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1958-06-20 第29回国会 衆議院 文教委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月十八日       稻葉  修君    臼井 莊一君       木村 武雄君    永山 忠則君       原田  憲君    小牧 次生君       櫻井 奎夫君    辻原 弘市君 が理事に当選した。     ————————————— 昭和三十三年六月二十日(金曜日)     午前十一時四分開議  出席委員    委員長 坂田 道太君    理事 稻葉  修君 理事 臼井 莊一君    理事 木村 武雄君 理事 永山 忠則君    理事 原田  憲君 理事 小牧 次生君    理事 櫻井 奎夫君 理事 辻原 弘市君       清瀬 一郎君    鈴木 正吾君       竹下  登君    谷川 和穗君       平井 義一君    福井 順一君       松永  東君    増田甲子七君       八木 徹雄君    山本 勝市君       西村 力弥君    野口 忠夫君       原   彪君    堀  昌雄君       本島百合子君    山崎 始男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         文部政務次官  高見 三郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君  委員外出席者         文部事務官         (社会教育局         長)      福田  繁君         文部事務官         (体育局長)  清水 康平君         文部事務官         (調査局長)  北岡 健二君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 六月十九日  委員大久保留次郎辞任につき、その補欠とし  て山本勝市君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員谷川和穗辞任につき、その補欠として吉  田茂君が議長指名委員に選任された。 同日  委員吉田茂辞任につき、その補欠として谷川  和穗君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月十九日  国立及び公立義務教育学校児童及び生徒  の災害補償に関する法律案山崎始男君外三名  提出衆法第一号)  市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する  法律案内閣提出第三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国立及び公立義務教育学校児童及び生徒  の災害補償に関する法律案山崎始男君外三名  提出衆法第一号)  市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する  法律案内閣提出第三号)  文教行政に関する件      ————◇—————
  2. 坂田道太

    坂田委員長 これより会議を開きます。  まず灘尾文部大臣より発言を求められておりますので、これを許します。灘尾文部大臣
  3. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回はからずもまた文部大臣の重責を汚すことに相なりました。まことに力足らざる者でございますが、誠心誠意文教のために努力いたしたいと考えておりますので、どうぞ格別な御支援、御協力を賜わりますように、心からお願いを申し上げる次第であります。  私は、元来、文教方面仕事につきましては、その政策がある程度継続し、また一貫性を持つことが必要であると考えるものであります。たびたび文部大臣が更迭するというようなことはあまり望ましいことではないように平素考えておる次第でございます。前回勤めました際にも、半年ばかりでかわるというような状態でございましたが、幸いに前の松永大臣のおやりになりましたことも、私の平素考えておりましたことも、ほとんど差異がない状況でございますので、これを今回受け継ぐことに相なりましたが、その点まことに仕合せに存じておる次第であります。新たに文部大臣に就任いたしましても、この際特に変った政策、変った仕事考えるという必要もないように思うのでございまして、一口に申せば、前大臣の御方針を踏襲いたしまして、その推進すべきものにつきましてはさらに一そうの努力をもって推進する、また発展させるべきものにつきましてはこれまた熱意をもって発展させていくという心がまえで今日おる次第でございます。  一々のことについて申し上げるのもいかがかと思うのでございますが、申し上げるまでもなく、今日の日本文教の上から申しまして、いわゆる科学技術教育振興ということにつきましては、世界の情勢から考えましても、またわが国の産業経済の要請の上から申しましても、現在の状態にさらに一段と努力を加えまして、これが発展をはかって参らなければならない事態にあると思うのでございまして、極力この方面のことにつきましては皆さんの御協力を得て仕事を進めて参りたいと考えております。  また道徳教育の問題につきましても、世上いろいろ議論のあるところでございますが、現下状況から申しまして、道徳教育効果をいかに上げるかというようなことは、まことに大切な問題と考えますので、これまた従来の松永大臣のおとりになりました御方針を受け継ぎまして、さらに一段と道徳教育の刷新ないしは強化という方面について努力を重ね、研究を重ねて参りたいと考えておるのでございます。  国民体位向上ということが必要であることは申すまでもございません。その意味におきまして、いわゆる国民スポーツを大いに普及し奨励して参るということも、私は文部省に課せられた重要な課題であると思うのでございます。御承知のごとく、先般省内に体育局も新設せられておるわけでございますので、この方面仕事につきましても、これまた皆さんの御協力のもとに、一そう発展いたしますように進めて参りたいと思うのでございます。ただ単に優秀な選手を養成するということだけでなしに、ほんとうに広く日本国民スポーツを愛好し、スポーツを楽しむ国民として、からだをよくいたしますと同時に、われわれの社会生活をもっと明朗健全なものにいたしたいという熱意を持って、仕事に当って参りたいと考えておる次第でございます。  そのほか文部省各般行政につきまして、戦前等状態から見ますと、よほど広くもなり、進んでもおると思うのでございますけれども、どの面をとって考えましても決してこれで十分であるというようなところまでは至っておらないように思うのであります。皆さんとその点におきましては心配を同じゅうするものでございます。どの仕事につきましてもいずれも大切なことでありますので、要はさらに研究し、努力を重ねまして、その方策の適正を期しますと同時に、予算の問題についてまだまだ努力しなければならぬものがたくさん残っておるように思うのでございます。ことに義務教育水準を維持し、向上するというようなことも、最も大切な仕事と思うのでありまして、予算獲得等についてもできるだけ努力をいたして参りたいと思うのでありますので、格段の御協力をお願い申し上げたいと思うのでございます。  なおこの際一言付言いたしたいと思いますことは、今日地方の教育界におきまして、いろいろ勤務評定の問題を中心といたしまして、混乱と申しますか、まことに不幸な事態が起っているということは御承知通りであります。私は文教行政をあずかる者といたしまして、かような不幸な事態につきましてはまことに残念千万に思っておるのでありまして、一日もすみやかにこういう状態がなくなりまして、教育関係の者がみんな力を合せまして、日本文教発展のために、振興のために進んでいくというような姿を実現いたしたいと心から念願をいたしておる次第であります。この勤務評定の問題は、いろいろ御議論があるということも承知いたしておりますけれども、問題の筋道はそれほど複雑ではないと思うのでございます。要は、今日どの社会におきましても、またおそらくどこの国におきましても、勤務評定というものは実施せられておると思うのであります。学校の場におきましても、やはり適正な勤務評定というものは、実施する必要があると私どもは考えるのでございます。しかもその勤務評定を実施するということは現行法において規定せられておるところでございます。この法律に基きまして、適正な勤務評定を実施したいという気持にほかならないのでありますので、これに関係する学校教職員の組合の諸君も、ぜひこの筋道については御協力を願いたいものと私は思うのであります。  かような問題についていろいろな意見がある、あるいは公開制にすべしというふうな意見もございましょう、同時にまた反対の御意見もあると思うのでありますが、それはそれとして、改善すべきものはもちろん改善するにやぶさかではない。また反対意見を承わるということについてもやぶさかではございませんけれども、法律に基く行政執行についてはどうか御協力をいただきたい。改めるべき点はまた改める余地があると思うのであります。一ぺんきめたことはみんな永久に変えちゃならぬというものでもないと思うのであります。法律に基く行政執行については基本的に御協力をいただきたい、こういうようなつもりで私はこの問題に対処していく考えでございます。これらの問題につきましても、日本教育全般のために皆様方の御協力を仰ぎたいと心から願っておる次第であります。どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。  まことに簡単でありますが、これをもちまして私のごあいさつかたがた今日考えております心持を申し上げまして、御支援をお願い申し上げる次第であります。(拍手)     —————————————
  4. 坂田道太

    坂田委員長 これより文教行政に関する調査を進めます。  質疑の通告があります。順次これを許します。辻原弘市君。
  5. 辻原弘市

    辻原委員 ただいま新大臣に就任をせられました灘尾さんの若干の所信を承わったのでありますが、私は第二次岸内閣文教行政というものを、大臣の口を通じてこの際抽象的ではなく、具体的に明らかにしていただきたいと思うのであります。  灘尾大臣は第三次鳩山内閣文相として豊富な経験を持っておられまするので、少くともわれわれとは立場は違いますけれども、日本文政の上にかなりの抱負と、またおそらく一般の間にも期待を持っておることと思うのでありまして、従ってただいまお述べになりましたようなきわめて抽象的な事柄ではなくして、少くともあなたが岸内閣文相として、今後重点的な施策として推進していくのだという一つ具体的内容を私は知らせしてもらいたいと思う。  今述べられた内容を見てみますると、第一には科学技術教育振興、それから道徳教育の問題に触れられ、体育スポーツ振興を言われているのであります。そして最後義務教育水準向上という問題に触れているのでありますが、過般の総選挙の際に、自由民主党は、かなり文教の問題を取り上げまして、国民に対しての公約をいたしております。それらの中であげてみますれば、特に最後で言われた義務教育水準向上父兄負担の軽減ということに相当量行政の分野をさかれておったように、私は記憶いたしておるのであります。現下この義務教育水準向上という問題は、私は非常に重要性を持っていると考えますので、その最後の問題の点から具体的な内容について承わってみたい。  本年度予算の中で考えますと、松永文相の当時に義務教育における教職員定数確保についての法律が成立を見まして、若干の予算がそれに加えられておりますが、当時社会党といたしましては、この問題にも非常な関心を持ちまして、政府提出をされました法案についての不備不十分を指摘をしておいたのでありますが、こうした点について、今後新たな立場からどのように取り上げられていこうとするのか、問題に触れていただきたいと思います。
  6. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど申し上げましたように、ただいまの段階におきましては、ちょうど年度の半ばにもなっていることでございます。また基本考え方におきまして、松永大臣のお考えになっておりましたことと私の平素考えておりましたことと何ら差異はないのでございます。現在の予算において定められておりますような範囲において、これを確実に実行していくということを申し上げる以外にないと思います。  今後の問題につきまして、もちろん現状を十分検討いたしまして、次の予算段階におきましてできるだけのことはいたしたいと考えている次第であります。義務教育の問題につきまして、お話にもありましたように、私の属しております自由民主党といたしましては、今度の総選挙におきましていろいろな公約をいたしているわけでございます。この公約を忠実に実行して参るということが私の一つの大きな任務になっていると考えるのであります。私といたしましては公約実現のためにできるだけの努力を払いたい、かように申し上げるにとどめておきたいと思うのであります。
  7. 辻原弘市

    辻原委員 前段で申し上げましたように、豊富な経験を持たれているという立場で私もお聞きいたしてみたいと思うのであります。もちろん細部の点に触れることは時間的に余裕がないと思いますが、しかし抽象的な題目については、これは何人もわかっておりますし、今それらをどうして具体化していくか、どうして予算化していくか、またどうして立法化していくかという段階でありますので、今後の展望についての大臣考え方、それらの点についてもう少し突っ込んで触れていただきたいと思います。また大臣に就任されましてから若干の日数もたっていると思いますので、そういう点については部内におかれても、大臣かなり聞き取られ、さらに検討も加えられたと思います。もう少し突っ込んだお考えを述べていただきたい。たとえば今の教員定数、言いかえてみますと、すし詰め学級解消、これは都会地には都会地の人口の自然増による、社会増による問題がありますし、また農村においては山間僻地を控えての教員定数の充足の問題がありましょうし、各地においてそれぞれの特色を持ったこのすし詰め学級解消の問題については、法律立法化ができましたけれども、当初文部省考え予算措置とはかなりこれは食い違っておるはずでありまして、そうい点から新大臣に期待するところは大きいのであります。その点に触れて申し上げまするならば、五十人を基準とされた今回の法律措置は、少くともその実施は明年度以降であります。本年度は暫定的に五十五人という線を定められて、この暫定の方法を各県にとらすことを認めておるのであります。従って本格的にすし詰め解消することはあげて明年以降にゆだねられているとするならば、これらに対する予算措置なり、あるいは各県に対する今後の指導というものはさらに相当行われなければならぬと思うのであります。こういう点について文部大臣としての具体的な今後の展望というものをお話しいただきたい。これは文部省の資料によりましても、一応五十人以上の学級定員を持っておるものが、今日小学校においては三五%、中学校においては三三%という多きを数えておるのであります。しかも都会地における社会増は、若干の手当をいたしましょうともなかなか解消できないということでありますならば、相当本腰を入れてかかってもらわなければならぬと思うのであります。この点についてはどういうような明年度以降の構想を立てられておるか。予算の編成時期もそろそろ近づいておる段階でありますから、大臣のこれについての意気込みを承わっておきたいと思います。
  8. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 前にわずかばかり文部大臣をやっておりましたのでありまして、豊富な経験なんて言われまするとまことに恐縮するわけであります。いろいろまた御指導、御鞭撻をいただきたいと思うのであります。  すし詰め教室解消という問題につきましては、その熱意においては私は皆さんに劣らない熱意を持っておるつもりであります。具体的な問題となって参りますと、いつも言いのがれを申し上げるようでありますけれども、何と申しましても国の財政というようなこととにらみ合わして参らなければならぬ立場にあるということも御了承を願いたいと思うのであります。まだ現在の段階がどの程度になっておるかというようなことについて十分に私の調査も届いておりませんので、なるべく早く現下実情ないしは今後の見通しというようなことについて検討を遂げまして、次の予算段階におきましてはできるだけの努力を払って、なるべくすみやかにすし詰め教室解消が実現するように最大の努力は払って参りたい、こういう気持でおるということを御了承願いたいと思うのであります。
  9. 辻原弘市

    辻原委員 私はすし詰め教室解消という問題はいろいろな問題をはらんでおると思うのであります。これは委員長坂田さんあたりも在来主張されておりまして、この委員会でもわれわれと見解が一致したこともありますが、諸外国の例に徴しましても五十というような学級定員をかかえておるところはほとんど皆無であります。少くともわれわれが先進国のそれを見習うとすれば、基本となるべき教育の実際の効果の及ぶ範囲というものはやはりできるだけ教える教師の負担を軽くして、効果を発揮するような方法をとらなければならぬ。諸外国の例で五十というような定員を持っておるところは皆無というそういう現状に立てば、私は過般の法律などはそのスタートを一歩というよりも半歩踏み出したばかりであって、そういう理想に近いところまで行くにはかなり努力をする余地大臣にも残されておると思う。従って本年度は五十五、それを来年はかりに法律通りの五十を堅持されるとするならば、その次にはあるいは四十、あるいはフランス、ドイツあたりか採用しているところの三十というような理想的な一つ学級定員の形に踏み出すのだという一つ意気込みと、将来にわたっての構想というものをこの機会に立てることが文政上必要ではないか。同時に学級定員が多いということはそれ自体、それだけの原因ではありませんけれども、教育上の効果、あるいは教育上の生徒児童に対する管理という面にも問題をはらんでいると思う。たとえばこの間起きました、まことに忌まわしい、足立区のあの十代の姉妹が自分の父親を殺害するといったような社会的に考えさせられるような問題は、一体那辺にその原因があったか。これは単に社会的な一現象と見るのではなしに、われわれはわれわれとして文教上の重要なことを示唆された問題として、これを真剣に取り上げて検討していくという態度でなければならぬと思います。多くを申し上げる時間はありませんけれども、それらの原因の中に、その家庭児童長欠児童であるということが指摘され、また妹の方は小学校一年で学校に行っていない。もちろん児童保護司、あるいは社会福祉司というような立場から手が差し伸べられていなかったという原因があるでありましょうけれども、しかし学校教育上の責任はないというような考え方では、教育者も、また教育行政にあずかる者もいけないと思う。たとえば学級定員数が少く、十分な管理、あるいは指導の目が行き届いていればいいが、それが六十、七十、あるいはそれ以上、何と申しますか、機械的に収容しているというのではそういった微細な家庭に至るまでの観察の目が怠りがちになる。こういうことを考えたときに、これらの問題もひっくるめて、やはり文政の末端における教育効果というものを文部省としても観察してもらいたい。勤務評定についても文部省立場でおっしゃることはけっこうでもあるが、しかしそうした表面のさざなみよりも、実際の教育の中に教育効果が及んでいないという面をもっとしっかり文部省あたり考えられるべきだと思うのですが、大臣の所見を伺いたい。
  10. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまの辻原君の御質問でございますが、その御趣旨につきましては、何ら反論すべきものを私は持っておりません。全く同感でございます。さような心持でもって学校教育のことについてわれわれというたしましても努力すべきことは当然のことであると思うのであります。その意味において御了承いただきたいと思います。具体的な問題となって参りますと、なかなか一足飛びにおっしゃるようなことがすぐ実現するかということについて、いろいろな制約があるかと思うのでありますが、その気持を持ってできるだけ努力して参るということを申し上げておきます。
  11. 辻原弘市

    辻原委員 今触れました足立区の問題でありますが、これはもちろん都の教育委員会、あるいは足立区の教育委員会の当面の問題でありますけれども、これは連日教育的、また社会的な観点から取り上げられているまことに重要な問題であると思うので、文部省としても単に社会的な一事象ということではなしに、教育的にどう取り上げられていくか、こういう問題についての実情を十分調べられたことがあるのか、もう日数がたっておりますが、この点を承わっておきたい。
  12. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 一応の報告は受けておりますけれども、まだ詳細に調査いたしておりません。
  13. 辻原弘市

    辻原委員 一応の報告だけでは済まないと思うのです。これはかつて灘尾さんに申し上げたいことがあるのですが、根本的に不良な環境を浄化するためにわれわれは努力しなければならぬ。そういう環境を浄化して、初めて教育が正常な姿になるのだということを私も考えているのです。これが教育上のあるべき姿だと思うのです。この原因を探求していくと、ただきめられた学校という範囲内の問題ではなしに、多くの子供の持っている、除去してやらなければならぬ社会的な背景があると思う。そういうことを文部省として研究することが、やはり行政教育が離れ離れになって絶えず争うといと形ではなしに、もっとしっかり現場におけるむずかしい問題というものに触れて、その上に行政をやられるという契機を開く、そういう意味でこういった問題を取り上げてもらいたい。どうなんです。
  14. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 辻原君の申されました御趣旨につきまして私も同感であります。せいぜいそういう方面のことにつきましても注意いたしまして、広くかつ深く教育の問題は考えて参りたいと思います。
  15. 辻原弘市

    辻原委員 他のこれらの問題についてあれをやれというのじゃなしに、ひとまずこの問題について研究を進めて、そうして長欠児童に対する指導方法、あるいは非常に不良な家庭環境にある児童に対する指導方法、こういうものを文部省の少くとも学習内容を担当しているあるいは指導内容を担当している部課においは積極的に研究を進めて、一つの素材とすべきだ、そういう方向で研究をしてもらいたい、取り上げてもらいたいということを私は申し上げておる。  若干横道にそれましたが、次の問題は、自民党の公約として、父兄負担を軽減するということを大きく取り上げておったようでありますが、一体具体的な内容はどうかということであります。公教育である以上、これを父兄負担に帰するということはまことに教育上おもしろくない、だんだんそういう一つの弊害を生んでおると思うのです。PTAの経費あるい、施設費管理費、こういうものを負担する能力のある家庭父兄はいいかもしれませんが、そうでない家庭父兄はもちろん負担することによって非常に経済的な苦しさを覚えると同時に、負担していない場合にその家庭子供に及ぼす影響というものは無形の形で教育をむしばむと思う。ですからすみやかにかさんでおる父兄負担を取り除くことがこれまた文教上の大きな問題でなければならぬと思う。教材費等において本年度予算で一億八千万円ですか、昨年に比べて増加をしておりますけれども、しかし実際はこれがほとんど自然増であって、この程度のものはそれだけの負担父兄から軽減したということには当っておりません。その証拠に、この教材費に対する父兄負担の割合を統計上見ますと、今なお所要額の約四一%、ほとんど五割に近いものがそれぞれ父兄負担においてやっておる。これが教育の実態である。ここにも問題がある。のみならず、建築費だとかあるいは一般学校維持管理費、こういうものに至るまで、父兄負担というものが、六三制が施行された当時よりは減っておると思いますけれども、しかしながら今なお二割に近い比率をもって父兄負担をしておる。こういうように義務教育かなり負担がなければ行えないというような姿はまことに私はへんぱであると思います。せっかく選挙に当って公約をされたのでありますから、おそらく来年度予算編成、さらには予算案の中には、こうした方面に対する重点的な考慮が加えられて予算が組まれるものと期待するのでありますが、大臣はそれらについていかなる構想をお持ちになっておるか、その点も承わっておきたい。
  16. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 義務教育における父兄負担の軽減の問題は、われわれといたしましても考えておることは、今度の選挙公約におきましてもそのことを掲げておりますことによっても御了承いただけると思うのであります。本年度予算におきまして若干のそういう措置を講じておりますが、もちろんそれで十分とは考えておりません。しかし国の財政その他の都合もございますし、なかなか一気に思うようには参らぬと思いますけれども、できるだけ父兄負担の合理化をはかり、またその軽減をはかって参るということにつきましては、辻原君と同じ考え方をいたしておるわけでございます。次の予算の編成に当りましても、文部省としましては極力その方向に向って努力をして参りたいと思います。
  17. 辻原弘市

    辻原委員 教材費は別といたしまして、建築費とか施設費、いわゆる維持管理費等に至っては、従来やられている建築関係の予算との見合いにおいて父兄負担は軽減されていくものと考えまするので、この場合にこれは文部省よりもむしろ国会側で非常に積極的であった施設費国庫負担、この法案の中に盛られている内容をさらに向上させ、同時に今まで不十分であった方面に対する手当、たとえば土地収得費あるいは坪当りの基準、こういうものにまで相当検討を及ぼして一つ新機軸を出してもらいたいと思うのであります。内容についてわれわれも意見がありまするが、それはこの際申さずに、父兄負担の軽減という問題は、維持管理費の面については、私は施設費予算向上、それからこれについての法案の内容向上させることとうらはらの関係にある。だからあなた方が公約されている以上われわれはその実施について要求をいたしたい。またわれわれもそれらについてかなり構想を持っております。だからこれも少くとも本年度予算の中においては相当われわれは期待をいたしております。またわれわれも努力をいたしたい。考えておいていただきたいと思う。  同時に父兄負担内容にはまだまだたくさんの内容があります。それは教科書費の問題、社会党としては諸外国の例にならって漸進的ではあるけれども、できれば教科書の無償交付、これを実現したい。せめて教科書くらいはいかなる子供にも同じ状態において持たせるという義務教育の無償の精神をこのところにおいて発揮させたい、こういう考え方に立っておりまするが、従来までの政府の取扱いは、貧困家庭あるいは準要保護児童に対してのみ教科書を与えるということ。私はこの委員会においてもそうした家庭の貧困の度合いによって物を与えたり与えなかったりするということはこれまた教育上非常におもしろくない点があるということを申し上げたことがあります。しかし現実に困っている人に与えること、われわれはそれにとかくを言うのではありません。理想的な姿はそういう観点ではなく、義務教育無償という精神から、やはり教科書程度のものは与えていくということにおいて、これまた若干の父兄負担が軽減されるのでありますから、こういう点においても、買える者には与えないんだという考え方を貫かれているようでありますが、その考え方を一擲されて、一つ前進をしてもらいたいと私どもは考えるのであります。  それから給食費の問題とて同然であります。これもあなたが前回御就任当時に、私どもは超党派的にこれは農林省とも話し合いをいたしまして、一つ構想を立ててやったことがあると思いますが、地域における酪農振興と結びつけて、外国からの脱脂粉乳の輸入をできるだけ押えるという建前から、市乳を、特に農村地帯においては児童あるいは生徒の体位向上のためにもどんどん国内産の牛乳を飲ませる、それに対して国家が保護政策をとる。学校給食と酪農振興というこの両面をあわせて思い切ってやったらどうかということで、各方面のいろいろな賛同がありましたが、いまだに日の目を見ないのであります。私はこういう点もまことに遺憾だと思う。こういう点は一つの新機軸として何人も反対しないのでありますから——当時考えられたのはひとまず十億程度予算、その程度のものでも一つの進歩だと思う。それを出すことによって少くとも農村における食生活の改善にも資するし、また学校給食に対する負担軽減ということにもなるのでありますから、こういう点にまで一つ突つ込んだ具体的構想を、負担を軽減するという限りにおいては総合的に立案されることが適切だと私は思う。思いつきにきょうは教科書をいじってみる、次は一つ何をいじってみるということでなしに、総合的に父兄負担の軽減をはかるというこの大題目に邁進をしてもらいたいということを大臣にお願いをいたしておきます。  それからいま一つの柱として述べられました科学教育、技術教育、これの振興策についてでありますが、松永さんの当時にも少しはそれらしきものがうかがえました。しかしイギリスにおいて時の総理大臣が議会に声を大にして科学教育振興、科学の振興を叫んだ、それに比較をいたしてみますると、私は今日の日本の科学振興という問題はまことにお粗末であると思います。もちろん予算の問題にも帰しますけれども、予算の問題の以前に科学教育一つの体系といいますかあるいは科学教育の重点といいますか、そういうものについての検討が、検討は行われておっても、それに取っ組む姿勢というものがまだ不十分であるように思います。ようやくことしの予算で理工系学生の講座を若干ふやしておりますけれども、その増加は、あげてみまするとわずかに千七百名であります。これでは官学の理工系あるいは法文系との比率を変更させるものにも至りません。ましてや数多く抱えておるところの一般私立学校において、これをどうこうするというところにはとうてい手が及んでいないのであります。この問題だけでも今後かなり努力を要する。どういう形に科学技術教育振興していこうとするのか、また六・三・三・四制の今日の学制体系の中で、この科学技術の一つ教育というものをどういうところに位置づけようとするのか。この構想がおありになると思います。前大臣構想についてはわれわれはほのかに承わりましたが、新灘尾大臣としてこの科学技術教育をどこへどういうふうに重点的に持っていかれようとするのか、制度的にまた内容的にどうされようとするのか、この点について承わっておきたい。
  18. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 科学技術教育振興ということは、私は最も熱意を入れてやって参りたい仕事一つであります。前に在任中に中央教育審議会にもこの考えを持って振興方策を諮問いたしましたことは御承知通りであります。その結論も出ておることでございますので、私としましてはこの中央教育審議会の出されました答申の趣意を尊重いたしまして、できるだけこれが実現に努力したいと思うのでございます。大体お話の御趣意はすべて同意見であると申し上げたいのでございます。問題は結局国の財政の上においてどの程度予算をこちらの方に取り得るかという問題にもなってくると思うのでございますが、小学校から大学に至りますまですべての課程を通じまして、この科学技術教育振興ということに私は極力努力を払って参りたいと思うのでございます。いろいろとやるべきことはあると思います。大学の設備でありますとかあるいは教官の研究費でありますとか、大学方面にもいろいろある。高等学校小学校、中学校、すべてにわたって改善を要すべきものがあると私は考えるのでありまして、なるべくすみやかにそれらの問題について行政上処理し得べきものについては処理して参りたいと思います。金を要するものについては予算をたくさん取りたいと思います。そういう考え方でもって努力を重ねて参りたいと思うのでございます。
  19. 西村力弥

    ○西村(力)委員 関連して……。先ほど酪農関係の問題について、学校給食との関係についての質問がありましたが、今需要期に入って乳価が全国的に一斉に下げられて、酪農の危機になっておるわけなんですが、この問題の解決策として学校給食にそれを用いよう、こういう動きが強く出ておりますが、その点については農林省の方からいろいろ具体的に交渉があるかどうか、それからまた文部省自体の計画としてはどういうものを持っておるか、この点について一つ答弁を願いたい。
  20. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 学校給食と酪農振興の問題を結びつけて考えるということは、確かに私は考究の価値のある問題だと考えるのであります。どういうふうにやったら一番よろしいのかというような、やり方等につきましても検討を要すると思うのでございますが、私としましてはこの問題は一つの考究を要する問題として何らかの考えをきめたい、現在はこういうふうに考えておるわけであります。まだその点につきまして省内におきましていろいろ相談をしたというふうなことはございません。また従来の経過につきましてはよく承知いたしておりませんので、政府委員からお答えいたさせます。
  21. 清水康平

    ○清水説明員 ただいま酪農の問題につきまして御質問がございましたが、皆様御承知と思いますが、いろいろ脱脂粉乳、いわゆるミルクでございますが、大体毎年二万五千程度アメリカのC・C・Cから輸入いたしております。そのほかにアメリカの贈与物資といたしまして五カ年計画で大体一万八千トンの脱脂粉乳、いわゆるミルクが輸入されております。そのほかに国内の酪農との関係でございますが、これは農林省の方で何とかその方の振興をはかってやらなければならぬというわけで、いろいろと考えておるのでございますが、御承知のごとくアメリカのミルクは非常に安く、一ポンド四セントぐらいで輸入しておる関係がございます。一ポンド四セントでございますから大体十四円四十銭ぐらいでございますが、これを日本学校給食会が取り扱いまして、大体これを二十人分で二十五円でやっておる関係がございます。そのあまりに安く入る関係の問題と、国内酪農との関係がありますが、しかし農林省といたしましては学校給食用そのものではございませんけれども、それに準ずるものといたしまして生牛乳あるいはバターとか全脂粉乳というようなものを、三十二年、三十三年合せまして大体三十万石供給してもらっておるわけでございます。本年度もこの八月過ぎごろから農林省と今後どうするかということについて、具体的に協議をいたす予定になっております。以上でございます。
  22. 辻原弘市

    辻原委員 科学教育のやり方の問題について、中教審の答申も、一つは勤労青少年に対する技術教育、それから  一般総合的な科学教育という立場からの問題、こういうふうに私は分けておったように記憶いたしますが、その中で一般の六・三・三・四制の普通教育といいますか、そういう中でのたとえば学制の問題、この前に出された専科大学等の一つ構想、あるいは六・三・三・四制の中で新たにそういうものを検討して設けていくかどうか、また改善を加えていくかどうか、こういう問題が一つあると思います。それから勤労青少年の問題については、おそらく中教審の答申の問題はそれに触れられたのではないかと思いますが、その問題は答申自体も内容が相当広範にわたっておりますので、今申し上げません。ただ一般的な六・三・三・四制の中で、特に中堅程度の科学技術の養成をどうするか、こういう点については、大臣構想を今お持ちになっておられるか、また考えられておるか。従来の松永さんの言われておったような程度のものを踏襲されようとするのであるか、これをまず聞いておきたい。
  23. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 問題がよほど専門家の意見を聞き、専門的な検討をしなければならぬ点がたくさんあるように思うのでございます。ただいまのところは、もちろん松永大臣の計画せられ、また予算の裏づけのあるものについてこれを実行するということについては、先ほど申し上げました通りであります。次の段階までの間におきまして、私としましても十分一つ勉強いたしたいと思います。その意味でさらに別な考え方をしなければならぬというふうなものでもあれば別でありますが、そうでなければ、現在の答申の線に沿ってそれが実現に努力をしていくということに私は考えておるわけであります。  大学の制度につきまして、先般の国会でいわゆる専科大学というような法律案提出されております。そのほか、格別一般の関係におきまして特に制度をどうするとかこうするとかいうようなことは考えておりません。この専科大学の問題につきましても、いろいろ御議論のあるところでございますが、文部省としましてはこの前の国会に提出いたしておることでございますので、一応その提出のつもりで現在おるわけでございますが、時間的余裕もあることでありますので、私としても十分検討いたして参りたいと思うのでございます。
  24. 辻原弘市

    辻原委員 科学教育を重点的に行うために、技術教育を重点的に行うための、名前は別として、一つの大学の構想というものも常識的に考えられるわけです。ただ現実に、あの法案の取扱いをめぐっても、短大等との摩擦がかなりひどかったように私も聞いております。そういうことはあえて無理しないで、やはり新しいものを新しい形において作っていき、そのものが今の一つのあれにマッチすれば、おのずからそういう方向に流れていく。それを制度的に無理やりにゆがめてしまおうということをやれば、せっかくの構想も成り立たない。そういう点についての調整は、大学局長一つ考慮を払われた方が適切ではないかと思います。  時間がございませんので次に進みます。勤労青少年の教育の問題について、特にわれわれは重視をいたしております。先ほど若干技術教育という面だけでのお話が大臣からありましたが、私は一般教育としてもこの勤労青少年教育という問題はもっと重視をしていただきたい。またわれわれももっとしさいにこの問題について取り上げていかなければならぬ、こういうふうに考える。その趣旨で、たとえばわが党から参議院に定時制あるいは通信教育の拡充のための振興法の一部改正を提出しておるのでありますが、せめてその辺のところまで私は踏み切れるのではないかと思う。それだけが勤労青少年の教育じゃありませんけれども、この点にもっと日を当てる政策、これが今日考えられなければならぬと思います。新聞等の発表の数字を見ましても、約八百五十万人がその対象だと言われておりまして、中学校を出て高等学校にすら進学できないで直ちに職業戦線に立つ青少年というのが八百五十万、一千万に近い数があると言われておる。この教育をもしなおざりにするならば、幾ら口で機会均等を言いましても、これは成り立たないのでありますから、この勤労青少年に対する教育振興という問題を広く採用してもらいたいと思います。今度あなた方の予算案で政府が取り上げた例の育英制度の進学保障制度ですか、この問題はどうも私は一つの英才教育のにおいがつきまとって仕方がないのであります。それも一つ方法であるかもしれませんけれども、それよりもっと幅広く、この勤労青少年に教育の場を与える。——青年学級をやればいいじゃないかという議論にわれわれはかつて反対しました。その理由は、青年学級で学識あるいは技術を習得するかもしれないけれども、しかしこれらの者が同じ教育を受けたという、そういう一つの資格を獲得して就職戦線には立てないじゃないかと私は反論したのであります。そういう意味で、やはり重点は、せっかく戦後設けられた高等学校の定時制があるのだから、あるいは通信教育によって学歴、資格というものを獲得する道があるのだから、やはり現実に考えた場合に、資格を与えることによって十分その教育を受けるということに熱意を持たせる、このことの方がより緊明である。だからそれに重点を置いて、そうして青年学級はまた違った観点において取り上げるべきじゃないか。青年学級をやるから定時制の方はこの程度でいいのだという考え方は改めなければならぬと思います。そういう意味一つ大臣に、この勤労青少年教育というものをどういう構想で進められていこうとしておるか、その構想があれば一つ承わっておきたいと思います。
  25. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 勤労青少年に対する教育をさらに充実し、また発展させるということ、私はやはり文教行政一つの大きな柱だと考えています。従いまして、この方面のことについてももちろん努力はいたすつもりでございます。結局御趣旨におきましては辻原君の仰せになりますことと私の考えておりますこととの間に、大した違いはないと私は思うのであります。問題は、これをいかにして実現するかというところにあると思うのであります。文部大臣といたしましてはせいぜいその実現のために努力をするということ以外のことを申し上げる何ものもないのであります。願わくは皆さん方の御協力を得て、この方面のことについてもさらに数歩を進めることができますようにお願いをいたしたいと思うのであります。またお気づきの点なり、こういうことをやったらどうだというような御着想でもありましたら、一つそれをわれわれにもお示しをいただきたいと思うのであります。
  26. 辻原弘市

    辻原委員 大臣は、一つの問題として体育向上体育振興を取り上げられております。われわれかねがね期待をしておりました体育局も新設せられまして、今後の活動に非常に大きな希望を寄せておるのであります。ところがどうもアジア大会でのあの運営等には若干私どもの遺憾な点が多いのであります。かって私はこのスポーツ界における派閥の問題を取り上げたことがありました。だんだんと一つまた機会を見て十分掘り下げてみたいと思うのでありますけれども、どうも納得いかない点があります。少くともスポーツというものは、体育向上だけじゃなしに、明朗な一つ国民的な気持を作り上げる。健全にして健康な社会環境を作り上げるということにこれまた目的があるのでありまして、それは芸術その他一般文化の発展向上という問題と軌を一にするものであります。そういう意味で、私はスポーツ振興一般健全文化の向上ということを切り離しては考えられない。たとえば国立劇場の設置の問題あるいは国立競技場の設置の問題は、同じような一つ国民的願望から生まれている、こう把握している。ところがせっかく競技場を作って、初めて諸外国から招待をしたアジア大会が、ああいうふうな子供の犠牲において開催をされた、こういうふうな運営はこれは運営に当った人それぞれの責任だといえばそれまででありますけれども、体育局何しているかとこれは怒られても私はやむを得ないと思います。しかし今はそれに触れることが目的ではありませんので、ここでは触れませんけれども、このスポーツ振興ということは、一部の優秀な選手を養成するとか、あるいは一部のそういうような系統に携わっている人々の気持を満足させるとかというふうな形で、これを運営されてはとんでもないのであります。幅の広い形において国民体育振興させるという目的のもとに今後運営してもらわなければならない。私はその点については特に大臣に留意をしてもらわなければならぬと思います。こうした一つの大がかりな事業計画が文化の面、体育の面で行われるたびに、いろいろのややこしい問題がそれに付随して起るということは遺憾しごくであります。たとえば国立劇場の問題にしても、今なお敷地が決定しないのは一体どういう理由か、こういうことも私は問題の発展によってお尋ねいたさなければなりません。これは在来から、ともかく早く建設をして、そうして無形文化財を長く伝えるという一つの芸術的な色彩を持った国立劇場を、私どもは歓迎をしておるわけであります。ところが敷地一つがあっちこっちに振り向けられて、どこから圧力がかかるか知らぬけれども、とにかく決定を見ていないのが現実なんです。こういうことは私は非常におもしろくないと思う。それが最も好適地であり、可能地であればさっさときめればいい。質問をした機会でありますから、一つこの国立劇場の問題についても伺っておきましょう。敷地はいつきまりますか。どこにきまる予定でありますか。
  27. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 体育の問題についての考え方につきましては、私も全く辻原君と同感であります。大体そういう心持を持って進みたいということはかねがね申し上げておったと思うのでありますが、御趣旨に沿うように私としてもやって参りたいと思います。  また今回のアジア競技大会における運営の問題につきまして、今後の非常に貴重な参考になったと思うのでございますが、今後運営上かれこれ問題の起らないように十分気をつけて参りたいと存じます。  国立劇場の問題につきましては、ただいま敷地の問題につきましていろいろやっておるところでございますが、その経過については関係の者より答弁させていただきたいと思います。そう遠からざるうちに決定するものと私は考えております。
  28. 清水康平

    ○清水説明員 文化財保護委員会の事務局の次長をやっておりました関係上、経緯を簡単に御説明申し上げます。国立劇場をどこに建てるかという問題はいろいろな方面からの要望がありましたが、大体しぼって参りますと、御承知のように都会の中心でなければいかぬ、交通の便利がよくなければいかぬというような立場から考え、また国有地でなければならぬというところから考えまして、しぼりにしぼりまして、青山一丁目のところにあります青山御所の一角、さもなければパレス・ハイツ、どちらかにきめなければいかぬということで、国立劇場の協議会あるいは文化財保護委員会あるいはその他の方面で今検討をいたしておりまして、今まで私の知っておる限りにおきましては、諸般の事情を勘案の結果、おそらくパレス・ハイツになる可能性が強いように一カ月前までは伺っております。しかしそこは将来の交通事情や、それから地下鉄なんかの関係でいろいろ意見がございまして、そういう意見の調整を今やっておるように承わっておりますが、約一カ月ばかり前の情勢を簡単に申しますとそういう事情でございますが、いずれ近いうちにいずれかにきまるのではないかと思っております。
  29. 辻原弘市

    辻原委員 これはわれわれも大体四月中にきまるのじゃないかと実は期待をしておった。また国立劇場の設置準備会の方でもそういうような要望をしておったと私は思います。当時私どもの聞いた範囲によると、現在の内閣ではありませんが、この前の内閣の有力な閣僚が強力に反対したために青山御所がつぶれたと聞きます。ところが常識的に考えてみれば、御所の一部を使うことは宮内庁もそれから関係筋も了承している。立地条件としても非常に適当だ。ところが三宅坂のパレス・ハイツの方はだれが考えても、交通あるいはその他の住宅の関係等から見れば青山御所よりも落ちるということが考えられる。ところが持主の方が使ってもいいと言い、立地条件がいいというのに、それにきまらない。これは清水さんのお話で——責任者ではありませんので、私は追及するのではありませんが、パレス・ハイツにきまるというような話のあたりは、先ほど私が抽象的に申し上げたように、まことに解せない。こういう点大臣はまだ十分お聞き下さっていないかもしれませんが、大臣の所管である文化財保護委員会、これの関係であります。だからせっかく国費を投じて国民期待のうちに作る国立劇場でありますから、立地条件といい、将来の協力面といい、私は少くとも万人の納得のいくような形においてきめてもらいたいと思う。いやしくもこれらの土地の決定等にいろいろな別の要素が入ってくるなどということは、大臣の責任において厳に排除しなければならぬと私は思う。いかがでございますか。
  30. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 どこにでも建てるというわけに参りませんので、結局適当な土地を東京の市内で決定するということになるわけであります。今話のございましたように、これまで問題となりました個所はつまり青山御所の一角、それからパレス・ハイツの問題でございますが、この両者についてどうするかということにつきましては、いろいろ意見もあり、議論もあるところでございますが、辻原君の仰せになるごとく、何かそこに妙な関係等もあってものがきまるということは、これは私としましても絶対にそうあってはならぬ。結局それぞれの関係方面において、了解がついたものについて決定をする以外にはないと思います。いずれにしましても、なるべく早く結論を得るように努力をして参りたいと思います。
  31. 辻原弘市

    辻原委員 それからもう一つ聞いておきたい問題があります。これは文化の面ではありませんが、先ほどの科学技術の関係で先国会、その前の国会等において私どもも非常に関心を持ちました南極観測についての意見の調整がまださだかではない。これも純粋な科学の分野においては、科学者の関係においてはぜひこれは継続したいと言う。ところが内閣においてはそれに異論があるというのでありますが、せっかく予備観測と本観測と二カ年続いた成果を具体的に国民の前に公表させないままに中絶してしまうということは、これはあまりにも惜しい。こういうことから、私はそれらについては、できれば最善の努力をして、再検討してでも実施することが至当ではないかと思うのでありますが、一体大臣はこの点についてはどう考えますか。
  32. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御質問をいただきまして、まことにありがたいと思っております。実は本日この席上で一応申し上げようと思ったことの一つでございます。南極観測につきましては、今後二カ年にわたって継続するという方針を本日の閣議で決定をいたしました。この方針に基いて急速に準備を進めて参りたいと考えております。さよう御承知おきを願います。
  33. 辻原弘市

    辻原委員 幸いに本日の閣議で従来のいきさつから進んで継続方針が確定せられたということでありますから、それについての私の心配は消えたのでありますが、この際要望しておきたいことはこれは予備観測、本観測を通じてわれわれも当委員会で指摘をいたしました。それは現地の気象状況の把握、あるいは持って行く宗谷あるいは予備観測の際の随伴船海鷹丸、こういうものの装備等について非常に懸念される点が多かった。ですから、われわれは少くとも国費を投じ、またいろいろな意見のある中で、今後遂行していこうという限りにおいては、事前の準備を、これは大きく国民協力を呼びかけてでも私は遂行すべきではないかと思う。科学技術の振興、科学の振興が言われる際に、まことに貧弱な成果しか期待せられないような形において科学者にその観測を実行せよと迫ることは、これは行政あるいは政治をやる者のとるべき立場ではなかろうと思います。こういうときこそ十分科学者をしてその探求を行なってもらえるように諸準備に遺憾のないように、特に本部長としての責任にあられる大臣は押し進めていただきたい、これは希望であります。  次に教育の中立性、それから道徳教育の問題について大臣は触れられました。道徳教育の問題につきましてもいろいろ論議を重ねまして、われわれは学校教育の中での道徳教育というものは特別に時間を設定したり、徳目を要綱的に並べてそれを押しつけるがごとき教育においては、その成果が期待できないという主張を今日まで続けてきたのであります。ところが、はしなくも四月の二十六日、二十七日に道徳教育研究大会というものが、かなりの規模において開催をされております。それらの成果につきまして新聞の報ずるところを見ますると、われわれの危惧、また私どもがむだではないかと懸念をしたような点が、その研究大会の中においてかなり指摘をされております。その一つの見るべき特徴的な意見は、こう言っておるのであります。それは、文部省が四月に流した道徳教育指導要綱ですか、これらに基いてそれを実践してみた、ところがその程度の事柄は、従来社会科等において十分取り扱っておって、成果が上っておる。ところが文部省指導の方向は、特設したその時間内においてこのことをやれ、こういうふうになっておる。たとえば小学校の六年に夏休みの計画を立てよ、その夏休みの計画を立てるのは、従来社会科の中に十分お互いの研究の課題として取り行われておって、何らそこに遜色がなかった。それを、特設した時間においてやらせるような方向に方向にと、この指導要綱は持っていっておる。そうするならば、ごく自然に社会科において取り行われる、そういった自然に身につくところの教育と、特別に道徳教育と銘打ったその単元の中で行われるこの実践要綱の道徳教育というものが、並列的な形になってくるのではないか、こういうことがこの意見の発表の中で懸念されておるのであります。私どもは、少くとも身につく道徳というものは一般社会の中においても、ただ教える、ただ特別の場合にだけやらせるということだけではだめなんだ、日常二十四時間の生活の中に自然に会得するもの、これがほんとうに身につく一つ教育である、こういう主張をしておる。その点で、私は第一回のこの研究大会においても同様の主張が出ているということは、文部省は傾聴すべきだと思います。時間を特別に作ること、指導要綱を流して徳目を並べることが道徳教育振興ではありませんということ、このことについて何か今後の指導方向として、あなた方は考えられる点がありますかどうか、この点を承わっておきたい。
  34. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 道徳教育をしっかりやらなくちゃならぬということが基本考え方であります。従いまして、道徳教育効果を上げるのには一体どうするかという問題が基本問題であろうと思うのでありますが、その点に関連いたしましていろいろ検討いたしました結果、成案を得て前の大臣がこれを実施に移されたわけであります。私はその成り行きというか成績というものを見て参りたいと思うのであります。今日まで文部省がとっておりました方針なりやり方等について、これを変えるとかなんとかいう考えは持っておりません。しかし目的は、いかにして効果を上げられるかという問題であろうと思いますので、その実施の過程において、あるいは改善を要するものがあれば改善をしていく、あるいは検討を要するものがあれば検討していく、これにやぶさかではありません。しばらくその成り行きを私は見たいと思うのでございます。  なお詳細の点につきましては、政府委員からお答え申し上げます。
  35. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 このたびの道徳教育の時間の特設は、御指摘のように全教科でやるということを否定しておるわけではございません。ですから、社会科その他者教科及び教科書外活動で行うところの道徳教育をさらに補充し、あるいは深く掘り下げる、あるいは断片的なものを統合していく、こういう意味で一時間の道徳教育の時間を特設したわけでございますので、この一時間の特設によりまして、学校全体としては、従来も道徳教育指導計画というものを作っております。ですからその指導計画の中で、道徳教育の特設の時間でやる分と、それから各教科及び教科外活動でやる分とに振り分けされると思います。そういう意味で、この一時間の道徳教育の時間が全教科の中で果す役割は相当大きいのではなかろうか。ですから、御指摘になりましたように、全教育活動でやる立場を少しもくずしていないわけであります。  それから先ほど御指摘になりましたように、この指導目標でございますが、これは小学校については三十六の指導目標が出ておりますし、中学校につきましては二十一の指導目標が出ております。これも先ほど御指摘になりましたように、従来やっているようなところのものをまとめた程度のものでございます。ですから指導目標が明確になりますれば、全教科でやるという場合にも非常に効果を上げ得るのではなかろうか。今までおぼろげにしておいたものが明確にされた、それによって学校生活の中における道徳教育を強力に推進したい、こういう趣旨でございます。
  36. 辻原弘市

    辻原委員 そういうふうに説明はできますけれども、問題は、全教科でやるのを妨げていない。むしろ実際全教科でやる場合にはこれは生活指導だと思う。生活指導は、これは従来の教育方法論の中にも取り入れられておったわけです。ですからそれをあえて道徳教育という形で取り出したというところに非常に無意味さを感じつつあるのが、私はその実践の結果ではないかと思います。だから生活指導であり、また全教科の中で妨げないし、よりよく全教科の中でマッチしてやるならば、それになぜ重点を置かないのか、わずか一時間の特設時間を設定してやるということに、それほどの価値があるかということを私は言いたい。これをまた悪くすれば、全教科で生活指導をやることの方が、よりむずかしく、より高度な研究と、より継続的な熱心さというものが必要とされるのである。もしこういう事態になったら、私は非常におそろしい結果が起ると思います。教育上マイナスの結果が起ると思います。それは、特設時間ができたのだから、むずかしい全教科での一つ指導方法をできるだけあれして、いわゆる道徳教育らしきもの、生活指導らしきものは、そのきめられた時間にやればいいのだともしなかったとすれば、これは私はゆゆしい問題だと思う。それこそ形式教育、形式的な徳目教育に終ってしまうと思う。そういうことをなからしめるためにも、私は困難な方法を採用して、より効果の上る一つ研究に頭を突っ込んでいくことが、より望ましいのではないか、こう申しておる。これは議論が分れまするし、だんだんとその結果については明らかになってくると思います。これらは今後われわれも十分一つ研究をしていきたい。またあなた方も、道徳教育を何がしかにおいをもってやらせるのだという印象を世論に与えたこの特設科目の問題にこだわらないで、問題研究の成果が、従来のいわゆる社会科を中心とした全教科における生活指導方針のやり方が成果が上り、そのことの方が新教育の目的を達成するということであれば、既往にこだわらず、私はそういう方法に改めていくべきではないかと思う。その間空疎な、そしてまたへたをすればきわめて安易な方法に走るようなそういう指導というものは、これは考えるべきだと思います。道徳教育の問題についてはだんだんと問題が出るだろうと思いますので、その程度にいたしておきたいのであります。  それからやはりこれは自民党の公約ということで、最近は自民党の教育政策は、言葉にして言えば、教育の中立性に籍口し、実際やっているのは勤務評定、これだけじゃないかという、これは率直に申せばそういう印象を与えるような一つの問題が全国的に巻き起されているわけであります。勤務評定の是であるか非であるかは、私はもっと掘り下げて論議をかわすべきではないかと思います。ところが問題はそうではなしに、教職員のとっておるこれの反対運動の問題について、これをあおりつけることによって今日かなりの成果を政府も上げているようであります。しかし私はもっと冷静に、少くとも行政の担当にある者は、その行政指導を受けるという立場にある教育職員とは親と子の関係にあると思う。そういう立場も、場合によれば必要じゃないか。向うがこうやってくるから、おれの方もこういくんだ、向うが折れなければ、おれらの方もそれについて何ら考え余地はないのだ、こういうことは、高い行政立場に立った、あるいは政治家としての、少くとも大臣あたりがとるべき態度ではないと私は思います。何と申しましても、今日勤務評定を中心にして巻き起っているこの教育上の問題というものは、教育上好ましい姿でないと私は思う。それだけに文部省なり、あるいは全国都道府県の教育委員会の責任というものは免れないと思うのです。やってくる方が悪いのだという簡単なことでは、長い歴史の過程から見ると済まされない問題です。かなえの軽重を問われている。また今後問われると思う。だから下手な、何といいますか、敵は本能寺にありというような目的をもってこの問題を考えておったならば、私は文部省教育行政、ひいて各都道府県の教育行政というものは、国民から批判をされ、国民から信用を失なっていくと思うのです。だからこれらの問題についてのすみやかなる事態の解決に、文部省文部大臣も腹をきめて対処していかなければならぬと思います。押しの一手というのが、文部省のとるべき態度ではない。事が起れば、指導官か視学官か何か知りませんけれども、地方に来て、いろいろお指図願うということは、文部省の端の端なんです。そういうことは地方にいたずらに紛糾を起すもとなんです。だからあなた方はもっと大所に立たれて、この問題についての処理を考えてもらいたいと思います。大臣はこの間参議院で、教育の問題については日教組とも語り合いたい、こういうお話をされておりました。この一言でも世間に好感を与えると思うのです。だからそういう意味で、大臣は率直に、政治家として、裸になられて語り合う。お互いの見解の相違はどこにあるかということまで見きわめられて、そして取り組んでいくという気概を持って——与党がだいぶ手きびしい、わしはその土台の上に立った大臣だというような考え方では灘尾文政が後世史家にたたえられるということは私はないと思う。一つこれらについて大臣の、与党席が前でありますけれども、御遠慮のない所信を承わりたい。
  37. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 勤務評定の問題について何か私が与党側の関係で、いやいやながらやっているというふうな意味にもとれるような御発言でございましたが、さようなことは絶対ございません。すでに前に在任いたしております際に、この問題が起ったわけでございます。私は実ははなはだうかつなことでありますが、戦後の制度にうといものでございますから、そういうふうな制度があるということすら、その当時よく知らなかったのでありますが、ただこの問題を契機といたしまして話を伺いました結果、これは全国的に実施すべきものであるという結論に到達いたしたのでありまして、その実施につきましては、もちろん地方の都道府県の委員会のやることでありますが、文部省といたしましても、現行法が存在しております以上、合理的な勤務評定というものが実施せられることが望ましいことと考えるのでありまして、その意味をもちまして事務局においても検討してほしいということを申しましたのであります。その後だんだんと物事が進行して参りまして、勤務評定の実施ということが今日地方の問題として行われておるわけでありまして、これを中心としましていろいろな問題が生じておりますことは、先ほど申しましたように、私は日本教育界のためにはまことに不幸なことだと思うのであります。また今日の事態というものは、実に遺憾千万であると申し上げたいのでございます。なるほど重要な問題には違いございませんけれども、しかし現在の法律を改正すれば、また別であります。あるいはまた廃止すればこれは別でございますけれども、現行法というものがあり、それに基いて勤務評定を全国的に実施しよう、おそまきながら全国的にやっていこうという際に、この建前を否定せられるという態度は、これは一つ考え直しを願いたいと思うのであります。もしこの法律が悪法であるということであるならば、法律改正の意見として出ることについては、これはかれこれ申す筋ではない。またその実施内容等につきましていろいろ御意見があり、その御意見を申し出られることも、何ら差しつかえないことであります。実施に当りましてはできるだけ合理的な案をもって進んでいくということが当然のことでありますので、いい案をもってこれを実施するということについては、われわれも何ら異存はございません。従って、さような意味におきまして、各方面の方々の意見をすなおな気持で承わって、いい案をもってこれを実施するということについては何ら私は申すべきことはないと思うのであります。頭からこの実施を拒否する、これを阻止することに、法でもって問題とせられておるような行動にまで移ってこれを阻止するという態度は、これはぜひお考え直しを教組の諸君にも願わなければならぬと思うのであります。願わくはすみやかに教組本来の姿に帰られまして、和気あいあいのうちに物事が進んでいくような事態になりたいものと、心から私は念願いたしております。そういうことでありますので、教組の諸君と会うということにつきましても、何らこれを拒否する理由はございません。いつでもお目にかかっていいのでありますが、しかしこの問題についてはあくまでも現行法があり、この施行の責任があります文部大臣といたしましては、これが合理的な施行というものをはかっていく責任があると思うのであります。この建前をくずすわけには、私は参らぬ。従って、その建前の上に乗っていろいろ御意見があるということなら、いつでも承わって差しつかえない、かように考えておる次第でございます。
  38. 辻原弘市

    辻原委員 私は、大臣ともこの問題について今後互いにかなり論議をしなければいかぬと思います。それはこだわらない立場で論議したいと私は思います。今、教職員との間に和気あいあいのうちに話し合いをしたい、これは私は双方ともそういう気持があるだろうと思います。しかし、やはり片方において一つの問題を投げかけて、波紋を投じている側の責任というものは私は相当考えてもらいたいと思う。波紋を投じて、そうしてかなり意図的なものをもってやらかしておいて、それに屈服しないで刃向ってくる者は、これはいけない、こういうふうにきめつけてかかるところに、私は問題があるのではないかと思う。  それともう一つ言いたいことは私は文部省は非常に卑怯であったと思います。それはなぜかというと、現在とどまるところを知らない、尽きるところを知らないような泥沼の形で、各県各県がそれぞれ異なった形において、教育委員会教職員との間に抗争が行われておる。それに対するそれぞれの立場を固執するという形で問題が展開されておるというこの実情を見るときに、文部省はみずからが解決をしていかなければならぬ問題を各都道府県の責任に帰したということが、さらに問題を複雑化している。当初われわれが聞いたところによれば、これについて文部省が責任をもってやるのだという。ところがだんだん事態が推移したのを見れば、教育委員会がどこやらで一つの試案を作ったというものが、どういう経路か知らぬけれども、各府県に持ち帰られて、それが一つの尺度になっておる。そしてあれは何々県の教育委員会が自主的にやっているのですから、こういうことで逃げている。ところが裏に回ってみると、どんどん文部省から電報も来れば、指導官も飛んでくる。文部省へ行けば、だらしがないとしかりとばす。そんな勤務評定もようやらぬような県には補助金もやらぬぞ。私はそういうことがないとは言わさぬ。現実にあるのです。そういうような行き方を裏面でとって、表面は私どもは単なる指導、助言をしておるのでありますというようなことでは、ますます事態は紛糾するばかりです。あなた方が信念を持っているということならば、何で文部省が全責任をもってこの問題に当らなかったか。こういうことも、私は今日になったら言わなければならぬ。さらに言えば、これは大臣が今言われたように、法律にあるからということを、大臣のみならず、地方に行ってみても、そのことを非常に金科玉条として言われるのです。ところがおそらく私は、文部省部内の当時地方公務員あるいは教育公務員特例法の関係を扱われた人は、記憶があるだろうと思う。どだいその時分の勤務評定などというものは、今と目的も何も全く違うじゃないか。かつての不合理な、人中心の人事管理というものは民主主義にそぐわないという意味で、一般原則としてこの勤務評定というものが言われた。その勤務評定は何も表にしてやるというような勤務評定ではなかったはずです。そういうことは、アメリカにおいても、イギリスにおいても、なかなか言うべくして行われないということ、当時アメリカが、日本に持ってきた法律の責任者などが言っておったはずです。だからこそ、人事院において研究しても成案ができない。文部省において研究しても成案ができない。じんぜん日を送った。しかしその間にいわゆる勤務評定と言えば言えなくもないような人事管理が行われていなかったかというと、決してそうではない。そこに世間の大きな誤りがあると思う。人事を、何も持たないで、これは気に入ったからやるというようなことは、戦後行われていなかったと思う。少くとも現在の評定の中の第一項等にあるような、いわゆる人事に対する一般的な調査、こういうものは人事管理の資料としてあったと思う。言うならば、それとても私は一つの評定であったと思う。しかし今問題になってることは、できもしない複雑なこと、人間の徳性というものを分析するような、全く千人に一人しかできないような、ノーベル賞をもらうような博士がやるようなことを、小学校の校長さん、中学校の校長さんにやれというところに問題がある。こういうことで論議されて、これは反対ということになってきておる。それらを考えないで、ただ法律にあるからやらなければならぬのだ、こう押しつけてるところに、私は一般の世論にも誤まってる点がありまするし、またそれらの背景を順次積み上げてこなかった、これに反対する側にも手抜かりがあったと思う。だから、勤務評定の問題は、もっと、ほんとうに、人事管理の一具体的方法、一方法論なんですから、そういう観点に立って論争すれば、これは私は大臣にしても、はたとお気づきになる点がたくさんあると思う。ですから、法律にきめられたからやるんだ、私はこの法律を守る所管大臣だからという言い分は、もっと極端に言えば、そういう一つの言いぐさというものは、これは事の半面だけを御承知なさって、あとの半面はヴェールで包んでる言い分だと思う。そこに私どもは非常に不満がある。しかしこれは論議になりまするから申し上げませんけれども、しかし今からでも、私はそういう一つの新しい立場に立ってもう一度見直すということには、時期を失していないと思う。法律だからやるんだ、いかに法律であってもやれぬことはやれぬじゃないかというこのぶつかり合いを、文部省はほおっておくという手はないでしよう。大臣は単なる行政屋ではありません。政治家なんです。そういう立場からも、私は事態の解決になにがしかの努力をすべきであろうと思うのであります。大臣の御所一見はどうでありますか。      一
  39. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は先ほども申しましたように、私は事柄としてはやるべきことだと思っておるのであります。従って、ぜひこれは地方においてもやってもらいたいものと考えておる次第であります。そのやり方、その内容等につきましては、いろいろ経験のある方々、あるいはまた各方面の人人の意見を尊重して、いい内容を持った合理的な案をぜひ実行してもらいたいと期待をいたしておるわけであります。文部省が指図をし命令をして作って、これをやれというような性質のものでないことは御承知通りであります。どこまでも地方の教育委員会の責任においてなすべき事柄に属しておるわけであります。あまり干渉がましいことを文部省がやるということも、行き過ぎだということになろうかと思っております。ただ、現在の事態はまことにおもしろくない事態でございますから、地方におかれましても、ことに教職員組合におかれましても、もっと冷静に、お互いに問題を合理的にし、いいものを作るという意味においての御協力は非常にありがたいことと思います。そういう意味においての意見の交換なり何なりはどしどしやっていただいて、私はけっこうだと思っております。しかしこれを頭からいかぬことだということで、実力にまで訴えてこれを阻止せられるということになりますと、この点は一つ先ほど申しましたように、お考え直しを願いたいと思うのであります。また実力で阻止するというようなことは思わざる結果を生ずるわけであります。これはまたきわめて遺憾なことでございます。そういうことのないように、もっと静かに、冷静に教育委員会の諸君にも意見を開陳せられまして、合理的なものは教育委員会においてもこれを取り上げる、こういうような姿で進めていただきたいということを念願しておるということを申し上げておきます。
  40. 辻原弘市

    辻原委員 もう一つ、私はこの事態の紛糾の原因に警察の介入という問題かあると思います。これは文部大臣にお聞きすることではありませんけれども、そのうちで私どもが考慮しなければならぬことは、警察が、一つの容疑ということで、法の権威にかけて捜査をやるのだということは、一応筋がありますけれども、しかしかりに教職員組合というものが、職員組合であろうが、普通の形において団体交渉あるいはそれに対する戦術が行われているような場合は、少くとも考え方としては、これは労働法上にいう管理者、それから組合員という立場における争いなんですから、警察が直ちにそれに入ってきて、管理者の側に立ってそれを有利に導くというような出過ぎた行為は、問題の解決ではなしに、紛糾させるばかりです。こういう点については文政をあずかる文部大臣としては所管大臣である警察庁長官に対して一言なかるべからざることだと思います。  もう一つはそういうことに籍口いたしまして、特に授業中生徒がおる間に、あるいは授業がなくとも生徒がまだ下校していない間に学校を捜査をする、あるいは不必要な形において学校内に入り込んで、そうして教職員にただそのことを尋ねた、参考に聞いたんだ——問題が出てわれわれが聞きますと、いや、それはただ参考意見として聞いた、こういうようなことをしばしばやっておる。これは実例がある。私の県での問題の中にも、そういうことが随所に見られる。これは警察の方にも十分注意を喚起いたしましたが、これは不必要なことです。不必要なことをしでかして、その結果教育上どういうようなマイナスが起るかということを、あまりお考えなさらない。私は今後そういうことが学校教育の場において行われるということは、まことに遺憾しごくです。どうしてもやらなければならぬ場合には、これは仕方がない。しかし参考に聞くといって学校をうろうろするようなことは、教育上見のがせない。こういうことについて一つ大臣のお考えをお聞きしてみたいと思います。
  41. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 警察の方で、法律違反の容疑があるというようなことで活動を開始するということは、これはいかんともしがたいことだと思うのであります。願わくはさような事態の起らないように、良識ある学校教師の団体でありますから、その点についてとくと慎重にやっていただきたいと思うのであります。同時に今お話にありましたような、幾ら警察権が働くといたしましても、不必要なことをやっていくとか、場所も時も考えずにやっていくとかいうようなことで、行き過ぎがあってはならぬと思うのであります。前におりました当時に問題がございましたときにも、警察側の方々に対しましては取調べその他はできるだけ慎重にやってほしい。事が教育の場に関係のある問題でありますだけに、特に慎重を期してもらいたいということはしばしば申し上げておるのでございますが、ただいまの事態についても同じような心配をいたすわけでございますので、私といたしましても警察側に対しましては特に慎重な配慮のもとにやってほしいというふうなことをお願いいたしておるような次第であります。どちら側も一つ慎重にやってほしい。ことに教組側におかれましても、しばしばこういうことをすれば問題になるということは申し上げておるわけです。それだけに、あるいは勢いのおもむくところああいうことになってしまったということもあるかもしれませんが、そこはよくお考えを願って、問題を起さないように、良識ある教師の行動としてふさわしい姿において物事をやっていただきたい、私はかように考えるわけであります。
  42. 辻原弘市

    辻原委員 時間もだんだんたって参りましたので、これで一応私の質問をやめておきたいと思うのでありますが、大体われわれが考えている中心的な問題についての所見は大臣から承わりました。まだ大臣も日なお浅く、はっきり申されたのは最後勤務評定だけでした。その他のことについては、まだ具体的なものは何も出されておりませんので、これ以上お伺いをすることも、まだ大臣構想も成っていないと判断いたしましてやめたいと思います。先刻から申し上げましたような重要問題につきましては、予算を要する問題は予算編成期にああだ、こうだという議論をかわすのではなくて、それまでにすみやかに一つ方針を策定されて、そうしてわれわれも国会議員の立場において、よい政策についてはできるだけ協力をして実現するように努力いたしたいと思います。文部省としても予算については冷や飯を食わされるというようなことのないように特別に一つ努力していただきたいと思います。大体具体的の成案ができましてから一つ一つについてのわれわれの意見を開陳して、そうしてまた大臣のお考えを承わって参りたいと思います。  以上で私の質問は終ります。
  43. 坂田道太

    坂田委員長 この際暫時休憩いたします。午後は一時三十分より再開いたします。     午後零時四十三分休憩      ————◇—————     午後二時十一分開議
  44. 坂田道太

    坂田委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  午前に引き続き、質疑を許します。その前に本島百合子委員から資料要求についての発言を求められておりますので、これを許します。本島百合子委員
  45. 本島百合子

    ○本島委員 先ほどの質問に関連いたしまして、資料を要求いたしたいと思います。長欠学童の現在の状態を知らしていただきたいと同時に、その中で特に精薄児童といわれる人が犯罪者の中に多く見受けられるということが、最近の非常に大きな現象になっておると思います。従ってこの青少年犯罪者の中で精薄に関係している者が何人か、あるいはまた経済的理由によってなっておるというものもあわせていただきたいと思います。なお肢体不自由児、虚弱児が、この長欠学童の中の、こうした種類の人々に、どれだけの施設があって、現在どれだけ収容されておるか。同時に全国で推定されておる数字というものは大体わかっておりますが、文部省でどの程度調査をされておりますか、あわせてその数等もお知らせいただきたいと思います。  なお給食の問題につきまして、現在の給食の状況がどんな状態になっておるか、どの程度学校数が実施して、その値段が幾らになっておるか。それから給食を受けることのできない学童が、やはりこれも増加しておるようでありますが、県によってまちまちで、その支給の方法がどういうふうにされておりますかというこの二つの案件をお願いいたします。  なお長欠児童の場合におきまして、最近都道府県または市町村において特に奨学金的な資金を出すような制度を設けられたところがあるはずでありますが、それがどういう内容で、どの程度の支給をしておるか、そしてそれと生活保護法との関連がどういうふうに取り扱われているかというような点をお調べいただいて、でき得るならば次の委員会までに提出していただきたいと思うものでございます。
  46. 坂田道太

    坂田委員長 ただいまの本島委員の御発言によりまして、すみやかに次の委員会までに文部当局から資料を整えていただきたいと思います。  次に、小牧次生君。
  47. 小牧次生

    小牧委員 私は文部大臣公立文教施設の問題で若干お伺いをいたしてみたいと思います。  この前の国会におきまして成立をいたしました義務教育学校施設費国庫負担法案、義務教育学校施設費に関する恒久負担の制度を確立したものでありますが、しかしながらその内容におきましては私ども国会の決議やまた地方の要望に比べてみまして、非常に多くの問題を残しておることでございます。さらにこの法律に見合う国庫負担金の予算の面におきましても、地方の最低の要望額をはかるに下回っておると考えますが、まず第一にこの問題について灘尾文部大臣の御所見をお伺いいたしたいと思うのであります。
  48. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 公立学校の施設の整備についての国庫負担制度が、この前の国会におきまして確立いたしましたことは御同慶にたえない次第でございます。内容につきましてはお説の通り現在の状況から見ましてなお充実し改善を要すべき点もあるかと考える次第であります。御承知のような財政状況でありまして思うにまかせないうらみがあるわけでありますが、私といたしましては現行制度につきましてもさらに検討を加えて、事情の許す限りその充実のために努力して参りたいと考えております。
  49. 小牧次生

    小牧委員 財政の関係はあと回しといたしまして、まず第一にお伺いいたしたいのは、改善を要する点について具体的にどういうことをお考えでありますか。
  50. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 結論をまだ申し上げる段階に至っておりませんけれども、私の考えるだけで申しましても、現在の負担の率でよろしいのかどうかというような問題もございます。また負担すべき施設の対象は一体このままでいいのかどうか、こういうような点もあるかと思うのであります。それらの点につきましてさらに検討を重ねてみたいと思っております。
  51. 小牧次生

    小牧委員 今回の本年度予算を組む際には、大臣は当時文部大臣でなかったわけでありますから、これについて深く追究するわけにも参りませんが、今のような予算で全国的な要望を満たすことができない。特に弱小府県におきましては非常に現校舎あるいは正常授業という問題で悩んでおります。従ってこれに対しては文部省とされましても根本的にこの問題と取り組んで、そうして一年でも早くこれらの問題が解決されるよう努力をしてもらわなければならないと考えておりますが、毎年私は同じような問題で質問をいたしております。要望もいたしておりますが、しかしながら現われて参ります予算になりますと非常に少い。文部省の方では相当な要求もしておられるようでありますが、大蔵省との関係において相当削減される。そうして少い予算となって現われて参りまして、その結果においては各都道府県から申請されて参りますところの申請坪数というものをはるかに下回っておる。おそらく同僚議員の方々におかれましてもそういった問題の陳情をたくさん受けて、そうしてそれらの解決に努力されておる方がたくさんあろうと私も想像いたしておりますが、毎年同じようなことを私どもは繰り返して参っております。従ってこの問題についてどうしても画期的な予算の増額ということが私はこの際非常に要望されるのではないかと考えるわけでありますが、まずこの点について新しい大臣の御決意のほどをお伺いしてみたいと思います。
  52. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 思いは同じことと私は思うのであります。できるだけ予算の増額に努力したいと考えておりますが、何さま一枚のふとんを数人が引っ張り合うような現在の状況でありますから、思うにまかせない点も多々ございますが、皆さんの御協力のもとにできるだけ努力をいたしたいと思っております。
  53. 櫻井奎夫

    櫻井委員 関連して……。けさほどから大臣の所信表明を伺っておるのでありますが、大臣は大体松永文教行政の跡を受け継いでいくのだと言っておられまするし、私どもの質問に対しても趣旨は全く同感だと、きわめて抽象的でのらりくらりとした御答弁なんです。特に今の小牧君の質問にありました施設費の国庫負担につきましては、この前の国会におきましても、この委員会としては附帯決議をつけたはずであります。これは最低限度の今までのこの委員会の要求がああいう形になって附帯決議となって現われたのであって、こういう点は一つ大臣からも明確にしてもらわなければならぬ。この委員会で与野党が一致して決議しました点は、これは大蔵省と折衝してみてから考えるというようなことではなくて、この点だけは少くとも自分が文教行政の最高責任者となった以上は、どうしても実現する、それくらいの具体的な決意の表明があってしかるべきだ。けさほどからの御答弁ははなはだどうも不満でございます。この点につきまして大臣の明確な御答弁をちょうだいしたいと思うのです。特に附帯決議として現われているわけでありますから、どうか一つ御所信を御表明願いたいと思います。
  54. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 附帯決議の御趣旨につきましては、もちろん文部当局といたしましてはこれを尊重いたしまして、できるだけその線に沿って要求をし、また努力することは当然のことと考えておるわけであります。しかし今その通りいたしますと申し上げても実現できなければこれは仕方がない。従いましてその線に沿うて努力するということでこの際は一つ御満足をいただきたいと思います。
  55. 小牧次生

    小牧委員 簡単にはなかなか満足できないわけです。たとえばこの前の国会におきまして、すし詰め学級解消という問題は岸内閣が大きく取り上げた問題であります。ところがこれに伴いまして学級編成の基準を適正化するという法律も出されております。すし詰め教室解消するということになりますと、これに見合うところの的確な計画がなければならぬ。ただ努力するというだけでは答弁にならないと思う。従ってこれには年次計画を作って、そうして私どもの前に学級基準の適正花と並行したものを提示願わなければならぬものと考えております。今直ちにそこでそういう資料がないかも存じませんけれども、大蔵省と折衝する場合においても、こういうふうに具体的なものを持って努力してもらわなければならぬと私は考えております。この点は今の場合は要望にとどめておきたいと存じます。  その次に関連してお伺いいたしたいのは今文部省におきましては、義務教育並びに公立高等学校の危険校舎、あるいは不正常、あるいは屋内体操場等の割当が行われておるやに聞いております。詳しいことは私存じませんので、抽象的になるかもわかりませんけれども、今年は都会における防火地帯あるいは準防火地帯、こういうところに重点を置いて相当数の坪数が割り当てられて、反面いなかの方におきますところの危険校舎なりその他の割当坪数は、昨年に比して非常に減少しておるのではないかということが伝えられておるわけであります。建築基準法等に触れる関連があるかと思いますけれども、事公立文教施設に関する限り、私どもは今のような措置が行われておるとするならば、その法的根拠を発見するのに苦しむわけであります。これについての大臣の御所見を伺いたいと思います。
  56. 小林行雄

    ○小林説明員 大臣にかわってお答え申し上げます。  ただいまのお尋ねは、おそらく校舎の耐火建築関係の問題についてのお尋ねだと思います。御承知のように予算といたしましては、対象によって違いますが、全坪数の大体三〇%ないし三五%程度が耐火建築あるいは鉄筋、鉄骨ということで予算が組まれているわけでございまして、この配分につきましては、たとえば防火地区あるいは準防火地区といったような法制上やはり耐火建築でなければならぬというようなものを特に考慮はいたしますが、それ以外にも、たとえば敷地の関係からどうしても耐火建築でなければならぬ、あるいは災害が比較的他の地区に比べて多いというような地区にはやはり将来のことも考えまして、耐火建築を多くしていかなければならぬと考えております。実際問題といたしまして、災害の多い地区等、ことに台風とか、あるいはその被害とかいった関係から、耐火構造の申請が非常に多いわけでございまして、そういった申請を十分検討いたしまして配分をいたしますので、特に防火とか、あるいは準防火地区だけに重点を置いて、鉄筋あるいは鉄骨のワクの配分を主張しているわけではございません。なお実際に採択いたします場合にも、ただいま申し上げましたようないろいろな条件を考慮して、そういった特に必要な地域の耐火構造につきましては十分私どもといたしましても考慮して採択するつもりでおります。
  57. 小牧次生

    小牧委員 私の質問に対しましてそうでないというようなお話でありましたので、私の聞いたことが違っておったかもわかりません。しかしながら今お話の中にもありました通り、この前の国会でありましたか、議員立法で台風常襲地帯の災害防除に関する特別措置法という法律も成立をいたしております。これは直接こういう公立文教施設にあるいは関係がないかもわかりませんが、しかしその趣旨とするところは、毎年台風に襲われて非常な災害を受ける地域に対する特別措置法でございまして、私どもが回りまして見た限りにおきましては、いろいろ公共施設が被害を受けますが、特にその中で一番多いのは学校施設です。しかもそういう地方には財政的な関係から危険な校舎が非常に多いわけであります。従ってそういう地方の児童父兄の御心配というものはまことに涙ぐましいものがあるわけでありまして、なるほど防火地帯あるいは準防火地区の関係も重要でございますけれども、そういう災害によって直接生命の危険その他にさらされるような地方における学校教育の問題も、それに劣らずきわめて重要な問題であると考えております。従いましてそういう台風に毎年襲われて被害を受ける地域においては、何といってもそういう公立文教施設は恒久建築に切りかえていかなければならない。その点については監理局長におかれても十分御承知であろうと考えますが、そのためには危険校舎の建物の構造の割合は、できるだけ恒久施設の方を多くするという方向に急速に進めてもらわない限りは、それらの地方の要望を満たすことはできない。私がいろいろ聞いたところによりますと、ことしの文部省の弱小府県に対する割当は、昨年に比べて非常に少くなっておる、かように私は聞いておるわけでありますが、先ほどのお話で、そうではないようにおっしゃいましたけれども、もう一ぺんこの点についてお伺いしてみたいと考えます。
  58. 小林行雄

    ○小林説明員 私どもも将来の学校建築は、できるだけ恒久的な建築にしたいというふうに考えておりまして、現在の構造比率、たとえば、ものによりまして違いますけれども、三五%程度が鉄筋、鉄骨であるというような状況では将来の事態に即応していくことができないのではなかろうか。将来はむしろこれをひっくり返すようなことでなければならないのじゃないだろうか。鉄筋、鉄骨の方を多くせねばならないのじゃないだろうかということを考えて、文部省としてもできるだけこの恒久的な建築の比率を多くしていくように努力したいと考えております。  なおお尋ねのございました、弱小府県には鉄筋、鉄骨の割当が少いのではないかというふうに伺ったわけでございますが、決してそういうことはございません。私どもといたしましてはたとえば危険校舎につきましては、大体危険校舎の坪数というものを全国的に調査をいたしまして、それを一番の基礎にして配分をいたしております。  また小学校あるいは中学校の整備の問題につきましても、不正常授業を行なっておりますところの坪数を基礎にいたしまして全国的なワクの配分をいたしております。必ずしも弱小と申しますか、財政的に豊かであるとかそうでないとかいうことは、かかわりのないことであります。現在ワクを割り当てておりますのは、そういった基準のもとにパーセンテージをかけて大体の割当をいたしております。先ほど申しましたように鉄筋、鉄骨の割当につきましては、そういった基礎の上に立ちまして、たとえば防火地区であるとか、準防火地区であるとか、あるいは災害が多いとかあるいは学校環境がどうであるとか、そういう点も十分考慮いたしまして、具体的な対策を行なっていきたいと考えている次第であります。
  59. 小牧次生

    小牧委員 少しく具体的にお伺いしたいと思いますが、現在文部省の方に各府県から申請されておる、木造、鉄筋、鉄骨、ブロックこれらの数に対しまして、文部省が予定されておる予算、その比率がどうなっておりますか具体的にお示しを願いたいと考えます。
  60. 小林行雄

    ○小林説明員 現在までに私どものところに参っております事業計画の坪数と予算坪数の比率の関係でございますが、これは全体の数字を申しますと、本年度の五十八億の予算でいうと、これが大体三十九万坪ということでございます。それに対しまして計画の坪数は約八十一万坪、これは義務制、非義務制すべてを合せた数字でございます。この数字から申しますと、倍率が大体二・○六倍というようなことになっております。この全体の数字の中で比較的倍率の高いものは、小学校の不正常が大体二・五倍程度であります。それから中学校の屋内体操場が二・四倍程度、小中学校学校統合がやはり二・四倍程度、小中学校の危険校舎の改築の関係のものが二・一倍程度でございます。それから高等学校の危険校舎が二・六倍程度になっております。これはただ全体の込みの数字でございまして、これを特に鉄筋を取り出してみますと、鉄筋をどうしてもほしいという鉄筋の計画に対しまして、鉄筋の予算の坪数の倍率から申しますと、小学校の整備の点につきましては二・八倍程度になっております。中学校の屋内運動場につきましては約十倍になっております。小中学校の統合につきましては五倍。高等学校の危険校舎につきましては、これも大体五倍程度になっております。そういったように、たとえば小学校の不正常あるいは中学校の屋体、学校統合あるいは高等学校の危険校舎の改築といったようなものが、恒久的な建築の計画が非常に多くて、予算の坪数と計画坪数との比率が非常に高くなっておる。そういった実際の状況でございます。
  61. 小牧次生

    小牧委員 ただいま監理局長の方からお示しになりました各種の数字でありますが、少くとも二倍以上であることはもう間違いない。さらに文部省に申請される前に、それぞれの都道府県においては、あるいは本年度申請しないで、あと回しになっておるようなところもあるのではないか。こういう議論がありますが、もしかりにそうだとするならば、それを加えるとさらにこの倍率は多くなるということは当然でございます。従いまして私は先ほど文部大臣にもお伺いをし、また要望もいたしたのでありますが、何といってもこれらの問題をできるだけ早く解決をし、解消するためには、年次計画が必要である。これはずっと前に小林管理局長の方からも、そういう計画の発表があったようであります。しかしそれから割り出して参りますと、おそらくこの五十八億というような金額は、とうていこれを生み出すことはできない。この計画のもとに割り出された金額を、あくまでも文部省とされましては、予算編成の際に確保してもらわない限りは、その年次計画は年次通りに達成されないということはもう当然である。従って私は、この際もう一度、今監理局長から示されたような具体的な根拠に基いて、はっきりした年次計画を作ってもらって、私どもの前にこれをお示し下さるように、この際特に要望いたし、また委員長の方でそのお取り計らいを願いたいと存じます。  さらに屋内体操場の問題でありますが、今監理局長からのお話の中にもございました通り、およそ十倍以上の申請数である。御承知通り学校におきましては、新制中学が多いわけでありまして、講堂を持っておらない、そういう学校が非常に多い。そのために屋内体操場を申請してくる学校が非常に多くなって参っておる。同時にもう一つは従来積雪寒冷地帯において、屋外で体操のできないそういう府県に、数年前から国が補助をいたしまして、屋内体操場を作って児童の体位の向上をはかって参られた。同時に三年前から高温多湿の温暖の地方にも、高温多湿のために同じように屋外において体操ができない。こういう点を御考慮願って、これらの地方にも、屋内体操場を国の補助をもって作ることを推進するという適切な措置がとられたために、またその希望が非常に激増して参っておる。その結果今のような十倍に上る申請数になっておると考えておりますが、この十倍ということを考えますときに、これはあまりにも実際の予算が少な過ぎるということがもうはっきりいたしておると考えます。これについてまず第一に文部大臣の御所見をお伺いしてみたいと思います。
  62. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 数字にわたることにつきましては、局長からお答え申し上げたいと存じますが、お話しの通りに、地方の要望するところとこれに対する国の予算との間には非常な開きがあるということはまことに遺憾に存じております。また残念にも存じておる次第でございますので、先ほど来申し上げますごとく、この地方の要望に対してできるだけ急速にこたえる必要があると思うのでございます。文部当局といたしましては、もちろんその線に沿って努力をいたすことは申し上げるまでもないことであります。また年次計画等のお話しもございましたが、もちろん予算を要求するに際しましては、われわれといたしましても、計画的にこれが実現をはかっていくという考え方でやって参りたいと思っております。具体的に一体何年の計画でやるかということをただいま結論づけるわけにも参らぬかと思いますけれども、計画的に物事を進めていくという考えにおきましては、私も全く同じように考えておる次第であります。その線に沿って計画を立て、また予算の折衝に当りましても、極力これが実現のために努力いたしたいと考えます。
  63. 小林行雄

    ○小林説明員 中学校の屋内体操場についてお尋ねでございますが、これは当初は御承知のように、積雪寒冷地それからそれ以外の湿潤と申しますか、雨の多い地域についても、これはこういった地域だけを選んで屋内体操場の予算の配分を行なったのでありますが、二、三年前からそういった地域はもちろんであるけれども、それ以外の積寒あるいは多雨の地域にも、これはそれを主とするわけではございませんけれども、そういった地域にももちろん屋内体操場が必要であるということから、予算の一部をさきまして、中学校の屋内運動場の建設の補助金を出しておるわけでございます。ただいまお尋ねの中にございましたこの計画と予算の比率が十倍と申しますのは、これは私のお答えの仕方が悪かったとも存じますが、十倍と申しますのは、鉄筋の比率でございまして、全体の数字といたしましては、大体二倍半程度、ただ屋内体操場のような特殊の構造のものでございますので、特に鉄筋なり鉄骨の要求が非常に強いという実際の状況でございます。
  64. 小牧次生

    小牧委員 私の調べたところによりますと、あと三、四年の間には中学校生徒が二百万人くらい増加すると考えておるのでありますが、そういたしますと、どうしても中学校の校舎もそれに見合って増築をしなければならないし、同時に今問題の屋内体操場の新築は必要である、こういうふうに考えますが、ことしは積雪寒冷地帯とそれ以外の地域との予算の配分について、前年度に比べて積雪寒冷地帯以外の地方の予算の配分が減るのではないか、大蔵省その他の折衝の段階においてそういうようなことを漏れ聞いておるのでありますが、これについて具体的に御答弁をお願いしたいと存じます。
  65. 小林行雄

    ○小林説明員 これは予算書にもはっきり書いてございますように、中学校の屋内運動場の予算の配分につきましては、積寒地を重点に配分するということになっております。この重点にということの実際の状況でございますが、昨年、一昨年あたりは大体七、三程度の比率になっておったと思っております。本年度はできればこの七、三の比率を多少修正いたしまして、たとえば三、五と六、五にする、あるいは四、六にするか、実際の要望は特に暖地の方に非常に強い状況でございますので、そういった実情も勘案いたしまして、ある程度この比率を修正するように努力をして参りたいと思っております。従って暖地の方が去年よりこの比率が低くなるということはおそらくないことと思っております。
  66. 小牧次生

    小牧委員 最後に今の問題で質問と要望をいたしておきたいと思います。今のように積雪寒冷地帯とそれ以外の地方との予算の配分の関係等もありまして、なかなか複雑な内容のようでございますので、この際私はまず公立学校施設費国庫負担法を改正されて、小学校の方にも屋内体操場の建築を国庫負担の対象にする。  それからもう一点は、先ほど申し上げた通り、いつも積雪寒冷地帯とそれ以外の地域との関係がありますから、そこにはっきりした特別な対策を明確に確立すべき段階じゃないか。もうすでにことしでもって二年度に入っておりますので、もうそろそろこの辺で今のような便宜的な措置でなく、はっきりした恒久的な対策を確立すべき段階ではないかと考えますので、またぜひそうしてもらいたいと考えますが、これに対して最後大臣の御意見をお伺いいたしまして、私の質問をこれで終りたいと思います。
  67. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御質問の御趣旨につきましては同感の点も多々ございますので、十分その辺も含んで検討いたしたいと思います。
  68. 坂田道太

  69. 山崎始男

    山崎(始)委員 私は来週今の屋内体操場の問題で大蔵省の方にもおいで願って、一点お伺いしたいと思っておったんですが、たまたま今小牧委員の方から積雪寒冷地帯と温暖地帯との配分の問題が出ましたので、私この機会に一言お尋ねしてみたい。  先ほど局長の方から、大体積寒地帯と温暖地帯との比率が従来三割、七割くらいの比率で積寒地帯の方へ重点的にやっておった、こういうことなのであります。それを本年度は大蔵省とも折衝して、そのワクを広げたい、こういうお話でありますが、それにつきまして私まずお尋ねしてみたいと思うことは、積雪寒冷地帯の方の屋内体操場を建てたいという要望と温暖地帯の方の屋内体操場を建てたいという要望との比率の問題、どちらが多いか、それをまずお尋ねしたい。
  70. 小林行雄

    ○小林説明員 本年度の申請の状況から申しますと、これは御承知のように、積寒地あるいは多雨地帯というのは、特に政令等ではっきり限定されておりまして、地域が少いわけでございますので、当然学校の数はその他の地域に比べますと少いのでございますが、積寒地帯の分が大体三割、それからその他の地域のものが大体七割といった実際の申請の状況でございます。
  71. 山崎始男

    山崎(始)委員 今の御答弁を聞きますと、実に私たちは変な感じを受けるのです。予算の配分は申し込みの少い積寒地帯で七割。逆に要望数から申しますと、申し込みの多い温暖地帯への予算の配分が大体三割ということを聞きますと、私はこれは全くあべこべじゃないかという気がするのであります。今までは特別の法律がございましたが、申し上げるまでもありませんが、国庫負担法ができました今日、その比率にあくまでこだわる必要はないという気がするのであります。もっと言いかえますと、屋内体操場に割り当てられました予算というものは、文部省の方で独自にお考えになって、それが積寒地帯であろうと温暖地帯であろうと、あなた方のお考えが主体となって配分されるべきじゃないか。何か大蔵省とそういうふうなお話し合いができておるのでしょうかどうでしょうか。もしできておるとすると、言いかえますと、大蔵省の方に制約を受けておるというようなことがあるとすれば、私は本年度からは実に変なものだという感じがするのであります。今のお話のように、実際の要望はむしろ今日では南部地区の方が多い。しかるに予算の配分は逆に三割くらいしか配分しない。そういうところに私は非常な矛盾があるような気がするのでありますが、今言いますように、そういうふうな制約が今年度もまた厳然としてあるでしょうか、どうでしょうか。もう少し弾力性をもって、負担法ができた今日にはむしろ文部省の方においてこそ現実の要望の数なり、また教育的見地から見ても、いろいろの必要な資料、どこへ配分したがいいかという資料をあなたの方こそ持っていらっしゃるのじゃないかと私は思うのです。そういう建前からいうと、これは文部大臣はもとよりでありますが、いま少し事務当局におかれましても主体性を持った配分の仕方をされるべきじゃないか、かように思うのでありますが、まずこの点は、事務的な点は局長からでもけっこうでありますが、そのものの考え方の点において文部大臣の御所見をお聞かせ願いたい。
  72. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ごもっともなお考えだと伺ったのでございます。今日の状況から申しまして、先ほど来お答えを申し上げました通りに、実際の要望とこれを満たす予算というものとに非常に開きがあるということは事実でございます。そういう点で予算の増額をはからなければならぬということをまずもって考えなければならないかと思うのでございます。予算の性格と申しますか、ことしどういう約束があったかよく存じませんけれども、沿革的に申せば、当初積雪寒冷地帯等を主眼として作った予算であります。それが年の経過とともに若干その他の地方にも及ぼし得るような道を、ようやく開いたというような段階であろうかと思うのでございます。しかし実情から申しますと、そういう性質のものじゃないということはお話の通りであります。予算が相当増額することがなければ、現実的にこのやり方を変えるということもなかなかむずかしいと思いますけれども、私は両方相並んで、文部省としましては単に積雪寒冷地帯だけではなくて、他の地方に対しましても、この種の施設に対しまして助成の道を講ずる、あるいは負担の道を講ずるということについては、努力して参らなくちゃならぬ筋合いのものじゃなかろうかと思っておりますので、今後の考え方といたしましてはその線に沿った計画を一つ立ててみたい、かように考えております。
  73. 山崎始男

    山崎(始)委員 私がお尋ねいたしましたのは、予算の増額、全体においてワクがふえますれば、これはもとより問題でありません。しかし、すでにきまった予算の配分を今問題にしておるのであります。それが今のような矛盾がそこに起きている。局長のお話では、むしろ南部地区の、積雪地帯でない地区の屋内体操場の要望の方がうんと多い、七割だと言われておるのであります。それが実際に事務的に本年度配分をされる御方針の中に、今承わりますと、大蔵省との話し合いとかなんとかいうようなものがあって、それがあべこべに七、三に配分されるということは、あまりにも実際行政学校建築の当面の衝に当っていらっしゃる文部省としては主体性がないことではないか、もっとしっかりしなさいと私は実は言いたい。その点を実はお聞きしておるのでありまして、局長の方から、いま少しその点のあなたのお考えをお聞かせ願いたい。私は温暖と積寒と、負担法ができた今日、それは申し上げる意思はないのであります。要するに、どちらであろうと屋内体操場の必要量がわかっておる。そうしてどういう地区に必要なのかという数字がはっきり今日は出ておるのですが、それが実際にはあべこべに配分されておるので、今日までそういうことを考えていらっしゃる文部省の態度というものが何だかはぐいいような気がする。実は最初私は大蔵省の方を呼んでお聞きしたかったのですが、たまたま今小牧君から出ましたから私はお尋ねしておるのですが、一つ局長の方からいま少しその点の御所見をお聞かせ願いたい。
  74. 小林行雄

    ○小林説明員 大臣からお答え申し上げましたように、この中学校の屋内運動場に対する国の負担金につきましては、最初は、御承知のように積寒地だけに限定をされて補助金がつけられたものでございます。その後それ以外の地域におきましても、雨の多いような地域は、やはり雪のために戸外運動ができない地域と同じじゃないかというようなことから、その他の地域の多雨地帯、湿潤地帯というものにも拡張されたわけでございます。その後さらにここ両三年におきましては、そういった積雪寒冷地帯あるいは多雨地帯以外の暖地にも、やはり教育的な見地から中学校の屋内運動場は必要じゃないかということになりまして、ことに積寒地は年々少しずつでも整備されておりますが、それ以外の地域の中学校には屋内運動場がないというようなことから、非常に強い要望が出て参りまして、多雨地帯以外のその他の地域にも国の補助金をつけて中学校の屋体を整備するということになったわけでございます。従って、現在の予算におきましても、比率の問題はありますけれども、そういった積寒地を重点的にということにつきましては、ただいま申しましたような沿革的な理由と、それから実際緊要度の度合いから申しますと、やはり非常に長い期間雪のあるような、長い期間戸外で運動なりあるいは教育ができないというような緊要度の問題から、従来は御承知のように積寒地を重点的に扱ってきたわけでございます。先ほど本年度の申請の比率が七、三ということを申したわけでございますが、これは実際に全国から申請されました学校数を積寒地とそれ以外の地域に分けただけでありまして、ほんとうの申請の比率ということから申しますと、積寒地にある学校と本年度申請された学校数、それから暖地の学校数と、本年度申請された暖地の学校数の比率をとらなければ、実際の比率というものは私は出てこないのじゃなかろうかと考えますが、いずれにいたしましても、その比率になりますとさして兄弟のないものではなかろうかと思います。ただ先ほどお答えの中に申しましたように、地域的に申しますと何と申しましても暖地の方が非常に雪寒地に比べて広いわけでございますので、ただ枚数だけをとりますと非常に多くなるのでございます。その御要望も私どもといたしましてはごもっともだと思いますが、そういった点から将来はできるだけ理想的な形態として、雪寒地と温暖地との差別と申しますか、そういったワクの差別をできるだけ早い機会に撤廃するような努力をしたいと思います。もちろん予算も増額してもらいたいわけでございますが、できるだけそういった理想的な形態を文部省といたしましては、頭に置きまして、この比率の問題もできるだけその実際の状況の比率に合うように、将来できるだけこれを修正していくようなことを考えたいと思っておる次第であります。
  75. 山崎始男

    山崎(始)委員 私も長くは申しませんが、要するに要望の多いところが——私たちが知っております一昨々年から温暖地帯への配分が起ったのでありますが、大体一県に対して一校かまま二校、二校までいってないと思うのだ。大体一県に一校。大体たくさん申し込みがある中で一校だけ出すのでありますから、たくさんある金魚鉢にふを一つほうり込んだのと同じことなんです。実際各都道府県の行政に当っている者は、これは引っぱりだこになって困っておるのです。私はその困り方を知っているからあえてこういう御質問をしているのです。行政筋道からいいましても、積寒地帯の方が大体もうあと五、六年間か六、七年もすれば充足される。しかも温暖地帯の方へ一昨年からこの法律がありながら、これをただの一校でも文部省の特別の思いやりといいますか、口を開いて下さった。その御労苦に対して私は多といたします。いたしますが、それがそのきっかけとなって昨年も相当の要望数が南部から出ている。本年はそれがずっと上回っていると思う。言いかえますと、それだけ要望が多いのでありますから、それでもってたった一校とかいうようなことでは、実際これはいつまでたったら南部の屋内体操場が拡充されるのか。北部の方は大体ある程度は目鼻はついていると見ている。まだそれは理想的な拡充まではいってないと思いますけれども、同じように教育的に見て屋内体操場というものが南部でも北部でも必要だというものの考え方からすれば、今あなたの方もそういう南とか北というようなワクはできるだけはずしたい、この気持を私は強く持っていただいて、南部へ出すか北部へ出すかは一番よく実態を知っていらっしゃる文部省の方が主体性を持った配分の仕方をしていただかなければ、大蔵省にいつまでも頭を下げて、鼻息をうかがっておそるおそる配分をしておるという印象を私たちは持つ。そういう点は間違いじゃないか、私はかように思いますので、一つその点は、極力御努力をなさっていただきたい。ほんとうに各府県は困っているのです。たった一県一校だけというような配分はむしろしない方がいい。どうぞ一つその点は、十分その実情は御存じだろうと思いますけれども、文部大臣もしっかり腹をきめて、よろしくお願いいたしたい。
  76. 坂田道太

    坂田委員長 堀昌雄君。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 けさほどの大臣の御答弁の中で、道徳教育の問題についてまず最初にお伺いをしたいと思います。  大臣はけさほど道徳教育効果をいかにしてあげるかということが問題である、このようにお話しになっております。そこで現在行われております道徳科の新設ということが効果をあげるための最善の方法であって、それ以外には方法はないとお考えになっておるかどうか、お伺いをしたい。
  78. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教育の仕方の問題であろうと思うのであります。みだりにしろうとがかれこれ言うべき点ではなかろうと思うのでございます。今日採用いたしました方法につきましては文部省といたしましても相当慎重に検討を遂げた結果、今日の場合これが適当であろうという考えのもとに実施いたしておるわけでございますので、これ以外にさらに適当な方法文部省としてあれば、またそれを採用するにやぶさかではございませんけれども、ただいまのところほかの考え方はいたしておりません。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 道徳教育というものはものの考え方でございますけれども、科目を新設して知識を与えると申しますか、そのような考え方で果して道徳教育というものができるかどうかは、いろいろと異論があるところだと思うわけであります、私が考えておりますのに、知識としてそのものことが正しいとか、あるいは間違っておるとかいうことの判断は、子供たちの中ではあえてこれを知識として与えなくても、その年令に応じた判断というものはあるものであるというふうに私は理解をいたしております。道徳というものは決してそういうふうな知識とか概念とかとして頭の中にあればそれで済むというような性格のものではなくて、これが行動になったときに初めて道徳ということになるのではないか、こういうふうに考えてみますと、私は道徳教育基本というものはやはり生活とか行動を通して子供たちの中に生まれてくるものでなければならない、このように、私は考えておるわけであります。そこで問題になりますのは一体そういう行動とか生活とかいうものの中から生れる道徳というものを、では一体どういう形で教育として与えていくかということになりますならば、やはり教師が子供たちと接して、その中で学校の中における生活をしておる中を通じて行われるものであって、ただこれをしてはいけませんとか、こういうことをしなさいということだけで道徳教育が行われるような性格のものではあり得ない。こういうふうに私は理解いたしておるわけであります。そういう理解の観点に立ってみますならば、現在のあの六十人近いような生徒を抱えて、先生が果して個々の子供たちに対して、そういう行為の中で、あるいは行動の中で身をもって示すことができるような状態があるかどうか、これが第一点であります。  第二点は、現在の教師諸君はきわめて多忙な状態に置かれております。教育委員会に対していろいろとこまごまとした報告書も書かされておる、あるいは子供の試験その他の問題をちゃんと調べてみなければいかぬ、あるいは事務上のいろいろなことをやらされておるというようなことの中で、先生たちの頭の中には果してそれだけの心のゆとりをもって個々の児童指導するだけの、そういう行動をするだけの余裕があるかどうかということをわれわれは考えてみなければならぬと思うわけであります。こういうふうに考えてみますと、さっきからいろいろとお話が出ておりますように、すし詰め教室という問題はただ知識を与えるという問題だけではなくて、道徳的な教育を与えるためにもそれは困難な状態にあるのではないか、やはり欧州のように三十名ぐらいの状態になって、そういう状態の中で行動を通して教えることができるような段階にならなければならないのじゃないか、これは古い例で考えてみますと、かつて松下村塾がございまして、吉田松陰先生とその塾生がいた、この吉田松陰という偉大なる教師のもとに、もちろんその塾生もりっぱであったでありましょうけれども、これが生活を通して教育をされ、ある少人数の人の中で行われておったがゆえに、松下村塾からはあのようなりっぱな人たちが輩出したのである。私は教育の本質というものはそのような過程の中から生れるのではないか、こういうふうに考えておるものです。  そこで先ほど大臣はこれが最上の方策であるというふうに現在考えておるというお答えでございましたけれども、私は最上の方策というものはただいまも申し上げたように、もっとそういうことの行い得る条件を学校教育の中に取り入れていくということがすなわち最上の条件であって、現在はそういう予算的措置を政府が取り得ないから、やむを得ずこういうふうな道徳科の新設をやらざるを得ないのだ、こういうふうに私は理解をしておるわけでありますが、この点についてはいかがでありましょう。
  80. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在のようないわゆるすし詰め教室、こういうふうな状態のもとにおいて、思うように先生方の努力が報いられないということはよくわかる話でございます。従ってすし詰め教室解消ということの中には、お話のような趣旨ももちろん込めてこれは考えていかなければならないものと、当然私もさように考えておる次第であります。できるだけさようなことも頭に置いて、この解決のためには急がなければならない、こういうように考えます。いずれにしましても、しかしそれなら何人まで下げるかということになりますと、そう簡単に結論は出せない問題だと思いますし、また現実の事情にも制約されるわけでありますが、方向においてはお話の通りだと私どもは考える次第であります。今度の道徳教育の問題につきまして、もちろん今お話になりましたような点も、道徳教育効果を上げていく上において、きわめて適切な考え方であるということについて私は何の異論もありません。また教師につきましても、できるだけ教育以外のわずらわしい雑務からなるべく解放されるような状態になれば、これもきわめてけっこうなことだと思います。御趣旨につきましては何ら異論はないのでありますが、またそういう方角に向ってお互いに努力して参らなければならぬと思いますが、今の道徳教育に関する時間を増すという問題につきましては、少くとも現在のごとき状態のもとにおきましては道徳教育効果を上げるために二時間を設けた方がよろしいという結論が出ましたので、それでやっておるわけであります。かような時間を設けなくても十分に効果を上げるというような事態になれば、しいてこれはやる必要がないと私は思うのでございます。現段階におきましては、また近き将来において、その問題が完全に解消するということもなかなか考えられない問題でございますので、現状におきましては、われわれの到達した一つの結論としてこれを実施さしていただきたいと思うのでございます。同時に各学級におけるすべての学課を通じて道徳教育のことについて努力する、また努力してもらわなければならぬということは一貫して変らないのでございます。その点につきましてはそれぞれの学級担任の先生方に、あるいはそれぞれの課目を担任する先生方において、従来同様に、いな従来以上にも、一つ努力が願いたいと思っておるわけでございます。それにプラスして今度のような措置をとって参りたい、こういうことでございますので御了承いただきたいと思います。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいま御答弁の中で、先生がなるたけ雑務をしないでいけるように考慮をしていきたい、こういうふうな御答弁がございましたけれども、現在の小学校その他におきましては、事務職員があるところもありますし、ないところもあるというのが現実の状態でございます。そこで大臣におかれては、今のお考えをもととして、小中学校において、先生方が事務的な問題から解放されて教育に専念できるような事務職員を配置していこうというお考えがあるかどうか、来年度予算において、それを予算化するだけの熱意をお持ちになるかどうかを承わりたい。
  82. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お考えの御趣旨につきましては同感でございます。できるだけその方角に向って検討を進めてみたいと思います。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 次に勤務評定の問題についてちょっと伺いたいのでありますが、大臣法律を実施するという前提でこの問題を考えてもらいたいというふうにお話になっております。そこで、法律を実施するにつきましては、何らかの目的があろうかと考えるわけでございますけれども、この勤務評定法律を実施するということの目的について伺いたいと思います。
  84. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 勤務評定の制度が設けられておりますのは、目的があればこそ設けられておるのだと思うのでございます。この勤務評定を行うことによりまして、教職員の人事につきまして、より合理的に、より適正に行いたいという、さような考え方から出ておるわけでございます。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 人事を適正に行いたいということが目的だというふうに伺いましたので、人事を適正に行いますためにはやはりその勤務評定が適切に行われるという前提の上に立たなければならないというふうに私は考えるわけであります。勤務評定が適切に行い得るということを考えますときに、勤務評定趣旨というものを調べてみますと、ここでは勤務の実績と能力というものを評価していきたい、こういうふうに大体いわれておるわけであります。そこで私は勤務の実績を評価することについては、これはそう困難な問題ではない。学校に先生が何日出席しておるとか、あるいは遅刻を何日したとか、あるいはよく休むとか、こういうふうな勤務の実績を評価されることにおいては、私はさように困難なことではないと考えるわけでありますが、能力を評価するという、この問題に私は一番大きな問題点があるだろう、こういうふうに考えておるわけであります。そこで教育というものはどういうふうにこれを理解していいか、私なりに考えてみますと、教育というものは知識を修得させる形と、人格をりっぱにすると申しますか、教養を高めると申しますか、人間的な問題、この二つの問題が私はあると考えております。そこでこの知識を修得させるということにすぐれた人もありましょうけれども、あるいは教養を高めるということにすぐれた人もあろうかと思います。こういうふうに考えるわけであります。個々の問題に立ち入りますと、要するに勤務実績というものは教師個人についてだけ考えられるものでありますけれども、教育上いう問題は児童なり生徒と教師という二つの人間間の問題としてこれを理解していかなければならない問題であるというふうに考えるわけであります。私は出身が医者でありますから、医者と患者という立場、あるいは教師と児童という立場は全く似通った状態にある、こういうふうに理解しておるわけでありますが、私の専門の方で医者の立場からちょっと申し上げてみますと、要するに医者が患者を見る場合に、患者というものについては千差万別であります。ある地域においての状態、貧富の状態、あるいは職業の状態、あるいは性別の状態、あらゆる状態において、その相手方の状態一つではないわけであります。この一つではないものをある一つの甲というものと乙というものの医師がこれを処理します場合に、その結果がどういうふうに出るかという場合に、甲の方が早くなおって、乙の方がおそくなおった、そうすると甲の方は能力があって、乙は能力がないのだ、こういうふうに評価ができるかというと、しかく簡単に参る性格のものではありません。その対象が千差万別であるということが第一の問題点でありますし、人間と人間との間に行われる行為でありますから、これは無形の仕事であって、有形の仕事として評価される性格のものではないということであります。これと同様のことが私は教師と児童との間に考えられるのではないか、子供たちというものの中には、あるいは都会地の住宅街の者もありましょうし、あるいは非常に貧困な人たちの集まっておる地域の人たちもありましょうし、これがまじり合ったところもありましょうし、山村もありましょう、かくいろいろなところの状態が多数にあるわけであります。これがまじり合ったところの状態としますならば、ある学級には比較的素質のいい子供たちが集まっておる、ある学級には比較的能力が足らない子供たちが集まっておる、この場合に、先生たちが非常に一生懸命にやりましても、その効果というものから考えますならば、やはり効果の上りやすい状態効果が上りにくい状態というものがある、こういうふうな非常に複雑な条件が人間対人間の関係に生じておるものを、これを一体いかように評価されるか。大臣は、果してこのように困難な評価を、あなた自身が評価をされる立場に立って、完全にされ得る自信がおありになるのかどうか。結局、私は法律を実施するについては、その実施をした結果、その目的に沿う効果を上げ得るものである限りにおいて法律を実施することは正しいと思いますけれども、その法律を実施することによって所期の目的に反する結果を招来するような場合に、必ずしもその法律を強行しなければならない性格のものではないのではないか、こういうふうに私は理解いたしておりますので、大臣がもし評定者の立場に立たれたならば、この困難な人間対人間関係の、無形の仕事をどのように評価しおおせる御自信があるかという点を伺いたい。
  86. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お説の通りでございまして、法律がありまして、これを適正に実施することが法律施行の目的でございます。せっかく実施しても逆な結果が生ずるというふうなことでありますれば、これは実施方法が適当でないということにもなろうかと思います。勤務評定の問題につきましても、また今のようなお話があればこそ勤務評定が要るのではなかろうか、こういうふうにも私は考えるのであります。個々の先生方の形に現われた日々の勤務成績といいますか、出欠の状況というふうなことを見るのは何でもないと思いますけれども、それ以外の今お話しになりましたような点にわたりまして、よくその先生の働きぶりというものを見てあげるということが必要ではないかと思うのであります。私は私自身にそれができるかできないかと言われますと、ものによればできるものもあるかと思いますし、ものによれば私の能力では不可能なものもありましょう。しかしこの勤務評定のやり方につきましては、いろいろ慎重に関係の向きの方々が検討せられてやったことでありますので、私は少くとも小中高等学校の校長さん方が日々その学校に勤めておられる教師の方々の状況をごらんになれば、不可能なことではないと思う。もし不可能なことをやっておるということになれば、これはできぬはずであります。私は、可能なものとして計画を立てておられるものと確信をするわけであります。また現実の私自身の考え方といたしましては、さような点について、もしさらにいろいろ改善を要すべき点があれば、その点は改善してもよろしいと思います。できない話を幾ら持ちかけてもこれは無理なことでありますから、そういうことをやろうということは全然考えておりません。願わくは適切な計画のもとに勤務評定が行われるようにということを望んでおるだけであります。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣は、ものによってはできるものもあるがものによってはできないものもある、こういうふうにおっしゃったわけであります。大臣においてすらものによってはできるけれども、ものによってはできないというものが、小中高等学校の先生全部に対してできるという前提のもとにこの法律考えられておるというふうに私は理解するわけでありますが、できないという部分もあるということになりますと、これは非常に問題があるのではないか。もう一つこの教育の問題につきましては、たとえば非常にりっぱな大学教授がおいでになる。学問としてはきわめてりっぱな先生であります。しかし、果してその大学教授が、その専門的な学問に匹敵するだけの教える能力をお持ちになるかどうか、あるいは人間として学生を陶冶されるだけのそういう人格的な内容をお持ちになっているかどうかということは、別個の問題であると私は考えておるわけであります。このような別個の問題がありましたときに、教師の中に甲、乙、丙の順序をつけなければならぬという場合、学識を第一にするのか、あるいは教育方法を第一にするのか、あるいは人格的な要素を第一にするのか、あるいはそのいずれがどうなるかというような、総合的な判断をしなければならないということはきわめて困難なことであって、私は大臣がおっしゃったことは正しいと思うのです。できることもあるしできないこともあるということは正しいのであって、できないことがあるということが予想されるものを小中高等学校の先生に押しつけるということは私は問題の取扱い方としてはいかがかと考えるわけでありますが、その点はいかがですか。
  88. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私が、できることもあればできないこともあると申し上げましたのは、現実の私、灘尾ができることもあればできないこともあるという意味で申し上げたのでありまして、各地方の学校長、つまり評定者となられる方々としてはこの程度のことはできるという前提のもとに今度の計画は進められておるものと存ずるのであります。また今お話にありましたように、ある人の学力の問題、あるいはその人の技術の問題、あるいは徳性の問題、いろいろあろうと思います。学術の点においては満点であるけれどもやり方が下手である、あるいはまた人格的におもしろくない、こういうふうに長所もあれば短所もあるわけでありますが、それらの点が、この勤務評定を行うことによってある程度はっきりしてくるのじゃないか、それに従ってその人に関する人事の問題を考えていく、これが私は勤務評定効果じゃないかと思うわけであります。人事をやる人が合理的な判断を下す参考の材料としてこの勤務評定というものが行われるわけでありまして、私はむしろこういうふうにやることによってただいまの人事がよりよくなってくるものと期待をいたしておるのであります。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 では、今小中高等学校の校長さんにはできるものであるという前提に立って考えておる、こういうふうなお話でございますが、もしある地域において、小中高等学校の校長さんが、私たちにはとてもこの評定はできませんという意思を表示した場合には、その府県においては行い得ないというふうに考えてよろしいのでありましょうか。
  90. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 客観的に考えまして、現在の小中学校の校長の力をもってすればこの程度のことはできるであろうということを考えておるわけであります。従いまして、むろん検討の結果不可能だということがはっきりすれば、教育委員会考えるでありましょう。しかし、一応の話といたしましては、できるという前提のもとにやっておることについて、もしその小中学校の校長さん方ができないということで投げ出されるということになれば、その小中学校の校長さん方の能力という問題についてさらに検討もしなければならぬということになるのじゃなかろうかと私は思うのであります。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 灘尾文部大臣が、灘尾個人の問題としてはできることもあり、できないこともある。文部行政の最高責任者である文部大臣にできることもできないことも個人としてはあり得るというようなことを、もし小中高等学校の校長先生ができないこともあると申したならば、それはその校長たちの能力を疑うということになるならば、われわれは文部大臣の能力を疑わざるを得ないということになります。いかがでありましょうか。
  92. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 どうも話が少し食い違っておるのじゃなかろうかと思います。私は小中学校の校長ではないのでございます。また小中学校の校長のような教育に関する専門的な訓練を受けたこともなければ、教育を受けたこともないのであります。従って、小中学校長のやられることは全部文部大臣ができるというような大それた考えは私は全然持っておりません。そういうことでありますので、今度のこういうような問題につきましては、私にできないことでも——私にできることはおそらく少いかもしれません。しかし、できないことでも、小中学校長の方々においてはできる、こういうふうな考えをいたしておるわけであります。またたくさんいろいろなことを書いております中に、あるいはできないという問題もそれはあるかもしれません。それを絶対にそれが能力がないというふうにきめつけるわけにも参りません。もちろんこれは私どもには全然できませんというような形でお出になるということになれば、その間に問題を生じてくるであろうと思うのであります。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 大体文部大臣の原則的なお考えについては了解をいたしましたけれども、私どもはやはり法律を実施されるにつきましては、先ほど大臣も仰せられましたように、効果があるように実施をされるべきである、こういうふうに考えております。ところが、現在の状態は、残念ながら効果があるということが果して認められるかどうかという点については、実施をするということの中でいろいろと問題が生じておる、こういうふうに考えるわけであります。そこで私は、この問題の取扱いについて、法律がきまっておるから実施をするという前提を一切くずさないのだというふうに大臣はおっしゃっておりますけれども、実施をする時期というものにはおのずから問題があろうかと思うのであります。実施をするという方向は問題が別でございますけれども、その時期は、やはりよく話し合いができて問題がない形で、より多くの効果が上るような形で実施をするということが、行政担当者として当然考えられる道であると考えますが、いかがでありますか。
  94. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私が文部省をおあずかりしておる以上は、この法律を改正しようという考えを持っておればまた別であるかもしれませんが、とにかく現在といたしましては、この法律施行の責任を持っておるわけであります。従って、この法律が円満に実施せられることを心から願っておるわけであります。何月何日に実施をするということについてまでは私は申しません。これは実施の責任者は地方の教育委員会でございます。地方の教育委員会において、すみやかに適切な計画を立ててこれが実施に努力をしてもらいたいというのが私の願いであり、希望であるわけであります。この実施の過程におきまして、関係の向きの方々のいろいろな意見調査し、慎重の上にも慎重にやりまして、適切な案を得なくちゃならぬということは申すまでもないことであります。各地方における都道府県教育委員会においてもそのつもりで今日までやってこられたことと私は信ずるのであります。できるだけ円満にこれが解決することを望んでおりますので、もし改善についての意見があるということでありますれば、遠慮なく意見としておっしゃっていただいてけっこうだと思います。しかし、これをやる以上は、あくまでも阻止するぞというような態度で、しかも法律に違反するようなことまでやられて、地方ではいろいろ物議をかもし、問題を起しておるような状態は、何と考えましても好ましい状態とは言えないと思うのであります。願わくは虚心たんかいにお互いに意見を交換する、あるいは意見をまとめるということはけっこうなことでありますので、それをやっていただきたいと思いますが、基本的に私といたしましては、この実施に御協力を願いたい、その前提のもとにいろいろなことをやっていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  95. 山崎始男

    山崎(始)委員 ちょっと関連。今勤務評定の問題について、文部大臣は、実施の時期については自分はあえてこだわらないというお話でありましたが、聞くところによりますと、ここへ松永文部大臣もいらっしゃるのでありますが、松永さんにお聞きするわけにはいきませんから、当時いらした内藤局長にお尋ねいたしますが、大体四月中に実施すべきであるという基本的な方針文部省はお持ちになっておられたかということ、このことを聞くのでありますが、事実でありますか。
  96. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 勤務評定につきましては、一昨年来いろいろと問題がございまして、昨年のたしか十月の全国の教育委員長会議及び教育会議で、成案ができ次第なるべく早く実施しよう、こういう申し合せがあったのでございます、その後十二月の二十日に成案ができましたので、全国の教育委員長会議では四月を目標に実施しよう、こういう申し合せができました。その申し合せの線に沿って各県が実施していらっしゃるのでございます。
  97. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私の申し上げ方にあるいは足らぬ点があったかと思いますが、私は実施の時期についてはこだわらないというふうに、あまりそうゆっくりした気持で申し上げておるわけではありませんで、別にしかし、何月何日までに実施しなければならぬということまで指示する必要はないと思いますけれども、前々からの経過に徴しますれば、相当の期間今日までもあったわけであります。なるべく早くやってもらいたいというのが文部省基本考え方であります。できるだけ早くやってもらいたいのであります。これが今のような状態のもとに実力的に阻止せられる、こういうようなことになりましたら、それ以上やりょうがないのであります、率直に申し上げまして。かわってやるわけにもいきませんし、強行してやるわけにもいかぬのであります。事実上おくれるということは、これはあり得ることかと思うのでありますが、文部大臣といたしましては、しかしさような状態はまことに好ましからぬ状態であります。ただいま堀さんにお答え申し上げましたように、すみやかにこれに協力するというような心持になられて、そうしてなるべく早く合理的な案が実施せられるようにやってほしいという念願で一ぱいなのでございます。
  98. 山崎始男

    山崎(始)委員 今のお言葉は、私たちが、内藤局長のお言葉を聞いた当時の前文部大臣の時分と、今の灘尾文部大臣のこの勤務評定の実施の時間的な関係においては、いささかニュアンスが違うのであります。私たちが聞いておりますのは、今都道府県の教育長並びに教育委員長会議において、できるだけ四月中に云々という局長のお話でありましたが、四月の一日にここにいらっしゃる松永文部大臣が川島幹事長と一緒にグランド・ホテルで本島教育長を呼ばれまして、ぜひ四月中に実施すべきであると言われたということを聞いております。そのくらい四月中ということに非常に一生懸命になっていらしたことは、事実なんでございます。それが選挙が済みました今日、灘尾文部大臣の御答弁を聞きますと、いささかニュアンスが違う。それで私がお聞きしたのであります。でありますから、多少そこに灘尾文政になって、勤務評定の実施の時期は、いささか味わいが前の大臣の時分とは違うということを私は理解するのであります。もう一ぺん一つその点はっきりしていただきたい。
  99. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 松永大臣の味わいと私の味わいとの間に、それほど差異があるとは実は私思っておりません。私はすみやかにやってほしいということを強く考えておるわけでございます。ことにこの問題が今のような、いわゆる実力行為なんかによって阻止せられておるというような状態は、まことに残念なことであります。そういうことでいたずらに遷延するということは、私としてもたえがたいのであります。なるべくそういうことのないように、早く一つやってほしいという心持でおるわけでございますので、あるいは私の方がもっとせっかちかもしれません。そういうふうに御了承願いたいと思います。     —————————————
  100. 坂田道太

    坂田委員長 それでは次に市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず提案の趣旨説明を聴取いたします。灘尾文部大臣。     —————————————
  101. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回政府から提出いたしました市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概略を御説明申し上げます。  改正の第一は、市町村立の小学校、中学校等の教職員に対する管理職手当を都道府県の負担とすることであります。すなわち、国立大学の学長、学部長等につきましては、これらの職員が管理または監督の地位にあることにかんがみ、一般職の職員の給与に関する法律第十条の二の規定により昭和三十一年度から俸給の特別調整額、すなわちいわゆる管理職手当が支給されておるのでありますが、国立の高等学校以下の校長に対する管理職手当につきましても本年度からその支給に必要な予算措置が講ぜられたのであります。国立の高等学校以下の校長に対して管理職手当が支給されることになりますと、教育公務員特例法第二十五条の五の公立学校教育公務員の給与の種類及び額は国立学校教育公務員の給与の種類及び額を基準として定めるという規定により、公立の高等学校以下の校長に対しても同様管理職手当が支給されることになるのであります。この場合、市町村立の義務教育学校等の経費のうち教職員の給与費については、従来都道府県の負担となっていたので、今回、校長に対する管理職手当につきましても他の給与と同様、都道府県の負担とすることが適当と考えられるのでこの点を規定したものであります。  なお、都道府県が負担する管理職手当のうち義務教育学校分については、義務教育費国庫負担法第二条の規定によりその実支出額の二分の一を国か負担することとなっているのであります。管理職手当の支給に伴う財政措置といたしましては、義務教育費国庫負担金として約四億四千五百万円を計上しておりますほか、地方負担分につきましては地方財政計画等において必要な措置を講じておるのであります。改正の第二は、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律により、国家公務員に対し、新たに通勤手当が支給されることになっておりますことに伴い、市町村立の義務教育学校等の教職員に支給される通勤手当を、管理職手当及びその他の給与と同様、都道府県の負担とするためのものであります。なお、通勤手当の支給に伴う財政措置といたしましては、義務教育費国庫負担金として約五億五千六百万円を計上しておりますほか、地方負担分につきましても地方財政計画等において所要の措置を講じているのであります。改正の第三は、給与を都道府県が負担する事務職員の範囲が吏員に相当する者であることを明らかにする等規定の整備を行うことであります。  最後に、この法律は公布の日から施行し、昭和三十三年四月一日から適用することといたしております。  以上、この法律案提出いたしました理由及びその内容の概略を御説明申し上げました。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願い申し上げます。     —————————————
  102. 坂田道太

    坂田委員長 次に国立及び公立義務教育学校児童及び生徒災害補償に関する法律案を議題といたします。  まず提案理由の説明を聴取いたします。山崎始男君。     —————————————
  103. 山崎始男

    山崎(始)委員 ただいま議題となりました国立及び公立義務教育学校児童及び生徒災害補償に関する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  およそ国家隆昌の基盤を教育に置かなければならないことは、言うまでもないところでありますが、なかんずく義務教育における約千七百万人の児童生徒のすこやかな成長こそは国民全体の念願でありまして、教育基本法及び児童憲法に明示されておりますように、常に留意せねばならないところであります。  さて義務教育に関しましては憲法第二十六条第一項によれば、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と規定しており、さらにまた第二項においては「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」と規定しておりまして、義務教育について特にその責務をうたって重視しておるのであります。しかるに一昨年来児童生徒の災害がひんぴんと報じられておりますのは、先刻御承知のところでありまして、特に紫雲丸事件や相模湖事件、三重の水難事故や学校給食の集団中毒等、記憶に新しいものが多くあったのであります。楽しい修学旅行や遠足に不安を抱いて行かなければならないことはまことに遺憾なことで、義務教育の諸学校で起きた災害の処置が父母の負担のままに放置されていることは実に忍びないところであり、義務教育趣旨からもまた絶対に見のがすことのできないものだと存ずる次第でございます。現在地方公共団体においては、自主的な補償策が共済組合的なものとして全国的に広まりつつあるのでございますが、このことは父兄並びに国民がいかに学校における災害に強い関心を持ち、特にその対策の万全をこいねがっているかを端的に物語っているものだと存ずるのでございます。従ってこのような現状におきまして、これをさらに一歩前進させ、児童生徒を災害から守るとともに、不幸にして災害を受けたならば、直ちに迅速かつ公正な補償を国家によって行うことが焦眉の急務であると存ずる次第でございます。  この法律案は、かような事情のもとにおきまして、ぜひとも必要と考えられる災害補償を国に行わせることを目的として立案いたしたものでございまして、その内容を簡単に御説明申し上げますと、第一に、この法律義務教育学校管理下の災害について義務教育の特殊性に基き、国はこれに対する補償を行う責任を有するのであるという立場に立っているのでございます。この場合学校管理下とは、義務教育学校児童生徒が、当該学校教育または監督もしくは保護を受けている場合を言うのでございますが、具体的には政令に譲っているのであります。  第二に、この法律による災害の補償の種類としては、療養補償、傷害補償、葬祭補償、遺族補償、打ち切り補償を考えておりますが、補償は金銭による補償としております。補償金額は、療養補償については、原則として完全に治癒するまでの費用を見ることに考えています。遺族補償につきましては、中学校を卒業して勤めに入った労働者が業務上死亡したとき、労働基準法で保障されている金額に準ずることといたしました。傷害補償等その他の補償につきましては、中学校を卒業して直ちに労働に従事した者が、労働基準法で補償される金額に準じて補償することにいたすよう考えています。  第三には、最初に申し上げましたように、補償の実施は国家事務でありまして、文部大臣が最終責任者でありますが、公立義務教育学校については、都道府県の教育委員会が委任を受けてその補償を実施するものとしておるのであります。  第四に、この法律による補償、災害を受けた児童生徒社会保険による給付を受けることができる場合には、その給付を受けるべき限度において補償を行わないようにいたしました。  第五に、補償を受ける手続について申し上げますと、公立義務教育学校管理下で、児童または生徒が災害を受けたときは、本人またはその遺族が文部省令で定める補償申請書を学校長及び市町村の教育委員会を経由して都道府県の教育委員会提出し、委員会は政令で定める基準に照らして、学校管理下における災害であるかどうか判定を行い、補償金額を決定し、補償をいたすのであります。これに不服の場合は文部大臣に審査の請求を行うことができることになるのであります。国立の場合もこれに準じております。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いいたします。(拍手)     —————————————
  104. 坂田道太

    坂田委員長 これより市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案を議題となし、質疑に入ります。通告順に質疑を許します。八木徹雄君。
  105. 八木徹雄

    ○八木(徹)委員 一部改正法案の問題について二、三お伺いいたしたいと思います。このうち、通勤手当の問題と、事務職員の範囲が吏員に相当するものであるということを明らかにした、このことについては問題があろうとは思われませんので、管理職手当の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  この案件につきましては、先国会におきまして、すでに文教委員会において、あるいは内閣委員会において、あるいは予算委員会等において、かなり綿密な質問も行われておるわけでございますので、ことさらに多くを質問しようとは思っておりませんが、まず最初に管理職手当の性格の問題についてお伺いをいたしたいのであります。管理職手当の性格は、ややもするといわゆる超過勤務手当の変形をしたものであるという、そういう解釈をいたしておるのでございます。歴史的にそういうような超勤手当というものがだんだん変っていって管理職手当になったということが察知できないこともないのでありますけれども、しかし単に超勤手当の性格が変っただけではなかろうと思いますので、まずもってその性格についてお伺いをいたしたいと思います。
  106. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 管理職手当につきましては、一般職の職員の給与に関する法律によりまして、管理、監督の地位にある者に支給することになっておる  のであります。今お尋ねの点もございましたが、経過的には確かに超過勤務手当が全部の者についておりまして、そのうち管理、監督の地位にある者は非常に超勤時間が多いので、むしろ一定の金額できめた方がいいのではないかという議論がございまして、管理、監督にある者に対しまして最高二五%、それから一八%、一二%、七%というような支給をしたわけでございます。そこで他の職員につきましては超過勤務手当を出す。しかしこの原則はすでにくずれておりまして、昭和三十一年に国立大学につきましては学長、学部長、病院長、研究所長等につきましては、超過勤務等の関係なしにすでに支給をしております。ですから沿革的にはさような事実もありましたけれども、今日ではそういうことは問題にならないと思っておるのであります。
  107. 八木徹雄

    ○八木(徹)委員 それでは次にお伺いいたしますが、この問題点の中で問題になりますのは、教職員の問題と一般公務員との対比において、特に今回は七%というものを校長先生に与えようということが、これが今お話しになった国立大学の学長あるいは学部長との均衡上問題がどうなるのかということと、同時に一般公務員との今言った二五%、一八%、一二%という三段階、その問題との均衡の問題があろうかと思うのでありますけれども、われわれの認識は特に教職員については、いわゆる給与表においてその水準差を設けて超過勤務というものの性格を織り込んだ給与水準、給与表というものを作っておる。そういう意味合いで今までは教職員については超勤手当というものを出してない。ところが今回校長先生だけ出すというのはおかしいではないかというような意味合いがありますけれども、これを出しても給与表で現在のままである限りにおいては、一般の先生方に対しては超勤を出すという必要があるのかないのか、将来出すという用意があるのかどうか、その点についてお伺いしたい。
  108. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 教員につきましては従来から教員の勤務の実態が正確に捕捉できない、こういうような点で超過勤務という支給の仕方はしないで、いわゆる調整号俸を加えるという形をとって参ったのでございます。当初は二号俸の増額をしたわけでありまするが、現在では一般公務員に対しまして一号の調整号俸がついておるわけでございます。従って超過勤務の問題は原則としてはこの考え方からははずれると思っております。それで校長に管理職手当を出したから直ちに教員に超過勤務手当を支給しろ、こういう議論にはならないと思うのです。そこでこれは国立大学の場合も同様でございますけれども、実は今度の国立大学の学長、学部長が一、二%という低い率にきまりましたのは、本来ならは教職員については学長を含めて一号の調整号俸がしてあるので、低い率を適用した。それで一般公務員につきましては先ほどもお話にありましたように、二五%とかあるいは一八%という高率を適用しているわけで、学長、学部長について一二%という率が低いのはその意味でございます。それから次にお尋ねの学長、学部長について一二%であるけれども、この場合に七%はどうかというような御意見ございましたですが、学長、学部長の勤務の実態と高等学校以下の校長の勤務の実態に多少差異もございますので、率が低いわけでございます。
  109. 八木徹雄

    ○八木(徹)委員 今の御答弁で、一般公務員と教職員との性格の違いということでよくわかるのでございますが、ただ国立大学の学長、学部長は一二%だ、小、中学校の校長先生は七%だということのやむを得ない理由といったものはわからないことはありませんが、あの答弁によりますと、将来もやはり七%でよいという認識を持っておられるのか、それともやはりそれを一〇%まで引きさ上げるとかなんとか、もう少し引き上げる用意を持っておられるのかどうか、これについてお伺いしたい。
  110. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 実は私ども当初予算要求といたしましては一二%を要求したわけでございますが、予算の関係も一面にございまして、また一面にはかつて甲、乙、丙、丁というのがございまして、これは三等郵便局長に支給した率でございますが、七%という率がございまして、一方には産業教育教職員の手当等も七%でございますので、非常に不満ではございましたが七%に一応きめたわけでございますが、今後引き上げるように私ども努力いたしたいと考えております。
  111. 八木徹雄

    ○八木(徹)委員 それでは現在は七%はやむを得ないが、できればなお上げたいという用意のようでございますが、その場合には一二%を目標にして上げる用意を持っておられるのか、そういう大蔵省折衝をやりたいというのであるのか。その場合には先ほど言った国立大学の学長、学部長の性格の相違から、これもまた上げなきゃならぬと思うが、それはどれだけ上げる用意を持っておられるのか、これを伺いたい。
  112. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 国立大学の学長、学部長の一二%につきましては、これは先ほど来申し上げましたように、超勤的な要素は入っておりませんので、今直ちに一二%を引き上げることは、私困難かと思っております。高等学校以下の校長の管理職手当につきましては国立大学の学長等のバランスもございますけれども、私どもは一二%くらいに上げたいものだというふうに希望を持っておるのであります。
  113. 八木徹雄

    ○八木(徹)委員 学校管理者という立場は、何も校長先生だけではなくて、教頭も含まれると思うのであります。また仄聞するところによりますと、最初は教頭も含めてこれが手当を出そうという心組みであったということを聞いておるのでありますが、これらの教頭に対しての管理職手当を将来要求されるつもりであるか、その場合にはそのパーセンテージというものは校長と同額程度のものにするのであるか。  なおまた幼稚園の——国立の幼稚園の関係もございましょうが、幼稚園の園長に対する問題についてはどういうふうにお考えになっておるか、これをお伺いいたします。
  114. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 教頭は校長を補佐する立場にございますので、私どもはやはり教頭も管理職であるというふうに考えておるのであります。従って実は三十三年度予算要求の中にも、教頭の管理職手当を要求したのでございますけれども、何分にも予算の都合で、三十三年度は割愛せざるを得なかったのでございます。しかし今後教頭にも出して参りたい。その率は校長と同率を適用いたしたいと考えておるのであります。  なおお尋ねの幼稚園の件でございますが、現在の国立の幼稚園につきましては、付属小学校に付置されておるいわゆる教員養成学部の付属小学校に付置されておる程度の非常に小規模のものでございますので、本来国立学校を主として対象としておりますので、公立の中には相当大規模のものもございますけれども、国立については規模が小さいので、さらに検討を続けたい、こういうことで本年度は落ちたわけでございますが、今後十分その点は検討いたしたいと考えております。
  115. 八木徹雄

    ○八木(徹)委員 最後文部大臣にお伺いいたしたいと思いますが、この問題につきましては、ややもいたしますと、いわゆる日教組対策の政治的な意図に基いてやるのじゃないかというふうに疑心暗鬼する向きがあるようでございます。そこでただ単にそういうことはございませんという答弁だけでは十分でないと思いますので、それに対する一つ文部大臣の信念を聞かしていただきたいと思います。
  116. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 何かやりますと、日教組対策だというふうに御批判を受ける場合があるのでありますが、私は今回のこの案はさような意味は毛頭ない、むしろきわめて事務的な案だと考えておる次第でありまして、学校長の地位にかんがみまして、この際管理職手当を出そうというのにすぎないのでございます。もっと早くあるいはやるべきであったという御議論もあろうかと思いますが、漸次こういうことにして施策を充実して参りたいと考えておる次第でありまして、ことしのところは学校長にとどめておりますが、その支給の額、あるいはまた支給の範囲等につきましても、文部省といたしましてはさらに検討を重ねて参りたいと思っておる次第であります。ひとえに学校長の管理職たる地位にかんがみまして、それ相応の処遇をしなければならぬという考え方から出発しておるものと御了解願いたいのであります。
  117. 坂田道太

    坂田委員長 本日はこれにて散会し、次会は公報をもってお知らせいたします。     午後三時五十九分散会