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1958-10-30 第30回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月三十日(木曜日)     午前十一時七分開議  出席委員    委員長 楢橋  渡君    理事 植木庚子郎君 理事 重政 誠之君    理事 西村 直己君 理事 野田 卯一君    理事 井手 以誠君 理事 小平  忠君    理事 田中織之進君       井出一太郎君    小澤佐重喜君       岡本  茂君    加藤 高藏君       川崎 秀二君    上林山榮吉君       北澤 直吉君    小坂善太郎君       篠田 弘作君    塚田十一郎君       綱島 正興君    床次 徳二君       中曽根康弘君    船田  中君       保利  茂君    水田三喜男君       南  好雄君    八木 一郎君       山崎  巖君  早稲田柳右エ門君       阿部 五郎君    淡谷 悠藏君       石村 英雄君    今澄  勇君       岡  良一君    北山 愛郎君       久保田 豊君    黒田 寿男君       小松  幹君    佐々木良作君       島上善五郎君    楯 兼次郎君       成田 知巳君    西村 榮一君       森 三樹二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 橋本 龍伍君         農 林 大 臣 三浦 一雄君         通商産業大臣  高碕達之助君         運 輸 大 臣 永野  護君         郵 政  大臣 寺尾  豊君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         建 設 大 臣 遠藤 三郎君         国 務 大 臣 青木  正君         国 務 大 臣 左藤 義詮君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         内閣官房長官  赤城 宗徳君         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         国防会議事務局         長       廣岡 謙二君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      江口 俊男君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君         検     事         (公安調査庁次         長)      関   之君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官        (銀行局長)   石田  正君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ――――――――――――― 十月三十日  委員古井喜實君及び加藤勘十君辞任につき、そ  の補欠として加藤高藏君及び久保田豊君が議長  の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)  昭和三十三年度特別会計予算補正(特第1号)      ――――◇―――――
  2. 楢橋渡

    楢橋委員長 これより会議を開きます。  昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十三年度特別会計予算補正(特第1号)を議題といたします。  この際閣僚及び政府委員に一言申し上げますが、閣僚及び政府委員出席がおそいため、本委員会の審査に及ぼす影響大なるものがあると存じますので、本委員会への出席はすみやかにされるように委員長より特に注意を申し上げる次第であります。(拍手)  質疑を続行いたします。今澄勇君。
  3. 今澄勇

    今澄委員 私は防衛の問題についていろいろとお伺いをいたしたいと思います。  その前に、今度の北海道自衛隊演習でわれわれが見のがすことのできない点が二点あります。緊急の問題でありますから防衛庁長官に御質問をいたします。  今度の北海道演習では、アメリカ軍事顧問団米軍人五名、在日米陸軍七名はいずれもジープ見学していたにもかかわらず、わが陸上自衛隊池上陸将補安成陸将補、松田、吉橋、この四陸将補のほか一佐、二佐級十数名はバスに乗って、演習揚観光バスでかけ歩いておる。しかもバスガールを乗せて観光地の説明を行わせ、そうしてソーラン節を歌って手拍手をとっておるなどのこの事案は、私は演習へ来た自衛隊のやることとしては少しどうかと思うのです。しかも隊員は全部夜営しておるにもかかわらず、泊っておるところは阿寒温泉、十勝川温泉、層雲峡温泉川湯温泉等にそれぞれ宿泊をしておる。私はこういった膨大な費用をかけて行われる自衛隊演習としては、懸命に働いた自衛隊員と比べて、幹部態度は実に不可解にたえません。防衛庁長官はこれに対していかなる処置をおとりになる考えか、報告が来ておるかどうか、御質問いたします。
  4. 左藤義詮

    左藤国務大臣 今回の北海道演習につきましては、地元、特に社会党の方々からいろいろ御注意もございまして、地元にできるだけ迷惑をかけませんように注意をいたしたつもりでございます。演習そのもの地元等のいろんな摩擦も少くてよくやったと思うのでございますが、今お示しのように、見学に参りました者の扱いにつきまして、新聞等にも非難が出ておりますし、私も今実情を調べておるのでございますが、たださようなことで、演習が局地的に行われまして、実際見学者見学いたします特別の演練項目というものが限られておりまするために、その間はジープ等も十分ございませんので、バスで案内いたしたことは事実でございまするが、これはできるだけ車両数を少くいたしまして、地元にもあるいは演習部隊、これはおもに機動をやりましたものですから、それらとの混乱を避ける意味において、見学者あるいは報道班の人を南北コースに二分いたしまして、借り上げバスを使ったということは事実でございます。そのために演習のございません途中におきまして、今お示しのようなバスガールがいろいろ案内したということもあったようでございます。なお宿泊地をああした温泉地に選んだという点でございまするが、相当数の人数でございますし、今観光シーズンでございまして、旅館がとりにくい、北海道の東に参りますと、ほとんど旅館の多いところは温泉地以外にはないのでございまして、さような結果になっておるわけでございますが、全体といたしまして、演習見学に参りました者が、隊員が野営をいたしまして努力をしておるのに、これに対して緊張した見学をしなかったということは私も感ずるのでございまして、実は私自身もこの演習に参るつもりでありまして、たまたま国会の方が忙しくなりましたために取りやめたのでありますが、私は秘書官に命じまして作業服等を――伊豆の災害のときに準備させたのでありますが、自分も作業服を着て、一生懸命第一線でやっておるところに行って、ほんとうの苦労を味わいたいと考えておった次第であります。そういう点におきまして、見学者上級将校等におきまして緊張が足りなかったということは私も感じておりますので、この点は私厳重に警告をし、もう少し緊張をするように責任をもって善処いたしたいと思います。
  5. 今澄勇

    今澄委員 大体の事情をあなたは認めておりますから、善処を私は希望しますが、特にはなはだしいのは、西部方面総監池野陸将は、事もあろうに釣ざおを持って行っている。同行の途中でこの釣ざおをとがめた某氏に対しては、九州では釣がうまくいかないからなと言っている。一億数千万円の膨大な演習費を使うこの北海道演習に、私はこの陸上自衛隊幹部の心がけは言語道断であると思う。あなたは一つこの席上から、この実情については、これらの人々を処断するということをはっきり言うてもらいたいと思うのです。
  6. 左藤義詮

    左藤国務大臣 釣ざお云々のことも新聞所報がございましたので調査をいたしましたが、朝早くとか夜おそくとか、もちろん演習が終りましてから使うつもりだったようであります。また事実演習中にさようなことをいたしたことはないようでございます。それにいたしましても非常な不謹慎だと私は思いますので、これは厳重に戒飭をいたしたいと思っております。
  7. 今澄勇

    今澄委員 長官のそういったきぜんたる態度でやってもらわないと、国民税金ですから――。  もう一つ長官にお伺いしますが、この演習部隊北部方面隊新聞というのを出している。この北部方面隊新聞を、演習で動員した人二万人、北海道自衛隊の皆さん五万人がこれを見ている。ここにその新聞がありますが、その中に町村金五氏の写真を掲げて、そうして町村氏の文章を載せております。その中にこう書いてある。「私は北海道の生まれで現に道選出の代議士でもあるので、常に北海道の治安、北海道の開発ということに結びつけて自衛隊を思うのである」といって、「私は社会党のように自衛隊土木部隊と見ているのではない。」なおそのほかに文句が入って、「反自衛隊分子は無防備の中立が一番よいと主張している。こういう無防備中立論者は、過般の中共中央委員会政治局会議で言っていることを承知の上である。これはソ連中共の対日政策基本方針であるわけなのだ」と書いて、まるっきり社会党がおそらくはソ連中共の手先であるかのごとき一文を北部方面隊新聞に載せ、しかもそれを演習の際に配るということは、これは当の本人が北海道知事候補者でもあるという建前から見ると、自衛隊国民税金を使って大演習をする、しかも一党の候補者事前運動に手を貸しておるといわなければならない。不謹慎きわまるじゃないか。防衛庁長官、どうですか。
  8. 左藤義詮

    左藤国務大臣 その新聞は私まだ見ておりませんので、調査をしましてお答えいたします。
  9. 今澄勇

    今澄委員 あなたは調査いたして処分という話でありましたが、私の手元に向うから送ってきたのが届いておりますから、これをごらんになりまして、時間もありませんから、あとでまた地方行政委員会なりその他の委員会で、この問題は追及することにいたします。  そこで私は総理にお伺いするのでありますが、岸総理は昨日の当委員会において、ブラウン記者報道についていろいろ述べられました。私は長く聞こうとは思いませんが、あなたの話を総合すると、結局ブラウン記者報道には一部に誤まりがあった、そういうことでなければ話が合わぬのです。あなたが国会でいろいろ述べた総理言葉というものは、ブラウン記者報道と一部は合っておったところがあるが、一部は合っていないのですから、あなたはそこでブラウン記者報道には一部に誤まりがあったということを、ここではっきり言うてもらいたいと思う。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 私が国会で声明をいたしました点とブラウン記者のいわゆる報告との間におきましては、お話通り、一部において私が言わないことが言ったとして報道されております。この点につきましては私は、私が国会で声明したことに全責任を持つということを明瞭に申し上げておるのでありまして、その点においてブラウン記者報告は、私の会談内容とは違っている点がございます。
  11. 今澄勇

    今澄委員 私は岸総理が、ブラウン記者報道は間違いがあるということをこの国会ではっきり一つ言うていただく必要があると思って、この問題を聞いたのであります。  次いで私は、総理はきのうの委員会において、日本防衛義務及び地域については、なるべく狭い地域に限りたいと言っておりました。米国側はなるべく大きい地域を主張するでしょう。そうすると今の段階では、国民世論を聞きながら考えていくという総理の話でありましたが、国民世論を待つまでもなく、もし西太平洋地域日本防衛担当区域にするということになれば、これはもうグァム島も入るのですから、わが日本憲法の示すところによって、国民世論を待つまでもなく、グァム島は入らないと思うわけです。だから西太平洋地域日本憲法からすると、わが国の防衛担当範囲に入らないと思うのですが、その点について総理見解を伺いたい。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 今問題になっている、いわゆる条約地域の問題は、日本防衛する地域としての、防衛義務を持つ地域の問題ではないのでありまして、日本防衛する地域は、これは明らかに日本領土に限られておることは、これは明瞭でございまして、その点については少しも交渉余地もなければ、議論余地はないと思います。問題はあるところに加えられたところの危険あるいは侵害侵略というものを、条約において共同一つ侵害として認めるか認めないかという地域の問題でございます。従っていわゆる憲法解釈の問題としては、はっきり防衛地域は、いかなることがあっても日本領土内に限るということ、これはもう問題のないことでございます。今問題になっておるのは、日米共同一つ防衛の場合に、ある地域に加えられた、すなわち日本領土に加えられたところの危害、侵略というものを、アメリカもそれを自国に加えられた侵害と見て、防衛義務を果そう、こういう場合に、各国の間にできておる従来の規定で見ますと、ある一定の地域に加えられたところの侵害なり侵略というものを、その条約によって一つの、両方に加えられた侵略と見て防衛する、その場合においては、もちろん憲法のなにが残っておることは当然でありますが、そういう意味における条約地域の問題であります。従って、そんなことはありませんけれども、かりにちょうど対等の意味において考えてみると、日本領土に加えられたものはアメリカアメリカに加えられた侵害として防衛する、またそれと対等のことを考えると、アメリカに加えられたところのものを日本日本に対する侵害として考える、こういうのが一番対等な意味でありますが、そういうことが考えられないことは言うを待たないのであります。その場合における防衛義務ということは、さっき申しましたように、おのずから憲法で明定されておるのでありまして、またそれを越えてのなにを交渉においてする考えはわれわれは持っておらぬのであります。
  13. 今澄勇

    今澄委員 今総理の言われる、アメリカに攻撃が加えられれば、日本がこれに対して共同出動義務を持つということは、国連憲章集団自衛権発動ということになる。だから西太平洋の諸島のグァム島が、日本防衛区域に入るということになれば、これはやはり集団的な自衛権発動によって日本がその義務を負わされるということになる。しからばその集団的自衛権グァムあたり集団的自衛権による日本防衛義務というのは、日本憲法から見るならば、私は憲法違反になるのではないかと思う。こういう点を聞いておるのですから、これについてお答えを願いたい。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 それは今私がお答え申し上げました通り、また今澄委員のおっしゃる通りでありまして、私は憲法日本防衛義務というのは、日本領土に限られる、かように考えておるのであります。
  15. 今澄勇

    今澄委員 外交の折衝から必要なことだが、しからばアメリカ西太平洋地域防衛地域に含めるといった場合に、グァムあたりが入ってくるが、グァム島が将来日本防衛地域共同的なあれに入るということになれば、集団的自衛権日本がこれに出動するということになるが、その集団的自衛権によってグァムあたりがそういう意味条約の中の防衛範囲に入るということは、私は今の日本憲法解釈からするならば、違憲であると思うが、総理はそれも含むこともできるという見解であるのかどうか。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく、先ほど来私が申しておるように、憲法日本防衛義務、すなわちあらゆる侵略自衛の力でもって排撃するということは、日本領土内に限られておるわけであります。従ってそれを出てやるということは憲法違反であるというあなたのお考え通りであります。
  17. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、あなたが言われるアメリカとの条約で、大きい場合はアメリカ日本も全部含める場合がある、小さい場合は日本本土だけだというようなお話は、いやしくもわが日本領土以外、固有の自衛権発動する以外は、日本防衛地域には憲法上の制約から含まれないということになれば、国民世論を待つまでもなく、それはそういう広範な地域が今度の条約の中の防衛範囲には含まれないという結論になりませんか。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 きのう私がお答え申し上げたのは、沖縄小笠原について、これは住民の意見もありますし、国民意見もございますし、また賛否両様議論が私が従来聞いた範囲内においてもあるのであります。従ってその問題の扱いについては、十分国民の、意向にも耳を傾けて交渉をしたいということを申したのであります。
  19. 今澄勇

    今澄委員 私は時間がありませんから詳しくは聞きませんが、法制局集団的自衛権のそのままの発動については日本憲法上疑義があるということを、かねがね今そこにおられる法制局長は言っておった。だから私はそうだとするならば、グァム島などを含めた西太平洋が新しい条約の中で日本防衛範囲に入ることはあり得ないと考えておるので、この点について総理は、そうだというのか、そういう場合もあり得るというのか、それを実は聞きたいわけです。沖縄についてはあとでお伺いいたします。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど申したように、そういう地域日本武力行動によって防衛する範囲に入らないことは明瞭であると思います。
  21. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、今度の条約でいうところの日本防衛義務の及ぶ範囲地域については、そういう西太平洋が入るということは絶対にないわけですね。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 今、西太平洋地域と御指摘になりましたが、その間に今問題になっておる沖縄小笠原というものが含まっておりますから、これは別に論じなければならぬと思いますが、その他の意味において、日本防衛行動をする地域に入らないということは、お話通りであります。
  23. 今澄勇

    今澄委員 そこで一つ明らかになりました。西太平洋地域全体は入れないのであるという。しからば沖縄小笠原は今のあなたのお話だと入るのである、こういうことになる。沖縄小笠原日本防衛範囲に入るとすれば――あなたは内閣委員会答弁で、沖縄小笠原日本防衛に入ることは、日本施政権の一部が返還されたことになるのである、それは一部の教育権等の問題であるかとの委員質問に対して、あなたは、包括的な広範な施政権の一部が返還されたことになるのである、こう答弁されておるのですが、この広範な施政権の一部というのは、具体的にいうとどういうことですか。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 私の内閣委員会でお答え申し上げたのはこういうことであったと思います。そういう場合に沖縄日本から基地を置くのか、あるいは基地を置くという場合にはどうなるのかというふうな議論からそういう質問が出たと思います。そうして、もしも沖縄基地を置くというような、またアメリカがそれを認めるというようなことになれば、日本がそれだけ出ていくわけですから、アメリカが持っておる全部の施政権がそれだけへこむということになるだろう、すなわち日本がこれについて一つのはっきりした防衛行動をとるということになれば、今まではそれを排除して日本のなにを入れなかったのですから、そういう意味においてそれだけへこむであろうということを申したのが私の趣旨であったのでございます。
  25. 今澄勇

    今澄委員 日本防衛範囲に入れて、いざというときには日本自衛隊が出動するということは、向うの施政権がそれだけへこむということは、具体的に言えば、施政権の中の軍事行動権というものが日本に渡された、こういう解釈総理はとるわけですか。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 はっきり渡したとか渡さないとか返還したとかいうような問題ではなしに、とにかく今はアメリカがあらゆる施政権というものを排他的に施行しておるわけであります。それに対して日本がそういう行動をなし得る、そういう権限が出てくるという意味において、アメリカが持っておる排他的な総合的な施政権が、その範囲においてそれだけへこむという意味でありまして、はっきり返還したとかいうよらな意味ではなかろうと思います。
  27. 今澄勇

    今澄委員 これはどうもはっきりしないのですが、あなたの話で沖縄小笠原日本防衛範囲に入ることは今はっきりしました。そこでグァムは入らぬが沖縄小笠原が入るというのなら、沖縄小笠原における日本施政権については、この際内閣の方では何か施政権の一部が返還になったら日本がこれを防衛する義務があるんだとかなんとかいうことにならなくちゃならぬと思うのだが、あなたは内閣委員会では包括的な施政権の一部が返還されると言っている。具体的にはそれは軍事行動権であるかと言ったら、今のあなたの答弁ははっきりしないが、具体的に言えば一体どういうものですか。
  28. 岸信介

    岸国務大臣 施政権の一部が返還されたという意味には私は答弁しておらぬと思います。私が申し上げたのは、現在アメリカが持っている包括的な、一切排他的な施政権というものがそれだけへこむ、日本はそこに行ってそれだけのことをやり得る、こういうことでありますから、その意味におとり願いたいと思います。
  29. 今澄勇

    今澄委員 あなたの今のお言葉だと、アメリカ施政権がへこむというのですが、技術的にへこむというのはどういう意味かということには議論がありましょう。そうするとアメリカが実際に今まで持っておる独占的の施政権というものは全然変らない。そこに、日本がいざというときには防衛義務を負うのですから派兵をしていかなければならぬ。そうするとアメリカ施政権のあるところへ日本派兵をしていくということになれ、ば、これはやっぱり海外派兵と変らない、こういうことになるが、どうですか。
  30. 岸信介

    岸国務大臣 私ども沖縄小笠原のなににつきましては、ここには潜在的主権を持っておるという立場に立っておる。そういう意味において、今出る、出ないということは別でありますが、かりに出ました場合にも、これをもって直ちに海外派兵考えることは、私は観念としては間違いであろうと思います。
  31. 今澄勇

    今澄委員 そうすると政府は、沖縄に出す分は海外派兵には入らない、施政権の一部がへこむだけである。そこでついでにもう少し聞きますが、沖縄防衛範囲に入れるということにすれば、この沖縄小笠原における米軍の配備あるいは行動、あるいはアメリカと韓国、アメリカ国民政府の間に結ばれた条約等発動沖縄に軍隊が動く場合は、事前にさらに日本と話し合いをするというふうな協定も取り結べることになるわけですか。その見込みはどうです。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 今私の申し上げていることは、結論的に沖縄小笠原条約防衛範囲に入れるということを決定的に申し上げているわけではないのでありまして、そういう前提で私申し上げているわけでないことをまず御了解願いたい。その問題は国民意向等も十分に聞いてきめるべき問題である、こういうことであります。しこうしてかりに入れるということになるとすれば、私はその場合の法律関係がどうなるかということを――かりに入れるとしてですよ、法律関係がどうなるかということを先ほど来話しておるわけであります。かりに入れるということになれば、今お話通り米韓条約あるいは米華条約等についての関係を見て、日本防衛義務というものを果していくのに差しつかえないような十分な条約を取り結ばなければならぬことは当然であろうと思います。
  33. 今澄勇

    今澄委員 アメリカ西太平洋共同防衛区域に含めたいが、やはり日本立場もあるから、日本は小さく区切るので、沖縄小笠原――アメリカの今日までの外電等を見ると、内容は申しませんが沖縄小笠原はほとんど決定的な段階になっている。私は今総理が言われた沖縄小笠原がこれに入るという場合を考えてみると、どうも国民としては穏やかならざるものがある。総理に聞きますが、アメリカ合衆国と中華民国との間の相互防衛条約、これは一九五四年十二月二日、ワシントン署名ですが、その中に、区域については、第六条にその管轄権のもとにある西太平洋の属領諸島という言葉が載っているのですよ。これが、台湾の国民政府共同防衛の区域――アメリカの管轄権のもとにある西太平洋の属領諸島、こうなっている。これは一体日本沖縄小笠原は入るのかどうか、総理にちょっとお伺いしておきたいと思います。
  34. 林修三

    ○林政府委員 この点は実は外務当局からお答えするのがほんとうだと思いますが、外務当局が今おりませんので私からお答えいたします。これはこの前、外務委員会条約局長がお答えしております通りに、アメリカの上院における論議等を見れば、沖縄小笠原を含むものと考えておるようでございます。
  35. 今澄勇

    今澄委員 要するに、今法制局長官が言ったのは、九月二十一日の参議院外務委員会条約局長は沖縄小笠原を含むとこう言っているということでしょう。そうすると、アメリカと台湾との条約発動した際は、沖縄小笠原は当然この防衛範囲に台湾を含んでいるのだから、それが即日本共同防衛地域になるとすれば、台湾に問題が起きた場合はすぐ日本は軍事義務を負う、こういうことになるのでして、結果的には日本と台湾との同盟条約一つも変らぬという結論になりますが、この点はどうです。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 私は、それは別の条約であってそれがすぐそういうことにはなるとは考えません。すなわち、台湾に対する侵害があれば、これは米華条約における問題でありまして、私どもの直接関係しておる問題でないことは言うを待たない。条約としては全然別の意味の問題であると考えます。
  37. 今澄勇

    今澄委員 もう一点聞きますが、大韓民国との間の相互条約一九五三年十月ワシントンの署名によると、これは現在それぞれの国の行政的管理のもとにある領域、こうなっているのです。そうすると法制局長官、これには沖縄小笠原も同じく含みますか。
  38. 林修三

    ○林政府委員 これは結局米国、韓国両当事国の解釈であると思いますが、私の承知しておる範囲では含むものと考えられておると思います。
  39. 今澄勇

    今澄委員 そこで総理が幾ら口でうまいことを言われようとも、アメリカと韓国との同盟条約アメリカ国民政府との同盟条約において、韓国が戦おうとも台湾が戦おうとも、沖縄というものは共同防衛地域ですから、戦場になる。しからば、日本アメリカとの今度の新しい条約において、沖縄小笠原が何らの施政権の返還もないのに日本防衛地域に含むということは、台湾と韓国においていわゆる戦争状態が起った際は当然沖縄が戦争状態になるのだから、そうなればアメリカとの条約によって日本沖縄を当然守らなければならぬ。ということは結果からすれば、条約は別々の三国の条約だけれども、沖縄というものが今法制局長官が言っている通りアメリカの行政管轄下にある諸島というのに入るとすれば、これは現実にはそういうことになるのじゃないか。この点は実に重大であって、沖縄はそれらの条約のもとにおける重要な意味においては、現実的には三国の同盟条約と全然変らないということを一つあなたに考えてもらいたいのだが、総理大臣、どうです。
  40. 岸信介

    岸国務大臣 これはおのおの三つの条約は、かりに結ばれたといたしましても別だと思いますが、しかし、沖縄小笠原を、今年の日米の間に結ばれる条約条約区域にした場合、こういう危険があるとして反対をされる今澄君の議論国民の間に相当あると思います。私が国民の声を十分に聞かなければならぬというのはそこなんであります。しかし一方、沖縄の人々は、やはり日本の運命をともにしたいということは沖縄の住民の声であり、またわれわれがここに潜在主権を持っておる日本立場考えますときにおいて、そういう議論だけに耳をかすことが適当であるか、またそれらのことも聞かなければならないというところで、十分に私は国民意向を聞いてこの問題をきめたい、こういうことを申しておるわけであります。
  41. 今澄勇

    今澄委員 私は今の法制局長官の法的解釈で、沖縄というものが今度の新防衛条約の中心的な課題であるということを、委員会を通じて国民がよく認識をしてくれると思うのです。それで私は岸さんに、こういうような国民の要望する沖縄施政権返還ということに取り組むならば、講和条約第三条、これに真正面から取り組んで、信託統治条項等、その他それらの問題からいくのが当然なことであって、沖縄施政権日本に完全に返還された後に、これを共同防衛地域に含めるということはもう聞くまでもない国民態度です。あなたは国民世論を聞くと言われるが、沖縄施政権が完全に日本に返るまでは、沖縄共同防衛地域に含めるようなことはないということを、この委員会で言明できるならば一つ言明してもらいたいと思うのですが、どうですか。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 私どもが沖縄施政権を全面的に返還を要望しており、これはもう国民の一致した要望であることは私もよく承知しておるのであります。あらゆる機会にこれが主張をアメリカ側に述べておることも事実であり、またこのことについて努力しておることも事実でございます。その要望が現在の状態におきましては、聞き入れられておらないというのが現状であります。そういう沖縄施政権の返還の問題は国民的な長い問題であり、われわれもまた今後あらゆる機会にこの努力を続けていかなければならぬ問題でございます。しかし今の安保条約の改定の問題におきまして、それができなければ、われわれはこれに対して防衛義務を負わないということにすることが適当であるかどうかは、まだ十分研究の余地のある問題であると考えております。
  43. 今澄勇

    今澄委員 私は端的に聞くが、あなたは国民をごまかすために、施政権返還は国民の声だと言われるが、その防衛義務を負うことは、いわゆる危ないところだけ守らされるわけで、権利ではないのです。それを権利でもあるかのごとく施政権返還問題をもし言うとすれば、そういうことはあり得ない。聞いたらあなたはへこむだけだ、それはそうだろう。そんな積極的な権利ではないのですから、ただ義務を負うだけで、へこむだけです。日本は潜在主権があるのだから、国民の願望にこたえて沖縄防衛地域に入れるということになると、それが沖縄施政権返還の問題ならば講和条約の改定以外に道はない。しかし講和条約の第三条の改定はなかなか困難でむずかしい。だからあなたは講和条約の改定などはやらないで、沖縄小笠原を中に入れて、国民に対しては施政権の一部返還と称し、アメリカに対してはその要望にこたえて、両方ともうまくこれでいこうなどということは、今日の状態のもとにおいて許されないものであるということをあなたに申し上げておかなければならぬと思います。  台湾は、はっきり申せば憲法で総統の四選は禁止している。蒋総統は三回大統領になれば、憲法を変えざる限りあとは出られない。韓国李承晩大統領は八十を過ぎた人で、おそらくそう長くその地位にとどまることはないでしょう。そうなると、さらにあわせて戦略的な体制はもう弾道弾の時代ですから、日本の飛行機の軍事基地はだんだん価値が少くなって、アメリカはどんどん引き揚げていく。むしろアメリカの中心はアリューシャン、アラスカ、カナダの方が対ソ戦略には中心となる。対中共の戦略に対しては沖縄、それからグァムと、漸次第一線は後退しつつあるわけです。だから日本からアメリカの飛行機の軍事基地その他がだんだんと引き揚げていくのは当然なことであって、こういうときに一番最後の、ここ当面四、五年間の一番のかなめが沖縄小笠原なんだ。だからアメリカ沖縄小笠原のほかにグァムを含めたいでしょう。グァムは将来の対中共ソ連戦略上の中心地である。今の戦略上の中心地は沖縄である。だからアメリカグァム沖縄、両方を含めて日本との間に防衛地域にすることができれば、アメリカとしては一大成功でしょう。沖縄日本防衛地域に含めるとすれば、ここ当面の戦略においては成功でしょう。しかしもしそんなことを今やるならば、蒋介石総統の三選ができないで、蒋経国なんという人が出てくれば、あれは元はコミュニストであり、あるいは朝鮮においてもかわりの人が出てくれば、民主党はそうアメリカの言うことばかり聞くとは限らない、それに日本沖縄共同防衛区域条約を握って取り残されるということになる。そういう戦略上の基礎的な立場から見ると、この際日本は断じて、アメリカのそういう戦略上の要望によって沖縄小笠原などを共同防衛地域となすべきものでない。総理国民に対しては施政権の一部返還であるといってこれを喜ばせ、アメリカに対しては当面アメリカが持っておる極東戦略の要望にこたえる、こういう姿が今日新条約を結ばんとする内閣考え方ではないかと思うが、この私の所見に対する岸さんの防衛上その他の御見解がありましたならばお伺いをいたしておきたいと思います。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 日本自衛力は、日本防衛する意味において、われわれは国力と国情に応じて漸次増強しております。しかしわれわれの力だけでは、国際情勢において完全に安全を保障されないという場合において、共同して日本、祖国を守る以外に方法がないという立場から日米安保条約ができておりますし、またこれが改定にも取り組んでおるわけであります。しこうして、今お話がありましたが、日本防衛力、自衛力の実体というものは、アメリカがよく承知しておりますが、あくまでも自国の、日本の国内の何を防衛するという意味において持たれており、またそれがまだ一国だけでは不十分であるという実情にある。この前提のもとに立って、しかも今までの安保条約の規定が非常に片務的な、不平等的な形になっているものを、われわれはできるだけ独立国としてふさわしい自主性と対等性を持とうということでありまして、それ以上は私は何も考えておらないのであります。ただいろいろとこれの改定について、今澄君のような意見国民の中にあることを私はよく承知しております。従って防衛地域の問題については十分に一つ検討してやろうということを申しておるわけであります。しかし一面、今澄君もお考えを願いたいと思うのは、われわれが潜在主権を持っておる地域、そこに住んでいるところのものは日本人である、これに対してわれわれが日本人としての立場からいかに考えるかという問題も、国民が非常に強い関心を持っておる問題であるので、これらのことを十分に検討して慎重に扱うべき問題である、かように考えております。
  45. 今澄勇

    今澄委員 私はついでにこの際伺っておくが、内乱条項、例の明示の要請によって、日本に内乱がある場合にアメリカの駐屯軍が出動するということがあります。これについては今度の新しい話し合いではこれを取りやめる、そういう方向を政府はとっておりますか。
  46. 岸信介

    岸国務大臣 この安保条約ができた当時は、日本は全然防衛力、自衛力を持たなかったのでありますが、われわれはその後の努力によって、自衛力というものが漸増して参っておりまして、独立後の今日の日本の情勢から申しますというと、内乱等の国内的の場合においては、日本みずからが当るべきものであって、このために外国の軍隊の力をかりるということは適当でない、こう考えておりますから、内乱条項については、これを今度の新しい条約ではなくする方向に進んで参りたい、かように思っております。
  47. 今澄勇

    今澄委員 米軍基地に対して日本がいろいろ特権を与えております。これはアメリカの了解なしにはよそに貸さないとか、いろいろありますが、この米軍基地に対する特権についても、今度はこれを取りやめる、そういうことに政府態度は進んでおりますか。これについてはどうです。
  48. 岸信介

    岸国務大臣 この基地やその他の問題は――アメリカ日本防衛する義務を明らかに負う場合において、日本アメリカ側に対して負う義務は、同様な義務は負えないのであります。御承知の通り憲法の制約の範囲内でわれわれはすべて問題を解決するということが前提でございますから。しかしながら基地の提供等のことは、これはやはり一つのなにとしては考えなければならない問題であるかと思います。しかしてそれをどういうふうに扱っていくかということは、十分に今後考えていかなければならぬ問題であると思いますし、なおそういう具体的の問題については、まだ交渉段階に入っている状態ではございません。
  49. 今澄勇

    今澄委員 はっきり言えば、この米軍基地使用については、アメリカの了解なしにはよそには全然貸さないという条約上はっきりしたあれを結んでいるのですから、この際これも当然解くべきである。なおアメリカの出動に対して事前に相談するかどうか。いわゆる日本に工合が悪いときに、極東の安全、極東の平和のためにアメリカが出動する際に、今わが日本には拒否権はないが、これの拒否権、すなわち米軍の配備出動の場合の事前の相談に基く拒否権というものについては、おそらくアメリカのことですから、沖縄小笠原の問題、あるいはグァムの問題とにらみ合いに、この拒否権の問題その他の問題をきめてくるのではないかと思うが、そういう事前の協議、相談という点の話し合いはどうなっておりますか。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 これは、現在安保条約においては、一方的になされる使用とかあるいは配備、装備の問題であるとかいうようなことについては、事前に協議して、われわれの同意がなければできないというふうな方向で話を進めて参りたいと思います。
  51. 今澄勇

    今澄委員 そこで最後に聞きますが、外務大臣は通常国会にこの条約を審議してもらうことになろうと言っておるが、岸さん、あなたは総理として、この条約は通常国会に出して審議するのですか。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 これは外交交渉の問題でありますから、いつまでに必ずできるということを私一個で申し上げることはできないと思います。しかし外務大臣がお答え申し上げているように、通常国会までに両国の合意に達すれば通常国会に提案をしたい。それまでに合意に達するように交渉に努力をするということを申し上げておることでありまして、それ以上申し上げることはできないと思います。
  53. 今澄勇

    今澄委員 私はこの条約の問題は、時間がないからこの程度で終りますが、日本の戦略的価値は、誘導弾、核兵器の発達によって漸次低下しつつあります。だからだんだんとアメリカが、今台湾にとっている軍事的な状態と同じような状態が早晩日本を訪れる。そこで日本国内のアメリカとどうしても手を握りたいという人々は、この際防諜法を作り、この際国防省を作り、そうして日本防衛努力を極端にアメリカに認めてもらって、沖縄小笠原あたりをその条約の中に入れて、そうしてアメリカとの間に、どうしても従来と変らない運命共同体を作りたいという考え方の人があなたの内閣の一部にある。こういうものの考え方は、今日の世界的な戦略並びに、アメリカの次の大統領選挙で、果してアイゼンハワーが当選するかどうかという点とにらみ合してみても、民主党が当選して、アイク・ダレスのラインがもし落ちるということになれば、おそらくアメリカの基本的な方針も変るでしょう。そういうときにアメリカ態度も――マケルロイ国防長官が見えたときも、なかなか強硬な態度であったと聞いておるが、そう簡単に譲るものではないと思うのです。それを次の通常国会にこの新しい防衛条約をきめて提案するのだということは、外務大臣としては見識のなさもまたはなはだしいものと言わなければなりません。私は、あなたの党内に異論のあるのは当然だと思うのです。きょう私は外務大臣に聞きたいと思ったが、何か病気できのう、きょうとお休みになっているけれども、不謹慎きわまる外務大臣と言わなければなりません。私は、この際、慎重に一つあなたの方でおやりになって、口先だけで国民をごまかすという態度ではなしに、この条約の持つ重要性について十分御検討に相なることが必要であると思う。私の見るところでは、通常国会の提案ということは急速には運ばないと思う。アメリカのニューヨーク・タイムスなどの政府筋を代弁する新聞の論調は非常に慎重です。あなたはそれを見て、当初の積極論から慎重論に変ったものと私は思っておるのですが、この交渉の前途についてあなたがどういうお考えを持っておられますかお伺いをして、安保条約の問題については質問を終りたいと思います。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 今お答え申し上げましたように、この問題については藤山外相がワシントンをたずねまして、ダレス国務長官との間に、先ほど来申したように基本的な――アメリカ日本の自主性を認め、日本との対等にしてしかも日本憲法の制約の範囲内でという基本的な話し合いが両者の間にできまして、なお具体的な問題については東京において外交的ルートを通じて交渉しよう、こういうことになっておるわけであります。私ども、これは重大な問題でありますから、こういう問題を急いで何でもかんでも急速にやろうという考え方では決してなくして、慎重にやることは当初からのわれわれの方針でございます。ただ、今藤山外相はダレス長官とそういう基本的な話し合い、またアメリカ日本に対しての非常な信頼や、あるいは協力的な態度、理解のある態度というものを藤山君みずから感じておりますので、このなにについてはできるだけ努力をして、できれば通常国会までにその成案を得たいということを考えるのが、私は外務大臣としては当然であろうと思うのであります。別に軽率であるとかあるいは非常にあせって誤まりを犯すというようなことを考えておるわけではないことは言うをまたないのであります。今申したような重大な問題については国民世論も十分に聞き、慎重に審議して、できるだけ早く結論を得ていくように努力したい、かように思っております。
  55. 今澄勇

    今澄委員 それでは総理、一時までここにずっといていただければ、私は質問を続けて行うことにいたします。  次は国内の問題ですが、自衛隊の問題で防衛庁長官にお伺いをいたします。これはあとで聞かなくちゃなりませんから総理もいていただきたい。  陸上自衛隊の幕僚監部第一管区総監部陸上自衛隊、東京都練馬区北町の正門前に、鉄筋で三階建の建物がある。この建物には、表に何らの表札もかかってはおりません。私はこれを調査してみたが、どうも不可解である。この建物の中で、一体何のために多くのケーブル線があり、この建物にどうして警察庁、公安調査庁あるいはその他の皆さんが勤めているのか。これは陸上自衛隊第二部に関することだが、防衛庁長官から、あそこでは一体何をやっておるかということをまずお伺いをしたいと思います。
  56. 左藤義詮

    左藤国務大臣 お答えいたします。第一管区の向いにありまする建物は、通信等のいろいろ研究をいたしております。
  57. 今澄勇

    今澄委員 その通信の研究をするのに、どうして内閣調査室の渡辺某や、警察庁の平野某や、公安調査庁の人々が必舞なんですか。
  58. 左藤義詮

    左藤国務大臣 国際情報等を聞いておりまするので、その聞きました国際情報を連絡いたしております。
  59. 今澄勇

    今澄委員 聞きますが、そこの責任者はどなたですか、職員録にも出ておらぬし……。
  60. 加藤陽三

    加藤政府委員 お答え申し上げます。陸上幕僚監部の第二部の別室でございまして、別室長は山口と申す事務官でございます。
  61. 今澄勇

    今澄委員 この山口という人は内閣調査室に籍を置いて、そうして元北海道警察本部警備部長、戦前は元特高、戦後追放のため一時警察界を退いた人なわけなんです。通信を聞くのに陸上自衛隊はどうしてこういう人物をそこの所長にしておるのですか。これは内閣調査室の調査官をも兼務しておるが、官房長官内閣調査室はこの陸上自衛隊の第二部とはどういう関係にあるのですか。
  62. 赤城宗徳

    ○赤城政府委員 ただいま防衛庁長官からお答えしましたが、外国の情報等をとっておるということでありましたが、内閣調査室は、御承知の通り、重要政策に関連する情報の収集、調査、こういうことをしておりますので、そこにおいて情報等を収集しておる、こういう仕事をしております。
  63. 今澄勇

    今澄委員 そこで、内閣調査室からは、山口という人のほかにだれだれが出て、青木さんがそこに見えておるが、公安調査庁からはだれだれが出て、そうして、警察庁からはだれだれが行って、そのおもな人々について――職員録を調べてもわからぬのですから、ここで一つ、二、三の人について報告を願いたいと思います。
  64. 加藤陽三

    加藤政府委員 調査いたしましてからお答えいたします。
  65. 今澄勇

    今澄委員 私はどうせ防諜法だとか、今度の警察官職務執行法だとかを政府はやるんでしょうから、そのあとで私がこういうことを聞くとそれにかかるのでしょう。私はこの際、そういったよらな不明朗な旧特高警察の復活のごとき、この一つの役所の中に、内閣調査室からも、警察庁からも、公安調査庁からも、こういう人々が集まってやっておるということ、あとで、詳細はこれから質問しますが、その人々の名前ぐらいはわかっておるはずです。どうしてそれがわからぬのです。防衛庁の所管の政府委員から一つ答弁してもらいたい。
  66. 左藤義詮

    左藤国務大臣 突然の御質問でございますので、連絡いたしまして調査をいたしましてお答えをいたします。
  67. 今澄勇

    今澄委員 いや、きのう防衛庁のさる連絡者から連絡があって、練馬の問題については質問しますかと言ったから、質問しますと言ってあるのだから、少くともきのうからきょうにかけて、そのくらいのことはわかっておらなければならないはずです。私はこの建物のケーブル装置あるいはそこに動員しておる人員が大体約百名、そうしてこれがここで常時そういう連中が集まって活動しておるからには、ただ単なる情報をとっておるのだといい、通信をやっておるのだというくらいでは納得することができないのですよ。防衛庁長官でもよし、官房長官でもいいが、ここで一体何と何をやろうとしておるのですか。
  68. 左藤義詮

    左藤国務大臣 本日御質問のありますることを私伺っておりませんでしたので、十分資料を持って参りませんでしたが、ここでやっておりますることは、国際的ないろいろな情報について十分検討したいと努力をしております。
  69. 今澄勇

    今澄委員 私は大体内閣調査室そのものが諜報組織、情報をとって、先般もその費用については出所に疑問があるとこう言っておるでしょう。それに警察庁、公安調査庁、それに陸上自衛隊の第二部が一緒になって、これだけの一つのものを作っておるからには、あなたがもし様子がわからなければ、これは私は内閣情報局設置特別法だとかあるいは何だとか特別の設置法に基いてやるべきものであって、これの予算、通信機材費でこれの予算をまかなうには、これはあまりにも大きいと思っております。多くのこれは問題があります。防衛庁長官はそういう重大な問題について、ただよくわからないという答弁では、ちょっとこれは私も納得するわけにいきません。
  70. 左藤義詮

    左藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、この御質問のございますことを私存じておりませんでしたので、資料を持っておりませんので、なお調査をいたしましてお答えをいたします。     〔「政府委員答弁できないというような、そんな秘密警察があるか」「理事会を開け」と呼び、その他発言する者多し〕
  71. 楢橋渡

    楢橋委員長 加藤政府委員。     〔「委員長、直ちに答弁させて下さい。」「休憩、休憩」と呼び、その他発言する者あり。〕
  72. 楢橋渡

    楢橋委員長 総理大臣政府所用のために退席されますので、この際暫時休憩いたします。午後は本会議終了後直ちに開くことにいたします。     午後零時十三分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十三分開議
  73. 楢橋渡

    楢橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。今澄勇君。
  74. 今澄勇

    今澄委員 防衛庁長官の方から……。
  75. 左藤義詮

    左藤国務大臣 先ほど練馬の第一管区総監部前の建物についてお尋ねでございましたが、お尋ねの建物は陸上幕僚監部第二部の別室でございまして、陸上幕僚監部第二部は情報、調査を担当しておる部門でありますが、別室はその作業を分担いたしまして各種の情報、調査の作業を行なっておるのでございます。
  76. 今澄勇

    今澄委員 そこで休憩した後に発表するという公安調査庁から詰めている者はだれ、内閣調査室から詰めている者はだれとだれ、警察庁から詰めておる者はだれとだれ、それは調べてあと報告するということであったが、それを報告してもらいたい。
  77. 赤城宗徳

    ○赤城政府委員 内閣調査室から練馬に派遣されている職員は四人ございます。うち一人は病気のため長期欠勤中であります。その氏名は内閣調査官渡辺愛三、これは長期欠勤中です。内閣事務官小林博、同じく井上伸次、同じく曲輪昇一、以上であります。
  78. 江口俊男

    ○江口政府委員 警察の関係をお答えいたします。警察の関係といたしましては、仰せになりました分室の方に常駐した作業員は行っておりません。ただ過去におきまして、やはり情報上の連絡がございましたのでおもむいたことはございます。しかし特定の人間が行ったということでございませんから、名前は特定いたしておりません。
  79. 今澄勇

    今澄委員 今の報告ではいきさか正確を欠くのであって、警備第一係長外、警備整理の第二係長等も行っておるはずである。もう一ぺん答弁し直してもらいたい。
  80. 江口俊男

    ○江口政府委員 お答えいたします。先ほど申し上げたように連絡に出向いたということはあるのでありまするが、いつ何日にだれが行ったというような意味で特定しておりませんので、ただいま御指摘になりました人間が行ったかどうかというのは、もら一度また調べないと確言はできませんが、行ったのかもわかりませんし、行かないかもわかりません。
  81. 今澄勇

    今澄委員 公安調査庁は。――それでは公安調査庁の方は関係者が見えられてから聞くことにして、とにかくこの建物にこういう警察の人、公安調査庁、内閣調査室はこのほかに調査官とか調査員、臨時の人等が入って、陸上自衛隊からも職員が入って、部屋の数も二十幾つかあって、常時相当な機関なんです。  防衛庁長官に聞くが、ここでただ通信をやっておるというだけでは、どうしてもちょっと無理なわけだな。ここで一体何をやっておるかということをお伺いしなければならぬ。
  82. 左藤義詮

    左藤国務大臣 先ほど申しましたように、第二部の分室でございますが、御承知のように第二部の所掌事項は、防衛庁組織令によって、防衛及び警備の実施に必要な資料及び情報の収集整理及び配付に関すること、防衛及び警備に関する秘密の保全に関すること、暗号、地図及び空中写真の計画に関すること、情報の収集整理及び配布に関する技術的事項の教育訓練に関すること、情報関係の部隊及び機関に関すること等、いろいろ所掌事項が多いのでございますが、そのうちで特に各種の情報をここで総合いたしまして、これをいろいろ検討いたしておりますので、相当の人員があるのであります。
  83. 今澄勇

    今澄委員 これと同じ機関が全国にまだほかにもあるのですが、どことどこにありますか。
  84. 左藤義詮

    左藤国務大臣 練馬、ただいま御指摘のところでありますが、東恵庭、太刀洗、小舟渡四カ所ございます。練馬ほどたくさんの人数はございません。
  85. 今澄勇

    今澄委員 その四カ所にこれを作っておるのは、これで四カ所の交信交差による国際的な特にソ連中共方面の電波をキャッチすることが一つの任務であると思うが、防衛庁長官どうだ。
  86. 左藤義詮

    左藤国務大臣 世界各国の放送をできるだけキャッチするように努めております。
  87. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、今あなたの答弁にもあったように、暗号の解読その他のことをやっておるそうですが、よその国の電信に関する暗号の解読は、国際条約において外務省か軍以外にはやれないことになっておる。ここに、公安調査庁なり、あるいは警察庁なり、そういう人々が集まって、そういう国際的な諜報解読に関することをやっておるというのは、どういう根拠に基いておるのですか。
  88. 左藤義詮

    左藤国務大臣 先ほど、私、防衛庁組織令で陸幕第二部の所管事項を申し上げましたが、その際の暗号と申しますのは、国内の、私どもの使っております暗号のいろいろな形式でございまして、この建物におきまして聞いておりますのは、世界各国の放送を中心にして聞いておるわけであります。
  89. 今澄勇

    今澄委員 ここでキャッチされた情報が――防衛庁の場合には電子計算機がないのです。電子計算機で一体どこで計算して出しておるのです。それだからこそ公安調査庁なり警察庁が入っておるんじゃないですか。あなた、そんないいかげんなことを、言ってもだめです。
  90. 左藤義詮

    左藤国務大臣 私の申し上げましたのは、世界各国の放送を――ローカルもいろいろございますが、できるだけ一つ漏れなく聞くように努力しておるわけであります。
  91. 今澄勇

    今澄委員 内閣が防諜法を作り、あるいは警職法を作り、その他のものを作っていこうとする背後には、すでにもうこういう既成の事実があるのではないか。それで、それらのことは、われわれ国会議員といえども一切議論ができない。あるいは演習場におけるいろいろなことだって、軍の機密ということで押えられればそれきりになる。私はあえて深くこれを掘り下げて徹底的に追及しようとは思わぬが、少くとも今日の情勢のもとにおいて、あなたの方は仮想敵国はないと言っておるけれども、この四カ所が交信交差してキャッチしているところの情報というのは、ほぼソ連、中国の国際的な情報にきまっておる。そして警察庁も入り、公安調査庁も入っている。防衛庁の中にはどこにあなたの方で暗号の解読をする電子計算機がありますか。ないじゃないですか。そうすると、それはどこかほかの役所でやっておる。日本の国内では自衛隊――海外では軍ということならば、この国際的な暗号の解読は問題はない。だけど日本自衛隊は軍ではないのです。やるなら当然これは外務省がやるべきである。外務省所管の管轄に関することを、防衛庁所管の管轄において、しかもわけのわからない内閣調査室だの何だのが入っていて、それで国際的な条約に違反して今日やっておるのです。私はもう一度防衛庁長官責任を持ってここで答弁してもらいたいと思いますね。
  92. 左藤義詮

    左藤国務大臣 先ほど暗号と申しましたのは、国内で私どもがいろいろ暗号通信の研究をいたしておるという意味でございます。
  93. 今澄勇

    今澄委員 まあこれは、防衛庁長官もその程度で、私の質問で御存じのようなことでしょう。だから私はこの程度にしておきますが、公安調査庁からだれか来られましたか。
  94. 楢橋渡

    楢橋委員長 関政府委員が出ております。
  95. 関之

    ○関政府委員 お答えいたします。公安調査庁では、防衛庁で傍受された情報などをいただくために、ときどき職員が行っている、こういう状況でございます。
  96. 今澄勇

    今澄委員 この問題はいろいろ影響がありましょうから、今の答弁は実際とはまるきりかけ離れておるけれども、戦闘機の質問もありますから、私は一応この程度で質問をやめておきます。  そこで私は官房長官にお伺いいたしますが、あなたは参議院の内閣委員会で、懇談会の席上においても、あるいは矢嶋委員質問に対しても答えられておる。その要旨は、次期主力戦闘機の着手は、発注に当って財政上なお検討すべき点が多いので、初年度経費を来年度予算に計上する見通しを持ってない、それで戦闘機の問題は一応当面はやらないというような話をしておられますが、その問題をめぐっていろいろ議論があって、あなたの方の閣内にも疑義があったという話ですが、もう一ぺんここでそのいきさつを官房長官から伺いたいと思います。
  97. 赤城宗徳

    ○赤城政府委員 機種の決定は私どもの所掌ではありませんけれども、今お話のように、機種の決定については相当慎重を要する問題もある、あるいはまた財政負担の問題等もある、こういう事情にありますので、相当慎重を期する、こういうことに相なりまするならば、来年度の当初予算にこの経費を計上するということはむずかしいだろう、計上は大体できない見通しである、こういうふうに考えているのであります。
  98. 今澄勇

    今澄委員 そうするとその次期戦闘機は四月の国防会議では六月の終りまでにきめるという話し合いがなされておるにもかかわらず、しかも決算委員会では、総理が早くこれを決定しなければいかぬということをしきりに言っておられるのだが、どういうわけで官房長官談話のようなことになったのですか。その原因は何です。
  99. 赤城宗徳

    ○赤城政府委員 四月に内定しましてから六月にきめるというようなことには相なっておらなかったと思います。慎重に、財政の問題あるいは性能等もございましょう、そういう万般の問題を整備するといいますか、調整した上で本ぎまりにする、こういうことに相なっておったのでございます。でありますので、早くきめなくてはならぬというようなこともなかったのでありますが、先ほど申し上げましたように、日本向きの戦闘機ということでありますから、中に価格の点もございましょう、あるいは性能の点もございましょう、あるいはまだ財政負担の問題もある。そういうことを総合的に検討した上でなければ決定という運びには至らない、こういうのが現状だというように私は承知いたしております。
  100. 今澄勇

    今澄委員 そこで国防会議の事務局長の廣岡さんにお伺いするのですが、あなたは九月二日の決算委員会においても、なるべく早くこれを決定する必要があるということを、証人としてもはっきり言っておられるのですが、今官房長官の話だと、今度はえらいゆっくりするわけですけれども、国防会議の事務局長としてはどういうお考えですか。
  101. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 昨年の六月の国防会議におきまして総理大臣に答申いたしました防衛力整備計画、そのうち自衛隊の装備する戦闘機は、航空機は約千三百機、その中で次期戦闘機につきましては三十七年度を目途にして装備するというようなことがきめられたわけでございます。従って防衛計画を達成する上におきまして、いろいろほかの財政的な角度からも検討することが必要でございますけれども、予算の関係もございますから、また生産量の点も考慮いたしまして、できるだけ早く決定を見ることが望ましいという自主的な立場から、これが準備が進捗されておった、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  102. 今澄勇

    今澄委員 防衛庁長官に聞きますが、そうするとこの飛行機はアメリカの対外援助費が加わって、防衛庁は一億ドルくらい取りたいというお話だったそうですが、それの折衝がだめになる。そうすると防衛力整備三カ年計画というものは、陸上十八万、海上十二万四千、飛行機千三百というこの計画は練り直すわけですか。
  103. 左藤義詮

    左藤国務大臣 この計画は、現在F86を進めておりまするので、練り直すつもりはございません。
  104. 今澄勇

    今澄委員 F86では練り直すあれはございませんと言ったって、機数が足らぬのですから、どうしてもそのあとにつける次期FX戦闘機三百というものが入らなければ計画は自然こわれるわけなんです。左藤長官答弁はまるで話にならぬのです。  それで私は総理大臣にお伺いしますが、あなたは昨年の六月十五日に国防会議を開いて、そこで防衛三カ年計画というものを決定している。その中の千三百の飛行機のうち主たる戦闘機七百七十、その中の主力戦闘機は今度新しくFX三百機ということをきめている。この計画案はダレスさんとの会見の席上あなたから向うの手に渡っているわけです。そのときあなたは、これから日本も自主防衛をやるのだということで約束をせられて、このきまった戦闘機の三百機については、あなたは国防会議の議長としては急がなければならぬ立場にあるわけなんですが、今の官房長官の話というものは、これまでのそういういきさつから見ると、まるきり変っているのですが、その点総理はどういうお考えですか。
  105. 岸信介

    岸国務大臣 国防増強計画並びにその一部であるところの航空機の整備の問題につきましては、これはやはり国防会議において決定する問題でございます。しこうして今までの経過を申し上げますと、一応ことしの四月にグラマン機を次期戦闘機の主力戦闘機として内定をし、さらに当時まだ不十分であったところの資料を整え、またアメリカとの折衝に必要なあらゆるデータを整備すると同時に、他の機種のものにつきましては、その後の進歩等も頭に置いて検討を加えてきておるのが現状でございます。しこうしてこれの最後的決定をするのは、言うまでもなく、官房長官が申し上げましたような諸種の事情を十分検討して最後的決定をすべきものだと思います。これらは国防会議におきまして必要な資料を整え、私が国防会議において検討して公正な最後の結論を出したい、かように考えております。それをできるだけ早くすることは望ましいことでありますが、同時に未確定のデータについての正確なるデータを集める必要もありますので、慎重に検討をいたしたいと存じております。
  106. 今澄勇

    今澄委員 それは前とうしろの話がとても食い違って、世人は、なぜ一体そんなに急いでおった戦闘機を、急にまたこんなにゆるめたのであろうかということについて、大へんな疑惑を持っております。廣岡事務局長にちょっとついでに聞いておきたいのですが、昨年の十二月二十四日、ノース・アメリカン八十機が防衛庁案として国防会議にかけられておりますか、どうですか。
  107. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 そういうことはなかったと思います。
  108. 今澄勇

    今澄委員 これは別段あなたはそう神経過敏になることはないので、ノース・アメリカン八十機が防衛庁案として国防会議にかけられ、そうしてこれは廃案になったということになっているのです。それがやはり岸総理やあるいはその他の政界有力者の押しがあって、通産省としてはこのノース・アメリカンで日本の航空機工業の間をつなごうというので出た。防衛庁の中には反対が多かったけれども、一応これは出たことは出たんでしょう。うそを言わぬで、ほんとうの話をしてもらわなくちゃ……。
  109. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 その当時の国防会議にはその八十機案というものは出ておりません。
  110. 今澄勇

    今澄委員 いつ出ましたか。
  111. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 ノース・アメリカンの飛行機八十機という問題は、いかなる場合にも出たことはないと思っております。
  112. 今澄勇

    今澄委員 廣岡さんに聞きますが、そういうことなら、私はごく紳士的にやろうと思ったのですけれども、某週刊誌が本日発売して、堂々とその中にメモを載せてあるが、八月の十九日、大乃という料理屋で三菱電機の副社長小野寛、同営業部長大久保謙、同伊東課長、あなたの方は廣岡、吉村、天川三人で会食したように出ておりますが、あなたはそういうことはありますか。
  113. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 お答えいたします。八月の十九日に出ました会といいますのは、三菱電機の関社長は私の高等学校の先輩でもありますし、前から知り合いでございます。今度原子力平和委員会に出るので内々送別会をやりたいから出てくれということを会社の秘書から申し込みがございましたので、私はそういう関係がございますので出ましょうと言って、築地のある料亭でその送別会に加わったわけであります。帰りに小野副社長以下数名の方と一緒に、もう二次会を用意しているというようなことでございましたので、それでは私がそれは持つということでもって出たわけでありまして、三菱電機の問題と今度の航空機の問題につきましては全然関係はございません。こういう事情でございます。
  114. 今澄勇

    今澄委員 いや、別段今度の航空機で私があれこれ疑っているわけではないが、少くともこれだけあわててきめておったものが急に延びたことには大きな疑惑があるということ、それからもう一つは、国防会議の事務局長ともあろう者が三菱電機の関係者と会談をし、そうして吉村氏や天川氏などと会談をしておるということについては不謹慎のそしりは免れぬと思うんですよ。私は、この天川という人が国防会議のいろいろなところで研修会をしたり、講演をしたりして謝礼金を得ておるというような話だが、この飛行機の問題には、急にこんなに態度の変った背後に児玉誉士夫という、まるきり政府の皆さんとは関係のない存在と天川というこれまたなぞの存在があるということは、もう国民周知の事実なのです。私は一民間の高利貸しのメモなどで千葉銀問題でも政府が打ち驚き、あるいはいろいろ驚いておるのは、今日の検察権が正当に発動してないからだと思うのです。これは検察庁が当然正当に捜査してそういうような不正をびしびしとやっておれば、何もそんな高利貸しのメモあたりで驚くことはないと思うのですよ。ところが内閣がかわるたびに法務大臣というのが問題になって、まあ率直に申せば今でも青木公安調査庁の長官は大野系でしょう。それから法務大臣は、これは河野さんの方からいろいろ名前も出たでしょうが、なかなかもみにもんできめるのがきまらない。それはなぜかというと、そういう法務大臣等の圧力で、検察庁がそういう不正な事実があれば調べなくちゃならぬが、それを調べないから、借金を少し取りそこねた町の高利貸しが、その手形の回収をするために作ったたかが一片半句のメモで驚かなければならないというのが、今日の保守政党の実態ではないですか。私はここに大きな問題があると思うのです。  飛行機についても、たとえばコンベア、ノース・アメリカン、グラマン、ロッキードといろいろあるが、これはほんとうを言えば飛行機に乗る人あるいは防衛庁の専門家がきめることですよ。政治家がそんなものわかるわけがないのです。ところがコンベアについては関谷産業の取扱いで、愛知揆一さんは官房長官のときに今井さんに電話をかけて、佐藤さんから頼まれたといって、このコンペアの責任者に会わぬかということで防衛庁幹部が会っておる。今度はグラマンにきまったところが、河野一郎氏が左藤さんをやかましくいって、テイト・ホテルで八月の七日、八日にロッキードのハル氏と五、六人で立ち会いのもとに会っている。政治家がこの飛行機の決定に大きく、それぞれの飛行機にみんな商事会社と政治家がついて動いておるというこの事実は、やはり国民が戦闘機について大きな疑惑を持つ一つであると思うのです。  そこでこの際お伺いをしなければならぬのは、大へんこれは失礼な話ですけれども、今の御答弁のような趣きでは、これはとても率直に申し上げるより仕方がないので、私はここではっきり申し上げます。決算委員会がいよいよ行われる。そこで九月八日の午後三時に、赤坂の料亭玉むしにおいて、田中決算委員長、山村新治郎、池田正之輔の三氏が一時間にわたって懇談している。そのあとで四時過ぎ総理官邸に、山村、池田の両氏が総理をたずねておられるのですよ。そこで私は総理にお伺いしたいのは、そのときに総理は――それは自分の党ですからいろいろお話もありましたでしょうけれども、何かこれらの戦闘機の問題についてお話し合いがありましたかどうですか。
  115. 岸信介

    岸国務大臣 私はこの問題が決算委員会にかかって審議されておる場合におきまして、本来の決算委員会の権能に従ってこれが審議をされるということは当然であろうけれども、機種の決定は国防会議において、私が議長として公正にあらゆるデータを集めて決定をするということ、であるということを、かねがね申して、おったのであります。今御指摘になりました池田君と山村君が私をたずねてきたということでありますが、私はそれについてしばしばこれらの人々と会っておりますので、日にち及びその経過等については、私今御指摘になりましたことについては、明瞭な記憶を持っておりません。特に機種問題についてそういう何らかの両人から特別の話は、私には記憶がございません。
  116. 今澄勇

    今澄委員 この山村と池田正之輔の両氏は、あなたのところで会ったあと、九月九日の朝、児玉誉士夫氏のところに朝飯会に行っておるのですよ。これは私の類推ですが、思うらくは、総理の御意向を受けて児玉さんのところの朝飯会に行かれたか、それはわからぬにしても、一応児玉さんのところに行っていろいろの話がされておる。そのときに岸総理がいろいろ言われた話については、きょうは予算委員会ですからここでは別段申しませんが、そのあとで、九月八日の午後五時ごろ、田中決算委員長が山村氏や池田正之輔の出たあとで、あなたのところに会談に行っておられます。これは当然党の決算委員長だから、この飛行機の問題については話し合いがあったでしょう。
  117. 岸信介

    岸国務大臣 私は田中委員長に、決算委員長としてこの問題の扱いについての、私の意見を数回にわたって言ったことがあります。それは決算委員会としての本来の任務を逸脱して、機種そのものをきめるというようなことについての決議をするとか、そういうような審議は適当でない。それをきめる事柄は先ほど申したように、国防会議において私が責任を持ってきめるのであるということを私は、言った。従って決算委員会の本来の職務権限の範囲内において、その疑惑の点を明らかにするということは当然のことであろうけれども、機種決定ということはこういう機関でやるからということを私はしばしば言ったことを記憶しております。
  118. 今澄勇

    今澄委員 決算委員会は九日の午後一時から行われ、証人を喚問してやることになっておる。そこで九日早朝、南平台の岸邸において、決算委員会の対策を協議しておられます。この出席者総理大臣と赤城さんと川島幹事長に、村上さんほか国会対策の方が出て協議をしておられます。そこで決算委員会に対しては、総理がまつ先に出て、そして事態の模様を明らかにする。さすればあとの川島、河野などの証人は、一つ呼ばないで運営していこうというような対策を立てられております。たが実際には決算委員会の運営はその通りにはいかなかった。そういう自民党の国会対策で立てられた通りの運営に決算委員会がいかなかったということは、やはり自民党内においても、一つの問題をかもすと思うのですが、田中決算委員長については、総理の方からは別段そういう運営については何も異存はないわけですか。
  119. 岸信介

    岸国務大臣 日にちはよく覚えませんけれども、今おあげになったときには、私が決算委員会に出るか出ないかということが問題だったように思います。私はもちろん決算委員会が要求するならば出て、この問題の扱いについて自分の所信を明らかにしたいということを申したと思います。それから私自身国会の運営につきましては、総裁としましても総理としても直接は関与いたしておりません。あるいはいろいろな、幹事長や国会対策委員長等から、国会の模様等については報告を受けておりますけれども、自民党におきましては、そういうことは幹事長及び国会対策委員長等において専行することになっております。私が一々指示を与えるようなことはいたしておりません。
  120. 今澄勇

    今澄委員 そこで官房長官に伺いますが、あなたは児玉さんにお会いになっておられますが、いろいろ飛行機以外のこと、その他のことでも話し合いがあったわけですか。
  121. 赤城宗徳

    ○赤城政府委員 いろいろ資料があるから資料を読んでおいてくれということで、資料を預かっただけであります。それだけです。
  122. 今澄勇

    今澄委員 官房長官は児玉さんに会って飛行機の資料を見ておられる、川島幹事長は政府の方じゃないからここにお見えになりませんが、川島幹事長も児玉さんに会って、そうしてグラマンは一億円高い、これをもっと引き下げる必要があるというような話があって検討を約したと伝えられております。ある代議士は児玉さんの邸宅に夜の十二時過ぎまで立ち番をして、児玉さんの怒りを静めるために努力をいたしております。私は戦闘機の決定をするのに、どうして一体そんな一介の児玉誉士夫なる人物に、官房長官も会い、川島幹事長も会い――何が原因でそんなに会われるのですか、官房長官にその点について伺いたい。
  123. 赤城宗徳

    ○赤城政府委員 私は児玉誉士夫氏がそういう飛行機のことで明るい人だとかなんとかいうことも何も承知しておらないし、前からも知っておる人ではなかったのでありますが、会ってくれというので会ったところが、いろいろ問題になっておる点について資料もあるし、読んでおいてくれ、だれも会う人がなくて困るからあなた読んでおいてくれというので、その資料を預かっただけです。
  124. 今澄勇

    今澄委員 児玉誉士夫氏がいろいろテープを持っておるとか、やれ何だとかいって、いろいろなかけ合いをしておられるそうですが、私はこの飛行機事件に国民が非常に疑惑を持つのは当然だと思うのです。  総理に伺いますが、九日午後の決算委員会において山本猛夫委員岸総理に対しこう言っている。「グラマン内定までに相当多額な運動費がばらまかれている事案がございます。これはいつでも証拠をあげて御説明ができるのでありますが、」「このたびのグラマン購入に当って国際的汚職のにおいの強い疑惑を持っておりますものに対しまして、ただいま議長のお答えというものはまことにそれを裏切るたくさんの事態があるのであります。私は先ほどお目にかけましたこういう文書、その他の書類による証拠品、」「こういうようなものを的確に持っております。」こういうのです。あなたはそういう疑惑が何もないと言っているけれども、おそらくは岸さんの意向を組んで行ったものに違いない、官房長官と川島幹事長が児玉氏に会っているところは。しかもかようなことを決算委員会で発言して、それに対して総理はどう答えておられるかというと、岸総理のこれに対する答えは「現在までそういう事実を一切存じてもおりませんし、またあり得べきものだとは思っておりません。」これだけであります。これは社会党の議員ならどうしようもないけれども、あなた、与党の議員ですよ、与党の議員から堂々たる国会の席上で端的にこれだけ指摘されて、それを弁駁すべき一言の言葉もなければ、しかも自分のところの幹事長なり官房長官は児玉誉士夫氏に会っておって、そしてこの議員の処分もできない、私はグラマン事件の問題についてはどうもおかしいといって岸さんに世間が疑惑の目を向けるのは当然だと思うのですが、どうですか総理大臣
  125. 岸信介

    岸国務大臣 私は明確にそのときも答弁しておるように、そういう事実は全然ない、こう考えますから、そのことを明確に言ったわけであります。
  126. 今澄勇

    今澄委員 あなたは党の総裁であり、党の責任者です。そういうことがあなたの党内で言われて、それに対してあなたはただ――これは外国人のブラウンとは違うんですよ。これはあなたの党員ですから、それで同じように、私の言うことを信用して下さいだけでは通らぬでしょう。あなたは一体どうするのですか、党内の規律については。
  127. 岸信介

    岸国務大臣 党内のことは党のそれぞれの機関によってこれを処置すると考えておりします。
  128. 今澄勇

    今澄委員 それは総理、党内というけれども、あなたは総理大臣だから、総理大臣に対してこういうことが言われて、それに対してあなたが何らの措置もとり得ないということになれば、世間があなたを疑うということは私は当然だと思いますね。  それからもう一つは週刊誌、これは週刊朝日もサンデー毎日もあれば、多くの週刊誌に、このグラマン問題が取り上げられて、国民の前にどんどん提供されておる。その中のある週刊誌は岸首相へと題していろいろ並べて、真相の究明をお願いしますと書いて出ているものもある。私がここに持っている資料によるといろいろなことが書いてある。これは大へんなことだと思うが、あなたはそういう覚えがないとかなんとか言うなら、この事件を取り扱ったこういったものについてあなたとしての厳然たる態度がなければならぬ。アメリカでもわずかなことで辞職した人もいる。鳩山元首相でもある週刊誌を告発している。私は一つだけ某ニュース誌を読んでみます。第二のシーメンス事件として政界上層部でその成り行きを見守られているグラマン汚職事件については、去る八月二十六日衆院決算委員会で問題取り上げにきまったとたんに、鳩山元首相はいみじくもこれで岸内閣もいよいよ崩壊だと漏らした、(笑声)四月初旬川島幹事長の手元にすでにグラマン機種内定の見込み手付金として一億円の現ナマが届けられていた、そうして同十二日予定のごとく内定が発表された、関係者は青天のへきれきとして驚嘆、そのころ国会世論も千葉銀問題でてんやわんや、岸の色紙事件、一萬田親書、主流派のもみ消し事件等々、岸内閣の危機、これを救う道は国会解散以外になかった、先だつものは選挙資金である、続いて、機種売り込みの両社のリベート、特にグラマン社のリベートの円払い代行のなぞ、これには某米大銀行と伊藤忠の介入がうわさされておる、新三菱、川崎両社の下請リベートのなぞ、グラマンの下請は、両社は六対五、三対五の割合である、今夏川島幹事長のハワイ行き、実はロスアンゼルス行きはリベート決済問題だといわれておる、衆院決算委員会はまだ序の口である、以上のなぞを解明することが同委員会の目的であるが、そこまでいけば岸内閣の自壊は百パーセント間違いないと見られていると報道しております。こういう報道がどんどん国民の前に行われているときに、もし岸さんが、決算委員会でそういうことを言った代議士の何らの処分もできない、自分の、言うことを聞かぬ決算委員長も政党の総裁としてよう取りかえることもできない、週刊誌がどんどん書いているが、それに対して名誉棄損その他の告発もできないということになれば、この事件というものは非常に疑惑を深めると私は思うのです。私はこれについて岸さんの御見解を聞いておきたいと思います。
  129. 岸信介

    岸国務大臣 私どもがこの問題を国防会議において扱いましたことは、当時機種についてその性能であるとか、あるいはその製造工程であるとか、あるいはまた安全性の問題であるとか、あるいはそれの大体の価格の見通しであるとか、そういうものをあらゆる面から検討いたしましてグラマン機というものを内定し、しかしなおそれにつきましては幾多の未確定の事実もございますので、また他のものともさらに比較を要する点があるというようなことを十分さらに具体的に研究して、最後の決定をしようという意味において、四月に内定をいたしたのでございます。私は、この問題に関連していろいろな疑惑が投げかけられておるということは、非常に、遺憾に思っております。しこうしで私は、国防会議においてこれを内定し、また現在決定するまでのいろいろな調査をする場合におきましては、公正な立場において一切を処理しております。従ってそういう投げかけられておる疑惑のような事実は、私は全然承知をいたしておらないのみならず、そういうことがあり得るとは絶対に信じておりません。そうしてまたこれを決定するのについては、少くともそういういろんなことが言われておりますから、国民の疑惑を解くような方法において、国民が納得するような方法において、この最後的決定をするということを、決算委員会においても言明いたしておりますが、今なおそういう心境でございます。
  130. 今澄勇

    今澄委員 私はとにかく日本の政界の裏面にあるもの、それから今日の保守政党の、特に資金的な裏面にあるものの間隙をついて、民間の一高利貸しが何かしらあるたびにこのメモというものを出す。一週間ばかり前に河野総務会長が、天川なる人物についていろいろと調査をされておる。柏村警察庁長官にも連絡をとっておられるのは、私はおそらくこのメモが一週間ばかり前に河野さんの目に映ったからだろうと思うのです。そして週刊誌にも堂々と出て、日本の政界の信用を落すことこの上もないと思うのです。私は国会議員の一人として非常に悲しむのであります。私は日本の検察当局というものが、こういうふうな一介の総会屋上りの高利貸しの情報で動くなんということは、不見識もはなはだしいと思う。その情報というものによって商法上の利益をこの高利貸しが得るということになるならば、検察当局との結びつきということについては大きな国憲の違反です。法務大臣そこにおられるが、あなたの方はこんなに世の中に疑惑が出ておるにもかかわらず、全然これらについての捜査はしないのですか、法務省の責任者として一体どうなんですか。
  131. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いかなる場合におきましても、検察庁といたしましては単なる伝聞、うわさ等だけでは捜査はいたしません。同時に検察庁といたしましては、厳正公正に法の秩序を守るために、中正なる態度で厳粛に検察権を行使いたしておるのであります。
  132. 今澄勇

    今澄委員 この際内閣がおそれておるのは、このグラマン事件の追及が進めば千葉銀事件とかそれらのものに問題の進展がいくことをおそれておるものであると私は類推をいたします。なぜかならば、かつて解散前に行われた千葉銀事件の大蔵委員会の森脇証言の前日に、森脇氏の事務所で某代議士は打ち合せをして、いろいろと詳細検討しておるのです。だから森脇の証言は国会を利用しただけで、国民には何ら真相がわからないまま終っている。私は阿寒鉱業に関する千葉銀の貸し出しについても、あるいは岸さんの再建同盟のころからの関係についても、きょうは申し上げませんが、おそらくはいろいろと問題があるに違いない。そういった問題も喧伝せられておる、メモも出る、しかも決算委員会に呼んで聞くと、割合にこれが当っているのです。愛知さんは今揣摩憶測と言うけれども、全部当っている。高利貸しは自分のそろばんに合うためにやっているので、費用に制限がある。しかし数千人の検察庁の組織と金は、国民が信頼して出しておるのであります。それが全然動かなくて、一介の民間の高利貸しが動いて、それで政治家がこの高利貸しの門をたたいて戦々きょうきょうとしておることは事実じゃないですか。私はこういう今日の情勢については、法務省はもっと厳正なる規律で検察の発動を促さなくてはならないと思います。  時間がありませんから私はこの一問で終りますが、決算委員会を開いてもらいたい開いてもらいたいといって、だいぶ社会党の方から要求しておるようですけれども、決算委員会は開かれておりません。田中委員長はどこか行方がわからぬそうであります。私は国会を利用して、しかも自分たちの陰の取引が成立するとそれで姿をくらましていくという今日の政治は、ほんとうに国民に疑惑を与えると思うのです。こういうことを申し上げるのは本意ではありません。私が念ずるのは、日本の政界がこのままもしこういう不明朗なものでいくならば、議会政治というものの命数はそう長くないのではないかということをおそれるから言うのです。田中さんは決算委員長を三回いたしました。三度も続けて決算委員長をしたということは、よほど適格であるということなんです。第一総裁であり総理である岸さんは、田中氏が決算委員長として適格であるとお思いですか。私の調査によれば――私は何も同僚の非を鳴らすつもりはない。決算委員会というのは国会の検察です。国会におけるほんとうの正しい道をきめるところなんです。それに三度あなたが起用して使っておる人は、――――――――――――――――私は多く申しませんが、いろいろあります。しかもあなたの官邸に集まっていろいろと国会対策をきめたことにも言うことを聞かない。しかもこの人と一緒になっておる山本委員委員会の席上であなたを罵倒した。それに対して総裁、総理大臣が一言もあれできない。一体こんな国会国会の権威を保てますか。私があえて火中のクリを拾うゆえんのものは、この際やはり私は日本国民の前に、戦闘機の問題でこんなに政界が腐敗しているということになると、この次には誘導弾、これにもまた大きな金が動くでしょう。そのたびにこういうような状態が続くということは、政界浄化のために私は非常に残念であるから、この際岸総理一つ善処を要望し、私は総理として、総裁として決算委員会のあり方、あなたに対して追及した人の処分、こういった一連の事実に対するあなたの決意、そういうものを聞いておきたいと思います。
  133. 岸信介

    岸国務大臣 機種決定の問題関しては、先ほど私が申し上げました通り、私は国防会議の議長としていろいろ投げかけられておる疑惑を解くに足るような、公正なる方法で最後の決定をいたすということを先ほども言明いたしましたが、その心組みでおります。また決算委員会の運営やあるいはそこにおけるところの委員の発言等に対する問題に関しましては、それぞれ党の機関において適当に処置することと信じます。
  134. 今澄勇

    今澄委員 私の時間が参りましたから、他の委員会でいろいろ質問をすることにして、これで終ります。(拍手
  135. 楢橋渡

  136. 塚田十一郎

    ○塚田委員 私はこのたび提出になっております予算に関連をいたしまして、外債問題につきまして若干お尋ねをいたしたいと思うのであります。ただ私は割当をいただいておる時間が二十分しかないそうであります。話の都合では三十分ぐらいまではよかろうというように伺っておるのでありまして、従って一つの問題でありますけれども非常に急がなければならない、こういうように感じておるわけです。そこでなるべく私は自分の意見を申し上げませずにお尋ねいたしたい。要点だけを申し上げて、そうして担当の大臣の御意見を伺いながら質問を進めて参りたい、こういうように考えます。  その前に簡単に、私はどういう気持でおるのかということを少し申し上げておく方が、お答えをいただくのに非常に都合がいいと思いますので、それを簡単に申し上げておきたいと思います。実は私は金融問題については、まことに恐縮でありますがしろうとであります。資料もそう十分に持っておるわけではありませんので、新聞記事、雑誌そのほか親戚、知人そういう人たちの話を聞き、そうしてしろうとではあるのでありますが、またしろうとはしろうとなりによくわからないことも原因しておるかもわからないのでありますけれども、今度の外債問題というものについて非常な心配をいたしておる。私は三十二年初めごろに自由民主党の政務調査会長をいたしておりまして、このときに例の御承知のように一千億減税、一千億積極施策の予算を組みました。当時私は党側の責任者の一人としてこの予算案を組んでうまくいかなかったことにつきまして、責任の一端を実は痛感しておる。そうしてあのときの経験で私といたしまして強く感じておりますことは、これから日本の経済は、自由主義、資本主義の経済で行く限りは、今後とも経済の波を起すということは避けられないだろう。しかしそれにしても二十八年、三十二年のようなああいう大きな波動を起す経験はなるべく積まない方が経済のために仕合せなんだ。振幅はなるべく狭めなければならないということを強く考えておるわけであります。安定した経済の発展ということをこれから考えなければならない。もう一つ感じております点は、事柄それ自体はやってよろしい、ぜひやらなければならないことである。しかしその時を誤まると、必ずしも所期の結果を得られないばかりでなく、全然期待したのと違った結果を及ぼすことが、財政、経済、金融の問題にはよくあるものだということを痛感した。あのときの一千億減税、一千億積極施策は、それ自体を見ましてみんなやっていいこと、やらなければならなかったことだと思うのでありますが、やはりあの時を得なかったという感じを強くしております。  そこで自分は、そういうようなしろうとはしろうとなりの乏しい経験を基礎にいたしまして今感じますことは、どうも私には今の時期に外債を出すということ、外資導入も同じ感じでありますが、特に外債を出すということは必要ではないのじゃないか、また適当じゃないのじゃないか、こういうように実は感じております。  そこで端的に、私が不必要じゃないかという感じを持ちますのは、一体今度の外債発行が、外貨を必要とされるのか、円資金を必要とされるのか、どちらなんであろうかという疑問を持っておるわけであります。外貨を必要とされるということであれば、私は最近の外貨事情というものをおぼろげに承知しておって、そんなに今外貨を必要とするという状態ではないのじゃないかという感じを持っておる。円資金を必要とするということであれば、私は円資金を獲得する方法は、外債を起すという方法でなしに、国内で適当な方法があるべきであるし、またそういう措置をとるべきじゃないだろうかという考えです。不適当であると感じますことは、その理由は御承知のように外債を発行して、これによって外貨が得られます。そういたしますと、それを見返りにして当然国内に円の金が出て参ります。そうすると、金融をゆるめるという作用をいたして参ることは、私がここで申し上げぬでもよく御存じの通りだと思う。ところが私が今心配をいたしておりますのは、最近これは私が申し上げぬでもよく御存じのように、日本の金融はゆるみがちになっておると思うのです。金融がゆるんでくること自体はけっこうなことであるし、正常な状態でだんだん金融がゆるむ、金利が下ってくることは経済の発展に好ましいことであることは申すまでもないのでありますが、私は今の金融のゆるみ方、それを受けて産業界、金融界の動いておる動かし方を見ると、どうも二十八年、三十二年のああいう失敗を繰り返すような心配が非常にされてならない。こういう時期に、政府がさらに外貨を入れることによってこれに拍車をかけていかれるということは適当でないのじゃないかと考えておるわけであります。  それから一方外債を募集されようとしておるアメリカの金融市場も、これまた新聞紙上などで御存じのように、最近急激に金利が引き上げられる傾向になっておる。そうすると、その点においても必ずしも適当な時期でないのではないかということが考えられる。  もう一つは、これはきわめて俗論でありますけれども、やはり外貨がたくさんありますと、私は気がゆるんでくるという感じを持つ。だから外貨がたくさんあるということはいいことであるかどうか、これはなかなか判断にむずかしい。私はそれよりはほんとうに正常貿易その他によって積み上げられた外貨を大事に使って、それをもとにして健全な経済発展を期していかれることが一番いい方法であり、正しい方法ではないか。こういうように考えると、私が先ほど申し上げました不必要であり、また不適当なのではないかという私は私なりの結論が出て参るわけであります。以上が私がこの問題を考えております基本の考え方、基本の立場であります。  そこで政府がこの時期におきまして、今やっぱり外債を出す必要があるのだというふうに御判断になるのには、政府政府なりに御判断の理由がおありになると思うのであります。そこで第一にお尋ねをいたしたいのは、政府は最近の外貨事情、ことに大蔵大臣は最近の外貨事情というものをどのように御認識になっておるのかという点であります。ことにこの外貨事情について、ことしの予算をお組みになる当初にはどういうお見通しであったかということ。それがどういう工合になってきて、現在どうなっているか、将来の展望はどうなのか、こういうようなことを中心に置いて大蔵大臣の外貨事情に対する御認識を伺いたい。
  137. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 お答えいたします。いろいろ基本的な構想というか、考え方についての御質問がございましたが、これについての私の意見は別といたしまして、お尋ねになりました点だけ簡潔にお答えいたしたいと思います。  御承知のように年度当初、予算を組みます際の外貨事情につきましては、今日のような非常な多額の黒字を予想しなかったろうと思います。本会議でもお話をいたしましたように、上期だけで二億五千万ドルという黒字を現出しておりますが、下期の状況におきましても引き続いて黒字の状況である。これが四億ドルにも近くなるという見方をする向きもございますが、少くともこれが三億ドルをこすことは、今日から容易に想像できることだと思います。この状況が次年度におきましてどういう形をとるか、問題はわが国産業の生産の面における伸び方等とも関連をして参ると思います。私は順次こういう黒字を非常にたくさん出している状態は、特に本年における特異的な性格ではないか、かように考えております。
  138. 塚田十一郎

    ○塚田委員 大体当初よりはよけいに黒字がふえておる。見通しは三億ドルか、四億ドルぐらい今年じゅうにはふえるということである。しかしこれはことしの特殊事情であって、来年度以降はそれほど見込まれないのじゃないかというような御意見のようでありますけれども、それではその問題についてもう一点お伺いいたしたいのでありますが、見込まれないのではないかということは、おそらく単なる見通しを立てていらっしゃると思うのでありますが、大蔵大臣は見通しでなくて、今後ますます黒字が増加するように努力するということを政策の基本には置いておいでにならないのか。ふえなければふえないで仕方がないから、今借金をするというお感じであるのか、その点はいかがですか。
  139. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 もちろんただいま私が申しましたのは、本年は異常の黒字だろうと申しました。これは同時に生産の面において、あるいは外資といいますか、あるいは外国的な資材の輸入といいますか、そういう問題を相当考慮に入れなければならない。今後の経済の見通しといたしまして、ことしは大へん不振の状況でございましたが、     〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕 もうすでに一般の経済、世界的な経済も、ことにアメリカの経済なども立ち直っておりますし、日本をめぐる経済環境、国際経済環境が毎年変ってくる、こういうことが期待できると思います。わが国の経済が膨張していく。そういたしました場合に、この収支の面においてもちろん黒字を堅持しなければならないと思いますが、本年のような多額の黒字は考えられないであろうということが私の考え方でございます。努力するということと、また経済のあり方といいますか、ことに来年度の経済を見通した場合にそういうことが考えられるのじゃないかということを申し上げたのであります。
  140. 塚田十一郎

    ○塚田委員 次に、それではお尋ねを申し上げたいのでありますけれども、外貨が入ってくるという場合に、国内の金融に及ぼす影響というものは、私先ほど前提の際にちょっと申し上げましたが、この点は大蔵大臣は御認識はどんなでございましょうか。と申しますのは、私は先ほど国内に外貨が入ってくると金融がゆるんでくる。私は率直な感じは、外債を募集して外貨が入ってきて、それを見返りに日銀から円が出ていくということになると、まあ心理的な影響その他を別にして考えれば、私は国内で日銀引き受けで国債を発行したと同じ作用がある、こういうように考えておりますが、その点はいかがでしょう。
  141. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 私は外債の場合と国内債発行の場合は、幾分か性格が違うのじゃないかという見方をいたしております。外債を発行することが直ちに日銀券の発行を増加させる、そういう結果を直ちに招来するとは私考えません。日銀自身が内国債を引き受けるという場合におきましては、これはもう明らかに日銀券の発行がふえてくる、こういうことになると思います。そうなると、いわゆる貨幣価値の安定という面におきまして、必ずしも私どもが希望するような状態ではないのではないか、こう考えます。
  142. 塚田十一郎

    ○塚田委員 外債を発行して国内に円資金がふえる、国内通貨がふえることにならないという御答弁でありますけれども、これは外債を発行して、それがそのまま特別会計の中にある限りにおいては何でございましょうが、どうせ外債を発行されるということになるならば、お使いになるはずなんでありますが、お使いになれば、私はさっき申し上げたように、同じ結果が出てくる、こういうように思うのですが、その点はいかがでしょう。
  143. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 使えば同じことになりますが、外債発行と国内における国債発行とは、その意味においては違ってくるだろうということを申すのであります。と申しますのは、外債を発行いたしますことは、これはもう明らかに外国からの資金を確保するということでありまして、内外の資金を確保して国の産業をまかなっていくということでございます。従いましてこの外債を発行した場合に、それが直ちに国内資金の方向において非常な増加をいたすかどうか、これは実際に使う場合に出てくることだと思います。ただ問題は、国内で国債を発行する、日銀の引き受けをする、こういたしますれば、それだけの金額は直ちに日銀券の増発行になる、こういう結果になるということを申すのであります。
  144. 塚田十一郎

    ○塚田委員 これはちょっと了解ができないのでありますけれども、同じことじゃないのでしょうか。国内で政府が日銀引き受けで国債を発行になりましても、実際に市中に出てくる金は、国がその金をお使いになったときにしか出てこない。外債を発行された場合にも、お使いにならなければ国内金融はゆるまない。その点で私は実質的には少しも違いがないと思う。ただ若干違う点があるとすれば、外債の裏づけのある金とない金と、若干違うという感じはあるかもしれないと思います。その点については、日本は何も金本位制度をとっておらないのでありますから、通貨の発行が金とか、内外の正貨、外貨、そういうものを裏づけしておらぬのでありますから、心理的な意味におきましても、今の管理通貨制度のもとにおいて、それほど違いがあるかないかということは私は疑問を持っておりますが、何がしかは違うかなとしろうとなりに考えているのでありますが、この問題はまたお尋ね申し上げる機会がありますから、次に、そういうようないろいろな外貨事情も原因をいたしておりまして、御承知のように最近の日本の金融は非常にゆるんでおると思うのでありますけれども、この国内の金融事情というものに対しての御認識がどうであるか。これも先ほど申し上げました外貨事情と同じように、年度の当初どんな見通しであったのか、その後どういう工合になり、また将来どんな見通しを立てておられるのか。さらに国内金融事情についての御認識を伺う際に、特に私が御意見を伺っておきたいのは、これも昨日西村委員が御指摘になりましたように、相当国内の資金が、今の日本段階ではまだ適当でない不要不急の産業に流れておる面がかなりあるのではないかと思う。昨日西村委員は、御承知のようにテレビ塔の例をお引きになり、また近く新宿にできそうだという広大な屋内競技場の例をお引きになりました。私はそれにさらに考え足して申し上げますならば、あちこちに今やたらにゴルフ場ができておるとか、そういうような、今日の日本経済の段階にまだそんなことが果して適当であるかどうかということに対して、非常に疑問に思われるような資金が相当流れておる。これはやはり金融事情の正常でない一つの状態だと思うのでありますが、それらの点もあわせての国内金融事情についての大蔵大臣の御認識を伺いたい。
  145. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 御指摘になりましたように、銀行預金は相当ふえております。ことにことしの米作等から見ましても、今また特に散超の時期になっておりますし、もう過去におきまして金利を、公定歩合を二回にわたって下げましたのも、金融事情に即応してやったわけであります。ただ一面におきまして、もちすでに御承知のように郵便貯金の伸びが必ずしも私どもが期待したほどにはならない。いわゆる財政投融資の面の資金といたしましては、来年度本年に対しまして非常に多額のものを期待することは非常に困難な状況にございます。この前西村君にもお答えいたしましたように、そこで財政と金融との一体的運用ということを申しておるのであります。そこでただいま御指摘になりましたように、民間資金、いわゆる銀行の伸びが非常にいい。この意味においていわゆる民間資金が豊富になっておる。この民間資金が豊富になったものに対しまして、もっと統制を加えたらどうかというような意見もあるやに伺いますが、実は昨日西村委員にお答えいたしましたように、これは民間の資金審議会であるとかあるいは資金調整委員会であるとか、こういうもので一つ自主的に協力していただきたいということを申しておるのでありまして、ただいまテレビ塔が不適当だ、あるいはまたゴルフがどうだとか、こういうお話もございました。しかし私どもが特に審議会なりあるいは調整委員会なりを通じまして、いわゆる基幹産業といわれる、たとえば電発であるとか、あるいは石炭であるとか、こういう基幹産業の面に対してどういうような融資が流れておるか、こういうような点については、政府側からも要望もいたしております。この下期など、第四・四半期だと思っておりますが、大体百八十億見当の基幹産業への融資を政府側は要望しておる。民間側ではそれを百四十億程度まかない得るような状況でございます。昨日もお答えいたしましたように、問題はこういう基幹産業に流して、そうして景気のささえにする、こういうことは一つの柱のように考える、こういう場合に、いわゆる系列産業であるとか、中小企業であるとか、下請産業であるとか、こういうものも潤ってくるのだという見方も実はいたしております。従いましてこういう基幹産業へただいま申す民間資金が流れていく、そういう場合に大資本、同時にまた中小企業等への流れ方を十分私どもも検討しており、同時に資金審議会なりあるいは資金調整委員会、これらの協力も願っておるような次第でございます。
  146. 塚田十一郎

    ○塚田委員 大体ゆるみつつあるという傾向の御認識のようでありますが、これは実は私は新聞の資料で得たので、たしか最近の日本経済の記事であったと思うのでありますけれども、全国銀行協会連合会調べによりましての本年度の銀行資金需給見通しというもの、これは当初ということでありますが、いつごろのことであるか私もはっきりしないので、おそらく四月ごろのことじゃないかと思うのですが、六千六百億ないし六千八百億ぐらいの実勢預金の増加の予想であった。ところが現在の予想では、おそらく八千億前後になるのじゃないか。従ってその結果日銀の借り入れの返済の見通しは、当初は九百億ないし一千億ぐらいしかできないという見通しであったものが、四月から九月までの前半期で八百十億もうすでに返済しておる。そうしてさらに年度間では二千億ぐらいの返済ができるであろう。さらに第四・四半期以降でありますが、これも大体緩慢の傾向をたどるであろう。こういうような見通しをしておるのでありますが、これは正確はその通りの数字であるかどうかはなんでありますけれども、大体こういう見通しは間違いないものなのでありますか。これは政府委員からでけっこうでありますからお答えいただきたいと思います。
  147. 石田正

    ○石田政府委員 最後の方のお言葉をちょっと聞き漏らしましたので、御趣旨を間違える点があるかもしれませんですが、お話がございました数字について申し上げたいと思います。  全国銀行の資金がどのくらい集まり、それがどういう方向に使われてしかるべきかというところの計画は、従前はなかったわけでございます。それがこの昭和三十三年度からそういうふうなことをしたらいいのではないかということで、昨年末一応の数字を出しました。それがいわゆる財政投融資計画その他を作ります場合の参考に初めて供されたということだと思うのでございます。先ほどお話がございました第二回の試算というのは、ことしのたしか二月の中旬だと思いますが、そのときの情勢におきまして、また新しく試算をしたわけでございます。そのときの数字が、いろいろ想定いたしました結果、六千六百億ないし六千八百億くらいの実勢預金が出るものと一応想定しよう、それに対しまして日本銀行の借入金が相当ございます。三十二年度におきましては、日本銀行の借り入れをそれに追加して出すという形であったのでありますが、そういうやり方はよくないのではないかというので、まず日本銀行の借り入れをある程度返すということも考えたらどうか、その数字が今申しました数字、預金の集まりに対しましては九百億ないし千百億、こういうふうに見込んだらどうだろうか、そういたしますと、結局銀行が供給できますところの資金源というのは五千六百億ないし五千九百億、こう見たらいいのではないか、そういたしますと、それではそれをどういうところへ向けるかということにつきましては、これは従来から銀行が集まった資金について最重点的に考えるものは何かということにつきまして過去からいろいろ問題がございまして、まず地方債の引き受けというものがあるであろう、それから電電、国鉄等の公社債の引き受けというものも考えなければなるまい。それからまた主として電力会社債でございますが、一般の事業債の中で特に重要なものの引き受けも考えなければならない、そういう数字を大体七百億と見込んだわけでございます。そういたしますと。それを引きますと、貸し出しになるところの資金というものは四千九百億ないし五千二百億であろう、こういう計算をしたわけでございます。そこでそのうちどれくらい設備資金に出せるか、御承知の通り銀行というのは短期資金供給を主としてやるものでございますので、その意味におきましてその資金を見る、それから設備資金が千億ないし千百億というふうに見まして、そのうちさらに電力、鉄鋼、海運、石炭という方面につきましてはどれだけの金が出せるかというと、六百億ないし七百億、こういうことになったわけでございます。この数字のときにおきましても、大体地方債及び電力債、その他国鉄、電電等の公社債につきましては、財政投融資計画をそのまま充足されるという数字でございます。問題は四重点産業につきまして六百億ないし七百億という数字が産業の方で要求するところの数字と合わないという問題があったわけでございます。これにつきましては今後銀行といたしましては、できるだけ資金の吸収に努力する、それから産業の方ではできるだけ資金の節減をはかっていただくということでミートしようということでやって参ったのでございますが、あとの数字は、今塚田委員からお話がありましたような工合に、銀行といたしましては資金が増加いたしまして、従いまして四重点産業に使えるものは百億ぐらいふえるであろう、しかしながらこの数字をもっていたしましても当初のギャップはまだ埋まらずに少し残っておる、こういうのが実情でございます。
  148. 塚田十一郎

    ○塚田委員 お尋ねしたいポイントを申し上げませんでしたので、答弁に長時間を要して残念に思っておるのですが、こういうことと了解をいたしてよろしゅうございますか。少くとも財政投融資及び民間のいろいろな融資計画の年度の当初にあったものの考え方と、その後の情勢は少くとも資金の供給の面では千四百億ないし千二百億ぐらいは上回ってできておる、こういうように了解してよろしゅうございますか。
  149. 石田正

    ○石田政府委員 第一回及び第二回の試算におきましては、銀行側といたしましては、どちらかと申しますとコンサーヴァティヴな、内輪な見方の数字を出したわけでございます。そうして先ほど申しましたような工合に、これから銀行としては努力いたしましょう、産業方面ではできるだけ資金の節減をしていただきたい、こういうことでありまして、初めからそれ以上の努力をするということは考えておったわけでございます。その努力と、それからその後における国庫収支の散超その他の関係から申しまして、今申しましたような工合に資金が集まってきた、そこで配分を増していこう、しかしながらまだ需要に対しては十分とは言いかねる、こういうふうな状況に相なっておるのでございます。
  150. 塚田十一郎

    ○塚田委員 次にお尋ねをいたしておきたいのは、三十二年のときのいろいろな経済の行き過ぎというものは、その、原因が設備投資の行き過ぎにあるのだといわれておる。私もそうじゃないかという感じを、いろいろなものを読んで持っておるのでありますが、私はこの日本の設備投資の行き過ぎというものは、民間においても設備投資の行き過ぎが一般的には言えるけれども、ものによってはおくれているものがあり、ものによっては非常に行き過ぎておるものもある。さらに全体としていうと、民間の方が非常に行き過ぎておって、その民間産業の外郭をなす産業基盤、つまり政府が財政投融資でいろいろごめんどうを見られなければならぬ面だと思うのでありますが、この面が非常におくれておる。つまり行き過ぎではあるけれども、それが不均衡に行き過ぎておるということ、私はそういうように了解をしておるのでありますが、この点は大蔵大臣及び経企長官なり、通産大臣の御意見をあわせて伺いたいと思います。
  151. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま言われたような感じを私も持っております。
  152. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御指摘のように、民間の投資と公共の投資のアンバランスは確かにあると思う。これは将来において是正していかなければならぬものだと思います。
  153. 塚田十一郎

    ○塚田委員 そこで大蔵大臣にお尋ねしたいのでありますが、民間の産業投資のアンバランスは一応別にいたしまして、政府がめんどう見なければなりませんところのもののおくれてしまった原因がどこにあるのか、何が原因でそういうことになっておるのか、この点の御認識はいかがですか。
  154. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 これは片一方がおくれたという言い方もありましょうし、片一方が進み過ぎたという言い方もございましょう。これは結局当時いろいろ計画されます際に、そういう点に工夫をされなければならない。もちろんバランスをとった考え方をされたものだと思います。しかしながら民間における需要というか、民間における要求に対しての方がどうしても政府の統制が思うようにいかない面がもちろんあるわけでございます。そのことが非常に経済を伸ばすゆえんだと私は思います。やはり自由経済、資本主義経済の線は盛り立てていきたいし、同時にこれがあまり行き過ぎにならないように、注意を平素怠らないようにする、こういう点がポイントじゃないかと思います。
  155. 塚田十一郎

    ○塚田委員 いろいろ金融がどうしても思うようにいかなければ、計画を立てて統制したらという考え方があることは確かでありますが、昨日来大蔵大臣の御説明のように、これは統制をしてはならぬものだろうと、私もその限りにおいて了解をしておるのであります。ただしかし今申し上げました設備投資が、民間と政府の間に非常にアンバランスになった大きな原因に、政府が財政投融資の資金をどこに求めるかという考え方に、非常にこだわっておられた面があるのじゃないかと私は思う。もう少し国全体の資金の蓄積の事情というものを考えて、そうしてその場合に民間にどれくらいの資金を使っていただく、政府がどれくらいの資金を獲得してこれを使うというように、何も統制をする必要は毛頭ないのですが、民間と御相談になって、絶えず調子を合せていくようにされたら、私はこんなにはならなかったのじゃないかと思う。そこで政府が財政投融資の資金を年々どこからお求めになっておるかということをいろいろ調べてみますと、これは資金運用部資金、その内容は郵便貯金であり、簡易保険であり、厚生年金であり、その他雑多なものでありますけれども、とにかくここのところにある原資ができないと、政府は金をお使いにならない。つまり公債は原則として出さないという考え方に強く立っておられたと思うのであります。もちろん全然公債が出ておらないということはないのでありますけれども、なるべく出したくないという考え方、従ってまた出そうという努力もなさらないというような考え方が原因して、金融政策における政府のものの考え方に弾力性がなかったことが原因して、郵便貯金も伸びない、簡易保険も伸びない、厚生年金も伸びない、金がないから財政投融資はこれだけしか使えない、民間は金が余っているからして、勝手に使えるものはどんどん使う、そうすると全体としては民間の方が行き過ぎて政府の方がおくれるからアンバランスになる、こういう感じがします。そこで果してこの私の考え方が当っておるかどうか、これはまた一緒に御説明をいただきたいと思うのですが、私が今率直に考えておりますのは、何も統制をなさらないでも、大体の感じで一年の資金量というものは、当初計画を立てたときどれくらい、それならばこれくらいを政府に使わしてもらう、これくらいを民間に使ってもらう、さらにそれがまた当初の予定と違った数字が出たら、それも弾力的に変えていくというように、統制の手段によらずに、政府と民間が御相談になってやっていくという工夫があるべきじゃないだろうか、こういうふうに感じておるのですが、この点いかがですか。
  156. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまの塚田君の御意見のうちに、その示唆が出ておると思いますが、政府がいわゆる財政投融資の資金を特別な財源だけによらないで、もっと国内資金を動員するような態勢をとったらどうか、端的に申せば公債を発行したらどうか、あるいは外債も発行するのだから同様じゃないかというようなお気持だろうと思うのでございますが、今日までわが国でとって参りましたことは、私が申すまでもなく健全財政一本やりで参ってきたと思います。その意味で、ときに非常に例外的な国債あるいは公社債というようなものも発行はしておりますが、これは非常に限定的な方法で、そういうような資金の獲得をしてきている。特に公債の発行というものについては、厳重にそういう方法はとらないという方針を今日まで堅持して参ったと思います。この点はおそらくそのときどきの景気、不景気を見ないで、長期にわたる計画を立てていくならば、公債を発行しても大丈夫じゃないか、こういう議論も立ちますが、今日までのところは、戦後の経済再建の状況から申せば、公債によらないということを堅持してきた、これははっきり言えるのじゃないかと思います。  そこで冒頭のお尋ねに返って参りますが、公債を国内で発行いたしますことは、ただいま申すようにこれは直ちに日銀券の増発行を来たす。従ってこれが長期の経済の面から見て、支払い能力があるにいたしましても、一時的な現象として貨幣価値を不安定ならしめるということは考えられる。そこで外債を募集するのも同様じゃないか、こういうお尋ねになるだろうと思います。この外債の問題も、先ほど御指摘になりましたように今外貨事情はいいじゃないか、それならば円資金不足のために外債を発行するのだ、別に外貨事情からそういう必要はないだろう、こういう御意見だと思うのでございますが、私どもが今回外債を発行することを決意してお諮りいたしておりますのは、外債発行は、やはり外貨事情のいいような際にすることが、当方に対しても条件は望ましいということは言える。非常に外貨事情の悪い際の外債発行が、必要に迫られた外債発行が条件の悪いことは、これは容易に想像がつくことだろうと思います。私どもが考えますのには、日本国内の産業を興隆させ、発展させていくという場合に、特に意を用いなければならないことは、国の内外を問わずやはり資金的な手当をする、資金の確保をする、こういうことを考えていくべきじゃないか。今日の国内においての資金確保なり、国外においての資金確保なり、これは同時に考えていくべきことだろうと思います。今日までもうすでに、いわゆる国債こそ発行はいたしておりませんが、世銀の借款その他のものを借り入れておりますもの、これは戦後の借り入れになりますが、もうすでに五億九千万ドル近くなっております。考え方によれば、正確には世銀あるいは輸銀等から借り入れているものは、はっきりしたものを申せば五億七千万ドルでございます。これらのことを考えて参りますと、これがわが国経済の発展に寄与していることは申すまでもないことであります。私ども一番心配をいたしますのは、民間資金を財政投融資の方向で動員すること、しかもそれが円の価値をいじらないで動員して、そして民間事業に圧迫を加えるようなことは、これはなるべく避けるべきじゃないか、こういう点もやはり考慮の中に入れなければならない。また外債を発行することが、なるほどそれだけ国内に使えば、それだけの金額のふえることは御指摘の通りでありまして、私それを別に意見を異にするとは申しません。申しませんが、これはやはり民間資金の使い方と、政府資金の使い方という考え方に立って参りますと、民間資金に対する圧迫は、この意味ではそう大きく出てこない。だから国内において国債を発行する場合とは、やや趣きを異にしておる。同時にまた外債を発行することは、ただいま申し上げますように、事構のいい際にやはり考えていかなければならない。この点は外貨事情がいいということが、これは一時的な現象にしろ何にしろ、当方にとりましては有利な条件であることは申すまでもないことです。ことに長い将来の経済の動向等を見きわめますと、この外債発行などは一つの時期ではないかと思います。もう一つ心配なのは、先ほど来のお話で私にもよくわかるのでございますが、アメリカの市場そのものも、今後は金利高の方向に向っているといわれております。昨年の八月時分に三・五ですか、その程度の金利だったのが、だんだんアメリカは下って参りまして、一・七五まで下ったものが、最近二回にわたって引き上げて二・五にしている。こういうように、アメリカがインフレに対して警戒の意味においての金利引き上げを実施しているという状況から見ますと、時期がおそくなればなるほど、やはり外債発行の時期としては、当方に不利な条件に実はなるのじゃないか。アメリカの金融状態は、私が申すまでもないことですが、年末が一つのピークでもございましょう。そして一、二月になりますと幾分かゆるんでくる。そしてまた三月になれば、これがちょうどアメリカの納税期にもなっているようでございます。それらのことをも考え、将来相当長期にわたって――一、二年と申しますか、高金利の方向をたどるだろう。こういうことを考えて参りますと、やはり外債を出すといたしますならば、もうすでにやる時期がおくれておるという批判すらあるのではないかと思うほど時期としてはおくれておる。同時にもう一つのポイントといたしまして、ただいま世銀からの重要産業に対する借款をいろいろ計画を進めております。これが本事業年度並びに来事業年度等において具体化して参りますと、これらの世銀の借り入れとこの外債との抱き合せが資金獲得上非常に有利であるというような点も、私どもが今回決意した一つの理由にもなっております。これらの点をあわせてお答えしたいと思います。     〔西村(直)委員長代理退席、委員   長着席〕
  157. 塚田十一郎

    ○塚田委員 実は最初に申し上げたように、金融問題には私しろうとでありますから、秩序を立てて基礎の認識を伺いながら最後にいろいろとお尋ねをしようと思ったら、まとめて総合して御答弁いただいて、恐縮すると同時にいささか頭が混乱をしてしまったのであります。  それはいいといたしまして、ただいま大臣の御答弁を伺っておって非常に感じますことは、外貨事情がいいときにしておくことが外債を有利に募集できる一つの大事なことだ、これは私もそうだと思います。ただそれでは私は大蔵大臣にお伺いしたいのですが、大蔵大臣はこれから日本の外貨事情が悪くなることもあるということを御心配になっておるのかどうなのか。そんなことになってはならない。これからはなるべく波を起さないようにしなければ日本の経済政策はだめなんだ。少くとも財政の当局者というものは、それくらいしっかりした覚悟を持っておられなければならぬ。なるほど伸びは窮屈かもしれませんけれども、日本国会がこれから外貨の事情が今より悪くなるとは考えないし、また絶対にそうならないようにやっていただきたい。この点はいかがですか。
  158. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 塚田君は盛んにしろうとしろうとと言われるけれども、実は私がしろうとでありまして、私のおかぶをとられたような気がいたしております。先ほど来のお話は私大へん教えられるわけであります。私は外貨事情が悪くなるということを実は申したわけではございませんで、ただ一年に三億も四億もの非常に多額の黒字を出すことが、非常に困難になるだろうということを実はおそれておるのでございます。この国際収支の黒字がいっときに赤字になるというようなことはもう大へんなことでございます。また私どもは日本の経済力から申しまして、さような事態は起らないと思う。しかしながらことしのように一年に三億前後の黒字になるということは毎年はなかなか考えられないということを実は申し上げ、そういう意味注意を喚起した次第でございます。
  159. 塚田十一郎

    ○塚田委員 次に、私は先ほど大蔵大臣の御答弁を伺っておりまして、もう一つ非常に大事なポイントだと申しましたのは、私が先ほど外債を入れるくらいなら日銀引き受けで、国内で公債を発行しても同じじゃないかということを申し上げたのは、比較のためにそのように申し上げたのであります。端的に私の考え方の結論を申し上げますならば、私は今百億くらいの金なら、外貨事情もよくなっておるので外貨も必要ないのだから、それからまた国内金融もずっとゆるんできておるのだから、一つ国内で金融機関の御協力を得るなり何なりして、日銀引き受けの方法によらないで資金を何とか獲得される方法があるのじゃないだろうか、またそのように御努力を願うのが今日の財政担当者として必要なのじゃないか、こういう感じを持っておるのでありますが、その点はいかがですか。
  160. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 御承知のように今回募集したいというのはわずか三千万ドルであります。金額としては百億でございます。しかしこれは御承知のように三十年来外債募集をしたこともない実は新しい試みでございます。わが国の今後の国債の決済を長期にわたっていろいろ計画を立ててみますと、戦前の英貨債とか米貨債、仏貨債はきわめて少額でありますが、それらのものであるとか、あるいは賠償その他の決済等をいろいろ考えて参りますと、都合のいいというか、好条件の場合にその道を開いておくことも一つの方法ではないかと思います。それかと申しまして私引き続いて多額の外債を発行すると申すわけではございませんが、こういうことによりまして外国市場を打診する機会が与えられるならば、これは将来長期にわたっての国際収支の決済上にも非常に役立つのじゃないかということを実は一つ考えるのであります。同時にまた今日までのいわゆる基幹産業である電発であるとかあるいは道路の建設であるとかあるいは製鉄事業であるとか、これらのものが世銀あるいは輸銀から借り入れをいたしまして、特にその援助を仰いで参っておりますが、これらのいわゆる基幹産業を強化していくということ、ことに非常に膨張を来たしておる一般民間産業とバランスをとる、こういうことを考えます場合には、資金的には相当多額のものを手当する要があるのではないか、こういうことを考えて参りますので、今回の金額だけということでなしに、今後の長期にわたる国債の収支の問題なりあるいはわが国の経済をどういうふうに発展させ膨張をさせていくか、こういうことを考えると、資金的には国内の資金並びに外国資金をも確保していくということを考えていかなければならないと思います。そういう場合に私どもは非常に気をつけなければならないと思いますことは、お話の中にもすでに出ておるのでございますが、通貨の安定はやはり考えていかなければならないし、また支払い能力以上の借金をすべきでないことももちろん私ども考えて参りたい、かように思っておる次第であります。
  161. 塚田十一郎

    ○塚田委員 まだいろいろお尋ねをいたしたい点があるのでありますけれども、だいぶ時間を超過しておるようでありますので、あとはどうせ法案が出るでありましょうから、果していつごろどんな条件のものが募集できるのか、それからもしどうしても外債を募集されるとするならば、一部を国内公債と抱き合せでおやりになる工夫があるのじゃないかという考え方を実は私持っておるのでありますけれども、それらの点はいずれ大蔵委員会でお尋ねをする機会を得たいということにいたしまして、最後にいま一点だけ伺いたい。  実はただいま大蔵大臣の御説明を伺っておってもよく言外に感知されるのでありますけれども、今日この時期に外債をば募集しておくということが、将来日本が必要な際に外資を入れる、しかもそれを外債の形で入れるということの一つの筋道をつけておくのだというお感じがあると思うのであります。私はそのこと自体別に異論もございませんし、非常にけっこうなことだと思うのでありますが、ただそういうものの考え方をいたします場合に、民間の金融筋の人たちの意見を伺っておりますと、道をつけておいていただくことはけっこうであるけれども、道をつけていただくということであるならば、ぜひともあとから歩いていくにいい道をつけておいていただきたい。外債の形で外資を入れます場合には、世銀借款などの場合と違いまして、相当長期にわたってしかも金融事情が変ってきたからそれを簡単に借りかえるというわけにいかないのでありますから、今日募集される外債が今のようなアメリカの金融市場の状況でありますと、想像されるところではかなり割の悪いものになるのじゃないか。私どもの記憶によりますのでは、震災後に日本は非常に早急の間に募集をいたしました外債が、六分あるいは六分以上の利率でもって募集いたしまして、これが国辱公債だということになり、それがただ国辱公債だといって非難を受けたばかりでなしに、長くその後の日本の外債の募集に悪い影響を及ぼしたということになっておるようでありますが、その点を非常に民間金融界筋は心配をしておるわけであります。一度外債を発行すると、日本の外国債というものの条件その他、要するに日本の外国債の値段、価値が世界市場できまってしまう。それで非常に心配をいたしておるのでありますが、その点について十分の自信をお持ちになっておるのかどうか、この一点だけお答えいただいて打ち切りたいと思います。
  162. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 外債を発行するといたしまして一番問題になるのは、ただいま御指摘になりました外債発行の条件でございます。これにつきましては私どもももちろん気をつけなければならないことでございます。ただ今日まで具体的な交渉を持ち得る段階ではございません。従いましてこういう機会に詳しく御説明のできないことはまことに残念でございます。しかし私どもが今一応の目標といたしておりますものは、世銀から借り入れております金利、これを上回ることがありましても、きわめてそれに近いものにしたい、それに近づけたい、こういう努力をいたしたい、これが私どものただいま考えておる考え方であります。先ほど来ニューヨーク市場のいろいろな金利の状況などもお話をいたしました。諸外国でもニューヨークで外債を発行しておる幾つもの例がございますが、最近世銀自身の金利も上向きになっております。そういうことなど考えまして、先ほどのお答えでも一言触れたつもりでございますが、見方によりましては、もうすでに時期を失したのではないか、そういうようなことを言われる方もある。そういうことを考えますと、できるだけ有利な条件にしたいということには、できるだけ早い時期に具体的な交渉にとりかかることが必要ではないかと思います。ニューデリーにおきまして、関係の人たちの意見もいろいろ伺いました。ことにこの外債問題につきましては、私になりまして初めて手がけたものではないのでありまして、過去の先輩の大蔵大臣諸公、それぞれいろいろ努力をされたようでございます。その意味で非常に日本の外債について理解を持つ諸君も、アメリカ財界にはいるわけであります。それらの諸君の話を総合してみますと、今が非常にいい時期ではないか、日本に対しての信用も非常に高まっておるし、また同時にアメリカのマーケットの今後の方向等を考えると、できるだけ早いことがいいのだ、こういうような話など、あるいはまた実際に募集にかかるなら一、ニヵ月のうちに結論というか、まとめるというような話などを伺って参りますと、これはできるだけ早い方がいい、こういうような感じをいたしておるわけでございます。御指摘になりましたように、外債を発行いたしまして非常に不名誉な名前をつけられるようなことは、私どもはどこまでも注意しなければならないことだと思います。今回の外債そのものにいたしましても、特に非常な不利益な条件のもとでありますならば、私ども発行についてさらに考え方を検討していい、かようにまで実は思っておる次第でございます。
  163. 塚田十一郎

    ○塚田委員 どうもありがとうございました。
  164. 楢橋渡

  165. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は社会党立場から、財政経済一般につきましての総括的な質問をいたしたいと思うのでありますが、この質問に先立ちまして、まず総理一つ御要望を申し上げて、御所見を承わりたいと存じます。  御承知のように、今度の臨時国会は、政府自民党側のお話によりましても、去る五月の総選挙当時になされました選挙公約を実現するための、いわゆる公約実現の国会であったはずでございます。あるいはまた私どもの方の社会党から要請いたしましたところの今度の国会は、これは現在の経済不況に対する施策を協議いたしたいという、不況対策を中心としたところの臨時国会であったはずでございます。しかるに御承知のように会期半ばにして突如として警職法をお出しになりまして、これがために今国会は本来の本質的な審議の任務がどこかへすっ飛んだ感がいたすのであります。私は国民大衆の前に約束された、そうしてほんとうに議せなければならない議題がほとんど議せられないままに、こういう状態になっておることを心から遺憾と思うわけであります。この責任はあげて警職法を突如としてお出しになりました岸内閣責任といわざるを得ないと思います。この点に関しましての岸総理の御所見をまず承わりたいと思います。また会期末にこういう事態に立ち至りまするや、政府、与党の方々は、本国会当初私どもの方と自由民主党の方との両方の約束にもかかわりませず、それを裏切って大幅な会期の延長を計画されておるように伝えられております。そのためか私どもがたとえば現在出されてここに審議になっておるところの今次の補正予算の審議に当りましても、この内容の賛否のいかんにかかわらず、内容が災害対策を中心といたすものでありまするがために、むしろ早急に審議を了して、一日も早く本格的な対策実施ができるようにというつもりで、審議の促進をこいねがっておるような状態でありますにもかかわらず、私どもに感ぜられるところの国会対策から受けまする印象は、この災害対策を中心とする予算の審議に際してさえも、なおこれを引き延ばそうという態度がなきにしもあらず、同様な意味におきまして警職法以外の今国会に提案されておりまする法案の審議につきましても、最近に至りましては与党の側のとっておられる態度に了解を苦しむような、むしろ会期延長に警職法だけを持ち込んだのではないという情勢を作らんがための、そういう疑いを十分に持ち得るような形で、現在諸種の法案の審議が続けられておるというふうに感ぜざるを得ないのでありまして、私はまことに遺憾に思うわけであります。従いまして私はまず最初にこの委員会のこの席上におきまして、岸総理に、あるいはまた党総裁という立場からでもけっこうでありますが、明確に予定通りの会期中におきまして、あらかじめ予定されておりますところの本格的な任務を中心とする議案を本格的に終了するという、態度を明確にされまして、付属物は捨てても、ともかくも今国会を召集せられたところの目的を達せられるような議題を、予定の会期中に審議をおおせるという態度一つ明確にいたされたいと思うわけであります。御所見をお伺いいたします。
  166. 岸信介

    岸国務大臣 私は警職法の御審議に際しましても私の所見の一端を申し述べたのでありますが、言うまでもなく国会国民の負託を受けて、あらゆる重要な問題に関しまして十分な審議を尽していくことがその任務であります。この国会が召集されました後、いろいろな事情で相当長きにわたって審議が行われなかったという事態ができましたことは、佐々木委員同様に私もきわめて遺憾だと思うのであります。いろいろ与党、野党、また政府と野党との間におきましては意見の相違、立場の相違というものがございまして、それぞれの主張が食い違っておることはやむを得ないと思います。しかしあくまでもそれは国会の審議を通じて国民の前に十分な所信を明らかにし、国民の批判、世論のこれの理解を求めるということが、国会政治のあり方でなければならないと思います。そういう意味におきまして十分な審議を尽していただいて、そうして国会の任務を十分に私どもも尽したい、かように考えておるわけであります。政府が今議会に提案いたしましたものは、いずれも政府としては緊急に御審議の結果成立することを強く望んでおる案件でございまして、私はそれらのものが十分に審議され、そうして政府が希望しておるように通過成立することを心から念願をいたしておるわけであります。私としても微力を尽して御審議に御協力申し上げて、成立するように望んでおるわけであります。
  167. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今国会の目的並びに審議の態度につきましては、私のきょう質問する問題と直接関係ありませんので、先ほどの御要望を申し上げただけでとどめまして、私に与えられましたところの財政経済の問題に入りたいと思います。ただ私は繰り返して申し上げておきたいと思いますことは、ともかくも今国会の任務は、自由民主党の側から言われますならば、選挙当時における公約実現の国会である。われわれの方から言うならば、われわれが憂うるところの経済不況に対して最も適切なる施策を行う、これが私どもの態度である。この二つの中から今国会の性格を十分に生かされますように、多数党の威力を十分に発揮されますように、特に私は御要望申し上げておきたいと存じます。  さて、本論に入るわけでありますが、現在の日本経済の不況の現象の認識の仕方につきまして、私どもの社会党と現内閣とは根本的な相違があるらしいことは、今国会の最初の岸総理の施政方針演説と、私どもの方の政調会長の勝間田さんの質問演説との対比の中で、あるいはまたこの補正予算が提出をされました当時の佐藤大蔵大臣のの説明演説と、私どもの方の代表の小松議員の質問と、この中でもまことに明瞭に出ておると私は思います。従いまして私は今さらここに繰り返して、現在の不況に対する両党の認識の相違につきまして、抽象的な論争を行おうとはいたしません。しかしながら現実に私どもの身にひしひしと感じますものは、ともかくも相当に強いところの不況であり、そしてまた相当に長引くところの不況であります限り、この根源に対しまして相当な批判をした後でなければ、具体的な政策が出ないと存じますから、私は三木企画庁長官を中心といたしまして、最初一、二問、この近所からただしたいと存ずるわけであります。  政府は、現在調整過程――特にそれも仕上げ段階に入っておる調整過程という見地に立っておられまして、特殊の若干の産業部門を除くほかは、一般施策としては、この間のお話を聞きましても、今は大体滞貨処理を中心といたしまして、そして滞貨だけの処理を中心に静観的な態度をとっておられて、ひたすらアメリカを中心とするところの世界経済の立ち直りを待っておられる、こういうふうに解せざるを得ないと思うわけでありますが、三木企画庁長官は、大体そういう感じで現在の日本経済を見、そして岸内閣の経済政策を総合されておりますか。
  168. 三木武夫

    ○三木国務大臣 現在の経済をどう見るかという問題でありますが、われわれも景気がいいとは申していないのであります。景気の沈滞である。これを不況ということになると、どういうふうな基準によるかによって、これは並行線だ。景気は沈滞である。よいといっておるならば、それは非常に大きな違いでありますが、沈滞である。従ってその沈滞の原因は、行き過ぎた経済の調整期に入っておる。それは世界的な傾向であります。しかし政府が何もしないで静観とか申しますと、そうではない。たとえば公共事業にいたしましても、財政投融資にいたしましても、昨年度に比べてみるならば、その規模も拡大はしておりますが、それを繰り上げて実施しておることは御承知の通りであります。公共事業のごときも、毎年第三・四半期にはその進捗率六五%のものが、八五%程度の繰り上げの実施をしようということで――新しく補正予算を組んだりして、ここに景気を刺激することは好ましくない。しかし現在の予算の規模の中で政府としてできる限りのことをやって、そのことによって、予算のワク内において有効需要を喚起するということは必要である。こういう見地に立って、静観というよりも、もう少し積極性を持った態度で今日の経済に臨んでおることは、御承知の通りでございます。
  169. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて伺いますが、せんだっての本会議並びにきょうまでの質疑応答の中では、企画庁長官は、在庫調整というものは非常に大きな意味をもって感じておられるようでありますが、現在の在庫をどういうふうに考えておられますか。
  170. 三木武夫

    ○三木国務大臣 一体どの程度の在庫が在庫の適正な標準であるかということは、佐々木委員も御理解願えると思いますが、非常にむずかしい問題であります。これはそのときの物価あるいは景気の見通し等にも影響いたしますから、これだけが在庫水準として適正なものだといって、断言することは困難であります。しかし大体において鉱工業生産の指数、これと生産者製品の在庫というものが見合うことが好ましいのではないか、こういうふうに考えるのであります。そういう点から見れば、製品在庫はテン・ポイントぐらい、まだ在庫水準は高い。しかしこれはいろいろな要素が伴いますから、在庫調整というものが完全に終らなければ、景気の上昇はできないのだ、こういうふうに断定することはできない。しかし在庫が多いか少いかといったならば、今日の段階で、まだ在庫は多過ぎるということは言えると思います。
  171. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 企画庁長官は、なかなか言葉をいろいろになされますけれども、岸内閣が昨年の夏にいわゆる緊急経済政策なるものをとりまして、あなたのところで発行されておりますところの白書その他の書きつけは、ほとんど全部、あのときの態度、あのときの政策が今だんだんと実を結びつつあるんだということを証明することに、ほとんどきゅきゅうとされておる。従いまして、時々によって言葉の相違はありますけれども、たとえば、春には、三月ごろには、調整は大体機能を動かして、そうして最も正常な滞貨になってきた、あるいはなるだろう。その次には、七月ごろにはそういう見通しだ、あるいは下期にはそういう見通しだと、だんだんと同じことを繰り返されておると私は思います。従いまして、いろいろのお話はありましょうけれども、現実には昨年から今年にかけまして、特に今年の上期を通じて、現実に経済政策として行われておりますものを見ますと、それは一方において滞貨金融を行なって、ともかくもその滞貨金融によって在庫を長引かして持たせる対策と、片一方におきましては、生産面において操短を実施させて、そうして生産を少くしようということと、それによって正常な在庫に持っていこう、たったこれだけじゃありませんか。しかし、私はここで一番強く三木さんにお伺いいたしたいと思いますことは、在庫調整を中心として行われました機能は――かつて朝鮮動乱のときにおける在庫調節、これは御承知のように、このときの在庫というのは、材料在庫であったはずであります。今問題になっておりますものは、完全に製品在庫であるはずであります。つまり売れ残り在庫であるはずであります。従いまして、これに何ぼ金をつぎ込んで滞貨融資をして、そうして生産を幾らとめようとしておりましても、売れる先が、つまり有効需要が起きて、購買力がふえるか、あるいは外への輸出が盛んになるか、どっちかでなければ、本格的な調節機能を果して、正常在庫にはならぬということは明らかであると思う。製品在庫であります限り、ともかく国内ではけるか外国にはけるかでなければ、幾ら操短を実施しておりましても、本格的なものにはならない。かつまた御承知のように、だんだんと不況が深刻化して参っておりまするがゆえに、その操短なるものも、かつての余剰投資の圧力によって、ちょっとでも売れる見込みが立てば、その品物についてはともかくどっとすぐ生産が起きてくる。これでは幾ら待っておっても、いつまでたっても、私は正常な在庫にはなり得ないと思う。ここで最も必要なるものは、本格的な国内の需要を喚起するか、あるいはこの政策を立てられたときに裏づけとなっておったところの輸出を本絡的に伸ばすか、この二つのいずれかがとられなければ、私は在庫は正常化しないと思いまするが、御所見はいかん。
  172. 三木武夫

    ○三木国務大臣 在庫の問題は、在庫整理が完全に終って、無罪放免のような形で景気が上昇するというような形ではなくして、在庫の調整は行われながらも、一方において輸出とか国内の消費、生産というものが伸びて、その在庫投資の重圧が緩和していくという形をとるように日本経済はなりがちである。それは佐々木君も御指摘のように、やはり設備も相当に持っておりますし、あるいは労働力も持っておりますし、少しでも目先がいいということになれば、操短を緩和しようとしたがる一つの傾向を企業自体に持っておりますから、それがはっきりと、何月には在庫調整を終って、いよいよ経済は上昇カーブだという形をとらぬということは、佐々木君の御指摘の通りだと思います。しかし、今後下期における経済は、ごらんになってもおわかりのように、経済の指標をなすものは、設備投資を除いたそれ以外の経済指標というものは、内輪目に見ても、ゆるやかな上昇のカーブをとることは間違いない。そういうことでありますから、時間的に多少のズレはあるにしても、やはり在庫による重圧というものが緩和され、輸出の方面においても、政府が努力をいたしておることは御承知の通りであります。そういうことで、今日経済界に与えておる在庫の重圧が、漸次緩和の方向に向うという観測をいたしておる次第であります。
  173. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 企画庁長官お話は、ちょうど株式新聞に書いてあるのをそのまま見たような感じを私は受けるわけであります。今国内でだんだん需要が伸びてきつつあって、景気が好調に向っておるというふうに見ておる者がどれだけほんとうにありましょうか。政府はそういうふうに言われましょうとも、現実にみずからの計算で仕事をしなければならぬところの各企業自身が、政府の好況見通しというものにむしろ見切りをつけて、そして、みずからの企業整備の段階に入っておるのが現状でしょう。これは例をあげるまでもないと思いますけれども、そういう意味でこそ七月ごろには日産化学が、八月に入りますと小西六、九月に入ると鐘紡、日本水素、石原産業あるいは日本紡というような大企業の本格的な企業整備が開始されておりまするし、そしてまた問題の王子製紙の問題自身も、私はそこに原因があると思う。それでこそ今あなた方は突如として警職法などを出して、この自然の成り行きを、労働組合の圧力なりあるいは国民の圧力から避けしめようとする態度が、ここに現われておるわけではありませんか。今三木さんの言われるようなことは、大企業に聞いてごらんなさい、中小企業にも聞いてごらんなさい、ほんとうに三木さんが言われるような意味での国内の景気好転をみずから信じて、そのための余力を持って今やっておるものがあるかどうか。私は決してないと思います。もし三木さんの言われるような景気好転の見込みがあるとするならば、やはりいつでも言われますように、唯一のものは、アメリカ経済が何とか立ち直りそうだ、そのきざしが見え始めたという一点じゃなかろうかと私は思う。佐藤大蔵大臣もせんだっての説明で、明らかにアメリカの経済の回復のきざしが現われたということをほとんど唯一の材料にしておられると私は思います。これは問答になりますから、時間の関係もありますから先を急ぎましょう。  そこで、普通の見方としては、国内にこのままで景気が回復することを待っておるものはない。従って、おそらく唯一の当てがアメリカ経済の見通しだろうと思います。そこで、経済企画庁長官は、アメリカ経済の好転のきざしを何によって感じておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  174. 三木武夫

    ○三木国務大臣 アメリカの経済は、御承知のように三月ごろを基準にして、生産基準、生産の指数あるいは雇用状態、あるいは国民の総生産、こういう面がいずれも上って参っております。そういうことで、たとえば一番大きな問題である総生産の数字を見ましても、大体今年度のアメリカの総生産は四千五百億ドル、こういうことをいわれておるのでありまして、この数字は、アメリカ経済の最近のピークであった昨年度の第三・四半期を相当上回る状態であります。アメリカの景気が立ち直ってきておるその立ち直り方は、日本よりも急激なカーブで立ち直っておるということは、いろいろな経済指標からアメリカ景気の前途をさように判断をいたしておる次第であります。
  175. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 確かに今年の四月以来、工業生産の上昇カーブに見られると思います。しかしながら、本格的な景気回復を左右するものは、御承知のように固定資本の投資であると思います。最近ふえておりまするものは、アメリカ政府支出と個人支出とでありまして、この二つによって一応景気の支えが行われたにすぎないのでありまして、本格的なものは、ちっとも民間資本としてはふえておらない。ここに私は最大の問題があると思う。従いまして、三木さんは今のような工業生産指数だけをとらえて言われまするけれども、たとえば、諸外国の一番中心になりまするイギリスあたりの見方にいたしましても、エコノミストの伝えるところによりますと、伝えられるアメリカ景気の好転は、政府の年間百三十億ドルをこえる赤字財政による一時的刺激にすぎないものであって、情勢は依然として不安だ、こういう見方をしておりまするし、さらにまた有名な経済学者も同じような見方をいたしております。さらにまた、三木さんも御承知の、あるいはその肝いりで今年の夏アメリカにむしろ景気打診のために行かれました有沢教授らも、似た結論を出して帰っておられる。従いまして、もし三木さんの楽観論が今のよもな工業指数のようなものだけにのっとっておるとするならば、西欧の一般の財界あるいは学者、さらにまた日本の学者の見方とはおよそ反するものではないか。もう少し深刻に考えられて、アメリカ経済を本格的に当てにするというのであれば、なおさら本格的に御検討の要があろうと思います。重ねて御所見を承わりたいと思います。
  176. 三木武夫

    ○三木国務大臣 アメリカ景気の動向については、われわれも深い関心を持っておりますが、しかし、アメリカの景気が立ち直ってきておるという判断は、いろいろな方面から検討いたしましても、そのことは言えると思います。ただしかし、日本の経済は、アメリカ経済の立ち直りが唯一のものではないのであります。関連をいたしまする面もありますけれども、それはアメリカの景気の好転を待つという態度であってはいけない。景気のある程度の水準を維持することは、政府の大きな責任に属するわけでありますから、こういうアメリカ景気の好転を頼みとするというのではなくして、現在の段階において、政府が、今申したような、やっておる施策で私はいいと思う。しかし、将来は、この景気の動向――やはり相当な沈滞期が続いておるわけであります。これから来る経済の影響を、政府は常にその動向というものに対して見きわめて、適切な経済政策をとらなければならぬことは申すまでもないの、であります。
  177. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今やっている国内の経済政策でいいというお話でありましたけれども、先ほど言われましたように、私はほとんど積極的な政策はとられていないというふうに思うわけであります。さらにまた、アメリカ景気の問題につきまして、それならば三木長官に重ねてお伺いいたしまするが、おそらくそのような感じでアメリカ経済を見ておるものは、一般の常識ではないのではなかろうかと思います。たとえば、対米収支の受取勘定をドル資金の形で保有せずに、これをだんだん金にかえておる傾向が、ヨーロッパ諸国のほとんど情勢だと思いまするが、これに対する御所見を承わりたいと思います。
  178. 三木武夫

    ○三木国務大臣 金の買上価格を引き上げたらどうかという世界の声もありまするから、そういう点がそういうことの行われる原因の一つにもなっておると思いますが、アメリカの景気の前途を悲観をして、そういう形でそういうことが行われておるとは私は思いません。
  179. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それでは重ねてお伺いいたしまするが、特に戦後ヨーロッパ諸国におきまして、どのような状態でアメリカの金が流出しておりまするか、御承知でございますか。特に最近アメリカ景気の後退がうわさされて以来、ほとんどの受取勘定をだんだんとヨーロッパ諸国は金にかえておる。それにつきまして、今金の値段を云々と言われましたけれども、そんなどころの私は問題じゃないと思いまするが、いかがでありますか。例を申し上げましょうか。戦後におけるアメリカの金流出は、三回にわたって大幅に行われつつある。第一回は一九四九年の九月から始まりまして、御承知のように二十九億ドルになんなんとするものが流れ出た。さらに第二回は、一九五二年の八月から始まって、五五年ごろまでで十七億程度であります。そうしてさらに第三回目の流出が開始されておりますのが、今年の初頭からであります。この第二・四半期だけで十億八千万ドルの金流出が行われておる事情は、私は御承知だろうと思います。日銀の調査月報によりましても、ことしの春あたりから相当に騒ぎ立てておる問題であるからであります。これはあの日銀の調査月報自身が、非常に遠慮がちに言ってはおりまするものの、ともかくもドルの信憑性について相当な疑いといいますか、まるまる信じ切れない予感を感じとりつつありますところの西ヨーロッパ諸国の、私はまことに慎重な態度だと思います。おそらく日本のみが、神がかり的なドルの迷信的な信用をのみ考えて、みずからの力を養うことを忘れておるのではないかと、私は非常に心配しておるわけであります。御所見いかがでございますか。
  180. 三木武夫

    ○三木国務大臣 アメリカの景気の前途でありますが、私が申し上げたのは、アメリカが今後むしろインフレの懸念を持って、公定歩合の引き上げなどを行なっておるのもそういう点にある、そういういろいろな先ほど申し上げました理由、そういうことで、そういう金の流出の数字は、私は詳細に存じませんが、そういう結果になっておると思うのであります。しかし、アメリカ自体の景気が今後非常な不況時代になるとは私は考えていない。いろいろな御指摘の理由があるにかかわらず、アメリカの景気がさらに今日の好況というものの――速度は問題であります。しかし、再び急速に、近い機会にデフレ的な傾向にアメリカの経済が入っておるとは、私は見ていないということを申し上げております。
  181. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 この辺になりますと、見解の相違で逃げられる危険性がありますので、それならば私は大蔵大臣に御所見を承わりたいと思います。大蔵大臣はせんだってインドに行かれまして、初めてと言っては大へん失礼でありますが、国際金融の場に処せられたわけであります。ここにおきまして、特に大蔵大臣もまたわが国の経済力が強くなったことを云々と、その価値を絶讃されているように聞えた演説をなさいましたけれども、現実にアメリカの金が諸外国に流出しつつあるそのこと自身が、アメリカのドルに対する相当な警戒を、私は今広めつつあると思いますけれども、御所見を伺いたいと思います。
  182. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 御指摘の通りアメリカのドルが欧州へ出ておる、特に金額が非常に大きい、これはアメリカの財務長官であるアンダーソンにいたしましても、また連邦準備銀行の総裁であるマーチンにしても、これは大へん異常な事態だということを実は申しております。ただいま過去においてのお話をされて、過去三回にわたわって流出したということを言っておられましたが、佐々木委員の言われる通り、ちゃんとアンダーソンにしてもマーチンにしても、最近ドルが流出しておる、これは大へんな問題だということを実は申しております。私は実はそれに対しまして、それで初めてドルが平均するのではないかという笑い話をして帰って参ったのでございますが、アメリカ自身がこの流出をしておる現状に対しまして、私どもにも話をしてくれるように十分の対策を立てておる、こういうことでもありますので、私は今御指摘になりましたように、ドルが非常に不安定な状況に置かれた、かようには私は考えておりません。  同時に、これはあるいは後にお話を受けることかとも思いますから、重ねてドルの流出に関連して申し上げますが、今回外債発行をいたすにいたしましても、これは完全に米国内で消化するということを実は申しておるのであります。過去におきましては、アメリカにおいて、募集ざれた外債は、多く欧州のマーケットにおいてこれが消化されておる、こういう実情にあったのでございますが、今回の日本の外債については、これが具体的に進むという場合においては、アメリカアメリカだけでこれを消化する、欧州の援助を受けなくてもいいということを実は申しております。  これらの事情から考えてみますと、金が流出しておることも事実でございますが、ただいま御指摘になりましたように、これでドルが非常な不安な状況にある、こういうような御心配は、実情に合わないのじゃないかと私は思います。
  183. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 アメリカほどの国が、そしてまた私どもといえども常識を持っておりまして、今一挙に二十九年当時のような、ああいう大きな恐慌が来ようとは思っておりません。しかしながら、その心配を各国がしておることは事実だと思うわけであります。従いまして、私は今度アメリカの問題でなくて、それと対応して日本の大蔵省で、それならばどれだけの準備をされつつあるかということを、重ねてお尋ねいたしたいと思います。  御承知のように、今度金ドルの準備額が大きな問題になるわけであります。外貨の中心になるわけでありますけれども、金ドル準備の総額の中で、実際に金が占めておるところのパーセンテージが、最近ヨーロッパ諸国においては非常に変ってきつつあります。念のために私が聞けば意地悪くなるかと思いますから、私の方から申し上げたいと存じますが、たとえばイギリスでは、金ドル準備総額の中で、金自身の準備は七六%、二十八億あるいは二十九億になんなんとするもののうちで、二十二億ドルを金にかえてちゃんと持っておる、七六%持っておる。ドイツにいたしましても四四%持っておる、カナダにいたしましても五五%、イタリアも二八%、オランダなんか七〇%、さらにスイスにいきますと九二、三%まで持っておる。このような状態でありまするときに、佐藤大蔵大臣、わが日本はたった二%じゃないですか。金ドル準備の総額八億三千万ドル、そのうちで二千三百万ドル見当が現在の金準備ではありませんか。それほど私は過信しなくてもいいと思いますけれども、この数字はあんまりじゃありませんか。諸外国の例に比べまして、少くとも五〇%から六、七〇%まで、現実にだんだんと危険を感じながら、ドルを金にかえて、そしていざ鎌倉というときにみずからの力がおかしくならないようにという準備をしておるときに、それこそ迷信的な信用をドルに与えて、そしてたった二%しかわが国は金にかえていない。この現状を不安とお考えになりませんか。
  184. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 これはなかなかむずかしい問題でありますし、また金の準備という問題につきましては、各国とも極秘に扱っておる数字だと思います。佐々木君はどこから手に入れられたかと思いますが、当方におきましても、これに対する準備をできるだけふやすといいますか、する方法は講じて参るつもりでございます。しかし、ただいま各国ともその点については公表しない建前になっておりますので、御了承願いたいと思います。
  185. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 確かに公表はされておりませんし、私のも推定にしかすぎません。しかしながら、大蔵大臣は先ごろインドのIMF会議に御出席なさったはずであります。私が中心に見てみましたのは、IMFが発表いたしておる数字からであります。この見方に対しましてもいろいろあろうと思います。しかし、傾向は明らかに察知せられる。五、六〇%のものをほとんど金にかえつつありますときに、わが日本だけがたった二%という傾向は、これは先ほどの三木長官お話ではありませんけれども、あんまり常識的でなさ過ぎると思います。あまり言いたくないことではありますけれども、その辺の態度が、それこそドルを盲信する態度であり、そのことがそのままアメリカ従属政策の現われだ、こういうふうな見方をせられても仕方がないのじゃありませんか。従って、政治的な独立をさえも云々と評価され、アメリカに対する政治的な従属度がだんだんと増しておるということを経済的に突っつかれても仕方がないような状態になっておるではありませんか。御承知のように、西ヨーロッパの近所だけではありません。その状態からいきますと、エジプトやインドネシア以下の状態である。大体比較され得るところは、韓国とフィリピンでしょう。韓国とフィリピンの状態と日本の状態とが、ちょうど三幅対みたいに、ドルに対する過信を持っておる。こういう判定を下されても仕方がないと思います。私はこれだけが唯一の材料ではあり得ないと思いますよ。しかしながら、アメリカ経済に依存する態度があまりにも強く打ち出されすぎる。そうして、先ほどから口をすっぱくして言っておりますように、アメリカ経済の立ち直りというものだけを当てにして、みずからなすべき政策を行なっておらない。あるいは政治的にアメリカの従属関係にあるのではないかという疑い、あるいはそしりを受けても仕方がない状態の一つの現われではないか。まことに私は心配にたえないわけであります。重ねて、態度とあわせて、またもし善後措置を講ぜられるお考えがありまするならば、それをお聞かせいただきたいと思います。
  186. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今のお話でございますが、今日までのところ、ドルを金にかえることは、これは非常に容易でございます。アメリカ自身におきまして、金の相場というか、それはちゃんと立っておりますから、必要でありますならば、ドルを金にかえることは可能だ。また先ほど来御説明いたしましたように、国際収支の面において黒字が増加しておる現状からいたしますならば、ドル自身の保有から申しまして、日本の金そのものの準備が少いからといって、これを非常に危険な状態だとお考えになることは、私はこれまた当らないと思います。またドルを一つの国際通貨として取り上げておる現状から申しまして、私どもドルということを申しておるのでありますが、わが国におきましては、ドル並びにポンドということを考えております。いわゆる各国の現地通貨による決済などは賛成をいたしておりませんが、ドルまたは。ポンド――ポンドもドル並みに、実は各国の事情に応じて、国際決済にはポンド建も考えておるのであります。これが今日の国際決済の方法として考えられるのでございます。ただいま御指摘になりましたように、ドルに依存し、ドルに支配せられる国だというように論理を飛躍されますことには、私ちょっと賛成いたしかねるのであります。ドルあるいはポンドが国際決済の貨幣である、これは御存じのことだと思います。この意味において、私どもは、ドルをたくさん持つことこれ自身が、同時にまた円の価値を維持するゆえんでもあるのでありまして、かように考えて参りますと、今の金そのものの準備が不足だといってこれが非常に不安だ、こういう結論になることは、論理的には相当飛躍じゃないか、と申しますのは、同時にこのドル自身を持つことが、ドルならばいつでも金にかえ得るという状況でございます。私が先ほど来申し上げておりますように、国内に金がたくさんある、これがけっこうなことであることはもちろんでございますが、金がないからといって、非常に不安だという結論を出されることには賛成しかねる、こういうことであります。
  187. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 金にかえることが自由であるから大丈夫だろうというお話でございますけれども、御承知のように、アメリカにおきましては、普通の金兌換は今停止されております。そうして、特殊な条件によって中央銀行との関係においてのみされております。従いまして、西欧諸国も非常に用心深く、じわじわとドルを金にかえつつあることを御承知願いたいと思います。それから、確かに、ドルだけでなくて、ポンドも関係がありましょう。しかしながら、一つの傾向だけは何としても見のがすことができない。今エアハルトさんが日本に来ております。エアハルトさんは、御承知のようにドイツ経済を復興さした神様みたいな人であるといわれておる。ここにおいて、アメリカとの関係のみならず、イギリスとの関係においても非常に深い関係がありますことは御承知の通り。そのドイツにおきまして、終戦当時から現在までの間にどんな努力をされてドルが金にかえられたか。御承知かとも思いますけれども、一九五〇年当時は、ドイツにおきましては、金準備はたった二千ドルだった。それを一六五〇年から今何年かかっておるか、たった七、八年です。七、八年の間にだんだんとかえて、今や二十五、六億の金準備を持ってきて、四四%の比率にまで達してきておる。ここにドイツの本格的な経済の実力が出つつあることを私は知るわけであります。従いまして、追い詰めましても、これは何ともいたし方なかろうと思いますけれども、私は、単にこの委員会における答弁を適当にやられるということでなしに、もう少し本格的に深刻に考えられまして――あの二十九年当時の恐慌でも、あのときに準備しておったものは助かった。三十一年のときに、どういう状態に世界各国が見舞われたか御承知のはずであります。私は、今一挙にそういう状態が来ようと言うのではない。言うのではないけれども、そういう心配をある程度しながら、一国の台所をまかなうところの者はやらなければならない。各国の例がそうなっておるではないか。その心配をしておらぬのは、たった韓国とフィリピンだけではないか。そのことを私は最も強く大蔵大臣に要請いたしまして、善後措置を早急に講ぜられながら独立経済を堅持されたいことを希望いたしまして、次の問題に移りたいと思います。  先ほど三木長官は、国内もだんだんとよくなりつつあるというお話をされました。しかしながら、特に最近における状態は、不渡り手形のだんだんと大きくなりつつあることを見てもわかりまするように、決して私は楽観は許さないと思います。そしてまた、輸出のためにいろいろな努力を払っておると言われましたけれども、現実にちっとも効果は上っていないじゃないですか。私が今一番問題にしなければならぬことは、あれを考えた、これを考えたという企画庁の白書やああいう書きつけによって政策は実施されるものではない。あなたはどういう政策を通産大臣なりあるいは大蔵大臣に要請をされて、輸出振興のためにどういう手を現実に考えられておるか。起死回生の妙手があれば、私は承われたいと思います。国内需要を喚起するほかにやることなしに、今やった唯一、岸内閣の経済政策として現在の不況を何とかしなければならぬといって公けに打ち出されておりまするものは、輸出振興だけだ。その輸出振興も昨年一年間。ことしの上期の状態を見ましても、だんだんとむしろ危険な状態になりつつある。下期に入りましても同様な状態である。私はここにむしろ、本格的に岸内閣が昨年からとられておりましたところの、ともかくも刺激的なやり方を避けて、唯一輸出貿易を盛んにすることによってこの不況を何とか乗り切ろうとしておるところの政策自身に、すでに破綻が見えておると思う。どんな努力をされて、それがどう失敗をされて、そしてこれからどういう起死回生の妙手を打とうとするか、私は承わりたい。
  188. 三木武夫

    ○三木国務大臣 輸出振興に対して起死回生の妙案が何かあるかというお話であります。こういう輸出の振興ということに、今すぐに即効薬的なものは、私はないと思います。これはよほど長い目で見て、じっくりと腰を落ちつけて輸出振興をはかるよりほかにはない。そういう場合に、今いろいろやってはおりますよ、おるけれども、日本の輸出が非常な上昇カーブをとるとはいえない。それは海外における、景気の状態等も影響するわけであります。日本の努力と海外の景気の動向等も影響があるわけであります。そういう点で、今、日本の貿易は、二面性と申しますか、一方においては先進諸国、購買力を持っておるアメリカとかカナダ、オーストラリア等、そういう国々に対しては、御承知のように貿易使節もただいま参っておるわけであります。またジュトロ等の貿易の機構もこれを整備して、絶えず市場の調査あるいは日本商品の宣伝、こういうことをすると同時に、現在はそういう購買力の多い地域に対して貿易使節等が参って、貿易上の障害というものをできるだけ排除して、こういう諸国に対する貿易の増進をはかろう。ことにアメリカは、御承知のようにだいぶ改善されましたけれども、輸出入ともアンバランスであることは御承知の通りであります。こういう点で努力をする。先進諸国は、行くものが高級雑貨のようなものでありまして、後進諸国に対しては、これは外貨不足であります。第一次産業の製品というものは世界的に下って、購買力が非常に落ちておるわけでありますから、クレジットあるいは延べ払い、こういう方式で、こういう後進諸国に対しては機械工業あるいは化学工業製品のような、多少先進諸国とは趣きを異にしたような商品が重点になるわけであります。こういう国々には、支払い条件に対して、日本の事情の許す限り便宜をはかって輸出の増進をはかっていく、こういう努力をしておることであります。とにかく一ぺんにどうということではない。これは長年月にわたって、やがては日本の貿易構造、産業構造そのものにも影響するわけでありますから、努力をしていかなければならない。今すぐにそんなに一ぺんにきくような妙薬は、貿易にはないのであります。
  189. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 これはやはり何ぼ申しましても今政策がないのでありますから、いたし方なかろうかと思います。しかし問題は、そんなに長年月かけて心配しておるような問題ではなくて、現実に昨年の夏のあの緊急対策以降、あなた自身が、あるいは通産大臣が、あるいは大蔵大臣とともにあの緊急対策の裏づけとしてすぐに実施しておらなければならない問題であるし、また従って相当の効果を上げておらなければならない問題である。今からいろはの調査をしておって、それこそやれる問題ではない。そこに私は非常に危機を感ずるわけであります。このごろは、作文行政が、岸内閣に入ってから非常にはやっておるわけでありまして、だんだん作文が上手になって参っております。従って、白書とか経済見通しとかそういうものの中で、言葉は、ことに停滞という言葉が現われた。これは停滞ではなくて、要するに不況ということなんでしょう。それをいろいろな言い回しで、具体的な中身がない。これを私どもは一番心配しておるわけです。時間がなさそうですから、私は先に急ぎたいと思います。しかしながら、通産大臣にも三木さんにも強く要請しておかなければならないのは、私ども社会党がいつも言っておりますように、ただ従来のアメリカを中心とした、あるいは西欧との関係だけの貿易でなかなかやれるものではない。そこに東西貿易の重要性がありますし、それから岸さん自身みずから東南アジア貿易をやらなければならぬことを非常に強く打ち出されておる。にもかかわらず、東南アジア貿易が、今三木さん自身も言われましたように、いろいろな手を打とうとしても、ちっとも実はならぬ。われわれ日本の対策よりも、もっと危険に陥れられつつありますのは、中国の東南アジアに対する進出である。それに対しまして、従来通産省がとっておったような、ジェット機一機にしかなるかならぬくらいの貿易振興対策費をこま切れに使って、どこで展覧会をやってみただとか、人をつかわしてちょっと調査してみただとか、そういうていのもので現在の輸出促進かできるものではない。従いまして、私は本気に考えなさいと言っておるわけであります。時間がだんだんと迫ってきますから、先に急ぎたいと思います。  今度は、今次補正の問題であります。今次補正は、一般会計は災害対策の補正になっておりますけれども、これと並びまして、産投並びに国債整理基金の両特別会計の補正が、先ほど塚田さんとの問答で問題になっておりましたところの外債発行の問題となっております。災害問題につきましては、あとで同僚から中心的に触れられますので、私は遠慮をいたしたいと思います。なお、外債問題も他の問題とともに重要性を持っておるわけでありますが、先ほどの塚田さんとの問答で相当に話が進んだように思いますから、私はただこのポイントだけをお聞きいたしたいと思います。先ほどの塚田さんとのお話の中で、やはり今度の外債発行の必要性というものは、何も外貨が必要なのではなくは、やはりあくまで円資金が必要なのだということであったと思います。そしてまた、おそらく私はそれもそうだろうと思う。そうであればあるほど、ほんとうは今外債発行というものは、むしろ国内における財政金融措置の失敗をあなた自身がさかさまに証明するような結果になるだろう。私はその意味におきましても遺憾だと思います。しかし、さらに塚田さんとの問答の中で、ちょうど今はアメリカの起債市場はいい条件である、従ってやはり早い方がいいという勧告を受けたような話をされましたが、これはほんとうですか。
  190. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 別に勧告を受けたわけではございません。勧告を受けたわけではございませんが、外債を発行する場合に、マーケットの状況がどうであるか、これはもちろん私どもも念頭に置かなければならないことであると思います。そういう意味でいろいろ実情を聞いたことはございますが、別に勧告は受けてはおりません。
  191. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 九月末に帰国されました駐米公使のお話によりましても、ニューヨークの金融市場というものは、政府の赤字の借り入れのために、七月以降は相当逼迫してきておる。むしろ外債発行に関しましては有利な条件ではなさそうだ。これを証明するように、ベルギーは昨年の九月に外債三千万ドルをニューヨークで発行しましたけれども、そうしてまた今年の秋、第二回目を発行する段取りになっておったけれども、だんだん金利が高くなってくるので、取りやめたという話が伝わっております。従いまして、私は今のアメリカの金融市場における外債発行条件がいい時期であるかどうかということに、むしろ非常に疑いを持っておるわけであります。大体大蔵大臣はどの程度の発行条件で消化されるお考えになっておりますか。
  192. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今の時期がいいわけではございませんが、おそくなればなるほど非常に不利になるということは言えるのであります。先ほど塚田委員質問に対して答えましたように、見方によりましては、あるいは非常にいい時期を失したのじゃないかということが言われておるのは、私が申し上げたいのは、アメリカが金利を引き上げる前に外債を発行すれば、一番いい条件であったろうということを実は意味しておるのでございます。今日はすでに一番低いときから、一・七五%からもうすでに二・五%というように金利が上っております。こういうことで、今後金利が一体どうなるか、アメリカの金利は今後一、二年の間は高金利を続けるであろうということを実は関係者は予想しております。そういうようなことを考えると、早い時期といいますか、おそくなれば金利がさらに高くなる危険があるということを考えますので、もら今日すでに高い、こういう御意見もあろうかと思いますが、しかし、もっとおくれればおくれるほど高くなるだろうということを実はおそれておるのであります。そこで、先ほど塚田君のお尋ねに対して答えましたように、やはり世銀の金利というものが一つの標準であることは、これはもう申すまでもないことでございます。世銀の金利は大体五・七五、五分七厘五毛程度ではないかと思いますが、これをやや上回る程度で公債を発行し得るのじゃないかということを実は想定いたしておるのであります。この点は、具体的にぶつかって交渉してみないことには、どのような条件になるかがわからない。この条件が非常に悪いというか、当方に対しまして過重な条件でありますならば、私は、あえて公債を発行しなければならないとか、またそう、までして公債を発行するとまでは実は考えておらないのであります。ところが、これは大へん率直に申し上げるわけでございますが、今、日本の財政法の建前等から見ますと、やはり授権立法をしていただかないと、具体的な交渉は持ち得ない、かような状況になっております。この意味において私ども外債発行に関する法律案も出し、同時にそれに見合う補正予算も計上いたしまして、そうしてこれを具体化することの権能をやはり政府に与えていただきたい。これが本来の筋でございます。もともと私どもが外債発行の権能がありますならば、おそらくこの金利の引き上げ前に、必要なればそういうような処置もとり得たかと思います。しかしながら、ただいまの建前では、そういう権能はございません。私、率直に申し上げて、今後アメリカの金利はさらに上向くであろう、こういう一致した見解でございますだけに、そういうように考えますと、できるだけ早い時期に公債発行の権能を与えていただくことが望ましいというのが、私の考え方でございます。
  193. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それならば、六%を上回るようなことがあったらやめられるわけですか。
  194. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 そういう場合におきましては、世銀の金利というものが一体どうなりますか、それもよく考えてみたいと思います。今世銀の金利自身も上向きの状況にあるということも、先ほど来申しております。これらと十分関連をとりまして、そうして最終的な決定をすべきだと、かように考えております。
  195. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は、そういうことであればあるほど、むしろ条件の限度を大体明確にされて、そうしてこの交渉をされるべきだと思います。初めから話がありましたように、そもそも外貨を必要とするための外債ではないわけであります。私の聞くところによりますと、私は関係があるから申すわけではありませんけれども、この三千万ドルの外債というのは、もともと世銀との交渉で、電源開発資金として四千万ドルの交渉をされておったでしょう。この四千万ドルの交渉は、ニューデリーのみやげ話みたいに御母衣等の借款ができそうだという話をされましたけれども、むしろさかさま向きに、四千万ドルの交渉が一千万ドルに削られたのでしょう。従って、一千万ドルと四千万ドルの間の三千万ドルの差額ができたから、むしろ逆にいうならば、世銀との交渉の過程におきまして、あとの三千万ドルは外債でいけ、こういう話でやられておるのではなかろうかと私は思う。それであればなおさら、今の世銀の歩合との関係もありましょうけれども、先ほど来最も強く佐藤大蔵大臣の言われておりますのは、数十年来初めての外債発行であるということだと思う。数十年来初めての外債発行であればあるほど、私はこういういきさつによって、こういう外からの押しつけがましいような状態で、高い条件でやらるべきではないと思うのでありますけれども、重ねて御所見を承わりたいと思います。
  196. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 世銀から借り入れと申しますか、大体借款計画といたしましてなお一億五千万ドル程度を予定しておるのでございます。私インドに参ります前に、この一億五千万ドルを実行に移し、さらにプラス・アルファとして、外債ができますならば、これは一つの方法ではないか。冒頭に申しましたように、国外の資金の手当をするという意味においてこれは役立つのじゃないかということを実は考えたのであります。問題はこの外債を発行する場合に、世銀からの借り入れ計画の一億五千万ドルの中に食い込む、こういうことがありますならば一番借款しやすい、世銀から借りてる方がいい、こういうことで私その点を一番念頭に置いて出かけたのであります。いろいろ交渉いたしました結果、世銀からの融資一億五千万ドルそのものは変更なしにしよう、そしてプラス三千万ドル、計一億八千万ドルになるように、アメリカから資金を獲得し得る方向で考えるということに実は話がついたのであります。ただ問題は、この外債を出すという場合に、その外債でまかなうプロジェクトを一体何にするか、事業を何にするかということでございます。電発の事業につきましては、ただいま御指摘のように三千五百万ドルないし四千万ドル、御母衣の工事のために世銀からの借款を計画して、そしてこの世銀からの借款そのままでありますならば、外債が出れば他のプロジェクトに回るわけでございますが、しかしただいま一番急いでおりますのが御母衣の工事を進めることであります。同時にまた世銀の一千万ドルにいたしましても、これと抱き合せの外債発行が当方に対しましては有利であるということも実は検討を加えたのであります。この意味においてこの三千万ドルの発行ができますならば、予定いたしました御母衣の工事用のためにこの資金を投入する、こういう計画を立てておるのであります。でありますから、誤解を受けないように願いたいことは、電発あるいは道路、あるいは九州電力、あるいは八幡製鉄、富士製鉄、これらのプロジェクトに対しまして約一億五千万ドルの世銀借款を計画しております。本事業年度並びに来事業年度でございます。世銀の事業年度は七月一日から翌年の六月末まででございます。来事業年度までを含めてただいま申したような借款計画を持ち、その計画を進めておるのでございます。この関係で結局ここに三千万ドルの外債を発行して、得たその三千万ドルというものが第二期の道路工事に回っていくとか、いろいろあとで使い方があるわけでございます。さような状況になっております。
  197. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は今の御説明にもかかわりませず、今度の外債発行につきましては、何としても承服しかねるわけであります。特に要望いたしておきたいと思いますることは、先ほど来申し上げますように、それこそ数十年来初めての外債発行だという点であります。御承知のように、関東大震災当時の国辱外債というものをまだ覚えておられるだろうと思います。六%を過ぎる場合におきまして、わが国の受けるところのいろいろなマイナス面というものは、私はおおい難いものがあるだろうと思う。従いまして、いずれにいたしましても、今の問題は円資金の問題でありまするがゆえに、本格的にこの外債発行を行われるといたしますならば、あくまでも、繰り返されるような国辱的な条件の、いわゆる国辱外債にならないように、強く私は希望いたしておきたいと存じます。特にせんだっての本会議質問演説で、私どもの同僚の小松議員が触れましたように、御承知のような対外債務がわが日本にはたまっておる。これとの関係におきましても、私はまことに重要な問題だと思いまするがゆえに、慎重なる態度をとられんことを特に希望いたしまして、時間の関係上、問題を先に急がしていただきます。  次にお伺いいたしたいのは、来年度、三十四年度の予算の基本構想についてであります。だんだんと時間が差し迫って参りましたので、私は端的に、総理大臣にお伺いをいたしたいと思います。夏あたりお話によりますと、今度の通常国会は、それこそいろんな問題があるし、来年の参議院選挙も控えておるから、従いましてあらゆるものをだんだんと早く扱ってしまいたいというお話でありまして、九月の早々でありましたか、自由民主党の来年度予算に対する大綱というものが出されて、そして大体その方針にのっとって閣議でも了解をされたと聞いております。しかしながら、いまだに本格的な来年度予算の基本構想を明らかにされません。私どもが推測をいたしまするところでは、政府はいろんな形で現在の不況を、ともかくも調整の時期であるとか、しかもそれは仕上げの段階にきておるとかいいまするけれども、現在の不況があまりに深刻なために、実際に来年度の財源の見通しに非常に困っておられるというのが一番中心ではなかろうか。しかも、かつ今度は、御承知のように、減税公約をまことに明らかにされておる。減税公約の実現と来年度の財源措置の見通しとの間に苦慮せられて、いまだにおそらく基本構想がまとまっておらないのではないかと思います。私は、特にこういう状態であればあるほど、一日も早く基本構想を発表せられまして、そして改むべきものは改め、政策の転換すべきものは転換をいたしまして、国民に対してある程度のはっきりと見通しをつけさせることが、何よりも大事かと存じます。従って、私が総理大臣にお伺いいたしたいと思いますることは、第一に、あの当時、九月の初めに発表されましたところの、自由民主党の基本構想の中に入っておりまする一千億程度の自然増収というものを見込まれながら基本構想を練っておられるかという点と、第二番目には、ほんとうに減税公約を実現されるための方針に従って今の構想を練っておられるかという、この二点につきましての御所信を総理大臣に承わりたいと思います。
  198. 岸信介

    岸国務大臣 自然増収をどのくらいに見込むかということにつきましては、時日がたつとともに、できるだけ正確なる見通しをすることが必要だと思います。私どもは、一千億前後の自然増収というものをやはり考えておるのでありますが、それは時日の経過とともに、なお一そう明確にしたいと思います。なお減税の問題につきましては、すでに明確に公約をいたしておることでございまして、これはぜひとも来年度にこれを実現するように、あらゆる努力をするつもりでございます。
  199. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 先ほどの委員会の討議におきましても、岸総理は、約束したことをはっきりと果す、特に明年度の約束として打ち出したものにつきましては、はっきりと約束を果すということを明言されておるようであります。御承知のように、減税の公約は、これは抽象的な内容を盛ったものではなくて、明らかに初年度七百億、平年度八百億、しかもまた御承知のように(「平年度七百億だよ」と呼ぶ者あり)それをすりかえられたので、私どもは問題があると、こう言っておる。いずれにいたしましても、減税公約は具体的に私はされたと思います。ところが私どもの聞くところによりますと、自由民主党内部におきまして、私どもが数え切れないくらいにいろんな税金関係委員会を作られて、一生懸命に御検討の最中らしいわけであります。聞くところによりますと、特に私どもが問題といたしておりまするところの地方税の減税措置につきまして、いわゆる亀山委員会なるものと、それから植本委員会なるものとの間に相当な開きがあることを私どもは聞いておるわけであります。ざらにまた所得税の軽減につきましても、私どもはまだほとんど片りんさえも知ることができないわけであります。従いまして、私はこの際総理大臣に対しまして、そういう憶測にもかかわらず、今進められておりまするところの減税につきましての公約実現の御方針を承わりたいと思います。
  200. 岸信介

    岸国務大臣 具体的の減税の内容につきましては、それぞれ目下委員会その他におきまして検討をいたしております。しかし私どもは、公約をいたしました線でこれを実現する意味におきまして、極力早く成案を得るように努力をいたしております。
  201. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて総理大臣にお伺いいたしまするけれども、そういう抽象的なお話では、私ども何べん承わっても同じことなのであります。従いまして私は、今示され得る最大限の御方針を具体的に承わりたいと存じます。
  202. 岸信介

    岸国務大臣 具体的なことにつきましては、まだ最後の成案を得ておりません。ただ大蔵大臣から審議の経過につきましては申し上げさせます。
  203. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほど佐々木委員御指摘のように、自然増収、これもなかなか窮屈でございます。しかし私ども、この自然増収は八百億ないし一千億、まあそういうような大まかな感じのものが考えられる。また前年度の剰余金にいたしましても、これもなかなかそう多額は考えられない。あるいはたな上げ資金を解くとか、あるいはまた既定経費を節減するとか、あらゆる方法を講じまして、とにかく公約いたした財源はこれを捻出したい、これが私どもの念願でございます。同時に、さような努力をただいまいたしておるわけでございます。減税の具体的な案は、まだできておりません。大蔵省におきましても、臨時税制懇談会を開きまして、いろいろ審議を進めております。その際に、特に期待をかけられております低所得者と申しますか、その所得税の軽減、いわゆる年収三十万までの所得税の軽減につきましての具体案も、いろいろ考究中でございます。さらにまた、今御指摘になりました地方税の減税に対する具体的な案、並びに地方税を減税した場合どういうような処置をとるか、これなどは最もむずかしい問題でございます。いろいろのお立場からいろいろの御意見があることでございますが、公約して発表しておりますところの事業税であるとか、あるいは固定資産税であるとか、あるいは物品税の適正化とでも申しますか、こういうような各方面の材料を合わして、私どもが公表いたしました減税公約はぜひとも実現したい、かように考えまして、せっかく努力しておる最中でございます。まだ具体的の案ができ上っておりませんので、この機会に御説明するまでに至っておらないことを御了承いただきたいと思います。
  204. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 先ほど申し上げましたように、減税の公約は数字をあげての具体的な公約であります。従いまして私はそれを今さら具体的に相談をされておること自身がすでに公約違反ではなかろうかと存じます。従いまして、公約に従って、今どの程度の状態になっておるか、私は重ねてお伺いをいたしたいと思います。
  205. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまその金額、たとえば所得税を軽減いたしますにしても、基本的な控除をどうするか、あるいは扶養家族の減額をどういうようにするか、いろいろ案があるのであります。そういう点をどういうように取り扱うか、いろいろ税制懇談会等で研究をしておる段階でございます。
  206. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねてお伺いをいたします。公約の内容は、先ほど申し上げましたように、具体的であったはずであります。たとえば地方税の内容につきましては、個人事業税の基礎控除をどうどう、法人事業税の税率をどうどう、所得税につきましても、同じような意味で、公約は標準世帯、たとえば年収三十万円まで、こういう公約がされておるわけであります。従って私が重ねてお伺いをいたしまするのは、総理大臣は公約を実現する、少くとも明年度に約束したものはやるといわれておるわけであります。従って私はそういう片りんが今いえないわけはないと思う。もし今いえないとするならば、それはやはり公約を実現しないというつもりであろうと私どもは想像せざるを得ないわけであります。重ねてお伺いいたします。
  207. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、減税の項目は実はすでに公約いたしておりますので、その項目について研究はいたしております。しかしながら、減税の方法がそれぞれあるのでございますから、その方法を具体化しない限り、所得税についてはどういう処置をとる、法人税についてはどういう処置をとる、あるいは固定資産税についてはどういう処置をとる、かようなことを申し上げることはできないということを申し上げておるのでございます。公約の際に取り上げるべき項目はすでに発表いたし、その意味においての研究を続けておる。問題は、実施する方法といたしましての具体的な案を策定する、それをただいま研究しておるということでございます。
  208. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それでは逆に……。私どもは公約に出ておりまする具体的な数字を期待しておるわけでありまするから、従ってやり方のいかんにかかわらず、見通しは公約の当時と同じような形で内容を盛られつつあるかどうか、負担の軽減の方向につきましての御考慮はどういう工合に払っておられるか、重ねて私はお伺いをいたしたいと思います。
  209. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 所得税につきましては、非常に具体的なお約束をいたしておりますので、これは具体的に進んでおります。あるいはまた事業税の基礎的な控除と申しますか、あのときは二十万円だった。こういうような基準につきましては、別にこれを変える考え方はございません。これは非常にはっきりいたしております。ただ、金額そのものが、事業税について幾らだという金額が出ておったと思いますが、これは当時の金額そのものとしての目標の程度に私どもは考えております。総体といたしまして平年度七百億減税という考え方、これは総体として私どもの目標として堅持しておるわけでございます。
  210. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それでは公約通り大体七百億の減税を明年度において行われる、こういうふうに今大蔵大臣は言明されたと承わってよろしゅうございますか。
  211. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 平年度七百億ということでございます。
  212. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 時間の限定を加えての問答でありまして、これは何ぼたっても同じ返事をされるならば、私どもはもう仕方がないということであります。しかしながら私は重ねて、選挙当時公約されたものは具体的であった、そしてそれは初年度七百億であった、ということをもう一ぺんはっきりと繰り返しておきます。そして私はこの作業を一日も早く終られて、少くとも私どもが今国会におきまして、この不況対策を中心として問題を論議しておるうちに、予算の基本構想とともに発表せられんことを重ねて希望いたしたいと思います。大体の見通しは、いつごろ基本構想及び減税の方針を出される御予定でありますか。
  213. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 予算は年末までにぜひとも編成を終りたい、こういうことを実は目途にいたしております。これから逆算いたして、この方針なりを明示したりあるいは予算案を閣議に諮る、こういう時期がおよそ見当がつこうかと思います。ただいまそれらの準備といいますか、各省からの要求をせっかく査定中でございます。また減税案等につきましても、懇談会においていろいろ、その結論を得るように急いでおる最中であります。この点御了承いただきたいと思います。
  214. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 この問題につきましても、私は具体的な方針をお示し願うことを要求したわけであります。押し問答になるようでありまするから、やむを得ないと思います。なお本来私どもの論旨は、現在の不況を相当深刻に見て、具体的な対策を要求いたしておるわけでありまして、必ずしも言葉にとらわれて、たとえば循環説的な恐慌であるとかあるいは不況であるとか、あるいはまた調整期であるとかいうことにとらわれず、具体的な現在の不況に対する有効なる手段を要求いたしたわけであります。しかしながらこれに対しましても、私どもが納得するような御説明をいただけないことをまことに遺憾とするわけであります。時間がだんだんと迫って参りまするので、私はあと一、二だけ具体的な問題をもう少しお伺いいたしたいと存じます。  たびたび経済白書にも書いてありまするように、現在政府は、特に国民消費については堅実な上昇過程をたどっておるということを前提とされて、施策を練られておる。しかし現在農漁村を襲っておりまするところの問題は、部分的には非常に深刻であることを御承知だと思います。私は非常に具体的に、その一例といたしまして、農林大臣を中心にお伺いいたしたいと思います。それは先般来発表されました繭糸価格の安定対策についてでありますが、農林大臣にお伺いをいたしまする前に、岸総理大臣に一言お伺いをいたしたいと思います。あれは農林省の発表ではなくて、閣議決定による発表と相なっておったからであります。従来繭につきましては、あくまでも増産態勢を中心といたしまして、昨年から増産五カ年計画を立てて、増産奨励の線に沿って指導をされておったわけであります。今回の決定は、なかなか抽象的にぼけてはおりまするが、私どもが承知いたしまるところでは、これはやはり完全な減産計画であろうかと存じまするが、明らかに私はこの委員会の席上におきまして、従来の繭に対する五カ年増産計画を廃棄して、そして新たな減産計画を立てられ、減少計画の方向に踏み切られたと、こういうふうに了解をいたしていいかどうか、まず総理大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  215. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 私から一通り御説明を申し上げて……。
  216. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私はに基本的な方針を総理大臣に要求いたしたわけであります。
  217. 岸信介

    岸国務大臣 最初に、政府の案の内容につきまして農林大臣をして説明させます。
  218. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 まず農村における経済情勢の見方でございますが、私たちの見ておりますところでは、本年の農業生産はここ数年の余波を受けまして上昇の気味でございまして、大体生産におきましては四%の増を見込まれております。同時にまた農村生産に必要でありますところの生産費等は低落の気味でございまして、全体を通じて考える場合には、農産関係の資材等は二%の下落になっております。同時に農村の総所得におきましては、総体において大体四%の増を認められておりまして、これを大観しまするならば、大体において上昇の気味でございます。さようなことでございますので、往年の農村状況とその性質を異にしておる、こういう情勢であります。ただし、本年は災害等がございまして、その面におきましては、われわれとしましてもこれに対処して、その施策に誤まりなきを期したいと考えておるのであります。  ただいま御指摘になりました蚕糸対策でございますが、ただいままでのところ高水準の支持価格制度をとって参ったのでございます。しかしながら、これは実際の事情に応じない。生産は過剰でございまして、供給の方は多いけれども、需要の方面がこれに伴わない。需給のバランスを失しまして、そして実需要はだんだん減退しておる。こういう情勢を長く続けることによりましては、市場を失い、さらにまた化繊等の競争の関係に立ちましても、相当の市場を失うのみならず、需要が伸びないわけでございます。われわれとしましてはこの際、これらの経済事情に即応した手段をとって参りたい、こう考えておるのであります。従いまして養蚕等につきましても、今までは増産の計画は若干持っておりましたのでございますけれども、やはりこれだけの経済事情の変遷が参りましたので、これに即応して一つの調整をしなければならぬ、こう考えておる次第であります。従いまして、今後われわれとしましては、支持価格等につきましては改定を加え、そして長期的に見て養蚕並びに製糸方面に安定した方策を見出したい、こういう考え方から先般の閣議決定をいたした次第であります。
  219. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私のお伺いいたしておりますのは、昨年を起点といたしまして、しかも数字をあげて、三千五百万貫の目標を立てられて、五カ年計画を立てておられたはずであります。先ほどの景気調節みたいな対症療法的な問題ではなくて、三千五百万貫の増産計画をはっきり立てて、ことしは二年目であるわけです。あなたの示されたところのいろいろな数字から、たとえば桑田整理とかなんとかから逆算してみますと、逆に四百万貫くらいを減産しなければならないということになるわけであります。農民というものはだまされやすい。農林大臣の口から明確に、三千五百万貫増産計画は廃棄して、そして何百万貫か知らないが、はっきりと減産計画に踏み切った、このことをこの委員会でまず明白にしていただきたい。
  220. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 現在の生糸に関しまする事情等から見まして、ある程度の調整はやむを得ない事情と考えております。
  221. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 五カ年増産計画は廃棄されたのでありますか。
  222. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 現在の直面しまする経済事情に即応しまして、再検討の上でこれを調整する考えでございます。
  223. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、私は明確に、三千五百万貫を目標としましたところの増産計画を廃棄された、こういうふうに了解をいたしたいと思います。よろしゅうございますか。
  224. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 調整をいたしまして、われわれは改定のやむなき事情だと考えております。
  225. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それでは私どもははっきりと、繭は減産計画に踏み切った、こういうふうに了解いたします。  それでは次に、あの対策の中心になっておりまするものは、この夏秋蚕繭の対策だろうと思います。あそこに盛られておりまするところの、二百円を上げまして千二百円で買い取る話は、御承知のように、今の措置では大体三百万貫程度の共同保管になったものしかできないはずでありますけれども、現実にとれたものはなま繭換算で千六百万貫だといわれております。残りの千三百万貫はどういうふうに安定措置をとられるのか伺いたい。
  226. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 現在は供給が過多でございまして、需要がこれに伴わない。これによって世界的な市場に圧迫も受け、同時にまた内需方面も非常に減少している事態であります。従いまして、この事態に即応して臨機の措置をとるのでございまして、このたびの計画におきましても、三百万貫はすでに業界におきましても共同保管等の措置をとっておるので、従いまして生産者方面の措置に対しまして政府はこれを助成し、そうして需給のバランスをとるに役立つようにいたしたい、こう考えます。従いまして、すでにこのことは需要供給の関係からある程度の事態が出ておりまして、従いまして今後の繭の事情は、一つの安定した適正な価格に落ちつくものと期待しておるわけであります。
  227. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 需要供給の関係において適正なところに落ちつく価格でありますならば、なんで繭糸価安定法を作り、また臨時の措置法を作られたか。需給関係でほうっておけば適当なところに安定するということでありますれば、この対策は必要はない。支持価格をとられたということは、農家経済を一応認めて、農家経済の安定帯と結びつけてとって参られたはずであります。従いまして臨時措置法によりますと、三十三年度産の繭及びこれを原料として作るところの生糸の価格安定を目的として対策が練られておるわけであります。従いまして、ほうっておいて安定するということでありまするならば、これは必要がない。この方針に基いてどこに安定をさせようとせられるか。千六百万貫の繭をどうせられるか、明確に御答弁願いたい。
  228. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 ただいままでの糸価にして十九万円、繭価にして千四百円の高水準では、とうてい現在の需給の状況では不適当だと考えたのであります。これを改定して、そうして長期的に安定したものにいたしたいというのが今回の措置でございまして、従来の方針の変更は、経済事情の変遷に従いましてやむを得ないと考えます。従いまして今後の対策としましては、今の三百万貫のたな上げ等をいたしまして、そうして適正な水準に保ちたい、こう考えます。
  229. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 共同乾繭分は、ともかくも千二百円で買い上げられる。従って残りの千三百万貫はどこを中心にして、どのくらいの値段で安定させようと思っておられますか。ほうっておいて安定するというものでなく、支持価格制度というものは、一つの目標を持って立てられた法律であり制度であるはずであります。
  230. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 この措置をとりまして、一つの安定しました適正な価格に落ちついた実勢を見きわめまして、さらにわれわれは今後の長期的な対策を立てたいと考えております。
  231. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 ですからその支持は、目標とせられる価格はどれだけで、そして、どれだけにしようとするのにどういう対策をとられるか聞いておる。ないならないと言われればいい。百姓の方は、春にちゃんと千四百円で買ってくれるというものだから、千四百円で買ってくれると思って待っておった。同じようにことしの夏、秋につきましても、何らの支持もされないじゃありませんか。増産計画はそのままあなたはしているじゃありませんか。そうしておいて、今ごろになって減収計画みたいなことを言っておる。作った繭は、この前のように千四百円で買うと言っておったのに、需給関係で適当なところに落ちつくであろう、それで農家指導ができると思いますか。そして、あなたは支持価格制度を作られたのだから、なんぼを目標にして、その目標とする価格に落ちつかせるためにどういう態度、どういう対策を行おうとせられるのか、明らかにされたい。ないならないということをはっきり言いなさい。そうしたら百姓はみんな売ってしまいますよ。
  232. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 ただいまの臨時の措置をとりまして、そしてこの需給の事情からきます実勢を見て、最終的の決定をいたすつもりであります。
  233. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 なんぼ言っても押し問答のようでありますが、私はほんとうにはっきりとしてもらいたいと思うのです。それは養蚕家――養蚕家のみではないのです、百姓の力には、適当な支持価格だとかなんとか何べんも言っておいて、しまいには必ず経済の自由原則みたいなことで逃げられる。これは農林省自身がそのつもりじゃないでしょう。佐藤大蔵大臣は、この交渉に対しまして、金融措置が困難であるがためにこういう政策をとられたいとか、あるいは支持価格制度をやめられたいとかということを、農林省と交渉されたことがありますか。
  234. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 繭の問題は、ことしの春繭以来実は私ども非常に大きな問題としていろいろ検討もし、工夫もいたして参ったのでございます。その基本的な問題は、ただいま農林大臣からお話しいたしましたように、需給の状況から見まして、あの十九万円ないし二十三万円という価格、国際的な価格の維持ができなくなった、これが実は一番の根本問題でございます。しかし春繭につきましては、特に金融措置等をとりまして、一応の対策を講じて参りました。これがある程度効果をおさめたことは御承知の通りでございます。しかし同時に、この春繭の計画とあわせて夏秋蚕計画というものも、私どもとしては一応念頭置き、夏秋蚕対策も同時に、春繭に対する対策を立てたときに実は一応頭のうちに描いて参ったのでございます。ただいま農林大臣が言われますように、この需給のバランスをとるように、ことに需給を喚起するような方法を農林省自身もいろいろとって参ったと思います。いろいろ工夫もされて参ったと思います。しかしながら、国際市場等のこの価格に対する考え方はよほど変化をいたしておる。そして国内需要の面におきましても、私どもが所期したような結果には必ずしもなっていない。また同時に、夏秋蚕に対する減産方策といいますか、いわゆる操短方策も十分の効果をあげ得なかった、かように考えるのでありまして、夏秋蚕におきましては非常に大暴落を来たした。そこで農林省、それから大蔵省ももちろん関係省の一つでございますが、大蔵、農林両省ともほんとうに話し合いまして、激変するこの市場に対する対策をいろいろ立てて参ったのでございます。すでに政府が発表いたしましたような対策を立てて、これによりましてまず輸出生糸もある一定の安定ができるんじゃないか。ただいま適正価格ということを表示しておられますが、私ども自身が貫当り千二百円でこれを買い取る、これ自身同時に生糸についてどのくらいの値段を予想しておるかということは、加工賃その他から直ちにはじき得ることでございます。こういう点で農家、養蚕家の所得をできるだけ確保したい、こういうことで最善の努力を払っておるのが今日の状況でございます。もちろん市場の状況でございますから、私どもが想定するような、私どもがここに価格を持っていきたい、かように考えましても、その通りに動くかどうかは非常に問題だと思います。しかし、この際三百万貫をたな上げすることによりまして、需給のバランスがまずとり得る、かように考えますと、供給過多によって価格が非常に変動を来たしておる今日の不安の状況に対しましては、一つのささえになるのじゃないかと実は考えておるのでございます。しかし、将来の生糸の需給の問題ということは、一般繊維等全部を総合して需要の状況を想定していかなければならないところでございまして、今後どういうところに価格が落ちついてくるか、これが実は私どもも非常に懸念しておるところであろう、ただいまの佐々木委員の御質問もその点にかかっておるだろうと思います。私どもも、養蚕家、零細農家の所得に対しまして、非常な所得の減収、激減を与えるようなことはどこまでも避けたい。また生糸自身も、今後の私どもの扱い方によりましては、国際的な相場、この価格も相当なところに維持し得ることも可能ではないか。政府並びに農林省といたしまして特に苦心をいたしておりますのは、今非常に低落しておるこの生糸の値段をもう少し高いところに持っていきたい。それにはやはり国内である程度の価格を安定さすということが必要である。政府自身が三百万貫について千二百円で買う。これから逆算いたしますれば、おそらく生糸の値段は十六万前後になるということになるのでありますが、少くともその程度の価格は維持したい。これが私どもの努力であることをこの際に一つ御了承いただきたいと思います。
  235. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 いずれにいたしましても、支持価格制度自身もまたここで私どもは捨てられたという了解をせざるを得ないのであります。大蔵大臣は今のようなお話をされますけれども、農林大臣は、はっきりと日本の農民に向って、繭の増産計画を立てて奨励されたわけであります。従いまして、繭の増産計画に従う奨励の途中において減産計画に変更されたということを明言され、そうしてまた同時に、支持価格制を捨てられて、今のような落ちつくべきところに落ちつくというように、需給相場を中心として考えられた。私は、そういうことを明確に農林大臣として日本農民にされることを希望しておきます。うそをつかれて、そのために農民はいつでも迷いますから、待つことはないと言われるべきです。  そこでこの際私はもうう一つつけ加えておきたいと思います。それは、先ほどの御答弁の中で、市場を失うおそれがあるとか、国際市場、国際相場を保ちたいとかいうお話がありましたけれども、私は現にこの夏時を得まして、ニューヨークを中心としてあの辺の生糸の状態について、いろいろ出先の皆さん、役所の出先の方々あるいは日本の商社の出先の方々、日本の生産者の出先の方々、同時にまた向うのアメリカ側の商社並びに業者の方々ともいろいろな話をしてみました。しかしながら、そこで出てきた結論というものは、第一には、いろいろ化繊等との競合もあるけれども、これだけ縮小されたところの絹の需要については、まだやり方によっては、はっきりとこの需要を確保することができる。あるいは逆に、やり方によってはこの需要を倍加することさえもできるというのが、あの辺における一般の結論であったこと。さらにまた、今のように非常に不安定な状況になっておることが、需要をだんだんと減少せしめつつあり、市場を喪失せしめつつあるところの最大の原因であるということを、はっきりと明言されておったわけであります。従いまして私どもは、その話を聞けば聞くほど、対策なり措置なりの根本的な問題は、需要先であるところのアメリカ市場にあるのではない。むしろ、日本国内の農林省の政策なり、あるいは内閣の政策の誤まれるところにあるということを、はっきりと痛感をいたして帰ったわけであります。  なお、ちなみに申し上げまするけれども、御承知のようにニューヨークにおきましては、あくまでも日本の生糸が一手の販売市場でありまして、決して中共の生糸は入っておりません。従って、日本の生糸だけの相場によってこれがだんだんと、きょう十九万円と言ったかと思うと、農林省の役人が出てきてこれは間違いないと言ったかと思うと、あくる日は十七万円とか十六万円に落ちる。こういう状態が最大の原因になっていることを指摘された。さらにまた最近におきましては、特に絹織物については、イタリアなりあるいはフランスなんかから入ってきておるけれども、御承知のように、イタリアものであり、ますと、ヤール二・五ドル程度、それからフランス製品でありますと、これが三ドル程度、これに対して、一ヤールが二・三ドルのヨーロッパ製品に比べて、日本の絹織物は同じ一ヤールが六、七十セントですよ。このために、ますます日本の絹織物は市場を失いつつある。先ほど言われましたように、安くすれば売れるというのではない。まさにエアハルト自身が、あなた方に言いたいことを言ってくれているような新聞の記事も出ておるじゃありませんか。私は最も大きな欠陥がここにあると思う。特に向うの連中の言うのには、生糸をだんだんと下げて、買いたたいておるのではなくて、売りたたいておる。しかも売りたたくのは日本の商社だ。しかも売りたたいた日本の商社によって、再び、たとえば絹織物のデザインを盗んだというニュアンスまでくっつけて、逆に今度は日本は、織物について今のアメリカの織物市場を脅かしつつあるということなんです。生糸自身が、今お話のような支持価格をとったかと思うと、支持価格が薄れてしまう。従って、暴落に暴落を重ねていくような措置をとられながら、また逆に、一方におきましては、絹織物の市場自身、ヨーロッパの製品が安定しており、その中で従来の日本の製品も安定しておったものを、日本の織物によってその市場をまただんだんと不安定ならしめて、総合計で絹自身の市場をだんだんと失わさせられつつある。ニューヨークの業者もはっきりと、十九万円の支持価格、十九万円で買って、そしてヨーロッパの製品並みの大体二・三ドル程度の織物を作るのに、決して損ではないということを言っておる。十九万円で買って、アメリカで加工して、二・三ドルのヨーロッパの絹織物と競争させて、決して負けないと言っております。それでありますのにもかかわらず、同じ生糸を日本の手で十七万円、十六万円と暴落させて、しかもまた、日本の業者の手によって絹織物を同じような六、七十セントで売って、総体の絹市場を今失わんとしている。それでありますのにかかわらず、農林大臣やその他のお話によりますと、繊維全体の問題からここへしわが寄りつつあるというような原則論のみを述べておる。自由主義経済国のアメリカにおいてさえも、原始産業に連なるところのかくのごとき繭から糸に関する政策は、一貫した一つのパイプによってこそ、本格的に安定を来たし、そしてそのことは、これほど減少してきたところの絹市場であるならば、完全に可能であるとさえ言っておる。私どもが言いたいことを、アメリカが言ってくれているような状態であるわけであります。従いまして農林大臣、大蔵大臣――通産大臣はおられなくなったようでありますが、この三人、企画庁長官が行司をとってやられるならば、安定した一つの値段で、安定した需要を確保することができる。従って、今減産計画に踏み切られたといい、支持価格制を捨てられたというならば、ここではっきりと再出発して、農民にうそをつかない状態で、どれだけの繭を作って、どれだけの値段で買い上げて、そうして市場を確保するための措置を、本格的に講ぜられる必要がある。これこそほんとうの現在の安定対策である。発表されましたところの二十四日閣議決定の安定対策は、言いのがれ対策であって、先ほど幾ら聞いても、本格的な問題を逃げられる。私はここに最大の問題があると思うわけであります。従いまして、今の一本のパイプに通して――これは本格的な自由競争によるところの経済をそのまま援用し得るたちのものではないのでありますから、私はそういう立場に立っての対策を早急に立てられて、そうして実施せられんことを特に希望いたしたいと思います。
  236. 楢橋渡

    楢橋委員長 佐々木委員に申し上げますが、申し合せの時間がだいぶ経過しておりますから、結論をお急ぎ下さい。
  237. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 制限時間はきたかしらぬけれども、先ほどから言っているように、われわれは上げることも覚悟しておるのだから、同僚諸君が工合が悪かったら帰ってもいいから、もう少し聞かしてもらいたいと思う。  ほんとうは私はこの農業関係、農民の問題として、繭糸とともに乳価問題も扱いたかった。今経済がノーマルだ、ノーマルだと言われれば言われるほど、私はこの問題を扱いたかったけれども、時間がないから割愛いたしましょう。  同時にまた、基礎産業でありますところの石炭と電気について、特に石炭については深刻な問題が出てきつつある。先ほど企画庁長官は、あるいはまた大蔵大臣も、産業基盤を強化するための方針については従来と同じであると言われる。その産業基盤を強化するための一番中心的な施策が、基礎産業に対する基礎産業培養の方針であった。しかもそれを前提とするところの長期計画は、われわれが警告したにもかかわらず、あの神武景気を背景とされたところの計画を立てられた。そしてそれが昨年の夏のがた落ちになった。そのがた落ちになる以前にわれわれは警告したけれども、それも聞かれなかった。そして五カ年計画を毎年々々ややこしい状態でされつつあるけれども、今の繭糸の問題と同じように、やっている方のものは、ちょうど桑の木を一ぺんに変えるといったって、三年くらいは一人前にならぬと同じように、増産計画から減産計画に踏み切れといったって踏み切れるものではない。従いまして、今申しました石炭でありますならば、計画の方針に従って、その計画通りの増産を遂げられた。日本国民は、その施策のまずさによって今や一千万トンの貯炭が何ともならぬ状態にあえいでおる。一千万トンの貯炭のために業者があえいでいる。特に中小に最大の犠牲をしいながら……。また多くの労働者が首切られて路頭に迷いつつある。この責任に対しまして口を緘して、状況の変化だとか、調整措置の仕上げの段階にあるとかというような抽象的な言葉で逃げられておることに対して、私は最大の不満を持つ。もっと率直に、計画を立て直されるなら、実態をはっきりと見届けて、そうしてごまかしでない政策を発表されんことを特に希望いたします。  時間がありませんので、最後に私は一点だけ、科学技術庁長官としての三木さんにお伺いいたしたいと思います。それは問題になっておりますところの動力協定の問題と、それから原子炉の輸入の問題とについてであります。端的に聞きますけれども、アメリカ並びにイギリスとの協定を急がれる理由はどこにあるのか。現在の、たとえば東海村の研究炉の増設のために、あるいは研究炉のための問題であるのか。伝えられるがごとく、動力用の原子炉を入れることを前提にしたものであるか。時間がありませんから端的にお答え願いたいと思います。
  238. 三木武夫

    ○三木国務大臣 イギリスはコールダーホールを、安全性と経済性について今検討を加えております。これが満足するならば、コールダーホールの原子炉を輸入したい、その必要があると考えます。アメリカからのは、来年一、二月ごろに本契約をしたいと考えておる。これは研究炉ではありません。試験動力炉、濃縮ウランの水冷却型発電炉の輸入をいたしたい。こういうことのためには、今までの研究協定では、これは段階が違って参りますから、今度は原子力の協定の必要があったわけであります。
  239. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私どもの了解するところでは、動力用の原子炉でも入れない限り、試験研究炉程度のものでありますと、現在の研究協定でもって、あるいはこれの改定でもって適当の措置がとり得る。ことしの春も御承知のようなステートメント方式というものが考えられた、交渉されたと聞いておりますけれども、これがどうしても工合の悪い理由というものはどこにあるのですか。
  240. 三木武夫

    ○三木国務大臣 イギリスは佐々木君御承知の通り、これはもう完全な発電の動力炉であります。しかしアメリカの方は、今までの段階が研究段階でありますために、いろいろな制限を受けている。これは試験動力炉で一万キロぐらいのものを予定しておるわけであります。そうなって参りますと、今までの研究協定ではやっていくわけにいかない。どうしても本協定を必要としたのでございます。
  241. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 アメリカとの関係におきましての協定につきましても、これは私どもの狭い範囲で聞いておるところによりましても、たとえばスエーデンとの間の研究協定が数回改定をされまして、そして以たようなことで、まだ試験研究の域においては研究協定でやられておると私ども聞いておるわけであります。従いまして、私どもは具体的に、ほんとうに今度のような動力協定が必要だというふうには思わないわけであります。むしろ逆に、今お話がありましたように、ずっとコールダーホール改良型を輸入しようとするところのイギリスとの関係がだんだんと熟してきておりますがために、これに促進をされて、あるいはまたこれのために今度の協定を結ぼうという気になられたのではないかと思うわけであります。私はその点まことに遺憾に思うわけです。第一の問題は、アメリカとの関係ならば先ほど、スエーデンの例を申し上げましたように、あるいはステートメント方式が検討されましたように、従来の研究協定によって、あるいはこれの改定によって可能であると思う。従って私は今度の動力協定を急がれる必要はなかろうと思う。それから二番目に、イギリスとの関係におきましての協定は、今お話のように動力炉の輸入が前提となっておるらしい。ここで私は三木さんにはっきりとお願いをいたしておきたい。従来の原子力関係の各大臣に対しまして、私はこの問題に対してはあくまでも慎重にやられたいということを言い続けてきた。御承知のように、今度のスイスにおけるあの会議におきまして、初めて日本国民にもコールダーホール改良型というものが決して役所から言われるような安全なものでないことがはっきりと証明された。初めて日本国民に果してそうかなというような思いをさせた。しかしながらもし、あの一時のように日本におけるエネルギーの需給バランスが非常に強くくずれる危険があって、何としても外国に先んじて水、火力の発電以外に原子力発電を必要とするという状態であるならば、また別な考えもあり得る。当時の担当大臣はむしろそれを一番中心にたてにとって言っておられた。私はそれに対して、電力需給の長期性から見ればそうじゃないと思う。十五万キロや二十万キロを今から計画したって、その出るときを考えれば、決してそうじゃない、私はむしろその電力の需給計画にしわ寄せされて、技術的にまだ非常に危険な状態とさえ考えられるものを、そこに佐々木局長もおられるが、いかにもそろばんに合うようなことを言って、火力と同じくらい、とんとんくらいなそろばんだというようなことを言われて、そういう数字の検討によって押しつけられようとすることを、私はほんとうに強く心配した。佐々木さん、今あなたはそこにおられるけれども、あなたはあの会議に出た人よりえらくないと思うが、コールダーホール改良型のそろばんがどれだけ立っておりますか。ちっとも立証も何もされていない。それどころか火力自身においても、据え付けてみなければあんなにこまかいそろばんが出るわけがない。一銭一厘一毛のその中の一厘一毛が低いとか、とんでもない話だ。そういう状態のときに、自分のなわ張りの仕事をあせって、ひょっとすると十分なる危険を帯びるかもしれないようなものを入れるとは何事であるか。御承知かと思いますが、もしこのコールダーホール型で最悪の事態に立ち至るとしますと、その地点から百六十キロ以内の住民の立ちのきを必要とする。アメリカの例でもそうです。今度のやつは改良型を持ってくると、さしあたりしょうがないから東海村に持ってこよう。東海村に据えて十五万キロを二基三十万キロでも据えてごらんなさい。最悪の危険があった場合には、わが日本の東京はあそこから百二十キロです。これだけの人口に対して立ちのきが命ぜられますか。特に日本におきましては、いろいろなダムを一つ作る、道を一つ作るのにも補償問題が起る。日本のような密集地帯、人口過剰地帯におきましては、それ自身がどれだけ大きな問題であるかは御承知のはずである。そういう問題を捨象しておいて、イギリスのような補償費を一文も考えぬようなところを前提として一厘一毛のそろばんをはじいて、大丈夫だ大丈夫だと言って、あげくの果てが、この間のスイスのあの会議の結果を見てごらんなさい。ここにちゃんと記録も持ってきておる。ちっとも安定性がないじゃありませんか。最も責任のあるイギリスの当事者自身が、まだまだ十分でないことを暗にはっきり言っておるじゃありませんか。それであるのにもかかわらず、原研を中心とする一部の人たちは、いまだにまだそのままの原子炉を入れようとする努力を非常にされておる、検討されておると聞きますけれども、その検討はいかにして有利な証明をとろうかという検討ばっかりです。商社の持ってくる話をそのままに受けて、そればかりやっておる。これは私は非常に危険であると思うわけであります。電力の需給事情は心配がないと三木さんははっきり言っておりますが、あなたのような聡明な方でありますならば、今余っておるところの石炭なり電力なりの見通しははっきり立つはずである。従いまして危険はちっともない。また世界の動きから見て、原子力の発電が今の佐々木局長が立てられたような昭和三十七年度七百万キロですか四百万キロですか、そういうような大きな計画をもってやるような状態になっていないこともあの会議で明瞭にされた。従いまして私は、時間もなさそうでありますから重ねて所見をただしておきたいと思いますが、アメリカとの関係におきまして、研究協定の改定等によってやられればその措置がとれるのじゃないかと思うから、従ってこれは大した問題がないとしても、動力協定を急がれる必要はないのじゃなかろうか。それから第二番目は、百歩を譲って、この協定は相当われわれの希望しておったような状態になったのであるから、従って協定を結ばれたとしても、現在問題になっておるイギリスからの動力炉を入れるという問題につきましては、それこそ国民の全部が満足の行くような状態になるまで、少くとも今進められておるような話は中止して、十分なる検討、慎重なる考慮をお願いいたしたい。御所見を承わりたいと存じます。
  242. 三木武夫

    ○三木国務大臣 佐々木さんの御指摘のように、この安全性、経済性については十分な検討を加え、何分にも最初の発電炉でありますから、このことによって国民に不安を与えるようなことがあっては相ならないわけであります。慎重に十分な検討を加えた上でなければこの輸入は許さないという方針でありますが、これを中止せよ、今検討しておることを中止してやり直すということには同意できません。今の検討を続けて、その過程において慎重を期するということはお話通りにいたしたいと思います。
  243. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 時間が参りましたので、最後に総理大臣に一点だけお伺いいたしたいと思います。それはうわさされておりますところの防諜法の関係についてであります。今度も警職法というものが突如として出て参りましてこういうようなことになったことは御承知の通りであります。私どもが心配いたしておりますのは、たしか十月二十七日でしたかの新聞に、防諜法か機密保護法かそれに相当するものを、次の通常国会に出す予定であるというような記事が載っておったと思いますが、そういう計画であるかどうかお聞きいたしたいと思います。
  244. 岸信介

    岸国務大臣 この防諜法の問題につきましては、私最近新聞記者会見で、質問がございましたその際に、こういうことを答弁いたしました。独立国がその国の最高の外交上あるいは防衛上の機密を他の国の諜報機関等に流されて、そうしてその国の独立というものに対して危害を受けるとか損害を受けるとかというようなことを、そのまま放置しておいてよいということは、これは何人も考えないだろうと思います。ただ問題は、どういうことが国家の最高の防衛上の機密であり、また外交上の機密であるかという問題と、そういうことを取り締ることによって、基本的人権が侵害されるおそれはないかという問題になるのであって、そういうことを慎重に検討しなければ、こういう法案というものは、法律案としては提案することができないのであります。私は今申し上げましたような考えで機密保護法といいますか、防諜法というものを取り扱って参りたい。従って十分慎重にあらゆる点を研究しなければならぬ問題でありまして、今日次の通常国会にこれを提案するというような意思は持っておりません。
  245. 楢橋渡

    楢橋委員長 佐々木君、結論ですか。もう四十分以上たっておりますから……。
  246. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それではただいまのお話では、今度の通常国会には、提出のつもりはないというふうに了解いたします。  問題はたくさんありますけれども、委員長並びに同僚からのお話もありますから、これで私の質問を終ります。(拍手
  247. 楢橋渡

    楢橋委員長 明三十一日は、午前十時半より開会することといたしまして、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十一分散会