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1958-10-07 第30回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月七日(火曜日)    午後一時二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青柳 秀夫君    理事            鶴見 祐輔君            苫米地英俊君    委員            井野 碩哉君            鹿島守之助君            笹森 順造君            杉原 荒太君            津島 壽一君            野村吉三郎君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            羽生 三七君            安部 清美君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    国 務 大 臣 左藤 義詮君   政府委員    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    外務政務次官  竹内 俊吉君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省欧亜局長 金山 政英君    外務省経済局長 牛場 信彦君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省国際連合    局長事務代理  北原 秀雄君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国ポーランド人民共和国との  間の通商に関する条約締結につい  て承認を求めるの件(内閣送付、予  備審査) ○通商に関する日本国とニュー・ジー  ランドとの間の協定締結について  承認を求めるの件(内閣送付予備  審査) ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢等に関する件)   —————————————
  2. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  初めに、日本国ポーランド人民共和国との間の通商に関する条約締結について承認を求めるの件(予備審査)、通商に関する日本国ニュー・ジーランドとの間の協定締結について承認を求める件(予備審査)、以上両案を便宜一括議題といたします。  政府より提案理由の説明を聴取いたします。
  3. 竹内俊吉

    政府委員竹内俊吉君) ただいま議題となりました日本国ポーランド人民共和国との間の通商に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  昨年二月に署名された日本国ポーランド人民共和国との間の国交回復に関する協定は、同年五月に発効いたしましたが、同協定の第五条において、両国は、「その通商及び海運の関係を安定した、かつ友好的な基礎の上に置くために、条約又は協定締結するための交渉をできる限りすみやかに開始すること」を約束しております。  日波両国間には、地理的遠距離関係もあり、従来見るべき貿易もありませんでしたが、今後の両国間の通商関係発展を促進するため、右の国交回復に関する協定第五条に従い、政府は、本年三月七日より東京においてポーランド代表との間で交渉を始め自来、折衝を重ねました結果、四月二十六日、日本側全権委員山田外務事務次官ポーランド側全権委員ゼブロウスキー大使との間で、通商に関する条約署名調印を了した次第であります。  この条約は、共産圏の国を相手とするものとしては、昨年十二月六日に署名され、本年五月に批准書交換により発効したソ連との間の通商に関する条約に次ぐものでありまして、その内容日ソ条約にならったものであります。その骨子は、関税通関手続に関する最恵国待遇船舶出入港及び船舶の取扱いに関する内国民待遇及び最恵国待遇内国税に関する最恵国待遇、為替及び輸出入制限に関する無差別待遇の相互許与等について規定するとともに、貿易実施に関連して問題となる仲裁判断の執行の条件を規定しております。  この条約締結によりまして、両国間の通商の促進のための基礎が固められ、両国間の今後の貿易発展が期待される次第であります。  よって、ここに、この条約批准について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件についてすみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次に、通商に関する日本国ニュー・ジーランドとの間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  ニュー・ジーランド政府は、従来わが国に対し、関税及び輸入制度差別待遇を行い、また、昭和三十年わが国ガットに正引加入いたしました際にも、英国、オーストラリア等の諸国に追随してガット第三十五条を援用し、わが国との間に正式なガット関係を設定することを拒否して参りました。  このような対日差別制限の結果、わが国の対ニュー・ジーランド輸出は、近年さしたる伸張ぶりを示していなかったのでありますが、これに反して、わが国は、ニュー・ジーランドから、羊毛、食肉、原皮、牛脂、くず鉄等の原材料を毎年相当量買い付けてきたため、両国間貿易は、原則としてわが方の入超となり、昭和三十一年においては、わが国輸出二百十二万ポンド、輸入三百三十六万ポンド、昭和三十二年においては輸出二百七十三万ポンド、輸入九百七十六万ポンド、本年一—六月においては輸出九十六万ポンド、輸入四百十七万ポンドという状況でございます。  政府といたしましては、ニュー・ジーランドにおけるこのような対日差別待遇を一日もすみやかに撤回せしめるため、従来から機会あるごとにニュー・ジーランド政府との間に公式、非公式に折衝を続けてきた次第でありますが、本年五月ごろ東京におきまして在本邦ニュー・ジーランド大使館との間に通商協定締結方に関し、予備的な折衝を行なった結果、ニュー・ジーランド側においても通商協定交渉の開始につき、原則的に異議ないことが確認されたため、本年七月下旬代表団をウエリントンに派遣し、同国政府交渉を行なってきたのでありますが、約一ヵ月半にわたる折衝の末、交渉は妥結し、去る九月九日同地において在ニュー・ジーランド島津特命全権大使とW・ナッシュ総理外務大臣との間で協定署名を行なった次第でございます。  この協定骨子は、両国相互関税に関する最恵国待遇及び輸出入許可制度に関する無差別待遇を与えることにありますが、相手国からの輸入の急増の結果、自国産業が危殆に瀕する場合には、緊急措置をとり得ることになっております。なお、本協定は、批准書交換の日から正式に効力を発生することになっており、昭和三十六年九月八日の後には、いつでも三ヵ月の予告をもってこれを終了することができるようになっております。もっとも、政府といたしましては、わが国商品に対する最恵国税率の適用及び差別的輸入制限の廃止は、一日も早くこれを実現することが有利と考えたので、本協定署名の日から、行政上可能な限度において本協定を仮実施することとし、今日に至っております。  よって、ここにこの協定批准について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につき、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 両案に対する質疑は後日に譲り、国際情勢等に関する調査議題といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  5. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  6. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) それでは国際情勢等に関する調査議題とし、藤山外務大臣等に対し質疑を行うことにいたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 きょうは主として日米安全保障条約改定といいますか、新条約締結という政府考え方についてお尋ねをいたしたいと思いますが、今度の政府考え方は、サンフランシスコ講和条約の連れ子ともいうべき日米安全保障条約が、成立当時は、敗戦の結果による日本の無防備状態とか、あるいはいわゆる真空理論によって合理化されてきたのでありますが、しかし、今度の政府の方針は、さらに一歩を進めて、日米相互援助条約締結に踏み切ったのではないかと思うのであります。しかし、日本には憲法制約もあって、海外派兵等もできないので、これをカバーするものとして、いわゆる基地提供を行い、同時に、日本自身防衛力を強化することによって、実質的にこれにこたえようというのが、政府の新条約締結方向ではないかと思うのであります。われわれは、日米安全保障条約については、もちろん解消の立場を堅持しておることは大臣も御承知通りと思いますが、政府は、今回の安保条約改定意図が、むしろ現行条約よりもさらに一そう危険なものになるとお考えにならないのか。政府は、今日まで対等とか平等とか、あるいは自主的とかいう言葉で説明しておりますが、これは案外国民に理解されておらない。対等とか平等とか自主的といえば、いかにもそれが日本独立をさらに一歩進め、好ましい方向に進むというふうに考えておるようでありますが、私はそうではなく、これは一種の言語の魔術言葉魔術だと思います。だから、ここに私は問題の所在があると思うので、きょうは各議員の方とともに、私はこの問題について根本的な政府の態度をお尋ねしたいと思う。  問題は、今申し上げたように、自主的とか対等とか、あるいは平等とかいう言葉のあやの問題ではなしに、自主的に日本がこの条約改正なりあるいは新条約締結によって、より安全になり得るかどうか、この問題だと思う。だから安全の、この自主的な保障をどこに求めるか、ここに基本的な問題があると思うのでありますが、以下、いずれあとでこまかくお尋ねいたしますけれども、本条約締結日米行政協定並びにこの安保条約改正についての政府の基本的な考え方を、いまだ私は詳細に伺ったことがない。本会議あるいは委員会論議において、たまたまの御意見は承わっておりますが、基本的な考え方を聞いたことがありませんので、きょうは、いかなる意図に基いてどういう方向で新しい方向に踏み切られようとするのか、まずこの問題を最初にお尋ねいたします。
  8. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日米間の問題を、相互信頼の上に打ち立てていくという意味、また、日米間の諸種の懸案を解決する立場からいいまして、一つの問題は安保条約——まあ経済問題もありますし、いろいろな問題もありますが、それは皆さん御承知だと思うのであります。そこで、安保条約のできました当時と今日の事情とでは、日本事情が全く違っておるということも、はっきりいたしておるわけであります。当時は、御承知のように日本自衛力もなかった、また、日本国際社会に伍しておらず、また、経済的にも日本の国力というものが必らずしも充実していなかった、こういうような状況にあった。従って、私が就任以来過去一年、議会等論議を通じてみましても、当時の事情と今日の事情と違っている。従って、制定当時は日本が自主的に話し合いをしたというよりも、むしろ恩恵的な立場である場合には話をされ、あるいは悪い言葉でいえば、押しつけられたというような形もあったということは、種々の論議を通じて承わっているところであります。で、そういう観点からしまして、今日の日本としては、特に国民感情の上からいっても、国際社会に復帰して、そうして国際的な諸問題についての発言をしている。それが何か従属的な立場において、話を日本がせざるを得ないような状況に認められることは、日本国民独立自尊の見地からいっても適当でないし、われわれ日本の言います意見が、何かそういう立場からきたという誤解を受けることも適当でないと思う。そういう点を考えてみましても、あるいは先ほど真空状態というお話もあったが、日本として、とにかく外国に対して事をかまえる、あるいは日本が進んで侵略をやるというようなことが、日本の今後にあろうとは考えられません。しかし、今後の国際情勢において、日本が自分の国だけを守らなければならぬということは、これは当然のことだと思うのであります。その当然のことをするために、日本自身自衛力を持つということ、それが次第に質量ともに充実してきている、それは必ずしも完璧とはいえないかもしれませんけれども、しかし、とにかく充実してきた。従って、ある程度日本侵略に対する防衛体制も進みつつあるということは考えられるわけです。また、経済力にしましても、日本が間違わないように経済政策をやっていきさえすれば、世界的ないろいろな不況なり経済上の変動なりが起りましても、それにたえていけるというようなことになってきたわけです。従って、その実情から見まして、やはり日本アメリカとの間を規定するものは、昨年総理アメリカに行かれましたが、そうしてワシントン日米の新しい時代がきたのだと、またお互いに対等の立場話し合いをしようじゃないかという原則を、話し合ってこられているわけであります。で、その線に沿って、われわれは安保条約というものを検討してみることが必要じゃないか、これはおそらく国民のだれでもが考えていることだと思います。その意味において、私はワシントンで、ダレス長官にその趣旨を話したわけであります。ダレス長官も、当時と今日の事情が変っているというような状況については、当然了承されたと思ったわけであります。十分その点は了承されたと思います。従って、その上に立って、一つ新しく安保条約の検討をしてみようということに、まあ同意されたわけであります。そういうのがわれわれの考え方であります。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 一国の防衛が、自国の固有の自衛力を増強したり、あるいはそれだけではだめな場合には、集団安全保障なり何なり求めるというその政府考え方は、それでも一つ考え方でしょう。しかし、それだけが一国の安全ではないということです。だから、今度のような一種日米相互援助条約的な性格になることの方が、むしろ日本の安全をそこなう場合がある。だから抽象的な安全保障論というものは、もう意味ないのですよ。今の日本を取り巻く国際情勢なり客観的な諸条件の中で、どうしたならば日本が安全かということを、もっと掘り下げて考える必要がある。だから、昔ながらの、ほんとうに、はなはだ失礼な言葉であるかもしれませんが、一つ覚えであるといわれるような、ただ自衛力の増強とか、集団安全保障とか、それだけが一国の安全保障というような考え方は、そのこと自身をもう私は革命せにゃならぬと思う。だから、今のような客観的な世界情勢の中で、どうしたら日本の安全が保たれるかということになると、むしろ、この今日の国際的な情勢のもとにおいては、いろいろな意味において、アメリカがこの世界緊張焦点にあるわけです。アメリカ自身世界緊張の一方の焦点にある。だから、それとわれわれが一種共同防衛義務を負う形になる。アメリカ日本を助ける場合もそれはあるでしょう。しかし実際には、アメリカに助けてもらわなければならぬような条件の起る憂えは、私はまず当面ないと思う。アメリカで出てこなければ日本の安全がそこなわれるというような危機というものが、日本にすぐ到来するという私は客観的な条件というものは、まず存在しないと思う。私は、永久日本が今私が申し上げた状態にあるとは申さない。しかし、今日の国際的な背景、条件のもとにおいては、私はそれは言えると思う。ところが、今度は日本アメリカ共同防衛義務を負い、海外出兵はしないにしても、一種の何といいますか、基地提供によって相互安全保障の体系の中に組み込まれることになると、アメリカが他の国と戦争状態になった場合には、日本基地からアメリカ軍が飛び立つのですから、当然日本攻撃を受ける。日本ではない、日本基地攻撃を受けるのです。ところが政府は、日本基地攻撃を受けても、これは日本に対する当然の攻撃とみなすであろうから、当然日本戦争の中に介入を余儀なくされる。だから、そのことの方がむしろ安全保障をそこなうことになりませんか。だから、むしろ今の場合においては、そんなことをやらない方が、国家のために安全になるのです。だから、抽象的な、単に日本一国だけでは弱いから、共同防衛をやれば、それで日本が安全になるとかならぬとか、そんなことは、これは、よく政府の言われる現実に即さない議論だと思う。むしろ私の方が現実に即している。だから、そういう立場からいうならば、今度の政府条約改正方向は、今までよりもより危険であるとわれわれは判断せざるを得ないのですが、外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  10. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 一国の防衛というのは、軍事力だけでないということは、私もよく心得ているつもりです。社会生活の安定あるいは経済生活の充実、あるいは思想の問題に対する対策というような意味で、一国の、ことに現在のような時代における防衛というのは、完全な軍事力だけでなしに、そうした面において国民の態勢が整うということ、これはもう非常に必要だということは、私どもお説の通りであり、われわれもまあそれに異論はない。ただしかし、それだからといって、現在において、必ずしも軍事的脅威がないと私は断定できないと思う。現在、世界において大きな軍備を持っている国が日本の近隣にあるわけでして、そしてしかも、これがその国々の考え方だけでなしに、やはり国際共産主義という一つ考え方によって、いろいろな活動が行われるというような状況下にあっては、やはり軍事力というものも防衛に、現在の段階においては実際的に考えていかなければならぬ。しかも、その軍備というものが、今日のような非常に多額の経費を要し、多額の施設を要し、設備を要するということでありますれば、侵略を受けた場合に対する軍事力抵抗力というものも、財政負担その他から考えまして、私はなかなか一国だけで防衛できるという段階ではない。これが世界の各地に、あるいは各国において、やはり二カ国間もしくは数カ国の間におのずから共同防衛考え方があるというわけで、これは単に自由主義陣営だけでなく、共産主義陣営の中に同じ考え方があると私は思うのです。ですから、共同防衛そのものは、現在非常に悪いものだ、世界現実にそういうものは合わないのだ、日本アメリカだけがそういうことをやるのだということであるならば問題ですが、共産陣営の中に、おのずから共同防衛の取りきめがあり、自由主義陣営の中にまたある。やはり日本の安全を一国だけで防衛できないという、今の日本経済力その他から考えれば、やはり親しい国と手を握って、日本の軍事的な安全を防衛するということを考えるのは、私は当然なことじゃないか、こう考えておるわけであります。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 もちろん、それは共産陣営たると、自由陣営たるとを問わず、一国防衛だけでは力が弱いから、共同防衛ということは、それは現に存在していると思うのです。このことを否定するわけじゃない。ただ問題は、私は結局、防衛や外交というものは、ある意味からいえば、比較の問題だと思うのです。だから、今のように、日本現実に置かれた条件の中で、日本がそういうアメリカとの共同防衛のような形に踏み込んだ方が、より日本の安全に役立つか、あるいは、そういうことをやらない方が、日本がより安全なのか、この比較の問題だと思うのです。だから、私は、抽象的な論議じゃない、現実日本条件に即して言うならば、これは日米共同防衛体制をとらない方が、より日本に安全である。これは私は永久不変の真理だなんて申しません。そんなことは客観情勢の変化でどう変るか、わかりません。しかし、少くとも今日の段階においては、これは今われわれの申し上げている社会党のとる立場の方が、より安全であるということを確信しているのです。しかし、これは抽象議論になると、与えられた時間の、ちっとばかりじゃ済まなくて、一日でもかかることになりますから、具体的な問題に入りますが、さて、その場合に、この在日米軍日本以外の地域の防衛に出動する場合、これは事前日本政府協議をするという問題が、論議一つ焦点になっているわけであります。協議するということは、つまり事前協議です。これは日本側が反対すれば、それがアメリカ側を拘束する法的な基礎を持つということを意味するのかどうか。そうでなかったら、これはもう国民ごまかし、問題を合理化するだけの形式論議で、実質上何らの制約がない。だから、事前協議して、日本政府アメリカ軍の出動について異議がある場合には断われるということがはっきりすれば、これは事前協議ということは意味を持つのですが、そうでない場合は、全くこれは一種の単なる形式的な問題になるのですが、政府は、一体どういうふうにお考えになるのですか。
  12. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今後、ただいま申し上げましたように、安保条約改定について話し合いをしようということを、アメリカ側は同意をしたわけであります。従って、これから安保条約改定問題、具体的な問題について折衝して参るわけでありますが、ただいま御指摘になりましたような問題については、今後の問題としてわれわれはむろん考えて参らなければならぬ。御意見としていろいろ承わっておきますけれども、私自身が今それについてコメントを申し上げることは差し控えたいと思います。ただ、われわれとしては、先ほど申し上げましたような観点に立ちまして安保条約改定をやるのだ、日本アメリカとが真に友好親善関係を持ち、また、日本が平素から率直にアメリカに対して言うべきことは言っている、そうしてそれがほんとう信頼関係にありますれば、私は、アメリカ日本との間にいろいろなそうした協議を遂げる上に、お互い誤解が起るということは考えられないのじゃないか。日本の意思も尊重するでしょうし、そういう意味において、私はむろん、日米友好関係というものが将来に固くなっていくことを確信しておる次第でございます。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 今の質問に対する大臣お答えは、私は今後の折衝せんならぬ個々の具体的な条文の内容について、こまかいことを今はここでお尋ねするのも無理であるし、大臣お答えはなかなか困難だろうと思いますが、しかし、今われわれが論議をしておる日米安全保障条約というような問題は、一国の国民の安否に関する——安全保障に関する基本的な重要問題です。だから、ある程度の基本的な構想を、少くとも国民を代表する者に、国会を通して論議を十分尽さずに、しかもきのうの自民党の代議士会お話なんか聞くと、川島幹事長の話のようですが、案外のスピードで日米会談は進むかもしれない、それで、通常国会での批准ということになる。ところが、実際われわれとの間には十分なる論議が行われず、しかもアメリカとの間ではもう動かすことのできない条約成文化が進んでくる、これはコンクリートになってしまって、もうあとからではどうにもならないような状態に追い込まれていく、これは私は適当でないと思う。一国の運命に関する重要な問題が、ある程度は——何条のどこに何を入れるかというようなことは私は聞きません、そんなことは尋ねる方がやぼですから。しかし、重要な問題について基本的にはこうだ、この程度のことをお答えにならないということは、非常に私は不満だ。それは条約の性質上、これは非常な障害があるからお答えできないんでしょうが、大臣もそのつもりでお答えをしていただかなければ困るんです。特に先日、本会議の同僚の質問の際に、かりにそういうことが起っても、日本国憲法制約の中において海外出兵はしないとか、あるいは核兵器の持ち込みは禁止するとか断わるとか、こういうことは条約の中に織り込むつもりだということは、岸総理が明確に答えられているわけですが、これは条約の中にはっきりうたいますかどうですか。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今の協議をして断わられた場合には——協議がととのわぬ場合にはどうという前段の御質問に対して私が申し上げておることは、要するに、日米ほんとう信頼関係にあれば、日本が絶対にいやだといって断わったものを、何か武力で押しつけるということは私はないという意味において、協議というものは円満にととのうのではないかと思うんですということを申し上げたので、今協議に対してお話がありましたから、そういう意味で御返事はいたしたわけなんです。日本憲法上の制約があるということは、もうこれはたびたびアメリカ側にも言っておりますし、またこれは天下公知の事実でもあります。従って、その範囲を出て日本条約を結ぶというわけには参らぬことは当然で、われわれもそのつもりでおります。また、核兵器の問題についても、日本国民が頼んできておらぬということも、今日までたびたびアメリカ側にも言い、アメリカ側もまた日本の意思を尊重して、そうしてそういう問題について信頼感の上に立って善処してきておるわけであります。ただ、条約上それをどう表現するかという問題になりますと、核兵器という言葉が表に出てくるか、あるいは出てこなくともそれを含められるような意味協議するか、そういう点になりますと、私は今お答えしかねると思います。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 これは問題のいかんによっては下手な協議なんかやって、それを日本が合理化することの方がより危険だということもあるんです。それなら明白に協議をして、協議がととのわなかった場合には相手を拘束するような明確な保障がなければ、かえって下手なことはやらない方がいいという議論すら成り立ち得るんです。  それからもう一つは、かりに共同防衛をやる場合、これは私たちの立場とあなた方の立場とでは、この問題のとりようがかなり違うと思うのですが、かりに共同防衛ということになる場合に、その適用範囲が沖縄、小笠原島も含むのかどうかということも、いま一つ論議焦点になっております。政府としては、一体どういうふうにお考えになるのか。今の現実情勢において、われわれは少くとも沖縄、小笠原島は、すみやかにアメリカから返してもらいたいと思っております。しかし、今まだ返らない現実において、これを共同防衛の範囲に政府は入れようと考えておられるのかおらないのか、そこら辺も、できればこの機会に大よそのことを明らかにしておいていただきたい。
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 範囲等につきましては、今お答えはいたしかねるのです。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 それでは、時間がありませんから私もう簡単にしますが、どうですか、こういう重要な問題がここではあまり明白にされずに、日米会談はどんどん進んでいるのですが、私は、日米会談をすぐにやめてしまえというやぼなことは言いません、そんなことは言いませんが、もっと慎重に、十分国会論議を尽し、国民論議も十分に取り入れて、しかる後におもむろにおやりになったらどうですか。国会議論も中途半端なうちに、片方ではどんどん条約の成文ができ上っていくと、しかも、それはもう全く動かしがたいものになる、これは従来の慣例でももう全くそうです。あとから、国会議論があったからこの第何条を直すということは、ほとんどできるものではない。そういう意味において、一国の運命に関する重要な安保条約の再検討の過程において、もっと慎重な配慮をとられることを私は希望するのですが、大臣の御見解を承わりたい。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保条約改定日本にとって非常に重要な問題だということは、私もよく心得ておるつもりです。従って、この改正に当って軽々なことで処置していこうとは思っておりません。従いまして、過去一年の国会論議等も通じて、私としても得るところがありますし、一つ皆さん方の御意見を十分承わって、国論はこういうところにもあるのだということも承わることは、私としても喜ばしいところだと思う。ただ私が今交渉に当っているその内容を言うわけには参らぬのでありまして、やはり皆さん方の御意見を十分国会で言っていただくと、そしてそれを私は体して交渉に当る、またそれに対して、政府としてこういうふうな形でそういうものを表現する、あるいはこういうふうな点はだめだとかいうことの態度は、それはきめなければならぬと思う。その点は、いろいろ言っていただくことも私はけっこうなことであって、決してそれを拒否しているわけでは毛頭ないのですが、ただそれが一つ一つ折衝に当る私の立場として、条項についてお前はどう考えるのだ、こうだというときにはお答えしにくいということです。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 それでは、防衛庁長官に一点だけお尋ねいたしますが、今度の日米安全保障条約が新しいものにかりになるとすると、私は、防衛力の増強ということは、さらに避けられない状況になってくると思う。そこで、核兵器の持ち込み禁止等の問題も新しい検討の材料になると思いますが、しかし、実際には制限原子戦争論もあるのです。それから戦術的な核兵器というような論議も出てきておる。サイドワインダーもいろいろの情報によれば、政府アメリカに供与方を要請するようだ。これは核兵器といえるかどうか問題でしょうが、しかし、一体自衛力の限界というものはどこにあるのか、この憲法の中において。いわゆる国民考えておる原水爆、いわゆる原水爆を除けば、ほとんど無限に自衛の名前で拡大できると、まことに憲法はあってなきがごときという状態が白昼公然と進められている。一体、自衛の限界というものはどこにあるかという問題ですが、これは承わっておかぬと、今後安保条約論議する上に非常に私は大きな条件になると思いますので、この一点だけを一つ防衛庁長官に伺いたいと思います。
  20. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 私どもの念願をいたしております自衛力の限界は、直接間接の侵略に対しまして、これを防衛し得る必要最小限度のものだと考えております。従いまして、ただいまお話のような核武装をするとか、あるいは核兵器を持ち込むというようなことはいたさないつもりでございます。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 これは、こんな短い時間に論議する性質のものではなさそうですから、私は他の方に……
  22. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ちょっと羽生君の質問に関連しまして、これは防衛庁長官にお伺いいたします。  先ほど羽生君が、日本におるアメリカ軍の出動について協議をする問題を提起されたが、外相からお答えが得られなかったのでありますが、一体、現在のようなプッシュ・ボタン・ウォアに近い状況において、事前協議というようなことが可能なものですか。これはあなたは防衛庁長官ですから、軍事的な見地から、そういうような場合における事前協議とはどういうものであるかということを、あるいはまたできるかできないかおわかりだろうと思うのですが、それを明確に答えていただきたい。
  23. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 現在の米国側との関係におきましては、御承知のように、在日米軍の部隊が日本以外の地域に移駐いたします場合には、昨年六月の岸、アイク共同声明における米軍配備ということに該当いたしますので、同声明に従いまして実行可能な限り、日本側協議が行われるということになっております。来たるべき安保条約においてどうなりまするか、これは外務大臣からお話しの通りでございますが、戦略あるいは戦術的に見て、果してどういう点が実行可能であるかということにつきましては、非常に今後の侵略のあるいは戦争の様相が変って参りまするので、非常に私は困難なこともあると存じます。私どもは、いわゆるボタン一つによって全世界が原爆によって滅亡するような戦争は起り得ない、また起してはならないというような願望を持っております。
  24. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 願望をお聞きしているのじゃないのですよ。
  25. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 関連質問は簡単にお願いいたします。
  26. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私が今お聞きしているのは、たとえば今、金門、馬祖でもってああいうふうに両軍の、中共軍とそれから国府軍の戦争が行われている。アメリカが出ている。日本からも部隊が行っている。あそこで限られておればいいですけれども、もしあの戦争が拡大していった場合に、たとえばアメリカの航空機が日本から飛び立ってこれに参加するというようなこと、あるいはまた向うがアメリカ基地攻撃するというような場合が起るかもしれない。そういうような場合に、たとえばレーダーに向う側の飛行機の影が映った。直ちにこれに対して応戦の態勢を整えるというようなことが起るときに、これは一体事前協議ができるのかということが、これは重大な問題になってくるのですがね。そういうことが一体技術的に可能かどうかということを聞いているのです。それをはっきりお答え願いたい。
  27. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 今後の戦争の様態によりまするので、技術的なことは、いろいろ私は今後情勢が変っていくと思いまするが、私どもが現在共同声明によってやっておりますることは、協議を必ずしてもらう。また、今後の安保条約につきましても協議が行れるということに、これは国民の非常な願望でございますのが、御意見通りでございますので、そういうことを、十分条約に努力いたしたいというふうに存じております。
  28. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それはわかっているのですよ。今言ったように、プッシュ・ボタン・ウォアというような時代に、ごく短かい、一秒か五秒争うようなときに、事前協議が可能かどうかということは、あなたはその防衛庁長官の立場として、技術的にできるかできないかということを、イエスかノーか聞いているだけなんです。
  29. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 非常に困難な場合もあろうと思いますが、私どもは、できるだけ協議が行われるように、現在も努力いたしておりまするし、次の条約につきましてもそういうことを盛り込んでいきたいというふうに思います。
  30. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 外務大臣質問いたしたいと思います。質問事項は、安保条約の問題と、中国問題でございます。時間の節約上、一括して申し上げます。  今回、藤山外務大臣アメリカ訪問によりまして、多年の懸案でありました日米安保条約の問題に関して、調整の道が開かれるに至りましたことにつきまして、その間の御努力に対し、国民の一人として敬意を表するものであります。  安保条約調整の問題は、事柄がきわめて大事でありまするので、今日、国民のひとしく注目いたしているところであります。しかし、現に交渉中の案件でありますので、個々の具体的問題に関しましては、その具体的問題に触れることはここでは差し控えまして、ここにはこの問題に対する政府の基本的な態度について、若干お尋ねいたしたいと存ずるのであります。  日本外交の一つの大きな柱は、戦争の防止、平和と安全の維持を目標とする平和外交の柱であると信ずるのであります。しかしてそれは、わが国のとるべき国防の基本方針と不可分の関係にあるものと存じます。また一方におきまして、敗戦の結果、対外関係の面におきましても、今後において調整の要する特殊の事態を残しているわが国といたしましては、独立の実を上げるということが、外交の一つの大きな目標でもなくてはならぬことだと存ずるのであります。私は、この見地に立ってお尋ねいたすのでありますが、今回の安保条約調整の大目的はどこにあるか。それをまず第一に国民によくわかるように、明らかにしていただきたいのであります。  次に、日本外交の他の一つの柱は、国民経済生活を豊かにすることを目標とすることが経済外交の柱であると信じます。この点からいたしまして、日米の間の友好提携の関係が特に重視せらるべきことは、国民のひとしく認識するところであります。日米安保条約調整の問題は、その内容において、防衛に関する両国関係の調整を直接の目的とするものに違いないのでありますが、安全保障経済安定との不可分関係の上から見ましても、また、安全保障に関するよその国の間の諸条約の実例から見ましても、安全保障に関する条約の中に経済協力に関する規定を織り込むということは、あえて不当ではないと存じます。  そこでお尋ねいたしたい第二点は、今回の安保条約調整に当りまして、日米間の経済協力の促進の原則を織り込むことの適否について、政府はいかなる態度をもって臨まれるのであるか、その点をお示し願いたいのであります。  次に、中国問題に関し、二、三の点についてお尋ねいたします。アメリカ政府は、先月の十一日だったと思いまするが、アメリカの中共政策を明らかにした長文の覚書を発表いたしております。その中で、中共政権の存続性の問題に関して、中共政権は長続きするものとは見られない旨を述べております。また、中共貿易に関し、自由諸国の中共貿易の利益は、長い目で見るならば、結局において実際的なものではない、リアルなものではないという趣旨を述べております。さらにまた、中共政府に対する外交的承認と特定事項についての交渉とは別である、アメリカ自身従来も中共政府と重大な交渉を持ったことを述べております。  アメリカ自身がそういった見解を持っていることは自由でありますから、このアメリカの見解自体についてかれこれ言う筋ではありませんが、私のお尋ねいたしたいことは、アメリカのその見解とは別に、第一、中共政権の存続性についての観測、第二、わが国と中共との貿易に対する基本的の方針、第三、外交的承認に至らざる段階における限定された交渉の問題、この三点に関し、外務大臣としては、大筋において大体いかなる考え方をしておられるのか、外務大臣立場において、お差しつかえなき限りお答えいただければ幸いに存じます。
  31. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保条約改定の意義でありますが、先ほど申し上げましたように、現行安保条約ができておりますときと今日の日本事情というものは変っておるわけであります。そこで、現在日本としては、国際社会に復帰しまして、そうして世界の諸般の問題について、国連総会なり、あるいは安保理事会等においても行動いたしておるわけであります。そういう面から見まして、われわれは、やはり日本が自主的な立場でもって国際社会に臨んでおるのだということを確信いたしておるわけであります。しかしながら、現行安保条約の成立当初の過程から見まして、何か現行の安保条約からくるある濃淡の影が、日本の自主的な立場を打ち消すような感じを与えていることもまた若干事実だと思います。そういう意味において、われわれは、国際社会に復帰した日本立場として、当然今後国際外交の中に溶け込んで、そうしてできるだけ世界の平和と安全のために努力をして参らなければならぬ、そういう立場がいささかも誤解をされるということは、日本として、はなはだ将来の立場を悪くする。特に、そういう考え方が、国際社会に対する反映ばかりでなくて、日本国民の自主独立の気風に対しても、何か影を投げておるところがあるとしますれば、これはやはり払拭していかなければならぬ。そのことが、日本外交の基調であります日米関係に、さらに影響して参ることは、私は日米間の友好関係の上に非常な悪い影響を投げることになると思います。  第二番の御質問でありました日本アメリカとの経済関係でございますが、日本は、今日経済生活をやっております上において、アメリカと友好な関係を保って参りますことが、日本経済の伸展の上にも非常に大きな力になっている、主軸になっているということは、これは申すまでもないことであります。日本が、このアメリカとの経済関係を深くしていくという意味からいいましても、日米関係は、やはり暗い影をさすような状況に置いておいてはならぬと思う。そういうことから考えまして、私は、安保条約というものが国民の願望の上に立って、自主独立的な日本国の形成の基礎をなすという意義が出て参りますことが非常に必要だと思うのであります。そういう意味において、安保条約改定の大きな意味があると思います。これらの条約を結ぶときに、日本アメリカとの経済関係について、条約上何らか研究するかしないかというような問題については、今お答えしかねますが、私が申し上げましたように、それに触れると触れないとにかかわりませず、日本アメリカとの経済関係というものは、日本経済における大きな問題でありまして、そのきずなというものは、やはりりっぱな進展を見るように進めていかなければならぬ、そういう観点に立って、条約改定に当っても、われわれは物を見ておるわけであります。しかし、それを条約上書くとか書かないとかいう問題については、お答を差し控えます。  第二段の、中国との関係でありますけれども、アメリカの声明等を御引用になりまして、いろいろアメリカの見方についてお話がありました。むろん、日本の外交方針というものは、日本みずからが置かれておる地位を十分考えまして、そして日本みずから決定することであります。がしかし、大きな国際情勢の渦の中にありますから、世界各国のそれぞれの動向なり何なりを参考にして参りますることは、また当然でありまして、そういう意味において、参考としてそれらの意見を率直に聞きただして参ることは、私は、日本独自の考え方をきめていく上においても必要だと思います。日本は、地理的にもアメリカよりも中国に近いわけであります。戦前において経済的な関係も大陸には相当大きな関係を持っております。そういう立場からわれわれやはり今後の中国問題というものを考えて参らなければならぬことは当然なことであります。現在、十数年一応政権を固めておりますという事実を私どもも見ておるわけであります。将来それがどうなるかということは、私として言うべき限りではないと思うのでありまして、将来の問題についてはお答えをいたしかねるわけであります。われわれとしては、日本の地理的にもあるいは大陸との長い間の歴史的状況等も日本と特に深い関係がありますから、そういうものも考え、また、国際情勢の各般のものをながめて、そうして中共の問題については日本自身の外交方針できめていくべきである、こう考えております。
  32. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私は、日中のもろもろの交流の問題、さらに日中の国交正常化の問題、そういう点と、それからそれに直接関連する問題でありますが、最近の台湾、澎湖島、あるいはもっと金門、馬祖をめぐる戦争の危機の問題、これらについて政府の御見解と、さらにそれに対してどう対処しようとしておられるかについて、いろいろお伺いをしたいと思いますが、まずその前に、委員長にちょっとお尋ねをしたいのですが、私は、今申し上げたような諸問題を解明する問題は、外交の問題であると同時に軍事の問題でありますから、防衛庁長官のみならず、林統合幕僚会議議長の御出席を要求をいたしたのでありますが、お見えになっておりません。岡田理事からちょっといきさつは簡単に聞きましたけれども、委員長は、これに対してどうお考えですか。
  33. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 委員長は、林幕僚長の出席を求められましたので、政府側にそれを要請いたしましたが、その点は防衛庁長官が出席するから、本日は防衛庁長官あるいは防衛局長に対する質問にとどめて、また必要の際は幕僚長を、まあ慣例によりますか、参考人というような意味でこちらに呼ぶということで、岡田委員との了解を得ておりますので、その通りにしたわけであります。
  34. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 制服の国会への出席の問題に対して防衛庁長官はどういうふうにお考えになりますか。
  35. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) ただいまのお尋ねの件でございますが、政治の軍事に対する優先はぜひ確保しなければならぬと考えております。この見地から、防衛庁の組織の立て方及びその運用の実際におきまして、政策に関しまする事項については私及び政府委員国会に対して責任をもってお答えを申し上げることにいたしまして、今日まで国会の御了承を願って実行して参ったのでございます。この慣行は、やはり今後とも維持することが望ましいと存じますので、何とぞ御協力をお願いいたしたい、かように存じております。
  36. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それは慣行で、何か法律的にその他出られないという規定があるかどうか。単なる慣行あるいは政治的な判断によってそうしておられるのか。その点を一つ明確にしていただきたい。
  37. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) お答えいたしますが、法律的な根拠はないと存じます。
  38. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしますと、政治が軍事に優先をするという意味において、あなたが統合幕僚長その他を全部従えておられて、それに指揮命令をするという点はいい見識だと思いますし、それはぜひ確立をしていただきたい。ただし、そのことは制服が国会に出てならないということではない。あくまでも、制服といえども、今は統帥権その他の問題を完全に打破したはずの民主主義国日本であれば、あなたに従属していると同様に国会に従属をしているものなのである。従って、国会には出てしかるべきだと私は思いますが、その点はどうお考えですか。これはアメリカその他でも御承知通り上院の外交委員会にはちゃんと参謀総長が出て、詳しく戦略、戦術の問題を報告をいたしておることは御承知通りです。だからあなたが政治優先を言われるのならば、単に一防衛庁長官の支配下にあるのでなくて、もっと高度に、国会の支配下になければならないと思います。それをどうお考えですか。
  39. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) ただいま米国のお話がございましたが、米国とは若干私違うところもあると存じまするし、ただいま過分のおほめをいただきましたような政治の軍事に対する優先と、もう私どもは、はっきり戦前の陸海軍とは一線を画しておりまするが、いろいろ国民の御心配もございまするので、なるべく私どもは私及び内局が責任を持ったお答えをいたしたい、こういうふうに努めていきたいと存じまするが、しかしどうしても私どもより以上に戦術戦略等について御要望がございますれば、国会の、ただいまのような、お話いただいたようなことを十分お含みいただいた上で、なお御要望がございますれば、いなむものではございません。
  40. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 この点はアメリカと違うと、事情が若干違うとおっしゃいましたが、私はその点がわからないのですが、まあそれはそれとして、それならば、国会にすら出てくることはどうも政治に関与する、介入をするような危険があるから、そういうことは、絶対に避けたいというお気持もあるだろうし、さらには、この政治優先を貫ぬこうとするお考えだと思うから、先ほどから言っているように、その限りにおいては私は非常にいい見識だと思う。従って、それは確立をしてほしい。  それならばお尋ねをいたしますが、林君は与党の会議に出席をしたと伝えられておりますが、いつ、どういう形で、出席をしたか。何を話したか。その点を御説明願いたいと思います。
  41. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 取り調べましてお答えいたします。
  42. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いやそれは取り調べる問題でなくて、非常に重要な問題だよ。国会にすら出さないのを与党に出しておるじゃないか。取り調べる問題じゃないのだよ。
  43. 門叶宗雄

    政府委員(門叶宗雄君) 私官房長でございますが、日時は今はっきり私記憶いたしておりません。与党の外交調査会から、世界の軍事事情について説明を求められまして、現在の各国の軍事事情を説明いたしたことがございます。
  44. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それがあなたの非常に懸念をされておる政治が優先をしなければならないという考え方で、与党にも出席をさせたというおつもりですかどうか。国会にすら出ることを非常にためらっておる林君が与党にのこのこと出ていって与党にサービスをするという態度が、政治優先の態度だとおっしゃるのですか。
  45. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 国会に対しましては、私どもが責任を持ってお答えを申し上げるということは、先ほど申した通りでございますが、与党におきまして軍事事情についての説明が聞きたいということで参りましたのは、政治に介入をするというわけではございませんので、ただ事情事情として御説明申し上げたということだと思います。
  46. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 あなたはさっきから国会にすら出さないと言っておるのでしょう。国会にすら出さないあれになっていたのです。それを、いかに軍事の問題であろうとも、与党にのこのこと出かけて行くということは、与党の小使以外の何ものでもないのじゃないか。なぜ与党が呼んだときに、国会に慣例として出ないものが、なおかつ出ていいということを安易にお考えになって出されたのか。すべて私はこれはあなたに国務大臣としてお尋ねをしますが、さらに総理に、きょうは僕はお尋ねをしようと思っていたが、総理はきょうは見えないから、あなたに国務大臣としてお尋ねをいたしますが、あなた方の自民党は、役人諸君をあたかもあなた方自民党の小使であるかのごとく呼び出してきて、いろいろ自民党で話をさしておられる。それでいて国会には出てこない。自民党の小使じゃないのですよ。国民のサーバントであり従って国会のサーバントであっても、いかに与党といえどもあなた方自民党の公僕じゃないのですよ。総理大臣も、あなたにも国務大臣として私はその点を聞くが、さらに役人諸君のあの何というか、節操のない、全くあなた方自民党の小使であるかのごとき、これは文部官僚においてもしかりだ。そこが問題なんです。だから、そういうことを私はただしたいと思うから、あなたの見解のみならず、林君に来てもらってそこをどういう考え方でやっているのか、あれほど国会に対して警戒をしておる諸君が、なぜのこのこと安易に出かけていくのか、明瞭な御答弁を願いたい。
  47. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 先ほど申し上げましたように、純軍事的な問題について、その方面の知識を持っております林君が、政治には一切関係がない問題ということでお伺いをして、その範囲において説明をいたしたものでございます。
  48. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 政治には関係がないといったって、その軍事知識その他をやられるにしても、戦略戦術についてお話をすることは、政治に関与しないという意味であなたがやるということになっておるのでしょう。あなたはどこの党の所属ですか。自民党から出ておる大臣でしょう。それならば、あなたが御説明になればよい。国会でも責任を持って私が一人でやりますとおっしゃるのだから、自民党に対してもそれをやられればいいのだ、ほんとうに制服を政治に関与させないためには。国会には出さないとおっしゃるならば、特定の一つの政党に出すことは、もっと政治的ですよ。さらにあなたもおられるし、何のために次官を出しておられるのですか。政務次官は、そういう連絡のためにこそ出ておるのでしょう。これは単にこの軍事その他の問題だけでなくて、私はさっきから言っておるように、一般情勢についてもそうだ。次官諸君、局長諸君が、与党のお呼び出しであるからといって、のこのこと全く無見識に出かけていく。与党の公僕ではないのですよ。与党の小使ではないのですよ。これは、私はあなたのいろいろな御説明を聞くけれども納得ができない。これは一つあなた、その点をはっきりして、今後そういうところには少くとも出さない、しかし国会には出す、そうして、のこのこと出ていった者の軽率さを十分にこれは戒飭される必要があると思う。そういうことを正さないから軍事が政治に介入をすることになるのですよ。どうですか。
  49. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 先ほど申し上げまするように、軍事が政治に優先しないようにすることにつきましては、私といたしまして全力を尽したいと存じます。
  50. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 しかし、優先をしておらないどころか与党の小使になっているじゃないですか。優先どころじゃない、小使ですよ。それを何とか正すことを、ここで責任を持って答弁をしていただきたい。
  51. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 純軍事的な問題につきまして、専門の知識を求められた。それをむろん軍事の秘密とかその他にわたりません範囲において御説明申し上げることは、私はむろんこれが、先ほどのお話の政治にわたるとか一党に偏しませんようには、しきりに注意をさせまするけれども、そのことにつきましては、私は絶対禁止するかどうかということは、もう少し考えたいと思います。
  52. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならば、なぜさっき、これまでかたく国会には出ないように戒心をしているんですと、慣例もないんです、従ってここに出さしませんということを言われるのですか。私は、その統合幕僚長の話が政治にわたったとか、一党に偏した意見を述べたとか、そういうことは何ら申しませんよ。それは純粋に軍事的な問題であったでありましょう。しかし、そのものが、国会にすら出ないのに、あなたの党のところにのこのこと出ていってサービスをしておるような、その態度なんですよ。果して一党のあれでないということを、政治に関与しないということを、ほんとうに厳正に考えているのか。あまりにそういうことをルーズに考えていながら国会に対しては出てこない。その態度は何ですか。これはしかもあなたが繰り返し言っておられるあなたの指揮下にあるんですよ。ここで責任のある答弁をしてもらいたい。あまりに明瞭なことじゃないですか。
  53. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 先ほど申し上げまするように、一党に奉仕するとか、あるいは政治の問題に介入するというようなことをいたさないように、十分戒心をいたします。なお国会には絶対に出ないというふうに仰せられたのでありまするが、どうしても専門の知識を、私どもでは御納得ができませんときには、説明員としてお呼びいただく例もあると思います。先ほど申し上げましたように、絶対に私どもいなむものではございません。なるべくさようなことにつきましては御協力をお願いしたいと申した次第でございます。
  54. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 じゃこの問題は、今この場で責任のある答弁をいただけませんから、残念ですけれども、しかし、これは総理とも十分にお話を願って——これはさっき言ったように行政官吏全部の問題です。それから党の幹部諸君ともよくお話し合いを願い、さらにあなたの所管のところだけとも十分一つ御連絡を願って、次の機会に責任のある答弁を要求して、私はこの問題はこれで終っておきます。それからこの次には、今言ったような意味において出てもらうことはもちろんのこと、先ほどのことについての責任がある御答弁、処置を要求をして、次の問題に移ります。  まず長官にお尋ねしますが、昨日午前一時彭徳懐中国国防部長が、御承知のように、台湾、澎湖島、金門、馬祖諸島の軍民に対するアピールなるものを発表したことは御承知通りであります。このアピールなるものは、戦略的に見て、戦術的に見て、どういう意味を持っておるか、戦略、戦術的な見地から、この問題が今後どういうふうな展開をするというふうにお考えになるか、まず長官にお尋ねをします。
  55. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 台湾海峡の事態は非常に深刻でございまして、予断は許しませんので、今後の推移を見守りたいと存じますが、しかし、現在ワルシャワで米中会談が開かれております。また私どもは、双方とも熱戦に入ることのないように努める動きはあると思いますので、われわれはこれに期待をいたしまして、何とか平和のうちに本問題が解決されることを望んでおります。
  56. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういう問題は、あと外務大臣にお尋ねをしようと思っておる問題です。私は、きょうあなたに特にお答えをお願いしておるのは、防衛庁長官として、先ほども明瞭に申しましたように、戦略、戦術的な見地から、どういうふうにお考えになりますか、ということを御質問をしております。そこを明瞭にしていただきたい。
  57. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 昨日の声明がどういう意図をもって、また相手にどういうふうに響いていくかということにつきましては、私どもとしては、推測を御遠慮したいと思います。金門、馬祖が非常に重要な戦略的な価値を持っておることは否定できないと存じます。
  58. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ただいまの金門、馬祖の戦略的価値、さらには台湾、澎湖島の戦略的価値等の問題については、次にお尋ねをする問題なんですよ。そういう問題じゃなくって、もっと直接にきのうのあのアピールをどうお考えになるかという問題、しかも私が特にだれのアピールかということを申し上げた。彭徳懐のアピールだから、あなたに特に戦略、戦術的な意味をどうお考えになるかということを聞いているのですよ。周恩来なり陳毅外交部長の問題ならば、あなたに聞かない。彭徳懐のアピールだから、しかも金門、馬祖のアピールについて、どういうふうにお考えになるか、それは非常に軍事的に重要な地位だとお考えになるから、そこから問題は、それじゃそういうところにあのアピールが出てどうなるんだということを、戦略、戦術的に明瞭に把握しておられなければならない。それを一つ明瞭に言って下さい。
  59. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 三十六計和にしかずというようなこともありますが、私は、逃げるのではございませんで、その和を私は念願をいたしておるものでございますので、そこに向って一歩進められれば非常にけっこうだと思っております。
  60. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 三十六計和にしかずというのは、アピールの冒頭に出てくる言葉で、これは外交上の、政治上の態度であり、問題なんですよ。この問題は、あなたから御答弁を願わなくたって、あとで専門家の外務大臣からお願いをしようと思っておる。そうでなくて、戦略、戦術的にどういう問題になるかということ、もっとその問題を具体的にお尋ねをしますが、一週間の停戦の提案をし、しかもその停戦提案は、条件をつけておる。アメリカ軍が物資補給その他の援護をしないように、アメリカ軍は手を引いてくれと、それならば自分たちは停戦をしておくんだと、こういう考え方ですよ。私が戦略、戦術上の問題を聞きたいというのは、これに関連をして、これがどういう意味を持ち、今後どういうふうにこれが展開をしていくかと、それがさらに、それじゃ台湾が、あるいはアメリカが、あるいは日本が、さらには世界の各国が、あるいはイギリスが、そういう戦略、戦術上の問題をどう判断をしようとしているかということをお聞きをしようというので、まずそれをはっきりしてから、三十六計和にしかずということがどういう意味を持つかは、外務大臣にお尋ねしますから、あなたからお答えにならなくてもいいです。
  61. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 直接戦略、戦術——ちょっと戦略、戦術という言葉、私どこをおっしゃっているのかわからないのでございますが、今のお話の戦略、戦術的と申しますか、一週間停止されますれば、その間、国府側としては補給が若干容易になるという事態はあると思います。この問題につきましては、彭徳懐国防部長の声明につきましては、これは私どもは戦略、戦術上の問題というよりは、むしろ外交上の問題であるというふうに判断をします。
  62. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 外交上の問題もありますけれども、今申し上げたように、戦略、戦術の問題が中心になっているのですよ。だからこそ彭徳懐にアピールをさせているのですよ。ちっとも質問の答えになっていないからどうも困るのですが……。だから林君を呼んでいただきたいというのも、ここにあるのですよ。どうも失礼ながら、あなたじゃ何にもわからない。一体、戦略、戦術上どういう意味を持っているかということすら、何を問題にしているかすらわからぬのだ。だから林君を呼んでくれということを言っている。その林君は、のこのこと自民党には行くけれども、ここには出てこない。じゃもう少し聞きますが、一体その金門、馬祖に国府の軍隊はどういう配備をしているのか、それに対して中共側は、これまでにどういう砲撃なり何なりをしたのか、それが一体どういう過程があって、ああいうアピールが戦術的に出たのか、そこらを明瞭に一つ
  63. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 御質問の御意味が少しわかって参りました。私は佐多委員のように中共の事情に詳しくございませんので……。
  64. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 戦術の問題ですよ、私は戦術、戦略はもうしろうとだから、よくわからぬから、専門のあなたに聞いている。
  65. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 金門、馬祖における国府側の兵力の配備等について御質問がございましたので、数字のことでありますので、防衛局長からお答えいたさせたいと思います。
  66. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 私どもの方の調査によりますると、ただいま金門、馬祖の正面におきましては、国府軍の方は金門島に約五個師団、馬祖島に約一個師団の兵力を集中しております。これに対しまして中共軍の方は金門、馬祖の正面に二個軍約六個師団、そのほかに砲兵、海兵隊の類約一ないし二個師団のものを集中している、これは約十万ぐらいの兵力があると思います。砲数百門、これが直接の配備でございまして、その後方には十万ないし二十万の兵が待機しているというふうに見ているのでございます。
  67. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それらが、どういうふうに両方が紛争を起したか、これが一番重要だ。どっちが先に手を出し、どっちがどうだったという論争点、それを明瞭に戦術的、戦略的に言って、どういうふうにお考えになるか、そうして今までの結果としてそれがどういうことになり、従って今のようなアピールが出てきたか、それを、だから国府は、あるいはアメリカは、どういうふうに受けようとしているか、戦術、戦略上の問題をさらに御説明を願いたい。
  68. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) これは大体地図等で御承知だと思いますが、金門、馬祖島は大陸へ取っ付いておる島嶼でございまして、中共側の方から見ますると、何といいましてもこれはあらゆる場面から考えまして、両島に国府軍の兵力がおるということは、これは私は障害になっておったと思うのでありますが、逆に、これを国府側の方から申しますと、これは大陸への一つの足がかりだという意味におきまして、これは戦術上非常に重大な意味を持っておると思います。と同時に、これは台湾本島及び澎湖島の前衛線であります。台湾本島、澎湖島の防衛上も、国府側の方から見ますと、私は非常に価値があると思うのであります。私どもの調べた範囲内におきましては、今回の砲撃は金門、馬祖に対しましては中共側の方から始まり、八月の間は主として金門、馬祖両島に対する直接の砲撃によりまして、両島におりまする国府側将兵の降伏を促すという作戦に出たようでありますが、九月に入りましては、漸次両島周辺の制海権、制空権を確保しながら、国府側の補給を遮断するという作戦に出ておるように見ておるのでございます。
  69. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今の考え方は、九月二十三日に砲撃を開始した、中共側が砲撃を開始した、従って侵略なり、軍事力によったのは、まずさきに中共側が手を出したんだというアメリカの見解をそのまま祖述されたんじゃないかと思いますが、もっと問題は前にさかのぼることは、あなた方すでに御承知だろうと思う。  私は七月の末に参りまして、八月の中旬まで北京におりましたが、すでに私が香港を行きがけに通ったときに、帰りがけにも、あそこは非常に緊張状態下にあって、そしてもう空中衝突は何べんも起っていた。それがどういう態勢において出てきたかというような問題は、これはもうあまりあれになりますから、この次に林君が来たときにそこでもう少しお尋ねをし、質疑をいたしたいと思いますが、ただ、これが一つ国府側の見方によれば、封鎖作戦なり砲撃作戦が成功をしなかったんで、時をかせぐためにああいう提案をしたんだという見解が行われておる。しかるにアメリカにおいてすら、あるいはイギリスその他においてすら、なかなかあそこを守り切れないようになって、そして、ただアメリカがワルシャワ会談において面子を立ててもらうようないろいろな話し合いをした。それとの関連においてしばらく停戦をする、しかし、すでに補給状況なりその他は、あと二週間、三週間程度しか残っていない。これをさらにやれば全滅をするか、全面投降するか、あるいは撤退する以外にないというような状況になっている。それらの問題をあなた方がどうお考えになるかということをお聞きをしたいと思うのですが、私は、もうこの次の林君との話し合いに譲ります。ただ一点、昨日あの声明が行われて、直ちにアメリカと国府軍の首脳が緊急会議を開いて、これはスムート台湾防衛米軍司令官と王国府参謀総長がこの緊急会談をした。この緊急会談をどうお考えになるか。この事態に軍としてどう対処しようというお考えを持っているか。これがさらに次の外交問題に関連しますから、これは大臣も御承知でしょうから、大臣の方から一つ御答弁を願います。
  70. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 私どもの得ております情報に基きまして、防衛局長からお答えをいたしたのでございますが、中共側の意図あるいは戦略、戦術等につきましては、佐多委員は、たなごころを指すごとく御承知だと思いますが、私どもは、そういうような情報にあるいは欠けているかもわかりません。私どもは現在得ております情報に基きまして、ただいま防衛局長からお話をいたしたのでございますが、この事態につきまして、米英側と国府側といかなる協議をしておりますか、その協議がどういう結果になるかにつきましては、私どもとしましては、今他国のことをいろいろ推測をいたすことは遠慮いたしたいと思います。
  71. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 これは日本が一番利害関係諸国なんですよ、日本がそして岩国なりあるいは横須賀はこの事件のためにすでに活動の中に入っていることはあなたも御承知通りでしょう。これらは詳しくさらに聞こうと思っていたけれども、幕僚長もいないし、あるいは時間もありませんから、私は次の機会にあれしますが、それからくる重要な問題でしょう。それによって、会談がどういうことを協議し、どういうふうに持っていかれようとしているのかを何も知らない。それでいてよく平和的な解決をしたいと思います。そういうふうに努力をしたいということが言えますね。それを明瞭にして、それじゃ軍当局としては、どういう見通しのもとにどうするか——私は国府やあるいはアメリカに命令をおしなさいと言いませんよ。しかし、少くともあれに関連して日本は、もっと限定して言えば、日本基地はどういう態度をとるかということは、あなたの言われる平和的な解決の非常に重要な点なんですよ。それを長官にお尋ねしている。
  72. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 今お示しの会談に、もちろんわが国が加わっておりませんし、私どもが他国のことを臆測いたしましてここでお答えをいたすことは、先ほど申しましたように御遠慮いたしたいと思います。  私どもは、最初に申しましたように、事態がすみやかに平和に解決されるように、そういう意味におきまして、とりあえず一週間停戦になりましたことは、私ども非常に歓迎をいたすところでありまして、さらにこれが長期に停戦が継続せられ、さらに円満な解決に至りますことを、心から念願をいたしているのでございます。
  73. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それは、これから外務大臣に聞くことだと、さっきから言っているじゃありませんか。その前に、その両軍部の首脳のきのうの朝の緊急会談で、伝えられるところによりますと、アメリカ側は輸送をやめると、そうして何らか面子の立つ方式による軍の撤退を考えようという意見を出し、しかるに国府側はそれに絶対反対の意見を言っている。特に蒋介石総統は、それを非常に強く突っ張っている。そこで、この緊急会談がどういう結論になったかということが、平和的に解決するか否かのかぎになる。そこが私たちにわからないから、これは正直に、私にはわからない、しかし、あなたは所管の大臣だし、ちゃんとした情報を持っておられるのだし、しかもアタッシェまで出しておられるでしょう。何のためにアタッシェを出しておられるのですか。
  74. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 国府にはアタッシェを出しておりません。
  75. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 アメリカからわかるはずです。私すらわかるのだから。
  76. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 私どもがその会談に全然関与いたしておりませんので、今、会談の内容あるいはその結論まで佐多委員は御承知のようでございますが、私どもはそういうことを確認いたしておりませんので、これに関しまして私どもがいろいろな推測をいたしますることは、先ほど申し上げましたように御遠慮申し上げたいと思います。
  77. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうも禅問答までもいかぬ、あなただから禅問答はいいだろうが、そういう問答をしていたって、こうらちはあきませんから、この次の機会に林君と一つ一しょに来て下さい。そしてあらためてそういう問題はこれはほんとうに平和的に解決する場合に非常に重要な問題なんですから、特にあなたに来ていただきたいというゆえんがそこにあるのですから、これで林君が出てこなければ問題が一歩も進まないということも、身にしみてお感じになったことだろうと思うからぜひ出して下さい。  あと外務大臣にお伺いしなければならないのですが、時間がないそうですから、外務大臣にはこの次に、本論はこの次にいたします。
  78. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私は外務大臣に……。私の質問は簡単でありますが、お答えを願いたいと思います。  一つは、安保条約の調整と申しますか、改定と申しますか、これは今問題は具体的になっておるわけであります。これは日本の国論に非常な影響を与えているのであります。そこで、私はこの問題について、二つの問題について外務大臣の口から、はっきりと国民にわかるように御説明をしていただきたいと思うわけであります。一つは、平和条約並びに安保条約及びこれに伴う行政協定などについては、日本国民の間に不満がございます。それで、前の改進党及び民主党、また、ただいまの自由民主党においては、一貫して日本国民の満足するような改定をしたい、調整をしたい、こういうことが党の方針としてきまっておる、ところが、この党の方針は原則としては異存はないと思われるのでありますが、今起っている問題は、それを具体的にどういうふうにするかという点であって、その点は、今衝に当っておられる外務大臣から具体的にはお伺いをいたすのは無理でありますからお伺いいたしませんが、根本の方針については、これははっきりと確認をして、もう一ぺん国民にわかるようにしていただきたい。ところでこの問題については、従来たびたび日本交渉をいたしております。約三年半前に重光外務大臣みずからワシントンに行きましてこの交渉を始めましたけれども、当時のアメリカ政府においても国民においても、これを受げ入れようという態勢でなかった。昨年岸首相が行かれて、またこの交渉をしておられて、抽象的ないろいろな発表はありました。しかし、この間外務大臣がおいでになって、また国務長官とも御会見になって、具体的にこの交渉に入られたということは、日本側の根本方針は少くとも自由民主党、その前の政党以来変っておりませんが、アメリカ側は非常に情勢が変ってきておるというふうに私には考えられるのでありますが、両方の合意がなければできない国際条約でありますから、日本側においてもはっきりこの方針を明らかにすると同時に、アメリカ側においても全部日本の要求が聞かれないまでも、これを弾力性をもって受け入れるようになっておるという事情が、ほんとうに私は日本国民に徹底しておるのかどうかを心配いたしますが、この点について、私は外務大臣からお話しをいただきたい。と同時に、これは今回の極東の非常に危険な金門、馬祖の問題の際にこの改定交渉をしたということは、私は一方からいえば、まことに不幸なことであったと思うのであります。アメリカはこの問題については、国をあげて非常に神経質になっておる、そのときに日本側がこの問題について改定を求めるということについて、非常な困難があり、従って、外務大臣としては言いたいこともおっしゃれない点もありましょう。しかしながら、これは必ずしも金門、馬祖の現実の問題を相手としておるのではなくて、こういう問題が、将来、この場合でなくとも、いろいろ起ることがあるから、国内においてもこの問題を中心としての改定論もあったと思うのであります。従って、この点につきまして、私はアメリカ側は変化しておるという見通しのもとにお始めになっておると思いますから、その情勢の変化について、国民にわかるようにこの機会にお話しおきをいただきたいと思います。
  79. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま鶴見委員の言われましたように、日本側におきまして各方面でこの現行安保条約に対して不満があったということは、その成り立ちからいいまして、これは時勢が変ってくれば当然だと思うのであります。従って、自民党の中にも、かねてからそういう意見があったということも、これは承知しております。私も一党員としてそれは心得ているつもりでございます。同時に、議会等論議を通じまして、私が外務大臣就任以来一年、この問題がしばしば議会で論議されておるのでありますが、私としてもそれらの問題の経緯から見まして、そうした観点に立ちまして見ました結論というのが、先ほど来申し上げておりますように、安保条約というものは、とにかく一方的な形において作られたものであって、そうして今日の事情からいえば、やはり双方がはっきりした対等の立場でこれが作られなければならぬということが一番大きな問題だと思います。従って、そういう立場を堅持しながら今後の交渉をやって参るわけでありますが、アメリカ側が数年前重光さんが行かれたときに応じなかった、また昨年岸総理が行かれたときにも、この話が必ずしもスムーズにいかなかったということでありますけれども、むろんアメリカ側においても、安保条約以後の日本国の成長と申しますか、発達と申しますか、あるいは実力がついてきたと申しますか、そうした点につきましては、逐次認識を改めてきているのではないかと思うのでありまして、たまたま重光外務大臣が行かれたときに、まだ必ずしもそれが十分徹底していなかったというようなことがあったと思うのでありまして、そういう点は、環境が次第に変ってきたのじゃないか。それから昨年総理が行かれまして、この問題を取り上げられましたときも、当然重光さんが言われたあとに、続いて総理大臣としてこのことを取り上げられたのでありますが、日本として非常に重要な国民的関心事であるということは、アメリカも了解したと思うのであります。ただ、そういうような状態でありましたけれども、昨年は安保委員会等を作って、そうして現行安保条約の運営その他に対して、適切にいくように、また将来安保委員会等において両国民の願望に沿うようにこの問題を検討していこうということになって、あの安保委員会ができた。安保委員会ができましたことも、やはりこれは総理が行かれまして、対等の立場日米に新時代がきたということに対する将来の施策の検討の一環としてできたことだと思うのであります。でありますから、その後の安保委員会等の話し合いその他に関連して見ましても、アメリカ側としては、逐次考え方が変ってきたのじゃないか、従って、安保委員会ができたことも、結果においては非常によかったのではないかと思うのでありまして、この問題を取り上げる時期が、ようやく熟してきたということが言えると思うのであります。そこにたまたま私が参ったことが、私の非常な仕合せであったのか、あるいはこういう重大な問題をやらなければならぬ不仕合せであったかは存じませんけれども、とにかくそういう時期が熟しておったときに際会したと思うのであります。むろんこの問題は、私は六月に第二次岸内閣に参与いたしましたときに、日米間のいろいろな問題について話し合いをしたいと思いまして、ダレス長官ワシントンで会見を求めたわけであります。七月の初めにそれを申しておいたのでありますが、当時はまだ台湾の海峡の問題も直接今日のような事態になっておりませんし、そういうことで予備的な会談等でも、まあマッカーサー大使とは、ワシントンに行けば必ずこの問題に言及せざるを得ないのだ、日本の過去の念願からいって言及せざるを得ないのだから、こういう点等についてワシントンに行ったら私としては話をすると。そのときは、必ずしも私はこうスムーズに解決する、あるいは条約解決の話し合いに応じようとまで本人の意図が得られるかは疑問に思っておった。私自身の心がまえとしましても、行って、そうして話し合いをした結果が、将来何かそういう問題を持ち出す一つの基盤の話し合いをしていくという気持でおったわけです。そういうことでありますので、台湾海峡の問題等に関連なしに、この問題は、本年とにかくワシントンにおける会談の題目として取り上げてきておるのでありまして、従って、そういうことに関係なしに過去数年間の日本の要望にこたえ、また、過去一年間の安保委員会の運営等の反映もありまして、そうしてアメリカ日本立場を正当に了解して、そしてこの問題の話し合い一つ応じていこうという決心をいたしたのではないかと、こう私は推測いたしておるわけなんです。  大体以上申し上げたことがアメリカ考え方ではないか、こう存じております。
  80. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 その中に、ただ、外務大臣の口からはおっしゃりにくいかもしれませんが、私は、国民の前にはっきりさせていただきたいことは、アメリカ日本自身の認識が変ったというだけでなく、アメリカ世界外交の態度が今までと次第に変っておるということが、私は一つの要素になっておると思うのでありますが、従って、先ほどから議論に出ました中共問題にしましても、一九五二年、あるいは一九五五年ごろと今日と非常に違ってきている。でありますから、金門、馬祖の問題につきまして、いきなりその変化を現わすことはなかなか困難でありましょう。けれども日本に対するこういう条約改定に応ずるというそこには、アメリカ自身考え方の変化というものをわれわれ日本国民が了解するように、外務大臣からお話しになる必要があるんじゃないか。
  81. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、安保条約を作ったときと日本事情が変ってきたと、そういう基礎の上に立ってアメリカとしても日本アメリカのよき友人として、日本と緊密なる連絡もとっていきたい。従って、そういう意味では日本立場というものも十分了解してやらなければいけないということになってきたということは、これは当然のことだと思います。でありますから、私はやはりアメリカに対して、もし日本がよき友人として言うならば、やはりアメリカに対して率直にものを言い、また、アメリカの見解についても率直な話し合いをしていくことが必要ではないか。そういうよき意味の友人に日本が成長していくということ、そういうことが非常に大きなアメリカとしては力になるのではないかと思います。  極東の問題についてアメリカが関心を深めておりますことは、申すまでもないのであります。アメリカとしては、今のような自由主義陣営の中におけるアメリカの指導的な立場からいきますと、大西洋における問題でありますとか、あるいは中近東における問題でありますとか、まあいろいろな角度においてアメリカに関連しております重要な問題があることむろんであります。従って、現在の世界情勢の分析の上からいいまして、やはりそのときどきに起りました地域的な紛争によって、若干の目の移りどころ、あるいはそのときの政策の重点を置きます問題は変っておりましても、アメリカとして、極東における問題は非常に大きな問題があるということは、これは申すまでもないことと思うのであります。そういう環境の中において、アメリカがやはり日本というものを非常によき友人として保持していく、こういう考え方はやはり強いと思うのであります。その立場からいきますれば、やはり日本を何か困るような状況下に置いていく、占領下のきずながなお強くつながっているというような形は、アメリカとしても、必らずし日本をよき友人としておく場合の建前ではない、そういう意味において、アメリカの世論といたしましても、あるいは政治方面の人たちでも、日本立場というものを考えてきているということは、これまた申すまでもないことと思うのでありまして、先般、鶴見さんもアメリカにおいでになりまして、おそらく同じような感じを抱いたのではないか、こう考えております。
  82. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 ちょっと私のお尋ねしたことと違うのでありますが、昔の非常に弾力性のないダレス外交であったら、これだけ安保条約改定の問題にはなかなか応じかねたろうと思う。そこのアメリカ自身の変化というものが、やはり日本の国論に反映しておらない。やはり日本国民が今度のあなたのなさる外交交渉に一まつの不安を感じられると思うのであります。外務大臣として、よその国のことは御披露はできないと申されましたが、私自身観点としましても、ダレス外交の観点が少し動いているということが、今日の外交の道を開いた一つの要素になっているのではないかと思うのであります。これは、外務大臣としておっしゃりにくいと思いますから、私は次の問題に移りますが、この間外務大臣がおいでになりましたときに、カナダにおいでになった。そしてカナダをお通りになって国連においでになり、英国の外務大臣とお会いになって、それからダレス長官とお会いになった。その問題につきまして、アメリカ及び日本にとって誤解があっては非常に不幸なことと思うのであります。これは具体的にお話ができるならば、やはりこの機会にお話をきょういただきたいと思うのは、私の推測では、おそらくは日本の外交の中心は国連である、だから国連の有力なる代表者とお会いになるというのであれば、何の誤解もないと思うのであります。日米の問題はあくまでも日本アメリカの問題であって、よその国の相談を受けなくても、そんな水くさい仲ではないという立場の方が、これは日米交渉が好調にいくのでありますから、その点については、外務大臣は少しも御異存がないことと思うのでありますが、この点について、朝野の間に誤解がないように、もう一ぺんここではっきりお話し願いたい。
  83. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 委員長から申し上げます。時間の関係もありますので、発言の方もまた答弁の方も、なるべく簡単明瞭に願います。
  84. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は国連に参りまして、国連において問題が取り上げられますときに、御承知のように国連の総会議場におけるプラット・フォームの演説というものは、これは相当激しい応酬もありますけれども、事実上、国連の問題が解決して参るのは、どこの会議においても同じように、特に国連等においては会議場以外のいろいろな折衝であります。でありますから、昨年と今年でも各国の外務大臣の国連に来ております数というものはふえております。また、活発にそういう舞台裏と申しますか、そういう所でわれわれは接触していかなければならないのは当然のことでございます。ただいま鶴見さんの言われましたアメリカとの外交の問題について、何かイギリスとあるいはカナダと話し合いをすることは、アメリカの感情を害するのではないかというふうな意味の御質問ではなかったのですか。
  85. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 そういう誤解が国内にあってはいけないから、そういうようなことはないということをはっきりした方がいいのじゃないか。
  86. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれといたしましては、極東の問題というものは、非常に大きな問題でありまして、これが国連の舞台に乗りました場合はもちろんのこと、国連の舞台に乗りません場合でも、やはりこれに関係を持ち、関心を持っている国の意見というものは、それがわれわれと同じであるか同じでないかは別としまして、やはり十分に聞いておきますことが私は当然なことだろうと思うのです。でありますから、私が他の国の人たちと会い、あるいはアメリカダレス長官と会った場合でもそうでありますけれども、いろいろな角度から、考え方を聞き出すために、質問をいたしておりますことは事実であります。しかし、私自身がこう考える、ああ考えるということを申したことはないのでありまして、結局は、それらの問題を十分聞きながら、日本の今後の問題を考えていくということが必要だと思うのであります。かりに各国の外務大臣等と接触しまして、そうしていろいろな立場からの意見を聞きながら日本自体の考えがきまってきますれば、それはまた改めて関係当事国の人と会談するような場合に、そういう前提のもとに話し得る場合もあろうと思います。今回は、全くそういう意味でいろいろな意見を聞いて、そうして参考にしたいという意味で聞きましたので、決してアメリカの感情を害したということはないし、また特別のあれもないので、その点は安心をしていただいて私は差しつかえないのじゃないかと、こう思っております。
  87. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 時間もありませんから、これでやめます。
  88. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 藤山外相はだいぶ外務大臣として板についてこられたのですが、大へん苦い問題を砂糖でもってちゃんとくるんでお話しになることが上手になってきました。しかし、私は、その苦いところを一つぜひお聞かせを願いたいと思うのであります。  まず、第一に、今度の安全保障条約改定について、日本アメリカとが合意をした。それで改定交渉が始まったわけでありますが。どうも改定について私は食い違いがあるのじゃないか、こういうふうに考えます。あなたの今の鶴見さんへの御答弁を聞いておりますというと、今度の改定について何も金門、馬祖の問題と直接関係があるのではないというふうに言われた。そうしてそれで前に岸さんが行かれたとき、あるいはその前に重光さんが向うに行かれたときからの懸案であって、七年前と今日とでは、日本情勢が違う。それがまあ改定の一番大きな理由になっているようであります。しかし、どうも私は今度特にこの問題を持ち出されて、また伝えられるところによりますというと、やはり金門、馬祖の問題について、日本におけるアメリカ軍日本側協議することなしに、勝手に飛び出していく。そうして日本側はこれに対してくちばし一ついれないということが、国民の間に非常に不安を巻き起している。そういうようなことで、特にこの場合に安全保障条約改定の問題を持ち出して、この際アメリカ軍の規制について何とかしたいというお考えではなかったかと想像するのです。ところがアメリカの方が、よろしい、改定いたしましょうと言って応じたのは、私は、そういうことじゃないと思う。もちろん七ヵ年たって日本情勢が変っておるということを向うも言っている。その変っているということは、日本に自衛隊ができてきた。相当使えるようになった。そこで、この一方的な条約を双務的なものに変えて、日本の自衛隊をやはり台湾の軍隊、韓国の軍隊あるいはフィリピンの軍隊と同じように使えるようにしたいというところが、向うの眼目ではないかと思うのであります。あるいはまた、アメリカの戦略が最近に非常に変ってきております。そのアメリカの戦略から見た日本の位置というものも変ってきております。従って、その新しいアメリカの戦略に適応するように、日米安全保障条約改定するというのが、アメリカ側のねらいであろうと私は思うのでありますが、ただ日本情勢が変ったというだけなのか。今アメリカ側が変えようというのは、そういうふうに日本の自衛隊がふえてきたから、条約の形を双務的、平等のものにして、日本の軍隊をも、韓国やフィリピンや台湾の軍隊と同じように、いざという場合に共同行動がとれるようにしようというところにねらいがあるのか。あるいはまた、アメリカの新しい戦略に沿うように改定しようとしているのか。その点どうなのか、はっきりお答えを願いたい。
  89. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、先ほど申しましたように、日本の当時の位置というものは大きく変ったということが非常に大きな原因だと思います。それは、私がまあ台湾問題が起っているときに話し合いをしようということを持ち出しているわけでないのでありまして、その前から私も持ち出しておりますし、また、その前からアメリカ側もおそらく八月初旬に私がワシントン訪問に対して、マッカーサー大使を通じてきて、それを訂正しろというようなことを、八月初旬に言ってきておりますから、そういうような時期等を考えましても、台湾問題とは何も関連なかったということは申し上げられると思います。むろん世の中のことは刻々に動いておりますから、その間に台湾問題等も起りましたから、そういうことを念頭に絶対に入れなかったということまで言うのはどうかと思いますが、しかし、アメリカが、日本の自衛隊ができてきたから、それを何らかの形でもって、韓国なりあるいは台湾なりそういうところに利用しようということは、憲法上の制約——われわれはそういう憲法上の制約が現にあるのであって、そうしてそれはどうしてもわれわれとして守らなければならないという立場をとっているわけでありまして、そういう意図から出てきているというよりは、むしろ、やはり私は政治的に日本というものを信頼すべき友人として、緊密なる友好関係を保っていく、ということが、極東の平和を維持する上においても必要だと、また、日本国民的な感情をいたずらにアメリカ安保条約を通じて何か刺激しているというようなことが、かえって大きな政治的観点からいってマイナスになるというような見地からであろうと私は考えております。
  90. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 安保条約は、これはまあ軍事的な条約なんですね。従って、改定されましてもこれは軍事的な性格は失われるものじゃない。そうすると、今、藤山さんの言われるように、まあ日本との友好親善関係を増すために安全保障条約改定しようなんということは、アメリカでは考えていないと思う。これは一般的な条約だとか、あるいは外交上の措置でありまして、私は、やはり安保条約改定ということは、単刀直入には向うだって軍事的な問題をはっきりきめたいというところにあると思います。そうじゃないのでしょうか。
  91. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保条約そのものが軍事的な条約である、これは申すまでもないことでありまして、従って、その上に立って論議をし、あるいは話し合いをしているわけであります。日本国民の感情というものをアメリカがやはり政治上に非常に重要に考えなければ、あるいは現行安保条約をそのまま置いておいても、あるいは軍事上に非常に大きな支障があるということではないんじゃないかというふうにも考えられる。やはり一つの大きなねらいというものは、何か日米間の離間というような問題を考えてみると、やはり安保条約の不平等性とか、あるいは日本の自主性がないというようなことが、とかく日本国民全体にアピールするところが非常に多い、それが基因になって、何かアメリカが一方的にわがままを押しつけているんだという感じがあるので、やはり私はそこに一つの大きなねらいがあるんじゃないかということを考えております。むろん安保条約それ自体が軍事上の条約でありまして、少くとも軍事を抜きにしてこの問題は考えられない、それは当然だと思います。ただ、改正に当っての気持といいますか、というのは、そういうものが大きく働いておると思います。
  92. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 日本の方の立場を大いにくんで、今度の新しい条約か、あるいは改定されるものをもっと平等のものにしよう、平等の形をとろうということは、あるいはけっこうなことかもしれません。しかし、これは私は形の問題だと思います。問題は内容にあると思う。もし不平等の形のものが平等に改められる、そうして片務的なものが、双務的に改められる、形はそれでいい、しかし、それじゃ双務的に改められるということになりまして、従来の安全保障条約に規定されているよりも、日本側でよけいな軍事的危険を負い、あるいはまた負担を負うことになりはしないかということを、国民がおそれておる。一体今度の安全保障条約改定の問題については、日本の自衛隊が増強されて今日のような姿になり、あるいは今後さらに増強されようというときに、アメリカ側は双務的だということによって、日本の方の軍事的義務の増大をねらっておるのではないかと思うのでありますが、果してその点はどうなったか、また、あなたは交渉されるに当って、日本側の軍事的義務の増大もやむを得ないと考えるのか、双務的にするためにはそうしなければならないのだとお考えになるのか、あるいは軍事的な義務はもっと今日よりも減らしていこうというふうにお考えになっておるのか、その基本のところをお伺いしたい。
  93. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん現行安保条約にあります諸般の問題を整備して参らなければならぬのでありまして、一方的であるのを、そういう面において双務的に直していくということは妥当だと思われます。しかし、憲法上の制約もありますし、軍事的な要求をこれ以上加えようという気持において私はこの問題を取り上げておるわけでないのでありまして、やはり条約上、現行の安保条約の規定をできるだけ双務的に整備していくという立場で問題を考えておるわけであります。
  94. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 現行の安保条約を双務的にできるだけしていくということでございますが、たとえばその前のときには自衛隊はなかった。今度ある、行政協定の二十四条を見ますと、日本区域において敵対行為が起るとか敵対行為の脅威が生じた場合には、日本政府アメリカ政府が共同の措置について協議をするということになっております。今まで日本の方にこれという頼むに足る軍隊がなかった、まあ向うはあるいは共同措置について協議をすることを認めなかったかもしれない、また、そういう事態が朝鮮事変が一段落してから後はなかったからかもしれぬ。しかし金門、馬祖の問題を考えてみますというと、私は、そういう共同措置を向う側から日本に要求することが今日の条約のもとでもできるわけでありますが、その場合に、前には日本に自衛隊がなかった、今度は自衛隊があるのであります。そういうことを考えて参りますというと、双務的にいたしまして、こういうような点がはっきりさせられてくると、日本は、極東においてアメリカがソ連や中国と敵対行為に入りました場合に、直ちに共同措置のための協議を求められてくる可能性が、より大きくなると思うのですが、こういうような点について、安全保障条約現在のものを双務的なものに改定しようということになった場合に、この問題はどういうふうになるのか、その点をお伺いしたい。
  95. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現行安保条約協議をされない問題を、できるだけ協議に移していくと、協議をすることが危険だということで——何か協議すればすぐに協議に応じざるを得ないような立場になると……。今のは、協議をしないから、応ずるか応じないかわからぬということになってくるかもしれないと思っておるのであります。まあ日本条約をやりまして、そしてやはりアメリカが一方的にやらぬ以上は、いろいろな問題を協議するということを明確に出すことが必要だと思うのでありまして、そのこと自体は、新しい義務を負うのじゃなくて、晦冥——何か暗い中に隠れていたものをはっきりさせるということだと思うのでありまして、はっきりさせること自体は、何か非常に大きな負担を背負うのでなくて、現実に負っておる負担が暗い中にあるからわからぬと、それはやはりはっきりさせるのだということの方が、私はすっきりした形において日本国民も納得し得るのじゃないか、こう考えているわけであります。
  96. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまのお話ですと、隠れていてはっきりしないことを今度はっきりさせるのだということになって参りますというと、行政協定二十四条にある例の共同措置ということが非常に重大な問題になってくるのですね。一体この共同措置というのは、敵対行為または敵対行為の脅威が差し迫った場合の共同措置ですから、これは軍事的共同措置にきまっている。そうでなければ、ただ共同措置といって規定してあっても、これは何のことだかわかりません。これはもうそういうものに限定されている。そうすると、それをはっきりしてくる、しかも双務的ということになってくれば、日本の自衛隊の出動あるいは自衛隊が海外に出ないまでも、アメリカ軍と協力するという問題もはっきりさせなければならぬということになるようでありますが、そういうことをはっきりさせるおつもりなのか。今の前のお話からいえばそうなるのですが、それはどうでございますか。
  97. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私の今申し上げたのは、総括的な精神論を申し上げておるわけでありまして、個々の具体的条章については、今何とも申し上げかねるわけであります。ただ、今までの国民の不安というものが、何かわけのわからぬ一方的な形でもって押しつけられているような形であって、それではいざというときにもはっきりもしないと、そういうような不安を持っていたということを、私は議会論議を通じても、あるいは他の場面からもあれしているわけであります。で、非常に大きな義務を背負うというような問題、その問題については、おのずから義務の限界もありましょうし、義務を負わない場合もありましょうし、それらの問題については、今後の折衝の上でわれわれが考えていく問題でありまして、ただいま申し上げたのは、そういう過去における論議の精神論的な面を申し上げて、私の条約改正に臨む一つの態度を申し上げたので、個々の問題についていろいろ一々申し上げておるわけでないのでありまして、御了承願いたいと思います。
  98. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 精神論は、私はもう何べんも聞いておりますので、大体耳にタコができておるのでありますが、私に精神論をお伺いしているのじゃない。私は、その共同措置ということについてお聞きしているのです。これは今度の条約にこれがどうなるかということは、あるいはあなた今言うことができないかもしれません。しかし、その個々の、つまり行政協定の二十四条に書いてある共同措置ということが、これは軍事的なものであるということはお認めになりますね。
  99. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 行政協定一般につきましても、今後、これはやはりわれわれとしては検討していきまして、本条約ができますときに、改正すべきものは改正して、現行のままで踏襲するものは踏襲するという態度をとるわけです。現在これらの問題について、私がとかくのことを言いますことは、交渉の直接当時者としは、非常に困難でありますので、お許しを願いたいと思います。
  100. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと今のに関連して一点だけ外務大臣に。今の岡田議員の質問に関連するのですが、要するにサンフランシスコ講和条約締結当時と情勢が変ったと、変ったから、客観情勢なり日本の主体的条件の変化に応じて条文の体裁上をととのえるという、一種の形式論ですね。独立国家にふさわしい一つ形式を作るということにウエートがあって、そして実質上、になう義務を付加されることはないのか。それとも消極的な共同防衛論から一歩進めて、むしろ日米相互援助条約的なものに一歩を進めるのか。どっちにその性格があるのか。単に体裁を一応整理して、客観情勢の変化にこたえるという意味のものなのか。もっと踏み込んで、新時代に対応する、いわゆる日米時代ですか、それに即応するような相互援助条約的な性格のものに踏み切っていくのか。どっちにほんとうの外相としての腹があるのか。この一点だけを承わりたい。
  101. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の改定に当りまして、現行安保条約を自主的な立場において再検討するというのがわれわれの考え方である。従って、これらの問題について現行安保条約基礎として、そして問題を自主的に配列をしていく、また、その規定を確保していくというような問題として、われわれは取り扱っております。ただ、ニュアンスとして、あるいははっきりさしたことのために、何か特別な重荷がかかったようなふうに、現行の安保条約にあること自体についても、ニュアンスがそういうふうに起っているというようなことは、それは絶無ではないと思います。そういうようなことは、実体論といいますか、そういうものと離れて。そういうことが何か予想されるというようなふうにお考えが、あるいはあるのじゃないかと思うのです。
  102. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 防衛庁長官に、その行政協定二十四条の共同措置ですね、それは軍事行動かどうかということを、まずお伺いします。
  103. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 主として軍事上のことであろうと思います。
  104. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうしますと、そういうものを明るみに引っ張り出して、そして条約のうちに入れるというようなことで明らかにしたいということになると、これはもうやはり日本の現在よりも、はっきりと軍事的な行為について、日本側の方でより余計な負担を負うということが起ってくるのじゃないか。私はそう考える。今、外相はいろいろ羽生君に対してお答えになったのでありますけれども、どうも私の見ているところでは、形よりも実体が問題であり、また、私ども論争する場合に、形よりもむしろ実体について論争したいと思うのです。それで、その実体について考えてみますというと、先ほどから言われましたように、この条約はそれ自体軍事的な条約であるということはお認めになった。二十四条の、安全保障条約に基く行政協定に規定されているものが、これは重要な軍事的な共同行動であるということになって参りますというと、今後こういう点が明らかになれば、明らかにこの共同の軍事行動をはっきりと規定したものになるのではないかどうか。その点は、外相どうお考えになりますか。
  105. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 行政協定条約との関連でありますけれども、むろんわれわれとしては、まず本条約審議に入るわけであります。それらの場合に、行政協定も見合い、また本条約ができましたときに、行政協定というものも検討してみるということでありまして、はっきりさせたこと自体が、何か非常なあれをさせるというのでなくて、晦冥であるために、かえってどこまで義務を背負うのかわからないというようなこともあり得るわけなんです。そこらはずいぶん議会等の論争でも御指摘があったところではないかと、私などは思っているわけでありまして、晦冥であるから、どこまで義務を背負うのかわからぬ。負うならある程度義務をはっきり書いた方がいいのではないかというような点が、相当国民の不安を買っているところでもあろうかと思います。しかし、この二十四条をどうするかという具体的問題については、今私は申し上げませんけれども、全体としてそういう点が、相当に論争の中にもあったし、国民感情の中にもあったというふうに私は考えているわけであります。
  106. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、安全保障条約の中に規定される軍事的義務といいますか、軍事的な点と、憲法の問題との関係ですがね。先ほどから憲法でもって規定されているところでもって、たとえば海外派兵その他については限界があるということを盛んに言われている。これはまあ一見もっともな話です。ところが、限界がぐらぐらしたら、これはどうにもしようがないのですね。そこで、たとえば自衛隊というものについて、これはもうできたときから非常な問題になっておったのですが、最初の警察予備隊から、保安隊になり、自衛隊になってきた。この間に、ずっと憲法の解釈についてぐらぐらしていたのですね。それで、だんだんだんだん解釈が拡張されていっているのです。このことはお認めになるか、現在までその解釈でもって一貫してきたとお考えになるのか。これは非常に動いて、拡大解釈になったとお考えになるか。その点。
  107. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 憲法制定当時の解釈というものについて、私ははっきりいたしませんけれども、しかしながら、制定当時からこうした問題について、非常な確定的な解釈があったとか、新しい時勢に即応して、若干ずつ法律のことでありますから、その情勢に応じて解釈が変るということも、絶無ではないかとも存じますが、しかし、少くも安保条約等を締結する、新条約等の場合には、一応現状の段階において、憲法の解釈をはっきりした上でやりませんければならぬと私は思います。
  108. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いつでも現在の段階においてははっきりしているのです。ところが、次の段階になると変っちゃうのですね。今も外務大臣は、まあ絶対に変らないとは言えない。どうも自分は知らないけれども、変っていったという意味のことを言われた。そうすると、ここでもって安全保障条約改定をされて、日本の海外派兵なり、その他の軍事的義務をこの条約に明記された場合に、現在の段階において、憲法をこう解釈したと言っても、あす、あさって、来年になるというと、また別の解釈が出てくるということじゃ、これは幾ら憲法の条章の範囲内ということであっても、どうにもならぬと思います。私は、そういう点の危険を感ずるのであります。たとえば自衛隊の問題一つ取り上げてみても、私はその憲法の解釈なるものが、今後も果して今の政府の態度で守られていくかどうか、これは非常に疑問だと思うし、まあ今後なお保守党の政府が続くとすれば、これまた別の解釈をとるだろうと思うので……。ただ憲法の制限があるから、限界があるから、この条約にかなり双務的な形をとっても大丈夫だということには、国民は安心はできない。その点についてどういうふうにお考えになるか。
  109. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) おそらく私といたしましても、これらの交渉をやります場合に、一定の憲法の解釈を確定してもらって、その上でやること、また、条約ができましたとき、議会等で御審議になるときも、その解釈に立って御説明申し上げることになろうかと思います。
  110. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 時間が少いから次の問題に移りますが……。
  111. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 委員長から申し上げますが、なるべく短かく願います。
  112. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 もう一ぺんだけお伺いいたします。  それは、在日米軍の行動についての規制ということが問題になるだろうということが予想されてるわけです。それは在日米軍が出動する場合に、事前協議をするかしないかということです。先ほど羽生君もそれに触れられまして、その協議ということは、一体、ごめんこうむる、それは困るということを含むものかどうかということもあるわけでありますが、この問題について、私は先ほど左藤防衛庁長官にお伺いして、満足な答えが得られなかった。これは今後重大な問題だろうと思うのです。先ほど左藤防衛庁長官は、実行可能な限り協議をするということを言われた。実行可能な限りということは、裏返しにすると、実行不可能な場合があるということで、それを予想されなければ実行可能な限りという言葉は出てこないと思うが、実行不可能な場合は、どういう場合か、一つあなたから御説明を願いたい。
  113. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 現在の規定におきましては、日本における米軍の配備、使用につきましては、実行可能と言えるということでありまして、私どもは実行不可能の場合は予想いたしません。
  114. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 現在は、実行可能な限りも不可能な限りもないのです。アメリカが勝手に動いておるのです。そして日本側一つも口ばしが出せないことは、条約上御存じでしょう。もし実行可能な限り協議すると言うなれば、それは、この間アメリカ軍が台湾へ移動したのだって何だって前に協議するはずなんです。それもしてない。だからあなた条約をお読みになってないからそういうことを言うのです。私は、今後協議をするということが問題になった場合に、一体、現在の軍の行動とか、あるいは戦術とかいうものからして、その実行不可能な、協議をする間がないという場合が多いのじゃないか。そういうような場合のことを、あなたはどういうふうにお考えになるか。たとえばアメリカの軍隊がこちらから出動するという場合に、緊急を要する場合も考えられるわけです。先ほど私が申したように、あるいは向うから航空機が編隊で来て、それがレーダーに映った。そして即刻アメリカ軍が出動するというような場合に、一体協議が可能であるかどうか、こういうことをお伺いしたのですがね。レーダーに映って、そして命令が出て、飛行機が飛び立つまでには、おそらく何分ともかからないのです。その間に、アメリカ軍の司令官と左藤防衛庁長官との間に協議が可能なりやいなやということを、はっきりお答え願いたい。
  115. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 先ほど来私が申しておりますのは、現在の共同声明における米軍の配備につきまして、この声明に従って、実行可能な限り日本側協議が行われるということでありまして、それまででございます。今後条約改正でどうなりまするか。その場合にどういうような協議をいたしますか、これは将来の問題だと思います。駐日米軍が、日本基地で突然今お話のような攻撃を受けた場合におきましては、これは行政協定の規定によって行動されると存じます。
  116. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうすると、それはもう協議をしないで行動するということですね。
  117. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 時間が参りましたから。
  118. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) さようなことはあり得るのでございます。
  119. 野村吉三郎

    野村吉三郎君 私は、外務大臣安保条約について二、三のお尋ねをしたいのであります。もうすでに詳しい質疑応答があったのでありまして、私は交渉内容を伺おうというのではなくて、外務大臣は私のただいまお尋ねせんとする点について、どういう腹がまえでいらっしゃるかということを伺いたいのであります。  条約改正は戦後十三年、国情の変遷に伴って改正の必要を認むるのは当然だと私は思います。まあ馬祖島あるいは金門湾の事件がある、ですからして考えられる点もありますけれども、反対する理由はないと思っております。わが国は自由国、民主国となっておりますが、私はこれは別に自由民主党の国だというのではなくて、九千万人の国民の国であるというふうに思っております。こういう点で、私は元来からして日本丸に乗っておる九千万人は、大和一致して超党派外交を推進すべきものだということを思っておりますが、それがなかなかまだ年所を必要とするのではないかと思っております。今の政府のとっておる方針は国連中心主義であって、世界の平和維持に努力しておるし、防衛日米安保条約によって国の安全を保つのに努力しておると私は思っております。安保条約改正に当って、外交上の慣例において平等の観念、あるいは双務的の点を考えることは当然だと思いますが、先ほどもいろいろお話があったように、その目的の根本は、やはり双務安全保障、すなわち軍事協定であると思うのであります。現在、日本防衛力は、いろいろお話がありましたのですが、私らの見るところでは、現下の国際環境に対しては非常に微弱なものである。海航方面を見ても駆逐艦の十隻ぐらい、あるいは新しい飛行機は数十機というような状況で、非常に貧弱である。この四つの島を守るのには、私らの見るところでは、とてもこれでは足りない。防衛隊の人はその少しの兵力をもって大きな任務を果しておるというふうに私は見ております。そうだからして、これを日米間の安全保障条約によって補足していくということは、当然だと思うのでありますが、この点について外務大臣はどうお考えになっておるか、自分の国の自衛力独立独歩でいける、そこへ錦上花的に日米保障条約でいくというお考えであるか、私は日米安全保障条約なければ、日本の現下の国際環境に対して、自衛はできないというふうに思っております。この点をはっきり伺いたい。日本憲法制約もありますし、海外出兵はできなくなっておりますが、先ほど羽生委員のお尋ねになった沖縄、小笠原島の問題であります。この外務大臣お答えも承わったししますが、これは日本の領土であって、潜在主権も確認されておるからして、安全保障の適用には、これはどうなされるようにお考えになっておるか、これは今答えられぬという御答弁になっておりますが、何というても日本の領土でありますし、日本の今の小さい自衛力をもって沖縄を守ろうということは困難だということは承知しておりますが、これはあくまでも日本の領土であるという見解のもとに立って、そうして日米安全保障条約でこれを守ろう、日本はこれに対して無関心でいるのではないというところは、はっきりお考えになっておると思いますが、こういう点について、あまり突っ込んでお答えを伺うわけにはいかないでしょうが……。それから改正に当って、はっきり米国が日本防衛の任務を分担するということを明記せられることは、これはやっぱりいろいろ外交専門家からも聞きましたが、あの条文でははっきりしないからして、望ましいと思います。これに対する——日本を守る責任を分担する上において、反対ということはどうかということ。これは私はやっぱり外国語で言っておるロジスティック——、兵站及び補給をもってやるということと、基地の使用となると思うのですが、基地という問題に触れるというと、アメリカのための基地だということが日本人の頭の中にあって、砂川事件のようなことが起っておるのですが、これは基地日本防衛上にも不可欠のものであって、飛行機がだんだん発達すれば、いろいろの機械もこれに応ずることをやるでしょうが、ある時期には飛行場を拡張するということの必要なことは、これは言うまでもないことであります。こういう点についても、日本国民に対して、はっきりと日本の国防上、自衛上必要なんだ、そうしてわが国の安全を保障せにゃならぬのだというようなところを、はっきり国民に了解させたら、そうけんかを起さぬでもいいだろう、私はそう思っておりますから、日本の国防は日本人の手でやる、しかしながら、今の国際情勢では力が足らぬのだからして、よその力も利用する、これは決して恥でも何でもないのだ、イギリスしかり、ドイツしかりですね。むしろ彼等は駐兵を望んでおるという状況ですから。そこで、社会党のお方と考えが少し違うかもしれませんが、それは同じ日本丸に乗っているのだから、その点一つ超党派外交ができる時期に、すみやかに到達することを私はほんとうに熱望しております。
  120. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま御質問のありました点でありますけれども、日本が自分で日本を守る、他国の侵略から日本ができるだけ日本自身の力を充実させて。それは狭義の軍事的な意味ばかりではなく、広義の民生安定その他の意味からいっても、私は全体として日本を守るということが必要だと思うわけであります。同時に、先ほど申し上げましたように、軍事的には、現在の段階において、とにかく膨大な軍備を持っている国々があるわけであります。われわれとしては、軍縮問題その他にできるだけ全力をあげてこれらの軍備が逐次縮小していくということに努力するのでなければなりませんが、しかし、現状の事実というものは、はっきり認識して参らなければ、国の防衛という面においていけないわけであります。従って、そういうような防衛の科学技術の発達でありますとか設備でありますとか施設というものは、一国だけでなかなかにない得ないという現状もまた当然のことであります。そこにやはり軍事的な条約というものの必要が起っておるということも、これまたはっきりいたしております。先ほどお答えしておりますように、これは単に世界の各国において、自由主義陣営ばかりでない、共産陣営の中にも、おのずからそういう形によって防衛を取りきめておるところが多いのであります。そういうことを考えてみますと、日本も当然現在の段階において、そういう処置をして参るのが適当だと考えております。  なお、沖縄でありますとか防衛任務の問題でありますとか、それぞれデリケートな内容関係いたしておるのでありますから、直接折衝の当事者としての私からは、今日お答えをしないのが適当だと考えております。
  121. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) ほかに御発言のある方もあるかと存じますが、都合により本日はこれにて……。
  122. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 議事進行について。この次に外務委員会を開かれるときには、総理の出席を願うこと、それから佐多君から要求がありましたように、必ず林統合幕僚長を出席せしめること、これをお願いしたい。  それからさらに、安全保障条約の問題について、われわれもなお研究をするために、当局に対して資料を請求したいと思います。その資料は米韓相互防衛条約、米比相互防衛条約、並びにこれらに関する行政協定、それからNATOの条約、SEATOの条約、ANZUS条約、ワルシャワ条約、これらをお願いしたい。それからさらにバンデンバーグ決議と、一九五五年一月の米議会の台湾に関する決議と、最近の台湾問題に関する米・中・ソ・台湾のいろいろ書簡のやりとりが行われておりますから、それらを一まとめにしたもの、これを一つお願いしたいと思います。
  123. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その書簡はフル・ノートにして、要旨ではなく。どうも外務省は要旨というとぺらぺらとやられるから、あれでなく、フルなものを一つお願いします。これは全部そろえて。
  124. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) それではこれで散会をいたします。    午後三時四十五分散会