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1958-10-22 第30回国会 参議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月二十二日(水曜日)    午後一時三十一分開会   —————————————   委員異動 十月二十一日委員松野孝一君及び後藤 義隆君辞任につき、その補欠として小 西英雄君及び高橋進太郎君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     田畑 金光君    理事            上原 正吉君            小幡 治和君            阿部 竹松君            大竹平八郎君    委員            大谷 贇雄君            古池 信三君            高橋進太郎君            高橋  衛君            天田 勝正君            海野 三朗君            島   清君            相馬 助治君            椿  繁夫君            豊田 雅孝君   政府委員    通商産業政務次    官       中川 俊思君   説明員    通商産業省繊維    局長      今井 善衛君   参考人    日本紡績協会専    務理事     田和 安夫君    全国繊維産業労   働組合同盟会長  滝田  実君    日本化学繊維協    会会長     賀集 益蔵君    全国繊維産業労    働組合同盟綿紡    部会会長    高山 恒雄君    全国繊維産業労    働組合同盟化繊    部会書記長   森   明君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○経済の自立と発展に関する調査の件  (繊維業界不況対策に関する件)   —————————————
  2. 田畑金光

    委員長田畑金光君) これより商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十一日、松野孝一君が辞任し、その補欠として小西英雄君が、後藤義隆君が辞任し、その補欠として高橋進太郎君がそれぞれ選任されました。   —————————————
  3. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 先ほど委員長及び理事打合会を開き協議いたしました結果、本日は前回の委員会の要望に基き、繊維業界不況対策についてお手元に配布いたしました印刷物に記載された人々から御意見を承わることにいたしたいと存じます。それでは日本紡績協会専務理事田和安夫君、日本化学繊維協会会長賀集益蔵君、全国繊維産業労働組合同盟会長滝田実君、全国繊維産業労働組合同盟綿紡部会会長高山恒雄君、及び同化繊部会書記長森明君、以上五人の方を本日の参考人とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  5. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 次に、明二十三日は午後一時より委員会を開き、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案及びその後提出され、まだ提案理由説明を聴取していない法案について、それぞれ提案理由説明を聴取し、そのあと通商産業政策及び経済計画について一般質問を行いたいと存じますので、御了承願います。   —————————————
  6. 田畑金光

    委員長田畑金光君) それでは、これより繊維業界不況対策に関する件を議題として調査を進めます。  参考人の方には御多忙中にもかかわらず、当委員会のためわざわざ御出席下さいましてありがとうございました。  参考人の方から御意見を伺いたいことは、現在の繊維業界不況対策についてでありますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承わりたいと存じます。なお、時間はお一人大体十分ないし十五分程度でお願いし、そのあと委員からの質問もあろうかと存じますので、それにお答え願えれば好都合と存じます。  それでは、まず田和参考人からお願いいたします。
  7. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 綿業不況は一口に申しますと、需給の不均衡ということに尽きるのでありますが、さてこの不均衡というものは、どこからきておるかと申しますと、まず第一番に、設備の過剰ということが取り上げられるのでございまして、昭和二十九年ごろからすでにぼつぼつ生産過剰、設備過剰の傾向が表われておりましたが、昭和三十一年に繊維設備制限法ができまして、新設備を抑制するということになりましたわけですが、このときにいわゆるかけ込み増設ということが行われまして、一挙に百二十万錘からの設備が増加いたしたのでございます。これは五カ年間でふえる予定だったものが、一カ年あまりでそういうような大きな増設が行われた。もっともこの増設神武景気というものによって一時的なブームが繊維界にも現出いたしましたので、この増設に拍車をかけたことはいなむわけには参りません。ちょうどこの急激な増設が行われましたのちに、今回の内外需要減退ということが襲来いたしましたので、一度に不況が深刻になってきたというわけでございます。  さて、需要減退は、内需輸出両面についてみなければなりませんが、まず輸出需要についてみますと、わが国の綿業は御承知の通り戦前は総生産の約六割を輸出し、戦後も三割五分見当を輸出に依存しておるのでありますが、昨年の下期はやや不況の兆が表われておったのでありますが、それでも年間の綿製品輸出額綿糸に換算いたしまして、それを月に平均いたしますと、九万コリないし十万コリ輸出せられたのでありますが、本年は逐月不振に陥りまして現在では八万コリを割る状態になっております。  輸出不振の原因は、いろいろあるのでありますが、このおもなるものといたしましては、世界的な経済不況東南アジア地域における政情不安による一般購買力——生産活動減退して購売力が減退したと、それから昨年から本年にかけての重要な問題といたしましては、中共綿布の進出による日本綿製品輸出圧迫ということがあげられると思います。もっとも業界といたしましては、この状態に対しまして決して傍観しおるわけではないのでありまして、各業主、これは生産者商社も加えまして、多大の犠牲を払って、そうして市場を維持しつつ輸出促進に努めておりますが、大勢は前に申し上げましたような関係で、本年に至りまして輸出は非常な不振の傾向を表わしてきておるのであります。  次に、国内市場需要についてでございますが、その不振の原因は非常に複雑でありまして、これを数字的に的確に把握することは困難でありますが、根本的には一応国民衣料が充足せられまして一種の飽和点に達したので、戦後のごとくに生産すれば直ちに売れると、生産需要という時期から現在は買手市場となり、消費に合う生産をせねばならないという事態に来たというのが一般情勢であります。また一面国民消費動向が変ってきた、いわゆるヘヴィ・グッド耐久消費材といわれます電気器具であるとか、テレビとか、ラジオとかいうような、そういうヘヴィ・グッドの方に国民消費動向が向いたということも一つ原因でありますし、また本年に至りましては、娯楽費国民消費の中に占める分野が大きくなって、それだけの繊維品消費が伸び悩みを来たしておるということも一つの特徴であろうかと思います。  また当面の問題といたしましては、中間消費減退したことがあげられております。こういう不況の時代になりますと常に商社倒産という声を聞くのでありますが、本年の不況には商社倒産ということはそれほど問題になっておりません。というのは、商社が非常に買い控えておるということが考えられるのであります。生産圧迫から価格が常に下降傾向を示しておりますので、中間商社といたしましては衣料投資というものに対して興味を持てなくなった。すなわち先約は細めまして、当用買いになっておりますので、手持ちが極端に縮小せられているということが、先ほど申しましたように、中間需要が非常に縮小した原因になっております。また不況機屋、メリヤス、タオルまで、一切の部門にまで及びまして、これらの手持ちとか仕掛品が極端に縮小したということも現在の不況原因になっております。たとえば織機を一例にとりますと、織機の一カ月の消費量は、ノーマルの状態のときには一カ月二十万コリにも達したのでありますが、現在はそれが三割五分ないし四割の操短をいたしておりまして、それだけ機屋消費が減ると同時に、また仕掛品も減っておるということも、この不況一つ原因になっております。  さらに今年に入りまして注目すべき現象は、主要の原材料部門に起っておる価格の下落でありまして、その著しい例は羊毛でありまして、これは昨年の半値近くにもなっております。また原綿につきましては、メキシコ綿が一番フリーなマーケットなのでありますが、メキシコ綿の一番安いときには昨年の一割五分も暴落いたしまして、最近は若干かえっておりますが、それでもなお一割以上の低落になっております。かようにメキシコ綿が下りますと、当然日本の一番主要の原綿でございますアメリカ綿もこれにつれて下げざるを得ない。また現在は支持価格によって下っておりませんけれども、下るだろうという不安を持つようになりまして、これが原料的にさように下降の不安が生じますと、さらに一般に買い控えの傾向を助長するということになって、不況を深刻ならしめている原因かと考えております。かような状態は綿だけに限りませず、他の繊維界にも互いに関連しまして、そうして反映し合います関係上、繊維界全般不況に陥るというふうになっております。たとえば綿が下れば、スフも下る、羊毛が下ればまた化繊も下るというふうに互いに相反映し合って、繊維界を全部軒並みに下げる、軒並みに不況を来たすというふうな状態になっておるわけです。  さて、これらの不況に対します今日までどういう対策がとられたかと、かように申しますと、昨年の九月に綿業界におきましては、繊維局から各業者に対して生産指示が行われまして、各業者生産限度がきめられたのでありますが、これでも不況は立ち直りませんので、本年四月から三割の勧告操短が行われて現在に至っております。その関係上、最高綿糸生産高は二十四万コリをこえたのでございますが、現在は十八万コリ減退いたしております。この三割操短のねらいは内需十三万コリ輸出八万コリ、大体月産二十一万コリ消費せられるので、生産は十八万コリに押えると月々三万コリのストックが減っていくだろう、そうすると、短期間にノーマルな状態に戻るだろうというので、高度、短期と、高度操短によって短期に片をつけよう。短期決戦という言葉が出たのはそういうわけでございます。ところが前に申しました関係上、生産予定通り十八万コリに下がりましたが、需要予定以上に減りましたので、月々三万コリ減る予定が現在一万コリくらいしか減っておりません。さような関係で、本年の最高四月に五十四万コリ在庫がございましたのが、現在は四十八万五千コリで、なお、ノーマルな状態から比べますと、七、八万コリの過剰になっております。四十万コリ、人によったら三十万コリくらいまでに下げぬと、需給調整できないだろうと言われているのでありまして、なお、この操短と並行いたしまして、八月中に紡績の持っております綿布五千万ヤールが凍結されました。これも政府指示によりまして、各社がその持ち分に応じて凍結いたしているのでございます。ところがこの凍結だけでは効果がないというので、また九月からは紡績三十四社、主として綿布関係がございます三十四社が出資いたしまして、そうして綿布買い上げを実行いたしております。しかしかように生産縮減在庫凍結綿布買い上げなど、消極的な需給調整の手は十分に打ち尽された形でありますが、依然としてまだ業界好転の曙光を見出しておりません。  戦後今日まで十数年間綿業は大体において順調な伸張を遂げ来たったのでありますが、これは要するに戦争によって、戦前千三百万錘もあったのが二百万錘に激減したのと、戦時中の極端な繊維不足、または戦後においても同様な繊維不足状態が続いておりましたので、物を作れば売れるという状態が、この戦後十年間を支配しておったのでありますが、現在では前申しましたように、生産設備は過剰になり、また需要内外ともに伸び悩み、または減退の時期に達しましたので、単純な生産調整のみでは短期に回復するということが容易でないという事態になっているわけなんであります。今後これをどういうふうにしていったらよくなるかということは、従来のような生産調整だけでは考えられない。ということは、戦前もこういう不況状態になりますと、生産調整によって需給調整をはかっていったというのが従来のやり方でありまして、綿業歴史操短歴史であるといわれるように操短が常に行われたのでありまするが、当時は日本の全繊維の大部分が綿でございましたから、綿業調整が即繊維需給調整になったのでありますが、現在のごとく綿の占める割合繊維の供給の半分ぐらいになりますと、綿だけではどうにもなりませんので、従って今後の対策総合対策繊維、綿、羊毛化繊すべてを含めた総合対策によって需給調整をはからねばならぬということになっているのであります。  しかしここで考えねばならないことは、前に申しましたように、繊維は綿だけではございませず、あらゆる繊維輸出に非常に大きな部分を占めているということでございまして、昨年の日本輸出のうち繊維の占める割合は三五%でございます。ほぼ四〇%というのが常識でございましたが、昨年度は三五%、現在のところでは、本年までのところでは三一%に繊維不況を反映して減っておりますが、それでも三分の一は繊維による輸出が占めているのでございまして、海外に競争して、そうしてこの輸出を維持するということが繊維不況の打開のかぎになっているのであります。従いまして今後の総合対策というものは、今日までとられましたような消極的な、暫定的な応急的な対策ではなくて、恒久的な対策を必要とする段階になっていると考えます。で、今日までとられました調整がいずれかといえば消極的であって、そうして生産費を高め、前申しましたような海外との競争力を弱めるというような結果になっておるようでございます。そこでこの二十九日ころに第一回の総合繊維対策研究大会が開かれることになっておりますが、繊維局中心になって、繊維の力を総合して、そうしてこの繊維不況が恒久化する、こういう相当長期にわたる不況にはどういうふうにしたらいいかということが考えられることになっておりまして、それは今後どういうものがそれに盛られていくかということはわかりませんが、今申しましたように、問題は私はこの不況に対抗するためには生産合理化ということが中心になるであろう、またそうなければならぬであろうと思います。もしそうでなかったら日本繊維はだんだん、むろん綿はそのうちの一番重要性のあるものでありますが、だんだん縮小して国内産業に押し込められる運命をたどるのではなかろうか、いわゆるランカシャーの二の舞になるのではないかということを心配するのであります。  大体私の陳述はこれで終らしていただきます。
  8. 田畑金光

    委員長田畑金光君) ありがとうございました。  次に、滝田参考人にお願いいたします。
  9. 滝田実

    参考人滝田実君) 全繊同盟滝田でございます。きょう意見を求められましたので、私が感じておる三、四点について公述したいと思います。  今日の不況がこういう形でくるであろうということは、われわれからみますと、数年前から予想されておったことでありまして、今繊維局中心になって総合対策懇談会を持とうとしておるわけですが、私どもはこの産業状態を見て、数年前に感じておった今日の予想される危機というものは、繊維産業は今転機にきている、天然繊維から化学繊維、あるいは合成繊維、それからもう一つ横にくるのは合成樹脂繊維というものが繊維にかわってくるのではなかろうか、これは世界的な産業転換期である、趨勢だ、こういうときに産業一つの総合的な計画を持っていないと、これは大へんなことになるというのが、われわれが数年前に予想しておった一つ見通しであったわけです。従って綿紡経営者化繊経営者羊毛、麻、あるいは生糸、それぞれあるでしょうが、その転換期に、おれの会社だけうまくやりたいという考えだけで、もうけに応じて設備をふやせば、これは必ずその反動がやってくる。従ってこの産業転換期に当っては、繊維産業全体の生産の規模と量というものを、国内消費あるいは輸出見通しとにらみ合せて、どういうふうに計画的にやるべきかということをやるべきだ、これが産業転換期に当って一番大切な点で、それぞれの国においてそういう機構を作ってやっている。そういう状態考えますと、繊維総合対策というのは非常に大切であるという考えから、われわれとしては繊維産業会議を提唱して、そこで総合的な意見の交換の中で一つの方法を見出していきたい、こういうふうに考え努力をしているのですが、なかなか経営者の方は乗ってこられない。政府の方も計画を立てたけれども、それを業者に徹底するような努力を欠いている。そういうことで私はほとんど繊維産業転換期については生産設備について無策であったといっていい状態であったと思う。いわゆる放漫そのままできてしまった。そういうことがとうとう設備が過剰になってしまって、そうして滞貨を今調整をしなければならないという操短事情を招いている。いずれの国も転換期には遭遇しておるわけです。しかし日本の国ほど、この転換期に激変して激動している国は、ほかの国には同じ繊維産業であっても類例を見ません。不測の事態がこの間に起きておれば、多少の理由になるかもしれませんけれども、東南アジアの若干の貿易の見通しを除いては、そう国内外の情勢が激変してないのに、日本繊維産業だけがこのように激変していることは、いかに無計画設備生産というものが今日の不況事態を招いているかがわかるわけであります。  で、まあせんじ詰めて言えば、政府あるいは経営者無策、そうして好景気に浮かれた増設をやった。金融資本はまたちょうど好況期を迎えて貸し出し競争を一生懸命にやって、この弊害というものをむしろ助長していったのではないか。それからもう一つ指摘しなければならないのは、過当競争弊害だと思います。過当競争国内においてもいろいろ生産設備を刺激していったのですが、国際的にもこの過当競争が非常な弊害を私はもたらしていると思います。今アメリカに限らずヨーロッパの主要国において、あるいは東南アジア日本繊維製品を扱う態度というものは、危くて扱えない、絶えず値下げ競争ばかりやっている、そういう過当競争というものが一体実額にしてどのくらい被害があるものであろうか。私は非常に巨大な損害が日本の国全体にはね返っておると思います。もし過当競争というものが、もう少し価格的に安定するような方策が実質的にとられておるならば、今日の不況の非常な赤字というものも、その大部分は埋め合わせがついておったのではないか、こういう点は政府とかあるいは経営者というのは一体どのような責任とあるいは見通しを持っているのか。私は日本国民のために損だと思うのです、こういうやり方は。その点は単に輸出が伸び悩んで、国内産業だけにしてはいけない、そういう小さな問題、あるいは本質的な問題ともいえる両面を持っているわけですが、それ以上の現実の問題としては、日本の浪費、国全体が非常に国際的な収支の面で損をしている。従って不況対策というのは、設備においても、生産の量においても、国際収支の面においても、さらにそれを総合して国際信用というものを非常に失墜してしまった、こういう点について私は政府の一貫した政策がないことと、経営者の無計画さというものを、まず不況対策についてじっくり考えてみなければ、安易な考えで糊塗的な対策をとるべきではない、そういうふうに思います。  それから第二に、この不況に対して労働者立場というものを明らかにしておきたいと思いますが、今申し上げたような意味合いにおいて、その不況というものを眺めてみますと、不況責任というものは労働者側にしわ寄せられるべきものではない。こういう見地に立って全繊同盟に集結している労働者約三十五万人は、不況に対しては首切り反対賃金引き下げにも反対工場閉鎖反対昇給停止反対、四原則というものを掲げてやって参りました。これは経営者の方から見られると、労働者だけ被害をこうむるまいとすることはやや責任というものを感じていないからではないか、一方的な言い方ではないかという意見があるかもしれません。これは私はあとの方でもう少し説明をいたします。なぜ首切り、賃下げというものが実際は不況対策にならないかということは、あと理由をはっきりいたしますが、このような四原則を掲げてやってきたものは、日本繊維労働者の大部分はきわめて生産という場所においては協力する労働運動を進めております。これはいかなる人も、私は日本国民全体が認めているところだと思います。いわゆる建設的な労働組合、そうしていわゆる民主的な労組の旗を守っている綿紡が、実は例をとればここ三年近くはベース・アップの闘争をやっていない。そういう建設的な協力的な労働者が今回この犠牲の第一線に立たされていることは、これは労使関係あるいは建設的な日本労働経済の諸政策について、労働者が協力する場所というものが違うのではないか。そういう面から日本労働運動自体もだんだんゆがんだ方向にいくのではないか、この点を政府とか経営者とかいう者は、労働者のこの反対する態度というものを、十分日常労働運動に照らし合せて受け入れる、あるいは真剣に考えるという態度がなければ、私は、日本の将来の生産の協力に対して、労働者というものはその立場というものを失ってしまう。こういう点から、私は、労働者不況責任をとる立場でなくて、そして犠牲を排除すべきであるという立場をとっていきたいと考えます。このことは、商工委員会の皆さんの中で御記憶のある方もあるかもしれませんが、繊維工業設備臨時措置法が作られるときに、今から過剰設備というようなことがあって、そして問題が起ったときに、労働者にはしわ寄せしないということが非常に論議されました、これは通産省が法律を作るときに。ところが、実際こうやってみると、もうかったときはあまり相談がないけれども、不況になってくると、すぐ組合の方に相談を持ってこられる。そして法律的にも、今度労働者犠牲というものは排除するということが、この繊維設備の問題を論じたときに法文化されて入れられていながら、実際的にはそういうしわ寄せがやってきておる。その代表的頂点ともいうべきものが、鐘紡の今度の会社提案になって出てきておると思うのです。で、けさの新聞の報道にありますように、一応の争議というようなものが避けるような形において一段落した形を持っておりますが、まだまだ交渉はあとに残されております。  そこで、私は、第三番目に指摘したいと思いますのは、労使のこの現状についてでありますが、鐘紡が一番いい例であります。これは、ぜひとも、国会で十分私は、日本労使関係というものを本質的に考えてもらいたいと思うのは、会社の経理の問題です。あるいは利益が上ったか上らぬかというときにとられる態度ですが、配当をきめられるときには、利益が上ったという会社決算書を作って、そして配当をきめ、税金を納める。そして労働者には赤字だという案を持ってきて、そして労働者を整理されようとされる。この二面性というか、欺瞞性というものを一体どう見るかという問題であります。いろんなときに、資本主義国としての当然の社会制度として、資本に対して配当を与えるというやり方はありましょうけれども、実際の企業の中が赤字になっておるときに、株主の配当のときには利益を上げて、労働者に対しては赤字であるという発表をする国があるだろうかという問題であります。具体的にいえば、鐘紡の場合は、二億何千万円という利益を上げたことによって一割八分の配当を株主にする。税金は何千万円と政府に対して払う。国家に対して支払う。しかし、労働者には九億何千万円の赤字だから賃下げ、首切りをやってもらいたい。こういう社会の欺瞞性というものは、法律の面からも私は糾弾さるべきものを持っておるし、社会的な観点からいっても、非常にこれの欺瞞性というものは非難さるべきものであるのではないか。これは、鐘紡が非常に具体的なものでありますけれども、鐘紡以外にも多くの会社——繊維産業に限らず、多くの会社にこういう欺瞞があるわけであります。言いかえれば、これは生活権というよりも、財産権というものを非常に高く見るという偏見であります。不況を克服する、あるいは大衆購買力を高めていこうというようなときに、一部の階層だけが非常に富みさかえていくというようなことが、果して不況対策になるものか、ならないものか。そういう生活権というものをむしろ剥奪してしまう、押えつけてしまって、そして財産権だけを保護する、資本だけを優遇するという立場において、ほんとうに産業というものは、大きく発展していくものかどうか。  私は抽象的な論議じゃだめですから、多少具体的な例をあげて、委員方の参考に供したいと思うのですが、繊維労働者全般、日本には約百万人あまりおりますけれども、その繊維労働者においても、八%はオーバー持っておりません。養成工の時代ですと、ほとんど給料が安いですから、冬のオーバーなんか買えないわけです。で、全体に調べてみまして、二年近くの勤続になってようやくオーバーが買えるかどうかというところであります。それも長いオーバーではなくて、安い、寸法の足りないトッパーで間に合せる。これが繊維労働者のいわゆる賃金と購買力の関係であります。繊維以外の労働者繊維消費というものを見てみますと、たとえば製材あるいは木工関係の人というものは一割から一割五分という者はオーバーをやはり持っておりません。それから職安関係の日雇い労働者の約三分の一の人たちはオーバーを持っておりません。あるかないかわからぬ者は約四割おります。従っていわゆる非常に最下層の労働者というものは約七割は冬に備えての準備がないといっていいと思うのですね。こういう事情を十分見ないで、そうして輸出合理化だといってみても始まらぬのじゃないか。まだ例をあげれば、いろいろの労働者について調べてみました。国鉄の労働者も調べてみましたけれども、国鉄の労働者最高、せびろを一着持っている者は——最高じゃなくて最低でしょう。一着持っている者は三五%、二着が約三四%、これは夏、冬、合を含めて一着でありますから、着た切りすずめということでありますね。それ以上の衣料には恵まれてないわけであります。その人たちが賃金がやはり二万円そこそこもらってこういう状態であります。それから私鉄の労働者も同じようなものであります。それから婦人の繊維消費を見ましても、妻のオーバーを持っているのは、日本人全体で、四人のうち一人ではなかろうかというふうに、われわれの側で調べたのによりますとそういう統計が出て参りました。そうすると繊維が余っているのじゃなくて、買えないわけです、こういう実態をどう見るかという問題でございます。  私はことしウイーンの国際会議に参りまして各国の状況をいろいろ聞いてみました。アメリカ繊維製品も、自動車の方ばかりに中心が購買力が向けられているために、従来せびろ一着作ったらズボンが二着作ったが、近ごろせびろ一着作ったら自動車二台買うようになった。だからもっと繊維を売ろうじゃないかというのがアメリカ人の考えであります。日本人の方は何が問題かといえば、非常に低い生活層を一体どういうふうに生活を豊かにするかということが繊維不況対策に根本的につながってこなくちゃならない。それを無視して、そうしてただ賃金を下げ、物を安くさえすれば売れるんだというものの考え方、平たく言えば、肥料をやらないで種をまこうといったってものが生えてこないということであります。砂地にしておいて何の肥料も与えないで、そうしてそこへ何か植えようとしている、花を咲かせようとするわけであります。そういう議論というものは、私は日本国内において全然当てはまってない。それを単に輸出輸出だというようなかけ声だけで、全然私は、的はずれな論議がされているのではないかというふうに思うわけであります。こういう点から、私はやはり配当と労働条件の関係あるいは購売力というものが、どういうふうに大衆化していくかということを考えなければ、繊維対策にはならないというふうに思うわけです。  次は、輸出と原料関係の点であります。ここにはまあ参考人としても、化繊の方も来ておられるし、いろいろな業種によって多少の相違はありますけれども、日本アメリカから一番たくさん輸入しているものは原綿であります。この原綿の代金をどう払うかということで、金利の問題が必ず出てきている。その金利の問題で多少恩恵があるために、アメリカに言うことを言ってないと私は思います。一方的にアメリカから余剰農産物であり余っている原綿を買わされているわけであります。その価格については日本はほとんど交渉権らしいものを持っていない。これはアメリカの非常に政治的な価格によって日本に売りつけられているといっていいと思います。こういう原綿の対米一辺倒と、そうして価格に対して交渉の余地が残されていないという、こういう関係を一体どう改善するのかですね。そして半面においては中共貿易、東南アジア貿易というものは輸出両面にわたってかなりの制限を受けておる、これを経営者ないし政府はどういうふうに打開しようというのか。私はあえて希望を申し上げるならば、ここでアメリカに対して日本からミッションくらい送ってもいいんじゃないか。これは政治関係の人も、業界の人も、労働組合の代表も含めて、アメリカ労働組合の発言力が非常に強いわけでありますから、そういう面も含めて、行った方がいいのではないかと思うくらいであります。こういう点は短い時間ではなかなか述べ切れませんが、私は重大問題だというふうに考えておるわけです。特に日本繊維産業というのはいわゆる加工的な産業の性格が強いわけでありますから、化繊合成繊維になれば別の面もありますけれども、繊維全体を眺めますと、このアメリカの原料と輸出入の関係というのは相当再検討する余地があるのじゃないのかと思うのですね。アメリカ日本に対する輸出というものと、日本アメリカに対する輸出というものと大体二対一くらいのしか割合になっていない、向うから売りつけられてくるだけ十分向うに売っていないと、こういう点あたりは、私は量的にもまた価格の面においても、それから日本がもっと広い世界に十分に貿易をする対等な立場に立っての政策というものが私は強く出されるべきじゃないかと思うのです。わずか金利の問題、世界銀行あたりの問題でそう遠慮する筋合いのものではない。これはぜひとももう少し時間をかけてこの委員会あたりで研究していただきたい。ここにも業界の代表が来ていますが、十分考えてもらいたいもんだと思います。  それから最後にもう一つ触れたい点は、結局はこの不況対策は迂遠なようでももっと対外的な信用をつける意味においても、過当競争というものを避けて、非常に安売りをしていることをもう少し何か一本化すような仕組みができないだろうかと、例をあげますと、A社が売りにくる。Bの会社はまた少し値を下げて売っていく。生産会社も出先に人を送っているが、商事会社も行っている。その間にバイヤーも入っている。日本の商品に関する限りは値段はめちゃめちゃであります。そんなことをやっておって、輸出振興に一体なるであろうか。  それから国内消費をやはり増大していくということは、私は所得の増大と不可分の関係だと思うのですね。表裏の関係だと思うのですね。ですから、賃金は購売力なりというものの見方をしてそして低所得者の所得をふやし、そこに大衆購買力をふやしていく、層を非常に広くしていくと、そういうことが大切なように思うのです。そういう見地から、今不況だからといって直ちに解雇者を出したり賃下げするようなことは、結局は日本の現在の政府がやっておる政策、いわゆる国際収支から見て縮小均衡政策をとっておりますけれども、縮小均衡ではなくて、もっと国内均衡のとれた拡大均衡政策に結びつけるためには、労働時間を短縮して完全雇用の方の形をとっていく、あるいは最低賃金制をすみやかに確立をする。で、われわれの認識によれば、六千円以下の所得者というのは三百万人を超えているし、八千円以下の所得者というのは六百万を超えているわけでありますから、これを家族を含めて最低賃金制を一刻も早くなし遂げることによって、現在の所得が非常に不均衡になっておる点を、いわゆる賃金の格差の増大ということを防ぐことによって、もっと購買力というものが国際収支には悪影響を与えないで安定する、拡大するという方策があり得るように考えるわけです。で、抽象的に申し上げてはいけませんから、この点は非常に大事な点ですから、ちょっと具体的な数字をあげて申し上げておきたいと思いますが、ここ数年のこの収入階層別消費動向を見ますと、まず税引きの所得の伸びは、三十一年から三十二年にかけて、実収入ですね、一万二千円前後から下の階層で七・二%から三・七%へというふうに下降線をたどっておるわけです。一万二千円前後の所得の人はですね、税抜きで。そうして六万円前後からそれ以上の所得の人はこの消費購買力というようなものが六%から一二%以上に伸びております。だから一万二千円以下からその下の人は消費力というものはぐうっと下って、高いところの人は上っているという格好ですから、これではこの購買力がさっき申し上げたように、せびろもオーバーも買えないわけですよ。それをただ景気対策だといって、すぐものの買い上げをはかり、あるいはいろいろなお祭なんかやってみても、大衆の方へ向いているお祭りでもないように思うのですね。こういう点をいろいろこう考えてみますと、今のとられておる政府政策とか、あるいは経営者がとっている態度というものは、すぐ不況になると賃下げ、首切ってしまうので、ますます買う人がなくなってしまう、そうしてそのことが低賃金によって国際価格を安定させるようなことになっていないと、まあこういう非常に悪い意味の悪循環、本質をほんとうに解決しようとしない不況対策でしかないように考えます。  従って結論的に申し上げれば、今は労働者犠牲をしわ寄せすることによって、この不況の克服というものはなされるべきではなくて、むしろ雇用を無理でも多少不安のないようにしっかりかかえていって、そうして労働時間を短縮するなり、そういったことによって必ずしも余剰設備とは言えないような方策があるわけであります。で、生産性が非常に上って技術が進歩しておって労働時間が長くなっておるのは日本だけであります。この点もしっかり私は認識をあらためてもらいたいと思うのですね。どこの国に技術が進歩して生産性が上って労働時間が長くなっておる国があるかということであります。で、繊維産業全体としては大企業は多少短くなる傾向にありますけれども、産業全体、労働者全体としては労働時間が長くなっている、機械が改善されて、そうして生産性が高まって、一人当りの労働時間が長くなれば、そうすれば雇用量が減少してくるのは当りまえな話であります。そのことによってニコヨンの人をふやす。そこに購買力がどうして出るはずがあるでありましょうか。この点を考えていただくと、雇用の安定、時間の短縮、あるいは最低賃金制、あるいは社会保障制度というものをやはり確立することによっての大衆の生活の安定のところにこそ、ほんとうの不況対策があり得るのだということが、繊維産業としては十分この際考えてもらいたい問題だと思います。  御質問があればまたお答えいたします。
  10. 田畑金光

    委員長田畑金光君) ありがとうございました。  次に、賀集参考人にお願いいたします。
  11. 賀集益蔵

    参考人賀集益蔵君) 私は化学繊維協会の会長をしておる賀集でございます。化学繊維ということに対しまして、多少天然繊維と異なった点がございまするので、その点についてもお話を申し上げたいと思います。  まず世界的に見まして化学繊維は非常に発展しておりますし、ことに天然繊維の資源を持たない日本も非常な発展をしております。これを具体的な数字について申し上げますと、ラウンド・ナンバーでございますが、一九三〇年の世界の全繊維の使用量というものは約百五十億ポンドでありました。一九五七年にはそれが二百七十億ポンドに全繊維を通じて増加いたしております。その間百二十億ポンドというものの増加でありますが、世界の人口が約二十億からその間に二十八億に増加しております。で、百二十億増加した。繊維は大分けにいたしまして天然繊維化学繊維とが約半分半分であります。ところが一九三〇年には、化学繊維というものは百五十億ポンドのうちにわずかに四億七千万ポンドしか生産しておらなかったのでございますが、それが一九五七年には、六十三億という増加に相なった次第でございます。それを見ますると、約百二十億の半分は化学繊維でもって補われておるというほど化学繊維というものは発達して参った次第でありまして、その間におきまして合成繊維のごときは一九四五年と思いますが、そのときに初めて出て参って、あとからあとからと種類もふえておるし、技術も進歩しておりますし、そうしてふえてきたような次第であります。  それで今回の化学繊維不況はどういうところから起ったかと申しますると、戦争前の設備が非常に陳腐化しておった。しかるにやはり輸出を増強することにわれわれは努めなければならぬというようなことで、戦後におきましてオートメーション化した面もございましょうし、あるいは合理化したということになっておりまして、現在におきましては、化学繊維というものは約四〇%は輸出産業として国際市場で競争する立場に相なっておるのであります。この競争の立場から、どうしても合理化せざるを得ないような立場に置かれまして、それによって特に合理化、オートメーション化、こういう手段によりまして、別に工場を増設したのでもありません。もちろん二社ほどは新たにできた会社がありますが、従来、既設の工場では別に増設したものはございませんが、この合理化、能率化によりまして増産の経路をたどったわけであります。それで昨年四月から、まあ国際収支の非常に悪くなった時分から不況に入りまして、昨年四月から操業短縮の実施をせざるを得ない立場になったのでございます。しかしながら、この化学繊維は国産品であって、輸出の上におきまして、国際収支の上に相当大きな貢献をしておるのでありますが、手前みそみたいなような話かもしれませんけれども、昨年度の輸出総額は三億四千万ドル、そのうちで輸入の原料、若干の苛性ソーダの原料として工業塩を輸入しておる。そういうものを差し引きましても、ネットで約三億円近い外貨をかせいでおる次第でありますが、ただ化学繊維不況の打撃というものは、他の天然繊維よりはやや深刻であったかのようにわれわれは感じるのであります。それはどういうわけかと申しますると、日本産業界に及ぼす影響は、綿花、羊毛と異なりまして、化学繊維の原料であるパルプ、苛性ソーダ、硫酸、硫黄、こういう産業化学繊維操短によりまして、それに比例いたしまして、生産が減少してきたわけなんであります。そういう次第でありますから、化学繊維不況というものは、縦の線である紡績とか、あるいは中小工業に属する織布とか、染織加工業とかという以外に、横の関連産業であるパルプ業者、苛性ソーダ業者、硫酸業者、硫黄業者、これに深刻な影響を及ぼしている次第でございますパルプ会社につきましても、化繊用パルプを専業としている一社のごときは、われわれ同様に操業を短縮しております。それに日本の特産物である硫黄工業のごときは、これは硫黄の生産が年産約二十二万トンくらいと、こう思っておりますが、そのうちの八五%は化学繊維関係に使っているものでありますから、これも大きな打撃を受けているような次第でございます。  そこでわれわれこうして増産した結果、こういう結果になった。この増産の目標、全然目標なしにやったのか、こう申しますると、そうではございません。これはヨーロッパの各国の、西ドイツや、イギリスの事情から考えてみまして、まずこれくらいはいくんじゃないか、こういう見通しでやったのでございまして、その一例として申し上げますなれば、日本では、化学繊維というような名前は、最近は非常にクローズ・アップしたようでございますけれども、日本人一人当りに使っている化学繊維は四・六ポンド、四ポンド半強、こういう数字でございまするが、英国では七・七七ポンド、西ドイツでは八・〇五ポンド、天然繊維の非常に豊富なアメリカでも、一人当りの使用量は九ポンド、こういう具合になっている次第でございます。そこでわれわれは、天然繊維の原料になる綿花や、羊毛に貴重な外貨を使うのであるから、まあ西ドイツや、英国の例にならい、これから綿花と化学繊維の混紡が増大することについて、われわれ熱心に研究もするし、またそれに努力をいたしているのでありますから、まあそういう目標があったものですから、それと生産のオートメーション化にするものと、この二つの原因でふえた次第でございます。日本の国情の、現在の繊維のあり方から見ますれば、イギリスや、西ドイツと同じように、天然繊維の自給を持たざる国なんであります。もしもこれがそのヨーロッパの持たざる国のように、混紡、混織に一般国民需要が増大してきますなれば、現在の設備は決して過剰じゃない。そういう例はヨーロッパにもすでにある次第でございますから、そういう建前でわれわれは綿紡協会ともいろいろ話し合いいたしまして、これが混紡、混織の増大に努力をいたしまして、現在の設備の過剰をなくしたい、こういうことに邁進しておるような事態でございます。いろいろ御質問がありましたら伺いますが、大体そういう方針で進んでおります。
  12. 田畑金光

    委員長田畑金光君) ありがとうございました。次に、高山参考人にお願いいたします。
  13. 高山恒雄

    参考人高山恒雄君) 私は、綿紡関係の部会長をしております高山でございます。参議院の商工委員会では、七月にも、私この不況対策について、いろいろ参考人として出席いたしましたので、当時詳しく申し上げておるわけですが、きょうは、ますますそれ以上の深刻の不況状態にありますので、そういう点について私の意見を申し上げてみたいと思います。  今度の不況対策については、政府も、業者の方においても、全く操短のみにたよっておられる。従って労働者が多くの犠牲をこうむっておる。その操短がまた一向に効果を上げていない。いわゆる操短だけでは解決のつかない、もう今日では根本的な解決をつけなければいかぬという時代になってきておるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。むしろ、この生産調整による消極的な操短対策では、先ほど同盟の会長が申しましたように、一時離職、次には希望退社、その次には賃下げ、首切りというような合理化であって、全く戦前と同様の対策が繰り返されて、失業者の増大対策になっておる。これが一番問題だと思うんです。ここで、政府も、また業者の方においても消費面からくるいわゆる積極的な対策考える必要があるのではないか。たとえていえば、国民の被服消費は、先ほど申しましたように、実際に満たされているのかというと、満たされてない。これは同盟で調査したのでありますが、昭和九年から十一年を一〇〇として、三十一年は八〇・六となるのであります。従って、水準が二〇%もまだ下回っている。特に皆さん方もすでに御承知のように、経済企画庁の白書が出ております。ここで三年間の個人の消費比率が縮小していることを発表しているのでありますが、二十八年から三十一年の三カ年間の一人当りの所得の増加率を見ると、いわゆる非農林個人業主と、早くいえば会社重役さんたちとのこの比率は二三%であるのに、勤労大衆は一七%、農家においては最もはなはだしい、一五%にすぎない。こうした所得階層の分布の拡大は、社会的な緊張がますます強まって、低所得層に対する社会保障制度の確立と、また所得再分配政策や、その他の所得の格差の均衡化が最も必要であると同時に、そういう政策をとる必要があるのではないかということを経済白書でもこれは出しているのであります。こういう点から見ますと、このことは繊維産業のみではないが、特に繊維産業が最も大きなその状態を現わしている、こういうふうに私たちは考えるのであります。大きな経済の中で、繊維産業は、政府としても、また経営者としても、もっとも責任を持って根本的な対策を立てるべきではないか。売れないから仕入れを少くすることは、これは商売の定法であっても、一番幼稚な方法ではないか。売れなければ売れるようにしなければならないということにもっと重点を置いたらどうか、こういうふうにわれわれは考えるのであります。  そこで、内需の拡大のために、国内の購買力をやはり増大する、これはもう政党でも十分いっておられることですが、いわゆる低賃金の格差を縮めるために、最低賃金制の確立をはかる、勤労所得税をもっと減免してやる、農民層の所得の増大の実現をはかってやる、さらに完全雇用は、これはもう実施していく、多少の苦しみがあっても、こういう不況の場合には、むしろ完全雇用の形を実現さしてやる、社会保障制度の点はもとよりであります。さらに、これを貿易政策の転換のために考えなくちゃいけないことは、現行の輸出に対する優遇制度の問題があります。これらはどのくらい今日市況を荒しておる原因を作っているかと申しますと、商社に対する原綿の割当ですが、これが賃紡をやっております。従って賃織りも出しております。ひどいのになると、全くコストを半分で賃織りに出しているというのが実態であります。中小企業はそういうことでもしなければ、自転車操業で食えなくなるから、安いコストでたたかれても、やむを得ずやっている。ヤール三円くらいのところがたくさんあります。こういうコストのいわゆる安い政策をとって、そうして市場を荒しているので、これに太刀打ちをしてやろうといっても、なかなか市況の安定なんというものは、私たちはこないのではないか。従って、こういう優遇制度なるものは、私もこれは前回も述べたと思いますが、もっと早く政府経営者も、改革すべきことはやるべきだ、こういうふうに考えるのであります。  さらに輸出入の市場の構造でありますが、これも先ほども全繊の会長が申しましたから、繰り返して申す必要もないと考えますけれども、あまりにも日本政府は米綿に依存し過ぎているのではないか、もっとこういう問題については、たとえ今までのつながりとか義理合いというようなものがあっても、もっと政府自体も考え業者の方も考えて、これらの依存性の体系を改善する必要がある。さらに米国への輸出に対する過大な期待であります。これも十分考慮して、むしろ日中の国交回復というようなものを促進させるべきである。そうして東南アジア等において、ああした荒されている現実に対して、日本としても早急にやる必要があるのではないか、こういうことは、われわれが申すまでもなく、やっておられるようだけれども、一年半に及ぶこの操短の実績から考えてみては、手ぬるいのではないか、こういうふうに考えるのであります。  さらに、この海外輸出商社に対する規制でありますが、もう少し、政府はこれらの問題について規制をしてやってもいいではないか、これらこそ政府が早く手を打つならば、国際信用上から見ても打てたのではないか。それが今日に至るも今なお、多くの人がそれを否定しておるにもかかわらず、今なおそれを規制もしないで存続して、国際信用を失っておるという現実は、何といってもこれは政府責任として、一日も早くやるべきだ、これらが最も重要な点ではないか。こういうふうに考えるわけであります。  時間もありませんので簡単に私の……。
  14. 田畑金光

    委員長田畑金光君) ありがとうございまた。  次に、森参考人にお願いいたします。
  15. 森明

    参考人(森明君) 私は化繊労働者立場として、若干お尋ねになられた点につきましての見解を述べてみたいと考えます。  私たち繊維産業は、先ほど賀集会会長の方からお話のありました通りに、現在、人絹糸で五五%、スフ綿並びにスフ糸四〇%の操短を行なっております。ほぼ一年間、操短率に若干の差はございましたが、継続されておるわけでございます。私たちの化学繊維部会と申しましても、日本におきます化学繊維製造業に働く労働者のほとんど百パーセントを組織しておりますけれども、この間、私たちが受けました被害と申しますと、失保適用によりますところの一時離職制度でもって延べ人員にいたしまして七千七百名以上の者が犠牲をこうむっております。もちろん、労働組合としまして法の許す限り、あるいは組合としてもなし得る限りの条件を獲得した上で、失保適用による一時離職制度を認めたわけでございますけれども、組織人員から申しますと一割強になる。それから昭和三十三年四月以降はこの方法を改めまして、社会保障によりますところの賃金八〇%補償によりまして、輪番休日制あるいは一時帰休制を用いまして対処して参りましたが、それでも一時帰休者の人数は二千二十三名に及んでおりまして、非常に労働組合の受けた影響は大きいものというふうに考えております。  もちろん、私たち化学繊維組合は、前年度におきまして週三時間の労働時間の短縮を行いこれを獲得することに成功いたしておりますし、かつ、現在、年来の問題でありますところの雇用の増加を目的として、あるいは労働者の労働を比較的たやすくするために、四交代制をとるための戦いも続けて、ある部署ではそれを戦いとったところもあるわけでございますけれども、そういう私たちは努力を重ねた上での話でありますが、これだけのものが出ております。さらに、希望退職者が、会社側からの募集した希望退職に四千八百八十一名が応じてしまいまして、労働組合としましてはまことに残念でございますけれども、このような状態に今われわれは追い込まれておるということでございます。もちろん、一時離職者あるいは一時帰休者等は現在全員これを帰社せしめておりまして、その点問題ないわけでございますけれども、希望退職者がかくも多く出たということの裏には、やはり産業に働く労働者が、不況というものにおびえておる姿というものが現われておったのではないかというふうに考えております。それでもなお、現在私たちが推定いたしております過剰人員は、化繊専業七社の中で約三千名から四千名程度の過剰人員をわれわれはかかえ込んでおるというふうに考えてもよろしいのではなかろうかと思います。  このような労働組合にしわ寄せされてきましたもろもろの事情は事情といたしましても、このような長期の操短が行われてきておりますけれども、それならば、それで操短の効果があったかということを考えてみますと、私たちは全くなかったいとうふうに思います。その理由は、操短が行われた当初の目的というものが市況の回復、いわば糸の値段の安定にねらいがあったかと思いますけれども、そういう意味での市況は回復されておりませんし、在庫調整も全くできていない、こういう状態が今日の状態ではなかろうかというふうに思うわけです。まして五五%の操短を行っております人絹の場合、むしろ逆に人絹が過去において確保しておりましたいろいろなマーケット、市場というものを他の繊維に奪われておるというふうな状態が現われているんじゃないかというふうに思われます。これはベンベルグに奪われておるか、新しい合成繊維に奪われておるか、あるいはその他のものに奪われておるか知りませんけれども、そのようにして市場さえも喪失しておるというふうに、繊維産業、ことに人絹産業というものは追い込まれてきておるのじゃないかと考えます。  私たちは一年間、この問題について真剣に取り組んでいろいろと考えてみたわけでありますけれども、他の繊維業界と違いまして、化繊業界の今日の操短というものは、いわば一般にいわれる不況という言葉の中でながめてはならない要素というものを多分に持っておるのじゃなかろうかというふうに考えます。その一つは、現在進行しておりますところのいわゆる不況化の中における合理化の動きというものは、化繊業界立場からいいますと、むしろ私はこれは防衛的な合理化じゃなくて、積極的な合理化の意味を多分に含んでおるように考えます。なぜならば、日本におきます化学繊維産業立場というものがいわば斜陽産業というふうに規定づけられるものではなくして、むしろ、今後興隆していくべき運命をになっておる産業でございますので、そういう意味での将来の企業抗争、将来の業者問の争い、そういうものに対処していきますところのいわば積極的な合理化というものが今日現われておりますのが、化繊産業合理化一つの特徴的な姿ではなかろうかというふうに考えます。  もう一つは、企業間におきまして技術革命というか技術革新というか、オートメーション化というか、そういうものの進行度合いの差というものが今日の合理化に拍車をかけておるのじゃないかというふうに考えます。たとえば東洋レーヨンあたりではすでに、その他のところでもそうでございますけれども、工程の中にコバルトを用いまして、いわば液面測定というようなものをコバルトの応用で測定するような非常に技術革命が進行したのもございますが、それと逆に、相変らず昔のままでやっておるという状態のところもございます。そういう企業間におけるところの技術革新の差というものが、今日の合理化に逆な意味での拍車をかけておるというふうに考えます。それから、もう一つは、戦後何だかんだといわれながらも、時として朝鮮ブームがあり、神武景気ありということで、整理期が延びておったものが、今この段階において一挙に押し寄せてきて、不況合理化ということになって現われてきた、このようにもわれわれは考えます。  それからもう一つは、第四点としましては、先ほど滝田会長並びに高山部会長が申し上げましたけれども、日本の貿易構造の変革からくる産業構造の転換期がこの不況、ことに繊維不況というものを促進しておるのじゃないかというふうに私どもは分析をしておるわけでございます。従いまして、私たちは、今日の繊維不況、ことに化繊不況対策というようなものは、一つには、確かに化繊なら化繊繊維なら繊維という産業独自解決策が必要であると同時に、もう一つには、いわば国全体の経済政策転換期に現在きておるのじゃないか、こういうものを並行していかない限りこの不況というものは、ことに繊維産業不況というものは救えないのじゃないか、このように考えておるわけでございますので、ぜひとも、今後政策を御立案なさるときには、そのような二面性というものが今日の繊維不況対策には必要なものであると思いますので、そういう観点からお救いと申しますか、御立案願いたいというふうに考えるわけでございます。  私は、特に化繊という立場でものを申しますので、そういう点で若干具体的な点を二つ、三つお願いしたい点がありますので、申し上げたいと思いますが、一つは、化繊の場合、三品取引所の制度が現在ありますけれども、まことにこれは無意味な制度だと思います。これは業者の方はどういう御意見か私はわかりませんけれども、生産高最高で一五%、その程度のものしか三品取引所には上場されておらない。それでもって市況が悪いとか、不安定だということで化学織維産業全体を律せられては、こっちはたまったものではない、こういうことになろうかと思います。従いまして、むしろ化繊の場合には、三品取引所に関係する法関係のものは要らないのではないか、このように考えるわけでございまするし、かつ、こういう点に対するところの一つ政策をお定めになった方がいいのではないかと思います。まして、いろいろな点では建値制度というものはやはり行われておりますし、いろいろとそういう点についてのむずかしさというものがあろうかと思いますが、三品取引所で現われておりますところの化繊価格というものは、むしろ真実を現わさないものであって、それをもとにして政策の立案をされては、われわれは非常に困るという、こういうように考えます。  もう一つは、化学繊維立場から申しますると、先ほどこれは賀集会会長の方からも申し出られたものと思うのでございますが、綿花あるいは羊毛の輸入原料をできるだけ削減していただきたい、これをできるだけ合成繊維なり化学繊維に代替をさしていただきたい。そういうことによって、やはり日本の何といいますか、貿易構造の転換などもやっていくべきでありましょうし、あるいは日本の国策産業というふうに規定されておりますところの新しい繊維の興隆にもプラスされる面もあるし、日本国民経済全体の上にもプラスされる面があるのではないかというように考えます。ことに、最近の繊維業界は、一つ綿紡なり化繊なり、羊毛というものでなくて、混紡時代ということにわれわれは期待しております。一つ天然繊維一つ化学繊維でもって存立するのではなくして、お互いにからみあって存立していかなければならない段階にありますので、世界の趨勢がそうだと思いますけれども、そういう段階にありますので、いたずらに一つの、アメリカならアメリカ政策等に惑わされることなく、そういう点での日本固有の、ことに日本は原資材がない国でありますので、そういう経済立場に立った固有の繊維政策というものを打ち出されていただきたいというふうに思うのであります。  それから、先ほど田和紡績協会の専務理事の方からおっしゃったことでありますけれども、国内消費にも限界がある、こういうことを言われたように記憶しておるのですが、これは滝田高山両氏から言われました通りに、私どもはそのように考えておりません。私どもも主として——ニコヨンその他を別にいたしましても、いわば日本におきまする大企業に働く労働者の衣料政策につきましての調査を十分持っておりますし、公表したこともございますけれども、そういう点からながめましても、まだまだ日本国内需要というものはあるのだ、確かに購買力というものがそれを裏づけてない。購買力があると、今ここで申し上げるまでもなく、ローレンス曲線等において象徴されております通りに、購買力と繊維消費というものは平行的にたどっていくものである。決してその点につきましては、われわれはここでとやかく言う必要はないと思うのですが、ことに日本のような、今のような場合は、イギリスにおいてとられておりますユーティリティ・システムと申しますか、ああいうようなものを参考にする必要があるのではないかと思います。たとえば学生服とか、作業服だとか、その他の制服だとか、あるいは大衆向きのせびろだとかというような、国民衣料とでもいうような規格を作っていただきまして、国家が指導して、何らかの形である程度の補償を通じて、低価格制度を打ち出していった場合の購買力というものは、われわれの調査しただけでも相当膨大なものになるという可能性を持っておるわけです。それから、われわれは購買力の面からくるところのそういう消費の増大と同時に、供給面からくるところのそういう増大を国内にはかっていって、衣生活を豊富にする方法というようなものを政策的に考えていかなければならない段階にあるのではないかというように考えます。  それから化学繊維立場のみに立って申しますると、われわれは非常に矛盾を感ずるのです。それは、現在はわれわれといたしましても、日本の国産パルプという——やはり化学繊維の場合はパルプが主要原料でございますが、国産パルプの方が、何と申しますか、悪いといっては語弊があるかもしれませんけれども、質がよくなくて高い、外国産のパルプの方が良質で低廉だ、こういう矛盾がある。この矛盾をいろいろ考えてみますと、どうも日本の国有林の管理方式に若干問題があるのではないかというように思うわけです。それはどういうことかと申しますると、大蔵省の予算仕事というような形において現われてくるのではないかと思います。一定のものを予算だけ売っぱらってしまって、あとは木があろうとなかろうと知ったことではないという顔をされておって、いわば国有林という最大の財産なり、いわば資源なりを持っていながら、日本のそういう産業に対しましての商業ベース上の操作というものを全然考えていない。こういうことに対しましてはやはり積極的に考えて、ああいうものを、よりわれわれの大衆生活と申しまするか、あるいは国策的な産業というものにプラスするような方法というものを考えていただきたいというように考えるのであります。  さらに、化学工業用の重要資材の一つである工業用の塩の問題にいたしましても、やはり何か専売方式の中でもけっこうですから、商業ベースに乗るような方式、あるいはそういうシステムというようなものを考えていただかないと、日本の国策産業である化学繊維産業というものが、常にそういう面からの圧迫なり、つらい立場に置かれてくる、これが問題ではないかと思うのであります。  また、輸出に対する問題といたしましては、先ほど両役員から申しておりますので、多くを言いませんけれども、ヨーロッパ各国を私も繊維関係で見て回ってきたのですが、何だかんだと申しましても、いろいろの形で輸出保護政策というものが徹底しておると思う。ことに繊維の場合、世界的に競争が激しいので、そういう保護政策が非常に徹底しておって、われわれが見てもびっくりするようなものがあるわけです。それが決して表に出ていない。そういう点での問題は別にあろうかと思いますけれども、そういうことをいろいろ考えてみまして、輸出に対する何か特殊な立場というものを、ただ現在の輸出所得の減税措置だけではなくて、別に考えられる政策というものが、こういう時期には日本全体として打ち出されていいのではないかというように考えます。  さらにまた、こういう操短等の問題が出て参りますると、私どもが一番困る点が、基礎になる統計資料というようなものが全く不備であるということです。この点につきましては、ぜひとも早急に御実現願いたいというふうに思うわけでありますが、たとえば在庫があるとかないとかといったところで、むしろこれは業者の申請を中心にした私は数字を書き並べただけじゃないかと思います。現在の実情につきましては、ある程度ほとんど通産省の方等でも御把握願っていると思いますけれども、たとえば東洋レーヨンとか帝人という会社では、人絹在庫というものはないのです。それが統計数字上では在庫が減っていないのです。こういうことは、統計機構そのものに欠点があるのか、ああいうものを拡充強化していかなければならない私は任務というものが、国会等にもあるのじゃないかというふうにも思いますけれども、通産省、労働省、統計局でもけっこうなんでございますが、そういう産業統計というものを確立するものを作っていただかないと、そういうものがないとわれわれは困る。何かやろうとしましても非常にいろいろ不備を感ずるし、また論議の中心にそういうことはなってしまう。また、いろいろ問題があろうかと思いますが、たとえば勧告操短といいながらも、これはいわば形式的に独禁法の裏をいく勧告操短には違いないけれども、業者の申請数字がまるのみにされてしまっている。明確な統計なら統計を持っておれば、ほんとうの意味の勧告ができるのじゃないかというふうに考えます。それから、こういう統計機能というものをこの際、こういうことの機会に、特に私は拡充と申しますか、そういうものをぴしっとしたものを作っていただきたいということをお願いいたしたいというふうに思うわけであります。  それから、最後にお願いいたしておきたい点は、現在過剰設備過剰設備といわれておりますれども、これもやはりものの見方ではないかというふうに思うわけであります。私は、人絹五五%、スフ四〇%の現在操短をやっておりますけれども、そんなに過剰かといいますと、私は過剰じゃないというふうに思います。いわば設備の更新というふうな言葉で表現されるような状態のものが、過剰設備ということでもって表現されている。それで不況だ、操短だといって争われている傾向が非常に強いのではないかというふうに思うのであります。特にこれは繊維の各業種についてもそのことは言えるのではないかというふうに思うのでありまして、そういうようなことを明確にしていただきまして、欲ぼけの形で古い機械を動かしてもうけているのは別でございますけれども、やはり設備の更新というものが、今日の過剰設備といわれて表現されている設備の中に多くあるという事実、そういうようなものをやはり明確に御認識をいただいて、政策の御立案を願いたいというふうに考えます。  私はそれで操短と一年取っ組んで、いろいろ御迷惑もかけたり、いろいろやっておったわけですが、今日ほど政治の指導性と申しますか、企画性と申しますか、計画性と申しますか、そういうものがほしいときはないと、つくづく感じましたので、そういうような意味合いで、強くそういうものを総合的に取り上げられて、日本の国の経済にプラスになるような方向においてわれわれを導いていくというような態度を打ち出されることを最後にお願いいたしまして、至って大ざっぱでありましたけれども、労働者から見た化繊業界というものの現状を申し上げました。
  16. 田畑金光

    委員長田畑金光君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見は終りましたので、これより質疑を行います。  御質疑のおありの方は、質問される参考人を名ざしをして御発言願います。
  17. 海野三朗

    ○海野三朗君 私は、田和さん、賀集さんにお伺いいたしますが、どういうふうにしたならばいいとお考えになりますか、御所見を承わりたい。
  18. 賀集益蔵

    参考人賀集益蔵君) お答えいたします。ただいま森参考人から言われたことは、まことに私は、経営者立場労働者立場と一致した点が非常に多いと思うのであります。私らの立場から申しますと、国内需要におきましては、ただいま申しました通りに、大体化繊天然繊維に三分の一まぜてやると、それだけ外貨も節約できますが、それだけ化繊の方も伸びる。事実、需要面においては、これは今まで経験した何ではほとんど変らない、ある意味においては長所もある。タオルなんかかえって喜ばれている。そういうような一つ政策国内需要の上においては考えてもらいたい。これはもちろん、需要者の希望によってやるんですけれども、そういう方向で為政者は考えてやってもらいたい。  それからもう一つは、輸出の面でございますが、今、森参考人から言われたことは、私は時間の制限で、申したかったのですが、ちょうど同じ意見が出ておりましたが、西ドイツやイタリア方面の輸出のあり方におきましては、いろいろな補助政策を立てております。しかもこれはガットに——あまり表に出てこないで、免税の点、それからあるいは金融の面、それが積極的に、日本では何ら——輸出というのは三十一億五千万ドルというように声は高いですけれども、政策面に何も現われておらない。これはぜひ実行して、そういう工合に持っていかないと、輸出の振興と同時に政策の面にそれを裏づけしていかないと、輸出はなかなかむずかしいんじゃないかと思うのです。
  19. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 今の御質問にお答えいたしますが、第一番の問題は、私申しましたように綿業としては輸出が非常に大きな部分を占めている。しかも内需というものは、多少の消長はあっても大きな差がないので、景気不景気ということは、輸出が伸びる伸びぬということに非常に影響がある。ところが輸出を伸ばそうと思えば、どうしても生産コストを下げなければならない。生産コストの中で一番大きな部分を占めておりますのは原料でありますから、従って、原料を安くするということが一番問題なんです。ところが、先ほど組合側からも御指摘がありましたように、日本原綿アメリカから買っているのが非常に多い。アメリカから買うのは従来の何か関係があって、やむを得ず買っているようなお話が組合の方からありましたが、私は現在の紡績が何も米綿を好んで買っているのではなくて、要するに日本の為替の関係から買わされているのだというふうに考えております。従って、為替がグローバルな為替であれば、当然一番安いメキシコ綿を買うはずなんであります。現在メキシコ綿と米綿との間には一割くらいの値開きがあるのでありますけれども、これを買えばコストが下る。たとえば、中共にメキシコ綿であったら対抗できるとまでいわれておるのであります。非常にそのメキシコ綿が買えないというのが、グローバルな予算が少いということにあるのでありますから、従って、原綿の買付というものをもう少しフリーにしてもらったらいいんじゃないか、これが一つであります。  それからもう一つ、これも先ほど組合高山さんから御指摘がございましたが、原綿というものがいろいろな意味において使われぬ人間に渡されている。そうしてそれがプレミアムなんかで結局生産者に入ってくるのでありますから、それが生産費を非常に高くしている。従ってこれが使う人間に渡されて、そうしてプレミアムかせぎなどというのがなくなれば、当然原綿は安くなる。かように考えますので、今の問題として、当面の問題としてなし得る一番の可能な方法で考えられるのは、私は原綿を、原料を安く入るような手が打たれるということが必要じゃなかろうか、かように考えます。
  20. 海野三朗

    ○海野三朗君 いま一つ操短をやっておるということでありますが、そうしますと、操短をやっておる。つまり日本繊維の方に従事しておる人間がよけいだということになりますか、どういうことになりますか。なぜそういうふうな現象が起ってくるのか、忌憚のないところを承わりたい。
  21. 高山恒雄

    参考人高山恒雄君) ちょっと御質問がわかりませんが……。
  22. 海野三朗

    ○海野三朗君 操短をやっている、不景気だ、なぜこの不景気の現象が起ってきているか、その根本ですね。そうすると、今まで日本ではその方面に従事してある人がよけいだということになるのですか、それはどういうわけなんですか、その点を一つお伺いいたしたい。
  23. 高山恒雄

    参考人高山恒雄君) それは、先ほど田和さんの方から根本的に第一番におっしゃったように、日本のつまり紡績設備が、いわゆる設備の統制をはかった、その予告期間が長かったわけですね。その間にものすごいかけ込み増錘というのができたわけなんです。その増錘に対しては、いろいろな政府調整をとればよかったのが、そこが放任主義であった。それがために、一挙に七百八十万錘から約九百二万錘になって、それがために設備拡大と同時に生産過剰になってきた。これが大きな原因なんです。従って、そういう設備に対する人員は、会社としては、これは当然経営者としては雇用を結んだわけですが、今製品が余るというと、その人間はやっぱり犠牲にしていく。ここに大きな矛盾があるのじゃないかと、われわれは申し上げておるわけであります。
  24. 島清

    ○島清君 たくさんお尋ねしたい点がございますけれども、同僚の委員諸君もお聞きしたいことでございましょうし、私はその範囲内において二、三点だけお尋ねしておきたいと思います。  まあ、繊維問題を取り上げまする場合に、原料高、製品安、こういうふうに、いわれておりまするので、参考人の方々からもそういう意見の御開陳があったわけでありますが、そのもとを尋ねていきまするというと、原綿が対米、アメリカだけに依存をしておる、こういうふうな御見解が述べられたわけでございます。メキシコ綿アメリカ綿よりも品質もよろしいそうでございまするし、日本の方にもっと輸出をしたい、こういうふうにメキシコ自体もそういう考えでいるようでございまするし、さらには、日本のいろいろの商品をもっと入れてもいいというふうな考え方もあるようでございまするけれども、しかしながら、今組合の方々、業者の方々から御指摘になりました通り、何か知らないけれども、日本の通産省はアメリカにだけ依存をしておる。これを何か一つ打開をする方途を講ずる必要があるのではないか、こう思いますが、繊維局長はそれに対して、政府当局はそれに対してどういうふうに考えておられるのか、この御見解を承わっておきたいと思います。  今参考人の御意見を拝聴いたしておりまして、非常に重要な点で食い違いますることは、組合の方々は、購買力を高めて、そして生産を刺激していった方がよろしい、言葉は違うかもしれませんが、そうそう購買力をなくして、そうして景気を回復しようとしたって、これは無理じゃないか、こういうような御見解でございまして、私もその通りだと思いますが、しかしながら、経営者側の方の御意見を拝聴しておりますというと、すでに衣料購買力というものは飽和点に達したのだ、こういうことでございまして、これは組合側であるとか経営者側であるということによって、私は国民の衣料購買力というものが飽和点に達したとか、そうじゃないのだというように、私は見解は異ならないと思うのです。これは客観的に数字に出ることでございますので、明確に意見は一致しなければならないと思うのでございまするが、そこで経営者側の方の前提をなしておりますのが、内需の面ではすでに国民の衣料購買力というものが飽和点に達しておるのであるから、内需を拡大していくことができない。そこで貿易に依存する以外にないのだがということで、いろいろ貿易が伸びないという事情を述べられまして、そうして結論といたしましては、生産調整操短だけでもだめである。あとはもう合理化しかないのだ、こういうような結論でございまして、合理化に対しまする御説明がなかったわけでございますが、もしそうであるといたしまするならば、一体どういうような合理化というものを経営者の側は考えておられるのであるか。私たちが非常に心配をしておりますのは、組合側の方からもしばしば御指摘がございました通り、臨時措置法によりまするというと、これは労働者側の方にしわ寄せしない、こういうふうになっておりますけれども、実際の不況克服という実態を見てみまするというと、鐘紡問題に現われておりますように、合理化という名目で労働者に耐えがたいような犠牲を強要しておる、こういうことでございまするので、果して経営者側の方の参考人が述べられました、この合理化以外にないのだ、不況克服は合理化以外にないのだという、その合理化の具体的なことを御説明を願いたい。まずとりあえずこの二点についてお尋ねをしておきます。
  25. 今井善衛

    説明員(今井善衛君) 先ほど原綿の話が出ましたのでお答えいたしますが、もちろん輸入いたします際に、世界中で一番安いところから適当の原綿を得るということが一番望ましいわけでございます。  ところで、御承知のように、日本が売るためにはまず買わなければならぬ、いわゆる求償的な貿易でございまして、たとえばブラジルとの関係におきましては、ブラジル綿は、結局、ほかの綿花よりも高いけれども、どうしてもやはり売り込むためにある程度買わざるを得ないというふうな制約が所々にございます。  それから米綿とメキシコ綿関係でございますが、これは確かにメキシコ綿の方が安いのでございます。私どもといたしまして、現在の状況におきましては、たとえばグローバル制度ということで、ドルでもってどこからでも安い物を買った方がいいということが、原綿を安く入手できる道になるわけでございます。ただ、たとえば非常に外貨が詰まっております際に、昨年度におきましては、余剰農産物の輸入もいたしました。ことしはもちろんいたしておりません。ただ輸出入銀行の借款によりまして借款綿を買うということが過去数年間続いておりまして、この借款綿の決定は、これはことしはたしか六千万ドルでございました。それによる借款綿を受け入れる。これは何も向うから売り込んできたわけじゃございませんけれども、従来日本がドル不足という意味で輸出入銀行から借款を受けておるので、借款綿を買わないと、外貨の方がもたなくなるというようなことからいたしまして、借款綿による米綿の輸入というものが継続して行われておるわけでございます。従いまして、借款綿というのが相当大きな割合を占めますので、それを差し引きますと、あとメキシコ綿、その他、安い綿花を買う余地というものが非常に少くなっているというのが現状でございまして、これはもう確かに今の状態だけから申しますれば、これはもうどこの綿花でも、たとえばメキシコ綿が自由に買えるようにということが望ましいわけでございますが、ただ、先ほど申しましたような状態で、借款綿を相当買う約束をしておるわけでございます。これは一年限りでございます。従いまして、今後ドル資金において不足がないという見通しがつけば、これはできるだけフリーにすべきであろうと思います。
  26. 島清

    ○島清君 借款綿をやめる意図はないかということを聞いている。私はそれを知っているから、それに対して考え方はどうだということを聞いているわけです。
  27. 今井善衛

    説明員(今井善衛君) これは何も対米依存というようなことでございませんで、将来の外貨の見通しをどうするかという問題にからんでおりますので、非常にそういう意味合いからいたしまして、政府の中で広く検討しなければならぬ問題だと思います。今のところ、ことしの問題につきましては、そのまま続けざるを得ないというふうに考えております。
  28. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 先ほどの第二の問題に対しては、だれが答弁されますか。
  29. 田和安夫

    参考人田和安夫君) お答えいたします。私の申しました中で飽和点に達しているという言葉が問題になっている。また組合の方では、これを限度だというふうにお取りになったようです。私はそういう意味では申さなかったのです。もしそういうふうにお取りになったとしたら、これは私の言葉が足りなかったためだと思います。私は前申しましたように、戦後十年というものは非常に設備が足りなかった。千三百万錘から二百万錘に減った。また戦時中は非常な繊維の不足を来たした。従いまして、できたものはみな売れるという状態が十年続いた。要するに売手市場であった。ところがそれが現在は買と売とミートする状態になったということを申し上げました。要するにこの意味において飽和点であって、今度の総合対策の案にも出ておりますけれども、人口の増加、それから所得の増加による自然成長率による消費の増加ということは、私はこれは認めているのでございます。その点はどうぞ誤解のないように願います。  それから合理化という点でございます。これは今後の総合対策の特別委員会において討議せられる問題であるということを私は申しましたが、この中でわれわれが考えます合理化のうちには、現在われわれは非常に犠牲を払って操短をしたり、それから買い上げをしたり、いろいろなことをしているが、ところが、まだ繊維業界にはそういうものが行われていない部面がある。また全般とのバランスなくして、繊維をまだ助長しようとする部面がある。たとえば合繊あるいは特綿紡のごとき、そういうようなものを合せて、全体としてどうしたらいいか、また現在の設備をどうしたらいいか、こういうことは、現在のわれわれの当面する問題であると、かように考えております。
  30. 相馬助治

    ○相馬助治君 きょうは参考人から御意見を伺って、私ども勉強して、追って政府意見を具申するなり、その見解を聞くという試みの委員会ですから、私は今答弁を求めるというのではないのですが、ただいまの同僚島委員質問に対する繊維局長の答弁は、あまりにも簡単であり、かつまた、田和参考人が烈々と述べられたそういう気持に対してもこたえ得る情熱を欠いていると思う。田和さんが言っているように、紡績業界としては、原料をもっと安く買うということが何よりの念願だ、こう申しているし、つまらないところにプレミアムなんかも出したくない、こういう話をしております。私はしろうとで、はっきりはわからないけれども、今の原綿の輸入につきましても、御承知のようにマル特による輸入の方式があってみたり、あるいは紡績業界においも、大手筋は原綿の買い方について一つ意見を持つであろうし、あるいはまた、小さな方の紡績業者はそれなりに原綿の買い入れについて意見を持っておる。そういうものを調節して、まず第一には、その原綿の輸入の方式を通産省はこの辺で抜本的に研究しなければならない段階にきていると思いまするし、もう一つは、借款綿を今の状態では買うほかないのだ、そんなふうにあきらめ切ったのでは、何にもそこには政治もなければ、進歩すべき通産行政もないのであって、むしろ操短々々で紡績業界をいじめるのじゃなくて、今の中共あたりの繊維東南アジアにどんどんどん進出しているというこの際に、やはり紡績業界を刺激して、そしてこれを輸出の方にどんどん向けるためには、どうしてもやはり原料を安く買わせなければならない。そういう場合に、借款綿を買うほかないのだということでなくて、もっと積極的に政府は手を打って、安いものを買うという手段を講じなければならない段階がきていると、こういうふうに私も思うのです。と同時に、局長が指摘しているように、ただ単に原綿を買うのじゃなくて、それに見合って物の売れる地域から買うという、こういう考慮があることももちろん私どももわかります。要するに、原料をもっと安く買いたいというこの参考人の御見解に対して、私たちも同感であるので、従って、同僚島委員のような質問が開陳されたのだと思います。  従って、この次の委員会に私は繊維局長にこの点をびっしり聞きたいから、もう少し研究してきて、そして資料を示して、われわれに納得するような説明をしていただきたいし、将来、紡績業界も安心のいくような積極政策等も一つお示し願いたいと思うので、今からそのことを予告しておきます。ここでうまい答弁もできないと思いますので、できれば今承わりたいし、できないなら、この次にびっしり承わりたいと思います。予告しておきます。
  31. 今井善衛

    説明員(今井善衛君) きょう詳しい資料を持っておりませんので、この次まで十分答え得るように研究いたしまして準備しておきます。
  32. 島清

    ○島清君 繊維不況を克服いたしまする最大の要点に、見解の異なっておられるような点がありますので、その点をお聞きしておきたいと思いますが、それは、滝田さんのお話を承わっておりますというと、大衆の購買力を拡大しなければいけないのだ、こういうような御見解でございました。私もそういうような見解に立つものでございまするが、ところが、経営者側の方からは、そういったような御見解の御開陳がなかったわけでございますが、この点については、経営者側の方といたしましてはどのように考えておられるか、その点を承わっておきたいと思います。それから、これはせっかく相馬委員からの御忠告もあったわけでありまするが、なるべくは政府側の方に答弁をわずらわすまいと思いますが、この点については通産当局は一体どう考えるか、これを明らかにしていただきたいと思います。さらに、不況の克服の効果が出てこなかったということについては、操短が効果を上げていないのだということが御指摘になっておるわけでありまするが、しかも、そのことについては口をきわめて滝田さんから、その政府無策といいまするか、経営者の無能といいますか、これが御指摘になったわけでございます。私もその通りだと思いますが、何とかしなければならないというて臨時措置法を制定した。そういたしまするというと、かけ込み増設がなされる。そうして五カ年計画は立てましたけれども、二年たたずしてその五カ年計画を達成いたしまして、今度不況だ、こういうわけでございます。一応は政府といたしましては、計画らしいものは立てましたけれども、しかしながら、それを実施いたしまするに当りましては、業者の方からの協力がなければできないわけでございますから、業者の協力に欠けるものがあったのではなかろうか、こういうふうに考えられるわけでございます。これからのこの不況の克服をやろうといたしますのには、これを進めて参りますためには、何を申し上げましても、やはり業者の積極的な協力がなければならないわけでございます。ところが、この前、私たちが委員会で大臣の答弁をわずらわしましたときに、大臣は、操短を続けていく、こういうような御見解のようでございましたが、しかしながら、この生産調整ではこれは無理である、こういうことを経営者側の方から言われているわけでございまするので、今後一体、通産省はこの不況克服のために、一体業者に対してどのような協力を要請し、そうしてどのような具体案をもってこの不況の克服を、なかんずく業者の協力の面に関する限り、どのような確信があるか、これはやはり一応表明願いたいと思います。この二点について御答弁を願いたい。
  33. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 操短の効果がなかったのじゃないかというお話がございますが、私は操短は予期したほど効果を上げていないということを申し上げたので、効果がなかったとは考えておりません。かりにですね、これは仮定になるので、逆説になるかと思いますが、操短がなかったら現在どういうことになっているかということを考えますと、実に惨たんたるものになっているであろう、かよう考えます。商社のむろんたくさんの倒産も出たでございましょうし、あるいは生産者のうちにも非常な犠牲者が出ているであろう。そうして、つまり抜け出ることのできない泥沼になっているのじゃなかろうかと考えます。従って、操短というものは消極的な効果は上げている、かよう考えております。  ただ、最初に申しましたように、操短なんというようなことは、短期で早く抜け出るようにしたいと思うたのが、需要が初め予期されておった以上に減退いたしたために、その効果が出なかったというだけで、現在の操短というものをもしやめたら、効果がないからといってやめたらどうなるかということになったら、やめたという声が出ただけでも、あくる日から市場は暴落して倒産者が出るだろうと、かように考えます。  それから消費の増加について、生産者はどういうふうに考えるかという御質問でございましたが、現在の国民の所得の状態においての消費増加、こういう運動は、生産者が個々において非常な努力を払っております。これは皆さんテレビをごらんになり、ラジオをお聞きになり、新聞の広告をごらんになったらおわかりだろうと考えますが、個々の業者は非常に犠牲を払って消費の増大に努力している。これは企業努力でございます。また共通の問題といたしまして、たとえばわが方の何で申しますと、綿業振興会というものができまして、これは業者が一体になって、相当に金を出して、あらゆる宣伝活動をいたしております。ただ、御質問の点は、今後消費者に購買力をつけるような所得の増加、あるいは所得を減らさぬような方向はどうかという御質問かと思います。これは、われわれの手ではできないことで、これは政府の方でお考え願うよりほかないことかと、かように考えます。
  34. 今井善衛

    説明員(今井善衛君) 繊維国内需要についてお答えいたしますが、私どもはかように考えております。戦後非常に衣料が払底しておりましたので、従いまして、この衣料の国内需要というものは、約最初の十年間、つまり昭和三十年までは、非常なテンポでもって、伸びて参ったのでございます。これはおそらく所得の伸び以上のスピードでもって伸びておるわけでございます。ところがここへきまして、もちろん国民衣料消費は、これは伸びてはおりますけれども、それかまあ非常に停滞しつつある、これは今までのかわききりました需要をある程度充足いたしまして、そこで今度は、普通の状態で伸びつつある、こういうことだと思います。  それから、今後の需要につきましては、滝田さんのおっしゃったように、確かにまだ潜在需要は非常に多いことと思いますが、ただ購買力がつかないために、今のような状態になっておるわけでございまして、従いまして、今後のこの国民需要の伸び自体というものは、これは一にかかってやはり国民所得の増加の問題にかかると、そういうことになりますと、これは、政策関係するところ非常に大きいと思いますけれども、戦後の急速なテンポじゃなくて、やはり多少鈍化された伸びということになるのじゃないかと、かように考えております。  それから操短の効果でございますが、大体におきまして、田和さんのおっしゃいました二点に賛成でございまして、とにかく、当初、短期決戦ということで、相当在庫が急速に在庫調整ができるということでやったのでございますが、ただいま申しましたような国内需要の鈍化、また輸出がそれほど伸びないというよりは、むしろ減っておるというふうな関係からいたしまして、在庫調整予定よりもはるかにおくれたということでございます。もし、この操短をやらないということになりますると、これは非常に生産力が、設備がたくさんございますので、従いまして非常な生産過剰になり、現在以上にもっとひどい深刻な状態になっておるのじゃないか、特に現在の操短、これは紡績部門と織布部門において行なっておりますが、紡績の段階におきましては、メーカーが少いという関係で非常に協力態勢がよくとれておるわけでございまして、大体やみ生産というふうな現象はないのでございますが、ただ織布の段階におきましては、御存じのように非常に数が多い、しかも零細な企業が多いという関係におきまして、たとえば三割操短という場合に、結果におきまして、それが二割になり何になり、生産予定よりもよけいできておる。従いまして、そういう意味合いからいたしまして、在庫調整がおくれておるということは言えると思います。  これは、まあ今後どうするかという問題につきましては、やはり検査の問題等とからみまして、こういう点につきましても、十分研究しておる次第でございます。
  35. 上原正吉

    ○上原正吉君 ちょっと田和さんに、先ほどの質問に関連してお伺いしておきたいのですが、自由に、つまりメシキコ綿を自由に買えて作ったら、現在の品物よりも、米綿を買ってまぜて作った品物よりも何か代表的な綿製品についてどれくらいのコストが違うか、それを一つと。  それから、中共とせり合う代表的な綿製品について、中共の輸出価格はどのくらいか。  それから、もう一つ、自由にメキシコ綿を買うことができて、それと競争できたとしたらどのくらいの輸出の減りを食いとめ得たと——これはまあ想像ですから、単なる想像を伺えばいいんですが、どのくらい輸出を防遏し得たか、数量で。  それから、また中共の綿製品は、その原料綿をどこから得ているか。これをおわかりでしたら、一つお答えいただきたいと思います。
  36. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 先ほどの、まず第一問のメキシコ綿だけで作れば、主要綿布についてどれだけコストが下るかという御質問でございますが、これは専門的な問題になりますので本日私からあいまいなことを申し上げるよりも、あとで書面をもってお答えさしていただきたいと、かように考えます。  それからメキシコ綿を入れたら、中共綿布にどういう対抗ができるかという御質問でございますが、これは非常にむずかしい質問でございます。と申しますのは、中共の価格というものは、常に日本綿布の下一割から一割五分たたくというようになっております。従って私が申しましたのは、現在の価格においては対抗できるというのでございます。もし日本メキシコ綿だけを入れて、たとえば一割なら一割、一割五分なら一割五分安いものを作ったとして、もし、政策的にその下をたたかれたら、これは意味ないことでございまして、私の申しましたのは、現在のところでは対抗し得るものであるということを申し上げたのでございます、ある品種については。さよう一つ考え願いたい。  それからもう一つ、中共の綿花はどこから手に入れているかというお話でございます。これは中共でできております。今年非常な増産でございまして、本年は新聞でも——私どもは新聞しかわかりませんが、新聞で見ましても、昨年よりは三割も四割も増産されておる。また、それによって設備も増加して輸出力は増大するであろうと言うております。われわれの方でも中共綿布の競争ということは、非常に重大視いたしまして、あらゆる手を通じて資料を調べておりますし、最近帰りました東南アジア地区全般に専門の調査団を出しまして、これは新聞にはそう出しておりません。しかし、目的は、中共とどうしたら対抗できるかということを各方面から研究いたしておりますが、根本になります原綿自体が、中共がどういうことになっておるか、中共がどういう価格原綿を収買し、また、これを紡織に渡しているかというような肝心の点は、なかなかわからないので、今後そういう点も調べまして、この中共綿布というものには、紡織としては、全力を尽して対抗する手段を講じなければいかぬ、かように考えております。
  37. 上原正吉

    ○上原正吉君 それから中共以外に、日本綿製品が世界各国で競争して日本が負ける、そういう相手がありましょうか。  それからもう一つ、ついでに、中共とは、今のお話から伺って、私は容易に対抗し得ない、中共を圧倒して、日本綿製品輸出を確保するということは、これはなかなか期待し得ないという印象を受けたのです。その点について、どれほどの確信と言いますか、見込みと言いますか、お持ちになっておりますか。
  38. 田和安夫

    参考人田和安夫君) お説の通り非常にむずかしい問題と考えます。非常にむずかしい問題でございますが、しかし、これは日本綿業のために、とにかく、あらゆる方法を研究していかなければならぬ、これは綿業に課せられた宿命的な問題であろう、かように考えております。お説の通り非常に困難であろうということは想像いたします。  第二問の、中共以外に対抗しているものがあるか、かような御質問でございますが、これは種類により、また、マーケットによって、多少違います。最近は、非常に減退いたしております。なお、日本綿業の脅威となっておるのは、香港の製品、香港製品というものは、非常に日本綿業の脅威になっております。これは香港というところは、原料が自由に入るということもございます。あすこは一年に三百六十日働いている。お正月と盆しか休まない。一日三交替で働いている、こういうような労働条件が非常に違いますし、大体中華の人が勤勉でございますので、労働能率は日本とあまり違いませんのに、非常な働きということも、一つ原因になっておりまして、香港製品が、日本一つの脅威でございます。  それから一、二年前までは、インドネシアにおいてインド製品が一つの脅威になっておりましたが、これはむしろ日本以上に、中共綿布に非常に影響を受けて後退いたしております。しかし、これも問題でございますが、それから国内市場という問題になりますと、たとえばパキスタンのごときは、パキスタンの国で、またアフリカとかいうふうな、インド人の固有のマーケットで、日本に対抗いたしております。  それからもう一つ、エジプト綿使いも、これはどういうわけかわかりませんが、エジプト綿使いのものは、常に英国品に圧迫をこうむっております。これはエジプトとイギリスとの間に、何らかの原料を安くし得る道があるのじゃなかろうか、あるいはエジプトが買うスーダン綿などのうちに、日本に対抗する原料綿があって、それが安く買えるのじゃなかろうか。もともとあそこには英国の資本によって開かれた原綿のコットン・ベルトが相当ございますから、そういうものがあるのじゃなかろうか。エジプト綿については、英国品と日本とは競争上不利に立たされることが非常に多うございます。
  39. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は田和さんに一点と、それから滝田さんに一点伺いたい。問題は別でありますが。  まずお伺いいたしたいことは、繊維輸出の問題、ことにこの綿布関係でありますが、先ほど御陳述の中にもありました通り、この輸出のふるわないということは、まず第一に、まあ世界の不況と、それから東南アの政治的不安、それから今問題になっております中共の進出、こういうことをお話しなされたようでありますが、綿布は、今年の四月ごろから、特に輸出が減り始めたことは御承知の通りであります。たとえば五月の船積み一つ見ましても、九千五百万ヤードというものは、これは前年の同期に比較いたしますと大体まあ半分というような惨たんたる状況なんでありますが、そういうときにもかかわらず、最近、これはたしか六月か七月だと思ったのでありますが、ビルマで綿糸の入札があったわけなのでありますが、これはむろん紡績会社が、直接その衝に当られたのではないと思います。むろんまあこれは商社がその衝に当られたと思うのでございますが、しかし相当な数量でもあったから、むろん紡績に連絡をしておることは、これはまあ当然なんでありますが、これらの入札の状況等を見ますと、台湾、パキスタンまでが御承知の通りこの入札に参加しておる。まあごく大ざっぱのものだけを拾ってみまするというと、香港が十ポンド当りに対して向うの三百二十五ペンスですか、それから、インドが三百七十九ペンス、中共が三百九十六ペンス、日本は四百三十六ペンスというような最高の値段にいっているわけですから、当然まあ入札は不可能だと、こういうわけなんでありますが、これはどういう点に、このコストの高いことが原因をしておるのか。今操短の続行によって、コスト高になっておるのか、その辺の事情を一つあかしていただきたいことと、それからいま一つ、この輸出を伸ばすことについては、今申し上げたような、いろいろな事情がありましょうけれども、しかしこれは、どうしてもやるべき手は打っていかなきゃならぬ。そういう点において、延べ払いというような問題、たとえば中共あたりは、最近は綿布だけでなく、インドネシアその他に対しましても、スフに対しても、長期借款というものを認めておる、こういうような実情がどんどん出てきておるわけなのでありますが、そういう点に対して、どういう御見解を持っておられるか、その点を一つお聞きしたいと思います。
  40. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 最初のビルマの綿糸の入札で、なぜ日本が負けたかというお話で、しかもそれが操短と関連しておるのかという御質問でございますが、私は操短と直接関係はないと考えます。操短によって、むろんコストは上っておりますけれども、売るチャンスがあれば相当な覚悟をして売っております。それは大きな声では言えぬでしょうけれども、今綿布は、採算に合っている輸出綿布はないのでございますから、従って今のストックをはかす意味において、業者はあらゆる努力を払って、輸出努力をしておりますから、従って操短からコストが高くなったから売れなくなったということではないと考えます。  それなら何かといいますと、やはり最初申しましたように原料の差というものが相当響いていると思います。インドなんかは、御承知の通り社会主義的な国でございますから、原料は非常に安く入っておりますし、中共は前申しましたような関係、香港におきましては、相当原料的に自由であるし、また生産コストが安いというようなことでありますので、私は操短と、それから何とが、直接関係はないように考えます。  それから延べ払いの御質問でございましたが、私は、これは日本政府の方で可能なのかどうかわかりませんが、もしそういうことによって、向うが買ってくれるんであったら、また日本政府として、財政上そういうことが許されるのであるということなら、これは望ましいことであると思いますが、ただ、最近インドネシアから帰りました調査団の話を聞きましても、インドネシアの政情不安というものは、相当なものでございまするので、果して現在のこの貨幣制度といいますか、今のメキシコの貨幣価値というものが、現状のごとく延べ払いへ維持できるかどうか。その辺の点が非常に問題でありまするので、その辺のことを、もし売れることならば、どんなことでもやっていただいたらと思いますが、将来のインドネシアの政情不安からくる貨幣価値なんか考えますと、これは、いろいろな方面から御研究になる必要もある問題のように、かよう考えます。
  41. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 滝田さんにお伺いいたしたいのでありますが、先ほど、いろいろお話がございました中に、私は聞き漏らしたのかもしれませんが、この中小企業によって経営をせられておりまする紡績会社、まあたとえば、これは俗に新々紡というかもしれませんが、まあ個々の従業者というものが、どのくらいいるかわかりませんが、二百に近い紡績連合会のうちに、この新々紡、いわゆる中小企業に属する紡績経営者というものは、相当おるんじゃないかと思いますが、ことに、こういうような大企業自体が青息吐息というようなときに、この中小企業に使われておられるところの従業員の状況、それから、このおそらくあなた方の組合に入っていない数が、あるいは新々紡あたりは多いのじゃないかと思うのでありますが、これは、そういう意味において、あるいは直接あなたの方で御関係をされていないかもしれませんが、実情は、多分把握されているんじゃないかと思いますが、最近にこの繊維不況において、中小企業経営者の中にあえいでおるところの従業員の状況、それからあなたは、まあ繊維関係の権威でもあるのですが、中小企業自体の紡績、中小企業自体の状況というものもあわせ、一つお話できれば、非常にけっこうだと思うのです。
  42. 滝田実

    参考人滝田実君) 非常に広範な問題でですね、ここで簡単に言い尽せないものがありますが、中小企業、一つは大企業の系列に入るか入らぬかということが、非常に問題になっていると思いますが、それと、この産業全体の転換期に、自分の企業はどの品種、どの業種に移り変っていくかということ、言いかえれば、経営者ないし企業の企画というものを誤まると、その企業はどうにもならなくなってしまうというような、いわゆる経営者責任ということが非常に重要な役割をなしておるように思うのです。はなはだ断片的でありますが、問題点をずっと指摘して参りますと。  それから中小企業全体について言えることは、やはり生産性が低いこと。一つの問題だと思います。これは経営の単位になっているのかいないのかですね、いわゆる経済単位として、それが経営単位になっているのかどうかということについては、私は中小企業に、単にざるの中に水を入れるような形でなしに、御承知の通り総合対策を練るような中において、綿紡なら綿紡化繊なら化繊羊毛なら羊毛というのは、どれくらいの規模にしたら、まず中小企業として生産性もそこそこにいき、採算もとれ、労働者の賃金、労働条件も確保できるかという、そういった経営単位、経済単位というものを、この際根本的に一つ、メスを入れて考えてみる、このことがなければ、私は、中小企業は、ここは困る困るということで、企業のできることを、いわゆる野放しにしておいて、そして一方において中小企業を助けようじゃないかといっても無理だと、こういう点が非常に強く感ぜられる点です。  で、先ほど触れましたけれども、中小企業は、系列の問題、資本の背景がどうなっているかということが非常に行き方としては大事な問題ですから——まあ、なかなか簡単に私も説明できないんですが。
  43. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 要点だけでけっこうです。
  44. 滝田実

    参考人滝田実君) 先ほど触れた最低賃金制、これについて考えておるのですけれども、中小企業は、系列に入るか入らんか、あるいは大資本と、どういう結びつきにあるかということについて、今の中小企業は困る困るといって結局は大きな資本圧迫されているのですから、この中小企業に筋金を入れ、てこ入れするものは、私は、最低賃金制以外にないのじゃないかという考え方を持っているわけです。  これはもう、私も、経済企画庁の経済審議会の委員をずうっと長くやってきて、今どこの審議会へ出てみても、日本産業を近代化し、中小企業にてこ入れするものは何だといえば、最低賃金制以外にはないのじゃないか。これは、中小企業をつぶすんじゃなくて、中小企業をそれによっててこ入れしてあげる、そのことによって大資本圧迫に対しての抵抗力を持たしめる。この関係が非常に迂遠で抽象的なようだけれども、生産の集中と利益の収奪がされる段階においては、やっぱり中小企業の非常に筋金になるんじゃないかと思っております。それをなさないで、中小企業の人たちに、今不況であるからといって助成策を図ってみても、それは、より多く一部において利益を集中するような形になって、たとえば、ここで差しさわりがあるとまずいんですけれども、同じ繊維のことを論ずるのはまずいと思うんですけれども、かりに東洋レーヨン一つとってみても、まあ日本の大企業のうちで、一番巨大な利益を上げておりますが、同じ東洋レーヨンの系列の所にいったら、どうかというと、これは、まあ月とスッポンほど違うんですね。こういうところに、中小企業そのものが、大きな力で押えられているものを、中小企業の実態がどうであるか、それを救ってやろうじゃないかという前に、それを健全化するのは何かということになると、私は、最低賃金制をしくことによって、労働時間その他によって中小企業をこれ以上、系列化によって押えつけちゃいかんという、一つの抵抗力を持たせてくるというふうに思っておるわけです。労働条件その他、御承知のように、一年において賃金の差が二%ぐらい開いてきております。年間、ここ六年の傾向は、御承知のように、約二%ずつ一年ごとに賃金が開いてきていますね。ですから、その開きというものが、今言った国民大衆の購買力というものをだんだんなくするという形になっておりますから、ですから、中小企業の労働条件あるいは賃金というものは、最低賃金制というものによって、てこ入れされ、そのことが、一つは、いわゆる産業の企業そのものを経済単位にだんだん近代化していくと同時に、大資本圧迫に対してもそれを耐え抜いていくと、こういう状態です。で、倒産そのものは、非常に世間で言われておるほどたくさんは出ておりません、私どもの知る限りにおいて。むしろ、やっぱり、ここで今申し上げた大資本なり系列化において、もっと自分たちの立場を有利にしてもらいたいというような、上向きの、何というか、要求というのが多くなってきているんですね。  先ほどからコスト高の問題について、原料のことばかり論ぜられておりますけれども、まだ触れられていない面があります。それは、金利の問題です。この不況下で、こんなに各企業が困っておっても、銀行だけですよ、のほほんとしておるのは。取り立てるものは、ちゃんと取り立てているわけですね。鐘紡一社にとっても、十三億の金利をちゃんと取っている。信用してこの企業はいいといって金を貸しておいて、取るものだけは左うちわで取って、そうして企業経営者をつついて、労働者犠牲にしろというようなことを裏でやっておる。表面は、紳士づらをしておるけれども、非常に悪質な面があるわけです。こういう金融関係の圧力というもの、あるいは、金利の面についての独占的な利益というものをどう考えるのか。これはどうしたって、私は政策の問題で論ずる以外にないように思うんです。中共の問題も出ておりますけれども、中共は、原料の差だけじゃありません。それは、やっぱり独裁政権下において労働条件をかなり下げておる。そうして金利の負担が全然ない。こういったことも、やっぱり大きな競争力の差です。それからコスト面においては、原料、金利のほかに、動力費用が、国際的には日本のは非常に高いです。こういう面もやっぱり考えてもらわなきゃならない。税金の問題も考えてもらわなきゃならない。  こういうことで、どれ一つが中小企業の救済策に、現状を表しておるということじゃなくて、今申し上げたいろいろなものを、総合的に、もう少し系統的に、しかも政策的には、かなり長い目をもって見直してもらいたいと、こういうふうに考えております。  今の御質問に、非常に不十分でありますけれども、お答えできる範囲内で答えれば、こんなものであります。
  45. 小幡治和

    ○小幡治和君 今、いろいろ同僚委員との応答の中で大体出たような気持もするんですが、さきほどからのいろいろなお話の中で、結局、今需要が鈍化しておる、その原因は、一体何だという問題なんですが、今滝田会長もちょっと触れられたように、さきほどからの議論では、結局、原料の問題だけの議論があったので、私は、原料以外に、もっと安くする方法というものはないのかということを質問したいというふうに思ったんです。  実を言うと、繊維というものが、戦後非常に繊維の不足でもって、いいかげんな布でも相当高く買われたという、そういう状況下において繊維産業というものが、今日まで拡大強化されてきたと思うので、今日の国民内需の面から見れば、大体衣料というものは行き渡っておるのじゃないか。そうすると、これ以上さらに衣料というものを内需的にふやそうとするならば、さきほど滝田会長も言われた通り、まだまだ所得の低い者にはほしい人たちもあるんだ、しかし、それは買えないんだということ、あるいはまた、衣料が一般に行き渡っても、なおこれを三年に一度買うものを毎年買うというところまで持っていくというふうなこととを考えるならば、どうしても今日の衣料品というものの価格が、全体から見て高過ぎるのじゃないかというふうに感じられるのですが、その点について、賀集さんなりまた田和さんなり、今の衣料品の最終の価格というものを高いと見られるか、それとも、これ以上安くはできないというふうに見られるのか、そこのところを一つお伺いしたいということが一つと、それからそういうふうに安くする余地というものを考えるならば、今、原料の問題も出ましたけれども、原料以外に、どういうところをそれじゃ安くする面において考え得るのかという問題。  それからもう一つは、最終生産品から考えますと、たとえば、賀集さんに特にお伺いしたいのですけれども、私も福井県に関係しておって、織物業界は、今日非常に不況で、今度不況突破の大会もやりますけれども、いわゆるメーカーというものと、それから織物業者というものと、それから染色業者及び商社、そういう一連の中において、今の最終価格というものを考える場合に、この今日の状況で、それでいいのかどうか、たとえば賀集さんの見地から見て織物業界にどういうことを要求されるのか、また今日の織物業界として、これでいいのかどうか、そういう面、あるいは染色業界なり、あるいは商社なりについて、結局、先ほどから総合的に考えなくちゃならぬということは、横の連絡において、あるいは化繊、あるいは綿、あるいは毛というような総合的な計画も立てなければいかぬと思うのだが、今度は縦の系統において、そういうものの総合計画を立てる意味において、賀集さんのような見地から、そういう面についてはいかなる不合理性があって、どういうふうに直していかなければいかぬというふうにお考えになるのか、そんな点も、まずお伺い申し上げたいと思います。
  46. 賀集益蔵

    参考人賀集益蔵君) ただいまの一番初めの現在日本生産されるものの価格が高いか安いか、こういう面でありまするが、これは国内では高いか安いかということの比較よりは、むしろ国際的にこれを比較するのが、一番はっきりしていると思うのであります。化学繊維に関する限りは、先ほども私が申し上げました通りに、生産の四〇%輸出しておる。その輸出しておるものが、国際的にどういう価格のなにになるかといいますと、人絹が約四億万ヤールから四億五千万ヤール、それからスパン・レーヨンは約十億万ヤール、こういうことなんですが、これは海外においては、独占市場といえば少し語弊がありましょうけれども、ほとんど日本価格と諸外国の比較にならぬ日本の方が安いです。先ほど滝田参考人からも、あるいは森参考人からも言われたような過当競争の結果もありましょうけれども、この過当競争というような範囲じゃなしに、もっと値を上げても、まだ安い。最近私の方からドイツヘやったのでありますが、相当生機がドイツへ行く。そこで日本のスパン・レーヨンの生機を、ドイツに輸入するのに対して、ドイツの化繊会社と加工業者と相当のあつれきがあった。日本の物を買う方が、品物も相当いいし、それから価格も安いというので、加工業者の方は、日本の物を入れようとする、向うの化繊業者の方は、それに反対するというような点から考えてみまして、価格は、私は決して高いのじゃない、不当に安い方だと思います。  この点に関しましても、ちょっと話が横へそれますけれども、この輸出に対しての過当競争というのは、われわれも実に頭をしぼっておるところであります。実は、われわれの方でも価格を維持しようと思って、前に内々話をしておりましたら、公正取引委員会からおしかりを受けまして、そして、われわれは被告として裁判を受けた例もありますが、この点については、余談ではありますが、公取法というものは大事な法律で、それを全然なくするということはいけないけれども、国の経済のためには、ある程度の改正をする必要があるのじゃないかということを(「それはあとで」と呼ぶ者あり)こういうことを考えております。その意味におきまして、価格という面においては、私は決して高いとは思いません。  それから化学繊維として福井、石川のように、機業地との関係でありますが、その他にもありますけれども、福井、石川が一番大きいのでありますが、先ほど滝田さんも、ちょっと触れておったようでありますが、われわれの方では、織布とかいうものは、もう言葉は悪いかもしれませんが、下部工業と申しますか、これは織布繊維業者にまかせておる、まかせきりというのじゃありませんが、そういうようなふうにやる方が、産業のあり方としても、社会的に見てもいいことだと思います。この点について、今までの人絹の販売のあり方についても、われわれといたしましても、多少反省しなければならないところもあると思います。しかし機業者の中小企業に属する織機業者という方々に対しても、私は一つ考えていただきたいし、もう一度、政府の方において、中小企業の育成というような建前から団体法案を作るよりも、むしろ振興法案のようなものを作っていただきたい。  それはどういうことかと申しますると、人絹の例をとっていいますと、系列であったところの織布には、B反、C反がない。いわゆるきずものと申しますか、あることはあっても、非常に少い。ところが全般に、昨今のように人絹輸出振興会社のやっておるような、このような機業者によると、非常にB反、C反が多い。やはり機業をある程度、単位を経済単位と申しますか、機業単位と申しますか、そういうところを少し大きくして近代化した織布業に、近代化した方法で進んでいくということが、一番必要ではないかと。ノリ付加工のごときは、各会社なり、あるいは協会の方で大きく、その機業地でノリ付工場を作りまして、そしてそれで、ビームを渡すというようなことになっておりますが、この方は、だいぶ品質のいいものができるのであります。織布の方においては同じ原料であって、品質のまちまちになる傾向が非常に多いと思います。これを相互に、ただ機業が、織布業者だけの責件に帰さずに、われわれの最終製品である一つの工程でありますから、メーカーの方の建前からも協力して、これの改善をしていただきたいと思います。  それにはどうしても言葉は悪いかもしれませんが、台数の少い、弱小と申しましょうか、そういう機業者は、連合でもして機業の単位をもう少し大きくして近代的にこれを合理化したものに進んでいくということが非常に必要ではないかと思います。まあ私はそういうように考えております。
  47. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 私、先ほどの御質問にお答えいたしますが、大体賀集さんと同じ結論なんでありまして、私は、日本綿製品は、世界で一番安いものを国民に供給しているように考えます。これは海外を旅行したらわかるのでありますが、たとえば早い話が、われわれ着ておりますワイシャツでも、ドイツ、イギリスで買いますと、大体日本の倍以上しております。日本くらい綿製品の安い国はないと私は考えます。その理由は、先ほど賀集さんのおっしゃったことと私は大同小異であります。  それから縦とのつながりのお話でございましたが、それも同じようでございまして、これは中小企業団体法のできますときに私やはり参議院の方の参考人として呼ばれて、そのとき申したのでありますが、経済的に見ても将来紡績と機業というものは系列化していく傾向にあるんだ、従ってこれを妨げるような方向はむしろ実際と反するのじゃないかということを私申したのでございますが、この傾向不況になりまして一そう助長されております。その理由はいろいろございますが、いろいろな資金的な関係もございますし、また製品的な関係もございます。製品的な関係ということは、大体物が手の込んだ高級なもので小口のものができますと、紡績のようなマス・プロよりはそういう専業者を使う方が有利である、という品質的の問題もございますし、またコストの問題もございます。またいろいろな理由から、系列化というものは織布部門紡績部門の両方の利益で結び合って促進されていく傾向にございます。
  48. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 時間も切迫しておりますから、一つ質問者も答弁される方もなるべく簡潔にお願いしたいと思いますが。
  49. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 田和さんにお尋ねしますが、中共綿布に対する競争力中心にしての問題がねらいなのですけれども、先ほど恒久的対策が必要であり、またそれには生産合理化中心であるということを強調せられたわけなのでありますが、私も同感なんでありますが、その場合において生産合理化中心はどこに重点を置いておられるか、それを具体的に承わりたいことと、これに関連しまして税制、金融などについても相当思い切った措置が今後必要になるんじゃないかと思うのですが、税制、金融面について繊維業界はどういうような希望を持っておられるか、基本的なこれは要望をどこに置いておられるかという点をお尋ねしておきたいと思うのであります。それが一点。  それから滝田さんにお尋ねしたいのでありますが、最低賃金が中小企業のてこ入れになっていくので、合理化のためにこれはむしろいいんじゃないかというお話でありましたが、現在の大企業と中小企業との相互関係を見ますると、あるいは親会社の力で単価の切り下げをされ、あるいは手形のサイトを不当に延ばすというようなわけでありまして、大企業、親会社のしわ寄せというもので中小企業は不合理化されてきているというのが一番大きな問題である。そういう点で、最低賃金でてこ入れをやるといよいよサンドイッチになって、中小企業というものは企業整備に追い込まれていくということになると思う。そうなると、ごく一部分の少数においては雇用の面において質的向上があるかもしれないけれども、大きな面からみると、雇用力の量的低下を非常に来たしやしないかという点が、完全雇用の上からまた別な面から、非常に大きな問題を提供するのじゃないかというふうに思うのです。そういう点から最低賃金の問題を言われたのでありますが、それが実質的にはてこ入れになるんでむしろ下はコンクリートになったが、上の方からどんどん押してくるということになると、中小企業の存在の余地がなくなっていくのじゃないかという問題がありゃしないか。これについてどういうお考えを持っているのかという点を伺いたいと思うのです。  特に最近は中小企業労働問題については質的向上の点が非常に強く取り上げられていっているので、これはまあいいですけれども、しかしこれはごく小部分のことになってしまって、大局から見ると、非常に完全雇用の面から大きなマイナスが出てきやしないか。これは、将来最低賃金法が通ったあと、予測しない問題が大きく出てくるのじゃないかというように心配しているのでありまして、この点をお伺いしておきたい。
  50. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 最初の合理化という内容について御質問がございましたのですが、合理化は各方面について考うべきで、これだけというて取り上げるということは非常にむずかしいと思うのですが、その一、二の例を申しますと、昔から操短をしておる間に紡績は非常に進歩いたしております。操短ということによって同時にその間に合理化が行われていて設備が改善されている、というふうになっているのでございますが、現在の操短の中において果して合理化が行われているかどうかということは、非常に疑問であろうと思います。と申しますのは、昔の操短の間には設備の制限がございませんので、古い設備を低く売っては新しい設備をどんどんふやしていく、従って操短の済んだ時分には前に比べて特段の機械の進歩があったと、そういうふうな状態でございましたのですけれども、現在はそういう状態でございませんので、従ってこういう不景気なときにはその設備機械というようなものも、合理化の対象になるだろうと考えます。  それからもう一つ、この特別委員ができまして取り上げようとしておられる問題は、この繊維村全体の合理化でございまして、たとえば現在はスフ紡はスフしか引けない、綿紡は綿しか引けない、合繊は何でも引けると、こういうふうに村々においてワクができております。それがためにスフ紡は余っている、綿紡は余っているのに合繊がどんどんふえていく、そうしてそれが全体を圧迫しておるというようなことが、これは業界全般からみて不合理であって、国家からみても余分な投資が行われているので、こういうものをどういうふうに村の町村合併と申しますか、そういうふうにして合理的なものができるかということも、これは大きな国家的見地から考えなければならぬと思います。  それからその他の合理化の方法というものは、これは各社が自分の会社に応じて企業内の努力においてなされるものであろうと思いますので、私がここにとりまとめて申し上げるのはどうかと思いますので差し控えさしていただきたいと思うのです。  次に税制のことについて御質問がございました。これは専門的になりますので、私はそういう方面にはきわめて不案内なもので、私が特に申し上げる点はないのでございますけれども、私の村でときどき問題になり、私もいつも同感であると考えておりますのは、こういうふうに非常に技術も進歩して改良する、また合理化をはからなければならぬというようなときに、償却の年度というようなものをもう少しお考えになる必要があるのじゃなかろうか。機械の償却が相当前にできたものがそのまま維持されている、というようなところをもう少し考えていただいて、そうしてこれがどんどん新しい設備に取りかえられるというようなことをお考えいただいたらいいんじゃなかろうかと、その他の問題は私は不案内で、よう適当なお答えができませんのですが、税制の問題で私が感づいておりますのはそういう点でございます。  それから金融関係も、これは滝田さんの御指摘の通り紡績は戦後自己資本というものがございませんで、すべて借金によって設備を拡充していって、しかも最近の設備拡充というものがまだ十分ペイされていないところにこの不況がきた。従って金融というものも負担が非常に大きくなっているということは事実でございまして、金融というもののもう少し負担が軽くなるようにすることができるならば、もうそれに越したことはなかろうと考えますが、これも具体的にどうしたらいいかということは専門的になりますので、この際ようお答えできません。
  51. 滝田実

    参考人滝田実君) 私、最低賃金制が中小企業をかえって窮地に陥れるのではないかという御心配ですね、一応そういうふうに考えられますけれども、これは最低賃金制の実施の仕方いかんに私はかかってくるだろうというふうに思うのですね。でこれはもう社会党の委員の中でもいろいろ御議論のあることで、これは労働組合の総評と全労と二つの、それから社会党案と、まあ三つに分れているような形で、院内においては社会党一本で闘われておりますけれども、私どもの考えを率直に言わしてもらえば、企業の規模による格差以外に産業別の賃金の格差もかなりひどいわけです。企業別の格差からみて、今まで事業場三十人以上の所しか貸金が統計的に出ておりませんでしたが、去年の七月に初めて五人以下のいわゆる零細企業の賃金というものを統計的にとってみたのです。それによると五百人以上の企業の労働者の賃金に比べて三六%にしかすぎません。そうするとこれは企業の格差がそんなに開いてきている上に、産業別の賃金を見ると、名目賃金として完全にとっている所と、福利厚生費というものをその中に含めたり残業を含めたりして、賃金の低い所では、産業別の賃金も非常にまちまちなんです。ですからこういった企業別格差と産業別、業種別賃金、あるいは地域別賃金が非常にでこぼこのひどいところに、全産業一律一本の最低賃金制をしくということになると、これは無理してしこうとすれば非常に低いものをしかざるを得ない、高いものをしくと実情に合わなくなってくる。そういう関係が出てきますから、私どもの考えでは産業ないし業種、地域別に最低賃金制をきめていく、これだけの幅を持たないとうまくいかないのではないか。今四十カ国くらいこれをやっておりますけれども、それぞれの国のそのときの産業の実態、賃金の実態、そして現在法律化されている最低賃金制というものは、どんなふうに歴史的にやられてきたかということを見ると、今御指摘になったような非常に革命的というような、そういう現実から一足飛びに理想案には私はできないと思います。やはり漸進的にいかざるを得ないだろう。ですから今御心配になったような、これが中小企業を圧迫してそして倒産になることはないので、実際的に各国の例を見ても、一挙に理想的なものでいかない限りは、この最低賃金制がやられたために中小企業はへたばって、そうしてつぶれたという例は私はないように思うのです。この点は私は確信を持っているのは、最低賃金制が非常にむちゃな案でなければ、企業が倒産に導かれたという例もなければ、労働時間を短縮したために企業が危殆に瀕した、という例は私はほかの国にも見当らないと思うのです。これは非常に杞憂のような気がするのです。これは、各企業の利益というものはどういう関係において相関関係に置かれているかということを見ると、私は産業別、業種別、地域別の考慮ぐらい払われれば今おっしゃるような御心配はない。それはやってみなければわからぬと言えばそれまででございますが、心配といえばそれまでですが、それ以上になると水かけ論にしかならないと思うのです。私は、現実を無視しない形においてやれば、今御指摘のような御心配はありません、こういうふうに考えております。
  52. 古池信三

    ○古池信三君 それでは、時間もあまりないようでありますから、簡単に二、三お尋ねをいたしたいと思います。これは賀集さんでも田和さんでもけっこうですが、経営者の方の側からお答えを願いたいと思うのです。  先ほど滝田繊同盟の会長の御意見の中に、非常に私どもごもっともだと思い、また傾聴する面が多々あったのでありますけれども、時間の関係できわめて端的にお話になった点がありまして、あるいは私は誤解しているかもしれませんけれども、その一つ生産性向上の問題です。これは繊維業界ばかりではなく、一般に最近非常に生産性向上はやかましくいわれております。繊維業界でもあるいは古い設備を新しい設備にしたり、あるいはその他作業の面においても非常に生産性が向上しつつあると承知しております。元来この生産性向上の目的は、やはりそれによって窮極においては労働者の負担が減り、労働時間も短縮されるべきものであろうと思うのです。ところが先ほどのお話の中には、現実の問題としては生産性向上が進むにもかかわらず、労働時間は短縮するどころかむしろふえておるような傾向にあるというようなお話がございました。これに対して経営者の方の側からは、どういう事情がそこに伏在しているのか、これはわれわれが考えても、生産性が向上していけば当然労働時間が短縮する、ということは考えられると思いますけれども、どんなふうにお考えになっているかということが一つ。  それから第二は、先ほどこういうようなお話がございました。一方においてある会社は一割八分というような高配当をやりながら、それにふさわしい利益を計上しながら、一方においては赤字であるといって労働者の整理をやろうとしておる。これはきわめて端的にお話しになったのですが、それにはいろいろな複雑な関係があるだろうと思いますが、それについての経営者側としての事情を一つ説明をお願いいたしたい。この二つ。  それからもう一つ第三には、これは田和さんにお伺いしたいのですが、先ほど賀集さんの御意見の中で、日本の将来としてはやはり外国から輸入する原綿というものはできるだけ現在よりも減らすべきである、そうして国産原料によって繊維を増産すべき方向に持っていくべきである、という御意見でありました。これに対して田和さんはどういうふうにお考えになっておるか。もっともこれは綿紡業界という立場ではなく、もっと広く大局的に日本の国家的な政策として見た場合には、そうあるべきかどうかということについてお答えをいただきたいのです。しかしこの問題は田和さんのお立場からどうも答えにくいということでございましたら、けっこうでございます。お答えに及びません。それだけ一つお願いいたします。
  53. 田和安夫

    参考人田和安夫君) 私から先に、第一問の生産性が上っているが労働時間が延びているというお話でございましたが、滝田さんは紡績企業だけではなく各業種いろいろな方面をお考えになって、そういうものを引っくるめてのお考えかと思うのでございますが、私は紡績に関する限りはそういうことはないと思います。先ほども滝田さんは、大きな企業ではそうではないかという前提でお話がございましたので、私は自分の村に関する限りはさようなことはないと、かよう考えております。  それから第二問の、経営者が経理内容を説明する場合には、株主に向ってはもうかっていると言い労働者に向っては損をしている、これは欺瞞じゃないかというお話がございまして、この点お前はどう考えるかという御質問でございますが、これは個々の業者が個々の株主、組合に御説明になるときにそういうお言葉を述べる人があるかと思いますけれども、これは共通の問題として取り上げるべき性質のものじゃない、私はかよう考えます。これは個々の人のその立場々々でそういうことをおっしゃるかもしれませんが、それは私は共通の問題として取り上げるのはどうか、またそれにお答えするのは適当ではないと思いますので、お許しを願いたいと思います。  第三問の、天然原料、自然原料の輸入は減らすのが得策であるかどうかという御質問で、私に同情的なお言葉がございましたが、これについてわれわれの村では一つのプリンシプルがございまして、これは減らすべきであるとか減らさぬべきであるという、べきという言葉で解決すべき問題じゃない。これはわれわれの紡機も普通の紡機も変らないのでございますので、消費者は綿よりもスフがいい、あるいは混紡がいいということになれば自然に解決すべき問題である。現在のところはまだ混紡よりも純綿の方が値段の上で好むということで、これだけ原料は減ってもなかなか混紡はふえないのでございます。そういうときに得策だからといって好まないものを売りつけようとしたり、また無理に作ってみたところで売れないのはきまっておりますから、従ってこういうものはこの消費者が決定が決定すべき問題である、そういうふうにわれわれはこの態度をとっております。
  54. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 滝田参考人ありますか。
  55. 滝田実

    参考人滝田実君) 私は、今田和さんからお答え願うのは非常にお答えにくい問題であると思うのです、全般的には。しかし、大部分経営者とまで言わないけれども、かりに、かなりの多数の会社配当するときは利益を多く出して、そして金融のいわゆる社会的信用を博していこう、実際は企業は赤字になっておる、この二面性を排して欺瞞がないようにしなければ企業は健全にならぬと思います。これはどうしたって一鐘紡の問題じゃありません、そういう傾向が財界全体を支配しておる。こんなうそついておる態度を改めるということでなければ、ほんとうの意味において、そういう利益も上っていないのに利益の上ったような株主配当をすれば、労働者はそれをよこせという闘争が起るのを当り前の話です。そういう実態でほんとうに企業を健全にしようとしないで、そんなことで銀行からよけい借り入れてきたって企業が健全化するゆえんじゃない。一つでも、二つでも、三つでもいいから、そういうことは徹底的に追及するという態度をとってもらいたいと思う。そういうことでなければ産業は健全化されない。労使関係は安定しない。短かい言葉でありますけれども、こういうことは十分に国会において今後論議していただきたいと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  56. 島清

    ○島清君 先ほど化繊の方で設備過剰じゃないのだ、こういうような御説明でございましたが、通産当局は言いにくいかもしれませんが、どういうふうにお考えでございますか、それが一点と。  それから先ほど過当競争によりまする安売り、それが巨大な額に達するであろうというようなことをどなたかお述べになったのでございますが、これは私も海外をめくってみましてそういう実情を知らされて非常に驚いたのですが、安く売って日本の商品が信用ができ市場が拡大できて、そうして取引がふえるというのならわかりますけれども、安くたたくがゆえに日本商品に対する不安があって日本商品が伸びない、こういうことであれば、大へんにこれは貿易についていかにわれわれが輸出振興を叫んでみたところで、これは絵に描いたもちにひとしい、こう思ったのですが、それは非常に膨大な額になると思うのですがね。その額はどういうふうに推定されておるか。もしそういうロスが出なければ私は繊維界も何とか安定していくのじゃないかと思うのですが、そこらに対する考え方はどんなふうでございますか。
  57. 今井善衛

    説明員(今井善衛君) 第一問の化繊設備が過剰であると考えているかどうかという問題でございますが、これは結局将来の需要の問題でございまして、需要と申しましても御承知のように、消費者が財布の中から衣料として支払う金額というものは、大体において趨勢値があるわけでございます。その中から合成繊維なり綿なり化繊をどう選ぶかということが問題でございまして、従いまして、外国の例は化繊は非常にこう伸びておるといたしましても、日本においてかりにスフ織物につきまして国民がまだ親しんでいないという場合におきましては、需要はそれだけ伸びないというようなことになるわけでございまして、従いまして、遠い将来はいざ知らず今の状態におきましては、やはり相当の過剰になっておるというふうに考えられます。どの程度過剰になっておるかどうかということにつきましては、総合的な懇談会において十分検討したい、かように考えておる次第でございます。  それから繊維の安売りによりまして非常なロスがあるという問題でございますが、これは確かにその通りでございまして、どの程度それじゃ安売りを防止したらばこれがセーブできるかということにつきましては、これは非常に至難な問題でございまして、ただいまそういう資料は持ち合しておりませんし、また推定もなかなかむずかしいと思います。ただたとえばスフ織物につきまして先ほどもお話がありましたように、非常に日本のスフ織物は安い。と申しますのは、全世界のスフ織物の輸出品の中で、日本のスフ織物の輸出は約七割を占めておるわけでございまして、ほかはそれぞれたとえば欧州諸国にしろあるいはアメリカにしろ、あとの三割を輸出しておりますけれども、これは何と申しますか、それぞれ自分に関係のある国々に輸出している。日本だけが諸外国の品物に比べまして格段に値段が安いというふうな状態になっておりまして、従いまして日本商品だけでもってむしろ値をくずし合っておるというふうな状態が現にございます。かような意味合いから非常にやはり国全体としましてはロスがあるということで、対策をいかにしなきゃならぬかということを研究しつつございます
  58. 滝田実

    参考人滝田実君) それでさよう私ども意見を聞かれた中で、非常に明確になった問題が一つあると思うのですが、それは先ほど田和参考人からは、輸出振興のためにはもっと合理化、コスト引き下げをやらなければならぬし、化繊においても綿紡においても、外国製品に比べて決して日本は高くないということを言っておられる。安くて売っいるんだ、しかし安く売っいるならこれ以上コストで、合理化労働者の賃下げでやるという議論は成り立たないと思いますね。この点だけが、もし参考人の中で非常に食い違っているならば、私はここでもう少し意見を交換した方がいいと思うのですけれども、そうならざるるを得ないと思うのです。ですから輸出振興ということは労働者の賃下げとか犠牲ということではなしにた他の面における原因があるんだ。このことだけ私ははっきり認識したつもりでいますが、そういうふうに考えてさしつかえないかどうか。(「同感」と呼ぶ者あり)
  59. 賀集益蔵

    参考人賀集益蔵君) 先ほど来、滝田さんからのお話もありまして、決算を労働者には赤字の発表であって、株主総会の方ではこれを利益になったように発表しておる、その発表が二面になっている、こういうお話がありました。これは会社によって違うでしょうけれども、一部にはこういうやり方をしておるところがあります。たとえば十億円もうけても、労働者にははっきり言うておる、十億円もうけたがこれを、そのうち発表は六億円にして四億円は内部保留しておく、こういう発表があるのですね。同時に悪くなった場合でもその内部保留を吐き出して、そうして利益はこうするが実際はこうだと、実際の面は利益がないんだけれども、しかし内部保留を吐き出してこれだけの利益を計上する、こういうことはあるんです。だからむしろ労働者に発表している方がはっきりしたなにがあると思います。
  60. 相馬助治

    ○相馬助治君 いろいろな例があるとまあ承知して……。
  61. 賀集益蔵

    参考人賀集益蔵君) そうです。
  62. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 他に御発言もなければ、質疑はこの程度にいたします。  参考人の方には、本日は長時間にわたり御出席下さいましてありがとうごいざました。当委員会におきましては、本日お述べになられました御意見を参考にして、本問題につき十分検討いたしたいと存じます。本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十九分散会