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1958-07-31 第29回国会 参議院 法務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月三十一日(木曜日)    午後一時四十六分開会   —————————————   委員異動 七月八日委員平井太郎君、坂本昭君、 矢嶋三義君及び横川正市君辞任につ き、その補欠として野本品吉君、藤原 道子君、山口重彦君及び赤松常子君を 議長において指名した。 本日委員藤原道子君及び山口重彦君辞 任につき、その補欠として坂本昭君及 び矢嶋三義君を議長において指名し た。   委員長補欠 七月八日青山正一委員長辞任につ き、その補欠として野本品吉君を議院 において委員長に選任した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     野本 品吉君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君    委員            雨森 常夫君            安井  謙君            亀田 得治君            坂本  昭君            矢嶋 三義君            辻  武壽君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    警察庁長官   石井 栄三君    警察庁警備局長 山口 喜雄君    法務省人権擁護    局長      鈴木 才蔵君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判の運営等に関する調査  の件  (高知高岡檮原村における人権  侵害事件に関する件)  (本州製紙江戸川工場事件に関する  件)   —————————————
  2. 野本品吉

    委員長野本品吉君) ただいまから、閉会中の第一回の法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動につきまして御報告申し上げます。  七月三十一日付をもって藤原道子君が辞任されまして、かわりに坂本昭君が選任されました。以上であります。     —————————————
  3. 野本品吉

    委員長野本品吉君) この際、一言ごあいさつを申し上げたいと思いますので、お許しを願いたいと思います。  今度、はからずも私が法務委員長として選任を受けたわけでございますが、御承知通りの、きわめて微力非才の者でございますので、幸いに委員各位の格別な御指導と御鞭撻とによりまして、大過なきを期したいと思います。  どうぞよろしくお願いいたします。     —————————————
  4. 野本品吉

    委員長野本品吉君) それでは、本日の議題に入ります。  本日は、前国会に引き続きまして、高知高岡檮原村における人権侵害事件、並びに本州製紙江戸川工場事件に関しまする人権侵害事件議題といたします。  初めに皆様にお断わりいたしたいと思いますが、本州製紙江戸川工場事件に関しましては、本日、佐藤金蔵君、松田小松川署長外関係者参考人として招致する予定になっておりましたが、佐藤金蔵君が余病併発のため、まだ安静を要する状態でありますので、参考人出席要求は見合せることにいたした次第でございます。この点御了承いただきたいと思います。  それでは、両人権侵害事件につきまして、その後の経過、措置等につきまして、それぞれ当局から御説明を願いたいと思います。本日は、石井警察庁長官山口警察庁警備局長鈴木人権擁護局長が出席されておりますので、念のために申し添えておきます。一応当局の御説明を求めたいと思います。
  5. 山口喜雄

    説明員山口喜雄君) 先般の本州製紙の問題につきましては、警察といたしましても、当日現場に出動いたしました警察官、特に警棒使用することを命ぜられました警察官全員につきまして、警棒使用をしたかどうか、使用したとすれば、どういう状況であった一かということを調査いたしたのであります。なお、浦安漁業組合関係方方につきましても調査をいたし、その他、当日現場にい合せたと思われる方方にいろいろと事情をお伺いいたしたのであります。ただいままで調査いたしましたところでは、警棒で明らかに負傷を負わせたと認められる事案が、まだ明瞭に、はなはだ残念ではございますがなっておりません。ただお医者さんの診断にも、鈍器様のものでけがをしたのではないかと思われるという診断もございますので、警察といたしましては、負傷がどういう事情で起ったかということについて詳細に調べたいと思いまして、ただいまも調査をいたしておるような次第でございます。なお漁業組合の方につきましては、その後、人権擁護局の方で直接御調査に乗り出されましたので、警察といたしましては人権擁護局が御調査に乗り出されましてからは、私の方の調査を差し控えておるような状況でございます。大体以上が本州事件についてでございますが、なお、詳細につきましては、御質問に対しましてお答え申し上げたい、かように考えております。  なお、佐藤金蔵さんの警察留置中におきまして肋骨骨折負傷をされたのにつきまして、いろいろの事情はございましたが、レントゲン診察がおくれ、その結果、釈放が若干おくれたことは、警察といたしましてもこの点は遺憾であった、かように存じております。  高知県の西ノ川小学校、中学校教員住宅について、ふろ場炊事場あるいは便所使用をやめさせるために、あるいはまた、住宅につきましても入り口を一部除きまして、くぎづけにいたしました事案につきましては、警察といたしまして、学校長先生方あるいは村の関係方々につきましていろいろと事情をお伺いいたしたのであります。この住宅は御承知のように、西ノ川校下民——校下民というのは父兄会あるいはPTAという意味でしょう、西ノ川校下民人たちが辺地の先生方に対して、まあ何らかの待遇をいたしたいという趣旨から費用を出し、かつ、労務を提供して建築をし、従って、そのPTAのようなものの共有関係にあり、家賃は無料である。そういうようなことで、まあいわゆる使用賃借というような関係であったかと思いますが、当日のくぎづけの問題につきましては、校下民の方からこの住宅を……住宅ではございません、炊事場あるいはふろ場あるいは便所等について使用をしないでもらいたいというような申し入れがありまして、先生方も話し合いの結果、まあ家賃も出していないからやむを得ないということで、この三カ所を使用しないことについて承知をせられたように私どもは伺っておるのであります。その後の現地のいろいろな事情調査いたしましても、事を警察がいわゆる犯罪容疑というようなことで調査をすることを必ずしも御希望にもなっておられないような事情もございますので、かたがた法律的に申しましても、これがいわゆる器物毀棄罪になるかどうかというような点、あるいは暴行脅迫があったかどうかというような点につきましても、前者につきましては法律上いろいろと疑義もございますし、後者の暴行脅迫というような点につきましては、いろいろと事情調査いたしましたが、そういうような事情は明瞭にあったと言い得ない状況でございます。そういうような事情で、現地も一応静かにおさまっておると申しますか、学校も授業を再開しておられるような状況でございますので、静かな山村のことでもございますし、警察といたしましては、ただいま先ほどから申し上げましたような態度で臨んでおるような次第でございます。  なお、詳細につきましては御質問に対してお答えを申し上げたいと存じます。この問題につきましては、事案が起りました翌日、駐在の巡査がその事情を聞きまして、そうして署長からの命令によりまして村の当局あるいは校下民方々にお会いしまして、そういうことはいけないから取りはずすようにというようなことで、取りはずしをしてもらった。その翌日、現場を念のために見て回りましたところが、一カ所まだ残っている所がありましたので、さらにその点についても直ちに直すように話しまして、直してもらっておるような次第であります。なお、ふろ場炊事場に置いてある荷物を勝手に持ち出したというような御質問が先般あったかと……、校下民の人々が勝手に持ち出したということでございましたが、いろいろと事情をただしましたところ、先生方も四人同行して、一緒に手伝って荷物を出しておられるというような状況も明らかになりました。いろいろと考えまして、この事件につきましては、器物投棄罪については法律上のいろいろな問題がございますし、暴行脅迫の点につきましても、そういう事情があったと認められません。警察上のいわゆる刑事事件容疑としての捜査は一応そういうような状況で、今後の状況を見守っておる、こういうような状況でございます。
  6. 鈴木才蔵

    説明員鈴木才蔵君) まず、本州製紙株式会社江戸川工場におきます事件につきまして申し上げたいと思います。  まだ本件につきましては、人権擁護上の違憲的な結論は出しかねております。ようやく最近に至りまして事実上の認定をいたすことができたのであります。従いまして、本日は、一つ中間報告として、人権擁護局調査の結果を申し上げてみたいと思うのであります。  まず、人権侵害になるかどうかという問題は、単なるその現像の一部分をとらえて判断することはできませんので、もうすでに、十分委員各位におかれましては御承知かと存じますけれども、この江戸川工場に起きました騒動背景から、少しおさらいの意味において述べさしていただきたいと思うのであります。  まず、江戸川工場騒動の起りました原因でありますが、それは、本州製紙株式会社におきましては、昭和三十三年三月ごろ、その江戸川工場パルプ製造の新設備を設けて操業をいたしまして、従来と違った黒褐色廃液江戸川放流するに至ったのであります。江戸川投網業者などは、同年の四月ごろから、しばしば右会社に対しまして、魚介類が死滅するおそれがあるとして、同廃液放流中止を要望いたしました。また、損害賠償につきましても、会社側交渉を続けて参ったのでありますが、交渉はまとまらないので、廃液放流が、依然として続けられたのであります。五月二十四日に至りまして、千葉浦安漁業協同組合員外江戸川周辺漁業協同組合員等が、会社態度にあきたらず、工場に来集いたしました。そのうち約百名が工場に入り、廃液放出を見て憤慨いたしまして、排水渠木片石等でふさぐというような事故を起したのであります。  その後、東京都庁千葉県庁関係部局におきましても、工場廃液による汚水問題の調査に乗り出しまして、六月六日、東京建築局指導部におきましては、「水質調査の結果、魚介類に被害があるように思われ、漁民がひどく激昂しているから、黒褐色廃液放出を中止すべき」旨、会社側に口頭の勧告をいたしたのであります。会社側におきましては、その勧告を受けまして、新設備運転を一時中止するに至ったのであります。ところが、六月九日に至りまして、工場側におきましては、本社の指示によって、漁民の了解なく、再び新設備運転を開始したのであります。そのため、浦安町長などから強硬な抗議がなされまして、十日午前一時ごろ、工場において新設備の稼動を一応中止したのでありますが、なおパルプの蒸煮過程の操業というものは継続されまして、褐色廃液放流したのであります。  右のような事態に対処するために、浦安町におきましては、同日の午後十二時三十分ごろ町民大会を開きまして、「毒水放流に対して絶対反対する」旨の宣言、「毒水放流を停止せよ、損害補償を要求する」旨の決議をいたしました。事態解決の促進をはかるために、国会関係官庁及び会社工場陳情することになりまして、同日の午後一時三十分過ぎごろ、浦安町民約七百名は、町長、助役、役場吏員及び漁業協同組合長などに引率されまして、十台のバスに分乗して出発したのであります。  警視庁におきましては、多数の浦安町民が、六月十日午後三時ごろ、国会付近において陳情デモを行い、無統制に近い行動をしたという報告を受けましたので、前記五月二十四日、江戸川工場において、浦安町民などによる器物投棄事件が発生したこともあわせ考えまして、警備態勢を強化して、偶発事故の防止をはかる必要を認めたのであります。それで小松川警察署長に対しまして、国会周辺の情報を伝えるとともに、一方、同日午後四時八分ごろ、江戸川工場事務部長から、小松川警察署長に対しまして、多数の漁民陳情に来るから、警察官派遣を願いたいとの要請があったのであります。  そこで小松川署長警官隊派遣はやむを得ないとして、第七方面部長と相談の上、警視庁本部機動隊の応援を求めたのであります。それによりまして午後五時三十分ごろ、第二機動隊三個中隊及び小松川署員合計約三百名が工場に到着をいたしたのでありますが、陳情団を刺激しないようにとの考慮から、工場内食堂——これは工場正門から望見できず、かっそこから約二百二十メートル奥にあるのでありますが、その工場内食堂付近待機をいたしたのであります。  国会などの陳情を終えました浦安町民約七百名は、町民大会決議文工場側へ手交するため、バスを連ねまして午後六時ごろ当工場正門に到着いたしました。ところが、正門の鉄のとびらが閉ざされておりまして、立入り禁止の掲示板が掲げられ、かつ同様趣旨の文言を書きましたプラカードを、工場正門内から町民に向って振られたのであります。そこで、先着の町民らは、この工場側態度に憤慨をいたしまして、閉ざされた鉄のとびらを押しのけて工場内になだれ込み、他の町民はこれに続いて入ったのであります。工場内に乱入いたしました一部町民は、町長等の制止にもかかわりませず、工場内にありました石、木片等をもちまして守衛室工場長室事務室等の窓を破壊いたしたのであります。待機中の警官隊は、直ちに配備につきまして、主力は正門から北門に通ずる道路上貯水池付近阻止線を張って町民侵入を防止いたしましたために、町民と対峙する形勢となったのであります。対峙しておりました町民は、石ころ、小砂利等を拾いまして投げつけ、阻止線を突破しようとし、警官隊はこれを制圧しようとして一時もみ合いになったのであります。この際、警察官七名が投石によって負傷し、一方、浦安町民佐藤金蔵外四名が建造物侵入暴力行為等処罰に関する法律違反現行犯人として逮捕されたのであります。町民逮捕者釈放を要求いたしまして、工場内資材倉庫張所付近にすわり込みをするに至りました。そこで浦安町長らは、小松川警察署長逮捕者釈放交渉したがいれられず、依然として対峙が続けられたのであります。警官隊は午後六時五十分ごろ第三機動隊三個中隊、同七時ごろ第四機動隊二個中隊、同七時五十分ごろ第四機動隊一個中隊と増派されまして、続々と工場に到着いたし、警備態勢を強化いたしたのであります。他方町民は、小松川署長及び浦安町長の再三の退去勧告に応じませず、津捕者が釈放されるまでは帰れないとして、引き続きすわり込みを続けたのであります。この間町民の一部は、飲食のため工場外に出た者もあるのであります。午後九時四十分ごろに至りまして、第一、第二製品倉庫の間の、これは正門から約東方百メートルの地点にありますが、この第二製品倉庫のあたりの路上阻止線を張っておりました第四機動隊二個中隊前面に、自動三輪車を先頭にして十数名の町村が来集したのであります。そうして阻止線内へ侵入しようといたしたのであります。町民たち倉庫の外壁にかけてあります消火器を取りはずしまして路上に投げ、また、消防ポンプ室内から消防三輪車を引き出しまして損害を与え、路上に放置いたしました。この折、投石などによりまして警官約七名が負傷いたしたのであります。右の事態を見まして、第四機動隊副隊長は、実力によりまして町民を退去させる必要がありと判断いたしまして、午後九時五十分ごろ三個中隊約百七十名に対しまして前進を命じたのであります。同時に、第二機動隊三個中隊約百七十名も協力して行動を開始いたしました。そのうち警察官約八十八名が警棒使用して前面町民約三百名くらいを正門外に押し出して門扉を閉じたのであります。その後、午後九時五十分ごろから同十一時ころまでの間、前後数回にわたりまして押し返して参りました町民が、門のとびらを排しまして工場内守衛室付近まで侵入をいたしました。そのつど警官隊により押し出されたのであります。この間正門外より町民投石を続けましたので、守衛室窓ガラス等が破壊され、警官約二十名が投石などによって負傷をいたしたのであります。また、この際、漁民宇田川源外二名が暴力行為等処罰に関する法律違反及び建造物侵入罪現行犯として検挙されております。  こういうふうな事情のもとに浦安町民受傷をした状況につきまして、——これが本件問題点であろうと思いますが、少し具体的に述べてみたいと思います。  こういうふうな警備活動の際におきまして、参集いたしました浦安町民などのうち、負傷した者は約百余名に達したのでありますが、そのうち診断書によりまして負傷の確認された者は合計八十六名であります。右負傷者のうち、その原因の確認できるものは、町民投石によるもの相馬七郎外一名、警察官警棒によるもの、柳町金太郎外四十五名、警察官足げによるもの佐藤金蔵外二名、残余の三十五名につきましては明白にその原因が確認できないのでありますが、大部分は警察官警棒による殴打あるいは足げなどによるものと推認されるのであります。  負傷時刻につきましては、午後六時十五分ごろ警官隊町民とが相対峙しましてから、午後九時五十分ごろ警察官実力行使に入るまでに受傷した者は十数名でありますが、その後実力行使によりまして、警官隊町民正門外に排除する際に大多数の負傷者が発生したのであります。  その受傷状況は、警官隊実力行使の際、町民からの投石及び木片などによる暴行がなされたことはあるのでありますが、これは少数によるものでありまして、かつ主として工場器物に対してなされたものと認められ、多数の町民はほとんど無抵抗で逃げ出し、あるいは正門外において傍観しているところを警察官警棒後頭部をなぐられ、靴でけられるなどの暴行を受けたものと認められるのであります。  特にこれらの受傷者のうち、佐藤金蔵外五名の受傷状況の詳細は次の通りであります。敬称は略します。佐藤金蔵は同日午後六時十五分ごろ、工場会議室北側中央出入口ガラス戸ガラス二枚を足でけ破りましたところ、第二機動隊員現行犯逮捕されましたが、逮捕に当りまして警察官数名に胸部足げにされ、第九、第十肋骨骨折全治三ヵ月余の傷害を受けました。  次に、柳町金太郎は同日午後九時五十分ごろ、工場内の消防ポンプ室付近におきまして町民を制止いたしまして、警察官に対し事態解決交渉をするために奔走をしておりましたところ、実力行使となりまして、突然数名の警察官によりまして警棒で前頭部などを殴打され、頭部打撲裂傷氷裂骨折全治ニカ月傷害を受けたのであります。  次に、相馬賢二は、資材倉庫張所前におきまして警官隊と対峙しすわり込んでおったのでありますが、その後工場外に出て食事をいたしまして、同日午後九時ごろ再び工場の第一製品倉庫前近くまで戻りましたところ、倉庫の陰から出てきました警察官によりまして警棒顔面殴打を受けまして、右眼網膜震湯症全治六ヵ月の傷害を受けたのであります。この負傷によりまして目から激しく出血をいたしましたため、手ぬぐいで押えながら工場正門外富士見橋付近松の植え込みに来てうずくまっておりましたところ、午後十時過ぎ町民を追って門外に出てきました警察官によりまして靴でけられ、顔面等打撲傷全治二十日間の傷害を受けたのであります。  次に、泉沢芳雄は、警察放送車から漁民は帰えるよう放送があったため、正門の方に出ていこうとして歩きかけたとき、警察官実力行使となり、多数の警察官が喚声をあげて追いかけてきたので、正門まで逃げてきましたところ、警察官に追いつかれ、後から警棒で右の肩及び背中を殴打され、右肩打撲右腰打撲右肩甲骨挫傷全治一ヵ月の傷害を負ったのであります。  次に、相馬三郎は午後九時四十五分ごろ、工場内消防ポンプ室付近道路上においてたばこをのみながら傍観をいたしておりましたが、突然警官隊実力行使となりまして、逃げようとして後向きになった際、警官隊警棒後頭部を数回殴打され、頭部打撲脳震湯症全治一カ月の傷害を受けたのであります。  次に、工場付近の住民で、田口明和という人が、午後九時五十分ごろ、正門外富士見橋付近で、本件乱闘事件を見物いたしておりましたところ、町民を追って門外に出てきました警察官によりまして警棒でその頭部などを殴打され、頭部挫創等全治二週間の傷害を受けたのであります。これは傍観者の事例であります。  次に、問題になりました小松川警察署における被疑者佐藤金蔵に対する留置中の処遇の件……。ありますが、佐藤金蔵さんは先ほど申しましたように、出捕されましてから小松川署に引致されたのでありますが、警部補飛田俊之介の、取り調べを受けた後、六月十一日片前一時三十分ごろ被疑者として同署に留置されたのであります。その際佐藤は、飛田警部補胸部の痛みを訴えたのでありますが、当番看守巡査の配慮により、ぬれ手ぬぐいで患部の湿布を受けたのであります。同十一日午前十時三十分ごろ医師加藤哲志の来診を画け、同医師診察の結果、肋骨骨折の疑いありとして、レントゲン検診の必要ある旨を看守担当巡査部長大迫笹に告げたのであります。同十一日の生後四時ごろに至りまして、飛出警部補佐藤取り調べた際、佐藤が、わき腹が痛い旨をなお話えますので、取り調べ終了後直ちに大迫巡査部長に対しまして佐藤レントゲン検診を受け太せるよう連絡し、さらに六月十二日午後二時三十分ごろ、佐藤に対する取り調べ後、同様大迫部長に強く申し渡したのであります。翌十二日午後四時……。十分ごろになりまして、初めて大迫照査部長佐藤加藤病院に連行してレントゲン検診を受けたのであります。翌十三日午後四時三十分ごろ、その検診の結果、佐藤が第九肋骨、その後合井良太郎医師によりまして第十肋骨骨折も認められておるのであります。この第九肋骨負傷をしたことが判明いたしまして、同日午後五時ごろ、同人は釈放されたのであります。  これが大体人権擁護局におきまして認定した事実であります。ただ、この認定した事実に基きまして、人権擁護上どういうふうな違憲的な結論を出すか、しばらく御猶予を願いたいと思うのであります。  次に、高知県におきます教職員の一斉休暇に伴い発生した人権侵犯事件について御報告を申し上げたいと存じます。  先の委員会におきましてお取り調べを要求されました事件は、先ほど警察庁の方において御報告ありました高知高岡檮原村立西ノ川小中学校関係の家屋のくぎづけ事件、それから同じく高知県長岡郡大豊村村立穴内小学校、それから同じく高知県吾川郡吾北村の柳野小学校における日教組を脱退せよという一つ強要事件があったのではないかと、こういうふうな事件であります。  ごの事件につきましてもようやく調査現地におきましてできまして、まだ私の方の人権擁護局としての人権擁護上の違憲的な結論はまだできておりませんが、大体におきまして事実関係について私ら人権擁護局の調べました点を御報告申し上げたいと存じます。  この三つの問題につきましても、ただ事件そのものを表面的に見ても、人権上、事の真相を見、また判断をすることができないのであります。少し、くどくなりますが、やはり本件学校のおかれました地位、状況、そういうものの背景についてまず述べ、それから具体的に入りたいと存じます。  これはまず高知県の非常にへんぴな山奥のようなところで起った事件であることを御了承願いたいのであります。概括的に申しますと、高知県というところは自由人権発祥の地とうたわれておるのでありますが、一般に封建色が強く、山間僻地に行くに従いまして封建的思想は根深いものがあるのであります。そうして一般的に申しますと、これは少し高知県民に対して失礼に当るかもしれませんが、一般にこういう山間僻地におきましては視野が狭く、また、単純、直情的でありまして、また、きわめて純情である半面、感情が一徹であるのであります。そうして特に学校の先生——教員というものは聖職であるという観念が強く、そこで先生に対しましては無批判的にきわめて深い尊敬と信頼の念を持っております。学校に関することはもとより、教員の私生活に至るまで協力を惜しまなかったのであります。時代の思想の理解には乏しく、父兄と教員との間に大きな思想的な開きがあることは否定できないのであります。そうしてその地方の父兄は教職員の勤務評定問題をめぐる微妙な空気の中にありまして、大きな組織力を持つ日本教職員組合及び高知県教職員組合の一連の勤務評定反対運動、ことに高知県教職員組合の高知県教育委員会におけるすわり込み、高知県教育長及び同教育委員のカン詰、本年六月七日勤務評定実施決定に際しましてついに警察官の出動を見るに至った等、勤務評定実施を阻止しようとする闘争行為及びその後におきます勤務評定実施撤回闘争行為を組織の力による横暴と見て快く思っていなかったようであります。そこで、かねてうわさされておりました教職員の一斉休暇闘争につきましては学校に対して強く反対を表明いたしまして、授業を休まないよう懇請しておったのでありますが、これに反しまして本年六月二十六日、教員は一斉休暇をとりまして、高知市で行われた高知県教職員組合主催の勤務評定反対措置要求大会に参加いたしましたため、父兄は平素惜しみなく協力した純情が踏みにじられ、尊敬と信頼が裏切られたという感情が反動的な怒りとなって爆発いたしまして、ついに児童生徒の同盟休校及び本件のような——本件と申しますか、この職員住宅くぎづけその他でありますが、本件のような不祥時件を発生するに至ったと観察されるのであります。  まず、高岡郡の檮原村立西ノ川小中学校関係につきまして申し上げます。同校の小学校児童は百八十六名でありまして、中学校生徒は六十二名で、教諭ば西村校長を含めて十二名でありますが、従来校下部落でありますが、校舎建築及び運動場拡張のための費用をほとんどすべて負担いたしまして部落有の教員住宅建築いたしまして無料で貸与いたしました。その管理補修をするほか、五十万円を投じて学校に電話を架設し、その維持費を負担する等非常に協力的であったのであります。従って、校下部落民は自分たちの学校であるような観念を持っていたようにうかがわれるのであります。そこでこの学校当局は、かねてPTAの総会におきまして、勤務評定は悪法であっても法治国である以上、法は法として守るべきである、勤務評定闘争のための一斉休暇は避けてもらいたい、一斉休暇をとるようなことがあれば児童生徒の同盟休校、教員住宅の明け渡し請求、ピケを張って教員を学校に入れない等の非常事態が起るかもしれないという父兄の強い反対の意向を承知いたしておったのであります。  ところが、本年六月二十六日父兄に対しましてはもとより、児童生徒に対しましても、連絡をしないで、抜き打ち的に当直の職員一人を残して高知市において開催の高知県教職員組合主催の教職員の勤務評定反対措置要求大会に出席をいたしたのであります。このことを知りました校下民は、同日檮原村役場におきまして大会を開催いたしました。先生が今日の行為を十分に反省し陳謝するか、教員を教育委員会に交代させるまでは全員同盟休校をさせる、教員住宅使用を全面的に禁止するという決議をいたしまして、決議文を作成し、翌日の二十七日児童生徒の同盟休校に入るとともに、午前八時ころ校下部落代表者約十名が学校に集まりまして、その代表者が右の決議文を校長に手渡しました。そして校長を通じて教員住宅の明け渡しを要求いたしました。まず居住教員の承諾を得て、ふろ場炊事場便所の明け渡しを受けました上、午後十二時ころ両炊事場ふろ場の一枚戸に二寸くぎ一本ずつを打ち、これを閉鎖いたしました。さらに午後十二時半ころ住宅の明け渡しを要求いたしましたが、いれられませんので、右部落代表者は便所の両入口と便所炊事場の間の通路の上下に一本ずつの横木を打ちつけまして、それに板を交差または縦に打ちつけて閉鎖いたしますとともに、その教員住宅に入ります正門の上下に一本ずつ横木を打ちつけまして、高さ五、六尺、横二、三尺の通路を残しまして板を縦に打ちつけて閉鎖いたしまして、住宅は、各玄関の戸を南側に面しました六枚の戸を除きました周囲の戸というものは全部、戸の下側の横の棧から敷居まで一本ずつ二寸くぎを打ちつけましてくぎづけをいたしました。午後二時半ころ、住宅は二十八日午後八時までに明け渡してもらいたいと校長に通告いたしまして、一同が引き上げたのであります。  それで六月二十八日の午後二時ころ土釜鶴吉村教育委員が須崎警察署四万川巡査駐在所勤務の西岡巡査の警告によりまして、校下部落の西岡貞雄に取り除きを依頼いたしましたが、同人が正門便所の両側のさくを取り除きまして、南側の炊事場の戸のくぎを抜いただけで中止いたしました。そこで翌二十九日須崎警察署の檮原警部補派出所勤務の川田警部補の警告によりまして、午前十一時ごろ部落代表者が人夫三名を雇って残り全部のさくと戸のくぎづけを取りのけたのであります。  右のようにくぎづけせられておりました間、教員住宅の居住者は五十メートルないし七十メートル先の校庭を隔てました学校便所に行きまして、その便所使用いたしたようであります。また、炊事用の水は同じように学校炊事場から運んでこなければならない不便はありましたけれども、期間がわずかでありますので、生活上非常に困ったということはないようであります。  これがくぎづけの問題であります。この点につきましては、私は背景はいろいろ先に述べた通りでありますけれども、こういう交渉の段階におきましてその住宅くぎづけをするということは、やはり人権上遺憾の点があるように認めるのでありますが、はっきりした結論は後述いたしたいと思っております。  次に、長岡郡の大豊村村立穴内小学校PTA人たちが教職員に対しまして日教組を脱退しろというつるしあげ的な強要をしたのではないかという問題であります。このことについての事実関係を左のごとく御報告したいのであります。  この学校職員は校長山崎勝利を含めまして七名でありますが、学校当局は本年六月十八日にPTAの役員会におきまして父兄から一斉休暇を避けてもらいたい。もし一斉休暇をとる場合には、事前にPTAへ知らせてほしい。勤務評定の説明のために家庭訪問をしないでほしいという要望を受けたことがあるのであります。それとまた、校長は同月二十一日、PTA会長から勤務評定実施反対闘争のためにPTAと合議しないで、一方的な行動によって生ずる事態については、PTAは一切の責任は負わない旨の声明書を受け取ったのでありますが、六月二十六日この学校におきまして、これらの要請にかかわらず、当直の校長一人を残しまして、高知市における高知県教職員組合主催の勤務評定反対措置要求大会に参加いたしたのであります。それがために、同日学校におきまして父兄六十七名が参集いたしまして、PTAの総会を開き、二十七日児童の同盟休校をすることを決議いたしまして、翌二十七日も続会して学校側に対して、  一、日教組を直ちに脱退して勤務評   定に反対しないこと。  二、政治運動をしないこと。  三、偏向教育をしないこと。  四、父兄の総意に対しては協力する   こと。の要求事項を決議して要求書を作成し、これをPTA会長から学校に手交し、児童は同盟休校したのであります。同日、学校側は職員一同の名をもちましてPTA会長にあて、右要求書の一については、教師の自由意思を認めてもらいたい。二、三については同意見である。四については父兄と教師が話し合いの上、教育上プラスすると考えられるものについては喜んで協力する旨回答いたしたのであります。ところが、PTA会長はこれを不満といたしまして、総会に職員全部の出席を求め、校長を除く職員一人々々に対して日教組脱退を要請したのであります。それによりまして脱退を拒否した者が二名、留保した者が四名でありましたために、解決に至らなかったのであります。それでPTAの顧問格の者を交えた交渉委員が、PTA総会側と学校側の交渉に当りました結果、校長は教組から脱退する。今後勤評を問わず、教組のことに関して教壇を放棄して活動しない。今学期終了後、校下民の意に沿わない教師は円満裏に転勤すること。今後教組活動による授業放棄のある場合には、校長は職をかけてこれを阻止するという折衷案が認められまして、これを双方が承認いたしましたので、これを誓約書として学校職員全体が署名捺印し、事態を心配して来ておりました大豊村教育長長野政高、同村PTA連合会長畑山善郎がこれに保証人として署名捺印し、PTA会長に渡して本件は解決いたしたのであります。本件の解決に当りまして、大豊村教育長が誓約書に保証人として署名捺印したことにつきましては、児童の同盟休校という非常事態を避け、校下民のこの感情上の火を消すためにはやむを得なかったと、ごう言っておるのでありますが、理由のいかんを問わず、その行為は少し行き過ぎのようで、あります。また、PTA総会及びPTA会長の学校側に対する行為にはある程度の圧迫があったものと認められるのであります。なお、この校長は、本月十日、日本教職員組合を脱退いたしております。  次に、柳野小学校の問題でありますが、この学校は児童が約九十二名で、職員は北川登志男校長を含めて五名であります。非常に小さい学校であります。本年六月の十七日、校下民を対象とする勤務評定研究懇談会が開催されまして、学校側は全員出席して説明に当ったのでありますが、その際、父兄の間に、日本教職員組合及び高知県教職員組合の活動に対する深刻な批判と、教職員が勤務評定の反対運動に参加すことについてきわめて強い反対があることがわかったのであります。しかし、その意向を無視いたしまして、六月二十五日、学校側は父兄に対し、二十六日児童は家庭学習にする旨の通知をするとともに、児童に対して家庭学習のプリントを配付して、二十六日は当直の校長一人を残して、高知県で行われました高知県教職員組合主催の勤務評定反対措置要求大会へ出席したのであります。これによりまして激高いたしました校下民は、同日、部落総会を開きまして、翌二十七日から児童の同盟休校をすることを決議いたしまして、同日より同盟休校に入ったのであります。そうして校下部落民は、二十七日、さらに部落総会を開きまして、学校問題対策委員会を組織し、委員十名を選任して解決に当らせたのであります。こえて六月二十九日、事態を心配いたしました村長川村武水、村教育長川村三吉、村教育委員筒井正清があっせんの労をとることになりまして、対策委員会側からは学校側に対しましていろいろの要望があったのでございますが、あっせん者を通じて折衝の結果、結局学校側では、一、校長は日教組を脱退すること、二、今後一切組合の闘争行為に参加しないこと、三、偏向教育をしないこと、という対策委員会側の要望を入れましたので、六月三十日から児童の同盟休校を解くことになって円満に解決いたしたのでございます。しかし、この解決は口頭による了解でございましたために、対策委員会側の一部に、部落総会へ提示する都合上、容認事項を書面にしてもらいたいという要望がありましたので、学校側はこれを了承いたしまして容認事項を文書にして、それに全職員が署名捺印し、対策委員会へ渡したのでありますが、右折衝の間におきまして、対策委員またはあっせん者が教員の自由意思を侵害したということは認めがたいのであります。なお、校長は事前すでに日本教職員組合を脱退する意思表示をしておったのでありますが、まだ脱退届は提出していないようであります。  これが大体人権擁護局調査いたしました事件の全貌であります。     —————————————
  7. 野本品吉

    委員長野本品吉君) この際、委員異動がありましたので御報告いたします。  七月三十一日付で山口重彦君が辞任されまして、かわりに矢嶋三義君が選任されました。以上であります。     —————————————
  8. 野本品吉

    委員長野本品吉君) ただいままでで両件に対しまする当局からの一応の報告あるいは説明を終ったわけでありますが、御質疑のございます方は順次御発言願います。
  9. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 ただいま警察庁並びに人権擁護局の方から御報告があったのですが、人権擁護局警察庁とは立場が違うのでありましょうが、同じ事件に対しまして、人権擁護局の御報告はかなり詳細をきわめた御報告である。ところが、警察庁の方の御報告はほとんど報告と言えないくらいな簡略をきわめたものである。われわれ国会の一の委員会が、ここに人権じゅうりんもしくは一歩進めて刑事事件として取り上げることができるかもしらぬという疑いがあるから、その事実を調べる基礎として実際の事実の真相の報告を荒めておるわけでありますが、警察庁の方の御報告は単にそういう事実はなかったというだけであって、何ら事実の真相をつかむだけの報告をしておらないのであります。警察庁当局は、この国会の審議権に協力するつもりでおられるのか、あるいはまた、自分の責任をのがれるために、報告すべきことも報告せずに、そういういいかげんなことを言っておられるのか、この点について一つ御答弁を願いたい。
  10. 石井栄三

    説明員石井栄三君) 特に本州製紙の問題についてのただいま人権擁護局長の詳細な事実関係の御報告と対比しまして、警備局長の先ほど報告いたしましたことがあまり軽きに過ぎるのではないかと思われますが、警備局長も申し上げました通り警察側といたしましては、とにかくあれだけの大ぜいの負傷者を出した遺憾な事案でございますので、鋭意慎重に検討すべきことは当然のことでございまして、そうした着意のもとに努力を進めておったのでありますが、何分にも関係者である警察でやることでございますから、とかく色眼鏡をもって見られることもありますので、幸いにして人権擁護局が詳細調査をされることになりましたので、公正な第三者としての立場から、御判断を願う方がかえっていいのではないか、こういうことで、関係漁民方方についていろいろ御事情を何するということを中途から中止をいたすということでございますので、従いまして、具体的な詳細なことを御報告することを省略さしていただいたのでございまして、警察としましては、関係警察官を対象としての調査はもちろんのこと、当時の関係者、先ほど警備局長がお答えしましたように、当初におきましては、浦安漁民方々についてもいろいろ事情をお聞きしましたし、また、工場の守衛あるいは第三者の目撃者またお医者さん、こういう方面につきましていろいろと事情調査いたしたのでございますが、けがをされた人の原因につきましては、たとえばお医者さんの診断におきましても、鈍器様のものでけがをしたということは診断書に出ておりますが、さてしからばその鈍器が果してすべて警棒であるかどうかというようなことについては、なかなか確認できないという状況であったのでございます。  警察庁側の調査が、必ずしも自分の非をおおうために不利な点をかばい有利なことだけ底抜けに発表するというような態度は決してとってはおらないのでございまして、鋭意真相を把握すべく努力はいたしておりますけれども、なかなか真実を把握しにくいという状況にあることを御了承願いたいのでございまして、先ほど申し上げました通り、公正な第三者の立場にあられる人権擁護局の詳細な正確な御調査によりまして、真相が一日もすみやかに明瞭になり、そうしてまた、それに基いて警察庁側といたしまして、責任を追及すべきものは十分これを追及して参りたいと私はかように考えておるので、御了承願いたいと思います。
  11. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 事実が非常に複雑混乱しておって、真相をつかみにくいというなら、わからないことは、特に私どもはしいて聞くことはしない。わかっている、真相が明らかである程度で御報告を願えば、それでいいと思うのです。それからまた、いろいろ法律の解釈の点ですけれども、法律の解釈の点で、あなた方の方て、これは刑事事件になるとかならぬとかいってきめてかかれる必要はないので、われわれとしては、あなた方の報告された事実をもとにして、これは人権侵害になるとか、あるいはこれは刑事事件になるべきものを警察の方で放任しておくのじゃないかということの解釈はわれわれの方でする。あなた方にそこまでしていただく必要はない。ともかく今日の人権擁護局報告警察庁報告とを聞くというと、だれが考えても、警察庁報告なるものはきわめて不親切である。不親切であるということは、自分たちの責任のがれをするのじゃないかという疑いは、これは当然だれも持つだろうと思うのです。私は、まあこの事件はただいま人権擁護局の方から十分に報告がありましたので、しいてあなたの方からこれ以上の報告を求める必要はないと思うけれども、しかし、今後は、やはりこういう事件に対する調査は一警察としてはできるだけの調査はして、警察庁に非難すべき点があるかないかは別として、事実の真相だけは、報告を求められれば報告をしなければならぬと私は思う。それだけ一言申しておきますが、それにつけ加えて、さっき山口警備局長の言われた中に、これは当事者が調査をあまり希望しない様子であるということが言われておりましたが、それは当事者というのはだれのことでしょうか。
  12. 山口喜雄

    説明員山口喜雄君) 高知県の西ノ川小学校、中学校の問題と思いますが、先ほどお話がありましたように、ふだんは非常に平和な高知県の山の中の村のことでありますし、問題が落ちつきました今日、村の当局側の人、村民の方、また学校先生方も、こういう問題について警察がいろいろと調査あるいは取調べをするというよりも、まあ静かにしてもらいたいと、こういう気持があることを申し上げたのであります。  なお、ついでで恐縮でございますが、私は、先ほど申しましたように、本州事件につきましては、警察側でも、被害者につきましては、ある程度当ったのでありますが、当っております途中に、人権擁護局の方で御調査に出られましたので、これは警察側としていろいろと漁業組合方々について調査をするよりも、人権擁護局の方に御調査をおまかせした方が、その方が警察側としても、何といいますか、正しい行き方ではないかと思いまして、途中から漁業組合関係の方から事情をお伺いすることを取りやめて、もっぱら警察官関係、あるいは第三者の目撃者等について調査をいたしたのであります。人権擁護局の方では、主として漁業組合方々、さらにはあるいは警察の方の者についてもお取り調べになって、この間、両者の申すことにも食い違いがありますれば、さらに漁業組合関係、さらに警察関係についてもお取調べを、御調査を十分にしていただきまして、そして真相が明らかになることを私ども希望いたしております。その上の措置につきましては、ただいま長官がお答えを申されたのであります。
  13. 坂本昭

    坂本昭君 先ほど来の御説明をお聞きいたしまして、まことに警官が野蛮だということで非常に驚きました、特に弱い者に対して。傍観者までまじっている。しかも警棒でなぐっているということを人権擁護局の方でははっきりと指摘しておられるにもかかわらず、警備局長は鈍器らしい、警棒ではないというふうな、そういうふうな説明をして、事件をいかにも糊塗しておられることを私ははなはだ遺憾に存じました。しかしながら、私は今からは本州事件の問題についてではなくて、主として檮原村の問題についてさらにお尋ねいたしたいと思うのであります。ただ先ほど来棚橋委員から指摘せられた通り警察庁の調べの中にはどうも不十分な点、もちろん私としては人権擁護局の調べの中にも不十分な点があると考えておりますが、特に教員住宅くぎづけ問題につきまして、警察庁の御答弁を伺うと、なかなか慎重な態度をとっておられるのであります。あらゆる場合にこういうふうに慎重に、検挙だとか逮捕だとか、そういうことについても人権を擁護する意味において、常に私は慎重であってほしいと思います。しかし、こういうはっきりと私は刑事事件としても扱ってもいい、はっきりと人権が無視せられている事件についてこのように慎重であるということは、警察官としての本分を私は怠っている、そういうことを指摘せざるを得ないのであります。今の御説明を承わると、村民の行為をいかにも正当化するような、そういうふうな解釈が非常に多い。もちろん警察庁の方でも平和な村だとか、純情素朴な人だとか、そういう点を強調しておられることは、地元の人たちを評価する上においてけっこうなことであります、けっこうなことであるけれども、純情だけれども、素朴だけれども、平和な村だけれども、そこには古い封建的のものがあり、人権の無視があるとするならば、やはりその事件々々に当って、何が正しい人権であり、何が正しい人間的な生活であるかということを警察官みずからが判断を下すべき私は義務があると思う。それを傍観して見送るということは、これは慎重ではなくて私は怠慢と称してもいいのではないか、そう思うのです。特に事なかれ主義ということは、これは非常に問題であります。静かな山の中をかき回したくない、これはだれしも思うことでありますし、ただいま棚橋委員質問に、繰り返して平和な村を維持したいということを警備局長言われ、特に問題が落ちついた今日では、事を荒立てたくないということを言っておられましたが、実はそういう態度警察当局があったればこそ、問題は今日なお解決していないのであります。この点、私ははっきり申し上げております。今なおまだ未解決のまま校下民の父兄たちとは、やはりいがみ合っているのです。相変らず教員組合を脱退する、相変らず住宅を出ていけといったまま、むしろ教育委員会のある人々、先ほど名前も出されていましたが、その人たちはこの問題の初期に当っては父兄を扇動した人といえるのです。ところが、火をつけておいて、今度おさまりがつかないのでむしろ弱っているというのが実情なんです。私は先ほど来、警備局長説明を聞きますというと、先生方ふろ場炊事場から荷物を持ち出すときに四人共同して持ち出したということを言っておられましたが、これは私は事実に違反している、違っております。というのは、学校先生方は確かにこの問題をなるべく平和におさめたいので、村民とむだな紛争は起したくない、そういう気持は持っております。ですから、できるだけ忍耐をしていこう、従って、告訴などする意思は初めからありません。が、最初事件の起りました直後の、これは学校長の責任のある私に対する報告によると、今の便所炊事場ふろ場を明け渡すことに一応話し合いがきまって、そのために女の先生は物品を持ち出すため住宅に行った。しかし、その間すでに前記三カ所内の物品は持ち出されておった、これが最初の報告なんです。その後あなた方が調べたときには、こういうことではまた村人と紛争を起すかもしれないというので、四人ほど共同して持ち出したというふうに説明をかえただろうと思うのです。こういうことは何も今度のことだけじゃありません。たとえば暴力団がいやがらせをやって喫茶店の便所くぎづけでもした、そしてその中の物品を持ち出したというような事件があったときに、あとから調査に行って、便所くぎづけしたが、それは話し合いのもとにくぎづけをしたか、あるいはその中の品物は話し合いのもとに持ち出しておったか、そういうことを聞けば暴力団に対するいろいろな遠慮のために、喫茶店の店主は、いや話し合いで締めてもらったのだ、その中の物は一緒に持ち出したのだとということを答えるだろうと思う。そういうときに一体警察当局は事実がどういうことが正しいかとということを調べるためにどういう取り調べ方をしますか。初めから事柄をおさめるためにということだけでなく、ほんとうの事実を徹底的に追及する、そのためにどういう態度をもって臨まれますか。私はその点を警備局長にお伺いいたしたい。
  14. 山口喜雄

    説明員山口喜雄君) この警察の仕事でございますが、いろいろ世間に事柄が起ります。その場合に、それが刑法その他の罰条に違反するという場合には、その容疑をもって事件として捜査をする、これが一つでございます。また、そういうような犯罪容疑というような場合におきましても、これは生命、身体、財産を守るということは警察の仕事でございますから、先ほど申しましたように、勧告なり、いろいろな措置によって適当な事態の解決に努力いたしておるのであります。今回の事件につきまして、私どももこれが刑事上の事件になりはしないかということで十分に検討をいたしました。まず第一は、暴行あるいは脅迫ということがあったとしまずならば、これは暴行罪あるいは脅迫罪、暴力行為違反ということも考えられるわけであります。その点は十分に調査をいたしましたが、このうちのくぎづけの問題につきまして、そういうような事実は学校先生方あるいは村の人々の話、その他いろいろ調査いたしましても出て参りません。そこで問題は刑法二百六十条にあります器物損壊という問題が出てくるのであります。これは親告罪ではございますが、一応告訴のあるなしにかかわらず警察としては捜査はいたさなければならないのであります。ところが、刑法二百六十二条に「自己ノ物ト雖モ差押受ケ、物権ヲ負担シ又ハ賃貸シタルモノ半損壊又ハ傷害シタルトキ八前三条ノ例二依ル」、すなわち器物損壊罪が成立する。自分の物といえども差し押えを受けておったりあるいは物権を負担しすなわち担保に入っておったり、あるいは賃貸したものを損壊した場合は「前三条ノ例ニ依ル」で、器物損壊罪が成立する、こう書いてあります。従いまして、使用貸借の場合には、自分の物を無料で貸しているというような場合には、どうも器物損壊罪が成立しない、こう解さざるを得ないのであります。それから「物権ヲ負担シ」というので、そこに住んでおられますから、一応占有権というようなものはあります。一応ではありません。あるわけであります。そこでこの「物権ヲ負担シ」という中に、居住者の占有権がある場合が入るかどうかということも私たちは十分に検討いたしました。法務省その他とも打ち合せをいたしましたが、これはいわゆるここに物権というのは担保に入っているというような場合をいうのである。こういう意見でこさしましたので、遺憾ながら器物損壊罪をもって今回の事件を取り扱うというわけにはいかなくなったのであります。そうしますと、ほかにいろいろ検討いたしましたが、先ほど申し上げました警察として事件として犯罪を捜査するという面につきましては、どうも根拠となるべき法規が見当らないのであります。  そこで、そういう場合におきましても、警察としては、一般の社会生活が平穏でありますように力を尽さなければなりません。先ほども申し上げましたように、二十七日の翌日、駐在所が警告をして取りはずしさをさせ、さらにその翌日残っておりましたところをとにかく原状に回復させたのであります。従って、いわゆる事件としての捜査には困難な点がございましたが事態の一応の回復といいますか、支障のないようにすることはいたしたつもりでございます。その後、村中のいろいろな情勢も考えまして、私が先ほど申し上げましたような態度で出ているわけであります。何でもかんでも、何といいますか、警察側が一方に偏して、事件として成り立ち得るにもかかわらず、あるいはなるにもかかわらず捜査しないというようなことは決してございません。先ほど言いましたように、法律上の問題につきましても、私どもも法務省といろいろと直後に打ち合せをいたしまして検討はいたしたわけであります。
  15. 坂本昭

    坂本昭君 どうも警備局長は、事柄は非常に簡単なように解釈しよう、しようとしている形跡があります。そちらに私写真を回しますが、これはさくを十文字にかけてしまった写真です。そうして先ほど人権擁護局長の説明だと、人が立って通るような通路があけてあったような説明があったのでありますが、実は人が立って通るほどの通路はあいておりません。従って、教員の住宅に入るためには犬のようにはって通らなければならなかったのであります。この写真に現われているところでは犬のようにはっても通ることはできません。もら一つあるのは、この写真はそういうふうに炊事場もそれから使所もふろ場も締められてしまったために、教員の奥さんがこうやって道ばたで洗たくをせざるを得なかったという写真であります。こういう点は十分見ていただきたいのでありますが、さらにこうしたはっきりと便所炊事場やふろの中にも入ることができないようにし、さらに中の住居人の了解を得ないで品物を先に持ち出している。これは私はむしろ刑法百三十条の住居侵入の罪として考えるべきではないか。この百三十条として考えることができない理由はどこにありますか、御返事いただきたい。
  16. 山口喜雄

    説明員山口喜雄君) これは御承知のように、学校の敷地の一部に住宅が建っておるわけであります。で一応出入り口がございますが、へいによりまして学校と区画ができております。この住宅の中に入ったということであれば、これは住居侵入ということで問擬していく余地も私はあると思います。ところが、これは便所でございますが、便所の外からくぎを打ちつけておるというような状況で、住居侵入というのは何か私は無理じゃないかと思います。それからこの炊事場の中にあるものを出したという点につきましては、先ほどもお話しがございましたように、まあ校長先生もしょうがないからそれは一つあけましょう、こういうことで出ておられます関係、それから学校の先生も四人ほど一緒にやっておられるという状況から見まして、住居侵入ということでいくのもちょっと無理がある、私どもはいろいろ状況をよく見まして検討したのであります。暴行脅迫ということがあれば、これはもうはっきりいけると思うわけです。そういうような事情では住居侵入はちょっと無理ではないか。それから出入り口のことをおっしゃいましたが、確かに通用門が二つございます。一つの方は板を打ちつけて通行できない状況になったのでありますが、一つの方は上と横の方に木が打ちつけてありますが人が一人ゆっくり通れるようにあけてあったことは間違いない、かように考えております。
  17. 坂本昭

    坂本昭君 私、今日のような近代生活の中で、たとえ檮原村の奥地が封建性が強いといっても、この写真に見るような木さくを取りめぐらして、そうして今ゆっくり出入りができると言いましたが、実はその中へ閉じ込められた人が、そこを出入りするについては、外から見られてはまことに恥かしい状態であったということが訴えられておるのです。そういう状態の中で生活することが何ら心理的に影響を与えない、あるいはこれが脅迫にならないというような理由は、私はどこにもないと思う。しかもこういう状態に置いておいて、どういうことの交渉が行われたかというと、教員組合を脱退する、あるいは勤務評定問題に対してこれを反対するわけです。あるいはそういう教師たちは次の学期には全部かわってもらいたい、全部出ていってもらいたい、そういう交渉が行われていることから見れば、これは当然脅迫じゃありませんか。それは脅迫でも何でもない、村の中に平和を維持するためには、なるべく静かに事を済ましていきたい、そのためには家の回りにこういうさくが打たれて、そうして非人間的な扱いをしながらも事を荒立てないためにも警官傍観している、これは少しおかしいではありませんか。先ほど人権擁護局長は、はっきりと結論は出さないけれども、人権は侵されているというふうに私はその説明を聞きました。警察官がなるほどいろいろと周囲の状態を見て、慎重に行動されるということは私は望ましいと思う。しかし、こういうはっきりと、純情であるかもしれませんけれども、野蛮な行為を犯した場合に、これはしかも現行犯です。現行犯だからすぐ取り押えて、とにかくこういう野蛮な行為を制止する、そういうことは私は警官の任務であったと思う、これをその当時どういう条項にも当てはまらないといって、いろいろ検討をして、検討した証拠が十分におありでございますか、それを伺いたい。
  18. 山口喜雄

    説明員山口喜雄君) 証拠とおっしゃられますが、私自身がこれは法務省と打ち合せをいたしまして検討いたしました。
  19. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 関連、ただいま坂本委員の方から、高知県の村民がしたことは脅迫の罪になるというお話しがあったのでありますが、これは大体その人の居住しておる家を、その居住者の同意がなくて勝手に戸口を打ちつけて出入りができないようにするというようなことは、これはもう私は人間の権利をじゅうりんすることで、許すべからざることである、こう思うのでありますが、警察としてはこいつが悪い、これは一体悪いと思えば、警察としてはかりにそれを勾留するというような場合には、いろいろな名前でもってそれを取り調べるというために勾留されるというようなことになるのでありますが、この場合に、私はそれだけのことがあって、それを放任しておくということはなかろうと思うので、刑法の条文にも幾らもその場合に私は適用される条文はあるのだと思う。二百二十二条の脅迫の罪、二百二十三条の強要の罪、これらもぴったりとこれに合うのだろうと思うのですが、ことに二百二十三条などは、その条文を読むというと、「生命、身体、自由、名誉若クハ財産ニ対シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ脅迫シ又ハ暴行ヲ用ヒ人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ又ハ行フ可キ権利ヲ妨害シタル者ハ」云々と、こういうことになっておるのですけれども、人の住んでいる家の戸口をくぎづけにしてしまって出入りのできないようにするというのは、これは自由の妨害じゃないですか、自由に対する脅迫じゃないですか、それはどうなんですか。
  20. 山口喜雄

    説明員山口喜雄君) そのこと自体は、私はやはり自由を侵すことだと思いますが、その前提に、ここを使わぬでもらいたいといって、学校先生方が一応了承したところに問題があるわけなんですね。そうして学校先生方荷物を一緒に出しに行かれているところに、私どもは警察として、事件として措置するのに困難を感ずる点があるわけです。  それから脅迫ということは、これは刑法上、脅迫というのは、相当程度のひどいことをいっておるわけであります。特にこういう大ぜいと大ぜいの話し合いの場合におきまして、個人の場合でもそうでございますが、刑法にいう脅迫というのは、われわれが普通いっておるおどかしたという程後では不十分だというのが、これが通説になっておるのであります。これは例としてはなはだ悪うございますが、お許しいただきますならば、いわゆる団体交渉の場合における双方のやり取り、これは脅迫というものを非常にゆるやかに解釈できるということになれば、また、いろいろこれは問題が起り得ることだろうと思います。脅迫は、われわれは相当きびしく判例等におきましても、解釈をいたしておるということは御了承願います。
  21. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 人を脅迫するのも相当の程度に達しなければいけない、程度の問題であるということを言われるのでありますけれども、今の場合は教員の方はこれは一人なんです。あるいはそれは教員はそこに二人も三人もいたかもしれないけれども、家をくぎづけにされた人はめいめい別々にいるから一人で、相手は村民の代表者というのは大ぜい来てやっておるのでしょう。そういう場合に多数の威力をかって、そうして自分の家の、戸口をくぎづけにされるというようなことが、これは脅迫にならぬのでしょうか、あなた方そうお考えになるのですか。もし多数の力によるのでなければというお話があると思いますが「暴力行為等処罰ニ関スル法律」の第一条は、「団体若クハ多衆ノ威力ヲ示シ、団体若クハ多衆ヲ仮装シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ示シ若クハ数人共同シテ刑法第二百八条第一項、第二百二十二条又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯シタル者ハ」云々と、こうなっておりますが、大ぜいの者が来て、そうして戸口をくぎづけにするということは、これは、多衆の威力を示して暴行したともとれるし、脅迫ともとれる、これでいけやしませんか。どうですか、この点は。
  22. 山口喜雄

    説明員山口喜雄君) 話し合いをせずに、あるいは事前に了承を得ずにやれば、私はその条文に当る場合があり得ると思います。ただ、先ほど人権擁護局長もお話になりましたように、前に村の代表と校長さんや何かが話し合いをされて、それはしぶしぶであったろうとは思いますが、それじゃしようがありませんということで、それじゃくぎを打ちつけようということでやられておる状態でございますから、それをちょっと脅迫というのは無理ではないかと……、それからもう一つ私ども考えましたのは、不退去罪とか、そういうような、もう出て行ってくれ、こう言って、どうしても出て行かなかった場合には、それは不退去罪や何かの問題が出てきますけれども、この場合には、出て行ってくれということも言っておられないということで、あれこれあれこれ十分検討いたしたのでございますが、むずかしい。一方におきまして、村の中の事情を見まして、まあこの問題は、警察が無理をして事件として捜査を進めていくよりも、村の平和を現状において一歩々々いい方に持っていった方がいいじゃないか、こういうふうに私どもは考えたわけであります。
  23. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 どうもわからない。前もって、前から村民とその教員との間に話し合いがあったとか、いろいろ中されるけれども、それではうちをあけてくれと、それはあけてもよろしいという話がかりにあったとして、その結果くぎづけになったとしても、くぎづけをしてくれてもよろしいと、そこまでの話は私は何もしておりゃせぬと思う。うちをあけようかどうかという話はあったかもしれませんけれども、あけぬ場合にはくぎづけにしてくれてよいという、そんな話があったとは思わない。これは突然起ったのであって、決して了解を与えたということではないでしょう。それからまた、その場合に、突然くぎづけに、どんどん大ぜいが来て、うちをくぎづけにするという場合には、それがこちらの精神に対して衝撃を与え、一種の脅迫を、おそろしさを感じさせるということがないとは、どう考えても私は考えられないと思う。どうも警察当局の御判断が、解釈が、われわれには納得がいかないのです。
  24. 大川光三

    ○大川光三君 関連。ただいまの住宅くぎづけの問題について、私の考え刀を述べて、当局の意見を伺いたいのとあります。と申しまするのは、なるほどくぎづけ事件そのものを法的に見ますると、あるいは脅迫じゃないか、めるいは暴行でないか等の疑義はあります。しかも、掘り下げて、その遠き縁出等を考えてみますると、もともとこれは、教員の方で一斉休暇をやったということが事の起りでありまして、しがも校下民の方では、一斉休暇をやらぬでおかぬでくれ、万が一、一斉休暇をやるというのであれば、家あけをしてもらわなけりゃならぬ、また、同盟休校もさすぞという予告を与えておるのでありまして、たまたま教員側の方で、その校下民の希望に反して、突如として一斉休暇をやったということでございまするから、校下民またはその父兄としては、自分の子弟を、教育を受ける自由から守ろうという大きな期待と言いますか、希望があった。でありまするから、私は、もしこれを結果的に判断するということになれば、校下民なり父兄の方にもあるいは違法性を阻却する理由があったのではないか。あるいは正当防衛なり、あるいは緊急避難というようなことは多少抽象的でありまするけれども、そういう意味の正当防衛ないしは緊急避難という言い分も私は父兄の方にあろうかと考えるのでありまして、たまたま、そういう動機がきわめて純真であるので、自分の子供を教育を受けさして、先生たちが一斉休暇されたのでは困るのだという、子弟を思う父兄の愛情から出発しておるこの事件について、しかもその後において、警察官の注意で、そういうくぎづけ等も撤回してしまって、事件は一応円満裏に話がついた、こういう事件全体から見まして、ただ、くぎづけ事件の部分だけの法律問題ではなしに、全般的な結論としては、これ以上警察がこの事件に介入すべきでないじゃないかというような考えを持つのでありますが、一体正当防衛であるとか、緊急避難というような観念が、この事件に入るというお考えを持っておられるかどうか、そこを一ぺん伺ってみたい。
  25. 山口喜雄

    説明員山口喜雄君) まあ世間の父兄の気持といたしましては、そういう、おっしゃるような気持があったと思います。ただ、緊急避難とか、正当防衛と申しますものは、その根本に、一応犯罪が成立する、しかし、正当防衛であるから犯罪が違法性を阻却する、こういうことになるわけであります。私どもは、基礎になる犯罪が成立するかどうかという点を検討いたしまして、どうもこれは犯罪が成立するとは、今まで調べた事情からは言いにくい、こういう見地であります。世間一般の父兄のお気持は、大川委員がおっしゃいましたようなお気持もあるいはあったのではなかろうか、こういうふうに考えます。
  26. 大川光三

    ○大川光三君 私、前回もこのことで発言をいたしましたが、一応暴行とか脅迫、または家宅侵入等の何らかのやはり法的に犯罪は成立するのだという実は考え方なんです。ところが、当局では、根本において犯罪は成立しないの、だということになりますと、いかにこれが使用貸借の物権であったからといって、実力をもってくぎづけにするというようなこと自身は、これでも何の罪もないのだ、何の法律に差しさわりはないのだということは私は言い得ないと思う。結局、一応何らかの法律違反はあるけれども、それは正当防衛なんだというところで解釈するのがよいと私は考えておるのですが、これは私の見解だけを申し述べておきます。
  27. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ほどから、警察当局報告並びに答弁を承わっておりまして、私は、かなり遺憾に思っておるのです。と申しますことは、最近警察当局並びに検察当局は、労働組合とか、あるいは思想団体等に対しては、法の解釈と運用に当って非常に拡大解釈されている。法律そのものは、その解釈、運用のいかんによって、かなり幅を持ってくると思います。一方にはそういうふうに拡大解釈をして、こういう問題を取り扱う場合に、あなた方が法律運用の専門家として先ほどから承わっているようなああいうお考えでつべこべ言われるということは、私は非常に遺憾に思います。私は法律の専門家でないが、常識的に考えてこれが私は法に抵触するおそれが十分あるということは常識をもって私は判断がつくと思う。それはこういうことがあっても何らこれは法に抵触するものではないのだ、こういう解釈をするということは私はおそろしいことだと考えます。ことに最近警察のあなた方の部下の第一線における働きぶりを見ていると、労働組合のデモとか、あるいは学生団体のデモ等に対する取り締りに出動している第一線の警察官行動を折折私は見るわけですが、この江戸川工場でも、あとでこの点については質疑いたしたいと思いますが、かなり後頭部にけがをされていますね、これは鈍器をもってですから警棒に間違いないと思います。だれが判断しても警棒でけがしたものだと判断される。第一線の警察官諸君は強い者、権力者に対しては非常に弱いです。これは労働組合では、特に学生の団体に対して上司が突っ込めと命令したときには全くところを得たというような、にこにこ笑いながら警棒を振り上げて突っ込んでいく様子というものは、それはあなた方想像以上のものですよ、どうして学生にあんなに憎しみを持っているかと思うぐらいです。あの勢いで突っ込んでいったら大がい逃げていってしまうのですが、全部警棒でやられている。これは十分今後注意してもらわなければならぬと思いますが、この質疑はあとに回して、今の高知の問題ですが、私は高知県の類似事件の起ったある村に参ったのです。そうしますと、大体先ほど人権擁護局長から説明がありましたが、山間部に行きますと想像以上の父兄が考え方を持っているのですね、納税者で、その税金によって学校を建てている、だから自分の学校だという気持を持つことはけっこうだと思います。昔は先生方の給与というものは市町村の負担になっている。今は都道府県が支給責任者になっているわけですが、その市町村当局が給与を払っている時代は、自分のうちの女中か下男みたいな気持を村の有力者というものは持っておったわけですね、しかし、最近はそういう考え方というものはなくなってきております。しかし、こういう事件の起った高知県の山の中に行ってみますと、学校の先生を、まあ国家の主権者である納税者が公僕として見ることは正しいのですが、しかし、それはずいぶんひどいのですね、全く自分のうちの女中、下男だというような、小間使いだというような気持をいわゆる村の有力者というのは持っていまして、ある村に行って私は調査したいと思いまして、校長さんと先生方と一緒に話して、村会議長がそこに入ってきて、一緒に話しましょうと言ったところが、あることを校長先生に尋ねたところ、校長先生が話そうとしかけたところが、村会議長は何と言ったか、にらみつけて、校長、しゃべれるものならしゃべってみろ、校長以下先生がさっと頭を下げてストップしてしまう、そういう雰囲気なんですね。いなかで公務員と言えば駐在所の巡査一人と小中学校の先生くらいですね。村人が何十人も集まってある要求事項を突きつけて参る、こういう場合にはもう雰囲気というものは完全に教員なんていうのは自由意思を束縛されている。これは言うことをきかなかったならばどうなるだろうかという脅迫下に置かれるわけですね。そういう雰囲気のもとにこういう事件が起ったということを私はまずわかってもらわなくちゃならぬと思うのですよ。従って、私が申し上げたい点は、先生がやむを得ないと承知したのだから云々だということですね。あるいは先のその四人が手伝って荷物を出した、このことは私は認識を誤まっていると思う。そういうことはあり得ないと思う。脅迫されたから、これを拒否したならばこの村におれなくなる、たくさん集まっている父兄にどういう仕打ちをされるかわからないというおそろしさから先生方に抵抗しなかったのでしょう。その抵抗しなかったことをもって先生方承知したとか、あるいはともどもに荷物を出した、こういう解釈をしているわけですね。だからこの事案については私は脅迫というものは十分行われたものだ、従って、これは法に抵触するということははっきりしていると思うのです。だからといって、私はあの村が一応落ちついているものを今からこの問題を取り上げて荒立てるというようなことを私は言うのじゃないのですが、こういうことがいけないことだということだけの解釈というものははっきりして指導しなければ、教えてあげなければこういうような事案というものは次々に私は起るおそれがあると思う。この点が一つ、これに対する見解。それからもう一つは、末端の駐在所の巡査ですね。これは十分職務を果したとは考えられぬ、こういう事件が起るおそれというものは予知しておったはずですね。だから当然巡査は解除しなければならぬのだが、村のボスがこわくて逃げておったのですよ。そして二日目、三日目にちょこちょこと行ってどうなっているだろうかということを見て、これは大へんだということで、ちょっとこれを取りはずせということで引き下る、そしてまた三日目に行ってみてそしてまたくぎを抜く、こういう行動をとっているのですね。勇敢でないのです。これはまた、江戸川工場警棒を持って突入するような意気込みだったら何ですが、これはいなかあたりの駐在所というのはほんとうに自分の責任感に燃えてやれば、これはいけません、話は話で別として、このくぎを抜きなさいということを言えばすぐ抜けますよ。おそろしいから逃げ回っていた。村のボスがおそろしいならば本署に連絡して応援を仰いだらいい、そういうことをやっていない。こういうことについては、十分私は警察当局としては、注意を喚起する必要があると思うのです。この二点についてまずお答え願います。
  28. 山口喜雄

    説明員山口喜雄君) 好ましいことでないと考えることは私も同感でございます。決してこういう事案が好ましいとは私ども思っておりません。ただ何と申しますか、われわれよく言うのですが、世間にけしからぬことはたくさんございます。ただしかし、警察としてはそれを事件として措置するのは、やはり根拠になる条文を求めてやっておる。これは労働組合の例をお引きになりましたが、組合の場合におきましてもそういう根拠の法規に基いてもちろんやっております。よく笑い話に言うのですが、けしからぬ罪というものは実はないのですから、けしからぬことはたくさんございますけれども、それを一々犯罪として警察が手をつけるというわけにはいかない事案がたくさんあるわけであります。そういうのは、私が一番初めに申し上げましたが、警察として事態を事実上解決するように努力をする。今回の場合も警察官は、前日に学校に行きまして、何か変ったことがあったら、校長先生にすぐ連絡してもらいたいということも話をしております。駐在から学校まで六キロございまして、当日は警部補派出所の警部補から命令を受けて一緒にほかの地方の捜査か何かに出かけております、二十六日の休暇闘争のあった日は。それで二十八日に、朝それを気づいてすぐ行って、そうして見て取りはずすようにと、こういうことを……、私もこういう事案が好ましいことであるとは私ども決して考えてはおりません。
  29. 坂本昭

    坂本昭君 けしからぬことに違いないことであるけれども、取るに足らぬ罪だというのですけれども、これは檮原村では何十年来初めての事件ですよ。私はそういうことをはっきりやっぱし認織した上で、さらにこういうさくをしてしまったことが、これでもよろしいということになれば、私は問題だと思うのですね。やはり悪いことは悪いとして、一応ケリをつけるべきだと思います。それから先ほど大川委員が正当防衛ではなかったかということですが、これについて一言お尋ねしておきたい。それは高知県の一斉休暇について警察庁ではどういう見解を持っておられるのですか。そうしてそれが犯罪であって違法であるならば、それは大川委員の指摘せられた通り、正当防衛なり、緊急避難に当るかもしれないけれども、高知県の一斉休暇闘争について、これは十分警察庁としてはお調べのはずだと思う。御見解を承わりたい。
  30. 山口喜雄

    説明員山口喜雄君) 高知県の休暇闘争につきましては、ただいま私の方で慎重に検討いたしております。まだ結論を得ておりません。校長が休暇を承認されたところと、されないところとございます。その両者につきまして、私の方の法律上の考え方をただいま検察庁と打ち合せをいたしており、まだここで申し上げる程度にまで結論を得ておりません。
  31. 野本品吉

    委員長野本品吉君) 先ほど人権擁護局長から発言を求められたが、ありますか。
  32. 鈴木才蔵

    説明員鈴木才蔵君) 先ほど来くぎづけ事件につきまして、脅迫あるいは強要罪あるいはその他の犯罪になるかというふうな法律論があったのでありますが、私はもう少しこの事案をそういう観点から検討いたしますには、具体的な事実をまず知るべきではないかと思います。ちょうど私の方に本件の問題になりました校長、職員の署名捺印の供述書が参っておりますので、もし許されまするならばこの供述内容をお読みいたしまして、その当時どういう事情であったかということを委員の方にお知り願うと好都合じゃないかと思って、実は発言を求めたわけでございます。
  33. 大川光三

    ○大川光三君 まず、今問題となっておりまする高知県のくぎづけその他の問題でありますが、先ほど矢嶋委員からも言われておりまするように、これ以上事を荒立てて問題にしようということではないのだというお言葉もありまするし、いろいろ検討した結果、法務委員会として特に取り上げる部分は大体もうわかってきた、かように思うのであります。以上の点について、あるいは教員組合の声明書とかいう問題、これはむしろあげて文教委員会で御検討を願うべき性質のものかと思いますから、この程度で、他に御質疑がなければ、高知県の問題は打ち切って、そうして本州製紙の問題に移られることを望みます。
  34. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大川委員のお言葉ごもっともですが、委員長のお許しを得て、坂本委員もありましょうが、私も人権擁護局長せっかく報告されておりますので、人権擁護局長にちょっとただしたいと思うのです。よろしゅうございましょうか。
  35. 野本品吉

    委員長野本品吉君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  36. 野本品吉

    委員長野本品吉君) 速記つけて。
  37. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 人権擁護局長、先ほど御報告いただいたわけですが、詳細にして誠意ある調査報告に対しまして敬意を表します。しかし、その調査は、必ずしも正確でない面があるようです。私は一、二点について伺いたいと思うのですが、まずこの西ノ川小中学校の問題について報告され、その最後の方において、あまりお困りになった
  38. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 どうもわからない。前もって、前から村民とその教員との間に話し合いがあったとか、いろいろ中されるけれども、それではうちをあけてくれと、それはあけてもよろしいという話がかりにあったとして、その結果くぎづけになったとしても、くぎづけをしてくれてもよろしいと、そこまでの話は私は何もしておりゃせぬと思う。うちをあけようかどうかという話はあったかもしれませんけれども、あけぬ場合にはくぎづけにしてくれてよいという、そんな話があったとは思わない。これは突然起ったのであって、決して了解を与えたということではないでしょう。それからまた、その場合に、突然くぎづけに、どんどん大ぜいが来て、うちをくぎづけにするという場合には、それがこちらの精神に対して衝撃を与え、一種の脅迫を、おそろしさを感じさせるということがないとは、どう考えても私は考えられないと思う。どうも警察当局の御判断が、解釈が、われわれには納得がいかないのです。
  39. 大川光三

    ○大川光三君 関連。ただいまの住宅くぎづけの問題について、私の考え刀を述べて、当局の意見を伺いたいのとあります。と申しまするのは、なるほどくぎづけ事件そのものを法的に見ますると、あるいは脅迫じゃないか、めるいは暴行でないか等の疑義はあります。しかも、掘り下げて、その遠き縁出等を考えてみますると、もともとこれは、教員の方で一斉休暇をやったということが事の起りでありまして、しがも校下民の方では、一斉休暇をやらぬでおかぬでくれ、万が一、一斉休暇をやるというのであれば、家あけをしてもらわなけりゃならぬ、また、同盟休校もさすぞという予告を与えておるのでありまして、たまたま教員側の方で、その校下民の希望に反して、突如として一斉休暇をやったということでございまするから、校下民またはその父兄としては、自分の子弟を、教育を受ける自由から守ろうという大きな期待と言いますか、希望があった。でありまするから、私は、もしこれを結果的に判断するということになれば、校下民なり父兄の方にもあるいは違法性を阻却する理由があったのではないか。あるいは正当防衛なり、あるいは緊急避難というようなことは多少抽象的でありまするけれども、そういう意味の正当防衛ないしは緊急避難という言い分も私は父兄の方にあろうかと考えるのでありまして、たまたま、そういう動機がきわめて純真であるので、自分の子供を教育を受けさして、先生たちが一斉休暇されたのでは困るのだという、子弟を思う父兄の愛情から出発しておるこの事件について、しかもその後において、警察官の注意で、そういうくぎづけ等も撤回してしまって、事件は一応円満裏に話がついた、こういう事件全体から見まして、ただ、くぎづけ事件の部分だけの法律問題ではなしに、全般的な結論としては、これ以上警察がこの事件に介入すべきでないじゃないかというような考えを持つのでありますが、一体正当防衛であるとか、緊急避難というような観念が、この事件に入るというお考えを持っておられるかどうか、そこを一ぺん伺ってみたい。
  40. 山口喜雄

    説明員山口喜雄君) まあ世間の父兄の気持といたしましては、そういう、おっしゃるような気持があったと思います。ただ、緊急避難とか、正当防衛と申しますものは、その根本に、一応犯罪が成立する、しかし、正当防衛であるから犯罪が違法性を阻却する、こういうことになるわけであります。私どもは、基礎になる犯罪が成立するかどうかという点を検討いたしまして、どうもこれは犯罪が成立するとは、今まで調べた事情からは言いにくい、こういう見地であります。世間一般の父兄のお気持は、大川委員がおっしゃいましたようなお気持もあるいはあったのではなかろうか、こういうふうに考えます。
  41. 大川光三

    ○大川光三君 私、前回もこのことで発言をいたしましたが、一応暴行とか脅迫、または家宅侵入等の何らかのやはり法的に犯罪は成立するのだという実は考え方なんです。ところが、当局では、根本において犯罪は成立しないの、だということになりますと、いかにこれが使用貸借の物権であったからといって、実力をもってくぎづけにするというようなこと自身は、これでも何の罪もないのだ、何の法律に差しさわりはないのだということは私は言い得ないと思う。結局、一応何らかの法律違反はあるけれども、それは正当防衛なんだというところで解釈するのがよいと私は考えておるのですが、これは私の見解だけを申し述べておきます。
  42. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ほどから、警察当局報告並びに答弁を承わっておりまして、私は、かなり遺憾に思っておるのです。と申しますことは、最近警察当局並びに検察当局は、労働組合とか、あるいは思想団体等に対しては、法の解釈と運用に当って非常に拡大解釈されている。法律そのものは、その解釈、運用のいかんによって、かなり幅を持ってくると思います。一方にはそういうふうに拡大解釈をして、こういう問題を取り扱う場合に、あなた方が法律運用の専門家として先ほどから承わっているようなああいうお考えでつべこべ言われるということは、私は非常に遺憾に思います。私は法律の専門家でないが、常識的に考えてこれが私は法に抵触するおそれが十分あるということは常識をもって私は判断がつくと思う。それはこういうことがあっても何らこれは法に抵触するものではないのだ、こういう解釈をするということは私はおそろしいことだと考えます。ことに最近警察のあなた方の部下の第一線における働きぶりを見ていると、労働組合のデモとか、あるいは学生団体のデモ等に対する取り締りに出動している第一線の警察官行動を折折私は見るわけですが、この江戸川工場でも、あとでこの点については質疑いたしたいと思いますが、かなり後頭部にけがをされていますね、これは鈍器をもってですから警棒に間違いないと思います。だれが判断しても警棒でけがしたものだと判断される。第一線の警察官諸君は強い者、権力者に対しては非常に弱いです。これは労働組合では、特に学生の団体に対して上司が突っ込めと命令したときには全くところを得たというような、にこにこ笑いながら警棒を振り上げて突っ込んでいく様子というものは、それはあなた方想像以上のものですよ、どうして学生にあんなに憎しみを持っているかと思うぐらいです。あの勢いで突っ込んでいったら大がい逃げていってしまうのですが、全部警棒でやられている。これは十分今後注意してもらわなければならぬと思いますが、この質疑はあとに回して、今の高知の問題ですが、私は高知県の類似事件の起ったある村に参ったのです。そうしますと、大体先ほど人権擁護局長から説明がありましたが、山間部に行きますと想像以上の父兄が考え方を持っているのですね、納税者で、その税金によって学校を建てている、だから自分の学校だという気持を持つことはけっこうだと思います。昔は先生方の給与というものは市町村の負担になっている。今は都道府県が支給責任者になっているわけですが、その市町村当局が給与を払っている時代は、自分のうちの女中か下男みたいな気持を村の有力者というものは持っておったわけですね、しかし、最近はそういう考え方というものはなくなってきております。しかし、こういう事件の起った高知県の山の中に行ってみますと、学校の先生を、まあ国家の主権者である納税者が公僕として見ることは正しいのですが、しかし、それはずいぶんひどいのですね、全く自分のうちの女中、下男だというような、小間使いだというような気持をいわゆる村の有力者というのは持っていまして、ある村に行って私は調査したいと思いまして、校長さんと先生方と一緒に話して、村会議長がそこに入ってきて、一緒に話しましょうと言ったところが、あることを校長先生に尋ねたところ、校長先生が話そうとしかけたところが、村会議長は何と言ったか、にらみつけて、校長、しゃべれるものならしゃべってみろ、校長以下先生がさっと頭を下げてストップしてしにつきましては大体事実関係はわかっておるのでありますが、この辺地の事情その他を考えまして、法務省の人権擁護員の方に活動を願いまして、そうしてこういう具体的な事件を契機として、こういう紛争あるいは感情的な衝突そういうふうな事案がある場合においてもあくまでも人権というものは腹の中に入れておいてもらいたい、こういうふうな人権の自覚の運動を勧告をするようにしたいと思っております。ただし、私の方でこの事案人権侵害であるとして部落民の方に勧告をするかあるいはどうか、これはもう少し考えさしてもらいたい、こう思うのであります。
  43. 坂本昭

    坂本昭君 人権擁護局長の御説明と御答弁は私も納得のできるものであります。とにかくこの事件の経緯を通して人権はそこなわれているし、また、きわめて野蛮でこのこと自身はとにかくいかぬということの結論だけは私は出す必要があると思う。まず、それが第一であります。それから、その次は、なるほど、こういうへんぴな山の中のことですから、罰するのが目的じゃありません。こういうことは野蛮なことである。そしてまた、勤務評定反対のために一斉休暇をやったことについては、今も警備局長が返事せられた通り、多くの問題点があります。実際六百八十五校のうち、校長の許可がなくて参加したのは、わずか二十一校なんです。従って、大体合法的な権利行使であるというふうな解釈が非常に強い。さすれば、こういう点については、こういうことは、学校の先生としては、これは権利の行使であるということを、やはり校下民に対し、あるいは村の人に対して教える必要がある。だから、あとのこの取扱いについては、私はこれは県当局に対してまかせてけっこうだと思うのだけれども、とにかくこういうこと自体を、何とかかんとか言いながら、これはよろしいのだというわけには私はどうしてもいかないと思う。それと、今、擁護局長は、その時期と方法については今検討中であると言いますが、私は、こういう問題はそういつまでも引っぱらぬ方がいいと思うのであります。なるべく早い時期に、これはよくないことであった、よくないことであったが、これについてはこうこうであったからといって、教師の側にも——教師の方ではもうよく知っているのです。教師は、だからできるだけ問題を起すまいとして、そしてあとから、警備局長説明のように、われわれも手伝ったらどうだといって、なるべく村人の気持を刺激しないように返事をしている。しかし今、擁護局長説明せられた通りが正しいのであって、警察庁の取調べは間違っていますよ。警察庁長官は、そういう点で、この前も私は指摘した高知県の警察網というものは、そういう事務報告的な点において非常に欠けている点がある。だから私は、何も処罰が目的ではなくて、この山の中で実はまだ問題が解決されていないのです。私は、その問題を解決するためには、こういうことはいいことだ、こういうことは悪いことだということをすみやかに早く知らせる。知らせると同時に、それを平和のうちに解決するところの方法は、地元によく検討させ、依頼させた上で、一つ最後の結論を出していただきたい。でありますから、その時期をあまり私は長くしてしまっては、これはせっかくの意味がなくなると思いますので、その点についてあらためて大体いつごろまでに、その形はどういう格好でするか。それからまた、私は警察の方に対しては、その地元の警官の名前もよく知っていますが、今さらつかまえてどうこうしようとは思いませんが、どうもぬかった点があると思うので、これも地元に住む警官は、東京都に住む警官とはまた違ったいろいろな任務があります。全くそこへ住み込んでおるし、校長先生などもその村の出身の人ですから、あとあと紛争の種をまかないような処理を、私からも特にお願いしたいと思います。重ねて人権擁護局長には、その処理の時期について御回答願いたいと思います。
  44. 鈴木才蔵

    説明員鈴木才蔵君) 時期の点を今明確に申し上げるのは、いろいろな問題が山積しておりますし、私も手が足りませんのでこの問題は至急ということになりますが、一週間ぐらいの御猶予を願いたいと思います。その上で一つ結論を出してみたいと思っております。
  45. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 人権擁護局長にもう一回伺います。ただいま西ノ川小中学校の問題について質疑応答がなされたわけですが、穴内小学校並に柳野小学校、この報告について、まだ質疑がなされていないので、一回だけお伺いいたします。この穴内小学校柳野小学校、二校ですが、これに類似した件は他にもあるわけであります。これは一つのモデルにピックアップして御調査になったと思うのですが、これは共通なことは、これこれの条件を先生方がのまなければ、子供を学校に出さない、同盟休校するということで、穴内のような場合には、教育長が証人になって文書を交換したわけですね。従って、この二校並びにこれに類似した事件が起った学校では、教師というものは圧迫を受けておるわけです。すでに学校長が日教組から脱退したということは、その交換した文書、その一部を学校長がまず履行しておるわけなんですよ。教員全部脱退しろというのが条件ですからね。学校長が、みずから進んで学校長だけが脱退しておるわけなんです。特に校下民の気に食わぬ先生は、円満に次の異動期に転任をするというようなことが入っておるわけで、この二校並びにこれに類似した事件の起った学校においては、私は教師の人権は侵害されておると思うのですがね。これらについては、何らかの人権擁護局として意思表示と指導が私はあってしかるべきだと思うのですが、この点はどういうようにお考えになっておりますか、承わっておきます。
  46. 鈴木才蔵

    説明員鈴木才蔵君) この問題は非常に重要な問題でありますので、しかるべく私の方としても検討をいたしまして、何らかの措置をとるべきなら措置をとりたいと思っております。今、即答は少し御猶予願いたいと思います。
  47. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 人権侵害のおそれはないのですか。
  48. 鈴木才蔵

    説明員鈴木才蔵君) いや、必ずしもそうとは思いません。もう少し後の点についての報告、あるいは確かな実情の報告が少し足りませんので、もう小し実情を見て検討いたしたいと思っております。
  49. 野本品吉

    委員長野本品吉君) 両件についての本日の調査は、この程度にとどめまして、本日はこれにて散会いたします。  明一日の午前十時から委員会を開会いたします。    午後四時八分散会