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高田委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、
修正案に賛成、原案に反対の意を表明せんとするものであります。
まず、わが党の今回の蚕糸
対策に対する基本的な態度について簡単に申し上げますと、わが党の基本的な態度といたしまして、まず第一に、
生糸価格十九万円、繭価格千四百円の水準は最低線として堅持する、第二に、このために繭及び
生糸について国は無制限に買い入れるものとし、当面今
国会において糸価安定特別会計
予算を補正し、同会計の借り入れ限度をさらに二百億円追加拡大する、第三に、
乾繭設備の不足にかんがみ、繭を
政府が
買い上げて、
製糸業者に
乾繭保管させるなどの
措置を考慮する、第四に、
繭糸価格安定法を改正し、
乾繭設備の整備等の
措置と相待って、
生糸及び繭の価格安定等のための条項を強化し、売りくずし、買いたたき等の規制に遺憾なからしめる、第五に、
政府の企図している蚕種
買い上げ、桑園整理等の生産制限
措置については、
養蚕農民及び蚕種、桑苗等の業者に対する国の補償を要求し、ことに、桑園の作付転換等については、畑地灌漑等の土地改良、営農資金確保、畑作農作物の価格安定等、畑作振興のために格段の
措置を講ずるよう要求し、これらの保障なき限り二割制限に反対すること、このような基本的な
立場に立ちまして今日まで鋭意
努力を重ねて参りました。
今回
政府から
臨時措置法案が提案せられましたので、われわれとしましては、このわが党の
考えておる基本的な
立場こそ、今日業界の要望するところであり、百万の
養蚕農民の要望に合致するところであると信じますので、この精神を織り込んだ共同
修正案を提出して、そうして政党政派をこえて国民の期待にこたえるべく
努力を重ねてきた次第であります。しかし、残念ながら、ついに与党の皆さんの御賛同が得られない、こういう
段階に立ち至りましたが、われわれは、今回提案せられました
臨時措置法案を無修正のままでは、われわれの
考える、また業界や
農民の要望しておる事項を満足せしむることはとうてい不可能であるということが昨日来の
質疑応答を通じましてきわめて明白となりましたので、ここにあえて単独で提案せられましたこの
修正案にぜひとも良識をもって皆様方に一人でも多く御賛成をいただいて、強く成立を期していただきたいことを念願するわけであります。
この原案におきましては、第一に、最も皆さんが心配しておりました
乾繭の
設備提供を
製糸業者が
拒否する場合、これに対しましてどういう救済
措置があるかということにつきましても、何ら明確なものが示されておりません。また、
乾繭をいたしました資金等の手当につきましても、これの万全を期する
措置が今なお明確を欠いております。また、団協によってすでに
製糸側に引き渡されました繭の掛目協定の始まる直前であめる今日におきまして、なお最低繭価が確実に掛目協定によって保障されるという具体的な
指導も制度も何も得られないのであります。また、この百五十億というものが、結局、
春繭に対する、また
春繭からできる
生糸に対する一応の
措置としてもきわめて不十分ではありますが、そういう
措置でありまして、それ以後については主として繭の二割生産制限にたよろうとしているわけでありますが、この二割制限たるや、今日全国の
農民がこぞって反対を唱えておる。今まで
政府が増産に増産を奨励し、忠実に増産をして参りまして、現に五カ年計画の途上にある、このとき突然
政府がそういう制限の
措置をとり、しかも自主的にこれをやれ、しかも何らの補償もない、こういうことに対しましては、
農民は怒りをもってこの二割制限
措置に反対の意思を表明しておるわけであります。従って、スムースに二割の制限ができるものと想定をして、需給のバランスがとれるかのごとき机上プランを立てて、そうしてこの
臨時措置によって
繭糸価格が安定できるかのごとく偽わろうとすることは、これは国民を欺くものである。また、そのことは業界がよく洞察しておりますから、今日この
段階に至ってもなおかつ十九万円の相場が出て参らない事実がこれを証明しておる。先行きますます不安であるというのが今日の空気であります。このままでいけば、おそらく
夏秋蚕以後におきましては再び今日当面いたしましたと同じような業界の
混乱を来たすことは必至であります。私
どもは、
責任ある
国会におきまして、一年間この
生糸年度における
臨時措置として立てます以上は、目先すでに不安を招来することが明らかであるようなものに賛成するわけには参らないのであります。私たちは、この
修正案によって、最低限度わが党の
考えておる、また
農民や業者が
考えておる国民の世論が織り込まれるならば、百歩を譲ってわれわれはこの
政府原案を若干修正をして成立せしめようとして
努力をいたしておるわけであります。
私は、この機会に特に申し上げたいのでありますが、今日まで
生糸相場が非常に動揺し、
繭取引がこの
春繭におきましては非常に動揺
混乱の中に行われて参りました根本の
責任は、
政府当局が明確なる蚕糸業政策というもの、基本的な政策というものをいまだに持っていない、非常に動揺よろめきを示しているということが、業界に対し、また海外に対し、
農民に対し、不安を与えておる根源であると思う。今日困難な
立場に遭遇しているわが国の蚕糸業をいかにして当初の目的である蚕糸業振興の大目的に乗せて引きずっていくかということのためには、明確な
政府当局者の
指導方針というものが、国民の間に、また海外にまで徹底されなければなりません。しかるに、今回のこの動揺が示しておる
通り、
政府は将来蚕糸業をどう持っていくかということについては今なお確信がないということが暴露されておるのであります。私
どもは、臨時応急
対策とあわせて、恒久的な具体策をすみやかに立てなければならぬと
考えておるのでありますが、
政府においては、おそらく、一部に適切なる批判があります
通り、蚕糸業は厄介ものである、さしあたり要求があるからやむを得ず百五十億を投げ出すことによって、
あとはもう言うことは聞かない、百五十億でやれるだけのことはやれ、
あとは成り行きにまかせる、こういう態度がここに法案によっても示されております。このことがますます業界に不安を呼び起すのでありまして、私は、
政府が基本的な態度を明確にし、蚕糸業振興の国策を明示しない限り、この
混乱を
最後的に収拾する道はないと信ずるのであります。私たちは、これから先も、この全国百万の
養蚕農民、また、
養蚕のみならず、酪農において、米麦において、あるいは果樹、園芸において、蔬菜において、ことごとく価格の暴落に悩み、農業危機のまっただ中にありますこの際、どうしてもこのわが国の農業を安定せしめるために、ことに
養蚕地帯の
養蚕業については、農業政策の見地からも確固たる
対策を立て、また
生糸や絹織物に対しましても、これまた一応角度を変えた
立場においてこの振興を
考えるというような、そういう
立場に立っての基本的な国策を樹立すべきであると
考えます。私
どもは、この当面する蚕糸業の危機を前にいたしまして、この最小限度の必要なる
修正案をぜひ皆さんの御賛成を得て本
国会において成立せしめていただきたいことを心から訴えざるを得ません。
以上、簡単でありますが、わが党の
立場、また本案の欠陥の二、三の要点を
指摘いたしまして、
修正案に賛成、修正部分を除く原案に反対の
趣旨を申し述べた次第であります。