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1958-08-28 第29回国会 衆議院 農林水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年八月二十八日(木曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 松浦周太郎君    理事 本名  武君 理事 石田 宥全君    理事 日野 吉夫君       五十嵐吉藏君    内田 常雄君       倉成  正君    佐藤洋之助君       篠田 弘作君    田口長治郎君       高石幸三郎君    内藤  隆君       松田 鐵藏君    三和 精一君       八木 徹雄君    保岡 武久君       足鹿  覺君    淡谷 悠藏君       今村  等君    角屋堅次郎君       神田 大作君    久保田 豊君       實川 清之君    高田 富之君       中澤 茂一君    西村 関一君       芳賀  貢君    松浦 定義君  出席国務大臣         農 林 大 臣 三浦 一雄君        国 務 大 臣 山口喜久一郎君  委員外出席者         法制局参事官         (第一部長)  亀岡 康夫君         総理府事務官         (北海道開発庁         企画室長)   吉村 次郎君         大蔵事務官         (主計官)   高木 文雄君         農林政務次官  石坂  繁君         農林事務官         (事務次官)  塩見友之助君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君         農林事務官         (農林経済局         長)      須賀 賢二君         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      清野  保君         農林事務官         (畜産局長)  安田善一郎君         農林事務官         (蚕糸局長)  大澤  融君         水産庁長官   奥原日出男君         農林事務官         (水産庁生産部         水産課長)   亀長 友義君         通商産業事務官         (通商局次長) 中野 正一君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 八月二十八日  委員赤澤正道君、加藤常太郎君、濱地文平君、  小松幹君、島口重次郎君及び西村力弥辞任に  つき、その補欠として篠田弘作君、松田鐵藏君、  内田常雄君、松浦定義君、實川清之君及び今村  等君が議長指名委員に選任された。 同日  委員今村等辞任につき、その補欠として神田  大作君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  酪農に関する件  農業災害に関する件  食糧に関する件  水産に関する件  蚕糸に関する件      ————◇—————
  2. 松浦周太郎

    松浦委員長 これより会議を開きます。水産に関する件、農業災害に関する件、以上二件について調査を進めます。  先ほどの事理会の申し合せにより、大臣に対する質疑を集中的に行うこととし、水産に関する件については一時間、農業災害に関する件については三十分といたしたいと存じます。なお、一件につき各党より一名ずつ必要に応じては関連質問を許すことといたしたいのであります。さよう御了承願います。  質疑の通告がありますので、これを許します。篠田弘作君。
  3. 篠田弘作

    篠田委員 農林大臣に御質問申し上げます。  先日の委員会におきまして主として水産庁長官答弁を求めたわけでありますが、今北海道で最もやかましい問題になっておりますいわゆる底びき禁止区域拡大という問題であります。先般の水産庁長官説明によりますと、底びきと沿岸漁業というものを対等の立場において両者紛争の調停をするという態度農林省基本的態度のように見受けられました。私たちはそうじゃなくて、底びきによる被害というものが年々非常に増加しておりまして、このままで置いては北海道漁業資源というものは枯渇してしまう、やがて沿岸ばかりでなく底びきもだめになってしまう、こういう立場から、幾らかでも資源のあるうちに底びきの禁止区域拡大して、そうしてこの北海道漁業を守るという立場からこの問題を取り上げておるわけです。農林大臣におかれては、どちらの立場をおとりになるか、それをまずお伺いしたいと思います。
  4. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ただいまお尋ねの点の、底びきによって資源が極端に枯渇するということでございますが、これは、試験研究のいろいろなデータをとってみますと、必ずしもさようなことには出ておらぬ証左もございます。しかしながら、それだけでもってこのことを了承するわけには参りませんので、われわれは、この問題は、やはり沿岸漁民の方と、それから底びき漁業一つ接触点においての問題があるわけでございますから、これらの両者のいわば接触点においての問題を解決し……     〔発言する者あり〕
  5. 松浦周太郎

    松浦委員長 静粛に願います。
  6. 三浦一雄

    三浦国務大臣 一面においては資源の保存をはかり、一面においては漁業利益を上げるということでございますけれども、その両者交錯して、いわば漁業上の利益を争うということになっておりますから、この交錯しております漁業上の利益を相互に調整して参る、そうして、一面において資源の涵養にも資するし、従って沿岸漁民漁業利益を守ることになりまするし、同時にまた、許されたところの底びき漁業との問題も解決して参る、かような考え方でおりますので、いろいろ表現の違いはあろうと思いますけれども、皆様の御指摘の点とは非常に異なった態度ではなかろうと思うのでございます。一応そのように考えております。
  7. 篠田弘作

    篠田委員 私が数年前にこの委員会におきまして質問をしましたときも、底びきによるところの漁業資源枯渇ということは沿岸の人が言うようなほどではない、それは権威ある水産研究所の検査によって明らかであるという答弁をその当時の水産庁長官がしたのであります。先般また現水産庁長官から、いろいろな科学的な調査によって底びきによるところの資源枯渇というものはそれほど認められないという答弁があった。現在また農林大臣から、いろいろなデータによってそういうような全体的の資源枯渇ということは考えられない、ただ、先端における底びきと沿岸漁業との摩擦というか、そういうものを解決する、しかし全体としてはわれわれの意向とは違わない方向に向っておる、こういう話である。ところが、科学的な調査といい、一体農林省水産研究所はどういう関係調査をやっておられるか、それを一つ伺いたい。
  8. 奥原日出男

    奥原説明員 農林省水産研究所は、北海道の余市に本所がありまして、そうして道内四カ所に支所を持っておりまして、定員が七十名のスタッフをもちまして、鋭意北海道周辺漁業資源に関しまする調査をいたしておるのであります。これが調査方法といたしましては、漁獲されました魚類の収集を行い、これが体長組成等状況による資源状況の分析をやる、また、魚種によりましては、標識放流もやり、その移動状況を調べる、また、同時に、漁業の問題は海況変化という問題と密接な関係がありますので、そういうようなことにおきまする海洋監視というものにも従事いたしておるような次第であります。それらの観点から収集いたしましたものの総合判断によりまして、ただいま大臣の申し上げましたように、特定の魚種を除きまして北洋の底棲魚類資源につきましては、底びきの漁獲努力によって資源の補充が憂慮すべき影響を受けておるという事実は今のところ認められない、こういう状況にある次第でございます。
  9. 松浦周太郎

    松浦委員長 篠田君、大臣に対する質問を集中して下さい。
  10. 篠田弘作

    篠田委員 ただいま水産庁長官からお話がありましたが、われわれの調査によりますと、実際において農林省研究所北海道周辺における底びきと沿岸漁業との問題について調べる船を持っていない。どういう船がこの試験に従事しておりますか。これは事務的なことですから長官でもいいです。
  11. 奥原日出男

    奥原説明員 北海道水産研究所は、たしか三隻であったと記憶しておりますが、調査船を持っておるのであります。しかし、同時にまた、道庁とも連絡し、資料の収集については、直接その調査船運航のみならず、漁獲物を市場から集めるとか、いろいろな方法によってデータ収集をいたしておるのでございます。
  12. 篠田弘作

    篠田委員 三隻あるそうですけれども、それでは、実際においてこういう底びきと沿岸漁業の問題についていつ幾日その船が調べたか、あなたの方からデータを出してもらいたい。われわれの知るところにおきましては、研究所は、底びきから船を借り上げまして、そうして試験船と称してその船を使っておる。現在それが北海道に七隻あります。この船は、夜となく昼となく沿岸を実は底びきをして漁をしておる。もちろん漁獲したものは自分のものになるであろうし、そのほかに、試験船の補助として農林省研究所から三十万円ずつ一隻について出しておる。そうして、これらの試験船は、当然試験船であるから水産庁役人がこれに乗っておらなければならないはずであるにかかわらず、春夏秋冬、一年じゅうやっておりますから、実際は専門家役人は乗っておらない。そうして、底びきから借り上げた七隻の船によって、毎日試験と称して漁をしながら、その報告研究所に行っておる。こういう底びきから借り上げた船によって試験をしておって、資源枯渇するとが少くなるとかいう報告があなた方は出ると思いますか。また、そういう試験官の乗らない底びきのチャーターした船によって、そしてあなた方はそれが科学的試験であるという、そういう根拠一つお尋ねしたい。農林省の船が三ばいあろうけれども、毎日船日記をつけておる。その日記を調べれば、その船が毎日どういう仕事をしたかということがすぐわかる。三ばいの船で専門にやったって、科学的とは言えません。あの広い北海道です。しかもその船が実際においてそういう仕事をしておらない。そして実際には底びきから借り上げた七隻の船によってやっておる。底びきに調査させて、底びきの被害がないという答えが出るのは当りまえだと思います。それに対する御答弁を願います。
  13. 奥原日出男

    奥原説明員 ただいま研究所調査をいたしますに当りましては、国の持っておりまする船を運航いたします場合と、民間から傭船いたしました船を運航する場合と、いろいろあるのであります。そこで、ただいま民間から傭船した船についてのお尋ねかと思うのでありますが、これは傭船をいたしました場合におきましても、その運営の管理につきましては試験場が全責任を負っておるのでございます。従って、ただいま御指摘のような点につきましては、なおよく実情を調べて参りたいと存じますが、私は、研究所統制外に、勝手にそれらの漁船に漁業をする名義を与えておるにすぎないとは考えられないのであります。ただ、北千島の今の新漁場開発についての調査に当りましては、これは、試験操業という名目で、本式な漁場操業の許可の名義を与えないで、二十隻なりあるいは二十五隻なりの船を期間によりまして運航させておるのでありますが、これに関しましては、これは全部に研究所の職員が乗っていないということもあり得るかと思うのであります。しかし、これは、ただいま資源調査関係におきましてやりまするいわゆる傭船運航とまた性質を異にするものでございます。しかし、その場合におきましても、十分データ報告収集はわれわれとしても努めておる次第でございます。
  14. 篠田弘作

    篠田委員 ただいまの水産研究所に関する水産庁長官お答えは、これはあまりに形式的なのです。なるほど責任は持つ。責任を持ったからといって、実際において役人も乗せない。そして農林省の権威ある学者も乗っておらない。そして底びきから七隻を借りてきて沿岸調査をさせておる。そしてそれをもって科学的な根拠の上に立って資源が減っておらないという答弁を数年間続けてきた。こういう水産庁責任は、私は許されないと思う。これは水産庁の事務的な問題ではないので、大臣もおなりになったばかりではなはだ迷惑と思いますけれども、この問題について御答弁を願います。
  15. 三浦一雄

    三浦国務大臣 現在までの調査段階につきましては、御指摘通り、御不満があろうかと思いますが、これはやはり基礎的には科学的な基礎もとにして判断すべきものと思いますから、今後できるだけ最善を尽して、その方面調査検討の周到を期したいと心得ております。
  16. 篠田弘作

    篠田委員 これは、科学的に調査をしておらないのに、科学的調査である科学的調査であるということで、数年間同じ答弁を繰り返してきた。しかも、その結果として、沿岸漁民は、資源は日々枯渇し、生活は非常に緊迫な状態になってきて、そのために今度の大きな問題が起ってきた。そこで、北海道庁の案を全面的に支持するわけではありませんが、私は専門家でありませんから、どういう案がいいかということはわからないけれども、北海道民四百七十万の代表である与党野党議員が全部集まって、北海道漁業資源を救うためにはこれ以外に方法はないという考え方でやってきた。だから、その問題について、それを一つのテーマとして、農林省においてこれを真剣に研究して、いけないならばどのところがいけないかということを発表するだけの責任があると思う。それは、この間の水産庁長官速記録を見てもわかる通り、ただ不適当であるというのでは、これは北海道沿岸漁民道民も納得しないと思います。それから、大体水産庁態度が、科学的な調査の結果資源は非常に枯渇したという状態でないからということで、禁止区域拡大ということについて渋っておる。それは両方とも同じ立場にあなた方は見ておるということは、根本は何であるかというと、結局、資源というものはそれほど枯渇しておらない、その論拠科学的調査であると言う。ところが、実際には、今指摘したように、科学的調査が行われておらない。もし行われておるとすれば、水産庁日記を全部、どの船が何時間どういう役人が乗ってどこを調査したということを示してもらいたい。実際はやっておらない。そうして、七隻の船を借り上げて、しかもそれを底びきの組合から借り上げて、それに調査をさせて、そのデータによって、沿岸漁民資源というものは枯渇しておらないのだという論拠によって、あなた方は今日までその拡大というものに対して積極的な態度をとっておらない。それは、この必要を認めないのか、あるいはまた必要を認めるけれども紛争をおそれておるのかもしれませんが、そういうなまぬるい態度では、もう北海道漁業資源を守ることはできないし、三十万の漁民生活を守ることはできない状態になったから、与野党を通じてこの問題が大問題になってきたわけです。これに対する従来のなまぬるい水産庁の見解を基礎とした大臣のお考えであっては、私はこの問題は解決しないと思う。それを一つ大臣からはっきりと、それに対する決意なり対策をお伺いしたい。
  17. 三浦一雄

    三浦国務大臣 今この判断基礎になりますデータを整備しておるかどうかということに集中的に御論議があったわけでございまして、それはいろいろの見方はあろうと思います。しかし、水産庁の従来取り来たっておりますことも、あながちこれは捨てるわけには参らぬと思います。やはり、積年の研究と実際の面を見ますと、それは出つるのでありますから、もとより科学的な調査研究は完璧を期さなければなりませんけれども、現在の段階におきまして、従来の調査研究の成績を基礎にし、同時にまた、経験をももとにして判断するのが至当だと考えますので、現在のところ、さような措置をとりたい、そういう考えでございます。
  18. 篠田弘作

    篠田委員 先日の委員会におきまして、北海道庁案によるところの禁止区域拡大をするというと、道庁では一二・五%、水産庁では二四何%、あるいは底びき組合では三〇%というような漁獲高の減少があるということを言っておるということが出ておるのであります。底びき禁止区域をわずか拡大しただけでも、少くも二、三〇%の漁獲不足になる、こう言っておる。そうすれば、それだけ不足になるというのはどういうことなのかといえば、それだけのものをよけいとっているということで、沿岸漁民を三〇%なり二〇%なり圧迫してきておるということは事実だと思う。それに対して、影響があるというふうにお考えであるか、影響ないというふうにお考えになるか、農林大臣お答えを願いたいと思います。
  19. 三浦一雄

    三浦国務大臣 技術的な点にわたりますから、まず水産庁長官から御答弁させます。
  20. 奥原日出男

    奥原説明員 もちろん、底びきと沿岸との間に分け取りをどういうふうにするかという問題は、終始つきまとう問題である、かように思っております。ただいま底びきのこの道庁案におきまする禁止区域拡大によりまする減収率についてのお話が出たのでありますが、結局、それだけ底びきによる漁獲が減ってくれば、その分だけその魚は沿岸において余ってくる、こんなふうな計算に相なるかと思います。しかし、結局、われわれは、それは沿岸と底びきとの間の操業上の交錯、こういう実態がどういうふうにあるか、交錯という実態がある限りにおいては、これは今直ちに解決していかなければならない、かような観点に立って、その間の解決案にも特に苦心をいたしておる次第であるのであります。
  21. 篠田弘作

    篠田委員 底びきの被害というものが、禁止区域拡大によってすでに三〇%なり二五%というふうに出ておるという事実、これは水産庁においてもお認めになる。そこで、現在の底びきというものは割合資本力を持ち、また、小さいものは二十トンくらいのものもあるようでありますが、大部分のものは六十トン以上の船でやっておる。それが二百九十隻ある。ところが、沿岸漁民というものは少くとも三十万くらいある。その沿岸漁民が一時食うに困って、また、半農半漁でも食えないというような現在の実態から見て、一体、二百九十隻の問題を解決する方が簡単であるか、あるいは三十万の方を解決する方が簡単であるか、あるいは、食うに困った三十万と、割合に大きな資本と大型の船を持っておる二百九十隻の船を、同じ割合において扱うことが政治的に妥当であるかどうか。それが数年来解決されず、今すぐ解決するめどもっかない。しかも、漁場禁止区域をどうするという問題がもうすぐ迫っておる。こういうときに、大臣はどういう形で解決していくつもりであるか、お伺いしたい。
  22. 三浦一雄

    三浦国務大臣 現実の問題としまして、沿岸漁民漁業上の利益、それから底びき関係漁業利益交錯衝突しているような現状でございまして、これをやはり公正な立場から見ていくということが必要であろうと思うのでございます。われわれとしましては、この交錯した漁業上の利益の衝突を調整することによって、他面におきましては沿岸の漁村にも利益をもたらす、同時にまた、底びきに対しましてはある程度の安定したものを見てやるということが、やはり漁業上の重要な解決点であろう、こう考えておるわけであります。
  23. 篠田弘作

    篠田委員 ただいまの農林大臣の御答弁は、そうであろうと思いますが、ちょっと私は抽象的であろうと思う。  そこで、こういうことは農林大臣としてお考えになりませんですか。底びきの数は現在非常に少い。この少いとい意味は、沿岸漁民に比較して、従事しておる人が数から見ると非常に少い。そこで、まず一番最初に、非常に困っておる三十万にも及ぶような漁民をまず救う。そして、もちろん底びきも救わないわけにいかないのでありますが、底びきについては、以西底びき、以東底びきの救済の際に国家がこれを補償し金を出した例がある。北海道の場合だけ全然金を出さないで、前に水産庁長官の言われたように、根本的な何か一つの底びきの行くべき道を発見するまでこの問題はなかなか解決できない、あるいはまた、両者の間に紛争が激化しておるから、不満足の中に満足する空気が出てくるまでは解決できないというような、そういうなまぬるい考え方ではこの問題は解決しない。そこで、政府も、底びきの禁止区域拡大することによって生ずる損害については、底びきの行くべき道を鋭意努力して発見するとともに、その損害についてはある程度の補償をしてやるという考え方があれば、これは両者の感情問題でも何でもなく、どちらも経済問題でありますから、底びきもまた、生きる道を考えてくれるならば、私はいさぎよく出ていくと思う。そういう意味において、政府責任において、底びきの行くべき道、魚田を新しく発見するとともに、拡大されたることによるその損害については政府もある程度補償するという考え方にならなければ、この問題は解決しない。また、沿岸の問題から言うならば、稚魚をとるというようなことばかりでなしに、実際産卵した卵までも底びきが荒しておるという現状になってきておる。だから、非常に真剣なんです。われわれもこれに関係して、沿岸を持っておる北海道選出国会議員というものは、与党野党参衆両院を問わずなぜ真剣であるかというと、ほんとうに北海道漁業というものはどうなるかという心配のもとに立っておる。だから、従来の今言ったようななまぬるい考え方でなしに、政府責任において、ある程度の損失に対しては補槇してやる、それは前例がないことではない。だから、そういう意味決意をされてこの問題の解決に当ってもらいたいと思うのでありますが、それに対する農林大臣の御意見を一つお伺いしたい。
  24. 三浦一雄

    三浦国務大臣 北海道沿岸漁業につきましては、なおこの底びきと沿岸との関係を理解する意味におきまして、底びき類似の問題でもって非常に密漁といいますか規則違反をやる、これが取締りの徹底を期せ、こういうような一面の御議論があり、これも相当大きい問題だろうと思います。従いまして、これを考えまする場合には、底びきと沿岸漁業関係だけを考えるわけには参らぬ。われわれは、漁場を守る点から言いますと、それらの面も考えなければなりません。同時にまた、先ほど来申し上げました通り漁業上の利益交錯がここにあり、そうして、沿岸漁民も保護しなければなりませんし、同時にまた、底びきといえどもこれまた捨てていくわけには参らぬ、従って、新漁場を求めてその方面に転換することを慫慂したい、こういう考え方であるわけでございます。今のところ、底びきをやめなさい、減船もしくは廃業せい、こういうことまでには行っておりません。そこまで打ち出せ、こういうあるいは御意図かもしれませんけれども、それは最終的ないわば死刑にも当るべき問題でございますので、われわれとしましては、最善の方途を尽してこの間の調整をしてこの問題に一段階をつける、これが焦眉の急であり、同時にまた、実情に適するものではないか、こういうように考えるのでありまして、今直ちに廃業等を慫慂し、そうしてこれに補償金等を与えるという考えまでは踏み切っておりません。その事情を御了承願います。
  25. 篠田弘作

    篠田委員 私は別に底びきの対策として減船をしろというようなことを言っておるわけじゃない。廃業さしてそのあれをするというのではなくて、禁止区域拡大することによってまたその一部のものが影響のないように、すぐどこかの漁場に行くことができれば、これは何もさしつかえないわけです。しかし、禁止区域拡大はされたけれども、新しい魚田はないということになれば、その間に非常な数字的にも損害も受ける。そういうような場合には、一方において政府は年々魚田開発ということのために相当の予算を使っておる。だから、底びきの禁止区域拡大するということは、同時にまた、沿岸漁民を保護し、資源枯渇を防ぐという政府漁業政策にも通ずるわけであるから、その場合の損失補償なり、あるいは、今日二十トンくらいから三十トンくらいの底びきがまだたくさんあるわけで、その底びきというものを一緒に合せて、政府が慫慂して隻数を減らす、何かそういうような方法を講ずるお考えはないものであるかどうか、それを聞いておるわけです。
  26. 三浦一雄

    三浦国務大臣 減船の問題でございますが、まだその段階にはわれわれ踏み切っておりません。漁業上の調整によりましてあるいは減船その他を必要とする場合にはもとよりでございますが、ただ禁止区域が若干変更になったからということで直ちにその底びきに重大な損害がありというふうに結論づけることは早計であろうと思います。同時にまた、これは他の漁業にも影響が非常に大きいことでございまして、今申し上げる通り漁業上の調整によって減船等をやるという考えはただいまのところございません。どこまでも操業上の交錯をなだらかなものにして、将来としましては、先般来御説明をしております通り、新しき漁田を求めて、その方面に働いてもらう、こういう方途をとっていく、こういうふうに考えております。
  27. 篠田弘作

    篠田委員 これは、数年来水産庁考え方に変りはない、しかも問題は日々に深刻を加えておるということは、水産庁役人考えておることと実際とが非常な開きをもって、一方が進行しておるということである。言いかえれば、北海道漁業資源枯渇というものは、これは水産庁が何と言おうと、現実の問題として漁民がそのために苦しんでおる。あるいは今大臣の言われた通り、単に底びきばかりではないと思います。密漁というものも千何百隻おるそうであります。これに対しても、従来の態度というものは見て見ぬふりをしておる。たまに海上保安庁の船が行ってつかまえるだけだ。それでは、農林行政というものが、少くも漁業というものに関する限り、野放しの状態である。それではまずいのでありますから、今言われた通り、密漁は取り締ってもらいたい。同時に、私も農林政務次官をしたことがあるので、農林省というものに対しては相当の理解と愛情を持っておるつもりでおりますけれども、水産庁沿岸漁業、底びきに関する考え方に限り、ほんとうに石頭だと私は思う。この五、六年何ら進歩しておりません。たしか昭和二十六、七年くらいにこの問題が起っておると思うが、一つも進歩していない。歴代の長官がちょうど遺言でも守っているような格好でやっている。大臣がまた水産庁の言うことを基本にしてお考えになっているせいか、大臣答弁もわれわれを満足させる答弁を今まで聞いておらない。三浦農林大臣は幸い農政通でありますから、ここで一つ大臣独自の立場で、水産庁の意見も一つの材料ですが、底びきの意見も、沿岸の意見も材料として、大臣独自の立場として、これをどうして解決したら一番いいかという方向を考えて、水産庁に指示してもらいたいと私は思います。水産庁の言うことを聞いて答弁されておったのでは、これはとうていわれわれとは平行線でありまして、どこまで行っても交わらないと思います。一つ新しい角度からこの問題を取り上げて、紛争を調停するというような立場をやめて、北海道漁業資源というものをどうするか、疲弊こんぱいして食うに困っている沿岸漁民をどうするかという立場に返って、一つ大臣は新たなる検討をしていただきたいということを希望して、あなたに対する時間がありませんから、これでやめておきます。どうか、あくまでもそういう基本的態度で、四、五年も同じことを繰り返している水産庁の言うことは半分ぐらいお聞きになってもいいけれども、全面的にのみ込むという態度は、この問題に関する限り悪いと思う。どうかそれを希望しておきます。
  28. 三浦一雄

    三浦国務大臣 これは、ただ単に禁止区域の問題だけでなくて、非常に多面な施策を必要とすると思います。私としましても、何らかの打開策を見出したい、せっかく努力したいと思います。
  29. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 関連して……。  十分より時間がないので、非常に簡単にお尋ねしますが、一つ答弁を願いたいと思います。  私は農林行政というものはその基本法である漁業法によって行われていかなければならないものと考えておりますが、この点、どうお考えになっておられますか。
  30. 三浦一雄

    三浦国務大臣 それはもうお説の通りでございまして、ただ、漁業法でもって包括されております法の運用あるいはその機構をどういうふうにするかという点はあろうと思いますが、御趣旨はその通りだと思います。
  31. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 大臣の言われる通りであって、社会問題として議論される場合においては、漁業法の許す範囲内においてそれを調整していくということが水産行政でなければならないと私は考えておる。ところで、この漁業法から言って、いろいろと議論されておる今日の問題も、今始まった問題じゃない。二十六年以降この問題があるのに対して、先ほど篠田委員からの御発言の通り水産庁はこれに対して手をつけていな、これが一番私は大きな問題だと思う。これは篠田委員ばかりではなく、前の委員会においても全部の者がそういう議論をされておる。ただそのときばかりを糊塗していけばいいというようなことであっては、根本的な施策というものはできない。これはまた私ども与党としての責任でもある。近く政調会を開いてこういう問題を論議していきたいと思う。そのときは篠田君の言われるように、水産庁としてのみ考えることなく、こうした社会問題というものをも考えて、大臣の英断を一つふるってもらいたいと思う。どうかそのときの腹がまえを聞かしていただきたいと思います。
  32. 三浦一雄

    三浦国務大臣 御趣旨につきましては異存がございません。要するに、いかに北海道沿岸漁業の振興と、同時にまた他の漁業との調整をも考え、これをどうして施策に打ち出すかということでございますので、これは十分に御意見を聞きまして、同時にまた当局も鞭撻し、そして進歩した施策をやって参りたい、こういうふうに考えております。
  33. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 そこで、漁業法のうちの一番大事なものは、総合的な海面の利用ということと、民主化をはかった漁業でなければならないということ、この二点が一番大事な問題だと思います。ところが、今日の問題となっておる禁止区域拡大、これは北海道とすればどうしても将来は禁止区域拡大をやらなければならぬ。それに対する資源調査がなまぬるい。それは、ただます目の資源調査ばかりをやろうとして、経済調査というものをやっていない。これを根本的に考え直していかなければならないということ。それから、先ほど篠田君の言われるように、二十五トンや三十トン以下の漁船でもって現行法の禁止区域外の海面における操業なんということは事実上できないというのがほんとうなんです。そういうことをもよく考えていかなければならない。ところが、この前にも言われたように、北海道庁案から言うと一二%の漁獲不足するということになっておる。さて今日、前の委員会においても私は指摘し、大臣にもお上げしておる申入書においては農林統計において三百何十万貫という密漁されておるものがはっきり明示されておる。また、昨日の委員会において長官は、二十九年は千六百隻、三十年は千三百隻、現在では四百隻内外の底びき類似の漁業があるということを、はっきりこの委員会において言明せられておる。これが民主化された漁業のあり方であるかどうか。この点は社会党においては遵法闘争をやっておられるのだから、わが党は別として、社会党においては、遵法闘争の建前から言って、漁業法そのものによる正しい議論をやっていかなければならないと思う。こうしたことによって、今この問題をどう解決するかといったならば、漁業法そのものによってすべての問題を解決していかなければならないと思う。それには、法律に優先するものは、漁民漁民との話し合い、協調、協定ということなんです。今水産庁禁止区域拡大の告示をするといって、大臣がするということになったら、どういう問題が起きるか。はっきりと漁業法に違反しておるという問題が起きるのです。であるから、どうしても将来はこうしなければならないという根本施策を一日も早く樹立しなければならない。この問題は二十六年以来こうなっておる。ここにおいて、三浦農政において、将来機船底びきはどうすべきであるか、どういう方途を持っていくかということをはっきりと明示されることを私は希望するのです。水産庁長官は、まだその段階じゃない、調査を今やっておりますと言うが、水産庁の言う調査なんというものは、百六十万くらいの金を出して、船を二十そうも動員するなんといったって、そんなことはできるものじゃないのです。そして、一方においては国会がこの暑いのに何日も何日も、大臣が来なければ委員会が開けないなんということをやっている。このざまは一にかかって水産行政の貧困なんです。こういう点に対するはっきりとした御意思を持って水産庁を鞭撻し、私ども与党責任でもあるのだから、われわれをも鞭撻して、こういう問題の解決策、根本施策というものをまず作って、それからでなければならない。ともかく、きょう底びき業者が来たから、先日の委員会において、九月一日が操業の期日となっておる、こういうことで議論があったので、当分の間底びきは操業いたしませんと水産庁に申し入れることが、民主化された漁民の第一の要素であるということを私は申しつけておいた。多分それが水産庁長官の方に申し入れてあると思う。そうして、漁民同士の話し合いというものを一番われわれは尊重して、漁業法にのっとってすべてのことをやっていくべきであろうと私は考えるのだが、大臣はこの点に対してどうお考えになっておるのですか。
  34. 三浦一雄

    三浦国務大臣 まず、北海道沿岸における違反の問題でございますが、これは、第一次にはやはり北海道庁で厳正に見てもらう、そうしてやっぱりその点を取締りをしてもらいたいと、こう考えます。そういうことがやはり漁民を保護し、同時にまた漁業上の利害の関係を調節するゆえんでございますから、それが第一点。第二には、基本的な調査研究を進めろということでございますが、これは先ほど篠田委員に対してお答えした通り、一そう努力して参りたいと思います。第三には、底びきその他に対しまする態度につきましても、水産庁長官の方としましては、非常に今慎重な答弁をしたのでございましょうけれども、これは、積極的に魚田開発、底びきの転換、こういう措置はぜひとも講じたい考えでございますし、同時にまた、沿岸漁業の振興につきましても、新しい構想をもちまして、できるだけの振興の方途を尽して参りたい、こういう基本的な考えで進みたいと思いますから、御了承いただきたいと思います。
  35. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 そこでもって、一つの参考資料として、前段申し上げたような農林統計から言っても、前に述べたようなことから言っても、道庁案の一二%という底びきの被害、こういう点から言ったならば、小手繰りの密漁によってなされておるこの被害というものはどのくらいあるか。約二〇%はあると思う。こういう非常に誤まった議論というものに対して、水産庁及び大臣は、こういう実態をよく考えて、そうして善処されんことを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  36. 三浦一雄

    三浦国務大臣 よく御趣旨を了承して善処いたします。
  37. 松浦周太郎

    松浦委員長 芳賀貢君。
  38. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣お尋ねいたしますが、農林大臣は八月一日の当委員会において底びき禁止区域の問題についても答弁されましたが、あのときはまだ問題の内容を十分理解しておらぬ点があったと私は推測しておる。そうして、一昨日石坂政務次官、奥原水産庁長官質問をしたのでありますが、まだ主務大臣であるところの三浦さんからこの問題の解決に当るところの基本的な方針を指示されておらないので、いずれ大臣の明確なる指示を待って、九月一日から予定される解禁日を控えて、早急に熱意のある結論を出したいというような答弁があったので、あなたの出席を実は期待しておった。本日は、先般の委員会の程度では、これは非常に困るわけですが、この問題に対する責任者の農林大臣として、当面した問題を処理するために、どういうような基本的な方針を立てて、そうして事務当局に御指示になっておるかどうか、その点を伺いたい。
  39. 三浦一雄

    三浦国務大臣 芳賀さんの昨日のお尋ねの趣旨は私はよく聞いておりませんが、この前も申し上げました通り、現行の沿岸漁業の問題と底びき漁業の問題は、客観的には漁業上の交錯状況にある、同時にまた、漁業上の利益の衝突であると私は考えるのであります。従いまして、あの当時のお尋ねは、基本的には沿岸漁業を保護するという立場を堅持する、こういうふうな御質疑であったと思うのでございますが、両者間に漁業上の権益を持っておるのですから、これはその重さ、幅によって調節すべきが本義であろう、こうお答えした通りであります。従いまして、この問題等につきましても、依然私は変りはございません。同時に、先ほど来篠田並びに松田委員から御質疑がありました通り沿岸漁業の振興策なり、あるいは底びきの抜本的な転換等につきましては、先ほど申し上げましたような態度をもって進みたい、これが私の所存でございます。
  40. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、従来政府で掲げてこられた沿岸漁業に対する根本的な施策というものは、三浦さんの農林大臣就任以来だいぶ変ってきたわけですね。今までは、沿岸漁業の振興というものを重点に置いて、たとえば底びき漁業のごときは大型化に伴って漸次これを沖合いに出す、そうして、沿岸の零細漁民に対しましては、沿岸を主たる漁場として確保して、そこに資源の維持培養を行なって、零細漁民の生産の場を安定させる、これが一貫した政府沿岸漁業に対する基本的な方針であるとわれわれは理解してこれを支持してきたわけであります。あなたの今の答弁は、沿岸と底びきを権限上同列の立場にあくまでも置いて、局地的な紛争の処理を漁業調整の名においてやろうというような、そういうことであるならば、基本的な沿岸漁業の政策の転換であるというふうに考えていいわけですか。
  41. 三浦一雄

    三浦国務大臣 私ほこう考えます。底びきをどういうふうにリードするかという基本的な態度につきましては、お説の通り沿岸漁業利益を侵害しないように、他に新しい魚田を求めるように、そっちの方にリードしていく、これが当然に考えるべきことでありまして、その点においては私は基本的に変りはないと思う。しかし、現在北海道に展開されております問題は双方とも漁業上の権益を持っておる、この権益を持っておる以上は、その権益が、片方は一である、片方は十であるという実情ならば別問題として、一応双方が権益を持っておるのですから、その権益のバランスを見つつ、公正にこれを解決するのが当面の問題である、こうお答えしたので、決して従来のなにを放擲して沿岸漁業を無視した底びきの奨励もしくはこれを指導するという考えはございません。
  42. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あなたのお考えは、あたかも現在現地において沿岸と底びき側において紛争が繰り返されて、この紛争を調停あっせんするために底びき禁止区域の問題を取り上げておるというような、そういう印象を強く与えておる。問題はそうではないのです。御承知の通り、昨年の七月、北海道においては、道議会が、これは与党野党を問わず満場一致で、禁止区域拡大道庁案というものを認めて、それを北海道知事の名において農林大臣に対してこの禁止区域拡大の上申を行なっておるわけです。ですから、それを取り上げて、これを中心にして水産庁においては約一年の間検討を進めてこられたと思うのであります。ですから、惹起りされた紛争の調停あっせんということになれば、これは、漁業法上から見ても、もちろん当該区域の海区調整委員会であるとか連合海区調整委員会において取り上げるような調整上の問題とも言えるけれども、今度の問題は紛争処理を重点とした禁止区域の検討ではないわけです。政策上の見地からこれをどうするかというところに問題があるわけでありますけれども、大臣の認識はまだそこまできていないのじゃないですか。これは大事な点だと思います。その点をもう一度お尋ねいたします。
  43. 三浦一雄

    三浦国務大臣 どうもこの問題はただ法律的な議論では理解しにくい。というのは、あなたは紛争処理とすぐおっしゃいますが、私は紛争処理とばかり言うておらぬ。ここに漁業上の交錯が行われておって、そこに利害の対立がある、これをどう調整するか、われわれとしましても、沿岸漁業利益を決して無視するとは申しておりません。同時にまた、底びきといえども、一つ操業する当然の利益を持っておるのでありますから、当面の問題として、この交錯されておる双方の点を調整するということが、やはり禁止区域拡大解決の焦点になりますから、その点を申し上げておるのでございます。どこまでも公正な妥当な線を見出すということでございまして、道庁等の案もあろうかと思いますが、これは有力なる資料とし参考として取り上げていくことになりましょう。ただ、道庁できめたからそのままやれということになると、現行の法規でほ許されぬのでございます。その点は、相当しんしゃくもし裁量の余地も与えていただきたい、こういうふうな考え方でございます。
  44. 芳賀貢

    ○芳賀委員 時間がないから簡潔に申し上げますが、これは、この漁業制度を扱う主務大臣として、あなた以外の大臣がそのような答弁をする場合はまた聞く余地もあるわけですが、どうも、あなたの答弁は、あたかも第三者的な立場に立っている。そういうことでば、制度上の問題、あるいは漁業調整上の問題、沿岸漁業の諸問題というものは解決できないと思うのです。みずからの責任なんですよ。農林大臣責任の場から離れて第三者的な立場に立って、あくまでも現地における紛争の処理ということになると、これは全く責任回避なんです。でありますから、一昨日も水産庁長官篠田委員質問に答えて、提起されておる道庁の案というものは、これは沿岸と底びきの両者に対する不満足のうちに満足させるようなそういう案ではない、これは不適当であると認める、そういうような極端な答弁までも行なっておるのです。ここに私は認識上の間違いがあると思うのです。漁業制度上、漁業法の規定から言っても、あるいは水産資源保護法の規定から言っても、主務官庁と地方庁の間における漁業上の行政というものは、常に不離一体の形で相互に協力態勢のもとに置かれなければ、問題の処理とか解決はできないわけです。これは当然大臣水産庁長官もお考えになっておると思うのです。ですから、漁業法の、たとえば七十四条の二には漁業調整上の問題については、これは農林大臣の権限を大幅に地方知事に委任して、そして本庁と地方庁との共同の責任もとにおいて漁業調整を行うということになっておるじゃありませんか。あるいは水産保護法の規定から見ても、水産資源の保護とか、維持培養等の問題とか、漁獲に対する制限とか、いろいろな命令等についても、これは農林大臣あるいは当該都道府県の知事が命令や規程を出せる、定めることができるということになっている。このことを見ても、特に漁業制度上の問題というものは、他の問題よりも、農林省と都道府県知事との間における、地方公共団体との間における密接な連帯性のもとに置かれておるわけなんです。そういう制度上の責任に基いて、たとえば北海道の知事が社会党であろうと自民党であろうと、これらの諸規定に基いて最も公正妥当な案というものを、しかも道議会の満場一致の承認を得て、そして農林省にそれを上申してきた場合において、これは全く不適当な案である、こういうような断定を下すということは、われわれとしては了承することができないわけです。こういう官僚的な独善的な水産庁長官がおる限り——私は、解散前の国会等においても、奥原水産庁長官のおる限りは沿岸漁業の問題というものは解決できないでしょうということをすでに予見して指摘しておるわけです。こういうことは農林大臣としては御承知ないかもしれませんが、ただ単に局地的な紛争の処理だ、そういうことでは済まされないわけです。北海道だけの問題でないのです。全国における沿岸漁業漁業政策というものをどういうふうにすべきかという、ここに問題の基本があると思うのです。そういう責任のがれの考えでなくて、たとえば道庁から具体的に出されたこの問題も、漁業調整の制度上の問題として、これをどういうふうに扱うかということに対しては、もう少し責任をもって農林大臣としても水産庁長官を初め自分の部下に明確に指示して、責任を転嫁しないような処置を講ずべきであると思いますが、いかがですか。
  45. 三浦一雄

    三浦国務大臣 私は第三者的な立場でこれを処理する考えは決してございません。同時に、ただいま芳賀委員の御指摘になりました道庁案、これは満場一致てきめたから、これを不離一体関係でもって、のめとはおっしゃいませんでしたが、それを採用するようにというような御意見でありましたが、これは、御指摘通り、すでに沿岸漁業の方々の御意見も、また底びきの方の意見も区々に出ております。また、同時に、他の県との関係もございます。でありますから、私たち農林省といたしましては、農林省の持っております固有の権限を公正妥当に事情に反しないように運用して参りたい、そうして適当な結論に導きたいという態度でありまして、水産庁長官がかりそめにも道庁の意見が不適当であるというようなことを申したはずはないと思いますけれども、さような考えがないことを申し添えておきたいと思います。
  46. 芳賀貢

    ○芳賀委員 長官答弁は一昨日の速記録を見ればわかります。そういうことを繰り返して言うことはありませんが、あなたの部下はそういうような認識の上に立ってこの問題を扱おうとしておることを指摘しておきます。あなたは先日、局長級の異動として、自分のかわいい部下を三人も退官させているじゃありませんか。それは、この法律を守り制度を守るためにりっぱにまじめに働いておるかどうかということを一つの尺度として見る必要があるわけです。地方庁から出された一つの案を全く冷酷な態度でながめ、しかも委員会の公開の席上で、道庁案というものは不適当でありますというように断定をする水産庁長官に対しては、厳重な監督をして、今後誤まりないような行政をやらせるように、あなたから厳重に注意してもらいたいということを私は要求しておきます。  次にお尋ねしたい点は、この間一年くらいかかっておるわけですが、たとえば漁業法上から言っても、この底びきも、二百メートル以内でなければ操業できないのだから、やはり深海漁業ではないわけです。やはり沿岸の一環として考え漁業であることはわれわれも認めておるのですが、そういう場合においても、その意見を求める場所というものはいろいろあると思います。今まで沿岸漁民の代表あるいは底びきの代表等を数次お呼びになって意見を聞いておられるようでありますが、たとえば北海道における連合海区漁業調整委員会の意見、あるいはその地域の海区漁業調整委員会の意見等は、どのような形で聞かれたか、この点を大臣お尋ねいたします。
  47. 奥原日出男

    奥原説明員 われわれ、この問題のっデータ収集に当りましては、職員も北海道に派して、長期にわたり水産現地において調査をいたしております。また、今の段階におきましても、それぞれ御当局の方々から御意見を拝聴いたしております。従って、特に直接農林大臣から北海道漁業調整委員会の意見を徴するという形式手続は踏んでおりませんが、しかし、その間の意見もわれわれとしては把握いたしておる次第でございます。
  48. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは大臣に申し上げますが、北海道連合海区漁業調整委員会は、本問題につき、北海道知事、道議会議長に対し決議を行なっておるわけであります。これは二十二年の七月十七日に行われた決議でありますが、北海道沿岸海域における中型底びきの禁止区域拡大の問題について、   昭和三十二年七月十七日札幌市道漁連会議室に於て第四回北海道連合海区漁業調整委員会を開催し北海道沿岸海域に於ける中型機船底曳網漁業禁止区域拡大について慎重審議の結果、別紙決議文の通り決定致しましたので、これが要望を速やかに実現せられるよう特段の御配慮を賜りたい。    決 議   北海道庁禁止区域の拡張の問題について諸解決を図られていることについては敬意を表する。   今回沿岸漁民全体からの請願事項についても現在の沿岸漁民として誠に止むを得ないものであるから右の点についても、これが実現出来うるよう転換等の措置も講じ最善の努力を致されんことを要望する。  こういうことで、北海道松田鐵藏君が言う最も民主的な漁民漁民の話し合いの場というものが海区漁業調整委員会だということを、この漁業制度というものは示しておるわけであります。この最も好ましい、尊重しなければならない話し合いの場において、北海道の連合海区漁業調整委員会は、かかる道庁案支持の決議を行なって、この際禁止区域拡大を実現してもらいたい、しかし、それに伴う底びき業者に対する影響については、これは政府あるいは道庁責任において万全の措置をこれにあわせて講ずべきであるというのが決議の内容であります。従って、この決議は、まず沿岸を守る、そしてその次には、このことによって生ずる底びき業者の諸問題については責任をもって解決すべきであるというような、筋の通った意見が述べられておるわけです。これらのものは当然尊重せられてしかるべきだと私は考えるのですが、農林大臣はまだ御承知ないと言うが、この点についてもどうなされまつすか。
  49. 三浦一雄

    三浦国務大臣 その決議がありました通り、前段は、結局禁止区域拡大せい、あとはあと、こういうふうなことであります。しかしながら、その決議も条件がついておることは御指摘通りです。われわれは条件のついたものをそのままさようでございますかという解決には持っていかない。従って、その相関的な内容を見てやらなければならぬから、ここに困難な点があるわけです。従いまして、その両者間の調整をとるということが残されておる問題ですから、これらの問題を考慮しつつ方法考える、これが最も実際的な解決の道でございますから、それをとりたい、こういうふうな考え方であるわけであります。決してその決議等を無視したりあるいはまたなおざりにするという意味ではございません。内容そのものも多面的であり複雑でありますから、われわれは十分にしんしゃくして参りたい、こういうことであります。
  50. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、最後に、八月一日の委員会農林大臣は私の質問に答えて、四月二十三日の当委員会における禁止区域拡大の決議の趣旨は十分尊重してこれを処理したいと考えておる、しかし、芳賀委員の主観的な、沿岸を重くみなして底びきを軽く見るような、そういう主観的な意見には承知することができないと、そうだいぶん語気を強めて答弁されたことは御記憶の通りです。それで、私の質問に対しての問題は別として、委員会の趣旨を尊重されるということの言明は、これは当然のことなのですが、この際もう一回この点を明らかにしておきます。この四月二十三日の当委員会の決議の趣旨は、これを内容的に分けると、第一の点は、北海道沿岸における数年来続いておるニシンの凶漁対策に対して、これが恒久的な救済対策を立てるためには、その最も効果的な方法として、この禁止区域拡大をはかって沿岸漁民を救う、ニシンの凶漁救済対策もこの禁止区域拡大の中でこれを救済っするというのが第一点。第二点は、沿岸漁業資源の維持培養のために、この際あらゆる角度からこれを検討した場合においても、現在のような沿岸における底びき等の漁業状態というものをいつまでも放任しておいても、これは何といっても資源枯渇することは自明の理であります。従って、この際資源保護培養の見地からも禁止区域拡大すべきである。この点に対しては、昨日日本に来たソ連の漁業部のイシコフ部長も、たとえば北洋の鮭鱒等の問題についても、やはり一番重視しているのは資源保護の問題であります。でありますから、われわれとしてもこれを重視して、沿岸における資源保護のために禁止区域拡大をはかる。第三点の問題は、とにかく漁業の近代化とか大型化といっても、現在の北海道並びに全国の大多数の沿岸零細漁民実態は、依然として沿岸に定着しておらなければ生産ができないわけです。これほど後進的なのです。ですから、せめて沿岸における区域拡大によって、零細漁民の生産の場を拡大安定させることによって、この際沿岸の零細漁民生活定安をはかるべきであるというのが第三点であります。第四点は、沿岸漁業と底びきとの間における競合性です。これはやはり、スケソウとかホッケとかいう同種の漁族を、沿岸も底びきもとっておられる。これは漁業上の具体的な競合性というものを調整、除去するために禁止区域拡大してこれを明確にする。この四つが禁止区域拡大すべしという本委員会の決議の内容であります。この決議が実行に移されて禁止区域拡大を行う。しかし、これに伴なって生ずる底びきの問題等については、あるいは漁場の転換であるとか、あるいは大型化に対する国の積極的な配慮の問題であるとか、あるいは、今後漁場の転換が十分できないというような場合においては、現在の底びき船の配置の内容というものを十分検討して、必要な場合には英断をふるって厳選の挙に出る。しかし、これに対しましては、水産資源保護法の十二条等にも規定されておりますが、政府の方針で厳選を行いあるいは海域の変更を行なったような場合においては国の責任で船の買い上げあるいは乗組員に対する適正な補償をすべきであるということは法律で規定されておる。ですから、問題がそこまで行く場合においては、積極的な方法としては、この定数の整理、それによるところの国家補償に踏み切るのもまた当然であるというふうにわれわれは考えて、この決議というものを社会党、自民党共同提案で成立さしておるわけです。ですから、この点については大臣も十分尊重の御意思はあるということを言明されておるのですから、この際諸般の事情を十分慎重に検討されるのは当然でありますが、もうすぐに差し迫った問題でありますから、あくまでもこれは、水産庁長官とか行政の事務官僚だけに問題をまかせてあんたが責任を転嫁するというようなことでなくて、農林大臣責任において方針を明らかにして、そして水産庁長官に適正な事務処理をやらせることにぜひ踏み切っていただきたい。この点に対してどのようなお考えであるか、最後にお尋ねいたします。
  51. 三浦一雄

    三浦国務大臣 当委員会の、北海道周辺海区における中型機船底びき漁業禁止区域拡張に関する件ということで表示されました御趣旨は、よく了承しております。この問題にも内容としましてやはり相関的な問題があるのですね。それでございますから、われわれが先ほど申し上げました通り、その関連する事項を正しく理解し、これに対して公正妥当なる結論を得たいということで参りたいということでございまして、今仰せになりました沿岸漁業の振興方策なり、あるいは機船底びきの整備と申しますか、新魚田を探究しまして、そっちの方に転換させるというふうなことは、皆関連しておる事項でございますので、先ほど来申し上げたようなことでございます。決して私は、責任を回避し、そして水産庁になすりつけるというようなことはございません。今御指摘になった点、さらにまた、先ほど篠田松田委員の御質問の際にもお答えした通り、また芳賀さんの御指摘になった通り、この問題等も、もっと積極的に、むしろ早目にこれを進めて参るということにいきたい、こう考えておりますから、御了承願います。
  52. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後にもう一点。これは漁業の秩序維持の問題ですね。これは、私どもたまたま海上保安庁の漁業上の取り締りとか違反の事例等について説明を求めておるのですが、最近は、全国的に、日本の沿岸はもちろん、あるいは遠洋や北洋等においても、違反、密漁の事犯が非常に急増しておるというようにも聞くのです。これはやはり制度上の欠陥にあるか、現在の政府の行政的な指導とか監督というものが非常に欠如しておるものがあって、このような秩序が破壊され、ややもすれば秩序の維持が困難になるような事態が惹起されないとも限らない。この点に対しては重大な問題でありますが、たとえば水産庁の監視規程等によっても、あるいは法律の規定等によっても十分監視とか、あるいは取締りをしなければなりませんが、たとえば、今の水産庁の持っておる巡視船が、これは全国で三十四隻くらいしかないというような状態で、ほとんど海上保安庁の巡視に依存しておるような状態なのです。ですから、農林省が直接監視に乗り出さないと——あるいは地方の都道府県知事の権限にゆだねられておる許可漁業等については、取締りも何もすべて知事の責任であるからして、この許可漁業の範囲内において違反が出るのはこれは知事の責任だ、こういうようなことで中央が責任を転嫁したような秩序の維持態勢では、私は十分問題の解明はできないと思う。ですから、こういう問題については、政府に対する漁業制度上の不信というものは全国に盛り上っているわけです。ですから、これに対してどういうふうにこたえて、完全なる漁業の秩序維持というものを農林大臣はおやりになるお考えですか。これは、よろめいたり、なまぬるい考えではできないことなのですから、特にお尋ねしておくわけなのです。
  53. 三浦一雄

    三浦国務大臣 漁業の秩序を保持するということは、これは漁業権益を守りますためにも必要でありますことは申すまでもございません。でございますから、まず第一に、この関係の業界自体におきましても、自主的な態度を持って、そしてみずから漁業の秩序を守るという、一つの醇風美俗と申しますか、そういうようなものを涵養するということが必要であろうと思います。第二に、やはり許可条件等を整備してそれを実行するということでございますが、これに対する違反等については、やはりきびしく励行しなければならぬと思います。間々北洋方面におきましてはルーズな点がありまして、国際間の物議さえかもすようなことでございますが、これらも厳正公正に取り締って参る。同時に、巡視艦船等の手薄なことも御指摘通りでございますが、これはただ単に取締りをするというだけでは足るわけではございませんけれども、この問題につきましては今後の施設の充実を待ちまして、相ともに今の漁業秩序を保持して参るということでございまして、根本はやはり同業者の人々の自覚と協力を前提にすることでございますので、これを総合的に推進して参りたい、かように考えておるわけであります。
  54. 松浦周太郎

    松浦委員長 日野委員
  55. 日野吉夫

    ○日野委員 次に私の番になっているのですが、非常に重大な一点だけを大臣にちょっと関連して伺っておきたい。水産庁農林省の方針は沿岸漁業の振興、こういうことは一つの鉄則であるが、この問題はおととい以来いろいろ聞いておりますると、沿岸漁業の振興と同時に、業者の営業権の尊重、こういうところから大詰めにきているようです。戦後の農林省の方針は、沿岸から沖合い、沖合いから遠洋と船を大きくして、沿岸を顧みなかったというところに今後の沿岸の振興問題があろうと思う。それは沿岸資源枯渇であります。従って、資源保護の建前から今の主張がされるとするならば、これは認めてやらなければならないのではないか。国際法においても、資源保護の関係からならば領海以外の公海においてもこれを制限するというのが一つの方向であります。こういうことから、この問題は、新しい漁場を見つけてやるということになっても、しょせん今度の対策には間に合わぬのだ。従って、問題は、篠田君あたりから強く主張されている業者の補償の問題になってくるのであります。これは無補償ではできません。松田君の著れる漁業法第一条——漁業法六十五条だと僕は思いますが、これらでちゃんと規定されております。これを無視すれば、これはやはり憲法違反の問題になってくる。こういうことで、いずれ当面の解決を迫られているとするならば、帰着点は補償の問題だろうと思いますので、かつて底びきの整理転換をやった経験を農林省は持っている。この場合の整理の仕方は、底びき船のトン数を計算して、トン数でもってこれを買い上げた形でもって補償した。このことは、私は、行政指導が足りなかっただけでなく、大きい誤まりであったと思う。とにかくトン数で買った。しかし船は残っておる。そしてそこに乗組員が残っておる。網がある。従って、船主に与えた補償は決して船員までは渡らなかった。従って、船はあるし、労働力があるから、これはやみ船になって沖に出ていく。今日のやみ船は、いかに取り締っても、彼らは自衛上やはり自衛手段を講じて、監視船につかまらないような姿で漁業をやって、これがはね返って沿岸資源を荒しておるというような実情であります。従って、今後の補償という問題は、やはり船主の補償と同時に船員の補償もしなければならない。船も買い上げなければならないということになろうかと私は思う。さらに、これらによって起っておる今の秩序維持の問題等も、無限のこういうやみ船を作って沿岸を荒していくのでは、全く何をやっておるかわからないことになるのであって、いずれこの問題は急いで解決するということになれば補償の問題にとなる。補償の問題は、今言ったように、前回の轍を踏まないように、再びやみ船を作ってそうして沿岸を荒さないような配慮がどうしても必要になると私は考える。いずれ、今のやみ船等も、監視船を増強してこれを摘発するだけでは根絶しないのだから、このことについては別個の対策考えなければなりませんが、今の補償に対する私の申し上げておることに対して農林大臣の意見、もしできれば、今はんらんして沿岸を荒しておるところの不許可船、こういうものを今後どういうふうにして処理していくか、こういうものをなくしていく方法等について何か名案があるか、今度の問題の解決と同時にここまで考えなければ完全な水産行政がやれないと思いますので、その点も伺っておきたい。
  56. 三浦一雄

    三浦国務大臣 今の日野委員お尋ねの前提は補償金を出すことを前提としてのお話でありますが、今のところまだそこまで行っておりません。それから、従来補償金を出しました場合でも、船員等の離職に関する手当等は見ておったそうでございます。かりに将来、万策尽きてと申しますか、いい手がないということで減船あるいは許可をやめさせるというふうな場合はわれわれは想像したくないのでありますが、さような場合の補償等をどうするかということは、今の御意見を十分に参酌していくということはかまわないと思いますが、今のところこれは補償問題で片づけようということではなくて、ただやめさせるというのではなくて、できるだけ新しい魚田を求め、あるいは漁業上の交錯している問題等を調整しまして、働き場所を相互に与えていきたいという考えでございますから、その点だけ申し上げておきます。
  57. 日野吉夫

    ○日野委員 それは、前回も、私たちその当時水産委員であってよく知っているのですが、船員の分も見てあると言っておるけれども、船主に渡した補償金というものは船員に渡っていないというこの事実、だから、私は行政指導を誤ったと思う。しかし、これは行政指導ではいけないのだ。今度魚田を見つけてそこに転換させるというけれども、一昨日からの議論で、それはいつになるかわからないと思う。およそ間に合わない。従って、補償にいくであろうという前提のもとに私が言ったことは間違いないが、急を要する解決というものはいずれ補償にいく以外にない。そこで、その場合は今のような配慮を十分して、何か法的にでもひもをつけておかぬと、これは行き渡らぬ。整理転換させて結局やみ船として沿岸をもっと悪質な荒し方をするような結果になるから、僕はそういうことのないようにということを強く希望申し上げて、注意を喚起しておきます。  引き続き、韓国ノリの問題で、通産省の方が見えておるようでありますから、通産省の局長さんにちょっと伺いますが、過般八月の六日か五日発表になりました問題で、韓国ノリが二千百万枚通関をいたした、こういうことになっておるのですが、これには前から参議院、衆議院の一致した決議に基く一つの制限があるはずなんです。そしてこれにはしばしば通産省で所要の手続の規程を作っているはずなのですが、そういう必要な手続がとられずに、何かしら非常に急いで、二、三日のうちにばたばたときめてしまった、そうして通関をさせたというような形勢があるのですが、どうしても急がなければならなかった当時の緊急性、手続をとるいとまがなかった、手続をとることが不可能であった、こういう一つの事情があったら、御説明願いたい。
  58. 中野正一

    ○中野説明員 お答えいたします。  韓国ノリの輸入につきましては、今御指摘のありましたように、韓国ノリの需給調整協議会というものができておるわけでありまして、これは生産業者、問屋さん、それから輸入業者と、この三者の構成で協議会ができておりまして、その協議会で十分協議をして、この意見を十分尊重して輸入は決定して下さいという農林水産委員会の申し入れがございますことは十分承知しております。今回の、今御指摘のありました二千百万枚につきましては、実はこれはもう前々から問題になっておったものでございますが、大阪の税関に数年前から輸入されたままで放置されて、相当品物も悪くなって、規格外になっているというようなことで、前々から、この輸入問題については早く処理してくれ、結局それが日韓の貿易拡大にも役立っじゃないかという向う側の強い要請もございました。通産省としましては、今申し上げましたように、やはりノリの輸入については国内の生産関係相当重大な影響がございますので、大体年間一億万枚を限度とするというような、これも農林水産委員会の申し入れがございますので、そういうものを尊重しまして、ノリの輸入については農林省と通産省で十分慎重に協議をしまして、その上で決定をする、一方、ノリ需給調整協議会の意見も聞く、こういう段取りになっておるわけでございます。今回の輸入につきましては、ノリの需給調整協議会には、ちょっと日にちを申し上げますと、四月三十日に諮問をしております。これは、二千百万枚の問題と、それから基本ワクとして大体年間一億万枚という線が出ておりますので、さしあたり急ぐ方は二千百万枚を急ぐからということで諮問したのですが、需給調整協議会が、何か会長問題その他の問題をめぐって、会合しようと思ってもなかなか集まれないわけです。要するに、需給調整協議会は本来の機能をもう十分果し得ないというような状態にあったようです。これに対しまして、五月十六日に需給調整協議会よりわれわれの方に回答が来ております。そうして、これは会場問題その他いろいろの問題があったように、これは間接に聞いておりますが、そういうことで、生産業者の方の話がなかなかうまくいかない。しかし、二千百万枚は、日韓貿易の促進という意味合いもあるし、それから、御承知のように、去年からことしにかけましては日本のノリが相当不作でありまして、需給関係もだんだん切迫してくるのではないかというふうな問題もありまして、これは急いでやりたいということで、需給調整協議会に諮りましたところが、需給調整協議会全体としては意見がまとまらないが、問屋さんと輸入業者との協議の結果の回答が来ております。しかし、これは、われわれの方としては、生産業者が入っておらないために、需給調整協議会全体の意見とは見ておりません。また、われわれの方は、ノリの輸入発表をする場合には農林省に対してやはり正式に協議をすることになっております。これは五月七日に、通産省の通商局長の名前をもちまして、農林省に対して、今申し上げましたような趣旨で、日韓貿易の現状から見て今ノリの輸入を若干増大するということは、今後の日韓貿易の拡大発展に寄与する、他方ことしは国産ノリも不作であるので、なるべく早く入れれば、国産のノリに影響も少いのではないか、こういう観点から、今申しました二千百万枚の輸入を早くやろうじゃ、ありませんかという申し入れをしまして、それに対しまして、農林省でもいろいろこれは慎重協議されたと思いますが、五月二十二日に、とりあえず今言った二千百万枚については同意をする、こういう正式の回答が参っております。従って、われわれの方としては、需給調整協議会からは全会一致の回答はありませんが、これはいくら待ってもその当時の情勢から言うとなかなか返答がありそうにもないということで、農林省と協議をいたしまして、二千百万枚の輸入について交渉に入らせた。従って、その間の事情は生産業者の団体の方もよく御承知と思いますが、そういうことで、だんだんと価格交渉なんかをやりまして、話が大体七月の終りごろつきましたので、それで八月六日に二十一万束について輸入発表しまして、そして外貨の割当をして最近通関を完了した、こういうような事情であります。
  59. 日野吉夫

    ○日野委員 そうしますと、この品物は、数年前に大阪のどこかの倉庫に眠っていた品物である、その品物を放出しようと思って需給調整協議会に意見を聞いた、ところが需給調整協議会は正式に成立しない、生産者側が参加してない、こういうことですね。それで、生産者を除けば、これは構成上あとに残るのは業者だということになりますね。生産者がどうであろうとも業者の意見だけを聞いてきめた、こういうことになるが、古い品物が今出てきて、期間も四月から九月まであるのに、そう取り急ぎきめなければならない事情はないのじゃないかと思うのです。もう一度生産者も含んだ需給調整協議会の会議農林省と通産省であっせんして成立さして、そこの完全な意見を求めてから放出してもよかったのじゃないかと思う。そうすると、一方的に業者が、生産者は来ないのだからやっちまえやっちまえという経緯で取り急ぎきめたと解釈されてもいいですか。そういう結果ではありませんか。
  60. 中野正一

    ○中野説明員 今の二千百万枚を入れた事情は、先ほど申しましたように、主として韓国側の方の要望が非常に強かった。それで、二千百万枚を片づけた上で、これは今のところでは基本ワク一億枚の数と二千百万枚は一致するというふうにわれわれは考えておりますが、今後の基本ワクを幾らにするかということは、今後さらに需給調整協議会の意見も聞き、農林省とも協議をして決定したい。それで、主として二千百万枚を片づけて、今後の話も早くしたいという韓国側の強い要望がございましてやったわけですが、需給調整協議会は、先ほど申しましたように、なかなか話がうまくいかない。これは両者が互譲の精神で譲り合って、やはりノリの輸入、ノリの生産、そういうノリ全体のことを考えて、輸入業者は生産業者の立場を十分考え、問屋さんもインポーターなり生産業者の立場考え、生産業者の方も、どっちみち日本では、日韓貿易の関係考え、需給関っ係から言っても、ノリはある程度入れなければならぬことになっておりますから、お互いにやはり互譲の精神でやっていかないと、問屋さん、インポーター、生産業者という利害の全然反する方が集まって需給調整協議会をやるわけでありますから、なかなかうまくいかないので、そういうことを今われわれの方は輸入業者の方へ強く要望しております。もう少し仲よくやってもらわなければ困るじゃないかということを強く言っておるのですが、このときは、今の会長問題その他の派生的のことじゃないかと思いますが、話がうまくいかなかった、そういうことで、要するに、生産業者の方の立場なり、ノリの需給関係はどうだというようなことは、これは国内の流通なり生産の問題でございまして、これを所管しておりますのは農林省なんです。従って、われわれの方としては通商面からできるだけ早く入れたいということと、国内の流通なり生産に及ぼす影響いかんという判断農林省の方で下されまして、需給調整協議会としては全会一致の回答はないが、この際は踏み切らざるを得ないのじゃないかという判断農林省にされたのじゃないかと思います。その農林省判断に従ってわれわれの方は意見を発表した、こういう事情でございます。
  61. 日野吉夫

    ○日野委員 農林省の意見は一応ただしたのですが、そうすると、この問題は結局輸入業者の一方的な意見を聞いてきめた、もう一つは、需給調整協議会が完全な意思を表明していないということだけは明らかですね。不完全な手続でやられた、こう理解してよろしゅうございますか。
  62. 中野正一

    ○中野説明員 そういうふうに解釈なさって差しつかえないと思います。
  63. 日野吉夫

    ○日野委員 それでは、これは今度始まったのじゃなく、昭和二十九年に六千五百万枚、昭和二十年には四千三百万枚、三十一年には一億枚で、去年はついろいろ問題があって、九千九百六十万枚が四月放出されて、これは閣議でもきめてあるように、去年はもう輸入しない、こういうことにきまってあるので、これは一時ここで今年の分は九千九百六十万枚で終ったという解釈をわれわれはとっているのですが、通産省は去年の分がまだ残っているのだからもっと放出してよろしいという考えを持っておるのですかどうですか、その点を一つ
  64. 中野正一

    ○中野説明員 昨年のノリの割当は、八月に割当をしまして、それが御承知のように九月一ぱいで通関という条件がついておりまして、これが価格の問題その他で交渉が行き悩んで通関できませんでしたので、これを三月になって期間を延長しまして通関をさせることにした、こういうわけなんです。従って、昨年の割当の分を三月に解除した、こういうことになっております。ただ、そのときに、それではすぐ三月に、期間延長しまして——昨年たしか九十六万束ぐらいであったと思いますが、その分を通関させるかどうかということは、十分これは農林、通産関係者がいろいろ協議をしたわけなんですが、通産省としてはぜひ三月すぐ通関をしたいということの強い意見でありました。というのは、昨年の割当が要するに価格交渉その他の点で延び延びになったのであるから、昨年の分であるというふうな考え方で、早く通関をするようにしたわけなんですが、これは農林省の御意見もございますし、関係者が集まって、従来国会方面でも九一月から四月まではノリの生産期だからその間は通関しないようにしよう、こういう大体の慣習みたようなものができておりますので、それに従って、許可は三月にするが、業者の方で自主的に通関は四月になってすぐやったらどうか、こういうことになったわけでございますので、ノリそのものは、今度入った九十六万束というのは、昨年度の分がことしの初めに、そういう生産期の関係なり従来の取りきめ等を十分尊重する意味で四月に入れた、こういうふうに通産省としては解釈しております。
  65. 日野吉夫

    ○日野委員 値段の折り合わなかった点はその通りでありますが、十一月の十三日に経済閣僚懇談会では生産期の輸入中止を申し合せた。ところが、十一月二十九日には閣議で前尾通産大臣が発言を求めて、通関を行う、四月以降にこれを市販する方針であるということを発表して、これは大問題になったはずであります。その後十二月の三日に前尾通産大臣が閣議で前回の閣議決定を取り消して、本年輸入せずという言明をしておるので、これは重大な問題ですが、そうすると、三月に去年分をやって、そうして四月これを放出した、そうしてまた今年の四月から九月期の間にまた一億枚を輸入するという方針かどうか。そこのところを一つあなたの方の意見をお伺いしておきます。
  66. 中野正一

    ○中野説明員 本年度の今後の輸入分を幾らにするかという問題につきましては、通産省は、できるだけ、二千百万枚を含めて一億枚くらいのノリは輸入したいという希望を持っております。しかし、これは、今御指摘のありましたような事情もあるし、農林省としては生産業者の立場も十分考慮されなければならぬと思います。また、需給状況も調べて、幾らくらい入れたらいいか、これは、通産省の日韓貿易拡大という観点と、農林省の、ノリの生産業者を一口に言えば保護するといいますか、それを助長するというような立場と、それから一般消費者がノリの需給関係でどういうふうな影響を受けるか、そういうような点をいろいろ総合しまして、今後決定さるべき問題じゃないか。この点については、近く需給調整協議会を九月の二日に開きまして、これは生産業者、問屋の人、それからインポーターもみな集まられるようになったそうでありますが、そこで十分議論を尽していただいて、その結論をできるだけ尊重して、農林、通産両省で協議をして、数量なり輸入方式を決定する、こういう段取りになると思います。
  67. 松浦周太郎

    松浦委員長 日野さん、あなたの方もこの問題で二人要求がありますから、簡潔に願います。
  68. 日野吉夫

    ○日野委員 今の問題は、これは政治問題で、近く需給調整協議会も開かれるというから、そこに譲りますが、さっき読み上げた相当数の、二十九年から三十三年までこれくらいの数を輸入して放出しているわけです。そのたびに商社の暗躍が行われることはあなたも御承知だと思うのです。輸入のつど、このことがえらい話題になる。去年の選挙のときはノリの輸入商社が六千万円金を出したなどとも世間から言われておる。どこどこ商社がどうだというようなことは、われわれは聞くにたえない。商社ばかりじゃない。政治家などがこれに入って、そうして毎回このことを繰り返しているのだ。あなた方の方でこういうことをこのまま今後日韓貿易拡大の線から拡大していこうという考えがあるのか、これをこのまま繰り返していって、これでいいとお考えになっているのか、それとも、機構のどこかに欠陥があってこういう問題が起ったから、この点を改めよう、こういう考えがあるのか、この点を一つ伺いたい。
  69. 中野正一

    ○中野説明員 今、前段で御指摘があった点はそういうことは全然われわれとしては関係もありませんし、そういうことは聞いておりませんが、できるだけ、輸入の体制、それから国内の流通関係とか、生産業者に対する影響、そういうものをさらに改善して、ノリの輸入問題はもう少し——毎回割当をするたびにいろいろもめる、これは、インポーター・サイドからもいろいろ陳情がある、生産業者からもある、問屋さんからもあるということで、もう少しこれは秩序よく、せいせいと輸入が行われるようなことを希望しております。ただ、これは、今言った需給調整協議会というものが現在ありまして、ここで三者が集まっていろいろ協議することになっておりますので、できるだけそういう場で、両者が先ほど申し上げましたように互譲の精神でもって大局的立場から調整をやっていただきたいというふうにわれわれは希望しております。
  70. 日野吉夫

    ○日野委員 そういう業者の暗躍やそうしたものは聞いていないというのですが、かつて、東和商事という会社があって、この会社に四月以降に放出することを厳重な条件をつけて放出したことがある。ところがこれがでたらめにやみ市場に流れて、生産者がこれで大きな迷惑、損失を受けて大騒ぎになった実情もある。そういうことをあなたが聞いていないなんというそんなばかなことはないはずであって、ただ、これは、相手が商社ですから、今の機構そのままだったらこれは無限に繰り返されるでしょう。こういうことで、どうしてもこの機構ではこれを毎回繰り返すより道がない。もっと悪質な、もっとひどいことが行われると思うので、われわれは、これに対して、機構上の欠陥がある、この機構ではいつまでもこれを繰り返すから、これはどうしても機構を改めなければならぬ、そういう考えを持っておるので、まず輸入商社から問屋業者、小売業者と消費者という一つの関連の中に、やはりこれは食糧ですから、農林省が食糧全体をにらんで食糧配給の管理をすることは当然でありますが、この中に生産者圧迫が問題になるのですから、生産者団体を一つ輸入業者と問屋業者の中に入れて、農林省の監督のもとに、この団体の意向で輸入商社から問屋業者べ放出する時期、適当な数量、こういうものをきめさせる。これは国内生産の関係をにらまなければならぬのですから、こういう考えをもってこの機構を確立せざる限り、これはいつまでたっても今のような醜い——諸君だって困るだろう。いろいろ痛くない腹を探られたり、いろいろ魔の手が伸びて、だいぶ通産大臣なども困ったようです。ぼくらもずっと関係しているから……。こういう経緯から、こういう機構を確立する。もしそういう問題が起らずに、系統的に、あなたらの言うようないざこざが起らずにすっと流れるような機構が作られるとするならば、これはあなた方は異議がないと思いますが、その点について、今の生産者団体を一つ入れるという機構を作る。国会がせっかく衆参両院でこういう条件をつけて決議しても、国会の意思というものは実際取引に当っては全く無視されておる。国会無視をあなた方がやらざるを得ないように業者から仕向けられておる。そこで、国会等が配給系統にこういう機構改革をやる、こういうことであれば、あなた方にも何らの異存がないと思うが、通産省の意向を一つここで承わりたい。
  71. 中野正一

    ○中野説明員 今御指摘の、ノリの国内流通をもう少し円滑にやったらどうかということだろうと思いますが、この点については御承知のように農林省の所管問題でございますので、そういう問題については今後農林省と十分協議をして、新しい輸入関係、国内の流通が円滑にいって、国内生産にも悪い影響を与えないというようないい方法があれば、十分検討したいと思います。
  72. 田口長治郎

    ○田口委員 関連して……。  このノリの問題で参議院も衆議院も三十一年の五月に重大な決議をしておりまして、この決議は、韓国ノリの輸入は年間一億枚を最高限度とする、そうして国内のノリの生産増加に伴うてこれを漸減する、こういう重大なる決議をしておるのでございます。国会がどういうわけでこういうような問題にタッチをするかという問題でございますが、御承知の通りに、先ほどからいろいろ問題になっておりますように、日本の沿岸漁業というものはすっかり行き詰まってしまっておる。この行き詰まった沿岸漁業を転換するのには浅海漁業方面に持っていかなければならない。ところが、浅海漁業で何をやらせるかということになりますと、ノリの養殖よりほかに方法がない。こういうことで、農林省も補助金を出して、この沿岸漁業者をノリ養殖に転換させることについて今日まで努力をしてきております。この結果、今ようやくその効果が現われまして、北海道から九州までの約二十九都道府県の各漁業組合漁業組合の数にいたしますと五百五十組合の者がこのノリで飯を食っておる、こういうような状態でございます。従って、二十九年の生産と比べますと、今ほとんど二倍の生産量になっておる。こういうようなことで全国的の沿岸漁業者は飯を食っておるという状態でございますから、無制限に韓国のノリを輸入されて、内地のノリの価格を下げてしまうということになったら、生産もとまりますし、沿岸漁業者の生活も困窮する、こういう意味で、三十一年の五月にこういう原則を立てておるのでございます。今年の二千百万枚の輸入にいたしましても、私らとしては非常に不満である。昨年輸入をしなかったからその分を今年輸入をしたんだという観念ではなしに、輸入する一億枚というものはその年その年で打ち切らなければならぬ性質のものである。昨年のものを輸入しなかったから今年は今年の分と昨年の分と二億輸入していいというものでなしに、年々の価格の圧迫を防止するためでございますから、昨年いろいろな事情で輸入しなかったその数量を今年かわりに輸入して、また今年の分を輸入するんだという観念は、絶対に許されない。かかる観点から言って、農林省が通産省に回答をいたしました、将来のワク内で二千百万だけは輸入してけっこうだろうという回答は、これはとんでもない話だと思います。私はこの二千百万枚のあなた方の外貨割当その他についても非常に疑問がありますけれども、きょうは時間がありませんからそういうことは申しませんが、今中野次長が言われるように、輸入業務は通産省でやられる、輸入したものをどう流すかという問題につきましては農林省責任である、この点は一つぜひ確立をしてもらいたいのであります。今、日野議員から申されましたように、輸入業者と問屋との間に生産団体が入りますれば、この生産団体が一厘でももうけないということで内地の生産業者保護のための流通をやりますれば、このノリの問題について輸入事務で生産者とのいざこざというものは将来なくなってしまうんじゃないか、こう考えるのでございまして、ここに生産団体が介入することが営利の目的で介入する、そういうことでありますと、これは排撃しなければなりませんけれども、一厘も利益をとらない、そうして、自分らの配下にある五百五十漁業組合組合員の生活を生産団体が守っていく、言いかえますと、内地の生産の事情を見て、生産業者が今までのルートによってノリを流していく、こういうようなことになりますと問題はなくなる。この問題ではいろいろな問題がありますけれども、一番重大なる問題は、この五百五十組合組合員の生活の問題でございますから、この問題だけはこれで解決するのではないか、こういうふうに考えるのでございまして、この点については、中野次長は、輸入は通産省、内地の配給関係農林省、こういうようなはっきりした考えを持っておられるようでございますが、農林省がこの配給の仕事を受け持たれる場合におきまして、営利を目的としない生産団体を中に入れて、そうしてものを吐く時期あるいは数量というものをこの生産団体に判断をさせて従来の問屋あるいは中間問屋の方に流すような処置をとられる意思があるかどうか、この点をはっきり伺っておきたいと思うのであります。
  73. 中野正一

    ○中野説明員 今お話のございました、生産業者を国内の流通機構の中にどういう格好で入れたら一番国内の生産に悪影響がないような形で輸入ノリの流通機構が確立できるかという問題は、実は今両先生から初めてそういう御意見を私拝聴したようなわけでございまして、先ほども申し上げましたように、この点については農林省と十分相談して考えていかなければならぬ問題でございますので、具体的に今この問題についてどうだという決定的な意見を私から申し上げることは差し控えたいと思います。
  74. 田口長治郎

    ○田口委員 今までのノリの流通段階といいますのは、輸入商社が輸入して、そうして輸入したものを問屋におろして、この問屋が中間問屋におろして、中間問屋が小売店に流す、こういうような経路をたどっておるのでございますが、これがだんだん乱れまして、昨年の状態を見ておりますと、輸入商社七十社が問屋におろさないで下の方に直接おろしてしまっている。その数量はおそらく七五%程度に達すると思うのでございますが、一〇〇%受け取るべき問屋が二五%受け取って、あとは問屋の手を経ないで下の方に直接に輸入業者が流してしまっておる。こんなことはどうしても納得がいかない。いろいろ疑問が生ずる点もそういう点にあると思うのでございますが、やはり、問屋がある以上、あるいは中間問屋、小売がある以上、こういう機構は尊重して、そうして適当な時期に適当な数量を流す、こういうような本体に返さなければいかぬ、かように考えるのでございますが、今のままでもし皆さん方がやられるとすれば、この傾向はますます強くなってくるだろう。従って、今までこれで飯を食っておった問屋連中の不平も相当出てくるのでございます。この点は大したことはないといたしましても、こういうような輸入業者が勝手に流すことによりまして、生産者の利益を守ることができない、こういうような事情で、非常にやっかいな問題が起るのでございますから、私どもは、生産者団体をここに入れる、この生産者団体は一厘ももうけない、適当な時期に国会できめられた数量を自分らのいろいろな情報、自分らの判断によって問屋に渡していく、こういうようなことになれば、生産者と輸入業者あるいは問屋との関係というものは、もう完全に解決をする、こういうふうに考えておるのでございますが、今初めて聞く、こういうような話で、ここで即答はできないような話でございますけれども、かくのごとくはっきりしたことを、自分らもさよう思うというような、その程度の答弁もできないかどうか、その点をもう一度御答弁をしていただきたいのでございます。
  75. 中野正一

    ○中野説明員 先ほど申し上げましたように、この問題については、通産省としても、農林省ともよく相談しなければいけませんし、生産業者が流通機構へどういう形で入ってくるのか、そういう点もまだはっきりしてないようでございます。本来は、普通のやり方でいけば、生産業者というものは、要するに輸入の配給にはタッチしない。要するに、数量を幾らにするかということは、需給調整協議会で決定をいたしますので、その決定をされました数字というものは、インポーターが輸入し、これを問屋に渡す。ただ、この場合に、問屋と輸入業者の性格が従来まだなかなかはっきりしなくて、いわゆるインポーターが問屋を兼業しておるというようなこともありまして、今先生から御指摘のありましたように、輸入業者、問屋、中間問屋といいますか、それから小売屋さんというような形で輸入されたものが整然と流れていけば、それでけっこうなんで、そう問題は起らないのじゃないかと思いますが、御指摘の生産業者を流通機構に入れるというようなことは、どういう形になるのか、そこらもやはり十分研究してからでないと意見を申し上げることもできませんし、いずれにしましても、これは関係農林省との相談のことになると思います。
  76. 田口長治郎

    ○田口委員 この問題につきましては、二十九年以来毎年々々紛糾をしておる、これは国会としても迷惑でございますし、通産省も迷惑である、農林省も迷惑と思うのでございます。そこで、私どもは、この生産者をどうしてもこの中に入れなければいかぬ、こういうことで、前通商局長の板垣さんのときにこの問題をいろいろ研究いたしました結果、さっきお話しになりましたところの韓国ノリ輸入調整協議会というものを作って、問屋と輸入業者と生産者と一緒にした団体を作らせて、そうして、当時の板垣局長の言明によりますと、輸入業者にいたしましても、あるいは問屋業者にいたしましても、全部この需給調整協議会に加入をさせる、そうして、この両関係者に対しては完全なる義務を負わせて、この需給協議会の指図によって輸入もし、あるいは配給もしよう、こういうような機構がはっきりできたのでございますが、それでやってみました結果、今度のように、生産者の加わらない需給調整協議会なり、その意見だけで通産省がノリを輸入する、こういうような問題になって、輸入業者の方はなるべく拒否しよう、タッチしないようにしようというような気持で、協力をしないで今回のような問題が起っておるのでございますから、私らといたしましては、もうこの需給調整協議会の介入だけではこの問題は解決はしない、むしろ、通産省は貿易の問題、国内配給は農林省が所管をすべきものである。そこにはっきりと一線を引きまして、あなた方の仕事はあなた方の方でやられてさしつかえないとして、内地で韓国ノリを流すことによって圧迫をされる漁業者をどうしても守らなければならぬ。守るためには、やはり漁業者の団体が、配給する数量なり販売をする時期なりというものを判断して、そうして一方と関係がないような時期を選ばすことが、この問題を解決するのに一番近道と思うのでございます。先ほどから通産省としてはお答えがありましたが、これを直接に主管される農林省として、さようなことが万全の策であるというふうにお考えになりませんか。農林省の回答を一つ伺いたいと思います。
  77. 亀長友義

    亀長説明員 今御指摘通り、輸入は通産省でありますし、国内配給につきましては農林省でございますが、結局、国内配給と申しましても、現在のところ輸入につきましては政府に輸入の外貨割当許可権限がございますが、国内配給につきましては、結局輸入許可を持った者がどうしても自由に処分をするというのが現在の外貨割当の建前でありますので、国内配給の処置に関しましては、直接外貨割当を受けた者、さらに、そこから手に入れる問屋、あるいはそれに関連した生産業者という人たちの話し合いによって従来取り扱ってきておるわけでありますが、その点が必ずしも円滑に行われないという点で、商社と問屋、さらに生産者との間にごたごたもあるのでございますが、一応は九月から四月までの生産期には入れないということで、この原則は従来も守られております。この四月から九月までの輸入した期間内において、たとえば月別の放出の状況を生産者団体の指示によって操作をするということを政府が法的に規制するということはなかなか困難でありまして、結局、調整協議会というふうなところで両者の紳士的な話し合いというものでまとめていく方向が、現在の経済体制のもとにおいて唯一の道ではないかというふうな考えで従来も進んできておるわけでありますが、今後も大体そのような方針で両者の話し合いをさらに進めたいというふうに考えております。
  78. 田口長治郎

    ○田口委員 今水産課長が言われましたように、輸入した者が勝手に処置する、こういうことをさせておいては、絶えずごたごたが起る。輸入業者は一定のマージンで輸入をさせればそれでいいので、これが勝手にすきな段階にどんどん売って、そして六十四軒もある問屋を通過させないで勝手なことをしていることは、問屋の立場から言っても非常に困る。そこで、輸入業者は輸入だけさせて、輸入したものを一応生産者団体に管理をさせて、従来の流通機構を尊重してやらせる。そのときに生産団体が利益をとるようなことではいけないのでありますから、利益をとらせないようにしてやらせる。言いかえますと、生産者団体が承認した商社に輸入をさせる、こういうような条件でもつければ、この輸入したノリというものが、生産団体の手に一ぺんは管理されるわけです。品物は保税倉庫にあるにしても、管理は生産団体にやらせる。こういう機構がどうして悪いのですか。そうすべきものじゃないのですか。こういうような内地の生産業者の生活と直接に関係のある仕事に対しては、農林省は進んで通産省にそういうことを主張をして、さような機構に持っていかなければならぬ、それが当りまえだと思うのですが、その点はどうもおかしいのです。
  79. 亀長友義

    亀長説明員 今の生産者管理の点につきまして、われわれも研究いたしておりますし、そのようにすれば生産者との関係が問題がなくなるということも十分承知をいたしております。ただ、先ほど申し上げましたように、輸入は通産省、国内配給は農林省と申しましても、結局、輸入許可の際に、政府は商社なりに対して縛らなければそういうことができないわけであります。従って、これは、なお通産省と私の方と十分打ち合せをした上で、輸入許可に際して、たとえば条件とかなんとか、そういう格好でしばっていきませんと、輸入をしたあとで農林省だけがやろうと思っても、なかなか実行ができないということになるわけでございます。そういう趣旨で私も通産省にいろいろお願いをしておるのでありますけれども、現在のところ、通産省にもやはり輸入に関するいろいろな建前がありまして、それとの調整上まだ十分な結論は得ておらない状況でございます。
  80. 田口長治郎

    ○田口委員 だんだん話が詰まって参ったのでございますが、結局、農林省がそういう仕事をするためには、この輸入業者が生産者団体に物を管理させる、そういうことをしなければならぬと思うのでございますが、あなたのところの前の局長はそこまで踏み切られて、もうごたごたに閉口したから、一つそういう方向でやろうということで、需給調整協議会まで踏み切ってこられたわけなんでございますが、一方が協力しないということで、どうしても需給協議会が運用できない、こういうところまできておるのでございますから、前局長と同じ方向におきまして、生産者団体と相談して外貨を割り当てられるということも、これは通産省としてちょっと困るでしょうし、この内地に来たのを管理する人に対して一応義務を完全に果すという商社に外貨を割り当てる、こういうところまで通産省としては踏み切るべきものと思うのでございますが、その点についてどうお考えです。
  81. 中野正一

    ○中野説明員 今最後に御指摘の輸入の方式、特に輸入に際して入った品物を生産業者に管理させるかどうかということは、先ほど来申し上げておりますように、農林省関係もございまして、われわれの方でどうこうするというお答えもできませんが、ただ、生産業者に輸入業者を、何と言いますか、選ばせるというふうな方式でございますね、こういう方式は、通産省としては従来からもう絶対反対の態度をとってきております。もしかりにそういうふうなことが許されるといたしますと、現在貿易拡大あるいは貿易の振興ということに非常に力を入れておる通産省といたしましては、やはり輸出を伸ばすためには輸入をしなければいかぬという御承知のようなことでございまして、特に各国が非常な外貨不足の際にはわれわれの方は、国内産業にある程度影響はありましても、この際踏み切って相当のものを輸入しなければいかぬということで、しょっちゅうわれわれは関係の業界あるいは関係省と議論をしながら、少しずつ輸出を伸ばす方向をやっておるわけでございます。そういう輸入物資につきまして、国内産業に非常な影響があるということで、たとえば生産業者に輸入をさせるとか、あるいは生産業者の意向によって輸入をさせる、特に輸入の方式についてそういうことになると、これは貿易振興という観点から言いましても、物の配給という関係から言っても、好ましい方式じゃないんじゃないか。ただ、入れましたものをどういうふうに配給するかということについては、従来のノリの配給について不十分なところがありますれば、それを是正する方法については、十分農林省にもわれわれとして協力したいというふうに考えております。
  82. 田口長治郎

    ○田口委員 私の言葉が足らなかったかもしれませんが、生産者の意見で決定するというのでなしに、国内のノリの流通に対して混乱をさせるような輸入業者、それでもかまわないんだということで通産省がそういう人に輸入させるということは困る。言いかえますと、よく国内生産の事情を考えた、いわゆる国内の生産者の立場を守ってくれるような輸入業者に外貨を割り当てる。通産省の外貨割当が生産者の意向を聞かなければきめられぬという、決してそういう意味でなしに、国内生産者を考えてくれる輸入業者、こういう意味において私は言っておるのでございます。それで、通産省は貿易振興にあらゆる努力を払われる官庁であるということはよく知っておるのでございますが、しかし、このノリの問題は、わずかに八十万ドルの問題である。しかるに、その結果は直ちに多数の沿岸漁業者の生活に響く問題であるから、日本の役所である以上、通産省が貿易のことを考えられることはもっともでありますけれども、国内の沿岸業者が死ぬような通産行政を、たった八十万ドルのためにやられるのは非常に困る、通産省といえどもお考えを願わなければならぬ、こういうふうに考えるので、生産業者の意見も聞いて——それによってきめるのでありませんけれども、意見も聞いて外貨をお考えになる、こういうことがこの際はどうしても必要でないかしらんと思うのでございます。通産省としても、貿易振興の官庁でありますけれども、こういうデリケートな輸入品、そしてこういうわずかな輸入品に対しましては、そこまでお考えがあってしかるべきだと考える次第でございますが、この点、もう一回お答えいただきたい。
  83. 中野正一

    ○中野説明員 ノリの輸入に際して、通産省として、国内の沿岸漁業、特にノリの漁業に従事しておられる方々の生活の問題なり、あるいは生産上の安定というようなものについてはもう少し留意をして輸入問題を処理すべきじゃないかという御意見でございますが、この点については、われわれも農林省からいろいろ事情も聞いておりますし、十分留意をいたしまして、輸入問題処理に当っては、国内のこれから伸びていこうとするノリの生産関係に悪影響のないように、くれぐれも注意したいというふうに考えております。  それから、もう一つ、生産関係者の団体を流通の関係にどういうふうにタッチさせるかという問題でございますが、その放出の時期、数量等については、これは、現在ノリ需給調整協議会というものがせっかくございまして、過去においては相当活動したこともございますので、われわれとしては、まず需給調整協議会といったような場で、問屋さん、輸入業者さん、生産業者さんの三者が集まりまして、そこへ役所が入りまして、いろいろいい案を練っていただく、こういうふうな考え方で、もう少し需給調整協議会が活発に活動する、その活動の状況とにらみ合せて処置していきたいというふうに、現在のところは考えております。
  84. 田口長治郎

    ○田口委員 私らがこういう意見を持つようになりましたのは、需給調整協議会がどうしてもまとまらないというような関係から、これは何か新しい機構を考えなければだめだ、こう主張しておる次第でございます。大体事情は通産省も農林省もおわかりと思います。ただ、問題は、今とっさに出た問題で、ここで明答されることは少し無理と思いますが、そういう機構にされれば、生産者なり何なりの関係にごたごたがなくなると思いますから、農林省と通産省でよく御研究になりまして、そうして、普通常識で、ごたごたがない機構である、こういうふうに考えられる問題につきまして、一つ抜本的の処置を講じていただくことを要請をいたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  85. 松浦周太郎

  86. 實川清之

    實川委員 ただいまの韓国ノリの輸入問題に関連いたしまして、二、三の点について農林省にお伺いいたしたいと思います。  昭和二十九年の五月と昭和三十一年の五月、それぞれ参議院と衆議院の農林水産委員会でノリの問題について決議がなされておるようでございます。その決議の趣旨といたしましては、国内のノリ漁業の育成とノリ漁業者の経営の安定を主眼といたしまして、原則的には輸入を禁止したい、やむを得ない事情があって輸入する場合におきましては、輸入数量なりあるいは輸入の時期というようなものにつきまして、国内のノリ業者に重大な圧迫を加えないようにというような配慮がこの二つの決議を通じてなされておりますが、この決議につきまして、農林当局としてはどのように理解され、あるいはまたこれを尊重されるおつもりがあるのかどうかということをお伺いいたしたいと思います。
  87. 亀長友義

    亀長説明員 国会の決議につきましては、農林省としましては、従来もその線をずっと尊重してきているつもりでございますし、今後も尊重して参るつもりでございます。
  88. 實川清之

    實川委員 それでは重ねてお伺いいたしますが、先ほど通産省の方のお話にもございましたが、農林省は、今年の四月末ですか、一億枚輸入され、さらに続いて八月に二千百万枚輸入されたこの問題についてでございますが、今までの毎年の例を見ますと、輸入の限度を一億枚というように許可数量を限っておったのでございます。この四月の末に入りました一億枚は、通産省の見解だと三十二年分だというふうに聞いておりますが、これはどうも話が少し変じゃないか。何かの事情があって朝飯を食べなかった、それで、お昼になりまして、朝飯の分だと言って二回分を食べるばかはないと私は思います。かりに大食いであって、二回分食べたといたしますと、これは胃をこわすことになります。この決議を尊重されるというような建前から申しまするならば、今年度の四月、十月のノリの生産されていない時期に一億枚輸入されたといたしまするならば、これはとりもなおさず朝飯の分を昼間食べたと同じことでございまして、もう一度昼飯を食べ直すということはどうも私には納得がいかないのでございますが、農林省はその点についてどうお考えになりますか。
  89. 亀長友義

    亀長説明員 四月に入りました一億枚を先年の分と見るか今年の分と見るかは、通産省からは先年の分と見るというお話がございましたが、農林省としましては、その辺、国会の決議をただそのまま文章的に断定をするというよりも、調整協議会の意向でそれをどう取り扱うかをきめる、こういう考え方でその回答のときはおったわけでございます。また協議会の内部にも現在はそのような考えはないようでございますけれども、その当時には、生産者団体側においても、もし生産者団体側において外貨割当でも得られるならば、若干あとは入れてもいいという意見も非公式に私どもにあったわけであります。従いまして、前に入りました一億枚が先年度か今年度かとかいうことに関係なく、今後入れるとすれば、自然そこに数がきまってくるわけでありますから、二千百万枚はあくまでその内数ということで処理をする、すなわち、従来の国会できめられた調整協議会で、どのような方式で入れるかということを決定するならば差しつかえない、そういう意味で回答したのでございまして、通産省の農林省に対する申し入れば特別輸入として扱いたいという御意見でございましたので、私どもは、特別輸入としては了承ができない、それは将来きまる数の通常の方法によってやるのだ、こういうことを御回答申し上げた次第でございます。
  90. 實川清之

    實川委員 そうすると、そこにも農林省と通産省の話の食い違いあるいは見解の相違があるようでございますが、農林省はただいま国会の決議を尊重すると言われた。そういたしますと、当然これは需給調整協議会の議を経なければならない、意見を聞かなければならないということになっておりますが、通産相のお話ですと、今度は協議会の方の内部の対立があった関係上話がまとまらない、従って、輸入業者と問屋側の意見を聞いたが、生産者の意見は聞かずに決定したというようにさっきお答えがあったようでございますが、なぜ農林省は生産者保護の建前から言ってそのような片手落ちのことを承認され、二千百万枚の輸入を重ねて認められたか、その点お伺いします。
  91. 亀長友義

    亀長説明員 私の方から回答いたしましたのは五月でございまして、通産省が輸入公表されましたのは八月であります。八月の際には、私どもは三ヵ月の間は通産省のとられました処置につきましては十分承知をいたしておりませんでしたが、八月になって輸入を公表されたわけでありまして、その間通産省においては調整協議会の取扱いについて種々御研究の上八月になって公表されたものと了承しております。
  92. 實川清之

    實川委員 農林省は、通産省からそういう相談を持ちかけられて、それに同意をするか反対をするかという態度決定の場合におきましては、当然通産省側においてそのような手続が済まされておるかどうかということを一応確認した上で回答がなさるべきだと私は考えております。ところが、今あなたのお話だと、五月に話があって、それに同意を与えた、発表されたのが八月だから、われわれの方は知らない、——はなはだ私は矛盾いたしておると思います。当然、五月に通産省から相談を持ちかけられた際に、これは需給調整協議会の意見を聞いてあるかどうかということを確認して、その上で同意あるいは反対の意見を決すべきであろうと私は考えております。大体、農林省は、この両院の決議を尊重すると言いながら、事実においては生産者を抑圧するような措置をとっておる。初めはどうあろうとも、今年度一億枚入ったことは事実でございます。さらに続けて二千百万枚入っておるということも事実でございます。そうすれば、明らかにこれは両院の決議をあなた方みずから無視していることになるわけでありまして、その点について、そうじゃないかどうか、もう一回お聞かせ願いたいと思います。
  93. 亀長友義

    亀長説明員 この二千万枚の通産省からの申し入れば、特別輸入として認めたい、こういうことでございました。特別輸入は国会の従来の精神に反しますので、私どもは特別輸入は了承しがたいという回答を申し上げておる次第でありますが、二千百万枚は将来きまる通常の方式ならば差しつかえない、要するに、将来きまる通常のワクというの、当然これは国会の意思に従う調整協議会の話し合いの場においてきまるものであって、そのうちの取扱いだとわれわれは考えておるわけであります。
  94. 實川清之

    實川委員 あなたのお話を伺いますと、あなた方が反対したにもかかわらず、特別輸入の形で通産省は一方的に輸入したという工合にお伺いしていいのですか。
  95. 中野正一

    ○中野説明員 通産省の方からちょっとお答こえ申し上げます。先ほど来申し上げておりますように、需給調整協議会にも諮りましてできるだけ個々のまとまった意見を聞いてからやりたいということを農林省の方も前々から言っておられましたし、われわれの方もそう希望しておったのですが、先ほどから御説明しておるような事情で、今回はやむを得ずああいう処置をとりました。この点については、当委員会の御指摘があるまでもなく、われわれとしては今後そういうことのないように十分気をつけたい、こういうふうに考えております。
  96. 實川清之

    實川委員 今私がお伺いいたしたことについて御回答がないようでございますが、私のお伺いしましたのは、農林省が反対したにもかかわらず、あなた方の方は農林省の意向を無視して一方的に輸入を決定されたのですか。
  97. 中野正一

    ○中野説明員 農林省とは、今度のノリの輸入の問題につきましては、前々からいろいろと協議を申し上げておりまして、五月の七日でありましたか、農林省から同意の回答がございましたので、われわれの方は輸入に踏み切った、こういうことになっております。
  98. 實川清之

    實川委員 そうすると、農林省と通産省の話はまるきり食い違っておるわけです。水産課長の話では、特別輸入の形で二千百万枚を輸入するということは反対であるという工合にただいまおっしゃって、あなたの方は同意を得たからと言うのですが、これはどっちがほんとうか、はっきり両者からお答え願いたい。
  99. 中野正一

    ○中野説明員 今の二千百万枚が将来決定さるべき通常輸入量のワクの外か中かという問題につきましては、農林省と通産省とは意見の食い違いはございません。通産省の方も、かりに一億となれば、一億枚の中だ、それが全体の量が八千万枚ときまれば、それから二千百万枚を引いた数字が残りの数量、こういうことになると思います。
  100. 實川清之

    實川委員 お役人は頭がいいので、われわれ委員には話がよくわかりませんが、一体二千百万枚というものは四月に入った一億枚の中じゃないでしょう。一億枚はすでに入っておるのだから、従って、農林省では、特別輸入だというあなた方の申し出を了承できないということで反対した。問題は、二千百万枚ではなく、一億枚を特別だということで通産省は考え輸入を許可した。農林省はそれに対して反対をした。しかし通産省に入れられてしまったというような形が、今まであなた方二人の答弁の形でございますが、どちらがほんとうなのか、それをお伺いしたいと思います。
  101. 中野正一

    ○中野説明員 通産省としては、農林省が、将来決定さるべき輸入量のワク内として二千百万枚の輸入は同意する、こういう御回答でございますので、そういうふうに処置した、それに食い違いはないのでございます。
  102. 實川清之

    實川委員 二千百万枚というものは、われわれの解釈からいけば、もう一億枚のワクをこえた余分な超過輸入だとわれわれは解釈しておるのです。そうしますと、農林省では決議を無視して超過分を認めたということになるのですか。水産課長はどうですか。
  103. 亀長友義

    亀長説明員 超過分というつもりではございませんけれども、四月に入りました一億枚を昨年のものだという御意見が、少くとも先ほど通産省からございましたが、協議会において昨年のものか本年のものかということをきめるのが筋道だろう、私どもはそう考えておったわけでございます。今明瞭に一億枚は本年度のものだというお話がございましたが、この点につきましては、調整協議会で、その辺は、去年のものとみなすか今年のものとみなすか、きめるべきだろうとわれわれは考えております。
  104. 實川清之

    實川委員 そうすると、農林省は調整協議会に何もかもまかせっぱなしで、農林省自体のお考えというものはお持ちにならないのですね。
  105. 亀長友義

    亀長説明員 私どもはなるべく調整協議会の意向を尊重して従来ともやっております。
  106. 實川清之

    實川委員 調整協議会の意見を尊重合する、それはけっこうで、ぜひそれはそうお願いしなければならない。しかし、建前が一億という一応の数量上の制限を課せられておるわけです。それをこえるかこえないか、それは意見を尊重するということではないと思うのです。むしろ意見を無視することになるのじゃないですか。
  107. 亀長友義

    亀長説明員 先ほど申し上げましたことを繰り返すのでありますが、これを去年のもと考えるか本年のものと考えるかは、農林省としては調整協議会できめるべきものだと考えております。また、この二千百万枚の話がありました当時に、先ほども申しましたが、非公式でございますけれども、生産者団体からも、もし出る場合にはわれわれにも外貨割当ということを考えれば、なお考える余地もあるのだというお話もございました。従いまして、将来の調整協議会の場においてそこら辺は議論をされるものという前提に立って、この回答をやったわけでございます。
  108. 實川清之

    實川委員 それでは、角度を変えてお伺いいたしますが、この二千百万枚について、あなた方は協議会の意見を尊重する、それじゃ協議会の意見をどのように決定されたか、その点をお伺いします。
  109. 亀長友義

    亀長説明員 これにつきましては、先ほど通産省からお話がありました通り、調整協議会が回答不能のような状態になったので、調整協議会の進行状況をも考慮に入れて通産省で八月に輸入を決定された、これは今お話があった通りでございます。その後の処置につきましては、九月二日再度調整協議会を開いて、その後の措置を協議いたすようにいたしたいと考えております。
  110. 實川清之

    實川委員 もうこれ以上申し上げる必要はないと思います。あなたは自分の発言で自家撞着をやっておりますよ。意見を尊重されるとおっしゃるが、意見がまとまらなかったから尊重の仕方がないでしょう。  それで、今後の問題についてお伺いいたしますが、まあ農林省がそういうでたらめなことをやっておることははなはだわれわれといたしましては遺憾でございますけれども、一体今後二千百万枚を除いた——かりに一億という数字のワクを考えますと、二千百万枚八月に入ったあとの七千九百枚はどうお考えになりますか。認めるつもりか、あるいは認めないつもりか。
  111. 亀長友義

    亀長説明員 その問題も、先ほど申し上げましたように、調整協議会で考えるべきものだと思います。国会の決議の中にも、この数量をこえる措置と異なるときには再度国会と協議することというふうな、多分に含みのある条項もあるようであります。従いまして、調整協議会の意向全体がそのようなものになった場合には、役所としては国会の了解を得てそのような処置をせざるを得ないと思っております。
  112. 實川清之

    實川委員 大体あなたは協議会の意向を尊重するとか協議会の決定に待つというようなことを言って、野放しの状態になっている。それなら国会の決議を尊重するということにも何にもならない。  それでは、あらためてお伺いしますが、朝鮮ノリの輸入価格は幾らですか。そうして、市場の末端における小売価格は幾らなんです。その辺をお伺いいたします。
  113. 亀長友義

    亀長説明員 輸入ノリの小売価格は一束八十セントでございます。国内におきまする韓国ノリだけの市況を、私は現在まだ整理ができておりませんので申しかねますが、一般の黒ノリの中級のものとして計算をいたしますと、十枚当り、東京においては一月から五月にかけて百三円から百十三円、大阪においては百四円から百四十円程度というふうな総理府の統計局の調査になっております。従いまして、これは国産の黒ノリ中級の価格でございますが、韓国ノリはこれよりもやや若干下回る価格かと思います。
  114. 實川清之

    實川委員 私が聞きました範囲ではまあ輸入価格はその通りに八十セントでございますが、実際の東京、大阪その他の大消費都市における末端価格は、大体高いものは千二百円くらいになっており、安いものも八百円くらいになっておるように聞いておりますが、そういう事実はあなたは御存じですか。
  115. 亀長友義

    亀長説明員 今の価格は百枚当りではないかと思いますので、そうすれば大体……。私の申し上げましたのは十枚でございますから。
  116. 實川清之

    實川委員 こんなべらぼうな利益があるからノリの問題をめぐっていろいろ紛争がある。先ほど日野委員から指摘されたように、ノリの問題については絶えず利権的な紛争があるわけです。今度のノリについても若干聞いておりますが、それは失礼だから申し上げませんけれども、そういうことをあなた方は所管の官署として黙って放任していいかどうか、その点について通産省にお伺いします。
  117. 中野正一

    ○中野説明員 韓国ノリが輸入されてからの流通の問題につきましては、農林省の方で現在も改善策を研究しておるように聞いておりますので、農林省とも十分相談して、改善策については今後さらに努力したいと考えております。
  118. 日野吉夫

    ○日野委員 大体今の論議で明らかになりましたように、今まで五回輸入している。しかも、通産省は輸入を、農林省は配給、管理を、こういう明確な一つの建前がきまっておる。五回輸入して、そのたびにいろいろのいまわしいあれを聞くわけでありまして、いつもごたごたしているわけです。しかも、調整協議会が開かれてこれに当っていても、調整協議会というものはなかなか意見が一致しない。これは、利益が侵害される生産者と、利益追求をやる業者団体との間で、そうあなた方の期待するような答えが出ない。これは機構が悪いということは、これだけでも明らかじゃありませんか。今僕と田口さんから提案されたように、こういう紛争の起らないように、生産者の利益を守り、正当利潤は保証するけれども、業者の不当利潤は押える、こういうようなすらりとした機構が出るというならば、その衝に当っているあなた方は釈然としてこれを了承しなければならぬとわれわれは考えるのだが、あなた方は、紛争を絶えず繰り返しておってこれでよろしいというお考えなのか、これで何か利益でもあるという考え方なのか。今の機構改革に対する結論的な賛否の意見を一つあなた方に——それは上役と相談しなければいけないということで逃げられると思うが、衝に当る前線のあなた方としての意向を一つ伺っておきたい。
  119. 中野正一

    ○中野説明員 今後の輸入及び国内の流通機構の改善については、十分研究して、いい案があればそれを採用することにやぶさかではありません。
  120. 亀長友義

    亀長説明員 農林省も通産省と同様の意見でありまして、現在のやり方が最も望ましいものとは考えておりません。改善措置について十分研究して参りたいと思います。
  121. 松浦周太郎

    松浦委員長 淡谷委員
  122. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ノリの問題ですが、これは前に東和商事の問題もありましたが、いろいろむずかしい問題が起るのに、どうして通産省が急いでこれを出さなければならないのか、その理由をもっと詳細に伺いたい。あの東和商事の問題はよく聞いております。このノリがどうして大阪の倉庫に入ったかといういきさつ、それをお伺いいたします。
  123. 中野正一

    ○中野説明員 この大阪の税関に二千百万枚というものがたまりましたの約は、三年くらい前から、韓国側の方で、この程度は輸入できるのではないかという見越しで、少しずつのものを、実際に外貨割当がありまして輸入できる数量より、よけいに持ってきた、そういう事情がだんだん重なりましてそういう数量がたまった、それがだんだん時間がたつうちに品物が悪くなって、早くあれを処理したいということを韓国側の方で苦慮しておった、こういうことでございます。
  124. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 その割当以上に入ってきたというのは一種の密輸じゃないですか。
  125. 中野正一

    ○中野説明員 今度の大阪の税関に入っておるものにつきましては、韓国側の正式の輸出組合といいますか、組合がございまして、そこから出たものでございまして、ただ、外貨割当の前に数量をよけい持ってくるとかいうことは、ほかの物資でもたまにはあることでありまして、それだけをつかまえて密輸であるということは言えないと思います。いずれにしても、税関の正式の許可があるまでは保税に入れておくより仕方がないわけであります。
  126. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この前の東和商事のはどうですか。あれははっきりした密輸ですか。
  127. 中野正一

    ○中野説明員 東和商事の事件につきましては、私も詳しいことは知りませんが、この当委員会の決議文でも、東和商事の輸入については政府の処置が非常に遺憾であったということが書いてございますので、こういうようなことは二度と繰り返さないように気をつけてあるつもりでございます。
  128. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 あの東和商事のノリも、何か韓国に債権を持っておる日本の商人あるいは日本在留の韓国人が、その債権を取り立てるためにやむを得ず入れたという問題があったが、今度のは、外貨の割当をしないでも日本の国内にノリを持ってこれるようなだらしのない輸入方法なんですか。これは知っているかどうか知りませんけれども、外貨の割当を決定して、それから輸入するのが当然の姿と思いますが、その割当を待たずして数量をこえるものを入れることができるならば、これは抜け道は幾らでもあるのではないか。そういうところにこういう問題が複雑怪奇になる原因があると思いますが、その点は通産省のお考えはどうなんですか。外貨の割当がなくても、それをこえる数量を輸入してもかまわぬという御意向かどうか。
  129. 中野正一

    ○中野説明員 過去において今御指摘のようなこともありましたので、最近においては、韓国側とも話し合いをいたしまして、こちらで外貨割当があるのを見越して持ってくることのないように話をいたしまして、韓国側でそのように決定しておりますから、今後はそういうことはないと思います。
  130. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この前、東和商事の場合に、今後はそういうことはないというような話でありましたが、これは明日よりやろうという方法はまずいですね。やはり、今度はというのではなしに、この問題もいろいろな責任を明らかにしなければ、今後直りませんよ。同時に、今度の二千一百万枚というものは、少しずつたまったと言いますが、納得できない。これは何年に幾らたまったのか、あなた方に資料があるでしょうから、御提出願いたい。余分に入ったものを押えているなら、何年度分何枚、何年度分何枚というものがあるでしょう。それから、ことし放出されるまではどこの倉庫にどういうふうに預けておいたのですか。
  131. 中野正一

    ○中野説明員 今御指摘の点につきましては、後日資料をもって詳細に御報告したいと思います。今手元に資料がございません。
  132. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 数量は資料をまとめてからいただきますけれども、放出するまでの処置をどうされたかくらいはわかるでしょう。これほどまとまってあるのですから。二千一百万枚ですよ。どこの倉庫にどう預けたかは概略お話しできるだろうと思う。倉庫料は一体どこで払ったか。
  133. 中野正一

    ○中野説明員 数量の詳細については後ほどまた数字をもって御報告したいと思いますが、大阪税関の渋沢倉庫に二千百万枚が保存してありたわけであります。
  134. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 倉庫料はどこで払ったのです。保管の責任はどこで持ったのか。
  135. 中野正一

    ○中野説明員 今まで倉庫に置いてあった間の倉庫料につきましては、韓国の組合の方と交渉いたしまして、日本側で円で払うということになっております。
  136. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 日本側というのは、日本側のだれが払っておるのですか。
  137. 中野正一

    ○中野説明員 これは向うの輸出組合に輸入業者が払うわけであります。
  138. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 何という輸入業者ですか。
  139. 中野正一

    ○中野説明員 今度の割当方式は、問屋の方に二つ組合がございまして、そこに発注権を与えまして、そうしてインポーターを選定するという方式をとりまして、実際には、東京食品という会社がございますが、そこが一手にインポーターを代表しまして輸入した、こういう形であります。
  140. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それでは、この二千一百万枚の保管並びに倉庫料の支払い等は東京食品が代表して支払ったというふうに了解してかまわないのですか、確認しておきますが。
  141. 中野正一

    ○中野説明員 その通りでございます。
  142. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それでは、あとでまた資料をいただいてから質問を続けますが、最後に、農林省とあなたの方と交渉されたのは、口頭で交渉されましたか、それとも公文書によって交渉されましたか。
  143. 中野正一

    ○中野説明員 口頭であらかじめいろいろ協議をいたしまして、そして、協議としては当然正式の文書でもってやることになっておりますから、文書でやっております。
  144. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 公文書の取りかわしがありましたら、その公文書の往復文書を一つ資料として御提出願いたい。
  145. 中野正一

    ○中野説明員 承知いたしました。
  146. 松浦周太郎

    松浦委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は二時半より再開し、大臣の出席するまで、酪農に関する件について質疑を進めることにいたします。  これにて休憩します。     午後一時四十二分休憩      ————◇—————     午後三時三十八分開議
  147. 松浦周太郎

    松浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  酪農に関する件につきまして調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。芳賀貢君。
  148. 芳賀貢

    ○芳賀委員 酪農問題に関して事務次官の塩見さんにお尋ねします。  酪農問題については、乳価問題を中心といたしまして、相当長期にわたって国会においても審議されておるわけでありますが、特に今回の応急措置等については、その一点といたしまして、消費の拡大をするために市乳価格の引き下げを行うということが施策の重要なる一つをなしておるわけであります。この点につきまして、塩見事務次官は、八月二十日に乳業界を代表する乳製品協会の代表と会見されて、業者側との間において農林省としての了解をなしておるということが伝えられておるわけであります。塩見次官と業界代表との話し合いの内容は、第一点は市乳値下げの問題でありますが、これは、八月の二十五日から、東京、横浜地区の市乳で一合十四円のものを十三円に、また加工乳で十五円のものを十四円に引き下げる、第二点は、ただし十三円以下で安く売っているものは必ずしも価格の値下げはしない、第三点は、大阪、名古屋、福岡、神戸の四都市は九月一日から値下げをする、第四点は、九月以降の原料乳価は、夏場の各種奨励金をはずしたものとするという、この四点を農林省として了承されたわけであります。特に、この中で、第四点の、九月以降の原料乳価に対しての夏場の各種奨励金をはずしたものというのは、一升当り四円ないし六円の実質的な値下げを意味するものであります。従って、これらの話し合いの了解は非常に重要な要素を包蔵しておりますので、これらの経過について、直接折衝の衝に当られた事務次官から御説明を願います。
  149. 塩見友之助

    ○塩見説明員 ただいま芳賀委員から御質問がございましたが、私が折衝を始めたのは、二十日ではなくて、あれは二十八日か九日からだということでございます。それで、今お話がありましたが、正確な資料は今酪農課長の方から持って参りますけれども、市乳値下げの分についてはただいまお話のあったような話し合いになっておりますけれども、     〔委員長退席、本名委員長代理着席〕 原料乳価の問題につきましては、七、八月分の乳価について六月の水準を維持するというふうなことをきめてはおりますけれども、九月以降の分については何らきめておりません。新聞に報道されたとすれば、それは私どもの話し合いの外の問題であって、そういう決定はいたしておりません。原料乳の価格の問題につきましては、農林省といたしましては、これは、七、八月というものは、ここ二、二年の間においては原料乳価というものは値上りがあっても値下りがないような時期ですから、需給関係のいかんにかかわらず、農民の方としては、夏はよくなると、ずっと慣行的にここ二、二年いわれております。北海道等においてはその前はそうでもなかった時代もあるようですけれども、そういう期待に反して下げられるというふうなことは、今酪農奨励をやっている、また農業経営上も土地改良上も非常に有効な方法で進めておるものを挫折させるようなことがあってはならぬ、こういうことで、七、八月分の乳価についてははっきりと条件をつけまして、六月の水準を維持する、こういうことをきめておりますけれども、九月以降の分については何ら触れておりません。
  150. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの塩見次官の答弁は、農林大臣答弁と違うのですね。農林大臣は、六、七、八の夏場の乳価というものは、これは堅持する、さらに、九月以降の秋乳価に対してもこの水準を維持するように政府責任で善処するということを明確に当委員会においては言明しておるわけであります。ところが、事務次官のあなたが、乳業者の代表との話し合いで、九月以降の分については関知しないというような話し合いをされたとすれば、これは実にゆゆしい問題だと思う。だから、もう少し詳しく、あるいは今回の政府の滞貨乳製品買い上げの措置、あるいは生乳を学校給食に増額使用して消費の拡大をはかるというような諸点について、さらに、一円市乳引き下げの問題等について、総合的な話し合いというものをメーカー側の代表との間においてあなたはなさっておると思うのです。ですから、全体の総合された乳価問題の経過の内容的な点をこの際事務的に御説明を願います。
  151. 塩見友之助

    ○塩見説明員 原料乳価の問題につきましては、これは私が直接業者との交渉にタッチしました前から、七、八月分の乳価というふうなことは話し合いの中心になっておりましたが、九月以降の問題については当初から触れておらないわけです。九月以降の分は、その情勢下において別に検討するような形で進められておりまして、それについては政府と業界との話し合いでは触れておらないというふうなことであります。原料乳価につきましては、大体当初の話し合いから七、八月分の乳価というふうなことになっております。
  152. 芳賀貢

    ○芳賀委員 塩見次官は酪農問題については当委員会に出席が初めてですが、石坂さんはしばしば出ておるのですね。あなたは農林大臣の当委員会における確固たる言明というものは聞いておられたと思う。今塩見次官のお話を聞くと、これは大きな食い違いがあると思うのですが、政務次官はどう考えておりますか。九月以降の原料乳価等に全く触れないで、問題をただ七、八の乳価だけに局限して今日まで施策を進めてきたのですか。
  153. 石坂繁

    ○石坂説明員 九月以降の乳価について当委員会農林大臣がどういう発言をされたかということは、私も正確な記憶がありませんので、これは速記を見なければわかりませんが、要するに、今までの経過は、ただいま塩見次官からお答え申し上げておりますように、七月、八月分についての折衝をしてきて、その点について答弁通りに決定した、こういうことでございます。
  154. 芳賀貢

    ○芳賀委員 問題は、九月以降の乳価をどうするかということについて、農林省が全くこれを切り離して、考えておらなかったということにはならないと思うのです。ですから、この点については、農林省としては大臣並びに政務次官としてはどういう考えで今日まで来たのですか。
  155. 石坂繁

    ○石坂説明員 たびたび同じことを繰り返すようでありまりすけれども、七月、八月につきましては、農林省が介在いたしまして折衝、決定いたしたのであります。しかるに、九月以降の乳価の決定につきましては、原則として生産者団体と乳業者との間の自主的交渉によって行う、こういうふうな方針で臨んで参っております。
  156. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ずいぶん後退しちゃったじゃないですか。これは両次官に質問しても水かけ論になりまりすから、後刻農林大臣が出席されたときに明らかにしてもらいます。ただ、あなた方の答弁を聞きますと、夏乳価だけということでああいうような施策を進められたのですか。そうして、九月以降の乳価に対しては、メーカーと生産者側との自主的な話し合いに待つということになれば、メーカー側が一方的に一升について四円ないし六円の値下げを強行することは必至ですよ。それを自主的にやらせるなんというなら、政府というものは要らないじゃないですか。そうなれば、結局ずいぶん時期はおくれましたが、八月二十五日以降の京浜地区の一円値下げ、九月一日からは残った四大都市においては一円の値下げをやる、さらに地方に対しても漸次これを拡大するというこのことは、政府の施策によって一円の値下げを行うのでなくて、九月一日以降の原乳の引き下げによってこの一円の市乳値下げが行われるということに終るじゃないですか。生産者の一方的な犠牲で市乳の値下げが行われるということでは、政府の善意な施策の跡というものは何ら見ることができないと思うのです。従って、九月以降の原乳価格の維持ということに重点を置いた施策をむしろ進めていく必要があると思うのですが、いかがですか。
  157. 石坂繁

    ○石坂説明員 九月以降の乳価の決定を生産者団体と乳業者との間の自主的な交渉によって行うというならば政府は要らぬじゃないか、こういうお話でございますけれども、私どもは決してさようには考えておりません。やはり、その後の乳価の成り行きにつきましても、われわれも重大な関心を持っております。言葉じりをとるように聞えるかもしれませんが、政府は要らぬということを言われますと、まことに私どももお答えのしようがないわけです。しかるに、さようにいたしまして、私どもは、九月以降の乳価の決定をただいまのように両業者の間の自主的交渉によって決定されることを期待しておるのでありますが、この場合そうすることによって一がいに生産者一方を犠牲にした乳価の決定であるというふうにも実は考えておらないのであります。さような場合に、今回の市乳消費者価格の引き下げを口実といたしまして、生産者を犠牲にする生乳の価格の引き下げが一方的に行われることのないように、需給の事情、市乳及び乳製品向け生乳処理量の変化、乳製品の在庫状況、生産費の増減等、当事者双方が十分に納得のいく理由を示しまして自主交渉が行われるように指示いたしたいと存じております。また、乳価交渉は、乳価が同一である生産者団体ができる限り団結して行うよう指導いたしたいと存じております。かようにいたしまして、双方ができる限り納得のいく乳価の決定をいたしまするならば、それぞれの経営を改善、合理化することによりまして、大いに自主性が高められて参るであろう、かような見地からいたしまして、私どもは、両者の自主的決定によることが生産者のみを犠牲にすることには相ならぬ、こういう見解を持っておるわけであります。
  158. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは、石坂さんのせっかくの答弁ですが、九月一日以降になれば現実にわかるのですから、これはここで繰り返すことをやめて、今のような政府のお考えでいけば、これは生産者の一方的な犠牲で一円値下げを行う、ただし九月以降は原料乳価が四円ないし六円下ることは必至である。それを政府は何らなすことなく傍観しているということに終ると思うのです。  そこで、塩見さんにお尋ねいたしますが、乳価問題の最終的段階は、むしろ谷垣畜産局長の手を離れて塩見次官の方に移ったということが伝えられておる。すでに谷垣さんは職を離れて、酪農問題を解決しないで去るというのは、彼としても心中さびしいものがあると存じますが、このような塩見さんの一つの結論を出した程度では、せっかく塩見事務次官が乗り出しても大したことにならぬと思うのですが、いかがでしょうか。
  159. 塩見友之助

    ○塩見説明員 御批判はいろいろあろうと思いますけれども、主体は、私がやりましたのは消費者価格の点です。これが一番問題であったわけです。そこへ最重点を置きまして、その問題が片がついていないという話をした、こういう形でございます。それはできるだけ早い方がいいのですけれども、やはり全国に三千の乳業者がおりますし、三万人の小売業者がおるというような関係で、次官はできるだけ早く値下げをしてもらった方がいいというふうな、両方の関係もございまして、それで、売手・買手、売手・買手という段階を経てくるわけですから、全部役所の方でやるというふうな形にはなかなかなりません。地方々々の事情もございまして、民間の間での話し合いをできるだけ促進してもらう、大乗的な見地に立って、一円というのは痛いではあろうけれども、そこのところは、酪農振興と、現在の経済状態から見て過剰状態になっているというふうなこと、先々農民の方としては、今手をつけた酪農というものを伸ばしていくという方向についてそう後退することはできないというふうな形から、そこのところは大乗的見地に立って、一つ話をどんどん進めてもらいたい、こういうふうな形で進めたわけでございます。原料乳の価格については、谷垣畜産局長がやっておりましたときから何ら変化はなくて、そのまま引き継いできております。これをはっきりとした話し合いとして、七月における生産者乳価の引き下げをやめる、こういうことでございまして、当初からの話が九月以降の問題につきましてははっきりと話の中には取り上げられておらない。
  160. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、事務的の経過の問題ですが、たとえば滞貨乳製品の買い上げの問題、あるいは学童給食の生乳の消費量をふやすという問題、これは当然財政的な措置が伴うのでありますが、この政府の支出額の内容、あるいは乳製品買い上げの場合の品目の内容、それから、実際の買い上げの発動を時期的にいつからやるかというふうな問題、それから、もう一点は、これに伴ってこの六、七、八の乳価の場合もすでにメーカーにおいて乳価の引き下げをやったところもあるわけですが、この点は、引き下げをしないということを認めて、引き下げした分に対しては追加払いの形でこれは精算するということになっておる。従って、これらの精算は最終的にいつまでに終了するような指示を与えておるか、これらの点について具体的内容を聞かしてもらいたい。
  161. 塩見友之助

    ○塩見説明員 予算の内容につきましては明日の閣議で確定されることと思いますが、今までの話し合いといたしましては、学童給食用乳製品の買い上げに対する補助金というふうなもの、それを一応確定し、そのほかに、いろいろこういう仕事を進めていくのに必要な、県庁その他学校給食会等の事務費とか、あるいは消費増進のための宣伝費とかいうふうなものを含めまして、大体五億六千七百五十四万二千円というふうなことで今進めておるわけでございます。それから、生乳の方につきましては、当初予算が七億のところを、なお約五億数千万円残っておるというふうな状態でございますので、とりあえずそれは繰り上げて九月以降においてそれで充当していくというふうなことで、それでなおあと四億を必要に応じて予備費の方から年内に計上してもらう、こういうふうな話し合いで進めておる、こういう状態でございます。  それから、生産者に対する支払いにつきましては、できるだけ早く学校給食会の方と乳業者の方との契約を促進して、その契約ができ次第、こちらの方としては融資その他の十分な措置をとる。代金の方は、現物のあれですから、受け渡しその他の時期は必ずしも契約の成立の時期と一緒にはならないで、ある程度おくれますから、そういうふうな形で代金が支払われてから農家の方に渡るということでは、非常に農家の要望にも沿いがたいので、契約が成立したらば払ってもらう、こういうふうな話し合いになっております。その間の金融等につきましては、こちらも十分に骨を折り、金融がつきさえすればそれは払うというようなことを乳業者の方から約束をしてもらっております。
  162. 芳賀貢

    ○芳賀委員 特に生産者に対する夏場の乳価の清算、不足分の支払いですね、これを、メーカー側の代表と塩見さんとの話し合いの場で、少くとも何月の何日ごろまでには——全国的に、大メーカーのみならず、中小メーカーにおいても、乳価維持の点で清算が終了するようにすべきであるという点は大事な点であると思いますので、その時期等について明確にしてもらいたい。
  163. 塩見友之助

    ○塩見説明員 この問題は当初大乳業者よりもむしろ中小の乳業者が支払い代金に非常に困るわけです。それで、だいぶそちらの方とも話し合いをしまして、金融をできるだけ政府の方でもあっせんするというふうなことで、できるだけ九月十日を目標にして学校給食会の方との契約の締結ができるようにすること、これは文部省の方とも打ち合せまして、できるだけ緊密な連絡をとりながらそれができるというふうな形に持っていきたい、こういうふうに思っております。そうすれば、契約が成立しますれば、あとは金融によって——中小乳業者の方は金融等についてもかなり苦しいところがあるようでありますけれども、払う、こういうふうなことになっております。
  164. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 関連して、事務的な点を一つお伺いします。  今のわれわれの関心の一番重点は、何といっても生産者の乳価が維持されるかどうかということでありますが、さっきの返事でどうもはっきりしないのは、市乳分の生産者価格についても七、八月分については六月の水準を維持する、九月以降については原料乳と同様自主的にきめろという約束であるのかというのが一点。  それから、もう一点は、あなたの方と業者の方といろいろ取りかわされた覚書とか請書とか、申入書というようなものが資料として出ております。これはおそらく二十日ないしは二十一日にあなたの方と取りかわされたものと思う。これらを見ますと、ただ非常に危ぶまれる点は、七、八月の生産者乳価、原料乳並びに市乳を含めて、これが文字の上では約束されておるが、果して実行できるかどうかということは疑問なんです。というのは、大部分の会社はまだ清算をしておりません。七、八月分については清算をされていない。それは政府との九億の取引がはっきりしないからです。特に私どもはこの点に疑問を持つわけです。なぜかというと、あなたの方との覚書、これは局長と協会長の植垣さんとの覚書と聞いております。これによると、脱脂粉乳なり、バターなり、全脂粉乳の価格が決定しているが、この価格は少くとも六月水準の価格ではない。これは六月の水準の原乳価格から五円ないし六円差し引いたものです。それでなければこういう価格は出ない。あなたの方ではこれをいわゆる市価でなければ買えないということでこの価格をきめられておるようです。その以前に協会か組合か何かからあなたの方に出している資料と要請書を見ると、六月の水準でやった場合はこれより高くなる。この経過がどうなっているのかという点が一点。  それから、もう一点は、なるほど、九月の十日に契約ができて、そうすれば払うと言っておりますけれども、大体その内容を見ると、二十万石は乳製品で、十万石は牛乳になる。乳製品はその以前のやつがまだ五万石くらい残っているようですね。二十五万石をこの際この価格で買い上げたにいたしましても、もともとすでに六月の水準価格ではない。その上にもってきて、二十五万石を一挙に買い上げたといたしましても、これでは、前にお話しになった九億円買う場合の滞貨、いわゆるデッド・ストックの減少にはなりません。そこらの計算はどうなっているか。夏場において八十億といわれたストックがどれだけ現実に減っているのか、そしてそれに二十五万石を買うならばどれだけ実際に乳業者のストックが減るのか。依然として今でも大体八十億ないし九十億近くのいわゆるストックを持っておる。そのうち約五十億はデッド・ストックだ、こう言っておる。こういう点から見ると、私どもは、前の分と合せて二十五万石を買われるとしても、これがいわゆる乳業者の口実をなくす理由にはならぬように思う。この点も非常に疑問であります。  さらに、第三は、この支払いの時期です。私の聞くところによりますと、九月十日にかりに契約ができましても、この支払いの時期は大蔵省等との関係相当おそくなる、九月末までにこの庫入れが完全にできるかどうかもこれは疑問だ、それ以降は実際に学校給食の始まる時期だというふうなことが取りざたされておる。もしそうだとするならば、これは相当時期がずれるという問題が出てこようと思います。これらの三点については業者とどういう約束になっておるのか。  さらに、これを前提といたしまして、今業者の間では大体どういう話が進んでおるかといいますと、原料乳については当然これは下る、九月以降は四円から六円まで下げる、市乳につきましても六円下げるという話が出ておる。大阪におきましても、六円のものを処理業者、メーカーが一円持って、小売に三円持たせる。東京においては、五円四十銭を標準にして話し合いを進めたが、それでは少いというので、やはり六円下げようじゃないか。その一円下げの内容のうち、生産者の負担が六円、それからメーカーの負担が一円、それから小売業者の負担が三円、これが大阪のようです。東京ではやはり、生産者の負担が六円、メーカーの負担が一円五十銭、小売業者の負担が二円五十銭というふうなことで、これがきまらずにごたごたしておるというのが今日の実情のようです。こういう点を考えてみますと、九月以降についてはもちろんこれは六円下げるということをあなたの方は認められておるわけなんです。この文書その他を見ても……。金額は認められておらないが、はっきり申入書をあなたの方は受けておる。その受けておるものは、八月以降については云々と書いてあって、これは承諾しておる。しかも、今のような状況から見て、文書ではなるほど約束はされていましょうけれども、果してこの七月、八月の分についても、約束通りいわゆる生産農民に対して払われるかどうか、これは常識上から見てきわめて私は危ないと思う。  これらについては、どういう経過になっておるのか、今後どういう措置をとられるのか、どういう見通しで対処されているのか、これらの点について一つはっきりして下さい。
  165. 塩見友之助

    ○塩見説明員 ただいまお尋ねのございました七、八月の乳価については、はっきり約束ができております。それで、価格の方は、これは私がタッチします前に大体話し合いがついておりますし、それから需給の方の数字も二十万石の製品買い上げで話がついておりますし、これははっきりと私の前でも約束をいたしましたのです。これは実行できると思います。  それから、先ほど芳賀さんからもお尋ねがありました通り、支払い時期につきましては、当初はやはり、中小乳業者を中心としまして非常に資金繰りが苦しいから、代金決済を学校給食会から受けたあとでないと払えないというお話はありましたのですけれども、これは、農民の方の立場から考えますと、はっきり契約ができたらあと金融がつけば何とか払えるじゃないかというようなことで、中小乳業者の人たちにものんでもらいまして、これも引き受けた、こういうことになっておりますので、その三点につきましては、これははっきりと話し合いがついております。これが実行される限り、農民への支払いについては、まず九月十日を目標にして大体進められる、こういうふうに考えております。  それから、片方の原料乳価格の問題ですけれども、それは乳業者の方では一方的に自分の方の意思としては下げたいということは申しておりますが、農林省の方でそれをのんでおるという事実はございません。これは、相手方である農民との話し合いというふうなものを十分に見定めた上でなければ、契約自由の原則に基いて両当事者できめるというのが現在の法の建前でございまして、それで、一方的に強行するとかどうとかというのでいろいろ問題が起りますれば、これは現在の酪農振興法に基きまして十分な調整ができる法的な関係にはないと思いますので、その改正ができるまでの間、できるだけ法の範囲内において、県知事のあっせんなりで、政府の方もできるだけそこを円満に持っていくように努力をするというふうなことはやるべきでありますし、そういうふうなものを前提として、一方的に買手だけが意思をきめてそれを片方に押しつけるというふうなことを引き受けるという事実はございません。これは円滑に話し合いをできるだけ進めてもらう。相手方があるものを、買手だけで勝手にきめるというふうな形で問題が紛糾しますれば、それは今の酪振法では不十分でございますが、それの範囲内において政府としては調整に乗り出す、こういうふうな考え方でおるわけでございます。
  166. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そうすると、この文書にいろいろ書いてありますけれども、もし六、七月分について業者の方が支払いをしなかったという場合にはどういう措置をとられるかということが一つ。  それから、もう一点は、これは一つの見解になりましょうけれども、せっかく九億の金をお使いになって、三十万石を政府が肩がわりをするという一つの英断をして、結局七、八の両カ月だけ乳価維持ということを大体においてはかられただけである。九月以降については、なるほど市乳価格は一円下げるけれども、原料乳は、業者の方は当然今の市場価格からいけば下げる、それから、市乳についても、すでに業者間では、メーカーと小売の間でもって、農民には六円、自分たちは一円とか三円とかいって、これが問題になっている。業者の間で言っているのは、この申入書を受けた皆さんの方で九月以降の分については関知をしないと言われておるので、これは大体値下げを了承したものだというふうに一般業者の方はとっておるようです。そうすると、結局九億の金を使って、七、八月だけは辛うじて六月水準を約束通り——これも危ないが、できたとしましても、九月以降は、その九億の代償としてむしろ値下げについて業者に一本とられたという関係になるではないか。その後の需給状況等が、これによってデット・ストックが少くなるとは私どもは考えられない。少くともの政府がこの前の国会で説明された場合においては、大体において、七十五億ないしは八十億のうち、四、五十億のものがデッド・ストックになっておるというふうなことを言われておるわけである。これが解消したようにはこの措置ではとられない。これはどういうことになるのですか。これでは、私は、乳業者、特に大乳業者のストックを持っていない人たちはある程度救われるかもしれない、しかしながら、生産農民は、結局七、八月にきわめて不確かな保証をもらったというだけで、むしろ九月以降は政府がはっきり値下げを了承したというほかにはとりようがないと思います。しかも、九月以降については何らの対策がない。両方において自主的に相談をしろ、もしそれがうまくいかなかったならば、政府は——これも役に立つかどうか知らないが、法の命ずるところによって、今の紛争調停なり何なりについて骨折ってみるというだけである。そんなものが効果があるなら、この問題はとっくに片づいておりますよ。こういうことになるが、これは私おかしいと思う。これに対する、あなたは少くともその当時の担当者としてそのくらいの見通しを持って当られておったと思うが、これはおかしいと思う。あなたはどういうふうにこの点を理解をされておって、今後どう対処されるか、御答弁を願いたい。
  167. 塩見友之助

    ○塩見説明員 九億の財政支出というものは、これは農乳価格の維持というふうな点で突っかい棒にするというだけではなくて、当初の予算説明にもございましたように、消費の拡大が一番のねらいでございますのと、特に若い学童等の体位の向上に寄与するというふうな点で、補助の中心は、やはりできるだけPTAの負担を軽減しまして、それで学童に十分飲んでもらう、それで先々の消費の拡大、体位の向上等に資したいというふうな点が、金を計算して参りますと中心になっております。それで、農乳価格というのはそれによって間接的に維持されるように、需給のバランスがとれるようにというふうな考え方でいっておるわけでございますので、そういうふうな線については、方向としては大体そういうふうな考え方で進めておるわけでございます。ただ農乳価格だけを直接的に維持する、こういうふうな種類ではございません。しかし、それだけのものを出すについては、これは、例年農民が期待していたことと反しまして、七、八月には農乳価格を下げるというふうなことが行われそうな気配もございましたので、それについてははっきりした条件をつける、こういうふうな形で進めておるわけでございます。九月以降の農乳価格については関知せずというのではなくて、これは前々から大臣もこの委員会等でお話しになっておると思いますが、現行法では、政府として十分な農乳価格の維持、あっせんについての処置ができるだけの法的な関係を持っておりません。不十分でございます。これはできるだけ早く法の改正をやりまして、そういうところについてある程度調整ができるような形へ持っていきたいというふうな考え方をもちまして進めておるわけでございますが、法制が整うまでの間は現行法で極力できるだけのことはしなければならない。しかし、それが不十分であるということは認めておるわけです。ですから、どうしても法の改正が要るだろう。それは、在庫の量につきましても、それから大業者あるいは中小業者、あるいは必要によっては小売業者の財産関係、経営の内容等、この種のものは、十分な調査ができるだけの権限を持ちませんと、なかなか明確な、具体的な問題についての意見というものは述べにくいという状態にもございますし、いろいろな意味において、牛乳を中心としましたそういうふうな政府でタッチすべき仕事についての制度というものが非常に不完備でございますから、その点については改正を必要とするという考え方を持っております。そういうふうな意味で、関知せずということではございません。とにかく、改正されるまでの間、現行法を極力援用して遺憾なきょうに処していきたい、こういう考えでおるわけであります。
  168. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうも今の答弁はおかしいですよ。学校給食は要するに消費拡大だ、これは一応わかる。しかし、当面の問題としては、消費拡大であると同時に、価格維持ということにつながる。要するにストックの処理であることは明らかです。それを、そういうふうなごまかしを今ごろ言われるということはおかしい。今まで塩見さんという人はそういういいかげんなことは言わない人だと考えておったが、きょうの答弁では、これは全くでたらめなことを言っているとしか考えられない。それで、もし七、八月の生産者価格を六月水準に原料乳についても維持するというなら、なぜ、政府でお買い上げになるときの価格水準を、大体において値下りしない前の原価計算に基いた価格をきめられないのか。私は当然この点は業者もずるいと思う。ずるいと思うが、値下げをした原料価格の基礎の上に立った価格で——これが時価です。こういう価格でやられたということは、そこに非常に大きな何というかあれがあるわけですね。これは何か製酪組合から出ておるものによると、これによって四千何がしの損がいく、政府で買い上げてもらって得が五百何万だ、その損額というものがこの価格では出てくる、それを生産者に払わなければならぬということを言っております。これはほんとうかうそか相当検討の余地があると思いますが、ここらにも、政府の、あなたの言っていることと、一つの文書の上と実際にやっていることと趣旨が一貫していないのであります。この点をもう一度明確にしてもらいたい。時価でなければ買えないというが、そういうふうな六月の水準を原料乳についてだけ維持するについても、ここに相当の大きな開きが中小乳業だけを見ても出てくるわけです。大乳業も当然出てくると思う。そういう矛盾をしたことをやっておる。そうしてまた、支払いの時期等についても、今の話によると多少の金融はできるでしょうけれども、全然これも明確な処置はないということでは、私どもは非常に危ないと思う。この点が一点。  それから、今のお話通り、九月以降については、いろいろの法制上の欠陥や制度上の欠陥がある。これは根本的に改めなければならぬ。しかし、これは今改まる問題じゃありません。臨時国会で改まるか、あるいは通常国会にいかなければならぬ問題だ。しかし、問題は九月以降になっておる。この問題は、もうすでに、この前の六月の乳価買いたたきのときにも問題になったから、九億の金を出して臨時処置をとったでしょう。今後の問題について酪振法の改正をしてどうするとかこうするとかいっても、九月の問題に間に合いません。従って、この九億の金を出す以上は、当然、常識としても、九月以降の生産者乳価の維持について何らかの——九億がおとりになるかならぬか、こういう小さな額になるかどうかわかりませんけれども、当然何らかの処置をとるのが政府のやるべきことだ。もしそれがないとすれば、九月以降については、別個の、九億の金を出したと同じような措置を今用意しておるのかどうか。その用意なくして、これは両方の自主的な話し合いできめて、うまくいかなかったら要するに何とか調整をします、こんなことで乳価維持ができるはずがありません。生産者乳価は、さっきも言ったように、もうすでに業者の方は、生産者乳価を、市乳については東京、大阪では一升について六円、それから原料乳についても四円ないし五円落すということをはっきり言っておるじゃありませんか。それに対して、法律を改正することが半年先になるかどうかわからないようなものを当てにして対処できるはずがないじゃないですか。そうすると、九億の金は何のために使ったか、こういうことに当然なろうと思う。  この二点をもう少し明確にしていただきたい。欠点は欠点でけっこうだと思う。そして、いろいろな事情で、たとえば大蔵省が文句を言って、この前九億を取るときの約束があって、大蔵省が銭出さぬから対策が立てられないというなら、はっきり立てられないとここで言ってもらいたい。そういうことがなければ、法律の改正をどうするとか、今の不確かな乳価調整のことで片がつかないことは明らかです。そして、業者と生産者団体といってみたところで、今までの実績で明らかじゃないですか。そういう言い逃れじゃなしに、そういう不備な法律の欠陥のある中で九月以降の乳価についてどうするということを、なぜこの前の段階において明確に約束しなかったか。七、八月については特別に九億の代償としてやるけれども、これも不確かなものである。しかし九月以降については野放し、こういう約束をなぜされたか。そのときに、今のお話のような無責任なことでやれるはずはないと思う。九月以降に対して何かはっきりした政策の打ち合せ、具体策がなければならぬはずです。この点がどうも一向明らかにならぬので、一つはっきりしてもらいたい。
  169. 塩見友之助

    ○塩見説明員 この仕事は、やはり需給関係が非常によろしくないので、それを安定さして、全体の酪農振興の進む方向というものを狂わさないように持っていきたいというのが趣旨でございまして、あくまで余っているものを有効に使う。ですから、PTAの負担なしに——製品につきましてはCCC等で非常に安く入ってきております。それを乳業者から買う値段とは相当な差がございます。そこをPTA父兄の負担にしないで学童の方に置きかえたい、こういう点がねらいでございまして、それらの量も、やはりPTAの方がそれだけのものを消費できるというふうな保証がありませんと、そのまま数字を拡大するというわけには学童給食の方は参らないわけで、やはりPTAとの相談の範囲にはおのずから限界があります。それは逐次進むに従ってふえていくことは可能でありましょうけれども、現在の段階ではやはりある限界があるわけでございます。そういうふうな関係から、それに必要と思われる範囲の量を——これは、需給の関係の数字は、たびたび御指摘がございましたし、私も数回聞いてみましたが、現在法の不備ではっきりしたストックその他の調査方法を持っておりません。話等を聞きましても、かなり時々によりまして異同がございます。これはランニング・ストックの計算方法もいろいろありましょうし、いろいろな数字が出て参りまして、不安定な状態にあるわけですけれども、そこを大まかにつかみまして、それでこれだけの数量を買い上げて学童給食に持っていこう。学童給食の方も、文部省の方から言いますると、やはり、補助金がこれだけつきましても、PTAの方でそれだけのものが消化できるかどうかという点については問題はあるわけですから、おのずからそういうふうな消費の方の数量とにらみ合せながらでないと、すぐにきめにくい点もございます。そういう関係からきまったものでございます。  それから、一方、九月乳価の問題につきましては、一方的に乳業者の方だけできまるものではございません。これに対する農民の意思というものは当然出て参るわけございましょうし、それらの話が円滑に進めばこれは問題はないし、それが進まなければ、現在はどうしても現行法の範囲でできるだけのことをするという形になっておりまして、今度の九億の買い上げとの関係においては、七、八月の乳価だけに当初から限っておるわけでございます。私が始めましたときにもそういうふうな形で話は進んでおったわけでございます。その七、八月の分ははっきりした条件です。九月についてははっきりとした条件とはもちろんしておらないのでありますが、そういう形で進んでおるわけでございます。
  170. 足鹿覺

    足鹿委員 関連して……。  先ほどから久保田君の質問に対して、塩見次官は酪振法の点について言及をされておられますが、たとえば、法が不備なので十分効果を発揮できない、従って次の機会に法の改正をするのだということをしばしばおっしゃいますが、私どもの見ておるところでは、酪振法そのものの運用が十分になされておらないと思う。あなたはこの委員会においでになりませんから今までの経過がおわかりにならないでしょうが、これはみんなの一致した意見です。酪振法そのものを運用しておられないのです。運用せずにおって、不備だ不備だと言われる。たとえば法第二十五条の適用の問題についてあなたに伺いたいのでありますが、この調査あるいは検査を行う場合は、第二項に「生乳等の取引の公正を確保するため必要があるときは、」云々とあるのです。あなた方は、在庫検査をされたこともなければ、何ら第二十五条の運用について経験を持っておられないではないですか。第一、三十万石分の在庫乳製品の買い上げの根拠自体が私どもには明らかでないのです。何によってそういう買い上げの重大な政策を行われる根拠を求められたのか。それは、明らかに、第二十五条の二項によりますと、生乳の取引の公正を確保するために在庫調査をされる。在庫調査をされた結果、滞貨が著しいので、従って相当量を買い上げるなら買い上げるという、そこに一つ判断が出ると思うのです。各地においてこの生乳取引の契約について紛争が起きておる。たとえば、香川県においても、あるいは群馬県においても、栃木県においても、知事に対してあっせんの申請が出ておるが、あなた方はそれを取り上げて処理をしてやれという指導もしておられない。何ら運用せずにおって、法が不備だ法が不備だと言うことは、一体どういうことを不備だと言われるのですか。まずその点を、先ほどからあなたは執拗に言われますから、関連して一点だけお伺いしたいと思うのです。運用せずして、どこが不備だか不備でないか、わかるはずがないじゃありませんか。何を根拠にしてこの買上数量を決定されたか。その目的は明らかに生乳取引の公正確保になければならぬはずだと思う。あなたの答弁を聞きますと、消費拡大が重点であって、生産者の生乳価格の維持確保ということについては間接的なものであって云々ということを言っておられますが、従来からの当委員会における経過から見まして、あなたの意見は非常に驚くべき変り方で、われわれはあぜんたらざるを得ません。     〔本名委員長代理退席、委員長着席〕今度の買い上げということについては、それは消費の拡大という面が一面含まれているということも私どもは否定はいたしませんが、現在この紛争が各地に起き、滞貨があって、それが市況を圧迫する、そういうところに乳業メーカーの乳価の値下げも胚胎をしておる。従って、買い上げによってこの紛争を調整し、そうして正当な取引を確保し、従って生乳価格の維持安定をわれわれは期待しておるのであります。にもかかわらず、今のあなたの御答弁は、全く今までのこの委員会における審議の経過を無視した非常に乱暴な発言と私は言わざるを得ません。  第二点として、しからばあなた方はどのような見解からこの買い上げをされるのでありますか。酪振法とは全然関係なしに、行政措置一本やりであなた方はこの九億円の国費を今支出されようとしておるのでありますか。その点を二点として伺っておきたいと思います。
  171. 塩見友之助

    ○塩見説明員 先ほど法の不備と申しましたけれども、ただいま足鹿委員からお話しの通り、それは、現在の法律をフルに運用すればかなりの問題が解決し得る点はあると思います。しかしながら、やはり、これを立法しました当時は、こういう酪農振興についての非常な悪条件が出たような状態ではございません。私らもいろいろ検討してみまして、これは、済んだものとしては、肥料の価格であるとか、あるいは米麦の価格であるとか、いろいろなものがございますけれども、牛乳はなまで非常に取扱いにくいしろものでございますので、扱い方はかなり生鮮食料品に似たような部分もございます。ですから、なかなかやり方等については問題はあると思いますが、現在の状態下においてやるとすれば、もう少しそういうふうな点について工夫をこらす必要があるだろうというふうなことも考えられるわけでございます。現在までその運用についてまじめにやったかというふうなことにつきましておしかりをこうむりましたが、その点については、十分なことはやっておらないというふうにも考えられます。その点について、畜産局長から、先般の二十二日の閣議の決定と同時に、そういう点でできるだけ現行法を活用して、それで調整をはかるようにという通牒は出してございます。  それから、二十五条の解釈につきましては、私直接法制局と交渉したわけではございませんけれども、この検査はかなり制約を受けておって、定例的にずっとデータをとるという形ではなくて、むしろ、紛争等があって酪農調整が必要な場合に、そのつどそのつど、こういうふうな形になっております。どうしても、肥料であるとかその他の物資についての価格等を考えます場合と同様に、やはり経常的にきちっとした報告を徴して、それで相当しつかりしたデータというものを持たないと、十分な調整には当りにくい。そのつどそのつどではなかなか押えがつきにくいというふうな感じを持っております。必要があれば二十五条につきましては酪農課長から説明をしていただいてもよろしゅうございます。
  172. 足鹿覺

    足鹿委員 それは、今あなたの答弁は、酪振法は今日のような生乳等の過剰傾向の生まれるような時期の立法ではない、従ってこの法の運営上において不十分な点があるというふうに逃げられますが、この法そのものを全部を通覧されまして、これを的確に運用されるならば、私は、ある程度、現状にも適用し、相当の効果を上げ得る内容を備えておると思うのです。増産するからには、取引の公正化の問題について当然立法が行われておる。ただそれを、今あなたは一部お認めになりましたが、十分に活用しておられない。第三章の場合におきましても、これは最近あわてて畜産局長通牒程度のものでお茶を濁しておられますが、実際にはちゃんと運営をすれば相当の効果が上るようになっておる。紛争が起きたときそのつどそのつどとおっしゃいますが、昨年以来今日までずっと継続して紛争が起きておるとわれわれは解釈しますが、別にその紛争はそのつどそのつど起きたとはわれわれは解釈しておりません。現に、昨年来、この酪農恐慌的な現象、これに基く紛争はずっと一貫して続いております。従って、報告を聴取され、あるいは検査をされる当然の法運営上の責任があると私は思います。たとえば、この罰則の場合において、第二十八条の場合においては、報告をしない、あるいは虚偽の報告をした、あるいは検査を拒み、あるいはこれを妨げ、もしくは忌避した者に対しては三万円以下の過料に処すると罰則規定があるじゃないですか。従って、これをある程度あなた方が信念を持って運用されるならば、法の欠陥云々によって事態を処理できなかったとは私は認めがたいと思うのです。一番強い物価統制令の場合を調べてみましても、統制令当時においては、統制経済のときの非常な権力規定であっても、三十条において、必要ありと認めたときはこの調査あるいは検査をすることができるとなっておるではありませんか。法文上そう大した開きはありません。あなた方はどういうふうに法改正しようというのでありますか。そういう点において、酪振法そのものも、何者かの圧力なりあるいは何者かのいろいろな懐柔なりによって、その運営そのものに対してあなた方が熱意を失っておられることから、いよいよもってこの法が死文化しておるのではないかと私どもは思うのであります。そういう点においては、権力規定であったところの物価統制令においてすらも、なそうと思えばちゃんとその当時も簡単な条文でなし得たのであります。いわんや、第二十五条の一項においては、「この法律を施行するため必要あるときは」と、ちゃんと規定して、法全体の適用についても明確な規定がなされております。第二項においては、先ほど申しましたように、「生乳等の取引の公正を確保するため必要があるときは」と、明文の規定がございます。あなた方は一つの滞貨量に対するところの推計を下される。これはただ推計でありますか。報告を聴取され、あるいは検査をされた事実が今までないとわれわれは思いますが、一体何に基いてこの九億円の支出をなされようとするのか、その根拠も明らかではないではありませんか。当然やるべきことをおやりになって、しかる後、どうもおもしろくない、十分にやれないとおっしゃるならば、これはわかりますが、もともと酪振法そのものの運用を怠っておられるとわれわれは断ぜざるを得ません。そういう点で、先ほどの言明については、また大臣がおいでになったときに伺いますが、間接的に生産者の生乳価格に影響を与えるのであって、直接には消費の拡大を当面の目的としてこの買い上げをするということは、非常に従来のこの委員会の審議の経過、いろいろな点を無視したところの一方的な発言だと私は思います。そういう意味でありますと、ただいま久保田君が言われましたように、何らかの別個な対策が次にとられなければ、この急場の間には合わぬと私どもは思います。そういう点についても何ら御答弁がない。私はただいまの塩見さんの御答弁を非常に遺憾に思いますが、関連でもありますし、他の委員の発言を妨げてもどうかと思いますから、重ねてこの二つの点をお尋ねします。もう一応御答弁を願いたいと思います。
  173. 塩見友之助

    ○塩見説明員 率直に申し上げまして、酪農振興法に対する運用について遺憾の点が多いという御指摘は、私も同感せざるを得ないと思います。それをできるだけやってから、その上で改正するなら改正しろ、こういうふうなお話でもありましょうが、やはり、いろいろ検討いたしてもらっておるわけでございますが、報告徴取についてはかなり経常的でない、それからまた、法規を作ったときに、それらの予算なり定員なりというものを、肥料なりその他の価格安定をやっておりますもののように、一緒に取りつけてないというふうな点で、運用の不十分な点等もございます。しかし、とにかく、当面の問題としてはこれをできるだけ活用してそれで進めるというふうなことを大体通牒としては出しておりますから、そういうふうに御了承願いたいと思います。  また、今度の買い入れについて、農乳価格については何らやってないというふうなお話でしたけれども、私はそういう答弁ではないので、この問題については、七、八月の農乳価格というふうなものを六月水準に維持するというふうなことははっきりとした条件になっておる、こういうことでございまして、農乳価格に全然関連をつけてないということではございません。これは、はっきりと、農乳価格にも、七、八月の農乳価格という点では関連はつけてあります。
  174. 倉成正

    ○倉成委員 関連して塩見次官にお尋ねしたいと思います。  先ほどから芳賀委員その他の御発言がございましたが、三浦大臣と次官の見解とは明らかに本委員会の経過から考えまして食い違っておるような感じがするわけであります。九月以降の乳価について大臣と次官とはよくお話し合いになったことがございますかどうか、その点をお伺いいたします。
  175. 塩見友之助

    ○塩見説明員 そういう話し合いというのは、これは程度の問題でございまして、どの程度ということで、話し合いはしております。この話を進めた当初から、これは私が引き継ぐ前から、九月乳価には直接触れておりません。はっきりと条件として——これはほんとうの条件ですから、もし満たされなければ、そういう乳業会社からも学校給食会への買い上げは停止いたします、そういうはっきりとした条件としては、これはスタートのときから問題を七、八月の乳価というふうに限っておるわけです。九月乳価については、直接今度の買い上げと結びつけた話は、はっきりとした条件としてはスタートのときから進めておりません。それは大臣にも十分御了解いただいておるわけであります。
  176. 倉成正

    ○倉成委員 次にお尋ねしたいと思いますが、八月二十五日から市乳価格について一円の値下げをする、こういうお話し合いが成立したということを新聞紙上で拝見しましたが、これは事実でございますか。
  177. 塩見友之助

    ○塩見説明員 それは、明確に申しますと、農林省の方としては、先ほど申し上げましたように、小売業者約三万、それから中小の乳業者三千というあれでございますし、それもやはりはっきりとそれを代表して決定できるというふうな機構も組織的にできておりません。時期的に言えば早いほどいいわけでございますから、それで、京浜地区——これは中小の方も少いし、話も非常に進めやすいということで、当初から、そこからまず手初めに進めて広げていく、こういう形できたわけであります。それで、市乳価格一円と申しますのは、最終的には消費者と小売業者との話し合いできまるわけです。それで、私らが話し合っているのは、その業者を呼んで——代表者その他を選定することはできませんし、時間的にも制約を受けておりますから、そういう乳業者を呼んで、そちらから小売の方へそういうふうにするように話し合いを進める、こういうふうな形で話を進めておるわけでございます。まだ小売価格については法律的にきちっと乳業者が引き受けられるというわけでもないわけです。しかしながら、世論的な支持も強うございます。政府としても消費拡大のためにはそこまで踏み込んでいこうという意図を強く示しておるわけですから、結果としてはそういうふうにできるという見通しをこちらも持ちましたし、それから、乳業者の方も、大体できるだろうという見通しで進めておるという形で、決決定自体はそういうふうに乳業者の方に勧奨するというふうな建前になっております。法律的にはきちっとした取りきめにはなっておらないのです。そういう形で進めているという工合であります。
  178. 倉成正

    ○倉成委員 それでは、もう一点お尋ねいたしますが、市販の牛乳の価格は、京浜地区においても現在十五円を割ってない、この事実は御存じでございますか。
  179. 塩見友之助

    ○塩見説明員 そういう点につきまして、話し合いが、先ほど申し上げましたように、乳業者と小売業者と消費者というふうな関係になっておりまして、最終的な価格に政府としては直接タッチをしていないという関係でございます。そういう関係から言えば、これは逃げ口上ではありませんで、それは必ずできる、こういう自信を持っております。価格の関係等につきましては、やはり代金支払いの時期は先になっておりますから、そこまでは持っていける、こういう確信を持っております。乳業者もそれは確信を持っております。これはもう、一部の有力な大半のメーカーの方から下っていけば——おれたちだけはどうしても値下げしないというような人がいても、法律的には強制できませんが、政府の方も、そういう場合の買い上げは、そういう人のはやりません。それはもちろんやりませんけれども、そういうような形で世論とその他が合わさってそういうところに行き得る、こういうふうに見ております。この点については、法律的にも、それから話し合いとしましても、相手の数も非常に多いわけですし、またしっかりした代表権を持った団体がそれほどあるわけでもございませんので、急を要すればそういう形にして進める以外に方法としては考えられないわけなのです。
  180. 倉成正

    ○倉成委員 先ほどから二、三の点をお尋ねしたゆえんのものは今度の消費者価格の問題について農林大臣がとられた態度が、大臣がいろいろ新聞紙上で御発表になったというのは八月中に値下げをするということでしたが、この問題は、大メーカーもあれば中小メーカーもあるし、いろいろ複雑な事情があることはよくわかるのですけれども、もうすでに八月の最終日を聞こうとしておる今日において、市般されておる牛乳の消費者価格が下っていない。こういう事実を一つもってしても、今まで大臣以下畜産当局がとられた見通しが非常に甘かった、こういうふうな感じをわれわれは抱くのでございますが、これについての塩見次官の御感想はいかがでございましょうか。
  181. 塩見友之助

    ○塩見説明員 私も、そういうあれで、乳業者との話と値下げについての交渉はやりましたのですけれども、やはりほかにも用もたくさんございますので、個々の状態を毎日は聞いていないのです。ただいま聞きますと、値下げをしていないところもあるけれども、値下げをしたところが大半だ、こういう話でございます。そこらの点については、小売業者全体と話し合いをつけられるという状態にはないわけです。しかしながら、それは確信を持ってそこにリードしていける——大半の生乳を出しておる京浜地帯の乳業者も寄りまして、その点については自分らも責任を持ってやるということですから、これは一時的には一、二の例外はあるかもしれませんけれども、大勢はそれで押し切れる、こういうふうに見ておりますので、その点以上にはなかなか、やはり全部の乳業者ではないですから、約束もし切れない点もあります。しかしながら、そこは、世論とそういう乳業者の協力等によって、そういう方向で大勢は制していける、こう考えておるわけでございます。
  182. 倉成正

    ○倉成委員 いろいろ御説明がございましたが、結果として出てきた問題は、非常に農林省の方が準備が不十分だった、こういう印象を私ども見ておるわけでございます。今度の酪農の問題は、基本的な問題についてはすでにこの委員会においてもうずっと論議し尽されておりますから、あえて繰り返しませんけれども、結局、生産の伸びが一年間に一七%以上伸びておる、消費の伸びがこれに対して非常におそい、この現象の一つがこの夏場の乳価の値下りとなって現われたので、酪農の振興の基本的な問題の中において現われました氷山の一角のようなものです。従って、夏場の牛乳の価格の問題ではなくして、根本的に日本の農業を米麦農業から酪農業を中心にして興していくのだ、こういったことが叫ばれた四、五年前の政策を今後も政府が確信と自信を持って進めていくかどうかという問題につながると思うのであります。そういった意味において、九億円の国費を投じて夏場の価格を維持して、消費者価格については曲りなりにも、まあ面目をと言いたいところでありますが、事実は幕切れになって非常にみじめな形での解決をした、これが事実であります。こういうことでは、生産農民としては安心して乳牛を飼うことができないし、また、メーカーとしても、これは別にメーカーの肩を持つわけではございませんが、やはり何か農林省の方針がふらふらして思いつき的にいろいろなことをやられるという不安を持っておるのではないかと思うのであります。そういったことでは日本の酪農政策というのは発展することを望むことはとうていできない。従って、酪農振興について抜本的に——いろいろ酪振法、酪農基金法等のお話も同僚委員からございましたが、もっと突き進んで、今日の乳製品等について国家において需給調整機関を作る、たとえば米麦における食管会計のようなものを作って、そうして価格の安定を考えていく、こういった御構想なり御意見はございませんか。この点についてお伺いいたしたいと思います。
  183. 塩見友之助

    ○塩見説明員 ただいまの消費者価格を政府の方でもって直接的にどうこうするというふうな問題については、非常にむずかしい問題でございまして、これは戦時中の物価統制令等があれば別なんですけれども、なかなかこれはむずかしい問題でございます。  もう一つは、ただいまお話しのように、ふらふら政府の方がしてやしないかというのですけれども、基本の方向といたしまして、酪農を振興していくというふうな点については、なお何ら変更は必要としないと思うのであります。現実にやはり過剰々々と言いながらも消費はほかの物資に比べまして非常に高いスピードで引き続き伸びておるわけであります。ただ、その消費の伸びと見合って見ました場合に、ことにこういう不景気で、需要弾性が非常に高い。日本の一般の家庭の経済から見ましては需要弾性の高い商品でございます。それと見合いまして、不景気と重なって生産の伸びのテンポも非常な速度でございますから、それがちょっと食い違っているというふうなことは明瞭でございます。また、それに対する十分な、流通関係あるいは価格決定関係、それに伴った消費の拡大等についての措置その他が従来十分とられておらなかったということは私も認めます。しかし、農民の方から言えば、やはり農業経営上も非常に有利であるし、土壌の改良にもなって生産基盤が強化されるわけですから、やりたい。これはやはり、あるテンポで農民の要望として出てくるものをできるだけ認めて、その線に沿って消費の拡大をして参りたい、こういう考え方は変らないわけであります。ただ、それがあまり無理になれば、これはどうしても、財政負担という点から、国民一般の負担の増加という点も考えられますから、財政とのにらみ合いをしなければならないので、これは無制限に農民の要望に応ずるというふうなことでもよくない。まあ適当なところはある。ただ、やはり景気、不景気が入ってきまずから、そこらの数字が相待って生産の増加と消費の増加がうまくいくようにということは非常に困難です。そこの間の需給の調整につきましては、やはり非常に腐りやすい、加工品にしましても貯蔵期間をそう長くは見込めないものでございますから、米麦とかその他生糸のように政府の方で扱うというのには非常に不便なものでございます。生鮮食料品の青果物等に比べればまだ手は打てると思いますけれども、役人仕事として米麦式に手を出すというのには非常に危険のあるものでございますから、そこらについて過去においてもずいぶん考えあぐねておった、こういうことでございます。今後ともその点については何らかの適切な措置をとりたいと思いますけれども、米麦並みにはなかなか持っていきにくいと考えます。
  184. 倉成正

    ○倉成委員 それでは、観点を変えて申し上げますが、五カ年計画によりますと、大体昭和三十一年に比して二倍の生産を上げていくというように記憶しておりますけれども、このテンポでずっと昭和三十三年、四年、五年、六年、七年と一応生産を伸ばしていく、それに応じて消費が十分伸びていくということについて、またそれに対する施策についての御自信があるかどうか、今日においてそういった計画について改正する必要があるというふうに考えられるかどうか、そういった点を一つ明らかにしていただきたいと思います。  それから、もう一点、先ほどいろいろ米麦と違うというお話がございましたが、これはよく私も承知しております。しかし、塩見次官もよく御承知のように、アメリカやデンマークやあるいはその他諸外国の実例もあることでございますし、そういったいろいろな各国のやり方、もちろんこれは日本の農業の中における酪農がまだ経営として確立していないという面もございましょうけれども、そういった面について日本の酪農政策は非常におくれておる、こういう点は私は次官も十分御承知のことと思うのであります。そういった点もあわせて御答弁いただきたいと思うのです。
  185. 塩見友之助

    ○塩見説明員 五カ年計画等その他の部分についても、現在日本の置かれた世界的な現状下における景気等につきましてもいろいろ問題がございますので、それと関連して検討を要する場合には検討を必要とするのじゃないか、こう思っておりますが、今のところでも、一般の経験者としては、年率一五%くらいならそう無理ではないのじゃないか、なおそういう見解を持っておられる人は多数ございます。そこらはもっと資料を整備して検討をしないといけないと思う。今年度の生産の伸びは、この率を二〇%ちょっとこすくらいに伸びておりますので、そこにアンバランスがあることは明瞭でございます。ただ、農民の方の要望を一五%にきっちり押えるとか、その一五%が確信を持って今年はどうとかいうのは、現在の経済状態下でははっきりとしたことは年々申し上げにくいような状態にあるわけでございまして、そこで食い違いが起ってくるということは免れがたい。  それから、各国の乳価についての制度等については検討した資料もございます。各種検討してみた結果、日本の乳業の状態に即応した措置というのはなかなかむずかしいのです。一頭飼育でございまして、経営的に、十頭、十五頭という飼育ならば、飼料の方を制約する、それから一部を減らすというようなこともできるのです。しかし、なお一頭飼育が相当な比重を持っているという関係から申しますと、なかなかそういう調節やその他のやり方は各国の例を見ましてもむずかしい点が多いと思いますが、検討中でございます。
  186. 倉成正

    ○倉成委員 いろいろ御意見を伺ったのでありますが、やはり、今日の段階で、非常に生産農民が乳価の問題を気にし、また、メーカーの方々がこういった今後の経営の問題でいろいろ苦労しておる。この点について、やはり確固たる将来の方向というものが十分に示されていない。まことにむずかしいことではありますけれども、やはり、乳価をかりに下げるにしても、これが一つの正しい方向だというふうな確信を持った一つの方向が示されてないというところに問題があるのじゃないかと思うのであります。この点について将来とも十分御検討いただいて、総合的な施策を早急に立てていただきたいことをお願いいたしまして、一応私の質問は終ります。
  187. 松浦周太郎

    松浦委員長 農林大臣が御出席になりましたので、これより酪農及び災害に関する大臣に対する質問に集中します。大臣に対する質疑は、申し合せに従いまして、両党それぞれ二十分くらいの持ち時間といたしたいと思いますが、さよう御了承願いたいと思います。芳賀貢君。
  188. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣お尋ねいたしますが、酪農問題について、先ほど石坂政務次官並びに塩見事務次官に質問したわけですが、今回の応急対策について、特にその中で消費拡大の問題として、市乳一円値下げの問題が、京浜地区においては今月の二十五日、他の四大都市においては九月一日から一円値下げが実施されることになった。これに関連して九月からの原料乳価の問題が全国的に注目されておるわけであります。この点については、三浦農林大臣は、八月一日の当委員会において、わが党の中澤委員並びに私の質問に答えて、九月以降の原料乳価の問題については、これを切り離すというようなことはしないで、あくまでも政府責任において六月以降の乳価と同じ線でこれを維持することに努力するというような言明をなさったのでありますが、ただいま、特に先般メーカー側の代表と農林省を代表した塩見事務次官との間における妥結の内容を見ると、事務次官の答弁によると、九月以降の原料乳価については政府としては当初より何ら触れておらない、しかも、今後秋乳価の問題については、これは政府が直接介入するということでなくて、生産者とメーカー側の自主的な話し合いにおいてこれを処理してもらうようにしたいと、こういうような、農林大臣の言明と全く相反した、責任のない答弁が行われておるわけであります。これは実にゆゆしい問題であると思いますので、この点について、まず農林大臣から責任のある答弁を願いたいわけです。
  189. 三浦一雄

    三浦国務大臣 お答えを申し上げます。  次官の答弁は、いかようにしましたか、私は今ここへ来たばかりですからわかりませんが、私は、先般お尋ねに際しまして、実は業界との折衝の過程でございましたから、具体的にお答えするということはかなり困難な事情でございましたけれども、九月以降の乳価の対策についてはどうするかということでございましたので、七、八の最盛需要期において値下げをされるということは困る、従って六月の水準を保ってほしい、これは強く業界との折衝の対象といたしまして、そうして次官以下に交渉をやってもらった、こういう経緯であります。九月の分につきましては、私としましては、今の臨時対策等を施行、実施いたしますから、そうしますと、在庫の負担であるとかそういうようなものも解消できます。これは、もとより、その解消の価値といいますか、これでは不十分だという御意見もあるやに聞きますけれども、とにかくそれだけの問題を解決する。それと同時に、新規用途の開拓をいたしますから、そうしますと、ここに新しいバランスができてくる。需給のバランスがなめらかになる。そうしますと、従来と異なって、特に乳価改定の要因等もなくなるのでございますから、私としましては、九月以降におきましても、生産者からの買上乳価等は下げないようにして参りたいという所存には変りはございません。すでにそのことは、今後といえどもできるだけの配慮はして参りたい、こう考えておるのでございます。ただし、これは、秋の乳価改定は各地区によっていろいろ行われて参りますから、その際に、農林省といたしましては、行政的指導と申しますか、あるいは業界の話し合いも十分にしてもらいまして、そうして終末の結論をつけなければならぬことは申すまでもございません。従って、次官等は、その後段の事情をお話し申し上げたことと、自分は察しております。
  190. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの大臣答弁と、先ほどの両次官の答弁とは、全くこれは食い違っておる。農林大臣の今の答弁がかりに農林省の一貫した基本的な方針であるとすれば、あなたを補佐しておるところの両次官は、全くあなたの意思を無視して食言しておることになる。そういうような女房役を持って、あなたの構想とか信念というものは実現することができないと思う。この場において石坂次官並びに塩見さんのもう一度今の農林大臣の御答弁を土台にしての御発言を願います。
  191. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ちょっと補足して……。  次官方の答弁は、折衝の過程において具体的に九月の乳価をどうするかということは相談の対象にしておらなかったということを申し上げただろうと思うのです。従いまして、今後どういうふうにそれを指導するかということにつきまして、かりに私のお答え申し上げたことと、あるいは説明せずにおりました分もあるやに察せられますので、必ずしも両次官が私の意図と反対にやっておるとか、あるいはまたどうのこうのということはなかろうかと思いますから、その点は御了承を得たいと思います。
  192. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これはあとで速記を調べてもらえばわかるのですが、問題は、塩見さん並びに石坂さんの言うことが、これが正直な発言であるとすれば、結局今回の滞貨製品の買い上げあるいは学校給食における生乳の消費拡大等の処置は、単に夏場の七月、八月の乳価維持だけに尽きてしまったということになる。九月一日からの秋の乳価等の問題に対しては何らこれは関連がない、継続性がないというふうに、そこで隔絶されているわけです。これは非常に問題があると思う。ですから、かりに今大臣答弁なすったことが方針であるとすれば、もう何日かの後に迫った九月一日からの秋の乳価、しかもメーカー側はすでに秋乳価については一升について四円ないし六円の乳価の値下げを実質的にやるということを明確にしておるのです。奨励金撤廃という名前のもとに一升四円ないし六円の原料乳価の値下げを行う、こういうことになれば、ただ単に六大都市に局限されたような市乳一円値下げというのは、結局生産者に対して原料乳価引き下げのしわ寄せをして市乳の引き下げが行われたということに終ってしまうわけです。だから、これは当然農林大臣責任において、前回の委員会で明確にされたように、九月以降の秋の原料乳価に対する態度、これはあくまでも責任と自信を持って対処するということをぜひこの委員会において具体的に責任のある答弁を願いたい。
  193. 三浦一雄

    三浦国務大臣 先ほどお答え申し上げました通り、両次官のお答えは、九月の乳価を具体的に思量したのじゃない、それには触れなかった、こういうことであろうと思いますから、その点は申し添えておきます。  それから、九月以降の原乳の乳価の決定でございますが、これは困難ではありますけれども、私は今申し上げたような線でもってぜひとも指導して参りたい。各地区、各地方の事情によっても差異がございますが、できるだけの措置をとって参りたい、こういう所存でございます。
  194. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、これに関連してもう一つ既成的な事実を指摘してお尋ねしますが、先般、農林当局の畜産局長と、それからメーカー側の代表である日本乳製品協会、日本製酪協同組合、飲用牛乳協会の三つの代表との間において覚書が取りかわされておる。これは農林大臣も御存じの通りであります。この覚書の内容を見ると、問題になる第一点としては、今回のこの政府の緊急措置は将来の乳価維持を必ずしも継続することを意味したのではない、端的に言うと、七月、八月の夏場の乳価維持の対策であるというふうな、そういう内容が第一点。もう一点は、一円値下げの場合においても、地域内の全体の末端の販売店において一円値下げをしない場合であっても、これはそのことを追及するのではなくて、この覚書をかわしたメーカー側は卸価格の幅で一円だけ値下することで足りるというのが覚書の内容であります。ですから、先ほど同僚委員指摘があったように、これでは一円下る場合もあるし、下げなくてもいいということは、これは政府とメーカー側の覚書の内容です。最後にもう一点は、これはこの覚書を通じて明確になっておる点は、九月以降の原料乳価は別であるということがこの内容に明確になっておる。これが覚書の問題点の第三点です。もう一点は、これにあわせて、この三つのメーカー側の団体が、農林大臣にあてて、「牛乳乳製品の需給調整対策に関する請書提出についての申入書」というものを出しているはずですから、あなたはこの内容はわかるはずですが、これは、たとえば学校給食向けに使用する乳製品の数量、あるいは入庫の期限、それから、その次には生乳生産者に対する七、八月分の生乳一升当りの支払い価格を六月の水準で維持するという問題、それから、第四点は、この市乳価格を、十四円ないし十五円のものについては八月二十五日より一合について一円の値下げを行うという点、こういう点が請書の中に書かれてあるのですが、この請書に添付された申入書によると、「今回の生乳の生産者価格維持の措置(市乳地帯の乳質奨励金を含む)は七、八月分に限るものであって九月以降に於ては右措置を継続しないものであることを申添へます。」ということがメーカー側から正式にあなたのところに出されておる。ですから、この覚書あるいは請書についての申入書を見れば、すでにもうメーカー側は、九月一日から明らかに原料乳価についてはこれと切り離して、奨励金撤廃という意味において原料乳価を下げるということを政府に通告しておるじゃないですか。こういうことを全く伏せておいて、われわれ当委員会にいかにも誠意のあるような答弁をしても、われわれはそれを御了承することができない。この点について、単に表面だけの答弁ではなくて、こういうようなメーカー側との間における政府との折衝の内容、今後の乳価維持の問題点等に対しては、どういう考え一体腹をきめてやるわけなんですか。ここにやはり大臣と次官の答弁の食い違いがあるわけです。この点をお尋ねします。
  195. 三浦一雄

    三浦国務大臣 業界側は、この問題に関連しまして、自分たちの希望であるという申し入れば受けました。しかしながら、農林省としましては、それを確約するとかというようなことはございません。従いまして、業者側としては、先ほど来御指摘のいろいろな点がありますが、たとえば中小企業方面との折衝も非常に困難を来たしておって、実情もかなり困難であるということをわれわれもよく了解した点でございます。従いまして、業界としては、それだけの希望は開陳してきましたけれども、私たちとしましては、先ほど来申し上げました通り、一応の事態として困難が一部解決しておりますから、そうすれば、この需給の面も、今後は学校給食あるいは集団消費の状態等によって需給の均衡も得ることになるし、そうなりますと、値下げの要因も実はなくなるわけでございます。従いまして、地方の各地区に当りましては、九月以降のなにはやはり当事者双方として十分に話し合いを進めるということも当然のことでありますし、そういうことによってわれわれとしては今後牛乳の対策につきましても努力を傾注して参りたい、こういう所存でございます。
  196. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林省が了承された覚書の内容について、特に覚書の五の「生産者乳価の維持については一ケ月のみの乳価維持は認めないが、五社以外のものについては止むを得ない事情があると認められる場合は別に考慮するものとする。」、これは農林省側の見解としてはどういう意味ですか。
  197. 塩見友之助

    ○塩見説明員 こまかい問題ですから、私から申し上げますけれども、このお話は、七、八、二カ月です。それも原料価格を六月水準で維持しなければだめなんだ、一カ月だけ、半分を六月乳価で維持したということでは条件は満たされない、こういうことであります。ただし、五社以外については、中小乳業者の中にはかなりいろいろな条件がありまして、もう六月前に消費者価格を相当下げてしまったとか、いろいろこまかい事情があちらこちらにあるようでございます。そういうふうな関係からして、大きい五社以外の中小乳業者については、地方々々でいろいろな実例もあったようでございますから、それを具体的に見定めた上で、二カ月農乳価格を上げることに対しては、正当と認めるだけの措置を生産者との関係でとっているというようなものについては、これは特別に考慮しよう、こういうことでございます。これは、中小乳業者の数は概算三千といわれておりますけれども、その中には、個々にいろいろ話し合いをいたしますると、実情考えてあげないといけないようなものもあるようでございますので、そういうふうな形にしたわけでございます。
  198. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは表面上の説明なんですが、問題はこの裏なんです。ここに書かれている覚書の表面に出ておらない点を私は尋ねているのです。結局、今回の緊急買上措置等は、これは七、八月の乳価を維持するものである、今後乳価維持をやる場合においては、かかる政府の具体的な措置が継続されなければいけないというような意味なんですよ。  それから、もう一点は、第七ですが、これは先ほど指摘いたしました市乳一円値下げ、これは、メーカー側としてはやる意思はあるが、万一販売店側の同意が得られない場合においては、メーカー側は卸売価格を一円引き下げるだけで足りるものとするという、この了解の内容はどういうものですか。
  199. 塩見友之助

    ○塩見説明員 前の方は裏は何もございません。先ほど申したように、二カ月分をちゃんと農民に払ってもらわなければ、一カ月だけというのでは困る、こういうことをはっきりさせているわけであります。何にも裏はございません。  それから、七につきましては、先ほどから申し上げましたように、三万と称する小売業者とこちらと話をするようなことは時間的にもなかったわけでありますが、できるだけ急ぐ必要があります。それから、この措置によってある程度犠牲を払っても政府に協力できるというふうな立場にあるものは、やはり加工業者及び飲用乳のメーカーでございますから、それとの話し合いをして、そこから小売の方へ話を進めてもらう、こういうような話し合いで進めたわけでございますから、最終的に小売業者との話を政府としてはやれないわけです。そういうふうな関係から、メーカーの方が合理的な卸価格の値下げをやる、そして、もし小売の方がそういう点で間でうまいことをするとかどうとかいうことがあれば、それはいたし方ない、小売の分までは、交渉中だから、どうしてもそこまでの約束は、小売を代表してメーカー等でやることはできない、こういうことはもっともでございまして、そういうふうな形で、あとは世論の支持、政府の指導というふうなことによって補足しながら、こういう点は趣旨を貫徹するほかに方法はないわけですから、ここを明確にしてある、こういうことでございまして、何ら他意はないわけであります。
  200. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただ、この点は、全国の牛乳消費者が望んでいるのは、小売価格が実際一円下って、一円安い牛乳が飲めるというのが期待なんですよ。それはできてもできなくても政府としてはいたし方ないということになれば、末端までこの一円値下げは徹底しないということになるでしょうね。  次に農林大臣お尋ねいたしますが、大臣相当決意と自信を持っておられるようですが、九月一日から現実に全国的に原料乳価の引き下げは行われるという事態が必ず来るわけですね。その場合には政府として具体的にどうしてこれに対処されるお考えですか。もうすでに構想はあると思うのですが、どうですか。
  201. 三浦一雄

    三浦国務大臣 従来までも、御承知の通り、ここ一両年の間原乳をだんだん下げておるわけであります。過去に下げておってそれを蓄積しておるから、それをいわば財源みたいにして今後保持をしよう、こういう意味ではもちろんないのでございますが、そういうような事態になってきた。ところが、今後としましては、先ほど来説明申し上げた通り、今需給のバランスを欠いてきた、そこで、われわれとしましては、乳製品等の滞貨を買い上げする、同時に、これを新しい消費面の学校給食等にも向ける、同時にまた、集団飲用等の奨励もしまして、そしてなま牛乳等の消費も喚起する、こういうふうになってきますと、おのずからここに需給のバランスがおおむねできて参ります。そうしますと、均衡を欠くために出てくるところの乳価を値下げするというようなことも、これはその理由がなくなってくるばかりでなく、同時にまた、滞貨の一掃によっても経営上も弾力が出てきますから、そういうふうな意味で値下げの素因がなくなる。こういうような事態を十分に認識した上で、地方等によっていろいろな事情がございますが、その間における乳価等の改定に際しましては、それを基礎にして、生産者をたたくような方策はとらないように十分見きわめて参りたい、こういうことでございます。
  202. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう一点お尋ねしますが、大臣はしばしば酪農振興法の根本改正をやりたいということを言っておられますが、農林大臣として、来たる臨時国会に成案を得て酪振法の改正をやられるお考えであるかどうか、あるいはまた、改正案を提案されるとすれば、大体大綱はどういうような点を改正の主眼とするのかという点が第一。  それから、もう一点は、やはり今後生産と消費のいわゆる調整をしていくためにはデッド・ストックに対する制度上の措置というものが必要だと思うのです。そういう場合においては、やはり政府はこの乳製品等の買上措置を随時行なって、そうしてこれによって需給調整をはかるということも、これは当然恒久対策としては必要になってくるわけです。そうなると、形はいろいろあると思いますが、たとえば農産物価格安定法等の改正を行なって、この中にそれらのものを包括して処理するということも、これは可能なことだと思う。ですから、これらの制度上の改正、改善等に対しては、どういう意図でこれを改正するのですか。  それから、次の臨時国会に提案されるだけの自信を持っておられるかどうか、この点もお尋ねしておきます。
  203. 三浦一雄

    三浦国務大臣 第一点は乳価の取りきめの問題でございますが、これは、現在でございますと、全く自由な取りきめに放任されておるわけでございまして、これはやはり、当事者の双方だけの取りきめでは、経済的に弱い者と強い者とのいろいろな摩擦が出て参りまして、そうしてことに生産者等は不利な状況になるわけでございますから、従来とてもその点を緩和するためにあっせん委員等の制度がございますが、もう一歩進めまして、そうして価格決定についても一つのあっせん調停の制度をもう少し改善して参りたいと第一に考えます。  それから、さらにまた、第二点としましては、今御指摘になりました、デッド・ストックを買い上げする制度を酪農振興法に取り入れるかどうかという問題でございますが、ただいまのところ、恒久的に一定の数量が出てきたときにこれを買い上げるという制度はいたす考えはございません。問題は、価格の決定の場合にもう少し進んだ方策にしていきたい。こういうふうにしまして、そうして、やはり生産者とそれからまたメーカー側との間によき慣行を盛り上げつつ、その線に沿うて改善するということが大切でありまして、直ちに強力な措置をいたしましても実情に沿わない点があろうかと思いますが、事態の推移を見守りながらいたすとすれば、肥料調整法等にもとられております通り、あるいは価格調整その他につきましても考えなければならぬ事態もあろうかと思いまして、この点は今後もなお検討を重ねて参りたい、かように考えておる次第であります。
  204. 芳賀貢

    ○芳賀委員 提案の時期はいつですか。
  205. 三浦一雄

    三浦国務大臣 できれば至近の国会に出したいと考えます。
  206. 芳賀貢

    ○芳賀委員 臨時国会ですか、通常国会に出すのですか。
  207. 三浦一雄

    三浦国務大臣 至近の国会に出します。
  208. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま農林大臣の言われた至近の国会というのは、これは、通常国会以前に臨時国会がある場合においては、臨時国会に提出するという御意思ですか。
  209. 三浦一雄

    三浦国務大臣 そういう心組みでおります。
  210. 中澤茂一

    ○中澤委員 関連して……。  亀岡第一部長さん、実は酪振法の第二十五条で滞貨検査、在庫検査ができるかできないかということは非常に議論をしておるのだが、政府は依然としてやろうとしないのです。どうしてもこれはできないものか、できるものか、その疑義を一つ明らかにしてもらいたい。
  211. 亀岡康夫

    ○亀岡説明員 お答え申し上げます。  お尋ねの問題は、酪農振興法第二十五条の規定によりまして在庫調査ができるかどうかという御質問の趣旨に承わりました。この二十五条を読んでみますと、「農林大臣又は都道府県知事は、この法律を施行するため必要があるときは、……乳業を行う者から必要な報告を求めることができる。」、こう規定してございます。従いまして、この規定が発動できますのは、この法律を施行するため必要があるとき、さらに説明申し上げますと、この法律に規定してあります条項を具体的に実施するため必要がある場合、たとえば取引契約についてのあっせんを行う場合に農林大臣または都道府県知事が助言をするというような必要の場合に報告を求めるというようなことが、この二十五条の第一項の規定でできると考えます。しかしながら、一般的に何らかの政策を実施するためにこの規定を発動いたしまして報告を求めるということは、この規定からはできないと考えております。
  212. 中澤茂一

    ○中澤委員 二項の方でできないですか。
  213. 亀岡康夫

    ○亀岡説明員 第二十五条の第二項は、「農林大臣又は都道府県知事は、生乳等の取引の公正を確保するため必要があるときは、その職員をして……乳業を行う者の事務所、事業所等に立ち入らせ、業務の状況又は帳簿書類その他必要な物件を検査させることができる。」、こう規定してございます。従って、ここにありますように、「生乳等の取引の公正を確保するため必要があるとき」、この場合にはこういう権限が行使できる、こういうことになるわけでありますが、その牛乳等の取引の公正を確保するということはどういうことかということは、やはり具体的にどういうことを目的としているかということをきめなければ、この権限はやはり一般的な場合には発動できない、こういうふうに考えております。
  214. 中澤茂一

    ○中澤委員 その「公正を」という問題ですね、今乳価紛争は新聞でも御承知のように非常にもめているわけです。その公正という立場から、施行上としても、事務所あるいはその他の物件という文句がありますね。だから、その文句から言えば、それは倉庫検査、滞貨検査ができるという解釈は成り立たないですか。
  215. 亀岡康夫

    ○亀岡説明員 お答え申し上げます。  この法律は、確かに、第二十五条の第二項で、牛乳等の取引の公正を確保すると、こういうことがございます。しかしながら、この法律を全般的にながめてみますと、第一条の目的にもありますように、「生乳等の取引の公正を図るための措置を定める」、こういうことになっているわけであります。従って、その定めた措置を実施するために必要な場合にこういう権限を行使できる、こう解釈すべきではないかと思います。なお、つけ加えて申し上げますと、この二十五条第一項、第二項両規定とも、違反した場合には処罰されるという処罰規定になっておりますので、この規定を解釈します場合には、処罰規定として厳重に解釈しなければならないという解釈の態度が前提にならなければならないと考えます。
  216. 中澤茂一

    ○中澤委員 これができないとなると、根本的に問題を考え直さなければならぬのです。これは大臣も政務次官も恒久対策をやるための滞貨検査をやるということを言明しているんです。この法律でできないとすれば、次の方策を考えなければならぬ問題なんです。われわれはできるという解釈をしている。倉庫の滞貨の検査はできる、要するに、公正の確保の点においてもかけられるし、できるという解釈をしている。こういうふうに解釈した場合はどうですか。
  217. 亀岡康夫

    ○亀岡説明員 お答え申し上げます。  この法律を読みます場合に、第二十五条の二項の牛乳等の取引の公正を確保するということは、やはりこの法律を離れて読むわけには参らないのでございまして、この法律は、先ほど申し上げましたように、こういう目的のために必要な措置を定め、その措置のために必要な場合にはこういう権限を行使することができる、こういうのでございますので、単に何らかの施策を実施する目的のために、その政策が牛乳等の取引の公正を確保するという目的でありましても、この第二十五条の二項の規定から直ちにこの権限は行使できるというわけにはならないと思います。
  218. 中澤茂一

    ○中澤委員 その前に、紛争あっせんの調停事項があるんです。これは第三章ですか。そういう紛争が現に数件起っている、それは施行上のあれだから、その件に関する限りはあの第二十五条の発動ができるという解釈は成り立ちますか。
  219. 亀岡康夫

    ○亀岡説明員 お答え申し上げます。  仰せの通り、現実に紛争があります場合に、その紛争をあっせんすると申しますか、解決するというためにこの権限を発動するということは、やはりこの法律の規定の範囲内でございますから、できると思います。
  220. 中澤茂一

    ○中澤委員 そのできる場合は、たとえば山梨県なら山梨県に紛争調停が出て、今あっせん調停している、そういう場合には、山梨県における乳業会社の事務所並びに倉庫だけができるのか、あるいは、それがもし明治乳業の山梨工場であるとすれば、それを敷衍して明治乳業の本社並びにそういう関連のものに対しても検査権の発動ができるか。
  221. 亀岡康夫

    ○亀岡説明員 具体的な問題になるので、法律の適用についての判断が非常に困難かと存じますが、先ほど申しましたように、現実にこの法律の規定してある範囲において取引の公正を確保するために必要があるということでありますれば、その乳業を行う者の事務所の状況を検査させることができる、こうありますので、その事実がこれに該当すれば、権限の発動はできる。ただ、ただいま申し上げましたのは事実問題でございますので、その事実が果してその法律の規定の権限を発動できる事実かどうかという判断の問題があると存じますので、いずれともこの場合お答えできないことと存じます。
  222. 中澤茂一

    ○中澤委員 それは、しかし、山梨県なら山梨県で起った問題を山梨のその工場なり事務所は発動して検査することができるが、もちろんそれと関連した、たとえばその乳業会社の本社の検査というものは、それにやはり関連しておるのですから、可能であるという解釈が成り立つと思うのですが、どうでしょうか。
  223. 亀岡康夫

    ○亀岡説明員 その御質問が具体的に取引契約についての紛争ということに限られて参りますと、その紛争解決するというために農林大臣なり都道府県知事がその権限を発動するのでありますから、今の場合に、山梨県だけにとどまってその権限を発動できる範囲内にあるか、また東京の本社を見なければ紛争解決できないものであるかということによってきまるものでありまして、直ちにそれがいずれであるということは、この規定だけからはお答えできないのではないかと思います。
  224. 足鹿覺

    足鹿委員 関連して第一部長にお尋ねをしますが、「この法律を施行するため必要があるときは、」と二十五条にうたっております。これに対する御解釈はどういう御解釈ですか。
  225. 亀岡康夫

    ○亀岡説明員 第二十五条の「この法律を施行するため必要があるときは、」と申しますのは、この法律に規定してある事項を現実に執行する必要がある場合に、農林大臣なり都道府県知事が権限を発動できる、こういうふうに解釈します。
  226. 足鹿覺

    足鹿委員 肥料需給安定法は実施という字句を使っておりますが、実施も施行も同様のものと御解釈になりますか。
  227. 亀岡康夫

    ○亀岡説明員 お答え申し上げます。  要するに、二十五条の「この法律を施行するため」とありますのは、農林大臣なり都道府県知事が何らかの行政権を発動する、こういう必要がある場合、こう考えるべきなのであると存じまして、それが、実施する、施行する、いずれの言葉が使われておりましても、ただいま申しましたような意味になるのではないかと思います。
  228. 足鹿覺

    足鹿委員 二十五条に、「農林大臣又は都道府県知事は、」というふうに、法を実施する者の立場が明記されておりますが、今中澤君の質問されましたように、現在の日本の乳業者の実態は第一部長も御存じだろうと思うわけであります。中小メーカーは相当数ございますが、実際において紛争が一番多く起きておりますのは、全国にその乳業者が工場または事業所を持っておるものに対して多く起きておるのでありまして、それはただ単に一都道府県に限られたものではないのであります。従って、この「農林大臣又は都道府県知事は、」ということは、広い範囲において、一都道府県に起きていることであっても、農林大臣が当然この法に基いて必要な報告を求め、あるいは二項によるところの検査等がなし得ると解釈されますが、さように解釈して間違いありませんか。
  229. 亀岡康夫

    ○亀岡説明員 二十五条の第一項、第二項の規定は先ほどから申しました通り処罰規定でございまして、この規定の解釈は厳重になさるべきものだと考えます。ところで、農林大臣がこの権限を行使する場合という想定でございますので、どの規定がそれに該当してくるか、たとえて申しますと、たとえば第三条の、農林大臣が集約酪農地域を指定する、こういう行政措置を講ずるというような場合に、必要があるときには必要な報告を求める、こういうことにもなると思います。
  230. 足鹿覺

    足鹿委員 それは大体私の解釈通りのようでありますからよろしいのでありますが、先刻第一部長は、全体を通じてという意味のことを言われましたが、たとえば第三章第二十条におきまして、「生乳等取引契約につき紛争が生じたときは、」云々とありまして、はっきり紛争が生じた場合、現にそれに合うような事態が起きておるのであります。たとえば、香川県であるとか、あるいは栃木県であるとか、群馬県であるとか、現にそういう紛争が起き、知事にあっせんの申請を二十条に基いて提出をしておる事実があるのであります。ただ、その知事あるいは農林大臣がこの法令に基いてこの法の発動をしておらないというだけのことでありまして、私どもが今お尋ねをしておるのは、紛争は起きておる。そこで、その紛争とは何かということになりますと、二十五条の二項に基き、生乳等の取引の公正を確保するため、すなわち、一定の乳業者から通告した価格によって乳の出荷をする場合に、その話合いが、乳業者から通告したものに対してそれを承知しない場合は、集乳、受乳を拒否するというような事態まで現実に各地にあるのであります。そういう事態をわれわれは現実に知っておりますから、二十五条の二項に基いて、生乳等の取引の公正を確保する、すなわちこの条項に該当するものであるという解釈をとっておるのでありまして、そういう事実があっても、この「生乳等の取引の公正を確保する」、そのために必要があるとわれわれは認めるわけでありますが、この解釈は法制局としては妥当でないというお考えでありますか。現実にそういうものがあるわけであります。ただ当局がこれを法令に基いて措置しておらないというだけのことであるのでありまして、これは当然法令に基いて法令を発動し、適当な措置を講ずることが至当である、こう私どもは判断をして、その法的根拠を求めておるわけでありまして、先ほども塩見事務次官は、法があっても十分にこれを活用しておらないということは、しばしばわれわれの質問に対して言明しておるわけであります。いきなりあなたもおいでになりましたので、今までの経緯等がよくおわかりになりませんので、ただ法文解釈だけにこだわられるという点もありましょうし、実態をよく把握されておらない点もあろうかと思いますので、一応そういう実情を申し上げて、よく御判断を願いたいと思うわけです。どうですか。
  231. 亀岡康夫

    ○亀岡説明員 最初に一言申させていただきますが、私が先ほどお答え申し上げましたのは、二十五条一項、二項の規定は処罰規定であるから厳重に解釈をしなければならない、こういうことを申し上げたので、その規定によって一般的な報告なり検査ができるということではないことをお断わりいたしておきます。  それから、次に、第二十条の取引契約のあっせんの具体的な問題につきましては、これは、農林大臣なり都道府県知事が必要を認めるという場合にこういう権限を発動できる、こう規定してありますので、必ずしも権限を発動しなくても、ほかの事実で判断ができるということでありますれば、第二十五条の規定によって農林大臣または都道府県知事が義務づけられるということはないと考えられます。
  232. 足鹿覺

    足鹿委員 もう一点伺いますが、そうしますと、その紛争が起きておる都道府県、特定な行政区域ということにおいてはお認めになったようでありますが、しからば、現在法令に基いて農業協同組合あるいは酪農協同組合が全国的な組織として成立をしております。そのものが、加盟組合の意思を正当な手続によって受け継いで、そしてあっせんの申請をした場合、農林大臣としてはこの法令に基いて行動することが可能でありまするか。ただその限られた地帯においてのみそれは法が発動されるという御解釈でありますならば、その紛争の起きた者が組織をしておる合法的な法令に基いた機関を代表する者がこの法に基いてあっせんの申請等をやる場合はどうなりますか。
  233. 亀岡康夫

    ○亀岡説明員 ただいまの御質問におきましても、やはり最初申しました二十五条の一項または二項の規定の考え方、すなわち処罰規定であるという考え方から見まして、これをゆるやかに解釈すべきではないので、今申しましたような見地から、必要な最小限度の範囲に限ってこういう権限の行使ができる、こういうことになるのではないかと考えます。
  234. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、第二十八条によりまして、この罰則規定で三万円以下の過料に処する旨の規定がございますが、そうしますと、この二十五条というものは、罰則を伴っておっても何ら強制力のないものでありますか。そうしますと、この法は当初から全く現実には適用のできない性格を持ったものと解せざるを得ないわけでありますが、そうしますと、この二十八条も空文にひとしい。何のために二十八条が設けられておると御解釈になっておりますか。
  235. 亀岡康夫

    ○亀岡説明員 国の法律で所定の規定があり、またその規定に違反した場合は処罰するという旨が定めてある場合に、あるにかかわらずそれが放任されるということは、法治国において許されないところでありまして、たとい今のようなことが事実問題として——私は存じないのでございますが、法律の建前としては、やはり、二十五条、二十八条、この二つの規定があるという前提に基いて解釈をしなければならないと考えます。
  236. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは文書でけっこうですが、統計法第二条に指定調査というのがあります。これは総理府の告示で乳業倉庫というものを告示するならばできるという解釈があるのです。それについてあとで御研究になって、政府がそういうふうな告示をすれば乳業会社の倉庫検査ができるかどうかということを、文書でけっこうですから、当農林委員会にその解釈を御提出願いたい。     —————————————
  237. 松浦周太郎

    松浦委員長 この際食糧に関する件について質疑をいたしたいと思います。  質疑の通告がありますので、これを許します。松浦定義君。
  238. 松浦定義

    松浦(定)委員 私はこの際北海道開発長官お尋ねいたしたいのでありますが、昭和二十六年に、北海道の重要性からいたしまして、特別立法をもって北海道開発に当るということで、山口長官は今日まで十七、八代目の長官であろうかと私は考えるのであります。従って、北海道ばかりでなく、全国から見て、非常に長官がかわり過ぎる、こういう意見でありましたが、今度の山口長官は、就任以来わずか二カ月半の間に四回行かれまして、北海道民よりもむしろ北海道の内容をよく知っておるというくらいまで新聞は伝えておるのでありまして、道民ばかりでなく、国家的の見地から言って、非常に期待をいたしておるのであります。そこで、特に食糧の重要性から考えまして、歴代の長官がいろいろな面に努力されて、しかも、今日まで山口長官北海道の農業事情についてはつぶさに視察をされ、その際のいろいろの体験の中から、今北海道に一番適しておる作物はということで、寒地農業確立という御意見を、実は私どももいろいろ聞いたわけであります。  そこで、本日は時間もありませんから、一点にしぼってお尋ねをいたしたいのでありますが、特に今問題になっております日本の糖業政策の中で、できるだけ自給自足がやれるように努力いたしたいということから、ビート中心の振興というものが非常に盛んになっておるわけであります。そこで、やはりこれは農業政策の一環からいたしまして、山口長官が親しくその点について調査された結果、私の聞くところによれば、ぜひ北海道にもっともっとビート工場を設置いたしたいというふうなことを新聞記者発表等をされておるようであります。今度最後に岸総理もおいでになりましたときも、長官がそういう点に相当積極的に触れられておるというのであります。そこで、私は、特にそうした面から、北海道開発にそういうものが非常に必要であるという御感想があった点について、見られた結果からの体験をまず一つお伺いしたいのであります。
  239. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 まだ就任日も浅いのでありまして、とうてい松浦さんほど私は詳しくはないわけでありますが、しかし、大体一カ月間にわたって北海道各地を視察して回りました結果、何としても、北海道の今後の開発の面においては、むしろ農業の面よりも地下資源開発、鉱工業の誘致といったような面から開発しなければ、人口が千万になるといったような、われわれしろうとが言っておるようななまやさしい北海道の農業事情ではないということをつぶさに見聞して参りました。その結果として、御説の通り北海道に残されたる唯一の農業はビート栽培ということが一番北海道には適しておることである、こういうふうに考えた次第であります。と同時に、ちょいちょい新聞等では、この乳価の問題と合わせて、ビートとそれから乳牛とを組み合せておるような考え方を持たれるのでありますが、私は、少し考え方を変えて、むしろ北海道のビートと食肉牛とを合せて考えていく方が安全ではないかと考えておるようなわけであります。  そこで、私はなぜ北海道のビート栽培の問題で強く意見を打ち出しておるかと申しますと、すでに農林当局のお考え方からいたしましても、今後昭和四十年までには十工場はよろしいというようなお考えのようですが、私は、もう一つ飛躍いたしまして、まだまだわれわれが先頭に立って大いに指導していったならば、今後まだ十四工場くらいは優に経営が成り立つという考えを持っておるような次第であります。また、国家的に申し上げましても、キューバ島からの原糖の輸入額は四百六十二億円になっておるわけでありますが、これに見返りで日本から輸出するものはわずかに十四億円になっておるような次第であります。でありますから、かりに北海道が今後さらに十ないし十四工場を増設したとしても、なおキューバ島から輸入する原糖の三〇%ぐらいしかこれを補てんすることができないというような現況でもございます。ですから、日本の年間の砂糖の消費量は約千百五十キロトンでありますが、このうちビートはわずかに八十五キロトンでございます。わずかに七%半であります。でありますが、ソ連やイタリアは完全に自給自足をしております。フランスが九五%、西独が七〇%、こういったような率で、欧米いずれの国でも三〇%以上は自国の原糖でまかなっておるというような状態ですから、これはどうしても、外貨の事情がこんな事情でありますから、この獲得の上からも、政府としては努力をしなければならぬという信念を私は固めたような次第でありまして、しからば、ビートの適作、適地はどこだと言えば、何としても北海道である、簡単に申し上げるとこういう結論を得たような次第でありますので、何とかして私の在任中にこのビートの増産計画ということにひとしお力を尽したい、かように考えたようなわけであります。
  240. 松浦定義

    松浦(定)委員 実は、先ほど農林大臣に、ちょうど山口長官の言われるようなことをお聞きしたいと思ったわけであります。ところが、山口農林大臣といったような御方針を披瀝されまして、この次はぜひ一つ農林大臣になってもらいたいと思うのです。そこで、私は、やはり政府考え方がそうであろうというふうに善意に了解いたします。了解はいたしますが、今政府が十方工場、さらに山口長官は十四カ工場と言っておられますが、原料というものは農民が生産しておるのであって、別に原料をよそから持ってきてそこの工場でやるというようなものとは違うわけであります。従って、それは過去の経過を山口長官は御存じないのでありまして、現在まで農民は非常に苦労して今日の工場をようやく守り続けて参っておるわけであります。ところが、工場を建ててしまえば、強制的に、ああせいこうせいというようなことになりますから、現在の工場の維持すら、地域指定とかいろいろなことで問題を起しておるのですが、現在あります七工場、これらが一応煙を吐くことになっておるわけでありますが、この工場の今日までの経過からいたしまして、これからの工場設置は、そう長官が言われるようにやすやすといかないであろうと私は考えておるのであります。そこで、私は農林大臣にもいろいろお話を聞きたいと思っておりますけれども、このことは別といたしまして、今長官がそのくらい力を入れておられるということは私は了承するといたしましても、このことの決定については、やはり耕作農民とそれぞれの地域の者が相集まってこれを検討せなければならない。ところが、昨年までの決定から見ますると、農民の意思を無視して、特定の人がどこかでこの工場を決定するといったようなことが間々あったかのように私は聞いておるわけであります。でありますから、今度山口長官調査をされまして、今私が申し上げましたように、そういう方針を道内で方々において声明をされておるわけであります。従って、今の北海道の事情からいたしますと、一応この次に工場を設置をしてもらいたいとか、あるいはするべきであるといったような地帯は、帯広、すなわち十勝が中心となっておることは長官も御存じであろうと思うのであります。十勝の場合、今日の空気は、私は率直にお伺いいたしまするが、先般長官がずっと回られ、最後に岸総理とおいでになったときには、特定の町村、すなわち特定の個所に次の工場を設置するといったようなことを言明されたかのように私は新聞紙上で拝見いたしておるのでありまするが、そこまで力を入れてやっておられるのかどうか、こういう点について一つ御意見を伺いたいと思うのであります。
  241. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 いろいろ各地において陳情を受けましたが、次に設置するとすればこの辺は適地ではないかというような意向を漏らしたことはございます。しかしながら、どこに設置するとかどうとかということは、何としても農林省、大蔵省がこの決定権を持っておるようなわけでありまして、そう簡単にはいかないと思っております。しかし、松浦さんも御承知の通り、帯広、十勝地区ではいろいろ既設の工場等が非常に増設をしたいという希望もありますし、また二カ所ほど希望の土地もあるようでありますが、これをいかにして調整するかというような問題は今後に残された問題でありまして、これはもうもちろん農林省、大蔵省の意向によって定められるべきでありますが、しかし、このことは別といたしまして、やはり、将来は何としても、政府は一面においては農民の実態に即した農業政策を立てなければなりませんが、また、一面においては、ある程度一つ農民に大いに気力を加えて、そうしてこれからこの問題で北海道は立ち上るんだというような気魄も持っていただきたいわけでありますから、私よりもあるいは農林大臣の方が実際的であって、そうしていろいろ慎重に考慮されるに違いありませんので、その点は一つあまり農林大臣をいじめぬようにしてもらいまして、何とかして、この北海道のビート栽培といった面について、これからさらに一つ御支援をいただきたいと思っております。ですから、今後の工場設置等に関しましては、また一つ十分皆さん方の御意見を徴していきたいと思いますが、何としても、先ほど申し上げました基本方針で、私は、いろいろの調査に基いて、今後どうしても農林省が計画されておることよりも一、二年計画年次を早めていくように努力をいたしたい、こう思っております。
  242. 松浦定義

    松浦(定)委員 今のお言葉の中に、今後の推進に当っては皆さんと一つ相談をしたい、こういうようなお話がありましたが、私はもう相談する余地のないほど長官はある進め方をされておるというふうに考えておるのであります。そういうことがあるかないか、この際一つはっきりしていただきたいと思うのであります。
  243. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 それほど出過ぎてはおりません。しかし、いろいろ土地々々によって、いかにも私が出過ぎたように宣伝して、有利にしようということがあるかもしれませんが、私自身としては、そこまで決定的な段階にはまだ行っていないと思います。
  244. 松浦定義

    松浦(定)委員 賢明なる長官だから、行こうはずはないと思うのでありますが、ところが、案に相違して、相当行っておる、こういうふうに理解しておるのであります。私がこう言っても、何だか特定のところに反対しておるかのようにお聞きになっては、これは間違いだと思うのであります。私は十勝で二万五千戸の農家のある中で実際自分でビートをずっと三十年来作っておる耕作農民なんですから、従来までのその過程については、よく心配をいたしておるわけであります。せめて自分の地元に作る工場だけでもそういうような形にならないようにという配慮から、いろいろ心配をしておるのでありまして、今長官がほんとうに相談するようにしたいと言われるならば、そのような措置を今日からでもとってもらいたいと思うのでありますが、そういう過程でなくて、すでにある会社とある人を通じて相当なところまで進めておられる、すでに今日東京において話をされておるというふうに私は聞いておるのであります。これは、どこの町村にできようとも、どこの会社が出ようとも、やはりこれは納得するのでなければできないのでありまして、今長官が陳情を受けて、一応その意中のある地帯がほんとうに適当であるかもしれません。あるいは不適当であるかもしれません。しかし、そういう点については、今長官からお話がありましたように、担当省はやっぱり農林省と大蔵省である、しかし自分は閣僚の一人として北海道の農業開発のために、見たままに努力をしたいというこの御発言は、私は了といたしますが、そういう発言であるならば、やはりある程度そういう点については調整の役を買ってもらわなければ——農林省と大蔵省と対立したことは、過去にもあるわけであります。そこへさらにまた開発長官が一方の旗がしらになって進めるというようなことになりますと、大蔵省、農林省はどうにもならないような事態になってしまう。そうすると、今意中の十工場あるいは十四工場というものができようとしても、あるいはできたとしても、いろいろ非難を受けるような工場になってしまって、農民に非常な問題を起すようになってしまうだろうと思うのであります。今そういうようなことはないというお話でありますけれども、すでに電報を打って招集して、そうしてこっちで話をしておるというようなことも新聞は伝えておるのであります。そういうことについては、それはただ単に向うから勝手に来ているのだというふうに御否定なさるのか、あるいは、こうこうこういうものであるというふうにお考えになるのか、この点を一つ明らかにしていただきたいと思うのであります。
  245. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 私自身で電報を打って招集したことはありませんが、あるいは私の秘書の方で、こういう陳情に対してはこんな電報を打つということがあったかもしれません。しかし、それは、御承知の通り、私は、いろいろのことに対して助言し、北海道開発の一助ともならばと思う一念からでありまして、一会社、一地方というようなことに対してえこひいきする、こういうことは、将来とも絶対いたさぬつもりでありますから、その点は一つ御了承を願いたいと思います。
  246. 松浦定義

    松浦(定)委員 それでは率直にお伺いいたしますが、秘書がやったかもしれない、こういうお話でありますから、それは一応認められておると思うのであります。ちょうど八月の二十日の日に、帯広においでになりましたときに、車中でもってその地帯の陳情を受けたときに、これは岸総理ともよく話をしてあるから、帰って佐藤大蔵、三浦農林、高碕通産と、さらに大日本製糖会社の社長である藤山勝彦氏と自分を含めて会談をやって、そうしてこの工場設置をあなたのところにきめる、そういう場合には連絡をするから直ちに上京してほしい、こういうような話をした、そういうことで、二十二日の午後四時四十分の着電でもって、上京するようにという電報が秘書の方から加藤氏に行っておるのであります。そういうことでありますれば、今お話があったように、大局的見地からやるとお話になったけれども、秘書がやるということは、少くとも普通のわれわれの陣がさの秘書ではないのであります。少くとも北海道開発長官の秘書として任命されておる者が電報を打って、町村長その他関係者を六名も上京させてやる、しかも、その半面に、岸総理をつらっていって、車中でもって総理との話し合いで事を進めるのだということになれば、地元の者にしてみれば、これは間違いないというふうに考えてしまう。そうすると、私どもがここで言っても、松浦は、われわれが選挙のときに協力したけれども、おれの地帯に来るものに反対しておる、あるいはそうでないものに賛成しておると言っておるかもしれない。そういうようなことが今日まで言われておるから、私は今はっきり言っておくのであります。私が今申し上げました、二十六日の朝までに上京されたいという電報、さらに、四者で会談をするからその場合に工場設置はあなたのところにきめる、連絡をするから上京せよ、といったようなことがあったかどうか、この点を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  247. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 最初の電報は認めておりますが、二度目のものは一切存じません。四者会談でどうこうするというようなことは私は一切知りませんが、最初の方の電報は承知しておる。しかも、それは、決定する決定権は私はないのですから、そういうことを打つはずはありません。ただ、お世話をする、そうして、大いに町長が運動して御相談したらいいだろう、そこにちゃんと探しに行っておる会社もあるから、よく一つ相談なさいという、それくらいのお世話は、私も私の身分においてお世話しても一向差しつかえないと思います。
  248. 松浦定義

    松浦(定)委員 私は、あとから打った電報と先に打った電報ということではないのです。岸総理が二十日の日に帯広に行く汽車の中で受けた陳情です。その陳情を受けたときのお言葉で、その後上京されてから電報を秘書が打ったので、その二十六日に上京した、これは全部認めなければならぬことになるわけです。そうしますと、私は、道路や橋なら一町村の者が陳情したときにやってよいと思う。道路や橋と違う。その隣の村でもすでにほかの会社が農林省に申請を出して運動をやっておる、あるいは現在の会社が第二工場を作りたいというようなことを言っておる、さらにもうあと二カ所の町村が何とかこれを確保したいというようなことを言っておる、こういうことを全部承知しておきながら、道路や橋と同じように、あたかも自分の権限かのように、その一町村において運動をやりなさいと言っておる。これは運動費だけでも大へんです。こんなことを今さらあなたがやったら、運動費だけでも大へんなんです。そういうことでありますから、こういう点については、私は、今そういうことを率直に言っていいということなら、私も一つ大いに運動せよということを言います。それでは、先ほどあなたが仰せになりましたように、ほんとうに大局的見地に立って仲裁をしてまでやるというのであったなら、ただ一町村のためにやるとあるいは困るかもしれない。私も最後は積極的に賛成しなければならぬようになるかもしれません。しかし、そのことはやはり地元なりそこの者にまかせてもらわなければなりませんが、そういうことは少し行き過ぎじゃないかということを指摘しておるのであります。あくまでも今のままで押すということであれば、そのようにはっきり言っていただきたいと思います。
  249. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 このことは、この席上で議論するよりも、松浦さんと私とほんとうにひざを交えて懇談して、どこが土地のためにも国家のためにもよいかということを御相談したなら、おのずから氷解する問題じゃないかと思いますが、そういう点で、ぜひあなたとも御相談して——私は決して無理しようという考えはいささかもありません。また、へんぱなことをしようとも一つも思っておりませんから、どうぞその点は御了承願います。ただ、多少調子の高い男ですから、太鼓のたたき方が少しはずんだかもしれませんが、他意はありませんから、どうぞ。
  250. 松浦定義

    松浦(定)委員 私は別に長官と話をして過去に起ったような問題を解決するとかいうようなことはしたくないのであります。堂々とやってもらいたい。砂糖は甘いのでありますから、いろいろ虫がついたりアリがついたりという話がありますので、今度自分の地元にできる工場だけはそういうことのないようにという、老婆心ながら御指摘をしておるわけであります。でありますから、この問題は、今お話がありましたように、もし長官がほんとうに私なりあるいは本名さんなりと話し合いをしたいというなら、もう少し前にそういうことをはっきりしてもらいたい。そうして、そうであるとするなら、今まで道庁案に対してやられた処置は全く不信行為だということになって、これはちょっと責任上困るかと思うのであります。  それから、もう一つ、今広くやりたいのでふろしきを広げ過ぎたというようなお話がありましたが、なるほど歴代の長官はちょっとふろしきを広げ過ぎた。締めくくりがないかもしれない。ところが、今度の長官のやり方は、ほんとうにふろしきを広げてもらって、そして大衆の中でこれを包むならいいのですが、きんちゃくのように締めてしまって、一つの町村だけやってあとは知らぬというような、そういうきんちゃく方針では困ると私は思うのであります。ただいまいろいろ申し上げまして、全部私の言うことを否定せず肯定されたのでありますから、今後の行動は、一切あげて、われわれをも含めて当農林委員会の意見なりを尊重して、農林省が中心になってそのことをきめる、こういうことでお願いしたい。私はやはり、決定は農林省がやるべきであって、金を出すところが金を出すからこのことを云々するということはけしからぬと思う。農林省農林省らしく、それに対して必要と認める場合にはどんどん金を出すということでなければ、金を出す方がけしかるとかけしからぬということでは、私は今後のあらゆる工場の設置などもできないと思いますから、長官も私の今の点をよくそこまで謙虚に肯定されるのであるならば、私はこれ以上申し上げませんが、今後の進展について、いささかも過去に起きました行動が問題となってこの解決ができ得ないということのないように、一つ十分御配慮をされることを要望いたしまして、一応この線で私の質問は終ることにいたしたいと思います。
  251. 松浦周太郎

    松浦委員長 これにて暫時休憩いたします。     午後六時三十二分休憩      ————◇—————     午後十一時五十八分開議
  252. 松浦周太郎

    松浦委員長 これより再開いたします。  時間もないことでありますので、本日はこの程度にし、明二十九日午前零時五分より開会することとし、散会いたします。     午後十一時五十九分散会