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1958-12-19 第31回国会 衆議院 運輸委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十二月十九日(金曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 天野 公義君 理事 簡牛 凡夫君    理事 木村 俊夫君 理事 長谷川 峻君    理事 堀内 一雄君 理事 久保 三郎君       宇田 國榮君    川野 芳滿君       小泉 純也君    關谷 勝利君       高橋 英吉君    高橋清一郎君       永山 忠則君    前田  郁君       伊藤卯四郎君    池田 禎治君       島口重次郎君    杉山元治郎君       館  俊三君    廣瀬 勝邦君       山田 長司君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 永野  護君  出席政府委員         運輸政務次官  中馬 辰猪君         運輸事務官         (海運局長)  朝田 靜夫君         運 輸 技 官         (船舶局長)  山下 正雄君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      山内 公猷君  委員外出席者         高等海難審判庁         長官      長屋 千棟君         海難審判庁理事         官         (海難審判理事         所長)     寺田  武君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 十二月十九日  委員石田博英君及び菊川君子辞任につき、そ  の補欠として永山忠則君及び廣瀬勝邦君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員永山忠則君及び廣瀬勝邦辞任につき、そ  の補欠として石田博英君及び菊川君子君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  陸運に関する件  海運に関する件      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより会議を開きます。  陸運に関する件及び海運に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。高橋清一郎君。
  3. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 国鉄におきましては近く機構改革を実施されると伺っておるのでありますが、国鉄運営につきましては、これはかねてから国民一般の注目するところでありまして、その実施に当りましては、国民の声を十分に取り入れて、いわゆる公共企業体の真価をいかんなく発揮できるようにしなければならないということは当然のことと思うのであります。私はこの際私見を申し上げまして、最後には陳情的なことになるかもしれぬと思うのでありますけれども、六項目にわたる質問に対しまして御答弁を賜わりたいと思うのであります。  率直に言わせていただきますと、この際特に関心を持っていただきたいということは、国鉄経営単位現行のままでは大き過ぎ、円滑な運営が期せられないと思うのであります。このことにつきましては去る七月発表せられました産業計画会議勧告書にも指摘されておるところであります。すなわち、一日に百五万キロの列車を動かし、千百八十万人の旅客と五十万トンに近い貨物等輸送しておる国鉄を、わずか六つ支社で分割して経営しておるというそのこと自体において多くの無理があると思うのであります。いかに権限を多く与えられ、いかに有能な人をもっていたしましても、その管理能力にはおのずから限界があるはずであります。  特に感じますることは、日本海岸沿線であります。奥羽羽越信越北陸上越線等幹線が千二百キロにわたって連なっておるのであります。これが沿線地方発展に大きな役割を果しておることは言うまでもないのでありますが、かてて加えて、北海道、奥羽、京浜、中京、関西以南、こういうふうな方面にわたります重要輸送路となっておるのでありまして、もしこの太平洋岸幹線に事のありました場合におきましては、欠くことのできない代行線としての動脈でもあることは御承知通りであります。しかるに、この日本海岸地区に当りましては、これら重要幹線を総合管理運営いたしますところの支社一つ設置されてないということは、まことに奇異の感さえ抱くものがあるのであります。一方、太平洋岸支社から関係鉄道管理局までの距離を見ましても、たとえて申しますと、東北支社から秋田までは二百六十キロ、関東支社から新潟までが三百三十キロ、中部支社から金沢までが二百六十キロと、いずれもこれは遠隔の地となっておるのであります。特に青森から米原でありますが、この間の路線というものは輸送上の大動脈を形成しておるにもかかわらず、従来政府太平洋岸重視主義の陰に隠れまして、たとえて申しますと、秋田新潟金沢、こういう各管理局はそれぞれ太平洋岸支社に三分割されておるのであります。全く事情を異にする所管に入れられておるということはこれははなはだしい不合理であります。ために輸送の隘路というものは依然として打開されない。日本海の沿線産業文化活動の伸展に至大の悪影響を与えておると、はっきり申し上げていいのではなかろうかと思うのであります。  この日本海岸地方は、御存じの方も多いと思うのでありますが、太平洋岸に比べまして、これはもちろん常時私が言うておることでございますが、国鉄のみではございません、とかくまま子扱いされているのであります。整備強化がおくれがちである。そのために地方産業文化経済発展に大きな障害となっておりますことは事実であります。しかもこれは裏日本という言葉のようにやむを得ないのだというような気持で考えることは、まことに残念に思うのでございます。これを国鉄について見まするに、東北線羽越信越、上越との輸送を比較いたしてみます場合におきまして、これはいずれも年間平均が千六百万トン程度通過トン数であります。ほとんど差異は認められないにもかかわりませず、いわゆる複線の問題でございましょうが、原価の問題にいたしましょうが、その他のもろもろの設備におきましても、日本海岸幹線というものは著しくおくれておるのであります。上越線羽越線のごときはもう今後の輸送量の増加に対処するところの能力がほとんど限界に達しておると言われておるのであります。さらには日本海岸沿線というものは御承知通り寒冷地でありまして、水害、雪害が多く、その運営も容易ではなく、太平洋岸と同一視するということができない特殊事情が多いということであります。こうした実態にあるにもかかわりませず、現行体制のままで、かりにでありますが、単に支社権限強化することだけではとうてい望むようなよりよい国鉄運営は期せられないと断じてもはばからないのであります。  これらの関連からいたしまして、日本海岸線中心地で、しかも交通の要衝にありますところの、将来ますます諸工業発展の途上にございます新潟市の例を一つあげるのでありますが、あるいは新潟港を控えております。この新潟港経済圏でありますが、御承知通り秋田、山形、福島の各県も新潟港を海の門戸としておるのであります。各種の原材料あるいは各種製品というものは、これはもう新潟港対岸貿易再開とともに活発に動き始めるわけなんでありますが、この新潟港を中継といたしまして輸出入されるということは必然的なものなのであります。この新潟市にどういたしましても支社設置するということが、日本海岸幹線一貫管理運営が可能となりまして、国鉄経営がより合理的になるとともに、地方発展にも大きく寄与することは自明の理であります。このたびの国鉄機構改革に当りましては、これらのことを十分考慮の上に、新潟にぜひ支社設置すべきものであると思うのであります。このことは沿線の住民あげての熱望でありまして、実は日本海岸国有鉄道整備促進協議会というものの発足を見まして、目下熱心に運動を展開しておるということは、その事情から洞察いたしましてはっきり申し上げることができると思うのであります。  以上申し上げましたことに基きまして、次の項目につきましてお答え願いたいと思うのでありますが、その第一番目は、政府が設けられました委員会で、支社設置についてどのような答申を行なっておられるかということが第一番目であります。
  4. 小倉俊夫

    小倉説明員 国鉄機構についての重要なる御質問でございまして、総裁から答弁いたすのが適当と思いますが、本日出席いたしかねておりますので、私からお答え申し上げます。  ただいま御指摘のように、裏日本と申し上げますといけませんが、北陸あるいは秋田新潟地区の最近の御発展は非常なものでございます。しかし輸送は現在各方面に非常にふえて参りまして、国鉄の使命はますます重大でございます。御指摘のように、国鉄といたしましても十分その組織なり運営なりについて再検討いたさなければならぬ段階だと承知いたしております。それで御指摘のように私どもも最近支社権限強化ということを考えておりまして、これは先般の公共審議会の御答申、あるいは行政管理庁あるいは監査委員会というような方面からも強い御指示がございまして、鉄道はやはり分権主義でなければいかぬ。地方強化するという方面に向わなければならぬという御指示がございましたので、実は鋭意研究いたしておるのでございます。権限強化ということにうらはらいたしまして支社の広さ——コントロールいたしかねるほどの広い地域でございますと権限強化しましてもなかなか思うようにいかぬということで、支社が現在の六つでよいのか、あるいはさらに考慮すべきかというようなことも必然的に問題になって参るのでございます。ただいまのところでは二、三の支社におきましては、私どもが見ましてもいささか範囲が広過ぎるというきらいがなきにしもあらずと考えております。しかしながら、ただいまのお話にもございましたように、国鉄国民国鉄でございまして、国民の皆様の世論を十分尊重して善処いたさなければならぬということは重々考えております。いろいろその方面の御指示、御指導あるいは御注文といったようなことも十分伺いまして、支社のあり方について善処して参りたいと考えております。
  5. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 強化々々と言われるのでありますが、支社制強化徹底ということにつきまして、幾らかただいまの御答弁の中に触れられておると思うのでありますけれども、検討中であると聞いているのであります。しからばこの支社をどういうふうに強化しようとなさいますか、少しく具体的にお話を伺いたい。
  6. 小倉俊夫

    小倉説明員 支社につきましては本年来いろいろ強化の方策を立てて参りましたが、来年度におきましてはさらに予算の軍営につき、従来よりも大幅な自主権を与えていきたい。たとえば工事なり経営の面におきまして、もっと予算の自由な使い方ができるようにということが第一点でございます。それからまた人事の点につきましても、従来は課長以下の人事でございましたが、さらに人事権のもっと拡大を考えてみたいと思っております。そのほか支社を設けますことはその地方々々の御事情に応じて活発、適切な輸送をすることが眼目でございますので、列車設定——ただいままでは重要な列車につきましては支社長権限でございませんでしたが、さらに幹線の急直行ということは本社でございますけれども、そのほかに地方々々に応じました列車の運行ということは支社にまかせたい、かように考えております。そのほかいろいろこまかなことはございます。たとえば資材の購入でございますとか工事の選定でございますとか、いろいろなことはございますが、大体におきましてただいま申し上げましたような予算上の権限、それから人事上の権限運営上の権限、こういうものを従来よりも強化して参りたいと考えております。
  7. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 この支社制強化徹底いたします場合におきまして、いろいろ手続その他容易でないと思うのでありますが、どのような法律上の措置を必要となさいますか、お答え願いたいと思います。
  8. 小倉俊夫

    小倉説明員 支社設置につきましては、法律の問題ではございませんで運輸大臣認可事項でございまして、運輸大臣に申請して許可がおりれば設置できるのでございます。しかしながら支社強化につきましてはまた別途いろいろ考究中でございます。
  9. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 それでは支社現状からほんとう経営体といたしましてふさわしいものに強化徹底する必要があるというふうにお考え願いまして強化徹底するという場合におきまして、その規模でございますが、これから少し核心に触れさせていただきたいと思うのでありますが、その規模現状通りでいいかどうかということを、大へん失礼でございますが、もう一度伺いたい。
  10. 小倉俊夫

    小倉説明員 見方はいろいろございますが、先ほども申し上げましたように、ただいま輸送量がどんどんふえて参りますので、支社長仕事が非常にふえて参ります。またいろいろな五カ年計画整備でございますとかその他のことによりまして、工事上の仕事も非常にふえて参ったのでございます。そういう点から申しますと、従来の支社長仕事よりも最近は非常にふえて参りました。さらに今回権限の移譲をいたしますと、ますますその責任が重大で、かつ広くなって参るのでございます。そういう点から申しますと、従来の支社で大きな支社では、なかなか末端まで日が届かないことも懸念いたされるのではないかと思います。たとえて申しますれば、ただいま先生も御指摘になりましたが、関東支社の例をとってみますと、職員も十万をこえておりますし、営業キロも三千キロをこえております。さような大きな支社でございまして、それがただいま非常に急速に輸送量の増加しております裏縦貫線を、責任を持っていたすということも、なかなか骨ではないかと思います。また関西支社営業キロあるいは仕事の量から見ましても、従来より非常に業務量がふえておりますし、西部支社またしかりでございます。かように考えますと、これは見方ではございますが、私の考えといたしましては、なかなか支社長末端まで管理の完璧を期するということは、だんだん困難になって参ってきたのではないかと考えております。
  11. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 ただいまのような御趣意のもとに非常に熱心に研究せられ、いろいろなことを検討しておられるということは聞いておるのであります。もう少し具体的に、率直にお答え願いたいと思うのでありますが、そのいろいろ御検討願います研究の中には新潟とか、これは新潟というのは現在の支社並みに、もう戦前にあったのですよ。そういう現状が、戦争のためにああいうことになったのでありますが、新潟とか広島とか、うわさによりますと四国支社も増設したいという御意図のように聞いておるのでありますが、そういうような県が含まれておるかどうかということをお尋ねいたします。
  12. 小倉俊夫

    小倉説明員 具体的の問題で、いろいろむずかしいお答えになるのでございますが、実はただいま御指摘新潟広島高松は、元、管理局所在地でございまして、東京であるとか名古屋であるとか大阪であるとかいうところと同じ肩を並へた局所在地でございました。それが戦後六つにしぼられまして、今の新潟広島高松は、ほっの地区支社——そのころは支配人でございましたが、今の支社が置かれましたのに対しまして、ただいまの三つ地区には支社が置かれなかったのでございます。それでやはり支社がないと輸送上不便であるということで、今まで再三再四地元の方々の強い御要望があったのでございます。先ほども申し上げましたが、私どもは、国家国鉄でございますので、一般世論をも十分尊重していかなければならぬという見地から、始終そういうことにつきましては関心を持ち、また研究もして参ったのでございます。ただ支社の増設というようなことは、国鉄にとりましても非常に重要な点でございますから、やはり国家あるいは世論というものが、これを設置すべしあるいは設置を許可するというようなことでありませんと、いろいろむずかしい点も出て参りますので、そういう点はできるだけ一般の御指示に従って善処して参りたい、かように考えております。
  13. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 これで終らしてもらいますが、私は新潟出身なので新潟にばかりこだわっておる印象を与えて大へん失礼でありましたが、単に新潟がどうのこうのということよりも、文化の恩恵にあまねく平等に浴す、国民国鉄とし、国鉄をよりよくしたいという念願から申し上げたのでありますから、とくと御考究賜わりまして世論にこたえていただきたいということを最後に申し上げまして、私の質問を終ります。
  14. 塚原俊郎

  15. 關谷勝利

    關谷委員 支社の問題が出ましたので、私も簡単に御質問を申し上げたいと思います。今副総裁お話を聞いておりますと、まことに支社設置、何やらのらりくらりとしておられるようでありますので、はっきりしたことをお尋ね申し上げておきたいと思います。私は四国出身議員といたしまして、国鉄に対しましては長らく、不満ではありません、恨みと怒りを感じておるのでございます。いかに国鉄四国をないがしろにしておるかということは、副総裁よく御承知であろうと思いますが、今高松へも支社設置するというふうなことで、少し恨みと怒りがやわらいではきておるのでありますが、私は以下その理由を御説明いたしまして、副総裁のかたい決意のほどをお伺い申し上げたいと思います。  今承わっておりますと、副総裁は御答弁の中に、世論をも無視することが——世論をもであります。世論は絶対無視してはならぬというお気持でないようであります。それから世論関心を持つというような、まことに何というか、人の言うことを聞かぬ国鉄ということを端的に現わしておるようでありますが、私たちは以前から支社設置して、ほんとうに支局というものを十分に認識した人によって、四国鉄道交通というものを受け持ってもらいたいということを主張し続けたのでありますが、まだ関心をようやく持ち始めた程度でありますが、この支社設置というようなことはいつごろやられようとしておるのか。どういう機会にやられようとしておりますのか、一つ伺っておきたいと思います。
  16. 小倉俊夫

    小倉説明員 ただいま恨みと怒りを持っておるとおっしゃいましたので、非常に恐縮でございますが、それを裏を返しますと、非常に国鉄について御関心が深く、また御鞭撻いただいておるということでありますし、また諸外国では、あるいは鉄道斜陽産業であるとも申されておりますのに、わが国ではそれだけ各方面から御関心を持たれておるのは、国鉄の誇りといたしまして、ありがたくお伺いした次第であります。  ただいまのいつごろ組織の改正をするかというようなことでございますが、ただいま年度中間のことでもございますし、いろいろな権限の移羨その他をやはり来春早々いたしたいと存じます。そういう際にもただいま関心を持つということではございませんで、十分世論の動きあるいは諸先生の御指導もいただきまして、国鉄機構整備ということにつきまして万遺漏なきを期していきたい、かように考えております。
  17. 關谷勝利

    關谷委員 私は以前からこの国鉄の今の機構というものにつきましては、あの縦割りにいたしました当時から、これでほんとうにできるのであろうか、あれでやりますと、いずれにいたしましても中央集権というようなことになって、地方が忘れられる。今の管理局を作りましたときのことは副総裁よく御承知のことでありましょうが、進駐軍がコンパスを当ててくるりくるりとひねって日本の地図についてやっていって、まあここらがということでやったまことにずさんきわまるものであります。そのために管理局あたりでも、一つの県が三つ管理局区域にわたっておるというふうなところもありますし、そこの県民が非常に困っておるということを一つ考慮に入れてないのでありまして、私はその点もまことに遺憾に考えております。なお、以前には国鉄というものがドイツ方式であったのが、アメリカさんによってアメリカ方式に塗りかえられて、そのために国鉄が、従来やっておったのが理想的であったのが非常に不便になったのでありますが、それをよく今まであの不便ななりで、私たちが幾たびか建言をいたしたのでありますが、それを今までしんぼうしておられたということは、一方においては国民の言うことに耳をかさぬ国鉄でありますが、一方においてはまことに従順なといいますか、しんぼう強い国鉄であると、その点私は感心もいたしておるのであります。私はこれについていろいろと改めていただきたいようなところもありますが、そういうふうなことはきょうはやめます。大体国鉄というところは、今副総裁外国においては斜陽産業であると言いまするが、日本では経済発展の開発の基礎になるのが国鉄であります。それほど国民は期待をいたしておるのであります。あの現在のままの支社制でいきますと、例を四国にとることは私の出身でありますのでなるべく控えたいと思いますけれども鉄道配置図を見ますと、四国というところにはほんとう鉄道があるのであろうかないのであろうかというくらいのところであります。いまだに循環線もないというところでりあますが、それが今まで放任されておるということでありまして、まことにあの支社制の欠陥といいますか、管轄区域支社になる点もありましょうが、管轄区域の不公正ということがあのような状態四国を見放すことにまでなったのだというふうに考えておるのであります。国鉄というところは公共性を第一として、その上で独立採算でなければならないのでありますのに、国鉄というところは公共性を忘れてしまって、独立採算ばかりに目がくらんでしまいまして、そのために私たち四国に例をとりますと、関西支社でありますともうかるところばかり力を入れるということになりまして、四国というところはそのままにしておいて何の手も施さないということで、ますます後進性を強めていくということが今までの状態であったのであります。ほんとう四国のことを考えると、四国がどうしたら発展するかというような公共性の立場から考えていただきますならば、私は四国には早く支社設置していなければならなかったであろうというふうに考えるのであります。今まで四国というようなところをほうっておくほど、国鉄というところは独立採算ということに幻惑せられて公共性を忘れておるのだというふうに考えますが、この私の言っておることに対して無理がありますかどうか、副総裁に伺っておきたいと思います。
  18. 小倉俊夫

    小倉説明員 まことに仰せごもっともだと存じます。支社はやはり支社長権限を持っておりますだけに、運営が活発になりまして、かえって経済採算にもつながって参る、同時に公益的活動も自由になるということでございまして、私、寡聞ではございますが、諸外国がこの大戦後分権主義をとり、地方責任自主性を与えた会社発展して、依然として中央集権でありました会社は衰えたということを聞いておりまして、日本におきましても分権制度が各方面に取り入れられてきておりますので、私は国鉄としましては地方分権を推進し、支社長権限強化するのがやはり国鉄では一番いい道である、かように考えます。従いまして支社活動範囲というものも必然的に検討して参らなければならないと思います。四国の話がございましたが、四国独立した輸送経路がございますので、これを一本に運営するということも非常に重大ではないか、かように考えますし、そのほかのただいま問題になりました方面も、あるいは山陽線強化、あるいは北陸線の強化というようなことに思いをいたしますと、やはり独立単位で強固な組織ができるということが、その地方輸送の改善をはかる上に一番必要なことだと考えます。ただ先ほど来申し上げましたように、支社設置ということは、国鉄組織上また非常に大きな問題でございますので、私がここで明快にお答え申し上げかねる点もございますが、ただいまの諸先生質問の趣旨は深く尊重いたしまして、そういう方向に努力して参りたい、かように考えます。
  19. 關谷勝利

    關谷委員 地方分権をやっておりますところはどの国でも栄えておる。この例もまさしくその通りでありまして、私たちは以前からそれを望んでおったところであります。早い話があなたの一番ひざ元の日通が支社制で、そして地方分権権限強化して支社長にやらして、あれだけの効果を上げておるのであります。あれをじっと見ながら、今まで四国あたりは支社もなしでほうっておかれたということは、私は灯台もと暗しというか、あの日通の支社状態を見ながらあなた方は一日も早くやられなければならぬのを、今度ようようやられると言いますので、設置せられることに対してはけっこうでありますが、まだ明快な御答弁をいたしかねるというふうなところに一抹の不安を私は感じておりますが、この支社長というものに対しましては私は強い権限を与えていただきたい、これを御考慮の基礎に置いていただきたい、そうして強力な支社長のもとにその地方をうんと発展するような方途を考えていきますことが国鉄の使命であります。また、これが日本のおくれておるところの後進性をとり戻す上からも、独立採算の上からも、私は非常に効果が上ってくる、こういうふうに考えております。早い話が、一例をあげますと、あの明石、鳴戸の橋が調査費をやって、もうできようとしておりますが、あれができ上りましても四国には循環線もないというようなことでは、橋は渡ってみたが、向うで行き詰まりの鉄道に乗ったというふうな、まことに変な格好になってきますので、これは権限の強い支社長を設けていただいて、それらの総合対策というふうなものも立てまして、ほんとう国鉄の能率が上るようにできていきますので支社長権限強化については私は特段の御協力を願いたい、こう考えますが、副総裁の御意見はどうでしょう。
  20. 小倉俊夫

    小倉説明員 先ほど来申し上げましたように、支社長強化権限はできるだけ大幅に移譲して参りたい、かように考えておる次第でございます。最近国鉄は電化あるいにディーゼル化ということをいたしておりまして、輸送機関の近代化をはかって参りました。かようにいたしまして電車区間がふえ、あるいはディーゼル化がふえますと、機宜に応じた輸送が比較的容易にとれるという利点がございますので、支社長権限内で、地方事情に応じた適当な輸送を機を失せずにいたすという条件が非常に最近ふえて参りましたので、こういう場合に、ただいまもお話のありますようにその地方々々の世論をお伺いしまして、ローカルの列車支社長で自由に動かされるというようなことをいたしたいと考えております。そういうことになりますれば、地元の方々の御満足も今よりもっともっといただけるのではないか、こう考えておりまして、お話通り権限の移譲はできるだけ大幅にいたして参りたいと考えております。
  21. 關谷勝利

    關谷委員 これでようやく四国関西支社から離れて四国支社になりまして、四国が植民地からようやく独立国の一部分に数えられることになったような気がいたしますので、この点感謝をいたします。予算の面におきましても、人事の面におきましても、業務の面におきましても、支社で強い権限を持って、ことごとくその地方の実情に応じたようにやり得るように、そしてその地方経済開発に協力をいたしまするとともに、この独立採算の実も、能率もうんと上げられまするように、私は重ねてお願いをいたしまして、私の質問を打ち切ります。
  22. 塚原俊郎

  23. 永山忠則

    永山委員 やはり関連いたしましてお尋ねいたしたいのでございまするが、ただいま副総裁新潟県と広島高松に来春には支社を置きたいというお言葉がございましたが、広島は元、管理局所在地でありましたにもかかわらず、旧来関西支社西部支社の接触面にございまして、支社の配置あるいは電化の問題も、岡山まできて、そしてまた一方山口からやられて、結局広島最後に中間地帯で残ってしまうのではないかということを非常に憂慮いたして、かねてから支社設置を要望をいたして、権限地方移譲によりまして輸送運営強化をはかってもらうということを期待しておったのでございますが、そのお言葉を聞きまして非常に喜んでおるのでございます。  そこでお尋ねいたしますが、ただいまのお話で、支社設置運輸大臣の許可事項だからということがございまして、運輸大臣だけ許可すればいいのであるかどうか。あるいは支社設置することになりまして、今お話の中に、支社制強化をやるんだ、従って支社制に法的な裏づけをいたして、支社を法的に確立するとともに、言葉の中にははっきり出ませんでしたが、支社長理事の中から任命することとして、これに関連して理事を増員する必要があるということが、結局支社制強化になるのでは雇いか、こう考えられるのであります。そうなってくれば国有鉄道法の改正ということが伴いまして、初めてここに支社を三カ所増設するということになるのではないかというように考えておるのでございます。でございますから、そういう法的な国有鉄道法の改正をいたさなければならぬということでございますならば、一つ早急に出していただきまして、これが実現に万全を期してもらいたいというように考えるわけであります。  時間がございませんから続けて申し上げますが、政府は行政機構改革、しかもこれを簡素化、合理化しようというときでございまして、機構を拡大することについては一応反対の立場をとっておるのでございますから、そこで今回の機構整備は要するに支社制強化して、輸送力の増強と合理的運営をやり、これによって国鉄のサービスをよくし、あるいは国富の一環としてやるのだということが強くこの支社の増設の中に出て参りませんと、ただ機構がふえるのだというような誤解を受ける可能性もなきにしもあらずというように考えておりますので、この法的整備と相待って支社の増設に対して強く推進をされるべきではないかというように考えておるのでございます。やはりその一環として国鉄輸送の合理化をはかって輸送力を増強していくというような関係、これと関連いたしまして、あるいは部外投資ができるようにするとか、あるいは資金の運用方式を合理化して、国庫以外の金融機関を利用するということになりますれば、現在来年度、三十四年度は二千億の散超と言っておるのでありまして、民間金融機関とのタイアップによりまして相当な事業合理化の諸設備に対しても有利に進んでいく。さらに部外投資によりまして、結局国鉄がよく指導的地位に立って運営の妙味を発揮するというような点もあるかと考えますので、これらの点に対しても、あわせて一つ十分検討されまして、国鉄機構の合理化とその妙味を発揮することが必要であるというように考えておるのでございますが、御所見を承わりたいと存じます。
  24. 小倉俊夫

    小倉説明員 ただいまの御質問法律事項はないかということでございましたが、先ほど申しましたように、やはり権限強化をいたしますにはその裏打ちの受け入れ態勢というものも必要でございますので、そういう点につきましては法案も提出いたしたいと考えて、ただいま準備中でございます。またその節にはいろいろ諸先生の御指導をいただくことに相なるかと存じますが、この支社権限強化という点につきましては、私どもはできるだけ簡素な形態で自由に活動のできるということをねらっておりまして、増員なども現在の人員からまかないまして、実際定員の要求はいたさないで済ましたいと考えておる次第でございます。それから支社につきましては、先ほど来私が答弁いたしましたのを総合して、国鉄できめたかのごとくお考え下さいますと、実は私の言い方がまずかったのでございまして、従来のいきさつあるいは現状から見て、支社の増設も世論の声を伺った上でできるだけ善処し努力したいと私は申し上げましたので、国鉄といたしましては、やはりこれだけの重要問題でございますれば、もちろん理事会の決定も必要でございますし、あるいは監査委員会の御了解も得なくてはならぬし、さらに監督官庁の指示も受けなくてはなりませんので、そういう手続も踏んでおらない現段階でお約束ということはいたしかねるのでございまして、私としてはできるだけ努力、善処いたしたいということでございますので、御了承願いたいと存じます。
  25. 塚原俊郎

    塚原委員長 川野芳滿君。
  26. 川野芳滿

    ○川野委員 同僚議員の質問に対しまして、小倉総裁から国鉄機構強化のために支社制をとる、こういう重大な発言がございましたから、私もこれに関連いたしまして、一言だけお尋ね申し上げてみたいと思います。  今回の国鉄機構強化のために支社制をとりまして、大幅な権限支社長に移譲する、そうして責任体制を作る、こういう御説明でございますが、まことにけっこうな案であると私は全面的に賛意を表せんとするものであります。しかし、いかに上層部だけの権限強化いたしましても、これに伴う下部組織強化をはからなければ、私は完璧の輸送は期し得ないと考えます。こういう観点から私はお尋ねするのでございますが、昭和二十五年機構改革以前におきましては、各県に管理部というものが設けられました。そうして管理部が責任を持って各県ごとの輸送面を担当して、輸送の完璧を期しておりましたことは御承知通りであります。ところが、昭和二十五年の機構改革によりまして、ある県の管理部を廃しまして、そうして廃止された管理部の県におきましては、他の県にございまする管理部がこれを支配いたしておりますのが今の実情であります。ところが、県ごとに一つ管理部が支配いたしておるのでございますならば、これはやむを得ないとも考えまするが、ある県におきましては、二つの管理部がその県を分断して支配いたしておるというのが現状であります。さらにある県においては三つ管理部がその県の運送事務を分断して、監督いたしておる、これが現在の実情であります。こういたしますると、もちろん責任の上におきましても非常に弱体化しておるのでありますが、また国民の迷惑というものは非常なもののあることを御承知願わなければならないと存じます。すなわち、私は選挙区は宮崎県でございまするが、宮崎県の実情を申しましてまことに恐縮でございますが、貨車一台とるにいたしましても、半分は鹿児島管理部でございますから、鹿児島管理部と交渉せねばならぬ、また半分は大分管理部に属しておりますから、大分管理部と交渉せねばならぬ、こういうような非常な煩雑な手続があります上に、なお貨車をとるという一つの問題をとらえましても非常に困難な現在の実情でございます。そこでこういうふうに県が分断されておりまするところは、当然管理部の復活を願わなければならないと私は考えるのでございまするが、こういう点についての副総裁の御意見を承わってみたいと存じます。
  27. 小倉俊夫

    小倉説明員 仰せの通りに、かつて管理部がたしか四十六、七ございましたのが、これが管理局になります際に二十七の現管理局にしぼられたのでございます。従いまして、仰せの通り一つの県に二つあるいは三つ管理局が入り乱れておるというような事態ができて参ったのでございます。それで御利用なさる方では一つのことにつきましても三つ管理局に話さなければらちがあかぬ、非常に不便であるというような声は前々から私どもの耳に入っておるのでございます。私は二年ばかり前に国鉄へ参ります前に、民間の貨物関係の団体に関係しておりましたので、そういうことはよく承知しておったのでございます。また国鉄輸送という点から見ますれば、たとえばその輸送の局の分界と申しまするのは、またある場合には行政区域の分界と違って設定した方が輸送運転上、管理上都合がいいというような点もございまして、その調和ということが非常にむずかしいのでございます。しかしながら、いずれにしましても行政区域とあまりに隔たった分界が設定せられまして、そのために国民の皆様に非常な御不便をかけるということは相慎しまなければならぬと考えております。従いまして、その局のあり方につきましてもやはり私は再検討いたさなければならぬと、かようには考えておりまするが、何はさて、先ほど申し上げましたように四十六、七の管理部が二十七という管理局に急激にしぼられて参りましたので、そこの調和ということは、いろいろな点から見まして非常にむずかしいものがございまするので、これにつきましては多少の御時間をいただきまして、検討を重ねて参りたい、かように考える次第でございます。
  28. 川野芳滿

    ○川野委員 ただいまの御発言に、行政区域と異なった管理部を置いた方がよろしい場合もあると、こういうお話がございましたが、しかし、これは行政区域と異なった管理部に属するという問題も、一つ管理部に属しておりますならば不便が少いかとも考えます。そこで宮崎県の場合でございまするが、宮崎の管理部廃止の場合におきましては、県民の世論といたしましては門司の管理部に属させてもらいたい、隣県の大分県の管理部を通り越して、門司の管理部につけてもらいたい、こういう当時の要望でございました。ところが国鉄におきましては、国鉄内部の事情等があるものと見えまして、ちょうど宮崎県の半分を大分につけられ、さらに残りの半分は鹿児島管理部につけられておる。さらに近く日南線が貫通いたしますと、さらに志布志方面に今度はもう一つ機構を置いてこういう線の監督をやられる、こういう計画もあるやに私は承わっております。そういう場合になりますと三つの監督官庁がございまして、三つの監督官庁が宮崎県の輸送事業を思い思いの考えによって支配するということになるのでなかろうか、私はかように考えております。現在ですら非常な不便で県民は泣いておるのでございまして、さらにこれをもう一つふやして、そうしてそういう問題を解決するということになりますと、県民の不便というものはたとえようのないものになると考えますから、どうか一つ、御検討中という御答弁がございましたが、できるだけ早くこういう問題も御検討になって、分断されておる県だけでも、管理部の復活と申しますか、管理部を設けられて、県民の不便を除かれるように切に希望申し上げまして、私の関連質問を終る次第であります。
  29. 關谷勝利

    關谷委員 今の川野委員の件に関連して一言申し上げておきたいと思いますが、私たちのところへいろいろ陳情が参りますのは、県を二つなり三つに割られるということが非常に困るんだ、これは一つにして、少くともその県だけは一つ管理局の所属にしてもらいたいという陳情であります。四国あたりは、四県ありますが、二県平均に一つ管理局があるのであります。私はあの機構改革の当時政務次官をしておりましたが、変な割り方をせられたのでは困る、一つ四国はモデル・ケースにしてあのままやってみようということで、あれをそのまま見のがしておったのでありますが、今になってみますと、あれはよかった、四県一つであっても、県が分断せられるよりはよかったんだというような気持がいたしております。おそらくどこの地域でもそうであろうと思いますので、二十七の管理局の配置というものを、アメリカがコンパスでくるくるっとやったあの範囲ということでやらないで、二つの県が一管理局でもけっこうなんでありますから、その点は行政区域と合致するようにしていただきたいというのが全国各地の陳情であることを私申し添えておきます。
  30. 小倉俊夫

    小倉説明員 仰せの通りに、私も原則といたしまして行政区域と局の限界が合致しているのが一番いい、こう考えております。
  31. 塚原俊郎

    塚原委員長 堀内一雄君。
  32. 堀内一雄

    ○堀内委員 同僚議員の質問にあります管理局の問題についてお伺いしたいと思います。すでに川野、關谷委員質問で大体解決しておるのでありますつが、支社強化に伴ってやはりその下の組織をどうしても強化していかなければならぬ、同時に一つの県が幾つもの管理局に属しておることがいかに不便であるかということは、もう申すまでもないことであります。今、国鉄におきましても十分これを考慮するという御説明でございますが、ぜひ一つこの点は御検討願いたい。先ほどお話の宮崎県のごときは二つに分れておる。私ども出身の山梨県においては三つに分れておる。それがどんなに不便であるかということは、たびたびの陳情等で国鉄当局においても御承知のことと存じますので、私はこれを繰り返して申しませんが、ぜひ一つこのことを十分検討して、支社の制度と一緒に御検討願いたいということをまず御希望申し上げておきます。  その次にお伺いいたしますのは、近く予算の折衝というようなことにもなりまするので、その際の原案においてお考え願いたいと思って申し上げておるのでございますが、中央線の複線化の問題でございます。これは御承知のように山梨、長野等、沿線の県から非常に熱心に陳情がある。しかもあの中央線は、聞きますと非常に乗車率がいいので、国鉄としてはもうかっておるというのですが、非常にもうかっておる反面に利用者が非常に不便をしておる。御承知のことだと存じますが、新宿の駅へ行ってみますれば、とにかく座席へすわるには二時間以上前に行って並んでいなければすわれないというような列車がある。大体多くの列車は一時間くらい先に行っていなければすわれないというような状態になっておるので、この複線化ということはぜひともやっていただかなければならぬと思っておるのでございますが、それに対する現在の国鉄計画はどんなふうになっていますか、一応御発表願いたい。
  33. 小倉俊夫

    小倉説明員 各方面で、多客期あるいは季節貨物の出回るときには御迷惑をかけている点を非常に恐縮いたしておりまして、常に輸送力の増強ということに頭を悩ましておるのでございます。  中央線につきましては、幹線でございまするので、できるだけ複線化をやって参らなければならぬということは常々考えております。ただし東線にしましても西線にしましても、地勢上なかなか急峻なところがございまして、思うように急速に複線にできない点は遺憾と存じておりまするが、あの区間は、ことに東線は非常に隧道も多うございますので、かねがね煤煙がひどいという御非難がございましたので、最近盛んにディーゼル機関車を入れまして、せめて煤煙の排除をいたして参りたいと思っております。  それから、ただいまはっきり記憶いたしておりませんが、東線につきましても西線につきましても、部分的に線増計画を立てて輸送力の増強を一日も早くいたしたいということで進んでおります。
  34. 堀内一雄

    ○堀内委員 中央線の複線化についていろいろ御考慮をいただいていることはわかりましたが、私は、あの地域が山が非常に多くて隧道が非常に多い、工事が困難だという反面は、それだけ早く手をつけていただかないといけないという理屈にもなると思います。同時に隧道という問題につきましても、昔と違いまして、今の技術では非常に進んでいるように私ども考えておる。昔は笹子のトンネルが十年かかったのが、今度の陸上道路のトンネルは二年たたないで完成しておるというような状態でございますので、今トンネルというものは大して困難な問題じゃないというふうにも私は考えるのであります。とにかく先ほども申しましたことですが、山梨県なり、それからあの中央線沿線には、いわゆるレクリエーション地帯が非常に多いのですが、現実には、ほとんど腰かけられないというようなことで、レクリエーション地帯ではなくて疲労地帯になっておる。これはラッシュ・アワーはもちろんですけれども、ラッシュ・アワー以外のときでもそういう状態であることは御承知通りと存ずるのでありますが、そういう意味から、ほかの方でもいいですが、どんなふうになっているか、いま少し具体的に御説明をいただきたい。もしできなければ別の時期に一つもう少し具体的にお話し願いたい。
  35. 小倉俊夫

    小倉説明員 資料を至急こしらえまして御提出いたします。
  36. 堀内一雄

    ○堀内委員 その次にもう一つ伺いたいのは、これと関連して御殿場線のことでございます。御殿場線の状況については私はある意味において丹那トンネルを通ずる方面の路線の緩和という意味において、貨車などをあちらへ回すということが非常に有利であるという点において、国鉄の方正面においてもこの方の電化なり、そのほかディーゼル化なりをいろいろ検討しておられるという、そういうお話をお伺いしておるのでございますが、たしか昨年の交通部会等で検討した場合にも、もし平塚と国府津の間を複々線にするならば、それによって東京——御殿場線というものは直通ができるということで、これを検討したことがあったように覚えておるのでございます。そこで、あそこの間は十キロか何ぼでありますので、至急に複々線にするというようなことを聞いておったのですが、この辺の状況はどんなふうになっていますか。
  37. 小倉俊夫

    小倉説明員 東海道線は全線にわたりまして非常に行き詰まって参りました。ことに大阪付近あるいは東京附近が隘路になっております。ただいま御指摘の区間ももちろん隘路区間でございまするが、現在一番の隘路とされておりまするのは、東京—品川問でございまして、これはただいま五カ年計画に取り上げまして、線路の増設を企画いたしております。それからまた品川—大船間につきましても線路の増設が必要ではないかと考えられております。それからただいま先生の御指摘の区間、さらに大阪付近というようなところにつきましては、東海道線の輸送の隘路を打開するために至急に取り上げていきたいということで、東海道線の現在線の強化を考えております。
  38. 堀内一雄

    ○堀内委員 ただいま要求いたしました中央線の複線化の御計画と、それから東海道線の、ことに平塚—国府津間の複々線化の計画の資料を一つ御提出を願って、これで私の質問を終ります。
  39. 塚原俊郎

  40. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 昭和三十三年の一月二十六日の南海丸の海難事故につきまして、本委員会でしばしば取り上げておられますが、本件につきまして、去る十五日に神戸地方海難審判庁において行われました論告によりますと、この海難事故は、すべて予測不可能な天災によるものであって、南海汽船側に責任がないというような結論が述べられたようでございます。これは、本委員会におきますこれまでの経緯、政府側のいろいろな答弁、そういうところから見ましても、われわれはどうも納得できない趣旨でございます。これにつきまして当局の方は、大体この論告は妥当なるものというふうに考えておられるかどうか、お尋ねいたします。
  41. 長屋千棟

    ○長屋説明員 お答えいたします。理事官の仕事につきましては、全般的に私が指揮監督いたしておりますが、個個の事件につきましてはやはり裁判所の検事長に相当します中央の理事所長が監督いたしております。論告その他につきましては、まだ審判庁の方ではただその意見を聞いただけでございまして、証拠書類その他私の方ではまだ受け取っておりませんので、私の意見としては申し述べるわけに参りません。しかし論告につきまして御不審の点その他ございましたら、理事所長を同伴いたして参っておりますから、それから説明させて御答弁いたしたいと思います。
  42. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 それでは、理事所長から今の点につきましてお伺いいたします。
  43. 寺田武

    ○寺田説明員 お答えいたします。理事官の申し上げました意見の大要につきましてはすでに御承知通りと思いますが、理事官は、あくまで状況証拠によりまして理事官としての意見を申し上げるのであります。最終においては、審判長の裁決によって結論が明らかにされるのが建前であります。この事件が起りましてから、理事官はさっそく現地に参りまして、三十余人の証人、それから現場に行きまして、水中テレビ、水中写真、その後に本船が浮揚いたしまして、これの船体構造その他について復元性能の試験を専門家に依頼して、判定を下しました。このような状況証拠によりまして、もっともこの事件は全員がなくなっておりますので、直接関係者から聞くことがでまませんので、あらゆるとり得る状況証拠を入手いたしまして、それによりまして、この事実はかくあるべきなのが妥当であるだろうというところに意見をまとめまして、先ほど先生が申されましたように、神戸において音意見を申し述べたのであります。  まず理事官の意見の内容といたしますと、この事件は……。
  44. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 けっこうですが、簡単に言って下さい。妥当だと思っていらっしゃるのですか。
  45. 寺田武

    ○寺田説明員 これは理事官としては妥当な考え方として意見を申し上げたのであります。
  46. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 まだお手元にその論告文が届いていないというような長官の方の話ですが、論告文は理事所長ごらんになりましたか。
  47. 長屋千棟

    ○長屋説明員 私は論告文が届いていないとは申しません。私の方へはそういうものは来ていない。理事所長の方には来ているかもしれません。
  48. 寺田武

    ○寺田説明員 当日の速達で、翌日に到着しております。
  49. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 私はこれを新聞で知った程度でございますが、これを見ましても、当時の運航管理あるいはまた船の対航性、同日の気象あるいは船長の出航判断——私、当時大体現地の状況を知っておるつもりでございます。非常に何かしらことさらに会社側に有利なようにこれには出ております。こういう点、所長は知らないとおっしゃればそれまででありますが、どう思われますか。
  50. 寺田武

    ○寺田説明員 理事官といたしましてはあくまでその当時の状況に立ち入って、たとえば船長の出航判断、こういうことにつきましては、あとで事件が発生してから後にそれを知って判断するのではなくて、その当時の状況において船長としてはいかに判断して出航したのであるかという考えで事件の原因を究明しようとしておるのでありまして、会社に有利であるとか、あるいは当事者に有利であるとか、そういったようなことは、理事官といたしましては絶対に考えておらないのであります。
  51. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 当時これの調査に当りました現地の徳島県の県警あるいは検察庁、これらあたりの見解を見てみましても、大体あの航路が非常に競争激烈な航路である、しかも船長は非常に熟練しておるとは言っても、当時の気象を甘く判断して、いわば会社側の、不当なる競争を強要する営業方針の結果、こういうふうな結果が生まれたのだというような結論を大体出しておるようであります。こういうふうな点は、全然御勘案にはならないのでございますか。
  52. 寺田武

    ○寺田説明員 会社のそういった営業部門に対する点について、理事官は何ら考えておりません。それとなお僚船わか丸船長——南海丸船長はなくなられておりますから、僚船のわか丸船長あるいは南海丸の前船長、そういった生存者から、そういったような会社からの圧力により出航を強要されたような事実はなかったかというような点についても調査しておりますが、そのような証言はありません。そういう事実は今までの状況証拠によっては上っておりませんので、右のように判断したのでございます。
  53. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 どうも正式な論告文がないとここでははっきり対決できないようでございますから、委員長にお願いしたいのですが、本件に対しての、去る十五日に出されました論告文を要求いたしておきます。  それでは船舶局長にお尋ねいたしますが、当時ここで開かれました委員会におきまして、南海丸のいわゆる復元性というような点、あるいはバラスト問題、こういうふうなものにつきましては、船舶局長の方でも大体欠陥があったのではないかというような見解を述べられておりますが、この点はどうでございましたか。
  54. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 欠陥があったということは申しておらないつもりでございます。ただこの船の——もちろん船の建造当時におきまして若干の欠陥がございまして、それはその後の措置によりまして全部規定に合格する程度まで、またそれ以上に改造を加えております。従いまして、遭難当時におきましては、規定の上からは全然欠陥があったという事実はございません。
  55. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 海運局長は本件について、やはり運航上、行政官として会社側の方の手落ちがなかった、大体そういうふうに結論されますか。
  56. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 当時種々先生方の御意見を伺いましたが、運航管理制度というものについての法的な制度というものはございませんし、航空の運航管理制度、ディスパッチャー制度のようなものを設けたらどうかというような御意見もございましたが、航空と実情ははなはだ違っておりますし、現行体制においては、そういうことの強制をいたしておりませんので、将来のわれわれの研究題目として御考慮させていただきたい、こういうことを当委員会で前海運局長が申し上げておるとも思います。そういう意味において、欠陥があると断定はいたしておりません。
  57. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 それぞれ聞いてみましたが、どうものらりくらりとうまく逃げるようでございますが、いずれ本件については論告文が来まして、みっちりとこの次の機会にでもやってみたいと思います。きょうはあまり時間がないようでありますから、次に移ります。  ただここに奇怪なことは、論告が十二月十五日に行われた。ところが会社側が大阪で十二月十一日に発表しまして——大体この論告の趣旨というものは、会社側に漏れておったのではないかというような感をわれわれは抱きます。現にそれを現地の新聞も報じております。しかもそれによって、過ぐる二十八国会におきまして、運輸大臣がこれに対しては十分なる補償をしよう、また補償を指導する、こういうふうな答弁をしておる。にもかかわらず、論告で会社側に責任がないのだというような点が出されまするや、会社は従来の態度を一擲しまして、弔慰金を含めてたったの五十万円、これで片をつけようとしておりますが、事前にこの論告の要旨が会社側に漏れたというようなことはございませんか。これは海難審判理事所の方へお聞きします。
  58. 寺田武

    ○寺田説明員 理事官の意見につきましては、その担当理事官以外に、その以前にその意見をほかに漏らすということは、この事件ばかりではなく、あらゆる事件においてもそういったことは絶対にないと信じて疑わないのであります。
  59. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 えてしてこういう問題は非常にみんなが注目しているところでございまして、もしそういうふうなことが——大体新聞に書かれるくらいですから、あったのではないかとわれわれも感じますから、こういうような点は今後の行政上十分留意していたたきたいと思います。  なお、この問題についての補償という点を少しお尋ねいたしておきたいのでございますが、大臣が見えられましたから、まず大臣にお尋ねいたします。二十八国会におきまして当時の中村運輸大臣が、わが党からの、この補償問題についての追及に対しましてこう答えております。「今度はあの南海汽船会社は」「そのうしろに南海鉄道があるのでございますから、私はこういう資力のある会社並びにその親会社は、なくなった方々に対して十二分の弔慰、補償の方法をとらするという決心であります。また彼らはその資力あると思いますから、私どもは最大限のことを指示するはずであります。」こう答弁をされておりますが、運輸大臣、この方針は堅持されますか。
  60. 永野護

    ○永野国務大臣 大体の方針といたしましては、同様であります。ただ具体的にそれがどうなるかということにつきましては、会社の実情その他の詳細なる材料が要るのでありますけれども、私今ここにそれを心得ておりませんから、担当局長から答弁いたさせます。
  61. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 去る十二月十二日に会社側から遺族代表に対しまして補償額の回答の提示をいたしております。私どもの調査によりますと、その後十二月十七日におきまして、四国、和歌山の遺族代表と会社側と話し合いをしておられます。この結果、遺族代表の方々から大阪の遺族代表と相談をしてから返事をする、こういうことで別れられております。その翌日十八日におきまして、会社側と大阪の遺族代表とが話し合いをしておられることが今の段階で私どもの方に報告が参っておる程度でございます。
  62. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 その金額は幾らでございますか。
  63. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 会社側が十二月十二日に遺族代表に補償額の回答提示をいたしました金額は七千万円であります。
  64. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 一人当り平均幾らになりますか。
  65. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 平均約五十万円。
  66. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 大体海難事故におきます相場として、それは妥当なるものというふうにお考えでございますか。
  67. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 妥当であるかどうかということにつきましては、非常に申し上げることはむずかしいと思うのであります。と言いますことは、個々の場合がそれぞれ違いますし、事情も違っておりますので、この額が妥当であるかどうかということは、政府側から申し上げることは非常にむずかしい問題だと思います。
  68. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 弔慰金と補償金とは一体どういう関係にあるのですか。
  69. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 私どもが報告を受けておりますところによりますと、弔慰金は補償金の内渡しとして考えておるというふうに聞いております。
  70. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 南海汽船は定期船協会に入っております。従ってその保険が一人二十五万円つきます。五十万円で済むとするならば、会社側の負担は二十五万円、大体これを基礎にして会社が案を作ったらしいのでございますが、これでは常識的に考えましてもあまりに不当だということは明々白々と思いますが、海運局長どうですか。
  71. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 私どもの方といたしまして申し上げられることは、また現在までにおきまして行政指導なりやってきました考え方を申し上げますと、こういう遺族補償の問題につきましては、会社側が遺族代表と誠意を持って処理するように指導して参ったのでございます。こういう基本方針で種々の行政指導を今まで行なっていたのでありますが、この額は妥当かどうかということにつきましては、私どもは今まで一言も言っておりません。また今の段階においても言うことは先ほど申し上げましたように困難である、こういうことであります。
  72. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 今大臣も、大体中村運輸大臣がその当時言われた方針は守るとお答えになりました。しかもそれの担当であるあなたが大臣にかわって今答弁をしておられます。十二分な補償を政府の方は指示するというふうな方針を持っていらっしゃる以上、だれが考えたって二十五万円くらいじゃこれは不当過ぎやしませんか。しかもこれは交渉の途中においてやはり指示する、ある程度サゼスチョンするというのが皆さん方の方の務めじゃないですか。どうですか。
  73. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 私どもは遺族の代表の方々と会社側とが話を詰められて、そこで話し合いによって解決の道を求めていただきたい。しかも会社はその中村運輸大臣の言われた精神でもって誠意を持ってその遺族の方々に当るように、こういうことで今日まで参っておるのであります。
  74. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 誠意を持った金額がそれぐらいでいけるというお考えなんですか。ちょっとこれはおかしい。洞爺丸では幾らお出しになったのですか。大体のところでけっこうですから、お聞かせを願いたい。
  75. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 国有鉄道は洞爺丸の場合には平均約百万円、第五北川丸の場合におきましては二十七万円、過去におきまして平均をいたしますと、相模湖事件以来四、五件ございますが、大体二十五万円程度であります。この場合に保険というものを定期船協会に加入いたしておりますことはお話通りであります。保険というものはこういう事故の損害を填補するためにあらかじめ会社側が措置しておるのであります。この保険金も含めての考え方も成り立ち得ると思うのでありますが、従来の国内の旅客定期船航路といいますものの企業の状態からいいまして、相模湖事件以来四、五件の平均は大体二十五万円程度であります。
  76. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 遺族会の方が要求しております額は、これはホフマン方式をとっておると思うのですが、一人最高が千三百五十万円、最低百十万円、平均六百万円、しかもこの乗組員二十八名、乗客百三十九名、計百六十七名全員死亡、こういうふうな特殊なる事故について、しかもそのほとんどの乗客というものはいわば働き盛りの人たちばかりだ。一家の支柱です。こういう人たちが死んで、今言うたような程度。これはちょっと——航空事故の例、あるいは洞爺丸でも巷間伝えられますように、その人たちの生前におきますところの職業、経歴、あるいは外人であるからというような例から、外人あたりについては一人二千万円近くの金も出されておる。こういうふうな点から考えましても、あまりにも今回のこの五十万円という線は南海電鉄の資力、こういうふうなことから考えてどうも不当だと思うのでございます。従って、大体この論告に対しての決裁が二月の下句だというふうに報ぜられておりますが、それまでの間に、現在遺族との間にいろいろ交渉が行われておるのでございましたら、積極的にもう少し誠意を持って、ということは結局金額をふやして、だれが考えても妥当だ、まあこのくらいの程度ならと言えるぐらいなところまで会社側が事前に出し、そうして交渉をさすというような積極指導をやってもらえる意思はございますか。これをお尋ねいたします。これは運輸大臣にお願いします。
  77. 永野護

    ○永野国務大臣 先ほども申しましたように、運輸大臣といたしましては、まことにお気の毒な犠牲者に対して運輸省としてもできるだけのお力添えをしたいということは、中村大田の方針と少しも変りはございません。この具体的の扱い方につきましては、まだ私、詳細の報告は得ておりません。できるだけ方針といたしましては、今の方針を堅持するように指示するつもりであります。
  78. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 大臣の今の答弁、私、まことにありがたいと思いますが、前大臣も言われましたように、南海汽船は南海電鉄というバツクがございます。しかも遺族の要求というものが非常に大きゅうございます。それを今の世間的な常識から考えて、紫雲のときが二十五万、あるいは北川のときが二十七万、そういったふうな例があるんだからといって、こういうふうな少い金額で押しつけないように、やはり一応妥当な線、遺族の要求しておりますところと歩み寄りができるような線に誠意を持って話し合いをするように、大臣の方からも強力に会社の方に一応この際御指示願いたい、これを要望いたしておきます。
  79. 永野護

    ○永野国務大臣 了承いたしました。
  80. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣に対してちょっと関連して。さっきから廣瀬君の質問に大臣から答弁しておられるのを伺っておると——さきの中村運輸大臣の折には南海電鉄のもので、非常に大きな財閥会社であるから、従ってこの犠牲者に対しては十二分の救援をするよに指示するという答弁をしておられるという速記録を今読んだようでしたが、そうすれば、運輸省側としては、当然その十二分と言われる点において会社側に指示しておられると思うのです。総合判断すれば大体見当のつくものであるから、およそどのくらいを指示されたか。それからまた、どうも犠牲者と会社側との間の自主的な点にまかして、そこらで解決するようにということで、きわめて放任的で、中村大臣が十二分に指示すると言ったことについて、それを行政的にちっとも取り上げておらぬようで、その辺はなはだ不親切であるように思う。一体十二分という点は、どの程度を言われるのであるか。今会社側が出しておるのを十二分と言われるのか、あるいは国鉄の青函の関係などのああいう例もある。その他いろいろ例がありますが、そういう点から総合して、十二分というと、私は相当金額的に見なければならぬと思うのであります。相当中にタッチして解決のできるように親切にしてやるべきであると思うが、さっきからの答弁を伺っておると、どうもわれわれはそう解釈ができないが、運輸大臣は、さきの中村運輸大臣が国会で答弁されたそういう点を、一体どのようにお考えになって扱っておられるか、あるいはまた各政府委員は、それを永野運輸大臣にどのように報告してこの問題を解決してやろうとしておられるか、そういう点に対してはなはだ不親切であるが、もっと責任のある親切な御答弁を聞かなければならぬと思う。大臣でもいいし、関係局長でもいいから、もっとはっきり答弁して下さい。
  81. 永野護

    ○永野国務大臣 御趣意はよく了承いたしました。ただ私は、まだ交渉過程にあると聞いておるだけでありまして、それがどの程度具体的な実情調査に基いた交渉であるかということは了承しておりません。もちろん北川丸あるいは相模湖の事件のような場合とは——バツクのあるなしということが実際問題の解決に大きな影響を与えるということは、私もそう思いますけれども、しかし、バツクがあるということは——国鉄のようにその会社自体非常に大きな負担能力があるということとは違います、独立会社でありますから。従いまして、そこにおのずから限度があると了承しております。バツクの会社と当面の責任者である会社との間の関係その他に関する調査、いわゆるどの程度のバツクの関係にあるかというようなことに関します調査も、ただいまのところ私には十分できておりません。従いまして、好意的な親切な指示をするという時期と方法につきましては、今日はまだ御答弁申し上げる時期でございません。研究いたしましてから、目鼻がつきましたら御報告いたします。
  82. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 政府委員の方ではさきに中村運輸大臣が十二分の指示をすると申されたことについてどのように行政的に扱っておられるか。今ここで金額等は政府側としても言われないことであるが、その間においてどのように指示をしておられるか。それから犠牲者側も、中村大臣が十三分にと言われた点について、監督官庁である運輸省が行政的にも十分手を尽していると相当期待していると思うし、またわれわれも、やはり大臣がここで発言されたことは責任を持ってもらわなければならぬ。だから、十二分の指示を行政的にしておられるかどうか、その点を明らかにしておいてもらいたい。
  83. 永野護

    ○永野国務大臣 運輸省がこの問題に関しまして指示をする時期と方法については相当研究しなければならぬと思います。責任のある船会社と犠牲者との間の交渉が始まる前から、あるいは始まった初頭から運輸省がそれに関与するのが適当であるか、ある程度こなれたところで適当な時期にお力添えすることがよいかというような問題は、研究する余地があります。いつかはどういう方法かでできるだけ犠牲者に対して手厚くお報いすることができるようにお口添えしたいという気持先ほどから答弁いたしました通りでありますけれども、その時期と方法につきましては、まだ結論に達しておりません。事務官僚の方でどういうことをしておったかまだ詳しい報告を聞いておりませんが、私といたしましては、まだ決意がつけかねております。しかし、いつの日かあるいはどういう方法かでできるだけ手厚いお報いをするようにという努力はするつもりであります。必ずいたします。
  84. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 お手並みを拝見いたしましょう。
  85. 廣瀬勝邦

    廣瀬(勝)委員 私がさっきからこの汽船会社のうしろに南海電鉄があるということを言ったので、それをとらえてああいう答弁になったと思うのでありますが、私の申し上げております趣旨は違うのであります。十五日の神戸におきます論告要旨は、われわれが考えましても少し甘過ぎはしないか、いわば会社側に有利であり過ぎはしないかという前提に立っております。従いまして、この判断の基礎は、これは十分補償をすべきだという論旨に立っての補償要求なんだ。だから、単に南海電鉄がうしろにあるからたくさんの補償を出すというような単純なものではございません。その点も一つ誤解のないように大臣にお願いしたいと思います。それとともに海運局長、今大臣が言われているように、そういうような指示、交渉がもう現在始まっております。しかも、伝えられるところによりますと、これはもう最後的な会社の案だ、腹だというふうに言って出されておるのが五十万円です。ですから、これはもう時期がきているんじゃないか。しかもこれの裁決は二月、年が明けてすぐでございます。まあ年末には無理かもしれませんが、一つきょうのこの委員会のわれわれの発言、要求、こういうふうなものを至急に、今大臣がおっしゃっておられるように、会社側に厳重に伝えていただきたい。私たちはこの問題については非常に重大な関心を寄せております。先ほど委員長の方にも論告文の提出を要求いたしておきました。年が明けましたら、さらにこの問題の推移によっては大々的にこれを取り上げていきたいと思っております。十分その点をお考え下さいまして、行政指導上万遺漏のないようにお願いしたいと思います。  ではこれで私の質問を終ります。
  86. 塚原俊郎

    塚原委員長 午前中の会議はこの程度にとどめ、午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時十五分開議
  87. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより再開いたします。  陸運に関する件について調査を進めます。  私鉄運賃の値上げの問題について質疑の通告がありますので、これを許します。館俊三君。
  88. 館俊三

    ○館委員 運輸大臣にお尋ねするのですが、私鉄の運賃の値上げについて世論が非常にやかましくなってきたことは御承知通りだと思います。きょうの朝日新聞にも投書欄に書いてあるんですね。ちょっと読み上げますが、「今年度の「経済白書」も「厚生白書」も一様に所得分布が拡大したことを指摘し、所得の平等化の必要性を強調している。にもかかわらず私鉄値上げなど、政府がさらに所得格差の幅を広げるような物価引上げ政策をとろうとしているのは明らかに矛盾している。」こういうような論法であって、そのあとで、「いったいなんのために白書を出しているのか。国民日本現状を訴え、協力を要望し、政府自身それにより反省し、将来の指針とするためではないのか。日本の国政を預る大臣方が、もっと白書をよく読まれたら、いまのような政策を考え出すはずがない。」こういうように言っているんですね。私はいろいろの観点から、私鉄運賃の値上げに対しては絶対反対していきたい、こういう立場をとってお話を聞きたいと思う。  政府が、物価値上りに響く影響や、あるいは従って反対の多い世論を排除して値上げを行おうとしておるのが現在の態度ですね。それに私承服しかねる、こういうことです。会社が自分の赤字を克服するときに利用者負担を考える、その前に考えてもらいたいことがある。まずどうしてみずからの企業努力の不足やあるいは経営のまずさを考えないのかと私は考える。特に交通運輸の事業は、社会の公共の福祉に直接に関連する事業であるということはだれでも明白なことでありまして、こういう公共の福祉事業を私企業の利潤追求の形でおくということがどうかこうかという基本的なものの考え方がある。それにもかかわらず、赤字だからすぐに運賃値上げだとは、私はどうしても納得がいかない。政府部内でも値上げ反対の論議がかなり長い間にわたって行われてきておった。その論議がどう克服されたかということを私は聞きたい。政府部内において値上げに賛成、反対論がかなり長く続けられておる。それが克服されたかどうかということを聞きたい。そして現在はどうかというと、なお年内の値上げはいけないという論がやはりあるらしい。さらには、これは変な話ですけれども、来年の各種の選挙において非常に与党に不利であるというような変な論議が出ておるわけなんですね。この論議なんぞということになりますと、言わずとも、世論の大部分が値上げに反対だということを明らかに言っておることなんですね。内閣の官房調査室の調査でも、八六%が値上げに反対だということを言っておる。これは内閣の調査室ですから、十分知っておられることだと思うのです。政府はこれを知っていると思うにもかかわらず、これは申し上げにくいことなんだけれども運輸大臣指導者のような形になって、閣僚の値上げ反対者に今でもなお説得工作というか、そういうものを続けていられるようなことなんだけれども、そういう根拠がどこにあるのか。さらにこれを年内に引き上げたいということを言っておられる。そう取り急ぐ必要もまたどこにあろうか。こういう総論を申し上げて、運輸大臣のまず第一の御返事をお願いしたいと思います。
  89. 永野護

    ○永野国務大臣 値上げの理由に、少し言葉じりをとらえるようで相済まぬことかもしれませんけれども、利潤追求の肩持ちをするのはけしからぬというようなお言葉がありましたけれども、それは断じてありません。むしろあなたのお言葉の中にある、公共の安全、福祉の増進を考えるというあなたのお言葉が、そのまま私の値上げの理由なんであります。すなわち今のままで、今の状態で進みますと、あまり遠くないうちに安全運転の危険が迫ってくるということをはっきり認識したからであります。すなわち当然やらなければならない修理を怠って、それを食っておるというのが今の経理の実情なのであります。大衆が反対しているじゃないかというのは、あるいはそうかもしれません。私はそうでないとは申し上げません。しかし大衆が運賃が安い方がいいか高い方がいいかといえば、それは安い方がいいと言うにきまっておるのであります。大衆が一々各会社の経理内容の数字を検討してみて、こんなことでは危ない、少々の運賃の値上げはしてもわれわれは安心して電車に乗りたいというような努力を払ってくれる大衆は絶無とは申しませんけれども、実に少いだろうと思うのであります。そこで私は各会社の経理の内容にわたって検討してみて、そからなるほどという議論をしていたたきたいのであります。私は大衆の生命をお預かりしているような格好であります。かりに修理不十分のために非常な事故が起ったといたしますると、私はその責任を追及される立場であります。従いまして、そういう事故が起らないように絶えず監督しなければなりません。もちろん私は運賃の値上げだけで私の任務が尽きるとは決して思っておりません。やるべきことはたくさんあります。そのうちの一つに運賃の値上げがあるのであります。航空機の事故が起って、あわてて航空機安全確保のためにたくさんの予算を計上してやりますけれども、あれは落ちて人が死んだから航空機のために金を使うということをだれも反対しない。レールが磨滅し、あるいは補修が悪いためにかりにひっくり返って何百人の人が死んだら、これは大へんだ、大衆といえども何らかの対策をしなければならぬということは了解してくれるだろうと思うのでありますけれども、私の立場はそれが待てないのであります。そういう事故が起きて、私が値上げの問題を扱いやすい時期のくるまで漫然と見ておるわけにいかない。そこで今は一見すこぶる平穏に日々運転されておるのであって、どこに安全運転に危惧の念があるかというふうにお考えであると思いますけれども、数字をごらんになるとすぐわかりますのは、安全運転を確保するためには、常識としてこの程度の修理費用が要るという率があります。館さんは鉄道のことは私よりは先輩であり、詳しいから、私があなたに対してこういう説明をするのはまさに釈迦に説法だろうと思います。しかし大衆はそういうことはわからないのであります。そこで非常に反対論が多かったことは事実であります。与党内にも反対論が多かったことは事実でありますけれども、あの反対論の全部とは申しませんけれども、大部分は、各会社の経理内容及び運転状況をしさいに検討して賛成、反対を言う人は非常に少いのであります。極端な表現をすれば絶無といってもいいのであります。私が今まで一生懸命努力してきましたのは、この数字をあげて、こんなふうだからある程度の値上げはやむを得ませんということを話しましたから時間がかかっておるのであります。少くとも与党内部ではややそれを理解してくれました。初め反対であった人が賛成してくれたのは、私が言うとおかしいけれども、私の努力の結果がだんだん現われてきた、こういうわけであります。場合によったら社会党の政策審議会にも資料を持っていって訴えるべきであるかもしれません。今までは自分のひざ元の与党の方々の御了解を得るのに時間が手一ぱいだった。はなはだ社会党の皆さんに対して手落ちがあったことは申しわけありませんけれども、時間的の制約があったわけであります。でありますから、今御質問の趣旨のこの値上げの理由は一体どこにあるかということに対する私の今のお答えと、それから政府部内にも反対があるじゃないか、大衆にも反対があるじゃないか、しかし私はそういう反対は知りつつこの提案をいたしておりまして、この二点のお答えをした次第でございます。
  90. 館俊三

    ○館委員 そうすると運輸大臣の運賃値上げの目的は、会社をしてどういうことをさせようということなのですか。赤字を克服させるためにやるのか、それとも輸送力増強といいますか、そういう形でやるのか、どういう立場から運賃の値上げを決定なさろうとするのかということを質問したいと思います。
  91. 永野護

    ○永野国務大臣 赤字の克服ということは結果論であります。目的ではありません。私の今の安全運転及びサービスの改善ということをなし得ますと、その結果として赤字の克服という結果が起きるかもしれません。目的ではないのであります。結果論であります。私の目的はあくまでも安全運転、同時にサービスの改善、これが目的であります。それを会社にやらしたいのであります。
  92. 館俊三

    ○館委員 その場合に運賃値上げによってこれをやろうとなさるのであるが、大会社ともあろうものが利用者負担において安全運転をやろうとする点については、私はどうもわからないと思います。この会社に一体それだけの増資をしたり社債を持つだけの力がないのかといいますと、私は十分にある会社だと思います。そういう方法について考えられたことがないのかどうか。ただ単に国鉄の運賃が去年値上げになった、値上げになるとすぐ私鉄運賃の値上げということを業者間からやかましく言われて出してきた、そこで中村運輸大臣がどうも会社経営がうまくいかない、赤字解消といいますか、そういう形で運賃の値上げをするのはよろしくないと考えられる、そこで、安全運転なり輸送力増強という形でものを言ってもらいたいということを言っておられたわけなのですが、それと一緒に、私鉄が五ヵ年計画というものを急にこしらえて出したという形がよく世間で言われているし、そういう話があるのですよ。そういう輸送力増強あるいは安全運転を確保するというようなことについては、初めから会社はそういう意図でなかったように思うわけです。大体私鉄運賃値上げというのは常に国鉄に先行させて、それが通ると、必ずその次に問題になってくる、国鉄の運賃がずっと上ってきたときには、必ず私鉄運賃を上げてくる。会社経営内容というものが十分に吟味されてやってきておるのかどうか。ことに今度はそういう傾向があるので……。大会社がそれだけの自分の企業に対して、自まかないで、安全運転を確保したりあるいは輸送の増強をするというのが、商業的立場から当然の仕事であって、それを会社内部の力でやるのが私は当りまえだと思うのです。それではその会社がそれだけの力がないのか、十三社なり十四社というものは、十分にその力を持っておると私は思う。その点について、十分吟味をなさる必要があると私は思う。
  93. 永野護

    ○永野国務大臣 お説の通りであります。十分に吟味しておるのであります。これは単に監督官庁である運輸省がその調べをしておるのはもちろんでありますけれども、運輸省の諮問機関である、最もこの道のヴェテランのそろっておりまする運輸審議会が、これは形ばかりでなくて、ほんとうに真剣に、毎晩々々夜十二時過ぎまでもかかって、その実情を数字に当って調べた結果、今申します二つの目的、すなわち安全運転及びサービスの向上、輸送力の増強のためには、ある程度の運賃の値上げはやむを得ない、これをしなければできないという結論を出しておるのであります。もちろん運輸審議会は諮問機関でありますから、そればかりにたよっておるのではございません。十分に直接運輸省の責任で数字の検討はいたしております。お説のように、安全運転だとか輸送力増強だとかいうことを、大衆のみの負担でやるのはけしからぬじゃないか、それより前に会社自体としてやるべきことがたくさんあるではないかというお説はごもっともであります。従いまして、私どもはその余地があるかないかということも十分に検討いたしております。これは場合によりますと、かなり膨大な数字になりますけれどもそれをお目にかけて、それを十分に読んでいただいたあとでその問題に触れるのが、あるいは順序じゃないかと思うのでありますけれども、結論だけ申し上げますと、今の状態では決して安易にやれぬだろうと思うから、まず値上げを許そうなんというような無責任な提案はいたしておらないのであります。十分に数字に基いたデータを研究いたしまして、この程度の値上げはやむを得ない、こう考えた結果であります。
  94. 館俊三

    ○館委員 会社が赤字だとか、そういう関係で安全運転なりあるいは輸送の増強をする力がないというような見きわめをなさったようなお話でありましたけれども、一体会社の配当は今何ぼやっているか、実にたくさんの配当をやつておるようであります。一三%ないし一五%の配当をやっている。最も低いので一〇%の配当をやっているように私は調べておる。こういう配当々々とやっておいて、そしてその会社経営の問題について、安全運転の問題について、これは当然会社がやらなければならぬものである、その問題が起きてきた時分に、利用者の負担といいますか、利用者の負担の形で運賃値上げをなさるというのは、私はどうもふに落ちない。株は株で、配当率は配当率でやっておいて、あとの始末は利用者にさせるというようなやり方は、私はどうもけしからぬと思うのです。その点はどうですか。
  95. 永野護

    ○永野国務大臣 その点は世間に非常に広く言われておるポイントであります。値上げをする前にまず配当を下げろ、これは議論としては、私はある程度まで正しいと思います。ただ、今の私企業でやっていきます上に、大衆の金を集めなければなりませんが、それにはある程度の配当をしておりませんと金が集まらないのであります。また借入金をするにいたしましても、ある程度の株価を維持し、ある程度の配当をしておる会社には、銀行は金を貸しますけれども、配当もしてないような会社には、銀行は決して金を貸しません。いわゆる金持ちけんかせずというので、そういう困難な経営状態にある会社に、社会大衆の福祉のために貸してやろうというような銀行業者はおりません。これは現実であります。従いまして、今館委員お話の論旨を貫けば、こういう公共事業は、みんな国営なり公営なりにすべきだという議論に、実はそこまでいかないと議論が一貫しないのでありまして、株式会社経営にまかしておる。その点を肯定して下されば、今度は結局私の所論まで、ずっと一路この汽車は進むと思うのであります。だからこういう公共事業は、一体民間経営にまかしておくのがけしからぬのだという論拠から御出発になると、それに私が賛成するか賛成しないかは別問題といたしまして、一貫した論理になるのでありますけれども、今のような株式会社で、そうして資本主義基調のもとに経営いたしますと、ある程度の利潤を認めませんと私企業は成り立ちません。それで、ことに資金運営の面から申しまして、ある程度の配当を続けておりませんと運営がつかない、これはよく━━━などというようなことをやりますのがまさにそれなのであります。━━━なんということはすこぶる悪いことなのであります。今の私鉄会社の配当は率直に申しまして厳格なる意味における査定をいたしますとまさに━━━だと思うのであります。しかし、それはそれをやらなければ今申しましたような設備の改善だとか最小限度に見て安全運転をするだけの資金の手当ができないという現実があるのであります。
  96. 館俊三

    ○館委員 今のお話だと、そういう配当は━━━━だと言われるのだが、しかし、これをやらなければ金融がつかないという会社の立場もお述べになった。そういう意味からいいまして、一二%なり一五%なり配当を━━━━であろうが何であろうが、それをやっておる会社なら、社債なり増資なりができないという道理は私はないと思う。そういう形において、今運輸大臣が望んでおられるような輸送力の増強なり安全運転をやるべきであって、これを私は前もって十分考えさしていただく必要があると思う。会社もみずからそれを深く考える必要があろうと私は思う。それで一体━━━━であろうが何であろうが、株主配当をしておって、そうして赤字が出るからお客さんに対してもう少し負担をしてくれという手は私は非常に酷たと思う。しかもそればかりでなく、そういうことになってくると、諸物価の値上りというものが非常に刺激をされてくる。そこでさっきの白書のような問題が出てくる。これはもう少し運輸大臣考えてみる必要があろうと思う。そういう━━━━をしておって、しかもその━━━━の形式をとることによって金融もうまくつけておりながら、今度は赤字が出たからすぐその分だけは利用者に負担をしてくれという手は、実に間違った手だと思う。私は全部公共事業体だからこれを国有にせいという議論は現段階ではしたいとは思わない。ただし公共的な事業の最も大きなものであるから、この事業を経営する者は公共事業であるということをよく考えて、その上に立って一体会社運営をどうすべきであるかということを考えたなら、運賃値上げの際においても十分に自己反省をする必要があろうと思う。私はこういう配当の面からいえば、世間がこの十三なり十四の大会社というのは決して経営困難な会社でないということを考えておるのは当然だろうと思う。私鉄のほんとうに零細な、運営の困難なる会社の値上げならとにかくとして、こういう一大企業体をなしておる会社に対してまで運賃値上げをして、さらに輸送力の増強なり会社経営の基礎を固めさせよう、それで配当は配当としてやる、そういうべらぼうな話は私はないと思う。会社の経理はそれで十分いくかもしれないけれども経済白書に書かれておるような人たちの家庭経済というもの、これも一つ経済の体系なんです。たくさんの人の家庭経済の体系が一体どうなるのか。会社だけの経営が成り立っても、一般家庭経済といいますか、家庭経理といいますか、そういうものを脅かしてまで、大会社のしかも企業の力量のある会社——私はそう言います、企業体として非常に力量を持った私鉄経経営会社に対して、もっと反省を求める必要が私はあろうと思う。━━━━であるとおっしゃるが、あるいはそうかもしれません。しかしその━━━━ができるほどの腕前を持った会社なんです。しかもそれによって銀行に━━━━だと思われても金融してもらうことのできる大会社なんです。その会社が、それだけの腕前、器量を持っておりながら、多年のお客さんにサービスをするために、安全運転の確保のために力を尽し、輸送増強のために力を尽すというのは、自分の力でやるのが当然であって、そういうものを一般大衆に転嫁するということは間違っておると私は思う。これは少し考え直していただきたい。この点はどうですか。
  97. 永野護

    ○永野国務大臣 これは直接のお答えじゃありませんけれども、━━━━という言葉は取り消します。というのは、私が公けの席で今の会社の配当は━━━━だというようなことを言ったということは、経済界に波乱を起します。すぐ株価に……(館委員「いや、いいんじゃないですか、波乱を起しても」と呼ぶ)従いまして、厳格な経理学的な意味でいうとそう言わざるを得ない配当だという意味でありまして、いわゆる世間にいう最も不健全なる会社の代表的言葉である━━━━ということを今の私鉄はみなやっているという言葉は非常に誤解を招きますから、今の━━━━という言葉は取り消すことにいたします。ただ経理内容が、さらにむずかしく申しますと、本来ならば配当すべからざる会社が配当をしておるというふうに一つ訂正さしていただきます。  そこで今度問題は、そういう腕があって、何はともあれ銀行からでも金を借り出すという腕があるのならば、自分の腕でやったらいいではないかというお説でありますけれども、これが根本に今の社会主義経済と資本主義経済の分れ目でありまして、資本主義経済では結局引き合わない仕事に資本は集まらないのであります。最後のところで本質的にある程度の利潤のある仕事でありませんと、その目的のいかんを問わず、それが安全運転のためであろうと、あるいはサービス向上のためであろうと、名目がいいからというので、危険な投資だけれども、してやろうという資本家は、少くも今日の状態ではございません。従いまして、いわゆる腕があってある期間つなぎがつくというのは、期間の問題であります。それはばかなような者でも、必ずじりじりとあの会社の配当はにせものだとわかります。そうするとほんとうの配当だと思っている人の資金は私鉄界から逃げます。そういたしますと、われわれがぜひ一刻も早くやらなければならぬという安全運転に必要とする資金も、サービス向上に対する資金——年々歳々数十万の人口がふくれ上っていきます都市を中心にする運輸事業に対して、それに適応する程度輸送力の増強、いわゆるサービスの向上をすることができないのであります。同じような状態で何とかかんとかやれるのに、それを運賃の値上げでやろうということをすぐ考えるというのは、これはいけないことだと思います。従いましてその点は御同感でございます。しかしながら、今やっておりまする努力は、自分たちの努力の限界に達しておるのでありますから、いましばらく今のような危険な状態に放任しておきますと、どうにもならない状態が起ることは必至であります。私は館委員がどうか各会社の計数を——資料を私幾らでも喜んで提供しますから、それをよく御検討下されば、なるほどこれは無理なことだというふうな御了解が得られると確信いたします。その後に、よく読んでみたけれども、どうしてもこの点が納得がいかぬ、ここにまだ節約をする余地があるんじゃないかという点がありましたら、私は喜んでお教えを受けます。
  98. 館俊三

    ○館委員 今お話しになったそういう資料を私はよく見ておきたいと思いますから、提出していただきたいと思います。しかし経済白書なりあるいは厚生白書で言ってよるような家庭の経済白書ですか、そういうものについて運輸大臣なり閣僚はものを考えることをしておらないというこの非難に対しては、十分に納得していただきたいと私は思う。一体、会社が赤字が出るとか、あるいはやむを得ざる配当であるとかいうお話でしたけれども会社それ自身がいろいろの付帯事業をやっておることは御承知通りであります。これはデパートもやったり、あるいは映画も始めるとか、あるいは土地の仕事もやるとか、あるいは住宅の仕事もやる。しまいには遊園施設をこしらえている。こういう兼業までやっておられるので、これらの経営と私鉄の経営とを総合したならば決して赤字じゃないし、こういうものを見ていても、いかに私鉄の企業者は企業能力を持っておる人たちであるということを感じないわけにいかない。特に変な投資なんかをしているのじゃないかという気がするのは、球団に対する投資なんかをどんどんやっておられることです。そういうところは私鉄企業としての本質をはずれていっている。しかも球団はみな赤字だというじゃないですか。そういうところにどんどん投資をしておいて、そうして安全操業が危なくなってきたとか、輸送増強ができなくなってきたとか、こういうものの言い方は私たちは理解ができない。これなんかについてのお考えはどうですか。これだけやって、しかも私鉄の乗客をふやしたり、そういうことに対して営業をやっていることに私は異議を申すものじゃないけれども、球団のようなああいうものにどんどん投資をするとか、あるいは選手をまかなってくるとか、そういう形をやっておいて、そうして運賃の値上げは私は非常に感心できない。私鉄の乗客なりその他をふやしていこうという立場でこれをやられることは一向差しつかえない。そういう企業的な意欲というか、そういうものを持っているような大私鉄会社が赤字をすぐ国民に負担しろというのは、経営者としてきわめてがいしょうなしだと私は思わざるを得ない。もっと家庭経済の経理の立場も知ってもらわなければならぬ。会社だけの経理の内容で事を処理されるようなものの言い方では国民は納得しないと思う。
  99. 永野護

    ○永野国務大臣 きわめてわかりいいぴんとくるお話、赤字を出しておって、何千万円の選手を雇う球団なんかやっているのはけしからんじゃないかという御質問は、まことに閉口するのであります。しかし、これは決して私鉄会社の社長の道楽で野球がおもしろいからやってみようなんていうものではないのでありまして、その社長の責任者の説明を聞きますと、それは直接にその球団の経費だけ切り離して考えますと、あるいはそれは重荷に小づけのような存在になっておるかもしれませんけれども、それがありますために、直接間接いわゆる乗客のふえるその数字を入れますと、非常に栄養施設になっておるのであって、決して道楽でもぜいたくでもない、こういう説明をいたしておるのであります。しかしながら、私は今までの館委員の御質問の中で、われわれの立場として非常に考えなければならぬことは、一応私はあの程度の配当はやむを得ぬ、やりくりをしていく、いわゆる安全運転確保とサービスの向上のためにはやむを得ぬとお答えはいたしましたけれども、しかしあの率が果して適当であるかどうかということについては、再検討の余地があると私自身が考えておるのであります。ただ問題は、今この目先のところでは一応これをお認めを願って、そうしてゆっくりと、少し時をかしていただいて、この問題を検討しなければならぬ。公共事業で、果してそれが八分が適当か、あるいは一割が適当か、まだ結論は出ません。出ませんが、一割とか一割三分とか一割五分という配当はこれは少くも、私はいけないというのではありません、検討してみる値打はある、こう考えております。その点が一点。これは私まじめに考えます。それからもう一つは、今のお説のように、たとえば球団のようなことを私鉄がやるということがいいか悪いか。私は悪いとは今決して申し上げておりませんが、いいか悪いかということを検討する程度の値打はある、検討すべきだ、こう考えております。そうして最も早い機会に、そういう数字に触れた検討までいたしましたときに、今度ははっきりとお答えができると思います。
  100. 館俊三

    ○館委員 そこで、国鉄のこのごろの方針は、たとえば国鉄輸送に専念するのだ、だからそういう輸送にあまり関係のない仕事は、これを切り離すのだという方針をとられておる。志免の問題でも被服廠の問題でも、いろいろ問題をとられておる。私鉄の経営に対して運輸省はどういう方針をとられておるのか、この付帯事業そのものに。私鉄の経営を培養する形において、非常にたくましい企業意欲から、土地を買収したり、住宅を建てたりあるいは球団をこしらえたり、遊園地をこしらえたりすること、これはよくわかる。しかし、それだけの仕事を私鉄がやっておることは、それは私は否定するものではないし、培養施設であるからいいと思いますが、そういうことをしておりながら、そのかたわら私鉄をやっておるという形になってきて、そのために私鉄の安全操業が行き詰まったり、それからそのサービスが行き詰まってくるという手は私はないと思う。私鉄が本業なのか、付帯事業が本業なのかと私は言わざるを得ない。まずお客さんを運んでおる人命に関する安全の施設に対して十分に、球団に入れるお金を入れる、あるいは住宅に入れるお金を入れる、付帯事業に対するお金を入れるということをまず優先せしめなければいけない、そういうことを考えております。それなのに、もうやたらにそういう付帯施設をして、培養施設をとってどんどんお客さんを吸収して、もう安全運転ができない、あるいはまたそのサービスの点で包容力がなくなった、こういう言い方をして、それだからどうしても私鉄企業としては赤字が出るんだ、これを国民に負担をさせれという経営の方針ですね、付帯事業が主なのが、安全運転なり輸送力増強という私鉄本来の仕事が主なのか、これを一つ明らかにしてもらいたいと私は思う。どういう方針で私鉄を指導監督しておられるのか。
  101. 永野護

    ○永野国務大臣 お答えいたします。私鉄が付帯事業をやることがいいか悪いかということは、これは検討する値打のある問題でありますけれども、私は今の制度のもとにおいてはやむを得ぬと思っております。国鉄が、厳格に計算いたしますと、実はいろいろな議論があるのでありまして、国鉄の経理の本質が一体どうなっているかということは、相当検討の要る問題だと思うのでありますけれども、しかし独立ほんとうの企業体としてやりますためには、今お話のあったあるいは炭鉱の経営も、あるいは住宅経営も場合によったらやってもいいのじゃないかと私は思っておるのであります。しかしながら今の国鉄が、それはやらない方がいいというのは、最後のしりを、とにかく国家がいろいろ資金を出してめんどうを見てくれるのだから、そんなことはやるなということを国が言い得るのであります。ところが私鉄の方は、そういう最後のよりどころがないのであります。どうしても自分は自分たちの持っている勢力の範囲内において生きていかなければならぬのでありますから、何とかしてそろばんを合わせるようにしようとする努力の結果が、いろいろな付帯事業になって現われておるのでありまして、またあるいは先ほどからたびたび繰り返して申します、あなたもお認めになっておる、安全運転とサービス向上のために必要な資金を捻出する一つの手段、方法としてとっておるのであって、決してあれは道楽でやっておるのではない。一見道楽に見えるような施設がありますけれども、実質はあれは道楽じゃない、その窮極の、私鉄本来の目的を達成するための一つの手段だ、こう私は了解しております。
  102. 館俊三

    ○館委員 今のお話の中で、そうすると付帯事業は認めるということなんですね。しかし付帯事業を主にするのか、私鉄それ自身の経営を主にするのかという指導の仕方、監督の仕方をどうなさるのですか。
  103. 永野護

    ○永野国務大臣 これは一がいに論ずるわけにはいきません。個々の私鉄についてみんな特殊事情があります。従いまして、その会社特殊事情に即しまして、あまりに付帯事業が多過ぎるではないかというような注意を与えなければならないような時期があるかもしれません。しかしその付帯事業が黒字であることによって、本来の鉄道が赤字であっても維持ができるというような状態会社であるといたしますならば、むしろその付帯事業は大衆の利益のためにやっておると解釈してやらなければならぬのであります。付帯事業が赤子になって、むしろ運賃の負担が増すような傾向のあるようなものであれば、これはとめなければならぬと思います。しかし付帯事業をやることによって、運賃の値上げの時期を多少でもずらして維持ができるというような状態にあるとすれば、これはむしろ奨励してもやらさなければならぬのじゃないかと思うのでありまして、一がいに一般論的に、私鉄会社が付帯事業をやっていいか悪いかという議論にはならぬ、こう考えております。
  104. 館俊三

    ○館委員 私の聞くのは、その付帯事業をやっていいか悪いかという論ではなくて、私鉄の経営を主にするのか、それを培養するための付帯事業を主にするのかということで、指導監督はどちらを主になさるのかということを聞いておるのです。
  105. 永野護

    ○永野国務大臣 それはもう議論の余地がなしに、私鉄会社は旅客、貨物の運送を主とするのは当然であります。これは私はあまりに当然過ぎることと思ってお答えしなかったわけであります。
  106. 館俊三

    ○館委員 全くその通りだと私は思う。そういう際に、付帯事業に私鉄が投資しておる資本というものをお考えになって経営を調査なさったかどうか。これは世間に伝えられるところによると、私鉄それ自身の経営は赤字ではない。この通り一三%、一五%、あるいは安くて一〇%の配当を何であろうがとにかくやっておる、これも黒字じゃないか。さらに付帯事業をどんどんはなやかにやっておる。これも黒字じゃないか。総合的に見ると、どうしても私鉄が赤字だとか、あるいはその運転なりの安全を期するお金がないとか、輸送力増強のためのサービスをするお金がないとかということは言えない。もちろんそれだけの増資なり社債なりで十分にまかなえるだけの力があるということを言っておるのですが、総合的な立場からの検討をなさったかどうか。単に私鉄そのものだけの検討をなさっておって、赤字ということを言っておられるのではないかという疑いを世間は非常に強く持っておる。それについてお答えを願いたい。
  107. 永野護

    ○永野国務大臣 もちろん全部の私鉄を十分に検討いたしております。でありますから、先ほどから申しますように、こういう質問応答に入りますときには、われわれの調査しております各種の資料を十分に御検討願って、付帯事業はどういう数字になっておる、本業はどういう数字になって、結局こうなっておるという数字に基づいた議論でありませんと、これはプリンシプルや主義主張は何もない問題であります。計数の問題であります。従ってやりとりいたしておりましたような、数字を抜きにしたような話は実は意味をなさぬと私は考えておるのであります。従いまして、いつでも皆さんに喜んで今の数字をお見せしますが、何にも知らない人は、あのデパートのはなやかな人の集まりや遊園地の繁盛を見て、非常に利益が上っておるような、はなやかなような感じを持っておるのでありますけれども、数字について見ますと、そう簡単なものではないのであります。私は総括論といたしまして、付帯事業が本来の輸送事業の負担になることは、事業の性質上やってはいかぬ、好ましからざることだと思います。しかしそれがプラスになっておる仕事だと、そこにある程度の資本が寝るではないかという理論でそれをとめるのはどうか、こう考えております。  それからもう一つは、固定資本を増加させるということと、それから目先の収支計算がどうなるかということとは全然別なことなのであります。資本をたくさん投下するくらいだから——これは個人の私経済でありますと、あそこで別荘を買ったり、大きな自動車を買ったりするという、何か物を買うということは、ふところが楽だということを意味いたしますけれども会社経営から申しますと、固定資本がだんだん増すということは、その会社が金持ちということではないのであります。固定資産がふえると、固定資本は目に見えます。借金は帳簿を調べてみないと出てこない。だから目に見える、だれにでもわかる施設たけ見て、あの会社は景気がいいんだ、それで苦しいなんということはけしからぬというような説が起っておりますけれども、それはいわゆる大衆の俗論でありまして、指導者階級の皆様のお説のときは、そういう俗論の、景気がいいというような話でない、現実の数字に基いた議論をいたしたい、こう考えております。その資料はいつでも提供いたします。
  108. 館俊三

    ○館委員 私は俗論を言っておるのではないのです。本質論を言っておるのです。これは会社自体の経営政府で十分に手を入れてめんどうを見てくれるのだが、一般消費者階級の生活、経営というものについては政府はめんどうを見ておらぬ。さっき読んだ新聞の投書を見ても明らかです。厚生省もそう言っておる。経済白書もそう言っておる。そういう点について一体どうめんどうを見てくれておるのか。常に政府は企業者側の立場に立って、それが赤字だの、事業経営というものは数字でいくのだとおっしゃるが、これはあなたと私と論じたって反対的立場であるから切りのない話ですが、そればかりでは運賃値上げには私は納得できないのです。この運賃値上げのために物価に及ぼす影響についてはどういうふうにお考えになっておるか、一つ御説明願いたい。
  109. 永野護

    ○永野国務大臣 これも数字をお目にかけて御説明申し上げますけれども、今度の値上げの結果家計に及ぼす影響は実に少いのであります。交通、通信全部を加えまして家計の一・九%でありますけれども、今度の値上げはその一・九%の中の電車賃の一%とか二%とかいうパーセンテージしか占めておりませんので、全体として見ますと、家計費の中に占める今度の運賃値上げの率は非常に微々たるものであります。これは資料ができておりますから差し上げます。
  110. 館俊三

    ○館委員 大体それはどのくらいになっておりますか。
  111. 永野護

    ○永野国務大臣 今度の値上げの及ぼします影響は各会社によってみな違うのであります。その会社の経理の内容に伴う率を出しておりまして、一律一体に同じ率で上げるのではございません。だからどこの何鉄道沿線の利用者はどうであるか——これは値上げいたしましてもある短かい区間はほとんど一つも影響のないというものが多いのであります。相当長距離にならないと目に立つほどの数字にはなりません。従いまして非常に具体的に、どこに住んでおる者の家計にどのくらい及ぼすということになるのでありまして、値上げがあっても影響のないところがあるのであります。だから一般論はしにくいのであります。  それから家計のことを考えないですぐ値上げするのはけしからぬというお話でありますが、それは私、先ほどからたびたび申し上げておるので御了解願ったのじゃないかと思いますが、それは決してぜいたくじゃなくて、いわゆる極端なことを申しますと、生命の安全を確保するために必須の費用だ、こう思うのであります。一種の火災保険のようなもの、だと思うのであります。それをしておりませんと、事故が起きた後になって——ごく端的に申しますと修理費の不足であります。その修理費用を食っておる今の実情であります。これはちょうどからだの健康が悪くなるようなものでありますから、今一ぱい飲んだ酒ですぐ翌日健康が悪くなるのではないのでありますけれども、そういう経営をずっと続けておりますと、大酒飲みの健康がだんだん悪くなって脳溢血でひっくり返るような現象が起る過程にあるのであります。従いまして、きのうの私鉄の経営と、きょうの私鉄の経営がそんなにはっきり違いはしません。けれども放任しておきますと非常に大きな結果が起ってくる、それを心配しておるのであります。
  112. 館俊三

    ○館委員 その利用者が自分の生命保険をかけさせられるというような今のお話、これは少しおかしい。そういう考えでいらっしゃるから利用者の個々の経済というものがいつも政府当局から無視されることになる。それから今、私鉄運賃の値上げはほんの微々たるもので家庭経済の何%にもならない、非常にパーセンテージが小さいというお話であった。計数はあとから示していただくということなんですが、この私鉄運賃の値上げ三割というのは、単に家庭経済交通費が非常に高くなるということばかりではないのです。それに刺激されて諸物価が非常に騰貴する。この点が非常に心配になっております。待ってましたというように物価の騰貴するものもたくさんあるということを新聞では伝えておる。世間もそう言っておる。それが小さい家計の上にのしかかってくる。その点についての御説明がなかったのはきわめて残念であります。政府は低物価政策をとると言っていらっしゃる。そのために閣議でいろいろ論議が起きたでしょう。それでこの私鉄の運賃値上げが低物価政策を破る突破口になるとさえ新聞は言っておる。現在においてはいろいろなものの値上げが考えられておる。あなたの方でこの間バスの値上げをしなければならぬという話もあったが、どうなりましたか。バスも待ってましたとやっている。トラックだって同じことです。新聞や放送料金、ガス、電気とかいうものが問題になっておる。家賃も問題になってくるでしょう。地代も問題になってくる。小さいところでは、パーマネント、理髪、こういうものまでが問題になっている。パーマネントとか理髪というのはほんとうに奥さんやだんなさんにのしかかってくる。こういうものの処置をどうなさるつもりか。これが多くの庶民を圧迫してくる。それは交通運賃の値上げだけの問題じゃない。私鉄の会社がとにかく政府の許可を受けて運賃値上げを突破したとなったら、これらは続続として立ち上ってくる。その心理的影響というものは非常に大きい。こっけいな話ですけれども、この間美智子さんが御婚約になったら、美智子さんのお父さんの会社の株がすぐ騰貴するような状態になってくる。心理的にも、また実際的にも押えてきたこれらの諸料金の騰貴というものが目に見えるようである。この問題は、あなた方与党の中でも、閣僚の中でも非常に割れた問題じゃないかと思う。それをどうなさるか。運輸大臣は大蔵大臣でない、経済企画庁長官でないとおっしゃるかもしれませんが、根本として低物価政策を破綻させるものであるというふうに私考える。その点については私は非常な危惧を抱いておる。こうなったらとめどなく貧富の懸隔のはなはだしい形がいよいよ深刻になる。これは非常に残念なことだ。だからどうしてもここは思いとどまって、この運賃値上げというものをあとにずらす、もう少し経済状態を見る、そういうふうにやると一緒に、その会社をして——そういう腕っこきの会社がそろっているんですからね。付帯の事業までやってどんどんもうけるような会社、配当も十分やっているような会社がやっている。これは近代産業経営者なんです。その近代産業経営者が公共事業だという頭を持っているのだろうと思う。それがすぐ消費者負担に顔を向けているというやり方は、近代産業経営者としての価値がないくらいに私は考える。もっと腕っこきがあってもよろしいと思う。この消費者に及ぼす影響というのは非常におそろしい。待ってましたとばかり諸料金あるいは運賃がどんどん上ってくる。この点についてどうお考えになるか。
  113. 永野護

    ○永野国務大臣 ごもっともであります。私どもが今日までこの運賃問題を全く無条件に押えてきておったのは、その連鎖反応がこわかったからであります。しかしながら、先ほど申しましたように、各私鉄会社経営状態が安全運転にも危殆を及ぼすような感じがだんだんと高まってきましたのが一つの理由であります。  もう一つは、いわゆる神武以来の好景気が神武以来の不景気に急転落いたしましたときにおいて、今申しましたような理論を傾聴しておるひまはなくて、不合理と知りつつもドラスティックな方法をとらなければならない時代が続いたのであります。ところが皆さん御承知のように、国民全部がこの急転落した経済状態の本体をよく認識いたしまして、政府国民一体となってその対策をいたしました結果、今日ではやや経済が安定して参りました。そして国際収支のバランスも合って参りましたので、今度は初めて、もうこの程度ならば少くも不合理の是正はしてもいい時期になったのじゃないか、こう私ども経済状態を観察したのであります。これは見解の差のある人がたくさんあることを前提として、これを認めつつ、私はそういうふうに観測しております。そしてその不合理の是正ということをまずやりたいのが、この運賃問題だ。ほかにもありましょうけれども、最も不合理の是正の必要度の高いものの一つとして、私鉄の運賃問題、バスの運賃問題を取り上げたわけであります。  今お話のような連鎖反応が起って大へんだぞということは十分承知しておるのであります。しかし承知しておってなおかつ、もうこの程度の不合理の是正は国の経済の根本をくつがえすだけの影響は与えないだけの体力を回復した、こういうふうに私どもは観測をしておるのであります。従いまして、今御指摘になったような各種の業態に連鎖反応の起る危険は私自体が認めておるのでありますから、これは他の方法でできるだけ小範囲に食いとめる努力については、この私鉄の運賃の値上げと同時に並行して考えなければならぬ、こう考えております。少くもすぐ国民の必要資材であるガスとか電気とかいうものを値上げするというようなことがあっちゃ相済まぬと思っております。これはその担当大臣によくお願いいたしまして、連鎖反応をできるだけ小さい範囲にとどめるように努力をいたして参ります。
  114. 館俊三

    ○館委員 私も運賃値上げしたらパーマネントまで上ってくるという話、そうだろうと思ったんだが、しかし大臣として、やはり連鎖反応が起きてそういうことが起きるだろうということを認めていらっしゃるのを聞いて、非常に寒い思いがする。そういう責任者の立場で連鎖反応が起きるということを現在認めていらっしゃる。これは各関係大臣に頼んで小範囲にとどめるというお話ですが、そのお話はきわめて適切であるが、きわめて消極的なお話なんだ。どうなるか行く先がわかりません。そこで私の言うのは、物価政策というものについての政府の立場がどうなったか、こういうわけなんです。とにかく神武景気ががた落ちになって変になっておるのだが、このごろはなべ底でなく少し上ったという話が出ておりますが、それだけで体質が改善されたとは私は見ておらぬ。まだまだ深刻だ。それだから経済白書なり厚生白書なりがああいうことを言っておる。そういう際に、もうどうもならぬ万から一つ体質を改善していくといって、選ばれた私鉄会社は仕合せであるかもしれないけれども、それ以外の立場に立つものは非常に前途危なしという感じを、あなたのお話で持たざるを得ない。これは間違った言い方であると思うから訂正なさったらどうかと思う。私は物価を押えるという立場で政府が現在まできていていろいろな施策を講じておられるものだと思っておった。これからおやりになるのでは、私は非常に困ったことだと思わざるを得ません。この話はこれで終りますが、一体運輸省として、国鉄経営なり私鉄の経営管理していらっしゃる際に、いつも問題になるのは運賃の問題だ。この運賃をどうするかという運賃政策というものについて、一体どういうふうな立場をとっておられるかということを私は危惧せざるを得ない。いつも私鉄会社から言われ、公社から言われて、ごたごたをやっておる。私はこれは非常におかしいと思う。国鉄の運賃値上げと同時に、簡単に私鉄から運賃値上げをやってくる、それから政府が論議を始めるという形が出ておる。国鉄、私鉄、あるいはバスなどに対する政府の実際的な運賃政策というべきものは今まで見たことがない。現在も国鉄運賃の値上げと同時に、私鉄から提起されて一年有余も上げるとか上げないとか、ごたこたやっている。この間一年半もかかっておっても、なおかつ運賃政策というものの確立は、私は聞いておらない。そういう自主性のない政府、あるいは運輸当局、私はそうあるべきものではないと思っておる。これは実に不思議な話だ。しかも業者あるいは経営者から提起されて、そうして上げるべきでない、あるいは上げるべきだ、あるいは低物価政策だの、高物価政策だの、そういう論議が始められて、そのうちには、とうとう結局経営者側からまるめられて、そうしてこういう形が出てくるというふうに、経過をながめてみると、そうとしか受け取れない。運賃論議が起きれば必ずこれは断わらないで、最後の手段には、運賃値上げという形が持ってこられる。運輸審議会というものはそうじゃないとおっしゃるかもしれないが、運輸審議会それ自身が何をやっているかと私は言いたい。運賃政策というものがあってやっているのか、あるいは運輸省がそれを示してやっておるのかどうか。そのときの経済情勢によっていいかげんに糊塗してやってきておるように思われる。運輸審議会で審議される資料はどうか。結局は運輸省なり国鉄、そういう方面からの資料を基礎にしてやっておられるようだ。会社の資料、そういうものでやっておられる。そうして国鉄にしても運輸省にしても大体上げるという方針がそのまま運輸審議会に移っていくという形になってきておる。基本的な立場で運賃政策を確立してその上で自主的に運賃についての詮議というものがいまだかつてなかった。こういう態度では非常におもしろくない。運賃政策というものは私はわからぬけれども、そういうものは何かあるはずだ。諸物価といろいろ比べ合せて、あるいはまたインフレ政策、デフレ政策に比べ合せて、それが立っていなければならぬと私は思うのです。そういうものがないんだ。それから私鉄運賃の値上げにしても、単に私鉄と運輸省だけの話し合い——あるいは審議会も入るかもしれませんけれども、そういう話し合いでやるべきものでなくて、これを少くとも国会の決裁が要るとか、あるいはまた、たとえば都市交通のようなものはその土地の都議会あるいは市議会というようなところで、運賃値上げその他については十分論議した上でやっておる。私鉄に関する限りはそういう場所がないのです。そういう審議する機関についても十分考慮する必要がある。あるいはいろいろな形で地域住民の公聴会を開くなりして、十分に意思を入れる、そういうような形でやる必要があろうと私は思うのです。今は運賃値上げ反対あるいは運賃値上げについての庶民の声というものは、単に投書欄を借りて細々と言うたり、あるいは少しばかりの会合を開いて大臣のところへ運賃値上げ反対と言ってきたりする態度だけであって、その審議する中へはっきりした形で入ってないということも実に残念だ。審議会の現在の審議の仕方あるいは運輸省と会社との話し合いの仕方、それだけで国民の生活に大きな影響を与えておる運賃の値下げ、値上げを論議されておることは実に残念。それに運賃政策というものの確立がないように私は思います。この点を一つ御返事おき願いたいのです。
  115. 永野護

    ○永野国務大臣 質問はかなり多岐にわたっておりますが、その中の、こういう公共福祉の増進に非常に関係のある料金は運輸省あるいは運輸審議会の答申のみにたよらないで、もっと公共的な機関、一番具体的なものは国会だと思いますが、そういうものの審議にかけるべきだという御主張は、私は立法論としては傾聴すべき議論だと思います。けれども私は現実の、今の法制のもとにおける運営ではできるだけの配慮を払ったつもりであります。これは運輸審議会の答申としてもお目にかけます。決していいかげんな、安易な、そこらから提出した材料をつづり合せた作文ではありません。相当に骨を折って調べております。それをお読み願えば相当苦労しておこることがおわかりになると思います。そういう意味におきまして運賃という問題をそう簡単に、軽々に思いつきで値上げをきめたり押えたりしたのではないのであります。十分に努力を尽した跡は数字の上に現われておりますから、ぜひごらんを願いたいと思います。     〔委員長退席、堀内委員長代理着席〕
  116. 館俊三

    ○館委員 いや現在の機構のもとに十分に審議されたことは私はわかっておる。わかっておるけれども、審議会の調査は何であるかということに疑問を持つ。会社の資料や運輸省の資料やそれくらいの線でやっていらっしゃるのではないかと思う。しかも運輸審議会にかけるということになると、結局運輸省の方針が出てから大体方針を体してやっておるような疑いを持つ。今の審議会というものはそういう形なんです。そこですなおに通っておる、いろいろなごたごたはあるのでしょうけれども。そういう形はいけないから今の法制のワク内で努力をしておられるといいながら、もう少しワクをはみ出す形の体系を将来作っていく気がまえが必要だと思う。そういう意味で運賃政策を考えていって、その運賃政策なりすべての物価の考え方なりからの運賃政策を立てていって、そういう建前から運輸審議会をどうするのだ、この運賃値上げを国会にかけるのかあるいは都市のように議会にかけるのか、あるいはまた地域住民と一緒になって一つのなにをこしらえるのか、そういう形を十分に研究する必要がある。単に今の機構がこうだからこれでやってきたというだけでは、庶民に大きな影響を及ぼす運賃の値上げにはならないというところへ現実にきておるわけなんです。そういうことを申し上げておきたい。ことに運賃の値上げは幾らくらいの値上げをなさっておるのか、最後にちょっと聞いておきたい。
  117. 永野護

    ○永野国務大臣 先ほども申しましたように、運賃の問題は二つの目的、すなわち、安全運転とサービスの向上のために必要とする経費をその会社の実態に応じて個々に検討しておりますからみんな違うのであります。平均して一五・八六%とこの書類ではなっておりますが、私は一六・一%ではなかったかと記憶するのだが、社によってずいぶん率が違います。一番安いのは六%くらいから一番高いのは二一%くらいになっておりますので、会社の実態によって非常に違います。
  118. 館俊三

    ○館委員 何社分ですか。
  119. 永野護

    ○永野国務大臣 私鉄十三社と申しますその全部です。十三社の平均が一五・八六%です。
  120. 館俊三

    ○館委員 時間がきましたから私、簡単に終りたいと思います。一五%とか一六%とかいうものは、個々の運賃を対象としたものではないですな。個々の運賃を十円であるとか二十円の十何%とかいうものではないらしい。その点はどうですか。
  121. 永野護

    ○永野国務大臣 収入と支出の残を基準として個別に検討しておるのであります。
  122. 館俊三

    ○館委員 総収入ですね。
  123. 永野護

    ○永野国務大臣 さようであります。従いまして非常に区域の狭いところではほとんど影響の起っていないところもあります。距離がだんだん長くなりますと相当の数字になるわけであります。たとえば東武鉄道について申しますと、一番遠い日光は今までは二百七十円であります。それが三百三十円になるのであります。それでもしかし国鉄で行きますと三百六十円ですから、値上げいたしましても国鉄よりは安いのであります。一番値上げが大きく現われる一番遠いところでその程度の影響が起って参るわけであります。
  124. 館俊三

    ○館委員 総収入の何%ということになるのですが、個々の十円だとか二十円だとかいう場合にはほとんど一六%じゃない、一〇〇%、倍になるというようなところも区間の割ではできてくる。最も心配なのは、やはり私鉄でも定期旅客が非常に多い。定期旅客が旅客の六〇%くらい占めているのじゃないですか。もっとたくさん占めているのじゃないですか。それが定期旅客運賃を値上げされたんじゃたまったものじゃない。これを値上げしなければ私鉄が値上げした目的が達せられないのではないか。この定期旅客運賃の値上げ、これが通勤者にとって非常な迷惑なんです。この点が非常な非難の的になっている。こういう点も一体運輸大臣指導されるのか、そのまま入社にまかせておくのか、そういう点も十分に聞いておきたいと思う。こういう運賃値上げは、さっき運輸大臣が言われた通り、あなたも認められた通り、諸物価に影響するところが非常に大きい。さびしい気持がしましたがね。だから私はこういうものには反対なんですよ。しかしその私鉄運賃の一六%値上げは、単に総収入の一六%値上げで、あとはやりっぱなしにして、定期を上げようが、区間がどうなろうが、そういうものについての運輸大臣のタッチがあるのかどうか、そういう点を最後に聞いておきたい。
  125. 永野護

    ○永野国務大臣 決してそんな乱暴な運賃の値上げを認めておりません。きわめてこまかに、その率がどういうふうに配分されるかということは表ができております。それから定期の場合も十分に考えております。しかし個々の説明は非常に具体的な問題となって、数字も小さくなっておりますから、私一々記憶しておりませんので、政府委員からそのこまかい数字の説明はさせます。
  126. 館俊三

    ○館委員 それを今ここで詳しく聞いたってしようのない話なんだが、私、私鉄の運賃を上げてはならぬという立場だから、そういう立場からこういうことを言うのはおかしいですけれども、そういう立場でなくて、あなた方やろうとする立場に立った場合に、十円のものが一ぺんに二十円になる、十五円のものが二区制になって三十円になったりすることになると、一般民衆が考えておる一六%値上げじゃなくて、一〇〇%値上げになっちゃう、そういうところができてくる。そういうことが、民衆に対して何%の値上げという言葉が、非常に民衆をごまかす形になる。総収入に対して何%ということを考えている人がない、そういう点が実におそろしいことだと私は思う。
  127. 永野護

    ○永野国務大臣 今のような御懸念は絶対にありません。そこで、できれば個個の会社について、個々の区間についてどこどこからどこまでは幾らのものが幾らになったというふうに御説明を申し上げますとはっきり御認識が願えると思います。十円のものが二十円になったり三十円になったりすることは一カ所も絶対にありません。
  128. 館俊三

    ○館委員 いや、それはあるんですよ。
  129. 永野護

    ○永野国務大臣 それでは事務当局から説明いたさせます。
  130. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 仰せの通り、現在の運賃制度におきましては、十円刻みの四捨五入制度をとっておりますので、これは国鉄の運賃値上げをいたすときもそうでございますが、限界がきますと、その次の段階に上るという点ができてくるわけでございます。そういうお客さんに対しましては、実は不合理であるという御意見ごもっともだと思いますが、これは運賃制度がそのほかに考えられないわけでございまして、たとえば二十一円でございますとか二十二円とかやってやれないわけではないわけでございますが、これをやりますと、非常に人件費を食う、あるいは手間がかかるということがありまして、かえってまたそれが運賃にはね返ってくるということで、やむを得ざる措置ということで——この点については鉄道企業に非常に明るい先生は十分おわかりだと思いますが、そういう点が起るということはやむを得ないということで今までやって参っておるわけでございます。
  131. 館俊三

    ○館委員 たとえば新聞を売るときだって、八円の新聞があったりして一円玉が出てくる。それが手数がかかるということになるわけだ。国鉄も私鉄もそういう手数のかかる、人件費のかかる点までも消費者が引き受けなければならぬという道理は、ほんとうを言えばないわけである。これは手数のかかるのは当りまえで、手数をかけてもうけなければいかぬのだからそういうことはない。  私、最後に言っておきますが、今運輸大臣が言われた通り、諸物価に影響するところが非常に大きいことを心配しておられながらも、私鉄運賃を上げようとなさる心理状態が私にはどうしてもわからぬということと、政府の物価政策はどうするのだ、低物価政策という建前であったらしいのだが、それを捨てたのかどうかということ、それをまた私はそういうことのないようにしてもらいたいというふうに考える。  それから私鉄経営者に私が言いたいことは、近代的な企業の経営をやっておる人の立場として、もっと公共事業であるということの認識に立って、器量のある人たちだから、もっとみずからを省みて社債にしろ増資にしろできないわけはないと思う。しかもそういう点について利用者に負担をかけないで、そういう点の世話をするのが運輸大臣ではないかと私は思う。そういう点も考えていただきたいということを申し述べる。運賃政策についてもっと確固とした——業者の下からの突き上げによって問題を毎回起しておるというふがいない話、そういうものは考えなければいけない、そういうことを申し述べまして、長いよたよた質問を終ることにいたします。
  132. 永野護

    ○永野国務大臣 了承いたしました。
  133. 堀内一雄

    ○堀内委員長代理 天野公義君。
  134. 天野公義

    ○天野(公)委員 館委員質問に関連いたしまして、二、三点お伺いしたいと思います。  今回運輸省で私鉄運賃の値上げについて大体踏み切って断行するというような話を聞いておるわけでございますが、基本的な問題といたしまして現行運賃のもとにおいては、私鉄の施設の改善並びにサービス面の改善が非常に困難である、こういう点に立脚して、そういうお考えに立たれたと思うわけであります。運賃は大衆にとって安ければこれに起したことはないわけでありますが、限界に達しますと問題のあることは大臣のお話通りだろうと思います。そこで、今のままの状況でございますと、設備の改善並びにサービスの向上という点で、具体面でどういう点が一番欠けてくるのかという点が一つ。それから今度運賃を改訂した場合に、施設面、サービス面、そういう面で具体的によいと思われる点が、どこに現われてくるのか、それを一つお伺いしたいと思います。
  135. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 先ほどから大臣が御説明をいたしておりますように、また各委員から、私鉄が運賃の改正を待たないで、みずからの力で設備の改善その他をやるべきではないかというごもっともなお話があったわけでございますが、現在、大私鉄の運賃が二十八年以降ストップになっております。それ以後それではどのくらい全鉄が増資なりあるいは社債なりで輸送力の増強をして参ったかということは、数字がありますがあまりこまかくなりますので省略さしてもらいますが、その点では非常に資本金の増大ということをやって参っております。それから、そのために投下資本が非常に多くなりまして、企業がむずかしくなったということは、御承知のように現在問題になっております十三大電鉄というものは、東京、大阪あるいは名古屋、北九州というような地域を持っておるところでございまして、人口集中の非常に激しいところでございます。それで現在東京あるいは大阪付近のラッシュ時におきますピークは二〇〇%をこしておる状態でございまして、運輸省といたしましては何とかしてこれを下げなければならない。少くとも一五〇%ぐらいにこの輸送効率を下げるということが必要であるということで、各会社から五カ年計画をとりまして、現在逐次それを実施さしておるという段階でございます。ただ、今言いましたように、収益勘定が非常に悪くなって参りましたので、それからだんだん、今まで会社だけの信用でやって参ったのができなくなってしまった。またその結果、補修費というものがどうしても食い込まれるわけでございます。国鉄におきましても、運賃改正前にはそういう傾向は願書であったわけでありますが、いわゆる老朽施設というものがだんだん改善をされないということになりますと安全を阻害するということで、今度の運賃改正はやむを得ないというふうに考えて参ったわけでございまして、今後ともそういう面におきまして会社の方には五ヵ年計画というものを役所にも出させております。車両の増備、あるいは線路の増備、または停車場の延伸というこまかい資料をとっておりますので、こういうサービス面に対する改善というものは以後もわれわれの方としましては強力に指導して参りたい、かように考えておるわけでございます。
  136. 天野公義

    ○天野(公)委員 いつでも国鉄が運賃を上げますと、私鉄の運賃の値上げ問題が出てくるわけでございます。ところが私は国鉄の運賃と私鉄の運賃とは性格が違うというか、乗っておる基盤が違うというように思うわけであります。ただいま山内さんのお話しになりましたように、私鉄は大体非常に人口密度の多いところを走っておって、非常に営業的にいいところを持っておる。国鉄の方はそうでなくて、はっきり公共事業でございますから、赤字線をたくさんかかえてやっておる。そういうことを考えますと、国鉄の運賃を上げたらすぐ私鉄の運賃がどうのこうの、それは今までの経験でありますと出てくるわけでありますが、これをはっきりと区別しなければならない。しかしながら、私鉄の方が設備の改善なり、また社会の進歩、人口の増加等に伴ってのサービスの向上ということができないように押えられておっても困る。並びに企業努力というものがそこにはさまってくる。そういうことをよく検討をし、また指導いたしていかなければならないと思うわけでございます。今回もし運賃が改訂された場合に、大体都心地帯に延びているものが多いように思うのでございますが、それらの面について、それでは大体ラッシュ時の緩和はどの程度になっていくのか、また線路の複線化というものは一体どういうのか、そういうような点、概略おわかりでしたらお知らせを願いたいと思います。
  137. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 仰せはごもっともでございます。国鉄と私鉄と違うということは一般的なそういう延びが大都市集中の最近の人口の状態からいってだいぶ多いのではないか。だから私鉄については国鉄と同じに議論してはいけないということは私どもも十分了承いたしております。それで国鉄の運賃が上ったから私鉄の運賃を上げたというのではない。たまたま今回十三社が一ぺんにやりましたが、われわれといたしましては一社々々やるのが当然であると考えておりますが、たまたま非常にこの運賃改正の仕事に慎重を期しましたためにたくさんが一ぺんになったということでございます。ただお客さんがふえておるということも非常に痛しかゆしの点があるわけでございまして、現在の数字によりますと、大体定期と定期外のお客さんは、定期券のお客さんが六〇%、定期外のお客さんが四〇%ということになっておりますが、収入では逆に定期の収入が三〇%、定期外のお客さんの収入か七〇%ということでございます。それで私鉄の企業というものを考えますと、持つ施設というものは大体ラッシュ時の輸送をいかにして行うかという施設を持つわけでございます。これは御承知のように大体定期客のためにする施設がほとんど大部分でございまして、昼間の輸送力といたしましては余っております。それで先ほどから大臣のいろいろなお話がありましたような付帯施設を作りまして、その余っている施設をいかに有効に使うかということが私鉄業者の努力する一面であります。また、御説明するまでもなく、諸外国に比べまして日本交通、特に鉄道関係の定期というものは非常に安い。われわれはおおむね原価を割っている運賃ではないかと思っております。それでこういうお客さんがふえたからといって、企業的に見てそれでは非常にプラスになるということは直ちに言えないわけでございまして、こういう点に電鉄企業というものの特殊性があるわけでございます。ただわれわれといたしまして、ここに運賃改正がもし行われるといたしまして、今言いましたような補修費を十分やらせたあとでまだ余裕があるとすれば、こういったサービスの面に十分振り向けていきたい、かように考えておるわけであります。
  138. 天野公義

    ○天野(公)委員 もう一つお尋ねしたいのですが、先般来踏み切り並びに立体交差の問題について、いろいろ本委員会で問題になっておることは御承知通りであります。そこで、今度の改正運賃がもしできた場合に、これらの立体交差もしくは踏り切りの施設の改善というようなことについて、私鉄の負担分を一体どうするかという問題についてお話しされたことがあるのですか。もしないようでしたら、こういう機会に負担分を何らかはっきりきめるなり、一札取ってやられた方がいいように思うのですが、その点いかがですか。
  139. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 現在いわゆる踏切事故というものが一般の事故に比べまして多くなっておるということは御承知通りでございまして、この原因がどちらにあるか、自動車がふえたから踏切事故がふえたのか、それとも電車の台数がふえたから事故がふえたのか、いろいろ問題がありまして、こういう点につきましては法案につきまして建設省とも現在まだ折衝中で御報告申し上げるまでに至っておりません。たた五ヵ年計画をわれわれとりましてやります場合には踏み切りの改善ということにつきましても会社側からの資料をとって検討いたしておる段階でございます。
  140. 天野公義

    ○天野(公)委員 いい機会ですから踏み切りの問題について一札取るなり、がっちり押えをきかせるなり、まだ法律ができていないのですが、できた場合にそこのところをぜひ押しておいていただきたいと思います。それから最後にお伺いしたいことは、今閣議でもガソリン税の増徴問題が非常に問題になっております。党内におきましてもいろいろとこれに対して反対の意見もある。大体運輸業界は全部反対、こういう建前をとっておるわけであります。道路がよくなるということは、それはいいわけですが、しかしながら、その反面において減税政策をやっていく、その反面にガソリン税だけとって運輸業者に負担をかけるということになりますと、各方面にいろいろだ問題が波及してくるわけであります。先ほど問題になりました低物価政策というような問題にも関係がありますし、また私鉄におきましても私鉄は全部バスを兼営しておる。従ってバス運賃の問題もそこにからんでくるし、私鉄の経理丙容にも入ってくる。大体バスであれば、またバス運賃の値上げということも当然そこにからんでくるわけであります。またトラック業界などというものは運賃ダンピングのさなかでありますから、赤字はもっと深まって、ますます不況が深刻になってくる、こういうようないろいろな問題を含んでおると思います。運輸大臣はぜひこのガソリン税増徴に対しては強力に反対をしていたたきたい、このようにわれわれは思うわけですが、ガソリン税の問題とまたバス運賃の関連、並びに総合的なガソリンというものについての運輸行政全般に及ぼす影響、それらの問題につきまして、運輸大臣の率直な御意見を承わりたいと思います。
  141. 永野護

    ○永野国務大臣 バス、私鉄運営の面から申しますと、ガソリン税の増徴ということはまことに望ましくないことであります。これは御同感であります。ただ全く変った面、すなわち日本の道路行政という点から申しますと、目的税としてガソリン税以上のものはないというような見方もありますので、運輸行政を重点にして見ます場合と、道路行政を重点にして見ます場合には、そこにかなりな意見の差があるのであります。道路行政を重点にして考えられる人は、ガソリン税の増徴やむなしと言われることは立場上もっともだと思います。私は私の立場上からいってガソリン税の増徴は困る、こういう建前を堅持して参るつもりであります。
  142. 天野公義

    ○天野(公)委員 もしガソリン税が上るというような場合においてのはね返り、また各種運賃に対するはね返り、こういう点については大臣は一体どういうふうにお考えでありますか。
  143. 永野護

    ○永野国務大臣 ある程度の是正策をそこへどうしても考えなければならぬと存じております。
  144. 久保三郎

    ○久保委員 同僚議員の質問でちょっとわかりにくいところを大臣にお尋ねしたいのです。今の天野委員最後の御質問のガソリン税の今回の値上げということは、巧妙なすりかえ——運輸大臣の立場から、今の御答弁でそういうすりかえはあまり好ましくないようにお考えだと思います。実際は私鉄業者のガソリン税値上げに対する反対を押えていくという一つの布石ではないだろうか、こういう見方も、うがった見方ですがございます。そういう見方は別としても、今回値上げしようとするその増収分に対しては、先ほど来いろいろお話がありまして、安全運転、いわゆるサービスの向上というところに重点を置くというのだが、ガソリン税の値上げ等が今後確実に行われるということになりますと、私鉄経営の中で占めるこの税金が大へん多いと思うのです。そういたしますと、運輸大臣が今許可しようとしておる運賃値上げ分はガソリン税の方へいって、ガソリン税は道路の修築に使う。そうしますと、私鉄を利用する利用者大衆はちっとも自分の——先ほどからの運輸大臣お話を私は脅迫にとっているのですが、運輸大臣お話は、安全運転ができない、危険な状態にあるからそれで値上げするのだ、こういうことでありますが、危険な状態はそのままで値上げされていくという、こういう問題が出てくると思うのです。極端な例かもしれませんが、あなたも極端な例を引くから私も極端な例を引いたのですが、こういうことでは利用者大衆は納得しないと思うのです。こういう点について、はっきりした今後の私鉄経営のあり方、そういうものを着実に考えることが必要ではないだろうか。これは値上げを前提にして申し上げるのではなくて、今までの御答弁の中では、そういうふうに持っていかれる危険が多分にあるということです。たとえばあなたのように値上げを是認しようという立場であっても、それは大衆を欺滿するものであるということになると思うのです。それからこの運賃値上げの問題は、私鉄、国鉄にかかわらず、まず第一に経営全体の問題ということと、利用者に対するPR、この二つに尽きると思うのです。先ほどから出てきた問題はこの二つだと思うのです。まず第一にPRの問題ですが、あなたは先ほどの御答弁で、会社経理の内容を真剣に検討して、反対を叫ぶ大衆は皆無にひとしい。こういうことをおっしゃられましたが、これは利用者大衆に対する、極端な言い方をすれば侮辱だと思うのです。というのは、なるほど運輸大臣に対しては、私鉄経営者は膨大な資料と努力を使って今日までその経理内容のPRをしたでしょう。しかしながら今までほんとうに私鉄が、自分の経営が自分が乗せて歩く旅客あるいは荷主に対してほんとうの奉仕の精神から出ているとするなら、運輸大臣に訴える前に利用者大衆に訴えるのがほんとうだと思うのです。ところが残念ながらいまだかつてございません。わずかにあなたが大臣になられて、特別国会の直後どこかへ遊説に参られたときに、初めてあなたは先ほどからの御答弁の中にある運賃値上げの問題を言い出した。それから今度は帰ってきて閣議の中でそれを打ち消され、あるいは参議院選挙があるからそのあとにしようかという話があったり、最近ではいよいよ年末二十六日ごろにやるのだとか、そうじゃなくて一月ごろに持ち越すのだとか、閣議の中で時期は別途考えなければいかぬということになった。なるほど社会党の政審会にお話をするのがまだできなくてという言いわけはありました。しかし、われわれの方へおっしゃる前に利用者大衆に私鉄経営者がなぜ率直にそういう危険な状態にあるならあると訴えなかったか。あなたの口からいつ何日という言明はございませんが、こういう新聞情報によればもう遠からない暁に、あなたは裁断を下して値上げしようとしているこの際、大衆が経理内容を知らぬ、これは考え直してもらわなければならぬことだと思います。そういう手順を踏んで、真に私鉄経営が危険な状態にあり、経営全体も、それは乗客の面からいっても当然値上げだという結論に到達するならば、あえてわれわれは反対いたしません。さらにもう一つ、反対するかしないかのポイントは先ほど質問の中にありました物価全体の問題、というよりは国民生活全体の問題だと思います。ところが今までのお話はおおむね私鉄経営そのものだけにとらわれて今日まで論議し、構想を練られてきたと思う。非常に残念だと思います。これはまだこれから値上げするかしないかおきめになると思いますが、お考えのほどは大体わかりましたが、少くともおやりになるならなるという立場もあるでしょうが、そういう一つのルールをとり、手順をとってやらなければいかぬたろう。さらに先ほど委員の御質問に対する御答弁で、会社の配当も再検討の要があります。さらに私鉄会社の事業全体、いわゆる付帯の事業を含めた事業全体の経営の再検討の要がございます。これはこれから検討してそれをはっきりしたい、こういうことですが、結局大衆にPRする場合に、この会社経理の問題あるいは事業全体の問題を真に運輸大臣として検討して、これはこうあるべきだというふうに結論をつけられないで、今までの御答弁の中ではどうもそういうように分けられて、これから値上げは値上げで、今までの検討の結果やって、これから配当のことも考えましょう、こういうことであります。私は会社の株主、それから利用者、経営者、この三つが集まっての一つの事業であり、一つのサービスだと思います。そうすれば今までの値上げは、なるほど今の資本主義を基調にした経済下においては一割三分もやらなければそれは資金が集まらない、こういうことかもしれませんが、一割三分が妥当であるかどうかについても運輸大臣そのものも疑問に思われていると思う。われわれも当然思っております、といって配当がゼロであってその経営はいいのだというような極端なことをわれわれは今考えておりません。だからここは結局経営者の立場で利用者にだけかぶせるという考え、これがどうかと思う。だから、むしろ今御検討願うとするならば、私鉄の運賃値上げを検討するとするならば、この配当問題、経営全体の問題、そして利用者、こういう二つの面から考えて、両方にしわ寄せするならするということじゃないかと、理屈の上から私は思うのです。その手順が一つもとられておらないように残念ながら今までお聞きします。それで結局運輸大臣お話は次の一語に尽きる。脅迫なんです。結局、いつ事故になるかわからぬ、だからこの際運賃値上げをして設備を改善するのだ。なぜそういう状態に今までほうっておいたか。監督官庁としてなぜほうっておいたか。なるほど先ほど脳溢血の病気の話をしました。あした事故が起るかもしれない。そうすると必ず運賃値上げができません。そのときに私鉄経営者は何と言いますか。運賃値上げができなくて設備が老朽化して、その結果こうなったということで、今度は盛んにPRすると思います。こういうものを許すことは私は断じてできない。だから、ほんとうにあなたがおっしゃる通り危殆に瀕しておるというならば、危殆に瀕しておる実態をわれわれにも、あるいは国民大衆にも知らしてほしい。知らせないでおいて、配当はそのまま、事業形態はそのままで、運輸大臣だけはなるほどと御了解になって、少くとも値上げしなければいかぬという結論をまじめにおつけになっても、何かガソリン税などの値上げにすりかえられたら、あるいはこれはうがったあまりいいうわさじゃございません、これはうわさですから気にとめないでもらいたいが、運賃値上げは、参議院選挙もあることだから、何か便利だろうといううわさも流れておる。そういうふうにもとられる。それは清潔な運輸大臣のことではないでしょう。これは政党全体としても問題がありますので、慎重に検討されていくべきだと私は思います。答弁は別にいただかなくともいい。ただそういう点を御注意いたたいて、最後委員長に申し上げますが、私鉄運賃値上げについての全体の資料をわれわれに提供してほしい。どういう論拠があるのかわからぬ、新聞だけでは……。
  145. 永野護

    ○永野国務大臣 了承いたしました。
  146. 堀内一雄

    ○堀内委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後四時一分散会