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1958-08-01 第29回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年八月一日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 内海 安吉君    理事 岡崎 英城君 理事 高瀬  傳君    理事 高橋 禎一君 理事 前田 正男君    理事 山本 正一君 理事 飛鳥田一雄君    理事 受田 新吉君 理事 木原津與志君       今松 治郎君    植木庚子郎君       始関 伊平君    田村  元君       高橋  等君    富田 健治君       中村 梅吉君    平井 義一君       船田  中君    山崎  巖君      茜ケ久保重光君    淡谷 悠藏君       石橋 政嗣君    石山 權作君       柏  正男君    中原 健次君       西尾 末廣君    柳田 秀一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 左藤 義詮君  委員外出席者         総理府総務副長         官       佐藤 朝生君         人事院総裁   浅井  清君         人事院事務官         (給与局長)  滝本 忠男君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (経理局長)  山下 武利君         防衛庁書記官         (経理局施設課         長)      大森 頼雄君         防衛庁技官         (建設本部長) 山田  誠君         総理府事務官         (調達庁次長) 真子 伝次君         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     柏原益太郎君         総理府事務官         (調達庁不動産         部次長)    鈴木  昇君         大蔵事務官         (管財局総務課         長)      谷川  宏君         農林事務官         (農地局管理部         入植営農課長) 安藤文一郎君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 八月一日  委員田中龍夫君及び八木昇辞任につき、その  補欠として中村梅吉君及び柳田秀一君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員淡谷悠藏君及び中村梅吉辞任につき、そ  の補欠として八木昇君及び田中龍夫君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の防衛に関する件  公務員制度及び給与に関する件      ————◇—————
  2. 内海安吉

    内海委員長 これより会議を開きます。  国の防衛に関する件及び公務員制度及び給与に関する件について調査を進めます。質疑通告がありますので、順次これを許します。石山權作君
  3. 石山權作

    石山委員 きのうの続きをお伺いするわけですが、一番の欠点と申しますか、理解に苦しむ点が一つございます。それは何月何日からこの勧告施行するようにしなさいという意味勧告が、ちっともなされていない点でございますが、それは何か特別な理由でもございまして期日を明示しなかったのでございますか。総裁にお伺いいたします。
  4. 浅井清

    浅井説明員 別に特別の理由はございませんが、人事院といたしましてはなるべく早くというのが、これまでの慣例になっております。これは内閣におきましても財政措置等をいたしますのには、それぞれ準備も要ることでございましょうから、何月何日といったことはこれまでほとんどないのでございまして、なるべく早くこれを実現していただきたい、かように言っておる次第であります。
  5. 石山權作

    石山委員 そうしますと、やり方によっては政府が御都合のいいとき、この案をば六割か七割ぐらい受け取ってもよろしいというふうな、独自な解釈がどこかに行われてくる可能性があるわけでございます。やはり人事院は、勧告したものが正しい数字であり、これが公務員給与、業績に絶対に必要な関連性があるというふうなお考えのもとで勧告されたとするならば、期日というものを明記しておかなければ勧告の趣旨に沿わないと思うのでございますが、いかがでございますか。
  6. 浅井清

    浅井説明員 さいぜんお答えを申しましたようにこれは政府として財政措置をする必要もあり、国会の開かれているときもあり開かれてないときもあるわけでございますから、人事院としてはただなるべく早くとかように申し上げておるのでございまして、さように書きましても、従来の例を見ましても決してそう何年もたってこれが行われるというようなことはないのでございます。
  7. 石山權作

    石山委員 給与の面からすれば毎年一ぺん見ることになっているわけですから、何年もたって勧告されたことが施行されるようであれば、人事院存在価値というものはだいぶ薄れるわけであります。特に私この場合総裁にお考え願いたいことは、たとえば物価が引き下る方向にあるというならば、かなりゆっくりした態度で実施期間政府におまかせするということも、これは一つの方法だと思います。しかし今の場合は新聞紙上にもあるように、だいぶ景気てこ入れをしなければならない、国内市場の開発を行わなければならぬということをいわれているわけなんです。景気ということは、私たち昔から終戦後ずっと見てきますと、景気が即インフレにつながるということは、これは事実はっきりしているわけなんです。景気労働者にとってはあまりいい景気ではなくて、企業そのものを興している企業者、それに投資する者の利潤、こういうふうなものが景気という名前で呼ばれているので、勤労者一般から見れば景気インフレ傾向があるのでございますから、むしろ公務員ように安定した職場を持っている方々から見れば、インフレというものは非常に危険なわけなんです。景気というものがある意味から見れば、給料取り大衆収奪というふうな言葉がもし使われるとすれば、そういう言葉で言ってもいいわけでございます。そういうふうな目前に、政府が施策をして景気てこ入れをしよう国内市場を開発しよう、そうすると必然的にインフレ傾向を帯びるという機会があるわけなんです。その機会が九月であるか十月であるか、あるいは年末というふうな言葉がありますけれども、いずれにしてもそういう方向をたどりつつあるというときに、人事院現実に三月ですか—七月に勧告しておられますけれども、集約された資料等を見ますとおそらく三月から四月末の基礎数字勧告基礎をなしておると私は思うのです。そうしますと、現実からだいぶ離れた時期に勧告を受け取ったという形で行われるとすると、そのときはインフレがたとえば一〇%進んでいたとする、そうすれば人事院が三月ないし四月でお考えになった現実給与体系から見て妥当なりと信じたことが、だいぶ違うのではございませんか。そういう点にお考えがあって期日を明記しなかったのでございますか。
  8. 浅井清

    浅井説明員 そういう財政一般のことは人事院として何も考えてはいないのでございますが、ただ報告の中に現われておりますように、物価その他が大体横ばい状態である、こういうことは報告の中にも書いてある次第でございます。これからインフレが起るから、あるいは起らないからというような予想は、人事院としては立てられないことでもありますので、さようなことは考えておりません。
  9. 石山權作

    石山委員 仮定の事実だからというならばそれまでですが、インフレが起ろうがどうあろうが、それは人事院の関知しないことだということにはなりはしないでしょう。インフレが直前に起りつつあれば、勧告案というものは、それに対して弾力性の帯びた、それを見込んだ勧告案が当然行われるべきなんです。そういう経過を過去にもたどってきたのが私は人事院勧告内容だと思っております。今になって経済横ばいになる、これも一つ仮定だろうということです。きのうまでは横ばいであったけれども、あしたからは横ばいであるかないかということはおわかりにならないわけでしょう。インフレになるということと同じようにこれはわからないことなんです。だけれども、今の総裁のお言葉を伺いますと、きのうまで横ばいであったからあしたも横ばいであるのだ、こういう意見なんです。私は逆に言っているわけでしょう。きのうまで横ばいであったけれども、政府景気てこ入れをする、国内市場の開拓を行なってこの不景気を切り抜けようとしている、こういう場面においてはインフレが非常に危険な立場で芽ばえてくるのだ、こういうことを私は言っているわけです。これはあなたがきのうまで横ばいであったからあしたの経済界横ばいであるということと、私がきのうまで横ばいであったが、あしたからインフレ傾向があるということとは何も違っておらぬ。一つ仮定でございますから、ちっとも違っておらぬと思います。こういうところから見ますと、そういう傾向の中でインフレがあろうがどうであろうが、それは人事院の関知したことでないということであれば、人事院任務にいささか欠けることがあるのではないか。人事院は何も過去の実績のみによって給与勧告をなすということではないでしょう。特に官公の場合は団体交渉とかいう普通の民間労働組合よう慣行がございません。民間労働組合であれば、インフレが起きれば三カ月後であれ二カ月後であれ、団体交渉によって一時金の獲得も可能であるというふうになりましょうし、いずれにしても経済界に対する速度というものは官公方々よりは非常に速度を持っているわけです。そういうことを考えてみますと、人事院は過去の実績のみでよろしいというふうな、そういう考え方は少しく姑息でもあるし、人事院在来の置かれた性格からしますと、公務員給与に対して忠実でない、こういうふうな声が出てもやむを得ないのじゃないか。人事院は今までも過去の実績のみに数字を探して、そしてそれをあしたの給与として出してきたかどうか、そういう点はいかがでございますか。
  10. 浅井清

    浅井説明員 過去の実績に基かなければ決して人事院としてはどういう給与が適切であるか、これはわからないのでございます。それからこれからインフレになるかならないか、さようなことは何も考えておりません。人事院といたしましては勧告いたしました以上、できるだけすみやかにこれを実施していただきたい、こういうふうに望んでいるだけのことでございます。
  11. 石山權作

    石山委員 どうもそこら辺人事院からそういう言葉をいただくと、官公方々が何だかたよりないようなことになりはしないでしょうか。総裁は御病気をなさったから表現力が弱くなっておるのかもしれませんけれども、人事院の持つ性格からして、それから官公人事院に望んでおるものはそういうふうなものではないと思う。きのうのことも考えていただきたいし、今日も考えていただきたいし、あしたの公務員の生活も考えていただきたい、こういうふうな中において人事院任務というものが十分に遂行されるように、こういうふうに公務員人たちは望んでおると思います。それで総裁の御意見を何べんも聞いておるのでありますけれども、インフレであろうが何であろうが、そういうことは人事院の関知したことでないというふうな言い切り方、こういう言い切り方は私はどうも妥当でないと思います。そうするとあしたのインフレに対して今度の勧告案というものは何らなすことを持たない内容を持っておるというふうに判定してよろしゅうございますか。
  12. 浅井清

    浅井説明員 インフレになるかならぬかということは、人事院としては判断すべき役所ではないということを申しておるのでございます。人事院としては、さよう財政一般の観測をいたすことはできません。人事院としては単に給与問題を取り扱っておるのでございまするから、人事院としては勧告をいたしました以上、できるだけすみやかにこれを実現していただきたい、これだけ申しておるのでございます。これは何も私が病気をしておったからといったって、決して表現が弱っておるわけでも何でもないのでございまして、これは従来の勧告はすべてさようになっております。ただ一言申し上げたいのは、三公社現業などと違いまして、団体交渉によって裁定をするのではございません。一般職公務員給与は、これは必ず予算法律改正を必要とするのでございまするから、三公社現業の協定のように、そういうふうに勝負は早くないのでございます。これは制度上さようになっておりまするから、やむを得ないのでございまするが、人事院といたしましてはできるだけすみやかにこの勧告実施されたい、かように従来からも申し、今回も申しておるのでございます。
  13. 石山權作

    石山委員 従来やっていたことに対して、私たちもそうであるし、官公方々もこの勧告施行期日というものを明記しないことに対しては、いたく不満を持っているわけなんです。従来の慣行が正しい、こう信じてやっておられるだろうと思いますが、先ほど私が申し述べたように、経済界が変動しておるときにおいて、勧告案施行期日を明記しないということは、これは決して勧告として正しい勧告でないと私たちは思うわけです。施行期日勧告することによって、勧告内容というのは当然死んだり生きたりしてくる、勧告内容が七〇%が六〇%に変化するということは、経済界動きによって、これは当然起きてくることでございます。ですから、人事院がお考えになっている妥当なる勧告ということは、期日を明記してこそ初めて妥当な内容を持ってくるのでありまして、施行期日を明記しないで、勧告案がかなりに適切妥当だと認めて勧告をしましたという言い分は、私は通らないと思う。そういう意味において私たちは、長い間人事院がとられてきている勧告施行期日を明記しないことをば不満としているわけです。その不満を私は今回もまた見せつけられることは、決してこれはお役所やり方として、特に給与問題を取り扱っているお役所仕事としては妥当なものではないと思うのです。  それからもう一つ、ではこういうことはどうでございましょうか。たとえば七月の三十日に勧告をなされたわけでございますが、年一ぺん人事院給与を見る。今までの関係からしますと、前の勧告が七月であれば、次の年のたとえば給与勧告などは、やはり大体満一年を置くというふうな考えのもとで勧告をなされているのか、それともそのつどの経済動きを見ながら勧告をなされているのか、その点を一つ説明いただきます。
  14. 浅井清

    浅井説明員 公務員法の第二十八条によりますれば、毎年一回給与報告はしなければならない、これは毎年一回でございます。そのときに給与表を五%以上ベース・アップする必要を認めたならば、あわせて勧告しなければならない、かように書いてあるのでございます。しかし決して年一回だけしか勧告をしてはいけないとは書いてないのでございますから、それは人事院が適切と思えば、いつでも勧告はいたすつもりでおります。ただ問題は、人事院は従来ずっと人事院方式による民間給与調査をやっておりますので、これは各都道府県にも依頼して、全国的に調べまする結果、相当の時間を要しまするので、さように一年に何べんも給与全体について勧告をすることは、これは事実上無理である。しかしながらそれは事実上の問題であって、何も法律上毎年一回に限ってはいないのでございます。
  15. 石山權作

    石山委員 毎年一ぺんずつやるということの繁雑さ、それは人事院仕事として、インフレが起きたからすぐ勧告するということは、事実上私は不可能なことだと思う。そうした場合において、私は人事院勧告案弾力性というものが、当然この場合想定されても私は不都合なものではないと思います。むしろ労使関係労働関係をば円滑にするためには、そういう弾力性を持った勧告案こそ、私はある意味では正しいと思う。何も過去の、きのうまでの民間給与云々であるとか、五現業がどうであるとか、こういうふうなやり方だけで人事院がいうところの独自の勧告案などとは私はいえないと思う。独自の勧告案という言葉がもし用いられ、適切妥当な勧告と私は認めていますというよう表現をなさるならば、相当そこには私は人事院総裁人事官たちの、ある意味労働慣行上におけるところの政治的な運行というものが当然考えられてよろしいと思う。それを何でもかんでもいけない、過去の数字のみが正しい、そういうふうなことをしますと、経済が動いたとするならば、年一度といったものは実際上施行上からいって、もしあなたのいう適切妥当な内容を持つ勧告施行するとするならば、その上暦年度において二回勧告してもよろしいということにしなければならぬということになりますが、実際そういうことはやり得ないでしょう。やり得ますか。あなたは先ほど年一ぺんということであって、二回やってはいけないのではないというふうにいったのは、二回やった過去の実績がありますか。
  16. 浅井清

    浅井説明員 それはやはり公務員法第六十四条にもございますように、民間給与とそれから生計費を調べなければならぬ、この民間給与調査というのは相当時間を要するのでございまするから、それさえできれば決して年に一回に限ってはいない、かように申し上げたのでございます。もう一つ弾力性のある勧告をしろとの仰せでございますけれども、その仰せになる弾力性というが、先行きが上るか下るかということを一つ推定して勧告しろという仰せでございまするならば、人事院はさようなことはいたしません。これは公務員給与一般国民租税負担になっておる、こういう事実から人事院勧告はやはり国民全体にある程度納得してもらうべき性質のよう考えておりますので、確固たる数字に基いてしか勧告はやっておりません。
  17. 石山權作

    石山委員 そうしますと人事院施行期日を明記しないということは、政府にとっては非常に好都合だということなんです。たとえばインフレになった場合は、実際の内容からすれば租税等関係を引き比べてみますると、実際は勧告内容の六割か六割五分ぐらい支給してもそれでいいという格好が実質上生れてくるわけなんです。それであってはあなたのいうところの温情のこもった適切妥当な勧告というものが死んでしまうじゃございませんか。そうして次にインフレが起きてまた次の勧告をしてあげたいという場合においては、民間企業を調べてやらなければいかぬ。民間企業を調べているうちにおそらく半年くらいはたってしまう。それでは公務員の諸君はインフレに対しては全く力がないということなんです。インフレに対しては民間労働者も大へんに損をするわけでございます。インフレを追っかけることだけで精一ぱい。その追っかけることに対しても、基礎数字を求めて追っかけるのでございますから、大へんに損だという形になるのでございますが、民間給与所得者よりもそういう場合には官公所得者は、一体どこがよくてそういう追っかけっこをしてもよろしいというふうに総裁判断しておられますか。
  18. 浅井清

    浅井説明員 でございますから人事院はなるべくすみやかに、こういう表現を使っておるのでございます。それで従来決してさようにおくれてはいない、非常におくれているという御指摘もあるかと思いまするが、私としては大体しかるべきときにこれは履行せられておる、かよう考えておるのでございます。
  19. 石山權作

    石山委員 なるべく早くというのは、一体どこら辺をさしてなるべく早くなんでしょうか。半月がなるべく早くか、三十五日がなるべく早くか、なるべくという中心は一体どこら辺になるのでございますか。
  20. 浅井清

    浅井説明員 これは文字の表現通り、それ以上は申し上げかねるのでございますが、ただ申し上げられることは、これはやはり予算の編成と国会における法律改正を必要とする、これだけのことでございます。
  21. 受田新吉

    受田委員 関連して。施行期日についての論議がかわされておるのでございますが、この勧告をなさった当時を基準にしてこれが施行せられることが一番適当である。なるべくというのは、できるならば施行期日基準にするというのが根拠であるというふうに了解するわけにいきませんか。
  22. 浅井清

    浅井説明員 それは勧告内容によるように思っております。これは七月十六日に勧告いたしまして、七月一日にこれを施行するということになれば、いわゆる遡及して適用する、かようになっております。この遡及適用にしてもよろしいよう内容のものもあり、あるいはそれではかえって混乱を生ずるというようなものもあろうかと思っております。これは抽象的に申し上げまして、勧告内容によることだろうと思います。
  23. 受田新吉

    受田委員 その勧告内容についての判断は、人事院としては政府に一任するという形をおとりになるわけですか。
  24. 浅井清

    浅井説明員 人事院といたしましては、この今回の勧告については、今回の勧告実施に支障のない程度においてなるべく早く、かように申し上げておる次第でございます。
  25. 受田新吉

    受田委員 今総裁インフレ論議について、経済的な事象についてはかれこれ論議すべきではないという御意見を言っておられたわけでありますが、昭和二十八年七月の勧告におきましては、民間給与との比較あるいは物価水準等調査におきまして、特に物価上昇率などにおきましては、すでに一〇%に近い上昇を認めておられる。にもかかわらず、これに対してベース・アップその他の給与改善措置勧告し得なかった報告書内容の中には、こういう言葉があるわけです。人事院報告全文のまず書き出しのところに掲げてある前文は、「他面、現在わが国経済転換期にあって給与を決定する諸条件が不確定であることなどを慎重考慮の結果」という、よほど融通性のある言葉が出ておるわけです。この言葉を今顧みますると、今石山君の質問に対する総裁の御答弁の中に、何だかわれわれとしては納得できないところもあるわけですけれども、この二十八年当時の転換期にあるわが国経済事情考えて、給与を決定する諸条件が不確定であるという判定をされたことは、今回の報告の問題とあわせて大事な前例の検討にもなるのでありますが、これはどうわれわれは判断をしたらいいか、御教示を願いたいと思う。
  26. 浅井清

    浅井説明員 ただいまの御質疑は、ちょっと石山さんのさいぜん申されましたのを私が受け取りましたのと違っておるように思います。石山さんの仰せになりましたのは、これから先の問題を仰せになっておる。ただいま受田さんのお読み上げになりましたのは、その人事院調査いたしました時点においての問題を取り上げておる。その時点におきましての問題でございますれば、今回の報告の中にも、物価横ばいである云々言葉はあるよう考えております。
  27. 受田新吉

    受田委員 二十八年当時すでに物価は一〇%に近い上昇を見ておるという事情にあったわけです。それを勧告に至らさなかった事情などが今申し上げたよう言葉で掲げてある。それが相殺されているのじゃないかと思うのです。当時の物価上昇率の一〇%というものは、当然勧告の段階に至ったものだと一般の人は判定しておったわけです。それが押えられたという一つ前例であるので、これをここへ持ち出して重ねてお尋ねをしておきたかったわけです。
  28. 浅井清

    浅井説明員 それは、その勧告書の中にも書きましたように、当時は民間公務員との給与の差異はございまするけれども、しかし経済全般の情勢から見て、勧告を留保するのが適当である、さよう判断を下したのでございます。これは何も決して違法ではないのでございまして、公務員法第六十四条にありまする通りに、民間の賃金、生計費その他の要素を考慮して人事院がきめる、その他の要素としてそれを取り上げた次第でございます。今回の場合は、さよう要素を取り上げる必要はない、かよう判断をいたしました。これは人事院判断の問題でございます。
  29. 内海安吉

    内海委員長 ちょっと速記をやめて下さい。     〔速記中止
  30. 内海安吉

    内海委員長 それでは速記を始めて下さい。  防衛庁長官に対する質疑通告がありますから、順次これを許すことにいたします。飛鳥田一雄君。
  31. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 特別国会が終りましてから、今日に至りますまでの間に出ました幾つかの疑問について御質問をいたしたいと思います。  まず第一にお伺いをいたしたいと思いますことは、新聞などで拝見をいたしますと、来年度の予算をお組みになる前提として、陸上兵一万名を増員する、こういう御議論が部内におありだそうであります。この問題については、早急に態度を御決定になりませんと予算編成ができませんので、一つその点について長官としてどうお考えになっておるか、明確な態度をお示しをいただきたいと思います。私たちが知っております範囲では、世界じゅうの各国はみんな陸上兵力を減少する、こういう方向に向いておるように思います。アメリカの国防省が、軍事費の増加傾向を食いとめるために兵力の五万名削減を考慮中であるとか、あるいはお隣の韓国においても十万名減員をするつもりであったけれども五万名にとどめて決定したとか、ソ連が軍縮をいたしましたことは前年御存じの通りであります。世界各国どこでも共通に陸上兵力はむしろ減少していくという傾向の中で、日本では一体どういう態度をおとりになるのか、これから伺わしていただきたいと思います。
  32. 左藤義詮

    左藤国務大臣 私ふなれでございますので、飛鳥田さんいろいろ御心配いただきまして、予算のことについて御質問でございますが、明年度予算につきましては現在せっかく事務当局で検討をいたしている段階でございまして、おそらく八月一ぱいには大体の予算要求の方針をきめなければならぬと思っているのでございますが、特に陸上兵力をどういうふうにいたすかということにつきましては、ただいまの御趣旨もよく拝承をいたしまして最後の調節をいたしたいと思います。現在のところは陸海空どういうふうに調節をして、どういうふうな予算要求をするかということのお答えをする段階にまだ至っておりません。
  33. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは私は技術的な問題ではなかろうと思うのです。むしろ問題は政治的な長官の御裁断に待つべきものだろうと私は思います。たとえば小さな兵器をどうするとか、あるいは軍団をどうするとかいう戦術的な問題でありますならば、防衛庁の中であなたの部下の方々といろいろ討論をなさり、それをお聞きになって決定することは私はもっともだと思いますけれども、むしろ問題はもうあなたの御裁断いかんにかかっているのではないかと私は思わざるを得ないわけです。私たちしろうとが見ておりましても、今陸上兵力をいたずらに増強させるなどということが、少くとも世界の大勢あるいは日本の各種の軍備の状況等にかんがみて妥当でない、こう私たちには思われるわけです。しかし庁議がきまらないうちはとおっしゃることは非常に慎重でごりっぱですが、私はあなたのほんとうの決断の腹を聞きたいと思うわけです。と申しますのは、もし一万名の増員をあなたがなさろうとするならば、私は当然突き当ってくるべき実に大きな政治問題がたくさんあるだろうと思うからです。長官のお考えとしてはいかがでしょうか。
  34. 左藤義詮

    左藤国務大臣 遠からぬ将来に裁断をいたしたいと思っておりますが、内外情勢、特に飛鳥田委員の今のお話、私は十分参考にいたしまして決断をいたしたいと思います。
  35. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これはよけいな差し出口かもしれませんが、増員をなさらぬという決定をなさるためには、今が格好の時期ではなかろうか。外交あるいは諸外国に与える印象などというものは外務省が主としてつかさどるものだとおっしゃればそれっきりですが、しかし今中近東における幾つかの問題、そしてそれをめぐる国連の中における平和を守っていこうという世界の機運の中で、むしろこの際早急に、きょうここで一万名の増員はなさらぬという宣言をなさることが、そういった世界情勢の中におけるあなた方の立場を明確にできるのではないだろうか。同じ御決定になるならば、時期を失して国連の問題が片づき、中近東の問題が片づき、もうほとんど影響力がなくなつたときに、いよいよ一万名の増員はいたしませんなどとおっしゃっても、それは私は賢明な政治家のなさることではなかろうと思うわけです。そういう点で今が絶好の時期ではないだろうか。イラクの新政権を岸内閣は承認をなさる、これは非常に迅速なよい態度だろうと私は思います。しかしこれも一月も二月も先になって、イラクの新政権の承認であるなどと言ってみたところで、それの与える影響はごく微弱なものでしかない。同時にきのう閣議の御決定で、自衛隊を出動させない、どんな国連軍の要請があってもさせない。文官といえども防衛庁の中の方は出さぬ。こういう態度を御決定になったのも、時宜の問題として私はお考えになったのだろうと思います。そういう時期にさらにあなたが一歩をお進めになることは、世界の軍縮傾向に対して一つのプラスをする。その時期をお見のがしになるということは私はちょっと考えられないのですが、いかがでしょうか。ここではっきりと私はやらぬつもりだ、自衛隊は世界の平和に寄与したい、こうおっしゃるお心持はないでしょうか。
  36. 左藤義詮

    左藤国務大臣 外交の問題についてのお話でございましたが、予算編成についての私どもの心がまえでございまして、野党の代表者としての有力な御意見としてありがたく拝聴いたしますが、今私が結論を出すべき時期ではないと思います。
  37. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今私は外国との関係だけを申し上げましたが、国内的にも私は重要な時期にあると思います。御存じのように中近東の問題を契機にして、藤山外交がよろめいたとかいろいろな世論の批評がありまして、国民は岸内閣がどのように平和を愛好していく方向をとろうとしておるかということについては、非常に神経質になっております。この際に、以前から二、三カ月の間、一万円増員をするするといううわさが出ております。こういうものについてはっきりと根を断って、やらぬとあなたが御宣言になることは、国内のそうした人々の不安を除くという点においても私は非常な価値があるだろうと思うわけです。そういう点で、国内的な情勢から考えてもこの際御宣言になるべきではないだろうか。自衛隊というものは武器をもって人を威圧し、そのことによって平和を獲得していこうとするものだけではないはずです。やはりそこには自衛隊独特の、自衛隊の存在それ自身から出てくる寄与、平和に対する寄与というものをお考えになるべきものだろう、こう思います。私たちとあなた方の立場は違いますが、かりにあなた方の立場に立って考えてみても私はそう思われるわけです。国内的にも重要な時期ではないだろうかと思うので、少くともこの際この委員会で、あなたがやりたくないのだとおっしゃることが、国内政治の上にとっても、自衛隊の寄与として当然あるべきではないだろうか、私はこんなふうに考えるのですがいかがでしょうか。
  38. 左藤義詮

    左藤国務大臣 私ども平和を愛好いたします点につきましては、決して人後に落ちるものではないのでございますが、そのことと一万人の問題とは必ずしも私は一体でないと思います。私どもは国の防衛も一日も早く完全にするために努力いたしておるのでございまして、そういう点は海空等のバランスも十分考えまして、私ども最後の判断をいたしたいと存じております。
  39. 高瀬傳

    ○高瀬委員 ちょっと飛鳥田委員の質問に関連いたしまして、二、三伺いたいのでありますが、実は昨日あたりの新聞に国際連合から日本に、監視団の一員として将校級を十名派遣してほしいという申し入れがあった。ところが政府は閣議でそれを派遣しないということに決定された。日本の憲法の趣旨あるいは自衛隊法その他から見て、一応ごもっともな処置だとは思いますが、かりに日本が今回国連に出したいわゆる日本案なるものが通れば、当然国連の監視団を派遣することになる。そうすると、提案者である日本としては当然それに協力する義務があるわけでありまして、平和を愛好するという日本の立場だけを主張して、義務を全然国連に対して履行しないという国などは、おそらく世界のどこにもないだろうと私は思います。従って、これは単なる海外派兵をしないというような概念的な議論でなくて、実質的に、日本がほんとうに平和を愛好し、世界の平和に寄与しようというかたい決意を有するならば、あの監視団に将校の十人や二十名派遣したといっても、私は大した問題ではなかろうと思う。従って政府がただ名目上、法律解釈上絶対に海外派兵はしないのだという概念的議論にとらわれることなく、将来この問題は、国連に協力し世界の平和に貢献しようという日本の熱意が高まれば高まるほど、必ず起きてくると思うのであります。従って単に閣議で海外派兵はしないのだということだけを決定して満足されることなく、将来必ずたびたび起る問題でございますから、この問題については政府としてもはっきりした方針をきめていただきたい。(「きまった」と呼ぶ者あり)きまったにしたところがあれは非常に概念的な決定であって、私どもとしては満足していない。これらの問題について防衛庁長官もいろいろこの点を御考究になる意思があるかどうか。あのままでは日本の平和寄与という熱意が世界に反映しない、かように私は思っておりますが、その点の御意見を伺いたい。
  40. 内海安吉

    内海委員長 高瀬さん、左藤さんは防衛庁の国務大臣として閣議に出席せられて、閣議決定として外部に発表された以上は、それ以上の答弁はできまいと私は思うのですが、どんなものでしょうか。—左藤さんどうですか。
  41. 左藤義詮

    左藤国務大臣 監視団の問題につきましては、御承知のように外務省の所管でございまして、一昨日ハマーショルド事務総長から要請がありましたのに対して、外務省としての判断でお答えをするということをいたしましたわけです。(「閣議の決定じゃないか」と呼ぶ者あり)閣議の決定ではございません。外務省で昨日決定いたしましたことを、閣僚と党の幹部との連絡会かではあったようでございますけれども、外務大臣の所管事項としてお断わりを申し上げたということでございます。
  42. 内海安吉

    内海委員長 そうしますと左藤大臣に承わっておきたいのだが、きのうのあの決定は閣議決定ではなく、外務大臣の、外務省として単独に省議をきめて、そうして閣議に報告しただけのことだったのですか。それをはっきりしてもらいたい。
  43. 左藤義詮

    左藤国務大臣 御承知の通り昨日は閣議は開かれておりません。一昨日おそく要請がございまして、それに対して外務省として決定せられたわけでございまして、本日の閣議においてそのことについての報告がございました。
  44. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それは報告だけですか、それとも閣議の決定ですか。
  45. 左藤義詮

    左藤国務大臣 こういう返事をしたという報告がありまして、それを了承いたしました。
  46. 内海安吉

    内海委員長 それでは閣議の決定だ。
  47. 高瀬傳

    ○高瀬委員 とにかく社会党の諸君は、海外派兵というのは戦争をやりに行くのだというようなお考えようで非常に心配しておるようであるが、何も海外派兵したからといって、今回のあれは国連に監視団を出すというのであるから、こういうことはやはり国連に協力するという日本の建前から、それはたとい自衛隊の職員であろうが何であろうが私はかまわないと思う。あまり社会党なんかに遠慮して、海外派兵はしないのだという概念的な閣議決定を防衛庁長官なさらぬように、私はこの内閣委員会の委員として切望いたします。何も遠慮は要らぬと思う。とにかく世界平和に寄与する海外派兵をするのに、それに協力するのが自衛隊であろうと何であろうと私はかまわぬと思いますから、一つその辺を十分御研究の上、閣議において世界平和に寄与するような協力態勢を作っていただきたいということを要望いたします。
  48. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今高瀬さんからお話がありましたが、しかし少くとも今の自衛隊法あるいは憲法等によって、自衛隊員を外国に派遣することはできないはずです、世界の平和に寄与するという主観的な意図によって、日本の国内にあります憲法及び法をじゅうりんしないように、これは私の意見としてあなたに申し上げておきたいと思います。  いずれにせよ、その問題はあとで御質問をいたしますが、先ほどの続きといたしまして、そういたしますと一万名増員という意見は、先般岸さんがアメリカを訪問せられました際のアメリカ首脳部との約束ですか、それとも何らアメリカの首脳部とのその当時の話し合いとは無関係にこの議論が出ておるのでありますか。同時にまた米軍の撤退などというようなものが盛んに続行されておるように思いますが、この撤退と見合った考慮でありますか、こういう点についてまだ御決定はないようでありますが、その主張の内容として、そういう事実が背後にあるかないかを一つ伺わしていただきたいと思います。
  49. 左藤義詮

    左藤国務大臣 アメリカに対して一万名増員をいたしますというようなことを総理が約束したとは伺っておりません。ただ私どもの整備計画は話し合いのときに示しておると思いますけれども、それが撤退云々の取引とか約束とか条件とかいうことではないと存じます。
  50. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 整備計画をお示しになって、こうやりますということをなさった以上は、それは約束になっていないでしょうか。整備計画の中には本年度の自衛隊員一万名増員ということは組まれてあるはずです。それをお示しになって、こうやります、こう言って、けっこうです、どうぞおやり下さい、それでは私の方で陸上軍を幾らか撤退させましょうとか、私の方でこういたしましょうとかいう話があったとすれば、それは少くとも私たち日本人の考え方では約束だと思いますが、いかがですか。そういう整備計画を示して向うに話をしておきながら、それは約束でない、あるいはそれは何ら向うと関連がないのだというようなことは、国際道義上許されることでしょうか。
  51. 左藤義詮

    左藤国務大臣 わが国の整備計画はあくまで自主的にいたすものでございまして、アメリカの干渉を受けるような、あるいはそれを示したということは、われわれはこういうように努力したいと思っておるということだけでございまして、それによって拘束されるようなことはないと存じております。
  52. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ただお示しになっただけならそうです。ですが、お示しになって、その上に立って岸さんは少くとも東南アジアあるいは極東の平和というものについていかに維持すべきかということを討論なすったはずです。話し合ったはずです。これは岸さんも帰ってこられたときに本会議の議場でお述べになったので、僕は速記録は見ておりませんが、記憶にあります。計画を示して、これでやりましょう、その上に立って極東の平和をどう維持するかというお話し合いをなさり、同時に安保委員会などというようなものをお作りになり、そうして具体的な、政治的なステップをどんどん進めておいて、さてその基礎になった資料、示した計画については日本が独自でやるもので、アメリカには拘束を受けません、こういうような言い方が一体国民の胸にすとんと落ちるでしょうか、私は少くとも国民の一人として落ちません。そういうのは失礼ですが詭弁ではなかろうか、こういう感じがいたします。少くとも私たちがここでお互いに議論を述べ、お答えをいただきます場合には、私たちの個人的な主観、個人的な好み、そういうものによって論理をもてあそぶべきではなしに、日本の全国民の胸に落ちるようなお互いに説明の仕方あるいは議論の出し方をすべきであろう、私はこう思います。そういう点から考えてみて、はなはだなまいきなことを言って恐縮ですが、私は少くともおかしいと思うのです。それではあなたは、ここで、岸訪米の際の会談と今回出てこようとする一万名増員とは全然何らのかかわりもない、政治家としてこう断言していただけるでしょうか。
  53. 左藤義詮

    左藤国務大臣 申すまでもなくこれは三十五年度までの計画でございまして、その中に三十五年度までもう一万名という計画はあったのでございますが、これを明年度にいたしますかあるいは明後年度にいたしますかということも、国力、国情、財政的ないろいろな考慮もあると思います。ことに先ほどお示しのように国際情勢もいろいろ変ってきておるのでございます。そういう点につきましてこれはあくまで日本が自主的に処置をして差しつかえないものだ、私はかように存じております。
  54. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと三十五年度までの範囲内において、本年度にやるか来年度にやるかということについては、日本が自主的に措置をしてよろしいものだというふうに私は今伺いました。  そこで、この点について議論をしておりましてもおそらく水かけ論でしょうから、時間の節約の意味で先に進んで伺いたいと思いますが、私はたしか四年くらい前だったかと思いますが、当時の木村防衛庁長官に伺ったことがあります。一体自衛隊は何万まで志願兵制度でやりますかということを伺いました。すると木村さんはあの通り卒直な方ですから、事務当局と打ち合せの上で、ポケットに手を突っ込んで胸をそらせて、二十万までやれます、こうお答えになりました。これは私は長官がおかわりになりましても責任ある御答弁だろうと思います。ところが現実には陸海空三軍と職員等を合せますと、現在はたしか二十四万くらいになっているはずです。その上にさらにプラスこれから一万名の増員をなさるということになりますと、当然志願兵制度には限界があり、それにぶつかってくるのではないだろうか。その証拠に私たちが今まで方々旅行いたしましても、自衛官募集という看板あるいはポスターをあんまり見ませんでした。ところがこの一、二年、昨年度のたしか一万名増員のときですか、あれを契機にいたしまして日本国中どこを歩いても、自衛官募集というポスターが張ってあります。沖縄にもあるそうです、今木原君の話によりますと。そうしますと、これは志願兵制度のリミットにきていることを示しているのではないか。幸いに今はなべ底景気と申しますか、非常に不景気ですから、従って職にあぶれた農家の二、三男、あるいは都市の若い方が多うございますので、応募があるかもしれません。だがしかし、いつまでもこういう不況があるわけではないでしょう。不況によってささえられている自衛隊などというのはナンセンスですからね、卒直に言えば。私は当然志願兵制度のリミットはもうきているのではないか、こう考えます。先ほど来一万名増員をやるかやらぬか、こういうことを伺ったのは、そういう重要な問題にもうぶつかりかかっているからで、前回の一万名増員のときには、私は徴兵制度という問題にぶつかるのではないかという質問を申し上げませんでした。しかしもう今度はぶつかるのではないだろうか。そういうことを十分にお考えになって、なおかつ一万名増員を御決定になる意思なのかどうか。そういう点で、過去四、五年の間もう国会で同じような議論が繰り返されて参りましたが、今やそのぎりぎりにきたのではないだろうか、こういうことでもう一度この問題について、一万名増員という説は徴兵制度ということまで考慮に入れてやっておるのか。志願兵制度のリミットがきておるということをちゃんと頭に入れてこの御議論が庁内で行われているのか。そうしてあなたが御裁断になろうとする場合には当然そのことを考慮をなさるべきものと思うが、その点についてあなたは御賛成かどうか、こういうことを私は一つ伺っておきたいと思うわけです、ぎりぎりですから。
  55. 左藤義詮

    左藤国務大臣 私も速記録を見ませんから、木村元長官がどういう答弁であったか存じませんが、二十万とおっしゃったのはおそらく陸上二十万ということではないかと思います。現在二十四万近くに充員をいたしておりますが、これには申すまでもなく制服でない者、あるいは幹部も含んでおるのでございまして、私どもはかりに一万増員をするといたしましても、現在の志願兵でまかない得る。私どもは徴兵制度をしこうというようなことは考えておりません。
  56. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは事務当局からでけっこうですが、志願兵制度の現在の不況のなべ底景気のどん底における数字でけっこうですから、それと予備自衛官制度というものがどの程度に充足せられておるのか、これも一つお述べをいただきたいと思います。
  57. 加藤陽三

    ○加藤説明員 この応募人員というものは、募集人員が多いときにはやはり多いのでありまして、募集人員の少いときにはそれに応じて減るわけでございますが、総じまして昭和三十年以降の統計で申してみますと、昭和三十年が陸上三万一千二百名の募集に対しまして十二万五千六百七十八名が応募いたしております。昭和三十一年は第一次が陸上九千名の募集に対しまして四万二千四百三十一名、第二次が七千名に対しまして二万八千二百三十二人の応募、第三次が六千人に対しまして二万四千八百二十五名、第四次が一万八百人の募集に対しまして二万九千八百七十三名、昭和三十二年は第一次が陸上八千二百名の募集に対しまして三万三百四十九名、第二次が九千人の募集に対しまして二万七千二百四十四名、第三次が一万名の募集に対しまして二万七千百十二名、以上が過去三カ年の応募成績でございます。大体私どもの考えといたしましては、三倍の応募率がありますれば現状くらいの素質、条件の隊員が採用できるというふうに考えております。  次は予備自衛官について申し上げますと、予備自衛官の現在数は、私どもの持っておる資料は本年の二月一日現在でありますが、八千九百八十三名でございます。
  58. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 予備自衛官の定員というものは六法全集では一万五千になっておると思いますが、間違っておったら御訂正下さい。一万五千であったと思いますが、それに対して八千九百八十三人というと約九千人しかないわけです。半分ちょっとというところだと思います。  これはこの前辻さんにお教えをいただいたのですが、今の自衛隊というのは裸でないか。今ある二十四万を繰り出して一度大打撃を受ければ、あとの補充は全然できないのではないか。一回こっきりの自衛隊、まるでばくちみたいです。一回こっきりの自衛隊、あとの補充がきかない、こんな軍隊は世界にない、こういうお話を伺いました。私は軍事専門家ではありませんから、この説が当っておるかどうかはわかりませんが、少くとも一万名増員というやり方、そういうやり方の背後にもう一ぺん繰り出して打撃を受ければそれでパーの軍隊、そういう欠点をこっちに持っておる、そういうような増員の仕方がほんとうに自衛隊をりっぱなものにしようというあなた方の意欲に基くものかどうか、私は不思議に思えるわけです。何かそこに人数だけをふやしていき、官庁としての図体を大きくしていくという—失礼ですが、そこにいらっしゃる方々の官僚としての意欲を満足させるだけにとどまりはしないだろうか。一ぺん出して大打撃を受ければそれでおしまいになってしまうような軍隊を一万名増員する。むしろうしろへ翻って予備自衛官が一万五千名定員があるのに九千名しか持てない、そういう欠点をこそ振り返らるべきではないか。そういう欠点を振り返らずに、ますますふやすだけのやり方などというものは、そこに私たちは、真実の軍隊とかなんとかお唱えになりますが、そういう表面の言葉だけではなくして、官僚諸君の意欲を発見するだけである。そういう官僚諸君の意欲を発見するだけの軍隊に、何千億というお金を投入することについて、非常に私たちは残念さを感じます。こういう点からも、もう私は自衛隊の増員そのものにリミットがきているのじゃないか、むしろここで長官御自身が、やりませんと、こういうことを御宣言になることの方が正しくないか、こんなものは、とつおいつ、おうちへお帰りになりて悩んで考えらるべき筋合いのものではありません。少くとも政治家として決断の時期だろう、私はこう思いますがいかがでしょう、くどいようですが。
  59. 左藤義詮

    左藤国務大臣 国防が国民全体の理解と協力によることはもちろんでございまして、これを増強すると申しますか、特に具体的には、予備自衛官を充実いたしますことについては、まことにありがたい御意見でございますが、自衛官を大観いたしまして、これに該当する者がまだ少うございますので、これは将来私はだんだんふえていくものだと思っております。このことにつきましては、まことに与党野党立場が違いましても、日本の国防の充実ということについての非常に御理解のある御意見、十分に参考にいたしたいと思いますが、一万名の問題につきましては、先ほど申しましたようわが国の国力、国情等につきまして、十分陸海空のバランスを考えまして、私ども最後の決定をいたしたいと思っております。現在私たちがどういうような決定をいたしますかにつきましては、御遠慮させていただきたいと思います。
  60. 加藤陽三

    ○加藤説明員 先ほど予備自衛官に関する私の説明が不足しておりましたので、つけ加えさせていただきます。予備自衛官一万五千名以内という法定定員であるのでございますが、予算上大蔵省との折衝によりまして、毎年一万五千人の範囲内におきまして定数をきめておりまして、昭和三十二年度は九千五百名でございます。昭和三十三年度におきまして千五百名増加いたしまして、一万一千名にいたしたいということでございます。九千五百名の予定に対しまして、二月一日現在が八千九百ということでございます。
  61. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もうこの議論はやめますが、私は別に国防の充実などを望んでおりません。これは明確にさしていただきたいと思います。今のお話で、予備自衛官、あるいは徴兵制度についての態度がわかりました。そういうものを当然含めて一万名増員を御決定になるだろうということもわかりました。しかしさらに、私たちしろうとでありますが、自衛隊の内部を見て参りますと、幾つかの矛盾を発見します。たとえば千歳の基地には、飛行機としてF86Fがおります。これが六十機おるはずです。それからT33が八機あるはずです。ところがそれに対してパイロットは三十人しかいないじゃないですか。その六十機、そしてT33が八機とすれば、六十八台です。六十八台に乗れるパイロットが三十人しかいない。どうやって動かすのでしょう。石橋君のヤジにありましたように、飛行機はスペアにしておくというのならけっこうですが、金を出しているのは国民ですよ。しかもF86Fというのは昼間機のはずです。夜は飛べないはずです。あなたのお説によれば、私たちはそんなことはないと思いますが、敵機が夜来るかもしれない。昼間だけしか役に立たない自衛隊、いやに皮肉っぼく言いますが、現実はそうです。そしてまた整備の問題を見ましても、米軍は一機に対して三十人整備士を持っているはずです。自衛隊は一機に対して五名整備士を持っているだけである。だから従って、自衛隊の飛行機はいつでも落ちるという迷信が国内にみなぎっている。先般も委員長さんがお乗りになりたいというので、落ちない飛行機を世話してあげて下さいといって笑ったのですが、五名しか整備士がいない。こういうことをそのままにして一万名増員するというのはどういう意味ですか。今日本に加えられる攻撃などというものを私たち考えませんが、誤解があるといけませんから考えませんが、しかし、いろいろな防衛庁の側に立った軍事評論家、あるいは防衛庁の中の方で、たまに本に執筆をなさる方、こういう方々の御意見を見ると、攻撃はまず空から来るというのは、もうだれでもが決定している前提です。ところが一万名に人間をふやして、飛行機の方は昼間しか使えない飛行機、しかもその飛行機に対して一台五名しか整備士を持っていない。パイロットも飛行機の半分しかいない。こういうやり方はどうでしょう。  さらにまた、もう時間がありませんので続けて伺いますが、徳島の基地に最近MDAPでもらったS2Fという対潜哨戒機があるはずです。アメリカから十八台もらったはずです。これは動いておりますか。これに必要な。パイロットの数がそろっておりますか、整備士の数がそろっておりますか。少くとも私たちがいろいろな業界紙その他で拝見いたしました限りでは、半分くらいしか動いていないということであります。さらにまたP2Vを六十機作られる、この間こういう御決定があったそうですが、しかしP2Vの六十機の製作にとうてい足りない、こういうことで年次計画を減らしていくという話があります。これも事実かどうか伺いたいと思いますが、ところが最近は、さらにP2Vの段階を越えかかっているのじゃないでしょうか。一般のシュノーケル型の潜水艦でいくならば、P2Vである程度発見できる。ところが原力潜水艦というものはもう発見できないのじゃないか。もうP2Vの性能の範囲を越えているのじゃないか。こういうことを考えますと、もう世界の科学の水準にどんどんおくれていくのに、一番おくれている自衛隊の陸上一万名の増員、こういうことをお考えになるのはなぜか。私たちがごく私たちなりの主観で判断すれば、もう自衛隊の皆さん方は外国の問題に対して棄権をなすった、権利を捨てた。そして国内の労働運動なり、いわゆるあなた方の目からごらんになった不逞のやからを弾圧するために陸上兵を増員するのだ、こう言わないわけにいかないと思うのです。どこをどうつついていってみたところで、日本の対外戦闘力を増力するための一万名増員だとは私には思えない。にこにこお笑いになった平和愛好の自衛隊という仮面のもとに、実は日本の民主主義を弾圧する底意が動いておる、私はこう言わないわけにいかないのです。現に、これはあなた方の責任ではありませんが、いろいろな軍事評論家あるいはその他の方々の書いたものを拝見いたしておりますと、今までのような直接侵略に対してどう対処するかという議論をするよりも、間接侵略に対してどう対処するかという部分の御議論が非常にふえてきました。ここに何とはなしにお互いのあなた方の気持の表現があるのじゃないか、こういうような解釈さえ私たちはせざるを得ないわけです。先ほど申し上げましたような事実、千歳における。パイロットと機数の差、あるいは整備士の非常に少いこと、そうして昼間戦闘機しか持っていないということ、あるいは徳島のS2Fが動いていないということ、P2Vそれ自身の年次計画が減っているということ、そうしてこれが時代おくれになりかかっているということ、こういうような事実、それはもちろんやるとおっしゃるでしょうが、この問題をある程度そのままにしておいて、一万名増員の御議論は一体何であるかということを、非常にくどいようでありますが、もう一度伺わさしていただきたいと思います。そうしてさらに、私が先ほどひがんで申し上げましたような間接侵略、あるいは国内における労働運動その他の弾圧用としての自衛隊ではないということを、ここで再度御確認をいただいておきたいと思います。
  62. 左藤義詮

    左藤国務大臣 創設以来自衛隊があくまで平和を愛し、民主主義を守るためにこそあるのでございまして、これを弾圧するとか、健全なる労働運動、健全なる民主主義というものを毛頭弾圧するような意思は持っておりませんことをはっきり申し上げておきます。しかし、非常に立ちおくれております自衛力の拡充につきましていろいろなアンバランスのありますることはまことに遺憾でございますが、特に人の問題でお話がございましたが、パイロットなり整備員を養成しますることは非常な時間も要することであり、本日から航空総隊も発足をいたしましてそういう方面に必死の努力をいたしておりますので、千歳あるいは徳島等における具体的なことにつきましては政府委員から御説明いたしまするが、今後最善を尽しまして、御心配のないようにいたしたいと思います。
  63. 加藤陽三

    ○加藤説明員 事務的なことを補足して御説明申し上げます。F86Fにつきましてはこの前も当委員会におきまして御説明したと思いますが、三十二年、三十三年、三十四年におきましては若干の保有機数の増と申しますか、操縦員等に対しまして余分のものが出ますことは私どももその通りに見ておるのでございます。全体といたしまして三十五年の末になりますと若干機の不足を来たすようでございます。なぜこういうふうなことになったかと申しますると、これも前回、前々回でございましたか、当委員会で御説明いたしましたが、操縦士の教育が予想の通りにいかなかった—いろいろな事情がございますけれども、昭和三十一年の初めからジェットの訓練を始めたのでございまして、初めての経験のことでございましたので、われわれの教育そのものがやはり実地についていなかったということもあると思います。千歳につきましては、現在。パイロット約三十名、飛行機は私の記憶ではF86Fが四十九機でございます。T33が数機ございます。この所要機数を全体から申し上げますと、やはり余剰でございます。ただ現在の整備、補給等の状況から申しますと、私どもは昭和三十二年におきましては操縦者一人に対しまして飛行機一・六機ということで、所要機数を計算しておるのでございます。整備員も昭和三十二年末におきまして三千六百二十名でございます。これを昭和三十三年末におきまして五千十三名にふやしたいということで養成の計画を進めておりまするが、これもやはり操縦者と同様にいろいろ支障がございまして、思う通りにいっておりません。昭和三十二年末におきましては大体われわれの計画しておりまする整備員の数の八〇数%という状況でございます。何とか工夫をこらしまして、早く整備員の養成を促進したいと考えておる次第でございます。  それからF86Fがデー・フアイターであることは、これは御指摘の通りでございます。私どもはやはりデー・フアイターだけではいいと思わないのでございまして、昭和三十三年度におきまして米軍よりF86D全天候の戦闘機の供与を六十機受けることになっております。漸次F86Dその他全天候の戦闘機をふやしまして、空の防衛に遺憾なきを期したいと思っておる次第でございます。  次に徳島の飛行隊のことにつきまして言及なさいましたが、徳島の飛行隊には現在米軍より供与を受けましたS2Fの艦上対潜哨戒機、これが三十機ございます。パイロットの数は主。パイロットが十三名、副パイロットが十八名、学生が十六名、計四十七名おるのでございます。大体私どもの考えでは三十機のS2Fに対しまして可働機数は約七割と考えております。それにいたしましても若干御指摘の通り飛行機の方が上回っておるではないかということは御指摘の通りでございますが、これは米軍よりの供与が当初計画しておりました時期よりか少し早くなったのでございます。その間のずれがございますので、これは逐次私どもは解消して参りたいと考えておるのでございます。  次にP2Vについてお尋ねがございましたが、なるほどP2Vの対潜哨戒機をもちましては、原子力潜水艦のようなものがだんだん発達して参りますと、これは水面上に出ないのでありますから、なかなか捕捉することは困難でございましょう。しかしこれは飛鳥田委員もよく御存じだと思いますが、現在原子力潜水艦はアメリカで三隻、ソ連におきましては、明確ではありませんが、大体三隻くらいであろう。この建造能力というものはやはり制限があるのでございまして、ここ数年の間に潜水艦が原子力潜水艦を主勢力とするようになるであろうということは、ちょっと私どもには想像できないのでございまして、現在ソ連が持っております五百数隻の潜水艦の大部分というものはやはりシュノーケルが多うございまして、今までの型の潜水艦でございます。アメリカも同様でございます。これらの潜水艦に対しましては現在われわれが持たんとしておりまするP2Vは、四十二機生産の計画アメリカから十六機供与を受け、合計五十八機になる予定でございますが、このP2Vの対潜哨戒機は現在世界でわれわれが見出し得る一番能率的な哨戒機であろう、かよう考えております。
  64. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その問題であまり長くかかっておりますと時間がかかりますので、ほかの問題を伺いますが、五月三十一日に下甑島のレーダー基地、六月の下旬に襟裳岬、御前崎、こういうものが日本に移管をされました。さらに今年度中には約十カ所のレーダー基地が日本の手に入る。そうして残りの十一カ所は三十四年と五年度のうちに行われる、こういうことであります。そうしますと、日本全国のうちに今二十四カ所のレーダー基地があるということはもう常識だろうと思います。このうち今日本に入って参りましたのが下甑島、襟裳、御前崎の三カ所、こういうことになります。そうしてあと十一カ所が本年度中に入る、こういうことになりますが、この日本に移管されたレーダー基地にはその後も引き続き米軍の軍事顧問団や将兵が残って教育訓練をやっているのかどうか、これから伺いたいと思います。
  65. 左藤義詮

    左藤国務大臣 レーダー・サイトについて御質問でございましたが、今三つお示しになりましたが、もう一つ最近笠取が返還になりまして、四つでございます。ここに残っておりまする米軍は教育訓練等はいたしておりませんで、連絡の仕事をいたしておりますというふうに承知しております。
  66. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の連絡のというお話がありましたので、その点にすぐ入っていきたいと思いますが、レーダー基地というものは二十四カ所一体をなして初めて一つの役割を果すものであると思います。まずレーダー・サイトで入ってくる所属不明の飛行機を発見した場合に、それを敵機なりや味方機なりやを判断する場所、これは一つ判断です。その判断がありましたら、それをADDCなり何なりに通報して、そうして三沢、ジョンソンあるいは板付等の日本の三カ所に分れておりまするところから指令が出て飛行機が飛ぶ、こういうことになっているのだろうと思います。しかも飛ぶ飛行機は、千歳の場合には、先ほど御説明がありましたように、昼間機でありますから、夜の場合には三沢の全天候機に依存せざるを得ないだろうと思います。そうした点を考えて参りますると、この二十四カ日所のレーダー・サイトは一個の働きをなさなければ役をなさない。ところがそのうちの一部分は日本に、一部分はアメリカに残っている、こういうことになります。一体この一個の働きをなすべきレーダー・サイトを指揮し、統轄している者はだれですか。
  67. 左藤義詮

    左藤国務大臣 飛鳥田委員はお詳しく、着任早々の私よりも非常によく御研究になっておるのでございますが、日本へ四カ所返りまして、他はアメリカにあるのでございますが、これは並行的に、日本に返ったところにはアメリカの連絡があります。現在米軍の持っておりますところには日本の方から連絡に行っておりまして、日本は日本人の間で二十四カ所有機的に判断をして、府中にあります航空総隊で指揮をしている。米軍もやはり同様にいたしておるということでございまして、日本のものが米軍の指揮系統に入っているとかということはない。両方が並行してやっておる状態だと存じております。
  68. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 実は並行してというお話をきのう官房長に非公式に伺ったわけです。私も家に帰っていろいろ考えてみたのですが、そういう御答弁は国会における答弁用じゃないですか。と申しますのは、日本を三沢、ジョンソン、板付という形で三つに分けて、その三つの先のほぼ同じ方向に幾つかのレーダー・サイトが置いてあるわけです。たとえば九州方面のレーダー・サイトは全部がそっくり日本のものになった、あるいは東北方面、北陸方面のレーダー・サイトがそっくりそのまま日本のものになったということなら、並行してお互いに情報を交換し合うということで、どっちの指揮に入る入らないということでなしにやっていける、こういう御説明はある程度可能かと思います。それも私は困難だと思いますが、可能かと思います。ところが見ますと下甑島に入ってきた、御前崎は中部ですから中部のものが一つ入ってきた。ぼつんぽつんと日本の系統に入ってきているわけです。それを相互に情報を交換するなどということで、実際の運営は行くでしょうか。そういう御答弁は、私はしろうとですからそのまま了承しても、ほんとうの軍事専門家が見て噴飯物でなければ仕合せだろうと思います。私はお互いの情報交換などということでなしに、実際は一つの指揮系統に入っているのだ、こう思わざるを得ないわけです。それから非公式のお話を出して恐縮ですが、官房長に伺いましたら非常にオートメーション化されておって、すうすうと行くのだというお話でありましたので、実は私も家に帰っていろいろなものを調べてみたわけです。そうしましたらすうすうと行くのはアメリカ本土にありますようやり方ですね。ところが日本でとっておりますやり方は、そういうごくオートメーション化されたものではなしに、アメリカ人は何かロバの速達便と呼んでいるそうですが、そういうもっと程度の低いものだということを知りました。これは多分事実だろうと思います。もしそうだとすれば、そうオートメーション化されているから相互に情報を交換する、こっちでボタンを押せば向うにわかる、こっちでボタンを押せば向うにわかるというよう関係ではなかろう、こう思います。そういう意味国会用の答弁とは逆に、実際は現実に向うの指揮系統に入っているものではないだろうか、こう私は思います。なぜ私がこんなことをしつこく申し上げるかと申しますと、もしそうだとすればここから破れ目が出るのじゃないだろうか。いやしくも日本の軍隊が他国の軍隊の指揮系統下に入る、あるいは他国の軍隊と指揮命令の関係にはないとしても協力関係に入る、こういうことが国会には何も報告されずに、いつの間にかあなた方だけの御判断で平然と行われていくとするならば、それはもう一歩前に出ればレバノンに自衛隊を派遣することと違わないのじゃないですか。そうたやすく国民のお金でできている軍隊を外国の軍隊との共同動作の中に入れてしまう、百尺一歩を譲っても共同動作の中に入れてしまう、あるいは法文上はないかもしれませんが、事実上の指揮系統の中に入っていく、これはレーダー・サイトをこっちへもらうという変態的な状態の中で発生していることですから、ごく例外の事象には違いありません。しかしその例外の事象ではあっても、そういうことを許していくならば、日本の軍隊はいつの間にか他国の軍隊の共同作戦者になり下ってしまう。そこからすぐ、もう一歩前へ出れば自衛隊の海外派兵も出、あるいはいろいろの自衛隊の独断的な行動も出てくるのではないか、私はこう思わざるを得ないわけです。ことにこんなことは、この特別に開かれた委員会の中で伺うつもりではなかったのですが、レバノンには自衛隊を派遣しないとおっしゃりながら、実は日本の自衛隊をアメリカの指揮下に派遣しているじゃないか。こういう事実を私は考えてみますと、きょう伺ってみないわけにはいかなかったわけです。一体そういう相互の情報交換だけで実際いけるのですか。私はそういう御答弁はちょっと満足できません。
  69. 左藤義詮

    左藤国務大臣 飛鳥田委員はただいま例外的とおっしゃいましたが、レーダー・サイト全部が一ぺんに返るならいいのですが、職員の訓練その他でなかなかそうは参りませんので、こういう過渡的な事象でございますが、指揮系統につきましては、先ほど申し上げましたように、米軍が管理しておりますものには日本の連絡員が行っておりますし、今度返りました分は米軍の管理でやっておりまして、その中枢の指揮は府中でいたしております。私も先般実地を見て参りまして、アメリカがどれだけオートメーション化しているか。こちらは非常におくれているというのですが、私はアメリカの方を存じませんけれども、私ども初めて見ましたのでは非常にオートメーション化して、あくまで源田空将のもとに日本の判断によってやれるようになっており、決して米軍の指揮下によって動くのではないということで、私は現場を見まして安心をしてきておるのでございまして、ましていわんやそういうことから—しかもレーダー・サイトはだんだんこうして日本へ返ってくるのでございまして、そういうことから次には海外派兵というような御心配は毛頭ないと私は確信いたします。
  70. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 まあ露骨なことを申し上げますが、長官も私も全然その方面のしろうとです。私たちの目で行って見て、びっくりして帰ってみたところで、それは今の非常に発達したものについてはナンセンスですから、それには十分軍事専門家なり何なりの御検討をいただくと同時に、この際民間の方方などにもまず十分研究させて、日本の自衛隊というものが米軍の指揮下に入っていないのだということをはっきり立証できるような措置を講じていただきたいと思います。私とあなたと一緒に行って見てきて、なるほどといって感心してみたところで、いなかの人が東京へ出てきて腰を抜かすのと同じではないだろうか、こう思います。しかしそれはそれでよろしゅうございます。  そこで少くともそういう国民の自衛隊がアメリカの指揮下に入っていると疑われるような事態があるとすれば、当然これは釈明をなさらなければいけないと思います。その釈明の方式として、ちゃんと行政協定の中にあります。第六条でありますが、「すべての非軍用及び軍用の航空交通管理及び通信の体係は、緊密に協調して発達を図るものとし、且つ、集団安全保障の利益を達成するため必要な程度に整合するものとする。この協調及び整合を図るため必要な手続及びそれに対するその後の変更は、相互の取極によって定める。」こう書いてあります。これも非公式に伺ったのですが、本件の場合とは違うという御説明がありましたけれども、しかし私は軍用の航空交通管理及び通信の体系というものに当然含まれるだろうと思います。もしそうだとすれば、国民の疑いなきように当然協調及び整合をはかるために必要な手続をおきめにならなければならぬわけです。そしてまた取りきめをなさらなければならぬわけです。そして軍機の秘密とかなんとかいうややこしいものがあるかもしれません。私はそんなものをこの日本国内で認めたいとは思いませんが、もしあなたの方でそういう御主張があるのならば、せめてそういう手続及び取りきめがなされたということを発表し、その大綱だけでも国民にお示しになっておかなければならぬはずです。そういう意味の必要な手続及び取りきめは現実にでき上っておりますか、でき上っておりませんか。もしでき上っていないとすれば、今後そういうものを至急おやりになる意思があるかないか、これを承わりたいと思います。
  71. 左藤義詮

    左藤国務大臣 この行政協定第六条の規定は、私の理解いたします限りにおきましては、航空、交通管理の問題でございまして、この点は運輸省の所管で、航空局におきましてこういう取りきめはいたしておるものと承知いたしております。
  72. 加藤陽三

    ○加藤説明員 この問題につきまして、補足して御説明申し上げます。行政協定第六条の関係は、今大臣がおっしゃった通りでございまして、航空交通管制に関する限り軍用機も非軍用機も一括して第六条で規定し、この第六条に基きまして、日本の航空局の代表者と米空軍の代表者とが取りきめをいたしておるというふうに了承しております。レーダー・サイトの警戒管制組織につきましては、行政協定の第六条とは関係ないものと存じております。現在やっております方法は、先ほどからいろいろお述べになりましたけれども、実情を申し上げますと、府中に本部があります第五空軍に対応いたしまして、航空自衛隊の航空総隊というものがございまして、これは府中に本部を同じく位置しておるのでございます。米軍の方は、第五空軍の下に第三十九航空師団というのが三沢にございますが、これに対応いたしまして、わが方は北部航空方面隊というのを三沢に置いております。また第四十一航空師団が入間川にございますが、これに対応いたしまして、中部航空方面隊というのを入間川に位置して設けておるのでございます。その下にそれぞれの航空隊とそれからレーダーの管制の部隊を持っておるわけであります。おのおのが共同して緊密な連絡をとってやる。一例を申し上げますと、あるレーダー・サイトで敵味方不明機を発見いたしますと、それがさっき申しましたADDCに来るわけでございます。このADDCの中で、まだわが方に返還を受けておらないものも多数ございますが、そこにはわが方の北部、中部の航空方面隊の下の警戒隊群の一部が常置しております。そのADDCからさらに報告がADDCに来るわけであります。そこに今申しましたように、第三十九師団とわが方の北部航空方面隊というのが位置しておるわけであります。おのおのの系統から上りまする情報をそこで調整する、そうして命令はおのおののところから別々の系統で流していくというふうにしておるわけでありまして、実際上指揮を受けておるということはないと私どもは考えております。
  73. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 中東問題が起りまして、アメリカ軍は各地においてみんな警戒態勢に入ったわけです。あえてそういうことを一々申し上げる必要もないだろうと思いますが、米太平洋艦隊は十五日全部隊、全将兵をあげて警戒態勢下に置いた。さらに在日米海軍も同様なことをやった。オマハの米戦略空軍司令部でも同様のことをやった。北米航空統合司令部でもそういうことをやった。カナダでもそういうことをやった。こういうことがたくさん新聞に出てくるわけであります。もしそうだとすれば、当然日本の中でもそういうことが行われているはずですし、現実に日本に駐留いたしております米空軍も、すべて非常警戒態勢に入っておるように新聞は報道いたしております。そうだといたしますと、当然この二十四のレーダー基地も警戒態勢に入ったはずだと思われますが、これはどうでしょう。
  74. 左藤義詮

    左藤国務大臣 米軍が警戒態勢をとったことは事実のようでございますが、警戒態勢にも、私どもしろうとでございますが、いろいろ非常に緊迫したのと、ほとんど訓練に近いような程度の低いのもあると思いますが、どの程度か私は知りませんが、自衛隊に関します限りは、今度の事件について警戒態勢は全然とっておりません。もちろんある部隊については、演習のために警戒態勢をとったということはあったかもしれませんが、全体として、いつもやります訓練の一翼として、ときどき各部隊長の権限でやっておりますことは、そこまでは私のところへ参りませんが、自衛隊といたしまして今度の中近東の事態に即応して、警戒態勢を命じたということは全然ございません。
  75. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、二十四のレーダー・サイトのうち二十は警戒態勢に入り、残りの四つは警戒態勢に入っていない、こういうふうに伺っていいわけですか。ずいぶんちぐはぐな、僕らとしては想像のできない結果なんですが、いかがでしょう。
  76. 左藤義詮

    左藤国務大臣 レーダー・サイトは御承知のように二十四時間運転しておるわけでございまして、極端に申しますれば、常時が警戒態勢ともいえると思うのでありまして、これが特に中近東の問題のために動員をするというようなことはなかったように存じております。またかりに米軍の所管しておりまするレーダー・サイトが警戒態勢に入るといたしましても、そこにおりまする連絡の者が、自衛隊の方針として命令をして警戒態勢に入らしたというような事実はございません。
  77. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、日本の四カ所のレーダー・サイトは、自主的にアメリカに御協力を申し上げておるという程度にすぎない、こう伺ってよろしいかと思います。もしそういうことでありますならば、私たちはもっとその程度を明確に出していただかないと、何か日本の軍隊の一部がアメリカの指揮下に入り、そのことを通じてやがてまたいろいろな破れ目が出てくる、こういうふうに思われます。その点については厳重に自戒をしていただきますようにお願いをしたいと思います。  まだほかにたくさん伺いたいことがありますが、同僚の方がおられますので、私の質問を終ります。
  78. 左藤義詮

    左藤国務大臣 レーダー・サイトが過渡期でありますので、今のような御心配をいただきまして、非常にありがたく存じます。厳重に私は、かりそめにも米軍の指揮下にあるような心配を国民にさせませんように、レーダー・サイトにつきましてもはっきり線を引いておるつもりでございますが、この機会に私の責任におきまして、御心配のようなことは絶対いたしません。飛鳥田さんはもちろん、国民の御理解をいただきたいと思います。
  79. 内海安吉

    内海委員長 茜ケ久保君。
  80. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 事務的なことを二、三簡潔に聞きます。  最初に、加藤防衛局長は先ほど飛鳥田委員の質問に答えた中で、人事局長時代に答えたことと違う答弁があるのです。これはちょっと困るので、御再考を願いたいと思います。というのは、募集に関する件ですが、加藤防衛局長はかつて人事局長の時代に、いつの国会でしたか、聞いたときに、募集人員の五倍以上の応募者がなければ、自衛隊が予期する質のいい採用者を採ることはできないというようなことを言っておる。それと同時に、私は最近ある地方連絡部に行って、実は数字的なデータを基礎にしていろいろ伺ってきたのでありますが、その地方連絡部の御説明でも、いわゆる採用に対して五倍以上の目標を作ってやる。ということは、採用に対して五倍以上なければ、不参者その他の関係で、最後に残る者は二倍以上にはならぬということから、五倍以上なければ困るという防衛庁からの話を受けておるという説明を聞いたのであります。先ほど防衛局長は、三倍以上ある、従って三倍あれば優秀な隊員が採れるということをおっしゃったのだが、この点あなたの前の御答弁と、さらに最近私が聞いた、地方連絡部におけるいわゆる防衛庁からのお達しをけんけん服膺しておる態度と、食い違いがある。この点いかように理解したらいいのか、お聞きしたい。
  81. 加藤陽三

    ○加藤説明員 いつの機会に申し上げましたか記憶ありませんけれども、ただいま申し上げましたのは、現在の条件下における今の質を落さないという程度におきましては、三倍でよかろうということを申し上げたのでございます。五倍ということを申し上げたかもわかりませんが、それは若干質を向上して、今よりかいい者を採りたいということを言ったのではないかと思いますけれども、よくまた速記録を調べて答弁申し上げたいと思います。
  82. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 もう一回聞きますが、私が二、三日前に地方連絡部に行って調査した。そのときに連絡部長の御説明では、数字をあげて第一管区総監部の募集人員と、これに対する応募者の予定数が下ってきて、地方連絡部に対して、応募者の予定数がちゃんと割り当てられている。聞いてみましたところが、やはり五倍以上ということを言っている。どうしてかと言ったら、その説明によると、まず不参者が三割、第一次で落すのが三割、いろいろなことをやっていくと、どうしても募集人員の五倍以上なければ、われわれの予期する質の隊員は募集できない乏いうことをはっきり言っている。そういたしますと、これはやはりあなたのかつての答弁が今もそのまま生きておって、それでずっときている。私は決して三倍が悪いということを言っておるのではないが、あなたが三倍あれば予期する隊員の募集が可能であるということをおっしゃったから、それは前におっしゃったこと、さらに今現にあなた方の下僚である地方連絡部の職員が一生懸命、かねや太鼓で募集している姿と食い違いがあるから、指導者であるあなた方と、それを受けてやっている下部の連絡部の職員諸君がやることが、それでは違うと思うから、お聞きした。あなたの立場で三倍でもいいとおっしゃるなら、それでもけっこうなんです。三倍でもいいなら、私はそのように、下部の連絡部に対して三倍でもいいという資料を出して、無理にああいう募集をやることはないと思う。聞いてみると、町村長が町村を回って全部やっておる。あなたと関係のない町村長が、あなた方のそういった指導に従ってやっているのだから、もし三倍でいいというならば、地方の町村長諸君もそれでやれるので、この点をもう一ぺん念のためにお聞きしておきたい。
  83. 加藤陽三

    ○加藤説明員 最近五倍の数の割当をしているということは、私は今承知しておりません。本日は人事局長がおりませんものですから、私の手持ちの資料で御説明申し上げ、当時の私の記憶に基いて三倍ということを申し上げたのでございますので、また人事局の方で資料を照合いたしまして、この次の機会に御説明申し上げたいと思います。
  84. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 この点は大事ですから、はっきりしておきたい。三倍なら三倍でいいのですから、そのように指導願いたい。無理に五倍にして、下部の町村長に迷惑をかけてはいけないのです。
  85. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 関連ですが、今の茜ケ久保さんのお話の、三倍とか五倍とかいう数の割当を与えていることは否定できないと思うのですが、それが三倍であるか五倍であるかということは別として、これは事実上の徴兵制度ではないでしょうか。例を言えとおっしゃれば、この次の会議のときにたくさん持ってきてごらんに入れますが、町村長に対して何名の応募者を出せ、こういう具体的な強制がございます。また現実に各町村長は、それを果さないと、法律上罰はないにしても、何か申しわけないような気がして、遊んでいる子供のところを歩き回っては、お前応募しろとかなんとかいうことをやつております。これは法律の強制にあらずして、社会的な一つの雰囲気としての強制をあえてやりつつある。こういう点から考えると、数の割当をしていて、それをよくするために、町村長という立場の人たち、あるいはそれに類似する人たちが、事実的な強制をしている。こういう意味で、もう徴兵制度、半徴兵制度だといわなければならないと思うのですが、こういう徴兵の仕方についてどうでしょう。
  86. 左藤義詮

    左藤国務大臣 私長く学校の教師をしておりまして、やはりたくさんの志願者の中から、入学試験で採用したときの方がどうも成績がいい。できるだけ優秀な志願者をたくさん得たい、そうして国民の税金で作っております自衛隊を少しでも精強なものにいたしたい、こういう熱心の余りだと思うのでございますが、もちろんただいま御心配のような徴兵制度でもございません。われわれ何ら法的な強制力を持っておりませんで、府県知事あるいは市町村長の自主的な御協力をいただきたいということをお願いしているわけでありまして、それが度を過ぎまして、ただいまのような御心配がありますれば、私ども自粛させたいと思います。しかしさっき申しましたように、若い人たちの御理解によりまして、少しでも優秀な志願者が多く集まりますように、この点は一つ御協力をいただきたいと思います。
  87. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 この国会の答弁では、多少強制が度が過ぎた場合もあるかもしれないなどということで、済んでしまうわけです。しかし現実は、絶対そう動いていませんよ。これはかなり強い強制力のあるものと、私たちはいつも考えておる。常に苦々しいことだと考えているわけです。法律によらない、しかし現実に徴兵制度が行われつつあるということは、長官もう一度振り返ってみていただいて、事いやしくも人に強制がましい募集の方法をとつてはならぬということを、少くとも通達せられるなり、周知徹底せしめられるなりなさらなければ、私はどんどん進んでいってしまって、やがて一つの既成事実ができ上ってしまい、それがさらに法律の上で徴兵制度をばかっと作る社会的な基盤になっていく、こういうことを私たちおそれざるを得ないわけであります。そういう通達を出していただけるかどうか、くどいようですが、お伺いいたします。
  88. 左藤義詮

    左藤国務大臣 子孫、民族を愛する市町村長等に自発的な御協力をいただくことは、私どもの希望するところでございまして、ただいまのところ、私ども何ら法的な強制力を持ってやっておるわけではございませんで、これに通達を出すよう考えは持っておりません。こういう熱心な方がおありになり、それに便乗をしてこれを徴兵に持っていこうというようなことは、絶対に考えておりません。皆さんが、御熱心な国民が御協力して下さって、優秀な志願者がどんどん来て下さることを私どもは希望しております。徴兵の問題等は、私どもは責任をもって申し上げておりますので、絶対に御安心をいただきたいと思います。
  89. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 調達庁次長に伺いたいのですが、アメリカ軍が最近返還する見込みの基地の場所と数と、あと相当残る基地の名称と数がわかっておれば知らしていただきたい。それと同時に防衛庁には、アメリカの返還した基地に防衛庁が駐留部隊を作るなり、あるいは演習地として使用する計画のあるところがあったら、それをお示し願いたい。この二点を、事務的なことですから御答弁願います。
  90. 真子伝次

    ○真子説明員 不動産部長がここに来ておりますので、詳細なことを不動産部長から御説明申し上げたいと思います。御了承願います。
  91. 柏原益太郎

    ○柏原説明員 現在提供中の施設が返還になる見込みのものにつきましては、地区別に申し上げますと、北海道地区で件数にいたしまして二件、関東地区において十九件、中京地区におままして三件、関西地区におきまして七件、九州地区におきまして三件、三十四件の施設が今後返還になる見込みでございます。三十三年度現在までに返還になりました施設は、おもなものを申し上げますと、関東地区でロスコ・Mカルコーテ兵舎、長井海岸訓練所、万平ホテル、PX中央倉庫等であります。なお中京地区におきましては、守山キャンプ、キャッスル・ハイツの住宅地区、アメリカ村住宅地区等であります。関西地区におきましてはサヤンプ大津A地区がございます。その土地につきましての返還総面積を申しますと、約四千三百万坪でございます。建物が約十五万坪でございます。  なお、現在までに返還になりました施設につきまして防衛庁で使用されておるものにつきましては、防衛庁の方からお答えを願った方がいいかと思います。
  92. 山下武利

    ○山下説明員 米軍の施設が返還になりました暁におきまして、防衛庁としてこれを使用したいと考えております施設は、大きく分けまして演習場、それから部隊の入ります施設、いわゆるキャンプ、それから飛行場とこの三つになるわけでございます。現在演習場につきましては、大部分のものが解除になりまして、現在未解除として残っております。ものは北海道の島松、恵庭付近にありますところの北海道演習場、それから北富士、東富士演習場、これがおもなものであります。これはいずれも自衛隊としては、もし解除になりました暁には引き続き使いたいという意向を持っております。なお、解除になりましたところでまだ所管がえを受けておりませんところでも、引き続き使いたい希望を有しておるところがございます。  それから部隊の施設につきましては、非常にこまかくなるわけでございますが、解除後引き続き使用したいと考えておりますおもなところといたしましては、熊谷、武山、守山並びに大津でございます。  それから飛行場につきましては、これは非常に数が制限されておりますので、原則として現在米軍が使っておりますところは、大部分これを引き続き使いたいと考えておるわけでございます。未解除の飛行場で将来とも防衛庁として、もし米軍が撤退した暁には使いたいと考えておりますところは、美保、木更津、岩国、千歳、三沢、板付、入間川、横田、立川、厚木等であります。これのほか弾薬施設、いわゆる弾薬庫、それから港湾の施設、それから先ほど話がありましたレーダー・サイト、射撃場、こういう小さな施設が若干あるわけでございます。
  93. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 問題になりました相馬ケ原演習場については、防衛府としてはどうしておりますか。
  94. 山下武利

    ○山下説明員 相馬ケ原演習場は先般解除になりました。防衛庁といたしましてはこれを引き続き使いたいという希望を大蔵省当局の方に申し出まして、所管がえを受けたいと今考えておるところでございます。一方農林省の方からは、演習場の一部を開拓地に譲ってほしいという申し出がありまして、目下その調整をいたしておるところでありまして、ほぼ妥結に近づいておるところであります。
  95. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 演習場としてお使いになる御希望か、あるいは部隊の駐屯地として使用のお考えか、この点はいかがですか。
  96. 山下武利

    ○山下説明員 演習場としても使いたいと考えておりますし、部隊も置きたいと考えております。
  97. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 防衛庁長官に調達庁担当のことを……。
  98. 左藤義詮

    左藤国務大臣 どうぞ。
  99. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 きのうの新聞を見ますと、沖縄の土地問題、全島民あげて反対しておりました土地の一括払いの件が、何かアメリカ側でも譲歩して、これは取り消すといったようなことが出ておりましたが、これはわれわれとしても非常にけっこうなことだと思いますし、そうあるべきだと思う。しかしこれは何か政府に対してアメリカ当局からそういった意向の連絡がありましたかどうか、これを伺っておきたいと思います。
  100. 左藤義詮

    左藤国務大臣 沖縄は御承知の通り、施政権を私どもは持っておりませんので、この問題に関しまして、調達庁を所管をいたしております私の知る限りにおいては、連絡がございません。
  101. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 これは非常にけっこうなことでありまして、政府としてもおそらく当間氏が来ておったようでありますから連絡があったと思うのですが、一つこの点はぜひ促進するようにお願いしたいと思います。  それから、これは前の国会でも問題にしたのですが、国会周辺のアメリカ軍のキャンプのことです。これは国会でもだいぶ問題にしたし、たびたび言っているのですが、いまだにどうも取り除く傾向もないようで、まことに残念なことであります。国の最高機関である国会の周辺に、あたかもこれを取り巻くようにアメリカ軍がなお依然として駐屯しておるということは、国民の感情からしてもこれはもうまずいことです。われわれ当委員会としても、ほとんど全員の希望のような形三たびたび政府当局に申し出ているのですが、一向その効果がない。きょうから調達庁があなたの直接の管轄に入ったという記念すべき日であります。一つそのときの長官である左藤長官が、この問題に対して積極的な働きをして、一日も早くあの施設が撤去されるよう方向へやっていただきたい。それに対してはわれわれ国会としてもどのような御協力でもしたいと思うのです。最近の国会周辺のアメリカのキャンプの撤退に関する状況の御報告をあわせて願いたいと思うのですが、これは長官でなくてもけっこうですけれども、一つ早期的対策について御答弁願いたいと思います。
  102. 左藤義詮

    左藤国務大臣 きょうから調達庁が防衛庁の外局になりますし、茜ケ久保委員から御激励をいただきましてまことに感激をいたすのでございますが、国会周辺のことにつきましては、かねて国会の御意思もございまして、調達庁としても努力いたしたのでございますけれども、先般私が来訪されましたスミス在日米軍司令官に対して答訪をいたしました日に、何と申しますか、私はコンプリメントかといって冗談にあいさつしたのですが、国会周辺のリンカーン、ジェフアーソン、パレス・ハイツというものはできるだけ早く返したい。ただし、ジェフアーソンにつきましてはあれの代替のものをほしいようで、その方の施設を今急いでおりますので、若干時期がかかるようでございますが、ハレス・ハイツにつきましては年内、ジェフアーソン、リンカーンにつきましても代替の方が早くできますれば、私はおそらく年度内と思います。これは時期は明示されませんけれども、できるだけ早く返還したい、こういう非常に好意ある申し出を受けた次第でありまして、なお御趣旨に従いまして一日も早くさようになりますように努力いたしたいと思います。
  103. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 さようにお願いします。  それから次に、北富士、東富士、日本原、相馬ケ原、こういった返還され心基地に対して、付近の住民から農地として払い下げの申請なり陳情、そういった事態がかなりあるわけであります。また私どもも現地に行って農民諸君と話し合って、そういったことに対して協力してきておるのでありますが、こういった地区の現在まで大蔵省がとってこられた、いわゆる農地として払い下げするという決定をされた場所があったら、その場所、面積、並びに現在なお進行中のところは、進行中でけっこうですが、一つ報告願いたいと思います。
  104. 谷川宏

    ○谷川説明員 お答え申し上げます。東富士、北富士、その他提供中の国有地が返って参りまして、地元の農民から農地として払い下げの希望があるところは相当の数がございますが、私どもといたしましては、農地として地元の農民に払い下げすることが適当であるかどうか、国防上の見地から防衛庁が使用することがいいかどうか、あるいはまたその他いろいろな航空施設として使用することが適当かどうかということを総合的に検討いたしまして、さらに国有財産審議会におきまして学識経験者等の意見も聞きまして、それぞれの財産の用途として果してどういうものに使った方がよいかという結論を出した上で、最終的に決定することにいたしておりますが、現在までに今御指摘の地域におきまして、農地として払い下げが終ったところはありませんが、これらの問題につきましては、農林省が専門の役所でございますので、農林省とも十分協議をいたしまして、善処していきたいと考えております。
  105. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 五日ほど前の新聞に、相馬ケ原に関しては百町歩の面積を農地として払い下げが決定したような報道があったのですが、その点はただ単に新聞の報道というものか、あるいは大蔵省でそういった御決定をされましたか、あるいはそういった話し合いがなされたのか、この点いかがでしょうか。
  106. 谷川宏

    ○谷川説明員 返還財産を農地として地元に払い下げをいたします場合におきましては、大蔵省は農林省にその土地を所管がえをいたしまして、農林省から払い下げを行うわけでございますが、ただいま御指摘の地域につきましては、農林省、防衛庁、大蔵省それぞれの立場からいろいろ話し合いを進めておりまして、先ほど防衛庁の経理局長からお話がございましたように、大体話がまとまる方向になっておりますので、話がまとまり次第、早急に農林省に所管がえをいたし、農林省からそれぞれの地域につきまして地元に払い下げする手続を進めることになるものでございます。
  107. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 管財局長が参りましたので、そういうことを伺っているのですが、私が聞いたのは、具体的に新聞に出ておりましたから聞いたわけでありますが、今の説明で大体わかったわけであります。これ以上聞きませんが、最後に長官に今全国にあるアメリカの基地で、今度返還になるものがあります。その中にはかって旧軍時代にもありましたし、アメリカ軍が参りましてからも、地元の農民の土地をほとんど強制的に引き上げて使っておったものがかなりあるわけです。そういったところはもちろんでありますが、かつて国有地としてあったものでも、やはり現在の日本の農業事情の観点から見まして、かなり農地として開放すべきことが望ましい点もありますし、農民もそういった希望をたくさん持っている。こういったことからかなり強い要請があるわけです。と同時に、またあなたの方も防衛庁としてはこれは格好の演習地なり駐屯地ですから、これは私どもが反対いたしましても、あなたとしては方針としてきまっている。ですからそこに一つのトラブルがあるわけですが、歴代の防衛庁長官には、言葉をきわめて、そういう場合には一つ付近の農民の窮状もよくくんで、ただ防衛防衛の見地で国民の生活をじゅうりんしたのでは、これは防衛にならないのでありまして、やはり国民の生活の安定こそが防衛の第一でありますから、それを十二分に含んで善処してもらいたいということは言っております。左藤長官は僧職にある方でありますから、そういう点については特にお考えがあるかと思いますが、今後たびたびの機会を通じて具体な事例をあげて申し上げますが、本日は防衛庁長官として、また調達庁の担当大臣として、その両面の責任者として今後十二分な御配慮をお願いしたいということを申し上げて、私の質問を終ります。
  108. 左藤義詮

    左藤国務大臣 狭小な国土でございますので、特に食糧増産の必要を十分私どもも理解しておるつもりでございます。旧軍時代のように、軍の命令でこちらさえ都合がよければというようなことはいたさないつもりでございます。ただ私どもとして国防の責任をおあずかりいたしました以上は、必要最小限度のものはやはり訓練して精強を期したいと思いますので、その間の調整につきましては、ただいまの御趣旨を体しまして努力いたしますが、また国会の皆様方にもそれぞれ地元の御関係と十分お話し合いができますよう、胸襟を開いて御相談をいたしたい、こう考えております。
  109. 内海安吉

    内海委員長 淡谷さん、お約束の時間はあと十三分しかございませんから、そのおつもりで簡単に願います。
  110. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いろいろ各委員から質問がございました通り、自衛隊の拡張の問題については各方面からさまざまな問題が起っております。中でも演習地の問題につきましては、地元の農民との間に相当以上深刻なトラブルが起きておりまして、開拓地を演習地に転換する場合には、特にその摩擦が大きいようであります。この前の委員会で御報告を受けましたが、演習地だけでも一億坪、これ以上ふえるだろうと思いますが、そこでこの農地として日本の食糧確保の上から必要であるか、国防上自衛隊の演習地がほしいかということは、今大蔵省の方からもお話が出ました通り、いろいろ問題があろうかと思います。ただ具体的な一つの問題として茨城県の百里原でございますが、やはり開拓地を飛行場に変えるにつきまして、現在さまざまな不祥事が起っております。今後また起るだろうと思います。その場合に、農林省の方では、これは庄野説明員が言っておられたのでありますが、首都防衛上どうしてもここでないとだめだ、こういう強い御意見でありましたし、国の防衛上ここが絶対に必要だという観点があって、心ならずもこれを承認したというような実は答弁があったのであります。あの百里原の開拓地を自衛隊の飛行場にすることが、首都の防衛上どうしてもあすこでなければならないものであるかということを長官からお聞きしたい。各地においてこういうことがあるわけであります。やはり旧軍時代と同じように軍事第一主義から、この狭い国土をほとんどもう無制限に演習地や部隊の駐屯地にするならば、私は足元から非常に大きな食糧問題等から国家治安が乱される危険性があると思いますから、それでは自衛隊自体の目的と全然矛盾すると思う。いろいろ聞きたいことがあるのですけれども、まずこの一点に集約しまして、首都防衛上どうして百里原でなければならないのか。首都防衛の構想を御説明願いたいと思います。
  111. 加藤陽三

    ○加藤説明員 百里原の飛行場は、航空自衛隊の使うものとして予定しておるのでございます。航空自衛隊の現在の飛行場の状況から申しまして、やはり関東平野のあたりに適当な場所を選定したいというところからきておるのでございます。首都防衛上ぜひ必要かどうか、これは首都防衛の見地から申しましても、あの周辺にあることが望ましいことは御承知の通りであります。しかし百里原そのものがちょっとでも動いてはいかぬかと申しますと、そういうような説明はなかなかできないのでございますが、大体私どもといたしましては、あの辺に航空隊を一つ持ちたいという考えを強く持っておるのでございます。
  112. 淡谷悠藏

    淡谷委員 多分そういうふうな御説明だろうと思ってお聞きしたのですが、各地で演習地をとる場合には、当局はそういうことを言うのです。ただし農林省の受け取り方は、首都防衛上ここでなければならないからとはっきり言ったから、せっかくの開拓者を他に移しても提供しよう、こういうのですから、これは長官、首都防衛上の構想をどう立てられておるのか。またそれをどう御理解になっておるのか。その一点だけ長官に聞きたい。あとは午後にでもまたゆっくり他の関係について質問したいと思います。首都防衛に対する長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  113. 左藤義詮

    左藤国務大臣 首都防衛のためには、関東地方にぜひ飛行場がほしい、こういう私どもの立場でございまして、それには百里原が最も適当である。もちろんそう遠くないところにこれにかわるべきものがあればけっこうでございますけれども、いろいろ検討いたしましたが、関東地方で首都防衛のための飛行場という条件から申しますと、これをどうしても確保いたしたい、こういう立場でございます。
  114. 淡谷悠藏

    淡谷委員 前会農林省の方から言われました通り、どうしてもあそこでなければならないというほどの重要性はないのですね。もし近くに別なものがあれば、あの構想は変えてもいいというふうに受け取ってかまわないでしょうか。これは前会もいよいよ納得ができなければ計画変更してもよろしいという御意見があった。しかしどうしても首都防衛上あそこでなければならぬという点があれば、この答弁自体おかしいと思う。ですから今でもなお変え得るものなのか、変え得ないものなのか。変え得ないとするならば、もう少し突き詰めた首都防衛ということで、あそこに自衛隊を置かなければ東京都は守れないという根拠を明らかにしてもらいましょう。
  115. 左藤義詮

    左藤国務大臣 これにかわるべきものというのが、九州や北海道では困るのでありまして、やはり首都に近いところと申しますと、いろいろ検討いたしましたが、私どもの現在の努力では、首都防衛のための必要な飛行場として、これにかわる適当なものが見出され得ない状態でありまして、何とか御理解を得たいと努力しておるところでございます。
  116. 内海安吉

  117. 受田新吉

    受田委員 私はきのう外務省の意思が統一して今日閣議で了承されたという、国連査察団の中に日本の自衛官を入れるかどうかという問題でちょっとお尋ねしたいのですが、防衛庁の職員は、少くとも制服の自衛官であろうといなとを問わず、シビリアンという解釈はむずかしいというので、政府としては査察団の中にこれを入れないという決意をされておるようです。ところが駐在武官というのが、今アメリカその他の少数の国に派遣されている。これは外務事務官という名称を持って自衛官が行っているわけでございますが、しかしながらこれが送られた外国では、駐在武官という形で取扱いがされておると伺っております。従って自衛官たる外務事務官というものは一体どういう性格を持っておるのか。アメリカに行っておる自衛官たる外務事務官は制服を着ておる。制服を着ておる以上は、自衛隊法第四十三条休職規定、自衛隊法施行令の第五十六条の休職にされる場合というこの条項からながめても問題があると思うのでございますが、自衛官の職務を行わない外務事務官とあるならば、制服を着て向うに勤務するということは、国際的に非常に問題を起すと思うのです。従って駐在武官というものは、自衛隊としては一体どういう性格であちらに出しておるのか、純然たる外務事務官であるならば、自衛官の諸君は一切考えないはずなんです。これをお伺いしたい。そして時間もないので、あわせて率直に簡単に御答弁願いたいのは、今少数派遣されている国々は、アメリカ、フランスその他一、二あると思うのでございまするが、この自衛官を外務事務官にして派遣される、今後の方針としてできるだけ多くの国々にこれを実現させたいという御意思を持っておられるのか、自衛官たる外務事務官はもう現在程度に食いとめておきたいという御意思を持っておられるのか、それをまずお伺いしたい。
  118. 左藤義詮

    左藤国務大臣 私どもといたしましては、各国のいろいろな情勢を十分把握いたしまして、国土の防衛に全きを期したいという意味で、許しまするならばまだ出したいと存じておるのでございますが、これがどういうような法的な根拠を持っておるか、どういうような取扱いを各国でしているかということにつきましては、政府委員から一つ答弁させたいと思います。
  119. 加藤陽三

    ○加藤説明員 お尋ねになりました職員は、外務省の職員に身分を移しまして、大使館一等書記官あるいは公使館一等書記官というふうな格好で外務省に出向を命じまして、それに一等陸佐とか二等海佐というような身分を兼任させて持たせております。これは外務省の職員でございまするけれども、主として、担当しておりまする仕事は、技術その他軍事情報の収集でございます。軍事情報の収集ということは、防衛庁の防衛計画を立てまする上におきましても非常に重大な関係のある仕事でありまして、私どもとしては防衛庁の仕事の実質的内容をなすものだと考えております。そこでそれぞれの自衛官の身分を持たせますることが、各国の軍との折衝におきまして便利でございまするので、あわせて自衛官の身分を持たせまして在外公館に勤務させておる次第であります。現在はアメリカ、フランス、ソ連、それに近く英国に駐在をさせる予定でございます。
  120. 受田新吉

    受田委員 合計何名ですか。
  121. 加藤陽三

    ○加藤説明員 米国に三名、フランス一名、ソ連に一名、それに近く英国に一名追加いたします。六名になります。
  122. 受田新吉

    受田委員 そうした駐在武官、これは軍事目的で出されておるということになれば、外交官とはヌエ的な名称で、長官が仰せられる平和——法衣の上によろいを着る、心は平和であるけれども形は武装、事実上駐在武官ということになってしまう。そうしますると、これを各国にもどんどん広げたいという御意思でございましたが、できるだけ多くの国に駐在武官を置きたいという御意思を長官が今言われたわけですが、そうなりますと、各国にできるだけ多くの駐在武官を置く、しかもそれは軍事目的達成に協力させるということになりますと、たとえば今度イラクにも駐在武官を置く、シリアにも置く、エジプトにも置くというような格好に、だんだん拡張されるとなってくると思う。そうすると、そういう各国に駐在された武官が結局国連の査察団の一員に加わり得る場合も、これは形式でなくて、その国の実態を調査するために実質的に加わり得る場合があり得ると思うのです。そうすると、明らかに武官が海外に派遣されたことになる。自衛隊員たる身分は残って、海外に長期出張されたという事実上の形態がとられてくると思うのです。そうして国連の監察団の一員という、形式的にはなくても、実質的には加わり得る場合がある。エジプトやシリアの駐在武官が実態調査に乗り出すということになれば、事実上武官の海外派遣というような結果になってくると思うのです。この点は私は外務事務官という仕事の方が大きく出て、自衛官は、休職のこの条項ではなかったかと思ったのですが、両方兼任させてあるということになると、——これは「外国の政府の招きにより」という自衛隊法施行令第五十六条の規定で出されたのではないかと思ったところが、自衛官を現実に出しておる形になっておる。それを外務事務官に兼ねさせておるということになると、これは問題になると思うのです。私はそこを考えなかったのですが、これはいかがでしょうか。長官のように、できるだけ英国やほかの方へも出したい、だんだん広げたいという御意思であると、これはもう各国に日本の現役の自衛官が、海外に長期派遣、長期出張というようなことになって、この一角でくずれておりはしませんか。
  123. 左藤義詮

    左藤国務大臣 ただいまきわめて少数派遣しております者は、やはり外務事務官として参っておりまして、これが自衛官としての身分を兼ねておるということでございまして、先ほど説明員が、できれば多くと申しましたが、まだきわめてわずかな範囲でございまして、今お話のようなイラクにもレバノンにもというようなことは、とても想像のできないことでございます。しかもこれは外交上のことでございまして、その国との話であって、国連に協力する場合はまた全然別なことになります。かりにこれが数がふえましても、直ちにこういうものが監察団とかその他国連の仕事に転用されると申しますか、ずるずると使われてしまう。御心配のような海外派兵になるというようなおそれは万々ない。これは全然筋の違ったものであるというふうに存じております。
  124. 受田新吉

    受田委員 今現実に自衛官が海外に派せられておることは間違いないでしょう。
  125. 左藤義詮

    左藤国務大臣 外務事務官として派遣をされておるのでございます。
  126. 受田新吉

    受田委員 軍事目的のための自衛官という身分と、外務事務官という身分と二つの職を兼ねて行っておると、前の人事局長現在の防衛局長仰せられておる。そうすると、兼ねて行っておるということになれば、やはり自衛官が海外に派せられておるということは事実でしょう。これはいかがでございますか。
  127. 左藤義詮

    左藤国務大臣 派遣せられております身分は外務事務官として参りまして、これが自衛官としての軍事情報の収集等に働いておる、こういうことでございます。
  128. 受田新吉

    受田委員 それはどうもおかしい。今の局長とお話が違うわけです。局長は自衛官という身分もやはり残っておる……。
  129. 左藤義詮

    左藤国務大臣 残っております。
  130. 受田新吉

    受田委員 つまり外務事務官と二つの身分を持って行っておる。特に軍事関係の問題については、やはり自衛官の身分でやるのが都合がいいのだというお話があったわけです。そうすると自衛官という身分を、特にそういう軍事目的のために残しておるという意味からいったならば、自衛官が海外に派せられておるということは間違いない。これは事実上そういうことになりはしませんか。
  131. 左藤義詮

    左藤国務大臣 その通りだと思います。
  132. 受田新吉

    受田委員 そうすると自衛官が海外に派せられているということになれば、これは兵が海外に派せられておるというようなことと、——そこが全く問題がむずかしくなってくるわけですが、事実上自衛官を海外に派しておることは間違いない。海の外へ行っておる。これをだんだん拡張していくという長官の方針であるということになると、イラク、レバノン等には派しない。しかしそのほかの国にはだんだん拡張するという御意思であるとすると、海外派兵をしないというのはその一角からくずれて、事実上は海外に派せられていることになる。そうなるとこれがまた広がって、欧州地区に派せられた自衛官が、ある目的地に集結して、会議をするという場合も起ってくる。形式的な問題は抜きにして、実質上の問題としては、国連監察団の一人としてそれに参加し得る場合も起ると思うのです。実質的には実態調査に行こうという場合が起る。それがまた重なってくる危険がある。そこで長官にお尋ねしておきたいのですが、事実上自衛官が海外に派せられておるという今の御解釈であるとするならば、紛争解決のための派兵の場合が海外派兵であって、そのほかの場合は海外派兵でないという解釈になるのでしょうか。
  133. 左藤義詮

    左藤国務大臣 ただいま外務事務官としての派遣のことでございましたが、そのほかにも自衛官が研究調査等のために海外に相当派遣されておりますが、これは全然武力を行使することを目的としておりません。私どもは海外派兵ではないと存じております。それから国連に協力いたします場合には、全然別個の問題でございまして、自衛隊員がただいま海外出張しておりますのは、自衛隊法の規定によりまして、自衛隊の仕事の必要上行っておりますことでありまして、これが国連に協力するということになると、全然筋が違って参りますので、この場合は、現在の自衛隊法では不可能であるということで、本日閣議において外務大臣の国連に対するお答えを私ども了承いたした次第であります。これは全然別個のものであると解釈いたしております。
  134. 受田新吉

    受田委員 研究のために、アメリカの陸海空各学校への日本の自衛隊の将校が行っておる。そういう場合にあちらの学校教育の目的のために、向うの学校が生徒、学生を引率して行くというようなことが起り得ると想像される。その場合にはもちろんあなたのお説の通り、日本としてはそれに参加を断わるという態度になりますね。
  135. 左藤義詮

    左藤国務大臣 もちろんでございまして、研究、調査のために参っておりますものが、直ちにそれが国連に転用される、視察に行く、さようなことは想像されませんし、もしさようなことの要求がありましてもこれは拒絶いたします。
  136. 受田新吉

    受田委員 私は自衛官と外務事務官とを併職さしておるということに問題があると思う。自衛官たる身分は、あちらで軍事目的達成のために派遣しておるということになる。一方では外交に協力させるための外務事務官でもある。この二つの人格が一本で向うに行っておる。ここは一つ現実の問題として考え直さなければいけない。外交目的のためならば、外務事務官だけに身分を切りかえていく。自衛官は特別職であり、外務事務官は一般職一般職と特別職と混合してやることは、公務員法に関しても非常に問題があると思う。これはいかがでしょうか。これと類似の、官と職とが混同されたような格好でなされた、特別職と一般職との混合形式をとられた職種はほかにありましょうか。その問題も一つ御答弁願いたいと思います。
  137. 加藤陽三

    ○加藤説明員 一般職と特別職との兼任の問題につきましては、私ども研究したのでございますが、私どもは法制上できるという考えを持っております。ほかの役所のことは存じませんけれども、現在防衛庁におきましては、今おっしゃった防衛駐在官のほかに、飛行機の検査等につきまして若干航空関係の技術の職員を通商産業省の職員と兼務さしておる例はございます。
  138. 受田新吉

    受田委員 これはいずれまた人事院総裁にも聞かなければならぬ問題なんですが、防衛庁だけがそういう独断で——根拠法は何の法律ですか。どこに自衛官とそうした他の一般職とを兼ねさせる根拠法があるのですか。
  139. 加藤陽三

    ○加藤説明員 これは人事院の方とも打ち合せした結果だと思いますが、その辺のところはまた調べまして申し上げます。ただ私の承知している範囲内では、これを禁止しておる規定はないように思います。
  140. 受田新吉

    受田委員 そういう禁止規定がないからという勝手な解釈でいけば、何事でもみなできるわけです。そこに一つ問題があるわけなんです。私は防衛庁が独断専行——実は外務事務官という身分で行って、しかもこれは休職で行っておるのじゃないか。この自衛隊法施行令第五十六条の規定を用いたのではないか。ところが今あなたの言葉を聞いたら、これは全く穏やかでない。自衛官として行っておるということになれば、これはもう明らかに自衛官を海外に派遣したという問題になってくるわけです。それを長官の御方針では、駐在武官たる自衛官は今後各国にどんどん広げたいという御意思を今表明された。そうすると私はここから一つの危険が起るということを申し上げたので、きのう外務省の了解事項では、防衛庁の職員を入れない、シビリアンであっても、つまり防衛庁の文官でも入れないということを決定されたのですね。これは問題になるというので遠慮されたのですね。
  141. 加藤陽三

    ○加藤説明員 その問題についてはまだそこまで行っておりません。今度要求されましたのは、私どもの方で言えば一尉または三佐というものの要求でございますから、いわゆる自衛隊員の士官でございますので、これに対しましてはお断わりをするということでございます。
  142. 受田新吉

    受田委員 私は十分過ぎましたので、長官のお仕事に支障を来たしては国際信用を失いますから、これで質問を終りますが、防衛庁の職員というものは外国ではもう明らかに軍人と見ておるのです。だから先般増原さんが行かれたときも、日本の国防次官が来たと向うは新聞に書いておるのです。国防次官、そういう印象をみな持っておる。つまり国防軍と見ておる。今の統合幕僚本部議長の林さんと向うの統合幕僚本部議長のラドフォードと同じであるような見方をしておる。そういうときに日本から自衛官が向うに行って、たとい外務事務官を兼ねておるにしても、外務事務官というのは形だけであって、実際は自衛官としての軍事目的のために行っておる、自衛官の仕事のために行っておる、こういうことをはっきりしておかないと、今自衛隊というのは、国際的にはどう見られても、日本としてはまだ憲法違反の疑いがあるというもので、あなた方自民党でも遠慮しておる段階ですからね。このときに、国際的に思い切って軍事目的で出すというよう考え方に勇敢に踏み切っておられるというところに問題があると思う。今後増加されて各国に広げられる場合においても、そこを考えておかなければならぬということを十分御注意をしておいていただいて、きょうはこれでお帰りいただくことにいたしましょう。
  143. 内海安吉

    内海委員長 この際お諮りいたしますが、防衛庁長官に対する質問は本日はこの程度にいたします。  なお、きょうは石山權作君並びに淡谷悠藏君より人事院及び調達庁に対する質疑がございますが、午後継続してやられた方がいいと思いますが、いかがでございましょうか。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  144. 内海安吉

    内海委員長 では継続して午後も質疑を続行することにいたします。  暫時休憩いたします。     午後一時十九分休憩      ————◇—————     午後二時十五分開議
  145. 内海安吉

    内海委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石山權作君
  146. 石山權作

    石山委員 人事院総裁に先ほどから私、勧告施行期日が明記されない、施行期日をも勧告するのが恩情のある、思いやりのある、しかもいわゆる適切妥当な勧告を生かす一つの中身でもある、こういうふうに何回も申し上げておりますが、どうも総裁の御答弁にはしかるべくなるべく早くというふうに勧告するのが正しいのだ、在来の慣例にもあるのだ、こういうふうになって、さっぱり問題が進んでいきませんので、とりあえずそれはおきまして、内容をもう少し、中へ入ってみたいと思います。  その一つとして、官公労の方々不満考えているのは、今度の勧告案によって職能給と申しますか、職階給と申しますか、上と下との差がだんだん強くなりつつある、その間隔が顕著になりつつある、こういう点も不満である、こういうふうに申し述べているわけですが、人事院は初任給、特に大学卒業生に対して、約千円の引き上げを行なったわけなのですが、その点に関しては十分自信があっておやりになったのでございますか。それもまたこの勧告文の説明の中にあるように、自信というよりもむしろ民間給与形態がかくかくであるから、それに準じて、しかもかなり下回って勧告をしておる、格付をしたのであるというふうな説明の一文が見えるわけですが、自信よりも、適切妥当よりも、むしろ在来の考え方の民間給与基準にして勧告した、こういうのでございますか、その内容について一つ御返答をお願いしたい。
  147. 浅井清

    浅井説明員 第一点のお答えになりますけれども、上と下とが離れてきたということは全然ないのでございます。ことに今回は初任給の引き上げに伴いまして、一万七千三百円、一万八千円以下のところに若干ずつ増額いたしましたから、下の方がよくなっておりまして、むしろ上薄下厚の給与体系になっておるのでございまして、これは社会党も御賛成になるだろうと私は考えておる次第でございます。  それから第二点は、大体民間にはまだ及ばないかもしれないけれども、大学卒、高校卒、短大卒、これだけぐらい上げる、まずこの辺でよかろう、こう考えてやった次第でございます。
  148. 石山權作

    石山委員 給与の担当の官庁に給与のことなどをあまり言うと、むしろおかしいかもしれませんけれども、われわれのよう民間にいていろいろ給与体系など見ている者からすれば、今の日本の勤労者の給与体系を見てみますと、まだほんとうの意味の生活給というものが確立しておらない。生活給、最低賃金の上にいろいろな職能的な、才能的なものが積み重なっていくということであれば、これはお役所機構であるいは勤務評定をするような格好で格付をされてもやむを得ない点があるのでございますけれども、実際の意味の生活給がまだ確立しない以前において、給与が大へん荒っぽい形で職階給に移行されつつあるというのが現状でございます。しかもこれは御承知のように生産性向上運動とからんで、にっちもさっちもいかない形で、民間労働組合が受け取っている格好でございます。この民間労働組合が受け取っている形をば、公務員給与をば厳格に、しかも科学的に長い間の伝統を持って勧告をする人事院が、そのまま採用しているとすれば、民間給与体系が不十分なものである、こういうふうに考えて闘争を組んでいる労働組合に対して、人事院の今日の勧告は、まるで民間の経営者の代弁を、この給与体系が正しいものであるというふうな格付をする表明をしたような格好になるのではないか。これはなぜかと申しますと、在来から私たちが経験していることでございますが、何と申しましても官でおやりになることは、最終的には正しいものだというふうな観念がわれわれの中にあるわけでございます。ですから給与の問題に対して、たとえば寒冷地手当、薪炭手当等の勧告に対しても、これは民間に及ぼす影響が絶対な価値を持つと同じに、今度の勧告給与体系についても、一つの力を持つわけです。そうすると今度のはどうも私らに言わせれば、民間労働組合の反対しておることを、民間の経営者が無理に押しつけていることをば、人事院がそれは正しい給与体系であるというふうな表明づけの給与勧告を行なったのではないか、こういう懸念を持つわけでございますが、そういうことはありませんでございますか。
  149. 浅井清

    浅井説明員 お言葉ではございまするけれども、人事院といたしましては、公務員法に従って勧告するより仕方がないのでございまして、公務員法には、民間給与と均衡を保って勧告を、給与を定める、かようになっておるのでございまするから、その民間賃金に対する御批判はいろいろございましょうけれども、人事院といたしましては、現在行われておりまする民間賃金との均衡を保つ、これしか方法はないのでございます。  第二点といたしましては、非常に荒っぽい職階給というようなことでございまするけれども、私どもはさようには考えていないのでございます。  第三点といたしまして、生活給の上に職階給を積み重ねるというようなお言葉がございましたけれども、それはその最低賃金をどの辺にとるかということによって決する問題だろうと考えております。人事院といたしましては、ただいま標準生計費というものを研究いたし、これによって一応の目安となっておりまするが、もしも最低賃金法というようなものが施行されるというようなことになりますれば、これはひとり公務員だけの問題ではなく、官民を通じてやらなければならぬ問題でございまして、その暁にはこれはまた別問題になろうかと思います。
  150. 石山權作

    石山委員 私、今の総裁の御答弁についてちょっと疑問を持つものでございますが、それは民間給与に準じて、公務員給与をば勧告する。これは公務員法に規定されていることだということは、私は一体何をさしているか、全体のワクをさしているのか、個個のこまかいケースまでもその内容を規定して指さしているものかどうか、こういう点もこの際お聞かせ願いたいと思います。
  151. 浅井清

    浅井説明員 民間給与にも職種によって種々の区別がございます。公務員にも職種によって種々の区別がございます。でございまするから、その職種ごとにこれを考えまするか、全体を一つとして考えまするか、こういう問題になってこようかと思いまして、今回の報告の中には、その両方をあげておるわけでございます。ただし公務員の中には、あるいは警察でございまするとか税務でございまするとか、民間に同様の職種のないものもある。しかもそれらは非常に高い給与を取っておる、こういうものもあるのでございまするから、これは究極のところにおきまして、全体を一つとして、およそどれほど高いか低いかということをきめるよりほかないように思いまして、その結論が四%の開きがある、かよう報告の中に書いておる次第でございます。
  152. 石山權作

    石山委員 そうしますと、民間のいわゆる事業形態、それと官庁の事業形態と似ているものと似てないものが当然あるわけでございますが、似ているものは、これは簡単にやることができるかもしれません。では似てないものは一体どこに基準を置くというわけでございますか。
  153. 浅井清

    浅井説明員 これは民間との基準のとりようがないのでございます。これはもう厳然たる事実でございまして、税務とか公安職とかというものは、民間に同種のものは、これはどこにもない。それでこれは全体を考えましてこれを調整する、これよりほかにいたし方がないように思います。
  154. 石山權作

    石山委員 このいただいた表から見ますと、民間は、行政部門の方が一〇三という係数、これでございます。この方でございます。こっちの官庁の方は九八・九あるいは七六・九、こういうふうな見合いは、一体どこで調整をなさって、今回の勧告をなさったのでございますか。
  155. 滝本忠男

    ○滝本説明員 ただいまの人事院報告の別表第一及び第二の問題でございまするが、人事院が今回民間給与調査をいたしましたところ、民間におきます公務員の行政職俸給表(一)に相当いたしまする職種、すなわち俸給表別に民間と対応いたしまする民間における対応職種というものを出してみまして、そうしてそれを、このいわゆるわれわれのやっておりますフィッシャー方式というもので、各俸給表相当職種間の高さというものを調べてみたものが別表第一でございます。御指摘のように、民間におきましては、行政職俸給表(一)に相当しまする職種は、公務と民間と比較し得る職種の範囲内においては平均より高いのであります。また同様のことを、これは公務でございまするので、資料も十分ございまするが、いわゆるフィッシャー方式によって各俸給表間の高さを比較してみますると、別表第二表に掲げておりまするように、行政職俸給表は平均より低い。これは事実でございます。しかしごらん願いますると、医療職俸給表のごときは、これは民間においては、医療職俸給表目、すなわち看護婦でありますが、これは民間においては、平均よりよほど低いのであります。ところが公務におきまして平均より高い、こういうようなことになっております。これはやはり公務における従来の給与のきめ方が、種々の事情が相重なりましてこのような結果になっておるのでございます。このバランスというものを一応問題にする余地はございますけれども、今直ちにこういう関係にありますものを民間にそのまま合わすということにいたしますならば、公務におきまして民間より高いものを引き下げなければならぬというようなことに相なるのでありまして、そういうようなことは現実としてはどうしてもすることができない、こういう関係になりまして、それで先ほど総裁から申し上げましたように、われわれはそれでは公務と民間とを比較する場合において、公務において民間と比較できないような税務とか公安職種、こういうものを除きまして、共通の比較し得るものだけでやってみた場合に、一体公務員民間とどれくらいの開きがあるかというふうに見て参りますと、四二%程度開きがあるということに相なります。従いまして今回は各俸給表をそれぞれ民間の対応いたします職種と合わすということはいたしませんで、主たる問題点が初任給でございますので、初任給の改正ということをいたす、そうして初任給の改正に従って一万七千四百円くらいまでを調整をいたすという措置をいたしたのでございまして、これは各俸給表を通じて一定額でやっております関係上、従来は率で各俸給表間のバランスができておったのでありますから、それよりは多少違った行き方に相なっておる、このよう事情でございます。
  156. 石山權作

    石山委員 説明を聞いておると何だか妥当なような気もいたします。妥当のような気もいたしますけれども、官公労の諸君が自分の身になってみた場合に、なかなか納得しない点を五つ六つあげておるわけですが、その中に今私の言っておる職階給、職能給の色が濃過ぎる、こういう点も力説されているわけでございます。それから公務員方々が二千円一律アップということを要求したのに対して、これはアップは認めない、今回そういうふうに言っていますが、この一律ベース・アップということは、結局私たちのいう最低賃金制の一つの格付だと考えております。やはりこの点では、最低賃金の生活給が格付されないというところに一つ不満があるだろうと思っております。もう一つは、午前中も申し上げたところのいわゆる勧告施行期日が明記されていない、これら大きくいえば三つくらいが不満要素になっているのではないか。私はこれからの人事院の将来の機能のために考えるわけでございますが、やはり民間民間の独自性、公務員には公務員としての体面維持、機能、その他によっておのおの区別があるわけでございます。もちろん公務員方々は税金によってそれぞれの給与をいただき、恩給等も支給されるわけでございますけれども、それはそれに見合うような活動を日ごろしているからこそ、国民は喜んで税金を差し上げて、給料を差し上げているわけなんです。ですから何らその点にはおもねることはない。よりよく与えてよりよく働いて、公務員としての態度、襟度を持っていただきたいというのが、われわれ税金を納める一般国民の気持だろうと思います。そうなりますと、公務員法の一部に規定されたことのみに考えをいつも伏せておいて、そこにのみ考え方を持っていって、新しい給与法というふうなものを研究しようとしないのか、意欲がないのかわかりませんが、在来のままを安易に踏襲するということは、これは私は熱心に公務員給与考えているお役所のやることではないような気がいたします。それはもちろん法律に規定されたことですから、法律の中にあって正しく運行されなければならぬというのが、人事院、人事官の任務でございましょうけれども、反面その不備をば将来国会等において法律改正が行われるという建前があるとするならば、そういう不満があるとするならば、それに対応したような準備もおのずからなされていなければならないと思いますが、そういう点では給与局あたりではどういうふうに見ていますか、質問申し上げます。
  157. 浅井清

    浅井説明員 私から先に答えさせていただきますが、第一点といたしまして今度の勧告が職階制を特に強化している、これは全然さようなことはございません。そもそも今度の勧告は、現在行われておりまする一昨年の勧告が実現いたしましたものを基礎にしておるのでございますから、特に職階制を強化するなどということはない、のみならず下の方へ幾らかずつ積んでいっておりますから、むしろ下の方が厚くなっておるのでございます。そうして現在の俸給表は、もと十五級の職務区分に分れておりましたものを最高八つに縮めておるのでございまして、俸給の幅は長くなっておるのでございますから、ただいま仰せられたように特に職階給を強化するというようなことは考えられていないのでございます。  それから第二は、二千円のベース・アップの問題でございまするけれども、現在の公務員給与は今年の三月末におきまして一万九千円少しになっておるのでございます。ですからここで二千円ベース・アップいたしますということになりますれば、一〇%以上のベース・アップをするということになっております。官民の開きは四%でございまするから、人事院はこれをとらなかったのでございます。これは官公労の諸君の主張しておる二千円のベース・アップというのは、非常に大きな事業所だけからとった数字基礎になっているように私は承知いたしております。ところが人事院は、五十人以上の事業所を基礎として計算をいたしておりますから、この勧告ような次第になったと思うわけでございます。
  158. 滝本忠男

    ○滝本説明員 先ほど御指摘のように、給与制度というものがその場当りでやっておったのではいけないので、やはり研究されなければいけないのではないかというお話でございますが、事務当局の給与局といたしましても、御指摘のようにやはり公務員法にのっとりまして、あるべき公務員給与制度というものは絶えず研究いたしておるのでございますが、勧告という場合におきましては諸般の事情がありまして、たとえば一〇%官公労がかりに要求しておるというような場合におきましても、現実の差が四%しかないというような場合におきましては、これはやはり四%の範囲内におきましてものを考えるということになるのでありまして、やはり部分的にこれを是正するという措置しかとれないという場合もあるのでございますが、われわれといたしましては、あるべき姿について十分研究を進めており、今後もやるつもりでございます。
  159. 石山權作

    石山委員 皆さんの御説明を聞いていると、人事院の意のあるところがお前たちにはわからぬかというふうになりそうでございます。よく内容を説明すれば、あるいは皆さんの意味がわかるかもしれません。それで勧告した後の行政措置でございますが、その内容をば官公労の方々に、つまり人事院の皆さんの意のあるところが了解されるように行政措置をとったかどうかということを聞きたい。
  160. 浅井清

    浅井説明員 これは勧告と同時に、なるべくすみやかにという意味におきまして、直ちに官公労に対しまして、この勧告書その他の付属資料を渡し、説明会を催して、十分意のあるところを説明いたしております。
  161. 石山權作

    石山委員 勧告されてから約二週間たつわけですが、その反応はいかがでございますか。
  162. 浅井清

    浅井説明員 その反応という言葉意味でございますけれども、私は別にこれに対して特に抗議を受けておらないのでございます。
  163. 石山權作

    石山委員 では人事院の方の勧告を受け取った政府側について御質問いたしますが、勧告が十六日に発表されまして、赤城官房長官と松野総務長官の二人がこの案について話し合ったようでございます。それを要約しますと、勧告は尊重するのだ、しかもその結論は二週間以内に出す、こういうふうな発表の仕方を新聞でなさっているわけでありますが、総理府としてはどういうふうに……。
  164. 佐藤朝生

    ○佐藤説明員 人事院勧告につきまして、政府におきましては、これを十分尊重する方針のもとに現在いろいろ研究しております。ただいま御質問の点につきましては、二週間以内ということを総務長官があるいは申されたかもしれませんが、現在のところまだ全部の検討が終っていないような状態でございまして、なるべく早く結論を得まして、公務員給与改善に努めたいと考えております。
  165. 石山權作

    石山委員 松野長官はあまりしゃべり過ぎるから、岸さんから籍口令をしかれたためにきょうは出てこないのかもしれませんが、いずれにしても二週間以内という言葉を使っております。それからいつもそうなんですが、尊重するとか善処するとかいう言葉をよくお使いになる。人事院総裁も、先ほどからしかるべくなるべく早くという言葉を使っておるのですが、なるべく早くということの一体中心は三十日か三十五日かという——私はいやみを言うわけですが、尊重するというのは、都合のいいところを尊重して都合の悪いところは切り捨てるという尊重の仕方もあるわけです。全体の八割だけしか尊重しないという尊重の仕方もある、百パーセントまるまる尊重するという尊重の仕方もあるわけです。尊重はするけれどもというふうな前言葉を置いて、そして七掛くらいしか実施しなかったというのが今までの例だと思う。それでたまたまこの前の石田労働大臣のときは、お互いさま権利と義務は守ろうなどといって、勧告を全部施行する、そうしたら団体交渉できめた前貸金だといって棒引きをしたりして物笑いになったような経緯もあるが、いずれにしてもこの政府の言う尊重、なるべく早くということは、一体どこら辺を中心にさしておるか、一つ御説明を願いたいと思います。
  166. 佐藤朝生

    ○佐藤説明員 ただいま申し上げました通り政府におきましては人事院勧告につきまして、十分尊重するという方針のもとにやっておるのでございますが、人事院勧告が初任給の引き上げ並びに期末手当の増額、この二つの方面にわたっておりますし、この二つの方面につきましてはいろいろ財源を要しますので、財源の措置ができてからこれが実施をするという段取りになるかと思います。そういう点につきましても財務当局とも十分打ち合せをとげまして、その結論を得たものから実施したいと思っております。
  167. 石山權作

    石山委員 けさほど私は人事院総裁に、なるべく早くということだけではいかぬ、勧告施行期日をも勧告しなければこの勧告内容は生きてこないのだ、適切妥当という言葉は生きてこないのだ、こんなふうに言っているのは、政府が現在とろうとしている新しい経済政策が、インフレを呼びそうな傾向にあるわけでございます。それがあなたの方のように尊重してなるべく早くなんと言っているうちに、もし景気対策で国内市場を刺激するようなことがあれば、必ずやこれは物価上昇を来たすということは今までの例からしても明らかなんです。そうするとこれがずっとおくれていくような格好になりますと、せっかくの賃上げが生きてこなくなる。それも心配の一つでございますし、それからさかのぼってやっていただくということになればなおさらよろしいのですけれども、なかなかそれが行われないというのが私は財政的な一つと重荷だと思います。そうしますとやはりいろいろな経緯がありましても、一日も早くやってもらいたいという気持は、受け取る方からすれば当りまえのことでございます。またわれわれのようにそれに注目している者から見れば、一つの安心感が労使間に生まれるものだと考えているものでございますから、まだ研究中であるとかいうことのみでは、この場合あまり妥当なお言葉ではないのではないか。ある一定の目標を示すという誠意くらいあってしかるべきではないか。おそらく大蔵省その他を通じてそれぞれの官庁で計数はもうきまっていると思います。予備費でまかなえる金額であるのかどうか、新しい国会に補正予算を組まなければならないのであるかどうか。そういうふうなことはおのずからもう発表していい段階にきているのではないかと思いますが、その点も一つ御説明をいただきたいと思います。
  168. 佐藤朝生

    ○佐藤説明員 お答えいたします。ただいまお尋ねの件でございますが、計数的の問題につきましては、目下私の方あるいは大蔵省あるいは自治庁等におきまして計算をいたしております。それがどういうふうに予算に影響するか、既定予算でやれるかあるいは予算を組まなくてはいけないかという点三つきましても研究しております。研究ができまして結論を得ましたならば、あるいは早い機会にその一部でも実現ができるのじゃないかと考えて研究しております。
  169. 石山權作

    石山委員 早い機会という言葉について一つお聞きしたいのですが、これは人事院の方にお聞きします。勧告を受けて政府が一番早く実施した期日、一番のろのろやって勧告の日から遠ざかって実施した日を一つお聞かせ願いたいと思います。——その間に佐藤さんに伺います。なるべく早くというふうな言葉が一体何をさすかと私が疑問に思っているのは、だんだん傾きつつある政府施行期日は来年という言葉が私の持っている切り抜きに入っているわけなんです。そうしますと、あなたのおっしゃるなるべく早くというのは今年以内ではないわけですか。そこら辺がまだわからぬのです。臨時国会、通常国会というふうに、われわれ国会議員にとっては一つのめどのある立場があるわけですが、それさえもまだ見当がつかぬということでありますか。
  170. 佐藤朝生

    ○佐藤説明員 先ほどから申し上げております通り、できるだけ早く結論を得たいと申し上げておりますが、もちろん結論を得まして臨時国会に出すことができますれば、臨時国会に出すつもりであります。
  171. 内海安吉

    内海委員長 どうです石山さん、この程度で……。
  172. 石山權作

    石山委員 全く水かけ論だから飽きてしまったんだけれども、計数的なことでございますが、これはこのたびの三十日の寒冷地手当、石炭手当、薪炭手当の勧告でございますが、前に総裁が約束の通り勧告をしていただいたことに対しては、それぞれの地方では感謝していると思います。ただしこの中にこういうことがあります。この半ぺらの方の2に「八月末日に支給すべき石炭手当については、石炭の価格等の実情を調査した結果、今回は新たな勧告を行わないこととした。」、これは結果でございまして、どういう内容でこういうふうにおなりになったかということを一応説明していただきたいと思います。
  173. 浅井清

    浅井説明員 給与局長から説明いたさせますけれども、それは新聞発表の文章でございまして、勧告文ではございません。勧告文には石炭手当のことは何も書いてありませんので、寒冷地手当だけ申し上げたのでございます。ただ石山さんがさいぜんからなるべく早くということを気になさっておられますが、その勧告にはなるべく早くとも何とも書いてないのでございます。しかし私の見通しといたしましては、この八月三十一日に支給されるものからそのようになるであろう、かよう考えております。
  174. 滝本忠男

    ○滝本説明員 石炭手当につきましては人事院は本年も例年通り、北海道におきます暖房用石炭の販売量調査をやったのでございます。その結果によりますると、昨年に比べまして塊炭、中塊炭、粉炭とございますが、塊炭並びに粉炭の使用量が減りまして中塊炭の使用量がふえておる。その結果、カロリーにおきましては昨年より平均カロリーは上っておるのでございまするが、全般的に炭価が下っておりまして、今年われわれが計算をいたしてみますると七千百三十円程度になるのでございます。昨年七千百五十円という勧告をいたしましてこれは実現しておるのでございますが、それを今直ちに改める必要はない、このよう考えまして勧告をいたさなかった次第でございます。
  175. 石山權作

    石山委員 これで終りますけれども、私たち給与というものはうそ偽わりがあってはならぬと思う。私たちが絵にかいた御飯を食べてもおなかが一ぱいにならないと同じことで、給与勧告の尊重ということは、人事院勧告をよく生かすということが尊重の建前だと思う。ですから、人事院勧告は三月末日を中心として基礎数字を練った案だと私考えておりますが、そうしますとなるべく早くということは、あるいは尊重するということは、そこら辺を中心として政府が十分に尊重をして、なるべくではもう私はいかぬと思うのです。早く実施するというふうに希望いたしまして私の質問を終りたいと思いますけれども、佐藤さんの方からもう一ぺん政府意見を聞かせてもらえれば幸いだと思います。
  176. 佐藤朝生

    ○佐藤説明員 人事院勧告につきましては、先ほどから申し上げております通り、今回の給与勧告並びに寒冷地手当の勧告につきましても十分尊重いたしまして、早急にそれが実施されるように措置する方針でございます。
  177. 石山權作

    石山委員 終ります。
  178. 内海安吉

    内海委員長 それでは受田新吉君。
  179. 受田新吉

    受田委員 どうせこの法案が出される時期が来ると思いますので、その際詳細にお尋ねを繰り返すことにして、きょうは総裁もいささか御不快の趣きを承わっておりまするので、この重要な段階で総裁の御健康に害があってはいけませんので、ごく簡単にお尋ねをいたします。  私は今度の勧告内容報告された文章を拝見をいたしまして、ごくありふれた形の報告及び勧告であることを確認をするものでございますが、ただ今度の勧告の方に示されている重要点が、初任給の引き上げと期末手当の増額でございます。その初任給の引き上げについて私は一つの疑義を持っておるのでございますが、せっかく出していただいた説明資料の中にも、民間給与公社の職員の初任給などもこれに示してあります。ところが今度お示しになられたこの初任給をこういう形で上げなければならないという理由に、民間においても最近において特に初任給がかなりの上昇を見せておるという言葉があるわけです。この言葉によりますと、最近においてかなりの上昇ということになりますと、去年ないしおととしはそうなかった、ことしになって特に上昇を見たというような印象を与えられるのです。ここへ示されている数字は別として、この初任給が民間公社などにおいてすでに相当上昇をしているという現象は今までにもう起っておった、ことしになって急に起ったものではないというような私は見方をしているのでございまするが、去年及びおととしにおいて初任給の引き上げ措置がとられなくて、ことしになってこれを急に思い立たれたというような印象を受けておるのでございまするが、ことしになって特に初任給を上げなければならないようになったという論点を十分御説明ができますでしょうか。
  180. 浅井清

    浅井説明員 全部ベース・アップの方式をとりますときには初任給も上げてきたのでございますから、これは問題がない。おととしの勧告におきましては号俸調整の処置をとりましたので、初任給を上げませんでした。それで今回は取り残された初任給を上げる。最近と申しますのは、そのように何もことしになって民間の初任給が急騰した、そういう意味ではないのでありまして、もう少し長い期間において申しておるのでございます。なお給与局長から御説明いたさせます。
  181. 滝本忠男

    ○滝本説明員 ただいま総裁が申されましたように一昨年の俸給表の改正のときにおきましては、いわゆるべース・アップ方式をとりませんで、現在おります人の給与改善をいたしますために一号昇給、三ヵ月昇給期間の短縮というような方法でやった次第であります。従いまして、現に在職いたしまする公務員給与の改善を受けたのでございまするけれども、俸給表の金額が変えてございませんために、初任給はそのまま据え置かれたわけでございまして、その後に入って参りましたいわゆる新入者は、その初任給の額を受けておるわけでございます。そういうわけでこの初任給は据え置かれた次第でございます。最近調べてみますると、やはり民間公務員との間にも相当の較差ができておるという実情でございますので、初任給に重点を置きまして、それを重点といたしまして、それに続く号俸の調整をいたした、このような次第でございます。
  182. 受田新吉

    受田委員 その年々の給与改善の方式に重点の置きどころが違う、号俸調整に努力するときもあれば、初任給の引き上げに努力することもある、またベース・アップ方式によることもあるというようなことになると思うのです。そうなるとここに俸給体系というものに、この場その場の場当り的な措置がとられるために、体系そのものが一貫した主張を通すことができなくなるおそれがある。現に今度の初任給改正措置によりまして、行政職の一に当る俸給表を拝見いたしましても、初任給が七等級で千円上ると同時に、それから漸次逓減方式で九百円、八百円というような間差が縮まっておる。そうするとこの俸給表全体を見ると、今度直された部分を何かそこでこそく手段的な修正を加えたような形になりますので、俸給表の体系というものに一貫した主張をとることができなくなる、これはもうやむを得ぬ措置とは言いながらも、何だか公務員給与というものが首尾一貫した主張を貫くことができないというおそれがあると思うのです。こうしたその年々の力の入れ方によって、初任給を引き上げてみたり、一号調整をしてみたりというような格好になり、せっかく人事院考えられている公務員給与体系の適正化というものに、どこかに波の打ち方の高いところもあり平板なところもあるというような、不均衡が起ってくると思いますが、これはやむを得ぬとお考えでございますか。
  183. 浅井清

    浅井説明員 これは給与政策の問題でございまするから、そのときどきに適当と考えた措置をとるより仕方がないと思っております。しかしわれわれは今受田さんの御指摘になりましたように、全体の俸給体系にひびの入るようなことは絶対にしていないつもりでございます。今回の初任給の引き上げにいたしましても、それに順応いたしましてある程度までを幾らかずつ積み上げて、全体としてのバランスを保つようには考えておるつもりでございます。なお給与局長から御答弁いたさせます。
  184. 滝本忠男

    ○滝本説明員 ただいま総裁から申された通りでございます。もともと俸給体系におきまして初任給が非常に低かったのでございますから、その辺を是正したということになっておるわけでございます。ただ初任給是正でございますから、全体の体系としてはおかしくないのでありますけれども、多少部分的に無理ができるということは、やむを得ない点もあろうかと思いますが、全体といたしましてはバランスのとれたものになるように、われわれとしては配慮いたした次第でございます。
  185. 受田新吉

    受田委員 部分的には無理が起ることを局長も御容認になっておられるようでありますが、その部分的な無理な個所も何かの形で直していくような努力をしようと思えば、やはり予算の全体のにらみ合せも十分考えて、俸給表の全体の体系を根本的にやり直す方式を、いずれかの機会にとらなければならない。こういうやり方をしていくうちに、やがてまた中だるみという問題が起ってくる。あるいは最高俸給額の引き上げというようなことが起ってくる。その局部々々の修正で、最初考えてきた給与体系に非常な無理が起ってくるおそれがあるわけです。これをどうして避けていくかという、ここに人事院としての給与政策の問題があると思います。過去においては号俸調整をやった、ことしは初任給、来年は中だるみ、こういう行き方でその年々の力の入れ方によって変えていくということは、給与政策として見るということになるとうなづき得ない節もないではないですけれども、給与体系を適正化させるという考え方からいったならば、適当なときに全体の調整をとる必要が起ってきはしないでしょうか。これはどうでしょうか。部分的な無理を直す時期が必要であるとお考えになりませんか。
  186. 浅井清

    浅井説明員 これはそのときどきに悪いところを直していけばよろしいのだろうと思います。全体を全然改めるということになりますと、現に俸給を受けているたくさんの人間が、すべての号俸のところにおるのでございますから、全部に影響をいたしまするから、悪いところをだんだんに改善をいたしていくという方法でよろしいのだろうと私は考えております。
  187. 受田新吉

    受田委員 こうした部分的な改正措置というものを積み重ねることは、最初に人事院がせっかく考えられた俸給の等級及び号俸による一覧表というものが、初め考えたものと変ってくることになるのです。初めはやはり理想的なものを考えてこられた。それがときどきの給与政策で適当に修正されていく、こういうことになれば、この間の間差、刻み方、昇給期間というものに対して、どこかで部分的に最初考えたものとは違ってくるわけです。今度なども、昇給期間などがちょうど境目にきたところで、三カ月短縮されているところがあるわけなんですが、こうした行き方を、その年々の給与政策で考えればいいのだという考え方は、これはちょっと問題があると思うのです。ことしは初任給、来年はかりに中だるみの中堅階級のところを直していく、こういうことでは何か首尾一貫しないものがある。初任給はことし急に民間で上ったわけではない。今まで漸次累積されておったものを、今までと変った立場において残された初任給に手をつけたのだということで、何か順次政策の体系について段階をつけたような印象を与えておる。人事院というものは、せっかく勧告される以上は、給与法の第四条の精神などを考えていかれたとしたならば、もう少し系統的な考え方で、去年はたとえば初任給において相当の引き上げだということになれば、われわれ国会で高等学校の部分を二百円引き上げるとか、あるいは三百円引き上げるという議論がいろいろ出た。そういうときにでも人事院が、いち早くぴしっと手を打たれるような格好にしておいたならば、一歩前進することであるし、国会が修正しなくても、人事院がそれに対してすぐ手を打っていただくというやり方があったと思うのです。そういうところに、何だかその年々の力の入れ方にいささか政策臭ふんぷんたるにおいを味わわせるものがあると思うのですが、もう打つべき手は、去年初任給の引き上げの部分についてちゃんとやっておくべきではなかったか。ことしまた引き上げるべき措置が必要なら、もう一ぺんやる。こういうふうにそのつどつど情勢に即応して措置さるべきではないでしょうか。
  188. 浅井清

    浅井説明員 たとえを申し上げて失礼でございますけれども、松下禅尼が障子の切り張りをして北条時宗に教えましたように、悪いところからなしくずしに直すということも、これはいいのでございまして、これは決して俸給表を悪くするのではないのでございます。ことに今年の勧告におきましては、下の方にだんだん厚くなっておる。昇給期間を変えたと仰せられますけれども、それは短縮をいたしまして、よくしておるのでございます。俸給体系の全体的な改革は、一昨年の勧告でほぼやっておるのでございますから、これは部分的にだんだんよくしていくという方向に向っておるのでございますから、それでよろしいと私は思っております。
  189. 受田新吉

    受田委員 松下禅尼のたとえを仰せになりましたけれども、障子の張りかえも必要があれば思い切って張りかえないと、次にひびが入るのです。だから張りかえるときには下の方を一枚張りかえるよりも二枚張りかえて、積み重ねを多くした方が丈夫になる場合が多いわけです。そういう意味からもそのつど、すでに昨年初任級の手入れをすべき部分についてはしておく。今年さらに重ねるべき部分については重ねるというふうにおやりになるべきではないか。このことを申し上げているのです。それで今昇給期間が短縮されたということでありますが、これも下を積み上げていく上において、もうちょうど境界線に来た部分が押し出しを食うようになっているから縮めたわけです。決して事新しく取り上げるほどのものではないわけです。そういう意味人事院として毎年々々何か勧告のときにおみやげを与えないと問題が起るというので、初任級は来年に残しておく。こういうよう考えがどうもおありのようです。毎年々々どこかで人事院が多少配慮しているのだという——来年はどういうものを残しておりましょうか。
  190. 浅井清

    浅井説明員 何も出し惜しみはしておらないのであります。これですべてを出しているのでございますが、来年はどういうことになりますか、これはまた調査をしてみなければわからないと思います。
  191. 受田新吉

    受田委員 大体この説明資料を拝見いたしましても、この初任級の場合も、期末手当の場合もでございますが、末尾に説明の記述があまりしてないのです。この説明の記述のしてある部分のところを一つ、二つ取り上げてみると、第二ページに実態調査の産業別、規模別調査事業所数というところに注として、「上記の外、調査不能および不適格事業所が四九八事業所あった。」とあるが、どういう状態においてこれを作成したかという説明がないのです。今まで非常に念入りに説明された膨大な説明資料をもらっていたわけですが、これが簡略にされている。そういう関係で今までの行きがかりと比べてみるのに非常に便利が悪いわけです。そこでたとえば二ページにあります事業所数の場合でも、これが書いてあるので非常に参考になったわけですけれども、従業員五十人以上を持つ事業所を調査の対象にされたわけでございますが、調査不能及び不適格のもの一が四百九十八もある。こういうことがあるから一つ疑問が起るわけです。それは五十人から九十九人、百人から四百九十九人、五百人以上と分けてあるので、どういうところに欠格条件の事業所が多いかということを質問したくなったのですが、どうでしょうか。
  192. 滝本忠男

    ○滝本説明員 これは今直ちにどこが多いという統計をわれわれ持っておりませんので、後ほど調べますが、事業場を最初抽出をいたしまして、そうして調査事業場を選ぶわけでありますが、その事業場におきまして調査ができなかったものが四百九十八と言っている次第でございまして、これはある特定の事業場を給与が低いからとか、高いからとかいうようなことで除外をしたということではないので、全く調査技術上できなかったもの、あるいは一定時間内に向うが忙しくて調査ができなくて、われわれの調査期日に間に合わないので、やむを得ず除外したというものもございますが、そういうものが四百九十八あったというようなことでございます。この内訳といたしましては、後ほど調べます。
  193. 受田新吉

    受田委員 大体五十人から百人という従業員の人数の少いところなどでは、こういう系統的な研究をする上に非常に便利が悪いわけです。それに対して専門の研究者というものも少いし、また会社の経営そのものからいっても、この給与の実態調査をするのに十分の用意をしていないというようなことが私は多いと思う。やはり五百人以上というような大規模の会社になってくると、大企業という形に入ると、ちゃんとそういう専門家がおって、いつ行ってもちゃんと資料を出すわけです。従って資料の提出の困難というよりは、不適格であるというようなことがわかったというのは、五百人以上のところで不適格であるということがわかったようなことは、私はあまりないと思う。調査対象として不適格だということになれば、やはり規模の小さい、経営の困難なところが私は入ると思う。そういうものがちゃんと入っていると、五十人から九十九人の間のものを調査対象とするには困難である。そうすればやはり百人以上の事業場を、公務員給与民間給与対照の対象には考えるべきだというわれわれ側の判断もできるわけです。そういうものが説明してない。従って、今せっかく局長がこの数字をまだ調査していないとおっしゃられたのですけれども、おそらく私は人数の少いところにそういう不適格条件のものが相当多いと思うのですが、そういう傾向があるとお考えでないですか。
  194. 滝本忠男

    ○滝本説明員 これは後ほど調べてお答えいたします。
  195. 受田新吉

    受田委員 従って、これなどについて下へもう一欄設けて、調査不能及び不適格という分の数をこの下の欄に入れていただく。こういうふうになると、一歩前進して、われわれの研究に非常に便利になってくるわけです。それからまた今度ページを繰りますと、平均年令があげてある。それからこの九ページあたりにいくと、職種名と格付号俸が書いてある。この格付号俸なども、八等級二号俸というものをなぜ取り上げたか、八等級五号俸をなぜ取り上げられたかというようなことについての説明がこの下にしてあると非常に便利である。そうしてこの俸給相当月額の平均が右側に出ているわけですが、これも全く平面的な平均である。ところが職種別の俸給該当者は人数はみな違うのですから、そのどの辺にどれどれの人数がおるという、人数別の公平な意味の実態的な平均額が出ている、こういう格好であったならば、もっと精密な研究ができると思うのですが、こういうところに一つ何か説明を付してもらいたい。  それから十一ページ辺にいきますと、俸給相当月額の算出方法が書いてある。これを見ますと、格付号俸が八等級からずっとあげてあるわけです。さっき局長さんの御説明によると、これが中間号俸であるという御説明でございます。今までこれは通し号俸ですから、通し号俸を見ていたわれわれは、新しく給与法が改正されて、こうした八等級の二号俸、八等級の五号俸、七等級の一号俸とか、六等級の九号俸とか、ぽこぽこ出ておると、これは何を基準にしたか、なかなか判断に苦しむわけです。これを一つ書いてもらいたい。というのは、「左の修正値」というところで「最小自乗法による」というのがある。これは昔の曲線を描くやり方なんですから、曲線を描くときのやり方の分と、こちらの左の方の関係がどうなっておるかというような説明をこれで書いておいてもらわぬと、今までわれわれが見たときと比べて、通し号俸と二次曲線の分との比較を便利にされておった時代と、われわれには違った困難があるのです。こうした意味で、説明が非常に簡単なんです。これがこう簡単であると、この民間給与の実態と公務員の分を比較する上において、掘り下げた、どういう形でこうした調査がされたかという方法についてのわれわれの理解が非常に困難になってくるのです。そこに一つ人事院が最近勧告及び報告に対して取扱いを簡略にされて、国会及び政府をいささか軽視せられる傾向があるやにうかがわれる節がある。そこは一つ、もう少し掘り下げた検討をわれわれにさせる資料をお与え願いたい。私はこの問題については、どういう形でこういう調査をされたかという、一つ一つの問題をこまかに聞いていかなければ、これはわからぬものになると思う。そこでこの中で一、二聞いてみたいと思うのでありますが、せっかくこうした調査表ができている以上、ただこれを、数字を見てなるほどというので、今度公務員給与が引き上げになるのだということでは、これは科学的な調査方法と言えません。従って一、二お尋ねをいたしたいのでありますが、これはまた今度この法案が出るときに、あわせて具体的に個々にわたってお尋ねをいたすことといたします。  今回の、民間給与が四%ばかり上っているのでこれに公務員の措置も考えていきたいという、こういうお考えをおきめになられたその理由です。十一ページに「昭和三十三年三月における民間の俸給相当額と行政職(一)の公務員の俸給との比較」というところに、一〇八・四という数字がありますが、この数字を出した平均です。この平均は、よく調べてみると、ここにある左側の職務の等級の格付号俸、金額、こういうものと民間給与の俸給相当額とを比べてみると、これには民間給与の相当高い率が一応出ている。しかしこの平均は、この注に加重平均値ということが書いてありますが、その加重平均値の出された過程をちょっと御説明願いたいのです。
  196. 滝本忠男

    ○滝本説明員 ただいまの説明資料の十一ページの表でございますが、この加重平均値を出しましたのは、公務員の数をウエートにいたしまして、右から二番目にあります(B)/(A)という数字の平均を出したのでございます。
  197. 受田新吉

    受田委員 公務員のこの職務の等級と格付号俸を出されたその出し方は、どういうところに基準があるのでしょうか。
  198. 滝本忠男

    ○滝本説明員 この八等級の二号俸とかあるいは八等級の五号俸、あるいは七等級の一号俸というのは、これは特に初任給でございますので、そういう意味におきましてこの号俸を問題にいたしたのでございますが、そのほかにおきましては、大体各等級におきます十二ヵ月昇給期間の中位号俸ということを目途にいたしまして、この号俸を採用いたしておる次第でございます。
  199. 受田新吉

    受田委員 十二ヵ月昇給期間における中位という、中位のところの人員を一番多く見ているということになりますか。
  200. 滝本忠男

    ○滝本説明員 現在はほとんど大部分が昇給いたしますので、各等級におきます人員分布は毎年ずれて参るのでございます。従いましてわれわれはその点も一応考慮はいたしておりますけれども、この号俸を定めますときには大体中位というところを見てとっておる次第でございます。
  201. 受田新吉

    受田委員 実際に俸給の実態を知るためには、その号俸による職員の数が全部平均されたものがほんとうの実態だと思うのです。それを出すのはやはりめんどうな点もあるので、中位のものを選んだということになると思うのです。そうしますと、この中位のものを民間のと比較してみると、今のお説のことではありませんが、その等級のある号俸の分については民間とずれている分があるのです。相当開きがあり過ぎるのもあれば、狭いのもある。それが今、民間給与の俸給相当額との比較のところで、その差異、差額というものが出ているわけです。差額にもいろいろあるわけです。あるところにズレがある。こういうもので最後に平均値をお求めになるということになれば、これは大体において加重平均値であるならば、平板な平均値よりはある程度実態に近いだろうというお気持があるかもしれませんが、しかしそうなると、その前の俸給相当月額の算出方法のところによる例の左の修正値、最小自乗法による金額の出し方というものとの関係を御説明いただかなければならぬ。格付号俸の中位をとったということと、従来の通し号俸のものとの間においては、人事院としては、従来の通し号俸をこれに切りかえても、こちらの修正値を求める場合に最小自乗法によるもので一向差しつかえないのだというお考えをお持ちでしょうか。
  202. 滝本忠男

    ○滝本説明員 従来の十五級の場合におきましては、いわゆる通し号俸というものがございまして、これがいわゆる指数曲線になっておったわけでございます。あの当時におきましては、仰せように最小自乗法によりましてそれを補正することはもちろんできるわけであります。ところが俸給表が改正になりまして後におきましては、各等級別に俸給額を定めておりまするので、上下等級において同じ金額の号俸は作ってございますけれども、考え方は従来の一本の通し号俸とは違っておるわけでございます。従いまして、従来と同様の方法をとってやるということは事実上不可能なわけであります。しかしながら各等級を見て参りますると、これは従来の通し号俸であったものを一応整理した形になっておりまするので、その中位号俸あたりが大体従来の通し号俸と同じよう傾向をとるということは事実上あるわけでございます。従いまして、われわれはそういう方法によりまして、これを最小自乗法によりまして補正をいたす。従ってその補正した線が従来の通し号俸と同じものであるというものがもちろんございません。ただたとえば八等級六号俸なら六号俸というある金額——これは俸給相当月額という欄をごらん願いますと、これを図表に示しますと非常に凹凸が多いのであります。従来の十五級の職務におけるキー・ポイントというものを補正いたしますが、その補正以前の線を連ねてみますと、これは非常に屈曲が多い線でございます。それを最小自乗法によってなめらかな線にするわけでございますが、その思想は今回も同じでございます。ただ今回は、ここにあります最小自乗法によって出したものは、それがただ一つの線として使えるものではないのでありまして、上下等級におけるポイントの関係をなめらかにするということだけのものでございまして、その意味においては従来と違っておるのであります。
  203. 受田新吉

    受田委員 与党の各位はあまりおられぬようですが、これは非常に大事な問題なんです。だから、今御質問申し上げてもまた繰り返してしまう問題になると思うのです。私は今局長の、なるべく曲線のところへ集中させるように点を求めていきたいという御説明はよくわかるのですが、ここに注として説明を記入するという御要求を申し上げて、そしてさらに方法論について検討をかえる機会を次の機会に与えていただくことにして、一応私、もとの本論に帰ることにしまして、早く質問を終ります。総裁の御工合の悪いこともよく存じております。できるだけ説明資料の御説明をいただく機会をあらためてお願いしておきたいと思います。  それと私もう一つ問題があるのは、今度の勧告の第二のポイントである期末手当であります。この期末手当は、先ほどちょっと個人的にも伺ってみたのでございますが、民間の期末手当の部分、つまり基本給以外の特別給の支給がだんだんと高まっていることはもちろん私たちも了承しております。だからこそわれわれもこれについて政府人事院勧告を待つまでもなく、手を打つように要求したことでございます。ところが給与法という法律には、期末手当のほかに勤勉手当という制度があって、これはその人の勤務ぶりに基く手当であるということになっておるわけでございますが、この勤勉手当というものは、最初の給与法が出たとき以来まだ改正されておりません。最初の〇・五ヵ月分がそのままなんです。期末手当の分だけが上ってきているわけです。われわれとしては大体勤勉手当そのものについて批判をしてきたわけなんで、期末手当の分のみが上ってくることは非常にけっこうなやり方だと思うのですが、そうすると勤勉手当というものは人事院としてはもう考えないことになっているのだろうか。これはもう今後ほとんど問題にならぬであろうという前提に立っておられるのかどうか。しかもこの説明資料を拝見しますと、民間調査の対象の中に、勤勉手当に当る部分と期末手当に当る部分との区別がしてないわけです。一律に期末手当という格好で一括取扱いをしておるわけです。しかし会社などによっては、賞与の部分の手当の方が多くて、期末手当の部分が少いところも相当あるわけです。そうしたもののほんとうの実態調査ということになれば、公務員の方には期末手当と勤勉手当と分けて手当が書いてあるのでございますから、民間の方もそういうものが実際に分けられて、これと比較対照できるような格好で調査されるのが順序だと思うのです。ただそれがあったから公務員の勤勉手当の方を多くするという意味ではなく、とにかく民間の実態はどうなっているかということは、やはり調査としては一応しておく必要がある。それから勤勉手当というものについては、もう人事院としては、現状において、公務員の志気の上などにおいても、勤勉手当の部分はこのままでよい、今後の増額は期末手当一本で、従来の改正されたのがみんな期末手当の部分だから、今後はこの方でいくのが普通の形になるというはっきりしたものをお持ちになっているかどうか、これを一つ伺いたいと思います。
  204. 浅井清

    浅井説明員 そういうふうにはっきりした考えは持っておりません。ただ民間調査は、大きな会社でははっきり二つは分れておりますけれども、何しろ五十人以上の事業所を研究いたしておりますので、そこで区別し得ないものもある。そこで一本で出しておるわけでございますが、人事院といたしましては、何も勤勉手当をふやさない方針であるということは打ち出しておらないのでございます。今回は期末手当をふやしました。     〔委員長退席、岡崎委員長代理着席〕 ただ勤勉手当をはっきり区分いたしますためには、勤務評定をぜひ履行いたさなければいかぬ。これは受田さんも一つ御協力を願いたいと思っております。
  205. 受田新吉

    受田委員 勤勉手当を出すために、勤務評定を大いに強化しなければならぬので、協力していただきたいという総裁のお話でございます。私はこれは全く別問題で今お話ししておるわけですが、この勤務評定を考えて勤勉手当を大いに検討したいというお気持か、あるいは勤勉手当というものを考え直す意味において、まず勤務評定というものを考えていかなければならないという意味なのか、大体勤勉手当というものは、考えようとしているのかいないのかということがはっきりしないで、そういうことに触れておられるのか、どうもおかしいのでございますが、勤勉手当という部分はこの法律には一応は規定してあるけれども、現実の問題としては、こういう部分よりは、むしろ期末手当の増額という措置の方が現状に即するという意味で、従来改正が繰り返されておると思うのです。今回もまたそれが繰り返されておる。従って現状においては勤勉手当というものは一応忘れ去られた、捨て去られた道の小草のような印象をみんなが持っておるわけです。それを今よみがえらすという意味でなくして、これはこのまま現状においては忘れ去られた道の小草という形で、そっとしまっておくという考え方を人事院がお持ちではないかと思ったわけです。寝た子がいつでも起きるような、休火山のような格好になっておるのですが……。
  206. 浅井清

    浅井説明員 そういうこともないのでございます。今回は期末手当をふやしましたが、将来はまた勤勉手当をふやすかもしれない。それは何も勤勉手当を現状のままくぎづけにして、将来は期末手当だけの増額でいこうとも考えておりません。これは将来の問題でございますが、今回は期末手当の増額でいこう、こういうふうに考えただけのものでございます。
  207. 受田新吉

    受田委員 今実際に総裁仰せられる通り、賞与の部分と一般の期末手当の部分の分離が、小さな事業場などではできない。そういう実態であるということになるならば、もう賞与の部分と、つまり勤勉手当の部分と期末手当の部分の分離さえできない。調査そのものの分離ができないということになっておるならば、民間給与との比較で公務員給与がきまる以上は、民間調査が不能の段階において国家公務員の分だけを分離して考えるということは、ちょっとおかしいのではないでしょうか。
  208. 浅井清

    浅井説明員 しかし大きな会社におきましては、この両者は非常にはっきりしておるのでございます。でございますから、必ずしも調査不可能ではない。大きなところだけを見ますれば、それはできるようにも思います。でございますから、人事院といたしましては勤勉手当はもうやめた、そういう考えは今のところは別に持っておりません。これは将来研究してみたいと思います。
  209. 受田新吉

    受田委員 五十人以上の事業場がみな対象になるのであって、そのうちの大きな企業だけを対象にして調査して、小さいところは調査の対象にしないという形では、これは人事院としては変ではないですか。今後は民間事業場の調査対象は百人以上にするとか、五百人以上にするとか、給与の方も期末手当の方も同じよう基準になると思うのですが、そういう形でつまり調査対象事業場の従業員数を大きな線に持っていく。大企業、中企業にとどめる。こういう形なら筋が通るのですが、大企業の部分だけを検討して勤勉手当の部分をきめる。小さいところはよくわけがわからぬから混同して調べる。こういう格好では私は人事院調査方式としてはまずい方式じゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  210. 浅井清

    浅井説明員 でございますから、これは一本にしてやっておるのです。人事院といたしましては給与全般につきまして、五十人以上を対象として考えておるのでございますから、それは一貫しておると思います。
  211. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、勤勉手当と期末手当は分離するということが実際は民間ではできないということがはっきりしたわけです。民間でできないものを公務員だけを分離して考えるということになればまた問題が起る。そこで民間給与の実態を考慮して給与をきめていくという公務員法給与法の規定からいうならば、民間では五十人までを含めたらこの二つの手当の分離がむずかしいということになれば、もうこの勤勉手当、期末手当分離論は、この民間給与調査に関しては不能であるということに一応考えてよろしいですか。
  212. 浅井清

    浅井説明員 そうも考えないのです。これはしいてやろうと思えばできるのでございまするけれども、われわれとしてはできるだけ正確なものにいたしたいと思いまするから、これは両者は一緒にしてあるのでございます。でございまするから、そういうことから人事院として、もう勤勉手当はやめたらどうだ、こういう仰せでございまするならば、そこまではまだ踏み切っていないということを申し上げるにとどめます。
  213. 受田新吉

    受田委員 私これで質問を終りますが、今回の報告及び勧告実施時期について、今石山委員からお尋ねがあったわけでございますが一人事院がせっかく勧告されたことでもあるので、これをできるだけ完全に実施したいという御意思があることはおよそ想像できるのですが、総理府総務副長官は、この点においては長官を補佐されて、事実上あなたが結論を出される責任者だと思う、予算の問題は抜きにして。そこで人事院は、非常につつましい形で出された勧告であるということは、国民一般に与えた印象ですけれども、ただ問題は、勧告に現われた二つのポイントがどうなるかということになってくると思うのです。これは毎年年末になってくると、時期的になかなかややこしいので、次の臨時国会で出さぬと、こういう期末手当の問題については手を打つ余裕がないのであります。そうすると十二月十五日に支払われる分については臨時国会で片づけなければならぬ。結局この勧告に基く法案作成は、少くとも臨時国会には法案を出すようになるであろうという見通しだけは持っておられますか。もし通常国会であったら、事実上これが支払い時期に関係するので非常に厄介になってくるのでありますが、それはおわかりだと思います。そうすると、臨時国会では法案を出す運びになるだろうというお見通しでしょうか。
  214. 佐藤朝生

    ○佐藤説明員 ただいまの御質問でございますが、仰せ通り人事院勧告は、初任給の引き上げと期末手当の増額の二つの点であります。先ほど申し上げました通り財源の関係、それからまたただいまお話の点もございます。結論を得ますれば期末手当は間に合うようにいたしたいと思います。ただ初任給の引き上げの問題などについて財源を用意して、来年度予算に影響する部分につきましては、あるいはこれは臨時国会に出せないことがあるかもしれませんが、極力早く結論を得たいと思います。
  215. 受田新吉

    受田委員 国公と地方公務員を合せて、期末手当増額分及び初任給引き上げ部分について、それぞれどれだけの予算措置を必要とするか、調査ができておるでしょうか。
  216. 佐藤朝生

    ○佐藤説明員 それはあるいは数字は変るかしれませんが、ただいまのところで計算したところを申し上げますと、初任給引き上げに伴います分が、一般会計におきまして四十九億、期末手当に関します分が四十四億、合せて九十三億でございます。特別会計その他政府関係機関、地方公務員等につきましては七十一億が初任給引き上げに伴う部分であります。期末手当引き上げに伴います分が七十六億、合せまして百四十七億であります。
  217. 岡崎英城

    ○岡崎委員長代理 淡谷悠藏君。
  218. 淡谷悠藏

    淡谷委員 米軍の地上部隊引き揚げにつきまして、そのあとに自衛隊が入るという構想がだんだん現われて参りました。大へん厄介なことが多く出るだろうと思います。これにつきまして、この前の委員会でいろいろお尋ねいたしましたが、米軍と自衛隊のジョイント・ユースの問題であります。米軍の使っておりました演習地に自衛隊が入っておったのは、端的に申しますと、おそらく米軍の引き揚げ後も居すわって離さないという形が出てくるのではないかと思うのですが、この間の防衛庁の山下説明員の御答弁によりますと、大体ジョイント・ユースの基礎となりますものは、行政協定の第二条の四項と、同じく第三条だという御説明がありましたが、第二条の四項はまずわかりますが、行政協定の第三条がジョイント・ユースの基礎になるというのは、読み返してみてもどうも納得がいかないのです。この際調達庁の方からジョイント・ユースの基礎になります法文の関係をあらためて御説明願いたいと思います。
  219. 柏原益太郎

    ○柏原説明員 この前の委員会におきまして、ただいまお話がございましたよう防衛庁の方からお答えがございましたが、われわれの考えております根拠規定も、この前の委員会で答弁がありました通りに、行政協定の二条四項の(a)と第三条の、この両条項によってジョイント・ユースを認められておるというふうに解釈しております。それで第三条の場合にその根拠がはっきりしないというような御質問であろうかと思いますが、この第三条の規定におきましては、施設、区域内におきまして米軍はその使用とか運営とか管理のために必要な適当な権利、権力、権能を有するというふうにございます。米軍が提供せられました施設、区域を、この規定に基く権利、権能によりまして一時的に使用させるという場合に、この第三条の管理権の範囲内においての使用であるというふうに解釈しておるのでございます。
  220. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この第三条は、明らかに今御説明の通り米軍の権利、権能の説明がうたわれておりますが、そうしますと、自衛隊は米軍の権利、権能のもとに使っているというだけの話で、何らこれを日本の国内法で規制すべき根拠はないように思われるのです。いわば権利、権能に基いた米軍の恩恵的な使用許可ですね。そのほかに法的な根拠から共同使用ができるということはないようにわれわれには思われるのですが、その点はどうですか。
  221. 柏原益太郎

    ○柏原説明員 調達庁といたしましては、米軍に提供しております施設につきましては、第三条によりまして米軍が提供期間中においてはその施設、区域についての管理権を持っております。その管理権の範囲内において、米軍に支障を来たさないという判断のもとにおいて、自衛隊の使用を米軍の管理権の範囲内において認めているというふうに解釈しております。
  222. 淡谷悠藏

    淡谷委員 結局この第三条に基いて使われているというのは、米軍の権能内で米軍の意思のままに使い得るだけの話で、こちらが積極的にこれを使うのだという権能はないわけです。自衛隊は米軍が許可を与えれば使えるが、米軍がいやだと言えば使えなくなってしまって、ジョイント・ユースをする権限がない、こういうふうに思われますが、どうですか。米軍がいやだと言っても、こっちが使う権利がございますか。
  223. 柏原益太郎

    ○柏原説明員 今お話のありましたように、米軍の恩恵と申しますか、この使用について差しつかえがないというふうな判断のもとに、いわば恩恵的に使わしているというような解釈もできるかと思います。
  224. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そうなりますと、米軍と自衛隊との間の関係は済むのですが、第三者が非常に困るのです。たとえば米軍が海岸等を使用している場合に、演習時間の割合で補償を出すという契約がしばしば地元の漁民と結ばれております。そうしますと、米軍の演習している時間は補償の対象になりますが、自衛隊がそのあとで演習している場合には、どこが一体補償の責任を負いますか。米軍が自分で負うのか、調達庁が中に入るのか、その点はどうです。
  225. 柏原益太郎

    ○柏原説明員 米軍の管理下において使用さしておりますので、一切のそういう補償関係においては、調達庁において責任を持って補償をいたします。
  226. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その場合に調達庁が中に入ってやるという書類がありますか。私はずいぶん見てきましたが、間に立って調達庁がこの補償責任を明らかにしたようなものは見たことがない。実際の例を出していただきたい。
  227. 柏原益太郎

    ○柏原説明員 自衛隊が演習いたします場合には、米軍の方から演習通報が出ております。それで米軍の演習通報に基いての演習ということにおいて、調達庁において補償をいたすということにしております。
  228. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そういう実例は少いのじゃないですか。実際の形は、地元の町村長が、米軍外の自衛隊が演習した場合は、この演習に対してあなたの方で補償責任を負いますかと米軍に言って、サインをしてもらった事例がずいぶんあります。それがなければ払いません。もしあるなら払った実例並びにその契約文書等を見せて下さい。
  229. 柏原益太郎

    ○柏原説明員 事例は後刻よく調査いたしまして御報告いたします。
  230. 淡谷悠藏

    淡谷委員 さらに行政協定の第四条を見ますと、米軍が撤退したあと、もとの状態に回復する責任を持っていないのです。そうすると、自衛隊はこの条文に基いて米軍が撤退したあとはそのまま残っているということがあり得るのですが、実際はどうなっておりますか。米軍が引き揚げたあとの演習地帯に自衛隊が依然として入っておりますか、あるいは米軍と一緒にそこを引き払っておりますか。
  231. 柏原益太郎

    ○柏原説明員 米軍が撤退いたしまして正式に米軍から返していきましたものにつきましては、国有地の場合は、これを大蔵省に国有財産として返還するわけであります。民有地をお借りしている場合には、そのそれぞれの所有者に返還の通知をいたしまして返還いたすわけであります。返還後において、たとえば民有地であります場合に、自衛隊が使う場合にはあらためてその所有者の方と、お借りするなりあるいは土地を買収するなり、そういった話をきめまして使用するということになるわけであります。
  232. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そういうことにはなるでしょうけれども、実情は自衛隊がその土地で演習を続けたまま折衝に入る事例はございませんか。
  233. 柏原益太郎

    ○柏原説明員 若干そういった施設があるようでございますが、その場合には民有地の所有者に一応の了解を得て使っておるという格好でございます。
  234. 淡谷悠藏

    淡谷委員 さっきあなたの御答弁では、米軍が撤退したあとでは、一応国有地は大蔵省の管理に移し、民有地は個人に返す。それならば全然第三者が知らなかった自衛隊と米軍のジョイント・ユースの跡始末もあなたの方ではっきりつけてやる必要があるのです。あなた方簡単に考えますけれども、米軍が演習地として土地を接収する——米軍と申しましょうか、調達庁が、行政協定あるいは安保条約に基く特別措置法でその土地の入手をはかる場合と、防衛庁が演習地等を取得する場合とでは手続が違うのです。はっきり申し上げますと、米軍の場合は土地収用法が適用できますけれども、自衛隊が地元の了解を得られない場合に収用法に基いて強行し得るかどうかはおぼつかない。その場合にねらうのは土地を手に入れようとする心理的な効果なんです。一般人たちは米軍と一緒に自衛隊もいなくなってしまえば自分の手元に返るのだと思いますけれども、自衛隊が演習しているままで、武器を持った自衛隊が土地を放さぬぞという気魄を示しながら交渉段階に入ったのと、全然撤退して交渉段階に入ったのとでは、地元が受ける心理的な影響が大へん違うのです。その点大へんこのジョイント・ユースの跡始末はだらしがないと思う。私はやはりあなたもおっしゃる原則に立ち返って、一切のジョイント・ユースの土地は、一応民有地は個人に返し、国のものは国に返して、あらためて自衛隊との間に折衝を始めるのが正しいと思いますが、これからでも残った分についてそういう手続をとる御意思はございますか。
  235. 柏原益太郎

    ○柏原説明員 土地をお借りしております場合には、賃貸借契約によっても米軍から返還がありました場合には直ちにお返しするという条項もございます。その場合にいろいろな補償の関係も片づけるということになるわけでございまして、その契約の条項から申しましても、米軍の施設が返ってきました場合には、国有地は大蔵省にお返と、民有地についてはそれぞれの所有者にお返しするということが一番正しい姿だと思います。しかしながら今先生のお話しになっているように、現実の姿は必ずしもそうなっていないのでございまして、防衛庁の方の使用の都合ということもあろうかと思いますが、しかし土地所有者の方の御了解をできるだけ早く取りつける、引き続いてその土地が自衛隊の手によって使われるようになるよう努力するということもまた必要かと思いますので、調達庁はその仲に立ちましていろいろと努力しておるのでございます。
  236. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうも私はあなたのお答弁では満足できないのです。いろいろ問題が起っておりますが、旧日本軍の演習地でも、あるいは米軍の取っておりました土地でも、農民がこれを食糧増産のために使おうという傾向と、国の防衛上の必要から防衛庁が使おうというのとで今せり合っているわけです。調達庁としては原則に立ち返って一たん白紙に返して、そこから折衝に入って正しいあっせんをするのはいいけれども、できるだけ自衛隊が使えるように骨を折る必要はないと思う。やはり一応原則に返って返してやった方がいいと思う。また返すのが至当であると思う。契約がなくなってしまった土地で、米軍に与えられた権利をかさに着て、演習を続けたままで土地を貸せという要求をするということは、国民から自衛隊は居直り強盗だといわれても仕方がない。その点はもっとはっきり割り切って、一応米軍の権利に基いて土地の使用を許したのですから、その権利者たる米軍が撤退したなら、文句を言わずに引き払って、新しい観点から折衝を進めなければ、公正な折衝はできないと思う。ですから今言っておる通り、これからでもいいですが、そういうような土地についてはすみやかにあなたのおっしゃる正しい方向に整理する御意思がございますか。それを聞いておるのです。
  237. 柏原益太郎

    ○柏原説明員 返還になりますならば、どうしても私の申しました原則に基いてやる必要があると思います。
  238. 淡谷悠藏

    淡谷委員 では防衛庁の関係に聞きますが、大体の解釈は今言った通りの解釈なんですが、各地でジョイント・ユースをやっておるために、米軍がいなくなったあとでも居残って演習を続けながら土地を貸せと言っておる事例があるようですが、これはやめたらどうですか。
  239. 大森頼雄

    ○大森説明員 今の御趣旨のようにいたしたいと思います。
  240. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうかそうやって下さい。ただそういう点が確認された以上は、各地のいろいろなそういう状態がすみやかに直らなければ、また次の機会に幾らでも食い下りますから、その点は十分お考えの上で御処置願いたいと思う。  それから開拓地を演習地にしたいというので要求した例がいろいろございますか。この前にもちょっと御報告をいただきましたけれども、だいぶ時間もたっておりますので、問題を集約して申し上げます。茨城県の百里原は、さっきもちょっと質問いたしましたが、これは開拓地です。あの開拓地を首都防衛の責任上どうしてもあすこが必要だというので、開拓をやめさせたというのですが、あの開拓地は、開拓地としては一体適当なんですか、不適当なんですか。これは農林省の方にお願いします。
  241. 安藤文一郎

    ○安藤説明員 百里原の開拓地につきましては、大部分は終戦直後に入った入植者のようでございます。それで開拓地としては、あそこは平地の地帯でございまして、大体中等程度の適当な土地であるというふうに考えております。営農成績につきまして、離脱前の状態を見ましても、大体半分くらいは三十万円以上の粗収入をあげておりまして、残りの半分がそれ以下、こういう状態でございました。それから農林省としては、今先生のおっしゃいましたように、開拓をやめさせたというよりは、先ほど午前中に私の方の部長がお話ししましたように、首都防衛上必要で許可を与えたわけでございますが、それにつきましては大部分の地元の開拓者の方が納得をなさいましたので、ああいう処置をとったわけでございます。
  242. 淡谷悠藏

    淡谷委員 さっきの答弁では、首都防衛上あそこがあった方がいいですけれども、どうしてもあそこでなければならぬという点はなかったようです。なお旧軍隊の演習地を開拓地にしておる例がたくさんあるのですが、あの旧軍隊の演習地に入った入植者というのは旧軍人が相当おります。この旧軍人が農業をやっておりますとうまくないのです。特に大佐だとか中佐だとかいう偉い将校だった者が非常に営農成績が悪い。この連中は自衛隊が演習地にほしいということを言い出しますと、先になって誘致運動を始める、失地回復運動といいますかね。そうなりますと、まじめに営農をやっておった農民が非常に迷惑を受ける。いわば開拓地を演習地にするのは、旧軍隊の土地の失地回復という考えはないでしょうか。これは防衛庁どうでしょう。旧軍隊の演習地を全部開拓地にしたのはけしからぬ。だから今度は自衛隊を拡張するとともに、この失地回復をして、もう一ぺん国を守る誇りにしようという観念で全部取り上げるというのじゃないでしょうね。これは念のために確かめておきます。
  243. 大森頼雄

    ○大森説明員 先生が今おっしゃったようなことで、旧演習地をまた演習地にこれからやろうというようなことは一つ考えておりません。それからきょう午前中にも説明があったかとも思いますが、演習場としては、現在の部隊ではただいま向うに提供してありまして、まだ解除になっておりません富士だとか北海道の演習場、それだけでございますが、それ以上新しく演習場を作ろうというものは、今の部隊では——新しく部隊を作られるときにそれに一つずつ標準に与えておりますので、そういうのは考えておりますが、あとはほとんど考えられておりません。
  244. 淡谷悠藏

    淡谷委員 富士にしましても北海道にしましても、さっきの原則によりますと、やはり一応は民間に返す。それから折衝を始めた方がいいと思いますから、あまり初めからきめてしまって、ここだというふうに白羽の矢を立てられると、立てられた方はほんとうに迷惑します。今の百里原の問題もそうですが、農林省は自発的にあそこは開拓地としても不適当であり、あるいは営農成績も悪いから、これはむしろやめさせた方がいいという考え方ではなくて、首都防衛のためやむを得ず開放したと思いますが、その点はどっちなんですか。開拓本来からいってだめだからやめたのですか、それとも首都防衛のためやめたのですか。
  245. 安藤文一郎

    ○安藤説明員 午前中に庄野部長から御説明いたしましたように、首都防衛上やむを得ないということで承知をしたわけでございます。開拓地としては非常にいいところで、極力営農のための指導、あるいはいろいろの畑地灌漑施設、こういうようなものもやって育成をはかっておったわけでございます。
  246. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私は原則として、開拓をしたもので成功しているところは、しゃにむに取り上げて演習地にすべきものではないと思う。その場合に、午前中の答弁もそうでしたが、この前の委員会におきましても、地元でどうしても承諾を得られない場合は、計画変更をする場合もあるという御答弁があったのです。つまりあくまでも承諾しなければ変更する、もしくはぜひともあそこでなくても似たような土地が近くにあればいいというのであれば、これは農林省の意向もまた変ってくると思うのです。それを農林省が、いわば涙をのんで開拓者にあきらめさして、あれを開墾地から演習地に変えようという腹を持たしたというのは、よほど強く首都防衛の必要性を説いたと思うのですが、これは長官に聞けば一番いいのですが、防衛局長一つ百里原千名の航空自衛隊を中心にして御講義願いたい。どうしてもあそこでなければならぬ、千人の空軍自衛隊がおったから首都が安全に守られるという構想は私にはわいてきません。私はしろうとでありますから、専門家の防衛局長から、一つあそこの事情をじっくりお聞かせ願いたいと思います。
  247. 加藤陽三

    ○加藤説明員 けさほどもちょっと申し上げましたが、やはり関東地方に一つ戦闘機の飛行場を持ちたいという非常に強い要望を持っておるわけでございます。そこで、かれこれいろいろ探したようでございますが、やはり飛行場となりますと、相当距離の滑走路が確保できるということと、それから山なり何なり障害物のないところがほしい。障害物がありますと、飛行場は非常に困難であります。それから東京にあまり近くないところであるということもほしい。いろいろな条件を総合いたしまして、百里原が関東地方に持つ防衛戦闘機隊の飛行場としても適当であるということになったように思うのでありまして、戦闘上どうしてもあそこでなければならぬという説明は、私はなかなかむずかしいと思います。ただ、ほかにそれならばどこがあるかといわれますと、これはいいと思うところも、地図の上では出ますけれども、そこにはやはり山があるとか川があるとかいうことで、だんだん局限されていくわけであります。先ほど旧陸海軍のおったところは、何でも失地回復で取るのではないかとおっしゃいましたが、そういうことは毛頭ございません。しかしながら旧陸海軍で飛行場としておりましたところは、今考えてみましてもやはり飛行の適地であったというふうに私は考えております。それでいろいろな条件を勘案しますと、結論としてそこに落ちつくという可能性が私はやはりあったのじゃなかろうかというふうに考えておるのでございます。
  248. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはお聞きの通りの話なんで、農林省も一つ開墾地を守るという腹をきめてもらいたいのです。これは私しろうとですが、あそこがなければ首都の防衛ができないのだと言われますと、それはやはりあきらめますけれども、それではちょっと話が違ってくるのです。一体それでは百里原の開墾地というのは自作農を創設していると思いますが、一反歩どのくらいの値段になるのです。
  249. 安藤文一郎

    ○安藤説明員 この百里原の開拓者に売り渡しましたのは二十五年当時でございますので、非常に安い価格でございます。現在あのところを売り渡すとすればどのくらいになるかということでございますが、大体あの付近でございますと反当八千円くらいはするのではないか、こういうよう考えております。
  250. 淡谷悠藏

    淡谷委員 防衛庁は一部買ったようですが、一反歩幾らで買いましたか。
  251. 山田誠

    ○山田説明員 お答えいたします。農地、山林とか原野とかいろいろございますので、農地におきまして約一年にわたってずっと買っておりますし、それと場所によっていろいろ変っておりますが、これは坪当りになっております。大体安いので二百八十九円、高いので四百七円、場所により、時期によって多少違っております。
  252. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大体坪三百円と見ましても、これを反歩に直すと九万円になりますが、自衛隊はその土地の時価に基いて買うという答弁を受けていましたが、農林省が八千円と見積っておるものを九万円に買うというのは、これは一体適当な値段ですか、どう思います。
  253. 山田誠

    ○山田説明員 土地の単価の出し方は、農林省で売られております単価の出し方と多少違いまして、この前おそらくあるいは局長からも説明があったと思うのでございますが、これは閣議で決定いたしました補償基準要綱、これは主として米軍に土地を提供するために国として買う場合の補償基準要綱というものがございまして、それに準じて一応防衛庁としても基準を作っております。この基準は先生には差し上げてあったと思いますが、それと、あとはそのときどきに国の財産、土地を買う場合は財務局の評価というものを依頼しております。その評価と補償要綱及び実際に作物を作っておりますものですから、その作物のできておる状況、離作補償ということになるわけですが、そういったような耕作の状況とかいうものを全部勘案して出しております。従いまして土地だけの値段、いわゆる素地価格と申しておりますが、そういうものだけではありませんで、私の方で買っておりますのは、そういったようないわば離作補償といいますか、離農の補償というよう意味の値段がこの補償要綱にも一応きめてありまして、そういうものを基準にしておりますから、この素地だけの値段と比較しますと相当開きが出ております。
  254. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ちょっと農林省にお聞きしますが、今の百里原のような事例の場合に、開拓者をそこから離して転業させる場合には、防衛庁あたりで土地を買うとあとは農林省は知らぬふりで、全然かまわないで防衛庁に押しつけておるのですか、それとも何か離作する農民に補償するような方法をとりましたか。
  255. 安藤文一郎

    ○安藤説明員 百里原の開拓地につきましては、離脱といいますか、そこから離れた方につきましては、県を通じましてかえ地のあっせん等をいたしました。それで現在離農といいますか、あの百里原開拓地を離れた方は五十九名ございます。しかしそのうちで農業をやりたいという希望の方も相当数ございまして、これは周辺の開拓地をあっせんいたしまして、その後も農業を続けておられる方が三十六名ございます。残りの方はほかに転業したいというお話でございましたので、ほかの商工業あるいは工員等になっておられる方もございますが、私の方としては極力土地のあっせんには努めました。
  256. 淡谷悠藏

    淡谷委員 別な土地で農業を営もうという三十六名の農民に対しては、大体旧債関係とかあるいは新しい土地を求める代金というのは何か考慮されなかったのですか。
  257. 安藤文一郎

    ○安藤説明員 ほかの土地で農業を営む方につきましては、営農資金等が必要になるわけでございますが、これにつきましては私の方から資金の融通をいたしております。なお旧債の関係につきましては今お話のような補償金をもらっておりますので、それで返済をしていただきました。
  258. 淡谷悠藏

    淡谷委員 開拓者は一戸当り大ていどれくらいの旧債を持っていましたか。
  259. 安藤文一郎

    ○安藤説明員 申しわけございませんが、この百里原の開拓地の方が旧債をどのくらい持っているかというのを実は手元に持っておりませんが、現在のところ全国で平均いたしますと二十万円程度の負債を一戸当り持っております。
  260. 淡谷悠藏

    淡谷委員 防衛庁の方にお聞き願いたいのですが、今の農林省の答弁にも現われておりました通り、三十六名はかえ地をあっせんしてもらって営農資金を貸し付けられておるから、離農者とは言えないのです。しかも旧債が全国平均二十万円、幾らも出ていないのでしょう。あなた方離作料その他と言われましても、三反歩の補償金で余るくらいです。あなた方の要綱はどういうふうにできているか知りませんけれども、これくらい差のある土地を全国にわたって膨大に買うということは、これは国費の非常な乱費です。そう思われませんか。この百里原の土地を買い上げたものは何もないのですから、その価格基準を今でなくても、臨時国会まででもかまいませんから、だれがどのくらい払われて、どう買ったかということを詳細にお出し願いたい。ただしこれで見ますと、地価は農林省で算定したものが八千円、それから防衛庁は農林省と同じようにはできないというので九万円、その他のものが入っておりましても明らかに九万円は払われている。そうしますと、農地としての一反歩の価格と演習地としての一反歩の価格というものは、非常に違った標準を出してしまった。ここに容易ならない一つの農業危機が考えられる。それで演習地などで開墾しておって少しまずくなっていくと、防衛庁に高く売りつけて離れてしまおうという気風が出てくる。しかもこの土地が万一演習地にならないで別な方に移転しなければならなくなったような場合には、この土地は再び農地に返ります。そのときにこの土地の評価というものはどうなりましょうか、これは大蔵省の方にお聞きしたい。たとえば防衛庁が手に入れました演習地が演習地になりがたくて別に変更した場合、その買った土地はどう処置されるか、これは調達庁にも関係がありますが、妙義山の一反歩三十六万円で買ったあの土地は、現在大蔵省では幾らに評価しておりますか。
  261. 谷川宏

    ○谷川説明員 前段の御質問の点でございますが、防衛庁の演習場が演習場として不要になりまして、あと処理することになった場合につきましては、その土地が農地として適当であり、また農林省の方から所管がえの希望があります場合には、その土地を農林省に所管がえをいたすわけでございますが、そのときの価格は農地法によって定められております価格を基準にして所管がえをすることになります。  それから第二の問題でございますが、妙義山の具体的な問題につきましてはただいま手元に資料がございませんので、さっそく後刻資料を提出するか、あるいは直接淡谷委員に御報告することにしたいと思いますが、国有財産の台帳の上の価格につきましては、払い下げをしたときの価格と大体同じ価格で現在台帳に登録されているはずでございます。
  262. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大蔵省の方にもう一ぺんちょっとお聞きしたいのですが、農地法によって価格を算定する場合と、あるいは演習地などで算定する場合とはどのくらい差がありますか。もしも演習地として取った土地が演習地にならずに返された場合には、その差があると非常に国有財産の報告がずさんになりますね。その点で演習地の地価算定と農地の地価算定との開きはどのくらいありますか。
  263. 谷川宏

    ○谷川説明員 その開きにつきましては今資料がございませんので、正確にお答えできませんが、国有財産である土地の評価につきましては、私どもはこういうふうな計算をしておるわけでございます。その土地が演習場に使わわれる場合、あるいは住宅用地として使われる場合、いずれの場合におきましても、私どもといたしましては第一に税金、すなわち相続税あるいは固定資産税の課税標準価額をもとにいたしまして、それから導き出されます価格、それから近傍類地におきまして売買が多くの場合はあるわけでございますので、その近傍類地における売買の実例の価格、それからさらには不動産、銀行その他の専門家が評価いたしました専門家の評価価額、これらを勘案いたしまして、適正な土地価格を算定するわけでありますが、さらにその価格の適否につきまして、法律に基いて設置されております国有財産地方審議会の学識経験者の意見も参考にいたしまして、価格を決定しているわけであります。  第二に農地の価格につきましては、農地法あるいは自作農創設特別会計法等におきまして、農地の価格の基準がきめられておりますので、農地につきましては、それらの価格によって台帳に登録いたしますが、実際に農民に払い下げをいたしますのは、先ほど申し上げましたように、大蔵省が直接農民に払い下げするのではなくて、大蔵省から農林省に国有地を所管がえいたしまして、農林省から農民に払い下げをすることになりますので、その場合の価格は農林省がきめることになっております。
  264. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いずれにしましても、この周辺の地価というものは、現在では演習地などができますとどんどん上っていくのです。周辺の売買価格というものを防衛庁自体が作っている実例がたくさんあります。防衛庁が買い上げた価格が、その周辺の価格になって地価の引き上げをやっている場合がある。ですからこれは勢い途中で工事をやめますと、大へんな国損を招くことになる。一体百里原はすっかり計画を立てて実行にかかっておるようですが、この前の委員会では、地元の抵抗があまり強ければ、どうしても納得が得られなければ多少の変更をするというのですが、土地の取得が完全にできる前に、なぜ工事を始めるのです。そんなに急ぐ必要がありますか。どうせやるならば演習地として十分にこれが完成できるような見通しをつけて、土地などの入手も完全にでき上った上で工事に着手した方がいいと思いますが、この前の委員会でも要求しておきましたが、あの百里原の演習地の請負師との契約書をまだお出し願っていないのですが、どういうふうな契約書作っておられるのか見せていただきたい。
  265. 山田誠

    ○山田説明員 さっそくお出しいたします。ここに控えもございますから、もし御必要でございましたら差し上げてもよろしゅうございます。
  266. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ちょっとそれを見せてもらいたい。——これは契約書ではないじゃないですか。百里原関係経理状況じゃないですか。私は個々の請負師に仕事を請け負わせているその仕事をどういうふうに契約しておるか、いつまでに仕上げろという命令を出しておるのか、そんな関係を見たいのです。請負契約書です。これは必要でありません。
  267. 山田誠

    ○山田説明員 契約書が御必要であれば契約書をお出ししますが、これは工事の名称と請負業者と、それから請負の期間と工事金額という一覧表だったのでございますが、先生の御要求は一つ一つの契約書がほしいということでございますので、契約書の写しを作ることにいたします。
  268. 淡谷悠藏

    淡谷委員 本部長は努めてとぼけたような答弁をいたしますから、こっちははっきり申しますが、私の必要なのは、あそこで農民と請負者並びに監督者あるいは警官隊までもまじえて、数次にわたって衝突をしていることはおわかりでしょう。その際のあなたの方の監督者の言い分が、請負者が仕事の進行上どうしても強行しなければならないから、こういう無理なことをするのだと言っている。土地の入手が完全にできる前に仕事を与えてしゃにむにやるというのは、防衛庁が陰に回って請負業者と農民をけんかさせようとしているようにわれわれには見える。それを契約の上においてどう書いたものやらはっきりみたい。あれはどうもおもしろくないですよ。あの態度は、国の治安を守ると言っておきながら、国防をやると言っておきながら、全く国民を敵として、国内戦を展開している。何の自衛かわからぬ。少くも、百里原だけではございませんが、各地の演習場ではもっと合理的に土地なども入手をして、完全に全体の計画ができてから仕事に着手すべきだと思うのです。だから、私はけさから言っておりますけれども、百里原の首都防衛上の戦略戦術を詳細にわたってお聞きしたいのはそこなんです。一年や二年おくれて東京都が守れないというならば考えなければならぬ。守れるとは思いませんが、あのくらいのことで。そういう点を考えないで、やたらに地元民を刺激して、乱闘まであえてして、警官隊が肥料桶までかぶって、そんなことまでして飛行場を作ってみたところで、それは完全に防衛態勢がしけるかどうかおぼつかないと思う。これは単に百里原の問題だけならばやかましく申しませんけれども、国全体にわたってこういうふうなやり方をするならば、私は国内に敵を作ることになると思う。一体防衛庁は地元民が承諾をしない場合、最後にはどういう手を用いてこの土地の提出をさせる公算があるのですか。あくまでも承諾をしないという人が二人でも三人でもあった場合、それを突きのけてやる何か合法的な手段をお持ちですか。
  269. 山田誠

    ○山田説明員 最後まで納得していただきたい、またその努力をする覚悟でございますし、納得していただけると希望も持っておるわけでございます。
  270. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私どもは自衛隊の土地取得の場合に、土地収用法の適用はできないという見解を持っておりますが、防衛庁はどうお考えになっておりますか。
  271. 山田誠

    ○山田説明員 法律的にはできるという解釈があるそうでございます。
  272. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは疑点のない解釈ですか。それともまた一方にはできないという説もあり、一方にはできるという説もある、疑点を許す解釈ですか、それとも全く疑点のない解釈ですか、確かめておきます。
  273. 大森頼雄

    ○大森説明員 これは土地収用法の主管である建設省と法制局の両方ともに書面で、できるかどうかという意見を聞きまして、それはできると解釈するという回答をいただいておるので、正式な意見でございます。
  274. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは今の条件でも聞かない場合は、最後には土地収用法を抜くつもりですか。土地収用法によってでも取りますか。どうも建設本部はあちこちにいろいろ聞き合しておるところを見ると、使いたいという気持があるようですが、これをお使いになりましたかどうですか。
  275. 山田誠

    ○山田説明員 どこまでも説得に努めまして、納得をしていただいてやりたいという覚悟でおりますし、その努力をいたす覚悟でございます。
  276. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あとでこの請負の契約書その他をいただきましてから、また質問を続けますけれども、私一つ本部長にお願いがあるのです。納得させる方法についてもっと御考慮をいただきたい。少し乱暴ですよ、あの方法は。あんな強硬に自衛隊をかさに着て、地元民を威嚇するような方法とか、また中へ入って非常に悪質な切りくずしをやってみたり、この前もございましたが、軍楽隊の問題があったが、あんな手の納得は少し古いのじゃないですか。かえって反撥しますよ。それから納得の方法もできるだけ民主的に平和的にやってもらいたいのです。自衛隊は武装はしておりますけれども、あくまで日本の平和と独立を守るための組織だそうでございますから、国内で平和を乱すような納得方法は、おやめになった方がよろしい。話し合いにもいろいろございまして、ダンビラぶら下げての話し合いは、ひょっと間違うと恐喝になりますから、その点十分厳重にあなたは監督されてそういうことがないようにやってもらいたい。事は国の防衛に関することですから、これは形が違っておりましても、法に名をかりて国民をしいたげるようなまねはしてもらいたくない。私明日また百里原に行って参りますが、なおこの次の資料に基きまして、この質問は継続することにいたします。きょうはこれだけにします。
  277. 岡崎英城

    ○岡崎委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることにし、本日はこれをもって散会することにいたします。     午後四時三十三分散会