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1959-03-06 第31回国会 衆議院 運輸委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月六日(金曜日)     午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 簡牛 凡夫君 理事 長谷川 峻君    理事 堀内 一雄君 理事 井岡 大治君    理事 久保 三郎君 理事 土井 直作君       川野 芳滿君    關谷 勝利君       高橋清一郎君    羽田武嗣郎君       三池  信君    菊川 君子君       杉山元治郎君    館  俊三君       廣瀬 勝邦君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 永野  護君  出席政府委員         運輸政務次官  中馬 辰猪君         運輸事務官         (大臣官房長) 細田 吉藏君         運輸事務官         (海運局長)  朝田 静夫君         運 輸 技 官         (船舶局長)  山下 正雄君         運輸事務官         (自動車局長) 國友 弘康君         海上保安庁長官 安西 正道君         高等海難審判庁         長官      長屋 千棟君         気象庁次長   太田九州男君  委員外出席者         議     員 關谷 勝利君         運輸事務官         (海運局定期船         課長)     中野  大君         海上保安官         (警備救難部         長)      松野 清秀君         運 輸 技 官         (気象庁予報部         長)      肥沼 寛一君         海難審判庁理事         官         (海難審判理事         所長)     寺田  武君         参  考  人         (南海汽船株式         会社取締役社         長)      宇都宮網郎君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 三月六日  委員中崎敏辞任につき、その補欠として廣瀬  勝邦君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員廣瀬勝邦辞任につき、その補欠として中  崎敏君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月五日  海上保安官に協力援助した者等災害給付に関  する法律の一部を改正する法律案關谷勝利君  外八名提出衆法第三七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  海上保安官に協力援助した者等災害給付に関  する法律の一部を改正する法律案關谷勝利君  外八名提出衆法第三七号)  海運に関する件  陸運に関する件      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより会議を開きます。  海上保安官に協力援助した者等災害給付に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、審議を行います。  まず提出者より提案理由説明を聴取いたします。關谷勝利君。     —————————————
  3. 關谷勝利

    關谷勝利君 ただいま議題となりました海上保安官に協力援助した者等災害給付に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案者を代表して提案理由を御説明申し上げます。  現行法によりますと、犯人逮捕職務執行中の海上保安官が、その職務執行上の必要により援助を求めた場合等、海上保安官がその場にいた場合に、これに協力援助した者の災害給付については規定がありますが、海上保安官がいない場所で、職務によらないで自発的に犯人逮捕または被害者の救助に当ったため災害を受けた者には、国より給付を受ける方法がありません。  しかしながら最近の海上における凶悪犯罪の増加の傾向にかんがみ、右のような事態の発生が予想されますが、このような場合、国といたしまして、これに対して療養その他必要な給付を行うことは当然のことと存ずるのであります。  この法律案はかような場合における国の災害給付を行うために現行法第三条を改正するとともに、これに伴って所要の字句の改正を行おうとするものであります。  以上申し上げましたところがこの法律案提案理由の概要でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  4. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより質疑に入ります。質疑通告がありますので、これを許します。井岡大治君。
  5. 井岡大治

    井岡委員 ただいま御提案になりました海上保安官に協力した者に対する補助援助、こういうことでございますが、これに要する費用はどのぐらいかかるのか、今提案になった早々でございますから、政府の方で十分おわかりにならないかと思いますけれども、大体おわかりになろうと思いますので、お伺いいたしたいと思います。
  6. 中馬辰猪

    中馬政府委員 予算につきましては二十万円計上いたしてございます。
  7. 井岡大治

    井岡委員 最近の日本近海における海難事故というものは非常に多いので、果して二十万円でやれるかどうか私自身まだわかりませんが、もし不足を生じた場合はどういうような処置をとるのか、一つお伺いしたいと思います。
  8. 中馬辰猪

    中馬政府委員 不足を生じた場合におきましては、予備費よりこれを支出することに話がついております。
  9. 井岡大治

    井岡委員 話がついている、こういうことですか。
  10. 中馬辰猪

    中馬政府委員 はい。
  11. 塚原俊郎

    塚原委員長 他に御質疑はございませんか。——他にないようでございますので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。  なお、海上保安官に協力援助した者等災害給付に関する法律の一部を改正する法律案は、議員発議にかかる予算を伴う法律案でありますので、国会法第五十七条の三の規定により内閣に対し意見を述べる機会を与えなければなりませんので、この際内閣意見を求めます。中馬政務次官
  12. 中馬辰猪

    中馬政府委員 海上保安官に協力援助した者等災害給付に関する法律の一部改正法律案に関する政府意見を申し上げます。  關谷勝利議員外議員より御提出になりました海上保安官に協力援助した者等災害給付に関する法律の一部改正法律案につきましては、政府といたしましても国会法第五十七条の三の規定によって異議のない旨を決定いたしております。予算措置につきましては、既定予算範囲内で処理できるものと存じております。本改正法律案が成立いたしました暁におきましては、政府といたしましては、今後その改正趣旨を十分体し、海上保安官がいない場所でその職務を自発的に行い、そのため災害を受けた者の保護に遺憾なきを期する次第であります。
  13. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより討議に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、討論を省略いたし、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 塚原俊郎

    塚原委員長 御異議なしと認め、これより採決いたします。  海上保安官に協力援助した者等災害給付に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立
  15. 塚原俊郎

    塚原委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決いたしました。  なお、ただいま可決いたしました本案に対する報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 塚原俊郎

    塚原委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  17. 塚原俊郎

    塚原委員長 次に、海運に関する件について調査を行います。  本日は参考人として宇都宮綱郎君を本委員会にお呼びいたしております。  この際、宇都宮参考人に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中のところ本委員会のためわざわざ御出席下さいまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  これより質疑を行います。質疑通告がありますので、これを許します。廣瀬勝邦君。
  18. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 昨年南海丸事件が起きまして、当運輸委員会におきましても種々論議を尽された。また昨年末これが論告が出まして、いよいよ本年になりまして裁決が出ようといたしております。そういうような時期で、この過程につきまして非常に重要段階にきたと思いますので、本日お開き願ったわけでありますが、いろいろ御配慮いただいてありがとうございました。時間があまりないようでありますから、端的に問題に入って参りたいと思います。  まず海難審判庁長官にお聞きしたいのでありますが、大体海難審判対象とします範囲、これを御説明願います。
  19. 長屋千棟

    長屋政府委員 お答えいたします。海難そのもの審判の客体といたしまして、その原因審判によって明らかにすることが審判法の目的でございます。
  20. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 その対象となる事項、これはその船が転覆した、あるいは事故が起きた、その現地局面だけでありますか。遠因あるいは原因となるべき船の一切の事業上の事項、こういうふうなものは十分考慮されますか。
  21. 長屋千棟

    長屋政府委員 これは海難審判法に明示されておりまして、第三条で「海難審判庁審判においては、左の事項にわたって、海難原因が、探究されなければならない。一 人の故意又は過失に因って発生したものであるかどうか。二 船舶乗組員の員数、資格、技能、労働条件又は服務に係る事由に因って発生したものであるかどうか。三 船体若しくは機関の構造、材質若しくは工作又は船舶のぎ装若しくは性能に係る事由に因って発生したものであるかどうか。四 水路図誌航路標識船舶通信気象通報又は救難施設等航海補助施設に係る事由に因って発生したものであるかどうか。五 港湾又は水路の状況に係る事由に因って発生したものであるかどうか。」以上の五項目を審理しなければならねことになっております。
  22. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 今の御説明に出ました通り、海難審判対象とすべきものは、その海難事故遠因、近因は申すに及ばず、運航管理、こういうふうな面あたりについても十分考慮が払われなければいけない、かように存じます。また法もそういうふうに規定いたしております。そうしますと、普通海難審判におきまして不可抗力ということは、どういうふうな定義、どういう要件でお使いになりますか、御説明いただきます。
  23. 長屋千棟

    長屋政府委員 わかりよく申し上げますと、天候が非常に異常な状態であったとか、これは予測できないようなものであったとかいうようなこと、それから船舶構造その他において船材の瑕瑾、そういうものが、実際は外から見たのではわからないような状態であって、沖で走っている間にぼこんとそこが割れて海難原因になった、そういう、造船する人、あるいはそのものを供給する人、検査をする人、それを運航する者にあらかじめわからぬような原因で起ったということは、これは不可抗力であるという工合にいたしております。
  24. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 異常気象とおっしゃいます。しかし特定海域において大体推定されるであろうところの異常気象程度、こういうふうなものはどのようにして判定されますか。
  25. 長屋千棟

    長屋政府委員 これは、それぞれの事件についてこまかいいろんな条件をよく調べませんと、総括的にこういうのが異常だということはなかなか申し上げにくいのであります。しかし、船長には、まあ責任者には、免状が交付してございます。その免状は、ある程度の知識を持っておるということを試験その他によって確かめて渡してありますので、一般のこういう運用学航海学とか気象学というようなものに免状要求しておる程度のものは、どうしても知っていなければならぬ。一般船長がこうであるという工合考えておることよりも異常なものであり、また実際の事件について申しますと、室戸台風のような——御存じでしょう、昭和九年九月二十六日ですか、大阪方面に襲来した非常に強い台風ですが、いかなる船もあれをしのぐことができなかった。在舶船は全部おかにたたき上げられてしまった。このように、だれでもそれをしのぐことのできないものであるということが明らかなる場合には、これを不可抗力として処理しております。
  26. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 気象長官おいでですか。
  27. 塚原俊郎

    塚原委員長 長官は今外遊中ですので、太田次長がお見えになっております。
  28. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 気象庁の方へお尋ねいたしますが、鳴門海域、あそこにおきますところの大体現在気象庁関係として把握していらっしゃる特殊現象、そういうものについて昨年南海丸事件が起りましたそのところに触れていただいていいのでしたらお触れになってお聞かせいただきたい。
  29. 太田九州男

    太田政府委員 ただいま予報部長が参っておりますので、予報部長から詳しく申し上げさせます。
  30. 肥沼寛一

    肥沼説明員 紀淡海峡のところの特殊性と申しますと、気象の変化は非常に地形に関係いたしますので、あそこの地形が非常に影響いたします。これはむしろ昨年一月二十六日の例で申し上げた方がいいと思いますのでそれで申し上げますが、あのときには、二十六月の午後から夕刻にかけて低気圧山陰沖にありまして、そこから寒冷前線と温暖前線、この二つが出ておりました。その二つの線の間である事件が起った。あの間のところでは南風が非常に強く吹き込んでおります。それで特殊性ですが、あの形の湾から申しますと、非常に南風が強くなるのが普通でございます。あのときの低気圧は、低気圧の強さから申しますと千二ミリバールですか、これは非常に弱い低気圧です。強いと申しましたのは、その程度の低気圧に対しては比較的強い風が吹く。現にあの海の上の観測は私ども詳しくは把握しておりませんけれども、当時の漁船あるいはあの辺を航行した船によりまして大体つかみまして、その結果から推定したところによりますと、十五メートルから二十メートルどまりくらいまでの風が吹いていたことは事実でございます。さらにいろいろの条件考えますと、その風が多少変動のある突風的なものを含んでいたことも事実でございます。しかしこれは在来のものに合せた——海の上でございますので資料が完全には把握できませんので推定がかなり含まれております。以上でございます。
  31. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 名前は私ちょっと忘れたのですが、徳大教授があの鳴門海峡の海上気象について特に研究しておられます。その方が新聞に発表しておられるのですが、大体陸上において吹く風の三倍ないし五倍くらいの風が吹く、こういうことを言われておりますが、この点についてはどうですか。
  32. 肥沼寛一

    肥沼説明員 海上の風が陸上より強いことは事実でございます。しかしその強さは地形その他の特殊条件で変りますが、普通五割から大きいときには八割増しくらいになるだろう、こう推定されております。それからもう一つの場合は、陸から吹いていく場合の海の風と海から吹いてくる場合とはかなり条件が違います。陸から吹いて参りますときには山や谷の影響を受けますので変動が大きい。海から吹いてくるときは変動はありますが、陸から吹いてくるよりは小さい。以上でございます。
  33. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 今、五割増し、八割増しということをおっしゃいました。これは一般論ですか。
  34. 肥沼寛一

    肥沼説明員 一般論でございます。
  35. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 あの地域特殊事情がそういう工合になっているということをお聞きになったこと、あるいは文献でお読みになったことはございませんか。
  36. 肥沼寛一

    肥沼説明員 あの風が海の方が陸上よりも二倍ないし三倍というものは、あの付近の陸上と比べての話だろうと思います。低気圧の位置その他によって強くなる、当然このくらいになるだろうと予想されるそれよりも八割増しということでございまして、場所による違いはございます。事実あのときに徳島その他の風はせいぜい十メートルしか吹いておりません。海上では二十メートル、一番強いところでは二十メートルを多少こえたかと思います。そうすると二倍ぐらいに吹いていたここは事実です。それは当然吹く風の二倍、三倍という意味ではなくて、条件の違うところです。
  37. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 ですから私はあなたにお断わりしてあるのですが、あの地帯の特殊気象から見てそういうことはあり得るということですね。徳大教授の言われるようなことはあり得ると私は思います。普通そちらで気象関係で使われる夜半前、これは時間的にはどういう時刻をさすのですか。
  38. 肥沼寛一

    肥沼説明員 予報のことはふだんでもきちっといかないことは御承知だと思いますが、そういうことで私ども何時から何時という厳格な規定は設けてございません。その点は常識範囲が非常に広いのでありますが、夜半前と申せばまず二十二時ないし二十三時、その辺のところをさすのが普通でございます。
  39. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 事件直後に徳島気象台長が、日没後だとこう言っておられますが……。
  40. 肥沼寛一

    肥沼説明員 それはどういう条件でどういう理由で言われたか知りませんが、普通常識としては、やはり夜半前というのは今私が申し上げたのが常識だろうと思いますし、厳密な規定を設けていつが夜半前だということは言っておりませんので、私、徳島気象台長が言ったという理由は今ここではっきりわかりません。
  41. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 宇都宮さんにお伺いいたします。南海丸を発注されましたのはいつですか。
  42. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 三十年の夏だったろうと思います。私、当時社長でございませんで、前社長がそのときの衝に当っておりましたので確かな時は存じませんが、でき上りましたのが三十一年の五月でございますから、発注しましたのは、おそらく三十年の夏ごろから造船計画がありまして、着手しましたのが三十年の暮れごろだというふうに記憶しております。
  43. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 きょう南海丸事件でここへ来ていただいたあなたは社長です。しかも遭難当時の社長です。その社長がこの南海丸についてそういうふうな認識程度だから、今日の問題が出ているのではないですか。私もここでがりがり言いたくないのです。しかし今あなたが開口一番おっしゃられたそういうふうな南海丸遭難についての認識程度、これが今の南海丸補償問題あたりについて大きな障害になっていると思います。法的にはどういう結論が出るか知りません。しかし道徳的には少くとも社長であるあなたに十分なる責任があるはずなんです。もう少しまじめに社長としての責任をとってもらわなければいかぬ。ましてきょうは遺族の方も来ておられると思います。一人も生存者のいない、あの遺族方々、その遺族方々がきょうの委員会の結果を待っていらっしゃる、おそらく私はそう思います。そのときにあなたはそういうふうな認識程度でここへ出てこられた。やはり問題はあなた方の側にあるというふうに私は認識をさらに強めました。以下、十分腹を据えて答えて下さい。一番初めに、発注されたのはどこへ発注されましたか。
  44. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 お答えします前にちょっとごあいさつ……。(廣瀬(勝)委員あいさつは要らない。私の言ったことだけに答えて下さい。」と呼ぶ)それではお答えだけにいたしておきます。二、三の造船所見積書を出させまして、結局日立造船に発注いたしました。
  45. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 二、三の造船所から見積書を出させたといいますが、私たちの調べたところによると、ほとんどのところで断わられておる。川崎のようなところでも断わられておる。なぜか。非常にトップ・ヘビーで、おたくの側の要求がきつ過ぎる。あれだけのトン数の船で四百四十四名が定員、しかも速力が十三・七ノット、こういうふうな船なんです。しかも外洋に面したあの航路で十分に安全度ということが考えられて運用できる、そういうふうに会社基本計画自体はお考えになったのか、この点どうです。
  46. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 先ほども申しましたように、当時直接私はタッチしておりませんでしたので、詳細な正確なお答えはできませんですが、私の聞いておりますところでは、発注いたしますときには、就航航路外洋に面しておるので、その点も十分配慮するようにということはいっておるというふうに聞いております。また発注先日立造船という一流の会社でありますので、十分その点は配慮して建造したものと考えております。なお船の構造について非常に具体的な注文をしまして、そのために他の造船所が断わったというふうなことはただいま私は初めて伺うところでありまして、そういうことはないと思っております。
  47. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 あなたが知られないというのならそれでよろしい。しかし私たちがここで言いますことは、ある程度の根拠がなければそういうことは言いやしないのです。  ついでにお聞きしておきますが、会社組織、特に運航管理という面についてはどういうふうにしておられますか。事件前、それから事件後、これは労組の要求があって、おたくは組みかえられたでしょう。その点について言って下さい。
  48. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 事故の以前におきましては、あの航路特殊性から申しまして、航行時間も非常に短時間でありますし、単純な航路であり、かつ就航しておりまする船の船長も多年あの航路にはなれておりますので、特に船の運航については船長にまかしておったような実情でございます。しかし本社の社長には、小さい船会社ではありますが、長年あの航路船会社経験を持っております者が部長をしておりましたので、もちろん完全とは思っておりませんでしたが、いずれは強化しなければならぬという考えはありましたが、当時まだあの航路の開設間もなくでもありましたので、一日を争って組織を変えなければならぬというふうには考えておりませんものでしたので、その程度人員配置でやっておりました。この事故のあとにおきましては、将来の安全運航ということを非常に考えまして、また組合側にもそういう意見もありましたし、御当局の方からの御要請もありまして、海務部並びに海務課を新設しまして、それぞれ部長課長海上経験のある者を新しく採用しまして、船の運航管理についてはただいま万全を期してやっておる次第でございます。
  49. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 海運局長、えらいことを言いましたが、あの航路許可をされたのはいつですか。申請はどういうふうになっておりましたか。今の社長の言ったことがおわかりだろうと思いますが、どうですか。
  50. 朝田静夫

    朝田政府委員 海上運送法によりましてあの航路免許をいたしましたのは昭和三十一年五月一日でございます。その際の申請を十分審査いたしまして、海上運送法の第四条の免許基準に適合するかどうかということを精査いたしまして、運輸審議会の方にも諮問をいたしまして、その答申に基いて免許をいたしたのでございます。
  51. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 先ほど宇都宮さんが答えましたが、海上運送に携わる会社でありながら海務部もない。しかもその船の運航というものは乙二の免状しか持っていない船長の判断だけにまかされておる、こういうふうな航路が、あなたが第四条の免許基準に合っておるとおっしゃいましたが、どこに合っておるのですか。第四号「当該事業を営む者の責任範囲が明確であるような経営形態であること。」経営形態自体もちっとも明確じゃない。しかも、さらに第二号の条件についても欠格条項がある。こういうふうなことをただ単に申請があったらというのでめくら判許可をされたのですか。
  52. 朝田静夫

    朝田政府委員 ただいま御指摘の第一点の、第四条の第四号の問題でありますが、この基準は「当該事業を営む者の責任範囲が明確であるような経営形態であること。」この経営形態と申しますのは、だれが事業遂行責任者であるかという経営形態が明確でなければならぬ、こういうことであります。名義貸しのようなものはいけない、こういう趣旨であります。  第二点の御指摘の、「自然的性質に適応したものであること。」こういうことでございますが、船舶の設計、構造、設備といったようなものが船舶検査を通じて適格性を持っておるという証左を持っておりますので、それに基いて免許をいたしたのであります。
  53. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 それでは、そういうふうな御答弁をされるのでしたら、繁雑ですけれどもこまかく入っていかなければならぬ。船舶安全法施行規則にあります平水区域沿海区域、それではあの地域はどういうふうになっておりますか。
  54. 山下正雄

    山下(正)政府委員 あの地区は沿海区域に指定されております。
  55. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 区間があくところはございませんか、二十海里として。
  56. 山下正雄

    山下(正)政府委員 平水区域は、淡路島と本州を結びましたあの地区内、いわゆる瀬戸内の内部が平水区域でございまして、その区域を出ておりますものは沿海区域に指定しておるわけでございます。従いまして、沿海区域一般的な原則としましては、沿岸から二十海里以内の地区を沿海としておりますが、平水区域外のところは全部沿海として扱っております。また場合によっては近海になるところもございますが、このケースにつきましては沿海として扱っております。
  57. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 では海上保安庁に質問いたします。事件発生の現地は御存じだろうと思います。事件発生の現地、あれを皆様方の海難防止、警備、救難という立場から考えられて、また水路部等のいろいろな所見というふうなもので、あれはいわば内海並みの沿海、そういうふうに取り扱っている地区ですか。鳴戸の海流、ああいうふうに非常に狭い地帯でずっと吹き込んでくるようなロード状のあの地帯、これはどうでありますか。
  58. 安西正道

    ○安西政府委員 この点につきましては、あの事件発生後、いろいろ部内でも検討いたしましたし、運輸省でも関係者が集まりましていろいろ議論をしたことはございます。あの事件発生当時の気象関係は非常に異常でございまして、ほとんどまれに見る現象ではないかということになりまして、さらに関係者が寄って一そう慎重に協議いたしましたけれども、現在の扱いで差しつかえないのではないかというような考えであります。
  59. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 須田水路部長はおられるでしょうか。
  60. 安西正道

    ○安西政府委員 ここには来ておりません。
  61. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 須田水路部長さんが、あの地区は非常に特殊な区域だ、あれを内海ないしは沿海として取り扱うのは不適当じゃないか、こういうふうにおっしゃっていますが、これはどうでしょうか。
  62. 安西正道

    ○安西政府委員 あれはたしか須田水路部長が新聞に所見を発表したのではないかと思います。その後部内におきまして、水路部の見地とそれから警備、救難両様の見地からいろいろ討議いたしましたが、結局あの当時の所見というのは須田個人の意見でございまして、いろいろ部内で討議いたしまして、必要なる施設、たとえばあそこの沼島でございますか、あの気象施設が不十分である、そういうような点の改善を行い、また水路部でも海流観測等の必要になる施設を行えばそれで十分であるという結論に達したわけでございます。
  63. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 それは個人の意見かもしれませんが、しかし水路部長といえばわが国の権威者です。その方がそういう断定を下していられる。しかもあなたが今なさった説明というのは、あそこの潮流観測所、あるいは沼・島のあの観測所を強化する、そういう新しい施設をあそこにごしらえてこそ初めてほぼ安全度が保てる、こういうことなんです。事件当時はそれはないのです。現在だってありません。そのときにあの地区を安全だというふうに結論されるのはちょっとおかしいのじゃないですか。
  64. 山下正雄

    山下(正)政府委員 それは気象庁に聞いていただけばわかると思いますが、たしかあそこに気象観測施設を置いたはずであります。
  65. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 それは気象観測所なんです。私の言っているのは潮流観測所あるいは潮流信号所、そういうものがあって初めて水路の方は安全だということが言える。気象庁がどうのというのは感覚違い。監督官庁がそんな一時のがれを言うようではいかぬと思う。もうこれは答弁は要りません。だからそういうふうな地域であるという認識は持っていただきたい。 大体今ずっと一わたり当りましたようなところがこの事件のベースになっております。ではこの事件の問題点は何か。果して今の法律が妥当なりやいなや。海運行政一般がこれでいいのか。結論から端的に申しますならば、今の法律はぎりぎりのところで最低線できめておる。一歩誤まれば全部危ないというところが法律の限界なんです。しかも現在の日本の海運行政は、悲しいことには企業性というものを優先しておる。だから安全度というものは企業性の前にはあと回しになってしまう。これが日本の海難事故の一番大きな原因ではないかと思う。現にあの付近におきまして、いろいろな事故が起っておりますが、真に不可抗力だと今日まで断定された事件というものは、全事故数の中の九%程度じゃないですか。これは海難審判庁長官と保安庁の方にお聞きいたします。
  66. 長屋千棟

    長屋政府委員 大体今御指摘になった程度で、真にこれはだれも防ぐことはできない、予想することはできないという事件は、おっしゃったような数字で、非常に少うございます。
  67. 安西正道

    ○安西政府委員 ただいま審判長官から申し上げたのと私どもは同じ見解を持っております。
  68. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 船舶局長にお伺いします。南海丸は進水しました当時、検査されましてこれであれば安全だという太鼓判を押された船ですか。
  69. 山下正雄

    山下(正)政府委員 御承知のように、事件を起します前の中間検査におきまして、バラストを搭載し、またはビルジ・キールを大きくするというような装置をいたしまして、現在の法規の上におきましては完全にその基準を越えたもの、従って私どもといたしましては、この船であればよかろうということで検査証書を出し、航行の承認をした船でございます。
  70. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 あの船は鳴門海域という特殊地帯を通ります。申請航路にもそれが出ております。鳴門の波のうねりの周期、いわゆるピリオドですか、これは何秒ですか。
  71. 山下正雄

    山下(正)政府委員 私ども波の周期の問題につきましては、専門には調べておりません。また事実波の波長と波の周期、波高というようなものは非常に調査がむずかしいものでございます。従いまして各国いろいろ実験の結果または調査等もございますが、それは必ずしも一定の値を示しておりません。いろいろの研究者の発表もありまして、大体このくらいの時間風が吹けば海洋においてはこのくらいの波長の波ができる、このくらいの高さになるだろうということは一応いわれておりますけれども、あのような特殊な地区におきまして、海流の影響、または山の影響、山によって起ります風に対する影響、それが波にも関係するわけでありますが、このような影響によりましてどのくらいの波が立つであろうかということは、実は詳しい資料を私ども持ち合せておりません。ただ一般的に言われておりますのは、これも一つのデータでございますが、風が吹きまする時間によりまして、沿海の区域において波が出ます、その波の高さ、周期等がございますが、かりに十九メートル程度の定常風が二時間吹きました場合において、波長が二十二・五メートルでございます。波の高さが二メートル、周期が三・八秒。また風が八時間吹きましたときには波長が五十四・二メートル、波高が五メートル、周期が五・九秒というようにデータもございます。詳細は省略いたしますが、このように吹く時間によって周期も違いますし、その地形によっていろいろの波の高さ、波の長さ、周期等が変るように存じます。
  72. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 船舶安全法でそういう船の安全度というものか一応要求されておる。しかも海上運送法によってその安全な運航というものも要求されておる。それの主管庁が海運局なんです。それらいろいろな点を勘案して航路免許を与えるのです。その主管庁が、最もそこで予想されるであろう、しかも特殊な海流——鳴戸の海流といえば日本でも有数な海流です。今おっしゃいませんでしたが、これは大体十秒の周期を持っております。そうすると、船の動揺周期と予想されるそういうふうな非常に特殊な海流、こういうものが同じような程度のところまで持ってくるという考え方をあなた方がやっていらっしゃるのはどういうことなんですか。といいますのは、復元性の問題があの船では非常に問題になりました。バラスト、積みかえ材、あるいはまたフォアピーク・タンクもアフターピーク・タンクもフル・ピークという要求は出しておりまして、燃料の点も言っている。そういうふうなこまかいところまで指図しておきながら、予想される一番重要なる海流を乗り切る船が——鳴戸の波の周期と船の動揺周期とが近づいて改装されてますます悪くなる。八・九秒であったものが九・〇六秒に改装後なっておる。しかも鳴戸の波のうねりの周期、ピリオドといいますか、それが十秒です。こういうことはどうなんですか。
  73. 山下正雄

    山下(正)政府委員 昨年の本委員会におきましていろいろ御説明申し上げましたように、この復元性の基準というものは、御承知のように定常風——十九メートルの風が船の真横から吹きまして、それからその船が、波としては考えられる一番悪い波、すなわち波の高さと波、長が十分の一の波に乗った場合に、さらに圧力にしまして五割増しの風が横なぐりに吹いても船の安全が保たれるという基準でこの復元性の基準を計算いたしております。従いまして、本船としましてはこの基準に十分合格しておるわけでございます。しかし御承知のように船の運航の問題は、波の周期と船の周期が同じになるように操船するということは船の操縦の仕方が悪い。結局同じように、同調しないように船の進行方向を、波にある程度の傾斜をもって動かすというようにいたしまして、船が起り得る一番危険な状態を脱し得るのが、船の運航常識でございます。本件の場合にのきまして、この論告を私ども拝見したわけでございますが、去年の委員会におきましては私どもはその原因が那辺にあるか、またどんな状況であったか、その状況がはっきりつかめませんので、私どもとしましてはどういう状態で船が沈んだかという点につきましては、はっきりこの委員会で御答弁をいたしておりません。しかしいろいろの専門家の御推察によりますと、ちょうど船の右寄りのうしろの方から風が吹いたようでございます。そして波の高さも相当大きな波、また風も規定で示しております十九メートルを場合によってはこえておるような状況ではなかったか、このような事態につきましては現在の規定の上では、船の安全ということは私どもは一応考えていないわけであります。従いましてこういうような事件が起きたのではなかろうか。このような異常な海象が当時起ったということにつきましては、私どもまことに残念に思いますが、事実はそのようなことで船の安全の限度を越えた。ような現象が起きたのではなかろうか、こういうように感じております。
  74. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 復元性試験のときにパスしておった。しかもそれは十九・八だからいわゆる十九メートルの風です。そうすると、二十メートルの風が吹いておる地帯では船は一応危険だということが考えられる。二十メートルの風というのはあの付近ではそう珍しい風ではないのですが、こういうことを許可官庁が知らないのですか。
  75. 山下正雄

    山下(正)政府委員 この十九メートルの風と申しますのは、これは瞬間の風ではございませんので、常時気象庁の方でどういう時間をとってその平均の風速をいうておられるか、今時間は忘れましたが、ある一定の時間吹きました風の平均速力をとっておるわけであります。従いまして普通の風でございますと、御承知のように、相当な風かあり、また一時やむというような状況でございますから、その平均が十九メートルになるわけであります。従っそそれらの風というものは海上においては相当用心しなければならない風ではなかろうか。たとえば遠洋とか近海に出ます船につきましては、これは風が吹いた場合なかなか逃げられぬような場合もありますし、その風に向っていかなければならぬというような場合もありますが、沿海の船につきましては、しかもこの航路につきましては、わずか二時間半くらいの時間であります。従いまして陸上で十メートル、十五メートル、二十メートルも吹いておれば当然海上では相当の風があるだろう、従って航海等もなさないというようなことだろうと思います。従いまして沿海航路の船としましては避難港もあるだろうし、また走る時間も短いであろうから、この程度のものであれば常時十九メートルの風が吹くものに対して安全を見ておけば十分ではなかろうかということでこの基準が設定されております。もちろんこの基準を設定するにつきましては、大学の先生方またそのほか学識経験者等を集めまして、数年にわたりまして研究をいたしまして一応基準を作ったものでございます。従いまして当時としましては、この基準というものは船の安全について相当権威あるものであるということで私どもはこの規定を公布したわけであります。
  76. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 ではあの船の限界傾斜度は幾らですか。
  77. 山下正雄

    山下(正)政府委員 お答え申し上げます。空倉出港の状態で海水流入角は四十一・六度、空倉入港時で四十三・三度、満載出港時で三十六・五度、満載入港時で三十八・八度でございます。なおちょっと補足させていただきたいと思います。復元性の範囲といたしましては、空倉出港晴で五十七・九度、空倉入港時で五十・九度満載出港時で五十二・七度、満載入港時で四十七・八度でございます。従いまして、一応計算の上では復元性の範囲まで船がかしぎましてももとへ戻る能力はある。しかし海水の流入角と申しますものは、たとえば船の部屋等に窓がございます、窓はもちろんガラスがはまって水が入りにくいようにはなってます。しかしその窓というものは十分水を防ぐことは期待できないであろうというので、海水流入角というのは、窓がありました場合には窓のところで限界を切っておるわけでございます。従いまして復元性の範囲と海水流入角とでは、多少差があるわけであります。
  78. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 船舶構造上、排水ということは絶対要件です。そうしますと、南海丸について、排水口、これが途中で改造されています。一般配置図に記載されていない。聞くところによると、一般配置図の原図なるものもなくなっている。これは一体どういうことですか。
  79. 山下正雄

    山下(正)政府委員 排水口の原図がなくなっているかどうかにつきましては存じませんが、ただいまお話がございましたように、新造当時の排水口を船長要求によりまして若干減じております。しかしその面積は十分規定に合格する面積でございます。  それからもう一つ申し添えたいと申いまするのは、排水口が、船に上りました水が船の外に抜けるのを目的としておることは、御承知の通りでございますが、実はこの排水口の面積をきめますには船のウエルの長さ、すなわち船の上甲板に水がたまる、そこをウエルと申しております。従ってまん中に甲板室がある場合は、ウエルの面積が比較的少い。甲板室がない場合には、ウエルの面積が非常に大きいわけでありますから、従って水がよけいたまるわけでございます。その場合についての排水口の面積を規定いたしております。しかし本船につきましては中央に大きな部屋がございまして、いわゆるウエルという形ではございませんで、船のブルワークと船のデッキ・ハウスとの間の通路に水がたまるので、ウエルとの間には相当大きな隔たりがございます。従って若干排水口の面積を小さくするということも造船技術上差しつかえはない、こういうふうに考えております。
  80. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 排水口は問題じゃない、こうおつしゃいますが、そんなことが言えますか。神戸商船大学の南波教授が出された鑑定書を御存じでしょう。波頂において三十度かしいだときに他の要因が加わったらひっくり返る、そういう鑑定書を出しておられる。あの船は前の方がずっと囲ってある。しかもそこに水がたまって、幾らまん中に部屋があるからといったって、極限にまできているところに、たといコップの水でも入れたら極限を越します。こういうことは考えられませんか。規定の面積に達しておると言われるが、規定の面積にだって足りやしないじゃないですか。あれは鋼船構造規程からいったって足りないのです。片舷面積が初め三・二〇平方メートル、実測してみると一・二五六平方メートルになっている。鋼船構造規程の二十一条からいくと二・三一平方メートルなければいけないことになっているのに、現実には一・二五六しかない。しかもそれにふたがついておる。こういうことは、これはどうなんですか。あなたたちは机の上だけでそういうことを考えられておる。実際問題として私はあると思うコップをひっくり返すのだって、ここまでいったらひっくり返るというところがあるのじゃないですか。どうですか。
  81. 山下正雄

    山下(正)政府委員 先ほど申しましたように、規定の上ではウエルを基準にして排水口の面積を出しておるわけであります。しかし本船の場合はウエルではございませんので、ごくわずかではございますが、しんしゃくしてございます。もちろんほんとうに船が返るか返らぬかという非常なきわどいときになりました場合には、お話のようにコップ一ぱいの水といえども平衡をくずすというようなことはあり得ると思います。
  82. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 あり得るということはわかるでしょうあり得ますですね。これは重要なことだろうと思います。こういうふうなことが、規定に合っておるからというので看過されてしまうこれはすべてにずっと適用されているような感じがします。風の点でもそうです。波の高さ、風向、そういうようなものもそうです。さらに同じ船のことからいけば、この機関は検査されたとぎどうだったんですか、新品ですか、中古ですか。
  83. 山下正雄

    山下(正)政府委員 機関につきましては新造当時は、神戸発動機で新造された機関でございます。
  84. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 GM係数が足りないからというので注意書を出して、これでバラストを積んでいますね。そのバラストを積んだあとの検査はいつどこでやられたんですか。
  85. 山下正雄

    山下(正)政府委員 これは第一次中間検査でやったわけでございますが、この事実につきましては、昭和三十二年六月二十一日に検査が終了いたしております。場所日立造船の向島工場でやっております。検査は中国海運局の尾道支局の検査官が参っております。
  86. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 その検査ですが、これは検査官自身がやるのですか。何か聞くところによると造船所にやらせたといいますが、どうなんですか。
  87. 山下正雄

    山下(正)政府委員 検査につきましては、たとえば傾斜試験をやりますときには船の重心を査定しましたり、または動揺試験をしなければなりません。従って検査官一人でそのような仕事をするわけにはいきませんので、検査官が指示をいたしまして試験の段取りをつけます。そうして実際にかなめになるところの指針の動き、傾斜の角度というような点につきましては、検査官がみずから確かめております。
  88. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 審判長官一つお尋ねしておきたいのですが、船の堪航性の場合に考えら回ますのはどういう要件ですか。
  89. 長屋千棟

    長屋政府委員 私といたしまして現実の現在審判が継続しておる事件に関しましては、どうもお答えすることはできないのでございます。ただ一般的のこと、あるいは法律の建前とかいうようなことならばお答えできますけれども、現実の問題についてこれはどうだといわれても、私、材料も持ちませんし、また地方海難審判庁継続中のものについては私どもの方から質問を発したり指示したり命令する権限はございませんので、内容を全然知りませんから、ここでちょっとお答えいたしかねます。
  90. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 そういうことはわかっております。ですから一般論としてお答え願ってけっこうです。
  91. 長屋千棟

    長屋政府委員 堪航性ということでございますが、これはあらゆる事柄に関連しておりまして、これはどうだというふうに、この事件でなくて一般的に問題を御指示願いませんと、私としてもあまりにも範囲が広い事柄でございますので、お答えいたしかねる次第でございます。
  92. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 船体に関することはもちろんだろうと思うのです。それから運航管理、船員の訓練度、技能、これはもうもちろん入るだろうと思いますが、どうでしょう。
  93. 長屋千棟

    長屋政府委員 一般論といたしましては、そういうあらゆることが関連してくると思います。しかしながら、先ほど運航管理ということをおっしゃいましたが、これはその航路について出帆するとかどうするとか、運航中にこれは避難しなければいけないとか、あるいはこれはどうしなければいけないということが実際判断し得る人であり、かつその行動をする権限を持っておるのは船長だけであります。これは社長といえどもそれに命令を下すことはできません。従いまして運航管理というものはもちろん必要でございますが、今申し上げましたそういう範囲内におきましては、船長にどうしろ、客が多いからぜひ出港しろとかいう命令は、船員法のあれからいたしてもできないわけであります。
  94. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 一般論としてお伺いいたします。これは一般論です。たまたま長官がおっしゃられたから、私はすぐにお聞きしてみたいのです。現在の内海航路というものは、客が多いから出ろというような状態運航されておるというのがほとんどではないですか。これは長官の御認識をお伺いいたしたい。
  95. 長屋千棟

    長屋政府委員 この点は私、海難審判庁長官として海難をなくすのが目的です。海難審判法は——これまでの私の三十年にわたる審判の結果から申し上げますと、いろいろ改良しなければならぬ点がございます。たとえば法規で厳重に取り締るとか、それがうまくできれば補助金を交付して設備をさせるとか、もっといい、高度の免状を持たせるように試験制度を改良するとかいろいろの点がございます。私としてはこれはみんなやってほしい。しかしながらこれを業者に申しました場合に、そういうことをされたのでは採算がとれぬ、二言目にはそれを言います。そうしますとこれは海難防止ということだけでなかなか事がきめられない。私としてはそういうレーダーなんかは全部持ってほしい。気象なんかの通報をすぐ聞けるように、小さい船では無線電話でも何でも何か持ってほしい。今言いました船長というものが権限を持っておるのですから、その権限を持たせるためには高度の技術を会得させなければいけない、基本的の教育をしなければいかぬ。ところがそういうことはみな金に直結してくる。そういうことをやられたのではこの商売は上ったりだということで、私はいろいろ太鼓をたたく場合があるのですが、なかなか思うように聞いてもらえない。こういう状態で、一番おしまいにいくと、それではこの商売はできないということで、いろいろと思うようにいかぬ点がございます。しかしながら、これが法規に違反していたとかなんとかいうことになりますと、それぞれ運輸省の部門がございまして、検査とかあるいは事業許可とかいう点で取り締っていただけますけれども、そこまでいかぬので、こうすればこういう海難はなくなるだろうと思っても、なかなか思うようにいかぬのであります。それが今の実情であります。
  96. 塚原俊郎

    塚原委員長 ただいま山下船舶局長より、先ほどの発言について訂正の申し入れがありますので、これを許します。
  97. 山下正雄

    山下(正)政府委員 先ほど本船備付の機関につきまして御質問がございましたときに、記憶の間違いがありましたので訂正させていただきたいと思います。製作所は阪神内燃機製のディーゼル機関でありまして、一千四十馬力一基を備えつけております。
  98. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 大臣が予算委員会に出られるそうでありますから、大臣に一つお伺いいたします。  昨年の末、私がここで本件についてお伺いいたしました。大臣はそのときに、ここに書いてもございますが、前大臣の中村運輸大臣の方針を踏襲してこの事件考える、こうおっしゃっているわけです。ただ南海電鉄株式会社との関係についてはあまりわからないから、それをよく調べてから、こういうふうにおっしゃられたのがこの前の結論でした。もう今はその時期にきたのです。きょうはこういうふうにしてすっと関係の方々が来て、いろいろお聞きいたしておるのですが、要はもう大臣も御承知と思いますが、今論告が出され、しかも論告が不可抗力だ、これはわれわれは承服するものではありません。しかし不可抗力だという線で出る、すると現在の海難審判の方法として、検察官に当る理事官が不可抗力だと出して裁決が白だと出た。そのときに遺族の側に立ってこれを保護してあげるものが何もないわけです。しかも現在の海運関係の諸法規、これは全部会社側に有利にできております。端的に言うならば、どろぼうをしておってその向う側に法律がかきを作ってそのどろぼうをつかまえさせない、こう言ってもいいと思います。今長官のおっしゃいました安全度を考えたいのだけれども企業性の方が先になってしまう、結局そういうふうな危険な船でも運航させている。しかも結局それを国家がオーソライドして、——今若干のやり取りがありましたので大臣お聞きと思いますけれども、船舶のこういうふうな許可基準にしましても航路免許基準にしましても、非常にずさんなものです。ここらあたりから考えていただいてやはりこの事件というものは、この事件一つ片づけるという簡単な気持ではなく、この事件一つの足場として、将来へのいましめとして——やはりこれは運輸大臣の責任だろうと私は思うのです。そういう意味で運輸大臣のお考えはいかがですか。
  99. 永野護

    ○永野国務大臣 この前の委員会廣瀬委員の御質問に対してお答えした考えは少しも変っておりません。ただ問題は法律的に、理屈ですけれども、親会社と子会社は全く別の存在になっておりますので、いわゆる情愛話はできますけれども、法律的に子会社のやったことは親会社責任を負わなければならぬのじゃないかという理屈の話はまずいのじゃないか、こう考えております。もちろん、ごくむずかしく言えば、親会社の株主総会の議決を経なければできないことでございます。従いましてその審判の結果なんかは親会社の扱い方に実際問題として影響するのじゃないか、こう考えております。情愛話でありますから、そういう法律的の事件は影響がないはずでありますけれども、実際問題としては影響すると思います。私はまことにお気の毒な事件である、これに対してできるだけのお力添え、御尽力はしたいと思っておる熱意においては、この前御質問を受けましたときと少しも変っておりませんけれども、実際の運営上から申しますと、今、廣瀬委員がおっしゃるようにこれは白と出るのだというふうにおきめになる、と言っちゃあ——これは審判官の判決でありますけれども、責任を負う、出す方から言いますとそういう見通しが——判決の結果に対しては廣瀬委員は第三者的の立場であります。そこからもそういう見通しなり意見が出ますと、それが影響するのではないかと思います。これは実際問題であります。従いまして、できるだけの尽力はいたしますけれども、その審判の結果待ちというような心がまえが親会社の方にあるのではないかと思われます。法律的には全然別の株式会社であり、法律上の義務は全然ないのに、そういう情愛話でとにかくおやりなさいという話をするのでありますから、できるだけのことをしてあげなさいよという程度のことは申しましたけれども、それじゃいつ、どういう方法で、幾ら、どうするつもりですかというような突き詰めたところまではまだ話はいたしておりません。もうすでに話をする時期に達していると廣瀬委員はお考えなんでありますが、その御意見もよく含みまして考えてみたいと思っております。
  100. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 なかなか苦しい答弁、大臣はそうだろうと思います。しかし、くどいようでございますけれども、現行法規一切がこの気の毒な遺族方々に対して何ら助けにはならないのです。かえって逆にこれがじゃまになっている。私、大臣と同じ気持です。先般の洞爺丸の例もございます。賢明なる海難審判庁当局は、おそらくわれわれの常識論からいっても納得しがたいような、そういう論告のしょうはまるまるは信用されないだろうと思います。裁決は自由裁量されると思います。また私たちはそれを期待いたしております。しかし補償問題とこれは分けて考えていただいていいのではないかと思います。今おっしゃるような点があることは私もわかります。しかしながら、やはりもう少し現在の海運行政の真の姿、これは海審長官が言われた言葉を引用するのではございませんが、法律的にもずさんな法律なんです。ここらあたりを国が考えてあげなければいけない。監督官庁として何かそれにサゼスチョンをしなければいけない、こう私は思います。そういう見地から中村前大臣の方針を踏襲されるとおっしゃられる。中村前大臣はこう言っておられる。「南海汽船会社は」「そのうしろに南海鉄道があるのでございますから、私はこういう資力のある会社並びにその親会社は、なくなった方々に対して十二分の弔慰、補償の方法をとらするという決心であります。また彼らはその資力あると思いますから、私どもは最大限のことを指示するはずであります。」しかもこの南海汽船株式会社は、資本金の金持ち株の九六%が南海電車の所有だ。現にもう海運当局の方には出ていると思いますが、昨年の決算あたりを見ましても、多額の金が南海電鉄の方から出ている。そういうふうな関係で、大臣は表面そういうふうにおっしゃられますが、やはりそこはもうはっきり踏み切っていただいて、今こそやっていただかなければいかぬ時期じゃないかと思います。と申しますのは、現に一昨昨日のこと、遺族の方が、この補償問題がまだ片づかない、そういうふうな意味でガス自殺された、こういうふうな例も出てきております。私ども遺族方々にもたくさん会いました。子供をかかえてどういうふうにして生活していこうか、こう考えていらっしゃる方がほとんどなのです。死なれた方というのは、ほとんど働き盛りで、一家の中心なんです。それの遺族です。こういうふうな点を一つとくとお考え願いたい。大臣のさらなる御決心をお聞かせ願いたい。
  101. 永野護

    ○永野国務大臣 先ほども申し上げまして、繰り返すようでありますけれども、中村運輸大臣がどういう決意をいたしましても、いわゆる情愛話の範囲を出ませんので、いわゆるきめ手がないわけであります。命令権がないわけであります。幾ら幾ら賠償しろという権限がございませんので、よく情愛の話を尽して、できるだけのことをして差し上げるということの範囲を出まいと思いますので、私も同様の範囲内においてはできるだけの尽力をいたすつもりでございます。なお、話は違いますが、この前の全日空の飛行機の事故のときに、あれが原因となりまして、飛行機の安全運航ということに非常に大きな関心を持たれ、内閣も特別委員会を作り、さらに立法上、行政上のいろいろな措置が講ぜられるようになったのであります。ただいま私承わっておりますと、安全性と企業の採算性との間にいろいろなむずかしい問題があるようでありますから、せめてもの手向けに、この事件を契機といたしまして、再びこういう災害が起らないようにする立法措置、行政措置をする期限になりましたなら、ちょうどあの全日空のときに遺族の方が、これで浮かばれるであろうという言葉を聞いたのでありますが、そういうようなことは、これは運輸大臣の責任としてやれると思います。これは立案の責任者としてはやれると思っておりますが、とりあえずの、今の弔慰金と申しますか、補償金と申しますかにつきましては限度が、あくまでも情愛話の範囲でできるだけのことをする、いわゆる運輸大臣の権限に基づいた指示をするというような余地は少ないのじゃないか、こう考えております。
  102. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 それでは、宇都宮社長にちょっとお聞きします。事件後今日まで、補償問題について、遺族とはどの程度お話しになられましたか。
  103. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 遭難直後から遺族側では遺族会を結成せられましたが、三地区に分れまして、これもときによりまして離合はありましたが、各地区別別に、あるいは一緒に、今日まで数十回お話し合いはいたしております。私が直接お会いすることもありますし、担当の者がお会いすることもありまして、今日まで最後の解決には至っておりませんけれども、引き続き数十回お会いしております。そのつど誠意を持って、監督官庁の方の御指示もありますし、誠意を持って私どもとしてもお話し合いを続けてきたつもりでございます。
  104. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 誠意を持ってとおっしゃいますが、誠意はどういうふうな誠意を持たれたのですか、具体的に言って下さい。
  105. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 金銭的には今日まで解決しておりませんが、遭難直後からのお話を簡単に申し上げますと、遭難直後全社をあげまして御遺体の収容、それから御遺体の引き渡し、御葬儀等に対しまして、全社をあげてねんごろにこれをいたしまして、その後、三月の中ごろでありますが、十八日、二十一日と、小松島と和歌山でそれぞれ合同慰葬祭を行いました。また初盆、本年の一周忌等においてもお供えを各遺族にお届けし、ごあいさつも差し上げまして、十分に遭難者の霊に手向けいたしました。また会社としましても高野山におきまして、私もお参りして、法要を営んでおるようなことで、御遺族には、補償金としてはまだ解決しておりませんが、遭難直後には葬祭料とか供花料とかあるいはお見舞いとかいう名前のもとに金額で九万円差し上げております。そのほか補償の場合にはこれを含むという条件で弔慰金として二十五万円差し上げてあります。その後、解決の御要求がありましたが、まだ解決のときに至っておりませんので、とりあえず十万円差し上げて解決していただける方には解決していただきたいということで御提示しましたのですが、これは御同意を得られませんで、御遺族の側では、うち五万円だけ内渡しにしてくれという御要求がございましたので、会社としましては、御遺族の中で生二活にお困りになる方もおありになるということもわかりますので、生活にお困りの方に対してという条件で五万円を差し上げることを承諾いたしましたのですが、結局全部の御遺族にお渡しするようなことに相なっております。金額としましては九万円と、弔慰金の二十五万円、その後の五万円。三十九万円を現在までに差し上、げておるわけであります。その後御遺族側との折衝につきましては、最後の金額を決定するのに必要な材料として遭難者百六十人の生前の各収入状態の調査とかいうことで日を費しまして、ようやく十一月の末に、その調べもできましたので、あまり長くなりますし、年末も迫りましたので、海難審判の論告もまだ出ておりませんけれども、会社の方にも道義的責任とか、あるいは一部の責任があるということをかりに仮定しまして、幸いにして会社で旅客の傷害保険に入っておりますので、その金額の倍額に当る七千万円を一応最後の金額として御提示申し上げたのでありますが、これに対しても御遺族の方の御同意を得られず、増額の御要求がありましたのですが、会社としましても、これ以上の金額は無理なんでありますが、一応三百万円の増額を承知いたしましてお示ししたのですけれども、これも御遺族の御同意を得られないで今日に至っておるようなわけでありまして、各御遺族の個々の御事情を伺って考えますと、会社から申し出た金額ではとても十分とは申せないというふうには考えますけれども、現在の段階におきましてはこの程度で一応ごしんぼうをお願いするより仕方がないというふうに考えておるわけであります。
  106. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 私どもが外から見ていますときに、あなたは今そういうふうにおっしゃいましたけれども、ここにありますこの資料は——大かた新聞ですが、会社の誠意がない、非常に冷淡である、ほとんどそうです。あの事件の直後、海難審判の審決がいかがあろうとも、補償問題については、別の問題として誠意を持って解決すると言ったことをあなたは覚えておるでしょう。
  107. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 会社としましてはやはり海審が済んでからしでいただきたいのでありますが、そういう御要求がありましたので、御要求に応じてさっそく補償のお話し合いには入ったのでありますが、実はまだ決定までに至っておらないようなわけであります。
  108. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 私が言ったのは海難審判の際、それがどうあろうとも別個の問題として補償の問題は考えよう、解決していくのだ、こういうふうにあなたは、言った。これはうそとは言わぬでしょう。どうですか。
  109. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 その意味で実は十二月の十一日に、論告の前に最終の金額を申し上げたわけであります。
  110. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 そうしますと、事故のすぐあとであの航路が一時中止になりました。そのときに航路再開の申請書に何というふうに書いて出されたか、理由をおっしゃって下さい。
  111. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 ちょっと資料を調べますからお待ちになって下さい。
  112. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 社長がわからなければ海運局から聞きます。海運局にはどういうふうに出ておりますか。
  113. 朝田静夫

    朝田政府委員 使用船の変更になりますので、法律上から申し上げますと運航計画の変更の承認を得なければできないことになっております。その申請の年月日は、ただいま資料がございませんが、運航計画の変更を承認をいたしておるのであります。
  114. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 それには理由を付さなければいけないはずです。それにはこういうふうに書いておるでしょう。あの航路を再開して早く収益を上げて、そしていろいろな補償問題も解決していきたい。筋ぐらいは覚えていらっしゃるでしょう。社長どうですか。
  115. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 そういう意味のことは書いてあると思います。
  116. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 現実に航路は再開になっておる。しかもそのあと、どこで金を都合されたのか知らぬが、一億二千万円で須磨丸という新しい船を買っておる。この金は一体どこから出たのですか。
  117. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 須磨丸を買いました件でありますが、実はあの航路の営業成績が当初の予想よりも非常に上回っておりまして、将来のことも考えまして、たまたまその当時の予備船が木船で九十八トンのものでありましたので、これを大型船にかえる計画がありまして、ちょうど事故の直前にその議が熟したのでありますが、あの事故によってそのまま流れたのであります。たまたまこの事故でわか丸一隻になりまして、営業にも差しつかえますし、地方交通機関として定期航路事業を確保するという意味におきましても、もう一船はぜひ必要なのでありまして、銀行の方もその点を了としてくれまして、金融の都合もつき、手に入れたわけであります。もちろん南海電鉄の保証によって入手したのであります。
  118. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 あなたの会社はそういうふうに金繰りがっくのです。大臣、聞いておって下さい。一億二千万円の金を、金をもうけるためなら出してくれる。南海電鉄の裏書きによって三和銀行から出ておる。そうでしょう。そういうふうな密接な関係にある電鉄会社に、なぜこの補償の問題についてあなたたちは相談を持っていかないのですか。社長、どうですか。
  119. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 南海汽船の親会社として南海電鉄がありますが、この経理は全然別でありまして、事故直後から今日まで事故のために出しましたいろいろな扱い方は、これは貧弱な南海汽船の規模としてはとうていできないわけで、親会社並みのことを実はいたしましたために、これの経費も莫大な金額になりましたので、将来の経理につきましてはよほど困難になってくると思うのであります。もちろん親会社から金融はつくのでありますが、その債務の——何といいますか、結局は南海汽船の経営に関係してくることでありまして、私の立場としては、南海電鉄が南海汽船に対して将来の経営に関係のないような出し方で出してくれるなら別でありますが、私の方の従業員も南海電鉄のべースとは全然同一になりません。これが従業員の待遇にも影響して参り、また船舶の補修もおろそかになりまして安全運航に響くというようなことになりましても——私の立場としては、そういう点も考えなければなりませんので、これ以上会社の経営を圧迫するようなことになりますと、親会社に対しても要請することをちゅうちょするわけであります。
  120. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 大体あなたは非常におかしな、こんなことを申し上げては失礼と思うのですけれども少しおかしいんじゃないですか。前に言われたこととあとで言われたことがだんだん違ってくる。それが全部遺族の交渉にも出ていると思うのです。前にこう言っておいて、それをその次にはあれは違ったのだ、そういうことをと平気でおっしゃる。あなたの会社というのは資本金の九六%を南海電鉄が持っているのですよ。あなたは要するにロボット、はっきり言うと番頭さんでしょう。だからそれが親会社になぜこのことについてこうなんだからということを言わないのですか、言えないのですか。
  121. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 私はそういう考えで今会社の経営はやっておりません。もちろん非常に密接な関係がありますから、絶えずいろいろな点について折衝はいたしますけれども、会社を預かってやっております点につきましては、そういう気持でやっておりません。
  122. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 わかりました。再開して収益が上っておるとおっしゃる、その上っておる収益で何とか遺族補償を考えよう、こういうことを今まで思ってもみなかったのですか。
  123. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 再開後の営業成績は、経済界の不況もありまして、前年の同期と比べますと非常に——条件が違いますので比べにくいのでありますが、条件の同じようなときを比較いたしますと、収入としては一割程度の減になっております。それに対しまして支出は、一船大型船をふやしました点と社内の整備強化のために人件費の増高とか諸経費がかさみまして、今期の決算予想はまだできておりませんが、相当の赤字を計上しなければならぬというふうに考えておりまして、まだ営業収益を上げて補償の方に回すという余裕はただいまはありません。
  124. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 営業収益が上っていない、うそおっしゃい。小松島航路はあなたのところの一番の実入りになっている。事件直後の決算は事件の前よりも小松島航路じゃもうかっているじゃないですか。四千五百四十万。事件の前が四千四十万、どうなんです。これは。旅客運賃だけだってそういうことが言える。
  125. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 事件の前、何月期の決算ですか。
  126. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 あなたのところの決算は三月決算と九月決算でしょう
  127. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 以前は一カ年決算でやっておりましたが、ただいまは六カ月決算です。
  128. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 だから三月期の決算と九月期の決算でしょう
  129. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 三月、九月です。
  130. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 私がさきに言った数字は三月期、四千四十万、九月期、事件のあとです。これが四千五百万、少しでもこれは違うのです、どうですか。
  131. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 三月期はちょうど事故のあとの一月、二月と三月の大部分とまる二カ月間営業を休止しておりまして、ことに冬の季節は後期の季節よりも収入としては悪うございますので、その関係で九月期の方がふえておるようなわけであります。
  132. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 おかしい。事件のあとの方が、あなたは経済状態あたりも悪くなってもうからないとおっしゃる。しかもその中には休んでおった期間が入っておる。事件の前よりあとの方が決算ではもうかっておるというのは、これはどういうことなんですか。——まあ時間がありませんからいいです。そういうふうになってきておるのです。だからその場のがれのことを言っちゃいけませんよ、社長。  そこでいろいろ今日までずっと日にちをどうも悪意的に引き延ばしているとしか思えない、こういうふうに遺族の方が感ずるわけです。遺族が会いに行くとあなたは病気でもないのに仮病を使って、大阪から和歌山と方々逃げ回っておる。それでなかなか会わない。会えば暴力団だと言う。遺族の代表が行っておるのに暴力団ですか。彼らはことしの正月はどういう気持で越しましたか。私も女の人たちに会って聞きました。もう正月も何もありません。こうなればお金の問題じゃないのです、宇都宮社長、南海汽船というもののその心持が憎い、あなたの家の前で首をつって死のうか、こういうふうに言っておられるのです。これはやはりあなたの態度なんです。どうですか。——答えられませんが、そういうふうに言ってきておるのです。また私はそれがほんとうだろうと考える。幾らあなたがここで強弁されようとも——大臣が先ほどああいうふうに南海電鉄と汽船とは違うというふうな見解を表明されました。これについてはいわゆる道議論しかない。法律的に言えばそうでしょう。しかしあなたはその会社責任者なんです。もう少しやろうと思えばできる。一身を考えるからそういうことになってくるのです。こういう大きな事故、しかも日本の海難史上でも全員死亡なんということはまれです。あたたはその事故責任者です。道義的な責任者だ。しかもそれのみではなく、先ほど言ったように二月四日には大阪であなたは岡田松枝さんという人を死に追いやった。言いかえればあなたが殺したのだ。それで人間として何とかここでしなければいけないのだ。やりようによってはやれるのだというこをもう一度考えてみませんか。どうですか。——委員長、答弁させて下さい。
  133. 塚原俊郎

    塚原委員長 宇都宮君、答弁ありますか。
  134. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 今まで交渉の過程におきましては、いろいろ御遺族の方で御不満があったようでありますが、これはそのつどそれぞれその理由がありましたので、あるいは代表とだけお会いするという約束の場合に大勢お見えになって、話ができないというふうに考えまして私がお会いしなかったこともありますし、いろいろな誤解もありますが、私の不徳のいたすところで、今後十分誠意も行き届くと思いますので、誠意を持ってお話し合いをいたしたいと思っております。
  135. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 じゃ、それは誠意を持ってやってくれますね。今までの態度はほんとうにもうけしからぬ。あなたのやりとりの過程を見る、人間相場説まで出ておる。この程度が人間の相場だ、何たる言いぐさですか。そういうふうな観念で幾ら日本の現在の社会機構が甘いからといって、それじゃやはり人間としての道にあなた自身が恥じなければいけないのじゃないですか。私はもっといろいろ言いたいのです。しかしもうこれ以上のことはあなたに言う形容詞がないくらいに、私はあなたに言っておる。人間じゃないとまで言っておる。それに対してあなたは反駁される余地はないと思うのですよ。今までの態度、人間相場なんということはほんとうにけしからぬことです。しかも一番看過しにくいのは、これは大臣も聞いておいていただきたい。一月二十九日、三十日に行われた会見のときに、遺族代表の質問に対してあなたはこういうことを言いましたね。補償について多く出すことは船主協会等の圧力があり、前例となるという考えがあるからやめてくれと船主協会から言われた。一体これは船主協会のだれが言ったのですか、言って下さい。
  136. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 今のお話は、私はそういうことを申しました覚えはありません。
  137. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 あなたはそういうことを言う。それじゃもう一度出てきてもらいましょうか。今度は証人としてこれを聞いた遺族の人にも出てきてもらいます。もしあなたがこれでうそだったら偽証罪ですよ。どうしますか。聞いているんだからはっきり言いなさい。
  138. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 全くそういう事実はないのでありまして、ただ私がそのときに言いましたことは、その解決金というものは将来いろいろなほかの方に影響する、あるいは船主協会というのは私の方では入っておりませんので、おそらく定期船協会のことだと思いますが、定期船協会の圧力というものをおそれてというようなことは絶対にありません。定期船協会の方で補償問題を相談したこともありませんし、ただ定期船協会に入っておりますので、定期船協会に将来に影響するというふうなことは言った覚えがあります。
  139. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 そういうふうな、大体あなたは一流の言い方をするのです。遺族はちゃんと速記録をとってあなたと会っているんですよ。それが三人も四人も聞いておって、なぜそういうふうな違うことが記録に残りますか。あなたの方も記録をとっておられるはずだ。協会からほんとうにそういうことを言われたのですか。この二十五万円というのは人間の相場なんですか。
  140. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 定期船協会からそういうことを言われたことはありませんし、また、相談をしたこともありません。それから今の人間の相場というふうな言葉も、私は言った覚えはありませんけれども、これは何日でしたか、折衝のときに二、三十人の御遺族の方にお会いした際に、七千万円を一人にすると五十万円だが、これが人間の相場かというふうなお話がありましたので、私は一人幾らというふうな申し上げ方はしておらぬ。そういうことが誤解を招くおそれがあるので、総額で七千万円というふうにお話ししてあるので、実際の解決については七千万円で承知していただけますれば五十万円以上の人もあるし、あるいは五十万円以下にもなるだろうと思われますので、一人五十万円というふうなことは言ったことはないのでありますが、そのときに大ぜいの方が一人五十万円かということでわっと騒ぎ立てられたことがあります。おそらくそれが結局、私が言ったというふうなことに遺族の方ではおっしゃるんだと思います。
  141. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 それはあなた、前の会合のときと混同していらっしゃる。いいですか、これは一月三十日なんです。あなたの方が言わないことを言ったなんて言いやしませんよ。逆に、言ったことを言わないとあなたの方が言う。大臣、今のような状態なんです。それが会社の交渉の実態なんです。運輸省がやはり出ていただかなくちゃだめなんです。どうです。
  142. 永野護

    ○永野国務大臣 時間は短かいのですけれども、質問のやりとりを聞いておりまして、あなたと同じような印象は受けました。もちろん独立の社長ではありますけれども、これは私ども多少財界の経験もあるのでありますが、子会社社長会社のところに行っては言いにくい点も理屈抜きにあると思います。従いまして私どもが口添えすることが、少くともこの社長の運動をしやすくする効果はあると思います。そういうふうに私考えましたから、それが果してどれだけの効果があるかということはわかりませんけれども、できるだけ社長の働きやすいように口添えをするということをしてみたい、こう考えております。
  143. 井岡大治

    井岡委員 関連。私はこの前、大臣に、この問題は善処してもらいたいということをお願いした。同時に私は大臣に頼むだけでなしに、南海本社の稲次専務のところに参りまして、遺族方々が非常にお困りになっておるから、法律的には会社が違うから何とも言えないということがあろうけれども、会社の実態はほとんど南海が支配をしておることであるから、あなたの方から社長が動きやすいように努力をしてもらいたいということを、二時間半にわたって話し合いました。そのときに稲次専務は私に、今会社の方で交渉しておるようであるけれども、御趣旨はよくわかりましたから社長に伝えると同時に、社長が私の方に相談に来れば御趣旨に沿うように努力します、こういう約束をしている。従って、先ほどの同僚の廣瀬さんの御質問を聞いておりますと、大臣ももう少し積極的に、私に約束した通り、動きやすいようにしてもらいたいということを要望します。
  144. 永野護

    ○永野国務大臣 わかりました。
  145. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 今の船主協会といいましょうか、定期船協会とそういうことをあなたは話したことがあるのでしょう。これは大へんなことですよ。もしこれをあなたはあくまでも言わないと言うのだったら、もう一度当運輸委員会に諮って、あなたを今度は証人として喚問しなければならぬ。偽証罪になりますが、どうです。
  146. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 定期船協会に——どういうふうにおっしゃるのですか。
  147. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 いわゆる人間相場論ですね。そういうふうなことで二十五万円会社から出す、ここらあたりが相場だ、こういうふうに言って、これ以上出すことは将来業界にも与える影響が大きい、こういうことを言ったのでしょう。
  148. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 定期船協会……。
  149. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 定期船協会の方からそういうふうに圧力があったのですか。
  150. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 いや、そういうことはありません。話もしておりません。
  151. 塚原俊郎

    塚原委員長 委員長許可を得てから発言を願います。
  152. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 協会の方にあなたは弁護士どもいろいろ話をされておる。もちろん顧問弁護士がおられる、それらの人たち意見、あるいは定期船協会あたりの意見、こういうような者が、ここらあたりが大体の線だということを言っておるのじゃないですか。
  153. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 定期船協会と話し合ってはおりません。
  154. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 それじゃなぜ速記録にそういうふうなことが出ておるのですか。おたくの方も速記録をとっているはずです。冒頭私が申し上げましたように、あなたは一つ敬虔な気持でこの問題を考えて下さい。今ここでそういうことを言ったら大へんなことになる、そう思ってそんな二枚舌を使われるのかもしれない。それだとしたら、私たちもやはりものの考え方を変えなければならない。
  155. 宇都宮網郎

    宇都宮参考人 今の通りでもう間違いありません。
  156. 塚原俊郎

    塚原委員長 廣瀬君に申し上げますが、宇都宮君は参考人として御出席を願っておりますわけでありますから、この点お含みの上御発言に御注意願います。     〔「委員長よけいなことを言うな」と呼ぶ者あり〕
  157. 塚原俊郎

    塚原委員長 御静粛に願います。
  158. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 それでは今の問題はいずれもう一度委員会に諮りましょう。場合によっては、あなたは証人として今度はここで証言をしていただくことになるかもしれません。  それではこの事件のべスになる海難審判の論告なんですが、非常にこれは私たちには承服しがたい論告内容でございます。これは私の意見として申し述べさせていただきます。おそらく論告関係について当局の方からの御返答は伺えないでしょう。現在いろいろ今日まで判明してきましたところの客観的情勢、あるいは常識的な判断——私の用語は法律用語ではないかもしれませんが、そういうふうなところから考えて、どうも一般社会人はこの論告については納得しがたい。現にこれが出されました神戸海難審判所の海事担当を長年やつているベテランの記者あたりでも、この論告は案外である。あいた口がふさがらないと言っておるくらいであります。そもそもの前提からずっと説き起してきて、やはり船体が悪かった、あるいは運航技術が悪かった、船か人か、そういうところに論点を落しながら、最後には不可抗力、その不可抗力の定義の仕方も、折衷説あるいは客観説、主観説、それぞれを交えております。事業上の危険以外のものであることが必要である。各事業の種類より客観的に見て相対的必要な予防手段を尽してもなおかつ避けることのできないできごとであることを要する。不可抗力とは、特定事業の外部より発生したできごとであって、通常必要と認められる予防方法を尽すも、これを防止することのできない危害をいう、こういうことを言って、いわゆる不可抗力説の中へ逃げ込んでしまっている。管理、運航、そういうふうな面についての会社側の手落ち、排水口の問題にしましても、あげれば枚挙にいとまはございません。果してこの事業法律で定められている範囲を順守しておったかどうかさえも疑わしいような状態会社、これについて何らの言及がなされていない。船舶運航、これについてもその通りです。出港判断、航路の選定、ましてあの航路あたりは、なぜああいうように鳴門の潮波の方向へ、あの予想される荒天時に船を持っていったのか。目的地はちょうど追い風に乗って行けるような方向です。いろいろな点で非常に不合理、いわば、そういうようなことを私たちが申し上げると専門の方々は怒られるかもしれませんが、やはり常識として納得しにくい論告、それが一つのシー・メンとしての特殊なジャンルの中に逃げ込んだひとりよがりの論告である。私は、海難審判というものは、公正妥当に行われて、何人といえどもこれは侵すことのできないものである、それがやはり海国日本の発展のためになるものである、かように考えております。そう期待したいと思うのです。そういう点からこの論告はどうも非常に遺憾であります。従いまして、ここに出ております不可抗力であったとは私たちは断じてこれは考えられない。船長のいない今日、やはり会社側にこの責任は全面的にあったものである。しかもそれが先ほど来指摘しましたように、論議の中でも出ています運航自体の本来の目的である安全、こういうものが全く看過されて、企業性のみが強調された現在の海運行政の罪である。気の毒な犠牲者に対しては、法律は何もそこに救うべきものはない。そうしてこの論告に基いてやがて出される判決というものが今待たれております。こういうふうな点も考えまして、われわれはこの問題について、将来とも十分なる関心を持ってながめておるのでございます。今までのは私の意見であります。海難審判庁長官に御期待申したい。やはり海難審判というものは、何人も侵しがたい公正妥当なものとして判決をされることを私は期待いたしております。長らくどうも本日はありがとうございました。
  159. 塚原俊郎

    塚原委員長 本日の発言中、もし不穏当な個所がありますれば、会議録を調査の上、委員長において適当に処置いたしたいと存じます。  宇都宮参考人におかれましては、御多忙中のところ本委員会に御出店下さいまして、ありがとうございました。  速記をとめて。     〔速記中止〕
  160. 塚原俊郎

    塚原委員長 速記を始めて下さい。     —————————————
  161. 塚原俊郎

    塚原委員長 陸運に関する件について調査を進めます。  質疑通告がありますので、これを許します。館俊三君。
  162. 館俊三

    ○館委員 これも大臣なり陸運局長に出てもらった方がいいと思いますが、私の質問するところは、きょう急にこういう陳情がありましたので、私もその内容についての調査なり理解なりがまだ不十分です。しかし問題は和歌山県の白浜地区におけるハス路線について非常に紛争が起きておるらしい。そこでその紛争に巻き込まれた弱小ハス会社だろうと思いますが、明光ハス株式会社の労働組合とそれから会社側が一緒になりまして、この委員会の始まる直前に私どものところに来まして、これをこの委員会で質問をして経過なりその他を聞いてほしいということでございます。私もこれは突然の話でありますから、今ここで十分な経過の説明ができるかどうかわかりませんが、その言い分について明光バスの書いたもの及び明光バス労働組合の書いたものをお読みをいたしまして、私も理解ができておりませんから十分なる調査と経過なりその他についてはあとでゆっくり承わりたい、こう思っております。何しろ大会社が、従来やっておった明光バス路線に対して非常な圧力で進出してきておる。そこで大正年間から経営しておる明光バスにとっては非常に脅威である。こういうことではバス路線指定の政策といいますか、見通し、かかることについて運輸当局に対して非常に不服があるらしい。そういうことなんですが、一つ読み上げますので記録にとどめておいていただきたいと思います。これは明光バス株式会社の声明なんですが……。
  163. 塚原俊郎

    塚原委員長 館君、要項だけにしておいた方がいいでしょう
  164. 館俊三

    ○館委員 内容は、「南海電鉄の子会社である白浜急行バスは昨年末秘かに白浜の旅館自家用バスを買収し、土地も買い、明光が多年幾多の犠牲と努力を払って開発育成して来た牙城に進出を計画し、去る一月末に白浜町に於ける大型貸切バス営業を申請」しておる、こういうことから起きた問題らしい。この点についてどういう形になっておるのかということを私も調べておりませんが、経過なりその方針について承わりたい、こういうことを言っておるわけであります。その内容を聞きますと、明光の南部——田辺間路線へ、龍神というバス会社があるらしいのですが、龍神の乗り入れを認めた際は陸運局が中に入って「その代り、白浜地区では龍神の貸切バス営業を認めない」という契約書をかわしておる。こういうような種類の契約書は、南海電鉄の子会社である白浜急行バスと、それから明光バスとの間にもそういう契約書がかわされておるにもかかわりませず、このごろそれを無視して明光バスの路線に入り込んできておるという訴えなんでありまして、こうなりますと三社か四社入り乱れておる。しかも明光バスの経営が非常に弱小であるために圧迫を受けておるということであります。バス会社としては全く死活の問、題でありますから、「この事態に直面した当社としては今やその対策に背水の陣を布かざるを得ません、」背水の陣とはどういうことかわかりませんが、そういうことを言っておる。こういう紛争がどういうところから起きているのか、その経緯について御説明を願いたいと思っております。
  165. 國友弘康

    國友政府委員 先生の今のお話につきましては、大阪陸運局に申請が出ているのだと思いますが、私、その内容については現在つまびらかにしておりませんので、よく調査しましてからお答え申し上げたいと存じます。
  166. 井岡大治

    井岡委員 関連。その問題ですが、実は運行協定ですか、そういう協定書があるわけです。その協定にはお互いの権益を侵さないということでやっておる。その協定は大阪陸運局の自動車部長の立ち会いのもとにかわされた協定です。にもかかわらず今白浜バスは、旅館の持っておる自家用の大型の自動車——これはバスでしょうが、これを買収してその路線に乗り入れる、こういう格好をとろうとしているらしいのです。従ってこういうように協定が次から次と破られていくということになると、これは道路上の混乱が出てくると思う。この点、局長は厳重な調査をしてもらいたいと思います。
  167. 國友弘康

    國友政府委員 よく調査いたしまして次の機会に御報告申し上げたいと思います。
  168. 館俊三

    ○館委員 この話を聞きますと、この路線に進入する会社の態度は非常に強硬であって、そういう協定を無視して白浜バスが正式に入ってくるという段階になってきたという緊急事態だそうです。そういうことがあってはなりませんので、私たちはその経緯を十分調査したものを聞いた上であらためて判断したいと思っておりますが、そういう会社同士の契約書、あるいは陸運当局立ち会いの上の契約を無視して南海電鉄の子会社、大会社を背景としたものが乗り込んでくるということは、非常におもしろくないことだと思いますので、十分調査をして発表していただきたいと思います。
  169. 井岡大治

    井岡委員 この問題とは別でございますが、幸い自動車局長がお見えになっておりますから、一つだけ簡単にお伺いいたしたいと思います。  東東の道路運送協議会ですか、これは非常に長い間発足しなかったのでありますが、その理由はどういう理由か、お伺いをいたしたい。
  170. 國友弘康

    國友政府委員 東京陸運局の自動車運送協議会につきまして今先生のおっしゃいました、発足しないのはどういう理由かという御質問でございますが、この自動車運送協議会につきましては、委員の任期は一年となっておりまして、昨年任命されました委員の任期がこの二月の六日に切れまして、その後、官庁関係から任命されております委員だけはそのまま身分が存続しておりますが、学識経験者及び一般の利用者それから事業者から選ばれました委員につきましては、身分が切れたわけでございまして、これは道路運送法上その委員を任命いたします場合には、運輸大臣が関係者の意見を徴して委員を任命するということになっておりますので、関係者の意見を徴しまして、それを東京陸運局長から本省の方に申達して参りましたわけで、それにつきましてわれわれとしても十分調べなければなりませんので、調査をいたしておったのでございますが、これは本日付をもって発令いたしました。
  171. 井岡大治

    井岡委員 これはもう本日付をもって発令したと言って、局長えらいすましておいでになるけれども、一年で任期が切れるということは初めからわかっていることですから、当然前もって関係者の意見を徴するということでおやりにならなければ、いつもそれだけずつおくれていくということでは、これは役に立たないと思う。しかも昨年はほとんどお開きになっておらないのですね。そういう点を考慮するならば、少なくとも自動車局長は十分の注意を払ってもらわなければならぬと思う特に今度の問題を急ぐ理由はいろいろあるでしょうが、われわれとして一番関心を持っておる問題は、前の国会にも問題になったことでありますが、政府の申し合わせ決定によって、駐留軍の離職者に対する優先取扱いというものがきめられておる。ところが、これについてその人たちもかなり真剣に考え、特にこれは私いろいろその間に皆さんと御相談を申し上げ、あるいは大臣とも御相談を申し上げて、分散をしておったのではいけない、一本になってやるならば非常にいい結果をもたらすのだ、こういうことでありましたので、その人がたも非常に努力をなさっておる事実を私は知っているわけであります。しかも長い間苦しんでおいでになりますから、この人たちに対する政府の施策というものを早く手を伸べてあげないと、二十万やそこらの退職金を渡してしまったって、皆さんの給料でおわかりになろうと思いますが、今の状態で生活をしておったら、三、四カ月すればないようになってしまう。これは寄生的な存在ではありましたけれども、占領中において国の政策に対して協力をした人方でありますから、早急にこれらの方々に対するところの援助あるいは救済の道を講ずることが特に必要じゃないかと思うのです。この点について局長の御答弁をいただきたいと思います。
  172. 國友弘康

    國友政府委員 やり方といたしましては、二月の六日に切れましたら、二月の七日に直ちに継続してやるのが当然でありまして、私もそれに努力すべきであったと考えておるのでございますが、ちょうど東京陸運局長が異動になります前後でございまして、そういう関係は考慮すべきではないのでありますけれども、しかし、いろいろな都合したとえば自動車運送協議会の諮問等につきましても、これは東京陸運局長が手配いたすのでございます。そういう関係上おくれておりまして、二月の七日に直ちに継続して発令し得るほどの準備ができておりませんでしたので、二月の七日以降に完全な手配をいたしまして発令の段取りになったわけでございます。  先生の今仰せられました駐留軍の労務者の離職者対策等につきましては、閣議決定もございますので、この閣議決定の趣旨を体しまして、われわれとしては十分に検討していきたいと考えておる次第であります。
  173. 井岡大治

    井岡委員 これ以上言うと、菊川さん何か御準備をなさっておいでのようでありますから、あまり人の侵害をやってもどうかと思いますから、私の質問はこれで終ります。
  174. 塚原俊郎

    塚原委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれをもって散会いたします。     午後一時五分散会      ————◇—————