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1959-03-25 第31回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十五日(水曜日)     午前十一時二十一分開議  出席委員    委員長 小金 義照君    理事 赤澤 正道君 理事 秋田 大助君    理事 中曽根康弘君 理事 前田 正男君    理事 岡  良一君 理事 岡本 隆一君       小坂善太郎君    小平 久雄君       佐々木盛雄君    丹羽喬四郎君       西村 英一君    保科善四郎君       堂森 芳夫君  出席政府委員         防衛政務次官  辻  寛一君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君  委員外出席者         原子力委員会委         員       有澤 廣巳君         原子力委員会委         員       石川 一郎君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  法貴 四郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子力行政に関する件  技術輸出所得特別控除に関する件      ————◇—————
  2. 小金義照

    小金委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  この際、御報告いたすことがございます。去る二十三日の理事会におきまして、現在大蔵委員会で審査中の物品税法の一部を改正する法律案規定されておりますトランジスターラジオに対する新規課税の問題について協議いたしました結果、次のような申し入れを行うことに決定いたしましたので、この旨、私から大蔵委員長申し入れをいたしておきました。その内容は、   トランジスターラジオ聴取機につ  いては、この際左記理由により新規  課税を取止めることが適当である。     理 由  一、右聴取機の製造は最近漸く発達   の緒についたもので、なお今後   益々技術上の改善進歩を必要とす   る現状である。従ってこれに対し   新規課税をすることは斯業の発展   を阻害するおそれが大である。  二、右課税は実際上関連乃至下請   工業に転嫁せられるおそれがあ   る。以上の内容でありますので、御了承をお願い申し上げます。  この際、国立試験研究機関の実情に関しまして、去る二月四日の理事会におきまして、本委員会調査に資するため、主として国立試験研究機関視察を行うことを申し合せ、二月十一日より三月四日までの間に数回にわたって航空技術研究所ほか七カ所の視察を行なったのでありますが、これについての共通的な印象及び所感を申し述べたいと存じます。  その第一は、各研究所に優秀な人材を吸引しがたいことであります。研究機関の機能の重点が、物的施設と同時に人的組織の優秀さにあることは論を待たないところであり、また、国立機関指導的役割から考えても、その必要性は一そう緊要であるにかかわらず、優秀な人材を吸引し、また、これを保有することができないうらみを共通に訴えておりました。その要因は、第一に、民間会社及びその研究機関等との間に待遇の格差が少なくないこと。第二に、官立機関では公務員試験合格条件があるため、指導教授等の推薦する適格者と自由に採用することができないこと等であります。これらの対策は、すみやかに実施する必要がありますが、その要点といたしましては、安心して研究に専念できるような待遇改善並びに研究職という特別な職に適応する採用条件を実行すること。また、十分な研究を行い得るような態勢を整える等、新進の研究員を吸引し得るよう格段の改革が必要であると思われるのであります。  その第二は、研究経費が不十分と認められることであります。研究所に対する研究費の過少なことについては例外なく各研究所当局が訴えており、今回の視察でその設備を実際に見ても、十分でないことは容易に看取されたのでありますが、前述するように、各研究所人件費物件費の割合から観察しても、民間研究機関に比べて人的組織に対する研究上の経費がふつり合いであることは、まず間違いのないところであると思われます。これらを改善するためには、総合的、計画的に漸次その充実を期することが肝要でありますが、一面、その研究成果により直接利益を受ける受益者側の適正な経費の負担を求むる受託研究のごときものを一そう拡充強化するのも、一つ方法であるように思われるのであります。  その第三は、研究施設設備等老朽化陳腐化を一掃する必要があることであります。諸外国との比較は酷であるとしても、民間施設設備と比べて著しく貧弱であるか、または老朽のものが少なくないのでありまして、国立のものは明治、大正、昭和の戦前のものが相当多く、最新のものと比較すると著しく不均衡であります。これらはすみやかに年次計画を定めて、逐次更改する必要のあることが痛感せられるのであります。  以上でその所見の大体は終りますが、その節に御参加されなかった方々もございますので、視察個所の概要を、参考として会議録に掲載いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小金義照

    小金委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 小金義照

    小金委員長 原子力行政に関する件について質疑の通告がありますので、順次これを許します。岡良一君。
  5. 岡良一

    岡委員 私は、原子力基本法と今参議院予算委員会あるいは衆議院内閣委員会論議の焦点となっております核兵器保有の問題、その関連性原子力委員会立場においてどう御決意をしておられるのか、いかなる具体的な御所信を持っておられるのかという点を承わりたいと思うのでございます。  そこで、まず参議院なり衆議院論議を見ておりますると、いわば、憲法解釈政策というものが混同されておる。従って、将来小型核兵器は、あたかも、現在軍隊が持って使っているところの鉄砲だまのようなものにでもなって、問題にならないんだというような印象、従って、そういうものは容易に持ち得るんではないかというような印象さえも与えておることは、非常に危険な考え方だと思うのでございます。そういう点からまずお伺いをいたしたいのでございますが、原子力委員会は、日本原子力研究開発並びにその利用全般について重大な責任を持っておられます。しこうして、その全般についての責任は、つまり原子力基本法を堅持する、この建前が貫かれねばなりますまいと存ずるのでございますが、まず、この点についての御所信を有澤委員からお伺いいたしたいと思います。
  6. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 全くそのように考えます。
  7. 岡良一

    岡委員 そこで、原子力基本法の第二条には「原子力研究開発及び利用は、平和の目的に限り、民主的な運営の下に」云々と規定されております。御存じのように、特にこの第二条は、昭和三十年に原子力基本法作業が始められました場合、科学者の側からも強い要請がありました。そこで、この法律は、与野党の委員共同作業のもとにこの第二条の規定を明確にいたしたのでございます。従って、当時これを提出したのは委員側でございまして、政府の一方的な解釈は許される性質のものではございません。ところが、たとえば岸総理は、「核兵器の問題については、科学が進歩するから、核兵器と名づければすべて違憲であるとするのは行き過ぎである」、こういうようなことも先般の予算委員会で私に答弁をしておられる。さらにまた最近は、「防衛用小型兵器ならば憲法上持てる」、こういうふうに申しておられるのでございます。これは、明らかに原子力基本法の第二条の規定を無視した考え方であると私は思うのでございまするが、原子力委員会としての御所見を承わりたい。
  8. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 ただいま岡さんから御質問原子力基本法第二条は、明らかに「原子力研究開発及び利用は平和の自的に限り、」、こういうふうに規定されております。それでありますから、原子力基本法が現存する限りは原子力開発研究ばかりでなく、利用そのものも平和の目的に限る、こう考えられます。従って、もし平和の目的に反するような原子力利用があるとするならば、それは基本法に反している、こういわなければならぬと思います。
  9. 岡良一

    岡委員 してみますると、今私が申し上げました岸首相の「防衛用小型兵器ならば憲法上持てる」という、この憲法解釈は、原子力基本法が現存する限り、この基本法の第二条に従えば持つことはできない、こうなるのでございますか、その点の御所信はいか  がでございましょう。
  10. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 憲法の方はどういうふうに解釈するか、私責任を持ってお答えはできませんが、基本法について申しますならば、基本法が現存している限りは、原子力利用といえども平和の目的に限定される、限られる、こういうことだということでございます。
  11. 岡良一

    岡委員 してみますると、原子力基本法第二条を改正しない限り、小型核兵器といえども日本はこれを持つことは許されない、こう原子力委員会としてはお考えでございますか。
  12. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 そうでございます。
  13. 岡良一

    岡委員 さらに、私はこの機会に、この第二条の、特に平和の目的についてはっきりとした解釈統一をいたしたいと存ずるのでございます。しばしば政府は、「日本が自国の安全を守る、平和を守るために自衛権発動するのである、従って、自衛権発動に伴い自衛力を行使するとしても、このことは必ずしも戦争の目的ではないのであるからして、平和を確保し、日本の安全を守るという意味において平和目的である」という、きわめてごまかしの説明をすることがこれまであったわけでございます。しかし、この原子力基本法第二条の規定の「平和の目的に限り、とということは、すなわち、いわゆる外国法律用語としてしばしば用いられておるノンミリテール、非軍事的という意味解釈をしていいのでございましょうか、その点のお考えを承わりたい。
  14. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 私、今回ちょうどこの原子力基本法国会提案になりましたときの中曽根議員提案理由説明を、速記録について読みました。それからまた、岡さんがそれについて中曽根さんに対して質問をしていらっしゃいますが、その答弁の中に、「これは軍事利用を禁止しておるものである」、こういう説明があります。私も、この提案者の立法の趣旨と全く同様に考えております。
  15. 岡良一

    岡委員 要するに、軍事的使用は認められないということに相なるといたしますると、たとえば、佐々木惣一博士日本自衛行動について憲法解釈との関連についての文献がございますが、佐々木博士は、たとえば、日本自衛権に基く自衛力行動自衛軍事行動である、こう規定されております。軍事行動であると言っておられます。なお、この著書によれば、さらに敷衍をいたしまして、要するに、自衛権発動に伴う自衛行動といえども軍事行動である、いわば軍事的な行動であると言っておる。従って、この基本法第二条の「平和の目的に限り」ということは、——すべての軍事行動自衛行動も含めるものである。従って、わが国がたとい自衛のためといえども軍事行動においては核兵器使用することは許されない。この基本法は、このようなことを明確に規定しておるものと原子力委員会はお考えになっておられるものと私どもは了承していいのでございますか。
  16. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 その通り私は考えております。
  17. 岡良一

    岡委員 防衛庁長官の御出席を求めたのでございますが、御病気で御出席がないのはまことに遺憾でございます。そこで、かわって防衛政務次官の辻さんにお尋ねをいたしまするが、お聞きの通り原子力基本法第二条においては、わが国自衛目的のためといえども核兵器は持つことができない。たとい、いかなる小型核兵器とい、えども持つことはできない。原子力委員会は、この基本法第二条を改正しない限り、小型核兵器といえども持つことはできないという所信を明らかにしておられます。防衛庁は、この見解に対していかが思っておられますか。
  18. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 原子力基本法第二条に規定してありまする通り平和目的に限っておりますが、防衛庁といたしましても、この法律の存する限り、核兵器保有することはできないと考えます。
  19. 岡良一

    岡委員 重ねてお聞きをいたしまするが、この平和目的、すなわち、非軍事的目的、従って、自衛権発動に伴う日本自衛行動においても小型核兵器使用は許されない、このように防衛庁ははっきりと言明をいただけるものでございますか。
  20. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 軍事上の固有の目的についてこれを利用することは絶対にできない、かように考えております。
  21. 岡良一

    岡委員 その軍事的行動とは、自衛行動をも私は含めるものである、こう先ほども申し上げておるのでございます。従って、いわゆる自衛目的のための行動といえども軍事行動である、従って、小型核兵器といえどもこれが使用は許されない、これが原子力基本法第二条の趣旨である。このような防衛庁の御所信でございますか。
  22. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 そのように解釈いたしております。
  23. 岡良一

    岡委員 この際、先般参議院予算委員会で示された自衛権に関する統一解釈を、いま一度この席上でお示しを願いたいと思います。
  24. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 誤まりがあってはいけませんので、はっきりと、一字一句を文書にしたのを朗読いたします。「誘導弾等による攻撃を受けて、これを防御する手段がほかに全然ないというような場合、敵基地をたたくことも自衛権範囲に入るということは、独立国として自衛権を持つ以上、座して自滅を待つべしというのが憲法趣旨ではあるまい。そういうような場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに他に全然方法がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくということは、法理的には自衛範囲に含まれており、また可能であると私ども考えております。しかしこのような事態は今日においては現実の問題として起りがたいのでありまして、こういう仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法趣旨とするところではないと考えます。」かようでございます。     —————————————
  25. 小坂善太郎

    ○小坂委員 この際、動議を提出いたしたいと思います。実は、岡さんの質問の前に申し上げるべきことであったのでありますが、大蔵省との打ち合せの都合もありまして、岡さんの質問を中断していただくことは非常に恐縮に存じますけれども、この際御採決を願いたいと思います。それは、技術輸出所得特別控除に関する件でありまするが、案文を読んでみます。     技術輸出所得特別控除に関する件   我が国科学技術現状に鑑み、技術輸出の促進は極めて緊要であると思料せられるが、その奨励方策の一環として、政府は、今国会租税特別措置法の一部を改正する法律案を提出し、技術輸出の場合の所得控除額引上げようとしていることは、誠に時宜を得たものであると考える。   従って、技術輸出所得特別控除を実施するに際し、同改正案第二十一条の三及び第五十五条の三各後段の括弧書当該金額当該技術輸出取引に係る当該事業年度(或は当該年分)の所得金額として政令で定めるところにより計算した金額をこえるときはその計算した金額)の政令を定めるに当っては、「その計算した金額とは当該事業年度(或は当該年分)の総所得の百分の五十とする。」よう措置すべきである。   右決議する。 こういうのであります。
  26. 小金義照

    小金委員長 ただいまの小坂善太郎君の御発言の通り技術輸出所得特別控除に関する件を本委員会決議とするに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 小金義照

    小金委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  なお、ただいまの決議につきましては、関係当局へ参考送付いたしたいと存じますが、その時期及び手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 小金義照

    小金委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  29. 前田正男

    前田(正)委員 岡君の質問の最中でありますが、時間の都合もありますので、私は石川委員の方に御質問いたしたいと思います。  今回、正式に原子力発電会社からイギリスのコールダーホール型の発電炉輸入許可に伴うところの申請を提出したということが新聞等にも出ておるようであります。当然、これに対しましては原子力委員会、あるいは通産省、あるいは科学技術庁がその許可をしなければならぬわけでありますが、これに対しまして、実はわれわれの当委員会といたしましては、過日原子炉規制法の一部を改正する法律案を通過させるに当りまして附帯決議をつけておるわけであります。その附帯決議には、こういう大型実用原子炉許可に当りましては、十分に各方面の意見を公聴会その他によって聞いて、よくこれを反映して処置してもらいたい、こういう附帯決議をいたしまして、御出席の高碕大臣からも、その趣旨に沿うような御答弁があったのでありますが、今回そういう具体的な申請が出て参りましたので、原子力委員会としてはどういうような取り扱いをされようとしておるか、石川委員から一つお答えを願いたいと思います。
  30. 石川一郎

    石川説明員 附帯決議のことはよく存じております。つきましては、われわれといたしましては附帯決議趣旨に沿いまして善処いたしたいと思っております。
  31. 前田正男

    前田(正)委員 具体的には、公聴会等の処置をやらなければならぬと思うのでありますが、その点について、原子力局長通産省その他とどのような連絡をしておられますか。
  32. 佐々木義武

    佐々木政府委員 御承知のように、通産省等では、古い法律でございますけれども電気事業法におきまして、聴聞会というものを事業者許可するときにやります。けれども聴聞会は、この前の附帯決議で御要望された趣旨にそのまま範囲が合致するかと申しますと、必ずしもそうでもないような感じもいたしますので、通産省と打ち合わした結果、通産省はやはり通産省で、本来の意味聴聞会をやりたいという意向のようですから、原子力委員会の方でも決議案に沿うような意味で、何らかのそういう機関をもちまして決定をいたしたいというように考えております。
  33. 前田正男

    前田(正)委員 それでは、ただいまの御答弁もありましたが、一つなるべく附帯決議趣旨に沿うようなことで厳正に、また公平に取り扱っていただきたいということをお願いしておきます。
  34. 小金義照

    小金委員長 それでは先ほど岡良一君の質疑を続行いたします。岡良一君。
  35. 岡良一

    岡委員 今統一解釈をお読みいただきましたが、御存じのように、かつて鳩山内閣のときに、現在の核兵器は原水爆が代表的だが、その他のものも多分に攻撃的性質を持つようだから、日本がこれらを持つことは憲法が許さない、こう申しておられる。ところがその後、この統一解釈について、去る十九日の参議院予算委員会伊能長官は、政府統一解釈核兵器を全面的に禁止したものではないということを、千葉君の質問に対して答えておられます。今お聞きいたしますと、原子力基本法が現存する限り、たとい自衛のためといえども、また、いかなる小型核兵器といえども、これを持つことは許されないのであるという御答弁でございました。してみますると、十九日の千葉委員に対する伊能長官政府統一解釈は、核兵器を全面的に禁止したものではないという御所信と大きく食い違うのでございまするが、この点いかがでございましょう。
  36. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 伊能長官の当時の答弁は、これは憲法の純粋な解釈なのでございまして、しばしば岸内閣が言明いたしております通り核兵器は絶対に保有しないという立場をとっておるわけでございます。なお、この原子力基本法規定されております通り、これによりましても核兵器を持てないことになっております。政策上はもとより、なお国内法においてもかように規定されておる限りにおきましては、核兵器を持つ意思は毛頭ございません。従いまして、憲法上の純粋解釈としての答弁といささかも食い違っておらないと存じます。
  37. 岡良一

    岡委員 今、辻政務次官が言われましたが、しかし、岸総理が、核兵器保有をしない、また、持ち込みも認めないという理由としては、「国民感情にかんがみ」ということを常に言われるけれども、「原子力基本法第二条の条章に照らして」ということを私は一度も聞いたことがない。また、国民感情というものは、いわば動くものでございます。しかし原子力基本法そのものは、これを改正しない限り、国の原子力政策基本として現存するものでございます。従いまして、核兵器保有を認めない、持ち込みも認めないということは、原子力基本法が現存する限り、これに基いてその保有も認めない、持ち込みも認めないという態度でなければならないと存じまするが、この点、原子力委員並びに防衛庁のお考えを承わりたいと思います。
  38. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 その通りに御解釈願ってけっこうでございます。私の方もそのように解釈いたしております。言い方の違いでございまして、政策の面において持たないということははっきりいたしておりますとともに、現在現存しておりますこの法律に照らしましても、核兵器は持てないということははっきり断言できます。
  39. 岡良一

    岡委員 なお、先般参議院でございましたか、衆議院でございましたかの質問に対して、たとえば米軍核兵器等を持ち込むことについては、憲法米軍を拘束し得ないという御答弁があったと記憶しておりまするが、この点、いま一度明らかにしていただきたいと思います。
  40. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 憲法日本国内に限っておりまして、国権の及ぶ範囲ということでございまするので、これによって在日米軍装備を規制するわけには参らぬわけでございます。従いまして、原子力基本法との関係は全然ないと私ども考えております。
  41. 岡良一

    岡委員 そこで、まず明らかにしておきたいことは、私が先ほども申しましたように、「国民感情にかんがみ」ということを総理は常に申される。しかし、国民感情はいわば動くものであります。非常に消長のあるものでございます。しかし、基本法は現に国会が議決した法律で、日本原子力政策の中核でございます。これが現存する限り、国民感情のいかんにかかわらず核兵器保有は認めることはできない、許されない、こういうふうに防衛庁としても御確信でございますか、この点をもう一度伺います。
  42. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 自衛隊に関する限り、その解釈で適当でございます。私どももその統一解釈をとっております。
  43. 岡良一

    岡委員 今、政務次官から、日本憲法国内法を拘束するが、在日米軍を拘束することはできない、こういう御所信でございました。ところが在日米軍行動は、米国の安全のためではなく、日本の安全と平和のため、あるいは太平洋地域の安全と平和のためであります。従って、米軍行動というものには、日本政府意思というものが無視されるはずのものではないと私は思うのでございますが、その間のことはどういうことになっておりますか。
  44. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 先ほど私が御答弁申し上げて、あるいははっきりいたさなかった点もあろうかと存じますが、日本国憲法第九条は、米軍行動規定するものではないわけでございまして、その米軍行動等につきましては、別に条約でもってこれを協議して定める、こういう建前に相なっておるわけでございます。
  45. 岡良一

    岡委員 そこで、米軍装備行動等については条約によって規制する、従って、両国政府間で協議しようというふうに現在の行政協定ではなっておるのでございますが、しかし、米軍行動そのものは、必ずしも米国そのものを本位としたいわゆる作戦ではない、あるいは軍事行動ではない、日本の平和と安全ということを中心とした行動である、こういうふうに政府はしばしば言っておられる。してみれば、日本の平和なり日本の安全のための米軍軍事行動である。こういうことに相なりますれば、この際日本国内法として現に原子力基本法が存しており、そして原子力利用平和目的に限定されておる。してみれば、当然この国内法米軍核兵器使用という点については大きな規制を与えざるを得ないわけでございます。この点をいかにして規制するかということが問題になろうかと存じますが、防衛庁としてはいかがお考えでございますか。
  46. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 原子力基本法は、これは米軍行動を規制するものでは全然ございません。従いまして、その点に関する限りは無関係であると存じます。
  47. 岡良一

    岡委員 米軍行動は規制しないが、ただ、米軍行動日本の平和なり日本の安全のために、現行の安保条約によれば、日本政府がこれを申し入れたときに行動を起すという建前になっておるのでございますから、日本の平和と安全のためには、たとい他国の軍隊といえども日本原子力基本法建前から言って、原子力軍事利用というものを放任するわけにはいくまい、私はそう考えるのでございますが、その点いかがお考えであるかということでございます。具体的に基本法が規制し得るかどうかということをお尋ねするのではございません。
  48. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 原子力基本法の存する日本でございますから、配備とか何とかいう問題につきましては一々米軍と協議をする建前になっておりますので、そうした場合におきまして、この原子力基本法の存在いたしておることも頭に置きまして、この協議に移るわけでございます。
  49. 岡良一

    岡委員 頭に置いて協議をいたしたといたしましても、たとえばアジア地域、あるいは極東地域において侵略の急迫した事態がかりに生じたといたしましても、しかも、この場合に核兵器を投入しようという決定は、従来の例に見ると、アメリカ、いわば三軍の統帥権を持っている大統領の裁定によってきまる。このような重大な、しかも軍事的な、作戦的な決定というものが相手国において必要と認められたという場合、日本がその心組みをもって、これをくつがえすことができるのでございますか。
  50. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 そうした仮定の問題は、あくまで条約の問題であると思います。万が一そういう場合に直面をいたしましたときには、協議によって解決をしていくことができる問題であると考えております。
  51. 岡良一

    岡委員 そこが現在の行政協定——あるいは行政協定が改定されるとしても、その内容として伝えられる両国政府の協議というところに、大きな欺瞞性があると私は思うのでございます。日本側とすれば、国内法ではあるけれども原子力基本法によって明らかに原子力軍事的目的使用は禁ぜられておる。してみれば、単に協議の上決定するのではなく、持ち込みは認めない、使用は認めないということを明文化することが当然なことではございませんか。この点、有澤委員の御所見防衛庁次官の御所見を伺いたい。
  52. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 日本には、今仰せられたように原子力基本法も存在いたしております。また、憲法も存在いたしております。従いまして、そういう点を十分考慮いたしまして、そして外交の当局であるところの外務省がそれに抵触をしない条約を結び、さらに、万一事態が生じた場合におきましては事前協議の形によってやっていく、こういうことで支障がないと存じております。
  53. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 ただいまの岡さんの御質問でございますが、原子力基本法、つまり法律関係から申しますと、私も防衛庁政務次官のおっしゃっている通りだと思います。  それから、日米の条約の中にそういう規定を入れるかどうかという問題は、今私からは直接お答えができませんで、これは政府自身の方針として決定さるべき問題だと思います。しかし、原子力基本法は、前々から申し上げておるように、日本においては原子力利用というものは平和目的に限っている、これはもう動かない明々白々たる事実である、そういうふうに考えます。
  54. 岡良一

    岡委員 辻政務次官は、今御答弁の中で、基本法ないしは憲法の精神等に抵触しないように云々と言われましたが、それは具体的にどういう措置を講ぜられるのでございますか。  それから有澤委員にお尋ねいたしますが、私ども原子力委員会に特にこの問題についてきょう御所見を承わりたいと申し上げましたのは、やはり原子力基本法第二条がゆがめられようとする危険がある。そこで、原子力委員会は少くとも原子力研究開発利用全般についての重大な責任を持っておられるのでありまするし、言ってみれば、原子力基本法という日本原子力政策憲法の番人であるという自覚と決意を持っていただきたい。そういう意味において、原子力委員会といえども、もし政府原子力政策において誤まりがある、あるいは原子力基本法に違反するおそれがあるという場合においては、当然原子力委員会意思を公けに政府申し入れされるということも、原子力委員会の設置法の中には権限としてうたわれておるのでございますので、このようなお立場を自覚されていかがされるか、いかにすべきが妥当であるか、基本法が厳存する限りは、他の第三国との間における軍事的な協定の中においても原子力軍事利用は認めないということを明文化する、これを取りつけるということは、原子力委員会としては当然な御方針でなくてはならないと思ってお尋ねをしたのでございます。その点で重ねて次官と有澤委員にお尋ねいたします。
  55. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 抵触というと、私そういう言葉を使ったといたしますれば、あるいは語弊が生ずるかと存じますが、憲法の精神並びに原子力基本法の定むるところと全然関係がない、こういうことなんでございます。——岡委員、私の申し上げたことがわかりませんでしょうか。憲法の九条の精神、それから原子力基本法の第二条と米軍の配備とかなんとかいった問題につきましては全然無関係である、こういうことでございます。
  56. 岡良一

    岡委員 そこで、たとえば現在の行政協定でも、また、特に今後改定が伝えられておる行政協定内容においても、米軍の配備と申しましょうか、こういう問題については両国政府が協議する、こういうことになろうかと思います。もし、そういうことになった場合——辻さんは作家辻寛一らしく非常に文学的な表現をなさいますので、はっきりとした表現をお願いしたい。問題は、日本には憲法の第九条がある。原子力分野においては、まさしくその延長として原子力基本法第二条がうたわれておる。われわれは、この基本法の立案当時、そういう心組みでこの第二条をはっきりと明確化したのであります。してみれば、この第二条が現存する限り——当然共同の軍事行動をとる場合が予想される。その場合において、たといそういうものがとられても、基本法に基いて原子力軍事利用というものはしてはならないのである。言葉をかえて言えば、日本自衛隊が核兵器を持つことはもちろんであるが、核兵器持ち込み——持ち込みということは当然使用意味するわけでありますから、このようなことはしてはならないということを、原子力基本法第二条の精神に基いて政府はその約束を取りつけるべきだ、私はそう申し上げておるのです。原子力委員会の有澤さんにも、こういう約束を取りつけることによって、初めて原子力基本法の第二条が責任を持って守り抜かれるのではないか、こうお尋ねをしておるのであります。その点を重ねてお答え願いたい。
  57. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 岸総理が、核兵器は持ち込ませないということをはっきり言明いたしておりますし、その精神のもとに条約を結ぶのでございますから、そうした懸念は全然ないと思います。
  58. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 法律の見地から申しますと、私たち、原子力基本法を全責任を持って守る、こういう趣旨でございますが、この法律から申しますと、さて、米軍が持つことについて、果して私たちの方がそれを強く規制することができるであろうかどうかということは問題だと思います。しかし、日本政府、あるいは日本の国が、原子力というものは平和利用に限る、こういうふうになっておりますから、その趣旨、精神から言うと、日米の間においてもそういうふうな趣旨条約の中に盛り込まれることが望ましい、こういうことは言えると思います。
  59. 岡良一

    岡委員 特に次官との話が少し並行線になるようでありますが、重ねて申し上げることは、憲法九条があり、基本法第二条がある。明文化した法律としてあるのだから、この法律日本の領土内における外国軍隊に対して直接拘束する力がないというならば、なおさらのこと、核兵器使用持ち込み等については明確な約束を取りつけることが、この基本法政府としては忠実なゆえんではないかということを申し上げておる。岸首相が持ち込まないと言っておるから、持ち込まないであろうというのではない。しかも、当時岸首相持ち込みを認めないとか、保有を許さないと言われておるのは、国民感情にかんがみて、こう言っておられる。今ここに新しく原子力基本法第二条が提起されておるわけです。国内法として現存しておる。非軍事目的にのみ原子力利用するということが明確に国内法によって規定されておるので、アメリカ軍が日本核兵器を持ち込む——持ち込むことは使用を前提とするのでございまするが、持ち込む、あるいは使用するということに対して、国内法建前からいえば、当然明確に、持ち込まない、使用は許さないという約束を取りつけることが、この法律に忠実なゆえんではないかということを私はお尋ねしておるものでございます。  それから、有澤原子力委員にお尋ねをしておりまするのは、先ほど申しましたように、原子力委員会設置法で、原子力委員会は内閣総理大臣に原子力政策について勧告する権限を持っておられる。ところで、小型核兵器ならば憲法上認めてもいいというような、いわば俗論的な見解が堂々と内閣総理大臣から発表されておるということに相なりますると、これは、この基本法第二条の、平和目的に限定をされた日本原子力政策というものが、きわめて歪曲をされようとする危険が感ぜられる。こういう場合には、原子力委員会は当然委員会責任において、勧告の権限にのっとって、このような誤まれる見解に対しては堂々原子力委員会所信を内閣総理大臣に勧告する、その具体的な方法としては、今、核兵器持ち込み保有ということが問題になるならば、原子力委員会としてはこれを明文化するということを、内閣総理大臣に明確に、委員会意思としてこれを勧告せられる、ここまで積極的な措置を講ぜられることが原子力委員会の正しい道ではないか、こう申し上げておるのでございます。重ねて御両者の御答弁を願います。
  60. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 憲法第九条の精神、それから原子力基本法二条の趣旨というものを十分尊重いたしまして、しかも、政策といたしまして岸内閣核兵器を持たない、こういう立場に立ちまして条約を締結するわけでございまするから、そういう御心配はないかと思います。しかし、そうした条約をどういうふうに具体化するかということは、国務大臣でもございませんから、私ではちょっとお答えするわけには参りません。私は、そういう心配がないと存ずるわけでございます。従いまして、その程度のお答えしか目下できないわけでございます。
  61. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 ただいまの岡さんの御質問ですが、先般も、朝永教育大学長の投書の中にもそういう御心配があったと見受けました。憲法、純粋の法律の議論、これをやっている場合には、私どもは直接それに関知することはないと思うのです。ただ、基本法の点からいえば、もう数回申し上げました通り、これは平和利用平和目的に限定されてくる。ところが、政府の方では事実持ち込まないと申しておりまするから、これを持ち込むとか、あるいは持ち込むことがあるということでありまするなら、これは大いに問題になると思いますけれども、純法律の、憲法解釈論議というものと、それから、持ち込むか、持ち込まぬかという問題とは、切り離して考うるべきではないかと私は思います。純粋の法律憲法論議に一々委員会の方が関与するということは、あまり必要ないのじゃないか、だがしかし、持ち込むか、持ち込まぬかということになれば、これは原子力基本法ではむろん持ち込めない、また持てない、この方は非常に明確になっていると思うのです。どうも議論が少し紛淆しているような感じを私自身は持っておりますが、しかし、基本法の点からいってどうか、こういう御質問があれば、これはもうはっきりと持てないし、持ち込めない、こういうふうに申し上げることができると思います。
  62. 岡良一

    岡委員 そこで、特に核兵器米軍が持ち込む、あるいは使用するということは、これは日本憲法も拘束することができない、いわんや、日本国内法ではこれを制限することはできない、こう防衛庁は言っておられる。総理も、そのように言っておられる。してみれば、持ち込まれ得る可能性はあるわけです。あるいは使用される可能性もあるわけです。そこで岸内閣総理大臣は、国民感情にかんがみて持ち込みは認めない、許さない、こういうことを言っておられる。ところが、そうではない。原子力基本法第二条に基いて持ち込まない、あるいは使用を許さないということになった場合に、この原子力基本法第二条の精神を原子力委員会責任を持って実現をし、推進をすべき立場におられますので、核兵器持ち込み使用日本法律では制限し得ないということであれば、原子力委員会としては、原子力基本法第二条の平和目的に限定された原子力利用という立場を堅持して、原子兵器の取扱いの問題については、持ち込まない、使用を許さないという明文を第三国からはっきり取りつけるべきであるということを、その危険がある限り、委員会としては意思表示をさるべきではないか。従って、法律の運営という具体的な政策の面で危険がある限りはすべきである。原子力委員会は、岸総理が、国民感情にかんがみて持ち込みは認めない、使用は許さないと言っておられるからその危険はないものである、こういうふうにお考えになるのか、そうではなく、国民感情でなくて、基本法第二条によって軍事目的使用は認めないのであるから、この国内法に基いて、しかも、国内法米軍を制約し得ない以上は、米軍との協定ないし条約内容として、明確に持ち込まない、あるいは使用を許さないという約束を取りつける必要がある、こういう立場に立たれるのが当然ではないか、これが原子力委員会として第二条を守られる当然な責任行為ではないか、こう私は申し上げておるわけです。
  63. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 基本法趣旨から言いますと、日本国がこれを平和的目的に限って利用する。今持ち込みで御議論になっておるのは、米軍が持ち込むという場合でございます。ですから、これは結局国と国との間の条約でそれがきまるわけだと思います。ですから、その条約の中に、日本としてはこの基本法の精神から言えば、原子力を平和利用に限る、日本としてはその方が望ましいということは言えると思います。持たないことも、アメリカ軍も持ってもらいたくないということも言えると思います。  それから、岸総理のおっしゃっている国民感情の問題は、おそらく、単に基本法ばかりでなく、国民の感情もそれを欲しない、みずからそれをしないという一つの論拠として国民感情の問題を出していると思うのです。ですから、私たちの判断の範囲外にある問題だと思います。基本法の精神から言えば、その規定が設けられることは望ましい。これは先ほど申し上げた通りであります。
  64. 岡良一

    岡委員 先ほど辻さんの方では、自分の立場からははっきりとしたお答えができかねると言われたのですが、その点、あらためて私は御答弁をいただきたいと存じます。  なお、先ほどお示しをいただいたいわゆる統一解釈でございますが、あの中の後段で、日本は相手国の基地をたたくことができるということでございましたね。基地をたたくことができるということは、自衛権の当然な行動としてできる、こういうことでございますか。
  65. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 敵基地をたたくということだけを取り上げていただきますとちょっと困りますが、その前にずっと限定がございます。つまり、誘導弾等による攻撃を受けて、もうこれを防御する手段が全然ないとき、こういう場合なんでございます。こういう場合には、座して死滅を待つのが憲法趣旨ではなかろうから、これは万やむを得ないじゃなかろうかということでございますから、こういうことは実際問題としては考え得られないことなんでありますが、突き詰めた憲法解釈として、一応こういう統一解釈を出したわけでございまして、これはあくまで仮定というより、架空といってもよかろうかという気持を持っておるわけでございます。
  66. 岡良一

    岡委員 そういうことがあってならないことは、私どもも当然そう願っておるのでございます。しかし、少くとも仮定を前提にせられるとはいえ、そのような見解をお示しでございますので、私はその見解についてお尋ねいたしたい。座してわれわれは敵の攻撃を拱手傍観するわけにいかない、そこで敵の基地をたたくという事態、具体的には、一体日本自衛行動としてはいかなる手段でたたくことが可能なのか、また許されるのか、具体的な点を一つ……。
  67. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 あり得ないことだと思いますが、万が一の場合にそういう事態が起りますれば、やっぱりその事態に直面をいたしまして考えていくよりしようがないと思います。従いまして、そういう事態のために敵基地をたたく以上は、兵器の進歩に伴って核兵器を平素持っておらなければならぬじゃないかという御議論もあろうかと思いますが、そういうためにこれを保有するなんということは、全然あり得ないわけでございます。
  68. 岡良一

    岡委員 防衛庁もやはり国の安全についての責任ある官庁でございますから、その万一の想定というのは、具体的にどういう想定を持っておられますか。一体、どこからいかなる攻撃日本に加えられるのか、誘導弾攻撃が加えられるその想定を、この際はっきりとお示しを願いたい。
  69. 辻寛一

    ○辻(寛)政府委員 政府委員から答弁をいたします。
  70. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 私ども現在の時点に立って考えますと、誘導弾等による攻撃というものは、どうせそういう誘導弾ということになりますと、核弾頭をつけなければならないかと思います。核弾頭をつけて核攻撃をするということになりますと、その規模が戦争に発展する可能性が非常に大きいのでございまして、非常に予測しがたいことであるというふうに思うのでございます。もし、万一かりにそういうふうな場合があったというときに、どういうふうに対処するかということは、今政務次官もおっしゃいました通り、その事態に即して考えてみなければならないと思います。あるいは米軍の援助を受けるということも一つ方法でございましょう。また、ICBM、IRBM等は最終兵器だというふうには言っておりますけれども、私は、兵器というものは必ず対抗する手段ができ、また新しいIRBMがでぎ、またそれに対抗する手段ができるというふうに考えておるのでございます。前大戦のときにおきまして、御承知と思いますが、ドイツがV1号、V2号というものでどんどん攻撃したのであります。それが現在のIRBM、ICBMの前身になっておるといわれるのであります。V1号に対しましては、イギリスはスピットフアイヤーをもちまして要撃しておる。今アメリカでもIRBM、ICBM等に対する防御方法等を研究中である、あるいは三千キロに及ぶ中距離のレーダーが開発されたとか、あるいは宇宙におきまして中性子を出しまして、目標から非常に離れたところでこれを破裂させるとか、いろんな方法考えられているというふうな情報も聞いているのでございます。どういう事態が起り、またどういう手段があるかということは、これはなかなか申し上げにくい。全般的に申しますと、そういうふうな攻撃は、今のところは予想しがたいと考えているわけでございます。
  71. 岡良一

    岡委員 しかし、国会議員の質問に対して、万一あり得べからざることであろうと仮定されても、日本誘導弾攻撃を受け得る万分の一の可能性を一応予想されるならば、その可能性とは現実にどういうものをさされるのであるか。具体的に私が今お尋ねをしているのは、日本がいかなる方法で相手方の基地をたたくかということではない。ただ、いかなる想定のもとに日本誘導弾攻撃を受けるのか。たとえば、北鮮とか北樺太にソビエトのICBMやIRBMの基地があるのか、あるいはナホトカに集結する潜水艦がIRBMを発射し得る装置を持っているのか、そういうような点を、具体的にどういう想定の上に立っておられるのかということをお尋ねするわけでございます。
  72. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 ICBM、IRBMに対する事柄は、各国とも非常な秘密事項でございまして、私どもといたしましても、これを知るのに非常に困難を感じておるわけでございます。現在私ども調査しております範囲におきましては、御承知のごとく、核兵器を生産しております国は米国とソ連と英国でございます。装備をしようとしている国は西独、それからスイスも、そういうふうなことを昨年政府としてはきめたようでございます。また極東について見ますと、新聞等で御承知のごとくマタドール、これは千キロぐらいの射程のものでございまして、アメリカが台湾に千キロのマタドール及びオネスト・ジョン、原子砲というふうなものを配置しているということが発表されておるわけでございます。その他の極東諸国におきましては、この判定はなかなかむずかしいのでございます。ただ、中共、北鮮等におきましては、まだ核装備というものはないのであろうと私どもは見ております。ソ連自体は核兵器を持っておりますが、IRBM程度の固定的な基地を必要としますものにつきましては、いろんな情報がございます。あるのだという情報もございますし、そうじゃないという情報もございますが、今のところ、私どもは固定的な基地を持っているというふうには確認をいたしておらない状況でございます。
  73. 岡良一

    岡委員 それにしても、かりに固定的な基地があろうと、あるいはまた移動的な潜水艦が装備しておろうと、核弾頭を持った誘導弾装備を持っている移動的な、あるいは固定的なものがかりに日本攻撃する場合、万一そういう事態があった場合、日本は相手国をたたくのにいかなる手段でたたくわけですか。
  74. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 だんだん話が詰まって参りまして、一つの国を仮想敵としてお答えしなければならないというような事態になりますことは、私は本意ではないのでございます。ただ、全般的に申しますと、そういうふうな核攻撃が起りますれば、これはやはり世界全般の戦局の問題でございまして、あるいは極東においてたたかなければ欧州方面における反復攻撃というふうなものも考えられるのでございまして、やはり日本に対する海外基地からする核攻撃がありますれば、世界的な規模においてその成り行きを考えなければならないような事態になることが多分にあるだろうというふうには考えております。
  75. 岡良一

    岡委員 私は、別にある特定な国を日本が仮想敵国とみなし、それに対していかなる軍事的な対策を用意すべきかということを申し上げているのではございませんし、ほんとうは国会でそういう論議を戦わしたくないというのが、私どもの党の立場でございます。しかし、政府の現実にとっておられる政策を見れば、われわれは、そういうことをも考えなければならないような気持になってお尋ねをしておるのでございます。たとえば、現に中共にわれわれの代表団が行くと、中共の指導者は、繰り返しやはり現内閣の敵視政策ということを口にいたしております。いかに政府が静観々々と言っておられましても、相手国はやはり敵視政策だと言っている。とすれば、こういう敵対的な対立というものを内閣自体の政策が引き起してくるということになりますると、それが最後の、最も好ましくない形においては、軍事的な解決という事態をあるいは起さざるを得ないということからお尋ねをしておるのでございます。  それでは加藤さんにお尋ねいたしますが、今加藤さんは、いわゆる限定核戦争というものは全面戦争になる危険性が非常に強い、こういうお話でございました。アメリカの公式筋の見解によれば、たとえば本年度のアイゼンハワー大統領の一般教書を見ても、やはり全面戦争を抑制するための限定核戦争というものを主張している。それはキッシンジャーの著書にもそのことをはっきりうたっております。これはアメリカの国防省の公式な見解だと思いますが、アメリカの世界戦略的な見解としては、全面戦争抑制のための限定核戦争である、こういう考え方に立っておるのでありますが、防衛庁の方では、そうではない、限定核戦争が起れば必ず全面核戦争に発展するんだ、こういうお考えでございますか。
  76. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 岡先生のおっしゃったことは、アメリカにおきましては、私ども見ておりますると、アメリカの持っておりまする戦略というものは、あくまでもやはり大量報復政策というふうなことが根底になっております。ただ、小型核兵器がだんだん発展して参りましたので、そういうふうな大量報復政策というものを基調にしながらも、局地的に戦争を急速に解決をいたしまして、これが大きくならないようにし得る可能性があるというのがダレス氏等の理論でございます。ここで考えておりまする戦術用の核兵器というものは、IRBMのような大きなものではございません。八インチ砲でありますとか、二百八十ミリの原子砲でありますとか、オネスト・ジョンでありますとか、そういうものをせいぜい考えておる。しかし、これに対しましてソ連側の方の見解といたしましては、限定核戦争というものはないのだ、もしも局地的にでも核攻撃核兵器を使うならば、これは大戦に発展する可能性が非常に多い、非常に危険な思想だというのがソ連側の一貫した主張のように聞いておるのでございます。そこのところは、私どもはなかなか判定のむずかしい問題であります。そういうふうな見解が両国にあるということを申し上げたいと思います。
  77. 岡良一

    岡委員 専門家の加藤局長とディスカッションするつもりはございませんが、とにかく、私もそう予想せざるを得ないわけです。ソ連側の態度が、いわゆる限定核戦争というものは考えないという態度に出ている。しかも、いわゆる限定核戦争が、中近東であれば、むき出しでソ連とアメリカが対決するわけはない。しかし、アジアにおける紛争というものは、むき出しにアメリカと中共が対決して、直ちにソ連と対決するという状態になってくる。これがアジアの戦略的な、軍事的な地域条件になっておる。こういうような点から見て、万一アジア地域に核戦争が起るということになれば、そのことは直ちに全面戦争になる。全面核戦争というものがどういう大きな犠牲を要求しているかということは、加藤局長あたりはとくと御存じだと思う。アメリカのその当面の責任者であるギャバン将軍あたりでも、万一、現在アメリカの保有する核兵器を全面的にソ連に投入するならば、何億の死者が——少くとも東南の風が吹けば、日本から中共、フィリピンまで放射能の犠牲とならざるを得ないであろう、アメリカは逆に、同量の大量報復核攻撃を受けるということになれば、とにかく当初の二週間で七千百万人、六十日目には八千三百人の直接の死者が出るであろう、もちろん、その後、あるいは後代に引き続く放射能の犠牲者に至ってはこれは算定し得べくもない、こういうことを専門の権威者が申しておる。こういうような状態の中で、日本核兵器の問題について、いまだに政府の態度としても非常にあいまい、原子力委員会の態度としても、基本法第二条をしっかりとふんまえて、原子力委員会は決して外交の問題に口出しをすべきものではないとか、あるいは国防の問題にくちばしを入れるべきものではないという立場のものではない。日本原子力政策というものは、対外的な、渉外的な接触なくして発展し得ない。そういう意味において、どんどん原子力委員会の意見を求めながら、原子力に関する平和利用の協定が結ばれておる。こういうような立場にあるのであって、原子力委員会といたしましても、この原子力基本法第二条の平和目的に限定された原子力利用という日本原子力政策の中核の、この大きな太い線を堅持していただきたい。そういうことを私は心からお願いをいたしまして、一応私の質問はやめます。
  78. 小金義照

    小金委員長 ほかに御質疑はございませんか。——ございませんければ、本日はこの程度で終りまして、次会は四月十五日の水曜日の大体午前十時から開会することに予定いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十七分散会      ————◇—————