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1958-06-25 第29回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十五日(水曜日)     午後一時五十五分開議  出席委員    委員長 松浦周太郎君    理事 吉川 久衛君 理事 助川 良平君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 石田 宥全君       安倍晋太郎君    赤澤 正道君       秋山 利恭君    五十嵐吉藏君       今井  耕君    大森 玉木君       倉成  正君    笹山茂太郎君       砂原  格君    高石幸三郎君       内藤  隆君    永田 亮一君       濱地 文平君    松岡嘉兵衛君       八木 一郎君    八木 徹雄君       保岡 武久君    足鹿  覺君       角屋堅次郎君    神田 大作君       久保田 豊君    栗原 俊夫君       實川 清之君    高田 富之君       中澤 茂一君    中村 時雄君       西村 関一君    芳賀  貢君       松浦 定義君    松平 忠久君  出席政府委員         農林政務次官  石坂  繁君         農林事務官         (蚕糸局長)  須賀 賢二君  委員外出席者         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  尾村 偉久君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 六月二十五日  委員加藤常太郎君、栗林三郎君、中村時雄君及  び西村関一君辞任につき、その補欠として八木  一郎君、栗原俊夫君、松平忠久君及び高田富之  君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 六月二十四日  繭糸価格の安定に関する臨時措置法案内閣提  出第五号) 同日  昭和三十三年産米価決定等に関する請願(片  島港君外一名紹介)(第一八号)  昭和三十三年産麦価減収加算に関する請願(  片島港君外一名紹介)(第一九号)  農地法の一部改正に関する請願丹羽兵助君紹  介)(第九六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基  金に関する法律案について、大蔵委員会連合  審査会開会申入れに関する件  繭糸価格の安定に関する臨時措置法案内閣提  出第五号)  酪農に関する件      ————◇—————
  2. 松浦周太郎

    松浦委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。目下大蔵委員会において審査中の、内閣提出経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案は、いわゆる昭和三十一年度一般会計の決算上の新規剰余金残額四百三十六億三千万円中の六十五億円を非補助小団地等土地改良事業助成基金として農林漁業金融公庫に設け、国の補助対象とならない農地改良及び造成にかかる事業に対する貸付についての利子の軽減に充当する財源にしようとするものでありまして、土地改良事業促進に重要な意義を持つ法律案でございます。つきましては、本案につき大蔵委員会連合審査会開会申し入れを行いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松浦周太郎

    松浦委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、開会日時等につきましては、大蔵委員長と協議の上決定し、追って御通知いたしたいと存じますので、さよう御了承いただきたいと存じます。
  4. 松浦周太郎

    松浦委員長 次に、昨日付託になりました内閣提出繭糸価格の安定に関する臨時措置法案議題とし、審査に入りたいと存じます。  まず本案趣旨について政府説明を求めます。石坂農林政務次官。     —————————————
  5. 石坂繁

    石坂政府委員 ただいま議題となりました繭糸価格の安定に関する臨時措置法案につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。  政府は、昨年以来の生糸需給事情の悪化に対処いたしまするために、つとに三十三年度においても生糸及び繭の最低価格従前の水準を堅持する方針を明らかにいたしまして、これを実現するために必要な施策を逐次講じて参ったのであります。すなわち、本年三月には、内外市場生糸価格に対する不安を解消いたしまするために、例年より早く、生糸の最高、最低価格及び繭の最低価格従前通りこれを据え置くことを決定いたしたのであります。さらに、本年初め以来生糸政府買い上げが急速に増加して参りました事態に備えまして、前国会において、糸価安定特別会計の借入金を四十億円増額するために必要なる法律改正を行い、糸価安定資金の総額を百六億円に増額して、糸価の安定をはかって参ったのでありますが、最近の生糸需給事情は、内外経済情勢と、昨年の夏秋蚕の豊作に引き続き、本年春蚕の作柄が良好であったことなどが重なりまして、生糸の供給が著しく増加する事態となって参りましたので、四月、五月においても引き続き相当量生糸政府買い上げを行なったのであります。  以上の推移にかんがみまして、政府はこの際、本年産繭及び生糸価格の安定をはかるために必要な施策をさらに充実することにいたしました。その措置の大要を申し上げますと  その第一は、本年の春繭につきまして、余剰の生糸市場からたな上げして糸価維持をはかりますために、新たに百億円の資金生糸を買い応ずる体制を整えることであります。  次に、繭の生産者団体繭価維持をはかるために乾繭共同保管を行う場合は、将来その繭を最低繭価見合い価格政府で引き取ることを約束し、これに必要なる資金として五十億円を予定することといたしました。  特に、今回の施策に当りましては、糸価維持を行うとともに、農家繭収入の確保をはかることがきわめて緊要な問題でありますので、生糸買い入れについてもこの点に十分留意し、なお、生糸買い入れ及び繭の共同保管に必要なる資金については、適時円滑に供給せられるよう措置をいたしたいと存じます。  第二に、本年の夏秋蚕については、当面の生糸異例需給事情にかんがみまして、繭の生産の面からこれを調整して、需給均衡をはかることが必要であると考えられますので、繭価維持のために、生産者団体において、本年夏秋蚕については自主的に二割を目標として生産抑制をはかるよう指導して参りたいと思います。  以上の施策と並行して、蚕糸業の安定に必要なる恒久対策を策定することにつきましては、すみやかにこれを取り進める所存でありますが、特に生糸需要喚起については一段と積極的な施策を講じたいと考えるのでありまして、生糸新規の用途ならびに販路の開拓をはかりますために業界に対して企業努力促進を強く要請するとともに、政府において必要なる施策を講ずるつもりであります。  以上申しあげました、昭和三十三年産の繭及び生糸に関する価格安定の措置は、本生糸年度の繭及び生糸異例需給事情による臨時措置でありまするから、本日提案いたしました繭糸価格の安定に関する臨時措置法案においてこれを実施して参りたいと思います。  以下本法律案内容の概略について申し上げます。  本法律案内容の第一は、日本輸出生糸保管株式会社が、農林大臣の定めるところに従い、生糸及び共同保管の繭を買い入れ保管する等の事業を営むことができることとしたことであります。日本輸出生糸保管株式会社は、繭糸価格安定法に基いて設立されている特別会社でありまして、今回の臨時措置による生糸及び繭のたな上げ及びこれに伴う業務を行う機関として適当なものであると考えたのであります。なお、会社買い入れ及び売り渡し価格について、その基準を定めるために必要な規定を設けております。  その第二は、会社買い入れ生糸及び繭で所定の時期を経過してなお保管しているもの政府がこれを買い入れることとするために必要な規定を設けるとともに、その買い入れについての債務負担の限度を明らかにする規定を置いたのであります。  以上が繭糸価格の安定に関する臨時措置法案を提出した理由及び法案概要でございます。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことを希望いたします。
  6. 松浦周太郎

    松浦委員長 これにて政府趣旨説明は終りました。  続いて質疑に入りたいと思います。質疑の通告があります。順次これを許します。高田富之君。
  7. 高田富之

    高田委員 大臣がお見えになりましたならば、あらためて根本的な点についての政府の所信を伺いたいと思うのでありますが、せっかく次官がお見えでありますので、次官に対しまして二、三の点について御答弁願いたいと思います。  第一にお伺いしたい点は、このたびの繭糸価格の安定の問題につきましては、提案説明によりますと、昨今における海外需要の急激な減退とか、あるいは繭の急激な増産というようなことを言われておりますが、大体、すでに今日まで農林当局におきましては、特に繭については増産を奨励され、各府県当局においても、本省の意を受けまして、年々増産を続けて参っておるわけでありまして、特にここへきて急に天候のかげんで間違って増産したという性質のものではないと思うのです。また、需要の点につきましては、これはすでに前から化学繊維との関係等におきまして相当根本的に考えなければならぬということは言われておる点であります。海外需要喚起のための措置についても、相当前から主張されておる点でありまして、ここへ参りまして、何か突発的な、一時的な現象でもあるかのごとく提案理由に御説明になり、なおまた、法案自体臨時措置法というようなことで、一時的な対策をもって事足るというようなことで、根本的な繭糸価格安定等につきましては何らこれが確立というようなことを考えておられない。まずこの政府考え方が非常に現実に合っておりませんので、私はこの法案について非常に疑いなきを得ないのでありますが、一体、政府は、今度のこの問題をそういうふうに臨時応急措置で片づければよろしい、基本的な法律に対しましては何ら欠陥を認めないというような、また従来のやって参りましたことについての繭の増産等に対する責任をどうお考えになっておるのか、まずお伺いいたしたいと思います。
  8. 石坂繁

    石坂政府委員 ただいま高田委員の御質問の点は、養蚕業に対する、あるいは生糸に対するきわめて重要な問題でございますが、政府考えといたしましての、今日のこの法案を提出いたしました趣旨は、先ほど提案趣旨に申し上げました通りであります。しかるに、高田委員質問は、これは突発的の需要によるものではないのではないか、こういうふうの御質問であったのでありまして、私どもは、この法案提出理由は、さきに述べました提案理由によって尽きておると考えておりまするが、なお詳細な点につきましては蚕糸局長から御答弁をいたします。
  9. 須賀賢二

    須賀政府委員 今回の法律につきまして、臨時措置法の形におきまして提案をいたしました考え方につきまして、ただいま御質問のありましたように、昨年度あたりまでは、生糸に対しまして年間大体一万俵程度需要は年年増加をしておったのでございます。従いまして、繭生産の面におきましても、百万貫程度の割合で年々増産指導し、また現実にその程度数量ものはふえて参っておったのでございます。ところが、昨年の秋あたりから著しく情勢が変って参ったのであります。その変りました原因は二つあるとわれわれは考えておるのでございます。その一つは、去年の夏秋蚕が戦後として非常に異例の高い生産高であった。千八百五十万という数字が出ております。それから、ことしの春蚕が、これはまだ生産数量は確実には把握されませんが、大体千五百万貫を若干上回る程度数量になるのではなかろうかと思います。そういたしますと、去年の秋、ことしの春を合せましたこの一年間の生産量というものは非常に大きなものとなっておるわけでございます。一方、内外経済情勢で、需要の方は非常に停滞をいたしておりまして、輸出の伸びないこともさることながら、内需の面につきましても非常に不振な状態を続けておるわけであります。それで、お手元の資料にもございますように、去年の暮れからことしの五月までに約四万俵の糸の政府買い入れをいたしたわけでございます。半年の間に四万俵という大量の糸が政府に入ったというような事態になったわけでございます。しかもなお、今回の法律案提案によりまして御審議を願っておりまする対策は、引き続き相当量の糸のたな上げ計画いたしておるというような需給関係になっておるわけでございます。  従いまして、今後の蚕糸業恒久対策と申しますか、長期的に考えました場合の対策につきましても十分検討を要するわけでございます。われわれといたしましては、早急に何らかの手を打たなければならぬと思っております。同時に、糸価安定制度につきましても、今後、従来と同じく、現行繭糸価格安定法、またそれの裏づけとなっておりまする糸価安定特別会計法、こういうもの現行のままの形において将来続けていくかどうかということにつきましては、十分検討を要する次第でございますので、われわれ政府部内において目下相談をいたしております。この国会が終りました直後において、直ちに適当な組織を持ちまして、三十四年度繭糸価格安定制度のあり方について、学識経験者を中心として検討に取り組む体制を整えたいと思っておるわけでございます。従いまして、今回の措置は、このような異常な事態になって参りましたことに対応いたしまして、この三十三生糸年度中にとりまする措置を御審議願っておるわけでございます。三十四年度は、さらに適当な機会に、三十四年度対策として、あるいは法案なりその他の形において御審議をいただくというつもりで考えておるわけでございます。そのような意味合いをもちまして、本年度措置として提案をいたしたわけでございます。
  10. 高田富之

    高田委員 去年の春からすでに生糸製造設備制限が問題になって、制限法律もできまして、製造設備制限にとりかかっておったわけであります。しかるに、繭の方だけは相変らず増産指導をなされまして、地方におきましても、今あなたのおっしゃった通り、国の方針に従って増産を続けてきておった。これらの点は農林当局として私は非常に責任は重大だと思うのです。今ここへきて急にあわてて、また、農民に対しまして非常な犠牲を負わせなければならないような羽目に陥っておる。これらの点につきまして、私はまた大臣がお見えになりましたら根本的な責任のある考え方をお聞きしたいと思うのです。  そこで、次にお尋ねいたしますが、この法案で意図されておりまするのは、本生糸年度の来年の五月三十一日まで、夏秋蚕全部をひっくるめての価格維持、糸の十九万円、繭の千四百円というものを安定するために考えられたのか、それとも、この当面の春繭だけで、あとのことはまたあとのことというお考えなのでありますか。
  11. 須賀賢二

    須賀政府委員 生糸製造設備制限につきましては、これは昨年の国会で御審議いただいたわけであります。この方は、昨年の十一月一日に施行いたして参りまして以来、当初の計画通り進行いたしておりまして、ただいまの時点におきまして、三十三年度事業も含めまして、械械製糸について約一万台程度設備処理仕事を完了いたしております。しかしながら、これは、蚕糸業の特に今後の対策といたしまして、製糸養蚕を通ずる生産費合理化をねらったわけでございます。従いまして、今日の段階におきましても、この仕事の持っております意味は、私どもは何ら変っておらないと考えております。この製造設備制限を御審議いただきましたときにわれわれが御説明を申し上げ数字によりましても、これは繭の生産量が三千四百万貫に達しました場合においてなお稼働率が八〇%というような計画になっておったわけであります。このために特に今回のような需給上の不均衡を助長するに至ったわけであります。  それから、この法律春蚕だけのものであるか、あるいは夏秋蚕を含めての本年度価格支持に対する一連対策であるかということについてのお尋ねでございますが、これは、この法律の第一条の趣旨に、昭和三十三年度の繭及び生糸価格維持をはかるということを言い表わしております通り、本年産の繭、生糸に対する一連考え方でございます。ただ、今回の百億円及び五十億円の資金裏づけといたしまして行われます生糸買い入れ並びに乾繭共同保管という仕事は、現実には春繭に重点を置きまして実施をされるという結果に相なるもの考えております。夏秋蚕につきましては、過般来方針として出しておりますように、量の調整を主体として考えて参りたい。政府買い上げ生産段階における量の調節との両者によりまして、需給の権衡を維持いたしまして、支持をいたしたい、かように考えております。
  12. 高田富之

    高田委員 そうしますと、この法律建前としては本生糸年度生糸、繭の全部を保障するということでありますが、結局中身春繭だけということになるわけでありますから、そのために、せっかくこういう法律案が出ましても、この金が切れるときは再び暴落するであろうという見通しを立てないわけにいかないために、結局、安定制度ものを言わない、大したきき目がない、——まあ若干上ったようでありますが、これではほんとう政府が法の建前を守って生糸の十九万円をどうしても維持する、繭の千四百円をどうしても維持するという当然とるべき態度というものは貫かれていないと思うのです。これでは先行きがもうわかっておりますから、この金が四カ月なら四カ月で尽きるという見通し相場も立つわけでありますし、需要者もそのつもりで買い控えたり売ったり、いろいろな措置を始めるわけでありますから、結局、この法律建前は、中身を見るとくずされてしまっておる。現実にも効果は十分にはいかないということになるのではないかと思う。また、現実にそうなっておると思う。その点が一つ。  それから、十九万円の生糸を完全に保障するということになれば、繭は当然千四百円になり得るわけです。ところが、生糸の方も十九万円が不完全にしか支持されておりません。そうなりますと、繭の方も勢い千四百円というものは不完全なものになるわけでありまして、現在共同乾繭されておるものについては、とりあえず春繭につきましてはこの金で五十億の範囲内におきましてはやれると思うのですけれども、それはごくわずかでございまして、大部分団協によって製糸家にすでに引き渡されております。売り渡されておるものもどうしたら千四百円というもの維持してやることができるかということが当面の課題でなければならぬと思うのです。この法律ではその重大なる根本のねらいがちっとも果されていない。これでは乾繭されたものだけは一応買い取ることになっておりますけれども、それはごくわずかです。もう繭は全部製糸家の方に渡っておる。これをどうするか、これが今日の最大の問題であります。この点についてはどういう処置をおとりになって千四百円を必ず維持してくれるお考えでありますか。
  13. 須賀賢二

    須賀政府委員 政府相当資金的裏づけを行なったにもかかわらず、先行き価格についてなお不安が残っておるという意味合いの御指摘でありますが、これは、私どもといたしましては、今回これだけの裏づけをもってやって参りまする以上、やはり製糸家、さらに養蚕団体協力を求めまして、量的な調節をどうしてもはかって参らなければ、先行き価格ほんとうに底が入るわけにはなかなかいきにくい。従いまして、製糸の繰短等につきましても、今回はさらに現実需給関係に即しまして十分従来の計画を見直しまして、しかも実効のあがるような措置で進めていきたいと目下考えております。夏秋蚕についてある程度生産抑制をお願いいたしておりますのも、そういう量的な調節が相伴うことによって十九万円の糸値、千四百円の繭値支持されるように保障しておるわけであります。それから、ことしの春繭につきまして、現実に千円ないし千百円程度売り渡し金製糸家に引き渡されたものについて、農家にいかようにして千四百円の繭価を保障するかという問題でございますが、これは今回の対策を立てるに当りまして最もわれわれの意を用いた点でございまして、お話のごとく、本年産春繭は大部分もの製糸家に先渡しの形において引き取られたというのが実態でございます。従いまして、近く行われまする繭価協定に際しましては、農家が千四百円の繭価の支払いが受けられますような協定ができ上りまする条件をいろいろ整えていくということがどうしても必要なわけでございます。それには糸値相当値段のところになければならないわけであります。現実にこの対策を打ち出しました以降、大体十八万五千円程度値段相場として出ておるわけでありますが、千四百円の協定維持し得る一つの材料が出ておるわけであります。     〔委員長退席吉川(久)委員長代理着席〕  さらに、今回の五万俵の生糸買い入れにつきましても、製糸家農家に対しまして千四百円の繭価を支払うということが、われわれの買い入れを進めていく条件になるような考え方を持っておるわけでございます。しかしながら、これは、お話のように、五万俵の糸をもちましても、製糸家全量の糸を買い入れるだけのものではないことはもちろんでございます。しかし、春繭だけにしぼって考えてみますれば、大体春繭からできます製糸買い入れ対象となりますような生糸の半分に近い程度数量買い入れし得る力があるわけでありますので、全量買い入れるという態勢でなくても、全体を千四百円ベース団体協約にしぼっていくということは必ずしも不可能ではないと実は考えております。しかし、それには、もちろんこれは交渉の問題でありますから、養蚕の側においてもできるだけ有利な条件交渉ができますように努力をいたさなければならぬわけでありますし、また、製糸の側においても今回の政策の建前を十分理解させまして協力をさせなければならぬわけであります。先般農林大臣業界のそれぞれの代表の方に要請をされましたのも、今回の措置に対応いたしまして、製糸養蚕両者において価格維持のために特段の努力を要請されたわけで、私どもも、さらにそれぞれの関係当事者相談をいたしまして、政府としてもできるだけ全量が千四百円の団体協約ベースに乗りますように指導して参りたいというように考えております。
  14. 高田富之

    高田委員 今までの農林省の指導は、あくまでも団体協約をやらせて、そうして県の養連でもってできるだけ一本化の形で繭の集荷をやって、そうして製糸団体団体交渉をして、掛目協定をやるという、きたいな形に持っていくというかなり強力な指導を今まで続けられてきたわけであります。非常に強力過ぎるような指導をされましたので、しばしば独禁法違反の問題を惹起したわけでありますが、それは、ただいままでは、御承知のように売り手市場であります。繭を奪い合うような形で製糸家が買っておるときにそういう指導を強く打ち出されたわけでありますから、そのために集荷されて団体協約でやった方がかえって安い値段で売られておるというような現実が発生したために、独禁法違反疑いを各地において起して大きな問題になったわけです。しかし、いずれにしても、そういう指導が行われてきたということは、また、忠実に各府県において養蚕団体県当局当局方針に従って団体協約を推進してきたということは、今回のような事態が万一発生してきたときにこれがものをいうのだ、必ずそのときには団体協約をしてみな一本にしておれば千四百円で最後の最悪の場合には政府が保障してくれるのだ、だがらあくまでも団体協約の線をくずすな、あくまでも団結してやれということで、かなり強力な指導をなさったわけであります。従って、その強力な指導に従って、独禁法違反などと言われながらも一生懸命やって参りました各府県養蚕団体県当局の人たちは、この期に至って、せっかく自分たちの指導してきた団協によって繭を一手に集荷して引き渡したのに、なお保障されていないということに対しては、これは非常な大きい問題になっておるわけです。今まで自分たちをペテンにかけてきた、一体どうしてくれるのだ、こういう問題であります。先般来各府県におきましては、いよいよこれは千四百円を割るというので、これを共同乾繭にしようということで、製糸家に対しまして設備の借り上げ方について協力を要請したわけであります。しかし、幾ら要請しましても、法的に何の裏づけもないのですから、そういうものはあずかりませんということで簡単に断わられてしまって、もう何ら打つ手がない。結局、みすみす繭を渡して、そうして、実勢相場で仕切られてもけっこうでございますというような態度をとらざるを得ない窮地に追い込んでしまったわけです。結局農林省が今まで指導してきました団体協約の線で忠実にやった者ほど不安な状態に今置かれておる。こういうようなことに対しまして、当局はもっと責任を持って、千四百円以下、八千七百五十掛以下の掛目協定というものはあり得えないんだ、そういうものは断じてあり得ないんだというための措置を明確にしなければならぬと思うのです。ただ先ほどのお話のように強く交渉してくれといっても、繭は向うへ行ってしまっているのですから、強くも何も交渉のしようはない。強く交渉すればますます長引くだけでありまして、交渉が長引けば長引くほど、損をするのは百姓だけであります。だから、早く金をもらおうと思えば言いなりになるよりほかはない。また、製糸の方では、繭の価格が安ければ安いほどけっこうなわけでありまして、十九万円で糸を買ってくれなくても、安い値で売っても、繭を安くさえ買えば十分引き合うわけです。特に、輸出業者その他の製糸業者の間においても、あるいは織物業者の間においても、相場を下げたいという意向が出ておることは御承知の通りであります。十九万円よりも低い線において、十六、七万円の線において安定させたいという考え方がある以上は、できるだけ安く繭を買って、できるだけ安い糸にしたいという考えで臨むのは当然であります。それも全量買ってくれるというなら別でありますけれども、今お話通り全量買ってくれるわけではない。ですから、できるだけ安く買おうという態度で製糸家掛目協定に臨むことは当然であります。その際、団協で渡してしまった農民は何をもってこれを高くしたらいいのですか。何を根拠にして高くするという交渉ができるのでしょうか。これはたよりにするのは政府だけなのです。どうしても千四百円以下では、八千七百五十掛以下では掛目協定は行わないという態度で農民側は臨むわけですけれども、しかし、臨んだって、どうこうしようもないのです。これに対しまして、政府の方で具体的に、それはそうじゃない、必ず千四百円以下にはしないのだ、掛目協定でそれ以下のものはあり得ないのだということについて、農民の安心できるような具体的な御説明をもう一度お願いしたい。
  15. 須賀賢二

    須賀政府委員 重ねてのお尋ねでございますが、私が先ほど申し上げましたのは、これからの現実掛目協定におきまして農家の最低繭価が保障されますような形において協定が結ばれることを今いろいろ考えておるというようなことを申し上げておるのでありますが、それについてのさらに具体的なやり方を今いろいろと考えておるわけであります。この点につきましては、今回の措置に応じまして、製糸養蚕、それぞれ実際の取引の当事者といたしまして、いろいろ態度をとりつつあるわけでありますが、私どもはこの両者の間にありましていろいろ指導あっせんをして参るわけでありますけれども、究極において、千四百円ベース団体協約を結んだ製糸と申しますか、結んだことによって何がしかの経済的に相対的な有利さがあるというような形を作り上げねばならないと考えております。しかし、これにつきましては、現在団協に入るまだ直前でありますが、その具体的な行き方についてわれわれも種々検討いたしておりますけれども、この段階であまり具体的のことを申し上げますことは、今後の繭価協定等に対しましても影響があると思いますので、(「そんなことはない、今明らかにしないのはおかしいではないか」と呼び、その他発言する者多し)この点は具体的に申し上げることは差し控えたいと思います。
  16. 高田富之

    高田委員 肝心なところにくるとわけがわからなくなってしまうのです。これは全く繭を製糸家に……。(「大臣を呼べ」と呼び、その他発言する者多し)これはとうてい納得するどころの騒ぎではない。私はこの点についてはさらに責任ある御答弁を後ほど大臣見えましたらお伺いしたいと思います。  それから、さっきのこの法律中身では、百億と五十億を限度とするということになっておるのでありますが、説明の方を見ますと、「資金については、適時円滑に供給せられるよう」と書いてありますが、そうすると、これは、なくなったあとにも場合によっては出すぞ、こういう意味でありますか。
  17. 須賀賢二

    須賀政府委員 今度の法律では、最後に政府が引き取ります場合の限度額が百億円ときめてあるのであります。その間日本輸出生糸保管株式会社買い入れを行います資金は市中の金融によるわけであります。これは具体的には農林中金の資金に依存する度合が非常に高いのであります。農林中金から資金供給をいたすにつきまして、現実買い入れに支障を来たすことがありませんように必要量は適時流していく、そういう趣旨であります。
  18. 高田富之

    高田委員 政務次官に伺いたい。これは非常に大きな問題なんで、おそらく掛目協定は今の状態では始まりませんし、始まっても話し合いも何もつきませんから、そのままずるずる延びる。延びておる間は損をしてしまう、金はほしいということで、延びれば延びるほど農民は窮地に陥るので、早い機会に、一刻も早く、今日こういう法案を出す以上は、これとあわせて農民に不安のないような御説明をいただかなければ、非常に無責任法案であるというそしりを免れないと思うのです。これを出したのだから、繭は千四百円は大丈夫だということを、納得のいくように御説明がいただきたいと思います。
  19. 石坂繁

    石坂政府委員 先ほど蚕糸局長から御答弁申し上げました点につきまして重ねての御質問でありますが、なるほど、きわめて重大な点でありまして、ごもっともな御質疑だと思います。しかしながら、一応蚕糸局長から御答弁申し上げましたことで御納得が参っておらないようでありますが、あらためてそれは、私から申し上げますよりも、大臣が出席いたしまして答弁いたします方が適当だと思いますので、いずれ大臣の出席の上で重ねて御質問を願いたいと思います。どうぞこの点で御了承を願います。
  20. 高田富之

    高田委員 どうも御答弁がないようでありますから、それでは大臣に対して質問いたすことにいたします。  それから、この夏秋蚕については、さっきもお話しのように、生産制限するということで価格維持をはかりたい、こういうような話でありますが、この生産制限の方法は、これまた非常に問題だと思うのです。自主的に期待するというようなことを言っておりますが、こういうことで農民が二割なり三割なりの桑を引っこ抜くということが一体あり得るとお考えになっておるのですか。その点について、もう少し具体的な御説明を承わりたいと思う。
  21. 須賀賢二

    須賀政府委員 夏秋蚕生産制限につきましては、私ども、今回の対策考えますに当りまして、もとよりかっての生産統制のようなことはもちろん考えておりません。こういうことは現在の行政のやり方ではもちろんできないわけであります。しかしながら、るる申し上げますように、今年度の繭及び生糸需給関係のもとにおきましては、五万俵の買い入れを行い、さらに二百数十万貫の共同保管を行なっても、なお例年の通り夏秋蚕生産をされました場合は、糸にいたしまして三万俵以上の糸がなお余るという推算が一応出て参ります。さような事態が予想されます場合に、政府といたしましても相当量資金を用意いたして糸価安定の制度は継続をして参るという態勢はとっておりますけれども、さらに、これと呼応いたしまして、農家の側でも、ことしのような異常な場合は、生産の面についてある程度抑制をしていただいた方が、需給均衡上非常に効果が高いと思うのであります。従いまして、私どもは、今回の措置は、あくまで生産者団体農家に親切な態度といたしまして、啓蒙指導建前一つ徹底的にやってもらいたい。いたずらに従来と同じ考え方増産の態勢一本で推移いたしまして、そのときになりまして農家に不測の結果をもたらすというようなことがありますと非常に困るわけであります。やはり啓蒙指導の意味におきまして、農家に現在当面いたしておりまする生糸需給事情をよく浸透さしてもらいたい。現在生産者団体に対して私どもがやってもらっておりまする仕事は、そういうことが中心になっておるわけでございます。
  22. 高田富之

    高田委員 この間の農民大会においては、全国の農協の代表者が集まりまして、そうしてこの二割制限に対しては絶対反対だということに原案が修正をされまして、全会一致をもって返上するというふうに決議をされております。これは全国の農民の声でありますから、今あなたがおっしゃったように、啓蒙指導だとか、親切にとかいうことを言えば、これは大へんな問題ですよ。何が親切ですか。何が啓蒙指導ですか。今まで一生懸命増産を奨励してきて、ここへきて勝手に種の方から制限してきて、お前の方はもう繭を作らなくもいい、そういうことが通用するというふうに甘く考えますと、これは大へんなことになる。私は、今日の農民の気持をもう少し当局側が、特に農林大臣はよく考えて——これは自分たちの責任なんです。今までの指導してきた責任において、もしどうしても減産しなければならぬということであるならば、確実に減産できるような措置を講じて、そしてそれだけの心配のないような指導と、補助と、資金的な裏づけをもって農民を納得させる以外には、できっこないんじゃないですか。この点は一つ次官の御答弁を願いたいと思います。これはとうていできません。
  23. 石坂繁

    石坂政府委員 御趣旨の点、よく大臣にも伝えまして、この点について十分に誠意をもって善処いたしたいと思います。
  24. 高田富之

    高田委員 どうも大臣大臣にということでありますから、やむを得ず、最後にもう一つお伺いしたいのですが、大臣が来てからにしましょう。
  25. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 高田君に申し上げますが、大臣でなくても差しつかえない程度の問題は、質問を続行していただきたいと思います。
  26. 高田富之

    高田委員 今まで重要なところにくるとみんな大臣にということになりますから、やはり大臣が参りましたら要点をお伺いすることにいたします。
  27. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 高田君、大臣は米審の方の手が離れ次第こちらに来ることになっております。それで、大臣でなくてもいい問題については一つ続けてくれませんか。
  28. 高田富之

    高田委員 それでは、あとの方に質問を譲ります。
  29. 足鹿覺

    足鹿委員 資料要求……。ちょっと資料の要求をこの機会にしておきます。  第一に、乾繭に要する諸費用のこまかい資料を提出願いたい。たとえば、公定加工生産費、それから、その他最高、最低の近代化された工場における加工生産費、また、近代化されない場合の加工生産費、そういった加工生産費に関するものと、それから、乾繭に要する諸費用、これの最高最低等、詳細な資料を御提出願いたい。  第二に、低能率の桑園の面積見込みはどういうふうになっているか。低能率とはどういうことかわかりませんが、政府が使っておりますから、その言葉通りでどういうふうに押えておられるか。その資料を第二に御提示を願いたい。  第三に、競合繊維の市場価格の推移と、日本及びアメリカ、ヨーロッパ等の実情について、競合繊維の市場価格の推移の状況に関するものを御提示願いたい。  それから、第四番目には、いただけるかどうかわかりませんが、養蚕の共同飼育等、共同化に対する現在の状況、それに対する最近の予算計上額、また、支出額、効果というような点について、参考になる資料を御提示願いたい。  それから、最後にただいまも高田君から問題にしておりました掛目協定の実情について、最近の主要産繭地における掛目協定の実績について、最近の年度別、蚕期別の協定の実績、大産地における掛目協定の実績。  以上五つの資料を、審議に非常に必要でありますので、とりあえず御提示を願いたいと思います。いかがですか。
  30. 須賀賢二

    須賀政府委員 ただいま御要求のありました資料は、大部分取りそろえ得ると思いますので、できるだけ早く急速にお出しするようにいたしたいと思います。
  31. 中澤茂一

    ○中澤委員 資料要求……。  四月から六月現在までの規格糸目ごとの実勢糸価、要するに、清算市場取引価格ではなくて、実際の取引糸価、値下りから現在までの実勢市価、取引上のものではなく実勢市価、これは私の方でも一部今調査しておりますが、今幾らで売買されておるか、その調査の資料を要求したい。
  32. 須賀賢二

    須賀政府委員 実勢市価につきましては、横浜における現物の気配相場程度ものであればお出しはできますが、それ以外は、政府として特にお出しできる材料は今のところありません。
  33. 中澤茂一

    ○中澤委員 横浜以外のは集まらぬですか。
  34. 須賀賢二

    須賀政府委員 いろいろ、糸の消費地等におきまして取引をされておるうわさと申しますか、情報のようなものはわれわれも聞いておりまするけれども、資料として責任を持ってお出しのできるようなものは目下のところございません。
  35. 中澤茂一

    ○中澤委員 うわさだか情報だか、業界筋のもの相当根拠のあるものがあるはずなんです。私の方でも調査しております。だから、あなたの方で責任が持てなくてもいいから、こういう程度の取引はたとえば福井県のどこにあったとか、そういうものがあるはずです。だから、そういうものについて、できるだけ参考資料として出してもらいたい。
  36. 須賀賢二

    須賀政府委員 私の方ですぐに整えられまするか、ちょっと検討してみたいと思います。
  37. 足鹿覺

    足鹿委員 もう一つ落しましたが、乾繭設備を持っておる各協同組合別の規模といいますか、乾繭能力、それから、現在の製糸の持っておる乾繭規模、またその能力をお調べになったものがありましたら、さっきの乾繭に要する諸費用に関連して御提出を願いたいと思います。
  38. 須賀賢二

    須賀政府委員 乾繭設備の状況は私の方で調べておりますので、これはお出しできます。
  39. 高田富之

    高田委員 現在までの共同乾繭の各府県別の数量がありましたら御提出願いたい。
  40. 須賀賢二

    須賀政府委員 これはまだ最終的に確定をいたしておりませんが、ごく最近の時点において生産者団体で取りまとめたものがございますので、あとでお出しいたしたいと思います。
  41. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 大臣でなくとも差しつかえない通告者の中から発言を許します。八木一郎君。
  42. 八木一郎

    八木一郎委員 今回の繭糸価格の異常な事態に処して、前例にもなく総理大臣はその演説で繭糸価格の安定は災害の対策とともに善処するというはっきりした言明をされましたが、期待を寄せるところは、千四百円の繭値生糸の十九万円とは、実勢には合わない点はあるかもしらぬが、政策として政治としてこれを約束している以上は、断固としてやはり抜く、こういう固い決意であると国民は受け取っております。私も、当然与党としてそうあるべきだという立場をとっております。これが前提になって私は事務的な二、三のことについてお伺いをし、またはっきりせぬところを明確にしていただきたいと思うのであります。まずその点を確認いたしたいと思います。
  43. 石坂繁

    石坂政府委員 当面の対策並びに恒久対策を立てまして、ただいま御質問通り政府としては十分の熱意と誠意をもってやりとげる所存でございます。
  44. 八木一郎

    八木一郎委員 そのことは直ちに糸と繭を両方見合って繭糸価格維持政策として執行しようとされておりますが、私は、今回の政府与党の決定の中にも明らかにいたしておりますように、農家の所得を維持していく、しかもこれを増大していくという臨機の措置から今回の法律提案をせられ、その内容としては繭の価格千四百円を何としても維持しようという熱意と情熱が行政当局の中にあふれ満ちていない限りは、ただいま質疑応答のありましたように、これは大へんだと思うのです。それである限りは、千四百円の繭価を全面的に完全に維持しようというのには、方法は二つだと私は思う。その一つは、政府が直ちに繭、乾繭を全部直接買い取るということが一つであろう。もう一つの方法は、農民が自衛上、自分の作った繭、この農産物を正札をつけて売るのだという、政府の買い上げをうしろだてといたしまして、千四百円以下では一粒の繭でも売らない、全然市場には出さない、この決意をいたして、需要供給の関係を調整しよう、供給力をみずからの手で調整しようというこの熱意に沿うように、行政的にも立法的にも、予算的にも資金的にもめんどうを見てやる。この前者か後者かの二つによるほか、完全な千四百円を維持してやるといって農民に安心を与えることはできないと思う。こういたしますと、前段の全部買うということは、科学技術の進歩した今日でも、原始的な乾燥保管施設を必要とする実情からいたしまして、今直ちには無理である。言うべくしてなかなかできぬ。やるつもりならば一年も前から支度をしていけばできるでしょう。この際になっては私はできないと思う。しかし、後段の方は、熱意と情熱を傾けて、政府法律制度を忠実に実行しようという気になって、それこそ啓蒙理解を農民に求めてかかるならば可能な問題であると考えたのに、これはあまり手を尽しておられなかったように思われますが。この実情について局長から御説明を願いたいと思います。
  45. 須賀賢二

    須賀政府委員 本年の乾繭につきまして、ただいま、主として生産者団体が千四百円以下では売らないという態勢を固めて、それによって行動していくというような指導が十分ではなかったのではないかという御質問でございますが、その点につきましては、われわれ、当初百億金の資金措置を講じました段階におきましても、繭取引の実際の推移によりまして、生産者団体が千四百円を維持いたしますために、その百億円の資金全量裏づけとして共同保管をやるというような事態が出ても、その場合は糸の買い入れを犠牲にしても共同保管に全力を尽してもよろしいという考え方指導して参ったのでございますけれども、結果は必ずしもこのような事態に相ならなかった。もちろん、これは、農協の金融をつけまするような事前の準備等につきまして、今回の場合は必ずしも予算的に完全な手配はできなかったというようないろいろな事情があると思います。結果において必ずしも当局としては思うようにならなかったことについては、私ども非常に残念に考えております。今後のこともありますので、今後の行き方につきましては、特に金融的裏づけの、相当時間を置いて事前に準備をするという点につきましては、私どもはさらに研究を続けていきたいと考えておる次第であります。
  46. 八木一郎

    八木一郎委員 百億を用意して、共同保管を希望するならば全部乾繭保管の体制を確立してもよろしいと、これまで踏み切った指導をなさったとは、どうも私には受け取れない。共同保管ということは二次的な考えで、団協と言われておる戦後の買手市場にあったこの経験に依存し過ぎて、買手市場としての立場の非常な急激な変化がここに来たという見方に私は甘い点があったのではないかということを考えます。これは言ってみても済んだことですから及びません。しかし、これから尽してもらわなければならぬ点がありますので、関連をしますのでお伺いいたしますが、乾繭で共同保管をされて、繭の取引市場に乾繭が出て、なま繭で一時に売りたたきの対象になるようなことを避けて、必要な時期に必要な量を自由に売って出ていけるという、この制度そのものは、日本の過去においても政府が非常な力を入れてやってきた時代があります。そういう経験を生かして考えますと、現に行われておる乾繭の二百数十万貫の共同保管を実施した農民が、この制度を信頼して、おれたちの持っておる繭は確実に千四百円の手取りが可能である、もし持ちこたえていても手取り千四百円なかった場合は、政府が——今度この法律が通れば保管会社ですが、ここで買い取ってもらえるということにすべきですが、それまでに必要な諸経費というもの相当ものです。農民の心理として、生活のかてに充てておるこの資金が、あすの百より今の五十で、なまもので処理するのをがまんして強力に共同保管という形を続けるというのは、並み大ていな決心ではできません。共同事業としてこれをやるのですから、一そう骨が折れる。この際に当って、私は、共同保管を実施した二百数十万貫の繭を持っておる農民に、ばかを見た、ひどい目に会ったという結果にならないように措置する必要があると思いますが、そのためにはこの法律を通過成立さして、何を一体政府の行政指導に期待しなければならぬかということを掘り下げて検討しますと、いろいろあると思いますが、私はこの際二、三特に注意を喚起して当局の態度を明らかにしてみたいと思うのです。  その一つは、繭が千四百円で確実に農民が手取りできる、最終的には相場がどうあろうと政府が買い取ってくれる、こういう建前である限りは、市場には千四百円出せば二百数十万貫の乾繭があるわけです。この二百数十万貫ある乾繭を、一応は出来秋の出盛り期から市場から凍結しておきますけれども、長期の貯蔵にはたえませんから、この乾繭を繭もととして生糸に加工しよう、あるいはこれを委託賃びきしよう、こういうことが起きて参りますが、その関係は、需要の実態を見てそういう一時加工をさせるお考えでありますか、あるいは、規定通り三月末日まで一切さような一時加工はさせない、こういうお考えであるのか、まずこの点をお聞かせ願いたいのです。
  47. 須賀賢二

    須賀政府委員 今回春繭につきまして二百数十万貫と予定されます共同保管の繭は、来年の三月——現在は三月と考えております。来年の三月まで繭の形において保管をしてもらうのでございます。従いまして、保管会社買い入れますときは繭で買い入れます。この場合、千四百円に金利、保管料等のいわゆる保管をいたしました経費は、加算をいたしますから、保管会社が払うのであります。三月三十一日までの保管について、市場の動向等によって共同保管をしておりました繭を農協が自分で手放すということがありますれば、それは農協の自由な措置であります。  それから、保管会社が繭で買い取るというものを、保管会社みずからの手によって糸に加工するか、あるいは政府で引き受けて糸に加工するか、その辺のところは現段階では最終的にはきめておりませんが、いずれにいたしましても、保管会社が引き取って参りました繭は、これは糸の形において一応たな上げされたことになる。直ちにこれは市場に環流して参るということは考えておりません。
  48. 八木一郎

    八木一郎委員 もう少し聞かしてもらいたい。いわゆる農民の共同保管しておる繭を、これを繭もととして賃加工で市場を開拓していこうという場合には、相当意味があるし、役立つことだと思う。機屋方面に売り出す糸として、繭もとはなるほど十四万円。しかし、政府に持っていくには五万円も工費をかけたりっぱな適格品だが、三万円なり二万五千円の加工費でりっぱに市場を開拓し、需要を増大していく手がかりを持っておる中小企業努力家というもの相当数に上っていると思う。こういう非常事態ですから、行政の指導としてぜひ道をあけてやる必要があると思う。その際に、こまかな採算になりますが、業界、農民の側で計算を明らかにしてもらいたい点は、今局長のお話になりました千四百円に、保管中の経費、諸掛りを加算して最終的には買い取る、その加算する額は何ぼであるかということを承知しないと、取引の対象に困る。これは予算の基礎にはございましたが、当時の予算基礎を立てたときに比べると、情勢も大幅に変ってきておる。そこで、概算として、六カ月保管をするところの建前に立ったならば、乾燥料、保管料、金利、倉敷、諸掛りを一切合せて幾ら千四百円に加算されるということになれば、政府のお世話にならぬでも、自分で売って、そうして中小企業努力の中小製糸家にこの繭を供給してこれを処理していこうという腹がきまると思う。ここまで親切な指導を必要とすると思いますので、資料があればこの際、なければ後日お示しを願いたいと思います。
  49. 須賀賢二

    須賀政府委員 保管会社共同保管の繭を引き取ります場合の金利、倉敷その他の保管料は、区々ばらばらな扱いはいたしませんで、金利は二銭何厘、保管料は倉庫業法できめられております所定の保管料、それから輸送料につきましても一定の基準で定額にいたしまして、あまりばらばらにいたさないような方針考えております。従いまして、大体保管を開始いたしましてから何日たった繭であれば幾らということが計算上すぐ出てくるようなやり方でやって参りたいと思います。
  50. 八木一郎

    八木一郎委員 今の点は非常にこまかいことですけれども共同保管をして、何百人の農民の繭を保管して持っておるといたしますと、来年の三月までこれを持ちこたえて政府に渡しさえすればいいんだという、安易な、いわゆる滞貨融資にもたれたようなことはさせてはならぬと私は思う。これは、当局指導の熱意いかんによって、今私が申し上げておるような方向に処理できるはずだ。一日も早く今申し上げるような諸経費一切はこの共同保管の形で見て、これを加えてもなお買っていこうという人が現われてこなければ処理できない。結局来年三月に全部政府が背負い込むということになりますから、明快にしていただくと同時に、輸送料あるいは乾燥料、保管料、その他諸掛りというものは、どうせ政府が日の丸で支払うんだからいいというような安易な計算でなく、これはがっちりしたものを必要といたしますが、それを今直ちに要求しません。しかし、予算の基礎的なものは、今お話しのように表にして、これは今すぐというわけにもいかないでしょうが、明日にでもお示し願いたい。資料としてこれを要求しておきますが、できますか。
  51. 須賀賢二

    須賀政府委員 この制度全体を通じましての個々の経費計算につきましては、今私の方でこまかく作業中でございます。従いまして、ただいまの乾繭共同保管の繭を引き取る場合の加算額個々についての基準、そういうようなものも作業をいたしておりますから、明日の段階で直ちにお出しができるかどうかわかりませんが、この法律が施行されますまでには完全に整えなければなりませんので、多少時日の余裕をおかしいただきたいと思います。明日ということはちょっとむずかしいのではないかと思います。
  52. 八木一郎

    八木一郎委員 それは、ただいまも、乾繭を、保管をといって、現場は非常に積算をしておる最中なんです。ですから、あなたは今具体的な数字はすぐはできないと言ったが、先ほど、金利は一般の二銭何厘、保管料は倉庫業法に基いて幾らということを言っているのだから、その予算の基礎的なものなら私はすぐにできると思う。現にその基礎で予算を組んだわけです。その予算の基礎の中に、金融の保証をした場合に保証料は加えるかどうか、政府の方でめんどうを見る中に入るかどうかという点までも参議院においては審議をされて、時の局長は、それも政府の方で見る、こういう回答をしておる。ですから、予算の基礎程度ものならそんなに待たなくてできると思う。これは、めどを当てる場合に、実態をどうしても把握したい。乾燥料についても、そういう意味で、概算でよろしいですけれども、大至急資料を提供してもらいたい。委員長においてもそういうことで御了承を願いたい。精密なものは後日法律の施行まででよろしいが、概算、予算の基礎的なものは、政府補助していくその対象でありますから、急いで出してもらいたい。  もう一つ、ほかの問題で質問を続けて参りたいと思います。それは、乾繭共同保管をいたした場合に一番困ることは何であるかというと、十年このかた共同乾繭保管という仕事は農民はしていない。それだけに今困っておるわけなんです。一番困っておるのは金融です。乾繭共同保管をすれば、明日の百よりも今の五十で、売ってしまいたくなるのです。私どもも組合の総会に行くと、実際その気になっているようです。なぜかというと、保管料に対する費用がどのくらい、金利に対するものがどのくらいということで、あるいは、今私が言った費用以外に、金融そのものが不円滑で困る——繭を担保として通常の融資を受け得るのは八掛けです。そうすると、千四百円に対して千円そこそこというものしか受けられない。すると、それに加えた諸費用諸掛り、見込みの危険を考えてみると、どうしてもそこにもう一つ工夫が必要である、こういうことから、局長御承知のように、信用基金制度を活用して、繭のこういう事態に処して保証金融の道を開いてある。この保証金融の道も開いてはありますが、かような異例事態に当るとなかなかうまく回らない。しかし、かかる事態ですから思い切って保証金融の道をあけるといたしますと、ここで問題になることは、春繭に無理をして繭価維持をはかるための共同保管に伴う保証基金の全部を充ててしまっていくという特別措置を講じましても、秋、晩秋についてのことを考える農民としては、今年の春繭共同保管をしなかったけれども夏秋、晩秋については共同保管をするかもしれない、従って、この保証金融制度を活用しようとする農民側では、特定の権利というか、特定の共同保管という国の方針協力するからといって、全部春で保証一ぱいこの制度を活用されることは困る、何らか夏秋蚕以降においても考えてもらえるかどうか、こういうことが強く要求されておるのであります。従いまして、私は、夏秋蚕以降の共同保管ということと、この共同保管のめどとなる金融の円滑化のための保証金融制度を、今ちゃちなものはありますが、これを増大強化して、やはり乾繭共同保管という自主的な制度に身を入れてこれから指導していこう、力をいたしてみよう、こういうお考えはありますかどうか、局長の、局に当っておる立場から、この問題についてのお気持を率直にお聞かせ願いたい。
  53. 須賀賢二

    須賀政府委員 前々から八木先生のこの問題に対するお話は伺っておるのでございますが、ただいまお尋ねの点につきましては、これを強化する、あるいは拡充する等の措置考えますのにいたしましても、あるいは予算的な裏づけの問題、あるいは法制的な組み立て方の問題、その他いろいろな問題を具体的に伴う問題であります。ただ単に拡充強化を考えるということでは済まない問題でございます。従いまして、その制度の利をさらに拡充強化するということを考えました場合には、具体的にどのような拡充の機関が現実の問題として考えられるかということを十分検討いたしまして、ただいまお話しの問題については考えて参りたいと思います。
  54. 八木一郎

    八木一郎委員 夏秋蚕問題については率直なお話でございますけれども春繭についても関連があるわけです。春繭自身が共同保管をして二百九十万、この金融に関しまして、第一線の、長野県、山梨県あるいは群馬県、こういう大量共同乾繭保管を実施せられた農民の諸君は、こういう点がどうなるかということを非常に気づかっておるわけです。政府与党が決定をいたしました今回の措置の中に、政府乾繭共同保管を奨励し、五十億の資金ワクを用意して適切に措置する、こういう大まかなことが出ているから、安心感は持てますけれども、実際に農民の所得に直接関係多大なものがある。それだけに、今私がお伺いしておるような点を、一日も早く、態度、方針を明確にしていただきたいと思います。  繰り返してその点を申し上げますと、第一点は、乾繭の担保と特別保証という金融保証制度、この二つを一緒にして、今政府が最終的には買い取ってもらえるという繭ですから、これに対しては、本来なら、千四百円まるまるでも、ほしい人には融資をしてもよろしい、心配はない、こう言ってもいいはずなんです。しかし、そうもできないとしても、金融当局は、金融保証の制度に関する建前がはっきりして、そして政府に買い取ってもらえるという特別契約がはっきりしてくれば、千四百円を維持してあげるという政府の熱意があるなら、それが明瞭なら、九割五分くらいは出しましょうと言っている。この点が明確になるような具体的な措置と、具体的な指導態度というものを明瞭にしていただきたいというのが第一点。  第二点は、その一番うるさい基礎になるのは、さっき資料として要求いたしました点です。最終的には三月末になってから掛り費用を計算して、これだけは政府が持ってやる、あとは千四百円に加算してやるという、その乾燥料、保管料、金利、輸送料等の予算の基礎となるべき数字であります。  第三点は、かくして乾繭保管をして持っておるけれども、その乾繭を三月まで持っていくというようなむだを排除して、企業努力に報いる精神でやっていただきたいそのための何らかの行政指導上の適切な措置考えてもらいたい。力を入れる適切な方法を考えてもらいたい。  この三点を要約して、金融の面で今当面農民が困っておりますから、一日も早く適切な指導措置をお願い申し上げておきたいと思うのであります。
  55. 須賀賢二

    須賀政府委員 ただいまの第一点につきましては、この法律が成立をいたしますと、対会社に対する契約におきましても、共同保管の最後に残ったもの政府で取るということを確約いたす、それに伴いまして、生産者団体でそれぞれの共同保管対象になりますものについて共同保管をいたすということの確認がなされて参ります。従いまして、そこで春繭共同保管は確定をいたすわけであります。  それから、中間経費につきましては、たとえば金利の問題等につきましても、最近の金利情勢等で多少の動きもありますので、今共同保管の金利は幾らときめてしまうことは、必ずしも現在の段階において直ちにさようにいたすことが適当でないという面もありますので、若干の模様を見たいと思っておるのでありますが、考え方と申しますか、金利についてはこういう種類の金利をとる、保管料についてはこういう基準のものをとる、乾繭料についてはこういう基準のものをとる、それぞれの基準を明らかにすることは、できるだけ早くいたしたい。これは、考え方だけでありますれば、できれば明日にでも御答弁申し上げたいと思います。  それから、第三の点の、共同保管をしております繭を、農協が途中で販売をいたしますことについては、金利、倉敷を自己の負担においていたしますことは何ら差しつかえないわけでありますが、八木先生の方でわれわれの方にどういうことを御要求になっておられますのか、その点が私ちょっと理解しかねたのであります。
  56. 八木一郎

    八木一郎委員 その中間経費は——予算説明書をそこに持っていますか。
  57. 須賀賢二

    須賀政府委員 ただいま持っておりません。
  58. 八木一郎

    八木一郎委員 その説明書的なものでよろしい。それならあしたでももらえますか。
  59. 須賀賢二

    須賀政府委員 これは作ります。
  60. 八木一郎

    八木一郎委員 予算があるのですから……。  それから、第三の点は、こういう意味なんです。そういう冷たい態度では困る、——冷たいという言葉は当るかどうか知りませんが、冷たいと私は言う。なぜなら、三月末まで持っておれば政府が買ってやるということを恩に着せるという態度。そんな三月末まで乾繭を補助してやるから持っておれと言って知らぬ顔をしておられることが、私には冷たく感じられる。そうではなくて、補助金は要りませんで、繭を十四万円、加工費三万円で十七万円、金利、倉敷、保管料等が幾ら、それならあげましょうと相談する時期が、来年三月を待たずして一度や二度はくるはずだ。その行政努力を大いにしていただいて、中小企業精神の企業努力に報いてもらいたい、そういう指導をしてもらいたい、こういうことですから、指導精神といいますか、指導意欲と申しますか、その点です。これはどうも売れなんだから仕方がない、——今なんかなかなか売れませんよ。十四万円の繭もとを持っておって、来年三月まで持っておれば政府がきれいにしてくれるといっても、かりに九割五分保証融資の道があってもなかなか踏み切れない。その踏み切れない零細な農民の実態をよく一つ見詰めてもらって、今私が質問というよりは要請をしておるこの気持に沿ってやってもらいたい。ぎりぎり、繭もとは、千四百円ですから十四万円です。あとは、経費を二万五千円にしてくれるか、三万円でやるか三万五千円かという、この企業家の努力によって、この繭は処理する道が開ける。しかも国費の負担には依存しない。補助金はもらわぬで済むわけです。予算や法律を運用していく上には、そういうところにこそ政府蚕糸当局の情熱を傾けた指導を期待したい。それをぜひお願いいたしたい。こういうことですが、おわかり願えますか。
  61. 須賀賢二

    須賀政府委員 非常に含みのあるお話でございまして、私の方でも現実にどういうふうな操作をいたしますれば、ただいま八木先生のお話しになっておりまするような趣旨で運営ができますか、十分よく研究をいたしまして、検討いたしてみたいと思います。
  62. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  63. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 速記を始めて。     —————————————
  64. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 それでは、この際酪農に関する件について調査を進めます。  当面の問題である乳価安定対策等について、まず政府説明を求めます。谷垣畜産局長。     〔吉川(久)委員長代理退席、委員長着席〕
  65. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 最近の酪農事情の状況を御報告申し上げます。  お配りした資料があるかと思いますが、この三十二年度におきます牛乳乳製品の需給の大体の予想を御説明申し上げておきたいと思います。三十二年度、ことしの三月までの状況を申し上げますと、昨年の上期、四月から九月までの状況は、農乳価格が三十一年の一月、二月以来ずっと上っております。夏乳価もそのままで持ちこたえておりましたような関係があったわけでありますが、生産の方も、そのような影響を受けまして、内地におきまして前年比一一九%、北海道におきまして一二四%というように、前年度の比較におきまして相当強い生産の伸びがあったわけであります。これに対しまして、市乳の方の消費は、夏分かなり天候が悪かったのでありますが、あるいはまた市乳の消費者価格上げの動きがありましたが、価格上げをしないで参ったわけでありますが、市乳消費は、内地におきまして前年に対して一一四%、北海道におきましては一〇六%程度の伸びがあったわけであります。従いまして、この生産と市乳消費のずれが乳製品の生産になって現われて参ったわけでありますが、その結果、内地におきましては前年に比べますと一二九%というような増大を見、北海道におきましては一三六%というような大幅の生産の増大を見たのであります。ところが、乳製品の消費の方は、主としまして大カン練乳の砂糖消費税免税措置撤廃を見越しました買いだめあるいは買い急ぎがあったかと思いますが、前年に比べますと一三二%程度の消費があったわけであります。ただし、これは、末端消費という考え方よりも、中間におきまする販売業者、あるいはそれを原料といたしまして加工いたしまするところにメーカーの方から流れていった数字になりますが、大体一三二%程度の増加があったわけであります。  下期に入りまして乳価の値下げがあったのでありますが、この期におきましては生産量の増大が鈍化いたしております。次のページの表に出しておりまするように、市乳用、加工用の価格が漸次下って参っております。この価格は農民手取りの価格でありますために、実際の値下げがありました月よりも時間的にずれた形になってここに出ておりますが、とにかくこのような形で生産の対前年比の率はかなり下った率を逐次示して参っておるわけであります。市乳消費の点は、この期に入りまして一—三月の学校給食を実施したわけでありますが、これによりまして、市乳の消費量は、前年に比べて、内地において一一八%、北海道におきましても一一〇%というようにかなりの伸びを見せております。しかし、乳製品の生産がやはり同様に——若干の市乳の増加はございましたけれども、残りのものが乳製品の生産に回りましたので、前年に比べて、内地で一一五%、北海道におきまして一一六・七%という数字をやはり依然として示したわけでございます。ところが、この期におきましては乳製品の消費が著しく減退して、対手前年比一〇六%というような数字を示して参っておるわけであります。大体、三月の末、四月、五月、そろそろ夏場の動きが見え始める時期でございますが、このあたりの天候が、御存じの通り、四月、五月、割合に冷涼な天候が続いた。また、生産の方は、当初予定をいたしておりました、私たちの方で昨年から実施しておりまするところのミルクの生産量予察がございまして、これはある程度確実な数字を今まで示してきておったのでありますが、この二、三、ことに三月の予想と実績がかなり違った形で出て参っております。これは、いろいろ、たとえば野菜類の豊作のための、牛乳生産のえさに向けられ、ブダ等にも向けられたと思いますが、そういうような、影響もあったかと思いますが、予想いたしましたものよりも高い生産量を示しております。そのようなものと、それから、四月、五月の割合に冷涼な天候、こういうような状態が続いて参りました。もちろん四月に入りましての生産量は若干低目に数字を出しております。従いまして、夏期の消費の見通しを非常に期待しておったのでありますが、かなりの生産が伸び、そうして消費の方が伸びなかったための需給の不均衡がそこに生じて参ったものだ、こういう状況でございます。  さような形で、本年の六月上旬ころに、数府県に対しまする乳業者から乳価の値下げの申し入れが行われたのであります。大手筋がまず動き始めまして、現在中小の諸君もそれにならおうとする気配が見えておる、こういう状態でございます。現在におきまする生産の予察等は、まだ五月の実績がわかっておりませんが、ある程度の下降を示してきておるものと見ております。  大体そういう状況になっておるのでありまして、当初学校給食の実施を一—三月にやりまして、あとは秋九月あるいはむしろ十月くらいから再開しようと考えておったのでありますが、三月の末におきまして、四月、五月の状況を判断いたしまして、四月、五月に学校給食を実施いたしました。六月に入りましては、北海道等の冷涼な地帯におきましての実施をいたしておりますが、その他の地帯におきましては、六月以降の学校給食は、政府補助金を出しまする体制ものは一時中止されております。大体そういう状況で現在まで推移しておる、こういうわけであります。
  66. 松浦周太郎

    松浦委員長 次に質疑に入ります。  質疑の通告があります。芳賀貢君。
  67. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま畜産局長から現況についての説明がありましたが、この際夏場の需要の最盛期を控えていろいろ乳価の暴落等の現象が露呈されておるのでありますが、これに対する一番大きな原因は、需要に対する生産の過剰というような傾向が増大いたしておることでありますが、この根拠となる実際に純然たる過剰数量というものは現在どのくらいになっており、そうしてこれに対して今後いかに消費拡大等の施策を講ずるかということが出発点になると思うのです。従来まで、政府は、この生産過剰傾向等に対しましても、正常在庫分は別としても、純然たるいわゆる過剰といわれるこの数量の把握を非常に甘く考えておった、実際の過剰数量よりも過小な把握を行なって、その上に施策を立てておった、これがやはり今日問題になっておると思うのです。それで、その正常在庫が大体一カ月半くらいが正常在庫といわれている場合においては、この純然たる過剰数量というものは果してどのくらいあるか。三十万石という説もあるし、また五十万石という説もあるわけでありますが、この的確な把握をどこに置いているかという点に対してはどうです。
  68. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 在庫数量の確保ということは、実は現在の体制では非常に困難な状況でありまして、工場在庫の数字は私たちの方で報告をとっておるのでありますが、在庫数量の報告は私たちに権限がございません。従いまして、各関係の業者の諸君に対しまして在庫の数字の提出方を督促いたしておりますが、なかなか思うように集まらない状況でございます。しかしながら、私たちの方で種々そういうような状況を勘案いたしまして、あるいはことしの三月末の推定在庫量等から考えますというと、三月末の在庫の数量は大体製品に直しまして七十万石ないし八十万石程度ではないだろうか、こういう推定をいたしております。ただし、これは、先ほど御指摘になっておりますところの通常在庫数量というものを含めまして大体そのあたり数字になるのではないか、かように考えております。
  69. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、毎月の正常な在庫数量の推定を一カ月三十万石ということにすれば、一カ月半の大体四十五万石が正常在庫ということになり、総体の製品在庫に換算した数字が八十万石であるということになれば、結局差引三十五万石が純然たる過剰乳ということになる。これがやはり作用していると思うのです。ですから、この把握のいかんによって、対策の進め方あるいは今後の市場等における価格維持等の問題が非常に変ってくると思うのです。ですから、これがつかみづらいとか、つかめないとかいうことになると、政府責任において具体的な施策が的確に進まないとわれわれは考える。これを最も的確に、どのくらいの数量が過剰数量であるか、一つその点を示してもらいたい。
  70. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 御指摘のありましたように、三月末の在庫量は大体今私が持っておりますような七十万石ないし八十万石程度、通常在庫を四十五万石と見ますと、その差でございますから、二十五万石ないし三十五万石であります。大体そのくらいだろうと思います。その後五月の末の在庫を実は今調べております。五月在庫はあるいは若干増加しておるというふうに私たちは推定いたしております。はっきりした数字はまだわかりませんが、若干増加しておる、かように考えております。
  71. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今後増加の傾向にあるわけでしょう。ですから、現在はたとえば三十万石が過剰在庫であるとすれば、今後年度内にそれがまた四十万石とか五十万石というふうになるわけです。そういう見通しはどうなんです。
  72. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 御存じのように、北海道は別でございますが、夏場におきましては牛乳生産は減って参ります。そして市乳の需要がかなり伸びて参りますので、夏場におきまする在庫量というものは、ふえるという傾向よりも少くなる傾向が多い、かように考えております。もちろん、このことは、実は天候に非常に影響があると思います。あるいはそのほかのいわゆる牛乳とかアイスクリームとが、夏季分に出ますところの他の競合物、ジュースでありますとか、特にはっきり出てきますスイカの出回りとかいうことに影響があると思いますが、夏場はバターその他の在庫はふえますけれども、それ以外の生産量が減り、市乳の量がふえて参りますから、夏場におきましては在庫量が減って参る、こういう状況になろうかと思います。現在申しておりますのは四月、五月の状況でございますから、その後の状況は、平年から参りますれば良好な格好になってくる、こういうことになろうと思います。
  73. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今日は農林大臣が来ておりませんので、重要な点に対しては局長だけの答弁では了承できない点が多々あるわけです。そこで、当面した緊急の、たとえば乳価安定等に対する緊急措置については、政府はもう具体的な対策を講じておると思うのですが、それがまだ表明されていないわけですね。発表の時期もあるかもしれませんが、この際、当委員会において、どういう具体的な対策をもってこの困難を克服していくかという点について、簡潔でけっこうですから、説明を願っておきたい。
  74. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 消費の急速な拡大をどういうふうにしていくかということが最大の問題であろうと思います。  この問題につきましては、学校給食のやり方をどういうふうにやっていくかという問題が一つあるかと思います。まだ私たちの方で今年度の予算でやりまする学校給食のワクが残っておりますので、これをどういうふうに利用していくかという問題が一つある。全体といたしましては、見合ってのワクの増大をどういうふうにするかという問題になろうかと思いますが、とりあえずの問題としましては、それをどういうふうに使うか、ただ、なま乳の給食ということは現在の状況からみまして不可能だと思います。従いまして、これはどうしても秋口のできるだけ早いときに再開をしていくということになろうかと思います。  それから、いわゆる集団消費の需要と申しますか、一般の消費の増大ももちろんでございますが、職場なり、あるいは集団の住宅なり、あるいは会社でありますとか事業所でありますとかいうところに対しまする集団的な消費の拡大が具体的問題としては起きて参ると思います。お手元に資料として配付してあるかと思いますが、全国的な数字がまだ私たちのところに入ってきておりませんが、東京及び神奈川地区、あるいは千葉のごく、一部のところを早々の間に調べました状況では集団飲用の形が進んで参っております。各地の生活協同組合あるいは消費者の団体等の特別な活動も最近かなり活発になってきた。こういう消費の拡大の方途を促進いたしますために、各県におきましての協議会等を、関係団体で作りまして、そうして具体的に消費拡大の方途をとる、こういうことを指導して参ってきておをわけであります。  そのほかに、これは従前からやっておるわけでありますが、生産者団体の共販体制ということを強くしていく、こういうことも現在の乳価安定の上から申しますと非常に大切な問題ではなかろうかというふうに考えておりまして、それぞれ関係の各県の担当者を集合いたしまして、対策を打ち合せ、それぞれ指導をさしておる、かような状況でございます。  そのほかに、地方におきまするいろいろな指導網を通じまする農家におけるより合理的な農業経営、こういう指導は、これは当面の対策とは言えないのですが、従前よりも指導を強くしてやっていきたい、かような考え方で進んでおる次第であります。
  75. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は消費拡大の具体的な対策を聞いておるのです。  それじゃ、一つ一つお尋ねしますが、第一の学校給食の問題です。これは、今年度の予算から言うと、牛乳換算二十万石を対象にして、期間的には六カ月間ということでやっておるわけですね。それで、学校給食を通じて消費拡大を一そうはかるということになれば、年間を通じて給食を行うということにすれば、少くとも一年を通ずれば四十万石の消費はできるということになるんですね。しかし、夏場等においては、これは生乳給食ということはできない。製品を加えて牛乳に換算して四十万石ということになれば、この面においても二十万石消費が拡大されると思うのです。もちろん、これに対しては、二十万石について七億円の予算が計上されておるから、これが倍額になれば、当然政府の支出の面においては十四億となるということは言うまでもないことです。こういう見通しの上に立って学校給食についてはどういうような拡大施策を講ずるか、この点はどうですか。具体的な点だけでいいですよ。こうやったらいいと思うという程度ではなくして、こうやりますということでなくちゃいかぬと思うのです。
  76. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 夏分におきまする学校給食は、内地におきましては、衛生上の関係その他がございますので、しておりません。四月、五月でとめておりますが、北海道のようなところにおきましては、そういう心配がないかと思いますので、夏場におきまする学校給食を続けております。  それから、御指摘の乳製品の問題、これはバターと全脂粉乳をやることにいたして進めてきておるわけであります。これらの問題も、もちろん夏場におきまする学校給食の問題といたしまして全然不可能だということではございませんが、バター等の問題につきましては問題があろうかと思います。これらは秋口からの学校の給食のために使いたい、かように考えております。  それから、今、とにかく、四月、五月とごく一部使いまして、あと残っておるわけでありますから、これを、学校給食が可能な時期になりますれば、できるだけ早く動いていくようにいたしたい、かように考えております。また、夏場におきまする消費がどの程度に伸びるかということも、これは例年のあれから見ますと相当に消費が伸びるということもありますので、夏場の状況を見まして具体的な今後におきまする数字を決定して関係当局に折衝しなければならぬ、かように考えております。
  77. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ばく然としたことを聞いておるのではなく、学校給食に消費拡大の一つの方法を向けるとすれば、具体的にことしの当初の計画よりさらにどれだけの数量をふやして、こうやるということにならなければいけないわけです。これは、局長一存でいかないとすれば、石坂さんどうですか。こういう学校給食の数量を拡大してやる御意思が今あるのかどうか。
  78. 石坂繁

    石坂政府委員 ただいまの学校給食を拡大する点につきましては、その方針でやっております。具体的のことにつきましては、今局長から答えた通りであります。  なお、先日酪農審議会におきましてもこれらの問題について検討いたしまして、ただいま応急対策及び恒久対策の二つの委員会を作って、それらの方面からも検討を続けてもらっております。
  79. 芳賀貢

    ○芳賀委員 将来のことじゃないのです。現在生産者の値段は全国的に五円とか六円買いたたかれて下っているわけです。これをどうするかというところに問題があるのです。先の先のことは、それはあなた方は考えなくていいのです。当面した緊急対策をどうするか。それには、たとえば、学校給食については、計画は二十万石であるけれども、これをさらに三十万石とか四十万石に政府は増加して、それに必要な予算措置は、たとえば九月の臨時国会なら臨時国会において、これが予算補正を行うなら行う、具体策を明らかにすれば、乳価というものは好転するということをわれわれは信じておるから、今お尋ねしているわけであります。
  80. 石坂繁

    石坂政府委員 その問題については、学校給食の実施は秋口からであります。なお、この点については大蔵省との関係もありますので、今その対策についてはせっかく検討中であります。
  81. 芳賀貢

    ○芳賀委員 秋からではだめです。今即刻何をやるかということです。ですから、ことしの計画は秋から向う六カ月間に二十万石の学童給食をやるということになっているが、もう直ちに始める、しかし夏場であるからして、なま乳を給食するということには困難性もあるから、この時期については製品をなま牛乳換算で何石ということにして、これを対象にして消費するということになれば、これはいいわけです。こういう点はいかがですか。
  82. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 御指摘の通り、学校給食の実施という問題は、現在北海道を除きましては実際上できていない。できない状況にあります。従いまして、秋場に入りましたときに、できるだけ早い時期になま牛乳による学校給食を実施していくということにならざるを得ないと思います。ただ、御指摘の、乳製品を今買い上げまして、あるいは買い上げの約束をいたしまして、学校給食をその現物で実施いたしますのは、今始めましても、夏場というものは学校は休みになるからできないと思いますから、その品物を作りましての学校給食は秋場以後になる。そういう乳製品の買い上げをどの程度にするかという問題は現在でも一つの方法があろうかと思います。と申しますのは、学校給食は全然なま牛乳だけでやるという考え方は持っておりません。ある程度の乳製品をその中に含める計画考えておりますので、そういうことはできる可能性はあると思います。ただ、数量その他を、年間を通じました現在の二十万石という数量をどういうふうに変更していくか、あるいはこれで十分なのかどうかという問題は、もちろん財政当局とも相談をいたさなければなりませんし、もう一つは、夏場におきまする需要というものがどの程度にはけるのか。これは何も手をこまぬいてやっておるわけじゃないので、消費拡大の運動を片方にいたしながら、それをやって参りました場合にどの程度にそれがはけるかということとにらみ合わしてやらざるを得ないと思いますが、そういう状況を見まして具体的な数字はきめざるを得ない、かように考えております。
  83. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、製品買い上げはやれる。やる気になればこれはやれることですが、その場合、この秋から消費するということになると、今までの数量よりもよけい一ぺんに運用しなければならぬということになる。現在は小学校、中学校と夜間高校にこれを適用しておるわけです。ですから、短期間に相当数量を消費拡大に向けるということになれば、その範囲を拡大して、たとえば全国の保育所であるとか、あるいは一般の高等学校とか、そういうところまでその対象を拡大すれば、同じ期間内においても消費額の増加は可能であると考えるのですが、そういう点についてはどう考えておりますか。
  84. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 実は、一—三月に十万石の学校給食を予定いたしましてやったのですが、この十万石の一—三月の間に学校給食をやります際に、実は方々から非常に懸念をされたわけです。十万石のなまミルクを学校給食で果してこなし切れるかどうかという問題であります。これはいろいろと各方面の御努力を得まして実現したわけでありますが、この学校給食をなし得る能力と申しますか、これの算定が大切だと思います。そのことと、それから、現在まで学校給食はいろんな乳製品を使っておるわけでありますが、それとの競合関係をどのように見るかという問題も生じてこようかと思います。今御指摘のように、対象を広げてやるという方法もあろうかと存じますし、あるいは現在のままの人数で——おそらく現在学校給食をいたしております人数は八百万人くらいの学童になっておると思いますが、そのワク内でやれるのではないかという問題もあろうかと思います。私たちの方で学童に対してやりましたのは、約二百万足らずの数字になっております。従いまして、現在やっております学童給食の範囲においてもこなせるということが考えられるわけであります。それは、具体的にワクを決定いたします際に、それらの事情を考えて決定しなければいかぬ、かように考えております。
  85. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、工場とか事業場とかの集団飲用に対しては、奨励とか促進はやっておるわけですが、具体的にどういうような助成とか補助的な政策を今日までとられてきたか、具体的な事例があれば……。
  86. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 お手元に配付してあります資料がその一端でありますが、地方における関係者の間に協議会を開く、あるいは打ち合せをさせて、具体的に、工場なり事業場なりと、そこに供給をいたします側、これは生産者団体の場合もありましようし、あるいは牛乳を販売しております諸君の場合もあろうかと思います。それをつなぎ合せる協議会にこちらの方から応援をいたしまして、従来指導してきたわけであります。具体的に個々の工場等に対する話し合いでありますとか、あるいは一般的にお集まりを願っての話し合いをいたしますとか、そういう形において進めて参ったわけであります。
  87. 芳賀貢

    ○芳賀委員 畜産局長通牒、六月十日に、「牛乳及び乳製品の消費拡大について」というのが流されている。この中にあることはあるのです。工場、事業場等における集団消費。しかし、具体的に政府としてはどういうテコ入れをしてやるから一生懸命にやりなさいというようなことを何も書いていない。ただ微温的な、PR的な消費促進だけなんです。ですから、最近集団飲用が伸びていないでしょう。たとえば、京浜地区においては、一合びんにして毎日一万本程度しか消費されていない。石数にすればわずか十石くらいですよ。これ以上頭打ちで伸びないというような現況にあるわけです。これで集団飲用が期待が持てますということにはならないと思うのです。ですから、集団飲用を奨励する場合には、たとえば冷却施設であるとか、いろいろな設備等に対し具体的に政府補助、助成措置を講ずるからやって下さいということにならなければ、効果はあがらないと思うのです。現在何か考えている点がありますか。
  88. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 京浜地区は一万本というお話がありましたが、もう少し進んで参っております。また婦人会、生協等の運動もここ非常に激しくなってきております。これの成績も相当上ってきております。これの冷却施設に対して何らかの助成措置をやったかというお話でありますが、そういうものの助成措置はいたしておりません。この問題に関しましては、ただいま申しましたように、具体的なあっせんをいたすとか、あるいはまた関係者の方々にお集まり願いまして話をつけていくというような形で運動を進めて参っておるわけであります。
  89. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は政務次官にお尋ねします。今後集団飲用を拡大する上において、学校においても当然そうでありますが、冷却施設、たとえば冷蔵庫を設置するとか、冷却施設が伴わなければ、これはできないわけなんです。この施設に対しては政府が助成するとかいうような具体策を講ずる必要があるのですけれども、今まではやっていないわけです。ですから、この際消費の拡大の一つの方策として、こういうことをおやりになる意思があるかどうか。
  90. 石坂繁

    石坂政府委員 ただいまの冷却施設等を作る必要であるではないかという御質問でありますが、消費の拡大のためにこの種の何らかの措置を講ずることは必要だと思いますが、それには当然経費が伴うことであります。補正予算等の関係もございますので、ただいまのところその点について具体的にどうするということを申し上げ段階ではないと思います。
  91. 芳賀貢

    ○芳賀委員 経費なしに実行なさる方法はないので、経費は当然伴うのです。そのことをやれば消費拡大ができるという見通しがつけば、それに経費を惜しむ必要はない。たとえば、冷蔵庫を購入する場合、冷蔵庫には四〇%の物品税が課されている。ですから、学校とか工場あるいは生活協同組合等が冷蔵庫を購入する場合、免税の特例措置もやるつもりであればやれるのです。これは経費が伴わない。この点に対して税金はとりませんということを行なっても効果があるわけです。この点はどうです。直接経費を払わないのです。
  92. 石坂繁

    石坂政府委員 それを今直ちにやるということをここで申し上げ段階ではないと思います。しかしながら、そういう点につきまして何らかの措置をすることは必要であると考えております。
  93. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点は農林大臣と速急に打ち合せをして、この次当委員会農林大臣が出席する場合に、重要な点に対して農林大臣を通じて政府考えを明らかにしてもらいたい。  それから、これは厚生省関係であると思いますが、学校給食あるいは工場等における集団飲用の施設を行なってこれをやる場合、たとえば食品衛生法の規定を適用して今日まで奨励してきたか、その点、環境衛生部長にお尋ねいたしたいと思います。
  94. 尾村偉久

    ○尾村説明員 学校給食あるいは集団飲用に牛乳が増加しつつある、これは保健衛生の上で特に適当な栄養の確保の上から望ましいものでございますから、厚生省の方としてはさようなものは伸びるようにすることを基本方針にいたしております。ただ、同じ栄養によりましての保健衛生の確保と同時に、一方でまた障害が起ってはいけないものでありますから、この点は最低の衛生上の安全性というものは、これは特に集団でございますので、危険がありますと個人のみならず一挙に集団で障害が起る問題ですから、この点は最低は必ず保持する、こういう建前でやっております。従いまして、この乳及び乳製品等の規格の省令の適用につきましては、今のような基本方針で集団給食というところで、管理者が義務を負ってというようなところの場合には、融通できるものは融通して、最低の線を確保する、こういうことによりまして、第一次としてはこれらが伸びるようにということで、農林省の牛乳の消費の拡大に協力していく、さような建前であります。
  95. 芳賀貢

    ○芳賀委員 現在の食品衛生法あるいはこれに伴う省令の規定は、こういう学校給食と集団飲用というものを予定しないで、これ以前にできた法律ですね。ですから、即応しない点が非常に多いわけですね。たとえば、学校給食を行う場合においても、現地で生産された新鮮な牛乳を、たとえば協同組合等の集乳施設から直接それを学校に提供して給食に資する場合に、その間に当然規定された設備というものは伴うわけなんですが、現在主として乳の処理業者に適用しておるところのこれらの法令だけで十分であるということにはならぬと思う。現地の事情に即応した最も簡便で効果的で適正な規定というものがこの際必要になってくると私は思うのですが、その点に対しては厚生省としてはどのように検討をしておられるか。
  96. 尾村偉久

    ○尾村説明員 ただいまの点についてはごもっともな点でございまして、すでに昭和三十年の三月、この集団飲用等の牛乳飲用促進についてという通知を出しまして、ちょうど今芳賀委員のおっしゃいましたようなことがうまく行われますように、この省令の実際の集団給食施設における適用につきまして相当詳細な、たとえば学校、病院向け、それから牛乳の生産地である農村地帯の場合というような工合に分けまして、詳細な指導をいたしておる。ただいままでのところ大体これに沿っておりまして、最近の学校給食初め集団飲用がこういう面では支障なく伸びておるというふうに信じておりますが、なお今後一そう、新たにとりかかるというところについて、今まで実績のありましたような集団給食施設で、なお工合の悪いというようなところが具体的に幾つか出ますれば、それについて検討いたしまして、さらに今の衛生安全は確保しなければいけませんが、その点から見まして、かような必要なものは十分考慮したい、かように存じております。
  97. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、たとえば具体的に取り上げて、殺菌処理の場合ですね。現在低温殺菌でやっておるわけなのですが、これは省令においては高温殺菌の措置も可能であるということになっておるのですね。ところが、厚生省の方では、この高温殺菌の施設等に対しても、これは反対であるというような態度をとって、高温殺菌を押えておる。これは昭和二十九年あたり相当論争した点なんですが、この学校給食の集団飲用のような場合は、直接その生産地で給食の現場に牛乳を持ち込んで、直ちに殺菌処理して、そうして飲用するということになるのですからして、適宜な措置としては、これらの事例に対しては当然現地の実情を十分勘案して、高温殺菌でこれはもう心配がないというような見通しがついた場合においては、それらの措置を認めるという、一歩前進した積極的な指導措置を講ずる必要があると思うのですが、この点が非常に消極的だったのです。ですから、この点に対する厚生省の積極的な意見を聞かせてもらいたいと思います。
  98. 尾村偉久

    ○尾村説明員 この殺菌方法につきましては、低温のみならず高温殺菌も最近は奨励をいたしております。実情を申し上げますと、今、集団給食を含めました牛乳の処理施設の中で、六十三度ないし六十五度、いわゆる今おっしゃる低温殺菌、これが千三百三十施設に対しまして、七十五度以上十五分間といういわゆる最高温でありますが、この六十二度の低温に対する高温、これが二千四十二施設、それから、さらに、超高温といいまして、百度ないし圧をかけることによりまして百五度、これによる瞬間殺菌が最近ふえまして、百十施設、これは大処理施設が多い。これは逐次ふえております。かような、実際最近とみにふえておりますのは、われわれの方も、さような両面、それぞれの環境と、それから処理量等を勘案いたしまして、これは決して偏せず、一番衛生安全で、しかも入ってくる牛乳の性質等から見て適当ということについては、自由にこれは勘案しておりますので、最近は、前のような、そういう低準でなければというような態度は、よくよくのことでなければとっておりませんので、この点は、給食の方も不便なく一番適した方法で伸びる、かように承知しておるような次第であります。
  99. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点がまだ全体に敷衍してない。往年の高準殺菌のいけないというその当時の状態というのがいまだに残っているように解釈されておるので、これで可能であるということになれば、むしろこの施設費等の面においても相当違います。この点は一つ積極的に進めてもらいたいと思う。  それから、もう一つは、この省令の中に、殺菌後一時間以内に冷却施設を置いてそれによって処理するということになっていますが、この点は学校給食等の場合にはどういうふうな適用をしておりますか。
  100. 尾村偉久

    ○尾村説明員 これは、常温に一時間以上にわたって保存してその後において飲用するということを想定いたしますと、來雑物——菌でありますが、発育の可能性が非常に大きいのであります。一度とにかく六十数度以上にいたしまして、これがちょうど細菌の発育の至適温度である三十七度、体温程度を通過いたすものでありますから、それは非常に発育の可能性が出ておる。そのまま常温に保存いたしますと、このまま発育が非常に促進されるわけでありますから、これは牛乳の世界の常識から十度以下ということにしてありますが、学校給食のような、ことに農村等が一番問題でありますが、これらは、すぐに飲んでしまう場合は問題がない。非常に短時間、すなわち、朝登校してからいろいろな処理をする、それでお昼になって出すというような場合には、一ぺんわざわざさます必要はない。さような点は機械的な適用をいたしておりません。ただ、今われわれの考えておりますのは、市販の配達するものは、やはりこれは厳密にいたしませんと、世界でもこの点で爆発した実例が非常に多いわけであります。これはやはり続けていきたい、かように存じております。
  101. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、学校等において、低温、高温にかかわらず、殺菌効果はおおむね一時間以内でも、これをすぐ飲用してしまうというような場合には、特に冷却施設等に対してはそれほど問題がないということになるのですか。市販の分に対しては厳重にやらなければならぬが、学校給食等については、短時間に飲用する場合においては、この規定では、施設はなくてもいい、こういうことになるわけですか。
  102. 尾村偉久

    ○尾村説明員 今の、殺菌処理を短時間でする場合には御説の通りであります。
  103. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この機会に、話が少し飛びますが、市販で小売の場合、これはやはり成分規格によって、たとえば脂肪含有が三%が普通牛乳ということになっておる。それから、三・五%以上というものが特別牛乳ということで処理されているのです。ところが、現在の実情は、市乳に用いる原料乳の成分内容検討すると、大体三・二%ないし三%くらいが成分現況なわけなんです。ですから、これは乳の成分内容が自然に改喜されて今日に至ったわけですから、実情に適応するように成分規格を変更するということもまた必要だと思うのです。そうでないと、悪質な業者の場合には、三・三%の原料乳が出た、それをわざわざ三%に薄めて、そして数量をふやして普通牛乳で販売するようなことも、合法的にやればできるわけです。ですから、こういう点に対しては、やはり現在の市乳等の原料乳の成分内容はどの程度に高度になっておるかということを十分把握して、それに適応した優秀な成分規格というものに改善して、そして消費者に対しましても優質なる牛乳が提供できるというように漸次改善すべきであると思いますが、この点はどうですか。
  104. 尾村偉久

    ○尾村説明員 牛乳の脂肪は牛乳の組成分の大事な指標の一つでありますが、普通牛乳三%、特別牛乳三・五%これを、近く省令改正によりまして、特別牛乳三・三%にいたします。これは、かつては、もっぱら牛乳の取締りといいますか、あるいは牛乳の評価を脂肪だけで言っておったわけでございますが、今はむしろ、その前提になる飼い方から、えさその他によりまして、ビタミンとか、それから鉱物質とか、あるいは蛋白質、こういうものが総合されて最終のいい悪いを決定するわけでございます。さような意味で、脂肪は三%以上ということになっておりまして、普通牛乳としてはこれを割ってはいかぬということにいたしておるわけでありまして、それ以上の方はいいことになっております。現在でも大部分は以上の方になっておるわけでございますが、しかし、これは、油断をいたしますと、やはり二・八とか二・九とか、これはまあ人為的なことはあまり疑いたくないのですが、これを割るものが出てくる。これは飼料その他の関係もあるかと思いますが、やはりこの三%以上ということは厳守する、ただし、特別牛乳というのは、脂肪分だけよりも、むしろ無菌的な牛の扱い方、しぼり方、飼い方ということで、あとの操作をしないでそのまま栄養品が壊されないで赤ん坊にいくということを一番のねらいにいたしまして高度の特別牛乳としておるわけでありますから、その意味で、これはむしろ三・五よりも三・三が適する、そのかわりに、ほかのいい点を壊さぬようにしようということで、むしろ今度は改善をはかっていくということで、大体きまりました。近く省令改正をいたします。かような方向に今教育をいたしております。脂肪だけあればほかの方が薄くていいという思想が流れておったのを、最近においてむしろ是正していこうということでやっております。普通牛乳は、三・二くらいに最低をやった方がいいという時期がきますればやりますが、今のところはまだ無理です。三・〇がいい。諸外国の例から言いましても、大体二・九ないし三以上ということが今のところまだ通例でありますので、あまり日本だけ先走っても、ほかの方に輸出その他の乳製品の関係がありますので、これはもう少し現在のままで見たい、かように思います。
  105. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう一点厚生省に伺います。市販の牛乳の価格面に対して、厚生省は何らかの検討を加えたことがあるかどうか。現在普通牛乳で東京都においては一合びんで十四円ですが、この価格構成の内容、たとえば生産者が売り渡す乳価は現在大体五円台と思います。それからメーカーから小売業者に卸す価格は大体九円くらいだと思います。そうして末端の価格が十四円ということになりますと、生産者が五円、メーカーが四円、小売業者が五円ですか、そういうような形になりますが、この点に対しては十分検討を加える余地があると思うのです。ですから、これは厚生省の立場において、たとえば環境衛生等で諸法令の根拠に立ってどういうような検討を加えられておりますか。
  106. 尾村偉久

    ○尾村説明員 これは、厚生省の立場でも、先ほどから申し上げますように、牛乳は、乳幼児を初め病人あるいは国民栄養に、非常に総合的にそろったいい栄養品であるということで、これが国民に極力多量にとられることが望ましいことであります。従いまして、価格というものはその面から非常に関心がある。いかに望ましくても、価格が生活に合わなければ、これはとれません。その他のわれわれの扱っている食品の価格とにらみ合せて妥当でなければいかぬということであります。これは常に検討を加えておるのでありますが、これは私の私見でありますが、一番のポイントは、やはり日本の小売という習慣にあるという点が一番われわれの目から見てあるのです。今のところ、ほとんど大部分が必ず家庭に毎朝配達されるということが習慣になっているのであります。それでなければ牛乳を飲んだような気がしない。たまに旅行先で駅で買うのは別といたしまして、このために、これの集配の費用というものが、中身の栄養品と関係なしに非常な価格内容になる。今のお話通り、三分の一はこれで占めている。わずかな溶液になっている栄養品の量の一本々々が相当な労働力を伴い、それから店舗を伴わなければこれが飲めないという形に問題があります。ほんとうから言いますと、ああいう中身の水の一合分が三合分になっても栄養品の価値から言いますれば、よけいなものを負担しなければそう高いとは思わずに飲むのではないか、こう思われます。その中身そのものが大事なのであります。その点があると思うのでありますが、ただ、これはあくまで商業上の日本の長い間の習慣と、それから国民側の習慣がとにかくまだそこまでいかないのですが、できれば、一本々々でなくて、家族が三人飲むならば三合びんというものがあって、それを朝取りに行くということになればそれだけ能率化されて、小売価格がうんと下る、小売店のいろいろな諸経費が、全国的に見まして小売に使われているものが現在の何分の一になる、こういうことになれば、これは必ず三円が四円下るのであります。そう思います。従いまして、われわれの方の指導方針といたしましては、むしろ取りに行ってでも、冷却装置のりっぱな、そのかわりびんは大びんで買えるようなところに取りに行く、その労力は家庭の方で費してでも行くという習慣がある程度に達するように、現在実は指導しているのであります。これは急速にはなかなかむずかしいとは思いますが、そういうような家庭経済に好影響を及ぼすこととか、あるいはその方がむしろ衛生的に安全だというような例を逐次普及していくつもりであります。実は、ことしの秋厚生省が二十周年の博覧会、展覧会をやる計画でありますが、むしろことしの計画にはさような国民栄養等の改善に必要なPRを中心にするということがきまっているくらいでございます。このような方向から始めませんと、急に厚生省の省令でこういうことをやれば価格は下るだろうといっても無理ではないか、かように存じております。
  107. 芳賀貢

    ○芳賀委員 配達機構等は、びんの改善等に手を加えれば、当然小売価格合理化されて、その面が圧縮されるということはわかるのです。しかも、現状において、生産者側の乳価が買いたたかれて暴落している中において、小売価格は依然として変化がない。ここに問題があると思うのであります。ですから、現状をながめた場合、これが妥当な価格構成であるか、それが妥当でないとすれば、どの面に検討を加え改善を加える余地があるか、その検討をやられたかどうかということを聞いているのです。
  108. 尾村偉久

    ○尾村説明員 今の末梢の消費価格に対しまして、それを構成しておる途中の原料価格とか、あるいは途中の生産価格等の相互の関係ということは、もちろんこれはわれわれも関心はあるのでございます。ということは、そのいかんによりましては、結局終末的には衛生上の措置にまで関係する部面があるわけでありますから、それは関心がありますが、ただ、これに対して、われわれの立場から、要するに衛生的な立場から、あるいは商品衛生の立場から、生産者の方の運営がまずくて、原料価格が下っておるのにまん中の幅が開いているのは不当じゃないか、という点についての経済的な分析、あるいはその商品学といいますか、そういうものからの分析というものは、まだわれわれの方は、不勉強なせいもありますが、知識も足らぬものですから、申し上げるような結論は持っておらないのであります。
  109. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう調査とか用意がないとすればやむを得ぬですが、しかし、厚生省の場合は、これは生産者も消費者も含めた国民全体の生活の改善とか、環境衛生の向上とか、そういうことが任務なんですから、当然こういうような現状に対しての具体的な検討を加えて、改善に対して適切な方途を与えるということは、これは大事なことだと思う。現在用意がないし、そのことをやっていないというのではやむを得ませんが、今後すみやかに、そういう面に対しても調査、検討を加え、結論が出た場合には、当委員会にできるだけすみやかに結果を報告してもらいたいと思うわけです。  次に農林省にお尋ねしますが、この価格安定の方策として、たとえば大カン練乳に対する砂糖消費税、この戻税復活の問題も一つの案なんです。これは昨年の十月から大蔵省が反対を押し切ってこれを強行したのですが、現在の大カン練乳の生産傾向を見ても、この面については前年度に対して七五%というのが大カン練乳の生産の現況です。これの原因は、やはり大カン練乳の免税措置が廃止されて、今度はそのことによって大カン練乳の価格がそれだけ高くなった、消費が非常に伸びないということによって、生産がこの面においては減退しておる。ですから、大蔵省がせっかくやってみたけれども、結果がまずかったわけなんです。誤りがあったのですからして、この際またこれを是正して、従前通り消費税のいわゆる戻税を復活させるというようなことを実現させたらいいというようなお考えは、当然農林省にあると思いますが、その点はいかがですか。
  110. 石坂繁

    石坂政府委員 ただいまの御質疑に対しましては、芳賀委員のような趣旨の陳情を、最近私どもも幾つも受けております。いろいろ事情気の毒な点もあるのでありますけれども、今直ちにそれをもとのようにすることもいかがであろうか、こういう点でありまして、農林省といたしましては、まだそこまで踏み切っておりません。
  111. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは政務次官も御承知の通り、農林省は免税措置を継続しろという立場の上に立っておったのだけれども、大蔵省に押し切られて戻税が廃止になったのだ。だから、別に態度を変える必要はないと思うのです。当時反対してずっとがんばってきて押し切られたのですからね。だから、大蔵省の側に回って、これは今のところはやむを得ぬというのはちょっと変じゃないですか。ですから、この点に対しては大蔵省の措置に誤りがあったのです。税の体系上どうだこうだといっても、結局このことが乳価安定とか酪農の問題に悪影響を今日与えているということが明確になったわけです。ですから、これを政治の中で改善するということは、これは当然だと思う。その意味において、免税措置を復活させるということに対しては、農林省としては強い主張を復活してしかるべきだと思うのですが、いかがですか。
  112. 石坂繁

    石坂政府委員 この席で私の口から大蔵省の措置が間違っておったということを申し上げることもいかがであろうかと思いますが、さような御意見は十分に私は傾聴いたします。
  113. 芳賀貢

    ○芳賀委員 石坂さん、そのくらいのことは、あなたここで言明できなければいけません。いずれ農林大臣相談して言明させるでしょうが、剣道の達人の石坂さんが、このくらいのことを大蔵省に対してはっきり言えぬようでは、われわれもなかなか安心できない。この点は早急に検討してもらいたい。特に、この戻税の廃止によって、政府においては年間大体十二億円税収があるわけですね。これをねらって大蔵省は廃止したわけです。ところが、その十一億円を全部乳価の安定とかそれに使っておるわけではないでしょう。その中の七億円は学校給食の奨励費に使っておるけれどもあとの五億円は、これは酪農振興基金法の出資金に回しておる。これは毎年五億ずつ出資をされるわけではなでしょう。それですから、戻税廃止に伴う税収のすべてを酪農振興の施策に使っておるということにはなっていないのです。そういう消極的な欺瞞的やり方を今日政府は酪農政策の面に講じておるからして、こういう結末になってきたわけであります。ですから、これは速急に改善する必要がある。この点についても後刻農林大臣を通じて明確な態度を示してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  114. 石坂繁

    石坂政府委員 ここで私の個人的の意見を述べれば、個人的の意見ではだめだと言われるにきまっておりますので、私はここでは申しませんが、ただいまの点は、私、農林大臣ととくと協議いたします。
  115. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に、緊急対策としてもう一点だけお尋ねしておきますが、アメリカよりの輸入乳製品の禁止並びに制限措置というもの政府はどう考えておるか。最近においても年間大体一万五千トン程度の粉乳が輸入されておるわけです。戦争直後は、これは援助物資とかMSA物資の形として援助的な意味で入ってきたのです。ところが、最近は、そういうような関係でなくて、粉乳が輸入されておるわけです。先般も、これは安宅産業と思いましたが、大体五千五百トンの落札をしておるわけです。ですから、たとえば年間一万五千トンの粉乳ということになると、これは牛乳に換算すると大体百万石ということになる。こういう牛乳換算百万石という膨大な粉乳がアメリカから毎年入ってきておるのです。国内においてもうすでに生産が過剰で乳価暴落というような状態になっておるのですから、この際緊急な乳価維持の上から言っても、今後アメリカの乳製品に対しては輸入を禁止する、あるいは計画的にこれを制限するというような緊急措置が講ぜられれば、これは乳価安定の上においては非常な好影響をもたらすと私は考えております。この点についてはどういうお考えですか。
  116. 石坂繁

    石坂政府委員 ごもっともな御質問と思いますが、詳しいことについては畜産局長からの答弁でお許しを願いたいと思います。
  117. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 私から申し上げたいと思いますが、御存じの通り、現在、主としてアメリカからでありますが、アメリカから相当に多量の脱脂粉乳が入っております。そのほかにバターが若干入っておりますが、これは駐留軍向けのバターでございまして、一般のバターにはなっておりません。問題は脱脂粉乳の問題になるかと思います。これが、御存じのように、贈与もしくは非常に廉価な形で入っておりまして、現在の学校給食の大部分をそれでまかなっておる、こういう状況になっております。従いまして、この脱脂粉乳が国内の乳製品にどういう影響を与えておるか。悪い影響を与えておるならば、これは当然に制限をすべきもの考えます。結局、これをいたします場合の——よしんばそれを制限いたしましても、片面におきまする学校給食の形におきましてのなまミルクあるいは乳製品におきます給食とのにらみ合いにおいて数量を決定すべきもの考えております。国内の乳製品に対する悪影響がありますならば、当然にそれは話をいたしまして、適正な数量制限をすべきだと考えておりますが、現在国内におきます乳製品の価格海外から入って参ります価格との間には非常な差がございます。そのままの形で内地の製品を学童給食の方に回すとなりますと、その間に相当な父兄負担の問題が出て参ります。従いまして、それは通常言われております学童給食の中に乳製品をどの程度に入れ込むべきかという問題とにらみ合せまして検討いたしたい。それで、海外の乳製品の、学童給食及び日本の乳製品に及ぼしております影響は、一応学童給食という第三市場的なものでこなされておりますから、その限りにおきましては、一般市場の形におきます乳製品とは関係がない。考え方によりますと、乳製品になれつつあります学童というものによって、将来拡大される一つの基礎が築かれつつあると考える面もあるわけです。これが価格の問題あるいは数量の問題で国内の乳製品を脅かすようなことがございますれば、当然に、御指摘のありますように、そういう調整をいたし、また、海外から入って参りますそういうもの制限すべきもの考えております。
  118. 芳賀貢

    ○芳賀委員 悪影響があればというが、悪影響があるのでしょう。結局、外国からこのような乳製品を輸入する場合としない場合の影響というものは、大いに違うでしょう。首をひねる必要はないですよ。違うのですよ。問題は、あなたの言いたいことは、アメリカの乳製品の方が安いということでしょう。それなら、外国の食糧や乳製品が安ければそれをどんどん持ってきて、日本の国内の農民の所得が低下したり貧困化が進んでもかまわないということにそれは通ずるじゃないですか。そういうことではいけないのですよ。ですから、たとえば現在アメリカから日本の乳製品に比べて相当格安なものが輸入されて、それが主として学童給食に回っておるが、その輸入をやめて、それを日本の乳製品と置きかえて、同じ数量を学童給食で消費した場合において、一体金額においてどれだけの差があるのですか。
  119. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 具体的な全体的の数字をちょっと私申し上げかねるのでありますが、大体、今のところ、脱粉によります学童給食一合の父兄負担は一円七十五銭見当になるのではないかと思います。それに対しまして、国内のなまミルクの場合、いろいろございますが、四円の補助を出しまして、父兄負担が、これはところによって違いますが、二円五十銭というところもあれば、あるいは三円というところもあります。ところによれば二円というところもございまして、一概に言えませんが、そういう程度の負担があるわけであります。全体の数量百二十万石とも申しますし、年々違って参っておりますが、それだけの数量を今のような格好で父兄負担というものを同じようにいたしてやっていくようにすれば、それだけの何らかの負担を国がやりますか、あるいはPTAの方でやりますか、どこかでやる、こういうことに相なろうかと思います。入れております脱脂粉乳自体の国内の製品の相場と、入れました脱脂粉乳の相場の違い、これは相当な開きがあるのであります。
  120. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、その差額ですね。アメリカの乳製品を輸入しないで、国内産の脱脂粉乳を同じ数量学童給食に回した場合、どれだけ給食費に差が出てくるか、総体でどれだけの数字になるか、そのくらいのことはわかるでしょう。
  121. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 これは、先ほど申しましたように、計算すれば出ると思います。いずれ計算して申しますれども、従来、脱脂粉乳を海外から入れて学校給食にいたします場合、国内の脱脂粉乳をそれに千トン程度入れる計画を何回か数年にわたってやって参ったのであります。ところが、当時の事情は、むしろ国内の脱脂粉乳の売れ行きと申しますか、価格が非常に高いものでありますから、学校給食の方に対して国内の脱脂粉乳を向けるということに計画が実行されなかった。こういう経過を数年経てきております。今日のような状況になれば、それがまた計画が変ったものになって参ると思います。従来はそういう経過になっております。金額はあとで申し上げたいと思います。
  122. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは政務次官にお尋ねしますが、今畜産局長の言った通り相当多量な、アメリカの余った——これはやはり過剰の乳製品なのです。それが日本へ進出してきておるのですからね。問題は、輸入品が安いとか国内品が高いとか、そういう問題ではない。国内の酪農政策をどうするかとか、食糧政策をどうするかという見地に立った場合に、やはり国内の生産がもう過剰傾向にある場合は、これをさらに圧迫するような外国の食糧や乳製品の輸入は当然禁止制限するのが、だれが考えても当然だと思う。こういうことをまずやるということの言明はできると思うのです。そのことによって、従来アメリカの輸入脱粉を学童給食に使っておったが、これは消極的に学童給食をとりやめるというのではないのです。結局国内の製品とそれを置きかえる場合においては、当然価格の差によって負担分がふえてくる。給食費がふえる。これを父兄に転嫁さすことはできないのでありますから、その差額分については政府がそれを負担するという腹さえきめれば、問題が解決できると思うのです。この点に対しましては、政務次官は、局長と私の質疑を通じて感ぜられたと思うのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  123. 石坂繁

    石坂政府委員 外国の安い品物を輸入して、そのために日本の酪農家を圧迫するということについては、十分これは考えなければならないと思います。芳賀さんの御質問趣旨もごもっともの点多々あると思います。しかし、同時に、これを全面的に置きかえるということになって、しかもPTAに負担をかけない方法でやろうということになると、国の財政負担は相当大きくなります。従いまして、今直ちにこれを全面的に置きかえるということではなしに、私どもは他の関係するところも十分考慮いたしまして、検討したいと思います。
  124. 松浦周太郎

    松浦委員長 芳賀君に申し上げます。すでに一時間二十分以上になっておりますし、他にまだ二人質問の通告があるのです。約束が約束ですから。
  125. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 現在、輸入の脱粉一ポンド大体二十五円見当であります。それから、国内産のものもだいぶ下っておりますが、現在一ポンド百円ないし百十円、こういう格好になっております。従来国内脱粉を少しでも学童給食の一部にも入れようということで努力したのでありますが、考えなければいけませんのは、国内におきます一般の需要者に対しまして、やはり脱脂粉乳の要求がかなりあるわけであります。そちらの方にも提供いたさなければなりませんので、従来の状況では、その間の調整をとりながらやっていく必要がある、かように考えております。学童給食に従いまして日本の国内におきます脱脂粉乳をどの程度受け得るかという数量の問題になろうかと思います。
  126. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、今の問題については後刻資料として提出題います。ここ数年間毎年の乳製品の輸入数量を各国別の仕分けをしてもらうという点、それから、輸入された乳製品の国内用途がどのような面に向けられておったかという、そういう内容についての資料を、明日でけっこうですから御提出題います。  そこで、ただいままでの私の質問に対して何ら具体的な答弁がなされておらないのです。この点に対しては、政務次官に申し上げますが、明日農林大臣が当委員会に出席される機会に、私の質問した諸点に対して政府の明確な御答弁を題いたいという点を申し上げまして、残余の質疑は保留しておきます。
  127. 松浦周太郎

    松浦委員長 永田亮一君。
  128. 永田亮一

    ○永田委員 時間もおそくなりましたから、ごく簡単に畜産局長に対して酪農の問題で二、三お尋ねしてみたいと思います。  酪農の重要なことは言うまでもないのですが、昨今の乳価の値下げとか、輸入制限の問題とか、非常に不況になってきており、憂うべき状態になってきておるように思われるのです。それに対して政府の方で酪農振興基金法をこの前の国会提案されまして、これはおそまきながらも非常に時宜を得たものであると考えるのであります。この酪農振興基金法が施行されたのはたしか五月十六日か七日だったと思いますが、それから後において、現在までに、その基金法の運営がどういうふうになって行われておるか、その模様をお尋ねしたいのです。たしか基金政府出資は五億円だったと思いますが、政府出資以外に、乳業者の出資金なんかはどのくらい、どうなっておるか、そういうような運営の模様をちょっと御説明願いたいと思います。
  129. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 あの法律にありますように、設立委員を任命いたしまして、そして、基金に対します申し込み、その他を募集して、役員に引き渡す、こういうことになっております。現在、予想されまする応募に対しての設立委員の推薦方を依頼しております。従いまして、今の段階におきましては、設立委員を任命をいたしまして、そして第一回の設立委員会を早急に開く、こういう段階になっております。従いまして、これは七月一ぱいには発足をいたして、八月には業務がやれるような順序で進んでいきたい、かように考えております。
  130. 永田亮一

    ○永田委員 なるべくうまくやっていただきたいと思います。  それから、次は、乳価の問題が今も議論になっておりましたが、生乳引き取りに関する紛争が、去年あたりでも、ことしでも、生乳の値段を下げようという業者と、下げちゃいかぬという生産者の間でずいぶんあったと思うのですが、この紛争のあっせん処理機構というようなものを何か考えられておるのか。私はまだ農林委員一年生なのでよくわかりませんが、そういうもの考えておられるかどうか、お伺いしたい。
  131. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 御存じのように、酪農振興法によりまして、そうした場合におきまして各県にあっせんをいたしまするあっせん委員の制度がございます。昨年の秋以後の問題といたしまして、二件ほどあっせんの話が出ておりました。
  132. 永田亮一

    ○永田委員 今酪農振興法のお話が出たから、ついでにお尋ねするのですが、酪農振興法ができてから、全国で何カ所くらい指定されたのですか。そして、うまくいっておるかどうか。そのことをちょっとお尋ねしたい。
  133. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 現在までおよそ七十五くらい集酪地区ができておると思います。あるいは数字が二、三カ所違うかもしれませんが、大体そのくらいの見当の集約酪農地区ができております。これは計画に沿って動いておるわけでありますが、牛の導入その他の関係におきましては大体において順調にいっておる、かように考えております。自給飼料の問題、草地改良の問題等の点におきましては、計画通りいっておるところと、そうでないところがあって、かなり幅があるような状況で現われておる、こういうことであります。
  134. 永田亮一

    ○永田委員 酪農振興法の指定を受けたいというわけで、全国からずいぶん運動や陳情があったらしいのですけれども、いざ受けるとなると、地元の負担が非常に過重であるとかいうので辞退を申し込んできたところが多かったというようなことを聞いておるのですが、そういうことはないのですか。
  135. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 地元の負担が多いためにこれを断わったというような例はあまり聞いておりません。むしろ、集酪地域の指定をいたしまする諸条件が整っていないために、こちらの方でそれを指定いたしますのを遠慮させていただいたというところが多いようであります。
  136. 永田亮一

    ○永田委員 もう一つ、乳価の問題は、さっきいろいろ質疑を伺っておったのですが、輸入の問題よりも、日本の製品の輸出振興の点ではどういう手を打っておられるのですか。
  137. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 輸出の問題につきましては、海外の状況等を、問い合せその他の形で調査をし、あるいは海外の市況等をこちらで連絡を受けてやっておる、こういう段階でありますが、戦前におきまして一部進出しておりましたような、いわゆる小形の加糖練乳のカンのごときもの相場は、東南アジア等の現在の状況を見ますと、デンマークの品物に比べますと、日本の品物は大体五割高くらいの状況でございます。その他各方面の状況、たとえばアイスクリームの輸出と申しますよりは、アイスクリームのブラント輸出のごときものができないか、そういうようなことにつきまして、業界においても検討いたしておる、こういう状況でございます。
  138. 永田亮一

    ○永田委員 たとえばワシ印の加糖練乳なんか、台湾の方へずいぶん行っていたように思うのですが、このごろは減っておるというようなことを聞くのだけれども政府の方で何か輸出補助とか、振興の方策はどういうことをやっておるかということを伺うのです。
  139. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 輸出の方策に関しまするやり方は、一般的な調査その他の段階以上には出ておりません。これは輸出の製品の海外におきまする価格の差があまりにも激しいからであります。
  140. 永田亮一

    ○永田委員 もう一つだけ。さっき輸入の脱脂粉乳の話がありましたけれども、アメリカから来るのはどうして安いのですか。これは供与という形で来るのですか。ララ物資のような形で、日本にただでやる、こういう形で入ってくるのですか。
  141. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 御指摘のような贈与物資的なものも中に入っております。あるいは向うのCCCの商品としまして安く入ってくる、こういうものがあるわけであります。そのほかに、アメリカ以外のオランダもの、その他の商品も若干入っておる、こういう状況であります。これらは相当にみな安いわけであります。
  142. 永田亮一

    ○永田委員 安いというのは、たとえば日本で税金をかけるとか保護関税をつけるとか、何かそういうような方策を政府の方では考えておらないのですか。
  143. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 御存じのように、アメリカにおきまするCCCのシステムは、これは国が買い上げまして、その差額を補完する。その他の輸出に対しましても、財政的なものが出ておる、かように考えております。オランダその他におきまするものにつきましては、まだ詳しく承知いたしておりません。
  144. 松浦周太郎

    松浦委員長 久保田豊君。
  145. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 畜産局長にお尋ねいたしますが、今同僚芳賀君その他の方との質疑の中でいろいろ問題になっておるが、いろいろさっき政府の政策、対策をお述べになっておりましたが、問題はもう少しつかみ方を明確にしてもらいたい。今問題になっておるのは、この七月の初旬を中心にしての乳価値下げ、至るところでもって受乳制限や拒否が出ておる。これをどう切り抜けるかということが根本の問題です。そして、さらに、私ども考えるのは、それから先には、政府が前々から言っておるように、少くとも五年間で牛を二倍にしようという以上は、年々相当に大きく乳量がふえてくることは明らかです。少くとも百五十万石程度ものはふえてくる。そうすると、これについて消費の拡大をするにはどうしていったらいいか、あるいは流通機構の整備をするにはどうしていったらいいか、あるいは共販体制とかいろいろな問題が出てくるわけです。こういう問題はそう簡単に一度に片づく問題じゃない。今のように政府がふらふら腰で、農林省もふらふら腰で何ら基本的な対策がなければ、こういう問題が片づくはずがない。ですから、この点についてはもう少し時間をかけてじっくりやってもらいたいと思う。さらに、もっと大きく言えば、生産の態勢から、もっと乳価の値下げその他の全般的な——畜産態勢を農業の根幹とするというのですから、そして日本の農業の骨格の改造をするというのだから、それぐらいの腹があるならば、それに応じたような施策をとるべきです。今までのところは何もない。ですから矛盾だらけです。こういう点については、さらにもっと突っ込んだ、少くとも酪農を中心としてやろうという以上は、少くとも来国会あたりには明確な対策を出してもらいたい、こう思うのです。  そこで、私は、現在の乳価の値下げなり、受乳制限なり、受乳拒否というこの非常事態というか緊急事態をどう切り抜けるかということの対策をここで主としてお聞きするわけです。さっきいろいろ畜産局長から言われました、学校給食とか、集団飲用の奨励とか、生産者団体の共販体制の確立とか、生産者に対して奨励する措置をやっていくとか、こういうことはいずれも多少ずつ影響はありますが、このうちですぐ使えるものは何かと言えば、学校給食だけです。これも、さっきの話の過程の中でわかったように、すぐには使えない。問題は、現在の問題をどうするか。普通の年ならば、七月の時分には奨励金が少くとも一升について三円、五円ついて、そして値上げをしてやって、それから九月にいってまたある程度のあれになって、九月—十一月になってまた値下げがくる。これは政府の政策の貧困からくる。こういう問題があるわけです。だから、ことしのように、ちょうど需要の最盛期に、奨励金がつくどころじゃない、値下げを食う、受乳制限を食うということでは、この冬は推して知るべしです。この問題をはっきり政府としては認識をして策を立てていただかなければ困るというのが、大部分の酪農民の希望なんです。畜産局長にはあとでいろいろ具体的な点についてお伺いいたしますが、こういう点について大臣なり次官はどういう認識を持っておるか。この認識がない限り、事務当局にまかしておいては一つも問題は片づきません。よほどしっかりした腹がまえでもってやらなければ何にもならぬ。この点について私は次官の基本的な心がまえを聞いておきたい。これはもちろん大臣にも聞きます。
  146. 石坂繁

    石坂政府委員 ただいまの御質問はかなり根本的なかつ本質的な問題でありまして、従来政府施策といたしまして酪農振興ということに非常な力を入れて参りまして、そのために、乳牛その他の導入、従って当面のこの問題といたしましては牛乳あるいは乳製品等が自然ふえて参ることは当然のことでありますが、そのために乳価が下落して参った、あるいはまた、畜産を奨励いたしましたが、飼料等の不足のために飼料の値上り等があるということで、実は私どもも今までこの政策についての矛盾を感じておったわけであります。従って、今それを一体どう打開していくかという具体的の施策をここで述べよと言われましても、これはもっと掘り下げて根本的に研究をいたしてみなければいけないと思いますけれども、問題の本質はきわめて深く、関連するところが大きいという点の認識は私どもも持っておるわけであります。従って、この点につきましては、根本的に検討し、対策を立てて参りたいと思っております。
  147. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今のお答えでは何が何だかちっともわからない。というのは、この七月の、普通ならば奨励金のつくべき時期に、さらに受乳拒否だの受乳制限だの、全般的な値下げがくるということになれば、政府の立てております今の酪農振興政策というものは基本からくずれる。この基本からくずれるのをどうして食いとめるかという腹がまえがない限り、対策は出てこないということを言っているのです。実際問題としてそうでしょう。今まで少くとも夏場は実際にはいつも奨励金がついてきた。それを逆に、ことしは値下げ、しかも、その値下げの上に持ってきて、受乳制限だ、受乳拒否だ、これでは牛を飼えと言ったって飼えないじゃないですか。ですから、幾ら政府が金を貸します、牛を買えと言ったって、だめだ。だから、この際に、この緊急危機というものをどうして具体的に食いとめるかという心がまえの問題を聞いているのです。
  148. 石坂繁

    石坂政府委員 久保田委員質問のうちに、日本農業の体格を改善するというような点に触れての御質問がありましたので、私はその根本問題に触れた御答弁をいたしたつもりでありますが、さて、当面の七月期の問題をどう突破していくかという問題につきましては、久保田君の御質疑のうちにもありました通りに、学校給食をふやしていく、こういうふうなことはやはり当面の具体的の対策であろうと思うのであります。従って、学校給食をふやす、あるいは工場等の集団消費をふやすということにつきましては、それぞれ具体的の策を進めておるような次第であります。なお、私の平素の持論といたしましては、日本の農民は米麦偏重の食生活を改善して動物性の蛋白質を多く摂取する必要がある。それには、鶏卵にしても、牛乳にしても、ヤギの乳等にしても、できるだけ自家消費をふやしたいというふうなことを考えておりますけれども、これは全体から言うとごくわずかのことであります。従って、当面の大きな問題といたしますては、学校給食その他の集団消費をふやしていく、こういうふうなことがさしあめたって先決的に解決すべき問題であろうと考えております。
  149. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 石坂さんとこれ以上話しても、どうも少し問題のつかみ方が違うようですから、これ以上はやめます。  そこで、とりあえず今の七月危機をどう突破するかという問題です。これはさっきから、消費の拡大だとか、受乳のあれだとか、あるいは税金の問題だとか、いろいろ出ました。しかし、政府の方には、今お話のあったように、これに見合うだけの予算の措置も具体策も何もない。そして、あったのは、工場集団飲用をやるために通牒を出して、みんなを集めて話をしたというだけですが、これで消費の拡大が予定のようにできれば何も心配はないのです。そんなことはできないから乳価が下ってきたのです。私はここで特に畜産局長に聞きたいのですが、さっきお話しのように、五月末の乳製品の在庫が原乳換算で推定八十万石から九十万石程度じゃないか、こういうことですね。三月末が七十万から八十万くらいのもので、これは通常在庫も含めたものということです。それで、五月末は少しふえている、大体こういう見込みですね。これは大部分乳製品だろうと思う。そこで、この乳製品のうち、ランニング・ストックが四十万石ないし四十五万石というのが普通でしょう。そうすると、四十万石ないし三十五万石くらいがデッド・ストックということでしょう。この全体の金額が大体において九十億から百億だろうと思う。これが今一番問題なんですよ。これをどう処理するのか。これが大乳業なり中小乳業の頭にかぶさって、しかも前途の見通しがはっきりつかないということに、乳の買いたたきや受乳制限をしてくる根本がある。ですから、七月危機の切り抜けをするには、デッド・ストックの大体三十万石ないしは三十五万石を政府がどう措置してやるか、業者の措置をどう援助してやるかということが根本問題です。これなくして、ただ学校給食を先々やります、——学校給食と関係があるのは、この処置に連関して学校給食の問題が先々にいって少し役立つであろうから私は言っている。ほかのものは何も役に立つものはありませんよ。ですから、この三十万石なりあるいは三十五万石に対して政府は具体的にこのデッド・ストックの処理についてどうしてやるかということをはっきりしなけば、この七月期の危機というものは切り抜けられない、私はこう思う。だれに聞いてもみなそうです。結論は明らかです。そこで、私どもは、これを出発点にして、九月の臨時国会までに、消費拡大なり、あるいは共販体制なり、いろいろ言われたようなことも、一気にはできないにしても、もう少し今までよりも筋の立ったものをやってもらいたい。今までのようにへっぴり腰ではだめですよ。ですから、今聞いているのは、この三十五万石なり何なりの内容、あるいは、これを持っているのは五大乳業が持っているのか、中小乳業がどう持っているのか、それで、そのうちすぐに措置できるものがどのくらいあって、そうして、まだまだ先へ置くものがどれだけあるか、それをたとえばたな上げする場合にはどこにネックがあるのか、こういう点を検討して、これに対して適切な措置をとっていただくよりほかないと思う。それには、前提として、大体において七月から九月までと見ていいと思う、九月までの間の夏場の需要は、今までは予想通りなかった、しかしこれは天候によって違う——さっきのお話のように、九月までの動きを見てと言う。それからじゃ手おくれですよ。そんなものは九月期の値下げに対する材料にはなるかもしれませんが、今の七月危機を切り抜ける材料にはなりませんよ。ですから、普通の年においては、大体夏場においては三〇%程度の減産になる、需要が三〇%伸びる、これが今までの普通でしょう。ところが、ことしは、さっきのお話のように、生産の方が相当伸びており、需要の方が相当減っている。ここで、デット・ストックの三十五万石がどれだけ消費可能か見当をうけて、そうしてここではっきり手を打たなければ、これは意味がないと思う。それがない限り問題は解決しませんよ。その点をぼやかしていろいろなことを言われたって、何にもならぬ。ですから、私は畜産局長にお聞きしたいのは、この夏場の今のストックが、実際にランニング・ストックはどのくらいで、デット・ストックはどのくらいで、その内容はどうで、この夏場の生産はどのくらいで、九月までに大体においてひっ込むか、あるいはまた、ことしの終りに——前年度対比ばかりしたって何もならぬ。ことしの状況として、この夏場においてはどのくらい消費が伸びるか、大体の見当をつけて、どれだけのもの措置してやったらいいかということを、その見当がはっきりつかなくて、この九月期、七月期の対策ができるはずがない。これを一つはっきりしてもらいたい。
  150. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 四月は大体におきまして生産は下っております。五月の状況はまだわかりません。これは早急に今とっておりますが、五月の状況はまだわかりません。かなり下るだろうとは思います。が、まだはっきりいたしません。それから六月の需要の伸びは相当伸びるだろうという一般の予想であります。これは、御存じのような天候が続いておりますので、そう予想しております。  滞貨の問題は、総体的には今久保田委員のおっしゃいましたような見当であろうと思います。それで、中小企業の持っておりまするものは、在庫は割合に少い。従いまして、御指摘の通りに、ある一定の分量をたな上げをいたしまして——しかし、たな上げだけでは意味がないのであります。それが市場に逆戻りしない形において消費されることが必要であろうと思います。今考えられますところは、学校給食という形が唯一のものではなかろうかと思います。でありますから、そういう一つの方策は当然に出てくる形ではないかと思います。ただ、数量その他の見当につきましては、今申し上げましたような、少くとも五月の状況その他がもう少し明確になる必要があろうと思いますし、夏場の状況というものをもう少し確かめる必要があろうかと思います。  それから、もう一つの問題といたしまして、消費をどのように拡大していくか。もちろん市乳の値下げの問題も当然起きてくることと思いますが、この消費の拡大、集団飲用を含めまして消費の拡大の問題は、私は相当に効果のある問題だと考えております。これをどの程度に織り込んでいくかということによりまして、先ほど御指摘のような大勢の数字的な骨格が出てくる、かように考えております。  一応の計画、一応の対策考え方は久保田委員と大体同じでございますが、数字的な問題を含めましては折衝すべき余地は十分あると存じております。
  151. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうもはっきりしたようで一向にはっきりしないのです、今のお話では。これは、夏場が過ぎて消費が幾ら拡大したって、数字が出てきてああこうだったとあとで言ったって、何もならぬというのです。ですから、私は、例年の例もあることですし、夏場の消費がどのくらいふえるかという見当は大体において皆はっきりつけていますよ。あの連中を集めれば、夏場に消費がどのくらい伸びるか、従って生産が上って、デッド・ストックのうち幾らはこの夏のうちに消費できるとか、今までのストックの中から自力でもってその消費まで持ち越しできるものがあるか、あるいは何かの援助を得なければならないものが出てくるかということは、業者はみんな大体出ていますよ。だから、そういう点を的確につかんで、政府でもって打たなければならぬ手を今打ってやってくれと言っているのです。その基礎としての数字は大体の見当ですよ。数字が的確に出たからといって、そんな数字は私は大して意味ないと思う。ですから、そういう点について、もう少し具体的に——大体考え方は同じだけれども、五月の数字もまだはっきり出ない、夏の消費の見当もまだつかない、ですからもう少し様子を見てということでしょう。そうすれば、七月は下ってしまいますよ。下ってしまったら、あとの処置で政府の方でどうだこうだと言っても、一度下ったものは上りはしませんよ。そうすれば、下った点でもって各業者は採算をとってきますよ。これでは最後は農民に全部しわ寄せになってしまうじゃないですか。そうして、北海道にしましても、三円幾らという乳価になって、やれる人もあるでしょうけれども、大部分の者はやれないという結論が出てくるでしょう。それでは困るから、今のはっきりした——大体そんな程度の見当がついていないということがおかしい。そういう心がまえだから、いつでも後手後手になってしまうということになろうと思うのですが、これらの点について具体的な数字上の見当がついていなければならぬはずだと思う。もしついていないというなら、次官にお願いするが、事務当局を早急に鞭撻して——こんなものは数日のうちにできるはずです。そんなにできないということはないはずです。そうして、どういう措置をしたらいいかということを早急にはっきりきめてもらいたい、こう思うのですが、この点について、次官、どうです。
  152. 石坂繁

    石坂政府委員 よく事務当局とも協議いたしまして、事実の真相をすみやかに明確にいたします。
  153. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ここでは的確な数字上のあれは出ませんけれども、いずれにしても、今八十億ないし百億といわれているストックがある。そのうち幾らがデッド・ストックであるか、そのデッド・ストックを政府が何らかの形において処理してやれば、私はそんなに値下げなんかしなくてもいけると思う。夏場でいけないなんということは絶対にありません。  そこで、これらについては、結局金を心配しなければだめですよ。金の心配を何もしないでおいてどうだこうだと言ったって、しょうがない。  そこでデット・ストックのうち、学校給食に回し得るものは幾らか。これは予算がまだ余っているはずです。そのうちの幾らを乳製品のうちから政府が買い上げるか。これは九月以降配給してもいい。先にやらなくてもいい。九月以降政府が買い上げればいい。この措置を早急にとるべきだと思う。それさえとれないなんというばかなことはない。さっきのお話では、学校給食にもいろいろ波があるというそれはあることはわかっているけれども現実にはそうでないのだから、生乳の分で九月以降の学校給食なり何なりには幾らやって、乳製品でもって幾らその方に回し得るという見当、——七億という予算があるから、そのうちの幾らを買うということをここではっきりすることが、この際一番大事だ。それさえはっきりしないで、その点もぼやかしておいたのでは、問題は解決しないと思うので、この点について、もうすでに見当がついておるかと思うが、幾ら買うつもりであるか、これをはっきりしてもらいたい。
  154. 石坂繁

    石坂政府委員 幾ら買うかという点については、まだはっきりしておらないのであります。
  155. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 今回の初めの計画から申しますと、二十万石のミルクの学童給食のうちに五万石分を乳製品で買おう、こういう予定をいたしておりました。四月、五月で約四万石程度のこれは生ミルクで給食いたしております。従いまして、まだ当初の予定から申しますと五万石程度の乳製品が残っております。しかし、それは現在の状況その他を勘案しますと、それが適当であるかどうかという問題は考究の余地があると思う。現在の状況でも五万石は買える、こういうことになっております。しかし買います品物は問題がありますので、学校給食に回せるものは一応あるのでありますが、従来は学校側においては全脂粉乳とバターでいたしておりました。それで、今すぐという問題になりますと、おそらくそれに脱脂粉乳をつけ加えなければならない、そこまでは考えております。あと五万石をどの程度にふやしてやるかという問題が残っております。
  156. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 大体そんなことだろうと私どもも思っている。ですから、さっきから聞いているように、今のストックのうちでデット・ストックといわれるものがどのようになっておるか、このうち学校給食で吸収できるものが幾らあるか、これを早急に検討して、買い上げ措置をとることが、さしあたりの第一の対策だと思う。  第二の対策としては、さっきの話ではなかなか間に合わないと思いますが、私は、この際利用すべきものは例の酪農振興基金だと思う。こういう目的のために作ったものですが、もう設立委員が出ているのですか出ていないのですか。少しその点でサボッテいやしないかと思う。この前の国会では、一日も早く作らなければ間に合わないといって急がして、法律だけ通しておいて、まだ設立委員が出ていないというばかなことはない。しかも、あのときの出資の工合もきめてある。われわれの聞いたところでは、ほとんど出資すべき連中は承知をしている。にもかかわらず、設立委員の任命もまだできていない。従って業務運営ができないということでは、こういう基金のみ作って——さっきの話のように七月末にやっと何とか動き出すということでは、間に合わない。政府はもうそのくらいの準備ができているはずですから、まず第一段として、これを早急に設立を完了して業務開始をするようにすること、あるいは、それを前提としてこの資金をあれして、一部のデッド・ストックのたな上げなり何なりの措置を講ずることが当然だと私は思う。そういう目的のために作ったものを、くどいようですが、この前の国会でこの法律を作るときには、一日もゆるがせにできないようなことを言っておいて、通ってしまったら、あとはまだ設立委員もやっていない、七月末にならなければどうにもなりません、そうして七月初旬の酪農危機は見送りだ、乳は下りほうだいだ、こんなばかな酪農政策がありますか。この点は、私は谷垣さんにもはっきり説明をしていただきたいし、心がまえを聞かしてもらいたいと思う。非常に失礼な言い分ですが、この点についても、一つ石坂政務次官からはっきりと政府の心がまえと、谷垣さんからその経過、早めるとすればいつまでに間に合うか、これらの点についてその見通しを聞きたい。これが質問の第二点です。
  157. 石坂繁

    石坂政府委員 大へん御激励をいただいたわけでありますが、できるだけ御趣旨に沿うように最善の努力をいたします。
  158. 谷垣專一

    ○谷垣説明員 おっしゃる通りで、極力急いで参りたいと思います。
  159. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうも大へん巧妙で、たよりにならない御答弁ですが、ぜひこれはまじめに早く進めてもらいたい。間に合うかどうかわかりませんけれども、私はこういうものはこの際に使わなければ意味がないと思う。  それから、もう一つは、政府としては措置があると思うのですが、この前やったのです。予算措置も何もないが、たな上げなり何なりをやった前例があるのですから、やる気さえあればできる。この金も、この前でもわずかに三千九百万かそこらでしょう。おそらく五千万か七千万出せばある程度のデッド・ストックのたな上げができると思う。こういう点、金融情勢相当変っていると思いますが、こういう点について具体的にとにかく七月危機をまずとりあえず防止するというところに重点を置いて——むずかしいことはあと回しでよろしゅうございます、そう一朝一夕に片づく問題ではないと思う。ですから、そういう臨時措置をこの際やって、七月の値下げだけは是が非でも食いとめる、このくらいの熱意がなければ、畜産五カ年計画なんかでも、日本の農業の骨格を変えるなんてでっかいことは言わないことです。これでは、あまり大きなでたらめばかり言って、何も大した対策はないじゃないですか。百姓をいじめるばかりじゃありませんか。こういうでたらめなことを農林省はやめなければいかぬ。そのくらいの腹がなくて、一畜産局長にまかせ切りにしておいて、長官なりあるいは次官が今のようなたよりないことばかりでは、意味がない。これは与党の農林委員の諸君にもお願いしておく。このくらいのことができないで、畜産政策をもって日本の農業の骨格を変えるなんて、でかいことは言わないことだ。百姓を苦しめることです。やろうと思えばできることです。その意思があるのかないのか、これをはっきりして下さい。
  160. 石坂繁

    石坂政府委員 就任日きわめて浅うございまして、御満足のいくような答弁ができないことをはなはだ遺憾に存じておりますが、事情まことにやむを得ないのであります。しかしながら、御指摘になりました点は重々承わりましたので、できるだけ御趣旨に沿うような最善の努力をいたします。
  161. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう一点だけ。そして消費拡大、これは必要です。しかし、学校給食にしましても、本気になってやれば、大体において全国で二百万石程度の学校給食ができるようになっておる。二十万石くらい飛び飛びにやったなんということで、内地乳をもって学校給食ができるなんということはだれも考えていません。これは要するに政府の逃げ腰としか考えられない。また工場の集団飲用その他についてもそうです。今のように何ら具体策がなくてやれと言ったってだめです。だめですから、こういうことについては、もう少し政府が本腰を入れて、基本的な政策を今すぐ立てろと言っても無理でしょうから、少くとも年来度の本予算には作っておくとか、あるいはその前提として、九月には与党の皆さんは補正予算を出すと言っているから、補正予算の中にその一部分でも出すようなまじめなことをやってもらいたい。二十万石ばかりのものを出して、これでもって処理しようなんで、ちゃんちゃらおかしい。工場の集団飲用でも、お話がありましたが、あんなことは今年の初めからそれぞれの団体がお願いしている。わずか五百万か六百万の金があればもっとうまくいったはずです。その金さえ出さないじゃありませんか。そうしておいて、今ごろになって、いろいろな通牒を出してあっせんをいたしました、これでは話になりませんよ。しかし、畜産局長の苦しい立場もよくわかるから、私は決して畜産局長を非難しようとは思いませんが、ぜひ、こういう点については、今すぐでなくてもいいから、まじめに考えて下さい。今当面の問題は、宣伝費を出してもらい、もっと消費拡大のための宣伝をやってもらいたいということです。幾らかかるかしれませんが、おそらく三千万円か四千万円出せばいいと思う。そうして、すぐ実効のあがるような企画はそれぞれみな持っておりますよ。業者にしてもいろいろの団体がある。こういう宣伝費を出して、この夏場消費を普通にふえるやつが三十万石というならば、これを四十万石なり四十五万石にふやして、ある程度の宣伝なり工作費は当然政府が出すべきだ。それでないと、九月になってからこの値下げというものはもっとひどく農民に来る。そうしますと、幾らえらそうなことを言っても、百姓は牛が飼えなくなります。農林省の机の上の実験や計画では飼えるようになっても、実際は牛を飼っても首をつるようになる。ですから、そのくらいのことは、酪農を農政の根幹にするという前の方針を貫くつもりならば、このくらいは良心をもって政府も与党もやってもらいたいと思う。このくらいのことをやらなければ何にもならぬじゃありませんか。私は、この点についても、今おそらく谷垣さんに聞いてもすぐ金の算段が——大蔵省に金がないといえばそれっきりでしょう。ですから、そのくらいのことは政府が腹をきめれば出るわけです。ぜひこのくらいのことは、野党だから攻撃をするために言うわけではないが、まじめに酪農政策を進めるならば、この段階で九月危機を切り抜けるために、このくらいのことはやってもらって当然だと思う。これをしもやらなければ、牛は飼えませんよ。ぜひこれを次官としても局長としても骨を折ってもらいたい。この点について御意見どうです。
  162. 石坂繁

    石坂政府委員 先ほどから繰り返し答弁いたした通りでありますので、今ここで具体的な、かようなことを断行いたしますということは申し上げかねますけれども、誠意をもって最善の努力を続けます。
  163. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 よろしゅうございます。あとはまた……。
  164. 松浦周太郎

    松浦委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十六分散会