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加舍説明員 それでは、私が
欧米諸国を調査して参りました
原子力災害補償制度につきまして御
報告申し上げたいと存じます。
米国におきましては、御
承知のように一昨年の九月に、
アンダースン・プライス法と申します
原子力法一部
改正法が通過いたしまして、それによりまして
原子炉の被
許可者は
ファイナンシャル・プロテクションを要求されることとなりました。そうして
ファイナンシャル・プロテクションを立証いたしました上は、
連邦政府が五億ドルの
範囲で
国家補償をするということをきめられたわけでございます。その
法律に基きます
暫定規則というのが同じく一昨年の九月に出ておりまして、それによりまして
ファイナンシャル・プロテクションの額というのがきめられておるわけでございます。それによりますと、最高が六千万ドル、
最低が二十五万ドルであるという
内容でございます。そして、その公式となりましたものは、
熱出力一キロワットにつきまして百五十ドルという比例をもってその間を埋めておるわけでございます。その後、昨年になりましてその
ファイナンシャル・プロテクションの公式をもう少し再検討すべきじゃないかということになりまして、現在検討いたしておるわけでございますが、その
内容といたしますところは、まず、その
最低の二十五万ドルというのを三百万ドルに引き上げるべきかどうかという点が一点でございます。そのほかに、その
原子炉の
設置の位置によって、その付近の
人口密度というものを加味すべきかどうかという点でございます。第三点は
燃料サイクルの
要素を加味して
ファイナンシャル・プロテクションの額をかげんするかどうかということでございまして、その三点について論議が戦わされておるわけでございますけれども、
米国政府の
担当者の言によりますと、第三点については、技術的にも少し問題があるので、その点は、おそらく
日の目を見ないだろうというふうに申しております。従って、
最小限度の二十五万ドルが引き上げられること、それから
人口要素を加味した係数が取り入れられるであろうというふうに想像しておるわけでございます。それから
米国の
法律は、ほとんど無過失
責任に近いような
責任体制になっておりますほか、昨年の八月の一部
改正によって、非
営利教育炉につきましては、特例を設けることといたしました。それは二十五万ドル以上の
賠償責任に対しては
責任を持たなくてもよいというものでございまして、
ファイナンシャル・プロテクションの立証も要求されておらないわけでございます。それから、もう一点の
法律改正がございましたが、それは同じく昨年の八月でございまして、
原子力船の
サバンナ号についてもこの
法律の
適用が
原則としてあるということをきめたわけでございます。それから最近の
動きとしては、その
暫定規則の中に、
政府と被
許可者との間に結ばれるであろう五億ドルの
補償契約の
契約書の
ひな形と申しますか、それを
暫定規則の中に入れたい、それから、もし
ファイナンシャル・プロテクションを
原子力責任保険によって求めるのであれば、その
責任保険証券の
ひな形は、次のような形式でなければならないというふうな、形の
ひな形を
暫定規則に取り入れたいという動向でございます。
それから、
英国について述べさせていただきますと、
英国は、昨年の十月の終りに
原子力施設法案というものを
政府提出いたしまして、
国会で審議されておるわけでございます。すでに
上院を通過いたしまして、下院で審議されておるわけでございますが、その
内容といたしますところは、
原子炉の被
許可者は
——正確には
原子力施設敷地の
使用者ということでございますが、その者は五百万ポンドの
ファイナンシャル・プロテクションを具備しなければならないということでございまして、これは
原子炉の型だとか、大きさによりませず、一律に五百万ポンド、すなわち、五十億円
程度のものを要求されるわけでございます。そして、その上の
部分につきましては、当初の
政府提出の
法案の中では、それ以上は一切
原子炉の
設置者は支払う必要はないのだというふうになっておったわけでございますが、その後の、つまり、
上院の
審議過程で修正がございまして、その点については、どんどん
原子炉の
設置者は支払ってもいいのだ、ただ、五百万ポンドをこえるような
事態であるという場合には、パーリアメントがその
支払い方法についてと決定し得るような
余地を残したわけでございます。従いまして、その
決定方法と申します
内容は何もきめられておらないわけでございまして、
可能性といたしまして、
国家の経済的な補完ということも考えられるという
程度でございます。
それから、
欧州諸国の中で
法案を準備しております他の国といたしまして、
ドイツと
スイスとがございます。
ドイツにつきましては、これもすでに
国会で審議されておる
状態でございますが、その
内容といたしますところは、五億
ドイツマルクの
補償と申しますか、いかなる
事故が起りましても、五億
ドイツマルクまでを
補償する、その中で、
原子炉の
設置者等が具備すべき額については、
政府がそのつど定めていくという
内容でございまして、その
金額は、一切将来の問題として残されておるわけでございます。従いまして、たとえば、その
金額が一億マルクというふうにきまりますれば、残りの四億マルクについては、結局
政府が支払わねばならないという
内容になっておるわけでございます。それ以上の、五億
ドイツマルク以上の
責任については、
原則としては打ち切られるという
内容でございます。
それから
スイスにつきましても同じような
法案でございますが、ただ、
金額は非常に低くございまして、三千万
スイスフランということでございますので、約二十数億の
ファイナンシャル・プロテクションを要求し、それについては、その
事態が起った場合に国が
補償することできるという
規定になっております。
以上、いずれも
法案でございまして、今後変更も当然予想されるわけでございますが、その
欧州十七ヵ国の
加盟によってできております。EECがこの問題につきまして
一つの
協定案と申しますか、ドラフト・
コンベンションというものを考えております。その
内容としますのは、
各国は、
原則として千五百万ドル以上のファイナンシャル・ブロテクションを具備するような
措置をとらなければならない、ただし、
国内立法によってその
ワクを変更することができる、ただし、その
国内立法でそれを変える場合にも、五百万ドルを下ってはならないということでございまして、千五百万ドルと申しますのは、ほぼ
英国の五十億円に相当するわけでございますが、そういう制約において
各国は
制度を作っていただきたいということです。そのほかにも
責任の制限の問題だとか、あるいは
時効の問題、あるいは
責任集中の問題ということが
規定されておるわけでございますが、それが、もし
日の目を見ますと、
加盟十七カ国はそれを
批准いたしますれば
——批准を要することになっておりますので、
批准いたしますれば、その
ワクの中でしか
立法なり何なりの
措置はとれないということになりますし、また、そうでなくて、独自の
国内立法をやるのであれば、結局
批准が非常にむずかしくなるというふうな
関係になるわけでございます。
OEECのその
条件につきましては、
各国はそれ以上の
措置をとることも可能であるということで、
余地を残しておるわけでございますが、別に強制はいたしておらないわけでございます。
以上、はなはだ簡単でございますが、一応の御
説明とさしていただきたいと存じます。