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1958-08-01 第29回国会 参議院 外務委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年八月一日(金曜日)    午前十時十八分開会   —————————————    委員異動 本日委員佐多忠隆君辞任につき、その 補欠として内村清次君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青柳 秀夫君    理事            井上 清一君            鶴見 祐輔君            森 元治郎君    委員            笹森 順造君            杉原 荒太君            寺本 広作君            苫米地英俊君            山本 利壽君            内村 清次君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            羽生 三七君            安部 清美君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省欧亜局長 金山 政英君    水産庁長官   奥原日出男君    海上保安庁長官 島居辰次郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告   —————————————
  2. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) それでは、ただいまから外務委員会を開会いたします。  本日は、先般当委員会が行いました委員派遣について、派遣委員の方から報告を承わることにいたします。  まず、第一班、北海道に派遣された委員の方から御報告をお願いいたします。     —————————————
  3. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) ただいま、委員異動がございました。佐多忠隆君が辞任されまして、内村清次君が補欠選任されましたから御報告いたします。     —————————————
  4. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) それでは森君。
  5. 森元治郎

    森元治郎君 北海道班は、笹森先生と私と二人が、山本調査員と三名の編成になって去る十五日東京出発、二十三日終了という日程で行動してきました。主たる目的は、一つ千歳における領空侵犯に対する措置、いわゆるスクランブルというものの実態を調べるごとと、昨年外務委員会根室へ行ったときに回り切れなかった稚内方面漁業状態を調べる二つ目的でありました。千歳の方はわずか四、五時間の視察でありましたけれども、格別のことがなくて、領空侵犯ということも最近はないし、緊張状況もない、われわれはのんきで絶えず哨戒しておるのだということだけの状況で、領空侵犯措置をとったがために緊迫した状況が出てきたというような心配は現在のところは全然ないようであります。漁業関係のことは、北海道庁と稚内両方の意向をまとめますと、接岸操業の実現ということをどうしても一つやってもらいたい。ソビエトの方では、平和条約とからましてきているけれども、そういう新しい事態をよく頭に入れた上で、なおかつ強力な、しかも適切な外交措置を講じてやってくれと、それからオホーツク海域におけるサケ・マス漁業が操業できるように特段の措置をはかってくれというのが、総括的な陳情の趣旨でありました。また、実際に魚をとっている根室稚内方面漁業者希望の一番大事な主張は、とにかく平和条約を結んでくれと、根室方面においては歯舞色丹だけを返してもらっただけでもいいから魚をとらしてくれというような強い要望が出ておるようであります。しかしながら、歯舞色丹を返して、歯舞色丹の線で平和条約ができて、国境確定ができたならば、あしたから安全操業もできるし、自分たち希望が全部達せられるのだというような、少しくお気の毒でございまするが、甘い考えもありましたが、とにかく条約——魚をとることが先であるという強い陳情がありました。これに関連して、稚内方面でも、領土という問題よりも、現実経済価値のある魚をとる方が先だというような強い意見を述べられる方もありました。いずれにしても、現地漁民は、まことにお気の毒でありますが、魚をとることが第一であると、何とかとれるようにしてくれ、そのためには平和条約であろうと、何であろうとどんどん進めてくれ、こういうような希望でありました。われわれも、その希望は中央に帰って強く伝えるようにするということで帰って参りました。その他小さい問題もたくさんありましたが、それは後刻当局の方にお伺いすると同時に、彼らの希望というものは派遣報告書会議議事録に詳しく書いておいたつもりでありまするから、これをごらん願いたいと思います。
  6. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 次に第二班、山口県及び長崎県に派遣された委員の方から御報告を願います。
  7. 岡田宗司

    岡田宗司君 派遣された者は、佐多忠隆安部清美岡田宗司の三名並びに渡辺調査員であります。それで、私どもは、下関対馬、壱岐、唐津、大村長崎の各地を視察いたしまして、関係者諸君と懇談する機会を得たのであります。その問題は、例の李ラインの問題並びに密出入国密貿易の問題、それから大村におきましては収容所視察事情の聴取、長崎におきましては日中漁業関係問題等について、いろいろ関係者から事情を聴取したのであります。その内容につきましては、報告書を提出してございますから、これを速記録に載せていただきまして、それでごらんを願いたいと存じます。
  8. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) これにて両班の口頭報告は終りましたが、両班から委員長の手元に報告書が提出されておりますので、この報告書会議録に掲載いたしたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、ただいまの報告に関し、御意見、御質疑のおありの方は御発言を願います。なお、政府側からは、外務省板垣アジア局長金山欧亜局長、農林省から奥原水産庁長官、運輸省から島居海上保安庁長官が出席いたしております。
  10. 岡田宗司

    岡田宗司君 アジア局長にお伺いをいたします。  まず最初に、現在までの日韓会談経過報告を願いまして、それについて質問いたしたいと思います。
  11. 板垣修

    説明員板垣修君) 現在までの日韓会談交渉状況を簡単に御説明申し上げます。  御承知のように、四月の十五日から全面会談が開かれまして、本会議が約八回ばかり開かれました。主としてその本会議の議題は、議事日程委員会の構成をどうするか、用語をどうするかというような問題を討議したわけでありますが、その結果、基本関係委員会請求権関係委員会——この請求権関係委員会二つに分れまして、一般請求権船舶二つの小委員会がございます。それから国籍処遇関係委員会漁業問題の委員会と、この四つの委員会が構成されまして、それに基きましてそれぞれの委員会開催されたわけであります。しかしながら、今日まで委員会が開かれておりまするのは、請求権関係船舶小委員会と、それから国籍関係委員会、この二つだけであります。基本関係委員会は、現在の段階におきましては、やはり諸懸案をまず相当めどをつけてから、最後に基本関係に入るということになっておりますので、これはいずれにいたしましてもあと回しになっておる次第でございます。問題は漁業関係委員会でございますが、これは日本側といたしましては、できるだけ早く他の委員会と並行いたしまして開催を要求しておったのでございますが、韓国側主席代表になる人の個人的な事情もあって、これは先方の言い分でありますが、今日までおくれておりまして、いまだに開かれておりません。昨日向う側主席代表である林代表外務省を訪問して参りまして、いよいよ、少しおくれたけれども、八月の十五、六日ごろに開きたい、そして漁業委員会は八月の二十日から開きたいという申し入れがありましたので、若干おくれましたが、ともかく漁業委員会も開かれる見込みがついた次第でございます。  さて、今まで開かれておりまする委員会審議状況を見ますると、やはりいろいろ困難な問題がありまするので、相当議事手続というような問題で非常にもめておりまして、船舶委員会などはまだその段階でございまして、十数回開きましたが、まだ実体的な問題に入っておりません。比較的進んでおりますのは、国籍関係委員会でございまして、これは今まで数回開かれておりまするが、まだ実質的な討議まで入っておりません。だいぶ山にさしかかってきて、相当両方の対立が激しくなっておるという状況であります。全体的に見ますと、今まで申し上げましたように、相当遅々たる状況でありますが、ともかく前に向って進んでおることは事実でございます。ただ、日本側といたしましては、一番大事な漁業委員会というものがもう少し審議が進まなければ、全体としてはやはり進まないのじゃないかというように考えておりまして、まず何よりもこの漁業委員会開催ということを強く主張して参った次第でありまして、これが少しおくれましたが、八月の半ば過ぎから開かれることになりましたので、今後日韓交渉が各委員会とも若干の進展を見るのではないかと思っております。
  12. 岡田宗司

    岡田宗司君 日韓交渉については、私たち非常にいろいろと疑いを持って見なければならぬ面がたくさんあるのですが、最近におきましても、柳公使矢次氏とともに、藤山外務大臣も同席をいたしまして、岸首相に会っておるのであります。それで、矢次氏の日韓関係における活動というものは、なかなか外から見ていると動きがひんぱんなようであります。かなり日韓会談等にも影響を及ぼしておるのではないかと思うのですけれども、その最近の柳公使矢次氏と一緒に総理大臣に会った、そのことは、どういう内容を持ち、また、それと最近の日韓会談の進行とどういう関係があるか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  13. 板垣修

    説明員板垣修君) 矢次氏の最近の動きにつきましては、われわれ事務当局は全然存じておりません。ただ、昨年の暮れに締結されました抑留者相互釈放関係につきましては、矢次氏が相当裏面で活動されたことは事実であります。しかし、その際は、私直接接触いたしましたが、矢次氏ともよく連絡をとりまして、相当効果をあげたことは、私は否定できないと思います。その後の動きにつきましては、矢次氏が総理の個人的な特使として韓国に派遣されたという以外には、われわれ外務省といたしまして、特に妨害になるという、そういうような感じは受けておりません。最近矢次氏が同席しまして、林代表総理との会見をあっせんしたようでありますが、これは私ども聞いておりませんし、その後の会見の結果を聞いてみましても、特に全面会談の全体の動きに非常な——いい意味においても、悪い意味においても、影響を受けているとは、私ども感じておりません。
  14. 岡田宗司

    岡田宗司君 この前、大村収容所北鮮系連中がハンストをやりました。それから、いろいろ北鮮系の方からも要求が出ておりますが、結局三年以上収容所に抑留されておる者、それから病気の者を国内釈放するということにきまったわけであります。まだ実際には釈放は行われておらぬのでありますが、この問題がそういうふうにきまりましたときに、柳公使がこの日本側のやり方というものは日韓交渉にも重大な影響を及ぼすだろうということを言ったのでありますが、その後、韓国側から、この問題について正式にどういうふうなことを言ってきたか、それをお伺いしたい。
  15. 板垣修

    説明員板垣修君) この決定が新聞に報道されるとすぐ、韓国側から申し入れがありまして、これは去年の十二月三十一日の協定の違反ではないか、こういうことはやめてもらいたいという強い申し入れがありました。向うの要請によりまして、正式に連絡会議を開きまして、私どもといたしましては、その後の数カ月情勢推移にかんがみまして、今回日本政府がとらんとする措置人道上やむを得ざる措置だということを十分に説明いたしましたが、韓国側といたしましてはもちろん納得いたしません。その後、柳公使がしばしば私を訪れまして、何とかこの問題を円滑に日韓協議の上で処理する方策を考えてくれということは、しばしば申し入れを受けております。昨日も林代表から外務大臣にそういう申し入れがあったようでありますが、現在のところ、日本側としては、従来の私ども連絡会議で表明いたしました日本側立場というものを変えてはおりません。
  16. 岡田宗司

    岡田宗司君 韓国側があの北鮮系釈放に対して抗議をしている、その抗議内容といいますか、反対の理由、それはどういう点にあるのですか。
  17. 板垣修

    説明員板垣修君) この点は、双方の見解の食い違いがあるわけでありまして、御承知のように、大村に九十何名かの北鮮帰国希望者というものがあったことは、昨年もずっとあったわけでありまするが、この問題につきましては、韓国側は、これもやはり一括して南鮮——釜山に帰してくれという要望があり、日本側はそれは実行上の問題としても簡単には承諾できないという立場をとったわけであります。昨年の十二月三十一日の協定ができます際に、その点をまずはっきりするということになりますと、とうてい協定もできない。従って、日本人の漁夫送還という問題もおくれるわけでございます。この問題は、後日の実行上の問題として討議をするということにしまして、深くこの問題を取り上げずに昨年の協定が結ばれたという経緯がございます。しかしながら、日本側といたしましては、従来私が就任前におきましても、この問題については、前任者向う前任者金公使との間にいろいろな応酬がありました。日本側としては、やはりこの九十何人というものをそう簡単に本人意思に反して韓国側に帰せないということを言っておりますが、その経緯の上から見ますと、去年の協定の書き方に、日本側が送った者を引き取る、日本追放者を引き取るという意味の表現になっております。従って、向うが引き取る義務だけはあるが、日本側大村にいる朝鮮人も何も全部韓国側に帰さなければならぬという意味までは入っていないというふうに解釈いたしておるわけでございます。韓国側としては、日本にいる朝鮮人は全部韓国人なんだから韓国側に渡さるべきであることは当然であろということであの協定が調印されたということであります。従って、その協定解釈そのものについて食い違いがあるわけであります。さらに、その後、協定実行上の話し合いの際に、日本には漁夫の問題もありまして、私どもとしては本人意思に反して韓国に帰さない。しかし、本人がもし何らかの事情で、集団意思の強制によって、北鮮に帰りたいというような者があり、これが自発的に意思を変更した場合は、韓国に帰す。それまでは北鮮に帰さずに大村収容所に入れておくという非公式の話し合いがあったことは事実であります。しかしながら、その後たった一人しか意思の変更はなかったわけであります。その他の者は北鮮に帰るという意思をますます強くし、あげくの果てハンガー・ストライキに訴え、数人の者は注射を拒絶し、あるいは病院に入ることも拒絶しまして、ほっておきますと死人が出るというようなことになって参りまして、逼迫した状態になりましたので、日本政府といたしましては、人道上やむを得ざる措置といたしまして、ともかく国内一定条件の者を釈放するという措置をとった次第でありまして、こういう工合に韓国側日本側とは、そもそも協定解釈そのものについても食い違いがありまするし、それからその後の情勢も変って参ったのでありますが、韓国側は依然として、日本側と従来話し合った線を守ってくれということを主張しておりまして、それが現在争点となっておる次第でございます。
  18. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは基本問題、あるいは例の処遇国籍の問題を扱う委員会とも関連を持つことになるわけでありますが、日本政府としては、この韓国側日本にいる朝鮮人は全部韓国籍を持つ者であって、従って、送還される場合には全部韓国側に引き渡されるべきものと、こういう解釈をとってこれを主張しておるわけでありますが、これに対しては、日本側は従来からそうでなくて、やはり北鮮側に帰りたいという者は、本人意思を認めて、今すぐはできないでしょうが、韓国側に引き渡したりなんかしないという態度はずっととってこられておるし、また、将来もその態度は変らないで貫かれているということでございますか。
  19. 板垣修

    説明員板垣修君) 日本側としましては、韓国側主張である日本にいる朝鮮人は全部韓国人である、これは韓国政府側建前でありますし、建前の問題といたしましては、日本としては、韓国政府交渉をし、正常関係を結ぼうとするのでありますから、その建前は認めなければいけないかもしれません。しかし、その建前をかりに認めるにしましても、現実の問題として、日本にいる六十万人の中で相当数の者が韓国籍になることを拒否しておる実情である。そうなりますと、実行上の問題としては不可能ではないかというので従来も主張しておりますし、現在も主張しております、従って、帰国の問題につきましても、どうしても一部の者は韓国に帰るのはいやだということになれば、これは人道上の問題として本人意思を尊重しなければならないというので、従来の立場を続けて韓国に帰ることはできないというふうに考えております。
  20. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いしますのは、大村に今九十三人ですか、あの諸君釈放はまだ進んでおらない、何か条件を満たしたなら釈放する、こういうことですが、その点について、身元引受人というか、そういうものと、収容所との間の交渉が進んでおるのかどうか、それは近く釈放されるかどうか、それをお伺いしたい。
  21. 板垣修

    説明員板垣修君) これは直接法務省でやっておりますので、私ども詳しい情報は一々受けておりませんが、今まで聞いたところによりますと、相当釈放条件身元保証人選定の問題で話がつかなくてだいぶおくれたということであります。しかし、きのうの連絡によりますと、二、三話のついたものもあるようでございますから、韓国側に一応の余裕をおいて忠告し、釈放を実施するということに話のついたものから実施していくことになると思います。
  22. 岡田宗司

    岡田宗司君 大体話がついて順次釈放されるということになった暁に、今度は北鮮側連中北鮮送還するという問題が起ってくる。その送還の問題について、政府側では、今北鮮政府との間に何ら外交上の関係が結ばれておらない。従って、直接に北鮮政府とこの問題で話をして実行に移すということはできない、そうなると、赤十字というものを使うということが中国の場合におけると同じように重要な手段になってくるわけですが、やはり日本側としては、これは一つ人道上の問題でもあるしするので、赤十字によってそれを送還するという方法をお取りになるつもりであるのかどうか、その点をお伺いしたい。
  23. 板垣修

    説明員板垣修君) ただいま日本政府として決定しておりますのは、一定条件をもった者の国内釈放だけでございまして、これを北鮮に帰すかどうかということについて、日本政府として何らの意思決定をいたしておりません。ただ、従来数カ月の経験にかんがみまして、これを全部韓国に帰すことは不可能ということになりますと、いつまでも日本に置くわけにいかぬということになればどこかに帰さなければならないという意味から、先般の連絡会議におきまして、私から韓国側に対して国際赤十字に委託する案を提案いたしましたが、これは韓国側の峻拒するところでございまして、また、今後も韓国側としてそれを受託する見込はおそらくないと思います。ただいままではそういう段階になっておりますが、ただいま御指摘のように、具体的な問題につきまして、かりに北鮮帰国の問題が決定いたしましても、北鮮政府はもちろん、北鮮赤十字交渉する意思はございません。やはり第三国中立機関である国際赤十字ということが考えられるだけだと思っております。
  24. 岡田宗司

    岡田宗司君 国際赤十字を通じてもいいと思いますが、この問題は単に今度釈放される九十何人かの人だけの問題ではなくて、日本におります朝鮮人のうちで、やはり北鮮相当帰国をしたいという者の数も多いわけでありまして、いつまでも本人意思に反して日本にとどめておくということは、その本人たちにとっても非常な迷惑であるとともに、日本側においても私はいろいろむずかしい事態が起ってくると思うのです。従って、国際赤十字の手を通じてそういうふうなことが運ばれるということでありまするならば、私はまずこの九十三人の処置の問題から始めて、漸次そういう実際の道を作っていくことが必要であろうかと思うのです。もちろん韓国はこれを峻拒するでありましょうが、しかし、私は人道上の問題として、そして国際赤十字がそれをやるということを承諾した場合には、たとえ韓国が峻拒しようが何をしようが、私はそれはやってしかるべきものである、こういうふうに考えておるのであります。  で、これはおそらく日韓会談の基本問題あるいは国内における韓国人処遇問題にも関係はありましょう。そして、いろいろその面でむずかしい問題はあるでありましょうけれども、しかし、実際問題として、韓国政府日本における朝鮮人も全部韓国籍があるものとするということが事実に反する、非常に不自然なことでありますので、そういうような一つのフィクションに基いたものは私どもとしては断じて認められないのであります。従って、韓国は三十八度線から南の方の政府であるということで、その事実に基いて日本側交渉をするという立場で、日本側もそういう立場で私は交渉すべきであって、あまりに向うさんが無理を言うというようなことは、こちらもあんまり——無理が通れば道理引っ込むような交渉はされないようにしていただきたいと思うのでありまして、特に北鮮へ帰りたい人たちの問題については、将来やはり大きな問題になると思うのでありまして、一つ政府の方においても、この問題については事務的にあるいはまた、政治的にも十分考慮をしてもらいたいと思います。特に向うへ帰す問題といたしましては、国際赤十字が乗り出すということになれば、ナホトカを通じても何でも、向う側に道をあけることができるだろうと思うのであります。まあ、そういうふうに一つやっていただきたいと思います。
  25. 板垣修

    説明員板垣修君) お話しの点は承わっておきます。ただ、これは大きな政治上、外交上の問題でもありますし、全面会談との関係もございまするので、今後の情勢推移を待って処理したいと思っております。
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 それじゃ水産庁長官の方にお伺いします。これは例の李ラインの問題と関係があるのですが、実はこの問題は海上保安庁の方に先にお伺いしてから聞く方がいいと思うのですけれども水産庁長官農林水産委員会の方においでになるということでありますから、まず先に水産庁長官からお伺いします。  私どもは過日李ライン状況視察に、下関対馬の方に行って参りました。まあ、最近でもちょくちょく船拿捕されたというようなことが起るのですが、しかも李ラインの外で拿捕されるものもあるというような事態が起きている。これが不当であることは申すまでもないのですが、しかし、私は予防措置を講ずれば、相当拿捕を避けることができて、そしてそのために日本韓国との間のトラブルを少くすることができると思う。ところが、行って見ておりますというと、拿捕を避ける、トラブルを避けるための予防措置というものがあまり完全ではないというふうに考えられるのであります。たとえば韓国巡視艇と言いますか、警備艇というものの動向は、ある程度日本側のあれをもって察知できるのです。従って、こちら側がその察知したところを漁船に伝え、漁船がそれを知ることができまして行動を起せば拿捕は避けられるということが十分わかっておるのです。ところが、その漁船短波受信機がないということのために、知らないでつかまつちゃったというのがずいぶんあるのです。向うに参りまして、下関でもありましたが、あるいは対馬でもありましたが、みんな短波受信機をつけるということを漁業協同組合人たち、その他の水産関係の人は非常に要望しておる。私も保安庁の船に乗ってみて実はいろんなことを聞いてみても、それを漁船に備え付けておると、相当トラブルが避けられるように認めてきたのです。何しろ大型漁船は持っておるようでありますが、零細漁船はないのです。そして価格を聞いてみますというと、四万円というものもあり五万円というものもあると言うのです。おそらく零細漁船ではなかなかこれをつけることは困難ではないか、そこで水産庁の方ではこのトラブルがたくさん起っていろんなことで金を出すのですから、そういうことをなるだけ起らないようにするために金を出す、すなわちそういう漁船短波受信機をつけるということに対して補助金を出せるかどうか、その点を一つお聞きしたい。
  27. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 李ラインの周辺の漁業の盛漁期は晩秋から冬にかけてですが、昨年の秋にただいまお話のございました短波受信機漁船につけるという問題を解決したいというので、研究をしたことがございます。当時われわれの調査では、大体二万三千から三万円くらいでつけさせ得るのではないか、今二十トン以上の船ですと、これは全部無電機を持っております。十トンから二十トンの船でも六五%は無電機を持っております。従って、十トン前後くらいから以下のものにつきまして持たせるという観点から考えてみますれば、大体五百台見当をあの辺の漁業組合等に準備させる、それに対して国が補助をするということで目的を遂げるというふうな見当を持たれたのでございます。しかし、実は当時抑留漁夫送還問題の交渉も進行いたしておりまして、それに対する影響も考慮いたしましたのと、予算折衝におきまして、抑留漁夫の生活援護の問題を、予算的にさらに確保したいというふうなまあ考えもございまして、昨年は実はただいまのいろんな研究は実を結ばなかった次第でございます。しかし、実は今後も事態推移を見まして、ただいまのようなことをぜひ何らかの方策で解決するということに努力をいたしたい、かように考えております。
  28. 岡田宗司

    岡田宗司君 今二万三千円から三万くらいでできると、何か海上保安庁の方の第七管区の渡辺本部長の話ですと、一万八千円でできたということも言っておりました。ですから四万円、五万円という高性能のものを持つことも必要でしょうけれども、まあ二、三万円前後でできるならば、私は五百台ぐらいのものでしたら、そう大きな予算でもないし、それから起るところのいろいろなトラブルに出す金のことを考えてみれば、決して損はないし、ですからこれは一つ早く取りつけるように努力をしていただきたい。来年度の予算にこれをつけるようにするならば、これは相当李ラインにおけるトラブルがなくなるというふうに考えております。一つその努力をしていただきたい、こういうふうに思います。  それからもう一つ、次に長崎で中国側に拿捕をされた漁船漁夫の家族の人に会ったのですが、この家族の人たちは、韓国に抑留された漁夫の家族の人たちと違って、何ら援護措置を受けておらぬのです。あの人たちは民間協定があって、とにかく協定を破って入ったということで、これは日中漁業協会の方でも、その非を認めているというようなところから、政府としても出しにくいところがあるというふうに聞いてきました、しかし、実際話を聞いてみるというと、ずいぶん気の毒な面も多い。また、漁船の持ち主にしても、相当韓国の場合と違いまして、困っているように聞いている。これはいろいろな方法があると思うのですが、研究をして、その人たちのもちろん釈放を早くするような折衝は、いろいろな方法で講じるとともに、そういう人たちに対して、まあ気の毒なことですから、何とか手当をするように御配慮を願いたいと思います。
  29. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 先ほどお尋ねがありました無電の問題は、これは措置するとしますれば、明年度の経営予算といういうよりも、むしろ事態推移に応じて、緊急に予備費等で解決をするというふうな性格の問題であろうかと、かようにわれわれは考えている次第であります。  それからただいまお話のございました漁夫の家族に対する援護対策の問題でありますが、拿捕によりまする漁夫の生活困窮のために、給与保険の制度をしいているのであります。これは三十一年度あたりの事例を見ますれば、大体入ってきます保険料収入の五倍ぐらいの保険金の交付をいたしている。これは全部国庫が負担をいたしているのであります。給与保険の問題に関しましては、これは韓国関係はもちろん、日中関係あるいはまた、北洋の関係も、いずれも平等な適用がある次第であります。ところが、給与保険に入っていない、あるいは給与保険に入っておりますが、低額のものというものに対しましては、韓国関係につきましては、何分にも李承晩ラインというもののあの性格上、国としても生活援護の十分めんどうを見なければならないということから、全然入っていないよのについては、月一万円、あるいは低額のものについては、大体保険金の平均の一万五千円との差額の三分の二というものを国から見舞金を交付をいたしているのであります。これをさらにその他のものに広げるということにつきましては、大蔵省との間でも繰り返していろいろ論議を重ねているのであります。しかし、今の段階におきましては、実は日中関係等も、ただいまお話がございましたように、問題の性格が、非常に日韓関係の問題とは、また違った性格を持っているのであります。それは国民一般に対しまする生活保護の問題として、その他の国民と平等に処遇さるべきだという考え方で一応現在処理をいたしておる次第でございまして、なおしかし、今後よく研究をいたしたいと、かように存じております。
  30. 岡田宗司

    岡田宗司君 長崎県の漁政課長ともいろいろ話してきたのですが、なかなか生活保護法の適用がいろいろなことでうまくいかないのです。それで非常に困っておる。一家離散というような事態もすでに生じておる。従って、漁政課長には、生活保護法の適用について十分にいろいろな点を考慮して、すみやかに適用するようにということは、よく話してきたのですが、とにかく生活保護法の適用さえまだ受けていないという事実を見てきた。そういう点も十分に御研究願いたい、こういうことです。
  31. 森元治郎

    森元治郎君 時間がないようですから、大至急で、問題はオホーツク海の問題に限って、条約上では、この間の四月の日ソ・コミュニケによると、五九年一月からは出漁はお互いに停止するということになっておるのですが、現地の要望は、沿岸漁業者のために、オホーツク海のサケ・マスの漁場を解放してくれ、こういうことに対して、水産庁はどういうふうな態度で業者に臨んでおるのか。それから西カムチャッカあたりの例のサケ・マスの基地独航の要望が非常に強いのですが、これに対して、どういう指導をしようとするのか。日ソ漁業協定とそういう関係を伺いたいと思います。
  32. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) この問題の経緯を若干申し上げる必要があると思うのであります。すなわち今日、北海道の南岸、太平洋沿岸地区につきましては、小型の流し網の漁船が許されて、そこに回遊いたして参りますサケ・マスの漁獲をいたしておるのであります。しかし、オホーツク海につきましては、これはオホーツク海の沿岸に建網によりまして、サケ・マスの漁獲をいたしておりまする関係から、その沿岸のすぐ前で流し網によって漁獲をするということは、これは非常に困難な紛糾を招く問題でございまするので、従来とも、これに対しましては、流し網の許可をいたしておらないのでございます。ところが、オホーツク海の沿岸の漁民諸君が、自分たちにもサケ・マスの漁獲をさしてくれ、これは北海道の地先で、十トンあるいは五トン程度の船でとるということよりも、今出ておりまする要請は、五十トンクラスの船で、すなわち母船に付属しておりまする独航船と同じ程度の規模の船をもちまして、オホーツク海におきまするサケ・マスの漁獲をやりたい、こういう問題でございます。これに関しましては、今日、御承知のごとく、母船によってオホーツク海においては漁獲をいたしておりまして、これは、単にわれわれは資本漁業という観点からだけは考えるべき問題ではないと思っておるのでありまして、これに付属いたしまする独航船というものは、これは要するに中小漁業であります。従って、その経営に対してある程度の安定性を与えるという努力をわれわれはしなければならないと思うのでございます。北洋漁業が非常に伸びていくというときであれば、あるいは北海道を基地にいたしまする独航船と、母船に付属する独航船が競合ということも乗り切り得るかと、かように存ずるのでございますが、御承知のような日ソ漁業条約締結以来の今日の情勢におきまして、この北海道漁業者の、北海道を基地にする独航船の進出ということは、母船付属独航船との間に非常な利害の衝突を招き、非常にそこにむずかしい漁業調整の過程を経なければ解決できない問題である、かように考えておった次第であるのでございます。ところで、今年は一船団六千五百トン、明年はオホーツクにおける公海でのサケ・マスの漁獲を停止するということに漁業交渉の結果とりまとまった次第であるのであります。その話の過程におきまして、北海道を基地にする独航船であれば許されるのではないかという期待を北海道の漁民の中で持ったのでございます。そういう意味の若干の紛擾がございましたけれども、これはソ連の真意は、あのオホーツク海からとにかく基地独航をも含めまして、日本漁船によりまするサケ・マスの漁獲を停止させるということにあるということであるのでありまして、その点はよく説明をいたしました結果、業者諸君もその点はわかって参ったかと思うのであります。そこで、今あの協定ができました現段階における問題といたしましては、北海道を基地にする独航船でオホーツク海でサケ・マスの漁獲をするということは、これはとうてい期待し得ないのでございます。もちろん、日ソ漁業条約によりますれば、不断に、現在やっている措置について科学的な再検討をするという条項もあるのでございまして、そういう意味の可能性は今後ともないとは申し上げないのでございますが、しかしながら、今当面している段階におきましては、そういう可能性はとうていないという状況であるのであります。そこで、われわれとしましては、漁業の不振地帯に対する振興対策というものの中に、今日のオホーツク沿岸の漁民の状況を取り上げまして、そして浅海増殖その他いろいろな対策を集中的に総合的に実行していく、こういうことによって漁民の行くべき道を見出して参りたい、かように考えているのでございます。
  33. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、トン数の問題ではなくて、かりに十トンというもので西カムに行く、実際問題としてむずかしいですが、小さい船であろうと、あるいは五十トンクラスの独航船であろうと、サケ・マスの漁撈はできないのだ、こういうことですね。
  34. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 従来も、オホーツクに関しては、北海道を基地にするそういう漁業はございませんでした。一応今後ともトン数のいかんにかかわらず、公海における漁獲ということは、これを期待し得ないという状況でございます。
  35. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、黙って魚とりに出かける船があるとすると、これは密漁船ということになって、許可事業でしょうから、当局はこれを押えるということになりますか。
  36. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 事サケ・マスに関する限りにおきましては、ただいまのお尋ねの通りでございます。しかし、それ以外におきまして、底びき、あるいは刺し網、あるいははえなわ等によります漁業を今日オホーツクの沿岸漁民はオホーツクの沿岸においてやっているのでございまして、これらについては、何らの制約もない次第でございます。条約上には、あるいは漁業交渉の上においては、何らの制約もない次第でございます。
  37. 笹森順造

    笹森順造君 ちょっと今の森さんの御質問に関連してお尋ねしておきたいのですが、オホーツク海におけるサケ・マスの漁獲をソ連側においては、日本漁夫に対してこれを禁止するということに対することについては、先ほど長官も言われたように、多少の誤解があったように思うので、独航船ならばできるのだというような期待は相当北海道の漁民側において、ある。従って、その両方協定の条文に関して、はっきりとそれもできないのだということになっておらぬということなので、独航船に関するものは条文の上にも現われておらぬということを聞くのですが、そうではなくしてお話のごとくであるならば、条約協定の文言をはっきりしておいていただきたいのが一点と、もう一つは、魚族の保護のためにそういうことをするならば、オホーツク海における公海におけるサケ・マスあるいはオホーツク海の西カムにおける領海のサケ・マスをもソ連においても当分とらないというのであるか、ソ連だけは自由にとっておるのであるか、この二点だけをはっきり関連してお尋ねしておきたいと思います。
  38. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 第二回の日ソ漁業委員会におきまする決定事項の文言に関しましては審議の過程におきましても、また、最後にでき上りました文言におきましても、北海道を基地にする独航船が漁業をする余地は全然ございません。一々の文句を私は記憶いたしておりませんが、オホーツク海の公海におけるサケ・マスの漁業を停止する、こういう決定でございます。従って、これは、当然母船に付属するものにつきましても、また、基地を北海道に持つものにいたしましても、同じく適用のある文言であるのでございます。なお、日ソ漁業条約は、これは公海における漁業の規制に関しまする条約でございまして、それぞれの領海内における漁業活動というものに関しましては、これは何らの規制をいたしておらないのでございます。もちろん公海における漁業の規制に関しましての折衝過程においてそれぞれ領海あるいは河川等における漁獲の状況というものがいろいろ論議がされますが、条約の適用主体はただいま申し上げましたようなことに相なっておるのでございます。従って、ソ連はもちろん公海における漁業についでの興味を持ち、そういう研究もいたしておったようでございますが、過般の会合におきまして、将来そういうことを自分の方は絶対にしない、する意思もないということを宣明をいたしたのでございます。しかしながら、ソ連の漁業は御承知のごとく、沿岸の建網によって漁獲をするのでございます。従って、当然それは領海内でございます。従って、それは正面からこの漁業条約及びその委員会における決定事項の対象外に相なっておるのでございます。
  39. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、現地の方では、今笹森さんのおっしゃったように、できるのだというような期待を持ってやっておるということに対して、今御注意を申し上げます。  それからカニ・タラの小漁船交渉の過程においてだろうと思いますが、カニ・タラの小漁船は基地独航で幾らでもやれそうなふうに受け取れるのですが、協定上はどうなって、政府はどう解釈しておりますか。
  40. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) カニ及びタラ等の漁業に関しましては、まず、カニは条約の適用魚種でございますが、しかし、これは北海道を根拠といたします船等については何ら適用はございません。カニによって規制をいたしております事項は、条約によりますとすれば雌ガニ、稚ガニの漁獲の制限をするということだけでございます。また、今年度の交渉の過程におきまして出てきました結論によって西カムの沖合いに禁止区域を作る、あるいは日本側及びソ連側それぞれが自主的に母船による漁獲の規模を規制するというような申し合せをいたしたのでございますけれども、ただいまお尋ねのありましたような北海道を基地にいたしますカニにつきましては雌ガニ、稚ガニの漁獲についても制限はございますが、その漁業活動の規模等についての制限はございません。それからタラは、これは全然漁業条約の適用魚種でございませんで、これは国内的な規制以外には何らの制約もございません次第でございます。
  41. 森元治郎

    森元治郎君 共同調査というのはこれから行われるのでしょうが、共同調査の結果、今までの協定をひつくり返してわれわれに有利になることがあり得る問題はどういう問題ですか。
  42. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 漁業委員会交渉によりまして、両国のそれぞれ適用魚種につきましての調査項目が分担をいたされております。また、学者を交換してそれぞれの国内を見せるという申し合せに基きまして日本の学者が今カムチャッカに参っておるのでありますが、近くソ連側からも学者が日本をたずねて、日本漁業視察をする、こういう状況に相なっておるのでございます。そこで、私は今共同調査によってどういうプラスがあるかということに関ましては、資源の見方についての共同の基盤が漸次加わっていく、こういう意味におきまして今まで漁業交渉のつど根本的に全く対立する資源論を戦わしておったということが漸次一方々々固まっていく、こういう方角にある。従って、それが北洋漁業の経営規模の安定化ということに将来において役に立つ、こういう方角に寄与するのではないか、かように考えておるのでございます。しかし、今具体的に直ちにそれによってこういう点がもう日本に有利になるというふうな具体的なお答えは差し控えた方がよろしいかと、かように考えるのでございます。
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 水産庁長官にもう一点お伺いします。これも日韓の漁業の問題ですけれども、さきに衆議院の外務委員会でも問題になった点ですが、李ラインを認めてそして日韓合弁の漁業会社を作って、その日韓合弁の漁業会社に属する船だけが李ラインの、つまり朝鮮側の方で操業をできるようにするという案がある。これは下関においても、対馬においても、長崎においてもことごとく猛反対、これは一部の大きな漁業資本家を利するだけになるであろうということは想像にかたくないことですが、これについて一体そういうような計画がどこから出てきたのか、そしてそういう話は水産庁でも聞いて知っているのか、ある程度関与しているのか、あるいは水産庁はこれに反対なのか、この点一つ水産庁側としての御答弁を願いたい。
  44. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 在日韓国人の中に日韓合弁企業の構想を立てまして、そしてその趣意書のようなものを配っている、こういう事実はわれわれ承知をいたしております。しかし、水産庁といたしましては、これは全く今日の段階においては、日本にとりましては百害あって一益なきアイデアである、そういう考え方を堅持しておるのであります。それであくまでも漁業交渉によりまして李ライン問題等をあるべき姿に解決するということが望ましいのでございまして、合弁企業の問題はこれはそういう問題が解決された後において、韓国の中でそういう計画を立てる者があり、日本漁業者の中でそれに乗りたい者があれば、それはそういうことはあり得るかもしれません。しかし、それは単にその企業が合弁企業であるということにすぎないのでありまして、合弁企業なるがゆえにそれが韓国の沿岸において他の者を排斥して特別なフェーバーを持つという筋合いのものであるべきではない、かように考えておるのでございます。幸いにいたしまして、今日までそういう韓国人の方で配っております趣意書に対しまして日本漁業者がこれに賛成しておる者は全然ない状況を掌握いたしておりますので、われわれもあまり相手にするのもおとなげないというような気持で見ておる次第でございます。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただ、そういうようなことが現地側にも伝わりまして、いろいろ不安に思い、動揺もあるのであります。従って、これははっきりと、そういうことはないのだということを示しておいていただきたい。なお、私の聞くところによると、そういうものを持ち回っておるのに対して、日本側の方でもそれをかついで回っておる若干の人があるということも聞いておる。それがやはり今後の日韓交渉、あるいは日韓というよりも、日本と朝鮮との関係に対して非常に悪い事態をもたらすものと私は思うので、これは一つ十分今長官から示された態度を堅持していただきたい。  そこで、今度アジア局長にお伺いするのですが、今の問題については、アジア局長の方でも同じ御見解ですか。
  46. 板垣修

    説明員板垣修君) 私どもほんとうにうわさ程度でそういう計画があるということを聞いただけでございます。対処方針につきましては、水産庁長官と完全に一致いたしております。
  47. 笹森順造

    笹森順造君 李ラインの問題とは違うのですが、ソ連においては十二海里を領海として主張している。日本では依然として三海里という説を堅持している。ところで、日本漁船が、このソ連の領域と思われる——ソ連で主張する十二海里以内、われわれが公海と思うところのこの三海里以外において出演をした日本漁船拿捕され、あるいはまた、船が没収され、船員が監禁され、船長が強制労働させられるという事実、これは御承知の通りだと思う。従って、先ほどの長官のお話によりますると、李ラインにおける特殊事情にかんがみて、いろいろな施設のほかに、特に同情して抑留漁夫等に対して手当をしておるということのお話に比較して、この北洋における今の安全操業をわれわれが一生懸命になって外務省を通して運動してもらっているのだが、なお、今多くの被害者を持っておるという状況、しかも私ども、事実となっておるそういう北海道以北の漁夫の窮状を聞いてきておるのでありますが、それに対してやはり李ラインにおいて受けた被害者と同様な措置を今まで水産庁で親切にやっておったか、やっておらなかったか、その点を一つお聞きしておきたいと思います。  それからもう一つの点は、ついでですからお聞きしたいのですが、先ほど森委員の質問の関連で私のお尋ねした、つまりオホーツク海における公海のサケ・マスは全然とらせない、しかし、ソ連では十二海里以内をソ連の領海として盛んにとっておる。結局するところ、その公海でとるということを日本が承諾するということは、全部ソ連にはサケ・マスをとらせて、日本は全然とらないというまるで一方的な取りきめをしたように考えるので、これは長官の外交交渉の責任ではないかもしれないけれども、そういうことを考えて、非常に不公平な不当な取りきめのごとくわれわれは感ぜられる。同じオホーツク海といっても、日本は三海里を領海と考えておる。網走方面の三海里以北は全部公海と考えなければならぬ。それではわれわれサケ・マスはとれぬということになる。ところが、ソ連では十二海里だから自分の十二海里をとっておる。そこで、領海の三海里と十二海里の間に非常に漁業に関する多くの国際的な不公平な問題を見出すのであるが、この点について、前の点とあとの点二つだけ、この機会にその見解をお示し願いたいと思います。
  48. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 北洋におきます抑留漁夫の援護対策に関しましては、給与保険は、北洋の漁夫にも適用いたしておるのでございまして、従って、あの海域に出漁いたしまする船の相当高い割合がいずれも給与保険に入っておるのであります。ただ全然保険に入っておらない、あるいは低額しか入っていない、こういうものに対しましての生活費の問題につきましては、まあ李ライン並みにするべきだという要請もたびたび受けておるのでございます。われわれもそうあってほしいというふうなことも考えるのでございます。ただ実態は——事柄の性質の問題は別といたしまして、李ラインはこれはもう完全に日本に返してくれない、向うの刑期が満ちましても、あの刑期の満ちました九百二十二名の者を帰すためにどれだけの時間と労力を要したか御承知の通りでありますが、北洋関係につきましては、船長及び漁掛長等の責任者はそのまま処罰はいたしますけれども、その他の漁夫は直ちに便のあり次第送還をしてくれる、こういう状況にあるのでございまして、まあそういうような事情の相違もあり、それやこれやでまだ政府部内におきまして李ライン並みの生活援護をするということについて意見の一致を見るに至っておらない、こういう状況にあるのであります。われわれとしましても、この問題は今後とも研究を継続して参りたいと、かように考えておる次第でございます。  なお、沿岸領海の問題に関しまして、日ソ漁業条約におきまして、この条約はそれぞれの国の領海に関する立場影響を与えるものではないという条項が実は入っておるのでございます。従って、領海三海里を主張する日本がソ連の十二海里の主張を正面から認めているわけでは毛頭ないのでありますけれども、しかし、たとえば北海道歯舞色丹あの一帯における拿捕、抑留の問題等いろいろデリケートなマイナスをこうむっておるということについては、われわれも割り切れない気持を抱いておるのでございますが、条約の規定がそういうことに相なっておりまするので、われわれとしては、やはり領海三海里ということでいろいろな措置を講じて参るべきであると、かように考えておるのでございます。  なお、オホーツク海の漁業停止の問題に関しましては、先ほど申し上げたような経緯に相なっておりまするが、しかし、あの条約の規制海域全体につきましては、これは全然変りはないのでございます。従いまして、日本は依然としてベーリング海等の北太平洋におきます鮭鱒漁業を継続して実施することができる次第でございまして、まあそういう意味におきまして、今後とも明年以降の交渉におきまして鮭鱒漁業の安定ということについてできる限りの努力がし得ると、かように考えておるのでございます。  なお、オホーツクの問題はカニ・ニシン等についてこれはもう全然あの漁業停止という問題はないのでございます。今後ともあの海域におきまして日本の適用魚種であるカニ・ニシンについての漁業を継続して実行していく次第でございます。
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 海上保安庁長官にお伺いしたい。  先ほど李ラインの問題について御質疑したわけなのですが、私ども今度の調査で海上保安庁の特に第七管区の方に大へん御厄介になりました。それで海上保安庁があの広い海域においてわずかの船、そしてまた、わずかの人数で、非常な海上における労苦の多い仕事をやっておられるということに対しましてわれわれとして、非常に同情をしておるわけであります。とにかく李ラインの問題というもの、あるいはまあ日中の漁業関係という問題について、あるいはまた、韓国からの密入国の問題、あるいは密貿易というようなことについて、ずいぶん海上保安庁としてやらなければならぬ仕事があると思います。現在の第七管区の配備状況を見ておりますというと、あの広い海域にあまりにも船が少な過ぎるように思うのであります。もちろん予算の関係があってなかなか新造船もできないことであろうと思いますが、しかし、ああいうふうな韓国との問題を考えて参りますというと、あの方面にはもっと重点的に配備をしてしかるべきではないか、そうすることによって、相当早く警戒措置を講ずることによって拿捕を免れることができる、あるいは密輸出、あるいは密貿易を押えることができる。そうしてそのためにいろいろな損害が生じ、また、そのために多額の費用がかかるのに比べれば、海上保安庁の船を増して人を増す、設備を増すことがかえって安上りにもつくというふうに考えられるのですが、海上保安庁においては、あの方面にもっと重点的に船を配備して人を置き、施設を作るというために努力をされる意思があるか、その点をお伺いしたい。
  50. 島居辰次郎

    説明員島居辰次郎君) まず最初に、先般李ライン方面においで下さいまして、そうして今また非常に御同情ある現地職員のためにお言葉をいただきましたことにつきまして、私から厚く御礼を申し上げる次第であります。お話のことをさっそく私帰りましたら、七管区の第一線の諸君に伝えたいと思いますが、とりわけこの人たちは喜ぶかと思っております。  御存じのように、海上保安庁は大体人の目につかないところで、ほんとうに苦労の多い仕事をしておるのであります。縁の下の力持ちの仕事をしておるのでありまして、現地におもむかれていろいろそういう実情を現実に見ていただくということは、私たちにとって非常にけっこうと存ずるのであります。どれだけ現地の諸君は喜ぶかと存じております。  次に、お話のございました結論は、全くお話の通りでございまして、日本は一万海里ございますが、その上に御存じのように、終戦後は国境が非常に近くなりました。それから沿岸の漁業が不振のために遠洋にどんどん出て行くというので、五十マイル、百マイルのところからのSOS、救難が最近では千マイル、二千マイルの方からSOSを打ってくるような状況でございまして、これに行くのには大へんなことなのです。ことに北海道地方の盛漁期におきましては、巡視船は救難に行って二隻くらいエンジンの不調になったものを引っぱって帰ってきたり、帰ってくるとすぐまた出かけなければならないというような状況で、各方面とも非常に大わらわなのであります。この一万海里の日本の沿岸を警備と救難に当りますために、わずか私ども巡視艇だけで申しますと、補助巡視船まで入れますと、約二百十隻でございますが、そのうちのおもなものは巡視船でございまして、九十三隻の巡視船でやっておるのでございまして、各方面とも巡視船の基地を設けて来てくれという声ばかりでございますので、これは北海道あるいは九州から厳原、対馬というふうな方面ばかりではないのでございますが、しかしお話のように、あの辺に常時二隻の巡視船を配置して、常時哨戒させておるのでありますが、盛漁期におきましてはこれを三隻にふやすのでございまして、しかし、三隻というと、常時三隻でございまして、これを待機中のを含めますと結局九隻になるわけでございまして、非常に船がさかれるわけでございます。しかし、おっしゃるように、もっともっとあの辺に船を配置した方が拿捕船も少くて済み、救難にももっと効果があるかと思っておるのでございまして、全くお話の結論には、私ども前からそう思っております。それで、ずっと毎年予算を、大体新造船十カ年計画をもちまして新造船を十二隻、代替船を十五隻、これは大小織りまぜてでございますが、こういうようなものを出しておるのでございます。巡視船と飛行機もまぜまして大体年々三十四億程度のものを出しておりますが、実際問題といたしますと、いろいろな予算の都合で削除されまして、わずか代替船の巡視船一隻と小さな巡視艇二隻ぐらい、金額にいたしますと約二億五千万円程度しか認められていないような状況でございまして、また、来年度予算が始まる時期になるのでありますが、今後とも一つ御協力、御応援をお願いしたいと思っております。
  51. 岡田宗司

    岡田宗司君 今のお話ですと、なかなか船ができないという話ですけれども、特に私は李ラインの問題については、海上保安庁の巡視船の増加、それからその機能をよくすることによって大部分トラブルが避けられるだろうということを現地で見てきたわけであります。とにかく海上保安庁の方では、韓国側警備艇動き等をキャッチすることもできておる、また、それに対して予防警戒措置をとるように無電を発することもできるのであります。しかし、何と言っても、船が少いということがいろいろやはりトラブルが起る余地を与えておる。だから、これを二つふやすということは、李ラインの問題を解決する上に、政治的に解決する上にも、非常に役に立つというふうに私どもは考える。それからなお、それに伴って厳原、とにかく対馬に何か基地を設ける、あるいはそこに無線の基地を設けるとかいうことも私は必要じゃないかと考えるのですが、その点については、海上保安庁の方はどう考えておるかどうか。
  52. 島居辰次郎

    説明員島居辰次郎君) 厳原につきましては、昭和二十三年に厳原の保安部を設けたいと思ったのでありますが、何しろ巡視船があそこへ基地を設けることになりますと、相当な乗組員もあることでございますので、まず先立つのは住宅でございます。それから水の問題その他生活環境の問題があるわけでございまして、その当時非常にそういう生活環境でむずかしい事態がありますので、私の方としましては、さしあたり通信関係は設けましたが、船艇におきましては二百七十トンクラスの一隻と、あとそれより小さい小型船舶二隻を第七管区の方から派遣いたしまして、実は常駐ということでございまして、基地と同じでございますが、そういうふうなことで処理している次第でございます。なお、対馬には厳原に保安部を置きまして、北の方に比田勝、ちょっと西の方になりますが竹敷、こういうところに分室を設けまして、それぞれ警備救難に当らせておるような次第でございます。
  53. 岡田宗司

    岡田宗司君 西海岸に一つ設けることが李ライン対策として必要じゃないかと、こう思うのです。これは一つ西海岸にも設けるように極力努力していただきたいと思います。  次にお伺いしたいのは、こっち側ばかりどんどん拿捕されて、向う側の方の船でだいぶ向うから密入国者を運んでくるものがある。あるいは密貿易に従事するものがあるというような状態なんです。これらがつかまった場合に、その韓国人の船員なりあるいはその韓国側船舶なりというものはどういうふうに処分されているのですか。
  54. 島居辰次郎

    説明員島居辰次郎君) 密入国も、先ほど申しますように、国境が近くなりました関係上、非常に多くなりまして、ことに去年あたりは七百三十九人くらいの密入国者を海上保安庁で検挙しておるような次第であります。ことにその大部分というのは韓国でございまして、この船は大体前は非常に小さい、三トンから五トン程度の船で来ておりました。そうして北九州あるいは裏日本の非常に西部の方に上っておったというような状況でありますが、最近はだんだん巧妙になりまして、大型船の乗組員あるいは貿易船、これはまあ百トン程度でありますが、こういうものの乗組員で、船員手帳を偽造しましてやってくるというふうな状況でございます。もちろんこういうものにつきましては、私どもでさっそく検挙しまして、これを検察庁の方に渡しておるような次第でございますが、船につきましては没収というところまではまだいっていない、そういうふうな処置はされていないようでございます。
  55. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本側の船が李ラインを越して魚をとった。すぐにその船も没収される。乗組員は向うで、国内法によって裁判される。それで刑期が終えても抑留、日本側の方では、ただまあにせの船員手帳を持って密入国した者を処罰する。まことに寛大な処置なんですね。それで、私はそれではなかなか韓国からの密入国は防げないと思います。やはりこちらも相当、密入国をする場合のその船なんかについても、没収をするとか、密輸出入に従事する向う側の船もどんどん没収するとかいうことにしますと、来にくくもなり、それから渡航賃が高くなるから、その面からも来る人がだんだんなくなる。私は、やはり向う側でもそういうふうなことをやっておるのですから、日本側だって、それは日本に対して非常な不利な事態を招くようなそういう船などに対しては、これは法律の改正等も必要ですけれども、やるということが必要なんじゃないのか。どうもその李ラインの問題、韓国との問題というと、年中何か弱腰、逃げ腰で、向うからの不法なことはさっぱりこっちでぎゅっと押えることができないということでは、全体の交渉も非常に不利になるというふうに考えるので、一つ海上保安庁の方でもその点は研究してもらいたいし、将来そういう不法な密輸出入なり、あるいは密入国なりについてはもっと厳重な処置をとるような方法を、一つ法務省と相談して考えてもらいたい、こういうふうに思います。
  56. 森元治郎

    森元治郎君 これに関連して。北海道へ行ったときに、海上保安庁の第二管区ですか、あそこは。
  57. 島居辰次郎

    説明員島居辰次郎君) 第一です。
  58. 森元治郎

    森元治郎君 第一の白書が出ておりました。大へんな人が死んでいるのですね。数百名くらい死んでいる。一体、こうたくさん死んでいるとは私も思わなかったのだが、単なる、保安庁の船が足りないからというだけでもないでしょう。原因をどんなふうに考えておられるのですか。対策というか……。
  59. 島居辰次郎

    説明員島居辰次郎君) 北海道の方は一般に申しますと、非常に小型漁船が多いのでございます。それから航海する計器を非常に持っていないというふうな状態が顕著なるものでございますので、それで、もちろん九州地方あるいは瀬戸内海地方などよりも波浪の状況なり海上の海礁なりすっかり変っておりますので、非常に困難なることもあるのであります。そういうわけで海難は非常に多いのでございます。その上に今のような、船艇が少いということもございますし、できるだけ私の方としてはやっているのでありますが、年々遭難船舶全国で四千隻くらいございます。そのうちで海上保安庁が一生懸命やって救助しているのが大体四一%程度なんでございまして、もっと先ほど申しましたように船艇、航空機、あるいは通信というものができれば相当このパーセンテージも上がるかと思うのであります。と同時に、漁船なんかの遭難の原因は、大部分がエンジン故障が多いのであります。エンジン故障を生ずるのは要するに一口に言いますと、エンジンの整備が不良なんでありまして、これは水産庁の方とも関係するわけであります。いわゆる歩合制度その他にも非常に関係するかと思うのでございます。こういうのをもっと根本的に解決していかなければ、海上保安庁の方で船もふやしますと同時に、そういうふうな方面にも手を伸ばさなければ、この海難というものの減少はなかなかできないかと存ずるのであります。
  60. 森元治郎

    森元治郎君 四千隻、四一%補助率というものは世界でどのくらいの順位に当るのか。おそらくきわめておそるべき順位なんだろうと思うのです。自衛隊には災害出動というものがきまっている。防衛出動とかいろんな出動の中の災害出動……。飛行機なんか飛ばす必要がないから災害出動の中に、荒天出動の、荒天訓練もやれるのですから、北の方の防衛庁の船は保安庁が海難救難のために季節的借り入れば可能だと思うのです。サケ・マス漁業等は五月から始まる。二カ月くらいこれはあすこらで訓練するにはもってこいの所なんです。波は荒いし、こういうことで緊急借り出し等をお考えにならないのか。順位ということと二つです。
  61. 島居辰次郎

    説明員島居辰次郎君) 順位というやつは、これは海上保安庁という制度は、アメリカくらいのものでございますので、ほかの各国の救難したということについてはまだ私ここに資料を持っておりませんので、調べてまたあとから御返事申し上げたいと思いますが、次の自衛隊関係でございますが、これは海難の非常に大きなる場合にはこちらから要請すればいわゆる自衛官は出動するということになっておりますので、現に北海道の、一昨年でございましたか、台風のような場合に、要請して出たような次第もありますが、何と申しましても自衛隊の方は基地が全国にどこの港にもというようにあるわけでもございませんし、非常にわずかな港にしかないわけでございますので、いざという場合、なかなか間に合わないということが一つと、それからまあないよりはあった方がいいのは当然でございますが、平素そういう救助にはおなれになっていないということもございますが、しかし、一般論といたしますと、今のような場合に、私の方から要請すればいつでも出られますし、また、大きな海難のときには、ときどき要請しているようなことがあるわけでございます。
  62. 岡田宗司

    岡田宗司君 今まあ海上自衛隊等の関係のお話しが出たわけですけれども、これはまあここでそんなことを言ってどうかと思うのですが、どうも海上自衛隊というのは実際の戦争には何の役にも立たないようなものなので、特に小さい船などのごときは、これは戦争用にはあってなきがごとし、あんなものをふやしたってしようがない。それこそもっと直接役に立つ海上保安庁の船に回した方がずっと役に立つように思うのですが、特に海上保安庁の方で、私はもっと小型の飛行機、ヘリコプターというものを利用するということが必要じゃないかと思うのです。特にそれは李ラインへ行って痛感したのですが、李ラインの上空をヘリコプターなんかでもって、ずっと巡視してみるということになりますれば、そしてそこから適当に基地に通信して、さらにそれから短波漁船に通報するということになりますれば、すべて非常にうまくいくというふうに思うのですが、そのヘリコプターの備え付けなんか、あるいはもっと一つあなたの方でも、自衛隊の船なぞにあまり金を出さないように、こっちへ回すぐらいに大いに意を期したらどうですか。これは意見ですから、別にお答えは要りませんが。
  63. 森元治郎

    森元治郎君 欧亜局長にお尋ねします。いわゆる安全操業、北洋の接岸漁業について、日ソ交渉について聞きたいと思うのですが、この前の国会のころ、六月、門脇さんが接岸操業について、ソビエト側にさらに申し入れをして、話を進めようじゃないかという申し入れをしたと思うのですが、そういうことをしたのかどうか。向うの回答はどうであったか。あるいは今日までの回答でもようございますが、それが一つと、時間もないようですからスピード・アップして伺いますと、今出しておると思われる接岸操業のフォーミュラ、そのフォーミュラを変えた方がいいとお考えになりますか、このままで進んでやっていくという方針でやられておるのか。この点をまずお伺いいたします。
  64. 金山政英

    説明員金山政英君) 北海道近海漁業に関しまして、昨年の六月三日以来、それから八月の十六日に向う交渉に応じてもいいということを申して以来、幾多の曲折があったのでありますが、結局、二月の五日に、先方は平和条約の問題とからましてきたという事情は御承知の通りであります。その後、この領土問題に関する日本側主張を繰り返すと同時に、実際上の問題といたしまして、この北海道の近海漁業ができるように、たびたび先方と交渉を根気よく続けているわけであります。最後に門脇大使からわが方の見解を申し述べましたのは、ことしの五月の十九日であります。そのノートにおきまして、われわれは先方のノートが再び平和条約に触れてきておりましたので、その点をさらに繰り返しますと同時に、この近海操業の問題は、人道上の問題でもあり、また、実際上解決を要する問題であるので、昨年の八月の二十九日に当方が提出いたしました、四十八度線以南の水域というフォーミュラ、それから三海里、十二海里というような、いろいろなフォーミュラを先方に出しておるのでございますが、こういうわが方のフォーミュラにスチックするものではなく、実際上この問題を解決するために、もしソ連側でお考えがあるなら、どのような提案でもよろしいからお出し願いたいということを先方に伝えてあるわけであります。これは出しましたのが五月十九日でありますが、その間両三度にわたりまして門脇大使から督促いたしましたのに対して、政府の上層部に伝えるということを繰り返すばかりでいまだに確たる返答はないわけであります。しかし、最近特に歯舞色丹、択捉、国後などの方面における漁船拿捕が、一般的な漁船拿捕事件が減少しておるにもかかわらず、この方面の拿捕事件が、パーセンテージにいたしましてふえておりますので、こういう点をも考慮いたしまして、わが方として最小限度の必要に応じ得る案をわが方から提出することを目下考慮中であります。もちろんこれは水産庁とも協議の上、提出するつもりでおりますが、近く具体案を作りまして先方に提出する考えであります。
  65. 森元治郎

    森元治郎君 わが方として最小限度の何ですか。
  66. 金山政英

    説明員金山政英君) 最小限度の必要に応じ得る……。
  67. 森元治郎

    森元治郎君 このポイントはどこにあるのですか。歯舞色丹だけに限局するのですか、前のやつにプラスしてやろうという趣旨なんですか、要点は。
  68. 金山政英

    説明員金山政英君) 従来の交渉経緯にかんがみまして、ソ連側がわが方のフォーミュラをそのまま受けるとは思いませんので、適用水域その他魚種等、先方が受諾し得るような内容のものを改めて提出いたしたい考えであります。
  69. 森元治郎

    森元治郎君 もうここまでいったら言ったっていいだろうと思うのですが、問題になっていないやつはアブラザメといったもの、たとえばこういうものについては相談する必要があるのですか。それから適用水域が四十八度以南から、どんなふうに変っていく傾向ですか。
  70. 金山政英

    説明員金山政英君) 先ほど申し上げましたように、元来北海道近海の安全操業、近海漁業の問題は漁船拿捕事件が契機でありまして、特に北海道のコンブ、歯舞色丹の近辺のコンブ、あるいは帆立貝というような、ソ連側にはほとんど利用価値のないようなものが、日本にとっては非常に重要なわけでありますので、そういうような点をも勘案いたしまして、その範囲を狭めた案にして提出いたしたいと思っております。
  71. 森元治郎

    森元治郎君 この点はどういうふうに交渉なされておるか、現地から多分陳情があったと思うのですが、 カムチャッカの突端、ノトロ岬の先に二丈岩という岩があって、これは非常に無人の岩礁といわれておる。ソ連側はその岩礁を基点として十二海里をやられるために、魚も自由にとれないし、オホーツク海に出ていくにも非常にやりにくい。どうかノトロの、自分の樺太本土からはかってならいざ知らず、はかってもなおかつ三海里ぐらい出てくるのですが、無人の岩礁を領海の設定に使い得るのか、国際法的にはどうなりますか。
  72. 金山政英

    説明員金山政英君) おそらくソ連の領土でありますれば、無人の島でも先方は十二海里を主張すると思います。水産庁におきましてはその間の事情もよく判明しておることと思いますので、水産庁と協議の上、具体的な案を作りたいと思っております。
  73. 森元治郎

    森元治郎君 こういうことを一体要求しておられますか、その船体を返してくれということ、今まで返さないのが四十六隻くらいあるのですが、船体も一つ返してくれ、没収船体も返してくれ。それから乗組員のつかまった者を早く帰せという交渉をやっているのかどうか、つかまったらもう仕方がないから、向うの裁判があるまで黙っておるのか、とにかく返せということをやっておるのか。  それから避難港を三つばかり作ってくれということはあなたも聞いておると思うのですが、東は多来加湾とか、西は真岡の方とか、三つばかり避難港を作ってくれとかいうようなことを現地の漁民から非常に要望されておる。多分水産庁からあなたの方に回ってきておると思いますが、こういうことを向うに要求されておるかどうか。  もう一つは、つかまったときにすぐにどうしてつかまったのかという照会をするなり、あるいは不当と思えば抗議をするなりの措置をとっておるのかどうか。昔はちょっとでもつかまれば、これに一生懸命になって、大使が外務省を訪れて、これらの事情を聞いておる。このごろではつかまるのは年中行事で、当りまえで、ためてお話ししておるような感じがあると思うが、これは一体どういうふうになっておるか、事情だけをまずお伺いしたい。
  74. 金山政英

    説明員金山政英君) 拿捕船がありました場合には、海上保安庁からさっそく外務省に通告があるわけであります。その問題に関しましては、機を逸せず直ちにモスクワに電報をいたしまして、モスクワの大使から先方に抗議をし、船体の釈放並びに船員の釈放を要求しております。従いまして、ためて要求しておるというような事実は全然ございません。  それから避難港の問題でありますが、この北海道近海の漁業に関する案を先方に出しましたときに、この避難港の問題も含めて先方に出しておるわけであります。
  75. 森元治郎

    森元治郎君 ためてはやっていないと言うが、いやしくも外務省日本の代表がソビエトの外務省を訪れておるなら、必ず新聞は、少くも共同通信は、参事官のだれだれか、門脇大使が外務省を訪問したという記事が出るわけですし、大使館もまたそういうことを発表すると思うのですが、一つも出ないところを見ると、訓令はそういうふうに出ているかもしれないが、出先は実行していない、こういう感じを受けるのですが、どうなんですか。
  76. 金山政英

    説明員金山政英君) そのつど先方の門脇大使に訓令をいたしておりますし、その抗議に対する先方の態度、これはもう判を押したように領海侵犯、密漁ということでつかまえたのだということを返事するばかりでありますが、必ず根気よくそのつどやっております。新聞がそれを報道していないということでありますが、あるいは新聞自身が興味がなくて出さないのかと思いますが、外務省としてはそのつど抗議をいたしております。ごとしに入りまして一月に二隻、二月に二隻、三月に二隻、四月に四隻、五月に九隻、六月に十七隻、七月は七月二十九日現在で九隻、これに対しましてはそのつど抗議をいたしております。
  77. 森元治郎

    森元治郎君 それは抗議は文書でされたのか、大使か、参事官か書記が行っているのか。
  78. 金山政英

    説明員金山政英君) ときによりましては、都村参事官あるいは書記官がやっておることもあります。
  79. 森元治郎

    森元治郎君 それは、この問題について訪問したということが順次内地にわかるような一つPRをしてもらいたいと思う。昔は小さい琴平丸事件とか何々丸事件というのがあると、時を移さず行ってお話をしている。ところが、それがないのです。政府の熱意が足りないのでしょう、現地の新聞記者もだれも取り上げないということは。これはやはり当局のやり方がまずいのだというふうに感ずるので、そういうことがあったら、今後われわれもモスクワの情勢を見ておりますから、何がつかまってどうだということをしっかりやってもらいたい。それから、国際法上、向う国内法できまって没収された船体というものは、返してもらえないものなのか、ちょっと国際法に基いて。
  80. 金山政英

    説明員金山政英君) 拿捕しました船舶、六百数十隻あるわけでございますが、そのうち大部分は返してきております。そのうち返ってきておりませんのが日本側の調べによりますと百二十隻あるのであります。それで、この船をどうしたかということ、それから逮捕されました船員がどこでいかなる刑を受けておるかということに関しても、はっきりしたことを言ってよこせということを強くソビエト側に申したわけであります。それに関連いたしまして、没収船舶は百十四隻であるということを先方が伝えて参りました。これに関しましてはすでに没収のあったものはコルホーズに渡してしまったというようなうわさもあるのでありまして、これに関する損害賠償の要求、当然われわれとしてはそういう手段を取るべきであると考えておりますので、目下準備中であります。
  81. 森元治郎

    森元治郎君 この間、四月に協定ができたとき、岸総理大臣は、オホーツク海には、公海自由の原則を放棄したのじゃないのだ、出られるのだというようなお話があったと思うのですが、今の水産庁長官のお話では、独航船ですらも、小型であろうと公海ではとれないのだ、こういうふうな御答弁があったのですが、どちらが正しいのですか。
  82. 金山政英

    説明員金山政英君) 今度の第二回の漁業委員会におきまして、御承知のような経緯によって、ソ連側が産卵のために遡行するサケ・マスをその途上においてとることは、資源の保護の上からいって適当でない。しかもソ連側の沿岸における状況を見ると、非常に緊急の事態であるので、ともかくとることをやめる約束を双方がしようということを申したわけであります。もちろんこの交渉の過程におきまして、わが方としましては、そういう事態があるかどうかということを十分共同調査をする必要があるということを強く主張したのでありますが、先方が緊急の必要があるということで、今回はそのような取りきめに同意したわけであります。しかし、実際上の問題といたしまして、果してソビエト側の主張が百パーセント正当であるかどうかという問題は、元来生物学的、科学的根拠によるのでありますから、調査の結果で、その反対の証明ができますれば、問題はさらに交渉の余地のあるものと考えております。すでに六月中に日本から六隻の調査船が公海漁業の調査のために出かけております。これを七月四日にソビエト側に通報いたしてあります。また、漁業に関する学識経験者の相互交換という問題、これも、先ほど水産庁長官からお話がありました通り、共同の材料を持つという意味において、非常に意義のあることであると思います。去年はこれが実行不可能であったのでありますが、今回はソビエト側もこれを受諾いたしまして、当方から七月の十七日に藤永水産庁調査研究部長を長とする十三人の代表団が先方に渡っております。また、ソビエト側からも八月六日に、おそらく先方の代表団が当地に参りまして、日本漁業の実態を調査することになると思います。このような、調査に関する具体的な措置がとられておりますので、これから出てくる結果によりまして、オホーツク海の問題も、あるいは将来、交渉の余地が残り得るものであろうと私考えております。
  83. 森元治郎

    森元治郎君 あと一点だけをお伺いいたします。基地独航ということは、現地の漁民はできるんだというふうに、まあ誤解といいますか、そういうふうに解釈をしておるようですが、しかも強い要望がある。政府としては、こういうものをソビエト側に要求する、主張する準備がありますかどうか。りますか。