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1958-06-26 第29回国会 参議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十六日(木曜日)    午前十時四十七分開会     —————————————   委員の異動 六月二十五日委員柴田栄辞任につ き、その補欠として斎藤昇君を議長に おいて指名した。 本日委員斎藤昇辞任につき、その補 欠として草葉隆圓君を議長において指 名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重政 庸徳君    理事            藤野 繁雄君            堀本 宜実君            東   隆君            北村  暢君            梶原 茂嘉君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            関根 久藏君            田中 茂穂君            仲原 善一君            堀  末治君            横川 信夫君            安部キミ子君            大河原一次君           小笠原二三男君            河合 義一君            小林 孝平君            島村 軍次君            千田  正君            北條 雋八君   国務大臣    農 林 大 臣 三浦 一雄君   政府委員    農林政務次官  高橋  衛君    農林大臣官房長 齋藤  誠君    農林省振興局長 永野 正二君    水産庁長官   奥原日出男君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    農林省農業経済    局長      渡部 伍良君    日本国有鉄道営    業局長     磯崎  叡君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選農林水産政策に関する調査の件  (農林水産基本政策に関する件)  (農林水産物資の運賃に関する件)     —————————————
  2. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) ただいまから農林水産委員会を開きます。  最初に、委員の変更について御報告いたします。昨日、柴田栄君が辞任され、斎藤昇君が選任され、本日、斎藤昇君が辞任され、草葉隆圓君が選任されました。     —————————————
  3. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) 次に、柴田栄君が辞任され、理事が一名欠員となっておりますので、その補欠互選を行います。互選の方法は、成規の手続を省略し、委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) 御異議ないと認め、私から、堀本宜実君を理事に指名いたします。     —————————————    〔理事藤野繁雄君退席、委員長着席
  5. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 農林水産基本政策の件を議題に供します。この件について、前回の委員会において述べられました三浦農林大臣所信に対し、順次御質疑を願います。
  6. 小林孝平

    小林孝平君 新農林大臣の農政に対するいろいろの抱負についてお尋ねをいたしたいと思いますが、さしあたっては、先般の当委員会においてお述べになりました所信について、二、三の点をお尋ねいたしたいと思います。時間の関係がありまして、本日は十分お尋ねできないと思いますので、いずれまた日をあらためて詳細をお尋ねいたすことにいたしまして、とりあえず、当面お尋ねをしなければならない点をお尋ねいたしたいと思います。  最初に、この所信の中に、米の統制は当分継続していく、引き続いて継続していくということをお述べになっておりますが、米の統制を継続していくには、その一つ問題点は、現在のやみ米対策をどうするかという点であろうと思うのであります。これをこのまま放置しておけば、実質上統制は継続すると言っても、骨抜きになってしまう。こういう意味から、やみ米対策についてどういうふうに考えておられるか、これをどうして正規ルートに乗せるかという点も非常に重要であろうと思いますので、これに対するお考えお尋ねいたしますが、あわせて、この端境期になりましてやみ米がどんどん値上りの傾向にあります。従って、そういう点からいいますと、農家の所得をある程度増加させるという点もありますけれども、このやみ米値上りによりまして、消費者には非常に負担がかかってくる、これは、岸内閣の大きいスローガンであります貧乏追放という点からいっても、このやみ米が現在のように値上りしてくるということは、岸内閣貧乏追放ということが、失敗していくということになるのではないかと思います。  そこで、こういう点から考えまして、岸内閣の大きい政策からいいましても、やみ米正規ルートに乗せるということが重要ではないかと思いますので、この二つの点から考えましてやみ米をいかにして正規ルートに乗せるかという点を、先般の所信表明に関連して、お尋ねいたします。
  7. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 小林委員お尋ねでございますが、現在の日本食糧事情から考えまして、一面においては生産者協力を求め、その支持を得て食糧集荷する。同時にまた、特に特質のある日本米のことでございますから、これを統制の線に沿うて消費者に渡さなければならぬ、こういう事情にありまして、この事情は、これはもう依然持続せざるを得ないと、こう考えておりますから、仰せ通り米統制の問題は、今後改善はだんだんいたさなければもちろんなりませんが、その持続は必要だと考えております。  同時に、今お尋ねやみ米対策でございますが、これは現在の統制下における最も困難な問題でございまして、率直に申し上げまして、歴代のこれは統制を持続しておる政府の悩みとしておるところでございまして、現在のなには、農業協同組合等を中心にして、農業団体協力を得て、同時にまた、農民了解のもとに、今の集荷対策をいたしておりまして、そうしてこれも事情がだんだん変って参りまして、割当から予約制度に切り替えて参るということにだんだん進んで参りました。そうしてその結果、所要予約買付をいたしておるわけでございますが、このやみを放任するということは、もとより許されないことでございますけれども、しかしながら、全部これを根絶することのできないということの現状は、率直に申し上げて、これは遺憾に存じておる次第であります。しかしながら、やはり基本線としましては、従来の予約制度、同時にまた農協その他農民団体協力によって、集荷の十全を期する、そうしてやみ米がまああまり流れていかないような最善の方途を講じなければならないと思うのでございますが、この問題につきましても、予約集荷等につきましては、なお工夫をこらして、そうして少しでも改善を重ねるという信念で進めたいと、こう考えておる次第であります。  次に、いわゆる岸内閣貧乏追放ということであるが、このやみ米の高騰に伴う問題等がその失敗の現われじゃないか、こういうことでございますが、総理大臣仰せになっておる通り、この貧乏をなくするということは政治全般のことであって、そして長年にわたって極力努力しなければならぬと申し上げておるのでございまして、その基本的な考え方施策重点はもとよりでございますが、総理仰せになったその基本的な考え方を推し進めて、これに対処するのほかはないかと思っております。一応……。
  8. 小林孝平

    小林孝平君 私は、農林大臣の先般のこの所信表明全体を見ますと、非常に抽象的であって、農林大臣就任早々でございますのでやむを得ないかもしれませんけれども、ほかならぬ三浦先生でございますから、もう少し具体的な政策を御発表になるのではないかと思ったわけであります。まあ一応所信具体性が欠けておるけれども、少くとも個々の問題についての質問に対しては、具体性のある御答弁を期待しておったのでありますけれども、今お話を承わりますと、きわめて抽象的でありまして、この米の統制を継続するということを言う以上は、やみ米対策をどうするかということを、具体的に示さない限り、これはほとんど意味のないことではないかと思うのです。私がこんなことを申し上げるまでもないと思いますけれども、もうやみ米に対する対策を、非常に困難ではあるけれども、これに対する具体策を立てない限り、米の統制骨抜きになり、農林大臣は強く生産者保護の建前からの米統制を継続するといわれますけれども、やがてこの点からも米の統制は崩壊してしまう、こういうふうに考えられますので、もう少し具体的な政策をお述べになっていただかなければ、私は困ると思っておるのでありますが、ただいまお聞きすれば、これ以上お尋ねしてもしっかりした御答弁を期待することはできませんので、この問題についてはやめますけれども、早急にやみ米対策、このやみ米正規ルートに乗せる具体的な方策を御研究になる必要があるのではないかと思います。  それから貧乏追放との関係でありますが、その根本的の問題は、今おっしゃった通りでありますけれども、具体的に、こういう一つの事例でありますけれども、岸内閣の大きいこのスローガンである貧乏追放というようなことが、こういう一つやみ米値上り、かつぎ屋の横行というような点から見ても、この岸内閣政策というものが、単なるスローガン、かけ声だけに終っているということは、これは否定することのできない事実であると思いますので、私はこういう点から考えましても、早急にやみ米対策を樹立される必要があるのではないかと思う。  次にお尋ねいたしますが、この所信には主要農産物価格維持と安定ということをうたっておいでになりますが、一体、主要農畜産物というのはどういうものを指されるのか、それから維持と安定とおっしゃっておりますが、政府はどれだけの用意があってそういうことを言われるのか、単にそういうことが必要だからここに述べたというだけなのであるか、あるいはどれだけ具体性を持った用意をされているのか、予算的の裏づけがもしありましたならば示していただきたいと思います。
  9. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 主要農産物価格維持をして参りたいと、こういうことを申し上げたわけでありますが、これはもう私からくどくどしく申し上げるまでもなく、もう農業政策の基本的なことでございますから、現在の米麦につきましては、片方は直接統制をとり、片方間接統制をとっているのですが、ある程度のこれは価格支持をして、そうして内容についてはいろいろまた御批判はあろうと思いますけれども、そういう制度を現にとりつつあるわけでございまして、これはやはり持続し、その効果を上げるということに重点を置かなければならぬことは、これは当然でございます。  第二の問題でございますが、漸次農産物等流通過程におきましていろいろな変動にあう、これが当今の問題になっていることは、御承知通りであります。ことに畜産物等につきましては、せっかく酪農が推進されて、また、その生産上昇線があるけれども、消費はこれに伴わないということになって参ったのでございまして、これに対する対応の策も、これは具体的に決定しなければならぬということで、ただいま当局といたしましては、その対応施策を具体的に立案を今いたしておりまして、やがて、これは必要に応じて資金の供給をするとか、あるいはまた助成の道を講ずるとか、そういうような方にだんだん突き進んで参りたいと、こう考えているわけでございます。さらにまた、農産物のその他の価格のうちでも重要なのは、繭と糸の問題でございますが、これはもう先般参議院の本会議臨時措置法趣旨説明をいたしまして、具体的な方策を提示しまして、そうして皆さんの御審議を仰いでいるようなことでございます。これら一連の政策は、先ほど申し上げました価格維持、同時にまた主要農産物に対する対応の一、二の問題でございまして、かような基本線に沿うて進みたいという所存でございます。
  10. 小林孝平

    小林孝平君 現在の農業政策のうち最も重要なものは、価格安定の政策であろうと思うんです。そこで農林大臣も、この所信主要農畜産物価格維持と安定、さらに既往施策に加えて一段と適切な施策を進めると、こうおっしゃったんだろうと思いますけれども、ただいまお話を承りますと、特にこれに対する農民を安心させる具体的な御方針がないように思うのです。少しも具体性がないようであります。特に既往施策に加えて一段と適初施策を進めると書いてございますが、具体的にどういうことを進めようとされておるのか、そういう点についてお話がなければ、これはただ書いただけだということになるのではないかと思うのです。また、農民としても、全国の農業関係者としても、非常に失望を感ずるのではないかと思いますので、この機会に、もう少し具体的にどういうことをやる意思があるのか、最も重要な問題で最大の農政問題であるこの価格安定に対する政策を、この機会に、やはり発表されるのが適切なことではないかと思うのです。
  11. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 基本的な考え方につきましては、今申し上げた通りですが、この経済情勢に即応しまして生起されました問題に対処しまして具体的な案をとり、たとえば繭糸価の安定のごときは、当面の養蚕家に対する重要な問題でございますから、これは具体的に打ち出してきているわけでありまして、今万般のものをすぐにどうだと、こういうことをお問いになりましても、これは御無理だろうと思うのでありまして、これは適時適応施策をやはり具体的に織り込んでいく、こういうことに御了承を賜わりたいと存じます。
  12. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣のお言葉でございますけれども、生起した問題に対して適切な措置を講ずるとおっしゃいますけれども、価格政策のごときはもうそういう事態が起きてからやられても、実際の効果は非常に薄いのでございます。それで、この問題については、前農林大臣の当時から、私たちは強くこういう希望を申し上げている。今の農林大臣のお言葉でございますれば、繭についてはこういう事態が起きたからやったと、この調子でいろいろどたんばにきて、どうにもこうにもならなくなったら、次々に対策を立てるということでは、私は真の政治ではないと思うのですが、今のお言葉ではそういう事態——非常に、どうにもならない事態にならなければ、おやりにならないと、こういうことに受け取れるのでありまして、非常にこれは私は残念にも思いますし、せっかくここにお書きになったことは、その程度のことであるということであれば、非常に関係者失望を与えるのではないかと思うのです。もう少し具体性のある対策はないものでございますか。
  13. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) あえて悪意ある御解釈だとは申し上げませんけれども、さような意味ではございません、それは。出てきたからそのときを待ってやるという意味ではもちろんございませんので、農業経済実情をよく推移を見まして、そして事前所要の手を打つということについては、これはもう御異存のないところでございます。さようその点は御了承願いたいと思います。
  14. 小林孝平

    小林孝平君 私は、たとえば今、農林大臣は生起した問題について対策を立てる、こうおっしゃいますけれども、今、繭についてとられましたこの対策は、対策としてきわめて不十分であることは何人も認めるところだろうと思うのです。そこで、こういうことを、生起した事態に対して手を打つと言うけれども、手を打たれたことは、今の繭に対する対策のごときものであって、そうしてこれに関連して申し上げれば、農民が今最もおびえている問題は、生産制限の問題なんです。たとえばこの繭についてでありますが、この生産制限をやられるということについて、非常に農民はおびえている。それで、こういうやり方でもってこの繭に対する価格政策が完璧である、あるいは十分であるというようなお考えをとっておいでになるとすれば、これは今後いろいろの価格問題の起きるのに、すべて生産制限をもって対処するのだという感じを抱かせる、現に農民は抱いておるから、今回の政府措置に対して、いろいろ反対をしたり、不満を述べたりしておるわけなんです。そこで私は、この機会農林大臣お尋ねいたしますが、この繭の生産制限を法的におやりになる考えがあるのかないのか、これをお尋ねいたします。
  15. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) たまたま繭の生産制限の問題でございますが、これは昨年の秋以来出て参りました臨時緊急の問題としまして、そうして繭の生産者、すなわち養蚕家に対しましても、自主的に調整のなにをしていただきたい。これはやはり一つの自衛的な作用もなすものでございますから。ただ、その情勢を放任するわけにいかぬ、他の手を打つと同時に、養蚕家の方でもこの際、自主的な一つなにをしていただきたいということで、その了解のもとに取り進めておることでございまして、現在のこの経済情勢下におきましては、これは、ある程度やむを得ざる一つの示唆であったわけでございます。これらを法律をもって制限するなどという考えはございません。むしろ、今後蚕糸の問題はやがてこれは生糸につながる問題であり、一種の世界的な商品でもあるし、同時にまた、今日では御承知通り海外需要よりも国内需要の方がむしろ重きをなしておる現状でございますが、これらの消費事情、それらを勘案しまして、そうして大局的な目でもっていかなければならぬと思っております。従いまして、生糸との関連においても考究すべき、改善すべきものがあると考えまするし、同時にまた、養蚕生産過程におきましても、それらを考えなければならないというふうな考えをもって、いわば養蚕で立たなければ他に転換できないような所も、これは立地条件として備わっておる所もあるわけなんですから、さようなところをよく見て、そうしてこれに対する当面のその養蚕家の御意向も聞き、これに対応して政府もまた支持あるいは援助というものを加えて、そうしてやるということにいかなければならぬと考えるのでありまして、法的な措置でもって生産制限などをしようとは考えておりません。
  16. 小林孝平

    小林孝平君 その法的な措置をとらないで生産制限が実際に可能であるかどうかということは、非常に問題であろうと思うのです。どうしてそういうことが可能であるというふうにお考えになるのか。私は、何ら法的な措置なくして生産制限というものが行われるはずがないと思うのです。そこで、この点を明らかにしていただきたい。特に私がこういう問題をお尋ねいたしますのは、農林大臣は、農林省からかつて企画院に行かれまして、農政問題に対して非常に御苦労をされたことがありますが、当時は、総動員法初め関係の必要なる法律があって、それに基いていろいろのことが行われましたけれども、今は全然ございません。そうしてあなたは、今もおやりになる意思がないと。こういう当時と全く違った状態にあって、果してそういうことが可能であるかどうか。どういうふうにしてこういうことが可能であるか。ただ協力を求めてやるとか何とかおっしゃっても、私は納得できないと思うのです、これは。
  17. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 小林さんとこれは理論闘争をここで展開しようとは思いませんが、法律をもって制限しようとすると、これはおのずから二つカテゴリーがあるわけでございます。つまり法律をもって禁止制限するという行き方と、同時にまた、いろいろな問題をするに伴っての他の法律制度を設ける、こういう二つの大体内容を持っておる。従いまして、直接法律をもって行為制限したりすることは、とりがたいと思います。しからば、その生産調整等作用はどうするかといいますと、やはり経済的な面の裏づけをいたしまして、それに即応してこれに応じ得る態勢を整えて、そうしてこの当業者の人たちの自発的な行為が、それに乗るような施策をする、一つ経済施策を伴うものとしてその効果を期待することであって、命令したりあるいは法律でもって禁止、制限するような考え方はとっておりません。
  18. 小林孝平

    小林孝平君 私は、何もこれを法律を作るべきであるということを主張するものではないのです。現実に政府がおやりになろうとしていることは、幾ら御説明になっても、農民には納得ができないだろうということを申し上げておる。また、納得ができないばかりでなく、うまくいかないだろう、今回の生産制限をやるとおっしゃっても、蚕糸制限をやるだけで、桑についてはそれでは実際的にどういうことをおやりになるのか、その点……。
  19. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 桑園改植であるとか、桑の生産制限等は現在いたしておりません。これは先ほども申し上げたのですが、やはり生糸の昨今の事情は、一つの特異な臨時的な現象だと実は見ております。しかし、このまま放置できませんので、臨時応急措置をとってこの害を除くということで、あの施策をとっておりますことは、たびたび申し上げた通りでありまして、従いまして、今後、この調整等作用をなお情勢上いたさなければならぬという場合には、桑園改植であるとかあるいは農業転換等を、農民人たちにも勧奨せざるを得ないことになるかもしれませんけれども、その際には、やはり経済的な裏づけをいたしまして、そうして転換が容易になるようなことにする、あるいは経済上の諸施策を伴って、そして両々相待ってその方面に進むというようなことで考えております。決してただ一方的に押しつけるというようなことは考えておりません。
  20. 小林孝平

    小林孝平君 この桑の制限をしないとおっしゃいますけれども、種を制限すれば、従って桑が要らなくなる、そうすると、その桑が余分にできるのはどうなるのか、その桑の処分はどうなるのかということがあるだろうと思う。それから従ってこれは、繭だけの種を制限すればそれで事足れりというわけには参らぬと思います。それから、それに関連いたしまして、根本的な問題としては、この六月三日の閣議で蚕糸応急対策をきめられました、前内閣は。その際、赤城前農林大臣は談話を発表されまして、今回のような事態は一時的だと判断している、こういうふうにおっしゃっておるのでありますが、三浦農林大臣も、そういうふうに、これは一時的であるとお考えになっているのかどうか、今回の事態は一時的のものであるとお考えですか。
  21. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 今回いろいろ措置しなければならぬ事態は、突発的な、臨時的なものと見ております。ただし、これは消費方面実情を見たり、あるいは国内における生糸の諸般の動向等を見ませんとなりませんし、ですから、そういう意味ではよくこの事態推移を見守って、誤まらないようにする、そしていやしくもかよような臨時措置をとるようなことのないように、事前対応していきたいという考えでおります。
  22. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をとめて。   〔速記中止
  23. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記を始めて。
  24. 小林孝平

    小林孝平君 そこで、今の農林大臣の御答弁は、非常に重要だと思うのです。これを一時的だと見るということと、恒久的だと見ることによって、繭の——農民は、もしほんとうの一時的であれば、桑を抜かないで、そのままにして置こうということを考えるかもしれませんが、恒久的であるということならば、政府のわすかの補助金などを当てにして、自発的に桑を抜くかもしれぬ。従って、これを政府が一時的だと見るか恒久的だと見るかということは、非常に養蚕農家全部に関する重要な問題だと思いますので、一時的だと見る根拠を、皆が納得する根拠を、この次の委員会にお示しを願いたいと思うのです。かりに今一時的だとおっしゃいましたが、この一時的だとおっしゃいましたことは、今後もこういう一時的の混乱は何度も起り得るという意味に解釈していいのかどうか。一時的ではあるけれども、そういう一時的の混乱は、恒久的ではないけれども、ときどき起るのだというふうに解釈していいのですか。その点。
  25. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 小林君も御了承通り、この繭糸の問題は歴史的に見てしばしば変動することは御指摘の通りです。あるいは四十年前にきたこともあるしあるいは二十年前にきたこともある。しかも非常に低落した場合、非常に暴騰した場合、おのおのの事象があったことは、御承知通りであります。従いまして、今度昨年来の夏秋蚕の増産と春蚕の増産によりまして、供給がいわば過剰になってきて、そうしてしかも低落し、従って繭価が維持できなくなったということの現象が生じてきたのであります。そこで、この臨時に起きてきた現象をとらえて、そうして糸価を大体安定したところへ持っていく。そうしてそれに伴って今度は養蚕家に対する繭価を保持してやるという政策をいたしておるのでありまして、安定しますならば、生糸需要についても、アメリカ等では値ごろの問題よりもむしろ安定した価格ということが必要である、同時にまた、国内におきましても安定したことになりまして、需要が喚起されることになりますと、なめらかなものになると思うのでありまして、そういう意味では、今度のなには、臨時的に起きたことだと見るわけであります。従いまして、しばしば経験したことでありますから、それらの情勢推移を見誤まることなくして、そうして対応の策を講じて参りたい、こういう考え方でございますから、御了承をいただきたい。
  26. 小林孝平

    小林孝平君 せっかく農林大臣の御答弁でございますけれども、私は、ただいまの御答弁では、この関係農民納得をして安んじて養蚕をやるわけにはいかないと思うのです。それで、私が御質問いたしましたのに対しまして、十分の御答弁がないけれども、農林大臣の今の御答弁だと、こういう現在のような一時的の混乱は、たびたび今後も起きるというふうにお考えになっておるのではないかと思います。この点は、非常に問題でございますから、次の委員会においてまたお尋ねをいたしますが、さらに農林大臣も、ただいま生糸価格が安定をすれば、米国における消費は安定をし、向上をするという、従来もそういう考え方をとられてきましたけれども、私はこの問題についても、アメリカとの関係でございますが、生糸価格が安定をすれば需要が増大するという考え方は、従来一貫してとられてきておりますけれども、必ずしもそうではないのじゃないか、こういうような問題もこの次の委員会において十分政府のお考えをただしたいと思います。  最後に、今回この関係農民がこの繭の生産制限に反対しておる理由の一つは、これは自衛策であるということは農林大臣がおっしゃった通り関係者はみんな知っておるのです。知っておるにもかかわらず、これに反対している。これは養蚕農民だけでなく、現に新潟県の農業会議は決議をいたしまして、この繭の生産制限農業会議として反対の決議をしております。それはなぜかといえば、今回の繭の生産制限が、やがて全作物に及ぶのではないか、果樹とか蔬菜等に及ぶのではないか、こういうふうに考えておられる。そこで、農林大臣は、そういうことはないのだという確信がおありになるのかどうか、これは先ほどの価格安定策と相応するのでありますが、具体的に価格安定策というものがなければ、結局、今後全作物に生産制限を及ぼさなければならない事態になってくると思うのです。全農民がおそれておるのはこの点なんです。今後、農林大臣の御出身の青森においてもリンゴができ過ぎて、過剰になって値段が下ったというような場合は、法的には措置をされないけれども、具体的に勧奨その他の措置をもって、政府生産制限をされることがあるのかないのか、そういう点についてお尋ねいたします。
  27. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 果樹、蔬菜、全作物に対して生産制限をするようなことは、もちろん考えはありません。同時に、これは一面においては文化水準が高まって、同時に消費面も増大することももちろんでありますし、これに対応して生産者方面におきましても、あるいは出荷の調整をする、あるいは貯蔵の設備を持たせる、流通過程においても弾力のある操作ができるような施設を、政府としましては、拡充して参らなければならぬと考えております。さようなことでございまして、いわんや全作物等に生産制限をするというような方法でなくて、むしろ、この生産が持続され、それが拡大し、そして国民経済消費水準も高まり、そうして豊かになるという方向に持っていかなければならぬことは当然のことだと考えておりますから、作物に対する生産制限というふうなことはとらぬ考えで進んで参りたいと思います。
  28. 小林孝平

    小林孝平君 最後に、そういたしますと、この繭についても農林大臣は蚕権の制限はするけれども、養蚕農民に対しては今の桑を抜かないように、生産を落さないように、こういう態度でお臨みになるのか、またそうではなくて、場合によっては抜いてもらうのだ、また抜くことが望ましいと、こういうお考えであるならば、抜いた際にはどういう作物を今度は植えたらいいのか、そういう点についてお尋ねをいたします。
  29. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 養蚕に対する見通しでございますが、本会議で申し上げました通り、この推移を見つつ対処して参りたいと、こう言っているわけでございまして、今直ちに桑を抜けとか、あるいは繭の生産をぶち切ってしまえという恒久的な施策を打ち出しているわけじゃございません。とにかくに、この秋の夏秋産の問題については、自衛的な措置をも講じてもらうし、そうして調整をして参りたいという限度でございますから、そこまで飛躍しておるわけじゃございません。
  30. 小林孝平

    小林孝平君 繭の種の制限を二、三割制限をすれば、従って桑はそれだけ必要でないことになるわけでありまして、桑の別に用途があればいいけれども、そうでなければ困るわけじゃないか、これらの点については、農林大臣はよく御存じで御答弁になっておるのでございますから、私は、特に重ねて御答弁を求めませんけれども、何と申しましても、ただいまの農林大臣の御答弁、それから政府の発表されたいろいろの見解等は、関係農民農業関係者納得させるものでないということは申し上げて差しつかえないのじゃないか。私は、これらの問題について、さらに農林委員会において農林大臣の御所見を承わりたいと思いますので、委員長に、そういう機会を持たれることを要求しておきます。
  31. 千田正

    ○千田正君 今の小林委員からの質問の中で、今度の対策蚕糸養蚕に対する対策は、一時的なように考えておられるのか、永久的か、ある程度の恒久的かということは、これはやはり国際市場とにらみ合せなければならないというような意味のことを大臣がおっしゃっておりました。国際市場において、たとえばアメリカなりその他において、日本生糸が将来需要がある程度伸びるという観点に立って今度の施策をなされたのかどうか、その点はどうなんですか。
  32. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 今、千田委員お尋ねでございますが、申すまでもないことですが、アメリカにおける生糸消費の減退は、これはもう従前とはまるで姿を変えてきたことは事実であります。ただしかし、アメリカにおける実際の実需は、やはり相当の分がございまして、そうしてこれは絹業界等でも生糸を利用しておるわけでありますね。その場合に、一番要望される点は、安定した価格で入手したい。向うからいえば、一つの計画的な生産をしているのであるから、生糸はある程度はほしい、それが非常に変動することじゃ困るというのが、生糸におけるアメリカの一番の重要なことだとわれわれは承知いたしております。そういうことであります。従いまして、国内におきましても安定するということの必要があります。海外にその必要量を伸ばしていくという点から見ましても必要だと考えます。それからなお、アメリカの需要の増進の問題でございます。いろいろ調査研究機関等も置いてやっておるのでございますが、その安定したことによって、さらにいろいろな方面の新規の用途の開発等も絶無じゃないということで、かつての非常なボリュームの出た、大量出たときのようには参りますまいけれども、相当のものだけは維持できるのじゃないか、こう考えておるわけでございます。
  33. 千田正

    ○千田正君 今度の春繭に対しては、百億と五十億、こういうふうに政府において出されましたが、しかも、最近においては繭の値段が千四百円、それから糸の値段は十九万ですか、一応それで安定しておるわけです。けれども、当初においては、そういう一つの標準を定めないために、むしろ製糸業者に金をのほうずに使われるような危険にさらされたと私は思うのですが、夏秋蚕を目標にした際においても、やはり今の繭の値段は千四百円、あるいは糸価が十九万というような安定標準というものを堅持していこうという対策は、やはりとられるわけですか。
  34. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 繭価の千四百円、それから糸価の十九万円、これは堅持して参る。従って、夏秋蚕以降につきましても、この情勢を保持していって、そうして繭価の安定を期待する、こういう考え方で進んでおるわけでございまして、先般提案いたしました臨時措置法を出したことによって、だんだん糸価も安定して参りました。こういうようなことで所要効果を上げたい、こういうことでございます。
  35. 千田正

    ○千田正君 次は、今度の旱魃を中心としまして、本年度の政府の買い上げ米に対する標準が、多少違ってくるのではないか。当初、農林省において当委員会において発表しましたときは、本年度は二千九百万石、これに対して、予算が五千六百八十八億五千五百万ですか、そういう予算をもって三十三年度産米の大体計画を立てたのです。現今におけるところの状況は、全国的な旱魃に襲われておるということと、あるいは九州におけるところの長雨、その他の米作に対する災害が当然起きておるのでありますが、これに対して二千九百万石という当初のお見込みが、十分達成されるかどうか、この点についてのお考えはどうなんですか。
  36. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 今秋の出来秋の米の集荷の目標でございますが、まず第一に旱魃の点でございます。きょうは計数をお手元に差し上げられませんので、いずれまたあとで差し上げますが、幸いに、旱魃で植付もできない、あるいは枯死寸前にあって植付が不能と見られたようなものが、これが幸いにだんだん減って参ります。そうして、そういうような実情にございますし、同時にまた、植え付けられましたものの生育等はまあ順調でございますから、必ずしも凶作を予想されるわけではございません。従いまして、現在の出来秋の予想を立てることは困難でございますけれども、まあ今までの専門的な見地で見ますると、この情勢でもって推移するならば、あるいは大災害等がなければ、一応平年作程度の作柄は予想されるのじゃないか、こう考えております。そうしますと、二千九百万石の集荷も、そう過大なものじゃなかろう、こう考えております。
  37. 千田正

    ○千田正君 ことしの予算におきましては、本年度の米価、三十三年度買い上げるのには一万二百円という予算を立てております。三十二年度におきましては、当初予算は一万円に置いて、実行見込みとしては一万三百五十円、三十二年度の当初大蔵省の発表はそうでございました。三十三年度のこの一万二百円という標準に対して、実行予算見込みはどういうふうに見ておりますか。昨年は一万円という当初予算に対して約三分五厘、三百五十円というものを追加して実行予算が組まれた。今年度はどういうふうに考えておりますか。
  38. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 米価の予算、いわゆる予算米価でございますが、これは御指摘のように、約一万二百円程度を予定しておるのであります。本年の出来秋買い上げ米価でございますが、まあ明日さらに米価審議会等の議を経て、最終的にきめるのには一両日、ある程度の間がありますが、大体の考え方といたしましては、最低昨年度実行の買い上げ価格を標準にして予定しているようなことでおるのであります。終局的にはまだきめかねておる段階でございますけれども、大体の考え方はさようでございます。
  39. 千田正

    ○千田正君 そうしますと、米価審議会の答申等を一つの大きな基礎的資料に置いて、大臣としては、決定に当っては十分その間に余地がある、こうわれわれは考えてよろしいのですか。
  40. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 昨年は、買い上げ価格の標準の価格でございますが、一万三百二十二円五十銭、こうなっておるわけでございまして、これをまあ下らないことにして実行いたしたいと、ただいまのところそういう考えでございます。従いまして、これをきめますにつきまして、先ほど御指摘のように米価審議会等の議を経た上で、最終的にきめなければなりません。まあそのプロセスをまだ経ておりませんので、今お答えした通りです。
  41. 千田正

    ○千田正君 この機会に聞きますが、今の旱魃の対策でございますが、先般、農林省局長からいろいろお話がありましたが、実施については、なかなか容易でない状況なんです。そのうち、まあ政府としての対策のうち、応急対策として特にどういうことを考えておりますか。
  42. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 関東の利根川流域であるとか、その他の流域におきまして、多目的ダムの活用をやったということで効果を相当上げております。利根川水系におきましても、会津方面においてもその効果を出している。これはまあそういう操作で建設省等の御協力によって、進んで参りましたが、そのほかに農林省で持っております資金などを出しまして、そうして用水のなにをしていく。そのほかに県で実行しておりますのは、ポンプの貸付なり、あるいは設置の助成をいたしておりますから、これはぜひめんどう見て、そうしてその用水の措置を講ずるということを第一に取り組んでいるわけでございます。なお、これに伴いますその必要な経費は、ただいま大蔵当局と折衝いたしております。そうして予備金の支出によって緊急の措置を講じたい考えであります。  なお、作付の全然不可能なもの、あるいはこれに準ずるものにつきましては、この応急対策としてさらに営農資金の供給であるとか、あるいはまた所要の助成等もいたしたいということで、今、先般おそらく御説明申し上げたのでございましょうが、その線を実行に移したいとやっております。
  43. 千田正

    ○千田正君 そのうち特に考えていただきたいのは、政務次官は、ちょうどかつての国税庁長官であられるのだからよくわかると思いますが、この秋になって収獲不能、あるいは著しく減収したものに対しては、租税の減免措置等について考えておられるかどうか。  もう一つは、今、大臣がおっしゃったのは、多目的ダムというようなものは国営、県営というような大きなダムであり、あるいは貯水池であるが、そうじゃなくて、実際に二十町歩、三十町歩という小型の、いわゆる小団地におけるところの被害に対しては、小団地のための恒久対策としてため池の修築であるとか、あるいは新設というような問題について考えられているかどうか、この二点についてはどうですか。
  44. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 先ほど御指摘の租税の減免は事情に応じて当然しなければならぬと思っております。  それから第二段のため池その他の改築でございますが、いやしくも整備の悪い所は、これはもうどうしても基礎的条件でございますから、この方面は将来拡大して、そうして施設して参りたいと、こう考えております。
  45. 千田正

    ○千田正君 最後に、私は水産の問題についてお伺いしたいのでありますが、今一番問題になっているのは、御承知通りの日中間におけるところの民間の漁業協定が、この六月の十二日において終ってしまった。その後におけるところの継続すべき何らの方法もとらない。しかもこれに対しましては、九州あるいは中国その他のいわゆる支那海を中心として漁業をやっている者にとっては、大きな打撃であり、また収獲の面においてはほとんどゼロに近い。今、何百億という数字をあげて問題になっております。これに対するところの処置として、何か考えているのか。これは早急に考えてもらわなくちゃならない一つの重大な問題と思いますので、大臣の所信を伺っておきたい。
  46. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 民間の協定でこれをいたしておったのでございますが、今御指摘の通り、民間協定が失効してしまいました。その後の経過等につきましては、私まだよく、詳しくしておりませんから、水産庁長官からその後の経過を一通り説明申し上げまして、今後の対策等につきましては、また私から申し上げさしていただきたいと思います。
  47. 奥原日出男

    政府委員奥原日出男君) 六月十三日より無協定状態に相なりましたので、関係漁業者といたしましては、協定があったときと同じく底びきの禁止区域あるいは共同入漁区域を尊重していく、こういう態勢を固めて、今のところ確実にそれを実行いたしております。六月の十七日でございましたか、福岡の船が楊子江の河口の北の方の協定区域外におきまして、中共の軍艦から臨検を受けたのでございますが、これは禁止区域外であるということが明らかになりまして、十分ばかりで釈放された、こういう状況でございます。今の段階といたしましては、われわれとしましては、あくまでも民間の関係の漁業者をして協定があったときと同じように、整然たる態勢を守らせる、それとともに、政府といたしましては、監視、その他に必要な援助を与える、それとともに、この問題は単に漁業の問題だけで起ったのではございません。御承知のような背景になりますると一般の事情がございまするので、これらの事情の好転を期待するとともに、事態推移を積極的な気持で見守っておる、こういう状況でございます。
  48. 千田正

    ○千田正君 今のあれだというと、岸総理がおっしゃっているような静観の態度であって、静観していたんでは漁師がとても飯が食っていけない。静観している間は政府が生活保護法でも適用して生活の安定でもはかるというようなことならば別として、ただ黙ってじっとしておるだけでは、漁師が承知するはずがありませんので、これに対する対策というものは、やはり静観するという意味の何か裏づけがあるということをはっきりしてもらわぬというと、また、食えないから結局もとの木阿弥になってしまって、静観じゃなく積極的にまた行動を起すかもしれない。これは非常に微妙な問題でございますので、この点に対するはっきりした対策、方針を立てていただきたいと思います。
  49. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 今、水産庁の長官が申し上げたように、民間協定がなくなりましたけれども、わが方といたしましては、民間協定があったときのように、相互に禁止区域を侵さない、あるいは入漁区域をどうするということで、非常に厳格に自粛してこれをやっておるわけでありまして、操業をとめておるわけじゃないのです。しかし、協定をもって、そして安定した漁業をさせなければなりませんから、総理大臣、外務大臣等は、ああいうふうな国際間等の問題がありますから、申しておりますけれども、われわれとしましては、何らかの機縁をもってこの民間側の協定が再開され、その了解のもとに安定した漁業をさせていきたい、こういうふうに考えております。
  50. 安部キミ子

    安部キミ子君 関連して。  大臣は、先ほどから所信のことについて説明があり、また小林委員の質問に対しては、提起された具体的な問題があれば、それの方針をはっきりすると、こういうふうな発言がありましたが、この所信表明には、今、千田委員が質問になりました中国のこの緊急な問題、それから私がその次に関連して質問したいと思う韓国の李ラインの問題とそれに付随した拿捕船と、それから漁夫の釈放の問題、それから今、日韓会談が開かれておりますこの問題の中で、李ラインを日本政府はどういう考え方で韓国と折衝しているか、ひいては竹島の問題をどう考えておるかというふうな、具体的な、しかも重大な緊急な問題については、何も所信表明されていない。  それからその次は、この日ソの漁業の問題にいたしましても、安全操業の問題が、いまだ何も手に触れていない。こういうふうなことで大臣の最初所信表明としては、まことに軽薄な、内容のないもので、私は遺憾に思います。もっと詳しく質問をしたいのでありますが、きょうは時間がありませんので、関連質問ですから、今私が提出しました質問だけ、はっきり御答弁いただきたい。
  51. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 提起した問題にだけ対処するという考えでないということを先ほど申しました。しかし短かい期間で、そして所信として申し上げたのでございますから、すべて万般のことを網羅し得ざることは御了解いただかなければならないと思います。もとよりお尋ねがございますと、それに関連して誠意ある御答弁をいたしたい、こういう考えでございます。  なお、最後の安全操業等の問題でございますが、これは、ただ単に漁業の観点ばかりでないものでございますから、やはり関係のものとの協調のもとにお尋ね下さる方がむしろ好ましいことではないかと思います。  一言お答えしておきます。
  52. 安部キミ子

    安部キミ子君 私の質問した韓国の李ラインの問題、それからそれに対してどういうふうな考え方……。
  53. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  54. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記を始めて。
  55. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 先ほどの小林委員の質問に関連するのでありますが、やみの問題に対する対策に関連してお伺いしたい。  大臣は、食糧管理制度維持していくことの必要性を強調されておるのでありますが、私もそれに同調するものであります。ただ、小林委員が言われましたように、半面においてやみというものがあって、その影響で食管制度の実体が、このところ相当弱体化していきつつあるということ。これはおおうことのできない事実なんです。そしてこれに対する対策というものは、大臣は、歴代の農林大臣もその問題について苦慮してきたといわれておるのでありますが、なるほど精神的には苦慮されたかもわかりませんけれども、このやみの問題に対して対処する施策というものは、何ら積極的に打ち出されなかったと私は思うのであります。率直に申し上げて、むしろやむを得ざるものとして放任されてきたというふうに申し上げる方が、おそらく実際であったろうと思うのでありますが、大臣は、食管制度改善ということを言われたのでありますが、必然的にやみの問題に関連すると思うのでありますけれども、何らかこの問題に対する対策というものを検討して、もちろん統制がある以上、やみというものを全部なくするということは、これはとうてい不可能だろうと思います。結局程度の問題にはなりましょうけれども、何ら手をつけないということはよろしくないと思う。こういう意味合いで、何らかこれに対する対策を立ててやってみるという一つのお考え方があるかどうか、これを一つ伺いたいと思います。
  56. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) やみ米対策でございますが、先ほど大体の考え方を申し上げたのでありますが、まだ御了承を得ないことは残念ですか、基本的な態度としましては、現行の制度をやはり最高度に活用するということが、基本的な態度であると思います。従いまして、農協その他の手を通じて、所要集荷の完璧を期すると同時に、これは忍びないことでございますが、同時にその違法に対しましては、必要に応じてその取締りも強化しなければなりませんが、ただしかし、取締りの強化をするということだけで無事の民を罪するということもなかなかできないことであって、そしてこの間の事情は御了承通りであります。そのほかに、何らかの手があるかと、こういうことでございますが、御承知通り先年は一応農協等の集荷のほかに、業界等を活用して、そしてやったようなこともありますけれども、これらのいろいろな経過はありますけれども、必ずしも十全の期待をし得なかったということもあるようであります。しかしながら、この基本線を強化するだけでは、なかなかうまくいかぬということに対しましては、なお十分にこの現行の制度そのものの本質、それから運用の実態、そのようなものをさらに再検討しまして、そして改善の方途は講じて参りたいと、こういう所存でございます。
  57. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 もう一点それに関連するのですけれども、これはきわめて率直な質問でありますが、現在の食管制度の実態からいいましても、やみというものが絶対に必要だ、必要欠くべからざる一つの存在だ、こういうふうに考えられる感じが私はしきりにするのであります。たとえば本年の計画からいきますると二千九百万石集めまして、そして配給面に回される量は、十四日を割っておそらく十二日見当になる。ところで、それであとの十七日なり十八日分はどうなっているかというと、これは全部ではありませんけれども、その多くはやみによってまかなわれている。たとえば今の政府の食管制度のあり方から見て、これまで通りやっていけば二千九百万石以上集荷し得るかというと、相当困難である。かりに百万石、二百万石集めてみても、月のうち半分の配給というものは量的に困難である。それを勘案してみますると、結局やみというものがあって初めて現行食管制度というものは存在している、こう言わざるを得ないのであります。言いかえれば、現在の制度においては、やみというものは必然的な悪じゃなくて必然的に必要なんだ、こういうふうに率直に考えられないかどうかと私は感ずるのですが、これの大臣の所見を伺いたいと思います。
  58. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) これは米の問題につきましては、もちろんエキスパート中のエキスパートである梶原さんのことであられるから、実態についてのお話であろうと思います。現行の食管制度等におきましても、完全無欠なものでないことは私も率直に認めざるを得ないと思います。しかしながら、食管の本流を維持していって、国民の食生活を安定させるということにつきましては、どうも私はとらざるを得ないと思うのです。現在は十四、五日分しかやらない、あとは何を食うかということでございますが、まあ好ましいこととしては、あるいはパン食を利用してもらうとか、あるいは麦その他をもって利用してもらうと、こういうことの建前であろうと思いますが、この間にやみ米の流動しておりますことは、これは率直に認めざるを得ないと思います。しかしながら、これを一分一厘もといいますか、何割か程度にとどめるということにつきましては、これはなかなかめんどうなことでございます。これは率直に認めざるを得ない。しかしながら、なるべくやみ米を少くして、そして統制下に置いて、そして消費者にたくさんの配給をするという理想は貫かなければならぬことでございますから、この理想と現実の間に非常に困難な問題のありますことは、梶原委員の御指摘の通り、すこぶる至難なことであるということは、率直に認める、こう考えております。
  59. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 大臣のいわゆる食管制度を守っていく、これは私は初めに言いましたように、全然同感なのであります。ところが、その本流なるものが年を追って弱まっていきつつある。その大臣の言われる理想ですか、それは現実に対比するというとだんだん弱まっていきつつある。そこに私は問題があると思う。これは先ほど小林君の指摘した通りなんです。かようにやみに対する対策というものは、ほとんど熱意をもって検討され、実行されておらない。そこに私は問題があろうかと思うのであります。それに関連して伺いたいのは、予約集荷制度に対する政府の態度であります。三年前に予約集荷制度がとられて、これは食管制度政策論としては私は大きな転換であったと思います。ところが、もちろん予約集荷制度農民各位の自主的な考え方によって集荷予約される、そういう制度ではありますけれども、半面、政府としては、全部流通する米を国民に公平に配給する責任を、食管制度上持っているのであります。ところが、過去の、これまでの政府予約集荷制度に対する現実の態度を見ていると、きわめて消極的であって、まあお出しになるだけいただきましょう、これはまあ少し極端ですけれども、そういう態度に思われる。ところが、地方においては、もっと政府が積極的に要請していいじゃないかという空気も少なくないのであります。予約集荷制度に対する政府の態度というものは、非常に消極的だ。もっと政府としては食管制度運営の責任の建前から、強く要請していいじゃないか。もちろん義務供出ではないのでありますから、それをどの程度、どういうふうに出すかということは、これは農民諸君の考え方に待つわけであって、できるだけ生産者の自主的な熱意と努力に待つことは、これは当然なんです。当然なんですけれども、政府政府として、もう少し熱意のある態度をおとりになっていいじゃないか、こういう感じがするのであります。今度も一応予算面は二千九百万石計上されておる。これは先はわかりませんから、果してどの程度現実に集荷し得るかわかりませんけれども、幸いに豊作であっても、政府としてはおそらく作がいいからもう少しという態度は、これまではおとりにならなかった。二千九百万石あれば、これは計算はだれがしても十四日の配給を割って十二日とかということになるのであります。それじゃ消費者はあるいはまた比較的高いやみを探さざるを得ない。そういうことに追い込まれるのであります。一体、予約集荷制度に対して、政府は、三浦大臣はどういう態度をおとりになるであろうということでありますが、これも所信だけでけっこうでありまするから、お伺いしたいと思います。
  60. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) まあ予約集荷制度の適用につきまして、あるいは強くやれというふうなお話等がありますが、強くという意味にも、これはいろいろあろうと思う。まさかこれを強制制度というような、もとのようなことではありますまい。それから積極的に進めろということは、なまぬるい集荷じゃいかぬから、もっと農民団体等にもはかって、そうして予約集荷のなにを積極的に進めろ、こういうふうなことにも推測されるわけでありますが、そのなにについては、別に反対はございません。ただしかし、強制的にするとかというふうなことでは、もちろんないでしょうし、やはりこの予約制度をとりました以上は、その予約制度をとったその根本の趣旨に従って、そしてやはり農民人たち納得のいくようなことにしてやはり集めるということは、これは本義だろうと思うのでございます。従いまして、農業団体等に緊密な連絡をとって、この予約制度の活用には十分気をつけ、かつ、また、集荷目標等につきましては、今申し上げました通り、年の豊凶によっても非常に影響があるのでございますから、その程度等を勘案して、そしてやはりこの筋道に沿うて、いわば正当に進めるのはかなかろう、こう思っておるわけでございまして、天来の妙手がありましたら、どうぞ一つ示唆していただいて、なお、この食管の改正のためにも御協力賜わりたいと思います。
  61. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は、政府の責任感と熱意の問題だと思います。それと努力と工夫だと思うのです。予約集荷制度それ自体は、食管制度の建前からいえば、本質的に問題があることは大臣御承知通りなんです。食管制度においては、生産者は全部政府に売る。消費者は、食管制度のもとにおいては、配給以外は買えない建前になっておるのであります。その責任を政府が持っておる。だから、その責任を果たす努力とやはり熱意がなくちゃなるまいし、行政庁もそういう工夫と努力は、私はぜひ必要だと思います。しかし、過去予約集荷制度実施から今日までの間、格段の努力と熱意と工夫がされたということは、先ほど申しましたように、そうそう見受けられない。しかも食管制度というものは、本流を維持するといいながら、毎年毎年弱体化しつつある。地方においては、土地によって配給が月のうち二日とか三日という所も、大臣御承知通りあるのであります。それをそのままにしておいて、そうして本流を保っていくんだということだけでは、私はいかがであろうか、こう思うのであります。大臣の一つ今後の御精進といいますか、御努力を期待したいと思うのであります。  終ります。
  62. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 剴切な御意見でございます。なお、この予約集荷制度の運用につきましては、一そうの工夫をこらして、いわゆる強く熱意をもってこれを改正するようにいたしたい、こう考えます。
  63. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 本件については、本日は、この程度にいたします。  ちょっと速記をやめて。   〔速記中止
  64. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記を始めて。  ここでしばらく休憩いたしまして、午後二時から開会いたします。    午後零時十七分休憩      —————・—————    午後二時二十四分開会
  65. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 委員会を再開いたします。  農林水産物資の運賃に関する件を議題といたします。この件について質疑の御要求がありますので、この際、御質疑を願うことといたします。なおこの点について、政府からの出席は農林省農林経済局長渡部伍良君、日本国有鉄道営業局長磯崎叡君。  まず最初に、日本国有鉄道営業局長から、突如として今農林水産物の運賃を上げねばならない、改訂せねばならない理由を、簡単に御説明願います。
  66. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私、国有鉄道の営業局長の磯崎叡でございます。  ただいま御指名によりまして、私の方で今考えております公共政策割引の措置につきまして、簡単に御説明をさせていただきます。お手元に資料を配付させていただきましたので、それによりまして御説明をいたします。  まず、第一枚目の公共政策割引貨物の割引額調、これは昭和三十二年度の実績でございます。この実績によりますと、現在私の方の貨物運賃は、国有鉄道運賃法によりまして、貨物の賃率表とそれから貨物の等級表とこの二つによって、たくさんの荷主から運賃を収受いたしておりますが、その賃率表にも等級表にもよらない特別の割引を、公共政策割引というふうに申しております。この公共政策割引の実績は、その一番初めの表の左側にございますようにトン数といたしまして千六百六十一万トン、木材類四百八十八万トンを筆頭といたしまして、薪炭が二百三十万トン、魚介が百五十万トン、野菜が百二十万トン、以下、生果、雑穀、食料品、家畜、肥料、農機具、わら工品等の農林水産物資のほかに、無煙炭三十六万トン、鉱石類三百七十八万トン——これは石灰石その他でございます——等、農林水産物資全体を合せますと千六百六十万トンでございまして、これは私の方の昭和三十二年度の一年間の貨物の輸送実績が一億七千七百万トンでございます。ちょうど全体の貨物輸送量の約一割に相当する数量でございます。これをもし現在の運賃法によりまして定められました貨物の賃率表並びに等級表によりまして、所定の運賃を算出いたしますると、ごらんの通り二百二十五億三千六百万円何がしになるわけでございます。この所定の運賃に対しまして、それからある程度の、品目によって非常に率は異なっておりますが、割引をいたしております。その割引の額が、ごらんの通り二十三億七千七百万、二十四億になんなんとする、私の方にとりましては、非常に膨大な割引額の実績を示しておるわけでございます。内容を念のために申し上げますと、木材類が大体半分近くの約十億、薪炭類が三億八千万、魚介が二億二千万、野菜が一億七千万、以下こまかい物資になりますが、ずっと飛びまして、通産物資の無煙炭が一億三千万、鉱石類が一億三千万、合計いたしまして約二十三億、そのうちの通産物資が約三億、農林物資が約二十億ということに相成っておるわけでございます。しからば、その割引の内容はどういう内容かと申し上げますと、その次の紙に書いてございます。この第二枚目の表は、公共政策割引貨物の品目別の割引率調べでございます。木材類から以下ずっと書いてございますこの品類は、第一ページの品類と同様でございます。その次に、おもな品名といたしまして、この各品類のうちにたくさん実は、約百三十ばかり品名がございますが、そのうちから数量の多い品名だけを抜き出しまして、おのおのの品名につきましての割引率を書きましたのが、以下の表でございます。先ほど申しました私どもの方の貨物等級表は、普通等級と特別等級と二つに分れております。普通等級は、全体で私どもの方で輸送いたします約七千近い物資を十二の等級に分類いたしております。この等級制度と申しますのは、鉄道が陸上輸送につきましてほとんど独占的な地位を占めておりました時代の一つの運賃制度でございまして、すなわち経済価値の高い貨物からは運賃をうんと取る。経済価値の低い貨物からは低い運賃を取る。そして高い運賃で低い運賃をカバーする。こういう運賃制度がこの等級の基礎をなしておるものでございます。すなわち一級から十二級までございまして、一級から四級ぐらいまでの運賃は、原価を上回った運賃を取っております。逆に六、七級から下の方の運賃は原価を下回った運賃を取っております。従いまして、原価を上回った運賃で原価を下回った運賃をカバーし、そして大体全体でとんとんになるというのが、私どもの方の現在の等級制度の基本でございます。これと著しい対照をなしますものは、現在のトラックの等級運賃制度でございまして、トラックはこういう分け方は一切ございません。たとえば、荷役がしやすいとか、いたみやすいとか、そういったものによる割増しはございますが、品名による割増し、割引によるその運賃の高低は一切ございませんで、一律に全部トラックの原価を中心にいたしまして運賃をきめております。従って、トラックで輸送いたしますと、どんなものでも一応原則としては、運賃は同額でございます。それが鉄道運賃は、先ほど申しました通り、一種の根本的な、政策的な運賃を取っておりまして、等級に分けて、そうして貨物の高い価格のものから高い運賃を取るという制度になっております。この等級のうちの数が多いほど価格の低い物資、すなわち運賃の安い物資、数の少いほど等級の高い物資でございます。この等級はトン当りの貨物の値段を客観的に算出いたしまして、それを機械的に十二の等級に当てはめたものでございます。これは、こういう機械的な当てはめ方は、若干社会政策的な考慮が払われないことがままございますので、それを特別等級というものによりまして修正をいたしておるわけでございます。すなわち、七千数百の品名の中から、特に国民生活に直結する農林水産物資、あるいはその他の物資のうちから、約数百のものを選びまして、それを特別等級というふうに格下げをいたしております。大体格下げいたします割引の引下率は二割前後でありましてそこに書きました通り、たとえば薪炭類で申しますと、木炭は価格だけから申しますと五級に相当するわけでございますが、それを二割二分引きまして二十二級という等級に格下げをしておるわけでございます。特別等級は二十一、二十二、二十三の三つの等級がございまして、この二十台に該当いたしますものは、一応普通等級の等級をとっておりますが、それから約二割ないし三割、ごらんの通り、農機具の脱穀機、耕耘機等になりますと、約三割八分の引き下げをしておりますが、それによりまして、二十二級というふうに下げております。米穀、麦等は二十一級になっております。こういたしまして、普通等級で数千の貨物を分類いたしたものから、さらにそれを社会政策的な意味で特別等級に格下げいたしまして、この特別等級までが一般の貨物に適用される運賃でございまして、この特別等級、普通等級と、先ほど申しました距離によります賃率、この二つをかみ合せまして荷主から具体的な運賃をいただいております。  これに対しまして、今問題となっております公共政策割引と申しますのは、これをさらに下回りまして、特別な品目につきまして特別な割引率をきめておるのが、現在の公共政策割引でございまして、従いまして、この公共政策割引は、現在の運賃法によりますところの貨物の賃率表にも、また貨物の等級表にも載っておりませんものでございます。これは日本国有鉄道運賃法の第八条によりまして、国有鉄道総裁が変更するということによってきめられておるわけでございます。この割引率は、ごらんの通り、品名、品類によりまして非常に違っております。一番高いのは上から三枚目にございますまきの二割二分ないし二割八分、それから、大体二割以上のものは一つ二つございます。わら工品なども二割から二割一分、それから非常に低いのは一分から六分、さまざまございますが、これは昨年の運賃を改訂いたしました際に、遠距離逓減の修正をいたしましたので、その遠距離逓減の修正があまりにも過度にならないようにという趣旨から、若干の訂正を距離によっていたしたわけでございまして、その距離による割引率の差異によりまして、この最高最低が出ておるわけでございます。この最高最低の率と、さらに距離別の数量と、この二つをかけ合せました結果が、その次の平均割引率でございます。ごらんの通り、品目によりまして二割以上のものもあれば、四分三分といったものもあるわけでございまして、いろいろさまざまな平均割引率になっておるわけでございます。これは三十二年度の割引の実績によりまして、距離、数量等の加重平均をいたしたものがこの平均割引率であります。この最高最低割引率によりまして各品目別にトン数をかけ合せまして、そして割り引きいたしました額が、先ほど申し上げました通り、その表の一番右側にございます二十三億七千万、木材類の十億を筆頭といたしまして、その品目別に割り引くことによって算出いたしましたのが、この二十三億の額でございます。これが現実に私の方で三十二年度に割り引きいたしました額でございます。  次に、三枚グラフが入っておりまするが、これは大体同じようなグラフなので、説明が長くなりますので、一枚だけで省略させていただきます。たとえば一番上は鮮魚、その次がバレイショ類、それから三枚目が木材、品目によりまして若干賃率が違いますので、こういった違った表を作成いたしましたが、一番上の鮮魚によって御説明申し上げますと、一番上の太い黒い線が、先ほど申し上げました鮮魚の価格による等級によって運賃を算出いたしました場合のグラフでございます。縦が運賃の額でございまして、横が距離でございます。すなわち距離が増加するに従って運賃の絶対額はもちろんふえて参りますが、運賃のキロ当り運賃はだんだん下っていっておるわけでございます。従ってこの三つは四十五度の角度を描かずに、さらに鋭角になって進んでいっておるわけでございます。この普通等級から特別等級へ、ごらんの通り二十二級と書いてございますが、下っております。これが普通等級を一〇〇といたしますと七八になっておるわけであります。この特別等級に該当する品目はたくさんございますが、特にこの鮮魚につきましては、さらにそれから割引をいたしております。ごらんの通り五百キロのところで横から線が出ております。五百キロの距離につきましては一番下の点線のごとく割引いたしまして、結局普通運賃の一〇〇に対しまして七四の割引の実態、すなわち二割六分の平均割引をいたしておるということに相なるわけでございます。そしてこれに実は原価の曲線を入れておりませんが、原価曲線で申し上げますと、大体原価は五級の前後を走っておりますが、その原価は、今度距離別に申し上げますと、大体私どもの方の運賃は、非常に率直に申し上げさしていただきますと、近距離でもうけて遠距離で損をする、こういう運賃制度になっております。すなわち日本の国土の関係その他から申しまして、相当強度な遠距離逓減制をとっておりますために、約三百キロから二百キロは原価を上回るような運賃をいただいております。そしてそれから距離が遠くなるに従いまして、原価を逆に割っていくという方法になっておりますので、先ほど申しましたように等級別、すなわち品目別に見ますると、高い値段の貨物の運賃でもって低い値段をカバーし、距離的に申しますと、近い貨物の運賃で遠い貨物の運賃をカバーする、これが私どもの方の縦と横の運賃制度の基礎になっておるわけでございます。こういう事情からいたしまして、ごらんの通り、遠距離にいくに従って、この幅が開いておるわけでございまして、これはこの次のバレイショの表も、また三枚目の表も同じことに相なっておるわけでございまして、この割引をいたしております。  今度は品目につきまして簡単に申し上げますと、次の表の「設定品目からみた割引品目数調」というのがございます。これは先ほど申しました通り、私の方で輸送いたします貨物は、全体で約七千ございます。その七千の貨物をそのまま等級表に入れますと、非常に複雑になりまして、事務的にも煩瑣にたえませんので、これを千三百六十の品目に圧縮いたしております。大体同じ価格、同じ性格のものを一つにまとめまして、これを、品目といたしましては千三百六十にまとめております。ごらんの通り、鉱産品から危険品に至るまで、さまざまな数が入っております。このうちで、今申しました通り、特別等級まではさまざまございますが、特別等級からさらに割り引きする、あるいは一般的に公共政策割引を適用いたしておりますものは、その次にございます通り百十五品目でございます。従いまして、逆に千二百四十五の品目につきましては割引がない。と申しますことは、一般の賃率と一般の等級表通り運賃をいただいている。すなわち、全体の約一割弱のものだけが特別に一般の等級表以下に運賃を暫定的に設定しているということに相なっているわけでございます。  次に、北海道の表が一番最後についておりますので、これを簡単に御説明させていただきます。この北海道の表は、ちょっと今までの表と性格が異なっておりますので、簡単に申し上げますと、実は、この表は、北海道から出ます貨物の運賃で、北海道から内地へ参りますもの及び北海道から出まして北海道へ届くものの二つにつきまして、三十一年度の実績と三十二年度の実績について、どの程度去年の値上りが実際に運賃面に出ているかという表でございます。まず、北海道の問題につきましては、二つ問題がございます。一つは、青函航路のキロ程の問題でございます。一つは、今問題になっております公共政策割引の問題でございます。この二つの問題がございます。青函航路キロ程につきましては、実は、私どもが昨年当委員会において御説明いたしました際には、青函航路キロ程は百キロメートル短縮いたすということでもって原案を御説明させていただきましたが、もし百キロメートルのままで参りますと、運賃の値上り率は一六・一%ということに相なっておったわけです。それからさらに御審議の過程におきまして、五十キロ短縮しろ、すなわち、四百五十キロであったものを私どもは三百五十キロにするという案でございましたが、それをさらに五十キロ短かくしろ、三百キロにしろ、三分の一を減らせというお話がございましたので、それを三分の一減らしまして、百五十キロ短縮いたしました。その結果、全体の値上り率は一四・八九%に下っておるわけであります。ここで約二億一千万円の私どもとしては持ち出しになったわけであります。さらにその次に、割引の方でございますが、従来の範囲による割引の継続、北海道につきましては、昭和二十八年に実は青函航路キロ程の修正をしろという御要望が非常に強かったわけでございますが、これが種々な関係でできませんで、そのかわり、北海道につきましてのみ特別な割引を実施いたしたのでございます。実は、それは、私どもといたしましては、当然、百五十キロ短縮された場合には削除していただくというつもりでおったのでございますが、しかしながら、それをさらに残せというお話がございまして、ここで約五億三千万入れまして、結局一一・九一%にこれが下ったわけでございます。さらに、北海道につきましても距離割引をしろというお話もございまして、距離割引を約六百万円追加いたしまして、結局一一・八七%ということに相なっておるわけであります。車扱いとして、全体の値上り率は、全国的に見ますと一四・九%、これを、北海道について正確に申しますと、一四・三%、それを北海道の青函を修正いたしまして一四・九%、これが一三%を上回りますことは、小口貨物の賃率が非常に下ったことと、車扱い以外のいろいろな扱い方を変えたというようなことのために、一・数%が財源になっておりますが、いずれにいたしましても、全国平均の値上り率が一四・三%に対しまして、北海道から出るものにつきましては一一・八七%という相当低位に押さえたつもりであったわけでございます。従いまして、私どもといたしましては、今回いろいろ北海道につきまして問題も出ておるようでございますが、この北海道に関します限り、昨年の運賃値上げにつきましては、相当ほかの地域とは違った扱い方をした結果になっているということを申し上げるために、この表を作ったわけでございます。  最後に、結論を申し上げますと、私どもといたしましては、ただいま申しました通り、約二十五億の割引を実施一いたしておりますが、これらの中には、相当昨年度の運賃改正の際に、お前のところの業務量の増加でまかなえというふうに、何と申しますか、言われて、お引き受けした割引があるわけでございます。ところが、御承知通り昨年の下半期からの経済不況によりまして、私どもは、昭和三十二年度におきましても約二十億近い貨物運賃の予算に対する減収をいたしております、もちろん割引額を引きました上で約二十億近い減収をいたしておりますが、ことに本年度になりましては、非常に減収の度がはなはだしく、現在までにすでに約一カ月十億近い減収を続けています。もちろんある程度旅客面でカバーいたしておりますが、旅客面の増収は、わずかに五、六億にすぎませんで、とても貨物の全体のカバーをするだけに至っておりません。従って、私どもといたしましては、何らかの若干の増収を企図したいということで、この公共政策割引につきましてある程度の減額をさしていただきたいということが、私どもの案でございまして、私どもの原案といたしましては、二十三億に対しまして、各物資ごとに、先ほど申しました通り、割引率は相違いたしておりますが、二分の一ないし三分の一を削減いたしたい、逆に申しますと、半分ないし三分の二を残しまして、二分の一ないし三分の一を削って参りたいというのが私どもの案でございます。そういうふうに、非常に不明確なことを申しますのは、非常にこれは技術的な問題でございまして、先ほどこらんの通り、割引率が非常にさまざまでございまして、二分の一、三分の一と申しましても、四捨五入あるいは二捨三入等の関係もございまして、あるいはそのまま残るものもあれば、あるいは四捨五入の関係で切り上げになるものもあるといったような、さまざまな割引に対する率のかけ方で変って参りますので、二分の一ないし三分の一と申し上げておるわけでありますが、全体で約七、八億の金額をぜひお戻し願いたいというのが、私どもの考え方であります。農林物資、通産物資別に申しますと、大体三分の二が農林物資、三分の一が通産物資ということに相なるかと思います。  以上、はなはだ簡単でございますが、御説明といたします。
  67. 千田正

    ○千田正君 磯崎さんの方で、これを改訂するに当りまして、この改訂が大体平均一割四分か一割六分上るということによって及ぼす物価の問題ももちろん考えられただろうと思いますが、そういう点についてはどういうふうに考えておられますかどうか。特に考えておられなかったのですか。
  68. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 各農林物資の中におきますその物資別の価格の中に占める運賃の割合の問題が、一番問題だと存じます。この点につきましては、実は詳細な検討資料を持っておりますが、今申しますことは、全体の運賃額の一割二割ということではなしに、割引額の一割二割ということに相なるわけでございます。従いまして、運賃額といたしましては、たとえば一割引きしているものは一割引きの三分の一、三分、従って、運賃全体の百分の三ということに相なるわけであります。一方、たとえば、例をとって非常に恐縮かと存じますが、魚について申し上げてみますと、これは前回もやはり申し上げて、お前の考え方は違うという実はおしかりを受けたわけでございますが、たとえば、築地の市場におきます魚の値段などを見ましても、最高最低の値幅というのは、一番安いイワシにおきましては七十円ぐらいで、安値が八十円、高値が百五十円ぐらいであります。これはおとといあたりでございますが、そうしました場合に、貫当りの運賃が約十円になります。その十円の中の約一円ぐらい、それが今回の問題になるわけでございます。ということになりますと、たとえその一円ぐらいのものがその品物の値段にかかわりましても、それは当然市場における高値安値の中に吸収されるべきものではないか、金額から申し上げまして、吸収されてしかるべきではないかというようにも考えられるかと存ずるわけでございます。その他、もちろん価格のそういった値幅のないものもございますけれども、現在の割引額の中の何分の一という額でございますので、ある程度それは吸収していただけるじゃないかというふうに考えておったわけでございます。
  69. 千田正

    ○千田正君 農林省としては、たとえばいろいろな農林水産物価に対するパリティ計算や何かの場合に、運賃の計算の場合は、当然実施運賃であるところの割引された運賃というものを一つの試算点にしているのではないか。とすれば、このたび、かりに割引運賃の何。パーセントかが改訂されるとすれば、それだけ上ってくるわけですね、これに対してどういう見方をしていられるのですか。
  70. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) お話通り、割引の率が減少すれば、それだけ取り扱う人の支払う運賃は上るわけであります。これがどこで負担されるかということは、また別の需給の関係とか、いろいろなほかの要素できまってくるわけでございますが、支払う運賃はそれだけふえてくるということは間違いないと思います。
  71. 千田正

    ○千田正君 距離の問題ですが、従来は三百キロを中心として考えたのですが、遠距離運賃の逓減による基礎五百キロ、それは今度はどういうふうになるのですか。
  72. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その点は、現在のままでやっております。
  73. 北村暢

    ○北村暢君 今の説明を聞いておりますと、たとえば国鉄の貨物を扱う量も最近ぐんと減ってきている、そういうことで、今回は特別割引の三分の一だけを一つ上げたい、こういうことのようですが、これは運賃審議会でこの秋から審議されてやるということですか、それまでに三分の一ずつ削っていって、運賃審議会の結論が出るころまでには、この特別割引を全部なくしていこう、こういう考えなんですか、どうですか。
  74. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 御質問の範囲をちょっと越えるかもしれませんが、先ほど申しました現在の私どもの方の等級表、これはこういうものでございますが、この等級表は、昭和二十八年にやはり等級審議会を作りまして、その審議会におきまして相当多数の方々の御意見を、相当長期にわたって伺いまして作成いたしましたのが、この現在の等級表でございます。この等級表に対しまして、実は例外的な措置としてやっておりますのが、現在の公共政策割引でございます。で、実は今後、等級表をいつ改めるかという問題がございます。この等級表と申しますのは、大体一年のうちのある一定時期を一つのポイントといたしまして、その時期における先ほど申しました七千数百の物資の客観的な価格を算定いたしまして作るわけでございますので、やはり四年か五年たちますと、どうしても新しい製品がどんどん出て参ります。そうすると、新しい製品自体の価格あるいは等級をまずきめなければならない、と同時に、また古い製品の経済価値が変ってくるわけでございますが、それらの変動があるということで、大体四年ないし五年に一回ずつは修正いたしているわけでございます。前にいたしましたのは、昭和二十八年で、今度は昭和三十四年か三十五年には、ぜひこれを修正いたしたいと思っておりますが、この次にこれを修正いたします場合には、現在の等級を基準として修正をすることになると思います、ということは、これを現在この通りに実施しておるということを前提といたしまして、新しい等級表がいかにあるべきかということを策定いたしますので、私どもとしては、極力、現在、多数の九〇%の荷主に適用しているこの等級表に、大体あと残りの一〇%の人も戻しておいて、そうして新しい等級表を作りたいというのがわれわれの念願でございますが、ただ現実の問題といたしまして、二十五億のものを一年、二年でもってゼロにするということは、これは私どもといたしましても非常に不可能だ、また急激な変化が起り過ぎるということもよくわかりますので、とりあえず今回この二分の一ないし三分の一というものを調整させていただきまして、あとはまたそのときの模様によりまして、調整できれば調整したいと思っておりますが、それはまたそのときの状況でもって、全部これを砕いてしまうということはちょっと不可能かと思います。  それからもう一つは、これは御質問の範囲かと存じますが、現在、実は鉄道運賃制度調査会というものを私どもの方で作っております。これは昨年の十月に発足いたしまして、原安三郎氏を会長といたしまして、二十五名の委員から成ります財界、学界、言論界その他各界の方々を大体網羅いたしまして、昨年の秋からすでに十回の総会と、それから今、部会を三つ持ちまして、旅客の運賃の問題、貨物の運賃問題及び運賃理論の問題と、この三つにつきまして現在検討中でございます。この調査会といたしまして、現在、実はきょうもやっておるのでございますが、その方向といたしましては、やはりこの等級問題は、ぜひここ二、三年のうちには修正すべきである、そうしてまた、できればことしの秋くらいから等級に関する専門委員会を持って、そこで新しい等級制度を作っていこうではないかというような、大体の委員の皆さん方の御意向であるのでございます。その前に、私どもといたしましては、現在の等級表からはみ出しておりますこの公共政策割引につきまして、ある程度の調整を加えたのだということに、ぜひいたしたいというのが、私どもの考え方であります。
  75. 北村暢

    ○北村暢君 今のその等級を決定して、それでなおかつ調整ができなくて公共の政策割引をやった、こういうことで二十五億の問題が出ておるが、それでは、その国鉄の側からいっての都合はわかったのですが、公共政策割引をこの三分の一なり何なり減らしていかなければならなくなったという新しい事情は、この農林物資なり何なりに新たな状況の変化が起ったのか、起らないのか、どう考えるか、これを一つ経済局長から。
  76. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) これは農林物資の方に起ったのではなくして、鉄道の採算の問題でありますので、私の方は支払いがふえることは好まないわけであります。ただ単に鉄道の収支がとれないから、その扱う運賃を上げるのだと言われても、すぐは同意しかねるということでございます。
  77. 北村暢

    ○北村暢君 今の経済局長答弁では、この公共政策の割引ができた当時と、農林水産物輸送について、さしたる変化がない、それで、国鉄の収支の都合でこれをなくしていきたいと。そうすると、今、五年に一回かやる等級の改訂等に当って、やはり具体的に調査会なり審議会なりで論議をされてから、等級を変更するときに、この公共政策割引を実施してきた条件というものを含めて改訂すべきでないか、この公共政策割引をやったときの状況に変化がないとするならば、ただ単に国鉄の都合で三分の一ずつだんだんなくしていくというようなことは、これはちょっと理解ができないのですよ。そこら辺のところは、国鉄の方ではどのように理由をつけられるのか。
  78. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その点につきましては、もし現在割り引きいたしておりますものが、ある一定の時期を限りまして、またほかのものと価格の比較をいたしまして、絶対に現在の割引額の限度まで等級を下げるべきだという客観的なものであるといたしますれば、当然この等級事態を修正すべき問題であったと思います。ところが等級表と申しますのは、先ほど申しました通り、非常に多数の物資、従ってほとんど日本の貨物輸送に関係のある数千、数万の方々が実は関心を寄せられている実情でありますので、これを簡単にいじることは非常にむずかしい。しかも、一カ所をいじれば必ず全部をいじらなければならないということになりますので、もしほんとうに現在やっております百二十の品目を割引通り下げなければいけないとするならば、当然これはいじらなければならない。そうすると、あと九〇%の荷主の了承がなければいじれぬ。従って今の段階におきましては、二十八年にできました等級表では一応妥当なものとして、それに対する例外的な措置として現在割引措置を行なっているというように、私どもはほかの荷主の了解を得ているわけです。従いまして、ほかの荷主といたしましても、もしこの二十五億の運賃が自分たちの九〇%にしわ寄せされるのではかなわぬ、これはあくまでももう一ぺん等級表自体をたたき直して、これを御破算にして、一つ全部七千の物資をやり直そうじゃないかという議論が出るのは当然です。従って私どもといたしましても、二十五億をそのほかの一〇%の荷主に還元いたしまして、あとの九〇%の荷主を犠牲にして二十五億をこの人たちに回すことが非常にむずかしいのじゃないかということが、やはり全体の多数の利用者の利益ということを考えますれば、この二十五億というものはだれが負担するかということも相当将来にひっかかる大きな問題だと思います。今の建前として申せば、等級表から申しますすと、二十五億はまかり間違うと残りの九〇%の荷主にしわ寄せされてしまうおそれがあるというところに非常に大きな問題が含まれておるわけでありますというふうに考えます。  それからもう一つは、私の方が全体としてもし二十五億のんでしまったらどうかというお話も当然あるかと思いますが、私どもといたしましては、とにかくこれだけの公共割引、もちろん旅客運賃にも率直にいってたくさんございます。こういった割引は貨物だけではございません。ございませんが、こういった割引をしょいながらも、私どもといたしましては、とにかく独立採算制でやれという、これは国家の至上命令を受けているわけでありまして、私どもといたしましても、とにかく収支償わなければいけないということを原則とされつつ、しかも一方で原価を割ったこれだけの割引をさせられているというところに相当根本的ないろいろな問題があると思います。従ってもちろん根本論としては、その公共企業体自体の問題が問題かとは存じますが、とりあえず現在独立採算制をやれということを前提として、こういった運賃制度考えますと、こういった不合理はある程度是正していきませんと、将来のあるべき姿に持っていけないということになるわけでございます。
  79. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 この前も再三伺ったのですが、基本料金の問題、ところが今のお話を伺ってみると、この二十五億の金が国鉄の経営上ほしいのだということにあるのか、こういう社会政策的な割引は不当であるからこれをならしてやっていかなくちゃいかぬという筋合いから問題が起っているのか、どうもその点がはっきりわからない。どっちもからんで、甲といわれると乙と返事をし、乙といわれると甲と返事をする。これではどうもわからないので、端的に金がほしいのか、理屈がほしいのか、はっきり話してもらいたい。
  80. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私どもといたしましては、二十五億まるまるちょうだいしたいとは今言ってない。これは、私どもも実際一億数千万円のものを送っておりますので、荷主その他の負担ということもわかりますが、二十五億まるまる出していただきたいということでなしに、大体三分の一くらい、ですから今の御質問のごとく二十五億絶対なければ困るのかとおっしゃれば、今のところ七、八億でがまんいたします、というふうに御返事せざるを得ないのであります。
  81. 千田正

    ○千田正君 今の局長のお考えは、二十五億の問題は、かりにあとの九〇%の人たちがしわ寄せを食わなければならない。それは不合理だ、ところが一体最終段階において、これはだれが負担するのかということになると、これは消費者に必ずしわ寄せがきますよ。それは荷主でもなければ何でもない。生産者の側からいえば消費者に負担させるより以外手はなくなってしまう。そうなると、これはやはり国民の生活上の問題になってくるので、九十人の国鉄の荷主を救うために、百万の国民が無理してそれをしょわなければならない。そこにわれわれは議論の分れ道が出てくるので、その筋道をはっきりしてもらわぬと困るのです、われわれといたしましては。限界の問題なんですね。
  82. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その点は荷主と申しますか、各物資の背後にある消費者のことはもちろん一番大事なことだと思いますが、実際問題として七千の貨物につきまして、一々の物資の背後にある消費者が実際八千万のうち幾らあるということは非常に困難でございまして、私どもといたしましては、一応物資と申しましても、たとえば米とか麦とかこれは入っていない。全体の国民が使う物資である米、麦は入っていないということにつきましても、同じ農林省の中でも、米の担当の方に言わせれば米を割引せよというふうにおっしゃるわけであります。それですから八千万が使うものはこれに入っていない。もちろんこの八千万の使うものがあり得るわけでありますが、そういう関係で、物資別にその背後にある消費者全体を観察することは非常にむずかしいので、私どもといたしましては、一応直接利用される荷主の数でもってものを言ったわけであります。
  83. 千田正

    ○千田正君 木材とか野菜とか鮮魚とかというものは、あなたの言う米、麦とは違っても、実際に住宅問題あるいはその他の建築資材としての木材あるいは外国輸出用の木材というような問題、それから生鮮食料品については、これは毎日食ぜんにわれわれが必要とするものです。そういう問題はやはり必要度においてこれは考えなければいけないと思う。そういう観点からわれわれは論議したいと思う。
  84. 北村暢

    ○北村暢君 もう一回お伺いしたい。この前の等級をきめる、あるいは等級をいじられなくて、先ほどの説明だというと、この特別割引というものができた。これはやはり公共の政策割引である。そういう点ですから、国鉄が独立採算制を至上命令として受けておるということはこれはわからないことではないが、しかしこの特別割引ができたというけれども、これは簡単にできたのではなくて、これはこの特別割引ができたときのいきさつからいきますと、この委員会でも相当にもんでこれができたのですよ。ですから、これはやはり国会の意思なんだ。意思なんだから、それを今聞いておるところによると、これを変更するべき何らの情勢の変化というものはない。ないにかかわらず、国鉄の都合だけでやるということは、すなわち国鉄が公共の政策を、国会の意思を無視してそうしてこれをだんだんなくしていく、こういうことについては私はどうしても理解ができない。従って、この特殊な割引というものをなくするとするならば、等級等において考慮せらるべき問題であるから、少くとも等級変更までこの割引はやはり続けていくべきだ、こういうふうに考えるのです。これは水かけ論になるかもしれませんが、私はそういうふうに考えます。
  85. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ただいまの御意見に対してお言葉を返すようで非常に恐縮でありますが、今の等級表は、実は国有鉄道運賃法の第七条によりまして、第七条は「車扱貨物運賃は、貨物等級表の等級に従い、別表第三の賃率による。」という表現になっております。別表第三の賃率と申しますのは、先ほど申し上げた距離の賃率でございます。これは遠距離逓減制を含めた賃率であります。賃率表は法律の付表になっております。この等級表は非常にこまかい表でありまして、ときどき変えなければいかぬということで、実はこれは私の方が制定されるようになっておるわけであります。従いまして、もしこの割引自体がほんとうにぜひここまで運賃を下げなければいかぬというならば、この等級表の中に織り込まれておるべかりしものであるわけであります。ところが、二十八年のときには実はそこまで論議せずして、その二十八年の等級は、一応これで作ってしまった。その後の問題について、種々論議された結果、例外的ということが、今のような割引ができたということになっておるわけであります。この点、ほんとうにもしこれが公共性割引ということになれば、先ほど御説明申し上げました特別等級において、当然解決されているべき問題である。私どもといたしましても、今申し上げました公共性は、特別等級を引くところまでは公共性だというふうに考えております。諸外国は、今の国鉄とは全然違っておりまして、よその国は等級表を入れないのでありまして、ほとんど国鉄が荷主と個別契約をするということをしませんと、トラックの業者といいますか、トラックの業者との共存共栄ができなくなってきておるというような状態でございます。従いまして、今までのようなこの等級表で、公共性を縛られますと、結局どういうことになるかと申しますと、等級の高い貨物は、これはみんなトラックに行ってしまう。これは鉄道の運賃が高いからトラックの方に行ってしまう。従って、等級の高いものがどんどんトラックに行くと申しますのは、現実に輸送実績を見ましても、毎年運賃の賃率は下ってきている。平均賃率は下っている。そして等級の高いものは、どんどんトラックに行ってしまう。これは、トラックの運賃が安いから当然なんです。割引のことを言っておられる荷主の方につきましても、近距離は私の方に来てないのでございます。距離別に申しますと、先ほど申しました大体三百キロ以内が、大体私の方でもうかるエリア、三百キロ以上が損をするエリア、ところが、三百キロ以内でありますと、私の方が運賃が高く、従ってトラックの方に行ってしまう。それから、三百キロから五百キロをこえたところが鉄道に残るわけでございます。これは、関係の荷主の方に常に申し上げておりますのですが、あなたが遠距離割引をせよ、公共性割引をせよとおっしゃるならば、近距離貨物を、私の方に出して下さい。近距離貨物をトラックに出しておいて、私どもの方に割引しろと言うならばわかりますが、近距離はトラックへ行ってしまう。遠距離だけを国鉄に持ってきて、割引しろということはおかしいじゃないか。ですから、私はよく各荷主、木材の荷主——現在茨城県とか群馬県、栃木県から東京に入る木材は、トラックばかりでございまして、ほとんど貨車はございません。それがもしトラック輸送でなしに、貨車輸送されれば、私はそこの距離でもって遠距離運賃は安くされる。ところが、近距離は全部トラックの方に行って、遠距離が私どもの方に回りますから、結局どうしても貨物は赤字にならざるを得ないということになりまして、遠距離と申しますと、私どもの方は、戦争前は平均百七十キロ、現在二百七十キロ、百キロ当り戦争前より貨物の足が伸びているということは、それだけ近距離貨物が減って、遠距離貨物が私どもの方に出るということで、近距離の高いものから運賃を取ってきて、遠距離の安い運賃をカバーすべきものが、それが全部トラックへ行ってしまう。安い遠くのものだけ残って、これをしかも割引しろ、こういうことになれば、実際貨物運賃としては実に不合理きわまりない状況になっております。
  86. 東隆

    ○東隆君 今お話しになったところではっきりしますが、私は国鉄はやはり貨物自動車を当然やらなければならぬ。ところが、それを運営の圧迫があるとか何とかいうことで、そうして結局汽車輸送の方面に影響さしている、これが私は現実の姿である。従って、独立採算を、単に鉄道だけでもってやろうとするところに無理がある。従って、国鉄は当然貨物自動車を併用していかなければならぬ。それをおやりにならない。そうして赤字になるから、そこで遠距離の八百キロだかを、五百キロにへずる。そうして無理なことをされているわけです。だから、新しい時代に向って、そうしてどんどん道路が整備されて、そうして新しい輸送機関ができれば、そっちの方に移るのは当りまえな話なんだ。そうしてできるだけ経済……、距離を短縮させようというのは、これは当りまえの話なんです。そういう場合に、国鉄が鉄道貨物に限り、普通のやり方でもって、特別の割引もしない、そうして遠距離のものを虐待をするようなやり方をすれば、それのしわ寄せは当然消費者に及ぶ——荷主じゃない、消費者の方に及んでいく。それを考えてくると、独立採算をしろと、こういうのは、私は国鉄の鉄道だけで独立採算制というのじゃない、やはり自動車の貨物輸送をどんどん併用して、そうして独立採算をするというならば、話はわかるのですがね。そのことをやらないで、二十五億の穴埋めのために運賃を直していく、こういうものは、これは非常におかしい。ことに北海道の場合なんか、青函の擬制距離がまだ残っている。それを昨年廃止したからというので、その点を考えて特別にできている。それを一つも直さないで、また元通りに直していくと、こんなようなことでもしやられるとすれば、これは国鉄そのものにおけるところの経営といいますか、運営のやり方ですね、そういう面に実は問題がある。貨物自動車を併用されると、先ほどお話しになったように、そっちの方に取られてしまう。だから仕方がない、こういうことを言う必要はないと思う。問題は運輸省の中にあるのですから、そっちの方を補正をする。そうして短距離のものをぜひ汽車に積んでもらわなければならぬというような依頼をするなどと言ったって、そんなばかなことに応じる荷主があるはずはないのだ、みんなそういうふうに、出す所から受け取る所に、直接届く荷物というのは数等いいのですから、短距離のところでもって、今さら鉄道に乗せかえてやってくれということは、これは泣き言以外の何ものでもないと思います。だから、私はその点を別な考え方でもって、営業局長さんの立場において改革をしていかなければならぬ点があるにもかかわらず、そっちの方をおやりにならんで、そうしてこっちの方にしわ寄せしておいて、泣き言言っておっても、仕方がないじゃありませんか。どうですか、その点は。
  87. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 非常に痛い御質問でございますが、ただ私どもといたしましては、もちろん近距離につきまして、自家用のトラックで運ぶべきだということは、そういうことはよく実はわかっております。ところが、現在の国の政策といたしまして、いわゆる民業圧迫ということが非常にやかましい。実は昨年東北におきまして、小口の貨物につきまして、直営でやるということをやりました。ところが大問題を起しました。非常に、国会の問題にまでなりまして、結局ある程度その調整をさせられたということで、今私の方が直営の貨物自動車をもちまして、近距離輸送をやるということは、非常にもう、それこそ私どもにわかりません政治情勢において、ほとんど不可能だというふうに申し上げざるを得ない。  それからもう一つ、全然別な問題でございまして、北海道の方が、先生方がよくおっしゃる今の青函のキロ程の問題です。この点は非常に私、申しわけないのですが、一つはっきり申し上げさしていだきますが、これは現在の百キロが三百キロになっておりますのは、これは鉄道キロ程に換算して三百キロになっております。昔、百キロぐらい、船運賃として、全然別個にいただいておったのです。たとえば札幌から東京に貨物を送ります場合は、昔、札幌−函館間の鉄道運賃と函館−東京間を一緒にいたしまして、船だけ別に運賃を取っておった。船の運賃はその当時の民間航路と大体同じにしておった。それにより少し低目にしておった。ところが、それが戦争中事務的に非常に不便になりまして、かたがた遠距離逓減をもう少し北海道に均霑させるということで、鉄道に船を通算した。そのときの船賃を鉄道に換算いたしますと、ちょうど三倍ないし三倍半というのが鉄道運賃、鉄道運賃の距離と船運賃の距離とのバランスであったのであります。従って、そのときに三百五十キロにいたしました。その後積みかえ輸送をいたしまして四百五十キロといたしましたが、現在三百キロになっておりますので、この点は今先生のお話ではございますが、その点による四倍の利益と申すものは一切ないのでございます。船の運賃を鉄道キロに換算して鉄道運賃といたしますと、大体三倍になるわけです。従って宇野−高松の大体十八キロの航路運賃に対しまして約五十キロの鉄道運賃に換算しておるわけです。もし今の三百キロ換算がいけないとおっしゃれば、私ども喜んで鉄道運賃と船運賃と区別して計算いたします。ちょうど旅客運賃が今そうでございます。そういたしますとどうなるかと申しますと、三百キロだけ遠距離逓減が減り、それだけ鉄道運賃自体が高くなる。それに船運賃が併算になる。三百キロがけしからぬ、百キロの船運賃を取れとおっしゃれば、私ども喜んでさしていただきたいと思いますが、結局北海道の方々の運賃負担がふえるのですから、私どもは鉄道運賃としていただいておるということをちょっと御記憶願いたいと思います。
  88. 東隆

    ○東隆君 今の問題は、九州と下関のあそこの関係はトンネルができましたね。そうすると、あれは普通の汽車の行程になった。それで問題は、北海道に早くトンネルを作ってくれれば、それで解決がつくのです。そうでしょう。だから問題は、トンネルを作らないで不便をかけておる。問題はそれだけの話なのですけれども、しかし理屈を何ぼ言われてもそいつは私らにはわからない。早くトンネルを作ってやってもらえばその方がけっこうなのです。その方がずっと楽なんです。だから問題は、九州との間にちゃんとトンネルをこしらえると、あそこはもう問題でなくなったのだから、その点を考えれば、今お話しになったことはもっともなようだけれども、私どもは納得ができない。それから税金でもって道路をどんどん直して、そしてそこの上を国鉄が自動車をどんどん通過させる、運行する。それに対して、民間が民営の圧迫だと言って文句を言うのはこれはおかしな話だ。もう少し民間がやる場合に税金をたくさん取るとか、いろいろな形でもって補給をするなら話はわかる。だから国鉄がどんどんこの際出て行って、そして国民から税金を取って道路を直し、その上でもって営業してどんどんもうけていく仕事を国鉄がやるのは一向差しつかえないです。これは当りまえの話です。そいつをかすめ取ってもうけようという方が悪いので、そいつに対して敢然と戦うのがほんとうのやり方です。だから私はこの際、交通機関というものを中心にして考えてきたときに、運輸省が当然考えなければならぬことは、私は新しい時代になってどんどん新しい交通機関ができるときに、そいつを一つも自分たちのもとに置かないで、そいつは民営にやらせる、そんな考え方ではだめだ。そして中心になって国がどんどんやっていく、こういう考え方でいけばいいのであって、その考え方に立たない以上、非常にこれから開発をしなきゃならぬ鉄道を敷くところなんかできっこないです。そこは赤字にきまっているのですから。北海道のトンネルなんか何ぼ考えたって採算からいってできやしません。だからもうけられるところで、利益を上げられるところでしっかり利益を上げてもらって、そして、赤字になるところをほかから補給してもらわなければいかぬ。これが独立採算制のほんとうの考え方です。小さな中の独立採算でなくて、大きな中の独立採算です。これがほんとうの独立採算制の考え方ですよ。だから、私どもははなはだ北海道におって、そして北海道の荷物がたくさんあって、荷物をたくさん国鉄に預けて、そして赤字になるのでございますと、こう言われるのでは、こいつはかなわぬ。お得意様は北海道がお得意なんですから。そうでしょう。荷物をたくさん預けておいて、そして赤字だからどうだこうだと言われても、それは反対ですよ。逆なんですよ、考え方が。だから独立採算制というものについての考え方が、普通の私的会社のような考え方考えておるからそういうことになるので、国がやっておる、国によるところの独立形態の国鉄という考え方でもって独立採算を考えていけば私はやり得ると思う。そういう考え方に立たなければもうだめなんじゃないですか。
  89. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 答弁は要りませんか。
  90. 東隆

    ○東隆君 ええ。
  91. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 この公共政策的な、今例外措置と言われておる引き下げ率は総裁の固有の権限として、これは独立して告示するなり何なりすれば効果が発揮できる、運輸大臣の許可も認可も要らぬ、こういう性格のものですね。
  92. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 法律的にだけ申し上げますと、国有鉄道運賃法の第七条によりまして、貨物運賃の収受の仕方がきめてございます。それから第四、五、六条によりまして、旅客運賃の収受の仕方をきめております。それに対する例外規定といたしまして第八条に「全体として日本国有鉄道の総収入に著しい影響を及ぼすことがない運賃又は料金の軽微な変更は、日本国有鉄道がこれを行うことができる。」ということになっておりまして、法律上はそういうことになっております。私の方といたしましては、これは運輸大臣からのお話で、私の方から運輸大臣に御報告申し上げております。従いまして実際上のやり方といたしましては、報告事項である限り、大体事前の御了解は得てやっておりますが、法律的に申し上げさしていただきますと、今のようになっております。行政的には報告事項になっております。
  93. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 普通等級、特別等級は、これは運輸大臣の特別な認可を受ける、これを必要としますか。
  94. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 先ほど申しました通り、この等級表も国鉄総裁がきめることになっております、権限的には。賃率表だけが法律の別表になっております。
  95. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、一般の各省関係に見合って考えると、賃率は法律できめてある。それを操作する部分については、政令部分は国鉄がその力を持っておる。こういうわけですね。一般官庁のそれに対比して考えれば政令的なものですね、これは。そうしますと、さっきお話を聞きましたが、特別等級というのは社会政策的な意味を持っておる。それで理論的には満足さるべきである。他の例外的な引き下げ率というのはよけいなものであって、恩恵的なものなんだ。この考えには国鉄は変りはないのですか。
  96. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) これは、等級表の中に普通等級を置くか特別等級を置くかということは、実は等級審議会できめておるわけです。等級審議会の設置は法律的にはきまっておりませんが、実際問題といたしまして、等級表のような膨大なものを作成をするためには、とても私どもの頭脳だけではできませんので、原則的には関係各省の係官、実は前回はこの渡部経済局長が重要な一人として作られたのであります。そういったように、関係各省の実際の局長級とか実務の課長級を大体網羅いたしまして、そのほかに関係業界の代表者、前回は大体延べで七、八十人の方々だったと思いますが、そういう方に実は御参画を願って等級表を作っておりまして、法律的には国鉄総裁がやれることになっておりますが、国鉄総裁がこれをやる場合には諮問機関を作って、その諮問機関が決定したことをやる。その諮問機関には関係各省の方々、専門家の方々に入っていただくというのが今までの昔からの慣例でございまして、その点は法律的の問題を別にいたしまして、実際上の問題といたしましては、非常に衆知を集めて作ったというものになっておるわけであります。特別等級以下の問題は等級審議会の問題でございませんので、私どもの方だけでやっておるという意味でございます。ちょうど定期の旅客運賃がよく問題になります。たとえば学生が九割引であるとかいろいろ言われておりますが、これも法律では大体五割引までしろということになっております。それから、ある程度やっておりますのも、これも国鉄総裁だけで、今までの慣例もありましてやっておるわけでございます。そういうものもございます。
  97. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 総裁の権限として、内容的には審議会をもってやろうがどうしようが、権限としてこういうふうにきまっているのは、理論的には特別等級だけが社会政策的なもので、それで例外だ、例外だといいますが、他の引き下げ率というものは社会政策的なものではない、こういうことは言い得ないじゃないですか。やはり両々相待って公社として考えられて、こういう結論が出ておるのじゃないですか。そういう意味では、私はこれは例外であるというけれども、社会政策的な運賃割引という原則の範疇でないかどうかという議論をしたい。
  98. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その点は、実は運賃法第七条におきまして、車扱貨物運賃は、等級表に従い、ということが実ははっきり書いてあります。従いまして法律だけから厳格に申しますれば、等級表にきめられたものの中で社会政策も織り込まれ、また、その他の基本政策も織り込まれるというふうに解釈すべきではないかと存じます。従いまして、私が申しましたように、現在やっております割引は、全体として大きな国鉄の財政に影響を及ぼすことのないような、ということを前提として、国鉄総裁がやっておるということになるので、やはり例外的な措置だというふうに申したわけであります。
  99. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私は、それは等級とか、割引率とかいう点からだけいえば、あなたの言うような議論も成り立つかもしらぬが、二十八年にきめた等級はそのままでもって賃率は変った。そしたらこれの見合いと申しますかの中で問題が考えられるのであって、その見合いになった場合に、こういう引き下げ率を総裁として必要と認めた限りにおいては、やはり私は賃率の改訂に伴って社会政策的な原則をこれで盛り込んだのだ、こう解釈するのですが、そうではない、あくまでもこれは便宜的なんだというのですか。
  100. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その点は、割引の基礎になっておりますことが、各方面のいろいろ御意向から出ておるのでございますが、主として運賃負担の急激な変化を避けるということを目的とするわけでございます。従いまして、もし先生のおっしゃるごとく、本質的にこの問題がその貨物自体の性格の問題だといたしますならば、それは当然特別等級というものを設置した趣旨そのものなんでございます。従いまして、特別等級を設置した以外に、その貨物自体の本質的な経済的性格からくる割引、その他は考えられないわけであります。もしそれがあるとすれば、それは当然現在の特別等級の中に織り込まれなければならない性格の割引だと私は考えます。
  101. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 だから、賃率はどうであってもよい。二倍になろうが、三倍になろうが、四倍になろうが、国鉄収入がふえようが、そんなことはかまわぬという建前で、等級をそういうふうに考えていくなら、それはそれとして理論として成り立つかもしらぬが、運賃率の方を上げておいて、そうしてその等級は二十二なら二十二というのはどこまでも二十二でいっていいのだというふうにはならぬのではないか。やはり賃率を上げていき、そして国鉄経営全体から見てくれば、普通等級なり、特別等級なりというものが根本的にいじられて、バランスのあるものにするのが原則でないかというふうに私はしろうと論で思うのです。それをいじらないできておって、法律の方だけ直したところのギャップを埋めるために、いわゆるその急激な変化を避けるために引き下げ率というものを作ったということなら、まだ、あくまでもこの引き下げ率というものは、品目に関しては特別等級と不可分のものであるという認識の方が正しいんじゃないですか。どうなんですか。
  102. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 今の御質問、ちょっと私少し間違って伺っているかもしれませんが、私といたしましては、こういうふうに考えております。実は、賃率と等級と一度にいじりますとでございますね、非常に大きな変化がくることがあるわけでございます。で、賃率が上ると、もし等級が下ればいいのでございまするが、賃率が上ると同時に等級が上るということになりますと、たとえば一割の運賃値上げをするという場合でも、三割なり四割の運賃値上げが出てくるわけでございます。すなわち、賃率値上げのほかに等級値上りが出てくるわけでございます。従いまして、等級の方をいじることは、品目の方の必要からやむを得なくなって、数年に一回だけいじる、あとは賃率の問題とは切り離して考えるというのが、実は今までの考え方なんでございます。従いまして、今お話のございましたことは、等級表については、この前は、三十二年はいじってないのでございます。これは、賃率だけいじったのでございます。その前の二十八年には、賃率と等級と両方いじったわけでございます。従いまして、二十八年の経過を考えますれば、もし、この問題が等級作成当時に起っていたとすれば、当然その大多数の人によって一緒に論議されて、そして一緒に特別等級その他に編入されておったかと思うのでございますが、その際には問題にならずに、実は、等級表がきまってから割引の問題が起きたということは、その問題は、急激に等級と賃率と両方いじりましたためにそういうことになったわけでございます。そのギャップを一時的に埋めるためにこういう割引がされておるのでありまして、あくまでも、私どもといたしましては、等級自体をきめることが政策割引なんだ——と申しますことは、特別等級を持っております貨物は、もちろん普通等級を持っているのでございます。普通等級ならば何割、特別等級ならば何割とかいうことになっております。従いまして、もちろん、そういう場合には安い運賃によるということになっておりまするので、普通等級の適用はございませんが、一応、物資間のバランスをとる場合は普通等級で考えております。従いまして、普通等級から二割何分を引いて特別等級ということになっております。やはり社会政策なり国民生活ということをまず第一に念頭に置いて作ったわけでございます。
  103. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 しつこいようですがね、三十二年に賃率を変えた——変えた場合に、従来の等級をそのまま適用するというと、急激な変化を来たす、それはただ形式上の変化だけでなくて、消費者すなわち一般国民に与える影響が大である、物価政策上も好ましくない、各種の原因もあったでしょう。お認めになって引き下げ率をこうきめざるを得なかったという理由は、この等級では工合悪いんだということが一応肯定されたという結果でしょうが、この引き下げ率というのは。そうでしょう。そうでなかったら、あくまでも恩恵的な、あくまでも便宜的な引き下げ率だということになる。それならば、国鉄自身は、収益をあげ、独立採算制でやっていかなけりゃならない、そういう営業目的を持っておる国鉄総裁として、こういう引き下げ率を、用うべきではない、厳然として用うべきではないこれを用いたということは、その急激な変革という内容、要素にはさまざまあるけれども、この特別等級そのままを当てはめるということだけでは、これは社会政策的なものにはならぬという根拠があって、こういう引き下げ率というものがきまったのじゃないですか。全然そういうものはなくて、ただ便宜的に、まあ二十数億になろうが、国鉄一般収益が上るだろうから、大体それはがまんできるだろうというような、ほんとうに便宜的なものでこの引き下げ率というものがきまったのか。私たちは、その考え方によっては国鉄に応援もするし、農林の立場で国鉄けしからぬとも思います。そういう意味お尋ねしておる。
  104. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その点につきましては、私どもといたしましては、現在の等級表の、普通等級表と特別等級表とは社会施策並びに産業施策、と申しますことは、運賃法の第一条に運賃法の目的が実は書いてございます。その目的の中に、運賃法は、まず、公正妥当でなければいけない、公正妥当と申しますことは、これは一種の差別待遇禁止の意味でございます。第二は、原価を償うものでなければならない。その原価と申しますのは、一応総括原価という意味で、個別輸送の原価はなかなか出ませんので、総括原価、すなわち国鉄全体の総括的な支出と国鉄全体の総括的な収入、それをまかなうものでなければいけないというのが第二号でございます。第三に、「産業の発達に資すること。」これは主として遠距離逓減その他のことを言っております。それから今申し上げました特別等級もこれに含まれております。それから第四に、「賃金及び物価の安定に寄与すること。」これは昭和二十二年立法当時の精神もございますので、賃金の安定ということも書いてございますが、一応現在の日本国有鉄道の運賃法はこの四つの項目を中心として考えられておるのでございます。従ってこの四つの項目でカバーするのは現在きめられておる等級表と賃率表で、あとは全体に影響がない。運賃料金の変更は、国鉄総裁がやってよろしいというように第八条でカバーしているというように考えております。
  105. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、引き下げ率というのは結局は、あなたたちとしては認めがたいものである、もともと認めがたいものである、外部勢力の圧力によってやむなくこういう措置をとったのだ、こういう言明と変りないですね、それなら。
  106. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その点につきましては、私といたしましてはもう一ぺん運賃法第一条のことを申し上げまして、それでその第一条でカバーいたしておりますのは、法律で言うておりますのは等級表と賃率表以外にないのでございます。従いまして、それ以外は国鉄全体に大きな影響を与えない軽微な変更ということで考えております。
  107. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それで、この引き下げ率を国鉄総裁がおきめになった場合には、運賃収入にさしたる影響がないと認めてやったところが、二十五億前後になるとこれは大いに影響がある、だからもうやめるのだ、だめなのだ、こういうことなんですね。
  108. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その点は、二十五億全額について申し上げているわけではございませんので、二十五億のうちの幾分かを私の方にお返し願いたいという意味で今回考えております。
  109. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 だから、二十五億のうちの一部は、これは著しく国鉄収入に影響する、こういう御認定になったということなんですね。
  110. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その点は、第八条との関連でなしに、現在の私の方の収入状況その他から見ますと、たとえ一億でも実は収入がほしいという事態でございます。
  111. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私は、あなたが一生懸命法律を言うから、それに即応して私はお尋ねしているので、総収入に著しい影響があるということになって、三分の一程度ちょうだいに及びたい、こういうことになったのでしょう、法律的には。
  112. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) それは、割引の場合には総収入に著しい影響がないということが前提となって、割引をするわけでございます。もし、全額を私がいただくとすれば、それは総収入に著しい影響があると申し上げるかとも存じますが、私は今全額について触れているわけではないのでございます。従って現在といたしましては、むしろ七億なり八億の金について全体として総収入状況が悪いからということで申し上げているわけでございます。
  113. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 どなたかお話したが、私は国鉄攻撃をやりたくない方の実は側なんです。やりたくない方の側だが、独占企業、言いたくない言葉を申し上げますが、独占企業であっても公社の精神としては引き下げ率というものは、部内の意向としてはやっては不得策のものである、けれども各般の理由があって総裁権限でやったのだ、そのときには著しい影響がないとして引き下げをやったのだ、が今や金が詰まってきた、従って一部その中から引き上げたい、これはあなたの方の経理、経営の内容からだけ言われることなんですが、一たんこういうことが公示せられ、こういうことが実施になれば、これは客観的な問題になってしまっているのですね、国民一般には。国鉄の経営だけでは処理し得ないプラス・アルファ国民的な消費者の立場といいますか、一つの客観的な事実として現われてきている。それがまた短時日の間に操作され、動かされる、こういうようなことは国民一般としては望まないところなんですね。望まないことだと思うのです。その両者をやはりかみ合せて問題を考えるべきであって、あなたたちには負けてやっているのだから、恩恵として今日やっているのだから、そのうちの一部を引き上げますよということは部内の理屈としては通るかもしれぬが、さまざまな影響のある関係者並びに一般消費者としては、なかなかその理屈はのみ込み得ないのですね。もしのみ込ませるということになれば、総収入に著しい影響があるということではない。今金の必要があるので、一部使いたいのだということであるならば、国鉄の経営内容、経理内容、企業の合理化の努力、その他一切が公開されて、そして国民の協力を待つ、これでなければ国鉄はやっていけないですよ、ということの納得協力を得た上でなければ、こういうことは私は軽々にやり得ないと思う。それを、総裁権限だからやり得るのだというような形でやるならば、それはいわゆる独占企業としての最も悪い部面を露呈することなんです。私は、公社として国民の税金をゆだねて、そしてなおかつ独立採算というきついワクの中で、皆さんに経営をゆだねているのは、そういう点しっかりしてくれということだと思うのです。便宜的な扱いでは、私は一般国民は承知しないと思う。どうですか。
  114. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) どうも今の御質問の中には、総裁がお答えしなければならぬ点があると思いますが、私でございますので、その点御不満かと思いますが、私としては、第一現在の私の方の輸送状況を考えて、今の国鉄が独占事業なんて思ったら大間違いだということを信念といたしております。現在毎日毎朝旅客貨物を輸送するのをながめ、またトラック、飛行機の輸送する姿をながめつつ、その仕事をながめつつ、私のやっている仕事が日本の独占事業だと思ったら私自身が職を去るのが当然だと思うくらいに、今の国鉄にひしひしと競争がきておることは知っております。従いまして、今私の考えておりますのは、今、先生のお話でございますが、今の私が独占企業の上にあぐらをかいているというような感覚でもって私は仕事をやっているのではないということを弁解として申し上げておくわけであります。
  115. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 弁解に質問する手もないけれども、あの独占企業として云々という私の言うのは、競争がある中で独占企業だという意味で、そこにウエートを置いて申し上げているのではない。そういう過去の国鉄経営をやった惰性といいますか、あなたはあぐらをかいているというが、あぐらをかいているというと語弊があるが、安易な気持で、金が足らなくなった、それでは引き下げ率をちょっといじくって引き上げよう、こういうような考え方それ自身があぐらをかいているのじゃないか、安易じゃないかというのです。もう少し企業内容の検討をし、詰めるところは詰め、そうしてなおかつこういう状態になっておるのだということの説得を、PRと、それから協力を願って、その上でこういう形のものを、三分の一なら三分の一というものを吸い上げていくということで進むべきでないか、こういうことを申し上げている。まあ御答弁は要りません。ただ私としては、この引き上げ率というものは、あの当時おきめになられ、あなたの方でも御了承になってきまったこういうものが、その実施の後大した時日もないのに、またこれがいじられるということについて、率直な国鉄に対する反撃が起ってくることは、これは当然であると私は思う。そういうことをお認めになりませんか。こうされては困るという方が不当なんだというお考えですか。
  116. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) もちろん私も、現在この公共政策割引を受けておられる方々からはたくさん苦情を伺っております。と同時に、そうでないほかの方々から言わせますと、どうしておれたちのものを割引しないのだ、どうしてあれだけ割引するのだということを言っておいでになる荷主も実はたくさんおられます。従いまして、私といたしましては、公共政策割引についても、これはある程度調整いたしたい。と申すことは、また荷主の数を申し上げるとしかられますが、九〇%の荷主は、むしろあの割引は早くやめてくれ、もし残しておくなら、おれたちも割引しろということを盛んに言っていらっしゃる。割引品目の拡張ということは、毎日々々と言っていいくらいお話がございます。また等級の引き下げについても同じ問題がございます。従って、現在割引を受けておられないたくさんの荷主から申しますれば、非常にこの割引を受けておる荷主だけが利益を受けておるという印象を持っておられることは事実です。
  117. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 内容的には運輸当局とも打ち合せられると言われますが、今あなたが申しておる御主張は、運輸当局も大体お認めになっておることなんですか。まだその段階にはいっていないのですか。
  118. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 運輸当局とは、大体私はその線でやりたいということを申し上げております。
  119. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そして、当局の方も大体よかろうという線までいっているのか、いきつつあるのですか。
  120. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その点は運輸省がきょうおられませんので、私から申し上げない方がいいと思います。私としては二分の一ないし三分の一でやりたいということを申しております。
  121. 千田正

    ○千田正君 さっきからのいろいろの議論の結論として私聞きたいことは、国鉄が運賃の収入だけで独立採算制をとっていこうというところに大きなネックがあるのであって、たとえば施設の面その他については、国がこれに対して助成なら助成を、ある程度の施設費を相当負担するという問題が一方においてなされるとするならば、運賃の問題はある程度あなた方のいわゆる担当部内において十分にやっていけるんじゃないか。だから、公共性を持つ者に対してのこういう問題は、やはり公共設備に対する設備費というものは、営業政策の実績からとらないで、むしろ国がそれに対して出すとか何とかやっていけば、そこに一つのバランスがとれていくのじゃないか、そういう面のことについてはどういうふうに考えておられますか。そういう問題が起きてこないというと、こういう問題はいつまでたっても繰り返されると思う。運用上から言えば、あなたはいつでも苦難の道をたどらなければならない。だから、施設のような、あるいは何年たってもなかなか効果が上らないようなところでも、国民の公共施設のためには新線を敷設しなければならない、トンネルを作らなくちゃならない、あるいは車を改造してやらなくちゃならない。そういうものに対しては、国の財政から助成していくということをやって、こういう問題のバランスをとって、そういう方向に持っていかなければ、こういう問題は解決しないのじゃないかというふうに私は思うのですが、どうですか。
  122. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 全く肯綮に当った御質疑と存じます。私といたしましては、経営自体におきましても、今申しました通り公共政策割引にいたしましても、これはもう、先ほど先生方のお話通り、まさに消費者的なサイドで考えますれば、あるいは農林省の予算でもって運賃の差額を補給するとか、あるいは通産省の予算で運賃を見るとかいうのがあるいは筋かと思います。また、たとえば今、千田先生のお話のように、建設線にいたしますれば、たとえば北海道の建設線などにつきまして申しますと、ほとんど投下資本の利子さえ払えないような建設線をこれからどんどん建設しなければならぬというような時代に、結局その利子の負担並びに経理の赤字の負担を全国民に全部背負ってもらわなければならないという形になると思うのであります。建設線も年間八十億やりますが、八十億も年間やれば、従って建設線から出る赤字が大きくなってくる、たとえば運賃は北海道も東海道も同額でございます。これは運賃平等の原則でございますので、結局この建設線からきますところの建設費の利子はもちろんのこと、経費自体さえも国鉄は、それはほかの利用者にぶっかけていかなければならないというふうなことは、ほかの方々としては非常に迷惑されるわけであります。従いまして、私どもといたしまして、もちろん政府その他でもってそういう面のごめんどうを見ていただくのが当然の筋かというふうに考えております。
  123. 堀末治

    ○堀末治君 局長にお願いしますが、ここに出ておる資料は、公共政策割引貨物の割引額というだけのものが出ておるのでしょう。先ほどからいろいろお話ししておると、赤字だ赤字だというので、それを何ぼかカバーしているので、それを三分の一ほどやってもらいたい、こういうことなんです。そこで全体の去年のあの運賃を変えて総体の運賃で何ぼ運賃収入があって、それでそれに対する予算が、トン数が何ぼで、金額が何ぼで、何ぼの赤字になっておるという表を一つだけ、明日でけっこうですから出して下さい。
  124. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  125. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をつけて。  本日は、これをもって散会いたします。    午後四時一分散会