○芳賀
委員 私は、自由民主党並びに
日本社会党を代表いたしまして、牛乳、乳製品の緊急需給
調整対策に関する決議を行う件を提案いたしまして、これが提案の
理由を申し述べんとするものであります。
まず案文の朗読をいたします。
牛乳、乳製品の緊急需給
調整対策に関する件(案)
わが国の
酪農事業は、戦後急速な進展を見、
農業経営の合理化と国民食生活の
改善に寄与しつつある。
然るに、現下の
酪農事情は、牛乳、乳製品に対する需要の伸び悩みにより、需要の最盛期たる夏期においてすら、乳価の引下げによってその
経営に困難な問題を提起しようとしている。
農業の改革の上に果す酪
農業の役割の大きなことに鑑み、
政府はこれが発展と国民の食生活の
改善及び体位の向上のため、速かに左記諸事項の実現を図るべきである。
記
一、
学校給食助成費の残額をもつて乳製品の滞貨を買入れること。
なお、今秋以降の
学校給食助成費は出来るだけ早い機会に倍額以上の増額補正を行うこと。
二、生乳の生産者価格の引下げを行うことなく、市乳消費者価格の引下げを実現し、牛乳消費の増進を促すよう
措置すること。
なお、すでに生産者価格の引下げを実行し、又は実行しようとする地域に対しても、これを元に引戻すよう強力な対策を講ずること。
三、牛乳の集団飲用のための冷蔵施設を普及するため助成の途を開き、また、牛乳、乳製品についての共同の消費宣伝を活発に実施し、その経費の一部を補助すること。
四、乳製品の輸入制限を行い、国内製品をもつて充当すること。
五、農村における生活の
改善に資するため、生産者団体等による農村における牛乳、乳製品の消費拡大を奨励すること。
六、大罐練乳の砂糖消費税の戻税制度の復活に努めること。
七、
政府保有飼料の払下げ方式及び流通機構の
改善を行い、飼料価格の引下げを図り、科学飼料を普及するとともに、急速に飼料の自給度向上のため、一層草地改良事業を推進すること。
右決議する。
昭和三十三年七月七日
衆議院農林水産
委員会
これが決議案の内容であります。
簡単に
趣旨について申し
上げますと、当
委員会においてしばしば
酪農問題については質疑が繰り返されたわけでありますが、この際、当面する
緊急事態に対して、
政府はすみやかにこの事態に対応する
施策を講ずべきと思うのであります。そのためには、ただいま決議案に示された
通り、一から七項目までの効果ある対策をすみやかに実行すべきであると思うのであります。特にこの場合指摘したい点は、全国的に牛乳のいわゆる原料乳価の大幅な引き下げ、あるいは市乳地域においても一部乳価の引き下げが行われておるわけでありますが、しかしながら、市乳の消費価格の面においては何ら引き下げの実があがっていないのであります。このことは、結局全国の酪
農民の犠牲において、しかも何らそれが消費価格の引き下げとなって寄与されておらないで、結局乳業者側が一方的に利益を増大しておるというような傾向がこの困難に乗じて行われておりますので、この点に対しましては、何といたしましても、
政府の責任において、乳業会社に対する反省と協力を勧告して、夏場における乳価の引き下げが絶対に行われないように阻止すべきであると
考えるのであります。あるいはすでに引き下げの行われた
地帯に対しましても、
政府は、あらゆる角度より
行政的な
指導と勧告を行いまして、乳価引き下げをあくまでも阻止する
施策を講ずべきであると思うのであります。
なお、この具体的な項目の内容につきまして簡単に重要な点だけを申し
上げますと、第一の点は、当面した乳製品の滞貨の買い
上げの問題であります。それは、現在
学校給食費の未使用分が約五億四千万程度ありますので、これをさしあたり充当して滞貨の買い
上げを行う、そして、秋以降の分に対しましては、本年度の学童給食の消費目標が二十万石でありますので、これを少くとも五十万石以上に増加いたしまして、これに必要な助成費は来たる臨時
国会等において増額補正を行うべきであるという点であります。
第二の点は、これは、乳価全体に対して、市乳といわず原料乳といわず、価格の暴落を阻止して、あくまでも生産者乳価を維持するように
政府が最善の策を講じなければならぬという点であります。
第三の点につきましては、集団飲用を促進するために、この際、
学校、工場、事業場あるいは生活協同組合等におきましても、たとえば十円牛乳の拡大をはかり、これらの計画に対しましては、冷蔵施設に対する助成の
措置、あるいは、冷蔵庫の購入につきましては、これに対して物品税を免除する等の
措置を講じて、消費の拡大をはからなければならぬという点であります。
第四の点は、今日学童給食にアメリカから脱脂粉乳が本年度におきましてもおおよそ二万トンの輸入計画が行われておりますので、この際、これらの輸入乳製品に対しましては、すみやかに輸入計画を変更いたしまして、外国からの輸入乳製品を大幅に制限あるいは抑圧して、国内において滞貨されておる乳製品をこれに充当して需給の均衡をはかるべきであるという点であります。
第五の点につきましては、これはやはり消費拡大の点でありますけれども、この際、生産
地帯等農村等におきましても、生活
改善を推進するために、食生活の
改善、特に牛乳等の飲用を農村においても大きく拡大する運動等を展開すべきであると思うのであります。
第六の点は、これは最も効果的な
措置と
考えられるのでありますが、昨年の十月以来廃止になりました大カン練乳の砂糖消費税の戻し税制度の復活等に対しましては、先般農林
大臣からも善処する旨の
答弁がありましたので、特にこれが実現のためには大いに力を注いで、早急に戻し税制度の復活を実現するようにすべきであると
考えられるのであります。
第七の点は、これは、飼料の価格の引き下げを行いまして、生産者の側におきましても、この際牛乳生産費の合理化をはかりまして、コストの引き下げによって今後
酪農振興をはかる必要がありますので、特に現在の飼料需給安定法に基く
政府保有の飼料の払い下げ、あるいは流通の
問題等に対してもいろいろ指摘される点が多いのであります。特に、払い下げ方式は競争入札をもって建前としておりますので、この弊害は、競争入札の場合にしばしば談合等が行われて、ほんとうに飼料需給安定法のねらいであるところの、飼料の末端における適正安価な配給というものが行われておりませんので、この点については、特に
政府の責任において、
政府の保有飼料等の払い下げ方式、あるいは流通機構等に対しましては、すみやかに
改善の
措置を講ずべきであります。
以上、申し
上げまして、本決議案の提案の
理由とする次第であります。