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1958-07-08 第29回国会 衆議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月八日(火曜日)     午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 小林かなえ君 理事 田中伊三次君    理事 福井 盛太君 理事 村瀬 宣親君    理事 井伊 誠一君 理事 菊地養之輔君    理事 坂本 泰良君       綾部健太郎君    犬養  健君       辻  政信君    大貫 大八君       神近 市子君    菊川 君子君       島上善五郎君    田中幾三郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      中川 董治君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (矯正局長)  渡部 善信君  委員外出席者         警 視 総 監 川合 壽人君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 七月三日  占領軍による被害者補償等に関する請願(高  瀬傳紹介)(第四〇八号)  同(中島茂喜紹介)(第四〇九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件   請願  一 占領軍による被害者補償等に関する請願    (高瀬傳紹介)(第四〇八号)  二 同(中島茂喜紹介)(第四〇九号)      ————◇—————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず、請願審査を行います。本日の請願日程に記載されております請願一括議題といたします。  お諮りいたします。両請願は、いずれも去る三日、本委員会において採択の上内閣に送付すべきものと議決いたしました請願同一趣旨請願でありますので、先例によりまして、前の請願同一の議決をしたものとみなすことにすることに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。  ただいま議決せられました両請願委員会報告書の作成につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  5. 小島徹三

    小島委員長 これより法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。辻政信君。
  6. 辻政信

    ○辻(政)委員 法務について全くしろうとの私が、自分の希望によらないで、党の指名で法務委員に任命をされたのであります。これはおそらく厳正公平な立場で法の権威を守るようにという意味があるように解しまして、つつしんでお受けいたしました。その意味におきまして、きょうは、党派を越えて、国民の聞きたいことを国民にかわって御質問いたしたいと思います。  さきに岸総理大臣に対して質問通告をしておきましたが、きょうは御出席にならぬとのことであります。きょうで国会が幕を終ろうとするときに、この選挙違反に対する質問総理大臣がなぜ御出席なさらないか、そのことをまず委員長から承わりたい。単に忙しいという意味じゃなしに、総理は今どこで何をしておられるか、そのために委員会に出られないのだということをはっきりお答え願いたい。
  7. 小島徹三

    小島委員長 辻君にお答えいたします。総理大臣は差しつかえのために出席いたされません。それ以上お答えする必要はないと思います。
  8. 辻政信

    ○辻(政)委員 差しつかえがあるということは、国会の終幕でもあり、私は先週から通告をしているんですよ。単にそれだけじゃ納得ができない。国会を軽視するのか、それとも選挙違反の追及を避けようとされるのか。そういう印象を国民に与えることはまずいと思います。具体的にどこで何をしておられるのか、もう一回お伺いいたします。
  9. 小島徹三

    小島委員長 委員長はそこまでお答えする必要はないと思います。
  10. 辻政信

    ○辻(政)委員 では、総理に対する質問は後日に保留しまして、きょうは主として愛知法務大臣石井長官に御質問いたします。  今度の組閣で世間をあっと言わしたことは、佐藤さんを大蔵大臣にし、また従来法務行政に御経験のない愛知さんを法務大臣にされたことであります。これは世間の意表をついた人事であり、ある一部の中には、岸さんは、弟さんで財政を握り、また愛知さんの手で汚職ふたをするのじゃないかというような誤解をする者もあるのでありますが、私はそう信じたくありません。岸さんのお気持は、最も信頼する有能な愛知大臣の手によって厳正公平に、権力におもねらないで、法の権威を守らそうとするお気持であっただろうと思うのであります。伺うまでもありませんが、念のため愛知大臣の御心境を簡単にお伺いします。
  11. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私といたしましては、ただいま御指摘通り、全く未経験のところに職をあてがわれたわけでございまして、この点は先ほど辻委員が御自分のことをお述べになりましたと私も同じような心境でございます。ことに、岸総理は、汚職追放、暴力の追放ということを三大スローガンのうちの二つにしておられるくらいでございますから、私といたしましては、しろうとではございますが、勇気を持ちまして、これらの検察行政については不偏不党、公正に処理をいたして参りたいと考えております。
  12. 辻政信

    ○辻(政)委員 非常に心強い御答弁であります。では、はなはだ失礼な仮定でありますが、過去においてあるいは将来において、岸総理またはその側近に法に触れるような事件が起ったことを仮定した場合に、大臣は、岸総理であろうが何であろうが、断固として取り調べ、かつて佐藤榮作さんの造船疑獄容疑指揮権が発動されたような失敗を再びしないという強固な御意思があるかどうか、念のためにお伺いします。
  13. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはただいまもお答えいたしましたように、不偏不党、公正に処理をして参りたい。そうして筋目を通して、国民信頼を得るようにいたしたいと考えます。
  14. 辻政信

    ○辻(政)委員 三悪の追放岸総理の悲願であり、それを具体的に実行しようとしたならば、まず政界を浄化して、汚職をなくすることであります。そのためには、金のかからない公明選挙を文字通りやる以外にないと思うのであります。口先で国民をごまかすことは不可能です。愛知大臣は、今度の選挙における違反事件を迅速かつ徹底的にやる決意があるかどうか、それを念のために承わります。
  15. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、昨日次席検事会同でも、特に強調して訓示をいたしたのでございますが、前申しましたような基本的な気持と、さらに選挙公明にやるということが民主主義の基本になることでもございますので、徹底的に捜査をいたしまして、けじめをつけて参りたいと思っております。特に迅速な処理を必要とすると思いますので、その点を特に重視しておるわけでございます。
  16. 辻政信

    ○辻(政)委員 今度の選挙特徴は、事前運動の期間が長いために、多くの違反事前に行われておる。事前運動違反を取り締らなくて、公明選挙はあり得ないのであります。その取締りを今後といえども徹底的に、時期をさかのぼってでもおやりになるのかどうか。あるいはもはや打ち切ろうとされておるのかどうか、それを承わりたい。
  17. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、昨日最高検の次長検事からも検事会同ではっきり申しておりますが、打ち切るというようなことはございません。徹底的に捜査を続けていくつもりであります。
  18. 辻政信

    ○辻(政)委員 この前、衆議院議員選挙違反統計表というのをいただきましたか、この表を見て私が感じたのですが、この内容においていわゆる事前運動違反事後違反事件が、一体この一万七千九百六十四件のうちにどういうふうに区別されておるか、どっちが多いのか、これを承わりたい。
  19. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は刑事局長からお答えいたします。
  20. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 一万七千九百、この数字の中で事前幾ら事後幾らということは、これは一がいに言えないのでございまして、私どもも、昨日の検事会同によりまして、ほぼ実態をつかむことができたのでございますが、買収違反につきましては、事前買収が、相当具体的事件の上におきまして、金額その他においても多いという特徴を発見いたしました。
  21. 辻政信

    ○辻(政)委員 それじゃさらに別の観点からお伺いいたします。この表で、違反の一番少いのが岐阜県の五十九件、下から第二位が山口県の六十一件となっております。最も少い。偶然に岐阜県は副総裁であり、山口県は総裁です。そうすると、この少い理由は、党の幹部がおったから、文字通り公明選挙をやりたために少いのか、あるいは検察当局手心を加えたために少いのか、どっちと思われるか、はっきりお答え願いたい。
  22. 小島徹三

    小島委員長 辻君に申し上げますが、質問はできるだけ他を刺激しないような、他を傷つけないような質問をお願いします。
  23. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 これは、事件が少かったというのは、偶然こういう結果の数字を示しておるのでございまして、そこが与党の大物の選挙区であるがためにそういう結果を招来したというようなことは、私どもは夢寐にだに考えたことのない事象でございます。これは厳正公平に行なっておりますけれども、時によりまして、こういう結果になることはあり得るのでございまして、前の選挙において非常に少かった所が今回の選挙には多くの違反が出ているということは、しばしば見受けるところでございます。これはたまたまそういう結果になっておるというふうに考えておりますし、現地の検事正もきわめて優秀な方々で、決してそのようなことを考えて手心を加えるというような方々ではないわけでございます。その点は私ども深く信頼をいたしておるような次第であります。
  24. 辻政信

    ○辻(政)委員 あまり刺激するなという委員長の御注意でございますが、私は抽象論を言っておるのではありません。法というものは、人によって左右されちゃならない。身分がいかにあろうが、地位がいかにあろうが、法の尊厳は人によって左右されてはいけない。そういう意味から、抽象論でなく、具体的に承わりたいと思うのですが、よろしゅうございますか。それとも委員長において発言を停止されますか。
  25. 小島徹三

    小島委員長 発言を停止する意思はございませんが、できるだけ他の名誉棄損になったり、他を傷つけるようなことのないような質問を、願いたいと思います。
  26. 辻政信

    ○辻(政)委員 もちろんその通りです。それじゃあらためてお伺いしますが、山口県の地方新聞——これはお調べになればわかりますが、今度の選挙で、総理佐藤榮作氏の違反が一件もない、山口県の警察本部長は近く栄転するだろうという記事がある。ほんとうにこの二人にはなかったですか。石井長官
  27. 中川董治

    中川(董)政府委員 私警察庁刑事局長ですが、選挙は厳正公平に、候補者のいかんによって区別しない、こういう立場をとっておるわけです。私どもは、犯罪統計はとって参りますけれども個人々々に、甲の候補者統計とか、乙の候補者統計とかいうものはとっていないのでございます。御指摘内容につきまして、そういう個人別統計はございませんので、今佐藤さんの派に違反がなかったかどうかということは、私の方としてここでは答えられないのでございます。
  28. 辻政信

    ○辻(政)委員 私は四回選挙をやりましたが、吉田、鳩山内閣の手で行われた過去三回の選挙に比べて、今度やられた選挙ほど金に汚された選挙はないとしみじみ感じたのであります。(「そうだ、そうだ」と呼ぶ者あり)これは私一人の意見じゃありませんよ。ほんとうにそれはないとおっしゃるなら、具体的に例をあげて私が今から言うことが、果して違反になるのかならぬのか、その解釈を承わりたい。  毎日新聞の四月三日の朝刊に「本社全国総局支局長座談会、総選挙含み地方政情」、こういう見出しで大きく出ております。お読みになっただろうと思う。少くとも検察当局はこれを見ないで検挙はできないはずだ。その中にこういうことが書かれておる。山口では、「岸首相のおヒザ元だが保守陣営事前運動は活発、二区では講演会人集めに「明治天皇日露戦争」の映画を持ち回っており、一区では地盤固めの“おみやげ戦術”にパーカーの万年筆から皮バンド「これでかけ回ってウンと運動して下さい……」というわけでもあるまいがスクーターを贈った話も伝わっている。婦人層への工作も激しく外国人形の贈物から、はては牛肉を配ったウワサも流れている。」こういう記事を見まして、これはいかぬと思って私が調査をした、その資料を今から御披露申し上げます。———————————————————————選挙区の全市町村にわたって行なったものであり、岸総理東南アジア訪問記録映画……。
  29. 小島徹三

    小島委員長 辻君に申し上げます。個人々々の事実をあげてここで御質問なさることは、遠慮していただきたいと思います。
  30. 辻政信

    ○辻(政)委員 国民にかわって、国民が疑問を抱き、新聞に書いてあることを具体的に申し上げるのですが、委員長はそれをとめますか。
  31. 小島徹三

    小島委員長 個人の名誉を傷つけるような質問は、遠慮していただきたい。
  32. 辻政信

    ○辻(政)委員 具体的にやらぬと……。(「新聞に出たのはいいよ」と呼ぶ者あり)委員長の職権でとめるならやりませんよ。
  33. 小島徹三

    小島委員長 新聞に公表された範囲内における質問なら許しますけれども、そうでないことは……。
  34. 辻政信

    ○辻(政)委員 それじゃ某と言いましょう。(「具体的な事実をあげなければわからないじゃないか」と呼ぶ者あり)しかも、入場料は無料で、ところによってはその司会者が、某君を全国最高点で当選させて下さいとあいさつしたとも伝えられておる。また、村のすみずみまで某候補記録映画のポスターを張りめぐらしておる。終りころには、「日露戦争明治天皇」の映画を「湯島の白梅」に変えて、そうして外遊映画とともに上映して、観衆は少くとも十万をこえただろうとうわさされておる。劇場で百円で見るものをただで見せたら、少くとも一千万円ばらまかれたことになる。これほど大胆な事前運動が他にあるか。それを取り締る意思があるのかないのかということを愛知大臣にお伺いします。
  35. 小島徹三

    小島委員長 辻君に申し上げます。一千万円になるとかならぬとかいうことは、全くの推定だと思います。そういうことで質問なさることは、この際遠慮していただきます。
  36. 辻政信

    ○辻(政)委員 私の言うのは推定じゃない、仮定だと言っておる。それじゃ一千万円は取り消しましょう。  要するに、これほどはっきりした事前運動を、厳正公平に取り締ったと言えるかどうか。どうですか、愛知さん。
  37. 小島徹三

    小島委員長 仮定によって、推定によって質問なすったり、他を傷つけるおそれのある質問は、この際禁止いたします。
  38. 辻政信

    ○辻(政)委員 他を傷つけるものじゃありません。具体的に言わなければ、承知にならぬから言っておる。名前は一切出さないが、具体的の事実をやる。  山口一区での万年筆バンドスクーター記事は某候補のことであり、スクーターは十数台に及び、県の婦人連合会会長某女史にはジープを買い与え、選挙区をかけ回らせたといううわさもずいぶん広がっておる。それらを取り調べたかどうか。大臣どうです。
  39. 愛知揆一

    愛知国務大臣 申すまでもございませんが、捜査をいたします場合に、単純ないわゆる伝聞あるいはうわさというようなことだけでは、これはなかなか捜査できないということは、御承知通りでございます。
  40. 辻政信

    ○辻(政)委員 それでは、某候補は、さらに山口市の山水園で、陛下のお泊りになったお部屋で、陛下のお使いになった茶道具で、県下の有力婦人を招いてお茶の供応をしている。これはれつきとした事実で、新聞にも出ていますから……。それは事前運動の部類に入るのかどうか、それをはっきりしてもらいたい。
  41. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 事前運動であるかどうかということは、それが選挙運動であったかどうかということにかかるわけでございまして、それは現地で事実に基いて判断しなければならないわけであります。抽象的に、お茶の会がすぐ事前運動であるかどうかということは、にわかに言えないと思います。
  42. 辻政信

    ○辻(政)委員 陛下名前を利用して、候補者の夫人みずからが出てよろしくと言ったら、それが事前運動にならないんですか。ならないのですか、あなたの解釈では。
  43. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 よろしくと言ったら、ならないかというお言葉でございますが、よろしくと言ったということは、どういう根拠に基いてそういう今の御発言があるのか存じませんが、座談会とかその他の記事あるいは風評等で、もしもその風評通り事件を運ぶということにいたしますれば、そういう風評はずいぶん各地の新聞に出てございます。そういうものだけでは、今の刑事訴訟法ではできないのでございます。そういう点は、一つお含み願いたいと思います。
  44. 辻政信

    ○辻(政)委員 私が具体的な名前をあげれば、風評でないことがわかるのですよ。今、委員長注意によって、それをやめておるから、あなた方は風評とおっしゃるが、風評を取り上げて、この神聖な席上で議論する辻じゃありませんよ。ふざけた答弁をするにもほどがあります。  次にもう一つ昭和三十三年四月十六日付の山口柳井市の周東日日新聞記事です。これは事実です。柳井市会議員総務委員長坪野静守氏の談として、次のような記事が載っている。「私は市会議員として、数名を同伴して柳井市の土地造成問題で、」某「代議士に陳情のために上京した。」名前は特に秘す。「その後四月上旬の夜、」その「代議士が、東京から直接の電話で、柳井市の土地造成事件は、自分が尽力して大体緒についた。満足とまでは行かないかも知れないが、逐次やる見透しはある。そこで今度の選挙では約束通り応援を頼むとの依頼を受けた。」これが堂々と本人談新聞に載っている。この談話を発表した坪野静守という人は、あの地区で落選をした某候補後援会長です。それを他の候補者が、いわゆる土地造成問題でやってやるから、おれのところに来いと言っている。これは人の女房を奪い取ったような利益誘導だと私は思う。名前を出せと言われれば出すが、抽象論では言わない。こういうれっきとした事実があるのだが、利益誘導で取り調べたことがあるかどうか、愛知大臣に伺いたい。
  45. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はその当時その局におりませんので、事実は承知いたしません。
  46. 辻政信

    ○辻(政)委員 事実を承知しておらぬということはわかりますよ、あなたの前任者のときのことだから。これほどはっきりした容疑事実が新聞にも報道されて、本人もそう言っている。本人を呼んで調べればわかるのだから、それをさかのぼって調べる意思があるかどうかということを知りたい。
  47. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは、私及び刑事局長からお答えした通りでありまして、単に新聞記事に出ましたことだけで捜査権を発動することはできない。
  48. 辻政信

    ○辻(政)委員 犯罪容疑というものの捜査は、聞き込みであるとか、うわさというようなものが端緒になって、それから物的証拠をつかんでやるのじゃありませんか。それをつかまえずにおいて、それだけでもってできないということは、少しなめ過ぎておる。はっきりした人の名前を申し上げている。それを呼んで聞いたらわかることじゃないですか。それをやるかやらぬかです。
  49. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 ただいまの新聞記事犯罪捜査端緒になるかならぬか、これは申すまでもなく、風評でありましょうとも、新聞記事でありましょうとも、端緒としてそれ自体価値があるわけでございますが、さて、それをさかのぼって犯罪捜査として捜査を進めていくかどうかということになりますと、具体的にその風評なり新聞記事が、証拠に基いてさらに進んでいけるだけの価値のあるものであるかどうかということの価値判断は、捜査官にまかされているのでありまして、そこを新聞に出ているから明白であるという断定に立って御議論をなさっても、捜査はそういうふうには参らないということを先ほど来申し上げている次第であります。
  50. 辻政信

    ○辻(政)委員 柳井市の市会議員であり総務委員長をしておった坪野静守という社会的地位のあるものが、いいかげんなことを言うわけがない。それを調べましたか。それとも単なる風評として聞き流された程度ですか、それを聞きたい。
  51. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 私の方への報告では、そのような事実は聞いておりません。
  52. 辻政信

    ○辻(政)委員 それならば、さかのぼって、こういううわさがあるが、調べろという指示をされますか。
  53. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 指示するかどうかということは、先ほど申しましたように、それが真実なものであり、証拠を伴っているものならば、それをやるのにやぶさかではございませんが、その間の判断は、現地捜査当局の責任においてやることでございまして、この議場で、やるかやらぬかという捜査会議のようなことは、いたしかねる次第でございます。
  54. 辻政信

    ○辻(政)委員 山口県ばかり言うと人のあげ足取りに誤解されるから、それでは話を転じて私の選挙区の一つの例を申し上げます。私個人のことをこの席上で申し上げることははばかりますが、この事件と対照的に申し上げるので、その気持でお聞き取り願いたい。なまいきな言い分かもしれませんが、私は過去三回法定費用で、形式犯一つもなく、文字通り選挙をやって参一りました。今度もやろうと思ったが、残念ながら一つ違反が出た。その違反とはいかなるものか、御参考までに申し上げますと、子供を戦場でなくした七十幾つの遺族の御老人——最後の日の演説会近所で開いた。ところが、その七十幾つ老人が、辻の演説を聞きに行くように隣り近所五、六軒をふれ回った。それを戸別訪問現行犯として逮捕して、三千円の罰金刑を科している。私はそれほど峻烈な取締りを石川県において受けている。今申しましたような大それた違反とは違う。顔も名前も知らない者が私の演説会を聞きに行けと言って、戸別訪問現行犯として三千円の罰金を科されている。私は違反を起したなら甘んじて受けるが、私に加えられたと同様な厳格さをもってなぜ徹底的にやらぬかと、国民疑惑を持って見ている。それであなた方の良心が済むと思われるならばかまわない。どういう感じをもってこの事件を見られるか。どうでしょう。
  55. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 そういう御処分を受けたということでございますが、選挙違反事件と申しますのは——一般事件でございますと、その地方によって状況が違いますので、同種の事件につきましても、処分の結果の違うことがあり得るのでございますが、この選挙違反事件につきましては、そういうニュアンスは考えながらも、なお全国的に同一基準で処理するというのが検察の本旨でございますので、昨日の会議におきましても、そういう趣旨意思統一をはかっておるのでございまして、特に辻委員選挙違反だけが厳重に処罰されて、その他のものは軽旧く扱われるということはないはずでございます。どうぞ御了承願います。
  56. 辻政信

    ○辻(政)委員 自分のことを例にとったのは、自分が不平を持っているからではないのですよ。これくらい徹底的にやってほしい。しかし、一方において今言ったようなことが、単なるうわさであるといって、手かげんを加えられておるから僕は言うのですよ。私一人の意見ではありませんよ。私への答弁でごまかしても、国民の目を、国民の耳をごまかすことはできませんよ。それをよく腹に入れて——愛知さんは先ほどりっぱなことを言われておる。法の権威の前には、人の地位を考えないで、厳正公平にやろうとおっしゃった。その愛知さんです。これほど具体的に言ってもわからなければもっと出す。たくさん資料を持っているのだから。しかし委員長から注意をされたからこの席上ではこれ以上やりませんが、世間疑惑に対しては敢然として粛正することが、私はむしろ総理意思を守る道だと思う。くさいものにふたをしたいという感じを与えたら、どうして国民順法精神を説けるのですか。法は厳格であるべきですが、同時に公平でなくてはなりません。公平を欠いた厳格であってはならない。町の暴力狩りを見ても同様、深夜喫茶のチンピラはひっかかるが、それをうしろであやつっている大物には手をつけられないじゃないか。どうです、選挙違反もその通り、落選議員にはきびしいむちが当てられておる。五名逮捕されているが、現職議員はただ一人、それも国会で許さない。果して当選議員に選挙違反がなくて、落選議員だけに選挙違反があったのか。なぜ人によらずに、法を公平にやる勇気がないのか。落選議員に加えられたきびしいむちをもって、総理といえども総理の側近といえども容許しないというところに法の権威が確立されるのではないか。皆さんそういうつもりでやっているのならいいが、それをやらないで、労働組合に対し、日教組に対して順法闘争をやれと言う資格がどこにあるか。総理自身がみずからを清くして、初めて労働者に対して順法精神を説けるのじゃないか。それを守るのが法務大臣であり、法務行政の職務である。何を恐れて手かげんをするのか。どうですか愛知さん。
  57. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、手かげんというようなことは考えておらぬのでございまして、この点は御了承願いたいと思います。
  58. 辻政信

    ○辻(政)委員 それほどあなたは逃げられるなら、もっともっと具体的な事実を出しますよ。それを遠慮しておるのですよ。もう一回再調査させる必要はないですか。現に山口県の警察本部長は、副知事から立候補した某候補者の友人で、選挙前に副知事と二人で戸別訪問をしておる。それが山口県の警察本部長です。そういう人の判断で、山口県においては公平な法の適用ができると石井君は考えておりますか、どうです。
  59. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 選挙違反取締りにつきましては、警察といたしましては、一党一派に偏することなく、厳正公平なる態度をもって処理するように、私は第一線の都道府県警察本部長には、機会あるごとに強調いたしております。今回の総選挙取締りに際しましても、全国警察本部長会議の際にこの点を重ねて注意をしておったのでございます。個々の取締りにつきましては、私全国の具体的な事実をすべて詳細に報告を受けておるわけでございませんので、ただいま辻委員のいろいろ御例示になりましたようなことは、私は一々報告に接しておりません。従って、辻委員のただいま御指摘になりましたような事実があったといたしますれば、おそらく捜査当局としましては、情報に基き、聞き込みに基き、捜査は大ていは進めたものと思うのでございます。その結果、御承知のように、事件証拠がはっきりと固まらなければ、これを事件として取り上げることが不可能である場合が多いのでございますので、そうしたことであるいはそのままになっておるという点もあるかと思いますが、しかし、今、御例示になりました点につきましては、私重ねて現地の方に照会いたしまして、どういう実情であったかということを確かめてみたいと思っております。  なお、特に山口県の本部長の一身についての御意見でございましたが、この際、本部長の立場もありますので、私から一言だけ申し添えさせていただきたいと思うのでありますが、確かに山口県の前副知事であった橋本君と坪井山口県本部長は、朝鮮総督府以来の役人としての同僚である関係上、個人的に親交のあった間柄であることは私も承知いたしております。それだけに、橋本前副知事は副知事時代から、また坪井君は山口警察本部長に赴任した際から、お互いにお互いの過去の交友関係があるだけに世間からいろいろ色めがねで見られるおそれのあることを百も承知の上で、お互いに公私ともに生活態度においては何ら疑惑を持たれないようにしようじゃないかという申し合せをしまして、本来ならばもっと親密に交際してしかるべきものを、ことさらに遠慮しておったというふうに私は両人から聞いておるのでございます。ことに今回の選挙取締りに当りましては、私は、全国的に各本部長に対して注意を喚起する以外に、坪井君自身に対しましては、今申し上げましたような前副知事が立候補するという問題もある際であるので、従前から自重しておられるようだが、この際君は特になお一そう自重せられるようにということを要望しておいたような次第であります。おそらく山口県本部長といたしましては、良心に恥じない態度で取締りに当ってくれたものと確信いたしております。しかし、個々具体的な事案については私は一々報告に接しておりませんので、先ほど御指摘になりました点につきましては、さらに十分調査をいたしてみたいと思っております。
  60. 辻政信

    ○辻(政)委員 私の言ったことが事実無根ならば、名誉棄損でも誣告罪でもあるいは除名処分でも喜んで受けますよ。国民の疑問を聞きただすということにおいて、私は自分の言動に対しては責任を感じている。いいかげんな風評で人の名誉を汚すものではございません。ただ法を守らないがために、法は万人に対して公正にやるべき必要があると思えばこそ申し上げているのであります。検察当局がやり切らないならば、法務委員会は法の権威を守るために、あしたからの休会中に調査団の派遣をして、現地にこの状況を調査する必要がある。法務関係の庁舎、建物の検査もよかろうが、建物の検査よりも、国民にかわって中身の検査をする必要がある。私の言ったことを、もし検察当局が権力においてやられぬならば、もう一回理事会に諮られて、調査団を派遣して国民疑惑を解くように、委員長において御配慮を願いたい。  総理に対する質問は後日に保留して、私の質問は一応終ります。
  61. 島上善五郎

    ○島上委員 今のことに関連して一問だけ伺いたい。これは今の辻君の質問したのと似通っている問題ですから重複を避けますけれども、私はここであえて質問をするのだが、現在の法律が不備であり、そのために取締りができなかったというのならば、法改正をしなければならぬと思う。現在の選挙法においても、事前運動の禁止及び特定の寄付の禁止という条項があります。御承知のように、寄付の禁止については、第百九十九条の二にあります。「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者は、当該選挙に関し、当該選挙区内にある者に対し、寄附をしてはならない。」「通常一般の社交程度を超える寄附をしてはならぬ」とある。これは特にこの前の選挙事前運動の不当な寄付というものが非常に選挙界を腐敗さしているという事実にかんがみて、この前の国会で改正したのです。そこで、今、辻君が言われたような事実はほかにも幾らもある。これは私が具体的に知っている事実であります。名前は差し控えておきますが、ある候補者が観光バスを七台借り切って、きょうはどこの町、きょうはどこの町というように百円の会費で毎日成田へ連れていって、帰りは船橋のヘルス・センターで一本つけてごちそうして、おみやげを持たして帰している。これを観光バス七台連ねて毎日やっている。これは選挙直前の一カ月ほど前のことです。これは明白に第百九十九条の二に該当すると思います。こういう事実がもしあったら、この第百九十九条の二、すなわちこの前公職選挙法の改正をしました条項に該当すると解釈するかしないか、そうしてそれについて調査をされた事実があるかどうか伺いたい。うわさであるとか、新聞記事であるとか言いますが、現実に毎日やっておるのです。観光バス七台連ねてやっておるのを警察が知らないはずはない。ただこの条項に該当しないというならば、法の不備ですから、法の改正をしなければならぬが、どういう解釈をお持ちですか。
  62. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 今のお話のようなことが寄付の禁止の規定に違反するか、あるいは事前の供応に該当するか、これはいずれにしましても、お示しのような事例が事実でございますならば、それぞれ罰条に触れる行為であろうと思います。しかしながら、それを調査しているかどうかという御質問でございますが、それは先ほど来申し上げますように、そのような事実はおそらく警察並びに検察庁の出先機関におきましてそれぞれ内偵をしておるのかとも思いますが、その結果私どもの方べ報告がされていない以上は、調査したかせぬかということをここでお答え申し上げることにはいかないのでありますけれども、具体的に今のヘルス・センターで云々というお話でございますが、おそらく東京か千葉の事例をおっしゃっているのかとも思いますが、よく調査してみまして、お返事を申し上げるほかないと思います。ただいま即座にはお答えできかねる状況でございます。
  63. 島上善五郎

    ○島上委員 やはり同じような事例で、後援会の名前でやった人があるのです。ところが、御承知のように、この前の解散直前の国会で、後援会の名による寄付も禁止するという改正が行われたのです。在来の法律だと、候補者となろうとする者は寄付してはいかぬ、しかし後援会の名前では野放しだったのです。その弊害が現実にありましたので、特に私ども強調しまして、後援会の名による寄付もいかぬというふうに改正した。その改正の直後に宴会をやったものですから、その人は明らかにこれに抵触することになって、立候補を断念した事実があるのです。何百万円も使って後援会で御馳走をしたために、立候補を断念した事実があるのです。片方は、公職選挙法による候補者となろうとする者が、大々的にこれをやっているのです。知らぬ者がないくらいです。所轄の警察でそれを知らぬとすれば、知らないでぼんやりしていたとすれば、これは警察がどうかしている。知らぬはずがない。それでも法律を適用するにはなお不備であるというなら、私どもは法律の改正をしなければならぬ。しかし、今のあなたの解釈によるならば、これに該当すると思われる、該当すると思われるならこれは当然調査すべきです。今からでも私はおそくないと思う。毎日七台の観光バスで何百人という人間を連れていくのですから、これは調べればはっきりわかります。こういうようなことに対して、今度の選挙取締りは、怠慢というか緩慢というか、実にでたらめだったのです。今度の選挙ほど金をかけた選挙はない、これは事実なのです。私があえてこれをあなたに聞くのは、法律がなお不備で、現行法律ではどうにもやりようがないというなら、法の改正をしなければならぬ。しかし、現行法でもやれるというなら、現行法でびしびしやって、公明選挙の実をあげてもらわなければならぬ。この点は、私は、法の権威を守るためには、今からでもおそくはないから、やってもらいたいと思う。具体的な事実が必要ならば、私どもいつでも提供します。ぐずぐずしていれば時効になってだめになってしまいますから。関連質問ですから、この程度にしておきます。
  64. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 法の不備といえ今のお話のような点からいいますと、法の不備という問題ではなくして、これを具体的にどういうふうに捜査するかという問題だと思いますので、おそらく現地の警察側並びに検察庁でそれぞれ協力のもとにやっておることとは思いますけれども、いや、ちっともやっていないじゃないかというお言葉でもございますので、十分調査してみたい、御意思があるところをよく体しまして調査してみたい、かように考えております。
  65. 小島徹三

    小島委員長 神近君。——神近君に申し上げますが、警視総監は十二時半までということですから、先に質問して下さい。
  66. 神近市子

    ○神近委員 愛知法務大臣に対して、二点の事項についてはっきりした御返事を承わりたいのでございます。  一つは、請願も出ておるはずでございますけれども、府中に建つ予定の婦人補導院の問題でございます。これは前国会通りました婦人補導院法による法務省設置法一部改正によって建つ婦人補導院が、小学校の門の前に建つということで、私どもは、片方では早く補導院は作ってもらいたいし、また教育に支障があると考えられる地元の考えももっともなので、何とか折衝ができて、そちらさまでお話し合いができればよいというように考えて、中立の立場でお話をあっせんしたりしたことがあるのです。お目にかかって陳情したのは、矯正局長です。どうもそういうようなところの人たちが、自分たちの判断で、では地元がそれほど反対しておるのだし、また実際に小学校の門の前に——私は内容はそれほどじゃまになるようなことはなさらないだろうということは信頼しておりますけれども、でも地元でいろいろ危惧をお持ちになる。これはごもっともだと考えて、この間からその話をあっせんしておるのですが、一時、地元の人たちの反対もあまり強くないというような法務省側のお考えも聞いて、私ども手を引いて待っていたのです。PTAはもちろんのこと、市長から市議会議長、市会議員、そういう方々が、全部をあげてこれに御反対ということも承われば、これもやはり考慮していただかなければならないのではないかと考えるのです。事務当局からでもよろしいのですが、防止法第五条により補導院に行くことの必要になっておる人たちは現在どのくらいか、私どもが聞いておるところでは、まだほとんどごく少数で、しかもその収容は栃木の婦人刑務所に臨時に収容所を作ってあるということも承わったのです。もし、それが事実であれば、問題は簡単に、皆さんの法務省関係のお考えを切りかえることによってできると考えるのです。どういうことかといえば、結局は、府中でなくて調布に私どもが適当ではないかと考えられる代替地がある。そうすれば、府中に建設すると書いてあったのを調布に建設するということに法務省設置法を変えるという、いわば役人としてはごく簡単な所作で、その地元の希望をいれることができるのです。ところが、法務省では、その法律を変えることの方を重大に考えて、地元に何とかこれをしのんでもらって、納得させようという、私はこの態度は非常に悪いと思うのです。役人が怠慢であるということ、あるいは国民の公僕であるという立場を忘れて、国民の希望よりも法務省の企画、決定したことを遂行しようとなさる。そこで、法務委員会にこの問題を持ち出せば、だれ一人として、学校の正門の前に婦人補導院を持っていくということを地元できらわれる理由のわからない者は、これは与党であれ野党であれ、ないと思う。このことは九月の、もうあと二月あとに迫っておる臨時国会で法律の方を改正して、お手数であろうけれども、それは皆さんの仕事でありますから仕方がない、そうして、中止して、代替地にこれを持っていかれた方がよいと考えます。なかなか一介のお役人では、そういうことは発言できないと思うのですが、法務大臣がこれはもっともだとお考えになれば、それができるということなのです。ぜひその点で法務大臣はここで勇敢に決裁していただきたいが、こういうことについて伺いたいのでございます。ほかにも質問がございますけれども、まずその点について法務大臣のお考えを承わらしていただきたいと思います。
  67. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまお尋ねの点につきましては、こまかい経緯あるいは数字等につきましては、事務当局から御説明いたしたいと思いますが、私も実はこの問題については非常に頭を悩ましております。まだ結論を申し上げるまでに至っておりませんが、ただいまもお話がございましたように、私としては、婦人補導院の設置とその活用は、今、国民的に要請されておる非常に大きな問題であると思います。すでに法律で府中ということがきめられてございますのと、それから地元の方々に対しましても、いろいろと法務省側の希望や考え方もざっくばらんに御相談申し上げておるわけでございまして、学校の前であることは御指摘通り確かに一つの問題でございますが、たとえばその建物の作り方とかあるいは通路のつけ方とか、いろいろの工夫もあろうかと思いまするし、また婦人補導院をできるだけ早く作らなければならないという大きな要請から申しまして、でき得るならば地元の方々とお話し合いをつけて、そして府中に作るということでやっていきたいという考え方でこれまで努力をして参ったのでございます。今のところは、まだ代替地云々ということは考えておらぬのでございます。と申しますのは、内々調べてみましても、一度こういうふうに問題になったところはなかなか受け入れ態勢がむずかしい。また他の受け入れ態勢がかりに物理的にはありましても、婦人補導院の活用というようなことから考えまして何かと不便も多いということで、今の私の気持としては、できるならば府中の方々とのお話し合いをもっともっと率直に交換をしてみて、そしてその実現をはかることはできないであろうか、こう考えておるわけであります。
  68. 神近市子

    ○神近委員 法務大臣も、代替地はごらんになっていないはずです。私もちょっと機会をはずしてまだ見ておりませんが、地元の方々の御説明を聞きますと、調布にございますこの代替地には、愛光学園という婦人収容所がありまして、その地続きだということでございます。それに山に近い所だそうで、もうすでにそういうところがあるのだし、その地続きだといえば、調布の地元では大して反対はなかろうという見込みも持っております。ただ、私どもが非常に困ると思うことは、矯正局長もそうですし、おそらく刑事局長もそうでしょうが、一たんきめたら、おそらく建築の手配なんかもしてあると思う。そして、たとえば請負なんかのことでもしてあるということで、変えることによって因るとおっしゃる。この理由の方が大きいと思うのです。ほんとうは地元の人たちの要望をいれて、地元の人たちの満足のいくような決定をなさるのがいい。私は、最初から申し上げているように、婦人補導院は早く作ってほしいし、あるいは地元の教育の効果として、きのう愛知法務大臣もおっしゃったように、青少年の犯罪について非常に深い注意を払っているということ、そういうことを考え合せると、地元の父兄たちが、あるいは自治体が不適当だということならば、これはやはり地元に聞かれるべきだと思うのです。もともとこの建設の問題が起ったときに、最初にその地元に相談をかけておいてからお始めになるべきだったと思うのです。それを、いかにも反対運動が起つちゃ困るというように、地元に相談も予告もしないであそこに手をおつけになったことが、こういうことになった原因の一つだと私は思うのです。それで、法務大臣がおいでになるのでお願いしたいのは、あなたが腹をきめてどっちの方針にするか、地元に聞くか、あるいは行政官等の下部の人たちの仕事をいろいろ変更しなくてはならないから——設計も違うだろうし、寸法も違うでしょう、門のつけどころも違うでしょう、そういうことの手間をいとわずにこれを改正させるかどっちかにおきめにならなければならないと思うのです。あなたはどっちを大事に思われるか。法律の改正は、九月の臨時国会でこれは一日でも法務委員会は通るのです。それを手数をかけるのがおいやなのか、あるいは地元の人たちの、そこに住んでいるその土地の主人たちの要望をいれるということとどっちが重いと考えられておるか、それが承わりたいと私は思います。
  69. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは国家的の要請で、婦人補導院をすみやかに建てなければならないということは、私は第一の要請であると思います。その要請に基いて、地元の方々の御協力をいただきたい。これはかりに他の代替地を求めるような場合でも、私はそういう考え方でいかなければならないと考えております。しばしば御指摘がございますが、事務的にどうだとか差しかかりのことがどうだからといって、強行して無理押しするというようなことは、避けなければならないというふうに考えております。この点は率直に私さっき申し上げましたように、家の建て方なりあるいはその他において相当に土地の方々の御納得を得ることができるのではなかろうかと思います。さっき御指摘のように、調布あるいは青梅でございますか、そういうところに、こんな場所はどうかというところがあるということも承知しておりますが、自分ではまだ見ておりません。しかし、仮定の問題でございますが、そういうところに置きましても、またこれは議論が出てくるものではなかろうかというふうに考えるのでありまして、何とかして一日もすみやかに、私の現在の気持では、予定のところに建てさせていただく、どうしてもそれがいけないということであれば、あらためて法律の修正をお願いするということは私はやぶさかではございません。しかし、私は、できるなら現在のところに何とか建てることで納得していただけるような話し合いを進めたいと思っております。
  70. 神近市子

    ○神近委員 私はその程度の御返答では満足できないのです。婦人補導院を早く建てるということは、もう国家的要請だということは、よくわかっております。もっと早くから婦人補導院の設置をしなくてはならぬということが、政府の御都合で延び延びになって、前国会の会期末にようやくこの設置法が通ったのです。それまでのいきさつは、あなたは御存じないでしょうけれども、われわれはよく心得ております。それで、私ども立場からも、婦人補導院は一日も早く建てていただきたいのですけれども、現在防止法第五条違反の人たちがわんさと出て来て、これを置くところがないというような状態でないということを承わっているということ、とりあえずそれができ上るまでの仮収容所としては、刑務所が使えるということ、そうであれば、手数でも、地元との融和を考えて——建ててしまえば当分取り除くことはできないのですから、地元が住宅のまん中に建てられるのは困ると言っているのも理由があるのです。矯正局長は、監獄のそばに小学校を建てたじゃないかということをこの間おっしゃったのです。そういうミスをしている市民だからというようなことで、この間その点を確かめましたところが、あれはすし詰め教場の問題を解消するためにとりあえずそこに増築しておいて、世情が安定次第どこかほかに移転するという前提で納得したのだということでした。一ぺん建てれば、なかなかそれをつぶすことはできないものですから、私はこの際法務大臣ももう一ぺん考え直して、そうして地元の人たちの話もお聞きになり、自分現地をごらんになってなるほど住宅のまん中でこれは困る、土地の人があげて反対しているということを頭にお入れになり、業務に携わっている人たちにいろいろ不便か起るでしょうから、いろいろ大臣にこうだ、ああだと言うでしょうけれども一つそれは政治的感覚を持って、内部と外部に対してあなたのはっきりした決定——どちらを大事に思うか、住民の意見を重んずるか、内部の人たちの事務上の意見を重んずるかということで決裁していただきたいと思います。  それから、私は矯正局長においでを願いましたけれども矯正局長のおっしゃることはわかるような気かいたしますから、時間を節約いたしまして、もう一つ法務大臣に伺いたいことは、深夜喫茶の問題でございます。この間ちょっとこの問題について事務上あるいは成立上のことをお伺いいたしましたけれども、今日世論もこれをやめさせなければならないという意見が強いのでございます。先般衆参婦人議員の超党派の懇談会でも、この問題について非常にいろいろと悪材料が提出されまして、そして都はこれを条例で廃止させようということを考えているようですけれども、条例ではこれはどうにもならないのでございます。それで、やはり立法が必要だろうということが大体話し合われまして、そして、どうしてもこれは廃止してもらわなければならない。あなたがきのう次席検事会同の検事さん方に訓示されておりますように、暴力、売春、年少者の犯罪は、都会が拠点というか、巣になっている事実を考えますと、これは婦人たちが困ると考えたばかりでなく、新聞もあるいは盛り場の地元も立ち上っているのです。ところが、国の助力がなければ、自前で地元が立ち上っても、いかほどのこともできないと思うのです。この点について、これを廃止させようという実態を知っていらっしゃるか。そして、これを廃止しなければならないという世論をどういうふうに感じておいでになるか、その御意見を承わりたい。
  71. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことに申しわけないのでありますが、私は深夜喫茶の実態を承知いたしておりません。しかし、いろいろの新聞報道あるいは人の話によりまして、常識的に政治家としての立場から、こういうものは廃止しなければならぬ問題だと私は考えております。しかし、実態も知らずに早計にそういうことを申し上げるのは、いささかいかがかと思いますが、私は廃止すべきものと思います。これは現在においては警察の方の関係でもあると思いますし、その方法については考えさせていただきたいと思います。
  72. 神近市子

    ○神近委員 大体、法務大臣は廃止すべきだというお考えですが、深夜喫茶には私ども行けないのですよ。私どもも実態を人から聞くだけで、見たいと思っても、こわくて行けないのです。昨日、一昨日でしたかも、東京新聞の夕刊の短文に書いてありましたけれども、新宿が自粛をしているから非常によくなったということが新聞に出ていたから、何かの会合のあとでそこを通ってみたけれども、ちっともよくなったとは自分たちには見えない。非常にこわい。どこかから出てきて、その町かどにたむろしている少年あるいは青年たちが、次の瞬間に何をしでかすか、次の瞬間にどんな凶悪な犯罪者になるかわからぬというような不安が非常に多いというようなことが書いてあります。私どもも、この点は前からなんとかならないかということは考えていたわけでございます。警察の方に、石井長官でもけっこうでございますが、この対策はどういうふうに考えていらっしゃるか、また法務省に対してどういうふうな報告をして、どういうふうな処置をとられることを希望しておられるか、その点をちょっと承わっておきたいと思います。
  73. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 いわゆる深夜喫茶が青少年の悪の温床として最近非常に注目の的になっておりますことは、私どもも十分承知をいたしております。現行法におきましては、食品衛生法あるいは関係都道府県の条例等によって取締りをいたしておるのでございますが、それでは必ずしも十分な取締りができないという点は、確かに現実の問題としてわれわれも痛切に感じておるところでございます。現在これは大都市に大体多い問題でございますから、その実態を十分に把握し、立法等につきましても、十分検討してみたい、かように考えておるのでございます。関係各省とも十分に打ち合せをいたしますとともに、まずそれに先立って実態把握をしたいとわれわれは考えておるわけでございます。むろんそうした研究もさることながら、ここ当分の間は、いわゆる法令に基いた十分な取締りはできないまでも、可能な限り取締りを徹底していく、こういうふうに考えているわけでございます。東京都下の例につきましては、ここに警視総監もおいでになっておりますから、もし具体的な実情等を、御要望があればお答えするかと思いますが、きょうの新聞にも出ております通り、新宿方面におきましては、自発的にここ当分廃止をするというふうなことも出ております。先般来警視庁におきましては、いわゆる盛り場特に深夜喫茶の取締りが問題になっておるために、重点を置いて強力な取締りを推進しております結果、業者等も相当自粛をしてきつつあるという動きもあるのでございます。それこれあわせ考えましてとにかく先ほど申します通り、まず実態を十分把握しまして、これに対応する法的措置を十分研究してみたい、かように考えております。
  74. 神近市子

    ○神近委員 私もその新聞を読んでおります。ところが、自粛々々ということは、これは業者からの自粛ということはあまり期待できないと思うので、御存じのように青線、赤線の自粛の問題があったときに、実態は、どうして警察の監督の目をのがれようかということで、結局そのこと自体は、業界から出てきた自粛ということは、そんなに当てにならない。結局悪事は依然として行われておる。目につかないようにこれをやろうというのが自粛なので、私はその点ではあまり期待できないと思うのです。むしろ商店街に暴力追放委員会か何かできておる。これは第三者ですから、相当効果があると思うのです。だけれども、それには向うが暴力団でありますから、それは土地に住んでいれば、にらまれたら、これまたどういうことをやられるかわからないので、先に立ってこれを指導するということがむずかしい。そういう場合は、そういう団体と警察が緊密に協力して、実働はやはり警察がして下さるということがほんとうじゃないかと思うのですけれども、そういう構想は持っていらっしゃいますかどうか。それから、もしなんだったら警視総監のお話も承わっておきたいと思うのです。実態をどの程度把握していらっしゃるか、承わっておきたいと思います。
  75. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 実態につきましては、後ほど警視総監からお答えしていただくことにいたします。  先ほど申しました通り、東京初め大都市におきまして、いわゆる深夜喫茶の問題が非常に問題になっております。実は今月の中ごろ、いわゆる五大府県の本部長を集めまして、深夜喫茶の問題はもとより、その他暴力取締りの問題等、大都市の特殊な問題を取り上げましての打ち合せ会議を持ちました。実態について私ども地方に十分話をしていただくと同時に、それを基礎としまして、われわれ中央において今後の対策を考究する資料にしたい、かように考えておるのでございます。先ほどお話のありましたように、こうした問題の解決のためには、それぞれ関係地域の善良なる市民の方々の自発的な御協力をいただくということが、問題の解決、取締りの効果を上げるのにきわめて大事なことであることは申すまでもないところでございます。それぞれの地域におきましては、関係府県におきましては、関係市民の方々の協力を得つつ、こうした問題の解決のために最善を尽しておると思うのでございます。今後こういう点につきましてはなおよく十分注意を喚起いたしまして、こうした方向に進んで参りたい、かように考えております。
  76. 川合壽人

    ○川合説明員 神近委員の、業者の自粛ではきわめて最終的に有効でない、どうしても取締り官庁たる警視庁その他の警察力が十分な活動をしなければだめだというお説は全くごもっともでございまして、私どももそのように心得ております。現在警視庁の管内には六千三百くらいの深夜喫茶がございまして、これは私どもの見るところでも、百害あって一利なしと私断言してもよろしいと思うのでございます。かつては、私どもの耳に入りましたところでも、深夜に労働をやる者、それから文士の方その他でもって深夜に頭を休めたいという人が、優秀な喫茶店でもって、夜、いこいの場になり、食事をとるのに便利だというようなことを私などに直接申された方もまれにはあったのでございますが、最近の深夜喫茶の実情は、もっぱら不良青少年の寄り所になっておりまして、彼らが朝四時、五時に何か不良の仲間たる少女などと一緒に肩を組んで出てきますそのありさまは、ほとんど見るにたえないものがあり、そのことだけを見ましても、もう非常に頽廃的なものなのであります。いわんやこの深夜喫茶というのが単に喫茶だけにとどまりませんで、実は売春の手引きをするところの方法をやります一つのアジトにもなりかねまじい状況が、私ども調査でわかっておるのであります。もちろん現実に証拠がありますれば、これは盛んに検挙をいたしておりますが、どっちにしましても、そういう深夜にああいう業態をやるということは、喫茶店の名前であれ、バーの名前であれ、これは私どもとしてはきわめていかがわしいものであって、ここから青少年の犯罪が続発をするというふうに見ておるのであります。ただ、この業者の自粛の傾向は、今新宿では非常に盛んでございますが、私ども必ずしもこれを看却できない、と申しますのは、業者の人たちの意気込みというものが私どもとけ、マッチしなければ、やはり警察取締りも効果を上げることができないということが第一点と、現実に法規ができまするまでには相当な日にちがかかると思うのであります。そこで、この人たちの組合も、これは全部の組合員ではありませんで、私どもの聞いておるところでは、実は二割か三割の組合員なのであります。あとの人はまだ深夜営業を続けたい、こういうわけなのであります。しかし、二割にせよ三割にせよ、こういう人たちが自発的に今の世論にかんがみて午前一時以後は灯を消そう、こういうことになりますれば、私どもはやはり非常にありがたいわけでございまして、警察署長や防犯協会長とともどもにそういう傾向には賛意を表しているわけなのでございます。ことに新宿の場合には、私ども一週間前に聞きましたときには、午前二時まで仕事をやろう、それで午前二時以後は戸を締めよう、こういう議であったのであります。それを昨日ですか一昨日ですか、午前一時に切り上げたという、その意気込みだけでも私は非常にありがたい、こう思っておるのであります。この傾向は、おそらく新宿がああいうふうに新聞に書かれますと、私どもで最も心配をしております渋谷、池袋、浅草、この三つにも波及するものと思っておりまして、法律を、法務大臣中心で、またこの委員会中心で立案をしていただくまでに、そういうこともだんだん充実されていって、私どももがんばりますが、ぜひそういう風潮にしていただきたいものだということを考えておるわけでございます。
  77. 神近市子

    ○神近委員 今、御説明を承われば、なるほどあなたは五時とおっしゃったけれども、六時まで営業があるそうですね。七時からまた朝の営業が始まる。そういうわけですから、これを全面的に禁止に持っていくまでに、その弊害を幾分でも軽減することができるというお考えなのですが、私がそのことだけに信頼できないというのは、そうなりますと非常に収入が減ってもうけが減るわけなのです。おそらく一時から朝の五時ごろまでいるような人たちは、最も犯罪の可能性の多い人たちあるいは不良化の進度の強い人たちで、その人たちの方が一番金を使うのじゃないか、どこでも店があいているときに、たとえば中村屋でも木村屋でもというようなところへは、そう入らないと思うのですよ。それで私は、その点が危惧にたえないということで、やはり立法ということを考えていらっしゃるとすれば、ぜひ法務大臣にこの御考慮を願って、私の質問を終りたいと思うのですけれども一つその取締りの方法として——私は深夜喫茶をのぞいたことはないのですが、どうしてこれが風俗営業法にかからないかというと、アルコールを禁じてあるということなのですね。ところが、お茶の中に非常に強いジンだとかウィスキーだとかをとっぷり入れて、それを飲んでいて、三ばいも飲めば、女の子なんかは足をとられて腰が抜けるというほど強い酒を飲んでいる。その方から取り締る方法はないものでしょうか。現実に、明日にでもアルコールを禁止するということ。それから賭博もやっているということがこの雑誌には出ておりますね。賭博を盛んに大いばりでやっている。そういうふうなことの取締りというものは、酒を出すということと賭博的な行為というものにはできないのですか。それをちょっとお伺いしたい。
  78. 川合壽人

    ○川合説明員 深夜喫茶で終夜営業をやっております業態というのは、酒を出さないところもありますし、出すところもあるのでございますが、婦女の「接待は厳然と禁止されておるのでございまして、その意味で風俗営業取締法にかかっておらぬわけなのであります。それから、利益の関係、これはおそらく神近委員も十分御了察だと思いますが、一時から五時、六時まで業態をやる、そのことが実はもうかる、もうからぬというのではなくて、あれらの喫茶店がもうかりますのは、善良なる人が入れかわり立ちかわりやってきまして、ノルマルに金を払って、エンジョイしてくれるためにもうかるわけなのであります。現在の喫茶店の悩みというのは、長い時間、店を開いておりましても、照明をつけ、バーテンを置きましても、不良どもが一ぱいのコーヒーでもって三時間でも四時間でもねばっておる、それからいかがわしい顔つきをした者が喫茶店のまわりなり店の中におりまして、普通のお客がなかなか入れないという状況にありますことが、実は嘆きの種になっておるわけでありまして、業者の自粛とわれわれの努力によりまして、気持よく、家族連れでも、娘さんでも入れる、——十一時以後は少年は入れませんが、入れるということになりますれば、利潤は上ってくるわけなのでございます。今の渋谷、新宿の状況では、そういう気持のいい状況になるのにはほど遠いと私どもは心配いたしておりますが、もうけ高というものはそういうものなのでございます。
  79. 神近市子

    ○神近委員 私どもも、その点で、婦人議員の仲間でこの問題を研究するつもりでおります。それで、どうか法務省でも、この問題に対処をされる態度あるいは角度が進捗しましたら、私どもに時々に御報告をいただくなり、あるいは内容を懇談的にお聞かせいただきたい。もし法務省がどうにもなさらないということだったら、これはまた婦人の議員団が騒ぎまして、また立法でもしなくちゃならぬということになる。そうなれば、私が法務委員会にいる関係上、また憎まれなくてはならないということになりますから、一つ考えていただきたいと思います。  私はこういうことを考えるのです。深夜の文士の話が出ました。文士に非常におくれた意識を持っている人がおって、私どもも深夜に仕事がしよいので、長いこと深夜に仕事をしましたが、そういう人が夜中に飛び出して一ぱい飲みにいくということ、これはわかります。ですけれども、このごろは、流行作家たちも非常に近代的な生活の仕方になって、そうひどくその方の要求はないと思います。それは三人や五人旧態依然としたそういう人たちがあると思うのですけれども、私はこれはもうほとんど過去の姿だと思うのです。そして、そのときは、今のような混乱した世相でなくて、もっと彼らが腰を落ちつけて飲めるというよき時代であったけれども、今はずいぶん皆さんの内容が変ってきていると思う。結局それの落し子が悪用されて、今日悪の巣になっていると思うのですけれども、本来の姿として、深夜に営業するのは、そば屋だとか、あるいは運転手とか新聞社の輪転機のそばにいる人たちだとかいう労働者の大衆食堂だけでいいという考えを私は持っている。今いろいろ外国の調査をしてもらっておりますけれども、飲ませるために、日本のようにだらしなく——待合という言葉は今は使われておりませんが、料亭と深夜喫茶を並べて考えている人があります。一応料亭は十一時までの営業ということになっていますけれども、その実態はわからない。それでまともに働いて暮す者には、朝起きて、夕方あるいは宥の口というようなものが外に出ている時間で、あとはやっぱり家庭に帰って子供の相手をしたり、家庭で休息をとったりするのがノーマルな形だと思うのです。私ども国会に出させていただいた以上、そういうような国民生活というものを考えているわけです。これは、時間がかかっても、一つ一つ解決していく方がいいのではないかということを考えているわけです。岸総理にもそういうふうなことについてちょっと伺ったことがあるのですけれども法務大臣は、そういうような悪質な、明らかに犯罪あるいは悪徳を助長するような施設は逐次閉鎖していって、もっとノーマルな生活ということが考えられるとお思いになるか、それは絶対できないとお考えになっているか。これから数年間というものは、あなたは重要な役割をおとりになるのですから、一応こういう問題についてのあなたのお考え方を伺っておきたいと考えます。
  80. 愛知揆一

    愛知国務大臣 大体私は御意見のように考えますが、何と申しましても、理想と現実との間にはある程度の開きがあることはやむを得ないことだと思うのであります。だんだん漸を追うて理想に近いようなやり方をやって参りたいと思います。
  81. 小島徹三

  82. 島上善五郎

    ○島上委員 警視総監並びに警察庁長官に、簡単に二、三伺っておきます。先般の本州製紙工場に浦安の漁民が陳情に参った際の事件でございます。これは、すでに地方行政その他の委員会で何回か質問されておりまするが、私が伺いたい点は、まず最初に警視総監に伺いたいのです。あのときに警察官が警棒を使用しておりまするが、この警棒使用は、警察官職務執行法の第四条、第五条による使用であるか、つまり警棒を用具として使用したものであるか、それから第七条に規定する武器として使用したものであるか、これを最初に伺っておきます。
  83. 川合壽人

    ○川合説明員 用具として使用したものでございます。
  84. 島上善五郎

    ○島上委員 第四条、第五条による用具として使用されたということですが、従いまして、その使用は、警告、引きとめの処置または制止の用具として使用した、こういうわけですね。そうだといたしますならば、警棒による負傷者が相当多数出ておるというこの事実、及びその負傷が頭部である、あるいは背中であるという事実が、全部ではありませんけれども、はっきりしておる。約百人余りの負傷者のうちで、警棒によって頭部及び背部を負傷したという事実が、私どもの調べ、それから人権擁護局の調べも大体同じようなことが出おりますが、そういう事実はお認めになるかどうか、もしそういう事実があるとしましたならば、これは警察官の職務執行法第四条、第五条による用具として使用したという点に行き過ぎがあるのではないか、こう思いますが、いかがですか。
  85. 川合壽人

    ○川合説明員 事案の詳細は十分御承知でありますので、くだくだしく申し上げません。九時四十三分から二分間にわたって警棒を用具として使用したわけでありますが、この警棒使用というのは非常に重要なことなので、使用しました直後におきまして負傷者の調査をすることはもとよりのこと、その使用方法において行き過ぎがあったかなかったかというふうなことにつきましては、各部隊長から詳細な報告が警務部に参るのでございます。翌日、翌々日、私ども負傷者が非常に多い、警察の側で三十七名、それから漁民の側で、私ども調査では七十三名でございますが、非常に大きな数の負傷者が出ておりましたので、もう一ぺん調査をよくやれということで、各部隊長とそれから各隊員を二回にわたりまして私どもの側におきまして調べたのでございます。その後、その調査の結果からは、隊員の中で違法に警棒を使用したというような者が見つかりませんので、今度は、病院——これは東京都下と千葉県管下の両方でありますが、病院及び接骨医その他につきまして、先生の御意見を承わっておるのであります。現在その調査書もかなりできております。それから、なかんずく負傷をした人たちにつきまして、現在まだ全部が済んでおりませんが、約二十二、三名の人につきまして、当時の記憶をたどって一つ詳細に述べてもらいたいということで調べをいたしておりますが、その関係者の陳述が、現在のところでは非常にまちまちでございますので、この点はもう少しつっ込んで調査を続けて参りたい、かように考えております。なお今お話がありましたように、法務省の人権擁護局におきましては、全然別な立場から、私どもの隊員も、関係者が約五十名取調べを受けております。それから、負傷された漁民の方々についても、その内容が今着々とでき上っておりまして、この結果につきましての私どもへの勧告その他の処分につきましては、私どもこれを待つわけでありますが、私どもとしましても調査を万全の形で進めて参りたい、かように考えて、今、漁民の人たちの繁忙の度合いに応じて、来てもらって、いろいろと続けておる次第なのでございます。
  86. 島上善五郎

    ○島上委員 まだ調査が完了しないということでありますが、もうすでに事件が起ってから一ヵ月、少くともこの点だけは私はわかっているんじゃないかと思うのです。警棒によると思われる頭部、背部の負傷者が相当多数あった。これは医師も立証しておりまするし、人権擁護局の調査でもはっきりしておるのです。警棒による頭の部分、背中のけがです。負傷者が相当数ある。この七十九名ないし百名といわれる負傷者のうちのどのくらいの比率かということは別にしましても、相当数頭部及び背部が警棒による負傷と思われるものがある。この点はいかがですか。
  87. 川合壽人

    ○川合説明員 負傷しました漁民の人たちでもって、明らかに自分は警棒でやられたと思うという人につきましても調べをしておるのでありますが、この人たちの中にも、陳述、記憶が非常にまちまちな人がありますが、いずれにしましても、確かに漁民が投げた石ではなく、警棒あるいはその他の鈍器でもって負傷したと思われるものが出てきておりますことは確実でありますので、私どもの隊員につきましても、これを現在二回繰り返しましたが、さらにいろいろな角度を変えて、隊員の中でそういう行き過ぎをやった者がないかということを調べております。今日の場合におきましては、まだ最終的にその結論が出ておりません。この人権擁護局の取調べによりましても、これはたとえて申しますと、バスのところで自分は警察官に後からなぐられた、こういう者が出てきておりますが、これを隊員について具体的に聞いてみましたところが、門のところからハスまでの距離が相当ありまして、門のところから外方に約五メートルくらいは出たけれども、当時の状況としては、パスまでは行けなかったという実情なども判明しておるわけで、私どもいささか困っておる状況なのであります。それから午後の八時ごろ自分は警察官に警棒で後からやられたという者が出てきておりますが、午後の八時ごろというのは多分記憶違いでありまして、八時という場合におきましては、まだ機動隊に対しまして、警棒の用具としての使用を認めていない時刻なのであります。これらのそこの点をすみやかに決着をつけまして、責任関係その他を明らかにいたしたい、かように考えている次第であります。
  88. 島上善五郎

    ○島上委員 それから、肋骨を二本折られて苦痛を訴えた佐藤金蔵とかいう人が、苦痛を訴えましたけれども、医師の診察を受けさせなかった。あくる日、他の留置人の病気診断のために医師が来たときにそれを訴えたが、それでも受けさせなかった。そしてわずかにタオルによって湿布をした、冷たい水で冷やした。これは本人がやったのだろうと思いますが、二日間放任をして、釈放する十五分ほど前にレントゲンの検診を受けさせた、こういう事実がありますけれども、これについてはその処置が適当であったと思えるかどうか、お調べになって、そのお考えはいかがですか。
  89. 川合壽人

    ○川合説明員 佐藤金蔵氏の逮捕から釈放までのこと、これはおそらく十分御承知であろうと思いますので、くだくだしく申し上げません。湿布は本人でやりませんで、これは監視の巡査が薬品その他をまじえて湿布をしてやっておるのであります。御指摘のように、湿布でなくて、正式に医者の診断を、レントゲン撮影をいたしましたのは十二日の午後の四時ごろと思いますが、それまでに、医者の診断は、取調べに差しつかえないというふうなことが出ておるのであります。ただ、本人の痛みがどうしてもやまない。そこで、医者が再度来診をいたしました結果、どうもこれは肋骨が折れておるのじゃないか、それだと病院へ来てもらわなくてはいかぬということで連れていきまして、十三日の午後四時に、そのレントゲンの結果が判明いたしております。     〔委員長退席、村瀬委員長代理着席〕 これを全体を通じて私ども見ますと、いかに署の中が当時上を下への騒ぎでありましても、医者に見せて、その結果を医者から早く探り取るというようなモーションにおきましてはぬるかったと思うのでありまして、非常に遺憾に存じております。
  90. 島上善五郎

    ○島上委員 私は時間がありませんから次の機会にもう一度詳しく聞きたいと思いますが、その処置はどう考えても適当ではなかったと私ども思われます。その他いろいろありますけれども、要するに、あの当時における警察官のとった行動の中には、警棒使用規程からしましても、警察官職務執行法から見ましても、相当の行き過ぎがあったと思われる点は、あなたの方はまだ調査が完了していないと言って逃げておられますけれども、しかし先般人権擁護局で調べた中間報告ですが、これは当委員会でも答弁されましたけれども、これだけの事実が調査の中間の段階で明らかになっております。漁民の中で傷を受けた者は百人にも及んでおる。それからこれらの傷は警棒でなぐられたものと、くつでけられたものがほとんどである。それから、なぐられた場所も頭部や背中が相当多いということ、さらに直接陳情に行った漁民でない傍観者、見物人の中に若干の負傷者があった。これだけのことは中間段階で明らかになっておる。人権擁護局でも、これから警官側を調べないと最終的な結論は出ないということですが、私は私ども立場で調べておりまして、大体こういうふうな事実があがっております。これはだんだん時がたてば、感情もやわらぐが、まあいいかげんにというようなものではないと思います。あなたの方は、最終的な調査を完了するまでには時間がかかるとおっしゃいますけれども、これはある程度やむを得ないといたしましても、その事実ははっきりと調査いたしまして、行き過ぎは行き過ぎとして、また責任は責任として明らかにするということが、この事件に対する措置として必要であるばかりではなく、今後警察官が国民に対してかかる行き過ぎがないようにするためにも、事実を明らかにし、責任を明らかにすることが必要だと思います。あなたの方でこれは今後どれだけ時間が必要であるとお考えになっておるかしりませんが、たとい時間が必要でありましょうとも、これは事実を明白にして、警棒でけがした者があるのに、だれがやったか、警察官であったかなかったかわからぬというようなことでは困ると思う。この事実を明らかにし、責任を明らかにして、今後かかる事態を再び起さぬようにしていただきたいと考えますが、警察庁長官並びに警視総監のお考えはいかがですか。
  91. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先般の本州製紙江戸川工場に発生しました事案は、まことに遺憾に存ずるのであります。ただいま警視総監からいろいろお答えしましたように、警察官側にも三十七名の負傷者を出しましたが、同時に相手方の漁民の方々にそれ以上に多数の負傷者を出したということは、まことに遺憾しごくのことでございます。原因がどこにあり、どういう状況であったかということは、先ほど警視総監もお答えいたしましたように、鋭意真相把握をいたしまして、その結果に基きまして、責任を追及すべきものは十分に追及する、こういう態度をもって、警視総監には実態の究明をまず急いでやってもらっておる次第でございます。おおよそ警察の日常の執行面につきましては、数多い警察官の中には、悪意なくして失敗すると申しますか、行き過ぎ的行為をしでかす場合が絶無ではないのであります。これは遺憾なことでございますが、そういうことが往々にしてあるのでございます。そうした場合には、警察のとるべき態度としましては、非は非として率直に男らしくこれを認め、将来再びそういうあやまちを繰り返さないように反省をすることによって、初めて警察も将来の進歩向上があり得るものと考えますので、私はこういう面につきまして、今回の本州製紙の事案につきましても、十分真相を究明いたしまして、責任を追及すべきものは十分責任を追及する、こういうふうにして参りたいと考えておる次第でございます。
  92. 川合壽人

    ○川合説明員 先ほど申し上げます通り、私ども調査と並行いたしまして、三日前から、人権擁護局におかれましては、私どもの方の第四機動隊長、第二機動隊長以下関係の隊員を逐次取り調べておられるのであります。この結果は日ならずして判明すると思います。それから、この結果に基いて、また私ども調査に基きましても、これが責任を明らかにしたい、かように考えております。部外者の負傷、これもまことにお気の毒でありましたが、いつの間にかこの工場の中に近隣の人が一、二名まぎれ込んでおりまして、その人の中に負傷した人があるのでございます。この経緯につきましても目下調べておりますが、私どもの態度といたしましては、今、長官も申しました通り、決して過誤をおおい隠すというような態度でなく、これから先のいろいろな私どもの行動につきましても関係がありますので、フェアな態度でいきたい、かように考えておるわけであります。
  93. 坂本泰良

    ○坂本委員 関連して。警視総監にちょっとお伺いしたいのですが、前回この問題について、警察官が警棒を使用した場合は、その使用の結果と申しますか、状況と申しますか、それを報告しなければならぬ、そういう規定があるということでしたが、今ちょっとここに見当らぬのですけれども、その点について、この本州製紙の問題について、警棒使用についての報告を受けておられるかどうか、受けておられるならば、その内容はどういうふうになっているか、その点を承わりたいと思います。
  94. 川合壽人

    ○川合説明員 警棒使用につきましては、これはその使うに至りました相当数時間前からの警備情勢を込めまして、だれが、どういう状況であったから、どういう号令を下して、どういうふうなことを隊員に命じたかということを、直ちに第一報としてとるのでございます。そのあとで事後処置として、いつおさめたか、これは警棒をおさめよという号令のもとにおさめるのでありますが、そのおさめたあとどういう処置をとったかということ、それから、そのあとの一般的な、この場合におきましては門の近くなんでありますが、門の近くの警備情勢、混乱の状況はどうであったかということとあわせまして、詳細な報告を、これは内規として私どもの方でとり、これをまとめまして検察庁の警備局の方べ通報するのでございます。
  95. 坂本泰良

    ○坂本委員 今の問題は、その点はもうすっかり済んでいるのかどうか、その点を……。
  96. 川合壽人

    ○川合説明員 全部済んでおります。
  97. 坂本泰良

    ○坂本委員 石井長官にお聞きしますが、今の警棒使用についての報告を受けられて、内規ですから発表できないかどうかは、私はその点わかりませんですが、その報告について、われわれは多少調査したいという意味があるのですが、総括的には適法に使用されておるかどうか、あるいは逸脱した点があるかどうか、その点について、できたら書面でもけっこうですが、見せてもらいたいのです。     〔村瀬委員長代理退席、委員長着席〕 また、その報告について、長官は、報告書を見られて行き過ぎも何もなかったかどうか、警棒使用についてはどうであったかという点を調査されたかどうか、この点を承わりたい。
  98. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 警棒使用についての報告は、私どもの方も受けておるのでございますが、先ほども警視総監からお答えがありましたように、なお目下実情を調査中でございまして、正確な最終的な報告じゃないというふうに私は考えております。従って、現在までの報告では、警棒使用についてのいわゆる行き過ぎというものは、報告書の上には現われておりません。しかし、とにもかくにもあれだけ多数の負傷者を出しておる実情から考えまして、さらにこれは検討の要ありということで、先ほど来申し上げました通り、鋭意真相の把握に努めつつある段階でございますので、いましばらく最終的な結論を得るまでには時間を拝借いたしたい、かように考えます。
  99. 小島徹三

    小島委員長 本日はこの程度にとどめます。  なお、さきに本委員会において議長に申し出てありました閉会中審査すべき案件が本日の本会議において付託されましたならば、明九日、午前十時より開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十七分散会