○樺山政府
委員 首都圏の
既成市街地における
工業等の
制限に関する
法律案につきまして、逐条
説明を申し上げます。
第一条は、目的を
規定しておりますが、すでに
提案理由説明の際申し上げた
通りでありますので、
説明を省略させていただきます。
第二条は、以下の条文に出て参ります「
既成市街地」、「作業場」、「教室」、「
制限施設」、「基準面積」及び「学校」の定義をいたしたものであります。
第一項は、
既成市街地の定義でありますが、これは、
首都圏整備法第二条第三項の
既成市街地の概念と同じものといたしております。すなわち
首都圏整備法第二条第三項におきましては、
既成市街地とは「
東京都及びこれと連接する枢要な都市を含む区域のうち、
政令で定める市街地の区域一と定められております。この
規定によりまして、
東京都におきましては、特別都市
計画法第三条の
規定により緑地
地域として指定された区域を除いた二十三区の全域、武蔵野市及び三鷹市についてはその大部分の区域を、横浜市、川崎市及び川口市におきましては、その相当部分の区域を
既成市街地と定めております。
第二項の「作業場」とは、物の加工業を含み、
政令で定める業種に属するものを除いた製造業の川に供する工場の作業場をいうことといたしております。
政令で除外する業種としては、新聞業、出版業、市乳製造業、製氷業、生コンクリート製造業等を予定しておりまして、住民の生活上、製品の性質上等により明らかに
制限区域内に立地せざるを得けない業種にのみ限定していく考えであります。
第三項の「教室」とは、学校教育法第一条に
規定する大学のうち、
政令で定める大学を除いたもの及び同法第八十三条第一項に
規定する各種学校のうち、
政令で定める各種学校を除いたものの教室をいうことといたしております。
大学または各種学校のうち、主として
制限区域内の住民を対象としているような
施設、たとえば勤労者を対象とする夜間学校は、
政令で除外して行きたいと考えております。また「教育」とは、いわゆる講義室をいうのでありまして、実習室、実験室等は除外しております。
第四項の「
制限施設」とは、作業場または教室で、一の団地内にあるものの床面積の合計が、次に御
説明申し上げます基準面積以上のものをいうことといたしております。
第五項の「基準面積」とは、作業場につきましては、工場の種類に従って千六百平方メートル(約五百坪)以上で
政令で定める面積とし、大学の教室につきましては二千平方メートル(約六百坪)、各種学校の教室につきましては千平方メートル(約三坪)と脱走したものであります。
作業場につきましては、中小企業に与える
影響を考慮いたしまして、作業場床面積千六百平方メートル、約五百坪を最低基準とし、従
業者百人
程度以上の規模の工場を目安として、業種別に
政令で基準面積を定めるにことといたしたのであります。また、大学及び各種学校につきましては、小規模のものは主として
制限区域内の住民の子弟を対象としたものでありますので、おおむね学生または生徒数が千人
程度のものを
制限の対象といたしまして基準面積を定めたものであります。
第三条は、
工業等制限区域を
規定いたしております。すなわち前条で
説明申し上げました
既成市街地のうち、特に人口や産業の集中のはなはだしい
東京都の特別区、武蔵野市及び三鷹市の区域を
工業等制限区域といたしたのであります。
また、
東京都の特別区に属する海面埋立地のうち、工業用地として埋め立てられた区域については、
政令で
制限区域から除外いたしたいと考えております。
第四条は、要
許可行為となる
制限施設の新設の
内容を明確にするとともに、
制限区域内においては、
制限施設の新設を原則として禁止し、ただ例外的に
東京都
知事の
許可を受けた場合にのみ新設し得る旨を
規定したのであります。
制限施設の新設の
内容としては、次の三つの場合に分けて考えております。すなわち第一に
制限施設の新設としては、さらにその作業場または教室が基準面積以上の工場または学校を新築する場合であり、本条第一項で
制限施設の新設といっているのは、この場合をさしているものであります。
第二に、
制限施設以外の
施設、たとえば倉庫、事務所等の用途を変更したり、何らの用途に供されていない
施設を利用して、基準面積以上の作業場または教室に使用しようとする場合も、
制限施設の新設とみなすものであります。
第二項第一号で
規定しておりますのは、このことをさしておるのであります。ただこの場合、以前に
制限施設であったことがある
施設については、それが現在地の用途に使用されていても、それを再び
制限施設として使用することは、
許可を要しないことといたしました。これは、製造業につきましては、経済情勢の変動により、工場を長期間閉鎖し、またはこれを一時他の用途に転用した後、工場を再開するような事例も多く見られ、この場合一々工場の再開のたびごとに、
許可にかかわらしめる必要がないと考えたからであります。
制限施設の新設の第三の場合といたしましては、最初に規模の小さな作業場または教室を作り、その後同一の団地内において逐次増設する場合、すなわち、作業場や教室を新築したり増築したり、または作業場や教室以外の
施設の用途を変更したり、あるいは遊休
施設を工場や学校に利用することによって、作業場や教室の全体の床面積が基準面積以上のものになる場合も、
制限施設の新設とみなすことにいたしたのであります。
第二号の
規定は、この第三の場合を
規定したものであります。
第五条は、第四条第一項ただし書きの
許可を受けて、
制限施設を新設した者は、その後に行う増設については
制限を受けないこととした
規定であります。
知事が
制限施設の新設の
許可をいたします場合には、あとで御
説明いたします
許可の基準に従って、真にやむを得ないもののみを
許可することといたしておりますので、一度
許可を受けた事業については、それが、その後の情勢の変化に応じて増設せざるを得なくなる場合であっても、再度の
許可手続を省略することといたしたのであります。
第六条の
規定は、一の
地域が
制限区域となった際等における経過措置であります。すなわちこの
法律施行前からある既存の工場または学校や、
工事中の工場または学校について、あるいは今後
制限区域が拡張される場合に、既存の権益を保護する必要がありますので、本則に、かかる措置を
規定したものであります。
第一項の
規定は、一の
地域が
制限区域となった際、現にその区域内において
施行されている
工事にかかわる
制限施設の新設については、
許可を要しないこととしたものであります。
制限区域となる前から遂行されていた
工事につきましては、他の立法例にもならい、これを救済することといたしたのであります。
第二項の
規定は、一の
地域が
制限区域となった際、現に存した作業場または教室についての経過
規定でありまして、既存の
施設について
制限を緩和しております。すなわち、第一に、作業場または教室について、その業種を変更することによって
制限施設に該当することとなった場合は、
許可を要しないこととしたものであります。また、これらの作業場または教室の用途を廃止した後、これを、そのまま
制限施設に該当する作業場または教室に利用いたします場合にも、同様な取扱いをいたすこととしたものであります。
第二に、一の
地域が
制限区域となった際における既存の作業場または教室を拡張して、同一団地内においてその床面積を増加させます場合には、もとからの作業場または教室の床面積は除外し、新規に増加させる部分のみが基準面積に達するまでは
制限しないことといたしているのであります。これは、第四条第二項の
規定の特例であります。
第三項の
規定は、一の
地域が
制限区域になった際、現に
工事中の作業場または教室につきましても、既存の作業場または教室と同様に、第二項の
規定について述べましたような
制限緩和の取扱いをしたものであります。また一の
地域が
制限区域となった際何らの用途に供されていない
施設であって、以前に製造業または学校の用に供されていたもの、たとえば、あき工場等につきましても同様の取扱いをしたものであります。
第四項の
規定は、一の
地域が
制限区域となった際、現にその区域内において作業場または教室を、製造業または学校の用に供していた者の事業経営に与える
影響を十分勘案いたしまして、その
地域が
制限区域となった言から起算して六カ月以内に
知事に届け出た場合は、その団地内におけるその後の増設を
制限しないことといたしたのであります。
第五項の
規定は、一の
地域が
制限区域となった際、作業場または教室について
工事施行中のものにつきまして、前項と同様に取り扱ったものてあります。
第六項の
規定は、
政令の
改正により
制限施設の
範囲が変った場合の経過措置であります。
政令の
改正により
制限施設の
範囲が変る場合としては、第二条第二項及び第三項の
規定に基く
政令が
改正されて、今まで
制限施設でなかった工場、学校が
制限施設となる場合、並びに第二条第五項の
規定による作業場の基準面積を定める
政令が
改正された場合が考えられます。
かような場合には、前五項の
規定に準じて必要なる経過措置を
政令で定め、既存権益を保護することとしたのであります。
第七条は、
許可の
申請手続についての
規定であります。
申請書に記載すべき
事項を、第一項において
規定いたしますとともに、
制限施設にかかわる
敷地及び
建築物の配置図その他
許可の基準に該当するかいなかを判断できるような資料を、
政令で定めて添付すべきものといたしたのであります。
第八条は
許可の基準を定めております。すなわち「
知事は、第四条第一項ただし書の
許可の
申請があったときは、次の各号の一に該当する場合でなければ
許可をしてはならない。」こととしているのであります。
第一号は、当該
制限施設の新設が
制限区域内における人口の増大をもたらすこととならないと認められるときであります。これは、この
法律の目的から見て当然であり、たとえばすでに基準面積以上の作業場を設置していた者がこれを取りこわして他の
場所に移転するような場合で、そのために従業員数が増加するものでない場合等がこれに該当すると考えております。
第二号は、当該
制限施設の新設によって、
制限区域内における住民または他の事
業者が、その生活上または事業経営上現に受けており、または将来受けるべき著しい不便が排除されると認められるときであります。これには、主として
制限区域の住民のために技術修得のための各種学校の新設がぜひとも必要である場合、
制限区域内の既存工場のための維持補修の工場が必要な場合等も考えております。
第三号は、
制限区域外において
申請者が当該
申請にかかる事業を経営することが著しく困難であると認められるときであります。これには、
制限区域内にある親工場に主として依存し、
制限区域外に立地することが著しく困難な下請工場の新設等を考えております。
第四号は、その他
政令で定める場合に該当するときであります。これは、前三号に該当しないが、
制限区域内に立地することがやむを得ないもの、たとえば既存の大学の学部、学科の増設等で学生の利便等を考嘱して、必要やむを得ないものと認められる場合等を考えております。
第二項は、
知事がが処分をするに当って産業政策及び文教政策との調整をはかり、処分の適正を期するため、
申請にかかる製造業または学校を所管している
関係行政機関の長の承認を受けることを
規定したものであります。
第九条は、
許可または届出の承継の
規定であります。すなわち
制限施設の新設についてその
許可を受けた場合、または一の
地域が
制限区域となった際、現にその区域内において作業場もしくは教室をその事業の用に供している者が、
知事に届出をした場合において、これらの
施設を事業または学校の譲り受け、相続、会員等の包括承継により承継した者があるときは、その者が、その
行為が行われ、またはその事実があったときから六カ月以内に
知事に届け出たときは、
許可を受け、または届出をした者の地位を承継することとしたのであります。
第十条は
許可の取り消しについての
規定であります。第四条第一項ただし書きの
規定によって
制限施設の新設の
許可を受けた者はすみやかに
工事に着手すべきものであることは当然でありまして、正当な理由がないのに一年以内に
工事に着手しないときは、
知事はその
許可を取り消し得ることといたしたのであります。この場合におきまして、
許可の場合と同様に、あらかじめ
関係行政機関の長の承認を要するものといたしたのであります。
第十一条は、違反に対する措置に関する
規定であります。本法
制定の趣旨にかんがみまして、違反に対する措置としては、
制限施設のうち、基準面積を越える部分の使用
制限命令を出し得るようにいたしたものであります。
第十二条は、立ち入り検査に関し必要な
規定を設けたものであります。すなわち
知事は、第六条第四項に
規定しております届出があった場合、及び前条の
規定によりまして違反に対する措置として
制限施設の使用
制限を命じようとする場合、以上二つの場合に限り、立ち入り検査を行うことができることとしたのであります。
第十三条は、聴聞の
規定であります。すなわち
知事が第十条第一項の
規定または第十一条の
規定によりまして、
許可の取り消しまたは違反に対する措置を行おうとする場合に、事前に公開による聴聞を行うことを要する旨を定め、もって、これらの処分の公正を期し、
関係者の
権利、利益が不当に侵害されることのないようにいたしたのであります。
第十四条は、訴願の
規定であります。すなわち本法の
規定による
知事の処分に対し、不服のある者の救済措置といたしまして、この
法律の主務大臣である内閣総理大臣に訴願を提起し得る道を開いたのであります。内閣総理大臣がこの訴願を裁決しようとするときは、
首都圏整備委員具会及びその他の
関係行政機関の長の意見を聞かなければならないこととし、裁決の公正を期することといたしたのであります。
第十五条は、国に対する適用を明示した
規定であります。国がみずから製造業の用に供するための工場の作業場または学校の教室を新設する場合も、国以外の者と同様に本法の適用を受けさせることは、この
法律の目的に照らして当然でありまして、本条は、この旨を特に明確に
規定したのであります。
第十六条は、他の
関係法律の適用についての
規定であります。第四条第一項ただし書きの
許可の対象となる
制限施設の新設に関しましては、
建築基準法、学校教育法、火薬類取締法等の他の法会において、本法とは別の観点から、行政庁の
許可認可等の処分を要することとなっているものもあります。本条は、このような他の法令と本法とが並列的に適用されるものであることを
法律上明確にしたものであります。
第十七条から第十九条までの
規定は、本法の
施行に関し、必要な
罰則を
規定したものでありまして、他の法令の類似の
規定の
罰則と
均衡をとって定められたものであります。
附則第二項は、本法の
施行に関する事務を、
首都圏整備委員会事務局をして行わしめるため、
首都圏整備法について所要の
改正をなすものであります。
以上でございます。