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1958-10-23 第30回国会 参議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月二十三日(木曜日)    午前十一時十七分開会   —————————————   委員異動 本日委員横山フク君及び木下友敬君辞 任につき、その補欠として西田信一君 及び横川正市君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     久保  等君    理事            勝俣  稔君            柴田  栄君    委員            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            斎藤  昇君            榊原  亨君            高野 一夫君            谷口弥三郎君            西岡 ハル君            西田 信一君            小柳  勇君            藤田藤太郎君            横川 正市君            田村 文吉君            竹中 恒夫君   国務大臣    労 働 大 臣 倉石 忠雄君   政府委員    警察庁長官   柏村 信雄君    警察庁警備局長 江口 俊男君    調達庁長官   丸山  佶君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    労働省労政局長 亀井  光君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    警察庁警備局警    備管理官    浜中 英二君    法務省民事局長 平賀 健太君    日本国有鉄道営    業局長     磯崎  叡君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査の件  (王子製紙株式会社労働争議に関  する件)  (駐留軍の撤退に伴う労務者の離職  対策に関する件)   —————————————
  2. 久保等

    委員長久保等君) 社会労働委員会を開きます。  委員異動報告いたします。十月二十三日付をもって横山フク君及び木下友敬君が辞任され、その補欠として、西田信一君及び横川正市君が選任されました。   —————————————
  3. 久保等

    委員長久保等君) 労働情勢に関する調査の一環として、王子製紙株式会社労働争議に関する件を議題といたします。  まず、労働省当局から現在までの状況について御説明を願います。
  4. 亀井光

    政府委員亀井光君) 当委員会におきまして、王子製紙紛争につきましてのその原因あるいは労使の意見の対立、こういう点につきましてはすでに御説明を申し上げましたので、その後の経過につきまして、ごく概要を申し上げたいと考えております。  八月十三日に会社側から北海道札幌地裁に対しまして、工場内に第一組合員立ち入りを禁止するという仮処分申請がなされまして九月六日に、それに対しまして札幌地裁として、会社が指定する者が会社事業所——朱線で囲んだ地域ですが——に出入することを妨害してはならないという趣旨の決定がなされたわけであります。ところが、この決定がなされました後、決定内容についても、解釈につきましていろいろ第一組合員側弁護士団と、執行吏の間に見解の対立がございまして、若干の時間が経過いたしまして、九月十五日になりまして警察官の要請をするとともに、執行吏仮処分執行に入ったわけであります。ここで若干のトラブルがございましたが、一応第二組合員工場に入りまして操業に着手をいたしたのでございます。その後十月六日になりまして、九月十九日に会社側から出されました工場木水路山林工場に第一組合員立ち入りを禁じ、工場執行吏の指揮のもとに置くという仮処分申請に対しまして札幌地裁は、第一組合員工場構内山林構内、送木水路付近の区域に所属の組合員、または第三者を立ち入らしてはならないという決定をいたしておるのでございます。さらに十月九日には札幌地裁は、会社側搬出水路妨害排除仮処分申請に対しまして、組合員もしくは第三者は次の行為をしてはならない。東北門を通る貨車による貨物出入荷実力をもって阻止してはならない。これが第一点。第二点は、工場から水路を利用して原木構内に送る行為に対し、実力をもって阻止してはならない。第三点は、組合側の言論による説得団結による示威については右の禁止は及ばないという決定がなされたわけであります。その決定後も引き続き、第一組合員側からは荷物あるいは貨物出入荷の阻止をいたして参ったのでございます。また、水路を利用しての原木構内への輸送につきましては、一応これは解決はいたしましたが、鉄道によりまする工場構内への原材料運び入れあるいは会社製品搬出というものにつきましては、第一組合員側ピケによって阻止されて参ってきたのでございます。従って、その間のトラブルはあったのでございまするが、十月二十一日になりまして、貨車五両が警察官ピケ排除によりまして一応工場構内に入りましてその目的を達しました。また、昨日は、貨車十六両が警察側ピケ排除によりまして、工場構内にありまする製品搬出が行われたというのが現在までの状況でございまするが、これに対しまして組合側は、二十一日に、札幌地裁に対しまして、団結権侵害排除仮処分申請をいたしておりますが、これに対しまする決定はまだ出されていないのであります。従って、現在におきましては、原材料の搬入あるいは製品搬出という問題をめぐりまして紛争議現場におきまして行われておるという現状でございます。その後、本質的な争議解決についての団体交渉も行われていない状況でございまして、目下のところは、そういう苫小牧現場におきまするトラブルが続いておるというのが現在の実情でございます。
  5. 久保等

    委員長久保等君) 政府からの出席者は、労働省亀井労政局長警察庁浜中管理官法務省平賀民事局長、国鉄からは磯崎営業局長吾孫子常務理事であります。なお、倉石労働大臣並びに警察庁長官も間もなく見える予定であります。  御質疑を願います。
  6. 西田信一

    西田信一君 まず、労働省警察庁にお伺いしたいのでありますが、この王子争議は相当長期化いたしておることは御承知通りであります。しかも、日本における三大労働争議一つに数え上げられるほど深刻な争議であり、しかも、その三大争議の中でも最も、何といいますか、いろいろなトラブルが頻発いたしまして、治安が非常に不安に陥っておるというような状況に置かれておる現況でございます。十一月号の文芸春秋にもこのことについてのかなり真相を伝えた記事が載っておりますが、「苫小牧市街戦」こういう見出しでこの記事を載せておる。しかもそのわき書きには、『砲のない戦線、銃をもたぬ兵が争う「紙の街」王子スト報告記』と書いているくらい、非常に何といいますか、私どもの目から見まして——私は実は申し上げておきますが、北海道から出ておるものでありますし、苫小牧の町に住んでおるものでございまするからして、状況については目で見、耳で聞いておりまして、かなり実態に触れておるつもりであります。どうも今度の争議は、見ておりまして非常に治安が不安である。また、非常にいわゆる労働争議以前のもの、労働争議ならば何をやってもかまわぬのだというような考え方に立っていろいろなことが行われているような感じがいたしますし、また、明らかに争議限界をこえる争議行為といいますか、行動がとられている現状であるように見てとっているわけであります。そこで、こういうような非常に深刻なしかも長期化した争議でありまして、労働省当局も、また、取締りに任じておられる警察庁といたしましても、現地状況把握というものは相当的確に敏速になされなければならぬと思うのでありますが、いろいろな報告を国会においてなされておりますから、相当の状況についての把握には努めておられると思いますが、いろいろな争議経過等の御報告はありますけれども、ほんとうの現地状況はどうなっているかということについて、労働省はどういう方法現状把握をされているのか、あるいはまた、警察庁はどういう現状把握中央においてなされているかということについて、まず、どういう手段をとっておられるかということをお聞きいたしたいわけであります。
  7. 亀井光

    政府委員亀井光君) 労働省といたしまして現地実情把握しますことは、われわれ労使関係解決をつかさどっております当事者としまして、非常に真剣に考えているわけでございまして、一つには、われわれの下部機構でございます北海道庁労働部を通じまして現場把握をいたしております。北海道庁労働部としましては、常時というわけには参りませんが、問題の起りそうな場合におきましては、職員苫小牧現地派遣をいたしまして実態把握に当っているようでございます。その報告がわれわれのところに刻々として参っております。それ以外にわれわれとしましては、やはり直接われわれの職員現地派遣する必要も感じまして、すでに過去において派遣もいたして、現地把握に努めておりますし、現在におきましても責任ある立場にある職員現地派遣をいたして調査をいたさせている現状でございます。
  8. 浜中英二

    説明員浜中英二君) 警察庁といたしましても、連日の状況を詳細に毎日報告を聴取いたしております。さらに必要に応じまして、適宜本庁から責任者派遣いたしまして、詳細にわたりまして現地状況調査せしめておりますとともに、また、現地からも随時上京して参りまして、問題の実態を私ども報告をいたしているのでございまして、そういうような方法で現在実態把握いたしております。
  9. 西田信一

    西田信一君 現地機関を大いに活動させて、これによって現状把握するのみならず、中央から直接にそれぞれ係官派遣して現地把握に努めているということでございますから、現地状況については、これは的確に御承知になっているものというふうに私は判断をいたしまして、以下御質問を申し上げたいと思いますが、まず、冒頭一つお尋ねいたしたいのでありますが、私が先ほど質問の劈頭に申し上げましたように、今度の争議が、いわゆる労働法に許されている限界内における平穏な労働争議限界をこえた、非常に何といいますか、言葉は適当でないが、悪質といいますか、そういう争議行為が頻発している。非常にそのために治安が不安に陥っている、今までの経過において。そういう状況にあると私は判断しておりますが、今度の争議に対する概括的な警察庁並び労働省のこの争議実態についての見方、これはどうでございますか。私の認識が誤まっておるか、あるいはまた、そういう状況にあるというふうに御判断なさいますか、この点をまず冒頭一つお聞きしておきたい。
  10. 亀井光

    政府委員亀井光君) 現地からの報告あるいはわれわれの職員が直接参りまして見聞をいたしました——調査をいたしました結果、われわれが承知したところによりますると、労働争議としましては従来に見られないようないろいろな問題がそこに発生いたしております。特にそれは治安上の問題として、あるいは暴力行為という形におきまして現われておりますることは、われわれも承知をいたしております。
  11. 浜中英二

    説明員浜中英二君) 現地争議につきましては、私どもは、労働争議それ自身の内容というものにつきましてタッチいたしまして深く原因を糾明するという立場をとっておりませんけれども、ここに現われました不法事態現象面から状況把握いたしておるのでございますが、現在までに起りました不法事犯発生状況は、暴行が十二件、暴力行為が四件、住居侵入が四件、公務執行妨害十件、傷害が三十二件、器物毀棄十七件、その他脅迫、名誉棄損等がございますが、合計八十四件に上っております。このうち現在までに検挙送致いたしましたものは、二十九件の五十三人に上っております。自余のものにつきましては、今なお捜査中でございます。なお、そのほかにいわゆるいやがらせ的な事案といたしまして軽微ないろいろな事案がかなり発生いたしておりますが、大体八月を頂点といたしまして、九月、十月というふうに現在若干そういうような問題が減少しつつあるような状態に相なっております。
  12. 横川正市

    横川正市君 今の西田委員質問と関連をいたしましてちょっとお伺いいたしたいと思うのでありますが、私は、新聞記事のとらえ方にいたしましても、北海道には北海タイムスという新聞と、それから北海道新聞という新聞がありまして、タイムスは大体八万部ぐらいな発行しか持っておらない、それから道新は、これは発行によっては六十万ぐらいで、全国で有数な発行部数ということでありますから、記事書き方を見ておりますと、タイムス道新書き方とは、それぞれその記事のとらえ方というのが違うように思うわけであります。ですから、その新聞記事のとらえ方によって現地状況をどう判断するかということよりか、問題はやはり現地に事実行って、その様相というものを実際上把握したものが、その実態というものを私はつかむことができるのではないだろうか、そういう意味合いで、労働省では、係官等、それから下部組織を動員いたしまして実態調査をいたしておるようでありますけれども、この調査の根本的な原因になっておりますのは、これは私は会社側が、今度の争議組合側をつぶさなければ解決がないのだという考え方のもとにユニオンショップとオープン・ショップとの、労働協約を一歩も譲らないという非常に強硬な態度を持しておる、ここに私は原因があるのではないかというふうに思うのでありますが、実際上調査に当られて、起っております末梢的な問題はともかくといたしまして根本的な原因というのはここにあるのではないか、ひいてはこれは苫小牧の町は王子製紙という企業の上に発展をしてきたというぐらいに言われておる町でありますが、この町の運営にも支障を来たすようになる、または、一般市民人たちの生活の脅威にもなる。いわば苫小牧あげて混乱に陥っているという事実は、経済上の面からは十分これは察知することができるわけであります。一方、紙の需要をめぐって大体日本の各方面が王子争議長期化によりまして、相当コスト高、紙その他の高値を呼ぶような状態、あるいはスムーズに手に入らなくなったような、そういう関係から混乱を来たしている点もあるようであります。私は、そういうような面から考えてみても、一方的に会社側協約改訂組合側がのまなければ、この争議は終らないのだというようなものの考え方でこの押しつけを行なっているというような状況をずいぶん見受けられるわけなんでありますが、その点について、実際調査された係官報告その他からどう解釈されているのか。根本問題としてその点、お伺いいたしたいと思います。
  13. 亀井光

    政府委員亀井光君) 今回の王子製紙労使間における紛争は、先般の委員会でも御説明いたしましたように、賃上げその他の経済的な要求とあわせまして、協約改訂という問題が会社から提案されまして、その中にはユニオンショップの問題、あるいはチエック・オフの廃止の問題、あるいは就業時間中の組合活動の制限の問題等ございます。この会社主張が当を得ているかどうかというふうなことにつきましては、われわれ何ら判断することはできないのでありまして、労使双方お互い主張主張し合い、そしてその主張の中からお互い解決点を見出していく、これが従来の労使慣行でございます。経済問題としましては、一応第二組合との妥結も見ておりまして、第一組合との間におきましても、経済問題自体につきましては、それほどの問題はないと思いまするが、御指摘通り、問題は協約改訂問題というところにしぼられているのではないかと思っております。
  14. 横川正市

    横川正市君 そういうふうな判断の上に立って、私は労働省としてはもちろん労働関係に対する一般問題等については、サービス省としての建前をとられておったと思うのであります。しかし、私は、労使間の紛争は、それはそれなりに自主的解決ということが最も望ましい形でありまして、この望ましい形を私ども今まで支持をいたしておりましたから、この望ましい形に対して第三者が何らかの形で介入することに対しては、私どもは排除するという基本的な考え方に立って問題の解決に当ってきたと思うのであります。ただその紛争が起ってきて、少くともそれぞれものを考えるものの良識、英知の現われとしても、泥沼に陥ってしまって、どちらかが傷つき、倒れなければ、問題が解決をしないのだというような、そういうばかげた労働争議というものをわれわれ経験することは、これはまことに遺憾なことでありまして、そうではなしに、お互い英知をもって問題を解決するというところに、第三者介入機関というものがそれぞれ労働問題解決のために高度な発展をしてきたというのが近代社会労使間の紛争に対する結果だったと思うのであります。今度の場合に、私は、どの条項を見ましても、組合側からも第三者仲裁機関に対しましてはきわめて信頼を持ち、問題の解決をはかろうという努力をされているようでありますが、これを一方的に、会社側第三者機関介入を阻止いたしまして、そして私のところに入っております地労委情報、それから中労委では二度ばかり強制あっせんの形に出ようとしておられたようでありますが、これまた、手をこまねいて現状非常に険悪な状態を傍観をしているという状態なわけでありますが、この状況労働省としてはどうお考えになっておられるのか。もちろん労働省がこれに対して介入をして争議解決してくれと私は申しているのではないのでありまして、少くとも英知でもって作られた労使間の紛争第三者介入機関解決すべきはずなのに、それを一方的に会社側がこれを拒否をしている、こういう状態について、労働省としてはどういうふうにお考えになっているか、その点をお伺いしたいと思います。
  15. 亀井光

    政府委員亀井光君) 本来労使関係紛争というものは、労使間におきまして、民主主義的なルールに従いまして、法の定める手続によって、それぞれ自主的に解決をしていくという建前をとるのが、近代社会におきまする労使慣行のよい形だと考えておるのでございまして、労働省としましては、これらのよい慣行労使間におきまして十分とっていただけるように、労働教育その他の面を通じまして、啓蒙に努めて参ってきておるのでございまして、労働省自体が、民間の一私企業紛争に対しまして直接介入という立場は従来もとっていないのでございまするし、今後もこの立場はくずさないつもりでございます。ただこれに関しましては、御指摘通りに、労調法によって定められておりまする公けの機関すなわち労働委員会というものが民間労使関係紛争処理機関として設置されておるわけでございまして、これらの公けの処理機関がそれぞれの紛争解決する、われわれといたしましては、これらの処理機関が問題の解決に当るにつきまして、よりよい解決ができるようにという側面的ないろいろな御援助は申し上げるのでございますが、直接の介入はいたしていないのであります。  そこで、具体的にこの王子製紙の問題につきましては、御指摘通り北海道地労委あるいは中労委におきまして実情調査という形におきまして、労使双方の中に、果して解決へのきざしが見出され得るかどうかということの調査をいたしたのでございますが、不幸にして現在までその解決点が見出され得なかったというのが、現実でございます。その理由は、会社側としましては、あくまでも自主交渉によって解決をしたいという強い主張がその原因をなしておりますることは、御指摘通りでございます。それかといって、民間私企業でございますので、これに強制的な調停あるいは仲裁という手段を講じますることもまだ労働委員会におきまして結論を出し得ないという現実状態ではないかというふうに考えております。
  16. 横川正市

    横川正市君 そこで、私は、今度のこの王子製紙の問題が今西田委員から質問をされたように、ある意味では悪質な争議化をたどってきているのだ、こういうふうに表現がされて、そういうことが一般には長期化すればするほど何か真実性が持たれるような状況になっております点を、非常に私は自主解決という点から、こういうふうに延びているということだけでの説明ではいささか不十分じゃないだろうか。ことに現地調査をされたという建前からするならば、その点が非常に不十分だというふうに考えるわけです。なぜかといいますと、まずこの闘争のずっと経過を見てみましても、第二組合が作られました経過については、まず、これはどの小企業あるいは零細企業にたまたま見られるような形態が、大企業であります王子の場合にとられてきているのではないか。少くとも私は——私も北海道出身でありまして、王子の今までのずっと組合歴工場歴については十分承知をいたしておりますが、この争議の起る前までは、王子はこれはきわめて穏健な労働組合であったというふうに考えているわけであります。この穏健な労働組合ということが、私どもはその王子の性格であると思っておったのが、今度のようなこの激しい闘争を行なったというところに私は本質的な問題をとらえてみなければならぬのではないだろうか。ことに争議が起って参りますと、まず、早川工場長を中心にいたしまして、勤労部長海堀さんとか、あるいは次長の山谷さんというような人たちは、争議が行われることに対して非常に感情的な立腹をいたしておったようであります。これは自分の意思に従って何日かの労働争議が行われておったという過去の例を見てみますと、もっと端的に言いますと、過去は、この人たちが、二、三日くらいは一つサボタージュをしてくれというようなことも組合側に暗黙に言ったという実例があるというくらいに、私は労使間がうまくいっていた組合だと思う。ところが、自分の言っておったことに反して組合側が立ち上ったというところに感情的な非常な対立を来たし、労働争議解決するのには会社案をのまなければ解決がないのだという建前をとって、その上に立って今度は、近親者それから縁故者職制こういうようなものを通じて第二組合の結成を行い、しかもたしか先月の初旬だったと思うのでありますが、そのころは第二組合情報によりますと、第二組合に来た者は首を切らない、それから第一組合にいる者は全部首を切るのだ、だから第二組合に来る場合には首を切られないのだから、皆さん第二組合に来なさいという、第二組合情報の中に海堀勤労部長のいわゆる言明というやつが入っております。しかもその裏には、三千名の従業員のうち、第二組合さえ結成すれば、一日か二日でその大半、七割か八割は第二組合に結集されるだろうという予想のもとに、労働組合の切りくずしを行なっておる、こういうような状態随所に出ておるわけであります。たとえば職制を通じて行われる個々人の説得は、第一組合闘争を批判いたしまして、第二組合に来ればお前の身分は保障してやる、さらにひどいのは、早川工場長あるいは海堀勤労部長の名前をもちまして、あなたが第一組合から脱退すれば、賃金とか、それからピケによって阻止された場合には、これは有給出勤と認めるというような問題、あるいは賞与、手当等については、これを郵便で郵送いたしまして切りくずしを行う、いわば第一組合を切りくずすことが今争議解決であるかのごとき不当労働行為を山積させまして、第一組合と対峙をいたしておる、こういう事実がきわめて顕著にしかも随所にこれは出てくるわけであります。私は、日本独占企業とまではいかなくても、大企業であります王子が、町の零細企業町工場と同じような感覚で、こういうような労働一般問題に対して対処いたしておるということは、これはもう今までの過去における労働関係についてきわめて私は幼稚なものを工場側としては持っておったのではないだろうか、こういう点をいろいろな面から察知することができるわけでありますが、労働省としては、このようにして随所に起っております不当労働行為、こういった問題に対してどのように対処しておるのか。  もう一つは、これらの問題に対してただ手をこまねいて見ておったのだということだけでは、私は本質問題が相当これははずれてくるのだと思うのでありますが、その点について御報告を受けたいと思います。
  17. 西田信一

    西田信一君 議事進行について。ただいま委員長の発言許可によりまして関連質問でお尋ねになっておりますが、これは本質的な問題に触れての御質問のように思います。私は現地を御調査になったが、どういう方法で御調査になったかということをまず伺って、その認識の上に立って私はこれから御質問申し上げようと思っておったわけであります。横川君の質問を決して封ずるわけではありませんけれども、本質的な質問でありますから関連質問でなくて、別途御質問されるように願って、一つ私の質問を継続さしていただきたい。こういうわけでございます。
  18. 久保等

    委員長久保等君) では横川委員質問に御答弁を願ってから……。
  19. 亀井光

    政府委員亀井光君) 苫小牧におきまする会社側不当労働行為の問題についていろいろ事例をあげて御質問がございました。  不当労働行為という制度自体にはいろいろな問題があるわけでございます。特に労組法の第七条であげております不当労働行為云々の構成要件というものを満たすか満たさぬかという問題が、問題の所在の一番的確な判断の資料になるわけでございますが、具体的ないろいろな事案につきまして、果してこの構成要件をその事案が満たしておるかどうかということは、それだけの問題——それだけの表面に現われました事柄だけでは判断はできないのでございましてそれを取り巻きまするいろいろな諸情勢というものを総合勘案しまして、事実認定がなされていかなければならぬ問題だと思います。ある事件におきまして、たとえばそれが不当労働行為になる場合におきましても、同じ問題が不当労働行為にならないというふうな場合もございましょうし、あるいはまた、軽微な支配、介入というような形で、すなわち団結権の保護という形においてこれを救済をしなければならないほどのものでない事案でございましても、それが積み重なって参りますると、そこに一つ不当労働行為というものを形成して参る場合もございまして、いろいろ個々の具体的な事例々々におきまして判断が違って参るのでございます。従いまして、労組法の建前から申しますると、それぞれ専門の機関におきまして、これらの事実認定なり、判断がなされなければ、的確な結論は出ないということから、労働委員会というもの、その中における学識経験者でありまする公益委員がこの問題の処理に当っておるのでございます。従って、労働省といたしまして、特に今度の事案につきましては、北海道地労委に対しまして組合側から不当労働行為の申し立てがなされております現状でございまして、それに対しましてわれわれが具体的な判断をいたしますることはこの際差し控えさしていただきたいと思うのでございまして、いろいろおあげになりました事案におきましても、それがどういう状況のもとに、どういう条件のもとにそういうものが出されてきたかという諸般の事情が認定されませんければ結論としてはなかなか出ないんじゃないかというふうに考えております。
  20. 西田信一

    西田信一君 私がこれから御質問申し上げたいと思いますることは、先ほど現地に対する労働省並びに警察庁状況把握に対して御信頼して申し上げたのでありますが、実はこれは治安の問題と、それからもう一つは行き過ぎの労働争議等によって法の秩序が守られないというところにこの問題がある。そういう点にしぼって私は御質問申し上げたいのでございまして、従って、将来この法の秩序がどうして守られるか、治安がどうして維持できるかということについての問題に中心をおいて御質問申し上げたい。  実は、この王子労働争議につきましては、わが党におきましてもこの問題の重要性にかんがみまして、実は党の調査団等も現地に参りまして調査もいたしました。しかしながら、あくまでもこの労使間の紛争解決に対しましては不介入の態度をとっておりまして、現地に参りましても公けの場所で実は第一組合にも会い、あるいは総評の代表の方にも会い、第二組合にも会い、会社の幹部にも会うというようなことで、現地状況把握ということだけにとどめて帰ってこられただけでありまするし、私の質問も、従いまして、決して紛争解決手段とか、方法とか、そういうことに介入するような意向を持っての質問はいたさないつもりでございます。これから申し上げることはそういう点にしぼって御質問申し上げますから、現地を十分御調査になって、御認識なさっておる立場から、一つ率直にお答えいただきたい、こういうふうに希望を申し上げておきます。  そこで、まずその治安が保たれる。この争議が現在並びに今日に至る過程におきまして治安がどういう状況であったかということ、また、現在はどういう状況であるか、将来その不安はないかということについてたくさん事例がございますけれども、一々事例はあげ切れませんので、そのうちの顕著なものを例にとりまして御質問申し上げますが、そのことだけでなく、私の御質問申し上げる事例だけにとらわれないで、一つ全体の状況についてお答えを願いたいと思います。  この争議が起きましてから非常に何といいますか、苛烈な状況になって参りまして、いろいろな新しいまあ戦術と申しますか、方法が編み出されたというふうな状況でございます。たとえば洗たくデモというようなのは、これはこの北海道議会における警察本部長の答弁によると、これは日本で初めての新戦術というふうに言われているようでございまして、これなどはまことに見ておりまして、何と申しますか、完全なもう人権がじゅうりんされているという状況であるわけであります。呼び子によってある人を取り巻くというと、これが何十人という人が取り巻く。第一列の人はただ手でこずいておりますけれども、第二列以下の人々はいろいろな手段によってこれを傷つけるというような、いろいろな凶器まがいのものを持っておりまして傷つける。二十分やりますと、洋服はボロボロ、ワイシャツはすり切れてしまうというような状況でございまして、こういうことが三十数件も起きております。負傷者が二十何名も出ているというような状況でございます。こういうようなことが一体いわゆる言論による説得とか、団結による示威というような範疇にあるのかどうかということについては、これは私は問題なく違法のことであると考えておりますが、こういうような戦術が行われているが、こういうことに対する労働省並びに警察庁としてどういう御見解をとっておられるか。  それから今度のいろいろなこの衝突等におきまして非常なけが人がたくさん出ております。それはこういう機会に申し上げることが適当であるかどうかわかりませんが、凶器または凶器に類するようなものをたくさん使っている。そのためにまあ非常にけが人が出ているという状況のようでございます。これは新聞に書いている——現地新聞あるいは札幌等で発行している新聞だけを拾って見ましても、千枚通しを使っている。それからスパイクのつめ、これを使ってたたく。あるいはいけ花に使う剣山というようなのがあります。針のようなもの、これをからだにつけてどんどんからだでぶつかっていく。包帯でかみそりの刃を隠しておって、これで相手を傷つける。あるいは三寸くらいのくぎでひっかく。こん棒を使う。あるいは石や、れんがや、石炭、こういうものをどんどん投げつけるというような状況でございまして、こういう報道がなされておりまして、これでは全くどうも凶器を用いているところの狂暴な行動でございますからして、とてもこれでは治安も保たれるわけはないと思うのであります。これは少し誇張したことでありましょうけれども、これは必ずしも真相でないとは言えないのは、たとえば千枚通しのようなものが町では売り切れてしまった、苫小牧の町では。というようなことがこれは言われている。現に警察官がその千枚通しで三寸も突き刺されて、瀕死の重傷を負ったというようなことが現に行われておりますが、こういう事実を警察の御当局は、警察庁としてはこれを事実としてお認めになっているのかどうか。これに対する取締りはどのようになさっているか。この点についてまずお尋ねいたしたい。
  21. 小柳勇

    ○小柳勇君 関連質問
  22. 久保等

    委員長久保等君) 御答弁を願ってから。
  23. 小柳勇

    ○小柳勇君 前に。
  24. 久保等

    委員長久保等君) 一応御答弁を願ってから。
  25. 亀井光

    政府委員亀井光君) 今回の王子製紙争議におきましていろいろな問題が起っておりまするが、争議行為、いわゆるストライキといわれますものは、私から申し上げるまでもなく、労務の不提供によりまして会社側の正常な業務の運営を阻害する、それによって経済的な損失を与えることによって組合側主張の貫徹をはかるというものでございまして、ピケッティングはこれらの労働者の側の行いまする争議行為の効力をさらに強めていくために、世界の各国におきまして行われておりまする労働運動の一つ手段でございます。しかしながら、このピケッティングにおきましてもあらゆる行為が許されるか、すなわち争議行為においてすべてのものが許されるかということになりますると、労組法の第一条二項にございまするように、正当な争議行為でございますれば違法性が阻却されて参るのでございまするが、正当でない争議行為につきましては、それらの法の措置、保護というものが与えられていないというのが現在の法の建前でございます。従いまして、ピケッティングにおきましても無制限にそれが許されるものではないのでありまして、ピケッティングの本質としましては、平和的な説得並びに団結権の誇示という限界を越えまするピケッティング、これはわれわれはピケの正当性の限界を越えておるというふうに考えるのでございます。いわんやそこに暴力というものが加わりますれば、これは労組法第一条の二項によりまして禁じられておる行為でございまして、正当性の限界を明らかに越えるものというふうに考えております。
  26. 小柳勇

    ○小柳勇君 さっきの西田委員に関連して。  初めに悪質な労働争議が頻発しておるという第一の議題の質問がありましたから、これに関連して質問しておかなければ——ここで私質問する必要なかったので、さっき質問を留保したんですが、悪質な労働争議が頻発しておるという前提の中で、しかも暴力行為が発生しておる、これに対して一体どうかという調査の結果に対して、さっき管理官が具体的に二十九件、五十三名の者が送検されたという報告がありました。このいわゆる暴力行為として苫小牧争議で送検せられたものは、われわれが調査したところによると、会社側が暴力団を多数裏門に配置して、そしてピケを破るためにこん棒その他のものをもって相当暴力をふるった、しかも組合の方から警察に対して、これの被害が非常に大きいので、これを守るように要請したところが、警察官の出動がなかった、こういうことで三浦署長に対していろいろ話し合って、その後、署長としては善処するという確約をしておるという情報もあるし、新聞情報もいろいろあるが、さっき言われたところの送検したという暴力事件は、ただいま西田委員が言われたようなそのデモ、たとえば洗たくデモと言われたけれども、そういうものによって暴力行為として逮捕され、送検されたものであるかどうか。私は今申し上げたように、暴力団を多数会社側が使っていろいろ暴力行為をやったようであるが、この送検された暴力行為の中にそういうものが含まれておるかどうか、御答弁願いたいと思います。
  27. 浜中英二

    説明員浜中英二君) 洗たくデモのうち、明白な暴力行為事案につきましては、暴力行為関係で取調べをいたしましてこれを送致いたしております。先ほど御指摘の点の、事実関係が現在どの点をおさしになっておりますか、ちょっとはっきりわかりかねますが、私どもといたしましては、新労でありましょうと、旧労でありましょうと、証拠が明確でありました者につきましては、それぞれ十分な措置をいたしておるわけでございます。ただそういう点でまだ捜査が進みませんために、検挙に至っていない件数もかなりあるわけでございますが、どちらの立場ということに関係なしに、不法行為を検挙するという態度で捜査を進めております。
  28. 小柳勇

    ○小柳勇君 それじゃ答弁になっていない、委員長
  29. 西田信一

    西田信一君 私の答弁を先にして下さい。
  30. 久保等

    委員長久保等君) 西田委員の先ほどの御質問の答弁を警察庁長官に……。
  31. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 西田委員の御質問に対してお答えを申し上げます。  この七月以来いまだに解決しないこうした長期の争議が行われる、これはまあいろいろ事情もございましょうが、その間におきまして幾多の不法事犯が起り、また、人心に不安を与えておると、社会の秩序が乱されているということにつきましては、警察としては、もとより争議そのものに介入するということはないのでございますが、そうした不法事犯、社会の秩序ということにつきましては、警察の責務として十分にその責務を果していかなければならないと存ずるのであります。ただ、この不法事犯につきましては、先ほど浜中管理官から申し上げていますから重複して申し上げませんが、暴行、暴力行為住居侵入等を初めとしまして八十四件もの事件が発生をいたしております。これにつきまして、先ほど申し上げたそうでございますが、二十九件五十三名の者につきまして証拠を固めて検挙、送致をいたしておるような状況でございます。ただ、このほかにも、いわゆるいやがらせ事案等がございましてはっきりと犯罪にならない、あるいは犯罪になるにしても全くかいもくだれがやったかわからないような事案も相当多く出ておるのでございます。これらにつきましては、もちろん警察として捜査を進めて参らなければなりませんが、夜間の投石であるとか、それも非常に計画的なものであれば、いろいろの角度からこれを検討することができましょうが、デモや何かが非常に先鋭化したような夜に、非常に興奮した気持から行われるものもあるのではないかと思いまするので、そういうようなことで非常に捜査上困難な問題がございます。しかしながら、この長い期間におけるこうした争議の過程におきまして、先ほどお話のように、実際新手のいろいろなやり方が行われる、こういうことは、さらにまた、他の方にもびまんして参るおそれもあるわけでございまして、十分注意をしなければならぬと思うわけでございます。ただこういうふうに長期にわたる、しかも単に第一組合、第二組合の争い、会社と第一組合の争いというばかりでなしに、多数のものが応援に争議介入して参るというようなことで、事態はさらに争議そのものが悪化し、また、不法事犯等も激化するということになっているわけであります。  警察といたしまして、あまりにも長期にわたりますので、それでも、これも先ほど申し上げたと思いますが、延べ四万三千名もの者を北海道全域から招集をいたしまして、苫小牧市に動員をしているというような事情でありまして、それでもなかなか手が足りないという実情でございます。苫小牧自体はわずかに定員八十八名でございまして、全道から引き抜いて動員をかけなければならない、そうでなければ事態の平静は期しがたいという状況でございます。これにつきまして、一部にはまだ警察が非常にやってくれないじゃないかと、警察がなまぬるいじゃないかということがございますが、われわれとしては、先ほども申し上げましたように、原則としてはできるだけ争議介入しないと、なるべくちょっとしたいざこざくらいならばできるだけ双方の間において、かりにそれが不法事犯になっても、そういうことを申しますとまた気が弱いと申されるかもしれませんが、多少の行き過ぎというものがあっても、そういうのに直ちに警察が介入して措置をとるというようなことはできるだけ差し控えたい。どうしても双方の間においてこれを解決していただくようにするというのがやはり争議から起ってくる事案についての私は常道であろうと思うのでありますが、しかし、あまりにもそれが激化して、お互いの間、また、一般市民というものにまで不安を及ぼすような事態というものが考えられるならば、私はそういう事態であったと思いますが——あると思いますが、そういうものについては、やはり警察は必要な措置をとっていかなきゃいかぬ。そういうことについて現地の本部長も、慎重ではありますが、必要なときには断固として実力を行使するという態勢をとっておるわけでございまして、私も本部長から詳細報告を受け、木部長の現在とっております方針というものが適当なやり方である。ある方面からはなまぬるい、ある方面からは、そんなにせんでもいいと言う方もあるかもしれませんが、私は現在の段階において、北海道の警察当局のとっておる措置は妥当な措置ではないかと思います。ただ、こういうような事案が頻発する、法のワクをこえて非常な激越な事案が多発するというような傾向というものは、これは見のがすことができない。そういう意味におきましても、私どもは、警察の人員と申しますか、装備と申しますが、そういうようなことで警察が十分に活動できるようなことについても配慮されなければならないと思いますし、それに必要な法の整備ということも必要ではないかというふうに考えておる次第であります。
  32. 小柳勇

    ○小柳勇君 私は西田委員質問に関連した質問をした。西田委員質問というのは非常に具体的なんですよ。しかもこの苫小牧王子ストというのは非常に暴力行為が多い。しかもほとんどの暴力行為労働争議現場に起っているから、その具体的な質問をされている。その具体的な質問に対して答弁されたのは、さっき言うのは、二十九件の発生で五十三名が送検された。その送検された暴力行為の中には、そのあとで西田委員質問されたのは、千枚通しが苫小牧の町になくなるほど売れている。そういうようなことを、暴力行為を一応発言された。その答弁されたのが今のような抽象的な答弁をされるということは、われわれは納得できないのだ。そういうことは答弁にならぬと思う。私の質問いたしましたのは、この暴力行為の中には暴力団の暴力行為も全部摘発し、これを起訴し、送検しておるかどうか、私が質問したのに答弁がない。しかもあなたの答弁には、さっきの千枚通しに全然ふれておらぬ。抽象的なことはわかっているのです。今答弁されたことは、労働次官の答弁された、あなたの答弁されたことはわかり切っていることだ。それよりも今、西田委員が深刻に質問されたことは、苫小牧現場に起っている、そういうことを質問している。従って、私どもとしては、そういうような凶器を持って、たとえば千枚通しを持ってというような質問の間に、そういうような抽象的な答弁では、これは全部それがあたかもあったようにして速記録で流れているということについて、もしそれが容認できれば、私はこの委員会の使命はないと思う。客観的に、しかももっと具体的に討論し合いながら、あの争議を早急に解決するということこそが、国会の任務ではないか。従って、そういうような一方的な質問をされ、一方的に審議されていくならば、私はこの審議に参加しない。それだけの自分の気持を持っているけれども、私の質問に対して答弁願いたい。
  33. 浜中英二

    説明員浜中英二君) 暴力団の事件が検挙の中に入っているかという御質問でございますが、二十日の日に、第一組合側と菱中興業の人夫の間でもみ合いが行われました。そのときに、菱中興業人夫の細谷地厚三氏を暴行罪によりまして現行犯、逮捕、送致いたしております。なお、凶器を用いているという問題につきましては、あらかじめ計画的にそういうものを用意したというようなことは、私どもの捜査の方では出て参っておりません。また、凶器を、千枚通しを持っているというところを、警察としては現認いたしておりません。ただ、被害者が医者にかかりましたところ、千枚通しのようなもので刺されているという診断を受けた事実はございます。その他、いけ花の道具とかあるいはかみそりの刃とか針とかいうようなお話しがありましたが、この点につきましては、それをあらかじめ用意しておったというようなものにつきましては、私ども報告を受けておりません。ただ偶発的に石やこん棒あるいはれんがが投げられたというような状態は、そういう混乱の場合におきまして、そういう行為がありましたことは事実でございます。
  34. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 私、西田委員の御質問にお答えしましたのは、西田委員が、自分の言うことだけの問題として考えないで答弁してもらいたい。例を言うからというお話しでありましたので、あるいはお聞きとりになって、抽象的に聞えたかもしれませんが、私は決して事実を隠蔽するというような意味で申し上げたつもりはございません。その点だけ一つ御了承願います。
  35. 横川正市

    横川正市君 簡単に関連質問を。最近の事例なんですが、十月の十日以降ですね。東門をめぐっていろいろ紛争が起っているわけなんですが、その場合に下請業者の大体顔見知りが非常に現地では多いわけです。下請業者として何年も使っておりますから、いわば下請業者といってみても、身分上は何々組の用人ということであるけれども現場では大体同じ仕事を流れ作業の中で分担をしてやっているという状態なんです。ですから、事実上は、雇用関係会社とそれから組というふうに違っているわけなんで、この下請業者の中に非常に最近著しく顔の見かけない、いわばボスに牛耳られる暴力団というようなものが入ってきて、大体その比率からいきますと、全体の一割は大体今まで顔の見知りの者だった。ところが、あとの九割は、そういう雇われた暴力団だというふうに認定のできる者が入ってきている。それらが相当ひどいことをやっているのです。たとえば腰にハンマーみたいなものを下げてくるとか、あるいはなたを下げているとか、手袋をしているのだが、その手袋の中には、いわばメリケンのような役を果すようなものを入れているというようなことで、乱闘になると、一様に被害は第一組合の者の方が非常にたくさん受けてきている。それらに対してはほとんど傷の負わされっ放しという状態なんだという報告がきているわけなんですが、警察庁長官としては、その点について全然御存じないということなのか、あるいは事件がそういうふうになっているので捜査中ということなのか、その事実についてお伺いしたいと思います。
  36. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 会社側で人夫を雇う、従来は顔見知りの者が多かったが、最近はそういうものが少くなったというお話しでございますが、ある程度そういう者が、そういう者と申しますか、新しい者が入ってきたということは、情報として私も報告を受けております。ただ、われわれの警察といたしましては、会社がどういう人を雇うということは——もちろんいろいろ危険な事態が起らないようにという注意の意味において、情報は収集いたしましても、現実に警察が活動するというのは、ただいまお話しのように、暴行などが行われて、そういう事態がはっきりするか、あるいはそれがもう寸前に行われるというようなときに活動が行われるという状況になっておるわけであります。それで先ほど申し上げましたが、これは第一組合側、あるいは第二組合側と申しますか、会社側と申しますか、そういうどちらにつきましても、非常に大ぜいの中で事件が起って、けが人などが出てから警察がこれを調べる。あらかじめそういうことが起らないようにするということでなく、起ってからやっておりますために、なかなか被疑者の確認ということができない。これはあるいは今お話のようなことがあったかもしれません。それが第一組合側が多く傷ついていたという事実があった場合もまた、先ほど申し上げました第二組合側がいやがらせを受けて被害を受けるというような事案、両方ともに非常にその捜査が困難であるということでありまして、警察といたしましては、どちら側についてだけその暴行事案の捜査をし、どちらについてはこれをいたさない、控えるというようなつもりは毛頭ございませんので、その点は、御了承を願います。
  37. 西田信一

    西田信一君 御答弁がございましたが、私は新聞に報道されておる例をあげて、こういうことが事実あるかどうか。また、うわさとしてはこんなうわさまで飛んでおる。千枚通しが売り切れたといううわさまで飛んでおるということであるが、そういう事実があったかどうか、御答弁を願ったわけですが、そこで、この間、先月の二十五日に、北海道議会でこの問題について緊急質問があって、警察本部長が答弁されておりますが、その答弁によると、これは具体的な例として、警察官がやられて、そして背中を刺された。これは医師の鑑定の結果は、くぎ、きり、または千枚通しのようなもので刺されたという鑑定がされておる。こういうことでございまして、今の御答弁によりますと、あらかじめそういうものを持っておったということは報告を受けておらぬということでありますが、警察本部長が、その現場においてもう突き刺したということを、その医師の鑑定の結果は、その現物はつかんでおらぬようですが、押収しておらぬようですが、そういうような答弁をしておるようです。従って、これはそういうものを、偶発的にそれを持ち出したというふうには私どもはちょっと受け取れないようですが、警察本部長の答弁によりますと、その当日までに二百四十二名の負傷者が出ておる、こういうことでございます。そこで、その後も相当いろいろな衝突等がございますから、もっと負傷者はふえておるように思います。現在までに何名の負傷者が出ておるか。しかも今の長官の御答弁によると、場合によっては、第一組合の負傷者が多かったかもしれないというような御答弁もあったように聞えましたけれども、私ども承知するところでは、第二組合はほとんど無抵抗主義をとっておる。従って、あまり第一組合に対して危害を加えるというようなことは行われておらないように聞いておりますし、また、新聞でもそういうように報道されておりますが、争議期間全体を通じて、現在どのくらいの負傷者が出たのか。そしてそれによって、もしわかるならば、警察官は何人負傷しているか。第一組合員は何人負傷しておるか。第二組合員は何人負傷しておるか。他の外郭の応援団体は何人負傷しておるかということを、一つこの際お伺いをしたいと思います。
  38. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 先ほど私申し上げましたが、あるいは第一組合が多いかもしれないと申しましたのは、全体を通じてという意味で、常にそうであるということが事実であろうという意味で申し上げたのではないので、ある紛議があった際にそういう場合もあったであろうという意味で申し上げたのであります。それからまた、本部長が道の議会で、千枚通しようのもので刺されたという報告をしておることは事実でございますし、そういう事実はございます。ただ、そのものをだれが持っていたかということの現認がないということでございます。けが人は現在まで警察官が百二十人、それから第一組合、第二組合、合せまして二百四十四人、合計三百六十四人という報告を受けております。
  39. 西田信一

    西田信一君 第一組合と第二組合との区別はわかりませんか。
  40. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 現在においては、この内訳はわかりませんが、九月末までの受傷者の数は、第一組合員が八十四名、第二組合員が七十九名、会社側が六名、一般人が二名、警察官が百十五名、合計二百八十六名、こういうことになっております。
  41. 西田信一

    西田信一君 次に、治安の問題でお伺いしたいと思うのでありますが、社宅で、とても生活ができない、こういって社宅外に、あるいは他の地方に避難をしている者が相当あるということを実は聞いております。で、これは現在どういう状態であるか。何戸ぐらい避難をして、そうして現在はどういう状態であるか。なぜ避難をしなければならぬのかということについて、何か警察庁として御調査ができているならば、一つお伺いをいたしたい。
  42. 浜中英二

    説明員浜中英二君) 現在何戸、何名がどこの方面に避難したというような事情につきましては、報告を受けておりませんので、さっそくよく調べてお答え申し上げます。
  43. 西田信一

    西田信一君 それでは、調べができておらぬようでありますが、少くとも現地調査なさっていれば、こういう実態をおつかみになっていると思ってお聞きしたのでありますが、一つ至急にお調べ願いたいということを希望しておきます。  いろいろ事例はありますが、ついては、もう一つの事例をあげてお聞きしたいのですが、これは会社において籠城就業している者が十月五日入構を始めて、五十名を出して、入れかえをやったそうです。そのときもそれに対して何かトラブルが起きてけが人ができたようでありますが、そのことは今お尋ねいたしませんけれども、そこで出てきた人が、これは駅の前に第一会館と申しまして、そこを借りて第二組合の事務所にしている。そこに行き、入ったところが、そこにピケを張ってしまって、二、三日間カン詰になった。それからようやくカン詰状態から脱して、そうして家へ帰ろうとしたら家へ帰れない。やむを得ず富士館という旅館と、千葉という旅館にこれは分宿しているが、今日に至るまでまだ一人も社宅に帰ることができない、こういうことがあるようであります。一体そういうことに対して、警察御当局は御承知になっているかどうか。また、そういうことが許されるかどうか。許せないとすれば、警察としては、これに対する取締り等についてどういうような対策をとっておられるのか。また、現に今日まで帰っておらぬそうです。家へ帰れないそうです。十月五日と申しますと、きょうは二十三日でございますから、十八、九日間、五十人近い人が、中には一人や二人帰った人があるかどうか知りませんが、大部分の人は帰れないそうです。そういう状態におる者がいるということですが、こういうのはどうお考えになるか。また、同時に、労働省としては、こういうことが合法であるかどうかということについてお伺いをいたしたい。
  44. 浜中英二

    説明員浜中英二君) 御指摘のような事実がございまして、新労の入構者が出門する。それにかわりまして新しく別の組合員が入れかわるということがございまして、それにつきまして妨害がありまして、警察が警告なり、あるいは制止をいたしまして事なきを得た。こういうようなケースがあったのでございますが、その後、旅館の方に現在宿泊中であるという報告も受けてございます。その後どういうような状態に相なりましたか、報告を受けてございませんが、いずれにいたしましても、こういうような状態があるということは、全体の治安の上から見まして非常に遺憾なことでございまするが、ただ、警察が実力を行使する場合におきましては、それぞれの法定の要件というものを十分に検討しなきゃならぬ問題もありますし、その他労使間におきまするいろいろな話し合いの過程というものもございますので、これをもちまして直ちに警察が云々するという段階には立ち至っていないというふうに報告を受けてございます。
  45. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 僕は、長官がお帰りになるから、一言だけ聞いておきたい。  長官は先ほどからの答弁の中で、争議については直接介入しないと、だから、労使の間の問題だからまあ多少という表現であったかどうか知らないけれども、とにかく争議解決するというところにこの問題の焦点があるのだから、できるだけこれに介入しないというお話があった。私はその立場だと思う。ところが、だんだんあとの方を聞いておると、何だかもっと強い取締りをしなければならぬというようなニュアンスの多少あるお言葉があった。それじゃ、労使争議をやって、具体的な事例は二十九件、五十三人という送検事案があり、八十四件という工合に調査されている問題があるわけです。具体的な処理については、警察はいろいろな角度から起きた事案について処理されるということは、報告を私は承わっておる。ではこれ以上、たとえば疑いがあるとか、何か問題の疑いがあるとか何とかというような格好で警察が処置するという問題になってくると、これはやはり人権の問題に私は入ってくると思う。事案が起きていないから、保護検束とか何とかというようなところに、人権じゅうりんの——われわれに言わせれば人権じゅうりんの問題までお考えになってああいう発言をされたのですか。そこのところを一つお聞きしたい。
  46. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 私が先ほど申し上げましたのは、警察は、現在やはり人員においても、装備等においても、まだ増加したり改善したりしなければならぬことがある、また、法も必ずしも現在の法規で十分でないという、そういうものについて研究し、整備をいたしていかなければならぬという趣旨で申し上げたのでございまして、今お尋ねのように、人権を侵害するというような方向において警察というものは活動すべきものでないことは、これはもう申すまでもないことでございます。その点は誤解のないように願います。
  47. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この問題は、この場では論議いたしませんけれども、ちょっと私は気になったから質問しておいたのです。
  48. 西田信一

    西田信一君 労政局長、先ほどお尋ねした点を御答弁願います。
  49. 亀井光

    政府委員亀井光君) 先ほどの御質問でございまするが、私が先般御答弁申し上げましたように、労働争議というものは、あくまでも正常な業務運営を阻害するための労務不提供の問題でございまして、すべてこの問題と関連して起る場合にはわれわれも判断ができますが、今の問題は、明らかに治安上の問題だというふうに考えておりますので、私としては答弁を差し控えたいと思います。ただ、そういうことがいろいろな角度から検討して、適当でないと申しまするか、何かそういう感じがいたしますが、ただ、これは労使関係の問題ではないと思います。
  50. 西田信一

    西田信一君 いろいろありますが、最近の治安状況はどうかということもあわせてお聞きしたいのですが、そこで、実は今月の十四日に、これはとてもやり切れないというので、社宅内の婦人代表が八名札幌に出まして、それで田中知事に面会を求めた。そうしてその実情を訴えて、何とか一つしてもらいたい、われわれはとても不安で生活ができないということを訴えていった事実がございます。それは新聞に報道されておりますが、ここに、見出しは、おそろしくて狂いそうだ、こういう見出しで書いておりますが、知事に訴えに行ったそのときの訴え方ですが、これは簡単に申し上げますけれども、八月の七日から十月十三日までの間に第一組合から受けた被害、これは洗たくデモ九件、これは社宅においてです。葬式デモ四件、糞尿事件が四件、暴行三十三件、傷害二十五件、投石によるガラス破損二十一件、暴行脅迫十五件、落書き十五件、宣伝妨害十五件である。代表団の一人は、これだけではないのだ。連日連夜社宅にかんしゃく玉を投げ込んだり、スピーカーで大きな声を出したり、悪口を言ったり、とても神経衰弱になって生活できない。そうして疎開する者もたくさん出ておる。こういうことをこの十四日に知事に訴えに行っております。これはやっぱり現状を物語っておると思うのでございますが、そこで、その第二組合側といいますか、会社側が、よくわかりませんが、これではとても不安で生活できないというので、何か見張りのためですか、見回りのためですか、お互いに人を出し合っておるのかどうか知りませんが、自警団のようなものを作って、みずから自分たちの生活を守ろうと、こういうようなことをやっておるとか、やらなきゃならぬとかいう話を実は耳にいたしております。現実にこのように、十四日に主婦代表が知事に訴えに行っておるという状況でございますから、今なお私は非常に不安な状態に置かれておるのだ、こういうふうに判断せざるを得ないのですが、現在はどうであり、また、こういうように訴えていっておることは必要じゃないのか。そんな状態でないのかどうか。また、そういう状態であるとするならば、どういうようなこれに対する措置をとっておられるかということを警察当局からお伺いしたい。
  51. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えをいたします。  第二組合の社宅におきまして、ただいまお話のありましたような状態があるということについては、われわれも連絡を受けております。ただ、非常に不安であるか、あるいはそういう障害が、今御指摘のような数があったかということにつきましては、われわれの方では判然といたしておりません。ただ、非常に不快——不快というか、不安であるといいまするか、まあおちおちしておられないという状態であることは事実のようであります。警察としましては、御承知のように、一番多く動員をいたしまして、実力を行使いたしたときには、二千人以上の警官が出たのでございまするけれども、普通の日におきましては、やはりほかとの関係もございまして、三百人ないし五百人の警官が毎日出て、そういう事案が起らないようにという警らの強化をやって今日に及んでおる次第でございます。ただ、北海道の本部長の報告によりますというと、そういうことはまあ程度の問題であって、警察事案としてこれを検挙するというところまでいきますためには、だれがやったかということはもちろんのこと、それからまた、そういうのが犯罪になるかどうかという限界というようなことがあって非常にむずかしいということと、それから、第一組合員といい、第二組合員といいましても、もともと同じ会社従業員でありました関係上、社宅等が、たとえばまあ一つの家を三軒に分けて住んでいるというような場合に、数から申しましても、二軒は第一組合員であり、そのまん中の一軒が第二組合員である。あるいは端の方の一軒が第二組合員であるというようなことで、第一組合員と第二組合員が入りまじって社宅に住んでおるというような関係で、なかなか、いつどこでそういうことが行われるかということを常時一軒々々前に立っておらぬというと、今お話になったような事柄が起りましても、即座にそこで処置ができないというような悩みがございまして、非常に警察取締りとしても困難をきわめておるという事情だけは御了承願いたいと思うのであります。
  52. 西田信一

    西田信一君 負傷者が、先ほどの御答弁では合計三百六十四名になって、そのうち警察官が百二十名けがしておるという状態であります。しかもなお、ただいまの警備局長の御答弁によると、社宅外等において苫小牧市内においてそういう不安がまだ除かれておらぬということである。しかしながら、警察の取締りが非常に困難をきわめておるということについては私も御同情をいたしております。しかしながら、そういう状態でございますので、しかも自警団をもって何とか自分たちがやらなければならないというような状態では、これは全く大きな問題だと思うわけでございまして、一つそういう事件が起きたときの取締りも必要でございましょうけれども、警察御当局としてももちろん努力されておることとは思いますが、それをもう少し、今お話しの通り、第一組合、第二組合、きのうまで同じ仕事をしておった連中が、しかもいろいろの暴行等においては同僚同士あるいはまた、下の立場の者が上の立場の人、同じ機械を握っておった者同士がなぐり合いをやっておるという実に悲惨な何とも言葉に表わせないような、涙の出るような状態、こういうことでございますので、やはりこういうような少くとも常軌を逸したようなこういうことが起きないように、警察御当局にしましても、その組合なり何なりに十分言い聞かせるということにも御努力になって、少くともこういう社会不安というものがすみやかに一つ取り除かれるように御努力願いたいし、そういう点に対してどういうふうにお考えになっておるか、一つ御見解を伺いたいのであります。
  53. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) ただいまのお話の通りでございまして、大いに努力をしたい。ただ、この問題はもちろん争議に付随して派生しておる問題でございますので、結局は争議が一日も早く解決をしませんというと、多かれ少かれこういう状態がそこまでずっと続いていくということで、私たちとしてもその根本になる問題の解決の一日も早からんことを願っております。
  54. 西田信一

    西田信一君 警察が非常に苦心をされておるということは私よくもう現地にいるからわかっております。また、ああいうところにたくさんの警察官が動員をされて、泊るところもなく、実にお気の毒の状態にあることもよく承知しております。ほとんど何といいますか、言葉は適当でないが、野戦同様のような状態でやっておられることも承知しております。まことにお気の毒であり、しかも何といいますか、努めて何といいますか、非難を受けないようにというので努力せられておることも、これはむしろ一部警察が非常に弱いという非常な非難をあびながらそういうことをされておるということは実際のようでございまして、御同情をいたしております。それでこの間、これは事実だと思うのですが、事実かどうかお聞きしたいのですが、聞いてきたのですが、あまりに何といいますか、実際には警棒も全部取ってしまって、まる裸でなぐられてもどうにも警察官は隠忍してやっておるという状況らしいのでありまして、これではとても自分たちの職責が尽されぬということだろうと思いますが、帯広から苫小牧派遣された警察官が、最近、とてもこれでは自分は勤まらぬといいますか、職責が尽せぬというので退職した、辞職した、こういうことを実は聞きました。これは帯広の方から聞いたのでありますが、そういうことが事実かどうか。もし、そうだとすれば、非常にこれは警察官の何といいますか、立場も御同情できるし、また、全体の士気にも関するような気がいたしまして、そういうことが事実あったのかどうか、お聞きをしたいのですが。
  55. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 前段の御質問はその通りでございます。非常に不自由をいたしておりますということにつきましては御指摘通りでございまするが、あとの、どこからか派遣された警察官がそのためにやめたということにつきましては、報告を受けておりません。
  56. 西田信一

    西田信一君 それでは、治安維持につきましては十分なる一つ対策をお願いいたしまして、この問題は一応この程度にいたします。  次に、やはりこれは治安の問題と全然別個ではありません。関連いたしておりますけれども、今回の労働争議におきまして、組合側争議行為におきまして、非常に何か行き過ぎがある、そのために何というか、こういう法治国家において法の権威が完全に失墜するというような状態にあるということについてお聞きするのでありますが、と申しますことは、いろいろ勤評問題に対する反対闘争であるとかあるいは労働争議であるとか、いろいろございます。しかしながら、これと私は少し性質が違うのじゃないかという意味において実は考えているのでありますが、と申しますことは、片方は要するに何といいますか、国の行政に対するところの反対の行動であるけれども、今度の場合、特に私が遺憾に思うことは、裁判所のいわゆる決定、このことが行われないということです。こういう状態であることについて、非常に遺憾に思いますが、これでは全くその法律の権威も何もこれは問題にならない。法の権威どころじゃない。これはもう全く労働運動については何をやってもいいのだというもし考え方を多数の組合員あるいはまた主婦、そういう人たちの中にそういう考えを持たれたら大へんだというふうに考えましてこの問題についてお聞きしたいのでありますが、そこで具体的に例をあげなければお答えがむずかしいと思いますから、例をあげてお尋ねをいたします。  第二組合の就労に対する仮処分決定が出ましてから、これが入構するまでに相当の時日を要しました。しかし、これは何といいますか、第二組合側の行動と第一組合側の阻止との関係において、あるいはいろいろな時間をとらざるを得なかった事情もあるかと思いまするけれども、このことは別といたしまして、これも問題がございますが、それは別といたしまして、特に私が例をあげたいのは、原木を入れるとかあるいは製品を積み出す貨車の入れかえ、これがその後の裁判所の決定によって妨害排除決定が下されて、なおかつ、実際に入るその十数日間、これがいわゆる阻止を受けて実行ができなかった。こういうことについて、私は非常に問題だと思うのでありますが、労働省からもお聞きしたいし、また、警察庁からもお聞きいたしたいが、なぜこういう状態であったのか。その前に、これは国鉄当局がもちろんこれは機関車を入れて引っぱり出す責任があるわけでありますから、国鉄当局からも一つその状況をお伺いすることが適当だと思いますので、まず先に、仮処分が今月の九日に出まして妨害排除決定が下されたが、その後どういう事情でこの輸送ができなかったのか。私は現地の駅長に詳しく聞いてみましたが、これは毎日二回ないし三回、何とかして機関車を入れようとして努力するけれども、完全にこれがピケラインによって阻止されて一歩も動けなかったということを実は聞いて参りましたが、国鉄当局は事情がよくおわかりでございましょうから、まず、国鉄当局からその状況をお伺いしたいと思います。
  57. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 苫小牧におきます王子製紙の専用線から出ます私ども貨物輸送につきまして十月十日以降の実績を御報告申し上げます。ただいま西田委員のお話しの通りに、十月十日に正式に私の方に貨車の要求がございました。その要求に応じまして、私の方から十月十日に約十六両の貨車を編成しまして受授線と申しまして、駅と会社の専用線との一つ貨車の受け渡しをするポイントがございますが、そこまで持っていったのであります。その後、十月十一日から去る十月二十日まで約回数にいたしまして二十回、延べ貨車数約二百両を受授線まで持って参りましたが、専用線の上に組合員立ち入り、あるいはすわり込みをする。あるいは専用線をはさんで線路の両側に立ち並びまして、あるいはレールの上に足を出し、あるいは枕木の上に出し、そこに踏み切りがございますが、その踏み切り道を往来する、あるいは老婆が線路の中にすわってしまうというようなことがございまして、私どもといたしましては、安全に列車を運転するということが不可能でございます。そのために、今申しました二十回、延べ約貨車二百両を入れようとしましたが、ついに一回も成功いたしませんでした。二十日までその状態を繰り返しておったわけでございます。その入れかえ作業を中止いたします際には、いつも会社側も立ち会いの上で、これでは危ないということを確認いたしまして、そして両者の意見の一致をみた上で貨車の入れかえを中止いたしております。その後、十月二十日に、これは先ほど労働省の方から御報告がございましたが、十月二十一日に至りまして初めて貨車五両を入れまして、また、逆に五両新聞巻き取りを積んで出てきております。  次に、昨日でございますが、先ほど労働省の御報告が十六両とおっしゃいましたが、昨日の午後また十六両入りまして、三十二両昨日入っております。出てきた貨車は十六両巻き取りを積んで出てきております。けさ私がこちらに着くまでの報告によりますと、けさは全部合せまして約四十両の貨車を入れる計画をいたしております。で、車は昨日入れました車の十六両がやはり巻き取りを積んで出るという予定になっております。  以上であります。
  58. 西田信一

    西田信一君 ちょっとお聞きをいたしますが、二十日までは二十回試みたけれども、これがただいま御答弁のような阻止にあってこれが出ることができなかった。二十一、二十二の二日間にわたっては五両及び十六両二回、二十一日は二回入れたということでありますが、その二十一日と二十二日の貨車が入った状況、要するに、何らの組合側のいわゆる二十日までに行われたような線距上に立ちふさがるというような妨害行為がなくして平穏に貨車を入れ得たのでありますかどうか、その点を一つ
  59. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 私どもの受けた報告によりますと、二十一日の状況は、第一回を午前九時二十分から十一時五分までの間に実施いたしております。これは貨車五両をもちまして受授線から機関車を持ってきましたが、ピケ隊が専用線の両側に約八百名、その他主婦連、その後方に約二百名がおりまして、これを阻止いたしましたが、十時十分に警察官が約一千名出動されまして、これによりまして、進路を開きまして、きわめておそい速度で徐々に前進いたしまして、その会社のゲートの少し手前に踏み切りがございます。その踏み切りの手前で一たん停止いたしまして、そこで警察と組合会社と三者の話し合いでもって話が十二時十分ごろつきましたので、組合はレールから下りまして、警察が一部を引き上げまして、そして初めて入っております。  それから昨日の二十二日でございますが、これは第一回はピケ隊の十名が機関車乗務員を説得するという理由で線路の上に入って参りました。同じようなことを数回繰り返した模様でございます。九時三十分ごろ警察官の出動がございまして、十時三十分に、昨日一昨日と同様な地域まで下る下らぬということでいろいろもめたようでございますが、その位置を明確にいたしまして、そして十一時四十五分に貨車十六両を工場に入れたというふうな報告が参っております。
  60. 横川正市

    横川正市君 これは警察当局とそれから国鉄の来られておる方にお聞きしたいのですが、十月十日に貨車妨害排除仮処分が出されまして、執行吏によってこれの仮処分会社側から出たものが却下されておるわけですね。その却下された理由によりますと、レールの外側に向って約百八十センチという間隔をおいて言論による説得及び団結による示威のためにピケラインを張って貨車の入構を阻止することは正当な争議権の範疇のことであるから差しつかえないという仮処分の判決が出て、そうしてそれに従って組合側が行動をとっておった。今あなたの、国鉄当局の言い方を聞きますと、こういうふうな行動をとっておる組合員に対して警察当局が、ピケライン排除を行い、貨車を導入したというようにいわれておるわけでありますが、その点に関して、この仮処分の申し立ての却下と関連して、国鉄の方と警察当局とのそれぞれの立場の当時の説明をいただきたいと思います。
  61. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) ただいまお話のございました通り、まず、会社は九月二十八日に、送水路の妨害をやってくれるなということと、貨車を入れてくれということの仮処分申請をしたのでありますが、十月九日にそのこと自体は認められたのであります。しかしながら、事実上先ほどのお話のように入れないものですから、さらにその妨害を排除するということの仮処分申請をいたしましたところが、それに対しましては、ただいまのお話のように、それは妨害になっていないという、解釈のもとに却下をされております。その当時の事情を聞いてみますというと、ただいまお話のありましたように、線路から一メートル八十離れた所ですわり込んでおるために、これは裁判所としては、貨車を通そうとすれば通せるというようなこと及び水路による原木を中に入れるということは、その後、仮処分申請をしたあとに解決をしていたものですから、その両方とも却下をされたのであります。しかしながら、おととい及びきのうの状態は、その仮処分の却下があった後におきまして、その前の日に、それでは二メートルの所まで下らなければ貨車は入らないということを、これは国鉄当局からお話があるかと思いますが、そういう事情でありましたために、会社側が下請業者を雇い入れて、二メートルの所にさくを作ろうということで出動したのであります。それに対しまして、組合側が、これを妨害いたしましたために、そこで乱闘になったということがございまして、警察が出てそれを引き分けております。それは一昨々日のことであります。そして昨日になりますと、一メートル八十の所にすわっているだけではなしに、貨車が来ると、拝むようにして頭を前の方に下げる、みんなが。それで一メートル八十というのが一メートル八十でなくなるということや、あるいは主婦連の中でやはり線路の中に入り込んでそうして説得といいますか、通してくれるなというような行為に出ますために、やはりどうしても貨車が入れないという状態になったものですから、警察としては、それは明らかに違法な状態であるということで、一昨日七百名の出動をいたさせまして、実力でこれを排除しました。それから昨日も同様七百名の出動をいたしましたが、これは警官によって実力の制止をしないで貨車が入ったというような状態でございまして、その状態は先ほど国鉄からお話になりました通りでございます。
  62. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ただいまお話になった通りでございまして、一メートル八十と申します根拠その他につきましては、詳しく存じませんが、一メートル八十というのは、地上で一メートル八十だったと思います。ところが、私の方の車両を動かす場合には、地表面だけでは危いのでございまして、立体的に見ませんと、機関車、貨車等は背の高いものでございますので、足だけが一メートル八十というところでは、からだが前へ出たときには車両に接触するということでもって、現実に一メートル八十に立ち並びましても、上体を前に倒して、そして波状的に動くので、これはとても危なくて、私ども機関士としては責任を持って運転できないということでございます。場合によりましては、旗ざおがときどき倒れるというようなこともありまして、それから今にも線路に飛び込みそうな状況であるというようなことで、これは私どもといたしましては、人命の尊重という意味で、安全運転ができないという意味で、その際には入構をいたさなかったのであります。
  63. 横川正市

    横川正市君 警察当局はこの主文の中にありますように、ピケラインを張って貨車の入構を阻止することは正当なる争議権の範疇であるから、これについては差しつかえないという裁判所の却下理由というものがあるわけですね。あなたの言ってるのは一メートル八十センチが守られるか守られないかの問題で、警察官を七百名も動員をして、それを排除する、こういう立場上の問題と、それからもう一つは、申立人の却下された裁判所の判定というものとを、もう少し私は実情に即して解決することはできなかったのか、私はこの条文を見ただけでも、警察当局が七百名を動員してピケを排除したということは、一方的に会社側の言い分に対して、警察官がそれを正当と認めてピケを排除したというふうに言われても、これは仕方がないだろうし、ひいてはあなたの立場としてこの争議には介入しないという、公平な立場というものが、一方的なものの考え方でこれはくずれてしまったと言われても仕方がないんじゃないかと、私はそう思う。なぜかと言えば、ここにあるようにピケを張って貨車が入ってくるやつを阻止をして、そして入構させない。こういう行為は、正当な労働争議の範疇だからということで、執行吏妨害排除の命令の却下理由になっておる。この点が、実は今言われてるように、非常に機械的に頭が出たとかそれから旗ざおが出たとか何とかいうことよりも、根本問題として、私は営業線と会社線との関係で、これは団結権を持って、経営ができないという形で相手側に損害を与えることだけを唯一の団体行動として、争議行為というものは成り立ってるわけなんです。製品が第二組合の手によって、しかもこれだっておかしいわけですが、第二組合員の数は三分の一の数にも満たないような状態で、それが会社側と同一意思を疎通させて製品を作っている。それを搬出させるというような、そういうことが無制限に許されて、一体争議行為というものの実際的効果があがるかどうなのか、私はそういう点からいけば、これは団結権の問題から言ってみても、国鉄当局がいろいろ理由があるにしても、貨車を入れてくれというから会社線まで持ってきて、国鉄営業線まで持ってきて、それ以上は会社側人たちがどうにかして下さい、私の方じゃどうもこれ以上はどうにもなりませんという態度ならば私はわかるのだけれども、なおかつ、そこの中へ入っていくということになれば、明らかにこれは第一組合団結権に対して、あなたの方では不当に介入をしてるということにならないかどうか、この問題が一つと、もう一つは、国鉄当局がこの排除命令の却下の理由にあるピケラインに入って、貨車を入構することを阻止するという考えというものは、正当な争議行為なんだ、だからこれは差しつかえないのだと、こういうふうに言われている決定理由に対して、あなたの方は七百名も警官を動員して、そしてこれを排除してしまう、こういうやり方は、争議行為のあなたは干渉だと、こういうふうに思わないか。この二つの点についてお聞きしたい。
  64. 西田信一

    西田信一君 今のに関連して関連質問したいのですが、ただいま横川委員から御質問がありましたが、先ほど御当局の答弁によりますと、二十日までは線路の上に入ったり、線路の上に旗ざおを出したり、あるいは腰かけたりして、全然それは動かすことができない状態にあった、こういう御答弁があったのです。警備局長の先ほどの御答弁によると、それとは何か違うような御答弁があったように思います。そこで、今横川委員から関連してお尋ねがあったのですが、裁判所は九日に、妨害してはならないという決定を下しておる。その後、裁判官が現地に参りまして、得たと思いますが、一メートル八十の線を守れということで、一メートル八十の決定をいたした。その後の状況は、ただいま国鉄当局が先ほど答弁したように、ほとんどそれが守られておらなくて、常に貨車が入れない状態にあったということを、御答弁があったわけです。ここにこれは写真があります、新聞に出ておるのですが、こういう状態貨車を全然通さないわけです。そういう状態にあったんだと思いますが、先ほどの御答弁と非常に食い違いがあるのですが、これはどういうことか。
  65. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 私の方で受けておりまする報告では、九日の日に決定が行われましたあとにおきましては、一メートル八十の線で大体並んでおるので、警察としては何とか通ろうとすれば通れるのではないかというふうに警察は見ておった。それから裁判所としても、やはり同様な見解をとって、その次の申請を却下いたしておるのでありますから、それはたまに旗ざおが出たことがないとか、あるいは頭を下げたことがないとかいうことは私申し上げませんけれども、第二回目の申請の却下がありまするまでには、時期を見れば貨車は何とか入れるのではなかろうかと見ておったのが、道警察の立場でございます。
  66. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ただいまの点につきまして、私の方の報告によりますと、十三日から十四日、十三日までは一メートル八十の問題とかかわりなしに、専用線のうちに入ったりしたというふうに聞いております。十四日以降は、専用線をはさんで両側に立ち並びましたが、先ほど申し上げましたように、レールの上に足を上げる、あるいはまくら木に乗るという状況であったのです。  それから先ほどの御質問につきましてお答え申し上げますが、私どもの方では、専用線と申しまして、会社自分で持っておる線でございますが、この専用線の中の作業につきましては二種類ございまして、会社自身が動力を持っておる会社と、会社に動力がございませんで、私の方の機関車でもって入れかえするという契約をしておる会社と二種類ございます。そして正確に申し上げますると、私の方の運送責任といたしましては、いわゆる会社と私の方の授受点までの運送責任は、完了の時期でございますが、それからあとにつきましては、全然別途に専用線の契約を結んでおります。その契約に基きまして、私ども機関車を入れまして、その機関車で別途料金をとりまして、そして専用線の作業を私の方でやっている、その点自分の方で動力を持っている会社と、王子のように自分の方に動力のない会社と、専用線の作業のやり方が異なっております。
  67. 西田信一

    西田信一君 今御答弁がございましたのですけれども、これは現状の認識の十分ない御答弁ではないかと思うのです。と申しますことは、私は、この問、駅長に会って聞いてみましたが、駅長もあらゆる努力をしておるが、どうにもならないのだと言って、何といいますか、残念がっておりました。ここに写真も今ごらんになったあれですが、一メートル八十の所に一応並べることは並べるという、ところが、ここに地元の新聞と東京の朝日新聞がありますが、これは真相を伝えておるのです。十八日の状況ですが、これは警察官が出動する前の状況ですけれども、「ピケ隊が波をうって線路に押寄せ、これをとめるふりをした組合の幹部やピケ隊の指導者みたいな人が、線路に足をかけたり、旗を線路上に差出したり」しておる、こういうことを書いています。それから北海タイムスもやはり同じように、「一・八メートルの地点に石灰で白線を引いて整列、青旗が」機関車を動かそうというときに青旗を振りますね、「青旗が出ると前に飛び出してくるので機関車は一歩も進まず、」云々と書いてあります。こういう状態は、国鉄当局の言明によって明らかなように、完全に何といいますか、一・八メートルというものが守られない、全然通さないという状態であり、しかも駅長に向ってもずいぶんひどいことを言っているようです。で、駅長に向っては、こういう状態貨車を入れるならば入れてみろ、万一のことがあれば全部国鉄の責任であり、われわれはその責任を負えない、こういうようなことを言って、また、前衛に向って、ピケ隊に向っては一・八メートルまで下ってくれ、しかし命がけでやっているのだから各個人がどういうことをするかについては、われわれは予言者ではないのだから責任は負えないということを今駅長に言ってきたから、そのつもりでやってほしい、こういうようなことを言うておるようでございますが、これが完全にいわゆる裁判所の決定の線が守られたという状態ではなかったということは、この新聞の報道によりましても、また、今国鉄当局の御答弁によりましても明らかでございます。で、裁判所の決定の問題について私は別な意見があるわけでありますけれども、少くとも、しかし、法律によって裁判所が決定を下した、この裁判所の決定がこのように十何日間も阻止されておったと、警察当局は通れる状態であったと御答弁になったとすれば、これは現地認識が少し私は間違っていないか、国鉄当局はみずから今そういう状態であったということを言っておるわけであります。ですからして、こういう状態におかれておったということはまことに私は遺憾であり、法の秩序を守らない、こういう裁判所の決定に対してすらこれが守られないという状態では、これはゆゆしい問題ではないかというふうに実は考えておるわけですが、この点はいかがでございましょうか。
  68. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 事実の認定につきましては、もちろん私現地の認識はございません、見ておりませんから。しかし、私たちの方に参っておりまする連絡では、先ほど申し上げた通りでございまして、裁判所自身も第二の決定を下しまする際には、やはりそういうふうに認めて下しておるのでございますから、私どもとして今おっしゃったようなことがなかったとは言えないと思いまするけれども、何とか入れれば、第二の決定がありまするまでは何とか入れられたのじゃないかというのが、まあ北海道から受けている連絡でございまするので、この点は、ただいま御質問になりました点と多少食い違いまするから御不満かもしれませんけれども、さよう申し上げる以外はないと思うのであります。ただ、ただいま御質問の最後に、こういうふうに裁判所できめたことさえ守られないという、法の秩序を無視するという風潮があることはゆゆしい問題だというお話につきましては、私たちも全く同感であります。
  69. 横川正市

    横川正市君 これはたとえば西田委員の言われておる執達吏の執行が十何日事実上おくれたというのは、これはその執達吏の執行命令文に事実上その地域指定その他でもって不備があって、それで現地の弁護士と執達吏との間でいろいろ話し合った結果、間違いを認めて、そうしてその間違いで執行の日にちがおくれたのですよ。  それからもう一つは、私がさっき言っているのに答弁がないが、たとえば先ほど警察庁長官がおったときに私の方で質問いたしましたように、十八日の日に、室蘭の笹谷組という暴力団が六十名くらいでピケを攻撃するために入ってきて、そうしてそのピケを攻撃するために入ってきたときに、第一組合側から警察官を要請したのに警察官は出動しておらない、このときには。あとから三浦苫小牧の警察署長にその点についてのいろいろの抗議を行なっていたが、そういうような片面があるにかかわらず、片っ方は執達吏の執行内容について、明確に百八十センチという指摘の指定があった。しかもその中で言論とか事実上の行為をもって説得をするということは、団結の維持のためにこれは正当な労働行為なんだと、こういうふうに見て、そうして会社側が、あなたがさっき言ったように二メートルでなければだめだというふうに言っておるのを、百八十センチの間隔でいいのだということで却下をしたわけですね。そういうような問題に対しては、あなたの方は、今度は警察官を動員して、そうしてピケを排除してしまう、こういうことになれば、私は一方的に警察の行為というものは、これは争議介入しないという建前をとるべきなのに介入した、この結果にならないかと、事実上これは現地で行われた行為について、私たちはあなたの方の公正な、しかも公平な立場に立って、労働争議については介入しないという立場と違反をしていないかどうか、こういう点を聞いているわけなんですよ。西田さんの方は、それとは別に、立場を変えて物を判断をしているようなんだけれども、私たちは、現地の事実上の問題と照し合せて、警察官行為について行き過ぎがあったんじゃないか、しかも介入したという事実が出てきたんじゃないか、こういう点を聞いておるわけなんです。あなたの方も見解は、先ほども言うように、百八十センチで頭が揺れたとか、旗ざおが出たとか、そういうことだけで、事実上のピケを排除したか、それならば貨車の入構を阻止するという労働権を守る立場から出た行為については、警察当局は一体どういうふうにして守ってやったのか、その点が全然出てきておらぬと思う。一方的に会社側の言うことに対してあなたたちは行為をしたというふうにしかとれないんじゃないか、こういうふうに私たちは思うのだけれども、当局としてはどういうふうに考えているか。
  70. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) ただいまの御質問の一番最初の点は、今度の貨車の問題じゃなしに、おそらく九月十五日に実力を行使して第二組合員を中に入れたときの話じゃないかと思いまするが、それはお話の通り決定文の中で朱線を引いたところがあいまいでございましたために、それは執行吏組合側の弁護士との間にいろいろ法律上のやりとりがございまして、それがまた仮処分決定がありましても、警察としましては、執行吏に応援する義務がございますが、応援の仕方なり方法なり技術なんということにつきましては、警察上の判断からやることでございまして、時日が相当おくれましたこともこれは事実でございます。  今の第二の、貨車の乗り入れの問題でございまするが、これは私は単に頭を下げた、それで百八十センチというものが百六十センチになったということを申し上げるのじゃなしに、そういうこともあり、かつ、線路の上にすわり込んだ者もある、事実上貨車が通れなかった、これは明らかに国鉄の業務に対する威力業務妨害罪になるので、しかもほうっておけばすわっている人の生命、身体というものに明らかに危害が及ぶ、こういうふうに判断いたしまして、実力を行使したのでありまするから、これは別に他意はないのであります。その前提になっておりまするただいまの御質問は、第二の仮処分申請に対する却下の点だけを取り上げておられまするが、その前に、十月九日に出ました仮処分決定におきましては、やはりそういうものを妨害して入れないようにしちゃいかぬ。ただし、団結の威力を示したり、説得をしたりすることはこの限りじゃないということを書いてあるのでありまして、入れなくてよいという決定一つも出ておらぬのであります。
  71. 西田信一

    西田信一君 私は、ただいまの御答弁で、その通りでございまするからそれ以上はお聞きいたしませんが、そこで、二十一日の状態、二十二日の状態について御説明がございました。二十一日については八百人のピケ隊がピケラインを引いて、しかも妨害したが、一千名の警官の出動によって貨車が入構できたということでございます。それから二十二日についてもおそらく警察官の出動があったのだと思いますが、これは御答弁がなかったからわかりませんが、そこで、二十二日、私はこういう事実を聞いたのですが、これは事実かどうかお聞きしたいのです。  それは第一回目を入れまして、入れるにも二時間か二時間なんぼ、三時間ぐらいかかるらしい。それで入れて、出るときも同様な状態であったらしいが、また、入っておそくなってから機関車だけ帰ってきた。機関車だけ帰ったところが、今度は機関車を取り囲んでとめて、機関士とか操車係とかが乗っておるのを機関車から引きずりおろして暴行を加えた。それで何か検挙者も出たということを情報として私は聞いておりますが、こういう事実があったのかどうか。  それからまた、きのうの朝、駅長室に多数の人が行って、駅長を駅長室にカン詰めにして何か強硬な談判をされたということでありますが、そういう事実があったかどうかということを私はお聞きしたい。要するにきのうの状況はどうであったかということです。
  72. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) きのうの事実につきましてただいま御質問のございました中で、引きずりおろされたかどうかということは、引きずりおろされたという連絡はございません。ただ、機関車の中に石を投げ込まれたということや、あるいは助役が足をけられたということがございまして、目下だれがやったか、けられたことが事実であるかどうかというようなことにつきましては、真相を調査中でございます。
  73. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 昨日の状況につきましては先ほどちょっと申し上げましたが、午前九時二十分に十六両の空車をもちまして受授線点から会社の方に向いまして入線いたしましたところが、ピケ隊員約十名が機関車乗務員を説得をするのだという理由のもとに線路上に入って参りまして、その後、いわゆる波打ち戦術というような戦術になりましたので、九時三十分に警察官の出動を行いまして、そして十時半に先ほどのお話の一メートル八十の禁止区域を石灰でもう一ぺん明瞭にいたしまして、そうして十一時四十五分に先ほどの十六両の貨車を入構させたわけでございます。  駅長が駅長室で云々というようなお話につきましては、まだ私の方は報告は受けておりません。  昨日の午後十五時二十五分に第二回目の貨車十六両をもちまして参りましたが、このときは警察官六名の出動によって入線いたしております。
  74. 小柳勇

    ○小柳勇君 私は少し論議の仕方が、たとえばわれわれは幾らでも、うわさであるいは情報で聞いたことがたくさんあるのだ。それを一々ここへ持ってきて、そしてあたかもあったように質問して、それはどうでしたか、どうでしたかと言って論議しておったら、今の現地争議というものが、あたかもそういうものの暴力行為だけによってやっておるようなことで、ちっとも解決の糸口を見出せないし、論議というものはただ時間を空費するだけだと思う。だから、事態をもっとこういうようなことで論議したいならば、もっと具体的にはっきり証拠のあるもので、しかも一体これをどうするかという具体的な問題についての建設的な論議ならやりますよ。もしそういうことを許すならば幾らでもやります。時間がないから、私は本質論に入って、われわれにもたくさんあるから、われわれにも発言ができるように議事進行をはかっていただきたいと思います。
  75. 西田信一

    西田信一君 私は事実のないことを申し上げておるのではなくて、事実あったことを——今まで事実のないことは一つもなかったと思うのです。  そこで、ただいまの貨車はきのうの夕方に起った事件でありまして、これはまだこちらに十分連絡がないようですから十分な御答弁がないのはやむを得ないと思いますが、そういう連絡があったわけでございます。そこで、そういう状況であるといたしますれば、今後、国鉄当局としては、きょう以後国鉄当局がどういう見通しを持っておられるかということをお聞きしたいのですが、警察官等の出動要請をしなくても十分に秩序が保たれて、十分輸送路の確保ができるという見通しを持っておられるか。それとも非常にそれは困難であるという見通しを持っておられるか、まずお伺いしたいのです。
  76. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ただいままで、二十一日から本日までの三日間でございます。きょうはまだどういうふうな状況か聞いておりませんが、今後の問題につきましては、やはりそのときそのときの状況いかんではないかというふうに考えられまして、今の御質問に対して、私といたしましては、明確な将来の見通しを申し上げるだけの段階に立ち至っておりません。
  77. 西田信一

    西田信一君 国鉄当局としては、将来の問題でございますから、的確な見通しを加えることは、それは困難と思いますが、私先ほどからのずっと答弁を聞いておりまして、きのうもそういう事件がなお起きておるという状況から見ますると、判断をいたしまするならば、やはりこれは平穏に輸送路の確保ができる、また、裁判所の決定が守られるというふうに考えたいが、それはなかなか困難なことが起きるのではないか、そういう守られない事態が起きるのではないかという懸念を持つわけでございますが、警察当局は将来の事態に対してどのようにお考えになっておられますか、お考えをお聞きしたい。
  78. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 御質問の御意見の通りだというふうに考えておりますので、まことに困ったことだと、こういうふうに思っておるわけであります。
  79. 西田信一

    西田信一君 先ほど横川委員からの御指摘がございましたが、裁判所の執行命令の却下についてちょっと私疑問をただしておきたいのでございます。それはもう先ほど警備局長御答弁になりましたように、要するに、百八十センチ以内には入っておらないのだ、そうして貨車の運行には危険がないという状態であり、その程度のピケを張っても貨車の入構を阻止するということにはならない、この程度のことは争議権の範囲を越えるものではないという判断のもとに、第一印象のもとに、要するに最初の、妨害をしてはならないという、その最初の決定をくつがえすものではない、その範囲内においてこれは守られておるとの現地認識に立って、これはその必要がないという決定を下されたものと考えます。しかしながら、私ちょっと疑問に思いますことが一つございます。これはむしろ法務省御当局にお聞きした方がよろしいかと思うのでございますが、この却下の理由の一つに、要するに、要点を申し上げますと、物に対しての排除はできるけれども人体に対しての違反行為を除くことは許されないという、現行法上いわゆる執行吏執行法ですか、これだと思いますが、人間の紛争解決のためにこういうような強制力を加えることを内容とした処分はできないのだという、こういう理由をあげておられるようでございます。これは私ちょっとよくわからないのでございますが、最初の第一回目の入構のときの仮処分は、これは要するにピケ隊を排除して入るわけでございますから、人間に対するところの処分を求めたわけで、これに対して札幌地裁から代替執行決定がなされた。ところが、同じ裁判所——札幌地裁でありますけれども、今度はやはりこの貨車を入れることについてこのピケ隊、要するに、人的妨害に対してこれを排除することは、これは現行法上許されないのだという、同じ裁判所が今度の理由についてあげておるというところが私には理解できがたいのでありまして、これはいろいろ学説があるようにも聞いておりまするけれども、こういうことでありまするならば、ちょっとこれは将来大きな前例として問題になるのではないかというように考えます。しかし、これはもちろん裁判所は特別の権限を持っておるわけでありますから、裁判所の決定に対してどうこうということはこれはもちろん言えませんけれども、一体法律的に解釈していったらどうであるかということについて何かお考えがございまするならば、一つ伺いたいのでございます。
  80. 平賀健太

    説明員平賀健太君) ただいまお話しのように、裁判所の執行命令の申し立ての却下の決定の理由の中には、人体に対して直接の強制力を及ぼす執行処分はできないという見解が述べられておるようでありますが、それはまさしくその通りでございまして、ただ、執行吏が強制執行をする、あるいは本件の事件のように、会社側貨車構内に入れる、そういう行為をします場合に、仮処分の被申請人の方の側で実力をもって抵抗をするというような場合に、その抵抗を排除することはこれはできるわけでございます。その抵抗排除をいたします場合には、執行吏警察官の援助も求め得るという規定が手続法の中にあるわけでございます。しかし、たとえばピケを組んでおる。それを解散しろというような直接の強制力を持ち得る処分を執行行為として命ずるということは、これはできないという解釈になるかと思うのであります。ちょっとくどくなりましたけれども、言いかえますと、あすこにピケを組んでおるからあれを解けというような、そういう執行処分はできない。ただ、執行吏が強制執行としてある処分をしようとしておる、あるいは仮処分申請人側がある行為を、許された行為をしようとしておる、被申請人側はそれを受忍しなくてはいけない。そういう行為をしようとする場合に、実力をもって抵抗された場合に、その抵抗を排除することはこれはできるのであります。で、その裁判所の決定に述べられております法律論もその限りにおいて間違いではないというふうに私どもとしては考えております。
  81. 西田信一

    西田信一君 どうも頭が悪いからか知らぬが、理解できないのですけれども、この場合のこの例をとることはいいか悪いかわかりませんけれども、これは最近起きた実例ですから、例にとって、将来の問題としてこれはお聞きするのでありますけれども、要するに、妨害排除決定が下された。その後、裁判所が現地に行って一・八メートルという線を裁判所が決定をした。しかしながら、それが守られない。さっきはっきり国鉄当局から御答弁がありましたように、線路の中に入るとか、旗ざおを出すとか、足を入れるとかということがずっと続いた。そして申請人は、申立人は、所属組合員もしくは第三者をして工場東北門を通る貨車を線路上及び線路敷地内にピケを張り、もしくは器材を用いて貨車の運行を妨害する行為を排除するということを申請した。要するに、裁判所の決定が守られたならば問題はないと思う。その中における妨害を排除してほしい、そのために執行吏をしてもらいたいという申し立てだと思う。それで、今のお話しのように、ピケ隊を解けとかということでなしに、ある限界内におけるところの妨害を排除するということに対する申請でございますから、私はそれが今の御答弁とはこれは事実に基いてあれするならば、ちょっと違うのではないか。そうすると、すでに最初に妨害排除決定は出ておるのですから、それを有効に妨害排除をしたいという点に対する執行吏の代替執行でありますが、それはどうも今の御答弁では納得がいかないのですが、事実に基いて考えたときにはどういうことになりましょう。
  82. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 具体的な例における裁判が妥当かどうか(西田信一君「私は妥当かどうかは聞いておりません」と述ぶ)という点は、私はちょっと意見を申し上げることを控えたいと思いますが、貨車を入れたり出したりする、それに対して組合側の方では妨害をしてはならないという仮処分は、すでに、まあ先ほどのお話しを伺っておりますと、本月の九日に出ておるのでありまして、私の考えに従いますと、それだけですでに十分ではないか。でありますから組合側としましては、会社側の方で貨車の出し入れをすることを組合側としては受忍しなくちゃならない。法律で使っている言葉を申しますと、耐忍しなければならないということになるわけであります。被申請人側におきましては耐忍しなければならない行為申請人側でいたします場合に抵抗がある。実力で抵抗される。そういう場合には、法律の規定によりますと、申請人側の方では執行吏の立ち会いを求めることができるわけです。執行吏がそれを阻止する。それを聞かない場合には警察官の援助も要請することができるということになっておるわけであります。でありますから、そういう方法申請人側としてはとればいいわけで、あらためてこういう執行命令の申し立てをするまでもなかったのではないかと私は思うのであります。適切な方法が手続法の中でも規定がありますので、そこまでする必要がなかったのではないか。ただ、この処分の執行命令の申し立てを却下しておりますその裁判の当否になりますと、これは私からは申し上げられないとお答えをするよりほかないのであります。
  83. 西田信一

    西田信一君 私は裁判の当否について触れるつもりはなく、また、そういう質問をしたのではないのでありますが、ただいまお聞きしたのは、そういう裁判所の決定した範囲内の執行ができないということにおいて、その執行吏に代替執行してもらいたいということの申請でございますから、問題はないのじゃないかと思うのですが、私はこういうことをやる必要があったのかなかったのかという問題は別にして、それは問題は別だと思うのですよ。  そこで、これ以上お聞きしてもこれはちょっと無理かと思いますから質問はいたしませんけれども、ただいまの御答弁によると、妨害を排除する、しかもその後、裁判所から一・八メートルと線をした。そういう場合には、執行吏の代替執行の申し立てをしなくても、会社が自由に執行吏を呼んで、そうして執行吏を使ってやるということはできるということなんですか。そうなんですか。
  84. 平賀健太

    説明員平賀健太君) さようでございます。
  85. 西田信一

    西田信一君 もう間もなく終りますが、最後に労働省に伺いますが、実は労働争議行為限界について一つ伺いたいのでございますが、現在までの状況を見ますと、会社のぐるり全部を第一組合員ピケを張っている。そのピケの張り方は器物を用いたりなんかもいたしております。鉄線なんかも張っている。有刺鉄線も張っているということもありますし、周囲に小屋を設けまして、たくさんの小屋を設けて昼夜交代なんかでやっている。中にはいろいろ、全部ではありませんが、こん棒なんかのようなものを持っている人も見受けるのですが、そういう状態で出入りは完全にとめられておる状態です。非組合員の出入りは苫小牧ではさほどひどくないが、春日井では非組合員の出入りもなかなか困難であるということです。苫小牧では食糧の、主食は入っているけれども、その他の副食物といいますか、食糧についてもなかなかこれは入れることが困難で、御承知のように、ヘリコプターを使って物を入れるということをやっておるようでありますが、こういうような状態というものは、いわゆる団結による利益といいますか、許された限界内の行為であるかどうかということ、こういう点はどういうふうにお考えになっておるのでございましょうか。
  86. 亀井光

    政府委員亀井光君) ピケッティングの限界につきましては、先ほど申し上げましたように、平和的説得または団結権の誇示という限界を越えてはならないというのがわれわれのピケッティングに対する解釈でございます。従いまして、その限界を越えまして出入を暴行脅迫とかあるいは不法な実力行使によって阻止するというふうなことは、ピケの正当性の限界を越えるというふうに私ども考えております。
  87. 西田信一

    西田信一君 次に、これは労働省警察庁にお聞きいたしますが、今度の争議についてはずいぶん外部のいろいろな団体が入ってきて、これを何か指導するとか支援するとか、いろいろやっておるようでございます。で、共産党なども相当活発に動いておるということも聞いておりますが、どういうような団体がどのように支援をしており、それが私は結局その争議を、自主解決をおくらせておる結果を招いておると思うからお聞きするのでありますが、どういう状況であるか、その状況労働省並びに警察当局に把握しておられるならば、その外部のいろいろ各団体あるいはまた、オルグ団等を含めましてどういう状況であったのか、一つこの機会に伺っておきたいのであります。
  88. 亀井光

    政府委員亀井光君) 私らの承知しておる範囲におきましては、総評におきましては、全面的に今度の王子争議に対して第一組合側を支援するという決定をいたしております。そのためのカンパその他も決定をいたしております。紙パ労連がその上部団体としまして、第一組合に応援をいたしますこともこれまた当然なことと思いますが、そのほかに、総評の決定に基きまして現地の国鉄労働組合あるいは炭労というふうな団体が、組合が応援に参加をいたしておりますることも承知をいたしておりまするが、今お話の共産党がこの問題にタッチしているかどうかということにつきましては、詳細なことは承知いたしておりません。
  89. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 私の方で得ておりまする情報でも、ただいま労政局長の答弁の通りでございまして、炭労なり、国鉄なりが中心となって応援をしておること、具体的にはその炭労なり、国鉄の中におきまする党員のもちろん活動というものはございますけれども、共産党自身として、党としてそれをどういうふうに応援しているかというようなことは具体的に聞いておりません。ことに九月十五日の仮処分執行の当日のごときは、やはり第一組合は第二組合員の出入を阻止しちゃいかぬという決定でありましたために、主として前面に出てこれを抵抗するという挙に出ましたのは、そういう応援団体が多かったのであります。平常の場合におきましても応援団体はもちろん行っておりますが、それはその日その日によってどれぐらいの人数がこれを応援しているかということは不明であります。
  90. 西田信一

    西田信一君 最後に、警察庁一つお聞きしたいのですが、先ほどの御答弁によりましても、この争議のために相当多数の警察官現地に動員せざるを得なかった。これはやむを得なかったことと思いますが、何しろ北海道は地域が非常に広い、そこに五千三百か五千五百でございますか、その程度の警察が機動力も非常に弱いことと思います。そこで、こういうような争議一つ起きて、そのような警察力を動員しなければ治安が維持できないというような状態であるということは、これはもう今回の事例がはっきり示しておる。そこで、こういうことは考えたくありませんけれども、もしこのような争議がかりに同時に多発と言わなくても、もう一カ所起きたという場合があったといたしまするならば、北海道治安というものは、非常に私は特殊事情にあるだけに非常に不安であるというふうに考えられるわけであります。そこで、将来それに対処するところの対策といいますか、いろいろこういう労働争議ばかりじゃありませんけれども、そういう一つの、今度の争議の体験にかんがみまして、北海道治安というものは現地に住んでおるわれわれとしては非常に不安である。また、現地苫小牧などは別な意味において非常に不安でありますけれども、また、その警察力が動員されるということによって、他の地方にも不安があると思います。そういうようなことでありまして、警察力がもっと充実されなければならないというようなことを考えておられるのか。また装備の点なんかどういうふうに考えておられるのか。あのような広いところであって、今回の動員でも二千名もおらないとすれば、そうした遠方から引っぱって、連れてこられたと思いますが、そういうことに対して何か緊急な、これ以上の突発的な何か事が起きたような場合に、果して北海道治安というものが完全に今の警察力で維持できるかどうかということについて、非常に私は不安を感じておるのでありますが、警察御当局はどういう御信念をもって、どういうふうな対策を、対策といいますか、考え方を持っておられるのかということを一つ最後にお伺いいたします。
  91. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 御指摘通り、ああいう事案北海道に数カ所も起るというような場合におきましては、まことにそれは不安でございます。そこで一番考えられることは、人口との比例によってああいうところに警察官の数がきまっておるのでありまするけれども警察官自身の数が絶対数として各地とも十分でないという点は私たちも痛感いたしております。しかし、これは急に幾ら増すというようなこともデリケートな点もございましょうから、どうなるか、これは希望としてはもっと増さなければいかぬと、こういうふうに考えまするし、なお、機動力につきましても、警察全体として五カ年計画というようなものを立てて、できるだけ現在の機動力をもう少し整備していこうという計画を立てております。  それから警備実施のやり方につきましてもなお検討の余地があろうかと思います。たとえば、九月十五日の警備実施は、相手方が四千名近くございましたのに二千名を投入している。これは相手方の数より警察官の数が少かった事例でございますが、他の場合におきましてはほぼ同数ぐらい、これは事故が起らないようにということを配慮いたしまして、相当数の警察官派遣するという事例になっておりまするが、これも少数のもので何とか工夫ができないものかというようにただいま検討中でございます。  なおまた、現場の押え方につきましても、これはこの後、御審議を願うわけでありまするが、事件が起った現場、非常に差し迫ったところでということを一歩、もう少しでも離れたところで何らかの制止ができればまたおのずからやりようもあろう、こういうことを考えておるわけであります。
  92. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、先ほどから西田委員質問を聞いておりまして、この争議というものがどうして起きたか、ここの問題が一つも出てこなかった。争議を警察でも、ここにおる人はやっぱり早く争議解決するということがあらゆる問題、いろいろな問題が起きておっても、これが根本の問題である。この問題については触れられないで、それで千枚通しが苫小牧の町で売り切れになったということを言われて、いかにも労働者がむちゃくちゃをやっているような印象をもってここで質疑が行われておる。私は非常に残念だと思うのです。労働者は、今のこの争議の形態を見てみましても、かつて二十八年以来ストライキ行為というようなものが起きた組合でもない。会社側が掲げているこの事案、賃金の問題と作業状況の問題を見てみても、週に一回休むというのを、十二日休まして、オーバー・タイムの賃金が七千円あるやつをなくしてしまおう、そういうところに合理化の焦点をおいて、しかし、それも六月の半ばになりますと、組合は何とか会社側の言い分も聞いて、そうしてこの会社の操業案と賃金の問題との関係において話し合いをつけるために努力をしている。もうただいま妥結の瞬間にまでなってきたら今度は労働協約案を持ってきて、根本的には労働組合をつぶそう、とにかく要求をするような形の労働組合をつぶそうというところに根本の問題があるようであります。そこから出てくる一番やっぱり大きな問題は、今日の日本労働争議全体を見てみても、大企業にはそういう例は少いのでありますけれども、深刻な争議になっている。中小企業以下の争議というものはほとんど団体交渉の拒否です。相手と話し合わない、自分の言い分を聞かない限りは問題を解決しないという立場から、争議というものがほとんど深刻になっているというのが現状なのです。そのような経路をここでたどって、話し合いも交渉も一回も応じない——一回、九月の初めに、何とか今先ほど西田委員からありましたが、町の方々の何とか争議解決したいという要望から道庁、要するに、知事の話があったとかいうような話がありましたけれども、とにかく道議会あげて道庁あげて、この問題は解決しなければならぬということで、労働省や道庁と、そういうものがこの調整事項を扱う立場じゃありませんから、やっぱり労働委員会を通じて道労委の問題、または全国的事案だから中労委の問題という工合にこれは上ってきている。ところが、中労委で九月の初めになってこの団体交渉——労組法の六条、七条のこの不当労働行為の問題が具体的になりそうになると、形だけの団体交渉を九月の三日ですか、ちょっと開いて、それじゃ中労委団体交渉が開かれるならばちょっと見てみようと言ったら、もうそのままほったらかして、労働者の血が出てもいいのだというような暴言を吐いて、一方的にこの話し合いの場を作らない、団体交渉を作らない、こういう立場会社側はとって今まできている。この問題を見てみても、私は非常に客観的に見て問題があると思う。たとえば、もう一つの問題を取り上げて見ると、たとえば今度の会社側状況はどうかというような問題になってくると、紙業者は操業を短縮してやって参る、で今日その紙の値段は値上りをしている、こういう状態に押し込んでいっている。紙自体の国内の需要の関係から見ても相当な利益を上げている。それだけ値上げをしなければならない需要の関係から言って、国内でやっぱり紙の需要に応じなければならぬという社会的責任が、私は業者の中にはあってしかるべきだと思う。そういう問題に触れると、一方的にとにかく組合を弱体にし、つぶす、そういう頭を下げてこない限りは団体交渉にも応じない、こういう立場争議というものが行われておる。そこで、働いている労働者はどうだという問題に入ってくると、こういう問題こそが警察との質疑の中に、労働省との質疑の中にも現われて、今後の問題として、やっぱり問題の争議解決ということがやっぱり一日も早からんことが願われている。私はそうだと思う。みんなもそうだと思う。その問題には触れられなかった。そうしていろいろといかにも労働者がけしからぬ、労働組合がけしからぬという一点で、こういう質疑をされて、非常に私は残念だと思う。これは西田委員に私は文句を言うわけではない。ないけれども、われわれ社会労働委員は、これは調査事項を扱う立法府ですから、これを調査するなら、今の争議はどうなっている、どういう工合にしたらこの争議解決するか、できるだけ一つ現地争議の焦点に立って、トラブルがないように円満に自粛して、具体的に円満にどうしたら解決されていくかというところに、私は、社会労働委員会というものは焦点を合すべきではないかと私はそう考えておる。だから、私は労働省にどうせい、こうせいとは、その労働者自身が調整のまん中に入ってやれとは言いませんけれども、八月の二十六日に社会労働委員会を開いて、ここでこの問題を取り上げ、八月二十六日の社会労働委員会では、何といたしましても、これはやっぱりその調整機構である道労委や中労委を中心に、この問題の解決のために努力をみんなしてしなければならぬじゃないか、みんながその努力をすることによって、この争議解決することによっていろいろ問題が起きても、また、起きたような問題がもとに復するのだから、労使関係だから、生産についてもらう、これは経済的に、国内の経済関係でもあることだから、重要な産業であるからということからして私たちはあのとき問題にしたと思っているのです。ところが、その根本的な論議をそこでしておって、きょうここでは今のような論議で終末をつけるということは、私は非常に残念だと思う。だから、労働省としては、先ほど報告がありました、簡単な報告一つありました。ありましたけれども、私は、今後会社不当労働行為そのものは、審議事項としてそれは公益委員会によってやれるでしょう。しかし、根本的な出発点は調整事項として出てきている争議なんだから、これはどういう工合に、中労委そのものはどういう工合にやろうとしておるか、道労委はどうやろうとしておるか、労働省はどう見ておるのか、こうい今問題を、争議解決の問題としてこの問題を、ちょっとお話を承わっておきたいと思います。
  93. 亀井光

    政府委員亀井光君) 私らもこの百日に近い王子製紙争議が一日も早く解決せられますことを念願いたしておるものでありまして、それにつきましては、藤田先生に劣らぬことと考えるのでございます。ただ問題は、先ほど来御説明を申し上げましたように、やはりいろいろな条件というものがその中に入っておりまして、われわれは行政の立場から直接介入しないという立場ではございますが、しかし、できるだけ労使の中で解決点が見出されるようにという気持から、労使双方をすでに数回にわたりまして招致して、いろいろ事情聴取もいたしておりますし、また、中労委も同じような考え方から事情の聴取をいたして参ったわけでございまするが、双方の中で、特にまあ会社側におきましては、自主解決という線を非常に強く主張をいたしまして、中労委の事情聴取におきましても、その中労委の引き続き行われるだろうと予想されておりましたあっせんその他に応じないという立場を堅持しております。われわれとしましては、できるだけそれらの会社主張等についてもいろいろ意見を聞き、また、われわれも意見を述べて参ってきておりまするが、まだそのきっかけが完全についたとは申し上げかねる今日の段階でございまするが、われわれとしましても、引き続きこのような努力は続けて参りたいというふうに考えております。
  94. 西田信一

    西田信一君 ただいま私の質問態度についてお話が述べられたようでありますけれども、私も決してただいま御指摘のような気持を持っておらないのだということではないのでありまして、むしろ私は現地に住んでいる市民の一人であるのでございまして、一日も早くこの問題が解決するように願っておることは、決して私は人後に落ちない気持を持っております。また、実際にあの第一組合、第二組合、もちろん外部の人もおりますが、お互い同士がほんとうに憎しみ合って——ほんとうの憎しみじゃないと思いますけれども、形の上から見るとあのような乱闘を繰り返し、もうほとんど半死半生の状態お互いになり合っておるという状態は、これはもう黙視するにしのびない。まあ余談になりますが、私はあそこのアイス・ホッケー・チームを何十年も育ててきたのです。これが、あのスポーツでありながら、二つに分れていがみ合っているというような状態は、実際自分としてもそういう面でも情ないと思っております。やはり市民だって迷惑を受けておりまして、私ども会社側にも組合側にも何とか解決ができるように努力をしてもらいたいということはしばしば申し上げておる。会社側も決して、今お話がありました第一組合をつぶしてしまうということは一ぺんも聞いたことはありません。現にそういうことは言っておらない。ただ自主的に解決をしたいのだという考えは持っているようでございまして、しかしながら、今のような状態では、ああいう状態では、何をやってもいいのだというような考え方を持っておられるのだと思われるような行動が頻発するような状態では、これはとても団体交渉をやっても意味がない、やれないのだ、こういう態度で、いつも団体交渉をやりたいということを会社側がしばしば申しております、何といいますか、そういう意味からも、先ほど外部の団体がどうのこうのとお聞きしましたのは、なるべくそういう状態でなくて、組合会社とは話し合いをして、そうして一日も早く解決するということを望んでおるから、私は申し上げたのでありますけれども、実際には相当に外部から来られた方々が、私も聞いておって、これは無責任だと思われるようなことをどんどん言っておられまして、そういうことが、たとえば主婦連なんかかんかんになっているのは、非常に、何といいますか、そういう方々の言動そのままうのみにして、そうしてああいうような言動に出ておられるという面が非常に多いのです、そういう意味から申しまして、私は、ただいま申し上げたような、こういうことがなくなれば、そうすればこれは団体交渉も行われましょうし、また、お互いの意思の疎通もできるであろう、こういう前提に立って、こういうことがなくなるようにしたい。だから警察当局もただ取り締るだけではなくて、むしろ進んでそういうことの行為を慎しむように、一つできるだけの努力をしてもらいたいということを先ほども申し上げたつもりでございまして、決してここでそういう事件だけを取り上げてどうのこうのという気持ではない。これは私は現地に住んでおる者といたしまして、まことに残念に思っておるし、また、一日も早く解決を……。この間も第一組合の人と会ってきました、二、三日前。そうして第一組合の方々からも何とか一つ、私どももあなたに一票入れたのだという話も出て、だから何とか一つ解決してほしいという話もあって、お互い解決しようじゃないかということを話し合ったくらいでございまして、決して一方的に非難するとか、一方的に取り上げてどうこうするというような考え方で申しておるのではないということを一つはっきり申し上げておきたいし、同時に、労働省当局に対しましても、また、警察当局に対しましても、政府機関におかれましても、一つできるだけこの問題が早く解決する方向にあらゆる御努力を願いたいということを私はこの機会に付言いたしまして、決して今御指摘になったように、一方的な見解に立っての質問ではないということを一つ御了解を願いたい。
  95. 横川正市

    横川正市君 西田さんの問題のとらえ方に対して、私は、実は一番最初私が関連したように、今の最後のやつが出てくるなら、私は何も途中からとやかく言わないのですよ。ことに現地状態からいきましても、第一組合にしても、第二組合にしても、それぞれ私どもどういう形にしろ、憎いとか、あるいはかわいいとかいう関係はないわけですよ。問題はやはり、王子の町は紙の町と言われるくらい、王子それ自体の発展とともに苫小牧発展というものがあったと思うのだ。また、その王子の貢献してきた事態というのはそれはやはり相当大きかったと思うのです。ただその中で、一番最初指摘したように、この労働協約改訂という問題が中心になっているわけですね。しかもそれは組合側から提起した問題ではなしに、会社側から提起した問題なんです。その他の問題でこれだけの大きな争議になるような要素というのは全然私はなかったと思うのであります。一方的な会社側の問題のとらえ方と、それから、自分が言えば組合側は何でも聞くだろうという思い上りが、私はこの争議をこういうふうに悪化させ、しかも長期化させてきているのだと、こういうふうに私どもは見れるわけですよ。そういう点を第一組合人たちは、あなたが行ったときに歓迎するように、一日も早く解決したいということで第三者介入を、これを何回も期待をし、しかも事実上これは申請もしているわけですよ。ところが、会社側が一方的にこれを拒否して、そうして自主解決ということは、これは言い直せば、組合側が頭を下げて来ることなんだというような態度で、争議行為というものをここまで紛糾させてきているのだ。この出発点というものを、私は、王子の場合にはよく心得ておらなければ、末梢的な現象だけじゃ問題の解決にはならないのじゃないかと、こういうふうに思うのであります。そういうことならば、私はあなたと同じように努力する方向というのは当然出てくるだろうと、こう思っておるわけです。
  96. 久保等

    委員長久保等君) 速記やめて下さい。    〔速記中止〕
  97. 久保等

    委員長久保等君) 速記起して。
  98. 西田信一

    西田信一君 今討論する気持はありません。しかしながら、私の質問全体を通して一つ御当局に御理解願いたいことは、今西田質問は一方的であったということでありますけれども、また、今の労働協約改訂が動機であったとおっしゃられますけれども、私はまたもう少し本質的な、その現象のもっと前の現象がたくさんある。そういうことで、これはやはり労使の問題に介入する気持はないのでありますが、決して私は現地に長くおりますから、一方的な見方をしておらぬつもりです。なぜこういう状態になってきたかという長い歴史の経緯があるわけでありますから、そういうことについては、私は決して一方的な物の見方をしておらない。ただ、現地状況がこういう状況であって、そのためにあるいは会社との正常な形における交渉もできないという状態になって、それをとり除くこと、また、そういう気持に組合側がなってもらわなければならないし、そういうことでなければこれはなかなか解決点を見出すことが困難であるという前提に立っての質問でございまするからして、横川委員にもその点十分に御理解願いたいし、また、政府当局におかれましても、一つそういう立場に立っての質問であり、いろいろな点で希望を申し上げたのはそういう趣旨でございますから、十分に一つその点の御理解を賜わりたいということをつけ加えて申し上げておきます。
  99. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いろいろ西田委員からの御意見が今もありました。しかし、この争議は、具体的にストに入ったのは七月十八日なんです。ところが、六月十七日にこの話がほとんど妥結点までいっている。それを一方的に排除してしまって、たとえば第二組合を、いろいろの不当労働行為として組合側申請をいたしている。その不当労働行為をだんだんと積み上げて、片方ではいく。片方では自主解決するというのは、団体交渉しなければ自主解決できないです。その団体交渉を拒否しておって、そうしてこの不当労働行為の審査案件というのは地労委と、中労委に託されているわけです。そういう問題が明らかになってくれば、たとえば七条二項の不当労働行為の問題が、団体交渉の問題だけでも明らかになってきたら団体交渉せざるを得ないような調整事項としてはなってくるのです。その問題も私は労働省に聞きたい。これは中労委地労委から聞いた方がいいかもしれませんが、おられぬから私は聞きたいのだが、このたくさんの不当労働行為事案が今まだ結論が出る段階にない。しかし、自主解決するという一つの唯一の理由で会社がいるなら、なぜこの団体交渉拒否の、七条二項の不当労働行為事案というものは単純で簡単なものなんですから、なぜ早く問題の解決を、結論を出して、そうして自主交渉自主解決の場を作らぬか。もう十月も末です。十月も終りなのに六月から一つ——九月の三日にちょっとやっただけで、会社がやるだろうということで、中労委も手を引いた。自主解決するといって盛んに宣伝するなら、なぜそういう道を調整機関がつけないか。ほかの不当労働行為の案件はたくさんあります。これも早急に解決するのは当然でございますけれども、少くともこの案件くらいは早く結論を出さないか。何か知らぬけれども、みんな寄ってこの争議を見ておって、いろいろの問題が出てくるようなところをつつき回している。こういうような格好でこの争議がいつになったら解決するか。だから、私は要するに、なぜ労働委員会の、公益委員会不当労働行為事項のこの審議をなぜ早急にやって、少くともこの団体交渉の拒否の問題だけでもなぜ早く解決しないか、自主解決をするということを唯一の看板にしているのだから、その道をつけてやらなければならぬ、それが一番言いたかった。そのために八月二十六日に社会労働委員会を開いて、そういう案件をあげて、争議をいかに解決するかという形で、ここでは審議しているのです。どうなんですか、それは、労政局長
  100. 亀井光

    政府委員亀井光君) 中労委におきましても、労組法第七条二号の不当労働行為申請がございますので、この問題につきましては、慎重に審議といいますか、審査の準備を進めておることと思うのであります。今どういう経過で、どういうところまでその準備が進んでおるかということにつきましては承知をいたしておりませんが、ただいま藤田委員からございました御意見につきましては、十分その趣旨を中労委当局に伝えたいと思います。
  101. 小柳勇

    ○小柳勇君 時間がないようだから、二つだけ警備局長と労政局長質問しておきたいと思うのですが、第一は、警備局長の方から先に質問しますけれども、多数の警官を動員して、先の西田さんのお話では、写真をとっておるけれども、武装した警官を多数使っておられる。そのことが私は敵役とは言わない。言わないが、第一の問題は、第一組合が握って、とにかく第一組合争議については、徹底的に戦うような意識をもって、現地の警官自体がそういう気がまえになってやっておる。それがいろんなトラブルを発生しておる。それから第二には、そういうことは、結局は、会社側が、警官隊を絶対自分の味方として、それをいろいろの敵役等に使うものだから、それが争議が長引いておる原因だと私は思う。そういった、根本的に、警官の使い方について、あるいは現地に動いておる警官、そういうものは一切、警備局長などが、きょうの西田さんの質問に対する答弁では、ほとんどのことをあなた知っておられるようだけれども、一切あなた方が指揮してやっておるのかどうか、現地で臨機応変にやっておるのかどうか、現地で一切やって、一切あなた方がこれを知りながら指揮してやってきているのかどうか。その点だけを、きょうは警備局長に御質問しておきたいと思います。  それから労政局長には、労働協約は、さっき横川君が言ったように、ほんとうは労働協約が根本であるが、ユニオンショップをオープン・ショップにするとか、大きな問題をごそっと投げ出してきて、そして五月の十七日に労働協約改訂を申し出て、六月の四日の日に、会社側が声明書を出して、そして組合は、五月の二十日の日の団体交渉ではやると言いましたけれども、六月二日までは現状のままという声明書を出して、あたかも組合側が、非常に労働協約に対して不誠意、しかも団体交渉に対して不誠意かのごとき声明を出して、そして会社側が第二組合を作って、第一組合を切りくずしにかかっておると私は判断しておるが、その労働協約改訂というのは、その衝にあずかったものはわかるのですけれども、少くとも三カ月なり半年以上の時日を要すると思う。それを労政局長は、専門屋であるから、今までの事情をよくおわかりだと思うが、わずか十日や二週間の間であれだけの労働争議に対して、組合側がすぐそれを解決すると思って出したかどうか。これは判断のことだからいろいろあろうけれども、私はなぜ言うかというと、この「エコノミスト」という雑誌の十月十一日号に書いてあるけれども、これはほんとうに会社側としては、勤評闘争と同様に、第一組合を一方的に押えつけて、そして今の第一組合を押えつけているところの実態を「エコノミスト」ですら書いておる。そういうことがわかっておるとするならば、私は中労委のあっせんについても、会社側は拒否しておるけれども、あなた方は、いろいろ裏話、あるいは表話でもいいけれども、日経連その他とも関係があろうし、そういう労働運動に対する会社側の誤まり、そういうものに対して、もっと、今までいろいろ民主的な、労働組合に対しては指導、援助して参ったと言っておられるから、そういうものに対して、あなた方はどう考えておるか。今までの答弁からちらちらとにおっておるところによりますと、第一組合はどうも行き過ぎだという前提に立っての考えがあると思うから、そういう根本的な問題について労政局長のお考えを承わっておきたいと思う。あとの問題は、この次に質問しようと思います。
  102. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 私に対する御質問の中で、現地警察官が第一組合を非常に敵視しておるじゃないかというお話でございまするが、個々の警察官がどう思っておるかということは、これは私存じませんけれども北海道警察全体としての考え方では、全然そういう気持はないのであります。  それから第二点は、一々こちらの方からああいう問題を指揮しておるかどうかという問題でございますが、これは警察法にも書いてございます通り北海道警察として動きます場合は、北海道公安委員会の管理のもとに北海道警察自体としての判断でやっておるのでございます。ただ、連絡は十分いただいておきませんというと、さっそく今日のような場合に、あれはどうだ、これはどうだという御質問もございますし、また、われわれも国全体として承知しておかなければならぬので、逐一ありました事態につきましては報告を得るようにいたしておるわけでございます。そういう次第でありますから、私たちが知らない点もそれはままあることであります。
  103. 亀井光

    政府委員亀井光君) 会社側が今回の争議に当りまして、協約の重要事項についての改訂の申し入れをした、それによりまして、いわば無理な難題を組合側に出して、それによって第一組合に何らかの工作の目的を達しよう、あるいはエコノミストにそういう趣旨のことが書いてあるというふうな御意見でございましたが、今の点につきましては、私らは全然関知をいたしてないのでございまして、会社会社としまして、やはり主張すべきところを主張しておるというふうに考えておりますし、また、組合がこの団体交渉におきましてそれを拒否して参っておりますことも、これまた、組合として主張すべきことを主張してきておるというふうに考えております。こういう基本的な協約が結ばれるには、二カ月も三カ月もかかるのが普通ではないかというお話でございます。もちろんそういう事例もたくさんございます。しかし、お互いに話し合いがつけば、これは一週間でもあるいは十日でもということもあり得るだろうと思いますが、今までのいろいろの例を見ますと、やはり協約問題は労使間の憲法でございますので、相当ほとんどのものは団体交渉で煮詰めておりますことは事実でございます。しかし、そうしなければ結ばれないという性質のものでないことも事実でございます。その間のことが、御意見のようなことによってそうなっておるのかどうかということにつきましては、私どもとしましてはお答えできないのでございますが、先般来申し上げておりますように、ともかくも早く自主交渉が開かれまして、そうして自主的に解決されるということをわれわれは心から念願をいたしておる次第でございます。
  104. 小柳勇

    ○小柳勇君 関連して。警備局長、よくわかりました。大体そのことはわかっておるつもりだったのですけれども会社側が雇った暴力団が相当裏門でも東北門でも動いておるようだけれども、そういう問題については、現地の第一組合の方から警察に出動を要請し、あるいは保護を要請しても出動しなかったということもお調べになったと思うけれども、そういう問題について、何らさっきの西田委員質問の中でも触れられなかった。もちろん長官も触れられなかった。そういうわけで私はこれはまた最近起るかもわかりませんので要請申し上げたいけれども、やはり警察官がそういう感情がないものとするならば、公平にしかも全体的に見て、一つそういうふうな暴力団の動きについても暴力事犯が発生しないように、格段の要請を現地の方の警察の方にお伝え願いたいと思うのです。
  105. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) われわれ警察の仕事をやります上におきましては、ただいまのお話のように、どちらにどうという感情を持つものでないことは申すまでもないことであります。重ねてそのことは申し上げておきます。暴力団というお話がございましたが、暴力団という名前のつく団体はもちろんわれわれの耳に入っておりませんけれども、下請業者との間にトラブルがありました際に、第一組合から要請がございましてこれは出動したのでございまするが、行ったときには事案が済んでいたという事柄が、私たちの耳に入っている限りにおきましては一回ございます。
  106. 久保等

    委員長久保等君) 休憩いたします。    午後二時二十一分休憩    —————・—————    午後三時三十四分開会
  107. 久保等

    委員長久保等君) 社会労働委員会を再開いたします。  駐留軍の撤退に伴う労務者の離職対策に関する件を議題といたします。  御質疑を願います。
  108. 小柳勇

    ○小柳勇君 アメリカ局長に第一に御質問いたしますが、この前も松野長官に御質問いたしましたけれども、アメリカ軍の動きについてはわれわれとしては全然見当がつかぬのですが、今まではだんだん減らすような情勢にあったので、今後も多分そうであろう、あるいは移動も相当ひんぱんになるであろうと考えておるのでありますが、この点についてアメリカ局長の見解を、まずお伺いしておきたいと思う。
  109. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 仰せの通りでございまして、昨年の岸・アイク共同声明で、大幅に、ことに陸軍の面において兵力の漸減を来たしまして、相当の減少を見たわけでありますが、今後ともこの趨勢は続くと思いますけれども、今までのようなテンポでは続かないのではないかというふうに考えております。
  110. 小柳勇

    ○小柳勇君 そういう移動と、それから予算の関係その他で、PD切りかえというのがなされようとし、またなされつつある。この間、松野長官の御答弁では、六件話があったけれども、その中で一件はどうしてもしょうがなかった、あと五件については、中止するように話して、中止の情勢にあると、こういうふうな返事でした。われわれとしては、そういうものが現在中止になっておるが、その中止の状態というものが、もうこれは全然再びそういうものは起らないと考えておるのだが、そう考えてよろしいかという点と、それから一つ座間の問題が発生しようとしておるが、その座間の問題についても、調達庁長官と労働者の代表とが会ったときには、これも中止させようと、そういう話であった。それが軍の命令によって実施されるようになったのですが、そういうふうに現在中止されておるあと五つの問題、あるいはそれ以上の問題が発生するのではないかという不安にしょっちゅうさらされているので、二つに分けて、中止させた五件については今後発生することはないと、そう御言明願いたいのと、あと座間の問題についても、一つもう一回これからでも中止するように交渉できないものかどうか、この二つの点について回答願いたいと思う。
  111. 森治樹

    政府委員(森治樹君) あとの問題は、調達庁長官にお答え願った方がよいかと思います。私としましては、あとの問題から申し上げますれば、調達庁長官の行われる交渉に対しましては、できるだけの御援助を申し上げるつもりでございます。  前者の問題につきましては、松野長官から御答弁があったことと思いますが、九月の十六日のアメリカ大使館から外務次官あての書簡の中に書いてございまして、現在まで行われたのは、六件行われておって、これによって、影響を受けたMLC労務者は約千百人である。他に五件検討されたけれども、これについては、諸種の事情を考慮してこれを取りやめたという経緯があるのでございます。米軍側でこの五件についてはすでに取りやめを決定いたしておりますので、再びこの五件について調達庁契約に切りかえるようなことは万ないことと存じておりますが、もしそういうことになりますれば、再び私の方としてもこれについて取りやめ方を折衝する予定でございます。
  112. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) いわゆるPD切りかえ、それに伴う調達庁が直接雇用主の立場である労務者の解雇問題、これに対しまして数カ月軍側と折衝を続けて参りました。お尋ねの六件が、七月、八月ごろに具体的なものとして早急に実施に移したいということで、交渉を重ねておりました。だいぶ延ばしてはきましたが、五件については、今アメリカ局長からもお話がありましたが、一応この実施を停止して、そうして再検討を加えるということがはっきりいたしておりましたが、一つの座間のモーター・プール関係のもの、これに関しては、一般的の理由としてあげられた予算の関係、あるいは配置人員の関係、それ以外に部分品の補給のやり方の関係等でどうしても待てないということで、御承知通り、すでに業者も選び、まあ実行に移さんという段階にあたるわけであります。私どもといたしましては、これをも含めて再検討でき得れば停止ということに持っていきたいということで、今まで努力も重ね、まあ現在もなおそのことで努力をいたしておるのでございますが、現状のところでは、これだけはどうしてもやむを得ぬから、もう実施の過程の段取りもできておるということで、非常に困難な状況にあるのが実情でございます。
  113. 小柳勇

    ○小柳勇君 聞くところによると、座間の問題も、三月十二日に米軍から通知が来て、調達庁長官などは非常に努力して、日米の合意がなければ実施しないところまで話がいったらしいが、突然九月の何日かに通牒が来て、切りかえることになったと、私どもはそういうふうに聞いておりますが、そういうことで調達庁長官がわざわざ米軍と話しておったにかかわらず、突然米軍から日米の合意がないままに一方的にやってきた、こういうものに対して長官は米軍に対してどういうふうな抗議なりあるいは扱いをされたか、御答弁を願いたいと思う。
  114. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) たしか、この件は八月の末あるいは九月の初めから、向うが実施をいたしたいというものでございまして、これに関しまして、ちょうど松野長官からもるる前回にお話しがあったと思いますが、そういう実施に関しては事前の打ち合せ調整ということを十分にした上ということに、日米間の話が進んでおりましたので、その事前の調整あるいは協議のやり方等について、いろいろ話し合いを向う側としておったわけでございます。そういうような事情のもとに、その具体的の事案についても、向うの九月早々にも実施ということを延期せよということで、私は強く何回も交渉いたしました。それで一応その事情を了として、延期ということにしてきたのでございます。その後、先ほども申し上げましたようにこれに関してはどうしても待てない、いろいろその事前調整の話においてまだ双方において話がつかぬけれども、これに関する限りは待てない、やむを得ざる事情で了承願いたい、こういうことなんで、それははなはだ遺憾のことである、ほかの件に関すると同様に、さらに再検討の余地を持つようにということで、その後も折衝を続けておりますが、実は先ほどのような実情にあるわけであります。
  115. 小柳勇

    ○小柳勇君 この前、長官も見えておったか、はっきりしないのですが、この前松野長官に私言ったのは、日本駐留軍労務者というものは非常に、生活なり、率直にいうと、人権すら労務者は保護されていない。調達庁長官は向うへ行って米軍といろいろ話し合ってきていて、それが一方的に破られていって、さっと書面で実施されていく、そういうものに対して、調達庁としては米軍に何ら不平なり抗議なり、あるいはこれが実施できないというような、そういうことはできないのであるかどうか。そういう点、どういうふうに日本政府としては考えておられるのか、聞いて置きたいと思うのです。
  116. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) この労務者の直接関係します事項、これらを律する双方の取りきめ、これは御承知通り、大もとに行政協定の事項があるわけでございます。このいわゆるPD切りかえ問題、何とかこちら側の労務者の立場、方面から、はなはだ遺憾の処置であるから、やめさせたい。これが結局行き詰まるところは、今の行政協定の条項にぶつかるわけなんです。たしか十二条と思いますが、米軍側がいろいろの自分の必要とする工事、役務、その他の注文あるいは契約、これらのことについては米軍が思う通りの業者を選び、思う通りの契約においてやるという、根本的な一つの条項がございます。最終的にはそこにおいて米軍側がやはりこのことは認められている事柄である。従って、日本側のおっしゃること、その理由は重々よくわかる。従って、自分の方としてもできる限り日本側の希望に沿うように、今の切りかえの問題等も最小限度にとどめていきたい。しかしながら、予算あるいは人員配置等の、今引き揚げに伴う自分の方の実情からこうせざるを得ない。そのやむを得ざるものだけは了承してほしい。行政協定の何からいってもそのことは認められるはずであるからと、こういうことであります。
  117. 小柳勇

    ○小柳勇君 しかし、長官が協定の解釈を、私もずっと議事録などを見てきておりますが、十二条の一項なり五項を見まして、この五項の方では、日本の労務者は日本労働法によって守られるということが書いてある。そういうものについても、管理権は管理権として調達庁としては主張できないという見解ですか。
  118. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 今の問題の最終的な、そんなことは絶対に米軍側がやむを得ないことであるかどうかといいますと、やはり今の協定上においては、向う側がやろうとする場合にはやり得る条項と、かように私は考えております。
  119. 小柳勇

    ○小柳勇君 そういたしますと、その座間の問題が、そういうことで調達庁長官はやり得ると考えておられると。あと五つ中止になった問題も、今まで駐留軍としては、この前も松野長官がるる説明しておりましたが、もうこれをやらせないというような確信を持ったのですけれども、しかし、今のような解釈であると、またぽんと書面一つで、通知一つで、あと中止された五つのキャンプについてもPD切りかえがやられるという危険性があるのじゃないか。そういう点、どうですか。
  120. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 私どもといたしましては、今の中止、停止状況を永久なものにしたい、いわゆるその問題はたな上げにいたしたい、このようにその後今日においても折衝をいたしているのでございます。向うも、現在のところ、御趣旨はよくわかる、なお再検討を加えた上において何分のまた意向を表明するまでの間は、とにかく中止である、その状況を了承してもらいたいというのが現状でございます。
  121. 小柳勇

    ○小柳勇君 まだ何も中止ととるわけにはいかぬわけですが、ただ進行中にあるということで、検討中だということにしか受け取れないのじゃないかと思うのですが、この間の松野長官の回答では、もう少しわれわれが自信を持つような、あるいはこれはもうやらせぬな、日本政府はあとの五つについてはやらせぬなというような印象を受けましたが、今の長官の回答を聞くと、検討中であります。やらないということについてはどうもはっきり言明できないというふうにとれるのですが、その点は、どうなんですか。
  122. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 現在、十月から実施しようという計画を中止、停止したことは事実でございます。従って、今後これがいつ起きるか。起らないようにという努力を私はまあいたしておるわけでございますが、その後の当方の言い分その他の事情の再検討というのが、実情でございます。その再検討の処置等が、まあいつ結論が出るのか。再検討の結果といえども、こちら側の要望通りに措置されて、永久にそういう問題はまあ上ってこないという、努力をいたしておるのが私ども現状であります。
  123. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 外務省の人に聞きますけれども、行政協定の解釈の問題と、それからもう一つは、日本の心がまえの問題だと私は思うのですが、十二条の五項の、労働法に従うということになると、十二条の二項の、日本経済に不利な影響を及ぼすときには日本政府と調整するという一項があるのですが、これとの関係において、外務省は心がまえとしてどういう立場をとっておりますか、今のような問題。
  124. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 行政協定十二条第五項によりまして、進駐軍労務者の方々の労働条件その他保護に関しては、日本の法令によらなければならないということになっております。それと、この十二条第一項及び第二項の調達形式の問題でございますが、第二項の「日本国の経済に不利な影響を及ぼす虞があるもの」というのは、これは成立の経緯から見まして、労働力の不足を来たした場合に、進駐軍のために大量の労務者が吸収せられて、そのために日本産業の復興に害があってはならないという趣旨でもって、第二項というものは書かれたわけでありまして、従いまして、この行政協定の解釈といたしましては、ただいま調達庁長官も申されましたように、第一項によりまして、米軍がその希望する調達の形式で、需品及び労務を調達し得るというふうな解釈にならざるを得ないというふうに考える次第でございます。  従いまして、私どもの現在までのアメリカ側との折衝の経過も、この法律論には重点を置かずに、むしろこの進駐軍労務者の方々は、進駐以来すでに十数年にわたって進駐軍のために行動してこられたわけであるし、しかも、これが日米の接触する第一線であるから、この間の関係が非常に円満にいくかいかないかということは、非常なこれは重大な問題であるという点から、いわゆる事実上、こういうことを事実上の問題として解決していくことが、日米の関係から見て適当であるという趣旨でもって、折衝いたしておる次第でございます。
  125. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その、事実上それを防いでいくということだけれども、法律上はアメリカ軍がやってもいいという認識の上に立って、事実上云々というふうに、この法律の十二条二項の解釈を、日本政府と調整するということになっているのだから、単に物をいうそういうもののみでなしに、日本の現在の失業の問題、これから関連してくる経済関係からいったら、非常に重要な関係にあるという認識に立っていいのであって、それを頭から、条約、行政協定自身の条項についてはもうアメリカが勝手にやってもいいのだ、ただお願いしますといった格好でなしに、今のようなPD切りかえや、その他アメリカが勝手にやることは日本経済のためによくない、こういう立場を腹に入れて、そして事実上の問題は交渉して、今後こういうことにならないようにというところへいかなければ、頭からもうやむを得ないのだというような考え方でなく、この行政協定でもそういういろいろな面を配慮して、こういう日本主張の中に立って調整するのは当然だという立場に立たない限りは、私はアメリカと交渉したって非常にまとまらぬと思うのだ。なかなかむずかしいと思うのだ。  だから、そういうところの心がまえはもう少しはっきり——この前も十二条二項については聞いております。聞いておりますけれども、今、PDの切りかえのことやその他の問題についていろいろ出ておるから、日本政府として外務省が出先なんですから、出先の外務省がやはり確固として日本実情を訴えて、こういう工合に解釈してこれをやってもらいたいという腹を私はきめてもらわない限り、これはのれん腕にになりますから、だから、どうなんです、これは。
  126. 森治樹

    政府委員(森治樹君) そういう見地から、私どもといたしましても、調達庁長官も、日米合同委員会の内外において本問題に尽力されましたし、私どもとしましても、合同委員会主張いたしたわけであります。ところが、合同委員会でもなかなか解決を見ることが困難な情勢にありましたので、さらにこれを上げまして、安全保障に関する日米の委員会でも、外務大臣から本問題を取り上げられましたし、さらに、八月十一日には外務次官から特に大使あてに、この問題を取り上げられた次第でございます。
  127. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、だから、私の言った解釈に立っておるということですね。一項の文句は、勝手にやってもしようがないのだという解釈でなしに、二項のこのような問題は、日本国と調整をするという立場に立って、事実の問題に入っておると、こういうことですね。理解の仕方……。
  128. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 理論的には、私が先ほど申し上げましたように、これはやはり米軍が権利を持っておると解釈せざるを得ないわけであります。しかし、腹がまえの問題とその理論の問題とはおのずから別個でございまして、腹がまえの問題と申されましたから、私どもとしましては、それは日本経済に悪影響を及ぼさない、あるいは進駐軍労務者の方々の米軍との関係、従来の関係等も考えて、折衝しておると申し上げた次第でございます。
  129. 小柳勇

    ○小柳勇君 そうすると、さっきの、もう一つくどいようだけれども、中止になったいわゆる検討中であるという五件の問題については、今後どういうふうに外務省としては取り扱っていこうとされておるのか。もう一回ちょっと、はっきり聞かしておいてもらいたい。
  130. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 私どもといたしましては、先方から、九月の十六日に通報を受けました五件の、先方が中止いたしましたものが、どういうものであるか、それが果して先ほど調達庁長官の触れられました座間の問題に関連しておるかどうかを、つまびらかにまだいたしておらない次第でございますが、この五件につきましては、先方も申しておりますように、検討をやったけれども、この検討の結果、これによって得られる利益というものは、その他の事情に比べれば割に僅少なものであるから、これは実施に移さなかった。そしてほかの事案については、実際上米軍の予算の削減の状況から見て、ぜひとも実施に移す必要のあるような場合には、調達庁関係当局との十分な協議を重ねた上でやりますからという趣旨のことでございますから、私どもとしては、当然この五件につきましては実施に移さない、移すことはないのじゃないかと、私ども考えておった次第でございます。
  131. 小柳勇

    ○小柳勇君 それは、現在のところでは実施に移さないものと考えるが、最悪の場合移すものとして、調達庁ともう一回あるいは二回、合意するまで、米軍としては相談するものと考えておるわけですか。
  132. 森治樹

    政府委員(森治樹君) もちろん、その通り考えております。
  133. 小柳勇

    ○小柳勇君 その通りですね。  次に、この前、松野長官の言われたことで気にかかるのですが、原則としてはPD切りかえをやらさないけれども、たとえば企業組合とか特定のものについては考えられる場合もあるというようなことを言われたのであるが、そういうことで、何かまだしりがくくれぬような気がしたのですが、その特定のものについての、何か外務省なり調達庁で考えておられる問題があれば、具体的に教えておいてもらいたいと思います。
  134. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 具体的にこういうものというものは、現在ございませんが、私どもが米軍側にその政策をやめさせようというものは、仕事の内容なりあるいはその進行工合なりが、従来と何ら本質的に変りのないもの、これらを、単に予算が少くなったから、あるいは担当の者がいないからということでもって、いわゆるPD業者に移すということに大反対なのでございます。ところが、その仕事の実態内容が変ってくる。たとえば毎日々々いろいろな作業があったものが、軍隊が減る、あるいは基地のある部分を閉鎖するというようなことで、仕事の内容自体が変ってきて、常時そこに人を配置してやるだけの仕事ではなくなった。十日に一ぺんとか一月に一ぺんとかというような式になってしまって、常時そこに人が配置できない。配置しておいても、する必要がなくなった。こういうようなものは、その必要のつどやはりだれかに請け負わせてやらざるを得ない。このようなケースであるならば、それがいわゆる特殊の場合として考えられるものであろう。これは少し抽象的でございますが、そのように考えておるわけです。
  135. 小柳勇

    ○小柳勇君 具体的な問題について、いろいろ将来出てくるかもわかりませんが、根本的にPD切りかえの考え方自体を是正するのは、やはり行政協定の解釈あるいはそういうような解釈の精神だろうと思うのですけれども、今、ちょうど安保条約改定に外務省では取りかかっておられるが、一体、私も、その後NATOにおける駐留軍労務者の軍との関係などいろいろ見てみまして、日本の行政協定の十二条の解釈を、外務省として非常に、特に労働関係については弱く考えておられるような気がしてならぬのです。で、そういうことで、労働省はおられぬようだけれども、今、もしそういうことで管理権の方が強くて、労働者の保護規定というものはそれよりも弱いのだというような解釈でおられるならば、今、安保条約についていろいろ話しておられるようだけれども、将来そういう労務者の問題はそういうものと切り離して考えられないものであるから、どういうふうにこの問題を解決しようと考えておられるのか、実は外務大臣に来ていただきたかったのですけれども、アメリカ局長なり調達庁長官の決意のほどを聞かしてもらいたいと思います。
  136. 森治樹

    政府委員(森治樹君) ただいま御指摘のように、安全保障条約の問題が日米間で交渉中でございます。ただ、行政協定にもいろんな問題があることは、御指摘通りでございます。ただこの安全保障条約の改定に伴って、当然その性格の変更になる条項は別としまして、どの程度まで行政協定が改善されるかということは、これは最高の政策の決定を仰がなければならない問題でございまして、私から、今ここでこの問題についてどういう処置をとるということは申し上げかねる立場にあることを、御了承いただきたいと思います。
  137. 小柳勇

    ○小柳勇君 それじゃ、この雇用契約を軍と調達庁としておられるのですが、調達庁と労働者の間には、何らこれを保護する規定がない、協約がない。そういうものを一体、調達庁長官はどういうふうにお考えであるか、まずそれから一つお聞かせ願いたいと思うのです。
  138. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 調達庁が軍側と結んでおりまする労務に関する基本契約、実はこれは御承知と思いますが、占領時代にありましたものを昨年改定いたしまして、非常に長いことかかったのでございますが、これに関しましては、実は関係労働組合も入れましてずいぶんと抗議をいたして参りまして、今の労働者の保護に関する事項等においても、相当意をいたしたつもりでございます。従って、それをもとにし、なお、いわゆる労働組合との関係等におきましては労働協約を締結いたしまして、これによるのは当然である、こういう考えを持っております。ところが、その現実を申し上げますと、昨年の十月一日に新しい契約になったとき以後、実は今日まで、まだ労働協約の締結に至っていないことは、はなはだ私どもも遺憾に思いまして、それの締結に努力する、そのための日米間の考え方の調整ということに現在努めておりまして、速急にそれによりましてこの問題の処置をいたしたい、このように考えます。
  139. 小柳勇

    ○小柳勇君 今のお話では、日米間——アメリカの方に、日本の調達庁と労働組合との間の労働協約を米軍の方と締結するかどうかなどについて相談しつつあるということですか。
  140. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) その通りでございます。
  141. 小柳勇

    ○小柳勇君 あるいは行政協定の十二条、この五項は、御存じのように、労務者については日本労働組合法を適用すると書いてあるでしょう。その日本労働組合法は、当然駐留軍労務者には適用されておる。そうすると、駐留軍労務者というのは、あなたといろいろ話すという、いわゆる団結権、団体交渉権についてはあるものと考えなければならぬのですが、そのことについて、いろいろ米軍と労働協約を結ぶことすら話し合わなければならぬということは、一体どういうことでしょうか。
  142. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 基地の中で働くことでありますので、基地に関する米軍側の管理その他いろいろの関係の機能もございます。それとの関係一つと、もう一つは、仕事の実態が、何と申しましても、調達庁が法律上の雇用主であるが、実際上に使用をしておるのは米軍でございまして、その仕事の内容等が向う側のものである。それらの関係がありますので、やはりその実態に合わせたようなものでないというと、完全な協定にならない。そういうものでございますので、これは基本契約を結ぶときにおきましても、すでに予想しまして、そのような協議事項がついておるわけでございます。
  143. 小柳勇

    ○小柳勇君 全般的にそういうことが言えまするから、飛躍いたしませんが、たとえばPD切りかえについて、もし米軍がそういう必要のある場合は、調達庁長官と全駐労の代表とが事前に話し合ってきめるくらいのことは、私は協約化しておいていいと思うのだが、その点、いかがですか。
  144. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) PD切りかえの問題はもちろん、それに限らず、いろいろのことを実は調達庁といたしましては、常時労働組合とは連絡をとり、あるいは意見も聞き、協議しておるわけでございます。従いまして、今後の労働協約の問題につきましては、もちろんいろいろな事項、それから組合からの要望事項というものについては、十分話し合ってやりたいと思っております。
  145. 小柳勇

    ○小柳勇君 私がくどく言うのは、このPD切りかえについても、皆さん一生懸命努力しておられるけれども、労働者としては非常に不安なんですね。あなた方がせっかく米軍と、そうやってやるときは合意でやるぞと取りきめてきておるにかかわらず、米軍の方で一方的にくずしていく。そうすると、あなた方は労働者と話し合う何にもそういう手続をしないで、それを実施していかれる。そういうことで非常に不安な生活をしておるので、くどく言っておるわけですけれども、何らか根本的にそういう不安を除去して、とにかく生活ができるような方法をお考え願えないものであろうかどうかですね。そういう点一つ、PD切りかえについて、あなたの考えを発表して教えてもらいたいと思います。
  146. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) この問題の根本的の解決ということ、これは先ほど行政協定関係のあれがあることも申し上げました。今後これがどういう工合にいくかということは、微妙な段階でありまして、アメリカ局長も、今申し上げられないという事情に話がありまして、私は労務者の雇用主の立場にございますので、その面から、何らかこういう問題の、協定の関係なり何らかによって打開をはかりたいと私は考えております。なお、その協定の問題とは離れましても、これは、実は、考え方によれば、日本側の米軍の撤退に伴うところの裏づけとなるいろいろな諸事項、つまり経費の問題なりあるいは入りいい問題について、何らかのまた処置が講ぜられれば、これについてもあるいは現地軍が無理にそのような措置をとらなくても済むのじゃなかろうかと、そういう点においても今強調いたしまして、向うの再検討の点は、その辺にも思いをいたせということを主張いたしております。
  147. 小柳勇

    ○小柳勇君 あまりくどくなりますから、PD切りかえについては質問はそのくらいにして終りますが、お願いしておきたいのは、やはり非常に不安な生活を八万——十万に近い労働者がしょっちゅうやっておりますので、五つの中止された問題についても、将来発生する問題についても、ときどき事態の推移を組合の代表なりに話すということについては、一つ努力を払ってもらいたいと思うのです。そしていろいろ最善の道を見出すべく努力していただきたいということをお願いして、次の質問に移りたいと思いますが……。
  148. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 僕は、一つ外務省にお願いしておきますけれども、今の行政協定の二項と五項の問題で、二項の問題は、日本が物資不足しておるときに勝手に調達されては困るという立場で、一応の解釈として進んできたから、今度の問題については、論理的にそういう解釈ができないのだということをおっしゃっておるわけです。その段階は一時はあったと思うのです、そういう段階は。しかし、今日は物の調達というものが大体自由にできる。むしろ、今日の状態から、調達することについて文句を言う段階ではもちろんないので、むしろそれに対しては、場所あるいは場合によっては、たくさん物を買ってもらう方がよい場合もあるという現状も私はよくわかるのです。ところが、私は、やはり片方においてその日本の法令に労働者が従うという原則をうたいながら、片方の二項の解釈を、日本経済、労務、需品自体の調達については、日本経済という面から見て、不利な場合のあるときにおいては、日本政府と調整をするという法文が明確にあるのだから、だから、私は五項と二項との関係は、何といっても明確に、私は今日のようなやり方をされることは、日本経済に影響をするのだという立場の論理的な解釈に立っていただいて、そうして心がまえはむろんお聞きしましたからけっこうですけれども、これの論理的な解釈をアメリカに理解さすように、一つ努力してもらいたいと私は思うのです。そういうことができるかできないかという問題に論及してくると思いますけれども、しかし、私はそういう今日の日本の事態というものを認識さすために、二項と五項との関係については、そういう立場一つ話を進めてもらいたい。で、今後自主的には、こういうPD切りかえのないようにしてもらうことですけれども、この取りきめの問題にも、そういう理解を相手にさせるようにしないと、一方でばさばさやられてしまうということでは、あとで問題が起りますから、そういう配慮をぜひしてもらいたい。それは要望です。  もう一つ、私は外務省にお尋ねしたいことは、たとえば追浜の問題が今起きてるわけですけれども、あれは七十万坪からの土地で、そうしてあそこの一万の労務者を産業誘致によって切りかえると、こういう問題がしばしばここで論議をされているのですね。長官を初め論議をされているけれども、実際に具体的な問題、たとえば誘致をする、どの産業を持ってくるか、こういう具体的な問題になってくると、アメリカがあの基地をどういう要するに立場、どういう関係に将来していくかという問題になってくると、未知数で、これはもう一つもはっきりしない。それで、内容をもっと分析してみると、アメリカの永続基地らしいものが四カ所も五カ所もある、海軍の基地らしいものが。そういうものが一方では存続するし、その他のところも日本との契約をどういう格好で、返還するなら返還するという……。ところが、そこが明確にならないから、私はあの産業誘致ということは、政府はここで答弁をされますけれども、いろいろ問題があるのじゃないか。こういう問題こそ、私は日米合同委員会でもっと毅然たる態度で日本が臨まない限り、たとえば産業誘致の問題もできないのじゃないかということを非常に痛感をしているのです。だから、そういう問題について、外務省としてはどういう立場で、たとえば追浜だけの問題を私は言っているのですけれども、ほかにもたくさんありますけれども、追浜の問題について、それじゃアメリカとどういう交渉をされたかということを私は聞いておきたいのです。
  149. 森治樹

    政府委員(森治樹君) ただいま御指摘の点はその通りでございまして、私どもとしましても、日米合同委員会におきまして、正確な期日を記憶はいたしておりませんが、八月中だったと思います。今後の労務関係及び施設関係の長期的な見通しを、日本側に知らしてもらうように、また特定の労務者に関係のある事件については、できるだけ前びろに通報してもらうように、すなわち、全般的な長期的な計画をまずもらいまして、特定のものについては、なるべく事情の許す限り早く通報してもらうように、要請をいたしております。その要請に応じまして、一部先方は通報いたしてきております。  なお、追浜の問題につきましては、私どもといたしましては、中央協議会の御決定によりまして、あの施設をなるべく早く返還してもらうことが、産業誘致上も好都合であるというようなこともございましたし、その趣旨の話し合いも非公式に初めている次第でございます。
  150. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから、問題はまた心がまえの問題になってくると思うけれども、私はやはり、日本が非常に困難な状態に入ってきて、首切りが行われている。九千万国民全体の生活に関係する問題なんです。で、追浜の問題が、私の調べたところによると、産業誘致の活動は努力をされているようでありますけれども、実際の米軍そのものが、あの基地をどれだけ、ここからここまではどうするんだ、どういう工合にそれでは日本の産業誘致に協力するなら協力するというような格好に、もっと私は心まえとしてはっきりと、その労務者問題や何かを日米合同委員会で外務省が先頭に立って、労働問題はあれは調達庁か労働省関係だから私は知らぬというような格好ではなしに、こういういろいろの問題を私はもう少し親身にやってもらわなければ、あの問題もなかなか見通しがつかない。まあ内容に入ればたくさんありますが、十二月のやつを九月で切ってしまうというような、いろいろと問題になっていますけれども、これはきょうはおきますけれども、あれの産業誘致をする場合に、アメリカと確たる心がまえをもって交渉するのでなければ、産業誘致なんということは言うだけに終りますよ。それを私は心配しているわけです。それをどうかしっかりした心がまえをもってやっていただきたいということを私はここで申し上げておきます。きょうは時間がないから……。
  151. 小柳勇

    ○小柳勇君 それでは、今の藤田委員質問に関連して。その産業誘致のために、都道府県でいろいろ対策を、今都道府県協議会というようなものを作っておられるが、予算的に検討してみてどうも貧弱であって、かけ声だけは大きいけれども、かえって実際に動けないというのが真実ではないかと思うのです。従って、現在の予算、将来の予算、そういう具体的なものについて、一つ御答弁を願いたいと思います。
  152. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 都道府県における駐留軍対策協議会の予算につきましては、便宜、私ども労働省の方で所管いたしております。これは昨年の九月の閣議決定に基きまして、昨年来、地方に協議会を関係府県に作って、予備費をもって昨年措置いたしまして、本年さらに続いてやっているのでありますが、労働省関係としてこの地方協議会に対する予算は、本年度は約百二十万円程度でございます。確かにおっしゃる通り、一県当りは非常に少い額でございます。しかしながら、この内容は対策協議会の会議費が中心になっておりまして、従いまして、この協議会が事業をやる、対策に関する事業をやるということにはなっておりませんために、今言ったようなことになっておる。ただ、私どもといたしましては、運用の面におきまして、特に必要とするところ等におきましては配分において苦心いたしておるところであります。  われわれ、現在はそういう形でございますが、一方におきまして調達庁関係におきまして、労務管理費というものが府県に配付されておるのであります。これは、まあ駐留軍労務者が減っていくということで漸次減少している。こういうことからして、県全体といたしましては、これに関係のある予算が要る、こういうことになろうかと思うのであります。われわれといたしましては、来年度あたりはあるいは相当調達庁関係の予算は減る。われわれの方の関係といたしましては、むしろこの対策協議会を中心といたしまして、事務局的なものを場合によっては作ってもらって、それを中心に総合的に対策を推進していくということのために、調達庁の予算と関連させながら、これの実情に沿うような増額をしていくというようなことで、現在来年度予算には要求をいたしております。これにつきましては、われわれは関係各省の御協力を得ましてこれを実現さしたい、こういうふうに考えております。
  153. 小柳勇

    ○小柳勇君 職業訓練なり、いろいろの職業補導なり、考えてやっておられるようですけれども、今の職業訓練を、私、先日福岡に行っていろいろ現地を見てきたが、非常に、先生の問題もあろう、あるいはいろいろ夜間作業の問題もあろうけれども、あなた方がいろいろここで、たとえばこれだけ離職がありますから、こうやりますといって、天びんにかけておって、国会で説明されるほど、現場の職業補導、職業訓練はできていない。予算の面だけではないかもしれぬが、とにかく駐留軍関係だと思ってほうっておくということは、さっき言われた通り、労務者が失業するということは目の前に見えているわけです。そういうものに対して、たとえば一県当り、私の計算によると、十万円くらいしか労働省の費用はない。調達庁の費用だって、これはといったらわずかしかないが、そういうものでやっておりますと、国会の答弁ではそれでいいかもしれませんが、実際離職して失業する者の身になったら、ほんとうにスズメの涙ほどの予算しかないのではないかと思うのですよ。実際、今、さっき資料も出たようだけれども、今抽象的に聞きましたけれども、具体的にもう少し、来年度の予算なり、今のあなた方の考えなり、また言えないと言われるかもわからぬけれども、ここまで話しが来たのだから、もう少し具体的に話のできる範囲内で説明をしていただきたい。
  154. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) ただいま職業訓練のお話も出ましたが、ただいま申し上げました予算は、駐留軍離職者対策の地方協議会の予算でございます。職業訓練等に対する予算は、別途にこれは予算措置をいたしてあるわけでございます。お手元に資料を差し上げてございますが、本年度におきましては、ここに書いてございますように、十五職種、一万七千五十人に対して職業訓練ができるような予算措置をいたしてあるわけでございます。  それから、今お話しになりましたように、指導員の問題あるいは資材の問題、そういう点につきまして、いろいろな不十分な点もあろうかと思いますが、われわれといたしましては、本年の七月以来職業訓練法も新たに制定されましたし、これにのっとりまして、さらに内容を充実して参りたいということで、本年度におきましては、従来よりもさらに内部の設備を充実するということで、特に特別会計からも、従来の予算のほかに一億円をこれに充てるということにいたしたような次第でございます。  なお、そのほかに、駐留軍離職者の離職に当りましての臨時職業相談というようなものは、それぞれ安定所の経費、府県の経費の中に別途対策費として計上してあります。さらに、当初におきまして見込まれておりませんでした追浜関係につきましては、新たに今度予備費の措置によりまして、職業紹介の強化並びに職業訓練の増設ということを処置したのであります。不十分でございますが、できるだけそうした事態に即した措置をとって参った次第でございます。
  155. 小柳勇

    ○小柳勇君 調達庁の方はどうですか。たとえば基地内の職業訓練費などというものも、あとあまり計画できないようなことに数字の上ではなっておるようでありますが、調達庁として、将来どうやって離職者に対して、百五十八号という法律をお作りになったが、それがこれ以外にどういうことをやって、ほんとうにこれを救おうとしているのか、長官のお考えをお聞かせ願いたいと思う。
  156. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 駐留軍の仕事を離れまして別途の仕事につかれる場合、この場合に、労働省あるいは実際の会社その他の状況を見ましても、何としても特別な、手に職を持っているということが非常に有効な就職のもとである。これについては、すでに軍の職業を離れてからでは間に合わない。まだ軍の雇用のあるうちにおいて職業補導をいたすことが最も有効な手段だ、こういうことで、昨年から基地内の補導ということで、基地の施設、あるいは自動車、あるいは特車両、こういうものの必要なものはそういうものを、それらを軍側の協力を得て使用しまして、基地内の補導訓練ということを実施しております。非常にその結果の就職はよろしいということで、本年もそれを始めておるわけでございます。すでに本年度においても、予算的に見ますと、千六百万円ほど府県に流しまして現在やっております。なお、これの状況は、各府県からもう少し拡充してやりたい、こういう要望が多数県から出ております。それらのものを今取りまとめ、検討いたしまして、できるだけ実情に応ずるような措置を講じたい、かように考えております。
  157. 小柳勇

    ○小柳勇君 こまかい問題だから、長官、あまり具体的に話がないのですが、今おっしゃった千六百万円というのは、大体十月ころまでに使っておるわけですね。あと来年の三月まで、費用がないわけですよ。そういうものについて、一体どういうことをしようとされておるのか、具体的なことですから長官でなくてもいいですが、担当官がおられたら、御返事願いたいと思うのです。
  158. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) お説の通り、その事情を私も知っております。何とか来年の三月までに必要な経費の処置を講じて実情に合うようにしたい、そういうことで、今、目下担当の者でその問題も検討を加えておりまして、それに応じさせたいと思っております。
  159. 小柳勇

    ○小柳勇君 では、次に軍直用員が、直接軍から雇われていた者は、この前言ったように、特別給付金は適用がないわけですね。特に軍直用員については、やはり生活も切り捨てごめんのような傾向にありますから、これに対してどういうふうにしようか。特に、私は特別給付金についても同じように実施してもらいたいと思うけれども、長官のお考えをお聞かせ置きを願いたいと思うのです。
  160. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) この問題は、駐留軍労務者離職対策の特別法案ができるときにも、相当議論された問題で、一応ああいう結論になりまして、とにかく政府として、岸・アイク声明に基いて、米軍縮小撤退という事態、これに対して政府が雇用主の立場にあるところの労務者に対して、何らか日本政府としての措置をとりたいというところにしぼられてきているのが、あの結論でございます。直接その軍の雇用者までこれを及ぼすということは、非常に私は困難だと考えております。
  161. 小柳勇

    ○小柳勇君 困難だということはどういうことですか。長官はそれをやりたいけれども、軍がうんと言わないというのか、政府の方がうんと言わないのか。困難ということは、どういうことですか。
  162. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 調達庁長官といたしましては、私、直用者のものは所管外でございますので、あまりあれこれの論議を申し上げることもできないのでございます。
  163. 小柳勇

    ○小柳勇君 わかりました。それは労働省なりその他の管轄でしょうが、担当者がおられないようですから、その問題はあとでまた別の機会に聞きましょう。担当官、おられましょうか。
  164. 久保等

    委員長久保等君) 労働省は、職業安定局長が来ております。
  165. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) この特別給付金の問題は、われわれとしても離職者対策協議会等でいろいろ検討されておりますが、この法律に基く給付金というものも雇用者としての政府が出したものでございますので、労働省が直接これにタッチいたしておりませんので、私から答弁するのを差し控えたいと思います。
  166. 小柳勇

    ○小柳勇君 そういう、とにかく国会の答弁ですら報告されないような軍の直用職員がおるわけです。そういうものに対する対策についても、これはただ所管外であるということだけでは答弁にならないと思うのですけれども、きょう担当官もおられぬし、時間も迫りましたから、次の機会に譲りまして、最後に、組合保護の問題について二つばかり質問して終りたいと思うのです。  第一は、私もおそまきながら、NATO諸国における労働者の保護の問題を調べてみたら、第九条でこういうことを書いてあるのです。「労働者の保護のための条件は、受入国の法令で定めるところによらなければならない」、向うの方では、たとえばアメリカの駐留軍がおりますというと、フランスでもドイツでも、そういうことで「よらなければならない」ということで、向うのその国の労働法ではっきり保護されておる。日本では、この間から話がありますように、もう最高裁の判決が出て、とにかく復職させなさいという判決が出ても、これを復職させない。しかも、管理権の方が労働者の権利よりも優先するというような考え方で処理しておられる。従って、こういうような問題についてどう考えておられるかということと、それからブラッドレー書簡やパッカード書簡というものがありまして、こういう法律があるにかかわらず、なお行政協定を上回って一司令官が書面を出して、職場内では一時間でも、休憩時間でもできないということを書面を出しておる。しかも、これで一切を処罰するような気配がある。そういう問題について、一体外務省なり調達庁なり、いわゆる政府担当者はアメリカに対して抗議したことがあるのかどうか。もうしょうがないとあきらめておられるのかどうか、この点、一つお聞かせ願いたい。
  167. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 基地内の組合活動の問題からお話し申し上げますが、この組合活動の問題は、実は先ほどもちょっと触れましたが、労働協約において明確にする、基本労務契約締結の際からの問題であります。それならば、なお意見の一致を見ず実施できない間はいかにするか。それを従来の契約あるいはそれに伴うところの労働協約のままその従来の方針態度を持続していこう、こういうのが基本的態度でございました。ところが、たまたま今お話のありましたような、空車においてある書簡を出して、その管下においてその書簡通りにやれというような指令が出た。これが問題になったのであります。従いまして、これに関しましては、調達庁としては、労働協約のできるまでの間は従来の慣例をそのまま踏襲しておくべきであるので、それ以上のことを制限し云々することは了知できないことであるということで、その問題を再三取り上げて現在もおるわけでございます。従いまして、その運用におきましては従来と変りないという処置を軍側各地区ともとっておるのでありますが、たまたま一つ、立川でもって問題が起きておるのが具体的の事例でございます。従いまして、現在その書簡そのものの内容、それから問題になりました事件の実情、それから従来のこれに関するところの事情、これらを調査検討いたしまして、その点の処置を明確にするという交渉を現在いたしておるわけでございます。  それから、裁判の判決が出たものの処置、これも実は最高裁の判決までも出ておる立川の問題がございまして、これに関しましては調達庁はその判決に服する、従って、これを復職させなければならないということで、軍交渉を続けてきましたが、これも先ほどの問題と同じように、基地の管理権の問題とぶつかりまして、先方が応じない。従って、この処置はなお上級の協議機関、すなわち合同委員会で処理をつける運びになっておるわけでございます。しかしながら、判決の趣旨通り雇用の継続が認められたのでありますが、それには雇用が継続しているものとして、今調達庁ではその賃金その他の支払いはいたさなければならないということで、支払いの措置をとっております。そのようなわけであります。
  168. 小柳勇

    ○小柳勇君 じゃ、最後ですけれども、ブラッドレー書簡などによって今後組合の活動などについて制約されるものはないものと考えていいものかどうかということと、それから局長に対しては、さっきの軍直用の問題は外務省の管轄だと思うけれども、軍直用のそういう職員の百五十八号の適用に対して、外務省としてはどんな考えをもって処置されようとしているのか、お答え願いたいと思います。
  169. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) いわゆる書簡なんぞによって、今後、従来以上な制限を設けられることはないと私は確信いたしております。なお、その後の処置も何らか片づけたいと考えております。そして一日もすみやかに、新しいはっきりした労働協約を作りたい、かように考えております。
  170. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 直用労務者の方々の関係につきましては、十分私ども事情はわかっております。しかしながら、これは責任を回避するわけじゃございませんけれども、外務省の所管であるかというと、外務省はそういう事項を所管する事例はあまりないのでありまして、私どもとしましては、現在とっております立場は、内閣に設けられております中央協議会で決定せられました線に沿って、米軍側との交渉を進めていくという措置をとっております。
  171. 小柳勇

    ○小柳勇君 今の、軍直用の問題を中央協議会で論議していくということですか。
  172. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 中央協議会で決定せられたところに従って措置していくという方針をとっております。
  173. 久保等

    委員長久保等君) 本日は、これにて散会をいたします。    午後四時四十三分散会