○小里
政府委員 駐留軍の労務者が米軍の撤退によりまして相当多数解雇になっておる、これは昨年の岸・アイク声明以来顕著な事実として出ておるわけでございますが、米軍の撤退あるいはそれに基く軍隊の配備の変更というようなことで解雇者が出るということは、一面やむを得ない面があるのでございますが、こういう大量な人員整理があるさなかにおきまして、ただいま御
指摘のありました不合理な首切りといいますか、首切りには合理的な首切りというものはないのでございますが、軍の撤退あるいは配備の変更ということでなしに、仕事がそのままありながらこれを民間業者に切りかえていくという傾向が、今年に入りましてから一月以降現われて参ったのでございます。この問題につきまして担当官庁としての調達庁、あるいは内閣で各省の
会議を持っておりまするが、この
関係各省の
会議におきましても、こういったいわゆるPD切りかえという名前で呼んでおります民間業者へ仕事を移すことによって、首切りを出すということに対するアメリカ側に対しての反省を求めるという線で、
日本政府といたしまして米軍に強く折衝をいたして参った次第でございます。調達庁はもちろんのこと、内閣の総務長官あるいは外務省、それぞれのルートを通じまして強硬に対軍折衝をいたして参ったのでございます。その結果、今年の三月半ばごろでございますが、
日本政府の意向をしんしゃくいたしまして、PDに切りかえる場合には十分な事前調整を日米間においてやろうという
意味の米軍の返答がございました。その線で今日まできておるわけでございます。今年の初め以来PD切りかえに出されました件数を申し上げますと、ただいま申しました三月の半ばごろに米軍から事前調整をやろう、今後の問題については日米間で十分な話し合いをしょう、こういうことを向うから言って参りますまでに、米軍ですでに
決定して、これは米軍としてやらざるを得ない、こういうことを言って参りました件数が八件ございます。この八件のうち実施に移されましたのが六件、それから他の二件はこれを中止いたしました。その後新しく日米間で事前調整をやるという線に沿って、米軍から
日本の
政府側にお申し越しのありました件数が六件ございます。この六件のうち、ただいままでに実施に移されましたのが一件でございます。
あとの五件につきましては、いろいろの経緯を経まして、この際新しい見地から再検討を加えたいということ下、ただいま中止の
状況にございます。これがずっと将来まで中止になったままでおるかどうかということにつきましては、ただいまのところ私
どもといたしましても楽観は許しておりません。米軍がPDに切りかえる理由としてあげておりますのは、予算の削減とかあるいは
日本の労務者を指揮監督をする米軍側の人員が極度に減少した、こういうような理由でございますので、この理由が必ずしもただいまのところなくなったということは言い得ない
状況でございますので、ただいまこの残りの五件について、米軍が再検討を加えておるという状態ではございますが、これがどういうことになるかということについて、ここではっきり私から申し上げることのできないのをはなはだ遺憾といたします。ただ
日本政府といたしましては、先ほ
ども申しましたように、軍隊の引揚げでありますとか基地の閉鎖でありますとかということと違って、仕事がありながらその職場を、従来の
日本人の労務者を首切って
日本の新しい業者に肩がわりをする、こういうことはやめてもらいたい、万やむを得ない場合でも最小限度にとどめてもらいたい、あるいは
日本政府と十分な事前調整をしてもらいたい、こういう態度で今後も折衝を続けて参りたい、かように考えておる次第でございます。