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1958-10-07 第30回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月七日(火曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 小林  進君 理事 五島 虎雄君    理事 滝井 義高君       加藤鐐五郎君    川崎 秀二君       河野 孝子君    齋藤 邦吉君       志賀健次郎君    田邉 國男君       中村三之丞君    中山 マサ君       二階堂 進君    古川 丈吉君       柳谷清三郎君    山田 彌一君       亘  四郎君    赤松  勇君       伊藤よし子君    大原  亨君       岡本 隆一君    河野  正君       多賀谷真稔君    堤 ツルヨ君       中村 英男君    八木 一男君  出席国務大臣         労 働 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         厚生政務次官  池田 清志君         労働政務次官  生田 宏一君         労働事務官         (大臣官房長) 澁谷 直藏君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君  委員外出席者         郵政事務官         (大臣官房人事         部長)     佐方 信博君         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本国有鉄道常         務理事     吾孫子 豊君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件  台風第二十二号による罹災者実情について、  派遣委員より報告聴取      ————◇—————
  2. 園田直

    園田委員長 これより会議を開きます。  先般台風第二十二号による罹災者実情調査のため、現地委員派遣いたしたのでありますが、この際各班の派遣委員より順次報告を承わることにいたします。第一班、河野孝子君。
  3. 河野孝子

    河野(孝)委員 台風第二十二号に伴う被害状況のうち、私の派遣されました東京千葉神奈川、各都県状況につき御報告いたします。  私は十月一日、二日の両日、建設農林文教の各委員とともに各部県庁に参り、議員各位の醵出せられました見舞金を手交するとともに状況を聴取し、災害現場視察したのであります。  台風二十二号は九月二十七日、神奈川県下から本土に上陸したのでありますが、この台風の接近に伴い本土南方に停滞していた前線によりまして静岡県、関東地方に未曽有豪雨をもたらし、東京都内各地では二百ミリないし四百ミリという気象庁開設以来の降雨量を示したのであります。これがため各所中小河川はんらん、がけくずれ、下水の溢流等が発生し、随所に床上床下浸水を見たのであります。  東京都における被害状況は次の通りであります。人では死者三十名、重軽傷者四十八名、行方不明十二名。建物では全壊八十二戸、半壊五十四戸、流失十七戸、一部破損二十六戸、床上浸水七万六千百十五戸、床下浸水二十五万三千百四十一戸でありまして、二十六日十六時には全都に対し災害救助法が発動され、三百五十七カ所の救護所を開設し、四万三千二百十人の収容を行い、食糧毛布むしろ等の配給をいたしたのであります。特に目を引いたのは、一日現在いまだ水が引かず、堤わきの民家の床は水におおわれ、崩壊寸前の家もあり、異様な臭気に包まれていた足立区の実状でありました。  次に千葉県は、人では死者十四名、負傷者二十二名、行方不明一名、建物では全壊四十八戸、半壊九十五戸、流失二戸、床上浸水四千四百三十二戸、床下浸水一万四千十戸でありまして、災害救助法を市川市、船橋市、千葉市、佐原市に適用し、延べ一万四百三十三人を避難所収容し、延べ二万三千二百九十人に対し給食等を実施いたしました。  神奈川県では、人では死者九十三名、負傷者百四十二名、行方不明一名、建物では全壊三百二十一戸、半壊二百八十九戸、流失十三戸、床上浸水一万六千九百九十一戸、床下浸水四万八千七百六十六戸でありまして、横浜市、川崎市、藤沢市、鎌倉市、横須賀市、逗子市に対して災害救助法を発動して、延べ十四万食分の給食を実施し、なお毛布、なべ、かま、バケツ等生活必需品の給与を行なったのであります。  以上災害状況でありますが、災害救助法運用については、給食避難所収容した者のみに適用される建前になっているのは不都合であり、また食糧その他の基準単価を引き上げる必要がある旨、都県の代表から意見の開陳があったこと、さらに千葉市原都南総町の県立結核療養所は約二百万円の損害で、病舎破損のため、百名収容のところへ二百五十名収容しているありさまで、とかく土木関係のみに気をとられがちな折に、このような病院災害への考慮も払われたしとのことでございました。  以上をもちまして報告を終りたいと存じます。
  4. 園田直

    園田委員長 第二班、伊藤よし子君。
  5. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 私ども静岡班は、農林委員二名、建設委員二名、文教委員一名、社会労働委員一名、松浦農林委員長班長といたしまして、一日の朝東京駅を七時五十分に出発いたしまして、三島市へ参りました。三島市で災害対策本部におきまして、全般状況についていろいろ説明を受けまして、その後ヘリコプターで一番災害のひどうございました中伊豆方面大仁方面視察いたしました。それからそのあと伊東市におきましては、ヘリコプターからおりまして、地上をつぶさに視察いたしました。  さて、台風二十二号は、去る九月二十六日伊豆半島をかすめ、江ノ島付近より関東地方に上陸したのでありますが、この台風はいわゆる雨台風でありまして、当時本土南岸にありました不連続線と相待って、東海道以東各地に記録的な豪雨をもたらし、近畿地方以東の各都道府県被害をもたらしたのであります。中でも伊豆半島、特に中伊豆地方におきましては、狩野川上流天城山糸一帯に降った豪雨は、湯ケ島において五一〇・五ミリ、修善寺において二二一・八ミリ、また伊豆半島西岸松崎におきましては二七八ミリという未曽有降雨量を示し、中でも湯ケ島においては、最大時雨量七四・六ミリという豪雨となったのであります。このため天城山系一帯から山くずれによる泥土を含んだ濁流が狩野川に押し寄せ、大見川、北又川、狩野川、三川の合流点である修善寺付近において膨大な量の濁水は修善寺橋を押し流し、堤防を破り、修善寺横瀬部落熊坂部落を一のみにして、さらに下流に殺到、堤防十数カ所を破り、大仁伊豆長岡町などに大きな惨禍を与え、田方平野一帯はんらんしたというのが今回の中伊豆地方大水害の概況であります。なお伊豆半島においては、このほか西海岸松崎町においては那賀川が、南岸下田町においては稲生沢川が、さらに東岸伊東市においては伊東大川がそれぞれはんらんし、いずれも相当被害を見ております。  本災害発生に伴い、沼津、伊東、熱海の三市、伊豆長岡町、修善寺町、中伊豆町、大仁町、韮山村など田方郡下四町五村及び松崎町、下田等賀茂郡下五町二村、計十九市町村に対して災害救助法が発動せられ、住民の避難、たき出し、遺体の捜査、埋葬、応急仮設住宅建設等の活動が続けられております。また県当局は、三島市に災害応急対策本部を設置して応急対策に当っており、一方自衛隊災害発生と同時に出動し、空陸より災害状況の偵察、遭難者救出食糧補給道路復旧、さらには行方不明者捜査全力をあげて活動いたしております。その被害につきましては、奥地との交通が途絶しているため、詳細が判明しないこと、また当面の緊急作業全力をあげていること等のために確実な状況を把握することは困難でありますが、十月二日現在として静岡災害応急対策本部の発表によれば、伊豆半島全体で死者三百七十三名、行方不明者六百七名、重軽傷者六百三十七名、家屋被害は、全壊流失合せて千三百五十一戸、半壊七百七十四戸、浸水一万四千九百二戸となっており、土木施設災害は二千二百二十三カ所、被害額四十九億四千万円、農地の流失、埋没は二千百四十八町歩、各種の被害合せての推定被害総額は百四十八億七千四百万円と称しております。  このうち、特に厚生関係施設被害について見ますと、まず医療施設被害を受けたものは、病院八、診療所十三、隔離病舎十四、助産所十となっており、また公衆衛生施設では、上水道八、簡易水道二十四、屎尿浄化槽四、火葬場一、塵芥処理場一、屠場二が、それぞれ被害を受けております。災害概況は以上の通りでありますが、次に私ども一行の視察の所見並びに現地関係当局の要望などについて申し上げることといたしますが、被災後まだ日の浅いため、現場輸送状況等関係から、空中からの視察を主とし、直接現地に足を踏み入れることが十分にできませんでしたことは遺憾でありました。しかしながら空中より見る狩野川流域状況は、すでにはんらんした水の大部分が引いてこそおりますが、三島南方蛇ヶ橋付近より以南は、一面の泥田と化し、その中にあるいは家屋の残骸や流木が集積し、排水に努める消防車や川原より立ち上る荼毘の煙など、風光明媚をうたわれた伊豆地方の面影は全く見られぬ惨状でありました。  また、直接地上より視察いたしました修善寺付近伊東市などにおきましては、水の勢いのすさまじさに今さらながら驚かされた次第でありました。  被災直後の応急援護につきましては、すでに申し上げた通り県市町村当局努力によって相当成果を見せているようであります。特に自衛隊機動力による救援は大きな成果を上げており、伊豆地方の特殊な地形に対し、ヘリコプターの活躍は、罹災者救出食糧輸送等に予期以上の威力を発揮しているようであります。また防疫対策についても、幸いにして今日までのところ悪疫の発生を見ていないようでありますが、この点については、観光地という特殊性もありますので、万全の措置を講ずる必要があると考えられ、特に奥地部落に対しましては、医薬品の補給等にも特に留意する必要があると考えます。  また今回の災害は、一部落全体が一挙に流失し、あるいは瞬時の出水であった等の事情により、一家離散し、あるいは老人や子供だけが取り残されたという例も数多いように見受けられますので、一般罹災者に対する対策に加えて、このような人々に対する恒久的な援護対策について特別な考慮を要するものと考えられます。  なお、県当局からは、罹災者に対する世帯更生資金及び母子福祉資金の貸付に対して特別の措置を講ずること、災害救助法救助範囲の拡大と国庫補助率の引き上げの措置をとること、国民健康保険事業に対する融資補助につき特別措置をとること、上水道その他公衆衛生施設復旧費国庫補助について特別措置をとること等を要望いたしておりますので、政府当局におかれては、今回の災害中伊豆地方において特に甚大である点にかんがみまして、それぞれ実情を把握の上、適当なる援助措置を講じ、罹災地の民生の安定をすみやかに回復されるよう措置されますことを強く要望して報告を終りといたします。(拍手
  6. 園田直

    園田委員長 第三班、大石武一君。
  7. 大石武一

    大石委員 私は第三班の班長といたしまして埼玉茨城福島の三県の災害状況視察いたしました。同行者は、文部、それから建設及び農林委員会より四名の方々が参加いたしておりますし、さらに地元出身議員方々がそれぞれ参加せられまして、非常な便宜を計らっていただきました。  大体このたびの災害は、台風といいましても、ことに豪雨による災害が多かったようであります。まず埼玉県に参りましては、川口市、戸田町あるいは浦和市等を中心視察して参りましたが、幸いに、この地方は四〇三ミリの降雨量を記録いたしましたが、秩父山系の方が三〇〇ミリ程度の雨であったために、荒川等の大きな川に堤防決壊等はんらんがなかったのが何よりの仕合せでございました。これらの町町につきましては、大体大雨による小さな河川はんらんがございまして、相当被害がございました。ことに一番大きいのは川口市であります。川口市には芝川という小さなどぶ川が流れておりますが、この川がひどいはんらんをいたしまして、御承知のような川口市の約七割の家屋床上浸水を来たしたわけでございます。このために、川口市は御承知のように機械なり鋳物の工場中心でございますので、これらの約八百の工場がみな浸水をいたしまして、機能を停止いたしております。その被害額は大体百二十億といわれております。埼玉県としましては、この川口市の中小企業に対する対策が一番大きな問題のようでございます。とりあえず県下の保証協力会等を通じまして、いろいろとそれぞれの融資をいたしておりますが、何よりも大事な問題は、これらの中小企業に対する融資の問題でありまして、何とかして長期にわたる融資をはっきりと政府できめてもらいたい。あるいは中小企業金融公庫なりその他の金融機関に対して、政府からいろいろと処置をして、円満な、円滑な運用がはかられるようにしてもらいたいという希望が強かったようであります。同時に、これらの工場機能停止によりまして、労働者失業が出るわけでございます。これらの失業者に対するいろいろな対策とか、あるいは失業が出ないようないろいろな手当をしてくれるようにという希望が非常に多かったように感じました。ここでは、何と申しましても、この芝川改修の問題が一番大事のようでございます。これは現在県営排水事業として工事を始めて、六千万円の予算が今までついておりますが、これが完成までには三十二億円の金が必要なのでございます。従いまして県営事業としてこの芝川改修が完成いたしますのは、十数年のあとになるわけでございまして、これに対しましてはもっともっと強力な措置を講ずる必要があろうかと思う次第でございます。  次に茨城県に参りました。茨城県は大体栗橋から南下いたしまして取手に行き、龍ヶ崎市に行きまして、土浦を回って水戸まで出て参りました。この間の被害を一言にして申しますと、要するに低湿地の冠水による被害でございます。北の方では、大体山手の方も二十一号台風以来相当台風に痛めつけられまして、ことに茨城県は凍霜害、旱害、十一、二十一、二十二号、この五つの災害にことしは悩まされて参ったのであります。山手の方は二十一号の被害相当多かったようでありますし、また今次の災害にも、道路の破壊とかあるいは橋脚の流失、そのような一般災害相当あったようでございますが、南の方は、ごく低い、要するに利根川の水系を中心とした低湿地でありますので、この大雨がここへ流れ込んで、いずれも低いところに一ぱいになりまして、水田がやられているという被害が一番多いようでございます。十月一日現在でこの水田の冠水しているところが一万一千町歩残っているという報告であります。われわれはいろいろと干拓地を見て参りましたが、ほとんど全部もとの沼地のような形で、これが水田であったとは思われないほどでありました。  ここでは何と申しましても排水の問題が一番大事であろうと思います。ことに先年から問題になっております小見川の問題でありますが、これが地元の反対でいまだ何らの対策が講ぜられない現状であります。従いまして、これらの堤防さえ危険なのに、これらに対して堤防の補強すらなされていない現状であります。従いましてこれは何と申しましてももっともっと国家が強力な指導を行なって、これらの問題を解決していく対策を立てることが大事であろう。同時に先ほどの旱魃対策にもございましたが、利根川逆流の問題がございます。この逆流をとめるために水門なりの処置をすることが、ここの大きな問題であろうと見て参った次第であります。  次に福島県に入ります。福島県は御承知のように浜通り、中通りとありまして、海岸地方とそれから中部から西の方にかけてのいわゆる山手の方があるわけでございます。この会津地方山手の方は二十一号台風によって手ひどい被害を受けているようであります。ところが今度の二十二号台風によりましては、大体において福島市の一部とそれから浜通り、そのうちの海岸の方がひどい。ことに双葉郡、相馬郡という北寄りの方がひどい災害を受けているようであります。いずれも木橋は全部流されております。それから道路は至るところ破壊しておりまして、いまだに北に上る国道が各所に寸断されて、交通がほとんど途絶しておる状況であります。こういうわけで、ことに福島の原町市あるいは鹿島町、あるいはその北の相馬市という都会はいずれも一千戸以上の床上浸水を見ております。ことに鹿島町というのは、千五百戸の部落の戸数のうち浸水しないものは三十戸という状態であります。  あそこには御承知のように阿武隈山系がありまして、その阿武隈山系の水が太平洋に入ります距離が非常に短い。河川が非常に短いのでありますから、水が出ると一ぺんに切れて一ぺんに引くという状況でありますので、これらの都会に対する浸水状況も急速であったために、いずれも各家庭において、いろいろな家財道具やあるいは商品を避難させる余裕がなかったのであります。従いましてこれらの中小企業希望というものは、いずれも融資がほしい、二十万、三十万なりでけっこうだからできるだけ早く融資をしてもらって、それが長期で返せるようにして、できるだけ商売の元にしたいという希望が最も強かったのであります。  その値いろいろと各県の希望は、特別交付税を早くもらいたいということが特色のおもな点であったと思います。  厚生関係に関しましてはほとんど問題ありませんでした。川口市におきましては、水道と下水道が完成しておりましたために、全然その点では病気の心配がなかった。水道もそのまますぐに使えて、水には困らなかったという非常にうれしい状況でありました。ただ一方鹿島町に参りますと、ここには簡易水道を作りたいという希望がありまして、御承知のように簡易水道は四分の一を国が補助、それから四分の一を県が補助あとの二分の一は起債ということになっておりますが、今の各県の経済状態では、四分の一の県費補助はほとんどないようであります。鹿島町でも四分の一の県費補助はほとんどもらえない状態である。ことに罹災しては地元負担も容易でないから、何とかしてこの金のめんどうを見られるような措置を講じてもらいたいという希望があったわけでございます。  以上簡単でございますが状況を御報告申し上げます。
  8. 園田直

    園田委員長 委員諸君は御苦労さんでした。関係各省、特に厚生省においては、特に委員報告をしさいに検討して、すみやかに処置せられるよう望みます。  この際、厚生政務次官より発言を求められておりますからこれを許します。厚生政務次官
  9. 池田清志

    池田政府委員 今回の三十二号台風によりまして尊い生命を失われた方や、あるいはまた行方不明の方が千数百名にもお上りになっておりますのを初めといたしまして、人的物的の被害の甚大にありましたことは、まことに残念でございます。政府といたしましては、生命を失われた方々の御冥福をお祈りいたしますとともに、被害者方々に対し深き深き同情を持っておる次第でございます。  今回の台風によりまして被害発生いたしますると、政府といたしましては直ちに国、都道府県市町村等の力を動員いたしましてこれが対策に乗り出しておりますことは御案内の通りであります。なおまた皆様方委員会から特に現地派遣をしていただきまして、ただいまは詳細なる現地の御報告並びにこれに対します罹災対策をお聞かせいただきまして、感謝を申し上げております。政府といたしましては従来これが対策につきまして努力をいたしておるのでありますが、皆様方の御報告によりまして、さらにまた一そう御鞭撻を受けまして、これの線に沿いまして応急的、恒久的対策をしっかりやりますということをお誓い申し上げる次第でございます。(拍手)     —————————————
  10. 園田直

    園田委員長 次に労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  前回労働大臣より説明を聴取いたしましたので、直ちに質疑を行いたいと存じます。大坪保雄君。
  11. 大坪保雄

    大坪委員 先般当委員会労働大臣から、労働行政全般に関して所信の御表明がございました。私ども一応労働大臣の、現在の時局下下労働行政を進めていくについてのお心がまえと申しますか、それを了承いたすのであります。ただ今日の労働問題に関する事柄につきましては、ずいぶん私どもも疑問に思うところも多くございますし、それらの問題に対する政府のお考え方なり、御措置というものを伺わなければならぬと思う事柄が、きわめて少くないのでございますが、これらにつきましては、社会党の同僚委員諸君からもおそらくかれこれ御質問が準備されておりましょうし、私は時間の関係等も考えまして、所信として御表明になりました事柄に関連して、二、三の点について労働大臣の御意見を伺いたい、かように考える次第でございます。  まず第一は、雇用失業の問題であります。この問題は御承知のように、わが党におきまして完全雇用を目標として、長期経済計画を立て、着々その線に沿って施策を進めるように政府と連繋をとり、努力をいたして参っておるのであります。しかしながらその間にやはり当然失業者が出てくる。これらの措置のために、従来から失業対策事業を起す等の措置をおとりになっておるのでありますが、昨年政府が実施されました国際収支改善のための総合対策以来、やはり経済界には、相当の不況の現象が露呈いたして参りまして、失業者の数も相当ふえて参っておるようであります。事業界企業整備をする、あるいは操短等をやるというようなことによって生ずる失業者の数も少くないようであります。政府でお出しになっております統計等について見ましても、その間の事情が明らかになっておるのでありますが、それに対してはそれぞれ適時適応失業対策措置をおとりになっておることは私どもも認めておるのでありますけれども、今日こういうような社会情勢でありますことについて、世上非常に心配をいたしての論議が少くない。場合によりますと何かもう今日失業の大軍が押し寄せて参るというような感じさえ持たれるような論議等も少くない感じがいたすのであります。  そこで、先般の大臣所信表明の中に、ずいぶんかれこれ御苦心になっておることはわかるのでありますが、新しい本年度の予算において、相当強化措置をおとりになっておることも、現に私ども承知いたしておりますが、その御所信の御表明の中に、今こ回、今日の事態に即応するためという意味でございましょう、公共事業費等の繰り上げ実施の措置を講ずることとしたと申されておるのであります。この点は現在、現実に起っております失業者多発事態に対する措置として、世上この問題を憂えるものの最も注目しておる点であろうと思うわけであります。公共事業等の繰り上げ等によって、当面応急措置を遺憾なくしようということである。それの具体的なものを一つここにお示し願えれば仕合せだと思うのであります。ただ数字の羅列をいうことでなしに、真に現在のわが国の失業問題に対して憂いを抱いておる人々に安心を与える、少くもある程度の納得をさせる、そういう意味合いをもって、それらの具体方策について御答弁を願えれば幸いだと思います。
  12. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 雇用の問題につきまして、今お話のように、経済調整の手段を当時の政府が取り出しましてから、昭和三十三年度予算の編成に当りましては、ああいう政策の結果当然雇用にも響いてくる、従って失業者もふえてくるという想定のもとに、御承知のように二万五千人の失対人員をふやしたというふうなことも、そういうおもんぱかりからでありますが、幸いにいたしまして、当初政府が見込みましたよりは、現在労働力調査等による完全失業者の推移を見ておりますと、当初計画に考えましたよりも少い程度でとどまっておることは御承知通りであります。しかしなおそういう経済政策のしわ寄せというものは、大体雇用失業の面に現われて参りますのは、従来の経過を見ますと六カ月、あるいは七、八カ月たってから出て参ります。そういう現象がつい最近までの失業保険受給者の増加という傾向で現われて参りました。しかもその内容を調べてみますと、常用者には比較的少い。特別な企業整備等によるものでない限りは、大体常用者は少くて、臨時雇用者のようなところにそういう傾向が現われてきておるようであります。そこで経済政策がかりにうまくいきましても、わが国の現状においては、やはり雇用失業というものは非常に大きな問題で、政治の部面において大きなウェートを占めておる重大問題であると存じますので、政府は、いわゆる長期五カ年計画の策定に当りましても、まず第一に雇用を拡大するということを、経済政策の重点施策として冒頭に掲げておるような次第であります。そこで現在いわゆる企業整備等で——名前はこういうところでは遠慮いたしますが、新聞等で御承知のように、相当名のある会社等でも人員の整理等が発表されておるような段階でありますが、そういうものも個々にわたって検討いたしますと、こういういわゆる不況でなくても整理をしなければならないような経理状態にあったものも、相当あるようであることは御承知通りであります。しかもなお相当実力のある大企業で、あるいは重役の人員を減らしたり、あるいはまた高級社員の月給を引き下げるというふうなことの話し合いを進めておるような段階は、つまり大きな産業でも操短第によって当然出るべき解雇者を、実力にものをいわせて相当長期間抱え込んでおった。そういうものが今日になってやはりそう長くは抱えられないといったようなものが現われてきておるのも、一つの現実の姿であります。そこで政府は、経済見通しに立って、これからの雇用失業につきましていろいろ考えていますが、私どもの方においては、いわゆる景気というものは大体なべ底であって、そのなべ底もさらに悪化する二重底になっていくとは見られない。ややこれから、ことに御承知のように、年末にかけて散布超過の時代も参りますし、同時にまた日銀の公定歩合の引き下げ等も二回にわたって行われ、金融も徐々にゆるやかになってくるという情勢になって参りましたので、私どもとしては、まずこれ以上非常に悪化するということは考えられない。しかしながら現在出ておりますものを救済するにつけても、ともかくも、ただいまお話にありましたように公共事業費の繰り上げ実施というふうなことをして、そこでまず出てくる失業者を食いとめよう、こういうふうな考えをもって政府も発表いたした次第であります。その政府部内で公共事業費を繰り上げ実施することによって、大体どういうふうな見当をつけておるかという数字につきましては、あと政府委員から申し上げたいと思いますが、そのようなふうにいたしまして、私どもとしては、現在の雇用失業問題は、一応大体安定を見るのではなかろうか、ただ駐留軍労務者のような特定の地域における失業者が特定の事情のもとに出てくる、こういうふうなものについては、政府は、それに応じたような特段の手段を講じて、できるだけそういう多発地帯の人々の救済をする、このように考え、またそういうふうに実施を進めておる次第でございます。
  13. 大坪保雄

    大坪委員 ただいまのお話の中で、結局雇用拡大をはかるということに従来力を注ぎ、現在も注いでおるということのお話のようでありますけれども、これは、現在の経済界の不況の実情下では、なかなか現実にはでき得ていないのではないかというように感じられる。ただいま大臣の御答弁によりますと、経済界の好転が近く期待されるから、まあ好転持ちだということのようでありますが、経済界の好転期待ということは、おそらくそういうことになるでございましょう。私ども経済界のことはきわめて暗いのでありますから、私ども自身がどうであるという、ここにはっきりした意見を持ち得ないのでありますけれども、そうでございましょう。が、それだけでは、結局今日の失業問題を憂えている人々に納得せしめるということにはならぬのではないかという感じがいたすのであります。公共事業の繰り上げ実施というようなこともさることながら、これもどうしても早くやってもらわなければならぬと思うのでありますけれども、何かさらに政府が手を加えて積極的に事業を興すというような事柄政府部内において検討をされておるかどうか、失業救済の措置といえば、いつも現存の道路の補修とか河川改修とかいうようなことをなされておるのでありますけれども、それらのことにきょくせきしないで、もっと何か積極的な事業を政府自体がやるか、ないし政府が力を貸してやるかということによって、失業者の救済もできるが、同時にこういう問題について心配を持っておる人たちにある程度の安心感を与えるというような措置を講ずべきことが、政府部内で論議されていないかどうか、その点を一つ重ねてでありますが、お伺いいたします。
  14. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 雇用関係は、やはり事業が興って、それに人員が動員されて増加するというものでありますから、これは、たとえば国の予算関係でも、御承知のように財政投融資、これらはもちろん雇用に大きな影響を持ってくるし、また大きなワクをわれわれは期待しておる。毎年そうでありますが、ただいまお話の公共事業の繰り上げ実施であるとか、あるいはまた財政投融資等による規模の拡大によって、そこに雇用を吸収する。同時にまた私ども今考えておりますことは、現在の経済政策について、先ほど私が申し上げましたように、雇用を優先的に考えていただく、こういうふうなことについて、一般雇用人員を多くかかえておられる事業等においてもう少し注意を喚起して、そうして政府の考えております雇用政策に協力を求める、こういうようなことをわれわれは実は今考えておるわけであります。同じたとえば綿紡なら綿紡、化繊なら化繊の業界においても、自分のところの経営単位だけで操短を計画されるというふうなことになるよりは、やはりその業界が雇用というもの——またいつまでもしぼんでおるわけではないのでありますから、やがて、伸びていくときにすぐ困るような状態では、当該企業自体が困るのでありますから、そういう面で若干の計画性を持った雇用の増大というものを事業家も考えてもらう方がいいのではないか、こういうことを私どもは考えておるわけであります。従ってなるべく早い機会にそういうことについて注意を喚起すると同時に、また政府の考えております雇用政策に協力をしてもらう、そういうふうなことをやって参りたいと実は思っておるわけであります。  同時にまた今大産業等の、たとえば新卒業生の就職等の様子を見ておりましても、現実に労働省の出先である安定所というものをどの程度活用されておられるかということについて、われわれは多大の疑問を実は持っておるものであります。また今の安定所の機構、予算等の状況では、そういうふうなことについて十分な活動をすることが非常に困難な状態になっている。私は、一般大衆はもちろんのこと、雇用量の一番大きな産業界に向って、もう少し政府のやる安定行政というものについて、十分な理解と同調と信頼とを持っていただくようにしむけて参りたい、そういうふうなことによって、もっともっと雇用の拡大というものがやれるのではないか。その他は先ほど私が申し上げました長期五カ年計画に見ましても、御承知通りでありますが、何といたしましてもやはり日本の産業規模が拡大していくということ、同時にその拡大されたものが国内消費だけではなくして、輸出の増強というふうなことに重点が置かれなければならぬ、そういうことの結果は、やはりその輸出品を作る産業の設備が拡大される。この間エジプトとの貿易協定ができましたことによっても、現にそれに関係のある産業が御承知のように非常に活発になり出したという、これなどは一つのいい事例でありまして、そういうような方向に政府の経済政策というものを持っていく、そういうことでまた一方において雇用の増大をはかっていく、こういうふうに考えておるわけであります。
  15. 大坪保雄

    大坪委員 これは私がこの機会にあらためて申し上げるまでもなく、現下の最も重大な政治問題であろうと思いますから、特に第二次岸内閣の成立の際、倉石労働大臣は岸総理とお話し合いになって、思いやりのある労働行政をやっていこうということで、新しい倉石労政の出発をなされたということであります。そのことでございましょう、従来恵まれることの少なかった中小企業方面の労働者に対するいろいろの保護政策をお進めになっておるようでありますが、最も日の当らない階層といえばこの失業者であろうと思う。どうか思いやりのある労働行政がこういう方面に特に強く取り立てられて実現されますよう、私ども倉石労働大臣にそういう方面について非常に大きく期待いたしておることでありますから、一つ御検討を願いたいと思うのであります。  そこで次にお伺い申し上げたいと思いますのは、統計等にも明らかになっておるごとく、また今お話もございましたごとく、きわめて失業者はふえておる傾向であるし、なお今後人口の増加に伴って労働力人口も自然多くふえて参る。これらの取扱いは、職業安定機関の窓口を通じてなされるのでありますが、私どもが全国各地に国政調査等で参りましたり、その他の機会に政府地方機関等を見てみまして常に感ずることは、労働省関係地方機関が、設備の点におきましてもあるいは人の面におきましても、またこれらに対する経費の面におきましても、他の省の地方機関に比べて非常に見劣りがする感じがいたしましてならぬのであります。特にその感が地方の安定所においてはなはだしい。今日職業安定所の仕事の重要性、緊急性というものにもかかわらず、設備はきわめて老朽、危険あるいは狭隘である、人手も非常に不足しているように見受けられます。人手の少いのと、従って自然激務になるのと、庁舎の狭隘、不衛生というような事柄からして、相当欠勤者、病人等も多いというようにも聞いておるのでございますが、そういうことでは、この重要にして緊急なる雇用失業の問題の処理というのは十分には参らぬのではないか、こういう点から雇用失業問題の解決に大きな支障を来たすということになっておる面があるのではないかというようなことが痛感させられるのであります。大臣は先般の御所信表明の中に、職業安定機関の機能の強化充実を期するということを、ことに取り立てて仰せになっておる。またこの問題につきましては、これは八月十八日付で中央職業安定審議会の有沢会長名で、職業安定組織の整備拡充に関する建議書も出ておる。その建議書を私ども拝見してみましても、非常に痛感させられるものがあるのであります。たとえば人手不足の状況というものを書いておられるのに、これはもちろん大臣もごらんになっていると思うのでございますけれども地方の小安定所においてさえ、個々の業務の標準的処理時間は、新規求職一件当り約八分、再来求職一件当り約三分、一般紹介一件当り約二分、失業保険認定給付一件当り約三分、日雇い労働紹介については一件につき一分をこえずというようなことが書かれておる。これが実情だそうです。これが都市の大安定所になると、新規求職一件当りがもっと時間が短かくて約七分、再来求職が二分、一般紹介が約一分、失業保険認定給付が一件当り約一分、日雇労働紹介については一件について数秒を出ないということが書いてある。うそではなかろうと思うのであります。こういうことではとても職業紹介もできるわけのものではなかろうと、こう思うのであります。現場では非常に苦労な仕事をやっておる。職業安定所の職員の諸君に対して、私どもは同情にたえない。こういう人たちが仕事をやりいいようにしてやる。やりいいようにしてやるということが、すなわち雇用失業の問題の解決の大きな力になるということであるのでありますから、その点を特に大臣は取り上げて、機能の強化充実を期すると言われたのであろうと思うのでありますが、これはぜひ一つ強力に大臣が大きく政治力を発揮して、措置していただかなければならぬ問題であると思うのであります。これは何も私は地方の職業安定所等の職員のためばかり申し上げておるわけではない。そのこともありますが、この大切な事業の執行について私ども憂うるがために、あえて取り上げて御質問申し上げる次第でありますが、この点について、これの充実を期せられる具体的な措置を承わりたいと思います。
  16. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 安定行政についての理解あるお話を承わりまして、まことに感謝いたすのであります。私どももたまに地方へ参りまして、安定所を視察いたしまして、第一線の安定業務に当っておる人々の御苦労をほんとうに心からお察しいたすのでありますが、ただいまお話のありました有沢教授を会長に願っております審議会でも、その実情を詳しく調査して、答申をいただいております。従って御趣意に沿うようにできるだけやりたいと思いまして、来年度予算には、そういう面について予算要求もいたしてあるわけであります。とかく、じみな縁の下の力持ち的な仕事でございますので、今まではどうも私どもの微力で十分にいきませんでしたが、しかし今日の時勢で雇用失業の問題というものは何よりも大事な問題でありますので、これを充実していく。そうしてまた雇用希望する方についても、それからまた就職を希望する方の側の人に対しても、できるだけその御要望に応ずるようにするには、とても今のようではいけませませんので、御趣意に沿うように全力をあげて改善をして参りたい、こういうふうに思っておりますので、一つこの上とも当委員会の御協力をお願いしたいと存じます。
  17. 大坪保雄

    大坪委員 どうか一つ御検討願いたいと思います。  もう一つ、雇用失業の問題に関連してお伺い申し上げたいと思いますのは、先ほど、今回の第二十二号台風被害実情調査調査班が三班に分れて派遣されて、それぞれ御報告がございました。事業場等が大被害をこうむって、事業の継続ができなくなった、ないしその他のことで職を失ったというようなことについての詳しい御報告は承わらなかったような気もいたしますけれども実情は特に大都市及びその周辺がひどくやられているということもございますし、事業場が継続不可能、ないし復旧のための労力が従来の従業員全部使うほどには必要でない等等によりまして、新しい失業者相当出ているのじゃないかということを私感ずるのであります。その辺の実情が調べ上っておるかどうか。何か特別の失対事業等々を特別に起して救済する必要のある程度にあるものを調べ上げておるかどうか、その状況がわかっておりますれば御説明を願いたいと、それに対する失対事業とでも申しますか、職を与える等の方策をお立てになっておるか、この点をお伺いいたします。
  18. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話の災害地の状況につきましては、まことに御同情申し上げるのでありますが、ただいま災害対策本部も設けられまして、その災害復旧全力をあげてやっておりますが、まだこの災害による特別な失業者というふうなものの調査、そういうところまでは出て参っておりません。今のところでは、そういう調査が十分にできておりませんけれども、さらに不十分な点がありましたならば、実情に応じまして罹災地失業対策事業を実施して参りたい、こういうふうに考えております。現地報告を詳細にとりまして、また追って御報告いたしたいと存じます。
  19. 園田直

    園田委員長 関連質問があります。これを許します。伊藤よし子君。
  20. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 ただいまの大坪委員の御質問に関連してでございますが、私は災害地を視察いたしまして特に強く感じて参りましたのは、大小の事業場などはもちろんのことでございますが、農地が流失いたしまして、またひどいところは川原のような状態になりまして、農民がその生業を奪われてしまった状態各所に起きているようでございます。その点につきまして特に失業対策事業の大幅な割当などをお考えになっておりますか。ただいまのと重複するかと思いますが、この点を伺っておきたいと思います。
  21. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お説のように、そういう画もあるようであります。そこでそういう対策本部の調査は今緊急にやっておりますが、応急にそういうお困りの方々に対する援助というものは対策本部でやっておりますが、その方々が特に職を失われて、そうして何か職を求めたいというふうなことにつきましては、私どもの方といたしましては、そういう土地に、特別な災害復旧に要する失対事業というふうなものを計画いたしまして、そういう面で救済して参るように今調べをいたしておる最中でございます。
  22. 大坪保雄

    大坪委員 どうか一つよろしくお願いいたします。  そこで、なるべく時間を少くしたいと思いますから次に入りたいと思いますが、それは労使関係の問題についてであります。最近国内の各地で行われておりますいわゆる各種の反対闘争、今日ではもう日本じゅう反対と言わなければものが通らぬというほどに反対闘争というものがいろいろのところで、いろいろの事柄について行われておる。特に今日世人の注目を引いておりますのは、御承知の日教組の勤務評定反対闘争である。さらにこれに関連して文部省が実施いたしております道徳教育のための講習会の反対闘争、あるいははなはだしきに至っては、この間は全国で学力テストを実施する、これは従来からやっているもので、今回が最後の仕上げだそうでありますが、そういうものも、私どもからすれば理由のないことでありますが、反対をやる、そしてこれを阻止することのために実力行使をやるという状況でございまして、まことに私どもは五十余年、これほど秩序の乱れた社会不安の激しい時期はなかったと思うくらいに、反対闘争が行われておるのであります。今日ではむしろこれらの事柄は治安の問題になっておるのでありますが、ここで私があえて労働大臣にこの問題について御所見を伺いたいと思いますことは、これらのいわゆる反対闘争というものが、労働組合ないしその集合体と申しますか、それによって指導され、あるいは指令され、あるいは現場で指揮されておるという点であります。労働組合の行ういろいろの労働争議行為というものは、これは憲法の保障もありますし、組合法その他において相当許されております。特に広く終戦後においては許されておりますから、何か労働組合がやることであれば、かりにそれが法律に反することである、世上一般には許されないことであるというようなものでも許されることのごとく、何か合法的なもののごとく感ぜられておるのではないか、そういうことで一般から見過されておるのではないかというような感じがいたすのであります。労働組合によりましては、非合法をあえてしてこれを合法化しようとする特別の意図を持ってやっておるものもあるような実情でありますし、そういう非合法を積み重ねてこれを合法化する、少くもそういう非合法に対して国民を不感症にする、そういうことによって既成事実を積み重ねていくという意図もある。これはもう私は確実だと思うのでありますが、そこにやはり私は問題があると思うのであります。そして今私が例にあげましたような勤評反対闘争とか、あるいは道徳教育講習反対闘争とかいうようなものは、明らかに何ら法律の根拠に基くもののない不法な、非合法なものであって、そして現実に社会の秩序を乱しておるものといわなければならぬ、そういう行動だと思うのであります。と申しますのは、たとえば日教組がやっております今日の勤評反対闘争のごときものも、これは労働条件の維持改善に関する主張なり、そのための行動なりとは言えない。どういう点から見てもそういうものとは言えない。従ってかりに日教組みずから呼号しておりますように、学校の先生方は労働者なりと見て、それらの組織している団体であるからこれを労働組合の範疇に入れるとして、そして彼らがやっておるこの勤評反対闘争というものは、しからば労働争議の範疇に入るかと申すと、これは私は入らぬと感ずる。そしてその目標としておるところは、これは明らかに政治的なる目的を持ってのことでありますから、労働争議の範疇にはもちろん入らぬし、いわゆる政治闘争として律すべきもの、こういうように思うのであります。そういうことになりますと、もちろんこれは御本人たちも、何も今の労働法による保護を受けようなどということは、おそらく考えてないかもしれませんが、しかしながら権利の主張はきわめて盛んでありますから、都合のいいところには必ず法律の保護を要求する行き方をとっておるわけであります。私どもはこの道徳教育講習会反対闘争のごときは、これはもう何ものでもない、単なるモッブに近い。特に全学連のごとき共産党の最先端を行っている連中のモッブともいうべきもので、これは単なる騒ぎにすぎない、こう思うのでありますが、今申し上げました勤評反対闘争のごときものも、これは労働争議とか労働紛議の範疇には入らぬ明らかな政治闘争だ、労働法上の保護を何ら受くべきものでない、かように考えるのでありますが、これは先刻申しましたように、労働組合がこれを唱え、あるいは指導しないし指令してやっているのでありますから、この点についての大臣の御所見をこの機会に承れば仕合せであります。
  23. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまお話になりました勤務評定反対運動とか道徳教育講習会反対運動といったような、今伝えられておりますような事柄は、いろいろ複雑した内容を持っておると思います。お示しのように、いわゆる日教組というものは職員団体で、労働組合員がその行われるたとえば道徳教育講習会、そういうものに出かけていっておやりになる行動が違法な行動であるならば、これは労働組合法上の保護を受けないことは当然のことであります。従って労働組合法及び憲法が保障をいたしておる労働運動というものは、それぞれ限界のあることなのでありますから、その保護を受けない違法なる行為については、他の法律によって処断されるということは当然のことであるとわれわれは解釈いたしております。
  24. 大坪保雄

    大坪委員 私はそうでなければならぬと思うのでありますが、これは今の日教組の勤評反対闘争とか講習会反対闘争とかいうことでなしに、現実にある事業場における労働争議の場合等にも常に使われている、いわゆる実力行使の方法というものがあるのでありますが、これが世界のどこにも通用するような正常な形における労働組合の実力行使ということであれば私どもは問題ないのでありますが、これは前に、かつて労働大臣であった場合に倉石労働大臣も言われたかと思いますし、前石田労働大臣も常に言われたのでありますけれども、労使関係を正常化するということのために説得を続ける方法を講ずる、そういう方針をとっておられるようである。ところが最近労働組合等の行われます実力行使の方法というものは、労使の間において世上認めらるべき正常と称してよろしい程度の実力行使のらちをはるかに逸脱して、他人に迷惑をかけるというような事柄が常だと言っていいくらいなされている。だれであっても、正当防衛とか緊急避難の場合はともかくでありましょうが、自分の権利を行使する上に当って第三者の法益を侵害していいということはない、それは許されないということは一般原則といわなければならぬのであります。ところがそれがあえてなされておる。たとえばこれは余談になりますが、勤評反対闘争にしても、あるいは道徳講習反対闘争にしても、ある政府がやる、ある団体がやるということについて反対であるがゆえに実力をもって反対する、その実力は暴力になっている、そういうようなことをもってこれを阻止するということはとうてい許されない。従って第三者に害を及ぼす、ないし公共に被害を及ぼすということで、自然警察官の出動ということもあるわけでありますが、そうすると、これは直ちに警察官に暴行も加えるし、非難も浴びせる。私は先刻申しましたように、今日の反対闘争時代に、かりに日教組がある会合を持って、そこにいわゆる右翼というものが、日教組と主義主張を異にするがために、これは国家国民のために許すべからず、ないし反対であるということで、何らかこれらの阻止行動でもとった場合のことを想像いたしますと、これはもうおそらく警察は何をしておるというようなことで、現在と反対の論議が非常に盛んになるだろうと思うのであります。しかし他のやることについては一向問題にしないで、自分たちのやることについては常に権利を主張するというのが実情であり、そういうことが先刻申しました政治局的を持った政治闘争の範疇と見るべきような方法でやられておる。それを私が特にこの際労働大臣にお尋ねいたしておりますのは、これらの指導に当っている者が総評である——全学連等もございますが総評であるということであります。総評は九月三十日の第三回拡大幹事会でございますか、今後の闘争方針をきめたものの中を見てみますと、きわめて政治的な目的を掲げているものが多いのであります。たとえば第三次統一行動といたしまして掲げておるのを見ましても、それには最低賃金制の獲得とか、ILO条約の批准とか、日中関係の打開とか、あるいは核武装阻止とか、台湾水域からの米軍即時撤退とか、明らかに何ら労働条件に関しない政治目的を掲げておるのであります。そして傘下団体を指揮し、ないし指導して、いわゆる違法行為を重ねてやっておる。これらの事柄が世の中にたびたび繰り返されると、先刻申しましたように国民全体が不感症になるおそれがある。私はそれが一番心配であると思うのであります。こういう総評のやっている目的、ないしその目的を遂行するための各種の実力行使の処置というものは、本来労働組合のやることじゃないのだ、明らかに政治目的を掲げている政治活動なんだ、政治闘争なんだということを、やはり国民にはっきり知らしめると申しますか、訴える必要があるのじゃないか、こういう点について、労働組合関係のことを主管しておいでになる労働大臣が、労働組合の行動の規範とでも申しますか、これは先般労働次官通牒等も出たのでありますが、そういう事柄についてのたとえば声明を出されるとか、あるいは労働組合ないしその集合体に対して通牒とでもいうべきものをお出しになるとかいうようなことによって警告を発する、国民に対してもその啓蒙いわゆるPRをやるというようなことをなされたらいかがなものであろうかと私は考えるのでありますが、この点について大臣はどういうようにお考えになりますか。
  25. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまお話にありしまたように、戦後日本の労働組合運動はだんだん落ちついて参っておる傾向にあると存じますが、なお一部には御指摘のようないろいろな好ましからざる風潮がございます。ことに先ほどお話のように、学校の先生の講習会に労働組合に籍を置いておる人々が出かけていって、そして不法な行為をなされておるということは、これはやはり道義心、教養、品性の問題だと思うのです。ああいうばかなことをやっておることによって、日本の労働組合運動の発展のために害があっても少しも益はないし、ことに外国人からばかにされる動機を作るだけでありまして、私ども健全なる日本の労働運動の発展を期待しておる者から見てまことに遺憾千万であります。従ってやむを得ない不法な行為をする者は、それぞれの法に従って処断をすると同時に、私どもとしてはやはりまだ未熟なお互いの民主主義でありますから、みんなが反省すると同時に、やはり労働運動などをやられる人及びこれを指導する立場におられる人に向っては、できるだけの機会を見つけて、たとえば労働協会などというものはそういう理想から出発いたしたのでありますが、日本人全体が民主主義に習熟する、このことはやはり英国でも長い間国内における闘争をやった結果、ああいうような落ちついた、自分から身につけた民主主義を体得しておるのでありますから、やはり労働行政を担当いたしておる者の立場から申しますと、締めくくるべきところはきつく締めくくる用意と腹を持ちながら、やはりあたたかい目でできるだけ反省を求めて指導していく、こういうゆっくりした気持をもってかかっていかなければいけないのじゃないかと私どもは考えております。ことに大ぜいの組織労働者及び未組織労働者の大部分は、決して破壊的なものの考え方を持っておる人ではないのでありまして、あるいは職業的に、あるいは何かためにせんとする考えで、朴訥な、まじめな労働省を扇動しようとするような職業革命家みたいな者もあるかもしれません。しかしそういう者については、これは警戒をしなければなりませんし、そういう人々労働者の敵であるということを労働者自身に自覚をしてもらう。従ってこれは長い目でゆっくり腰を落ちつけてやっていくべきだと思うのであります。日本の労働運動も、そういう面から見ますと、だんだん安定を取り戻してきておると思いますが、要は日本人全体が民主主義に対して、より多く反省と自覚を持っていくように仕向けていく、これがやはり大事なことであると思います。岸第二次内閣が労働政策に重点を置くと申しました一面においては、先ほどお話がありましたように、雇用失業というような問題、日の当らない階層に属する労働者に先を楽しんで働いてもらうような、たとえば中小企業の共済制度であるとか、そういうものをやって政治に信頼感を持っていただく。同時にまた前大臣以来いわれておりました労働秩序というものを徐々に確立して、産業発展の片方のにない手である労働組合員諸君の生活を安定させると同時に、日本の産業を国際競争力を持って維持していくことのできるように推し進めていきたい、こういうような考え方が岸総理の言っておる労働政策に重点を置くということでございます。
  26. 大坪保雄

    大坪委員 ただいま倉石労働大臣は、今総評等の行なっておるような非合法的な多くのやり方は、日本の労働組合の発展のために害があって益がないと思う、国際的にもいかがなものであろうというようなお話でありますが、私も全く同感であります。私があえてここでこの点について大臣の御所見を伺ったのは、私も、日本の労働組合運動が世界の各国から笑われないような、いわゆるいつまでたっても幼稚だ、子供だという批判を受けないような健全な発展を期待すればこそのことであります。ごく最近の新聞紙で私は見たのでありますが、全労会議が運動方針案というものをまとめたということが出ております。これを一応通覧いたしますと、私どもは……(「お気に召したか」と呼ぶ者あり)お気に召します。(笑声)これならばどこの国に行っても——ソ連や中共に行ったらこれでもちょっと弾圧を受けますが、その他の民主的自由主義の国々に行ったらこういうものならまず正常なる労働組合運動として納得されるであろうと思うのであります。どうも社会党の諸君から不正常ないろいろのやじが飛んでおりますが、これをノーと言われるのであるか、しからば総評のやっている奇矯過激な労働運動をよしとされるのであるか、その点を私は非常に疑わざるを得ないのでありますけれども、私どもは、せめて全労会議が取り上げようとしておるこのような運動方針であれば世人も納得するし、われわれも了承することができる、こう思うのであります。そういうことを心配するがために今お尋ねを申し上げたのでありますが、従来から、前大臣もそうでございましたけれども、前大臣のごときは説得大臣などと言われておったようでありますが、どうもこの説得だけでは効果が上らないように思うのでありますが、しかし、今お話のごとくこういう問題はあせってはいかぬのでありますから、時日をかして、ほんとうにわが国の労働運動もまだまだ幼稚であるなどと世界から笑われないで済むように、早く成長するように労働大臣としてもお力添えを願いたいと思います。  そこで私は、委員長、この際最近の郵便物遅配の実情についてお尋ねしたいと思いますが、郵政省はおいでですか。
  27. 園田直

    園田委員長 人事部長が来ております。
  28. 大坪保雄

    大坪委員 それでは私は、もう時間も非常に迫りましたりしますから、この点について実情を少しお尋ねし、また労働大臣にその点についての御見解もお尋ねしたいと思います。  最近の実情は、この際私が多くを申し上げる必要もないと思いますが、新聞紙等で十分伝えられておりますから皆さん御承知通りでありますが、郵便物の遅配が、全般的ではありませんけれども、所によって、はなはだしいものがある。それが国民に非常に大きな迷惑を及ぼしておる。特に今日はいわゆる就職時期でございまして、今度来年に学校を出ようという人たちの就職口に対する関心というものはきわめて深く、きわめて真剣なものがあるのであります。これは一生の運命を決することでありますから、まさにしかるべきものである。それが郵便物の遅配のために非常に大きな損害を受けている向きもあるというふうなことも聞くのでありまして、しかもその遅配の状況が今日なお続いておるようであります。申すまでもなく郵便のことは国営企業でありまするし、国民の生活にきわめて密接しておる公益公共の事業でありますから、こういう事態はすみやかに解消されて、事態が正常化することを望むわけでありますが、そういう見地から私はお尋ねしたいと思うのであります。  私は時間をなるべく急ぎたいと思いますので、お答えも簡潔に願いたいと思いますが、新聞紙で伝えるところによりますと、郵便物の最近の遅配の原因は全逓の超過勤務拒否による能率低下のためだと言われております。そこで、どこの郵便局でも一体そうであるのかどうか、これは特殊の局に限られておるのであるかどうか、遅配がもう現に現われている局は一体どれくらい全国的に見てあるのか。それからもう一つ、ついでにここで伺っておきたいと思いますが、労働基準法三十六条に基いて、現場でいわゆる三六協定を結んで超勤の措置を講じておられるものがあるのではないかと思いますが、それがあればどのくらいの数が現在なされているか。この点をまず郵政当局にお尋ねします。
  29. 佐方信博

    ○佐方説明員 お答え申し上げます。現在遅配を生じております局は主として東京都内でございますが、東京都内で四、五局ございます。それから新潟県で三局ございます。それから名古屋管内で五、六局ございます。それから大阪で一局、布施というところが非常に大きくたまっております。それから熊本で四、五局という状況でございます。それから三六協定を現場で結んでいるところは、現在普通局で三十局ほどございます。それは主として東京と大阪の管内でございます。
  30. 大坪保雄

    大坪委員 ただいまお示しのような数字であれば、日本全体の郵便局の数に対してきわめて少数であるように思われます。これが原因については、ことしの春の春闘に全逓の行き過ぎがあって、従って公労法その他に基いて解雇がなされた、その解雇をなされた人たちが、解雇をされれば現在の公労法四条三項によれば組合員となることも組合の役員となることもできないのであるのにもかかわりませず、その後、ことしの七月でしたかの全逓大会においてこれを再び役員に選任した、そうしてその解雇された人が全部代表権を持つ役員に選任されたということで、従って郵政当局との交渉ができなくなっておる、そのためだ、こういうことが言われておりまして、それに基いて超過勤務等に関する労働協約が結べないからである。労働組合側の主張は、当局が団交に応じないからだというようなことを言っておるのでありますが、またその場合、労働組合側の主張というものは、私どもが新聞紙上等で伺ったところによれば、本来人員が足りないのだ、仕事の量に対して人間の手当が十分でないのである、従って、八時間労働ですか、正規の労働時間を働いていくのであれば、当然この程度の遅配は起るのだ、従って、それを補うために超過勤務の措置を労働協約を結んでやっておるのを、労働協約締結のための団交に応じないから、その責任は郵政当局にあるのだという言い方をいたしておる。この問題に対しては、そういうことがあるとすると、ほんとうに超勤でなければやれないということであれば、これはこんな程度の局でなしに、もっと全国的に郵便物の遅配というものが起ってこなければならぬと思うのであります。それらの点を考えてみますと、これはやはり単なるいわゆる順法闘争、規定の時間内だけ動いたということでこの遅配が起ったというのでなしに、何かそこにやはり怠業状態があるのではないかということが察せられるのであります。その点については実際はどうであるか。この団交拒否といいますかの措置がとられておる以前と以後に比べて、どうしても超過時間の労働でなければ処理できないような実情にあるのか、たとえばその以前の郵便配達手の受け持ち郵便物数はどのくらいであって、この遅配を起したところの郵便局の配達状況はどういうふうであるか、そういうことがもしわかっておれば、と申しますのは、私はそこに、どうしても、単にいわゆる順法闘争ということによってのみ遅配が生じたのではなしに、特別の怠業がなされたがために遅配がひどく現われておるということではないか、こういう感じを持つのでありますが、その点を伺いたいと思います。
  31. 佐方信博

    ○佐方説明員 お答え申し上げます。団交を拒否いたしましたために、組合といたしましては無期限の超勤拒否をやったということを言っておるわけであります。そのために業務が動かないのだという主張をいたしておりますけれども、御承知のように郵便物は毎日非常に違うわけでございます。月曜日は非常に少いとかほかの日は多いとかいうので、かねてある程度の超勤は予想しておりますけれども、超勤を拒否いたしました分につきましては、これは実は六月十日以降超勤の協約がございませんので、そこの局につきましては、必要なときには非常勤者を使って処理をしてきております。そういうことで、全国的に今まで運用して参りましたけれども、特殊の、今申し上げましたような局におきましては、非常勤者を投入いたしますと、その人に仕事の手順を教えないというようなこと、それから常勤者が勤務時間中に働いておりますときに、普通よりもぐっと能率を落して、たとえば今まででありますと七百通ぐらい配達いたしておりましたのに、二百通しか配達しないというようなことを順法闘争と称してやっておるというような事実がありまして、そういうところだけがこういうふうな遅配の状況を起しておるという現状であります。
  32. 大坪保雄

    大坪委員 ただいまの人事部長の御答弁を伺いますと、これはやはりどうしても明らかに怠業と見なければならぬと思います。怠業の状態があれば、これは御承知のように公労法十七条に明らかに違反する、業務の正常なる運営を阻害しているということになると思う。従ってこれは、行為当事者も、またこれをいわゆるあおり、そそのかした者も、当然その次の十八条によって、私は処分されなければならぬと思う。あるいはまた郵便法の規定にもございましょう。これらの者に対して一体どういう措置をなさっておいでになるか。これは言うまでもなく、何人でも、自分に関係した郵便物の遅配が自分の身に起って、そのためにたとえば自分の子供なり兄弟なりが就職試験にも間に合わなかったという事態が起れば、おそらく痛切に感ぜられるだろう、こう思うのであります。これは郵便業務の公共性、公益性その国民生活に関係する程度の大きさ、深さ、そういう点からして、私ども事柄を憂うるがために、あえてきょう御質問申し上げておるわけでありますが、明らかに今のようなことであれば怠業である。怠業であれば公労法十七条に明らかに違反する。それらに対する措置をやはりとらなければ私はいかぬと思う。どうも社会秩序の乱れるというようなことは、信賞必罰と申しますか、こういう措置がとられないからである。そういう点を私どもは痛感するのでありますが、何かその処分についてはこれまでになされておるかどうか、あるいは今後の方針はどうであるか。
  33. 佐方信博

    ○佐方説明員 実はそういう怠業的な行為がございまして、それに対しまして郵便局長からたびたびそういうことをしないで普通の通り配達をするようにというようなことで今まで説得して参ったのでありますが、東京都内におきまして葛飾と城東の局だけは、特にその様子がひどうございましたので、九月に処分をいたしました。ただしそれは直ちに公労法によって首ということはいたしませんで、停職処分をいたしまして、職場をあまり乱しておりますので、その職場から出てもらうということをいたしました。あとのことにつきましては、その後組合内部におきましても、その二局は少し行き過ぎておるというような批判もありましたようで、九月の末から逐次平常の姿に持っていこうというような動きになっております。たまたま水害の問題もありましたので、基準法三十三条の発動によりまして超過勤務をやるということで、この二、三日の模模では、逐次おさまっていくのではないかという見通しでございます。
  34. 大坪保雄

    大坪委員 私は先刻も申し上げましたように仕事が仕事でありますから、そうしてこれが不正常化になれば、直ちに国民大衆が迷惑をするのでありますから、これをすみやかに正常化するような方向に一つ郵政当局としても万全の措置を講じてもらわなければならぬ、こう思うのであります。ところが、先刻もちょっと触れましたが、新聞によりますと、組合側は責任は当局にある、当局が団交に応じないからだ、というようなことを言っておる。この点は一体どうなのですか。もちろん拒否されておるだろうと思う。私は大体わかっておる。わかっておるが、これを天下に声明するくらいの気持で、この問題に対する郵政当局の見解なり立場なりをここで一つはっきり言っていただきたい。
  35. 佐方信博

    ○佐方説明員 先ほど申し上げましたように、解雇された三役を再選いたしてきておりますので、われわれとしては団体交渉を拒否しておる。これに対して組合は三六協定の拒否をしてきておる。三六協定を拒否いたしますならば、必要な場合には非常勤者を用いて処理していけば業務の運行はできるわけでございます。にもかかわりませず業務の運行を阻害するような、たとえば非常勤者に仕事を教えないとか、あるいは所定の勤務時間中に平常よりも能率を落した仕事をするということになりますと、決してそのことはわれわれの責任あるいは政府の責任という問題ではなく、やはりまじめに働いてもらうということを怠っておる側にあるだろうと思うわけでございます。
  36. 大坪保雄

    大坪委員 私は今の郵政当局の団体交渉拒否の態度はそれでよいと思いますが、もともと全逓もそうですが、これは国鉄あたりずいぶん改まりましたけれども、総評の指導するものは、私はこう言った方がよいと思う、それは法律無視なのです。法律を無視しよう、法律や国の権威、行政権の権威あるいは政府の権威というものを国民の目の前に失墜して示そう、そうしてそれを既成事実にしようという意図がある。これは明らかである。公労法というものは今後いろいろ改正せられる時期もあるかもしれません。あるかもしれませんが、現在は厳として国会において審議されてできたりっぱな法律なんです。その法律に掲げてある四条三項の規定というものは、これは国民、特に公労法に掲げてある事業に従事している人たちは十分知っておるし、知っておらなければならぬし、また守らなければならぬ。そうでなければ法の秩序は成り立たない。また事業の秩序が成り立たないのであります。これは昨年の国労あるいは機労の前例もあることであるから、全逓の幹部の諸君にいささかの良識があれば、こういうことをやれないはずなんです。それをあえて四条三項に違反する決議をとって、解雇された組合員を再び責任ある役員に選任をしておる。これは明らかに法律無視であります。こういう法律無視を放任しておけば、一切私ども措置はつかなくなると思うのでありますから、団交拒否の態度を現在郵政当局がとっておられることは非常にけっこうだと私どもは思うのであります。ともすれば世の中の論議というものは非常に俗調に陥ってしまって、安易につくことを奨励する場合がある。そういう世の中の俗論に聞いて安易な措置をとるということになると、これは法律を守るべき立場にある政府当局自体が法律無視という結果に陥ると私は思う。単に全逓の幹部が法律を無視した、そのために法律の秩序が乱れ、職場の秩序が乱れているのに、安易にものを解決づけるということのためにこれを認める——表にでも裏にでも、暗にでも認める措置をとれば、政府当局自体が法律無視の結果になるのであります。この点が私は十分に考慮しておいてもらわなければならぬ点だと思います。しかし私は先刻も申し上げましたように、こういう大事な公共事業、国の事業でありますから、どうか一日も早く正常化してもらいたい。これには何としても全逓の役員あるいは全逓大衆が、行きがかりや面子というようなものにとらわれないで、国鉄や機労が良識を発揮したごとく、ここでやはり良識を発揮してもらって、特にこれときわめて深い関係のあるであろうと思われる国会議員の社会党の諸君もこういう点に一つ御協力を下すって、そして正常化に努力をされたい。昨年の秋のいわゆる国労に対する藤林あっせん案の線まで、すなわち団交態勢を作る、そういうところまで全逓の諸君が進歩してもらうということを念願してやまないのであります。どうも今日の実情は全逓の幹部三人ばかりのために法律秩序が乱され、国民が非常な迷惑をこうむっておる。従ってこれを正常化するためには、今三十ばかりの職場において三六協定が結ばれて、そこでは業務が正常に運営されておるそうでありますから、全逓の幹部の諸君が良識を発揮して反省をしてくれなければ、職場における三六協定を強力に一つ押し進められて、下部、末端から郵政業務の正常化をはかるということに努力を願うよりほか道はないのじゃないか、こういうように思います。この点についての御答弁は求めませんが、どうか一つそういう点についての御努力を願いたいと思います。  ただ世上言われているところでは、全逓は最近ILO条約八十七号、これの批准促進運動をあっちこっちでやっておるわけでありますが、これが促進されて、それに伴って公労法四条三項も削除されるというような法律改正がやがてなされるであろう。従って現在の違法状態をそのまま続けて無期限定時退庁の戦術を続けておって、結局法律改正を待って、今までの違法行為を合法的なものにする、そういう作戦もあるやに伝えられておる。こういったことは一応考えられそうなことであります。どうも世の中では悪いことをしてやがて、次の皇太子様の御結婚等によって大赦や特赦を願うというような不心得者もあるのでございますが、こういう犯行者と、これは一思理が通じておるもののように思われるのであります。従ってこういうことは私は許すべきではないと思います。これは労働大臣にお伺いいたしますが、先般の本会議の席上で一応この問題については滝井先生の御質問にお答えになったのでありますが、ここでもう一ぺん、私はそういうように思うのでありますが、そういう大赦、特赦を待つ犯行者と同じような心理を持つことに力をかすようなことにならぬようにしなければならぬと思うのであります。ILO条約、これは従来から倉石労働大臣もそうでございましたし、前の石田大田もそうでございましたが、ILO条約八十七号の批准については、労働問題懇談会の結論待ちだということが言われております。その小委員会が一応結論を出して、公労法四条三項はILO条約八十七号に抵触するようだという結論を出したようでありますが、それが新聞紙上に発表されましたがために、もうすぐにでもILO条約は批准され、四条三項は削除されなければならぬ、やがて削除されるであろう、こういう感じを持っておる者が国内に相当あったのではないか、そういう期待を今のような大赦、特赦待ちのような人たちが持っておるのではないか、こういうふうに思うのでありますが、この点について重ねてでありますが、労働大臣の御見解を伺いたいと思います。
  37. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 全逓労組に対しての郵政当局の態度はりっぱだと思っております。  八十七号条約の批准につきましては、この前本会議でも申し上げました通りでありまして、私どもは現存しておる法律を国民が守る義務があるということは、法治国家として当然のことであります。そこで特に違法な行為をやっておられるということについてはまことに遺憾に存じておるのでありますが、ただいまお話のように公労法の適用を受けておる労働組合で、わざわざ藤林あっせんというふうなもので国労がああいう態度をとって、正常化に協力しておられるときに、全く違った態度をとられるものが、同じ公労協内にあるということについては、私どもはまことに遺憾に存ずるのでありまして、一日も早く法律を守って、国民に安心をさせてもらいたいと考えておりますが、そういうような現在の段階では、それに関係のありますILO条約の八十七号の批准ということを論議すべき段階ではない。このように政府は考えております。
  38. 大坪保雄

    大坪委員 これで終りますが、今の労働大臣の御答弁を伺って、そうでなければならぬと思います。特に現在のわが国の国内の諸情勢を見てみますと、労働慣行がまだやっぱり成熟せずと言われておる。法律無視あるいは集団の威力による圧力のかけ方、いわゆる実力行使、そういうものでまた特に政治的目的を達する、そういうことを、その目的、行動を労働組合がもう忌憚なくとっておる。力をもて、法と秩序を乱すということを、日常茶飯事のごとく心得て実行しておる組合のある現状においては、法律秩序、公共の福祉を守る上から、軽々にILO条約を批准するというようなことによって彼らの非違を遂げさせるようなことがあってはならぬ、かように考えるわけであります。私は全逓について先刻要望的な意見を述べましたが、ほんとうに全逓の諸君が総評の幹部の顔ばかり見ないで、国民全部の顔を見て良識を発揮されんことを私は念願してやみません。私がいろいろ今申し上げましたのも、どうか日本の労働運動が、先刻もたびたび申しましたように、国民も納得し、世界の良識ある人々も了承するような正常な状態に早く返って、国内の秩序を保つとともに、国の生産を高める、そういうことによって国民全体の福祉の向上に寄与するようにあってもらいたい。せめて全労会議の線に一つ、これは総評の諸君にはお気の毒でありますけれども、その程度の良識を持った労働組合に一つ成長をしてもらいたいという念願を持ちますがために申し上げた次第でございます。  いろいろ要望も申し上げましたが、私ども倉石労働大臣に期待することがきわめて多いのでありますから、どうか一つ十分に御検討のほど願い上げます。  私の質問を終ります。
  39. 五島虎雄

    ○五島委員 大坪委員の貴重ないろいろの質問について、われわれは非常に勉強になるのですが、ここに出席された委員の顔ぶれを見ると、自民党五角、社会党六名というようなことで、議事規則の運営通りに正常化されていないというように思うわけです。これから慎重に真剣に重要法案を審議するに当って、こういうような出席ではどうもおかしいと思うのです。そこで今後はできるだけたくさん、やはり二十名以上の出席をとれるようにしなければならないと思うのです。この間の理事会でもよく相談し理解し合った通りで、ほんとうに慎重に勉強しなければならぬ。そこでたくさんの者が出席して審議に参画する、こういうようなことですが、きょうは大坪さんがせっかくいい質問をされておる過程において、四名とか三名とか、御婦人が二人で、自民党の男性の方が一名、こういうことではさびしい。それで今後はたくさん出席されなければこういう委員会が進行されないと思うのです。この点について委員長は十分努力してもらいたいと思います。
  40. 園田直

    園田委員長 委員各位の御精励を望みます。  午前中の質疑はこの程度にとどめます。午後は本会議散会直後、約二時半と予定いたします。二時半まで休憩をして、小林進君の質問から始めます。     午後一時五分休憩      ————◇—————     午後四時五分開議
  41. 園田直

    園田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について質疑を継続いたします。小林進君。
  42. 小林進

    ○小林(進)委員 委員長にお尋ね申し上げますが、去る九月二十六日の当社会労働委員会におきまして、新潟の国鉄監理局の不当労働行為についてわれわれは質問を開始いたしました。その結果、労働大臣並びに労政局長の御答弁が、まだその事実について御調査ができていない、こういうような御答弁で、はなはだ不満足なものでございましたので、その後の理事会において、国鉄の最高責任者でありまする総裁並びに関係理事者においで願って、そうして這般の問題についてさらに細部にわたってお伺いいたしたい、かようなことを決定いたしました。本日われわれの理事会の決定に基いて、国鉄の総裁並びに関係者がお見えになっておるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  43. 園田直

    園田委員長 総裁は。——副総裁が来ております。
  44. 小林進

    ○小林(進)委員 副総裁一人でありますか。
  45. 園田直

  46. 小林進

    ○小林(進)委員 吾孫子理事と小倉副総裁がお見えになっておる。——たしかわれわれの理事会におきましては、総裁においで願うように決定をいたしておるはずであります。副総裁にはおいで願いたいということをわれわれは決定いたしておりません。どうして一体総裁がお見えにならないのか。這般の事情を一つお伺いいたしたいと思います。
  47. 園田直

    園田委員長 きょうは総裁はどうして来られないのですか。
  48. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 参議院の方に出ております。
  49. 園田直

    園田委員長 参議院の方と一緒になっておりますので、代理に副総裁が来たそうです。
  50. 小林進

    ○小林(進)委員 参議院とおっしゃいますと、参議院のどこですか。まだ参議院の方で使われているのでございますか。そこら辺の事情を一つお伺いいたします。
  51. 園田直

    園田委員長 参議院の委員会ですか。
  52. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 委員会じゃありません。政策審議会の方へ出ております。
  53. 小林進

    ○小林(進)委員 総裁が見えられませんので、しばらく私も一つお待ちをいたしたいと思います。——それでは国鉄の総裁もお見えになったようでございますから、まず総裁に一つ御質問をいたしたいと思うのであります。実は本日御足労を願いました理由は、国鉄の新潟監理局内におきまして、昨今おそるべき不当労働行為が行われております。われわれの判断をもってしまするならば、労働組合法も憲法も全くじゅうりんをして顧みないような不当労働行為が新潟鉄道監理局長によって行われておる。これに対して先般われわれは労働大臣に質問をいたしたのでありまするが、大臣はまだ何らの報告を受けていないということで、的確な回答をわれわれに与えなかった。従いまして本日国鉄内部における最高の責任者でありまするところの総裁においでを願って這般の事情を一つ明らかにしていただきたい、かようなわけでおいでを願ったわけでございます。しかるに、われわれが先般の理事会において与野党ともに全会一致で総裁においで願うということを決定したにもかかわらず、本日ここを見ますると、総裁はお見えにならない、われわれの理事会で決定しない副総裁がお見えになっておる。若干われわれの気分に沿わないものがありました。そこで今総裁のおいでを待ったわけであります。事情御了承を得たいと思うのであります。  私はまず総裁に具体的な問題を御質問する前に、総裁は一体労働者の地位についてどのような見解をお持ちになっているか、国鉄三十六万の労働者を引き連れておられる総裁として、労働者に対してどういうような基本的なお考えを持っているのか、まずこれを一つお伺いをいたしたいと思うのであります。  先ほどからも大坪委員の、何か全逓労組に対する御質問がありましたが、そういう質問の中にはわれわれの了承できない基本的な思想が横たわっておる。私は倉石労働大臣労働行政に対する御説明を承わっておりまするが、大臣の労働の価値並びに労働者に対する見解というものは、われわれはまだ若干釈然としないものを持っておるのでございます。  御参考までに一つ申し上げるのでございまするが、これは十月三日でございましたか、予算委員会においてわが社会党の北山委員が、岸総理大臣に対しまして、私が今総裁に行なっていると同じ質問をいたしました。総理大臣、一体あなたは労働者というものをいかに考えておられるか、労働者こそがこの世の中において一番価値ある仕事に従事しているのであるということを総理大臣は了承されるかどうか、労働者によってすべてのものが生産されている、すべての機関というものが労働者の汗によって動いているのである、一人の労働大臣農林大臣などというものはいてもいなくても差しつかえないのだ、しかし労働者が動かなければ、労働が停止をした場合には、人類の生存というものが停止してしまうのであって、労働者こそが一番価値ある仕事に従事しているのである、総理大臣は一体この労働者を尊敬されるかどうか、こういうような今私が言ったと同じ質問を予算委員会でわが北山委員が質問したときに、総理大臣は、あの人は八方美人ですから真意はどうか知りませんけれども、表面においては、あなたの趣旨と全く同感であるという答弁をされている。私は保守党の各閣僚の労働の価値並びに労働者の値打ちに対するいろいろの考え方を承わりまするけれども、さすがに岸さんの答弁は一番新しい。時代感覚に沿っておる。さすがにやっぱり世人の言う通りに、そつのない人だという感じを受けたのであります。  一体総裁は、この労働者に対するどういう見解を持つか、お伺いをいたします。
  54. 十河信二

    ○十河説明員 まずもって出席のおくれましたことに対しまして、おわびを申し上げたいと思います。  ただいまの御質問の、労働者の国鉄経営上における地位というものは、経営者も労働者も、事業を経営する上においては、人間が一番大切である、これは経営者も労働者もともに一番大切である、そういうふうに考えております。
  55. 小林進

    ○小林(進)委員 労働者も経営者も一番大事だという古色蒼然たる前時代的な御答弁をいただきまして、まことにどうもこれは言葉がつげないのでございますが、せっかくの御答弁でございまするから……。  私は、今の国鉄の問題について、例をとって申し上げまするならば、われわれがこうして乗りものに乗ってこの場所へ参ったり、郷里へ帰ったり、日本国民がそれぞれ国鉄その他の乗りものを利用いたしまして、みんな動いておるのは、これは総裁は、あるいは総裁の力によって全都国鉄等の乗りものを動かしておるというふうにお考えになっておるかもしれぬが、私どもは何も総裁の力で汽車に乗って、このような快適な生活をしておる、あるいは経済活動をしておるというようには考えておりません。やはり労働者が機関車を動かしてくれる、車掌が切符を切ってくれる、こういう労働者の汗と力によって、一切のわが日本の交通というものは滞りなく動いておるのである。こういう労働者の汗の上に総裁が乗っかって、高禄をはんで、総裁のいすで、晩年を非常に楽しく送っておる、こういう結論になる。私はかように考えているわけでございます。何も総裁がおいでにならなくても、汽車の運行その他には一応差しつかえはございません。けれども労働者がいなくちゃ汽車は動かない、汽車には乗れぬのであります。その意味において、私は労働者の価値というものは、十分考えていただかなければならぬと思う。こういうわけなのでございます。しかしわが日本の管理者、経営者には、こういう当りまえのことがわからない。やっぱり自分たちが親方だと思っておる。そうして労働者は一歩も二歩も自分たちの下だと思っておる。権力をもって押えつけ、監視、監督するものだ、労働者といえば、何か自分たちより一歩下だ、卑しいものだというような、そういう考え方がどっかにある。これがものを紛淆せしめている一番大きな基本的な間違いなんだと思う。だから少くともあなたには、そういう間違った考えは持たないようにしてもらいたい。私が申し上げたことは少し極端かもしれませんけれども、新しい民主憲法の上では、そういう労働の価値というものを基本的に考えてやってもらわなければならないということをお願い申し上げます。特にあなたは戦時官僚でいらっしゃいました。そして追放の身の上になられた。追放の旅を続けながら、やがて過去に対してあなたは非常に反省するところがあったと思う。だが、再び迎えられて国鉄の総裁になったからには、その過去の、自分の誤まれる権力の上に王座をふるった、そういうことを改めて、今度はほんとうに働く労働者を大切にするという気持になって、私は国鉄行政をやってもらいたいと思うのです。そういう気持で総裁の地位につかれたのである、私は遠くからそういうふうに考えておったのです。だから、私の推定もし誤まりなかりせば、この際私がこれから申し上げる問題についても、どうか一つ真実と誠実を傾けて御答弁を願いたい。そうして私が申し上げるような新しい感覚に基いた新しい国鉄というものを、あなたの過去の贖罪を兼ねて、晩年を全うする意味においてもやってもらいたい、こういう意味で私はお願いをいたしたわけでございます。  具体的な問題に入りまするが、実はこれは労働大臣に質問をいたしましたと同じことを、私は再び繰り返すことになるのでございますが、新潟の国鉄の監理局長の河村勝氏という人が、九月の十五日でございますか、新しく管理職に任命をせられました分区長、自分の国鉄の管内における分区長というものの講習会を持ったわけであります。その講習会を持ちましたときに、分区長を集めて、みんな分区長の前に名札をつけて、天皇陛下のようにまん中に局長席を設けまして、そこへその名札と顔とをちゃんと照合できるような、そういうものをみんな自分の前に置いて、そして一つ一つ指名点呼するようなものものしい席の配列をやったわけであります。そういうことをやっておいて、そこで大指令を飛ばしたわけであります。これはもうあなたも内部で御存じだと思いますから、そういうことを具体的に申し上げることはやめにいたしまして、ここに這般の事情を明らかにする国鉄労働組合新潟地方本部の執行委員長相田一男氏が、新潟鉄道監理局長河村勝殿あてに公開質問状を発しておりますので、それを一つ具体的な説明の内容にかえて私は読み上げたいと思う。  これによりますと「一、局長としては第二組合を育成し、国労新潟地方本部をどうしてもつぶしたい。そのためには現場長や助役に頼ってももううまくいかない。今度は諸君らが第二組合を増やすよう頑張ってもらいたい。第二を増やすには諸君が日常組合員と作業の上で緊密に結びついているので一番よい。二、第二組合のないところでは何をしているのであろうか。柏崎保線区は一番成績がよい。諸君らのやることはすぐ結果としてあらわれるから、やっているかいないかすぐわかる。三、このことに異議のあるものはこの場所でいってもらいたい。四、このようなことのできないものは管理者としての資格がないから技術掛、営林掛、工手長に格下げをする。五、自分は新潟地方本部をつぶすまで新潟にいる心算だから頑張ってもらいたい。  これらのことは昼食の会食時にもおこなわれ、そのため参会者は異常な緊張感につつまれ、極度の疲労を感じたと報告されています。  このようなことは明らかに不当労働行為であり、かつ反民主主義的行為であります。貴殿は常に労働情報を通じ新潟地方本部を暴力的とののしり、ばり雑言をあびせかける等の暴挙をおこなっておりますが、これらは第二組合の宣伝と軌を一にしており、今回の分区長会議における貴殿の訓示も第二組合と一体となった暴挙と断ぜざるを得ません。  わが国鉄労組新潟地方本部は、これら一連の不当労働行為と反民主主義的行為に抗議するとともに、貴殿の分区長教育の際おこなった訓示の真相について、良心に誓った回答を寄せられるよう強く要求いたします。」こういう公開質問状が組合委員長の名において管理局長に提出をせられておるのでございます。  なおこの公開質問状を出しまするには、現実に教育を受けました分区長三十数名から、それぞれ組合の諸君は直接ないし間接にこの事実を確かめている。こういうことの情報をもたらされておりますが、まずこれに対しまして総裁がこの事実を一体お知りになっていたかどうか。そしてこれに対して一体どういう所見をお持ちになっておるか、あるいはどういう処置を講ぜられたか、まず一つお伺いいたしたいと思うのでございます。
  56. 十河信二

    ○十河説明員 ただいまの御質問の質問状が出ておるということは、報告を受けております。しかしながらその質問の内容については事実と相違しておるという報告を受けておるので、私といたしましては、たとい事実相違のことでも、そういう誤解を受けて、こうやって皆さんにいろいろ御心配いただくことは、はなはだ相済まぬことだと恐縮に存じております。今後はそういうことのないようにということを戒めておる次第であります。
  57. 小林進

    ○小林(進)委員 私はこれから逐次具体的な問題について総裁にお伺いをいたしたいと思うのでございまするが、そもそも、総裁にここへおいで願います前に、本理事会においては、現地の局長とそれに対立をいたしまする労働組合の責任者と両方来ていただいて、そうして一つわれわれ社労委員会において真相の追及をしようじゃないかということで、相当議論をかわしたのでありまするが、権威ある国会において即時に現場の局長まで呼ぶのもどうかと思われるから、まず総裁をお呼びして、総裁から誠実のあるお話を承わってそれでなおかつ納得のいかないときには、次の手段として現場長なりあるいは監理局長なりを呼ぶか、あるいは国会で視察をするかということにして、一応まず総裁においで願おう、こういう話ができ上っておりますので、総裁が今のような御答弁で、まあ事実と相違しているけれども云々というようなお話で終始せられますると、われわれは残念ながら理事会の申し合せによってさらにまた次にこの問題を追及する別案をとらなければならぬのであります。どうか一つ知る範囲において、こういうむだな時間の浪費がないように、努めて懇切丁寧、具体的に御答弁をお願いしたい、こう思うのでございます。  具体的な事例をあげる前に、私はまたここで一つ、抽象論になるかもしれませんが、監理局長の任務というものを総裁から承わっておきたいと思うのでございます。これは情報じゃなくて、私が直接監理局長に会ったときの話でありまするけれども、彼は私と二人の対談の中で——もちろん泉とかいう総務部長もそばにおりましたが、対談の中においても彼はしばしば、組合書には勝たねばならぬとか、この一戦には負けられないとか、断じて勝たなければならないとか、何かこう話を聞いていると戦争か、けんかをしていられるような気がしてくる。はて、初めは私はこの新潟監理局長は戦争の話をしているのかと思いまして、だんだん聞いてみますると、相対立している組合に勝たねばならぬ、負けられない、断じて勝つと、こういう話をしておる。私は、経営者、管理者というものが労働組合というものをけんかの相手や戦争の相手にして、勝つとか負けるとか、死するとも帰らずなどというようなそういう考え方でいって、組合行政なり職場行政をおやりになっていることが、これは監理局長としての本来の職務なのか。国鉄の総裁は、組合に断じて負けるな、その戦いには勝て、そういうような指令を監理局長にお出しになっておるのか。それが監理局長のほんとうの仕事なのか、職務なのか、この点を一つ承わりたいと思います。
  58. 十河信二

    ○十河説明員 初めに申し上げましたように、事業経営で最も大切なものは人間であります。人であります。私は、私の部下をわが子のごとくに絶えず自分もかわいがっておる。それから私の部下に対しても、そういうふうにかわいがって大事にしなければならぬということを常に申しつけております。従って、そういう敵だなんていうことは、極力——ときどき新聞で組合の情報なんかに出て参ります。私は、そういうことは絶対に考えてはならぬということを常々戒めております。河村局長も私の意を体して常々やってくれておると私は今日までも信じておるのであります。
  59. 小林進

    ○小林(進)委員 わが部下を子供のように愛するとおっしゃいました。その子供というのは、局長でございますか、働いている末端の組合労働者全般のことでありますか、お伺いいたします。
  60. 十河信二

    ○十河説明員 私にとりましては局長も子供であります。局長の部下もまた私にとっては子供であります。私は一視同仁に、いずれも子供のようにかわいがっておるつもりであります。
  61. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは、話がまだ具体的な問題に入らない前に、時間の制約もあるんでなんでありますが、私はそのお話を聞くと質問をしなければならない。昨年の七月に新潟闘争が行われました、その新潟闘争はわれわれの調査によれば、当局側の不当なる馘首によってあのような不当なる問題が惹起したのである、われわれはこう解釈しております。しかしその内容については、経営者たるあなたと第三者たるわれわれの間には見解の相違があるかもしれません。私はその問題の真相をあなたとここで争うというのではないのでありますけれども、両方ともみんなわが子のようにかわいい愛情を持っているとあなたがおっしゃるならば、あのような不祥事が起きたならば、警察官と一般組合、検事や判事と組合ならともかく、いわゆる管理者と労働組合、職員という関係にあって、あなたから見れば一視同仁の愛情をもって見るという、そういうものの間に一つの争いが起きた。一般大衆に大きな迷惑をかけるような争議が起きた。それに対してあなたはさらに追い打ちをかけて、一方的に組合の幹部だけを大量に馘首をせられて、そして一方の大衆にえらい迷惑をかけた新潟鉄道監理局内の管理局長初め経営者陣に対しては何ら制裁処分をしておいでにならない。これはどうも不公平なやり方じゃありませんか。俗言にもけんか両成敗という言葉があります。けんかがあれば両成敗。しかるにあなたは一方の方に対しては何らの措置をせられないということは、これを同等に扱うという御主張からながめればはなはだ理解に苦しむ。不公平なやり方ではないかと思う。いかがでございましょう、御答弁願いたいと思います。
  62. 十河信二

    ○十河説明員 私は部下を子供のごとく愛しておりますし、馘首をするということは私の忍び得ないところであります。しかしながら私には国民の国鉄を預かっておるという責任があります。国法によって、残念ながら違法なことをしたような場合にはやむを得ずそういう処置に出ざるを得ない場合もあります。そのことは御了承を願いたいと存じます。
  63. 小林進

    ○小林(進)委員 私は先ほどから申し上げておりますように、法律に違反するように、法律に違反するということは、一視同仁の愛情を持つという国鉄総裁の立場ではないと私は言っておる。そのために検事局もあれば裁判所もあるし警察もあるじゃないか。私は国鉄総裁のあなたが一視同仁に考えている、俗に言う国鉄一家内部の争いであるならば——それはやはり火のないところに煙は出ないです。それでやられて、不当なる馘首で首を切られたり不当なる弾圧を受けた。だからそういうような問題が出てくる。私は今も言われたように、たまたま一視同仁に見られたというから私は申し上げる。自民党や保守党の諸君は組合の幹部などというと、なかなかどうもちりあくたか、非常な強盗か気違いのように、思想悪化のおそろしき人物のように考えておる人たちがまだおります。しかし私どもは労働組合の幹部を、その私的生活は、家庭に入っては平和を愛し、妻を愛し、子を愛し、隣近所のつき合いも裏も表もない、実に崇高なる清潔な生活をしているものだと信じております。総裁もそういう信頼の気持でいま一回各組合の人たちをながめていただきたい。組合員はばかではないのです。国鉄三十六万の各職場におる組合員はばかではない。自分たちが選び出した組合の幹部が私的生活でどのようなことをやっておるか、大ぜいの目で見ておるのです。局長や何かはあなたの目をごまかせば何でもできるけれども、大ぜいの大衆の中にある組合の幹部などというものは——倉石労働大臣なんかまだ笑っておられますけれども、そんな甘いものではございません。しかし私的生活などというものは、実にわれわれが知る範囲においては崇高なものだ。間違えば直ちに次の改選期には大衆の討議によって捨てられるのだから、みんな没落していくのだから、そういうりっぱな人たちがやはり大衆の意向や組合員の要望に基いて争うべき当然の理由があって、労使対立して争っておる。あなたのいわゆるかわいい子供たちが二つに分れて争っておるのです。それをあなたは一方的に国法に反しておるからとか、あるいは法律に反しておるからとかいうような理由で、検事や判事と同じような理由で、忍びないという首を切られることは、あなたの言われる言葉は腹の中に一つの矛盾があるのではないかと思いますが、いかがでありますか。
  64. 十河信二

    ○十河説明員 私は先ほど申し上げましたように、首を切るというようなことはしたくないのです。私の私情においてははなはだ遺憾でありますが、国民の国鉄を預かっておるものとして、やむを得ずそういう処置に出ざるを得なかったことを非常に遺憾に存じております。
  65. 小林進

    ○小林(進)委員 この問題はとうてい水と油の議論でありますから、この程度にしておきまして、さて具体的な問題を一つ取り上げて総裁の御答弁を願いたいと思います。  先ほども申し上げましたように、管理局長分区長や現場長、助役等にそのような教育訓示を行いましたその結果、それが具体的に職場にどう現われておるか。いやしくもやはり、国会のこういう公けの舞台において質問するからには、私自身もまた身を挺して調べないと——無責任なことをしゃべったのではどうも申しわけない、こういう考えで、まる一日わが新潟鉄道管内の一地域職場の中に入りました。労働者諸君とひざを交え、あるいはみずから足にまめを出しながら、大体四十か五十の各分会、職場を回りながら調査をいたしました。その私の調査によりますと、大体こういうことがある。それは一つの分区長——もし総裁がうそだとおっしゃるならば、だんだんほんとうのその人の具体的な名前を申し上げてもよいが、今のところは固有名詞を申し上げるのは控えておきたいと思いますけれども、これは一地域の信号通信区の助役です、この人が信越線の田口信号通信区に出張いたしました。そして車両ダイヤを説明するからということで組合員を集めた。集めておいて、新潟地本は共産党だという訓話に終始し、みずから脱退名節を印刷いたしまして、これに職場の組合員に強制的に捺印をせしめた。これに押せ、お前は第一組合をやめて、そして第二組合に入りなさいと言って捺印をさせました。さらにその助役が言うには、このことは局長から私に対するじきじきの命令でやっておるのであるから、文句があったら私に言わず河村局長に言ってくれ、盛んにこういうような言葉を使って、車両に対するダイヤの説明は一つもなかった。こういうことがあるのでございます。これが一例でございます。  その次の例といたしましては、これは一地域の分区長でございますが、去る九月二十四日に新潟地本をつぶせという局長の説明を聞いてから、職場に帰ってこられて、新潟地方本部は非合法組合なんだから、今後一切年休と組合休は認めない、地本の組合活動のために、お前が法的に定められている年休とか、組合休をとることは認めない、こういうようなことを言いまして、もし年休をとって出ていっても、組合活動をしている場合には、それは直ちに事故欠に変えてしまう、こういうようなことを組合員に公然と言明している。こういうような局長もいられるのであります。またある主任は、自分が直接掌握をしておりまする組合員を近くの簡単な料亭——簡単な料亭です、高尚なものではない。その料亭に行って、酒を飲ませ、飯を食わせながら、一生懸命第二組合に入ることの勧誘をしている。そしてまたある主任はこういうことも言っているのです。どうもこの職場から二名ばかり相当強い労働の場所に転出をしなければいけない、第二組合にでも入れば出すわけにはいかないだろう、こういうようなひとり言を言いながら組合員に転出の話をする。その中には、二年ばかり結核をやられて療養生活をして、そしてその職場へ帰ってきた人がおりましたが、その話を聞いて身ぶるいした。そんなことで次の重労働を要する職場へ転出させられたら、私のからだは参ってしまうということで、とうとう泣く泣く第二組合に入ることに承諾をした。こういうような事実の話も伝わっておるのでございまするが、総裁いかがでございましょうか、こういう事実を御存じになっているかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  66. 十河信二

    ○十河説明員 私はそういう事実があるということを存じません。またそういうことがあると思われないのであります。どなたからお聞きになったか知りませんが、それは言葉の行き違いか何かで誤解があるんではないかと思います。私はそういう事実があったということを存じません。知りません。なかったと思います。
  67. 小林進

    ○小林(進)委員 私はその人の名誉を尊重いたしまして、ただいままで固有名詞はここにありまするけれども申し上げないのであります。総裁は型のごとく存じません、なかったと信ずるとおっしゃいますが、しからば事実あったときには、もう具体的に名前があるのですから、これが事実あったという証明が立った場合には、一体どう処置されますか、お伺いいたしたいと思います。
  68. 十河信二

    ○十河説明員 あったといたしますると、そのときの事情によって、実情をよく勘案いたしまして適当な処置をとりたいと存じます。
  69. 小林進

    ○小林(進)委員 そういう気まま勝手な、絶対ございません、あれば事情を勘案して適当な処置をしますなどという御答弁には、私は満足するわけにはいきませんが、それは最後の結論に待つことにいたしまして、次になおお伺いいたしたいと思うのでございますが、特に労働者が一番自分の身にこたえてつらいのは、昇給の問題です。給料のストップや停止の問題です。これはこの人たちの終生を支配する重大問題でございますが、こういうようなことが新潟地本において公然と行われておるのでございまして、私の調べました問題だけでも、国労です、その国鉄新潟労働組合に所属したことだけで不当な差別を受けている。その事例を申し上げますと、まず第一は昇給問題でございまするが、有資格者の昇給です。有資格者で昇給に落された者、これが新津の車掌区において六名、全部国労です。しかるに同じく新津の車掌区におきまして、抜擢昇給または無資格者で昇給をいたしました者が二名おります。その二名はだれかというと、全部第二組合の組合員です。そして昇給をストップされた者は全部国鉄労働組合の職員です。  次は新潟の電務区でございます。新潟の電務区には有資格者で昇給をストップされた者が七名ございます。その七名全部が国労の組合員であります。しかるに同じくこの電務区の職場において、抜擢昇給または無資格者で昇給した者が五名もございます。そのうちの一名は助役であります。河村局長の意を体して一生懸命に第一組合を弾圧いたしました助役が、この抜擢の栄誉に浴しております。なお次の四名は全部第二組合の組合員でありますし、そのうちの一名は実に二十二日病気欠勤をいたしました。これはたしか無資格者である。それが第二組合員なるがゆえに昇給をいたしております。  長岡電務区の例を申し上げます。ここでは五名が昇給のストップをされております。全部国労の労働組合員であります。二名が抜擢昇給または無資格者で昇給をいたしております。その二名のうちの一名は第二組合員、組合の役員であります。他の一名は、第二組合員にして、これは三十八日間病欠をした人です。いわゆる無資格者であります。しかし第二組合員なるがゆえにということで抜擢昇給いたしております。  関屋面のことを申し上げましょう。二名が有資格者にして落されております。これは全部国労であります。二名が抜擢昇給または無資格者で昇給されている。一名は駅長です。関屋駅長というのは、実に弾圧の名手です。これがちゃんと抜擢昇給されておる。そして一名は第二組合員にして三十五日間の病欠です。病気欠勤をいたしました。しかしこれは昇給をしている。こういうような事例があります。いかに当局側が弁明しましょうとも、私が先ほど言うように、大衆の目はごまかせない。労働者はお互いの昇給やストップにはみんな敏感であります。自他ともに許す自分の昇給のストップなら、これは了承いたしましょうけれども、だれもが了承しない、ただ第二組合員なるがゆえに二十八日、三十五日休んでも昇給している。りっぱな有資格者も第一組合員なるがゆえに昇給しないという事例が、小さなこの地域の中にもかくのごとく現われている。これは私が調査した一部分だけの問題であります。おそらく新潟監理局を全部調べたら、こういう問題がもっと出てくるのではないかと思います。  次に第二の問題といたしまして、組合活動をいたしたがゆえに、組合活動を理由にして昇給を停止された国鉄労働組合の員数を参考までに申し上げます。これは現在判明したものだけであります。これも私の調査でございますが、第一組合、国労の組合活動をしたということによって昇給のストップをされた者が酒田支部において二十六名、坂町支部において三省、新津支部において九名、新潟支部において十六名、四吉田支部において八名、柏崎支部において一名、長岡支部において七名、直江津支部において十三名、計八十三名、こういう数字が現われております。  総裁、第三番目の問題を申し上げましょうか。第一国労に所属しているがゆえに特別に圧迫をせられた典型的な事例として一応関屋駅の事例を私はここで申し上げます。関屋の駅というのは定員二十七名の中で国労組合員が二名、第二組合員が二十二名、管理者が三名でございますが、そのうち昇給の有資格者が十九名あります。そのうち国労の組合員が二名、第二組合員が十六名、管理者が一名おるのでございますが、この国労組合員二名はそのまま昇給ストップをせられておりまして、第二組合員の十六名は全員昇給、管理者、駅長も抜擢昇給、しかも無資格者にして第二組合員が一名、管理者が一名、関屋駅においても昇給いたしておりますが、国労組合員二名だけはそのまま置き去られている例が明らかになっておるのでございます。  以上申し上げましたように国労の組合員であるがゆえに全部が昇給していない、第二組合員全員が昇給している。さらに本部本社間の協定で無資格者として欠格条件に該当している者までがちゃんと第二組合員なるがゆえに昇給している。管理者につきましても有資格者が全員昇給し、さらに公然と第二組合の育成を関屋駅長は行なったがゆえに、昇給の時期でもないのに抜擢昇給している事実があるのであります。こういうような具体的事実について、総裁はまさかこれを否定されないと思うが、御所見を承わりたいと思います。
  70. 十河信二

    ○十河説明員 私は多数の職員が一々どういうことをしたか、どういう事情によって昇給がどうなっているかということは存じませんが、単に甲の組合に属するから昇給する、乙の組合に属するから昇給させないというようなことは絶対にありません。それから単純に組合活動をやったからということで圧迫せられるというふうなことはないと存じます。
  71. 小林進

    ○小林(進)委員 私は具体的にこのように数字をあげて、職場も申し上げておるのでありますから、その職場の事情はこうだ、ああだと、いま少し具体的にうがった説明をしていただかなければならぬ。そういう不親切な答弁は私はいただきかねる。
  72. 十河信二

    ○十河説明員 私自分で答弁したいのですが、そういう一人々々の各駅のこまかい事情は私存じません。もし必要があるならば、吾孫子常務が知っておれば、吾孫子常務の知っておることだけはお答えいたさせます。
  73. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいま御指摘になりました一つ一つのことについて必ずしも全部わかっておるわけでもございませんが、ただいま総裁が申されましたように、組合の所属によって昇給に差別をつけるというような扱いは絶対いたしておりません。その一つの例として申し上げますが、たとえば長期欠勤者は普通欠格条項ということで昇給からオミットされるのが原則でございますが、しかし同じ理由で二回以上昇給からは落さない、それから昇給定年というのがございますが、その定年を著しく超過した者に対しては不利益な取扱いをしない、従来そういう方針で行なっておるわけでございます。そういう考え方でおりますので、欠格条項に触れる者でも特に長期にわたって昇給できないような者につきましては、事情気の毒でもありますので例外の扱いをいたすこともあるわけでございます。それで今度の七月の昇給では新潟局の管内で十名ほど欠格条項に触れる長期欠勤者を特に昇給させております。その内訳を申しますと、国鉄労組の組合員が七名、機労の組合員が一名、それからいわゆる第二組合、新地労の組合員が二名でございます。なお、今申しました国労の組合員の七名の中には、百七十八日あるいは百四十七日というような相当長期にわたる病気欠勤者も昇給させておるのでございまして、新潟地労の組合員二名の方はそれぞれ三十八日、二十七日という程度の欠勤でございますが、そのように組合の所属によって不公平な取扱いをするということは一切いたしておりません。一つの例として御報告申し上げます。
  74. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、ただいま私が申し上げました数字は、これは速記ができていると思いますし、できなければまたあとでお上げしておきますけれども、この職場と数字に対して一つ早急にお調べを願いまして、具体的な回答を書面でいただきたいと思います。
  75. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 調査の上お答えいたしたいと思います。
  76. 小林進

    ○小林(進)委員 次に私は第二組合員を不当に庇護いたしております一つの事例としてこれを申し上げたい。これは新潟駅で起った問題でございますが、十月一日の十六時ごろ、第六一四列車の編成すえ置きの際、信号機のモデル板不確認から一〇五号転轍機が反位になっておるのを客車操車掛が発見いたしまして、事故を未然に防止いたしました。この関係者は全部第二組合員であったのでありますが、近藤運輸主任は第二組合員が起した事故を隠蔽するために、信号分区、保線分区、機関区などにそれぞれ酒五升、かきの種若干を贈り秘密を守ってくれるように奔走をいたしました。おそらくこれが国労の問題であったならばどういうふうに当局側は出たか、私ども考えるときにりつ然たるものがございます。第二組合員でありますので、おそるべき事実は未然に防いだのでありますけれども、これを隠蔽するために、河村局長の意を引いた末端の管理者は、かくのごとく東奔西走してこれを隠蔽しているというのでありますがこれに対する総裁の御所見を一つ承わりたいと思います。
  77. 十河信二

    ○十河説明員 そういう事実を私存じませんので、今どうするということを申し上げかねます。
  78. 小林進

    ○小林(進)委員 私は一々こういう具体的な例を述べているのでありますが、総裁は知らぬ、存ぜぬということで通されるのでありますけれども、しかし一々こういうことが起きているということは、いかにこの新潟監理局の管理が間違っておるかということです。いたずらに組合員を弾圧し、いたずらに組合にけんかをしかけて、そして組合員をいじめることをもって本分としている。私どもが監理局の各駅に入っても少しも明るさがないじゃないか。駅長室に入ってみたところで、あるいは駅の出札に入ってみたところで、まことに不愉快きわまる。このような空気が一体なぜでき上っているか。あなたは知らぬ、存ぜぬというが、知らぬ、存ぜぬで総裁が勤まると思っているか知りませんが、知らぬ、存ぜぬというのは総裁の勤めじゃないのですよ。一体なぜこういう問題が起きるのか。総裁として遺憾千万なら遺憾千万、申しわけないなら申しわけない、責任とるなら責任とる、いま少ししゃんとした御回答をいただきたい。
  79. 十河信二

    ○十河説明員 私は新潟の問題について、たといどういう事情があったにしろ、皆さんに御心配をおかけすることははなはだ遺憾だと、最初にそのことは恐縮して申し上げておるのであります。ただいまあげられたような事実は私存じませんが、いずれ速記録を詳細に拝見いたしまして、取調べをいたしてからお答えすることにいたしたいと思います。
  80. 小林進

    ○小林(進)委員 吾孫子理事の回答を聞いてみたいと思います。
  81. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいまの十月一日の事故隠蔽のお話というのは、私も承知しておりませんのでございます。総裁からお答えのございましたように、よく取り調べた上でお答えをいたしたいと思います。
  82. 小林進

    ○小林(進)委員 どうもあなた方は、いいとか悪いとか——責任者じゃありませんか。知らぬ、存ぜぬで回答して一体それでいいのですか。不謹慎きわまると思っているのだ。私はまた別な角度から一つお尋ねしますが、これは新潟の監理局です。これは御存じになっているだろうと思う。これは知らぬとは言わせないのですが、静岡の国労の臨時大会前後をもって新潟監理局で創刊されているのでありますが、その労働情報、あるいは新潟国鉄労働情報とか、いわゆる労働情報、こういう名前のものが新潟監理局の労働課長の公文書の形で発行をせられておる。これは総裁御存じでございますか、お尋ねします。
  83. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 新潟の監理局におきまして、局の労働課長の名前で労働情報というものを出しておることは承知いたしております。
  84. 小林進

    ○小林(進)委員 その情報が不当労働行為に該当するかいなかということをお考えになったかどうか。私は不当労働行為になっておる、かように解釈しておりますが、御存じになっておりまするならば、その見解もあると思います。一つ総裁あるいは吾孫子理事の御所見を承わりたい。
  85. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 局の情報に限らず、不当労働行為にわたるようなことをやってはならないということは常々厳重に注意をいたしております。そのような情報が不当労働行為になるというようなことはないはずであるというふうに思っております。
  86. 小林進

    ○小林(進)委員 これは全部あなたお読みになりましたか。
  87. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 私自身は全部は読んでおりません。
  88. 小林進

    ○小林(進)委員 全部読まないで不当労働行為でないなどという、そんな無責任な答弁がありますか。私は川村局長に要求いたしまして、約一年分に近いものを送ってもらいました。今でも私の会館にあります。ここにも若干持って来ております。その情報の中に盛られた記事は何ですか。ほとんどと言っていいほど国鉄労働組合を非難をする文章で盛られておるではありませんか。労働組合の非難の文章ではありませんか。そうして第二組合に非常な好意的な気分を寄せて、それを賞揚し、賛嘆し、それが大きく成長することを祈るような記事をもって毎号埋めておるといっても過言でない。この記事をあなたが読まれたならば、一体経営者がこのような労働組合を一方で非難し、一方で育成するような記事を当局側の公文書の形で出すということが不当労働行為でないかどうか、一つお伺いいたします。
  89. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 実は私一々全部の局の労働情報を読んでおるわけではございませんので、先生のお手元にございます労働情報の中で、どういうことが特に不当労働行為だというふうに仰せられておるのかわからない点もございますが、ただこれはいつも国鉄の当局側といたしまして、下部機関に付して申しておることでございますが、違法な行為というものを見のがすようなことがあってはならない。また組合員に違法な行為をさせるようなことをさせてはならない。また違法な行為があった場合にはそれに相応した処置をとらなければならぬという趣旨のことは常に話もしておりますし、またその趣旨のことは組合側に対してもしばしば警告を発するというようなことは行なっておりますので、そういう意味であるいは組合の行動を批判する、非難するというようなことが載っておる場合もあったかと思いまするが、それ以外にいわゆる不当労働行為と言われるようなことはないように指導をいたしておるつもりでございます。
  90. 小林進

    ○小林(進)委員 これがりっぱな不当労働行為であるということは、私はここに最高裁の判例を摘出して持って参りました。その判例の命ずるところは明らかなのです。それはこうです。けれどもこれはあとで読み上げましょう。幾つもありますからあとで読み上げますが、いやしくも労働者を子供のようにかわいいとかなんとか言っている人が、そのような不当にして、毎日の情報で公文書の形で組合を非難攻撃しておるようなものを、その甘っちょろいことで考えておられるからあなた方はだめだと言うのです。とんでもないことだ。  なお私は申し上げるのでありますが、この情報は労働課長の名前で公文書の形で出されるのでありますから、当然これは監理局内部の管理者だけに見せるものでございましょう。管理者だけにこれは通達をするものと解釈すべきものと存じますが、いかがでございましょうか。
  91. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 労働情報というようなものは、これは管理者側の各級の責任者に情報を知らせるということが、もちろんその目的の中に入っておりますが、同時にこれは組合とかなんとかいう関係ではなしに、職員全体に対しても、別にこれを秘匿する必要があるというようなことでもございませんので、職員にも労働関係のいろいろな情報をよく知らせるという意味で、職員が読むことも予想いたしておる次第でございます。
  92. 小林進

    ○小林(進)委員 強制的に職員に読むことを強要するのは、一体不当労働行為であるかないか、お伺いいたします。
  93. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 業務上必要な資料につきましては、職員に読ませるということは、しばしばあるのでございますが、情報というようなものについて強制的に読ませるというようなことはないのではなかろうかというふうに思っております。
  94. 小林進

    ○小林(進)委員 これは信越線のある——某駅としておきましょう。しかし御希望があれば具体的な名前を申し上げてもよろしい。その駅の駅長が、労働課長が来て労働情報を職員がみんな通覧することを強要して、読んだか読まないかという証拠のために判こを押せというので判こを押させている。押さないと昇給停止とか左遷の原因にされるというので、みんな押している。この中に盛られている記事は、今も申し上げますように、ほとんど労働組合を非難攻撃する材料で埋まっている。一体どこにこんな管理者がありますか。こういう経営者が一体どこにありますか。これは不当労働行為ではありませんか。
  95. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 先ほども申し上げましたように、職員が違法な行為を知らずして犯すというようなことがありますと、総裁も申されましたように、やむを得ずそれに対して処分も、行いたくないものをしなければならぬというような場合も出て参りますので、違法な行為等をやることのないようにという意味で、労働関係のいろいろな情報につきましても、職員に読ませる必要があるというふうに現場の長が考えました場合には、この情報についてはみんなで読むようにということを申す場合もあるかと思います。
  96. 小林進

    ○小林(進)委員 吾孫子務理事の答弁はやや詭弁に近いと私は思っている。私どもはそういう上手な答弁を聞いているのじゃない。私どもがこの国会の席上であなたに質問するからには、正当な常識ある者あるいは学識ある者、それぞれの人々に、こういう事実があるがどうかと、みな聞いておる。実に驚くべきことでないか、こういう憲法がしかれ、こういう労働基準法が行われてまさに十数年、ようやくわが国の労働組合も軌道に乗りつつあるという今日、そういう前近代的な驚くべき局長や管理者や、その指令のもとに動くような現場長がおるのか、大へんなことだとみんな驚いております。驚かないのは総裁とあんただけだ。そんなことじゃいけませんよ。いま少し驚きなさい。そしていま少し良心的に、胸に手を当てて、困ったことだという考えを持たなければ話にならない。  まあ次に、こんな例を具体的に述べておれば際限がありませんから、私もそろそろ結論の方向へ歩みを進めていきたいと思うのでございますが、私がそういうようなことを九月二十六日、この委員会において質問をいたしましたことについて、河村局長は、先ほどの最初に戻りまして、そういう分区長やあるいは現場の助役、駅長等に何の指令をし何の訓示をしようとも、それは当局の内部の関係じゃありませんか、当局内の、非組合員のみの打合会の話ではないか、だからそんなことを何も不当労働行為と言われる必要がない、こういうようなことの新聞談話を発表いたしております。新潟国鉄労働組合をつぶすのが目的であるというようなことを公然と自分の部下の前でしゃべっても、それは非組合員であり当局内の話であるから、それは何をしゃべろうとも何も非難されることはない、こういうことを言明いたしておりますが、一体この河村監理局長の言い分は間違っていないかどうか、一つ総裁にお伺いいたします。
  97. 十河信二

    ○十河説明員 私は河村局長がどういう言葉を使ったか知りませんが、そういう、組合をつぶすの何のというようなことを言ったとは私は考えられないのであります。しかしながらどういう言葉を使ったにしても、皆さんにそういうふうな誤解を与えるようなことがあったということは、これはまことに遺憾だと存じます。今後もそういうことのないように十分に注意したいと思います。
  98. 小林進

    ○小林(進)委員 吾孫子理事のこれに対する見解を承わりたいと思います。
  99. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいま新聞記者に談話として何か局長が発表したというようなお言葉でございましたが、この点新潟の局の方の事情も調べたわけでございますが、別に談話として何か発表したというようなことはございません。ただ何か新聞記者が単独で尋ねてきた人に、先生の御質問等に関連して話をしたということはあったようでございますが、局長についてよく取り調べましたところ、先生の御質問その他に対して、何かこれを御批判申し上げるというような気持はさらさらなかったけれども、言葉足らずでああいうような記事になって新聞に出たということに対しては、恐縮の意を表しておる次第であるというふうに申しておりました。  それからなお組合をつぶす、つぶさないというお話でございますが、これにつきましては、つぶしたいというようなことは申しておりませんです。ただ先年の夏以来のような違法な行為が繰り返されるような組合のあり方は好ましくないという気持は、監理局長として当然そのことは強く考えておるわけでございまして、そういう気持がどういう言葉になりましたか存じませんが、しかし組合をつぶすのだとか、つぶしたいとか言ったような事実は全くないということだけは明らかでございますので、御了承をいただきたいと思います。
  100. 小林進

    ○小林(進)委員 私が最初にお伺いいたしましたことは、その分区長を呼んで、国鉄地本をつぶすと言っても言わなくてもよろしいが、ともかく呼んで訓示をしたことが、当局部内の非組合員のみの打ち合せであるから、それを不当労働行為云々せられることはとんでもない見当違いだということを発言しているのです。このことを聞いておるのです。そういう非組合員が都内において、組合をつぶすとか断圧するとか、何を言っても不当労働行為にならないのか、あなたの見解を聞いておるのです。
  101. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 今回の分区長を集めての会議に際しての局長の言動につきましては、不当労働行為にわたるような事実はないと思っております。
  102. 小林進

    ○小林(進)委員 実に驚くべき一方的な調査しかあなたはしておいでにならない。九月三日の新聞にも——われわれの同僚各位が新聞を持っているが、その中にも私が今申し上げたようなことを公然と新聞の談話に発表いたしておる。新聞だけじゃない、むしろ先ほどから私が問題にしているのは、これは当局側の労働情報だ。監理局が発行する労働情報——これは監理局の労働課長が発行責任者になって出しているのですが、その第四十六号、昭和三十三年九月三十日の情報の中に書いてあるじゃありませんか。管理者講習会は、組合員が出席しているわけでもなく、あくまでも当局部内の非組合員のみの打ち合せであって、この中には種々いろいろと変った意見や発言の出るのは当然のことである云々と言っている。そしてやはり新聞記事と同じように、それを不当労働行為と言われる理由はないという意味のことが、当局側の情報の中に書いてあるじゃありませんか。一体これがほんとうに不当労働行為でないのかどうか、お伺いしたいのであります。
  103. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 別段公開もせず、部内限りで打ち合せの際にいろいろな話が出ましても、そのことが外部に向って国鉄としての意思表示というふうになるわけでもございませんので、不当労働行為ということにはならないのではないかと考えております。
  104. 小林進

    ○小林(進)委員 あなたは国鉄の常務理事としては、実に重大なる誤謬を犯しておいでになる。不当労働行為に対する最高裁の判例を一つ申し上げます。これは、発言当時の状況のもとで、客観的に組合活動に対する非難と、組合活動を理由とする不利益取扱いの暗示をも含むものと認められる発言により、組合の運営に対して影響を与えた事実がある以上、たとい発言者にこの点についての主観的認識ないし目的がなかったとしても、なお労働組合法第七条第三号にいう組合運営に対する介入があったものと解すべきである、こういう判例なのです。単なる組合活動に対する非難と組合活動を理由とする不利益取扱いの暗示——暗示程度のことをやっても、それが完全なる第七条第三号の不当労働行為だ、不当介入だということを判例は示している。あなたは重大なる間違いですよ。そういうような間違いをいたして、一一組合行政をやられたのではたまったものではございません。間違いなら間違いであると、はっきり一つここで釈明をしていただきたい。
  105. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 正当な組合活動に対して不利益な取扱いを暗示するというようなことがございますれば、まさにおっしゃる通りであると思いますが、違法な行為等に対して、そういう状態は処罰の対象にもなり、公労法下の組合として好ましくないのだということを申しましても、それは別に不利益取扱いの暗示とかなんとかいうことには該当しないのではないかというふうに私考えております。
  106. 小林進

    ○小林(進)委員 あなたは自分で勝手に仮定を作り上げて、あなたの仮説のもとにそういう詭弁を正当化しようとしておられる。それは卑怯ですよ。一つこの際労政局長の見解を承わりたい。
  107. 亀井光

    ○亀井政府委員 不当労働行為の問題につきましては、同じ表現上の事実でありましても、それが不当労働行為にならない場合、あるいはなる場合、いろいろあるわけでございます。それはそのとき、あるいはその場所によりまするいろいろな条件が事実認定の上で積み重ねられまして、そして判断されていくわけでございます。たとえば使用者のいろいろな行動の中に、不当労働行為で救済すべきほどのものでなくても、それが積み重ねられていった場合におきまして不当労働行為になる場合もございましょうし、あるいは同じ事案でございましても、片一方は不当労働行為になり、片一方は不当労働行為にはならないというふうな場合もございまして、不当労働行為の認定は法律の解釈と違いまして、事実認定がその中に入りますために非常に判断がむずかしいのでございます。そこで労働法におきましては、御承知通り学識経験のあります方々によって構成されておる労働委員会あるいは公労委というふうなところで慎重にその問題の判定をいたすことになっているわけでございます。そしてまたかりに、われわれがそれが不当労働行為であるかどうかということを判定することよりも、この制度自体は、それからいかなる救済をするか、団結権なりあるいはその他の労働者の権利をいかに救済していくかということが目的でございまして、これはやはり労働委員会なり公労委でその事実認定に基きました判断がなされるということでございます。今の問題につきましても、私ら諸般の状況が明確でございませんので、私といたしましては判断を申し上げることを差し控えさしていただきたいと思います。
  108. 小林進

    ○小林(進)委員 局長はこの前の労働大臣に対するときも今と同じような答弁をされ、二度も拝聴したわけでございますので、これ以上は水かけ論になりますので私もやめますが、私は非組合員同士の中に、組合をぶっつぶせばよろしいというような暴言を吐いていることは、自分の部下——現場長、分区長を通じてそういうような組合をつぶすというような圧力影響を与えるような発言は、これは純然たる不当労働行為であると解釈をいたします。しかしあなたが承服をせられないならば、また別の角度で相まみえることにいたしまして、私もこれでほこをおさめることにいたします。ただし同じ日付の労働情報の中に、局長の訓示が終っていろいろの角度から質問や意見が述べられたが、その際ある質問に対し、局長から、今の地本は危機によろめいている、現状のような姿の新潟地本であるならむしろつぶれた方がましだと思う、こういう発言をされている。これは、ごらん下さい、当局側の情報です。つぶれた方がましだと思うと局長が発言をしておる。これは不当労働行為じゃございませんか。
  109. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 その前後の話というものがよくわかりませんですが、違法な行為が繰り返されるような、そういう状態の組合は望ましくないからつぶれた方がましだというようなことを言ったのかと思うのであります。それは先ほども申し上げましたように、非公開の席上で申したことでもあり、別段不当労働行為とかなんとかいうような、特に積極的な組合に対する弾圧をしようとかいうような気持とは違って、感想を述べたものであって、特に不当労働行為というようなことになる性質のものではないように私は考えております。
  110. 小林進

    ○小林(進)委員 あなた方がそういうような答弁をしているうちに、だんだん日本の民主主義も憲法も事実上浮き上って、昔ながらの反動の形が現われてくるのですよ。そうしてそういうような答弁をあなた方がたくみにやっているうちに、恐るべき時代がだんだん起きてきますよ。一体そんなことで労働者は承服しますか。私は一つ具体的な例をここで読み上げてみたいと思うのでありまするが、これは率直に申し上げまするけれども労働者側の情報です。今までのものはいわゆる経営者側の情報だ。ただ労働者側の情報を申し上げる前に一言念を押しておきまするけれども、私どもは、新潟の国鉄の出している労働情報というものは、何といってもこれは不当労働行為だ、経営者が国鉄労働組合を圧迫しようという、不利益を与えようとする、弾圧をしようとする意図のもとに行われておる労働情報のように断定するよりほかにないと思う。もしそうでないというならば私は調べてきますよ。だからどうかあなた方も責任をもってこんなものは廃刊をしてもらうように、厳然たる態度をとってもらいたい。何のために理事がおり総裁がおるか、そんなことでわが国の汽車が動くと思っておったら間違いですよ。こんなことはやめさせるように私はここで一本念を押しておきます。こんなことはやらせませんよ。  それからこれは労働者側の情報なんですよ。いいですか、読み上げますよ。これは二十五日です。これは八月二十五日でしょうな。「朝七時三十分頃、酒田駅構内裏一番コマポイントが列車進入寸前にもかかわらず反対の方向にかえっているのを操車掛が事故発生前に発見ことなきを得た。これは陸羽西線の六三列車着ガマが機関区に入るとき、上り八番線をまわって機関区に入ることになっており、裏一番は八番線から別れている線で通常なら上り八番線は定位にならなければならないのにポイントの反位を発見した操車掛は早速構内詰所の組合員に知らせた。ポイント扱い担当の北部転てつはもちろん誰も扱ったものもいないし入換もきていないのに全く不思議なことではないか——と早朝の酒田構内は騒然としたが、たまたま脱線十五、六分までなんともなかったのに構内巡視をした一人の外勤助役がいたことが明らかになった。その時刻が事故発生五——十分位前の出来事だったし、組合員の眼はこのあやしいいたずらはかって二十九年から三十年頃にかけてやはり外勤助役が中心に構内作業の勤務評定として従事員の作業監査の名目で裏面監査をやり、ポイントを返したりブレーキをおろしたり、また客車連結器のテコをはずしており従業員の神経をあおる方法をとったが、はげしい反対のため取やめられたが、こうしたやり方がまた誰も知らぬ間に復活したのではないかと責任追及がおこなわれようとしており、構内はじめ酒田支部は問題の探求をはじめている。」というのであります。これに対して今申しましたように、これはまさに第二の松川事件の寸前だぞ、下山事件の寸前だ、それがこんなところでどうも起るような懸念が現場にあるのではないかと、組合員がこういうことをおそれておる。あまり権力で弾圧していこうとすると、みんな功を争うようになってくる。かりに局長が一言言えば、それに迎合しようとして現場職員は二、三積極的な行動に出る。功績を得んとする行動がこんな形になって現われてこないと一体否定できますか。  また一つ読み上げますと、「悪質裏面監査のその後、駅長は勤務るすに床屋」というので、これは駅長のことが書いてあるのだが、これもついでですから読み上げましょう。「八月二十七日(木)朝八時二十分から九時四十五分まで、青柳酒田駅長は勤務時間中に職場を離れて不在であった。彼はこの間床屋へ行っていた。たまたま時間まではっきり記録されたまでのこと、毎回のことである。職場の人たちの間には「われわれには、列車の間合いに一寸マンガ本を見ていてもやれ勤務態度がよくない、勤務成績がわるい、といいながら駅長は一時間も出勤早々職場をるすにしている」こんな駅長が、職員をコキ下したり、始末書をとる資格があるだろうかという話がひろがっている。今、酒田駅では先日(九月二十五日)駅構内裏一番線のコマポイントを列車進入寸前に」これは前の記事でございますが、こういうことが行われている云々とあり、こういうような危険が起っているのを「青柳駅長は労務対策で当局から覚えがよいことをカサにきているが、次のような暴力、独善、鼻下長駅長でもある。藤島駅長当時、助役の胸グラをつかみナイフで「殺すぞ」とアバれた。酒田駅へきてからも気にくわぬ助役に赤インキを顔からかぶせたこともある。日頃「バカやろ、クソやろ」と主任級などにも当っており、地区労代表などにも「帰らぬと警察を呼ぶぞ」とどなりちらし、去る春斗では組合とは団交を拒否しながら芸者を入れていた事実もある。酒田市会等でもこれら駅長の柄の悪さが目にあまって「酒田の玄関には不適当だ」の声があがっている。」こういうような記事が羅列をされているのでございますが、このように労使の間というものはもはや実に離れてしまった、水と油以上に離れている。一体こんなことで国鉄行政はでき上るのですか、やっていけるのですか。われわれもおっかなくて汽車に乗れませんよ。かってあの飛行機事故が起きたときに、総裁が遺族の霊前にぬかずいて泣いている姿を私はテレビで拝見いたしました。私はあの姿をながめて、総裁もまことに誠心を傾けて遺族の前に泣いていると思いました。あの涙にはうそはありません。総裁は誠実な方なんだ。私は、テレビを見ながら一応総裁の態度に感激をしたこともございましたが、総裁、事故は今あなたの足元に起ろうとしているのですよ、これを一体どう判断せられるか、こういうような危険に対するあなたの所見を私はお聞きしたいと思うのです。これもうそですか。
  111. 十河信二

    ○十河説明員 私は、国鉄が輸送の使命を全うするためには、初めに申し上げましたように、人間が一番大切である、人の和がすべての基本である、こう考えます。就任以来労使関係も正常化したいと考えまして、経営者に対しても労働組合に対しても、その目的で絶えず協力を求めておりまして、私自身の行動につきましても絶えず反省をいたしておるのであります。そういういろいろな問題が起りますことは、ひっきょう私の統率力が足りないといいますか、不徳といいますか、そういうところがあるかもしれないと私は大いに反省をして、今後そういうふうな、たとい誤解であってもそういうことの問題が起らないようにいたしたいと念じている次第であります。
  112. 小林進

    ○小林(進)委員 私はまだ多分に材料を持っております。もっともっと多く私は質問をしたいと思うけれども、しかし彼我大小相似たようなものを繰り返し申し上げていたところで、もはや効果もないと思いますので結論に入りますが、なおそのほか私自身に与えられている——私個人ではございません、国会議員の小林進です。私どもは国民から法律以上の大きな力で調査の権能を与えられている。権利と義務を与えられている。そういう国会議員固有の調査権能をも剥奪するような不当なる行為も私は河村局長から受けておりますが、これは前の労働大臣にも質問いたしましたので省略いたしますが、今まであなたに申し上げたことだけでも、多くの同僚先輩諸君並びに学識経験者はともに驚いている。残念ながら驚かないのは総裁と常務理事だけである。あなた方が主宰している、あなた方が経営している、その責任者のあなた方だけが驚かれない。そしてあなたは繰り返し遺憾の意を表せられているけれども、責任をとるということは一言もおっしゃられない。私がこれだけ克明に調査していることに対しても、あるいは誤解があってもというような誤解という前提のもとに遺憾の意を表している。実に私は無責任きわまると思う。いやしくもそういうような総裁の考え方であるならば、私が国民の意思を代表いたしまして、いかにその国鉄の安全を願い、労使のよき慣行を願い、平和の国鉄のその成績の増進を祈ったところで百年河清を待つほかはないといわなければならぬと思うのでありまして、総裁はそういう遺憾の意を表する前に、私が今まで申し上げたことをいま一回一つ反復反省されまして、どういう処置をとるか、一体どういう手段をとるかという具体的なこれに対する対策を一つお聞かせ願たいと思うのであります。ただ遺憾の意を表せられただけでは、死者の墓前にぬかずいて泣くだけではこの問題は解決するものではありません。飛行機の事故はできたことでありますけれども、これらは将来起る危険性のある問題でございます。事前に明確な手を打っておかなくてはいけない。どういう具体的な処置を講じて、これらの不当労働行為、あるいは多くの危険、それからよって生ずるこの危険を防止せられるお考えであるか、一つ承わりたいと思います。
  113. 十河信二

    ○十河説明員 私は今まで報告を受けて承知しておる限りにおいて今日も答弁いたしました。いろいろ具体的の事実をあげて今日もお話がありました。さらにいま一応調査いたしまして、その上でお答え申し上げたいと存じます。
  114. 小林進

    ○小林(進)委員 私は部外者であります。私は、国鉄の責任を負って、あなたのようにそのために高禄をはんで、そして総裁室に蟠踞しているのとは違います。部外者です。けれども、私は国民の代表の立場から、この国鉄行政、新潟の監理局のあり方に非常な危険を感じ、そのために私は誠心誠意調べて、これだけの材料を提供したわけです。まだ私の調べた材料の三分の一に及びませんけれども、提供した。あなたはそのために高禄をはんでいる。それは吾孫子務理事もその通りだ。しかもこのたびの国会において、新潟国鉄の問題について国会議員小林進から質問があるということは、きょうだけじゃない、もはや数日前からあなた方の方に国会の委員部を通じてちゃんと情報が行っているはずなんです。そういう散漫な調べ方で、そういう答弁もできないで一体何です。それで一体職責が果されるんですか。これからまた調べて持っていこう、そんな緩慢なことで一体あなたの職責が全うされるんですか。吾孫子務理事、一体いつ国鉄に私の方から質問があるということがあなたの耳に入り、あなたはいつから調査を開始されたか、答弁を願いたい。
  115. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 九月の二十六日でございますか、先生の御質問がありました直後に、新潟の問題についてお尋ねがあったということを伺いました。それで新潟の局に対して照会し、局長にも来てもらいましたし、また本社の調査役を現地派遣いたしまして、二十六日の御質問の際にいろいろ問題になりました事実については取調べをいたした次第でございます。
  116. 小林進

    ○小林(進)委員 私の質問に対して何も答えがなっていないじゃないか。答えが一つもできておりません。よくそういうようなずさんな調査をせられたものです。この問題は、私は率直に申し上げまするが、労働委員会の先輩、同僚各位と十分打ち合せをして質問しておりますが、これは社会労働委員会だけじゃない。わが党の国会対策委員会にも正式に諮りまして、これは実に重大問題であるということで、運輸委員会その他の委員会はもちろんですが、わが党の弾圧対策委員会においてもすべてこれを取り上げて、抜本的に解決しなければならないというので、非常にこれを重大視しておる。しかるにこういうような問題についてあなた方はまるで馬耳東風だ。何の調査もしていなければ、ただこの委員会に現われてちゃらんぽらんの回答をしてその場をじんぜん過ごせば事足りる、そういうような考え方でおられるということを私は予見をいたしまして、非常に不愉快であります。しかし率直に申しまするけれども、問題はこの労働委員会における私の質問をもって終るものではございません。どういう形でこれが現われてくるか、私は具体的にあなた方に申し上げませんけれども、決してあなた方の考えているような簡単な問題でないということを申し上げます。私ども労働委員会といたしましても、もちろんこれだけで手をおさめたのでは、私は他の先輩やほかの委員会に対して責任が持てませんから、この問題はもちろん皆さん方の精密な再調査を依頼して、書面に基く国会への御回答は要求いたしますけれども、それをもって満足できません。  委員長、一つ提案をいたしまするが、現地の局長をこの国会に御招請願って、本人から直接今までの経過についてお話を伺うか、さもなければ、わが委員会において、もちろん与野党からなりまする調査団を編成をいたしまして、現地にわれらみずから出張をいたしまして事実の調査に当るか、いずれかの方法をとるために何分の御所断を得たいことをお願いをいたしまして、一応私の質問を終りたいと思います。
  117. 園田直

    園田委員長 小林君の質問に関連をして、委員長から総裁並びに常務理事に申し上げます。衆議院規則第六十六条、委員長委員会の議事を整理し、秩序を保持するという責任から、委員の質問、言論並びに政府委員の答弁の言論を保護する権限はございますが、その内容を批判し、または擁護する義務はございません。従ってその意味において小林委員の質問を擁護する意味でもなく、批判する意味でもなく、また政府委員の答弁を批判する意味でもなく、公正な委員長の立場として二つだけ申し上げます。  その一つは、本日小林委員から質問された事項は、先般の社会労働委員会でほとんど同様の質問をなされて、しかも国鉄の総裁並びに関係係の出席は、その委員会の散会直後要求してございます。小林君の質問が事実であるか、あるいは見当はずれであるかということは、委員会で展開される議員の質問、及び直実を調査して事実を並べられて、自分の所見とともに開陳をせられる政府委員の答弁とともに、両方照合して、おのおの結論が出てくるし、見解の一致を見ないものは国民の批判によってこれが出てくるものと委員長は解釈をいたします。そういう意味において、このような委員会の大きな問題となり、しかも労働大臣に質問をされた事項については、今後さらに国鉄当局においては事前調査をして、準備周到にして出席をし、議員の質問に的確に答弁されるよう委員長として要求いたします。  次にもう一つは、先般小林委員の質問に関連をして、新潟日報九月三十日付の新聞に、事実を曲げた中傷という見出しで、河村新鉄局長が小林発言に反駁をいたしております。これについては吾孫子務理事も先ほどの答弁の中に若干触れられた模様であります。この新聞をお読みになったかどうか、あるいは総裁にお見せになったかどうか、それはお伺いはいたしませんが、少くともこれは新潟鉄道局の労働争議に対する不当干渉であるかどうかということとは別個の問題として、国会議員の権威に関する重大な問題でございます。この内容は読み上げませんが、まず新鉄河村局長が言っていることは、小林氏は故意に事実を曲げて中傷しておる、国会議員としてあるまじき軽率な態度だということから言い始めて、小林議員の質問に対し否定的な事実を並べ、その中で、しかし新潟地本をつぶしたいというのはなるほど私の持論であるが、こういうことを言って、一番最後の結びには、いやしくも国会議員として軽率きわまる行為といえよう、こういうことで結んでおります。もちろん吾孫子務理事は、これは談話でもなければ声明でもないと言っておられまするが、いやしくも国鉄局長の地位にある者が役所で、一人であろうと二人であろうとも、新聞記者に向って語る談話としてはきわめて不謹慎であるばかりでなく、国会議員の権威に関する重大な問題であります。憲法五十一条には「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」これは国会議員が無責任であるという意味ではございません。審議並びに討論について、国の最高議決機関として権威ある自由なる討論を与えるために憲法で保障された国会議員の唯一の基本的な保障であります。今日まで委員会において某議員政府委員に質問をした際、その政府委員がその質問に答弁しないで、議員の質問が不当であるかのごとき印象を与え、あなたはそういう質問をしたが、日本国の現状はこうであるということは御存じかと逆質問をした例があります。その際、委員長は直ちに政府委員の発言の中止を命じ、政府委員には、出席をして国会議員の審議、質問に応じて答弁する権限はあるが、国会議員に質問する権限は与えてないと、非常に厳重な抗議をしたことがございます。これもともに国会議員の言論に対する権威の保持からきたことでございます。そういう意味において、これが事実であったかなかったかということは、国鉄と新潟日報の対決すべき問題でありましょう。しかしながらいやしくも公器たる新聞に載せられた以上、河村新鉄局長の談話が事実であるかどうか、小林議員がゆかたがけで河村局長と対談されたことについては、委員長は論外であります。いやしくも委員会において発言した内容について一公務員が、たとい大臣といえども総理大臣といえども、自分の職務上院外においてこれに批判を浴びせ、これに対する権威について語るということは、国会議員として許されるべきことではございません。従って、新聞を調べてみたらそういう事実でなかったということでお済ましになるわけにはいきますまい。これは当然社会労働一委員会の問題ではなくて、国会の問題として当局長を招致し、これに対する取調べがあることは当然のことであると考えております。後日にその問題は取り残されます。なおそういうわけでございますから、今後ともこういうことについては総裁も常務理事も特に注意されて、しかも政治的に申しましても、理論的に私が申した通りでありますが、こういう問題になっている事柄の事実を調査し、反省すべきことは反省して、円満に労使の協調に持っていくことは総裁の持論でもあるし、これはまた当然のことであると思います。それを一局長がみずからこれに反駁を加えて、ことさらに紛糾を来たすがごとき言論は、政治上から見ても適当でなかろうと私は判断をいたします。どうぞこういうことについては今後十分御注意あるよう、委員長としてここに発言しておきます。  なお、ただいま小林委員から提案がありましたが、この提案については、社会労働委員会に属する問題でございますから、これは与野党の理事に諮って後日この問題を決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時八分散会