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1958-10-29 第30回国会 衆議院 商工委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月二十九日(水曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 中垣 國男君 理事 中村 幸八君    理事 加藤 鐐造君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       新井 京太君    岡部 得三君       岡本  茂君    木倉和一郎君       久野 忠治君    坂田 英一君       始関 伊平君    關谷 勝利君       中井 一夫君    中村 寅太君       野田 武夫君    濱田 正信君       細田 義安君    渡邊 本治君       赤路 友藏君    板川 正吾君       今村  等君    大矢 省三君       勝澤 芳雄君    小林 正美君       鈴木  一君    堂森 芳夫君       中嶋 英夫君    水谷長三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       中川 俊思君         通商産業政務次         官       大島 秀一君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁調         整局参事官)  花園 一郎君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部水道課         長)      田辺  弘君         農 林 技 官         (水産庁漁政部         漁業調整第二課         長)      菊地 荘弥君         通商産業事務官         (企業局産業施         設課長)    川原 英之君         参  考  人         (日本化学工業         協会技術部長) 大島 竹治君         参  考  人         (全国農業会議          所事務局長) 大坪 藤市君         参  考  人         (日本鉱業協会         専務理事)   樋口 重雄君         参  考  人         (全国漁業協同         組合連合会専務         理事)     岡  尊信君         参  考  人         (工学博士)  柴田 三郎君         参  考  人         (渡良瀬川鉱害         根絶期成同盟会         長)      恩田 正一君         参  考  人         (神奈川県内水         面漁業協同組合         連合会理事)  耳浦 善二君         参  考  人         (紙パルプ連合         会排水委員会委         員長)     大川 鐵雄君         参  考  人         (日本商工会議         所理事)    三輪 包信君         参  考  人         (千葉浦安町         長)      宇田川謹二君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 十月二十九日  委員永井勝次郎君辞任につき、その補欠として  赤路友藏君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公共用水域水質保全に関する法律案内閣  提出第三一号)  工場排水等規制に関する法律案内閣提出第  三二号)  水質汚濁防止法案赤路友藏君外四十六名提出、  衆法第三号)      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 これより会議を開きます。  公共用水域水質保全に関する法律案工場排水等規制に関する法律案水質汚濁防止法案の三案を一括して議題とし、審査を進めます。  本日は、三案について、午前には、学識経験者としまして工学博士柴田三郎君、日本化学工業協会技術部長大島竹治君、全国農業会議所事務局長大坪藤市君、全国漁業協同組合連合会専務理事岡尊信君、日本鉱業協会専務理事樋口重雄君、午後には、千葉浦安町長宇田川謹二君、渡良瀬川鉱害根絶期成同盟会長恩田正一君、神奈川県内水面漁業協同組合連合会理事耳浦善二君、紙パルプ連合会排水委員会委員長大川鐵雄君、日本商工会議所理事三輪包信君、以上の方々参考人として出席されることになっております。  この際参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところ御出席下さいましてまことにありがとうございます。ただいま議題になっております三法案重要性につきましては、今さら申し上げるまでもなく、本委員会といたしましても、法案審査に入ります前にも再三調査をいたしたこともあり、法案審査に当りましても、これが農業水産面に及ぼす影響並びに産業各部門に及ぼす影響重要性考えまして、当局に対し質疑を行うばかりでなく、学識経験者並びに利害に関係の深い方々により御意見をお聞きすべく、本日御出席を願った次第でございます。参考人方々におかれましては、忌憚のない御意見をお述べ下さいますようお願いを申し上げます。  ただ、時間の都合がありますのでで、初めに説明をされる時間は、一人当り大体十五分程度にお願いをいたしまして、後刻委員各位からの質疑にも十分お答え下さいますよう、お願いを申し上げます。  それでは、まず大島竹治君にお願いいたします。
  3. 大島竹治

    大島参考人 大島でございます。お手元産業界意見書と申しますか、「産業排水規制立法に関する意見」と申します意見書をきよう公述かたがた議会方々に御提出いたしたいと思いまして持って参りましたものがお手元に参っておりますから、ごらん願いながらお話いたしたいと思ます。  産業界としまして日本化学工業協会日本化学繊維協会紙パルプ連合会日本石炭協会日本鉄鋼連盟日本鉱業協会石油連盟、以上七団体、これはこの問題について一番関係のある産業界団体かと存じます。それでそれらの方々が慎重にこの問題を検討いたしまして、この問題に対する一応の意見をまとめましたものもお手元に差し上げたわけであります。これについてこれから若干御説明させていただきます。この問題につきましていろいろ論議されておりますけれども、この問題についての長い歴史がございますので、その間に産業界がいろいろ練ってみまして、そうしてこの問題の本質についてよく勉強したつもりでございます。その結果皆さんとして、この問題の基本的考え方はこうではないかということをまずきめまして、それからそれについての観点から法案につきましてこういう御希望、修正その他を申し上げるということでこの意見書ができております。  まずこの意見中心をなします思想といたしまして、これに書いてございますが、大体三つあげたわけでございます。  その第一は、この問題に関係される方々は、どうか一つ農業ならば農業水産ならば水産産業ならば産業というふうに片寄らずに、国家的の視野でこれをよくごらん願って、問題の処理に当っていただきたいということがまず第一であります。それはたとえて申し上げますならば、ここに川がございまして、その川が大へんよこれて参った、そのときに川下の方に一軒か二軒の漁業家があって、その上にたくさんの産業家があったと仮定いたします。そうしました場合には、その一軒か二軒の水産の方のために、非常に膨大な設備産業家がしなければならないということはきわめて起り得るわけでございます。そういうことは国家的に非常に不経済だから、その二、三人の方に、極端な言い方を申しますと、どういうふうに生活の方針を立てていただくかということについてみんなで相談いたしまして、そうして産業にそう不経済でなく、その方々十分生活にお差しつかえないように考えるという考え方でございます。もう一つ言いかえますならば、逆に今度は漁業が非常にその産額が多うございまして、その漁業で圧倒的なたくさんの人が生活していらっしゃる、しかし同時にまたこれは工場適地としても非常にいいという場合には、工業家の方でなるべく遠慮を申し上げて、かりにやるとすればその保障をよくやってやらなければなりませんし、それにたえるなら、それでよろしゅうございますけれども、そうでないならば工業家の方で、そういう場所をなるべく避けるという方向に持って参る。それからまた住宅として非常にいいところに工場を作るということについては、これは遠慮しなければいけない、こういうような観点からお考えおき願いたい、こういう建前で、まず第一の思想を申し上げた次第でございます。  それから第二の問題といたしまして、この問題は、どこの国でも一応水質基準をきめて参るという方向に参るのでございますが、こちらもその水質基準を作るという法律でやろうとおっしゃるので、これはしごくもっともな話でございます。そこでその水質基準をきめるに当りまして、各国ともケースバイケースでやっております。ケースバイケースと申しますと、川下が大して被害を受けず、実害がないといったような場合には、何も非常にむずかしい廃水防護設備をするに及びませんので、そういうものには別に規制のきめを作るには及ばない、しかし下に非常にたくさんの住民がおられましてお困りになるという場合には規制して参るというようなことで、ケースバイケースとして、川の川上と川下と中間とは違って参る、これは各国ともとっておるやり方でございますので、そういうふうにして参る。そうしてまたこれは非常に慎重に実害のもとをよく調べてやりませんと、非常に不経済な、危険なことになりますので、実害を起しているのは果して何であるかということをよく調べてやっていただかなければならぬ。それがためにどうしてもここにラボラトリーというものは入り用だろう、それも、今度はあそこのラボラトリーに頼もう、今度はあそこのラボラトリーに頼もうということでは、その人たちがなれておりませんし、おそくもありますしますから、どうしても常設の、中央の権威あるラボラトリーを設定していただきたいということが第二でございます。まず実害のよって来たるところをよく調べて、それが農薬であるのか、糞尿であるのか、工場であるのか、工場であったならばその工場はどこの工場が害をなしているのか、ということは正確にはわかりませんが、科学的な調査をするならば、かなりよくわかるわけであります。現に工業大学先生が今やっておられますが、あの研究を方々でやっておるわけでございますが、そういうようなことがまずスタートでなければならない。それには何々大学先生ということでなくて、やはりニュートラルであり、それを業務となさる官庁のラボラトリーというものがどうしてもほしいということでございます。そのラボラトリーは、第一にはもちろん水産試験場であり、工業試験場であって差しつかえない。皆さんの信望が得られるならば、どちらでもけっこうなんでございますが、ともかく中央にそういう権威あるラボラトリーを持って、そのデータによってやる。そのデーターによってやりますならば、工業家というのはみなインテリでございまして理に服しますから、そのデータが違っているならだれでも実験はできることでございますので、その実験データのここが違っていやしませんかということを言えばいいのであって、それでもし自分がその害の主たるものであるならば、これはもう一たまりもなくあやまってしまうということになりますから、そういう方向に理詰めで持って参るというふうにしていただきたい、これが第二でございます。  それから第三番目に仲介とか仲裁とかあっせんとかいう言葉がいろいろ出ておりますが、その一連の問題につきまして申し上げたいと存じます。これはこの問題の一番中核をなす問題だろうと私は考えております。その場合に、経済企画庁で御計画なすったといいますか、政府案の方では、府県にこの仲介の主点を置いておられます。これは府県が別に悪いわけではございませんが、いろんな振り合いもありしますので、この点はどうしても中央に権威あるラボラトリーを一応頭に置きまして、そしてなるべくなれられた、世間の振り合い外国事情もよく御存じになっておられるところでよく御研究なすって、その実害データによって仲介の労をとって下さり、その仲裁あっせんの労をとって下さるということにして下さいますと、産業家は納得づくで非常にこのことはよく参る。また被害者側にしましてもその方がすっきりするということになると思いますので、そういうような科学的のデータをもとにして参るというようにしていただきたい、これが私どもの申さんとするこれに対する基本的な意見でございます。特にその最後の問題、科学的データをとるようにお努めいただきたい。必ずしも正確にきちっと出なくてもよろしいのであります。大体の傾向が指向されればいいのであります。正確に出てくれば一番いいのでありますが、なかなかそれはわからぬという意見もあるかもしれませんけれども、かりに裁判所にこれを持っていったとすれば、どうしてもそうしなければならないわけでありますから、それが全然できないということはない、こう考えるのであります。  これが基本的な意見でございまして、これを細部について申し上げるわけでありますが、それについて意見を一応三つに分けて申し上げたいと思います。三つと申し上げますのは、水質基準をおきめになる場合の希望と申しますか、そういう意見でございますが、これが一つ、もう一つ施設を作る場合の意見、これが二つ目でございます。第三番目に仲介仲裁あっせんというような一連紛争を静める方の問題についての意見、この三つに分けて申し上げたいと思います。  まず第一の水質基準をきめる場合でございますが、これはどれを基準にするか、こういうことになりますけれども、できることなら非常によくするに越したことはないのであります。しかしながら文明国においてはどうしても川というものはよこれがちでございます。糞尿であり、工場であり、いろいろな点で、どうしてもそういうふうになりがちでございます。そこで各国ともやっておりますことは現状を維持するということで、よくやっていますところでも、現状は変るものであるという仮定をもってかからないと、この問題のプラクティカルな解決ができないという意見がございます。しかしいずれにしましても現状維持ということに重心を置いて参るということで、閣議でもそういうような御意見が多かったようにも伺っておりますが、これがモーラリーにはあくまできれいにするということが入り用であるということであります。  それからその次に申し上げますことは、先ほど申しましたケースバイケースでぜひやっていただきたい。ケースバイケースでなければ非常な負担というものがかかりますので、政府案でもそのようなお考えのようでありますが、それでけっこうでございましてこれをしっかりやっていただく。アメリカでもよくやっておりますところは、法律のような文面といいますか、これを条例のような文面にいたしませんで、委員会の結果をそのままあれして、変化があったらその変化に応ずるというような弾力性のあるものにしているところが割合よく成功していますから、できるならその方向に行きたい、そういうことでございます。  それからその次に先ほど申し上げました汚濁源をよくお調べになって、その汚濁源をお調べになった結果、ここの工場が一番大きい、その次はここだ。それには水質はこれくらい保たなければならぬ。従ってあなたのところはこれだけプラスのPHをここから持ってくるから、このPHをどこまでにしなければいけないというような規定をすれば、産業家は一たまりもない。これは理の当然でありますから、そういうふうに持っていっていただきたい。それで汚濁源をよく御調査なさって、その原因の端がどこが一番大きくてその次がどこだというふうに順序を立ててやっていただく。それは正確にはできないのでありますが、しかし大体の傾向科学者ならば十分できるのであります。ですからこれは常置の研究所をお作りになりましたならば十分できると思います。それですからこの辺をお考え願いたいということであります。それで前申しましたように、そのためにラボラトリーがぜひとも要るということであります。  それから施設の問題でありますが、施設につきましては漸進的にやるということにしていただきたい。これは非常に金のかかることでございまして、中には非常に簡単にやっているところもございます。私昨年ちょっと外国を一回りして、この問題だけを調べて参ったのでありますが、そのときの様子を見ますと、アメリカではかなり金持ちの会社はよくやっております。しかしながら強制力でやっているところは、それほどきびしい装置で進めるわけではございません。欧州に至りましては、ぜひともやらなければならぬということはみんな言っておりますし、工場も言っておりますが、事実上はそう大きな装置をやっているわけではございません。日本は非常によくやっている方なんであります。しかし普遍的でないことは事実であります。それは各国ともそうであります。従ってこの際そう大きな装置を早くやれということは、事実上この不景気ではありますし、できない。同時にまたわれわれは産業といたしまして、いかなる産業も今日としては日本独自にやるというわけに参りません。必ず外国との血みどろの競争のもとにやっているわけであります。従ってよけいなハンディを持つということ、なかなかむずかしいということであります。この辺を一つお含みおき願って、漸進的にやっていただきたい、こういうことであります。もしそれを御調査の結果、ある工場がこの汚濁の主要な部分である。その汚濁が非常に激しくて漁業ができない、農業ができない、農業が非常に悪くなったということでは、当然急いでやらなければなりませんが、その場合にはその会社事情を参酌されまして若干の助成金をやっていただきたい。そうしませんと事実上できないということになるということでございます。  それからその次に、これに対しましては政府の方で十分お考えになっていらっしゃるようであります。政府提案の分も社会党提案の分も、この点については十分に御配慮がありますが、この施設は生産に積極的に寄与しているわけではございませんので、補助金それから税の減免、それから特別償却あるいは償却年限を最大にする。それから低利資金の融資というようなことを一つ考え願いたい。この点は各社会党案にいたしましても、政府案におきましても、十分お考えおき願っている。こう考えます。  それからその次の一連——仲裁と書いてありますが、これは仲介と直していただいた方が、政府案の方には仲介となっておりますから、そういうふうにでもしていただいておいた方が便利かと思います。この仲介員が、問題の場合に寄せて二で割るというような方式だけは絶対にやめてもらいたい、こういうことであります。それでそのためにどうしても何と申しますか、実害調査ということがどうしても根底にならなければならないと思うのであります。それでないと寄せて二で割るとすると、騒いだ方が得だということになったのでは、これは秩序の上から見てもはなはだ好ましくないことで、法律を作る基本的な目的がだめになってしまうと思います。実はイタリア法律があるにかかわらず非常に紛糾しておりまして、日本と同じことであります。フランスもややその傾向にございます。この原因はどうかというようなことについて、私は現地でもかなり聞いてみたのでありますが、よく調べてみますと、結局実害調べるところの調査機関というものが、常置的によくできておらぬというわけであります。それはフランスイタリアではその場合訴訟ですから大学先生に頼むわけですが、なかなか遠慮もありますし、なれもしないから、すぐは返事はできない。そうしますと産業家の方ではどうしても産業をやめるわけにいかないのでありますから、調停裁判を頼んでおりますと時間がかかりますので、それでとうとう法律にそのような配慮があるにかかわらず、意味をなさなくなって参るということになって参ります。これが紛糾の大きな原因だろうと思う。従ってこの場合にどうしても実害調査というものはできる範囲内——これはみな常識をお持ちですから、そう正確でないと言ってあくまでがんばられる方はございません。大体の傾向はなるほどそうだというところの、常識から見てのアンダースタンドというものは当然できますから、そういう方向に進めていただきませんと、この問題は紛糾を続けて参る。だからどうしてもそういうような方向でやっていっていただきたい。従ってこの政府案の中に公共用水に対する仲介の話が出ておりますが、これは今のような理由からしまして、また水質審議会の権威をそこなわないという意味からいたしましても、これは傾向の問題でありますが、どうしてもそういう手順のついたところだけを指定水域としていただきたい。つまりこれを指定水域ということにお直しを願いたい、こう存ずるのであります。その他そういうようにいやしくも政府として仲介の形をとるというような場合には、単に寄せて二で割るということがどうしても避けられないという場合は別ですが、そういうふうな方法があるのでありますから、そういう手順のついたものについてだけ、法に則して仲介をやっていただいて、その他の場合は現在通り大体紛争の起きたところから水質基準をきめて参る。そういう手順で、初めは不なれで時間がかかるでしょうが、そうは時間がかかるまい、こう考えるのであります。  それから以上申しましたことをやるために、どうしても中央に権威あるラボラトリーというものが要る。これがわれわれの所見の中心をなしております。それは何も現状のものでいけないというのでございませんで、できるなら中央独立機関がいいのでありますが、これは私個人考え方でございますが、この問題は国の水産試験場のいろいろな話を、かなり詳細に私でも聞いております。その聞いております範囲では、今までは実に公平にやってきて下すったと存じております。従って私個人では、少くとも当面水産試験場でもってけっこうだと思う。しかしこれは業界としてまとまっておりません。まだ危惧を持っていらっしゃる方もございますから、まとまった意見とは申せません。しかしこれはおよそ信用の問題でございますから、私はそう感じております。  その他雑件といたしまして、今度の政府案によりますと、一工場数省のいわば管理を受けることになるので、これは化学工場なんかですといろいろなものをやっておりますから、農薬もやり、医薬もやり、それから一般化学工業もやるということになっております。そうかといって廃水というのは原則として一まとめにして、そしてお互いが中和し、それから浄化装置を作るにしても、一つでやるというのが一応原則でございますので、そういうふうにやっておりますから、数省にわたるということを協定によって避けていただきたいということであります。それから原則的に申し上げるならば、この問題の基本的な問題は、何としましても各国常識としまして共同下水都市下水に待つほかはないというのが一般のきめ手でございます。これは日本ばかりに起きている問題ではなくて、各国に起きておる問題でございまして、沿岸漁業においては、大小はあっても必ず起きている問題でありますので、そこでみんな苦しんでいる結果の意見は、結局都市下水共同下水専用排水設備を作る以外にはないというのが常識のようであります。従って私は最近のことは知りませんが、通産省で前に工業都市整備法案ですか、そういうものを御準備なすったことがありますが、ああいうインダストリアル・ゾーンというものを特定する法律を急いでいただきたいと思います。そういたしますと、そこは特定地域といたしましてその配慮が十分にできます。私はこれ以外にいい方法はないと思っているのですが、そうしませんと国全体の体系から見ても、将来非常に困ることになるから、こういう法律を急いでいただきたい。インダストリアル・ゾーンを決定して、その決定したところでは共同排水の設備をし、また海等については廃液に対するいろいろな配慮は各省で御協定願える、こういうことになりますので、安心して工業がやれるように一つ仕向けていただくのがいい行政ではないか、そう考えるのであります。  それからその次に、この法律がいかなる形でもできました場合には、水質汚濁に関する地方条例が方々にございます。これは当然その線に沿って改廃されるべきものと考えます。この辺を一つお含みおき願って、一応常識的にそうだと思いますが、これを一つ念を入れて申し上げることが必要かと存じまして、申し上げる次第であります。  以上、これに一番関係します産業界が寄りまして相談しました意見を、概略的に申し上げた次第であります。
  4. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 次に大坪参考人お願いをいたします。
  5. 大坪藤市

    大坪参考人 全国農業会議所の大坪でございます。実は、本日水質汚濁の問題につきまして参考人としてお呼び下さいましたことは、この上もない光栄に存ずる次第でございます。その点厚く御礼を申し上げておきたいと思うのでございます。  実は水質汚濁の問題は非常にむずかしい問題でございますので、私自身、実は自信がないと申し上げた方がけっこうかと思うのであります。満足なる意見を申し上げかねることを冒頭におわびしておきたいと思うのであります。  ただいま大島先生からいろいろお話があったのでございますが、御承知のように諸外国でも水質汚濁の問題は相当やかましいのでございますが、まして日本のように狭い国土にたくさんの人間が住んで、しかも多くの産業が乱立をしておるというような情勢下におきましては、害する方と害される方の利害というものが直接対立して参る、従って水質の問題につきましても年々千件をこえる問題が起っておるような事情であるのでございまして、この点については水質汚濁の問題が非常にやかましい問題であります。しかしながら非常に利害関係が対立いたしておりますので、しかも問題の本質が非常にむずかしい問題でございますので、本問題についての解決と申しますか、政府としての態度が今日まではっきりしなかったと考えるのでございます。  そこで私としましては、法律の規定で申し上げますと、公共用水域水質保全に関する法律案の第二条「何人も、公共用水域及び地下水の水質保全に心掛けなければならない。」こういうような宣言、これは訓示的規定でございますので、何ら罰則を伴うものではございませんけれども、国民としての態度、国家としての態度といたしまして、水質保全に国全体が協力していかなければならない、こういうふうな宣言と申しますか、この規定は高い姿勢でありまして、提出法律の第四条にもあるようでございますが、こういうふうな態度につきましては、深甚の敬意を払いたいと考えるのでございます。ただ具体的に申し上げると、公共用水域水質保全に関する法律案の第四条に「経済企画庁長官は、公共用水域のうち、当該水域の……」という規定がありまして第三項に「前項の水質基準は、第一項の指定の要件となった事実を除去し又は防止するため必要な程度をこえないものでなければならない。」こういう規定がございます。この規定はきわめて低い姿勢である。従ってこういうような水質基準でございますれば、農民なり漁民なりに被害を受けてもよろしいということを規定しておるのでございます。この点は非常に低い姿勢かと思いますが、しからば飜って水質基準とは何であるか、極端な言葉をもって申し上げますれば、水質基準は何ものも害せない真水である、この規定以外には実はないかと思うのでございますが、この点についての研究と申しますか、現在の各関係方面における研究の程度では、水質基準というものについて、おそらく自信がないのであろうということを考えるのでございます。真水でなければならないという基準であれば、これはだれでも設定できますが、真水以外のどういう水質基準を求めたらいいかということにつきましては、現在の研究段階におきましてはおそらく満足すべき標準というものはなかったように考えますので、現段階においては第四条の第三項の規定で満足せざるを得ないのじゃないか。もちろんこの問題につきましては、われわれとしては主として被害を受ける立場にございますので、できるだけ満足なる基準を求めたいのでございますが、日本経済の全般的な発展というような点から考えますれば、そうむちゃくちゃな理想的な水準を求めるわけにいかぬじゃないかと実は考えたのであります。この点につきましてはこういうような研究と申しますか、大島先生から大いにラボラトリーを充実すべしというお話がございましたが、私も全くさように考えるのでございまして、一応幼稚園みたいな法律を作っておいて、それに合せるように研究を充実して参りまして、順次法律の内容を充実して参る、こういうこと以外にないじゃなかろうか、かように考えておるのでございます。いろいろ御意見を申し上げたいのでございますが、非常に低い姿勢の法律のように考えるのでございまして、その点については、私どもといたしましては満足するものではございませんけれども、一応こういうような法律ができたということで、第一段階としては、まあ満足せざるを得ないのじゃないか。同時に、今後この問題につきましての試験研究機関を充実して参りまして、順次そういうような基準についてのはっきりした科学的な理論をもちまして体系づけて参る、こういうこと以外にないじゃなかろうか、かように実は考えるのでございまして、はなはだ満足のいくようなあれでございませんけれども、一応の私の見解といたしましては、さように考えるのでございます。
  6. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 次に、樋口参考人お願いをいたします。
  7. 樋口重雄

    樋口参考人 私は日本鉱業協会専務理事をいたしております樋口でございます。  私の協会は鉱山関係の協会でございます。先ほど大島さんから御説明がありました七団体の連名の意見書にも名前を連ねております。この七団体連名の意見書は、私どもの協会といたしましてももちろん全面的にこれを支持いたしたいと考えておるわけでございますが、私の方の業界、ことに鉱山排水の問題につきましてはちょっと一般工場と変りました特殊性があるわけでございますので、その点につきまして簡単に意見を述べたいと存じます。  公共用水をきれいに保つということにつきましては、もちろん私どもも賛成でございまして、水をよごして恥はないというような気持はもちろんないのでございます。できれば流水は常にメダカも育つというようにきれいにいたしたい心持はもちろん持っておるわけでございます。この趣旨からいたしまして、このたびのただいま議題になっております三法案の立法の精神に対しましてはもちろん賛成でございます。ただしこの流水の正常を保つということと産業、ことに地下資源採掘の鉱業の調整という点に関しまして、多少の修正の意見を述べてみたいと存じておるわけでございます。その修正の意見と申しますのは、これは工場関係法案にはございますが、この公共用水域水質保全に関する法律案にはございません事項でございますが、それは国庫補助並びに低利資金融資のあっせんの問題でございます。鉱山関係の鉱廃水問題の特殊性につきまして二、三触れてみたいと存じますが、鉱山の存在いたします地帯は、元来多少とも水がよこれているところが多いのでございます。これは一般の鉱山でもそうでございますが、特に硫黄鉱山なんかに流れております水は、多少とも自然水がすでに硫酸分でよこれておるということが多いわけでございます。また過去において非常に古い山主が掘った跡の鉱津が堆積している場合がありまして、雨水がそれをぬらして流す、その水が自然とぬれてよこれてくるというようなことも非常にその例が多いわけでございます。  第二に、この鉱山関係では水量というものを人為的に調節ができないという点があるわけでございます。工場では大体においてその使用水量というものは一定しておると存じますが、鉱山におきましては坑内水の流量というものが一定しない場合が非常に多い。水の穴にぶつかりますと非常に多量な水が流れてくる。また雨が多量に降りますと坑内水が非常に多くなるというようなことがございまして、処理水量が一定しない。従いまして、鉱山の鉱廃水の問題では、これを最高水量時に近いときに合せて大体鉱廃水処理のプラントを作らなければならないというようなことがありますために、その費用が非常に多額になるという特殊性もあるかと存じます。  第三に、都市下水道の利用ができない場合が多い。都市下水道の発達はまだそれほどに発達もしていないようでございますが、たとえばこれが国家または公共団体の費用で、都市の下水道が完備いたしたとしましても、鉱山というものは、御承知のように、山間僻地にある場合が多いのでありまして、こういった公共施設を利用することができない、全部自分で廃水は処理しなければならない実情があるわけでございます。つまり廃水の共同処理ができないという例が多いのであります。  次に、鉱山は主として上流地帯にあるのが主でございまして、下流地帯のように、下水のほか、農薬その他ですでによこれている地帯に存在するということはまれであります。また水がきれいなところにあるものですから、少しよこれてもすぐに目立ち、その地方の騒ぎのもとになりやすいというような傾向があるわけであります。  次に、鉱山は山の中にあることが多いのでありまして、従って立地的に非常に規制されるという二面がございます。ダムを作るとか、沈澱池、中和槽を作るという面におきましても、立地的に非常に制約されるために費用が比較的多くかかるというような特殊性もあるかと存じます。  第六には、鉱山には御承知のように、現在鉱山保安法というものがございまして、すでにこういう鉱廃水の除外施設につきましては、鉱山保安法によって作ることを強制されておりまして、現在鉱山においては大なり小なり、そういう施設を持っているということが鉱山関係の鉱廃水に関する一つの特殊性ではないかというふうに考えております。そういう状態でございまして、鉱山の鉱廃水処理に関する施設というものには、非常に莫大な費用がかかるわけでございまして、ある大鉱山におきましては、年の利益が四、五億の会社が、鉱山のダム、堆積場を作るために八億円程度の金をかけているというような例もあるわけでございまして、非常に多額な費用がかかるのでございますが、こういう施設の建設に国庫補助並びに資金融資のあっせんというような規定が、公共用水域水質保全に関する法律案にはございません。工場工場排水等規制に関する法律案の中にはそれがございますが、この法律案は鉱山には適用がないのでございまして、ほかの工場よりも費用のかかる鉱山のこういう施設に関して、こういう規定が法律上欠けておるということは、鉱山関係といたしましては非常に遺憾に存じている次第でございます。従いまして、この公共用水域水質保全に関する法律案の中に、こういった国庫補助並びに資金確保の規定をぜひ盛っていただきたいということを希望するわけでございますが、もしもかりに何らかの事情でそれができないということでありますれば、鉱山保安法の中にそういう規定を設けていただきたいというふうに考えております。もしもそういうふうに国庫補助その他のことが実施されませんと、せっかくこの法律を施行いたしましても、その実効が上ってこないのじゃないか。ある山におきましては、この法律が施行されて厳密にこれをやられたら、もう仕事ができないということを言って嘆いておる山も多々あるわけでございます。なおこういう施設をやるものは、こういう施設は生産増強に直接役に立たない施設なものでございますので、一般の融資の対象にはならないというような状況でございます。通産省におきましては、ある程度この国庫補助の予算も計上されておるように聞いておりますので、ぜひこの予算が通過されるように希望いたしますと同時に、現在通産省の考えとしては、この国庫補助は中小企業を対象として主として考えておるというように承わっておるのでございますが、この点につきましては大企業でも中小企業でも全然意味は同じだと存じますので、大中小にかかわらず、国庫補助並びに資金融資の方はこれを適用していただきたいということが、おもな希望でございます。  次に課税関係のことでございますが、これは先ほど大島さんからもお話がございました除害施設に対する特別償却、これは現在鉱山におきましては廃滓の堆積場は五年償却になっております。従来は二十年、三十年の償却でございましたが、いろいろ大蔵省とも折衝した結果、現在は五年の償却になっておりますが、この堆積場以外の除害施設に対する償却は普通の償却率を適用されておるわけでございます。除害施設はこの廃滓堆積場と全然同じ意味施設でございますので、これも廃滓堆積場同様、少くとも五カ年くらいの短期償却を認めていただきたいというふうに存じております。  なお固定資産税の件でございますが、これは鉱山では現在全部免税をされております。従いまして工場でも同様の取扱いにすべきではないかというふうに考えます。なお除害施設に関する不動産取得税の免税についても御考慮を願いたいというふうに考えております。  次に希望意見を二、三述べさしていただきたいと思います。それは水質基準のきめ方でございますが、先ほどもお話がありましたように、工場、鉱山が増加していく、また生産力が増強するに従いまして、どうしても水はよこれる傾向にあるわけであります。また人口が増加すれば、下水道の汚染も増加して参りますし、農業が化学的な肥料によって合理化されていけば、農薬による流水の汚染というものは避け得られないわけであります。従いましてどうしても水はよこれる傾向にある。これを阻止するだけでもなかなか大へんな仕事だと思うのでございますが、これを一ときにきれいにするということは実際問題としてはできないと思いますので、この水質基準のきめ方、これは水質審議会というものが設置されて、そこでやられるわけでございますが、そのきめ方は現状維持ということをまず第一目標にしていただきたい。それから漸次に改善をしていくという方向に向うべきではないか。最初から厳格な基準をきめられたのでは、せっかくのこの法律の効果というものが実効は上らないのじゃないかというふうに考えられます。それから水質審議会というものがもしも設置されました場合には、その委員の中には各方面の意見を代表する方が集まることはもちろんであると存じますが、産業界意見、また鉱山業界の意見を十分に反映するような機構並びに運営にしていただきたいということでございます。それから先ほどからお話もありましたような権威ある研究所または試験所の設置によりまして、科学的な基礎に基いた裁定をやるということは、ぜひ必要だろうと思います。なおこういう機関で諸産業の調整、振興、共存共栄というような国民経済的な見地から水質基準を研究していくということが、絶対に必要なのじゃないかというふうに考える次第でございます。  簡単でございますが以上をもって終ります。
  8. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 次に岡参考人お願いをいたします。
  9. 岡尊信

    ○岡参考人 私は全漁連の専務理事の岡尊信であります。大正十二年に当時の衆議院及び貴族院の有志の議員さんたちによって水質保譲協会が設立されまして、水産資源の保護、水質の改善が叫ばれ、以来三十五年であります。そうしてその間水質汚濁防止法をぜひ制定したいという要請が民間から起ったのでありますが、今日政府提案として二法案、また赤路友藏先生外四十六名提案の法案がこの国会に上程され、審議されるようになったことに対しましてはわが国産業の円満なる発達のためにまことにけっこうなことでありまして、一日も早く成立することを要望いたします。なお今日まで政府当局の並々ならぬ御努力、あるいは政党関係の非常な御努力に対して、この機会に敬意を表します。  最初にこの公共用水域水質保全に関する法律案及びもう一つ法律案について申し上げます。  私ども水産関係団体中央の二十二団体、地方の数千ある組合その他の団体が一緒になりまして、水質汚濁防止対策推進本部というものを結成して、そうしてその法律を作るには基本的考え方として次の五項目をもちまして方々に要請をしたのであります。  すなわち、第一は水質行政に関する独立専管の行政機関を設置すること、第二は、水質基準の設定については単に水質現状維持といった観念で設定すべきでなく、少くとも積極的な改善を意図して決定すべきである。紛争あっせん、調停機構を整備すること、これが三であります。第四は、本制度運用のためには水質科学研究機関の総合的把握による活用が絶対に必要であること、第五番目は下水道の整備計画並びに工場廃液除害施設の設置に対して国は財政的、金融的、技術的に援助をしなければいけない、この五項目をもって要請したのであります。  以上の基本的正要望事項に照らして、本法案に対しまして意見を申し上げます。法第一条、第二条の水質保全という字句は、水質汚濁規制とか、汚濁の防止とかいう消極的の意味でなくて、汚濁されている現状水質を積極的に改善して、何年かかるかわかりません、五年で済むか、十年で済むか、わかりませんが、ついには自然水に引き戻すという意味であれば、私は賛成であります。もし水質現状をこのままにしておいて、これ以上は汚濁しないという現状維持考えであるとすれば、この法律全体の運用を基本的にあいまいにするおそれがありまして、私は賛成できません。  今、東京湾の海水の汚濁現状は、アンモニア性窒素が一リットル当りで六百三十五ガンマ、普通海水の十倍ないし六十倍程度であります。大腸菌は一CC当り十万個あります。糞尿処理基準三千個に比較すれば三十三倍になっております。CODすなわち化学的酸素の消費量は、正常の海水の二十倍もの二十PPMにも汚濁されております。この現状を続ければ、ノリだけについて見ましても、千葉県の生産は五十億円ですが、これに東京、神奈川を加えれば実に百億円近いところのノリが全滅するということになったといたしましたならば、東京湾だけで数万の漁民がこれによって失業し、生活することができなくなります。また大阪の淀川について見ますと、大阪市水道局の調査の発表を見ますと、上流である鴨川の京都市の八割の未処理の下水、また大部分の未処理の工場の廃液が淀川に合流して、大阪府内では硫酸、硫酸ソーダ、苛性ソーダ、顔料、染料その他有機物を含む工場廃液がこれに加わりまして、大阪府民の上水道源はもう限界に達しております。貝類は死滅し、水中生物は繁殖せざるばかりでなく、清水を必要とする化学工業、世界に誇る薬品工業は地下水によらなければならず、地下水を汲み上げるために地盤が沈下して、毎年九センチずつ大阪の地盤は沈下をして、現に大阪湾近くにある工場は海中に沈没して煙突だけが水上に出ておるということを最近私は見てきました。この現状をもし十年も続けますならば、京阪神地方は日本の工業都市として不適地となる、こういうようなことから考えてみましても、現状の維持であるということはこれはとんでもない間違いである。私はこの法律が施行されれば、無理に現状維持だとか、あるいはさきのような裁定のなにを作るというような規定を入れないでも、漸次きれいになっていきます。ただ予算の関係で早いかおそいかで、漸次きれいになっていくのでありますから、無理にこの農水産被害を受けるような人を刺激するような条文や決定はなさらないでもいい、またなさらない方が賢明だと私は考えるのであります。  その次に、第三条第二項の水質基準は、同項の規定によれば、事業場から指定水域に排出される水の許容基準であると法律に書いてあります。すなわちこれは排出水基準または放流水基準と私どもは言っております。これだけを日本法律は採用しておりますが、さらに放流される指定水域すなわち河川、湖沼の水の基準をもあわせ考えなければいけないのじゃないでしょうか。これはまず川の基準を、そんなりっぱな基準でもない、現状に近いこれを計画的に五年目にはこの基準にするとか、十年目にはこの基準にするというような腹がまえをきめて、これは基準でなくてもあるいは行政措置としておやりになるかもしれませんが、その汚濁源にさかのぼって排水基準というものをお作りになるという方法をとればいいのではないか。欧米の例を見ましても、水質基準そのものを設定することには可否があります。水質基準を作ったらいい、作るのは理論的には当然いい。しかし作るということによって長年月を要し、すなわちこれが権利化され、これが紛争の種になるというようなことはいけないから、全然作らないという趣旨も見受けられます。すなわち先ほど大島さんの言われたケースバイケース、タイム・バイ・タイムでこれをきめていけばいいじゃないかという議論もあります。その議論は別としまして、私はこの際流水の基準というものの腹がまえを、まず計画的に政府が三年目、五年目、七年目、やがては清水に近いようなものにするのだという心がまえで、水質基準をお作りになることがいいと思います。  次に、第四条の指定水域の指定要件であります。指定水域をきめるときの指定要件、第四条には、「水域の水質汚濁原因となって関係産業に相当の損害を生じ、若しくは公衆衛生上看過し難い影響が生じているもの又はそれらのおそれの高いものを、水域を限って、指定水域として指定する。」汚濁されて、うんとよこれ、関係産業に損害がある水域でなければ指定できない、こういうふうになっております。すなわち、汚濁されてから指定水域に指定して、水質基準をきめて保全に心がけるということでありまするが、たとえば水産業でいえば、現在及び将来において重要な漁場である水域、農業考えれば広大なる農耕地のあるところ、工業でいえば、立地条件がよくて工場誘致に適当である土地、あるいは上水道源として適切なところの水域が現在では清浄な水源があっていまだ汚濁されていない、すなわち第四条の指定要件たる汚濁と損害はないが、これを指定水域として公共用水汚濁を未然に防ぐ必要があると思われるのでありますが、そこでこの指定要件は再考を願いたい。たとえば先般ありました益田市のあの大きな紛争事件、あるいは鹿児島湾の紛争事件、宮崎県の紛争事件、これはいずれもパルプ工場を建設しようとする計画があっただけなんです。現在ではその土地の川も海もよこれてはおりません。きれいですけれども、もし工場が建ったならばこの水が汚濁されて困るという恐怖からあの騒動が起きたのであります。あの恐怖から起る騒動を未然に防ぐためには、よこれないところでもやらなければいけない。たとえば東京湾に埋め立てを作って、ここへ大きな工場地帯を作るというならば、まず第一公共団体がこれを指定してもらって、下水施設あるいは工場から出る廃液の処理施設というものを同時に考えて、ここへ来る鉱工業者も安心して出てこられるようにする必要がある。ただ電気と水だけを考えないで、汚水処理施設というものを同時に考えて、工場誘致法という法律を別に作って、ある特定の地域に工場を作る場合には、まず第一に汚水処理施設をするということを、公共団体に責任を持たせてからおやりになったならば、農業者も水産業者も鉱工業者も喜んで安心して工場の誘致ができる、こういうふうに平素私は考えているものであります。  また、第四条第二項によれば、水域指定と、水質基準の決定が原則として表裏一体のようになっております。同時規定となっておりますが、水質基準の決定には相当調査研究の期間が要ります。そうすると、この法律がかりに公布されましても、一番最初にわれわれが待望している指定水域の設定というものが一年も二年も三年も、水質基準がきまらないためにできないとしたならば、この法律ができてもちっともその間は恩恵に浴せられないということであります。水域を指定するということは、今日大体において指定しなければならないところはさまっておりますから、これをまず大よそ指定をして、そうして水質基準をすみやかにこしらえるという方法がいいように考えております。  次に、行政機構の問題を申し上げますと、第四条、第五条、第八条では、一応の調整の主管官庁とでも申しますか、これは経済企画庁長官となっております。また法第八条二項で関係行政機関の長に対して勧告権を認めております。ことに、水質汚濁防止の重要事項であるところの工場排水等規制に関する法律では、「大蔵大臣、厚生大臣、農林大臣、通産大臣、運輸大臣の五大臣がそれぞれ主管になっております。すなわちわが国では水質汚濁から守る法律は、明治二十九年に制定された河川法を初めとして、「鉱山保安法、港則法、港湾法、漁港法、水産資源保護法、清掃法、水道法等々十数ありますけれども、この主管官庁間の権限が非常に輻輳しておりまして、なかかなおさまらない。法律は施行されてもいまだ省令が出せない。そのまま眠っておるというようなものもあります。すなわち第八条の勧告権はあっても、関係行政機関が勧告に従わぬか、あるいは従うまでに長年月を要することがありとすれば法の目的達成はできません。また被害者側の行政機関は法の実施に酷であり、加害者側の行政機関は法の実施に酷であることは人情であります。従ってアメリカにおきましては、この水質汚濁防止法が国会で論議され、最後に通過するときに、国会の意見で従来鉱山局を初め、いろいろの省に権限があったものをあげて、厚生文部福祉省といいますか、私はそういうように訳しましたが、この厚生文部福祉省に属せしめて、関係行政機関は別に委員会等を作ってこれに協力する。もちろん関係行政機関の意見を聞いてやります。こういうようにすることが必要だと思います。社会党の案には、この委員会のことが規定してありますが、これは理想的には私はいいと思いますが、日本の今日の行政機関の分れ方、権限争い、セクショナリズムというところからいったならば、一気にこれを改革することができたらば非常にいいのでありますが、相当困難な問題がある、こう思っております。  次に損害賠償の責任について申し上げますが、本法を上程する際の大臣の提案理由の説明の中には、「水質基準公共用水域水質保全をはかるための行政上の基準でありますので当事者の民事上の免責規定ではない」ということを言っておりますが、これは当然であります。でありますからこういう規定こそあるいは注意的の規定かもしれませんが、この法律の中へ入れて、加害者も被害者も前もって決心をし、そうして汚濁から守るということに向けた方がいいじゃないか。法理論だけでなしに。また無過失損害賠償の規定も法理論からすれば自明の理で、これは当りまえだ。当りまえのことはこの法律に一々書かぬでもいいじゃないかという議論があるかと思いますが、こういうようなことも一般国民の法律のこまかいところまで知らない者に知らしめるためには、注意的ではあるかもしれぬが、こういうものも私は入れておいた方がいいように考えられます。  その次第九条の公共用水域水質調査の規定第十一条第二項三号ですが、公共用水域水質調査その他公共用水域及び地下水の水質保全に関する基本的事項、第十九条の水質汚濁による被害等規定してありますが、これは非常に重要なことであります。紛争のあったときはもちろん、流水の水質、流水の量、温度等は季節別によって変化があるのでありますから、これを常に生物学的に、科学的に、技術的に調査もし、一つ法律の目的達成上、一つ被害、加害の立証材料にするために、権威ある国家の研究機関が必要であります。これは今まで呼ばれた参考人の方が同じように言っておられますが、昭和二十六年三月経済安定本部の経済調査会の決議では、国立の水質科学研究所を設置し、技術的調査実験及び研究等を行うために公共水水質試験部、下水及び産業廃水部、水産及び農業灌漑水部、上水及び工業用水部、水質技術者養成部の六部を置くべきであるということを決議しております。これなくして法律の目的達成も、紛争の解決もむずかしものと思われます。  次に第四章の和解の仲介でありますが、これは十九条では「損害賠償に関する紛争その他の民事上紛争が生じたとき」と規定してありまするが、行政的の問題、たとえば廃水の処理施設の整備等の問題も含めること、並びにこれは政令の事項になるかもしれませんが、二都道府県以上にまたがる川に起った事件をやるために、この法律あるいは政令でできればよろしいと思いますが、ちょうど漁業法にいう調整の連合委員会と同じように、委員の中から東京都から二名、千葉県から二名、あるいははその他から二名というように、その委員会から出てきてもらって連合委員会を作って、そこで審議できるようになればいいと思っております。  次に第三章及び附則の水質審議会の規定については大体組織その他はこれでいいと思います。  次に工場排水等規制に関する法律案について申し上げます。法案第四条において「工場排水等指定水域に排出する者は、特定施設を設置し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、主務省令で定めるところにより、」主務大臣に届けるべき事項を列挙してありますが、届出に対す主務大臣の認定のみでは実効を上げることができないので、この項目中に、少くとも汚水等の処理の方法並びに工場排水等水質については許可を受けるべき旨を規定したらどうか。本問題についてアメリカの制度を見ますと、許可制が六州、認可制が四州、命令制が三州、監督制が二州、承認制が三州となてっいるが、いずれも単に届出制というものだけではないのであります。  次に除害施設の設置に対する助成措置についてでありますが、水質汚濁規制は社会的、経済的に複雑な問題を包蔵しており、単に取締りによってはその目的を達成し得るものではありません。従来各種の法律水質規制を規定しながらその実効を期し得なかったことは、技術的な水質基準の確定が困難であることと、取締りの裏づけとなるべき助成措置が講ぜられなかったことによるものと考えられます。この意味から、私は今回の法案においては、第十六条において国は「必要な資金の確保、技術的な助言その他の援助に努める」ことになっているが、その他の援助の具体的内容、並びに中小企業等に対する補助については積極的に考えるべきものではないか。米国などにおきましては連邦政府が、補助金を出す、それから州政府補助金を出す。さらに公共団体が補助する基金を設け、あるいは公債の発行権を認めております。そうして米国においては下水を中心にしておりますが、工場排水は工場廃水の中から毒物その他を取り除くことだけを会社工場にやらせて、あとは下水の現状水質と同じ程度のものにまで浄化したものを下水に流させて、そして公共団体が下水処理をやっております。これに対しましてはあるいは水道料金の何割にひとしいものを下水処理費として別にとるとか、こういうような方法でその公共団体といえども非常な負担をかけずにやっておる。同法附則に地方税の一部改正があって、固定資産税は免税になっておりまするが、これは前の参考人からも言われましたが、どうか一つ租税特別措置法を改正して、この施設に対しては特別償却の制度を設けてやっていただきたい。これはなぜかというと、理由は公共用水汚濁から守る施設であります。私の営利上の目的のために立てられた施設ではないのです。公共用水汚濁から守るためにこしらえた施設でありまして、これは半ば公共施設である。従ってこういうものは税金から免除をし、補助をする必要がある、こういうふうに考えております。簡単でありますが、以上であります。(拍手)
  10. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 柴田参考人お願いをいたします。
  11. 柴田三郎

    柴田参考人 私は農民団体も協会も代表していない全然個人で呼び出されたのであります。私は学校を出てから三十三年間になりますが、その間にやった仕事は下水処理の問題とか工業廃水の処理及び水質試験、河川の調査、海水の調査、そういうことばかりしかやっておりません。それから戦前戦後各工場廃水の処理の設計及び処理施設の実際に当っており、その後の管理、水質についての指導もしてきましたので、そういう経験があるということが一つの取り柄であろうと思います。  それから水質汚濁防止の勧告書を昭和二十七年に出しておりますが、その場合に日本で最初の総合的法案でしょうが、それを起案しその草案を作った一人であるということで、それがためにそれまでの長い間各国の法令やいろいろなものを研究して、日本の実情に合うようにというので、水質汚濁防止法案の勧告書を作ったのでありますが、それはいろいろな事情で時期尚早ということになって、今日まで日の目を見なかったのであります。今日三つ法案が出ましたが、これを見ますると、やはり大して変っていないので非常に喜んでいる次第であります。そうしてさてどうなるかというと、皆様が陳述なさったような希望も何もない。というのは何の団体も代表しているのではないから、私からはこういうことはこうやってほしいという希望がないのです。漁業及び商業、通産等のどの方面でもうまい工合に水は利用された方がもちろんいいわけであります。水というものは神様が与えたものであって、人間が作ったのじゃないからだれでも使う権利があるのだ。それと同時にだれでも自分だけ使って、よその人が使ったからといってトラブルが起きることのないようにする義務があるから、水に対する法律なんというものはないのが、ほんとうだろうと思っております。自分が作ったり何かしたのなら自分の権利を守ることもあるけれども、全然自然のものであり、水の大切なことはみんなわかっておるのであるから、自分一人が利益を得ようといって縄張り争いなんかは起らないものだろうと思うんです。ですから今日まで水に対する法律ができなかったのであって、別に日本が野蛮国であるとか後進国であるから、水の法律ができないというのでなくて、相当うまくさばいてきた。こんな狭い国で、水の資源がそう豊富でないにもかかわらず、外国のようにやかましいことを言わなかったのは、水というものが大事である漁業とか農業が主であったし、それからこういう国情から山紫水明を誇ってきれいにしようという精神があったので、結局法律がなくてもうまくやってきたのだろうと思いますが、近代になってきますと、工場がふえてくるばかりでなく、人口は何千万とふえてきて、下水及び産業廃水による汚濁がひどくなって、それを法がなくてもきれいにして、人に迷惑をかけないようにしようという会社は多いんですが、下水道が遅々として進まないために、下水でさえ完備しないのだから工業廃水施設などまだ持たなくてもいいじゃないかという思想を持つ工場もありまして、あまりめんどうなく川水や海水をほかの人が利用できるとは限らなくなったので、方々紛争が起きた。それでもってこういう法律ができなければならないようなはめになったのだろうと思っております。それで水の法律というのは、結局天然水はだれが使ってもいいものだし、だれもきれいにしなければならないものですから、水を汚濁するなどということは私から考えると変なので、汚濁ばかりでなくて、何人も水を使用するについて他人に迷惑をかけないように、ほかの人の利用を妨げないように心がけなければならない。やわらかい言葉で言わないと、何か水というものはだれかが作ってその権利を守っているというような形では、少し固いのではないか、大体そういうふうに考えております。私は学識経験者ではありませんが、廃水処理専門の知識がちょっとばかりあるので、少しばかり概論を述べたいと思います。  時間もありませんので個々のことについては、御質問があれば一つ一つお答えすることにいたしますが、私は専門が水質試験とか廃水の処理とかでありますので、どのくらいきたないのをどのくらいにすればいいかという質問ならよく答えられますが、法的なことやなんかは専門でないのであまり触れたくないのです。ですから結局水というものは化学的の成分であって、水の標準をきめるということをこの法律で規定しているけれども、結局働いてくるのは川水及び海水の標準をどこへ出すべきか、工場廃水はどのくらいまで処理できるか。できないなら処理限度はどうかということが、ほんとうの戦闘隊みたいなものになる。あるいは参謀本部はこれかもしれぬが、戦闘隊の方は非常に活躍しているのに今これにはどこにもうたってないので、それを識別させようというのだろうが、これは私のごとき技術屋が云々すべきではなく、法律の概念的な面では非常によくできていると私は考えております。ですけれども最初委員長から十五分くらい述べろとおっしゃいましたから、それについてちょっとばかり述べさしていただくと、水は守る義務とともにそれを利用する権利が何人にもある。だから利用すれば必ず多少の汚濁を発生する。汚濁の発生から水を保全する——私は保全という意味がよくわからないのですが、保護して全からしめる、キープ・インタクト——保全という言葉は、私辞書を引いてみると徳川時代にはなかったものです。明治になってからの外国語の翻訳であると思います。キープ・インタクトというと、汚損しない、そのままにしておく、完全にしておく、もとのままにしておくというのがキープ・インタクト、あるいは保全のほんとうの語源のようです。ですから保全という言葉を使っていくと現状維持ということになる。それはいつも変らないということになる。現状維持でこわさないままで、水は、さっきだれかがおっしゃったように、水というものはほんとうに飲めるような水でなければならないのがスタンダードだと言うけれども、それはちょっと考えるとどうかと思う。水はだれでも使う権利がある。第二に生物を生かすというのが天然水の一番りっぱな目的です。いろいろきたないものを洗い去ってきれいにする。これが第二の目的でしょう。もし食べることばかりに使われて、きたないものをきれいにしなければ、人間は死んでしまうかもしれない。だから洗濯もすれば、きたない話だが、くそ、小便の痕跡の残らないようにする。いろいろなことで水をきれいにする、工場でもきれいなものにして人間の役に立たせるようにしてお返ししなければならぬ。天にすぐそのまま上げるわけにいかない。人間が生きている以上キープ・インタクトの問題はあり得ないのです。水というものは酸素と水素を含んでおるし、酸化菌といって、きたないものをきれいにしてしまうばい菌もいる。ペニシリンみたいな細菌がたくさんいるので、少しばかりきたないものが加わっても、すぐにもとの通りに酸化してしまうといういい点がある。そのような点を持って世の中に出てきたものであるので、人口がふえない間は工場廃水などは問題にならなかったのでありますが、近代になって自分の力では負えないくらいの荷物を与えられるので手を上げてしまって、きれいに滅菌せずに海に行ってしまい、途中のいろいろの利用目的に差しつかえる。だから水の問題は汚物を浄化するという目的があるというのははっきりしたことで、それがどこにもうたっていないようだし、またそれを含ませていないように考えられるが、この点はちょっとまずいのではないかと思うのです。それは保全という言葉は、元通りというのは、きれいな神武天皇時代の水が保全か、あるいは現状維持か、現状維持という言葉は非常に語弊があるのでしょう。水というものはバリアブルなもの、変化するものでしょう。絶えず人口がふえてき、絶えず工業情勢が変ってきているから常にバリアブルなので、そのバリアブルなものをどうして保全するか。やはりバリアブルなものに対してはバリアブルで変り得るもので対処していかなくちゃならないから、なかなかむずかしいのでしょう。だからそこを保全という言葉にあまりこだわっているようですが、現状維持というのですが、現状維持ということは、毎日のように現状が変るから毎日のように水質基準を変えていくことはできないじゃないですか。とても委員会も間に合わない。それは各国々々と皆さんおっしゃるが、水の最初の法律というものは英国で、イギリスのローヤル・コミッションが水に関する研究をやっていて、それによって出した基準や何かが世界的に利用されて、去年あたりディスカッションしましたが、英国ではあの当時と今でも変らないといっているのですが、それは大へん理屈が合って、どのくらいの限度の川水であれば他から毒物を受けるとか廃物を加えても何里流れたらきれいになって他目的を害しない。その水というものはほんとうの川のあり得べき水のスタンダードはこのくらいであるときめて、いろいろ調査して、その次に多少汚染されたが、その他の利用目的にはさしつかえない。第三番目には、それは下水の処理ぐらいになるけれども、水産用水にはなり得ない。第四には——これははっきりここで言えばあまり専門的になるから言いませんが、第四には、もはやその水は何の使用にもならない、下水に近いというように、科学的に研究してそのような種類に分けてある。先ほどどなたかおっしゃった、基準というのは飲めるような水ではないかとおっしゃったが、そうではないでしょう。水というものは飲むばかりではないので、今言ったようにきたないものを洗たくもする、くそ小便も持っていかなくちゃならない、そういう下水だと、何べん処理しても元の下水で、相当きたないものでも入る。そういうことがあるからなかなかスタンダードはできないのです。スタンダードを作るということは空論ではなくて、日本ではこのごろこういうことを言う人がある。たとえば川水のスタンダードは英国ではこういうようである、アメリカではこうだが、日本は後進国であって、まだまだ廃水処理ができないから、このくらいのスタンダードにまけておこうじゃないか、それから下水の放流水の水質基準は向うはBODというもので行い、百万分の二十だが、日本はまだ後進国だから三十くらにまけておこうじゃないかなどというが、それはちっとも意味がない。たとえば二グラムの青酸カリを飲めば死ぬけれども、二グラム以下なら死なない。二グラム以上だから死ぬというように、たとえば川のスタンダードはBODが百万分の二というものがあったら、それは水産用水にならないと大体きまっている。だからそれをまけてやって三にしようといったって何の意味もなさない、水産用水にならない。だからスタンダードはあるのでしょう。科学的にはあるのでしょうが、それはなかなか日本の今の経済状態ではできないから、魚は死ぬかもしれぬけれども、そのときは漁民は相当害があれば、その被害を出せば工場もその費用を出すことになるのじゃないか。しかし今の科学技術上、三にしかできないというのだが、そこは外国ではいろいろの科学機関が研究して大体近いものが出ている。アメリカのペンシルバニアの法律では、石炭排水の浮遊物は三〇〇PPmになし得ない、それで三〇〇PPmを要求するのは無理というので、石炭排水に対してはこの法令から除いた。しかるに二、三年前に研究した結果、三〇〇PPmになし得るから石炭排水もその中に入れるとはっきりうたってある。そのように保全という言葉にこだわると科学技術は進まなくなる。もっと安い金で処理することができればどういう人でも処理することができるのじゃないでしょうか。だからそういう精神が入っているかどうかわからないが、そういう精神を含めていただかなければ科学の進歩はとまってしまう。ただ保全するというだけでいいというのではまずいのではないか、こう思っています。  それから水をよごす方ばかりを非難するようであって、よごされる方ばかりが主体になっているが、よごす方、すなわち工業の方も水を使わなければならないのだから、非常に熱心にこれから処理も研究するでしょう。通産省の方の案なんかそのためにあるのでしょうが、ただ水を使う方でも何か処理しなければならないのじゃないでしょうか。自分たちも工業製品を使うのであるし、自分たちも下水を流すのです。昔のように水をどんなによく処理しても、今後日本は人口がもっと多くなるのだから、科学技術の進歩よりも汚濁が先行する運命にあるでしょう。その場合に非常に経済的ないい方法がいきなりできるものじゃない。長く研究の期間がかかるから、二、三年あるいは十年もかかるかもしれない。そうなったら飲めるような水になるかもしれないが、ならないかもしれない。そうすれば一たん廃水は処理するが、それは元のようでなく幾らか汚濁されるでしょう。だけれども使用する方でもそれに対処するような処理をしなければならない。たとえば飲料水というのは昔は川の水を飲んでいたのでしょうが、それから結局掘り抜き井戸とか地下の掘り水をとって飲んだ。それが今度は砂を使って沈澱させ、薬剤を使って沈澱させ、それに大へん金をかけるようになった。使う方でも金をかけているのだから、農民や漁民の方では研究している人があります。島根県あたりで篤農家がたんぼに石灰石を置いて、そのたんぼに入る坑水のPHが低いので今までできなかった作物が、できるように研究したとかいうが、何かそういう研究もしなければならぬだろうと思う。水がよこれてくるのは結局全体の国民がよごしているのでしょう。漁民でも農民でも化学製品は必要である。またきたなくする方でも自分たちの工業製品を使ってもらうのだし、漁業農業がなくては生きていけないから、むちゃによごさないようにできるだけ努力するということがもちろん必要です。しかし使う方でも、それ以上やったら工場、中小企業は成り立っていかない、だからこれは何か自分たちが苦労しようというので、魚でも廃水に強いのがたくさんいますから、そこに見合った魚を飼うとか、水質の悪い川ではアユを飼わないで別なものを養殖するとか、そういうことに進んで協力していかないと、紛争はこの法律ができたあとでも、多分におさまらないのじゃないかと私は思います。だから利用する方でも、いつまでも昔のように大公望をきめ込むようではいけないのじゃないか。やはりバリアブルな変化あるものは変化をもって対処していく。もう向うでは機関銃や原子砲を持ってくるのに、日本では月影流とか、それでやろうというのでは負けてしまう。やはり大砲くらい持っていなければいけないのじゃないでしょうか。その点工業の方も、おれたちもこのくらい努力して金を使ってやっているのだというので、これ以上はやらないようにしてくれといったって、なかなかうまくいかないのじゃないか。たとえば工業の方からいうと、水というのは水産用や農業用だけのように考えられる点がある。それで大体工場としては、非常に悪い工場はあるけれども、大体において下水処理というのは統計によると、日本人では大ていよいよ見て全人口の五%しか処理してないのだが、工業排水は人口に直してやると一七・五%か処理して、ずっと下水処理を上回っている。戦後私が手がけただけでも、大中の工場で十幾つが完全処理をし、世界でも日本ほどやらないだろうというような下水処理以上の完全処理をやっているところが二、三あるくらいです。それは法律でも何でもなく、私が最初経済安定本部の出した水質基準や何かに準じてやっているので、水質基準ははなはだむずかしい、むずかしいというけれども、一つできればそれに準じてやるからそれに近くなるので、やはりいいことだと思う。  結局科学的な水質基準を作るということが大事であって、その点に非常に重点を置いて公平なる人間を集めなければいけないと思う。生物学者や科学者及び法律家——それは各省代表もあるでしょうけれども、それよりもむしろ専門々々の学者で、比較的中間色の人を選んで、そうしていいものをきめるということに、すべてはかかっているのだろうと思います。  それから社会党案は案外いいのですよ。なぜかというと、ほかのものは川の水をスタンダードにきめておいて、そしてその水をよごすとどうこうということは、なかなか川の水のスタンダードというものはバリアブルで変るものだから、それが変れば工場はまた処理を変えなければならないとかなんとか、その川沿いにはもう工場が建たなくなるとか、なかなかむずかしいのです。社会党の方は、川に出す工場排水の水質をどのくらいにしようということがきまっているから、これは案外行われやすいのです。そしてまた相当きれいになる。ただある工場が何もやってないからその川が自由に汚濁されている。どの工場も五〇%きれいにすれば半分になってしまう。川水のスタンダードの平均、BODでいえば百万分の二、しかしこれを保つための処理には最高能力で処理しなければだめだというので、言うはやすく行いがたい。社会党の方は主としてそういうことになっているし、通産省の案もそうなっていると思いますが、この親法になっているのが川の水や海の水の排水を受ける方のスタンダードばかりきびしく言っているが、それは実際はうまくいかない案じゃないかと思います。それから社会党の案の批評をするのはいやですけれども、ただ欠点が一つある。何だか賠償とか調停とか紛争というようなものが主になっているが、そういう民事訴訟のような案になっているのは、何だかわけがわからないのです。水は化学的なもので、今言ったように廃水処理施設が非常に重要で、だれもが水は自分ばかりのものではないということがわかったら、期せずしてきれいになる。そして紛争、賠償はむしろ従であって、そういうふうに言ってもだめな場合、たとえば私が今言った通り、五〇%川の水をきれいにしても汚濁は半分にしかならないから、幾らか損害はある。その損害はもとの一〇ではなくて半分である。その半分を出すということはあとにうたえばいい。のっけにうたってあれば、まるで漁民、農民が裁判所に提訴するような感じがする。委員も二十人、三十人にもすれば、船頭多くして船進まずで、各省の代表が何のかの言ってなかなかきまらないだろう。社会党の案は四人ということにしているけれども、きびしくて、何らの職業のない者、身分高潔な人、そんな人は一人もいないかもしれません。たとえば尾崎行雄先生などは適当でしょうけれども、水質とか廃水処理の技術を知っていなければそれは無理だ。そんな処理はできっこない。だからそこのところはもう少し考えるべきだろうと思うのです。いろいろ言いたいことはあるのですが、時間が長くなりますから、これで終ります。(拍手)
  12. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 以上で午前に出席を願いました参考人方々の一応の意見の開陳は終りました。  次に質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。田中武雄君。
  13. 田中武夫

    ○田中(武)委員 最初に大島参考人にお伺いいたしたいのですが、あなたは先ほど片寄らずに国家的視野から見てやってもらいたい、それから、そのためには中央に権威ある幾関を置いてやるべきだ。こういったような意味の御意見があったわけなんですね。御承知のようにこの問題に関しまして政府法案と社会党の案とが出て、今本委員会においてともに審議をしておるわけなんです。社会党案は御承知のように一本の法体系によって、この水質汚濁に関する点について解決していこう、こういう考え方を持っているわけです。それに対して政府案はまず公共用水域水質保全に関する法律というもので基本的なものをこしらえて、そうして具体的なものについては、工場から排出せられるものは工場排水法、あるいは鉱山保安法とか、あるいは下水道については下水の法律とかりといったように、個々の法律によって扱おうとしておる。そういたしますと、公共用排水だけを見ても、主管の主務大臣がたくさん出てくるようなことになって、あなたのおっしゃるような広い視野からものをながめていくということにならずに、むしろ各官庁の権限争いというものが持ち込まれてくるおそれがあると思いますが、あなたの言われたような考え方から見て、内容はともかくとして法体系として一本立の方が望ましいとお思いですか、この政府案のように数個の法体系の方が望ましいと思われるか、そういう点について一つお伺いいたしたい。と同時に、被害者側といいますか、害をこうむる方の代表として来ておられるところの岡参考人大坪参考人、このお二人にお伺いいたしたいのですが、先ほど申しましたような法律の体系からくる問題として、何か問題が起きた場合においても、社会党案のように一本立で行く場合は地方において水質汚濁委員会、こういうところですぐ結論に持っていくこともできる。だが、しかし政府案のように行くと各官庁の考え方が出てきて、そのために結論に持っていくのに相当紆余曲折があり、そのために農民漁民の利益がむしられてくるといいまするか、解決がおくれる、こういうようなことがあり得ると思いますが、そういう点について大坪さん、岡さんに御意見を伺いたいと思います。
  14. 大島竹治

    大島参考人 ただいまお話しの問題は、非常に私どもとしては考えたことでございまして、実を申し上げますと、私どもの加盟の団体が数年前から申しておったのは、今おっしゃるような理由はそちらの方でございませんで、全体を見るという意味から実は考えるわけではございませんで、トラブルサムという意味から、一本の法で、この考え方はかなり前からわれわれは腹をきめたのでございますが、その前の方にはおっしゃるような形態を考えたのでございます。ところが目下の官庁の事情から見まして、ちょっとそれはできまいということから、一つのあきらめではございませんが、やはりプラクティカルな行き方から、そういうふうで別に差しつかえなかろう、こういうような考え方に変えたわけでございます。一方国家的な考え方というふうな考え方は、そう皆さんが非国家的というわけではございませんが、まあその辺のバランスをお考えにならないと、分離したらお考えにならないだろうとは考えておらないのでございます。しかしながらこちらとしますと、窓口が多くなるからトラブルサムであるというような考え方は、最初持っておったわけであります。ただ実情から見まして、そういうことは今までの官庁習慣を一朝にしてどうするというわけにはいくまい、こういうふうな考え方からさようにこの問題を問題にしなかったわけでございます。
  15. 大坪藤市

    大坪参考人 ただいまのお話でございまするが、実は私どもといたしましても赤路先生提出法案のように持っていった方が理想に近いのじゃないか、さように考えます。ただ本問題は、先ほど申し上げましたように非常にむずかしい問題でございまするし、各産業間の調整を保っていくということが、一方には必要性がございまするので、直ちに理想的な政策と申しまするか、方策をとることがいいことか悪いことかということについては、なお検討する必要があるのじゃないか。要するに赤子に洋食を食わせることがいいことかどうかという点がございますので、まず第一段階としては各所管官庁で責任を持ってやるという姿勢で満足すべきじゃなかろうか。いきなり大きな行政幾関を作って、そこで本式にやっていくということは、これはもちろんいいことと存じますが、現段階においてはまず試験研究でございますとか、そういうような客観的な方面を充実して参って、そしてぼちぼちやって参る以外には方法がないのじゃなかろうかというような考えを持っていますので、まずまずこの辺の程度で第一段階としてはおさめざるを得ないのじゃないか、実はかように考えておるわけであります。
  16. 岡尊信

    ○岡参考人 ただいまの御質問、理想としては、私は赤路先生外四十六名のあの制度がいいと思いますけれども、これはなかなかむずかしい問題で、国家行政組織法の改正をし、膨大なるものをやるということになると、今日の日本の各省間のいろいろの権限の問題を一挙に改めるというようなことは相当困難であります。最初は私どももそういう法案を用意したのでありますが、しからばどこまでもそれを通せということになれば、まだ二年や三年論議してもこの法案は上程にまで至らないのじゃないか、政府としてもその決心がおつきにならないだろう、まあ一応このくらいの程度で政府考えておられるということに対しては、やむを得ずといいますか、理想論ではないが賛成をします。ただし将来この問題は十分に研究をなさって、最もいい方法を考えていくことがいいのじゃないか。日本の官庁間の権限というものは、単に水質汚濁の問題ばかりではないので、その他の問題が非常に輻湊をしておる。こういうことをやはり簡素化するということは、目下政府、国会でもお考えになっておるときでありますから、そういう時期には一つ、いの一番に取り上げて御研究願うことにして、とにかく二、三年もかかって作るというよりか、今作ってもらいたいということで、早い方をたっとびまするので、私はその意味において賛成せざるを得ない、こういうように思っております。
  17. 田中武夫

    ○田中(武)委員 ただいまの三人の参考人の御意見を聞いておりますと、産業代表の方々も、あるいは漁業関係の代表の方々も、理想としては、社会党のような一本建の法体系にして、そして中央において強力な水質汚濁関係の問題を所管するところの行政幾関が必要である、こういうことについては、加害者側の産業界も、あるいは被害を受ける側の農業漁業の代表の方々も、理想的にはその方に賛成しておられるようです。ただ、そういうふうに一本に持っていくためには、各官庁の従来の慣習、あるいはいろいろな権限争いというようなところに気がねせられて、あるいはそういう慣習からくるので、そういうことでこの法律案の成立がおくれるよりか、むしろ満足ではないが、ないよりはましなものができてもいい、こういうような意味のように受け取ったわけです。そこでわれわれといたしましては、そいうことの方が皆さん方が希望しておられる、このように受け取りたいと思うのですが、それでよろしいでしょうか。  そこで次に大坪さんにお伺いしたいのですが、あなたは先ほどこの問題に関しては、害を与えるものと害を受けるものとの間に、すなわち利害関係が強く対立しておるのだ、こういうようなことを冒頭におっしゃったわけなんですが、そういたしますと、その利害関係が強く対立しておる問題を解決するには、やはり社会党案のようにあっせん、それでできなければ調停、さらに仲裁というところまで強く入らなければ解決できないのではないか、このように私は考えるわけです。従って政府案のように、ただ仲介の労をとるというような意味仲介員だけでは十分紛争解決にはならない、こういうように思うのですが、大坪さんのお考えはいかがでしょうか。
  18. 大坪藤市

    大坪参考人 ただいまの御意見でございますが、理想としては私ども社会党案のようなものを期待をいたします。ただ、現段階においてこれがどうかという問題は疑問であると思います。  それから次に本質論でございますが、政府提案の提案理由の説明の中にも、水質に関する問題は行政上の問題であって、司法上の責任を云々するものではないということをうたっているようでございます。この点は本質的な問題といたしまして非常に重要な問題かと存じまするが、そのごとく水質基準についての政府の現段階における考え方と申しまするか、自信のあり方と申しまするか、そういう点については非常に低い姿勢にある、かように実は考えるのでございます。そういうような段階にある場合においては、この程度の法律を制定する以上には出られないというような実際上の問題があるのじゃなかろうか、実はかように考えているのでございます。従って、調停の問題等につきましても非常に低い姿勢でございまするから、一応第一段階としてはこの程度で、もうしようがないじゃないか、こういうふうに考えているのでございますが、さらに試験研究を充実し、継続して参りまして、水質そのものの毒性の程度の問題と、それからその毒性が散布される範囲の問題、こういうような二つの本質的な問題と、もう少し取り組んでみて、化学的な基準というものがもう少しはっきりして参った場合には、調停委員会等のシステムの問題も、もう少しがっちりしたものでやるべきじゃないか、かように考えるのでございます。水質そのものとしての毒性の問題につきましても、最初に申し上げましたように非常にたくさんの問題がございまするし、また毒性そのものが散布される範囲、程度、この問題につきましても非常に問題があるのでございまして、具体的な場合にいろいろと当てはめて参りました場合に、実際問題としてだれからも非難されなくして問題が解決できるかどうかという点については、いろいろな問題があろうかと思うのでございまするから、一応現段階においてはこの程度で仕方がないじゃなかろうか、かように考えております。
  19. 田中武夫

    ○田中(武)委員 われわれが、あなた方にお忙しい中をわずらわして参考人として来ていただいているのは、あなた方の考えておられるところの、理想としておられるところの御意見を十分伺わしていただきたい、こういうような考えで来ていただいているわけであります。ところが先ほどから皆さんの発言を聞いていると、理想は別にある、しかしながら、政府がこうして出しておられるのだから、これよりほかのものは通らないであろうというようなことで、十分自分の理想とするところをおっしゃらずに政治的な発言をしておられるようである。そういうことであったらわれわれがこうしてあなた方に来ていただいて意見を聞く必要はない。はなはだ失礼な言い方でありますが、あなた方の言うことを聞いていると、社会党の言うことはいいことを言っているが、しかしながらどうも社会党は今は少数党だから言うことが通らない、そんなことをがちゃがちゃ言っているより、悪いことでも通してもらいたい、そういうふうに受け取れますが、そういう弱いことでなく——少くとも与党の議員の方々も、あなた方の意見を十分聞いて政府案を修正する気持は十分あるのです。またあなた方が十分に理想とするところを言われておって、それが適当な意見であるのにかかわらず、言うことを聞かないような与党の諸君でもないと思っております。ことに商工委員会には話のわかった人が多いのです。だから十分そういうことを言ってもらいたいと思うのです。  さて次ですが、先ほど大坪さんも政府公共用水域水質保全に関する法律案の第四条は、低姿勢であるとみずからおっしゃっておられるわけですが、私もそう思う。この四条に指定水域をきめるためには厳格な条件が三つばかり設けられておる。従って指定水域を指定する場合には、狭いところの意味のものとして指定せられると思うのです。しかしながら実際の農業あるいは漁業影響を受けるのはそういった狭い地域でなく、ことごとに影響のあるといいますか、関係があるところの水域全体にわたるのです。そういう意味からいきましてこの水域の指定につきましては、第四条のようなこういう厳格な規定、しかもその立てる観点現状維持というようなところから、低い姿勢できめているということによって、これもやむを得ないと言えばおしまいですが、あなた方の理想はこういうことで満足せられるのかどうか。少くともこのことによって影響を受けるところの地域全体を指定すべきじゃなかろうか、このように思うのですが、大坪さんと岡さん、それからいずれの利害関係にも立っておられないところの柴田先生の三人の御意見、水域指定についてはどういうような観点をとるべきかという点についてお伺いしたいと思います。
  20. 大坪藤市

    大坪参考人 第四条でございますが、これは第一項から第四項まで、このやり方につきましては低い姿勢という言葉を申し上げましたが、非常に限定をされております。つまり消極的な限定をしておりますので、これでは被害があっても、実は被害があるということは当然予定しているということになるわけでございます。と申しますのは第三項に防止するため必要な程度をこえないものとございますから、その範囲内で被害があるということはある程度わかっても、その程度をこえない程度でやりますから、非常に低い水質基準をきめるということと、それからもう一つ影響が目にわかっている場合だけやるんだ、こういうようなことでございますので、この規定全体につきましては私どもといたしましては満足はできません。ただ水質基準という——先ほどおしかりを受けましたが、この問題については実は非常にむずかしい問題かと存じますので、現在の水質に関します試験研究の現状におきましては、この程度でやむを得ないんじゃないかというように考えております。
  21. 岡尊信

    ○岡参考人 私はこの第四条の問題についてはこまかく申し上げたと思いますが、公共用水域のうちで害を生じているもの、またはそのおそれの高いものというようなところだけを限って指定水域にするということは、少し足らないじゃないか。先ほど申しました通り今日の紛争汚濁されて困っておる漁民が文句を言ってくるということと、汚濁されるおそれのある工場を清水のあるところへ建てる。鹿児島湾でパルプ工場を建てる。あるいは宮崎県にパルプ工場を建てる。益田市にパルプ工場を建てるということによって、現在は汚濁されてないりっぱな水なんですけれども、やがてはくる。だからこれを指定水域にしてよごさないように、よごすということを未然に防いでもらいたいという議論がたくさんあるのでありますから、この第四条なりはこういうように損害を及ぼし、あるいは影響が生ずるおそれのあるところで、これは必要なところへ行政庁が出せばいいので、できればもっと言えば企画庁長官は必要と認めるところに指定水域を含める、こういうようなことになってもらえばいいと思います。その他の問題もありますが、先ほどこまごまと申しましたが、そういうようにしていただいたらいいかと思います。
  22. 柴田三郎

    柴田参考人 私の考え指定水域というものは、むしろ今まであまり汚濁されていないところ、昔のようにきれいな水を持っているところを指定水域にすれば、そこは保全され、守られるのだと思います。こういうように水の汚濁があってトラブルが起きたところを指定水域として、水質基準をきめるということは、先ほど申しました通り工場が業種を変えたり、原料を変えたりするために、毎日のように変る。それだからそこで水質基準をきめることは大へん厄介で、そこにはしまいに工場が建たなくなりますから、よそにいく。よそでも指定水域にならないでも、人情として、うちの川は指定水域外だから、だれでもよごしてくれということになるのはだれも好まないから、だれでも指定水域になりたいと思うのです。たとえばきれいな川で、何も汚濁されてないところから指定水域にして、一、二、三、四とあれば、一にしてもらいたいということになって、必ず紛争が起るものだと思います。指定水域外になってどのようにしてもよいというふうに解釈されては困るということになりがちであるから、指定水域というのは、結局特定区域の観光地で有名な長良川みたいなところの排水は、厳正に最高に処理して出さなければいけないということにして、あとは指定水域というのは意味がないのです。ただ水質基準は必要なんです。いわゆる何も汚濁されない水はこれだ。その次に少し汚濁されても、まだ川水、海水として使用にたえるのはこれだ。その次はある種の用途には役に立つけれども、ある種の用途にはならぬものだ。最後は下水に持っていくより用途がないもの、こういうふうに分けられるのです。現在の科学は、水の科学だけがおくれておるわけではなく、原子科学の世の中で、相当に進んでおるのです。そのスタンダードはできるのです。そうしておいてその川はすでにトラブルが生じた、そういう漁業農業の盛んなところから、第一のクラスとか、第二のクラスとかきめておけば、そこに工場を建てるのもいい。私の理想としては、できれば日本の水域は、最初にトラブルがあるなしにかかわらず、将来も考え、よく研究して、ある種の基準を設けるべきだと思うのです。そうして指定水域というのはいつもきれいにしておりまして、日本でもこれくらいの川はあって、なるほど山紫水明と昔言われたのは当りまえだ——今は川と言えば黄色い川とか白い川が多くて、九州の遠賀川なんか、この間見に行ったのですが、小学校の先生が言ったのですが、どうも絵をかかせるとうちの生従は黒い川をかくという。そういうことになりますから、指定水域の規定というのは、むしろない方がいいのじゃないかと思います。
  23. 田中武夫

    ○田中(武)委員 指定水域はむしろない方がいいということは、これに関係のある地域ならどれでも適用せられるのだ、むしろこういうように広い意味のように私は了解した。そこでもう一つお伺いしたいのですが、政府案によると水質基準の許容量といいますか、これがいわゆる工場あるいは鉱山等から排出せられる悪い液、こういうものに対して設けよう、こういう考え方のように受け取れます。しかしそういういろいろなものがまざってきた何々川水域という、その全体の川に流れている水が問題だ。だから水質基準についてはその水域によって基準を設けるべきではないか。さように私考えるのですが、これについて柴田先生及び岡さんに一つお伺いいたします。
  24. 岡尊信

    ○岡参考人 私、前にも陳述しましたが、水質基準というのは非常にむずかしい問題で、むしろ考えない方がいいじゃないか、ケースバイケースでいくべきであるという考え方と、いや、法律を作って規制する以上は、ものさしがなければだめだという議論と二つあります。けれども、かりに今度作る場合には、今御質問になりましたように、いわゆる川の水、私はこれを流水基準と言いますが、流水基準というものをもとにして——なぜならば流水が悪いから被害が多いのだから、流水基準をもとにして、汚濁源にさかのぼって一つ一つきめていくべきである。ということは、流水の量は一定しておっても、パルプ工場一つのときと二つのときとある。すなわち一つ工場から十万トン流す、その次の工場は非常に大きな工場で、一日に三十万トン流すというようなときには、この汚濁源に基いてやっていかなければならぬ。従ってこの流水基準というものは、法律に書いてやるか、かりに書かないでも、審議会でおやりになる場合には、ちゃんと政府のふところになければいかぬ。なければ、この水質基準というものはできない。そういうものをこしらえて——それを私は一ぺんに昔の水に返せと言うのじゃないので、二年計画、三年計画、五年計画で、この流水の基準はこういうように保たせるという腹がまえをきめてさえおれば、一つだけのものでもいい。ということは、なくてもいいという議論をする人もあるのですから。排出する基準だけを考えて、ほかの基準考えないのはいかぬ。  もう一つは、川の悪い水でも、アルカリ性の工場からアルカリが流れてきて、酸性の工場から酸が流れてきて、おしまいには中和してむしろよくなるということもある。あるいは川上にソーダ工場があって、塩を流されると、農耕用水にはこれは非常な被害がある。けれども川口でもって塩を流されても、川口の先は海でありまして、海は塩水でありますから、これは被害がない。こういうようにいろいろありますから、水の用途別に川の上流、中流、下流というように水質基準を心がまえに置かなければ、法律で書くか、書かないでもそれを心がまえに置なかければ、一つ一つ工場の排水基準というものはできないと思いますから、もしこの法案の通りに排水基準一つだとしても、今言ったことがあれば私はいいと思います。
  25. 柴田三郎

    柴田参考人 質問の意味がよくわからないのですが、私は先ほど言ったように、川というものはみな基準があるべきものだ——鉱山廃水が入った水は飲み水としては害があるでしょう。だから結局Bクラスに入る水だ。あるパルプ産業があって、これくらいのものがこう入ったものはDクラスだと自然にきまるもので、川はクラスを持っているべきものだと思います。海水もそうであります。ですから、指定区域がないというのは、あるべきものだから全然ないのと同じだということで、川は個性を持っていて、その個性を保全するなら指定水域ということになりましょう。けれども川や海の標準をきめて、これがAクラス、Bクラス、Cクラスであって、これがDクラスのゾーンだと言えば指定ゾーンで、汚濁されたところで指定区域ときめるというのでなくて、最初にきめておくというのが私の理想なんです。
  26. 田中武夫

    ○田中(武)委員 まだもっとたくさんお伺いしたいのですが、午後からの分もありますし、時間の制約もありますから、最後にもう一問だけお伺いして終りたいと思いますが、政府案公共用水域水質保全に関する法律案の第七条におきまして、「排出水を排出する者は、当該指定水域に係る水質基準を遵守しなければならない。」こういったような注意事項があるわけです。そういたしますと、かりにある工場が許容基準を守っておったとしても、終局的には農民なり漁民に相当に大きな悪影響を与え損害を与える場合もあり得ると思う。しかしながらこれを民事訴訟法的に考えた場合には、大体の場合には故意または過失、これに基くものでなければ損害賠償責任を負わないというのが民法の建前である。そうするならば社会党案のように、無過失責任というような規定をはっきりしておかないと、農民あるいは漁民の方々の終局的な利益を守ることはできない、このように考えるのですが、農民代表の大坪さんに率直にお答えを願いたい。それから岡さんにお伺いしたいと思います。  それから一言柴田先生に申しげしたいのですが、先ほど先生社会党案を批判せられましたが、よくわれわれも承わっておきたいと思います。しかしながらわれわれの立場といたしましては、この問題が出てきたのはやはり農業及び漁業に与える影響、損害、こういう問題が各地に紛争となって起ってきた、これをいかに解決すべきかというような政治的な面から取り上げて参りましたので、従ってこの法律は農民及び漁民の利益を守ろうという立場に立っての立案が中心であるということだけ申し上げておきます。
  27. 大坪藤市

    大坪参考人 ただいまの問題につきましては、私どもとしてもはっきりいたしておきたいと思うのでございますが、政府提案公共用水域水質保全に関する法律案の提案理由説明というのがございまして、その三ページの初めの方に、「なおこの基準公共用水域水質保全をはかるための行政上の基準でありますので、当事者の民事上の免責規定ではないのであります。」という説明がございます。このことは、一応基準に従って基準通りの排水をやっておっても、それが下流あるいは関係の方面に被害を及ぼした場合には、損害賠償の責任は免れない、こういうことを意味しておると思うのでございまして、その点は私どもといたしましてはあくまで政府提案の説明にある通りに、この基準に従っての行動でありましても、いやしくも被害を及ぼした場合には責任があるのだ、この点ははっきり先生の御意見通りにそういうふうに解釈をし、認識をしておきたい、かように考えます。
  28. 田中武夫

    ○田中(武)委員 それで無過失責任といったようなことを明確にうたっておく必要があるかどうかとこういうことなんです。政府委員じゃないのですから、政府案の提案説明の補足はけっこうでございます。
  29. 大坪藤市

    大坪参考人 民事上の問題でございますと——刑法上の問題は、過失のない場合には原則として罰しないということがあると思いますが、民法上の場合におきますると、いやしくも被害を及ぼしました場合には、そこに過失があろうとなかろうと賠償の責任があるということは一応の原則である、かように私は考えるのでございまして、特にこれは一般の民事上の問題として処理すればいいのであって、本法に特にそういうような特殊の規定を挿入することが適当かどうかということにつきましては、私はまだ研究いたしておりませんので、この際御意見を申し上げることは……。
  30. 岡尊信

    ○岡参考人 第七条の水質基準を遵守したときの民事上の責任、免責規定でないということと、もう一つは無過失損害補償の場合、これは先ほど大坪参考人が言われた通り、刑事事件では無過失では責任がないのでありますが、民事事件ではたとい無過失でも第三者に被害を及ぼした場合には損害補償の責任があるというような今日の日本法律の解釈、あるいは判例等によってもそうなっておりますから必要がないように思われますが、また法律立法技術上そんな規定は要らぬのじゃないか、こういう議論もありますが、私はこれは加害者、被害者を啓蒙させる意味からしても、安心させる意味からしても必要のようであるから、注意的規定でもいいから規定してもらえないかということを、この前の陳述のときに申し上げております。
  31. 田中武夫

    ○田中(武)委員 法律論争じゃないんですが、現在法律論として無過失責任なんてこれは常識なんです。だから民法のいわゆる故意または過失、これだけでなく損害を与えたものは賠償責任があるということははっきりしているわけです。従ってそれはかかっていなくても、法廷で争う場合は無過失責任ということが出てくると思う。しかしながらおっしゃるように注意規定というか、それよりかむしろ明確に無過失責任を打ち出しておいた方がいいのじゃないかと思うんです。それから先ほど大坪さんが言われたような御意見ならば、特別立法は必要でないというようなことにもなると思いますので、それだけ申し上げておきます。
  32. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 初めに柴田先生に御質問申し上げます。実は先生は突然こちらへおいでになってこの委員会の審議の経過等をあまり御存じないかもしれませんので、きのうの委員会政府委員と私どもとの間に行われました議論の中心を先に申し上げたいと思いますが、私どもは今回の法律を作ります以上は、第一に水質基準をこの川にはこれ、あの川にはあれという作り方をするときには、相当政治的配慮がいるわけであります。それからそういうことから全国の河川を対象とする一般的な基準がなければならぬ。かりにその一般的な基準を、政治的な配慮からもっと高くする場合があるとしても、ほんとうはこうあらなければならぬというものを作っておく必要がある、こういう意見を出したわけですが、政府当局の方からそれは困難であるという答弁があったわけです。ただいま先生のお話を承わりますと、スタンダードは作り得る、もちろん一つではない、たとえばほんとうに澄明度の高い河川をA級としますならば、次には若干よこれておるとか、飲めないとか、被害を与えるとかいう四つくらいのクラスによって、スタンダードは作っておかなければならぬという御意見のようでありました。私もスタンダードなしで、出たとこ勝負で、その川その川で、そのときの政治的情勢、その地区の関係の人々の運動、こういうものによって変更されることは非常に問題があると思うのであります。この点についてもう一度先生の御意見を伺っておきたいと思います。同時に先ほど大坪参考人からの発言によりますと、この基準日本現状においては定め得ないという、日本の科学技術の水準を非常に軽く見られた発言がありましたが、これに対して先生は治水工学の大家とされてどれだけの自信を持っておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  33. 柴田三郎

    柴田参考人 その水の各法令は、また外国法のことを言うのは何ですが、アメリカでもイギリスでも——ことにイギリスの方が最初で、先ほど申し上げましたようにローヤル・コミッションがスタンダードをきめて、それがもととなって河川法ができているはずですから、アメリカでも各州に法律があるが、その州は大てい三分の一くらいは各州ごと及び両州にまたがるものは両州間にスタンダードを持っているはずです。ただそれを運用するに当って、いかなる場合にこれこれでなければならぬ、その川の廃水は何パーセント、きたないものはきれいにしておけという実例や法文に書いてないやり方もあるし、法文に書いてあるのもありますが、結局そこでしょう。そうすると科学というのは進んでいるから、必ず一つ基準を定めてそこに進むべきでしょう。基準がなければ進まない。大ていの法律はそうじゃないでしょうか。たとえば二十才未満の者はたばこは吸ってはいかぬ、酒は飲んではいかぬということになっているが、二十才でも何ら差しつかえないようながっちりした人もいるし、二十五才になっても飲むとふらふらする者もあるが、一応二十才という基準をつけて、そうしてそれによって情状酌量して罪にする場合もあるし、罪にしない場合もあるのではないか。法律というものはこれでよいというところをきめて、それに近づけよう——それから漁業の方でも通産省の方でも、その理想に近づけようという目的をもって、汚水、下水、工業排水処理もされる。ところが理想に近づいているにかかわらず、今も汚濁されているのだから、これは漁民や農民に対してその汚濁が処理できない場合に賠償という形になるのではないでしょうか。そういうふうにしなければ、魚や漁業のために水がある——これは神様に聞いてみなければわかりませんが、そうではなくスタンダードはきめればきめ得るんです。日本の水科学、ことに廃水科学なんかは一つもおくれてないのじゃないでしょうか。下水の方は向うでは発達がはなはだしくて、ずっと前から、二十年も三十年も前に体系づけられておる。工業廃水を単独に処理するということは、日本の方はちっともおくれてない。先ほども申しましたが、名前は言いませんが、三、四の会社でもって世界じゅうに持って回ってもいいくらい川に水をきれいにして出しているところもあります。だからむしろ外国に見に行くよりも、日本各地のよくやっている工場を見た方が参考になる点が多々あると思います。みんな向うばかりに行っておりますが、向うでもそれほどまでにやっていないところがある。経済安定本部が昭和二十四年に出した産業廃水法律や、それをもとにしてそれに近づこうとしてBODならBODを一〇〇以上にしないということによって工場排水としたのであって、そのほかに精神的に水をきれいにしようとか、一応あるところに近づけて、世界的に日本の科学でも研究されて、ほとんど害がない、あったにしても現在ではやむを得ないのではないかということになっておる。現在水質基準というものは三つか四つかは作り得るのではないか。また作るべきであると思う。だから水質基準は政治的にもできるはずです。必ずできて、その運用によってそれに近ずこうとする会社が、もしその基準からはずれている場合、少しでもその基準に合うように研究してもらいたい。それから工場が処理をしないで害があった場合、漁民に金を払うとか何とかいうことも起るが、結局水の保全のためには基準がなければならぬが、日本の相当の川はその基準はつけられるものだと、私は確信をもって言うことができます。
  34. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 先生の今の御意見はまことに貴重な御意見で感謝いたします。今度の水質汚濁の問題については被害者、加害者共通の場があるわけです。何も化学工業の発達を阻止し妨害するために、水産業者が生まれてきたわけではない。漁業をやっつけてやろうと思って工業地帯になったわけでもない。それで設備の改善に対して国家の大巾な援助、こういうものに共通の場があると思う。従ってこれを機会に治水工学が大巾な発展をする非常な好機に恵まれておると思う。こういう機会に日本の治水工学に対する水準が非常に低下しているような見方が一部にある。本日の参考人の中にもおられるし、政府部内にもあることは非常に残念に思いますが、ただいまの先生のお話で非常に心強く思う次第であります。  次に大鳥参考人にお伺いいたしますが、先ほどのお話の中に閣議では現状基準とするという意見が多かった、こういうお話があったわけですが、この点は今度の法案の審議に非常に重大なことでありまして、私どもはもちろん今柴田先生からお話がありましたように、今の水がもう少しよこれてもその地区に工場を作った方がいいという川、それからまたもう少しこれをきれいにしなければ大へんだという川もあるし、また産業工場の分布その他の問題もあると思いますが、あまりにも集中し過ぎる傾向にあるわけですが、新しい土地を求めなければならない、それが必ずしも単なる水の関係だけでなくて、電力の関係とか、あるいは地価の関係とか、こういう問題でそういうことが期待されている。また現に東北方面においては工場誘致の運動を起しておる、従って今よりよこれるかもしれないが工場を誘致してくれ、また今より少しよこれても大丈夫だ、今よりもっときれいにしなければならぬという川もある。こういう点が問題になるのですが、大島参考人の御発言の中に、閣議において現状基準とする意見が多かったということは、どういう経路でお知りになったのか、こういう点を伺っておきたいと思います。
  35. 大島竹治

    大島参考人 これは閣議の方のお話を漏れ聞いたのでありまして、私は閣議の方に行くわけに参りません。しかしながら大体そういう空気が多かったということを私は聞いた、こういうことでございます。従って、先ほど来お話のあります保全の問題のことでございます。それで今おっしゃいました通りに、非常に現状よりもよくしなければならぬ川はございます。それから、ある点までもう少しこのほかの関係からよこれても工場は作れるだろうというところもございましょう。ですから、これは一つの空気のあれでございまして、それはそういうように伺いました、こう申したのであって、そうであると申し上げたのではございません。
  36. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 私が非常に心配しますのは、この問題で一番すっきりした案を作ってほしいと期待しておるのは農業団体漁業団体であります。ところが農林水産の行政の面で非常に有力な政府並びに与党の中におる方、こういう方の方から閣議の方にいろいろ働きかけがあったということを、私も漏れ聞いておるわけです。ですから、農林水産の方に発言力のある実力者といわれておる人が、一方でまたこの案を骨抜きにしようという動きがあるならば、これはほんとうに審議しておる私たちは茶番劇をやっておるようなものでありますので、その点をもし大島参考人から伺えれば幸いだと思ったわけです。
  37. 大島竹治

    大島参考人 この問題は、先ほどからいろいろな論議がありましたように、非常に清水のごとく、たとえば隅田川にアユがすめるようにというような希望希望として持たれるのはごもっともでございますが、それを法律体系で持っていこう、こういうような空気であるのは困りますと申し上げたのであって、川をよくしようという希望については少しも変りがございません。
  38. 赤路友藏

    赤路委員 一点だけ。いろいろ私の方でも調査いたしてみましたが、捕捉できない点が一つありますので先生にお尋ねしたいのですが、現在の日本の工業用水の年間の使用量の推定はどの程度か、おわかりになりませんでしょうか。
  39. 大島竹治

    大島参考人 書類を持って参りませんが、ちょうど通産省の産業施設課長がおられますので、その方から……。
  40. 赤路友藏

    赤路委員 通産省の方わかっておりますか。
  41. 川原英之

    ○川原説明員 大体わかっております。
  42. 赤路友藏

    赤路委員 推定でけっこうです。
  43. 川原英之

    ○川原説明員 大体現在調べましたところでは、三十一年度におきまして、全国二千六百十四工場について調べましたところで、一日に淡水が千七百万トン、それから海水が千三百万トン工業用に使っておりまして、両方で大体三千万トンという数字でございます。これは二千六百十四工場でございます。従って中小の工場調査対象から漏れているものについては、若干推定をいたさねばならぬかと思います。
  44. 勝澤芳雄

    勝澤委員 大島参考人と岡参考人に最初にお尋ねしたいですが、和解仲介の問題の十九条に対しまして、大島参考人の方は公共用水域指定水域とされたい、こういう考え方をされておるわけでありまして、水質基準のないところで紛争が起きても困難じゃないか、こういう考え方に立つと、紛争が起きたところから水質基準を作っていけばいいじゃないか、こういう考え方もあるわけでありますが、現在紛争を処理するという立場からすると、指定水域だけで、それに水質基準をきめてそこからやっていく、こういうことと、それからやはり紛争をできるだけ早く解決していく、こういう立場からいうと、少しここに問題点があると思うわけですが、この点についての御見解を両者から賜わりたい。それと同時に、仲介方式の問題でありますが、任意制という問題を出されております。中央にも水質審議会を置いた方がいいじゃないか、それから岡さんの方は、連合審査というようなものを作られた方がいいじゃないか。きのう私が政府に質問した場合には、東京都と千葉のような場合においては、それは好きな方にやればいいのだ、こういう回答がございましたけれども、具体的には政令できまることになる、これからの審議の中で十分皆様方の御意見を取り入れたものがきめられると思うのですが、この問題について、仲介委任の問題あるいは連合審査の問題、両方の立場から一つ御回答を願いたい。  それから次に大坪さんと岡さんにお願いしたいですが、大坪さんの場合は全国農業会議所の代表ということで出ておられるので、私は農民の代表という立場で聞いておったんですが、さっき第四条の三項の場合の水質基準の許容条件をきめる場合において、今日でさえたくさん紛争ができておる、そうしてきのう政府の答弁の中でも四条一項によって「相当の損害が生じ、若しくは公衆衛生上看過し難い影響が生じているもの又はそれらのおそれの高いもの」、この許容基準でさえも紛争が起きるであろう、民事訴訟が起きるであろう、こういうことを予言されているわけです。なぜ今日この法律を必要とするかといえば、とにかくごたごたしている農民や漁民は零細で、裁判などというものは大きな会社に伺ってできない、やはり何とか国家で両方を調整できるものを作ってくれ、こういう立場から出ておると私は思うのですが、大坪さんは農民の立場から言われて、いやこれでいいのだ、こういうことを言われて、私は大へん残念に思っておるんですが、今日の紛争状態から考えて、もう一度はっきりこの立場というものを明白にされておいていただきたい、このことがこの法案を審議する上に大へん重要なキー・ポイントになってくるんじゃないか、こういうふうに思うのです。  最後に柴田参考人お願いしたいですが、この社会党の案の骨子となっているものは、二十六年一月二十五日の第二十八回の経済安定本部の資源調査会においてきめられた案を骨子に社会党は作っておると思うのです。この中の委員には柴田先生水質汚濁防止小委員会の会長として出席をされて、経済安定本部の総裁である吉田茂氏に答申案を出されておる。こういう立場で社会党案というものは作られておるわけでありまして、この水質汚濁の問題につきましては先生も大へん造詣が深いし、また大きな期待を持っておると思うのです。そういう立場で今回政府が出しておる案をやはり少しでもよりよくしていこうということをお考えになっているのは当然のことであると思うのですが、そういう学問的な立場から、こことここだけはやはり少し何とかしておいた方がいいのじゃないかという点があったら、一つ御指摘を賜わりたいと思います。  以上御質問申し上げます。
  45. 大島竹治

    大島参考人 今私に御質問がございましたのは二つあると思いますが、一つ中央にも作っておいたらいかがでしょうということ、それからもう一つは、指定水域としてきまりましたところについて法定の仲介の制度をお作りになって、その他は現行の通りということについての説明でございますね。  そのあとの方から申し上げますと、その説明書に書いてございますけれども、一番この問題で私どもが心配しておりますことは、時の勢いできまるということでなくて、先ほどよく申しましたけれども、調査ができまして害の根源がきまるようにしてきめていただきたいというところにございます。それでそうなりますと、何もびっしりきまってくれなくてよろしいのです。大体傾向がこうだということがわかる程度でけっこうなんですが、そういうことはわかるようにしてもらいたい。そういうようにしまして法定の仲介というものは、そういうことのできる手順のついているものにしていただいて、その他は現行のように、県知事さんなんかに御仲介を願わなければならぬと思うのですから、現行のようにやっていただいて、そうして目的を達していただいた方がよかろう、そうして今御疑問があろうと思いますのは、法定するには大急ぎで水質をきめたらいいじゃないかというふうに、それだけにちょっと御疑問があろうかと思います。大体においてだんだんなれて参りますと、その水質基準をきめたり何かする技術は、そう長く時間がかからぬようになるだろうと思います。それで私は問題が起きましたところを水質基準にして法定にして参る、そうして正式に理詰めに仲介の労もおとり下さる準備をしてやっていただくというような手順の方がよくはないか、こういうような業界の意見でございます。  それから前の方の問題は、任意制と書いたのが少し悪かったのかもしれませんのですが、何もこれは大審院と地方裁判所というような解釈ではございませんので、どちらでもとれるように、そうして中央におきますと、中央にはいろいろな識者がおりますし、それからまた比較的権威あるいろいろなラボラトリーがございますから、そういうようにどっちを使ってもよろしい、場合によったら未解決だったらこっちでまた調べてもらったらよかろう、こういうような考え方でございます。
  46. 大坪藤市

    大坪参考人 ただいまの点はこの法律といたしましては非常に重要な点かと思います。私の方といたしましては、この第三項は削除していただくか、あるいは残すとすれば、「事実を除去し、又は防止するため必要な程度とする。」、こういうふうに直していただきますければ非常にけっこうじゃないかと思うのでございます。社会党御提出法律政府提出法律の違いの一つは行政機構の問題、もう一つはこの点に対する考え方が大きな問題ではなかろうかと思うのでありまして、主として被害を受ける側の私どもといたしましては、第三項は削除するか、あるいはこのまま残すといたしますれば、その必要な程度とする、この限度くらいには持っていっていただきたいという希望意見は持っております。
  47. 岡尊信

    ○岡参考人 この十九条でありますが、公共用水域に排出される水が和解仲介の対象になる、これは私けっこうだと思います。その通りに、単に指定水域だけでなしに、公共用水域に排出される水で事件が起きたらみな和解仲介をしていただきたい、こういうことであります。  それからその次の先ほどの第三項でありますが、こういうことは行政上の考え方、審議会の考え方でできると思う。無理にこういう条文を入れて、被害者を刺激することは大して効果がないのじゃないか、むしろ逆効果があるのじゃないか、こういうように思いますので、むしろ私はこの条項は要らないように思います。
  48. 柴田三郎

    柴田参考人 社会党案政府案とのいいところをとれば完全なものになると思います。具体的なことを申し上げますと、政府案の第二条に、「何人も、公共用水域及び地下水の水質保全に心掛けなければならない。」というのですが、私の希望としては、「何人も公共用水を利用する権利を持つ。」ということを入れてもらった方が、いいと思います。  それから第三条で、「公共下水道及び都市下水路」というのも、公共用水域に組み入れていますが、そうだとすると下水道の水質変化させるシリアスな問題になるような気がします。大体汚濁したものを下水道を通して下水処理場に入れて処理するのが下水処理ですから、下水道をここに入れておるというのは、下水の濃度を変えるなということになりそうです。今日でも、下水の方に、まだ下水管に工業廃水を入れられては困るという意見があるのですが、公共下水道を公共水域に組み入れると困ることになるでしょう。そういうことを言っていたのでは水質汚濁防止は進行しない。公共の設備だから喜んで汚水をとってやって、その経費だけ余分にもらえばいい。これをここに入れておけば、がんこな下水道業者は、下水道に工業廃水を入れさせないということになる。そういう理屈を今でも言う人があるから、そういう考えを持って下水道に入れてはいけないというふうなことを地方の県庁なんかに言っては困るので、下水道を公共水域になぜ入れたか私にはわからない。私としては下水道というものは公共の汚水処理のためにいろいろ使うのですから、公共用下水道を作ったからそれをよごしてはならないというのはおかしい。よこれても処理するのが役所の義務だから、保全すべき公共水域に下水道を入れるということは、下水道の発達をも阻害するのではないか。どんどんきたないものを入れてもきれいにするよう技術を研究してやるべきである。下水道が完備するということは、結局国が大へんきれいになり、健康にもなる。工業の発達にもなると思うので、この下水道を公共水域に組み入れることは、とった方がいいと私は希望します。  それから第四条で「経済企画庁長官は、公共用水域のうち、当該水域の水質汚濁原因となって関係産業に相当の損害が生じ、若しくは公衆衛生上着過し難い影響が生じているもの又はそれらのおそれの高いものを、水域を限って、指定水域として指定する。」という、そこも先ほども何べんも申し上げましたが、トラブルが起きたら、よこれているところだけ指定水域にすることはむずかしい。公共用水域全部に基準を設けることになった方がよい。あまり厳しく言わないで、含みを持たした方がいいのじゃないかと思います。第三号の「前項の水質基準」というのは、先ほど低姿勢であると言うが、別に低姿勢ではないのです。最低このくらいであるということで、それ以上であってはいけないというのではありません。それ以上のスタンダードは作ってはいけないという意味で、スタンダードがたとえば溶存酸素が四でなければならない、四にしても五にしても六にしても悪いということは言ってないのだから、結局四以下にしてはいけないというので、これは決して低い姿勢ではない。四以下にしたら魚が死ぬとか農産物にいけないのだから、それでいいと思います。これはそのままでいいということで、意見にはならないかもしれないけれども、念のために申し上げます。  それから第七条はなかなかむづかしいのじゃないか。先ほども申しましたが、水質基準を順守しなければならないというのは、工場がちょっと製品を変えたり、きょうはうまくいかなかったとか、工場がやめて別な小さいものができてしまったりする場合に、小さな町工場なんかできたってわからない。そうすると、水質基準を守っていてもなかなかこれはトラブルが起きるし、また守られないことがあとで出てくる。そういう場合に順守しなければならないというのはなかなかむずかしいことで、水質基準を順守するように努力しなければならない、そういうふうにした方が含みがある。しなければならないというと、ほんとうに年中水質試験をやらなければならない。するように努力しなければならないというと、非常に楽になって、一カ月に一回くらい水質試験所で研究するとか、会社の方でも研究するということになるのじゃないかと思います。  それからあとは大してないのですが、委員二十人というのは少し多過ぎる。さっきも言ったように、半分の十人くらいにしぼってもらった方がかえってうまくいくのじゃないかと思う。それから研究のことですね。地下水の利用とかいろいろなものを研究しなければならないことがうたってあったでしょう。第十一条の二項の三、水質保全に関する基本的事項に関することといって、その場合に処理した水の放流を受けて、幾らか汚濁された水を使用する目的の方からいえば、浄化研究もしなければ、片方の農水産の方はいつも元通りの水を期待する結果、文明とか、進歩とかにほおかむりしていられるということであって、いつまでも農民、漁民がレベルが低いから科学研究はできないということでみくびることになると思う。汚濁水を使用目的に沿うように浄化研究を調査することというようなことを入れたら、大へんにりっぱになるのではないかと私は思っております。  それから都道府県にその調停を依頼するということになって、それが主になっているようだけれども、都道府県でもってなかなか解決できない場合がある。知事がある人の肩を持って乱闘にまで立ち至った例も僕は知っている。こういうへんぱな考えを持ったのではなかなかできない。地方で解決ができなければ中央委員会が取り上げるということを入れておかないと、また間違いが起きますから、それを入れておく方がよい。実際に、排水処理に、地方に行ってみると、いろいろそういう例にぶつかりますから、中央提訴の機会を与えて公平なる判断を受けられるようにしたらいいのじゃないかと思います。
  49. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 以上で午前出席願いました参考人方々に対する質疑は終りました。  参考人方々に、長時間にわたり貴重な御意見をお述べ下さいましたことを、厚くお礼を申し上げます。  午後二時より再開をいたします。     午後一時二十四分休憩      ————◇—————     午後二時十五分開議
  50. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  公共用水域水質保全に関する法律案工場排水等規制に関する法律案及び水質汚濁防止法案を一括して議題となし、休憩前に引き続き参考人方々より意見を聴取することといたします。  この際参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところ御出席下さいまして、まことにありがとう存じました。ただいま議題になっております三法案重要性につきましては、今さら申し上げるまでもなく、本委員会といたしましても、法案審査に入ります前にも再三調査をいたしたこともあり、法案審査に当りましても、これが農業水産面が受けます影響並びに産業各部門に及ぼす影響重要性考えまして、当局に対し質疑を行うばかりでなく、学識経験者並びに利害に関係の深い方々より御意見をお聞きすべく本日御出席を願った次第であります。参考人方々におかれましては、忌憚のない御意見をお述べ下さいますようお願いを申し上げます。ただ時間の都合もありますので、初めに説明をされる時間は一人当り大体十五分程度に願いまして、後刻委員からの質疑にも十分お答え下さいますようお願いを申し上げます。  それでは、まず恩田参考人お願いをいたします。
  51. 恩田正一

    恩田参考人 私は群馬県の東部の農民でございますが、かねがね足尾鉱山からの鉱毒被害に何十年来悩まされておる農民といたしまして、本日この委員会出席できまして委員先生方に意見を申し上げる機会を得られましたことを深く喜びとし、感謝する次第でございまして、何とぞわれわれ農民が被害から免れるような法律を十分作って、対策を立てていただきたいと考える次第でございます。  われわれの住んでおりまする群馬県東部、桐生、太田、館林、新田郡、山田郡、邑楽郡にまたがるところの地帯は、いわゆる群馬県のウクライナとして、米作地帯として、われわれ農民の食糧増産に対する使命は非常に大きいのでございます。この七千二百町歩にわたる東毛地方の水田は、ことごとく渡良瀬川の水に依存しているわけでございます。渡良瀬川は日光の男体山と赤城山の間に源を発しまして、ちょどその源に当るところに足尾銅山があるのでございます。足尾銅山が明治初年からここに精練製銅の仕事を続けておりまして、この煙害によりまして今すでにこの水源の何万町歩の山は、完全に草木、コケ類まで一つもない荒涼たる岩山になっております。従いまして、少し日照りが続くと、水源ががら山であるために保水力がない。すぐに旱害が起る。雨が降って水がふえたと思えば、足尾鉱山の鉱泥の堆積場から濁水がとうとうと来まして、雨さえ降れば濁水が来る。ときには天気でも水が流れてくる。特に終戦直前の二、三年間というものは、一年じゅう澄んだ水は一回も流れてこなかったような状態でありまして、これがために、われわれの水田は完全に荒廃いたしまして、米においては三万俵の減収、麦、小麦においては一反二俵半から三俵の減収でございます。なぜこういう被害が起るかと申しますと、もちろん鉱山の中の坑内湧水の極端に酸性であること、これは直接化学的の被害を及ぼしておる。麦が発芽しなくなる。また水田に鉱津が入りますと、この鉱津はちょうどセメントのような三百メッシュとかいう微粒状態の粉でございまして、これが雨水とともに川に流れ込んで水田に入ってくるのであります。そうしてこれが水田の表面に沈澱しまして、太陽光線も、空気も、水の交流もとめられてしまう。従って、稲が呼吸作用ができないで、根腐れを起す。植えたままで成長もしていかない、分けつももちろんしない。根が腐ってしまう。これが被害の状態でございます。  そうしまして、今まで鉱山保安法とか何とかあるそうでございますが、われわれが鉱山に何十年来苦情を申し込んでも、なかなか鉱山側としてはこれに対する損害賠償はやらない。今度この河川の浄化をはかるという法律ができるそうでございまして、この法律も二、三日前に私のところにも送られて、ちょっと見ましたが、内閣提出という二つの法案は一通り読みましてわかるのでございますけれども、あと何君提出という方の法案は、読みましても、鉱山保安法の何条の何を加えるとか、カッコの中にまたカッコがあったりして読めないので、一回目を通してよしてしまいました。その中にはどういうことが書いてあるか、もちろん私には六法全書等がないために読めませんでしたが、この内閣提出の方は非常によく、しろうとでもわかったような気がしますがけれども、率直に申し上げれば、これによってどうもわれわれの鉱毒被害が守られるような感じはいたさないのでございます。そうして特にこの十九条ですかで、紛争あっせんについて経済企画庁の審議室でやるというようなことが書いてありますが、その十九条に「水質汚濁による被害(鉱害及び水洗炭業の施業による被害を除く。)」ということによりまして、都道府県知事の仲介の申し立てをすることが除かれているような状態であります。また都道府県知事にまかせられても、われわれ被害を受ける方は群馬県の農民であって、鉱山は栃木県にある。栃木県はいろいろ利益があるでしょうが、群馬県だけが排泄物の被害を総かぶりにかぶる。こういう状態で、群馬県知事が栃木県の取締りはできないのじゃないかと思います。そういうことからしまして、私には、この鉱山の取締り関係は、鉱山保安局なり通産大臣なりの所管において、この紛争なり鉱害の防止がはかられるような法律になっているような感じがするのでございますが、私はそういう一省がこの問題を取扱うということでなく、中央に強力な機関を設けて、これによって第三者的の立場から、がっちりと取締っていただきたいということをまず痛感するものであります。  それから濁水の基準を作ると申しますが、足尾の場合には、渡良瀬川についてはほとんど一年じゅう澄んだ水が来たことがない現状でありますので、おそらく許容基準などというものを設けていただいても、現状がこの程度だから現状より悪くならなければよいというふうな許容基準であってみれば、われわれには何ら救いの手は伸べられてこない。渡良瀬川の場合には、たとい雨が降っても、この排泄物の鉱毒が渡良瀬川に進出しないように、許容基準をもし作っていただくならば、一〇〇の中へ〇・一でも〇・五でも入られては困る、これをこの程度ならよろしいという許容基準を作られたら、今度は鉱山では、これでもう免許皆伝だと、公然と流されるという懸念が多分にあるのでございます。泥は一ミリでも水の中に入らせないようにという——さっき何とかという下水の博士の方が申しましたが、どの川は一級の川だ、どの川は二級だ、これはこの程度濁ってもよいというようなああいうことでは絶対困るのでありまして、田へかける水というものの中にこのセメントのような粉がまじって、この程度ならばよいという許容基準を作られて、それによってこの川はこの程度はよいんだということになっても、一年じゅう田へかけてそれが何十年と累積ざれた結果、今われわれの水田七千二百町歩が壊滅になった。農民も朝晩注意しておりまして、ひどい鉱毒が来た場合には、夜中でも起きて行って水をとめて、田の中へ入れないようにする。しかし植付直後とか田植えの日には、どうしてもこの悪い水を入れなければ田植えもできない。また植付直後の十五日間どうしても水を切ることができないという場合には、われわれは涙をのんでかけざるを得ないのであります。これが長年蓄積、累積されるところからこの鉱毒の被害が起った。すでにわれわれの田は、上から一尺表土を交換しなければ、いかに石灰を使っても、どういう処置をしても、もうだめだということを専門家も言っております。この膨大なる被害土地の土の入れかえなんということは、できるものじゃございません。かりにあしたからこの汚水、濁水の取締りができて、完全にきれいな水が流れたとしても、この荒廃した土地を回復するにはおそらく十年、二十年とかかることだろうと思います。  今までに鉱山監督局等があって、それが足尾のこの鉱津の排泄物を取り締っておったそうでございますが、われわれから見ると、鉱山監督局というのはちっとも取り締ってくれないで、この廃泥の処理施設も全くお粗末な申しわけ的な施設で、一年に何回もくずれると、そのたびにその泥が片づくという計算のもとに、この施設ができている。じきにこわれるように計算されているような感じがするのでありまして、足尾に言わせると、これは監督官庁がこれでいいと言っているのだから、こわれてもわれわれの責任じゃないということを申しておりまして、こんな監督官庁に監督されて、その法律のもとに、われわれ農民がみずからを守らなければならないという情ない状態ではまことに困るのでありまして、この点につきましても、農地が被害を受けることについて、当然農民を守ってくれるのが農林省であるべきだのに、これほど大きな農業災害でも、ひょうが降ったとか、大水だとか、冷害だとかでなければ、農業災害としてかまってくれないということは、まことに農業災害法はなきにひとしいものであります。特に今回の鉱毒の対策につきまして、農林省が何ら独特の法案も出してくれないで、足尾鉱山を育成すべきところの通産大臣がこれを所管するということにおいては、われわれがおやじと頼む農林省が、われわれ農民を他人に養子にくれて、鉱山をかかえておるところの通産大臣にお願い申し上げなければならないということは、農林省に親心がない。手前の子供をよそにやってそっちの害を与える方のおやじさんにかばってもらえという、その精神がすべてこの法案の中に出されているような感じがして、まことに残念でございます。  それから足尾銅山のような、早くいえば、あの渡良瀬川の上流に大きなモグラの怪物がおって、やたらに穴を掘って岩石を食って、その排泄物が一日に千トンも三千トンも渡良瀬川にほうり出されて、その排泄物の堆積の山が、雨さえ降れば汚泥となって流れ出しておる状態、そしてかってはゴジラだか何だか知らない巨大なる怪物が渡良瀬の上流の山に住んでおって、これが毒気を吐いて水源の山をみんな枯らしてしまっておる。その毒気の煙だけは始末がついたとはいいながら、その岩石を食っては排泄するところのこの怪物の排泄物の何十年来積まれた山が、この七千二百町歩の水田に対して何億という被害を与えておる現状でありまして、これは人工的の災害の最も大きいものであると思います。天然の災害は取り締まるが、こういう膨大な人工災害に対して何ら国家において手を打ってくれないということはまことに残念でありまして、この巨大なる怪物に対して、下流農民が田中正造翁以来八十年にわたって抗議を申し込んで戦ってきても、今もって旧態依然たる状態にわれわれは放任しておかれる。  しかも、あの渡良瀬川の上流の山を坊主にしたのも、国家の許可のもとにやらした。今やわれわれはこの被害に対して、ただ単に足尾銅山を相手にけんかしていたのでは始まらない。国家がこの根本原因から対策を立てていただきたということを切にお願いするものでありまして、規制法律で、汚水、濁水が何パーセントならばこれを許してもいいとか、そんななまやさしい問題では絶対にないのでございます。これは下流において三億なり五億なりの被害が出ておる。その食糧の事情と、それから水源においてこういう事業をしておる。しかもその事業は、足尾さんに聞くと、もう引き合わないのだ、銅もあまり出なくなったというならば、むしろこれを廃業して、今まで掘った泥をみんなその穴へ埋めて、しつかりふたをして閉鎖していただくことが、むしろわれわれ農民の希望するところであります。承わるところによると、すでに足尾の鉱脈は尽きて、ほかの山から運んできて、わざわざ渡良瀬川の上流に行って粉にして流す。なお承われば、最近原石をチリーから持ってきて、わざわざあそこまで運んで流す。そんなことなら、いっそのこと鉱山をそっくり海岸に持っていって、被害のないようなところでやってもらいたい。これは国家的見地から、どっちが国のためになるかということを代議士先生たちがよくお考えになって、できることなら、それが一番われわれの希望するところでございますので、水質汚濁防止もけっこうでございますが、やるならば渡良瀬川については、この鉱津の排泄物はたとい一ミリグラムでも水に入ったら許容基準を超過するものだ、という程度の許容基準を作っていただきたい。そうでなければ、また鉱山監督局が許可しているのだから、の程度でいいということで、今度は大いばりでまた流されるという危険性が多分にうかがわれるのでございます。この許容基準ということがわれわれは頭にこびりついて、これはどういうふうにきめられるのかということで、全く眠れないような状態でございます。  以上であります。
  52. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 次に、耳浦参考人お願いをいたします。
  53. 耳浦善二

    耳浦参考人 私は内水面の川の組合をやっております耳浦でございます。本日私は、川を扱っております組合の者たちが多年願っておりました工場の排水に対する法案が、いよいよ日の目を見ようとすることでありますので、非常な期待を持ってここへ参ったわけであります。  さて、そこで私は逐次、この法案の一条、二条ということに対することでなくして、川を守っております人が今日まで工場の汚水によってどの程度の被害を受け、苦労しておったかということと、この法案の骨子は工場の汚水を規制することだけで、川にすんでおる魚の生息資源の枯渇ということに対して親心があるのかないのか、こういう二点を申し上げたいと思うのであります。御存じのように私が住んでおります、主宰しておりまする川は、神奈川県の酒匂川であります。関東地区におきまして、ただいまは組合員の熱心なる育成によりまして、アユの名産地となっておりまするこの川が、三十年来この流域にできました各工場による被害のために、毎年々々川に集まりまする収入の金をこれらのついえにしているような状態であります。上は静岡県の小山から流れまする鮎沢川を合流いたします。これは読んで名のごとく、鮎沢川であります。アユが往年ここにはごってりすんでおったので、鮎沢川という名前ができたのでありますが、あそこに紡績が建ちますると、この川は全滅いたしまして、全然魚のいない川に相なって、神奈川県へ入っておりまして、これが酒匂川の上流に合流しております。それから中、下流に参りますると、富士フイルムという化学工場がございます。それからその途中には、小田原製紙あるいは日加工業染色という染色工場が——まあ酒匂川という川は、実に紡績から製紙から化学から染色から、至れり尽せりの工場が密集しておりまして、この工場によって年々歳々私たちは被害を受けておるのであります。  そこでこの問題については、まず最初に静岡県の紡績から流れます被害のために、私たちは再三再四アユの斃死をこうむっておるのでありますが、残念ながらこれは他県でございます。ここへ参りますには、まず被害を受けまして、この現場まで参ります間に、報告を受けましてから約四時間くらい時間がかかりますので、ここへ着いたときには、工場では今まで流しておった汚水を全部きれいに洗い清めまして、私たちが参りましても、いや工場の日誌をごらんになればおわかりでしょうけれども、工場では何もそういうような毒物は流しておりません、こう言うわけであります。何回参りましても証拠がつかめませんから、いつも泣き寝入り、これが川の状態であります。  特に本年六月一日に行われました富士フイルムにおけるアユの斃死の状態におきましては、これは実に時もよし、タイミングもよかったのであります。毎年これは二度ないし三度参っておりまするが、いつ参りましても、私の方では御存じのように工場管理というものがオートメーションになっておりますので、絶対に川へ毒物は流しません、ということで、はねられました。この法案の中にも審議会があるそうであります。罰則を設けるということが出ております。しかもその中には、委員が非常勤というようなのが書いてありまするが、川は最低時速二キロ程度の流速を持って流れております。従って、魚の被害を受けましてから、これを魚が浮き上りましてから発見し、この水を取り上げて現場に持っていくときには、もう水は希簿になりまして、アユが、魚が斃死の状態になっておりません。それで、これを持って参りましても、はっきりとアンモニアなり硫酸なりという表が出ますれば、まだよろしいのでございますが、出ない場合においては、いつの場合においても、工場では、もっとしっかりした証拠を持ってこい、あなた方はこんなものを持ってきて、言いがかりをつけるのもほどがあるじゃないか、こういうことで、追い払われるのが川の漁師の状態であります。たまたま六月のときには、これはアユの解禁日でございましたので、全組合員、役員百名が例年の通り二時から出勤いたしまして、流域を固めました。従って、約八キロにわたるところの流域において流れました猛毒汚水というものが、何時にここへ流れた、何時にここへ魚が上ったというふうに順に参りましたので、これはいやおうなしに現場をつかまりましたから、文句なしに頭を下げたのでありますが、これがもし一日違っておりまして、この災害が五月三十一日であったならば、午前の三時に排出いたしました毒水というもので、だれしもが寝床におるうちに、きれいにあの八千貫というような膨大なアユは流されてしまった。こういうような状態になったときに、だれが一体これを審議するか。証拠物件がない場合に、一体だれが審議をし、この審議会はどういうふうにして取り上げるでしょう。たまたま二千人以上の人がおりましても、あまりの災害のひどさに、水をくんで証拠をとろうという人がないという状態でありました。私はたまたま川におりましたので、すぐにとりましたが、竹筒一本の水が保健所の分析によりまして、アンモニアと硫酸とこういう含量だということがはっきりわかりましたので、やむを得ず会社が過失という面を認めております。これが一日違っておったら、われわれといたしましては、きのうまであんなにおった魚が一尾もおらなくなった、どうしてだんべえかということで、おしまいであります。こういう被害を受けた場合に、組合はただ泣き寝入りしなければならないのではないかという点であります。こういう点に対しましても、この法案に対してはまだ疑義があるのであります。  もう一つは、この中に水質基準ということがうたわれております。これはもちろん科学的な基準でありまして、川に対するあくまでも科学的な基準ではないかと思うのであります。魚を育て上げておりますわれわれといたしますれば、この科学的要素がなくても、魚は年々少くなっていきます。原因は、いわゆる中流以下における砂利の採取によりまして、日々再々濁り水を出し、こまかい砂礫を下流に流しますために、これらによって魚は自然に産卵を規制され、遡上を規制されまして、日一日と魚の量が少くなっていくのでありますが、こういう点がこの水質基準に取り上げてもらえるか、こういう点であります。水質が、濁っておるという点だけでは、だめだというようなことになれば、この法案水質基準というものは骨抜きになってしまうのではないか。御承知のように、水清ければ魚すまずということわざがありますが、世界に冠たる日本特産のこのアユは、清い水と清い流れがなければ生育は成り立たないのであります。たまたま十一月に入りますと、アユは産卵の最盛期でありまして、下流におきまして小砂利に産卵するのでありますが、そのときにおきまして、砂利を取りますドレッジャーが三台も四台もがらがらやって、これは夜も寝ません。二十四時間休みなしに川をほじくり回して砂を流し、黒い、赤い水を流しますために、アユは絶対に卵を砂地につけませんし、産卵すると、雄がこれに精液をかけますのに、こういう濁った水があったのでは、卵が付着いたしませんので、全部これは川口に流れて不発に終ってしまうわけです。そのために年々歳々アユの姿がなくなる。しかも砂利を所かまわず取りますために、川の中にありますところの魚の唯一の生息地である玉石がだんだんなくなるため、アユの形が小さくなるというような状態、こういうことは、水質基準という点からいうならば、われわれ川におります、少くとも全国のこの河川を扱っております組合の人たちはだれしもが考えておることでありますが、残念ながらこれを今日まで取り上げてもらっておりません。先ほど群馬県の方から、川を扱い、たんぼを扱うのが農林省であるのに、農林省でないよその管轄に来てこういうことを言うのは、という言葉がありましたけれども、私ももっともだと思うのであります。従って私の申すことは、この法案のピントをはずれておるかもしれませんけれども、一応この公共用水法案を作る上におきましては、魚を、資源を保護する。これは川ばかりでありません。海における魚介類もしかりであります。まずこの魚族、貝族、こういうものの資源を保護するという根本から立ち上り、次にそれらによって受けますところのこれらに従事する漁民の利益を代表し、それから、これらをやらざればならなくなった工場に対する規制という、こういう面に立脚して、この法案はおそらくなされたのであろうと思いますので、そういう意味におきますと、何かこの法案に足らざるものがあると思うのであります。  それから、たまたま私どもの流域にありまする工場が大きな紡績、大きなフィルム会社であります場合はよろしいのであります。その下流にあります小さな製紙、染色工場というものは、約二キロにわたりまして、悪臭鼻をつまむような水を流域を通じて——これが土手裏の川を流れております。この水をどこでとりましても、この水はもう魚のすめるものでありませんし、生物のすめるものではありませんが、一応これは堤防裏を流して河口へ持っていっております。河口から約四百メートルばかりのところに持っていっておりますが、雨量の多い場合におきましては、一応水流がございますから、この汚水が川へ入りましても希簿になるから、魚の死骸には関係ないのであります。ところが、これが一たん渇水期になりまして、この水が流れて参りますと、この被害というものは非常に大きい。しかも三月、四月の小さな魚の遡上期におきましては、この被害というものは、また格別なものであります。そういう場合において、一体水質基準というものを、水質のそれぞれこういうものにおいてとり得るのかどうか、そういう点も私は不安を感ずるものであります。  いろいろと私たちが考えまして、こういう面と、もう一つは小さな工場におきまして、かりに被害の起きましたときに、一体この工場がそれを支払う能力がなかったときはどうするか。これは毎々私たちがやっておりますことは、製紙工場から出ますカルキの分量が多くなります。しかも、昔は漂白剤にしましてもカルキばかりでありましたものが、最近はだんだん高度の化学剤を使うようになりましたので、ときどき非常に大きい被害をこうむるのでありますけれども、そこに参りましても、御存じのような状態でございますから、どうか一つ組合さん、かんべんして下さい、今後は絶対いたしませんから、どうかごかんべん願います、こういうことで、半紙の五しめももらえば、それで組合は泣き寝入り、こういう状態が続くのでありますが、こういう中小工場に対しますところの補償という問題は一体どうなるか。こういう点をこの法案の中に、私まだよく読んでおりませんが、果してはっきりと盛ってあるのかどうか。ぜひ、せっかくできまする法案でありますから、われわれは、どんな形でもよろしい、何でもいいから、一日も早く日の目を見たいという気持も切でありますけれども、どうぞ、こういう法案がせっかくできまする以上は、どちらの人にも喜ばれる法案にしてもらいたい、かように私は思う次第でございます。
  54. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 次に、大川参考人お願いをいたします。
  55. 大川鐵雄

    大川参考人 私は紙パルプ連合会の排水委員会委員長をやっております大川鉄雄でございます。このたび排水の規制あるいは水質保全ということについて法案提出いたされましたことは、私どもも最も当然なことと考えておるのでありますが、しかし、この水質を定め、あるいは何か問題の起りましたときに、その損害のよって来たる原因が何であるかということを、本質的に学問的に、それを調べますことはかなり困難があることは御承知の通りであります。しかし、これをだんだんに突き詰めて、まず当らずといえども遠からざる程度の、この損害を与えた場合のソースがどこにあって、それに対するウエートが——それにはいろいろな原因がからみ合って参りますが、ある企業に問題が起った場合には、その企業が果してその損害のウエートをどのくらいのものを負うべきであるかということも、できるだけはっきりと御検討を願って、当然負うべき責めは、その企業が負うべきであると考えるのでありますけれども、そういうように学術的に十分検討されるという必要があり、またそういった組織——現在、工業試験所なり水産試験場なりあるいは衛生試験所、そういう権威のあるところで十分御調査を願って、その上できめられるということであれば、けっこうなんでありますが、これがわずかな常任的な委員会で、そういう基礎が不十分なままにある線を引かれなければならないというようなことに相なります場合は、正当な判断と違った結論を生み出す危険が多分にございます。そういうような意味から、実は社会党の御提出の、申さば行政委員会の組織というような方式には、遺憾ながら賛意を表しかねる次第でございます。  なお、この政府提案公共用水域水質保全に関する法律案及び工場排水等規制に関する律法案、これらにつきまして私ども申し上げたいことは、大体この審議会を作られて、この審議会の運営いかんということが最も問題に相なるのだろうと思いますので、そういうこまかい点につきましては、これを省略させていただいて、ただこの和解の条項が第四章にございますが、これには私個人的にも、初めはこれが公共水域に排出される水、それに対しての和解条項ということに相なっておりますので、本文は水質を指定される、それと同時に、指定水域に対しての和解ということでありたいという気持を持ちましたのであります。それは現在でもいろいろ問題のありました場合には、都道府県の知事が和解の仲介に立っておられる例は多々ございます。しかし、この法案を出されまして、ことに十九条でこれをはっきり書かれますと、そのために何か当を得ないような問題を誘発するような傾向が起りはせぬか。そして何かそういったようなことから、後によく調べて規定されるべき水質基準というものがゆがめられるおそれはないか、といったような懸念を持ちましたために、和解条項、これはやはり指定水域の方がいいのじゃないかというような考え方を私どもいたしたのでありますが、しかしこういう法案を出されます以上、現在あるいろいろな紛議、それに対してまず指定水域がきまる前に、一般公共水域においてもこういったような形の和解の仲介をするのであるということでありますれば、かような章が入ることまた余儀ないかというふうに考え直しております。  それから都道府県が毎年仲介員の候補者十五人以内を委嘱されて、その名簿を作成され、そして何か問題が起ったときは、そのうちの五名を指定して、その仲介を実務的にはさせる、こういうことに相なっておりますが、これは当然関係行政幾関の協力を得る必要があるんじゃないかと考えるわけです。さような意味から申しますと、二県等にまたがったいろいろな問題も起るというようなことがあり得るのでございますから、一応各県がそういう候補者を指名される時分には、関係の行政官庁と御協議になって、その上で候補者を選ぶということにしていただいたらいいんじゃないかというような感じを持っております。  それからもう一つは、本法には盛られておりませんけれども、いろいろ廃水の除害施設、これらは私ども紙パルプ業界では、大企業においてはかなりいろいろな施設をいたして、できるだけ害のないような水を流すということに努力はいたしておるのであります。あらためて水質基準がきめられ、これが過当にシビヤーな基準に相なるという場合には、その除害施設には非常な金がかかる。またそれが実際漁族にきわめて有害であるというようなことであれば、これはあくまでその除害施設には力をいたさなければならないのでありますが、この基準がシビヤーに過ぎたために、片寄ってきめられるというようなことに相なった場合には、やはり相当の国庫補助なり助成措置を講じていただく方がいいんじゃないか。ことに中小企業においては、いろいろな助成を受けて、それで各自が汚水処理場を持つこともはなはだつまらぬことでありますから、共同の排水路を作って、十分に処理するというような、公共的な意味でも、だんだんにどうしてもそういう方向にいくのでありましょうから、そういったものに対して十分の国の助成を盛り込まれた法案であって、本法にそれが載っておったならば、大へんけっこうなんじゃないか、かように考えております。工場排水法の方では、これに対して低利の資金を確保する、あるいは固定資産税を免除するというような項目がございますが、そういった除害施設はできるだけ奨励をするという意味で、租税特別措置法なり何なりで、特別償却の方途を講じていただくというようなことは、ぜひお願いしたいと考えるのであります。それと同時に、ただいまの助成、そのこともぜひ御考慮願いたいと思うのであります。と申しますのは、これは非常識な場合の考え方でありますが、極端に水質基準がやかましく言われました場合、場合によりますと、単に施設だけではなくて、その水の処理のために莫大なランニング・エクスペンスを負担しなければならぬということも、おそらく実際問題としてはそういうケースは起らぬかもしれませんが、とにかくあり得る問題であります。さような意味から、この水質基準をきめられる場合には、各産業間のバランスを十分御考慮になってよく御検討の上おきめを願うのでありますから、そういうアブノーマル・ケース考えることは行き過ぎかも存じませんが、一応今度は基準をきめられる方の側からいっても、おきめになる以上は、それに対してある程度の責任も持つという意味から、場合によっては国家がそれを助成してもある程度の除害装置はやらせるのであるといったような、本法にある程度そういう意味の補助というようなことを盛り込まれたらと考えております。  なお、これはパルプ問題について申し上げますと、私ども実はサルフアイト・パルプをやっております工場、これは水をかなり多く使います。そして亜硫酸法によって木材の中のリグニン、繊維素を溶解いたしまして、それを洗い流して純粋のセルローズを回収するという仕事になりますので、廃水処理に対しては、第一に亜硫酸が多少酸性でありますので、これをできるだけ中和をする。またただいま申し上げました繊維素が溶解しておりますが、これはだんだんに水中の溶存酸素を食いまして、それ自体が酸化する傾向があります。アルフアー・セルローズそのものはかなり安定したもので、大量の溶存酸素を食うということは起りにくいのでございますが、不純な非繊維素のようなものは、比較的それを急速に食うというようなことから、そういった廃水は一応空中に噴霧をいたしまして、特殊の曝気装置をもちまして、まず酸化するだけ十分に酸化をさせ、その上で放流するというようなことをいたしております。これらは多少ランニング・スペースはかかるにいたしましても、大したことはないのでありますが、廃水が多少濁色を帯びますので色が悪い。色を除けというようなお話がたまには出ることもあるのであります。非常な混濁をするというようなことではもちろん問題になりませんが、十分ダイリユートされて、ある程度の色がわずかに残る。その色までとれということになりますと、これは相当の薬品量を要する。そういうことに相なりますと、むしろパルプ事業としては、その廃液が、本来溶かしたリグニンそのものが何かに活用されるという意味で、回収されればよいのでありますが、これは各社ともにおのおのいろいろな方面で研究はしておりますけれども、まだ十分にそれを利用するというところまでいっておりません。  さような関係で一番手っとり早い方法は、これを一ぺんエヴアポレーターなり何なりにかけて濃くいたします。そうしますと、元来が繊維素といっても木の一部でありまして、十分な熱量を持っておりますので、それはせっかく回収した熱量の半分は回収の道程で消費されるということには相なりましょうけれども、相当のパーセントの、木を煮るための熱量、それをそのリグニンを燃やすことによりまして回収することができるわけであります。国としてもエネルギー資源の確保についていろいろ御配慮いただいておるのでありますから、そういうようなことから考えますと、パルプ廃液をどこかモデル・プラントのようなものを作って、そして十分熱として回収をさせる。ともに一挙両得のようなわけで、排水の条件は非常によくなる。こういうこともございますので、そういう意味から申しますれば、そういったモデル・プラントを——これは、しかし、なかなかエヴアポレーターは——こまかいことを申し上げてまことに恐縮ですが、われわれ亜硫酸パルプをやっております者は、おもにカルシウム・ベースでやっております。石灰ベースのものを使っております関係から、現在エヴアポレーターで非常にスケーリング・トラブルが起りやすい。いろいろ考慮すべき点がございますので、そのベースを変えるか、あるいはなおそれでやっていいかというようなことで、私ども寄り寄り研究しておるのでありますが、一企業が二重投資のようにして、それをさらに熟として回収する施設をやることは、ことに目下不況の状態でもありましてなかなかたえ得ないところでありますが、これは国に大いに助成いただいて、いい成績が得られるようになったならば、これをその工場が年賦でお譲り受けをするというようなことにすれば、この廃液問題はそこで大きく改善され、同時にまた熱エネルギーの回収ということにも相なるのじゃないか。そういう意味からいっても、何か国家の助成というような項目がどこかにうたわれておったらいいんじゃないかという感じが痛切にいたしております。  いずれにしましても、この水質の改善ということについて申しますると、工場排水もさることながら、一般の下水の害も非常に問題で、その点が改善されますると、この水質基準等の決定に対してもいろいろまた幅のある考慮が払われるのではないか。どうしてもその下水道の管理ということに重点を置いて、その方面に国としても御尽力を願いたいと考えます。  なお、この審議会の機構その他につきましては、何かまたお話がございますればお答え申し上げることといたして、私、法案につきましては、大体この程度のことを申し上げて終りたいと存じます。
  56. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 次に、三輪参考人お願いいたします。
  57. 三輪包信

    ○三輪参考人 私は日本商工会議所の理事をいたしております三輪でございます。水質汚濁防止問題につきましては、商工会議所が地域団体であります関係から、従来から非常に関心を持って参っておるわけでございます。本問題につきましては、しばしば国会並びに政府の方に意見提出いたしておるのでありますが、今回の法案につきましては、皆様のお手元へ「水質汚濁規制立法に関する要望」としてお配りを申し上げているような意見提出いたしておる次第でございます。  その要点を申し上げますれば、この問題は、産業、特に中小企業に非常に重大な関係を有しますので、その水質汚濁防止の趣旨につきましては、十分これを了承いたしておるわけでございますが、その運用に当りましては、ぜひとも中小企業の実情を勘案されまして、漸進的な運用をされますよう、ここに基本的な線として要望をいたしておるわけでございます。その点につきまして、私どもは各地の実情の報告を求めておる次第でございます。これは大企業についても情報報告を求めておるわけでございますが、ここで特に中小企業の実情につきまして、一、二の実例を申し上げまして皆様の御参考に供しまして、これに基いて皆様の御審議に対しまして御要望を申し上げたいというふうに考える次第でございます。  その第一の例といたしまして、あるいは皆様御承知かとも存じますが、愛知県の瀬戸に窯業原料を作っております業者が、組合に入っております工場が六十くらいありますが、これは珪砂、珪粉を生産しておりまして、日本のガラス、板ガラスあるいは光学レンズの原料の八割を生産いたしておるのでございます。それから生じます汚水が下流の農地に入りまして、従来からいろいろと紛争をいたしておるわけでございす。これに対しまして関係者が寄りまして、いろいろとその対策を講じておるわけでありますが、その実情を申し上げますれば、業者側におきましては、これが施設をしたいという希望は持っておるわけでございまして、県のあっせんによりましてその費用を求めておるわけでありますけれども、一企業に三百万ないし五百万くらいの費用がかかりまして、今までにしたものは、県などの相当のあれがありまして、約三分の一の企業がどうにか施設をいたしておるようであります。しかしながら残りの三分の二の施設がまだできませんので、全体として改善ができないというような実情に相なっておるわけでございます。  そこで業界の主張を申し上げますと、こういうことを一例としてお聞きを願いたいと思うのでありますが、珪砂は板ガラス、光学レンズ等、輸出用を初め、一般ガラス用原料ばかりではなくて、基礎産業である製鉄、製鋼等の副材料として、わが国需要の八〇%が当地区で供給されており、わが国基礎産業として大きな役割を持っているものである。ガラス原料及び基礎産業の副材料として重要な役割を果しているにもかかわらず、珪砂産業は原始産業ともいうべき原料製造であるために価格が非常に低く、業界は経営不振に悩んでおる。珪砂業界は中小企業であり、近年特に不振を続けているにもかかわらず、農民側の要求をくみ、今日までしばしば補償を行なってきたが、しかしながら今日ではその能力も限界に達しており、これ以上の補償はとうてい困難であるばかりでなく、珪砂業界そのものの経営が危ぶまれておる現状である、こういう報告をいたしておる次第でございます。しかしてその対策委員会におきましては、これが根本的解決のために大沈澱池を構築いたしまして、それには土地が約五千坪、機械、その他を入れますと約九千万円の費用がかかる、こういうことになっておりまして、その資金をいかにして調達するかということが一番大問題になっておるような次第でございます。  今申し上げました一例は、瀬戸の窯業の原料の事業を申し上げたのでありますが、このように中小企業が集団的に集まりまして、一つ産業をなしておりまする地域が各地に多数あるわけでございます。岳南の地方には製紙業が多数に存在をいたしておる。それから一宮には染色整理の業界が多数あり、和歌山には染料あるいは皮革の中小企業が集団的にありまして、これらがこの問題につきまして長年の間非常に悩んで参りましたような次第でございます。この法案を見ます場合におきまして、大企業も中小企業も同じようなことで律せられておりまする点はわれわれの一番心配いたしますところでありまして、問題となりまする水質汚濁関係のありまする業種を見ましても、三百人未満の中小企業が約九五%を占めておる次第でございまして、この法案を御審議いただきます場合におきましては、その点を十分に御考慮に入れていただきたいと考えておる次第でございます。  具体的に法案の問題といたしまして申し上げれば、ただいま申し上げましたように、共同の施設をいたしますれば、瀬戸の場合に九千万円かかりますが、これを地元の業者だけで負担するということはとうてい不可能でありまして、当然国家が、あるいは地方公共団体がこれに対して助成すべきで、特にこの法律を制定して、農業なり、工業との間の産業調和をはかるという意思を国家が表明をいたす法律であるとしますれば、困難な中小企業のために、国家が必要な経費を支出するという義務づけを与えられたいと考えておる次第でございます。この点について社会党の案におきましては、補助の規定を明確におやりになっておりますが、ぜひこの点については、社会党の案のごとく、補助の規定を明確に政府の方で御修正をいただきたい。  その他につきまして、なおいろいろ申し上げることはあるわけでありますが、いずれも各業界、工場、企業側から申し述べられたところと大体同じでありまするので、省略をいたしまして、今申しました点を特に強調いたして、私の意見を終りたいと思います。
  58. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 次に、宇田川参考人お願いいたします。
  59. 宇田川謹二

    ○宇田川参考人 私は浦安町の町長宇田川でございます。去る六月十日の本州製紙さんと私ども町民との間におきましてトラブルがありまして、大へん皆様に御迷惑をかけ、また社会に対しましているいろいろと御心配いただきましたことを厚く御礼と、おわびを申し上げます。  その事件以来、各方面から激励文あるいは電報等が数十通参っておりまして、ぜひこの法案の立法化に力を入れてもらいたいというような激励がございました。その中に、君の手から汚水を一滴たりとも漏らしてはならないというような強い激励の文もございました。この書類をちょうだいいたしまして、いろいろ拝見いたしましたが、非常に弱い点があるように思うのごでざいます。公共用水水質保全に関する法案でございますが、第二条の「水質保全に心掛けなければならない。」となっておりますが、これを「水質保全を厳守しなければならない」というふうに、強い字句を入れていただきたいということをお願い申し上げる次第でございます。  それから指定水域でございます。先ほどもいろいろ問題があったようでございますが、「関係産業に相当の損害が生じ、」という文がございますけれども、「相当」という字が非常に判断に苦しむところでございまして、これを「関係産業に損害を生じた場合」というふうに御訂正を願いますれば、われわれの望みとするところでございます。  なお水質基準でございますが、この点は第四項に掲げてございます「経済企画庁長官は、指定水域を指定し、及び水質基準を定めようとするとき」は、さっき群馬の農家の代表の方がおっしゃいました通り、許容水質基準ということにお願いをしたならば、どちらもよろしいのではないかと思うのでございます。  さらに十九条にございます和解の点でございますが、「政令で定めるところにより、都道府県知事」これを「関係都道府県知事」とお願いしますればよろしいと思います。たとえば私どもの場合、東京都知事と千葉県の知事とが関係しておりますので、「関係都道府県知事」というふうにしていただいたならばけっこうではないかと思うのでございます。  それから罰則の点でございまするが、現在の物価指数からいきまして、あまりにも安過ぎやしないかと思うのでございます。「一年以下の懲役又は十万円以下の罰金」というふうに、工場排水等規制に関する法律案の中にございますこの金額は、現在の物価からいきまして、大工場といたしますれば、十万円やあるいは懲役の一年くらい何でもないと思います。これは少くもこの十倍ないし二十倍の額に改めてほしいことをお願いする次第でございます。  率直でまことに失礼でございますが、以上の要望をいたしまして、われわれ漁民のためにぜひこの成案をお願い申し上げまして、私の参考人としての意見を終ります。
  60. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 以上で参考人方々の一応の意見の開陳は終りました。  次に質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。  松平忠久君。
  61. 松平忠久

    ○松平委員 参考人の方に、ただいま御公述になりましたことについて若干質問したいと思うのであります。  まず最初に公述された恩田さんにお伺いしたいのですが、あの地域において長い間鉱害を受けておる、その間防除施設も足尾銅山ではやったようなことがあるわけでありますが、それが不備であって、だんだんたまっていって、ついに毒が非常にたまっておる、こういうようなお話だったわけです。そこでお伺いしたいことは、今から十年くらい前の反収と、最近における状況というものは、どういうように変化しておるかということをちょっとお知らせ願いたいと思うのです。
  62. 恩田正一

    恩田参考人 十年前と申しますと、戦争の直後でございまして、肥料事情等の関係もただいまと違っておりますし、そのときと同じ管理肥培をしておったとしたならば、十年間よけいに鉱毒が累積されただけ少くなっていると思います。
  63. 松平忠久

    ○松平委員 その鉱毒のたまってくる状態とかなんとかいうものは、どこかの試験所か何かでその土壊を試験してもらったということはございませんか。
  64. 恩田正一

    恩田参考人 これにつきましては、とにかく群馬県といたしますと、ほんとうに農業上の重大な問題でありまして、今から十年ほど前にもあらゆる基礎資料を調査しまして、これのデータはそっくり県の改良課、試験場等で綿密な試験結果が出ております。
  65. 松平忠久

    ○松平委員 それからお伺いしたいのは、その仲介あっせんという和解のことなんですが、先ほどのお話のことは今度の法案では除いておるわけですけれども、今までこの問題は群馬県なりあるいは栃木県なりという県庁が中に立って、和解をうまく成立さしたということはございますか。
  66. 恩田正一

    恩田参考人 これにつきましては、補償要求というようなことに直接県がタッチしたことはないような気がいたしますが、ただ昭和二十九年ごろ、渡良瀬川の本流の水ばかりたよっていてはとてもだめだということから、渡良瀬の近くにヒューム管を埋設しまして、その地下浸透水を使おうという計画が県において行われまして、その際地元受益者負担の割当金が二千五百万円であったのにつきまして、こういった施設を作るということそのものが足尾の鉱毒のためにやむを得ずやる工事なので、これについての費用はそっくり足尾が持つべきだというのが、農民の意見だったのでございます。しかしながら、そのとき足尾は八百万円の工事寄付をいたしまして、これは損害賠償の意味でなく、工事の寄付だということで、六千町歩にわたる水利組合が八百万円を申し受けております。その八百万円を受領した際に、当時の県知事が立会人として署名捺印しておる。これが関係者ということになるのじゃないかと思う。その程度でございます。
  67. 松平忠久

    ○松平委員 和解のことが出ましたので、浦安の町長さんにお聞きしたいのですが、この間の事件においては、千葉県と東京都であっせんの労をとったというふうに記憶をいたしております。本日午前の参考人の公述におきましては、日本化学技術協会の大島技術部長の公述によりますと、やはり県庁などではしっかりした試験機関等も持ってない、技術人員も不備であるということで、もっとこれらの和解というものは権威のある機関でしてもらわなければ困るというような発言があったのであります。同時にまた全漁連の岡専務理事の公述によりますと、この区域が数県等にまたがっておるという場合もあるので、そこで関係県の連合委員会というようなものによって和解をした方がいい、こういう発言があったわけであります。そこで浦安の町長として、江戸川のあの汚水のことに関連をいたしまして、この跡始末をした経験からいって、県あるいは県の連合会、もしくはもっとしっかりした機関が中央にあって、それが和解をしてくれるという方がいいのかどうか、これについて御意見がありましたら承わりたいと思います。
  68. 宇田川謹二

    ○宇田川参考人 お答えいたします。現在浦安町と本州製紙の問題につきまして、実は千葉県といたしまして四組合が被害を受けておりまして、東京が四組合、計八つの漁業協同組合が被害を受けたのでございまして、東京都側は都知事に御一任したということを聞いております。それから千葉県側といたしましては、現在市川に合併しましたが、行徳町、南行徳町、浦安第一組合というのがございましてこの三組合がやはり県知事に仲介を頼みまして現在に至っておるわけでございます。一方もう一つの組合が浦安漁業協同組合、本組合々々々と言っておりますが、この本組合の組合員は、大体一千二、三百名おるわけでございまして、この組合は本州製紙と直接交渉をいたしまして、あくまでも仲介者は要らないということでやっておったのでございますが、本州製紙の方がそれに対しまして応じないような形になっておるのでございます。そこでつい十日くらい前から、知事に向ってこの件に対して骨を折ってくれということを申し入れてあります。たまたま知事選挙に入りましたのですが、昨日終りましたので、今後も知事にお願いしようとしておりまするけれども、お尋ねの通り、県庁としてはどの程度が中正な数字であるかということがなかなか計算ができません。一水産部長、一水産課長あたりで計算しましても出ないのでございます。従って、全漁連の岡専務さんのおっしゃったように委員の連合会等を作りまして、そうしてその中に権威ある経験者を入れまして、仲介の労をとっていただいた方がよろしいんではないかというふうに考えております。
  69. 松平忠久

    ○松平委員 それから次に耳浦さんに伺いたいのです。今酒匂川のことを伺ったのですが、そういう場合に、すぐその汚水をとって試験をするというようなことをやっておるわけございますか、ただ、そうではなくて、会社へそれを持っていって、会社で試験をさせるというようなことであるのか、あるいはもっと権威のあるようなものが、地方によりまして、神奈川県なら神奈川県にあって、そうしてそれにすぐそれを持っていってやる、こういうようなことを従来やっておられましたかどうですか。
  70. 耳浦善二

    耳浦参考人 組合には汚水対策委員というものを私が組合長になりましてから作ってございます。これは十九名おります理事の中から、六名そういう人たちを選出してございます。大体簡単な色素試験くらいはできる教育はしてあるのでございます。ただいま小田原には県立の保健所がございます。そこで大体の薬物試験はしてくれますので、いつも組合員には、事故が起きた場合には一番手近な水をすぐくめ、何でもいいからくんで、そうして保健所へ持っていけ、と言っております。そうして保健所と別に県の水産指導所がございまして、これたちがいつも並行して骨折ってくれる、こういうことになっております。
  71. 松平忠久

    ○松平委員 大川さんに伺いたいのですが、紙工場等において汚水処理をやっておられることを私も承知しておりますけれども、そういう場合において、一体どの程度下流に影響があるかということで、汚水処理の施設の規模というものもきまるだろうと思うのですが、そういう場合におけるところの基準といいますか、この法律の中に書いてあるところのいわゆる水質基準なんですが、その水質基準というものは、会社独自に研究をなさってきめて、それに合せるような施設をするのか、あるいは各方面の意見等を参酌しておきめになっておるのか、こういうことを伺いたいと思うのです。それから同時に、その施設はいろいろ方法があると思うのですが、大体パルプ会社等で採用しておられる施設というのは、どういうような方式の施設を持っておられるかということ、それからその施設そのものは、その工場施設全体の総額の何%くらいがこの汚水処理の施設にはかかっておるのか、お伺いいたします。
  72. 大川鐵雄

    大川参考人 お答えを申し上げます。ただいまの水質基準をいかにするかという点、これは大体各工場所在地の県あたりから御指示がある場合もあり、そうでなくても柴田さんあたりの御意見を参照しまして、たとえば放水口からどの程度にダイリュートされるか、本川の水量及び工場の排水量によって多少変って参りまするので、ダイリュートされた状態で一応排水口から百メートル程度下ったところで平均のサンプリングをいたしまして、PHは先ほど四というお話がありましたが、大体六程度までの、下っても五・八くらいのPHのものを私どもは採用しております。それから問題はBODでございますが、BODはその状態で百PPM程度のものを目途にして処理をいたしております。  それから処理施設、これは工場によりまして、実は現在各パルプ工場が、全部が全部曝気までやっておるという状態ではないのでございます。しかし一例を申し上げますると、山陽パルプの江津の工場あたりでは、戦後に新たにあそこでパルプ・プラントとして再出発をいたしたというような関係から、かなりシビヤーな条件で良心的に排水処理もしなければならぬということから、従来ございました不完全な排水処理槽の基礎の上にいろいろ施設をいたしました関係上、比較的に安く上っておりますが、これを新たに作るといたしますと、一億数千万円の固定費がかかるということに相なろうかと考えております。実際は数千万円程度の支出で、半分ちょっと切れるくらいの支出で仕上ってはおりますけれども、根本から作り上げるとすると、その程度かかる。また工場自体が、あれは少し時期も早うございましたから、二十億以下のあれでございますので、そういう観点からいたしますると、かなり厳格な排水処理をこれからいたしますことになると、やはり何%程度では上らぬ、一つオーダーが上るのじゃないかというふうに考えられるのでございます。それともう一つは、先ほども触れましたように、色を落すとかなんとかいう問題になって参りますと、塩化鉄を使うというようなことから、多量の鉄くずを使い、塩酸を使い、またそれを中和するというようなこと、またその汚泥を上げて処理するというようなこと、かたがた莫大な運転経費を色のためのみに費さねばならぬということもございますので、やはり各産業間の調整を十分ごしんしゃくの上、実際に害のある点はあくまで除去することは必要であろうと思いますが、はっきりしない部分にまであまりにシビヤーな規格にならないように願いたいという考え方は、かなり除害施設に金がかかるからでございます。  なお御参考に申し上げますが、そのほかに、一般に製紙パルプ業界では、各セクションでなるたけ多くの繊維を回収する、これは当然企業として考えるべきことでございます。それで電力や何かを考えますと、幾分損でも、できるだけ各セクションで繊維を回収する努力はいたしております。しかしこれは排水処理施設ではなくて、繊維回収施設になっております。そのセクションで回収いたしますれば、その原価の原料が回収できますが、これが最後の汚水と一緒になって回収したのでは、ごみだらけのものになって、それだけの価値がない。しかし、そういった浮遊物を流すこと自体もいけませんのでございますから、そういう場合には、その辺の機械は同じような施設で——これは多くパルプ・セイバー、シリンダーに金綱を張りまして、そこで繊維をこすようなシステムのものが、バキュームにかけるものもございますし、それからフィルター・メジュームをそこへ入れて、できるだけ回収しようというような形式のものございますが、一般にデッカーあるいはバキューム・フィルターというような機械を使いまして回収しておるのでございます。これは従来は繊維回収装置であるというので、排水処理施設には入れられておらなかったのでございますが、最後の段階の、そういった同じような形態の機械ではありますが、使う場所によっては純然たる排水施設であるということに御認定を願って、将来固定資産税の免除といったようないろいろな税法上の恩典は、そういうものに対してはやはり御適用を願いたいというように考えております。  そのほか、木がまの廃液の場合には、最近は連続蒸煮の木がまがだんだんできております。この方は常に一定量のパルプができて、それをしぼっていくので、いいのでありますが、大部分の亜硫酸パルプは御承知のように十トンないし十五トンの大きなかまで一ぺんにブロー・オフいたします。それでこれをできるだけ早い機会に洗いませんと、ピッチ・トラブルが多く起るということから、ブローピットに水を流しまして一ぺんそれを切って洗う、こういうようなことから、木がま廃液がかなり多く、もちろん今日は岩国あたりでもそれをできるだけ濃厚にとり、いろいろな練炭その他のバインダーに使うとか、あるいはそのほかいろいろの用途に今考慮いたしております。もう一つは、そのうちに溶けております木糖と申します糖分をアルコールとして回収するというような装置もいたす関係から、できるだけ廃液の回収をはかっておりますが、従来はインターミッテントの仕事でございますから、一ぺんに廃液が濃い状態で出る。十時間ないし十二時間に一ぺんかなり濃い廃液が流れる。それが主排水路に入って流れていくことになりますと、どうしても比較的いいときと、ときどきは悪い状態で流れるということに相なります。そういうような関係から、やはり廃液処理をいたします上では、それをできるだけリザーバーにとりまして、そして連続的に平均して処理して流す、こういうような方向に参りますので、いろいろな施設が要る次第でございます。この程度でよろしゅうございますか。
  73. 松平忠久

    ○松平委員 そこで木がまの亜硫酸ですが、私ども学者に聞いてみますと、亜硫酸というものは非常に中和しにくいのだ、中和する方法はありますけれども、その方法をとると、中和はされるけれども、結局たとえば酸がアルカリにかわるというようなことで、かえってアルカリ性の塩が出てしまって、そして魚には何も害はないけれども、そのために堤防等のコンクリートを非常に腐蝕してしまう、これが東京あたりでは非常に昨年あたりから問題になってきておるわけであります。そこで中和をいたしたために、かえって今度は魚には影響しないけれども、ほかの方へ害を及ぼすというので、そっちの方から苦情が出てくるというようなことが最近は出てきておるわけですが、そういうことはお聞き及びになったことはございませんか。
  74. 大川鐵雄

    大川参考人 ただいまの御質問、私どもの亜硫酸あるいは硫酸にいたしましても、主として一番安い簡単な中和をいたしますために石灰を使っております。そして硫酸の場合ならば硫酸カルシウム、申せば石こうができてニュートラルなものになるわけでありますが、これが亜硫酸の場合でも、後にアルカリ性になるということは、私は不敏にして聞き及んでおりませんが、大体木がまのもとのブローピットあたりは、どうもよく漏洩が起って下水道も荒れて困ったのでありますが、やはり主としてコンクリートの石灰分を酸がなめるために、あるいはまた木材を蒸煮いたしますためには、単にそういう煮る亜硫酸のみならず、多少温度も上げますから、有機酸も幾分かはできるかもしれません。しかし一面石灰もかなりの量が入っておりますので、実際廃液の中にありますそういった有機酸の量は微量でございましょうが、とにかくそういった酸性のものは下水の回りのコンクリートでありますとか、そういうものを非常にいためやすい性質があるかと思います。ただ念のために、私が聞き及んでいる範囲におきましては、これは河川でございますが、何か一工場で硫酸が多少出る、それは回収できる範囲において十分回収なさっておいでなんでしょうが、ある程度硫酸ができるものを石灰で中和して、石こうのような状態になってこれが流れて参るのですが、固形になっているのならいいのですが、非常なサスペンションの状態あるいはごく微粒子になって、石こうの粉末が、中性ではありますが、流れていく、これがある程度沈澱してたまっているところへもっていって、何か腐敗菌でもつく、こういうような場合には、この細菌の作用のために、一ぺん安定な化合物になったものが、再分解されまして硫黄を出し、水中の水素イオンとくっつきまして硫化水素を発生する。この硫化水素は生物に非常に害がある。それで、漁業方面で水の規準に関して非常に硫化物の混入ということをやかましくおっしゃるのは、やはりその辺に原因があるのではないか、こう考えております。その程度の知識しか持ち合せておりません。
  75. 松平忠久

    ○松平委員 三輪さんにお伺いしたいのですが、東京都では隅田川の水は一つも工業用水には使われない、こういうことを聞いておりますが、それは事実ですか。
  76. 三輪包信

    ○三輪参考人 ただいまの御質問は非常に技術的な関係でございまして、私どもの所管でもございませんので、ちょっとお答えしにくいのであります。
  77. 松平忠久

    ○松平委員 私ども聞いているところによりますと、東京都では隅田川、江戸川の下流は全然工業用水に使われないのだ、そうして塩類が非常に多い。そこで工場地帯の水というのは、ことに金属性のものと塩類が化合した場合に非常に魚貝類に影響を与えるわけです。ところがその塩類の中和というのは非常に困難であって、できるのだけれども、その反作用というものが非常にあって、東京都の河川の堤防というものが非常に腐蝕をされてくる率が最近は多くなってきた、こういうことをよく聞くわけでありますけれども、そういうことをお聞きになったことはございませんか。
  78. 三輪包信

    ○三輪参考人 ただいまの点におきましても、技術的な面にわたりますので、私の所管の外にありまして……。
  79. 松平忠久

    ○松平委員 それではちょっとお伺いしますけれども、先ほど珪酸のお話があったのです。珪酸はたんぼに対して毒を与えるというような報告が出ているようでありますけれども、珪酸というものはある程度たんぼにまぜなければいかぬ。いもちなんかが最近非常に発生して困っておるたんぼは、わざわざ珪酸をぱらぱらとまくわけです。それが多過ぎてもいけないというのかとも思いますけれども、そういう工合に、つまり農産物と微量要素というか、珪酸は微量要素なんですが、中小企業が出すそういったものとの関係というようなものを非常に地方なんかではよくお調べになって紛争解決というようなことになっているのかどうか。ただ農民が騒ぐということもあり得るように思うのですが、そこらのところの化学的な判定というようなものを両者に示して、そうしてそれをうまく解決する機関というようなものをお持ちになって、そういうものからの報告でございますか。
  80. 三輪包信

    ○三輪参考人 多少技術的な問題でございますが、私ども報告を受けております範囲で申し上げたいと思います。ただいまの珪砂の関係におきましては、ここで農民の側が主張いたしておりますのは、耕土に粘土が残って流れるわけでありますけれども、粘土によって凝結するため太陽熱が耕土内に侵透していないので肥料が分解しないために起るのだ、こういうことを言っております。  今のお話に関連しまして、いろいろと報告のあります点で特に私どもが注意いたしておりますことは、汚染等色の問題でありますが、実際に水そのものは害がないのだが、色がついておるために非常にいろいろ文句が出るのだ、色は別に有害でないが、色を取るためには非常に技術的に困難なものもあることを報告いたしておりますが、非常に困難だ、非常に莫大な施設が要るのだ、しかし今お話の通り非常に政治的な問題もありますので、農民なり漁民の方々といろいろ話し合って、あるいは見舞金なりあるいは寄付金なりというような形で処理をしておる場合がある程度あることは報告に出ておる次第でございますが、この珪砂の場合には、その点はある程度話し合いで承認をいたしております。  なお、今の有害であるかどうかの問題につきまして、大体今までの、特に中小企業の関係で出ております点は、大体漁業関係ですと水産試験場の方で調べられた資料がもとになっておるようだ、これに半面業界における水質試験のあれというものはないのだ、従いまして、この問題について公平な正確な判断ができるような機関を整備してもらいたいということがやはり業界の要望になっておる次第でございます。
  81. 松平忠久

    ○松平委員 最後に一つお伺いしたいのですが、これは大川さんにお伺いします。さっきちょっとお伺いしたいろいろな設備はわかりましたが、渇水期とそうでない場合とがあるのですが、そういう場合に、フレキシブルに、薬品をよけいにするとかなんとか、そういうことにそれはなっているかどうか、そういうシステムを採用しておられるかどうかということと、それからもう一つは、今のはRGY、SPについてですが、最近GPについてもいろいろ苦情が静岡等にあるわけであります。そこでこれは全然物理的なものなんであって、この物理的なものが、たんぼなんかにも白水だから影響を与えるとかいうことを言っておるけれども、どういうような影響を与えるのか、あるいは漁業なんかに対してはかなり影響を与えるようなことを言っておりますけれども、これは皆さん方の側から見ると一体どの程度害があるのか、またこれに対する対策というようなものはどういうことを講じておられるか、これを伺って私の質問を終ります。
  82. 大川鐵雄

    大川参考人 お答えを申し上げます。ただいまのGPの問題、これは前回の渇水時にどうするかという御質問に対しては、本質的には本川の水量とマッチして、その放水口から出て十分混和したという条件のもとで百メートル下流で幾らということを言っておりますので、これは平均豊水期にはそれ以下になる、渇水期にはそれ以上になるということから、それに対して工場側は気をつけなければならぬということに相なるわけであります。先ほども申し上げましたように、従来はまだまだ不備な点はございますが、今後はっきりしたものができますれば、流量を下げるということについては、やはり曝気なり何なり十分の処置をいたしまして、そうしてペーハーや何かの問題はほとんどないと思いますので、BODの問題について申し上げますれば、これは十分曝気をいたしまして処理をして、異常渇水というような場合には特に工場も気をつけねばならぬでありましょうが、普通の渇水期にもカバーできる程度の施設を持っていくように心がけるべだと思います。ただ念のために申し上げたいのは、水質基準をきめます場合に、たとえばBOD幾ら、今度は工場の排水口で幾ら、本川が平均渇水期がこれくらいの水量であるから、お前のところ幾らの水を出せ、それも濃度はこの程度であらねばならぬということが工場排水法でかりにきめられたといたしましても、その場合に、BODについていえば、瀬戸内海に面するところとかあるいは平静な河水にこれを流すとかいう場合には、これはきわめて重大な問題でありますから、当然できるだけの施設をしてその値を満足せしめるような装置をしなければなりませんが、川によりましては、その川自体が工場排水をした以後において、工場で下手な施設をして曝気する以上に曝気効果のある川もございます。それからまた日本海その他のように非常に波が始終立っておって、われわれが出しまするリグニンを溶解したもの、それらが食います酸素よりもっと十分の酸素を空中から天然の波自体が回収してくれるというような場合には、本来私どもは、そういった自然効果の十分ある際には多少基準をやわらげていただきたいとさえ思っているのでありますが、しかし、まず一定の基準ができれば、そういった状況はたな上げてやはりその基準に従わねばならぬのではないかというふうに考えておる次第でございます。ただし、少し余論的に入りますが、そういうようなことからこの水質基準をおきめいただく際には、農業水産その他に対して、重要なファクターについて特に重点的におきめいただいて、あまり冗長な、どうでもいいようなことにまでその基準はお触れにならないように、これは運営の問題でありますがやっていただきたいというふうに考えております。  それから砕木のグラインダーの問題、これは実は砕木パルプは砥石で木をすりおろすわけでございますから何ら薬品が出るわけではございませんが、その途中で非常にこまかい繊維が分離して参りまして、微粒繊維が多いというようなことから、その回収処理にはなかなか厄介な点がございます。ただしそういった非繊維素もあることで、多少BODにも大きく影響するということもあり得るでございましょうし、またもう一つは、沈澱池等でこれを処理しょうということは、サルフアイトでありますと沈下速度が比較的早いのでありますが、砕木はすられて非常にこまかい足の出た原料になっておりまして、そこヘエア・バブルがかなりつくというようなことから、沈澱によってそれをとるということには、きわめて不適当な原料でございます。従ってどうしてもフィルターでこれをとっていくということにせざるを得ません。多少のピッチや何かがつくということから、そのフィルターの重みがなかなか容易でないというような難点があって、ただいままで多少の不備があったんじゃないかと考えます。そのほか考え得ますことは、摂氏の七十度なりあるいはそれ以上の温度で、すられる場合もかなりございますので、木の中にあります可溶性糖類が一緒に多少流れるんじゃないか。それについてその可溶性糖類がありますために、幾分その流域にのろのようなものの発生を促す原因になるんじゃないかなというような感じは、私個人的には多少持っておりますが、その程度で、砕木の処理は機械的に処理する以外に手はないと考えております。
  83. 松平忠久

    ○松平委員 もう一点。お宅では水質を検査する場合にすぐ検査できるものですか、二時間ぐらいかかるのが普通じゃないかと思うのですが、今ある電圧と電流の変化による測定器、RGYという測定器をお使いになっておりますか。
  84. 大川鐵雄

    大川参考人 それはPHでございましょうか。
  85. 松平忠久

    ○松平委員 それは主として亜硫酸あるいは硝酸類等の——主として塩類の測定器です。これによって、すぐこれが許容量であるかどうかということが電流によってわかるのです。これはもう一分間でわかるのです、この水がどうかということは……。
  86. 大川鐵雄

    大川参考人 私自身は、申しわけありませんがまだその知識がございません。ただ水質の測定では、ただいまのBODの問題だけに関しては——ほかの酸度を推定するとかなんとかいうことは比較的簡単にできますが、BODはある程度時間的なファクターが入りますので、そう簡単にできない。むしろ二日も三日もかかるということが通例でございます。
  87. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 中嶋英夫君。
  88. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 耳浦さんと大川さん、三輪さんに御質問しますが、初めに耳浦さんに御質問いたします。  水質汚濁の問題について政府が二つの法律案を準備したという新聞報道があった場合に、一般の漁民の方々は、何となく一歩前進した、自分の漁をしておる川にも、あるいは海にも何かすぐ変化があるのだという期待感があったんじゃないかと思うわけです。ところがこの法律の内容をよく調べられると、耳浦さんの場合には、いち早く、先ほどお話したように、非常な不備な点が多いということがおわかりだろうと思うのですが、一般の漁民の方々は、何となく期待はずれになったということを言っておるのか、あるいは何かいいものができるというように期待しているのか、その点どういうふうな情勢になっておるのか、伺っておきたいと思います。
  89. 耳浦善二

    耳浦参考人 今の御質問は、提案されましたこの法案が私たちの期待にそむいておるか、もう一つは非常に期待を持っておるか——これは私たちもこの法案の制定促進の委員を仰せつかりまして、そうしてこの法案が私たちが期待するような法案になるべく、私たちの組合会議あるいは県単位、全国単位の皆さんと寄り寄り集まりましてこれらの協議をし、そうして完全な法案ができることを望んでおったのであります。そこでこの法案にあります各条項は——もちろん先ほど申し上げましたように私たちは魚の方の立場であります。従って、この法案は大体工場規制でありますので、私たちは漁民の側からの期待ということをこの法案に望むことは、若干無理があるのではないかと思うのであります。そういう意味におきまして、御存じのように一般の漁民は長いこと工場側に苦しめられてきております。でありますので、今度の私たちの事故のときにおいても、第三者は介入させるな、顔役を中に入れるな、役人は入れてはいけない、こういうことでもって今度の紛争は、これはここまで来たら法律をたよってはいけない、役人をたよってはだめだ、顔役にたよってはいけない、お互いが真心で話し合いをしようじゃないか。心と心とつながりを持って話し合いをすれば、必ず解決できるだろう、こういう形から私たちはほんとに素っ裸になって工場側と話し合いました。大体今不満ながらも一応穏便のうちに話し合いができました。こういう点からいきまして、この法案が一日も早くできることはけっこうでありますけれども、私たちが見ますと、何かやはり私たち漁民とはちょっと遊離したような感じを受けるのであります。個々にこれがどうだということは、ちょっと言えませんけれども、全漁連の岡さんも、ともかく不満があるけれども、日の目を見たい、こういうことが大体皆さんの意向らしいのでありまして、私たち川を預かる者といたしましては、でき得れば、もう少し魚に対する——大へんむずかしいPHとかBODというようなこまかいことをいろいろ申しておられますけれども、大事な魚については、午前午後を通じて一言もお話がございませんことは、私たち漁民としてははなはだ残念に思っておる次第でございます。
  90. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 私の今伺いたかったのは、この指定水域の問題についても、皆さんがお見えにならないきのうの委員会などでは、当面問題の多い六河川を一年間やってみる、こうなって参りますと、皆さんの御関係しておられる酒匂川のごときは、いつ指定をせられるのか、いつこの法律が適用されるかは、まだわからないわけであります。ですから、一般漁民の方の中には、最近各県の水産大会のことを伺ってみますと、その背後に、独占禁止法の改正反対並びに水質汚濁の問題について強調したスローガンがおありになる。もちろん漁民の方々は、ただ海を守る、川を守る、魚を守るのだと、感情的なものを素朴な立場でぶっつけられることは、よく理解はできますけれども、しかしやはりせっかく政府がおやりになるのに不備な点があるならば、どうした点を直してくれればよいのか、こういう点を自分たちの川にもすぐ適用してほしいとか、なまのものを政府なりあるいは私たち政党の方なりにお聞かせ願えれば非常に幸いだと思いますので、この際お願いしておきます。  次に大川さんと三輪さんに伺うのでありますが、午前中の参考人であられました大島竹治さんは日本化学工業協会の技術部長さんであります。紙パルプの連合会は日本化学工業協会のメンバーであられると、そのように報告されておりますが、従来この日本化学工業協会、もちろん傘下の各連合会、あるいは連盟、協会、こういった人々は、この水質汚濁の問題あるいは一般の公害の防除をしようとする問題について、相当の政治的な力を発揮されまして、これを食いとめるために御努力なすってきたようであります。特に午前中の参考人であられた大島さんが私ども委員会に配付されました資料の中には、「水質汚濁防止の法的規制に関する従来の経緯について」、こういう資料を配付して下さいましたが、これによりますと、いかに財界がこの水質汚濁の立法化に対して絶えず抵抗されておったか、その歴史を書いてあるのであります。特に昭和三十年の八月二十二日の公害防止に関する法律案、厚生省の立案のものでありますが、これに対する批判としてはいろいろ書いてありますが、特にこういう表現があります。「このすこぶる高飛車杜撰な法案には」云々という表現、あるいはこの内容のあとにおいて「これは自らを知らざる甚だ乱暴極まる体のものであったが、関係者は各省、各政党へ猛烈に働きかけた。これに対する産業界の反対は十五産業団体の代表として日化協会」いわゆる日本化学工業協会でありましょうが、「日化協会長原安三郎氏の名義で関係官庁各政党等に正式に提出され大騒ぎとなった結果、遂に議会への提出は取り止めとなった。(十五団体というのは、鉄鋼・石炭・鉱業・化繊・化学工業・紙パルプ・硫安・石油・軽金属等の各重要産業を含めたもので、事重大と見て既にこれ等の団体産業排水対策委員会を結成し、昭電社長佐竹次郎氏が委員長に挙げられていたのである。)」こういう表現があります。今大川さんのお話を聞きますと、相当技術的な画についての御造詣が深いようでありますし、午前中の参考人でありました柴田三郎博士は、すでにこの水質汚濁の防除の問題に対する技術的きめ手はある、またスタンダードの水準をきめることも可能である、他国の範をとる必要はない、日本みずからの中に十分技術的な、科学的な水準が高くなっているので心配はない、こういうお話をわれわれ承わったわけでありますが、いわゆる技術的にきめ手があるならば、残る問題は資金的きめ手であります。先ほど来いろいろお話の中にもありましたように、何しろ多額のお金がかかる。これが従来水質問題に限らず、一般の公害問題に対する最後の壁であります。これに対して、昨日の委員会の審議の過程におきまして、松尾企業局長から、この防除設備の改善に要する費用の半額は補助していきたい、なお足らぬ場合は融資も考える、長期のしかも低利の融資を考えていきたい、こういう意見の発表がありました。もちろんこれは松尾さんの御意見でありまして、大蔵当局がどのようにのむかは問題があるところなんですが、幾つかの法案にブレーキをかけて葬ることに成功した財界の政治力、この希代な政治力でこの技術的な改善の方向、資金的な解決の方向政府に強く当っていく場合には、私は相当な成果があると思う。お互いに被害者、加害者と言わないで、ともに・Pし得る共通の場に今後力を集中して財界が尽す。ことに昨年大気汚染、空気汚染防止に関する法律案を厚生省が立案した場合に、まず第一にまっ先に反対の名乗りをあげたのは日経連である、あるいはその他の経済団体が反対の声明をする、そのあとで通産省が反対だ、そうしてつぶされてしまった。こういう経過もありますが、今後こういう地方住民あるいは他産業に重要な被害を与える諸問題について、技術的解決ができるならば、資金的解決の方向に、国政にいろいろ働きかけをする、こういう方向に努力される機運が、今関係されております十五団体の内部ないしは日本商工会議所の内部に巻き起りつつある。私の知っている限りにおいては、ある地方の商工会議所の副会頭みずからが煤煙防止対策協会の会長となって努力をされておる顕著な例を京浜間に見ておりますが、そういう機運が強くなっておる。これに対する御両氏の御意見なりもし御決意がありますならば、それを一つ承わっておきたい、こう思います。
  91. 大川鐵雄

    大川参考人 ただいまお話の白化協の大島さんのレポート、多少さように字句が弄されておるかもしれないのでありますが、かつて厚生省の環境衛生関係から提出されました排水の基準に関する法律案に対しては、かくお答え申し上げております私自身、水の点においては反対を申し上げたのであります。ということは、その当時水質基準法はすべて公衆衛生の立場から見た基準法案という名前にその法律案は相なっておりました。そうしてその内容においては、水質基準ということについては、なるほど遊泳場や何かは大腸菌が幾ら以上あってはならないというような、ある程度の基準の指定はそこにありましたが、主として掲げられている基準は、水道水源に関する基源が一応うたってあります。これはごく上流の水道水源に対するものは、厚生省として当然そういう基準をおうたいになることは必要かと思いますが、その基準がそのままいって、あとの下流においてどうなるのであるということに対しての御考慮が十分に払われていないように考えましたので、私はその点で御反対を申し上げたのであります。ただむやみにいろいろなそういう法案に対し抵抗したということではございませんで、るる申し上げておりますように、水のきめ手にはきわめていろいろなファクターがまじって参りますために、これを急激に、十分な実態調査その他の研究を経ずして、いきなりきめられるということに対しては、われわれ工業界はきわめて不安を持ってはおりますが、これが合理的にきめられるということについては、決してそれをはばむものでもございません。現に私どもは、ただいまお話のありました柴田先生あたりの御意向を常に参酌して、その御指導によって大体においては排水処理の施設をやって参っておるようなわけであります。
  92. 三輪包信

    ○三輪参考人 商工会議所といたしましては、ただいまお話のありましたように、地方の地域の総合団体といたしまして、やや法的な性格を持っておるというふうに自任をいたしておるわけであります。従いまして、この水質汚濁紛争につきましても仲介の労をとっておる地方もあると思います。それから煤煙の防止等につきましても、積極的に商工会議所の活動としてやっておる会議所も多数にあるわけでございますが、場合によりましては、労働争議を商工会議所が——いわゆる使用者側ではありますが、労働組合と両方の間に入りまして、あっせんをいたしておる例もままあるわけであります。会議所といたしましては、その都市が発展することが産業が発展するのだ、産業が発展することが都市が発展することだ、こういう考え方で活動をしておる伝統を持っておるわけでございますが、この問題につきましても同様でございまして、一応それぞれに問題を円満に解決するよう、あらゆる努力を払っておるわけでございますが、この法案を全国一律に、早急に水質基準をあらゆる面において——技術的なことは私どもわかりませんが、実施することは業界の実情からいって非常に困難ではないかという考え方は、今でも持っておるわけでございまして、この法律が通りましても、その運用は先ほど最初に申し上げましたように漸進的に業界の実情と合いまするよう、これに対する国家の施設等が並行して行われるように運用されんことを常に希望いたしておる次第でございます。
  93. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 簡単ですが、私の今質問申し上げたのは、今までこういう公害問題あるいは特に水質汚濁問題について、産業の発展のブレーキになる、妨げになるというような考えもあって、いろいろ努力してきたということは、済んだことですからこれを責める気はないのですが、これほど大騒ぎをしたこの力を、今後防除設備の改善の問題並びに自力では困難、特に中小企業の場合においては自力では相当困難である、これを解決するには資金的な解決が要るわけです。これに対し今申し上げましたように通産省の松尾さんの方から、できれば半額は補助をしていきたい。ただ法律の条文の中に補助金と明記することは避けたいということですが、そういう意見の発表もある。また長期低利の資金を貸し出していきたいという気持もある。しかしこれは松尾さん一人では、なかなか実現困難だろうと思う。従ってこれを政府の各関係あるいは大蔵当局とも関係があろうと思うのですが、こういう方面では財界が常日ごろそれに対して大きな勢力と影響力を持っておられるのですから、その方向に向けていかれることによって被害者、加害者という関係を露骨に先鋭化しなくても解決の道があるという、その道にお進みになるお考えがあるか。またその機運が皆様方のお知りになっている十団体の中なり会議所の中におありになりますかということをお伺いしたいわけです。
  94. 大川鐵雄

    大川参考人 お答え申し上げます。先ほど私申し上げましたようにこの施設に対してはもちろん低利の資金を確保していただかないことには、こういった採算ベースに乗らぬものは困難でありますので、その点はお願いしておりますし、また国庫補助の点も先ほどフアイバーかすを燃やす点について苦言を申し上げた通りでございますが、ただいまの仰せのような資金的な確保に向っての努力、これは常にこういう問題が起りますごとに、この春以来特に国庫補助及び助成、あるいは低利資金の確保というようなことに関しましては、経団連等も通じまして大いに努力をいたしたい存念でございます。そうしてまた日加協は申さば技術的方面に相なりますので、あるいはそういういろいろな抵抗のみを心がけるというふうな御判断に相なったかと思いますが、日加協自体これは紙パルプ工業連合会はその下部団体ではないのでございますが、協力して一緒にやって話し合っていこうというようなことで、始終お話し合いはいたしております。しかし今回の法案に対しましてもやはり国庫補助それから助成等のこと、低利資金の確保、あるいはまたそういった処理をするのに、場所あるいは建物を新しく買わなければならぬ。そういうものに対しては不動産取得税も免除していただきたいというようなこまかいことまで申し上げておる次第でございますので、そういった御指定のような資金的な方面の確保に向っては、ぜひ努力をいたしたいと考えております。
  95. 三輪包信

    ○三輪参考人 同じような考えでございます。
  96. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 資金を政府の方から仰ぐということの努力に向けられると同時に、今度は逆にかりに政府の方で資金を貸してやろう、あるいは補助を出そう、こうなるとなお一そう水質汚濁を防止するために熱心に努力をしていかなければならぬという逆なはね返りがあると思う。そういう点を一つ関係方々特に日本の現段階において、日本の国政に影響力を持つ財界の方々に、そういう認識を高めていただきたい、それを希望して私の質問を終ります。
  97. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 以上で参考人方々に対する質疑は終りました。参考人方々には長時間にわたり大へん貴重な御意見をお述べ下さいまして厚く御礼を申し上げます。  次会は明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十七分散会