○奧原
政府委員 まずただいままでの
お話の中で、おそらく御
質問の中に包含されておったかと思うのでありますが、お答えのありませんでした点に触れてお答え申し上げたいと思います。
それは日ソ漁業
条約に基きます漁獲高の問題でございます。これに関しましては、サケ、マス、カニ、ニシンの適用魚種の中で、特にサケ、マスにつきましては非常な激しい論議の末に、昨年は十二万トン、今年は十一万トン、こういう漁獲量を取りきめました次第であります。
そこで今年の漁業は幸いにいたしまして取りきめました漁獲量をとにかく全部漁獲することができたのであります。ところで今後の問題といたしましては、両国の間におきます科学的な立論の根拠というものを、これはできる限り資料の交換、学者の相互交換というようなことによりまして一致させていくということが、今後の論議をうまくまとめていきますためにも有益である、そういうことからそれぞれの技術者の交換調査ということを昨年一応
政府に勧告いたしましたのが実現しませんでしたものを、今年とにかく実現いたしまして、それに伴いましてイシコフ漁業担当の部長も
日本を視察に参ったわけであります。もちろんこれは第一年でありますので、十分な成果を上げたとは私は
考えておりませんけれ
ども、今後の両国の間の交渉の推進には、まあ礎石としての何がしかの成果はあった、かように
考えておる次第であります。
次に北海道近海の接岸操業の問題でありますが、この問題につきましてはただいま
お話のありました通りの経過でございまして、これに関しまする漁夫の対策につきましては、樺太、千島の引揚漁民につきましては、過去五カ年間にわたりまして、これらの漁民の開拓事業、新しい漁村部落を作って、そこで住宅その他の施設あるいは学校の建設等もやってやるというふうな仕事をやって参ったのであります。今正確な数字を記憶いたしておりませんが、約千三百戸であったと記憶いたしております。それくらいの漁村部落を北海道の周辺に建設をいたしたのでございます。今後の対策といたしましては、この問題が
解決しない間におきましても、できる限り沿岸漁業対策をこれらの地域において集中的に実現していく、そういうことによって漁獲収入を増大するという機会を与えていくということに努めたい、かように
考えております。今年水産庁におきまして認められました総合的沿岸漁業対策費、この中でも根室周辺海域をまず第一の重点地域に置きまして、そうしてこれらの地域におきまする、通常の予算では認められておらないコンブのほし場の造成等の仕事に対しまして助成をいたす、こういうふうなことに踏み切っておるのでございます。またそのほか魚礁の設置あるいは沿岸漁場の改良あるいは漁船の建造に対する融資等、いろいろな面におきまして着々と具体的な国の助成をこれらの地方に及ぶように努力をいたして参りたい、かように
考えておるのでございます。
次に沿海州の問題にお触れになりましたのですが、これに関しましてはソ連の方ではソ連の内水であるということで、
日本漁船の締め出しをいたした次第であります。そこでわれわれといたしましては、これらの底びき船の行くべき漁場を
国内の漁場調整の上においてぜひ打開したい、こういう観点から北海道の東沖合い等に誘導したいということで、いろいろ北海道漁民の説得に努めたのでございますが、現在までのところは、まだ漁業者の排他的な御
承知のような行き方から受け入れられるに至っておらないのであります。しかし今年度幸いに予算が認められておりますので、中部沿海州あたりに新しい漁場の捜査をしたい。これについてはそれによって就業漁場としての価値が見出されれば、これらの漁業者を優先的に就業さすようにいたしたい。なお今後とも北海道の東、千島方面の沖合いにおきます底びき漁場への吸収に一段と努力をいたして参りたい、かように
考えております。
それから李承晩ラインの問題につきましては、これは外務省からお答えになりました通りであります。今デリケートな
段階で、どうということを申し上げかねるのでございますけれ
ども、われわれといたしましては、この際公海におきまする
関係国間の漁場の
関係というものがどうあるべきかということに立脚いたしまして、この問題の
解決をはかって参りたい、かように
考えておる次第でございます。
中共との
関係につきましては、ことしの六月の十三日でございましたか、過去三カ年間の民間協定が期限が切れた次第でございます。しかし
関係の漁業者いわゆる以西の底びきトロール漁業者を指導いたしまして、協定があった当時と同じような操業形態をする、すなわち協定によりまして
中共の沖合いに、約束いたしておりまする禁止区域には立ち入らない、また両方が共同入漁区域として隻数の協定をいたしております区域については、定められた隻数だけをこちらもきめて入っていく、こういう態勢にいたしたのでありますが、その後
中共との間に三隻ばかりの船がいろいろ尋問を受けたりしたことがあったわけでありますが、しかし今までのところでは向うの禁止区域を侵していない、こういうことであれば向うも釈放をいたしておるのでありまして、六月十四日以降におきまして拿捕された船は一隻もない、こういう次第であるのでございます。幸いにいたしまして、
日本の西におきます漁業の中で、以西の底びきというものは割合に安定した漁業であります。ただ夏は閑漁期でありますが、これから盛漁期に入りますので、さらに一そう規律のある操業をするように指導を加えますとともに、水産庁といたしましても、これが監視船の増強というようなことについて善処をいたしたい、かように
考えております。