○原(茂)
委員 橋本代議士自身に渡したんですね。
そこでまた問題が中段に返ってくるわけですが、
前田さんの前の御説明を聞いておりますと、逆用されるおそれがない、あるいは
内容がいいからあげても差しつかえないという
判断が
中心になってこの種のことを行うのだと先ほど繰り返し御説明があったわけです。いやしくも
公安委員でありながら総
同盟の
会長で、いわゆる
警職法に反対する
立場の
中心棒である
金正氏、
国民会議の
総評と総
同盟の
二つの大きな柱が
社会党と手を握り合って、どんなことがあってもこれは撤回させる、廃棄させるのだという強い決意を私
どもと常に語り合っている
金正氏であり、その
立場をとっていることがまわりから見て、現象的にそれがわかる一番大きな看板は総
同盟の
会長であるということ、この総
同盟の
会長の話を、反対される
立場にある
自民党の代議士がほしいと言ってきたときに、これが逆用されるおそれはない、あるいはその
番組の
内容が非常にいいから謙虚な意味で
参考にしたいと要求になっているのだ、こう
判断をされるか、どちらかの
判断がなければ、
前田さんの言われる
建前から言うならば出すべきでないし、貸せないはずなんだ。書類なんかには重点を置いていない。貸してくれという、速記がほしいというその
内容を許可するかどうかを
判断するときには
二つのことがある。その
一つは、
内容が非常にいいから、勉強になるから、非常に
大衆、公衆のためにこれは利益になるんだというような
考え方であるのかどうかが一点。もう
一つは、これを出したときに、それが逆用されるおそれがあるかないか、これは実に大事なことですから、
前田さんのさっきの御説明は正しいと思う。逆用されるおそれがあるかないか、この
二つ。端的に言うならば貸し出しを許可すべきであるかどうかを
判断するのだという御説明が繰り返しあったのですが、その御説明の
立場から言って、前段に申し上げたように、総
同盟の
会長であり、
警職法反対の急先鋒であり、その
中心棒であり、
社会党と手を握って
国民会議を形成し国家的な世論を巻き起す大きな柱の
一つである総
同盟の
会長の
金正氏が、
テレビでいろいろものを言った、その
内容がいいか悪いかは別問題として、いやしくも先ほどから論議されているように、政治的な公正、不党不偏、こういうことを
中心に
協会は常に意を用いなければいけないという前段に立っていろいろの
番組の
編成あるいは
実施、こういうものをずっとやってきている
協会が、先ほ
ども聞きますと、非常にこまかいところまで、ついには
会長という
金正さんでなくて、
公安委員としての
金正氏を
考えたんだ、十年もずっとやっておる、今の
公安委員の中では一番古い人だ、こういうことからこの人を選んだんだと、政治的な公平という
立場に立って繊細な注意を払っておられる
協会、でき上ったこの録音というものは内窓はもとより聞いたり見たりしているはずの
協会の幹部が、この事件においていやしくもまっこうから対立して、
国会の中でも
警職法を
中心に体当り的に阻止あるいはこれを突破しようという運動を、
社会党、
自民党、両党において行なっていることもこれも
国民のひとしく認める事実であります。こういうような国内で院の内外あげて大きな
国民的な課題となって注目の的になっている政治的にも最も重要な課題を取り上げて、それを
中心に録音したものを——
社会党は防ごうとする、一方の自由民主党の、しかも長くこの
委員会の
委員をやっている橋本代議士にこれを渡すということが、果して政治的な公平、政治的に不偏不党ということが言えるかどうか。しかもこの録音そのものを簡単に聞かしたのではなくて、
前田さんはみずから進んで、速記におとりになったらどうですか、速記にして差し上げましょう——先ほ
ども説明がありましたが、全
放送に対して全部録音はとっていない。こういう
常識は私
どもにもわかります。しかし録音をとられるという
常識の範疇の中でとられている問題に関して、一般の聴衆、一般の
国民がぜひそれがほしい、録音が云々といったときに、ささいな問題ですが、一体
前田さんなり、あるいは
吉田さんなり、
協会の職員の諸公が、録音は聞いただけで大へんですから速記をおとりなさい、
協会でとってあげましょう、差し上げましょうというほどに、もしほんとうに善意で、
内容が非常にいいから、逆用のおそれもないからというような
建前から許可をする場合でも、一体そのような親切丁寧な、
協会の貴重な予算の中で、そうでなくても職員の賃金の低いことを嘆いている
協会が、率先して、自分の費用で録音を、しかも前例のない
理事の方から進んで、どうです、速記をとってあげましょうというほどの親切を、もしこれを他に及ぼしたとするならば、橋本さんだからやってよろしい、一般
大衆だからやらないということは、それこそ
協会の
立場からいって断じて許さるべきでないと思う。そのような前例がここに開かれて、今後一般聴衆の中から録音のあるものに対してこの種の要求があったときに、果してそのようなことが全部にわたって親切丁寧に、自分の費用で録音を速記化して、これを与えるというようなことができるかどうか。ささいな問題ではありますけれ
ども、このこと自体が、何かやはり現在の
権力を持っている自由民主党、時の政府である
自民党に対して
協会の幹部の頭のどっかに
権力にこびへつらうような、
権力に自分自身がこびへつらうのではないとするならば、何かその
権力から、正直に言っていただきたいのですが、圧力を受けて、そうせざるを得ないような
立場に何か追い込まれたという理由か、どちらかの理由でこの種のことが行われたのであって、このことが正しいことであるということには断じて私はならないと思うし、今後の
協会の運営の問題としても、このこと自体は、たった一回、あるいはわずか二十分の録音、これを速記をした費用にしても大したこはない、問題を局限すれば、それだけかもしれませんが、そのことの意味するものは実に重大でありまして、要するに
協会の不偏不党というものがこの段階において、このことをきっかけに音を立ててくずれていっているような、耳にごうごうたる音が私には聞えるのであります。このことは非常に問題であります。そうでなくても、今日国家、
国民をあげて心配をするのは、
警職法というこれを
中心にして、
社会党が反対党だからものを言うのではなくて、今日国家、
国民の全部の世論というものは、文化人から婦人団体から、あるいは労働者はもとより、農民の団体から、一般市民の間からもきゅう然としてこの
警職法阻止、これのかっての治安警察法、治安維持法に現われたあの大きな不当な弾圧というものが、今日まだまだレベルのそこまで上っていない警察官の認定によってのみ、この
法律がひとりで歩かされたその結果は、やはり多くの経験者もまだおりますが、そういった過去の暗い弾圧時代を想起して、何とかして身をもってこれを成立せしめない、こういう
法律を作らないようにということが、私は率直に言って
国民大多数の、過半数の世論であり、声であるとすら、私も
日本人の一人として今感じているわけであります。こういったさなかに、この問題を取り扱った最も公正でなければならない
協会が、しかもこの
公安委員の中から総
同盟の
会長であり、二十二日が
大会であるからという、いわゆる副次的な条件を加味してこの
金正氏を選んだという前段の説明があっただけでも私は警告を発したわけでありますが、しかも後段に至っては、昨日すでにこのような相対立する一方の
自民党に対して、その
内容がどうか知りませんが、一方的にこの申請があったからといってこれを貸した
態度、しかも親切にも録音は速記にすべきであるとわざわざ自分の方から提案して、その速記をとってまでこれに渡すというようなことが果して許されるものかどうか。政治的な公平を守っている
協会の
立場としてこれが正しいと言えるかどうか。私はもはやこの段階になると、
前田さんにお伺いするのでありません。これは当局の
立場、
責任者の
立場から一体このようなことが公平であると言えるかどうか。
局長は先ほど四十四条に抵触をしないと思う、こうおっしゃった。私も前段の
金正氏を選んだということは四十四条に抵触はしないということを論じようとは思いません。しかし今日この段階になって、この情勢の中で、院の内外を通じて相対立する
社会党と
自民党のこの係争の中で、
自民党には唯々諾々として、しかも親切きわまる
態度でこの速記を作り、渡すということが、果して政治的な公平なる
態度を
協会はとっているのだということが言えるかどうか。
協会はいわゆる厳正な、歯に衣を着せない
態度で今後重大な
言論の自由を守らなければ、
日本における
放送協会を作った創立の意義からいっても、このことの御
答弁いかんによっては、
協会の今後のあり方に対する重大な角度を作ってくると私は思いますので、どうかそういう意味から、はっきりした
態度というものを
監督指導の
立場にある当局からまず御回答いただきたい。