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1958-07-07 第29回国会 参議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月七日(月曜日)    午前十時四十三分開会   ―――――――――――――   委員異動 七月三日委員横川正市君辞任につき、 その補欠として藤原道子君を議長にお いて指名した。 本日委員藤原道子君、赤松常子君及び 松本治一郎辞任につき、その補欠と して坂本昭君、横川正市君及び矢嶋三 義君を議長において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君            宮城タマヨ君    委員            吉野 信次君            亀田 得治君            坂本  昭君            矢嶋 三義君            横川 正市君   国務大臣    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君   政府委員    警察庁長官   石井 榮三君    警察庁警備局長 山口 喜雄君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君   ―――――――――――――    最高裁判所長官    代理者    (事務総長)  横田 正俊君    最高裁判所長官    代理者    (総務局長)  関根 小郷君    最高裁判所長官    代理者    (人事局長)  守田  直君    最高裁判所長官    代理者    (人事局給与課    長)      西山  要君    最高裁判所長官    代理者    (刑事局長)  江里口清雄君    最高裁判所長官    代理者    (家庭局長)  菰淵 鋭夫君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省人権擁護    局長      鈴木 才蔵君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (裁判書作成浄書問題に関する  件)  (逮捕状の執行に関する件)  (高知県高岡郡檮原町における人権  侵害に関する件)   ―――――――――――――
  2. 一松定吉

    理事一松定吉君) 本日の委員会を開会いたします。  前回に引き続き、検察及び裁判運営等に関する調査をいたしまして、裁判書作成並びに浄書に関する問題を調査することにいたします。  前回に引き続き、御質疑の方は御発言を願います。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 私は、今日は時間が中途発端で、しり切れトンボになってもいけませんので、大体二つのことに問題を集中して、若干お聞きしたいと思います。  第一は、裁判官裁判をしておらない問題、最高裁はいろいろ説明はされるのですが、相当ある。そういう点の指摘を少し具体的にして、こういう事情でもなおかつそういうことがないとおっしゃるのかどうか、そういう点等をもう少しお聞きしたい。いずれこれは、休会中、皆さんの方の、一つ協力も得て、実地に調べさしてもらうわけですが、もう少しこの点を質疑したいということと、もう一つは、結果起きてきた処分についての今後の扱いについて、もう少しお尋ねしておきたい。  まず第一の点でありますが、前回、一般的に、裁判官によらない裁判のことを申し上げたのでありますが、たとえば東京家庭裁判所少年部ですね、ここにおける裁判書作成実態というものについて申し上げてみたい。それは、東京家裁少年審判部は、御存じだろうと思いますが、係が九つに分れております。第一から第九の係までございます。  第一の係は佐藤信一郎、第二は佐々木さん、第三は森口静一裁判官、第四は藤原裁判官、第五が中川裁判官、第六が長谷川裁判官、第七が石崎裁判官、第八が桜井裁判官、第九はちょっとわからないのですが、そういうふうにずっと分れております。そこでこの九人の裁判官の中で、いわゆるこの少年院送致決定ですね、その決定決定書を、裁判官自身で起案しているのは、第七係の石崎さんと第八係の桜井さんなんです。この二人であって、ほかの方は全くこれは書記官にまかせ切りなんです。これが実態なんです。それからこの九人の裁判官とも、自分印鑑は、全部書記官に預けっぱなしになっております。印鑑を押すのは書記官だ。で、これははなはだ人の名誉にも関することですから、少しこまかく申し上げないといかぬですが、ただ例外として、第五係の中川裁判官、それから第六係の長谷川裁判官、こういう方は、重要な決定書だと思われる場合には、みずから署名をしたりあるいは目を通して訂正をする、そういうふうなことをおやりになっていたようです。だからこういうふうに、今私の申し上げた裁判書の起草並びに印鑑の保管という二つの面を総合して考えますと、この第一係から第四係、それから第九係と、この五つの係では、結局裁判官審判廷主文を言い渡すだけ、こういうことになる。実質的な決定書作成というものは、全くこう書記官にまかせっぱなし、こういうわけなんです。これは少年院送致決定でありますが、しかし、身柄はやはり懲役と同じように相当長期間拘束するような、そういう重要な決定なんですから、こういうことは皆さんどういうふうに――実際これでもいいというふうにおっしゃるのだろうかね、それでも決定書を、ともかく裁判所で読むんだから、その読むときに一切のものの判断を、事後で、そこで裁判官がやったんだと、そういうふうなことをおっしゃるのかどうか。判こ自分で押さぬでいい、それで決定書を読むことすらせぬということになったら、これは大へんなことです、それこそ。そんなことはあり得ることはないです。しかし、今申し上げたようなふうな状態になっておっても、それでも裁判官決定書を作っているのだということになるかどうか、はなはだ疑問が多いのですが、私は絶対ならぬと思う、そんなことは。私が今申し上げた東京家裁少年審判部のことについて、これは前からも若干皆さんのお耳に入っているのじゃないかと思いますが、実情を若干お調べになったのかどうか、どういうふうに判断されておるか、お聞きしておきたい。
  4. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵夫君) 少し事が専門的にわたりますので、私からお答え申し上げます。少年事件審判、つまり裁判でございますが、少年事件裁判は必ず少年がいなくちゃいけないものでございまして、少年の面前で告知するわけでございます。そして今お話のありました少年院送致決定、これは少年審判規則によりまして、犯罪事実と適用状況、これは刑法上の犯罪の場合は刑法上の条文と、それとまあ人によって違いますけれども少年法と、それから少年院法条文を書くことになっております。そして書記官は、御承知通りに、言い渡しのときには必ず列席しております。ですから、これを民事の判決のように、必ずしも決定書を先にしなくちゃいかぬということではございませんので、もしお話のような事実があったとすれば、定型的に少年名前、本籍、氏名、それからだれだれを少年院送致するという主文、そして犯罪事実といたしまして、多くの場合警察あるいは検察庁から送って参りました事件についております送致事実、それだけ書きまして、それにあと条文をつければいいのでございまして、いろいろ少年処分につきましての意見、あるいはそれから少年院に行きましてどういうふうに取り扱ってほしいというような意見をお書きになることもございますけれども、これは必要要件でございませんので、それはそれまでに作成せられておりまする少年院、つまり家庭裁判所調査官調査記録がございます。これはまあ社会記録といっておりますが、調査官調査報告書、あるいはもし少年身柄つきの場合でございますと、少年鑑別所に原則として二週間の観護をするという処置をとっておりますので、その間の心身の鑑別の結果の報告、あるいはまた、家庭裁判所医務室がございますので、もしそういう人によりまして心理測定をやっておりますなれば、そういう測定報告書、そういうものがついておりますので、その記録は必ず少年とともに少年院の方に送られますので、それを見て、少年院少年院としての独自のお立場で少年の処遇をお考えになるようになっております。ですから、かりにそういうような事実が私はないと信じますけれども、あったとしても、そういうようなことで裁判官はもちろん、これはしばしばこちらから申し上げました通りに判を押し、また、名を書くときにその決定内容を修正しております、かりに書いたものが間違っておりますれば。そういうことになっております。で、東京少年事件は多うございまして、全国の三割五分もございます。九人の裁判官の方がおやりになっておるのは非常に大へんでございます。交通事件だけでも約十万件になんなんとしております。約十万件に近いものがございます。それをあの限りある場所で、限りある時間で、限りある人数で処理するということは非常に手数がかかるのでございますので、あるいは、私はまだそういうことをこれ初めてお聞きしたのでよく承知しておりませんけれども、そういうことで処理されているのかもしれませんが、決して裁判判断、つまり少年少年院に送るかどうかというような判断書記官にまかしてないということは断言できます。  それから、何か判のことをおっしゃっておりましたが、東京家庭裁判所少年部は、御承知通りに、裁判官書記官とは同じ部屋におりまして、いろいろ審判期日の通知その他につきまして判を押す場合が多くございます。調査官調査を命ずる判とか、いろいろ御承知通りに判が多いのが当りまえでございまして、そこで同じ部屋にありますので、あるいはそういう関係上この判を向うへ行って押すというよりも、能率的に処理するためにあるいはおまかせになっているかもしれませんが、決してそういう裁判書の判まで押すというようなことは、書記官の方が押すということは私はあり得ないというふうに考えております。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 あり得ないことがあるから問題にされておる。こんな人の名前を出して私も申し上げるくらいですから、間違いがあったらこれは大へんなことになる。それは一つ家庭局長もよく検討される必要があるのですよ。で、ちょうど特別国会でこういうふうに裁判書のことが問題になってきたものですから、東京家裁では七月一日に、少年部裁判官会議をされまして、そうして七月二日から今まで書記官に預けておいた印鑑を全部裁判官の手元に回収なさっておるのです。そういう事実関係から見たって、今までは預けておいたからこれは回収ということになるわけです。今家庭局長は、同じ部屋におるからというようなことをおっしゃっておりますけれども部屋が同じであったって、実際上そっちに預けっぱなしにもできるわけだし、それから正々堂々とやっているなら何もうろたえて会議なんか開く必要はないはずです。それから少年院送致決定につきましても、森口裁判官とか藤原裁判官、こういう人たちも、国会で問題になってきてから初めて最近は自分で起案をする、こういうふうになってきておるようです。だから、私は忙しいというのはわかっているのですよ。ことに東京大阪なんか、それは私たちがあれだけの件数をかかえて場所へ送り込まれたらこれは大へんだと思うのです。しかし、その解決はまた別個の問題である。だから幾ら忙しいからといったって、ことに少年事件なんかは、これは決定書の理由のつけ方一つでも最も大事な問題だと思うのです。少年事件なんか、ことに幅のある判断が必要なんでしょうから、ほかの犯罪のように窃盗の事実があった、それだけでぽんぽん処理していくものではない。私は一そう裁判官などがゆっくりとどういうこれを扱いにするのが一番いいのか検討する時間を与えるように制度上すべきである。私たちはむしろそう思っているのです。ところが、現実は、まさに逆なんです。だから、そういう現実であるということ自体すらを否定されたんでは、それでは、一つお互いにこれをどうしようかということにはならないのでして、はっきり、これは一つ実情調査してほしいと思うのです。  それからもう一つ、ついでですから申し上げておきましょう。それは、たびたび出るのですが、大阪のやはり家庭裁判所で、こういうことを実際やっておる。それは、夜間、大阪警察署で、家出少年とかそういう者を保護的につかまえたというような場合に、いわゆる緊急同行状の効力で、一晩だけ少年警察署に留置する、こういうことをずっと前からやっておるのです。従って、警察官が、駅とか盛り場などで、夜おそく寝ているとか、そういったような少年等がありますと、氏名、年令、住所、保護者状態家出事情などを聞いて、そうして大阪家庭裁判所電話通告をする。そうすると、大阪家庭裁判所では、宿直者がだれかおります。ところが、この宿直者は、書記官または調査官または事務官とか雇いとか、それ以下の人なんです。裁判官はおらぬのです。そこへ電話がかかってきますと、受付簿にはすぐ記入するでしょう。ところが、その際、結局宿直者だけの判断で、たまには、これはどうかなと思う場合にはあるいは裁判官の家に電話しているのもあるかもしれません。しかし、ほとんどが宿直者判断で大体同行状が発付されてきているのです。だから、こういうことなんか、裁判官がおらぬわけなんですから、聞いて、それを判断してやったとか、そんなことが加わる余地がないわけなんです。こういうことは、もちろんあくる日の朝になれば、これはちゃんと警察から少年を連れて裁判所へやってきます。そうすると、結局あくる日になって、そこへ裁判官が出てきて、初めて正式の書類というものができるわけなんです。だから、その正式書類ができるまでの間というものは、法律的にはまことにこれは疑義があるのです、こういうやり方は。少くとも裁判官判断の加わらぬ状態で数時間でもとめておかれる、こんなことは私ははなはだ間違いだと思うのです。このことが、やはり、これは勤めておる書記官事務官の間でも問題になりまして、こういうことはやめてもらいたいという申し入れをやって、これは今年の四月に入ってからです、初めてそういう書記官とか事務官まかせというようなことはなくなっているのです。こういうことなんか、明らかに私はもう人権侵害もはなはだしい事例だと思っているのですが、家庭局長はどういうふうにこういうことを御判断されておるのですか。
  6. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵夫君) これは大へん重大なことを承わるのでございますが、大阪家庭裁判所少年部裁判官の方は、一人奈良にお住まいのほかは大部分大阪市内に住んでおられます。そして各宿舎には必ず電話を持っておられますので、おそらくそういう場合、宿直書記官なりあるいは調査官、あるいは今おっしゃいましたそれ以下の方の判断の上で、緊急の同行状を出されるということはないと思いますが、そういうことにつきまして、私どもはまだ何らの報告も受けておりませんのですが、ただこの緊急同行状というものは、なるべく出さぬようにという話になっておりまして、従来その通りやっておりましたが、数年前ヒロポンが非常に盛んになりましたときに、緊急同行状でやらなければそういうような中毒的の少年を救うことができないというので、緊急同行状が使われたように聞いております。私としては、ただいま、それ以上ちょっとお答えすることはできない状態でございます。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 これはもうずいぶん前からそういうふうにやっているのです。これは裁判書に関連して内部から問題になってきて、そして改められてきているわけです。私はほかでもやはりあるのじゃないかと思います。これもよく調査をしてもらいたいのです。  それからもう一件、これは事務総長にお聞きしますが、これはいつか会計検査院からも指摘された問題ですが、久永判事裁判書を書かなかったために罰金の徴収が不能になった、これは現在東京高裁裁判官に変っておられます。これは判決です。略式命令とかそういうものでもない。自分言い渡し判決を、結局いつまでも書かないで罰金が徴収不能になってしまったという事件があったのですが、こういう問題は、どういうふうに最高裁として処理されておりますか。
  8. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 刑事局長からお答え申し上げます。
  9. 江里口清雄

    最高裁判所長官代理者江里口清雄君) ただいまのお話し、実は私ども報告もございませんし、聞いておらないのでございます。あるいはそういうことがございますれば、十分調査いたしたいと存じます。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 裁判書というものを疎漏に扱うから、やはりこういう間違いが私は出てくるのだと思います。実際に逮捕したり、令状執行する場合には何もなくて、あとから書類が作られるとか、そんなのは相当数ある。ともかくそれはまじめな判事ですと、書記官の方で裁判書なんかどんどん書いて、さあ判事さん判だけ下さいなんというようなことを言ってくると、しかる裁判官も私は聞いております。そんな出過ぎたことするな、だから私はそれがほんとうだと思うのです。現状ははなはだしくまちまちなんですよ、裁判官によって違うと思います。それから東京簡裁略式命令の判を預けっぱなしにして、そうして書記官に判を押させていた裁判官がおるのですが、これも七月一日からうろたえて回収している。回収したのだからそれまでは預けてある。だから略式のことですから法廷で言い渡しをするということもこれはない。従って、略式のような場合に判を預けておいて判事自身が押さないというようなことをやっておる。私はこれはもう裁判官によらぬ裁判が行われているとはっきりしていると思うのです。裁判官名前を言うてもいいのですが、あんまりそういうことを言うてもどうかと思いますけれども、ずいぶん多いですよ。それが七月一日からやはり回収をしております、東京簡裁で。まあこれは同じことをいろいろ何回聞きましても大体お答えは同じようなことしか得られないわけですが、まあこの問題を一応本国会はこの程度にしまして、私どもの方も、お互い一つ実地調査をさして、それに対する考え方をもう少しはっきりしてまた論議したいと思いますが、次の処分の問題に移る前に関連質問が……。
  11. 横川正市

    横川正市君 今の関連問題で、私ちょうど先般の委員会でもちょっと申し上げましたが、秋田の地裁のできごとなんでありますが、大体裁判書というのは、私も警察、いわゆる地検から裁判所へ回って参りまして、そして各種の様式を整えて一件が処理される、裁判にかかっていく、そして最終的決定が行われるまでの書類を見ましたけれども、相当膨大な書類になる。その間には勾留だとか保釈だとか、保釈金だとか、たくさんありましたが、その中の一つの事実として裁判書部分について書記官がこれを書いて持っていったところが、裁判官から余分な仕事をするな、これは裁判官仕事であるということで大へん激昂しておしかりをこうむった、そういうことから秋田では裁判書に対していろいろと意見討論を行なった場合に、裁判官自体裁判書に対しての、これは自分のものだ、これは書記官のものだという判断が個人的にまちまちなんではないかという印象を受けるような意見が出ておったのであります。  そこでお聞きしたいのは、あなたの方では、裁判書についての実際上の指導といいますか、この前は慣例という言葉がだいぶ使われておりましたが、指導について判事判断というものは大体もう全国統一されているものか、ある裁判官は今言ったように判まで預けている裁判官があり、ある裁判官は、裁判書を書いていったら、お前の仕事ではないと怒って判を押さないというような、何か大へん裁判書に対してまちまちな見解を持っているように思われるのですが、ことに秋田の問題が起ったところでありますから、この点について、皆さん意見一つお聞かせいただきたいと思います。   ―――――――――――――
  12. 一松定吉

    理事一松定吉君) ちょっとこの際、御報告しますが、委員異動がありましたので、七月七日付で藤原道子君が辞任され、坂本昭君が選任されました。また、赤松常子君が辞任され、横川正市君が選任され、松本治一郎君が辞任され、矢嶋三義君が選任されました。ただいま質問した横川君は、本日赤松君と交代いたしております。   ―――――――――――――
  13. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) この裁判書の問題につきましては、そもそも書記官にいわゆる浄書の法律上の義務があるかどうかという点と、それからその義務があるということを前提にしましても書記官をわずらわすやり方の問題と、この二つあるようでございますが、その前段につきましては、私は大体裁判官の御意見は一致していると考えております。これはもちろん先日亀田さんから、大阪あたり裁判官の中にはそうでない人もおるようだというお話でございました。大体この義務の点につきまして私は、こまかな理論構成は別といたしまして異論はないように思います。ただ、その後段のそういうことを前提としまして書記官にやらせますやり方につきましては、先ほどいろいろ御指摘のような、また、判を預けるとかいうような、かなり行き過ぎたやり方をしている人もあるようでございます。それから今お話のような、いわば良心的な、あくまでも自分がやるというような態度の方と、これはいろいろそこにはあると思いますが、今統一的なやり方というようなものが、日本全国裁判官やり方調査して、特に調査したわけではございませんが、かなりそのやり方にはいろいろあると思います。ただ非常に忙しい東京とか大阪とかいうようなところでは、大体おのずからそこに先ほども慣行ということをおっしゃいましたが、まあ慣行というようなことがあって、大体同じような形に自然になっておるのじゃないかと思います。その人々によりまして書記官仕事のやらせ方について、多少の差はあるように見受けられます。
  14. 横川正市

    横川正市君 事務総長の答弁では、やはり実態を明確に説明されておらないのじゃないかと思う。個人的に多少の差があるという程度のものならば、これは私はこういう大きな問題にまで発展しなかったのじゃないか、こう思うのです。ことに秋田の場合の怒られた側の書記官と怒った方の裁判官というものは、事実上今度は処分に当ってどういう関係をとっているかというと、秋田書記官との話し合いの中では、一時的には書記官のやっている仕事ではないということを裁判官が認めて、そしてその認めた上に立って話し合いというものが一時成立した時期がある。だからこれは今言ったように怒る側の裁判官というのがおるからこそ初めて怒られる側というものは、自分仕事というものの範囲というものを判断する。それからルーズに事をかまえて判こを渡すからおのずと書記官は渡された判こを使うという仕事範囲品分で認識するわけです。そうすると、あなたの言うように、多少の差というのではなくして、そういう二人の裁判官がいるということは相当大きな仕事の幅といいますか、幅の内容を持たせておったということに私はなろうかと思う。結果的には今度は、それを一つの問題が起って判断をするときには一時的にはそれを認め、あるいは時間がたつとそれを認めないというようなあいまいな過程というものを経てくる、こういうことに私はなるのじゃないかと思う。ですから、その点を裁判所としては少くともこの裁判書というものが、この間も言ったように慣例では困るので、横田さんではなかった、関根さんですか、慣例ではない、はっきりときまったものであるという、その点をあとで聞きたいと思うのですが、そういったものがあれば、こういう間違いは起らないと思う。ないから必然とその仕事の幅というものが、個々人の裁判官によってきめられてくる。そこに私は問題の起る原因がある。それをあなたは非常に簡単に幅の狭いものに考えて、最終的には行政的な懲罰を課すという判断の資料にしてくるという原因があって、これは非常に無理な結果になってくる、私はそういうふうに考えられるのでありますが、その個々の裁判官考え方の幅が、そんなにあなたたちの言うように狭かったものか、あなたの考えだけでも、もっと広いものがあって、どれとどれとが違法で、どれとどれとが適法だというふうに、的確に当時判断をしてこられたのか。その点どうも今までの最高裁としてのあり方は、少しあいまいじゃなかったかと思うのですが、その点、もう少しはっきり御答弁を願いたいと思います。
  15. 江里口清雄

    最高裁判所長官代理者江里口清雄君) 仕事の幅とおっしゃいますが、従来からこの浄書ということに関連いたしましては、裁判官側では、これは書記官の職務範囲に入るのだということをだれも疑わなかったのでございます。今度この通達――この裁判書拒否という問題が昨秋から秋田にございまして、その際に二十三年の通達で、書記官をわずらわさないようにすることというような通達がございましたので、その点で、書記官の方であの通達を、浄書書記官仕事でないというふうな解釈に援用して持ってきたのではないかと思います。一つの闘争手段として持ってきたのではないかと思うのであります。裁判官の方では、日々事件が参りますので、仕事が差しつかえるというようなことから、それを避けるために、裁判官がみずから書いたということはあるのでございますが、それが裁判官の職務であって、書記官の職務でないというような解釈をとった裁判官はなかったように聞いております。  それから先ほどいろいろと御意見がございましたが、略式命令あるいは逮捕状等につきまして、あらかじめ略式命令の請求書をそのまま書き写してくる、あるいは逮捕状氏名等を書き写してくるというようなことは、あと裁判官が判を押す際に判断をするということで、これも一つ浄書であるということで、裁判官あるいは裁判所内部といたしましては、その点についての解釈のあいまいさというようなものはなかったように私たちは理解しておるのであります。ただ、この白紙逮捕状を出した、そして処分をされたというような裁判官が、かつて浦和管内に出ましたので、そういうことのないようにということは、会同ごとに注意を促し、裁判官側もそういうことは決してやらないということを申しておりますので、そういうことはないと思う。ただ、まかせきりで、白紙逮捕状裁判官が目を通さないで、判断をしないで出すような令状あるいは略式命令というようなものはないというふうに考えております。
  16. 横川正市

    横川正市君 事実があって、事実が指摘されると、ないと言う。あるかないかということは、あなたの方では、結局その裁判官判断が先にあったのか、あとにあったかということの説明だけで、いつも、のがれているのですね、この間からの説明をずっと聞いておりますと。結局ある程度の作業というものを書記官がやって、それが最終的に読まれたか、判こを押したか、そういうことによって判事の責任が全うされたか、されないか、いろいろそういうような事実があって説明をされるのですが、私どもはしろうとですけれども、そういう説明じゃちょっと納得しかねるのですよ。なぜかというと、秋田のような小さな地裁で、何人かいる判事さんの中で、この書きものはお前たちが書いたらだめなんだぞという判事さんがいる。それからかりに、同じ部屋に働いておるのでありますから、一つこれを頼むといえば、義理人情もありましょう。だから書く。書いて判こを押してやろう、こういう場合もあるでしょう。そういうことが一つの地裁に起った場合に、私は、裁判書というものは一体どういうものなんだということを判断する場合には、まかすとも言い、まかせないで、絶対書いてはだめだとも言い、あなたの方の判断というものがあったのじゃないか、そういう幅の広いものが。だから、それを何か今までだれも疑わなかった慣例だ。慣例というのは、一つのことを言うのではなしに、相当幅の広い仕事をあなたの方ではさしておるのじゃないか。ところが、たまたま問題になってきて、いろいろ話をするということになってくると、言い分というものも両者に出てくる。これは、まかすなと言った裁判官に言わせれば、それは書記官仕事ではない。まかすと言った方では、これは書記官仕事だ。ただ、その書記官仕事だというのにも、少しおまけがついておって、事件がたくさんあって、裁判官の定数が足りない、当然これはやってもらわないと、実際上、裁判仕事は進まない、こういうものまでも付随して、書かせる方の慣例というものの説明になっている。これでは、私ども判断としても、裁判書というものは、一体どういうふうに書かれるもので、だれが責任を持つのか、どの範囲なのか、こういう説明が、私にはちょっとつかないわけであります。だから、あなたの方ではもう少し明確に、裁判書というものはこうなんです、こういうふうに明確にしてもらわないと、何かあいまいなやつを幅広くやって、それが慣例でございまして、しかも、書かれたものの最後は裁判官の判定がありますから違法ではありません、こういう説明だけでは、実際上、今まで行われてきた実態から考えると、説明が足りないのじゃないか、その点を私は申し上げておるのであります。
  17. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 結局、これは書記官といたしましては、自分が所属しておりまする裁判所裁判官の具体的な指示に従えばいいのでございます。この指示の仕方は、先ほどちょっと申しましたように、いろいろ人の、その裁判官の性格とか、いろいろなことによって、そこに違った手ぶりがあり得るわけでございます。書記官といたしましては、いずれにいたしましても、その具体的な裁判官の方針に従って、機械的に仕事をしていただけばいいのでございます。今までの裁判官がかなりその浄書につきまして、いきなり記録書記官の方へ回して一応の浄書をしてもらうというようなやり方でやっておられたところへ、別の裁判官が見えて、ともかく書類は一応裁判所の方へ出してくれ、裁判官が、一応おれが目を通すからと言われれば、そういうふうにすればいいわけであります。要するに、その具体的な裁判所裁判官やり方、これはやはり一つの具体的な慣行というものが、その裁判官書記官の間に出てくるのでありまして、それに従っていただけばいいわけで、書記官は、どうしたらいいかといってそう迷われる必要はないように私は考えるのであります。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 事務総長がそんなことをお考えになっていたら、旧来の陋習が一そうひどくなりますよ。書記官の方だって、幾ら裁判官から言われたって、従えない分野というものがあるのですよ。そんなことまで書記官にやらせるのは困る。それは裁判官自身がやるべきだ、これは一定の限界が法律上も憲法上もあるのです、だからそれをまるで書記官というものを裁判官の小使いのようにお考えになると、これは大へんな間違いです。私からそんなことを申し上げるのも何だが、今の事務総長お話を聞いておると、まるで書記官の法律上の地位というものは無視されておるような感じがしますがね。
  19. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 今私が申し上げましたのは、先ほどの問題は二段あって、義務がある問題について具体的な指示に従うべきである、こういうふうに申し上げました。その後段について申し上げておるのであります。これはもちろん書記官……あるいは亀田さんなどはむしろ前段の点について非常な疑問をお持ちでございますので、それを前提といたしますと、いろいろそこに問題があることは私も認めます。今私が申し上げました趣旨は、あくまでも後段の義務のある範囲内についてのやり方がいろいろあるのじゃないかと、それは具体的な裁判官の指示に書記官としては従えばいいと、こういうふうに申し上げたわけであります。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 まあ浄書というものを二つに分けて考えることも一つの問題でしょう、そういうふうに分けることも。抽象的に分けて考えてみたところで、具体的な問題になるとなかなか明確を欠くんです。単なる事務的なことか、あるいはこれは裁判官判断事項に入るのかということははなはだ明確を欠くのですよ、これは。事務を疎略にしておると結局は判断の領域にまでいつの間にか入ってきてしまう、そこに誤まりのもとがある、そういうことですから、私は非常に不明確な点について書記官の方に異論がある場合、裁判官の命令に従えということにはちょっと私はならないと思うのです。事柄自体が不明確なんですから、その場合には。ことさら意地で言っておる場合は別として、実際にそういう問題にぶつかることがたくさんあろうと思うのです。そういう場合には、憲法の精神からいえば念のため裁判官がやっておく、こういうふうにすれば、これは間違いはないのです。裁判官仕事が事務的な方面にまで多少出たというだけであって間違いはない、そういうふうに思われませんか。両方で意見が対立しておる場合、裁判官の命令に従えと、はっきりしたものについての命令権は裁判所法六十条三項を見たってそれはあるでしょう、だけど、それが職務範囲かどうかという疑いが出るものがたくさんあるんです。その場合、一方的な命令はできないでしょう、これは卑屈な書記なら別ですがね、ほんとうにお互いの職務権限を公正に守っていこうという立場の人なら一言言いたいところでしょうし、書記官というのは大体独立なんです、根本的には裁判官に対して調書なんかについては裁判官以上の責任を持っておるし、裁判官が調書を直せと言ったって、書記官が反対の場合にはそれは直せないわけですからね、裁判官意見を加えるだけで。そういう点から見ても、書記官の地位というものは、そんな疑いのあることについてまで裁判官の命令に従えといったようなことを事務総長あたりが簡単に言ってもらっては私は困ると思うのですね、裁判官判断についての最高の地位にある、価値判断については。しかし、それ以外の調書とか、そういう事務的なことについては、裁判官以上に書記官の方が地位が保障されているんです。従って、弁護士でもあの書記官はけしからぬと思えば、書記官自体に対する忌避とか回避までできるわけでしょう、そんな人の小使いみたいなものに忌避とかいう、そういう制度があり得るわけがない。判を公正にするためには判事といえどもそういう記録とか、そういうことについては自分の主観で変えてはならぬということで、一定の独立の地位を持った立場です。兼子さんがこの問題について最高裁の態度に大体反対的な考えを持っているのは、やはりそういうところに一つは根拠を置いているんですね、先生の意見を私ども検討すると。だからその辺のところがどうもはなはだ明快を欠きますね。裁判か事務かわからぬことについてそんな命令できますか。そういう意味で事務総長がおっしゃっているのではないかもしれませんがね、しかし、あのままの言葉だと、あるいは非常に何でもかんでもこれは含んでおるような意味に、もし誤解する人がいたら大へんなことになりますから、私確かめておくんですがね。
  21. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) このいわゆる浄書につきましての最高裁判所あるいは裁判所側の考え方につきましては、あらゆる機会にいろいろ申し上げておりまして、ここでまた詳しく申し上げることは省略さしていただきますが、要するに、われわれといたしましては、書記官裁判官の命令があれば何でもしなければならぬというような乱暴な議論は全然しておりませんで、要するに、浄書というものが書記官の職務範囲に入るという解釈、また、その解釈に基きまして長年行われておりました事実を申し上げまして、それを前提にいたしましていろいろ議論を、意見を申し上げたわけでございまして、そのわれわれの考え方はよくおわかりいただけるんじゃないかと考えております。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 そのあなたのおっしゃる浄書は、裁判官判断関係のない事務的な浄書という意味のことだろうと思います。で私の申し上げているのは、現実浄書々々というておる中にはその範囲を逸脱しているものがたくさんあるんですよ、これは。それでけさも若干その実例を申し上げたわけなんですがね。でそういう問題にぶつかった場合に、裁判官が、いやお前それでやっとけと、こんなことを言えますかというんです。私はそれは言えないと思う。
  23. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 書記官判断を要しますような問題につきましては、これはもちろん裁判官が命令をして書記官にそれをやらせるというようなことは絶対あり得べからざることであります。また、現実にそういうものは問題がございますれば、これはそういうことはやめさせる何らかの措置をとらなければならぬというふうに私は考えております。そういう若干の間違い、行き過ぎというようなことがございますれば、それはもちろん私どもとして是正をいたすつもりでおります。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 まあそうおっしゃればわかる。だからそういう問題について、書記官一つの主張をした場合に従って裁判官としてもそれに対して命令的な指示なんかはできない、結論はやはりそうなるわけです。  ただしからば、事務的な点はどうか、これもいろいろ問題ですがね、実際は私が今まで議論していたのはそれ以外の問題なんです。裁判所の方では裁判所法六十条二百項というものの一つの拡張解釈といいますか、そういうことで結論づけられておられるようですがね。まあこれももちろんそれに関連していろいろな規則等もあるのでしょうが、まあ基本的にその裁判所法の六十条の二項自体で明確でないものを規則などできめたからといって、果してそれでいいのかどうか。やっぱり問題が相当残るわけですけれどもね。まあその問題までは時間の都合もありますので、きょうは触れませんがね。  最後に処分の問題ですね。ともかくせんだってからいろいろ質疑を申し上げている中でも、一人々々の書記と裁判官関係というものを取り上げてみると、相当複雑だということだけは私どももはっきり断言できるのですよ。そして基本的にも中間領域なんかについてはなかなか問題がある。事柄自体に問題がある。そういうわけですから、処分などについてはよほどこれは慎重でなきゃいかぬと思うのですね。運動が何か一つぱっと起きている。だから処分する方も一つの抽象的な概念、立場で、まあめぼしいところをぱっぱっとやっちまえばいい。どうもそういうふうにやられたみたいな感じ、これは裁判所らしくないですね、そういうのは。やっぱり一方でももちろん合法的な運動ということで考えておる。まあこの機会にそういう陋習も若干でも改められればということ、これがまたよく発展すれば、非常に裁判所の人員の問題なり、そういうことでこれがはなはだ裁判所のためによかったということになるかもしれぬくらいの問題なんです。そういう立場で取り上げてきておる問題について、あまり個別的な検討等を十分されないで処分をされた形跡がある。はなはだ私はこれは遺憾だと思うのです。一人々々の書記に、処分者が実際に当って処分されましたか。事務総長名前処分されたのもありますがね。どうですか。
  25. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 今回の処分は、御承知のように、第一回の分は秋田裁判所秋田の分につきましては、秋田裁判所と私がそのうちの二名を処分いたしました。   〔理事一松定吉君退席、委員長着席〕 この私の分につきましては、問題が、結局、秋田で起っておりますので、こちらから人をやりましていろいろ具体的に調べるというやり方もございますが、秋田の所長以下裁判官、その他の秋田におりまする現地の人々が非常に詳細に調べましたものがございますので、私といたしましては、ただ任免権者であるという形がとられておりますので、私の名前処分いたしたわけでございます。その調べの実体は、秋田所長以下の現地の方々の非常な詳細なお調べを信用いたしまして処分をいたした次第でございます。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 私は、公務員の首切りなんというのは、これは全く死刑に値する処分ですからね。ほかの官庁へ勤めることできませんよ、若い人は。私は、それだけに、たとえそういう調査に基く書類等があっても、いやしくも最高裁のあなたが処分される場合には、一応本人を呼んで、そうして事情を具体的に聞いてもらう。これが当然だと思うのですがね。一年や二年の懲役へ行くよりも、これは苦痛な処分です。実際は。ちょっと関連して聞いておきますが、事務総長命で処分された人が若干あるわけですが、あれはどういう根拠に基くのですか。
  27. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) これは国家公務員法を準用しておりまする結果、懲戒処分は任免権者が第一次的にはすることになっておりまして、この秋田の十二名でございましたか、この十二名の中の二名は伊藤正蔵という人と館山茂、これは秋田地方裁判所、または家庭裁判所書記官でございます。この書記官につきましての任免は、大体最高裁判所に任免権があるこう者の任免権は最高裁判所自体で統一してあるわけでございますが、その書記官についての任免権を事務総長に、事務総長を指名しまして委任されております結果、この書記官の懲戒処分も、やはり事務総長がこれを行う、こういう立場で二名の書記官の人だけにつきまして、私が処分者になったわけであります。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 この書記官の任免権を最高裁事務総長に委任しているのですか。それはどの規則にあるのでしょう。
  29. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) それは裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の任免等に関する規則、これは昭和二十五年の一月二十日の規則でそうなっております。この中の第六条でございましたか、「最高裁判所がその指名する者に委任することができる。」こういうことになっております。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 これはどうなんでしょうか。最高裁判所の司法行政権というものは裁判官会議がやるわけですね。最高の機関ですね。その裁判官会議のメンバーでない事務総長に、そういう重要なことを委任する、首切りまで含めて委任する。一体そういう規則自体が有効なんですかね。はなはだ私疑問を持つのですが、これはやはりある程度独立の地位等も持っている書記官というような立場を考えますと、最高の機関によっていろいろ処理されるならいいですが、ここから委任された方が首を切ったり、こんなことを規則できめれば、何でもきめれるというのではない、私は限度があると思う。その点、非常に疑問を持つのです。最高裁みずからがこれはやるべきじゃないですか。こういう重要なことは。どういうふうに御解釈になりますか。
  31. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 法律の解釈は、ただいま私が申し上げましたようなことでよいと思いますが、ただまあ現実の問題といたしまして、いろいろ問題がここにございまして、たとえば書記官の任免権を最高裁判所が握るということにも多少問題がございます。原則といたしまして、秋田で申しますれば、秋田の所長に、そこの職員の任免権を与えるということも、一つ考え方でございます。なるたけ書記官については、全国統一した一つの方針のもとに任免を行うということで、最高裁判所に保留して――保留と申しますか、他に委任しないのでございますので、ただ、これを事務総長に委任するということにも、やはり多少問題はいろいろあろうかと思います。しかし、これは非常にたくさんの――判事、検事、裁判官異動と違いまして、書記官あるいは裁判所事務官の人事というものは、非常に数も多うございますし、かなり大へんでございますので、そういうようなところからいたしまして、事務総長に委任するという、こういう形になっておると思うのでございます。委任されました以上は、やはり任免権者でございますので、当然に懲戒権がそれについてくる、こういう形になっておるわけでございます。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 その規則には、任免を委任する。しかし、懲戒を委任するとはっきり書いてあるのですか。
  33. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 懲戒は書いてございません。任免を委任するような……。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 免は、入っておりますか。
  35. 横田正俊

  36. 亀田得治

    亀田得治君 大体、最高裁は、憲法上、裁判の最高機関であると同時に、司法行政の最高機関と言いますか、司法行政も一手に握っておるわけですね。このこと自体に非常に無理があるような感じがするのですね、現状を見ておると。だから、裁判官会議自分でやれぬから、こういう重要なことを事総長委任する、そういうことにならざるを得ない。だから、一方では、最高裁がそんなに忙しいなら、もう司法行政なんかを最高裁なんかから取ってしまったらどうか、こういう意見も、一部の人から出してくるのもある。これは、私は必ずしもそういう意見なるものは賛成しません。これは当然裁判所の独立性の問題に、やはり間接的には響いてきます。ところが、最高裁の考えておるのは、たとえば機構改革にしたって、人数を減らすでしょう。一番トップ。レベルを減らして、そんなことをして、それじゃ司法行政に対するほんとうの権限というものが、憲法が期待するようにこれが行使できるかどうか、非常な疑問があるんですよ。  それから本来は、書記官のそういう任免なんていうものは、全国で四千名でしょう。そんなものは最高裁が人に委任しないで直接やるべきですよ。裁判官会議構成の、その中のだれか、特にそういう面で適任な方に委任する、あるいはこっちの方の行政事務は、こっちの裁判官に委任する、こういうことならわかると思いますが、裁判官会議を構成しておらぬ方に全幅的にそれを委任してしまうなら、これは、実質的には最高裁判所が憲法上与えられた司法行政の責任を負っておらぬことです。それなら、昔のように、もう司法行政は法務省にでも渡してしまった方がいい。そんなことは、私は言いませんけれども、そうなんじゃないですか。この間のように、長官は出てこない。国会にも出てこない。そういう面にもこれは若干関連するわけだが、これは最高裁の機構改革のときに、そういう面からも私ども少し議論したいと思いますがね。だから、はなはだ間違いだと思います。重要な書記官の任免というようなものを裁判官会議の構成員でない方にまかす筋は、私は通らぬと思いますがね。これは本来は、裁判官会議がやらぬといかぬ。少くとも、そのメンバーの一人が担当するなら別です。総務局長、どう思いますか。
  37. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 今亀田委員お話の点、非常にごもっともな点があろうかと思います。できますれば、裁判官会議自体ですべてのことを、司法行政事務全部をやることが一番いいかと思いますが、しかし、司法行政事務の中にはいろいろあることは御承知通りでございます。全部をやることができないために、裁判所自体に、司法行政事務を行うために事務総局を置く、そうして事務総長がその代表として、そのことをしておられる。でございますから、根本的な問題について裁判官会議決定権を保留すればそれでいいのではないか、言葉をかえて申し上げますと、書記官の任命権の問題だけに限りましても、書記官のうち、上級の者については最高裁判所裁判官会議全員がタッチする。それ以外の者については、事務総長にまかせるということが考えられるべきでありまして、だからといって、最高裁判所でだれに委任するかということをきめる以上は、戦前の、内閣できめるというようなことと違いまして、やはり何人に任免権を委任するかということを裁判官会議できめ得れば、やはり裁判所法の精神に合致するのじゃないかという考えで、今までのルールも、それからそれに基きまする裁判官会議の決議もそういう考え方でできているわけでございます。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 私はどうもこの首切りまで委任しているその規則自体は、ちょっと問題があろうと思うのです。それでは裁判所判決を、忙しいからほかの五、六人、法律のわかった人を呼んできてそこに委任する、そんなことができますか。全然できません。任命の方はいろいろ試験したり、多少性質が違いますから、若干最高裁のおっしゃる理由もあるかもしれぬが、首切りというやつは、これはもう裁判と同じ性格を持っているのですから、そんなことを私は委任すべきではないと思う。私は委任は無効だと思うのです。本来、裁判官会議がやるべきことです。だからそういう意味からも、今度のこの首切りの原文を私見まして、事務総長名前が出ていたから、はなはだ疑問を持ったのです。それでお尋ねしたわけですが、まあ少し検討してほしいですね。そんなことまで裁判官会議に持ち込まれたらかなわぬとおっしゃるかもしれないが、首切りだけはもっと慎重にやってもらいたい。もしそれが今の裁判官で忙し過ぎれば、むしろ弁護士会なんかが言っているように、最高裁判事の増員を考えたらいい。皆さんは減員ですから、だからますます大事なことでも他人まかせということになる。この点、十分一つ御検討願いたいと思う。  それから最高裁調査課長というのがあります。これはこういう処分などの場合に調査をする人ですね。それから公平課長というのがあります。これは公平委員会なんかに訴えてきた場合に、いろいろ下調べをする部署だろうと思うのです。ところが、この調査課長と公平課長が現在兼任になっているようですね。これも私ちょうど検事と判事が一緒になっておるような感じを受けるのですがね。いやしくも法律の最高のポストにあるという役所において、こんなことは大へん筋が通らぬと思うのですが、どうなんでしょう。
  39. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) これは人事の都合と申しますか、だいぶ前からそういう形になっておるようでございまして、私どももこういう形は必ずしも好ましいとは考えておりません。ことに調査、公平関係仕事がだんだんふえてきておるような状況でございますので、これはできる限り近い機会におきまして、おのおの別々の課長を設けまして、大いにこの課の仕事を活発にして参りたいと考えております。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 まあそういうようなわけで、なかなか、いろいろ最高裁の中でも一つ一つこう検討してみるとやはり問題がいろいろあるわけですね。せんだって、五月六日でしたか、全司法の方と事務総長がお会いになったときに、公平委員会にこの問題を持ち出してきても、処分についての最高裁の法律上の見解は、公平委員会でも変らない、こういう趣旨のことをその会合の席上でおっしゃったやに聞くのですが、一応最高裁処分した、そして何かそこに審判機関が生まれてくるというふうなときにそういうことをおっしゃるのは、私ははなはだこう不愉快だと思うのですね。ともかくも法律上、公平委員会という制度があるのだから、十分そこで御審議を願うつもりだ、腹の中でどう思ってたって、そうおっしゃるのがこれはむしろ法律家らしいのでね。そんな公平委員会でどないにやったって、最後には、結局行政訴訟になったところで、これは裁判所自体判断するのだから、といったようなことをにおわせるような、そんなことじゃはなはだおもしろくないと思うのです。要らぬことだと思うのですがね、そういうことをおっしゃるのは。どういう意味でそんなことをおっしゃったのか、心境をお聞きしたいのですが。
  41. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 五月六日であったかどうか正確に記憶しておりませんが、たしか今度の処分の中には事実が間違っておるものがある。これは浦和でございましたか、秋田でございましたか……。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 浦和ですね。
  43. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) そういうことを盛んに主張された際に、これは公平委員会でどうせ公平な立場で調べられるのであるから、ということを申し上げた際に、あるいは法律上の見解については、これは一応裁判所としては、そういう解釈をとってやっておるからこれを変えるということはあるいはむずかしいかもしれない、という程度のことは申したかもしれません。しかし、まあ問題は事実問題で、いろいろ書記官連が、いろいろな人が言っておりました際の発言でございまして、あるいは御指摘のように慎重を欠いた点があると思います。私としましては、非常に軽い意味で申したつもりでございます。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 まあ処分された方から見れば、皆さんの一言一句というものは非常に注意して聞いておるわけですからね、やはり慎重にこういうことはやってもらわないといかぬと思いますね。それで、先日の委員会で、公平委員会のことについて私ちょっと要望的にお聞きしたのですが、できるだけこれは一つ第三者の、裁判所のこともよくわかり、また、法律のこともよくわかっておるそういうような人で判断を願うようにしてもらいたい。事務総長としては、よく検討しましょうという趣旨の御返事だったと思うのですが、まあこれも何ですね、どういう方をいろいろ腹案としてお考えになっておるか知りませんが、たとえば最高裁の内部の局長とか、こういうような方は私は任命されないと思うのですね、少くとも、これは公平委員会に出て行かれて、皆さんがむしろ聞かれる方の立場ですから、どういう趣旨であったかというようなことを。そういう意味でまあ最高裁のそういう地位の方を任命されることはなかろうと思うのですが、この点、どうでしょう。
  45. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 具体的の人事の問題は、ちょっとこの国会を終えましてからさらに慎重に検討いたしますので、この際、先走って申し上げますことを遠慮さしていただきたいと思いますが、大体今までの裁判所やり方、公平審査のやり方といたしまして、部内の職員をもって公平委員会を構成しておりましたが、人事局あるいはその他の局長というような人は入っておりませんで、その問題にできるだけ関係の少い部局の局長以外の人をもって構成しておるというのがほとんどの場合がそうでございます。この点は、今度の公平委員会の構成につきましても、私はそういうふうにありたいと考えております。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 ただいつもの場合の公平審査事件と若干今度は違う点があると思うのです。いつもの場合ですと、何か不始末をしたとかいったようなことが多いのですが、今度の場合には、一つ裁判書とか、また、それに関連しての裁判所法の解釈の仕方とかそういったようなことが相当これは重要性を持ってきます。ことろが、そういう問題については、裁判所は、ことに最近のいろいろな通達等でしばしば解釈を出されておるわけです。だから、私はこの解釈は裁判所内から人を出せばやはりそれをある程度拘束していくと思うのですよ。全然別個な裁判所のようなものを作るわけでもないのですからね。はなはだこれはあいまいな点がありますから。だから事実上裁判所の解釈で縛られるようなそういう部内の方をこの際はむしろ避ける、ほんとうに公平に審査させるというように、私は最高裁のむしろ名誉のために思うのです。先ほどのお話ですと、直接、人事局長とか、総務局長もそうでしょうが、そういうようなところは入らぬようですが、それ以外についても、私はこれは一緒だと思うのですよ。だからそんな誤解を生まないように、公平委員会の結論がいかようになろうとも、構成だけはみんなが納得すようにやってほしい。そういう立場から私たち実際はいろいろ注文があるわけなんです。これは事務総長も人選にはなはだ苦慮されておるようですから、こういうことも一つ御参考に聞いておいてもらいたいのですが、たとえば兼子一さん、これは今度の問題について、非常に自分意見も出しておられますし、こういう方なんかはやはり考えてもらいたい。それから浅井人事院総裁。とにかく首切りの問題ですからね。司法であろうが、行政であろうが、私はそこに常識的な共通点というものがたくさんあると思う。そういう意味で、こういう方も一つ出馬を願う。それから金森徳次郎、それから憲法上の問題等もありますし、宮澤俊義、杉村章三郎、こういったような憲法、行政法の関係の学者ですね、こういう方も非常にいいのじゃないか。それから労働関係からたとえば松岡三郎、鈴木義男あるいは、これはまあきわめて直接の関係になりますが、中労委の委員をしておる太田薫とか、こういうふうなところまで、一つ、少し考え方を広めて人選を考えてもらいたい。第三者だけにしたって、いやどうも最高裁の息のかかったものだけで第三者にした。こんなことを言われぬようにやってもらいたいのです。そういうことを思って、私も意見を出す以上は、ある程度納得のできるものはどんなものだろうかと思って考えてみたのですが、こんなような人は一体これは適任じゃないでしょうか。私は相当適任者がおると思うのですがね。どういうお感じでしょう。
  47. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 私も存じ上げておる人が相当ございます。いずれもりっぱな方だと思いますが、まあ公平審査という、また、こういう具体的の事案についての委員としてお願いするのは、適当であるかどうかにつきましてよく慎重に考えまして、こういう御意見があるということも、結局は最高裁判官会議できめることでありますから、この点は私会議の席上にももちろん問題にいたしたいと思います。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 十分一つ、これは裁判官会議の方にそういう点の一つの参考意見としてお伝え願いたいと思うのです。  それから、最後に、ともかくこの問題は考えれば考えるほど裁判所機構の改革とも関連して、実に複雑な要素を持っておる。そういうことなんでしてね。公平委員会の結論が出るまでに、たとえば、裁判所の方では職員団体の登録に関する是正措置命令といったようなものを出しておりますね。この命令に従わぬ場合は何とかかんとかと、こう書いてあるのですがね。私はこういうことも公平委員会が終るまでは、やはり多少そこをゆとりをもって考えてもらいたいと思うのです。一方は一方でやはり一つの理屈を持っているのですし、それが問題になっているのですから、やはり結論が出るまでは多少これは考えてもらいたい。  それからもう一つは、それに関連するのですが、たとえばILOの条約八十七号結社の自由及び団結権の擁護に関する条約、この批准の問題が、現在、日本じゃ労働界で非常な問題になっておる。政府も消極的ではありましたが、最近は必ずしもそうばかりでもない程度にやはりだんだんなってきているわけです。こういう条約が調印されますと、職員団体なんかの問題についても、相当法規自体について検討を加えなければならぬ点があるわけなんですね。だからそういうこと等も関連して考えまして、私は、この公平委員会の結論前に、何か、団体そのものを抹殺するような措置というか、そんなことをすれば、当然それ自体がまた行政訴訟等の対象になって紛糾をますます拡大するだけですね。そういう気がいたしますので、その辺のところをもう少し常識的に取扱いを要望したいのです。どういうふうにお考えでしょうか。
  49. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) この点につきましては、前回委員会でございましたが、一応お答えしたように思いますが、私どもといたしましては、ただいまお話の公平委員会の審査も、これからだんだん行われる状態でございますので、職員側あるいは組合の方に違法な動きがございません限りは、なるたけ平静な態度をもちまして、公平委員会の結論を待ちたいというふうに考えおりまして、この際、特に裁判所側から攻勢的にいろいろな手を打つというようなことは、私自身は好ましくないと思っております。  なお、お示しのILOの関係等の問題につきましても、私どもの方で慎重に検討をいたしておりますので、それらをあわせて考えまして、できるだけ平静な態度で今後処して参りたいと思っております。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、ぜひそれはそういう覚悟で、一つまた何か問題をよけい起したというようなことにならぬようにお願いしたい。実際問題としては、私どもの方にも、たとえば具体的な資料等、相当手に入っておるわけですけれども、まあ、そんなものなら一つ訴追委員会に出して弾劾でもしたらいいじゃないかといったような対象になるようなものもあるのです。しかしまあ、実情実情、ということは、家庭局長がおっしゃいましたが、そういうことも私どもわかっております。だから、そういうわけですからね、あまり形式にとらわれて、やはり相手をへこませるといったようなことでやらぬようにしてほしいと思いますね。この問題は、私ども最高裁がそういうふうな襟度のある態度でやってもらえれば、もちろんわれわれとしてもこの問題、結論がいい方向に解決するように、われわれとしてもできるだけの力を尽したいと、こういうつもりでやっておるわけですから、その辺のところも一つ御了承願いたいと思います。  一応、いろいろたくさん聞きましたが、大体時間も経過しましたので来国会に、休会中の調査に基いて、再度もう少し発展的に質疑をすることにして、この程度にしますが、ちょっと関連してお聞きしておきますが、前回のあの国会だったと思うのですが、例の裁判所法の三十八条の、事務の一部移管の問題ですね。あのときは、大阪の都島簡裁、あれは、総務局長でしたと思うのですが、裁判所法三十八条によってやっておるのだ、こういうふうに御説明になったはずですね、あのときは。ところが、この六月一日付の裁判所時報――あなたの方からお出しになっておるこの裁判所時報を拝見すると、その中に裁判所法の逐条解説があるのですが、ちょうど三十八条が載っていたからひょっと見たのですが、見ますると、三十八条の解釈としては私や大川委員が言うた通りの解説になっているのですがね。三十八条で事務移転をするのは、天災と地変、騒乱、病気の流行あるいは刑事事件などの場合、一つ裁判所でやってはどうもいろいろな状況からいって、裁判の公平が維持できないようなおそれがあるかもしれない、そういった場合にやるのだ、こうなっておるし、解説も私もその通りだと思うのですがね。だから都島のように初めから法律上のものと全然違ったところに置く、こんなものは三十八条に当らないので、間違いなんだと思うのですがね。置く場所が間違っておるのかあるいはその名称が間違っておるのか、どっちかその問題なんで、そんな事務移転というような三十八条の問題で私、なかろうと思うのですが、どうなんですか、総務局の解説です、あなたの。
  51. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) ただいま亀田委員お話は、この前の国会でございましたか、私が御説明申し上げたわけでございますが、今お話裁判所時報の解説も、私の方の所管の関係として載せてございます。条文をお読みいただくとおわかりかと思いますが、「簡易裁判所において、特別の事情によりその事務を取り扱うことができないときは、」とございまして、その代表的なものは天災、地変、やむを得ない不可抗力の場合ということが一番典型的なものでございまして、その説明裁判所時報に載せたわけでございますが、その他これに類似する問題として、事実上庁舎を作ることはできないとかあるいは敷地が求められない、そういったために簡易裁判所が開設できないという場合も、でき得ればそういった事態がないことが望ましいことはもちろんでございますけれども、そういったやむを得ない事情がございますときは、やはりこの特別事情に入り得るという解釈をとらざるを得ないのでございますので、この前の国会におきまして私が申し上げた点は、やはり現在におきましても同じ解釈にならざるを得ないのではないか。しかし、実際問題として、そういった事態をなくする方がいいことでございますので、この都島につきましても同様でございますが、その他につきましても、最初から敷地あるいは庁舎が求められませんために事務移転をやっておりまする個所が数ヵ所ございますけれども、そういったところは漸次なくしていきたいと、あるいは極端に申し上げれば、簡易裁判所を廃止しなくちゃならない場合もあり得るのではないか。現在法務省とともに、これは結局廃止となりますれば、法務省の問題にも関連いたしますので、ともになりまして現在調査中でございます。でき得れば、そういった事態をなくしたい、こういう考えで進めておるわけでございます。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 どうもこの御説明は納得いかぬですね。初めからあなた庁舎がないですから、実際にあるところの名前をつけたらいいのでして、これは人心を惑わすものですよ、こんなこと。それからたとえば神戸の灘ですね、灘の簡易裁判所も灘区になくて生田区にあるのですね。法律上は灘に、実際は生田区にある。宝塚もそのはずですね。宝塚市になくて、伊丹にある、そうでしょう。これなんかまるっきりこれは外部から来た弁護士さんではとまどいしますよ。宝塚簡裁といえばだれだって宝塚へ行きますよ。まるっきり違う伊丹にある。こんなことは三十八条の事務移転というのはどんなに解釈したって出てこぬですよ。これは大川さん承知できますか。
  53. 大川光三

    ○大川光三君 ちょっと関連して。今の亀田委員に対する御答弁で、三十八条の条文をよく読むとわかるのだ、こういうことでございますが、条文自身を解釈すると、これはどうしても私どもが疑問を実は起さざるを得ない。よく読んでみますと、なるほど「簡易裁判所において特別の事情によりその事務を取り扱うことができないときは、その所在地を管轄する地方裁判所は、その管轄区域内の他の簡易裁判所に当該簡易裁判所の事務の全部又は一部を取り扱わせることができる。」こういうことは実例を申しますと、都島簡易裁判所というものが一たんできて、そうして、都島簡易裁判所で特別の事情があって事務を取り扱うことができないときには、たとえば東区の簡易裁判所、いわゆる大阪簡易裁判所に事務を取り扱わせることができるのだ。ところが、都島簡易裁判所が最初からなしに、しかも大阪簡易裁判所の中に都島簡易裁判所という看板を掲げて、実際は事務をとっておる。それなら他の裁判所、他の簡易裁判所に事務を取り扱わせるのじゃなしに、都島簡易裁判所が他の簡易裁判所にその場所を借りて、宿を借りておるということになりますね。そのことがこの条文にはどうしても当てはまらないというのが私どもの解釈なんでありますが、いかがでございましょうか。
  54. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 今大川委員お話の点も、実はこの前からの問題でいろいろ検討しておる問題でございますが、この「特別の事情」という解釈が、一たん簡易裁判所が実際上開設したあとの問題だと、この点はそうありたいとわれわれも望んでおりますのですけれども現実の問題といたしましては、五百以上の簡易裁判所ができましたときに、どうしてもでき得ない、開設できない事情というものがあったわけです。そういたしますと、やはりそういったものも特別の事情に入るのじゃないか。これはやむを得ない限度にとどめて、もうできる限り少数の場所だけでございますけれども現実にはできました、そういった事態ができるのでございますので、やはり三十八条の「特別の事情」という言葉の中にそういった場合を入れなければ、実際上簡易裁判所が出発できなかったわけでございますので、そういった事情からやむを得ず三十八条の解釈ということにならざるを得ないという考えでおりますが、今後できるだけそういった事態をなくすことが望ましいことは先ほど申し上げた通りでございますので、そういった方向に努力しておるわけでございます。
  55. 青山正一

    委員長(青山正一君) 何ですか、その都島じゃなしに、その区の名前を出すというわけにいかないのですか。設置法関係で、あるいは付則のそういうような名前をずらっと並べてあるとか、所在地の名前を掲げてある関係で――どうなんですか、名前を変えるというわけにいかないのですか。
  56. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 今委員長お話しのように、そういったことも考えられるのですけれども、今の亀田委員、大川委員お話は、究極するところ、実際上、敷地なり庁舎がないところの簡易裁判所をほかの裁判所の所へ持っていって、そして三十八条でそういった事態を解決するのがよろしくないというところまでさかのぼる御意見だと思います。そういたしますれば、名前を変えるだけでは済まないのじゃないか、でございますので、あわせまして検討しておりますが、できる限りその庁舎ができるように御協力いただくとありがたいわけなんです。
  57. 大川光三

    ○大川光三君 念のために伺っておきますが、そういたしますと、今の例で申しますと、庁舎はなるほどない。ところが、都島簡易裁判所裁判官または書記官というものは初めからあるのですか、ないのですか。
  58. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) これは定員の関係ではやはり現実にあるわけでございますが、しかし、実際上、庁舎がないために現実にはそこは欠員状態になるわけでございます。
  59. 大川光三

    ○大川光三君 欠員状態という場合と転補または兼務するという場合がございますね。これは都島の場合は転補でもなければ兼務でもなしに、都島の簡易裁判所所属の裁判官も古記官もおらない。こういうことになるのですね。そうすると、実際においては都島簡易裁判所というような名前だけであって、これは実在しないのだということにならないのでしょうか。
  60. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 確かに実質的にお話になりますると、三十八条自体で、最初から設置されません簡易裁判所におきましては、実際ないじゃないかという御議論は出ると思います。しかし、私先ほどから申し上げておりますように、そういった事態も特別事情に入るという解釈が全然とれないとは思えませんので、おもしろくない事態ではございまするけれども、やむを得ないのじゃないか、確かにお話のように、実質論をされますと、そういった裁判所がないじゃないかというお話ができ得るかと思いますが、やはり三十八条で解釈せざるを得ないのじゃないか、そういう考え広おります。
  61. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連して。先ほど亀田委員から全司法の問題について質疑がなされたようでございますし、本委員会においては前回にもなされたと承わっておりますので、私はごく簡単に一、二点念のために伺ってみたいと思います。  まず、事務総長に伺いますが、お宅関係では非常勤職員というものは何人程度おられますか、その状況をお教えいただきたいと思います。
  62. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 私は、今数字の点はあまりはっきりいたしませんので、人事局長からお誓えいたさせます。
  63. 西山要

    最高裁判所長官代理者(西山要君) 最高裁、高等裁判所、地方裁判所家庭裁判所に分けまして、大体の数を申し上げますと、非常勤職員として最高裁判所に入っておりますのが二名でございます。実際にも二名でございます。  それから高等裁判所が――もっとも今申し上げているのは、いわゆる非常勤職員として給与として上っている分でない、実際の非常勤職員です。勤務が常勤職員と同じ形態でない、週に何回というようなものでございます。
  64. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 常勤的非常勤もあわせてお答えを願いたい。
  65. 西山要

    最高裁判所長官代理者(西山要君) 常勤的非常勤も合せますと、いわゆる常動労務者を含めてでございますか。
  66. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そう、そう。
  67. 西山要

    最高裁判所長官代理者(西山要君) この数が、今覚えてないのですが、集計するあれにもないのですが、後ほど調査の上お答えさしていただければと思います。
  68. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私も若干調査資料を持っているわけですが、確たる自信がないからこの数字を読み上げることは遠慮しておるわけですが、お宅の方にも、どの官庁でもそうですが、相当、常勤的非常勤職員が定員法の関係であり、ことに裁判所関係では下級職員にかなり労働過重の傾向があるということを承わっておるわけなんですがね。単に下級の公務員のみならず、裁判官自体も定員等の関係で業務の遂行上支障があるように承わっておるわけですが、このことは事務総長認識しておられるのですか、いかように把握されておられますか、承わりたい。
  69. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 裁判官その他上級の職員につきましては、先般亀田委員の御質疑に対しまして、いろいろ数が不足しておるというふうに申し上げましてあるのでございます。この下級の職員、ことに今お示しのような関係につきましては、実は数字的に私はあまり詳しく存じておりません。いずれよく調べまして申し上げます。
  70. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に、具体的にお伺いしますが、先ほど亀田委員から質疑されておりました全司法所属の書記官処分の問題ですが、私も実態を若干聞き、調査をし、さらに法律の各条章を検討してみて、いわゆる処分の対象となった浄書拒否というあのことは、裁判所法等から見て、明確に書記官の果して本務かという点に私は法律にしろうとですが、常識的に考えて無理があるという感じがするのですがね。たとえば教育公務員については日宿直等は本務でないという解釈があります。一部の人は本務に随伴する業務だというふうに解釈しておる人がありますが、明確でない。従って、教職員の日宿存というのは便宜上慣習として奉仕しているのだ、こういうような解釈がなされておる。従って、これらを拒否して、はっきりと要員を任命して、日宿直業務をやるべきだというような戦いを、そういう組合運動を日教組としてやったことがありますが、その組合運動に酷似しておる感じがするのです。明確に本務ではない。しかし、慣習として書記官が便宜上そういう奉仕をし、または裁判官がそういうふうに使っておるというのじゃないかと思います。あなたが他の委員会でもお答えになっていたのを承わっておりまして、一つの罰則の基準がある、その基準を書記官に示して、しかるべく書いてほしいというような現実が下級裁判所にあるということを私ども聞いておりますが、そういうことから考えるときに、私は先ほども申したような事態ではないか、従って、いわゆる浄書拒否が行われたからと言って、即座に十三人の首切りというような処分をされるということは、私も労働運動をやった者の一人ですが、あまりにも過酷ではないかというような印象を非常に強く受けます。従って、これらの処分をされた人に対する公平審査の要求に対しましては、現在の日本の良識を結集して公平審査をしなければならない、そういうように要求してしかるべきではないか、かように私は考えますが、そういう立場から先刻亀田委員から公平委員会の構成等について意見を含めて御要望、質問があったようでありますが、私承わっておりまして、まことに適切らの点について、重ねて事務総長さんの御見解を簡単でよろしゅうございますから、私は承わりたいと思います。
  71. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 実は公平委員会のメンバーにつきましては、私ども非常に苦心をいたしておるのでございまして、先般矢嶋さんが最高裁へお見えになりましたころには、実は正直なことを申し上げますと、公平委員の人選をそろそろきめようかという段階でございました。しかし、いろいろ御意見も承わりまして、やはり国会で一応この問題を論議していただいて、それを参考にいたしまして、できる限りよいメンバーを作りたいということになりまして、先般来この国会におきましていろいろな方面から有益な御意見を承わっておるわけでございます。これらの御意見を十分に参酌いたしまして、適当なメンバーを裁判官会議できめていただきたい、かように考えております。
  72. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この公平委員を任命して審査を始めますと、大体期間にしてどの程度期間があれば一応の結論が得られるでしょうか、その見通しを承わりたいと思います。
  73. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) それはできる限り私としましては、始まりましたらば、もう始まるまでにだいぶときがたちました点もしんしゃくいたしまして、できる限り早く結論が出るということが、処分を受けました人々のためにもよいことだと思いますし、また、役所といたしましても、こういう問題がからまっておりますことは、いろいろな面で非常に支障を来たしておりますので、できる限り短期間に結論に到達するような運びになってほしいと考えております。もっともこれが何カ月で終るか、これは非常に処分者もいろいろございますし、また、処分を受けた人の数も相当ございますので、また、これにつきましては、いろいろな代理人等の関係もございまして、そうスムーズに運ばないかもしれませんが、私ども考え方といたしましては、なるたけこの問題に専念し得る方をできる限り選任していただくというような形におきまして、審理もできる限り短期間に終る、こういう方向に持っていきたいと考えております。そんな点から委員の顔ぶれも、先ほど亀田委員からいろいろお示しもございましたが、あまりに多忙な方というようなことでございますと、自然どうしても審理が非常に長引く結果にもなりますので、そういう点もやはり考えなければならぬと考えております。現に非常に今までの処分に対する公平審査も大へんときがかかりましたものもございます。これは今までの公平委員会が、いわば最高裁の中の人が普通の仕事をしておりながら、いわば片手間に公平審査の仕事をするというような形になりますと、自然そういう結果になりますので、実はなるたけそういうことじゃなしに、この公平審査の問題に専念して、できるだけ短期間に処理をしていただきたい、こういうふうに考えております。
  74. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 問題は委員の顔ぶれによると思うのですね。これが私は一番大切だと思うので、まことに失礼な言葉になるかと思いますが、裁判所関係の方は、比較的に労働運動等はやったことがないお方が多いし、また、割に理解の度の浅い人が多いのじゃないかと思うのです。従って、組合を作って、その組合運動が原因となってこういう事態が起った場合に、その公平な審査をするに当っては、皆様方に労働感覚がないわけじゃございませんけれども、戦後新たに日本に労働運動というものがはっきりと法的に認められるようになった、こういう時代の動きに即応する時代感覚、労働感覚等が豊富であり、それからそういう若干経験のある中労委の会長というような人は、そういう点では私はきわめて尊敬すべき豊かなものを持っておられると思うのですが、それは例ですけれども、そろいう方々も一枚加って公平審査をするということが、私は大切ではないか、決して拙速になってはならないと考えます。お宅で今まで取り扱った事件を見ますと、相当期間かかっているようです。しかも顕著なことは、公平審査をやった結果が、最初の処分の結果と変化を来たした場合がほとんどないわけですね。人事院において国家公務員の公平審査をやっておりますし、地方公務員に対しましては、各都道府県の人事委員会――公平審査機関で審査していますが、いろしろと問題が起った場合に、その公平審査機関で審査した場合、国の場合でも地方公共団体の場合でも、ずいぶんと公平審査の結果は、原審と申しますか、最初の処分内容が変ったのが出た例が非常に多いわけです。お宅の方を拝見しますと、それが少いということは、結局私は公平委員会委員の構成いかんによるのじゃないか、かように推察をいたすわけでございます。従って、早いがいいでしょうが、拙速になることなく、委員の顔ぶれについては十分慎重な態度をおとりいただきたいということをお願い申し上げておきます。そういう点は一つ御考慮いただけるでしょうね、いかがでしょうか。
  75. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 今おっしゃったような点も十分に考慮いたしたいと思います。
  76. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと速記をとめて下さい。
  77. 青山正一

    委員長(青山正一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  78. 青山正一

    委員長(青山正一君) 速記始めて。  本件についての本日の調査は、この程度にとどめ、これにて午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十二分休憩    ――――・――――    午後二時二十二分開会
  79. 青山正一

    委員長(青山正一君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  逮捕状の執行に関する件を議題にいたします。本件に関しましては、警察庁長官に対し、御質疑のある方は御発言を願います。
  80. 亀田得治

    亀田得治君 きょうは法務大臣と検事総長に来てもらって一緒に質疑をしたいと思ったのですが、次席検事会議で出席が思うようにならぬようですから、始めますが、最初にちょっと委員長にこれはお願いがあるのですが、実は一回この法務委員会警察庁長官に質問をしたことのある問題ですが、大阪の忠岡町の山内誠巍という人から陳情書が法務委員会に来ておるわけです、それを拝見いたしますと、一度この委員会で御審議を願ったことでありますが、ぜひ一つ関係者を委員会でよく調べてもらいたいという陳情がきております。で、問題は元忠岡町の町会議員をしていた山内君が、川の砂を無断で取ったということで窃盗罪に問われたわけですが、実際は法律解釈としてもこういうのは窃盗罪にはならない、それから川の砂を無断で取ったとなっておるが、事実関係についても全然無断でやったことではない、そういったような事案なんですが、まあそれを無理やりにある程度地位のあるそういう男に対して逮捕状を出して、そうして取調べをした、しかも逮捕状を出したのはそういう事実があってから約一年ほど経過した後のことなんです。これは明らかにほかの政治的な問題に関連して、そうして警察権を乱用したものだ、政治的な問題というのは、当時自治警の存否について賛成、反対の議論が全国にあったわけですが、この山内君は自治警廃止の意見者であった、それを快く思っていない当時の忠岡署長の佐竹秀澄という人がそういう挙に出たというのが真相のようです。これは最高裁で、前回にも報告したように、明確に全部無罪になったわけです。そこで陳情者としては、これはぜひこういうことが無罪になりさえすればそれで事済むというふうなことでは了承できない、ぜひ当時の事情を詳細に法務委員会として調べてほしいという趣旨の陳情です。で調べる人としては、当事者である山内本人はもちろんですが、相手方の佐竹という当時の警察署長、現在はこの人は最近栄転して警視になって布施署の要職についておるようです、こういう点も陳情者を大いに刺激しているようですが、その佐竹、それからその当時この事件を起訴した元副検事の西村正という人ですね、この辺が逮捕、起訴それ自身についての事情に一番詳しい。それからなお背後の先ほど申し上げたような事情等については、前泉大津市長の納谷長三郎、それから市会議員の橋爪鶴蔵、それからさらに市会議員で人権擁護委員をしておる久保泰雅、こういうふうなところをお調べ願いたい。まあ関連した問題は検察庁でも、それから裁判所でもたくさんあるわけですが、そういう問題に広げるのでなしに、一体こういうものを逮捕する必要があるかどうか、こういう事件ということについて特にお調べを願いたい、こういう陳情です。これは私もごもっともな陳情だと思いますし、できれば本国会中にでも適当な方法をとってもらいたいと思うのですが、会期ももうありませんので、私の委員長に対するお願いですが、会期が終りますと、あとども現地の調査にいろいろ出ます、その際に専門室からも派遣委員に人がついてゆきますので、正規の調査が終ったあとで、できますならば随行者の方に下調査を一応させてもらいたい、で下調査を、今私が申し上げたような者たちを中心にやってもらえば大体真相等が出てくるんじゃないかと思いますので、そういうものを基礎にして次の臨時国会でさらに御検討願う、こういうことに、今の段階ではこういうことしか仕方がないと思いますので、その点一つお願いをしておきたいと思います。
  81. 青山正一

    委員長(青山正一君) ただいま亀田委員から申し入れのこの人権の問題につきまして、後刻理事会を開きまして、その取り計らいについて十分に検討し、もし必要とあらば、さよう取り計らうことにいたしたいと思います。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 これは一つぜひ必要な問題ですから、ぜひ理事会でそういうふうな御決定になるようにお願いを再度いたしておきます。  そこで、せんだっての予算委員会で、私、高知県の勤評反対闘争に関連してPTAの一部の方、まあ結局は勤評賛成側の人でしょうが、そういう諸君が学校なり教師に対して乱暴を働いておる、こういうことについて長官に質問をしたのですが、その点について、当時はまだ長官聞いておられなかった、いずれ調査の上で報告したいということでありましたので、本日一つお聞きをしておきたいと思います。
  83. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) ただいまお尋ねの高知県における先般の県下一斉十割休暇闘争のありました直後におきまして、高岡郡の檮原村西ノ川小学校、中学校のありますところにおきまして、父兄の方々がそうした休暇闘争に対するかなり批判的な態度をとられ、学校の先生方に対してそうした闘争に参加することについて反省を求められたということ、また、それに関連をいたしまして、同村におきましては、学校教員に部落有の住宅を提供しておられたのでございますが、その住宅から立ちのいてもらいたいというふうな要求をされた、そうしてまた、その立ちのき要求に先生方が応じられなかったということで、その建物に付随するところの炊事場、ふろ場、便所等に対して使用のできないような状態にしたということ、さらにはまた、ガラス戸にくぎ打ちをしたといったようなことがありましたことは、その後調査いたしました結果、そういう事実もあったという報告に接しております。具体的には、御承知通り、休暇闘争が行われましたのが六月二十六日でございますが、その翌二十七日に、今申し上げましたような教員住宅のくぎづけ事件と申しますか、こうした事案が起っておるのであります。これに対しまして、村の教育委員会の方々が仲裁と申しますか、あっせんの労をとられまして、六月二十九日に一応くぎづけ等は取りはずしをされたというふうに報告に接しておるのでございます。父兄の方々が、先生の休暇闘争に対して反感を持たれると申しますか、批判的な態度をとられたということは、立場上やむを得ないとしましても、そうした住宅に対して、今申し上げましたような挙に出られたということは、これは一つの大きな問題であるのであります。器物損壊と申しますか、そういった犯罪にも触れるおそれがありますので、当時地元の警察といたしましては、御承知通り、器物損壊は親告罪でもございますので、先生方に告訴の意思はおありですかということはお聞きしたのでございますが、先生方はそういう意思もない。ということであったようでございます。警察としましては、当時の状況は詳細正確に調査を進めているわけでございます。
  84. 青山正一

    委員長(青山正一君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  85. 青山正一

    委員長(青山正一君) 速記を始めて。
  86. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 議事進行について。亀田委員の質疑を展開するのには、検察当局は必要だということなんですね。それから高知県に起った事件についての質疑をするに当っては、警察庁長官お見えになっておりますが、人権擁護局長、それから文部省側がどうせ来ていないと、委員会の取り運び上重複して非常に不能率になりますので、いずれから先にやられてもけっこうですが、先ほどの申し合せば、亀田委員の質疑は先行することになっておったわけです。従って、関係政府委員の出席をすみやかに委員長は促して下さい。でないと委員会の運営が非常に不能率になりますから……。
  87. 青山正一

    委員長(青山正一君) 矢嶋さんに申し上げたいと思いますが、もうすぐ人権擁護局長はこちらにお見えになります。また、文部省側からもお見えになりますが、先ほどの御質問は、はっきり申し上げますと、大阪の問題が出ましたので、一応それを議題に供したわけであります。後刻人権擁護局長なりお見えになりますから、それまでに皆さんの御質問をさせていただいて、そうして亀田さん一つ……。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ、あれします。特別抗告のやつをやっているとほかのやつも全部進まぬし、でありますから、特別抗告が始まればやっぱり警察なんだから、そういう立場から若干長官に聞いておきます。そういう意味で逮捕の問題を一応片付けてもらい、その間に人権擁護局長なり文部省に来てもらって、そうして高知の方に移ってもらう。
  89. 青山正一

    委員長(青山正一君) 矢嶋さんに申し上げます。きょうは次席検事会議がありまして、検察庁側がどなたも御出席にならぬわけです。こちらには法務官側から人権擁護局長、それから警察庁長官、それから刑事局長、それから文部大臣と初等中等教育局長、こういった方がお見えになります。その点をお含み願います。
  90. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 けっこうです。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 そうしましたら、全逓の事件で、例の最高検で出した特別抗告が却下された。で、この逮捕という問題は、実は検察庁と労組との対立になっておりますが、準抗告前の最初の逮捕請求というのは、これはやはり警察がやっておるわけです。そういう意味で警察自体も逮捕を請求するといったような場合に、ああいう特別抗告の却下という事態に当面すれば、何らかここに私は重大なショックを受けているものがあろうと思う、何か御感想があろうと思うのです。その点をどういうふうに反省をされておるか、これは検察庁とわれわれとの意見の対立だけじゃない、警察自体が最初の逮捕を求めたわけですから、警察としてはやはりそれに乗って準抗告、特別抗告と、こういっている。だからそういう意味において長官としてもどうもああいう事件について、むやみやたらに逮捕を請求するようなこと自体は問題があるのじゃないかというふうにお考えになっておるかどうか、そういう点を一つお聞きしておきたい。
  92. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) およそ逮捕状を請求し、また、これを執行するということにつきましては、事、人権に関することでございますから、きわめて慎重でなければならぬことは申すまでもないところでございます。捜査の必要上やむを得ず逮捕状を請求し、執行するにいたしましても、それは必要最小限度にとどめるべきことであることは申すまでもないところでございまして、私、機会あるごとにたびたび申し上げております通り、捜査の本来のあり方としましては、任意捜査によって目的が達成し得るならば、これが最も望ましいのでありまして、従って、捜査に当る者といたしましては、その点に思いをいたしまして、任意捜査によって目的が達成し得るように最大限の努力をいたすべきものと思うのでございます。しかし、それにはおのずから限界があり、どうしても強制捜査を必要とする場合に初めて逮捕状の請求、執行、こういうことになるのはいたし方ないのでございます。今後のことにつきましても、私、今申し上げましたような心がまえのもとに捜査に当る者といたしましては、人権の尊重ということを基本理念といたしまして、どこまでも逮捕状の請求、執行は、できるだけ最小限度にとどむべきものである、かように考えるのでございます。今回の準抗告、特別抗告等のいきさつ等も十分念頭に入れまして、今後の捜査に当る者といたしましては、細心の注意を払ってやるべきものである、かように考えております。
  93. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、全逓事件であれだけの逮捕請求をして、結局最後にはだめになったわけですが、必要最小限度ではなかったと一応こういうふうに現在では認定しなきゃならないと思うのですが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  94. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 警察の捜査当局といたしまして、逮捕状を請求いたしましたものにつきましては、裁判官はその理由ありとして逮捕状を出していただいたのでございます。問題はその後のことでございます。従いまして、その点につきましては私から責任あるお答えをするのは差し控えた方が適当かと思うのでございます。捜査に当った者といたしましては、なおさらに、身柄を勾留して捜査をする必要があったというふうに感じておった点は確かにあるように聞いております。しかしながら、裁判官はそれ以前の任意捜査によって相当の資料もすでに集収できていることであるし、また、逮捕状の執行によって限られた時間であるけれども、その時間の捜査によってある程度目的を達しておるのではないか、従って、それ以後さらに引き続き身柄を拘束して捜査をしなくともいいのではないかという判断に立たれて、勾留請求が却下されたものと、こういうふうに私は考えておるのでございます。従いまして、先ほど申しました通り、そういったいわゆるボーダー・ラインと申しますか、デリケートな関係にあるものにつきましては、今後捜査に当る者といたしましては、その辺の事情を十分に念頭に入れて、慎重なる配慮を要すると、こういうふうに感じおるのであります。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 検察官が請求する勾留、それがけられたので、警察官の最初の逮捕は許されたのだ、だからおれの方の段階では別にあまり手落ちがなかったのじゃないかという気持が若干おありのようでありますが、そこが問題なんです。と言いますのは、あなたの方で逮捕をして取調べになった、なったけれども、ほとんど取調べはできていないのですよ、警察ではできていない、そして結局身柄の拘束そのものがいいかどうかということが、やはり次の段階で初めて弁護士もつくし、あるいは検察側も大いに主張するということで、そこで初めて販売になっておるのですね、法律的な意見のやりとりなんかは。最初のときにはやはり警察から出す、裁判所は一応許していく、こういう格好になりやすい、だからあまり論議を経ないですっと行った、それでおれの方はともかくよかったのだ、そうは私はならないと思う。最高裁判所は結局これをけった、けった基本的な態度というものは強制捜査の必要性を認めておらないわけなんです。だからそう考えますと、あなたの方のやつは許されたとしても、全体を通じて考えると、これはそういう手荒い方法を講じてまでやるべき事件ではないのだ、こういうことなんですよ、そうなれば、警察自体裁判所に最初逮捕状をお願いに行ったそのこともやはり間違いなんだぞ、こういうことにこれはなるわけなんです、事実上。だから皆さんの方で主観的にはそれは必要があるとあるいは今でも思っておられるかもしれぬけれども、しかし、それは最高裁判決決定というものを警察自体が無視するような印象を与えますので、そこをもう少しはっきり、どうもこういう種類の事件については、調べにくいが、やはり強制捜査ということはいかぬと最高裁が言うたのですから、もうちょっとはっきり答えてほしいのです。
  96. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 最高裁決定は御承知のように、この判例違反という点について拘束理由がないというだけの決定でございます。本件について拘置を必要としないというような点には一切触れておらない、要するに、判例違反になるかならないかという点だけの決定であります。私どもといたしましては、当初に逮捕しなければ本件の捜査は十分に行うことができないと思いまして、やむを得ず逮捕の手続をとったのであります。その後、裁判所の方の決定は御承知のように、事件が起って相当長い期間もたっているし、今さら証拠隠滅ということも考えられないから拘置の必要はないということで、従って、私どもといたしましては、本件について強制捜査の方法をとりましたことは、これが当初にさかのぼって間違っておったと、捜査の方法を誤まっておったというようには、ただいま考えてはおりません。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 はなはだ不明快ですな。それは最高裁は判例違反にならぬと言うておるのです、もちろんこれは。しかし、その判例は逮捕、強制捜査を許した判例を検察庁が持ち出しているわけです。だから半面から言えば、そういう判例はこの際は役に立ちませんよということでありますから、だからこれは強制捜査の必要はないのだというそういう意味のことです、何といっても、どうもあきらめが悪過ぎますな、いまだにそういうことを局長あたりが言うのは。だから現実にああいうことになれば、ああいう特別抗告の却下になればこの捜査は非常にしにくいでしょう。その点、どうです。しにくくなったかどうか。
  98. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 検察庁が要求いたしました拘置が認められなかったということは、本件の捜査上に支障があったように、私は思います。これはしかし、検察庁にお聞きにならないとわかりませんが、私どもは、警察の立場としては、そのように考えております。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 それはおそらくその通りです。そこで、もう一つ長官に反省してほしい。だからこれはもう刑事事件にはならないわけです。ならぬです。だから、初めから刑事事件にならぬようなものをそのワクにはめ込もう。そういうところに無理があったのかなというふうな観点での反省というものをされているかどうかということです。ともかく全逓の諸君ですか、一生懸命やっておる者が、そうして一応合法的な形をとってきておる。目的は、何もそんな犯罪を犯すとか何とかそんなものじゃないんですよ、初めから。だからそういう種類のものについては目的と手段が違う。目的はよくても手段が悪ければいかぬとか、そういう議論ばかりを振り回しておらないで、もう少し常識的に、良識的にやりませんと、手をつけてしまったわ、収拾がつかないわ、そうすれば警察の威信を失墜するだけですよ。そういう面から、おそらく長官は日教組の問題でも、全逓の問題でも、私は、大きな反省をされておられると思います。そういう大きな反省はどうですか。
  100. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 先ほどもお答えいたしました通り、捜査に当る者といたしましては、あくまで基本的人権の尊重という基礎理念に立って、強制力は必要最小限度にとどめるべきことは繰り返し申し上げておる通りでございまして、今後この種の事案の取扱いにつきましては、より一そう慎重に考慮をめぐらして、必要最小限度の強制捜査をする、こういう態度でいくべきである、私はさように感じておるのでございます。  今回の全逓関係事件は、刑事事件にならないのじゃないかという御指摘でございますが、これは今日までの捜査の資料に基き、また、今後の許されたる任意捜査の集積によりまして、事件としては、これは一応格好がついておりますから、形は整え得るのではないかと、かように私は感じておるのでございます。これは、まあ今後のさらに残された問題でございますが、たびたび申し上げました通り、どこまで慎重にこの問題の取扱いについては、第一線の捜査関係者にはよく注意を喚起いたしたい、かように考えております。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 では、一応特別抗告に関する問題は、この程度にいたしておきます。
  102. 青山正一

    委員長(青山正一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  103. 青山正一

    委員長(青山正一君) 速記を始めて。
  104. 一松定吉

    一松定吉君 警察の方、人権擁護の方にお伺いしますが、近ごろ犯罪の捜査に関しまして、どうも捜査の仕方が非常に非合法的な捜査の仕方が多い。どういうことかといいますと、密告だとか、投書だとか、あるいは想像だとかいうようなことを基礎にして、そうして人を召喚して、十分的確な証拠でないものをもって、ああだろう、こうだろうというようにして誘導し、そうして脅迫し、恐喝しというようなことが近ごろ非常に盛んになってきた。たとえば被疑者を呼んで、お前はこういうことをしただろう、何の何がしがこういうことを言うておるぞと言うて、言うておりもしないことを言うておるというように嘘を言うて、自白をしいる。あるいは、もしお前がこのことを言わなければ、お前の家内を呼び寄せるぞ、あるいはお前の家の家宅捜査をするぞ。あるいはお前を帰そうと思ったけれども、帰さないでお前を留置するぞ、こういうようなことを一言うて、そうして調べることが非常に多くなって参ったのです。例をあげれば幾らもありますが、例はきょうはあげない。必要があれば例も具体的にあげて、そういう話もしますがね。そういうようなことは、上司の方から厳にこれを戒めるところの訓令を出し、もしくは彼らの捜査官に向ってよろしき指導の方法を講ずるということが必要ではないかと私は考えておりますが、そういう点について、どういうお考えを持っておられますか、それを一つ伺ってみたい。  それから一問一答することは時間がかかりますから、そういうことをせぬで、いま一つ非常な悪質な例をあげますと、現にこれは千葉で起ったそうです。ある被疑者が呼んで調べるけれども、なかなか自分の思うような供述をしない。ところが、それを供述させるために、隣に、ドアを隔てて隣に警察官同士が、一人が訊問の警察官という立場におり、一人の警察官は調べられる立場において、二人でいかにも調べておるかのごとくよそおって、お前はこうこうこういうようなことを知っておるじゃないか。こういうことをお前は言うたじゃないか、こういうようなことをしたじゃないかというて、こちらが尋問すると、相手方が、その通りいたしました、これには何の何がしが関係しておりますと言うて、隣にちゃんと聞えるように、隣に待っておる者の名前を言うて自白を強要する手段に供したという実例がある。それはほんの一例ですが、そういうようなことが、近ごろ警察官の調べ方に非常に多い。これについては、かねがね人権擁護の方面からも、また、警察の上司の方面からも十分に訓戒を与え、誤まりを正すべく指導をしておるということは承知しておりますが、なかなかそれが行われない。自分が手柄を立てて、この事件一つ自分の力によって検挙しようというようなことのために、詐術を用いたり、想像をたくましくしたり、言わないことを言うたように言うて、相手方を欺罔するというようなことが非常に多いのです。これに対し、どういうお考えを持っており、また、どういうような指導をし、将来どういうような方針で、かくのごとき弊害を除去するということをお考えになっておるか。それを一つ、抽象的でもよろしいですから、お話し下さることを希望します。
  105. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) まことにごもっともな御意見と拝聴いたします。私ども、捜査のあり方ということにつきまして、少くとも私は昨年来機会あるごとに第一線の捜査関係者に要望いたしておりますことは、捜査の適正化、合理化、すなわち言葉をかえて申しますならば、科学的、合理的な捜査を推し進めなければならない。基本的人権を尊重しつつ科学的、合理的に物事を見きわめていって、真実の発見に努める、こういう捜査のあり方が、今日のわれわれ警察の捜査に当る者のとるべき態度であるというふうに私は申しておるのでございます。過去におきまして、残念ながら警察の捜査をいわゆる勘による捜査といったようなことからしまして、往々にして人権侵害するような事例が捜査の過程においてまま見受けられたことは、私どもも否定はいたさないのでございます。そうした行き方を一擲いたしまして、先ほど申しました通り、科学的、合理的な捜査を進めることによって真実を発見するという、捜査の新しいやり方を打ち立てようじゃないか。そのためには科学的な、たとえば鑑識施設といったようなものを十分に整備し、そうした科学の力によって真実を発見していくようにする。また、何と申しましても、基本的な考えの基礎になるべきものは、人権の尊重ということでございますから、先ほども亀田委員にお答えをいたしましたように、捜査の目的を達するに急なるあまりに手段を選ばずという行き方を避け、極力人権を尊重するためには強制捜査にたやすく依存するという態度を一御して、任意捜査によって目的を達成するようにあくまで最善を尽す。そうして必要やむを得ない最小限度において強制捜査をする、こういう態度でなければならないということを、私は機会あるごとに強調しておるのでございまして、何分にも全国数多い警察官、しかも多年古い捜査のやり方になずんでおる者、一朝一夕にその旧弊が抜けきれないというのが、遺憾ながら率直に私は認めなければならぬ現状でございまして、そのために往々にしまして捜査上の行き過ぎと申しますか、不手際というものがいまだにあとを断たない状況であることはまことに遺憾に思っておるのでございますが、今後さらにその面の指導、教養を一そう徹底いたしまして、私は先ほど申しましたような理想的な捜査の行き方と申しますか、そうした姿の実現のために、今後一そう努力をいたして参りたいと、かように考えておる次第であります。ただいま御例示になりました千葉の事案は、私寡聞にして承知をいたしておりませんで、さっそくにもよく調査いたしまして、もしそういった好ましからざる捜査をいたしております者がありますならば、十分これは将来改善するように指導をいたして参りたいと、かように考えております。
  106. 一松定吉

    一松定吉君 犯罪捜査に対して科学的捜査をするということの必要であることに、これはもう議論はありません。科学的捜査をすることによって結論づけられたものは、これはもう必ず検挙の目的を達成するのでありますが、なかなか地方で調べておることは科学的捜査ということではなくて、先刻例をあげたような不合理的な不法な動機、原因を基礎にして捜査に着手することが非常に多い。それについては一体どういうような手段、方法によってそういう弊害を除去するというようなお考えがあるのですか。これをただ単に地方におまかせして、ただ一片の文書によって、そういうことをしちゃいかぬということでは、なかなかこれは直りませんよ。少くとも捜査に従事するおもな者を一ところに集めて、東京地方なら東京地方の者を東京に招集するとか、あるいは近畿の者は大阪に招集するとか、中国の者は広島に招集するとかいうふうにして、そういうような科学的捜査の方法について、彼らをして十分に研究のできるような道を直接教えるということが必要なんです。それをせぬで、ただああいうことじゃいかぬ、こういうことじゃいかぬということだけでは、捜査の任に当る者がしからばどうすればいいかということについてなかなかこういう実地はできないと私は思うのです。近ごろ指紋を取るとかアリバイを研究するとかいうようなことが非常にはやっているのですが、こういうことによって調べあげられた結果は非常にいいようですが、そうではなくて、単なるうわさとか、投書とか、密告とかいうようなことによってやったのでは、なかなか事実の真相がつかめない。事実の真相のつかめないのを無理にこれをつかもうとするから間違いがある。私の言うのはここにある。いわゆる一罰百戒という方針でなければならぬ。それを非常に凶悪なる殺人とか、強盗とかいうようなものはこれは一つ徹底的に捜査に従事して、その犯罪を撲滅するという方法をとらなければなりませんが、大したことでもないものをつかまえて、そうして、想像をたくましゅうして、作為、詐言を用いて恐喝をし、拷問に似たようなことをして、そしてこれを調べあげて検察庁に送る。検察庁もこの警察庁の調べた書類に基いてこれを捜査を継続して、これは果して犯罪が確実であるかどうかということがわからないのがこれを起訴する。起訴するがために取調べの結果無罪であるというようなことが近来非常に多いことは私が申し上げるまでもないのですが、そういうすなわち一罰百戒という趣旨を徹底するようにして、疑問のあるようなものを無理やりにして、自分の手柄功名をするために無理をして人権じゅうりんまでをして、これを私は捜査して書類として検察庁に送り、また、公判に回すという必要はないと思うのですが、この点はどうですか。
  107. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 捜査に当る者に対しまして、私が先ほどお答えしましたような、ただ単に抽象的な文句をあるいは訓示を通牒として流しただけではとうてい刷新改善されるものでないことは私も十分承知いたしております。そこで、具体的には各階級の者をそれぞれあるいは警察大学校あるいは幹部学校等におきまして、捜査専従員の指導、教養を繰り返しやっておるのでございます。そうした者がそれぞれの府県にあってまた、部下の捜査専従員の指導教養に当ると、こういうふうにいたしておるのであります。学校教養においてのみならず、さらに日常職場において、個々の事件を取り扱う際に、幹部たる者が部下捜査係員に対しまして、先ほど私が申しましたような精神に立脚した新しい今日の時代の捜査のあり力というものを身につけるように、具体的事件を通しての教養というものに極力力をいたしておるのでございます。そうした努力の集積によって、日ならずして私は捜査のあり方というものも理想的な姿に到達し得るものであると、かように期待いたしておるのであります。もし不幸にしていわゆる捜査の行き過ぎがあり、人権侵犯等を犯した者があります場合には、先ほどお話がありましたように、一罰百戒、信賞必罰というような精神にのっとりましてこれを処断をいたしまして、他の者の反省の資にすると、こういうようにいたしておるのでございまして、今後漸次改善をされていくものとかように考えております。
  108. 一松定吉

    一松定吉君 私の言うのは信賞必罰ではないのです。一罰百戒です。つまり犯罪のあるのを全部一網打尽的に検挙をして、これを全部罰しなければならぬというふうにすると捜査に無理がいくと思うのです。だから一人を罰して百人を戒めるという方針で捜査に当ることが一番いいのであるが、そういう点についてのあなた方の指導の方法について伺ってみたいと、こう申し上げておるのです。  実はこれは自分がやったことだが、ちょうど私が大阪の高検の検事をしておるときに、私は京都に出張して選挙違反事件を二千八百人検挙した、刑事十四人を連れて。そこで、京都に出張して選挙違反事件を二千八百人検挙した。私が検事十余人を連れて行ってそして京都の捜査を済まして、これから丹波、丹後に攻め入ろうとしたときに、丹波、丹後に七百人の被疑者がおる。そうして攻め入ろうとしたときに、私の上司である大阪の小林検事長が私にいわく、「一松君、君が京都の選挙違反を二千八百人検挙したことは、非常に君の功績は賞讃に値するが、これから君、丹波、丹後に攻め入って七百人を検挙するということはよしたまえ」そこで私は検事長に向って「山城の方面から二千八百人を検挙して、丹波、丹後に七百人おるということがわかっておるのに、それを検挙せぬというのは検挙の不公平ではございませんか。」ここですよ、小林検事長が言うのに「君、神様から見ればみんな不公平だよ。君のような人間がおるから山城二千八百人検挙したのだが、ほかの地方で検事が、いわゆる俊敏な検事がおれば山城と同じように検挙ができるけれども日本全国で二千八百人も検挙したというのは、この山城、君だけじゃないか。ほかの地方はしからば違反はないかというと、みんな神様から見れば違反があるのだから、だから君が丹波、丹後に攻め入って七百人を検挙しようということは、これは公平という君は立場から言うのであろうが、京都府から見れば公平、不公平ということはあるけれども日本全国から見れば、君は京都をやっただけでもそれは不公平だ。だからしてもうこの程度でよかろう、これで京都府民は選挙違反というものはよくないことであるということを十分認識したのだから、丹波、丹後の方はもうやめてもよかろう」ということを言われて、なるほどやっぱりこの人は偉いなあ、今私は常に今日まで忘れることはない。ところが、それをいわゆる小林検事長のようなそういうりっぱなお考えが、今日の警察官や、今日の検察庁に欠除しておるということを私は痛切に感ずるのです。何かここに引っつかまえて来たならば、これを必ずものを言わしてものにしようというようなお考えでやるか、そこで人権じゅうりんがあり、詐術を用い、暴力を用い、自白を強要するということになるのです。こういうような弊害を除去するためには、やはり私の言う一罰百戒で一人を罰してそうして他の者をもって戒めて、ああいうことをすればおれもあの人間のようになるということで、自分から自分を警戒して罪を犯さないようにする方向に持っていくことが世の中の秩序を保つ最良の方法であるのだ、一網打尽に一人残らずやるというようなことは、これは断じてなすべきことではなくして、検挙の任に当る者はこの点に注意しなければならぬということを言われて、私は小林検事長のその至れり尽せりの温情のあるしかも検事政策として最も正しいやり方だということを、私は痛切に感じておるのですが、そういうお考えをあなた方一つ部下の警察官に一つ訓示するようなお考えはありませんか、どうですか、それを一つ伺っておきましょう。
  109. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) まことにごもっともな御意見で、貴重な御意見として拝聴いたしました。私、先ほど先生、一罰百戒と仰せられたのを、警察官の、行き過ぎのある警察官に対してこれを厳重処分すれば、ほかの警察官の戒めにもなって捜査の行き過ぎ、失敗というものがなくなるのではないかというふうに受け取りましてお答えしましたので、ちょっと的をはずれておりましたので、この機会に訂正さしていただきます。警察が外部の者に対して取り締る態度として、悪質なものを代表的に取り締って、他の類似のこの軽微のものはそうこれを特に取り立てないという行き方、これは確かに考えなければならぬことでございます。私ども警察の力にもおのずから限界があるのでございますから、事の大小なく、すべての犯罪を漏れなく捜査し、事件にするということは不可能でございますが、結局悪質なものを特に重点をおいて取り締りをし、これによっていわゆる一罰百戒の効果を上げるということが当然考えられてしかるべきだと考えて、今後そうした点は第一線の捜査に当る者に対しましても、私は十分先生の御意見を浸透させるように考えたいと、かように存じております。
  110. 一松定吉

    一松定吉君 いや、あなたのように、そういうよく理解なさる方は――警察官みんなそういうことになると、今のような人権じゅうりんだとかあるいは自由の強要とかいうようなことはなくなるのだが、なかなかその下の者を、警察官や刑事、巡査なんかは、まあ言うべくして行われないことで、非常に私は憤慨しておることがあるのですが、たとえば、こういうことがある。今度の選挙違反の検挙において、具体的な話は申しませんが、ある選挙の会計責任者が、ある者に金を渡した。それは、労務費として一日五百円の計算で二十日間一万円渡した。そうして、その一万円受け取った人間から確かに一万円の労務賃を受け取りましたという領収証を取っておる。その領収証を押収し、そうして、いわゆる労務賃というものの性質を追及して、「一体この労務賃を受け取ったこの男は何をしたか。」とこう聞く。「これはビラを張りました。」「ビラを二十日間も毎日張るだけの仕事があるか。」こうくる。「いや、それはありません。」「それならばその間何をしたか。」「ビラを張り、ビラが破れた時分には張りかえます。それ以外には事務所に来て、掃除をします。お茶を汲みます。あるいは自動車を、弁士に与えたりいたします。そうして、会場に行って机を片づけたり、弁士にお茶を汲んだりいたします。」「それはよろしい。ところがその間にお前さんは演説をしやしないか。」「演説をします。」「またビラを張りに行くときにお前は一人で行くか。」「一人で行きます。」「一人で行くと、それは労務者じゃないよ。」ここですよ。「労務者というのは指導する者についていって、指導するものが、こういうように張れ。へい、ここに張れ。へい。これを破ってこちらへ持ってこい。へい。こうして指揮命令を受ける者が労務者なんだよ。お前は一人で持っていって一人でここに張れば非常に見やすいところだからいいな。これは破れているからいけないな。ここは下の方だからもっと上に張りかえようというようなことを自分の頭を使ってビラを張ったりはがしたりするということは労務者じゃないよ。なぜかという、自分の頭を使うのだから。労務者というものはほんとうに機械的な仕事をするのだから、だからお前はその労務者じゃなくて、そういう機械的じゃない仕事をしたのか。」「へい、そうです。」「そうすると、お前は労務者じゃないよ。いわゆる運動員だ。運動員が金をもらうとすれは違反である。」こう言うて――これはほんとうですよ。こう言うて会計主任をいじめ、もらった人間をいじめ、とうとう検察庁に送りましたね。こういうようなことが日本国中に至るところにあるのですよ。そこでその調べられた人間は、「私はビラを張ることは、これは労務者と思いまして張りました。私に対して指揮監督する人はついて参りませんが、私がそういう人夫の意味の仕事をいたしました。」こう言うと、「お前は市会議員をしている人間じゃないか。市会議員の労務者なんていうことはない。それは運動員だ。」「いや、市会議員でありましても、私の仕事が労務でありますから、労務と考えて労務賃をもらいました。」「それはお前間違っておる。それはお前、選挙違反だ。」こういうように言って、おどしつけて、無理に「そうですか。それでは半分は労務者で、半分は運動員でございます。」とこういう答弁をさす。「そうすると、それならば半分はお前はもらうべきでないものをもらったのだ。それは違反だ。」こう言って選挙違反で書類検察庁へ送っておりますよ。具体的には申しませんが、こういうことがあるのですから、そういうようなことを検挙のやり方について一つ十分に地方々々のブロックでもいいですから、こしらえて指導誘掖する講師を派遣して、そうして、そういう間違った、事実の認定を誤まるようなことのないようにするということが私は必要だと思うのですが、今あなたのお話しでは、まだそこまでやっておらぬようですから、そういうことを一つ急におやりになる必要があると思うが、どうですか、一つそれを。
  111. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 指導、教養につきましては、先ほども申しました通り、学校教養を通じあるいは日常の処理を通じての、個々の事件を通じての扱い方についての指導教養というようなことに努めておるのでございますが、なお足らざる点のあることを反省いたしまして、ただいま御指摘のような点も十分に反省をいたしまして、今後一そう指導、教養に努めたいと、かように考えております。
  112. 一松定吉

    一松定吉君 もう最後ですが、僕は、そういう点については今後十分に注意して、そういうことのないようにしていただきたい。どうも、近ごろ、調べられたようなことがすぐに新聞に出ますね。非常な、新聞に出ると、出された人の名誉に重大な影響を及ぼすんです。現に、きのうの毎日新聞や朝日新聞に出ておりますが、大阪の山村庄之助、大阪の副知事、この男がすぐに、運動員に金をやって書類検察庁に送られたというようなことが、新聞の記事に麗々と出ておる。これは、やったことはない、これはないのです。受け取ったという人間は精神もうろう者――梅毒によっての精神もうろう者、それがいろいろなことを言うて責められて、その結果、言うたことを基礎にして、山村副知事を警察官が調べて、そうして山村副知事からむしろ反撃されて、どうもこれ以上調べのできないようなものを、書類をつけて検察庁に送った。その送ったことを、山村庄之助は違反をやって、こうこうして有権者を買収した、それがために書類検察庁に送られた、なんという記事が、きのうの朝刊や夕刊に出ておるが、こういうことは、出所は私は警察から出るものと思うんです。こういうことはこの山村に限りません、すべての問題がみなすぐに新聞に出るが、これはやはり警察庁の方がその種を新聞記者に与えるものであろうと思うのですが、こういうようなお考えはどうなんですか。新聞社が、警察が何にも言わぬでも探知して、想像を書くのか、あるいは警察が新聞にそういう材料を提供するのか、もし提供するとあれば、どういうわけでそういうことをするのか、むしろ、こういうことはこれをしないようにした方が、人の名誉を尊重する上においていいのではないか、こういう点についてのお考えを聞きたい。
  113. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 関係者の名誉を重んじなければならぬことは申すまでもないところでございまして、すべて犯罪を取り扱う係官といたしましては、進んで発表をするというようなことはしておらないと私は思うのでございまして、今日、新聞報道関係者、ずいぶんよく勉強されまして、いろいろな方面からいろいろなことを勉強されまして、材料を入手されるように伺っておるのでございまして、警察が何ら進んで発表をしなくとも、いつの間にか事件のあることが察知をされまして新聞記事になるという事例がきわめて多いのでございまして、むしろ、捜査に当る者としましては、新聞にそうしたことが報道されることによって、その後の捜査に非常な支障を感ずることさえ多いのでございますが、今日、御承知通り、言論の自由から、何らそうしたところに制約を受けることになっておらないために、われわれ、むしろ捜査上非常に不便を感ずることさえあるくらいでございます。しかし、また同時に、反面におきましては、新聞報道されることによって、その後の捜査に協力をしていただける面もありますので、一利一害と申しますか、簡単にこれを批評することはいかがかと思いますが、少くとも、関係者の名誉を尊重するということは、これは捜査に当る者としましては根本の心がまえとしなければならぬ点でございます。この点は第一線の捜査係官も十分に心得ておると思うのでございますが、御例示にありましたようなこともございますので、さらにその点は重ねて注意を喚起しておきたいと、かように考えます。
  114. 一松定吉

    一松定吉君 そこで長官、あなたは警察としてはそういうことはさせないようにし、部下にも訓示をしておられるから、警察が漏らすはずはないんだということ、それは理屈です。それは先刻来、亀田君から何べんも追及されるように、口ではそういうことを言うけれども、実際は一々新聞に漏れ、しかもその漏れておることが、大体調べられた人の、調べられた事実のようなことそれ自体が漏れておる。そうすると、調べられた人間がこれを新聞に発表する以外には、警察官がこれを発表する方法以外にないんですね。そういうことが人の名誉に関係するのみならず、生涯取り返しのつかないことになるんですからして、現に山村副知事が今度当選した、ああいう点につきましては、朝日、毎日に出ております。一体どこからこういう材料が出たのかということを、新聞記者を調べてもこれは秘密だと言って黙秘権を行使して言わないでしょう、しかし、警察の方面に向って十分にそうした訓戒を与え、一応取り調べをしておけば、二度とそういうことをしないように思うんですが、一つそういう手段方法をお取りになるお考えがありますか、どうですか。それを一つ伺いたい。
  115. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 十分実情を確かめまして、将来再びそういう間違いと言いますか、関係者に御迷惑になるようなことをしでかさないように、さらに注意を喚起したいと思います。
  116. 大川光三

    ○大川光三君 関連して……。
  117. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 議事進行について。一松議員の質問に対して関連質問が大川委員からあるそうですが、それをやっていただくのもけっこうですが、その直後に坂本委員の方から質疑をなす予定ですが、いまだに文部大臣御出席になっておりませんが、そう長時間でないわけですから、ぜひ大川委員が質問をやっている間に文部大臣が出席するように格段の委員長、御配慮をお願いいたします。
  118. 青山正一

    委員長(青山正一君) はい。それでは大川君願います。
  119. 大川光三

    ○大川光三君 ただいまの一松委員の御質問に関連いたしましてお伺いいたします。  先ほど、捜査は基本的人権尊重を旨としてやるんだ、こういうお言葉がありまして、大いに敬意を表するのであります。ところが、たまたま警察において捜査して、そうして事件検察庁に送るというその事前に、もし警察官が捜査上のそういう秘密を漏らしたという場合には、一体どういう処置がとられるかという点であります。御承知通りに、国家公務員法の百条には「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。」こういうように明らかになっております。まさにそういう捜査上の秘密を送庁前に漏らすということは、これに一体該当するかどうか。該当するとすればどういう処置をとられるか、という点を伺いたいのであります。
  120. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 仰せの通り公務員は、職務上の秘密を漏らしてはならない、という規定があるのでございまして、これに違反をいたしまするならば、その事案の軽重に応じてそれ相応の処分を受けることは、これまた当然でございます。捜査に当る者といたしましては、いわゆる捜査の秘密を漏らしてはならないことは、申すまでもないところでございます。先ほども申し上げましたように、私は、捜査に当る者は、捜査の秘密を守るにはずいぶん注意を払っておるものと信ずるのでございます。不幸にしまして、具体的に幾つか事例があるとすれば、その真相をよく確かめまして、それぞれそれ相当の措置をとるべく関係者に注意を喚起したい、かように考えております。
  121. 大川光三

    ○大川光三君 お取調べを願う機会に一つ実例を申し上げます。これはやはり今度の選挙違反に関連したことでありますが、大阪の府市会議員が四人、それが買収容疑で書類を送庁されたという記事が夕刊に載った、ところがその夕刊に載つた当時、この四人の府市会議員は、いまだに何らの調べを受けていない、翌日に至って初めて調べられた、こういう事案でありまして、いまだ当の本人は何も知らぬのに、すでに夕刊にその記事が出ておる、こういうことがありまして、この四人の府市会議員諸君は驚きもし、また、非常にこれは、府市会議員諸君も一つの名誉的な地位におるだけに、非常に迷惑をいたしておる、という事実、事件があるのでありますから、一体、そういう秘密はどこから出たのか、新聞の種はどこから出たんだということを、一つお調べ願いたい。本人が調べられておらぬ先に、すでに新聞で書類送庁、こういう事件がございました。あわせてお取り調べをいただきたいと思います。
  122. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと今のに関連して。  石井長官のお言葉を承わっていますと、あなたの人格のほとばしりであろうと思うのですが、ほんとうに民主警察が具現しそうな感じがするんですけれどもね。実際はなかなかそうでないわけですよ。ぐれん隊とか暴力団体等には、なかなかあなたの部下は、出先機関は手をつけようとしない。ことさら逃避してるような場合もある。選挙違反にしても大物の選挙違反はなかなか手をつけないで、小物を手をつけていじめる。最近労働組合とか教職員の逮捕とか、捜査あたりについては、私らは常識をもって考えても少し過剰じゃないか、捜査過剰じゃないか、行き過ぎじゃないかと思うように勇み立ってやる。ところが、ほんとうにあなた方の方で摘発しなくちゃならぬ大物とか、そういう方面については比較的に見送っている。それからこの捜査の事情がよく新聞に出るというのは、ほんとうにこれは大事で漏れてはならぬというのは、捜査第一線に働いてる人は聞き込みか何かやってるでしょう。漏れてはならないけれども、それとなく新聞記者に見てもらったらいいというので、それとなく机の上に置いとくんじゃないかと私感じることがある。新聞記者はしょっちゅうあなた方の部屋に行ってこうして探している。ここらあたりに置いとくと、見せるわけにいかぬが、新聞記者がめくるときにちょっと目につくだろうという期待感をもってお粗末に扱うということは皆無じゃないと思うのですがね。そういう点も厳正にやっていただかんならぬ。私は石井長官の御人格を人からいろいろ承わっておりますが、私も感じて、あなたの御人格はりっぱだと敬服してるのです。答弁を承わってますとね、あなたが長官としておられれば、日本全国警察というのはほんとうに人権を尊重する民主的な警察が具現しそうなものだと思うのですけれども、実際はそうでないのですね。そういう点に私は穴があると思うのですが、それらの是正をぜひやって、先ほどから一松委員並びに大川委員からきわめて急所を皆さん方に指摘してるようですから、それらの点について、一つ格段の善処を願いたいと思いますが、いかがでしょう。
  123. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 民主警察の理想の姿の具現に、なおほど遠い状態にありますことは、私の微力にしてなお第一線に対する指導の不十分である点をいまさらのごとく反省をいたしておるのでございますが、今後さらに一そう努力をいたしまして、理想的な姿の具現に一そうの精進をいたしたい、かように考えております。警察は、たとえば選挙違反等においても、大物にはほとんど手をつけないで小物ばかりをしておるではないかというおしかりでございますが、決して警察は小物に目をつけ、大物に目をつぶるといったような態度はとっておらないのでございまして、特に選挙取締りにつきましては、一党一派に編することなく、厳正公平な態度をもって過般の選挙取締りには当ったはずでございますが、結果的に見てそういうふうに見られる節がありますならば、なお警察の協力の足りない点があるためであろうと思いますので、今後さらに十分そうした点は反省いたさしたいと、かように考えております。  また、暴力団、ぐれん隊等が最近横行いたしておるのに対しましての警察の取締り態度は緩慢ではないかというおしかりでございますがこの点も暴力取締りにつきましては、私一昨年来、強く第一線の諸君に要望いたしまして、この種の問題についてはただ単に一時的な取締り、線香花火式取締りであっては決して目的を達するものではない、長期、継続的に計画的に取締り態勢を整備して、この問題と取っ組まなければならないということを強調いたしまして、各府県はそれぞれ実情に即して取締り態勢を立てて今日に及んでおるのでございますが、その間――手前みそではありませんが、相当成果は上げているのでございますが、何分にも相手と申しますか、暴力団の組織等はきわめて根強いものがありまして、一朝一夕にこれを壊滅させるというわけに参らない現状にあるのでございまして、この点につきましては、今後ともさらに創意工夫をこらしまして、国民の御期待に沿うような暴力の一掃ということに一そうの努力を加えたい、かように考えておりますので、御了承願います。
  124. 一松定吉

    一松定吉君 最後ですが、今長官がいろいろお話しになりましたことを、私どもは必ずしもあなたがいいかげんな答弁をしておるとは思いません。誠心誠意答弁に当っていることと思いますが、どうも全国警察官のうちにあなたと志を同じくする者はどうかというと少いのです。自分の手柄にしようというようなことで乱暴な調べをした、そういうことをして調べて、そして無理に検挙しようというような態度がありまするから、こういうことはぜひ一つ先刻私がお願いいたしましたように、十分に徹底するようにブロック的にこういう人を集めて一つ訓練をするようにぜびこれをお願いしたい。それが一つ。  それから選挙は御承知通り、五月二十二日が選挙であった、もう大かた、五月、六月、七月ともうだいぶになりますが、今にまた次から次に徹底的に調べようなんといって、つまらないほんの枝葉の連中に向って手を伸ばしつつある地方が多いのですが、こういうことはもういいかげんに調べあげて、そしてその余力をもって国家の重大な犯罪の捜査に回るような方法をおとりになることが、国家治安のために大切だと私は思うのですが、そういう点のお考えはどうですか、まだやはり引き続いてこういう選挙違反のつまらない小さいものをこせこせかきまぜくって調べあげるというようなお考えでありますか。もういいかげんなところで一つ手を引いて、その余力を他の凶悪犯罪人の検挙に向って伸ばすというようなお考えですか、その点を一つ承わっておきます。
  125. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 警察官の教養につきましては、先ほど来たびたび申し上げました通りでございまして、御意見通りブロック的にあるいは全国的に適当な計画を立てまして一そう教養に努めたいと考えております。  それから選挙取締りのことでございますが、投票日からすでに一カ月半も経過した今日、まだこれから取締りをさらに強力にやるんだといったような態度をとっておるようにお考えのようでございますが、私どもは第一線の状況を聞いてみますと、今まですでに表面化しているものの跡始末と申しますか、終息のために今最後の努力をいたしておるというふうに感じておるのでございまして、おおむね一カ月半も経過しました今日でございますから、そろそろ幕をおろすと申しますか、すでに表面化しているものはこれは一応のけじめをつけなければなりませんが、そういう意味においての捜査の最後の段階にきておると、こういうふうに考えておるのでございます。これ以上新たなる材料を見つけて、さらに手を伸ばしていこうといったような考えは、第一線、各府県とも持っておらないように私は考えておるのでございます。
  126. 一松定吉

    一松定吉君 そこで、先刻小林検事長の言った例を申し上げたのですが、選挙のことについて、神様から見れば違反をしない候補者は一人もありませんよ。三百人の候補者が立てば、三百人みな違反しているのです、神様から見れば。しかしながら、そのうちでいわゆる悪質なものは、これは取締り上十分に徹底して検挙する必要があるんだ。それを一つ警察官の力で選挙違反というものをなくしようというような考えを持って検挙するということは、これは無意味です。公平な検挙というようなことはできませんから、いいかげんなところで――悪質なものだけやって、あとはもうこの程度でというところで区切りを切って、そして他の方面にその余力をお向けになるということが一番公平であり、いわゆる一罰百戒の目的を達するのであるということだけは念頭に入れて、そういうことを一つ地方警察署長なり警察部長に御訓示になっていくということが一番いいと思うのです。徹底的にやろうとすれば、神様から見れば、候補者でほとんど一人として違反しない人はないでしょう。かく言う私もやはり違反があったかもしれない。けれども、それは悪質であったか、悪質でないか、あるいは法を誤解しておったかおらないかということ、小さいこのくらいのものの違反ということは、たくさんありましょうが、そういうことを徹底的に調べなければならぬということでは、とんでもない話であるから、そういう点は、よほど御認識の上、いいかげんな程度でもって打ち切り、そうしてほかの方にその余力を向けるということの方がいいと思いますから、そういうふうな一つお考えをして、私どもの主張が正しいとあらば、適当な時期を見て、適当な訓令でも出して打ち切るということをすることがいいと思いますから、これだけを御参考のために申し上げておきます。私、質問を終ります。   ―――――――――――――
  127. 青山正一

    委員長(青山正一君) それでは高知県に発生しました人権侵害問題について、調査を行います。御質疑の方は御発言下さい。
  128. 坂本昭

    坂本昭君 先ほど石井警察庁長官から、高知県鷹原教員住宅のくぎづけ問題について説明がありました。大要、教員住宅が部落民有であること、それから教員から告訴が出されていないこと、さらに警察の勧告によってくぎづけを解いたこと、そういった説明がありましたが、それについてまず二点お伺いいたしたい。  長官のところに入っている情報というのは、たったそれだけのことであるかということが一つ。  それから、長官の御説明を聞いていると、高知県の警察当局のとった処置は、穏当である、妥当であるというふうな説明に私は聞きましたが、これでよろしいということを、長官は責任を持ってお答えができるか。この二つをまず御質問いたします。
  129. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 私が先ほどお答えしましたのは、ごく事案の概要をかいつまんで申し上げたわけでございます。詳細な報告書は高知県警察本部の方から参っておると思いますが、主管の警備局長が持っておると思いますので、もし必要でありますならば、後刻警備局長からお答えをさしたいと思います。  警察の当時とった措置が十分であるかどうかというお尋ねの点でございますが、これも先ほど申し上げました通り、事案の重要性にかんがみまして、現地におきましては、詳細調査をいたしておる段階でございます。われわれは当時の一応の状況の報告に接しておるだけでございますので、それだけで軽々に、すべて警察のとっている措置はよろしいというふうに決定的に申し上げるのはいかがかと思いますが、おおむね私の聞いているところでは、当初に警察のとった措置はまず妥当であろうというふうに聞いておりますが、詳細になお調査いたしまして、間違いと申しますか、不備な点がありますならば、それは改めるにはばかることはない気持を持っておるのでございますが、一応私どもは、当時の状況の概略の報告に接して、先ほどお答えした次第でございます。
  130. 坂本昭

    坂本昭君 どうも高知県の県警から出ている情報は、不的確であると思います。先ほど一松委員指摘された通り警察が先入主的あるいは一方的判断を持ってはならないということは、先ほど来繰り返して申されましたが、どうも事態の認識がまずきわめて不十分である。特に、長官も繰り返して触れておられたのは、勤務評定反対の十割休暇闘争に部落民、村民がきわめて感情的に激して、その結果、やむを得ない行動として出ている。ただ、そういう点に長官としては先入的な判断をとっておられるやに私たちは若干感じたのであります。いわば故意に人権保護の任務を警察官が放棄をしているのではないか、私はあなたたちのところに現場の写真があるか、あるいはさらに当時の状況がどうであるか、十分調べてあるか、もし調べてなければ、私の調査した範囲を、私の責任を持って、詳しいことは申しません、ここで若干申し上げて、そして皆さんの御批判をいただきたい。  私は、まず……。
  131. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっとその前に関連して。  今坂本委員調査結果を発表する前に、警察庁長官に伺いたいと思いますが、私が所有権を持っている家に、ある人が契約で居住している。その人の了解を得ずに、私がその居住者の荷物を出して、そして出入りができないようにくぎづけをするというようなことは、法的に許されることですか、許されないことですか。
  132. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 法的にとおっしゃいますのは、刑法上の問題としてですか。
  133. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ともかくどの解釈でもよろしいですが。   〔委員長退席、理事一松定吉君着席〕
  134. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 考えられることは、脅迫したかどうかということが一つ、脅迫の事実があればこれは脅迫罪というものは成立する場合があると思います。それから自分の建物である場合、その場合考えられることは、建造物あるいは器物の損壊罪、器物損壊罪は、御承知のように親告罪になっております。被害者が告訴をすることが要件になっております。刑法の二百六十二条に、自分のものをこわした場合には、次の場合しか刑法の適用がないのです。それは差し押えられているもの、それから有料で貸しているもの、たしかもう一つ何かありましたが、従って無料で貸しているものについては、器物損壊罪等は成立しないというようにたしかなっていると思います。こういうふうに思います。
  135. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一つ、そういう場合に、不法に住居に侵入したという罪に問われないのですか。
  136. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) もちろん不法に侵入しておれば。
  137. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 犯罪を構成しますね。
  138. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) いたします。
  139. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういう事態が起った場合に、その居住人がその中に入れないというような事実を確認した場合に、警察官はどういう行動をとるべきものですか、原則として。
  140. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 中に住んでいる者を無理やりに追い出して、出入ができないというようにした場合におきましては、脅迫罪、あるいは追い出すために中に無断で入ったというなら、住居侵入の問題、あるいはそれが何か業務妨害したという疑いがあれば、業務妨害したという問題になろうと思います。抽象的なお話でございますから、大体以上で、高知の具体的な問題につきましては、別に具体的な事情お話しの際に申し上げたいと思います。
  141. 坂本昭

    坂本昭君 ただいまの局長の御答弁によると、何か具体的に情報資料がおありのようにみえますが、先ほど長官の説明を補足するに足る正確な、責任を持って御答弁できる資料があるならば御説明いただきたい。
  142. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 御報告いたします。高知県の警察本部から参っておる事件でございます。六月二十六日県下一斎に勤務評定反対闘争が実施されたのであります。  問題になっております学校は、高知県高岡郡檮原村西ノ川小中学校であります。ここでは先生一人を残して、全員が反対闘争に参加をいたしまして休んだわけで、そして高知市で開かれた県下の総決起大会に参加をいたしたのであります。この先生が一斎休暇をしましたので、PTAといいますか、その学校の児童の父兄たちが大会を開きまして、そして一方において児童の同盟休校をやらせておるのであります。たぶん今日までこの学校は従って同盟休校が行われておると思います。なお、前々から一斎休暇の話が起りましたころから、十六日の日に父兄約三十人とそれから先生方が全部集まって、勤務評定の問題についてお話をしておられるのでありますが、父兄側から一斎休暇は実施しないでもらいたい、もし一斎休暇をされた場合には、われわれはやむを得ず児童の同盟休校をする。もし一斎休暇をした場合には、昭和二十九年にこの学校の児童の父兄たちがお金を出し合いまして作って、そしてその学校の先生方にお貸ししてある家を明け渡してもらいたいということを申し入れておる。これは口頭で申し入れておるようであります。先生方の方では、明確なこれに対する答弁はなかったようであります。  六月十七日にやはり夜九時半から翌日の夜中の一時半までの間、同じような会合が持たれまして、前日と同様の申し入れが父兄側からあったようですが、先生側の方からは回答がなかったということであります。このときに、一斎休暇に入る場合には、事前に話をしてもらいたいということが父兄側から申し入れしてあったようでありますが、二十六日の日には、事前に父兄側の言うところによりますと、事前に何らの通知もなく、一斎休暇が行われて、先生が一人残って全部高知市の大会に行かれた。そこで、同日村役場に集まってダムの問題を協議中の者とこの学校の父兄の人々が一緒になりまして、約八十人――念のために申し上げますが、この学校の関係の部落戸数は約二百戸でございます。八十名で学校の校下民大会――学校のPTA大会という意味でしょう。で、集まりまして、前々から先生方に申し入れてありました事項を確認すると同時に、これを実行しようということを決議をいたしまして、村の教育委員に対して、先生方が反省されるまで同盟休校を行う。それから住宅の使用は遠慮してもらう。現在の先生方を全部かえてもらうという申し入れを行なったようであります。六月二十七日にやはり百名ばかりが父兄が集まりまして、同様の決議をして十時ごろ代表十一名が校長の西村という先生に対して口頭でこの父兄大会の決議事項を伝達して、まあ家に入っておる先生方に対して立ちのきを要求いたしたのであります。後に文書でこの決議事項は校長先生にお渡ししておるということでございます。で、この先生方の住居は、学校の敷地に隣接をして作ってあるものであります。全部で八戸ですが、現在使用中のものは五世帯、五戸であります。炊事場と便所などは学校のものが使用できるというので、これを閉鎖する。それからそれにふろ場を加えて使用禁止の申し入れを行なったのでありますが、私の方に参っております報告によりますと、入っておられる先生方も一応これを了承されまして、そこで炊事場と便所とふろ場のくぎづけが行われたのであります。それから翌日も明け渡しを要求しまして、校長は六月二十八日中に立ちのくということを承諾をされたということであります。で、部落代表の人は、校長も承諾をしたということを入っておる先生方に告げまして、各家の出入口一カ所を残して、ほかの出入口をくぎづけにして閉鎖をした。学校への出入口は二カ所でありますが、一カ所の方は出入りができるようになっておりますが、一カ所の方はできないようにいたしたのであります。警察といたしましては、二十七日の日に駐在の巡査が学校に行きまして、校長さんに会って、父兄の人々が一斎休暇に非常に反対をしておられるので、何かトラブルでもあってはいけないので、そういう場合にはすぐ連絡をしていただきたいということをお話をしてあったのであります。で、二十七日は、当日警察の者は署からの命令で、ほかのところに事件捜査で出向いておりますが、二十八日に警察がどうも学校の先生の家がくぎづけになっているらしいということを聞きまして、そこで現場に行ってみて、これはどうも少し行き過ぎのように思うというので、教育委員及び村会議長を通じてこれは一つ撤去してもらいたい、撤去するようにという警告をし、さらに、まあ話し合いによって円満に解決をしてもらいたいということを申し入れたのであります。二十八日の三時に、便所と炊事場とふろ場はくぎづけを撤去してございます。これは土釜という教育委員が撤去したように報告されております。ところが、この土釜という教育委員が家の方の出入り口の方にお気づきにならなかったのでしょうが、二十九日に警察で念のために現場をよく見ておこう、全部うまくいっておるかどうか見ておこうということで行きましたところが、家の方は若干くぎづけが残っているというので、十二時四十分に父兄会の代表をして取らせた、撤去させた、こういうことでございます。  なお、この問題に関連いたしまして若干追加してお話しいたしますと、六月三十日に県の教員組合からオルグ団が四十名現地に派遣をされております。これは県教組としての立場を父兄に納得をしていただくために派遣されたものと思うのでありますが、どうも現地の事情を聞いてみますと、新聞に載っておる記事が部落の実情を十分に伝えておらない。まあ部落の父兄の立場からいいますとあるいは一方的な記事だということでしょうが、そういうことと、それから六月三十日に県教組からオルグ団が四十名現地に到着をしたということが相当部落の人々の感情も刺激しておるようであります。今日に至るまで対立のみぞが深くなりまして、いまだに同盟休校が続けられておるというような状況のようであります。  なお、警察といたしましては、この問題についてはあるいは脅迫罪、あるいは器物損壊罪、あるいは住居侵入というような問題も考えられますので、住んでおられる先生につきましても事情を聴取いたしております。脅迫の点につきましては、村の父兄代表は、主として校長先生を通じて話し合いをしておったようであります。校長先生、あるいは先生方に聞きましても、いわゆる脅迫というようなことはなかったということであります。それから器物損壊の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、これは被害者の告訴が犯罪成立の一つの要件になっておりますので、告訴等をされる意思があるかどうか、学校の先生方にお聞きいたしましたが、もちろん御承知のような高知県のへんぴな地方における問題でございまするし、まあ問題を円満に解決したいというようなことで先生方には告訴等をするというお考えはないと、こういうことでございます。  大体以上でございますが、くぎで打ちつけるときの状況がただいま申しましたような、住んでおる人の意思を反対をまあ押えつけて無理やりにくぎを打ちつけたという状況でもない点が若干見られる。それから器物損壊の点につきましては、告訴の意思がないということがはっきりしておる。脅迫という点につきましては、主として校長と父兄との話し合いであったということ等見まして、刑事事件としてこれを取り扱うことが果して適当であるかどうか。また、現地における、そういうふだんは平穏な一地方における学校の問題でございますので、関係者はおそらく事態の円満な解決を希望しておられるものと警察では考えまして、現在までのところ、いわゆる刑事事件というような意味の捜査はいたしておりませんが、事件の経過につきましては、地方の警察で十分の注意をもって推移を見守っておると、こういう状況でございます。
  143. 坂本昭

    坂本昭君 円満に片づけば人権がどんなに侵害されてもいいということは、そういう言葉は私はどこにも通用することはできないと思います。  まず、今の情報というものはきわめて不的確であります。第一、この重大な問題に関して責任ある県警の本部長も現地にはもちろん行っておりません。それからまた、所管の一番責任ある高岡郡の中心都市である須崎市の署長も行っておりません。今の報告はおそらくは警部補並びに駐在所の報告だと思うのです。非常に大事な点が欠けているのです。私は一々こまかいことは反駁しませんが、まず大事な点でし上げたいことは、第一にくぎづけこ関して事前に駐在所では知っておったということですよ。これは重大なことであります。今のあなたの報告の中にも書かれておりますが、すでに事前に駐在が承知しておった。ただし、くぎづけをするということを口頭をもっての校長に対する連絡はそんなに前からあったのではありません。二十七日の朝、一斎休暇闘争のあけた翌日に村民は非常に感情的に激高して、そうして一斎休暇に対して陳謝と、それからこういうことをされる先生では困る、一つ交代してもらいたい、そういう要求をもって校長のところへ押しかけて行った。そのときにも別にまだくぎづけなんかしていません。しかし、とにかく興奮した状態が村下にあったということは事実です。それからあなたの方では部落民有の住宅ということを言っておられますし、特に学校に近接した学校の外であるということですが、実は校内の敷地の上に建てられた建物、ただし、その建物については県なり国なりが補助を出さないで校下民がこれを建てたということは事実です。従って、これは後ほど文部省に伺って、こういう寄付によって校内の敷地に建てられた場合にはこれは一体部落民有だか、あるいは学校のものだか、村のものだか、そういうことも検討しなければならない。今のいろいろな所有権についての基本的な点も明らかにする必要がある。ただ、そういう状態の中でくぎづけをしたのはもうお昼近くなってからくぎづけをしている。なるほどあなたの言われた通り、先生との間にいろいろな交渉をした。しかし、交渉の間に、くぎづけをしてよろしいです、私の家をくぎづけをしてしまって、水も使えない、ふろにも入れない、台所で炊事をすることもできないというような、そういうことをよろしいという先生はあるはずはありませんよ。むしろその激高した、いつ人身に対する危害が加えられるかもしれない場合だから、警官は常にその場におって危害が加えられた場合にはこれを守るというのが警官としての当然の態度であったはずだと思う。実際はそういう交渉をして、そうして、いわば交渉がととのわなかった。ととのわなかったのはもう午後です。ととのわなかったので、村民たちは、しからば便所、炊事場、ふろ場、これはくぎづけをしますということで、先生たちは台所の炊事場のなべからかまから、くぎづけされたら困りますから、急いでとって返して、それを取り出そうと思ったところが、もうそのときには、なべやかまは部落民が全部勝手に持ち出してしまって、全部くぎづけになっておった。つまり、無断で中のなべやかま類は全部持ち出してしまったという事実があるのです。それからさらに大事なことは、その日の午後になって九名の人が来て、徹底的に、中へ入ることのできない、使用のできないような状態にしました。今私はここに写真を持っております、見て下さい。これはもうとにかく相当なものですよ。人間なんか通れっこありません。もちろん人が通れぬことはない、犬のようになって、下をくぐったら通れることのできる場所が一カ所ある。一カ所あるけれども、人通りに面したところで、女の先生たちが犬のようになってはって行って下をくぐるなんということが許されますか。当然これは重大な私は人権侵害だと思う。のみならず、先生たちが補給米を買いに行こうとしたら売ってくれません。それから出産後十一カ月の女の子を抱いた先生がおられたのですが、今の水の出るところのふろと炊事場をくぎづけされたために、二日間おむつをかえることもできなかった、こういう事実があるのですよ。こういう大事なことについては、あなたの部下である警官は一つ報告していない。そしてさらに、二十八日の日にこの校下民たちは、やはり非常に激高しておって、早く明け渡してもらいたい、早く出て行ってもらいたいということを要求しました。しかし、これは非常な不穏な事態であって、そのときになって初めて村の教育委員は、これはこういうことをやっておったのでは一大問題であるというので 今指摘された土釜という教育委員、その方が二十八日の午後三時になって、これはいけない、実は前日二十七日の夕方、教育委員会ではこれは即刻取りはずそうということをきめたから、私が取りはずしますということを言って、土釜教育委員が、一部のさくと便所のさくを取りはずして、炊事場のくぎを抜いて使えるようにしたのです。しかしさらに激高した村民たちは、その後、二十八日の夕刻に学校の中へ入って行って、学校の中の電話、この電話もおれたちが寄付をして引いた電話だから、これは使わせないと言って、電話の前にすわって、二時間以上電話を不法占拠しているのです。こういうことは警官は一つもお知りにならない。学校の先生の住宅をくぎづけしただけじゃない、学校の中へ入って行って、電話を激高のあまりに二時間も使わせないようなことをしたのですよ。そしてあくる二十九日の日の朝になりまして、校下民たちもようやく激高からさめたのでしょうね、その中の一人が、私が責任を持つと言って、一応今までの大多数のくぎをはずし、さくを取りのけたのです。そのときに、一人で責任をとれるかと言って学校の方では質問もしております。が、いずれにしてもくぎはのけました。そののけたあとに、十時ごろになって駐在の警官が御到着になっているのです。そしてその日の午後一時半になって、いよいよ校下民の人たちが三人来られて、残っておったくぎも何もかも全部撤去しました。その撤去したあとにまた警官は、それに追い討ちと言ったらおかしいのですが、追い討ちをして、全部のけなくちゃいかぬ……。ですからいつも警官はうしろから見ているだけなんですよ。うしろから見ているだけであってまあ幸いにしてこの学校の先生方が、ひどい目にあつたけれども、歯を食いしばって、われわれは別に村の人に恨みはないのだ、それよりも勤務評定を強行する権力に対してわれわれは反抗しているのであって、村人には反抗しているのでないのであるからと言って、だからもちろん告訴もしません。しかし、歯を食いしばってがまんをしてそのときに事態を円満に解決することをこいねがっておる、一方においては、人権がむざんにしいたげられていっているじゃありませんか。結局最後に、警部補が来て、片づいたあとに、さあ全部取ってしまえと言って片をつけたのです。しかし、実はまだ一、二本のくぎは窓に残っておるようであります。これはこの前後を通じての実情でございます。私はこの実情が十分に警察庁にも届いていないということは、これはあなた方の情報網がいかに怠慢であるかということを、これを指摘せざるを得ないのです。高知県の県警本部長も知っていないですよ。何で知っているかというと、新聞を通じて知っているだけであります。私は新聞の切り抜きを持って来ましたけれども、新聞を通じて大体事態がどうなっているかということを知っているだけなんです。今文部大臣も来ておられますから、あとで伺いますが、こういう重大な事件が実は高知県下には、二十七日以後全県下十九校起っている。そういうふうな場合において、警察当局のとった処置というのは今のようなことしかとっていないのです。私は今の点について、長官並びに局長が今法的に説明をしておられましたが、これが人権じゆうりんでないか、あるいは住宅侵害、住宅侵入にならないか、御説明いただきたい。
  144. 一松定吉

    理事一松定吉君) 坂本委員にちょっと申し上げますが、文部大臣が急な用事があって四時三十分までしかおれないというのですが、なるだけあなたの質問をこの四時三十分までにあげるようにできますならばしてもらいたい、四時三十分までもうあと二十分……。
  145. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 文部大臣なら僕が聞きましょう。
  146. 一松定吉

    理事一松定吉君) 四時半過ぎには退場できるような質問をやってくれませんか。矢嶋君に許していいですか。
  147. 坂本昭

    坂本昭君 文部当局に、今私一たん触れましたが、まずこういう高知県下の事態を知っておられるか。今警察庁長官に聞きましたら何にも知らないのです。何にも知らないと、いうと少し語弊がありますけれども、非常に大事な点を知っておられない。で、文部当局では、高知県下に六月の二十七日以後一体同盟休校がどれくらいあって、どれくらいの生徒が休んだか、そうして現在その後どういうふうな経過をとっておるか知っておられるか、それから知っておられるならば、当然同盟休校は、とにかく義務教育の小中学校だけです、これは。その子供たちが一週間以上も休んでいるのです。当然保護者に対して義務履行の催促をしなくちゃいかぬ、そういうことを文部当局は十かやっているか、そういう点についてお尋ねしたい。
  148. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 同盟休校のあることは承知しております。ただ何校とか何人くらいというところまでは存じておりませんけれども、一応同盟休校のあることを承知しておりまして、これに対してはなるべく早くそういう事態を解除しまして、正常な学校運営ができるように指導いたしております。
  149. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっとその点について。高知県教育委員会から、何月何日報告があっておりますか、おりませんか。
  150. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 随時電話で連絡報告をしておりますし、また、高知県の関係官が上京いたしましていろいろと事情は承わっております。
  151. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 文書報告は来ておりますか、それを明確にして――文書報告があったならば、その内容を答えて下さい。
  152. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 文書報告ではございません。二十二日以後の分は主として電話連絡と係官の上京等によって説明を聴取しておる程度であります。
  153. 坂本昭

    坂本昭君 説明を聴取じゃなくて、もう少しどの程度、一体今何人休んで、幾つの学校が同盟休校をやっておるか、ほんとうに知っておられますか。
  154. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 同盟休校をやっておるということは聞いております。
  155. 坂本昭

    坂本昭君 やっておることを聞いておるという――普通、感冒がはやって、千人くらい子供が病気で倒れたような場合には、これはやはり重大な問題として、文部当局でもまた厚生省と連絡して対策を講ずるはずですよ。それが十九校も続いて同盟休校があり、さらに同盟休校が連鎖反応で起る可能性もあるという状態、そういう義務教育における大事な段階において、あなた方、聞いておりますということだけでは、私は済まされないと思う。また、県当局からはどういう責任ある人が来て説明をいたしましたか。また、どういうふうにこれに対する事態処理を文部省としては指令いたしましたか。
  156. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 学事課長が参りまして説明をいたしております。それから私どもとしてはすみやかに正常なる学校運営のできるように指示しておりす。
  157. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 ただいま坂本君の質問に対して、局長は高知県の方からもだんだん報告が文部省の方に参っておるということを答えておりますが、大体文部省の方にきておる報告によって、高知県の方の勤務評定の事件がどういうふうな情勢にあるかということの大体の報告を願いたいのですが。
  158. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 高知県は非常に憂慮すべき事態ではないかと私は思っております。特に和歌山に次いで高知県に対しては日教組が非常に反対闘争をここに集中しておるような実情でございますので、高知県においていろいろ不祥事件も起きておることを聞いておるわけであります。特に県の教育委員会といたしましては、たしか六月の七日に評定の規則を作りまして、その後二十二、三日のころと思いますが、内容決定いたしまして、勤評が九月、十月、十一月とこの大体秋に評定書を提出する、これはもちろん教育長の定めた日となっておりますが、大体四国ブロックは共同で歩調を進めておりますので、教育長の定める秋の日に評定書を提出する、かような段取りになっておりますが、その後、内容及び規則をきめてからこれが非常に熾烈な撤回闘争が展開されておりまして……。
  159. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 局長、あなたはあとまで残られるのだから、文部大臣から先にやって下さい。
  160. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 それじゃあなたの方から文部大臣に質問があったら……。
  161. 坂本昭

    坂本昭君 どうも今の局長の御答弁では、どうも事態をはっきり知っておられないようだし、わざとその点をぼかしておられるのかもしれないが、大臣はこの高知県の特殊な状態、これについてどの程度知っておられますか。そしてそれについてどういうふうな御方針を持っておられますか。
  162. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 勤務評定の実施という問題をめぐりまして、高知県下においていろいろな混乱と申しますか、紛争と申しますか、さような事態が起っておるということは私も報告を受けております。非常に心配をいたしておる次第であります。できるだけ早く平静な状態になりまして、物事が進んでいくことを心から期待しておるわけであります。詳細な一々の点につきましては私も格別な報告を受けておりませんが、問題は憂慮すべき事態にあるというふうには承知いたしておるわけでございますので、下僚に対しましても、高知県の当局に事態の平静化あるいは正常化ということについて努力するようにという趣旨のことを伝えてもらっておるわけであります。
  163. 坂本昭

    坂本昭君 実は高知県のこういう事件を起しておるところは、非常に山間僻地のきわめて封建性の強いいわば恵まれないところの人たちであって、大臣は勤務評定さえ強行すればそれでいいとお考えになっておるのかもしれませんが、われわれとしては、勤評問題は勤評問題、そしてそのために休暇闘争をやっておることはやっておることで、これは一つ批判し、判断する、ただ村の人たちは先生が一日休んだから子供たちも一日休まそう、そうして子供をいわば闘争の共に供しておるのです。子供を学校にやったら先生に取られる、その子供を学校を休ますことによっておれたちの権利を主張しよう、そういう考えを持っておるような非常に考えの素朴な人たちです。ただ現実の問題としては、大事な義務教育が二日なり三日、さらに今日ではもう一週間を越えて休まされておる、しかもそれについては子供は行きたい、行きたい子供を途中で親でない別の人がそれをさらって、この学校に連れていかないで別のところに連れていくという、こういう事実もある、私はこの憂慮すべきことについて文部当局として、事務当局として当然すみやかに処理すべきではないか。何か勤務評定の闘争は闘争で大体根本的に間違っているんだから、それに対して親が何をやろうとも傍観しているということでは、それは子供に義務教育を施行させようとする文部当局としては、私は怠慢のそしりを免れないと思うんです。実は高知県当局においてもその点私はぼんやりしている、だから報告も足りないかもしれない、また、文部当局も今お聞きをすると明白な考えを持っておられない。あなた方の義務は教組とどうこうすることではありません、親たちにどうこうすることではありません、子供にともかく教育を授けるということが文部当局の義務だと私は思う。それに対して大臣として明確なお答えをしていただかない以上は、日本の、ことにこの高知県の教育というものはきわめて危殆に瀕しておると思うんです。その点、もう少し明確な御答弁をいただきたい。
  164. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) お話通りに何よりも大事なことは子供の教育をどうするかという点にあると思うのでございます。文部省といたしましてももちろんそうでございます。地方の教育機関にいたしましても、また、学校の先生方にいたしましても、あるいは父兄の諸君におかれましてもすべては子供の教育をうまくやってゆくという方向に向ってお互いに努力しなければならないと私はさように考えております。今回の問題にいたしましても、坂本君は勤務評定を強行するというふうにおっしゃいましたが、私どもこれを強行するとか、押しつけるとかいうふうな気持でこの問題を取り扱っておるのではございません、なすべきことをなす、こういうようなつもりでやっておるのでございますから、これを中心にいたしまして、一方においてはこれを拒否する、あるいは実施を阻止する、こういうふうな動きがあり、また、その動きに対しまして非常な不満の意を持っている国民諸君も相当おるわけでございます。そういうふうな関係から、地方におきまして一番不幸なことでありますけれども、学校の先生と父兄との間にトラブルを生じておる、かようなことになっておると私は思うのでございます。非常に残念なことでございます。一日も早くそういう事態は解消いたしまして、勤務評定の問題にいたしましてもこれを論議するにはおのずから道があると私は思う、その筋道を通って話し合いが行われるということが一番望ましいと思うのでございます。これまでの段階におきましは、どうもそういう点につきましは、私は教組側におきましても相当考え直してもらいたい、こういう気持がしてならぬのであります。お話通りに、子供の教育ということを考えます場合に、みんながそのつもりになって協力して参りませんというと、うまくいかぬと思いますので、私はその気持でもって地方を指導して参りたいと思っております。
  165. 坂本昭

    坂本昭君 私は今大臣から勤務評定についてのいろいろなお説を聞こうと思っているんじゃないんです。それよりも現実義務教育の小学校、中学校の子供たちが同盟休校で休んでいるというこの事態をどうやってすみやかに解決するかということをお聞きしているんです。どうもその点につて勤務評定問題について先生と父兄とがけんかしておることはまことに嘆かわしい事実である、私はそのことよりも、一体義務教育の子供の休校をどうしてすみやかに元へ戻すか、というのは今のような大臣並びに局長のお答えでは、積極的なこの義務教育に対する皆さんの熱意というものが少しもうかがわれない、むしろこういう問題を警察の処理にまかす、そういう事実が実は現われているんです。先ほど警察庁長官説明されましたが、この事件が起ってから七月の三日の日に高知県警は一週間以上やることは違法であるということを学校教育法に基いて休校しているところの父兄たちに警告を発しているんです。警察の方が警告を発して、教育委員会の方はぼう然としてなすところを知らない、こんなおかしな教育はないですよ。私が申し上げているのは、警察警察だと、警察は人身を保護すべきであって、教育についてとやかく言う必要はない。私はその点は、またあと警察の方に指摘をしようと思いますが、大体文部当局はこの問題について全部を警察にまかしておいて、先生とお父さんたちのけんかだからそいつはやらしておけ、そういうことでは義務教育は私は遂行できないと思うんですよ。その点を私は何度もお尋ねしておるのであって、もしほんとうにこのことを憂えるならば――私は今ここで勤務評定のことをいいとか悪いとかいって大臣と議論しておるのではありません。それよりも千名をこえる子供たちが同盟休校しておる、この事実について、さらにだんだん広がるかもしれないということについて、すみやかに義務教育を担当しておる文部当局としてどう処理するか、そのことを私はお尋ねしておるんです。明確なそれについての御方針を伺いたいんです。
  166. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) われわれといたしましては、先ほどお答え申しましたように、教育の正常化を望んでおるわけでございます。教育委員会当局者に対しましても、その趣旨において善処してもらいたいと思っておるわけであります。
  167. 坂本昭

    坂本昭君 それでは大臣並びに文部当局にお尋ねしますが、具体的にこういう事態がまだ引き続いて起っておる、それについての詳しい数、それから現在置かれておる状態をよく調べていただいて、そうして具体的に文部省からは県当局に対してどういうふうな御措置をなさるおつもりですか、具体的な方法を一つ説明いただきたい。
  168. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 御注意もございますので、なおよく事実を詳細取り調べまして、その上において善処いたしたいと思います。
  169. 一松定吉

    理事一松定吉君) もう文部大臣になるたけ簡単に……。
  170. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 朝から要求しておるわけですから簡単にやりますから……。大臣に伺います。地域の住民が集団をなして学校の教師に対してかくかくの教育をやってほしい、そういうことを教師が了承せざる限りは子供を登校させない、こういうような出方をすることは認められることですかどうですか。私は教育委員会の方々が、学校の教師に対して教育内容について、あるいは道徳教育をやってほしい、あるいは理科教育を振興してほしいというような要請をすることはけっこうだと思う。しかし、今の教育立法の立場から考えるときに、地域住民の人が直接団体交渉の形で学校はこういう教育方針でやれ、それを了承しなければわれわれの子供は登校させない、かように教員側に団交を持ち、それに署名捺印を要求するという形態は許されることか許されないことか、どういう見解ですか。
  171. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) いわば父兄の立場から学校教育に対しましてそれぞれ重大な関心を持っておると思います。従いまして、こういうふうにしていただきたいとか、こういうことを希望するということはそれはあるかと思いますけれども、今お話になりましたような形において迫っていくというようなことはもちろん行き過ぎだと考えます。
  172. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に、居住民の方が、先生方を相手に組合運動を一切やめなさい、それから教員組合に入っているのを脱退しなさい、これを了承しましてこの覚書にちゃんと署名捺印しない限り、われわれの子供は学校へ出さないといって、学校の教育は麻痺状態に陥る、かような態度で住民が学校教育当事者に当ることは妥当と考えますか、いかように考えますか。
  173. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 今のお話のような事柄につきましては、現に組合というものが認められておるわけでございます。従って、組合を否定するとか、組合から脱退しろとかいうようなことを言うのは私はそれは行き過ぎだろうと思うのであります。ただ問題は、父兄の側からごらんになりまして、いろいろ御希望があると、そういうふうな御希望なり御意見のあるというものを先生方に伝えるということについては、一がいにこれは私は悪いとはいえないと思います。そこにお互いにやっぱり仲よくやってもらわなければならぬはずのものでありまして、何も言っちゃいかぬというわけにいきますまいけれども、おっしゃったような事柄でありまするならば、私はこれは行き過ぎだと思っております。
  174. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 明確に大臣が答弁しなければ、私は本委員会から退場することを許しません。  多数の力で、人が集まって、組合を脱退しなければ子供を学校にやらないと言つて署名、捺印を強要する、こういうことは職員団体結成の自由を否定しており、地公法五十二条の私は違反だと思う。行き過ぎといより違反だと思う。あなたは法律学者ですから明確に答えて下さい。違反だと思うのです。それからまた、その組合を脱退する、あるいは学校長が役員ならば、それをやめなければ来年の三月の異動期に転任させる、その転任することを了承せよと署名、捺印を強要するということは、団体に入っていると入っていないとにかかわらず、同等の扱いをしなければならないという地公法五十六条の明白なる違反だと私は思うのですが、法律を専攻された文部大臣とされてはどういう御見解ですか。明確に承わりたい。
  175. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) さような一体事実があったのかなかったのか、私はよく承知いたしておりません。
  176. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 事実があったらどうしますか。
  177. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 具体的の問題につきましてはお答えを保留したいと思いますが、あなたのおっしゃたようなやり方でこれを強行、強く迫っていくというようなことは、これは適当でないと思うのであります。従いまして、そういう点については父兄の方々も、何といいますか、行動が、らち外に出ないように、適当な行動をとってもらいたいと私は思うのであります。問題は、具体的の場合になりまするというと、何がそうせしめたかというようなこともあろうかと思います。そこいらの点はお互いによくやっていかなければならないと思うのであります。
  178. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は現われた事象だけを聞いているのです。
  179. 坂本昭

    坂本昭君 関連して。場合によればやむを得ないというふうな大臣のお話ですけれども、じゃもしその脅迫による署名、捺印をして、さらにそれに教育長が保証人として捺印をしたというような場合、これは一体どう法的に御解釈になりますか。
  180. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) いわゆる法律論というふうなことから申しますれば、私は適当でないと考えております、そういうふうないき方をするということは。問題は具体的な現実にある問題をどういうふうに解決していくかと、こういうふうな意味合いにおいてものを考えた場合には、お互いによく話し合って、父兄がそこまでやるということにも何か私は理由があろうと思う。理由なくしてそういうむちゃなことをやるはずはないと思う。そこらの点は双方ともによく考え、行動については反省をしていただきたい、かように思うのです。法律論から申しますればお説の通りであります。
  181. 坂本昭

    坂本昭君 そこに何か父兄に理由があるだろうからやむを得ないということは、先ほども警察関係の人もそういうようなことを言っておりますが、それで一体法治国家として立っていくところがあるのですか。
  182. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 私はやむを得ないというふうに申し上げておるのじゃございません。
  183. 坂本昭

    坂本昭君 今不適当だと言われましたけれども、これは不当行為なんですね。その点は大臣御承認になりますか。
  184. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 事実を詳細にきわめませんと、そこまで私ははっきり申し上げかねます。
  185. 坂本昭

    坂本昭君 しからば、もしそれが事実であるとするならば、皆さん方いつもおっしゃっておる順法精神でやると、法に従ってこの問題については的確なる、かつ、厳格なる御処置をおとりになられると、そういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  186. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 明らかに違法なことをやっておるといたしますれば、これにつきましては十分考え直してもらわなければなりません。その意味におきまして、地方の教育委員会に対しましてはよく指導してもらいたいと思っております。
  187. 坂本昭

    坂本昭君 実は私たちこういうことで大臣や局長と議論をしたくないのです。しかし、きわめて憂慮すべき事態が発生して、しかも皆さん方が怠慢にも放置しておられる。だから私たちは重ねてこういうことを申し上げておるのであって、事態はむしろ、今大臣がそういうような事実はなかろう、村民が激高したために先生と父兄とがけんかしていろいろなトラブルが起っているにすぎないだろうと言われていますが、これは事実をもっとよくお調べ下さい。実は私はもっと教育上重大な事件が続発していると思う。そらしてこれは単なる政治的な問題よりも、義務教育を遂行するというあなた方本来の立場の上において早期に解決をどうしてもしなければならない点があるのです。私はこうして皆さんにお伺いしておると、どうも皆さん方は義務教育に対して不熱心だというふうな、何か変な方に熱心過ぎるという感じがしてしようがないのでありますが、どうかわれわれのこういう批判に値しない。ほんとうに子供を愛し義務教育を施行するのに熱心な文部当局にぜひなっていただきたい。国民のためになっていただきたい。
  188. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう二、三点大臣に続いてお伺いいたしますが校区の住民が多数集まって、気に食わない学校の先生は近い将来転任させる、そのことを学校長は了承せよと、これに署名捺印せよと、それをしない限り子供は登校させないというような態度に出て、学校教育を麻痺状態に陥らせる、その仲介を市町村教育委員会当局が行うということは、私は教育の自主性と教権の確立という立場からゆゆしき事態だと考えますが、文部大臣の御見解はいかがですか。
  189. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 具体的な事実を知りませんので、それに対する……。
  190. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私が発表した範囲内においてお答えいただければよろしい。
  191. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) あなた方のおっしゃるような事柄は決して正常な状態ではありません。さようなことがないことを私は希望いたします。
  192. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 時間がないから多く聞きません。私は以上三、四点についてお伺いいたしましたが、いずれも事実です。双方とも認めている事実です。私は責任を持ってこの発言をいたしました。かような事実があった場合に、市町村教育委員会並びにまずもって都道府県教育委員会はいかなる態度をとることが正常だと考えますか、義務だと考えますか。
  193. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 市町村の教育委員会にいたしましても、また、都道府県教育委員会にいたしましても、今日の教育界の混乱と申しますか、かようなものを一日もすみやかに解決するということが私はその任務だろうと思うのであります。さような意味合いにおきまして、どこまでも努力してもらうように私の方からも指導いたしたいと思います。
  194. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 答弁不十分です。  もうすぐ済みます。先ほどの問題になっておりました檮原のくぎづけ事件にいたしましても、そのほか若干の地区に起りました私が先ほど列挙いたしましたような事件についても、いずれも市町村教育委員会はきわめて怠慢です。のみならず、むしろ共謀した形跡すらある。この市町村教育委員会に対して教育が正常化するように適切なる助言と指導とを県の教育委員会はやっておりません。私は現に教育次長に会って承わったところが、何校そういう事故が起っているか、何名の学生が今休んでおるかという、そういう数字すら教育次長はつかんでおりませんでした。驚き入りました。従って、あなた方には何らの的確な報告がきていないわけです。従って、今坂本委員の質問にも答弁ができないのですね。そういう実情です。だから私は、県の教育委員会に対して、こういう事態が起ったならば、とにかくいかなる事情があろうとも、子供の教育が即日再開されて、正常化するように努力をしなさい。また、こういう事態が起らないように市町村教育委員会は善処してほしいという文書も県の教育委員会は即刻に出すべきものだと思うのですが、それも出していない、こういう実情です。そこで私は、この矢嶋の見解が違っているかどうかということと、文部省としては直ちに私は書面をもって高知県教育委員会報告を求めるとともに、今あなたは私の列挙したのを全部認められたわけですから、その角度から適切なる助言と指導とをこの高知県教育委員会に即刻与えること。さらに先ほど私が言いましたような事実、それが事実ならば、教師は自由を制約されてそういうものに署名捺印されておるわけですから、そういう憲法違反、法律違反の取りかわしというものは一応白紙に返した形でその地域の教育が正常になるようにやるべきだという、そういう私は助言と指導を文部大臣は出すべきである、かように私は考えますが、御所見いかがですか。
  195. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 高知県内のいろいろな問題につきまして詳細に具体的な事実というものを承知いたしておりませんので、お答えしにくいのでありますから、先ほど坂本委員からお話もございましたように、高知県の当局者に対しまして詳細な報告を求めたいと思います。その報告を見ました上で、われわれのとるべき態度というものを決定いたしたいと考えておる次第であります。
  196. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 報告を求めることはそれでけっこうです。私の伺ったのは、それともう一つ重要なポイントがあるわけですね。私がさっき別挙したことは事実なんです。これは矢嶋が責任を持って言います。これは吉田本部長とも会って、吉田本部長がみずから認めておる、そういう事実があったということは。私は責任を持つ。その前提に立って事は火急なんです。これに対しても文部大臣の今の見解はここで明確に速記録に残ったわけですから、その点に沿って私は適切な助言と指導を与えるべきである、こういう形において高知県の教育が正常化するようにしなければならぬ。具体的に言って、憲法違反とか法律違反の、明らかな法律違反の形がある。教師の自由なるものが制約された形で行われたそういうものは一応白紙に反して……法治国です、日本は。白紙に反して、そうして教育が正常になる形にしなければならぬ。そういう点の文部省の見解――助言と指導を与えるということは、当然私は文部省の責任だと思う。私は何らちゅうちょすることはないと思う。その点の答弁が残っておりますから、明確なお答えを願いたいと思います。
  197. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) ただいま矢嶋君は、日本は法治国であると仰せられました。それはその通りでございます。従って、どの面と言わず、法律には従ってもらいたいと思うのであります。そういう心持はひとり地方の住民の方々のみならず、各種の行政機関におきましても、あるいはまた、先生方におかれましても、みな法律に従って行動するということが一番望ましいことであります。これに反する者につきましては、われわれといたしましては正常な状態に立ち戻るようにという指導をいたしたいと、かように考えておる次第であります。具体的な事実についての報告を求めまして、その上で善処いたしたいと思っておる次第であります。
  198. 一松定吉

    理事一松定吉君) ちょっと私は文部大臣に伺いたいのですがね、今までの質問応答を承わってみますると、教員が憲法の規定によって団結権、交渉権を運用するためにストライキをする。そうして自分らに義務づけられておる授業というものを放擲して授業をしない。そういうことは、私の考えでは教育者としての本分に反し、それはいわゆる憲法において保障されておる二十八条の団結権並びに交渉権の範囲を逸脱したものであると私は考えておる。のみならず、憲法十二条の規定によってそういうような自分義務に違反して教育を放擲するような教員の行動は憲法において認められておるものではない。私はそう考えておる。そういうときに、その法律によって就学させられておる児童の教育が放擲されておるときに、その児童の監督者であり保護者である者が、自分の児童に対して教育を放擲しておるような者に対して、お前方はそういうことをするのは不都合だ、だからしてあらためて当りまえの教育に従事してもらわなければ困ると言うことは、これは正当防衛権の行使だと私は考えておる。また、そういうことをする公務員に対しては、国民はその公務員に対して損害賠償の請求権のあることを憲法十七条において認めておる。また、公務員を選定し、これを罷免することは国民の固有の権利であるということも憲法十五条に規定してある。こういうものと比較対照して、今の生徒の父兄がそういうことをやることが権利の乱用であるか、正当防衛権であるかということは、いま少しくお考えの上で答弁すべきものではないかと私は考えておりますが、それを灘尾文部大臣のごとく、そういうことは行き過ぎである。そういうことはよくないことである、事実を調査していないから答弁ができないと言うことはどうかと思うのです。私の希望するところは、今、矢嶋君なり、坂本君の質問するところもごもっともであるが、あなた方の方でも、こういう憲法の規定等を十分に御研究の上、今そういう父兄のやり方についていいか悪いかということを、憲法上及び教育問題の各般の上から十分御検討なさった上で答弁をなさることが適当だと思いますが、いかがですか。
  199. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 具体の問題についての政府の措置ということになりますというと、先ほど申しましたように、さらに詳細な事実というものをきわめないというと、なかなか結論は出ないと思います。また、やることにつきましてもいろいろな方法もあろうかと思うのでございますが、ただ先ほど矢嶋君の御質問は、一般的抽象的な方のお尋ねのようでございましたので、そのお答えを申し上げたわけでございます。十分研究いたしまして間違いのないようにいたしたいと思っております。
  200. 一松定吉

    理事一松定吉君) 私が今あなた方の答弁を承わってみると、父兄のやり方が不法である、行き過ぎであるというようなお答えをなさっているようだが、私は憲法の解釈上から、教育法の解釈からみると、必ずしも違法とか、行き過ぎということはあるいは言えぬのではないかという考えを持っておりますから、私の希望するところは、いま少しくこの基本法等を御研究の上、その父兄のやったことが行き過ぎであるか、違法であるかどうかということをさらに御答弁なさることを、御研究の上された方がよくはないかと、かように申し上げている、だから、坂本君や矢嶋君の質問が不法である、不当であるというわけでもない。あなた方の答弁が正当であるということでもない。いま少しくこれは検討の上御答弁なさることが、坂本君、矢嶋君の質問に対しても肯綮に当る答弁ができるのではなかろうかと、かように思うから申し上げるのですが、その点は、十分に一つ御考慮の上に御答弁なさらぬと、取り返しのつかぬことになると思いますから。
  201. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 委員長は法律学者ですが、意見をまぜて伺っておられますが、もしそういうことを肯定するということになると、委員長の御見解ということになると、ゆゆしき事態が私は起ってくると思うのですが、二十六日に高知県教組の先生方がとられた行動は、ある法律学者によると、違法の疑いがある、警察庁長官は違法の疑いがあるというような解釈がある。また、やられた先生方並びに法律学者は、休暇願を出して、地公法に定められている措置要求権の発動として措置要求に参るのだから合法だ、こういう解釈もある。だからそのことが違法か、合法かということは別の角度において論議すればいいのであって、今申し上げましたように、かくかくの教育をやるということを承知せよ、あるいは組合を脱退するということを承知せよ、そうでなければ、われわれ団結の力で子供を学校にやらないと言って、学校の教育を麻痺状態に陥れるということは、その限りにおいて私は法の許されるところでないと伺ったわけであって、これは私は明確だと思うのです。だから前者と後者を何して、今の高知の一部の方々の、私の列挙したようなのは認められるのだという解釈は、これは私は、出てこない、絶対に出てこない。まだ、それが出てくるとすれば、日本の今の教育体系というものはめちゃめちゃになってしまうと思うのです。その点ははっきり私は申し上げておきたいと思います。  大臣に最後に承わりたい点は、調査をすると、高知県教育委員会に要望するわけですから、高知県教育委員会から報告は参りましょう。その報告書はできるだけ早く本委員会へ提出をお願いいたします。これ了承できるかどうか、承わりたい。  それから今の、先ほど私が列挙したような事実によって高知県の教育は麻痺状態にあるわけですが、これを正常化するためには、都道府県教育委員会並びに市町村教育委員会は私は最大の努力をする義務があると思うのですね。文部省は助言と指導権を持たれているわけですから、こういう事態が起った場合に、これを看過しているということはないと思うのですね。具体的にどういう助言と指導を与えるのか、第二点。  もう一点は、これは最後の質問ですが、私は高知へちょっと参りまして、そして即座に感じたのですが、勤務評定は必要であるという国民もあれば、必要でないという国民もある。全く世論を二分したような形ですが、今高知県の教育界が、きょうあすのうちに勤務評定をやらなければ高知県の教育が破滅するとかいうようなものでもないと思うのです。高知県政が転覆するというようなものでもないと思う。これほどの事態が起っている際に、私は一カ月、二カ月を争って勤務評定を強行することはないのではないか、かように私は考えます。ところが、文部省の圧力が強くて、もしこれをやらない場合は、これは教育長にしてみれば、文部大臣が承認権を持っているから自分の首が飛ぶ。また、文部省の御期待に沿ってこれを強行しなければ、今後学校の施設費等の補助金等をいただくときに工合が悪かろうというような考えで、あなた方のにらみがきいて、あの混乱しているのに、依然として文部省に忠勤を尽して強行せなければ、という考えであられるようですが、この点については、現状に即応した、文部省は緩急よろしきを得た助言と指導をなさるべきではないかと思うのですが、以上三点についてお答えを願います。
  202. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 高知県に対しまして、現状に対する具体的報告を求めるということは、先ほど申しました通りであります。その報告書を十分検討いたしまして私も善処いたしたいと思うわけでございます。国会の方に提出するということにつきましては、できるだけ御希望に沿うようにいたしたいと思っております。  なお、事態の正常化という問題でございますが、これにつきましては、高知県の教育委員会においてもそれぞれ私は努力をいたしていることと確信をいたすのであります。問題は、ただ勤務評定を強行するというふうに仰せになりますけれども、私は別に強行するとか何とかいうようなものじゃないと思うのです。勤務評定の実施ということに対して、日教組の諸君が協力していただけるならば、問題はきわめて簡単に片づくと思うのであります。その点については、ぜひ日教組の諸君についても考え直していただきたい。私はまあかように考える次第であります。
  203. 大川光三

    ○大川光三君 文部大臣に対する質問につきましては、先ほど坂本矢嶋両議員よりきわめて御熱心な質疑がありました。また、委員長からも御発言がありましたが、これは事実の認定と、法律の適用についてはなおいろいろ研究すべき点もあろうと思いまするから、文部大臣に対する質問はこれで打ち切りまして、引き続いて、警察当局の法律的御見解について委員会はただしたいと、かように存じますので、さようにお取り計らいを願います。
  204. 一松定吉

    理事一松定吉君) ただいま大川君の発議に賛成ですか、異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  205. 一松定吉

    理事一松定吉君) さように決定いたしました。どうぞほかに矢嶋君なり、坂本君、質問ありませんか。
  206. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 いやまだありますが、この際……。
  207. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 警察庁にちょっと質問しますが、先ほどの御報告のうちにもありましたように、教員が現在住んでおる家を、村の人たちがくぎづけにした。家はだれの所有であっても、また、だれがどういう理由があっても、人が現住しておる家屋をくぎづけにするということは、これは私は大きな犯罪と言えると思います。いろいろどの条項に該当するかということは、意見もありましょうけれども、すぐ考えられることで、暴力行為等処罰ニ関スル法律の第一条で、「団体若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、団体若ハ多衆ヲ仮装シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ示シ若ハ数人共同シテ刑法第二百八条第一項、」これは暴行ですね。「第二百二十二条」これは脅迫です。「又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ」云々、こういうことになっておるわけです。明らかにこの法律に該当すると思います。  ところで、そこにおった巡査は、告訴する意思があるかどうかと言って先生に聞いておるそうでありますから、これはそういう犯罪事実があるということを知らぬというわけにはいかない。現認しておる。ところが、そういう犯罪が目の前で行われておるにかかわらず、この警察官は黙って何もしないで、見ておる。この警察官の行為は警察庁の当局として、正当であるとお考えになりましたか。
  208. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 高知県のこの場合におきましては、暴行はないわけです。いわゆる暴行。それから脅迫という点につきましては、学校の先生方にお伺いをいたしましたが、脅迫されたということもおっしゃっておりませんし、脅迫と言うこともむずかしい。従って、私どもでも暴力行為取締り法違反の問題も検討はしてみましたけれども、今回の場合にはこれは無理である。  それからくぎづけということですが、出入り口はあけてあります。(「いや、そうじゃない」と呼ぶ者あり)出入り口はあけておいて、全然出入りできないようにはしていないわけです。
  209. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 警察の最高幹部が、そういう法律の解釈をしておられるから、世の中には暴行脅迫があの通り横行しても手が出ないのだと私は思います。村民が、わずか数家族であるところの小学校の先生を取り巻いて、数百人の村民が集まって、そうして騒いでおる。勤務評定に反対と言っておる小学校の先生に対して、反対の立場からそれを取り巻いて騒いでおる。それが脅迫でないのですか。そうしてその人たちの家をくぎづけにしておる。家をくぎづけにして、そのこと自体が暴行でないか。また、そういう騒ぎをしておるときに、これは脅迫でないと言えますか。そんな言葉じりをとらえたような解釈を、警察の最高幹部かしておって、どうして暴力行為の取締りができますか。そこを何とお考えになりますか。
  210. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 先ほど警備局長がお答えいたしましたのは、私どもの方に、高知県警察本部から参っております報告に基いてお答えをしたものと私は思うのであります。先ほど坂本委員から、いろいろ詳しく具体的のお話も伺いましたところによりますと、われわれの所に高知県警察本部から参っております報告と、相当事実関係の相違を来たしておるように、私は拝聴いたしたのでございます。従いまして、なお私どもといたしましては、現地の高知県警察本部に対しまして、再調方をお願いしまして、事実関係を明らかにいたしたいと思っております。その結果、ただいま棚橋委員の御指摘のように、あるいは暴力行為等処罰ニ関スル法律に間疑すべき事案であるかどうかも明瞭になってこようかと思います。いましばらく時間をおかし願いたい。真相をさらに詳細にかつ、正確に調査いたしたい、かように考えます。
  211. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 警察がもう少し事態の判明するまで取り調べをして、その上で、何らかの処置をとろう、こうおっしゃる。こういうのでしたら、私はこの辺にしておきたいと思いますけれども、よく警察の方は、取り調べをすると言って、そのままにすることが多い。そういうことのないように必ず責任をもって処置せられたいと思います。
  212. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今のに関連して石井さんに伺いますが、調査していただくことはけっこうですが、しかし、調査せぬでも、はっきりあなたの見解を伺うことができることがあると思う。警備局長はさっきくぎづけをすることを先生方が承認された、こういうことなんですが、一つ常識をもって考えて下さい。脅迫も何もなくて、自分の住んでいる家、お便所にも行けなくなるのですよ。水も汲めなくなるのですよ。そういうところをくぎづけするのを脅迫も、何もそういう事態がなくて、承認するというようなことが、人間社会であり得るでしょうか、どうでしょうか。承認されたから、だから問題ないのだ、こういう報告があるといって、それを警備局長はここへ報告しているわけです。そのこと自体、私は常識で考えて、あり得ないことだと思うのですが、長官はどういうふうに御判断なさいますか。
  213. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) そういう若干納得しがたいような点も含めまして、十分再調いたしました上、善処したい、かように考えます。
  214. 大川光三

    ○大川光三君 私は人権擁護局長に、ただいまの問題に関連して伺いたい。いわゆる住居のくぎづけの問題、この部分だけを取り上げて考えますると、これは法的に見て、結局PTAの方で、くぎづけをしたという側に相当な不法がある、私はかように考える。まず住居の、家屋の貸借の問題ですが、これが賃貸借にしろ、使用貸借にしろ、ただ一片の口頭、または文書をもって直ちに契約解除は、これはできません。もし住居をくぎづけしようというのであれば、適法な仮処分とか、あるいはその他の命令をもってしなければ、本件における住居のくぎづけということは、これは暴力です。その暴力に対して、いわゆる正当防衛の見地で、直ちにさようなくぎづけを、こちらも実力行使で撤回してしまうということは、私は法的に見て許されると考えるのですが、擁護局長の方では、それに対するお考えはどうかということが一つ。  それと、先ほど警察当局から、いわゆるこれは暴行でないとか、あるいは脅迫でないとかいうような御意見がありましたが、これは明らかに現行犯です。暴力による住居権侵害の現行犯です。憲法で保障されている、いわゆる財産権、住居の不可侵の問題、ないしは居住の自由という、これらの憲法上の保障を受けている権利が、暴力によって犯されている。警察官が、目の前でこれを現認しているのです。そういうときに、警察が一切手が下せないというようなことは、私はどうもあり得ないと思いますが、そういう点について、人権擁護局長の御意見を伺いたい。
  215. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) 第一点の実力行使ができるのではないかというお話でありますが、これは相当微妙な問題のように思うのであります。ただこの前提となりましたくぎづけと申しますか、今写真を拝見いたしますと、入口その他のところに板をもって入れないようにしておるようでありますが、これは確かに、この事実に基いて述べたいと思いますが、こういう一斎休暇を実行されるならば、今貸してある家をくぎづけしますというふうな話し合いがあった、その話し合いのもとに一斎休暇をしたのでくぎづけをした、こういう場合でありましても、私はこれを明らかに人権上問題となる件だと思うのであります。しかし、この場合にそれをさらに実力でもってそのくぎづけをはずすことができるか、この問題でありますが、私といたしまして、この実力行使ということはできるだけ避けたい。一方が実力行使であるがゆえにまた実力行使をやっていいじゃないか。これは今直ちに私として御返答申し上げかねるのでありますが、法的な執行でない限りは、またそれが法に基かない実力行使のくぎづけであるとするならば、私はこの場合には撤去してもかまわないのじゃないか、こういうふうには考えます。  それから第二点の問題でありますが、これは明らかに……私は今大川委員の御質問をちょっと誤解をしておるかもしれませんけれども刑法上の問題でなくて、やはり人権上の大きな問題であり、たとえ家の使用関係がどういうふうになっておりましょうとも、法的手段によらないでこのくぎづけをするということは明らかに人権じゅうりんであり、また、くぎづけに伴って何らかの刑法上の問題があれば、やはり刑事犯を伴うと思うのであります。私はこういう場合には、やはり警察官におきましても、この民事関係に介入しない限度におきまして、やはり相当人権上の問題として差しとめをすべきじゃないかと思うのでありますが、事態をもう少し研究さしていただきたいと思います。
  216. 大川光三

    ○大川光三君 御答弁のうちで、私のお尋ねいたしました点に多少かけ離れたお考えであったように思う。第二点は、少くもわれわれは憲法で保障されておる住居権あるいは財産権、住居の自由、こういう大きな権利を現実に妨害をする。しかも不適法ないわゆる暴力によって妨害をしておる、侵害をしておるのであります。そういうこと自身が現行犯として許すべからずとして警察が適当な処置をとらねばならぬのではなかろうかという質問でございますので……。
  217. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) 失礼いたしました。  ただ、私の方にも住居の明け渡し問題に関連いたしまして、実力行使の問題がよく人権問題として起るのでありますが、また、一面、警察の方が民事の紛争に直接介入されることによっていろいろの弊害を生ずる場合もあります。私の方では、できる限り、民事に関する警察官の介入ということを一つ控えるように勧告をいたす事例が多いのでありますが、この場合に果してこの暴力行為によってこのくぎづけがなされたかどうか。この点は私少し、事案を聞いておりますと、やや疑問に思う点があるのであります。もちろん暴力行為によりまして、教員の方が阻止されるにかかわらず、無理にこういうふうな行動に出た場合には、確かにこれは大きな刑法上の問題であろうと思います。
  218. 坂本昭

    坂本昭君 確かに今の点は非常に微妙な問題が含まれていると思います。二十七日の日のお昼ごろまで、校下民の人たちが先生たちと話し合って、どうしてもわれわれの要求を聞いてくれないならば、やむを得ないから立ちのいてもらいたい。その立ちのく前にくぎづけをする、そういうふうな話し合いで、先生方も、われわれはどうしてもあなた方の要求を聞くことはできない、従って、そうならばわれわれとしては立ちのかざるを得ないと言って、この場合に、最初の問題になりたときは、便所と炊事場とふろ場です。それに対してまず村民は強硬に明け渡すことを要求してきたのですね。で、この便所と炊事場とふろ場だけは、これは学校のものを使っもていいからというので、やむを得ないというので、物品を持ち出すために帰ったときには、すでに村民がもう勝手に家の中の物品を出してしまってくぎづけをしてあったのです。ということは、これはもう話し合いの結果くぎづけじゃなくて、確かに暴力です。中の物を黙って持ち出しているのです。そういうふうにお認めになりませんですか。
  219. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) まあ一つの今の御質問の抽象的な事案についてお答えをいたさざるを得ないのでありますが、私はまず、どういう状況下にありましたかしれませんが、一斎休暇をやるならばこの家を別けてもらう、即座に明けてもらう、この話し合いそれ自体が問題があると私は思うのであります。こういうふうな、これは明らかに不当な、また、人権上ゆゆしい話し合いであります。教員の方がこれを承諾されたのかどうか、これを非常に疑問に思うのでありますが、この話し合い自体がたとえありましたといたしましても、その住んでおる方の留守中に無断で、許可なくそこの住んでおられた人の私有物を外へ出すということは、これは執行吏でない、あるいは債務名義に基く執行吏でなければできないことであります。これは明らかに暴力行為と認めざるを得ないのであります。
  220. 坂本昭

    坂本昭君 今の点、便所、炊事場、ふろ場に関してのことであるということをつけ加えておきます。  しかし、今のような、たとえ話し合いがついておっても、非常に私は不当なことだと思うのですが、さらにこうした要求が、たとえば住宅を出ろ、あるいは組合を脱退せよ、あるいは教師の家庭訪問については、かくかくの場合には行ってはならないというようなことは、それぞれ教育者の思想と良心の自由を保障する憲法、あるいは教職員の組合活動を保障する憲法に違反しているのみならず、これらのことを教員に要求する場合の状態、 この状態は、実は多数の人がかなり酒を飲んで、ある場合には青年たちが木刀類、あるいはこれに類するものを持って四十人ほど集まって迫った。そういうような事実があるのです。で、こうしたことは当然私は刑法二百二十条、あるいは二百二十二条、こうしたものに私は該当するのではないか。これは一つには人権擁護局長にもお答えいただきたいし、また、文部省の当局の方にも、こういうふうな家庭訪問について特別な要求をするということは、教育方針に不当な侵害を加えることではないかと思うのですが、局長の御答弁をいただきたい。
  221. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) 今御説明のような事案でありますならば、一つの暴行脅迫罪は成立するように私は考えるのであります。この暴行あるいは脅迫罪は、私は刑法の専門家でもございませんので、法律上の明確な答弁はできるだけ避けたいと存じます。
  222. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) ただいまの家庭訪問の件でございますけれども、私どもその点について詳しく実情調査しておりませんので、十分正確な調査をいたした上で善処いたしたいと思います。
  223. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 人権擁護局長にお尋ねしますが、どうも今の御答弁が、表現が非常に巧妙と言おうか、われわれはほんとうの局長の真意をちょっと捕捉できないのですが、しかし、人が現住しておる家屋を、その人の意思に反してくぎづけにするということは、私は明らかに憲法に保障されておる住居の自由を侵害するものだと思う。ことに、刑法には住居を侵す罪というものがあります。それは人の住んでいる家に入ってきて退去を要求されて、退去をしない場合には住居侵入ということになります。それよりもこの方がもっと暴力的要素をもっており、もっと重い権利侵害だと思うのです。そういう権利侵害があるのに対して、人権擁護局長はまだこれは権利侵害については疑いがある、こういうふうにお考えになっておるのですか。そのところをはっきりしていただきたい。人権擁護局長という仕事は、いろいろのほかのことを考えないでも、国民の権利や自由が侵害されたかどうかということを頭においてお考えになったらいいのじゃないのですか。ほかのいろいろのことをお考えになる必要はない。どうもあなたのおっしゃることが私どもはっきりしない。これは人権侵害とかじゅうりんということにならないか、なるかということを私は聞きたい。
  224. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) 私はそういう場合は、刑法上の解釈は別として、人権上の重大な問題であり、住居者の人権侵害になることははっきり申し上げたいと思います。
  225. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 これが人権侵害になるということは間違いないということはおっしゃっておりますが、それならば、こういうことが行われているのに対して人権擁護局長としてはどういう措置をとられておりますか。現地ではこういうことが行われておるので、法務省の人権擁護局の出張所があちらにあるでしょう。どういうふうに措置をとられますか。
  226. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) この本件の先生方の住んでおられた家のくぎづけの問題に関しまして、私の方にまだ報告が参っておりませんのですが、こういう事態がありましたならば、私といたしましてはさっそく調査を命じまして、そうしてこれが、先ほど申されたようなことが事実通りとするならば、重大な人権侵害としてこのくぎづけをした関係者に対しまして、人権を重んずるように勧告する以外にないと思っております。
  227. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 あちらから報告の来るのを待っておらずに、こちらから督促して報告をお取り寄せになって、そうしてこれが人権侵害になるということであったなら、すみやかに適当な措置をとられますか。
  228. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) さっそく調査を命じまして、もし、この事実がはっきりすれば、勧告をいたさなければなりません。
  229. 一松定吉

    理事一松定吉君) ちょっと私申し上げますが、あるいはあなた方、事実が十分におわかりにならぬで仮定的な答弁をしているようだから、質問者の方が納得できぬのです。だからわかっておるならわかっておることを基礎にして答弁するということにせぬければ、わかぬことを前提として答弁すると、幾らしたって質問に対する答えになりませんよ。
  230. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 くぎづけ事件が、各委員から述べられたのが事実とすれば、明らかに人権侵害であるという御答弁があったわけですが、私ももう一つ具体的に伺いますが、先生方が十人から十数人、その先生方を、村民が、六、七十人から百人以上の人が、十数時間からひどい場合は約五十時間ぐらい話し合いの場を持って、そうして組合から脱退する――これは、組合を結成する権利は地公法の五十二条で保障されている。組合から脱退する、それから役職にある者は役職を去る、それからは村人の気に食わぬ人は転任することを了承する。これは、人事権は県の教育委員会にある。人事権を持たない人が、こういう条件を先生方、あなた方はのんで、署名捺印しますか、しませんか。署名捺印したら、今休ませている子供を学校に出しましよう。それを了承しない限りは子供は学校に出さない、そういう事態で一日、二日、長きは七日、八日と、学校の教育は麻卸しているわけですね。これは私は明らかに人権侵害だと考えるのです。組合を結成する権利があるのですからね。それを、この組合から脱退するのを了承しなければ、君らの教育活動は正常になることをさせぬ、先生方よりも少くも六、七倍以上、十何倍の人がここに来ているわけですから、そうして署名捺印させるというは、明らかに私は人権侵害になると思うのですが、局長の答弁いかがですか。
  231. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) 今のお示しの事実通りとすれば、私はゆゆしい人権問題だと考えます。
  232. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこであなた方の機構を承わりますが、くぎづけ事件にしても、そういうものにしても、高知の新聞にはでかでかとそういう事実が出ているのですね。あなたの出先の法務局というのは、そういう記事を読めば、これは人権侵犯のおそれがあるとして、みずから調査に乗り出す、その結果をあなた方に報告するような、そういう機構になっていないのですか。訴えもしなければ、手をこまねいて見ているという格好になっているのですか、どうですか、実際の運営は。
  233. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) くぎづけの問題に関しましては別でございますが、その他、高知県で起きました差別問題は事実かどうか、こういう問題で、人権に重大な関係のある問題が新聞に載りました場合には、情報認知をいたしまして、私らの方へ一応受理報告をして参るわけであります。しかし、ただこのくぎづけの問題につきましてはどういうものですか、報告がなかったのであります。非常に残念でありますが、私の方で、まだその点について徹底的な調査の資料を出しておらないであります。
  234. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私も現地で調査したのですが、この件については、県警察当局や教育委員会、さらに人権擁護の立場に立つあなたの出先機関等は、意識してかしないでか、私は怠慢のそしりを免がれないと思う。今日までたっても報告がないということは、厳重なる警告を出先機関に発する必要がある。そうして出先機関は即座に調査して、そうしてしかるべき勧告をなすべきだと思う。その勧告の場合、先ほど言ったような事態で、文書を交換して署名捺印さしているとすれば、その勧告の内容の中には、そういう状態で取り結ばれた文書は一応白紙に返すのが至当だと、こういう私は勧告を織り込むべきものだと思いますが、局長のお考えいかがですか。
  235. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) もう少し地方法務局からの調査報告を待ちまして――いや、むしろ、直ちにこちらが調査を命じますが、その上で、御指示のようにできる限り善処をしたいと存じております。
  236. 坂本昭

    坂本昭君 どうも私たちがいろいろと質問をしても、明確なる答弁がない。特に、われわれが出した資料について、きわめて懐疑的なふうにも思われますのは、はなはだ遺憾であります。事実は、実際私たちが申し述べた通りであり、さらに、この当時、村八分的な脅迫が村民同士の中においても行われておる。あるいは、学校へ行きたい子供を、親でないほかの人たちが、これを押えて別へ連れていくというふうな、略取または誘拐の罪に当ると思われるような事項もある。また、教師に対して、殺すぞというような暴言を吐く、そういう事項もある。また、くぎづけにしておいて補給米も売ってやらないという、そういうきわめて憂慮すべき、人権侵害のおそれが頻発している状態で、警官は何もしておらなかった。そうして、なおかつ、学校から電話を占拠するというような、そういうようなことについて、幾ら私たちが話をしても、皆さん方が明確な答弁をなさいませんから、私は、実は、当法務委員会におきまして関係者を招致せられて、徹底的な御調査に相なりたいので、そのことを私は今提案いたしたいと思います。
  237. 一松定吉

    理事一松定吉君) ちょっと皆さんにお諮りいたしますが、どうでしょうか。政府の方が事実を十分に調査してなくて、あなた方の実際に適合する御質問に対する答弁ができない。調査した上にということであるのだが、十分に一つ政府をして調査せしめた上で、さらに質問を継続するということにしてはいかがでしょうか。そうでないと、ただ、あなた方は実際を言っているし、政府委員の方では調査してないので、それは食い違いで、ほんとうの答弁ができないように私は思うのだが、今坂本さんのお話しのようなこともごもっともだと思うから、政府がもう少し調査して、政府の答弁を待った上で今のようなことにして、政府の答弁がまだあいまいで十分に事実を把握していないという場合に、坂本さんの御指示に従って、関係者を当委員会に招致した上で事実を明らかにする、こういうようにしたらどうだろうかと思うのですが、まだ、明日がいよいよもうおしまいでありまするけれども、継続で審査ができますから、そういうようにしたらどうだろうかと思いますが、皆さんの御意見を承わりたい。
  238. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 警察庁の方も、それから人権擁護局の方も、向うからの報告をお取りになって、いろいろ報告があると思いまするけれども、それはそれとして、御報告があった後に、こちらはまた参考人を呼んで調べることはできるのでありますけれども、その時期は、そのあとでもいいと思うけれども、ともかく法務委員会としては、重大なる問題でありますからして、一応参考人を呼んで調べるという御決定をしておかれまして、それで、その時期は、御報告があってその後でもいいと思いますけれども、それだけの決定はしておいていただきたいと思います。
  239. 大川光三

    ○大川光三君 先ほど委員長御発言の通り、休会中にでも委員会を開いてこの問題を検討するということには賛成であります。ただ、私が先ほど申し上げましたのは、住居のくぎづけ問題に限定して私は発言をいたしております。ところが、先ほど坂本矢嶋委員から、たとえば先生方に対して署名を取ることについて、多少脅迫的なところがあったという問題、さらに私どもが知りたいのは、たとえば教育委員を日教組の人たちがつるし上げたという問題も、これは人権擁護の立場からいうと検討しなければならぬ問題でありますので、当法務委員会としましては、住居のくぎづけ問題というように限定して、その他主として文教委員会に関連するものは文教委員会で検討してもらうということに願いませんと、何もかも法務委員会に持ち込まれるということについては私はどうかと思うのでありまして、法務委員会調査すべき事柄、文教委員会調査すべき事柄は、おのずからそこに区別があろうかと存じまするから、あげて法務委員会調査するということでなしに、法務委員会に明らかに属する調査事項だけを取り上げて御調査あらんことを願います。
  240. 一松定吉

    理事一松定吉君) ちょっとお諮りいたしますが、皆さんの御意見ごもっともだと思うが、きょうは時間もだいぶ過ぎておりまするし、今棚橋君の言うように、関係者を一応招致するかしないかをきめておいて、招致するということにきまれば、次の継続審査のときに、一つそれを招致するようにしてはどうだろうかという御発言ですが、私もそういうふうに、その期間中に政府当局の方も事実を調べて、その関係者を呼んで調べるときには、もう政府委員の方では事実を調査しておって、お互いが事実を明らかにすることができるような状況においてこの委員会をおやりになったらどうかと思うのですがいかがですか。そうでないと、お互いに、こっちの言うことと向うの言うこととちぐはぐちぐはぐで一向帰一するところを知らないようだが、棚橋君の言うようにしてはどうでしょうか。
  241. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 理事の御意見はこうなんですね。きょうこれから質疑しても、政府委員側は十分調査してないので話が進まないから、きょう政府委員側が調査することを約束したわけであるから、その調査の終られたころを見計らって、その時期は委員長におまかせしますが、その適当な時期に関係者をお呼びして、そうしてこの調査をし、政府委員の見解、対策もただすと、そしてその内容は、教育の分野にあまり入らないで、くぎづけ事件とか、本委員会関係ある主として人権関係の問題にできるだけしぼって扱っていく。こういう御発言のように了承するのですが、さようでございますか。
  242. 一松定吉

    理事一松定吉君) そういう意味です。
  243. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それじゃあけっこうでございます。
  244. 大川光三

    ○大川光三君 先ほど棚橋さんの御発言もございますが、本日の委員会で直ちに参考人を呼ぶということはちょっと早計かと思うのです。やはり法務委員会は法務委員会として理事会の席にもかけて、そうして正式に参考人を呼ぶ、もし必要とあれば文教委員会の方へもそう願って、連合審査をやるのもまた一つの方法だと思いますから、本然の法務委員会の姿に返って、理事会にかけた上で一つ決定を願いたい。
  245. 一松定吉

    理事一松定吉君) いかがでしょうか。今大川君の御発言のように、理事会で一つあなた方の御趣旨のあるところを議案として調査研究した上で、理事会できめて、そういう御趣旨を損しないようなふうに、次回に続行するというふうにしたらいかがでしょう。
  246. 坂本昭

    坂本昭君 御趣旨まことにけっこうでございますが、ただ政府の調査が大体いつまでにできるか、そのことだけ政府に伺って、あまり延び延びといつまでも延ばされると困りますから。
  247. 一松定吉

    理事一松定吉君) そこで皆さんに御相談したいのですが、明日でおしまいですから、明日というわけにいきませんから、今私は皆さんにお諮りしようとしておったが、閉会中の委員会を一応今月の三十一日と八月一日の両日に開会するようにしたらどうだろうかということをお諮りしようかと思うのですが、もしこれがいいとなれば、七月三十一日と八月一日と、相当期間もありますから、その間に政府の方で調査できるだろうし、その間に、われわれの方も関係者を呼ぶとか呼ばぬとかいうことも理事会できめてやるということならばよくはないかと思います。もし七月三十一日と八月一日だけではいかぬということならば、まだ継続審査ができるのですから、また日をきめてしてもいい。こういうことですが、どうでしょうか。
  248. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点、委員長理事でよく打ち合せいただけませんか。
  249. 一松定吉

    理事一松定吉君) それでは、今の坂本君、矢嶋君、棚橋君、大川君等の御発言に関しましては、最近に理事会を開催いたしまして、理事会においてこれを取りきめた上で、次会に継続審査するということにいたすことに決定をいたします。  そこで、本日は散会いたしますが、閉会中の委員会の予定日につきましては、一応本月の三十日と八月一日の両日に開会するということにして、そうしてその開会のときに、調査事項につきましてさらに調査をするというような事項は理事会できめたごとを実行する、かようにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 一松定吉

    理事一松定吉君) 御異議ないと認めます。さように決定いたしました。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十二分散会