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1958-06-24 第29回国会 参議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十四日(火曜日)    午後一時三十六分開会     ―――――――――――――    委員異動 六月二十三日委員藤田藤太郎君辞任に つき、その補欠として近藤信一君を議 長において指名した。 本日委員木島虎藏君及び近藤信一君辞 任につき、その補欠として斎藤昇君及 び藤田藤太郎君を議長において指名し た。     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     久保  等君    理事            勝俣  稔君            山下 義信君            中山 福藏君    委員            紅露 みつ君            斎藤  昇君            榊原  亨君            鈴木 万平君            谷口弥三郎君            横山 フク君            片岡 文重君            木下 友敬君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            竹中 恒夫君   委員外議員            坂本  昭君            森中 守義君            矢嶋 三義君   国務大臣    厚 生 大 臣 橋本 龍伍君   政府委員    大蔵政務次官  佐野  廣君    厚生大臣官房長 太宰 博邦君    厚生省保険局長 高田 正巳君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    大蔵省主計官  鳩山威一郎君    文部省大学学術    局長      緒方 信一君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省公衆衛生    局環境衛生部長 尾村 偉久君    水産庁漁政部長 武田 誠三君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件社会保障制度に関する調査の件  (一般厚生問題に関する件)  (熊本県水俣市に発生した奇病に関  する件)     ―――――――――――――
  2. 久保等

    委員長久保等君) それでは、これより委員会を開きます。  委員異動を報告いたします。  六月二十三日付をもって藤田藤太郎君が辞任し、その補欠として近藤信一君が選任されました。  六月二十四日付をもって木島虎藏君及び近藤信一君が辞任し、その補欠として斎藤昇君及び藤田藤太郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 久保等

    委員長久保等君) 社会保障制度に関する調査の一環として、一般厚生問題に関する件を議題といたします。  この際、過日新任されました橋本厚生大臣から発言を求められております。これを許可いたします。
  4. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 橋本であります。  私は、今回、第二次岸内閣成立に際しまして、厚生大臣の重職を汚すことと相成りました。まことに至らぬ者でございますが、厚生行政につきまして御造詣の深い各位の御支援、御協力を得まして、鋭意重要問題の処理に当って参りたいと思う次第であります。よろしくお願いをいたします。  社会保障制度整備拡充いたしまして、福祉国家実現を期する上におきまして、その推進中核体とも申すべき厚生行政に課せられました使命は、きわめて大きいと言わなければなりませんが、私どもの当面いたしておりまする緊急の課題は、何と申しましても、国民医療保障達成することであります。すなわち、その中心的施策として、昭和三十二年度から実施いたしておりまする国民健康保険全国普及四カ年計画は、本年度で第二年度を迎え、おおむね順調に進捗いたしておるとは申しますものの、既定方針通り昭和三十五年度中に懸案の国民保険実現いたしますためには、なお一そう制度上、運営上の整備を必要といたしますとともに、同時に、これに関連する諾施策、特に結核対策医療機関体系的整備等について、さらに強化をはかって参らなければならない実情でございます。とりわけこの問題に直接深いつながりを持つ国民健康保険法改正につきましては、不幸にして改正案が、去る第二十八回通常国会におきまして審議未了となりましたが、国民保険早期達成推進いたしますために、できるだけすみやかに国会に再提出をいたし、その成立を期したいと念願いたしておるものであります。  また、医療保障達成に重要な関連を持つ社会保険診療報酬の改訂の問題につきましては、長期間にわたって種々紆余曲折がございましたが、すでに去る五月下旬以来、政府基本方針が確立されておりますので、この線に沿って善処して参る考えであります。  医療保障と並んで重要な課題は、国民年金制度の創設であります。国民年金制度につきましては、政府は、すでに昨年四月以来、所要の調査並びに準備を進めて参っておりますが、その早急な実現を望む世論はきわめて高いのでありまして、各種の試案が世間に問われており、また、内閣総理大臣の諮問に対する社会保障制度審議会答申も行われ、制度実現への機運はとみに熟して参っている実情であります。この問題につきましては、社会保障制度審議会答申をできるだけ尊重しつつ、厚生省に設けられておりまする国民年金委員中心として、各方面の意見をも参酌して、さらに慎重に、十分な検討を加え、早急に国民年金制度体系を確立しいたしまして、昭和三十四年度から老齢者母子世帯身体障害者等に対する国民年金を漸次実施されるように、諸般の準備に万全を期して参りたいと考えております。  以上のほか、公衆衛生施策推進環境衛生の改善、貧困階層対策、児童の健全育成母子保健対策等厚生行政は、きわめて広い範囲にわたり、早急に解決をすべき重要な問題が山積している現状でございます。  これらの問題につきましては、私は、まことに微力ではありますが、今後できるだけ力をいたしまして、施策のすみやかな具現化に努めて参いる決意でございますので、重ねて各位の御協力お願い申し上げる次第であります。よろしくお願いをいたします。  なお本日は、私とともに新任いたしました池田政務次官出席をいたしまして、皆さん方にごあいさつを申し述べたいと申しておったのでありますが、たまたま鹿児島で、本年度におきまする貞明皇后記念救ライの日がございますので、高松宮、同妃両殿下のお供をいたしまして私のかわりに、政務次官鹿児島に行ってもらったのであります。社会労働委員会を参議院でお開きになりまする最初機会に、政務次官とともにごあいさつのできませんでしたことは、はなはだ恐縮でございます。次官からも、皆さん方によろしくお願い申し上げてくれということでありましたから、ついでに申し上げる次第であります。     ―――――――――――――
  5. 久保等

    委員長久保等君) それでは、これより一般厚生問題に関する質疑を行います。  なお、この際お諮りいたします。委員外議員森中守義君から、発言を許可せられたいとの申し出がございます。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認め、発言を許可することに決定いたしました。
  7. 山下義信

    山下義信君 ただいま橋本厚生大臣から、御所信の一端を承わったのでありますが、久しぶりに有能な大臣を迎えることができまして、私ども野党といたしましても、審議をいたしますのに張り合いがありまして、大へんけっこうに存ずるのであります。  さしあたり緊急に伺いたいことが、一、二ございます。問題は重大でありますから、質問趣旨をるる申し上げたいのでありますが、時間の関係もありますし、かつ、厚生大臣は言うまでもなくベテランでおいでになりますので、概要だけ申し上げますので、できるだけ具体的な御回答を得たいと思う次第であります。  ただいまのごあいさつの中にも、国民健康保険法案につきまして、できるだけすみやかな機会に、国会に再提出したいということをお述べになりましたが、そのできるだけすみやかな機会とは、いつでございましょうか。この特別国会に御提案になるお考えでありましょうか。その点を承わりたいと思います。なお、この特別国会に御提案になるといたしまして、その提出されまする法案は、前国会に御提案になりました通り内容法案でありましょうか。あるいは前国会と今日まで若干の時日がありましたが、政府におかれましては、その内容について若干の再検討をされたのでありましょうか。あるいはまた会期の少いこの特別国会に再提出されるというお考えであるならば、その再提出されるお考えは、いかなる理由でこの会期の短い国会に御提出に相なろうとなさるのでありましょうか。あるいは、この法案不備につきましては、前国会でわれわれも議論いたしたのでありますが、この重大な法案特別国会にお出しになりまする以上は、何らか国会審議についてお考えがあるのでありましょうか。たとえば野党意見も十分お聞き入れになりまして、再修正についても応ずるというお考えで、この法案成立をお望みになるのでありましょうか。あるいは、ただ単に出しておくというだけで、その実は、次の臨時国会成立すればよろしいというお考えでありましょうか。この国民健康保険法案をすみやかなる機会に御提出になるという御意思、具体的なお考えをまず承わりたいと思うのであります。
  8. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) ただいまの御質問にお答えを申し上げたいと思います。前大臣から申し継ぎがございますので、それをお話し申し上げたいと思うのであります。  実は前内閣時代に、特別国会への提出法律案をどうしようかということを話されたそうでありまして、今度の特別国会会期も短いし、二百条に近いこの国民健康保険法改正の御審議を願うのは無理だから、今度の特別国会に出さないで、臨時国会に出すということを一応決定されたそうであります。前大臣からそういう申し継ぎがございました。なお、最初閣議にもその申し継ぎを受けまして、前内閣時代には、無理であるのだが、あらためて確認を求めるというので、閣議に四つの案件だけを出すという提案がございました。私は、その際留保をいたしました。なかなかむずかしい問題ではあるけれども、この十月一日からの改正案実施を控え、ぜひ一つ特別国会に通せるものなら通していきたいので、いろいろな問題はあるけれども、この国会に出す努力をしてみたいということで留保をいたして、せっかくその努力をいたしておる次第であります。もう会期も非常に短いのでありますが、私は、この国会にぜひ出したいと考えております。ただ、前国会時代にも、原案に対しまする不備の点についても、いろいろお話もございました次第でありますから、これを出すのに当りましては、なるべく与党野党、また衆参両院、また外の関係団体を通じまして、私たちのほんとうの善意というものを了解してもらって出します方が、一日、二日を争って誤解を生じますよりも、御審議を促進していただけるものと考えておるのでありまして、私、何日ということは申し上げかねますが、急速に提出運びにしたいと思って、努力をいたしておる次第であります。で、提出をいたしまする際には、これにはもうどうしても、あれだけの法案について、新たにまた政府部内で、あるいは大蔵省とか自治庁あたりと集合するというような余裕もございませんので、提出をするとすれば、原案で出さざるを得ないと思うのでありますが、ただその際に、私といたしましては、これはもう、厚生省の出します原案が非常にいいもので、絶対に譲れぬというようなことは決して申しませんので、出しました以上は、衆参両院の御審議の過程におきまして、与党野党の御意見、またほかの意見十分しんしゃくをして御審議を願いたいと考えておる次第であります。  なお、急ぐのはどういう理由かというお話でありましたが、これは、私たちとしては、今いろいろな理由がございますけれども、一番の問題は、国民保険達成する上において政府が整えるべきいろいろな施策というものは、できるだけ早く整えて、真剣に熱意を持って進んでいくということは、非常に大切なことだと考えておるのであります。この年度の半ばから新改正法実施するつもりで、新たな国民健康保険実施考えておられる団体はだいぶたくさんございますので、そうした団体準備をおくらせないためにも、私は、何とかして会期は短かくなりましたが、この国会提出をいたしまして、出したからには、ずいぶん無理な話ではあると思いますが、できるだけ成立努力をいたしまして、衆参両院皆さん方お願いを申し上げたいと考えておる次第であります。
  9. 山下義信

    山下義信君 わかりました。  次は、国民年金制度につきまして、厚相のお考えを承わりたいと思います。どこでありましたか、はっきり記憶いたしておりませんが、大臣は、国民年金制については、八月ぐらいまでには成案を得るつもりだ、こういうような御意思があったようであります。八月といいますと、もうあと一、二ヵ月しかないのであります。よほどこれは、御準備がお進みになっておるように察せられるのであります。大体その八月中に成案を得られるというお見通しの御作業プログラム一端をお漏らしを願いたい。かつ、この問題は、承わるということになりますと、ずいぶん広範多岐にわたりますから、それらはすべて省略いたしまして、大体の御構想を私は伺うにとどめますが、母子年金老齢年金身体障害者年金、この無醵出における三種年金は、同時に発足させるという御準備をお進めになっておられますか。あるいはまた、老齢年金だけを先にして、母子年金身体障害者年金あとに回されるというお考えでありましょうか。無醵出制における場合の三種年金について同時発足か、あるいは前後されますのか、そういうことを承わりたい。  それから、八月中に成案を得られるということであるならば、おそらく私は、臨時国会に何らか具体的なものをお示しになるのではないかと思うのでありますが、そういう御見当で作業をお進めになっておられるのであるかどうであるか。言いかえますというと、明年度予算編成までには、少くとも国民年金制の中における無醵出の今申し上げました各種年金制については、明年度予算の中に編成していく上においても、臨時国会で形を整えるという見通しおいでになりますか。あるいは、細部は通常国会法案その他はおかけになるというお考えであるのかという点を一つ国民年金制推進についての厚生大臣の段取りを、プログラムをお示し願いたい。こう思うのであります。
  10. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 八月中に成案を得るというのは、これは少し誤解でございまして、こういうふうに考えておるのであります。先ほどのごあいさつのうちにも申しましたように、この社会保障制度審議会答申をちょうだいいたしましたが、これをできるだけ尊重しながら、国民年金中心として検討を加えたいと実は考えておるのであります。御承知のように、社会保障制度審議会答申は、荒筋を言うておられるのでありますが、あれの中でやはり、たとえば経過措置のようなものをどこまでやるかというような問題につきまして、それから準備の算定はほとんどしてございませんし、国民年金制度をどういう立て方をすると、経費がどういう項目について幾らぐらいかかるかということをはっきりつかみますることと、それをつかみながら、大体どういう構想で、立て方でやっていこうかということをきめなければならぬわけでありまして、来年度予算ともにらみ合わせまして国民年金委員の……、この間長沼委員長にお目にかかったのでありますが、八月中には、社会保障制度審議会答申を尊重しながら、これを掘り下げて、かみ砕いて、どういう立て方にしたらよろしいか、そうした場合に、どういう立て方で、どういう項目についてどれくらいの経費がかかるかという具体的に内容を――内容の所在と申しますか、そういうものを八月中にはっきりして参りたい。それが大体できるということでありました。厚生省事務当局も、企画室でやっておりましたのを、保険局の方でさらに掘り下げてやる事務機構を作っておりますが、それをさらに念を入れて、国民年金委員の方にも協力をさせながら、それだけの作業を大体八月中にやりたいと考えております。それを見ましてから、厚生省としても検討をし、かつ政府部内でこれに関します仕上げをいたしますので、厚生省としての仕事振りとしては、臨時国会にその案をお示しするというところまでは参りかねるのじゃないか。八月中にその素材の検討を終えまして、それに従って大至急やはり厚生省としての来年度予算要求にからんだ原案というものをなるべく早くまとめまして、政府部内での交渉を始めたい。そうしまして成案は、やはり来年度予算編成とからんで、年末か、あるいは来春早々にこれを確定して、通常国会にかけるという運びに相なるかと考えておるのであります。  なお、三種無職出年金を同時に発足させるかどうかというお話でございました。これは、御承知だと思いますが、自由民主党では、選挙に際しての公約として、老齢年金を来年度から必ず発足をさせて、追いかけて母子年金廃疾年金をやるというふうなことを、大体非常に手固く考えておったのでありますが、その後、私はその当時から別の考えを持っておりましたが、今度社会保障制度審議会の御答申をちょうだいいたしまして、それをできるだけ尊重してやっていくという立場から申しましも、この三種の無醵出年金を来年度からぜひ発足をさせたいと考えておるであります。あの答申にもありますように、この年金制度は、やはり発足をさせましてからあとでも、五年ごとには基礎計算をやり直せということが書いてありますから、それを発足させながら固めていかなければならない面が非常にあると思いますので、もし財政的な制約を受けまする場合には、養老年金だけをやって、ほかの二つを後に残すということをいたしますよりも、財政的にもできるだけ財源を取るように努力をいたしまして、もし財政的な制約で、十分にいかない場合には、三種年金金額発足の時期において多少低くなりましても、同時に発足をさせて、そうしてそれをあとで充実させていくという方がよろしいと私は大体考えておりまして、国民年金委員の方々にも、掘り下げをなさるに当って、大体私の考え方としては、そういう趣旨で御検討を願いたいということをお願いしておいた次第であります。
  11. 山下義信

    山下義信君 非常に明快な御答弁をいただきまして、よくわかりました。御方針としては承わっておきます。  関連いたしましてですが、この年金制度をお進めになると同時に、これを所掌いたしまする行政機構等については、たとえば年金庁構想であるとか、かつてそういう話も聞いたことがありますが、あるいは厚生省機構――現在の保険局年金局にする、あるいは年金局を新たに設置するとか、あるいは地方における将来における国民年金の取扱いの機構等についても何らかのお考えがあるのではないか、こう思う。制度準備をなさると同時に、当然行政機構の御準備もあると思うのでありますが、大体はどういうふうに中央地方年金関係行政機構考えておられるかという点を関連して承わりたい。  なお年金関係として承わりたい点は、現在厚生年金積立金が三千億内外の巨額に達しておりまして、これが運営につきましては、不十分である点は、自他周知のごとく、多年の問題である。これが適正なる運営、ただにこの巨額な積立金運営のみならず、ことに被保険者に向ってのこの積立金の活用というような点につきまして改革をすべきではないかと、私ども従来から考えておるのでありますが、厚生大臣には、この点についてどういうふうな方針をお持ちになっておるかという点をお示し願いたいと思います。
  12. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) ただいまお尋ねがございました国民年金実施に関する機構の問題でありますが、これは非常に重大な問題でありまして、これは、中央機構といたしましても、今ではもう手薄で、とうてい実施ができませんし、それから地方機構といたしましては、新規に醵出年金の掛金を徴収するといったような問題を考えてみましても、その際におきまする、今までとにかく二十年習熟をいたしました国民健康保険の問題についても、地方機構というものが非常にいろいろ苦労しながらやっておるという点も考えてみますると、よほどいろいろ考えてみなければならぬと考えておるのであります。そういうような趣旨で、厚生省の中でも、行政機構の問題は、年金制度内容検討と並んで、別に官房考えさしておるのであります。今日まだ、どこをどうする、どれくらいの規模でどうするということについての成案を得ておりませんので、いましばらくお待ちを願いたいと思います。  それからもう一つの、厚生年金運営の問題でございますが、ただいま御指摘のありました通りでありまして、金額は非常に大きなものに相なって参りまするし、これの運営の問題につきましては、私も新任早々でございまして、いろいろなお話を承わってなかなか問題があって、考えなければならぬなとは考えておりますが、これの方も一つ問題だけは、何か今のままでいいかどうかを考えなきゃならぬとは考えておりますが、具体的にどういうことについては、まあ皆さん方の御意見も承わりまして、研究をいたして参りたいと思います。
  13. 山下義信

    山下義信君 それらの点につきましては、具体的な御成案が得られましてまた伺うことにいたしたいと思います。  次は、当面の問題でありますが、医療費の告示の問題につきまして伺いたいと思う。新大臣が就任されまして、デット・ロックに乗り上げておりましたこの問題が、百八十度といいますか、三百六十度といいますか、全面的に回転をいたしまして、局面が打開されたような形になりましたことはともかくもといたしまして、問題がまあとにかく前進したということもいえるわけでありまして、注目すべき現象であると思います。ともかくも、いかんともあれ、ああいうこじれた格好で、正面衝突のままで戦線が固着している形というものは、自他とも不幸であります。よかれあしかれ、右か左にはっきりと解決がついていくということが、悪ければ直せばよい、よければ前進すればいい、膠着した状態というものは自他の不幸でありまして、新大臣の就任と同時に、何らか局面が一変するのではないかと予期いたしておりましたが、果せるかな、この問題に向ってまず第一に手をおつけに相なったということであります。そこで私は、まず委員会といたしましては、ただいま若干の諸君がお集りになって、厚生省側といろいろと御相談になっているような筋である。新聞紙上では断片的に報道がされておるのでありまして、私はこの際、厚生大臣から、この医療費の告示問題についての関係団体といいますか、あるいはそれらを代表せられる若干の人々と厚生省側とがいろいろと御相談に相なっておられる内容経過、お見通し等につきまして、この委員会経過の御報告を願いたいと思うのであります。これは、法律的に申しますれば、言うまでもなく、ただ厚生大臣の権限で、厚生省行政の一部事務であるにすぎません。もとより国会承認云々を必要とする問題でないことは言うまでもありませんが、しかしながら、われわれがこの委員会で取り上げて論議をし、かつまた、非常に大きな社会問題となって、今日国民の関心の的となっておりまする以上は、この厚生省が新たなる方針のもとに関係者と御相談に相なっておるというこのことの内容につきましては、これを明らかに、適当な機関でこういう点を相談しておる、こういう点がまとまりつつある、こういう議論がかわされておる、いつごろには結論を得て、こういう形になる見通しであるということは、国民に明らかにお示しになる必要があると思う。それでなければ、あれだけ世間を騒がせました問題、しかも一面においては、大きく各種の問題を腹蔵して、内包して、論争を続けてきたのであるが、一面においては、確かに関係者の利害問題であることは間違いない、そういう問題が終末の段階、あるいはこれが最終ではないかしらぬけれども、新たなる幕明きになるかもしれぬが、しかしともかくも、一応橋本厚生大臣の手で事態を拾収しようとする段階に、どこやらわからぬ所で、都内某所でぼそぼそぼそぼそとやって手打ちしたというような格好は、きわめて私どもおもしろくないと思う。そこで一つ、どういう御相談か、どういう経過の状態であるかということを率直に一つこの際、御報告が願いたいと思うのであります。
  14. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) むしろ私、お尋ねをいただきまして、まことに幸いであります。折がありましたならば、どこかでお話し申し上げたいと思っておったのであります。今までの経緯は、もう皆さん方承知通りでございまして、私、就任いたしまして、申し継ぎを受けました政府方針は、先般来厚生省で出しましたところの甲、乙両案というものを基礎にして、もう一度関係団体といろいろ話し合いをして、円満に調整をできるものなら調整をする、そうして調整がとれましたならば調整のとれた線において、また不幸にしてとれなかったら、問題は問題として、厚生省で作りました案を告示をする。おそくも六月一ぱいに告示をするという方針でありました。私は、申し継がれました内閣方針を忠実に実行するつもりでございます。そこで、こじれたままではいけませんと思いまするので、とにかく意見を話したい人からは、できるだけフランクにお話を承わりたいということを考えまして、何日でございましたか、私就任をいたしまして早い機会に、医師会、歯科医師会、それから日本病院協会その他の五団体、それから労働団体等においでを願いまして、私から、この医療費の問題について今月中にぜひ告示をいたしたい、それについては、厚生省で作りました原案について御意見があれば承わりたい。今まで御反対の方の御反対の御意見も承わりたいし、あるいは御賛成の方についても、なお考え直してこういうことを言いたいということがあれば承わるということを申し上げて、お願いをしたわけであります。現実に一番問題のありまするのは医師会、歯科医師会の関係でありましてこの方は、去年からああいう状態で話し合いをしておりませんでしたので、具体的なこまかい話は今回初めて始まるというわけで、その際医師会、歯科医師会の側で話をするとすれば、個別に呼ばれて話をするというようなことでなしに、医師会と歯科医師会とが一緒になって、そして厚生省の方からも出てもらって、まずそろって疑問の点について趣旨を聞きたいし、それからそれについて、やはりそろっているところで意見を言いたいというお話がございました。これは、話し合いの形式は御希望の通りにしてよろしいと思いましたので、それではそういう形式で承わりましょうということで発足をしたのであります。ただ、いつでも医師会、歯科医師会に厚生省事務当局が加わった形で全部をお話をする必要もないのじゃないか。具体的な個別な問題については、その専門家の医師会だけとか、歯科医師会だけとか、あるいはまた産科の方だけとか、あるいは外科の方だけとかいうように話をしていいのじゃないかということを申したのでありますが、とにかく初めの間はそろって意見を言いたいし聞きたいということで、話し合いを始めました。割合に話は、今までのところ抽象的な議論が多うございまして、どうして甲表と乙表を立てたかとか、あるいは十円単価にするのにどういう意味があるのかというような問題、それから、昨年の夏以来とぎれております中央医療協議会の専門部会におきます中間答申との関連といったようなお話があったようであります。  それからかつ、甲表、乙表の間で病類別に分類をいたしまして、こういうふうなものは、従来の現行の点数単価表に比べて安くなる、高くなる、それが妥当であるかどうかといったような個別にいろいろな検討が行われておりました。  だんだんに御意見が出て参りまして、何でも、私の聞いたところによりますと、歯科医師会の方は、これはあるいは正式にか、あるいは非公式の相談かもしれませんが、大体点数表をこういうふうに直してもらいたいというような御意見が出ておるようであります。医師会の方はまだ出ておりませんが、六月中に告示をする関係から申しまするならば、おそくも二十四日には意見を出してもらいたい、具体的な意見を出してもらいたいということを前から申しておりますので、きょうの午後また会談が行われますが、そこで医師会の方の御意見も出てくるかと思っております。ぜひ出してもらいたいと思っておるのでございます。  それから薬剤師会の方は、一応いわゆる五団体に御参会になりまして、今まで大体了承してきたような形ではありますけれども、なお一点直してもらいたいところがあるのだということで、これもやはり御修正の御要望が出ておるやに聞いております。私は、中間的な段階でありますので、今まではそういった報告を受けておるだけであります。  なお五団体の方からもおいでになりまして、中間的な御意見を求められたのでありますが、まだ具体的にどうこうというところに参っておりませんので、一般的なお話だけをしておる次第であります。大体きょうじゅうで御意見のある分は全部出して下さると考えておりますので、どんな御意見が出まするか、それを拝見をいたしまして善処いたしたいと考えておるのでありますが、いずれにいたしましても、前内閣の末期に方針をきめまして、私の申し継ぎを受けました方法でぜひまとめて参るつもりであります。  ただ、何と申しましても、私、就任以来短かい月日の話でありまして、この間から関係団体お話を承わりましても、これは厚生省としても関係団体としても、なかなか意の尽さぬところがあると思いまするし、それからまた、どうせ医学も日進月歩でありまするので、今月じゅうはもう今月じゅうでぜひ告示を出して、新しいスタートをなし、その上でも厚生省としては、医療費のあり方また支払いの方法等につきましては、これは、この上とも皆さん方の御意見を承わりながら検討はもちろん重ねて参りたいと考えておる次第であります。
  15. 山下義信

    山下義信君 具体的な点数の修正をどういうふうにされるかということは、関係者の案がきょうじゅうに出そろうということでありまして、今後の御作業ということでありまするから、今ここで承わることはできないわけでありまするが、方針として一つ承わっておきたいことは、向うの言いなり次第になるわけではないのでありますから、あなたの方にも御方針があるわけでありますから、それは困る、それは、厚生省方針はこうだから、この点は認めてもらいたい、大体のお話は済んであるかもしれませんが、順序としてはそうあるべきでありますから、向うの希望の案がどうであろうと、一応厚生省の御方針というものが、やはり何といいますか、譲り得ないぎりぎりのところはおありだろうと思う、どうでもコンニャクのようになるわけではないでしょうから。そこで伺いたいと思いまするが、単価をおいじりになるかどうか。これは、今の十円単価、これは絶対に動かさぬようになさいますか。単価はおいじりなさいますか、御方針としては。  それからいま一つは、点数はいろいろ希望を聞いて、一つ話し合いを円満に解決しようということになりましても、その点数のいじり方は、乙表を主としていじるということになりますと、言いかえますというと、厚生省方針としては、従来は甲表中心主義だ、実のところは。乙表は、一般開業医諸君の便宜のために設けたと言いながら、実は甲表を励行してもらいたいというのがほんとうの腹であった。しかし場合によっては乙表が中心になってもいいのだということで、中心が乙表に移っておる。全国の医師がそれで納得をしていくというならば、事態円満のために、若干のそういう点は、大局上認めていこうというお考えであるかどうかという点を伺いたい。  それから点数を直せば、言うまでもなくどこも削るところはないのであって、大がい直すといえばみな点数を増すのである。そうすると、勢いこれは医療費がふくらんでこなければならぬ。どの程度ふくらんでいいとお考えであるかどうか。あるいは、これは御無理な伺い方かもしれぬが、しかし腹をかけなければならぬ、ちょいちょい二、三カ所一点、二点おまじないのように直すというのでは意味ないのであって、相当まるく話しをおきめようとするならば、ある程度の手直しをやらなければならない。それがためには、医療費のふくらんでいくことも腹をかけていかなければならぬ。そういう点についてどんなふうに考えおいでになるかという、御方針として基本的な御方針をお持ちであるかどうかという点を伺っておきたいと思います。
  16. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) ただいまの御質問にお答えを申し上げます。方針として考えておりまするのは、政府できめました厚生省の案を基礎として、この際合理化はぜひやるということであります。それから、総体の医療費の上りを八・五%にするということでございまして、ただいまのお話の点はごもっともでございまして、私たちとしても、およそのいろいろな面についての腹がまえというのは当然持たなければならぬわけであります。これは、最初この問題の話し合いを、つまり私が就任いたしましてから関係団体を呼んでお話をいたしましたときにも、一体限定されたワクの中でこれだけの話を聞いてやるというのか、何の話でも聞くのかということが問題になりまして、これはどうも、およそ私の方としてのまとめの腹がまえは持たなければなりませんけれども、しかし、外に対して御意見を聞くというときには、ワクをきめてかかるというのではどうしてもはなはだうまくいきませんので、今回のお話は、言いたい御意見は全部聞く、それから修正の案についても、これはお考え通りとにかく出していただく、ただできるだけ、およそ六月中ということと、厚生省の案を基礎にするというところで、あまりかけ離れたものになってもまとめに困るので、およそその点は考えていただきたいけれども、私の方もあらかじめ意見はこのワクの中だけで出してくれということは言わぬという約束だけで、お話し合いを始めたわけであります。で、私も、今日まとめるのに大事な段階になりまして、まあどういうワクの中でしか考えられぬということをきょうここで申し上げることは、ちょっと差し控えさしていただきたいと思うのでございます。およそいろいろなことを考えて参らなければなりませんけれどもお話自身は限定をしないで、どんな意見であっても伺って、そうしてそれがのめるものかのめないものかということは今日以後、これはわずかな時間しかありませんが、その間に誠意を尽してお話し合いをしたいと考えております。なお、点数を是正するときにはふくらむという話でありました。実際その通りであろうと思いますが、その場合には、これはもう関係団体の方にも十分御了解を願っておるはずであります。この際八・五%をこえるということは困りますので、御意見の出て参りますのも、つまりこういう点数では八・五%まで達しない、上げる分については、八・五%のワクの中で処理するためには、こういう点数はもっと上げてしかるべきではないか、こういうわけで出てくると私は考えておるのであります。大体総医療費として八・五%のワクというのは、つまり厚生省の基礎原案をもとにして話をしていく上に、この点での御理解ができておるものと私は考えておる次第であります。
  17. 山下義信

    山下義信君 この段階では、その程度伺いましょう。また専門家の委員諸君もおられますから、お触れになることと思いますから、ただ、私の伺った御方針の中で、一つお答えをいただけなかったのは、必ずしも甲表中心ということを固執しないで、これからの医療費の形態が乙表中心になっても、それはいとわないのであるというやはりお考えを持っておられるかどうかという点はお答えがなかった。もし御方針がありますればお示しを願いたい。  それから、お立ちになりますついでに、やはりこの問題に関連してでありますが、将来は根本的に一つ検討するという御意思であるやに、厚生大臣談話として、これは新聞紙でありましたけれども、承わったと思うのでありますが、将来診療報酬の支払い方式の再検討あるいはその報酬額の決定等について、現在の中央医療協議会のあり方等々も検討されまして、何か適当なそれからの審議機関といいますか、検討する機関を新設されるお考えでありますかどうか。やはり従来の中央医療協議会等をこのままお持ちになるのかどうか。おそらくその中央医療協議会が答申したものがこの状態に相なって手直しをされて、おそらくその機関がそのまま持ち得る機関であり、また委員諸君もそのままの姿ということはあり得べきでないのじゃないかというようにも思われます。ことに、当時関係団体から選出せられた委員の中で、病院関係委員が進退について問題を起したことがある。従いまして、あるいは利益関係団体でなくして、公正な、第三者のような性格を持った中立的なこれらの診療報酬に関する審議機関をお作りになるというようなお考えでもあるのではないか。将来根本的に――一応ここで話がまとまった案はやらしてみる、一年か一年半やらしてみるが、その間に、いわゆるいうところの合理的な、また科学的な相当根拠のある、しかもきわめてスマートな診療報酬の方式あるいは額等を根本的に検討させるのだということであるならば、その検討する機関はどういうものを考えおいでになるかという点をあわせて承わりたいと思うのであります。
  18. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) この甲表、乙表の問題につきましても、おそらくこういう問題について関係団体意見が出て参ると思いますので、私は、前内閣以来引き継いだ方針に基いて、厚生省の案を基礎にして討議を進めて参るということだけで、本日の点は御答弁をそれだけにさせていただきたいと思っておるのであります。  なお、機構の問題でありますが、私は今のところ、中央医療協議会の機構を必ず改めなければならぬというふうにも考えておらないのであります。ただ、実は私が昭和二十六年に、前に診療報酬を引き上げました際にも、昭和二十六年の八月に諮問をいたしまして、あといろいろにもめて、とうとう十一月の未になって、まあもめて結論が出ないなら出ないなりに、こういう意見があってとうとう結論が出なかったという答申をしてもらわなければ困るということを委員長お願いをして、十一月の末にそういう趣旨答申を得て、結局結論のないままに、私の責任で十二月の六日だかに告示をいたしたのであります。今回も、昨年の八月に諮問が始まりまして、結局は具体的に点数なり単価なりをどうするかという統一された見解は出ないままに、審議経過についての締めくくりの御答申があったわけでありますが、礎案の問題として、両回とも円満な締めくくりがうまくいかなかったのであります。これは、診療報酬の改定の問題というのは、これは今後でも、一般の国民の所得水準が上りました際に、それにつれて一種の待遇の改善という問題が出てくるわけであります。これは、長い目で見ると、ちょうど定期的に出てくる問題であって、もっと穏やかに、もっと学識経験を取り入れた形と、かつまた利害調節を取り入れた形と、それがうまくかみ合されて、円満な結論の出るような運営の仕方をどうしても考えてもらわなければならぬと思います。その上で、どうしてもああいう形では運営がうまくいかないのだということになれば、仕組みも別に考えなければならぬかもしれないが、私はどうも、いきなり機構をどうこうということよりも、どうも昭和二十六年の時、また昨年の時のようなことでない円満な運営の仕方ができないものかということにつきましては、今月の問題はまあ今月の問題として処理しなければなりませんけれども、これから先の宿題としてこれは、皆さん方の御意見も承わりながら考えて参りたい。で、今までの問題は、機構が悪かったのか、運営の方法が悪かったのか知りませんけれども、現実の結果として、やはり直ちにとり用うべき答申をいただけなかったということは、やはり工合が悪いことであって、今後は、御答申をいただいてそのまま用いられるような何か仕組みないし運用の方法というものを研究いたしてみたいと考えております。結論的なものを、今どうするということにはきめておりません。
  19. 山下義信

    山下義信君 私は、この医療費の問題がいかなる形で妥決されるか存じませんが、数日のうちにともかくも一応のケリがつくでしょう。その妥決されたということは、一体何を意味するかということですね。これは私は、ただ事態がまるくおさまったというのでは意味をなさぬ。事態がまるくおさまったというようなことでは、子供のけんかであったということになる。厚生省は、健康保険の問題までさかのぼると長くなるが、この医療費の問題で前後約二カ年の歳月を使ったのであります。もしこの医療費の問題がここでおさまったことが何らかの意味をなさぬのであったならば、この二カ年は、空費した実に貴重な時間であったと私は思う。この医療費の問題に長い間の時間をかけたということは、私は、ただその形の争い、金額の争い、利益の争いではなかったと思う。私は、この医療費問題について、厚生省関係団体の、医師、歯科医師諸君との間の論争には、本質論があると思う。内容があると思う。そこで、ただ表の点数じゃ、単価じゃ、金額じゃというものが話がついたというのでは、この貴重な二カ年は何をしておったかということになって、しかも、われわれが顧みると、この二カ年の間は、厚生省は全力をこの医療費問題に傾倒をして、足踏みをしておる。有能な諸君も、非常にこの問題に日夜奔命疲れて、厚生省あげてこれらの問題に全力を投入して、あとのは皆ストップ。言いかえると、大臣は、御承知のごとく厚生行政社会保障制度の諸前進は足踏みのままである。しかしながら、いかに足踏みし、いかに時間を使っても、この医療費問題の解決が非常に深い意義があるならば、この時間もまた、きわめて有効に使われたと言うことも私はできると思う。そこで、今度話がまるくついたということは何を意味するか。反対に申し上げるならば、裏から申し上げるならば、一体この医療費の論争を政府並びに民間が続けてきておった本質は何であったか。その本質は一体何が解決されたかということを、私はこの医療費問題の解決に際して明らかにしておく必要がある。もし表面的な、この数字のようないわゆる問題は話がついたようであるが、この内包しておるところの本質はちっとも解決されなかったということであるならば、非常に大きな問題があとに残る。  そこで、私は伺いたいのでありますが、この医療費の問題ということは、総括的に言えば、国民保険をどういう形でやろうかという問題である。そこで、つまり言うと、この医療費問題がどう話がついても、その話がついた、それで果して国民保険政府の所期のごとくにやれるかどうかということなんです。その自信があるかどうか。ただ当面の相手方のごきげんをとって、前任者が難行したそれをただリリーフして、ちょっと当分の目鼻をつけたというだけじゃ意味をなさぬのであります。私どもはしろうとでよくわからぬが、これらの医療費の単価点数のそれらの一点一点のあり方は、ことごとく私は国民保険の本質に響くものであろうと思う。ただ博労の牛や馬を買うように、両方で歩み寄って、二に二を足して、それを四で割ったというようなことで話し合いがつき、妥協ということではないのであって、国民保険の進む、これから行くコース、そのあり方というものに私はことごとく関連があると思う。私は、そういう点で、その医療費の問題の持っております本質について、どういうふうに大臣がお考えになるか。これは、きょう直ちに御答弁をいただくことは――あるいは十分御検討の上でいただいてもけっこうでありますが、何といったって、名にしおう天下のベテランがここに厚生大臣として来たのでありますから、かえって今邪念の入らぬうちに承わっておく方がいいのじゃないか。私は、この問題の中にひそんでおるこの本質の論争、いわゆる国民保険医療保障のあり方というものを、結論的に言えば営利性を認めていくか、非営利性で押し切っていくかというような点にもいろいろある。それは関連して行くというと、医療制度全般に及んで来る。医師の身分の上から、医療制度の上から、医療機関の上から、しかも、保険診療の報酬というものに営利性を認めていくか、非営利性であるべきかという、その本質論から言って、そうして忘るべからざる問題のかなめは、このわが国における医療保障のイニシアは、国みずからが責任を負うてやるか、あるいは関係の専門家の医療担当者にまかせるか、ある程度それらの諸君の意見をもとにこれが動かされていくか、主従という差をつけると妙であるが、一体どういう性格でわが国の医療保障制度を、これを完全実施していこうとするか、将来の見通し、あるべき姿、私は本質としてそれがあったと思う。私は、ただ医師会諸君の十二円五十銭よりは十八円だ、百円よりは千円だというような争いではなかったと思う。医師会関係、歯科医師関係の諸君も、この医療保障がいわば、これはあなた方には耳が痛いかわからぬが、官僚統制のような姿でわが国の医療保障制度が、果して医師の良心的な仕事として担当し得られるかどうかという大きな論争、こういうものを、こういう姿を官僚統制と言うか言わないか、これは別であるが、ともかくも、そういう医療保障制度のあるべき姿に向って、両者は医療費という形の上に、医療費の戦いの上に、実は内面的には本質的に戦いは私はあったと思う。そういう点について、ここでただ単に単価点数表の話し合いがついた。問題が先に若干ずれて持ち越したといっても、本質の解決一つもついていない。そこで私は、これらの問題の中に含まれておった本質については、厚生大臣がよく御承知通りでありますから、基本的なわが国の医療制度の方向としてはいかなる性格で進むのであるか、これらの関連する一群の未解決の基本的な諸問題を、あなたの手で一々明快に解決してお進みになる考えであるかという点の御所信を承わっておきたいと思う。
  20. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 非常に広範な、根本的のお話でございまして、私も、国民保険をやって参りまする上において、本来こうした国民保険のための仕組みという趣旨でなくて発足をいたしました、この一種の恩恵的な社会事業といったような形で発足をいたしました制度は、いろいろな矛盾がございまするし、単に医療費の問題のみならず、いろいろな点で考えなければならぬ部分がたくさんあると思います。で、医療費のあり方、また支払いの方法等についても、いろいろな問題がございまして、十分な検討をして参らなければならないと思いますので、ただいま山下委員から承わりましたことは、十分心得て善処いたして参りたいと思います。ただ、この六月一ぱいに告示を出すという問題に関しましては、ただいまお話をいただきました、全部の方針というものを十分に立て貫いていくということは、なかなかいろいろな問題があろうかと思います。私も、実はこの問題については多少の意見も持っておりまするが、何分にも引き継いだ事項の処理でありまして、時間的な制約もありまするので、私の私見は私見といたしまして、この六月中に、何でも内閣の立てた方針に従ってのできるだけの話し合いをし、その上での告示というものをいたして参りたいと思います。今月中の解決については、ただいまお話も承わりました御趣旨の点についての理論的な解明も十分でないかと思いますが、今月の解決は今月の解決といたしまして、その後についても、医療費のあり方等については、根本的に検討いたして参りたいと思います。
  21. 山下義信

    山下義信君 ぜひ一つ大いに御勉強下すって、それらの諸問題、根本的な問題について御解決を願いたいと思います。そこで私は、最後でございますが、これは、私から新大臣にお祝いという意味で、一つ御期待をかねて御要望を申し上げたい。  今理論的な解明をすると、してみたいとおっしゃったが、私がお願いをしたいと思うことは、これから一つ橋本厚生大臣のお手で、わが国の社会保障制度のおくれを取りかえしていただかなければならぬ。まあお急ぎになる必要もない。おそらく数カ年にわたって御在職でございましょうから、ぼつぼつでよろしゅうございますから、おくれを取りかえしていただきたいと私は思う。そこで、あなたのお手で、わが国の社会保障制度の目鼻をきちんと一つつけていただきたい。こう思う、第一点は。  第二点は、日本の社会保障制度の範疇、範囲というものがきわめて不明瞭である。どこまでをわが国の社会保障制度としていくかということを、一つあなたのお手ではっきりきめていっていただかなければならぬ。ただ通俗的に社会保障社会保障と言っておりますが、ここですべて理論的な根拠でこれを明快していただかなければならぬ。これがまず基礎だ。たとえば今日結核対策社会保障制度の一環に入っている。これは、ここに御在席の同僚勝俣委員が、当時私ども社会保障制度審議会に初めて席を連ねた時分に、同君が強力に押して、結核対策というものを社会保障制度一つにした。それで、今日たとえば軍人恩給というような社会保障制度の外に出ておるこれも、たとえば国家扶助料というような名称にすれば、国家年金扶助料というか、年金の一種の形態にすれば、社会保障制度の中に入れることはできる。今わが党は、これは防衛費の中に入れてある。そこで、そういうように、社会保障制度の範囲というものをきめてもらわなければならぬ。たとえば共済組合というものはどうするのか。大蔵省が便宜的に所管しておるが、年金制度を進めていく上において、あるいは共済制度を、長期のみではないが、短期もあるが、一体これらの制度というものを外に置くのかどうするのか。全般的に見渡していただいて、まずこれをきめなければならぬ。たとえば予算におきましても、今日社会保障制度予算としてわれわれ国会審議するのは、言うまでもなく狭義の社会保障、それをどこまで広義にしていくのか、住宅問題を取り入れるかどうするかということもきめてもらわなければならぬ。私は、これを一つあなたのときに手がけていただいて、はっきりとしていただきたいと思う。それから、その社会保障制度を政策としてこれからあなたがとっておいでになっていくことについては、その根本的な理論というものを明快にしていただきたい。どういう考え社会保障制度とするのか。いわゆる保守政党が社会保障制度をこれから大きな政策としていかれるのには、どういうような一体理念でこの制度を目標としていかれるのか。私ども社会党は社会党で、社会保障制度を重要政策と主張するが、私どもが社会党は社会党としての理論を持たなければならない。あなた方はあなた方の方で理論を持ってもらわなければならぬ。そこで、そういう根本理論を、ちゃんと裏づけを持っていて、お互いに論争しようじゃありませんか。予算が一億じゃ少いじゃないか、それなら二億でいいか、金の争いじゃありません。金も争わなければなりませんが、理論の闘争もやろうじゃありませんか。そこで初めて与野党がほんとうに切磋琢磨できる。今日までわが国の社会保障制度の諸施策に筋の通った理論のないというこの現状については、非常に遺憾に思うのでありますから、この点一つ、あなたのお手で理論づけを願いたい。  それから、第五点としては、言うまでもなく、社会保障制度の全般の制度について体系整備一つやっていただきたい。これはお考えがあろうかと思う。たとえば医療保険、これはだれが所管しておる。今保険局保険局は何の得手があってこの医療保険行政をつかさどるか。何の特有の機能があって、保険局という機構はこれを運営指導していくのか。これは、本来言えば、私どもしろうとでわからぬが、医療保険というものは、医務局かあるいは衛生局というようなものが非常に関係が深い。私は、そういうような医療保障なら医療保障についての体系整備、すべて、年金その他におきましても、あるいはその他の福祉関係におきましても、この諸制度体系整備一つ私はやるべきじゃないか。それから、かつまた、中央地方とにおきましても、中央政府でやるべき限界はどこまでであるか。あるいは地方の公共団体でやるべきものはどれをやらせるのか。これは、長い間の論争で、行きつ戻りつしておるのでありますが、これを筋を通してもらわねばならぬ。民間の特殊関係でやるべき民間の事業というのはどの分野であるかということも、そういう分野も一つ制度全体について体系整備を私は願いたい。  それから、その整備の中には、第四といたしましては、言うまでもなく制度運営の合理化、これは私、いつも事あるごとに申し上げておるのでありますが、合理化を一つ徹底的に御検討願わなければならぬ。合理化ということは、裏を返せば効率化です。能率の増大です。これを一つぜひやっていただきたい。私は、たとえば、これは大臣もよく御承知なんで、あなたは非常に関係が深くいらっしゃるから御承知のことですが、国保でも、事務費の一人当り八十五円じゃ少い。百円、百三十五円なければと言って、金を争うのもいいですけれども、金をかけるのもいいですが、私は、国保の事務が今どうなっているか知りませんが、六十五冊も帳面が要る。そういう複雑な、非常に手間のかかるような、これは一例でありますが、事務手続の状態であって、そうして事務費の単価の値上げばかり勉強しておってもしようがありません。簡素にして能率的に、すべて私はそう思う。この社会保障関係で、いろいろな事務的なことをしろうとながら伺ってみるというと、非常に複雑な手続諸規定があるということは、言いかえるならば、相手を疑う、国民を疑う、うそを言って来はすまいか、料金をよけい取りはすまいか、これは証拠が完全であろうか、条件がそろっておるか、相手を疑う。おそらく諸外国では、そういうような証拠物件をそろえ、書式をそろえるというようなことはないと思う。口頭で言えば、すぐそれが条件となって係官がオーケーする。すぐ判を押す。私は、国民をもっと信頼する厚生行政なり、社会保障制度なり、そういうようなあり方で、簡素化して能率化、合理化をはかっていただきたい、かように考えます。  また、これでおしまいでありますが、私は、社会保障制度関係の費用の総ワクというものについて、一つ大臣の御見識で検討してみていただきたい。今日の社会保障制度の諸費用というもの、たとえば千三百億の費用というものは、どういう合理的根拠で千三百億でなくちゃならぬというものが出てきたのか。社会局は社会局で生活保護を計算し、保険局保険局で補助費を計算し、それぞれの各局がそのときの施策施策を含めながら計算して、積み上げて総計が千三百億になるということは、国全体の予算国民所得の全体、私は、何もああいったようなパーセンテージがどうとか、そのような古いことをばかの一つ覚えみたいに言おうとはしません。しかしながら、わが国の国力、経済力、予算の規模その他から、一体社会保障制度の総ワクというものはどうあるべきかということが出てこなければならない。合理的に、そういう点につきまして、私は、ぜひ一つ明年の予算編成厚生大臣の御要求、またこの予算の御要求のあり方等につきましては、社会保障費の持つ理論的な根拠に立って、画期的な一つ示し方を願いたい。  最後に、そういうことになって参りますと、私は、今日の段階としては、わが国の社会保障制度の面目を一新して、大臣の御理想を着々として実現なさる上におきましては、どうしても厚生省自体が社会保障省のような性格になる。名前はどうするにしても、とにかくその性格の省となり、そうしていつも相も変らぬような、きまったような顔ぶれを集めて、お知恵拝借かどうかわかりません。人間の知恵というものはそう無尽蔵に、梅が枝の手水鉢のように、たたけば出るというものではない。一ぺんしぼってしまえば、あとはからっぽであります。同じようなものを屋上屋を重ねて、そうしてそのありもしない知恵をありがたそうにちょうだいしているということは、まことにそばから見ていると愚劣きわまる。それで、そんなに名論卓越の知恵を持っておるものは、そういう数あるものではない。少くとも私を除いてそんなにあるものではない。(笑声)そこで、そういうりっぱな優秀な人があなたの部下にあると思う。厚生省の中にもあると思う。それは、もとより多く省外の意見を広く取り入れることはけっこうでありますが、大いに有能なブレインを、部下を活用されまして私は、厚生省の中にこの際社会保障研究所というような直属の機関でもお持ちになって、そうして基礎的な研究、あるいはすぐに施策に間に合うような名案を考えさせ、それに理論的な裏づけをさせる、そういうような勉強をする一つ直属の研究機関をお持ちになる。もろもろの審議会というものは、それにつけたらいいのであります。今日私は、社会保障制度審議会でも、内閣の、総理大臣の直属としているというような時期ではないと思う。社会保障が何かあのときに軽視をされないかと思って、総理府に置けば権威があるというので、私ども無理やりにああいうような形で、大臣もその当時御関係と思いますが、したのであって、今日厚生大臣のもとにあればいいのであります。社会保障研究所の、それの付属機関として審議会があればいいのでありまして、そういうふうに、審議会等も統括なされまして、そうして厚生省一つ気風を一新して、こうよどんでいることは、これは、何べんも言うようでありますが、とろんとして、どろんとしている。(笑声)これに一つ活を入れていただいて、そうして有能な士をどんどん吸収していただいて、行き場のない者が厚生省に集まったような格好ではどうにもなりません。それで、一つ省内の人心を一新していただいて積極的に、根本的に、わが国の社会保障制度の基礎をあなたの大臣の代に確立していただきたい。はなはだ軽少でございますが、お祝いのしるしでございますから、(笑声)御所見を承わりたいと思います。
  22. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 御激励をいただきまして、まことに恐縮であります。ただいま承わりましたことは、私前々から考えていたことでありまして、御激励の趣旨に従いまして、できるだけの実現をはかって参りたいと思います。ただ、あまりそうその、山下先生から御期待をいただいても、なかなか御期待に沿いかねるかと思うのでございますが、せいぜい努力をいたしたいと思います。ただもう理論闘争の点は、お前はとかく理論闘争が好きでいけないから、なるべく理論闘争はせぬようにせいということを党からも忠告をされている筋でありますので、おとなしく御意見を承わるつもりでございます。ただ承わった御意見はできるだけそしゃくをいたしまして、実現をはかって参りたいと思います。この上ともどうかよろしく御支援をお願いいたします。
  23. 山下義信

    山下義信君 社会保障研究所をぜひ私はお願いしたいと思うのでございますが、大臣いかがでございましょうか、御所見を承わりたい。
  24. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 省の性格を変えよというお話は、もうその通りであります。私が今度就任をいたしましてからも、一番省内でも話しておりますのは、もともとが恩恵的社会政策から発足をいたしまして、そのための制度として発足をしましたので、いろいろな矛盾もございますし、やはり今後の発展をはかって参ります上においては、われわれがこの恩恵的社会政策から離れて、ほんとうにこの近代福祉国家運営していく必須の機構としての近代的なこの生活保障の制度というものをわれわれが担当しているんだという、まあ心がまえから変えて参らなければならぬと思っております。で、厚生省もなかなか有能な人物がおりますが、お話のように、今までのずっとしきたりの、行政の中で事務的に苦労するという面から少し解放をされて、能力を将来に大きく目を開いた企画にぜひ向けてもらいたいと考えている次第でありまして、そのための仕組みもいろいろ考える必要があろうかと思いますが、御意見のございました筋は、今日直ちに御返事を申し上げるわけにはいきませんけれども、十分に頭に入れまして、できるだけ御希望に沿うような方法で運営をいたしたいと考えます。
  25. 久保等

    委員長久保等君) この際お諮りいたします。委員外議員坂本昭君の発言許可の申し出がございます。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認め、発言を許可することに決定をいたしました。
  27. 坂本昭

    委員外議員(坂本昭君) ただいま山下委員から種々のお尋ねがありまして、私も新しい厚生大臣に多大の期待をかけ、ただいま理論闘争は御遠慮なさるということでございますけれども、これは、今日の与野党対立の立場におきましては、どんどん社会保障理論も相戦わしたい。戦わす義務が国民に対してあると考えております。しかし、まあ本日は、社会保障の理論、あるいは国民所得の再分配の意味におけるところの社会保障予算の配分、あるいは特に国の負担すべき責任額をどうとるか、あるいはまた、医療制度保険費の問題、特に結核の扱い、生活保護特にその基準の問題、これは、与党の貧乏追放の基礎になるものでありますが、こうしたことにつきましては、きょうは省きまして、さしあたって緊急な問題、特に選挙の場合に直接票にはならない小さい子供たちのことについて、緊急性並びに重要性についてのみお尋ね申し上げたいと思います。  ただいま大臣のごあいさつの中にも、児童の健全育成ということについては、るる述べておられましたが、今日の乳幼児対策というものは、その基礎は、文部省並びに厚生省でお考えになるべきであるにかかわらず、実は非常に等閑に付せられておるのであります。現況におきましては、わずかに文部省が幼稚園として一部扱い、さらにまた厚生省では、生活保護の対策としてのみ、この保育にかける児童を対象として、行政措置が行われておるにすげない実情でございます。ところが現実では、夫婦共かせぎという新しい時代の立場並びに生活のためから、もはや生活保護的であってはならない実情が生まれてきております。先般六月の十九日に、当社会労働委員会におきましては、四つの東京都下における保育所を視察いたしました。詳しいことはここでは申し上げませんが、その中でわれわれ感じましたことは、たとえば渋谷にあります都立の保育所でございますが、非常に一見環境のいい地域であります。大きな家の立ち並んでいるところであります。ところが、そこの八十人の子供たちの母の職業を見ますと、内職や雑役や、外交や家政婦や、日雇いやパート・タイムやあるいは病気、こうした人が五十人を占めておる。措置児が七十八人を占めておる。非常に見かけは環境のいい所であるにかかわらず、生活が非常に困窮をしておる人が多い。言いかえれば、今日の日本の社会というものは、すべてが生活保護の対象になると見ていいのであります。また新宿に、二葉という財団法人の保育所がありますが、九十五人のうち措置児が五十一名であります。しかも、三鷹市とか武蔵野市とか、非常に遠い所からお母さんたちが乳児などを連れてきて、預けて働きに出ていく。あるいは三鷹の市立保育園、これは非常にりっぱでありますけれども、三鷹市長のお話によりますと、非常にりっぱな保育園であるために、著名人がわざわざ移住してきて、子供を預かってもらっておる。保護の必要性もありますが、もはやさらに、それ以上の必要性が乳幼児対策には生まれてきておると思うのです。そこで新大臣は、乳幼児対策に対してどういうふうなお考えを持っておられるか。これは、社会保障の一環として、きわめて重要な問題であると思いますので、大臣の御所見をお聞かせいただきとうございます。
  28. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 実は私も、参りましたばかりで最近の厚生行政内容がどの程度まで進展しておりまするか、よくつかんでおらないのであります。私は、乳幼児対策の問題として一番大切でありますのは、一つは保育所の運営を幼稚園的なものにならないように、できるだけ乳幼児を手間がかかってもよけい預かってあげるという方向に指導いたしますることが一点、それからもう一つは、やはり母子衛生の面で、乳幼児が無事に育ちまするようにめんどうを見てあげるという、二つの面に重点を入れてやって参りたいと思うのであります。こういう面でも、まだまだいろいろな面で至らないところが多いんであろうと思いますが、これから先、所管の行政につきまして十分掘り下げて検討をいたして、乳幼児の対策についても、今までよりもできるだけ効率を上げて仕事のできるようにいたして参りたいと考えております。
  29. 坂本昭

    委員外議員(坂本昭君) 新大臣は、乳幼児の世話のためには、どんなに手間がかかっても、万難を排してこれをなし遂げて、母子衛生の確立のためにやっていきたいと、大へんりっぱな御見解であることを心から喜びます。ただ、どんなに手間がかかってもというところの解釈の重要な点がございます。それは、非常に手間のかかることなんであります。十人の乳児をかかえておれば、お母さんとしても一人二人でも大へんなのに、十人もかかえておれば、その保母さんの仕事というのは、非常に過重な労働であります。大臣は今そのように仰せられましたが、現実の保育所における保母の活動というものは、きわめて非人間的な労働過重の状態であります。しかも、それに対して厚生省事務当局考えているところの現在の行政措置は、さらに保母に労働を過重させ、のみならず賃金を引き下げよう、そういう計画が行われているのであります。ただいまの大臣の御見解によりますると、保育所の必要性というものは十分お考えになっておられると思いますので、一点お確かめしておきたいのは、今日児童局長も、保育を必要とする措置児で、まだ保育所に入っていない児童が二十五万人もおるということを申しておりましたが、今のような大臣の御見解ならば、保育所をさらに発展さすために予算的な措置を、また行政的な措置を十分におとりになる御所存と思いますが。その点いかがでございましょう。
  30. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 保育所を発展させるために、行政的にも予算的にも充実いたして参りたいと考えております。私も心がけまして、近年、一年に二、三カ所は保育所を見て歩いておりますが、むしろ公立の保育所よりも、私立で、非常に精神的な面でやっておられる保育所などで乳幼児を多く預かっておられるところなどを見受けるのでありますが、私は、やはりそういうところの保母さんの働きを見まするにつけましても、たださえ手間がとれるのに、おむつの洗たくなどをしたり、非常に骨の折れる仕事をしておられるわけであります。で、一つの精神的なささえといったようなもので御苦労を願っておるところは、保母さん方も苦労をしながらやっておられるのでありますが、あれをただ全部精神面のささえだけで御無理を願うというわけにいきませんので、もっとやはり制度的なもので乳幼児の預かりというようなものが進むようにするにはどうしたらよかろう。予算の面の制約もございますが、予算もせいぜい取りながら、やはり制度運営する上で、熱をもってやってもらうという方向にも予算の足らないところを補いながら努力をしてほしいと、実は考えておる次第であります。なお、母子衛生のほかの問題につきましても、同じような問題がございまして、おそらくはそれは、保育所なんかにつきましても、保母さんは保母さんで雇う、洗たく婦は洗たく婦で雇う。そして非常に楽な形で、十分な給与を出せばいいと思うんですが、そういう面を理想として考えておりますけれども、まずまず当面のところは、やはり待遇もある程度、たとえばこの間の国会で通しました期末勤勉手当を差し上げるというようなところをやりながら、既存の保育所の人たちの待遇も十分できないのに、施設をふやすということは、多少無理があるかもしれませんけれども、今日の現情を一つみんなが認識して、がまんし合いながら、当面のところの待遇はあれくらいのところで、新規に取れる予算では、保育所の設置個所をふやす方向に重点を置きたいと考えておる次第であります。
  31. 坂本昭

    委員外議員(坂本昭君) 大臣最初のお言葉は、なかなか保育所の現情を、特に保母の働きを認識しておられまして、なかなか厚生省の課長さん、局長さんよりも現情認識の上において非常にお高いと思って、感心しておったのですが、あとの方になりますというと、やはり給料はそのまま頭打ちにしておいて、そして今度は建物だけを建てるというふうに、何だか議論が変って参りまして、おそらく最初のお言葉だけならば、全国約三万近い保母さんが非常な感激をしたと思うんですが、あとの方を聞いておると、保母さんの方はチープ・レーバー、安い給料で働らかしておいて――建物だけどんどん建てていただくのもけっこうですけれども、やはり要は、ほんとうに子供たちがそこで保育せられるということでございまして、その点については、私はまた後ほどもう少しお尋ねいたしたいと思います。ただ、その保育所の必要性のある点だけは、大臣も御同感であるということだけは、私も非常に感謝申し上げる次第であります。  ところで、大臣は実は御承知ないのでありますが、前堀木大臣の御在任中に、この保育所の措置費の改善策というものが提出せられて、それが実施せられますというと、なかなかこの保育所の経営が困難になってくるという実態が生まれてきたのであります。こまかいことを一々申し上げるわけにもいきませんが、東京都下の、場合によれば大臣も御足労を願いたいと思いますが、ただいま申し上げた都立の渋谷の保育園あたりで、もし新しい措置案が実施せられますというと、八十名の保育園で、月で一万二千六百円の赤字になる、赤字になるのみならず、今度は保護者の側としては、保育料の徴収額が九〇%ふえました。ほとんど倍になる。つまり保育園としては赤字経営になる。母親としては、今までよりも大かた倍額も保育料を払わなければいかぬ。こういうことが生まれてきております。それからまた、先ほどおっしゃいましたが、非常に精神的に努力しておるというキリスト教の二葉保育園などでは、これも月に赤字が三万一千七百五十円になる。これは、現在九十五名の乳幼児が入っております。そして今度母親の負担は、ここではあまりふえておりません。四百四十五円程度でございます。これは、非常に貧乏な人が多いからですね。しかし、いずれにしても赤字がふえてくる。さらに三鷹の市立の保育園などでは、もうこれは、厚生省のそういう措置費などというものにたよっておらないんです。これは驚くべきことでございまして、現在三鷹の市立の保育園では、措置児一人当り平均負担額は、国の定めるところでは二千三十三円です。ところが、三鷹の市長さんはひどく奮発して、三千七百七十二円まで出しておるんです。しかも、まだこれで足りないと言っております。そして特にこの市長さんは言うんです。厚生省の定めるような給食内容ならば、言葉が過ぎるかもしらぬが子供は、餓死するかもしれぬ。こういうことではだめだから、われわれのところは、もっと上回ったものをやっておる。十分栄養学的に研究をやって、もっとも上回ったものをやっている。いずれにしても、このモデル的な三鷹の市立保育園など、非常な赤字で経営しておる。こういうような現実があるのでございます。これは東京都下の保育園で、特に私立の保育園でありますと、この傾向は強くなります。武蔵野の西窪という保育園を視察しましたが、七十名で、今度月二万四千円の赤字になる。そして親から徴収する金額は八割ふえる。これは東京都だけじゃありません。高知県は、これは非常に全国でも保育園の発達しておる所でありますが、三百五十の保育園のうち――厚生省では黒字になる施設、赤字になる施設を一類、二類と分けておりますが、一類施設が七十六、二類が二百七十四、つまりほとんどが今度赤字になるのです。その赤字を総計いたしますと、年間四千十二万四千九百四十円、四千万円という膨大な金額が赤字になるのであります。これについては、もちろん経過措置を講じておるから大丈夫だということを厚生省は言っておりますが、この経過措置が一体いつまで行われるか。来年の三月の終りで打ち切るというような意見もあるのです。そうすると、さしあたって経営ができなくなる。特にこれは、政府としても、ことしは失業者がふえるということを皆さんお考えになっておられる。私も数日前高知へ参りまして、高知市内の失業対策の労務者で、保育所に預けておる保護者の負担を急いで調べてみました。これは高知市内ですが、八施設九十八名を調べてみますと、現在の保育料だと、九十八名で合計一万一千三百五十円です。今度の新しい保育料になりますと、二万九千九百九十円、大かた三倍近くなってくるのです。こういうことでは、とうてい保護者の特に失対労務者としては、もう保育隅に子供をやることができないという現実が生まれてきたのであります。私は、大臣は新しい理想と希望を持って社会保障、児童対策を推進しようとしておられるけれども、この大臣の最も信頼しておる、かつ有能だと言われるところの厚生省事務当局におきましては、こういうきわめて不合理な事務当局原案を作っておられる。このことについて大臣の所見を承りとうございます。
  32. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 先に保母さんの手当のお話を申し上げておきます。私も、今のままで大へんけっこうだと思っておりません。実際ほんとうに、赤ん坊の世話というのは大へんな仕事でありまして、夜なんかでも、お母さんが取りにくるまでは、八時、九時までも保母さんがいるような状態であります。できるだけ考えて差し上げたいと思っております。ただ、先ほど少し正直に申し上げ過ぎましたのは、私、実は来年度予算のことを考えておりますので、どうもことしの予算で期末勤勉手当をふやしましたものですから、保母さんの待遇改善は、私は来年も問題にはしてみたいと思っていますけれども、どうも毎年続いては、ちょっとあまり自信がないと実は考えておる次第で、できるだけ骨は折って差し上げたいと思っております。それから、ことに何かやはり乳幼児を預っておる上での特別な手間についてのお骨折りの手当といったようなものは、これは一般のベース・アップというのはなかなか大へんですけれども考えて差し上げることができないかと思っておるのであります。  なお、措置費の問題につきましては、これも引き継ぎ事項として承知いたしております。私が申し上げるよりも、皆さん方がよく御承知だと思いますが、従来の保育所の運営に関しまして、保育料の取り方だとか、補助の仕方あたりを見ましても、非常に一貫しない、むらがあったことは事実でありまして、いつかそれをもう少しはっきりした形に立て直そうというので、ことし手を打って、いろいろな問題を起しておるわけであります。実際問題として、どんな理由がありましょうとも、現在までの状態に対して、非常に悪くなるというところがお困りなことは確かなわけでありまして、与えられた予算の範囲内で、経過措置についてはできるだけ十分承わって、できるだけの手を尽すように、当局にも係にも申しておるわけでございます。この上とも御意見のありまするところを具体的に承わりまして、予算のある限り措置をして参りたいと思います。今後の、つまり来年度以降の問題につきましては、これは少し研究をさしていただきたいと思います。いろいろな御幸情のあることを十分に頭に入れて、なお考えてみたいと思います。
  33. 坂本昭

    委員外議員(坂本昭君) できるだけ努力されるという、そのできるだけが一番の問題だと思うのでございますが、新大臣は非常な抱負を持っておられますので、ここではこまかいことまで追及はいたしませんが、ただ、現在の改善案が実施されると、経営者として非常な赤字の経営になる。しかも、事務当局では経営の一切を、事務費、事業費まとめて経営者に一任してあるので、経営者がしかるべくやってもらえば、その手腕によって運営ができる、言いかえれば、非常にこの責任を経営者におっかぶせている実情がございます。その結果どういうことになるかと申しますと、経営者である園長なり所長と、保育所の一番主体をなすところの保母さんとの間に、大きな賃金上のあるいは経営上の対立が生まれてくる。私は、こういうことははなはだ望ましくないことである、そう思っております。で、こうしたことは、十分来年度についても予算折衝に当って検討したいと言われますが、来年度のこの検討については、さしあたって現実をつかむということが最も大切であります。で、今度の措置費改善案が、来年度予算をたくさん獲得する上においてプラスであるならば、私たちも一応それは、現在の経営の困難さは忍んでも、来年十分予算が取れるならば、これは事務当局におまかせしてもいいのですが、先般、六月九日の社会労働委員会において、児童局長にお尋ねした際の返答によりますと、何らそこに、来年の予算獲得に十分な確信のある根拠というものは少しも示されなかったのであります。私は、そういう点において、大臣が、この保育所の問題の処理に当っては、十分慎重にせられていただきたい。しからずんば、皆さん方が公約せられた社会保障の問題の処理に当っても、その公約を誤まることになるのではないか。特にこの保育所の問題は、超党派的に、第二の国民たるところの乳幼児をどうするかというきわめて重大な問題でございます。従ってその点、私は大臣に慎重なる御配慮をわずらわしたいことを特にお願い申し上げておきますが、さらに、ただいまお言葉のありました、来年度予算折衝のことについて、私は若干御意見を申し上げたいのであります。実は、この保育所の問題につきましては、二十八国会の特に参議院社会労働委員会並びに予算委員会において、きわめて長時間を費し、さらに公聴会を開いて、われわれとしては、何とかして厚生省予算を十分取りたい。昭和三十三年度予算折衝のときには、最初この一月に一挙に六億五千万円も削られた。そのために、保母さんが大挙集団陳情するというような事態もあって、ようやくもとに復活いたしました。そのために、われわれは厚生省事務当局を難詰するためじゃなくて、厚生予算獲得に、保育予算を獲得するために、予算委員会並びに社会労働委員会においてこの事務当局を督促して、そうしてこの国会審議を通じて、正しい保育予算を獲得するために努力をしてきたのであります。ところが厚生省事務当局は、その間われわれの国会における審議をとかく無視する傾向がございます。で、去る六月九日の日に、当社会労働委員会において、再び三たび児童局長に、厚生省の措置興改善案はきわめて不適当な点があるから、いろいろと考慮しなさい、そういう質問をし、要求をし、そして激励をしたのであります。ところが、あにはからんや、六月七日の目には、すでに次官通牒をもって、この改善の案を、案としてではなくて、各都道府県に通牒として出しておきながら、六月九日の委員会においては、児童局長は何らの断りもしていない、こういうことは、厚生省事務当局の人たちは、国会審議をまことにないがしろにすると言わざるを得ないのであります。私は、新大臣は決してそういう非民主的な人ではなくて、このおくれた厚生行政を完成するためには、与野党一致して、大臣も省内も、さらに国会も一緒になって予算折衝に当る、そういうお考えをお持ちになっていることを確信します。しかし従来の少くともこの保育予算審議について、保育問題の審議については、事務当局、あなたの最も有能だとし、信頼されるところの方々のとられた態度は、きわめてわれわれとして不満足の意を表せざるを得ない。私はそのことを大臣に一言申し上げて、大臣の御所見、お考えを承わりたいと存じます。
  34. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 御意見のあるところは十分拝聴いたしました。事務当局といたしましても、私の知ります限り、予算の獲得については、児童局長なかなか欲ばりでありまして、私が党におりましたときにも、始終予算の獲得には、いろいろな点でむしろ強い要望を受けておったのであります。ただ成立予算の処理につきましては、いろいろな立場があるかと思いますが、ただいまお話のございましたような点は十分心に含めまして、つとめて皆さん方に御相談も申し上げ、また御支援も受けて参りたいと考えております。何か私、従来のことは存じませんけれども、ただいま御要望の趣旨にはできるだけ将来沿うように心がけて参りますから、よろしくお願いいたします。
  35. 坂本昭

    委員外議員(坂本昭君) もうあまり長く質問いたしませんが、次官通牒を出したのが六月七日ということは、ちょうどその書類が着いたのは六月十日ごろになるのです、各都道府県に。これについての責任はどうなるのか。児童局長は、大臣局長の責任だと言いますが、前大臣の責任というような格好で六月七日に出して、私は、出すならば新大臣が十分納得して、ちょうど医療点数の告示問題と同じように、新しい大臣が納得して、そうしてまた、責任をもってやられるという立場をとるべきだと思うけれども、これは、事務当局が政党に所属するところの大臣を無視するもはなはだしいと思う。そうして同時に、国会審議を無視するもはなはだしいと思う。私は、こういう態度を厚生省事務当局がとられるということは、まことに厚生行政の将来を考えまして、はなはだ残念だと思うのであります。これは、何も児童福祉の問題だけではございません。先ほど山下委員の指摘せられた通りに、いろいろな保健行政についても、ともすれば厚生省大臣はいつも浮き上っている。浮び上っている。こういうことでは、十分に予算を獲得するというようなことはとうていできない。しかも省内では、行政担当のそれぞれの人たちのセクショナリズムが非常に強い。そうしてまた、国会との非協力性も非常に強い。悪く言えば、国会を無視しているとも私は言わざるを得ないのであります。ただいま大臣は、十分検討し、慎重にこの保育所の問題をお扱いになるということをおっしゃいましたので、私はそのことを固く信じまして、今後の行政の措置の上におきましても、たとえば保育所の問題につきましては、経過措置の期間をいつまでにするか、もう来年三月でやめてしまうのか、もっとさらに延ばすのか、さらに、非常にむずかしい言葉になりますが、A、B、C、Dという保育料の徴収の区分をつけておりますが、このC階層というのは、実は厚生省では、四百五十円としておりますが、これは少し高いですよ。これはもう少し、大体三百円ぐらいに落さなければ払えないと思います。こういう現実に即した、事務的な行政措置を考慮していただきたい。また、今度きめました保育単価の内容については、厚生省は明らかにいたしておりません。どういう理論的の基礎があって保育単価が得られたか。ことに営繕費というものはほとんど考慮されていない。だから、私立の保育園なんかは、行って見ると、ぼろぼろの建物なんであります。そうして何か日よけができているのを見ると、これはみんなお母さん方の勤労奉仕によってできたものである。まことに、何と申しますか、国が責任を持つべきにかかわらず、国民の一人々々が奉仕をして保育園というものをささえている。あるいは給食費の内容につきましても、三鷹の市長が指摘しておったように、その理論的な基礎というものが明らかにされていない。あるいは措置費につきましても、地域差の設定がされておりますが、その根拠がはっきりしない幾多の問題もあるのであります。私たちは、国会で十分なる審議を尽して、そうしてりっぱなものを作って、それによって予算を十分超党派的に獲得したい、そういうことを心から念願しているものであります。従いまして、この保育所の問題につきましては、次官通牒をもって、七月一日から強行実施ということになっておりますけれども大臣におかれましては、十分慎重に再検討の上、経過措置の扱い、さらに第二類施設におけるところの赤字をどの程度負担してやるか、聞くところによりますと、都道府県では、三割、四割負担してもらえるかと思っておったら、比較的よく負担してもらえたので、安心して帰ったと申しておりますが、しかし、これは都道府県のことであって、実際に赤字に悩むものは市町村あるいは市町村立あるいは私立の小さい保育所の問題であります。そういうところでは、大臣は、新しく保育所を作られるとおっしゃっていますけれども、保育所に行く子供の数がだんだん減って、もう作る必要がなくなるかもしれない。皮肉な言葉で申しますと、こういうような措置をとられたのでは、大臣考えられる乳幼児の保護対策とは逆の方向になります。今、厚生省事務当局では、そういう非常な無理なことをしているということを十分念頭に置かれまして、この問題の処理に当っては、事務当局に全部をまかしきらないで、大臣として十分責任をもって処理し、検討するという一言をいただきとうございます。
  36. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 私不敏でございますが、十分責任をもって検討いたしたいと存じます。
  37. 坂本昭

    委員外議員(坂本昭君) ありがとう存じました。
  38. 紅露みつ

    紅露みつ君 大臣から、今の問題については、責任をもって検討して下さるという御答弁でございますので、もう申し上げなくてもよろしいかと存じますが、御就任早々医療費等の差し迫った問題が先に出てしまっておりますので、私どもも御遠慮申し上げて、お話し申し上げる機会もなかったのでございますが、この保育所の問題、かねがね大臣には、御就任前から御心配いただいておるのでございますが、最近におきまして、今お話にありましたように、保育料等だいぶ簡素化して参ったのは、それはけっこうでございますけれども、やはりそれだけでは赤字が出るという状態でございまして、従って、保母さんの待遇でございますが、昨年期末手当が少額ながらつきましたので、今年と申しましょうか、来年直ちにその待遇改善についてはというお話で、私どもそうは存じますけれども、どうも保育料が足りませんということが勢い保母さんにしわ寄せがいくことでございますので、直接保母さんの待遇がどうなりませんでも、保育料の方が豊かになりまして、経営が楽になりますれば、これは保母さんの方は息がつけるわけでございます。どうか、御就任早々大へんいろんな問題があって、御苦労の多いことでございましょうが、保育の問題につきましては、一つ格別にお心をとめられて御検討いただきますように、私からもお願いを申し上げたいと存じます。
  39. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) ただいまのお話を承わりまして、善処いたしたいと思います。ただ、今年度予算成立をいたしておりまして、予算のワクの中でいろいろ苦心をしている点があると思います。先ほど坂本さんのお話にも申し上げました通り、私なおよく検討いたしたいと思います。
  40. 山下義信

    山下義信君 関連ですが、あとで片岡委員が質疑されますが、私はさっきくどいように申し上げた。物事をするには、理論の裏づけを持って下さいよということをお願いしたのは、これは、保育所のことは、ほかの諸君が言われますから、私は別の機会にしますが、たとえばC層ですね。C層四百五十円、四百五十円という金額はいかなる理論的根拠があるか。バランスで計算して四百五十円という、こうきめたのでは意味がない。どうぞ一つ厚生省は、三百円というのを出したら、三百円のちゃんと論拠を持ってもらいたい。この四百五十円を見たときに、C層ですよ。児童手当が四百円、そうでしょう。もろもろのわが国の諸制度における児童手当は四百円、しかるにその児童手当を当てにしなければならぬような階層の保育料は四百五十円、児童手当より五十円高く徴収する理論的根拠いかん。そういう理論をちゃんと持って下さい。そうせなければ、この委員会で幾らやりとりしておっても夜が明けない。私はお願いしておく。今後機会をあらためて承わりますが、ただ、今度の改善案でも、経理的な改善というのでは意味をなさない。この改善案には、ずっと保育所のあり方というものについて、みなちゃんと論拠が、保育所が改善されていく理論的根拠がつけてあらねばならぬ。そうして論争するようでなけらねばならぬ。ただ観念論だけで顔を赤らめ合うのでは意味をなさない。だから、C層に四百五十円の保育料、四百五十円という金は、いかなる理論的根拠があるか。計算の上から出たというのでは意味をなさない、児童手当四百円、児当手当を当てにしなければならぬC層に、いかなる理由で四百五十円にしたか。こういうことは一例でございますが、次まで考えていただきたい。私は、そういう理論的根拠を要求する。それならば納得する。これが五百円でも七百円でも納得する。ちゃんと金額の持つ意味に堂々たる理論があれば。そこまで私は関連質問ですから希望しておきます。どうか理論を持って下さい。
  41. 片岡文重

    ○片岡文重君 大臣に二、三お尋ねしたいのですが、今児童の問題が出ておりますから、私も関連をしてお尋ね申し上げますが、先刻来山下委員からるる主張されておられますように、私ども、この委員会においては、厚生行政の一貫した体系づけを行うべきであるということは、強く主張して参ったところです。これは、おそらくこの厚生行政に関心を持つ者は、与野党を問わず、ひとしくその希望を強く持っておると思うのですが、残念ながら厚生行政あとを振り返ってみると、この理論づけが行われておらない。むしろ事務当局としても、好んでこういう、ジグザグ・コースと言いますか、ずたずたに切られたやり方ではなくて、一貫した計画に基いて、一貫した具体化を進めていきたいという希望でありましょうけれども、残念ながら要求する予算が要求する通り手に入らないところにももちろん原因はあろうかと思うのですが、理由いいかんはともかくとして、現実には体系づけられておらない。しかも、ジクザグ・コースをとる、あるいはずたずたにされておっても、それが前進への道をたどっておるならば、まだまだということが言えると思う。せっかく緒についたものが途中で中断をされる、こういうやり方は、停止するということは、この進歩している時代から見れば、後退をすることに私はなろうかと思う。そういうことのないように、できる限り一つ大臣は、今後の厚生行政に一貫した体系づけを極力具体化されるように御努力いただきたいと思うのですが、その具体的な問題として、お願いをする問題はたくさんございます。しかし、きょうは時間の関係等もありますから、また、大かたの筋としては、山下委員から述べられておりますので、さしあたってここに二、三お尋ねをしておきたい。  その一つは子供の問題ですが、売春禁止法が実施せられて、今路頭にほうり出されておる赤線、青線地帯から解放された婦人の知能指数を見ると、そのうちの三〇何%、実に四〇%近いものが精薄に属する。こういうおそるべき結果が出ております。また、いろいろ家庭内の問題を起し、社会不安を起しておる子供たち、また、おとなになってからを見ると、精神薄弱がその素因をなしておる。こういうことも例が少いわけではありません。たくさんの例があります。しかし、これらの精薄者も、その幼少年時代において適切な保護と指導が加えられるならば、必ずしもそういう結果にならなくても済むのではなかろうか。むしろりっぱな社会人として社会生活を行なっていくことができるのではないかと私は思うわけです。当委員会においても、しばしばこの精薄児に対する保護と指導については、児童局長並びにその当時の厚生大臣に対して極力御努力を要請して参ったところです。もちろん厚生省においても努力をされたとは思いますが、私どもから見れば、どうも歩みが遅々たるを免れないように考えられる。特に、これは私の調査したところですから、あるいは児童局長としては異論があるかもしれませんけれども、現在の精神薄弱児の厚生省所管として扱うべき児童数は、およそ七万八千人をこえておる。おそらく八万人前後になるのではなかろうか。そのうちに、施設に入所させる必要のある児童推定数が三万四千七百人を大体推定されております。しかし、厚生省で三十二年度予算としてお作りになられたこの収容施設というものは、はなはだ微弱です。僅少です。特に困るのは、重精薄の問題であろうと思う。この重精薄児についても、三十二年度予算では、百人収容の施設を東京に一カ所設けられました。ついせんだって開所式が行われたわけです。数万を数える精薄児の中で、わずか百人の収容施設を一カ所辛うじて設けられた。しかも、これでもう当分あとは設ける意思がない。意思がないと言っては語弊があるでしょうけれども、設けることはできない状態になっておる。しかし、児童局長を初めとして所管の各位は、おそらくこれを続けてやりたいと念願されておるでしょう。しかし、予算等の関係でできておらない。できておらないばかりでなしに、これを作っていこうとしてできないということであるならば、努力は続けられるでしょうから、われわれとしては、まだ幾分明るい見通しは立てられますけれども、もう作らないのだ、当分作らないのだという気持の上に立って努力がされないのであるならば、これは、これらの重精薄児は、いつになってあたたかい施設に迎えられるのかわかりません。こういうことは、私たちとしては見るに忍びない。何とかしてこの収容施設をもっとたくさん作ってもらいたいと思うのです。神田厚生大臣のときには、国立の重精薄収容の施設は、今回作られた百人収容の施設をモデル・ケースとして、なお今後総合的な研究を重ねて、具体的に計画を立てて実施をする意向である。少くともそういう努力をする、言われた言葉のそのままを記憶はいたしておりませんが、とにかく継続して具体的な努力を続けるという意味の約束をされておるわけです。ところが、それが一年で打ち切られて、その後は進んでおらないのです。この際一つ大臣は当然前大臣からの引き継ぎを受けておられるとは存じますが、この際、進んでおらない具体的な計画を促進されて、こういう声を出そうにも出し得ない不幸な人々の声なき声を十分聞いてやっていただくような努力一つしてほしいと思うのです。これは、なかなか予算が取りにくいようです、問題が問題ですから。けれども、社会に与える影響をお考え下さるならば、どうしてもこれは、厚生省として十分力を入れてやっていただきたいと思います。これに対する御所見を一つ伺っておきたい。
  42. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 私も、平素からいささかそうした団体関係を持って仕事の促進をはかって参ったわけです。いまだほんとうにお説の通り不十分でありまして、精薄児を持っておる親御さんたちも、ほんとうに涙の出るような努力をしておられるわけです。いろいろな問題がございまして、問題が山積しておりまして、この点に十分な設備のできておりませんのははなはだ遺憾でありますが、今後ともできるだけ増加に努力をいたして参りたいと思います。
  43. 片岡文重

    ○片岡文重君 いま一点お尋ねしたいのですが、それは、船員保険法の改正に関する問題であります。これは、二十六国会の終りに、当委員会から、健康保険法、船員保険法の改正に当って付帯決議が出されました。その付帯決議には、健康保険の被保険者の標準報酬額を引き上げた反面、船員保険者の被保険の標準報酬を最高三万六千円に据え置き、しかも被保険者の一部負担制度をなすことは、船員保険の療養給付の趣旨から見て矛盾が惑ぜられるから、船員保険法については、早急に根本的な改正について検討を加える必要がある。こういう付帯決議が付けられておるのです。この内容は、今申しました通りに、標準報酬の引き上げと一部負担の撤廃であります。この船員保険法の改正については、神田大臣にも堀木前大臣にも、私どもから強く要望申し上げておるところであり、この改正をしなければならないということについては、厚生省並びに関係の運輸省の当局においても認めておるところだと思うのです。ことに船員保険法の改正は本年、あるいは来年でありましたか、改正をしなければならない時期にもう来ておるわけです。今日なおかつそれを急いで実は検討し、具体化してほしいと要望申し上げるゆえんのものは、船員というものの報酬は、御承知のように、陸上勤務者から見ればはるかに高額です。しかも、その陸上勤務のものが五万数千円に最高報酬標準を引き上げられておるにもかかわらず、船員の場合は三万六千円に据え置かれておる。この矛盾をやはり一日も早く解消してやらなければ、高級船員等この療養者は、非常な矛盾と言いましょうか、不合理な状態に置かれておるということです。それから一部負担の場合は、これはもう申し上げるまでもなく、初診料を取ることからして非常な不合理が生まれております。陸上勤務の場合には、初診料というものは大体一回で済みます、お医者さんさえかえなければ。ところが船員の場合は、ことに近海航路、沿岸航路の場合の船員のごときは、自分が医者をかえようとする意思がなくとも、乗っておる船が港々に長くおらなければ、そうして病気がなおらなければ、その船とともに動くのですから、初診料を五回も六回も取られる不都合が起きておる。しかも、これを船主が負担すべきであるという規則になっておるにもかかわらず、病気で医者にかかっておきながら、その負担を船主にさせるとは何事だということで、なかなか理解ある船主の負担を受けるわけには参りません。この泣き寝入りになっておる件数も相当多く上っておるわけです。私どもは、それに対して調査も若干いたしてあります。必要とあれば、資料をお示ししてもけっこうでありますが、とにかくこの私どもの調べた結果によりますと、一日も早くこの不合理は是正をしてやらなければならぬものではないかと考えるわけです。そこで、この船員保険の問題は、ひとり船員保険法ばかりでなしに、全社会保険の問題として、これまた体系づけて、総合的に研究をしていただいて、それの一環として、この筋を通した一つの部門としての対策が講ぜられることが好ましいと思いますが、しかし、そういう解決というものはすぐにはできますまい。おそらくここ半年、一年たっても、これがなるほど筋の通った、しかも総合的にバランスのとれた解決だということには私はならぬと思うのです、残念ながら。さしあたってこの矛盾と言いましょうか、不合理を除去する措置だけは、できるだけ早く私は講じていただきたいと思う。おそらくこれは、引き継ぎをお受けになっておられると思うけれども、でき得るなら、私はこの特別国会にも御提出していただきたいと思うのですが、もしそれができないとしても、少くとも臨時国会あたりには提出できるように、格段の御努力お願いいたしておきたいと思うのです。できれば所見を伺っておきたいと思います。
  44. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 私、実は就任いたしましたばかりで、十分その辺の検討をいたしておりませんので、御趣旨のところを検討いたしまして、善処いたしたいと思います。  なお、もし必要ありましたら、事務当局の方から何かお答えをさせようかと思いますが、よろしゅうございますか。
  45. 片岡文重

    ○片岡文重君 もし保険局の方で具体案がおありになるならば、この際伺っておきたいと思います。
  46. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 船員保険の標準報酬の最高の問題を一つ御指摘でございます。この問題は、昨年の、前々回でございましたか、法改正のときにもいろいろ御論議がございましたところでありますが、片岡先生よく御存じのように、長期保険と疾病保険とを一緒にやっております総合保険でございます。従って、その標準報酬は両方にかぶさって参るものでございますから、それで、健康保険の方の標準報酬を改正いたしましたにもかかわらず、最高は、厚生年金保険の一万八千円というものとにらみ合せまして、船員保険におきましては、三万六千円で据え置いたわけでございます。それで、これを検討をいたして具体案がすでにできておるかという仰せでございますが、実はそこまで参っておりません。と申しまするのは、御存じのように、厚生年金保険も、今回次の通常国会にはその改正を御審議お願いいたさなきやならぬ時期になっております。これと同時に、船員保険の長期部門におきましても、これは厚生年金保険と同じように、御検討をいただくべき時期に際会いたしております。さようなわけで、その際にいずれ、これはまだ結論は出ておりませんけれども厚生年金保険の標準報酬の最高というようなものも、船員保険とあわせてこれは論議、検討の対象になるべきテーマの重要な一つであろう、かように考えておりまするので、その全体の改正構想の一環としてこの問題を検討して参りたい。従いまして、特別国会なり、あるいは臨時国会なりというときまでには、とうてい私どもの方といたしましては間に合わないという見通しをいたしております。  それから第二点は、船員保険法の疾病部門におきまする一部負担の点であろうかと思います。この点につきましては、これも、法改正のときにいろいろ御論議がございましたように、ちょっと、船員法その他の関係で、一般の健康保険の場合とは違うわけでございます。しかしまた、違いはいたしまするけれども、現在の船員保険が大型船と漁船と一緒になってこの疾病保険を運用しておりまする関係上、いろいろそこらに不満な点も内部に包蔵をしておるわけでございます。それらの点に対して一つの、解決とまではいきませんけれども、その不満をやや合理的に取扱うというようなことにも若干寄与するようなことにもなっておるわけでございます。しかし、これはいろいろ問題があるわけでございまするので、十分実施の結果を検討いたしまして、もしこれが不都合であるということであれば改正をいたさなきゃならぬ、検討をいたさなきゃならぬという付帯決議もちょうだいしておりまするので、ただ、御存じのように、昨年の年度中途からこの制度はまだ実施運用に移されたばかりでございます。その実績をもう少し私どもといたしましては見さしていただきまして、その上で一つ検討をいたしたい。なおそれらに関連をして、関係の役所側に不十分な、努力の足りない点等があって、そうしてこの制度がうまくいかないというようなことであれば、その努力を十分に重ねていくような努力もいたしまして、その上で一つこの制度の是非というものを検討いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  47. 片岡文重

    ○片岡文重君 一部負担の問題は、十分な調査もなされないで、いまだ実施されてから間がないからと、こういうことでは、これはいつまでたっても、現在あの――特に問題は下級船員です――下級船員の諸君が受けておるところの不合理というもの、気の毒な状態は是正されません。で、この点については、すでに局長も十分私は御承知になっておられると思う。二十八国会の、前国会の終りにも、この問題については御質疑を申し上げ、局長からも今御答弁になったと同じような内容の御答弁をいただいておりますけれども、その結論としては、やはり幾多の矛盾を含んでおることは、お認めになっておられると思うのです。特にこの一部負担の問題が下級船員を苦しめておる実情、そのときには、たしか私は数字を示しお話を申し上げたと思うのです。で、むしろ逆に、厚生省や運輸省にそういう資料が、まだ発足間がないからということで、整っておらなかったように思う。こういう不親切な態度では、いつまでべんべんとお待ちしても、これの改正というものを望むことは私はできないと思います。ですから、こういうことのないように、また標準報酬の問題についても、それは総合保険であるからということであるようですけれども、総合保険であるならばあるように、下級船員あるいはその高級者が、それぞれの立場に応じて救済のできるような方法を私はもっと積極的に考えるべきだと思うのです。研究すべきだと思うのです。そういう研究が果してなされておるのかどうかということになると、これは、今も率直に、まだそのところまで行っておらないとおっしゃる。しかしこの改正は、二十六国会の終りに、健康保険法が改正されたときに、この問題はすでに提起されておるのですから、その前から提起されておるのを、そのときにこの問題だけ据え置きになったから、一そう強くこのことは浮かび上ってきたわけです。で、もうすでに一年半たっているわけです。当然、これに対する誠意がおありになるならば、何らかの具体的な検討の結果というものが私は示されてしかるべきじゃないか。しかし、その結果というものは、示される段階にはなっておらないとおっしゃる。これではいつまでたっても……しかも、局長がこれを担当しておられれば、思いを新たにしてという機会というものはなかなかおありにならぬのではないか。たまたま大臣が更迭をされた機会に、この所管の業務全般にわたって御検討下さる絶好の機会であるから、ぜひ大臣としても、関心を持って御検討いただきたい、こういう趣旨お願いを申し上げたい。従って局長にも、その点を十分おくみ取りいただいて、この実際に適用を受ける船員諸君の立場に立って、御検討一つわずらわしたいと思うのです。
  48. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 御趣旨をくんで検討いたします。
  49. 木下友敬

    ○木下友敬君 大臣に、医療の問題で少しお尋ねをしたいのです。大体は山下議員ので了解した点がございますが、なるだけ重複しないように御答弁をお願いしたい。と申しますのは、簡単に申し上げますが、おかげさまで、三十五年度では国民保険という線もほぼできるだろうと思われる。完全でなくても、ほぼそれに近づいていくと思いますが、そうすれば、わが国の医療問題も大きな成果を上げるということになるのです。ということは、一方では、医療問題が非常に社会化されたということになると思うのです。医療問題が社会化されたということと、医療に対する国家管理が非常に強くなってくるということは、これは非常に似たような状態でございますが、今、厚生大臣は新しく御就任になりましたが、普通の人が厚生大臣に初めてなったのと違って、特別にその方のベテランであります厚生大臣でございますから、もう御就任になる早々、このことについては十分お考えがまとまっておることと思うのですが、医療が社会化されてくれば、国家管理が非常にきびしくなってくる、医療機関は国家の統制下に置かれるという度合いが非常に今までより強くなってくるということは、これは当然のことだろうと思うのです。そうした場合に大臣は、これを医療国営まで進める気があるのか、あるいは今まで通りに、国営的なものと、あるいは私的医療機関というようなものの二本立でやはり進めていくというような考えでいかれるか、このことをあらかじめお尋ねしておきたい。
  50. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 私、今日まだいろいろな点を検討しなくちゃならぬと思っておりますが、医療国営というところへ持っていくつもりはございません。やはり私的な医療とうまくかみ合せて、国民保険のシステムがうまくいくようにやって参りたいと思うのであります。私も十分研究しておりませんが、イギリスあたりでも、やはりその点が最初のスタートのときから大きな問題であったそうでありまして、今日私の考えておりまするのは、大体ただいまお話のありました後者の方の行き方で、いろいろな問題をどうしてうまく軌道に乗せていくかということを考えておるわけでございます。
  51. 木下友敬

    ○木下友敬君 今のは、こういうふうにお答えいただいたと思っていいのじゃないかと思いますが、私的医療機関も認めていくのだとおっしゃったように思うのですが、ただ心配なのは、皆保険というような状態になりまして、御承知通り医療費の問題でも非常に今やかましい状態にある。というのは、今のような医療費では、りっぱな治療はできないのだ、また医療機関整備もできない、私的医療機関も、公的医療機関も、だんだん荒廃に陥っていくだろうというような状況のもとでは、公的医療機関は、どこからか助けを求めることはできるけれども、私的医療機関というものは、だれも助けてくれない。で、このままにほうっておけば、政府としては、私的医療機関も認めるのだとおっしゃっても、そのままにしておけば、だんだん自滅していくおそれがありはしないか。確かにあると思うわけですが、自滅させてはせっかく二本立で行こうという考えも成り立たないわけであるから、自滅しないように、私的医療機関も育成していくというようなことについても、大臣は何かお考えを持っておられるのではないか、こういうふうに思うのですが、この点についての御所見をあらかじめ伺っておきたいと思います。
  52. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 医療も一本立でなくて健康保険国民健康保険、共済等、いろいろございますが、やはりこれは、医療機関が自滅するというようなことがあってはなりませんので、私は、医療費のあり方と、それからもう一つは、たとえば国民健康保険について、医療費の二割五分に相当する金額を国庫補助しているといったふうな形で、要するに医療費のあり方、それから国民保険各種のシステムについての国庫補助のあり方といったような面を通じまして、やはり医療担当機関がそれぞれ成り立っていくような形を考えて参らなければならないし、私は、将来も全部国営でめんどうをみなければ、これはどうにもならぬよう状態になるとは考えておらないのであります。
  53. 木下友敬

    ○木下友敬君 大体わかりましたが、どうでしょうか。現在までの状態のような医療費のあり方では、私的医療機関というものは漸次さびれていくのではないか。少くも医学の進歩に沿う設備をするというようなことは可能でないのじゃないか。あるいは、もっと適切に言えば、現状維持か、あるいはだんだんその現状が世の中におくれていくというような状態に取り残されはしないかということを私おそれるのですが、この点に関して医療費との関係について、大臣の御見解はどうでございますか。
  54. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 実は私は、今月は、現実に今問題になっております点数単価の改正案の告示問題をしょっておりますので、私の申し上げまする意見が、今月中のこの数日間にさばかなければならない問題のその処理方針だと考えられることを、私は今日は非常におそれておるのであります。私自身は、昨年以来根本的のことをいろいろ考えて参りましたし、当面の問題を処理する上においても、国民保険を今後進めていく上においてどうしたらいいかというようなこととか、まあいろんな問題があるわけであります。実は、つい今月中の間にも、大学の付属病院長の会議がありまして、この社会保険の治療指針の範囲内の医療薬をとったのじゃ、大学の付属研究機関であるところの大学付属病院の意義がない。それで実際、医療はほとんど社会保険診療になっているんだが、どういうふうな形をとるかといったようなことを、これも御相談を受けておるような状態であります。まあいろんな面で問題があると思います。で、結局、社会保険の診療の内容としては、できるだけ国民の負担の少い形で、しかも日進月歩の医学を十分に取り入れた形の最高の治療のできるように工夫するというのが理想でありまして、その間にいろんな問題があることを私も承知をいたしております。もともとが、現在の健康保険にいたしましても、国民健康保険にいたしましても、これで医療保障を行おうという考え発足をしたのでなしに、ずっと昔に、自由診療が主体であったころに、むしろ一種の社会政策として、医者に実費で診療を願うくらいの心意気で発足をしたということでありますから、大きくなってからでも、いろんな問題を含んでおると思います。で、ぜひどこかでこれは、飛躍はできませんけれども、何らかの考慮を払ってやらなければならない問題であると思います。六月三十日までには当面の問題を片づけるつもりでありますので、どうか一つ、七月一日以後において、根本的な問題については十分御意見も承わり、私たちも骨を折って参りたいと思う次第でありますので、当面のところとしては、問題を預からしていただきたいと思います。
  55. 木下友敬

    ○木下友敬君 私、質問するときそのことも考慮に入れて、今ちょうど関係団体ともお話し中でございますから、その妨げになるようなことがあっては、せっかく今日まで来たことがむだになるからと思って、妨げにならないような質問をしておるつもりでございます。たとえば、今お尋ねしました私的の医療機関がだんだん取り残されていくような状態にありはせぬかと思うが、これに対して大臣は、このためにも何か骨を折っていくという御意思があるかどうかというような意味の質問でしたが、それはもう、自然にまかせるのだというようなことでは因るので……。
  56. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) いや、そうではございません。私は、私的な医療機関が十分に機能を発揮していただけますように、まあ医療費のあり方等についても、それを頭に入れていきたいと考えております。
  57. 木下友敬

    ○木下友敬君 わかりました。それから、これも十分大臣もお考えになっておることと思うのですが、現在の医療機関体系と申しますか、非常に複雑でございます。たとえば病院の種類にしましても、厚生年金病院があるとか、鉄道病院があるとか、逓信病院があるとか、共済組合病院があるとか、そうかと思うと、県立病院だとか、国立病院だとか、多種多様でございまして、どうかすれば、厚生省自体はそれらのものに十分目を配ることができないような状態にある。はっきり言えば、あるものについてはとうていできないので、県の衛生部にまかせ切りだというのが実態ではないかと思うようなわけであります。そこで、厚生省によくお尋ねしても、各病院のあり方なり、あるいは現状を十分把握しておられないというような状態にあるわけです。私は、新しい大臣を迎えて、この医療機関のこういうような種々雑多なものを何とか一つ整理して、厚生省で一にらみすれば、十分にらみをきかせるというような体系一つ整備してみたいと思うのでございますが、さっきの大臣のごあいさつの中にも、医療機関体系整備を強化するというお言葉があったようでございますけれども、あのお言葉は、今私が申しましたような意味の体系整備でしょうか。あるいはそれとも、何かほかのことを考えておられるのかどうか。そのことを一つお答え願いたいと思います。
  58. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 木下委員の仰せの通りに、医療機関の雑多なものを、もっと筋の通った能率的な配置を考えることはぜひ必要だと考えております。ごく一例を申し上げてみましても、私は、どうしてこんな情ないことになったかと思うのでありますが、この東京を見ましても、元来、割方暮し向きのいい人たちの住んでおります山手の方面に大病院がある。しかも、それは私立の病院というよりは、これは、どこに建ててもかまわないはずの、公的な費用を持っておる大病院が林立をいたしておる状態でありまして、人がたくさんおって、貧乏して困っている者の比較的多い隅田川の向う側などに、ほとんど鉄道の病院だとか逓信の病院をお建てにならないということは、私は実に残念なことだと考えておる次第であります。これは理屈を言いますと、好きな所に建てるのは憲法上の自由で、むやみに抑制することはできぬと言いますけれども、いやしくも国民保険をやる、国民医療保障をやるのだということを考えまするならば、これは、医療の問題というものは、やはり公共の福祉の問題であって、ある程度国が宰領してもよろしいし、また国がお願いして、どこかの団体に宰領していただいてもいいはずだと私は考えております。  先ほど私が申し上げました体系整備の問題につきましては、今日もなお困っておりまする無医村の解消といった僻地医療対策というような問題と、それからもう一つは、とにもかくにも病院も診療所もある。けれどもその間に、日本の国内総体を見たときに、やはり医療を受ける恩典の厚薄があまりひど過ぎる。それに、公的なもの、私的なものを通じて、病院の配置、診療所の配置というものについて、ぜひ一つ何らか筋の通った方策を考えて参りたいと思うのであります。イギリスあたり、いろいろな制度をとっているという話を聞いているのでありますが、こういう面につきましては、役所だけで申しますと、官僚統制とか何とかいって、実際非難もありましょうし、また、考えの至らぬ点も出て参ると思いますので、医師会その他についても、やはりお互い仲間で言いにくいこともおありかと思いますけれども、やはり診療所の配置等については、いろいろそういう機関にもお骨折りを願って、あるいはまた、病院は病院同士の間で相談をしながら、それの拡充等を考えていくといったような、何らかの方式を考えて参りたいと思うのであります。これは非常に抵抗の大きい問題でありまして、おそらく新しいものを作る場合に何らか手を入れていくことがせいぜいで、既存のものを直ちに統廃をするというようなことは、これはなかなか及ばないと思いますけれども趣旨としては、木下委員お話の点はもうごもっともで、ぜひ何らかの運用の方法を考え、それに当る機関考えて、将来国民保険がうまくいくための課題の大きな一つとして考えて参りたいと思っています。
  59. 木下友敬

    ○木下友敬君 各県においては、医療機関整備するとか、あるいはその配置の工合をどうするかというようなことについて、諮問機関があるわけです。そこで諮ってやっておりますけれども、実際は、これはもう有名無実であって、その効果を上げていない。だから、私が要望したいのは、厚生省としては、この点では、各府県にもっと強力に通達なりあるいはPRをしてもらって、医療機関整備についてもっと努力するようにしてもらいたいということをお願いしておきたいと思うのです。  なお次に、私は医療費の問題で、これもこの際お答え願って大して差しつかえないことだと思うから、お願いするわけですが、御承知通り、今度の医療費の問題から、甲案、乙案というのが出ているのです。これは御承知通り。ところが、私考えてみますと、医療行為は同じであって、医療の報酬というものが、たとえば設備がいいとか、あるいは技術がいいのだというために甲乙の差があるのは、これはかまわぬけれども、そういうところの根拠はなくして、ただ診療担当者の希望によって甲案をとれ、乙案をとれというようなことで、一つの医療行為について二つの対症価格があるということは、私は、これは根本的に間違いだと思う。これは、何か厚生省が投げ出し的な考え方で甲案を作ったけれども、これがいやなら乙案をとれというような考え方でやっているように受け取っているわけですが、これは早晩どっちかにまとめる。医療行為というものは、医師の熟練とか、あるいは技術の差がない以上は、一本であるというようにいくのが当然じゃないかと思いますが、この点に関して、大臣はどういうお考えですか。
  60. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) これは実は今日、厚生省原案、つまり甲乙両案というものを基礎にして、なるべくこれをのんでいただきたい、御意見があれば、それについて調整に応じますという建前でお話を申し上げておりますので、私、本日としては、非常に根本的なお話を申し上げにくいのであります。端的に申し上げまして、ただいま木下委員の御意見は、私は、非常にごもっともな点を含んでおると、私は個人としてそう思っております。ただ、まあ今日の問題としましては、甲乙同案を基礎にして、あれで御意見を承わっております。ただいまの木下さんの御意見は、私はもうごもっともだと思いますが、ただ本日は、承わらしておいていただきたいと思います。
  61. 木下友敬

    ○木下友敬君 これは今日の問題でなくして、この問題について、大臣の一体明年の考えはどうかというわけでございまして、自分は確信を持って甲乙案というものがいいんだというお考えにおられるか、あるいは早晩これは考え直さなければならぬという立場におられるかということをお聞きしておるわけです。
  62. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 私、昨年の経緯はよく存じませんけれども、おそらくまあこの経過措置くらいのつもりで、一方の案は出ておるんだと私も思います。本来のところはお話通りでありまして、どこの病院で手術をいたしましょうとも、盲腸炎の手術は盲腸炎の手術でありまして、同じ診療行為について二つの医療報酬があるというのは、これはまあ筋からいっておかしいと思います。これはもう当然、将来の問題としては、診療報酬といったようなのは一本であるのが筋であると思います。これはまあいろいろ苦心の末、一種の、何と言いますか、現状変更に対する妥協的な経過措置くらいの点で原案提案されているものだと考えております。
  63. 木下友敬

    ○木下友敬君 似たような質問ですが、これもはっきり御説明していただいて差しつかえない問題だろうと思うのですが、今度は十円単価ということが強くいい出されておって、まあ関係団体も、この十円単価で一つのんでもらいたいというのが厚生省のお考え、あるいはその通りになっていく可能性が十分あるように思いますが、一体十円という単価に踏み切った以上は、これはもう単価という経済指数と、それから点数という診療行為別のバランスというような意味の、この二つのファクターがなくなった以上、十円単価と来た以上ならば、これは金額表示でも同じじゃないか。十点というかわりに百円といっても同じなんだから、むしろはっきり金額表示にしたのも同様だから、あっさり金額表示にしてしまうべきではないかという考えを持っておるのです。厚生省が、それにもかかわらず、なぜ十一点だとか十二点だとかいう点数に、これをどうしてもその点数というもので固執しておるという理由はどこにあるか。なぜはっきり金額でいえば不都合が起るかということが私の疑問ですが、大臣はどういうふうにお考えですか。
  64. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 実は私は、ただいま十円単価で点数を整備いたしました甲乙二表を私の原案として実は提示をいたして、御意見を伺っておるところでありますから、私がきょういろいろお話を申し上げるのは、私としても実は少々つらい立場にあるのであります。本日のところは、私は、自分の案として、単価十円で甲乙二案を提案をいたしておりまして、まあいろいろな事情はありますけれども、当面のところ、厚生省としてはそういう案を提案しておることを御了承願いたいと思います。それで、将来の根本的な問題といたしましては、いろんな問題があると思うのですが、私は、もう関係者の方々に一番のんでいただきたい問題は、つまりこれもやはり日本の厚生行政というものが、まあ恩恵的社会政策から発足をして、そして実際はもう全然別な、近代的な生活保障の仕組みになりつつあるという点に問題があると思うのでありまして、診療報酬の問題なんかにいたしましても、もともとが自由診療が主体で、社会保険診療というのはほとんどない。それで、極端に言えば、値段がどうきまっても大したことはないのだというところから発足をして、戦後になって、一般の所得水準が下りますると同時に、これはもう会社の重役でも、大学の教授でも、健康保険国民健康保険を使うようになって、社会保険診療報酬が医者の所得の大宗をなすようになったということのとたんに、この診療報酬を幾らにするかということが問題になってきたわけであります。私は、それでまあ大へんだ大へんだというようなわけで、たびたびに大騒ぎをするわけでありますが、社会保険診療というものが医療の大宗をなすようになり、しかも、われわれが今日とっておりまする長期経済計画においても、五年間に国民所得が総体で四割上ることを考えておるわけでありますが、そうしますれば、一般所得水準が上ると同時に、医者の所得水準も上るのが当りまえなんで、定期的に起ってくる問題なわけであります。従いまして、問題に対する扱いとしても、もう少し落ちついた気持で、何年か後にはおそらく起ってくるのでありましょうところの診療報酬問題を楽に主張し、楽に受け取り、楽に審議をする。そうして円満な解決をするといったような問題に習熟する必要があると思うのでありまして、診療報酬のきめ方にいたしましても、私はやはり、今日の問題のきめ方だけでなしに、たとえば今日きめたのが、三年後に一般的な診療報酬引き上げの要望が出てきたときに、国民の所得水準と医者の報酬とのアンバランスが出てきたときに、そうやってさばくというような問題もからめて考えていかなきゃならぬと、実は思っておるのであります。それで、ごく一般論としてそんなことを考えて、将来を善処いたして参りたいと思います。その間に、ただいまお話のありましたような、もう点数も単価もやめていく方法論もいろいろございましょうし、それから、また、支払い方式自体を変えることによっていろんな差も起って参りましょうし、いろんな問題があると思いますが、根本的な問題は、どうか一つ、なお今後の検討に残させていただきたいと思う次第であります。
  65. 木下友敬

    ○木下友敬君 やはりこれはもう、七月一日にならぬと都合が悪い問題のようなお答えでございますが、私も、そういうことはよくわかっておりますので、そういう質問をしたわけじゃなくて、なぜ金額表示にしないで、十円単価というようなことをされたか。言葉をかえれば、十円単価というものと、金額表示にするというのは同じものであるが、なぜ十円単価という表現をとられたか。同じじゃないか。何かまさったところがあるか。そこをお尋ねしたわけで、金額で言うより、点数で言えばこういう得があるのだということを一口言ってもらえばそれで済むわけです。
  66. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) いや、実は私も、どういう趣旨か、あまりはっきり存じておりませんのですが、やはり趣旨は、将来なお診療報酬を改訂いたしたりする場合に、ある場合に点数をいじり、ある場合に単価をいじりというふうなことを考えて、二つの要素がある方がいいと考えられたのではないかと、私は理解しておる次第であります。
  67. 木下友敬

    ○木下友敬君 これは、局長さんから説明してもらった方が……。
  68. 久保等

    委員長久保等君) ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  69. 久保等

    委員長久保等君) 速記をつけて。
  70. 木下友敬

    ○木下友敬君 これは、十円にまるくする方が計算上の都合がいいということで、十円という単価を持ってこられたわけですか。そういうことは今までの説明にずっと載っておるわけで、まるくする方が都合がいいから十円にしたということであれば、将来これを十一円にするとか、十二円にするというような、端数がついてくるというようなことは間違いないと考える。そうすれば、十円というものが、何十年も先は別として、当分は十円という単価でいくという厚生省のお考えだったように私は受け取るものですから、そんなら、あっさり金額でいった方がいいじゃないかと、金額でいくよりも、点数の方がいいというならば、そこに何か違いがあるかと、こういうことの質問でありまして、もし、大臣がおっしゃるように、将来点数も改正する、それから単価も改正するという可能があるというのであるならば、今しいて十円にまるくしたということが意義が少くなってくると、こういうふうに考えられる。この点どういうふうなお考えでしょうか。
  71. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) まあ当初の考え方は、やはりなるべく簡単にするということであったであろうと思います。ただ、この点は、今回医師会、歯科医師会等からの御質問の中にもあるようでありまするが、やはり詰めて考えて参りますと、将来の問題としては、診療報酬をいつの日にか改訂の要求があって、それがもっともだというときがあり得るに違いない。で、詰めて考えてみまするときに、物と技術を分けて参りました際には、物価が大きく動いて参らない限り、技術料を主体にいたしました点数の方を主として改訂していけばいいので、単価の方をあまりいじることはあるまいと、従って、十円刻みにしておけば、割方計算の楽な時代が続くであろうということを主に考えたようでありまするが、やはり詰めて考えて参りますれば、物価の動くこともあるかもしれませんししますので、単価を動かすときはないんだということは決してもう申し切れないし、そこまでは厚生当局としても申しておらない問題であります。これもお話がありました間に出ておりまして、当初は十円刻みで非常に簡単にいくというふうに考えて参り、今後もなるべくそういうふうにしたいという方針考えたものでありまして、将来これに手をつける時期が全然ないとまでは申し切れないと思います。従いまして、先々の問題といたしましては、木下委員お話のような筋も、将来の診療報酬のきめ方としては、やはり問題になる場合があるのだろうと考えておる次第であります。御意見の筋は、十分拝聴したいと思います。
  72. 木下友敬

    ○木下友敬君 この点では、金額表示にすべきだというのは、これは私ども社会党での考え方でございまして、今度のように、十円単価にまるくするというのが非常に事務的に簡明であるというお考え方に賛成したあげく、それならば金額表示の方がもっと簡単じゃないかというような点に到達したのが私ども社会党の考え方で、党は違いますけれども、私ども考えておるこの金額表示ということについても、一つ大臣は、一ぺんよく考えていただきたいと、こういうようなことを考えるわけです。  なお、次に、もう一つ二つお尋ねしたいのですが、これは最近、この二、三年ですが、医師会、歯科医師会というようなものが医療行政協力すべきであるということが非常に言われてきましたのにつれまして、医師会法とか歯科医師会法とかいうようなものを作る、あるいは特殊法人とすべきではないかというような説もだんだん出てきているわけです。大臣は、医師会法とかあるいは歯科医師会法というようなものを、大臣任期中に一つ制定して、医師会あるいは歯科医師会というような、こういう団体の医療行政に関する協力態勢を、もっと今以上に緊密にしていく一つの方法としたいというようなことについては、どういうふうにお考えになっておるか。
  73. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 国民保険を実行するとなりますれば、医師会や歯科医師会等の医療担当者との協力態勢ということは、ほんとうにこれは必要なことだと考えております。従いまして、療医担当者に御協力も願いまするし、同時に、御協力を願うのにふさわしい地位と責任とを一つ持っていただきたいという態勢にすることは必要だと考えておりますが、そのために医師会法というようなものを制定したらいいのかどうかということについては、御議論のあることはよく承知をいたしておりますけれども、私として、まだいずれとも考えはきめておりません。そういったような、ただいま申し上げましたような根本の要請からいたしまして、どうしたらいいか、これから考えていきたいと思っております。
  74. 木下友敬

    ○木下友敬君 先ほど大臣お話の中に、医育機関、大学の先生方と話し合う機会を最近に持つことになっておるというようなお話でありました。この委員会でも、現在の医育大学で学生を育てていくというこの重大な仕事においては、今の健康保険のこの治療方針、あるいは点数でしばりつけていくというような行き方では、とうていりっぱな医者を作ることはできないということが論議されまして、それでは一つ、大学の責任者に出てもらって、どういうようにお困りになっているか、また、それを打開するためにはどうすればいいかということを一つ話し合いしようじゃないかということが、もう前々国会から話になっておりまして、決議になっている。それで委員会としても、先生方をお招きするはずになっておりましたのが、突発的な事故がだんだん続きまして、今日までその機会を得ていない。個人的には、先生方といろいろ意見の交換もしたわけでございますが、その中で、私どが耳に残っておるのは、医育機関というのは、これは文部省の管轄で、りっぱな医者を作るということにおいても、責任は文部省にあるんだから、教育のための費用は治療費から出るのじゃなくて、別に文部省が医育機関に出すべきである。たとえば、ほかの言葉で言えば、予算面において、すでに文部省の予算として、保険とは別な意味で、研究費とか、あるいは学生の医育の費用だとして、別に予算を取って、健康保険のお世話にならぬような態勢に持っていくべきだというような意見が一番耳寄りな意見のようでございました。大臣は、この問題について、現在のお考えはどうであるか、伺いたいのです。
  75. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) もうやはり、話の筋として、私も、つまり社会保険といたしましては、保険料と国庫補助と見合いで、診療内容についても、これはある程度の基準を設けざるを得ないわけでございますが、ただ、大学の方としては、もう非常な新しい薬を用いたり、非常に新しい治療方法をしたり、あるいは非常に特別な栄養を取らしたりというようなことが必要なことは当然なんであります。これの解決の方法としては、基本的には、どうしてもそういう特別なものについては、大学の医学研究費といったようなものでやってもらうのが、予算的にも筋だと思っております。ただ、実際の面から参りますると、まあ患者自身がほとんど社会保険の患者でなければ参らぬと思いまするし、それが社会保険を利用するというのについては、どうしてもからみ合せて何らかの措置を考えなければなりませんので、ただそういうような特別な患者ははずして、文部省の予算で、ということで、私も実は前に申したのでありますが、一向片づかないのでありまして、どんなふうにいたしたらいいか、なお検討いたしたいと考えております。もう話の筋は、今木下委員からお話のありましたように、その方は、もう文部省所管の大学の運営費の中に医学研究費として、その分をまる持ちで入れてもらえれば、解決として一番筋がいいことだと思います。
  76. 木下友敬

    ○木下友敬君 これは、単にお医者さんを育てる大学の費用の問題だけでなく、たとえば、一つの公的な病院があって、医療機関があってそこで看護婦を養成しておる。看護婦を養成するのにもお金が要る。ところが、その看護婦を養成するお金が、もし健康保険で幾らかの利潤が上ったのが看護婦の養成に回されるというようなことをしなければならぬような状態になりつつありはしないか。私は、これは看護婦を養い育てる費用まで医療費の中に入れてくれというもし医療費の値上げの要求であるならば、これはよほど考えていかなければならぬという問題がすぐ起ってくるわけなんです。大学の学生という人ならば縁が遠いですけれども、現在の看護婦の養成というものは、ほとんど国家は手を出していない。手を出しておっても希薄で、赤十字病院でありますとか、あるいは各府県の医師会であるとか、あるいは私立、公立の病院でやる。そこでは、もうすぐこの問題に、健康保険の診療費の問題とつながってくるわわけですから、これは何とか、あまり先まで延ばさないで解決していってもらわなければならぬ。そうすると、ちょうどこれは、大審院の昔の判例のように、大学のお医者さんたちを作るそこの機関で、一体保険とどういうかね合いを持っていくかということが、それが前例になりまして末端における看護婦の養成まで同じようなことがやられるようになるのじゃないか。こういうふうに思いますので、特に大臣意見を聞いたわけであります。重ねて一つ
  77. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) なかなかむずかしい問題でありまするので、厚生省も、実は一応この問題については通牒を出しておるようですが、これはほんとうに、その通牒を私も読みましたけれども、なかなか通牒を運用するのはむずかしいようでございます。これは、根本的な問題でありますので、なお一応通牒は出してあるようでありますが、検討いたしてみます。
  78. 木下友敬

    ○木下友敬君 最後に、今の看護婦の養成の問題でございます。これは御承知と思いますが、実際に厚生省、あるいはもっと広い意味で言えば、お役所は非常に手を出しておりません。民間の機関にむしろまかしておるというような状態でございます。これは重大なことでございまして、もう看護婦の社会的地位にいたしましても、また任務の上からの義務、権利ということからも、非常に昔とは違っておるから、もっと私は、厚生省自体が看護婦の養成については力を入れ、これらにくちばしを差しはさんで、りっぱな看護婦を作るように努力していかなければならないと思うのですが、今日までのところは、それがあまり十分に果されていないように思うのです。どうか一つこの点は、新しい大臣を迎えまして、あまりこういうものを民間にまかせきりでなくして、少くも都道府県でなりと、これにもっと力を入れていくようにしていただきたいと思うのでございます。と申しますのは、今日は、栄養士はもちろんのことでございますが、理髪関係にいたしましても、あるいは料理の関係にいたしましても、みんな国家試験あるいは国家試験に準ずるようなものができまして、非常な地位の向上、内容の充実が行われておる。特にこの歴史の古い看護婦などが作の状態に放置されておるということは、まことに遺憾な次第でございますから、特に大臣がこの方に意を用いていただきたい。こういうことを要望すると同時に、大臣の御所信を伺って、私の質問を終ることにします。
  79. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 御趣旨まことにごもっともであります。よく考えていきたいと思っております。     ―――――――――――――
  80. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 私は、お許しをいただきました時間があまりありませんので、つとめて要領よく質問いたします。従いまして、大臣及び政務次官及び政府委員の方も、簡潔にお答えをいただきたいと思います。  質問項目といたしましては、厳密に申し上げますと、昭和一十八年の十二月から三十一年にかけまして、熊本県の南端に当ります水俣で、中枢神経系統の疾患を中心にした、原因不明の病気が発生しました。それで、六十四名の患者のうち、すでに死亡した者が二十一名、今なお入院加療中の者が三十二名ございます。この問題につきましては、三十二年の三月七日、二十六国会におきまして、当委員会で、私は、時の神田厚生大臣及び関係政府委員との間にいろいろと質疑を行いました。特に神田厚生大臣は、すみやかに善処しようという固い約束をいただいております。にもかかわらず、この問題が関係者のたゆまざる努力にもかかわらず、今なお解決を見ておりませんので、あらためて繰り返すようなことになるかとも思いますが、若干質問をいたします。もちろん大臣は、この問題についてどこまで事情を洞察されておるか、私もよく存じませんが、もし大臣でお答えできなければ、政府委員の方からお答えをいただきまして、質疑の内容から十二分に御理解をいただき、最後に大臣のお約束をいただきたいと思います。  そこで、厚生当局にお尋ねいたしたい第一の問題は、原因物質の確認がすでに行われたかどうか。それと、原因物質の魚介類への移行経路が明確になったかどうか、及び原因物資の発生源の追及がどこまでいっておるか、この三点についてお伺いをいたします。
  81. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 最初に私からお答え申し上げます。森中議員の御質問の御趣旨につきましては、私は、実は一夜づけで、朝から勉強いたしました。大体どういう問題であるかということを私認識をいたしまして、なかなか大へんな問題で、この水俣の問題自身にいたしましても、あるいはよそでこういったような問題が起らないために、十分われわれとして検討して対処策を考えてやらなければならぬと考えております。ただ、ただいま御質問になりましたことについては、私、実はけさから聞いたばかりで、受け売りを申し上げるよりも、直接に政府委員から答弁をさせますから、御了承願います。
  82. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) ただいまの森中議員の御質問三点につきまして、現在まで明確になっておる点を申し上げたいと思います。  原因物質の明確化の問題でありますが、現在まで、これは化学物質、ある種の金属による中毒である。しかもそれは、脳症を起す中毒であるということ、その物質はタリウム、セレニウム、マンガン、この三つのうちのいずれか、あるいはこの三つの二つないしは三つの総合によるものであろうということが、原因物質として今のところわかっております。と申しますのが、この病気によりまして死んだネコその他の動物、それから人間で死にました四つの解剖死体、これから、明確にこの三種の物質がその他の死体と比べまして、非常に大量に化学的に証明されたということは、不幸にしてこれはまだ明確な資料が出ませんのでありますが、これを病理組織の変化から見ますと、この三種類の物質によって起った既存の知識による症状と酷似しておる。ただしその場合に、水俣病による病理変化が、ただ一つの物質のみによるものとは少しずつ違っておる。この三つを総合いたしますと、完全にどれをも含む、こういうことも明らかにされた。その脳細胞と、それから脳の血管に主として変化を来たしておるわけでございますが、これらの中からの大量の検出ということは、明確にこれはつかめておりません。しかし、発見はされておるわけでございます。従いまして、現在の水俣病の病変を起したものは、この三つのうちのいずれか、あるいは三つの総合であろうというところまで、現在の学者の知識は到達いたしております。  それから第二の、魚類に対します移行経路でございますが、明らかに今度の疾病が水俣でとれました魚類を食しておることに起ったに違いなかろう、こういうことは確実にわかっております。かつまた、ここらでとれました魚類を実験的に、ネコなり、あるいはネズミに食わせると、相当数が同様な症状を起して倒れる、あるいはかなり長期の病変を起しておる。これも明らかになっております。なぜ魚類に何らかの毒物が、これらを起す毒物が来たかという経路につきましては、魚類が、特別にほかの湾の魚類と比べまして非常に弱ってきておるとか、そういうようなことはないのでございまして、魚類はぴんぴんしておる。普通に生存しておる。ちょうどフグ毒のように、フグそのものに含まれておる毒物は、フグそのものの生存には関係なしに、人間が食しますと毒になるというのと同じようなことで、すなわち、この物資を魚類が摂食した場合、ただ無機的な形で付加されておるのではなく、むしろ魚類の中で相当な有機的な変化を起しまして、魚類には差しつかえないが、人間にそれらが入ると有害になるのではないかということが想像されておりますが、なぜ、この魚類の生存しておるまわりにそういう物質があると魚類に移行するかというのは追究を続けてもらっておりますが、今のところまだ明確になっておらない。魚類の中でも、からだの中で、肝臓でどんなふうに変化するか、血液でどういうふうに変化して作用するかは、ただいまのところはまだわかっておりません。ただし、これは一番大事な点でございますので、この実験を継続してもらっております。なおかつ、そういうふうな水を作りまして、この三種類の化合物を入れました水を作りまして、その中に魚類を入れた場合に、水俣病を起す毒を有する魚類に変化するかどうかということが、これは一番将来……この海中にあったと推定される毒物が魚類を通じて人間が病変を起すこととの結びつきが、一番重要な従来の医学的な追及ではポイントでございますが、この点の実験が必要でございます。これを今後も続けることに委員会の方で決しまして、今年度の研究でも、ここにもっぱら力を入れるわけでございます。現在までのところは、その実験は今のところ成功しておりません。  それから第三点の発生源の追及でございますが、今のように病変を起した動物、人間に対しましては、今申した三種類でからだの中では起したのであろうということはわかっておりますが、その源になる物質がどこから出てきたかということにつきましては、一番推定されますのが、ほかの状況と違いますのが、あの湾に接しました所に一つの工場がございまして、これがこれらの物質と関連のある化学工場であるということで、この化学工場から今言いました三種類の物質が精製過程あるいは最後の精製過程で出ておるかどうかということとを調べまして、大体これらに関連がありという想定で、工場に生産過程について詳しい回答を昨年求めまして、その結果が本年の一月に参りまして、その結果、今の三種類の物質のうちマンガンにつきましては、かつてこの工場で使っておったが、二十六年八月以降は使用をしておらない。ただし、その以前には使っておった。それからセレニウム、タリウムについては、この硫化鉱石が主原料で化学工場を運転しておるのでございますが、これのかすに相当に含まれておる。このかすは野積みにいたしまして、かすを必要とする他の地方に輸送しておるということでございます。おそらくこれはある程度、その近所なりに液その他になりまして流出することは想定されますが、この一つは、この工場で生産をされておることがはっきりしております。ただ、今のマンガンにつきましては、発症いたしましたのが、大体二十八年から患者が発見されたのでありますが、二十六年からやっておらぬ場合に、果して無関係であるか、あるいはその以前にマンガンが蓄積されまして、工場生産物が蓄積されて、その後の生産をとめました後におきまして発症に関係してきたかどうかの点が想像されますが、現在のところの事実はそういうような形でございます。従いまして、発生源と推定されるものが工場において生産はされておるということ、それからその物質による病変であるということは、これは確定されておる。その途中の経路――すなわち、この種の工場は日本全国にまだほかにあるわけでございますが、さような所では、こういうものが発生もしておらないということで、果して、これが流れ込んだだけで起ったならば、ほかでも今まであり得る。それからこれが十数年、二十年以上にわたってこの工場が経営されておるものでありますが、何ゆえに二十八年以来、かような大きな病気が起ったかという点につきまして疑問があるわけでございます。従いまして、この生産物が海中に入りまして、魚類に入って、人間に来るまでの間に湾内における諸環境が非常に特殊な必要条件になっているかどうかということが結びつきますと、この種の工場と発症とそれからこの種の環境という三つがそろって、こういう事件が起ったということが確定するわけでございますが、その中間の経路が一番大事な点でございますが、まだこれが証明なり、実験が成り立っておりませんので、今のところ、研究の追及をそこに重点を置いてやるということに決定いたしております。ただ、これは医学者だけでは非常に困難でございまして、海流の検査、それから地質、土質の検査、それから棲息物、すなわち魚類そのものではなく、魚類がさらに間接に食するプランクトン等を介しているか、どうかということが、これも大事な点でございますので、かような海洋生物の知識というようなことと総合してやらなければだめなんでありますので、本年の研究計画をさようなことでぜひやりたい、こういうことにいたしております。そのために、最終的にこの研究会が東京で集まりましたのが二月十五日でございましたが、そのときの結論では、以上御説明したごとき内容が大体明白になりまして、今後研究をそういう方向に続けようという申し合せによりまして、実は今年度のこの予算成立いたしまして、厚生環境に関する限り最近きまりましたので、さような方に重点を置いて研究を進めてもらおう、こういうことになっているわけであります。
  83. 久保等

    委員長久保等君) この際、お諮りいたします。  委員外議員矢嶋三義君から発言の許可の申し出がございます。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないものと認めて、発言を許可することに決定いたしました。
  85. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 私は前回も、さらに今冒頭に申し上げたように、懸命に研究されている皆さんの努力には大いに敬意を表しております。それから、こういう学術上の問題を一定の期間に所定の成果を求めることがきわめて困難であることもわかります。しかし問題は、前回私が御質問を申し上げた段階よりも飛躍的な進歩を見ておりません。また私はこれを行政上の立場から少し質問をしたいのでありますが、まずその第一点は、ただいま環境衛生部長の御答弁にもありましたように、やはり工場の廃水に疑わしい点がある、こういうように受け取るのであります。もちろん、これは地勢的に見ても、私は研究の一過程として疑いを持つことは当然であろう、必ずしも穏当を欠くことではないと思うのであります。しかるがゆえに、工場に対して、たとえば資料の提供あるいは調査、研究の協力政府機関として正式に申し出られ、これに対する工場側の回答はどのようになっておりますか、その点を明らかにしていただきたい。
  86. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 熊本大学を中心にいたしまして、水俣病の研究協議会ということで、これは厚生省の国立公衆衛生院の疫学部長が班長になっておりますが、私どもにおきまして、工場の一定の調査が必要であるということになりまして、現実に公文書で出しましたのは、熊本大学の医学部長の質問書を出しまして、これに対して、工場長から正規の回答書が出まして、その抄録は、去る二月十五日の協議会で、熊本大学を中心にこれの検討の結果の説明がありましたが、なお、正規の非常に分厚い回答書でございますが、これは編集をいたしまして、大学の方から厚生省その他の関係方面に配るということになっておりまして、これもまだ完成しませんので、まだ入手はいたしておりませんが、抄録によりますと、質問に対しましては、まじめに調査の回答をいたしております。その結果を総合いたしまして、先ほど申し上げましたような見解に委員会が達したわけでございますが、なお、その前、一月の三十一日に、今のお話行政上の関係がございますので、私のところで、関係の各省の関係官に御参集を願いまして、今のような、工場につきまして今後いろいろな調査なり、あるいは場合によりましては、物質採集等の要ができますと思いますので、その方の関係官の方では、さような場合には、協力方を連絡お願いしたわけでございます。その際の参集者は、水産庁それから通産省、ことに企業局、軽工業局、この関係、それから文部省それから厚生省では社会、保険それからもちろん公衆衛生、こういう形で、大体関連する中央官庁の方の連絡はいたしておりまして、必要に応じて、この研究の裏づけ的なことは、行政的な面で手を打つ、かような方向で今進めておるわけであります。
  87. 森中守義

    委員外議員森中守義君) この前、私が主張したことが、かなり採用されておるように、今の御答弁だと受け取ります。ただし、すこぶる明確でないのは、やはり行政上の責任体制というものが、何かしらぼけておるような気がする。どこが中心なのか、この点は、私は明確でないと、実際の研究調査に参加をされる各学界の代表あるいは現場の前線においでになる人たちも、いろいろな点でお困りが生じるのじゃないかと思います。こういう点からお尋ねいたしますが、この前、つまり昨年の三月七日に、山口公衆衛生局長が、私に対する答弁の中で、厚生科学研究班、これは臨時的なものであるが、これを結成をしたと、こういう御答弁がありました。従って、私は何もこれは厚生省の設置法あるいは組織令もしくは組織規程、こういうものによる正規の機関ではないと思うのですが、少くとも厚生省設置法の四条の一項と三項、これを中心にした行政上の責任をとるために、それを遂行するために、この臨時的な厚生科学研究班というものが結成をされた。これに行政上の責任が私は当然存在するものとして当時理解をしておったのです。従いまして、先刻環境衛生部長の答弁から参りますと、委員会という言葉を使っておいでになりますが、これは研究班が変体をしたのか、変体というよりも、むしろ進歩的に解体をされたのかもわかりません。従って、こういう組織的なものが存在するかどうか、この点を、第二の問題として明らかにして下さい。
  88. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) いまだ厚生科学研究班でやっております。私が委員会と申しましたのは、今の研究班の参加学者が中央に集まりまして会を開くときに、委員会という形をとっておりますものでございますから、その会のたびに委員会ということで、ふだんは研究班の班員としてそれぞれ研究を担当している、こういう形で、変化いたしておりません。
  89. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 決してこれは深追いをするつもりじゃありませんよ。そういうつもりで聞いて下さい。そうしますと、やはり厚生省としては、設置法の四条の一項ないしは三項の目的を果すために設置された行政上の責任機関である、このように解釈してよろしゅうございますか。これは非常に責任の所在を行政機関として明らかにするため必要でありますから、特に聞いておきます。
  90. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) この厚生科学研究班という形でやっておりますのは、これは厚生科学研究費という形で、研究費を中心にいたしまして、これを募集いたしましたものないしは厚生行政上必要な研究題目につきまして、まず研究題目についての研究を策定し、これに最も適当する学者ないしは研究者を動員をいたしまして、このテーマの研究を遂行するという形になっておりまして、研究班と申しますものは、行政上の責任の機構にはなっておらぬのです。
  91. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 意味としてはわかります。しかし問題は、やはりこの国会の中で、行政機関としてはどこの官庁がこの責任を持つのか、これがやはり明らかにされませんと、たとえば予算の問題、こういうことにも非常に大きな関係を持つのです。そういう意味で、私は今までもこの問題に関しては行政責任はどこが持つのか、こういう質問をしたことがありませんでしたが、もうそろそろこの問題をあらかた明らかにする段階に来たと思います。そういう意味で、なるほど研究班というものは、設置法に表現したものでもありません、正規な機関ではもちろんない、しかしながら、厚生省設置法の四条ですね、この中に「厚生省は、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進を図ることを任務とし、左に掲げる国の行政事務及び事業を一体的に遂行する責任を負う行政機関とする。」、きわめて明瞭な条文です。そうしてその一項には「国民の保健」というのがあります。明らかにこの一項には、水俣の問題に関しましては、国民の保健がそこなわれた、これを復元するということは、当然厚生省の任務であろうと思います。また三項には「社会事業、災害救助その他国民生活の保護指導」、こういうものがある。だから、私はやはりこの厚生省設置法四条というものが現存する限り、この行政責任は厚生大臣に帰属する、こういう考えを持つのでありますが、今まで厚生省がこの問題にタッチされて参りました趣旨は、この辺にあると解釈してよろしゅうございますか。これは政治責任の問題ですから、厚生大臣が答えて下さい。
  92. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 実は、私はけさ聞いたばかりでよくわからないのでございまして、これは私、決して逃げも隠れもいたしませんけれども、官庁の権能の問題と実際の仕振りの問題と、いろいろ関係がある。ただいま承わったところで、これを政府において善処いたしますのに、十分御趣旨をくんで検討して参りたいと思っております。
  93. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 厚生大臣、私はこの個々の内容を聞いているのじゃない。今のお答えははなはだ遺憾に思う。大臣の所管事項として設置法の四条にこういう項目がある、これがこういう問題に対して適合するかどうかということは、個々のケースを中心にした判断というよりは、むしろ政治的な認識、法律の解釈によるのです。それでも研究しますか。
  94. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) はなはだ恐縮でございますが、実は設置法覚えておりませんで、私、この設置法を見まして、この原因を究明して対策を立てて参りますることは厚生省の仕事だと思います。
  95. 森中守義

    委員外議員森中守義君) それで今の大臣の御答弁は、行政上の責任は厚生大臣に帰属する、こういうことを確認してよろしゅうございますね。そういう御答弁ですね。
  96. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 行政上の責任は厚生省に帰属するという御趣旨がよくわからないのでありますが、この行政官庁として原因を究明し、対策を立てていくということは厚生省の仕事であると思います。
  97. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 仕事であるということは、厚生大臣が責任をになう、こういうことですね。
  98. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) そういうことですね。
  99. 森中守義

    委員外議員森中守義君) よろしゅうございます。そうしますと、この研究班の中に熊本県を代表して衛生部長及び熊木大学を代表して尾崎医学部長、このお二人のお方が松田先生及び北岡先生と同じように班員として入っておいでになりますね。そうしますと、県及び熊大と厚生省との関係はどういうことになりますか。
  100. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) これは先ほど御説明いたしましたように、研究班というのは、この研究すべきテーマについて必要な研究者、学者を網羅するという形の意味で、それの必要な知識経験者という形で入っていただいたわけでございます。
  101. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 大へんくどいようですがね、これはやはり一つ行政上の問題なんですよ。それでやはり非常に窮屈な解釈になるかわかりませんが、指揮系統があって、どことどこが現場の仕事をする、やったあとの責任はどこがになう、こういう形でないと、国の仕事としておやりになる場合には、単に医学者が参加をされる、その研究発表はどこがする、こういう民間団体的なものでは私は困ると思う、この問題は。そういう意味で厚生省は熊本県に指令をするとか、さらにまた先般の山口公衆衛生局長お話によりますと、三十一年の五月に水俣市は、水俣市の医師会と一緒になって対策委員会を作って、さらに三十一年の八月には水俣市が熊大に調査の依頼をした。そして熊本県が三十一年の十一月に熊大に研究の依頼をした。そのあと厚生省の中に厚生科学研究班というものが組織されて、この中に県を代表する衛生部長、熊大を代表する医学部長が参加をされて、総合的な研究、究明に乗り出した、こういう歴史がこの前言われております。私はその際に行政上の責任はどこが負うというような質問をいたしておりません。しかし、それは参加をされる学者の良識と、あるいは善意、こういうものがこり固まってこの問題に取り組んでおいでになるという、こういう前提に立ちましたから、行政上の責任云々ということはあえて言わなかったのであります。やはり根本は、先刻申し上げたように、厚生省の設置法に根拠を置いて、行政上の問題としてこの研究調査が行われるというのが大筋でなければなりませんから、そういう意味で私は申し上げております。従って、厚生省としては熊本県に、あるいは熊本県は知事が熊大の学長に対して、この研究調査の依頼を正式に、公けの機関として行なったかどうか、こういうことを承わっておるのです。
  102. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) ただいまの研究班に対しましては、厚生省行政上、患者が発生し、死亡者が出たので、これの原因を追及し、その手段といたしまして、この研究費によりその原因の追及と適当な治療法の研究という、この二つの項目をあげてこの研究班員に知識経験者になっていただいて、その大目的に向って研究を続行願っておるわけでございまして、それがそういう研究の――広い意味の研究、行政の責任ということになればまた別でございますが、直接この事件発生その他の行政責任まで厚生省がこの班に負わしたということでは最初からなしでやっております。あくまで厚生省の知りたい原因の探求と、適当な治療法の発見ということをお願いする、こういうことでやっていただいておりますので、従って、この研究班からあるいは衛生部に向い、あるいは大学に向って正式の、公式の行政上の要望を出していろいろなことをお願いしたということはあり得ない、こう存じております。なお、衛生部という県民の衛生行政の担当に向いましては、これは厚生省から府県知事という自治体に対する指揮権によりまして、必要なことは、これは調査あるいは報告の聴取あるいは必要な行政の現場における措置ということは、これは行政上の命令で別途にやる、こういうような形になっておりまして、研究班とは分けております。
  103. 森中守義

    委員外議員森中守義君) なるほど御説のように、こういう研究調査というものが、いわゆる公機関としての文書の命令や口頭の命令によって動くということは、これはやはり問題があろうと思うのです。しかし、問題はありますが、私は特に主張しなければならないのは、熊大に県が委嘱をした。県が委嘱をしたということは、それをずっと延長していけば、国の機関がそれを委嘱をしたという解釈がとれると思うのです、地方自治体と国という、こういう相関性におきまして。だから、そのことは厚生省の方では、何も厚生省は熊大に頼んではいないという、そういうきちょうめんなお答えが出るかどうかわかりませんが、少くとも責任の帰属というものは、地方自治体あるいは国の行政機関、こういう関連性を生じてくると思います。そうなれば厚生省としては、熊大は文部省の所管ですから、当然文部省を通じてこういうことはどうかというような御相談もあってしかるべきであるし、ことに問題にしなければなりませんのは、厚生省が三十一年に科学研究費として十七万出している。それから三十二年度に五十万、六十七万を出されている。これに対して文部省では、この問題の科学研究費という名目で、三十一年度に十五万、三十二年度には六十八万、合計八十三万の金が出され、加えて三十一年度には、熊本大学に、この問題の研究設備費として二百五十八万出ております。あるいは学用患者として百万、委託研究費として、三十一年、三十二年、合計百二十二万、こういう国の経費が出されているのです。もちろんこれは国の経費ですから、厚生省であれ、文部省であれ、どちらでもいいと思うのですが、もう少しこの辺の分限というものが明確でないと、研究の費用についても、熊大では困った困ったという話を私どもは聞いております。いつぞやは積算書ができて参りました。こういう器材があるならば、この病原の究明はさして困難ではなかろうという熊大の医学部長あたりの話も聞いたことがあります。しかし、行政上の責任がきわめてあいまいであるところに、こういう金の出どころも、国の経費の出費等にも、一つの盲点を生じているのではないかということを考えますので、大へん設置法など取り出してくどい質問になりましたが、御質問を申し上げたのでありますが、要するに、この問題の行政上の責任体制というものは、最初からすこぶる明確でなかった。もちろん明確でないその当時の事情等もよく勘案できますが、いま一歩進展した形でこの問題を解決されるために、行政上の責任は一切厚生省がとるならとる、こういう御見解をお持ちであるかどうか、この点をもう一回お答えをいただきます。
  104. 山口正義

    説明員(山口正義君) 私が前の国会においてお答え申し上げましたことを御引用になっていろいろ御質問もございましたが、先ほどから、事務当局といたしましては、環境衛生部長からお答え申し上げておりましたが、ただいまこの仕事を直接所管部長としてやっておりますのでお答えを申し上げますが、先ほど御質問の中に、前回の委員会における発言についての話がございましたので、私からお答えさしていただきたいと存じます。先ほどからお話がございましたように、また大臣からお答えがございましたように、こういう特殊な疾病が起りまして、それに対して国民の保健衛生を所管しております厚生省としてその原因を究明し、そしてそれに対し治療、予防なりの的確な対策を立てていくということは厚生省の責任である、そういうふうに考えておりますが、ただ、その原因がはっきりいたしました際に、これは仮定の問題でございますので、そのあと原因のいかんによりまして、責任の所在もまた別のところに生ずると思いますし、また対策といたしましても、対策がわかりまして、これが現にすでに行なってもらっております水産関係の仕事でございますれば、それの責任は農林省の水産庁というふうになると思うのでございます。この特殊な疾病の原因を追求してそれの対策を見出していくということは厚生省の責任である、そういうふうに考えております。
  105. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 大体責任の問題は明らかになりましたので次に移りますが、目下その研究の三体というものは熊本大学が持っておりますか。これが第一点と、それと熊本大学は尾崎医学部長が研究班の班員になっておいでになりますから、勢い松田疫学部長、あるいは北岡部長あたりと連携をとりながら、一つの目標に向って進んでおいでになることであろうと思うのでありますが、この研究班の運用の状況はどういうことになっておるか。先刻の御答弁だと、二月の十五日に一定の研究課題を設定をした、こういうことでありました、その語音から受けるのは、きわめて長期の態勢であって、一年に一回かないし二回かの年間の研究目標を出してその方向に前進をされているような、きわめて消極的なように私はとるのです。しかし、問題は一刻も早く解決しなければならないような問題でありますから、この研究班の運行の状況について、いま少し具体的に御説明を願いたい。
  106. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 今の、実際にこの研究班に関係いたしまして研究をしていただいておる研究員の数は相当多数ございます。熊本大学の関係の各教授、それから公衆衛生院、国立衛生試験所、これのそれぞれの化学、あるいはこういう生物の方の関係者が実際には研究を担当してやっておりますが、研究班として、代表して熊本から連絡に入っていただいておる公式の総代は医学部長さんになっていただいております。従いまして、実際に研究にタッチしておる研究者の数から申しますと、熊本大学の方が一番多いのであります。従ってやはり熊本大学が中心ということは、申せます。これは地理的の便利もございまして、一番近いものでありますので、材料の収集、それから現実に六人患者が現在入院しておりますので、これらの関係からこれは中心にならざるを得ない、こう存じます。また適当であろうと思っております。  それから研究班の運営の状況でございますが、今まで東京で正規に厚生省中心にこの班が連絡のため集まりましたのは、私になりましてからは四回であります。最終が二月の十五日、このほかに日本衛生学会、それから公衆衛生学会というときに、ほとんどの班員が必ず学会に発表をする、この問題を中心にいつでも発表されておりますので、集まりますので、そのときには内容はかなり同じでございますが、臨時に毎回集まりを開きまして、研究の進展状況の報告し合いを必ずやっております。ただこれを、しばしばかような班の連絡会議を、非常に離れておるわけでございますが、開いていく方が効果がより上るかどうかという点につきましては、進展しております研究を、文書である程度お互いに話し合ったものが完成いたしますと、班長のところに集めるという形を今までとっておるのによりまして、大部分はそう一月に一ぺんというふうに集まらぬでも、今までのところは障害がありませんので、それらのレポートを集積いたしまして、どうしても意見を戦わせねばならぬというときをねらいまして、大体今までの経過では、三月ないし四月に一回というようなことになっておりますが、この程度の間隔で今までのところは大丈夫である。ただし、先般も最終にきまりました水中における魚類の有毒化という一番ポイントになる実験並びに水俣湾の関係におきまして、毒物が順次人体あるいは動物に入ってきます経路の追求という題目を大体きめたわけでございますが、これが実際に一部は取りかかっておると存じておりますが、もし具体的に非常にこれがなりますと、これは班員をもっと増加しなければならない。各種の班員を増加しなければならない。これは私も先般の会議のときに、それがぜひ必要である、そうなれば熊本大の代表者につきましても、医学部長のみならず、他の学部の方、さらに水産庁の出先の研究機関等も必要であろうということで、その場合には班員から、会議を開くなり、あるいは連絡を受けて、諸般の必要な計画を立てるからというお約束を申し上げる、今までのところはまだその具体案が出て参っておりません。これは至急もう一度班長と――班長のところへあるいはある部分は集まって参っておるのかもしれません。これは至急連絡をとりたい、かように存じております。
  107. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 大体わかりました。それで冒頭に御質問申し上げた物質の確認は、大体三つの主要素によってでき上っておる、こういうことでありますね。それで、ただいまの御答弁で明かになりましたように、さらに医学を過ぎて化学であるとかあるいは薬学、工学、あるいは水産学、地質学、こういうように多角的な研究態勢をすみやかに具体化する御意思があるか。今そういう御意思のようでありましたが、まあこれはもうすでに現実の問題ですから、この委員会でも終了したならば、直ちに行政上の責任においてこういう研究態勢をおとりになる御意思があるかどうか、このことを明確にお答えいただきたいと思います。
  108. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) これはただいま御説明申し上げましたように、ぜひそういう知識の網羅が現段階で必要であるということは、私どもも必要を感じ、それから学者方からもさような意見が出まして、先般そういうことだけは話し合いが済んだわけでございますが、さらにどういう方々がいいかということは、従来の研究班員の方々が一番よく知っておられる。自分らで手に余る題目になってきたものでありますから、その必要な案を網羅してもらいたいということを注文を出しておるわけであります。案を出しておる、どういう構成メンバーにするか。それが出ましたら今度は問題は、今度その新たに増加して構成された委員会における、研究の細目をきめなければならない、方針をきめなければいかぬということですが、それがきまりますと予算の問題があるわけでございます。現在、厚生科学研究費といたしまして今年も成立いたして決定いたしておりますのは三十万円でございます。果してそれで間に合うものか、余るものか、実際の対策を伺いませんとわからぬわけでございますが、ただその場合に、先ほども御指摘がありましたように、文部省は文部省の系統の科学研究費を使っておるじゃないかということで、厚生省一本で、この水俣の研究費に関する限り一本でやったらという御意見も学者の間から出ました。しかし、これはやはり現在熊本大学という特定の仕事を引き受けて常時フルにやるところにさらにお願いするわけでございますから、研究費だけでも別に差し上げてもいいようでもあるし、しかしながら、従来の役人としての仕事の中の時間の中で実はさいていただくわけで、夜中だけやっていただくわけにいかないのであります。本来の仕事の中でやるということも言えるわけでございますので、今のように厚生科学研究費がさようにきまったということで、まだ、幾ら要るということがわからぬということで出てきましたときに、この前も横の省の連絡会議を開いたときも申し上げたのでありますが、今後必要な場合には御援助を願う。援助といいますよりも、実際には原因がはっきりして参りますと、行政上の責任は厚生省のみならず、その種類によりましては農林省あるいは通産省に、当然これは同じようにその所管の行政の措置をすることが必ず起ると想定されますので、同じ立場でこの問題の処理に、研究について当っていただくことが起るということは大体申し上げてあるわけでございますので、それによって善処したい、こう存じます。
  109. 矢嶋三義

    委員外議員(矢嶋三義君) 話が先に行く前に、さっき確認されました究明の責任は厚生省にあるということですね。これは確認されたわけですが、それに関連して私は一、二点伺いたいと思うのですがね。究明の責任は厚生省にある。そうすれば、熊本県なら熊本県にこういう事態が起った、究明してほしいという要請がありますね、自治体からね。そうしますと、その熊本県はその原因を早く究明してほしいというような責任感のもとに、厚生省に逐次連絡をとって要請して参るという責任があるのですか、ないのですか。
  110. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 一般の伝染病等でございますと、これは法律に基きまして……。
  111. 矢嶋三義

    委員外議員(矢嶋三義君) 水俣病の究明に限定して時間がありませんから。
  112. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 水俣病の場合でございますと、県が必ず時々刻々に厚生省に当然最初から報告する義務というものは現在のところございません。ただし、これは県自体で、小さい問題でありますと県自体で片づけて、こういうことがあって、こういう措置をして片づけた、対策も立てたという報告は、これは厚生省に普通通常常識として参りますが、当然の責任はないわけでございます。しかしながら、水俣病はこれは非常に最初から県では原因がわからぬということで、脳炎を疑って厚生省が乗り出したくらいでございますので、その経過から見まして、進展あるいは変化その他がございますれば、これは当然熊本県ではわれわれの方に報告がある、こういうふうにお互いの了解はできておるわけでございます。
  113. 矢嶋三義

    委員外議員(矢嶋三義君) だから、私が具体的に伺っておることは、あなたのところは究明の責任があり、努力していると。そのことについて熊本県の方からその後実情はこうだと、早く原因の究明を明確にしてほしいというような要請がどの程度あったかということを伺っておるわけです。
  114. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 先ほどからの行政責任といいますのは、熊本県にないのではなくて、先ほどからの話は衛生当局にある、今の原因の究明は。こういうことでございますので、厚生省もそれから熊本県も同じようにこれは責任があるわけでございます。相互に、これは当然厚生省に依頼して初めてこの原因の究明を始めるのではなくて、相互に、知ったならば直ちにやるという形で従来進んでおるわけでございます。
  115. 矢嶋三義

    委員外議員(矢嶋三義君) いや、僕の伺っているのは、厚生省と県の間にどの程度の連絡が最近あったかということを伺っているわけです。
  116. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 先般の二月十五日の委員会に、これは熊本県の担当課長がこの委員会に参加して参りまして、そのときに、それまでの県に関する報告を私どもにも、また委員のその他の方々にもしたわけであります。その後は、文章なりあるいは口頭でその後のことを現在のところ直接連絡を受けておりません。
  117. 矢嶋三義

    委員外議員(矢嶋三義君) もう一問、あとでさらに聞きますがね、私はここでもう一問関連して伺いますが、伺っておって、行政官の答弁のように聞えないのです。どこかの研究所の所長さんがお話しになっているような感じを受けるのです。究明の責任が厚生省にあるということが明確ならば、十分な連絡をとっていない熊本県も熊本県、厚生省厚生省です。山口さんも御記憶があると思いますが、私はかつてある委員会であなたにお伺いしたいときに、もう究明も間もなくできる、こういうことだった。実は私は解決したと思っておったわけですね。ところが、あなた方はつつかれたときだけちょこちょこっとやるだけで、事実上私は原因の究明というものは中断されていると思うのです。おそらくそれに違いない。先ほどの答弁を伺っておっても、これは単に学理の研究をやっているわけではない。きょうあすの生活の問題です。きょうあすの政治の問題を論議しているわけですね。従って、これは先ほど森中委員からも追及されておりましたが、あとで伺いたいと思いますが、先ほど、究明の責任は厚生省にあると言うならば、山口さん、今ポストが変っているわけですが、間もなく究明ができると言って、大厚生省の組織で二年有余もしてこんな原因を究明されないで、つつかれたときだけ問題をやって、あとで研究が中断されているということでは、私はこの責任はきわめて重大だと思う。この点に限って厚生大臣と山口さんの御答弁を伺います。
  118. 山口正義

    説明員(山口正義君) この前私が矢嶋先生にお答え申し上げましたときは、まだマンガン、タリウム、セレンというところまでは突きとめていなかった時期ではないかと思います。あるいは私の記憶違いであったかと思いますが、さっき環境衛生部長から御説明申し上げましたように、そういう三つのものが非常に濃厚で、大体そう考えていいだろうというところまで参りました。それであと、それがどういう経路で魚に入り、また人間に入ってきたかということが一番ポイントでございます。それを現在究明してもらっておるところでございますが、いろいろな所の泥をとってはその移り工合というものを調べてもらっておりまして、泥やなんかを調べておるわけでございまして、あるいは非常に学問的な研究ばかりしておるではないかという御指摘があるかと存じますが、これは事柄が非常に特殊な中毒でございましてむずかしゅうございますので、やはり専門家の手を借りなければなりません。厚生省の衛生試験所の人間も、これは新しい化学物質であるというような見通しがはっきりいたしましたので、そういうメンバーも班員の中に加わってやってもらっておるわけでございまして、私どもは厚生科学研究費というような費用がございますが、それで研究をしてもらって、その原因がわかりますれば、それに基いて次の措置を打つということでございます。しかしとりあえず、漁民が非常に生活に困っておられますので、その漁場を別の所に作るというようなことについては水産庁から財政的な手も打っていただいてやっております。また医療費の問題あるいは生活費の問題につきましては、先ほど環境衛生部長が申し上げましたように、それぞれ関係方面に、具体的に申し上げれば、連絡をとって特別の措置をとってもらっておるわけでございまして、非常に時間がかかっておるような御指摘で恐縮でございますが、事柄が非常にむずかしい問題でございますので、決して委員会でお尋ねがあったとまだけにいろいろなことをしておるというわけではございませんので、それぞれの担当の者が専門的の立場から検討を続けておるわけでございます。
  119. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) ただいま公衆衛生局長から御説明申し上げましたが、私も生活保護の問題その他については、十分な手を厚生省所管の仕事として打って参らなければならぬと思います。ただいまのお話は、一番大事などうして健康に障害が起ったかという原因の究明であります。これは私も今後とも結論がはっきりなるべく早く出るように事務当局を督励して仕事を進めて参りたいと思います。
  120. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 私は大へん逆戻りするようで恐縮ですが、先刻大臣にその責任がすべて厚生省設置法によって厚生大臣に帰属する、それでいいかという確認をしたときに、大臣はその通りだ、こういう答弁がありました。従って、その意味は今矢嶋委員が言っているように、行政上の責任体制がこれから先は明確になる、明確にする、こういう大臣の答弁だということで了承しておるのです。で、今までのことを、山口局長やあるいは環境衛生部長がサボっておられたとか、あるいは熱意がなかったという、そういう非難や批判はしておりません。大へん努力に感謝しております。むしろ少し控え目過ぎるということなんです。何となれば、厚生大臣地方の知事に委任しておる事項があります。その委任された事項をなぜ厚生省としては地方の知事に対して強烈に指示をしないのか、これは明らかに怠っておりますよ。非常に控え目です。委任事項の中にこういう公衆衛生に関する事項は、原因がたとえ明瞭であろうと不明瞭であろうと、地方の知事はその職権の範疇に大臣から委任されておる事項がある。ところが、そういうものを厚生省は押そうとされていない。学者あるいは研究される人たちの気持を尊重されるのはけっこうです。しかし、その背景にあり、そういう研究態勢を強く推進していくものは行政上の指揮系統、命令系統、そうして指揮命令というものを裏づける予算、そういうものが相待って私は進展しなければこの問題の速急の解決は困難だ、こういうことをこの際指摘しておきたいと思うのです。そういう意味で、厚生天津が責任の所在は厚生大臣にある、こういう明確な答弁で私はそこまで推しはかって了承いたしております。従いまして、ちょっと先刻矢嶋委員の言葉が足りないような気もしますので、そのことをあえて付言をしておきます。  そこで、本論に返りますが、先刻環境衛生部長のお話に上りますと、医学の段階を過ぎて、さらに多角的な学会の動員が必要である、そのことを認めておいでになります。しかし、これはすでに検討の段階は私は過ぎておると思う。むしろおそまきに失するくらいに具体的に実行の段階に入るべきだと思うのです。あと金をどうするかということは、佐野政務次官大蔵省からおいでになっておりますからあとで承わることにしまして、すみやかにこの委員会が終了いたしましたならば、そういう多角的な学会を動員して態勢を確立するというお約束がこの際厚生大臣として私はあってしかるべきであろう、かように考えます。この点について大臣から明確にお答えをいただきたい。
  121. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 原因の究明及び対策の樹立に必要な措置をとるつもりでおります。
  122. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 大へん言葉が抽象的で、いかようにも解釈できるのです。もう少し具体的に、今、環境衛生部長は単に医学だけでなくて、もう少し多角的な学会の研究が必要である、こういう答弁でありますから、そのことをそうするならする、こういったようにお答えをいただきませんと、やはり抽象的では、具体的な問題ですから納得できないのですよ。もう少し明確にお答えいただきたい。
  123. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 動物実験等が必要であればそれをやって、結論を出すことができますような必要な指令なり、あるいはまた予算措置の要求もいたしたいと思います。
  124. 森中守義

    委員外議員森中守義君) わかりました。それで大蔵政務次官がお急ぎだということでありますから、ほんの二、三、政務次官にお答えをいただきたい。  その第一は、こういう原因が不明であるだけに、現行法のどれを適用するか非常にむずかしい。これは厚生省も農林省もあるいは通産省も文部省も、関係の各省がどの法律を適用することによって問題の解決ができるかという苦悶を大分長く続けておいでになります。そこで、この厚生省の中に設置されている科学研究班ですね、厚生科学研究班、およそ私は年間の予算の範囲内で、この問題に予算を注入されていると思う。その何が積算の根拠になっているかわかりません、水俣の問題が。しかし、それも実際問題として、大蔵省厚生省予算を要求される場合に、こういう問題が特段の考慮が払われておるかどうかについてはかなり疑いを持たざるを得ないのです。そこで、どの法律を適用するかということが明瞭であれば、補助金もあるいは助成金も出ましょうが、そういうわけに参りません。この問題は、これはもう救援対策の問題も、あるいは零細漁民の転業の問題も同様です。そこで、この問題の解決に必要なことは、予備費の支出をされるということ、これ以外に方法はない。よろしゅうございますね。私はここに二十八国会提出された、いわゆる予備費支出の内容を持っております。ぱらっとめくっただけでも七、八件ある。その一例を申し上げるならば、農林省関係では、洪水及び豪雨によって災害をこうむった、しかし、年間の款項目にないので、これを閣議に、よって予備費の支出をした報告が行われております。あるいは北海道の冷害、これは文部省の関係です。学用品を子供に渡す、文部省の経常予算にないという理由によりまして、閣議決定による予備費の支出が行われております。されに水産庁関係でも、漁港施設災害復旧事業、こういうような費目で、同様に閣議決定で予備費の支出が行われている。ですから、現行年度予算の補正の中に組み込むというよりも、むしろ私は閣議の決定ということで、研究に必要な予算あるいは適用法が現存いたしませんから、救援対策として、たとえば見舞金なり、あるいは慰謝金なり、どういう方法でもよろしい、一戸当り五万円なら五万円、十万円なら十万円という、こういう国として、これはもう明らかに天災です、現状のところ。だから予備費の支出を、政務次官としては考慮の余地があるかどうか、私はきょう官房長官の出席を求めております。本来ならば官房長官が閣議の中でこのことを発議をされ、閣僚の了承をいただくのが正当であろうと思いますが、おいでになりませんから、所管の政務次官として、大蔵省はどういうようにこの問題をおさばきになるか、その見解をとりあえず明らかにしていただきたい。
  125. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 私も就任早々で、実は昨日来、この問題を関係者からいろいろ聞いて研究をいたしております。先ほど来お話の、こういうように文部省、厚生省等にわたっており、あるいは奇病対策といたしましては、農林省関係においてもつきそいとか、あるいは魚礁等の対策も講ぜられておるようにも聞いております。従いまして今予備費の支出の問題でありますが、これもこの二、三年来のいろいろ予算が計上されておる現状等から見まして、今直ちにこれを予備費から支出するということがどうかということにつきましては、私ただいま熱心に傾聴いたしておりましたが、その判断は少しつきかねております。なお研究してお答えをいたしたいと思いますが、さように御了承願いたいと思いいます。
  126. 森中守義

    委員外議員森中守義君) それでは困る。よろしゅうございますか。北海道の冷害ですね、あるいは洪水、こういう場合には、閣議が先刻申し上げたように決定をして予備費の支出をしておるのです。そういう冷害であるとか、あるいは風水害あたりと何ら内容においては変りません。たとえて申し上げるならば、先刻も申し上げたように適用する法律がない。それでこれはあなたが責任を持ってここで答弁できないとおっしゃるけれども、私は国の予算、国の予備費の支出の方法、その大筋としては一つも間違ったことじゃないと思うのです。だから、検討する、研究するのではなくして、そういう方向に進もうというくらいのお答えはこれはいただいても一向差しつかえないことじゃないかと思う。むしろ熊本県もあまり金を出しておりません。水俣の市長さんもここにおいでになっているが、水俣の市の当局が盆だとか、あるいは暮だとかにむしろ見舞金を出しておいでになる。国が処理すべき問題を地方の自治体にこういう大きしな犠牲を払わせるというこうは、これは私は国としては、はなはだ遺憾なことであろうと思う。それですから、いろいろ申し上げると際限がありませんが、理屈の通らない内容じゃないのですから、すみやかに大臣と御相談になって、できるだけ早い機会閣議決定ということで厚生科学研究費、あるいは農林省の問題、生活保護の問題、こういうものを一括して予備費でお出しになる方が、補正予算に組むとか、既定予算の中から削って出すというみみっちいことではなくして、かえってすっきりすると思う。もう少し懇切丁寧な誠意あるお答えをここでして下さい。
  127. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 決して私誠意がないわけではありませんが、今文部省とか、もちろん厚生省大臣からも重要なる御発言もありましたし、まだ厚生省とその問題について話したこともございませんし、その他研究費につきましては文部省とか、あるいは漁民に対する対策としての農林省、こういうところとの話もいたしておりませんので、先ほど申し上げましたように御答弁申し上げた次第でございます。主管大臣等ともよく相談いたしまして善処したい、かような趣旨でございます。
  128. 久保等

    委員長久保等君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  129. 久保等

    委員長久保等君) 速記を始めて。
  130. 矢嶋三義

    委員外議員(矢嶋三義君) 大臣の判断が私は必要だと思うのですよ。原因を究明しているというのだが、この原因の究明ももう二年以上たっているのですが、これを早くやることが先決ですね。それで先般千葉県の浦安の問題、あれの問題については、東京都は弊害があるといってだっと結論を出した。これに対して会社側とか、他からも反論があったけれども、東京都としては委嘱して、あの弊害があるという結論を出してきた。だから水俣の問題にしても、それは学者がいろいろ言いますといろいろ出てきましょう。私は学者でないからわからぬけれども、しかし、大所高所に立って二年以上も研究して、資料が集まったら、原因がどこにあるかということは判断が私はつくと思う。これは勇断をふるって一日も早く私はこの原因の所在を明確にするべきだと思う。これは先ほどから局長みずから厚生省に責任があるということを言っておるのですから、事務当局事務官だけにまかせることなく、大臣、今度就任されたのですから、あなたずいぶんセンスも持たれている方だから、十分お聞きになって、ここ一週間以内ぐらいに結論を一つ出してもらいたい。それ以外にこの問題は解決、前進しないと思う。そこに私は問題点があると思うのです。あなたの政治的な答弁をお願いいたします。
  131. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) ちょっと一週間以内に結論を出すということは今ここで御確約いたしかねるわけです。先ほど公衆衛生局長からお聞き及びの通り、やはりこういう問題については、学識経験者の判断というものを求めなくちゃなりません。研究の足らぬところがあれば至急になにをいたしますし、御所望の結論を早く得るように私もせいぜい努力をいたします。
  132. 久保等

    委員長久保等君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  133. 久保等

    委員長久保等君) 速記を始めて。
  134. 森中守義

    委員外議員森中守義君) それでは、次の救援関係に入りますが、特に佐野政務次官に伺っておきたいことは、この救援方法の一つとしまして災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律、こういうのがあります。もちろんこの擁災者はほとんど無収入の状態のようでありますが、さればといって所得税の免税行為は与えられておりません。それですから、これを一つ具体的に救済をするという意味において、この災害被害者に対する租税の減免徴収猶予の法律の適用を大蔵省ではお考えになられるかどうか、このことをお答えいただきたいと思います。
  135. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 最初に申し上げましたように、私は経過をあまり存じておりませんので、ちょっと経過がわからないものですから、担当の者から一つ説明さしたいと思うのですが、お許し願います。
  136. 森中守義

    委員外議員森中守義君) いや、了承はいたしません、お答えがないのだから。これはやはり問題の一つとして事務当同が見えたら相談して下さい。  これも非常に大事な問題なので、厚生大臣がお帰りになってからと思いますが、山口局長の所管であるかどうかわかりませんけれども、適用法の一つとしまして、災害救助法というものがどうも当てはまりそうな気がするのです。それは災害救助法の第一条の目的、それから救助の適用、この一条と二条から判断をつければ、厳密な法解釈からいけば、この災害救助法を適用されるような気がする。どういう工合にお考えですか。今までどういう法律を適用することが実際のこの擁病者に対する救済になるかという見当もいろいろとつけてお見えになったと思いますから、この法律に対してはどうお思いですか、一条と二条。
  137. 山口正義

    説明員(山口正義君) 災害救助法は社会局の所管でございますので、私からお答え申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。今までも災害救助法ということでなしに、援護につきましては、もっぱら生活保護法あるいは世帯更生資金ということでやって参ったのでございます。例は違うのでございますが、四エチル鉛の問題が出ましたときも、災害救助法を考えたのでございましたが、ちょっと適用しかねるというような状況でございまして、私なかなかむずかしいのではないかというふうに考えるわけでございます。
  138. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 今、局長のお答えのように、生活保護法を初め生業資金の貸付、そういうものは局長の方の御配慮によって今適用を受けております。それは私は何をも言うところはありません。しかし、そういうことでは、今日の要するに完全な転業もできない。しかも、一家の支柱をほとんど失っております。だから、この際、単に生活保護法や生業資金の貸付でできないとするならば、もう少し大幅なワクの広がった法律の適用というものが必要だと、こういう工合に思う。従って、お手元にお持ちのようでありますが、一条の中には、災害救助法といえば、あたかも水害がある、あるいは台風がある、まあ、こういうことが通念として適用されておりますが、この中には対象事項というもの、どういう状況に適用するかという法律上の規定はないのです。これに類似する事柄というように一条ではうたっております。だから、天災にもひとしい非常に大きな災害だという解釈は、当然人命に損耗を与えておるわけですから、この災害救助法の適用ということは、あながち的はずれのことではなかろう、こう思うのです。社会局の方、おいでになっておりませんか。
  139. 久保等

    委員長久保等君) 来ておりません。
  140. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 来ていませんか。それでは、今のことは、大臣がお帰りになってからお尋ねすることといたしまして水産資源の問題について、農林省漁政部長がおいでだと思いますから質問をいたします。申し上げるまでもなく、わが国の今日の水産資源は、李ラインでありますとか、あるいは日ソ漁業協定、あるいは日中漁業協定、こういうものの制限によって大へんな危機に瀕しております。こういう際に、たとい、その占むる比率というものが、全体的なものからすれば軽少であったにしても、あの一定の制限区域というものが完全に死んでおります。これの病源の究明ができないと対策は立たないと思いますが、昨年農林省の御考慮によりまして、つきいそができました。こういうものをあと少し拡大をするということは、考慮の中にお持ちでございましょうか、その点をお答えをいただきたいと思います。
  141. 武田誠三

    説明員(武田誠三君) 水産庁といたしまして、水俣の問題につきましては、ただいまお話のございましたように、昨年度予算におきまして、魚礁の設置や、それから投石によりまして、沿岸魚の生息場所並びに海草の繁殖施設を講じたわけでございます。従来これらの沿岸の増殖施設につきましては、御承知のように三分の一が国の補助、三分の一が県の補助、あとの三分の一は地元の御負担を願って設置をして参ったわけでありますが、この場合に限りまして、半額を国で負担をいたしまして、なお半額を県で負担をしていただきまして、地元の負担はゼロということで処理をいたしたわけであります。私どもといたしまして、現在におきましては、昨年度の単年度の事業といたしまして、その本年度での継続は今のところ考えておりません。現在、本年度予算として、もしやるということに相なりますれば、現在の当初に申し上げましたような、一般補助の方式によって処理をするという形になって参るかというふうに考えております。
  142. 森中守義

    委員外議員森中守義君) なるほど、実情を詳しく申し上げておりませんと、ただいまの漁政部長のお答えは無理からぬことだと思います。しかし、昨年のあの措置を講じていただいたことによりまして、地元の当該者はいささかの生活の寄るべを発見したようであります。しかし、それでもなお問題の解決、終局的な解決に至っておりません。従いまして、私の手元に今、地元からの請願書が届いておりますが、この請願によりますと、どうしても昨年度同様の方式で、同様の個数で、この魚礁の設定を農林省にお願いをしたい、こういう請願の趣旨でありますが、ほんとうの現地の実情がそういうものであるという認識をいただくならば、昨年とられたような措置をおとりいただけますか。
  143. 武田誠三

    説明員(武田誠三君) これは予算関係のございますことで、私が今すぐここで、そういうことをいたしますということも申し上げかねる問題でございますが、地元の衆当局の、こういう問題についての意見なり希望も十分聞きまして、その上で、私どもとしての対策も考えて参りたいというように考えておるわけでございます。
  144. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 結局、要望が、要請が達せられるように研究考慮をする、こういう御意思と承わってよろしゅうございますね。
  145. 武田誠三

    説明員(武田誠三君) 私どもといたしまして、この問題について沿岸の漁業者が、漁業資源がこれによって枯渇することによって危険に陥るということは、極力これは避けなければならない問題だと思っております。ただ、その場合に、私どもとしてとり得ます措置としての限界があろうかと思っております。これはこの地先の水面におきます漁業資源を、昨年度講じました施設によりましてどの程度の回復がなされるものであるか、かつまた地元の理解、この問題について見解がどうであるか、それらの点も十分伺ってみないと、昨年度施設いたしましたものが、一朝一夕ですぐ翌日から効果を発揮するものでなくて、自然にそこは魚が集まって参る、あるいはその資源を地元でも保護していただかなければならないわけであります。それらの効果等も、十分私どもとしては地元の県当局の御意見を伺いまして、きわめて不十分であるというようなことでありますれば、これについてさらに善処いたしたいというように考えておるわけでございます。
  146. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 重ねて漁政部長にお尋ねいたしますが、これは昨年、漁業の方式の転換をしたい、こういう要望があったのであります。それには転換資金を農林省の方に要請があったようでした。しかし、前の新沢部長と関係者が御相談になりまして、こういう方式に落ちついたのです。ところが、先刻も申し上げましたように、水産資源の確保という面が第一、それからもう一つ見のがしてはならない問題は、目の前に魚が浮いておる、泳いでおる、ところが、それは危険区域である、しかし、漁業の転換ができない、転業資金がない、だから、危ないということを知りながら、危ない魚をとる、しかも、それは深夜にどことなく売られていく、こういうことが二、三実例としてあるということです。ですから、罹病を未然に予防するという観点と、水産資源の確保という、この二つの面から考えていけば、もちろん国の予算ですから、そうそう勝手にもいかぬということは、私どもわかりますけれども、大体水産庁がお出しになる金は二百万足らずじゃないかと思うのです、昨年の実績から参りますと。もちろん県も半分負担しております。地元も負担されておるようであります。こういうことで、そう農林省予算、水産庁予算の全体のワクからいけば、大した金にもならないようでありますし、大筋としては、筋の通らない話ではないようであります。できるならば予防ということ、水産資源の確保というこの二つの問題を中心にして、ぜひ地元の要望にこたえ得るような態勢を御検討願いたい。いずれまた、この問題については後日委員会でお尋ねをする機会もあるかと思いますが、何しろ零細漁民の今日ただいまの生活問題ですから、特に水産庁の方でも特段の配慮を私は要請をしておきたいと思います。これに対する漁政部長の御意見をもう一度お聞かせをいただきたい。
  147. 武田誠三

    説明員(武田誠三君) ただいまの御意見のことにつきまして、お話のように予防的な意味合いも兼ねて新しい漁場を設置していくということは必要なことであるというふうに存じております。漁業転換の問題につきましては、御承知のような熊本と鹿児島との県境でございます。鹿児島県の入漁入会の問題が生ずるわけでございます。これらの問題につきましては、かねて熊本県の方に検討お願いいたしまして、まだ特段の御返事が参っておりませんが、漁業転換の問題につきましてお話がございますれば、これについては、われわれとしても融資その他の関係についてもできるだけの努力を重ねたいというように考えております。
  148. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 大蔵省事務当局見えましたか。――それでは大蔵省事務当局に伺いますが、先刻政務次官に伺いましたところの災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律というのがございます。これを、内容をお知りでないかと思いますが、要するに天災的な病気のために大へん生活に因っております。従って、この法律の発動をこういう問題に対して適用することができるかどうか、この点についてお答えを願います。
  149. 鳩山威一郎

    説明員鳩山威一郎君) 私、ただいま主税局の方で確かめて参ったのでございますが、責任者でございませんで申しわけないのでございますが、一応お伝えしたいと思いますが、ただいまお話の法律につきましては、やはり天災ということを考えておりまして、風水害その他いろいろ、病気につきましては、やはり実際法律の運用としては考えていない、ちょっと法律解釈としても無理じゃないか、それで、まあ病気の場合につきましては、医療費の控除という制度がございますので、こういう病気にかかりまして長期療養を要するというような場合には、医療費が多額に要するわけでございますから、所得の五%をこえる医療費につきましては、控除制度をやるということになっておりまして、従いまして、長期療養を要する方々等につきましては、租税の減免というようなことではちょっと恩典に浴することがほとんどないんじゃないかというふうに考えております。
  150. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 主計官にお尋ねしますがね、この租税の減免の措置というものは、法律上どういうような状態をさしておりますか、どういう状態のときに適用になるのですか。
  151. 鳩山威一郎

    説明員鳩山威一郎君) 私専門でございませんので恐縮でございますが、災害の場合におきましては、やはり住宅、家屋あるいは田畑その他に非常な被害があるわけでございまして、従いまして、ほかに所得がございましても、そういう被害の復旧に資金的に非常に必要であるというような観点が立法の趣旨ではないか、こう存じておるのでございます。病気の場合には個人的な被害ということでございますので、もちろんその間労働をすることができないために、所得を得られないということはございます。そういった場合には、所得自体が得られません。で、従いまして、税がかかるということがほとんどないのではないか、というふうに考えております。従いまして、その場合は医療費の控除という制度があれば、大半の場合にはやっていける、こういうふうに考えております。
  152. 森中守義

    委員外議員森中守義君) これは私も法律の専門家でありませんし、立法に参加しておりません、この時期はもちろん。それで非常に自信のあることでもないのですが、ただ一条に言っておることは「震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害」、こういっておる。そこで問題になりますのは、病気にかかっておるという現場の認定からいけば、今、主計官の答弁が当てはまってくると思うのです。ところが、発病の原因は何か、こういうことになりますと、形態としては震災でも、あるいは風水害でも、落雷でも、火災でもない。ではないけれども、やはり原因がはっきりしないという、言ってしまうならば一つの災難である、こういうことが私は発病の原因としてはとれると思う。こういうことになりますと「その他これらに類する災害」という、こういう法律解釈が成り立つと思うのです。しかも、そういう事むずかしい法律解釈と同時に、こういったような経路をたどって病床に呻吟をし、あるいはそのために一家が塗炭の苦しみにあるとするならば、この減免の措置というものは、当然国としてはとっても差しつかえないのではなかろうか、こういう工合に思うのです。この点は、主計官というよりも、むしろ政務次官の方が政治的な意味合いでの解釈を下される方がこの問題の措置には妥当だと思います。今私は条文を読み上げてお聞きの通りです。政務次官、どうお思いになりますか。
  153. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 私も立法の当時に参画したものでもありませんしわかりませんが、拡大解釈はそこまでいくのか、あるいは地すべりの項目はないから、あるいはそういうものが入るとかいうので、今、主計官が申しましたように、病気によるその原因の問題がいろいろるる申し述べられましたが、そういうふうな、あるいはコレラがはやってこれが非常に人命を損傷したとかというような場合もこれも入るかどうかというふうなこともあるかもしれません。それで私、ただ本日初めてお聞きしまして、この二、三年来研究費が出されたり、いろいろ施策はされておりまして、森中委員の言われるような災害被害者に対する今のような税の減免というふうなことがきょう議論されたわけなんですが、初めてだろうと思います。果してこれが適用されるかどうか、どうも私話を聞いて考えますと、誠意や熱意の問題でなくして、何となく今の法律解釈に当てはまりかねるのじゃないかという私は気持を持っております。なお、専門的に研究いたしまして、これが適用されるものならばあたたかい気持でやらなければいけないことは当然でありますけれども、ただいま私が聞きましたところでは、一応そういう判断に立っておるわけでございます。
  154. 森中守義

    委員外議員森中守義君) これ以上追及するのもどうかと思いますけれども、条文の解釈は、これはいろいろあると思う。一体それじゃどういう解釈が一番正しいかということになると、ときに裁判による場合もありましょう。しかし、政治を行うそういう為政者の解釈がやはり私は一番大事だと思うのですよ。しかも、こういうのは何も政党政派で争うような問題でもありませんし、しかも、ごく限定された少数の人たちの生活を国としてどう見るか、こういう政治的な問題だと思う。だから、私の解釈がおそらく政務次官にぴんとこないことはないと思う。あなたの出身地である鳥取や島根においてもこういうことがあればやはりそういう解釈をしますよ。それはもっと重要なことは、岸内閣は減税を言っております。これはあなた少々税金を取り過ぎておる、そのくらいのことは少し返しなさい、だから、主計官あるいは主計局長あたりとも相談をして、何しろこれは熊本県全体に適用してくれという意味じゃありませんから、ぜひそういう意味で減免の措置をおとりいただきたいと思います。それで一つ大へんあいまいなようであるけれども、研究するでなくて、やれないということでなくて、そういう方向に努力しようということを会議録に残しておいて下さい。
  155. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 仰せのようにあたたかい気持で法を解釈していきたい、かように考えます。
  156. 久保等

    委員長久保等君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  157. 久保等

    委員長久保等君) 速記を始めて。
  158. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 大へん時間を取り過ぎて恐縮でありますが、あと一、二御質問いたします。文部省の学術局長お願いしておりましたので御質問いたします。  先刻来お聞きの通りに、この問題の処理が各省にまたがっております。むしろ私はこの機会に文部省が厚生省よりも多額の研究費を熊大に注入されておるということに対しまして敬意を表するのでありますが、やはり熊大は昨年でありましたか、この調査のために相当多額の積算書をお出しになっておりました。これに対する答えとしてどの程度の経費が流されたかどうかしりませんが、熊大の御意向によりますと、平素こういう医療器具が熊大に常置されておるならば、もう少し早く事態の解決が行われたというような話も聞いたことがあります。おそらくこの問題は熊大との間に話が全部立ち消えになっているとは思いません。従って、文部省としては、こういう問題の解決と同時に、文教委員会でこういうことはやることであるかもわかりませんが、熊大の積算書に対してこれから先どういう措置をしようとされるのか、そのことを承わっておきたいと思います。
  159. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 水俣の特殊な病気の問題に対しまして熊本大学といたしましては、地方当局から御要請もありましたので、その原因の究明並びに治療法等について、先ほど話がありましたような協力をいたしておるわけですが、これに対しまして文部省といたしましては、これは先ほど森中委員からもお話があったようでございますけれども、三十一年来、予算的に相当大学に支出をいたしております。三十一年に出しました設備費でございますが、これは二百五十八万円でございます。これは螢光光度計その他この病気の原因調査のために分析等をしなければなりませんので、そのための機械を購入する経費、そのほか、あるいは学用患者費、それからさらに続きまして三十一年、三十二年に、それからごとしも出すつもりでございますが、科学研究費を支出いたしております。科学研究費と申しますのは、御承知でございましょうけれども、大学で経営的に研究をするための経費のほかに特別に研究をやりますものを助成していくという性質のものでございまして、特別に研究をやっていくことだけにいわば特配的に出しておるわけです。熊本大学に対しましては、三十一年度十五万円、それから三十二年度、昨年が六十八万円、それから三十三年度には八十万円科学研究費を支出いたしております。この研究を継続していきたい、かように考えておる次第でございます。ただいまおっしゃいましたそのほかの熊本大学の経費の見積りというお話でございますが、これは昨年この委員会で私一ぺん森中委員お話を承わったことがございますけれども、大学といたしましては、このほかには正式に要求いたしてきておりません。でございますから、私どもといたしましては、科学研究費の支出をもって、この業務を大学が進めていきますためにこれを支出いたしたい、かようなつもりでございます。
  160. 森中守義

    委員外議員森中守義君) そうしますと、先刻お聞きの通りに、厚生大臣の方では医学の段階を過ぎてその他の部面にも進展をしたい、こういうようなお話であります。おそらく文部省の方にもそういう趣旨の御相談があるであろうと思いますが、そういう際に工学部に必要な金、薬学部、あるいはその他所要の各部面に必要な経費は今まで注入されたと同じような方式でお出しになる、こういうことに了承してよろしゅうございますか。
  161. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 一応その研究をし、あるいは教育をいたすのが本当の目的でありますから、そういう経常経費はきまった額が配分されると思います。しかし、それだけで足りない、特殊なものをやるという場合には、今お話をしましたように、経費を配分するわけでございますけれども、ただ、これは今後の問題でありまして、私ども工学部にこのために必要とする特別な経費ができるかどうかよくわかりませんので、そのお話は十分検討した上で考えたいと思います。
  162. 森中守義

    委員外議員森中守義君) ちょっとそれじゃ理屈に合いませんね。医学部に出してほかの方には出せないという理屈はないと思いますよ。どうですか。
  163. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 理屈じゃなくて、医学部は今研究をいたしておりますから、その研究に対して具体的な計画を持っておりますから、三十三年度につきましても、具体的な計画を持って科学研究費の申請をいたしてきております。これは大学の申請に基いてかような経費は本省としてやはり配分をして参りますので、今後十分検討しなければならぬということを申したつもりでございます。
  164. 森中守義

    委員外議員森中守義君) こういうことですか。医学部が資料が出てきたからそれに検討を加えて出す。だから工学部とかあるいは薬学部あたりが必要だということで予算の要求を出してきたならば、それに検討を加えて出そう、こういうことですか。
  165. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 今出しておりますその科学研究費と申しますのは、いろいろ種類がありますけれども、この三十三年度熊本大学に支出いたしておりますのは総合研究費と称しておりまして、これはある一つのテーマをとらえて、いろいろな角度からそのいろいろな専門の人が集まって研究するものに支出するものでございます。八十万と申しますのは、大体そういう総合研究としましてはまあ通常の、通常と申しますか、通常なレベルでございまして、大体まあこの中にその薬学部あるいはそのほかの研究所が加わっても相当運営できるのじゃないか、かように私考えますが、しかし、今後そういう計画が出ました場合に、今後の問題として検討する、かようにお答えしているわけであります。科学研究費といたしましては、これは年々予算がありまして、それを年々各大学から申請がありまして配分をいたします。これは厳密に審査委員会にかけて配分をいたしますので、三十三年度の科学研究費はもう配分済みでございます。でありますから、ほかの経費があるかないか、それに適当な支出の費目であるかどうか、こういうことになって参ります。
  166. 森中守義

    委員外議員森中守義君) わかりました。それからもう一つ伺っておきたいのは、学用患者が今熊本大に五名入れてもらっておりますね、この問題で。学用患者がいる熊大にこの予算が三十一年度で百万出ておりますが、これの一人の単価はどのくらいですか。
  167. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 今五名学用患者がいるというお話ですが、私どもの方で調べました数字では、学用患者としてではございません。入院はいたしておりますけれども、これは自費の患者でございまして、学用患者というのは、これは申し上げるまでもございませんが、学術的に患者の特殊な病気を研究していくというのでございまして従来、三十一年度で学用患者として十分研究いたしまして、現在入っている人は治療をしに入っているという関係になります。学用患者の経費は、年額にいたしまして全体で一億六、七千万あるかと思いますが、それを各大学病院に一定の基準で配分いたします。一人幾らということはちょっと私お答えいたしかねますけれども、そういう関係でございまして、熊本大学ももちろん今年度もし学用患者の扱いをいたしますならば、その程度の経費でまかなっていくということでございます。
  168. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 大へんこまかい質問になりますが、すでに五名の入院されておる人たちは学用患者としての価値がない、つまり研究の対象から除外された、それだけ研究は成果をおさめたということですか。
  169. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) これは扱いの問題でございまして、具体的に今の人がどうかということは私よく存じませんが、今とにかく自費の患者として入院しておるということを聞いております。
  170. 森中守義

    委員外議員森中守義君) 山口局長にお尋ねいたします。五名の入院者、すでに研究の対象から除外された、つまりこの人たちに対する一切の学術上の究明、研究から除外をしていいのですか。
  171. 山口正義

    説明員(山口正義君) それはただいま緒方局長からもお答えがありましたように、扱いの問題になるかと思うのでありますが、この前の委員会でも、あるいは別の委員会であったかもしれませんが、学用患者として扱われておりました者を、生活保護法の患者として取扱って、そうして費用をまかなってあげるというふうな取扱いに変えております。現在はそういう取扱いでやっております。
  172. 久保等

    委員長久保等君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  173. 久保等

    委員長久保等君) 速記を始めて。
  174. 森中守義

    委員外議員森中守義君) ただいま委員長理事の打ち合せで、この問題の扱いの協議が行われたそうでありますから、その通りに私も従います。ただ最後に、厚生大臣がお見えにならないそうでありますから、山口局長に大事な点でありますから一つお尋ねしておきますが、こういうような問題が全国の方々に起きてはもちろん困ります。困りはしますが、世の中のことですから、どういうことでまたこういうような問題が起らないとも限りません。従って、予防措置ということもなかなかできないでしょうけれども、ただ、この問題の歴史と過程を顧みて、やはりこういう問題を処理する法律がないということ、これが一番私はここまで問題を紛糾させ、しかも、混乱を招いた要因であろうと思うのであります。従って、一つのできごとがあったから、すぐ何もかにも法律を作ろうということも、これは立法府としては一考の余地がありますが、問題が問題だけに、何かこういうものに一つの処理ができるような法律の制定というものを厚生省でお考えになりますか。
  175. 山口正義

    説明員(山口正義君) 法律の制定の意味がいろいろあるかと存じますが、一つには、これがその湾があると、そこに工場の汚水が流れ込んだ、それによって起ったということで、そういう公共の水が汚染されないように対策を講じていく、それに必要な法的な措置を講ずるということが一つの問題だろうと存じます。そういうことにつきましては、他にもいろいろ問題がございますので、現在これは関係する省がいろいろ多うございますので、経済企画庁が中心になりまして法律の検討をいたしております。できるだけ早い機会国会提出して御審議お願いしたいというような心組みで準備は進めておるわけでございます。ただ、あとのいろいろな援護の問題というようなことになりますと、これはまたいろいろあるかと存じますが、その問題につきましては、現在のところ特別に私の方で今準備をいたしておるということはございません。
  176. 森中守義

    委員外議員森中守義君) ただいまのお話厚生省のお気持もわかりましたが、やはり何と言ってもこういう不幸な罹災者を一日も早く全快させるということ、そうして再びこういうことが起らないということ、こういうことがやはりこの問題の究極の目的でなければなりませんし、また不幸なできごとでありましたが、学界の大へんな御努力によって、まあ一つの大きな学術上の歴史がここに残ったと思うのであります。従いまして、私は先刻も申し院げたように、何もかにも法律によって処理するということもどうかと思いますが、やはりこの内容が究極的に明確になった上は、法制定の必要があるかないかという最終的な結論が出ると思うのです。そういう際に、ぜひこういうことがわが国土に再び起らないような、たとえば工場廃水の取扱いであるとか、――工場だと断定する意味じゃありませんよ、ありませんが、やはりそういう工場設置あるいは扱う汚水の放出、こういうものに対する規制でありますとか、あるいは水産資源をそういうところに果して密着させるべきかどうかというような、こういうことまでも一つ考えをいただいて、ぜひ法制定については特段の御考慮を願いたいと思います。  で、さらに理事委員長打ち合せによりまして、後日もう一度この問題の扱いを討議するということでありますから、本日はこれで私終了いたしたいと思いますけれども、要するに三十一年以来この問題が、ときに新聞の大きなトップ記事に出たこともあります。あるいは週刊朝日やサンデー毎日、あるいはサンケイ等の週刊誌に、ときには政府が攻撃を受けたときもありますし、国会がまた同様に批判を受けたこともあります。それだけ社会的な問題としてうつされております。さなきだに現地の人たちの不安、焦燥というものは察するに余りある状態であります。どういう法律を適用するかというむずかしい問題もありますけれども、いま一度特段のお骨折りによりまして、できるだけ早く問題のすべての解決ができますように、次の委員会では私どもが当局に対して無限の感謝の意が表されるようなところまで喫緊の解決を特に私は懇請をしまして、大へん時間をとりましたが、以上をもってきょうの私の質問を終らせていただきます。
  177. 久保等

    委員長久保等君) 本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十八分散会     ――――――・――――――