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1959-02-27 第31回国会 衆議院 運輸委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十七日(金曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 天野 公義君 理事 簡牛 凡夫君    理事 井岡 大治君 理事 久保 三郎君    理事 土井 直作君       宇田 國榮君    川野 芳滿君       菅家 喜六君    小枝 一雄君       羽田武嗣郎君    前田  郁君       島口重次郎君    館  俊三君       山田 長司君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 永野  護君  出席政府委員         運輸政務次官  中馬 辰猪君         運輸事務官         (大臣官房長) 細田 吉藏君         運輸事務官         (海運局長)  朝田 靜夫君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      山内 公猷君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本国有鉄道常         務理事     久保 亀夫君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 本日の会議に付した案付  国内旅客船公団法案内閣提出第八七号)  日本国有鉄道経営等に関する件      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより会議を開きます。  国内旅客船公団法案を議題として、審査を行います。  質疑通告がありますので、これを許します。土井直作君。
  3. 土井直作

    土井委員 国内旅客船公団法案に対しましては、本委員会でも同僚議員の諸君からしばしば質疑がありまして、それに対するところ当局答弁等がありますので、それらの質疑をいたしましたものとできるだけ重複しないように避けながら、きわめて簡単に二、三の点を御質問申し上げたいと思うのであります。  この公団を作る目的というものは、海上旅客運送事業者に協力し、民生の安定に必要な航路の維持あるいは改善に資することを目的とするということをうたってありまして、そのためには、老朽船代替資金公団においてまかなっていこうということでございます。そこで、お尋ね申し上げたいのでありまするが、海運局長がさきに關谷委員質疑に対しまして、大体この公団対象になる業者は八百八十三程度のものであるということであります。しかし、これらの業者に対しまして、その代替をするということのために、約五カ年間の計画をもちまして逐次これを行おうとしているのでありまするが、ただこの場合われわれが懸念される問題は、この代替をしようとするところ金融措置をどういうような形で、たとえば具体的にいいまするならば、それぞれの業者希望を募って、あるいはそうでなければこちらから認定して、そしてこれとこれは何年たって、しかも使用にたえないからこれを代替建造するのだというようなそのめどをどういうところに置いておるのか、この点をまず第一にお聞きしておきたいと思うのであります。
  4. 朝田靜夫

    朝田政府委員 ただいまの御指摘の点は、この公団ができましたあと運営する場合におきまする非常に重要な点かと存じますが、事業者から公団に対しまして申請を出させまして、それに対して、この公団が整備する国内旅客船を選考するということに業務が運ばれると考えるのであります。しかしながらその場合に、公団が整備する国内旅客船をどういうものを取り上げていくかということにつきましては、公団業務方法書に具体的にきめることになると思うのでありますが、その内容については、今後の運営の問題でもあり、ここで詳細に申し上げるまでに至っておりません。ただ、そういう申請がありまして、どういう船舶代替建造し、改造していくかということにつきましては、代替建造緊急度、すなわち代替を必要とする船舶老朽度というようなものが第一に問題になって参ると思います。次に就航航路重要性——先ほどの御指摘にもありました民生安定上必要な航路重要性、あるいは事業者適格性代替船舶航路事情に対する適格性、こういったようなものから検討してきめられるべき問題である、こういうふうに考えるのでございます。
  5. 土井直作

    土井委員 この公団法案を今回提出するに至ったのでありまするが、政府の提出しておりまする資料によりますと、かなり老朽船がありまして、それによるところのいろいろな海上災害等が起っておることも十分に承知しておるのであります。なぜこういうような事柄をもっと早目に処理するという考え方をしなかったのか、今までなぜこれを放置しておったのか、その点についての政府の見解をお伺いしたいと思います。
  6. 朝田靜夫

    朝田政府委員 まことに私どもももっと早くこの問題について手を打つべきであったと思うのでございますが、従来とって参りました考え方を申し上げますと、離島航路整備法という法律に基きまして、私ども航路補助あるいは新船建造に対しまする利子補給、こういったもので何とかまかなってきたのが現状でございます。ただそういったようなことで非常に小規模でありましたし、また広範囲に計画的に代替建造をやらなければどうしてもいけないというような事態に立ち至りましたので、今回抜本的にこういった対策を立てて実行していかなければならぬ、こういうふうに考えておるのであります。ただいままでの点につきましては、新船建造利子補給、こういったことで参ったのでありますが、それでは十分でないということで、今回この公団という方式を通じて計画的に代替建造をやって参りたい、こういうふうに考えております。
  7. 土井直作

    土井委員 離島航路整備法は大体基幹離島に対するところのものであって、今度の対象となるものはむしろこういう点でなくて、きわめて小さい島々を回っていくものがかなり対象になっておるように思われるのであります。そういう点から考えて参りますと、ただいまの御答弁とは多少目的が違うようにも考えられるのでありますが、従来のものを全部含めて、これを対象としてやっておるのか、あるいはもっと零細な、沿岸交通に当っておるところのものを対象としておるのか、対象の中心をどこに置かれておるか、この点をお伺いしたいと思います。
  8. 朝田靜夫

    朝田政府委員 従来の離島航路整備法に基きまする建造に対する利子補給というものをやって参りました事業対象に限らずに、ただいま御指摘になりましたもっと零細な、しかも沿岸航路で民生安定に必要な航路に従事するものを全部含んでおるのでありまして、従来のような小規模な、非常に限定された離島、あるいはそれに準ずるものというような考え方はいたしておりません。
  9. 土井直作

    土井委員 この代替建造をするということで実際上の問題としてそれぞれの業者を選ぶのですが、その場合において、たとえば老朽船使用にたえない、そういう認定の上において、先ほどの答弁によると相手方希望を募ってというような面も出ておりますが、相手方希望しない場合において、その老朽船代替はどういう形でやるのか、言いかえれば強制力を持ってやるのかどうか、この点はいかがですか。
  10. 朝田靜夫

    朝田政府委員 強制を持ってこの公団がやるということは考えておりません。やはり企業側の申し出によりまして、それに対して選考をして参るということでございます。
  11. 土井直作

    土井委員 そこで零細企業でありまする関係から、たとえば公団から金を借りて代替建造をしたくない、することによってそれぞれ負担がかかって、それでなくても今まで赤字で苦しんでおるようなところでございますから、そういうところはそれを欲しないということがあり得ると思うのであります。そういう場合において、やはり海難防止の面からいっても、相手が欲する欲しないは別にいたしまして、こちらは交通の安全という面から強制あるいはぜひそれを作らなければならない、作ってもらいたいというようなことにならざるを得ない場合があるのじゃないか、そういう場合における行政的な指導というか処置というか、それが相手方希望しない場合においてはそれを放置しておっていいのかどうか、あるいは放置するのかどうか、こういう点はいかがですか。
  12. 朝田靜夫

    朝田政府委員 ただいまの御指摘の点につきましては、海難防止の問題にも非常に重大な関連を持つものであります。船舶安全法及びそれに関連いたしまする諸法令の順守ということにつきましては、もちろん十分に確保されなければならぬ問題でありまするし、そういう法令に照らしまして、不適格船につきましては、過去のいろいろな事故の頻発にかんがみまして、相当強力な行政指導も私どもとしてはやっておるつもりであります。従いましてそういった面から、老朽で安全の基準に照らしてどうしても好ましくないというようなものは、相当強力に行政指導をいたしまして、どうしても使用にたえないというようなものについては、その企業運営の問題と安全の問題とを総合勘案いたしますと、どうしても公団共有方式を通じてでなければ建造ができないということに自然なって参る、こう考えるのであります。
  13. 土井直作

    土井委員 私の心配する点は、代替船舶に対する検査があるわけです。合格しているわけですから。従って老朽船であっても、一応それぞれの検査を通過してやっておるということであるから代替しなくてもよろしいという考え方業者は持つ。なるべく費用を少くしたいという考え方からそういうことになる。しかしながら、なるほど合格はしておるけれども、行く行くはだめだ、従ってぜひこれは代替しなければいかぬというような立場当局いわゆる公団が考えた場合、強制力というものが全然なければ非常に困難ではないか、こう思われるのだが、そういう点について何か考え方がございましょうかしら。
  14. 朝田靜夫

    朝田政府委員 老朽船を持っておりました方が新船を持っておるよりも経営上楽だというようなことも一つ限度がありまして、老朽船になればなるほど修繕費がかさんで参りますし、そういう点については、老朽船を持っておる方が新船を持つよりも負担が軽いというようなことも一がいには言えない問題であります。従いまして、ある一定の限度になりますと、経済的な観点からしても代替新造をして参らなければならぬというような問題が起って参ると思います。また物理的に船舶安全法基準に照らして安全でないというような問題につきましては、これは強力な行政指導をもってやって参る。そういうようなことから自然この公団を通じて計画的に代替新造というものが促進されていくように、今後も運営に万全を期したい、こういうふうに考えます。
  15. 土井直作

    土井委員 大体業者零細企業でございまして、統計の示すところによれば相当資本金の小さなものが多いように見受けられのであります。そこで経営基盤を強化するというようなことのために、たとえば運賃問題等につきましても、これは陸上における運賃の低廉な面などから見て、あるいはまた競争が激甚であるという関係から、お互いに低い賃金によってやっておるという場合もしばしば起っておりまするが、そこで業者経営基盤を強化するという立場から、運賃適正化であるとか、あるいは航路調整の問題であるとか、場合によりましては資本合同化とか、そういうような面について当局はこれを促進するとか、あるいはさらに積極的に勧告をするとか、そういうような点についての御意思があるかどうか、またあるとすればどういう形でこれを行おうとするのか、この点について一つ答弁願いたいと思います。
  16. 朝田靜夫

    朝田政府委員 ただいま御指摘になりました点につきましては、この公団を設立いたします趣旨の一つは実はそこにあるのであります。御指摘になりました運賃調整あるいは企業経営合理化、あるいは旅客船につきましていかなる船型のものを作るかというようなことの設計指導あるいは今おあげになりました航路調整の問題といったようなものにつきましては、この公団を通じて共有をいたしますから、この公団が七割という共有持ち分を持ちますので、その限度において十分発言できるわけであります。従いまして、この公団がただ単に計画的に新船代替建造するということでなしに、今言われましたような重要な点についても、この公団を通じて相当の効果が上るというふうに私どもは期待しておるのであります。
  17. 土井直作

    土井委員 ただいま御答弁の中にありましたように、代替建造する場合における融資の関係で、公団が七割から持つということになっておりますが、その場合に個人かあるいは事業体が金を借りてそれで代替するのでありますが、そういう場合に所有権関係、これは公団の方が持っておるのか、それとも事業者が持っておるのか。たとえば公団が七割からのいわゆる権利を持っておるとするならば、この所有権関係公団にあるような気もするのでありますが、それはどういうような形になるのか、この点を一つお伺いします。
  18. 朝田靜夫

    朝田政府委員 所有権の問題についてのお尋ねでございますが、新しくこの公団共有をいたしましてでき上りました船につきましては、公団が七割の持ち分事業者が三割の持ち分であります。従いまして民法上の共有によりましてはっきりした持ち分登記しなければなりません。従いまして七割の分については公団、三割については事業者、こういうふうに持ち分を明確にいたしまして、おのおの共有持ち分というものをはっきりしておるのであります。ただ問題になりますのは、改造をいたしました場合に一体そのときの船価——新造の場合は今申し上げましたように建造船価の七割、三割ということではっきりいたしますが、改造いたしました場合には改造後における船価の五割、五割ということになっておりますから、改造の場合はその改造後における船価のうちどれだけを占めるかということになるわけでございます。
  19. 土井直作

    土井委員 これは私もふびんにしてよくわからないのでございますが、例の地方税固定資産税などがございますが、そういう場合における固定資産税支払金は、たとえば七割と三割あるいは五割と五割というような分割的な形で負担するのであるかどうか、この点はいかがですか。
  20. 朝田靜夫

    朝田政府委員 この点は事業者負担することになっておるのであります。
  21. 土井直作

    土井委員 事業者負担をするということになれば、その所有しておる対象として、法的に見て所有者が当然固定資産税を払わなければならない。ところが金を借りて、しかも公団が七割を——七割というのは登記か何かの形で法的に処置するのでしょうね。それはどうですか。
  22. 朝田靜夫

    朝田政府委員 共有契約書によって共有の形をきめまして、あと登記をいたしまする場合には持ち分を明確に登記するということであります。
  23. 土井直作

    土井委員 これは海運局長では、大蔵関係や何かでないから実際上はわからないのかもしれませんけれども登記をする場合に七、三なら七、三。五、五なら五、五というふうにする場合において、それの固定資産税負担というものは、当然所有者でなくて両方で負担すべき内容を示すものじゃないかと思うのだが、この点はどうなのでしょうね。
  24. 朝田靜夫

    朝田政府委員 船舶共有の場合におきましては、船舶管理人というものを指定をしてきめるわけでございますが、船舶管理人といいますのはこの場合事業者がなることが便宜であるというので事業者にするつもりでおります。それは保険金を払ったりあるいは税金を納めたりということの、百パーセント持ち分を持っておる船主と同じ事務を行うわけであります。理論上は七割、三割の関係税金負担するわけでありますが、今申し上げましたのは少し誤解があるような答弁をいたしましたが、船舶管理人がかわって払う。理論上は七割と三割に分けられる、それは内部関係で処理する、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  25. 土井直作

    土井委員 それでようやくわかりました。要するに法的な関係よりも内部事務処理の中で公団事業者の間における分割をきちっとして払うということである。そうでないと零細企業者は借入金の利子を払わせられたり、それに対する固定資産税あるいは事業税——これは事業税固定資産税と同様の形で取り扱うのでしょうね。
  26. 朝田靜夫

    朝田政府委員 公団の分についての事業税については免税になっております。
  27. 土井直作

    土井委員 そこで、公団関係はそうでありましょうが、私の言うのは、要するに業者に対する事業税関係を申し上げたのであって、従って業者事業をやっておる場合において公団と折半または七、三の形で持っておる場合においては、その事業から生ずる利益というものについての税の負担は一体どういうふうにするのか。それは固定資産税と同じように、内部事務処理によって分担するのかどうかということをお聞きしておるわけです。
  28. 朝田靜夫

    朝田政府委員 地方税中の事業税につきましては、運送事業者事業を行なって、そのもうけに対してかかるわけであります。この事業に対してかかる税金でありますので、これは公団との関係はないというふうに解釈いたしております。
  29. 土井直作

    土井委員 どうもその点まだちょっと私自身としては納得いきませんが、さらにこれは研究したいと思っております。  その次に公団運営の問題ですが、これはそれぞれ事業者直接間接に非常な関係がございますので、できるだけ民主的に行いたい、行うべきじゃないか、かように考えております。従ってこれに対するところの公平妥当な処置をとるための、何か審議会というか、経営委員会のようなものを設ける意思があるかどうか、この点をお伺いします。
  30. 朝田靜夫

    朝田政府委員 経営委員会といいますか、あるいは管理委員会というようなものも私どもとしては考えてみたのでございますが、広く事業者意見が反映をいたしまするような意味で、こういった委員会というようなものをこしらえますと、むしろ弊害が出てくる。あるいは学識経験者なりあるいは地方庁あたり意見を聞く、こういうようなことになりますると、そういった利害関係立場というものが出て参ることもありまするし、また事業運営につきましても責任の所在が明確でないというようなことも考えられますので、私どもとしては、そういう審議会あるいは委員会といったようなものを考えておりません。
  31. 土井直作

    土井委員 経営民主化というような面から見て各方面の意見を聞くというために、理事長諮問機関のような形で学識経験者とか旅客船業を代表する者とか、あるいは造船関係を代表する者、同時に乗務員いわゆる船員を代表する者、こういうような角度の人々が、この公団運営に当って適正妥当な答申をするというようなことで、この種のものは設けた方がかえって経営民主化のためにも非常によろしいのではないかと思っておりまするが、当局としてぜひこれに対しまして一考をわずらわしていただきたいと思うのであります。  それから代替建造されました船は老朽船であったりしますので、再びこれを航路使用するというようなことのないように、できるだけこれはスクラップにしていくということを原則に考えていかなければならないと思いますが、この点についての御方針はどういうふうになっておりますか。
  32. 朝田靜夫

    朝田政府委員 この公団が先ほど申し上げますように老朽船代替建造をやって参りまする面につきまして、老朽船になったものでありますから、それを旅客船としては使用されないということが理論上も当然であると思います。ことに公団が整備いたしますものは緊要度の高いものを先にいたしまするし、旅客船としての使用が不適当であるというようなものの代船でありますので、再びこういうものが旅客船として使用されるおそれは少いものだ、自然そういう結果になると思います。なお旅客定期航路あるいは不定期航路使用船の変更につきましては、海上運送法によって運輸大臣の認可を必要といたしておりますので、こういった場合の船舶イヤマークをつけまして不適当な航路使用されることのないように監督を十分いたして参りたい、こういうふうに考えております。
  33. 土井直作

    土井委員 その点は私としても十分に納得のいく点でございまして、元来ある場所においては使用にたえないが、ちょっと手を入れたりあるいは違った航路にこれを使うという場合が時には起りやすい問題でありますので、この点については厳重に監督をしていただいて、そういうことのないように御注意を願いたいと思います。  それから最後に、公団が出資いたしまして建造または改造する場合における船の構造等について、大体非常に小さな船で、旅客なり貨物なりをできるだけ積んだりあるいは輸送したりというような、そういう目的のために、ここに働く船員等について、その休憩所さえも設けておらないような場合があるのでありますが、現に今使われておるところの船などでは、船員が休む場所もないというようなのがたくさんあります。従ってこれから公団建造または改造されるような船については、そういう点の設備を十分していただかなければならぬと思いますが、これに対する——これは船の技術的な関係でありましょうが、こういう点についての指導なりあるいは方針なりは、どういうふうに考えておりますか、この点をお伺いしたいと思います。
  34. 朝田靜夫

    朝田政府委員 ただいまの問題は、こういう国内旅客船の問題に限らずに、一般の大型の国際航路に従事する船についても非常に重大な問題であります。労使双方あるいは政府が入りまして、運輸省におきましては、設備規程の改正その他にからむ設備協議会というものを設けております。これにかけるほどの大きな船でもありませんが、いわゆる船員の居住と労働条件の問題と、採算の問題と安全性の問題、こういった大まかにいえば三つの要素をいかに調和していくかという問題でありますので、この旅客船公団が作る国内の比較的小規模な船にいたしましても、その点の考慮はお説の通り十分払って参らなければならぬと思います。そこで公団というものが設計指導を行うというような一つの利点もございますので、その点については今後の運営上十分考慮に入れまして、国際航路に従事する船ほど長期間そこで居住するわけでもありませんので、その程度はいささか低くなるかもしれませんが、十分その点は運営上考えて参りたい、こういうふうに考えております。
  35. 土井直作

    土井委員 国際汽船であるとか、あるいは離島の場合でも、佐渡とか、隠岐、対島とか、あるいは小笠原とか、相当に遠いところに行く船には多少そういう設備はございますが、沿岸等を回る小さな船にはほとんどそういう設備がないので、従って運転手運転をして、それで交代をする場合においても、そのそばで、たとえば小さないすの上にすわって休憩しておるというような、あとのスペースはほとんど旅客なりあるいは荷物の置場にこれを使用するというようなことが現に行われておるわけであります。従って船員の疲労というものは相当に強いものがあるということが言い得るわけであります。ただいま局長の御答弁によりまして、建造または改造するような場合における面については、十分これを考えてそういうことのないようにということでありますので、どうかそういう点について、船員の保健あるいは待遇上の問題等についても間違いのないような処置をこの際お願い申し上げたいと思います。  以上をもって私の質問を終ります。     —————————————
  36. 塚原俊郎

    塚原委員長 次に陸運、海運及び航空に関する件につき調査を進めます。  質疑通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  37. 久保三郎

    久保委員 国鉄関係でお尋ねするのですが、先般大臣はおらなかったがきょうはおいでになりますので、まず第一に、来年度から着手いたします東海道新幹線の建設、来年度予算では、自己資金三十億をこれに引き当てておるわけでありますが、この建設資金計画は、運輸大臣としてはどういうふうにお考えになっておりますか、まずその点をお伺いいたします。
  38. 永野護

    永野国務大臣 来年度の予算は、ほんのトンネルの対策とか、余れば多少の敷地の買収程度であります。本格的の事業遂行の段階には立ち至りませんのですが、その次の三十五年度からの問題になると思います。これはこの前の委員会でも何かお話が出ておりましたように、国鉄自己資金でまかなうということを建前といたしております。こまかい数字は国鉄の当事者から説明を願います。ただ私から一言申し添えておきたいと思いまするのは、外資の問題が案外に好調に進んでおります。アメリカにおいての扱い方は相当好意的であります。三月の五日ごろにはその関係者の人が帰ってこまかい報告をいたしますけれども、中間報告によりますと非常に有望であるように伝えられております。私どもが一番心配いたしますのは、外資はそれを金で出すよりは物で出したいということを言うのであります。これが非常に日本の産業との関係にデリケートな関係がありまするので、必ずしも貸してくれるからといってすぐ飛びつくべきであるかどうかということについては十分考慮を払わなければならぬと思っております。従いまして国内の経済情勢の動き、特に国鉄の収支の見通しなんかとにらみ合せまして、この外資の扱い方をきめていきたいと思っておりますが、私どもが考えましたよりは好意的に取り扱われておると思います。しかしもちろん計画を立てますときには他人様のふところだけを当てにしてやっておるものではございませんので、自己資金を中心にして考えておるのでございますが、この自己資金の内訳につきましては当該担当者からお答えいたします。
  39. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 ただいま大臣からのお話がございました通り、東海道新幹線は三十四年度三十億の予算を計上いたしております。これは主として実地測量、用地買収等に力を注ぐつもりでございまして、なおこの三十億のほかに丹那隧道に引き当てる債務負担行為が四十億——これは五カ年間にまたがる債務負担行為として四十億円計上いたしておりまするし、そのほかに三十五年度にわたる債務負担行為として二十億円を計上いたしております。  それからどういうことに使用するかという御質問がございましたので、ごくあらましのことを申し上げておきますると、三十億円の内容は用地買収に十六億八千万円余、それから工事といたしまして七億八千万円余、この七億八千万円のうちで丹那隧道としては五億九千万円を予定いたしております。そのほか工務施設、機械等で二億一千五百万円、総経費として三億二千二百万円等を考えておる次第でございます。
  40. 久保三郎

    久保委員 大臣のお話では、自己資金と外資導入によってまかない得ると言われたのですが、この東海道新幹線については国の大動脈でございます。むやみやたらに外資導入に期待を持つことは国家百年の計からいって非常にうまくないのじゃないかとわれわれは考えておるわけであります。     〔委員長退席、簡牛委員長代理着席〕 むしろ自己資金でまかなうということと——これはもちろん全部を否定するわけではございません。しかし、その前に政府からこれを投資するということを考えなくてはこれは筋が通らぬではなかろうか、こういうふうにわれわれは思っておるわけであります。その点については大臣はどういうふうに考えられておりますか。
  41. 永野護

    永野国務大臣 御承知の通り国鉄は独立の企業体でありますので、政府の力にたよりますことはどうしても第二次的に考えるべきであって、独立の企業体であるという以上は、国鉄自体の金融調達能力によるべきが本筋だと思うのであります。限度のある国家予算でありますから、まずもって自己資金にたよりたい、これを基本の原則にしたい。ただし、この東海道新幹線を作りますために自己資金によれというと、昨日もここで質問のありましたように、他の新設計画に非常に大きな影響を与えるということになりまして、幹線本位に堕するというようなことの起ることも避けなければなりませんので、外資の問題が日本産業を圧迫しないような状態でできるのならば、これはやはり考えた方がいいのじゃあるまいか。もちろん条件がまだ何もきまっておらないのでありますから、ある程度目安のつきましたあとで外資の問題に力を注ぐべきかどうかという判断をすべきであって、今は総括的に外資はおもしろくないというような気持をきめるのはどうかと考えております。
  42. 久保三郎

    久保委員 おもしろくないというのではなくて、先ほど大臣も心配されておるように、向うは現なまでなくて物でと言うことは当然だと思う。そういう場合に、あるいは大臣じゃなかったかもしれませんが、東海道新幹線は輸送力の増強ということばかりじゃなくて、国内産業の刺激あるいは発展ということも頭の中へ置いていい計画だ、こういうふうな考えをいつか発表されたと思うのです。そうだとすれば、これは外資導入、しかも物で持ってきて、今の御答弁のように、日本産業を極度に圧迫しなければいいだろうということでは少し違うのではないか。極度に圧迫するというか、もうすでに東海道新幹線ぐらいの物資調達を国内においてやっても、これは日本の経済がそんなに発展する要素はないわけであります。そこへもってきて、よそから物を持ってくれば、これはますますひどくなるのだと思います。そういうことからいって、外資導入というものは最悪の事態に考えるべきことではないか。  それからもう一つは、独立の企業体であるから自己資金ということ、これはなるほど独立の企業体であります。しかしながら先般大臣おいでにならないときにも、鉄道の性格というものを私申し上げたのですが、独立採算というか、そういう企業体あるいは公共団体——公共性を帯びた、しかも企業性を抱きかかえた一つ事業体だ、この公共性と企業性は相反する二つのものを持っておる、その調和をどうするかという御質問をこの間申し上げたわけであります。調和点についてはなかなかむずかしいようでありますが、少くとも現在、これはあとから申し上げようと思っていたのですが、一緒に申し上げますが、たとえば新線建設、これは全部赤字線区です。この赤字線区を承知の上で、しかも日本全体の交通政策というものを頭に描かないで無計画に新線建設を強要されているのが国鉄です。そういう赤字を全部国鉄でまかなうということになっているわけです。そういうところから通勤輸送も緩和できなければ老朽施設の取りかえも思うようでない。それでとどのつまりは再び運賃値上げということで大衆の犠牲になる。こういう悪循環を今日まで繰り返しておるわけです。松永さんでしたかがやった産業計画会議あるいは最近経済雑誌に出ております、何といいますか、国鉄の不良の根源をつけ、というのがありますが、こういうのは国鉄内部にいる人も、大衆もよくわかっているわけです。どこに矛盾があるかというと公共性と企業性の調和をとろうとしていない。国鉄でなく国がとらせようとしない。片方では政治路線をどんどん引っぱって赤字をどんどん累積させる。そして片方では老朽施設がどんどん出てくる。そういうところから自己資金を出すということは、結局大衆の負担において東海道新幹線をやっていくことなんです。極端なようですけれども、毎日立ちん坊で押しつぶされそうな形で乗っている乗客の背中に乗って東海道新線あるいは新しい建設線路ができる、こういうことだと思うのです。だから、せめてそういう公共性と企業性というものをある一点において調和させるという大きな方針を立ててやっていかない限りは、これも自己資金でやるのが当然じゃないか、これも自己資金で出せ、あるいは自分の力において資本を導入しろ、その利息は当然その企業体から払え、こういうことなんですね。このいい例は終戦後できたすべての新建設線です。これは言うまでもなく先ほど言ったように赤字です。これはもともと赤字のはずなんです。黒字になりっこない。一体どう合理化をしようが、大体最初から合理化方針建設しておるのです。それもなお考えると、営業係数四〇〇あるいは五〇〇という線、そういうものの投資は国で見るとか、あるいはその投資に対する利子は国が補給するという手段をやらぬ限りは、これは無理だと思うのです。そういうのを片方でおきながら、東海道の輸送緩和をねらって、あるいは今後の交通事情を考えて新幹線をやる、その資金は自己資金が先だ、政府あとあとの話だ、外資導入をその前にやれというふうに聞えるようでは話が違うと思う。大臣は非常に経営の御経験が深いのでありまして、国鉄の在任中、志免炭鉱などはどうでもいいですから、せめて大きいことは、少くとも国鉄のこの性格と現在の経営を調和する、いわゆる公共性と企業性をどこへ置いたら調和できるか、その御方針をしっかりお立てになって、一つこれの完成ができますれば、永野運輸大臣は永久に大政治家として存在するようになると私は思う。そういう点を考えないで自己資金その他をやったのでは困るんで、十分考えてもらわなければいかぬと思っております。  なお東海道新幹線を五カ年計画ということでありますが、これだけの当初予算、債務負担を入れまして全部合せても九十億でおよそ五カ年間の進度がとれるのかどうか、これを一つお尋ねしたい。
  43. 永野護

    永野国務大臣 私が運輸省に奉職いたしまして以来、国鉄のあり方については、今、久保委員が御質問になった点を最も大きな問題として、どうしても一ぺん考えなければならぬ問題だと考えておるのであります。つまり、今日では独立企業体という面と、国鉄という国家の企業という面と——これは私の立場から申すのは少し言い過ぎかもしれませんが、悪い点だけを両方兼ね備えておる。全部がほんとうの独立の企業体として自由に経営ができる立場にありますと、国鉄経営についても変ったいろいろな施策も考えられるのでありますけれども、今日ではほとんど——極端な表現をしますと、小さなもの一つ買うのでもみんな大蔵省の認可を得なければならぬ。上げた金はみな吸い上げられてしまうというわけで、どこに独立企業体の実体があるかと言いたいような面があるのであります。従いまして前の国鉄のときの方がむしろいいじゃないかというような説すらあり得るのであります。せんじ詰めると、今の公共性と企業性との調和をどこでとるかという久保委員のお説に集約されるのでありますが、いずれにいたしましても、現状のままを何らかの形で打開して実情に即するように考えなければならぬと思っております。その点は久保委員と全く同感であります。ただ同感ばかりではいけない、いかにしてそれを実現するかという具体的の問題になりますけれども、せっかく研究しておりますから、いましばらく時をかしていただきたいと思います。  それから外資は内地産業を圧迫しないようにしなければいかぬ、そうでない外資は入れるべきでないというお説も、実はこれはアメリカと交渉いたしますときに、私が最も重点を置いて話をした点でありまして、私はインパクト・ローンで話をしておるのであります。そのときに向うは、そうでなくて、物に結びついたものなら話がしやすいけれどもと、こう言うのですが、物に結びついたローンでなくちゃならぬとまではまだ言い切っていないのであります。従いまして交渉は全部これから先のことでありますけれども久保委員の御質問の趣意は十分考えつつその交渉を進めて参りたいと考えております。
  44. 久保三郎

    久保委員 企業性と公共性の調和をせっかく御研究なさっておるということなので、その研究材料の一つとして私の考えを申し上げたいと思います。先ほど申し上げたような国鉄の実態でございますから、現在の国鉄にいわゆる政策としてしわ寄せしておるもの、それにはいろいろな運賃の割引がございます。そういうようなものは全額補償しろということではなくて、せめて輸送原価だけでも償うべきではないか。輸送原価プラス利潤の方は別として、原価以下の輸送を強要されて、それで企業性を発揮しろと言われても、これはちょうど子供に重い荷物を背負わして百里の道を歩かすようなもので、だれがやってもとうていできない。巷間伝えられる民営論はそういうものをそのままにしておいてやれる民営というものはどこにもありません。  もう一つは、先ほど申し上げたような閑散線、あるいは新線の建設、こういうものも、交通政策上から国鉄でやらなければいかぬようなものは当然敷かなければいけない。しかしそういうものの建設資金に対しては、少くとも利子補給ぐらいはやってやりたいと思うのです。こういうものをまず整理していかぬと、現在起きておる現象は、閑散線区といういわゆる赤字線区に対しては合理化を促進していく、この合理化ももちろん名前の通りの合理化ならわれわれもこれを否定はしません。積極的に賛成します。ところが支社制度あるいは管理局の権限強化ということになりまして、そこに予算あるいは目標を張りつけられる、張りつけられるから、どうしてもそこで何とか幾らかでも赤字を解消しなければならぬというので、無理な面が相当各地に出てきておるのが実態であります。そのうち国会も終りになりましたら、大臣一つそういう閑散線区の実態を御調査いただきたいものだと思う。これが実態なんです。そういうことではほんとうに国鉄の万全な運営はできないのであります。まずもって先ほど申し上げたような線をやってもらう。  それからもう一つは、岸内閣は法治国家の国民は法律を守らなければいかぬということでやっておりますが、政府自体が守っておらないのが国鉄にもございます。たとえば傷痍軍人の無賃輸送の問題であります。これは法律では全額国が負担すべきものとなっている。ところ負担は三分の一ぐらいしかしていない。これは全部大衆が背負う。傷痍軍人を無賃で輸送することはこれは国策として当然だ。ところがその国策は——岸内閣は法律を作ってぽっと出した。手数も金もかからぬでしょう。それを大衆がしょっていく、こういう実態が一つあるのです。この間大蔵省からもおいでになりまして聞きましたが、大体見合っているはずだと言うのです。見合っているはずが実際は見合っていない。こういうことについて運輸省なり国鉄は非常に弱腰である。この点は一つ実業界のオーソリティである大臣がいる間に少くとも筋金を通してもらわぬと、国鉄はどうにもならぬというのが私の主張であります。そういう観点からぜひお願いしたい、こう思います。  続いて来年度の国鉄予算でありますが、その中で収入の大半である運輸収入の見積り方であります。     〔簡牛委員長代理退席、委員長着席〕 これについては、たとえば旅客収入で見ますと、三十三年度の実績見込みに対して約百六億、これが五・七%の増になっておるようです。それから貨物がやはり三十三年度見込みに対して約百九億の増、これは七%ということであります。ところでお尋ねするのは、旅客収入の五・七%の増は、そういう大幅なふえ方をする要因が三十四年度には何かあるのか。たとえば国際オリンピックがくるとかなんとかという、そういう非常に人の移動があるような様子でもあるのか、あるいは天気でもずっと続いて行楽びよりが続くような天気予報でもあるのか。それでない限りは、大体今までの実績からいいますと累増が八十億から九十億の間だと思うのです。この点だけでも少し多いんじゃないか。それからもう一つ貨物運賃では、大体経済企画庁の発表による見通しでは、鉱工業生産の伸びは約六・一%、それから農林水産の方の伸びは全然ないと言っていい、〇・三%だ、こういうのです。ところ国鉄貨物輸送だけは七%ふっかけている、こういうことなんで、これもどうもそれだけの伸びがないだろう。なるほど来年度の予算はだいぶ景気がいいような予算で、景気がよくなるというかけ声があります。どうなるかわかりませんが、たとえばかけ声だけでもよくなるという見通しに立っても、そう極端に早くから刺激してくるわけじゃない。そういうのはおそらく後半に入って、しかも後半も第四・四半期にならないと本景気にならないのではないか。そうなると大半の貨物収入から見ても七%増は少し過大ではないか、こういうふうに考えております。  この二つの点について、一つ国鉄なり運輸大臣からお答えを願いたいと思います。
  45. 永野護

    永野国務大臣 来年度の収入見込みの具体的の数字のことにつきましては経理担当者からこまかいことはお答えいたしますが、私は大体論といたしまして、来年度は世界経済の大勢を楽観いたしております。必ず今考えられております以上の経済発展をするのではないかと考えております。国鉄のような大衆の生活に直接影響のありますところは、もちろん基本は鉱工業生産という一番産業の骨幹ともなるべき産業の見通しによらなければなりませんけれども、しかしこういう大衆相手の仕事は今の大衆の全体の消費生活、つまり生産の基盤となる、骨格となる鉱工業生産ということももちろんこれは基幹であることは言うまでもありませんけれども、とりあえずのところは、人の移動だとか貨物の移動ということは、消費経済の消長ということが大きく響くと思うのでありますが、過去三年続いた豊作による農民のふところのいいということと、そうして逐次きまするべース・アップによって国民の一般消費階級に潤いができたという二つの要素が、この消費景気と申しますか、消費物資の荷動き及びそれと同じような意味における人の動きを増長して参ります。これは各デパートなんかの売り上げの足取りを見ましても大体私の考えは当っておる、こう考えるのであります。従いまして今の程度の成長率は、大体論から見まして、私はそう無理な見積りではないと思いますけれども、経理の担当者はこれを具体的に数字に盛った計画を持っておると思いますから、それは当事者から説明することにいたします。
  46. 久保亀夫

    久保説明員 では私から数字について御説明を申し上げます。ただいま久保委員の申されたように、三十四年度運輸収入の見込みは、ごく最近にとりました三十三年度の実績見込みに対しまして、旅客収入では五・七%、貨物収入では七%の増加を見たわけでございますが、これのよりどころは、昨年十二月に経済企画庁で出されました三十四年度の経済見通しというものによりまして出したわけでございます。これによりますと、まず貨物から申しますと、貨物輸送につきましては全国の貨物輸送は来年度九・一%伸びる、その中で国鉄の受け持つ分野につきましては七%。それから旅客につきましては全国で七・四%、そのうち国鉄の受け持つ分野につきましては五・六%、こういう数字が実は出されておりまして、これは貨物輸送につきましては総生産、あるいは旅客運賃につきましては個人消費指数といったような過去の計数からそういったものの伸び方と一般輸送特にその中の鉄道輸送との相関関係をいろいろの方式で求めまして、それによって出した数字でございまして、私どもといたしましては、国民所得の増加なり、あるいは生産指数なり個人消費指数が経済企画庁の見通された数字で伸びていきますならば、私どもの方の数字が達成できるのじゃないか。もちろん私ども自体としての増収努力というものはそれにかかわらず鋭意やるつもりでございますが、そういった面からいきまして全体の国内の生産あるいは消費指数がこういう計画で上昇していくならば、こういった数字が努力と相待って得られるのじゃないか、かように考えております。
  47. 久保三郎

    久保委員 これは大体経済企画庁であろうが何であろうが、みんな大道の八卦見と同じでありまして、正確に当てる者はおそらくない。たよるものは勘ぐらいだと思うのです。そういうことになりますと水かけ論になるかもしれませんが、少くともたとえば貨物の輸送は、御案内の通り貨車で運ぶような大量なものはだんだんなくなってきておるというのが最近の強い傾向だと思います。そうなりますと、景気がよくなってもこれはますます減るだけであります。大量貨物がふえるということはあまり期待できない、こういうふうに私は思う。というのは、大体が今の経済界が、大きな財閥は別として、ほかの産業経営者は、ほとんどが自転車営業と言っては大へん語弊がありますが、そういうのが多い。そうなりますと、一括大量貨物の移動というものはそうはない。一括大量貨物の輸送というものはそうはふえない、そういうことであります。いずれにいたしましても、この見積りは、今の御説明では大体妥当だ、こういうことだと思いますが、とにかく一つ企業でありますから、これはやはり最初は収入の方は手がたく見積っていかぬと、今度は事業計画その他が全部狂ってくるというのが実態だと思います。そうであるから、大よそ小幅にこれはしておくのが当然でないか。今後たとえば予算総則にある弾力条項なども適用はほとんど見込めないのじゃないか、こういうふうに私は思うのです。それでありますから、こういう収入の問題は少し考えてほしい。  それからこれは、大臣が行ってしまったが、政務次官がおられますが、こういう予算をなぜ強く言うかというと、これはみんな第一線の駅へ全部配当になる。お前の駅は今年度何月は幾ら、こういうことになりますと、これは大へんな苦労をするわけです。といってお客や荷物を、町へ出て簡単に引っぱってこれるかというと、これはこれないのです。そういうことで、結局現場、末端においては、この収入の予算、これに対して非常な神経過敏にならざるを得ない。そこから当然労働強化とかそういうものも惹起してくる場合があるわけです。そういうわけでありますから、この予算の見積りというのは、少し考えものだ、こういうふうに私は思います。  時間もありませんから先へ参りますが、今後組まれる場合は、大蔵省の一方的な——大蔵省との折衝は何回ほどやられたのですか。二、二回やられたのですか、数字をあっちこっちいじったのは……。
  48. 久保亀夫

    久保説明員 大蔵省とは、もちろんこちらの要求数字を出しまして、いろいろと議論もし、またその中間で、企画庁の経済成長の見通し、こういったものも入れて結論を出したわけでございまして、実を申しますと、ことしの予算につきましては、私ども当初要求いたしました予算に対して、むしろ若干減少しておる。と申しますのは、貨物収入の見込み等は、去年の夏から十二月につきまして、予算を最終的にきめる段階になってむしろ悪くなったというようなこともありまして、当初出しましたより減少しているといったような数字もございまして、いろいろ経過はございますが、特に大蔵省から水増しされたというような経過はございません。
  49. 久保三郎

    久保委員 それでは次に人間の問題、予算人員についてお伺いしたい。  予算人員の査定の基礎は言うまでもありませんで、これは業務量だと思います。この業務量の基準であるところの換算車両キロ、これは御案内の通り逐年増加しております。ところがこの職員定数は、ほとんど増加しておらぬ。こういうことでありますから、職員一人当りの換算車両キロは、昭和二十七年以来ずっとふえておる。三十二年は二十七年に対して一二五%、いわゆる二割五分多くなっている。こういうのがまず一つ。それからまた営業収入で見ますると、これに対する比率を見ますと、職員一人当り営業収入の指数は、昭和二十七年に対して三十二年が一五二%、これはおそらく三十三年度は少し下っておる。大幅には下らぬと思う、一五〇%くらいだと思う。こういうことで増加しているわけなんです。ところが先ほど申し上げたように、業務量は増加しているのに、全然人員を増さない。こういうのは安全輸送を、あるいはサービスの向上を唱えている国鉄として、どこかにしわ寄せがいっていると思う。これが巷間いろいろだたかれる材料になってくるのが一つあると思う。それで来年度の予算人員は、前年度と同じ四十五万五百二十五人ですか、こういうことになっている。ところが先ほどお話があったように、来年度は旅客において五・七%、貨物で七%の増を見込んでいる。そのほかにこれは新線開業が四線あるので、四線で約九十キロ。それから東海道新線、これも先ほど言ったように着手する。こういうのは、当然これらの人員を加えなければ、ほんとうの万全な安全輸送というものは私はできないと思う。単に労働者の生産性の向上だけに今日までたよっているが、これにもすでに私は限界があると思うのです。だからそれはどの程度まで生産性を向上するつもりなのか。先ほど申し上げたように、車両換算キロでいって三十二年度は一二五%になっている、あるいは営業収入に対して一五二%になっている。これ以上に来年度はなるわけなんです。営業収入に対しては一六〇くらいになるでしょう。そういうことを考えて、どこまで定員はそのままでやっていくのか、これを一つ御説明願いたい。
  50. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 国鉄の職員の数が幾らが適正かということは、非常に算定がむずかしいのでありまするが、実は三十二年度に法律改正によりまして、運賃の値上げをいたしました。それの前に鉄道が再三運賃値上げを主張いたしましたが、それにはまず経営全体の分折をして、それが妥当であるかどうかということを調査しなければならぬということで、経営調査会ができたのでございまするが、経営調査会の答申では、運賃値上げはやむを得ない、しかしながら国鉄企業としては、もっともっと合理化、節約をする余地がある。それで運賃値上げはやむを得ないとしましても、一つの理由で要員につきましては、今後五カ年計画の遂行途上においては、いろいろの近代化をはかって、それで人間を生み出して増員はいたさないようにというふうな答申が出ております。それで私どももいろいろ工夫いたしまして、いろいろ文化の発達に伴いまして能率のいい機械ができたとか、あるいは動力を近代化するとか、あるいは通信の画期的な変更をするとか、そういういろいろな点で要員の節約のできる部面がございまするので、その点に鋭意努力して、大体五カ年計画につきましては、かたがたそういう近代化を行いつつ、要員の点につきましては過大にならないように慎しんで参りたいと存じておりまするので、労働生産性はもちろん上りまするが、それをカバーすることとして事務の改善ということで埋め合せて参りたい、こう考えております。
  51. 久保三郎

    久保委員 お話のような、たとえば近代的な機械を導入して、それによって人員のふえることをカバーしていくのだということだけではないようなんであります。たとえば予算人員が足りないので、業務委託をどんどん外部に流す。たとえば先般もお話に出ました客貨車の清掃業務等も切り離す、これはそれだけ当然人間が要らない。あるいは閑散線区だというので、これまた日通その他に代売あるいは受託等の業務を全部委託していく、そういうことをやっていくと、最後にはほんとうに東海道と山陽線くらいを残して、全部どこかの会社に持っていかれちゃうのじゃないか、極端な話こう私は思う。そういうことではほんとうの経営ではないと私は思う。ところで、そういう合理化でやっていくのだと言いますが、あとからもちょっとお話し申し上げますが、合理化だけでやれる部面とやれない部面とあるわけです。たとえばこの間私、山手線の電車を待ちながら上野の駅で見ていると、ちょうど線路工手が突き固めの作業をやっていた。タイ・タンパーというのか、ああいう機械をこの前見たのだが、つい最近見たときには昔ながらのつるはしをもってびたつきをしている。これはどういうわけかとよく聞いてみたら、タイ・タンパーを持って行っても、しかけて放す時間の方が長くかかって仕事にならぬ、だからこれはびたつきの方がいい、いわゆるつるはしの方がいい、こういう話です。それはそうだろうと思う。これは一丁持って逃げればいいのですが、機械はそうはいかぬ。こういう矛盾もあるわけです。だから、こういう点を考えないで、単に人員をもらえないから、もらえないからというので、そういうところにだけもっていくと、大衆には迷惑がかかる、労働者には労働強化が出てくる、こういうことだと思うのです。  それからもう一つついででありますから、機械化と人間の問題で私見を申し上げておきますが、たとえば機械を導入するものは、電話の交換の方は別として、これは頭脳の労働者でひどい方でしょうが、大体労務職関係が多いと思う。たとえばこの線路工手のやっている作業に対して機械を導入する、これはけっこうだと思うのです。機械の利用できる部面はどんどん機械を利用した方がいいと思う。ところが先ほどのお話のようにこれでもって人間を減らしていく、あるいはふやさぬということに今なっている。そうなりますと、国鉄経営の近代化というのはなるほど機械だけは入ってきたが、そこに携わっている人間の頭の中はちっとも近代化できない。国鉄の幹部の方は職掌柄おわかりだと思いますが、綿路工手というのは昔ながらの単なる肉体労働だ、頭でものを考えたり判断する必要はないのだというような考えが今でも国鉄幹部の中にありはしないか。それだったら大へんなことになると思う。肉体だけなら、それは機械に置きかえればいいです。そうじやなぐて、近代化というのは機械を入れると同時に、今までものを考えたり判断したりできなかったような頭をそういうふうに置きかえることもやはり一つの近代化だ。それをやらぬとなかなか国鉄全体として成長はむずかしいと思う。そういう点を一つ考えてほしいと思う。  続いて定員の問題でありますが、これは新線開業は昭和二十八年から見ましたが、二十八年以降三十三年までに、職員の実績は、ほんとうに配置してあるのは千六百六人配置してある。ところがこれに見合うところの査定人員はその半分の八百六人、三十年度以降は全然査定人員はなし、ゼロだ。これは全部無理な配置転換その他によって置きかえてきた。今度四線で約九十キロの新線開業も、この形でやっていくと、この辺でもう少し考え直さぬとこれはえらいことになるのではないか、私はこう思う。それから、さっきの東海道新幹線の着工、これもある。まず第一に新線開業の四線、九十キロで大体どのくらいの人間を必要とするのですか。もう一つは東海道新幹線でどのくらいの人間が三十四年度それを担当するのか。もう一つは、昨年あるいは一昨年、特に昨年は多かったのですが、長距離列車、いわゆる優等列車の増設が多い。この場合にサービス要員が当然必要になってくる。それからもう一つは、その乗車券の販売を集中するとかなんとかいう案があるそうですが、そういう問題、いわゆるサービス向上のための所要人員はどのくらいを考えておるか。それからもう一つ業務量が多くなってきますと、今までの特殊勤務というものが徹夜勤務に置きかえられる、いわゆる勤務形態の変更、こういうもので相当の人間もふえてくるのじゃないかと思うのですが、それら新しい定員増は全体量どのくらいふえる見込みですか。
  52. 久保亀夫

    久保説明員 ただいまはっきりしておりますのは、新線の開業、今、久保委員のおっしゃったようにこれが予定通り開業いたしますと、こまかい査定はいたしておりませんが、大体三百人前後必要かということには相なるわけで、これは申されたように、先ほど総裁が申しました配置転換その他で生み出していきたい。それから新幹線につきましては、この予算に出ておりますように来年度は百人ということでこの予算にもお願いいたしておりますし、その人員でやって参りたいと考えております。それから先ほどのサービス改善その他につきましては、これはこの予算が通りまして、来年度の列車の増発計画と生み出す要員とにらみ合せながら計画を進めて参りたい、こういうことになって参るわけでありまして、ただいま何百何十人とはっきり申し上げる段階になっておらないのであります。
  53. 久保三郎

    久保委員 今まで業務量の増加に対しては、先ほど小倉副総裁から答弁があったように機械を入れて合理化していく、あるいは非採算線区の方で合理化して要員を配置転換するということでまかなってきておると思うのですが、そのほかに長期雇用の臨時雇用員というものは大体五千五百人くらい長期に雇い入れているのじゃないかと思う。これは少くとも予算に当然組み入れるべき性質のものであります。大体この長期雇用の臨時雇用員の仕事は、御承知のように運輸の第一線に一般職員と同様に働いているのであります。そうしますと輸送の責任態勢からいっても、これは当然本式の要員に置きかえなければいかぬと私は思うのです。だから当然少くとも今長期雇用している五千五百人を定員化するという必要が、さしあたり最小限に見積ったとしてもありはしないか、こう思うのです。工夫創意によって要員を生み出すというのも一つでしょうが、これは先ほどのお話の通りでいいとしても、現実に足りないから欠員補充その他のために五千五百人もの長期雇用員を使っているということは、仕事の上からいってもこれはゆがんでいます。責任態勢からいってもまずい。何か事故を起したら大へんなことです。臨時員でございますといって済ましているわけにいかぬ。それでありますから、これは責任の上からいっても当然少くとも五千五百人は要員化する必要があるでしょう。これについては大蔵省との折衝はどうなっておるのか。
  54. 久保亀夫

    久保説明員 ただいまおっしゃったように、長期臨時雇用員というものが四千人くらいいるかと思いますが、現在おりますことは事実で、この中に、仕事によりましては若干季節的波動に備えたものもございますが、若干おることは事実でございます。ただ業務内容につきましては、実際運転関係は絶対に困るということで極力避けまして、単純労務職というと言葉は悪うございますが、庫内手でありますとか炭水手等につきまして、やむを得なかった場合に臨時に行われているということはございます。それで私どもといたしましては、たとえば毎年度御承知のように特別退職もございまして、もちろん職種別には過剰人員も実はありますので、そういった場合にできるだけそれを差し繰りいたしまして、その臨時雇用員を極力減していくということはやって参りまして、実はその数字は一昨年等から見るとどんどん減って参っておる数字でございます。と申しますのは、昨年度特に神武景気等で急激な輸送量増ということもございまして、昨年度の予算では二千八百人という増員をいたしたのでございます。それでございますから、来年度の予算といたしましては、予算面では輸送量はふえないのであります。旅客、貨物を通じて輸送量もふえない、一年おくれになっているという格好もありまして、増員ということはむずかしいし、また方向としては置きかえて持っていきたい、こういう考え方で参ったわけで、今の臨時工員も本年度末の特別退職とからめて、できるだけ配置転換あるいは調整で減らして参りたい、かように考えております。
  55. 久保三郎

    久保委員 いずれにしても必要な人員だけは当然確保するのが当りまえです。一つ今後とも努力をお願いしなければいかぬと思います。  それからもう一つは、来年度の予算人員の中で、トータルは先ほどのように三十三年と同じでありますが、中間勘定から損益勘定に千人振りかえていますね。これは工場と炭鉱関係だと思うのでありますが、国鉄というのは最近検修の回帰キロ、これの延伸、こういうことと、先ほどお話があったように、合理化、機械化といいますか、そういうことでそれを振りかえている、こういうふうに思うのであります。こういう振りかえは、先ほど私が言った論法からいけば、それ以上に、何か極度に、たとえば工場区といいますか、そういうところの職場を圧縮していくような傾向がある。これは、昨年の国鉄の監査委員会指摘事項の中に書いてある文句であります。その中で特に検修関係の中にこう書いてありまして、在場日数の短縮をするために、区に同着後の手直し件数が非常に多い。これは車両運用効率上まずいという指摘事項が、一項目というか、あります。これは、来年度は中間勘定から振りかえるということと逆だ。これは極度に人間を減らしていって、結局労働強化のために、在場日数は、機械化で人数が少いから、ちょっとしたところは見のがして出してしまえということで出してきたのが、使いものにならぬで、今度は手直しをやる。結局これは二重に損をしている。こういう格好が出ているわけです。これは監査委員会指摘しているのでありますから、そんなに微々たる事項ではないと私は思う。  それからもう一つは、運転事故の面から見ましても、なるほど全体としては職員の努力その他によって減っております。年々減少の傾向をたどっている。これはいいことだと思います。しかし、そういうのも事実だが、一面、貸車の故障も、絶対数というものはあまり減っていない、これも事実です。貸車の中でも担バネとか自動連結器とかいうのが多いのだそうであります。これを考えると、中間勘定、特に工場関係から人間を引き揚げて配置転換するというような情勢ではないと私は思う。これは一つ考え直す必要がありはしないか。  もう一つは、振りかえの中の、たしか五百名ですか、これを炭鉱から振りかえる。志免炭鉱の今日の情勢は御存じの通りであります。国鉄総裁がどのように考えようとも、大臣は別構想を持っております。これは来年の四月以降いつ結着がつくものであるかわかりません。特に労働問題等が円満に解決しなければ云々、こういうことを言っております。なかなか困難な情勢であります。ところが、困難な情勢にありながら、中間勘定の炭鉱の要員から損益勘定へ振りかえていくということは、振りかえられないということです。振りかえの見通しはない。そうすれば、損益勘定のそれだけの穴はどうして埋めるのか。やはり長期雇用要員でまかなうつもりなのか、これを一つ聞きたい。  それからもう一つ。最近聞くところによれば、当局側は西部支社に対し、志免炭鉱から要員受け入れをするような画策をしているそうだが、そういう点差あるのかどうか。炭鉱はいまだ結着がついておらぬのでございます。人間についても手を出してはいかぬというのが私の主張。そういう観点から一つお答えを願いたい。
  56. 久保亀夫

    久保説明員 ただいまの人員振りかえの点でございますが、お説のように、来年度損益勘定へ千人他の中間勘定から振りかえます。その内容は、車両工場から四百、諸工場百人、それから炭鉱勘定から五百人という振りかえを実は予定いたしております。工場につきましては、先ほど久保委員も申されたごとく、本年度車両修繕回帰の延長とか、技術の進歩あるいは材質の向上といったようなことで、修繕費の合理的節約という面から回帰の延長を各車種について実施いたしまして、その業務量の減ということもございます。  もう一つは、きょうに始まったことではなく、一昨年からやっておりました例の客車の鋼体化が完了いたしまして、その関係で人員の過剰といった面もございます。実は実員の面から申しますと、この程度の振りかえをいたすことは、相互間の仕事の量からいえばむしろ当然ではなかろうか、こういうことで、先ほどの回帰の延長ということとあわせて考えたわけであります。  それから、ついででございますが、先ほどの客車の手直しの点も監査報告にございまして、私どももこれはかねがね痛感しておったところでございますが、これはただ工場の手抜きとか、できばえが悪いということよりも、むしろ使う方の側から見て、やはり一ぺん見てみないと安心ができないという、人の本能というか、そういうようなことが多かったようで、もう一ぺん修繕をやり直すというほどでもございませんで、その辺の指導教育については力を入れておりまして、そう目立ったものはだんだんとなくなっているということでございます。  もう一つ、今の志免炭鉱の問題でございますが、この要員の振りかえは大体現在員に即して、御承知のように、昨年でございますか、六坑の廃止をやりまして、その関係の要員は昨年初めから実は配置転換をいたしましたその分に対して見合った数字でございまして、特にこれからどうということでございません。これは志免炭鉱の根本問題が御承知のようなことですから、結論を得ましたらそれに従って処理する、こういうことでございます。
  57. 久保三郎

    久保委員 その工場の人員不足で云々じゃないのです。使う方の側が用心のためにまた見るのだ、こういうお話でありますが、それは手直しでなくて点検です、直っていればよいが、直っていないからそれは手直しという。それは久保常務でもおわかりと思います。今の客車の鋼体化ができたというのは、客車向上、これはなるほどそうかもしれません。しかし、全体として先ほど言った車両事故の問題、それから手直しの問題も含めてこれはもう少し考え直さなければいかぬ。要員計画は誤まりであろうと思う。結論として、志免鉱業所の閉鎖の問題とは別であって、去年は六坑閉鎖でやった。それは去年の話で終りである。来年はどうなるかということです。今の生産からいけば減らすということになる。これも聞いた話でありますが、そのうち正式に報告があるでしょう。入坑の奥で新しい鉱脈に突き当って掘れない。そういうところから炭鉱の要員を引き揚げるというのは、どうも話がおかしい。公平に見て、炭鉱の結着がつくまではそういう振りかえをやるべきじゃない。売る立場に立てば、掘っていなければ出ない炭鉱は安くなるのが当然である。だからどんどん掘って、売る立場になれば高く売った方がいい。そういうことからいえば、あなたのおっしゃる五百人を炭鉱から引き抜くというのは、志免問題が片づかなければいかぬでしょう。片づかぬうちに、今のままでこれは配置転換の要があるのだという計算はちょっと納得できない。出炭量からいってどうなのか、これを一つお聞かせ願いたい。
  58. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 工場の中間勘定から人間をほかへ持っていくと工場の従来の使命が達成せられないのではないというお話のようでございますが、実は鉄道の車両工場は、戦後におきまして軍の工場を引き受けたのがたくさんございます。それは少しずつ整理はして参りましたが、いまだに引き継いだものが残っております。片方、戦前戦後非常に車両を酷使いたしましたので、車両の質が低下しておりまして、これを修繕するのにやはり設備及び人間を要したのでございまするが、もうこれも大かた済みまして、ことに最近五カ年計画は遂行という意味合いから車両をどんどん新製をいたしております。こういうふうなことをにらみ合せまして、実は現在車両修繕工場の手が余りつつあるというのが、私どもの常識になっております。それで前に木製車を全部鋼体化するという工事も起しましたし、また古い機関車のボイラーを急速に改善するというようなこともいたしましたが、それもほぼ完了いたしました。そう相なりますと、現在の車両工場としては能力が余るという傾向になって参りました。それで、決して車両工場だけということでもございませんが、先ほど申し上げましたように、鉄道は企業の上にあぐらをかかないで、もっと能率よく、もっと経済的に運営しろという各方面のお言葉がありますので、私どももその線に沿っていろいろな工夫をいたし、そこで金も浮かし、人間も浮かして必要な方面に持っていくということを考えていますので、そういう意味合いからいいまして、現在の車両工場の改善ということも考えておるのでございます。  また志免につきましては、国鉄には一月十日付の大臣の指令をいただいております。国鉄はそれを大臣の指令と考えておるのでございまするが、ただ、今の人間の点につきましては、現地においてどう呼びかけておるのか、私、現段階でははっきりいたしませんので帰って調査いたしまするが、ただ考えられまするのは、北九州の電化工事というのをいたしております。それにつきましてはできるだけ各方面の余裕のある人間を持ってきて、電化の工事あるいは事務に当らせるようにということで進んでおりまするので、そういう意味合いからあるいは志免も入ってきたかと思いまするが、そういう点につきましてはまた調査させていただきます。
  59. 久保三郎

    久保委員 今の中間勘定の振りかえは、どうも御説明では納得しかねるわけなんです。久保常務、先ほどの修繕工場の問題は、これにはこう書いてあるんです。「車両運用効率向上の見地から工場修繕のできばえ向上に一層の努力をすべきである。」、できばえが悪いから手直しするのです。これは訂正してもらいたいと思います。いずれにしましても、こういうことで、車両修繕、回帰キロの延長も、これが十分な、満足するものであるかどうかという点については、私はしろうとでありますが、大へん疑問があります。そういう点は抜きにしましても、さっき言ったような単純労務者のような形に全部人間を置きかえるということでなくて、もう少しものを考える人間を置くということがいいのじゃないか。そういう点からも、ただ客車鋼体化が大体できたからそれをどっかへ持っていこうというような単純な形での配置転換は慎しまなければいかぬと思います。各方面から節約しろという声がかかってつらくてかなわぬというようなお話でありますが、なるほどつらいでありましょうが、一人ばかりつらくてもしようがないのですから、全体としてやはり先ほど言った公共性と企業性の調和ができかねるうちは、どんなにやっても非難はつきものであります。それでそういうときには、その調和をその人にお願いしたらいい。それをしないで経営合理化しろつたって無理なんです。そういうことを考えないと、大衆にも迷惑をかける。稼働施設などの手抜きをして車がひっくり返ったという場合には、それこそまた国鉄が非難をこうむる。こういうことは厳に慎しんでもらいたい、こう思います。いずれにしましても、炭鉱の配転は出炭計画から出ているのか、あるいは現在の要員は五百名要らないのか、そういう計画は文書によってあとからいただきたいと思います。  それから、続いて修繕費についてちょっとお尋ねします。先ほどもお話があったようでありますが、修繕費というものは減らしていくのだ、これは賛成です。ほんとうに要らないものは、減らすのが当りまえなんです。ところが三十三年度に比較して来年度は予算が全体で二億八千余万円減っているわけです。それではその内容であるところの修繕工事費はどうかというと、昨年に比べて実に八億六千余万円の削減です。それほど修繕費が要らなくなったというのは、修繕はしなくてもいいという国鉄の実体ですか。維持修繕というものをそんなに減らしてもやっていけるのだろうか、私は非常に疑問であります。特に三十三年度は五百九億ですか、これも結局内容としては五%の節約ということで切ってある。その五%の復活もできないし、なおかつ今度はその支柱であるべき修繕工事費は八億数千万円の削減だということでは、予算面から見ますと、国鉄の維持修繕は現有施設で万全である、こういうふうにも考えられる。大へんな心臓だと思う。それほど楽観していいんですか。
  60. 久保亀夫

    久保説明員 三十四年度の修繕費予算が三十三年度より若干減少しておりますことは事実でございますが、これにつきましては、一つにはこの三十三年度つまり本年度の予算をきめました当時の鋼材等、特に鋼材でございますが、鋼材の価格が相当高い見込みだったということ、それに比べますと今度の予算をきめましたとき、すなわち現在は鋼材その他セメント等について、ことに鋼材については相当下っておるというような要素を一つ一つ計算して出したものであります。もう一つは、五カ年計画の進行のおかげで、設備の近代化と同時に取りかえ等も済みまして新しくなって参る、こういう点の修繕費の逓減というようなこと、それから全般に工事費の節減ということにつきまして、ことに外注につきましては非常に厳重に指導いたしております。そういう面も含めまして、これで適正な修繕費として設備の維持はやっていける、こう考えております。問題はむしろこの予算をくずさないで確保したいということが問題ではないかと考えておりまして、ここ一、二年度は若干そういう点について十分でなかった点もございます。来年度はその点について十分考えて参りたいと考えております。
  61. 久保三郎

    久保委員 これで大体満足で、この予算をくずさないように持っていきたいのだというお話でございますが、維持修繕は大体これでいける、こういう観点のようであります。もっとも運営している人でありますから、そういう責任のある人がおっしゃるのだから間違いないと思うけれども、どうも巷間伝えられるところによると、そうでもなさそうです。  それからもう一つ、これは当局からいただいた資料でありますが、たとえば車両の検修について先ほどの関連として申し上げます。先ほどの御答弁は、大体新車の投入あるいは機械化、あるいは修繕回帰キロの延長、こういうことでだいぶ少くなっているんだ、これでいいんだ、こういう御答弁のようでございますが、たとえば現有車両の車齢を見てみますると、これはけさほどいただいたばかりですから一番新しい資料ですが、蒸気機関車で、三十二年度はその車齢が二四・二年、これはだんだん車齢がふえていく、すでにもう平均以上になっているわけですね。これはもちろん電気に置きかえるとか、あるいはディーゼル・カーに置きかえるということでございますから、新造はないのですから、どんどん古くなっていくのは当りまえです。これが一番尤たるものです。ところが、この機関車を使わぬでどこかに置くのか、あるいはスクラップにするのかというと、依然として大きい機関車が入ってはいけないような線、丙線区といいますか、そういうところにD五〇とかいうような大きい機関車を入れ込んでいく。車の方もボロになる、線路の方も、あとから申し上げますが、ボロになる。ボロがボロでもってやっていくのだから差しつかえないだろう、あまりスピードも出ないからというが、そうではなくて、結局両方から、閑散線区というか、重要線区、亜幹線区以外のものは、全部こういうもので始末をつけられる。乗っている本人あるいは荷物を託送する荷主からいけば、実際これは危険千万きわまりない。  それからもう一つ、なるほど電気機関車あるいは電車それから客車、これは鋼体化ができましたから、こういうものはだんだん車齢が若返ってきている、これは当然だと思います。ところが貨車はそうはいかない。貨車は車齢がだんだん若くなってくるようでもありますが、こないようでもあるというのが現状です。これは三十二年に一七・六になっている。ずっとこの幅はあまり減っていない。おそらく三十四年もそうだと思います。これも耐用年数の平均寿命の半分以上になっている。これ一つ見ましても、こういうものをかかえておきながら修繕費を減らしていくというようなことは、鋼材が安くなるからというのですが、ことしは先行きああいうものははやるのですから、だんだん上ってくるのです。去年はなるほど不景気だから下ったけれども、下るよりは上る方が早いです。そういうところを見ますと、鋼材というか、材料費が節約できるということは——もっとも高いものを買う必要はございませんけれども、少くとも今言った車両面からいっても、すでに老朽になっているものがある。そして修繕回帰キロは延長した、要員は減らした、こういうことでは安全運転を確保することができないのではないか、こう思うのです。だから、この修繕費などは、少くとももう少し大幅に組まなければだめではないか、こういうことが私の主張であります。いずれにしましても、車両稼動施設についてはそういう実態であります。  それからもう一つ、経済企画庁が発表した新長期経済計画の中でも、こういうように指摘しております。お読みになったと思いますが、「輸送量の増加に対応して輸送力を増強するためには車や船のような可動施設の増強ももとより必要であるが、特に戦前戦後を通じて線路、道路、港湾などの基礎施設の整備がおくれてきているため、これらの施設の増強と近代化が実現されなければもはや可動施設のみを増加してもその能力を発揮できない段階にある。こういうように指摘しておる。なるほどそうだと思います。この輸送能力の基礎であるところの線路、橋梁、隧道、こういうものを強化しなければならぬはずなんであります。それじゃその現況はどうなっておるかということであります。現況については、国鉄当局は百も承知だと思います。あからさまに言ってほしいと思いますが、たとえばレールの現況は、近年通過トン数の増大、あるいは列車のスピード・アップ、どんどんスピード・アップしておる。これに比べてどうかといえば、相当負担増になっている。大体破壊力は戦前の二倍に及んでおる。それに今度は、先ほど申し上げたように列車間合いがない。東海道のごときも山手のごときもない。せいぜい二十分か十分ぐらいしかない。それも一日に数えるほどしかない。だから、結局この修繕がきかない、こういうのが実態だと思う。ところが、たとえば、いやレールは違う、いわゆる重軌条に置きかえていくのだ、ことしもその計画でやるのだというのでありますが、四千六百万トンだと思うのですが、重軌条に置きかえることは昨年とあまりふえていない。そういうことで、たとえば日豊線は、私はよく知りませんが、ある人の話では三十五キロかそこらだということですね。そこへ特急を通しておりますね。そういうことが可能なんだろうか。最優等列車を通している。この近郊の私鉄を見ましても、大体実際上そういうものはないそうです。こういうことをやっていて修繕費は要らないのだということでは、これは話が違うと思うのでありますが、こういう点についてどういうふうに考えておられるか、一つお答えをお願いしたいと思う。  それからもう一つは、軌道修繕費、特にレールの方の修繕費、これは三十二年、三十三年とも極度に減っているのです。来年度はどうなっておりますか、予算書にございませんからわかりませんが、来年度はもっと減るのですか。  それからもう一つは、先ほど言ったように、線路関係の近代化ということで機械を購入しているそうです。たくさんの機械があるそうですが、そういうものはほんとうに機械が活用できる立場にあるかどうかということです。  もう一つ、大へん高い特許料を払っているということですが、特許料はどのくらい払っているか、一つお聞きしたい。
  62. 久保亀夫

    久保説明員 初めに車両の関係のお話でございましたが、確かに、蒸気機関車につきましては新造いたしておりませんので、古くなる一方ということで、かたがた輸送量もふえるということで、これは不本意ながら使っているという面もあったのでありますが、三十三年度輸送量が若干緩和したのを機会にいたしまして、先生のお手元の表にもございますが、昨年度廃車七十両でございますが、三十三年度は約百七、八十両の廃車になるかと思います。こういったことで、合理的に修繕費も逓減し、またその安全運転も期される。また、その他のことは、たな上げということを輸送の事情によってはやっております。  それと、先ほどの回帰キロの延長、これも決してやみくもにふやすということではございませんで、技術の向上あるいは材質の向上というようなことで、合理的に、技術的に長いことかかって得た結論でございまして、それによって安全運転が阻害されるというようなことは万々ないと存じております。  それから施設関係の現況ということでございますが、この前、鉄道経営調査会、あるいつ運賃値上げをお願いした当時問題になりました取りかえ老朽施設、あれは七、八百億、あるいは隧道、あるいは橋梁等があると申し上げましたが、あれはおかげですでに七〇%近く橋梁の取りかえ等を実は完了いたしておりまして、この点はおかげさまで非常に済んだということに相なるわけでございます。  それから全般の施設の強化ということでございますが、これは修繕費とあわせて、工事費と申しますか、設備投資ということで、先ほどお話の出た軌条の重量化、あるいはまくら木等につきましても、セメントまくら木を使うとか、東海道線につきましては、毎年十億近くの金を投じましてまくら木のコンクリート化というようなことをやるとか、そういうこともいろいろやっております。  それから、ただいま久保委員の御指摘になりましたように、三十二年度あるいは三十三年度におきまして、修繕費が従来より減少したということ、これは事実でございまして、この点は、たとえば仲裁裁定の実施等というようなことで食われたということの弁解は別といたしまして、私どもとしてはこれでいいとは実は考えておりませんで、その意味で、来年度の予算を、先ほどちょっと申し上げましたように、何とか人件費に食われるということのないようにいたしまして確保して参りたい。と申しますのは、たとえば来年度の修繕費の中には、施設関係といたしまして百四十億入っております。本年度はこれは決算見込みが正確に出ておりませんのでわかりませんが、百億をあまり多く出ないのではないかという見込みでございます。そういたしますれば、これを確保いたしますと相当大幅にふえて、まくら木の交換あるいは軌条の交換等については計画通りやれる。これは施設関係だけではございませんで、その他につきましても若干同様な事情でございまして、来年度何とかこの予算を実行上確保して修繕度を向上して参りたい、かように考えております。
  63. 久保三郎

    久保委員 それでは、これはすぐ御答弁できないかと思うのです。久保務理事は大へん自信がおありのようなお話でありますが、軌条の交換ですね、あるいはコンクリートまくら木等の投入、こういうものを、今の施設を更新していくのに、こういう速度ではどのくらいかかるか、一つ計算して出してほしい。おそらく十年ではむずかしいのじゃないか。そのうちにだんだんとろけてきてしまうのじゃないかと私は思う。それから線路合理化じゃなくて、結局走れなくなるからそこは通らぬということに、極端に言えばなるのではないか。これを一つ局長から出してもらいたい。  状態はその通りですが、次に今度は施設関係の要員面であります。要員面は、配賦定員に対して常時千名前後の欠員があるようです。予算上の配賦定員はもらえないにしても、おたくの方で査定した定員くらいは、実際に配賦する工夫をすべきじゃないか。なぜ要員の確保をしないで今日までやってきておるか。その理由をまず一つお伺いします。  それからもう一つ修繕費についてであります。修繕費は支社長権限でありますが、何か、最近こういう修繕費が足りない上に支社長権限で持っていって——あるいは管理局長ですか、各方面、こういう修繕費が支社長権限に移っていく。独算制のしわ寄せで、先ほど人件費に食われないようにというお話でありましたが、人件費に食われている面もありはしないか。  それから、いつかもお話申し上げましたが、敦賀の管理局長が見せかけ工事などをやる、こういうところへ持っていってまくら木がペンキに変ったりする。まごまごしておるとまくら木が電気洗たく機に変ってしまうと思うのです。だからこの際言いたいことは、支社長権限の移譲もけっこうだが、と同時に、目的を示した権限移譲を一つすべきじゃないか。ことに修繕費等は足りないのです。何とそこで御答弁なさっても、事実上はマッチしないというのが現状だと思うのです。だから、こういう問題については一つ真剣に考えて、権限の問題をやってほしい、これを一つ聞きます。
  64. 久保亀夫

    久保説明員 ただいまの初めの施設関係の要員の問題でございますが、欠員が絶無であるかどうか、千人というお話、私はまだ確認しておりませんけれども、あるいはあるかと思います。その理由は、私がここで推量いたしますには、職種別あるいは地域別に四十五万の人員の配置状況は、相当配置転換はして参りましたけれども、各職場によってはまだ過剰の職種もあるわけであります。そうなるとおそらく見かねるところが出てくるということで、これについては私ども、先ほど臨時雇用員のところで申し上げたように、年度末の特別退職の機会にそのでこぼこを調整するようにということは毎度厳に申しておりまして、今度の特別退職の機会を通じて約五、六千になったと思いますが、続いてでこぼこをなくして参るように指導していきたいと思います。  それからもう一つは支社長の権限移譲の問題でありますが、支社長に対して現在では全体の収支のスケールあるいは経営目標というものだけを示しまして、修繕費に幾ら使え、あるいは石炭費に幾ら使えという指示はいたしておりません。もちろん従来の実績等がありますから、おのずから概数的には見られるわけですが、現在の指示の仕方で申しますと、たとえば人件費を減して修繕費をふやすということも可能なわけでございますが、実際問題としてはなかなかそうは参りません。ただ私ども指導といたしましては、ことに昨年、一昨年のような状態もございますので、できるだけ業務——たとえばこまかく申しますと旅費のようなものは極力節約して、修繕費へ回せというようなことは、支社長あるいは担当者の集まるごとに具体的に指導いたしております。しかし権限としては一応、人件費は別といたしまして、各費目間は自由に支社長限りで融通できるようにはなっております。ただ指導といたしましては修繕費に重点を置いて運用しろということは前々申しておりますし、ことに来年度についてもこの点は厳重に指導して参りたい、かように考えております。
  65. 久保三郎

    久保委員 とにかく、今の修繕費は支社長の権限にまかせてやるそうですが、いずれにしても大事な点だけはそのワクを示して、これは最低限として守れというようにやってもらわぬと、時たま頭のおかしい人が出てきて、レールをペンキにしたり材料にしたりすることがある。そうすると、国会では小倉副総裁があるいはこの支出は適当な支出ではございませんというようなことを言えば、私は念のためにお聞きしておきます、そういうことでは困ると言われる。  そこで、修繕費についてはというよりは戦後施設の近代化という点と稼働施設の近代化、これは現在マッチしておるかどうか、マッチしておるというならマッチしておるという材料をそろえてあとからお示し願いたい。あるいはしてないというならどういう見通しあるいは計画をしておられるか、伺いたい。  最後に、全体の点で申し上げたいのは、国鉄は世間からいろいろな点で非常にやかましく注目されて、どうもサービスが悪いとか経営能力がないとかいわれて、何とか一つ名誉挽回ということで思いついたのが去年のデラックス版です。デラックス版をいろいろお考えになった。これは全面的に悪いということではございません。しかしどうも一般の受ける感じとしては、そのデラックスに重点を置いて、非難を何とかそっちに向けようという役人的なずるさではないだろうか、こういうふうにわれわれは見るわけです。もしもそうだとするならば、ここで厳重な自己批判をしてほしい、こう思うのであります。  それからもう一つ自己批判をしてほしいのは、国鉄そのものは役所じゃございません。ところがここにおられる幹部全部はそうだと思うのでありますが、それは法文科系統であります、これはけっこうなんです、別に悪いからやめろということではございません。ところが実際に運営する場合には、法文科系統も必要だか知らないが、技術屋というのも必要です。ところが最近その技術屋の意見というものはあまり通らぬように見ておるわけです。一時国鉄が公社になったときには技術屋というものも相当な発言権を持たせるように何か考えておった場合があった。ところが今また役所的に変ってくるような傾向がある。だから世間から非難があると、今度はデラックス版だ、これで防戦しようというようなことになってしまった。やはり真剣にじみちに考えておる技術陣の声も聞いてもらわぬと、万全なほんとうの信頼される国鉄というものはできない。予算の盛り方についてもその通りです。この点は厳重にすなおに自己反省してほしいと思います。  次に固定資産の管理でお尋ねしたい。これはもうおわかりと思いますから、くどくは申しません。とにかく今まで国鉄は何をしておられたか。膨大な資産をかかえてその的確な把握もまだ完了しておらぬ。これは何回も国鉄の監査委員会あるいは行監あるいは会計検査院、それぞれの向きからいろいろ指摘されたが、結論としてとにかく資産の的確なる把握をしろ、こういうことだった。そこで国鉄ではすでに昭和二十七年に、この管理規定といいますか、それを作ったと思うのです。管理規定ができたときに、それに対応する陣がまえあるいは予算そういうものをとっていれば、今日はその資産は的確に下部から上部に至るまで把握できたと思う。ところがいまだその中途にあるということであります。それではお互いに困る。これは今までただ規定を置いたというにすぎない。あとは何とかやってもらおうじゃないか。だからこれに対する予算あるいは要員、それからその実行態勢、こういう点について今どういうかまえをしているのか、これを一つお尋ねします。
  66. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 簡単にお答え申し上げますが、デラックス型を作ってそれで悪い方の評判をカバーするのではないか、こういうようなお話がございましたが、決してそういう意図はございませんで、やはり鉄道のような技術の面の多いところは常に進歩していかなければならないので、そういう技術の向上ということを目ざしてやって参っておる次第でございます。  それから、もちろん国鉄は広範な事務もございますが、その根幹をなすものはやはり技術でございますので、私ども常々国鉄の技術関係のエキスパートは十分尊重していっておるつもりでございます。  それから固定資産の管理につきましては、前々から御指摘も受けておりますので、いろいろ資産管理の方の組織も強化いたしましたし、それから帳簿面も全部整理いたしまして、ただ現在帳簿とそれから実際の価格との引き合せということを、これは全体で二兆一千億もございますので、容易な仕事ではございませんが、三カ年計画を立てて着々実行いたしておる次第でございます。
  67. 久保三郎

    久保委員 三カ年計画を立てるというが、三カ年で完了するような気配はないようであります。これは一つこちらから申し上げますが、とにかくまず第一に現在の全体を一括把握するということが先決だと思うのです。これが一つ。それからもう一つは今度はそのつど整理を整え、逐次整理していくという、そういう態勢、二つあると思うのです。だから二つの業務も今やらざるを得ないような現実だと思うのです。そこでこれに対しては予算を組んであるかどうか。それからそういうものの態勢が上から下までずっと一貫してできているのか、おそらくできていないと思う。できていないとするならばどういうふうにおやりになるのか、これを一つお尋ねいたします。
  68. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 財産につきましては、財産の管理をいたしますのは、たとえば工場であれば工場長、それからレールその他でありますれば保線区長であるとかあるいは建築区長であるとかそういうのが実際の管理者になっております。それでそういう人たちのところにいろいろ帳簿もございますので、それを本社から指導して参っております。そのために昨年経理局部内に財産課を新設いたしまして、そこでこの帳簿の様式その他をきめ、現場の管理者に対する通達をいたして参っておるのでございまして、そういう意味合いから、その全体の把握ということは現地を総合して財産課で掌握しておりますし、実際の管理につきましては、その財産課の指令を受けまして、実際の現場の管理者、責任者が管理していく、こういう二本建で考えております。
  69. 久保三郎

    久保委員 とにかく職制としてはそうなっているが、現場の末端の機構が確立していないというか、そういうものがあると思うのです。だからこの際はこれは新しい仕事だと思うのです、一括全体を把握するという仕事は。それならばしかも長期にわたらなければならない。半年やそこらでできないということなら、これは予算はつけてあるのだろうと思う。その予算を活用する場合には、これは職員の方ともよく相談してやるというのが当然だと思うのですが、あまり相談はやっておらぬと思うのです。日常業務の中でやるといっても、今一括全体やるといっても相当かかりますから、やはり協力を仰がなければならぬ、その協力を仰ぐための話し合いをすなおにすべきだと思うのですが、どうですか。
  70. 久保亀夫

    久保説明員 今、久保委員のおっしゃるのは財産の実態調査の問題だと思うのですが、先ほど副総裁が申されたように、かねがね問題になっておりまして、本年度三十三年度から本格的に発足いたしまして、土地以外は大体二年で完了する、土地はやはりいろいろ問題があるので四、五年かかると思いますが、土地以外は二年を目標といたしましてことしも予算を一億余りつけまして、旅費とか測量費とかその他でスタートいたしまして、本年一月末で調べたところ、本年度計画で七〇%ないし八〇%進捗しておるという数字が出ております。おそらく年度内には、ものによってあるいは場所によって多少違いますが、八、九〇%は済むのじゃないか。それでそういったものにつきましてはおそらく二年ではきちんと済みますまいが、三年を待たずしておそらくやれるのじゃないかということで、相当予算も組んでおりますし、現場々々とのお話し合いはもちろんいたしまして、円滑に事務の進むようにいたしておるはずでございます。なおその点につきましては十分指導いたしたい、かように考えております。
  71. 久保三郎

    久保委員 現場で話し合っても話にならぬと思う。だから、やはり予算権限を持っている中央なら中央で話し合って、そうして二年なら二年でやる、あとの態勢は、下に要員がないというのなら、そういう話し合いを持つ必要があると思うが、その点どうですか。そういうことをおやりになった方がいいのじゃないか。
  72. 久保亀夫

    久保説明員 私、現場と申し上げたのは、直接保線区ということでもございませんので、支社なり鉄道管理局なりでその実態を把握しておりますので、管理局に対しましてもそういう業務指導して参りたい、かように考えております。
  73. 久保三郎

    久保委員 基本の方針についてはやはり本社でも話し合いをすべきじゃないかと思う。あまり本社では話し合いが進んでいないのじゃないか。そういう点については率直に話し合って促進するのがいいのじゃないかと思います。  最後に給与費について一言。この給与費の予算単価——これは去年三十三年度の予算単価の二万百二十二円ですか、これに昨年の仲裁裁定分として二百円、これを合せて昇給資金としてその四・五%を組んだ、こう言っておるわけですね。ところがこの昇給資金の中には三十二年ですか二十何年ですかの格差九十円を加えてあるわけですね。そうしますと実質的には昇給財源というのはほんとうは四%くらいにしかならぬ、こう思うのです。格差の残額二百七十円ございますね。これは労使間で団体交渉で妥結を見てきめたものであって、こういうものをいつまでも何か知らぬがおかしくしておく必要はないのじゃないか。お互いに成規のルールによってきめたものであるから、この辺のことは一つ全部満額入れてやるべきじゃないかというのが私の主張。だから当然この全額を予算に組み入れると同時に、先ほど言った格差九十円を含めた昇給四・五%というならば、格差を入れる入れないは別にして、五%にすれば格差の九十円は別ワクになりますから、だからこの昇給資金は四%というのを五%くらいに組むのは当然じゃないか、なぜこういうことをやっておるのか。もちろん弾力条項があるからそれでやります、こういう御答弁だと思うのですが、一応こういうものはあまり紛争の種にしないで、当初から入れておいて、そしてその上で弾力条項を適用したらどうか、こう思っておるのです。それに対してのお考えを伺いたいのが一つ。  もう一つは、期末手当と奨励手当であります。これは二・六五を組んでありますね。ところが一般公務員は二・八、これは差がある。それから同じ企業体でも、おすわりになっていらっしゃる皆さんは二・八で、一般公務員と同じ。親子の間でいて、大体親だけはいいところをならって、たくさんの子供は二・六五では、どうもちょっと近代的経営人としてそぐわないのじゃないか、同じことなら二・八組むのが当然じゃなかろうか、こう私は思うのです。これまた弾力条項によってやるのだというが、もともとそういうのをやっておいて、そして団体交渉でもきたら、最後は二・八はじいてやろうという、あるいはかけ引きの材料にこういう予算を組んだのかもわからないが、少くとも企業意識を発揮され、生産性を向上させるということを弾力条項に求めるとするならば、基礎は基礎としてやはりりっぱに組んでやる、こうでなければだめだと思う。役員が二・八、一般公務員が二・八を組んだら、二・六五ではなくて二・八組んで勤労意欲をかき立てて弾力条項でやっていくというのが、ほんとうの経営を近代化し、サービスをよくし、あるいは能率もよくするということだと思うのですが、そういうことについてどう思います。
  74. 久保亀夫

    久保説明員 前半の御質問につきまして私からお答え申し上げます。いわゆる格差の九十円の問題でございます。これは当時二、三年前の仲裁裁定を政府がのむ際に、いろいろこういった問題が出まして、大体こういう趣旨で消していこう、その間についてはあの当時はきまったようなきまらぬような状態でございますが、私どもとしてはどうしても消すということは当時のいきさつとしてやむを得ぬとしても、できるだけ少しずつやってもらいたいということで、やはりある程度やむを得ない、しかし実際の昇給資金の点につきましては、先ほど申し上げた数千人の退職整理の問題もございますので、その新陳代謝による差額等で何とかやっていけるのではないか、かように存じております。
  75. 塚原俊郎

    塚原委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時四分散会