年十一月中旬には、岸内閣総理大臣が第二次東南アジア訪問に当ってカンボジアを訪問し、プノンペンで同国政府首脳と会談いたしましたが、その結果経済技術協力協定締結について原則的に合意に達しましたので、右に基いて引き続き現地の吉岡大使を通じ、先方政府交渉を重ねて参りましたところ、このほど意見の一致を見るに至り、三月二日にプノンペンで、在カンボジア吉岡大使とソン・サン外務大臣との間で協定に署名調印を行なった次第でございます。  この協定に基きまして、わが国はカンボジアに対し、総額十五億円の無償の援助を原則として三年の期間内に日本国の生産物及び日本人の役務の形で供与することとなります。  なお協定の実施細目については目下折衝を続けており、近く合意に達する見込みでございますが、生産物及び役務の供与の方式は、前国会において御承認を得て、一月二十三日に発効いたしましたラオスとの間の経済及び技術協力協定の援助実施方式と同一のものであり、またこの援助の対象となる計画といたしましては、協定の附属書に掲げてある通り、農業技術センターと種畜場の設置計画が予定されております。  よって、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、御承認あらんことを希望いたします。  最後に日本国とユーゴースラビア連邦人民共和国との間の通商航海条約締結について承認を求めるの件につきまして御説明いたします。  わが国とユーゴースラビアとの間には、現在大正十二年(一九二三年)署名の日本国「セルブ、クロアート、スロヴェーヌ」国間通商航海条約が復活適用されていますが、この条約は戦後の実情に即しない点もありまして、この条約を昭和二十七年に復活させるときに、将来新しい通商航海条約締結する必要を確認した次第であります。  かくて昭和二十八年八月ユーゴ側は新条約の草案を提示して参りまして自来ベルグラードにおいて交渉が続けられ、途中双方の意見が対立して交渉が中断される事態もありましたが、本年に至りましてユーゴ側がわが方の主張に大幅に歩み寄った結果、ようやく妥結を見ましたので、二月二十八日にベルグラードで在ユーゴスラビア加瀬大使とユーゴスラビア代表ツルノブルニや外務次官との問に署名を了した次第であります。  この条約は、現行の日本国「セルブ、クロアート、スロヴェーヌ」国間の通商航海条約を参照しますとともに、戦後わが国が締結した日米、日諾通商航海条約、日印、日ソ、日波通商協定等と類似した内容のものであります。  この条約によりましてわが国とユーゴスラビアとの間の通商航海関係は、現状に即した新たな法的基礎の上に置かれることとなるわけでありまして、両国間の友好関係及び経済関係を発展させるものと考えられますので、ここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。  以上三件につき、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  54. 櫻内義雄

    櫻内委員長 以上三件に対する審議は次会に譲ります。     —————————————
  55. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に外務省設置法の一部を改正する法律案、日本国とアメリカ合衆国との間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件及び千九百五十八年の国際砂糖協定締結について承認を求めるの件の三件を一括議題として審議を行います。  質疑の通告がありますので、これを許します。松本七郎君。
  56. 松本七郎

    松本(七)委員 最初に日米小包郵便約定の問題から伺いたいと思いまするが、この約定で一つの問題になりますのは沖縄との関係でございます。この約定の中には沖縄に関する規定が全然ないばかりか、議定書もないのでございまするが、この前の委員会で床次さんから質問が出ましたときに、沖縄は内国扱いをしている、こういう御答弁があった。ところが米国の方は、これにどういう態度で臨もうとしておるかと申しますると、アメリカはちょうど昔の日本が関東州に対したと同じように外地扱いというか、従って施政権を持っておるアメリカとしては、当然この施政権に基いてこれを沖繩の民政府に代行させることによって、やはり日本と郵便についての協定を結ばせるということがアメリカの方針のようでございます。日本は実際には内国扱いしておるからそれでいいといって済まされないのじゃないか。これは東京新聞の坂井米夫特派員が報道されておったことが一時あるのですが、近い将来に教育とそれから郵便については施政権の返還がなされる可能性ワシントンにありというような報道もあった。それとこれとを考え合せてみますと、ごく近い将来にこの郵便についての施政権が返還される見込みがあるがゆえに、この約定には何らの規定もなしあるいは議定書もないのか、その事情が不明確です。沖繩の地位というものは安保条約の改定の問題でますます微妙な問題を含んでおりますので、条約上の沖繩の地位というものをこの際少し明らかにしておきたいと思うので、特にこの点を外務大臣から御説明をお願いしたいと思います。
  57. 曽山克巳

    ○曽山説明員 お答えいたします。ただいま松本先生から先回の国会における床次先生の御質問に対して、沖繩の郵便事務につきましては内国扱いにしておるという話があったが、条約上の関係はどうかという御質問でございます。条約上のことにつきましては後ほど外務省から御答弁をお願いすることといたしまして、一応事務的にかつ郵政関係の約定関係から申し上げますと、先日御答弁いたしました内国扱いをしておると申しますのは、私の考えでは向うつまり沖繩の地域を日本の内地法の適用地域としておるという意味ではないのでございまして、向うから、つまり沖繩から日本に来ます郵便あるいは日本から——本国でございます、本国から沖繩に行きますところの郵係の扱い方を、ちょうど内国でやっておりますのと同じ方法でやっておるという意味で申し上げた次第でございます。従って日本から向うに参ります郵便物は、一応外国郵便規則という規則にはきまっておりますけれども、料金等は全く内地と同じでございまして、書状につきましても十円、はがきにつきましても五円ということになっております。向うからこちらに参りますものにつきましても同じように、沖繩の島々におきますところの料金と同じような料金を徴しておる、そういう意味において全く両者とも内国扱いであるという意味で申し上げたのであります。郵政省側の考えによりますと、当初沖繩をこの日米小包郵便約定に入れるか入れないかにつきまして、いろいろと所管の向きとも相談したのでありますが、現在の日米小包交換約定の中には、アメリカが租借しておりますパナマ運河地域におきましても第一条の適用地域から除いております。それと同様な意味におきまして、日本の沖繩も相当困難な問題がございますので、こういう問題は議定書からも落しまして、先ほど松本先生が御指摘になりましたように、沖繩側の方と日本の方との間で合意をいたしまして、先ほど申したような内国扱いみたいな取扱いにしたらどうだろうということになったわけであります。先生の御見解によりますと、しからばアメリカが現在施政権を持っておるのであるから、アメリカの施政権下にある沖繩の郵便物交換という業務と日本の郵便物交換という業務の間に、アメリカと日本との間に何らかの条約あるいは条約に至らないまでも取りきめが必要じゃないかということだろうと思いますが、この点につきましてもいろいろと相談いたしました結果、相当困難な問題がございまして、かつ私どもの方といたしましては、駐留軍が日本を占領しておりました当時、スキャップがスキャッピンを出し、それに基いて万国郵便連合の諸条約、たとえば万国郵便条約あるいは万国郵便連合の小包約定といったいろいろな関係条約があるのでございますが、その条約を準用してやれという覚書が参っております。そこで平和復興後この覚書にかわるものとして何らかの取りきめが必要なのではなかろうかという工合になるわけでございますが、何回も申し上げます通り相当困難な問題がございます。かつまた郵便というものは水の低きに流れるがごとく、また空気が至るところにびまんをいたしますごとく行き来することこそ、郵便本来のあり方でございまして、条約上の諸問題におきまして困難だからといってやめるわけに参りませんので、一応従来の状態を継続いたしまして、つまりアメリカ側がこれに対して平和復興後日本本土と沖繩との間における関係を従来通り何ら異議を唱えず、暗黙の承諾を与えたものと解釈いたしまして、沖繩と本国との関係を規律して参った次第であります。
  58. 松本七郎

    松本(七)委員 今の説明では、スキャップ時代のやり方と何ら独立後も切りかえることなしにそのまま継続しているということなんですね。そこで郵便のような技術的なものは施政権としても返還しやすいでしょうから、東京新聞に一時報道されておったように、郵便なり教育なり、特に郵便のような共通なものは、制度上やはり共通化するということが将来の理想なんですから、ましてや日本の内国扱いのできる沖繩については、当然郵便あるいは教育を含めた施政権の返還がまず独立考えられなければならぬ問題じゃないかと思うのです。それで外務大臣によくあれしていただきたいのは、スキャップの行政をそのまま継続されておる事例は、こういったふうにたくさんあるわけです。平和条約締結した以上は、当時のスキャップに基いてやられたことを一応打ち切って、アメリカの方針は先ほどから言うように、沖繩についても自分の握っておる施政権に基いて協定を結ぼうという方針なんです。だからそれをやるか、そうでなかったら、日本側からとすれば、独立に当っては当然郵便についての施政権の返還ということで対抗する以外にないと思うのです。この返還の交渉をすみやかにやるか、それでなかったらアメリカの言うように、やはり別個協定を結んできちっとけじめをつけるべきではないかと思うのですが、この点外務大臣の御意見を伺っておきたい。
  59. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今度の場合におきましても、今お話しのようないろいろな問題がありますから、従って別個立場でこれを扱って、技術的な協定をするという形において問題が解決されておるわけであります。そういう意味に御理解を願いたいと思います。
  60. 松本七郎

    松本(七)委員 協定がないのです。ないから問題なんです。この約定の中に沖繩はないのです。約定の中に規定がないばかりでなく、別に議定書もないのです。今の答弁にもあったでしょう。スキャップ時代のやり方がそのまま継続されておる。だから施政権の返還をきちっとやるか、そうでなかったら別に協定を結んでやらなければ筋が通らないじゃないかということです。
  61. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもの申し上げたのは実質的な意味での話し合い協定と申したので、この中にないことは事実なんであります。実際的に郵便を円滑にやっていくことの必要の上に立ちまして、話し合いによって取扱いをきめていくということが行われるわけなんでありまして、むろんそういう意味において、実際的な活動ができるという形において現状あるのが当然だと思います。
  62. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、今後すみやかにアメリカと沖繩についての協定別個に結ぶということですか。今まで通りスキャップ時代のことを踏襲して今やっておるのだからそのままでいいと言われるわけですか。
  63. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん今までの通り行われることによって、実際的支障がないのでありますから差しつかえない、こういうことです。
  64. 松本七郎

    松本(七)委員 それはおかしいじゃないですか。占領行政を、内容は変更されなくても形式はやはりスキャップというものを一応平和条約によって打ち切るのだから、必要な協定別個に作るか、それでなかったら施政権の一部を完全に日本に返還するかどちらかやらなければ占領の継続ということになりますね。
  65. 曽山克巳

    ○曽山説明員 私の言い方が不十分でありますためにあるいは誤解を招いたのではないかと思いますが、スキャッピンそのまま踏襲しておるわけではございませんで、当時の解釈が、つまり沖繩の地位というものは、万国郵便条約で申しますと例外的な地位でありまして万国郵便連合の中に入らない地域というふうに解釈されておりましたために、その入らない地域と入っておりますところの日本本土との関係を規律するのに万国郵便条約を準用する、そういう解釈になっておった次第でございます。従ってスキャップが去りました後も、何もスキャッピンそのままを踏襲しておるというわけではございませんで、やはりやめたが、そのあと日本と沖繩との関係をどういう工合に考えるかということを考えましたときに、今申しましたように万国郵便条約上の例外的な関係としまして、日本が沖繩のために郵便物を仲介し、かつまた郵便物を交換し合うという合意を、アメリカとの間に遂げたという次第でございます。
  66. 松本七郎

    松本(七)委員 アメリカ自身は万国郵便条約に加入していないでしょう。そういう立場にあるアメリカとこの問題についての万国郵便条約との関係その他の問題があると思うのですが、それよりもきょうは沖繩のそういった条約上の立場というのが非常に不明瞭な、いろいろな問題が出てきておりますので、この点をもう少しはっきりしておきたいと思うのです。それはこの前外務委員会でも一度総理大臣が答弁されたと思うのですが、この前内閣委員会でも、わが党の石橋さんから、たしかアメリカと台湾条約それからアメリカとフィリピン、アメリカと韓国条約締結に当って、アメリカが沖繩というものをアメリカ領として扱ったかどうかという質問が出された。これは外務委員会でもずっと前に出された問題ですが、そのときに総理大臣の御答弁では、これは日本の領土として扱っておる、こういう答弁があったように記憶しておるのですが、その点をまず確認しておきたい。
  67. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、ちょっと私はっきりしない点があるのでございます。アメリカと台湾、アメリカとフィリピンでございますか、そういう条約において、この条約の適用地域としまして、ちょっと今その用語は見出せませんが、適用地域として沖繩も入るような表現をしているわけでございます。従いましてアメリカが沖繩を自国の領土としてとか、どこの領土としてというような、領土権の関係をはっきりするようなことでやっているのではなくて、この条約の適用地域として、適用される場所の問題として沖繩をあげてある、こういうふうに考えております。
  68. 松本七郎

    松本(七)委員 もちろん表現上は自国領土とかあるいは属領あるいは管轄権のもとにあるとか、そういうふうな規定ですから、条約の適用地域に入っているわけだけれども、その点は外務委員会でもしばしばやったことですから間違いないわけです。ただその場合に、アメリカは条約適用地域の中に沖繩を含んでいる。その沖繩の領土は自国領土として臨んでおるか、日本の領土として取り上げておるかということは一つの問題点になるわけです。条約に表現はないのです。表現はないけれども、その前提としての領土の帰属というものは、全然ノータツチで無関係なものか、条約上に規定がなければ、条約適用地域というものをきめるでしょう。きめる場合の表現の仕方はいろいろある。いきなり属領と規定する場合もあるでしょうし、管轄権にある地域と規定する場合もある。その管轄権にある地域としての沖繩の領土権というものは、潜在主権と同じですね。日本のものという前提に立った解釈がなされるかどうかという点です。
  69. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これは確かに沖繩の地位の問題になりますが、アメリカが果して沖繩をどういうふうな気持と申しますか、見地に立って入れたかどうかということは、実はその条約自体の問題にはあまり関係がないのじゃないかと考える次第でございます。しかしとにかくアメリカとしましても、沖繩を入れたということは日本との関係においてよく承知しておりますから、これはアメリカがここに施政権を持っている地域でありますから、日本がここに潜在権を持っているという建前で、そういう見解のもとにこれが入っていると私は了解いたします。
  70. 松本七郎

    松本(七)委員 ですから日本は沖繩に潜在主権を持っている。アメリカは施政権を持っている。従って当然沖繩は日本の領土であるという建前のもとに立って解釈していいかということです。
  71. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 潜在主権というものは何であるかという議論があるわけですが、最終処分権が日本にあるという意味においてはむろん領土だと思います。施政権を持っている限りにおいてアメリカはその国の三権を持っていることでありますから、実質的に自分が支配しているという形だと考えております。
  72. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、まず第一に確認しておきたいのは、沖繩は日本の領土だということは国際的にも認められておる、この点は間違いないのですね。
  73. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 間違いないと思います。
  74. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると今までは領土であるけれども、その表現は潜在主権という特殊の言葉で表現された、しかもその潜在主権という表現は、吉田さんの演説なり、ダレスの演説で言われたのであって、条約上何らの規定があるわけではありません。その点はどうですか。
  75. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 御承知の通り平和条約には何ら規定はないのでございますけれども、ただ平和条約の解釈上もそういうふうに解釈することができるということは御承知の通りだと思います。千島のほかの島嶼には一切の権利、権原、タイトルでございますか、一切を放棄したということをいっておるのに対しまして、沖繩の地域につきましてはそういうことをいっていずに、ただ信託統治に付すということだけをいっておりますから、従いましてそういう関係から考えましても、そこに一つの主権、または潜在主権というものは日本が最終的に持っているのだということが、その解釈からも出るのじゃないかと考えております。
  76. 松本七郎

    松本(七)委員 平和条約でそういう解釈もできる、引き続いてアメリカが結んだ韓国、台湾、フィリピンとの条約でも、わざわざ属領とかあるいは管轄権下にある地域とかいう区別をして沖繩を含んでいるところを考えると、こういう表現による条約を結んだことによって、この条約によっても沖繩というものに対する日本の潜在主権が再確認された、こう解釈できないでしょうか。この点はどうですか。
  77. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その条約をよく読みます場合に、そのような解釈も可能であろうかと考えております。ただそれが再確認されたというところまで積極的に解釈できるかというと、もう少し研究させていただきたいと思います。
  78. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると施政権の返還要求の根拠というのは、条約的には今のあなたの言う平和条約の解釈に基く要求ですか、その後新しい条約上の何か根拠というものはお出しされておらないのか伺いたい。
  79. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 御承知の通りサンフランシスコ会議におけるダレスの演説、それから英国代表のヤングの演説におきまして、日本は主権を持って、あるいはここに潜在主権を持っているということを演説いたしております。それが会議の議事録として記載されて確認されております。  それからもう一つ、これはアメリカの国内の、何か裁判事件であったと考えますが、それにおいてもそのような取扱いをいたしております。
  80. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、まず第一に確認しておきたいのは、この沖繩に対する潜在主権というものは、国際法的にも確認されたということは、日本ばかりではなしに、アメリカも認めている、こう解釈していいのですか、この点をまず伺いたい。
  81. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 そのように考えております。
  82. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると今の解釈によれば、アメリカが韓国や台湾あるいはフィリピンと条約を結ぶ以前から、この日本の潜在主権というものははっきりしているのだ、こういうことですね。そうなれば、いやしくも日本が潜在主権を持っている沖繩が、アメリカとその他の国の条約の適用地域の中に入れられたわけでしょう。このことによって沖繩自身は、今までより以上に、この国際条約を結ばれたことによっていろいろな権利義務をさらに負うわけですね。そうするとアメリカが施政権を持っていることを根拠にして、第三国、主権者でない日本以外の国と沖繩についての国際条約を結ぶことは、これは日本の潜在主権そのものを侵害することになりませんか。その結んだ条約によって沖繩の人民というものはいろいろ権利義務を負うのだから、当然潜在主権と法的には抵触するということになりはしませんか。
  83. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 潜在主権をわれわれが持っているわけでございますが、米国もそこに対して施政権を持っているわけであります。従いましてその施政権の範囲におきましては、沖繩につきましてアメリカ側も権利を持ち、その権利の範囲内においては協定条約を結んでもいいのではないか。従いましてわれわれが、もし施政権、潜在主権が何であるかといろいろ解釈上の問題はあります、またいろいろと言われておりますが、少くとも最終的な処分権というものは、これが具体的な第一の内容であろうと考えておりますので、この最終的な処分権を害しない限りは、あるいはその施政権のために条約を結んでもわれわれは差しつかえないと考えております。
  84. 松本七郎

    松本(七)委員 条約を見ますと、武力による侵略ばかりでなしに、共産主義者の行動その他自分の方に不利な自由の制度云々ということも書いてある、そういうふうなことになると、結局主観的な判断によってこの条約の適用がされる可能性が十分残してあるわけです。そういう重要な沖繩に関する条約を結ぶこと自体が、私は潜在主権そのものと抵触するのじゃないかと思うのです。これは法律的には潜在主権そのものの概念の内容がまた問題になりますから、今後なお検討しなければならぬ問題だと思いますが、それは今後に残すとして、外務大臣に伺いたいのは、かりに今高橋条約局長の言われるように、法的には必ずしも潜在主権に抵触しないとしても、いやしくもこれほど重要な条約をアメリカが結ぶ以上は、潜在主権を持っておる日本、つまり母国に対してこの条約締結については相談をするのが国際政治道徳上からは当然なことだと思うのですが、その経過はどうですか。
  85. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 法律論は別としまして、何かそうした相談をするということは、それは好ましいことだと思います。ただ当時これらの条約ができましたときに、そういう事実があったかどうかということは、私、承知しておりません。
  86. 松本七郎

    松本(七)委員 当時話があったかどうか知らないと言われるのですか、どうなんですか。たれも知らないじゃ困る。一体今までそういう重要な条約を結ぶ場合に、日本政府に全然無断でこれがなされたのか、あるいは何らかの意見を求めるなり、あるいは了解を求める場合があったのかどうか、この点明らかにしてもらいたい。
  87. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 おそらく当時なかったと思います。また今お話のように、潜在主権ということは、裏を返せば顕在主権というものをアメリカが持っておるのですから、その範囲内において条約を結ぶこと、これを対象として条約を結ぶことはできると思います。
  88. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると最終処分権はないけれども、その他の権利は一切施政権の名において持っておる。従って、現実的には日本は沖繩に関する限りは最終処分権以外についての発言権は最終的にはない、こうあきらめざるを得ないというわけですね。
  89. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 大体そうだと思います。
  90. 松本七郎

    松本(七)委員 そういう解釈で今後沖繩というものに対処していくとすると、藤山さんが今度の安保条約で、これを条約適用地域に含めないと言われるようなことが一体潜在主権というものとどうなるのか。その潜在主権との関係において考えた場合ですよ。河野さんの言われるのは、この条約適用地域に入れて、そうして実際の防衛は日本はやらない。けれども、沖繩が外国からの攻撃を受けた場合は、これは死活に関することです。領土の処分というよりも、むしろ外国の力によって、これの存亡が危うくなるというような事態なんですから、今の最終処分権という観点からしても、やはり筋を通した考え方からすれば、河野さんの言うように、やはり沖繩を、少くとも直接の防衛の対象にはしなくても、条約の適用地域の中には入れるということでなければ筋が通らないじゃないか。これをあなたの言われるように、条約適用地域外にはずすということになれば、これは最終処分権までももうあきらめて放棄したにひとしい結果になりかねないですよ。これはとにかく三つの条約でがんじがらめになっているのだし、対象になっているのですから……。今の御答弁では最終処分権だけはあるように言われるけれども、実際にはそれも有名無実なものだということになりかねないのじゃないか。その点はどうでしょう、どういう解釈でそれをされるのか。
  91. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私はそう考えておりませんので、施政権の返還ということは、日本はこれを捨てたわけではないのでありまして、あくまでも施政権の返還を要求して外交ルートでいっております。従って施政権及びその基礎をなす領土というものをわれわれは捨てた考え方には、安保条約締結する場合にこれを入れようと入れまいと、その立場でものを考えておりません。
  92. 松本七郎

    松本(七)委員 それだけれどもあなた、今施政権というものはアメリカにある。しかも潜在主権の内容は最終的な処分権だけだ、こう言われるのでしょう。その最終的処分権をはっきり確保しそれを貫くためには、やはり今言うように、第三国とアメリカが条約でもって外国の侵略に対処するにはどうするか、そういう内容の規定をする場合には、これは潜在主権の立場からいって矛盾しないかということをさっき質問したわけです。それは施政権を持っている以上はそうできるのだ、あきらめざるを得ないのだ、こう言う。ところがその最終処分権だけはあくまでも持っておるのだというけれども、その処分権を有効に確保して使い得る道を残すためには、そういう観点からすれば、アメリカもこの沖繩を条約の対象に入れておる。日本もまた当然その防衛ということの対象あるいはそれが直接防衛の実施は憲法の制約でできなければ、せいぜい条約の適用地域ということでそこのところを貫いていかなければ、筋が通らないような気がする。それを条約適用地域からはすした後この三つの条約との関係がどうなるかということも問題です。これをはずせば危険が防止できるかといえば、私はそうはいかないと思います。それは条約のあなたの構想の内容がすっかりコンクリートになってから、この点はさらに論議しなければならぬ点になるだろうと思いますけれども、今この段階においても、どうも処分権というものはあるのだ、それを確保するためには、やはりその条約適用地域の中にはっきり入れなければ筋が通らないじゃないかと思う。日本もこれを条約適用地域の中に入れない。アメリカも共同防衛の対象からはすしているというならわかるのですよ。ところがアメリカはこの三国との条約の中へはっきり入れているのだから、それならば最終的な処分権さえも日本は全然関与する余地がないということになる。その点を、一つでも最終処分権にしがみつくという道を考えるならば、やはり今度は日本条約の適用地域の中へ入れることによって、かろうじて私は最終処分権にしがみつくことができるのじゃないかと思う。その関係を聞いているわけです。
  93. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカとフィリピンあるいはアメリカと韓国、アメリカと台湾、その防衛の中の地域の一つとして入っているということが、最終処分権に抵触するものだとは考えておりません。
  94. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃ、潜在主権という名前の当否は別として、とにかくその表現によってこの沖繩というのは日本の領土だということが確認されているわけでしょう。そうすると、かりに沖繩が外国から攻撃を受けた場合には、それは日本に対する攻撃である。あなたの言うように、条約適用地域でなくすれば、外国から沖繩へ対する攻撃があっても、これは日本に対する攻撃とはみなさないという結果になるでしょう、河野さんの構想のように、直接防衛はしないが、条約適用地域だということになれば、外国から沖繩が攻撃された場合には、これは日本に対する攻撃と同じ条約上の効果が出てくるわけです。そこのところに私は非常に大きな違いがあると思う。その点はどうですか、沖繩が外国から攻撃を受けた場合、それは日本に対する攻撃とはみなさないということでいいのですね。
  95. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この安保条約の中に沖繩を入れるか入れないか。また入れた場合に攻撃を受けた場合、入れない場合に攻撃を受けた場合ということでありますが、今の考え方で申せば、沖繩自身が攻撃をされたときに、必ずしも日本がすぐに直接攻撃されたというふうには考えられないと思います。しかし日本に対する侵略の危険がそこで発生したということは、これは言えるものだと思います。
  96. 松本七郎

    松本(七)委員 それではあなた、沖繩が外国から攻撃を受けても、それは日本に対する攻撃とはみなさない、こういう立場で今後臨まれるのですか、その点をはっきりしておいていただきたいと思います。
  97. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その点は、初めから入れない場合にははっきりしているんじゃないかと思います。
  98. 松本七郎

    松本(七)委員 そうするとその入れるという主張の一番大きな根拠はどこにあるのですか。今あなたの立場は、入れない方がいい、それからもう一つはやっぱり入れるべきだ、しかし直接の防衛義務は負わない、こういう主張でしょう。その入れる方がいいという一番中心的な根拠はどこにあると、あなたは判断されておりますか。
  99. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 入れた場合には、やはり共同の防衛ができることになるので、あるいは、入れて抜くということがあるわけですけれども、その抜くということがどういう方法で抜くのか、私はその点も非常にむずかしい問題だと思います。
  100. 松本七郎

    松本(七)委員 その抜くということのむずかしさは別として、入れろという主張をしている人の根拠は、私どもが聞いておるところでは、やはり潜在主権は持っておるのだから、施政権は返還しなければならぬし、その施政権を返還するのにも、入れた方が筋が通ってやりやすいというふうに、施政権返還と結びつけて考えられておるように私は聞いておるのです。先ほどから質問している点も、そこに関係があるので御質問しているのだけれども、やはり最終処分権というものは、これは外国の侵略と結びついた非常に重要なことでしょう。最終処分権がある以上は、外国の侵略に対しては重大なる関心を持たざるを得ないのだから、そのときの発言力というものは、日本が全然ノー・タッチでいる場合と、条約上それが対象になっている場合とじゃ、非常に大きな違いが出るわけです。だから、そういうところにも沖繩を含めるかどうかということのポイントがあると思うのです。
  101. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 沖繩を含めるという論者の議論は、今お話のように、日本が潜在主権を持っているのだからという立場と、あそこに九十万の日本人がいるのだからという国民感情的な議論と、両方あるのだと思います。むしろ従来からの説明によれば、国民感情的な議論が非常に多いのではないか。潜在主権そのものを確保することは、これは入れる。入れないにかかわらず、外交ルートをもって交渉し確保していくことができるのでありまして、そういう意味において、今までの入れろという方の御議論は、私はそう理解しております。
  102. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、今かりに入れないというあなたの構想の通りに進んだといたしまして、アメリカと三国との結んでおる条約の適用地域にこれが入っておるためにかりに条約適用外にしても、日本にいるアメリカ軍が、このアメリカと台湾、フィリピン、韓国との条約が発動されることによって、これはやはり動かなければならなくなると思うんですね。一方そっちの方から行動を起さなければならぬ。ところがあなたは、在日米軍の行動の場合には協議の対象にするんだから、どうしても動くことを認められない場合には拒否すればいい、こういうことをしばしば言っておられるわけです。ところがかりにそういうふうな建前をとっても、この三国とアメリカとの条約が発動されることによって、それは極東の総合的な作戦から在日米軍そのものも、どうしても条約上の義務として動かなければならぬ場合があると思うんですね。こうなりますと、それは形式的には条約適用外に置いて、しかも協議の対象であって拒否権があるんだ、こうなっても、実質的にはこの三国と結んだアメリカの条約を発動することによって、在日米軍もやはりこの行動に協力しなければならぬという事態になってくる。そうなれば、かりに協議されて、日本としてはあくまでも拒否したくても、実際にはアメリカも——ただ対米じゃない、アメリカ、フィリピン、台湾、韓国の関係から、これはしゃにむに動かさざるを得なくなってくると思う。それまで拒否できる保証が一体どこにあるかという問題が、今後私は必ず大きな問題になると思うのです。そういう点で、この三条約との関連において、沖繩の地位というものを果してどの程度検討されておるかということを、もう少しこの機会に伺っておかなければならない。
  103. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 三条約が沖繩を発動区域に持っておる、沖繩が危殆に瀕したときに何が何でもと申しますか、しゃにむに日本にいるアメリカ軍が出なければならぬという、アメリカはそれらを条約上持っておるとは私は思いません。アメリカは日本を守るために日本に置いておるわけであります。  従ってわれわれはそういう場合にも拒否することができると思います。ただ現実の事態として、沖繩が侵略されてくるような事態が起りますれば、それは日本を侵略する前提であるとも言えましょうし、そういうような状態においては、在日米軍が日本を基地として活動することも、日本侵略に対抗する意味において必要な場合があろうと思います。ただしかし、アメリカが日本日米安保条約で置いております軍隊そのものを、条約向うに回さなければならぬ義務は負ってないと思います。
  104. 松本七郎

    松本(七)委員 条約上すぐそうならなくても、条約上台湾との間に、沖繩が攻撃された場合共同防衛の義務が生じて、作戦行動が太平洋、極東、相当広がる。そういう場合にこの前の金門、馬祖においても、輸送、補給その他で相当在日米軍が協力しているんだから、そういう意味でその台湾との条約が発動されれば——条約上そのまま、在日米軍が動く義務はもちろんないのです。しかし広範囲にわたった太平洋、極東における作戦行動の必要から、動かなければならない場合があり得るわけですよ。そういうときに日本は拒否権を持っているからといって、いかにそれを拒否しようとしても、実際にはそういう米台間の条約発動によって行動をだんだん拡大していって、在日米軍もどうしても動かなければならなくなった事態になった場合に、アメリカは日本意思を無視して動かさなければならないような立場に追い込まれることがあると思う。そういうときにも日本立場からはあくまでも拒否し、これを食いとめる保証というものは、私幾ら知恵をしぼっても今後の安保条約ではできないと思うのです。そういう点がもっと安心できる御説明を得ておかないと、沖繩を中心にして非常に不安な状態になると思う。  きのうの予算委員会ででしたか、岸総理が、在日米軍の基地が攻撃されたときには侵略とみなす、こういう答弁をされております。そうすると今言うような関係から、在日米軍も米台の条約発動に伴ってある程度の協力をしなければならないような事態になったときに、これに協力する在日米軍というものの基地は当然攻撃の目標になる。そうなればあなたの言われるように、沖繩が攻撃を受けるようなときには、当然日本も侵略あるいは攻撃を受ける危険があるというのは、そういう意味でなら、もう必然的に日本は攻撃されるということになるわけです。これは何も日本自身が原因を作らなくても、他国の原因によってそういう事態が引き起されるということになるんじゃないか。こうなると、あなたのせっかくの構想ですけれども、拒否権を持っておるとか、あるいは協議の対象にするとかいうようなことが、およそ無意味なものになってしまうおそれが多分にあるんじゃないか。この沖繩を中心に、そういう点が心配されるわけなんです。そういったところまで保証される自信があなたにはおありかどうか、もう一度確かめておきたい。
  105. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 おそらく松本さんの御議論は私の立場と別で、安保条約解消論だと思います。少くも現在の安保条約では協議事項すら入っておらぬのでありまして、無制限にそういう危険性を冒すわけであります。今度は少くも協議事項を入れまして、そうしてアメリカが一方的にそういう行動ができないようにしていく。少くも日本意思を入れて、そういうときには協議をして、拒否する場合もあり得るわけでありまして、決してあり得ないとは考えておりません。ただ、どうしてももう死活の問題であって、どうだという極端な例をお引きになりますけれども、そういうふうなほんとうにアメリカすら沖繩を守れないというような危険が起ってくる事態は、おそらく日本本土も危険な状態になるのではないか。そういうような場合には、それらの三国で結んでおります条約に巻き込まれる、というよりは、もうそれ自体日本を目標にした一つの段階にきているのじゃないかということも判断されるのではないかと思うのであります。そういう事態については、そのときの国民が完全に判断をして、そのときの政府を動かすべき問題であって、長期にわたる条約を結びますものとしては、やはりそうしたことを考えながら条約を作っていくということが当然のことであろうかと思います。
  106. 松本七郎

    松本(七)委員 沖繩が攻撃されたときは、こっちも攻撃されるような事態だと言われるけれども、私は必ずしもそうじゃないと思う。それは台湾という特殊の国際的な状態、特殊の事態にあるところを中心に、やはり沖繩というものが、この三国の条約によっても考えられているのだから、従って日本が何ら挑発行為をしない、日本は攻撃の対象になる要素がなくても、アメリカとの関係、台湾との関係、この特殊な地位にある台湾との関係で、沖繩が攻撃の対象になるということはあり得るわけですよ。沖繩が攻撃されるような事態は必ず日本も攻撃を受けるように、おのずから国際情勢全体がそういうふうになっておるとは私はいえないと思う。だから、そういう台湾の特殊事態の巻き添えを食らって、こっちが攻撃を受けざるを得なくなるような状態というものをできるだけ食いとめる努力をする余地はあるのじゃないか、こういう点なのです。その点になれば、それは全体の情勢がもう攻撃を受けるのは必至な状態になれば、これはもうやむを得ないところでしょう。だけれども、そうではなくて、台湾なりアメリカの行為によって、沖繩が、台湾と関係深い関係から、特にアメリカの基地化が徹底しておるという関係から、ここが攻撃対象になって、そのために在日米軍も攻撃され、在日米軍の基地も攻撃されて、そしてこれが日本に対する侵略だとみなすというような方向に今後いくならば、自分は種をまかないのに、直接の紛争の原因に日本自身は関知せざる間に、他国の紛争によって日本が危険にさらされるという結果になる。これをもう少し、安保条約改定については沖繩の地位ということの微妙なものを考慮して、これは条約改定の問題についてももっと重要視すべきではないかというところをお聞きしているわけなのです。
  107. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それでありますから協議事項にして、ノーと言える余地が必要だと思うのでありまして、そういう意味において、協議事項で、ノーと言える余地を私は作っておると思うのであります。それからまた今の松本委員お話によりますと、沖繩を攻撃し、同時に日本にある基地の米軍を攻撃するということでありますが、私はやはり今後の地域戦争においても、国連憲章にのっとって各国がやると思います。従って沖繩において米軍とも争うような国、それは大陸にある国で、日本と友好親善関係を持っているとすれば、沖繩の米軍をたたいて、日本の基地を侵略するようなことは私はしないのじゃないかと思います。少くもそういう前提でなければならぬのではないか。あらゆる角度において全部日本をたたいてくるというふうにまで思うことはいかがかと思います。
  108. 櫻内義雄

    櫻内委員長 松本君、いかがでありますか、本会議も迫りますから議題の三件に直接の御質疑をお願いしたいと思います。
  109. 松本七郎

    松本(七)委員 そこでさしあたり郵便についての施政権の返還というものは、何らか具体的に議題にされたことがあるのでしょうか。先ほど引用した坂井特派員の話では、ワシントンの方では郵便と教育については考慮する空気があるということを報道しているのですが、日本から何かこれについて返還要求をされてその反応はどうですか。
  110. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 特別に郵便でありますとか教育でありますとかいうものを返還してくれという、そういう施政権返還の意味において交渉したことはございません。しかしながら沖繩の経済問題あるいは戸籍の問題、郵便の問題、教育の問題等につきましては、日本も非常に関心を持っているのであって、従って沖繩の経済の発展なりあるいは郵便交通の十分円滑なる達成なり、そうしたような方法を講ずることについて最大の考慮を払ってもらうということはしょっちゅう言っておることであります。
  111. 松本七郎

    松本(七)委員 しょっちゅう言っておられて可能性はあるのでしょうか。どういうふうに見ておられますか。当分望みなしかどうか。
  112. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日米共同声明によりますと、施政権は当分返還できないということをいわれておりますが、部分的にこれらの問題の協定をいたし、あるいは協定の援助をいたすというようなこと自体が、必ずしも施政権返還とまでは法律的にはいえないかとも思いますけれども、しかし実質的にはそうしたものの援助によってわれわれがそういう面の便宜をあれし、沖繩の民生の幸福に資する道は開かれていると思っております。
  113. 松本七郎

    松本(七)委員 あとは事務当局に対するものですからあとにしましょう。
  114. 櫻内義雄

    櫻内委員長 この際お諮りいたします。砂糖協定について質疑を終了するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  115. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なければ、これにて本件に対する質疑は終了いたしました。  本件については別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  千九百五十八年の国際砂糖協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件を承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって、本件は承認することに決しました。  なお、本件に関する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なければ、さよう取り計らいます。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十八分散会