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1958-09-05 第29回国会 衆議院 地方行政委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年九月五日(金曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 鈴木 善幸君    理事 亀山 孝一君 理事 纐纈 彌三君    理事 渡海元三郎君 理事 丹羽喬四郎君    理事 吉田 重延君 理事 川村 継義君    理事 中井徳次郎君 理事 門司  亮君       相川 勝六君    天野 光晴君       飯塚 定輔君    加藤 精三君       鍛冶 良作君    津島 文治君       中島 茂喜君    野原 正勝君       原田  憲君    渡邊 良夫君       太田 一夫君    加賀田 進君       佐野 憲治君    阪上安太郎君       下平 正一君    楯 兼次郎君       中村 高一君    安井 吉典君  出席国務大臣         法 務 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         国 務 大 臣 青木  正君  委員外出席者         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      江口 俊男君         自治政務次官  黒金 泰美君         総理府事務官         (自治庁財政局         長)      奥野 誠亮君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君         警 視 総 監 川合 壽人君         専  門  員 円地与四松君     ――――――――――――― 八月二十六日  委員松田鐵藏辞任につき、その補欠として加  藤常太郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員加藤常太郎辞任につき、その補欠として  松田鐵藏君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員松田鐵藏辞任につき、その補欠として加  藤常太郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員加藤常太郎辞任につき、その補欠として  松田鐵藏君が議長指名委員に選任された。 九月四日  委員鹿野彦吉君金子岩三君及び小金義照君辞  任につき、その補欠として鍛冶良作君、加藤精  三君及び原田憲君が議長指名委員に選任さ  れた。 同月五日  委員加藤精三君、鍛冶良作君、原田憲君、北條  秀一君及び矢尾喜三郎辞任につき、その補欠  として金子岩三君、鹿野彦吉君、小金義照君、  中村高一君及び楯兼次郎君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員楯次郎君及び中村高一君辞任につき、そ  の補欠として矢尾喜三郎君及び北條秀一君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  地方自治及び地方財政に関する件  警察に関する件      ――――◇―――――
  2. 鈴木善幸

    鈴木委員長 これより会議を開きます。地方自治及び地方財政に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。津島文治君。
  3. 津島文治

    津島委員 私は、地方財政のうち最近特に問題となっております地方交付税の問題について御当局へお尋ねいたしたいと思います。  きょうは、承わりますれば閣議の都合で大臣がお見えにならぬそうでありますが、あとでその模様によりましては大臣にお尋ねすることになるかもしらないのであります。  まずお聞き申し上げたいのは、このたびの普通交付税算定方式は非常に変ったのであります。その結果から見ますと非常な激変である、こう評されておるのであります。しかして私が冒頭にお尋ねいたしたいのは、これほどの激変する大変革でありながら、これが早くから地方団体の方へ内示あるいはその指導ができていなかったのではないだろうか、私はかようにまず思うのであります。それは、八号の二十五日に全国知事会長安井氏から要望書が出て、おります。これによりますと、八月二十五日に至りまして、全国知事会の方も非常に驚いたように見受けらるるのであります。従って、どうもこの要望書からうかがいますと、この八月以前において、こういうことが自治庁から示されていないのではないかというようなことが考えらるるのであります。また自治庁においても、これに関する見解を明らかにして、そうして説明をいたしたのが八月の二十六日、すなわち知事会から要望書が出されました翌日に至りまして、初めてこれに関する書面が出ておるのであります。それはここにおいでになります奥野財政局長の名前をもってお出しになっておるのであります。またその日に、午前十時から都道府県会館四階の会議室におきまして、これに対する会議が開かれ、それに対しては、それぞれの自治庁関係の方々が御出席になりまして、御説明をいたしておるのであります。こういう点から考えますと、どうしてこの問題が八月の末まで取り上げられずにおったのであるか。八月の末はおそらく配分が全般にきまったときでありましょうが、そのときまでどうしてこれを関係地方団体に示さなかったのであるか、こういうことをまず第一にお尋ねいたしたいのであります。
  4. 奥野誠亮

    奥野説明員 御指摘のように、率直に申し上げまして、地方交付税法改正の結果、基準財政需要額算定方式が大幅に変ったわけでありますので、今までの基準財政需要額計算通り伸び方をどの団体にも一様にするものではないんだということについて、自治庁としてもっと府県に徹底さしておくべきではなかったかということは、深く反省をいたしておるわけでございます。ただ形式的なことを申し上げますと、二月に出されております予算編成の通達には、新しい測定単位、新しい単位費用を基礎にして基準地方交付税を見込みなさいということは申しております。申しておりますが、どの団体も、自分団体だけは平均伸び以上に交付税伸びてくるんだというような気持でおられたことも事実のようでございますので、私ども、今御指摘になりました点について十分でなかったということを深く考えておるものでございます。  なお、今度の計算当りまして、七月に全国財政課長会議あるいは地方課長会議を行なったわけであります。その際に、私や財政課長から、計算方式が大幅に変っているので、個々団体における基準財政需要額伸び方は一様ではない。従って、予想とかなり違ったものになってくるおそれがある。そういうこともあるので、特別交付税配分に当っては、もっぱらこれの調整に充てたい。特別交付税をそのための調整に一重点を置いて運営をしたいから了承してもらいたいということを、繰り返し強調しておるわけであります。それは七月のことであります。同時に、八月に決定をいたします際に、御指摘になりました内翰を発表したわけであります。いろいろ議論があってそうしたというわけではございませんで、七月に会議があった際に、私たちとして、交付税計算を安定さしていきたいという希望を持っておるから、法律改正の結果基準財政需要額伸び方が一様に行っていないで、その結果予想がはずれる団体もあるかもしれないが、しかしその点については、特別交付税調整を全面的にはかっていきたいと考えておりますということを、繰り返し強調したわけであります。八月に決定になりました際に、決定と同時に今の内翰を発表した、こういう経緯になっておるわけであります。
  5. 津島文治

    津島委員 ただいまお聞きするところによると、二月にすでにわかっていなければならないのが、各団体ともいわゆる希望観測自分の方には多く当るであろうと有利に試算をした、こういうお話であります。それも実際あるかもしれませんけれども、私の理解に苦しむのは赤字団体であります。赤字団体は、御承知通り予算を組みます場合におきまして、一々自治庁指導を受けて組んでおるのであります。しかしてこのたび非常な激変を招いたのは赤字団体であります。そういうことを考えてみますと、どうしても自治庁指導というのがそこに非常に手抜かりがあった、かように私は考えざるを得ないのであります。私は、この問題がじんぜん八月の末まで、こういうふうに比較的問題にならなくて推移したということは、そこに非常に困ったことがあるのであります。これが早くわかりまして、どうしても自分たち財政規模を縮めなければならないと早く気がつきますと、それだけみなやはり覚悟をいたしまして、予算縮小にかかるのであります。しかし、今日、八月も過ぎ、もはや九月でございます。九月にこういうことがあからさまになって参ったのでありますから、その間まさに五ヵ月。五ヵ月の間、じんぜんただ日を送ったというような形になるのであります。これから残りは九、十、十一、十二、一、二、三の七カ月。七カ月の間で、財政を緊縮するものは緊縮をするということになって参りますので、一そう苦しい場面に追いつめられるというようなことがあるのであります。私は、こういう意味からいいまして、自治庁は、これほどの激変のある大問題であるならば、なぜそのわかり次第なるべく早い機会において各県を指導しなかったかということに対しましては、やはり遺憾の考えを持っておるものでございます。
  6. 奥野誠亮

    奥野説明員 御指摘になりますように、私も、自治庁として、地方団体指導していく点において十分でなかったということを感じておるわけでございます。その点、今後なお一そう注意していかなければならないというように考えておるものでございます。ただ一例をあげて申し上げますと、地方交付税法改正の結果、義務教育費算定方式が変って、今までは学級数生徒数を用いることになっておったのが、今度は標準定数を使うことになった。その標準定数が最終的にきまりましたのは、たしか六月か七月のころではなかったかと思います。ところが、この算定方式改正の結果、茨城県だけをとりましても、一億何千万円という金額が、全国的な伸びよりも少ないわけで、こういうような激変を与えたようなことでありますので、できますならば激変緩和措置を立法しておく、あるいはまた、その改正をもう少し時期をずらすというような考え方もあり得たのではないかと考えたわけでありますが、そういう経緯もまた自治庁としての指導の徹底を欠いた。また地方団体としても、ただ自分のところについて期待感を一般的な伸び以上に持っておったというようなことも手伝っておるのではないかと思いますが、今後こういうことがありませんように、私たちももっと慎重に考慮していかなければならないということを痛切に感じておるものでございます。
  7. 津島文治

    津島委員 次にお伺いをいたしたいのは、交付税がどうして生まれるようになったのであるか、また交付税の有する性格というものがどういうものであるかということについて、一つ申し上げたいと思うのであります。  御承知通り、現代の経済構造のもとでは、財源の定期的不均衡は免れ得ないところでございます。この不均衡を救済して、さらに計画的な運営を保障する方途を講じなければ、自治体の財政というものは確立できないのであります。こういう意味において、過去において地方財政補給金というものが考えられたのであります。さらにまた、これが配付税考えが進んで、さらに御承知シャウプ勧告による平衡交付金というふうに進んで、今日の交付税までに進んで参ったのであります。交付税考え方は、財源調整にとどまらず、財源保障制度としてかなり整備されてきているものと思うのであります。という面から私どもは交付税というものを考えておるのでございますが、今回の自治庁のおとりになった改訂というものは、私は、この交付税の持っておるところのよい慣習を著しく破ったものである、かように考えます。いわゆる財政の進歩的な今日までの歩み方に対して、大きく逆行をしたものではないかというふうに考えられるのでありますが、この点に対しまして、どんな考えをお持ちでございましょうか。
  8. 奥野誠亮

    奥野説明員 御指摘になりましたように、私も、地方交付税制度個々地方団体ごとに基準的な行政を行うに必要な財源を保障いたしまして、地方行政の計画的な運営が達成されます役割を果しているものだ、かように考えているのでございます。従いまして、個々団体ごと基準財政需要額をどう測定していくか、これが一番重大な問題だろうと存じます。御指摘になりましたのは、おそらくこの基準財政需要額算定当りまして、三十一年度において地方債を縮減した。それまでは貧弱な団体につきましては、この地方債をかえって多く許可して参った。縮減したわけでありますから、貧弱な団体におきましては見返り財源がなければならない。地方財源全体としては十分でないけれども、さしあたり傾斜的に若干財源を多く与えるというような特別態容補正を実施したわけであります。この特別態容補正やり方につきまして、今回若干改正をいたしました。そういう臨時的な措置でありますので、全体的に態容補正を引き上げなければならない。基準財政需要額の全体としてたしか六百億円くらいふやしているのです。そういう関係がございますので、従来特別態容補正で五十五、六億円くらい見ておったものを二十四、五億円圧縮しております。この点をおっしゃっているのではなかろうかと思います。特別態容補正やり方といたしましては二つあるわけでありまして、たとえば道路にいたしますと、未改良道路であるか、あるいは改良済み道路であるか、まだ改修されていない道路でありますと割増しをいたします。こういう個別的な態容補正をしていくやり方一つございます。これは私たちは、今回の措置におきましてもウエートを引き下げたわけではなしに、逆にウエートも今までよりも高めているわけです。もう一つ原始産業人口が多いとか、あるいは人口増加が少いとか、そういうことで個々割増しをして、このウエートを引き下げている。この点を御指摘になっているのだろうと思います。私たちは、やはり基準財政需要額を合理的に測定していくべきであると考えるのであります。原始産業人口が少いから、一人当り道路費がよけいかかる、あるいは河川費がよけいかかるのだということでは、これはちょっと筋が通らないと思います。しかし、これも地方債を減額しなければならないような際に、さしあたり急場をしのぐという意味においてはそういう方式もやむを得なかったかもしれません。しかしながら、全体としての基準財政需要額を増額できる場合には、やはり本来の姿に戻って計算していくべきではないだろうか、つかみ式の金をばらまいていくということは、基準財政需要額算定においてやっていくべきではないと思います。またそうやっても、全体に公平に基準財政需要額がそういう地域に増額になっているかというと、必ずしもそうなっていないのであります。そういう点もございます。特別態容補正のうちの一つ個別態容補正と申しておりますが、改修済みであるか、改修済みでないかということによってウエートをつける。これはむしろ従来よりもウエートを高めたわけであります。もう一つ総合態容補正と申しておりますが、原始産業に従事する人口が全体として多いとか、あるいは一人当り税収入が少いとかいうことで割増しをする、そういうウエートは下げております。これは私たちは、やはり基準財政需要額を正確に算定していくのであって、それによって個々道路費がどうなる、河川費がどうなるということは結論が出ないと思っております。そういうことで個々基準財政需要額算定につきまして、なお全体として合理的に考えていかなければならないと思いますが、基本的には安定させなければならない、こういうことだと思います。その安定という問題につきまして、今回、府県間にかなり伸びに差が生じた。これは私たちにしましても、特に心すべきことであったろうと思います。そういう意味で、先ほど御指摘になりましたような特別交付税補てん措置を講じていきたいというようなことを同時に発表した次第であります。
  9. 津島文治

    津島委員 私は、先ほども申し上げました通り交付税というものの性格から見まして、やはり弱小県というものの財政運営、それから行政水準向上というものを考えていかなければならない、かように考えるものです。従いまして、こういう観点から考えますと、今回の改正というものが、新設をしたというようなものにつきましても、どうしても富裕県に有利でありまして、貧弱県には不利であるというように進んだと思わざるを得ないのであります。たとえてみますと、海岸保全施設、これを測定単位として新たに定めたということでございますが、これなどを考えてみましても、海岸保全施設をたくさんに持っておる県というものは、これは富裕県でございます。弱小県にはあまりないのであります。また、ただいま局長お話しになりました小、中学校のことでございますが、これは従来は児童数あるいは生徒数測定単位としておったのでありますが、今年から改められまして教員数改訂をせられた。ところが、実際のさまを見ますと、富裕県は一学級四十五人ぐらいにしておるのであります。従いまして教員の数は多い。しかし、貧弱県はこういう一学級四十五人などの編制ができないのであります。六十人ぐらいで編制しておるのであります。そういう関係からいたしまして、やはり貧弱県教員数が不足でございます。従ってこれを土台にして勘定をするということは、何事も経済縮小をしておりますその貧弱県に対しまして、非常に不利益である。私はかように考えるのであります。  もう一つまた例を申しますと、道路の問題でございますが、今年から砂利道舗装道路によりまして、種別補正を行なって、舗装道路には割増しをしておるのであります。そこですぐ考えておわかりになるでありましょうが、舗装道を多く持ってるのは、これは富裕県であります。貧弱県には舗装道路がどうしても少いのであります。このこともやはり私は富裕県が得をするようにできておる、かように考えるのでございます。  こう考えてみますと、今回の改訂というものは、どうしても私らから見ますと、富裕県に重きを置いたとしか考えることができないのでございます。これは私は、先ほど申しました交付税性格から逸脱をしておるのではないかというふうに考えるのであります。  さらに先ほど局長は、態容補正、未開発補正の問題につきまして、これは臨時的な措置であるというようなお話でございましたが、実際貧弱な県は、御承知通り幾らかでも行政水準向上をいたしたということは、これはいろいろの原因がございましょうが、私は、そのうちの最大な原因というものは補正係数配分にかかっておるものと考えるのであります。昭和三十一年度、三十二年度においては、地方交付税配分における特別態容補正が確実に功を奏しまして、ようやく明るいきざしが見えたのであります。そこでこれをまた下げるということになりますと、そこにせっかく明るさが見えました弱小県財政というものが、再び暗黒に閉ざされるような格好に私は相なると思うのであります。昨年は百十億円の補正財源があったようでございますが、本年は七十億円にこれが縮まっております。さらにこの七十億円に、従来特交で見てきておりましたものを普通交付税に振りかえた分三十億円が食い込んでおりますために、実際補正の分は四十億円になっているのであります。今日の弱小県の混乱は主としてここにあると私は思うのでございます。この態容補正弱小県にとりましていかに大きな役割を持っておるかということにつきまして、御参考までに青森県の場合を申し上げてみますと、今回の改訂によりまして、道路費におきましては三千四百五十万七千円が減ぜられておるのであります。橋梁費におきましても千五百九十三万八千円、河川費において千四百四十八万五千円、農業行政費において四千九百三十二万四千円、林野行政費におきまして千百二十二万五千円がそれぞれ減額せられておるのでございます。青森県の財政にとりましては、実に大きな額であるのでございます。こういう結果、御承知でございましょうが、青森県におきましては交付税伸びが昨年に比べまして、パーセントにいたしまして〇・二%、わずかに二厘、金額にしまして六十万円に満たないのであります。極端なのは、御承知茨城県でございまして、九千百四十七万五千円が減っておるというようなことでございます。これはひとり青森県ばかりではございませんで、一般に東北地方においては、この増加は一割未満でございます。反対福岡兵庫等におきましては、昨年に比べまして五〇%を上回るというような状態であるのであります。こういうところから考えますと、今回の改訂というものが、私は非常に交付税というものの性格から逸脱した大きな問題ではないかというふうに考えられるのであります。
  10. 奥野誠亮

    奥野説明員 お話のございました中で、道路費について舗装済み道路を特に割増ししておる、こういうのは何か間違いではないかと思ひます。未改修であります道路については割増しをいたしますが、砂利道についてはよけい経費を見積るというやり方をしておりまして、ちょっと反対ではなかろうかと考えております。なお、義務教育費計算いたしましたり、あるいは今回新たに海岸費算定するようになりましたりした結果、貧弱団体がかえって不利になっておるじゃないかという御指摘がございました。いずれも法律改正によって起ってきた問題でございます。私たちも、なお改正法を実施した結果につきまして、しさいに検討して参りたいというふうに存じておるわけであります。基本的には地方交付税計算方式を安定させるということを前提にしながら、いろいろ矛盾の生じております点につきましては、しさいに検討して、必要な措置を講じて参らなければならない、かように考えておるわけであります。  なお、態容補正改正について御指摘がありましたが、私たち交付税計算考えます場合に、基準財政需要額が幾ばくに算定されておるか、これが基本的な問題であると思います。基準財政需要額は、どの団体におきましても、もちろん相当伸びておるわけでありまして、府県によりましては大体一一%平均伸びておる。これが伸びていないという県はあり得ないわけであります。ただ税収入がふえて参りますと、基準財政需要額伸びましても、交付される交付税の額は減ってくる、こういうことはあり得ると考えるのでありますけれども、これは見返りの税という財源が入ってくるわけでありますので、それでよろしいのではないか、こう考えるわけであります。なお、富裕団体は特に伸びておるんだ、こういう御指摘がございました。これは私たちとしては、非常に誤解を招く言葉ではないかと思うのでありまして、先ほど来繰り返し申し上げますように、計算方式が変りましたために、全国平均的な伸び基準財政需要額について示していない、これは私は問題があると思うのでありますが、とにかく平均的な伸びは示していないと考えております。しかし、交付される交付税の額が前年度と比べてどう増減するかということは、交付税計算の過程におきましては大して問題にすべきじゃないのじゃないかと考えております。基準財政需要額伸びたけれども、地方税収入額も非常にふえた。その結果、かえって交付される交付税が減っても、それでよろしいじゃないかと考えます。また基準財政需要額伸びは少いけれども、それ以上に税が減ってきた。その結果、交付される交付税が非常にふえてくるということも当然のことではなかろうかと思うのであります。そういう意味で申しますと、たとえば富裕な団体であるとされております愛知県にいたしましても、あるいはまた福岡県にいたしましても、基準財政需要額がいずれも平均伸びに達していない状態である。また貧弱な団体とされおります徳島県でありますとか、和歌山県でありますとかいうような団体でありましても、これがまた平均からずっと伸びている団体もございまして、必ずしも一様な結果を示していないわけでございます。青森県について例をおあげになりましたが、実はこまかし数字はまだ当っておりませんけれども、青森県が全国で一番基準財政需要額伸びなかった県であります。その次が御指摘茨城県であります。いずれも当該団体に対しましては、まことにお気の毒な感じを持っておるのでありますが、一番大きな原因は、恩給費の計算方式が、従来人口算定されておりましたが、法律改正の結果恩給受給権者の数で算定されるようになった。それが一番大きな影響を青森に持ったと思っておるのであります。手元にあります数字だけでも、その金額だけで一億円以上の金額が減っております。また御指摘になりましたように、海岸の施設がないから、そういうために基準財政需要額増加されたが、そういう恩恵を青森県が受けていないという式の問題もずいぶんあるようでございます。これらにつきましては、先ほども申しましたように、安定ということを基本に考えながら改正の結果をしさいに検討いたしまして、必要な是正は工夫しなければならない、こう存じておるわけであります。青森県も、交付税は別といたしまして、基準財政需要額伸びないわけではなしに、五・一%の伸びであります。平均が一一%でありますから、青森県のような財政状況から考えますと、これはまことにお気の毒な結果になっておると存じておるわけであります。そういうこともございますので、一一%の伸びまでと交付税が得られるように、特別交付税で優先的に配慮したいということで、普通交付税決定と同時にそういう決定もしていただいたという経緯になっておるわけであります。
  11. 津島文治

    津島委員 そこでお尋ねいたしたいのは、平均の伸張率は一一%であった、そこでそれに達しない以はその率まで特交で持っていく、そういうただいまのお話がございました。どうもこのたびのやり方は、非常に理論に走って、実際の結果がどうなるかということに対する検討に欠けるところがあったのではないか、私はそのように考えられるのでございます。その結果、御当局が考えた以上に非常に結果的にはジリ貧を見た。それであるからして、これを特交で手直しをしていけばいいではないかというようなことのように思われるのでありますが、しかし私は、これに対しまして非常な疑問を持っておるものでございます。これは少しく邪推に過ぎるかもしれませんが、当局の方では、初め考えたよりも結果のジリ貧に驚いておると思うのであります。そこで特交をもってこのでこぼこを直すというのでございますが、これでは私は特交性格からしまして、こういう大きな今回のようなでこぼこを、一体特交は直し得るものであるかどうか。特交の性質からそれているのではないかということを考えるのであります。
  12. 奥野誠亮

    奥野説明員 特別交付税で手直しをすると言うておる、こうおっしゃったわけでございますが、実は手直しをすると申し上げておるのではありませんで、私たちは、やはりどの団体も、平均伸びあるいは平均以上の伸びを期待されておった向きが非常に多いように感じられたのであります。言いかえれば、御指摘になりましたように、自治庁として、こういうふうに計算方式が変わるんだから、基準財政需要額も、伸びを一様にするということはできないということについての強調が足りなかったのではないかという反省もさせられるわけであります。そこで、せっかく平均あるいは平均以上の伸びを期待しておったのにそうならなかった。そうしますと、個々団体については財政混乱を起すことにもなりかねませんのでそういうような混乱を避けるために特別交付税を使用したいと考えております。手直しというのではありません。手直しをすべきことでありますならば、これはやはり次の国会で法律改正を待たざるを行ないのじゃないか、そのことがいいか悪いか、なお検討しなければならないのじゃないかと考えております。どちらかと申しますと、私は、府県基準財政需要額の四割に近いようなものについて算定方法を変えるといたしますならば、同時に何か激変緩和措置を立法しておいておやりになった方がよろしかったのじゃないか、こういう感じを個人としては持ってております。しかし、おそらくそのときの考えとしては、特別立法でなくとも、特別交付税があるから、それでやればよろしいじゃないかという気持もあったのじゃないかと推測もされるわけであります。そこで特別立法もございませんし、やるとすれば特別交付税の道が残されておるわけでございますので、特別交付税でその措置をしたい、かように申し上げて参っておるわけであります。なおまた今度の計算の結果、いろいろ反発があり、それに驚いて特別交付税で手直しをするのだというような態度を自治庁がとったんじゃ、ないか、こういうふうにおっしゃっておるわけでありますが、これも先ほど申し上げましたように、そうじゃございませんで、七月に全国財政課長、地方課長を集めまして、計算方式を示しました。その際に、私は、地方交付税計算方式は安定させなければならないという感じを非常に強く持っておるということも強調いたしました。しかしながら、すでに計算方式はいろいろ変っておるので、個々団体において、基準財政需要額伸びは必ずしも一様じゃないということを申し上げました。従いまして、また多くの団体は、平均伸びを期待されておるようだから、今年度に限って特別交付税を、その方法に重点を置いて使わなればならない。従ってそれ以外の事由による特別交付税配分額が非常に減ってくるだろう。だから従来のような気持で特別交付税を期待されることはかんべんしてほしい。しかしながら、ことしの基準財政需要額伸びの悪かった団体につきましては、この特別交付税を重点的に持っていって調整したいというようなことも繰り返し強調いたしております。七月のことでございます。決定いたしたのは八月の末であります。決定と同時に、先ほど申し上げましたように、その際に申しておりましたことを、正式に自治庁におきましても、大臣の御決裁をいただきまして発表したような経緯になっておるわけであります。それじゃ将来ともこのままでいくつもりかということになりますと、先ほども申し上げましたように、私はやはり安定が一番大切なことだと思っております。しかしながら、改正の結果出て参りました点につきましては、なおしさいに検討も要することであろうと思いまして、そういうような検討を慎重に重ねたい、その上で善処して参りたい、かように存じておるわけでございます。
  13. 津島文治

    津島委員 ただいまのお話で、元来このでこぼこが生じた場合においては、これを救済するためには特別立法をすべきであるというようなお考えを承わりましたが、私もまさにそれはそうしてこれを救済すべきものである、かように考えるのであります。その次は、特交をこの調整に使いました結果、従来あるべき今までの特交が、これによって解消をするおそれがないであろうか。そうなりますとまた全般へ大きく影響するようになると思うのでありますが、この点はいかがでございますか。
  14. 奥野誠亮

    奥野説明員 一一%まで補償する額が非常に多なものになって参りますと、災害があった場合、特別交付税でめんどうを見るのだというようなことについて支障が起きてくるのじゃないかという心配が生まれてくるわけであります。しかしながら、現在の程度でありますと、百三十億円の特別交付税もあることでございますので、特段非常な混乱が特別交付税配分に当って起きるというほどのこともないのじゃないだろうかというふうに思って、おります。
  15. 津島文治

    津島委員 それで大体わかったのでありますが、最後にお伺いいたしたいのは、今回の自治庁算定に関しまして、大蔵省が非常に不満である。自治庁の独走は許されないというのが日本経済新聞の九月一日に出ておるのであります。これの最後の方に、「大蔵省はことにする方針を決めている。」こうございます。これに対しまして大蔵省との今日までの交渉はいかがであったのであるか、伺いたいと思います。
  16. 奥野誠亮

    奥野説明員 昨日次官会議の席上で、大蔵省から今お話しのように、総理府令の形式を政令の形にできぬだろうかという意見のあったことを聞きました。私はどちらかといいますと、できるだけ法律できめてしまうという行き方が一番よろしいと思っております。ただ補正係数につきましては、なお検討の段階にあるわけでございますので、その間はやはりやむを得ず総理府令でいかざるを得ないんじゃないだろうか。そういう複雑な格好になっておるし、絶えず検討を加えていかなければならぬようなことになって参りますと、政令でいろいろ議論し合うということも、かえって穏当を欠くんじゃないか。予算のぶんどりみたいになりまして、各府県予算に各省が注文をつける傾向が一そう助長されるというふうなことにもなって参りますと、やはり将来法律に上げるということを前提にして、ここ半分は総理府令で定めていくという行き方が妥当ではなかろうか、かように今日考えておるわけであります。
  17. 津島文治

    津島委員 さらにお伺いいたしたいが、今日の朝日新聞の記事でございます。「交付遅れる地方交付金の第三期分」という見出しでございます。これを読みますと、「本年度の地方交付税交付金の第三期分五百七十億円は、三日、各府県市町村あて交付される予定であったが、大蔵省がこの支出命令を認めなかったため、交付はしばらく遅れることになった。八月末に自治庁が決めた普通交付税交付金の配分が、後進県に不利で、先進県に不当に有利なやり方になっているので、大蔵省がこれを不満としての措置である。しかし、この配分はすでに告示ずみなので、これを変更することは実際問題として難しく、大蔵省、自治庁両者間で何らかの解決策を見付けなければならぬ局面となっている。こういうのであります。
  18. 奥野誠亮

    奥野説明員 地方交付税の第三期分は、九月中に地方団体に交付するという法律の建前になっております。私たちとしましては、できるだけ早く交付したい考えでおりますので、私の方の財政課長が大蔵省の国庫課長と話し合いをいたしまして、九月三日に交付するというような約束をいたしております。ところが、総理府令を決定するに当りまして、事前に大蔵省との打ち合せができていなかったようであります。三日の日に、実は私、主計局の次長と電話で話し合ったのでございますが、そ、の際に、大蔵省側の言い分として、従来総理府令をきめる場合に、事前に自治庁から連絡してもらっておった。それが連絡もなしに、しかも八月三十一日付で官報で公布されて、十分な説明を聞かなければすぐに交付というわけにいかないじゃないか、おくれざるを得ないじゃないか、こういう話がございました。そして、私が説明をしようかという話をしておったわけでございますが、実は三日の午後札幌に行ったものでありますから、きのうも不在であったのであります。財政課長でもけっこうだからという話がありまして、財政課長が主計局の次長に説明をしておったはずであります。よく納得をしてもらいまして、交付税の交付もなるたけ早く進めたい、かように考えておるわけであります。三日に交付するつもりで地方団体にも連絡しておったわけでありますが、今申し上げましたような事務的な手違いもございまして、課長も課長補佐もかわったものでありますから、従来事前に連絡をしておったわけでありますが、その連絡もできなかった。従って向うとしても納得のできる説明を聞きたい、こう言っておるわけであります。これももっともなわけでございまして、十分そういう点についての打ち合せを早く遂げまして、なるたけ早く交付税を交付できるように持っていきたいというふうに存じております。
  19. 鈴木善幸

  20. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 地方交付税の問題ですが、先ほどからいろいろ話を伺って、やはり私どもがいつも言っておるように、交付税というものは安定性がないと、毎年心々小手先でいじっておってはいけないということが、具体的にここに出てきたものだと私は思うのでありますが、しかし結果がいいとか悪いとかいうふうなことを別にいたしまして、私がこの際ちょっと伺っておきたいのは、先ほどから津島さんとあなたの問答のうちに、特別態容補正というようなことがありました。これはどういう法的な根拠でそういうものが置かれたのか。私は実は去年五十億ばかりあるという話も聞いておったのですが、どういう根拠でそういう非常に大きな金を政府がおやりになったのか、法的根拠をまず聞かしてもらいたいと私は思います。
  21. 奥野誠亮

    奥野説明員 三十一年に地方交付税法改正いたしまして、第十三条の第四項の第三号のハですが、特別態容補正の規定を加えたわけであります。
  22. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 どういうことなんですか。
  23. 奥野誠亮

    奥野説明員  「行政水準の標準化を必要とする行政に係る投資的経費で総理府令で定めるものに係るものにあっては、当該標準化に必要な行政の質及び量の差に基いて割高となる度合について、経済構造等総理府令で定める指標により測定した総理府令で定める率を用いて算定した数値を当該率を用いないで算定した数値で除して算定する。」、こういう言葉が入っておるわけであります。地方債を減額いたしまして、特に貧弱団体地方債をよけいつけておった。地方財源一般に大幅に増額するという段階にもそのときには参りませんので、さしあたり貧弱団体基準財政需要額を先に上げるというわけで、この特別態容補正の規定を先に入れたようであります。
  24. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 そういう規定を設けまして、そうして去年は二千億に満たなかったと思うのです。その交付税の中で約二・五%以上の五十数億をそういうものに回すということに私はいろいろ問題があると思うのです。地方交付税というものは法律で峻厳にきめられて、その通り機械的に出るものでないと私はいけないと思うのです。過去十年間、交付税の問題でいろいろと批判を聞くのであります。私どもはいささか心得ておるつもりでありますから、政治的な判断によってこういうものは左右されるものではありませんと言うておりますけれども、今、お話を承わりますと、十三条の第何項のハだとかいうような非常に小さいところでちょっといじって、その結果が五十五億という金であるというのは、私は驚くべきものだと思います。ことしはそういう面について多少修正されたというふうなことでありますが、金額はやはり三十億ばかりある。そういうことであるならば、この基準財政需要額の全体をいじったらどうですか。私はそういうふうに思います。今回の東北六県、茨城県とか、非常に減ったという問題はここにあると思うのです。こういう点について私、これは黒金さんの見解を伺いたい。毎年々々交付税というものは変更される。事情を聞きますとやむを得ないというのですが、どうもしかし非常に技術的になって、一般国民がよく納得されない。あなたも御経験があろうと思うが、われわれは選挙その他に際しまして、政策の批判というものは、特別交付税の問題、前には平衡交付金の問題、こういうことを論じましても、国民は全然わからない。しかもその財源が、府県におきましてはもう財源の大半を占めておる。非常に重要な問題が、非常に専門的になってわかりにくいというところに、私は何か日本の内政の一つの大きな盲点があるように思いますので、この点について、もう平衡交付金をあわせまして制度が変ったといいますが、財政需要額、収入額計算等は同じでありますし、もう十数年たっておるのでありますから、もう少し権威のあるものを作ってもらいたい。  それからことしの三月に、今承わりますとだいぶん変更しまして、その変更もわれわれは毎年やっておりますから、こういうふうな大へんな変更になるとは実は委員会の皆さんにおかれましても――烱眼の皆様はおわかりであったかもしれませんが、少くとも私は感づかなかったのです。ところが、実際はこういう形になっておるというので、どうも納得がいかない。この点はあとで黒金さんから特別態容補正との相関関係を御答弁いただくとしまして、もう一点だけ念のために私は伺っておきたいのですが、先ほどの問答の中では、おもに基準財政需要額が問題になっておりましたが、実は、去年からことしにかけての非常な不景気によって、基準財政収入額に大きな変動があったということが、今日の交付税法律改正だけではなく、他に一般的な不況による金額の変更が大きな要素になっておるのではないか、その点が今説明されておりません。私も、さっきちょっとだれかの資料を拝見しましたが、福岡のごときは、去年は交付税が二十億円であった、ことしは一挙に三十一億になっておるといううことでありますが、これはおそらく炭鉱の非常な不況に伴う法人事業税の減収というようなことが大きな原因になっておるのではないかと思うのですが、この基準財政収入額の変動、こういうものについて、去年からことしにかけてはどのようになっておるか。その点をちょっと財政局長から御答弁が願いたい。
  25. 黒金泰美

    ○黒金説明員 ただいま中井委員からお話がございました通り私も感じております。こういう問題は、今、津島委員からお話がございましたように、いろいろ法律が変りましても、今お話があったように、委員の方自体もその結果が予測できなかった。われわれも国会でこれに参与いたしておりましたが、実は最後の数字を見まして、初めてこんなに大きな変化があったか、わかる程度でございまして、従って、自治庁でいろいろ指導についても、かゆいところに手が届くほどの注意もなかったかもしれませんが、それにいたしましても府県、市町村の方で、どうも法律を読んだだけでは、一向わからないというようなことがありましては、今申し上げたように、最後の数字が出た場合に非常な期待とはずれてしまいまして、予算の編成にも困る、実施にも困る、こういうことが起りますので、でき得べくんば、今お話のように、もう法律をだれが読みましてもそのまま機械的にはじける、政府側から見てもはじけますし、また受領いたします地方団体の方から見ましても、そのまま数字が出てくるというものにぜひして参りたいと思うのでございますが、今お話特別態容補正、こういうものがかりに必要であるといたしましても、それが数字の上で、法律から見ましてすぐにはじけるようなものにぜひして参りたいと思って、事務当局におきましても、いろいろ努力を重ねておる次第で、今のところ、十年もたってなかなか成案が出ない、困ったものだというお話でございますけれども、鋭意そういう方に持って参りたい。ただ今回の問題につきましては、私は、方向としては、この間の国会の改正はけっこうな改正であったのじゃないか。ただその結果があまりに激しい変化を示しましたり、いろいろとそこに起債のそごを来たしましたり、いろいろいたしましたが、今年といたしましては、今財政局長から御答弁いたしたように、あらゆる知恵をしぼりまして、地方団体側がお困りになるところを何とか救済しながら、この結果を見て、来年以降の法律改正その他の検討をして参りたい、このように考えておる次第でございます。
  26. 奥野誠亮

    奥野説明員 地方交付税の問題に基準財政収入額のこともあるのじゃないかという御指摘でございます。全くその通りでございまして、私、津島先生のお話に対しまして触れませんでしたが、その点がやはりかなり大きな問題になっていると思っております。といいますのは、この春、地方税の収入見込額についていろいろ御指摘がございました。五百億円くらいの増収がある、それが過大である、過大でないということもありました。それに対しまして、その五百億円という数字は、実は三十二年度中にふえた数字であって、大体それが横すべりと考えていいのだ、こう申しておったわけであります。今回基準財政収入額計算いたします場合には、この五百億円の増を見込んだ計算をいたしておるわけであります。実際におきましては、一般の団体においては税収入はふえないのであります。昨年にふえてしまっておるわけであります。しかし交付税においては、基準財政収入額が五百億円ふえた計算になるわけでございます。そこで当該団体としては非常な見込違いだ、こういうことが起ってくるのじゃないかと思います。もう一つは、財政収入額計算のうちで大きなウエートを占めます法人事業税法人割につきましては、一応過去の実績から将来の推定をした計算の仕方をしておるわけであります。三月決算までは、八月に決定します場合に税収入がわかっておるわけでありますけれども、それから先のことはわからぬわけでございますから、一応地方財政収入額に見込んでおりました数字に合わせるように、全国的な増減率を乗ずるというようなやり方をするわけであります。しかし、その結果は団体によって違ってくるわけでありますので、翌年度で清算をいたします。見込み過大であった場合には、基準財政収入額について、翌年度の額から減額します。見込みが少かった場合には、翌年度の額に加算をするわけであります。こういう建前になっておるわけでありますが、この建前につきましても、いろいろ議論はあろうかと思います。私個人にも、数年来意見のある問題でございます。こういう点について、たとえば福岡県の例をあげますと、八幡製鉄所が上り坂にあったそのときに算定されます基準財政収入額というものは、とかく過小になります。従って翌年の基準財政収入額にプラスされます。従って交付税は減って参ります。ところが今度は下り坂になって参りますと、算定された額が過小であるよりも過大になってくるわけでありまして、その結果は、逆に基準収入額から減額されるという傾向――かりに過小であってもプラスされる額が少い、こういうふうなことにもなるわけでありますので、二重に影響を持ってくるわけであります。要するに、八幡製鉄所の税収入が減ってきたそういう問題に加えて過大過小でプラス、マイナスされる額が、なお一そう基準財政収入額が少なく算定される方向に影響してくる。その結果は、普通交付税が二重の影響を受けて多くなるということになるわけであります。この点につきましては、なおよく研究しなければならない点だろうと思っております。
  27. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 大体その傾向はわかりましたが、ことしあたりは五百億の自然増といいますか、があるというふうな自治庁のお考え自体に問題があったのです。それからもう一つ、今あなたからお話がありましたけれども、不況に伴う事業税の減収というものは、あなた方が考えておられる以上にひどいのじゃないかと私どもは思っております。ある県のごときは、去年の事業税収入の二三%だなどというひどいところもあるというようなことでありまして、そういうことを考えますと、特別交付税との関連につきまして、先ほどから平均伸びが一一%だ、みんな一一%にならすように努力をする、そういうことも各府県の実際の動きから見て同情に値するし、そういう考え方もいいだろうというふうな気もいたしますが、今はまだ最後的にそういうことまで決定をして打ち出されるというのには、まだまだ時期が早いというような感じもいたすわけであります。この一辺についての御見解。さらにこういうふうな大変動があったのであるから、先ほどもお話があったが、行政水準との関係、貧弱府県行政水準を上げるために大いに交付税考えていくという建前からいくと、どうしてもまた来年いじっていかなければならぬというふうなこともあると思うのであります。ところが、逆にことしはたしか特別交付税の率を八%を六%に下げた。そういう余裕がまたなくなったというふうなことで、非常に矛盾をした事態が錯綜して出ておるように考えますが、来年また交付税の一部改正をお出しになるおつもりであるのか、その辺のところを重ねて伺っておきます。
  28. 黒金泰美

    ○黒金説明員 今配付をいたしまして、ことにいろいろと苦情も多く出ておりますので、そういう個々の問題について具体的に今検討をいたしおります。そういう検討をいたしました上で、今度の改正につきまして――三月に改正をわずらわしたわけでありますが、非常な欠陥があれば、これはまた考えなければいかぬと思いますが、一年の経過だけですぐにそれをやっていいかどうか、そういう点も慎重に考えて参らなければならぬと思いますので、これから十分検討さしていただきたいと思います。
  29. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 最後に、津島さんからもお話があったが、大蔵省が交付税の配付を押えておるというのは、一体どういう法的根拠があるのか、わけがわからぬのですが、その点はどうですか。私どもはこれは前代未聞の大事件だと思うのです。きょうの新聞によると、今度出されるのは五百億くらいですか、それを出さぬということになると、コール市場にも影響があるだろうということを書いておりますが、どうなんですか。あなたが出張しておったからちょっといけなかったんだ、そういう簡単なことじゃないと私は思うのです。この奥にある思想というものをわれわれは考えてみたいと思うのです。そういうふうに大蔵省は何でもかんでも押える権限を持っておるのかどうか。これは大問題だと思います。
  30. 奥野誠亮

    奥野説明員 先ほどお答え申し上げましたように、一応私どもの財政課長と大蔵省の国庫課長との間では、国庫金の状況もあわせ考慮いたしまして、九月三日に交付したい、そういう約束をいたしました。それに基きまして、地方団体にもあらかじめ八月中にその旨を申しておったのであります。ところが総理府での決定当りまして、事前の説明が主計局に対してできていなかった。それで主計局はそれを十分聞きたい、こういうことを言っているわけでありまして、それももっともなことだと思うわけであります。説明をいたしまして十分理解をした上で交付税を交付いたしましても、ほんの数日の問題ではなかろうか、こういうふうに思っておるのであります。
  31. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 数日の問題ですね。これはつまらぬようなことですけれども、地方の自治体にとりましては、私は非常な大きな問題だと思う。同時に、今の内閣の性格を出したように思うので、自治庁は一体何をしているのかということになってくると思うのですが、それは黒金さんどうですか。この支払いをとめたとかとめないとかということ、それはまあ往々にしてほかの事件においてはあると思います。しかし、こういう問題であって、それが大きな世論機関に取り上げられておるということ、ここに問題があるように思うのですが、いかがですか。
  32. 黒金泰美

    ○黒金説明員 大蔵省が国庫金全体の運用をいたしておりますために、大きな金を出すときに、いつ出すかということについて打ち合せをする、これは当然のことだと思います。ただ、今財政局長から御説明いたしましたように、もう三日に出す約束になっておりながら、それが事務上の手違いと申しますか、事前の連絡不十分のためにおくれました点はまことに残念に存じますので、今財政局長から申し上げた通りに、できるだけ早い機会に――これはあしたが土曜日でございますが、来週早々にも出せるようにいたしたい、かように考えます。
  33. 鈴木善幸

    鈴木委員長 午前の会議はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時二十四分開議
  34. 鈴木善幸

    鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  警察に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。丹羽喬四郎君。
  35. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 最近最も問題となっております勤務評定の実施、これの反対闘争につきまして、二、三の質問を関係大臣並びに関係当局にいたしたいと思う次第でございます。勤務評定実施の反対闘争につきましては、昨年来各地におきまして、あるいは福岡その他における一斉休暇闘争を初めといたしまして、いろいろの形で執拗に繰り返し繰り返し行われて参った次第でございます。今日に至りまして、ついにこの十五日におきましては、日教組においては教職員の一斉教壇放棄、一斉休暇闘争ということの指令を発し、そしてまた総評が、彼らの児童に対しまして、就学拒否の態度を明らかにいたしました。まことに重大なる時局に突入して参りましたことは同憂にたえない次第でございます。七の間におきまして、いろいろ警察介入の事件もございました。私たち地方行政審議にあずかる者といたしましては、この地方行財政の大半を占める、ことに今一番苦しい地方財政の血税をしぼっている地方教育という立場から考えましても、まことにゆゆしい事態でございまして、私はこれらの点につきまして、ことに去る八月十六日に和歌山に起りましたあの勤務評定反対のいゆる民主主義教育を守るというあの大会のデモは、ついに流血の惨事を起し、多数の負傷者を出したということとは、まことに遺憾しごくのことでございまして、私といたしましても、これの真相をあくまでも究明いたしまして、そして後日かかる不詳事のなきを期したいと思う次第でございます。  これらの点につきまして具体的に一々承わりたいと思う次第でございますが、さしあたってまず第一番に私の聞きたいと思いますことは、昨日の新聞に報じました、いわゆるこの反対闘争の先端に立ち、中心となって運動を開始しておりましたところの、日教組委員長の小林氏が昨日逮捕されたことでございます。この点につきまして、いかなる理由で、いかなる根拠で、そしてまた逮捕に至るまでの経緯はどういうものであるかということにつきまして、警察庁長官からできるだけ詳しく御説明を願いたいと思う次第でございます。
  36. 柏村信雄

    ○柏村説明員 日教組の委員長の小林氏が昨朝逮捕いたされましたが、これは去る四月の勤評反対の教職員の争議行為をあふりそそのかしたということの証拠固めを、相当長期間にわたって下部の方からだんだん積み重ねまして、ついに小林氏にその容疑ありという判断のもとに、警視庁におきまして、とりあえず任意に出頭を求めて調べをいたしたいという意図のもとに、再三出頭を要求したのでありますが、これに対して一度も応ずることがなかったわけであります。従いまして、どうしても取り調べの必要上、昨朝に至りまして逮捕せざるを得なかったという事情でございます。これは警視庁において捜査を進めて参った次第でもございますので、詳細については警視総監からお答えした方が適当かと思います。
  37. 川合壽人

    ○川合説明員 小林委員長につきましては、本年の四月二十三日に起きました、都教組の行った一斉休暇に対する地方公務員法違反被疑事件につきまして、小林委員長が都教組の長谷川委員長などと共謀の上この挙に出たもの、という容疑が濃厚でありまして、八月の七日、八日以来数次にわたって、あるいは書記長を介し、あるいは家族の方を介しまして、警視庁に出頭方を求めたのでありますが、どうしても応ずる挙が見えませんで、本人もまた各地方に旅行等のことがありまして、事実上非常な東奔西走の形でありましたが、私どもとしましては、いやしくも日教組の委員長でありますので、できる限り任意出頭の形でもってこの被疑事件の決着をつけたいという考えでおったわけでありますが、察するところ、多忙のほかに、どうしても本人が任意でもって出てくるという様子が認められない。そこで、本人が九月の二日ごろ帰京したということが確認されましたので、九月四日の早朝に自宅に出向きまして、本人に任意出頭を求めましたが、自分は目下まだ多忙であるので出頭には応じられない。ただし、君は逮捕状を持ってきたかという質問があったのであります。そこで係官が逮捕状が出ておる旨を告げますと、それでは見せろということで呈示を求められまして、ここに令状を示して、午前七時に自宅で逮捕状を執行いたしまして、取調べのまま本日現刻まで至っておる実情でございます。
  38. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 ただいまの警察庁長官並びに警視総監の御答弁で、大体のことは了承した次第でございますが、そういたしますと、ただいまの逮捕につきましては、一部新聞紙上に、不当弾圧であるとかその他のことが出ておりますが、警視庁といたしましては、たびたび任意捜査によって事件の決着をつけようといたしまして、手を重ねましてやったが、相手方がこれを拒絶したためにやむを得ず逮捕したことと了承してよろしゅうございますか。
  39. 川合壽人

    ○川合説明員 お説の通りでございます。
  40. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 私、いつもこういう事件につきまして考える次第でございますが、こういった社会運動事件につきまして、あるいはただいまおっしゃった公務員法三十七条の違反でございますか、そういったようないわゆる共謀またはそそのかしあふるというような、いわゆる扇動の容疑でもって逮捕になりましたときは、必ず不当逮捕であるといって抗議いたします。また抗議デモをする。これをいろいろの方面に訴えて参ります。そうして参りますと、これが一般の善良なる国民にとりましては、あるいは警察が不当な弾圧をしているんじゃないか、こういったような印象を受けることが間々あるわけでございまして、検察並びに警察当局の苦心もあろうかと存する次第でございますが、これらの印象のままにほおっておきますと、これは法治国といたしまして、ゆゆしきことになると思うわけでございます。これにつきまして、そういったデモあるいは宣伝によりまして、不当弾圧の印象を一面国民に植えつけるわけでございますが、いわゆる検察当局、警察当局といたしましては、これは不当ではないということを大衆に宣伝をすることは、機構からいたしましてもなかなかにできにくいことでございますが、その罪の容疑があったんだということをはっきりいたしますのには、どういたしましても、これは公訴が完全に維持できるということがまず第一番であろうと存ずる次第でございます。ただいま問題になっている小林氏を逮捕した次第でございますから、公訴維持の点につきましては、もとより確信があると思う次第でございますが、それらの点につきまして、事をはっきりさしておくために、法務大臣から一つその点につきましての所信を伺いたいと思う次第でございます。
  41. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま警察当局から御説明いたしましたような次第でございまして、ただいま警視庁においてこれを取調べ中でございますから、今後の取調べによりませんと、事柄の性質上、明確に見通し等申し上げることはできないわけでございますが、先ほど来申しておりますように、容疑をもってやむを得ず逮捕をし、かつ取調べ中である、こういうことでございますから、今後の警察の取調べに、今のところは一応待ちたいと考えております。
  42. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 ただいまの法務大臣の御答弁、大体は了承した次第でございますが、ただいまの御答弁ではっきりいたしましたのは、容疑は十分あるということでございます。私、常々考えておりますのに、いわゆる日教組の性格でございますが、これらは今さら言うまでもなく、各府県の教職員組合の連合一体でございまして、明らかに公務員の団体であることは間違いのないところでございます。しかもまたその公務員が、教職という特殊の、国家にとりましては最も大事な任務を持っているところの役職にある者の団体でございます。従いまして、この日教組に属しておるところの教員の人々も、憲法第十五条にいう全体のために奉仕をして、一部のものに奉仕してはならぬという規定は明らかでございます。また公務員といたしまして、あるいは怠業、あるいは罷業をしてはならぬということは、はっきりと書かれていることでございます。今回の勤務評定の実施、これに伴うところの反対闘争を見ますと、この勤務評定の実施ということは、はっきりと法律にうたわれている事実でございます。この事実に対しまして、あくまでも実力をもってこれを阻止しよう、しかも、場合によっては容疑の域に踏み込んでもこれを阻止しようとするところに、私は非常に大きな問題があるんじゃないかと思う次第でございます。今さらに言うまでもなく、日教組のいわゆる教員の倫理綱領には、社会主義社会実現のための歴史的課題を与えられている任務を持っているというようなことをはっきりと出しております。私たち今日、この憲法十五条の規定からいいましても、全体のために奉仕してもらわなくてはならぬ。国民の大多数が、全部が社会主義社会の実現を念じているかどうか、これが非常に問題でございます。自由に投票し、無記名で投票する選挙におきましても、国民の全体が、国民の大多数が社会主義社会の実現を希求しているということは、絶対に言い得ない今日の状況でございます。このときにありまして、この教職員組合、この公務員の団体が、その指導精神に、はっきりと社会主義の社会の実現を企図している。その方針によりまして青少年を教育するというところに、非常に大きな問題があるんじゃないかと私は思う次第でございます。もっとざっくばらに言いますと、私たちが私たちの税金でもって、私たちのかわいい子供を教育してもらおうというのが、一つのある片寄った方向に教育をされていくというところに非常に問題があるのでございます。しかしながら、そのことは思想の自由でございます。これが直ちに法に触れるとは言い得ないのでございますが、これの思想を宣伝をいたしまして、そうして自分の思想と相合致しないところのもの、はっきり申しますと、ただいまのわが税政府あるいは現文部省当局に対しましては、はっきりした敵対の態度を持ち、そうして国民の大多数の制定した法律に対しまして、自分たちの多数をたのんで、そうして多数の圧力によりまして実力をもってこれを阻止しようというところに、私は根本的な大きな問題があろうかと思っている次第でございます。ことに私は、本日の新聞を見ましてまことに驚いたのでございますが、あらかじめ自分たちのこの多数運動、大衆運動におきまして、実力行使を前提として、あるいは警察違反の容疑に触れるということを前提といたしまして、救援資金に何と二十一億円という多額の資金の募集計画を考え、ここに書いてありますように、もし犠牲によりまして教職を離れた場合においては、一人五百万円という多額の金をこれに支出する。それだからあとは心配するなということで、えらい資金動員計画のもとにおきまして、どんなに反対がございましても、自分たちのこの希望を達成しようということが出ている次第でございますが、しかもこのことは、この新聞で見ますると、警察庁の調べということで出ております。これらの点につきましては、どういう救援規定というもので実際にこういうことが行われているのであるか、そうしてまたこれらの資金というものがどういうところから出るのであろうか、またどういうところから募集するつもりであるかというようなことにつきまして、もしおわかりでございましたら、できるだけ御説明願いたいと思う次第でございます。
  43. 柏村信雄

    ○柏村説明員 けさの新聞に出ておりましたことは、警察庁といたしまして特別に発表いたしたものではございません。しかしながら、われわれの得ておりまする情報におきましては、おおむね新聞に記載されていることと同様の情報を入手いたしておる次第でございます。この資金の出所ということについては、組合員各自から取るというのが建前のように聞いております。
  44. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 これらの資金というものは全部組合員の醵金から出るということでありますから、これは自由意思で何ともいたし方ない次第でございますが、少くとも私たちは、私たちのかわいい子供のために税金を納めるという――今日言うまでもなく、法治国のもとにおきまして、法律を守り、社会秩序を守っていくという上において、もしそこに意に満たない法律がありましても、所定の手続を踏んで、そうして改正に向うということが民主主義政治を守る唯一のルールであるにもかかわりませず、自分の意に満たない法律を撤回させるために、いろいろの運動はありましょうが、いわゆる警察犠牲者を出す、容疑者を出すというようなことまで覚悟をいたしまして、そうしてそれらの運動を推進するというようなことに、われわれの税金を納めるということでございましたならば、まことに心外にたえない次第でございます。現に各新聞におきましても、今日の闘争におきまして、どういたしましても私たちの子弟だけはこういった闘争に巻き込んでくれるなということが、あらゆる父兄の層から出ている次第でございます。しかもこれらの点につきまして、どういたしましてもまだそういうふうな危惧があるといたしましたならば、これを鎮圧し、これを取り締るにはどういう方法があるかという問題でございます。私は、後ほどにおきまして、和歌山の流血事件につきまして詳しく御説明を伺い、私の意見を申し述べたいと思う次第でございますが、少くともこれは日本国民同士の問題でございます。そうして幾ら多衆行動がございましても、またそういったデモ行為や集会があるといたしましても、再び流血の惨事を見るというようなことをなくしていただきたいということが私の念願でございます。これにつきましては、もとよりそれを指導しておる指導者に対しまして、強い反省を国民として要求することは当然でございます。今日、最も自由を確保されたるところのわが日本の国におきまして、いたずらに極端なるところの議論を戦わし、真に平和であるべきところの国民を闘争の渦中に連れ込むというようなことにつきましては、断固としてこれを排除するという為政者の強い態度と、指導者の強い反省と良識とを望むことはもとよりでございますが、これらの事態がデモ行進その他の場合にできました際に、警察当局は、どういう措置でかかる不法行進というものを排除する気がまえがあるかという問題でございます。実はこの点につきましては、後ほどこれは伺いたいと思う次第でございますが、先般和歌山に起りましたところの流血の惨事で、お互いに負傷者が出た。それに対して不当弾圧抗議デモをする、不当逮捕者釈放の抗議デモをするということをやっている次第でございます。これらのデモ行進のときにおきまして、いわゆるジグザグ行進の禁止ということは当りまえなことでございます。いわゆるジグザグ行進をすることによりまして非常に交通の妨害をする。現に和歌山のあの事件のときにおきましても、読売新聞その他に、あの当時のありさまを見て市民の一部は泣いているという記事も出ている次第でございます。またラッシュ・アワーなどにかかりましたならば、非常に市民も迷惑をこうむるのであります。それが苛烈になりますと、狂躁に流れやすいことは当然でございます。またきょうの新聞にも出ておりましたが、ややともいたしますると、血気にはやりまして渦巻行進を行う。そうして警備の警察官をその渦巻の中に巻き込んでしまってけがをさせる。向うの人もけがをするという事態に立ち至る。これはまことに残念しごくなことであります。私はそうした事態をなくさせるために、そういった事態を起させる責任者につきましては、このジグザグ行進を許可しないという態度がとれないものかと思う次第でございますが、今日のところ、遺憾ながらまだまだそこまではいっていない状態だと聞いている次第でございますが、これはどういたしましても、行進は自由でございます。憲法で認められた自由ではあるけれども、それが平穏に、たとえば最近行われておりまするところのメーデーの行進のように、市民も楽しげに笑って見ている、警察官も楽しげにこれを警戒しているというふうな事態に持っていくにはどういうふうにしたらいいか。これはもとより指導者の良識に待つところでございますが、万一それができなくて、指導者がこれに対しまして違反行為をする、デモ行進をする、あるいは渦巻行進をするといったような場合に、向うが力でもってやってくるというのに対しまして、こっちでも棒でもって防御する、あるいはまた引き抜きをやるといったようなことでなく、もっとその違法の行進に対しまして、これを鎮圧せしむることができるような特段な装備であるとか、あるいは方法であるとか、こういったものがないものであろうかどうかということにつきまして、警察当局のお考えを承わりたいと思う次第でございます。
  45. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいま御指摘になりました和歌山における乱闘と申しますか、流血を見まして負傷者を多く出ました事件、これは私どもまことに遺憾なことに思っておるわけであります。われわれといたしましては、できるだけそういう事態のないように、事前にしばしば注意をいたし、また公安条例による許可申請に対しましても、そういう事態が発生するようなおそれのないように、いろいろと条件をつけておるわけでございます。しかしながら、これが平穏に行われる場合ももちろん多いのでございますが、和歌山の事件のように、相当過激分子がその中におったというような場合には、許可の条件も無視し、警察の警告も聞かないということで、あくまでも自分たちの勝手なやり方をやるというような場合も間々あるのでございまして、こういう場合にも、できるだけ犠牲を少くするという方法については、かねてから研究もし、苦心をいたしておるわけであります。しかしながら、やはりどうしても聞かれない場合に、ある程度物理的な力というものが警察力によって加えられてこれを規制するということもやむを得ない場合があると思うのでありまして、不幸なことに、和歌山における事件は、そうしたことによって双方に多数の負傷者を出すということになったのであります。われわれの気持といたしましては、できるだけ指揮者、指導者の良識、また構成員のその良識ある指揮者に従う規律ある態度というものを期待してやまないのでありますが、不幸にして秩序を乱すような場合におきましても、できるだけ犠牲を少くするような方法、手段を考えてこれに対処するということは常々指導をいたし、また第一線においても研究されておるところであります。今後は装備とかあるいはそういうものに対処する方策ということについて、さらに研究を進めまして、警察として手落ちのないように、また一般の善良な市民に迷惑のかからないように、犠牲をできるだけ少くするようにということについては十分研究いたしたいと思いますが、願わくは、行為者というものにおいても、できるだけの良識を切望してやまない次第であります。
  46. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 ただいまの警察庁長官お話によりまして、装備をできるだけ工夫をする、そうしてまたその警戒方法につきましても、特別に工夫するという御答弁でございましたが、ぜひその点につきまして、特段の御工夫をいただきまして、いゆる警察官も傷つかぬ、また誤まってそういうことをしたという者も直ちに鎮圧ができる、しかも両方とも傷つかぬというふうな点、これはなかなかむずかしいことでございますけれども、そういう点につきまして、格段の御工夫のほどを一つお願いいたしまして、この問題につきましてはこれだけにしておきます。  第二に私が伺いたいのは、一昨日の新聞に、東京都庁の何とかという教育長に面会を強要して、高等学校の学生が五十人とか六十人とかこれが押しかけて参りました。教育長が不在でございましたので、その玄関先にすわり込みをしてどうしても立ちのかない。そうしてやはり警視庁から部隊が出まして、実力でこれを立ちのかしまして出たという記事でございました。私ども、最近の世相に非常に慨嘆これ久しくしている次第でございますが、今日一番の問題は、こういったまだ未成年学生、未成年生徒がそういったデモに参加をいたしまして、そうして教育庁にまですわり込みに行く、こういう事実はまことにゆゆしき事実と考える次第でございます。私たちは、ともかくも学生のうちは、少くとも成年になるまでは、自分に与えられたるところの授業に精進をしてもらう。そうしてりっぱなる判断がついてから政治活動もどんどやってもらう。もとより憲法で、満二十才になりましたら選挙権を持っている次第であります。従いまして、私は学生の政治運動を云々するものではございません。しかしながら、そういった未成年者である高等学校の生徒が、そういったようなデモ行為を行うということは、私は容易ならぬことだと思う次第でございます。これらの点につきましては、われわれといたしましても、文教行政の上からも容易ならぬことと思う次第でございまして、これらの者の誤まれる行為をなからしめるために、文教行政といたしましては、どういうふうにしたらいいかということにつきましての文部大臣の強い御確信と、そしてまたこれらを指導しあやつっておりますところの背後の関係、あるいはまたそれが日教組とどういうふうな関係にあるか、全学連とどういうふうな関係にあるか、そしてこれらの学生の家庭というものはどういうものであるかというようなことにつきまして、できるだけ詳細に警視庁あるいはまた警察庁から御答弁を願いたい、こう思う次第でございます。
  47. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 高等学校の学生の東京都の教育長に対する事件につきまして、私はあの新聞記事を見ましてがく然といたした次第であります。また同時に、文教行政を担当する者といたしまして、国民の皆さんに対しましてもほんとうに申しわけのないことと思っておる次第であります。申すまでもなく、精神的にも、あるいはからだの上から申しましても、一番発育盛りで、教育上一番気をつけなければならぬ年ごろとも考えられる次第であります。そういう意味におきまして、われわれといたしましては特に気をつけて参らなければならない。あの学生諸君の状況を見ましてまことに何とも表現のしようのない心持になった次第でございます。事態が一体どういうところからこういうことになっておるのか、その背後関係は一体どういうふうなものか、どこの学生であるのか、あるいは教師との関係はどういうことになっておるのかというふうなことを十分取り調べまして、その上でこれに対する今後の措置というようなものについても誤まりなきを期して参りたいと思うのでございます。特に高等学校教育につきましては、さらに一そう内容の充実、改善等に努力して参りたいと考えます。
  48. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 ただいまの私の質問中、文部大臣の御決心のほどは了承した次第でございますが、この学生をそういった運動にかり立てましたところのいろいろの要因あるいは関係団体とのいきさつ、それからまたその学校の状況というようなことを、警察庁あるいは内藤局長の方でおわかりでございましたら、少し詳細にここにおきましてお知らせを願いたいと思う次第でございます。
  49. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいまお尋ねの点、詳細にお答えするほどの調査は今できておりませんが、参加いたしました人員は大体四十名くらいではないか、帽子の記章その他から判断いたしまして、参加した高校生は、これはあるいは人のものを借りてきたかもしれませんので、その点ははっきりいたしませんが、そういうことで想像いたしますと、教育大の付属高校、都立大の付属高校を主力といたしまして、そのほかに早大の高等学院、新宿高校、日比谷高校、それから西高校等の生徒で、いずれも全日制の生徒と思われるのであります。その背後関係も目下詳細には判明いたしませんが、現場では高校生だけが一団となって都学連とは別行動をとっております。都学連の方から統一行動を申し入れたそうでありますが、これに対しては、独自に行動するというふうにしてこれを拒否をいたしておりますので、直接的には全学連との関係は直ちには考えられないのでありますが、これら高校生の一団の中に社会主義学生同盟、これは前の反戦学同でありますが、これの執行委員であります陶山健一、小野田猛史、同じく徳江和雄というような大学生が入っております。それでこれらの高校生の行動を指導していた模様であります。これらの参加高校にはいずれも社学同の文部がございますので、そういう分子によって、いわゆる社学同の指導によって高校生が集められ、ああいう行動に出たのではないかというふうに思われるのであります。現在社学同の数は大体千五百名といわれておりますが、その大部分が党員またはシンバであります。中央役員の約半数が党員であるというふうにいわれておるのであります。現場におきましてこういう代表たちが申しておりますのは、実力をもってしても勤評を阻止しろというようなアジ演説を行なっております点などから考えまして、彼らの行動は、単なる陳情ではなくて、やはり撤回交渉の目的をもって集団的に行動を起したものというふうに考えておる次第でございます。
  50. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 ただいまのお話でございますけれども、その社学同の生徒というものは、大体父兄とかあるいは親戚の者とか、そういった方がやはり共産党関係の者であるのか、あるいはまた指導する先生に特別にその方面の指導をしておる者がいるのか、これはどういう点でございましょうか、その点についておわかりになりませんか。
  51. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいまお尋ねのような点まで詳細に私ども承知いたしておりません。
  52. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 私は、寡聞にしてこれらのことはあまり詳しくなかったものでございまして、今日の新聞を見ましてまことにほんとうに驚いたものでございます。これらまだ未成熟な学生か実力行使の行動にまで移るということは、これはまこにゆゆしき問題でございます。今日父兄は、かくすれば、ただ反対闘争を非難するはかりでなく、わが国の文教行政の根本まで、こういうようなことでほうっておいて日本はどうなるだろうかという危惧の感を私は持ってくると思う次第でございます。この詳細に、文部省、警察庁ともに協力なさいまして、それらのよって来たる原因を突きとめていただきましてこれらのことが再び起らないように、できるだけ一つ御工夫を願いたいと思う次第でございます。次に私は、和歌山の先般起りましたるいわゆる流血の不祥事件につきまして二、三お伺いをしたいと思う次第でございます。これらの点につきましては、先ごろ文教委員会におきまして一部この問題が審議せられましたことがございますが、わが地方行政委員会といたしましても、この地方教育ということは最も重大なる問題でございます。あの際におきましては、まだ日が浅くて、いろいろ調査の不十分な点もあったように思う次第でございますが、この際、もう一度警察庁長官から事の次第てんまつを詳しく一つ御披露願いたいと思う次第でございます。つきましては、これらのことは十五日の大会から引き続きまして起った次第でございまして、十五日の大会に至るまでの経緯並びに十六日のあの不祥事件ということにつきましていろいろ御説明を願いたい。これはいろいろ見方によりまして非常なデマも飛んでおりますし、また諸説ふんぷんたるものがございます。この点につきまして、十分調査の結果をここで鮮明されたいと思う次第でございます。
  53. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいまお尋ねの和歌山県におきまする八月十五、十六の両日における民主教育擁護国民大会の状況と、これの一環として行われました八月十六日におきまする勤務評定阻止平和と民主主義を守る青年、婦人、学生全国大会、むしろこの十六日に非常に大きい問題を起したのでありますが、この概況をそれでは御説明申し上げたいと思います。  日教組が九月中旬から本格的な実力行使を行うという計画をいたしておりますことは、御承知通りでありますが、その前段的な闘争の一環といたしまして、民主教育を守る会というもの、これは総評と日教組が中心でございますが、その主催によって民主教育擁護国民大会というものを開くことに相なり、和歌山県下二十五カ所に四万六千名、これは全国から総評傘下の各単産であるとか、地評代表者であるとか、日教組、文化人、その他和歌県下の教組、地評、父兄というようなものを集める予定で、四万六千名を動員するという予定を立てたわけでありますが、実際に集まりましたのは、われわれの調べによりますと、第一日の十五日は午後一時から五時まで十六カ所において分散会が行われております。その後五市一町において決起大会とかデモ行進が行われたのでありますが、その参加者数は一万名をこえる程度、従って動員計画の二二、三%というもので、むしろそういう点では低調であったというふうに思われるのであります。それから第二日の十六日は、和歌山市の労働会館など九カ所で分散会が行われ、その参加者は二千八百名という状況でありました。この十五、十六日の民主教育擁護国民大会というのは、あまり大きい事件を起しておりません。ただ、十五日にデモ行進をいたしまして、その際、蛇行進に移った際に警察による実力規制が一時行われております。その際に警察官が十七名ほど軽傷者を出しておるわけであります。このときはさほど積極的な抵抗もなくて、検挙者もないという状況であったのであります。ところが、先ほど申し上げました十六日におきます勤務評定阻止、平和と民主主義を守る青年、婦人、学生全国大会というものは、勤評反対の国民大会の行事の一環として青年学生勤評反対共闘会議、これは全学連とか社会党の青年部というものが中心でありますが、これが計画をいたしまして、十六日に和歌山市の城北小学校において約九百名が参加して開催されたわけであります。そして午後六時二十三分からデモに移り、そしてこのデモがいろいろの不祥事件を起す契機になっておるということを申し上げたいのであります。  デモ行進の状況でございますが、公安条例によりまして、デモ行進の許可は、午後四時から午後七時の間ということで許可をされておったわけであります。ところが、大会が終了いたしましたのが午後六時二十分でございまして、予定コースの行進には、大体一時間を要するというふうに認められますので、所轄の警察署長は、午後六時ごろ会場に参りまして、午後七時以降に及ぶようなデモ行進は認められないという旨を警告をいたしております。ところが、先ほど申し上げましたように午後六時二十三分に、これは約五百名参加でございますが、会場を出発いたしまして、市電の宇治停留場付近で軌道上を約四分間ほどジグザグ行進を行い、この間電車など九台が立往生しておったという状況が一つあるのであります。このときはそれで済んだのでありますが、午後六時五十三分ごろに本町二丁目、これは和歌山市の最も繁華な町でございますが、その付近にかかりますと、再び旗ざおを横にいたしまして、道幅一ぱいのジグザグ行進を行うようになった。警察広報車が幾たびか警告をいたしておるのでありますが、これを無視してジグザグ行進を行う。その間に通行が著しく妨害されておるのであります。ちょうどこのときはお盆でありまして、相当な人出があったということから、さらに交通の妨害事案がはなはだしかったということが言えると思います。ちょうどそういうことでがたがたいたしておりますときに、デモ隊と同じ方向にスクーターが走ってきた。そういうジグザグをやっておりますので、うまいようにスクーターが目的通り走れない。少しよたよたしておったのだと思いますが、そのスクーターをデモ隊員がじゃまだということでけった。それでそのスクーターに乗っていた人間が非常に憤激いたしまして、デモ隊にかかっていった。そのスクーターに乗っておったのが一人で大ぜいの中にかかっていったわけでありますから、自分をけった者に文句を言うつもりでかかったわけでありましょうが、大衆の中に巻き込まれまして、これはやはり危険だということで警察官が一個分隊ほどこの救出にかかった。たまたま折悪しく大体時を同じくいたしまして、日本教育対策協議会、これは勤評賛成の運動をいたしておる団体でございますが、これの宣伝カー、オープン・カーでありますが、これが今度反対の方向からやってきた。そしてこれは初めは同じ方向に行ってお互いに――片方は勤評反対であります。片方は勤評賛成でありますから、お互いに言い合いはあったようでありますが、警察で、不祥事案が起らないように警告をいたし、そのまま通り過ぎたのでありますが、これがまたずっと行って引き返してきたわけです。引き返してきてデモ隊のところに差しかかった。今度は道幅一ぱいジグザグ行進をやっておりますので、そこを通り抜けられない。デモ隊によって十メートルくらいこれが押し返された。また一たん押し返されましたこの宣伝カーが、さらに角度を変えまして進行してデモ隊に接触する。双方で前々からお互いに反対の立場でありますので、そこで自動車に乗っておる者とデモ隊との間に旗の奪い合いというようなものがあって、また混乱が増したわけであります。そういうような状況でありますので、六時五十五分ごろに警備部隊が現場に出動いたしまして、この混乱の収拾、それからジグザグの制止に移ったのでありますが、この際にデモ隊の方で旗ざおなどを振り回して警察官になぐりかかるという状況がありました。あるいは付近の工事場にあった丸太を投げるような暴行がありまして、この際に公務執行妨害罪あるいは傷害罪の現行犯で五名を検挙いたしております。この混乱のために双方に多くの負傷者が出たわけでありますが、とにかく警察部隊の実力排除によりまして、デモ隊はそこから脱落する者がかなりあり、先ほど五百名と申しましたが、その後は三百名くらいになりまして、今度は道路の右側を平穏に行進して参ったということであります。  その後午後七時ごろ、これが先ほど申し上げました公安条例によります許可の時限でございますが、デモ隊は医大の付属病院前に差しかかっておったわけであります。警察が広報車でこれに対して解散を警告いたしたわけであります。ところが、七時五分ごろに、その医大付属病院前で停止いたしまして、今度は警察署に対して抗議するということで労働歌を高唱し気勢を上げるというような状況になりまして、この際見物をいたしております一般市民、約千名ほどおったということでありますが、こういう一般市民の間から、病院の前でやかましいぞ、常識がない、それでも教員か――一般市民は先生だと思っておる。先生はそう大ぜいおったんじゃないと思いますが、先生がこんなことをするのはひどいということで非難をしたのだろうと思います。それでやっぱり腹にちょっと気が引けたと見えて、そこで沈黙した。  そこで一たんその問題は済んでおるのでありますが、七時三十七分ごろに、このあとに残りましたデモ隊三百名程度が歩道を行進して参りまして、和歌山の西警察署に到着して、表玄関から押し入ろうとした。これは警察の部隊によって制止されております。従いまして、中に入れないので、警察署前の歩道に署を後にして大体六列横隊くらいで今度はすわり込みに入った。この西警察署におきましては、警察の前で三百名もそういう連中がすわり込むということでは非常に工合が悪いということで、マイクを通じまして百数十回にわたって解散するように警告をいたしております。しかし、これには一向に応じない。その間に見物中の市民が、ここにもたくさんの市民が見ておったのでありますが、デモ隊に対して罵声を送る、あるいは砂や石を、これは一時的でありますが、投げるというような行為がありまして、警察はこれを制止いたしております。九時二十一分ごろになりまして、日本教育対策協議会、先ほどもうしました勤評賛成側でありますが、この責任者の橘好道らが十三名ほど、そのすわり込みの現場に来た。そしてここでまたデモ隊との間にお互いに言い合いが起ったわけであります。こういうふうにして民衆も非常に憤激する、ことにこういう考え方の違う者、前々からお互いにいがみ合っているような連中までやってくるということになれば、いかなる乱闘にならぬとも限らないということで、警察としては、その教育対策協議会の連中を、小ぜり合いに対して制止をいたしておりますが、先ほどから申しますように、幾たびかの解散警告にも応じないので、とうとう九時二十五分に至りまして、このすわり込みの排除に警察が移ったわけであります。ところがこの際に、また片方はスクラムを組んで、なかなか解散しようとしない。それを一人ずつ引き抜くということで、その際また相当にもみ合いが行われまして、若干の負傷者を出しておるわけであります。そういうことで、結局九時四十五分に至りまして全員の排除を終了いたしておるわけであります。デモ隊は、一たん筋向いの市役所の前庭に集合いたしまして、さらに三々五々教育会館の方に向って、そこで解散したということです。あらましの状況を申し上げますとそういうことであります。
  54. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 ただいまの長官の御説明で大体はわかったわけでございますがこの点につきまして、私がもう少し詳しくいろいろ聞きたいと思いますのは、これにつきまして非常な反対の宣伝が行われているわけでございます。ちょうど流血の事件が行われましたあとに、勤評反対、民主教育国民大会実行委員会並びに八・一六国民大会不当弾圧糾弾委員会の名前で、和歌山市内に非常なビラがまかれておる次第であります。これによりますと、「皆さんこれが権力の正体です」という大きな見出しで、その中に、「その夜の西警察署前道路は、頭を割られ、体をたたきつけられ、胴をけ上げられた若者たちを、追い回す一千名の警官隊と暴力団の暴逆で、全くの修羅場と化しました。」、こういうようなことが書かれております。私は、今日民主主義政治の世の中におきまして、ことに公衆の面前におきまして、警察がかかる暴逆なことをするということはとうてい考えられないことでございますが、こういったような宣伝を一方においてはしているわけであります。  そもそもこの事件の起ります因というものは、初めから、私が向うに参りましていろいろ聞いたところによりますと、会場の貸与の問題につきましていろいろトラブルがあった。教育委員会側におきましては、会場は貸与しない――そういった勤務評定実施の既定事実を阻害するような大会には貸与しない。それに対しまして実行者側は、ぜひ貸してくれ、貸してくれないときは――大ぜいの人が集まるのであるから、休憩所でもいいから貸してくれ、人が集まって、万一炎天下におきまして倒れたらどうする、休憩所でいいから貸してくれ、こういうことをたびたび折衝した。その折衝をした結果、それでは仕方がない、休憩所だけなら貸してもよいだろう、そのかわり、休憩所におきましては休憩所というビラを張る、そして赤旗だとか、宣伝旗とか、スローガンとか、そういったものは一切張ってはならない、喧騒のことにわたってはならぬ、労働歌なんかを高唱してはならぬ、いろいろの条件をつけまして、そうして貸したということを聞いている次第でございます。これが直ちに破られ、休憩所というものが会場になり、演壇が設けられ、スローガンが張られ、そして教育委員会が再三注意をいたしましたが、馬耳東風でもってこれを行なっておる。またデモ行進につきましても、あるいはジグザグ行進はいけない、あるいはまた渦巻行進はいけない、あるいはまた喧騒にわたるようなことはいけないというようないろいろな制限を行なった。そうしてまたこれにつきましては時間はぜひ厳守してもらいたい、夜間にわたっては困るということも再々言ってある。ところが、十五日もそうでございましたが、十六日におきまして非常な事件になったということは、私は、これらの点につきましては詳しくは知らないのでございますが、現地の人の話を聞きますと、十五日は警察が低姿勢であった、隠忍自重して警棒を持たなかった。それで警察官のみが、捜査課長のごときはうしろから頭を割られ、あるいはまたずいぶんけがをする者が出た。十七人も負傷者ができた。それでとどまったわけでございますが、割合に十五日は平穏に行われた。しかしながら、十六日は平穏でなくて、非常なああいったような事件、先ほど警察長官がお述べになりましたようなジグザグ行進が至るところにおいて行われた。その当時の事情につきまして、読売新聞の十七日の記事によりますと、非常な混乱の状況が如実に書かれております。簡単でございますからちょっと読んでみますと、「同所は和歌山市内一の繁華街でバス、電車などストップ、土曜の夜に月おくれのお盆でにぎわう市民約千人は商店の軒下に避難、女子供の中になぐり合う姿に泣き出す者もあった。」といっております。こういった普通民主主義国家まで行われないようなことが行われる一つの要因というものは、私は十六日のデモは指揮者の性格いかんにあったのではないかということを想像する次第でございます。伝え聞くところによりますと、十五日におきましては、いわゆる全学連の人たち団体行進の後部にありまして、それほど全面的指揮はとっておりませんでしたが、十六日におきましては、一番先頭部におきまして全体を指揮した。しかも、そのときにだいぶおそくなって、警察署長が、もう時間が切れるという再三の忠告をいたしましたので、社会党県連の方々は、もう時間もおそいし人数も少いから、今日のデモ行進はやめたらどうだろうと言うのをさえぎりまして、どうしても行うのだといって強行したところに、あの悲惨なできごとが起ったのではないかと考える次第でございます。いわゆる良識のあるところの社会運動家の指導が後退いたしまして、先般の六月の初めでございましたか、共産党におきましても、会議室を占領いたしまして、幹部を不法監禁してなおもはばからないといったような血気にはやりました全学連の一派の人々が指導したところに、私は今回の不祥事の大きな原因があると思うのでございますが、その点につきまして、警察当局あるいはもし公安調査庁からおいででございましたら、それらの点につきまして全学連の今回の運動と勤務評定反対――日教組が先頭に立ってやりますこの運動との関連性、相互の人的関係あるいは総評との関係につきまして、少しく詳しく御説明を願いたい、かように思う次第であります。
  55. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいまお述べになりましたように、確かに十五日の集まりと十六日の集まりは、質的に非常な違いがあると私は考えております。十六日におきましては、約五百名がデモに参加いたしておるわけでありますが、その主力は全学連であります。われわれの見るところでは、五百名のうち大体三百名くらいは党員ないしシンパであったのではないか。こういう者によって指導され、行動されたことが、私は、ああいう非常な過激な動作になり、また警察の警告、制止も聞かないで乱闘状態を現出したというふうに考えておるわけであります。この点は丹羽委員のお考えと全く一致する次第でございます。今度の日教組の勤評反対運動に対しましても、全学連は、やはり一番過激に行動しているように私は考えます。
  56. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 ついでに、と申してはなんでございますが、ただいま言われました日教組、全学連の間には有機的な関係はございますか。あるいは総評との間にございますか。その背後と申しますか、その人たちが共産党に入党しているかどうかという関係でございます。
  57. 柏村信雄

    ○柏村説明員 日教組と全学連とは一応共闘的態勢でおると思います。しかし、全学連は御承知のようにたしか執行委員というのは三十名だったと思いますが、そのうち二十数名が党員です。従って全学連に参加している者がすべて党的色彩を持っているとは申しませんけれども、少くともその指導層においては、共産党の者たちによって牛耳られており、その指導が非常に徹底して、全学連の動きというものがそういう過激なものになってきているのではないかというふうに考えます。しかも全学連を指導しております党員と申しますのは、現在の共産党の主流の行動にもあきたらない、これではなまぬるという考え方の者によって指導されておるということで、むしろ共産党の現在の主流派がこれに手を焼いているというような状況でありまして、それがいろいろな運動に過激的な大きな要因を作っているのではないかと思います。
  58. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 ただいまの長官の御説明によりまして、今回のあの和歌山の不祥事件が、悲しいかなというよりも、どうしてもああいうふうにならざるを得ないということがはっきりつかめたような気がする次第でございます。ただ、もう一点聞きたいのは、先ほど私が申し上げました警察官とのいわゆる負傷者の問題と申しますか、流血の問題でございます。これにつきましては、聞くところによりますと、被害者側から警察を告発しているというような事件もあるやに聞いている次第でございますが、警察も六十人の負傷者を出し、実行者側も百名からの負傷者を出しておるということをいわれておる次第でございます。しかもこの点につきまして、警察は右翼と結託をしてやったというようなこともいわれております。私は、もとよりそういうことは信じませんけれども、そういうことをいわれている実情でございます。私は、それらの点につきまして被害の調査を早くなさっていただきまして、そうして真相を明らかにしていただきたい。これが民主政治擁護の上におきまして最も大切なことだと思う次第でございます。ことに和歌山の市教組の小林という委員長が、後部から頭を割られ、あるいはまた警察のびょうのついたくつでもって踏みにじられ、その跡がついているというようなこともいわれている次第でございます。また、説によりますと、それらの被害を調べに行きましても、病院に組合の連中が蟠踞いたしまして、医者にも会わせない。警察はすごすご帰ってきたというような話も聞いているのでございます。万一そういうことでございましたならば、これは親告罪ではございません。傷害罪である。その被害の調査も警察ができないというふうなことがございましたならば、これはゆゆしき大事だと思うのでございますが、それらについてもう少し真相をお話し願いたいと思うのでございます。
  59. 柏村信雄

    ○柏村説明員 まず右翼との関係でございますが、確かにそういうことを言っている向きもございます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、勤評賛成派の連中もあそこに入りこんでおった。それからこれと別に右翼団体に属する連中も数十名和歌山に乗り込んでおった。そういうことで勤評賛成派と勤評反対派ないし右翼の間に、いわゆるいがみ合い的な状況があったということはいなめないと思いますけれども、警察は決して左右両派に片寄るものではございません。警察の信条は、不偏不党、厳正公平に中正の道をたどるということでなくてはならないし、事実和歌山においてもその通りの行動をいたしておるのでありまして、警察としては、決して右翼と結託して勤評反対に対して対抗したというような事実は全然認められない次第でございます。  なお、十六日の負傷者の問題でございますが、警察官の方は当日六十六名のけが人を出しております。これはどの程度のけがであるということがはっきりいたしておるわけでありますが、デモ隊の方の負傷者につきましては、日教組の書記次長が発表いたしましたところでは、負傷者百四十五名、うち重傷者二十一名という発表になっております。これにつきまして、警察といたしまして、負傷者が入院したと見られる病院その他について調査をいたすべくおもむいたのでありますが、ただいまお話しのように、絶対合わせない。警察に対しては、負傷の状況についても、口を緘して語らない。ただ松岡医院というところにおいて、医師が口頭で、堀江何がしという者について、脳底骨折の状況だということ、相当重傷であるということを言われたというだけでありまして、その他については詳細が判明いたさないのであります。われわれも非常に遺憾に思っておりますが、現在までに警察で確認をいたしましたのは、ただいまの堀江は、医師の言による以外はわからない。実際に確認をいたしたのは、逮捕した三名、これは現実に警察の医者が見ておりますからわかるわけでありますが、一人は、和歌山市の教組の書記長の丸山輝夫、これは肋骨骨折、左眼打撲傷、左足関節捻挫ということで、治療約二週間ということになっております。これは、先ほど申し上げました日本教育対策協議会に参加いたしております太田垣泰明という者が与えた傷であると考えられるわけでありまして、太田垣泰明に対して丸山輝夫が告訴をいたしておりまして、その太田垣泰明を、この告発状に基きまして逮捕をいたして取調べをいたしておるわけであります。ただいま申しました傷の程度というのは、太田垣泰明に対する傷害罪告発状に添付された医大付属病院の診断書によってであります。そのほかに、公務執行妨害罪で検挙いたしました井上章、これは頭部打撲傷、右指擦過傷全治一週間、同じく公務執行妨害罪で検挙いたしました早大生の松永毅士、これは左ひじに軽い擦過傷があるということであります。そのほかについては、事実がわからないのが非常に遺憾でありますが、決して警察が調査を怠っておるわけではございませんで、どうしても教えてくれない。これはしいて強制する方策をとればできないことはないのかもしれませんが、大体けがをしたというのは、自分の方で損害を受けたのでありますから、損害について自分の方から申し出るというのが普通であろうと思います。警察としては、踏み込んでまで調べるということまではいたしておらない状況であります。そういうことで調査が徹底しない点は遺憾に思います。  それからもう一つ、胸をびょうのついたくつで踏まれたということを言っておる者があるということでありますが、当日警備のために出動いたしております警察官は、全部警備出動のためのくつをはいておりまして、このくつは底がゴムでございまして、びょうは打ってございません。従って、もしびょうの跡がついておったということであれば、それによっても、警察官によって踏まれたものでないという、むしろ逆な証拠になると思います。
  60. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 ただいまの長官の御説明によりまして、警察官が暴行したのじゃないということははっきりと了承した次第でございます。そしてまた右翼との関係も全然関知しない、これは当然のことでございますが、分明にされましたことは、先般私たち現地を調査いたしまして、ただ関係当事者あるいはまた関係役所方面ばかりでなく、市民一般につきましてできるだけいろいろ調査いたしました結論と同じでございまして、日本の警察のためにとりましても、まことに疑いが晴れまして喜びにたえない次第でございます。しかしながら、私が今日一番憂慮しておりますことは、これらの事態が、先ほども申し上げました通り、どうしても今日の示威運動がジグザグ行進を伴う、あるいはまた渦巻行進を伴う、こういうことになって参る。しかもその場合に負傷者が出てもやむを得ぬ、負傷者が出たら救援規定でもって助けてやるというような実力行使に向う傾向が強くなったことが最も嘆かわしい次第でございます。私は、それらの点につきまして、やはり日本国民といたしまして、どうかいたしましてこれらの者に対しまして指導者の反省と良識を強く促すとともに、警察といたしましても、一段と技術の改善に努めていただきまして、こういう不祥事の絶滅を期していただきたい、こう存ずる次第でございます。ことに最近におきましては、このデモ行進が非常に多くなって参りましたので、これはまことに笑いごとではなく、最近の新聞紙上に、和歌山市内におきまして、デモごっこが子供の中にはやって仕方がない、そうして父兄も非常に弱っておる、どうか子供をこれらの渦中に巻き込んでもらいたくないという真剣な叫びの記事が出ていた次第でございますますが、それらの点につきましても、どういたしましても、今日これらの最悪を思わせる事態におきまして、われわれが真の意味におきまして民主主義を守り、法治国の現行法を守る。そうしてそのあしきは秩序によって、正当なる手続によって改善をしていく。それによってのみ初めて民主主義政治は守れるという固い信念を持ちまして、政府におきましても格段の強い決心を持ちまして臨んでいただきたいということを切望してやまない次第でございます。  最後に私は、もう一つの事例でございますが、いわゆる雑賀崎における教員の村八分事件につきまして、その真相につきましてお伺いをいたしまして私の質問を終りたいと思う次第でございます。私たち現地に参りまして、雑賀崎事件を初め聞いたときは、それほど大した事柄ではないと思った次第でございます。しかしながら、その場所に参りまして、しかも父兄から実情を聞くに及びまして、こういうようなことがやはり行われておるのか、これはほんとうにまた悲しむべきことだという感を深くした次第でございます。すでに各新聞その他でも報道され、あるいはまた折り込みビラその他によりまして、現地におきましては宣伝もされていることでございますが、このことを簡単に申しますと、いわゆる勤務評定反対闘争につきまして一斉休暇をとる。ストをするということに反対のために日教組を脱退いたしました。雑賀崎という小さな部落におきまして、校長以下十七名の教員を擁する小学校でございますが、この小学校の四年甲組の先生が、その日教組を脱退したという事実によりまして非常な迫害を受けたことでございます。しかも、本人一人が迫害を受けたということばかりにとどまりませんで、その教師が受け持っておりまする四年甲組の生徒の教育におきまして非常な差別待遇を受けた。いわゆるその先生が悪いからお前たち生徒までも差別待遇を受けるのだ。お前たちは、もしその先生が休んだ場合におきましては、授業もろくろくほかの先生たちは見てやらぬぞというような、こういうような事態が出てきた次第でございまして、私は、ここにその迫害を受けました先生の発言につきまして簡単に紹介をいたしまして、これが事実であるかどうか、そしてこの事実につきまして、またその教育が先生憎さのあまりにその教え子にまで教育をさせない、教えないというような事実があったかどうか、そうしてまたこの事実に対しまして、文部当局といたしましてどういう調査をしておるか、またその調査した結果につきましてどういう指導をしておるか、またどういう措置がその市の教育委員会でとられているかということにつきましてお伺いしたいと思う次第でございます。  その教員は藪田という人でございますが、その藪田教員の発言でございますが、「私は昭和三十二年十二月、勤評問題がやかましく論議されるようになってからこの方終始一貫して、授業放棄と一斉スト等の行動はいやしくも教育に魂を打ち込んでいる者にとってはなすべからざる行動であるといって反対し続けて参りました。いかなる理由があるにせよ、教壇を放棄するということは断じて許さるべきものでなく、また教育者としてまさに自殺行為にひとししもので、踏むべからざる邪道であると信ずるものであります。ところが日教組の指令に無条件で従う職場十六人の空気は正反対で、あくまでも意思統一と称して強制的にでも同調せしめようと、あらゆる戦術をもって迫ってきたのであります。論争、脅迫、威圧等、ついには村八分の宣言までするような暴力行為に及んだのであります。こうした会合は昨年以来数うるにいとまないほどで、ほとんど連日連夜と言うも過言ではないでしょう。ことに第一波に突入しようという前からは白熱的で、夜半に至ることは常であり、徹宵論議されたことも数回あります。最も激しかったのは第二波突入の六月九日の夜、これは都合により二十三日に延期、それと六月二十四日夜のこととであります。六月二十三日から二十五日まで三、三、四割の休暇闘争が指令されました、ところが二十三日に業務命令が出されました。私はそのとき無理に分会長になるよう強請せられておりましたが、とうていこの日教組の指令には従う気持にはなれず、公務員である以上あくまでも法に従うべきものであると思い、ストには同調しないことに決意いたしました。そうして校長に日教組脱退を申し出、一切の役から辞任いたしましたところが、分会員は納得せず、二十四日午後四時三十分より職場会を開き、小生の脱退理由を釈明せよと迫りました。そこで小生がその理由を申し述べましたるところ、全然受け入れられず。あくまでもストに同調せよ、さもないときはなんじを孤立無援に陥れるぞ、ただ単にそれのみにとどまらず、なんじの愛する教え子にまで累を及ぼしていくぞ、それでもいいのか、そうしたらそのしわ寄せは校長も及んでいくがそれでもよいのか、校長さんお困りになりませんか、それでいいのですかと詰め寄ります。校長はやむを得ず困ると答えてしまう。そうするとみなを困らせてそれでよいのかと追い打ちをかけてくる。無理無体に承諾せしめようとはかるのでした。あげくの果てには教頭は、この期に及んであくまで同調せず自分の健康上云々に託して脱落するとはけしからぬ。われわれは生命がけで戦っているのだ。だから藪田先生お前一人ぐらい死んでもかまわぬと大声疾呼してテーブルをたたきました。そこで小生はもはや問答無用とばかり外に飛び出して帰宅しようとすると、数名の者が私を取り巻いて連れ戻そうとしたので私は抵抗したが、とうとうまた元の席に帰らせられた。小生はもはやものも言わぬと言っ  てがんばったが、いろいろ追及してくるのでとうとう小生は倒れました。嘔吐した。そのときの血圧は二百二十、まさに生命の危険にさえさらされていたのでした。医師に絶対安静を命ぜられ、当分の間学校を休めと勧告がありました。二十日間の静養診断、そんなわけで、夜が明けてから家に帰って参りました。」こういったことが書いてある次第でございます。これは漁村でございますが、この漁村のこの担当の児童の父兄が、私ら調査に参りました者のところに二十数名集まって参りました。まことに素朴な漁民の人たちでございます。これらが口を開きまして、むしろこの藪田先生を支持いたしまして、藪田先生は気の毒である。しかもそれだけでなく、自分たちの子供はこの藪旧先生に教わっている。おかげでもって、あるいはみなが水泳に行くときに水泳にも連れていってもらえぬ。あるいはまたみなが紙芝居を見せてもらうときに、隣の組では見せているのに、頼んでも隣の組の先生は見せてくれない。いつでも自習ばかりさせられて、同じ行動をさせてくれない。これでは子供がひがむばかりである。勤務評定のいい悪いは別といたしまして、こういったことにまで子供を苦しめることはぜひやめるようにしていただきたい。地教委にもよくそのことを申してもらいたいということを言っておりましたのには胸を打たれた次第でございます。これらの問題は、今言いました教育行政上もゆゆしい問題でございます。また一面においては、人権擁護の建前からいたしましたも非常な問題であると私は思う次第でございます。文部省におきまして、あるいはまた法務省におきまして、これらの点につきまして十分なる御調査をしているかどうか。そうしてまた調査の結果がどうなっているかということにつきまして、文部大臣あるいは法務大臣がもし詳しいことを御存じでございませんでしたならば、かわりの局長からその点につきましてはっきりしたるところの御答弁を願いたいと思う次第でございます。
  61. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 雑賀崎小学校におけるただいまお述べになりましたような件は、きわめて重大だと私も考えております。地方教育委員会に対しまして、実情を精査の上善処するようにというような連絡をいたしておるわけでございます。詳細につきましては局長から答弁いたさせます。
  62. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 ただいまお述べになりました事実は、大体私どもの調査でも同様な報告が参っております。この教員は六月九日、二十四日の再度にわたる職場会議においてつるし上げられ、疲労こんぱいして二十五日に卒倒した。それからその後八月二十二日に藪田教諭がただいまお述べになった声明を発表したわけであります。それによって組合活動に同調するように勧められ、そうしなければ孤立無援にして一切の交渉と援助を断つ。また交換授業、補習授業を拒否すると長時間にわたって脅迫、圧迫を加えられた。これも事実でございます。六月の二十五日に卒倒いたしましたので、二十六日から三日間、同教諭は療養のため休暇をとったが、この期間中同教諭担当のクラスに対しては、他の教員による一切の補習授業が全然行われなかった、放置された。七月三日同教諭が遅刻して参ったところ、当日は全児童の映画観賞日であったが、にもかかわらず、同教諭担当のクラスのみが放置されて自習していた。こういうような事態がありまして、先ほどお述べになりましたように、同教諭担任の父兄が非常に抗議を申し入れまして、PTA幹部も今後の善処を要望して一応この事件は解決したことになっております。和歌山県の教育委員会に対しましても、先ほど文部大臣からお述べになりましたように、適切な措置を、要望して参ったわけであります。特に職員団体の加入脱退は自由でございますので、少し行き過ぎがあるようにも思います。(「少しか」、「少しじゃない」と呼ぶ者あり)そこで私どもとしても適切な措置を要望いたしまして、和歌山県の教育委員会といたしましては、この事態を非常に憂慮いたしまして、校長と教頭は転任を命じたわけでございます。なお、その他の件については、さらに詳細に事態を調査いたしまして、適切なる措置を講ずる、こういうふうに申しております。
  63. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま御指摘の籔田教員の事件というものは、まことにゆゆしきことであると考えます。従って私ども法務省の立場におきましては、人権の侵犯の事実に対しまして、すでに一応の調査の報告は現地の当局から得ておりますが、さらに私は非常に重大な事案だと考えましたので、本省からも特に人を派遣いたしまして、人権擁護、人権の侵犯という立場から詳細に一つ事実を徹底的に調べまして、その結果に基きまして、私どもは私どもの立場において措置をいたしたいと考えておるわけでございます。実は藪田君の事件のみならず、最近こうした憂慮すべきような傾向が他にも具体的にありますので、これらにつきましては、私どもとしては、全力をあげて一つ人権擁護の実をあげたいと考えております。
  64. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員 ただいまの文部大臣、法務大臣並びに内藤局長の御答弁で大体了承したのでございますが、新学期になって参りまして、その雑賀崎の父兄の場合でございますると、今のままでおいたならば必ず差別教育が行われる。ことに藪田という教師は、からだが少し弱っているから欠席するかもわからぬ。そういう場合におきましては差別教育が行われるかもわからぬということで、新学期になってこのままでは困るということを非常に憂慮した次第でございます。また私たちの調べました結果では、校長は大体におきまして藪田教員の行動を是認していたわけでございます。是認しておりましたけれども、他の十四人の者が、強硬に藪田教諭の行為というものはなっておらぬ、これはわれわれと思想傾向が全然違うのだ、こういった者は不届きであるということを脅迫的に責めるものでございますから、校長はついに多数に左祖をいたしまして、それで藪田教諭を迫害するという態度に出たわけでございまして、実を申しますると、和歌山の教育委員会におきましても、私ども行ってその真相を追及するまではあまりはっきりしてなかったという実情でございます。こういったようなことが全国で――これはたまたま私ども参りまして、副産物というとおかしゅうございますけれども、行って派生的に見てきた事実でございますが、こういうことが、ややもいたしますると今日の日教組の行き過ぎと申しますか、日教組に属している教員たちの行き過ぎによりまして、あるいはあちこちに行われているんじゃないかということを私は非常に心配をするものでございます。ただいま局長もおっしゃった通りに、日教組は職員組合でありまして、労働組合ではない。加入脱退は自由である。自由であるにもかかわらず、自分の力を強行いたそうとしてその自由を奪う。そうして自分の意思通りにやっていくというところに非常に今日の誤まりが強いのではないか。今日全国に行われようとしておりますところの一斉ストの問題におきましても、その指令にいたしましても、実は日教組は決議をしただけである。幹部は、決議をした、だけであるということを言うかわかりませんが、一人々々の教員は、日教組の委員長の指令によりまして、今日休暇をとりますということをはっきり書面で出しておるという事実がある。東京都のこの前の一斉罷業のときにおきましても、自分は都教組の委員長の何々の指令によりまして今日休暇をいたしますということを校長に出しておる。こういったようなむしろ中央集権の排除を口に言いながら、強い強い中央集権によりまして、自分たちの持っているところの野望と申しますか、理想を達成しようといたしておる現状でございます。それがために、今日すでにもう十五日のことにつきましては、世の人がみな心配している。ほかの業種ではございません。私たちの一番大切な、国の宝であるところの子供を預かる教育を、一斉に教壇を放棄しようとしている事態であります。しかもまた今日それだけでなく、このいたいけな子供の就業を拒否しようとしておる。あるいは良識ある地区によりましては、それだけは行き過ぎであるといってとどめて、おる地区もございます。また全労のごとく、これをやつちゃいかぬといっているところの組合もございます。良識のあるところもございます。私は、今日におきましてこれは非常なゆゆしき問題であると思う次第でございます。  私は、社会党といたしましても、今日これらの問題――お互いに立場もございましょうけれども、これらの問題につきましては、真に国民的見地に立ちまして、広い見地に立ちまして、相手の良識をむしろ自分たちの良識でもって訴えて、これらの行き過ぎをなだめてくれるという立場に立っていただきたいことを衷心から望みますとともに、文部大臣、法務大臣、公安委員長を初め、この今日の日本の危急にあたりましては、確固たる信念を持ちまして、しかも愛情と誠意とを持ちまして、この教育行政の危機、いな、申しますならば、自由主義国家といたしましての日本の危機打開に邁進せられんことを切に切にお願いして、私の質問を終る次第でございます。
  65. 鈴木善幸

  66. 阪上安太郎

    ○阪上委員 先ほどから勤評問題をめぐる和歌山の闘争事件あるいはまた小林日教組委員長の逮捕、こういった問題につきましていろいろと質疑応答がなされたのであります。私は現地和歌山等にも参りまして、あの乱闘事件の実態を実地検証してきたのでございます。その結果、どうも当然中立を守らなければならない警察権が、その中立性を逸脱して、そして一つの政党、この場合与党の政策に加担しておるという考え方が十分に持たれるのであります。そういった点から、さらに貴重な時間でありますが、和歌山事件について、先ほど警察庁長官が答弁せられた経過報告、時と場所、デモ隊の人員、警察官の動員の人数、こういったものにつきましてはほぼ同様でありますけれども、その内容についての見解が非常に違っておりますので、この点についてまず一番に質問をしてみたいと思います。  私が調べました乱闘事件の概要でありますが、原因の見方につきまして非常に違っております。朝日、毎日、産経、読売等の各新聞、並びに目撃者等の声を聞いてみましても、やはり右翼の割り込みで流血のデモが始まった。あるいはまた丸正百貨店前における右翼宣伝車のデモ妨害、これが直接の原因をなしておる。あるいはまたデモ隊とこれを妨害しようとする右翼団体、これが西警察署前における争いのきっかけとなっておる。こういったことがはっきりといわれておるのでありまするが、事実大体そういうふうにわれわれも認証するのであります。こういった原因の見方につきましても、長官は、先ほど言われたように非常に違った見解を持っておられる、こういうふうに私は考えております。なおまた乱闘の実態を考えてみますと、血を流しながら列外に出ようとする学生を、さらに警棒で追い打ちをかけておる、こういうような事実があります。踏んだりけったりごぼう抜きをやっておる。あるいは制服のトンネルを作って、そうしてこういった制圧をやっておる。足げにかけてやっておる。また男女の区別なく、女の子はほとんど全裸に近いような状態にまで引きずり回わされておる。こういった乱闘のさなかに、私服警官が多く入っておったので、それを承知しておるデモ隊側の者は、これに対して、お前の顔は覚えておるぞ、――まあ売り言葉に買い言葉でありますが、そういったことを発言いたしますと、それでは一つ見えないようにしてやろうというので、負傷者の目をさらにたたきつぶす。また取材記者を、十二分に説明をしておるにかかわらず、これに対しまして承知の上で警察官が暴行しておる。打撲傷を与えておる。また、警察官の負傷の大部分というものは相互が同士打ちをやって、無差別の乱闘によるところの打撲傷になっております。後の方からなぐりかけて、警官の前列者を後列がなぐっておる。こういうような乱闘の実態であります。テレビで砂川事件のあの乱闘を見たけれども、今度の場合はそれ以上だった。また警官のあばれ方というものは全く暴徒であった。西署前では、入れ墨をした男が警官と一緒にごぼう抜きをしていたが、警官は黙ってこれを見ていた。こういった実態を私はつかんできたのです。先ほど長官は一方的な、あるいはまた資料不足からああいうふうな答弁をなさったものであろうと私は思うのでありますが、もっと公正にこういった事実というものをはっきりとつかんでもらいたいと私は思います。  そこで私は、これについて次のようなことについて一つ長官の見解を伺っておきたいと思います。金田県警本部長の談によりますと、デモ隊は計画的な暴行を初めから企図していた。こういうふうに言っております。目撃者の第三者の地方民の言によると、警察官がきょうは一つ思いきりこらしめてやれと口走りながら乱闘をやっておった。そこで警察当局が考えておられる、デモ隊が初めからこの暴挙を計画しておったということに対して、私は、警察こそ計画的な暴挙である。その一つといたしまして、私、県警の警備部長に直接会って話を聞いたのでありますが、事前に乱闘を想定して、前の日に警棒使用を命じておるとはっきり言っております。警棒使用については、武器としては命じてないけれども、とにかく警棒を使ってよろしい、こういうことになっておる。それから県警警察官の言辞、あるいは先ほど言いました県警の幹部の連中とも会いまして、その面接の場合の言辞から察しまして、先ほどもちょっとお話がございましたように、明らかにこれは前日のデモに対するしこりがありまして、それからくる感情があの乱闘事件になっておる。五百人足らずのデモ隊に対しまして、西署ではすでに三百人程度にも減っておるこのデモ隊に対しまして、少くもわれわれの承知したところによると、三百ないし五百名近い警察官を待機せしめておる。先刻言いました本部長の談話自体が、これは逆説的でありましょうけれども、すでにそういった強硬取締りを事前に警察がしようということを考えておった。それから先ほどそうじゃないと言われておりますが、右翼と暗々裡に黙契があった。その事前に行われました勝間田事件の問題にいたしましても、ごぼう抜きの場所における右翼団体の闘争への介入の状態におきましても、宣伝車のあのデモ妨害の状態をながめてみましてもそうであります。ことに交通取締りに対しまして、私服警官を初めから配置しておった。当然乱闘が起ると考えるならば、むしろ私服警官などを入れずに、堂々と制服の警官を入れなければいよいよ混乱に陥るのではないか。にもかかわらず、その中に私服警官をほうり込んでおる。そうしてあの乱闘が一方的にデモ隊の責任であるというような言い方は許されない。私はこういうように考えますので、この点につきまして一つ長官の御意見なり御見解を聞きたいと思います。
  67. 柏村信雄

    ○柏村説明員 まず金田本部長が、デモ隊の行動が計画的であったということを言ったというお話でございますが、私は、デモ隊が当初から計画的に警察官とやろうとしたというふうに断定する資料は持ち合せておりません。ただ情報では、十五日が非常におとなしかった――何と言いますか、デモ隊の過激な分子から見れば和歌山の警察は大したことはないぞといった印象を得て、このくらいの警察なら千名もおれば相当やられるということを言っておったという情報は入っております。しかしながら、これは果して確実なものであるかどうかわかりません。従って私が申し上げたいのは、デモ隊が当初から計画的であったということは断定できないけれども、先ほど丹羽委員の御質問にもお答えしましたように、十六日の構成分子というものは十五日の構成分子と相当に質的に違っておるということは、これは警察としても予見はいたしておりた次第であります。従いまして、えてしてああいう連中は、何か半があると権力に対して闘争するということが、これは過去の事例において相当あるわけであります。従いまして警棒使用ということも、警棒を使用せよと言ったのではなくて、万一に備えて警棒を持ち、必要に応じて警棒を使用することを認めておるということは、私は警察の態度として当然ではないか。騒ぎが起ってから、警棒がどこにあるかといって取り寄せるというようなことでは間に合わないことで、これは計画的だったと断定しないけれども、そういうことが起る可能性があるということのために、警棒使用ということが事前に考えられた。しかしながら、この警棒使用に当っては、警棒の使用について詳細に注意は与えておるわけであります。  それから十五日に警察官がけがをしたので、今度はやってやるぞというようなことで、十六日はむしろ警察が計画的にやったのではないかというお話でございますが、警察は、先ほども申し上げましたように、個人々々いろいろの感情の高ぶりとか何とかはあるかもしれませんが、警察が警察活動をするに当りましては、そういうことは許されない。またこの際も、警察としてはそんな考えは毛頭持っておらなかったわけであります。むしろ十六日、十七名のけが人は出たけれども、無事に済んだことを喜んでおったような次第で、十五日のかたき討ちというような対抗意識があり得るはずはないと思うのであります。それから右翼との関係でございますが、これもいろいろと勘ぐっていただくと、たまたま右翼の車がぶつかったときがジグザグ行進の最中であったというようなことを示し合せれば、ちょうどそのときに来れるということは、一つの想像として、想定としては考えられるかもしれないのでありますが、先ほども申し上げましたように、こういうものと脈絡をとって、わざわざ騒ぎを大きくして、そう  してなぐろうなんというような警察の指導はいたしておりませんし、現地の実情もそういうことではないというふうに私は確信をいたしております。それから私服警察官を配置するのはけしからぬというようなお話でございますが、相当多くのデモ行進、多数のデモ行進、しかも何か事件が起るかもしれないというような場合におきましては、もちろん原則としては制服警察官を配置するわけでありますが、その際のいわゆる証拠を集める、採証的な業務に携わるものとして私服をある程度配置するということは、これは警察の配置としては私は当然のことだと思う。今の御質問に対しては、以上お答えをいたします。
  68. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ただいまの御答弁でありますけれども、これは論議をいたしましても、いずれ水かけ論になってきましょう。どうか一つ、私の申し上げたことについて、善意にあなたも考えていただきたい。私服警官の点などについても、乱闘を予想されるのにそういう私服警官を入れておくということが、私は乱闘をさらに拡大する要素になるのじゃないか、こういうことを申し上げた。そのこと自体がいい悪いの問題じゃない。よく一つ考えてもらいたいと思う。  次に、さらに御質問申し上げまするが、先ほども言いましたように、乱闘の実態からながめてみまして、負傷者に対してさらに追い打ちをかけておる。こういった事実とか、あるいはまたどうもデモ隊を取り締るのに、うしろからついてきて、前の方がどうなったかよくわからないのに、うしろからなぐりかけておるというような取締り方法があるだろうか、非常に不手ぎわじゃないかというような考え方もいたします。それから警棒を武器として使っておるということは事実であります。首から上を確かに殴打されておる者が多いのであります。これなども十六日のデモを終って、そうして帰り支度をして集まっている人たち、そういったものによって仕組まれたデモ、これが多少のジグザグ行進をやったからといって、うしろから追い打ちをかけてなぐりかけるというような取締り法というのは、私はあったものじゃないと思う。これは大阪府警察官内とか、東京都内ならば、ああいうばかげた取締りはやらぬと思う。この点について、和歌山の警察当局がとった態度それ自体に、みずから反省すべきものがあるのじゃないか、私はこう思うのです。それからこれはもちろんやかましく言われておりますところの報道陣の取材妨害をやるということ、カメラをたたきこわされた者もある。器物破壊ですよ、これは。こういうことをやって、第三者に対してまで警察官の暴力が用いられている。私は、こういう点から考えて参りますると、明らかにこれは警察法におけるところの警察の目的なんというのは全く無視されておる。生命の、あるいは身体の、あるいは財産の保護をやらなければならぬところの警察官自体が、今言ったようなことをやっておるということについては、これはおそるべき行為である、こういうように思います。この点につきまして、さらにあなたの見解を聞きたいと思います。
  69. 柏村信雄

    ○柏村説明員 負傷者に追い打ちをかけたという事実は私は聞いておりません。それから先ほどお話しの、警察官がトンネルを作って引き抜きをやっているのはおかしいというようなことでございましたが、とにかく三百名からのものがスクラム組んで、とにかく百数十回解散を命じているにかかわらず、がんとして聞かない。これを警棒を使わずに、素手でこれを一人ずつ離していかなければならない。離したって、そのままにしておけばまたくっついてしまう。これはどうしてもトンネルでも作って一人ずつよそに出さなければならない。これは私は一つやり方だろうと思う。それから警棒を振り上げて使ったというお話でございますが、私の承知しておる限りでは、なぐるために警棒を振り上げてはいない。先ほど申し上げましたように、旗ざおでなぐりかかってくる。だからさっき警察官が警察の頭をなぐっておるのじゃないかとおっしゃいましたが、逆に私は、旗ざおでデモ隊同士がなぐったが、長いので、警察官をなぐろうとして、手元の方が自分の前にいるデモ隊に当るということもあり得るわけでありまして、むしろ、警察官の方が制服ではっきりしておるのでありますから、警察官同士でなぐり合うなんということは考えられない。そういう旗ざおでなぐりかかったものに対して、これを防ぐというために、上からかかってくるものには振り上げてこれを防ぐのは当然でありまして、警察官のけがでも、人さし指のもとのところをけがしておる者が多いのであります。こんなのは、つばのついていない警棒で防ぐときに当ったというようなことが想像されるわけであります。私は、お言葉のように警察というものはいろいろの御批判があります。従って、反省すべきことは反省しなければならないのでありますが、何かためにする警察への反対議論ということで、それを世間に流布されるということは、非常にわれわれとして遺憾に思う次第であります。私は、虚心たんかいに世の批判というものには耳を傾けるつもりでありますけれども、やはり、しからざるものについては、しからざるゆえんを御説明申し上げる以外にはないと思います。  報道陣についての問題でございますが、これは確かに報道班員であるということを知らずして、写真をとるのをじゃまをした、あるいは署に入ってくる人を押しのけたという事実はございます。これは故意に報道の取材を妨害するという意図ではございませんけれども、結果的にそういうことになったことは私は遺憾に思います。しかし、これも計画的に警察官が報道陣に対してまで暴力を振ったというふうにおとりになることは、私としては心外に存じます。
  70. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ただいま質問申し上げたことについて、御答弁でありますが、これも在来の例からいうと水かけ論になります。しかし、これもまた一つ考えていただきたい。旗ざおでなぐったからどうのこうのというこまかい演出が出てきたのでありますが、旗ざおでなぐることにしても、うしろからなぐりかけた警察官のうしろからなぐるということはなかなか技術を要します。私は、そういう言い方もあろうかと思いますが、よく考えていただきたい。それから報道陣に対して計画的になぐったと私は言っておらぬ。計画もくそもない。とにかくテレビのカメラがわからないような警察官というものは非常識です。そんなものもこわしておるというのです。報道陣であるというようなことがわからぬということを言っておるのはおかしい。もう少しそれは教育してください。この点についても……。  次に一つ、これも真剣に考えていただきたいと思いますけれども、先ほどいいましたように、デモを妨害しそれは偶然の一致であるとこういっておる。かつ暴行したところの右翼団体が、明らかに日本教育何とか対策協議会、それの和歌山支部である。いやしくもその頭にこういった文字を付しておるところのものであります。勤評闘争の熾烈化しておるときに、これは右翼団体と称していいかどうか、私もあまりよくわかりませんが、大したものでないという話も私は聞いてきた。こういう名称を付しているところの団体、それがひょっこりとこの勤評闘争のまっただ中に出てきた。それでこういった混乱の契機を作っておる。それらのものがあばれ回っておるのに、だまって警察官が見ておる。そればかりでなく、デモ隊側の二、三の人の意見を聞きましても、その現場において、明らかにその教育団体があばれておるのを、私服の警察官である幹部の警察官が、盛んにやれやれといって応援をしておる。それに対してその本人に、お前何をやっているのだということを言ったら、向うも顔を知っておったので、てれ隠しにどっかへこそこそ逃げてしまった。そのやった団体というのは大した右翼団体じゃないかもしれないけれども、繰り返して言いますが、教育というものを頭において、しかもその対策協議会として、明らかにこれは勤評反対運動に対するところの妨害であることは事実でありましょう。それに対して、警察官がだまって見ておるどころか、応援しておる。こういうことでありますならば、警察は、明らかにその中立性というものを放棄してしまって、そうしてデモの取締りどころか、それから逸脱して、勤評反対運動に対する取締りをやっておるじゃありませんか。こういった右翼団体の一迫の不法行為に対しまして、彼らも暴力をふるっておるのにこれを検挙した事実はない。なぜ直ちに逮捕しないのですか。あとになってから抗議を突っ込んでいくと、そのうち何とかいたしますというような回答に接しておる。こういったことを考えて参りますと、厳正中立を守らなければならぬ警察官というものが、与党の政策に対して一方的に加担するという事実が出てきておる。これからますます熾烈化されるでありましょう文部省の強硬方針に対して、日教組、総評とかが、さらに反対運動を続けるということになりますれば、非常に混乱するでありましょうし、緊迫するでありましょう。そういうものが目の前に来ておるときに、警察の態度というものがこういう態度であるならば、非常におそろしいことになると思う。こういう点につきまして、さらに一つあなたの御見解を伺いたい。
  71. 柏村信雄

    ○柏村説明員 重ねて右翼との結託の問題をお話しでございますが、そういうことは決してございません。ただ警察といたしましては、勤評賛成であるにしろ、勤評反対であるにせよ、それが不法行為に至らない場合に、これを取り締るということはいたしません。従って自動車で宣伝をする、これはもちろん非常に事態が悪化するおそれがあるという場合に、警告をしたり、あるいは誘導をしたりするというような事実上の措置ということは必要でありましょう。でき得べくんば、あの際に引き返してくる自動車がもしわかったら、引き返さないようにとめるということが最良であったろうと私は思うのです。しかしながら、とにかく自動車が普通に町を歩く。しかも勤評反対をやっているのに対して、これに対する反対でありますから、その反対の運動をするというそれだけで一方的にこれを取り締るということは果していかがなものか。そういうことで百パーセント満点だというふうに言っておるわけではありませんけれども、そういう事態があるいは契機となつたということは、見方としてはあり得るかもしれません。それで警察側の車を入れて、この車を守るために、今度勤評反対をやっているデモ隊を取り締るというようなふうに直ちにおとりになることは、これは間違いじゃなかろうかというふうに思います。従って、警察は勤評反対運動そのものを取り締っておりません。これははっきり申し上げておきます。  それから警察官は、先ほど申し上げましたように、もちろん検察庁の方に告発がなされております。金田本部長以下数十名の者についての告発がなされておりまして、これは検察庁において正当にお取り調べがあることと思いますけれども、私の今まで承知しておりますところでは、警察は正当な業務を遂行していった。その間にけが人が出たということは非常に遺憾であるけれども、やむを得なかったというふうに考えておりますので、そのことを申し上げておきます。  繰り返して申し上げますが、勤評反対運動そのものを警察が――個々人でどういう考えを持つということはあると思いますけれども、警察が、不法越軌にわたらない限り、その運動そのものを取り締るということはない。従って、与党は勤評賛成である、それから勤評反対の政治団体もある。しかしながら、われわれ不法なものは取り締まる。右翼であろうと、左翼であろうと同じであります。たまたまあのときにデモ隊の気勢によってけが人がお互いに出たということで、与党の支持をしておるというふうにおとりになることも、非常に警察としては迷惑でございます。
  72. 阪上安太郎

    ○阪上委員 百パーセント十分でなかったということなんですが、結局その点であると私は思います。さらに一つ、八十パーセントだったかどうか知りませんが、またよく実態調査して善処していただきたいと思います。御参考までに申し上げておきたいのです。あの事件の起った翌日、私ども直ちにかけつけて現場に参ったわけであります。そして真相を知りたいと思って、まず私は県警本部に行った。本部長どこに行ったかわからない。仕方がないので西警察署に行ったのでありますが、警察署長も行方不明であります。われわれの方から一つ捜索願いでも出そうかという話をしたのでありますが、あれだけの事件を引き越しておいて、その翌日、当の責任者がどこに行ったかわからぬという状態で、われわれに面会を拒否しておる。こういった点についてはよほど一つ将来考えていただきたい。われわれは事を荒げたり何かするために行ったのではありません。すでにその次に起ろうとするデモ自体を引きとめようとして行っておる。こういった点について、もう少し謙虚な気持になって話し合いをするというような態度を、和歌山の場合にはぜひとも勧告してもらいたいと思っておる。  それから先ほど負傷者の調査が不十分であるというお話がありましたが、私もしごくもっともに思います。いろいろ問題がありましょうけれども、しかしあれだけのけが人を出しておるのですから、やはり警察でも、負傷者に対しては、警察官ばかりでなく調査する必要がある。ところが、拒否されたそうであります。それは警察本部も言っておりました。しかし、こういう場合こそ一つ権力を行使してでも、やはり調べる必要があるのではないかというふうに私は思います。それから暴行警官に対するところの取調べというようなものは、検察庁のお取調べがない限りおやりにならないのでしょうか。その点について伺っておきたい。
  73. 柏村信雄

    ○柏村説明員 負傷者に対しては、先ほど申し上げましたように、調査に行っても拒否されておる。しかし、社会党の方がおいでになると、ある程度話をしておるというようにも聞いておる。しかし、そういう方からも、具体的にどういう傷があるということを承わり得ないのです。この点につきまして、ただいまお話しの強権を使ってでも調査すべきであるというお言葉がありましたが、これはよく研究いたしまして、今後そういうようにやってみたらいいかとも考えます。これはよく研究をいたしておきます。  それから、先ほどから警察官の行き過ぎの問題か出ましたが、これについては、お答えいたしております通り、警察としてはそういう事実がない、調査はいたしておりませんけれども、そういう事実は出ていない。しかし、警察がそう言っても、そうだろうと納得して下さらない方も中にはあるでありましょう。それで検察庁にもそういう告訴がなされておる。検察庁は、警察と違った立場において、自分の身内の者としてでなしに、公正にお調べをなさることと思いますので、その点は、われわれの方はわれわれの方として、内部の規律の問題として調査をいたし――しかしこいつは出てこない。検察庁の方のお調べを待とうという意味で申し上げました。
  74. 阪上安太郎

    ○阪上委員 最後に、これは各新聞の記事でありますが、同時に読売新聞等が最も要領よくまとめておりますので、その結論を申し上げますと、血に狂った警官隊の計画的な暴力行為は、まさに警官自体が暴行犯人だ、いまだかつてないほどの非民主的な警察の実態を暴露したところのテロ行為である、こういう言い方をいたしております。警察の職権乱用とか暴行傷害、職務怠慢、こういった一連の非違行為のあったという私どもの見方に対して、今警察庁長官は、一切そういうのはなかったのだ。しかしながら、なお百パーセントでなかった、幾らかあるんじゃないかという考え方もあるんじゃないかと私は考えますが、一つこういった問題につきましては、さらに検討していただいて、善処していただきたいと思います。  私の質問はこれで終ります。
  75. 鈴木善幸

  76. 加藤精三

    加藤(精)委員 最初に、和歌山事件につきまして若干の質問をさしていただきたいと思っております。私は、この事件の直後、和歌山市に事件のてんまつを調査のために参ったのでございますが、あの和歌山市は、古来非常に栄えた旧藩の城趾の町でございまして、地理的にも、歴史的にも、何とも言えない穏やかな興趣の深い観光地ともいわれるような町でございます。あの地域におきまして、今回本委員会で問題になっておりますような事件が起きたことに対して、大きい観点から観察いたしますと、全国から相当激しい連中があそこに押し寄せてきて、そうして各種の行動をいたしまして、あの騒擾に導いたということにつきまして、和歌山の地域民の方と同じように、だれだ花園を荒すのは、というふうな憤慨の気持を持ったのは当然でございまして、そのほとばしりの一部があの激突の原因になったということは、非常に悲しい事実ではあっても、あるいは必然的な点が若干あったんじゃないか、こう思うのでございます。  わが国の教育行政というものを、ことに地方教育行政というものを考えてみますと、特に全国民の中に義務教育を受けない者はない。小学校に入っていない者はないというわけでございますから、だれも小学校教育というものに対しましては思い出を持っており、ある種の愛着を持っておるのでございます。しかも、鎮守の森の赤い鳥居と並んで、あるいはたんぼの中の、あるいは山の上に立っております村の小学校、こういうものはまことにわが日本国民の魂のふるさとでございます。われわれは、これらの教育を愛する日本民族のよき伝統を捨てて、そうして宗教を否定し、伝統を否定する共産主義思想のままに、その遠い外国からの命令に黙々と従って、醜い行動を展開しております左翼の人たちの思想に対しましては、どうしても同調できないのであります。社会党は、ただいま勤評問題で非常な煩悶をしておる。昨日発表になりました行動要領につきましても、全くわけがわからない。新聞記者諸君から、一体どういうことなんだと聞かれて、回答ができなかった。そこの文章に書いてあるだけだと答えたということは、社会党にも良心が芽ばえておるということを知って、私はうれしいのであります。それでこそ社会党だと考えるのでございます。しかしながら、大勢におきまして、現在のわが国の社会党は自主性を失っておる。その自主性を失っておることが、今度の社会党の機構改革の社会党内の世論の起きた原因でございまして、委員長が最後の裁決権を行使することができないような、そうした他の圧力団体に引きずられるままに動き、その引きずるものが、あるいは活動家とか、あるいは労組とか、相反する方向にある場合におきましては、その中間の、わけのわからない政策綱領、行動の綱領をきめていくとかいうような、非常に情けない状態にあったと私は考えております。そして今回の和歌山事件について特に痛感いたしましたことは、大体日教組は社会党を支持しているのでございますが、その社会党が日教組の実力行使を支援している。行政阻害の起きるおそれのあることを天下の公党が支援しているということは、非常に大きな疑問がありますけれども、それはさておき、社会党の統制下にあるにもかかわらず、いつの間にか、東京にいる共産党員の岩間君とか、全学連の小野田沼とか、そういう人が、あるいは総司令官、あるいは小隊長、あるいは分隊長というように、独立行動で指揮しておりまして、これは全く社会党の辻原君をして、今度は全く全学連にしてやられたという嘆声を、公けの人のいる前で放たしめたところであります。これをもってみても、もし社会党内閣というものができましたら、社会党政府というものができましたら、私はその政府、その内閣は、必ずや全学連、日教組、あるいは日本共産党そのものに引きずられてしまう社会党政府ができるだろうと思いますので、これらわが国の教育を愛し、また美しいわが国の伝統を育てていこうという日本人の血を持った者は、社会党が目ざめることは寸前の将来にあるだろうと思いますが、現在の社会党のままなら、われわれは、また国民は絶対に社会党に政権を与えることは不安でございます。私は、とにかくこの問題に関連をいたしまして、一言重大なる質疑を当局にいたすものでございますが、社会党が合法政党であって、合法の道を歩むと私は考えておるのでございますが、それにつきましても、非常な失望を最近しておるのでございますが、その社会党をあごで使うといわれております総評の態度でございます。その総評の今回の勤評に対する態度につきまして、私は若干の不審を持っております。これにつきまして私は場……(「総評議長に質問しろ」と呼び、その他発言する者あり)私はまじめに聞いていただきたいのでございまして、私は非常に内気で、気が小さいのでございますから、あまり騒音にわたりますと自分の意思を拘束されますので、それは議場における民主主義的な儀礼に反すると思いますので、社会党の方には御静粛にお願いしたいのでございます。  私の言わんとするところは、今回の和歌山事件――和歌山の全国集会というものが、総評の秋季闘争の第一次統一闘争ということにプログラムで決定されまして、そうしてそれを新聞紙上にもりっぱに公表されまして実施している集会でございまして、政治闘争でございます。そうして総評が同じプログラムにおきまして掲げておりまするごとく、第二次統一闘争は九月の勤評阻止闘争ということで明らかに国民の前に銘を打っておるのでございます。しかも、これは日教組担当部分、総評担当部分ということを正直に国民の前に鮮明いたしまして、日教組が九月十五日に、最低半日以上の統一闘争という実力行使をする。そうして総評はこれに呼応して、組合員の子弟の児童、生徒の登校阻止をさせるということでございます。この登校阻止ということにつきましても、実に悲惨な戦術でございまして、われわれの愛するいとけなき児童に対しましては、残虐この上もない闘争手段であると私は考えるのでございまして、国民の一員として、労働運動と称して、世論から保護を受けやすいこの闘争方法の中に、こういう残虐悲惨な行動を入れておくということにつきましては、私は国民の一人としてこれを非常に恥じるものでございます。しかもそうした方法をもって共謀し、そうして日教組ないし日教組傘下の組合員たる先生をあおり、そそのかし、なお児童の保護者に対しても圧力をかけるということは、法律問題は別といたしましても、人道上許すべからざることと考えたのでございますが、これらの事態につきましては、総評の責任者というものは、地方公務員法三十七条後段及び地方公務員法六十一条の第四号に抵触するものであると私は考えるのでございますが、(発言する者あり)まじめなことを言っているのですから、ひやかしては困ります。地方公務員法の第三十七条を読んでいないから、ただいまのような不規則発言が出るのでございまして、何人といえども、前段の行為を企て、または共謀し、またはあおりそそのかすことはできないということが三十七条にちゃんと書いてありますから、よくそれを読みなすってからひやかして下さい。それで、私はそうしたことにつきまして多大の疑問を持っておるということをこの際申し上げているのでございますが、ただいま労働組合その他の関係者、指導者のような方ですらも、なかなかそういうことを御研究になっていない方もあるので、総評の幹部の方におかれましても、岩井事務局長等の本日の新聞に発表せられておりまする程度の論文の頭では、とてもいろいろのそうした深い考慮が払われていないものと思いますので、政府としても、そうした法を乱る団体に対しまして十分に警告され、やさしい心を持ちまして育成していかれ、善導していかれることをお願いしたいのでございます。それらに関しまして、いかなる事項を政府が決定いたしましても、直ちにこれに反対いたしますばかりでなしに、国の法律によって決定いたしましたことに対しまして、これを実現しないように阻害運動をいたす傾向が最近非常に多いのでございまして、その最たるものが、社会党内閣のもとに作られましたる地方公務員法の、この四十条の勤務評定の否定を社会党の方がやっているということは、社会党の七月四日の、この勤務評定の、実力行使に対して社会党は協力すべしという指令をもってみましても、私は明白であると思います。(「地方公務員法は二十五年だよ」と呼び、その他は告げんする者あり)国会におきまして決定いたしましたる法令の実施を妨げ、正当に組織せられました行政機関の行政事務執行を阻害するということが、まさに日常茶飯時のように行われているというわが国の現状に対しましては、民主主義国家といたしまして、まことに恥かしい思いをするのでございます。終戦後もはや十二、三年になりまするのに、このざまでは、何といたしましても、かの最も重大な戦争の惨禍をこうむりました西ドイツが、よく国民が国法を守りまして、国家目的に協力いたしまして、今日世界で最も実力のある幸福な国家を形成していることなどに比べますると、まことに恥かしい次第でございますので、この際、かかる小児病的な行動をとる者が国内にびまんすることのないように根本的な措置をとりたいのでございます。  つきましては、西ドイツの法律に、ドイツ刑法典第六章、国家権力に対する反抗という章がございますが、その百十条に「公然と多衆の面前で、並びに文書もしくは、その他の表現物を頒布し、または公然と文書もしくはその他の表現物を掲示もしくは陳列することによって、法律もしくは法律上の有効な命令に対し、または官憲がその権限の範囲内でなした命令に対して、不従順であることを勧誘する者は、罰金または二年以下の軽懲役をもって罰する。」ドイツ刑法典第六章、国家に対する不実の誹謗第百三十一条「公けの制度または官憲の命令を侮べつするために、その虚構または歪曲を知りながら虚構または歪曲の事実を公然と主張または流布する者は、罰金または二年以下の軽懲役をもって罰する。」こうしたような規定が西ドイツにはございますが、こういう法典を日本で作ることがいいかどうかということは別問題です。西ドイツが世界一の経済興隆をいたしておりまするその裏には、また西ドイツの国民精神が振起いたしておりまする裏には、こういう法律文化も栄えているのだということを私は言いたいのでございます。それに比して、日本におきましては、行政阻害につきましては、食糧管理法によりまして最高裁の方で指示されましたものがございます。また納税阻害につきましては、高等裁判所が判決を得ておりまするところのものがある。こういうふうなことでありまして、一般にはこうした規定がないことが一つの特徴になっておりますが、そういう事態でございますればなおさらのこと、国民はこういうことを自覚して、国家の将来のためによく順法精神を維持しまして、そうして終戦後の国難に処し、わが国の国力を充実していくという方面に努力すべきだろうと私は考えるのでございます。これらの感想を私は持っておるのでございまして、これらに対しまして、特定の点について結論をお尋ねするのではございませんが、文部大臣、法務大臣、それから自治庁長官の皆様の、私の意見に対しまする感想を、その後の質問の準備のためにまず聞かしていただくことができますれば、ありがたいと考えておるのでございます。
  77. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまの勤務評定をめぐる各般の情勢につきましては、非常に御心配をいただきまして、その結果ただいまのような御質問が出たことと存ずるのであります。従いまして、まず私から私の感じておる点を申し上げたいと思うのでございます。  今回の勤務評定に対する反対の闘争につきまして、私はまことに遺憾に存じております。勤務評定の制度あるいはまた今回の実施計画等につきまして、いろいろな御意見があるということはこれは当然のことと思うのであります。あるいは悪いと言い、あるいはいいと言い、あるいはここをこうしたらいいと言い、いろいろな御意見があろうかと思うのであります。願わくは、その反対の方々が、筋道の通ったいわゆる合法的なあるいは民主的な態度をもってこれに対処していただきたいと心から念願いたしておる次第でございますが、遺憾ながら、皆さんも御承知通りの事態でございます。すでに法に根拠があり、その根拠に基きまして勤務評定をやろうというわれわれの努力に対しまして、ぜがひでも実力をもってしても反対をする、その手段を選ばない。またその手段には、多く公務員としては禁ぜられておる手段に訴えてまでやるというのが今日までの姿であります。ごく端的に申しますれば、何としても順法精神を振い起していただきたいということを言わざるを得ない今日の状況でございます。従いまして、加藤委員のいろいろ西ドイツ等の事例を引いてのお話でございますが、さような法律が必要か必要ないか、とくと考えなくてはなりませんけれども、その精神におきましては、私は、すべての国民の方にぜひ国の法を守り、また秩序を守っていただきたいということを訴えざるを得ないのであります。法律上の第何条に該当するとかしないとかいう問題はいろいろあろうかと思いますけれども、私は、一般の国民の方に特にお願いしたい。また公務員たる立場にある諸君に対しましては、それぞれその行動に対しましても規制のあることでありますから、その規制の範囲内においてすべての行動をやってもらいたいと心から念願いたします。九月十五日のことを中心にいたしまして昨今皆さんに御心配をかけております。ことに私といたしましては、これをやったら第何条に触れるぞ、これをやったら罰を受けるぞというふうなことより、ぜひ一つやらずにおいてもらいたい、良識を取り戻してほんとうに民主的な行動をやっていただきたい、このことを心から願い、またこれを訴えておるようなわけでございます。さように御了承を願います。
  78. 愛知揆一

    愛知国務大臣 加藤委員から切々たる御意見を承わりまして、私も全然御同様に心配にたえない次第でございます。私のこの問題に対する見解は、ただいま文部大臣から申し上げました通りでございますが、特につけ加えて申し上げたいと思いますことは、法務省といたしましては、特に法秩序を維持するということが国政の基本であると私は信ずるのでございます。従って、この法の秩序を全国民に守っていただきたい。こういう考え方から、この勤評問題につきましても、法務省の見解としてはこうこうこういう点が法に触れる、あるいはこういうことをやられれば、これは罰条にも触れて、従って捜査もし、検挙もしなければならぬものであるということを明確にいたしまして、これも国民各位の常識に訴える一つの方法であろうかと信じまして、先般来私どもの態度というものを明確にいたしておるわけでございます。これが国民の心に訴えるところとなり、従ってまた今文部大臣が言われましたように、十五日に一斉授業放棄であるとか、あるいは一斉休暇というような、私からいえば全く非常識きわまる、良識を疑わざるを得ないような行動が、われわれのこの日本に起らざることを切に私も期待いたしておるような次第でございまして、このために今後とも全力をあげてきぜんとしてやって参りたいと思います。
  79. 青木正

    ○青木国務大臣 すでに文部、法務両大臣の御答弁で尽きておると思うのでありますが、私も、終戦後、ややもすれば違法行為が違法行為でないようなごとく看過されておることが一つの常識化しておったような風潮があったことはまことに遺憾でございまして、私どもは、加藤委員の御指摘のごとく、終戦後すでに十三年もたったのでありますから、法治国家として、違法行為はあくまでもこれを違法行為として法律上守っていかなければならぬ、かように存じておる次第でございます。  なお、地方公務員法第三十七条の解釈の問題でございますが、御指摘のごとく、これは単に職員だけを規定したものではないのでありまして、職員外の者でありましても、こういう争議行為をあおり、教唆することは禁止せられておることは御指摘通りでございます。
  80. 加藤精三

    加藤(精)委員 ただいま三国務大臣の御意見を承わりまして、私は日本国家は滅びないという強い信念を持つことができることを喜びとするものでございまして、それに勇気を得まして、なおさらに申し上げたいのでございますが、終戦後の惰性で、わが国には違法なる行為が平然として行われておるのじゃないかという疑いがございますので、それにつきまして二、三気のついたところを申し上げたいのでございます。私ごく最近、日教組の講師団の一人と称するところの東大の教授の何がしという人物の、ある新聞に掲載しております論文を読んだのでございます。その中にはこういうことが書いてございます。文部省はせいぜい参考に試案、これは道徳要領についての試案を出す程度にとどまれ、よけいなことをするなというのです。そうでないと、この要領の第一原理たる人間尊重そのものにまっ正面から矛盾することにもなろう。告示は役所の考え方で勝手に変えられるのだから、こういうのです。この全体の文章を紹介するのは長過ぎますので、結局、文部省の出したもののごときは学習指導要領として無価値なものだから、相手にしなくてもよいということをアジっておるのでございます。従って、その講習会なんかは受講するものじゃない、そんな価値があるものではない。日教組のやっておる国民教育研究所の講習会、そこで研究したり受講したりすべきだ。そこで文部省なんか要らないから、学習指導要領をこの左の側で作るんだが、それに協力するようにということを指示している雰囲気が濃厚でございまして、これは「世界」の九月号に、この先生の親分であるところの上原専禄という、これもやはり日教組講師団の講師であります。この言説をなした者は、東大教授の教育学の宗像誠也という人物であります。この上原専禄なる教授は、たしか商大かどっかの教授であります。これが日教組国民教育研究所の運営委員長でございまして、宗像誠也なる人物は、その下で運営委員長をいたしております。ここに運営委員が六名おりまして、その大部分、ほとんど全部が大学の教授でございます。こうした意見の発表は、これは私は御答弁を要求するのではございませんけれども、地方公務員法やあるいは人事院規則、そうしたものにも抵触するおそれが十分でございまして、本件、私が申し上げました事件以外に、幾多の大学教授または官吏が、特定の内閣に反対し、特定の政府、政党の政策に反対し、その政策の実現を阻害する目的をもってするところの政治行動に踏み出しているという事実が非常にたくさんあると考えておるのでございます。かかる大きな違法行為を取り締らずして、末端の小さな町村の教育委員会と教組とのごたごたのごときものを取り締っても、そのもとになる原因を排除しなければ、わが国はついに、シンパとしてあるいは党員として、これらの大物たち指導しているところの政治運動のために、白アリにむしばまれますようにだんだん崩壊の過程をたどるに至るということを考えるのございまして、日本共産党のある代議士は、上ノ山の日教組の大会におきまして、日教組は実によくやってくれている。こういうふうに協力してくれるならば、共産主義国家が誕生するのもそう多くの時間を要しないだろうということを放言しているところを見ましても、私は憂慮にたえないものでございます、。これらの事項につきまして、御当局は相当の関心は持っておられると考えるのでございますが、文部大臣、法務大臣及び警察庁長官に、これらの左翼的な思想を持っております国立ないし公立の教授の言論に対しまして、いかなる御観察をしておられるかということをここで承わっておきたいのでございます。  ちなみに申し上げますが、これらの教授は非常に時間を豊富に持っておられるようでございまして、前に申しましたる宗像誠也教授は、日本母親大会全国母親連絡会の助言者というか顧問のようなことをしております。それから日中国交回復国民会議発起人をいたしております。国民文化会議の発起人をいたしております。それから憲法擁護国民連合の講演会の講師をやっております。日本作文の会の顧問をしておられます。しかも、日教組講師団の中におきましては、最も有力なる顧問の一人でございます。こうした大きな左翼思想を持つ団体と共同して、実に多彩きわまる活動をいたしておるかたわら、こうした論説を掲げて、国家の行政の阻害をずっと職業的にやっておるというふうな現状は、私は、まことに問題であると考えているのでございまして、心ある国民は、これに対しまして、同じ毎日新聞の本日の投書欄等におきましても、この教授よりもはるかに秩序立った頭をもって、逐一この教授の論説に対して反駁をしておりますので、私は非常に心強く思ったのでございまするが、いかにせよ、かかる行政阻害は私はまことに嘆かわしいことだと思いますので、それらにつきまして、の感想をお聞かせいただきますようにお願いいたしたいのでございます。この質問は文部大臣と法務大臣、それから警察庁長官に御質問を申し上げるのでございますが、大体の御感想を申し述べていただきたいと思います。
  81. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 日教組の講師団と申しますか、そういうふうな方の中に学者が多数参加しておられますことは、私も承知いたしております。その学者諸君の言説というようなものにつきまして、ただいま加藤委員からもるるお述べになりましたが、少くとも私どもの考えからいたしますれば、受けとりがたい言説も少くないように思います。また行政を担当いたしておる者といたしましては、まことに困った議論をせられる、こういうふうに思う場合もしばしばあることは事実でございます。しかしながら、学問の自由、あるいは研究の自由ということは尊重いたさなければなりません。問題が一体学問の自由あるいは研究の自由ということであるのか、そうでないのか、そこの境目のところはなかなかむずかしい問題でございまして、ともかく学問なり研究の自由というものは、われわれも尊重しなければならぬと思います。これを逸脱するということになりますれば、御注意を申し上げなければならぬということになってくるわけであります。なかなか境目のところがむずかしい、取扱いにくい問題だと思うのでございますが、御承知通りに、大学は大学自治ということにも相なっておるわけでございますので、大学内部において良識ある取り計らいをしてもらいたいものと思っておるわけでございますが、一般的に、往々にして公務員であるところの大学教授が、政治目的のために何がしかのことをやる、政治活動をやるということになりますと、制限を受けておることも御承知通りであります。そういうようなことになっては困りますので、その辺のところはよろしく一つ御注意を願いたいということは、文部省といたしましても、大学と種々連絡をとっておるわけであります。お話しの通りに、なかなかすれすれのところが多いのであります。私自身といたしましては、当惑をし、あるいは困惑をするということもないではございませんけれども、またみだりに研究の自由、学問の自由を阻害するわけにもいきません。そこで大学の諸君に良識ある考えを望み、また良識ある行動を切に期待いたしておりますのが、ただいまの私の心境であります。
  82. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま文部大臣から、率直に詳細にお話しになりました通りでございまして、私としては、特につけ加えることはございません。
  83. 青木正

    ○青木国務大臣 私からも加えることはないかと思うのでありますが、地方公務員、つまり地方公立学校の先生方の地方公務員法弟三十六条の引用をなすってのお話でございます。これにつきましては行政罰になっておりますので、任免権者において、そういうことがあった場合、適当な処置をとっていただくほかないと思うのであります。警察の立場から、刑事罰になっておりませんので、警察がこういう問題に関与すべきことでないことは申すまでもないことだと思います。
  84. 加藤精三

    加藤(精)委員 ただいま私は大学教授だけを述べたのでございますが、国務大臣の三大臣から、相当な決意を持っておられることを承わりまして満足いたすものでございます。また大学教授は、公立でございましても、これは文部省の管下にございますので、文部大臣にそうした決意がございまして、十分に監督を期待しておられるということでございまするので安心いたしたわけでございます。  次に、地方行財政の面から勤評問題を考えてみたいと思うのでございますが、各府県教員組合は、専従職員というものがおるのでございます。で、この専従職員諸君の中におきましては、わずか数カ月教壇に立っただけで、それから十年あるいは十年余にわたりまして、この専従職員の職務を担当して、しかも、これは単に休暇と称しまして、毎年切りかえているものがあるのでございまするが、県によりましては、規定の千分の一の人数を超過いたしまして専従の事務に従事する者を休暇として認めている例があるのでございまするが、もはや戦後相当期間を経まして、明後年中には、専従職員の職務だけで恩給がつく者があるということに聞いておるのでございまするが、専従をやめて学校に復帰するということについての喜びを述べている専従職員が、雑誌等においては非常にたくさん見受けられるのであります。しかし、これは争議行為その他を専門にやっておりまして、そうしてその間のブランクがございましても、教壇に復帰いたしまして、十分義務教育、また国家として最も大切な国民教育の所期します教育の内容の伝達ができるかどうか、また性格的にも相当な影響を受けていると思うのでございますが、そうしたことにならぬように、たとい専従の許可を与えますにいたしましても、これを一年か二年に限るとか、何かそういうことも必要じゃないか。そうしてまじめな職員団体本来の事務に専従するということが望ましいじゃないかということを私は考えるのでございます。そうすることによりまして、現在地方団体は非常な財政窮乏の中から、血の出るように納付していただきまするところの国民の税金を有効に使うことになるのじゃないか。これは恩給も、国費と地方賢と両方で醵出したファンドから出ているわけでございます。また教壇に復帰いたしましても、十分な教育活動をすることが、同じ経費を支出いたしましてもわが国の教育の実質を高めるわけでございます。で、そうしたようなことにつきまして、ただ職員組合の普通の事務に従出しているだけでもって、他の職員よりも優遇されておるところの教育職員としての昇給を毎年し、そうし恩給を同じようにいただくということにつきましては、何か割り切れないものがあるのでございまするが、そうした点につきまして、私は自治庁側の御意見を承わりたいと考えておるのでございます。
  85. 青木正

    ○青木国務大臣 御指摘のごとく、専従職員につきましては専従休暇に関する条例によってやっておるわけでありますが、長い期間専従職員として職務を離れておるということになりますと、いろいろ御指摘のような問題も起って参るわけでございまして、またお話のように、そう長い間ほかの仕事についておって、そうして恩給を受けるというようなことも確かにどうかと思うのであります。そこでこの休暇期間があまり長期にわたる結果、公務に支障が生ずることも確かに出てくると思うのであります。そういう場合におきましては、当然任命権者におきまして、そういうことのないように適当に処置することが望ましいことだ、かように私ども考えております。
  86. 加藤精三

    加藤(精)委員 ただいまの御答弁で満足するものでございます。国民の割り切れない気持を持っておることにつきましては、政府におきまして率先是正して、いただきますことをお願いいたしたいのでございます。  次に先般丹羽委員によって取り上げられました和歌山県雑賀崎小学校の藪田教諭の問題についてでございますが、われわれが確実に手に入れました資料によりますと、藪田教諭に対する教員組合側の圧制は実に残虐きわまるものでございまして、日教組の闘争がかりに正しいにせよ、目的は手段を正当化するものではございませんと、私はその点につきまして強く注意を喚起したいのでございます。それでこの藪田教諭に対する教員組合の人権じゅうりんの事態がかくも深刻なことは、たまたま各府県を視察いたしましたわれらの目に触れたのでございます、日本教員組合の行いますところの行動につきまして、またその革命的な綱領につきまして、不満を抱いております全国の中小学校の先生は、実に私はその数が多いものだろうと考えているのでございまして、文部大臣が常に言うておられますごとく、日本の五十万教職員はその大部分が、こうした日本教員組合の過激なやり方に対しては同調をしていないので、何とかしてかかる雰囲気から脱却したいというふうに考えている先生たちが多いんじゃないかと私は考えているのでございます。しかるに、ここにあげられましたる雑賀崎小学校の事件のように、これに対しましてあらゆる精神的、肉体的圧迫を加えられ、また社会的に圧迫を加えられ、そうしたことのために、心ならずも、世界労連の指導を受けているところのこの過激なる日教組の行動に追従せざるを得ないんじゃないかと思うのでございまして、そういう面から、この雑賀崎小学校の事件は、日教組の性格を語るものとして私は重要視したいのでございます。われわれの手に入れました材料の中には、この学校の先生が申し合せを作って、それをプリントにいたしております。その中の言葉を一つ二つ拾ってみますと、藪田教諭に対してのわれわれのとるべき道というものは、籔田教諭に対して警察からの呼び出しがきても行かさないようにしなければいかぬということを言っております。わが国の国民の最後の保護を受けるところは警察でございます。その警察からいうてきても、藪田教諭が警察に行かないようにみんなで押えつけて、これを警察の方から阻隔するというのでございまして、まことにゆゆしい事件だと思うのでございます。また、われわれは籔田教諭の行動に対し激しい憤りを感じ、授業、校務一切の援助は拒否し、何とかして抗議したい。これは藪田教諭の受け持っておる子供の授業に対しても協力を拒否し、そうして片方で四年乙組の生徒は映画に連れていくけれども、甲組の生徒は暗い部屋で自習させる。また四年乙組の生徒は隣の部屋で楽しく紙芝居を見せてもらって教えていただいておるのに、黙々として自習をさせられて、その自習の成果も見てくれない。藪田教諭が病気で海岸に行けないとすれば、そのクラスの者がもし海岸に行っても、海岸で保護してやらぬ、水におぼれても差しつかえないというような……(「そんなことはよけいなことだ」と呼ぶ者あり)何がよけいだ。(「おぼれても差しつかえがないとだれが言った」と呼ぶ者あり)絶対校務、授業一切に協力援助しないという決議をしておるのです。実際に協力援助しないということを公言しておるのです。そうして父兄に対してもそれが伝わりまして、父兄は大問題を起しておるのです。何も私が想像して言っておるのではない。事実のあるところを加藤委員はいつでも言うのだから、よく聞いて下さい。  次に校長に対してはこういうことを要求しております。校長先生として、藪田先生の思想、行動についての見解を明確に答えてほしい。これは籔田先生の思想についての勤務評定ですね。教員組合はこういうことをやっておりながら、思想について評定ができないとか何とか言っておる。この事態をどう措置されるお考えか、処理について納得のいくような取り計らいを願う。校長先生として、藪田先生に平生からとられた態度について反省してもらいたい。どっちが校長だかわからない、どっちが上司だかわからない。今後職場におけるいろいろな事柄を父兄に漏らすことは許しがたいことであるゆえ校長として、注意してほしい。校長が父兄と意思の融和をはかり、いろいろなことについて話をするということは、これはもうPTAその他でそういうことがあるからでありますが、籔田先生関係のことは絶対父兄に漏らしてはいかぬということでございます。われわれ今まで校長としての立場を認めてきたが、組合員としての立場をどういうふうに考えておるか。こういうふうなまるで校長に対して教員組合が監督し、圧制しておるということが事実でございまして、これによって最初、相当血圧の高い病気にまで追い込まれましたこの圧制されました薮田教諭に対して同情を持った校長先生も、遂には藪田教諭に対して冷たい取扱いをするようになったという事情でございます。こうしたことは、私は、その残虐性におきまして、まことにハンガリーの出兵、それ以上残虐と思われるところのナジの処刑、それらのことに一脈相通ずるものがあるような気がするのでございまして、日教組に対してこうした圧制を土台にして、無理々々に自分らの団体の主義に、個々教員のものの考え方の自主性を滅却してついてこいという命令をされるような旧軍閥時代のようなそうした態度は、絶対にやめてもらいたいと思うのでございまして、それによって全国の純真な日本人の魂を持った日本人として、自主的にものを考えて、ソ連や中共の言う通りにはならぬ、そういうふうな何十万の先生のために、私はこの事件の真相を明らかにして、そうして単に一地域の話が穏便につくという程度のものでなしに、徹底的にこれを取り調べていただきまして、かかる圧制を加えた者に対してはかかる処置があるんだ、そして悪はついに善には勝たないんだということを明らかにしていただくことをお願いしたいのでございまして、その御決心があるかどうかということにつきまして、私は法務大臣に御質問申し上げるものでございます。
  87. 愛知揆一

    愛知国務大臣 本件につきましては、先ほど丹羽委員にもお答えをいたしました通り、法務省としても、これはゆゆしき問題であると考えておるわけでございます。すでに人権侵犯の疑いのあるものとして、その方面からもあらためて徹底した調査を行なっております。それからなおこの機会に申し上げたいと思いますが、これは人権侵犯の調査というだけではございませんで、場合によりましては、これは刑事事件としても成立するものである。暴力行為として、暴力行為処罰法に違反する疑いあるものといいたしまして、刑事事件としても目下調査中でございます。この結果は、徹底的に詳細に調べまして、国民各位の御納得を得るような結末を、私は誠意をもってやりたいと思っておりますので御了承願いたいと思います。(拍手)
  88. 加藤精三

    加藤(精)委員 法務大臣の御決心を承わりまして満足いたします。私の質問は一応これをもって終りますが、なお、時間の関係で一応やめるのでありまして、もし時間がありましたら、関連質問によりまして、さらに私の意思のあるところを徹底して申し上げたいと存するのでございますから、委員長におかれましては、それを御了承願いたいと思います。
  89. 鈴木善幸

    鈴木委員長 門司亮君。
  90. 門司亮

    ○門司委員 私は昨年の文教委員会でかなり質問いたしましたので、きょうは長い時間質問しようとは考えておりません。従って当局は率直に御答弁を願いたいと思います。  和歌山の事件が、特に警察官の暴行によるものであるということにつきましては、いろいろ言われておりますが、私は、大体われわれの手に入れております資料、ことに報道班であります新聞の記事をずっと読んで参りまして、私は明確になっていると思いますが、新聞社の座談会等によりましても、明らかに警察官の暴行であるということに大体解釈ができるのであります。従って、これらの問題につきましては、ここで私は警察当局が行き過ぎのあったということを何か合理化することのためにあまり隠蔽したような答弁はなさらぬ方がよろしいと思う。写真が出ておるんです、現実の問題として。そしてここにあります読売新聞の八月十九日の写真によりましても、丸い印のつけてあるのは現場指揮の露詰警部補、×印は学生の足を引っぱる私服刑事、それから矢印は警官に胸を突かれて失神した女子学生と、こう書いてある。こういうものが明確になっておるのであります。私は、警察は絶対に暴行しなかった、行き過ぎがなかったという弁解をされるなら、これらの報道に対して、警察は一体いかなる処置をとられたのか、これは警察の名誉にかけても問題があると思う。しかもこれは座談会として、なるほど名前はみんなアルフアベッドで書いてありますのでよくわからぬと思いますが、しかし、これも見ようによっては、見る人が見ればこの人がだれであるかということは多少おわかりになると思う。そして問題は、やはり先ほど阪上委員から申し上げましたように、「イレズミ男が座込みに乱入」あるいは「一般市民の目にどう映っただろうか」という見出のところで「警棒で殴ったり、また警官のトンネルヘひきずりこんだりしている有様は砂川事件同様だが、殴り方や検束のもようはテレビやニュース映画でみた砂川事件以上のやり方だともらしていた。」これは一般市民の声としてこういうことが書かれている。ここで、そういうことは絶対になかったというような答弁は、私にとりましてはどうしても承服するわけにはいかない。警察官といえども人間でありまするし、また親心子知らずということもありますし、往々にしてこういう行き過ぎがあったと私は思うのであります。あったものはあったものとして、率直に認められることの方が、警察の威信に対してもよろしいと思う。また警察が、もし私どものこういう考え方と別に、そういうことをすれば今後のいろいろな事件に対して警察官の士気が鈍るのだというようなお考えで、そういう事実を認めることができないというふうなことになりますと、これはゆゆしい問題であって、民主警察どころか、完全なファッショ警察になる危険性をここから持ってくる。ほんとうに民主警察になろうとするなら、こういう事件が歴然として出てきているのでありますから、一般市民の声として、先ほど同僚の自民党の諸君からは、デモ隊がどうのこうのということもございましたが、こういうことも新聞記事を読んでごらんなさい。いろいろ意見があるのです。ある人の発言には、暴力的でどうにもならない、一体あれはどうしたんだろうという一般市民の声もあるというように、おのおのそのときそのときの立場によって、見た人の感覚あるいはものの考え方によっても多少違うと思いますが、いずれにいたしましても、こうした事実のあったことはほんとうであります。従って、これらに対する警察側のもう少し反省のある答弁を私はこの際要求したいのですがどうですか。
  91. 柏村信雄

    ○柏村説明員 門司委員の御質問でございますが、私は、先ほど申し上げましたように、事実を隠蔽するというような気持はございません。またここで私が、事実そういう問題があった場合に、そういう事実がございました、非常に悪うございましたと言うことが、私は、警察の士気に影響するとは考えておりません。しかし、私どもの調査によりましては、警察官が故意になぐったり、つついたりしたという事実は聞いておらないのでありまして、それは写真や何かで見る人によって解釈もあろうと思う。私は新聞の報道をまるきりうそだと申すわけではございませんけれども、新聞にも往々にして間違いがあり、あるいはある見方による記事の書き方もあると思うのでありまして、私は、これは門司委員がよく御存じと思いますが、そういう警察の士気のためとか、あるいは警察の恥さらしになるとかいうことで、ことさらに隠蔽する意図をもって処置したことは今までもございません。この点は、私はわれわれの調査のありのままを申し上げておる次第でございます。
  92. 門司亮

    ○門司委員 どうもそういうことでは私は簡単にこの問題を片づけるわけにいかぬのであります。たとえば、われわれが考えております、またときどき当局に聞いております無差別の取締りというようなことについても、その新聞記事だけを引用してみますと、こう書いてある。「警官側の大部分が後頭部の打撲傷だった。第二列目の警官がデモ隊を殴ろうとして誤って前にいる味方を殴ってしまったのを目撃した市民もいる。西署前では私服警官をデモ隊と勘違いした隣接署の応援制服警官とやはり同士打ちをしていた。実力行使がいかに無差別だったかがわかる。」こう書いてある。こういうことは今の警察庁の長官の答弁によると、必ずしもそれが正しいものではないというお話でありますが、しかし私は、座談会その他等で話すものの中で、本人の思量を加えたり、本人の想像を加えたりするようなものではなかったと思う。ことにこの事件は、八月の十六日に起った事件が十九日の朝刊に出ておるのでありますから、そう長い時間がかかったわけではないのであります。こういうことを考えて参りますと、どうしても私は、この際警察官の行き過ぎがあったということ以外に考えられない。従って、もし警察側がそういう態度であるとするなら、法務省に聞きたいと思いますが、御承知のように負傷の場所がいずれも後頭部であって、そうしてかなりの重傷をした者が実は告発をいたしております。従って、この事件に対して検察庁としてどの辺まで今お調べが進んでおるか、その点を一つおわかりになるならお話しを願いたいと思います。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどからお話がございますように、告発は受理しております。ただいま詳細捜査中で、ただいまのところ何とも申し上げる段階ではございません。
  94. 門司亮

    ○門司委員 私は、その点についても、実は和歌山に参りましたときも、検事長さんにお会いをいたしまして、この種の事件だからできるだけ早く始末をしてもらいたい。同時に、公正にやってもらいたいと要請を実はして参ったのでありますが、これは大体検察庁も了承されておると思います。傷の個所は、いずれもこの前の委員会で申し上げましたように、全部後頭部の裂傷であることに間違いはないのであります。そういたしますと、負傷した場所がここでありますと、われわれが想像いたしましても、うしろからなぐられたものであることに間違いがないと思います。警察官に対する職務執行妨害として、警察官ともみ合う場合の状態というものは、前額部であるならば、けんかしておってなぐりつけたということも考えられる。しかし、後頭部である場合は、どう考えても、取っ組み合いをやっていたとも考えられなければ、何とも考えられない。あるいは逃げようとしたからうしろからなぐったのかもしれないけれども、こうなると、私は少し行き過ぎだと思う。こういう事実は、私は今の法務大臣の答弁だけでは了承できないのでありますが、相当長い時日がかかったのであります。従って検察庁側としてもある程度のこういう取調べが――警察官がなぐったのであるかどうかということについては、あるいはまだ十分調査してないかもしれませんが、後頭部にこういう負傷をしているという事実だけは、検察庁は認めないわけにはいかないと私は思う。この点は認められておるでしょうか。
  95. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは率直に申しますが、ただいまの段階で、私から断定的にお答えを申し上げるべき筋合いでもなければ、時期でもないという点は御了承願いたいと思います。
  96. 門司亮

    ○門司委員 まあ検察庁を指揮される法務大臣としての地位から、私からいえば、まだ調査を十分しておらないからわからぬという御答弁ならわかるのでありますが、答えられないということはこれは少し逃げ口上に私は見えるのです。少くともこういう問題については、日にちも相当たっていることでありますから、そうした傷害の場所がどこであったくらいのことはすぐわかることなのです。私は、これが警察官がなぐったのかなぐらぬのかまで調査したかということを聞いているのではないのでありまして、傷害の場所がどこであったということくらいは、私は確認されておると思う。また確認されておらなければならぬと思う。そのことを聞いておりますので、もし大臣にしてわからなければ、だれかおわかりになる方があれば、すぐこれを話してもらいたいと思います。
  97. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お答えいたしますが、私は、検察というものは公正に不偏不党にやるべきものだと思うのであります。そういうふうに検察としては公正妥当にただいま捜査をいたしております。それから捜査の途中で、この一点はどうだ、この一点はどうだというようなことは、私は、法務大臣として、信頼すべき検察官から一々さようなことを聞くべきものではない、事柄の筋合いがそうだということを申し上げたのでございますから、十分に捜査をいたしました結果を詳細に私としては聞きたいと思っておりますから、御了承願います。
  98. 門司亮

    ○門司委員 法務大臣としては、非常に何か苦しい御答弁のようでございますが、大臣がお知りにならなければ、私は、お知りにならないでけっこうだと思います。しかし問題は、こういう告発をいたします者が、負傷の個所の違った場所を私は告発をするおそれはないと思うのです。自分の身体に傷害を受けた場所を間違えて告発する人はおそらくなかろうと思う。だから、大体この告発された人たちの負傷の個所というものは、私には間違いがないというように考えられるのです。そうして同時にこの傷は大体二針あるいは三針ぐらいの縫合がされております。従って、傷としてはちょっとしたかすり傷というようなものではなかったと私は思います。縫合を要するけがということになりますと、そう簡単なものではなかったと私は思います。従って、この事実に基いて、今法務大臣は何とも言えないというお話でございますので、御存じがなければそれでよろしいかと思いますが、警察側はどうなんです。この告発された事件について、今、こういう事実があったということは検察庁の調べがなければ一向わからぬ、この前の委員会ではこういうような答弁のようでありましたが、私はそういうことはおかしいと思う。自分たちが調べに行ったけれども一向教えてくれなかった、だからどういうけががあるかわからないと警察側は言っておる。しかし、本人はすでに検察庁に告発をしておる。そういたしますと、警察は一体どうなるのです。やはり告発をされている以上は、検察庁がじかに上取り調べることもありましょうし、あるいは警察に移譲することもありましょう。警察としても、私はわからぬわけがないと思います。全然没交渉でないと私は思います。たとえばここに書いてある九人の人が訴訟をしておる、いわゆる告発しておる。従って、それらの者だけについても、警察側が傷が見られなかったということで調査ができなかったという事由は成り立たないと思うのでありますが、この点はどうですか。
  99. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいまお話しのように、負傷者が出て、それによって警察官が告発を受けておるわけでございます。警察といたしましては、検察庁に係属いたしました事件については、やはり検察庁の自主的な捜査に待つべきであって、ただその間において、警察に対してある程度の援助なり協力なりということを求められる場合は、虚心に検察庁に協力して捜査を進めるということはありますが、検察庁に係属した事件について、そういう事件があるそうだから、こっちはこっちで独自にやるというのは、少し建前上おかしいんじゃないかというふうに考えております。
  100. 門司亮

    ○門司委員 私は、その建前はわかつております。建前は今お話しのような建前になると思います。しかし、全然知らなかったということは私は言えないと思います。本人は、告発をするだけの余裕があり、また事実上告発をしておるのでありますから、警察は、告発したのだから一切知らないよ、検察庁がやるだろうというような、そんな無関心なことでいられるのですかどうか。これは事件の取扱いについていろいろ問題があると思いますが、だからといって、警察が調べたが調べられなかったという理由には私はならぬと思います。こういう事実がありますから、調べれば調べ得たと思います。けが人が現実にたくさんいるのでありますから、明らかに調べ得たと思います。警察は、いまだにどういうものか、だれがけがしたかわからぬというようなことで逃げられるつもりですか。
  101. 柏村信雄

    ○柏村説明員 別に責任を回避して逃げるとかどうこうという考えは全然ございません。先ほどから申し上げましたように、今まで確認しておりますのは、現実に確認しておる者は五名、医師から聞いている者一名、その後あるいはさらに医師から聞いた者があるかもしれませんが、報告に接しておりません。原則的には、百何十名という発表に対して何ら協力的に警察に教えない。ただ先ほど阪上委員からもお話がございましたように、ああいう場合は、警察としても強権を発動してもやはり調べるべきものであるかどうかという点は、さらにとくと検討をいたしたいというふうに考えております。
  102. 門司亮

    ○門司委員 理屈を言うようですけれども、警棒使用の場合でも、警察官がもしあやまって――たといあやまってもあやまらなくても、負傷させたような場合には、直ちに上司に報告せよという規定が警察の中にはあるのです。従って、こういう負傷があった場合には、どういう乱闘が行われて、どういうふうになったということは報告されなければならぬと思う。その報告の義務はどうなっていますか。一々警察官が――確かに警棒を使ったと思う。そして現実に新聞にはっきり書いてありますように、警棒で胸を突かれて失心している女の子の写真が出ている。警棒を使った人があるからやられたと思うのですが、その警察官は上司に何も報告しなくても、警察はよろしいのですか。問題はここにあるのですがね。間違っておろうと、それが正しい行為であろうと、警棒を使った者で相手方に負傷させた場合は上司に報告せよとちゃんと規定に書いてある。またそうしなければならぬ。そのことの義務を怠っている警察官について、そのままでよろしいのですか。
  103. 柏村信雄

    ○柏村説明員 確かに御指摘のように、警察官が警棒を使用して負傷をさせたというときには上司に報告しなければならないことになっております。ただ、今までの報告では、そういう報告がないので、従って、自分でけがをさせたと意識して報告している者がないということであります。それから先ほども、いかにも隠蔽するというようなお話でございましたが、私どもといたしましては、警察に行き過ぎがあるとか、あるいは適当な措置でなかったという場合に、初めわれわれに対する報告で、まあここまでは言わないでいいだろうということで、大したことはなかったという報告があったとして、その後になって詳細な調査をした結果、まことに面目次第もないような結果が出てくるということになることは、われわれとしても非常に困ることでありますので、この点は種々の会議においても、悪かったことは悪かったこととして、正確に、詳細に報告するようにということは、非常にやかましくいって注意を喚起している次第でございます。今回も、故意にけがさせたという、意識的にけがさせたという者の報告がない。従って、われわれとしては一応は信じなければいけません。それでそういう事実はない、おおむね正当な執行をしておったという判断をいたしておる次第でございます。
  104. 門司亮

    ○門司委員 私は、もし警察庁の長官が今のような答弁だったら大へんなことだと思うのです。いわゆる警棒使用の規則等に書いておりますことは、故意にやったから報告せよというようなばかなことは言っちゃいないと思う。あえて私はここでばかという言葉を使います。警察官が少くとも故意に国民に傷害を与えてもよろしいなんということは、毛頭考えられないことである。そういうことを想定して規則をこしらえたわけではないと思う。この規則の想定は、少くとも、正常と思われても、あるいは正当防衛と考えられても、相手方に傷をつけた場合には、その理由をやはり上司に報告するという、いわゆる警察行政を公正に行うという基本方針に基いたものだと思う。今の長官の答弁を聞いておりますと、何か故意に傷をつけた者はないというお話ですが、故意であろうとなかろうと、国民に傷をつけた以上は、上司に報告するということが、警察法の建前であり、それでなければならぬと思う。今の警察庁の長官の答弁は、はなはだ納得がいかない。もしそういうお考えだとするならば、警察官はいかに人民に傷をつけても、故意でなければそれでよろしいのだということになれば、非常に大きなあやまちを犯すと思いますよ。これじゃ国民は、安心してうっかり警察官のそばに寄れないですよ。間違ってやったのだからといってそのままになるようでは、ばかじゃあるまいし――ほんとうに私は平たい、悪い言葉を使いますが、故意に負傷を与えた以外のものはこれから除かれるということになれば、えらいことですよ。私は、ほんとうの民主警察としての精神に関する問題だと思うのですが、今の答弁は一つ直しておいてくれませんか。
  105. 柏村信雄

    ○柏村説明員 速記がどういうふうになりますか、今私は、故意にと言って、故意ということがおかしいから、意識的にと言い直したつもりでございます。結局けがをさせたことを意識した警察官が報告するということになると思います。従ってそういう報告がないということを申し上げたのございますから、もし速記に私が今申し上げたようなふうに書かれていないとすれば、故意に傷つけた者のみが報告せよというようなことでないことは、門司委員の御指摘通り当然のことであります。意識して傷をつけた者は報告するということでありますから、意識してした者は報告しなければならないことになっておるのであります。
  106. 門司亮

    ○門司委員 問題は、もしそういうことでのがれられるといたしますと、本人の意思がどこにあったかということで、あらゆる者が、自分は意識しなかった、どうも混乱だったから、けがをさしたかもしれないが報告をしなかったということになれば、これは報告をしなくてもいいということなんですよ。意識していなかったということは、本人の自覚です。他人から見た問題ではないのですから、君はそうやったと言われても、おれは気がつかなかったと言えば、それまでのことです。新聞の記事に書いてありますように、警棒で胸を突かれて失心した女子学生ということがはっきり書いてある。この記事がうそであるとか、あるいは写真が載っているのですが、これがうそだということになれば、これは別の話になりますが、私は、少くともこの写真の状態から見て、明らかに警棒で突かれたか何かしたのは間違いがないと思う。そういうものでも、本人が意識しないうちにやったものなら、それで報告しなくてもよろしいのだということを警察庁の長官から言われたということになりますと、これはちょっと問題を起しやしませんか、どうなんですか。少くとも警察庁長官としてのものの考え方が、露骨に正直にいえば、今言われたようなことが個々の警察官の心理の中にあるかもしれない。あるかもしれないが、公けの立場としては私は許されないと思う。本人が意識しなければ、それで届け出なくてもよろしいということは問題だと思う。そうなって参りますと、告発状に書いてありますように、これを指揮した責任者は、その責任を負うべきだという結論になると思う。そういうことが告発の最大の原因だと思うのです。その辺は一体どうなんですか。
  107. 柏村信雄

    ○柏村説明員 先ほどから申し上げますように、意思をもってとか、あるいは故意とかいうことでなくて、けがさせたということが意識されなければ、報告もできないということであります。
  108. 門司亮

    ○門司委員 そうしますと、警察の連帯性の上に立って議論しなければなりませんが、この告発状にありますような警察官にけがをさせられたということも、個々の警察官に意識した者がなかった、いわゆる覚えておった者がなかった、だから報告しなかった。しかし、けがしたのが事実だとすれば、当時警察を指揮された諸君が、その被害者に対して当然責任を負うべきだと私は考えるのだが、その点はどうですか。
  109. 柏村信雄

    ○柏村説明員 私は、ただいまお尋ねの報告義務の問題について、けがをさせたことを意識した者は報告しなければならないという趣旨であるということを申し上げたのでありまして、具体的に部隊の活動としてやっております場合に、警察官がけがをさせたかあるいはそうでなくてけがしたかは別としまして、知り得るだけの状況というものは当然上司の方に報告すべきであるというふうに考えております。
  110. 門司亮

    ○門司委員 私の質問から少し離れておるのでありますが、私が今お聞きいたしましたのは、警察庁長官の言われるように、負傷あるいはけがをさせた警察官自身が意識していなければ、知らなければ報告はできないという理屈も成り立つかもしれない。しかし、けがをしておる者があることは事実なんです。これは事実でないとは言われぬと思う。警察官の方でもけがをしておるし、デモ隊の方でも何十人かけがしているということは事実なんです。そのけがした原因があるのに違いないのでありまして、その原因がもみ合った中にあるとすれば――しかも警察官は警棒を使用しているという事実がある。警棒にぶつかればけがをするのです。カシの棒ですから、少しこづかれればけがをするのはきまっている。負傷の起る原因、要素が十分あったと思われる。その中で事実上の負傷者が出ている。そういたしますと、本人が何の何がしをけがさせたということについては、私はなかなかわからぬと思います。何千人という知らない人が集まっておるのです。面識がないのですから、何の何がしをけがさせたということはわからないと思いますが、しかし、少くとも警棒に当ってそういう負傷をした人が何人かあるということは、これは私は警察側に報告がなきゃならぬと思う。しかしこういうことは、あなたの方はいろいろやかましいことをいうが、場所がどこで、時間が何時で、何の何がしにけがさせたかということは、これは事実上知ることは不可能です。おそらく警察官が知っているはずはないと思う。ただ、そういうことが今のような答弁だけでよいということになると、結局、なぐればなぐり得だという印象を警察官に与える。同時に、国民にはなぐられ損だという印象を与える。これではやはり厳正な警察行政というものは行えない。警察というものはわからぬものだ、警察というものはこわいものだという感じしか持たせない。だから、もう一ぺんあとに戻ってもよろしゅうございますが、警察の警棒使用に関する取締りの規則についての解釈をもう少し明確にしておいてもらいたいと思うのです。
  111. 柏村信雄

    ○柏村説明員 どうも答弁が上手でないものですから……。(「質問が意地が悪いんだよ。」と呼ぶ者あり)警棒を使用して他人にけがをさせたというときには、これは当然届出なければならない。ただ警棒でけがしたかどうかわからない。けが人というものを大体これくらいは警棒でやったろうというわけにも参らないわけでありまして、私は先ほどから申し上げておりますように、警棒によってけがしたということがはっきりしない状況でありますので、従ってやかましく報告を正確に出すように言っておりますが、現在までそういう報告に接していない。従って私は、金田本部長を信頼して、今度の事件については、おおむね正当な職務行為をやったというふうに判断をいたしておるわけであります。
  112. 門司亮

    ○門司委員 どうもその点があれなんです。あまりしつこく追及するようですが、この種の事件は、いずれの事件でもうやむやになっておるのです。そうしてけが人がたくさん出ている。しかもデモ隊は武器を持ってないことは事実なんですね。何人かのうちには旗を持っていたかもしれない、旗ざおがあったかもしれない。しかし、その旗さおは、味方の頭を百人も五十人もなぐるような機会もなければ場所もなかった。いわゆる何も武器を持たない、無抵抗といっていい諸君が負傷をしているという事実は、警察はそれでは一体何によって判断されます。あれはどこかほかから棒きれでも持ってきてたたき合ったんだろうという判断をされているのでしょうか。それでは国民は納得しませんよ。新聞には、血に狂った警察官の暴挙と書いてありますよ。血に狂ったか何かわからぬが、とにかくけがをしたものはデモ隊であり、その対象になってけがをさせたものは、少くとも行為のいかんにかかわらず、あるいは場所のいかんにかかわらず、これは警察官の警棒によってけがしたものであろうということ、あるいは警察官が手をねじるとか、足でけとばしたかによって負傷したものであることは、一般人の想像にかたくないところである。それ以外に考えようはない。これについても、いや断じて警察官はやらなかった、何かのはずみでけがしたのだというようなお考えですか。
  113. 柏村信雄

    ○柏村説明員 私は、今度ああいう事件が起ったことは非常に遺憾に思っておるわけであります。しかし、警察官がけがをさせた、警察官に非があるというふうに、断定されることは、私としては非常に遺憾なのであって、警察が正当にデモ隊に対して正常化させるための規制をしていくに当って、今無抵抗の人間というお話でございましたが、無抵抗ということではなくて、確かになぐりかかってきておるのであります。そのために警察官がけがしている者がはっきり出ておるわけでありますから、そういう無抵抗でない状況の者に対して、警棒を原則的にはななめ横構えにしまして、これに規制を加えて、いく。そういう際に、あるいはけがをするという者もあったかもしれぬ、警棒によるけがはあったかもしれません。それは私も全く警棒によるけがはなかったということを申し上げているのではなしに、そういうことを、けがをさせたということを意識した警察官がなかった、こういうふうに申し上げたのであります。
  114. 門司亮

    ○門司委員 どうも水かけ論のようですが、けがをさせたということを意識した警察官がいなかったとおっしゃるのだけれども、とにかくこれだけ大きなけがをしているんですよ。さっき読みました告発状を見てみましても、二針ないし三針くらいの縫合をいたしておりますし、それから肋骨のけがもありますし、それから脳髄の挫創兼上膊麻痺というようなことが診断書に書いてあるようでありますが、こういうけがは単にこぶしやそれからひじの当ったくらいでは、これはけがしないものなんですよ。けがしようとすれば、やはり人間のからだより何かかたいものにぶつからなければけがしないものですよ、実際は……。これは常識的にそう考えられる。今のように、あったかもしれないというようなことでは、この種の事件というものはなかなか解決できないと思うのです。ここで警察庁長官と幾ら議論してみても、私はなかなか解決つかぬと思いますが、そこでこの種の事件についてもう一つ関連性を持ったもので聞いておきたいと思いますことは、今のように、警察庁としては負傷者の確認が不明だとかなんとかいって逃げておりますが、われわれどう考えても、これは警察との衝突によってできた負傷であります。デモ隊がどんなにジグザグをやってみましても、デモ隊自体のジグザグをやっている間には負傷者はなかったはずであります。警察との衝突においてけが人が出ておるのであります。しかも、警察隊が警棒を使用したことは事実でありますから、これは人権擁護局の方がおいでなら聞いておきたいのでありますが、これはこの前の文教委員会のときにも申し上げておいたのであります。議事録を読み上げることは差し控えますが、かつて本州製紙事件の起きましたときに、私の記憶では東京新聞かと思いますが、人権擁護局で調査した範囲では、どうも警察官の方に行き過ぎがあるようだ、たとえばデモに何の関係もないバスを停留所で待っておった人がなぐられた、傍観していた人で傷ついた人がある、これは一週間以内に警察庁に警告する、というような記事があるのを見たことがありますが、この問題は、その後どうなっておりますか。
  115. 鈴木才藏

    鈴木説明員 私ども、そういう新聞記事は見たのであります。あれは記者が推測をいたしまして書いた記事のようでありまして、私ども遺憾に思います。本州製紙の事件につきましては、大体東京法務局の実情の調査が終りまして、最後には、この事件についてどういう処置をするかという考慮の段階であります。
  116. 門司亮

    ○門司委員 今事件の内容といいますか、新聞の記事が憶測で書かれたものであるというような御答弁がありましたので、一応私はそれを信じたいと考えます。  問題になりますのは、この種の事件は、どの事件でもはっきりした結末がついてないのであります。砂川事件にいたしましても、また本州事件にいたしましても、被害者はずっと並んでおりまして、そうして今私が申し上げましたような個所で、ほとんどデモ隊とは何ら関係がなかった――ことに本州製紙事件のごときは、御承知のようにデモ隊が石を投げた事実がある。それに対する正当防衛という形が一方に出ている。それでもバスの停留所でなぐられたとか、デモ隊と何ら関係がない人がけがをさせられた事実があるのであります。しかし、これらのことにつきまして、警察官に対する明確な措置というものがほとんど今日までなされていない。ほとんどうやむのうちにこれが終っておる。同時に、この種の事件は非常にむずかしいのでありまして、先ほど申し上げましたように、警察官の方でも、何の何がしをどこでどうけがをさせたということがなかなか確認しにくい。大ぜいの人でありますから……。従って大衆の方も、警察官のこの人にやられたということがわかっておっても、どこの警察署のどういう警察官であるかということは確認しがたいのであります。従って、これを告訴するにいたしましても、訴訟するにいたしましても、非常に困難性が伴います、事実の確認の上に。従って、こういう事件はほとんどといっていいほど泣き寝入りになっている。この泣き寝入りになっているということは、大きな意味からいいますと、権力による国民への一つの大きな弾圧というか、圧力がかけられておるということであります。国民の方からいわせますると、きわめて迷惑な話であり、いわゆる権力による行使は、人権をかなり大きくじゅうりんしてもこれはのがれるんだという印象を与えるということは、先ほどから申し上げておりますように、はなはだおもしろくない傾向だと思う。こういうことがたび重なって参りますると、結局、思想的にいわゆる反発する人間というものは必ず出てくる。だから、私はこの際この機会に、人権擁護局に対します要望でありますが、この種の事件については、徹底的に人権を守ってもらいたい。そうすることによってのみ、私は思想の正常化も行われると思いますし、警察の威信というようなものも高められてくる。このことは一つ擁護局の方には特にこの際お願いをいたしておきます。  それからその次に警察当局に聞いておきたいと思いますことは、最近におけるこの種の争議に対しまする警察権力の介入の問題でありますが、これをどうお考えになっているかということであります。たとえば、今度の勤務評定をめぐるいろいろな教職員組合の闘争にも、三十七条違反であるというものの考え方で、そうして警察当局がいきなり出てくるという態度を示しております。また法務省も、そういう見解をこの間大臣はおとりになっておったようでございます。私は、この種の問題の地方公務員法の解釈と同時に、今日の日本の学校教育法あるいはそれに伴いますいろいろな法律の関連性をずっと見て参りますと、おのおの処置すべき問題は別にあるので、三十七条違反というものが警察権力によって先にこれが行使されるかどうかということと、その前に、これに対しまする当局のとるべき一つの処置というものがありはしないかということが私には考えられる。いわゆる地方教育行政の組織及び運営に関する法律の二十三条第四号には、明らかに教育行政に対するこういう不就学の問題その他については教育委員会がこれを担当するように書いてあります。従って、教育委員会が、この勤評の問題等につきましても、あるいは子供を学校にやらないというようなことをたといどこかの団体がきめましても、これを不就学の行為としてみなすかどうかということは、あえてこの法律によりまするならば、教育委員会の判定がなければ、警察が、ただ単にそういう、たとえば今の総評の諸君が九月十五日に実際に児童を休ませるというようなことを、三十七条違反として断定することは早いのではないか、おかしいのではないか、就学に関する権限というものはこの委員会が持っているはずである。そういたしますと、この委員会が、この就学は明らかにそういう意思をもってやったものであるという解釈をするならば、あるいはこれは三十七条違反といえるかもしれない。しかし、この委員会が何らの意思表示をしないうちに、警察当局が三十七条違反であるからこれをひっくくるんだ、これを処罰するんだということは、行き過ぎだと思う。明らかに警察権の行使の行き過ぎだと思うのですが、この点はどうお考えになりますか。
  117. 柏村信雄

    ○柏村説明員 今回の九月十五日に計画予定されております事態というものは、まことに私どもも遺憾に思っておるわけでありますが、しかし、こういう問題は、国民の良識あるいは教育当局の措置ということによって解決されることが最も望ましいことだと思うのでありまして、警察としては、直ちにこれに対して介入する、何でもかんでも介入していくという考えを今から持っているわけではございません。しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、その行為が不法越軌にわたるというような場合におきましては、その事態によっては警察が介入することもあり得ると思います。
  118. 門司亮

    ○門司委員 どうもそれは事態が起ってからのことであって、今は事態が起っておるわけでも何でもない。しかもさっきも言いましたように、就学の問題についての所管、監督としては、今申しました地方教育行政の組織及び運営に関する法律の二十三条の四号に明らかにそういう字句が挿入してあります。従って教育委員会の担当だと思う。だから、この教育委員会が、明らかにこれは不就学をあおり、またそそのかしたものであると断定を下すならば、これはあるいは三十七条違反として私は取り締ることができるかと思う。しかし、そういうことは実はないわけであります。これはどう考えても、今のような早まったものの考え方、これは法務大臣もはっきりこの前の委員会で言われておりましたが、三十七条違反であって、不就学の罪に該当するのだというようなお話をされておったようですが、これは私は少し行き過ぎだと思います。この所管をするものは、やはりこの法律に基いた教育委員会の一つの仕事であって、教育委員会が、こういうものを不就学の行為としてみなすということになれば、これはどうかもしれぬ。どうも政府の権力の介入が早過ぎる、あるいは何か意図するようなものがあるように考えられるのですが、この辺はどうなんですか。
  119. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先般の文教委員会で私が申しましたことを引用せられておるようでございますが、私の申し上げましたことをもう一度正確に繰り返して申し上げたいと思います。これはそもそも本来ならば、こういったような念の入ったことは私どもはやりたくないのでございます。しかしあの当時、新聞でも、ラジオでも、あるいはその他各方面の報道機関から、九月十五日を期して一斉に休校するのである、あるいは組合傘下の各人の子弟は学校へ行かせないのであるというなことが大々的に報道されておるということが、まず出てきた一つの事実なんであります。でありますから、私が先ほど来申しておりますように、法の秩序を守るというわれわれの立場からいうと、こうこういうことをなされば、これは法律に違反するものでありますよということは、私としては言わざるを得ない。これは法務大臣としてむしろ当然の措置であると思うのであります。私の申しましたところの内容は、一斉休校の問題について、先ほど来お話がありましたように、三十七条あるいは六十一条の四号の規定を念のために皆さんでもう一度見直していただきたい、こうこういうことは法に該当いたしますよということを申したのが一つの内容であります。  それからいま一つ、これも念のためでございますが、学校教育法を引用いたしまして、これには二十二条にこういう規定がございますよ、これは法律に違反いたします。ただ二十二条の点については罰条の規定はございませんことは今さら申し上げるまでもありません。従って、ただいま門司委員の言われたようなことは、私が申した以上に私が言ったかのごとくにあるいは誤解されておるのではなかろうかと考えますから、この点は一つ改めていただきたいと思います。
  120. 門司亮

    ○門司委員 改めろと言われますが、改めようがない。大臣の方で、はっきり新聞に書かれたように、三十七条違反を取り締る、あるいは処罰するということを言われておりますので、私は、事就学に関する問題であって、しかもこれは同盟罷業、怠業というものとの間に議論があると思う。これは父兄の行う行為でありますから、教員の行う行為とは別であります。これは地方公務員が行う行為ではございません。児童に責任のある父兄が行う行為であります。いわゆる不就学が妥当であるかどうかということが議論になるわけであります。この点にはかなり議論が残されておるのであります。休むということが直ちに不就学という字句につながるかどうかということは、愛知さんの方では大きく拡大されて、二十二条二十二条と言われておりますが、しかし、二十二条は二十二条といたしまして、私どもの考え方からすれば、さっき申し上げましたように、教育委員会及び地方公共団体の権利という条項は、例の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の二十三条には、明らかに教育委員会の権限あるいは地方公共団体の権限としてちゃんと書いてあるのであります。いわゆる就学に関する問題については、これらの諸君が一応権限を持っておるのであります。従ってこれらの権限が、果してこれを不就学とみなすかどうかということは、一応私はここで検討さるべきだと思う。これらの諸君の権限でありますから。児童の就学その他については、これは法律の条文を見ましてもこう書いてある。「学齢生徒及び学齢児童の就学並びに生徒、児童及び幼児の入学、転学及び退学に関すること。」こう書いてある。これは明らかに就学に対しまする職務権限というものは、教育委員会並びに地方公共団体の長にあるのである。従って、これらの諸君が、今行なっておる行為があるいは自分たちの権限を侵す行為である。自分たち考え方からして、これは不就学の行為であるとみなすということになれば、これはあるいは三十七条違反になるかもしれない。しかしこれらの諸君が沈黙しておるのに、三十七条違反だということにあなた方が断定されて行われるということになりますると、たとえば公務員法を見て参りましても、もしこの事件があなた方のような考え方で、教育委員会が打ち出さない、考えない前に、これを公務員法の三十七条違反として、六十条なり六十一条が適用されるということになりますと、ここで二十八条が私は出てこなければならぬと思う。あるいは二十九条が出てこなければならぬと思う。当然これについては刑事罰があると同時に行政罰が起ってくる。しかし、総評の諸君は、何も公務員ではありませんから、二十八条なり二十九条の処罰を受ける必要は毛頭ない。これは処罰をしようとしてもしようがないのであります、公務員じゃありませんから。そういうことで、いろいろ法律上の解釈については、私は問題があると思う。それを十分究明されないで、そうして、あの行為は直ちに不就学の罪に該当するんだというような意思表示をされることは、何か事をかまえて、ことさらに私は問題を紛糾させようとするように考えられるのでありますが この点については、大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  121. 愛知揆一

    愛知国務大臣 あなたのおっしゃるようなことを、もし私が言ったのだとすれば、あなたのおっしゃるような御意見になろうかと思います。しかし、先般私の申しましたことは、議事録等によってお読みいただければけっこうでありますが、私は、そうは言うておらぬのであります。ですから、私はあなたと論争する気持はないのでありますが、事実私の言ったことを繰り返して言えば、先ほども申しましたように、前段におきましても、一斉休校の問題を取り上げて――まあいろいろこまかいことは、くどいようですから省きますけれども、たとえば総評にしても、日教組にしても、事情のいかんを問わず、何でもかんでも学校長に一斉休校の許可を与えよというような指令を発したり、共同謀議をしたり、あおり、そそのかしたりするならば、何人といえどもこれは地方公務員法第六十一条の罰条に該当する、なぜなれは、そういった行為をやることが、あおられそそのかされる対象になるような行為をすることが三十七条に違反するからでありますと、これは私はそう明白にいたした点であります。それから学校教育法の方の関係で、三十七条を、私はあのときに引用したことはないのでございます。学校教育法の関係で私が申しましたのは、学校教育法第二十二条及び第三十九条によりますると、学齢児童、学齢生徒の保護者は、その児童生徒を通学させる義務があると規定されております。この義務の履行は、単に児童生徒を、小中学校に在籍させれば足りるのではなくて、義務教育期間中引き続いて就学させることを必要といたします。従って保護者が児童生徒の病気、家族の病気等、正当の事由のないのに児童生徒を就学させないことが、学校教育法に定める就学義務の違反行為になりますよと、ここまでしか私は言っておりません。なお、それからさらにあなたの触れられた点に、私がしいて申し上げますならば、そこまでのところには罰条がないのです、御承知通り。従って、私が申しましたのはそこまでの点であって、さらに罰則の点になりますと、学校教育法二十二条第二項及び第四十条によって、同法の委任を受けた学校教育法施行令二十条によりますると、ここに七日間以上就学させなかった場合とか、あるいは市町村教育委員会にすみやかに通知しなければならないことであるとか、そのほかここで市町村教育委員会の関係が出て参ります。そうして市町村教育委員会との関係において、督促されても児童が出てこないような場合には、罰条がここに出てくるのでありますが、この点については、あまり詳細のことでありますから私は触れていなかった。この点を、あなたはさらに私の言うたことを拡大されて、これと三十七条のことを何かチャンポンにして言うたかのように、私はどうしてもあなたは誤解されておるように思いますから、この点は事理を明白にしておきたいと思います。     〔「了解々々」と呼ぶ者あり〕
  122. 門司亮

    ○門司委員 私は了解ができないのであります。従って、今世間で問題の起っておりますのは、同盟休校でなくて、個々の父兄が子供を登校させないということが是か非かという議論は別にいたしまして、これはこの前の委員会からこれは別にしている。そうして問題を直ちに政府がこれを取り上げて、違反であるからというような、あるいは処罰をするというようなことになっておると思います。私は、就学の問題についてはこれはいろいろ議論がありますが、今一週間以上就学をさせないものはどうのこうのと言われましたが、二十条を見てみましても、なるほどここに書いてありますのは、問題は、出席させないことが相当の期間に及んでと、こういうことを意味しておるのであって、何もそう短かい問題をどうしておるわけでもありませんし、同時に、問題は就学の義務と、ここにも出席という文字が、二十条にも使ってあります。法律の中に出席という文字を使っておるのはまだほかにもあります。たとえば学校教育法における二十六条ですか、二十六条にも出席という文字を使っておる。同時に二十六条だと思いますが、停学あるいは登校を禁止することができるという規定もございます。これは伝染病だとかあるいは素行がおさまらなくて他に迷惑をかけるような者については停学を命ずることができる。これは就学の義務と停学の処置というものは多少議論があろうかと思います。ここには就学の義務を規定に置いて、片方には停学できるということについては、いろいろ問題があろうかと思います。そういう問題が同じようにありますし、もう一つは、従ってそれを受けた学校教育法の施行規則の十二条の四には、明らかに出席簿を作成するということが書かれております。これもやはりこの種の問題に対する法律の中で出席という文字を使った条項があります。これらの出席という文字を使った条項をずっとこう見てみますと、これは直ちに就学の義務と関連を持つかどうかということについては、さっきから申し上げておりますように、私は議論があると思うのでございます、どう考えても。今当局のお考えは、たとえ欠席でも、これは不就学のことを考えられるというお話のように聞えるのです。またその通りにお考えになっておらなければああいう問題が出てこないと思います。だから、欠席と不就学という問題との関連性は、私はまだはっきりした、解明したものはどこにもないと思うのです。従って、従来起って参りました、先ほどから、この前の委員会で申し上げましたように、日本には一週間あるいは十日ぐらい、あるいはもっと長い間、正規の学校に就学させないものはたくさんあります。実例をあげろというならすぐ申し上げますが、ここに写真もありますから……。(「いいよ、いいよ」と呼ぶ者あり)いいよ、いいよと言われておりますが、これはたくさんあるのですよ。写真をごらんになれば、どこの学校で場所はどこという写真を私はたくさん持っておりますから、これは枚挙にいとまがないというと少し大げさかもしれませんが、日本にはかなりたくさんある。しかし、それらの問題のときには一向政府は問題にしておらない。しかも、それは一週間どころじゃないのですよ。もっと長いのです。そうしてただこの問題が発表されたというだけで、まだ実行するかしないかわからぬ段階で、いかにもこれを大げさに取り上げられるということは、どう考えても意図のあるものだとしか考えられないのであります。われわれは考えられない。理屈を言うようですが、今までのそうした事実を知りながらどうして一体処置をされなかったのか、文部省はそういう事実を知らなかったかどうか。文部省は知らないわけはないと思う。だから、そういうものと関連して考えると、どう考えてもふに落ちない。文部省は、今まで同盟休校その他について何か処置をとった実例がございますか。もし実例があったらそれをはっきりしてもらいたい。もしなかったらどういうわけで法を適用しなかったかということ、政府は、法を守る守るというからには、法を守ってもらいたい。
  123. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 ただいまの質問にお答えいたします。私どもとしては、いかなる場合にも不就学の事態が起きないように、できるだけ措置をしておるのであります。本件に対する罰則の適用は新潟県に一件ございます。
  124. 門司亮

    ○門司委員 新潟県に一件あるというなら、その事実をはっきり……。私はあなたの方であまり逃げるなら、これは写真がありますから、それを見せてもよろしいのであります。日にちも書いてありますし、場所も書いてあります。子供をどこで教育しているかという写真がちゃんとあります。寺子屋みたいなところで教えて正規の学校へ行ってないことは明らかだ。しかも正規に学校へ行っていない以上は不就学といわなければならないと思います。そういうものとの関連性を、この際もう少し明確にしておいてもらいたいと思う。
  125. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 不就学に関連しての御質問ですが、今までどうであったかというようなことについてのお話がございましたが、学校を欠席するというような事実には、いろいろな態様があろうと思うのです。病気で休むこともありましょうし、家庭の都合上休むこともありましょうし、またいろいろ問題になっておる、われわれが頭を悩ましておる長欠児童というような問題もございます。これはわれわれも行政上非常に頭を悩ましておる問題でございますが、さような事実のないように、とにかく学校に来てもらうように、出席するようにということの努力がわれわれとしては本体をなすものでなくてはならぬと思っております。病気その他のやむを得ざる事由によって休んだ者も、それを一々罰をかけるとかいう性質のものじゃないと思う。また長欠児童の問題につきましても、学校に来ないのは遺憾である。できるだけ出てもらうように努力したいと思います。それに対して直ちに罰条をもって臨むということは、文部省としてとるべき態度ではないと思います。同時に、時には父兄との間のいろいろな問題、村うちのいろいろの問題で、その学校に父兄が出さないというような事例があったように聞いておるのであります。それも遺憾なことであります。しかし、さような場合は、そのうちだんだんと話が円満に解決される点があるのであります。これを一々罰条にかけてどうこうという考え方は文部省としてはいたしておりません。できるだけ学校に出してほしいという心持で行政はやっていかなくてはならないと思うのでございます。今回のこの問題でございますが、私どもから考えますならば、いわゆる勤務評定の問題、それに反対するというふうな反対闘争の手段として、父兄が子供を学校に出さないということはまことに遺憾なことと思うのであります。できるだけ考え直していただきたい。そういうことで子供を学校に上げないというふうなことのないようにしたいということが、私どもの心からなる念願でございます。そういうふうに父兄が特別な意図を持って子供を学校に上げないという事実があった場合に、一体法律上どうなるのだ。こういうことになれば、先ほど愛知国務大臣からお答えになりましたように、法律上の見解としては、私はそういうことになろうかと思うのであります。いずれにいたしましても、罰があるとかないとかいう問題よりも、こんなことで子供を学校に出さないということのないようにぜひお願いしたいというのが私どもの考えでございます。
  126. 門司亮

    ○門司委員 私は、文部大臣のものの考え方等につきましては、大体そういうことになろうかと思います。今日までの欠席の児童の問題は、今大臣の言われたような政争の中に巻き込まれた――はっきりいえば町村合併あるいは学校の位置等の問題について、父兄が対立したときに、そういうことが往々にして行われておるのであります。これを実際から見ると、おとなの政治闘争に子供が巻き込まれて迷惑をするということであって、あまり私はいい結果じゃないと思う。しかし、こういうことは今まで放任しておるのであります。そこで今度の問題は、やはりこういう一つの勤評問題にからんだ問題だからけしからないのだ。だからこれを取り締るのだということは考えられておっても、今の文部大臣のようなお考えだとすれば、先ほどから言われておりますように、当局が罰則をもって臨むのだということの片りんでも国民ににおわせるということ自体、私は非常に大きな、上から高圧的に出てきた一つのものの考え方がありはしないかということです。そういうことが望ましいことではないという意思表示はけっこうだと思います。あるいはそういうことは言えるかと思います。今度のような問題について、やはり罰則があるからこの罰則を適用するのだ、しかもその罰則の適用については、先ほどから申し上げておりますように、不就学と欠席というものとのものの考え方はどういうふうに考えていくか。同時に、直ちに罰則を適用しようといたしましても、今大臣の言われたように、二十二条を見て参りましても、一日休んだからすぐ罰則を適用するというのじゃない。いわゆる長期欠席が不就学とみなされる場合において、そういうことが出てくるのであります。それがなければ、この種の法律の中に出席、欠席とかいう言葉を書かないはずだと思う。みんな就学とか不就学とか書くと思う。そういう字句の使い分けをしておりますところに、この法律についてはいろいろ私は疑義があると思う。それにもかかわらず、何か勤評の問題に対しては、政府が高圧的に出て、どうしてもこれでやるんだ。これは政府のものの考え方でありますから、そのままにしておいてもよろしいと思います。そのことのためにかってあまりやらなかったことを、今度だけは特別に行うという威圧的な態度に出られることに、私は政府に大きな弾圧をしようとする意図があると思う。大臣今までずっと言われておりますけれども、私は、確かにそういう意図がなければ、今度の問題だけについてこういう問題は起らないと思う。しかも長期就学させないということを言っておるわけじゃないのです。かりに九月十五日なら九月十五日一日だけしか言っていない。どう考えても、この問題については、私は、政府はそうした一つの挑発的――と言うと、また法務大臣に怒られるかもしれませんが、かなり強い弾圧をするという意図のもとに行われておるものであるというように考えられるのであります。この点はどうでしょうか、もう一度法務大臣に聞きたい。
  127. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、別に威たけ高になって言っておるわけでも何でもないのでありまして、就学の義務について、何か学校へ通わせなければ、父兄が直ちにふんじばられるとでも思われているかのような、あるいはそういう印象を受ける御発言でありますが、そういうことを私は言った覚えもなければ、私がかりにそういう乱暴なことを言ったとしても、それは法律に規定されておることの以外のことです。それは最小限度区別してお考えをいただきたいと思います。
  128. 門司亮

    ○門司委員 最後にもう一つ聞いておきたいと思いますことは、この前の委員会では、右翼に対しては何らの関係がなかったというお話であります。ところが、和歌山の問題を通じて考えられますことは、確かに右翼の団体がいろいろな行動をやっておることは、何もあの十五日、十六日の事件だけではありません。六月にも、和歌山の県庁の中に右翼と称される諸君が来て、こういう会合に対して、屎尿をまいたりあるいは水をかけたりした事実があるのであります。これらの問題が和歌山のときにすでにそういう様相を呈していたということは、大体警察においてはわかっておったと思う。もしそれがうそだと言われるなら、私はここに新聞の切り抜きを持っております。書いてあるから読んでもよろしゅうございますが、事実があったわけであります。それらについては、今日まで何らの処置がとられておらない。そういうところに、こういうデモ隊に対しても、やはり右翼が増長する――という言葉を使いますか、出てきて、そうしていろいろ必要以上の混乱に導くような行動をとってきた。そうしてそれが、警察庁の長官の言葉をかりて言えば、たまたま同じような時間で、同じような場所だったと言われるのでありますが、たまたま同じような時間で、同じような場所であったかもしれないが、とにかくそういう事実があることは明白なんです。それらに対して、一体警察はどういう取締りと、どういう方針をもって臨んでおるかということを、最後に私は聞いておきたいと思います。
  129. 柏村信雄

    ○柏村説明員 先ほどから申し上げておりますように、右翼と警察が結託したということは全くございません。この点は、たまたまと私が申しましたので、たまたまかもしれないが、そうでないかもしれないとおっしゃいますが、これはほんとうにどうも、見解の相違と申しますか、遺憾でありますが、私の申すことがおわかりいただけないという以外に、どうもいたし方ないと思います。右翼と結託するということはございません。先ほどから申し上げておりますように、警察は不偏不党、中正に職責を遂行していくという以外に申し上げようがないのであります。ただいまお話の、六月に行われました右翼の行動につきましては、これの取締りを確実にいたしております。
  130. 門司亮

    ○門司委員 これは私の認識不足であれば――不足だとよろしいのでありますが、今、取締りをされたと言われますが、どういう処置をとられましたか。その後、右翼に対するものの考え方と処置はどうされておりますか。
  131. 柏村信雄

    ○柏村説明員 六月に行われました抗議集会に対する勤評促進協議会というものの汚物をまいた事件、それから自動車を乗り入れた事件につきまして、この団体側の四名を清掃法と暴力行為等処罰二関スル法律違反容疑で取り調べて、そのうち一名を地検に送致し、他は説諭処分にいたしております。それから右翼についてどういうふうに考えておるか。右翼といっても、なかなかどういうものが右翼かということは一がいに申しにくいのでありますが、いわゆる右翼の者が、左翼的傾向のある行為の団体に対して、非常に反対的な、激越な行動に出るおそれが多分にあるということで、この点は終始警戒をいたしておるわけでありまして、今回の和歌山の事件につきましても、事前に十分の警告を発し、トラブルの起らないように処置をしたつもりでございます。当日におきましても、デモ隊と自動車とがお互いに悪口の言い合いをしておるというようなのについても、トラブルが起らないように警告をし続けておったような次第でありまして、右翼に対して不穏な事態のないようにという意味における警戒措置は、十分にいたしておったつもりでございます。ただ先ほど申し上げましたように、勤評賛成で、勤評反対闘争に反対するということだけで、これを取締りの対象にすることはできない。やはり、これが不法越軌にわたるという状態になって、初めて取締りの対象として警察が乗り出すということになるわけであります。この点は、デモの行進等についても、同じ考えを持ってやっておるわけでございます。
  132. 鈴木善幸

  133. 中村高一

    中村(高)委員 九月の十五日の問題が切迫いたしておりますので、だいぶ時間もおそくなっておりますけれども、もうしばらく時間をいただきたいと思うのであります。  今度の勤評問題が非常に大きくなって参りまして、現在の状況では、どうも九月の十五日の反対行動からいろいろの問題が起るんではないかということを、われわれも心配をいたしておるのであります。幸いに、きょうは三人の大臣もおられまして、今までの問答からいきましても、おそらくできるだけ事態をおさめていごうという気持になっておられると思いますし、私たちも同じような気持でありますが、特に先ほど来いろいろの質問で、取締りをするということから、法を乱す者を取り締るということに対しては、われわれも法治国民の一人でありますから、これはやむを得ない。しかし、法の執行をする場合においては、いやしくも人権を棄損したり、あるいはまた何か別の目的を持って検挙をするというような、ことがあってはならないと思うのであります。この点については十分に一つ、どういう事態が起るかわかりませんが、考えていただきたいと思うのであります。先ほど来の丹羽さんやあるいは加藤さんの質問にもうかがわれるのでありますが、どうも日教組の行動が、全学連とかあるいは総評だとか、あるいは共産党だとかいうものに何か使嗾をされてこういう行動に出ておるもののような問答がたくさんありますけれども、どうでしょうか、一体学校の教員――相当の教育を受けておる者でありまして、これが、若い全学連の学生がおだてたから、五十万の先生みんながはね上ったなどという見方をするとすれば、私はおかしいんじゃないかと思います。相当の教育のある者が、若い学生や共産党の者におだてられて全部立ち上ったんですなどという皮相な見解になったとすれば、私は、この問題は片づかないと思う。ことに今の学校の先生は、一体だれが今日養成してきたのですか。灘尾文部大臣あるいは先輩の諸君が、みんな今日の教員を養成する担当者じゃないですか、いわば自分の子供だと思います。五人の子供があって、その五人の子供が全部おやじの言うことが間違いだといって立ち上ったときに、あなた方は、子供ばかり間違ったと言えるかどうか。待てよ、おやじの考えにも少しは間違いがあるんじゃないかということを、私は反省する必要があると思う。五人の子供のうちの一人が言うことを聞かないというならば、これはわかりますけれども、全部と言うては言い過ぎかもしれないが、大部分の人が、いけないんだ、間違いだ、何とか考え直すべきだと言うてきておるところには、私は一がいに若い者から扇動されたなどという見方は無理だと思う。やはりこれは、その当局にある者が、なぜこういう反対をされるかということにも、もう少し反省してもらいたいと思う。自分の子供のような、自分で養ってきた教員をこれだけ全部敵に回すということは、私は、よほど考え直さなければいけない問題だと思っております。どうも東京都の職員のこの前の一斉休暇のあの処罰のやり方などを見ても、私は考えなければいけないと思うのは、たとえば減俸、戒告、訓告を受けた者が三万三百三十九人もある。法の適用というものは、私は、共同生活をはずれた一部の者を処罰するということになければならぬと思う。大部分の者をみんな処罰してしまうということじゃ、法の目的などはないんじゃないかと思うのです。レールからはずれたものをレールに乗っけてやるのが目的であるのに、三万何ぼも処罰するということには、どこかに無理がある。法の目的なんか達しませんよ。一人や二人を処罰するならば、あるいは法の目的は達するかもしれませんけれども、全部を処罰されたのでは、法の目的を達しませんよ。かえって処罰されないものの方が例外だということになるので、これは私は考え直さなければならぬと思う。九月十五日に政府がどんな態度をとるか、これは結果が現われてみなければわかりませんけれども、教員自分たちが養成してきたものであるということ、全部の者を処罰するというような行き方は間違いだということを、まず私は考えていただきたいと思うのであります。  私がお聞きしたいのは、今度の日教組の小林委員長の逮捕でありますから、警察庁長官なり、あるいは担当の警視総監に最初に答えていただきたいのでありますが、先ほど丹羽委員の質問によると、今度の逮捕は四月二十三日に起った都教組の問題で検挙したというのでありますけれども、どうして今ごろになって検挙したのか、まずお尋ねをいたしたいのであります。四月、五月、六月、七月、八月、九月と、問題が起こってからなぜ六カ月もたって逮捕なさったのか、この点何か別の目的で逮捕するようなことがあっては、私どもいけないと思う。ほんとうにあのときの問題で、仕方がなしにやったのだというならば、これはわからないことはありませんよ。ところが、九月十五日に日教組が全国的に一斉にやるという数日前をねらって委員長を急に逮捕するということは、今聞くと、四月の事件だということなんです。六ヵ月間のうちになぜ逮捕しなかったのですか。六ヵ月間にできないということは、世間には幾らでもありますよ。犯人が逃亡しておって、どうしてもわからないとかというのならわかるのです。ところが、日教組の委員長ですから目の前にいる。どこを歩いていても毎日の新聞に出ていますよ。それを六カ月もそのままにしておいて、九月十五日の直前に逮捕するということに対しては、やはり世間では、何かこれはほかの目的でやったのではないかという、少くとも疑いを持たれる逮捕だと私は思いますけれども、いかがでございますか。
  134. 川合壽人

    ○川合説明員 四月二十三日の休暇闘争についての取調べそのものが相当遅延している上に、小林委員長の逮捕に至っては、きわめて妥当でない時間に行われたというふうにお聞きいたしますので、ごくかいつまんで四月二十三日からの、この事案につきましての私ども関係者と協力いたしましてとりましたことを申し上げますが、御案内の通り、四月二十三日の一斉休暇というのは、きわめて重要な事件でありまして、これにつきまして、私どもは、法規の解釈の上から申しまして、ことに関係の教職員について法を問擬するということにつきましては、慎重を期したわけでありますが、いかんせん、地方公務員法三十七条の違反の容疑はあまりにもはっきりしておりますので、この下準備のためにいろいろと苦慮いたしたわけであります。御承知のように、最初に関係のところの家宅捜索を行い、あるいは関係者の任意出頭を求めまして、いろいろと調査を進め、取調べを進めて参ったわけでありますが、私どもの手腕がすぐれていないとおっしゃればそれまででありますけれども、事態はさほど簡単ではありませんし、関係の人たちも、それからこの闘争に入りました事態も、いろいろと入り組んでおりまして、きわめて激越な区もありますれば、あるいはこの点につきまして非常に懐疑的な区もあったわけであります。それらのことはまず別といたしまして、私どもとしましては、虚心に、法の建前と当時の人たちのとりました行動について協議をし、調査を進めたわけでありますが、途中におきまして、検事の勾留について裁判官の承認が得られない。法上の手続として、準抗告、特別抗告の手段も検察庁においてはとられたのでありますが、この点が承認になりませんで、取調べの上において相当難渋をいたしたのであります。この事件そのものの外貌につきましては、おおむね事件処理は八月中に終ったわけでありますが、これとてもおそいとおっしゃればそれまででありますけれども、今申し上げました入り組んだ事情がありましたわけでありますが、小林委員長の場合におきましては、この長谷川氏以下の取調べと並行しまして、数回にわたって任意の出頭を求め、私どもとしましては事件の結果をこれ急いだわけであります。先ほど丹羽委員の御質疑に対しましてもお答え申し上げましたが、繰り返し申し上げますと、八月の七日、八日に呼び出しの電話をいたしましたが、任意出頭に応じていただけない。その後、二十二日ごろまでに十数回にわたって宮之原書記長などに、日下部という私どもの方の係長が電話の呼び出しの依頼をしております。その後二十五日の午後七時と二十六日の午後六時には、本人並びに本人の奥さんに直接呼出状を手渡しておるのでありますが、何らの連絡御返事もないのであります。私どもとしましては、これはこういうことでは困る、事件の結末の上から申しましても、また小林委員長の容疑の点の解明につきましても、これ以上は委員長のお立場におられても、任意でもって遷延するということはできないということで、九月の二日に帰京されたことを確認いたしまして、あえて検察庁を通して逮捕状をもらって、自宅において本人にこれを呈示して、来ていただいたという状況であります。きわめて不穏当な時期ではないかということでありますが、今申し上げましたような事情でありまして、私どもとしましては、四月の二十三日の東京都教組が行いましたところの一斉休暇闘争というものの事件の結末につきまして、このような過程をたどりましたことを申し上げます。
  135. 中村高一

    中村(高)委員 今の御答弁だけでは、私は、もし九月十五日の問題が起きなければ、この事件は、小林君の逮捕はおそらいろいろの点から流れただろうと思います。そんなことはないというならば、私はお聞きいたしますけれども、この事件で一斉にあの関係者は二十七名逮捕しているのに、この人だけなぜそれでは二十七名と一緒に逮捕しなかったのですか。
  136. 川合壽人

    ○川合説明員 中村委員も十分御承知でありますが、四月二十三日の東京都において行われました一斉休暇闘争というものは、受け持ちました仕事の内容、指令の渡り工合、あるいは具体的にこの挙に出ました者、あるいは前のことを申しますと、共同謀議、あるいはあおりそそのかしたいろいろの事態というもの、各人々々によって様相が違っておるのでありまして、二十七名の者は、これは主として区の支部長を込めました都教組の役員であったのであります。その以前におきまして、いろいろと日にちを変え、場所を変えまして、任意出頭なり何なり、あるいは捜索なりをいたしておるのでありまして、小林委員長の容疑の事実というものは、今申し上げました任意出頭に応じてきた人たち、あるいは逮捕令状によって逮捕されました都教組の役職員あるいは支部長の方々とは、その容疑の内容がいささか変っておりますので、一斉にやらなかった理由がわからないとおっしゃいますが、これは私どもとしましては、何ら事務上にそごがあるとは考えません。
  137. 中村高一

    中村(高)委員 先ほどの警察庁長官の答弁でも、あなたの答弁でも、再三再四にわたって出てこい、こう言ったというのでしょう。ですから、もうずっと前から早く出てこい、早く出てこいと言っておったんですから、なぜこの小林君にだけは再三再四呼び出しをかけておって逮捕しないで、今、九月十五日の直前を目ざして逮捕したか、逮捕する機会は幾らでもあったんじゃないですか。再三再四にわたって呼び出したのであるから、そのうちの再二でも再三でも再一でも、どこからでもやる機会はあったのじゃないですか。それをこの十五日の目前をねらうということが納得できない。幾らでもやる機会はあったのです。どうですか、再三再四呼び出しているのだから、前もってやる機会はどこかであったのじゃないですか。
  138. 川合壽人

    ○川合説明員 これは説明をいたしまして御納得いくかどうか知りませんが、私どもは、小林委員長という人のこの争議におきますところのとられました態度その他と、今の私どもの方でずっと以前に逮捕いたしました長谷川委員長以下とは、その内容が変っておりますということと、いやしくも日教組の委員長をやっておられるということにつきまして、考えるところがあったわけであります。実は再三再四、再五、こういうふうなことをおっしゃいますが、私どもとしましては、今申し上げましたように、電話、文書その他の方法で手を尽しておるのでありまして、あるいは技術上から申しますと、八月の半ばあるいは下旬にでもそのことは私は絶対に不可能であったとは申しません。しかし、これをもしも九月十五日の事案がなかりせば、警視庁は絶対に逮捕状のようなことの挙には出なかったろうということにつきましては、残念ながら言えないのであります。
  139. 中村高一

    中村(高)委員 逮捕状をお出しになるときには、犯罪の事実の要旨がおわかりになっておると思うのですが、これは小林君は共謀ですか、それともそそのかしたというのか、あおったというのですか、どれです。
  140. 川合壽人

    ○川合説明員 小林委員長の公務員法第三十七条違反の容疑の点につきましては、小林委員長は、私どもの調査の範囲内におきましては、都教組の長谷川委員長などと共謀の上、東京都の教職員が四月二十三日一斉休暇をとつて、いわゆる措置要求大会に参加するように指令して、その遂行をあおったという疑いによるものでございます。
  141. 中村高一

    中村(高)委員 今共謀であるという事実がわかってきましたが、大ぜいの者が集まって共謀したとすれば、一番最高は小林委員長になるわけです。それを小林委員長だけを除外して下の者だけを逮捕して、すでに二十七名逮捕して、七人だけはもう起訴して公判に回って、行政処分も全部済んで、この事件は全部結了しておる。そうすると、委員長たる主役にある人が共謀したということになると、その責任は私は重大だと思うが、最も重大な責任にある委員長だけを、今までやればやる機会もあったけれども、九月まで持ってきたということも、どうも事件自体からいっておかしいじゃないですか。共謀したとすれば、委員長たる責任者ですから、まず相当厳罰にしなければならぬと思うのでありますけれども、それはそのままにしておいて、下の方だけを処罰するというそのお考えはおかしいじゃないですか。政治的に何かお考えがあったんじゃないかという疑いを受けるのだが……。
  142. 川合壽人

    ○川合説明員 小林氏の行為が、長谷川氏その他の人の行為よりも、それは組織の中枢であるから重いではないか、こういうことなんでありますが、私どもは、必ずしもそのようには考えておりません。これは非常によく調査してみないことにはわかりませんが、いろいろな任意の供述、あるいは私どもの押収しました証拠資料その他から申しましてこれはきまることでありまして、一がいにそのように申し上げることはできません。これは一に私どもに許されました――きのうの七時に逮捕状を執行しておるでありますが、四十八時間後、あるいはあと立場を変えての検事担当の地検の調査によってわかること、あるいはその間におきましても依然として黙秘をされるのであれば、現在までにおきましての人証、物証によってきまるのでありまして、ここでは重いとか軽いとかいうふうなことは断定できません。
  143. 中村高一

    中村(高)委員 逮捕はしたけれども、共謀の事実がありそうだという程度で、どうも的確なことはつかんでおられないように思うのであります。そうして今までの段階で二日間逮捕しておるのですが、調べの状況はどういうことになっておるかわかりませんか。普通勾留状の請求をなさると思うのでありますが、この点はどういうふうにお考えですか。釈放しますか、どっちですか。
  144. 川合壽人

    ○川合説明員 私どもは、書類を添付して地検にお送りするのが私どもの職務でありまして、勾留状の請求につきましては、関係の法務省の方から……。
  145. 中村高一

    中村(高)委員 法務大臣がおられるから、このことに関連してお尋ねしたいのであります。全国的に、日教組の勤評問題ではずいぶん多数の人を逮捕しておりますが、さらに進んで勾留状の請求をいたした場合には、全国の裁判所が、勾留する必要はないといってほとんど却下されておるのであります。他の事件の場合には、検察から勾留の請求をする場合には、大ていは裁判官が許可するのですが、それをほとんど全国で許可をしない。東京でも二十七名やはり勾留請求したけれども、勾留しておく必要がないといって、裁判官が全部却下されております。こういう却下をされるような事件が次から次に起きておりますけれども、なおこの問題についてそういう無責任な勾留請求をするということは、法務大臣としても、やはり無理な勾留であるということをお考えになって、今度の事件などについては、反省をすべき点があると思うのでありますが、どうでありますか。
  146. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、私の信頼する検察庁におきまして、十分周到な検討をいたしまして、その上で勾留の請求をしたことは、検察庁としては全く妥当であったと確信いたしております。その事案の中で、ただいま御指摘のように相当の件数が却下になりましたことは、私は遺憾に存じます。非常に遺憾に存じておったのでございますが、御案内のように最近に至りましては、裁判所側においても相当に協力のなにを示しておりまして、御承知のように、最近におきましては、福岡県を初め勾留の請求を認めておる事例がだんだんと出て参りましたので、私としてはまことに喜んでおる次第であります。
  147. 中村高一

    中村(高)委員 もう時間がありませんから、一応この程度で……。
  148. 相川勝六

    ○相川委員 関連して。時間もおそくなりましたから一つだけ政府側に質問したいと思うのです。現政府は、特に暴力団取締りには非常な力を注いでおられるようであります。これは非常に国民は喜んでおるのでございます。そこで一方、暴力団に対する取締りもどんどん励行してもらわなければなりませんが、近ごろ団体の示威運動の暴力団がとにかく非常に多い。そこで、本日の質疑応答をずっと聞きましても、結局は大きな原因はジグザグ行進、たつまき行進に端を発しておるようであります。そこで世間には、そういう一部矯激の徒は、交通違反をやって警察と乱を起して、そして問題を大きくする。そうして手薄い警察官が疲労こんぱいしていく、各地に大ぜいの連中が押しかけていって、結局は警察も嫌疑の手が伸びないようにすることを考えておるというような説もあるのであります。現在の日教組の勤評反対運動は、単なる教育運動ではなくして、政治運動、あるいは進んで九月十五日を目して全国各地に暴動的なことを起してやりたいということを意図しておる者があるというような説もあるのであります。そこでわれわれは、示威運動はけっこうです、十分やってもらいたいけれども、示威運動が転化して、暴力的な騒動、暴動に陥るようなことは極力避けなければならない。ところが、現在の警察法規なりその他の法規で、今の示威運動の暴力化を防ぐような適切なる取締り法規があるかどうか、これが非常に欠陥ではないかと思っております。たとえば今ずっと朝から聞きましても、ジクザグ行進とか、たつまき行進とかやっておる。これを幾ら言ってもきかない。そういうような団体は、将来示威運動を許さないということも一つの方法ではないか。何か適切なことをやらないと、これは警察官の諸君も――今ずっと質問を聞いておると、今の社会党の質問もまことにけっこうです。ところが、ああいう場合に一々警察官が適正な、普通一対一のような取締りはできませんよ。警察官はまた、こういう国家の暴動的なときに、きぜんとして国家の秩序を維持してもらわなければならない。それをおそれて、国の秩序を破壊して一国が暴動に陥るようなことを、自分の安易を考えてちゅうちょするような警察官であっては困るのです。だから、そういう暴動が起きないように、そういう端緒を一つ押えるような何か適切な方針というか、解決策はないか。これは示威運動の暴力行為阻止の問題、暴力団の阻止も必要ですが、示威運動の暴力団阻止の点において、法制の上に何かお考えをされる必要がありはしないかと思うのです。この点一言法務大臣と警察の方に聞いておきたい。
  149. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいまのお尋ねでございますが、私ども警察の者といたしましては、少くとも現状におきましては、与えられたる法の範囲内において万全を尽して参りたい。先ほど丹羽委員からの御質問に対しましてお答えしたように、争議とか、あるいはいろいろなこれに対する規制とかいうことに、まだまだ工夫を要するものもあろうかと思っておりますので、そういう点を十分に検討いたしまして善処をして参りたいと思います。ただ、御指摘のように、社会情勢がさらに悪化して参りまして、今の法規を十全に活用してもなお足りないというような状況が予見されるというようなことになりますれば、さらに考えを新たにして法律的な、いわゆる立法の問題という問題も起り得るかと思いますが、現段階においては、私どもは、少くとも現在地方において公安条例というものを作っているという程度において処置をいたして参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  150. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま御質問の点は、私も全く同感に考えるわけでございまして、最近のいろいろの事例から見ましても、何らかの措置を必要とするのではないかと考えられますが、ただいま警察庁長官からお答えいたしました通りでございまして、まずさしむきのところは、現行の許される法令の範囲内におきまして、これは主として警察の方にお願いするわけでございますが、十全の措置をいろいろと考えてみるということで、まず今の段階はやるべき段階じゃなかろうか。なお、そのほかの点については、それらの状況ともにらみ合せまして十分慎重に考究を続けたいと存じます。
  151. 鈴木善幸

    鈴木委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後六時二十六分散会