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1958-06-24 第29回国会 参議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十四日(火曜日)    午前十時二十一分開会   ―――――――――――――    委員異動 六月二十日委員吉江勝保君及び高田な ほ子君辞任につき、その補欠として平 井太郎君及び藤原道子君を議長おい て指名した。 六月二十三日委員平井太郎君及び林屋 亀次郎辞任につき、その補欠として 吉江勝保君及び斎藤昇君を議長おい て指名した。 本日委員藤原道子辞任につき、その 補欠として高田なほ子君を議長おい て指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     竹中 勝男君    理事            野本 品吉君            三浦 義男君            松永 忠二君            常岡 一郎君    委員            大谷 贇雄君            川村 松助君            後藤 義隆君            近藤 鶴代君            斎藤  昇君            下條 康麿君            中野 文門君            吉江 勝保君            秋山 長造君            天田 勝正君            高田なほ子君            湯山  勇君            吉田 法晴君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   参考人    全国都道府県教    育委員長協議会    会長      木下 一雄君    都道府県教育長    協議会幹事長  本島  寛君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○教育、文化及び学術に関する調査の  件(教職員勤務評定に関する件) ○高等学校定時制教育及び通信教育  振興法の一部を改正する法律案(吉  田法晴君外三名発議)   ―――――――――――――
  2. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) それではこれから文教委員会開会いたします。  委員異動がありましたから御報告いたします。  六月二十日吉江勝保君、高田なほ子君が辞任され、その補欠として平井太郎君、藤原道子君が選任されました。また、二十三日には平井太郎君、林屋亀次郎君が辞任され、その補欠として吉江勝保君、斎藤昇君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) 次に、教職員勤務評定に関する件を議題といたします。  本日は、本件に関する参考人として、全国都道府県教育委員長協議会会長木下一雄君及び都道府県教育長協議会幹事長本島寛君が出席されており、教職員勤務評定試案作成された当事者から、その立案趣旨並びにその内容実施方法などについて御説明を願い、それに対する質疑を通して、本件問題点を明らかにすることになっております。参考人方々には御多忙中、本委員会調査のため御出席いただきありがとうございました。本件は、目下教育界の大問題として世間の注目を集めておりますが、本日の調査を通して問題の解決に少しでも寄与することができれば幸いと存じております。参考人におかれましても、以上の趣旨を御理解いただき、できるだけ御協力を願いたいと存じます。進行の便宜上、まずお二人からおのおの十分程度で御説明をいただき、直ちに質疑に入ることといたします。  なお、参考人は御都合によりまして午後一時には退席されますので、その旨あらかじめお含みの上質疑を進めていただきたいと存じます。  それでは参考人全国都道府県教育委員長協議会会長木下一雄君からお願いいたします。
  4. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 勤務評定試案につきまして、私からその趣旨につきまして一言御説明申し上げるのでございますが、その前にちょっとごあいさつ申し上げたいことがございます。  さきに、三月、四月ころに私ども参考人としてお呼びいただきまして、本日の委員会をお開きになる御予定のように承わっておりましたのでございますが、当時私どものいろいろの支障からいたしまして、はなはだ延引いたされました結果、本日この委員会開会の次第になられましたことは、まことに私どもといたしまして申しわけのないことでございまして、ここに厚くおわびを申し上げる次第でございます。  次に、勤務評定につきまして、私から大体この勤務評定精神につきまして、すでに御承知と思うのでございますけれども、きわめて簡単に申し上げたいと思っております。  勤務評定は純粋に教育的な立場から考えまして、教育効果を上げるために私ども必要だと考えておる次第でございます。教職員勤務実績特性能力に応じまして教職員適性配置を初めといたしまして、それに伴う人事管理を行いますためには、勤務評定によります基礎資料と申しますものが、どうしても必要であると思います。勤務評定によりまして教職員勤務成績評価を組織的、統一的に行いまして、これを責任ある公式の記録といたしまして作成いたしました上、これを資料として公正な人事管理を行いまして、かような制度のもとに、教育効果を上げようとする趣旨にほかならないものでございます。私どもはかように勤務評定というものを純粋に教育効果を上げる立場からのみ考えて実施したいと考えておるものでございます。  今日教職員生活は、非常に激職でありますことは、私も十分承知いたしております。しかしながら、その激職の間におきまして、多くの教職員は寸時も子供生活と離れない教職員悩みといたしまして、教師としての生活とまた人間としての生活の場合とこれを二元的に考えまして、若い教師にもかなりその点で悩みを持っておる者が多数あると思うのでございます。しかしながら、教師としての生活人間としての生活とを、もはや一元に考えましてこの激しい教師としての生活の中に人間としてのたっとい仕事があるのである、はっきりとさような人生観に安住いたしまして、この教育現場に日々に頭の下るような教育活動をしておられる先生方が、まだまだ日本にはたくさんあると思うのであります。かような教師生活こそ人間生活である、そこにこそ自分たちの生きがいがあるのであるというように、日夜教育のために真剣に活動しておるまじめな教職員に対しまして、勤務評定というものは、かような者に対してできるだけの道を講じてこれに報いることが必要である、私は勤務評定の第一に目ざすところはそこにあると思うのでございます。また、実際現在日本教育界の中におきまして、まじめに日々その職に従事しておる者が多数ございますが、その間におきまして私どもやはり現場におります一人といたしまして、どうかまじめに働いておる教員を窒息させてくれるなというような希望を聞くことが多くあるのであります。まじめに教壇に立って働いておる者に、その所を得させという人事管理を行いまして、せっかくまじめにやっておる教員をして窒息させないようにする、しかも、それを公正な資料のもとにおいてするということが、一段と日本教育を明るくしていくもとではないかと私は信じておるのでございます。勤務評定に記載されますところの内容につきましては、さらに御説明する機会があると思うのでございますが、今日学校を運営していくに当りましては、私は、学校管理の面と、学校経営の面と二つの面から考えておるのでありますが、この教育基本法を初めといたしまして、あらゆる教育規定、教科の指導要領に至るまで、教育はやはり公共のものでございますので、さような精神によって行うことは当然であるのでございますが、それを基本といたしまして、ほんとう学校を運営するに当りましては、さようないろいろな諸規則等をもとにして行う。これを私は学校管理の面と考えるのでありますが、その学校管理の面を、さらにこれを生かした、生きた教育にするためには、学校経営が必要であろう。つまり学校経営の段におきましては、学校長中心といたしまして、教職員がこれらの公共教育であります特に義務教育等におきましては、さようないろいろな精神のもとに、しかも、校長中心とした各学級経営担任者が、自分たち教育の理想を含めまして、教育活動をするところに勤務成績というものがほんとうに上ってくるのではないか。さような場合における学校長中心といたしましての教職員教育活動におきましては、あらゆる面におきまして、日々、今日勤務評定のいろいろの項目があるようでございますけれども、その中には教師指導力、あるいは責任感、あるいは教授力というような勤務実績というものは、やはり教師であれば教師の人格を通しまして、教師性格なり、能力を通しまして、それらのものが表現されてくると思うのであります。これは日々まじめにやっております教師教育活動でございますれば、日々もうたくさんの結果が現われてくるのでありまして、これを一つの総合的なまとまった記録にいたしますということは、項目は非常に多いようでありますけれども、実はきわめて日々の資料をまとめる上におきましては、そう困難ではないと私は考えておるのでございます。  さような意味におきまして、直接教職員と一緒に生活しております校長が、さしあたりこの勤務評定教職員に対してはする。また、校長に対しましては教育委員会おいてする。こういう立場勤務評定おいてはとっておるわけでございます。  私から趣旨のありますところだけを申し述べることにいたします。
  5. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) ありがとうございました。  次に、都道府県教育長協議会幹事長本島寛君にお願いいたします。
  6. 本島寛

    参考人本島寛君) 私から都道府県教育長協議会におきまして、勤務評定試案作成いたしましたその経過について、ごく要点だけを申し上げたいと存じます。  一通りいきさつにつきましては、お手元に教職員勤務評定についてというガリ版に要約いたしまして御参考に供してございますので、あとで御高覧を賜わりたいと存じます。  この教職員勤務評定、ことに地方公務員である教職員勤務評定計画なり、実施なりが非常におくれて参っております。法律制定から数年の間、手がつけられないような状態で多くの場合見送られた形になっておりますが、それらの点につきましてのいきさつにつきましても、この資料の中に書いておきましたので、略させていただきまして、直接試案を作るに至りました動機なり、その後のいきさつなりを申し上げたいと存じます。  一昨年愛媛県で勤務評定実施しようということが起って参りまして、県教育長当局おい一つ案を作りまして、当時私ども教育長協議会でも、これは、愛媛県だけの問題ではない、各県及び市町村ともども計画なり実施にそれぞれ当らなければならない仕事であるので、これは、各教育長全部の問題でもあり、教育委員会全体の問題であるから、これを機会にしてお互いおいても、十分検討しようではないかということで、当時、愛媛県の教育長から、調査をされたいろいろな資料の提供を求めまして、お互いおい調査するということにいたしたのであります。その後さらに、ただ調査をしていく、そうして、お互いの県で、それぞれ案を立てて、これはもちろん終局的には各県の問題でございますから、各県が自主的に計画をし、かつ、市町村とともに実施に当るべき仕事ではございますが、教職員勤務評定そのものにつきましては、非常に共通面が多い、むしろ共通する面の方が多いと見て差しつかえないほど、勤務なりあるいは給与なりの諸条件からして、さらにまた、教職員という職務特殊性から考えましても、非常にその共通点が多いものでありますから、お互いがばらばらに研究して立案をし、教育委員会の決定を経てやるべき性質のものではあるけれども、その共通面があるから、相互に協力をして研究をし合おうではないかということを申し合せまして研究調査なり、いろいろ仕事を進めますために、私どもは第一部会から四部会まで部会を設けておりますが、行政面を担当する第三部会に、これを正式に、昨年の五月、総会の決議をもって付託をいたしまして、そうしてその研究を軌道に乗せて進めることにいたしました。  十三県がその該当に当り、群馬県の教育長が主査となって進めたわけでございます。最初に、資料の収集から仕事を分担いたしまして、検討を続けて参りまして、それから、さらに、小委員会群馬と山梨と東京の三県にしぼって、十三県の担当部面を取りまとめて、試案にまとめたわけであります。そうして、昨年の十一月ごろにおおむね試案をまとめることができましたので、三部会総会を開き、さらに幹事会にかけてその承認を得まして、十二月の二十日に試案の発表をいたしました。  これをもって、各県の教育長は、みずから持っておる事務機関にいろいろ検討させ、さらにまた、関係各方面意見を聞きながら、自分の県の規則案を立てて委員会に提出するということで、お互いに連絡し合いながら仕事を進めていこうということで、申し合せなどもいたしたことでございますし、この間におきまして、教育委員長協議会総会におきましても、勤務評定は、法律規定があるのみでなく、実際都道府県が、市町村立学校職員人事管理までを一括してやるように制度が変りました以上、どうしても、実際の勤務状況や、先生たちの一人々々の持っておる特性能力性格というふうなものも、できるだけ正確に把握する資料がほしい。そうして、それに基いて、より公正な人事管理を行うべき実際の必要があることであるから、各府県はともども協力し合って、その準備を進め、できるだけ早く実施するようにしようという申し合せを総会おいていたしましたような次第でございます。  これらの点から考えまして、私ども教育長協議会におきましても、事務的に規則案立案のいろいろな準備に携わって参りました。十二月二十日に発表いたしましてから、各県ではそれぞれ県の特殊性というものを多少折り込みながら、そこで案を立てまして現在までに御承知通りに、都道府県におきまして、すでに残っておるのが七つの道府県だけでありまして、これらもいろいろ規則制定のための検討なり準備を進めておられると聞いておる次第であります。  その後の問題については、一応試案作成経過ということでございますので、以上だけ申し上げさしていただきます。
  7. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) ありがとうございました。それでは逐次御質問、御質疑をお願いいたします。
  8. 松永忠二

    松永忠二君 まず、作成経過の問題について本島教育長にお尋ねをしたいと思うのです。大へん御説明も簡単で、時間もありませんので、要点をつかまない点もあると思いますので、その点がありましたら、一つまたお聞かせを願いたいと思うのでありますが、勤務評定が非常に科学的な、合理的な公正妥当なものであって、それによって評定を行われていくということになれば、非常に教育効果を高めるということは、この試案作成の、試案の中の御説明にもあるように、そうだと私たちも思うのでありますが、そこで作りましたこの試案について、実はその内容について、幾多の批判が現在あるということは御承知だと、私たち思うのでありますが、いろいろその中に批判もあるわけでありますが、その点をまとめて、私たちがその点を把握をしているのでありますが、評定要素というものが非常に、十四にわたっておる、そうして観察内容が八十四にわたっている。こういうふうなことから考えてみると、結局総評といいますか、評価というものを、先に印象的な評価をつけておいて、それから逆算的に観察をしていくとか、あるいは評定要素の中に取り入れていくということになりはせぬか、そうなると、一つ一つ項目は科学的なようだけれども、結局これは形式的、機械的な合理化ということになりはせぬかというような意見も実はあるわけなんであります。それからまた、観察内容というものが、非常に的確を欠いておる点がありはせぬかということで、これについては非常に、項目をあげるといろいろあるようでありますか、一般でもそう言っておりますし、私たちもこの点について、たとえば一、二の例をあげると、特性とか、能力のところに教育愛ということがあるわけでありますが、その中に教育に対する正しい信念を持っているかということになると、正しい信念というのは一体どういうことであるのか、あるいは寛容、協力というようなところに、自説にこだわることはないかというような内容がある、あるいは観察内容の特に勤務状況のところにいくと適格であるとか、適切であるとかというような、非常にばくとした観察内容があるというようなことについても、これは価値判断基準が客観化されているかどうかという点について疑念を持つというような批判も聞いておるし、われわれもそういう点が疑念を持っておる一つなんであります。その点が第二であり、第三として性格能力を記入するということになっておるのでありますが、今の点は第二の観察内容が的確を欠くという中の一つの事例として、性格なんかについて試案の中に、四十ページにいろいろ性格を四十くらいあげてあって、その中のどれに当るかというようなことが出ておるわけでありますが、このうちの温厚と温和というのは一体どういう違いがあるのであろうか、あるいは冷静、沈着というようなことがあるけれども、これもはっきり規格をするということについては非常に問題がある。自然主観的な観察でそこをつけていくのではないかという懸念もするわけでありますが、そういう点が第二の点であります。  それから第三の点としては、勤務状況ということについては非常に、内容は別として、そういう勤務評定の場合として、内容として非常に必要だというけれども、特に特性能力というふうな面で、この内容というものが人物評定になりはせんか、そういうような勤務内容と、職務内容と関連をした特性能力というけれども特性能力について、むしろ非常に人物評定になり、あるいは思想問題について広く取り上げているというような点なんかも、どうであろうかという批判もある。  あるいは第四点として、この職務内容について、非常に積極的な面が少いではないか、特に教師の一人々々について考えれば、教師自分学級を越えて学校経営にどう積極的に参加をしていくかとか、あるいは教師が外部の父兄とか一般家庭と手を結んで、どれだけ一体教育の環境について努力をしていくかという点についてはほとんど触れておらないで、主として学校経営の中で、ワク内でただ学級を経営していくということになるので、子供を通してただ家庭とだけ結んでいくというような、非常な活動に消極的な面がありはせんか、そういう点で積極的な面が非常に少くて、与えられた職務の範囲内でただやるというようなところに終始をしてはいないか。なお進んで、この校務の処理というような面について、どれだけ一体校務を処理すればいいのか、校務の中で、現在やっている、教師の中で管理をしていく問題がありはせんか、それをただ校務を忠実にすればいいということだけであって、もう少しやはり校務の中で、整理をしていく問題を考えていくべきではないか等、四つのおもな私たち承知している批判が出てきているわけでありますけれども、こういうふうなことを考えてみますと、あるいは勤務評定自身は、人事院規則でもきめられているように実施も必要であるし、これを実情に適するかどうかということを、一応試験的な準備というか、経験が必要だということを人事院規則の中に定められているわけなんであります。そうなってくると、私たちは今御説明経過で、三十二年の五月にこれが正式に取り上げられて、十月にいろいろ討議が行われて、十二月に大体試案ができたという、半年の間にこの作成が行われたわけであります。その試案に実は各方面から批判があり、試案とはいいながら、これが国の各地方教育委員会一つ基準案として実施されて、非常にいろいろ問題を起しているということを考えてみると、もう少しできたものを、研究機関を別に設けてここに学者を入れて研究をしていくとか、あるいはそれに、できたならばできた案を一度諮問するような機関を設けて、そういう諮問機関にかけて学者検討を経て、たとえば心理学的に検討を経て、観察内容が的確であるかどうか、用語が学問的に適切であるかどうかというような点なんかについても、非常に意見を聞いていく。そうしていわゆる人事院規則に基く勤務評定としての十分な実験的な経過も得た上でこれを発表していくなり、それに基いて実施をしていくというようなことでないと、つまりあまりに極端な言葉を申し上げますと、いろいろ批判もある拙速的な案を、どういうわけで強行しなければいけないのか、そういう点についてやはりもう少し検討を要するというようなことについて御反省なりお考えをお持ちであるのかどうか。こういう点について作成の衝に当られた本島教育長から御意見をお聞かせ願いたいと思うわけであります。     ―――――――――――――
  9. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) ちょっと参考人の御答弁に先だちましてこの際委員の変更について御報告いたします。本日藤原道子君が辞任され補欠として高田なほ子君が選任されました。以上であります。     ―――――――――――――
  10. 本島寛

    参考人本島寛君) お答え申し上げますが、試案を作ります態度といたしましても、きわめて職員勤務評定の案を立てるという仕事は困難な仕事であります。私どもが多くの行政面仕事を担当しておりますうちでの最もむずかしい部分に属する仕事だと私どももその点はよく考えております。そこでまあ、一昨年来からいろいろ資料を集めて検討もして参ったのでありますが、ただ、今日まで公務員勤務評定昭和二十五年に法律ができまして以来、相ついで国家公務員地方公務員評定実施されており、すでに国立学校教職員評定実施されておることは御案内通りでございまするので、私どもといたしましてはすでにいろいろな苦労をして案を立て研究をされたそれらの研究の成果というものもちょうだいいたしますだけの非常にありがたい時期にはあったわけであります。研究に着手いたしまして、もちろん日がまことに浅いようではございましたけれども、すでに日本で同じような公務員についての実施された他の例等を非常によい参考として進めることができたわけでございますが、それにもかかわらず調査なり検討を進めれば進めるほどに、お話しのようにむずかしい点が出て参るのであります。勤務評定というものは、今日も各方面からいろいろ意見を伺いましたけれども、私は十人の人、十人のグループが案を立てれば、それぞれ同じ職種の人に対する勤務評定案を作りましても、違う案が出てくる性質仕事であると考えております。それだけにこの試案に対していろんな批判がありますことは、かねてから私ども承知をいたしておりまして、決して自分たちの作ったものが一番いい、これにまさるものはないのだといったような気持は毛頭ございません。従ってこの案を作ります過程におきまして、研究機関を設けようというようなこともいろいろ検討いたしましたのでございますが、何分にも御案内通り勤務評定の問題については、賛否のあたかも二つに分れたかのごとき議論が非常に強く出ておったわけでございます。私どもといたしましては、このことがいろいろな方面から意見が述べられておりまして、実施するに当っては、このようにやることがよいという具体的な意見よりは、むしろ賛成かいなかという意見が非常に強かったのであります。私どもといたしましては、もう賛否という問題でなくて、国では法律も作り、公務員おいてもう幾多実施されておる問題で、最後に残ったといっていいほどおくれておるこの仕事なのであり、実際に必要なことでもあるのだから、われわれも実施をするのだという立場に立って問題を検討するということにしぼっていったわけであります。そうなりますと初めから反対とか賛成だという意見方々からいろいろ実施案について意見を伺うこともどうだろうか、意見を伺うとするならば、いろいろな意見を持っている方の意見を伺うのが適当だと思っておりますが、なかなかその後これは各県で直面いたしたことでございますが、校長会とか市町村委員会、あるいは教職員組合との話し合いなどの過程におきましても、根本において反対だという態度をとっておりますと、なかなかその内容に立ってほんとうにいい考えがあってもそれを述べられないというのが実情、こういうようなことを考えまして、事前に研究機関を置いて、あるいは第三者の意見を聞きながら、第三部会検討を進めるということは一応断念せざるを得ないような私どもとしては気持を持ったわけでございます。  それで、なお総括的な問題として今後の点でございますが、これは各県について私がどうこう申すべきことではございませんが、私ども東京都におきましては今試案、これを参考としながら、都案をすでに制定いたしましたわけでございますけれども、今申しましたように非常にむずかしい仕事でありますから、今後十分検討していきたい。もう反対とか賛成という立場でなくて、実施する場合においては、こういう案ではこういうところが悪い、このようにした方がよろしいという意見を十分求めて、そしてこれを取り入れるようにいたしたいと私どもは考えておるわけであります。十分反省をいたしまして悪い点は直していくという気持を今日でも持っております。  そこで、この規則を制定いたしましてから、その後教職員組合とかあるいは校長会にも話をいたしておりますが、できるだけ早く研究機関を持ちたい、それは校長とか市町村教育長、あるいは一般教員、事務職員とか、養護教諭とか、関係するところのものを網羅したところの研究機関を設け、さらにその職種別の部会を設け研究していこう。さらに、その間において学識経験者の意見を伺った方がよい問題点が出た場合には、その問題点について、その問題の権威者と申しますか、学識経験者の意見も伺うようにしていきたい、こういう考えを持ちまして、今申しました関係方面にお話しをいたしておりますし、委員会設置の仕事を実は進めておるわけでございます。できるだけ早く設けてやりたい。そこで組合の方といたしましては、それは勤務評定そのものに問題があるのであるから、その点を含めての研究機関ならば参加してもよろしい。しかしながら、もうすでに規則を作ってしまったのだから、実施するのだという点にしぼっての研究機関であるならば、今にわかに参加するということは言えないということでございます。私もその後早くこれは問題点問題点として、今後できるだけいいものを作る努力は将来にわたって続けなければならないのだから、問題点問題点として今回作った規則の使い方については、またその使い方としての問題点は、別に話し合いをしてもいいから、研究機関研究機関一つ設けようということで催促いたしておりますけれども、まだこれに応ずる回答を得ておりません。どうしても得られなければ、私どもの関係の者だけでも研究機関を早急に置きまして、今後の検討を続け、そうして第一回に作成いたしましたこの規則の悪い面は直して、いい点をどんどん取り入れていきたい、こういう気持でございますことを、全般的に申し上げます。
  11. 松永忠二

    松永忠二君 特に人事院によって規則をきめられておる勤務評定の問題についても、人事行政学会等が討論会を開いてやっておるし、あるいは宗像氏あたりは教師の成績評価研究というものは、ほとんど日本にはないのだというようなことも発表されておるしするので、私たちとしてはできたものをあとから直すというよりも、できる過程の中で研究をし、外部の批判も受け、そうして国民の批判も受けながら、あるいは同時に教師学校長意見をも反映をさせながらその中で案ができ、勤務評定実施の問題が論議されていくということが行われておるならば、結論の出てきたときには、もうすでにいろいろな波乱が少しでも防げるではなかったかというような点を考えるわけなんであって、そういう点、できたものをあとからいろいろどうこうするということよりも、そういう段階を踏んでほしいというような感じを持つのでありますが、その点を一つだけあとで御答弁をいただきたい。  もう一つ、私は時間もありませんが、御質問したいのですが、この勤務評定というものには、公正妥当な評価が、勤務評定ができればそれに基いてやれば非常にいいし、またその勤務評定自身には、評定制度というものには、一つにはマイナスの面が考えられるということがまあ考えられるわけなのであります。これについては、もうアメリカあたりの研究も御承知であろうと思うし、この勤務評定制度そのものに伴ういわゆる経済的なマイナスの面とか、あるいはこれを実施をするものと、実施されるものとの人間的な関係というものを円滑にするということは、勤務評定というような評定制度の中では望めないというようなことなんかについても、マイナスの面があるということをお考えになられて実施をされておられると思うのでありますが、そこで東京都にしたところが、勤務評定実施に非常に大きな混乱を伴ったわけなのでありますが、先ほど本島協議会幹事長からお話があった通りに、どこまでも教育効果を上げるのが目的だというお話があるわけでありますが、教育効果を上げるということが最大の目的であるとするならば、こういう混乱の中で勤務評定実施をして、しかも、マイナスの伴う評定実施していくことが、真にこの教育効果を高めることになるかどうかという点については、やはりお考えがあろうかと私たちは思うわけなんであります。教育効果を高めるということであれは、これだけの混乱の中で勤務評定実施をしていったら、評定のマイナス面もあるということを考えてみたときに、これをやらなければ、教育効果が高まらないのかどうかということについて、やはりこれだけの混乱の中で実施をしても、やはり教育効果は高まったと言い得るような、まあ御反省をお持ちであるのかどうか。こういう点について、さきの点とあわせて私は御意見を、両者から一つお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  12. 本島寛

    参考人本島寛君) まあ事前に尽すべき研究検討を尽し、意見も聞くべきを聞いて、よりよい案を作るという態度は、私はもういかなる場合にもとっていくべきよりよい態度であると思っております。ただ、先ほども申しますように、事前におきましては、ほんとうによい案を作るという趣旨での意見を関係者から十分聞きがたいというような情勢判断をいたしましたので、そうしていろいろな意見はございますが、その意見はどなたもまだ実施した体験を持っておらないで述べられる意見が多いのであります。しかも、私ども試案に対して、いろいろな意見がございますけれども、積極的にこれはこうした方がいいぞという意見は割合に出て参りません。特にまあ市町村委員会とか、あるいは校長会のような直接担当者、あるいは組合員のような担当者に、現実に積極的な意見の提示を求めましたが、なかなか出て参りませんし、出た意見は、割に消極的な意見が、校長会あたりから出た意見としても多いような事態でありましたので、一応私どもは、まあ伺った意見の中で、よいと思われる点は取り入れまして、そうしてたとえば総評の表示のごときも、いたずらに刺激をする面があれば、この点はカットしていくというようなことで、そういう配慮を加えまして、そうして一応作る。そうしてこの作った案についての研究には、次によい案を作るというように、悪い点を直すというだけじゃございません、この規則の中には、どういう点に欠点があるかどうかという点をよく検討いたしまして、欠点があるとわかったならば、その点をその通りに使うということではならない。十分その点におきまして試用期間、試験期間というような意味合いの精神も汲み入れまして、私どもとしてはやっていきたい。従って最近に置こうといたしまするこの研究機関には、次のいい案を作るということと、第一回の案そのものに持っているかもしれない悪い点については、使う上において十分なる配慮をしたい。これは都だけでなくて、市町村及び学校百長にそのような指導をしていきたい、こういう点から考えておる点でございます。お話しのように、前もってやることのいいことは、私どもも重々承知いたしておりますし、また、評定そのものには、長所とマイナスもあることも承知をいたしておりますが、その点は踏み切って、実施に出たわけでございますので、この上は、やはり評定の規則そのもののマイナスの点もあわせて検討していきたい、こう思っておるわけでございます。  それから混乱の中であのように実施をしたということも、これは私どもも、これはもう再々教育委員会でも慎重な審議を遂げられ、私ども地元局におきましても十分検討を加えたのでございますけれども、なかなか冷静に内容について話し合いをして、いい案を作るというような状況が期待できませんでしたので、やむを得ずやったわけでございますが、最後におきましては、私は教職員の良識によりまして、ああいう事態は何とか回避してほしいということで、反対の意見なり何かは、これは自由に述べることもよろしい、これは今後においても大いに主張があったら、主張は述べてもらったがよろしい。どういう反対があり、意見があっても、自分がかかえている教育を、ああいうほうっておくといいますか、ああいう事態は回避できるのではないかということの期待を持っておったのでありますし、夜を徹して私どももその前夜あたりから、そういう事態にならないように望んで参ったつもりでありますし、ベストを尽したつもりでありますが、やむを得ざる情勢で、ああいう事態になったのは、まことに私は残念であり、かつ都民に対しては申しわけないと思っておるわけであります。しかし、大局から判断いたしまして、あのような事態になったときに、法律の施行があり、また教育委員会みずからが必要を認めてやろうとする仕事に対して、徹底的な反対にあって実行できないということになった場合には、そのときの方が大局から見て、長い目で見て、私は教育目的の効果を上げるゆえんではないというように、私は現状判断をいたしました。
  13. 木下一雄

    参考人木下一雄君) ただいま二人から答弁をするようにというお言葉でありましたので、私からもお答えを申し上げたいと思います。宗像誠也氏が学問的に教育学の立場から、評定はもう完成したものがないというお話でございましたが、現在の教育学の程度からいたしまして、あるいはそうかとも思うのでありますけれどもしかしながら、日々の教師教育活動におきまして、またそれをまとめまして学校長学校を運営しております際に当りまして、さようなものがまだ完成しないからといって、学校教育がその面におきまして何ら触れていなかったならば、私は教育内容の面から言いまして、効果は上ってこないのじゃないかと思うのです。日々の生活の面におきまして、私はその評価が行われておりますので、高学年の担当の適任者もあれば、低学年の担当の適任者もあれば、あるいは中学年の担当の適任者もあると思うのであります。そのほか、学校におきまして研修部を設けまして、学校の内部におけるさまざまの研究、あるいはそれらの研究の部門を担当するにつきましても、それらの能力、あるいは指導力等によりまして、校長がこの学校内における人事の適正な配置をやっておるのだろうと思うのであります。さような日々のことが記録に残ってくるということでございまして、学問としては完成をしていないかもわかりませんけれども、完成の道に持っていく経路をとるということは、教育の実際面につきましては、私は必要であり、完成されてから初めて行うという考え方に対しましては、私は現場教育を担当していた経験上からいたしまして、どうもそれはあまりにも先のことになるのではないかと思うのでございます。  それから評定にマイナスがあるということ、これも確かにいろいろの世論や、あるいはいろいろの報道その他におきまして伺っております。マイナスがあるという点につきましては、伺っておるのでありますが、そのマイナスがあるという点を、私どもはいろいろの面で伺っておりまして、まことに残念なことが非常に多いのであります。天下の教育者はもっともっとその十分正しい認識ができるように方法はないか、これは私ども認識を十分にするという道が非常に足りないところから起ってくるのであろうと思うのでございます。ある週でございましたが、ある放送でもって日本教育という放送を約一週間組みました。特集番組として組んだことがございます。その一日の日でありましたが、勤務評定を取り上げられまして、そうしてその勤務評定につきまして、いろいろ批判の声を放送されました。このときに私も一人でありましたが、勤務評定趣旨を述べたのでございますが、あとから日本現場教員が三名これに対しまして反対の意見を述べたのであります。少くとも放送を通じまして全国に勤務評定に反対するという意見を述べるのでありますならば、責任を持ちまして、そうしてこれを発表すべきものだと私は考えておりまして、いかなる議論が出るかということを私は待ったのでございます。
  14. 松永忠二

    松永忠二君 ちょっと御発言中ですが、非常に時間もありませんし、皆さん御質問もありますので、私の、御意見もいろいろあると思うのですが、混乱の中で教育効果を高めるという意味でやったとすれば、そういう点についてはどうなんだろうかという、その点について御答弁をいただいて、ぜひほかの方々のいろいろ御質問もありますので……。
  15. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 承知いたしました。それは要するに、これらの反対論の中には、教育者でありながら教育者の顔につばを吐きかけるような私はマイナス論があるのではないかということを一言、それでは、……その言葉で結びたいと思うのであります。  次に、混乱のことでございますが、私は日本の現在の教育全体につきまして、非常に今日こそ日本教育の危機であるということを痛感いたしております。混乱ということでございますれば、道徳教育ですら混乱が起っておるのであります。道徳教育反対というプラカードを立てて往来を歩く教職員、(「全くだ」と呼ぶ者あり)また、私の家の前の電信柱には軍国主義教育から子供を守れという、そうして勤務評定反対というビラが張ってあるのであります。おそらくビラでありますから、東京市中至るところに張ってあると思うのでございます。しかしながら、軍国主義教育から子供を守れ、勤務評定反対というようなビラが電信柱に方々に張られるというようなところに、私は混乱が起ってくるのだろうと思うのであります。私はさような意味におきまして、実に日本教育は今正しい認識が行われておらないのであるという意味からいたしまして、私は道徳教育おいても混乱が起る、勤務評定にも混乱が起る。その混乱をよく考えてみますと、今はその混乱の中において、正しいと思うことをこれはもう職を賭しても行うべきであるということを、私は日本教育のために申し上げたいと思うのであります。
  16. 野本品吉

    ○野本品吉君 最初に木下先生にお伺いいたしたいと思います。木下先生は昨年の十二月の十日に全国都道府県教育委員長協議会会長の名におきまして重大な声明を発表されました。私はこれを朗読いたしたいと思います。   学校教職員勤務評定を行うことにより、公正な人事管理を行い、教育効果の向上を図ることは教育行政上きわめて重要であり、このために法律教職員勤務評定は、各都道府県教育委員会計画のもとに実施すべきことを規定しているのである。   全国都道府県教育委員長協議会は、かねてよりこれが計画について慎重な研究を続け、各地方の実情に即して、自主的に実施すべきことを申し合せた。   愛媛県においては、現に評定実施しつつあるが、これに反対する県教組及び日教組との対立が深刻をきわめ、同県の教育上憂慮すべき事態を招来しているのみならず、わが国教育の全般にまで好ましからぬ影響を及ぼしていると認められることは、まことに遺憾とするところである。よって、勤務評定実施に関しては、これをあげて教育委員会の自主的処理に一任されることを要望する。   「教育委員会はみずからの使命にかんがみ、あくまでもその「自主性を堅持して、教育の中立性を守り、」地方の実情に即し、公正、かつ、円滑な評定実施を期するものである。」   ここに本協議会緊急理事会の決議により、われわれのかたい決意をひれきして、世の支持を期待する次第である。  右声明する。  この声明の底を流れております先生のお気持ちは、先ほど日本教育の危機をひしひしと感ずるという言葉によって表わされていると思うのでありますが、さらに私は、この声明と関連しまして考えますことは、教育基本法の「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」さらに、義務教育学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法、この措置法におきまして「義務教育の政治的中立を確保する」ということが言われているのでありますが、これらの法律趣旨に基きまして、日本教育現場における問題を処理しよう、こういう意図に基いているものと、私は考えるのであります。そこで、先生にお伺いいたしたいと思いますことは、この十二月十日の先生方の憂国の至情に満ちました声明というものが、これは愛媛教育勤評問題がクライマックスに達したときであります。その状態は、現在さらに拡大され、さらに深刻になりつつある。この事態に対しまして、声明当時の心境と比べまして、現在どういう御心境であられるか。もう一つは、全国の都道府県教育委員長の諸君が、やはり当時の声明を詳しく認識し、そうしてその線においてお考えになっているのであるかどうか、これを先生にお伺いいたしたいと思います。
  17. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 十二月十日の全国都道府県教育委員長協議会の緊急理事会によります決議の声明をするに当りましては、ただいまお話しのございました通り、当時愛媛県の勤評問題が非常に悪い事態になって参りましたので、私は、教育委員会が存在する以上、教育委員会の使命というものを痛感いたしまして、ただいまお話しもございましたように、この教育は不当の支配に服する云々、国民全体に責任を負う、ことに義務教育立場からいたしましての教育委員会のなすべき処置というものを考えまして、全国の協議会の代表者を東京においでを願いまして、さような発表をしましたのでございます。当時におきまして、日本ほんとう教育の実情を憂えられました方は、私ばかりではございません。非常に多くの方々がそうであったと思うのであります。この点におきましては、日教組等におきましても、十分心配はされておったことと私は信じております。この声明は一片の声明にとどまりませんで、どうかしてこの声明は、どこまでも日本教育に対して一つの考え方を呼び起したいという意味でかなり強く出したものでございます。その後、昨年の暮れに全国の都道府県教育委員長協議会総会がありましたことがございます。この総会の席上におきまして、理事会におきまして決議しましたこの声明をこの総会に提出をいたしまして、この考え方で全国の都道府県教育委員会は、ぜひ今後の勤務評定の処理については進んでいこうではないかというような話し合いも出まして、あの声明は、その後における全国教育委員長協議会一つの方針になった次第でございまして、現在におきまして、和歌山その他他の二、三の県におきましても問題になっておるようでございますが、私はあの声明が今日におきましても大きな力をもって進んでいかなければならないし、また世の支持を、あの声明が十分受けることを念願いたしておる次第でございます。現在の和歌山県の深刻な事態を、いろいろ報道によりまして承知いたしましても、この教育委員長協議会のあの声明は十分御支持いただきたいことを述べましてお答えといたします。
  18. 野本品吉

    ○野本品吉君 この声明のうちで、特に私でもが重大な関心を持ち、また私はかくなければならぬ。こう考えております点は、教育委員会がみずからの使命にかんがみまして、「あくまでも「その自主性を堅持して教育の中立性を守り、」地方の実情に即し、公正、かつ、円滑な評定実施を期するものである。」ここでございます。これは先生の気持は一応了解いたしましたが、私どもといたしましては、やはり教育が不当な支配に屈することのないように、教育委員会が、あくまでもその自主性におい教育諸問題の解決に当られます決意と情熱とをお持ちいただきたいということを希望いたすわけであります。  次にお伺いいたしたいことは、これは東京都の事態といたしまして、私ども非常に残念に思っております。私は実は前に教育二法が大達文部大臣のときに出されましたときに、少くも聖なる教育の場に、また聖なる教育の仕草に当る教職員に対して、警察的な目でこれをながめたり、警察的な権力が入ることは排除すべきである。従って例の刑事罰の問題を全力を傾けて排除した先鋒に立ちました一人であります。従ってそういう問題につきまして、絶えず深い関心を持っておるのでありますが、遺憾ながら今度の東京都におきまして、また、その他においてもあるようでありますが、この教育の場であります学校に、あるいは教師家庭に警察の捜査の手が伸びたという事実は、私は前に刑事罰排除を提唱いたしました一人としまして、実に泣くに泣けない気持でおるわけです。かようなことは教育に及ぼす影響は非常に大きな問題でありまするので、従って今度の東京都の警察の捜査、その他に対して教育的に配慮されておったかどうか。どれだけの配慮がされておったか。これらのことにつきまして本島教育長にお伺いいたしたい。
  19. 本島寛

    参考人本島寛君) あとにお話しのありました教育の場に警察的な活動の入ってくることを好ましくないという趣旨から、今回東京都の場合におきまして、捜査の手が学校ないしは教職員家庭にまで伸びておるということについての、そういうことからする教育べの影響を排除することについて、何かの考えがあったかというような趣旨のように伺ったのでありますが、その考え方については、私どもも全く同じであります。教育を不当な支配から守るということは、いかなる不当なる支配からもこれを守るということに私どもは考えておるのであり、従って教育の場が教育を行うことは当然でありますが、教育の場といえども、国の秩序のうちにあります。従っていろいろな他の公けの仕事の作用というものが関連して起って参りますが、そのいかなる他の公けの働きが起って参りましても、教育に支障のないような配慮を加えてやってもらうことを私どもは常に念願し、かつ、そのための努力はいたして参ったつもりであります。従って今回の場合におきましても、十分この点についてはあらかじめ警視庁の当局にも、この考え方を申し出てございます。警視庁におきましては、総監初め全く私の今申しました考え方と同じである、自分らも教育に支障を起さないようにやりたいということで、十分注意をいたしてやるが、さらに何か具体的なことでもまた起った場合には、十分連絡してほしい、一そう注意をしてやりたいということで、事前にその点については相互の間に話し合いを進めて、また、教育上への不必要な、いろんな混乱をさらに大きくしないように、私どもとしては十分な配慮をいたして参りましたし、今後においてもやっていくつもりであります。
  20. 野本品吉

    ○野本品吉君 もう二点お伺いいたします。ここに私のもとにありました勤務評定をめぐる八つの問題、ここに「質問にこたえて」、これは日本教職員組合で作ったものであると言われた。私はこの「質問にこたえて」というものを何べんか、繰り返し繰り返しして読みました。で、各項目につきまして、私どもいろいろ意見を持っておりますが、それは差し控えます。ただ問題は、これを全面的に信用した親たち一般社会の見る勤務評定に対する見方というものは、少くも公正、中正の見方にならないという結論は私は出ると思う。そこで、問題は勤務評定実施に当りまして、勤務評定とはどういうものかということに対するあなた方からの、教育委員会側からのPRというものが欠けておるのではないか、そこに公正な世論というものが起ってこないように私は考えるわけです。その点につきまして、東京都はどういう方法をとられておるか。もう一つは、勤務評定実施をめぐりまして、地教委の教育長その他に、果して教師評価する能力があるかどうか、それができるかどうか。こういうようなことにつきましても、いろいろと御意見があるように思うのであらます。私は今の地教委等の教育長あるいはその他の方々に、かりにその能力が欠けておったといたしましても、これは人の問題であって、制度の欠陥ではない。人を入れかえることによってその制度は生かされる、こういうふうに私は考えておるんですが、これらの点についてのお考えをお伺いいたしたい。
  21. 本島寛

    参考人本島寛君) 勤務評定をめぐる諸問題について、一般のPRが欠けておりやしないかというお話しでございますが、私ども実はその点は非常に心配をいたしまして、今にして考えてみましても、一般国民への、正しい勤務評定はこういうものなのだ、このようして行うのだ、その結果はこのように活用されるということが、十分私は知らされておらないと、今もってそう考えておるのでありまして、大へん私ども大きな反省事項の一つでございます。そこで私どもは、最初は関係者だけを相手にしていろいろ話をいたして参ったのでありますが、今御例示になりましたように、いろいろなことが一般教職員や父兄にまで、勤務評定の問題が、他の方面から流れている。反対署名運動というようなことで、直ちに飛び込んでいったりいたしまして、非常に父兄にも混乱をかけたのであります。そういうことからいたしまして、非常におくればせではございましたが、御案内通りの、新聞折り込みをもちまして、勤務評定趣旨がどういうものであるかというようなことを、問答式できわめて平易に解明をいたしましてビラをお配りいたしたのでございますが、なおそれだけにとどまらず、特に関心の深いPTAの全都的な組織、あるいは区市町村の組織、連合会等がございまするので、それらの幹部のほう自身からも非常に心配して、何とか話を聞きたいという申し出がございましたので、いい機会と考えまして、そういう方面に対しましても、私どもはできるだけ、私自身も出ましたし、あるいは、部長なり課長なり、主事なりを派遣いたしまして、その趣旨説明に当らせるように努めて参ったつもりでありますが、現在におきましても、なお機会あるごとに私どもはこれをPR活動をやっていきたいというように考えております。なお、ラジオその他の機関を通しましても、私どもとしては数次にわたって評定問題を述べておりますけれども、まだまだ一般の国民に対してほんとう勤務評定というものが正しく理解されておらない。非常な何か不安を持った、よくないものであるかのごとき印象を最初から持っておるように思われてならないので、今後とも他の道府県とも協力いたしまして 一そう努力をいたして参りたいと思っております。  それから次の、市町村教育委員会教育長校長評定を行い、また、一般教職員について校長の行いました評定の調整をするという任務を負わしておるわけでありますが、実際において、教育経験なり行政経験、あるいは、それの持っておる事務機関等から見て、正しくこのことを公正に行うのには、非常に何か足りない点がありはしないかということが言われております。それにつきましても、私どもも、現実の姿、制度制度として、また、人の配置は配置として、現実に仕事はやっていかなければなりません。評定だけではなく、毎日の大事な教育の行政を担当してもらっておるのでありますから、この間常に考えておりますことは、今度の委員会法の改正によりまして、従前のように、市町村委員会に対しては求めがあるならば指導や助言をしてもいいといったような受動的な消極的な態度から、さらに進んで、市町村委員会に対しましても、指導なり助言なり援助がなし得るように法の改正がなされましたので、その趣旨を汲み入れまして、いろいろな仕事につきましても指導なり助言、援助をいたしております。この勤務評定も、せっかく考えました案が、実施の面においてその作成者の力の足りない点から、公正なものができなくては非常に残念でありますので、十分私どもはその指導をやっていく考えでございますし、その指導におきましても、まあ、具体的に強い弱いと申しますか、いろいろ事情が違いますので、そういう所に対しては、関係の職員を派遣いたしたりして具体的な仕事についての手ほどきまでやっていくように、そして、現在、第一回の評定作成する九月一日までの間をずうっとスケジュールを組みまして、連日のように、なるべくブロックを小さくしぼって、その評定書を作るための指導を、関係者について校長なり、あるいは教育長なり、その配下の課長、主事等に対して、現にやりつつあるわけでございまして、その持っておる御心配の点は、実施の面におきまして私どもとしてはできるだけそういうマイナスが出てこないような最善の努力を続けて参るつもりでございます。
  22. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 さきほど来木下教育委員長さんの、まことに国を思う切々たる、日本教育の危機を突破をいたして教育を純粋にその効果を上げしめなければならない、そのために今回の勤務評定実施をいたすことになったと、まあこういうお話しでございまして、私は、心から感銘を深くいたすものでございます。そこで、先ほど来、混乱の中にこの勤務評定実施をするというようなことは避けたらいいじゃないかと、こういうような御意見も御開陳があったのでございますが、私は、実は勤務評定を今まで実施をしなかったことに、非常な奇異の感を抱いておるのであります。八百屋の小僧さんでも魚屋の小僧さんでも、ちゃんと主人公がその勤務評定をしておるのであります。どこの会社へ行ったって、その部下の勤務評定をせずして、これを抜擢するとか昇進せしめるとかいうようなことのない所はないのであります。従って、学校の先生が子供の通信簿だけはつけて、自分たちをつけることはごめんだというような考え方は、私はどうかと実は思う。そこで、先ほどもすでに職務状況観察内容のことまで御質問がありましたが、私は、その前に、一体教員組合の人々が今の内容の問題について、こういう評定は科学的ではないではないかとか、あるいは、これはこうしてもらいたいと、こういうようなお話ならばわかるのでありまするけれども、そうでなしに、勤務評定をまっこうから反対をするということの意味が私はわからない。一体国民もその点について、社会一般どこへ行ったって、勤務評定をやっておらんような社会というものはないわけであります。従って学校の先生だけが、それに全面的におれたちには勤務評定をやってはいかんという闘争をなさるという真意が、国民一般に理解するところに苦しんでおられると思う。私は、今まで教員組合の諸君と折衝をしておいでになった委員長並びに本島教育長さんに、一体どういうところに教員組合の諸君は……、そういう私ども国民全体から見まするというと割り切れない感じを持っておる。どういうところにそういうような反対をされる真意があるか、また、どういうことを皆様方のほうに言ってきているのかという点について、この際御解明をお願いしたいと思う。
  23. 本島寛

    参考人本島寛君) 大へんむずかしい問題でございまして、むしろ私どもが、組合がどうして徹底的に反対だということを、闘争委員会、あるいは全国の代表者会議を開くたびごとに、反対を強化していく、そういうような決意がなされていくかを、実は不思議でならない者の一人なんです。もう一つこの問題について不思議な点は、絶対に反対だからといって最後には授業までも放棄するというこの態度、この二つについては、私は、どうしても今もってその真意がわからない因っておる当事者でございまして何とか自分も早くそういう点をほんとうのところをつかんで、私どもなりにできることがあるならば、それを是正するような方向に努力したいと思っておる次第でございますが、ただ、今、そういう点から申しまして、大へん申しわけございませんが、私からはっきりしたことを申し上げることがそれだけのものを持っておりません。恐縮に存ずる次第でございますけれども、私の持っているただ印象的なものでございますから、決して肯綮に触れているという点とは考えておらんのでありますが、第一に、勤務評定の問題を地方の教員で、法律ができた当時でなくてその後において、実際必要からこれを取り上げたのは、愛媛の問題でございましたが、最初は、御承知のように、再建団体として非常に困って、そうして七割の定期増俸しかできない。そうすると、いかにしてそれをやるかということから、勤務評定をやろうということが現実の問題として取り上げられてきたように私は感じておりました。こういうことが、結果的にはそうでなくなったのでありますけれども、最初から何かしら暗い印象を教職員勤務評定というものに投げかけられたのではないか。この暗い印象というものが、今後何らかの形で他の道府県に影響してはならないということを、ひそかに私は当時おそれておった次第でございますが、何かしら、外国のものを研究いたしましても、アメリカあたりでは勤務評定そのものを、直ちに罷免の一つ資料として使われておるというようなことなども出ておりまして、非常に暗い面ばかりが何か取り入れられてきたかのように思うわけであります。  それからもう一つには、最初は全国的に反対だという態度を全国組織の日教組が強力に打ち出してしまっておる。しかし、あの態度というものを、当初から、これは私の印象でございますが、決して、地方の教組がみんな強力な絶対反対の線で、それが盛り上って、あのような愛媛へ絶対反対という日教組の態度になったかということに対しては、私は疑問を持っておるのであります。従って地方の教組は、県当局といろいろとこの問題について話し合いをするために、非常に苦慮されておる。私どもは相手の立場というものをよく考えて話し合いをしなければならず、また、取りまとめにも努力をしなければなりません。自分立場だけを考えてはならぬのでありますが、その苦衷のほどが察せられるのであります。従って、今後はそういうことは、組合自体にも反省が起ってくる。われわれにおきましても、悪い点は十分反省をしてこれを直す努力をいたさなければなりませんが、組合自体も、最初はあの当時のような態度をとったのだから、段階はだんだん進んでも、いつも同じだということはどうだろうということを、私はひそかに、その絶対反対をどこまでもやりぬくという態度を変えていただきたい。もし、ああいう態度を持するなら、われわれに直接向ってこないで、法律を作った政府なり、国会に向って私はやってもらいたい。地方の弱い県、あるいは市町村教育委員会当局なり、あるいは町村の校長なり、そういう人たちに、全国組織の大きな力をもって私は当ってこられるようなことに対しては、私自身として非常に残念に思っておるわけであります。大へん御質問に沿わないことを申し上げて恐縮でございますが……。
  24. 木下一雄

    参考人木下一雄君) ただいま本島教育長から申し上げましたことで、ほとんど尽きておるのでございますが、私は二言申し上げたいのであります。  私は、多年東京都の教育現場職員とは、何十年来というほど親しい者もございますし、かなり多数の教職員を存じておるのでありますが、それらの人と話し合いまして、東京都の全部の教員があげて全面反対であるということは、私は信じておらなかったのであります。現在でも、あるいはそれは信じ得ないことであろうと思うのであります。従いまして、教員の真意というものは、私は全面反対というのはむしろ、まあしかし四万五千もおります東京都の教員の全部と話したわけでもありませんので、言い得ないかもしれませんが、東京都の教員の全部が反対ではないということは申し上げ得られると思うのであります。ところが、二十三日のあの授業放棄ということになりますと、事実私どもが信頼しておりました教員ですら、授業放棄をしておる者が多数あったということを、まのあたりに私は見まして、これはまことに残念に思いました。私の教え子なども多数その中に入っておるわけでありまして、まことに残念であったのでありますが、このかようなところに至りましたことの経過につきましては、十分研究しなければなりませんし、であるから、私は今後におきましては、やはり真意はここにあるのだという、その真意をどこまでも伸ばしていくような、私は東京都の教育委員会としましても、その指導の仕方を考えていくことが、私どもの宿題ではないかと、私はかように考えております。
  25. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 私の解釈では、この勤務評定実施をいたすことによって、まじめな先生は、その一生懸命にやっておりますることを大いに認められて、そうしてますます教育のために精進をしてくれられる。従って、この勤務評定実施をするということは、その目的は、信賞必罰、しかも、大いに励む努力をいたす人に対して、大いにこれを賞賛をし、また、昇進の道を開き、栄転の道を講じて、そうして日本教育をますますりっぱにする、こういうことにあるのに違いないと、かように考えるのでございまして、今、先ほど本島教育長のお話しでは、何か暗い面が伝わったので、そういうことにも一つ理由があるのではないかというお話しでありますが、私は、信賞必罰を明らかにし、ことに、りっぱな先生たちが、ますます日本子供のために尽してもらいたい、こういう趣旨実施をなさるのだと解釈をいたしておるのでございますが、その点についての御所見、また、私は従って、この勤務評定実施をすることによって、りっぱな、まじめな先生たちは大いに、実際内心は喜んでおる。しかるに、授業放棄をするというような事態が起ったり、和歌山のような、ことに外部の者までも動員をしてやるというようなことは、今日の日本教育界おいては、私は良貨がたくさんあるのだけれども、悪貨がこれを駆逐しよう、引ずろう、こういうようなことについて、日本教育界をゆがめておるのではないかということを非常におそれるのでございますが、その前段についての、一つ、お答えをいただきたいと思います。
  26. 本島寛

    参考人本島寛君) 勤務評定は、お話しのように、決して暗いものではありませんし、むしろ、従来やっておりますような、そのときどきの監督者なり、人事管理に当る人の勘どころとか、断片的な記憶とか、人から聞いたこととか、そのつど出される内申といったようなものを基礎にして人事管理が行われておった、まことに大福帳的な処理がなされておったといっていいと思うのでありますが、それに、今度の場合におきましては、できるだけ科学件を持たせたいということから、客観的な評定要素を出し、それの見方も統一をいたしまして、そういう場当り的な、その人限りの見方、やり方で処理されてきた、そういう資料を改めていこうというのでありますから、むしろ私は、教職員側の方から、従来のようなやり方、その場当りの断片的なやり方でなくて、最も一つの正しい基準によりまして、公正な資料を作って、それによって人事管理をやってくれ、それがわれわれにとって最も安心ができる道である、こう主張すべきことではないかと思う。このことは、組合と話し合いをする最初に、私は、組合の出る態度として、反対はおかしい、こうあるべきだと思うがということも申し上げたのでありますが、今日でもそういう気持を持っておりますし、いつの日にか、そういう日の来ることを私は期待いたしておるわけであります。従って、決して暗いものではない、信賞必罰というお話がございましたが、むろん、いいところはどんどん伸ばしていく、そうしてもし悪いところがありますれば、これは、指導あるいは助言、研修等によりまして、だんだんより方にこれを持っていくというところに、勤務評定の私はいいねらいがある、またそのように使っていきたいと思う。決して、悪い点はその場で処分するというようなことは、外国の事例にはございますけれども、私どもとしては、そういうことには考えておらない。これ一つ資料にして、直ちに悪い処遇を決定するというようなことには考えておらない。できるだけよくしたいということが大事であり、いいものにはいいだけの、お話しのように、まじめに、ほんとうによく国民のために働いてくれるりっぱな先生がありますならば、それに応じた処遇も当然されなけれ、はならない。どういうような勤務ぶりをいたしておりましょうとも、皆同じように増俸をされたり、処遇されていくというような悪平等的な、画一主義的な扱い方は、これは当然改めてかからなければならないと思う。そういうようなことからいたしましても、私は勤務評定というものは悪いものだけを引き出して暗い印象をつけることではなくて、もっといいように作り、よいように使うという声こそ、私は教育者の間から起ってしかるべきだと思っております。なお今後とも、私どもはそういう態度で、この問題を反省しつついいものを作り、よく使用するように、そうして終局的には、教育効果を上げるようにやって参りたいと考えておるわけであります。
  27. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで、もう一点だけ……。私は日本教員諸君の勤勉な人々に対して、今お話しのように、どうか大いに激励をいただきたいし、必罰というよりも信賞を明らかに御推進を願いたいと思いますが、この間私は秋田へ行きましたところが秋田の校長さんたちが十人、ばかり、自分たちにはこの勤務評定をする義務がないというようなことで訴訟を起しておられる。さらに、きのう新聞を見るというと、高知県でも校長会を開いて自分たちには勤務評定のそんなむずかしい能力がないというふうな新聞記事が載っておった。まあ、人間人間の品定めをするということは、これはお互いに非常に困難なことでありまするけれども、従ってまあ相対的な問題でありまして、これはまあ国会議員だって選挙でちゃんと勤務評定をやってもらって出てくるので、みんなやはりそれを選挙民がちゃんとながめておってこれをやって下さるわけです。そこで、校長さん、むろん絶対的な意味においていろいろ観察をして評価をするということについては、大へんまことに御苦労千万な話でありまして、純粋に考えれば、その責任の重大なることを痛感をされて、ああいうようなことが起ったのではないかしら、こう思われるのでありますが、こういう義務がないという意見があるわけです。それは、私はいくじのない校長さんだと思うが、それについての  一つ御所見を承わっておきたい。
  28. 本島寛

    参考人本島寛君) ああいう事態の起りましたことは、まことに残念に思いますが、私ども笹下の校長に対して勤務評定書を作成する仕事一つ職務としてやってもらうようにいたしてあります。校長職務は、御承知のように、校務をつかさどり、所属の職員を監督するのであります。その校務の範囲については、いろいろと問題があるわけであります。事実非常に狭義に解釈する解釈の仕方なり、広義の解釈の仕方なりございますが、私どもといたしましては、教育基本法なり、学校教育法なり、あるいはそれに赤いて発評する委員会規則などに基きまして、学校教育を行わなければならない、その必要な仕事がございます。その必要な仕事を、学校の長として、校長として必要である仕事については、当然学校長職務と考えておるわけであります。所属の職員を監督するという点と、校務を掌理するという点からみましても、一人々々の先生を把握して、その職務状況なり、特性能力などをよく把握して、それを記録するという仕事は、校長を除いて全然部外者がやるということはできません。他の一般教員を参加させるようなことは、方法として一応考えられますけれども、しかし、私はその立場おいては、他の公務員における場合におきましても、監督者なり、管理者その所属の長が評定をするという点から考えて見ましても、その考えを学校に及ぼしたときには、当然に学校長の責務になると私どもは考えております。これは法律では都道府県教育委員会計画のもとに市町村委員会実施するとなっておりますが、その実施の方法なり、計画として、具体的には校長が書くということを定めますれば、それは校長職務として当然やるべきであるという解釈を持っているわけでございます。御承知のように法律では一々教育仕事の推進に当って、このことは教育長がやるんだ、あるいは部長、課長、指導主事がやるんだ、社会教育主事がやる、あるいは校長がやるべきであるというようなことは、具体的に言ってないことが多い。多くの場合委員会の権限なり、責任ということでやっておりますが、実際問題といたしましては、委員会自身がやろうとしても、常任の特別職である、非常勤の特別職である、そうして合議制であるところの教育委員会が、一人々々の先生の勤務状況を把握して、そうして記録するというような職務をやるべきものでないということは、委員会制度の本質から考えてみまして、当然起り得るのでありまして、従ってこれは委員会がやるべきであって、校長の責任でないと考えることは、私はあまりに狭義に解釈し過ぎた解釈の仕方で、これは通らないことである。従来の行政慣行から申しましても、そのようなことは通らないというように固く信じております。
  29. 高田なほ子

    高田なほ子君 二、三点お伺いしたいと思います。まず、本島教育長にお伺いするわけですが、案は勤務評定は確かに法律の中に出ているわけでありますが、私ども文教委員といたしましては、教職員に対する勤務評定という問題については、今日非常に問題がありますように、教育効果そのものに対してどういうような影響を持つか、しかして勤務評定の内答等については、どういうような方策が必要であるのか等々、各般の問題がその中に内包されているわけでありますが、不幸にして私ども文教委員といたしましては、法律制定当時において、わずか数分間の審議きりされておらなかった。従ってこの問題の実施に当っては、重大な関心を持って、当時文部大臣であられました松永東氏に対しては、勤評実施に当っては、その実施前にすべての問題、もちろん実施経過内容、こういう問題について、われわれに内容を明らかにしてもらいたいということを、しばしば実は文教委員会で要請をしてきたわけであります。これは当然立法府にある者の良心であって、これは決して文部大臣も御反対なさらず、公開をすると、こういうようなお話しでありましたために、文教委員会としては、全国的な当の責任をお持ちであられる本島さん、木下さん、この御両所に国会においでいただいて、各般の問題について実施前に御意見を伺い、また、われわれ立法府にある者も、立法した者の立場として、その責任を負わなければならないという観点から、実はしばしば御出席を御要請申し上げたのです。ところが、不幸にして実施前に各般の御所用という理由で、ためにその意見をお聞かせ願えなかったということは、かえすがえすも残念であったわけでございます。そこで、今お伺いしたいことはこうした私たちの真率な願いに対してなぜ実施前に国会にお出ましいただいて、いろいろの御意見をお聞かせ願うことができなかったのか。今日、実施後こうした混乱の中で御意見を聞くということよりは、むしろ、実施前にお伺いしたがったという思いが切でありましたがゆえに、どういうわけでわれわれの衷情というものをくみとられて、ここに御出席できなかったか、まずその理由についてお伺いしたい。
  30. 本島寛

    参考人本島寛君) 先ほど木下委員長から、この点に触れて冒頭に申し上げたのであります。私からさらに申し上げたいと思います。三月の中旬から四月にかけてのお話がございましたが、私どもは実は十二月に勤務評定試案を発表いたしまして同時に管内の組合はもとよりのこと、関係者にこの試案をお配りいたしまして、急いで研究していてくれ、これは東京都は最初から試案にタッチして作ったものであるから、本来ならば、初めから東京都でこの試案参考として都案を作ってから、都案について意見を求めるべく研究してもらうべきでありますが、自分らが初めからタッチしたものであるから、大体この考えと、われわれの現在の考えとは、そう大きな食い違い、差はない、この点を含んで、まずもって検討してほしいということを要望いたしました。そのときに、勤務評定の問題を処理するに当って、われわれの今考えておる今後の進め方についてお話をしておこうというので、当時は私は一月中には、各機関に対する説明会をやる、二月、三月とかけて、その間にいろいろ意見を聞きながら東京都案を作って、四月一日から実行に移したい。つまり三カ月間というものは、部内の関係各機関のいろいろ意見を聞き、また質疑応答もしつつ、そうして部案を作っていきだい。四月一日から、これを、規則の制定をして、九月一日に第一回の評定書を作ってもらうようにしたい。このことは勤務評定を作る時期といえば、年度のうちで一番異動の少い九月一日または十月一日を選ぶのが最も適当である。しかし、最初にやります場合には十分これを、いいものを作るための指導なり研究機関というものが必要であるから、にわかに評定規則を作って、さらに幾日のうちに出すといったやり方はおかしい。この仕事のむずかしい点から見ましても、相当の余裕を置くべきである、逆算をして自分らはそういうふうにやりたいのだということで、はっきり各機関に同じようなことを申しました。そのやり方、スケジュールに従って仕事を進めて参ったのであります。従って三月から四月の間というものは、私どもにとって、実は富士山の胸突き八丁と申しますか、九合目というような大事なときになっておりまして、多くの年度末、あるいは年度当初の重要な問題を控えておりながら、なおかっこの問題をやっていきたいということは、今申しましたような逆算をして、どうしてもその仕事をすることが適当だと考えたためであります。何も他意はありません。ほんとうにこの評定問題やら年度末の議会を控え、かつはしょっちゅう常任委員会もございますし、その間人事の大異動もありまする等、そうしてこの問題も進めなければならない最後の段階に入ってきて、委員長なり私がこの時間をあけるということは、全くもうできかねる情勢にあったのであります。このことは、その後取扱っている各県の事例からごらんになりましても、ほんとうにこの問題と取っ組んでいきますと、その時間をあけるための困難な情勢にあることは御了解いただけると思うわけでございますが、何の私ども他意はございませんので、ほんとう自分の担当している現実の仕事処理に追われてそれができなかった。心の中ではまことに相済まない、恐縮だと思いながら、ついその申し出に応ずるところの確信が得られなかったような次第でございますので、私からも事情を敷衍申し上げまして、御了承いただきたいと思います。
  31. 高田なほ子

    高田なほ子君 御多忙であるということについての理由は、今十分了承してあるわけでありますが、御承知のように先ほどもお話しのように、最も今回の全国的な、かなり統一的な評定標準を作るために、愛媛県の資料を元にされたようであります。御承知のように愛媛県の勤評問題は、昨年来非常な問題が起きて、われわれ文教委員会といたしましても、被評定者側、また評定者側、両者の意見を十分ここで実はお聞きさしたわけであります。当時評定者側でも、今回の実施された評定は満足なものではない。従ってだんだんと研究をして、必ず満足のいくようなものにしたいというような確言を、この文教委員会でなすっておったわけなんであります。ところが、その後愛媛県下では国会でお話しになったとは違う、全く前と変らないような評定内容実施したために、たびたびの混乱が繰り返されてきた、こういうようないきさつがありますので、ぜひ東京都の本島さんが、全国的な画一的なこの勤務評定内容を作る責任者であるという観点から、御多忙であるという理由は、万々承知であるが、実施後、または実施時における混乱というものが十分予想されたので、何としても御意見をここで伺いたかった、まことにそのことができなかったのは残念きわまりないことでありますが、理由はただ単なる時間的に余裕がないということだけでは、私どもにとってははなはだ満足がいかない。事それほど重大な問題であればあるほど、お互いが胸襟を開いて意見を交換して、円滑に、かつすべての者が納得できるような方法が講じられてしかるべきであったと思うのですが、こうした混乱惹起の原因が、一つにはこうしたところにかかっているのではないか、こういうことを遺憾ながら申し上げざるを得ない。  第二点にお伺いしたいことは、これは釈迦に説法でありますが、文部省はこれを作る内容等について、その制定する何も権限は持っておらぬ、木下委員長の代表による声明にもある通り、各都道府県の実情に即し、教育委員会が自主性をもってこれに当る、こういうことは、これはもとより実は論を待たないわけであります。文部省の木田課長等が愛媛県において、あるいは関東ブロック教育長会議において、さながら、王者のごとく君臨して、しきりに皆さんの自主的な判断を、むしろ文部当局の考え、または文部当局の指導ということを口実にして、それに持っていこうとした形勢がはなはだ強くうかがえるのです。私は文部省の指導助言という権限を否定するわけではありませんが、どうも文部省の影響が強過ぎたように思うのです。私は本島さんにここで開き直って質問するよそよそしい間柄ではありませんが、御承知のように東京都は、都労連という伝統的な、すべて話し合いによる問題の解決ということを伝統にしながら、今日まで事教育の問題に関する限りにおいては、胸襟を開いて、一度も今日まで混乱の事態を招いたことはなかった。これは木鳥教育長の寛容な御態度によることでもあり、また、東京都の教員組合としての伝統的ないわゆる闘争方針によるものでもあり、合せて都労連としての今日までいい慣行が守られてきた。しかるにもかかわらず、今度文部省が、一たびこのお尻を上げるや、混乱を巻事起すということを十分に予想しながら、これを回避できなかったということは、本島さんが文部省の圧力に屈したのじゃないかという危惧を持たざるを得ない。この点について文部省が、いかなる皆さん方に対する指導方針で臨まれたのか、御迷惑かと思いますけれども、私としては今後教育の自主性、地方の自生性を尊重するという教育委員会職務の通常の面から考えても、忌憚のないところで御意見を拝聴しておきたいと思う。
  32. 本島寛

    参考人本島寛君) 私は先ほど教育委員長が申しましたように、戦後のあの教育制度を作られたうちの最も大きな特色は、地方の教育がそれぞれ住民の直接責任においてその自主的な、そうして地方の自主制に基いて処理されるべきであるという、その行政のやり方を貫いたところにあると思う。これがわれわれが日常の仕事をしていきます上の基本的な態度であるということを、私は就任以来常々考えております。ただいまの勤務評定の問題を処理するに当りましても、当然その考えは堅持して最後まで参ったつもりでございます。お話しのうちに関東ブロックの会議なり、あるいは試案作成の会議に、文部省の課長なりが出たというようなことがございますが、これはむしろ、私の方では各部会の会議とか、幹再会とか、総会等に当りましては、いつもわれわれと国との緊密な連絡、都道府県相互の間の連絡ばかりでなくて、国との緊密な連絡ということは大事な仕事に考えております。同じ義務教育なら義務教育を担当する当事者であり、国と都道府県市町村がばらばらであってはなりませんので、緊密の連繋をとることの必要性は言うまでもございません。そのために私どもが会議を持ちますためには、それぞれ担当の責任者の出席を私から要請をいたすのであります。場合によっては、大臣の出席、あるいは次官、局長、それぞれの調査とか下調べとかによりましては、あるいは係官、それらの出席を要望し、あるいは国が持っておるところの資料の提示を求めます。そして私どもはみずからの仕事としてこれを意見を聞き、かつは資料の提示を得まして、そうして内分たちの出し合った資料なり、お互い意見を交換して、そうして会議を進めるという行き方をとっております。このやり方は、今度の勤務評定のやり方においても、いささかも変っておりません。たまたま出ておったことから、文部省が必要以上にこれに干渉していったのじゃないかというようなことが言われるとするならば、それはむしろ、私どもの方から要請したことであって、出席して下さった人に対しては、大へん申しわけないのだというように考えております。しかし、外部ではどのようなことを言われましょうとも、私どもは私なりの考えでいくことはいいと信じておりますので、今後ともこういう態度でいきたい。決して国と都道府県市町村のばらばらのやり方があってはなりませんので、緊密の連繋をとるためには。しかしそれに籍口して不当に他の権限、責任に属する仕事に関与したり、圧力をかけたりすることは、これは厳に戒めなければなりませんし、かりにそのようなことがあっても、いささかも屈してはならないという点については、私どもとしては、そのお気持にはその点があろうかと思いますが、全くその気持としては、私は同感であります。
  33. 高田なほ子

    高田なほ子君 国との連絡についての事項については、御説私もまことにごもっともと拝聴するわけです。しかし、本問題についての連絡は、事教育に関する問題であって、国との連絡だけ考えても、面接教育の衝に当る教育者との連絡をこれは考えないというやり方は、私は大へん本島さんにしては封建的な考え方ではないかと思うのです。先ほども開陳された中にあるように、教員実施を反対しているというけれども、その真意がわからないからといって大谷さんから質問がありました。ところが、本島さんは、実は私もその教員が反対している真意がわからないのだ、こういうようなことをおっしゃっていられた。先生方が措置要求をしなければならないほどの不退転の決意を持って、しかも一部の先生方がこれをあおったり、そそのかしたりするのではなく、御承知のようにほんとうに九八%の先生が、良心をかけてこの問題に対して強い反対の意見を持っているというときに、その反対の理由が実施する段階、実施前の段階においてもわからないなどという教育長というのは、よほどおかしいと思う。それでは教育長としての私は貫禄がお勤まりにならないのじゃないか、なぜこの実施反対の真意というものについて研究される熱意をお持ちにならなかったか、それが一点。  もう一つ、先ほどこの実施前に各般の意見を実は聞いたけれども、積極的な意見はなかったのだ、しかし二、三よいと思った点は取り入れたのだ、こういうようなお話しでありました。しからば、どんな勤務評定実施前に、各般の意見を、どういうような形式で、どういうような層に、どういうような方法でこの意見を聞くことに努力をされたのか、はなはだ皮肉な質問でおそれ入りますが、まことに重要な点であるから、お伺いしたいと思います。  それからその次にお伺いしたいことは、公立学校長会のあの要望事項は、はなはだ積極的な意見が私は出ていると思っています。あなたは積極的な意見が出ていないと言っておられますが、これは最低の校長会の要望事項であったと思うのです。この中で五段階評価を、せめて三段階にすることについてですね、これは学校内における教員をこまごましく五段階に分類するということについてはまずい。従ってこの点を削除してもらいたい。こういうような二つの要望点があったと思うのです。けれどもこの要望点については、遺憾ながらいれられておらないということが、ここに書いてあるわけであります。これではせっかく校長さんが最低限度の意見を徴して、皆さんにこれをこうしてもらいたいという要望を出したにかかわらず、こういうものさえも受け入れられないというのは、意見を聞くというのは、単に形式的だけのことで、本気になって意見を聞くつもりがなかったんじゃないかという憶測もせざるを得ない。はなはだ残念なことであって、こうした混乱の原因をやはり教育長側が多分にお持ちになっておるので、単に組合側に反省せいというようなことをおっしゃっても、それはあなた納得がいきませんです。この間の御説明を願いたいと思う。
  34. 本島寛

    参考人本島寛君) 文部省だけでなくて、教組との連絡も大事であって、十分に事前においてもそうすべきではなかったかというお話しでありましたが、私どもも最初実は組合に説明をしたときから、資料を配ったときから、この注意をいたしておりました。いろいろ当時日教組は絶対反対という声を出しておったことも、よく承知しておりました関係から、もう絶対反対という意見は、最初からこれは意見として伺うことは参考のためにけっこうであるけれども、問題を処理するための意見としては、私どもとしては実は聞いてもしようがないのだ。これは先ほど申し上げましたように、国会なり政府に行って述べてもらいたい。われわれとしてはそれを実際に必要を認め、法律規定もあることであるので、どのようにやるかということを検討したいのだから、問題点をしぼって意見を聞きたいということを、最初に冒頭から私は申してあるんです。ところが、なかなかそう事実は御承知のように参りませんでしたので、十分なるその意見を、内容について聞くということには参りませんでした。十数回にわたる話し合いにもかかわりませず、その間これはよくないから、こういうふうにした方がいいじゃないかという意見を聞くことができなかった。どれもこれもいけないということで、最後には結論づけられて、それぞれの評定要素観察内容を逐次質疑を続けて参りましても、最後にはそういうことになっていくんだ。私はかつての長い行政経験から旨いまして、どんな会議に出ましても、やはり初めから何もかも全部反対というような会議に出たことはないということを申したほどであります。そういうことから、私どもとしては会議を持つことを労を惜しんだわけでも何でもありませんし、直接関係のあることであるから、内容にしぼって意見を聞きたいということは十分聞かれなかったのだということは、御了察いただけると思うのです。従来教育のいろいろな難問題を処理するに当りましても、決して先ほど都労連との労働慣行の問題がございましたが、私どもとしては者をかまえて仕事をいたしたくありませんが、それにやむを得ずしてなったのであるというふうに今でも私は考えております。  それから反対の理由について十分検討しなかったかというのでありますが、なぜ反対をするであろうという相手の立場になって考えますときに、教員という立場になってものを考えたのではわからないのであります、私には。ほかの要素を取り入れて考えてみますれば、それはいろいろな想像がついて参ります。しかしながら、教職員であるということで考えてみまするときに、なぜ徹底的に反対しなければならないか。子供の授業までもほっぽり出してまでも反対しなければならないという理由は、今でも私にはわからない。ほかの要素を考えていけば推測はできるわけであります。  それから校長会なりその他に対して、あまり積極的な意見が出なかった。これはあれだけのこまかい内容を出したのでありますから、一々について私どもいろいろ意見も聞きたかったわけでございますけれども、いろいろ検討いたしまして、結局校長会としては取りまとめて出したのでありますが、最初にどうか一つ意見がありましたならばそれぞれの機関、組織でまとめた意見を出してほしい。一人一人の意見、田刀何千、あるいは校長の千五百というような人たちの一人一人の意見を伺っていてもなかなか大へんなことだから、これは一つ皆さんの方でも組織を持っているし、それぞれの専門委員会を設けて、すでにこの問題を検討している組織もあることですから、そういう方面からまとめた意見を出してもらいたい。しかし、それが意見を出すに当っては、大体二月中には出していただきたいということを先ほど申し述べましたスケジュールの関連を述べまして要請をいたしたわけであります。それに対しまして、今お話しのように、校長会からは五段階を三段階にしてくれという要望がございました。これも十分検討いたしました。校長意見が出たから検討したのでなく、実は最後に勤務評定試案の結末をつけるときまで、この問題を問題点として私ども検討を加えたのであります。校長の言わんとする主張のごときは十分検討して、そして五段階にした理由を校長方にはるる述べて私どもも参ったのでありまして、三段階より五段階の方がよいと、今もって私どもは考えております。これは今後のいろいろな意見も聞きながら再検討を加えて、三段階の方がよりよいということであれば、修正するにやぶさかではありませんが、今ではまだ五段階の方がいいんだ、三段階では楽過ぎる。そして三段階をやった他の経験から言いますと、これはあきたらない。たとえば一番いいというようなものを、ただよいというだけでは足りないで、最もよいというような符号をつけて出す。事実三段階で出せということを要望しているのにかかわらず、五段階になったり四段階、六段階になったりして、いろいろなことを実績上出してくる。それで三段階では楽過ぎるということが、実績上からはほかの実例によって見ることができるのでありまして、そういうことは想像できます。従って五段階の方がよかろうということでいたしたので、何らの基準のない、出すものは五段階で出す、そうでないものは三段階で出すというふうなことになってはならないということでいたしたのであります。  それからさらに強い要望でありましたが、これは相対評価の点を削除してほしいという強い要望がございました。これにつきましても最初からやはり今の段階の点と、相対評価の場におきまして、絶対評価だけでいいじゃないか、相対評価も合せてやるべきであるというようなことについては、もう終局の締めくくりをつけるときの大きな問題点でございましたので、十分私ども検討いたしました。先生方の述べられる理由について、その方がよいということに私どもは納得できなかったわけであります。これはやはりそういうことでいっていいと私は思う。意見があって、検討し抜いて、十分聞き、さらに再検討を加えて、われわれ自身がやる仕事に対してこの方がよいと判断したことを、私は最後にはそれでやっていっていいんだと、かように考えておりますために、このせっかくの校長会の意見に対しても、この点は取り入れることができなかったわけであります。
  35. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) ちょっと御発言の前に委員長として申しますが、あと三十七分くらいになっておりますので、まだ御質問の希望者が相当あると思いますので、御質問をきわめて簡単に、また御答弁もそういう要点にしぼっていただきたいと思います。
  36. 高田なほ子

    高田なほ子君 三点だけあと残っておりますので、簡略に私も質問いたします。今の御答弁の中で、ちょっと聞き捨てにならない御答弁がありました。教員として絶対反対だということはわからないが、ほかの要素を考えていけばわかるという、これは大へんおかしな話ではありませんか。大体現在の部教組の執行部ですね、たびたびあなたは団体交渉をお持ちになって、おわかりになっているのじゃないですか、いつでも彼らは自主的にものごとを判断して、冷静に下部の皆さんの意見を聞き、また特定な飛躍した議論に対しては常に執行部は冷静な態度をもって事を処している。これはあなたが一番都教組の現在を理解していらっしゃる方なんですね。それなのに何ですか、ほかの要素を考えていけばわかるけれども教員の絶対反対はわからない、そのほかの要素というのはどういうわけか。  もう一つは、研究機関を設けたいと思ったが、結局あなたは設けなかったのですね。私も研究機関を前にお持ちになったならば、こういう問題も未然に防げたのじゃないかという非常な疑問を持つ一人なんです。なぜ前に研究機関といったようなものが持てなかったか、それが第二の点。  第三点は、四月十九日非常な切迫した最後の交渉段階に、われわれ文教委員会としては、東京都の状態はただならぬ状態である、これを回避するために、文部大臣のあっせんを文教委員会としては決定をして、事態の混乱を収拾するために最後の御努力を願ったわけですが、不幸にして校長二つの最低限度の意見もいれられず、教員勤務評定反対の真意も認められないままに、一方的にやはりあなた方は決行してしまわれた。これは都労連の戦いの伝統の中でまことに悲しんでも余りあることであり、都教組の現在の執行部の謙虚な能度に対しても、私はあなたは一つの冒涜を冒されたのではないか。まことに遺憾に思うのです。この点についてお答えを願いたいと思います。  それから続いてお願いしたいのでありますが、本島教育長の名をもって「政治的行為の制限について」こういうパンフレットをお流しになっておられます。そうしてその末尾にいわく、直ちに政治的行為の制限に違反した行為を防止し、または矯正のために適切な措置をとらなければならない、ということを書いてありますが、ところがその前に、このような政治的な行為の違反の事実が発生した場合には、「すみやかに関係者の職氏名およびその事情を報告されたい。参考のため別紙関係法令を付記する。」こういうふうにして教育公務員特例法の第何条とか、それから国家公務員法の政治的行為の制限、政治的行為、政治的目的の定義というようなものが抜粋として流されております。しかし私をしていわしむるならば、これは大へん不親切なやり方なんです。これは、よく法律研究しておられない方は、これを出されますというと、何でもかんでもこれは政治的行為になってしまって、何にもできないというような気分を持たせるのに非常に役立つのです。私は、もしこういうものをお流しになるならば、この法令のやはり人事院の法解釈も克明に流してしかるべきではないかと思う。たとえば、ここにあります第十の「政治的目的をもって、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し若しくは指導し又はこれらの行為を援助すること。」これは政治的行為であるという断定をし、これに参画した職氏名を直ちに報告せよとあなたは命令を発しておる。これはあまりにも雑駁な指示であります。あまりにも拘束的な、あまりにも権力的な私はやり方ではないかと思う。御承知のように、この第十号に示威運動というものを規定してあるわけですが、組合員だけの非公開の会合の場合には、本号に該当しない。組合員だけの会合等にもこれが適用するような印象を与えるということは、はなはだもってけしからぬことなんです。その他時間がありませんから、これは一々指摘できませんけれども、これはもっともっと親切な解釈が出ているのですから、一から十までみんな政治的行為にきめつけてしまうような指導をなさるということは、はなはだ私は遺憾だと思う。こういう問題についてどういうふうなあなたはお考えをお持ちになっていらっしゃるか。  その次は、警察権がしきりに乱用されております。先般も法務委員会で警察権の乱用について問題があったわけでありますが、岸内閣総理大臣も予算委員会あるいは本文教委員会おいて、事教育に関する問題については警察権の介入は阻止していかなければならないという基本方針を出されておるのですね。ところが、本島さんの管轄下にある東京都の学校の中では、白昼職買薬の引き出しをかき回し、子供のいる前でそういうことをやっている。はなはだしいのは、この捜査令状の中の対象にもないような、手さげ金庫まで持っていく。まるでどろぼうのようなことを警察官がしている、学校から持っていく。そういうような不当な職権の乱用は、非常に私は教育上これは支障があると考えております。従いまして、本島教育長は、こういう事態に直面されて、断固として教育を守るという、やはりその心意気をお示しになってしかるべきではないか。大東京都の、最も世論の注視を浴びる本島教育長の私は御態度というものは、非常な大きい影響を持つがゆえに、警察権乱用に対する教育長としての御態度、このことについて御答弁を願いたい。  続きまして、木下委員長さんにお尋ねを申し上げたいのであります。教育者が、軍国主義教育から子供を守れというのは何が悪いんです。私どもは、私はと言った方がいいでしょうが、二十五年間教育者をしてきて、いかに軍国主義教育のもとに自分たちの教え子を犠牲にしたか。死んで国に尽せばよいという、いわゆる国が統制した道徳、修身科の教育を通して、徹底的に軍国主義教育をたたき込んで、多くの教え子を殺した。言うならば、私は戦争犯罪者の一人だと思うんです。時の政府の権力のもとに、食べねばならぬ教育者が、こうした自分の良心さえも麻痺させて軍国主義教育に奉仕してきたんです。それゆえに、現在の教育者は、あなたも御存じでありましょうが、戦後、教職員適格証なるものをわれわれは出さねばならなかった。憲法を守り、戦争に協力しない。そうでなければ教壇に立てなかった。こういうような観点から、軍国主義教育から子供を守れと教育者が主張することがなぜ悪いんですか。木下さんは尊敬する私の大先輩であります。この点についての御見解が、はなはだしく先ほどの御発言からあいまいであることを憂えまして御質問を申し上げます。こういう点が解明されないから、大田区の尾崎教諭は、尊敬する木下先生に裏切られたというようなことで、あえてみずからの生命を縮めようとなさるような不幸なできごとを惹起したあなたの責任というものは、まことに私は重大だと思う。前途ある教職員の指導的な立場に立たれる方でありますから、これを明確に御答弁願いたい。同時に、教員勤務評定というものに対する批判をすることは自由であります。これは何ら政治的な行為でもなければ、政治的な目的にも入っておりません。堂々と教員は、勤評が悪ければ悪いという反対をすることは、合法的な行動であります。従って勤評反対という意思表示をすることが何が悪いか。あなたは、こういうことを吐くのはあきれ果てたものだというようなことを言われましたが、何が悪いんですか。なぜそのようにまで教員の意思というものを権力で押えつけなければならないのですか。私はこの点がわかりません。解明をしていただきたい。
  37. 本島寛

    参考人本島寛君) 先ほどの委員長の御注意もございましたので、言葉は尽しませんかもしれませんが、簡単に述べさしていただきます。教員としては、絶対反対をする理由がわからないが、他の要素を考えれば想像がつくと申しましたが、そのことを都労連の労働慣行から申しますと、私はどうして教組が絶対反対だとあのように言うのかということがわからない。やはりそれは日教組という大きな組織が、全国的な立場おいて、絶対反対であるということを、東京におけるいろいろな会議でもそういう態度を打ち出しておりますから、そういう点から、うちの都教組なり高教組というものも、そういう一つの組織下においては、自分らは賛成であるということは、口には出せないのであろうというようなことは私は想像いたしております。けれども、しかしこの勤務評定そのものが、どこまでも絶対反対であるというようなことを、果してうちの方の教組の幹部が持っているかどうかというと、私はそうは考えておらないのであります。人のことでありますから、非常に支障がありますからあまり触れなかったわけでありますが、その点であります。自分としては相当わかっておるつもりではございますけれども、やはり申し上げにくい点もあることは御了承いただきたいと思います。  それから、研究機関を事前に置かなかった理由は先ほど申し上げました。あのような絶対反対と賛成との二つの理論下において、どのような案を作ったらよりよいものができるかという、そのわれわれの求めている研究機関というものの設置はむずかしい。ことにそのうちに教組の参加を求めるといっても、今もって教組は参加を拒否しているのでありまして、そのような内容を、どのようなものを作るかということではできなかった。もちろん勤務評定そのものの是非論からの研究機関であったならば当時できたでありましょう。もしそういう機関であれば、国の方においてやって、国の一つの考え方なり制度の問題からも起っておることでありますから、国の方でやってほしい。私ども実施上においての問題点を究明し、そして検討を遂げてやるということで、最初からその態度をとっておったのでありますから、これは一つ御了承をいただきたいと思います。  それから、文部大臣が、最後の段階に入りまして、わざわざ東京都まで、国会の非常にお忙しいさ中をおいでになりまして、どうかその混乱の事態を起さないように、国会の方でも強い要望をしているし、われわれとしても、文部大臣としてそういうことを強く念願しておることであるから、教育界の混乱を避けるように一つ善処してほしいということのお話がございました。さらに、これは直接の関係ではございませんけれども、安井知事のところに寄って、どうかそういう点で、都政の中に教育の混乱が起らないようなことに、知事としてなし得る面についての一つ助力をしてほしいということまで要望されて行かれたように聞いたのであります。私どもは、これはまことにごもっともなことであり、教育委員どなたでも、私どもは混乱を招くことを何とかして回避したいという気持については、いささかも変りはございませんので、さらにそのお話がございましたので、あらためて委員の皆さんといろいろ検討を加えました。相当御年輩の委員の砦さん方も、あの最後には、夜を徹して、一瞬もされずにこの問題処理のためには努力をされて参ったのでございまして、大臣が申し入れをされたことに対しましては、最後までその趣旨をくんで努力をいたしたのでありますが、残念ながら結果に及ばなかったような次第でございました。  それから次に、政治的行為の制限についての注意を喚起しておきました。私はこういうことを、あとになってからいろいろ注意するよりは、当然施行されている法律だから、だれでも知っておらなければならないことではございましょうが、なかなかその場にぶつかってみないと、前に制定された法律などをうっかりするという場合もございますし、そういうことから法を犯すというようなことがあってはなりませんので、事前に注意をしておくことがよいと考えて、その関係法文を援用いたしまして、そうして事前に警告を出したのであります。もちろん事前の警告はこれだけではございません。その前に何回も回を重ねて、そうして教職員が、どんな場合にあっても、どうしてもやはり教職員としての態度を失ってはならないということについての注意をいたしたのでありますが、そのうちの一つとして、従前やってきたような、いろいろな場合において問題にされなかったことでも、法律が改正になると、新たに問題になるおそれがある。今度のように、授業放棄までやっても絶対に阻止するというような態度をとっておられると、そういうその後に改正されたいわゆる教育二法の、あの改正された後の問題点に直面いたしますと、その前と情勢が違うので、こういう点は一つ忘れてはならないぞという意味で、私としてみれば、ほんとうに親切な気持で出したのであります。その考え方、私の所管する四万五千ないし五万に及ぶ教職員に対してというよりは、私は自分の自負ではありますけれども、一人でも法を犯す者のないようにという配慮からいたしたのでありまして、その逆をとって、圧迫とか権力的とか、そんな気持はいささかもございません。この点ははっきり申し上げておきます。
  38. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 私に御質問のありました二点につきましてお答えを申し上げます。軍国主義教育から子供を守れという言葉は、確かにただいま高田先生からお話ありました通り、さようなことがあってはいけないと思うのでありますが、しかしながら、日本の、現在少くとも東京におきまして軍国主義教育は、私は行われていないと思うのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)それが多少なりとも行われているきざしがありましたならば、軍国主義教育から子供を守れということは私は一言えると思うのでありますが、(「あるじゃないか」と呼ぶ者あり)私は東京都の教育委員長といたしましては軍国主義の教育をやっておりません。と同時に、また現在は民主主義の教育で、少くともこの十年間ただ一つ民主主義教育のために努力をして参りまして、この民主主義の教育をどこまでも実現していくということの考え方の中に、いかなることを論理を用いましても、現在の民主主義を十年間やっている中に軍国主義教育が入り込む余地は私はないと思うのであります。と同時に、かつてのこれは軍国主義でありまして、かつての軍国主義は現在の日本教育に入り込む余地は私はないと思うのであります。しいて入れれば別でありますが。少くともさようなことでありますこの言葉と勤務評定反対という言葉を一枚のビラに記すということが私は混乱を起すもとになる、(「いいところだ」と呼ぶ者あり)そういうことを私は御答弁申し上げますときに指摘したわけであります。これは、混乱の原因は、きざしのないこういうようなことと、勤務評定という、何らの関係のないものを結びつける勤務評定は私は純粋な教育の問題として考えているということは一番さきも申し上げた通りでございます。  なおそれに関連いたしまして、私に非常に裏切られたという若い教育者がありますことを私は承知いたしております。直接私に対しまして質問状も来ております。私はいい機会であるから、この質問状をもとにしてこれに丁寧に一つ答えてやる、その答えたものがある新聞に報道されております。ここで私の態度というものはこの裏切られたものに対しては解明をなし得たつもりです。  それから第二の御質問でございますが、勤務評定に対します批判は、私もこれを実施するに当りましていろいろその反対を聞くことを求めました。でありますから、勤務評定に対します批判をするということはもとより自由でございます。もとより自由でありますので、私は代表的に日本教育という題目で特に一時間を費しまして、日本教育者三名が勤務評定に反対をしたものを述べましたのを忠実に聞きました。これを述べようと思いましたところが、そのときにそれは必要がないから先へ進めということで、私はそのときに発言を中止いたしました次第であります。ちょうどその中止いたしましたところがただいま御質問に出てきたものでありますので、その内容をちょっとここで……。つまり私は勤評に対する批判は自由でありますけれども、その批判内容になるところのものが問題であったのだ、従いまして内容でありましたところのものをここで申し上げたいと思うのでありますが、一つの代表的な教育者の反対論は、これから教室の中でいすに腰かけて授業をしていたならば、校長さんがたまたまそこに巡回してきたときにこれを見つけて、私の勤務評定は悪くなるであろう、こういうような評定ならば絶対に反対である、これが一つであります。二番目には、冬にストーブをたいているけれども学校にストーブにかけてある網がないために子供がこれでやけどをしたらば、自分校長さんは、教育愛がないからやけどをしたのだということで私の評定は悪くなるであろう、だから勤務評定は反対、第三番目の反対論は、これから校長先生の家に行ってごきげんをとらないと勤務評定は悪くなるであろう、少くとも一時間の放送の中におきまして三人の教育者の代表者の述べました反対論の内容というものはかようなものであります。これを全国のわれわれ仲間といってもいいかと思うのでありますが、教育者が聞いたときに、この反対論は全くその通りだという、そういう信念を持っている教育者が一体どのくらいあるであろうか、おそらく私は日本教育者は残念なことを言ってくれたものである。反対論としてはあまりにも残念な反対論ではないかというふうに、私も教壇に立った経験が相当ありますので、私も一個の教育者としての立場から考えれば、われわれの仲間がかような内容勤務評定に対する反対としましてはまことに情ない反対である。反対をするならほんとうにりっぱな納得のいくような反対をしてもらいたいというふうに考えました。そこで、私は結論といたしまして、そのときに教育者みずからがみずからの顔をよごすような態度に出る反対論は、これは勤務評定はマイナスだというけれども、決してそれはそういうような意味合いからマイナスの論が出るということについては私は意見を異にする、こういう意味で申し上げた次第であります。私は勤務評定批判の出ることを十分、この自由はむろん妨げないのでありますけれども、聞くに足りる意思表示をされ、たっとい内容を持った批判が伺いたいと、こう思ったのであります。(高田なほ子君「一言だけ」と述ぶ)
  39. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) ちょっと高田委員に申しますけれども、だいぶ時間が高田委員とっておられますので、あとで……。(高田なほ子君「誤解があるから」と述ぶ)
  40. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 いろいろ論議を尽されておりますので、私は教育の行政の問題から逸脱いたしまして、教育の、実際に授業放棄するような事態におきましては、教育行政を越えて重大な国政の問題だと考えます。従って、ここで二、三の点についてお尋ねいたしたいと思います、先月東京都の勤務評定実施に反対の先生のストがありましたが、あのときに新聞の折り込みが折り込まれて、勤務評定、道徳教育賛成すれば戦争になる、戦争に反対ならこれに反対しろというようなビラが入れられておりましたのは御存じですか。
  41. 本島寛

    参考人本島寛君) 承知しております。
  42. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 その点と、ただいまの木下さんの、軍国主義教育から子供を守れ、勤務評定反対というビラとの、そうした点を関連して、相当に国民は混乱した考え方になっていると思うのであります。われわれはむしろ道徳教育とか、修身の教育が戦争したとは考えられないで、議会主義を否定して、法を無視した青年将校の革新思想に狂乱した誤まりが引きずり回して悲しき戦争となったとしか、どうしても考えられないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)しかも、その戦争の結果まことに廃頽たる、あわれな廃墟となった日本が、手も足も全部もぎ取られたような、領土を失ったその日本が、七年間の占領政策に引きずられながらも、わずか独立して五、六年の間に、世界の人が驚くいうなきようのりっぱな復興を遂げましたのは、苦難に負けず、その中に耐えてきた長き精神訓練といいますか、道徳訓練の、その蓄積されたる力であって、むしろこれが日本を復興せしめた原動力であると私たちは考えております。こういうふうな点から申しますならば、その道徳教育とか、修身教育とか、あるいはまじめに勤める……勤務評定に対してそれをはっきり知ってもらうような行き方は、むしろ日本人古来の美徳ではないかと考えておるのであります。こういうような点から考えて参りますときに、先ほど高田委員の質問に対しまして何か別の要素があるんじゃないか、こう言われました意味もわれわれは非常に心配しております。今日の和歌山県のあのストの姿を見ますというと、これは法を無視し、議会政治を無視した当時の軍部の一部の青年将校のはやった気持によく似たものが、何か非常識きわまる日教組の一部の中にあるのではないかとさえ国民は心配しております。むしろその方がはるかに心配であることを思いますが、そういう点についてはいかがな……それに対して私の考え方は間違っておるでしょうか。国民はかなりその点を心配しておるということをちょっとお尋ね申し上げます。
  43. 本島寛

    参考人本島寛君) 四月二十三日の授業を一斉放棄するという事態の起りましたその前後の問題として、新聞の折り込みを出されました。私どもの方でも都民にPR活動して出しましたのでありますが、勤務評定について都民の皆さんに訴えますということで出しておられるうちにも、ただいまお話のあったようなことの意味も書いてあるわけでありますが、私どもは核兵器とか、基地を作るとか、再軍備とか、憲法を変えたり云々というようなことも書いて、そうして今は教育の方向を変えようとする動きがあるというようなことでやっておられることでありますが私ども教育自体のことをまっすぐに持っていくという以外に何も考えておらない。ところが、相手の人たちがいろいろなことを、さっき私はばく然と他の要素を考えるとわからなくなると申したのでありますが、これはそれ以上申し上げる必要がないと思ったからであります。今は、和歌山の今の事例から見ましても、ほんとうに私は教育委員会当局がああいう混乱のさなかにおいほんとうに年をとった委員長が労苦をされておることは忍び得ない感じがいたします。何とかこういう事態から早く教育を正常に戻したい。これが先ほど委員長の最初に、冒頭にお話しになりましたように、参議院で非常に御関心になって下すっておることを私ども感謝いたしておるのでありますが、何とかいたしましてこういう事態を回避いたしたい。今お話のありましたような点については、ひとしく私どもも他のいろいろな組織なり何かが、それは労働組合としては友好団体でございましょうけれども、事教育の面になりますと、ただ勤労者の勤務者相互の間における友好関係だけでは割り切ってはならない多くの深刻な問題がございますわけなので、こういう点を考えて処理をやっていただきたい。こういうことは私どもほんとうに熱望してやまないところでありますし、また大きく常々心配しておるところでございます。むしろ私ども国会の方に十分そういう点についても御配慮を賜わりたいということを念願いたしておる次第でございます……。
  44. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 時間がございませんから、きょうは。
  45. 近藤鶴代

    ○近藤鶴代君 最後にちょっと議事進行について。私はこの前に参考人と呼びましたときにもそういう感じを持ちましたのですけれども、きょうも重ねてそういう感を深ういたしましたので、今後もあることでございますので、委員長おいて気をつけていただきたいと思うのです。と申しますことは、参考人を呼ぶことは参考人意見を聞くことが主目的なのでございますから、参考人に対して時間を制限するようなことはよほどの場合でなければ失礼だと思います。それよりは、委員がこの場で、まるでその問題に対して専門家同士が集まっていてわかるにもかかわらず、それに関する自分の心境であるとか、あるいは周辺のいろいろな説明をなさるために、演説をするために時間をとられるということです。それをやめる訓練を私はしていただきたいと思います。新しい委員長に私はお願いをいたしておきます。
  46. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) わかりました。
  47. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 きょうの議事進行は、今の点もでございますが、大へん不公正に行われたということを私は遺憾に思います。私の質問の時間はあともう五分ないくらいの時間でございまして、そこで一ぺんにお尋ねをすると大へん工合が悪いのでありますが、仕方がございませんからなるべくまとめて申し上げたいと思います。  御質問を、同僚議員が申し上げました点については、単にここで聞き、御意見を承わるというのではなくて、やはり勤評問題について納得のいかない点がある。そこで本質問題に触れて教育委員長あるいは教育長について、その御反省あるいは御批判にこたえられるところがあるかどうか、こういうところだと思うのでありますが、残念ながら今まで考えたところを繰り返して述べられる点にとどまっております点も非常に残念に思います。悪貨は良貨を駆逐するというお話でございましたが、教育に携わっております教育委員会あるいは教育庁も、この日本を含みます非民主主義的な悪貨風潮に流されないように一つ願いたいと思うのであります。  前置きは、時間をとりますから省略をいたしまして、先ほど尾崎教諭の死をもってする抗議に対して、別に鮮明をしたからもう済んだのではないかというお話でございましたが、今までの答弁を聞いておりますと、尾崎先生が死をもって主張を、あるいは抗議を申しました重要な点について、どれだけ木下教育委員長自身が受け取っておられるか、あるいは考えておられるかという点が、従来の答弁では明らかになりませんでした。その中にございます、これは木下さん個人に対する尊敬もございますけれども、尊敬している人に失望したとき人間がこんなにもろくなるものかと驚いております、という点は、これはひとり尾崎教諭の気持だけではなしに、東京都下の教員全部についてある点だと思うのです。あるいは教育委員会に対する尊敬が失われた、あるいは学校先生たちにとっては信頼と尊敬が失われたという点だと思うのであります。その点についてどういうように木下委員長はお考えになるか、第一に伺いたい。  それからもう一つは、先ほどからいろいろ自民党の委員方々もお尋ねになりましたけれども教育の中立性が確保されているのかどうか。あるいは自主性が守られているのかどうか、教育行政について。この点については重大な疑問が投げかけられておる、あの遺書の中に。ところが、それについてはお答えがなかったと思うのです。さらに、民主的な教育を進めたいと答弁されましたけれども、これは尾崎先生の言葉をここで読み上げるのは非常に時間がかかりますから省略いたしますけれども、二個所にわたって、学校の先生もそれから教育学者も、あるいは校長等も反対をしておるのに、政治権力に屈服してこれが道義にかなうであろうか、それでいいのでしょうか、教える子たち教育的良心を政治的権力に売り渡してそれが教育愛と言えるのでしょうか、こういう点が二、三個所にわたって指摘をされております。そういう意味で民主的な教育行政がなされようとしていないのではないか。信頼と、それから民主的な教育を進めていくために、あるいは平和的な教育を進めていくためにわれわれは真剣になって意見を出した、あるいは教育学者に対しても、あるいは教師にとっては同僚、後輩である者からも意見が出ているのに対して、すべてそれが考慮されていないじゃないか、こういう点が指摘をされておりますけれども、それらの点については十分な木下さんの御意見がございませんでした。教育委員会を代表して来ておられますから、遺書の中で指摘されました、少くともその三点については、もっと木下さんの良心的な答弁をお願いをいたしたいと思います。  じゃ、あとすみませんけれども、二点お尋ねをいたします。
  48. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 初めの、この尾崎教諭が死をもって抗議をしたという点でございます。二つとかけがえのない大事な生命をかけての抗議でありますので、私は十分その書かれたところのものを読みました。一人尾崎教諭のみならず、私に対する信頼と尊敬とを裏切った、失ったというものはほかにもあるでございましょう。これに対しましては、私は過去の弁解をいたしませんで、将来に対して私のやるところを尽したいと思っております。  第二点の自主性でございますけれども、今日ほど私は日本教育の危機はないということを先ほど申し上げましたが、それとともに、現在における全国の教育委員会の存在の危機が今日来ておるのだろうと思う。教育委員会は全国的に今試練の時期であろう、このときに教育委員会が自主性を保って事の解決ができませんければ、私は日本制度からむしろ教育委員会をなくしちまっていいのじゃないかとさえ思っている。しかし民主主義の教育のためにできました教育委員会でありますので、私は先ほどお話にも出ました十二月十日の声明も出しまして、しかもその声明によりまして、この勤務評定に対する全国都道府県教育委員会が自主性を持って解決をするということを申し合せた次第でございまして、事のなるかならないかは今日の日本教育一つの試練の時期であると考えております。  第三番目の民主的ということでございますが、私はよく政治権力に屈服したということを言われております。しかしながら、私はということは、少し僭越だったかもわかりませんが、この遺言等によりましても私がなぜ政治権力に屈服したと、こういうことが数個所出ております。この点を私は個人的に弁解をしてもいけませんから、新聞等に自分の文を載せたわけでありまして、私は今日まで政治権力に屈服したという事実を自分で幾ら反省いたしましても、それがないということを申し上げたいと思います。
  49. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) 御注意しますけれども、時間が、予定の時間に近づいて、二分ほど過ぎておりますから……。(笑声)
  50. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それはまあ従来の運営の欠陥の結果でありますから、私だけしわ寄せされるのは多少不服であります。しかしいずれにいたしましても、委員会としては予定をいたしました時間を過ぎかけておりますから、最後に二点だけお尋ねいたしたいと思います。  これは、木下さんも民主主義的な教育あるいは民主的にやらなければならぬ、こう言われます。それから問題の勤評をめぐりまして、前大臣に教育委員会にまあ行っていただいたのでありますが、そのときにも理解と納得なしには協力は得られない、民主的な教育は、これは進めることができない、こういうお話がございました。ところが、今までの質疑を聞いておりましても、今の尾崎さんの死の抗議に対しましても、この一方的な実施の理由は述べられた。しかし一方的に委員会なり、あるいは文部省についても指導と助言という建前で勤評を実施するのが当然と、こういうことを言われておりますが、一方的な決定では、これは戦争中の話ではございませんけれども、納得することができません。納得と協力とは得られません。そこで意見を聞いて教育問題については、あるいは地方教育委員会意見も、あるいは実際の教育に当ります学校長なりあるいは教職員意見も聞かなければ、これはやってもやっても実際のその効果をあげることはできない。これは教育行政についてもそうだろうと思うのであります。ところがその実施について、一方的な実施という態勢に対して、意見を述べよう、あるいは話し合いをしようということについて、その意見をいれる、批判にたえてくれるという態度がなかったのではないでしょうか、あるいは尾崎氏の抗議にしても、あるいは二十三日の実施の前に大臣にも行っていただきました。しかしあの際に本島教育長は、検討したけれどもやることにいたしました。こういう先ほどの御答弁、それではあの混乱は防げなかった。あるいはこうして一方的にやろうとされましても、各地方でこの抵抗があり、あるいは意見が出されておる、あるいは若干の混乱も起っておりますが、これは一方的にやろうという方針のもとではできぬのではないでしょうか、その辺についての基本的な反省があるかどうか、民主主義的な教育をやりたい、民主主義的な教育行政をやろうと言われるならば、ほんとうの納得を得られる段階というものがなければできないのではなかろうかと思うのでありますが、その点についてどういうふうにお考えでありますか。  それから、先ほどから、この評定の結果は、あるいは給与、待遇等に関連をするということはお認めになっておられますが、そうするとこれは労働条件に関連をする問題であります。教職員特殊性と言われますけれども、問題は労働条件に関連するものであれば、あるいは措置要求をいたしましたり、あるいはこの労働条件を決定する勤評について話し合いをしたり、普通の労働者のような団交権があるか、罷業権があるかないかは別問題として、少くとも労働者として憲法上保障されております団結権に基いてこれは話し合いをするというのは当然だと思うのでありますが、そういう労働条件を決定する勤務評定について話し合いに応ずるという態度があるのかないのか、従来の態度を見ておりますと、ないのではなかろうかと考えられましたので、重ねて答弁をわずらわしたい。  それから最後に警察問題でありますが、警察が教育問題に介入することは、これは避くべきであると考えたということを本島さんも先ほど申されました。しかしその答弁の中にも、教育に支障のないようにこれだけの注意はしたということですが、同僚高田委員から指摘をいたしましたが、国家公務員法あるいは地方公務員法違反といったような、何といいますか、公務員法あるいは地方公務員法等を、指令通達の中に入れられました。どうも教育委員会も、あるいは指導助言の立場にあります文部省についても、警察権が発動いたしますについて、あるいは地方公務員法違反であるという考えのもとに警察権の発動を直接指示要請をさせなかったでしょうけれども、警察権が発動するような結果に事態を招いた点は、これ自体どうも否定できないのではなかろうかと考えております。そういうことが勤評それ自身についても、批判に十分にたえない、意見をいれていくということだけでなしに、警察が入っても勤評は実施していくんだ、こういう態度では、これは教育者の態度ではないのではなかろうか、あるいは民主的な教育を守る道ではないのではなかろうか、まあ軍国主義教育のこの点が問題になりました尾崎教諭の遺書の中にもございました。それは皆さんの意図の中にはないかもしれませんけれども、流れております方向についてはそういう危険がある。先ほど申し上げましたような民主主義的な教育なりあるいは教育行政の振興をはかられないところにそういう危険があるというこれは心配であります。警察の介入について教育委員長を代表せられます木下さんとして、過去のあり方について遺憾に考えられますか、それともあれでよかったと考えられますか、重ねてお伺いいたします。
  51. 木下一雄

    参考人木下一雄君) ただいま御指摘になりました点につきましては、将来十分考えていきたいと思っております。
  52. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) お諮りいたします。(「委員長、関連」「関連が出ているのだよ、委員会」と呼ぶ者あり)お諮りいたします……。(「委員長、関連」と呼ぶ者あり)それでは湯山君。
  53. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の吉田委員の質問に関連して、木下委員長本島教育長にお尋ねいたします。  最初は、木下委員長にお尋ねいたしたいのですが、その一つは、あなたはあなたの手がけた教員から、信頼を裏切られたということをおっしゃいましたけれども、逆に、あなたを信頼しておった教員があなたに裏切られたということも、私はあなた自身お考えにならなければならない問題ではないか。この点についてどうお考えになっておられますか。  それから第二は、今非常に、反対論の中には、情ない反対論だ、顔につばをかけるような反対論が多いという具体的な例をおあげになりました。しかし、そういう反対論はどこからきたかという点について委員長はお考えになったことがあるかどうか。それは、あなた方が全国にお出しになっている試案の中に、しかもこれを五段階に評定するという項目の中に、たとえばからだや服装が清潔であるか、こういう評定項目があって五段階に評定されます。低学年を持っている女の先生たちは毎日どろんこになっている。そういう人たちが一体一々髪形や服装を気にしなければならない、こういう評定項目をきめた方に責任があるので、聞いた方に責任があるのじゃないと思います。さらに身辺の清潔整頓とか、それからあなたはこびへつらうことはないかという質問が愚問だとおっしゃいましたけれども、これも五段階に評定する特性能力項目の中に、「上司や有力者にへつらい、取り入ることがないか。」こういうことをあなたが評定することをきめておる。だから、こういうことをきめられると、やりたいこともついやれないようになってくる。こういう心配をしているのであって、そういう愚問を誘発した責任は、むしろこの案にあるということをお考えになったことがおありになるかどうか。  本島教育長にお尋ねいたしたい点は、あなたはこの法律にあるからどうしてもやるのだというお話ですけれども、(「そうでもない」と呼ぶ者あり)そうですか。地公法四十条と区別をして、今吉田さんも御指摘になったように、これは四十条にかかわらず、教育委員会が案を立ててやるのだということは、私は教育特殊性教育委員会の自主性が認められていると思います。だから、必ずしも法律にあるから是が非でもやらなければならないという立論は成り立たないと思いますので、もしあなたのような御議論があるとすれば、現在東京都だって、ずいぶん違法をやっていると思います。私が調べた中にも七十名以上入っている教室もありますし、それから夜間の中学校どもやっておられるようですけれども、しかし私どもはそれを違法だととがめる気持もありません。やむを得ぬ措置だと思っております。  そこで今吉田委員の言われた、民主的な教育行政から言えば、勤務評定をやる必要があるかないかを十分研究する、それからそういうことができるかできないかをその次には研究する、それからできるときまれば、初めて内容に入っていく、こういう順序を経ることが民主的な教育行政のあり方で、あなたのおっしゃっているのはどうも逆で、研究機関も設けない、必要、必要でないは論じない、それからできるか、できないかも論じない、これではやはりさか立ちしているので、民主的な教育行政と反対ですから、これは明らかに非民主的な教育行政だということになると思います。(「委員長、注意」と呼ぶ者あり)それからまた反対論というのは、民主的には十分聞かなくちゃならないのを、それを聞いていない。反対論こそ傾聴することが民主的な教育行政です。都民の中で理解が足りない。理解さしてからやることでちっともおそくないし、そうしなければならないはずなんですけれども、これもあと回し。これでは私は決して民主的なやり方ではないと思います。そこで、今のように委員会の自主性が認められている以上は、私はこれはやはり元へ返して、もう一ぺん民主的な手続を踏んでやり直し、そうして最初の、必要か必要でないか、今の教育行政機関で可能か可能でないか、こういうことを十分検討すべきだ、こういうふうに考えますが、そういうことについてのお考えと、それからもう一つは、非常に勤務評定でお忙しかったということを言っておられますけれども教育の本筋からいって、これがそんなに第一義的な重要なものであるかどうか、これをやらなければどうしても都の教育行政はできないというようなことになるのかならないのか。私はそれじゃなくて、もっとやらなければならないことは、たとえばすし詰め教室の解消なり、それから夜、中学校に行っている者の救済なり、都としておやりにならなければならない、これよりもはるかに重要な、そうして都民がだれ一人異議を唱えない、そういう問題がたくさんあると思うのですけれども、そういうことにさくエネルギーをあえてさいて、なおこれをやらなければならない理由がどこにあるか、そういう点も一つお聞かせ願いたいと思います。こういうことは一つ一つ論じながらいくと、よくわかっていただけるし、きっとやり直すというお考えを述べていただけるのですけれども、どうも前の方がうるそうございますから、これで終ることにいたします。(「時間が過ぎている」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  54. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) 静粛に願います。
  55. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 初めの点についてお答えいたします。これは二つの場合がございまして、教え子から裏切られたということ、木下が裏切ったということと、二つの思想があると思います。教え子から私が裏切られたということは教え子の心理でありましてこれに対しては私は何らの追及をする必要はないと思います。ただ木下が裏切ったということに対しては、私は裏切っていることがありませんから、その点につきまして釈明をいたした次第でございます。  第二点の、その各項目につきましていろいろ例示的に御説明、御意見があったのでありますが、あの八十四項目にわたっておりますのは、あれは一つ項目ごとに採点をするという意味のものではございませんで、総括的にあれが出てくるのでありまして、一つ一つ項目にとらわれる必要は毛頭ないということを申し上げておきます。(「それは違う」「それはおかしい」と呼ぶ者あり)
  56. 本島寛

    参考人本島寛君) なおただいま木下委員長の言われたことにちょっと補足を加えますが、評定要素一般教員について十四、校長あるいは教頭については十三となっておりますが、それは要素だけを示しましたので、非常に簡単な項目になっておるわけでございます。けれども、それだけでは非常に見方、考え方がまちまちになって、公正な資料を得るのに非常におかしなことに考えられますので、私どもとしては見方、考え方がまちまちにならないように、その観察内容を分析して示したのであります。これにはいろいろ意見があろうと思うのです。それで私どもとしては、この評定要素はこういうものでいいかとか、観察内容はこういうものでいいか、こういうことを直接十分意見も聞きたかったのでございますけれども、なかなかその反対だという意見はございましても、こういう意見がいいという点がなかなか具体的に出ませんでした。これは、あとの民主的な教育の進め方と、おかしいではないかということとも関連いたすのでございますが、やはり私は基本的に民主的な態度をとって仕事をするということは、だれもが持たなければならないと思うのです。一方がそういう態度をとらないで、一方だけが民主的な態度をとっておったって、その話し合いはなかなか民主的な解決はつきかねると思うのです。やはり国会が国の最高権威として定めた法律、そうしてそれを実行しろと命ぜられたわれわれの立場、また法律規定があるなしでなくて、実際問題として必要があることは先ほど申し上げた通りであります。その実際の必要性と法律規定があり、制度上ある以上、これを実行する機関であるものは当然実行に向って態度をきめるべきが当然だと思うのです。それに対して、態度に最初からの食い違いがあって、絶対反対だという立場ですと、その食い違いからして、残念ながら民主的な話し合いが他の多くの問題を処理したと同じように事が進まなかったことを先ほど来申したのであります。私どもは決してその民主的な態度を変えて、何か上から押えつけるようなことで言ったんでないということは一つ御了承をいただきたいと思います。  それから、なお他にも多くの問題があるではないかということは、御指摘の通りでありまして、勤評だけに取っ組んで仕事をやっておるのではございません。一つ一つの具体的問題を解決しまするために、多角的に、またそれぞれ掘り下げて私どもは対策を考えて、すし詰め学級の解消、その他の問題に取っ組んでやっておるのであります。これまたもうすでにおくれておることでありまして、もっと急いでやらなければならなかったのがおくれておる、ほかの問題のエネルギーをさいてこれにだけ集中したということではございませんし、またそうあってはならない。  なお、私は今後におきましても、十分意見は聞いてよりいいものを作るとか、あるいは現在やった評定そのものの欠陥は使う上においての補正をいたしていきたい、つまり事後におきましても、その民主的な態度というものはいかなる仕事の処理にも私は忘れてはならない大事なことだと思っております。この点については、その御注意については、厚くお礼を申し上げますが、私は考え方には食い違いはないと自負いたしておりますから、この点をはっきり申し上げます。
  57. 湯山勇

    ○湯山勇君 木下委員長の御答弁違っておりますから、ちょっと指摘しておきます。
  58. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) それじゃ最後に指摘する点がありましたら、簡単に指摘して、これでもって……。
  59. 湯山勇

    ○湯山勇君 評定観察内容表をごらんになりますと、ちゃんと今の「身体、服装が清潔であるか」という項目の前に「評価」と書いた欄があるのですが、こういうことを教育委員長自身御存じなくて今のような御答弁をするということは私は非常に不満でございますが、間違いの指摘にとどめておきます。
  60. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) 時間の制約がございますので、まだ御質疑を御希望の方もあり、また参考人方々にも十分御答弁をお聞きしたいのですが、これをもって本日の参考人の御意見並びに参考人に対する質疑を終りたいと思います。  本日は木下本島御両先生におかれましては、御多忙の中を委員会参考人として御出席になり、重要な質疑に対して応答をされましたことにつきまして、委員会を代表して厚くお礼申し上げます。これをもって参考人に対する御意見並びに質疑を終ることにいたします。ありがとうございました。     ―――――――――――――
  61. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) 引き続きまして、本日の議案になっております高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案を議題といたします、発議者に提案理由の説明を求めます。
  62. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ただいま議題となりました高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案につきまして、提案者を代表して、その提案理由及び内容の概略を御説明申し上げます。  わが国は、国土狭隘、人口稠密かつ資源に乏しい国であります。九千万国民が憲法に示された平和な、自由で幸福な生活のできる明るい社会を、建設して参りますためには高度の科学技術に基く産業発展が期待されねばならず、そのためには、すべての青少年に対し、高い教養と技術を付与する教育が、重要視されねばならないことは、申すまでもないところであります。  従いまして、年々義務教育を終えて直ちに職業についていく約半数の勤労青少年に対しましても、十分な教育を与えていく方策が、確立されなければならないのでございます。このことは、憲法、教育基本法に定められた教育機会均等にのっとるゆえんでもあります。  戦後六、三、三、四の新教育制度実施せられ、義務教育が中学校まで延長されるとともに、国民的教育機会均等の理想を実現するために定時制教育及び通信教育制度実施されたことは、まことに喜ばしいことでありました。  今、これらの教育を受ける生徒数の推移をながめますと、昭和二十三年の発足当初は十三万人でありましたが、翌二十四年には一躍三十万人となり、自後、逐年増加の傾向をたどり、二十七年度には五十万人を突破し、高等学校の全生徒数の四分の一を占めるに至ったのであります。また学校数におきましても、発足当初、独立校、併置校、分校を合せて約一千校でありましたのが、二十八年には、三千校をこえております。  そして、昭和二十八年には高等学校定時制教育及び通信教育振興法が議員立法によって、制定され、同時に、施設費についての国庫補助、教職員に対する給与費の国庫負担、雇用主に対する積極的な就学奨励の措置を講ずべきであることが、付帯決議として可決され、また、この付帯決議の線に沿って、新たに、夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律が、当文教委員会の提案によって、同三十一年に制定される等、法制上からの制度推進の努力も重ねられて参ったのでありました。  しかるに、近年この重要な教育制度が、危機に逢着いたしておりまして、これは、まことにゆゆしき事態と申さねばならないのであります。  すなわち、第一には、地方財政の窮状と、国の補助金の手薄等の理由から、これら定時制高等学校の整理、統廃合が行われつつあることを、指摘しなけれ、ばならないのであります。  文部省調査によりますと、昭和三十二年度におきましては、本校二十五校、分校四十四校計六十九校が廃止されています。また、本年は本校二十校、分校四十四校計六十四校が廃止される予定の由であります、かくのごとき定時制高校の統廃合は生徒の通学条件を悪化し、勤労青年の向学心をむざんにつみとることになり、高校教育機会均等を失わしめるものであります。  このような、重大な事実の陰には、教員定数の削減、あるいは施設、設備の不足、ひいては生徒数の減少等という憂うべき悪循環が、全国的にあるのであります。また最近は、定時制通信教育を受ける使用人に対する、雇用主の理解は漸次深まりつつあるというものの、なお多くの雇用主の理解、協力は不十分で、生徒の就学困難の事実も、うかがえるのであります。  このことについては、中央青少年問題協議会においても、つとに論議せられ、昭和三十一年に定時制高等学校に学ぶ働く青少年の教育保護福祉対策要綱が決定され、さらに「定時制高等学校通信教育を含む)に対する財政措置について」が、政府に要望されております。  そもそも、昭和二十三年、定時制教育制度の発足に当りましては、特に勤労青少年の教育の振興をはかりますために、市町村立学校職員給与負担法とともに、公立高等学校定時制課程職員給与費国庫補助法が制定され、定時制高等学校職員の給与費は、都道府県の負担とし、その四割は国庫において補助することとなり、本制度の財政的基礎が固められたのでありましたが昭和二十五年以降は、地方財政平衡交付金制度実施によって教育費は、交付金に算入され、四割の国庫補助金は打ち切られることとなりました。  現在定時制高等学校職員給与費は県財政に組み込まれているとはいうものの、これがひもつきでないがために、地方財政が窮乏すれば、たちまち勤労青少年の教育が犠牲に供せられるという事態を生じますことは前述の通りで、この点発足当初の形のように、国から直接給与費を負担する制度が、ぜひとも必要であることを痛感するものであります。  また、施設設備の不備を改善していくために、さらに国の財政措置を強化するとともに生徒の就学を容易ならしめるための奨学措置、使用者の協力措置等を積極化することはわが国文教振興の大方針からいっても、ぜひとも推進されねばならない点であると信じ、ここに本改正案を提出いたした次第でございます。  次に本法律案の骨子は第一には、第三条において新たに勤労青年で経済的理由により定時制教育または通信教育を受けることの困難な者に対し、国及び地方公共団体は適切な奨学措置をなすよう考慮すること、また、定時制教育または通信教育に従事する職員の定員及び待遇についても、同様に特別の措置を講ずべきことに規定いたしました。  第二には、第三条の二として勤労青年の使用者は、勤労青年が、定時制教育または通信教育を受けることを不当に妨げたり、不利益な取扱いをしてはならないことを規定いたしました。  第三には、第五条の公立高等学校についての国の補助制度を二分の一の負担の制度に改めるとともに、従来、欠けていた施設を新たに対象といたしました。また、さらに、公立の定時制教育並びに通信教育に従事する、教職員の給与費の四割を国庫で負担することを新たに規定いたしました。  第四には、第六条において従来私立学校に対する国の補助対象は定時制教育の設備のみに限定されておりましたのを新たに、その運営費をも対象といたしました。  第五は、附則におきまして、本法の施行期日を、公布の日とするとともに第五条第一項の教職員給与費の四割負担の規定、第五条第二項の公立の定時制高校の施設、または設備に要する経費に対する二分の一の国庫負担の規定等につきましては、昭和三十四年四月一日から適用することとし、本年度における公立の高等学校定時制教育または通信教育の設備に要する経費等についての国の補助についてはなお従前の例によることといたしました外、関係法令につき所要の改正をいたしております。  以上本法律案の提案の理由及び内容の概略を申述べました。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御賛同下さいますようお願いいたします。
  63. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) 本案に対する質疑は、後日に譲ります。  速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  64. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) 速記を始めて下さい。     ―――――――――――――
  65. 湯山勇

    ○湯山勇君 当委員会で、従来非常に研究もし、あるいは問題にしておりました、南極観測が再び決行されるというようなことが報ぜられております。当委員会は、当初から、この問題は非常に関心を持ってやって参りましたので、この際、委員長におかれましては、なるべく早い機会に、文部省、それから学術会議あるいは前回の経験者永田隊長その他をお呼びいただいて、今回、新たに計画されたものについて、いろいろ聞く機会をぜひ与えていただきたいと思います。
  66. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) この問題につきましては、二十六日の理事・委員長打合会でお諮りいたします。
  67. 高田なほ子

    高田なほ子君 要望がございます。きょう勤務評定について、三月十八日の本委員会の決定に基いて質疑が行われたのでありますが、私は、当初この問題は非常に重要な問題なので、まさかわずか二、三時間でこれを終るとは初め実は考えておらなかった。少くとも一日くらいは、短かくとも一日くらいは十分御意見を伺わしていただけるのだと思っておりましたが、不幸にして御都合上きょう一時で打ち切られたのですが、経過を見ていますと、どうもいろいろな疑問の点を残しながらこの委員会を終了しなければならないという形になって、これではほんとうに三カ月も待ちに待ったことがさっぱり効果を私なさなかったように思うのです。従いまして、前湯山委員長の時代にも、私は執拗にこのことを申し上げて参りましたが、あまりにもこの問題は重要であり、きょうの質疑の中でも明らかなように、当の責任者である木下会長が、われわれの了解に苦しむようなことを御理解のないままに言っておられるというようなことでは、これではますます混乱を引き起してしまうようなことに私はなってしまうと思う、この速記録はみんなだれにでも配られていいものですから。従って、結論としては勤務評定に対する各方面の有識者の意見もあわせて聞くことを提案し、また当委員会としては、この問題については了承せられておるわけでありますから、どうぞ早い機会にこの問題が再度理事会において取り上げられまして、どうか十分にお互いが了解と納得のもとに物事が進めるように特に委員長おいてお取り計らいいただき、各党の理事においても御善処いただけるように心からお願い申し上げます。
  68. 竹中勝男

    委員長竹中勝男君) 承知しました。  それでは、本日の委員会は、これにて散会いたします。    午後一時三十八分散会