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1958-08-29 第29回国会 参議院 地方行政委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年八月二十九日(金曜日)    午前十時四十二分開会     —————————————    委員異動 八月七日委員大倉精一辞任につき、 その補欠として松澤兼人君を議長にお いて指名した。 八月二十七日委員伊能繁次郎辞任に つき、その補欠として左藤義詮君を議 長において指名した。 八月二十八日委員左藤義詮辞任につ き、その補欠として吉江勝保君を議長 において指名した。 本日委員本多市郎君及び中田吉雄君辞 任につき、その補欠として剱木亨弘君 及び江田三郎君を議長において指名し た。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     田中 啓一君    理事            大沢 雄一君            小柳 牧衞君            加瀬  完君            鈴木  壽君    委員            剱木 亨弘君            小林 武治君            郡  祐一君            館  哲二君            成田 一郎君            吉江 勝保君            占部 秀男君            江田 三郎君            成瀬 幡治君            松澤 兼人君            森 八三一君            白木義一郎君   国務大臣    法 務 大 臣 愛知 揆一君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    国 務 大 臣 青木  正君   事務局側    常任委員会専門    員       福永與一郎君   説明員    警察庁長官   柏村 信雄君    警察庁警備局長 江口 俊男君    自治政務次官  黒金 泰美君    自治庁財政局長 奧野 誠亮君    自治庁税務局長 金丸 三郎君    法務省人権擁護    局調査課長   斎藤  巌君    公安調査庁次長 関   之君    文部省初等中等    局長      内藤誉三郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方行政の改革に関する調査の件  (地方交付税配分に関する件及び  財政再建団体再建計画変更に関す  る件)  (遊興飲食税の市えの一部還元に関  する件)  (地方公務員に対する勤務評定に関  する件)     —————————————
  2. 田中啓一

    委員長田中啓一君) それでは、これより委員会を開きます。  まず、本日までの委員異動を報告いたします。  去る八月七日、大倉精一君が辞任され、松澤兼人君が補欠選任されました。  また、一昨二十七日、伊能繁次郎君が辞任され、左藤義詮君が補欠選任されましたところ、昨日、左藤君が辞任され、吉江勝保君が後任として選任されました。  さらに本日、中田吉雄君及び本多市郎君が辞任され、江田三郎君及び剱木亨弘君が補欠選任をされました。     —————————————
  3. 田中啓一

    委員長田中啓一君) 次に、本日の議事でございますが、先ほど理事会を開きまして、協議の結果、まず地方行政財政、税制問題につきまして、前回委員会政府側答弁留保事項、その他、さらに関連をした質問をなさりたい方に御質問を願いまして、本日理事会協議ができました勤務評定の問題につきましては、出席要求大臣が、ただいま閣議中でございますので、それは閣議終り次第御出席を願って議題にすることにいたしまして、それまでは地方財政行政税制等に関する問題を議題といたしたいと存じます。     —————————————
  4. 田中啓一

    委員長田中啓一君) これより議事に入りますが、前回委員会におきまして御質問の残っておった分、あるいは、さらに関連してございます分、あるいは答弁を留保されたもの等、この際、引き続き行いたいと思うのであります。さらに、地方財政の再建問題あるいは交付税配分問題等につきましても、関連事項でございますから、この際、一緒に一括した議題の中で御質疑を願いたいと思う次第でございます。御質疑のあります方は……。
  5. 占部秀男

    占部秀男君 奧野局長にお伺いしたいんですが、この九月の地方交付税ですか、これは先ごろ自治庁で発表したあの形によって配付をするということになりますかどうか、これを一つ
  6. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) お話しのように数日前、地方交付税の額を決定いたしたわけでございます。
  7. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、あの内容について見ると、これは非常に重大な点があるんじゃないかというふうに感じるんですが、それは、いろいろ問題ありますけれども、特に、きょうは時間の関係もありますので、本番ずばりでいきたいと思うんですけれども、特別態容補正の問題ですね。この特別態容補正の問題で、今度の配付方法によると、後進県といわれているようなところが、非常に財政的には減収というか、税の率が下ってきておると、こういうことで、相当な問題になっているわけなんですが、特別態容補正の問題について聞きたいんですが、特別態容補正というのは、あれは法律にはないわけですね、政令でやっておるんじゃないかと思うんですが、その点と、それから、どういうわけで態容補正の中に特別態容補正というものを作ったのか、あるいは今度のような後進県特別態容補正という形をとったのか、その経緯を簡単にちょっとお伺いしたいと思うのです。
  8. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 今回の普通交付税決定の結果を見ますると、かなり地方団体間に基準財政需要額伸び方に差がございます。これは春の国会におきまして、いろいろな行政項目についての経費の測定の仕方を改正いたしております。これが地方団体相互間においては利害が区々なんでございますから、結果的に伸び方が非常に違って参った、かように考えております。後進県の中にも伸びのいい団体もあるわけでございまして、必ずしも一律的に今お話しになりましたような断定はできない、かように考えているわけでございますが、特別の態容の問題は、総理府令で規定をいたしておるわけでございます。その経緯は、三十一年度から地方財政健全化へ大きく踏み出したわけでございますが、その方法としては、今まで地方債をかなり大幅に発行して参った、これを思い切って縮減したわけであります。これまで地方債発行の仕方は、御承知のように財源に乏しい団体によけい地方債発行を認めて参ったわけでございます。そうしますと、将来なお一そうにっちもさっちもいかなくなるわけでありまして、そのために地方債を縮減した。しかし、必ずしも地方財源が一般的に大幅に増額できたというところまでいかないのでございますので、さしあたり、今まで地方債をよけい認めてきたような団体に若干でも地方交付税をよけい配分をしよう、こういうような考えで特別態容補正をしたわけでございます。そういうような経緯で始まったものでございますから、特別態容補正に当りまして、人口一人当りの税収入の乏しいような団体、あるいは原始産業に従事するような人たちのウェートの高い団体に、よけい河川費用なり道路費用なりが見積られるというようなやり方をいたしたわけでございます。しかし、春の国会におきまして、河川費用につきましても、道路費用につきましても、その他の費用につきましても、かなり大幅の単位費用の引き上げを行なっていただいたわけでございます。従いまして、一般的にそれぞれの財政需要伸びてくるわけでございますから、傾斜的に増額していきましたやり方につきましては、漸減方式をとるというようなやり方を今回いたしたわけであります。
  9. 占部秀男

    占部秀男君 事情はわかったのですが、私も、まあ特別態容補正というような問題は、奥野さんの言うところと同じように、これはだんだんなくさなければならないと思っておるのですが、ただ、この際あれをしたいことは、今度の特別態容補正そのものが、お話によると、やはり財源の少いところに、財源のないところに財源をいわば補充するというような形で特別態容補正をしたわけですね。ところが、春の国会単位費用の点については幾らか上ったとはいうものの、御存じのように、その上り方、伸ばし方というものは知れたものです。今度の突如とした特別態容補正切り下げのために、特に東北の各県のごときは全体として大きな影響を受けておる。今度は御存じのように五十億だったやつを二十億減らして三十億にしたわけですね。二十五億減らしたのですか、そのために、一つの例を言えば、山形県のごときは二億以上も減っておるわけです。こういうような減らし方というものは、少くとも私は、前にこういう減らし方をするのだということを県やその他の方へ、三十三年度なら三十三年度予算を作るその前に、あらかじめ知らしておかなければならないことではないかと思うのです。突如として切り下げられることになると、地方の方としては、すでに骨格予算というか骨組み予算は、そういう問題は春やっておる。今度は肉づけしようとするところに二億なら二億——山形県なら二億といえば大きな問題です。それがぼこっと減ってくる。こういうようなことになってくると、いろいろな事業が、特に公共事業その他ができなくなるということになってくる。そういう点については相当自治庁としては、行く行くの先を考えながらこれはやらなければならぬ問題だと思うのですが、そういう点に対する考慮というものは、今度は払われなかったのですか、どうですか、その点をお伺いしたい。
  10. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 三十三年度地方予算編成に当りましては、特別態容補正による増額を見込まないようにしてもらいたい、こういう連絡はいたしておりました。しかしながら、御指摘もありましたように、果してそういうような考え方について地方団体に十分徹底するようなやり方をしておったかどうかという点につきましては、私たちとしても反省をしなければなりませんし、ことに、法律その他の改正によりましても、地方団体財源に予測以外の事態を起しますようなことはできるだけ避けなければなりませんので、基準財政需要額そのものが、府県でいいますと、全国平均で一一%伸びているわけであります。一一%にも達しないような団体があります場合には、たとえば山形県のごときは九%程度でございます。平均伸びまでは、基準財政需要額伸びた場合に得られる財源は確保さして上げたい、そういうようなことで、特別交付税配分に当りましては、基準財政需要額が一一%に伸びておりません団体について、一一%に伸びた場合に得られる額だけを特別交付税として優先的に決定をしたい、こういうような方針をきめまして、そしてそのことを先般府県知事さんあてまで通知いたしたわけであります。   〔委員長退席理事大沢雄一君着   席〕
  11. 占部秀男

    占部秀男君 全国平均まで伸ばしてもらうということは、これは相当助かるわけでございますけれども、今、局長の言われたような、特別態容補正は今度は減るのだ、なくすのだ、従ってそういう考え方でやってもらいたいということは、いつどんな形で、どういう方法で、それを各県や地方に連絡されたか、その点を明らかにしていただきたい。
  12. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 今年の二月に出ております地方予算編成についての通達の中には、特別態容補正による額は見込まないようにしてもらいたい、こういうことを書いております。それからまた、私は府県人たちから伺っておるのでありますが、漸減すると、こういうふうには自治庁財政当局からも聞いておった。しかしその漸減がどの程度であるかというところについては必ずしも明確な話がなかった、というように府県側から聞いておるわけであります。従いまして、漸減するという方針だけは私は知っていただいておったのではないか、程度の点について通達では見込むなと、こう書いておるわけであります。どこまでその点が徹底しておるかにつきましては、当時の当事者ではございませんので、正確ではないわけでありますが、そういうような経過でございます。
  13. 占部秀男

    占部秀男君 二月の通達でそれが出ておると、こういうようなお話ですが、私もあれはたしか読んだことがあると思うのですが、特別態容補正の問題は触れていなかったように感ずるのですが、こんなことを言っては悪いのですけれども、ほんとうに出ていたのですか。
  14. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) その通達表現は、特別態容という言葉を使いませんで、新態容補正という表現を使っておるようであります。同じ内容のことでありまして、法律には特別態容、こうしておるわけでありますが、新しく態容補正を作ったものですから、新態容というふうに言いならわしてきておりますので、こういうわけで出ているわけであります。
  15. 占部秀男

    占部秀男君 これはこまかいことなんですが、新態容という言葉で県の連中はわかるわけなんですか。
  16. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) かえってその方がわかりやすいのであります。
  17. 占部秀男

    占部秀男君 そういうようなお話を聞いて、あらかじめ自治庁の方としてそういうような心組みでやってもらいたいということを地方の方へ流されたという点は、私は了解いたします。了解いたしますが、ともかく奧野局長は、いわば公共事業にしろ何にしろ、相当単位費用伸びているのだと言うのだけれども、直接地方事情というものは、今まではあまり押えつけられていたということであって、伸びたというその伸びは、果して、あなた方が三十一年に考慮されたこの特別態容補正をさほど引っこめるほど伸びているかどうかということになると、これは大きな問題があると思う。いわゆる机の上ではそういうように考えられるかもわからぬけれども、地方へ行きますと、特別態容補正をもらって、やっと息をついておるというのが東北の県の情勢ではないかと思うのです。それを急にああいうような工合に大きく減らされたのでは、それはどこの県でも大問題で、九月に予算が組まれるかどうか、どこでも心配しているわけです。そこで、おそらく東北の方の各県としては、この問題について、特別態容補正をことしは置いてもらいたい、こういう意向が強いと思うのですが、これは、本年度はこのまま特別態容補正をもらうと、ほかの方は、ふえた方は減るということになりますから、私はほかの方は減らせろというようなことは申し上げませんが、少くとも特別態容補正によって切り下げられた額だけは、何らかの形で特別に本年は三十三年度財源を見るという形はとれないものかどうか、またそういうことの意思があるかないか、そういう点をお聞きしたい。
  18. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 三十三年度交付税はすでに決定いたしておりますので、今これをさらに改正をするというようなことは避けるべきだと思います。お言葉にもございましたように、ある団体によい結果が他の団体に悪い結果を与えるということでもございますので、なかなか重大問題だろうというように存じておるわけであります。本年度基準財政需要額の算定に当りましては、総額は、交付団体、不交付団体、合計してでありますが、六百億ふやしているわけであります。府県基準財政需要額につきましても一一%まで伸びておるわけであります。   〔理事大沢雄一退席委員長着席〕 こういうことは、まさしく私は画期的な増額だと言えるのじゃないか、こういう感じもするわけであります。それだから地方財政は非常に潤ったのだと、こう私は結論を持っていくわけじゃございませんが、ともかく単位費用についてはまれな増額措置が行われた、こう申し上げて差しつかえないと思います。ただ、府県なり市町村にとってみた場合に、基準財政収入額を昨年よりもかなり大幅に増額を見込んでいるわけであります。この春の国会におきましても、たびたび御論議がございましたように、昨年度中に地方財政計画に見込みましたよりも五百億内外もふえたわけであります。それをことしは計画にそのまま乗っけて参ったわけであります。ことしの伸びはとまっております。従いまして、昨年の税収の伸び、それをことしは交付税計算におきましても、伸びているという計算をしているわけであります。しかし昨年からことしにかけては実体的には伸びていないわけであります。そこに私は県側としては、基準財政需要額を大幅に伸ばしたにもかかわらず、非常に窮屈だ、こういう感じが出て参ってきておる、こういうふうに私は思っております。それともう一つは、測定単位を大幅に改正したものでありますから、個々団体で、非常に伸びておるところもあれば伸びないところもございます。予想外交付税がふえたという団体もあろうかと思うのであります。それに反しまして、東北人たちの話を聞いておりますと、平均伸び、それになおプラス・アルファして伸びるだろうとこういう期待を持っておられたところがかなりあるようであります。これは、いろいろ予測することは自由でありますけれども、少くとも平均伸びぐらいで考えていただけぬものだろうか、こう思うのであります。今度のような測定単位を大幅に改正いたしましたときには、もっとじみちに見込んでいただかなければならない、こういう問題もあろうかと思うのであります。しかしながら、いずれにいたしましても、少くとも平均伸びだけは全地方団体を通じて、全府県を通じて確保すべきだろう、こういう考え方を持っておるわけであります。そういうような意味で、先ほど申し上げましたような措置をとったわけでございます。
  19. 占部秀男

    占部秀男君 第二のお話しになった点なんですけれども、ある県で、私は試算してもらったのです。そうすると、見込みよりは減っておる部分は、結局、特別態容補正切り下げたことによって減額された金額とほとんどぴったり合う。今度はいろいろ、黒金さんのお話もありますけれども、僕は、今度の問題の中心は、やはり特別態容補正切り下げに当然見込んでおられる減少というものがあるのじゃないかということを試算してもらって、はじいてきて、実は、持ってきておるのですよ。そういうようなことで、時間の関係もありますから、こまかい点についてはあれですが、ともかくも何らかの形で、今年はそういうように急に、各県としても九月予算を組むには非常に困っておるのが現実なんです。そこで交付税を今やり変えると、よけいもらえるところはへっこむことになりますから、この点は、私は問題を取り上げずに、何らかの措置で、そういう点を埋め合せる財源というものを、自治庁の方で何らかの形で考えていただくような、秋の国会もあるのですから、従って考えていただくようなことができるかどうか、そういう点をはっきりと私は聞きたい。
  20. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) お話のように、個々団体の問題につきまして、私たちも十分勉強さしていただきたい。そして、できる限りお困りになりませんように御相談にあずかっていきたい、こういう考え方でございます。基本的には、地方交付税計算方式をたびたび変えることは穏当ではないと私は思っております。穏当ではないと思っておりますが、今回かなり大幅な改正が行われたわけでありまして、恩給費計算方式一つ変えただけでも、青森県が一億円もマイナスになっております。義務教育計算方式を変えただけでも茨城県で一億数千万円の減少になっております。事実は測定単位法律改正が行われたわけでありますけれども、こういうような結果につきまして、私たちとしましては、今計算済んだばかりのところでございますので、さらに資料を収集いたしまして、十分検討を加えたい。そしてどういう姿が、個々地方団体の実態に最も適合しているかということについても、さらに研究をして参りたいと思っております。
  21. 占部秀男

    占部秀男君 この点は、あと大臣来られたときに……。まあ政策問題ですから、あなたには無理だと思いますから、あとで、この点だけは保留しておきたいと思います。  もう一つ、この点に関連してお聞きしたい。実は、今度の特別態容補正の問題について、あちらこちら地方で聞いてみると、省議の決定をしないのに奧野さんが、いわゆる奥野理論でこの問題を割り切ってやったという評判が強いです。これは黒金さんの関連ですが、政務次官なんぞが知らない間にこの問題が決定されておったと、こういうようなことを私は聞いておるのです。非常に法律上の問題であって、開かれた委員会でこういう問題が討議された、こういうことなら、これは問題は別問題ですが、政令関係の問題であって、特に自民党としては、政策的な問題に関連する問題になってくるわけですが、どうも奧野さんえらいのだから、えらいことはえらいと私は尊敬しているけれども、一奧野局長が、こういうようなたくさんの県やなんかに大きく影響を及ぼす問題を、その手でやってしまうということになると、これは非常な大問題だと私は考えて、そんなことは万々あるまいと思っているのですが、黒金さんのお話によると、知らなかったと言うので、非常におかしいと思うのですが、一体、そういう点はどういうようなことに自治庁はやられているのか、これは単にこの問題だけじゃありませんから、意地が悪いようですけれども、念のために聞いておきたいと思います。
  22. 黒金泰美

    説明員黒金泰美君) どうも私たな上げみたいな格好で、不体裁なことでありますけれども、今、奧野さんの御答弁でもおわかりになりますように、一応交付税総額予算上きまって参ります。それから、春に御審議を願いました法律改正によって、いろいろと一般的に回ります交付税の額が自然にはじき出されて参ります。従って、残りが補正分に当ってくる、こういう関係で、別に、奧野財政局長、非常に練達堪能の士でございましょうけれども、恣意的な作為をしたというようなことはないように私も考えております。奧野さんのために弁解申し上げると同時に、私自身まあ不勉強のようで、はなはだ恐縮でございますが、別にそう知らなかったわけでもございませんので、はなはだ弁明がましくて恐縮ですが、そういう部内の不統一は決してなかったということだけは申し上げておきます。
  23. 占部秀男

    占部秀男君 それではちょっとついでに黒金さんにお伺いしたいのですが、さっき奧野さんにお話ししましたが、やはり各県ではこの問題では相当困っているのです。そこで、秋の国会もありますしね、大臣にかわって一つどうなんですか、もう少し私は率直に言って、特別態容補正でもって減額された分を、そのまま一銭一厘も切らずにやってくれとは言わないのですけれども、もっと何らかの形で、未開発の方だけは、今いわゆる特別態容補正の被害を大きく受ける、そういうような県等は見てやるというようなことが今考えられてないかどうか、そういうような意思があるかないか、そういう点について一つお願いしたい。
  24. 黒金泰美

    説明員黒金泰美君) 先ほど来、占部先生からもすでに例が引かれます東北の出身でございます。まことに御同情のある御質問で恐縮でございます。従いまして、先ほど引例なさいました山形県、私の選挙区ですが、再々陳情も受けております。実際に困っていることも多いように存じますので、自治庁の方といたしましても、非常に困っておりますところを、個々具体的によく相談いたしまして、何とか地方自治団体財政が成り立つように具体的に考えていこうじゃないか、今仰せになりましたが、理論的と申しますか、原則的に、一つ一つ項目に直しますと、影響するところは大きいと思います。さらでだに今まで予想以上に多く入ったところはますます多く入りまして、差がひどくなりますから、個々具体的に検討さしていただきたい、こう考えております。
  25. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) よけいなことでございますが、財政局長がかわったから特別態容補正を大いに削減したと、こういうことではございませんで、法律改正から引き続いてきて、当時からとられてきている考え方でございます。そういう僭越な考え方は私自身持っておりませんで十分問題はよく御相談してやっていかなければならないと思っております。
  26. 鈴木壽

    鈴木壽君 今いろいろお話がございましたが、私、未開発補正の問題にからんで一、二お伺いしたいのですが、これは単位費用の改訂が行われて、当然交付税配分のそれぞれ大きな根本的な違いが出てきたのですから、補正の問題もこれは当然変ってくるのが当然だと思います。今お答えになったように、別にあなた勝手にやったということではもちろんない問題でございましょうが、ただ私、お聞きしておきたいのは、未開発補正なり、その他の補正の問題と、単位費用の改訂の問題を、当初一体どう考えておったのかということなんです。単位費用の改訂があって、一律に引き上げられていること、これはまあけっこうだと思うのですが、当然これはその後に行われる補正の問題とこれはからんでくることを予想しなければいけない問題なんですが、その場合に、単位費用が上った、さて今度は補正の額は減った、やってみたら指摘されたような結果が出てきた、こういうことで、非常にいわば予測しなかったような困難な問題が起きてきているわけなんですから、単位費用の額を決定する際のいろいろな点で皆さん御検討なさったと思いますが、そういうものと、今問題になっている未開発補正なり、これは全体のワクなんかみな違ってくるわけですから、そういうものを当時はどういうふうにお考えになっておられたのか、それを一つまず最初にお聞きしておきたいと思うのです。というのは、今問題が起ったからということだけじゃ実は私ないと思うので、単位費用の引き上げは、結果として、今回出ました交付税配分等の、これは大まかな数字しか、私ども今、新聞等に発表されました、そういうものだけしかつかみ得ませんけれども、大まかに言って、私は単位費用の引き上げというものが、必ずしも後進県にプラスになって出てこないんじゃないか、プラスになっている面もあります。ありますけれども、必ずしも後進県といわれる地域に対する、そういう団体に対するプラスというよりも、むしろ今現われてきておるような結果からすれば、後進県の反対の先進県ですか、言葉はちょっと変ですが、むしろそういうところにも非常に大きなプラスになってきている面があるのですから、当然何かの形でこれは補正されなければならない。こういう問題が予想しなきゃいけないものだと思うわけなんですが、そういう点についてどういう考慮が払われておったのか、一つお聞きしたいと思うのです。
  27. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 今御指摘になっています東北団体基準財政需要額が案外伸びが悪いと、そういう問題を検討して参りますと、単位費用の問題よりも、どちらかといいますと、私は測定単位改正、これが全体としては財政需要額を伸ばしていながらも、計算方式が変ったために案外伸びなかった、ここに一番大きな原因があると、かように考えているわけであります。もう春の国会で十分議論されたことでありますので、繰り返し申し上げることは遠慮しなきゃならぬのでありますが、一つには、たとえて申し上げると、今の恩給費計算を人口でやるとか、あるいは学級数、生徒数でやっておった。今回からは恩給受給権者数を測定単位に使うことにいたしました。この結果、東北のどの県でもでありますが、かえって非常に減って参ってきております。一例を申し上げれば、青森県でそれがためだけで一億円も減って参ってきております。前の計算がよかったのか、今度の計算がよかったのか、いろいろ議論はございましょうが、どうも私たちその結果から見ていますと、昔でいうと、中学校を出て教職につく、だんだん東京その他に異動してこられてきて、東京やその他で恩給を受給しておられているんじゃないでしょうか、こういうような感じを持ってきているわけであります。恩給だけで見ますと、あるいはそういう改正してよかったか悪かったか、なお議論ができるわけでありますけれども、やはり全体としての財政需要額があまり、やっぱり多い方ではないんじゃないか、こういう感じを持っておるわけであります。あるいは義務教育につきましても、計算方式を根本から変えていく、あるいはまた、海岸堤防施設というものを測定単位に加えたりしております。あるいはまた単独災害復旧費、これも測定単位に加えております。さらにまた公共事業費にかかわる災害復旧費につきまして、今回は財政補正をやるようにしておるわけであります。財政力の少い団体につきましては、そういう経費をよけいに見積るということにしておりまして、どちらかといいますと、後進県財源によけい行くという方法をとってるわけであります。従いまして、ある特定の団体だけが特に悪くなるような改正をしたということじゃなしに、法律改正としては、合理化を目ざして改正をしたのでありますが、結果としましては、団体によって有利にも働いたり不利にも働くと、こういう結果になっておると思うのであります。そういうこともございますので、今もまた御指摘もございましたので、私たちこの法律改正の結果、算定をいたしましたところに基きまして、資料を収集して、さらに十分な検討を加えていきたい、こういうふうな考え方を持っておるわけでございます。
  28. 鈴木壽

    鈴木壽君 そこで、先ほどお答えがあったものの中に、今回未開発補正等によって非常に予想外伸びなかったところ、従って、予算編成等において非常に困難を来たしておるようなところに対しては、特別交付税で見ていきたいと、こういうようなお話があったようでございますが、大体特別交付税から出す金をどの程度に押えておられるのか、これ一つ……。
  29. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 府県交付団体基準財政需要額平均的な伸び率は一一%であります。従いまして、基準財政需要額に——昨年度基準財政需要額、これに一一一%乗じまして、それからことしの決定した基準財政需要額を差し引きまして、その差額を特別交付税として決定を優先的にしたい、そうしますと、その額が全国で二十八億円になります。特別交付税総額が百三十億円でありますから、二十八億円だけをまず優先的にこういう形であらかじめ決定をしていただいて、そしてそれぞれの団体で当初予想しておったところとそう狂いのない交付税決定に持っていきたい。法律改正でありますけれども、そうだからといいまして、一般的な伸びを期待しておった、その期待を裏切る結果は財政困難に陥ってもいけませんし、そういう機能を特別交付税で果していきたい、こういうことに考えております。
  30. 鈴木壽

    鈴木壽君 二十八億だとしますと、大体昨年度の五十五億からことし三十億になった、二十五億をちょっと上回るだけの金を、差額が二十五億ですから、三億ばかり上回る金が行くことになります、大体額として。私総額の——率とか何とかではなくて、総額のことを言っているのですが、それくらいであったら大体いいのではないかと思います。ただこの二十八億の金を出す、いわゆる特別交付税のワクの中からそれを出していくということについてですが、これは特別交付税の使い方については、私、地方交付税法の中の特別交付税の算定のそれがはっきり基準が示されていると思うのですが、これは新たに何かそういうものを設けないと、今の法律からしますと、そういう金が出てくる余地がないのではないかと思うのですが、この点どうです。
  31. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 今回のように府県基準財政需要額が四割に近いということについて、測定単位改正をやっておるのです。そういう場合には、どちらかというと、私は激変緩和のため第二普通交付税というものを臨時的に設けておいた方がよろしいと思います。しかし、当時おそらくそういうことがあっても特別交付税措置したいという考え方があったからかもしれませんが、現にそういう措置は設けられていませんし、やはり特別交付税でそういうふうな機能を受け持ってもらおう、しかし百三十億のうちの二十八億円でありますから、その結果、特別交付税が不当にゆがめられるということにならない、かように考えておるのであります。最もよい方法は、激変緩和の立法をしておくことだったと思いますが、それができておりません今日においては、特別交付税措置することが妥当だと、かように考えております。
  32. 占部秀男

    占部秀男君 ちょっと今の二十八億の問題ですが、結局、特別態容補正の率の引き下げは、さっきいった小学校の測定単位のうちの変化ですね、こういうものに及ぼす影響を全面的に考えて二十八億の問題を出したわけですか。そういうことになりますね。特別態容補正だけの問題ではないわけでしょう。そこで具体的に私は聞きたいのですが、かりに、黒金さんが言われた山形なら山形の問題ですが、山形で試算した結果がかりに二億なら一億の問題が出ておるという場合に、二十八億なら二十八億を特交の中で特に優先して見ると、こういうことになりますと、この二十八億の中からある程度山形の方に特交の回るやつが入っていくわけですね、行くことによって二億の部分はほとんど問題は解消するという工合になるのですか、ならないのですか、その点の見通しをちょっと……。
  33. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 府県によってはかなり行くだろうと思います。私の今記憶しておるところでは、東北各県でいいますと、青森県では、この方式をとるだけで約三億円近い金が特別交付税として配分されます。山形県の場合たしか五千万円前後ではなかったかと思います。特別態容補正影響だけの問題ではなしに、測定単位改正の結果、増減、いろんな影響を持っておりますので、東北だからといって一律的な状態ではないわけであります。山形県の事情はまた別な問題があるようでありまして、財政収入につきましてもいろいろございます。必要があればここで御説明いたしますが、いろいろな事情がございまして、個々団体事情に応じてできる限り相談相手になって参りたいと思っております。
  34. 鈴木壽

    鈴木壽君 特別交付税で見ることもやむを得ないと、現在の困った事態を救済するといいますか、ほうっておけませんから、何らかの形によって見なきゃならないということもわかりますが、私どももまた、それこそ何らかの形によって見てやるべきだと思うのですが、ただ私お聞きしたいのは、先ほども申しましたように、特別交付税の額の算定の、いわゆる法の第十五条の中にそういうことが可能であると読めるのかどうか、こういうことなんです。ですから、まあいろいろな特別の財政需要があるとか、災害とかなんとか、いろいろ書いてあります。ありますが、今いった普通交付税配分のいわばその穴埋めの救済措置みたいなようなことで、特別交付税というものが二十八億もの額をやれるものかどうかということが一つ。  それからあなたの、百三十億の中の、特別交付税があるのだから、二十八億ぐらいやってもさしたる影響がないというふうな今お話であったと思うのですが、もしそうだとすれば、私はこの別特交付税というものの考え方で、私はちょっと変なものがありやしないかと、今までの八%が六%になって、相当の額が減らされておるわけです。これは私ども、特別交付税というものはそんなに大きなパーセンテージを占める額をやらなくてもいいじゃないかというふうなさっきからお話があった。測定単位なり、あるいは単位費用の問題等からしますと、そうでない方が私どもは理論的には正しいと思うのですが、現実の問題として昨年より相当減額になっておる。百三十四億の中から、今あなたがおっしゃったような二十八億もの額を取る、さらにあなたはこの前からいろいろ、木引税の穴埋めもこれによってやるとか、自転車荷車税の廃止に伴う穴埋めもそういうものによって見てやりたい、こういうことをおっしゃっているのですから、そういうものを取り去って、これは何億になるか、まだはっきり私はわかりませんが、これは相当の額になるのじゃないかと思うので、そうしますと、将来予測されますところの問題に対して、果して百三十億円で、あなたが言うように心配ないものかどうかですね、こういう点を私はやはり考えないといけないと思うのです。これはまあ災害等がなければそういう心配もなくなる、これに越したことはございませんけれども、災害はいつどういう格好でやってくるかわかりませんし、もともと、私は従って特別交付税というものの使い方において、ちょっと根本的に納得しかねる問題があると思いますが、その点どうでしょう。
  35. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 先ほども申し上げましたように、最善の措置は、私はやはり激変緩和の方法を立法しておくべきだったろうと、こう思っております。しかし、それは今言ってもいたし方がございませんので、今何かそういう措置を講ずべきだとするならば、特別交付税を選ぶよりいたし方がないのじゃないかと、こう思っているわけであります。その場合に百三十億円のうちの三十億円だから、三十億円を優先的に確保した結果、特別交付税が非常に少くなって、にっちもさっちもいかなくなるというほど極端に心配することも要らないのじゃないだろうか、こういう程度に申し上げたわけであります。私は正直に申し上げますと、特別交付税という言葉が悪いと思っております。第二普通交付税、第三普通交付税というような格好のものだと思っております。特別交付税におきましても計算方式が確定されてきておるわけであります。特別交付税といえども参酌じゃなしに、やはり機械的に計算されておるわけであります。ただ、普通交付税ほど全く機械的な計算ができない、そこに若干の実態の調査をしなければならない、そういうものがあるものですから、特別交付税でそういう部分は見ておるわけでございまして、漸次そういう点ももっと明確にし、同時にそれを安定さしていかなきゃならない、これが私は一番必要なことじゃなかろうか、こういうふうに思っているわけであります。春のときにもいろいろ御議論あったわけでありますが、木材引取税の問題等は、今申し上げましたような金額でいいますと、ごくわずかな金額だろうと、こう思っております。
  36. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは特別交付税がどういうものであるべきかという本質的な問題であり、これはいろいろ考え方があると思うのです。あなたがおっしゃるように、第一交付税、第二交付税、その第二交付税に当るようなものであるべきだというふうなお話ですが、そういうことにつきましては、これはいろいろ考え方はあり得ると思うし、あっていいと思う。ただ、しかし、現実の問題として特別交付税については、はっきり先ほど申しましたように、第十五条に規定されておる、それに基くところの総理府令によって配分される。もちろん、一律な機械的なということじゃなしに、地方財政事情に応じた取扱いも可能でありますから、ですからそういうふうなことも、一つ現在のところ、いいにしろ悪いにしろ、規定があるのですから、それから私は、はみ出すような取扱いなり解釈なりということは慎しまなければならぬと思う。そういう意味で私は、今の未開発補正についての特別交付税から出す激変緩和だということは、さっき申しましたように、私ども何らかの形で激変緩和をすべきだという立場に立つわけなんですけれども、さてしからば、われわれの言うように、ただ特別交付税によって見るというふうなことの方が、現在の法の規定からして直ちに行き得るかどうか、こういうことです。私はつけ足りとして申し上げました木引の場合であっても、税の減収になる穴を特交でやれとはどこにも書いてない。今だって普通交付税によって地方財政の運営で非常に支障が出てくるようなことを特交によってやれるというふうなことには私は読み取れない、こういうことなんです。この点どうでしょうか。
  37. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 春にも大へん御議論のあった点でありますが、私たちとしては特別の事情があるということを、木材引取税についての法律改正した場合も、あるいは交付税計算方式改正した場合も、それぞれの地方団体について思わざる影響を与えた、そういう場合には、国としてそういう事情を考慮して適当な措置を講じなければならない、そういうふうにこの特別の事情というものを読んでいってよろしいのじゃないか。また、そういう気持で従来も特別交付税を運用いたして参っておるわけであります。
  38. 鈴木壽

    鈴木壽君 どうもあなた方、こういうような問題少し、私は何といいますか、言葉は悪いのですけれども、ルーズに考えているのじゃないかと思うのですがね。これ第十五条でお読みになって、私どもよりあなた方は専門家ですが、どこで今のような普通交付税配分によって地方財政でいろいろ影響があり、それを直ちに三十億近い金を出し得るというようなことは、私は、激変緩和は何かの形でしなくちゃならぬ、しかし、それが直ちに特別交付税によってやらなければいかぬということには私はならぬと思う。この中に何も激変緩和をするとか、そういうようなことは一行もありませんよ。特別の財政需要があるとか、あるいは基準財政収入額のうちに著しく過大に算定されたいろいろ書いてあります。これらによって総理府令で定めると、こう書いてある。今のは何に当るのですか。
  39. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 十五条の前段に御指摘のような例示がございます。それらの等のため、「減少があることその他特別の事情があることに因り、」ということを考えているわけでありまして、そうしてなお計算方式をそのままとっても、「普通交付税の額が財政需要に比して過少であると認められる地方団体に対して、」、要するに財政需要は、基準財政需要額でも何でもありません。全体的な財政需要額として思っているわけであります。普通の財政需要額が過少であると認められる地方団体に対して「当該事情を考慮して交付する。」、こう書いてあるわけでありまして、かなり幅の広い規定の仕方をしている、かように考えておるわけであります。
  40. 鈴木壽

    鈴木壽君 それでは現在の特別交付税のいわゆる総理府令でいろいろな事項がきまっているわけでありますね。あの中でかつてそういうことが入れられて、算定されて交付になったことがありますか。今言ったような事柄が、たくさんある項目の中で、これは毎年のように変るのですが、その中にそういうことが入れられて、具体的にやったことが私はなかったと思う。
  41. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 最近の例で申し上げますと、市町村民税の課税方式につきまして、第二方式や第三方式について基準的な率を法定したことがあります。その結果、間接的にある程度減税を余儀なくされる事情に市町村としても置かれたわけでありますので、そういう団体に対しまして、たしか三十二年度で二十数億円のものを市町村にそういう事情を考慮して配分したわけであります。
  42. 鈴木壽

    鈴木壽君 そういう事情を考慮して配分したということは、ですから私は、総理府令に示された具体的ないろんな事項がたくさんありますね。二十幾つか、時によっては三十幾つかの項目になりますが、あの中にはっきりうたわれていたのですか。
  43. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) そのものずばりで配分いたしております。
  44. 鈴木壽

    鈴木壽君 いや、うたわれたのですか。
  45. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) その通りであります。
  46. 鈴木壽

    鈴木壽君 これはあとから私が調べてみます。私は、特別交付税の問題等についてはっきりもう少し、こういうような問題についてのこういうような取扱いもいいとか、このようにも解釈し得るとかいうようなことでなしに、これは今の額は相当大きな額ですから、これははっきりうたわなければならないと思いますね、今年は、その御用意がありますか。
  47. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 総理府令の中に明記しなければならないと考えております。
  48. 鈴木壽

    鈴木壽君 明記なさいますか。
  49. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) その通りであります。
  50. 鈴木壽

    鈴木壽君 そこで、私が根本的に申し上げたいことは、私が先ほどの一番最初に申し上げました中に、単位費用のことばかり言って、あなたに指摘された測定単位のことに触れなかったので、あなたは私の言ったことよりこっちの方が大事だとおっしゃった。私は、単位費用の改訂という中に一応、うっかりしましたが、含めた意味で全般的な問題として申し上げたのですが、今後もこれは改訂の必要が出てくると思います。そういうことがあると思うのですが、これはよほど綿密な試算等をやって、そしてそれに関連するいろいろな、単に未開発補正のみならず、他の補正係数等においても、これはよほどしっかりやっておかないと、またこのようなことが起ると思うのです。そのつど、いわゆる激変緩和とかなんとかいうことで、法の精神にもあまり合わないようなことまでもしなければならぬ。やむを得ぬ措置としてそれを認めざるを得ないということが私は出てくるのではないかと思う。私はもともと、特別交付税等につきまして、先ほど申しましたように、そんなに大きな額を取っておく必要もないし、従って測定の単位なり、あるいは単位費用の問題が、大かたの片がつくような、そういうような形で交付税配分というものはしなければならないと思う。特別な財政需要なり何かの災害等のあった場合のほかは、それによって私は交付ができるようにしなければ、私は各団体等においても困る問題だと思いますから、そういう問題で今後私は十分検討なされた上で、私は、これはめんどうな計算になると思いますけれども、十分な用意をしていただかないと、またぞろこういうことになりはしないかということを考えるのですが、この点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。
  51. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 交付税計算方式改正に当りましては、理論倒れになりませんで、私は十分試算を重ねるべきである、こういう考え方を強く持っているものでございます。また同時に、個々の経費の合理化の必要もありましょうし、全体の額をそう個々団体について動かさぬ、むしろ交付税法の計算方式をなるべくすみやかに安定されることが、地方財政の今後のことを考えました場合に必要だと、こういう気持を強く持っております。お話のような方向で研究していきたいと思います。
  52. 鈴木壽

    鈴木壽君 ちょっと時間を取るようで恐縮ですが……。  そこでいま一つ、特に補正の問題ですね。これはいろいろ合理的にやられておると思いますが、私どもいろいろ読んでみたってわからないような計算方式で、なかなかつかみづらいのですが、これは単に未開発補正のみならず、いろいろな段階補正なり、いろいろな補正で、これをときどき変えられるとまた変なものになってくるのではないか。それもあなた方の、何といいますか、仕事の範囲内でいろいろ変るというようなことも、これは将来やはり十分検討してもらわなければいけないと思う。これは補正は、何かの形での補正は、私は必ず出てくる問題だと思いますけれども、それが今年はこういう補正をやるんだ、来年になるとそれはなくなるのだ。あるいはその補正係数等においてもいろいろ変るということを、私は、やはり先ほどあなたがおっしゃったように、こういうものの安定といいますか、そういうものからして私は困る問題が実際出てきておるのだというようなことも一つ指摘いたしまして、御考慮をいただきたいと思うのです。
  53. 占部秀男

    占部秀男君 その点については黒金さんに特にお願いしたいのですが、というのは、この問題は御存じのように、今となっては、各県の立場からいえば、財源の穴をどういうふうにして埋めるかという問題になってくるわけです。いろいろ問題はありますが、今、鈴木さんからお話が出たようにいろいろ問題はありますが、当面の問題としては、どういうふうに埋めるかということになってくると思う。それでなければ事業ができないということになってくるわけです。そこで九月に入る問題ですが、この委員会が終ってしまうと、今度は臨時国会まではこの問題をどうにもしようがない、臨時国会までは。そこで特に、これは大臣あとで来られるから、黒金さんと大臣一つお話し合いを願って、これは局長といっても、やはり政策的な問題になりますから、従って無理ですから、黒金さんと大臣お話し合いを願って、ここで一つ明確な答弁あとで……。それは今、奧野局長からもお話があった通り、今度の特交の中でこういう問題を見ようじゃないかという問題がある。しかし、あるけれども、あれは未開発補正だけの問題ではなくて、今度の測定単位の変化の問題から、いろいろな減額も含まれている。こういう形で、たとえば青森県のような場合は三億くれれば問題は解決するのです。ところが今、山形県では五千万円かそこらでは解決できない。四分の一から五分の一しかくれない。そういうようなアンバランスが各県においてあるわけです。こういうようなアンバランスの特に激しい県については、今あなたの言われたように、個々に具体的に県と話し合って問題を処理しようというわけですから、その問題を処理しようということは、結局は財源問題になり、従って臨時国会もあることですから、そうした点については、必ず十分に行けるか行けぬかはこれからの問題になるとしても、この特交の問題だけではなくて、特交の問題で解決のつかないような問題は、特交の問題以外の問題としても、この問題については解決をつけるようにしようじゃないかということをはっきりとするかしないかを聞いておきたい。これは何と言ったって、九月県会を控えて各県では一番の焦点になっておるのですから、できないならできないでやむを得ぬ。できるならばやってもらわなければならぬ。それが九月県会で原案として知事は出さなければならぬ。こういうところに二十一県みな影響のあるところに追い込まれておるわけです。そういう点についての明確な答弁あと一ついただきたい。これは念を入れて一つお願いしたい。
  54. 田中啓一

    委員長田中啓一君) 答弁なさいますか。
  55. 占部秀男

    占部秀男君 いや、いいです、大臣から伺いますから。
  56. 鈴木壽

    鈴木壽君 それからいま一つは、今の交付税の問題ではございませんが、再建団体に対する再建期間の短縮を指示された問題でございます。これあれですか、再建団体全部についてああいうふうな通牒をお出しになったのですか。それともいわゆる再建期間の短縮が可能だと思われる、あなた方から見まして、そういう団体だけについておやりになったのか、この点一つ
  57. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 基本的な考え方は、再建団体全部について申し上げております。府県について申し上げますと、しかしながら、もう再建期間がごくわずかなものもある。そういう団体についてまで再建期間を短縮しなさいということを慫慂する必要はございませんので、五年未満の団体につきましては慫慂しない、こういう方針をとっておるわけです。
  58. 鈴木壽

    鈴木壽君 そうしますと、五年未満のものには慫慂しない。まあたとえば七年とか十年とかいうような長期にわたっての再建計画を立ててやっておるところだけでございますね。
  59. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) その通りでございます。基本的な考え方は全体に連絡しておりますが、再建期間の短縮という点については御指摘の通りであります。
  60. 鈴木壽

    鈴木壽君 それで、今の特に長期にわたっていわゆる再建をしなければならぬ、そういう団体ですね。これは私どもも十年とか十何年とかいうような、こういう再建計画というものは、事実上こういうものを放置しておくべきではないと思うので、できるだけ早い期間に再建を終って、軌道に乗るようなことをしなければならぬし、これは団体自体においても、あるいはまた、あなた方の指導の面においても、そうしなければいけないということは、これはわかります。ただ再建が始まって今、二年、三年目ですか、この期間に、果して私そういう長期にわたっての再建を要する団体が期間を短縮し得るやいなやということについては、これはもちろん、その中にはあると思いますけれども、一般的にいって、私は非常にむずかしい問題ではないか、こういうふうに考えるのです。というのは、それはなるほど去年あたり、ことしあたり、税の伸びもあり、あるいは交付税の何といいますか、伸びもあったりしまして、ややいわゆる地方財政というものは好転したように見えます。ただし一方におきましては財政需要も相当ふえておる。こういう実態だと思うのです。団体の中には多少の繰り越しをするようなところもありますけれども、しかし、だからといって、こういう状態がじゃ一体ことしも来年も、再来年も続くかというと、必ずしも私はそういう見通しには立ってないと思う。税の自然増収なんかからしましても、私は来年度になったら、これは相当悲観すべき状態になってくるのではないかと見ておるのですが、そういうふうな問題。あるいは一方、財政需要の面においては人件費等の関係、あるいはその他、いろいろな仕事の関係で、これは当然延ばさなければいけない、そういうものが出てくる。さらに今度の税改正がどのような形で行われるのか、特に府県団体等でいえば、事業税が大幅に何といいますか、減らされるというような事態になると、これは一体どう財政を持っていったらいいかということについてのめどが全然私はつかないと思う。そういう段階に今あると思う。こういうときに、さて十年のものを八年計画にしろとか、七年のものを五年程度に縮めろとかというようなことを、今果して指示し、通達することが正しいものかどうか、私は疑問だと思う。一体どういう根拠に立ってあなた方は再建期間の短縮が可能と見て、二年程度縮めろとか、三年程度縮めろというふうなそういう通牒を出されたのか、その点の地方財政の今後の見通しという問題について私は一つ承わっておきたいと思う。
  61. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 財政再建計画を立てました三年前と現在とを比べますと、非常な変りようだ、こういうふうに私たちは思っておるわけであります。再建計画を立てました当時におきましては、その団体も非常に深刻な気持であの再建計画をお立てになっただろうと思うのです。幸いにしてその後、国の措置なり、あるいは経済の好転なり、あるいは地方団体の努力なりが実を結びまして、若干ずつ好転をして参っておるわけであります。昨年は再建計画の変更に当りまして、増収分の六割は行政水準の引き上げに使ってもいいし、四割は繰り上げ償還なり健全化のために使いなさい、こういうようなやり方をいたしたわけでありまして、その事柄が政府部内におきましてもいろいろ論議の的になりまして、また国会におきましてもいろいろ御批判のあったところであります。だんだん財政も回復して参りますと、自治庁として、再建団体といえども、再建計画の変更についてあまり個々の金の使い方につきましてくちばしをいれるということは私は穏当ではないと考えておるのであります。しかし、野放しにしてよいかというと、そうでなしに、やはり大きな方向だけは示して参らなければならぬじゃないか。また大きな方向だけは、その方向に再建団体において真剣に歩んでもらう努力をお願いしなければならぬのではないか、こういう気持を持っておるわけであります。  昨年度とことしと比べますと、先ほど申し上げましたように基準財政需要額交付税を通じて申しますと、府県で三百五十億ふえておる、市町村で二百五十億ふえております。税収入がかりに伸びません団体でも、基準財政需要の増加を通じて、財源が保証されておりますので、もし再建を一年でも早くする、早く完了するという方向をとるといたしますならば、今回の再建計画の変更が一番の好機じゃないだろうか、こういう気持を持っておるわけであります。そういう意味で、でき得る限り再建期間を短縮して、早くこういういやな問題から独立するように持っていって下さい、こういうお願いを再建団体に対しましてもいたして参っておるわけであります。大きな方向だけは再建団体につきまして強くお願いする。しかし、予算査定みたようなやり方はもう避けるべきだ。地方団体一つの基本方針だけを守りながら、自力で再建をすみやかに完了するように努力していただきたい、かような考え方を持っておるわけであります。
  62. 鈴木壽

    鈴木壽君 私も先ほど申し上げましたように、再建期間が十年とか十何年とかいうようなことをそのまま放置してよいとは思いません。一日も早く再建されまして、軌道に乗るような、そういうことについての努力は私は当然あるべきだと思います。その大きな原則については、あなたと何も見解を異にするとは思いません。ただ、今そういうことを一つの原則なり、将来の方針なりとして、十分再建のために、再建期間短縮のために努力せよという事柄だけの通知であるならば、ともかく、はっきり、これは二年の短縮なり、このくらいの金はこういうふうに使えというようなやり方でおられるのですから、私は相当きついものだと思う。だとすれば、私は時期的に、現在の今日の段階がそういうものを立て得る段階であるかどうかということについては私は疑問がある、こういうことなんです。考え方の、基本的な再建計画のいわゆる改訂と申しますか、そういうことについては、私は何も否定しておりません。  私は一体ことしの春から、あるいは去年あたりから、地方税の減税が打ち出されて、政府においてもはっきり打ち出しておる。これはどの程度にきまるかわかりません。こういうやさき、一体事業税に例をとっていうならば、事業税を特に減らした場合に、かわり財源に何があるかということはまだはっきりしていない段階だ。どういう形で穴埋めがされるかということはだれもわからない。こういう段階で来年から、額が五百億になるか三百億になるかわかりませんが、いずれ大幅に減らされることは確かだと私は見る。そういう今の段階で、一体来年度予算をどう組むのかわからないというときに、長期にわたる財政計画の変更ということが一体可能なのかどうか。あなたが先に指摘されたように、また私が申し上げたように、税の収入の伸びはありました。しかし、来年度以降の税の収入の伸びというものは、なかなか私はそう簡単に期待できない情勢にあると思う。こういうときなんです。自治体におきましては、あなた方は、脱税の整理をすべきだといっても、ちっぽけな一万円か二万円の脱税も整理できないような、こういう状態の中に、それから、さらに再建団体の中で増税等もやっておる。こういう中で、あなた方が言われるような再建期間の短縮ということが、果して計画されたように遂行可能かどうかということは、これはもう私はむちゃなことだと思うのです。むしろ通り一ぺんのものを作って、また修正修正というような形で終ってしまうのではないか、私はこういうような心配を大きく持つわけなんです。むしろ私はあなた方の再建期間の短縮というような問題よりも、現在行われておる、いわゆる財政計画のあの不合理といいますか、正常ならざる財政計画だと私ははっきり申し上げますが、ああいうものを修正させて、そういうものが一段落ついて、今いったような、たとえば税の問題なり、あるいは自然増収についての将来の見通し等をつけた上で、再建計画の短縮ということを考えるべき問題ではないか、私はこう思うのです。ですから、考え方がどうも少し通り一ぺんで、やれるところはやればいいし、やれないところは、それを無理じいするのじゃない、こう言ってしまえばそれまでですが、一応あなた方の文章なんか見ますと、これははっきり二年間短縮せよとか、この金をどういうふうにせいというようなことが具体的に指示されておる。それを全然あなた方は、再建団体がそうやらないからといって見ておるかというと、私はそうでないと思う。そうだとすれば、私は今いったような根本的な問題に逢着すると思うのでこの点私ははっきりあなた方の見通しなり、これに対する考え方なりということを承わっておきたいと思うのです。
  63. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 個々団体におきまして、地方税の収入、これはいろいろ変って参るだろうと思います。しかしながら、地方交付税制度を通じまして算定されます基準財政需要額は、地方税や地方交付税を通じて財源が保証される。こういうこともまず変りはないだろうと思うのであります。そうしますと、昨年から今年にわけまして基準財政需要額が大幅に伸びておるわけであります。伸び財源だけは保証されるわけでありまして、これに基きまして、財政再建計画の変更がこれから行われようとしているわけであります。そう考えて参りますと、昨年のような四分・六分というようなやり方がいいのか、そうじゃなしに、大きな方向だけを示しまして、個々団体はその中で自由におやりいただきますことがいいのか、そうなりますと、私は大きな方向だけを示しまして、あとはそれぞれの団体におまかせした方がよろしいのじゃないか、こういう考え方を持っておるわけでありまして、なおまた、再建期間の短縮でありますが、一例をあげますと、かりに十億円の赤字を十年間で解消する、こういう計画をしておった。もし、それを一年短縮して九年にするのだということになりますと、最後の一億円の元金を九年間に割るわけでありますから、一年間に一億一千万円の金を九年間にそれぞれにつけていく、これは私はそれほどむずかしいことを地方団体にいっているわけではないと、こう考えているわけであります。私たちは最後の一億円を今すぐ返してしまいなさいというようなことをいっていないのでありまして、とにかく、再建期間を短縮して、早く全くの独立闊歩できるような状態になりなさいということを申し上げておるわけであります。しかし、もしそのことが非常に無理でありますならば、またその団体につきましてよく検討さしていただきたいと思いますが、総体的に考えまして、そう無理なことを私たちとしては言うておるのじゃなかろうか、こういう気持ではおるのであります。
  64. 鈴木壽

    鈴木壽君 あなた方は、根本的に私問題があると思うのです。ですから、何べんも言うように、再建期間の短縮ということをまず取り上げるのか。現在の、不合理であり、むしろ非常にゆがめられた格好で十何年もの財政計画を立てておる、そういうものの是正なり修正なりをまずやるべきではないかということが私の考え方なんです。と同時に、特に再建団体においては、これはいつでもいわれるように、行政水準の低下ということが叫ばれている。こういう事柄についての配慮をしながら、現在ある再建計画をどう修正していくのか、こういうことをまず手をつけるべきじゃないだろうか、私はそう思う。その上に立って、なお余裕があるならば、昨年のように四分・六分に金を分けるとか、あるいは将来のために、再建期間の短縮のためにやっていくと、そういうことをまずやるべきじゃないだろうか、たとえば一例を申しますと、各赤字団体におきますところの人員の整理の問題、これをこのままほうっておいていいかというと、私は必ずしもそうではないと思う。一律に、ある団体におきましては年間たとえば五十人ずつ減らしていく、こういうような方針をとっているところがある。あるいは、団体によっては増税をやっている団体がある。私はこういう増税というような事柄をしいてやらして、いわゆる収入を上げさして、再建計画のつじつまを合すというようなやり方は、私はとるべきではないと思う。こういうことをまず計画の立て直しをやって、修正をやって、なおかつ、今よくいわれておりますところの行政水準の引き上げというようなことも兼ねて考えていって、これは今言ったように……。それからもう一つは、今叫ばれている税制面の問題、あるいはいろいろなそういう問題の見通しをつけて、私は時期的にいうならば、来年なり再来年にそういう問題を取り上げても何ら悪くないと思うし、むしろその方がよりいい再建計画ができるのじゃないだろうか、私はそういうふうに考えるのです。根本的にはあなたのおっしゃることは私もわかりますし、私もそういう意味におきましては同感の意を表するわけだけれども、単にあなた方の指導の方針として、将来のことを考えたらいいということでは、私は今回の各団体の通牒を全部見ておりませんが、出ているところのそれは、そう簡単なものではないと思います。三十三年度におきましての財政調整積立金は、三十三年度基準財政需要額の一%程度の額を目途とするとか、こういういろいろなことをあなた方の方では指示しているのです。これは団体によってやれるところはやればいいし、やれぬところはやれなくてもいいという、そういうゆるいものなんですか、私は今回の通牒というものはそういうものではないと思います。ですから、私はこういう強い一つの規制するものを、あなたの答弁からしますと、そう強くやるつもりはないと、こうおっしゃるけれども、事実文書の上では強くなっている。ですから、こういう問題は、私はやはりよく考えてやってもらわないと困るのじゃないか。何も私、赤字団体ばかりを現在のままでいいとか何とかいうことじゃありません。中には再建期間の短縮も可能なところももちろんあるでございましょうが、そういう実態は、私は、あなた方は十分調査しなければいけないと思うが、しかし、一律に五年以上の再建期間のものについてはこういうふうにして、やった全部のものについてもやはり考え方としてはそのように考えている、こういうのだとすれば、今私は時期的にいって適当ではない、こういうふうに思うということです。
  65. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 繰り返し申し上げるわけでありますが、昨年までとって参りましたように、予算査定的な扱い方を再建団体についてもいたしたくない。従いまして、大きな方針のワクの中で自由に将来の計画を再建団体についても自分できめていただこう、こういう考え方を持っているわけであります。その際に申し上げました点は三点ございます。  第一点は、再建期間というものを一年なり二年なり一つ短縮をはかってもらいたい。短縮の仕方は、先ほども申し上げましたように、すぐに繰り上げ償還してしまえ、こういうことではないわけであります。短縮された年間で、返さなければならないものを残りの再建期間中に割り振ってもらえばよろしいわけであります。これが第一点であります。  第二点は、今、再建計画を変更いたしましても、また毎年々々やはり若干ずつ変更の事由が生じてくるだろうと思います。その際に、一々また変更の認可だということになりましてもわずらわしいばかりでございますので、各年々に財政調整積立金というものを基準財政需要額の一%程度ずつ割り振っておいてもらいたい。その必要が起れば、それを取りくずしてもよろしいし、取りくずさぬで済めば、そのまま財政再建計画を促進したことになるのじゃないか、そういう再建計画の立て方をしたらどうか、これが第二点であります。  第三点は、積立金をもってそういう場合には積み立てておきますよりも、むしろ思い切って、高利債などがあるわけでございましょうから、旧債の繰り上げ償還をやったらどうか、どの旧債の繰り上げ償還するかということは、その地方団体にとって有利な方を選びなさい、こういう三つの基本的な方針だけを申し上げているわけであります。あとは私たちの気持としてはおまかせをしたい、こういう考え方であります。この方針に従って大部分の団体はやっていただいているわけであります。しかし、若干の団体におきましては、何か再建期間を短縮すると不利になるのだ、こういう気持をお持ちになる団体もあるわけでございまして、そういう団体につきましては、できるなら再建期間の短縮をやりたくない、こういうこともいっておられる県もないわけではございません。しかし、十分そういう団体につきましても事情はお伺いいたしまして、相談ずくでやっていきたい、こういう基本的な考え方も変っていないわけであります。
  66. 鈴木壽

    鈴木壽君 再建期間の短縮のたとえば二年なら二年という指示をした、これもできなければやらなくてもいい、こういうことなんですか。
  67. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 再建期間の短縮につきましては、一定の基準で計算をいたしまして、そこから割り出されました年数について、再建課長と別個にこういう点は相談しているわけであります。現在のところ、私たちはそういう線でやってもらえると思っておるわけでありまして、できないところはやらないでよろしいのか、こういう御質問につきましては、今のところ、やっていただける、こういう期待をいたしている。こういうお答えをするより仕方がないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  68. 鈴木壽

    鈴木壽君 そこで、何べんも申し上げますように、もう少し来年度の税制の落ちつきなり、あるいは税の自然増収の伸び方なり、そういうものの推移を見まして、同時に一方において、現在までの再建計画というものは、これは何といっても正常なものとはいえませんから、そういうもののゆがみをどう直していくかということが私は先決問題であって、そういうものをやりながら将来の見通しを立てた時期——従って私は、今年度の後半なり、あるいは来年度の最初に、そういう問題をあなた方ももっとやっぱり積極的に指導してもいいのじゃないか。私は、再建期間の短縮は、しばしば言うように不必要だとも思いませんし、不利だとも思っておりません。やっぱり、いつまでも、十年とか十何年とか、そういうことでやるのはこれはいけないと思いますから、できるだけ早くやっぱりそういうものはやめてしまうことが一番いいのでございますから、そういうことにおいては私は変りありませんけれども、今いったような事柄を、時期的な問題あるいは方法の問題で私は問題があろう、こういうことなんです。一つこれは出てしまった通牒でございますが、これは今後、ほんとうに従来の財政計画の不合理、不健全なそういうものの是正をしながら、やっぱり地方自治体のそういうものの実情をよく見て、一律な指導なり、強制にわたらないように一つやってもらわなければいかぬと思うのですが、その点どうでしょう。
  69. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 各団体の実情につきましては十分お伺いもし、御相談にあずかって参りたいと存じます。
  70. 占部秀男

    占部秀男君 今の点なんですが、強制にわたらないようにしていこうというお言葉なんで、これはそうしてもらわなくちゃならぬと思うのですが、この問題、局長の話を聞いてみますと、たとえば一億円の問題が一億一千万円になった、大した問題ではないということを言われておるのですが、地方の方は、切り詰めて切り詰めた中に、さらに短縮によるところの年間の処理の問題が加わるので、そう簡単なものではないと思うのですね。特に加わったものだけはどこに行くか。これはやっぱり首切りとか給与の問題とか、いわゆる人件費の問題に一番初めに手をつけるわけなんです。従ってあちらこちらにトラブルが起ってくるということは明白なんでして、知事としても非常に迷惑していやしないか。特にこの問題で私の言いたいのは、どこの県でも余裕があれば、再建計画なんていうあんないやなものは一貫して早くやめたいという気持は持っておる。ただ、それをやめる場合でも、知事なら知事が自主的にやるべき問題であって、それを自治庁の方で云々されるというようなやり方でやるべき問題ではないと思うのですが、特にこの点について私は局長にお伺いしておきたいことは、これは何か通達をやるとかやらないとかで、例の二十一条の問題、「求めることができる。」という計画変更の問題です。二十一条によれば、行政指導であなた方の方からかりに再建計画を短縮しろといった場合に、これを短縮しないからといって利子補給はしないとか、いろいろな問題に引っかけてやるようなことは万々ないと思うのですけれども、そういう点を一つはっきりしてもらいたいと思うのです。とにかく、できないことはこれはできないので、知事の方としても、いろいろなことで最後のだんびらを出されたのではかなわぬということで、できないこともやむを得ずしようということでは大問題なので、そういう点を一つ明確にしてもらいたいと思うのですが、二十一条のあの問題であるかどうか、この通達の性格というものは、あの二十一条に適用されるべき性格のものであるかどうか、そういう点をはっきりと一つ聞いておきたいと思うのです。
  71. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 財政再建計画の変更の問題が起って参るわけでございますので、そういう際に、先ほど来申し上げましたような基本方針にのっとって計画の変更をお出し願いたい、こういうことを申し上げておるわけでございまして、今の段階で御相談し合っているわけでございまして、御相談によって解決するというように考えておるわけであります。給与条例の悪い例があるものでございますので、御心配になっているようでありますが、私たちもああいう例は非常に不幸な例であったと、こう考えておるわけでございまして、ああいうことを起さないように地方団体においてもよく考えていただきたいし、私たちも十分慎重に処理して参りたいと考えております。
  72. 占部秀男

    占部秀男君 どうも局長の言うことを聞いておると、最後には二十一条に引っかけてまた利子補給の問題を持ち出さないとも限らないという内容のように私にはどうも受け取れるのですが、二十一条の問題でないということを明確にしてもらいたいのです、この点は。というのは、この再建計画の短縮の問題は、今、鈴木君が言ったように、そう簡単なものじゃないのですね。地方の税の伸びもないし、将来大きな問題になりますよ。だからこの点は良心的に、知事だって無理に、あんな半禁治産者的な立場に置かれて何かしようと思っていないから、従って二十一条の問題ではないのだということで、これはあくまで税の伸びの税源の回復したところはやってもらいたいということをはっきりしてもらわなければならぬと思うのです。どうも局長がその点ははっきりできないと言うなら、あと大臣が来るから、私はあと大臣に聞いてもけっこうです。これはあまり局長さんに聞いてもしょうがないから、大臣に聞きますが、その点どうなんですか。
  73. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 現在も、先ほどからたびたび申し上げておりますように、御相談をしているわけであります。別に正式な要求書を突きつけたとか、そういう格好のものじゃございません。十分話し合いで解決できると、こういうように私は考えておるわけであります。
  74. 占部秀男

    占部秀男君 現在のことはよくわかるのです。現在は御相談しておるという段階はわかる、御相談がまとまればいいのです。御相談がまとまらぬときは、二十一条の問題だといってだんびらをやられたのでは困るので、二十一条の問題ではないのだ、あくまで御相談で民主的にそれこそやるのだ、そういう点をはっきりしてもらわぬと、これは知事たちは困りますよ、ほんとうのことを言って……。もし言えないなら、大臣からはっきりした言明をもらいますからいいですよ。その点は奧野さん、大臣とよく相談して下さい。
  75. 田中啓一

    委員長田中啓一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  76. 田中啓一

    委員長田中啓一君) それじゃ速記を起して。
  77. 黒金泰美

    説明員黒金泰美君) ただいまいろいろ御懸念の点でございまして、御懸念も、今までの実績に徴して無理からぬ点があるように思いますが、そういう御懸念のないように、占部先生の御懸念が杞憂で済むように処理をして参りたいと今努力をしておりますので、どうかしばらくの間それをお待ち願いたいと思います。
  78. 田中啓一

    委員長田中啓一君) 速記をとめて。    午後零時九分速記中止      —————・—————    午後零時二十一分速記開始
  79. 田中啓一

    委員長田中啓一君) それでは速記をつけて。
  80. 小林武治

    ○小林武治君 私、遊興飲食税のことを一つとくとお聞きしておきたいのですが、それは御承知のように遊興飲食税は現在まあ百数十億収入がある。ところが税が非常に偏在しておる。特に私、静岡県ですが、静岡県なら熱海、伊東というようなところに非常に税が偏在しておる。しかも税そのものは町の施設からあがってきておる。ところがこれがすべて県税になっておる。そして町としては県から大した恩恵を受けない。こうことになっておるので、遊興飲食税一つ一部分その市町村に保留すると申しますか、あるいは遊興飲食税を分割して、たばこ消費税のように県と市町村とに分ける、こういうふうな方法がないかどうか。還付税あるいは譲与税等の制度が府県にあればそれでいいが、現在のところそういう方法がない。従って、私はその税源の一部分でも町村に分割するということのためには、市町村税たる遊興飲食税を設けるというか、一部分これをさく、こういうふうな方法しかないのじゃないかと思うが、このような偏在した税源ですね、しかもその町村の施設によって主として生ずる税について、その町村に幾分でも均霑させる、こういうふうな考え方について、自治庁当局はどういうふうに思っておられますか。
  81. 金丸三郎

    説明員(金丸三郎君) ただいま小林委員からお尋ねがございました通り、遊興飲食税につきまして、市町村と申しましょうか、遊興飲食税の非常に多額におさめられておる、主として市でございますが、そういう方面から、ただいまのような要望が以前からございますことは、私どももよく承知いたしております。ただ、かりにこれを府県と市町村と分割するといたしました場合に、その基準と申しましようか、特にそのような施設が多いところだけになぜやらなければならないのか、実はそういうふうに突き詰めて考えて参りますというと、分割の基準と申しましょうか、そういうような点でもいろいろむずかしい問題が出て参るわけでございます。そのような要望があることは私どももともとと承知いたしておりますので、やはり遊興飲食税一つだけを取り上げてみましても、府県と市町村の全体の財源につながる問題でございまして、やはり府県、市町村全体を通じて税源をどういうふうにするかという見地から総合的に考えて参る必要があるのではないか、かように考えておる次第でございます。まあそのような見地から、来年税制の改正をおそらくいたさなければならぬかと思っておりますので、それに合せてどのようにいたしますか、結論を出すようにいたしたい、かように考えております。
  82. 小林武治

    ○小林武治君 今の問題は、特別の都市等については非常に不公平と申しますか、そういう傾向が顕著である。どういうふうに分けるかなどというような問題は、現在でも、たばこ消費税などは府県税と市町村税と両方でとっている。従って、とにかくどれだけのものにするかということは、今後の問題としても、分け方に困るということはあるまい。ことに、この静岡県の熱海等の問題については、年に三、四億も納めて、そして県から、県の経費をもって市の方に均霑せられる費用というものは非常に少い。こういうのは、遊興飲食税がどこから出るかということから考えれば非常に不公平に思われる。むろん、府県と市町村の全体の調整の上に考えられなければならぬが、ああいうような問題は、私は財政的にも、また税制的にも何か考えてやらなければならぬ。こういうふうに思っていますが、財政的の方の問題なんかではどうにもしようがありませんか。その点どうですか、財政局長
  83. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 財政上の問題は、もし不交付団体交付団体である府県税収入が回ってくるということになりますと、それだけ交付団体財源補てんの額が大きくなるわけでございますので、全体としてそれを補充する財源をさらに要求しなければならぬという問題は残ろうと思います。しかしながら、不交付団体といえども、今御指摘のような市町村の財政需要はさらに大きなものがある、そういうような措置も別途にとるべきだ、こういう議論もあるかと思いますので、両々相待って検討すべき性格のものだろう、こういうふうに思います。
  84. 小林武治

    ○小林武治君 それでは、私は一応これで質問は保留しておきますが、この問題は自治庁当局も一つ掘り下げて検討しておいてもらいたいと思います。
  85. 田中啓一

    委員長田中啓一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  86. 田中啓一

    委員長田中啓一君) 速記をつけて。     —————————————
  87. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 閣議のために出席がおくれまして、まことに恐縮に存じます。  先ほど来、交付税の問題につきまして、新らしい基準によりまして配付した結果が、各地方団体の期待しておった数字よりもそこに若干の相違が生じたために、各府県でお困りの府県があるというような問題に関連してのことでありますが、先ほど来、財政局長答弁いたしましたように一応の手当をいたしましたが、さらに、それによってもなおかつそこに地方団体としてお困りのところ等がありまする場合は、個々に折衝いたしまして、できるだけ御期待に沿うようにいたしたいと、かように存じます。  それから、再建団体の問題につきましては、お話の点はよくわかるのでありますが、せっかく今いろいろと折衝中でありますので、しばらく折衝経過をお待ち願いたい、かように存ずる次第でございます。
  88. 占部秀男

    占部秀男君 今、大臣から御答弁ございまして、第一の点は私も了解したと思うのです。特交以外には、個々の県の事情に従って、これは一つその点については地方で仕事ができなくならないように、一つ臨時国会もありますから、これは一つめんどうを見ていただきたいと思うのです。  ただ、第二の点については、今、大臣の話し合いをされている経過だから従ってという、そのお気持はわかるのですが、私は、ここで大きな問題があると思うのです。それは、この前の給与表の例を引いて申すまでもないのですが、やはり再建計画なら再建計画が、かりに県、市が余裕ができて、これを短縮しようとかどうとかいうような問題は、知事なり市長なり、当該の自治団体がまず基礎的には自発的にやってもらわなければならぬ問題であって、それを自治庁の方で慫慂され、あるいは勧奨され、あるいは勧告されて、そういうふうにいくという、そういう姿のものでは——これは地財再建法のできた趣旨からいって、そういう姿ではないものであるというように私は根本的には考えているのです。しかも、給与表の問題がああいう形で利子補給をしないという最後のだんびらを自治庁の方として出したあとなので、知事側としては、これを聞かなければ二十一条をまた発動されるのではないかと、こういうことで、短縮できないものを無理をしても短縮をしてくるというような経過に陥る可能性が多いのですよ。そこでこの問題は、特に税の伸びが上昇期にあるという、そういうような時期ならば、これはまた話はわかると思うのですが、税の伸びの問題は、先ほど鈴木さんがいろいろ言ったのですが、非常にわれわれが見ておっても感じがはっきりしない。しかも、地方税の減税の問題が目の前に控えておる、こういうような時期に、しかもそういう形でもって出されて、最後はだんびらを振りかざすのだと、そういう危険性があるのだといったのでは、これは地方としては知事なんか立つ瀬がないと思うのですよ。従って、この問題は、そういうような来年度財政計画のはっきりした後に、もう少し見通しが出た後に、こういう問題を出されるとか、あるいは現在やっている問題は、そういうような客観的な情勢の中にあるのだから、二十一条というような、そういうむちゃなことはしないのだと、あくまで良心的に話し合いをして、そうしてお互いに再建計画団体なんというものはいいものじゃないのだから、早くこれをやるようにするのだと、このいずれかであるならば、私はこれは了承できると思う。そういうような意味合いで、実は大臣にはしつこいほどお願いをしておるのですが、何か今二十一条を出さないのだということを言明してしまうと、知事たちがやらなくなってしまうからという、この考え方は、この際はまだ早いのではないか。もう少し三十四年度の見通しがついてからやったっておそくはないのであって、そういうようにやる時期ではないので、そういうような意味合いからも、この際は二十一条のようなむちゃなことは——むちゃということは言いませんが、二十一条のようなそういうことは考えていないのだと、あくまで話し合いのうちにやっていきたいのだと、まあ将来のことは別としても、今やっているのはそうだと、そのくらいは大臣として私はやってもらうのが、それこそ自治庁長官の役割の一番大きな問題ではないかと、こういうように考えるわけです。そこで、大臣には、しつこいようですが、もう一ぺんその点についての御考慮を願った言明がほしいというか、お答えがほしいと、私はそう思うわけなんですがね。
  89. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 御趣旨の点はよくわかりました。まあ従来もああいう問題がありますので、私ども、できるだけ将来地方団体側の御意見を十分尊重いたしまして、無理のないように、お互いに話し合って、何と申しますか、感情の上において対立の生ずることのないように、御趣旨を十分尊重いたしまして折衝を進めたいと考えております。     —————————————
  90. 田中啓一

    委員長田中啓一君) 次に、勤務評定に関する問題を議題に供します。
  91. 吉江勝保

    吉江勝保君 私しばらく地方行政の常任委員会からはずれておりましたが、きょうは古巣に戻って参りまして質問をさしていただきますので、まことにうれしく存じますが、今日、国内におきまして国民の非常に深い関心を持っております学校の教職員に対しまする勤務評定の実施につきましては、日教組が絶対反対の闘争を開始いたしておりますることは、すでに御承知のことでありまして、こういうような混乱がどこから起ってきておるかということにつきましてお尋ねをいたし、さらにこの問題につきまして、各地におきまして警察の取締りを受けまするような事案が起っており、その事案があるいは警察の行き過ぎではないかというような声も聞くのでありまして、昨日の衆議院の文教委員会におきましては、相当具体的な例をあげられまして、特に和歌山の事件におきまして警察官の行き過ぎの行為が質問されておりましたが、そういうような警察取締りの点につきましても、地方行政の担当でありまするので、質問を二、三させていただきたいと思います。  最初に、この勤務評定の問題でありまするが、この勤務評定の施行につきましては、灘尾文部大臣におかれましては、常に、これは国の行政行為であると、こういう点を明確にされまして、いわゆる職員団体団体交渉の対象にはならないのだと、国の法律できまりました行政を施行いたしておりまするので、それに対しまするところの反対の意見があれば、これはどういう方面におきましても反対の意見を出しますることはよろしいが、公務員といたしましてこれに反対いたしまする限度があることもおっしゃっておるのであります。この反対阻止闘争というものが、今日ではだんだんと模糊といたしまして、こういうような国の行政に対しましても、多数の者で反対をすれば、力関係でこの行政が阻止できるのであると、力で阻止ができるのであると、泥沼に入ってきておると、これは無理押しをしておるところの日教組並びに総評のやり方もよくないが、しかし一方的にこれを強行しようとする文部当局においてもまた考えるべきではないかというような意見が聞かれるのでありまするが、こういうような意見が起ってきまするのは、これが団体交渉の対象になるような問題であるかのごとくに扱われてきておるところに大きな過誤が生じてきておるのではないかと思うのでありまして、国の行政行為であれば、この行政行為をただしまする道というものはおのずから明白にあるのでありまして、こういう点におきましては、特に地方行政のこの委員会におきまして明確にしていただきたいと思うのであります。  この勤務評定の施行につきましては、すでに昭和二十二年、時のアメリカの対日教育制度顧問団のフーバーでありましたか、団長になりまして参りまして、日本の公務員制度を検討いたしまして、そしてそれを骨子にいたしまして、時の片山内閣にこれを勧めまして、片山内閣がこれを採用いたしまして作りましたものが、日本におきまする最初の公務員制度を取り入れました国家公務員法でありますることは、すでに御承知の通りでありまして、従って、この勤務評定の問題というものは、文教面よりも、もとを申しますというと国家公務員、地方公務員のこの法律を担当いたしまするところの主管の大臣でありまする自治庁の長官が、最もそのもとをたばねておられるものではないかと思うのでありまして、文部大臣は、しばしばこの勤務評定の実施というものは国の行政行為であって、これを阻害する者は、地方公務員法第三十七条でありまするか、そういうものに違反になるというようなことも、たびたび明白に言っておられるのでありますが、しかしこの国家公務員法、あるいは特に地方公務員法の法の運営につきまして、あるいは公務員制度につきまして、勤評制度につきまして、勤務評定の実施というものがどういう性格のものであるか、これに反対する場合におきましては、公務員としてはどういうような態度であるべきかというような点につきましては、主管の大臣でありまするところの自治庁長官の方におきまして、これを明確にしていただきたいと思うのであります。  以上、最初に御質問申し上げます。
  92. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) ただいまの件につきましては、お話しのように地方公務員法第四十条に明らかに規定されておりまして、「任命権者は、職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果に応じた措置を講じなければならない。」、こういう規定が設けられておりまして、これに基きましてそれぞれ地方公務員の勤務成績の評定をなさなければならないことになっており、各地方のそれぞれの任命権者は、この法律に基きまして職員の勤務評定をしなければならぬ、現に各地方公共団体におきましてもこの法律の規定に基きまして勤務評定を実施いたしておるのであります。実際問題といたしましては、まだ実施に至っていないところも若干あるのでありますが、しかし、おおむねすでに勤務評定は実施いたしており、また実施の段階に至っていない地方公共団体に対しましては、自治庁といたしまして、同法第五十九条の規定に基きまして、これらの実施してない団体がすみやかに第四十条に基きまして勤務評定を実施するように適切な指導、技術的な助言、これを現にいたしておるのであります。
  93. 吉江勝保

    吉江勝保君 実施の進められておりまする点につきまして御答弁がありましたが、最初に、私は一番今日問題の混乱を生じておりまするのは、この勤務評定の実施ということが、国のこれが行政行為であるという点につきまして、たびたび灘尾文部大臣は明白に言っておられるのでありまして、もちろん、申し上げるまでもなく、自治庁長官は、こういう公務員法の担当でありますので、その性質につきましてさようにお考えになっておりますることとは存じまするが、これが勤務条件に対しまして団体交渉の対象になるかのごとくにすでに紛淆を招いておりまして、集団交渉等によりましてこの勤務評定を阻止しようというような傾向に移り変りつつありまするので、そういう過誤を正しまするためには、まず根本におきまして、勤務評定というものがいかなる性格のものであるかということを最初に御質問申し上げたわけであります。
  94. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 申し上げるまでもなく、勤務評定は、これは全く人事管理上の問題であります。従いまして、いわゆる地方公務員法にいう勤務条件ではないと私ども考えております。従って、職員団体の交渉事項ではないと、かように存じております。あくまでもこれは人事管理上の問題と、かように考えております。
  95. 吉江勝保

    吉江勝保君 人事管理上の問題、非常に、私がはっきり申しまするのは、国の行政行為であるという面をはっきりおっしゃっていただきたいのでありまして、これは大臣が、事項であるというようなそういう点でなしに、私はその点につきまして、これは国の行政行為である、自治庁におきましては地方にいろいろな行政行為をさせておられるのでありまするが、そういうようにまず第一に性格を明確にお願いをいたしたいと思うのであります。
  96. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 法律に規定されておりますることを実施するのでありまして、これは法律施行上の問題と、かように考えております。
  97. 吉江勝保

    吉江勝保君 法律施行の行為である、こういう御答弁でありまするので、それはたびたびお聞きいたしましたので、大体わかりましたが、私が御質問申し上げておりまする行政行為であるということの御答弁になったことと了承をいたします。(「とんでもない話だ。」「委員長関連」と呼ぶ者あり)
  98. 田中啓一

    委員長田中啓一君) 御静粛に願います。
  99. 吉江勝保

    吉江勝保君 これがまず第一に問題を明らかにいたします点でありますので、これがはっきりいたしませんと、そこに今日、団体交渉の対象になってくるように、あるいはこういう国の行為に対しまして、あるいは地方の教育委員会の行為に対しまする反対闘争というものが、これがあたかも力関係でどちらにでも移るというような紛淆を生じてきておりますので、私は次の段階におきましては、こういう国の行政行為に対しまして、公務員たる地位にあります者が、もしこれに反対の意見を持ちまする場合には、どういうような手段方法が許されておるか、今日私どもが了承いたしておりまするのは、公務員は職員団体とされておりまして、これは労働組合ではないのでありまして、職員団体というものがなし得ます限度というものは、これはきめられておると思うのであります。今日の世間の論評を見ましても、こういうような性格がはっきりいたしませんので、そこにあるいは職員団体といたしましても、労働組合のような行為を見ましたり、あるいは政治行動に出て参る。しかも、それさえあるいは力関係であれば差しつかえないのではないかというような誤解が世間に生まれておるのでありまして、こういう点を明らかにいたしまするのが、私は、地方行政委員会におきましては最も大事な点ではないかと思うのであります。こういうような職員団体というものがなし得まする限度というもの、こういう点につきまして明確な御説明をいただきたいと思うのであります。
  100. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 御承知のごとく、公務員法によって職員団体というものは認められておりますが、言うまでもなく、これは労働法の労働団体、労働組合とは違うのでありまして、従って、労働組合と同じような考え方に立ったあり方は私どもは認めらるべきものではないと、かように存じております。あくまでも職員団体としての立場に立ってのことしか私どもは許さるべきものではない、かように存じております。
  101. 吉江勝保

    吉江勝保君 自治庁長官からは大体原則的にお伺いいたしましたので、今度話を教職員の方に移しまして、地方公務員であります教員が、もし勤務評定の実施に心よからぬと申しますか、反対の意向を持ちましたときには、教職員といたしまして、地方公務員の立場にあります者は、どういう限度までが許されておりまする行動であるかを文部大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
  102. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 先ほど来お話の通りに、私はこの勤務評定の実施という問題は、いわゆる団体交渉の対象にはならぬと、こういうふうに考えておる次第であります。勤務評定という事柄について国民がどういう考え方を持っているか、どういう意見を持つか、これは自由だと思います。従って、公務員が勤務評定という事柄に対しまして反対の意見を持つことも御自由だろうと思うのであります。賛成の意見を持つことが自由であると同様であります。私はさような際に、意見として公務員が何らかの意見を持ち、それを表明せられ、あるいは教育公務員の場合におきましては、関係当局に対しまして、自分がこういう意見を持つというようなことを言われることは、何ら妨げるところはないと思うのでありますが、これが実施については、法に基いて適法に権限のある機関でもってやっていくという場合におきましては、これは認めてもらわなければ困る。もし法律が悪いというのでありますならば、その法律改正について意見を述べたり、あるいは国会を通じてその改正を求めていくとかいうようなことは、これは自由だと思うのでありますが、問題は、現在やっておりますように、国の法律に基きまして権限のある教育委員会が適法に物事をやっております場合には、これは認めてもらわなければならない、こういうふうに考えております。
  103. 吉江勝保

    吉江勝保君 ただいま文部大臣の御答弁によりましてある程度了承いたしたのでありますが、私が幾らか意見を申しますれば、反対の意見を持つことは自由である。しかしそれにつきまして、その行動に現わしまする場合には、法治国であります以上は、正当の政治活動と申しまするか、立法の府におきまして法律改正に持っていくのが筋道であって、行政行為そのものを実力で阻止するということは許されないものであるということを御答弁いただいたように聞くのでありまするが、間違いはございませんですか。
  104. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) その通りであります。
  105. 吉江勝保

    吉江勝保君 そこで、私は引き続きまして法務大臣にこういうような行き過ぎました行為をいたしましたときには、その筋道を明かにいたしまして、法務大臣は一国の法をあずかっておられますので、これを維持しますためには、公務員がその覊絆を越えました行動、たとえて申しますれば、勤務評定の実施に当りまして、実力をもって教育委員を長時間にわたりましてこれを集団交渉、監禁をいたしまして、そしてその実施を実力で阻止していく、こういうような行為に出ましたような場合、あるいはそういうような行為をやりますることを中央で指令をいたしますような場合、こういうような場合に、果してそれが、ただいま自治庁長官あるいは文部大臣お話しになりましたように、許されない公務員の行為であるといたしますならば、どういうような規制、どういうような取締りを今日なさろうといたしておるのでありましょうか、それをお聞きいたしたい。
  106. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 先ほど来、いろいろとお話があるわけでございますが、私の立場といたしましては、法の秩序を維持するということが私どもの職分でございますから、法律の各条章に照らしまして、これに違反がある、特に罰条に触れるというような行動のあります場合におきましては、捜査を行いまして、必要な措置をとって参るというのが、申すまでもございませんが、私どもの態度でございます。現に、この勤評問題ということが一つの大きな問題になり、まことに遺憾なことでありますが、本年になりましてからも、去る五月以来いろいろと事件が起っております。また捜査もいたしておりますことは御承知の通りでございますが、今後もさような態度を厳格にとって参りたい、かように考えております。
  107. 吉江勝保

    吉江勝保君 抽象的な質問ではお答えもむずかしかろうと存じますので、ここで一、二具体的に例をあげまして法務大臣に御質問を申し上げたいと思います。  今日、最初申しましたように、全国民の視聴を集めておりまする勤務評定の反対闘争の渦が引き起しました幾多の悲惨な事例は枚挙にいとまがないと申しまするか、各都道府県に起っておるのであります。しかし、その中におきまして、私は最も悲惨な事件の一つといたしまして、教育長が自殺をしたという事件をここでお尋ねいたしたいのであります。これは三重県の四日市市の教育委員長、染川教育委員長が、去る七月の五日、午後の五時に、自分の教育長の隣りの部屋で、教育課におきまして帽子掛けと申しまするか、服掛の陰にコードをもちまして首をしめまして死んだ事件であります。この事件に対しまして、私どもが承知いたしておりまする経過を申し上げてみますというと、すでに三重県におきましては勤務評定の実施を県の教育委員会決定をいたしまして、これを各市町村の教育委員会に示達をいたしまして、それに基きまして四日市の市の教育委員会におきましては協議の上に、七月一日にこれを決定するということになりました。七月の一日に教育委員会の部屋におきまして、教育委員全員が集まりまして、そしてこの県の方針に従いまして勤務評定の実施を決定し、さらにそれを各校長に示達をすることになったのでありますが、この決定を見ましたのが七月の一日の午後の一時からの会議でありまするが、引き続きまして三時から翌朝の四時三十分まで十三時間半というものは、その教育委員会の会議で決定をいたしましたその委員会が、三四教組の人たち——三重県のこの四日市の教組の人たちに取り囲まれまして、十三時間三十分というものは監禁をされた状態になったのでありまして、ついにその場におきまして、一たん決定いたしましたものがくつがえされるというような事態になっておるのであります。こういうようなことが、染川教育長が自殺をいたしまするあるいは一つの原因になっておるのではないかと思うのであります。しかも十三時間三十分の間というものはドアを締めまして、外へも出さなければ食事も取らさないというようなことが、果して今日の正当な団体交渉と申しましようか、交渉として許されるべきものであるかどうか、私はこういうことが、今日最も国民の間から嫌悪されておりまする、強く非難されておりまする集団の暴力ではないかと思うのでありまして、こういうような事案につきまして、法務省におきましては御調査になっておられるかどうか。  さらにこの結果というものが、——あまり詳しく申しましても時間を取りまするので、七月の五日に自殺をいたすのでありますが、その前日の七月の四日には、たびたびの会合があるのでありまするが、その前日にもまた三四教組との集団交渉と申しまするかを加えられまして、その席におきましては——社会会館でやったんでありますが、三四教組の側の者は約三百人、この人たちは教組ばかりでなしに、いろいろな組合の人たちが参加をいたしておるのでありまするが、こういう三百名の人たちが数名の教育委員を囲みまして、そこで一人々々の教育委員をつるし上げをいたしておる。一たん決定をいたしましたものをそこでまたくつがえさすような脅迫を加えた、こういうように見受けられるのであります。ことに、この席上におきましては、染川教育長の娘でありまする、長女でありまする教員を、いやだというのをこれを連れ出しまして、その集団交渉の席に引き出し、さらに後方におりましたものを、その前列にまで、親の前にこれを置かしておるというようなことを聞くのであります。また、こういうような事件の後におきまして、お父さんが自殺をいたしましたそのせつなにおきまして、この娘さんは、教組がお父さんを殺したのだ、こういうことも漏らしておるようにも聞いております。また、その娘さんの夫でありまする人の兄さんというのが、県の教組の幹部であります、執行委員であります。小塚と申しまするが、これは県の教組の幹部でありまして、この娘婿の兄が采配を振っておるのでありますが、染川教育長が自殺をいたしましたときに、この弟でありまする長女の婿は、兄貴に向って、兄貴どうしてくれるのだといって、死骸の前で泣いたそうであります。  こういうような事件が、今次の勤務評定の闘争の渦の中に起っておるのでありまして、しかも、いち早く教組側におきましてはPRをいたしまして、これは文部省が強硬に一方的にやるからこういう惨悲な事件が起るのだ、こういうようなPRをいたしたのであります。しかし、その後におきまして、この教組の人たちが、慰霊をするというて寄金を集めまして、弔慰をするというようなことも計画をしたそうでありますが、今日調べてみますと、まだそういうような具体的な結果にはきていないようでありますが、地元に行って聞いてみますと、実に悲惨なことに目をおおうておるのであります。私は、こういうような、集団交渉から始まりまして、教育長が自殺をするというような事件にまで追い込まれておる事件を、法務省におきましてはどういうような御調査をなさっておるか、その状況を、おわかりの程度一つお知らせをいただきたいと思うのであります。
  108. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) ただいま御指摘になりました事件は、私も全くこれは悲痛な事件であると考えております。法務省といたしましては、教育長が不幸にしてなくなられましてから以後、地元の法務局等を通じまして、詳細にこの事案を調べておるのでございます。常識的に申しまして、事件が起りましてから今日まで、かなり長い日数がたっておりまして、いろいろと御不満や御不審の点もあろうかと察せられるのでありまするが、何分、御当人が自殺をなさって、なくなっておるというようなこともございまするので、調査に相当の日数がかかり、また、率直に申しますと、現地当局の調査に不十分の点も見受けられるように考えましたので、本省からも特に係官を派遣いたしまして、これには、私としてははっきりしたけじめをつけたいと考えております。調査の結果、法の定めるところによって、結果によりまして十分の措置をとりたいと考えております。  なお、最近の世相から申しまして、かくのごとく悲痛な事件が起るということ、あるいはそこまでいかなくても、現に和歌山県等におきましても、御承知のようないろいろの気の毒なことが起っております。私は、勤評問題につきましても、きぜんたる自分の意見を堂々と述べる、あるいは管理側の立場にある人が、非常な困難、不当な闘争に対してきぜんとした態度で立って、職責を全うしようとする人が、不幸にして人権を侵害されるというようなことがありますことは遺憾にたえないわけでございまして、人権擁護の問題については、特にこういったような点につきまして、今後十分の努力を傾倒して参りたいと考えております。
  109. 吉江勝保

    吉江勝保君 私は、こういう実例を幾つかあげたいのでありますが、一応、実例といたしましてはこの一つを申しまして、法務省におきましても、人権擁護局におきましても、どうか地元の単なる報告に終らずに、実地の調査を、こういう記事が出ましたならば、すでに新聞も大きく報道いたしておりまするので、本部の方から人を派遣されまして、詳細に御調査を願いたい。この事件のみではないのでありまして、ほかにも多々あるのでありますが、一応この事件一つを申しまするが、どうか十分な調査をお遂げいただきまして、人権の保護に遺憾のないように御尽力をお願い申し上げておきます。  続きまして、こういうような問題が起りますることは、私は学校の先生方、いわゆる教員の人たちのほとんど全部の人たちが、非常に残念に思っておられるのではないかと思うのでありまして、今日の日教組——日教組と申しまするか、その数多い先生方が、皆が何もこういうような過激な手段をとることに同意をされておるものとは察せられないのであります。余談にわたりますが、私本年の一月の二十日に、日本・インドネシアの賠償協定の調印に藤山外務大臣の顧問といたしましてジャカルタに参りました機会に、インドネシア政府の文部大臣にも会いまして、インドネシアの教員の団体というもの、組合というものがどういうような動きをしておるか、組織されておるかということをお尋ねいたしたのでありまするが、その場合に、インドネシアの教員の団体というものは幾つもあるのでありまして、しかもまた、それがそれぞれの政治活動におきましては、国民党もあり、社会党もあり、共産党もありまするが、それぞれの政党の支持をいたしておるのであります。こういうように分れておるのが現状である。私に逆問されまして、日本の教職員はどうであるかと聞かれましたときに、日本の教職員が一つに集まって、しかもそれが政治活動の際に、指令で動いておるというような、こういう話をいたしましたら、プリヨノ文部大臣は、実に意外に驚かれたのであります。  こういう実例は、何も私が申し上げるまでもなく、世界の教員組合の連盟の大会に出られました日教組の派遣されました中央の人たちが、この世界の——これはソ連圏の教員でやっております会でございまするが、その世界教員組合の連盟共産党の支配を受けておりますこの大会が二度ほど今日開かれておりまするが、そのつど中央の人たちが、十七名あるいは十五名というように、多数出席をされておりまして、そこでいつも誇らしげに言うておられまするのは、日本の教員は五十万おる、五十万を全部自分らが支配をしておる。こういうことを言うておられまして、世界の各国にも驚かれておるのであります。  私は、職員団体であればこそ、五十万の職員が一つにこれはなるのでありまして、これが一つのイデオロギー、思想というものに動かされ、あるいは一つの政党を支持するというような、こういう団体になるならば、こういう姿はあり得ないことだと思うのであります。そういうような考えをいたしておりまするものは、今日の日教組の行き方につきましては、教員の人たちが心からついておられるものとは思えないのであります。しかし、そのやっておりますることは、先刻来も申しまするように、各地におきまして、中央の指令によりまして、非常に行き過ぎた行動が起っておるのであります。たとえば、先ほど法務大臣がちょっと申されました和歌山の今次の闘争におきまして、全県下の教員に十割の休暇をとらしておる、こういうことはでき得ないことなんであります。実際は、相当多くの人が脱落をいたしておりまするが、こういうことをやらそうとして、学校の正常な運営を阻害するような行為をやらそうとすることを、もし中央におきまして、あるいは日教組でありまするか、あるいは総評でありまするか、そういうところにおきまして、こういう謀議をし、こういうような指令をいたしました場合におきましては、現実にこれはいかなる法に触れるものでありましょうか。私は、これをお尋ねいたしまするのは、公務執行妨害で、和歌山の十五日、十六日の事件は、数多くの教員の人たちと申しまするか、参加いたしました人たちが、ジグザグ行進等の場合に、警察官の制止に会いまして、相当多数のけが人を出しておるのであります。非常に私はお気の毒にたえないのであります。その行為の違法でありますることは別といたしましても、こういうようなけがを受けられました方にも、それぞれ両親もあり子供もあるのでありまして、そういう人たちのこういう負傷を見まするときに、まことに遺憾にたえないのでありまするが、しかし、問題は、そういう公務執行妨害したということで検挙をされましたり、そういうような罪に問われますることよりも、問題は、こういうある意味におきましてあまり深く知らない人たち、あるいは中には事情をよく知っておられる方もあるかとも思いまするが、知らない人たち、大ぜいの人たちを罪に追い込んでおるような指令を出しておりまする人たち、こういう人たちに対しまして根本的な対策というものがなければ、全国の教員というものは次々に罪に問われ、けが人になっていくのではないかと心配するのであります。そういう点におきまして、学校の正常な運営を阻害をいたしまするような行為を——具体的に申しまするならば、校長の許可も受けなかったり、あるいは校長が一緒になって許可をいたしましても、正常な学校の運営を阻害いたしまするような、そういう行為をあおりそそのかしますような行為をいたしまするものは、これは単独罪といたしまして刑法の罪になるのかどうかという点につきまして、法務大臣の明確な御所見を承わりたいと存じます。
  110. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) ただいまの御質問は非常に広範にわたっておりますので一々詳細にお答えを申し上げたいのでございますが、まず、ただいまの御質問の中で、現地における公務執行妨害あるいはそれに類するような問題よりも、もっと根本的にこういったようなことが起らないようにする必要があるのではないか、それに対して法務当局としてはどういう考えでおるのかというお尋ねにまず第一にお答えいたしたいと思いますが、具体的な例を申し上げまするとただいまも御指摘がございましたように、休暇の承認というようなことが全然ございませんのに、一斉に共同謀議によって休暇闘争と称して授業を放棄するということは、明白な争議行為でございます。従って、これをあおりそそのかすことは、地方公務員法のそれぞれの条項すなわち三十七条あるいは六十一条に違反するのでございます。従ってこういう見解から、和歌山に限らず、御承知のように都教組あるいは福岡県教組その他に対しましては、法の命ずるところに従いまして、検察庁といたしましては、所要の措置を講じておることは御承知の通りでございます。  それから、この一斉休暇闘争というようなことについて、さらにそれならば、校長が休暇を承認すれば違反にならないのではないかというようなことが当然一応の問題になるかと思いまするけれども、すでに権限ある者の承認がないのにあえて争議行為を行おうとする意図をもってあおりそそのかす等の行為をすれば、ただいま申し上げましたような犯罪行為になるのでありまして、かりに、その後におきましても、たまたま権限のある者の承認が形式的にあったからといいまして、一たん成立した犯罪が消滅するものではございません。  それから、私はさらに進んで、たとえば情報等によりますと、こういうこともあり得るかと思うのでありますが、たとえば、日教組等が今度は学校長といったような人たちに対しまして、何でもかんでも一斉休暇を許可すべきである、事情のいかんを問わず一斉休暇を承認すべしというような趣旨の指令をし、あおりそそのかしたという事実が明白で、証拠上もこれが明確に断定されるという事実が確認されるというような場合におきましては、やはり地方公務員法第六十一条の罰則に該当するものである、こういうような見解でございます。ただ、申すまでもこれはございませんが、ただいま申しました点は、情報等により、かりにそういう事態があった場合ということを申し上げておるのでありまして、具体的の事案につきましては、個々の場合において捜査その他のやり方が異なるべきことは申すまでもございませんし、また事柄の性質上、今後、そういった場合に、どういうふうに現実に発動するかということについては、ここに事柄の性質上、明白にお答えはできないと思いますが、法律の政府としての解釈は、以上申し上げました通りでございまして、これによりまして、私どもとしては大多数の国民の要望にこたえまして、検察権としては、国民の信頼や期待にこたえ得るようにやって参りたい、かように考えておる次第であります。
  111. 吉江勝保

    吉江勝保君 私は、和歌山の事件におきまして、罪に——罪と申しますか、負傷を負うた人たちあるいは今日逮捕されておりまする人たち、あるいは起訴されるような事態になりまする人たちに、まことにお気の毒に思うのでありまするが、こういうような事態につきましての一応真相と申しまするか、新聞にはいろいろと書かれており、また、昨日の衆議院の文教委員会におきましては、文教委員会ではありまするが、こういう警察の取締り等につきまして相当質問があったのであります。きょうは、参議院におきましては、地方行政委員会でありまして、警察を主管をといいますか、担当をいたしておりまする常任委員会でありますので、警察庁長官の方から、和歌山の流血デモと、新聞の書いておりまする流血デモ事件と申しまするか、この事件につきまして、差しつかえがなかったら、できるだけ詳細に御報告をいただきたいと存じます。
  112. 江口俊男

    説明員(江口俊男君) 長官がただいまよんどころない用事で退室いたしましたので、警備局長でございまするが、かわってお答え申し上げます。  ただいまお話しのございました和歌山におきまする勤評阻止のためのデモ行進から発しました事案につきまして詳細にというお話でございまするが、御期待に浴いまするか、ただいままでわれわれの手元でわかっておりまする範囲につきまして御報告を申し上げます。  八月の十五日及び八月の十六日におきまする民主教育擁護国民大会の状況でございまするが、これは日教組が九月中旬から本格的に実力行使を行おうという前段の闘争の一環といたしまして、民主教育を守る会、これは御承知のように総評とか日教組が中心に相なっておる会でございまするが、この会の主催により行われました大会でございまして、八月十五日、十六日の両日にわたり和歌山県下二十五カ所に四万六千名を集めましてこれを行おうという計画であったようでございます。全国の総評傘下の各単産あるいは地方の代表、日教組、文化人というものを、その計画によりますと、二万二千名、和歌山県下の教組、地評、父兄等を二万四千人動員する。合せて四万六千人の動員におり大々的に勤評阻止の決起大会及びそれに続く示威運動をやろうという計画であったのであります。ところが、それが実際どう行われたかということを申し上げますというと、流血の惨事を起した十六日の前提として、十五日のことから申し上げまするが、第一日の十五日は、予定は十時でございましたけれども、実際上は午後一時から五時までの間、二十五カ所の予定のところを十六カ所でいわゆる分散会——あちこちに分れていろいろな会議を持っておるのであります。和歌山市内十五カ所、橋本市におきまして一カ所、合せて十六カ所でいわゆる分散会——分れ散る会を行っております。その後、和歌山市を初め五市一町におきまして決起大会、十六カ所に分散しておったものが、和歌山市ほか五市一町に集まりまして決起大会を行いまして、その後デモ行進が行われたのであります。その参加人員は、主催者の発表あるいは報道関係の報道と、いろいろ数字に違いがございます。私どもとして警察当局から報告を寄せられました数は、これは一々どうして数えたかということについては多少の疑問はございまするけれども、その日の参加者は一万五百七十七名、四万六千名の動員計画に対し、参加人員は一万五百七十七名ということに相なっております。従いまして、計画に対し二二・五%でございます。しかも一万幾らという数字は、デモに参加をした数字でございまして、午後一時から始まった分散会にはさらにそれより少い数字でございます。なお、特徴といたしましては、他県から和歌山に入られました方々が多い。これも一万数百名のうちで六千六百名余に上っておりまするから、全体の六割三分以上が和歌山県以外のところからこの大会に参加をされたというような事情でございます。  また、第二日の十六日も、この大会といたしましては、教育を守る会としての主催といたしましては、和歌山市で二千八百名が九ヵ所に分れて分散会をやっておられます。従いまして、この会自身の行動につきましては、十五日のデモ及び十六日の分散会、この両者を合わせましても、そう大した混乱は起しておりません。しかしながら、後に述べまするように、十五日の晩のデモ行進も十六日のものほど問題は起しておりませんけれども、多少の場所につきましてジグザグ行進をやりました際に、警察官がこれを出て規制をいたす、その際にやはり旗ざお等に当りましてけが人が出たという状態でありまして、全然問題がなかったという意味ではございませんが、十六日に比べまして、十六日のいわゆる学生、青年を中心にしたデモに比較しいたしまする場合、これはやはり世間の目から、それと比較しては問題がなかったというふうに考えられておる事柄でございます。しかしながら、ただいま申し上げたように、全然事件がなかったという意味でもございませんので、順序として十五日のデモのことを多少申し上げたいと思います。  八月十五日、これは和歌山市内のことでありますが、大会——いわゆる決起大会が終了いたしましたあと、和歌山商業高等学校の門の前から参加者が約七千七百名、八千名近くのデモ隊でございます。これが午後六時十分から本町公園横まで三、四キロの間をデモ行進を行なっておりまするが、全学連、国鉄を主といたしまする集団が、途中、医大の病院の前ほか八ヵ所で、まあ二、三分の短かい時間でありまするが、二、三分間にわたり十五メートル幅の道路一ぱいになったり、あるいは場合によっては多少の余地を残し、三分の二というような程度のジグザグもございましたが、そういう程度のことを行なっております。そのために電車及び自動車の通行を阻害したというような場所が出ましたので、これらの場所におきましては交通整理の警察官によりましてこれを圧縮、規制をいたしております。ちなみに十五日のこのデモ行進は、先ほど申し上げましたように、計画において、これは県内全部で四万六千名、それから示威行進の許可届の内容におきましても三万六千名でございましたか、八千名でございましたか、相当数が出るということで、事件が起るという意味合いではなくても、あの和歌山県としましては、和歌山県の警察全部から人間を呼び出してきましても、五百名あるいは千名という警備の要員を抜き出すということは非常に困難で、そういう意味から、事件を予測したわけではないけれども、十五日は人数が多いという意味で、特に近畿管区学校から四百十八名の応援を得て、総数六百四十九名でこの警戒に当っておるのであります。ところが、先ほど申し上げたように、その日は多少のジグザグはあったけれども、事件になるようなことはなく、警察側に、旗ざおに当って十七名がけがをした、一人脳しんとうを起してひっくり返ったのがございまするが、これは大した傷なく終っております。デモ隊側におきましても十二名の負傷者が出たというふうに発表をされておりまするが、これはその数及びその程度について確認はいたしておりません。しかしながら、要するにこの問題——その日におきましては両者に大した事柄はなかったというふうにわれわれ承知いたしておるのであります。  ところで、次に御質問のおそらく重点であろうかと考えまするが、翌八月十六日におきまする、これは、きのうの大会に関連した会ではございまするが、大会そのものの内容ではございません。それを機会に行われた「勤務評定阻止、平和と民主主義を守る青年、婦人、学生全国大会」というものが別個に行われております。この和歌山におきまする八月十五日の勤務評定反対国民大会の行事の一環として行われたことには間違いございませんが、今申し上げたような名前の別の集会が行われまして、この中心は——この名前は今申し上げたような「勤務評定阻止、平和と民主主義を守る青年、婦人、学生全国大会」というのでありまするが、その中心は全学連及び社会党の青年部、あるいはいろんな女子の団体、中央青年学生共闘会議の内容をなしておりまする総評の青婦協あるいは全青婦、全学連、社会党青年部、民主青年同盟、目農青年部準備会と、こういうものが内容をなしておりまするが、約九百名で会議を持ちまして、そうして、これは和歌山市の城北小学校というところで集まって会議を持ったのでありまするが、これが午後四時から七時までの間デモをやりたいという許可を前もってとっておったのであります。ところが、会議が六時二十分ごろまでございまして、デモをやったのは六時二十三分からデモに移っております。その間いろいろのことがございまするが、あとで申し上げます。一応、筋を申し上げますというと、六時二十三分からデモに移り、その後デモ隊の不法行為を規制しようとする警察官を旗ざを、丸太でなぐるというような暴行を加えて混乱に陥ったほか、さらにそこで検挙をされておりまするから、その検挙者の釈放を要求しまして、和歌山の西警察署に押しかけてすわり込みに入った。そのデモ隊を排除しようとする警察官との間にまた摩擦を起しまして、以上の実力規制をした場所と、実力排除をやった警察前の広場とにおきまして、双方に相当数の負傷者を出したという事件がただいま御質問になりました事柄の大筋でございます。  そこでこの会議の状況を以下多少詳しく申し上げてみたいと考えます。日時は御承知のように八月の十六日午前十時から午後六時二十分までが会議、場所は和歌山市の城北小学校、参加団体は、先ほど申し上げたような青年、学生、婦人というようなものを中心とする九百名、討議は統一行動の組み方などという事柄について討議をしたようであります。それが大会の状況で、大会の済んだあとのデモ行進の状況は、公安条例によりまするデモ行進の許可は届けてある午後四時から七時までの間として許可をされておったのであります。ところが、今申し上げたように、大会がなかなか済まない。済んだのが六時二十分であります。その間に所轄署長は、時間がなくなるということを心配しまして、時間がなくなればやはり時間外ということでデモ隊との間に摩擦が起るということを心配いたしまして、どうしても一時間くらいはかかると、こう見にゃならぬので、六時に大会の方に、デモをやるなら早くやらなければ時間切れになるぞということを警告いたしております。しかしながら今いったように、六時二十分までかかって、六時二十三分からデモに移ったような次第であります。そして六時二十三分、全学連を先頭にしまして、日教組の青年部長の井田保という人が指揮をとって、約五百名が示威行進に移ったわけであります。大会には九百名で示威行進は五百名、これは多少他府県から参られた人のうちで脱落者が出たために数が減っております。これが会場を出発いたしまして、まず一番目に市電の宇治停留所というところがあるそうでありますが、そこ附近で電車の軌道の上で約四分間ジグザグ行進をしています。第一回、ここで電車が九台その間立往生をしたというわけであります。しかしながら、そこでは警察は規制に入っておりません。四分間で、時間が短かったためでもありましょう。まあ済むのを待って、手をつけておりません。ところが、午後の六時五十三分ごろ、本町二丁目、これは御存じの方もございましょうが、和歌山市では最も繁華な所でありまするが、その付近に差しかかるや再び旗ざおを、この旗ざおは各団体ごとに全部で二十五本くらいを持っておる。長さはいずれも一間半くらいあったようであります。これを横にかまえまして、道幅、先ほどいったように、これは十五メートルくらいございますが、そこでは道幅一ぱいにジグザグ行進を始めたのであります。ここで警察としては広報車を使って何べんも警告をいたしておりまするが、これを無視して、約十二分間ここではジグザグ行進が行われております。当日はちょうどお盆の日で人出も相当ございまして、ジグザグ行進によって交通が著しく阻害されたというふうに警察は認定いたしたわけであります。この間電車が四台、バスが七台、自動車が三十五台というものが両方から通れずに、このジグザグ行進の前後に停滞したというような状況でございました。  ところが午後の六時五十四分ごろ、これは派生的なことでございまするが、たまたま同時に起ったために、いろいろ問題になりますので申し上げますが、スクーターでその本町二丁目の所をデモ隊と並行して南の方に行こうとした、これは氏名がわかりませんけれども、普通の通行者でございまするが、これがデモ隊と並行して南進しようとしましたのに対し、そのデモ隊員が、じゃまだといってスクーターをけったということであります。ところが、このけられたスクーターに乗っておった男が、まあ元気な人といいますか、非常に憤慨しまして、スクーターをおりて、けったデモ隊員を捕えようとして飛びかかったというか、文句を言いにいったわけであります。ところが、デモ隊は人数が多いものですから、それを巻き込んでもみ合ったというような状況になりましたから、この際警察側は一個分隊が出まして、これが救出にかかっております。それからほぼ時を同じうして、その直前ということになっておりまするが、日本教育対策協議会という会の宣伝カー、これは勤務評定賛成といいますか、勤務評定反対に対して反対ということを目標にして八月八日にできた会でございまするが、その協議会の宣伝カーが、一ぺんは警察の警告によりましてデモ隊とトラブルを起すことなく行き過ぎたのですけれども、急にまた引き返してきて、徐行しながらも、道路一ぱいに広がっているデモ隊に向ってかかってきたわけであります。かかってくるといっても、スピードを増して突っ込んだというようないろいろな考え方がありますけれども、ただいままでの調べではそういう事情はありませんが、デモ隊に向って差しかかってきた。そうすると、デモ隊に押されて、一ぺん十メートルぐらいうしろに後退しております。しかしながら、さらに一たんとまったけれども、その宣伝カーがさらに角度を変えて進行しまして、やはりデモ隊の前方でありますか、あるいは横から接触をして、そのためのけが人というものは出ておりませんが、そのために旗の奪い合いというか、宣伝カーの上と下のデモ隊との間に日の丸の旗の奪い合いというような混乱が一つの現象としてたまたまその時間に起っております。そういう状況におきまして、午後六時五十五分ごろ、警備隊二百六十四名が現場に出動しまして、警じょうを横にかまえて、その混乱の収拾、ジグザグ行進の規制、制止ということに移ったのでありますが、この際に全学連、民青同などを中心とするデモ隊の者に旗ざおをもって立ち向われたわけであります。この状況は、旗ざおをもってなぐりかかる者もあれば、近くに工事場があって、丸太ん棒があったそうですが、それを投げる者もあるという状況で、警察もそれを排除しつつ、しかもデモ隊を右側の方に押しつける、そして交通ができるようにするという行為に移ったわけであります。この際抵抗しました者や、あるいは積極的に警官に対して傷害を負わした者を公務執行妨害罪と傷害罪の現行犯といたしまして三名ここで検挙をいたしました。この混乱のために双方に多くの負傷者が出た模様でありますが、デモ隊側の負傷につきましては後ほど申し上げますけれども、こちらの方で何名どのくらいの傷があったかということにつきましては、わからないのであります。そして、こういう騒ぎがあったために、デモ隊はさらに脱落者が多く、約三百名ぐらいにその後は減っております。そして、その後は道路の左側を平穏に行進をいたしております。そして午後七時に、公安条例による許可の時間がここで終るのでありますが、七時にデモ隊は医大の付属病院前に差しかかっておりましたので、警察がそこに行って、広報車をもって、時間が切れたから解散しろということを警告したのであります。  そこで七時五分ごろ、この医大病院前にデモ隊が停止しまして、今度は、三人さっきつかまったから、これの釈放要求のために警察に対して抗議せにゃならぬということで、労働歌を高唱して、その病院前で気勢を上げておったのであります。この時期におきまして見物人が一千名ほどそこに集まっておったそうでありますが、見物人の中から、ここは病院の前だ、病院の前でやかましいじゃないかというようなことや、お前たちは良識がないのか、それでも学校の先生かというような非難を浴びせかけたので、そこを引き揚げて、七時三十七分ごろ、警察署に抗議のために参っておるのであります。午後七時三十七分、まあ七時半ごろ署に参りまして、表玄関からどかどかと入ろうといたしましたけれども、警察部隊の一個小隊でそれを阻止して、入れておりません。それで午後七時四十五分ごろ、警察署前の歩道上に、警察署を背にしまして、六列横隊にすわり込んでおります。それで西警察署では、すわり込みの三百名に対しまして、マイクを通じて、そこは道路で交通のじゃまになるから早く解散するようにということを、警告の回数にして百数十回、時間にして二時間弱行なっております。その間、やはり先ほどの見物人がこちらの方にも参りまして、この場合は、あるいは五百人といい、あるいは千名といい、はっきり数えておりませんので、五百名ないし千名の見物人がそのうしろを取り巻いて、口々にデモ隊に罵声を送っております。あるいは、大きな石はその辺にはないわけでありますが、砂等をかき集めて、また、中にはピンポン玉くらいの石もあったかというふうにあとで申しておりますがそういうものを投げつけるというような行為があったので、警察はそのたびにこれを制止し、一方にはデモ隊員に対して解散を警告するという状態で、約二時間近く経過いたしました。  それから、九時二十分ごろに、先ほどの宣伝カーでデモ隊の前部と接触したという例の日本教育対策協議会の者なども、その民衆の中に交ってきて、そのデモ隊があくまでもすわり込むならば、しかも警察がちっとも何もしない、なまぬるいというようなことで、自分たちで出してやろうかというようなことまでいったような事情もあって、警察としては、片方からはなまぬるい、なぜやらぬかということや、あるいは片方では、やはりあくまでもすわり込もうというような中に立って、約二時間近く両方を制止し、しかも解散を警告しながら時間が過ぎたのであります。しかしながら、こういう状態をいつまでも続けていくということは、民衆とデモ隊との接触というか、紛争を起すおそれが十分あり、かつまた交通上の支障もこれ以上放置できないという意味合いにおきまして、九時二十五分に至って警察官は実力行使に入っております。もうその時間になるとデモ隊も約二百名に減っております。それに対しまして警察官は、いわゆるその実力排除ということになると、人数が非常によけい要るのであります。まことに丁寧に、しかも十分に排除するためには、一人当り数人の警察官が要るそうでありまするが、この場合は二百名に対しまして二百八十五名が……。もちろんこの場合は素手であります。この場合に警棒で云々というようなことを一般に伝えられている向きもございますけれども、この場合は、すわり込みを排除いたします際には警棒は使いません。むろんさげていきません。素手でこれを排除いたしております。ただ排除する人員も、今申した通り二百名に対して二百八十五名でありますから、型通りのきちんとした形で排除できないで、ある程度の、トンネルみたいなものを作って、そこに一人ずつうしろの方に送って出すというようなやり方であったようでありまするが、やはり方々でもみ合いになっております。この際うしろで見ていた民衆といいますか、そういう人々が、いつまでも警察がやらぬということで、じりじりしておった連中でございますけれども、一緒になってやはり引きずり出した者もあり、さらにうしろの方に突きやるというような行為も皆無ではなかったようでありまして、これを見ました場合におきましては、警察はそれを制止いたしておるのであります。ここでもやはり双方にけが人が出たものと思われます。そうして九時四十五分ごろすわり込みのデモの全員を排除いたしましたために、そのデモ隊は一たん、すわり込んでおった場所の筋向いの市役所前の庭に集合して、さらに三三五五、教育会館に向いました。そこで解散をしたのであります。このときは、すわり込んだ者について一名検挙をし、一名は、これは共産党員でありまするけれども、自動車を運転をしてきていて、どうしても退かない。それで交通妨害だということで任意に同行をしました上で、これは女でありましたので、すぐ釈放いたしております。従いまして、前の本町二丁目におきます実力規制の場合に、傷害及び公務執行妨害の現行犯として三名、この場合に一名というものを逮捕して、計四名がその晩としては逮捕いたしたわけであります。  負傷者の状況でありまするが、警察側に六十五名出ております、十六日の分として。そのうち二名は入院をいたさせましたが、ただいまは退院をいたしております。傷の状況等、いろいろございます。打撲傷、擦過傷、脳しんとうというようなことでいろいろございまするが、特色としては、本町二丁目の実力規制の場合は、やはり警棒で青竹を受けたということで、警棒につばがないものですから、何といいますか、手首のところのけがが相当多い。それから、実力ですわり込みを排除した際におけるけがは、やはり擦過傷や打撲傷のほかに、かみつかれた——咬傷というけがが多いようでございます。それから、デモ隊におきまするけが人は百数十名の多きに上ったというふうに報道もされ、また発表もされておりまするけれども、残念ながら、この点につきましては、私もこれは事柄のいかんを問わず、けがということについては、それが警察官側であろうとも、デモ隊側であろうとも、きわめて慎重に調べなければいかぬということで、数回の督促を現地にいたしておりますけれども、初めのうちは、どうしてもデモ隊側のけが人の数あるいはその程度ということについて知ることができない。会いに行っても断わられる、家としても会わせないというようなことで、このことにつきましては十分な調査を希望しながらも、その結果を得られていないという現状でございまして、まことにその点は残念であります。しかし、われわれの方で確認している相当なけがというものにつきましては四名ございまするし、また、この問題について、県の警察本部長並びに所轄の署長及び数十名の警察官というものを相手に告発をしておられるものの内容から見て、七人けが人が出ているということについての告発状でありますから、それはやがて検察庁の調べ等ではっきりとなるものと考えておるのであります。  以上が十六日の事案で、私たちのわかっておりまするところの大筋でありまするが、これは先ほど申し上げた十五日及び十六日に行われました国民大会の一環としての行事でございまして、国民大会そのものの進め方なり性格なりというものについて、私たちが十分の研究が足りておったか、足りなかったかというような事柄からも、この問題を惹起した、あるいはこれの処理に当って双方に多くの負傷者を出したというような事柄を引き起したのじゃなかろうかという事柄につきましては、なお検討する必要があろうかというふうに考えておるのであります。  以上で大体……。
  113. 吉江勝保

    吉江勝保君 詳細に報告を受けましたので、お聞きいただいておりまする皆さんも大へんお疲れかと存じまするが、もう一、二点重要なことをお尋ねいたしてみたいと思います。  このデモにつきましては、事前に警察側におきましても、公安条例に基きまして、あるいは公安委員会におきましても、条件をつけてこれは許しておられる。また、それを守るべきデモ隊がそれを守らずに交通の阻害をしたと、こういう点からいろいろな問題が起ってくるのでありまして、私どもは、けがの、そのことにつきましても、もちろん責任を、警察の行き過ぎを糾明もいたしたのでございまするが、こういう事態を引き起しておるその陰に、どういうような動きがあるかということを十分に御調査をいただきたいのであります。そのことにつきましては、あとでいま少し質問をいたしまするが、このデモの事件におきまして、特に問題になっております負傷が二件あるのであります。  その一つは、取材の新聞記者の妨害をしたといいますか、これに負傷させたといいますか、そういうことが報道されておるのであります。混乱と申しまするか、実力制止をやろうというような場合でありますので、そういうことにつきまして、あるいは見さかいがつかなかったというか、あるいはそういうことがある程度わかっておっても、いかんともしがたかったというようなこともあろうかと思いますが、しかしこういうような取材の新聞社の記者に対しまする態度につきましては、慎重な取扱いをされますように、十分警察におきましては平素におきましての訓練、教養というものを十分にしておいていただきたい。また、こういう場面が起りましたことにつきましては、事実の調査もしなければならぬでありましょうが、十分にそのことにつきましてのある意味におきまする遺憾の意というものも表されるのが適当ではないかと思うのです。  もう一つは、私、昨日衆議院におきまして特に印象強く受けましたのは、そのうちのけが人で、特にひどいけが人が、丸山書記長と申しましたか、十六日の日のすわり込みの際に出されましたその人に対しまして、警察が救援をしたそうでありますが、その際に本人がズボンあるいは上着等をはがされまして、そしてその本人の身体に受けておりますけがというものは、非常に悲惨な残酷な負傷を受けておる。昨日の衆議院におきまする発言、辻原議員の発言をそのまま受けますれば、腹部でありますとか、そういうところにびょうの打ったくつあとがついた。きょうのちょうど毎日新聞——速記録をまだ見ておりませんが、きょうの毎日新聞の朝刊を見てみますというと、その質問は、辻原氏が、救出したというのに胸腹部にびょうのついた警察官のくつあとが残っておるのはなぜか、こういう質問に対しまして柏村次長が、それにつきましては現地から報告がまだきていないというような答弁をされておるようであります。こういうように救出に行きました警察官が、これは民衆から受けておったのか存じませんが、そういう裸にされました丸山某に対しまして、胸腹部にびょうのついた警察官のはいておるくつのあとがなまなましく残っておる。しかも、それは昨日の発言によりますと、写真にとっておるということも言うておられるのであります。こういうような残酷なことがもし警察官においてあったとしましたら、これは私は、立場はいずれにいたしましてもまことに遺憾のきわみであるのであります。こういう点につきまして、私は、果して警察官が当日こういうような状態にあったのかどうか、こういうことにつきまして、昨日の質問ではまだ報告はきていないというように言うておられますが、本日もしこの点につきましてさらに突っ込んだその当時の状況、あるいは警察側におきまして、当日どういうような装備をされておったか、こういうことにつきまして御説明をいただきまして、それについてさらに質問をいたしてみたいと思います。
  114. 江口俊男

    説明員(江口俊男君) お答えをいたします。まず第一点の報道関係についてでございますが、これは現地におきましてもお話のような抗議がございまして、われわれとしても、事柄が重要でございますので、十分調査するように勧告をしたわけでございますが、それによってわかりました範囲においては、ニカ所においてそう言われても結果としてはやむを得ない、しかしながら、ああいう混乱の際であったので、他意はなかったのだということが二つほど事例がございました。  一つは、本町二丁目におきますジグザグ行進の規制の直後、指揮官が集まれという号令をかける際に警棒を、まあ集まれというときにはこう上げるわけであります。それに従って警察部隊が集まってこようとしたところを、その群集の中から、これはだれであるかということはわからなかったと警察の方では言っているのでございまするけれども、あるテレビのカメラマンがそれを写そうとしておった。これは写してくれるなと言ったのか、集まりのじゃまだと言ったのか、そこで多少のトラブルを起して、事情を知らないほかの警察官が何だ、何だというようなことでそれを押し出したという事件と、それからもう一つは、すわり込みの場所であった西警察署におきまして、横門から入ろうとした記者に対して、これもまた記者であるということを、その際は一番初めはわからずに押し問答をしたという事件がございます。特にこの西警察の場合におきましては、署員は実力行使の方に回るので、横門に警備しておったのは他署からの応援の警察官であって、顔見知りの西署員であったならばそういうトラブルを起さなかったであろうという反省をいたしておるのであります。そのほかにも報道の自由を妨害したというような抗議はございまするので、それは将来のこともあり、他の場合の一つのいい教訓ともなりまするから、そういう事実があったかどうか、あったとすれば、将来はどういう形でそういうことのないようにできるかというような研究の題目としても、虚心たんかいに調査するようにいたしておるわけでございます。  それから第二の、丸山書記長のけがの点でありまするが、これは昨日、私もびょうのあとがあるというようなことは初めて伺ったのでありまして、先ほど来申し上げるように、どういう傷であるか、どういう程度であるかということが調べようが十分でなかったということから、私の方に対する報告もその点については来てなかったのでありまするが、こういう話があるがどうだということを、昨日帰りましてから電話で照会いたしましたところ、そのくつの傷あとがあるということは知らない、警察としては。知らないけれども、びょうのあとがあるとすれば、その日出動しました警察部隊はみな警備ぐつをはいておった。これはびょうも何も打っていない、ゴム底でございます。周囲のみぞはすべりどめのためでありまするけれども、びょうはない。これはもしもそうであれば間違いであるという返答に接しておるわけであります。なお、この丸山書記長は、日本教育対策協議会の太田垣某という者になぐられた、やられたということでこれを告訴いたしておりまするので、太田垣某を警察としては逮捕して調べております。太田垣某の供述からしましても、やはり太田垣を初めとする数人にやられておるところを——警察はそこまでなぜ見ておったか、手おくれではないかという言い方はあるかもしれぬけれども、警察が救出しておるということは事実であります。ただ丸山書記長は太田垣某にやられたということは、告訴をするくらいですから、はっきり言うておりまするが、君は警察官からやられたと言っておるそうじゃないかということを言ったことについては、それは自分一存では返答できぬということを言っておりまするから、これはまたいかなる場所でいかなる返答をされるか存じない次第であります。
  115. 吉江勝保

    吉江勝保君 私は実はきのうの衆議院の状況を聞いておりまして、いかに与党の立場でありましても、警察官がそういう残忍なことを万一やったとしたならば、これは本委員会におきまし相当究明をしたいと、こう思っておったのであります。しかし今の話によりますと、当日警察官はゴムぐつをはいておって、びょうの痕跡の残るようなことはないということを聞きますと、逆に昨日の辻原君の発言は、警察官のくつあとではないという、逆な実証になったような感がいたしまして、今後におきましてどういう者がびょうが打ってあるくつを当日はいておったかというようなお調べになるかとも存じますが、一応この二つの事件——取材の新聞記者に対しまする暴行といいま一すか、事件、丸山書記長に対しまする事件、この二つの問題につきましてはこれで終りまして、他の問題に移っていきたいと思います。
  116. 田中啓一

    委員長田中啓一君) どうも二時を過ぎましたので、ここで二十五分休憩いたしまして、二時半から始めたいと思います。  それでは休憩いたします。    午後二時六分休憩      —————・—————    午後二時四十一分開会
  117. 田中啓一

    委員長田中啓一君) 休憩前に引き続き、地方公務員勤務評定に関する件の質疑を続行いたします。
  118. 吉江勝保

    吉江勝保君 和歌山の流血デモ事件につきまして、特にその中で起りました被害といいますか、事件の中の二つの事件につきましては、午前中にお聞きいたして、大体了承できたのであります。少しく方面を変えるのでありまするが、こういうような事件が、たとえば四日市の教育長の事件とか、あるいは和歌山市におきまする流血デモ事件と、こういうような事件が各地に起っておるのでありまするが、午前中も申しましたように、日教組々々々と申しまするが、日教組の先生方みなが悪いわけではないのでありまして、私はそういう意味で、日教組の中に今日入っておりまするところの共産党員の数というものはどのくらいな数おるものであるか、あるいはそういう党員がどういう場所に地位を占めておるのか、そういう教組内におきまする共産党の実在勢力といいますか、そういうものの状況を御調査になっておりましたら、公安調査庁の方で御説明いただきたいと思います。
  119. 関之

    説明員(関之君) お答えいたします。日教組の中に共産党勢力がどういうふうに配置されているかという点でございますが、日教組の構成員は大体五十万といわれておりまするが、その中に、私ども今日まで調査の結果によると、約千七百名前後の者が、どうもその程度の数字は共産党員の疑いがあると、こういうような状況であります。これらはもちろん、日教組の本部の執行部や事務局から、各府県教組に分布しているわけでありまして、それらがそれぞれ共産党と密接な連絡のもとに、共産党の目的遂行の行為をいたしておるということに相なるわけであります。  和歌山県におきましては、和歌山県教組の——五千名前後と思いますが、その中に全体として共産党員が約四百名いるのであろう、こういう疑いを持っているわけであります。これらが和教組の中にどれくらいいるかと思しますと、約三十名前後の者がそこにいるという疑いを持っているわけであります。これらの和教組の中における共産党員の地位というものは、相当の指導的地位にいる、こういうことが申し上げ得るかと思うのであります。
  120. 吉江勝保

    吉江勝保君 日教組の中におきまする共産党の活動というものにつきましてはいずれ文教委員会等におきまして、もっと突っ込んでお聞きしたいと思うのでありまするが、おもに和歌山のこの流血事件というものと関連させまして、この和歌山の事件の起りましたときには、共産党の連中はどういう動きをしておったかと、こういうことにつきまして、おわかりになっておりましたら御説明をいただきたい。
  121. 関之

    説明員(関之君) お答えいたします。これはきわめて共産党といたしましては重大な問題である。ちょうど彼らが意図する最も格好なケースであるというて、全力を尽してこの運動に乗り込んできているというのが結論のところであります。  さて、やや具体的に詳しいことを申しますと、まず、日本共産党といたしまして、この勤評闘争全体をどういうふうに考え、これをどういうふうに自己の目的遂行のために利用せんとするかという問題があるわけであります。これは御承知のように、日本共産党が去る七月、第七回党大会を開きましたが、その党大会に出た諸般の綱領草案その他を見ましても、彼らが依然として国際共産主義の背景のもとに、暴力を肯定する革命の方式をとっているということは、一点疑いのないところなのであります。さてそこで、そうかといって直ちに革命が起きない。要するに彼らはそれを称して民主主義革命を急速に社会主義革命に発展させると申しておりまするが、その根底には暴力を依然として肯定しているわけであります。ところが、なかなかすぐ革命はできない。ところが現在はどうするか、力がまだ劣勢である。こういうことから結局編み出した戦術が、統一戦線戦術というのであります。要するに、自分たちが中心になって他の各団体、各人を巻き込む、そうして自己の指導力と活動力を漸次拡大していく、これが彼らの当面とっている戦術なのであります。特に対象とするのは労働組合、あるいは各種大衆団体でありまして、その中に日共統制力の増強、拡大をはかるということが、当面の目標に相なるわけであります。そうして、はるかかなたに革命というものを置いておる、こういうことに相なるわけであります。  そこで、この和歌山の勤評闘争全体について彼らがどういうふうに考えているかというと、これはまことに絶好の彼らの目的達成の機会であると、こう見ておるわけであります。と申しますのは、和歌山の闘争で根本になるのが、一つ法律の実施に対する反対ということに相なるわけであります。この法律というものは、申すまでもありませんが、国家権力の表徴であって、結局、最後のところは、共産党の政治闘争である、権力闘争であり、権力否定の闘争になるわけであります。そこで、この権力否定の闘争方針から見て、法律という国家統治権力の表徴に対して、これを否定するということが、この本筋でありますからして、きわめて絶好な、彼らがこの上もない闘争の場であるとしていまして、彼らはこれを称して、勤評の実施を、核武装に連なって日本の軍国主義化である、そうしてこれは全労働者に対する岸政権の弾圧である、圧迫である、全労働者はこれを立ってはね返さなければならぬ。そうして、今までやや劣勢であった全労働者の前進的基盤をここで確立しなければならないというような趣旨のことを、この大体の勤評闘争に対する彼らの基本的な考え方としているのであります。  さて、従って、このような考え方のもとにどういうような闘争態勢を築き上げて和歌山闘争に臨んだかという問題が次の問題に相なるわけであります。そこで、この闘争態勢でありますが、これは和歌山の勤評闘争ができ上ったとき、そこに七者共闘会議を組織したということに相なっておると思います。これは御承知の通りと思いますが、和教組、高教組、地評、和大の自治会、県教委の組合、そうして部落解放、そうして県庁の職組と、こういうふうなものが七者共闘というものを組織したのであります。これらのおのおのの団体の中に、今の和歌山県下四百人の共産党員のうちの約百名近い者がこれらの団体の中に加盟をしておるわけであります。これらの団体の中に加盟をしている共産党員は、御承知のごとく、共産党の規約によりまして、それらの団体の使命より、共産党の勢力拡充が至上であって、それらの団体において共産党のオルグとして、共産党の指導方針考え方の発展をはかる。こういう趣旨がそれらの各大衆団体における共産党員の使命なのであります。そこでそういう者が、とにかくそれらの七者共闘会議の中の、各団体の中に百名近くいたわけであります。そういう体制がある。そこでこれに対する闘争態勢は、まずそれをしっかりつかんで、そして党中央と、関西地方の大阪、京都、兵庫のこの地方を結集して、そして時々刻々最高の会議を開いて、指導方針をきめて、そしてこの共闘会議における百名近い党員をうしろから操作して、これを彼らの意図する方向に、その権力闘争の方向に持ちかける、こういうのが彼らの闘争体制なのであります。  そこでこの七者共闘には、共産党は表面上は名前は載せておりませんが、実際には、しばしばその会議に接触し、実際は八者ないし九者という形で共闘会議で行われているのであります。さて、このような闘争体制をしきまして、そしてとにかく背後においてこれを自己の意図、すなわち、はるかかなたに革命を見越した、現在における統一戦線の拡大という、その戦術に乗せていくということをいたしたのであります。その一つの現われといたしまして、この十五、六日の大会における共産党の活動なんでありますが、これはまず、そこに参加した者は、中央から中央委員の若干、そして京都、兵庫、大阪の各地方委員会の者、そして和歌山の地元の者が合しまして、百名余りと思いますが、それらの者がここに参加し、大阪及び兵庫から宣伝カー二台を繰り出して、ここに乗り込んでいるわけであります。そしてその大会におきまして、党中央から参りました中央委員山田六左衛門は、たとえて申しますと次のような激励演説をしておるわけであります。  今日の情勢から多くの困難はあるが、勤評反対闘争は勝利の道を進め、敵の弱点に向って最大の力を結集していかなければならない。日共は社会党とも手を結ばなければならなくなり、和歌山の闘争が成果を上げたことは、プロレタリアの独占資本に対する熾烈なる攻撃であったからだ。諸君は、職場及び学内においてプロレタリアの先鋒となって闘わなければならない。こういうような趣旨のことを言っておるわけで、これは要するに共産党の基本的な考え方、要するに暴力を肯定する、革命をかなたに目途して、そしてそれに近づく。そしてその形において、結局問題は、大衆を階級的に割り切らせる、あくまでも階級闘争である。階級的独裁を作り上げるという考え方と、大衆をいかにして動員するか、その二つの修練のためにこの場を使っておる、こういうふうにどうも考えざるを得ないのであります。  そんなようなわけでありまして、この十五、六日には、今申し上げたような体制でもって中央からも繰り出し、宣伝カー二台も持ち出して、盛んにこれに対して彼らの意図達成のための活動を推進していく、大体こういうような状況に相なっておるかと思うのであります。
  122. 吉江勝保

    吉江勝保君 ただいま、一応状況の説明をいただいたのでありますが、和歌山県が、今回拠点闘争の場に選ばれましたことは、いろいろな事情もあったろうと思うのであります。県といたしましても、山地が多くて、交通の便の悪いところであり、しかも警備の警察というものは、和歌山県あげましても一千名少しぐらいの警察官ではないかと思うのでありまして、ここに十万の人を動員いたしましてここで大会をやり、しかもその中には、表向きは十万人の人たちは普通の装いでおりまするが、その陰に糸を引いておりまして、またそういうものの中には相当先鋭な部隊が入っておったといたしましたならば、果して和歌山県の治安というものは、この千名内外の警察官で維持されると当時お考えになっておったかどうかということを、自治庁長官にお聞きいたしたいと思います。
  123. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 公安委員会としては、直接そうした場合の指揮と申しますか、やる立場にはないのでありますが、私どもの承知しておりまする限りにおきましては、警察庁当局におきましても、この問題につきまして重大な関心を持っておりまして、当初十万の動員というようなことがいわれておりましたが、その場合に対する措置というものも当然考えなければなりませんが、期日の切迫につれまして、大体十万と称しておりましても、実際は四、五万じゃないかというようなことを目標に置いておったようであります。さらに、具体的に各地から参加いたしまする人員につきまして、各地の情報を総合いたしまして、そうしておよその集合する人員の見当もつきましたので、これに対応するだけの警察官を配備したということで、必要な警察官として大阪管区学校の学生の応援を求め、さらに三重県境の所でありますか、につきましては、三重県からも応援を頼む、こういうようなことで、現実の動員数に対応するだけの警察力の配備ということは、遺憾なきように処置したものと私どもは報告を受けておるのであります。
  124. 吉江勝保

    吉江勝保君 結果から見まして、大事に至らなかったと申しますと、あるいはこういう流血デモ事件がありますので、申しにくいかも存じませんが、一応警察力で治安が維持された結果になったのであります。しかし、果してこういうふうに人数が一千前後になるか、あるいはデモの当時に五百名に減るかということは、当初私はなかなかこれは予測がつかないことではないかと思うのでありまして、和歌山県の警察の力をもちまして、十万といわれた人たち、しかもそれの背後にありましては、ただいま公安調査庁の方から話がありましたような動きが計画されているということは、これはよく承知されなければならぬことと思うのでありまして、そういう点から申しまして、今次の和歌山の流血事件のさなかにおきましても、たとえば十五日の日におきましても、きょうのデモはこの程度に終ったが、和歌山の治安を、五百ぐらいの警察はおれたちの手で繋砕してしまえるということさえ言うておるのでありまして、こういうことは情報としてもすぐ入っておると思うのであります。これに対しまして、和歌山県が全部の警察官を集めましても、半数足らずの五百ぐらいのものでありまして、警察官がどんな感じを抱いたということも想像できるのであります。幸いにデモ隊員が少くなりまして、治安が警察官によって維持されたので、私は幸いだと思うのでありまするが、こういうような深い意図を持っておりまするデモに対しまして、国家公安委員会におきましては、いま少しく私は事前に十分な対策をお立てになる必要があるのではなかろうかと思うのであります。また来る九月の十五日には、今度は全国でこれをやるようなこともいわれておるのでありまして、表向きには七者共闘、八者共闘あるいは十者共闘というふうにしまして、あらゆる勢力を糾合してやっておりまするが、その中枢を握っておりまするものは、これは日教組の先生方というよりも、ほとんど党員がその指導に当っておることは、ただいまの説明でも明白なんでありまして、ことに私、この和歌山におきまして、新しく作られておりまする、また当日非常に活躍いたしておりまする日本青年学生共闘会議というものはどういう性格のものであるかということを、もし御調査になっておりましたら、この際お話しをいただきたいと思います。
  125. 関之

    説明員(関之君) その十五、六日の大会のときに、これは全日本青年学生共闘会議というものがそのときに、十五、六日に日教組、総評の会議と並行して持たれておるのであります。この会議は、結局全学連、社会党の青年部、総評の青年部というような、そういう青年学生が主体となって開催されたものであります。これももちろん、今申し上げたような角度から、全学連がかなり指導的な立場をとって、この部隊を引っぱっていく、こういうような方向においてやったのでありまして、特に十五、十六日のこのデモ、あるいはその他においては、この部隊がかなり活発な活動を展開したというふうに申し上げることができるかと思うのであります。
  126. 吉江勝保

    吉江勝保君 ただいま大体御答弁いただいた通りでありまして、それ以上の詳細なこともあるいは発表しかねるのではないかと思うのでありますが、この八月十六日に勤評阻止の和歌山市におきまする国民大会、このときに作られておりまするこの日本青年学生共闘会議というものの実体は、日本共産党の特別闘争指導隊、これの変形でありまして、日共指導部が世間体をつくろうための配慮によって作られたものだと、こういうように見ているのでありまして、こういうような変形、世間体を偽わりました、世間体をつくろいましたところのものによって実体が動かされているのであります。そのほかまたこの国民大会には、別に日共の中央の指導隊の秘密指令を受けまして潜入しました党員が相当いるのであります。これは七者共闘というような、そういう中に入って活動しました者以外に、秘密の指令を受けて入っている者が相当数いることは明らかでありまして、私はこういうような人たちがこの大会の実際の指導をやっている。あのデモのわきを、共産党ののぼりを立てまして、幕を張りまして、そして皆さんがんばれといって、共産党のマークをつけました旗を立てました人たちが、デモの側面から激励をやっておりまするのは、これはある意味におきまして一つの隊でありまするが、それ以外の、もっと深いところの、表面に現われておりませんところの共産党の特別な指導隊が、和歌山県のこの事件をほんとうに指導しておったのではないかと思うのでありまして、自動車に乗って、幕を張って、デモの皆さんに御苦労さん、しっかりやりなさいというような、そういう激励をして回った共産党員の方は、まだはっきりいたしておるのでありまするが、そういうように姿を現わさずに、相当重要な役割を演じている人たちがあるのでありまして、私は午前中にも申しましたが、実際、職務妨害等で検挙しました人たちはほんとうにお気の毒なのでありますが、こういうようなのは、ほんとうにあやつり、こういう事態に追い込んでおりまする実体につきまして、もっと明白に国会におきまして発表していただきたいのであります。  私どもの承知いたしておりまするところでも、この日共の中央指導隊長が、前日これらの青年党員に対しましてその秘密指令を発しておりまするその中には、指導隊員はみずからを謙虚に、党員の姿を露呈することなく、大衆の中にあって行動し、闘争のため潜在力の創造に努力する宣伝、扇動党員として行動せよ、こういうような命令を出しております。また常に政治的警戒心を旺盛にして、党員グループの存在を察知せしめざるよう行動し、情勢に応ずる指令に待機せよ。最後に、闘争目標、これは勤評反対です。闘争目標とともに、常に日本共産党の政治的主張に関連せしめることを忘れるな。こういうような秘密指令を発しまして、この特別な隊が動いているのでありまして、さらにその外に幕を張りました共産党の車が走っておるのであります。全学連の連中が、この連中が引っぱっておりますが、またそのまだ外廓に、その外に学校の先生たちが引きずられまして、デモでけがをしておるのであります。  まことにこの事件というものは非常に重大な内容を含んでおりまするので、今後のこういう勤務評定反対闘争、単に勤務評定と申しますると、これは文教の問題のように聞えますが、この名目をとらえましてやっておりますることは、実に深刻なことを計画しておるように見受けるのでありまして、そういう意味におきまして、私は特にこの共産党以外の人たちにおかれましても、こういう底意によって動かされておるということにつきましての認識を持っていただきたいのであります。午前中申しましたが、私たまたまインドネシアに参りましたときに、社会党の党首のシャハリールと会見しましたときに、インドネシアにおきまして、選挙の際におきまして、共産党と最も激しく論争して戦っておるのがインドネシアの社会党なんであります。私はああいう実情を見まして、社会党が一番共産党の実体というものを知っております。国民党よりも激しく共産党と国民の前に論争をやっておるのであります。今日わが国におきましても、一番共産党の実体をよく知っておられるのは社会党の人たちではないかと思うのであります。こういう点につきまして、そういう陰の指導におどらされて、それに引きずられていくことのないように、これは私、まあ何と申しますか、こういうところで申しまして、越権かも知れませんが、お願いをいたしたいのであります。  こういうような問題から、さらに、私最後に意見を申してお聞きをいたしたいのは、今度のこの勤務評定反対の闘争というものが、九月十五日にさらに一斉に学校の児童の登校を拒否いたしまして、そうして生徒、児童をこの反対闘争に巻き込もうとしておるのであります。これに対しましては、すでに日教組もこの総評のこの決定に応ずるように指令を出しておるようでありますが、また他の参加します共闘の参加者におきましても、そういう態勢をともにとろうとされておるのではないかと思うのでありますが、万一かようなことが起りましたならば、私は、国民はどんなに憤激するであろうかと思うのであります。  私はその一つの例を高知県の高岡郡の檮原村の例によって申し上げますと、七月の二十六日に一斉十割休暇闘争をやったのです。あの檮原村の中・小学校の先生たち十二名の人たちに対しまして、村の人たちはほんとうに神様のように尊敬しております。先生が不便な土地におられるので、教員の住宅も建てまして、先生に不自由のないようにいたしておるのであります。ところがこの指令によりまして、この先生方が十割の休暇闘争をやる事態に切迫しましたときに、校下の人たち、PTAの人たち、区民の人たち全部が集まりまして、この先生方に十割休暇闘争に参加しないようにお願いをしておるのであります。ところが、その二十六日に至りまするというと、学校の先生たちは、このPTAの人たち、校下の人たち、区民の人たちの熱望をいれずに、十割の休暇闘争をやってしまったのであります。これは、今まで先生に対しまして尊敬と信頼を持っておりましたこの部落の人たち、村の人たちは、その信頼が逆に今度は憤激に変ってしまったのであります。それがあの教員住宅のくぎづけ事件というふうに発展しまして、しかもそれが自分らの子供を学校に登校さすことをやめまして、十数日の間、子供を学校にあげなかったのであります。そのあげないときに行われております会合で、村の人たちがどういうことを言っておるかということを、ここで報告をさしていただきますと、この十割休暇闘争をしましたあとに、いろいろと村の人たちが会合をやりまして、しかし、子供を学校にあげないということは、これはやめなければいけない、子供たちは学校にあげなさい。こういうように皆から勧められておるのでありまして、全校、百五十五戸の人たちが全員集まりまして、この問題について最後の協議会を開いております。数回の勧告等もありまして、これを開いたのでありまするが、そのときどうしても村の人たちの、この登校さすことに対しまして、自由な意思表示の結果が出ておるのでありまして、皆がやはり拒否しておるのであります、反対しておるのであります。その反対されておりまする理由を声明いたしておりまするが、それは一つは、思想的に中立を離れた教育を子供に受けさせたくないということであります。二は、校長及び教頭の発言したような正常の教育のできないような先生に子供を託することはできない。三番目には、あくまで校下民の意に反する、つまり父兄と繋がりのない教師、こういう教師はすみやかに自分の学校から出ていってもらいたい。こういうような理由をもちまして子供を学校にあげていないのです。これは私は問題であろうと思いまして、どういう事情があっても学校にあげるように話したのでありまするが、非常に強い決意をもって、思想的に中立を失った先生に自分の子供の教育はさせたくないということを非常に強く村の人たちが言っておるのであります。こういうような、村の人たちの要望を聞かない民主教育というものが果してあるだろうか。一体、PTAの意向も聞かない民主教育と申しますものがどこにあるだろうかと私は言いたくなるのであります。  そこで最後に、私は大宅壮一君の書いておりまするものを引用さしていただきまするが、この民主教育につきましては、日教組は日本共産党のようにはっきりした態度を示していない。しかし、これまで日教組の名で出された宣言や運動方針などを見ますと、ソ連や中共の民主主義に近いというような印象を受ける。ソ連や中共では、まず社会革命に成功して、しかる後新しい権力を守り抜くために新しい教育方針を立てて、これを徹底的に実施しておる。いわば革命後の地ならしが教育の名においてなされておるのだ。日本にそういう学校や先生があってもいい。しかし、義務教育がそういう形でなされることを希望して子供たちを学校に送っておる父母がそんなにたくさんおるとは思えない。現在、日本は資本主義の体制下にあることは明らかである。そこで日教組の指導者たちは、ソ連や中共の場合とは逆に、まず教育を通じて学童の頭の中の耕地整理を行い、それから日本の社会革命に持っていこうとしておるようだ。これが日教組の民主教育なるものの実態で、父母たちがそれを望んでおるといなとにかかわらず、子供たちは日教組に属する先生たちの手でその目的のために訓練されておることになる。第十七回の山形県の上ノ山の日教組の大会におきまして、志賀義雄氏が行って祝辞を述べております。その祝辞にはっきりこれは言っておるのであります。  こういうような教育が行われておりまするとき、私は最後に文部大臣に、こういう今日の勤評問題が泥沼のような状態になりまして、九月十五日には児童までも、登校をやめさせて、勤評反対をやろうというような全く無謀な挙に出ておるのであります。しかし私は、こういうものを正気でほんとうにどういうところで計画をいたしておるにいたしましても、本気でやるものではないのではないか、こういうふうに思うのでありますが、ほんとうにそういうことをやりましたならば、全国の村の津々浦々におきまして、学校の先生たちは非常な逆につるし上げを受ける結果になろうかと思います。しかるべき時期に考えられますことは、私はある人たちが中に入りまして、こういう日教組あるいは総評の過激な闘争手段は手を引かす、しかし、そのかわりに勤務評定の実施もここ当分延期してもらいたいというような、こういう話し合いが出てくるのではなかろうかと思うのであります。万一、さような場合を予測いたすのでありまするが、登校の問題につきましては、仲裁者が、これを登校さすかわりに勤務評定の実施についてはこれを当分延期するように、冷却期間を置くようにという話し合いがありましたときには、文部大臣はいかなる態度でお臨みになりまするか、その御所見をただいまお聞きいたしておきたいと存じます。
  127. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 勤務評定の問題をめぐりまして各地に問題を生じ、教育界が混乱を来たしておりますることは、私まことに残念に存ずるのであります。  御承知のように勤務評定は、教職員の人事管理を適正にいたしまして、教育の効果を上げるという意味におきまして必要なことと私どもは考えるのであります。同時に、すでにおそらくどこの社会でもそうだと思いますが、実質的な意味の何がしかの勤務評定は必ず行われておるのであります。学校におきましても、今日までやはり実質的な意味における勤務評定は行われてきたと思うのであります。この点につきまして、御承知のように今日法律でもって勤務評定はやることになっておる。今まで実質的にやっておりまするところの勤務評定を、より合理的なものにしようということで、法律もあることでございますし、これを実施しようというのが今回の勤務評定の問題の起りでございます。  これにつきまして、いろいろこれに対する御意見があり、御要望もあるということは、これはわかるのであります。それをかれこれ申すのではございませんけれども、この勤務評定の実施ということをめぐりまして、教職員の側において絶対にこれを反対する、その実施を阻止するということが当初から行われておるのでありまして、まことに遺憾とするところであります。反対するにいたしましても、筋道を立てて、合理的な民主的な反対が行われることを私は期待するものであります。そうでなくて、頭からこの実施を拒否する、是が非でも拒否するというような態度に出られることはまことに残念なことでありますが、なぜ一体そういう反対をしなければならぬのかというところが、私どもには実は理解できないのであります。そのいわれておりますところはきわめて漠たる抽象的なことばかりいっておられるのであります。建設的に、ここがこうだからこうしろとか、ああしろとかいう話じゃない。いわば政府が何か教育を権力的に支配するためにやるのであるとか、あるいはまた戦争の準備のためにやるのである、こういうような反対を呼号しておられるのでありまして、全く理解に苦しむことでございますが、申すまでもなく、勤務評定は文部省で直接やることではございません。これは御承知のように、地方の都道府県の教育委員会におきまして、その実施の計画を立て、地区の教育委員会におきましてこれが実施の任に当る、こういうふうな建前のものでございますが、地方においての状況を見ておりましても、いろいろな反対運動も起り、穏やかな建設的な具体的のお話というものがほとんどない。会えば必ずつるし上げであるとか、あるいはカン詰めであるとか、すわり込みであるとか、こういうようなことで、あくまでも絶対的にやらせない、こういうような建前の運動が今日まで行われてきたのであります。  事柄は教育行政上の行き方の問題でございますが、どうもその反対の意図は一体どこから出ておるのかというふうなことにだんだん私ども疑いを持たざるを得ない。日教組そのものは御承知のようにいわゆる職員団体でございます。職員団体と申しますうちに——都道府県以下の教育委員会では法律上認められておる職員団体、日教組はただそれらの職員団体のいわば連合体であります。これは任意のものでありまして、格別法律上の根拠を持っておるものではございません。いわんやかような問題について交渉権を持つというふうなものではないのでありますが、その日教組の職員団体たる性格から非常に逸脱した動きをいたしておるのではないか、こう考えざるを得ないのであります。また、日教組の指導綱領でありますところのいわゆる倫理綱領というものを見ましても、また折々の大会その他に現われてきますところの宣言決議、ないしはこれに基く行動等を見ておりましても、私は全国の一体教職員諸君のほんとうの意思を代表したものであるかどうかということにすら疑いを持たざるを得ないのです。むしろ私は、多数の先生はああいうような考え方はいたしておらぬように思う。しかし現実は、指導部からの指令によりまして右に左にと動いておるのが今日の状況であります。これまた私は、良識あり、また品格を保たなければならない教職員の行動としましてはまことに残念に思っておるのであります。ぜひその本来の使命にかんがみて、先生らしい態度に帰ってもらいたい。また職員団体は職員団体らしい姿に帰ってもらいたいということを心から念願をいたしておるものであります。  何にいたしましても、先ほどお話にも出たことでございますが、この問題は、現在、国会で議決せられました国法に基いて、それぞれの機関においてそれが実施をはかっておるわけでございます。その実施をはかるということに対しまして筋道の立たない、いわば実力をもってあくまでもこれが実施を阻止するという動きに対しましては、われわれもこれを看過するわけに参らない。言いかえまするならば、われわれといたしましては、たとえどのような反対がありましょうとも、最近はかようなことが具体化するということはまことに私は残念に思っております。さようなことのないように心から念願するものでございますけれども、来月の中ごろには一斉休暇ストをやるとか、あるいはまた児童の登校を拒否するとかいう、ほんとうに話にも何にもならないようなことが計画せられておるやに聞くのであります。ぜひ関係者の方々の反省によって、さようなことのないように望んでおりますけれども、かりにそういうことが行われるといたしましても、そういうふうな理不尽な反対行動によって、政府ないし権限ある行政機関の活動を停止するとか延期するとかいうようなことは、私は全然考えておりません。あくまでも初志に向って邁進するつもりでおります。
  128. 吉江勝保

    吉江勝保君 ただいま一番最初に質問いたしました、勤務評定は国の行政行為である、こういうところから、大体不当な反対闘争と取引してやめるようなことは決してないというような結論にまでお聞きいたしましたのですが、私の質問はこれで終らしていただきます。
  129. 加瀬完

    ○加瀬完君 質問に先だちまして二つ政府に要望をいたします。これはうんちくのある御質問吉江さんからるる述べられたわけでありますが、その御答弁の中に、四日市の教育長の問題がございましたが、これは新聞でもはっきりと担当地域の人権擁護関係の者が、人権侵害の疑いはないということが明瞭に打ち出されておるわけでありますから、このような御答弁をされなくては私どもは腑に落ちない。  もう一つは、警察庁でありますが、あなた方の御答弁が、警察官が不当行為をしなかったということをるる述べておるにすぎない。その言葉の中に、デモ隊に旗ざおをもって立ち向われただけである、こういうことである。われわれの聞きたいのは、本州製紙の場合もそうでありますが、きめられておる職務規程のワクを越えたような行為があるのじゃないか、こういうことが問題になって、たとえば警棒使用ということが正しく使われておるかどうか。これはただいまの和歌山の問題ではあなたのおっしゃる通りかもしれぬけれども、少くとも本州製紙の問題では、警棒が不当に使われておるということが、これは人権擁護局もはっきり明言しておる。そういうことをやはり率直に、お互いに民主警察を作るという立場から、こういうところはわれわれにまずいところがあった、こういう点はあなた方のおっしゃる点とは違うというようにお話を下さらなければ困る。こういう御報告をこれからは求めたいと思う。  質問に移りますが、文部大臣は、一昨日あるいは昨日などの新聞によりますると、この勤評実施の問題について法律施行の責務を果す決意、こういう言葉でお気持をお披瀝になっていらっしゃいます。吉江委員はただいま質問の中で、勤務評定は国の行政行為だという言葉をお出しになりましたが、まさか国の行政行為であると文部大臣はお答えになれないと思う。しかし、いずれにしても、法律施行の責務を果す決意といいますけれども、どういう、政府は地方公務員勤務評定について、一体この法律を施行しなければならない責務というものを法律の上で根拠が求められるか。その今お考えになっている御根拠を明らかにしてもらいたい。  もう一点、全国教育長協議会が市町村教育委員会あてに通知を出されたということが出ておる。この通知を出されることは、文部省の事務当局も当然のことであるというふうにおっしゃっておる。しかし、この通知の内容を見ると、指示命令だ、指示命令にもひとしいところの通知を全国教育長協議会というものは、どういう法的根拠に立って市町村教育委員会にお出しになれるのか。もし、お出しになれないようなものを、どうして文部省がこれをお認めになるような御発言をなさるのか。この二点をまず伺いたい。
  130. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 政府といたしましては、国会決定いたしました法律を施行する責任があることは、これは申すまでもないことだと思うのです。その意味におきまして私は申し上げておるわけであります。この教育関係の法規につきましては、いわば私の担当に属するものであります。その担当に属する法律が施行せられるためには、われわれといたしましてはできるだけの努力をしなければならぬと思うのであります。もちろん、勤務評定の実施は、先ほども申しましたように、法律の定めるところによって地方の都道府県の教育委員会計画を立て、地区の教育委員会がこれを実施するということになっておるのでありますから、それぞれのところでそれぞれの責務を果して参るわけでありますが、全体といたしまして、この法律が動いて参らなければ困る。動かすための努力は私としては当然なすべき責務だと心得ておるのであります。  なおまた、今お示しになりましたのは、少し具体的にどういうことか、よく存じませんが、関係局長も来ておることでありますので、事実についての一つ御説明をいたさせていただきたいと思います。
  131. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) ただいまお尋ねの件につきまして、私どういうものか存じておりませんです。
  132. 加瀬完

    ○加瀬完君 国法できまっておるものであるから、その実施に当然政府は責任がある。こうおっしゃいますが、国の法律にはたくさんありますよ。極端な例をいえば、債権取り立てという権利が民法にありましょう。しかし債権の取り立ての権利があるからといって、債権者が取り立ての要求もしないのに国がその債権の取り立ての要求をすることができますか。極端な例をいえばそういうことなんです。勤務評定も、勤務評定計画権というものが、これは御存じのように都道府県の教育委員会にあるわけです。これを実施する権限というものは地方教育委員会にあるわけです。ですから、少くもの都道府県の教育委員会が、地方教育委員会の意向を聞いて計画をして実施するという主体性が生まれなければ、文部省がこのようなワクで、このような勤務評定をやれと指示命令をする権限というものは、法的権限というものはどこにもない。しかし現実において行われておるものは、事実をあげてもよろしゅうございますよ、府県が主体的ではなくて、文部省の方が主体的に動いていらっしゃるのじゃありませんか。その法的権限をどこに文部省は求めておるかと私は伺っておるのです。
  133. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 勤務評定計画を立てることは地方の都道府県の教育委員会の仕事である。これが実施の任に当るのは地区の教育委員会であるということは、私も申し上げました通りであります。私もそのように考えておるわけであります。私の方で計画を立て、私の方で実施するつもりはございません。ただ、この法規に基いてそういうふうなことをやってほしいということは、私としては言わざるを得ないのであります。
  134. 加瀬完

    ○加瀬完君 その都道府県の教育委員会がそれぞれ勤務評定というものを計画されまして、それに対して教育行政の立場から、全体的な全国的視野という立場で見渡してみて、このように是正したらいいだろう、こういうように方法を変えたらどうだろうということは、指導助言でありまして、はっきりと私も文部省でそういう点はやっていただかなければならない権限だと思います。しかし、今度のこれは、天下周知の事実じゃありませんか。全国の教育長会議などを設けまして、あるいは各地区の教育長会議などを設けまして、そこへ文部省のそれぞれの担当官などがお出になって、それぞれの勤務評定というものを協議しておるじゃありませんか。それで大体教育長試案というふうなものだけれども、実質的な指導というものは文部省がやっておるということは隠れもない事実だ。こういうやり方をしてしまうということは、はなはだ文部省の権限を逸脱した行為だと私は言いたい。極端に言うならば、あなたの御発言の中にも、まだやっておらないところの府県がある、そういう府県にもやれ、あるいはやらすべきだと、また、やらなければならないという意味の御発言もたびたびなさっておる。そういう、やるかやらないかという権限は、都道府県教育委員会にあるわけです。ことし計画しようが来年計画しようが、どういう計画内容にしょうが、これは都道府県教育委員会の権限だ。そういうことまで性急にやらせようとなさっていらっしゃるのが、今の文部省のお考えということに私どもは承知をせざるを得ない。こういう点がいいとか悪いとかということでなくて、もっと法律のワクというものをわれわれは尊重すべきじゃないか。少くとも義務教育の教育行政というものは、これは全部が固有の権限とは言わなくても、地方の固有の権限として、地方自治とともに、教育の自治といいますか、住民によって教育の行政が行われるということは、一つの大きな基本方針として立っておるわけです。それをゆるがすような、あるいはゆるがすように思われるようなやり方が文部省によって行われるということは、私は、法の解釈の上からどうしても腑に落ちない。
  135. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 文部省のやっておりますことをどういうふうなものにおとりになるか、これは私にはわからぬことでございますが、私としましては、先ほど来申しましたような建前のもとにやっておるわけであります。ただ、文部省は、地方の教育委員会等に対しましても指導的立場におるわけでありまして、また、相談でもあれば、これに対して助言を与えるということも認められておるわけであります。今回のことにつきまして、特に文部省が地方に押しつけて、この計画でこういう内容でこういうふうにやれというふうに、何もかも文部省の指図できまったものでないということだけははっきり申し上げます。
  136. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは、文部省が指示をなさっておらないとあなたがどのようにおっしゃっても、指示を受けて、文部省からこういう指示を受けてわれわれはこういうように計画を進めなければならないというのは、各都道府県委員会の多くの者たちが、語るに落ちるといいますか、説明済みのことです。それを言ったか言わないかということを問答しておる時間もありませんので、私はもう少し先へ質問を進めますが、法律できまっておるとおっしゃる、勤務評定をやるということは、確かに地方教育行政の組織及び運営に関する法律でも、あるいはその基本法といいますか、母法といいますか、地方公務員法でも、あるいは国家公務員法でもきまっております、しかし、あなた方が今進めておられるように、校長が勤務評定表を用いて勤務評定をしなければならないということは、どこにも法律にきまっておらぬ。ですから、地方によっては、勤務評定をするといっても、いろいろのワクを考えたいと思うかもしれないけれども、校長に勤務評定表を用いて勤務評定をしろという、そういう文部省のワクというものを押しつけられている。あなたはさっき、話し合いの幅はないと言うけれども、そういう立場からこの線という固まったものを押しつけられておるから 話し合いの余地がないということになるわけです。一体、校長が勤務評定表によって勤務評定をやって提出しなければならないという法的根拠はどこですか。
  137. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) それはいわゆる実施計画に属するわけであります。地方の都道府県の教育委員会においてきめるわけであります。
  138. 加瀬完

    ○加瀬完君 実施計画に基くといったって、あなたは法律々々とさっきから言っている。法律にも権限のない、義務のないものを実施計画で作れますか。法律に基くというならば、校長が勤務評定表によって勤務評定をしなければならないという、どこか法的根拠があるわけです、それを御明示いただきたい。
  139. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) おっしゃる通りに、法律そのものに校長の勤務評定を出せということはこれはございません。この法律に基きまして地方で実施計画を立てるわけです。その実施計画内容においてきまることであります。校長は、御承知の通りに職員の人事その他について意見を具申する立場にあり、学校の管理運営の任に当っていくものでございます。これに評定書を作らせることが最も適当であるということで、各都道府県においてはさような決定をいたしたものと私は考えております。
  140. 加瀬完

    ○加瀬完君 都道府県教育委員会勤務評定の必要がなかったから、法律がきまりましても、七、八年の間勤務評定といのものは実際行われておらぬ。それが文部省からせっつかれて勤務評定をやらざるを得なくなった、それが事実です。校長の権限といいますか、法律で校長の権限としてきめられておりますものは、児童生徒に対する懲戒の権限、あるいは卒業証書を授与するの権限、それから臨時休校をする権限、こういったもののほか、法律、規則によっては校長の権限といのものははっきりしていない。業務命令を出すにしても、勤務評定の範囲というものは、校長の教育執行のワクの中で出されるものでなければ筋が違うと思う。都道府県教育委員会計画したというけれども、都道府県教育委員会計画したって、法律的な根拠に基かないものならば、筋が通らないものならば、そういうものを指導助言して修正させるのがあなた方じゃありませんか。もっと校長の勤務評定表によって、勤務評定をしなければならない根拠を明らかにしていただきたい。
  141. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 御承知のように、学校長の人事についての内申権も認めているわけです。意見の具申も認めているわけです。学校の職員を指導し監督する任にあるわけです。さような意味におきましても、さきの国会におきまして管理職手当の御審議を願い、管理職の地位を持っている校長に第一次評定書を書かせることが、一番私は適当であると考えております。
  142. 加瀬完

    ○加瀬完君 理屈っぼくなりますけれども、たとえば教育公務員特例法の中に、大学の学長なり学部長なりという者は勤務評定についてどういう役割をしなければならないかということははっきりきまっていない。あるいは地方教育行政の組織及び運営に関する法律の中でも、だれが勤務評定をしなければならないかということははっきりきまっていない。校長はその補助執行をしなければならないとも、第一次の勤務評定を書かなければならないとも、どこにもきまっておらないのです。それであなたが、学校教育法の二十八条で「校長は、校務を掌り、所属職員を監督する。」ので、この間管理職手当を出したばかりだから、管理職手当をもらっている限り管理職だと、管理職ならば勤務評定を出すのは当然だ。管理職手当がいかに法律的に不備かということは今さらこれを繰り返しません。学校教育法の二十八条の「校務を掌り」というその校務は、教育委員会なりその他の権限者から委任事務として委任をされた範囲ということに校務はなると思う。それから「所属職員を監督する。」ということも、今までの文部省自身の御説明によっても、所属職員の監督というのは、これは指揮命令というものを意味しておらないのだ、指導助言ということで、学校経営そのものはもちろん校長が中心になるべきではあるけれども、職員と一体の形において遂行さるべきものだということが説明されている。今になって、どの法律的根拠によって急に勤務評定の第一次者であるという、校長というものを位置づけをなさるのか、ただいまの御説明では納得できない。
  143. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) この前の国会でも申し上げましたが、管理職手当を出したから管理職になったのだというのじゃありません。管理職だから管理職手当を出した、こういうのがわれわれの考え方でございます。その管理職たる地位にある、これが第一次の評定をするということは、最も私は実情に適する計画だと思うのであります。
  144. 加瀬完

    ○加瀬完君 管理職というのが、校長の管理的権限というのが法律のどこにあります、示して下さい。
  145. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) だんだん話がこまかくなるので専門の局長から答えさせます。
  146. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 校長が管理職であることは、先ほど御引例になりました学校教育法二十八条によって、「校務を掌り、所属職員を監督する。」、この規定があるわけであります。もう一つは、さっき御引例になりましたところの、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の中に、所属職員の人事に関し具申する権限が与えられておるのであります。
  147. 加瀬完

    ○加瀬完君 具申権というのは、法律的に何の権限もないのですよ。具申するだけですよ。具申権が通らなければならないという法律的な裏づけは何にもない。これを法律的に解釈すれば、具申権というものが、校長が人事管理をする固有の権限だという解釈は今の法律の通説においては通用しないといわれておる。具申権が通るという見通しがありますか、何にもないでしょう。  それから、二十八条ばかりをあなた方出しますが、二十八条をあなた方自身の文部省の御説明によって、二十八条における監督の権限というのは、こういった校務というものは委任された事務以外にはあり得ない。さっき私があげた校長の固有の権限以外にはあり得ないというのでしょう。説明しているでしょう、かつて。勤務評定表を作って勤務評定をしなければならないという法的根拠をもっと明確に出して下さい。
  148. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 校長は、「所属職員を監督する。」、この監督の中には指揮命令は含まれます。私どもは、今御指摘になりましたような意味に解釈しておりません。  それから、教育委員会の権限といいますのは、これは地方教育行政の組織及び運営に関する法律に明らかにされていますように、学校のあらゆる管理運営に関する権限は、全部教育委員会が持っているわけであります。その権限を校長にまかせる場合があるわけであります。たとえば教育課程の編成権でも、これは教育委員会が持つものであります。教育課程にしても、あるいは建物の問題にいたしましても、あるいは人事の問題にいたしましても、ある程度教育委員会は校長に事実上委任しておるのでございます。ですから教育委員会が上司でございますので、教育委員会の命令に校長は従わなければならぬ義務があると思っております。
  149. 加瀬完

    ○加瀬完君 指揮命令の権限がありますと言われるけれども、指揮命令の権限はありませんよ。どういうところから指揮命令の権限があると言われるのですか。校長は委員事務以外のことについては、固有の事務は、さっき言った三つです。あとは委任事務以外のことについて固有の権限というものはほかにないのですよ。それに校長の、校務をつかさどり、職員を監督するということは、職員を監督するということは、学校教育という業務についてこれは監督することであって、一般の教育行政の全般について監督するという権限は、教育委員会にはあったって校長にはないですよ。委任されたときのみ、それは委任された範囲で指揮命令することはできるでしょう。しかし委任がはっきりと法律的に、勤務評定表を作って、校長は勤務評定をしなければならないという委任事務が明確になっているのなら言われるでしょうけれども、そういう法律になっておらない。委任するか委任しないかは、その教育委員会によってまた変ってくる。あるいはそういうものが委任の内容になるかならないかという問題も起る。少くもあなたが今、上司であるから、上司の命令に従うだけだ。上司といえども教育行政の全般にわたって地方教育委員会が全部の権限を持っているということにはならないのですよ。少くも命令されるものは職務の範囲内においてだけしか命令はされませんよ。校長が勤務評定をするという職務があるかないかという問題がそこにある。その法的根拠がどこにあるか、その法的根拠が明らかにならなければ、命令を受ける権限があるかないかという問題がまたあとに残ってしまう。私が聞いているのは、職務として校長が勤務評定書を提出しなければならないという義務は法律的にどこにあるか。
  150. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 先ほど申しましたように「所属職員を監督する。」、この監督ということは、人事管理を行う面でございます。そういう面から人事の具申権もあるわけであります。従って、当然校長の私どもは職務の範囲内、つまり勤務評定ということは、人事管理をする参考資料でございますから、その参考資料を教育委員会が校長に命ずることは適当であろうと考えます。
  151. 加瀬完

    ○加瀬完君 地方教育行政に関する法律でも、地方公務員法でも、地方自治法でも、監督という言葉と指揮監督という言葉を重ねて使っているところは意味が違います。指揮監督するという言葉と、ただ監督するという言葉は別に使い分けております。そこで監督ということは、指示命令というぐらいはしいて考えることができるかもしれないが、指揮監督という意味ではないということが一般としては解釈の通念になっておる。あなたは法律の専門家ですから十分おわかりでしょう。そこで、校長の職務としてやらなければならない固有の権限の中に、さっき言ったようなものがあるかないかということを、あなたは、校長は管理職だ。今までの法律の上では、校長にはあなたがおっしゃるような管理権というのは、委任されない限り存在しませんよ。どういう点を監督するかといったら、学校教育の運営ということはない。学校教育の執行ということだけについて監督する権限が校長にあるわけです。今度はそうではなくて、だんだん文部省の解釈というものは、もう一つ人事管理の監督権というものが校長にあるのだという解釈をつけ加えてきておる。それならば教育公務員特例法でもちゃんとそこを改めて、校長の位置というものをきちんときめるべきである。そうでなければ、教育公務員特例法にある学長、学部長の勤務評定に関する権限というものと、高等学校長以下の校長の権限というものは違っておるわけです。あなたの言うような解釈をするのは、それはあなたの都合のいいような立場に立たなければできない解釈だと私どもは考える。
  152. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 今おあげになりました教育公務員特例法の場合は、この前お話がありましたように、大学の機関には広範な自治権が認められたわけであります、特例法によりまして。そういう意味で学長の地位というものが文部大臣からある程度独立した形をとっております。しかし市町村の学校の場合には、教育委員会に全部の管理、運営の権限がありまして、その管理、運営の方針に従って校長が校長の管理事務を行なっております。これは教育課程の編成権は実は教育委員会にあるわけであります。具体的に毎日毎日の教育課程の計画を立てる権限は教育委員会にある。その一部を教育委員会は校長にまかしてある。建物の場合も同じだと思います。同時に人事の場合も同じであります。従って、学校教育法にも特にこの点は明示いたしまして、「所属職員を監督する。」とありますその監督の一態様と考えておるわけであります。
  153. 加瀬完

    ○加瀬完君 監督ということは、校長の今まで考えられた職務の範囲内においてのみ監督し得るのだ。職務の本体は教育の執行でありますから、教育の執行については監督しますけれども、人事管理のことについて監督するという権限は校長には今まではなかった。  それならば、また例を引いて恐縮ですが、そういうふうに命令すれば何でも校長はやらなければいけないか、入学児童の該当者がどこのだれ兵衛だということを調査しろと命令されれば、それを校長はやらなければならない義務がありますか。また、教員に戸籍簿を整理しろと命令があったら、それをやらなければならないか。職務範囲外のものをやる義務というものは、幾ら命令であってもあり得ないでしょう。上司が命令を出し得るのは、地方教育委員会が校長に命令を出し得るというのは、校長の固有の権限だ、委任事務の範囲内だということであれば、命令というものが義務となって裏づけられる。勤務評定をしなければならない義務というのはどういう法律によって裏づけられるか、それを聞いておるのです。
  154. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) その点はたびたび申しましたように、一つは、校長は学校教育法によって「校務を掌り、所属職員を監督する。」、この二つになっております。校務をつかさどる、一つは所属職員を監督する、この監督の中に人事管理の面も当然含まれる。従って、人事管理上必要な勤務評定書を書かせるということは、職務の範囲内だと思います。
  155. 加瀬完

    ○加瀬完君 それなら、地方教育行政なんて、あなた方非常に大声をして無理に通した法律がある。この中に、校長、教員というものを一緒くたに扱われている。これは地方教育委員会のいろいろの命令系統、指揮系統といいますか、そういうものが書いてある。校長と教員というのは別になっていませんよ。たとえば、教育委員会の仕事の中に、校長、教員の研修といったのがあります。校長をそういった人事管理の補助的執行機関としてやらなければならないということは、あなた方が作った法律の中にどこにもないじゃないですか。それを牽強付会もはなはだしい。命令みたいなものでやれるという解釈をするなんて、こじつけもはなはだしいです。何でそれじゃこの中に入れなかったか、この教育行政法律の中に……。どこの条項から校長が勤務評定地方教育委員会の補助執行機関としてやらなきゃならないということが出てくるか。ちゃんと法律の条項を示して下さい。
  156. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 一々私どもは法律に明示しなければならぬとは考えていないので、教育委員会と学校との関係は内部関係なんですから、内部関係として教育委員会が校長に命ずることもあるし、また、教員に命ずることもあるだろうと思います。
  157. 加瀬完

    ○加瀬完君 その命令なんということじゃない。指揮監督という、そういうことが野放図にやれるものじゃないです。だから、さっき言ったように、それなら戸籍の整理まで校長に言いつけられるかというのです、教育委員会が……。だから、命令するということは、こういう法的根拠についてこういうふうに命令するんだという、法的根拠がなきゃいかぬ。その法的根拠がないというときには、非常にあいまいなんだから、そこは十分研究の余地がある。それをあなた方が、やたらに校長に勤務評定書を作って提出しろということは、法律による法律によるというけれども、法律によるんじゃないじゃないですか。あなた方の今の説明によれば、法律によるんじゃないじゃないですか。法律によるんじゃなくて、行政命令によってそういうふうにやった方がいいんだからということだ。
  158. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 学校と教育委員会との関係は、これは内部機関の関係でございますから、内部機関の関係について一々法律で規定する必要は私はないと思います。ですから、この地方教育行政の組織及び運営に関する法律でも、教育に関することは全部、管理運営は教育委員会にあるわけなんです。その権限を校長に一部委任し、あるいは一部みずから執行する場合もあるわけなんです。だから、その関係は私は内部関係だと、さように考えておりますので、一々法律に明示する必要はない……。
  159. 加瀬完

    ○加瀬完君 さように考えていらっしゃるということであれば、これはまあ法律的な解釈じゃありませんから、考えているのを考えるなと言っても無理ですから、議論を進めませんが、おかしいですよ。内部関係といったって……。認めましょう、内部関係。しかし、その地方の教育をするという一つの機関としての内部関係という存在を認めるとしても、地方教育委員会の管理者としてやらなければならない立場と、実際の教育執行者としてやらなきやならない教員の立場というものは、はっきり法律に分れている。内部関係とはいわないです。教育行政としてやらなきゃならない地方教育委員会の権限と、教育の執行者としてやらなきゃならない学校の教員の権限と、校長の権限と、はっきり分れている。有無相通ずるというのは、予算のないときの昔の経済の話だ。今、法律で明分されている教育の分野というものを、そう混合してしまったら、これは地方行政というものは成り立ちませんよ。あなた方が考えているというならそれでいいです。次の質問に移ります。  二番目は、勤務評定の目的です。これはまあ大臣に、伺いますけれども、勤務評定の目的がたびたび人事管理のためだということをおっしゃいますが、ここであらためて、どういう目的で文部省は強引に、強制までもして勤務評定をやらなければならないとお考えになっておりますか。その勤務評定の目的としてお考えになっていらっしゃる点を、念のためにはっきりとお答えいただきます。
  160. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 勤務評定は、人事管理を適正にいたしますための参考資料を得る方法であろうと思うのでありますが、これによりまして人事の管理を適正にし、勤務成績の向上をはかり、ひいては教育効果を上げていこうと、こういうところに目的があるものと考えております。また、これは私は、強制も何もいたしておるわけじゃございません。要するに、法に基いて仕事が運んでいくように努力をいたしておるわけでございます。
  161. 加瀬完

    ○加瀬完君 昭和三十一年十一月二十日の文教委員会において、愛媛の勤評が初めて問題になりましたときに、人事院関係の方もいらっしゃっていただきまして、そのときの政府の勤務評定の国家公務員に対する目的というものは何だという質問をいたしましたときに、人事院給与局の次長はこう答えております。国家公務員の勤務評定制度は、公務の能率増進計画の一環として、特に勤務成績優秀な者に対する表彰だとか、あるいはまた不良な者に対する矯正方法を講じて、全体として公務員の能率発揮に万遺憾なきを期せしめることが根本趣旨である、こう答えておる。で、能率増進計画の一環としてやるということと、人事管理が勤務評定でなければできないとしてやることとは、ずいぶん違いがあるんです。あなたのせいじゃありませんから、おれは知らぬと言えばそれ切りの話だけれども、人事院の見解として表明されました、能率増進計画の一環としてやるんだというお考えはおとりになりませんか。
  162. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 私は法律のことはそれほど詳しくないんです。ことに、当時どういうことであったか、よく承知いたしておりませんが、人事の管理の適正について、また言いかえれば、勤務成績の向上を促すことになり、能率の増進になることは、かれこれ矛盾するところはないと思います。
  163. 加瀬完

    ○加瀬完君 やり方によっては矛盾しませんけれども、あなた方のようなやり方をなさっておられると大いに矛盾するんです。  これは自治庁の長官にも伺いたいんですが、各都道府県を初め、地方団体でも当然勤務評定ということが問題になるわけです。あなたの御担当……。そこで、これからおやりになろうと、あなたさっきだいぶやっているというが、だいぶはやっていない、これからおやりにならなければならない。そのときにどっちの立場をとるかということによって基本的に違ってくる。それは国家公務員法の七十三条には「能率増進計画」という一項があります。で、能率増進の計画というと、たとえば厚生施設をどうするとか、職員の教育訓練をどうするとか、元気回復に関する事項ということまでもあります。そういう勤務条件をベスト・コンデションにするということと、勤務評定をして、全体の能率増進をはかるということと、ほかの勤務条件をさっぱりやらないでおいて、勤務評定だけをやって能率増進をはかるということはずいぶん違ってくる。そこで文部大臣にさっきから伺っているのは、一体あなたが能率増進計画の一環として勤務評定をやるというなら、やり方はもっと別にあるんじゃないか。そんなことは文部省考えておらないんじゃないか。勤務評定をやれば能率増進ができるという前提に立ってやっている。そうでないという御理由を事務担当の方でいいから十分御説明下さい。
  164. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) ただいま大臣からお答えいたしましたように、私どもは勤務評定を行いまして、成績のいい者は特別昇給させるとか、あるいは優遇する方途を考え、悪い者についてはこれを矯正して研修させる等のことを行いまして、全体的に教育の能率を増進するように、教育効果を上げるようにすることだと思います。これが人事管理の要諦だろうと私は思っております。
  165. 加瀬完

    ○加瀬完君 能率増進計画の一環としておやりになるのか、勤務評定のみによって、あなた方が説明しているように、人事管理の適正を期そうとするのか。国家公務員法にも地方公務員法にも、人事管理のために勤務評定をやるということはどこにもありませんよ。能率増進計画の一環として勤務評定というものが位置づけられているわけです、法律には。国家公務員法には、そういう意味で勤務評定の目的というものがはっきり七十二条にきめられている。その裏づけとして勤務評定をする条件としてこれだけのものを整えなければならないということが七十三条にきめられている。こういうことを一つも考えないで、ただあなた方の作った法律の中には、勤務評定はやることになっているけれども、勤務評定というものはどういう目的という目的が書いてない。だから人事管理という適当な言葉で解釈していますけれども、少くとも地方教育行政の組織及び運営に関する法律にきまっておらないことは地方公務員法によるべきであり、地方公務員法でさらに明確化されておらないのは、これは解釈の常識からいって、慣例からいって国家公務員法によるべきである。国家公務員法にははっきりそう書いてあるにもかかわらず、そういう今までの考え方というものを全然だめにしてしまって、人事管理ということばっかりを表にあげるということは、これは法律解釈の上からも国家公務員との権衡の上からもはなはだ腑に落ちない、この点どうでしょうか。
  166. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 私どもは教育の能率を増進し、そして教育効果を上げることが人事管理の上で非常に必要なことだ、かように考えております。
  167. 加瀬完

    ○加瀬完君 かように考えておるか、考えていないか、あなたの考えは聞いていない。法律の解釈をどうするか、国家公務員法の七十二条、七十三条というものは、当然地方公務員にもこれは類推解釈されるべきだ、その考え方というものを全然取り上げないというのはどういうわけだと、法の解釈の仕方を聞いているのです。
  168. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 今お尋ねの国家公務員法の七十二条には、「職員の執務については、その所轄庁の長は、定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果に応じた措置を講じなけれならない。」、こういうふうに書かれております。
  169. 加瀬完

    ○加瀬完君 第三項があるでしょう。都合のいいところばかり読み上げないで、都合の悪いところも読んで下さい。
  170. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 第三項は「人事院は、勤務成績の優秀な者に対する表彰に関する事項及び成績のいちじるしく不良な者に対する矯正方法に関する事項を立案し、これについて、適当な措置を講じなければならない。」、趣旨はこういう点でございます。
  171. 加瀬完

    ○加瀬完君 七十三条は……。
  172. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 七十三条は「能率増進計画」として、「人事院及び関係庁の長は、職員の勤務能率の発揮及び増進のために、左の事項について計画を樹立し、これが実施に努めなければならない。一 職員の教育訓練に関する事項、二 職員の保健に関する事項、三 職員の元気回復に関する事項、四 職員の安全保持に関する事項、五 職員の厚生に関する事項、前項の計画の樹立及び実施に関し、人事院は、その総合的企画並びに関係各庁に対する調整及び監視に当る。」、こういう規定がございます。私どもは、ここにいう能率増進ということが人事管理の上に非常に必要であろうと思うのであります。
  173. 加瀬完

    ○加瀬完君 ですから人事管理の上に必要ということは、人事管理をあなたは主体に考えている。そうじゃないのですよ。人事管理のために能率増進があるのではない。能率増進計画というものの中に勤務評定というものがある。その勤務評定というものを使って人事管理をした方が能率増進するということになるわけです。大もとが違っている。あなた方の考えは、人事管理だけうまくやれば能率増進するというのがあなたの解釈です。法律はそう解釈していない。そう規定しておらない。地方公務員法でも四十二条の解釈には、はっきりと能率発揮というものについていろいろ規定しておるわけです。だからこれは現在の法律では、人事管理というものだけを目的にして勤務評定をやらせるという根拠はないのです。勤務評定というものをやるならば、七十二条の三項のようなねらいで、少くも七十三条のような条件のもとに行われなければならないわけです。しかも地方財政の問題でも、行財政の問題でも、文教政策の問題でも、地方に行ってごらんなさい。昇給昇格が何回もストップされている。こういの勤務条件の悪いことは何ら改善されておらない。あるいは教育改善のためのいろいろな法律をお骨折りでお作りになりました。しかし何々振興法というけれども、振興されていますか。裏づけの予算というのは、あなた方自身御不満でしょう。たとえば、すし詰め学級の解消ということを私は何回も言っておりますけれども、あなた方自身、大蔵省に要求したものの一体何パーセントが通りました。そういう勤務条件の改善というものは捨てておいて、文部省が……。地方教育委員会なり県の教育委員会が、勤務評定というものをやろうかやらないかと盛んに議論するのはけっこうです。そちらの方ではあまり騒がないで、あなた方の方がねじりはち巻きでおみこしみたいにわっしょわっしょやる。こういうのは法律解釈からいっても、どうも法律の正しい解釈とはいわれないのじゃないか。私ども勤務評定の目的というものはそういうものではない。法律できまっている勤務評定の目的というものを、それを曲げてそういうふうに解釈を下しておやりになるのは腑に落ちないというのです。法律的にどういう根拠があるのか、それを伺っておるのです。
  174. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 御指摘になりましたように、職員の勤務能率の向上をはかり、勤務成績をよくするということが、人事管理上私ども非常に適切であり、必要なことだと考えておるわけであります。
  175. 加瀬完

    ○加瀬完君 内藤局長は御勉強の方ですから、御事情はよくおわかりにならないはずはない。勤務条件や職場の人間関係の改善をやる方が、勤務評定をやるよりは、能率増進の上でも、人事管理の上でも先決だというのが、大体アメリカなんかでももう一般的な通説といいますか、世論の傾向というのは大体そういうことに落ちている。人間関係をどうするか、勤務条件をどう改善するかということを完備しなければ、勤務評定だけやったって、これは人事管理ができないというのが定説だ、こういわれておるのです。それを非常にかつてやったところでも大きな反省をして、勤務評定というものを、しかも日本の法律できまっている目的にはずれたような傾向に持っていこうとするような企画というものは私は賛成できない。またそういう考え方をするあなた方が……。文部大臣は先ほどから法の尊重、法の尊重と言っているけれども、法の尊重をしておらない。法律違反とまでは言わなくても、少くとも法の精神にはずれたような考え方に固まっているあなた方だと言わざるを得ないのです。いかがでしょうか、この点は。
  176. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) たびたびのお尋ねでございますけれども、私どもは、義務教育の職員、高等学校の職員が、職務能率を増進し、教育の効果を上げることを目的としているのであります。そのために適切な人事管理を行うための一つの資料として勤務評定を増進しているわけであります。
  177. 加瀬完

    ○加瀬完君 まことにくどくて申しわけないのですけれども、能率増進の一環として勤務評定をやるというなら、勤務評定よりももっと能率増進の諸計画ということが先行されなければならないと思うのです。こちらの方は金がかかるからというのでたな上げにしてしまって、勤務評定だけに頼って能率増進をしようということは、法律の精神に反する、こう申し上げているわけであります。反しないといわれれば、それっきりですけれども、それは、そういう解釈は、私は法制局あたりに来てもらって正しい見解を聞かなければ、内藤さんの解釈と私の解釈、これは水かけ論になると困りますから、あとで法制局にでも見解を承わりたいと思います。
  178. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 能率増進ということを言われますが、その通りだろうと思うのであります。勤務評定の実施ということは、要するに、ねらいとするところは、勤務成績の向上をはかり、教育者のいわば教育の効果というものを上げてもらいたいというところから出発いたしておるわけであります。その大きな目的につきまして、あなたのおっしゃることと、われわれの考えていることとは、私はそごはないと思います。また能率を増進するという意味合において、ただ勤務評定だけやれば能率が増進するのだというふうに考えるのは、ちょっといかぬだろうと私は思うのであります。それから、それに対する施策というものを講じて参りたいと思います。不十分ながら今日まで少しも努力はして参ったつもりであります。そういうことでありますので、ものの考え方において私は加瀬さんとそれほど違いがあるとは思っておらない。
  179. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは大いにあるのですよ。能率増進計画というものを考えて、そのワクの中で勤務評定を乗せていこうということになると、勤務評定イコール能率増進計画だと考えられることは、非常に違いがあります。それは見解の相違と言われれば、それまでのことですが、質問を次に移します。  もう一つは、教員に勤務評定を行うことが法律上可能かという問題です。法律できまっているから勤務評定をやらなければならないと言いますけれども、法律では勤務評定をやらなくてもいいときまっている。御存じのことです。あらゆる国家公務員、地方公務員全部、勤務評定をやらなければならないということにはさまっていないわけです。人事院規則によれば、勤務評定をやらないものが幾つか抜き出されておる。またやらなくてもいい条項というものはちゃんと設けられておる。これは御存じの通り。それで、勤務評定をやるとするならば、その前提として、職務内容の分析が整理されておらなければならない。教育という一つの仕事の職務の中で、勤務評定をするような分析をどうしてできるか。現在の、とにかく教育科学といいますか、そういうワクの中では、教員の教育の仕事というものの勤務評定をすることは科学的に不可能だというのが定説なんです。教師の教育活動を科学的、客観的に評価するということは、教育科学の水準ではできないというのが定説なんです。それをあなた方はおやりになるというからには、勤務評定をするには、少くも職務内容の分析が整然だとされているという前提があるはずです。この点はどうです。
  180. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 教育の効果を測定するということは、これはなかなか困難だと思います。しかし職員の勤務のしっぷりというようなものを測定するということは、これは教員だからといって別に例外ではないと思うのです。すでに国家公務員についてもやっておるし、国立学校でも実施しておるわけなんです。特に付属の学校等においては実施しております。地方の公立学校においてもできないはずはないし、現に公立学校でも、県立学校では十数県がやっておりますし、小・中学校でも愛知、富山、愛媛等、数県が実施しておりますので、この実施の状況を見ても不可能だとは私は言えないと思います。
  181. 加瀬完

    ○加瀬完君 国立学校でやっていらっしゃると言いますが、どんなようにやっておられるか、あなたは御存じでしょう。あんなものをやるならば、勤務評定をやった方が喜びますよ。三分の一ずつ特別昇給をさせる対象人員を作っているのですよ。三年に一ぺんぐらい特別昇給をさせるようなワクを作って、交代に特別昇給さしているのです。そんな勤務評定ならだれも問題はありませんよ。あなた方がこれからおやりになろうとする勤務評定はそんなものじゃないはずです。われわれの知り得る範囲においては、実際人事院規則において勤務評定というものが考えられている根底には、職階制というのがあるはずです。職階制で職務内容というものが画然と区画されて、その職階制の区画されたワクの中で勤務が正しく評価されると、こういう形でなければ勤務評定はできないという前提に人事院規則は立っておる。職階制が教員にありますか。職階制のない中でどうして一体やれますか。たとえば事務職員がここにある、養護教員がある、教頭がある、校長がある。六年生を持っておるのと一年生を持っておるのがある。産休補助教員がある。どうしてこれの教育効果を判定することができますか。職階制がなければこれはあてがい扶持ですよ。いいかげんにつけるよりない。勘だ。そういうものを、あんな区画をした中できちんと入れようということになると、どだい無理だということが言えませんか。
  182. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 勤務評定は直接私、職階制と関係ないと思う。現在、都道府県で行われようとする勤務評定は、校長の職種、これははっきりしております。それから教員、今お尋ねになりました養護教員、事務職員、それぞれ職種がはっきりしておりますので、それぞれの職種に応じた勤務の内容があるはずでございますので、勤務の内容をつかまえて、適当な判定要素を選び出しているわけでございます。
  183. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなたは、適切な基準といいますが、そういったような職務遂行の基準というものはきめられないというのが、これは学問的には定説なんです。どうしてきめられますか。対象が違うのですよ。悪いけれども、ばかばかり集まった組もあれば、頭のいい者ばかり集まった組もあるでしょう。これを同じ努力でやったって教育効果というものは判定できますか。あるいは、ことし非常に効果が上ったと思ったら、来年にはぞろっと悪いのが出てきちゃったということになって、さかのぼって去年の評定を変化させることができますか。そういうような非常に困難な条件がありますので、少くとも十二分な検討がなければ、一応の表ができましたから、さあやれという問題ではないだろう。  それで、地方公務員が国家公務員とそのまま同じことをやるとは言いませんけれども、少くとも国家公務員の勤務評定についての人事院規則の中には、勤務評定をやる前の条件というのがちゃんときめられております。「あらかじめ試験的な実施その他の調査を行って、評定の結果に識別力、信頼性及び妥当性があり、且つ容易に実施できる」という三つの要件が必要だということが、人事院規則の中にきめられている。これは勤務評定をする前提条件というものが、国家公務員での前提条件であれば、これは当然地方公務員にも適用されなければならない。こういう方法をお用いにならないのは一体どういうわけです。人事院規則に違反するということは、国家公務員法第二条の違反だ、どうです。
  184. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 先ほどお尋ねになったその教育の効果を私は評定しようとは言ってないのです。教員の勤務の仕方、しっぷりを評価する、この点混同していただきたくないと思います。  それから、今の勤務評定の試験的実施でございますけれども、この試験的実施につきましては、教育公務員についてはすでに相当行われている。たとえば、先ほどから例を申しましたように、県立学校においては静岡、その他十県が行われておりますし、また小・中学校におきましても、富山、愛知、愛媛においては行われております。そういう実態を十分考慮して、また国立学校における状態も考慮いたしまして、今度の評定を作ったわけでございますので、全然新しいものではございません。(「文部省が作ったんだ」と呼ぶ者あり)
  185. 加瀬完

    ○加瀬完君 やはりとうとう白状して作ったとおっしゃいましたけれども、文部省が作ったという考え方だから、全国のどこかでやっておって試験済みだと、こういうようにおっしゃる。ところが、たとえばどこでもいいのです。神戸市なら神戸市というところで勤務評定をするというならば、その神戸市において試験期間があって、そこで妥当性というものが少くとも考えられている、またやっておって、能率が上るというはっきりとした見通しがついて、そういういろいろな条件というのがそろわなければ、少くとも神戸市における勤務評定ということは行えないはずです。そうでしょう。奄美大島の名瀬あたりで勤務評定をやったからといって、これをそのまま持っていって札幌でやれますか。札幌は札幌のことで、そういう勤務評定をやり得る条件というものが、できるかできないか、この試験期間が必要なんだ。各地方団体皆独立しているのです。あなたのように、文部省でやろうとすれば、おれの方はわかっているから大丈夫だということになるかもしれませんが、それぞれの地方団体、それぞれの地方教育委員会では、自分のところで試験的にやってみなければ安心できません。法律の精神も、人事院規則の精神もそういうところにある。これはおかしいのです。  それから、先に教育の効果を測定するのじゃない、勤務を測定するのだとおっしゃる。教員の教育における勤務ということは一体何です。教育効果の上る教育でしょう。教育の効果を測定できないで、何の勤務評定をやるのです。何時に来たとか、何時間学校にいたとか、そんなことでしょうか。それでは教育公務員の職務の執行というものの本体をなす教育の業務を執行するということにははずれてくるでしょう。それでは教育の管理になりません。教育効果そのものを判定しないで、教員の人事管理ということでありますか、どうです。
  186. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 最初のお問いでありますが、実は教育長協議会で、この試案が作られるときに、いろいろな要素を考慮せられて、そうしてこれならば一つの試案としていけるだろうということでお作りになったわけです。それに基いて、各県ではそれぞれの状況を考慮されて、独自の案が作られているわけなんです。この点、各県がおそらく確信のある案ができていると思うのです。ですからそういう意味で、全国一律の案ではない。  それから、次のお尋ねでございますが、私どもは、教育効果を綿密に科学的に測定するということは、なるほどむずかしいと思います。しかしながら、先ほど来申しましたように、教員がたとえば熱心であるとか、不熱心であるとか、あるいは指導力があるとかないとか、学級経営がうまくいっているとか、いかないとか、これは私は、日常の勤務を見ればこれはわかる。ですから教員の勤務する態様から勤務成績を把握できる、かように考えております。
  187. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういう概括的な判定というものは、現在通例行われているところの校長の職員に対する監督で十分事足りるわけで、あなた方の文部省の指示による教育長試案というものにはずいぶんこまかい……。あんなものはばかの骨頂だ。やれるはずはないものだ。もっとやるなら、客観的に学問的にうなずけるようなものを出すならまだしも、あなた方の現場の経験もなければ、教育科学を特に勉強したものでもない者が、いいかげんのものを作って、どれだけそれが客観性がありますか。永久性がありますか。やるならやるように、客観的にそういう専門家を頼んで、なるほど一応うなずけるというようなもの出すならまだしも、そういうことでなければ、結局やってみたってどうにもならないということになるわけです。ほかの目的でやるならともかくですよ。教育の目的をさらに向上させ、教育公務員としての人事管理、能率増進をはかるということだったら、あなたのようなお考えで、今のような案ではだめなんです。  それからもう一つ、教育長協議会が云々。教育長協議会というのは一体何ですか。そんなものが法律に何の権限があります。あなた方に集められて、しようことなく来て、すかされたり、おどかされたり、電話かけられたりして、いつやるとか、そこはもう少し延ばしなさい、こういう内容ではどうですか、それは変更しちゃだめだと言われて、そんな者が集まってやったって、それが客観的なものができますか。大体、教育長そのものに別に資格はないでしょう。教育経験者でなければならないと、この前の法律のように教育長としての資格というものがきちっとあるはずはない。だれでも選任されれば教育長になれるわけだ。労働部長が教育長になっている、民生部長が教育長になっている。こういう人たちが集まって、何ができます。第一、教育長協議会というものが試案を作るということも、はなはだ地方自治的に見れば越権行為もはなはだしい。私は千葉ですけれども、千葉県の勤務評定は千葉県の教育委員会計画をして、それぞれの町村で実施するというのが本体で、東京の教育長に案を作らせて、それを千葉の教育長が持ってきて、大体あんまり変更しないようにというてやられて、大きに迷惑です。そういうやり方をすることが、やらせ方をすることがそもそも私はおかしい。教育長協議会というものの名をかりて、文部省の意図をその中に盛り込まれて、いろいろ下へ流されていく。そういうことは非常に地方自治権の侵害だとお考えになりませんか。これは大臣に聞きましょう。いいですか。教育長協議会というものを作って、そこで大体文部省の方から腹がまえというものを伝えて、そこで作った案として下へ流していく。これは少くも地方の自治というものを侵犯するものですよ。勤務評定やらなきゃならないなら、その県が必要として計画して、その町村が必要としてやればいい。文部省が全国の教育長を集めて、教育長の団体に文部省の腹づもりをみんな渡して、責任だけを向うへおっかぶせる、こういうやり方をあなた方の方はしている。こういうやり方を、これは文部省の正しいやり方だと大臣お考えになりますか。
  188. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 加瀬君のおっしゃったような通りのことが行われておれば、いろいろ議論も起ろうと思いますけれども、私どもは、地方自治の全般の発達をはかる上におきましても、あるいはまた、教育行政の点をとらえてみましても、中央と地方とは互いに協力してやるということは、自治の侵害になることはないと思います。私どもの方で何か規則でも作って、これを押しつけるということであれば、穏やかならぬということになりましょうし、違法ということにもなりましょう。しかし、そういうことでやっておるわけではありませんし、連絡協議会で協議をして、そのことをもって直ちに私は地方自治の侵犯ということにはならないように思うのであります。
  189. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、新聞によりますと、大臣はまだ実施計画を持たないところの府県には実施計画を持たせるんだというふうなことをおっしゃっておりますが、北海道その他、まだ実施計画を持たないものが、当分実施はわれわれの方では無理だと、研究期間を置いて引き延ばして、計画を密にするんだという考えに立てば、それを文部省として強要するというお考えはありませんね。あるいは今の、各教育委員会が、このようなままでやるということは非常に無理があるから、若干冷却期間を置こうという打ち出し方を府県の教育委員会がすれば、それもお認めになるということですね。「当然だ」と呼ぶ者あり)それを強要する権限というのはないはずだけれども、強要しているようないろいろな言動があるから私は質問する。重ねて大臣の御見解を承わりたい。
  190. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 私は、一般的に申しまして、勤務評定の実施を望んでおるのであります。従いまして、その意味において実施してほしいということは私の立場からお願いをしておるわけであります。それだけのことであります。
  191. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、文部省のあなたの下僚が、それぞれの教育委員会に対して実施の強要をしておる事実があるというときはどうしますか。
  192. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 文部省にはさようなことを強要するだけの力はございません。
  193. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、各それぞれの今まで強要されておったと受け取っておる府県が、強要しておらないという大臣のお言葉があるならば、われわれは、計画を変更しようというならば、その計画の変更は、文部省としてそのままお認めになるということになりますね。
  194. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 文部省は、地方教育委員会に対して指導し、助言し、勧告するという権限は与えられておるのであります。必要があればこれを行使するだけのことであります。別に強要するとか、しないとかいうことではなくて、法律があることでありますので、文部省としてはぜひこれを実施してもらいたいということを私どもお願いしておるわけでございます。
  195. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは当然です。しかし指導、助言、勧告を通り越して、指揮命令のような形を実際的には帯びていると地方では、受け取っておるのです。少くとも地方公務員法四十条の2によりましても、こういったようなものが施行されますとき、人事委員会の意見というものを十分尊重されていいと思う。ところが府県によりますと、人事委員会が、これはやるべきではないという研究成果を発表しているところもあれば、これはやるべきではないという勧告をしておるところもあると聞いておるのです。こういう人事委員会の態度がはっきりしているところまで文部省は、そういう地域の事情があるにもかかわらず、文部省は画一的に勤評をやるべきであるという勧告をなさるお考えですか。人事委員会のかりに意見というものは尊重するのですか、しないのですか。
  196. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 地方の人事委員会がどういうことを申したか存じませんけれども、それは地方教育委員会考え方です。文部省としては、地方教育委員会に対して実施を勧めておるのであります。
  197. 加瀬完

    ○加瀬完君 実施を勧めておるあなた方だから、その地域の実情というものを十分理解しているはずだ。人事委員会は人事管理の上に不適切だという判定を出しているところの教育委員会に対してまで勤務評定をしろという、御指導でも御助言でもいい、そういうことをなさるのははなはだ当を得ない。そういうものは十分人事委員会なり、その地域の教育委員会なりの意向というものは、文部省としても尊重されてしかるべきです。大体建前上、この勤評にしても何にしても、教育委員会というものを尊重すべきです。教育委員会は教育行政の主体です、地方において。それが国の法律、その他全般の国の教育そのものから見て、むしろ行き過ぎがあったり、行き足りないところがあったりするとき指導する、助言することで事足りるのです。文部省の立場はそのワクをはみ出しております、勤評の問題では。  ですから、問題を先に返しまして、その地域では勤評をやることが無理だという条件が蓄積されておるところにもかかわらず、あえて強行させようという御意思はおありにならないのかどうか。
  198. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 私は、勤評実施がどういう事情によりますか存じませんけれども、無理だということはよく了解できないのです。従いまして、地方教育委員会に対しては、実施していただきますようにということをお勧めするつもりです。
  199. 加瀬完

    ○加瀬完君 越権行為もはなはだしい。地方教育委員会なり教育委員会が勤評をやろうがやるまいが大きなお世話です、文部省は……。あなたが了解できないというのはばかな話です。青森なら青森、北海道なら北海道の教育委員会あるいは人事委員会が勤評について態度をとるという、それが地方自治権を尊重する立場なら、これはその地域の住民の意思です。これを尊重しないでそういうような決定をするのはわからない。文部省がたってやるなら、その根拠はどこにありますか。法律に、文部省設置何とかいう法律の中に、そういうことをやってはならないということがきまっているではないですか。
  200. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 私は現在の国法のもとにおいて勤評を実施するかしないかということが、地方教育委員会の自由であるとは思っておりません。地方教育委員会としては実施すべきものと考えております。
  201. 加瀬完

    ○加瀬完君 やるかやらないかの権限は、地方教育委員会にあるのです。文部省にはないのです。政治的とか何とかいう変なことを考えないで、客観的に見て、その地域ではやることが無理だという客観情勢が人事委員会なり教育委員会なりで発表されておるときにまで、強引にお前の方はやらなきゃならないというやり方を文部省はまさかなさるのではあるまい、こういうことですよ。
  202. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) やるかやらないかということは、地方教育委員会の私は自由にまかせられておる問題じゃないと思います。地方教育委員会としましては、法律上やるべきであると、そういう法律になっているのです。従って、私がやるわけじゃございません。問題は、もちろん地方教育委員会がやるのでございますが、文部大臣としては、地方教育委員会に、法律にそうなっておるのですから、任務を一つ果してもらいたい、こういう立場におるわけでありまして、それを進めておるわけでございます。
  203. 加瀬完

    ○加瀬完君 文部大臣にばかり聞いているとおしかりをいただきますので……。さっき吉江さんからも出ましたけれども、職員団体が話し合いを持ち込んだときに、勤評の問題で話し合いする価値はないと、まあこういうお話でしたがね、文部大臣は。  自治庁の長官に伺います。人事院規則の規定の中に、勤務評定の実施方法はその対象となる被評定者に周知させることを要するという規定からすれば、団体交渉ということではなくても、十分周知させるためには、いろいろな疑点、問題点、その他内容ということについて話し合いを求められたときには話し合いをするのが当然だと私は思う。自治庁の長官、地方の職員団体から、勤評という一つの勤務条件のことについて話し合いを持ち込まれたときに、その話し合いまでも、これはしなくていいということに解釈できるのですか。
  204. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) そのことは職員団体として、勤務条件に関する交渉とか話し合いとか、そういうものとはおのずから別と私は考えております。そしてまた、ただいまのお話のことにつきまして、話し合いをしなければならぬという法律的な規定はないと思うのであります。しかし、事実問題としていろいろ職員間で話し合いをするということはあり得ると思うのであります。そのことについて話し合いをしなきゃならぬと、こういう法律的な義務と申しますか、そういうことはないと思うのであります。
  205. 加瀬完

    ○加瀬完君 ですから、人事院規則の中にきめられていることは、勤務評定の実施方法は、その対象となる被評定者に周知させることを要するということになっておりますから、この趣旨からいえば団体交渉ということで、そこではっきりと団体的な取引をするということならば、これは異論もあろうけれども、そういう内容その他については話し合いは私はすべきだと、その精神が尊重されてしかるべきだと、こう思いますが、御異論はないと存じますが、いかがですか。
  206. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 法律問題というよりは、実際の行政運営の問題としてそれはあり得る事例であり、また円滑に処理するためにそういうことも時によってあり得ると考えております。
  207. 加瀬完

    ○加瀬完君 それから、自治庁の長官に伺いますが、これはほんとうは人権擁護局に来てもらわないとはっきりしないのですが……。
  208. 田中啓一

    委員長田中啓一君) 人権擁護局は課長が来ておられますから……。
  209. 加瀬完

    ○加瀬完君 文部省の示されておる全国教育長協議会の名のもとに公表されました勤務評定内容によりますと、評定された者が異議の申し立てをする権限はどこにも留保されておらない、これは地方公務員全般としてですよ。憲法で保障されておるこれは基本的人権の侵害にも取扱いようによってはなると思う。一体、異議申し立ての権利も認めない勤務評定というものは、自治庁の長官は、これからあなたの方でいろいろおやりになるというけれども、あなたはこれに対してどう思うのですか。地方公務員のうちの教育公務員はこう勤務評定されたら、石川五右衛門の釜ゆでと同じように、入れられたら文句はいえない、こういうやり方が、一体勤務評定やり方として妥当なものと、自治庁の長官として考えられるかどうか。
  210. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 勤務条件に関する問題でありますれば、これは不利な決定があってはいけませんので、それに対する異議の申し立てということも当然認めなきゃならぬと思うのであります。しかし、勤務評定の問題は、任命権者が人事管理の必要上やることでありまして、私は、必ずしも勤務条件に関する問題の場合と同じような扱いにする必要はないのじゃないか、かように思っております。
  211. 加瀬完

    ○加瀬完君 勤務評定の目的の中に、国家公務員法でもちゃんときまっておりますけれども、少くとも不良なる者はこれに矯正措置を講じなければならないということがあるでしょう。本人に通告しなくて、一体、矯正の第一歩が進みますか。犯罪人だって、死刑に該当する犯罪人だってちゃんと異議の申し立てというのが法廷でできる立場になっている。それが基本的人権の擁護ということがはっきり明文化されてなっている。評定されっぱなしで、それで自分がどういう評定をされたかということも熟知しないということでは、みずから反省して優良な公務員になろうという方法がないじゃないですか。そういうことが勤務評定内容として正しいとお考えになるのか。あなた、これからおやりになるときもやりっぱなしか、その点どうですか。
  212. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 勤務評定そのものについて、私はこれは管理、任命権者としてやることでありまして、もし勤務評定をやりまして、その勤務評定に基きまして、任命権者が何らかの処置をやった場合、それが職員に対する不利益を与えるというときになりますれば、そこで職員は、これに対して不利益処分の訴えをする、こういうことになると思うのでありまして、勤務評定それ自体が直ちに職員に対する不利益処分と、こういうことにならぬと思うのであります。勤務評定のいかんによって、それを実施した場合、それが不利益処分になれば、当然職員として訴える、こういうことになると思います。
  213. 加瀬完

    ○加瀬完君 ですから、そういう事前の手続として、勤務評定したものを、特に不利益的な評定がされたものに対しては、その本人からすれば不利益な場面、評定者からすれば、はなはだ勤務に適正を欠く場面、それを指摘する、通告するといいますか、そうして本人がもし不当だと思えば異議の申し立てをなし得る根拠というものを与えないでよろしいのか。これは人権擁護局の課長さん来ておるので、人権擁護の立場からいって好ましい方法とお考えになるかどうか、あわせて一つ答弁いただきたい。
  214. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 人権擁護局から御答弁申し上げます前に私から……。それは実施されてからの問題じゃないかと思うのでありまして、施される前のことについてのお話でなくして、実施されたあとの問題だろうと思います。
  215. 斎藤巌

    説明員(斎藤巌君) お尋ねの件でございますけれども、私どもまだよく検討しておりませんので、お答えしかねると思います。
  216. 加瀬完

    ○加瀬完君 検討する必要も何もない。今私が言った通りだ。一方的に評定されるわけだ。それが理由でいろいろ不利益を受けるということも、当然勤務評定の場合はあり得る。そういう場合に、勤務評定の目的からすれば、本人に通告するのが当然のことになっている。しかし通称文部省試案なるものによると、それは一切本人に通告しないことになっている。それでは不利益の異議の申し立てもできないじゃないか。不利益の場合は、異議の申し立てができるような根拠を何か与えることが妥当じゃないかと思われますが、そういう方法をとらない場合は、人権侵害になるおそれもあるのじゃないかと思われますが、どうでしうか、こういうことなんです。
  217. 斎藤巌

    説明員(斎藤巌君) 直ちに人権侵犯になるかどうかということは考えられないところでございますけれども……。
  218. 加瀬完

    ○加瀬完君 好ましい方法かどうか。
  219. 斎藤巌

    説明員(斎藤巌君) 人権擁護という言葉の意味になりますけれども、そういう場合、何らかの方法を、適切な方法をとることも必要かと思われます。
  220. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) こういうことじゃないでしょうか。勤務評定をして記録しておくだけ、それだけじゃもちろん問題にならぬわけです。勤務評定の結果、不利益処分を受けた場合には、これは当然不利益処分に対して訴える、こういうことになると私は考えます。
  221. 加瀬完

    ○加瀬完君 まあいいや、あとで研究して下さい。  自治庁長官に……。あなたさっき勤務評定は各地の団体で実施しているというけれども、実施されている団体の方が少いですよ。実施されておらない団体の方が大部分だ。そこで地方公務員法の二十四条には給与、勤務条件の権衡の原則というものがあるわけだ。直ちにこれが勤務条件ということにならないかもしれないけれども、同じ地方団体で、町役場の職員は勤務評定が行われておらない、学校の教員は行われておる、県庁の職員は行われておらない、高等学校の教員は行われている。こういうことでは、これは直ちにそれが勤務条件のバランスを破るということにならないとしても、地方公務員の立場からすれば好ましい態様とはいわれないだろう。しかし今、文部省はやっきになって、まず地方の教育公務員だけには勤務評定をやろうとなさっておる。そこであなたの方に、地方公務員との権衡の原則上、何か他の公務員をも勤務評定をやる方が好ましいというようなお話があったかどうか。あるいはあなたは、地方公務員のうちの教員だけ勤務評定をやられておることに対して、ここに権衡の原則が破られるのだけれども、何か文部省の方に対して、地方団体をやるならとにかくも、文部省が熱を上げてやっておるようだけれども、それは全体の二十四条の精神からいってあまり好ましい方法ではないという御意思の御表示でもあられたか、その間の連絡はどうとられておるか、この点……。
  222. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 各府県あるいは市町村における勤務評定の実施のまずその状況でありますが、府県におきましては、現在のところ、九県を除きまして、ほかは実施されておるのであります。また市におきましては、現在のところ、百六十八市でありますか、実施されておるように私ども報告を受けております。そこでお話のように、他の府県なりあるいは他の市町村なりとの不均衡の問題もあるわけでございまするので、私どもといたしましては、地方公務員法の規定に基きまして、この公務員法の第四十条に定める勤務評定が実施されるように、同法第五十九条の規定に基きまして必要な助言等をいたし、なるべくすみやかに他の府県と、実施していない府県は実施している府県と同じように実施されることを期待しておるのであります。なおまた、文部省は地方の教育委員会に対していろいろ連絡をとること、もちろん、私どもとしては教育委員会に対して、自治庁として権限は持っているわけではないのでありまして、文部省は文部省として、文部省所管の地方公務員に対してそれぞれの勧告等をいたしておる。私どもは私どもといたしまして、府県あるいは市町村等に対して五十九条に基いて必要なる助言等をいたしておる、こういうことであります。
  223. 加瀬完

    ○加瀬完君 府県はきめておりますけれども、実施しておらないところが大部分ですよ。あと占部君から詳しくいろいろ出ると思いますが、町村などにおいてはほとんどやっておらない。身分としては、任命権者は県だけれども、義務教育の教職員は身分は大体市町村の職員、同じ市町村の職員で、片方は勤務評定をやられて、片方はやられない。これは二十四条の精神に少なくもはずれるということは言われると思う。昭和三十一年の愛媛県のときにも、三人の法制局の者がこの委員会に出て、法制局の見解としては、勤務評定が直ちに二十四条違反とは言われないとしても、国及び他の地方公共団体とはなはだしく違った形で行われることは妥当を欠くという御見解が法律的に表明されておる。  そこで今、長官は、地方教育委員会やその他の府県の教育委員会を文部省の所管と言ったけれども、行政的には何も文部省の所管じゃありません。行政命令を受ける何も権限はありません。地方の自主性ということから勤務評定が云々されるのじゃなくて、文部省の要求ということから勤務評定をさせられるということであっては、そこにしたくない市町村も、自分の教員にはやりたくないという市町村も、勤務評定をされざるを得ないということになると、はなはだ権衡を失すると思う。こういうことを自治庁の長官としてはどうお考えになっておられるか。これから市町村に対して勤務評定をやるようにというのは、勧告や指導、助言にとどまるわけだ。学校の教職員ではありませんから、市町村は言うことを聞きません。またやっても人事管理ができないという具体的な例もある。勤務評定をやらない方が能率が増進するという実態をつかまえておるときには、市町村はやりませんよ。そういう場合には、やられる方とやられない方と、同じ市町村でバランスがとれない。これは実際の地方行政上どう考えるか。
  224. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 地方公務員法第四十条に定められておることでありますので、これは府県あるいは市町村におきましても、いまだ実施していない府県あるいは市町村に対しましては、これをすみやかに実施していただくよう助言をいたしたいと、かように存じております。
  225. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは教育行政法の四十六条なり地方公務員法の四十条なりがありましても、法律できまっておるから、いかなる職種、いかなる人にも勤務評定を必ずやらなければならないということには法律はなっておらないのです。だから、その町村で事情によってやらないというなら、罰則も何もない。法律できまっておってもやらないことがたくさんある。地方公務員法なり地方自治法なりにも、法律できまっても、われわれがやってくれやってくれと言っても、市町村が非常にやってもらわなければ困るときでも、おやりにならないことがたくさんある。そのときに、おれたちの希望しておることをやらないでおいて、強制的にやれと言っても、実際に動かない。市町村の職員は勤務評定がない、学校の職員は勤務評定がある。これでは二十四条の精神というのにはなはだしく違背する。これを自治庁の長官としてはどう考えるか、少くとも文部大臣自治庁長官というものとは、同じ地方団体の職員の条件が違ってくるのだから考えなければならない、十分打ち合せが遂げられなければならないと思うのですが、どんな打ち合せをなされたか。これからまた、どういう打ち合せで問題のバランスを失しないような方法をおとりになるか、その点一つ
  226. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 自治庁といたしましては、御承知のように地方公務員法の第五十九条にはっきりと、「自治庁は、地方公共団体の人事行政がこの法律によって確立される地方公務員制度の原則に沿って運営されるように協力し、及び技術的助言をすることができる。」、こういう規定がありますので、従ってこの「地方公務員制度の原則に沿って運営されるよう」、この法律を実施していきたい。その法律勤務評定の規定がはっきりと出ておりますから、これを自治庁として府県、市町村に対してそのことをもちろん命令することはできません。命令するわけには参りませんが、地方公共団体がこの法律によって勤務評定を実施するよう不断に助言をし勧告していくべきものと考えておる次第であります。文部省の方は文部省として、教育行政についてやはり勤務評定問題をお取り扱いになっておりますが、私どもは地方公共団体におきましても、やはりこの法律によって勤務評定を実施していただくよう助言、勧告をいたしたいと、かように考えております。
  227. 占部秀男

    占部秀男君 二つの点でこの勤評問題でお伺いしたいのですが、その前に、今、町村の方で、県、市町村で勤務評定を実施しておらないものに対して勧告すると言う。よけいな勧告はしてもらいたくないのです。(笑声)というのは、県や市町村で勤務評定が現在まで行われていないということは、それを行なったら人事管理もめちゃくちゃになる。従って、こういうことは行わない方が執務上からもその方がいいというので、団体交渉でそういうふうにきまって行なっていないのですから、この現実を無視して、よけいな勧告やなんかはしてもらいたくない。それは私の希望です。  なお、その問題について加瀬委員が今言われたのは、おそらく県、市町村でもやっていないやつを、文部省が教員だけにやる必要はないのじゃないかということを言ったのであって、それを逆に市町村の方へやらせるということは、これはよけいなことでありますから、(笑声)それは念のために一つお断わりしておきます。  それから、私の質問したいことは二つあるのですが、一つは、先ほど吉江さんからの質問が、勤評というものは行政行為であって、従って勤務条件として団体交渉の対象になるものではない。こういうようなことを質問されたときに、灘尾文部大臣はその通りで、団交の対象にはならぬと、こういうふうに言われた。これはとんでもない話なんです。さすがに青木長官は、そういう点は地公法の主管大臣ですから、そういうことははっきり言わずに、法律上の施行、実施するだけではだめだ、こういうようなことを言われたので、私はややそこにニュアンスが違うと思うのです。——なぜ私がこういうことを言うかというと、青木長官が先ほど言われたように、各県市の中には、小部分ではあるけれども、勤務評定というものを行なっておる。ところがその内容は、今の教育長、文部省のやっているのとは全く違うんですよ。つまりこの地方公務員法の第四十条では、勤務評定をすることができるということは書いてある。勤務評定をすることはできるということは書いてあるけれども、どういうような評定の内容でそれをするか、それはまた、評定をした結果をどういうふうに使おうかということはこの中には書いてない。従って、どこでもその部分については県の条例、市の条例、町村の条例にゆだねられておる。ところで県、市町村の理事者側が、この勤務評定をした結果を昇給昇格、その他の勤務条件に使おうというような態度に出ておるので、従ってこの勤務評定の問題については、当然これは勤務条件の問題として扱っておるのです。現在勤評のできておる県、市では。勤務条件ということになると、もちろんこれは給与、勤務時間、その他の勤務条件ということにも、これは明らかにしておるように、これは団体交渉の対象として、団体交渉をして、その結果こういう勤務評定をしようじゃないかということが、各県、市町村で条例となって、小部分ではあるが現われておるのです。しかるに、あなたが言われたように、勤評そのものは団体交渉の、これは勤務条件ではないから、団体交渉の対象ではないということになると、今行われておるところの県や市町村のこの勤評というものの条例は、そのもの自体が無効だということになる。これは大きな問題になる。これは言うまでもなく昇給昇格の問題とも関連する問題に当然なってくる問題であるし、これは勤務条件なんです。勤評の問題は勤務条件なんです。団体交渉の対象なんです、現実に。団体交渉の対象としてやっておる。やっておる結果を自治庁はちゃんと認めておるんですよ。それを今になって勤務条件ではないから、団体交渉の対象ではないというようなことは、これはもってのほかです。第一にその点について明らかにしていただきたい。  それから第二の点は、先ほどの吉江さんのお話の中に、職員団体は労働組合ではない。従ってそれには限度があるということを言われた。これに、響きに応ずるごとくに灘尾さんは、その通りだ、従って団交ではなくて、意見の上申をするだけだ。もってのほかだ。この法律にそういうことが書いてありますか、地方公務員法には……。国家公務員法と地方公務員法との違いは、あなたもよく御存じのことだ。国家公務員法にはないけれども、地方公務員法の中には勤務条件について団体として交渉することができるとはっきりとうたってある。しかもその結果については、理事者側と組合側との間で文書による協定をすることができると、はっきりと書いてあることは、あなたにも御存じの通りである。まあこれは見落されたかもしらぬので、私はあらためて読み上げますけれども、(国務大臣灘尾弘吉君)「読み上げなくてもけっこうです」と述ぶ)第五十五条の中にあることは御存じの通り。  こういうふうに法律で明らかに団体交渉ができるとある。しかも文書によって協定をする。協定を理事者側と組合側とがこういう協定をする。この協定が、どこが意見の上申ですか、こういう点ははっきりとしてもらいたい。これは単にこの問題だけではないのです。県、市町村、あるいは教員の組合が入るかもしれませんけれども、すべての組合の行動に大きく響く問題ですから、その点は明言をしてもらいたい。間違いであったならば取り消していただきたい。
  228. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 私はこの問題については法律上の見解を述べておるのであります。法律上の見解といたしましては、御説の通りに、職員団体はある種の問題については団体として交渉する権利はある。それは私も承知いたしております。それこそ決して否定するものではない。ただ、今回の勤務評定というものは、この団体交渉の対象となるべき事項ではない、かように私は考えておるわけであります。
  229. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、第二の点についてはっきりと私は言ってもらいたいのですが、それは先ほどの言葉の中に、団体交渉ではなくて、意見を上申するのだという言葉があった。意見を上申するという言葉は、それは勤評の問題のことだけであるとあなたは言われるけれども、そうはいかない。吉江さんは、一般的に、原則的な問題であるということを前提にして言われた。そこで、私は、現在の職員団体は労組法の団体ではないけれども、団体交渉をする権利はあるのだ。それをはっきりとここで言明して、さっきあなたの言った、意見の上申をするといったそういったことは間違いであって、団体交渉をすることができるのだということを明確にしてもらわないと、今の答弁だけでは、まだまだ拡大解釈される憂いが今後相当あるので、その点を一つ明快にしていただきたいというのが第一です。
  230. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 法律上の解釈といたしましては、私は、今回の勤務評定の今やっております問題は、団体交渉にはずれておる、権利の外にある、こういうように考えておる。そのほかの問題については、つまり法律に考えられておる事項について団体交渉をされることは、これは私は決して否定するものではない。しかし勤務評定の問題は、そういう問題の性質でなかろう。こういうような考え方でさように申し上げたのであります。
  231. 占部秀男

    占部秀男君 半分わかって半分了解できないのですが、あと勤務評定以外のことは大臣の言明があってよくわかりました。
  232. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 何もかもというのではありません。法律の条項についてのことはその通りであります。
  233. 占部秀男

    占部秀男君 ただ、勤評問題について、これは団交の外にあるという考え方、この点については、私はもっとお聞きしたいと思うのです。というのは、われわれが一般的にやっておる勤務評定の問題は、いずれにしても昇給昇格の問題と関連している問題だ。これを一方は、勤務評定だから昇給昇格と関連しない。一方は昇給昇格と勤務評定とは全然別だという切り方は、頭の上では、これは灘尾さんは非常に頭がいいので、頭の中ではきちっと切れるでしょう。しかし現実の問題としては切れない。切れないところに問題がある。この問題は、結局は、われわれの方としては、各県市の組合の方としては、やはり昇給昇格の問題はしっかりと勤務評定の問題の対象として現在やっているし、また現状でもそれを認められておる。それを一般的に勤務評定の問題は勤務条件の外だから団体交渉の外だ、こういうような言い方をすることは、現状を無視することであり、同時にこの問題自体は大きな問題になってくる。従って、そういう言い方については取り消してもらいたい。
  234. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 私はただいま申し上げました見解について、これを取り消す考えはございません。私の法律上の解釈はそうなる。従って取り消す考えはございません。また、現に地方でいろいろやっておりますことは、これは法律上一体どうなのか、こういうお話でありますが、やはり今の意見を申し上げざるを得ない。
  235. 占部秀男

    占部秀男君 灘尾さんに私は特にお伺いしたいのですが、この地方公務員法の中に、先生関係の問題についての勤評の扱い方と、先生以外の地方公務員についての勤評の扱い方と、違った扱い方をしろということがうたわれておるならば、今あなたの言われたことについて、私は何も申し上げません。しかし、地方公務員法の規定というものは、一般公務員も教育公務員も一緒にして規定されておる。従って、あなたは、勤評問題は勤務条件の外の問題だというような言い方をすることは、法律そのものの解釈を私は無視した解釈の仕方である。法律の趣旨を無視した解釈の仕方であるというように私は考えるわけです。その点について灘尾さんの御意見を伺いたい。
  236. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 私は、その条項についての解釈を申し上げているわけでございます。普通の公務員と教育公務員とを別に差別しての解釈をいたしておるつもりではございません。
  237. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると文相のお考えは、教員の勤評についてはと、前提を置いて言っておることであって、一般の勤務評定ということについて、一般的の問題として言っておるのではないと、こういうふうに言われておるのでありますか、その点を明確にしていただきたい。
  238. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 私は、この問題につきまして、地方団体と組合との間でいろいろ意見の交換があるとか、話し合いがあるとかいうことを、一々いけないとか何とかいっておるつもりじゃございません。ただ法律問題といたしましては、勤務評定という事柄は、いわゆる団体交渉の目的になる事項ではない、こういう解釈をいたしておるわけであります。
  239. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、文部大臣は、勤務評定という事柄自体が、もうすでに教育公務員であろうが一般地方公務員であろうが、勤務条件の外だと、こういうことですか。
  240. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 私の解釈はその通りであります。
  241. 占部秀男

    占部秀男君 灘尾さんの非常に明快な言葉を承わったので、これはもう非常に私としてもいいお話を承わったと思うのですが、ただ問題は、あなたがそういうふうに解釈をされていても、実態的にはそうでない形が県や市町村で表われておるのですが、この実態をあなたがどういうふうに処理をされるか。それはもちろん管轄外でありましょう。管轄外でありますが、同じ、第二次か第三次か知らぬけれども、岸内閣の一員でありますので、内閣の一員として、その責任から、この問題をどういうふうに考えておられるか、その点を明確にしていただきたい。
  242. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 私は、組合とあるいは地方府県とか市町村、そういうふうなものとの間に、こういうふうな種類の問題についてお互いに会われて、いろいろな話をなさるということを一々かれこれ申しておるわけじゃありません。ただ、勤務評定の問題が法律上いわゆる団体交渉の目的となるかならぬか、こういうふうな議論として考えます場合には、これは入らぬというような考え方をいたしておるわけであります。
  243. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そのことにちょっと関連するわけですが、先ほど、吉江さんとの関連で、あなたが職員団体との関係交渉にならないという理由は、少くとも法律にきまっておるから、これをやるとかやらないとか、あるいはきまっておることをやめようというような、そういうことは団体交渉にならない。しかし勤務評定というものが勤務条件に直結しておることは事実なんです。従って、内容の問題については、私は、団体交渉の対象になるというようなふうに吉江さんとの話では私は聞いておったのです。ところが今、占部君とのやり取りを聞いておると、まるで勤務評定の問題は一切団体交渉の対象にはならぬと、こういうふうに解釈をしておると、こうおっしゃる。どっちがほんとうなんですか。
  244. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 私は、勤務評定の問題が、回り回って考えれば、いわゆる給与の問題その他にも響いてくることもあろうと思いますけれども、しかし、この勤務評定をすることそれ自体は、団体交渉の目的にはならぬと、こういうふうに考えておるわけであります。
  245. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 勝手な解釈ですから、それはそうだとおっしゃれば、しょうがないのですけれども、少くとも勤務評定が勤務条件に関係するということは、あなたは言葉の中で認めておられる。従って、団体交渉の事項というものに当然なるべき性質のものです。それを一方的に自分でならぬと、こう言われるなら、これは法制局にでも来ていただいて、私は聞かなければならぬ。あとで法制局を呼ぶように手配して下さい。これはしっかりしておかなければならぬ、明確にしておかなければならぬ。  次に、この問題で重ねてお聞きしたい点は、都道府県の教育委員会一つの自主的のものを、法律ではきまっているけれども、やるやらぬとか、いろいろなことは、やってほしいというあなたの気持はよくわかります。しかし、教育委員会の自主性というものは、あなたはこういうワク内でどれだけ尊重しようとされるのか、法律ではなるほどきまっております。きまっておりますが、これをやるやらないという決定を、たとえば教育委員会が、わしのところは一年間延ばしたい、もう少し、半年間延期をしていきたい、こういう決定をしていくことがあると思います。そういう自主性というものを、あなたは全然認めない、法律にきまっているからやれということをいう権限も私は何も……。何ともできぬと思いますが、私は、当然、地方教育委員会の自主性というものがここで厳然とあるのだ、あなたは尊重するとかしないとかいう問題ではなくて、自主権限があるのだ、事勤評に関しては自主的権限があるものと解釈しますが、どうですか。
  246. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 仰せの通りでありまして、勤評に関する任務は、これは地方の教育委員会の任務であります。自主性があることはもちろん当然のことでありますから、ただ私の申したいのは、地方教育委員会も、やるとかやらぬとかいうことを自主性の名においていいかげんにするわけにはいかない。国の法律がやることを期待しているわけであります。それによってやってもらいたい、こういうことなんであります。
  247. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 よくわかりました。そうすると、あなたは法律にあるから尊重はしてほしい、しかし、地方教育委員会がそこに自主的に決定をするものについては、あなたとしてはこれをどうこうすることはできなくて、あくまでもその地方の自主性というものが尊重されていく建前である、この法律に基いてそれをやっていく、こういうお話のように承わっておりますが……。
  248. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 話の筋としてはその通りであります。
  249. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それでけっこうです。
  250. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) ただ私は、地方の教育委員会に対しまして、必要によっては指導し、助言し、また勧告をすることもできるわけであります。私がその必要あると考えまする場合には、その権限を行使するわけであります。
  251. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それはあなたの方の権限はいつ、指導、助言、そういうことは、求めてきた場合において行われることであって、すぐそれをやる必要がどうかという点について慎重に、そういう段階になるならば、よく慎重審議をしてやっていただきたいと思います。  次に、こういうことなんです。勤評やって、たとえば愛知はやっておるとおっしゃっている。実際、教育長が夜中に電報打って、各校長を朝八時に各部市町村のところへ集まってこいといって、そこへ判を持って集まってこいといって、何かしらと思って校長が行く、そこにカン詰めにしておいてやる。校長が書けないといったら、そうしたら業務命令になるかもしれないから書いてくれ、片方で脅迫みたいなことをして書いている。こういう勤評を書いておいて、教育の、しばしばいったように能率の増進の一貫計画としてこれが行われているなんということは、さらさら考えられない。こういう姿に追い込むことも私は非常に不適当だと、それから、こういう指導、助言をしては文部省はだめだと思う。  もう一つ申し上げたい点は、先ほど吉江さんが、染川教育長の問題について、どこでお聞きになったか知れませんけれども、娘さんがどうとか、それから夫がどうとかいうことをおっしゃったが、私はこの点についても、染川さんも御承知のように教育経験者でございます。そうしてこの勤評問題に反対であって、自分は絶対にやらぬ、こういうことを四日市の教員組合の席上において話をしておられる。ところが片方では業務命令かのごときものが出てくる。そういうところで、そういう中にクッションのところへ押し込められてしまって、それが結局自殺に追いやった。言葉をかえていえば、文部省がベルトをかけて染川さんの首を締めた、こういうことにもなるのですよ、春秋の筆法をもってすれば。それほど圧力をかけて勤評はやらなければならないものか。法律が制定されてから八年あるのです。その間に何も問題なしにして、そうしてここへきて突如としてくるというのは、何か政治的にやらなくちゃならぬものがあるのじゃないか、こう私は世間から指摘されても、むしろやむを得ぬじゃないか。従って、この勤評の問題については、何か非常にかたくなな問題とか、これを冷却期間を置いたらどうかというような、仲裁が入ったら、それは応じないとか何とかいうけれども、少し私は、文部省は実際氷の中へ頭を突っ込んで出直すべきが今の段階ではなかろうか、こう思っているのです。特に、とにかく今のように人が死んでいるほど重大なところへ追い込んでおいて、文部省は責任を感じておらなければならぬと思う。こういう問題について何も責任を感ぜずに、ただ東条軍閥内閣と一緒で、特攻に前へ進めと号令をかけるような、そういう何と申しますか、とにかく非人道的な非教育的なことをやってはだめじゃないか、もっとしっかりしてもらいたいと思う。これは要望です。  次に、私はお尋ねしたい点は、警察の問題なんですけれども、とにかく警官がこのごろ組合の争議を見るとよう出てくる。あるいは本州製紙の場合を見ると、漁民が押しかけると警察官が出てくる。必ずけが人が出ている。一体警察官というものは、どういう法律に基いてそういう場合に出動しているのですか、まずその法的根拠を伺いたい。
  252. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 警察官は、たとえば和歌山県の場合におきましては、和歌山県で作っております集団示威行進公安条例に基くものです。
  253. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それは公安条例に基くわけですが、そのときにはそれで出てくる。しかし、警官が守らなければならない行動の範囲というものは、おのずから決定しておると思うのです。警官は人に危害を加えることは絶対にやっちゃいかぬ、こういうふうに私は書いてあると思うのですが、どうでしょうか。それを念のために読みますれば、警察官職務執行法の第七条には、警官が人に危害を加えていいなんということは一言も書いてないのです。それがたとえば早稲田事件においては頭をみんな割られた。あるいは砂川でもうしろからやられた。今度の和歌山でもうしろからやられた。本州製紙の場合もそうでしょう。一体、この警察官職務執行法の第七条は守られているかどうか。そうしてこれについてあなたたちは、どういうふうに一体警察官に指示をしておられるか、注意をしておられるか、どういうふうに守っていこうとされているのか、どうですか。
  254. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 警察官が他人に危害を加えてはならないということは、これは当然のことであります。警察庁といたしましても、全国の警察官の教養に当りましては、法令に従って正当な業務行為を行うということは当然教養をいたしておるわけであります。ただ今回の和歌山の事件について、ただいまお話しのように、全部うしろから頭をけがしておるというお話でございますが、遺憾ながら、われ者れのところに参っております報告では、百数十名の負傷者が出ているといいますものの、これを極力病院について、あるいはその他について調査をいたそうとしても、全然警察の調査に応じない。で、警察において今まで確認いたしておりますのはわずがに四名であります。これはひどいけがをしたということで入院したという者について——松岡医院と申しましたか、そこの医者について聞いて、会わせられないけれども、概要を聞いたというのと、あとは逮捕をした者が、警察で逮捕しておりますから、擦過傷その他を受けておることがわかっておる、わずかに四名であります。警察としては、調べないんでなくて、調べたくて大いに努力をいたしたが、警察が行けば、拒否してこれを調べさせないという状況になっているのは、非常に遺憾に思っているわけであります。  また、検察庁に警察官の暴行についての告発が出されておるそうでありますが、これによると七名の負傷者ということになっておるようであります。その負傷の詳細は私どもの方にはまだ承知をいたしておりませんが、警察官に、今のお話によりますと、うしろから警棒でなぐられたというふうに断定的なようなお話でございますが、われわれの調査では、警察官がことさらに頭部をねらって打ったというような事実はないのであります。従って調べた結果においては、頭部を打ったという事実は今までの調べの結果においては出ておりません。むしろ警棒を使いましたのは、本町二丁目におけるジグザグ行進の際に、非常に道幅一ぱいに広がり、そこに、スクーターとか、あるいは何といいましたか、教育対策協議会ですか、そこのオープン・カーが入ってきたというようなトラブルがあり、同時にジグザグ行進が非常に激しかったというようなことから、一番激しくジグザク行進をしているものを横から規制をしてそうして正常に復させるようにした。その際に旗ざおとか、あるいは材木置場かなんかがあったのでありましょうか、そこの丸太とかをもってなぐりかかられたということで、むしろわれわれの方は、警察官のけがは、これははっきりしておりますので、警察官のけがについて見ましても、人さし指のつけ根のところがやられておるというのがかなりあるわけであります。これはどういう状況で起っておるかと申しますと、結局、上からきたのを警棒で防ぐ、警棒にはつばはついてない。それで頭は打たれないが、手は打たれるというふうに想像できるのでありまして、あの際にも警棒でうしろから襲いかかったということがよくいわれますけれども、そういう事実はわれわれとしては承知いたしておらないのであります。  従って、今、成瀬さんのお話の、警察官が決して法に基かずに、また必要以上に警棒を使用する、それによって、特に故意にけがをさせるというような事態はもちろんなかったと思いまするし、また教養についは十分そういう点注意をいたしておるつもりであります。
  255. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 まああなたの方の、先ほど江口警備局長から、あるいは今おっしゃった点、手に受けた傷がある、警官の方で。しかし被害者の方は、デモ隊の方は届け出てない。あるいは調査ができないから、といって済まされる問題でない。頭部にけがを負うた、あるいは少くとも警察官に警棒で突かれたというようなけがをさしても絶対ならぬと思う。第七条の精神からいったら、少くとも死刑または無期とか、懲役三年以上云々というように限定されるのみで、正当防衛の場合はやむを得ません。そうでない場合に警官が、たとえどんなことをした人にせよ、けがをさせたということがあれば、これは少くとも職務執行法に違反するのだ。絶対こんなことがあってはならぬ。そこを私は言っておるわけです。今度の和歌山の事件でも、あなたは何といっても、警棒でなぐられた。しかしこういうことはいつでもうやむやになってしまう。しかし、御承知のように砂川のときには、これはニュースにあるから、見れば警察官がうしろから打っておるニュースが出てきますよ。あなたもごらんになっておる。今度も本町二丁目において、ある種のテレビの取材記者が妨害をされておる。おそらくそういうところを写したのじゃないか。それを引きちぎってだめにしたのじゃないか、こうとしかとれない。それを先ほど江口さんに言うと、警官が上っちゃって見さかいなくやった。見さかいなくやったとするならば、何にもしない者を逮捕したことになる。それは悪いことをしておる人もあるかもしれません、デモの大ぜいの中には。しかし、この人が取材をしておるかどうかという見さかいのないくらい、いる者は何でもかんでもこれは悪いやつだという解釈でやるから、この取材者までやられるということになる。あるいは警棒をうしろから使っているところをやられては大へんなことになるからというふうに意識してやったか、どっちころんでも、警察官としては不名誉なことだ、なっておらぬことだ。そういう点についてどういうようにあなたの方は弁明をされるのか。
  256. 江口俊男

    説明員(江口俊男君) 事柄が私の先ほどの説明に関連をいたしますので、私からお答え申し上げます。  先ほどの説明中、一個所私の誤解がございましたので、訂正してもらいたいと思いますが、実質的には変りませんけれども、警棒を持ってなかったという、西署前のすわり込みの排除の場合でございます。もちろん警棒を使っておりません。使っておりませんが、正規の服装として、警棒をさげておったことは事実であるそうでございますから、その点、私の考え違いで、警棒をわざと置いていったのじゃなしに、警棒はさげさしたまま、素手で行為をした、こういうふうに御了解をいただきたい。  それから、ただいまの成瀬議員のお話のうち、見さかいなく報道陣の方をどうこうしたというふうに私が申し上げたような誤解がございますが、報道陣の方だということはわからなかったということを申し上げたのであって、そういうことで見さかいがあったかなかったかということについては御判断を願いたいと思います。  それからなお、警棒使用のことで職務執行法の第七条をお持ち出しになりましたが、これは武器として、武器を使用する場合の規定でございます。警棒の使用は、武器として使用いたしまするということは、これは例外でございまして、今日の使用の場合は、やはり警棒を普通の仕事をやる用具として使用したというふうに御了解を願いたいと思います。  今のお話のうちで、何人といえども、これは警官に限らず、何人といえども、危害を加えていいというわけではございませんが、特にわれわれ警察官としては、その点についてはっきりと、大へん詳細に書いてあるというふうにわれわれ了解いたしておりまするが、ただその半面、警察官としてはどうしてもやらなければならぬ仕事がある。第四条の警察の職務として、ジグザグ行進等によって交通が著しく阻害されていると認める場合はそれを排除せにゃならぬ、そのことに関する必要最小限度の事柄は、事故を起さないという、相手に危害を与えないということの最良の方法は、相手に近寄らぬことでありまするけれども、やはり一方、どうしても混乱の状態を制止せにゃならぬということになりまするというと、初めは横隊形で押していくということになり、片方からやれば、片方でそれを受けとめて、なおかつ相手を片側の方に制圧していかなければならぬ、こういうことになるのでございまして、第七条の使用をしたということではないのでございまするから、さよう御了承を願いたいと思います。
  257. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 今、江口警備局長は、なるほどすわり込みのときには——取材記者であったのですが、テレビをやった人については他意はなかった、こういうお話です。時間がないから私も簡単に申しますけれども、あなたのおっしゃるのは、なるほど、すわり込みを排除した場合に警棒は使っておりません。それは私も何にも誤解もしておりません。しかし本町二丁目で取材記者、いわゆるテレビの取材記者が負傷しておるのです。そのときに警棒を使っておるのです。あなたは、警官に集合をかけたときに棒を上げた、そういうようなことで棒が上げたときのことで、他意はないというお話ですね。そうでなくて、なぜそれでは警棒がそのように当るか、テレビの方に当るか、その説明ができますか。
  258. 江口俊男

    説明員(江口俊男君) 私の承知いたしておりまする範囲におきましては、先ほど申し上げたようなトラブルがございましたけれども、取材カメラマンに対して暴行を加えた、少くともそのためにけがをさしたという事実はないと考えております。
  259. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ですから、本町二丁目のときには警棒を使ったのですよ、警棒を使っておる。だからテレビのときに、私が言うのは、あのときに、いわゆるテレビは、うしろからなぐっておる、それをニュースとしておさめた、それをおさめられちゃ大へんだから、それをやっておる。こう解釈するか、それとも、普通ならデモ行進の中でも何か不法的な行為をやっておる、その者を制止するとか何かせなくちゃならぬと思うのです。ところが、この人は私は何にもやっておらぬと思うのです。取材をしておったと思うのです。その人までやられておるということは、結局そこにいる者は十ぱ一からげ的にやってやろうというふうに警官が行動を示したということになると思うのです。だからどちらを見たって、警官としては不適当なやり方をしておる、不穏当なやり方をしておるじゃないか、こういうことが言いたいのです。
  260. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 本町二丁目におきまするジグザグ行進を契機としましての負傷者を多数出した事案、これはいずれにしろ、非常に遺憾な事態だと私は思います。しかし、ただいま成瀬委員の御指摘のカメラマンというもののケースでありますが、これは私の承知いたしておりますところはこういう事情なんです。ジグザグ行進が、ジグザグのごたごたが一応おさまりかけて、そうしてデモ隊も隊伍を整える、そうすれば警察官も早く引いて、そうして整理をする、自分らも整頓する、そのために指導者が警棒を上げた、これをカメラマンがとろうとして警察官に襲われた。ところがそれに報道班員のしるしも何もなかったので、そこでさっき江口君がどう言ったか知りませんが、若干そういう興奮の間において、わけのわからない、まず当初はわけのわからないことが入ってくる。カメラをとる、そのときはなぐっているのじゃなくて、指揮棒として警棒を上げて集まれといった、これをとろうとしたものを横の方に排除していった。こういうふうに私は聞いておるのでありまして、十ぱ一からげに警棒でなぐりかかっておったということは、全然そういうことはないと私は考えております。
  261. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私の聞いておるのと大へん違う。あなたの方は、まことに都合のいい話です。実は引き上げようとする、向うから警官が入ってくる、向うは逃げようとする、そこを警官が突っ込むということになっておる。それは前日のときには警官は何の実力行使的なことはしていなかった。しかしあしたもやるから、あすは思い知らしてやらなければいかぬということを警官がいったということもわれわれは聞いておるわけです。そうしてしかも引き上げようとするそのときに、うしろからかかろうとしておる、それをおさめようとしたからやったのだ、こういうふうに聞いておるので、これは見解の相違だから、それは別として、私が言いたいのは、先ほど聞いたら、第七条ではなくして、それはあくまで取扱規程の第四条の方に基くようなことで警棒を使用しておるというようなお話、この警棒で少くともどんな形にしろけがをさせるということは一つも出ていないのです。しかも、私は今度は不幸にして本町二丁目のときには実はおらなかった。おらなかったけれども、砂川のときは実はおりました。警官の警棒というものはこんなふうに前にこんなようにこうやっておりますよ、ここにいる占部君もかつて首相官邸でやられたことがありますけれども、とにかくやってくるのです。だから第四条の規程に基く警俸の使用というのは、あなたの方は徹底しておるはずです。見るとここには図解までしてある。実はそれだのに、とにかく頭にけがをする。あれは少くとも第七条の武器としてやるのじゃなくて、こちらの方の使用の取扱規程でやるようなことだったら、絶対にけがをさせるようなことは一つも出てこない。それだのにやっておるということは、非常に私は遺憾なことだと思うのです。やはり警官も群衆心理で、若干の興奮ということは私も認めましょう。しかし、それがもとでけがを与えるというようなことが絶対にあってはいかぬ。少くとも警棒の使用というものは必要な限度をこえて使用しないことと第一条に書いてあります。絶対に警棒の使用というものは、そういうふうに使ってはいけない、絶対最小限度なんです。しかし一番最初、弾帯をすぐはずして、こういうふうに横にして突いてくるのです。それでこうやって立っている者はここを突っつかれるのです。もっとひどいものは、こういうふうに縦にして突いてくるのです。それで目を突いたり、目をねらってくるのです。そうしてしまいには頭をなぐってくる。こういうやり方が、それが今までの警棒の使用なんです、実際のトラブルにおける。だから私は絶対に——こういうことがもう何べんか繰り返されておる。一番ひどかったのは実は早稲田事件だと思う。絶対こういうことのないように、あなたの方としては万々の注意をしてもらわなくちゃならぬと思う。しかも警棒の使用だけではなくて、それが頭だけではなくて、あるいはこういうところじゃなくて、少くとも警察官のこういういろいろなことによって、けがでも摩擦でもしてはいかぬ。ましてくつにびょうのあるようなもので傷を負わせるようなことはもってのほかです。これはゴム底だというけれども、そんな都合のいい話はないと思う。わしらの方じゃない、自分らの方に都合のいい話はないのだ。少くともどういうふうにあなたの方は、こういうことについてお考えになっておるのか、事は取調べが困難だからという問題じゃない、取調べの問題じゃないのです。警棒の使用というものについて、あなたの方はどのくらい慎重にやっておるか、こういう点を私はお聞きしたいのです。
  262. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 先ほど来申し上げておりますように、どんな事態でもけが人が出るということは遺憾なことであります。過去において確かに御指摘のような事案がなかったとは私申しませんが、少くとも今回の和歌山におきまする本町二丁目のジグザグのことについては、警俸を振り上げてなぐったということは今までしていないのであります。お話のように、こうやってもけがするからやるなとおっしゃられれば、それまででありますけれども、何回も警告は広報車をお願いして警告をし、その警告に従わない、一般の善良な民衆は通行もできない。店はお客さんもこないという状況においては、警察としてはやはり交通の安全を期するために、デモ隊に対して必要な限度においての規制を加えるということは私は当然だと思う。その際にその規制の警告に従わないときは、やっぱり実力で片方に押しやるということにしておる。押しやるときに、それに従って整理がされていけばけがけしないでしょうけれども、それに刃向ってくると、あるいは私の聞いているのでは、旗ざおでなぐりかかるということになれば、その間に警棒を振り上げて防御する、それが当るということは、私は場合によってはあり得るのじゃないか。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)そのときに起ったけがを、もうすべて警察官が故意になぐりかかったけがのように御解釈になるということは、私は非常に遺憾です。われわれは、成瀬委員のおっしゃるように、極力そういう事態の起らないように、実際規制の実施についても用意周到にやるように注意をいたしております。今回もおそらく、和歌山県においても十分注意してやったと思うのでありますけれでも、遺憾ながらあれだけ多数の、少くとも警察官においてその当日六十五名ですかのけが人を出しておる。相手側にも何人か出ておることと考えられるので、非常に遺憾なことであります。  それから、これはちょっとつけ足しておきますが、警察側できょうはおとなしくやって、向うにけが人を出させられたが、あしたはやってやれというような情報があったとおっしゃるが、そういう点は、出所や何かほんとうにはっきりすれば、だれがそういうことを考えて、だれがそういうことをしゃべったかということがはっきりすれば、よく調べたいと思います。しかし、われわれが聞いておるのは、むしろ逆に、十六日のあのデモ行進というものは非常な、われわれから見れば、かなり先鋭的な分子が中心となって行われたものと私どもは考えておる。共産党ないしそのシンパが相当多数入って、そうしてやっておるというふうに聞いております。また、これは情報でありますので、これも確たる出所を申し上げるわけには参りませんけれども、今、情報のことをおっしゃったから、こちらも情報のことを申しますと、十五日のあのような警察の弱さでは、五百名くらいの警察官は、こっちが千名あれば何とでもできるということをいっておったという情報すらある。そういうことでありまして、われわれは、何も警察の弁護ばかりするわけではございませんけれども、先生方にもお願いをしたいのは、やはりわれわれがけが人を調べることは、これは責務でありまして調べておりますけれども、協力がない。そういう中にやはり——もちろん、共産党員から私はそういうことの協力を求めようと思っておりません。そういうものでなくて、あの大会を割に温和裏に計画された方方が、なぜそういう事後収拾についても御協力を願えないものかということをわれわれ非常に遺憾に思っておる次第ということを申し上げておきます。
  263. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 今、長官の話を聞いておりますと、警察官がたとえば要らないから一つあとへ下れ、退去せいという命令を出されたが、それに従わなかったらけがしても当りまえだというように聞えてくるのです。私はそういうふうなんじゃいけないと思う。それでもなおかつ警察官というものはけがをさしちゃいかぬ、それが警察の立場じゃないか、こういうことを申し上げておる。あなたの説明は、意のあるところはわかるのです。少しはわかる。しかしそれでも警察というものはけがを与えては困る、これが私は警察官のあるべき任務だと思う。何かあなたの話を聞いておると、やむを得ない、だからそれはやったのだ。あなた方は、それだからこう来ても向うから来るのだから、それでけがをするのだ、これでは暴徒と結局一緒のことなんです。そこが警察官は、少くともけがを与えないのが警察官の態度ではないか、こう思っておるのです、どうですか。
  264. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) ただいまの成瀬委員のお言葉は、まさしくその通りでありまして、極力けがを出さないように慎重にやらなければいけない。そのことは再三申し上げているように注意をいたしておるのであります。しかしながら、実際に警告をしても聞かない、これに対して実力をもって規制する際に、場合によってがけ人が起ることもあり得ると私が申し上げたのに対して、そういうときはけがをしてもしょうがないじゃないか、かまわずやれというふうにお取りになっては非常に残念でありまして、そういう趣旨ではない。できるだけ警察としては行動に注意して、けが人の出ないようにするのはもちろん当然のことであります。しかし、やむを得ない場合には出ることがある。そういう際に、警察はけしからぬとだけお責めになるのは少し酷ではないか、こういうことを申し上げておるわけであります。
  265. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それはどんなことがあっても、私は今まで警察官が、こういう争議の問題があるという場合に、けがを与えるということが非常に多いのです。それは私は何も和歌山のことだけを言っているのじゃない。本州製紙の問題でもそうです。早稲田事件や砂川事件を見ても、どう見たって警官が行き過ぎておる。だから長官もあるいは警備局長も、私は十分警官の指揮というものを、非常に困難かもしれないと思いますけれども、十分注意してもらわなければならぬと思います。それには私は弁護というものはないと思う。警官が民衆にけがを与えるということは、どんなことがあってもこれはやむを得なかったのだという弁解がましいことは許されぬと思う。少くとも、そういう警官は節度ある私は行動をしてもらいたいと思う。こういうことをお願いしておるわけであります。
  266. 成田一郎

    ○成田一郎君 文部大臣にちょっとお尋ねしたいのですが、さっき吉江委員質問の中にありましたが、答弁のはっきりしない点があるように思いますから、確かめておきたいと思いますことは、勤評をこの際やるかたい決心であるということはわかりましたが、世間にはだいぶもんでいるのだから、やるにしてもしばらく冷却期間を置いたらいいじゃないか、猶予期間を置いたらいいじゃないかという声が世間にあるようです。識者の中にもそういうのがありまして、知らない者はそうかと思う点もあるかと思うのですが、この点についてはっきりしたお答えがなかったようでありますから、かりに一年の猶予期間を置いてやるというようなお考えに対して、どういう文部大臣としてはお考えであるかということをはっきりお答え願いたい。
  267. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 成田委員のお尋ねでございますが、何か私がいかにもがんこ一徹で、かたいことばかり言っているというふうに世間でお取りになっていらっしゃるようです。まことに残念なことであります。私は何もそうがんこなことを申したつもりはございません。ただ、けさほども申しましたように、今回のこの勤務評定の実施ということについて、いろいろ御意見はあると思うのであります。御意見をお述べになることも決して私どもならぬと申し上げるわけではございません。また同時に、この法律がいけないということで筋を通しての反対運動が行われることについても、反対運動は困ることは困っても、それはいかんともしがたいことである、こういうふうに思うのでございます。けれども、今回のこの日教組を中心とする勤務評定の反対運動というものは、私はどうも少しむちゃじゃないかと思う。是が非でも、実力をもってでもこれを阻止する、こういう態度で反対をせられる。それで各地にいろいろな問題を起し、この間の和歌山のような、ただいま問題になりましたようなああいう事態まで生じておるわけであります。まことに残念な遺憾なことと思うのでございますが、しかし私は、行政の任に当る者といたしまして、国法の実施ということが一部の人の実力によって妨げられる、こういう事態は、これは見のがすわけには参りませんので、そういうふうな反対運動が現に行われ、しかも、これに対しまして、各それぞれの実施の任に当っておりますところの都道府県の教育委員会にいたしましても、あらゆる努力をして、これが実施に向って進んでおるわけであります。今日、四十府県ばかりにおきましてはすでにその実施計画も立って、提出の時期を待っておるようなわけであります。これからまた他の府県におきましても実施の計画に向って進んでおるわけであります。かような際に頭を冷やせ、冷却期間を置けということでありますが、私はきわめて冷静にやっておるつもりでございます。願わくば、非民主的と申しますか、理不尽な反対闘争を一つおやめ願いたいと思っております。  九月十五日の問題のごときはまことに憂慮にたえぬ問題でございまして、ぜひ一つ考え直して、むちゃなことはやらないようにしていただきたいというのが、私の念願でございます。どうでもこうでも、何が何でも反対するという態度に対しましては、私としましては、どこまでも実施の線に向って進んでいくと申さざるを得ないのでございます。従って今の場合、冷却期間を置くとか何とかいうふうなことは、私は全然考えておりません。
  268. 成田一郎

    ○成田一郎君 今の御答弁でよくわかりました。なお、今の御答弁の中にありましたが、九月十五日に総評の方ではいろいろ戦術を考えておる。この中に、生徒児童の登校をおさえるという指令が出ているようですが、これは何か法律に違反するということをきのう委員会で法務大臣答弁されたようですが、そう承知していいわけですか。
  269. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 学校教育法の上から申しまして、父兄は就学義務を負っておるわけであります。子供を就学させる義務を負っているわけでございますので、この就学義務を行わないということになりますれば違反になり得ると申さざるを得ないのでございます。とにかく、こういうふうなことになりますというと、事態はまことに残念なことであります。かような問題のために子供が巻き込まれてしまうというふうなことでありますと、教育上から申しましても非常に心配な事柄でございまするので、何とか一つそういうむちゃな企てだけは考え直していただきたいと心から念願をいたしますと同時に、地方の教育委員会等に対しましても、事前にそれぞれ適切な処置をとり、さような事態の発生しないようにやってもらいたいものと念願をいたしておる次第でございます。こういうふうなことが行われるということになりますと、私は、これは日本の教育界始まって以来の一種の暴挙である、かようにさえ考えております。まことにこの点心配をいたしておる次第でございます。
  270. 成田一郎

    ○成田一郎君 もう一点だけ。今のお答えでよくわかったのですが、そこで、現在でも父兄に対して勤評の反対の署名を取って歩いている向きもあります。これは署名する、しない、これは別に差しつかえないと思うのです、自分の考え次第で。しかしながら、今の児童の登校をとめるということになると、今の署名することとは違って、法律に反するということになると、何も知らない父兄に非常に気の毒なことになりやしないか。だからこれは親心というか、何か知りませんが、それがいけないことであれば、これは違法であって、そういうことをしてはいげないのだということも、文部省としても父兄によく徹底させるような方途を講ぜられる必要があると思うのです。今もだんだんとそういう手段をとっているというお話もありましたが、これはぜひやっていただきたい。私はこういう希望を申し上げて質問を終ります。
  271. 松澤兼人

    松澤兼人君 簡単に二、三点だけお伺いしたいと思うのです。  先ほど加瀬君の質問によって、法的根拠が十分でないということ、及び法律でそうはっきり規定していなくても、権限の問題でできるのだと、こういう内藤局長お話もあった。しかし、考えてみますというと、やはり問題は、たとえそれは文部省で作ったものでないにいたしましても、一応は文部省が指導して、教育長協議会というような形において各府県に勤評の実施を指導したということはいえると思うのです。ところが、お話がありました国家公務員の場合には、人事院という権限のある機関がありまして、立案をしたり、あるいはまた記録をしたり、その他適当な仕事を人事院自身がやりますし、また場合によりましては、それぞれ任命権者に対して、適当な勧告をやる、こういう段階を、権限ある機関を中に入れている。もう一つは、同じく人事院規則で、準備的な調査といいますか、評定を行いまして、それから本格的な評定をやる、こういう国家公務員の場合にはそういう権限ある機関と手続を十分に完了してから、本格的な調査をやる、こういうことになっているのであります。ところが、今回文部省が考えられて指導されている立場は、何でもかんでも、これはどうしてもやらなければいけないのだということで、その緩衝地帯というべき権限ある機関というものもなければ、よしんば、それが人事委員会等あるといえばあるわけでありますけれども、人事委員会がどんなことを考えようと、文部省としては、この法律を実施しなければならない責任官庁であるから、これはもう実施するのだ、一方的にきめてかかって実施を決意されている、強行されようとしている。こういうところに、地方公務員に対する勤務評定という、法律で規定されている仕事をするにしましても、国家公務員の場合とは違った形のものがそこにあるのでありまして、それはとりもなおさず、国家公務員の場合には、先ほどもお話ありましたように、それは行政行為だといえるかもしれない。しかし地方公務員の場合にはそうでないからして、何かそこに強制的なものを排除して、人事委員会等の勧告があれば、その勧告を十分に聞かなければならないような機構になっている。それをはずしてしまって、文部省から教育長、あるいは教育長から教育委員会、そしてそれでもって決定するということに無理があるように思うのです。この点は、自治庁長官なり文部大臣なり、どのように考えられますか。国家公務員に勤務評定を行う場合と、地方公務員勤務評定を行う場合と、そこにやはり任命権者というものと、あるいはまたは、片方では行政行為と考えられるでしょう、国家公務員の場合には。地方公務員の場合にはそれは違うのでありますから、その辺のけじめがやはりおのずからあるべきである。こう思うのでありますが、この点いかがですか。お二人から……。
  272. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 地方公務員法の場合におきましても、御承知のように第四十条の規定がありますが、同時にまたその第二項にありますように「人事委員会は、勤務成績の評定に関する計画の立案その他勤務成績の評定に関し必要な事項について任命権者に勧告することができる。」、こういう規定があるわけであります。従いまして、その勧告がありましたならば、任命権者は当然その勧告に従って適当な措置をとる、かように存じております。  なお、ただいま教育職員の場合と一般公務員の場合とのお話がありましたが、教育職員の場合と一般地方公共団体の場合と、自然勤務の内容と申しますか、違いますので、従って勤務評定内容、そういうようなことにつきましてはおのずから違ってくる、これはやむを得ないと思います。それぞれの公共団体の仕事の内容に応じまして、教育職員の場合とはおのずから違ってくる、こういうことは当然だと考えております。
  273. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 教育公務員の勤務評定やり方につきましては、すでに御承知の通りでございます。法に定められたところでやっていくわけであります。お話のように人事委員会等の勧告もございますれば、これはもちろん教育委員会としてはこれを尊重すると私は考えております。
  274. 松澤兼人

    松澤兼人君 青木長官にお伺いしたい。長官としては、人事委員会で、勤務評定を実施することは非常に困難であるとか、さらによく研究しなければならないというような勧告があった場合には、その人事委員会の勧告は尊重さるべきであるとお考えでしょうか。
  275. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) もちろん、その勧告を受けた任命権者の判断に待つべきものでありまして、自治庁として、それに対してとやかくいう筋合いでないことは言うまでもないことであります。しかし、任命権者がその勧告を受けまして、そしてその勧告を尊重する結果として、場合によりその内容を変更するというようなことも、これは当然あり得ることと考えます。
  276. 松澤兼人

    松澤兼人君 文部大臣にお伺いします。先ほど加瀬君が、ある地方の人事委員会においては、実施が困難であるとか、あるいは実施がむずかしいというような見解をもって勧告をしたと、そういう場合でも、やはり法律で規定されているのだから、教育委員会としては実施しなければならない、実施を勧告するということを言われておりましたけれども、人事委員会の権限と、それから教育委員会の権限とは、それぞれ別個なものだと思うのです。人事委員会でそういう決定を、勧告をなされたとすれば、やはりその勧告というものは教育委員会としても尊重されなければならない。それを文部大臣が、人事委員会がどのように考えようと、法律で規定されている限り、これはもう実施してもらわなければ困るのだと、文部省としては実施を強く、強行といえば言葉が悪いけれども、そういうふうにやってもらわなければならないのだと、やらせるつもりだというふうにお考えであれば、私はそれは少し行き過ぎではないかと、こう思うのです。いかがでしょうか。
  277. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 問題は、先ほど来議論のありましたように、実施計画を策定いたしますのは地方の教育委員会であります。地方の教育委員会がもちろん主体性を持たなければならぬということは、これは当然のことであります。それにつきまして人事委員会から勧告があったというふうな場合には、もちろん教育委員会としましてはこれを尊重してやっていかなければならぬと思うのであります。今までそういうことがあったということは、私どもは聞いておりません。なお、人事委員会の勧告というのは、御承知のように、「勤務成績の評定に関する計画の立案その他勤務成績の評定に関し必要な事項について任命権者に勧告することができる。」と、こういうふうになっておりますので、問題はその範囲内のことに限られると、かように考えておる次第でございます。
  278. 松澤兼人

    松澤兼人君 もう一つの問題は、国家公務員の場合は、準備的な評定と申しますか、それがなされることに人事院規則でなっておる。地方公務員の場合にはその規定が明確でありません。直接になってくるわけです。そこで、段階的に行われれば、悪いところは是正されるということが考えられるわけですけれども、現在でも実施を決定しているものは、いいも悪いもない、とにかく九月には勤務評定が行われるのだということになっているわけです。この点は国家公務員の場合に比べて地方公務員の場合は、不利益と申しますか、ただもうそれが、実施を決定すれば勤務評定書が書かれるということになるわけです。この点はいかがですか。
  279. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 現在の法律のもとにおきましては、そういう進み方をすることであります。問題は、その立案に当りまして、十分調査をして、間違いのない案を作っていただくということを、われわれといたしましては期待いたしておるわけであります。手続といたしましては、今日の場合、仰せの通りの手続をとっているわけであります。
  280. 松澤兼人

    松澤兼人君 青木長官にお伺いします。今申しましたことですね、国家公務員の場合には準備的な評定というものが行われる、地方公務員の場合にはそれが行われないということは、地方公務員にとりまして、ある場合には非常に不利益になると思うのです。特にいろいろ評定のむずかしい教育公務員の場合には非常に不利益になると思うのです。そういう点、長官としましては、やはり国家公務員の場合のように、準備的な評定が行われるということが当然望まれると思うのです。それを、とにかく決定すれば九月には勤務評定書を書かなければならないと、こういうことは、国家公務員の場合に比べて地方公務員の場合は非常に不利だと、こういうふうに考えるが、長官としてはどういうふうにお考えになりますか。
  281. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 国家公務員の場合と違って地方公務員の場合、その準備的な規定がないという趣旨は那辺にあるか、これはもちろん、その当時の立法のいきさつ等を詳細に存じておりませんからわかりませんが、おそらく、地方公務員の場合におきましては、国家公務員の場合と違いまして、その管轄と申しますか、所属する職員の数が少いというようなこともありますので、特に準備の規定を設けなくてもできるのではないかと、こういうようなことから出てきたのではないかと思います。これは私の推測でございますが、しかし、法律に特別にそういう規定がございませんので、地方公務員の場合には国家公務員の場合と違って、そういうものを今日のところ置かなければならぬということはないのではないかと思っております。
  282. 松澤兼人

    松澤兼人君 これはもうすでにその時期が過ぎ去ってしまいましたから、実際死文になっております。しかし、国家公務員法ができましたときに、付則の第十五条で、「人事院は、昭和二十六年七月一日前においては、都道府県、市その他地方公共団体の人事機関が、この法律によって確立された原則に沿って設置され、且つ、運営されるように協力し、及び技術的助言をなすことができる。」、こういう規定がある。これはすでに時期が過ぎ去りましたから、今日では死文になっております。しかし、地方公務員法制定の場合、あるいは国家公務員法制定の場合、やはり精神は、この国家公務員の精神に従って、しかも国家公務員の人事機関でありまするところの人事院というものは地方の人事機関に対してその設置及び運営について助言することができるという精神は依然として存在しているわけです。ですから、国家公務員の場合に準備的な期間が必要であるということを人事院規則で規定している以上は、やはり地方公務員の場合も、準備期間を、その人事管理なり勤務評定なりを準じて取り扱うべきであるという精神は依然として残っていると思う。これは本来ならば、やはり地方公務員に対する勤務評定というものは、準備的な期間を置いて実施するということが当然だという結論になると思います。地方公務員は数が少いからということは、私は理由にならないと思う。その点どうです。
  283. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 考え方としては、地方公務員の場合におきましても、やはり国家公務員に準ずるものでありまして、やはり準備期間を置くことが望ましいことであるということは、お話の通りであると思うのでありますが、しかし現行法におきまして、特にそれを置かなければならないという規定がありませんので、置くことが望ましいことではありますが、だからといって、特段の規定がありませんので、地方の実情によりまして、準備期間を置かずに実施いたしましても一向差しつかえないのではないかと、こう考えております。
  284. 松澤兼人

    松澤兼人君 これはもう青木長官も御存じのように、国家公務員法ができたいろいろないきさつ等、私はその当時人事委員をやっておりましたから、よく知っております。それに準じて地方公務員法ができたということもよくわかっております。従いまして、やはり流れるところのものは一貫して流れていると思うのです。それがアメリカの指導によってできたとか何とかいう、いろいろ議論はあるでしょうが、今日、人事院という制度が適当であるかないかということは別といたしまして、やはり立法的な問題からいえば、一貫して流れるものがある。ですからして、私が先ほど申しましたように、これまですでに地方公務員に対して勤務評定が行われているとすれば、それはやむを得ないことです。けれども、今回、まだ教育公務員に対しましては勤務評定が行われていないのですから、それにつきましては、私はやはり国立学校の教職員に対しましては、人事院規則でもって定められるような、そういう順序を踏んでやられたものと思う。そうすれば地方公務員の場合にも、同様にそういう段階を踏んで勤務評定がやられることが望ましい。またはそれが当然だと思うわけです。しかし文部大臣は非常な決意をして、いわゆる違法に対してはどんどん処罰をしていくという強い決意で今日おられるのであります。しかし私たちが、まあ手前みそのようでありますけれども、やはりこの経緯を静かに考えてみると、加瀬君が指摘したように、法律的な根拠もいろいろと疑義があるし、あるいはまた、今申しましたように、地方公務員に対する勤務評定と国家公務員に対する勤務評定の取扱いの仕方にもいろいろと問題があるし、ですから私は、ここで非常に急速に、かつまた、非常に強力に文部省が出て、どこまでも府県教育委員会を督励して九月中には全部やらせるという、その強行的な態度というものが、やはり問題を惹起しているのではないかというふうに考える。もちろん、それは文部大臣としては言い分がおありでしょう。しかし、もし政治評論家なりあるいはまた評論家の方々にいわせれば、やはりそういうところに問題がある。もちろん、これを文部大臣が強行するということにもいろいろと異論があるでしょう。また、それに反対するために実力的なことをやるのにも非難をするでしょう。しかし、公平な立場で考えてみる場合には、やはりそういうところに両方とも反省しなければならない問題があるというふうに見ているんじゃないかと思うのです。文部大臣が非常に強硬で、もう一切延期とか冷却期間というものを認めないということであるならば、これはもう何をか言わんやでありまして、その責任はやはり文部大臣が負わなきゃならぬところだろうと思うのです。以上申し上げておきます。
  285. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 私は、先ほど来申しておりますように、基本的な物の考え方は、勤務評定の実施をぜひやりたいということでございます。法律にございます以上は、責任者としてこれを、実施したいのであります。その実施につきましては、法律にあります通りに、地方教育委員会でこれがその任に当るわけであります。そこの点について、教育委員会はすでに大多数の府県におきましては実施に移っておるわけであります。いろいろ検討いたしましてその計画を作り、規則も作ってやっておるのが今日の状況でございます。これにつきまして、国家公務員の例をお引きになりましてのお話でございすが、ごもっともの点もあると思うのでありますが、現行法は国家公務員と地方公務員と分けて書いておるのでありまして、それにはまたそれだけの理由もあったのじゃなかろうかと想像するのでありますけれども、いずれにいたしましても、事は慎重にしなきゃならぬ、十分練っていいものを作っていかなくちゃならぬという趣旨においては、私は何ら異存はございません。そういうふうなことにつきまして、昨年来、地方の教育委員会のいわゆる教育長等の連絡協議会と申しますか、そういうふうな会合におきましていろいろ検討をし、相当な期間をかけて各種の資料も参考にいたしまして作ったものでございますので、私は一応これで進んでよろしいのじゃないかと思う。しかしこれも一つの基準案でありまして、個々の教育委員会においてやっておりますことは、必ずしも教育長の会できめた通りにやっているわけでもございません。また提出期日等につきましても、必ずしも同じように、九月一日なら九月一日、十月なら十月というふうに固定したものでもございません。その県その県の事情によってやり方も変えている県もあるようでございます。私はそういうことに一々文部省が干渉したり、指導したりするというふうな気持は持っておりませんけれども、とにかく現在の状況のもとにおきましては、何とか一つあまりむちゃな反対はやめていただいて、これを実施に移すように協力していただきたいというのが、私の心からなる念願でありまして、決して争いを好むとかいうつもりでやっておるのではありませんので、物事の筋だけは一つ通させていただきたいというのが私の念願であります。
  286. 田中啓一

    委員長田中啓一君) 本件に関する質疑は、この程度にとどめまして、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  287. 田中啓一

    委員長田中啓一君) 御異議ないものと認めます。  本日は、これにて散会をいたします。    午後六時六分散会