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1959-02-18 第31回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十八日(水曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 小金 義照君    理事 赤澤 正道君 理事 秋田 大助君    理事 菅野和太郎君 理事 前田 正男君    理事 岡  良一君 理事 原   茂君       天野 公義君    小坂善太郎君       西村 英一君    平野 三郎君       内海  清君    田中 武夫君       松前 重義君  出席国務大臣         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         法制局参事官         (第二部長)  野木 新一君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君         総理府技官         (科学技術庁         資源局長)   黒澤 俊一君  委員外出席者         原子力委員会委         員         日本学術会議会         長       兼重寛九郎君         日本学術会議第         四部長     小谷 正雄君         日本学術会議事         務局長     本田 弘人君         科学技術事務次         官       篠原  登君     ————————————— 二月十七日  委員櫻井奎夫君辞任につき、その補欠として堂  森芳夫君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関  する法律の一部を改正する法律案内閣提出第  一〇三号)  科学技術行政に関する件      ————◇—————
  2. 小金義照

    小金委員長 これより会議を開きます。  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。質疑通告順にこれを許します。岡良一君。
  3. 岡良一

    岡委員 私はこのたび御提案規制法の一部を改正する法律案について、まず、長官並びに学術会議代表として兼重さんに、科学技術発展に伴う災害補償ということについての国の基本的な方針、及び学術会議としてもこの問題に無関心でおられないはずでございますので、学術会議立場から、どういうふうにお取扱いになろうとする方針であろうかというような点を、率直にお聞きいたしたいと思います。  そこで、まず長官お尋ねをいたしますが、こうして科学技術が月とともに、年とともに進歩するということになりますと、それに伴って災害が発生するということは、現に新潟県の地盤沈下の問題にいたしましても、やはり天然ガスの採取が大きな原因ではなかろうかと取りざたされております。こういう格好で、自然界事物をわれわれの社会生活に有用なものたらしめようとする努力が、一方においてはこうした災害を伴ってくる。そういう意味で、私ども科学技術の振興を育成しようとする国の立場からは、これらの災害に対しても、国としては責任を持って積極的な補償に当ろうとする心がまえが当然必要だと思うわけでございますが、この点の御所信をお伺いいたしたいと存じます。
  4. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 仰せのごとく、科学技術進歩いたしますと、その発達につれて、従前には予想しなかったような大きな災害が起るということもわれわれは考えていかなければならぬ、こう存じておるわけでございます。原則といたしましては、かりに原子炉設置いたしますにつきましても、こういったものによって起る損害は、設置者保険をかけて、それでやるべきが原則でありますが、それ以上の大きな損害が起った場合には、私は国としても大いに責任を感ずるわけであります。ところがその責任を、どの程度保険範囲をきめて、国がどの程度にこれを補償するかというふうな問題になるとすれば、ケースバイケースによって違うわけでありますから、そういうふうなことは、原子力の問題は原子力科学技術の問題は科学技術という方面の最高の権威者をもって組織いたしております会議にかけて、そうして、できるだけケースバイケースに国の責任範囲を明らかにしておく必要があると存じまして、今後その問題は逐次検討を加えて、国家責任範囲を明らかにしたいと存じております。
  5. 岡良一

    岡委員 私がお尋ねをいたしておるのはたとえば、科学技術発展に伴い、原子炉に限らず、新しい設備を備え、かつこれを管理し、または運転をするというような場合、たとえば新潟県の地盤沈下が、かりに今後の調査の結果として天然ガス採掘にあったといたしましても、この採掘に当る会社責任であるのか、あるいは国の責任であるのか、あるいはまた、国と会社が連帯で損害賠償責任を負うべきものであるのか、こういう点の区分と申しますよりも、国の方針、たとえば、そういう場合に一私法人としての天然ガス発掘会社が負うにたえない損害があり得ると思うのであります。たとえば新潟県の場合、何億という金をやはり国が出している。私は、こういう国としての大幅な、積極的な賠償責任への心がまえというものが、やはり今後の科学技術進歩実用化に当っては非常に大切なかなめではないかと思います。そういう点で、原子炉を越えた基本的なお心がまえとしてどうであるか、この点をお聞きしているわけであります。
  6. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今新潟県の例をおっしゃいましたが、こういった場合には、今のガスを利用する会社自身が水を利用したということによって地盤が沈下した、かりに、そういう事実がはっきりしたといたしましても、ガスを利用した会社だけにこれを負わせておくということは、いかにも損害が大きいわけでありますから、その会社だけに損害を負担せしめるということは困難だと存じます。そういった場合には、当然国としても大いにその責任を感ずるわけであります。そういうふうな点につきましては国としても大いに考慮する必要があると思います。
  7. 岡良一

    岡委員 たとえば、原子炉設置の場合を考えましても、かりにその結果として、放射能を帯ひた有害な塵埃なり、あるいはまた、空気というものが広い範囲に及び得る可能性があるというような場合には、そういう事態もあり得るという、やはり前提の上に立っての国の損害賠償に対する明確な態度というものが必要ではないでしょうか。
  8. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 原子炉のようなものにいたしましても、国がその設置を認め、かつ原子力平和利用を促進するという方針で進んでおります以上は国といたしましても相当責任を感ずるような次第であります。
  9. 岡良一

    岡委員 そこで学術会議立場から、この問題についてどうお考えになっておられるかということをお伺いをいたしたいのであります。学術会議といたしましては、広く人文科学も含めての会議ではございますが、自然科学の分野において自然の法則を探求しながら、その突きとめた法則を自然の事物に適用しつつ人間社会の利益をはかろうということのために科学技術というものがあるわけでございます。そうなりますと、科学技術進歩発展については、やはりこのように起り得る災害に対する国の責任態勢というものが当然裏づけられるということが科学発展一つの大きな前提になるのではないかと思います。たまたま学術会議の方でも、この問題について大きな関心を示されたこともあるやに承わっておりますが、いかがでございましょうか。
  10. 兼重寛九郎

    兼重説明員 学術会議の方の関係者としてお話し申し上げたいと思います。  ただいま岡先生の御質問でございましたが、昔はと申しますか、戦争前のころまでは、科学者は、そういう自然の真理を探求することが自分たち責任である、それから、かりに何か障害が生ずるようなことがあったとしても、それは為政者が責任を持つべきことであるというような、今から申せば比較的のんきな気持で、とにかく研究専一にやってきたと私は思っております。ところが原子力開発が始まりまして以来、今度は逆に、科学者の間におきまして、そういう新しい研究の進むのにつれまして、これがまた一面非常に大きな障害をもたらすかもしれないという懸念も格段にふえて参りましたために、科学者自身、そういうことに関して非常な責任を感じるような状態になったことは、すでに御承知のことと思います。  そこで学術会議でも、特に原子力開発については、安全の確保ということについて、かねがねいろいろ意見を申しております。そのことを突き詰めて参りますと、国あるいは政府が、ある程度責任を持つべきものであろうということが含まれておると思いますけれども、そのことについての具体的な案を学術会議から出すというところまでは至ってもおりませんし、そこまで学術会議でやることも困難であるが、また、やるべきでないかとも思うのでございます。従って、そういうことが政府、特に原子力委員会の方で考究されまして、だんだん実現されることを希望はしておりますが、現状はその通りになっておらないわけでありますけれどもきょうすぐそういうことをはっきりさせろというのにも、むずかしいことがあろうことは想像しております。学術会議関係者として申しますことは、そういうことが、できるだけ早い機会に確立されまして、科学者が安心して研究を進め、またそれを実用化することができるようになってほしいということでございます。
  11. 岡良一

    岡委員 関西原子炉の敷地問題でも、御存じのような紆余曲折がある。そこで、原子炉そのものが安全であるということは、これはもう、もちろん一番大前提にはなりまするが、それにしても、まだ新しい施設でもあることであって、しばしば不慮の事故に基く災害があり得るということになれば、それに対しては、やはり国としても、特にこの原子力の今後の研究開発を進めようという方針に立たれる限り、その災害補償については積極的な協力をするというか、積極的な、賠償責めをになうばかりの気持を持っていただかなければ、今後の具体的な原子力研究開発はなかなか進み得ないのではないかと思いますので、この点は特に国務大臣としての長官の今後の善処を強く希望いたしたいと思います。  そこで、原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案に具体的に触れたいと思います。この法律案を出された事務当局としての御見解を承わりますが、原子炉事故に基く災害責任というものは、私どもの知る範囲では、原子炉を管理する者、あるいは運転する者の故意または過失という事実が原因であり、従って、その責任は、これを管理し、運転する者にある、こういうふうな、いわば損害賠償建前がこの規制法改正の動機になっておるのでしょうか、この点をまずお尋ねいたしたいと思います。
  12. 佐々木義武

    佐々木政府委員 この改正は、改正法提案趣旨大臣が御説明申し上げました際にも明白にしてあったのでありますけれども、あくまで一つのワン・ステップといたしまして、最終的な解決方法だとは実は考えていないのであります。されば、この第一段階規制法の一部改正ではどういうふうな考え方かと申しますと、責任所在は、あくまでも炉の設置者がこれを負担すべきであるというふうに考えるものでございます。責任範囲は、現在の段階では、現行法保険法あるいは民法等基礎にいたしましたものでございますから、やはり、当然民法過失責任というものがこの賠償基礎になろうかというふうに考えるものでございます。これは、民法の何条でございましたか、条文はちょっと忘れましたが、過失責任がございます。その過失責任が、この責任主体だというふうに考えております。
  13. 岡良一

    岡委員 そこでお尋ねをいたしますが、そうすると、まず当初の原子炉事故が起り得る原因について、さらに考えてみました場合、いずれにいたしましても、原子炉の導入は協定に基いて導入される。そこで協定内容は、今さら申し上げるまでもなく、核燃料物質等についてはその完全性にできるだけ努めるけれども、しかし、それが完全であるという保証には立てない。情報設計も正確であるように努めるが、ひっきょうするところ、その保証には立てないから、万一これが不完全であり、不正確であったために事故が起ったとするならば、相手国はその損害賠償責めを負わないという免責規定があるわけですね。そうすると、かりにある個人が原子炉設置した場合におきましても、これに基いて損害が起ったときに、まず政府みずからが責任を負うべきなのに、逆に免責規定をのんでおる。言ってみるならば、政府みずからが受け取ったものが——事実上受け取る当事者は政府だと私は思いますが、その政府が、完全なものであり得ない、正確なものであり得ない情報なり原料を受け取って、これをもとにして民間がかり原子炉設置し、運転をした場合において、その責任所在というものが民間にある、こうきめつけるのは、私はいささか無理ではないかと思うわけです。その点はいかがでしよう。
  14. 佐々木義武

    佐々木政府委員 条約にございます免責の問題は、あくまでも国自体免責するのでございまして、相手国メーカー等の、いわば国以外の社を免責しておるわけではございません。従いまして、国から国が責任を持って受け取ったものに対しましては、実は相手の国を免責するのは条約上当然でございますが、そうじゃなくて、たとえば、日本民間の社が英国民間メーカーから私契約に基いて原子炉等を輸入する場合には、別に国が向う民間業者免責することは何もないのでありまして、それは日本業界向う業界の私契約契約条項がどうであるかということによってきまるわけでございます。従いまして、その契約によって、もし相手国メーカー免責してなければ、当然日本民間の人は訴追することができるわけでございます。これは岡さんの質問とあるいは内容が違うかと思いますけれども、私どもはそういうふうに理解しておるのでございます。ただ、その際に、民間でどうしても責任が持ち切れぬような事故が起きた場合に一体どうなるか、そういう責任が起きた場合には、先ほど大臣からおっしゃられた通り処置方法になるかと思います。
  15. 岡良一

    岡委員 どうも僕も、そういうこまかいことになると十分自分も知らないのでわかりませんが、佐々木さんの御答弁はちょっと的はずれじゃないかと思うのです。かりに、日本国アメリカ国とが原子力関係協定を結んでおる。そこで向うから核燃料を受け取る、設計を受け取る、その他必要な資材を受け取る、ところが、これらのものが完全である、正確であるということを、向う政府保証を立てられない。従って、万一受け取ったものに対する災害が発生したときには、アメリカ政府責任をとらないということならば、日本国政府責任をとるということですね。こういう大前提の上に立って、さて、いよいよ日本原子炉を築造するという場合に、政府なり、あるいは築造の許可を得たものが、今度は向うメーカーとの間に話し合いをする。これは私契約でありますから、どういう内容であろうとも、大前提としては責任をとらないということになる。向うにしたところで、私契約とはいうけれども日本だって協定の上では、その原子炉設置するものに対しては、政府間相互で認可をするという規定もあるのですね。協定の上においては授権したものだ。そういう意味においては、多分に私契約とは言えない。原子炉許可をした場合、政府は授権しておるのですよ。権限の移譲をやっておるのですからね。そういう状態で、向うだって、向う原子力委員会許可を得なければ、向うメーカーとこっちのメーカーが勝手な契約はできないと思うのですね。そうすると、向う原子力委員会とこっちの原子力委員会相手国政府日本国政府との間に結ばれておる協定趣旨というものが原則となってこなければならないと思うのです。でありますから、こちらのメーカー向うメーカーの私契約ではなく、大前提として、そのメーカーは、相互に、やはり向う政府ないしそれを代表する機関によって授権されたものである。その権限の根源である政府政府、あるいは原子力委員会原子力委員会においては、受け取ったものの正確性や不完全性保証されないから、従って、それに基いて起ったところの事故に伴う災害はわが方において責任をとる、こういっておる以上、もう野放しにして、民間民間の私契約であるから、その契約内容がどうであるかわからないが、いずれにしても、その災害については、その私契約のいかんによっては、また災害範囲によっては政府責任を負うことがあり得るということではないが、しかし、やはり政府としては、政府間同士協定趣旨に基いて責任を負うという根本の方針がまず立てられるということが、原子炉に基く災害補償の大精神ではないか、こう思うわけなんです。この点で佐々木さんの私の質問に対する答弁は取り違えられたのか、私はそう思うので、この点ははっきりさせたいと思うのですが、大臣はどうお考えになりますか。
  16. 佐々木義武

    佐々木政府委員 岡さんの御質問でございますが、それは、あくまでも条約免責条項あるいは無補償条項規定いたしましたその条項解釈をどう見るかということにあろうかと思います。従いまして、もし対米の条約でありますと、お説のように、特殊核分裂物質を貸与されました場合には、その条項に、もちろん燃料に関しまして起きた事故等に関しましては、アメリカ政府責任をとらないということになっておるわけであります。今度は逆に、これはあくまでも日本政府主体になって、政府から政府が買うわけでございますので、この点は非常に明確でございます。アメリカ民間から日本政府加工契約等で買った場合はどうなるかということになりますと、あくまでも日本政府アメリカ加工メーカーとの私的契約内容がどうであるかという問題にかかってくるわけでございます。加工災害に対して責任をどう負うかという問題は、対政府の問題でなく、アメリカメーカーとの問題になってくるわけでございます。一方、逆に英国の際はどうかと申しますと、英国政府並びに原子力公社天然ウラン等日本政府あるいは日本政府の権威づけたものに売却あるいは貸与する場合には、その責任はどうなるかといいますと、英国の際には英国でかりに買い取った場合は、米国と同じような関係になるわけでありますけれども、おそらく国がこれを買い取るという形式でなく、多分原子力公社等がこれを買い取るという格好になった場合には、お話のように、燃料公社あるいは国として、米国の場合と同じような責任の免除の関係の問題が起きると思います。しかし、そうでなく、純民間が、燃料だけでなく、向う民間メーカーから、たとえば今三グループから輸入しておりますが、その一社から原子炉を買い取ったという場合に、原子炉自体から事故が起きた場合にどうなるかという問題に関しましては、それは、こちらの民間会社向う会社との契約の中に免責条項をどういうふうに織り込むかということにかかっておるわけであります。ただ、法律の根拠はあくまでもそうなっておりますが、現実の問題としてはかりに、最後の例で申しますと、英国から買った原子炉そのものから、それが直接の原因になって事故が起きたということが非常に明確であった場合には、もしその私契約英国メーカー免責されていなければ、当然英国メーカーに対して訴追することが可能であろうかと思います。もし私契約内容向う免責してありますれば、こちらの会社自体自分責任を負う建前になっておりますが、どうしても負い切れぬ場合にどうするかという問題については、対英国の問題でなく、むしろ日本国内の問題として処理すべきだというふうに考えております。
  17. 岡良一

    岡委員 どうもはっきりわからないですが、それでは、すでに運転されておる第一号炉あるいは将来運転が開始されるCPうについては、いわゆる契約免責という問題はどういうふうに取り扱われておりますか。
  18. 佐々木義武

    佐々木政府委員 これはアメリカ燃料の問題だと思いますが、弗化ウラン段階では、米国政府から直接日本に貸与するという格好になりますので、日本政府責任を持ちます。従いまして、アメリカ政府との、AECとの契約内容になります。ところがそれを加工する場合は、アメリカ加工業者日本政府契約になって、日本政府向う加工業者契約しておりますその契約の際の契約条項がどの程度免責しておるかということによってきまるわけでございますが、現実の問題としては、ただいまの段階では、はっきり免責というふうなことはうたっておりません。従いまして、検査には念には念を入れて引き取っておりますけれども、かりに事故が起りまして、明らかに向うメーカー責任であるということが明確になった場合には、その点、いろいろ問題はあろうと思いますが、法律的には、米国業者そのものに対する責任を問い得るというふうに考えております。
  19. 岡良一

    岡委員 しかし事実上の問題として、そういうものに損害賠償を起してみたところで、それはとれるはずがないじゃないですか。
  20. 佐々木義武

    佐々木政府委員 私は法律的な解釈を申し述べたのでございまして、実際問題といたしましては原子炉事故がかりに起きた場合に、燃料が非であるのか、燃料のどこに傷があってそういう事故が起きたかということの判定は技術的にもほとんど不可能に近い問題がありますので、その際には日本設置者がまず責任を負い、それ以上の災害が起きた場合には先ほど大臣からお話がございましたような、国家としての責任というふうな問題に相なってくるのじゃなかろうかと考えております。
  21. 岡良一

    岡委員 そこに国の責任設置者責任のすりかえがあると思うのですが、それはあとの問題にしまして、ちょうど法制局の方もこられましたので、お尋ねいたします。  まず佐々木さんにお尋ねをしますが、私が聞いたところでは、たとえば、後段の英国との場合でございます。すでに英国との間の動力協定締結交渉の過程で、ある日、こういう話し合いがあり、それを双方が承認をした。それはどういう内容かというと、英国が引き渡す核燃料物質については、これに基く事故の発生は予測しがたい、かつまた、事故が発生したときは、その災害の規模、範囲が非常に大きいことにかんがみ、英国政府責任をとらない、こういう話し合い交渉のある日に行われて、双方は、その当日、代表者が一応そういう話し合いにおいてこの事実が承認されたということをイニシアルで証明しておる、こういう事実を私は聞いておるのですが、佐々木さんはどうですか。
  22. 佐々木義武

    佐々木政府委員 外交途上におきましての交渉の詳細は、実はつまびらかにしておりませんけれども、対英協定の、ただいまお話しになりました条文は、結論におきまして——私それを存じておりますので、それをもう一ぺんお話し申し上げますと、それは第八条の2のa項でございまして、「日本国政府は、第三条の規定に従って供給された燃料に関し、その燃料の生産又は加工に起因し、かつ、同政府日本政府でございますが、「同政府又は同政府許可した者に対する引渡の後に生ずる損害に関する第三者に対する責任について、連合王国政府及び公社に対しその責任を免れさせ、かつ、損害を与えないようにするものとする。」ということで、結局日本政府に一たん引き渡してしまったが最後連合王国政府及び公社責任は免除されるのであります。ただし、免責範囲を次に規定しております。「ただし、この免責は、日本国政府許可した者に供給された燃料の場合には、」たとえば、燃料公社原子力発電会社燃料を売った場合にはどうなるかという想定でございますが、「本国政府許可した者に供給された燃料の場合には、連合王国政府又は公社が前記の責任に関して支払う金額のうち、この協定規定に従って公社が締結した燃料売却のための契約に含まれる免責規定に従って連合王国政府又は公社に対して支払が行われない金額の限度についてのみ、適用されるものとする。」、非常にややこしい規定でございますが、くだいて申しますと、もし、その燃料が直接の原因で第三者に損害を与えた場合に、その第三者が、かりに英国公社なら公社を告訴します。そして、もし向うが敗訴をいたしまして、その支払いをした場合に、その金額日本許可された保険範囲内を越えた分は日本政府が持ちなさい、こういうふうになっているわけでございます。日本政府のこの責任は、公社に対し支払いが行われない金額の限度にのみ適用される。たとえば、百億の損害があったとする。そうすると、向う公社は百億を日本の第三者に支払ってしまうわけです。そうして、その百億のうち、原子力発電会社保険金等をかけて七十億なら七十億ありますと、その分は向うで回収いたしますが、三十億どうしても向うの方が穴があいてしまう。その分は日本政府責任を持つという規定であります。ですから、これはあくまでも日本国政府あるいは日本の第三者、設置者が、英国政府並びに英国公社だけを免責しておるのでありまして、しかも、それは燃料と限ってあります。そうじゃなくて、向うメーカーそのものから日本の発電会社が買う際には、この条項規定はございません。これは、あくまでも向うメーカー対こちらの発電会社の間の私契約範囲になるわけでございます。
  23. 岡良一

    岡委員 そこのところが、どうも私はっきりわからないのだが、そうすると、日本の発電会社が私契約に基いて向うメーカーから、たとえば天然ウランの成型加工されたものを買い取ることができるのですか。
  24. 佐々木義武

    佐々木政府委員 もちろん、この条約がなければ、向うでは原子炉の輸出等は許可しないだろうと思います。しかし、その責任所在はどこにあるかという点に関しましては、この条約の中に明確にうたっておるのでありまして、これこれに関しては英国政府並びに公社責任を持たないということをいっておるだけでありまして、向う民間会社責任を持たないということは、何もいってないのであります。
  25. 岡良一

    岡委員 そこで具体的な問題に入っていきますと、かりに百トンの成型加工された天然ウランを購入するという契約をする。これは政府政府間の契約として締結する、こういうことですね。
  26. 佐々木義武

    佐々木政府委員 それは英国の場合でございましょうね——英国の場合は、まだ燃料の具体的な話し合いになっておりませんので、具体的にははっきりいたしませんけれども、おそらく、公社加工するのでありますと、公社対こちらの原子力発電会社、または日本燃料公社がこちらの主体になろうかと思います。
  27. 岡良一

    岡委員 しかし、燃料公社と、向うの天然ウランの成型加工の、かりにメーカーがあるとすれば、その話し合い前提には動力協定というものがありますね。これがなければ買えないということですね。
  28. 佐々木義武

    佐々木政府委員 その通りでございます。ですから、英国燃料公社が天然ウランの段階だけで売買契約をするか、そうじゃなくて、加工まで自分で含めるか、あるいは加工英国燃料公社がやらないで、英国の製造業者がやるのか、そこら辺は、まだこれからの話し合いできまるのでありまして、はっきりしておりません。
  29. 岡良一

    岡委員 法制局の第二部長もよく聞いておいて下さい。私も話がややこしくてよくわからないのですが、問題は、そうすると、かりに動力協定というものを日本が持っておる。動力協定を日英間に結んで、その動力協定では、一応核燃料物質などの事故に基く災害については、英国政府英国公社責任はとらない。さて、その天然ウランを日本がこの協定によって受け取ることに決定した、そこで日本燃料公社が受け取る主体となって、相手国にその成型加工をしてもらう、そうして百トンをかりに受け取った、核燃料物質を使用する原子炉災害が起った、その災害が百億であったという場合、こちらの受け取って原子炉運転しておる管理者が、かりに七十億の保険に入っておった、そうすれば、相手メーカーは二十億だけはこちらへくれる、そうして百億の損害賠償はでき得るようになるんだ、こういうことですか。
  30. 佐々木義武

    佐々木政府委員 ただいまの話は第三者に対する損害の問題かと思いますが、日本政府あるいは日本公社等が英国政府あるいは英国公社免責しておりましても、日本の第三者は何ら向う政府あるいは公社免責しておりません。従って、もし第三者が日本設置者に訴訟を起して、百億の損害賠償を請求したところが、支払い能力が七十億しかなかったという場合には、これではいかぬというので、かりに英国公社を訴追する。そうしますと、勝訴しまして二十億かりにもらったという場合には、その三十億は日本設置者は払えないのでありますから、政府がそれを英国公社に払いなさい、こういう話になっております。
  31. 岡良一

    岡委員 日本政府向うへ払うのですか。
  32. 佐々木義武

    佐々木政府委員 そうです。原則からいいますと、百億の損害があって、その百億というものは第三者にかりに向うが払ったとします。そうすると、日本設置者は七十億支払う義務があるわけです。七十億は向う公社に返します。あとの三十億はやり場がない。その三十億は日本政府が負担しなさい、こういう条約になっているわけであります。
  33. 岡良一

    岡委員 そこで、原子炉設置の最も重要な基準は安全性にある。原子炉設置する場合、これは僕はよくわからないけれども、総理大臣が安全であるということを認めて、そうして、その設置許可する。許可された設置者が、さて運転を始めたところが事故が起ったというようなとき、これは法制局の見解はどうなんでしょうか。そういう場合に、やはり国もその安全を保障しておったものが、案に相違して災害を起した場合、責任設置者のみにかかるものなんでしょうか。  それから、先ほどるる話し合いをしておりましたように、少くとも、政府政府間の折衝においては、核燃料物質等の安全性については、できるだけそれが完全であるように努めるが、しかし事故についての損害は、少くとも相手国公社なり政府は免除されるという前提協定——協定の締結の過程では、引き渡す核燃料物質の安全性について保しがたい、しかも、これに基く事故による災害が大規模であることも予想せられるので、英国政府としては補償しない、こういうことも交渉の過程にかりにあったということになれば、いわば、日本政府はその協定に際して、安全ではないことを覚悟して受け入れておる。万一には不測の事態が起ることを覚悟して受け取っておる。そういうものを、今度は安全性の基準を設けて、安全であるとして許可しておる。そうしてたまたまやってみたところが、安全でなくて事故が発生し、災害が生じた。こういう場合、これは一つの新しいケースになってくるかもしれない、おそらくそうだと思いますが、そういう経過のもとに原子炉設置したときに、たまたま事故が発生し、災害が起った。その損害賠償責任は、その設置者のみの責任に限られるものであるという考え方は、どうも私は納得しがたいのですが、これは法制的に、あるいは法律的にどういうふうに解釈すべきでしょうか。
  34. 野木新一

    ○野木政府委員 非常にむずかしい問題を含んでの質問と存ずるわけでありますが、御質問の際にも、原子力という新しい事態が生じたので、何か新しい問題を含んでいるのじゃないかという御発言もちょっとあったようでありますが、少くとも、在来の考えでいきますと、何か損害が起った場合に責任を負うのは、故意または過失があった場合に損害を負うというのが大原則であると思います。故意、過失がないのに損害を負うというのは、何か特別の明文がない限りは負わないというのが、今までの、現行の法律の大原則だろうと存じます。そういう現行の大原則から考えてみますると、政府が安全と認めて許可したという場合におきましても、政府としては、現在の能力の限りを尽して安全と認めて許可しているわけでございまするから、おそらく故意、過失はないということによって損害賠償を負うということは、特別の規定でもない限りは、やはり生じないのではないかと存ずる次第であります。
  35. 岡良一

    岡委員 そこで、協定によると、私の解釈するところでは、だれでもかれでも、よし、お前はよろしいということで、いわば、きわめて簡単な形式で相手国から、原子炉関係する資材や燃料は買えないわけです。政府が授権するんでしょう。そうでしょう、佐々木さん。
  36. 佐々木義武

    佐々木政府委員 そうです。
  37. 岡良一

    岡委員 ということは、いわば政府を代行するというか、代表するというか、少くとも、政府権限がある程度まで委譲されるような、そういう意味において非常に公的なものが、権威あるものが政府を代行するような形で、また、事実上向うも、こちら側の政府を代行するような権威ある機関なり、組織に対して向う公社なら公社という、いわば政府機関が、それを授権する者に対してその燃料の払い下げをし、加工をし、成型をして、日本の授権された者が引き取るという、いわば非常に公式的な循環でものが入ってくる。しかも、その入ってくるものについては、協定に基いて入ってくる。協定では、政府政府間のこの損害賠償責任については、相手国免責されているということですね。免責をされておるということは、言葉をかえて言えば、日本政府としては、その安全性が保しがたいということを認めながら入れておる。そして安全基準などというものをこしらえて、これは安全であるとして日本政府許可した。ところが案に相違して、やはり安全ではなかったという事態が万一発生した場合、今度は、これは日本政府も全然免責されてしまって、主として損害賠償主体はその設置者、管理者にある。こういう政府協定の経過、そして安全性の問題を、一方では安全性を保しがたいものと知りながら受け入れて、しかも安全であるという認定を与えて、そうして設置者運転をした。さて、今度は事故が起ったという場合に、やはり、政府民間業者との共同の連帯責任が少くとも生ずるのではないでしょうかね。そういう協定政府間で結んでおるということにおいて……。しかも、内容において安全性が保しがたいものを、保しがたいという事実を承知しながら、その協定を結んでおる。そうなれば、いわば原子炉は、その後何人が設置し、管理し、運転をしようとも、少くとも、政府自体としても安全を保しがたいという大前提に立っておる。してみれば、安全性を保しがたいというその責任は、まず政府自体がやはり負うてしかるべきではないか。こういう苦肉なことも、日本原子力発展のためにはやむを得ないとしても、負うべきである。従ってその責任というものは、時間的には、たとい政府が安全であるということを認めて許可した私法人であろうとも、政府自体も不安全であるかもしれないということを前提として受け入れておるこの協定に基いて原子炉設置される限り、やはり責任は時間的に継続すると思うのです。かりに、私法人に設置許可され、私法人がそれを管理し、運営するとしても、そういう協定を結んでおる以上、損害賠償責任というものは時間的に継続をするんじゃないでしょうか。しかも、それが授権をするというような形において、しかも、非常に大きな権限政府が移譲しておるのでしょう。そうしてみれば、法律的に、私は詳しいことはわからぬが、やはり損害賠償責任は時間的に継続するんじゃないでしょうか。その点がやはりこの問題の一つの問題点だろうと思うのです。その点法制的にどうなんでしょう。
  38. 野木新一

    ○野木政府委員 御質問の点は、ある原子炉から事故が生じたという場合に、政府としては、御質問に現われたような事情にあるから、直ちに損害賠償責任を負うかどうか、そういう観点からみますと、やはり現行法としては、具体的損害が生じた場合に、それに対して、政府に故意、過失があるかどうか、因果関係があるかどうか、そういうような点を具体的に探求しなければならないのであります。それですから、おっしゃったような、そういう非常に抽象的な関係だけでは、おそらく現行法のもとでは損害賠償責任を負うべきであるということは断定できないのではないかと思います。しかし、おっしゃったような考え方は、確かに立法論的な見地としてはそういう事情があるし、何か特別な規定を置いたらどうかという方向の御議論としたならば、あるいはそういう御議論も一つの見解であろうと存ずるわけでありますが、現行法解釈論として、直ちに損害賠償責任が生ずるかどうか何も規定がない場合に、そこはどうも、やはり、むしろ負わない、負う場合はほとんどないんじゃないかというふうに断定した方がよいんじゃないかと存じます。
  39. 岡良一

    岡委員 私は非常に寡聞で、この方面のことはよくわからないのですが、こういうケースは、これまであなた方がお取扱いになった範囲内でありますか。
  40. 野木新一

    ○野木政府委員 原子炉関係は新しい事態でありまして、もちろんわが国にはございませんし、外国の例も、私はまだ聞いておりません。ただ、これに類似の例はどうかといいましても、これも私裁判例を直接扱っておる立場にございませんので、私の現在の知識においては、これに類似することはちょっと聞いておりません。
  41. 岡良一

    岡委員 こういうケースについて、私ども何も法制局と討論しようと思うのじゃないのですが、やはり今後原子力研究開発を育てる意味において、こういう新しいケースについて、法制局としての率直な御見解を、この次の適当な機会に、一つできるだけまた御研究いただいて、そうして、私どもに聞かしていただきたいと思います。
  42. 松前重義

    ○松前委員 私は、関連して質問をいたします。  ただいまの岡さんの質問は非常に重要な問題であります。そこで、私は政府原子力委員会お尋ねしたいのですが、この間、私が要求したアメリカ原子力委員会の運営に関する資料、これはちょうだいいたしましたが、それを私のところで訳したやつでもってアメリカの実情をここで申し述べて見解を伺いたいと思います。  第二章の、原子炉の建設、運転許可に伴う公聴会というのがあります。その章で、原子炉設置許可をする場合、AECは公聴会を開き、許可を与える場合には反対者から、また、不許可にする場合は原子炉設置出願者からの意見を聞き、公けに発表して許可、不許可の判断を下す。この公聴会は、AECが公表して三十日以内にその希望があった場合にそれを開くと、こう書いてある。その次が大事です。しかしながら、PRDC、パワー・リアクター・デベロプメント・カンパニーの場合、AEC民間発電原子炉計画促進のために、反対者から公聴会の希望があったにもかかわらず、建設許可を与えて建設を始めさせた。その理由は、公聴会は通常数カ月を要し、その間、計画を停止することは大きな損失であるからである。何でも、公聴会の最終的な結論としてこれが不許可になった場合、民間原子炉計画は、すでに建設を始めたために非常に大きな損失となる。この場合、AECはその損失の全責任を持つ決意をして、公聴会を開きつつ、一方で建設許可を与えて建設を始めた。こういう非常に勇敢な、責任自分で背負って立つやり方をしておるわけです。日本原子力委員会は、これだけ学術的な確信もないから、そこのところを、ここまではやっていけない、こうおっしゃるかもしれませんけれども、私は、政府全体として、やはりこれだけの心がまえがなければ、——政府が全責任を持つという心がまえ、経済的な責任までも持って建設を撤回させる、すなわち、御破算にさせる、その間に会社がこうむった被害というものは全部政府においてこれを負担する、こういうふうな心がまえがなければ、ただいまの災害の問題と同じ意味におきまして、この原子力行政というものは推進されないのじゃないか。これは原子力委員会にこういう心がまえをお持ちなさいといったって、予算のないところにそういうことを言うても仕方がないが、政府としては一体どういう考えを持つか、大臣がおられると非常に都合がいいのですけれども、あなた方の個人的な希望でけっこうです。きょうは、政府としての立場を聞こうと思いませんが、佐々木さん、あなたの個人的な希望でけっこうですよ。何もそれでもってあとで何しようと思いませんから……。
  43. 佐々木義武

    佐々木政府委員 私ども、やはり公務員の一人でございますので、法律に与えられた権限、あるいは法律解釈されましたその範囲内で行政権を発動する以外にしようがないのでありまして、ただいまの行政法規、原子力関係の法規から申しますと、この前にもお話申し上げましたように、やはり原子力委員会の意見を聞いて、その上で許可、不許可の行政処分をするというふうな建前になっておりますので、まず、原子力委員会の方に意見を求めておるわけであります。そこで、原子力委員会の方といたしましては、さらに専門家を委嘱してこの問題を検討させつつある最中でありまして、最終的な結論をいただく段階にはまだなっておりませんが、そういう結論のない前に、法の規定しました範囲を離脱して、行政府のみでこれを専断に推進するというふうな行政処分をするということは、私どもといたしましては、どういたしましても考えかねますので、ただいまの段階では、原子力委員会の最終的結論を待っておる段階でございます。ただ、心がけといたしましてはどうかと申しますと、あくまでも、この前にもお話しましたように、原子力平和利用というものを推進するのが私どもの本来の任務でありますので、これを設置いたしたいという希望がございますれば、御希望に沿いますようにできるだけ努力いたしたいというふうな心がまえだけは持っておるわけでございます。
  44. 松前重義

    ○松前委員 私の質問答弁はだいぶ離れております。アメリカ原子力委員会が、大きな発電用原子炉設置申請があった場合、それに対して反対者が出てくる、そうすると、公聴会を開く、その間、半年もかかりますから、そういった長い間待たせられないので、まあ、大体よかろうということになれば、それで責任を持って許可を与える。許可を与えた場合に、公聴会をあとで開いて、工事がだいぶ進んでおるが、工事がだいぶ進んだ後においてこれが否決された、言いかえると、不許可になる運命に陥った、こういうときには、原子力委員会AECは、日本とだいぶ仕組が違い、十分なる予算を持っておりますから、従って、その会社がこうむった損害の全部を、不許可にすると同時に、これを支払う、それだけの腹をもって許可をする、こういうことなんです。私は、政府がほんとうに原子力開発を推進しようというのならば、そのくらいの責任を持ってやらなくちゃならないと思う。今お話があった災害はもちろんのことです。だから、今岡さんのは災害の話だけなんですけれども災害以上に、許可の問題に対する一つ責任の問題が起ってくる。アメリカは、その点で六カ月も待てないというつもりで、どんどんやらしておるのでありまして、だから、それくらいの腹がまえでいくべきじゃないかと私は思うのだが、その点を一つ答弁願いたいと思います。
  45. 佐々木義武

    佐々木政府委員 アメリカの実情は、まことに何と申しますか、非常に積極的なる行政で、おそれ入っておりますが、わが国におきましては、やはりただいまの三権分立と申しますか、この範囲内で行政に与えられた権限権限として、その権利義務の間で行政を施行するというのが私ども官吏の役目だと思いますので、現在の日本では、原子力委員会の意見を聞かないで積極的に許可をするというふうなところまでは、いたしかねると思います。
  46. 松前重義

    ○松前委員 私は、原子力委員会を無視しておやりになれ、そんなことを言っておるのではありません。とにかく、政府の政策として、基本的にそのくらいの心がまえがなければ、とてもそれは推進しない。ほんとうは原子力局長のあなたに聞くのはちょっとどうかと思うのだけれども、だれもここにおらぬもんだから、あなたの個人的な心がまえを、少し脱線した気持の表現を一つ期待しておったけれども、なかなか官僚以上に出ないようだから、これ以上私は申し上げません。しかし、原子力委員会は、少くとも政府をしてそのくらいのことはやらしめるだけの気がまえをもってお進みになるべきであると私は思うのであります。そういうふうに考えておるけれども、なかなかそうはいかぬという御答弁があるだろうと想像はしますが、しかし、それじゃ前進はしない。もしこれを聞かぬならば私は原子力委員をやめるというぐらいの強い信念をもって推進していただかなければ、原子力行政は進まない。同時に、民間に対しては、ほんとうに親切な、指導的な、足らざるを補ってやる気持をもってやらなければ、とうてい進んでいくものではない。こういうふうに思うのです。政府に対しては強く、民間に対してはやわらかく、そうして政府に対しては相当な圧力をかげ、民間に対しては親切に誘導していく、こういうふうな立場になくちゃいかぬ。今は、私は逆じゃないかという感じがするので質問申し上げたのです。
  47. 兼重寛九郎

    兼重説明員 今度は原子力委員会関係者として申し上げます。ただいま松前先生のおっしゃったことは、私にはよくわかります。それで、ここで申し上げる答えは、今こういう返事をするだろうというふうにおっしゃったその通りになるのでございますが、気持の上で、決してそれに負けておるわけではございません。たとえば、政府に強く言って、聞かなければ原子力委員をやめる、いわば職を賭してやるべきじゃないかという御意見に対しましては、そういう方法が効果がある場合には、私はそういう方法を考えないわけではないのでございますが、ただ、そういうふうなことを示唆すればいいというものでもないと思うのであります。従って、現在アメリカのやり方に比べれば、非常にまだるっこしいやり方ではありますけれども、その与えられた条件の中でも、できるだけ推進に努めるようにするのが、現在ではやはり結局早く推進する道だと考えております。それで、最近の動きが逆ではないかという御指摘に対して、そういう印象を与えておるといたしますと、これは私どもに至らないところもあったのでありましょうし、特に、初め経験が乏しいものでありましたから、そういうところから、そういう印象を必要以上に与えておった点もあるのではないかと思います。これは、今後経験を積むに従って改められていくことと思います。従って、いましばらくそういう状況を見守って、しかも、外から見られたそういう印象をどうぞ親切に御注意いただきたい。それによって日本原子力開発ができるだけ早く進むようにありたい、こう考えております。
  48. 松前重義

    ○松前委員 大体想像した通りの御返事でした。それではまだ私はほんとうは満足しておりませんけれども、これ以上追及しません。ただ問題は先ほど岡さんが質問しておりました、あの英国からの原子炉を買うとか買わぬとか、協定に基いておやりになる、こういうことでありますが、あれはもう設置許可申請は出て、そうして安全部会の議を経て、大体買うことにおきめになるのでありますか、これからおきめになるのですか、大体の腹づもりで、もう許可する方針でいらっしゃるのですか。安全性の上からそれを……。
  49. 佐々木義武

    佐々木政府委員 ただいまの段階では、まだ正式の認可申請はしておりません。従いまして、ただいま安全のみに関しましては、あらかじめ予備審査のようなものをしておく方が時間的にも便宜じゃなかろうかというので、予備審査のような形で審査はするようであります。ただ、もちろん正式の申請を待って、立地の問題、あるいは炉の問題、管理者の問題等、全般の問題を検討した上で許可、不許可の問題がきまるわけでございますので、これは今後の問題になっております。
  50. 松前重義

    ○松前委員 予備審査をやられるときに、どうですか、公聴会のごときものはお持ちになりますか。これは非常に重大な問題です。小さな問題じゃない。
  51. 佐々木義武

    佐々木政府委員 原子力委員会の方では、別に聴聞会とか、公聴会を開く意思はございません。しかし、一方では電気事業法がございまして、通産省の方では、これを許可する際には、たしか聴聞会を開いて認可をきめるということになろうかと思います。
  52. 松前重義

    ○松前委員 これこそ民主的に公聴会のごときものを開いて、国民の声を聞くべきじゃないかと私は思うのです。原子炉の安全部会の人たちが原子炉のことをどのくらい知っておるか知りませんが、そういうところだけで決定するがごときは、まことに冒険もはなはだしいと思う。これに対しては、そういう御意思がなければないとして、われわれとして考えなければならぬ点があると思うのです。  それから、もう一つ伺いたいことがあります。見本市を東京港の晴海埠頭というところでやるそうですが、あそこに何か小さな原子炉を出品するそうです。あれに出品することは設置することなんですけれども、その許可申請があって、そして、それはどうしておられますか。
  53. 佐々木義武

    佐々木政府委員 米国設置業者から正式な申請はまだいただいておりません。しかし、そういう話がございまして、事前審査の格好で安全性の検討は進めております。
  54. 松前重義

    ○松前委員 ああいうものでも、やはり安全性を見られるのですか。こっけいしごくですね。
  55. 佐々木義武

    佐々木政府委員 やはり原子炉設置法がございますので、これは管理主任者等もおらぬといけませんし、炉自体も、ただ表面で安全というわけではいけませんので……。
  56. 松前重義

    ○松前委員 それは許可する方針でしょうね、もうきまっているから……。政府関係することは頭から許可して、民間から申請するのはがたがたするというのが現状のようだから、私はさっきの兼重先生の御答弁は、私の言うたのが正しいと思っておる。現実には、どうも答弁が間違っておるような気がする。そういうことを考えると、片方は許可する前提の上に立って、コールダーホールその他英国原子炉を買う。片方は許可する前提の上に立ってやっている。そういう意思が政府の中にあることは、どうも解せない点がある。
  57. 佐々木義武

    佐々木政府委員 そんたくは各人の自由でございますが、ただいまの段階で、私ども許可、不許可は全然ブランクで検討に入っております。別に先入観にとらわれておりません。
  58. 松前重義

    ○松前委員 それでは、あなた方が中心か何か知らぬけれども、ある程度関与して、米国原子炉日本に入れるようなことについて、具体的に話に乗っておられるかどうか。
  59. 佐々木義武

    佐々木政府委員 正式の審査申請がなければ審査をしないというものではないのでありまして、正式な検討は、もちろん申請があってからするのが当然でございますが、時間の関係もあるので、あらかじめ御検討いただきたいというふうに米国AECのアタッシェの方たちからお勧めがございましたので、それでは事前に審査をしましょうというので、これから審査にかかろうという段階になっただけであります。決して私の方から積極的に、許可するから出せといったような既成事実を作ったわけでは毛頭ございません。
  60. 松前重義

    ○松前委員 それはわかりました。既成事実がないという前提の上に立って、今後考えていきましょう。あらゆる原子炉についても、既成事実はないことになっていますね。
  61. 佐々木義武

    佐々木政府委員 その通りでございます。
  62. 松前重義

    ○松前委員 原子力委員会にお伺いいたします。今のような大きな原子炉、発電用原子炉等を設ける場合において、公聴会もやらないという話でありますが、これはまことに危険千万だと私は思う。それならば、この許可するかどうかの問題については、大衆の多少逸脱した運動、大衆運動、こいつの影響以外にはないんです。いろいろ大衆の声を聞くということが全然ない。こういうことで、一体そういう大きな原子炉設置することがよろしいかどうか。アメリカあたりではやっておる。そのかわり、腹を据えてやっておる。小さな原子炉については、安全部会なんかにかけないでどんどんやっております。まるで、やっていることがしゃくし定木で、原子炉を知らない人間のやっていることとしか考えられないが、どうですか。
  63. 兼重寛九郎

    兼重説明員 しゃくし定木のように現在見えておりますし、また、現存実際にそういう点があるかと思います。これは、やはり経験が足りませんことと、日本の国情も手伝っておることで、どうしてもアメリカと同じようにいけない点があることを御了承願いたいと思います。公聴会の件について、現在までそれをやるというふうにきめたことは全然ございませんから、その点については、佐々木局長の申しましたように、公聴会をやるつもりがないということだと思いますが、今まで多少検討したところでは、公聴会を開いて非常にいい結果が得られるという見通しがないというところかと思います。しかし、なお原子力委員会として検討はしてみることにいたします。
  64. 松前重義

    ○松前委員 私はあとでまたやりますから、一応これで終ります。
  65. 岡良一

    岡委員 松前さんの言われた、政府が安全性を認めて、そうして許可をしたという場合、万一不慮の事故があった場合における政府責任というもの、これはまた政府の方でいろいろこれまでの取扱いもありましょう。そういうものを基準として、原子炉の場合どうあるべきかということを御研究願いたいと思う。  その次は、大体私ども常識的に考えて、損害賠償ということになれば、そのものを持っておって、それを利用することによって利益を得る者、これがやはり損害賠償一つ責任主体ではないかと思うわけです。私はそういうふうに考えておるのですが、損害賠償原則的な点を法制局の方から伺っておきます。
  66. 野木新一

    ○野木政府委員 損害賠償原則の要点といたしましては、現行法制においては、まず民法の不法行為の章及び国等につきましては国家賠償法の体系なのであります。原則といたしましては、不法行為をした者、故意、過失によって他人に損害を与えた者、こういう者が損害賠償責任を負うわけでありまして、だれがそれに当るかということにつきましては、それぞれの具体的な事案々々において考えていく、そういうことになると存ずる次第であります。
  67. 岡良一

    岡委員 それでは、たとえば原子炉の場合、原子炉運転することによって利益を得る者が、やはり損害賠償主体になるというような法人、損害賠償の場合考えなくてもいいんでしょうか。
  68. 野木新一

    ○野木政府委員 結局、損害賠償をするには金銭賠償原則でありますから、金がなければ、幾ら責任を負っても結局被害者は満足をせられない。金のある者は結局利益を得る者ではないか、従って利益を得る者に損害賠償責任を負わせるのがいいのじゃないかという一連の考え方は、一つの筋道としては考えられるとは存じますが、現行法建前としては、必ずしもそうなっておるわけではありません。従いまして、そういうような建前にしようと思うならば、何か特別の規定でもしなければ、これはむずかしいのじゃないか、そう存ずる次第であります。
  69. 岡良一

    岡委員 ある法制専門家にこの点をお聞きしたところ、そのお答えをいただいておりますが、これによると、天然自然の資源による災害発生の場合には、その資源によって平生経済的な利益を受けている者がこれを負担する、これが私法上の損害賠償、公法上の国家補償を通ずる原則である、実は、こういうお答えをいただいておるのでございます。今の御見解とは若干異なりますが、これはただ一部の見解ということでいいのでございましょうか。
  70. 野木新一

    ○野木政府委員 ただいまお聞きした見解は、むしろ、そういうものは立法の建前として合理的ではなかろうか、やはり利益を得る者に損害を帰せしめる、そういうような立場の議論だろうと思いますが、すべて民法国家賠償法の原則が必ずそれと合致しておると言い切れるかどうか、なお研究の余地があるかと存ずる次第であります。
  71. 岡良一

    岡委員 そこで具体的に、たとえば、日本原子力研究所という特殊法人が原子炉設置して、これがたまたま事故に基いて他に災害を及ぼした場合、その損害賠償責任は当然日本原子力研究所にある。ところが、これは百億以上の出資を政府がやっておる。法制上は若干の出資の道は開かれておるけれども、事実上は、まるまる国が支出をしておるという場合、この日本原子力研究所に設置された原子炉のために、万一にも災害が起ったときの損害賠償責任は国にあるのではないだろうか、私はそう考えるのですが、その点はいかがでしょうか。
  72. 野木新一

    ○野木政府委員 純粋に法律的の立場から申し上げますと、今の民法建前は、不法行為者としての者というものは、やはり法律上の人格者をさしておるわけでありまして、自然人とか法人とかいうものが責任主体になるわけであります。従いまして、日本原子力研究所というのは特別法によってできております特別法人でありまして、一個の法的人格者であります。従いまして、その与えた損害というものは、やはりその日本原子力研究所という法人が責任者になる。特別の規定がない限りは国が直ちに法律上上の責任を負うということは、ちょっとむずかしいのではないかと存ずる次第であります。
  73. 岡良一

    岡委員 こういう特別な法人が、先ほども申しましたように、ほとんど国の支出によって経営されておるという場合、むずかしい言葉の特殊法人であるとか、私法人であるとか、公法人であるとかいろいろあるのでしょうが、しかし、これは事実上国が責任を持つべき公法人とみなしていいんじゃないでしょうか。
  74. 野木新一

    ○野木政府委員 ただいまの損害賠償云々の点につきましては、公法人であろうが、私法人であろうが、法人というものが損害賠償責任主体になるという点でありまして、公法人であろうが、私法人であろうが、その点から差別はついてはおらないのであります。ただ、立法的に考えまして、国の息の非常にかかっている、国の別動隊みたいなものは、何か特別な措置が必要じゃないか、そういうような、立法政策的な問題は別途議論の余地があるかと存じますが、何ら規定がない限りはやはりその法人が責任を負う。その場合において、公法人なり私法人なりの区別に従って法的の責任に差異を生ずることはない、そう解釈すべきであろうと思います。
  75. 岡良一

    岡委員 佐々木さん、何かありますか。
  76. 佐々木義武

    佐々木政府委員 私も同じだと思います。
  77. 岡良一

    岡委員 それでは、かりに国立大学に原子炉設置した場合、その事故に基く災害についての補償はどういうことになりますか。
  78. 野木新一

    ○野木政府委員 国立大学は、別に別個の法人でも何でもありません。国の管理のもとにあって、国が直接やっておるわけであります。従いまして、その責任は国が主体として問題になるのでありまして、すなわち、国家賠償法に該当するかどうかという点によって国の責任の有無はきまってくる、そういうように存ずる次第であります。
  79. 岡良一

    岡委員 そうすると、原子炉が、今後国産一号炉その他動力試験炉と、日本原子力研究所にも集中されてくることになってくるので、そういう場合、日本原子力研究所そのものもやはり損害賠償をし得るような、何か立法的な措置が必要になってくるんじゃないかと思うのですが、これは法制局の御見解と原子力局の御見解、でき得べくんば、原子力委員会としても、この問題についてどういう御関心を持っておられるか、この際お聞かせを願いたい。
  80. 野木新一

    ○野木政府委員 現行法解釈論としては、私ただいままでるる申し上げた通りになると存じます。しかしながら、現行法はともかくとして、実質的にそういう関係はおもしろくないから、何か特別措置を講ずるべきではないかということは、次の立法政策として出てくると存じます。この点は、何しろ原子力というものは世界における新しい事態でありまして、原子力による事故に基く損害というものは、どういう措置をしたらいいか、どの程度責任考えたらいいかというような点は、まだまだ非常に研究すべき点があろうかと存じます。私の聞くところでは、たしか我妻先生などを中心にいたしまして、その関係研究原子力局の力でも進められているというように、たしかこの案の審議のときに承わっておりました。従って、その研究が完成されれば、わが国のその方面のオーソリティである我妻先生が中心になっているわけでありますから、一つの有力な示唆が得られると存ずる次第であります。今この委員会は、いろいろ諸外国の資料とか、日本の判例とか集めておそらく研究されているわけでありますが、それに私ども非常な期待を持っておる次第であります。  それから、ただいまの御質問原子力研究所の関係につきましてはこれは一つの政策の問題になりまして、法制的にはいろいろ考えられるわけでありますが、それより、まずどういうように政策をするかという問題でありますから、これは、まず原子力局の方にお答えを譲りたいと思います。
  81. 佐々木義武

    佐々木政府委員 この制度の一部改正が法案として成立いたしますと、その法案に書いてございますように、原子力研究所も当然賠償の適切な措置を、申請と申しますか、監督しているから直接申請ではございませんが、はっきりさせなければなりません。その際には、当然民間保険プールができておりますれば、その保険プールに入るわけでございますけれども、その保険プールに入るための予算的措置はあらかじめ講じてあります。予備金の形でとってございまして、この法律ができますれば、また民間のプールができますれば、入るように予算的に措置をしてございます。なお、この第一段階がそれだけでは不十分じゃないか、それ以上の災害が起きた場合には一体国としてどうするかという、保険の限度を越えた場合の岡さんの御質問かと思いますが、その点に関しましては、ただいま野木部長からもお話がございましたように、原子力委員会の中に損害賠償の特別専門部会を作りまして、そうして、我妻栄教授が特に承諾して下さいまして、委員長になって、そうして、日本でこういう問題の一番のオーソリティと思われる方たちにお集まり願って、非常に熱心に検討していただいております。最近海外に調査団を出しまして、その調査団も帰ってきたばかりでございまして、だいぶ各国のこれに対する研究も進みつつあるように承知しております。そういう問題に対しましては、たとえば、この原子力災害に基く損害賠償責任のあり方、ただいま岡さんの質問になった点でございますが、非常にこれはむずかしい問題でございます。たとえば、従来の民法でいきますと、先ほどからるる御説明がありましたように、やはりこの過失というのが責任の非常に重要な事項になってきますと、無過失責任といったようなものは一体どう考えたらいいか、あるいは責任をどこに集中すべきか、あるいは責任の制限をすべきかどうかといったような問題、あるいは保険プールの、原子力責任保険の引き受け能力を越えるような事故というものが一体考えられるか、英国の方では五十億円という限度をつけまして、これ以上は絶対起らぬという信念、信念といってはおかしいですが、それ以上起きた場合には、議会がその跡始末は考えるというふうな規定にしているようでございます。従いまして、そういう、今考えております保険の給付限度以上の事故というものが果して起る可能性があるかどうかというような問題、あるいは各国の損害補償制度といったようなものが、一体どういうふうな考え方に立っておるか、非常に各国ともまちまちの考えで、決してそろった考え方で進んでおりません。そういう点も、いろいろ国の事情等も考えまして、今後研究を進めていきたいというので、帰って参りました調査団を中心にいたしまして、できますれば、来国会等を目ざして、特殊な保険制度というものが必要であれば、そういう保険法みたいなものを作る必要がありましょうし、あるいは特別な国家補償というものが必要であれば、そういう法律にもなろうかと思います。そういう点をあわせて、ただいま検討中でございます。
  82. 岡良一

    岡委員 それでは万一原子炉事故が起ったときに、この事故が何に基くかということの判定を下すことができますか。
  83. 兼重寛九郎

    兼重説明員 その問題はむずかしいことでございますし、どこから起ったかわからない場合が多いらしいというのが、現在の常識のようでございます。特殊な場合には、はっきりわかることもございましょうけれども、わかるケースの方が少くて、どこかわからないであろうというふうに考えられます。従って、そういう場合に、さっきも話が出ました無過失の場合でも賠償をする必要が出てくるかもしれない、そういうことについて大へんむずかしい問題があるようでございますので、現在そういう点がまだ解決しておりませんために、いろいろ検討を進め、調査をしておることは、先ほどから説明がありました通りで、そういうふうな対策を立てる必要があることは十分承知しておって、努力中でございます。
  84. 岡良一

    岡委員 私もよくこの委員会で申し上げるのだが、これまでの原子炉事故原因が究明されないのは、結局、各国の権威者が指摘しているように、まだ始まって早々のことでもあるので、いわゆる中性子の持続的な放射にさらされた物質の化学的な構造の変化というものが把握できない。これがやはり大きな事故原因が解明されない一つのポイントではないかと思う。従って、そういう意味から、いわば原子力に関する研究なり開発の進んだ国でも、まだ原子力事故原因究明においては科学的に十分——これならばというその原因が究明され得る段階にまで、遺憾ながら人間の科学水準がいっていない。そういうような状態でありながら、安全であるということで許可することになるわけです。政府が、内閣総理大臣許可するということになると、そういうこと自体が、やはり国の無過失賠償という——とにかく賠償責任というものをはっきりさせておく必要があるんじゃないか。これも法制局の方で御研究願いたいと思うのです。こういう事態に即して、法の改正なり、あるいは新しい法を設けるなりしなければならぬじゃないかという面まで御研究願いたいと思う。  そこで、今佐々木君の言う、大体この法律案における単独の保険なり、あるいは再保険としての保険プールという構想はどういう規模のものなのか、そして、それは日本国内にとどめるのか、その点を一つはっきり伺いたい。
  85. 佐々木義武

    佐々木政府委員 ただいま損害保険協会の方が中心になりまして、自発的にこのプールの結成を進めてございます。その保険約款等はただいま作成中でございますので、まだ最終的な結論を得ておらぬようでございまして、それができ次第、大蔵省の事業認可の段階になろうかと思いますが、     〔委員長退席、秋田委員長代理着席〕 大体の規模から申し上げますと、十億から十五億くらいの引受金額になるのじゃなかろうか。もちろん、再保険を海外に出すわけですが、その際には、それが数倍になり得るであろうという見通しのようでございます。従いまして、六十億から七十億くらいの保険料は持ち得るのじゃなかろうか。これは一次的な保険と申しますか、各国によってだいぶ違いがあるようですけれども、先ほどお話ございましたように、英国では大体五十億くらいの限度を一応の最高額として、それ以上の事故は起り得ないというように判断しているようでございますが、ただいまの損保の方々たちの考え方は、大体その程度の規模で考えているようでございます。
  86. 岡良一

    岡委員 そうすると、たとえば、原子力発電会社がかりに原子炉運転する、動力炉を運転する場合には、その国内における保険の限度は五十億、海外にはどれだけ、何かそこのところ……。
  87. 佐々木義武

    佐々木政府委員 それは、もう少し具体的になりませんと何とも申し上げられません。一応今の仮計算によりますと、十億から十五億くらいが日本保険業界のプールの引受限度でございまして、これを海外に再保険した場合には数倍に変るだろうと思います。従いまして、両方合せて大体六十億から七十億くらいの限度の保険金額はかけ得るのじゃなかろうかというふうな見通、しに立っております。
  88. 岡良一

    岡委員 この法律が、特に民間保険に期待をして損害賠償をしようというならば、やはり、その点のはっきりとした確実な見通しがなくて、ばく然たる期待の上にこれを出してくるというのは、私は少し無責任じゃないかと思うのですよ。この点はわれわれがこの法律案を審議する場合における重大な参考資料、というよりも、前提ですから、やはりはっきり出してもらわなければいかぬと思う。ただこういう抽象的な方針だけを示されても、具体的に万一災害が起った場合は、今のような状態でありますと、実際災害を受けた第三者である、たとえば住民なり耕地の所有者なりというものはもうどこへすがっていいかわからない国と国との裁判になれば何年かかるかわからない、国は責任を回避しておるということであり、事故原因がはっきりわからないということになれば、保険会社だって保険金の支払いに対していろいろと問題が出てくると思うのですよ。だから、そういう点、もっとはっきりと、やはり責任のある備えの土にこういう法律案を出されないと、これでは私は審議の余地がないと思うのですよ。そういう点でも一つできるだけ準備を進められて、この際大蔵大臣及び科学技術庁長官にぜひ御出席を願って、もっと——これは日本原子力研究開発の将来をトする重大問題なのですから、一つ責任ある体制で、真剣にこの委員会の討議に上せたいと思います。そういう意味で、あとの機会に譲りまして、きょうはこれで私の質問を打ち切ります。
  89. 松前重義

    ○松前委員 先ほど佐々木局長は、政府あるいは政府関係機関のやることに対しては非常に好意的であって、民間のやることには、非常に好意的であるかないか知らぬが、少し峻厳ではないか、こういうふうな表現で私が質問したら、そういうことは絶対にないと言われた。そこで私は一つお伺いしたいのだが、この間新聞で見ると、これも憶測のことで、そういうことは君の勝手だとあなたがおっしゃるならばそれまでだが、しかし、日本原子力研究所がこの間方々から人を呼んで国産原子炉の起工式をおやりになった。それは設置の認可申請を出されたのか、そうしてそれに対して正式な許可がおりたのか、安全審査部会を経過して認可がおりたのか、これを伺いたい。
  90. 佐々木義武

    佐々木政府委員 原子力研究所は、原子炉規制に関する法律にございますように、別に政府に認可を申請する必要はございません。別途日本原子力研究所法に基いて国が監督してございますので、設置の際には、当然事前に国で十分調査をいたしまして、そして国の方針として事業計画等を定め、それに基いて設置するのでございますから、許可は必要ないわけでございます。ただ、実際に運転する際にそれではどうなるかと申しますと、その点に関しましては、保安規定その他実際の運転に必要な規定を申請いたさせまして、この方を十分に検査をいたしました結果運転許可をいたす、こういうふうな建前になっております。
  91. 松前重義

    ○松前委員 安全に関する問題は、設置という一つの建設に関する仕事のみならず、それを運転するということが一番大事なことなんです。それで、安全審査部会は運転に対しても、その要員に対しても発言なさるらしいのでありますが、原子力委員会の安全審査なんとか部会というものは、当然その許可云々の問題に対してはその運転に対する見通しもつかないならば、それの機構その他についてやるべきではないと私は思う。運転は一番大事なことです。ただ家を作ったり何かするだけの場合、それを据えつけただけの場合なら、これは問題にならぬので、当然これは運転をしなければならぬ。その運転が一番大事なんで、その運転に危険性がある。その点をルースにしておいて、民間に対しては非常にシビアか何か知らぬが、そういう態度をとっておる。これは憶測であるから、実際はどうか知らぬけれども、そういうふうな感じが実はするんです。けじめをつけて下さい。
  92. 佐々木義武

    佐々木政府委員 原子力研究所の管理能力そのものに関しましては、法律規定されております取扱主任技術者等はもちろんのこと、保険等に関しましても十分な準備を整えて運転してございますので、その点は特別にどうということは考えておりません。それから、立地の問題に関しましては、これはしばしば問題になったところでございますけれども、あの土地をきめます際にもいろいろ御説明申し上げましたように、原子炉設置に関する立地条件としては、まずまず十分じゃなかろうかという点からあの土地を選んだのでございまして、立地そのものに関しましても、今のところ問題がないかというふうに考えております。
  93. 松前重義

    ○松前委員 今の御答弁だと、運転に関するものも、別に許可も何も要らぬという、さっきの言葉をあなたは打ち消されましたね。
  94. 佐々木義武

    佐々木政府委員 それは原子力研究所に関する御質問かと思いましたので、原十力研究所に関しましてはただいま申し上げました通りでございまた。
  95. 松前重義

    ○松前委員 どうもおかしい。さっきあなたは、原子力研究所に関しても、運転に関するところの許可は必要であると言ったでしょう。
  96. 佐々木義武

    佐々木政府委員 安全あるいは運転に関する規則、もう一つは、設計及び工事方法の認可でございまして、別に、原子力研究所に関しましては、運営能力、管理能力等は、設置の際にと申しますか、研究所法自体として監督する内容に入っておるのでありまして、運転するに際しての許認可事項といたしましては、さっき申しましたように、保安規定の問題と、それから設計及び工事方法がどうなっているかという点を検査するだけでございます。
  97. 松前重義

    ○松前委員 そうなると、運転というものは切り離されるんですね。設置許可等の問題と切り離して許可されるんですね。そういうことになるでしょう。
  98. 佐々木義武

    佐々木政府委員 原子力研究所の設置については許可という事実はございません。そうではなくて、原子力研究所そのものにどういう炉を設置し、管理をするかという問題に関しましては、日本原子力研究所法で国が直接監督している関係上、その事業計画として国でこれを認めまして、そして、こういう炉をやるという場合になりますれば、原子力委員会等で御決定いただいて、そうして予算等の折衝に入って、それが成立いたしますと実際の設置と申しますか、その仕事に入っていくわけでございまして、研究所以外の者が原子炉設置する際には、政府に申請するという様式行為は要らないということを申し上げておるのでございます。
  99. 松前重義

    ○松前委員 そのことは、もうわかりましたが、しかし、運転に際しては許可が要るということをあなたはさっき言いましたね。これは速記を見てもいいです。それを取り消されるならいいのですが、取り消されないなら、今の私の質問は残りますよ。
  100. 佐々木義武

    佐々木政府委員 運転に際しての認可はどういうのかと申しますと、保安規定の問題と、設計及び工事の方法の認可、この二つでございます。これが許可、認可事項になっております。
  101. 松前重義

    ○松前委員 私は形式上のことを言っているんです。実質上のことは、あなたの言われるのはよくわかります。また、あなたの言うように、ほんとうにそうすべきだと実は思うのですけれども、形式上の問題、許可申請を一体形式的に出しておられるかどうか……。
  102. 佐々木義武

    佐々木政府委員 その通りやってございます。
  103. 松前重義

    ○松前委員 出してあるのですか。
  104. 佐々木義武

    佐々木政府委員 出しております。
  105. 松前重義

    ○松前委員 それは安全審査部会にかかりましたか。
  106. 佐々木義武

    佐々木政府委員 ウォーター・ボイラーに関しましては、まだ安全審査部会のない以前でございましたので、これは政府限りでやりましたが、CPS等に関します設計、工事等の問題は一切安全審査部会の意見を聞くつもりでございます。
  107. 松前重義

    ○松前委員 それは非常に見ものですね。よく注意して安全審査部会の御高見を承わってみましょう。  それから、最後に前田さんの御質問があるそうですから、私はこの次に譲りますけれども、安全審査部会の方々が原子炉についての安全をいろいろ審議なさいますが、具体的に、東海村のやつをごらんになっておられる方はこの原子炉について大体おわかりでございましょう。しかし、それではまだ不十分であって、世界中の、小さなチンピラから大きなものに至るまでの原子炉を視察しておられる人がどのくらいおられるか、どういう原子炉をどこで、どういうふうに見てこられたか、そのリストをちょうだいしたいと思います。これで私は終ります。
  108. 佐々木義武

    佐々木政府委員 承知いたしました。
  109. 秋田大助

    ○秋田委員長代理 前田正男君。
  110. 前田正男

    ○前田(正)委員 今の松前君の質問に関連して、私の本質問の前にちょっと聞きたいのです。  原子炉許可については、安全審査部会で審査されるということですけれども、私は、安全審査部会というものがどれだけの権限を持っておるか知らぬが、政府の許認可事項というようなものは、部会に決定する権限は全然ないんじゃないか。これは原子力委員会が決定すべきものであって、部会は、ただ参考意見を述べることはできるけれども、これは安全であるとか、安全でないとか、そういう意見をきめるということはできないものだと思います。原子力委員会権限はどうなっておるのか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  111. 佐々木義武

    佐々木政府委員 もちろん、決定するのは原子力委員会でありまして、かりに、専門部会の答申と申しますか、結論と違った結論を原子力委員会で出したとしても、法的には決して矛盾するものではありません。あくまでも決定は委員会でありまして、委員会が自己の仕事を決定するに際しまして、その意思を決定するための資料等を専門部会に求めるだけでございます。
  112. 前田正男

    ○前田(正)委員 事行政に関することは、今原子力委員会が一応決定権を持っておる。しかし、認可権は科学技術庁長官が持っておるわけです。だから、行政府最後の決定権を持っておるわけです。専門部会の意見を聞いていろいろおやりになるのはけっこうです。この許可、認可事項という、行政の責任のようなものは、専門部会で一応結論を出したという話を聞くのですけれども、専門部会にそんな結論を出させるべきものではないんじゃないか。専門部会で、これをどういうところで、どういうふうに考えなければならぬとか、そんな意見を出すのはいいですけれども、これは安全であるとか、安全でないというような意見を出した、そういう意見が出たために、原子力委員会がその意見にとらわれて、反対の決定がしにくいというようなことはやるべきじゃない。行政の面は原子力委員会と、さらにその最終決定をする科学技術庁というものが握るべきものであって、専門意見を聞くほか、これは安全であるとか、安全でないというような決定した意見まで専門部会から求めるというのは、やり方がおかしいんじゃないかと思うのです。一般の意見を聞くのはいいけれども、行政の責任である許認可事項の結論を一応出させるという運営のやり方はおかしいと思いますが、兼重原子力委員どうお思いになりますか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  113. 兼重寛九郎

    兼重説明員 ただいまの御質問に対しますお答えは、この前松前衆議院議員から質問書が出ておりまして、総理大臣から答弁書が出ております。その中で、今の安全性についての検討を正原子炉安全審査専門部会に求めて、安全部会からある答申が出ました。現段階における科学技術陣の判断は十分尊重すべきものと考えますが、現在これについて、原子力委員会原子力局とにおいて慎重に審査を進めている次第でございます。いずれ、結論を得次第と申しておりますように、あの結論をそのままのむつもりはございませんで、ちゃんとその通りにするとすれば、納得ができた上で初めてする。現在まだその結論を得ていない状況であります。その上、総理に意見を申しますことは、原子炉の安全性だけではございませんで、そのほか、幾つかの項目がありまして、そのほかの項目は、それとはまた別に検討をしております。その上で意見がきまることになるわけでありますから、外部に出た形がそういうふうな印象を与えたことがあるいはあったのかもわかりませんが、建前としては、心得ておるつもりであります。
  114. 前田正男

    ○前田(正)委員 その建前はそれでけっこうなんですけれども、厚子力委員会が部会を運営されるに当って、特に注意をしていただいた方がいいじゃないかと思うことがあるのです。こういう許可、認可事項というようなものに対して、部会がいろいろ専門的な意見を出すのはけっこうです。原子力委員会がいろいろな決定をするために必要な専門的な意見を求めることはけっこうですけれども、部会に結論を出さすということは間違っておるではないか。部会の結論が出ていると、原子力委員会の方はそれにこだわって、反対の意見を出しにくいということになる。ほかの事項はいろいろ結論を出さしてもよいが、許認可事項は、正式に任命された、権限を持っておる方が結論を出すべきではないか。初めに結論を出さしておけは、原子力委員会で皆さんが審議されるときに、この部会の結論というものをある程度考えなければならなくなって、原子力委員会がおきめになるときにこだわってくると思うのです。原子力委員会が結論を下すときに、ああいうことをしろとか、海外がどうなっているとか、そういう専門事項を調べるのに部会をお使いになった方がよいでしょうが、行政事務に関するようなことの結論を出さすことは、おやりにならない方がよい。原子力委員会としては、建前通り、部会がそういう結論を出しても、自分の反対の結論を出せる、これは今の御答弁通りですけれども、そういうふうなことでは、部会の運営はやりにくいではないかと思うのです。原子力委員会の方は、許認可事項に関する行政上のことについては、もう少し部会のやり方を御研究願った方がよいのではないか。そうしないと、今御答弁になったような建前が貫きにくくなるのではないかと思うのです。どうお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  115. 兼重寛九郎

    兼重説明員 今までやっておりますのは、大体この趣旨でいくと思っておりましたけれども、きょうの御意見も伺いましたので、なお十分検討して、改めた方がよいことは、今後改めるようにいたします。
  116. 前田正男

    ○前田(正)委員 その点は一つ研究願っておきたいと思います。  私は、一般科学技術の問題についてお聞きしたいのですが、特に学術会議の会長として、一つ兼重さんの御答弁をお願いしたい。それは、この間私たちの委員会に、学術会議の第二十七回の総会におきますところの声明を配っていただきました。非常に参考になって、われわれも大いに勉強になると思っておりますが、この声明に書いてあることは、要するに、基礎科学について政府としてはもっと重点的に考えろということのようでありまして、その趣旨はわれわれも大賛成であります。私たちも、この科学技術の特別委員会はもちろんのこと、われわれの党の方におきます特別委員会におきましても、われわれは常に科学技術の問題を論ずるときは、もちろん基礎科学の問題も必ず一緒にしてやっております。ところが、この衆議院の委員会でも、もちろんそういう意味におきまして基礎科学の分野、あるいは教育の問題等もここで何回も質疑応答し、議論をいたしたことでありまして、この委員会としては、もちろん基礎科学というものも取り上げる権限を持っておるわけであります。従って、われわれは常にそういうものの発展のためには努力して参っておるし、われわれ与党といたしましても、予算のときにも、基礎科学は一緒に、いつも一般の科学技術とともに予算要求してやってきておるわけです。ところが、私たちがそういう気持でやってきておるのでありますけれども、現在の日本科学技術の現状というものは、われわれが科学技術の行政を確立するに当りまして、この基礎科学というものと一般の科学技術というものと連携しなければ、日本の産業の発展はあり得ないというふうなことで、実は私たちは科学技術庁というものを作ろうとしたのであります。そして、そういうふうな法案も提案になった。ところが学術会議の方から文部省等の御意見も出まして、いわゆる基礎科学の分野を除いてくれということになって、科学技術庁から権限が除かれておる。原子力も同じであります。人文科学を除くのはけっこうでありますけれども、そういうふうなことから、私は、基礎科学というものを、われわれがせっかく力を入れて一般の科学技術とともに大いに拡大してやっていこうと思ったのでありますが、たとえば原子力の例をとりましても、基礎科学の方は文部省がおやりになるだけでありまして、われわれは、この委員会では大いに協力しておるのでありますけれども現実問題として、そういうことがあるためにだんだんおくれていって、一般の科学技術の方は、正原子力の例によりましても、どんどん進んでいくわけであります。これは、なぜそういうことになったかというと、結局、行政が二本建になってしまった。私は、そういうことではいけないということを、初めから考えてやったのであります。皆さんのこの声明の説明を見ましても、同じことが書いてあります。説明のまん中に「基礎研究が応用部面と直接にむすびついてきており、今後の基礎研究発展が、産業技術の進歩に、はかり知れない可能性を約束しております。」と書いてあります。これが事実だと私は思うのです。それなのに、学問の自由だとかなんだとかいうようなことから、この基礎科学の分野のことに対しまして、いわゆるみんな科学技術というものを一本としてわれわれは調整して、そして大きくやっていこうということに対して、学問の自由とは何だということから反対してこられたのが、今までの現状だと私は思うのであります。そこで、私たちはそれじゃ仕方がないからというので、御承知の通り、今度科学技術会議という、総理大臣を議長とします非常に有力な機関を設けて、その調整をはかることにいたしました。しかも、学術会議の御意見を聞いて——学術会議の会長は、その議員として法律できめられておる、こういうふうなことになったのであります。そこで、皆さんがそういう声明を出される以上は、これは当然、今度は学術会議の会長は科学技術会議の議員でありますから、そういう高所の立場から、この基礎科学というものの発展については、一般の科学技術というものと連携を密にしてやっていこうということを考えて、こういう声明を出されたのかどうか、それをまずお聞かせ願いたいと思うのであります。
  117. 兼重寛九郎

    兼重説明員 この声明は、ごらんになりましたように、現在日本基礎科学、しかも、それを主として担当しております日本の大学の研究施設及び研究費などが非常に乏しい状況でありますために、現状のままでいけば近いうちに世界の水準から落後してしまうということをおそれて、早く手を打っていただきたいということを申しておるわけであります。その手を打つ方法はいろいろございましょう。そこで、かねがねこの特別委員会なんかに御関係委員の先生方が、大学の基礎科学研究も一緒にやろうというのに対して、学術会議は、大学の研究についてははずしてほしい、とこう申した、そのことが現在こういう状況になっておる有力な原因であるとは申されませんでしたけれども、そういうふうに感じて御質問になったのではないかと推察するのでございますが、そういうふうに見られる面もあるのでございましょう。結果から見ると、そうでございましょう。しかし、これがたとえば、そういうものを科学技術庁が持つことにしなければ推進しないものであるのかどうか、一元化しなければ推進しないとなりますと、今度はそういうものをはずされました大学の中で、また教育の面と研究の面とが二元化して参りまして、どちらにも欠点もあれば長所もあることでございます。そこで、こういう声明を出したからには、この前別にしてくれといったことの誤まりを認めて出したのかという趣旨の御質問であるとすれば、まだそこまで割り切って申したわけではございません。かりに、現状のままでありましても、基礎科学の部門を担当している大学関係の施設なり、予算なりがふえるような対策、措置を講じてほしい、こういうふうに申しておるわけでございます。
  118. 前田正男

    ○前田(正)委員 今私の申し上げたのは、そういう過去の実例はありましたけれども、すでにそういうものができ上った現状においては、今ここに行政を統一するというようなことはなかなか困難であるから、そこで、日本としては科学技術行政は二本建になっておりますので、それを是正するために科学技術会議というものが生まれた。その会議の議員に会長は当然なられるわけであります。そのときに、ここにこういう声明が出ておるわけですから、私は今度の新しい会議の議員とされて——これは何も行政を統一するものではないのです。この会議基礎科学も一般の科学技術も全部含めて、除いておるのは人文科学だけです。あとは全部入っております。この会議では、基礎から応用に至るまでの科学技術について全部のことをきめることになっておりますから、その会議の議員とされては、ここで一つよく強調をして、日本科学技術発展の基本的な政策を進めていかれるということに努力されたらいいのではないか。そのときになっても大学関係基礎科学の方は除いてくれ、まさか、そういうことは言わぬと思うのですけれども、しかし、こういう声明を出されるのですから、そういう点は重点を置いて、私は学術会議の会長がぜひ一つ議員になってしてもらいたい。学術会議の方からも御要望があり、法律的にも会長が議員になるという意味はこの科学技術会議においては、大いに基礎科学の問題も取り上げて、一般の科学技術との連携、基本的な政策の樹立ということに大いに発言をしてもらうために、また努力していただくために、私は議員になっていただくのだと思うのですけれども、そこの心がまえ一つお聞かせいただきたいと思います。
  119. 兼重寛九郎

    兼重説明員 前の御質問趣旨を取り違えておりまして済みませんでした。そういう趣旨でございましたら、科学技術会議が実際に発足しまして、そういうことを申すことのできる機会に私が恵まれました、と申しますか、実際にその会議が始まりましたならば、そういう趣旨でいたすつもりでおります。
  120. 前田正男

    ○前田(正)委員 そこで、特に科学技術の振興については、皆さんの声明の御説明にも書いてあり、先ほど読みました通りに、基礎研究というものは応用部門と非常に密接に結びついておって、今科学技術の基本的な振興政策を立てるにいたしましても、あるいはまた、その研究所のいろいろな内容の問題にいたしましても、あるいはまた、この研究所には大学研究所もあれば、官立の研究所もありますけれども、そういったものの振興策についても、また科学技術者の養成の問題にいたしましても、みんな関連した問題だと思うのです。そこで、基礎科学というものを伸ばすことにわれわれは非常に賛成でありますけれども、それをやるためには、関連した事柄をよくこの際お考え願って、大学とか、基礎科学だけは別にやっていくという気持をはずしてやってもらわないと、そんな気持でおやりになっても伸びていきません。皆さんの声明にも書いてありますから、そういうことはないわけでありますけれども一つよくお考え願いたいと思うのであります。  そこで私は、次に一つお話を申し上げたいと思うのですが、それは、今度学術会議考え方として、こういう基礎科学進歩というものを出され、また、この学術会議の会長というものが科学技術会議の方に議員として出られるのはけっこうでありますけれども、どうも学術会議の意見というものが、私の見ておるところでは、自然科学の問題に対しまする総会の決議等においても、人文科学の人がいろいろな意見を述べて、そうして変な立場から、いわゆる自然科学立場考え方、施策というものに対して批判をされる例が非常に多いのです。総会におきましても、人文科学の人が立ってそういうことをされることが多い。それで、学術会議の会長は、自然科学の問題について科学技術会議の議員として御出席されるわけです。科学技術会議は先ほど申しましたように、人文科学を除いたものでありますから、そのときに、その会長の意見が人文科学の人によって左右されるということでは、私はほんとうの自然科学の部門を代表された学会の意見というものにならないのじゃないかと思うのですが、その点どうお考えになりますか。
  121. 兼重寛九郎

    兼重説明員 学術会議は御承知のように人文科学自然科学全部を含めておりますから、総会において自然科学関係のことを論ずる場合に、もちろん人文科学関係の人の意見も出て参ります。相当活発に出てくるのは事実であります。しかし、自然科学のことであるから、自然科学の者だけで考えるということは、事柄の性質によってはそれでいいものももちろんございますが、大きな問題のときには、やはりそうでない人の意見も十分聞くことが必要であり、それがまた役に立つことと考えております。ただ、御質問の中にありましたように、人文科学関係の人に引きずられ、あるいはそれに左右されるというような表現でおっしゃられましたが、数から言えば、自然科学関係の方が多く加わっておりますから、その人たちの意見だけで動くわけではございません。従って、私は全体の立場から見た意見をお取次することができる、こう考えております。
  122. 前田正男

    ○前田(正)委員 その辺は、過去の実績をよく調べてみる必要があると私は思うのですけれども、議論になりますから省略します。ただ、せっかく科学技術会議というものができて、日本の基本的な科学技術の問題を、総理大臣が議長をしておやりになるのですから、私は、大体日本学術会議というものが人文科学自然科学が一緒になつていることもおかしいのじゃないかと実は思うのです。そういうふうな学術会議のあり方自身にも、また、そういうものを代表されて議員としてお話しになるそのやり方自身も御研究願ったらどうか。これは、何も単に学術会議の問題だけではなしに、政府の行政のやり方も悪ければ直すとか、研究所を統合しなければならぬというのなら統合するとか、あるいは基礎科学のために総合研究所を作るとか、いろいろな問題が私はあると思うのですが、この際、もう少し、従来の形にとらわれないで、基本的に掘り下げてお考え願った方がいいんじゃないか、それが結局、今皆さんが考えておられる基礎科学の遊歩というものに相当役に立つのではないかとわれわれは考えるのであります。これは、あるいはそういう事実があったかどうかというのは議論になりますけれども、われわれが見ていると、私たちは、基礎科学の学問の、自然科学にわたるものには相当協力しようと思っておるのに、何だか自然科学の学者の方が要らぬことや、変なことを言って、——私は協力するつもりでおりますけれども、一般の政治家の諸君には、学術会議に対していろいろな誤まったような意見、あるいは考え方を持っておる人が相当できてきたという事実があるのです。そういうふうなことは、基礎科学を伸ばし、自然科学を伸ばしていこうという立場から見ると非常にマイナスじゃないかと思うのです。私たちはもちろん人文科学の方も大いに伸ばしてもらわなければ、日本の国の全体のバランスというものがとれませんから、人文科学の問題についても大いにやっていただきたいと思いますけれども、この人文科学の問題は、科学技術会議みたいに、総合的に、各行政機関が集まって会議を開いてやっていかなければならぬということはないわけです。科学技術会議のように、自然科学の方は行政が分れているからこそ、そういうものが必要ですけれども人文科学の方は文部省一本で統制してやっておられるのですから、私は、大きく政治力を発揮していかれて、人文科学の方をもっと伸ばしていただきたい。私は一つも反対ではありません。大いにやっていただいたらいいと思うのですが、ただ、その人文科学のために自然科学の方が非常にいろいろなつまらぬ誤解を受けるというようなことのないように、私はしなければいけないんじゃないかと思うのです。この科学技術会議ができた機会に学術会議のあり方、その運用のやり方、あるいはまた、全体の科学技術行政のやり方、そういったことも御研究をお願いいたしたい、こう私は思うのであります。きょうは時間がありませんから、この程度にしておきますけれども、いずれ、また一つゆっくりお願いいたしたいと思っております。会長自身として、今の学術会議の運営、あるいはあり方について、何か御意見がおありでしたら伺いたいと思います。
  123. 兼重寛九郎

    兼重説明員 科学技術会議ができました上で、それに協力しまして、その設置趣旨が生かされるように努力をします。私が会長でおります間は、するつもりでございます。  そこで、学術会議の構成が今のようであることが、基礎科学の振興に幾らかじゃまをしておるのではないかというような印象を持っておられるように推察いたしましたけれども、それは私自身としては、そういうことが原因ではないと思っております。誤解と申してはいけないのかもしれませんが、普通よく誤解と申します。誤解の起るときには、必ずしも人文科学関係の人だけが関係しておるわけではありませんで、基礎科学自然科学をやっておる人たちもそういう印象を与えるのに影響はあるかもわかりません。これは、人文科学自然科学とが一緒になっておるからというふうに、簡単には言えないことだと思います。従って、私は今誤解と申せば、自分の方が正解をしておって、相手の方が間違ったことを主張することになりますけれども、そうではなくて、お互いの了解を十分していけば、そういうことなしに進み得るものだと現在確信しております。しかし、きょうの御意見も承わっておきます。今後どういうふうにしてやるか、そういう御意見があるなしにかかわらず、常に考えるべきことでございます。そういう点は念頭にとどめておくようにいたします。
  124. 秋田大助

    ○秋田委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる月二十五日水曜日、午前十時より委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後一時十分散会