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1958-07-09 第29回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月九日(水曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 鍛冶 良作君 理事 小林かなえ君    理事 田中伊三次君 理事 福井 盛太君    理事 村瀬 宣親君 理事 菊地養之輔君    理事 坂本 泰良君       綾部健太郎君    犬養  健君       小澤佐重喜君    世耕 弘一君       辻  政信君    大貫 大八君       神近 市子君    菊川 君子君       田中幾三郎君  委員外出席者         検     事         (刑事局長)  竹内 寿平君         最高裁判所事務         総長      横田 正俊君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      関根 小郷君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      守田  直君         判     事         (最高裁判所事         務総局刑事局         長)      江里口清雄君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 七月八日  委員島上善五郎君辞任につき、その補欠として  勝間田清一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 七月八日  一、裁判所司法行政に関する件  二、法務行政及び検察行政に関する件  三、国内治安及び人権擁護に関する件  四、最高裁判所機構改革上訴制度を含む)   に関する件  五、外国人の出入国に関する件  六、交通犯罪に関する件  七、青少年犯罪に関する件  八、売春防止法の施行に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件      ————◇—————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。本閉会中、最高裁判所の長官またはその指定する代理者から本委員会出席説明の要求がありましたときは、その承認に関する決定につきましては、そのつど委員会に諮ることなく、その取扱いを委員長に御一任願っておきたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  これより裁判所司法行政に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  大貫大八君。
  4. 大貫大八

    大貫委員 この、間の裁判書の、問題で、私の質疑がまだ済んでおりませんでしたので、関連してお尋ねをいたしたいと思うのであります。非常にくどいようですが、どう伺っても納得がいかないのです。裁判内容決定する裁判官活動というのは、決定されたものを書面に書いて、最後署名捺印するまで一括されているんだといわれているんですが、そうすると、裁判官がそういう裁判決定を外部に何ら示さぬ前に、書記官原稿を書いてきた。それに対して裁判官が、その原稿はその通りでよろしいとして署名する。そういう場合でも、裁判書裁判官が作ったものだが、こういうことが言えるのでしょうか。
  5. 横田正俊

    横田最高裁判所説明員 それは一見書記官が自分の判断で勝手に書面を作ったように見えますけれども、書記官にそういう扱いをさせる前に、裁判官がその記録に基いて、一応裁判書原本を作るということの裁判官意思があるわけでございます。その意思に従いまして、記録その他の資料に基いて書記官が機械的に書類を作る。しかしこれはやはり最後の段階まで、内容決定という活動は続いているわけでございまして、一応用意させましたその書面について、最後的な判断を加えて署名捺印をして、あるいは記名捺印をして、そこで裁判書が完成する、こういうことでございまして、最初に書記官が書きますのも、やはり裁判官意思に従ってやっておる、こういうふうに見るべきであろうと思います。
  6. 大貫大八

    大貫委員 ところが、裁判官が全然書類を見ない前に、書記官が書いてしまっている。それを裁判官のところへ持っていって、署名捺印をしてもらう、こういう事例が今まで再三取り上げられておるのですが、その場合どうなんでしょうか。裁判官は全然書類を見ていないのですが、見ていない前に書記官裁判書にひとしいものを作り上げてしまっておる、そういう活動はどうごらんになるのですか。書記官がそれまで作ったものをどう解釈したらよろしいでしょうか。
  7. 横田正俊

    横田最高裁判所説明員 事件が非常に少い場合につきましては、一応裁判官のところへ書類が参りまして、その書類に基いて原本を作ってくれ、こういうようなあからさまな指示があって作る、こういうことになろうと思いますが、事件が多くなりますと、一々そういう手続を経ませんでも、一応書記官が作るという一つ慣例——これは決して書記官が勝手に作っておるわけではなくて、来た書類に基いて、そういうものを一応用意してくるということが一つ慣例となって行われておる。これは裁判官一つ一つ事件について一々申しませんでも、そういう慣習になっておりますので、それはやはり裁判官意思に従って書類ができた、こういうふうに見るべきであろうと思います。
  8. 大貫大八

    大貫委員 また慣例という言葉が出たのですが、その慣例ということがすでに間違いではないか、私はこう言うておるのであります。つまり、そういう間違った慣例というものを直していただかなければならないのじゃないかと思うのです。裁判というものは、具体的な一つ一つの問題に対して判断を下していくもので、抽象的な、包括的な裁判というものはないのです。どうも書記官にそういうことを一般的に委任しておるような印象を、慣例という言葉の中に受けるのですが、そうすると、裁判権の委任ということになるのじゃないのですか。どうですか。
  9. 横田正俊

    横田最高裁判所説明員 これは、判決等でございますと、その判決内容というものは千差万別でございますから、やはり原稿を作って詳細な指示をいたしませんと、書記官がそれに基いて原本を作るということが困難でございます。たとえば、支払命令というものにつきましては、大体申立人の申し立てをそのまま一応認めまして命令するのが支払命令でございますが、その支払命令内容はもうきまっておりまして、従って、よほど特殊の事情のない限りは、そのままの命令が出ることになるわけであります。あるいは略式命令につきましても若干の問題がございますが、大体検察官の請求書に基いて略式命令が出されるのがほとんど大部分でございまして、裁判所のこの種の裁判実態というものが、やはりそういう慣習を生んでくるのでございます。しかしそれは、やはり裁判官最後的な仕上げをするということは怠ってはなりませんので、先ほど申しましたように、最後的の決定は留保されておりますが、ほとんど既存書類で機械的に用意されますものが大体そのまま通るという実際の裁判事務実態から、そういう慣習も生れてきているのだと私は考えます。
  10. 大貫大八

    大貫委員 どうも同じことを蒸し返すようになるから、別な方向からお尋ねいたします。今まで引例されたのは略式命令とか支払命令ですが、それならば判決の場合は一体どうなるでしょうか。かりに書記官判決に対して原稿を作って、窃盗罪なら窃盗罪について懲役一年とか懲役二年とか、そして理由を作って、そういうものを裁判官のところへ持っていって署名をもらうという場合は、一体どうなりますか。今までのお答えから考えてみますと、そういう場合もあり得ると思うのですが、そういう場合はどうなりますか。
  11. 横田正俊

    横田最高裁判所説明員 判決の場合は、たとえば記録書記官の方に回しましてこれで一つ適当な判決を書いてくれと言われました場合には、書記官としては、記録を見て、そこでいろいろ事実の認定をしたり、法律の適用をしたり、いわゆる書記官判断が必要になって参りますが、そういう事柄を書記官に委任いたしますことは、これはもちろんはなはだ間違ったことでございまして、この間うち、あるいはそういう極端な例もあるやに申された方があったようでございますが、そういうことは全くとんでもないことでございまして、そういう判断書記官にさせるべきではないのであります。ただ、先ほどからお示しの問題は、結局今度の処分になりました対象のいろいろな決定命令類が、そういう判断書記官がする余地のないもので、またその余地のない範囲において、既存資料によって原本になるべきものを作成する。こういうのでございますので、今お示し判決の場合とは大へんなそこに違いがあるわけであります。
  12. 大貫大八

    大貫委員 現にその判決書記官に書かしたというような例を私聞いているのです。特に、これはある簡易裁判所の判事ですが、書記官に、民事判決などは、記録を持ってきて「これ」と言って書記官に出すと、書記官は気をきかして判決を書いておる、こういうことを私聞いてあぜんとしたわけです。これは特殊な例でしょうが、そこで、判決ならば判断余地があるが、判決以外のものは判断余地がないという考えがどうも変ではないかと思う。これはこの前も申し上げたように、たとえば略式命令換刑処分なんか、これはりっぱな判断だと思うのですが、この判断の点についてはあらかじめ相場示しておる、こういうお答えなんです。この点はその通りであるとすれば、これは裁判に関するりっぱな判断なんですが、そういう判断まで書記官にやらせておる。これが従来の慣行だ、こういうふうに聞えるのですが、どうでしょうか。
  13. 横田正俊

    横田最高裁判所説明員 換刑処分の問題につきましては、実情刑事局長が調べておりますので、刑事局長からお答えさせていただきます。
  14. 江里口清雄

    江里口最高裁判所説明員 ただいまのお尋ねでございますが、各庁におきまして一定金額を定めて、これで換刑処分をするように、換刑処分を書いてくるようにというふうに指示してあるのでございます。百円あるいは二百円というふうに指示しております。東京簡易裁判所について調査いたしたところによりますと、交通事件はすべて一日百円、それから二万円以上の罰金については一日二百円ということで換刑処分を書いてくるようにというふうに指示してあるのでございまして、これが東京地方における相場というふうになっておるのでございます。それに従って書いてきておるのでございまして、一定金額についてそういうふうにきめてあることは、換刑処分についてではございませんが、刑事訴訟法の第四百九十五条、それから罰金等臨時措置法によりますと、未決勾留法定通算につきまして、罰金にそれを通算する場合、には一日二百円で通算するようにという規定もございまして、一定金額で通算するように相なっております。換刑処分もこれに類するもの——全然同じものではございませんが、類するものでございまして、そういうふうに一定金額を定めて、これで書いてくるようにというふうに指示がなされておるのでございまして、この指示に基いて書いてくるわけでございます。相場と申しましたのは、その一定金額のことを前回申し上げた趣旨でございます。
  15. 大貫大八

    大貫委員 一定金額について換刑処分をきめておるということは、裁判の建前からして一体許されるんでしょうか。やはり一日を幾らに換算するというのは、この前も申し上げましたように、機械的にそういう罰金金額によってきめるというのでなくて、その人の社会的地位であるとか収入であるとか、いろいろな点を考慮して、やはりこの人間は一日百円が妥当であるとか、あるいは二百円であるとか三百円であるとか、そういう判断が、その事件の性質を見て個別的になされるのが私はほんとうの裁判ではないかと思う。それが換刑処分ではないかと思う。一律に金額で押えているということは、どうも裁判を冒涜するものではないでしょうか、どうでしょうか。
  16. 江里口清雄

    江里口最高裁判所説明員 換刑処分につきまして一定金額を定めておる、この点についての御意見でございますが、この点については二つ考え方があるのでございます。被告人地位収入あるいは犯罪情状等によって具体的に一々変えるべきであるという考え方と、それからもう一つは、そういう区別をつけないで、一定金額換刑処分をきめるべきであるというこの二つ考え方があるのでございまして、一般的には、罰金等につきましては、特別の事情がない限りは、平等の金額ですべきであるというのが一般考え方のようでございます。そのようなことから、そのように一定金額原則としてきめておるのでございまして、それに従って書記官等が書いて参りました場合に、裁判官がさらにその事件を審査して、署名あるいは記名捺印いたす場合において、それでいいかどうかということをもう一ぺん判断いたしまして、特別の事情がある場合においては、この金額を変えておるというのが実情でございます。
  17. 大貫大八

    大貫委員 その法律的な根拠はどこにあるのですか。一定金額でやるのが一つ原則になっているという法律根拠ですね。
  18. 江里口清雄

    江里口最高裁判所説明員 一定金額原則であるという法律規定はございません。
  19. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、法律の規中がないとすれば、やはり換刑処分)いうのは、これは重要な問題ですから、私が先ほど申しましたように、犯罪内容やら資産の程度やら、社会的な地位やらいろいろな状況を判断して、換刑処分というものが判断されなければならぬと思うのですけれども、どうでしょうか。
  20. 江里口清雄

    江里口最高裁判所説明員 その点は先ほども申し上げました通り二つ考え方がございまして、大貫委員の御意見一つ考え方だと思いますが、そうでなければならないというふうには言えないと思います。その点は、いかなる金額において換刑処分をするかというのは、これは裁判官にまかされた自由裁量範囲内でございまして、裁判官は、格別事情がある場合には、その事情をしんしゃくして、全額をそれぞれ裁定するのでございますが、一般的な場合においては、格別事情がない場合には、一定金額換刑処分をするというのが裁判官一般考え方のようでございます。この点は各裁判官判断にまかせられておることでございます。
  21. 大貫大八

    大貫委員 結局いずれにしても、裁判官自由裁量というか、判断にまかせられた問題だと思うのですが、その裁判官判断というものを前もって書記官示しておくということは、これは裁判官を漏らすことになるのじゃないでしょうか。
  22. 江里口清雄

    江里口最高裁判所説明員 そのまま裁判の結果になるわけではございませんで、裁判官がさらに判断を加えて出すわけでございまして、一般の基準を書記官指示してあるから、それで直ちに裁判を事前に漏らすということにはならないと思います。
  23. 大貫大八

    大貫委員 しかし、一応相場指示している以上は、その指示に基いて書記官が書いたとすれば、それをさらに変更するなんという事例はないのじゃないですか。
  24. 江里口清雄

    江里口最高裁判所説明員 その点は、事後に裁判官判断を加えて、署名して裁判書とする場合において変更を加えることは相当ございます。現実に変更を加えられておる裁判もたくさんございます。
  25. 大貫大八

    大貫委員 それでは、そういう相場指示したということが何の意味かさっぱりわからなくなるのですが、そのくらいならば、初めから裁判官がその具体的な事件々々について判断するのが本筋でもあるし、そう本筋通りに行なった方がよろしいんじゃないか。
  26. 江里口清雄

    江里口最高裁判所説明員 これは、裁判の能率というような面から、大体において格別事情がない限りは、一般指示された金額において出されるものの方が多いということの点から、一般的な指示の処理がなされておるわけでございます。
  27. 大貫大八

    大貫委員 どうもどこまでいってもコンニャク問答みたいになってしまいまして、果てしがありませんから、質問を変えます。  書記官職務内容についてお尋ねをいたしたいのです。これも何回か答弁もあったようでありますけれども、書記官任務というのは、裁判所法の第六十条の第二項で職務内容を明らかにいたしておると思うのであります。これによると、書記官職務というのは、自己名義書類を作成することになっております。こういう関係から、書記官職務というのは、ある程度独立した地位を認めておるのが第六十条の第二項の規定じゃないかと私は思うのです。それだから、書記官に関しましては、裁判官に対する忌避、回避等規定も準用されておるのであります。要するに、書記官職務というものに、ある程度独立した地位を認めておるのが、第六十条の第二項だと思うのであります。これから見ますと、単純な浄書というような機械的な労務は、決して書記官任務じゃない、職務じゃない、こういうふうに、この裁判所法第六十条の解釈から解釈するのが私は妥当であると思いますが、どうでしょう。
  28. 横田正俊

    横田最高裁判所説明員 この裁判所法第六十条に基きまする裁判所書記官職務範囲につきましては、裁判事務実情等を申し上げまして、私から前回一応お答えをいたしたのでございますが、要するに、裁判所書記官職務の中には、この法律規定に基きまして、裁判官命令がなくても、独自の立場でやらなければならない、またやることのできる仕事と、それから裁判官命令に従って行う仕事と、いろいろあるわけでございます。それが要するに第二項と第三項、特に第三項をごらん願いたいのは、「裁判所書記官は、その職務を行うについては、裁判官命令に従う。」とありまして、完全な独立した仕事だけをやるわけではございませんで、裁判官命令に従って職務を行うことがうたってあるわけでございます。そこにいろいろ書記官のやるべき仕事があるわけでございます。この詳細につきましては、関根総務局長からお答えいたしたいと思います。
  29. 関根小郷

    関根最高裁判所説明員 ただいま大貫委員からのお話の点は、先般来事務総長からお答え申し上げ、さらにただいま申し上げた通りでございます。なお詳細にと申しましても、あまり時間をかけてはいかがかと思いますので、要点だけを申し上げますと、御承知のように、裁判所事務は、戦後は裁判自体プロパー仕事と、それから一般司法行政仕事と両方を合せてやることになりまして、この点で戦前の裁判所と違って参ったことは御承知通りでございます。そのうち、前に申し上げました裁判プロパー仕事、これは御承知のように、刑事では起訴され、民事では訴状が出ますると、それ以後裁判がなされますまで、いわゆる受訴裁判所——訴えを受ける裁判所仕事として、一貫作業がなされるわけでございます。この受訴裁判所仕事をだれがやるかということを申し上げますと、これは裁判官書記官系統仕事になるわけでございます。それからもう一つ戦後の新しい司法行政をやる点は、これは御承知のように、主体が裁判官会議でございまして、その下に事務官という系統でなされるわけでございます。もっとも、事務官の点については、広く裁判所事務を行うとなっておりますので、裁判プロパーの問題についてもできないわけではございませんが、大きな筋から申し上げまして、受訴裁判所仕事書記官の方、それから裁判官会議司法行政面事務官の方ということになります。そういうところから考えますと、裁判所法第六十条の書記官仕事を定めておりますのは、この受訴裁判所仕事に関する書記官のことを書いてある。この受訴裁判所仕事につきまして書記官がやりますことは、実にたくさんございます。その中のおもなものを第六十条で書いたわけでございまして、ただいまお話書記官の固有の権限、ほかの人がタッチできない権限、そういうおもだったところを書いたわけでございます。それ以外の裁判官補助としてやる仕事、しかし、その仕事には範囲がございまして、ただいま申し上げました受訴裁判所としての仕事範囲に狭められるわけでございますが、その範囲において裁判官補助をする、これは当然第六十条の趣旨から申しまして入る。この点は従来総長が申し上げておる通りであります。でありますので、書記官仕事には、御承知のように、何人も侵すことのできない仕事と、裁判官補助をする仕事と、両方あるという考えがございまして、その結果、書記官仕事のうち補助事務については、特に裁判官命令に従わなくちゃならない場合が多いということになるわけでございます。
  30. 大貫大八

    大貫委員 今第六十条第三項の問題が出ましたが、特に私はこの第六十条第三項の問題からして、書記官職務というものは、ある程度の独立性があるのだと解釈しておるのであります。たとえば、第六十条の第三項には「裁判所書記官は、その職務を行うについては、裁判官命令に従う」。となっております。その職務を行うに当り、裁判官命令に従うというのでありますから、その職務内容についてはこの第二項に示してあるが、この第二項にかかって第三項があると思うのであります。つまり、「職務を行うについては」というのは、もっとこれを率直に解釈すれば、「前項の職務を行うについては」ということに私はこの条文は解釈しなければならぬと思うのであります。事務官職務内容を見ますと、事務官の方は単に「上司の命を受けて」と、こうなっておる。書記官の方は、今のように、「職務を行うについては」と、特に断わっている。ですから、これは事務官書記官とが厳に職務内容を異にすることだと私は思うのであります。そういう点から見ても、どうも裁判所側解釈というものは、少し書記官職務でないものまで、法律にないようなことまで、書記官に押しつけているのじゃないか、こういうふうに思えるのですが、どうでしょう。
  31. 関根小郷

    関根最高裁判所説明員 ただいまの大貫委員お話の点でございますが、ただいまお示し裁判所事務官仕事につきましての裁判所法規定は、「裁判所事務官は、上司の命を受けて、裁判所事務を掌る。」ということになっておりまして、この事務官仕事範囲は、先ほど申し上げました二つの大きな受け方から申し上げますと、両方入るということが考えられるわけでございます。裁判所事務でございますので、受訴裁判所仕事と同時に裁判行政の問題も入る。ところが、先ほど示しの第六十条の方は、先ほど私が申し上げておりまするように、受訴裁判所仕事の方のことを書いている。でありますから、確かにお話のように、この第六十条の第三項につきまして、裁判官の命を受ける範囲は、やはり限定的でございます。限定的であることはお話通りでございますが、その限定の範囲が、受訴裁判所仕事範囲までいくという考え方がわれわれの考え方でございます。だからといって、無制限というわけではない。でありまするから、第二項の職務と第三項の職務は全く同一、そういう考えでわれわれは終始しているわけでございます。
  32. 大貫大八

    大貫委員 そういう解釈だといたしますれば、私もそう思うのですが、それだとすると、やはり浄書というような機械的な労務というものは、これは書記官職務じゃないと私は思うのです。浄書というようなことは、やはり事務官なりあるいはタイピストというような、いわゆる従来雇といっておりましたような、そういう人に命じてやらしていいことなので——いいことじゃない、そういう人の仕事であって、書記官としての、ある程度の地位の独立しておる書記官職務内容ではない、こう考えますが、どうでしょう。
  33. 関根小郷

    関根最高裁判所説明員 今、大貫委員お話の問題でございますが、これは確かにお話のように、浄書問題につきましては、タイピストでありあるいは事務官である、あるいは雇員であるということを妨げる趣旨でわれわれは申し上げているわけではございません。ただ問題は、先ほど大きな線で申し上げました受訴裁判所系統仕事になりますれば、あに裁判書浄書の問題にとどまらず、いろいろな機械的事務的な仕事書記官の手にわたっているわけでございまして、それはまた書記官職務の中に入らなければ、どうしても裁判所としても運営できない。そういうところから第六十条が出ているわけでございます。たとえて申し上げれば、訴状が出てくる、それを受け付けるということも、機械的技術的な仕事ではございますが、これは雇員、事務官あるいはタイピストなどがやらずに、書記官でやっている。あるいは御承知のように、法廷で証拠品が出ますときに、やはりその授受は書記官がやる。いろいろそういった事務が非常に多いわけでございます。この範囲先ほど申し上げましたように限界がございまするけれども、なお限界内の問題としてもう少し申し上げますると、先般来総長からお話し申し上げておりますように、国選弁護人の選任の事務補助、あるいはそれぞれの事件につきましての当事者との連絡の事項、そういったいろいろな受訴裁判所をめぐる仕事というのは非常に多いわけでございまして、それを一々法律に書くということはとうてい不可能に近いところでありまするから、その重立ったものだけを法律に書きまして、あとは解釈でいくということは、これは法律を作る立場としても当然のことかと思われます。従って、そういった趣旨から、限定的に解釈いたしましても、その範囲浄書を含めました意味の範囲仕事は、当然書記官職務内容に入るという考え方が立つと私は思うのであります。
  34. 大貫大八

    大貫委員 そういう仕事こそむしろ事務官仕事じゃないか、私はこう思うのですが、実際上は、今も、総長も前から引例されておりますけれども、たとえば国選弁護人の選定に関して連絡をするとか、破産管財人の選定に関して弁護士に連絡する、そういう職務までこれは書記官仕事でないということになると、裁判所の運営がとまってしまう、こういうことを言われておるのですが、実際上は書記官がやっておりませんですよ。そういう仕事は、それこそ慣例上雇がやっております。電話をかけたり何かするような仕事、そういう点から見ましても、私はやはり裁判所書記官としての任務というのは、第六十条の第二項にあるように、これはもう一つの責任を持つ仕事を負わされておるのですから、やはりそこに限定して解釈すべきじゃないかと思う。もしそれ以上の広い意味の職務を負わせるとするならば、これは裁判官と同じような忌避に関する規定あるいは回避、こういうものの規定が準用されるはずがないと思うのです。このような忌避、回避というような規定まで準用されるというのは、それだけ書記官任務の重要性というものを、私はある程度認めておるからだと思うのです。そういう機械的な労務まで書記官任務だとする解釈は、どうしても私は納得がいかないのですが、どうでしょう。
  35. 関根小郷

    関根最高裁判所説明員 今、大貫委員お話の中で、実際は書記官がやらずに雇員にやらしておる部分があるのではないか、たとえば国選弁護人の選任に関する事項、これはそういった場合があり得ることはわれわれも認めますが、しかし、その雇員というものは、書記官の下にいる雇員なんでありまして、いわゆる裁判行政の方にいる雇員ではございません。それから、原則として申し上げますと、いわゆる受訴裁判所におります事務官というものは非常に少くて、これは雇員の待遇では困るために事務官として待遇上やむを得ずやっておるわけでありまして実際問題としては、事務官裁判行政の方のいわゆる事務局の方におるわけなのであります。でありますから、お話の中の雇員云々という問題は、実際は書記官がやっておることと同じことになるわけでございます。なお、そういうことをいうならば、書記官について回避、忌避の規定なんか要らないじゃないかというお話でございますが、われわれは書記官事務の中に裁判官補助事務があるということを言いましても、書記官に個有独立の権限がないということは一言も申し上げておりません。従って、固有独立の権限がある限度においては、どうしても裁判官と同じように忌避、回避の制度があってしかるべきであります。でありますから、補助事務があるということと、回避、忌避の制度があるということとは矛盾しないと考えておるわけであります。
  36. 大貫大八

    大貫委員 それでは、今度は別の質問に変えますが、昭和三十三年の六月十二日、十三日に開かれた高等裁判所長官、地方裁判所所長の会議において、最高裁判所長官の訓示がなされておりますけれども、この訓示は、最高裁判所の統一された意見と伺ってよろしいか。
  37. 関根小郷

    関根最高裁判所説明員 今お話の長官訓示は、打ちあけたところを申し上げますと、毎年行われます長官所長会同におきましての長官の訓示は、裁判官会議の議を経ましていろいろ手も入れられましてでき上るものでございます。これは、最高裁判所長官御自身で作られたものではない。でありますから、結局最高裁判所全体の意見ということになると申し上げていいと思います。
  38. 大貫大八

    大貫委員 それでは、この訓示の中に、書記官の処遇問題について触れられておりますけれども、その中にこういう文句があります。「さらに今回の事件の背後に一部の外部団体の、裁判所の権威を否定し、その機能を阻害しようとする動きが存し、この事件を誘発したことを推測せしめるものがあるのであります。」こう書いてありますが、この背後にある一部の外部団体というものは、何をいっておるのでしょう。「裁判所の権威を否定し」云々、このそういう裁判所の権威を否定するような外部団体というのは、何を一体いっておることなんでしょう。
  39. 関根小郷

    関根最高裁判所説明員 今、大貫委員お話の点は、確かに長官の訓示の中にあったかと思います。その背後にあるものというのは何ものであるかということは、検討したわけではございませんが、実は今度の処分問題につきましては、全司法の範疇内におきましての処分であり、それからまた裁判所職員としての規律の維持の問題からやりましたことでありまして、いろいろの折衝中に総評の方々が入ってこられて、むしろ全司法の方々よりも総評の方々が、総長に面会その他の要求をされたことがございますので、そういった事態からも、そういったことが察知されるじゃないかということが、われわれ考えられるわけでございます。そういった趣旨がそこべ出てきたのではないか。それからもう一つは、力関係の問題でございますが、今お話のように、裁判の権威を否定するようなというお話がございましたが、今度の全司法の動きというものは、結局、浄書問題を通じまして、裁判所の力を逆にすると申しますか、要するに先般来総長が申し上げておるように、そういった趣旨がうかがわれるわけでございまして、そういったところから、ただいま申された訓示の内容が出て参ったと推測するわけでございます。
  40. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、この一部の外部団体というのは、大体総評だとお考えになって、その総評は、裁判の権威を否定し、裁判の機能を阻害するような動きがあって、そういう動きにあやつられておるのだ、こういうふうに解釈しておられるのでしょうか。
  41. 関根小郷

    関根最高裁判所説明員 今、私の推測では、全司法の動きが力関係を変えていこうという趣旨にあるとすれば、それと同調する総評も同様であるというふうな推測が出てくるのは当然というふうに考えてよろしいかと思います。
  42. 大貫大八

    大貫委員 どうも労働運動に対する認識が足りないと思うのですけれども、当然労働組合運動というのは力関係にあると思うのであります。憲法上保障された団結、団体行動によって要求をかちとるというのは、労働運動の本筋の行き方だと思うのです。そういうことはどうも不穏な行動のごとく裁判所にお考えになっておられるのでしょうか。
  43. 関根小郷

    関根最高裁判所説明員 力関係をはっきりするということは、適法の範囲内なら問題ないと思いますが、法律範囲を越えまして、法律を無視してまで力関係を反対に持っていこうということになれば、これは当然問題にしていいのではないかという考えであります。
  44. 小島徹三

    小島委員長 大貫君に申し上げますが、裁判所当局は、どうしても十一時過ぎには帰らなければなりませんから、そのつもりで御質問願います。
  45. 大貫大八

    大貫委員 時間を見ながらやっておるのですが——そこが問題なんです。法律を無視するというのは、一体それならば全司法労働組合にどういう点があったかというと、裁判所でいわれるのは、今の、浄書を拒否した、こういうことに、何回御質問してもなると思うのです。その浄書の問題は、むしろ法律的に確定した意見がないと思うのです。私どもの見解と裁判所の見解とは、全く違っておるのであります。浄書を拒否したということは、必ずしも法律に違背したことじゃない。私どもからいえば、これは大体浄書しておることが間違いだ。これはサービスだ。書記官が、法律にもない、職務にもないことをサービスをしておる。そのサービスを、実は今度のこの運動を通じて返上をした、こういうことだけであって、何ら違法性がない。法律に違目反しない。こういうふうに私どもは考えておる。裁判所は、もう少し労働運動に対する認識を高めていただかなければならぬと思うのですが、どうも裁判所考え方というのは、司法職員が組合を作って、いろんな要求を出すことはけしからぬ、こういう考え方があるんじゃないですか。
  46. 関根小郷

    関根最高裁判所説明員 裁判所考え方は、労働運動に対する理解が足りない。これは実はわれわれの方としては、最高裁判所に行政局という、裁判を通じましての労働問題を専門にやっておるところがございます。そうして、いわゆる労働裁判例集を出しておりますし、それについてのいろいろな学説等を全部集めまして、いろいろ研究しておるつもりでありますが、われわれの方としてはまだ至らないところがあるかと思いますけれども、なお研究を続けたいと思います。  それからなお、違法かどうかという点につきましては、先般来総長が申し上げておりますように、浄書事務の問題については、戦前戦後を通じまして、ちっとも法律上変っておらないのでございまして、戦前は司法大臣の訓令があり、戦後は最高裁判所の規則で、浄書義務があるということが明確になっておりますので、われわれの考えといたしまして、それを拒絶するということは、違法状態になるといって差しつかえないという考えでおります。
  47. 大貫大八

    大貫委員 そこが問題なんです。時間がないのですけれども、浄書問題については再々蒸し返しておりますが、たとえば二十三年七月の通達によりますと、これは浄書義務がないということを明らかにしておると思うのです。そこは非常に問題点だと思うのです。  そこで最後に、「命令に抵抗する力」という論説を書いたことを処分の対象にしておられるようです。しかも総長の前回の御答弁によりますと、こういう論文を書いた者を処罰する根拠は、国家公務員法第八十二条の第三号であるというように聞いておるのですが、このような論文を書いたことのどの点が、いわゆる第八十二条第三号のどういう点に触れるのか、それを御説明願いたい。
  48. 横田正俊

    横田最高裁判所説明員 これは、結局その論文だけを突如とごらんになっても、はっきりいたさぬ面があるかと思いますが、処分説明書の中にいろいろ書いてございますように、その前に全司法組合からのいろいろな指令がございまして、それに基きましていろいろな動きがありまして、その上で全司法新聞というものにああいう記事が出ておるわけでございまして、そういう事実を背景にあの新聞の価値判断をしなければならないわけでございます。結局あれによりまして、われわれが違法と思っておりますいわゆる浄書の拒否をそそのかし、あおる、その面におきまして、非常に強い力を持っておるというふうにわれわれは見たわけでございます。従いまして公務員たるにふさわしくない行為であるという点で、処分の対象にいたした次第でございます。
  49. 大貫大八

    大貫委員 憲法上、表現の自由ということが保障されているはずなんです。しかも、このような全司法労組の決定をしたというのは、何も個人がやったんではなくて、労働組合の機関を経て、いわゆる全司法の闘争方針というか、そういう方針が決定されて、その方針に従ってわれわれはあくまで戦うのだということが、この「命令に抵抗する力」という論説の内容だと思う。そういたしますと、処分された人個人がそそのかしたとか、どうしたというのではなくて、機関がやって、それを全司法新聞に書いたという、これで国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行ということが言えるだろうか。少し無理じゃないかと私は思うのですが、今でも裁判所としては妥当だと思っておられるのですか。
  50. 横田正俊

    横田最高裁判所説明員 結局これは裁判所職員にそういう職務上の義務がないということを前提にお考えになりますと、いかにもわれわれのやりましたことが、言論の自由を束縛した憲法違反というふうにもお考えになるのじゃないかと思いますが、結局そういう職務がある。その職務の違背をそそのかす、あるいはこれは組合自体がそういうことを決定しておるかもしれませんが、やはりいろいろな組合の役員なりその他の人がそういうそそのかし、あおるというような行為を具体的にやっておるわけでございます。やはり処分の対象は個々の職員でございますので、その行為を具体的にやりました職員を、処分の対象にいたすことは差しつかえない、こう思います。
  51. 大貫大八

    大貫委員 これは、質問はどこまで行っても相交わらざる平行線のようでありますから、私はもうこれ以上質問はやめますが、ただこの事態について、これは前にも田中委員から述べられたと思うのですが、裁判所がやはりこの事態を収拾するということに、十分御努力を願わないといかぬのじゃないか。どうも裁判所の労働組合に対するお考えが、少し時代おくれのような感が深いので、今のような対立する事態を何とか解決するということに、裁判所の方でも努力されんことを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  52. 小島徹三

    小島委員長 坂本泰良君。
  53. 坂本泰良

    ○坂本委員 私も一、二点お伺いしたいのですが、最初に、ただいま「命令に抵抗する力」という論文が、浄書拒否をそそのかし、あおった、こういう御答弁があったのです。そこで私はお聞きしたいのですが、田中長官は、再々憲法は改正しなければならぬ、こういうことを言うておる。今資料がないから一々あげませんが、あとであげてもいいが、憲法の番人が憲法を改正しなければならぬということを言うておる。だから裁判官訴追委員会で調査しなければならぬ。憲法の番人である最高裁判所の長官が、憲法は改正しなければならぬ、こういうことを一月の訓示あるいは裁判所所長会同とかで再々言うておるのです。これは今材料がないからあとで明示をいたします。それから憲法を改正しなければならぬという論文も、どこかで書いておられたと思うのです。そういうことから思い合せますと、訴追委員会には出る権限があるとかないとかで、とうとう出られなかったわけですが、そのままになっております。われわれは今度構成された裁判官訴追委員会でもこの問題は考えようと思っておるわけですが、そういうふうに論文を書いたり、各公けの席上で憲法の番人であるところの長官が、憲法を改正しなければならぬというようなことを言っておる。そういうような疑義のあることを言っておる。裁判所が、単に「命令に抵抗する力」という論文を書いただけで、浄書拒否をそそのかしたりあるいはあおった、こういうふうに考える場合において、私は今お聞きしてびっくりしたわけです。少くとも憲法上保障された言論の自由に対して、国家公務員法の第八十二条の第三号は、これは公務員の地位につくからこそ、そこに制限ができてくるわけです。だから、論文を書いただけで、前後の事情その他によって、そそのかし、あおる、こういうならば、もう少し具体的にこの処分の理由も書かなければならぬと思うのです。単なる抽象的に、そそのかし、あおるということだけでは、私は納得できないと思うのです。「命令に抵抗する力」という論文とあわせて、そそのかし、あおる、こういう認定をされた具体的の事実がありましたならば、お聞きしたいと思います。
  54. 横田正俊

    横田最高裁判所説明員 こまかくは、結局、証拠、事実認定の問題になります。この点はいずれ公平委員会でもってお互いに証拠を出し合いまして、委員会判断を仰ぐということになろうと思います。ここで一々申し上げません。処分説明書といたしましては、あれでかなり詳しく書いてあると私は考えております。  なお、お言葉の中に、田中長官が何か憲法改正論者であるような御発言がございましたが、私は寡聞にして田中長官がそういうことを言われたこと、あるいはそういう論文を書かれましたことを、全然知らないのでございます。のみならず、田中長官は憲法を擁護するという点につきましては、何人にも劣らない非常な熱意を持っておられるということを私は確信いたしております。
  55. 坂本泰良

    ○坂本委員 事務総長は、このごろなられたから、わからぬでしょうけれども、長官が憲法改正のことをいろいろ言われたということは、だれでも知っておる。寡聞にして聞かないということは、事務総長としてはもう少し調査してもらいたいと思う。それは私も具体的な問題を提示して次会にお聞きしたいと思う。田中長官は改憲論者だということは、一般に言われておるわけです。憲法の番人がどうもおかしいじゃないか。だから外国では、私もあまり外国のことは知りませんが、最高裁判所裁判官とか長官なんかは、そういう論文とか演説なんかは公開の席上ではあまりやらない。しかし、よく日本の長官は、公けの会場に出て、そういうことを言うものだという話も私は聞いておるわけです。この点は、私も今度は具体的事実をあげてやりますから、留保いたしておきます。  次に、先ほど力関係、こうおしゃった。これは労働運動に対する適法の範囲の限界の問題だと思いますが、先ほどの御答弁によると、全司法以外の総評というのがその背後にある力関係、こういうふうに私は聞き取れたのですが、そういうお考えであるかどうか、御説明願いたい。
  56. 関根小郷

    関根最高裁判所説明員 坂本委員お話でございますが、力関係と申しましたのは、裁判所内部における現在の力を変えまして、下の人が上になるといった意味で申し上げたのでありまして、総評が全司法の力であるという趣旨で申し上げたわけではございません。
  57. 坂本泰良

    ○坂本委員 そういたしますと、力関係というのは、地位の下の者が地位の上の者と対等になっていろいろやる、そういうことを力関係、こういう意味ですか。
  58. 関根小郷

    関根最高裁判所説明員 私の申し上げたのは、結局現在法律範囲内においてやる義務のある者が、それを否定してその上にいて命ずる者が命ずることができなくなった。結局命令する権利のある者に対しまして、その権利、はないといって否定する意味で、力関係を変えていくという意味で申し上げたわけであります。
  59. 坂本泰良

    ○坂本委員 法に基く範囲においての命令はあると思うのです。しかしながら、この浄書の問題については、あなた方の方では、単に裁判書浄書とおっしゃるけれども、全司法書記官連中は、裁判書自体をやっている、判事は略式命令には名前を書くだけだ、令状その他についてはもうすでに判までついて渡しておる、警察から被疑事実を書いて要求してくれば、それをそのまま付属書類としてくっつけて逮捕令状、捜査令状を出している、とにかく裁判書自体に対する仕事をやらせている、これは裁判官がやるべきものであって、書記官がやるべきものでないから、これは拒否すると言っている。だから全司法の連中が申しておるのは、いわゆる浄書じゃないわけです。裁判書自体をやらせるから、それは裁判官がやるべきものであって、書記官がやるべきものでないということなのです。あなた方の方の御説明を聞きますと、単に裁判書の写しを作る、浄書をやる、それは戦前戦後続いてやっておるから、それに違反するのは命令に違反する、こうおっしゃる。われわれが刑事訴訟法裁判所法に基いてこれを見まするときに、略式命令署名だけ書くのは、これは裁判官がやるべきものをやらずに、書記官にやらせておるのだから、そのこと自体が違法である、裁判官がやるのをやらぬから違法である、それを書記官に転嫁して懲戒処分までもやるというのは、これは行き過ぎであり、さらに違法じゃないか、だからそういう点から考えると、単に上からの命令を持っておるからというのでなくてみずから裁判官がやるべきものをやらずにやっているかどうかということを検討せずに、その責を書記官だけに負わせるところに、さらに懲戒その他の死刑に相当するようないわゆる懲戒免職をするような、そういう処分自体が違法であり、行き過ぎじゃないか、こういう見解に立っておるわけなんです。ですから、あなた方の方では、令状、略式命令自体は、裁判書として、刑事訴訟法の第百九十九条でしたか、それに基いて裁判官自身が書かなければならない。それを書記官にやらせていたのは、長い間やっていたにしても、それは違法であるから、改めなければならないというお考えは、処分をされる際に起らなかったかどうか、その点をお伺いしたい。
  60. 関根小郷

    関根最高裁判所説明員 今、坂本委員の御質問の点は、何度も繰り返して申し上げておりますので、もうおわかりかと思いますが、ただ一点だけ申し上げますと、裁判書の作成ということは、裁判書の一字一句まで裁判官が書けということではないのでございまして、そういう場合には、特に一字一句まで書けということが法律にはっきりしておるわけでございます。たとえて申し上げますれば、実質証書の遺言証書、これなどは一字一句まで書けということが法律に書いてあります。それ以外の場合は、結局裁判官が作るということは、裁判官判断すればいいわけで、最後判断を加えて署名捺印あるいは記名捺印すればいいわけであって、一字一句をだれに作らせるかということは、タイピストを使いあるいは事務官、あるいは書記官にやってもらうことは法律上許されているわけで、その点が、あるいはお問いの趣旨から考えますと、一字一句まで書かなくちゃいかぬというふうにも受け取られたのでございますが、われわれはそういう考えではないわけでございます。
  61. 小島徹三

    小島委員長 時間がございませんから、簡単に願います。
  62. 坂本泰良

    ○坂本委員 次に、問題は違いますが、公判記録紛失事件というのがありまして、先般、三十三年六月二十五日の朝日新聞の夕刊にも、「十年かかった傷害致死」というので出ておりましたが、公判記録が紛失をしておる。その公判記録が紛失をしたのについて、上告で差し戻しになりまして、控訴審では、記録がないから、当時の立ち会いの検察官とか裁判官その他を証人に呼んで、起訴状の写しで裁判をされた。それが上告になって、上告棄却になった。裁判内容はわれわれの関知するところではありませんが、かような重大なる公判記録を紛失する、これについてはどういう理由で公判記録が紛失したか。次にこの公判記録紛失の責任の所在はどこにあるか、その点をお伺いしたいと思います。
  63. 江里口清雄

    江里口最高裁判所説明員 先般の新聞に出ておりました公判事件記録の紛失でございますが、あれはあの記載の通り、実は紛失したのであります。紛失の状況は、第二審の判決がございましたのが昭和二十四年六月二十九日に懲役六年という高等裁判所判決がございまして、即日上告の申し立てがあったのでございますが、書記官の手元において記録を整理中、同年九月十五日に被告人、辺田本人が記録の閲覧を請求してきて、当日閲覧をさせたのであります。その後一週間たちました九月の二十一日に、記録を送付するように担当の裁判長が書記官に命じましたところが、記録が見当らないということが発覚いたしました。その後、当時非常に事件が山積しておりまして、他の記録にまぎれ込んでおるのではないかということで、ずっと引き続き捜査いたしておりましたが、ついに発見することができないので、昭和三十年の一月二十五日に記録を再編して、上告審に送付したのであります。これが起訴状がございませんでしたために、適法な起訴であったかどうかわからないということで破棄になって、差し戻しになり、先ほど坂本委員の御発言の通り、昭和三十二年十月十一日に東京高等裁判所でさらに審理を遂げて、懲役四年の判決の言い渡しをした。これが上告されて、三十三年六月二十六日上告棄却になったのてございます。調査によりますと、ただいま申し上げました通り、昭和二十四年九月十五日から二十一日の間に記録が紛失したのでございまして、紛失の原因については、いろいろと高等裁判所において調査したのでございますが、原因を確認することができなかったのでございます。記録の保管の責任は書記官にあるのでございますが、裁判所において保管すべき記録裁判所において紛失したということで、これは裁判所としては申しわけないことだと思っております。この責任につきましては、昭和二十七年四月二十八日の講和恩赦と同時に施行されました公務員等の懲戒免除等に関する法律によりまして、直接の保管者である書記官の責任あるいは監督者の行政責任というものは赦免されておって、この点についての処罰ということは行われておりません。     —————————————
  64. 小島徹三

    小島委員長 次に、法務行政に関する件について調査を進めたいと存じますが、この際、委員長として特に法務省当局にお願いしたいことがあります。七月七日付、毎日新聞の夕刊五ページに、「無視された診断書、千葉の選挙違反容疑者が訴え」という見出しで記載されている記事の内容は、一読したところでは、人権擁護の点から見てゆゆしき重大な問題を包含する記事であるという感じがいたします。その真否を委員会としてはぜひとも知っておいて、今後委員会として取るべき処置を考慮すべき必要があると思われます。法務当局において、すでにその真相が明らかでありまするならば、御報告願いたいと存じます。まだ未調査であるといたしまするならば、至急調査の上、次会期日までに御報告願いたいと存じます。
  65. 竹内寿平

    ○竹内説明員 ただいま御指摘の七月七日付の夕刊に「無視された診断書」という表題で出ておりましたこの選挙違反被疑者の取扱いに関する行き過ぎではないかという問題は、私どもとしては非常に事柄を重視いたしまして、さっそく事柄の真相を問い合せておりますが、これには胃かいようという診断書を持ってきたにかかわらず、検察官側がまた刑務所の医師をして診断せしめましてそれは単なる胃カタルである、しかも勾留にたえ得るものであるという判断をしたのに対しまして、これをその通り信じまして勾留の手続をとりましたこの検事の態度が、果してこれで適当であったかどうか、それからまた刑務所の医師が胃かいようを軽々しく胃カタルと診断したことは、医師として軽率ではなかったかというような問題等々、いろいろ疑点があるのでございまして、一応の経過は承知いたしておりますが、なお十分調査をいたしまして、当委員会に御報告を申し上げたいと思います。
  66. 小島徹三

    小島委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時三十三分休憩      ————◇—————     午前十一時五十九分開議
  67. 小島徹三

    小島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  次回は、特別の必要がない限り、八月九日、午前十時に開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     正午散会