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1958-06-26 第29回国会 衆議院 大蔵委員会外務委員会農林水産委員会商工委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十六日(木曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員  大蔵委員会    委員長 早川  崇君    理事 足立 篤郎君 理事 夏堀源三郎君    理事 福田  一君 理事 坊  秀男君    理事 石野 久男君 理事 佐藤觀次郎君    理事 平岡忠次郎君       荒木萬壽夫君    内田 常雄君       鴨田 宗一君    小山 長規君       田中 角榮君    西村 英一君       福永 一臣君    古川 丈吉君       細田 義安君    毛利 松平君       山下 春江君    春日 一幸君       久保田鶴松君    田万 廣文君       竹谷源太郎君    廣瀬 勝邦君       松尾トシ子君    山花 秀雄君       山本 幸一君    横路 節雄君       横山 利秋君  外務委員会    委員長 櫻内 義雄君    理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君    理事 床次 徳二君 理事 山村新治郎君    理事 岡田 春夫君 理事 松本 七郎君       北澤 直吉君    千葉 三郎君       中曽根康弘君    福田 篤泰君       松田竹千代君    大西 正道君       田中 稔男君    森島 守人君  農林水産委員会    委員長 松浦周太郎君    理事 助川 良平君 理事 丹羽 兵助君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 石田 宥全君       赤澤 正道君    秋山 利恭君       五十嵐吉藏君    永田 亮一君       松岡嘉兵衛君    角屋堅次郎君       久保田 豊君    中澤 茂一君       松浦 定義君  商工委員会    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君    理事 小平 久雄君 理事 中垣 國男君    理事 中村 幸八君 理事 加藤 鐐造君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       新井 京太君    岡部 得三君       岡本  茂君    奧村又十郎君       加藤 高藏君    川野 芳滿君       木倉和一郎君    關谷 勝利君       田中 榮一君    高橋  等君       中井 一夫君    濱田 正信君       渡邊 本治君    板川 正吾君       今村  等君    内海  清君       勝澤 芳雄君    小林 正美君       堂森 芳夫君    中嶋 英夫君       水谷長三郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君         労働事務官         (労働局長)  亀井  光君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      小熊 孝次君         通商産業事務官         (通商局振興部         長)      日高準之助君         外務委員会専門         員       佐藤 敏人君         大蔵委員会専門         員       椎木 文也君         農林水産委員会         専門員     岩隈  博君         商工委員会専門         員       越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済基盤強化ため資金及び特別の法人の基  金に関する法律案内閣提出第一号)  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二号)      ————◇—————     〔早川大蔵委員長委員長席に着く〕
  2. 早川崇

    早川委員長 これより大蔵委員会外務委員会農林水産委員会商工委員会連合審査会を開会いたします。  私が議案の付託を受けました委員会委員長でありますので、連合審査会委員長の職務を行いますから、御了承下さい。  なお、本日の連合審査会の議事につきまして、各委員長と御協議いたしました結果、まず、経済基盤強化ため資金及び特別の法人基金に関する法律案に対する質疑をし、次いで、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案に対する質疑を行うことにいたします。  また、本連合審査会は、大体午前中に終了いたしたいと存じますので、御協力を願います。     —————————————     —————————————
  3. 早川崇

    早川委員長 それでは、経済基盤強化ため資金及び特別の法人基金に関する法律案及び外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案の両案を一括して、質疑を行います。石田宥全君
  4. 石田宥全

    石田(宥)委員 私は経済基盤強化に関する法律案の中の、小団地等土地改良基金に関する件について、大蔵大臣所見をただしたいと思うのでありますが、まず第一に、大蔵大臣日本農業に対するお考えを伺いたいと思うのであります。  それは歴代の大蔵大臣並びに大蔵官僚農業に対する認識が、はなはだ不十分ではないかと考えるのであります。農業は御承知通り、いわゆる劣勢産業といわれるように、非常な後進性を持っておるものでありまして、他の鉱工業がどんどん近代化され、近代科学の基礎の上に立ってオートメーション化が行われ、産業合理化が行われて参ります中に、農業というものは、依然として腰をまげて田植えをし除草をやらなければならない。今日、やや機械化が行われたといわれておりますけれども、それは単に耕耘と脱穀調製くらいの程度でございまして、その他は数千年来行なってきたままの作業を続けなければならないような状態に置かれておるのであります。それがために、人口では四割二分以上の農業人口であるにもかかわらず、その所得はわずかに一九%強というような、低い生産のもとに置かれておるのであります。こういう状態のもとにおいて、年々の農林予算に対する大蔵省並びに大蔵大臣考え方というものは、きわめて農民にとって冷たい態度予算編成に臨んでおられるのであります。こういうような基本的な考え方が間違っておりますと、なかなか日本農業というものは立ち直って参りません。過去三年間、未曽有の大豊作が続いておりながら、農家経済は赤字の連続で、農家の負債がだんだんと多くなって参っておるのであります。こういう劣勢産業に対しては、各国とも相当手厚い保護政策をとっておるのであって、わが国においてももちろん保護政策はとられて参っておりますけれども、ここ数年前から、だんだんと補助助成融資に切りかえるというような方向を打ち出して参っておるのであります。佐藤大蔵大臣は、就任まだ日も浅いことでありますけれども日本農業それ自体に対する考え方、同時に、それに対する保護政策補助助成に対する考え方が、やはり従来通りの、大蔵省官僚考えておるような考え方のもとに臨もうとされるのか、あるいは、この後進性を持っておる劣勢産業である農業に対しては、国策的な見地から積極的な保護政策を打ち出そうとされるのか、この基本的な考えをまず承わりたいと思うのであります。
  5. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまいろいろお尋ねがございました。私も、農業の置かれている地位——今、後進性という表現をされましたが、少くとも近代的でない、非常におくれておる点については、同じ見方をいたしております。しかも、それが、なかなか自力でみずからの道を開拓することが困難な状況に置かれておることも、よくわかっております。私は今回初めて大蔵省を担当いたしますが、党にある場合には、特に御指摘になりましたような点に留意いたしたつもりであります。三十三年度予算が、初めて農林予算において一千八億——一千億台以上の予算を計上することができた。これらの点はただいま御指摘になったような後進性に対しての対策の表われにほかならないのであります。いろいろあるだろうと思いますが、一応この程度で……。
  6. 石田宥全

    石田(宥)委員 その次に伺いたいことは本年度予算編成に当って、当時の大蔵大臣——一萬田さんでありますが、農林予算増額の要求に対して、こういうことを言っておる。わが国工業製品輸出ために、特に東南アジア貿易ために、外米輸入国策として必要なものであるが、国内の米麦の増産はこれに逆行するものであるので、農林予算、特に土地改良費増額にはなかなか応じられない、ということを言っておるのであります。わが国における農産物輸入は実に膨大なものでありまして、むしろ、私どもは、少くとも農産物に関する限り、これは国内自給態勢を確立して、できる限り国内で自給自足をはかるという態勢をとらなければならないと思うのであります。どうもこれは、産業資本の中にもそういう意見があるようでありますが、貿易を盛んにするには、どうしても今のところ東南アジアにでも輸出する以外にない。東南アジア輸出をしても、向うから輸入すべきものがあまりない。米でも持ってくるほかない。こういうようなことで、必要以上に外米輸入をはかっておるようであります。これは、私は、本末転倒もはなはだしいものであって、特に外資との関係等考えました場合に、むしろ食糧自給態勢をはかって、砂糖等についても、積極的なやはり国内生産態勢を確立するということが、国策としても正しい方針ではないかと思うのでありますが、この点に対する大臣所見を伺いたいと思います。
  7. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 食糧自給度を高めるということは、もちろん私どもの一貫した基本的方針でございます。外米輸入、これはただいま国内自給度を高めるというその基本的な線に私どもは抵触しておるとは思いません。ただいまお話のありました土地改良事業、これなどは石田さんのところなど非常によくできておる。私は非常にうらやましく思っておる。これはやはり耕地面積の狭小あるいは非常に広いところでいろいろまちまちだとは思いますが、この土地改良事業についての積極的な政策、これはもちろん続けていかなければならないと思います。私ども石田さんのところなど参りまして、非常にうらやましく考えております。
  8. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこで国内農産物自給態勢という基本的な考え方に立って、日本農業近代化をはかり、土地利用高度化をはかる上に、その生産基盤であるところの農地開墾開発土地改良、こういうものについては、これはもう農業政策以前のものだ、こういうことがよくいわれておるわけでありまして、全くその通りであります。機械を使うにも、あるいは新しい経営方針をとろうとするにも、土地改良自体の進行しないことにはその政策が行えないのであります。その政策以前ともいわれるところの土地改良というものに対し、どうも政府熱意を持っておらない。これは特に私は大蔵官僚のこれに対する認識不足、それと無理解なことが大きな原因の一つに数えられなければならないと思うのであります。すなわち、戦後土地改良事業に対しては一千億近く資金が投ぜられておるにもかかわらず、昨年までの進捗状況を見ると、国営では二八%、県営では三七%、団体営では三一%にすぎない。この事業が完成するまでに、それぞれ十一年、八年、十七年もかかるという実情にあります。たとえば岩手県の豊沢川地区では、ダムはほとんど完成したが、幹線水路ができない。今まで十六億六千万円も投じたにもかかわらず、ほとんどそれが空転して用をなしておらない。いつ完成するか見通しも立たない。またよく例に引かれるところの千葉県の両総用水の土地改良事業のごときは利根川の水を揚げて、九十九里浜沿岸水田約二万町歩の日干害を防止するというので、昭和十八年から着工されておる。三十二年で、まだ国営が六五%、県営が一八%、団体営が四八%という状態で、御承知のようにことしは早害に悩まされておるのであります。農民の中から、この災害は天災でなくて人災だといわれておるのも理由があることなのでありますが、こんな例は全国至るところに山積しております。あと十五年も十七年もかからなければ完成しない。全くいつ完成するか見通しも立たない。これが日本土地改良事業の実態であります。政府は、なぜこのような関係農民を塗炭の苦しみに追いやって、これを顧みずに、わずか六十五億くらいの資金をたな上げして、その利子三億九千万円程度利子補給をやって、これで日本土地改良を推進するんだなどと一体言えるのか、私は理解に苦しむのであります。少くとも十年も十五年以上もいたずらに資金を投入して何ら経済効果の見るべきものがない、しかも農民負担が重くして今後の継続も困難であるというような事業が全国至るところにあるのであって、この六十五億つというものがそういう跡始末に使われるということならば、これは私は受け取れる。しかるに、六十五億をたな上げしておいて、わずか四億足らずの利子で一分五厘の利子補給をやって、これで日本土地改良事業が大いに進捗するという考えでしょう。そこに問題がある。今、大蔵大臣生産基盤強化拡充ために、農産物自給態勢の確立のために、大いにやらなければならないという御答弁であったのでありますが、その答弁とははなはだしくうらはらのものがここに現われて参っておるのではないかと思うのでありますが、その考え方について一つ伺いたいと思うのであります。
  9. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 土地改良につきましては昨年特に特別会計を設置して工事のおくれておるのを取り返そうと、皆さん方の御協賛を経て特別会計制度が生まれておる。おそらく今後は工事期間も短縮されるだろうと思います。努めてそういう方向に向わなければならないと思います。今回皆さん方の御協賛を経ようとお願いしておりますものは、補助対象にならない農地改良造成事業に対する融資利子補給と申しますか、そういう方の資金であります。この点は先ほど来お話がございましたが、大きな土地改良また小さな土地改良、あわせて一貫したと申しますか、土地改良に対する政府の意のあるところが、こういうことに具体化されつつあるのであります。
  10. 石田宥全

    石田(宥)委員 昨年立法化されました土地改良特別会計法は、なるほど従来非常に長引いたものを七年程度で完成するという目途のもとに工事を進める、こういう点でいかにも促進するかのごとく聞えるのでありますけれども、今後、従来のような大蔵省態度方針のもとに予算編成が行われることになりますと、予算制約を受けることになって、法律上に義務づけられないところの土地改良特別会計というようなものは、これは予算制約を受けて、この予定通りにいくかいかないか、実はわれわれは従来の態度から信用できない。ことに国庫負担は従来の六〇%に減らしておる。これは農民にとっては大きな負担の増加になるのであります。ことにまた、国営については土地改良特別会計でいく。非補助の分については利子補給でやるのであって、それで国営県営団体営等が関連して進めるようにという大臣のお考えのようでありますけれども、この点について、あと農林省関係から詳しいことは伺いたいと思うのでありますが、必ずしも大蔵大臣のお考えになっておるように進むものとはわれわれは考えておらないのであって、やはり六十五億の今たな上げをする金がありまするならば、それを今後は七年くらいで完成させるということであるならば、今までの問題を、何十億も投入して幹線水路はできたが、支線ができない、ダムはできたが幹線水路さえできない、こういうことで、資金は投入しながら、その資金が死んでおる。こういうような面を十分生かすためにこの金を使うというのが、私は本来の筋ではないかと思うのでありますが、大臣どうです。これは一つたな上げ資金をそういう方面に充当させるように、これからでも考え直される御意思があるかどうか。
  11. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 このたび御審議をいただいております基金並びに資金を設定いたします四百三十六億三千万円、この予算の使い方の問題だと思いますが、当時三十三年度予算を作ります際に、当面しておる経済並びに三十三年に進行するであろうと考えるそれに対応して、三十三年度予算を組み、同時に四百三十六億三千万円はこれを予算化しないことが、経済の健全なまた着実な発展を期する上に望ましいという一貫した考え方で、今日御審議をいただいておる法律案を提案いたしておるのであります。そこで、問題は、三十三年度予算編成の際ならわかるが、もうすでに相当期間が経過して一般経済情勢も変ってきている。そこで積極的財政政策をとるべきじゃないか、基金あるいは資金制度、こういう制度をとらない方がいいのではないか、こういう御意見であるやに拝聴いたしますが、私どもは、今日の経済状況に対しては、積極的な財政政策をとることは時期的にまだ早い。今公定歩合の引き下げをしたばかりでございますので、今しばらく経済情勢、その推移を見きわめた上で、しかる後に必要であるならば考えて参りたいと思います。しかし、その場合におきましても、基金の方に触れる考え方は、まだただいまのところもちろんございません。今御審議をいただいております資金、いわゆる二百二十一億三千万円そのものについていろいろの御議論があるやに伺っておるのでございます。農林関係予算について特に意を注げということでございますが、これらの点は、三十四年度予算編成の際に、皆様方の御意見も十分今日教えていただきまして、私どもりっぱな予算を作りたい、かように考えております。
  12. 石田宥全

    石田(宥)委員 予算編成時ならいざ知らず、今となって、これを取りくずして直ちに使えるような予算化をすることは困難だというお説でありますが、私はもしそういう事情がありまするならば、これをずっと半永久的に基金にして、その利子だけで小団地土地改良を進めるというようなことでなしに、もっと別な方法があると思うのです。ただ、なるほど、表向きではさっき大蔵大臣農林予算は一千八億になったのだからとおっしゃるけれども、その中で六十五億というものは全くたな上げで、使える金というものは三億九千万円程度しかないのであって、これでは一千八億の予算が泣きますよ。  それから、後段の答弁の中にあった、来年からの農林予算については大いに熱意を示すという言葉でございますが、これは実は年々歳々行われる予算編成時における争奪戦と申しますか、それが行われるわけでありますが、だんだん、だんだんと農林予算というものを減らす方向に実は大蔵省の方では考えておるのです。たとえば米価などにいたしましても、やはりだんだん安くして切りくずしていこう、こういうことが現われておりまするし、土地改良開墾開発事業というようなものについての予算のごときも、全く顧みられないと言っても過言ではないのです。近代的な農業改策を行うには、まずその基盤を確立して、そのあとは適当な保護政策でもいいかもしれないけれども開墾開発土地改良事業などというものは農民自力でやれることではないのでありますし、やはりこれは国策として、国が中心になって、相当本腰を入れてかからなければできない話なんでありまして、これは一つ来年——来年のことを言うと鬼が笑うといいますけれども、来年のことについても、主計局長あたりもよく聞いておいていただきたい。単なる末梢的な補助金とか助成金ということなら、私は実はそう力を入れてこんなことは言わない。少くともその生産基盤である農地の問題については、ここらあたりふん切りをつけて、一つりっぱな土地改良をやって——機械化をやるにも、あるいは集団化をやるにも、やりいいところの基盤を作ってやるということが、私は政府の責任だと思う。かっては自民党の諸君すらも土地改良費全額国庫負担を主張されておったのでありますが、いつの間にやらその土地改良費全額国庫負担のスローガンははずされたようでありますけれども、これはやはり、そういう基本的な考え方に立って、開墾開発土地改良についてだけは本腰を入れて一つやっていただきたい、こう思うのでありますが、その心がまえで来年度予算一つお作りを願いたい。どうですか。
  13. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 十分御高見を拝聴いたしておきます。
  14. 石田宥全

    石田(宥)委員 それから、これは大蔵大臣に伺うのは少しどうかと思うのでありますけれども、今は国県営は、それぞれ比率は違うが、補助金がちゃんと出されておる。ところが団体営になると補助金はない。そこで、実は、従来の補助金予算制約されるために、事業分量相当に大きなものがあるのだけれども、その事業を縮小せざるを得ない。それがために、さっき申し上げたように、二十何年もかかっても、まだ半分ぐらいしか進行しないということが起るのです。そこで、政府は、その予算を縮小するために、従来の補助対象であった国県営土地改良事業というものを予算関係で非補助事業としてはずして、県があまり気の毒だから、もう一分五厘ぐらいの利子補給をやってこれをごまかそう、こういうのが実際はねらいではないか、こう考えられるのです。また、事実そういう結果に、どう弁明されようともこれはなるのです。だから、一応農林省計画というものも、年次計画がちゃんと立って、そうして全国的に国営工事事業分量はどの程度県営はどの程度、そうしてこれだけはやらなければならないというふうな分量があるわけですから、それをただ大蔵省が一方的に予算関係で圧縮してしまう。そうすれば、農林省は切ないぐらい従来のこの計画をみんなくずしていって、五カ年計画を十カ年計画に、十カ年計画を十五カ年計画とどんどんはずしていく。それをやるのは一体大蔵省じゃないですか。大蔵省がこの土地改良事業というものを理解しないというところから、こういう問題が起ってくるのです。この関係主計局長がずっと予算に当っておられるので、一つ局長考えを承わっておきたいと思います。
  15. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 率その他の点については主計局長から説明させたいと思います。もとのお話でございますが、農林省計画予算の都合でなかなかその通りやれない、そこで非常に農民に対する負担なり、計画にそごを来たす、こういうお話でございます。これはときにそういう事態も起ろうかと思います。先ほど来農業後進性ということを言われましたが、同時に、わが国予算自身も、まことに脆弱と申しますか、小さなものでございますし、国の力そのものから見まして、ときに予算の面の制約を受けることはこれまたやむを得ない。この点はどうか御了承いただきたいと思います。
  16. 石原周夫

    石原政府委員 団体営土地改良につきましては、二十町歩以上の分につきましては、石田委員承知でございまするように、灌漑排水事業から始まりまして、補助がついておるわけであります。ただ、二十町歩以下のもの、あるいは今回の三分五厘の利子補給のつきました融資と合せて考えますと、どういうような金の回し方をいたすのが適当であるかということにつきまして、目下農林省と案を練っておりまして、そのため補助を切るという考え方はございません。全体としての補助のつく分と三分五厘の利子補給のいきますものの組み合せをどうするのが一番適当であるか、ということについての相談をいたしておるのであります。  なお、ついでをもちまして申し上げておきまするが、食糧増産関係は御承知のように、本年度予算におきまして二十三億ほどふえております。それを土地改良で七億、開拓で十三億というふうに、全体の財政の制約はございまするが、道路あるいは港湾に次いで、あるいは相並びまして、重点を注いで予算を計上しておるわけであります。御了承を願います。
  17. 石田宥全

    石田(宥)委員 もちろん二十町歩以上というものの小団地、これはわかりますが、今全体的にいってももちろんそうであるけれども、一番緊急に土地改良をやらしてやらなければならないのは、山間地なんですね。山間地のきわめて零細な農家、これが一番苦しいわけです。生活補助対象にもなるような農家が多くて、そういうところでは、経済事情もありまして、なかなか大がかりな土地改良というようなものは行えない。また地形的にも地理的にも行えないのであって、これはきわめて小さな面積で、三町なり五町なりというような土地改良が多いし、それを今緊急の要務としておるわけなんであります。ところが、それがもちろん補助対象にならないのみならず、利子補給対象にもならないものが多い。一体利子補給対象というものは事業分量の中でどれくらいあると主計局長考えておりますか。いわゆる補助対象にならない小団地であって、利子補給対象にもならないようなものが相当あるのです。それをどれくらいだとお考えですか。
  18. 石原周夫

    石原政府委員 あるいはお尋ねに対して正確なお答えになるかどうか存じませんが、先ほど申し上げましたように、現在補助と三分五厘の利子補給のつきました金とのコンビネーションを考えておりまして、御指摘のような小規模のものにつきましては、三分五厘の利子補給の方の金でやっていただこうかという考え方をしております。従来は、御承知のように、経費の効率と申しまするか、投下いたしました金当りの収益量という点に重点を置きましたので、御指摘のようなやや小規模な、あるいは立地も必ずしも有望でないというような分に補助が回らなかったことは事実でございます。これに対しまして、今回三分五厘の融資をもちまして、そういうような地域におきまする土地改良を進めるようにいたしたいというのが、今回の非補助団地土地改良事業融資の運用であろうと考えております。
  19. 石田宥全

    石田(宥)委員 どうも主計局長は事情をよく知らないのです。一分五厘の利子でどれくらいの事業分量にこの利子補給ができるかというと、これは三十五億くらいの事業に対してしかできないのです。今大体総計六十五億から七十億くらいあるので、二十五億から三十億くらいのものは利子補給対象からもうはずれるのです。そういうものは一体どうするのです。私がさっき言ったのは、そういうものをまずやらなければならないし、まず緊急にやらなければならないのはそういうところだというのです。ところが、一番経済力のない、生活補助対象にもしなければならないような農家土地改良を行おうというときに、何もやっておれないじゃないですか。どういうことなんですか。
  20. 石原周夫

    石原政府委員 現在農林漁業金融公庫におきまする非補助土地改良の方に回しまする金は六十五億と聞いております。そのうち御指摘の三分五厘の金が回ります分が三十五億であります。従いまして、全部が利子補給を受けるわけに参らぬではないかという点につきましては、御指摘通りであります。従いまして、農林省といたしましては、現在その二十五億をどういうふうに運用されるかということにつきましての御勉強だろうと思うのであります。その二十五億の金をどういうような地域に回して参るか、その運用の点におきまして、農林省なりあるいは農林金融公庫なりにおきまして、一番いい方法をお考えいただくということだろうと思います。
  21. 石田宥全

    石田(宥)委員 どうもこの論争はまだやりたいのですけれども、時間がないようでありますから、もう一点だけ大臣にお尋ねして、あと農地局長に伺いたいと思います。  開墾開発関係ですが、日本農業の最大の欠陥は過小農経営にあるといわれておる。最近農林省が発表した農地行政白書によりますと、農業だけで生計を維持し多少ゆとりがあると見られておる階層は、全農家の五・五%にすぎない。このような農家の八割は一町五反以上の耕作規模を持っておるということが明らかにされています。またわが国農地改革もついにこの零細性は解決できなかったということを指摘しております。この問題はもちろん簡単に解決できる問題ではございませんが、現在政府が調査済みのもので開墾の適地とされておるものが百五万町歩、干拓の適地とされておるものが九万町歩、これがまだ未利用のままに放置されておるのであります。これを解決することがやはり全体の問題を解決するための一助となることは言うまでもありません。しかるに、やはりこの点も予算関係制約があって、開墾適地であってりっぱな美田となりあるいは畑地となるものが放任されております。また、入植開墾のごときも、営農類型等の制約がありまして、新しいものはかなり近代的な農業を営み得る基盤が与えられておりまするけれども、終戦直後に入植いたしました地方の開拓農家というものは、もう全く負債の重荷にたえないで、逃げ出さなければならないような状態のままに放置されております。これは、単に日本農業ためということでなしに、やはり日本国策として解決しなければならない問題であると思うのでありまして、これは本年度どもまだ予算が非常に微々たるものでありまして、見るべき施策が行われなかったのでありまするが、来年度以降においてこの点についてももう少し積極的な対策が講ぜられなければならないと思うが、大蔵大臣所見をお伺いしたいと思います。
  22. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御指摘のように、まだ開墾なり開拓する適地は相当町歩があるように思います。もちろんこれも、予算とにらみ合わせた上で、それぞれ着工していくことは当然でございます。そこで、今お話しになりましたわが国開墾、開拓、特に入植開墾とでも申しますか、そういう面の戦後の動向を見ますと、当初におきましては、食糧不足なりあるいはまた外地引揚者、こういう方の入植というような点に非常に力が入っておったと思いますが、その後の経過を見ますと、ただいま御指摘になりましたように、営農の面から見て非常に欠くるものがあるのじゃないか。従って、三十一年度予算編成以来、入植者の営農というものに特に留意をして、農業経営の安定並びに所得の確保という方向に効果のあるような予算を組むということにいたして参っております。ことに、三十三年度におきましては、入植戸数なども相当大幅に実は減らして、営農に特に重点を置いて、当初の開墾、開拓者等に対しての営農資金の貸付なり、あるいは機械設備等も容易にできるように、そういう融資の面あるいは返済等についても特別な考慮を払い、特に営農に留意をした予算を組んで参っております。この考え方は、今後とも情勢をよく見きわめなければなりませんが、今しばらく続くのではないかという感じがいたしております。
  23. 早川崇

    早川委員長 石田委員に申し上げますが、委員長との申し合せ時間が過ぎておりますので、あと一問だけで……。
  24. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、もう一つ大臣に伺いますが、最近の日本農林省考え方、これはもちろん政府考え方でありますが、畑作振興という方面に相当力を注いで参っております。これは大へんけっこうなことでありますが、今度の非補助の小団地土地改良事業助成基金利子補給は、畑地灌漑をその対象とされるかどうか。実はことしは特に大早害でありますが、早天が続くと日本の畑作というものは一つぺんに早害にかかってしまう。これはどうしても灌漑施設をやりませんと、畑作の安定というものはあり得ない。それがために、畑作農産物の価格もまた暴騰暴落が激しいのでありまして、畑作の安定、畑作地帯の農業経営の安定と農民生活の面から見て、どうしても畑灌をもその対象にすべきであると思いますが、大臣のお答えを承わりたい。
  25. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今回の利子補給はもちろん畑地灌漑の方向にも適用できるということになっておると思います。思いますが、今言われる畑地改良、この方は非常におくれておる現状であることを、まことに遺憾に思います。
  26. 石田宥全

    石田(宥)委員 この点は今後来年からかなり大幅な要求が出るであろうと考えられるので、大臣も主税局長も一つ大いに考えておいていただきたい。これは要望を申し上げます。  次に、具体的な本論に入るわけでありますが、これはこまかな問題でありますので、農地局長から一つ答弁をしていただきたい。  非補助団地土地改良事業助成基金の運用をどのようにして行われる予定であるか。これは局長の仕事であると思うのでありまして、具体的な御説明を一つ願いたいと思います
  27. 安田善一郎

    ○安田政府委員 お答え申し上げます。  小団地土地改良事業助成基金の運用でございますが、この運用に当りましては、補助及び融資を通じまして、お話がありましたように、要土地改良事業の大きさと申しますか、所要面積に対しましては、従来それらがともに少きうらみがございましたので、事業の推進を第一に、また、先ほどお話がありましたように、山場地帯のように補助の受けにくいようなところに重きを置きながら、従来の補助事業を別に打ち切り置きかえする方針でなしに、両両相まって運用の妙を得たいと思います。また農民負担の増高を来たさないことを一つの原則にいたしたい。そうしまして、地元農民の意思を尊重しまして、その希望と同意による以上の三点を要点といたしまして、次のようにいたしたいと考えておるのであります。利子補給事業は標準融資事業利子補助をいたすわけでありますが、お話のように公庫の一般のワクは五分でございますから、一分五厘下げて三分五厘といたしたいと思います。方法は、利子の引き下げにあり、借りかえでない方法でいきたいと思っております。  次は、どんな事業、業種、地域等にこれを適用するかでありますが、先ほど申しました三点に重点を置いて運用することにいたしまして、まず内地と北海道を分けたらどうか。団体灌排事業以下の小規模の事業は、北海道では四割五分以上の補助でありますので、補助の率の高いところはやはり三分五厘ではふさわしくないのであります。これは従来のように補助予算の運用を中心にいたしたいと思っております。そうしますと、内地の問題でございますが、内地には団体灌排あり、耕地整備あり、耕地整備の中に客土、農道、あるいは区画整理、暗渠排水、索道等がございますが、その下に二十町歩以下のいわゆる小団地開発事業がございます。それぞれに応じまして、現行は国庫補助率が二割、三割、四割等でございますが、客土、農道等一般の場合は二割の補助でございまして、地すべり地帯とか急傾斜地帯とか、今申しました北海道の地域には、より高い補助率でございますから、一般の客土、農道等の事業についてなるべく三分五厘を指導奨励しまして、農民の意思のおもむくところ、引き合う、またこれで事業をより推進したい、こういうところにおいては積極的におすすめ申して、同意を得てやっていきたいと思います。しかし、これは主として新規事業についてでございまして、すでに補助事業として始めております継続事業とか、道路、水路を隔ててこの継続事業と地縁、血縁等で縁の深い、公平化を要するところ等は、やはり補助でいくべきものと思っております。また、三割補助が一般でございます区画整理、暗渠排水等は例外といたしまして、流水、客土等が五割の補助率を持っておるほかに、率の高いところもございますので、これらは三分五厘制度と併用いたしまして、農民負担事業費等を考えまして区分を申しまして、国が指導的な措置を県とともにとりまして、円滑に地元農民の意思を尊重してやりたいと思っておるわけであります。また、団体営は、先ほど畑作のお話がございましたが、団体灌排事業でありますが、一応これは四割の補助率でございます。四割の補助率と申しますと、非補助融資利子補給を行いましても、三分五厘では農民負担を過重ならしめるおそれが多分にございますので、この場合は将来なお研究することと相待ちまして、もし地元農民が希望せられ、国営県営及び団体営ないしはその下の小団地を通じまして事業が促進いたしまして、また総体の農民負担事業進捗とにらみ合せて重くならないという場合には、希望において適用するのがいいのではないか、こういうふうに考えております。小団地事業お話もありましたが、内地、北海道を通じましてだんだんと適用してみたら、比較的重点的にこの三分五厘非補助融資事業が活用されるのではないだろうか、そのように思っております。あわせまして昨年まで補助事業対象として主として考えておりますが、その進捗度がお話のありましたようにおそいために、地元におきまして従来の公庫融資あるいは農協資金、こういうのを使われまして、積極的に事業を推進せられました地域が各所にあります。これは今回この基金の運用によりまして三分五厘制度の適用を見ますると、その間に公平の問題が出ておりますので、旧貸付の公庫資金の非補助融資の場合におきます金利の引き下げもまた三分五厘とバランスを得るように運用したらいかがかと思っておりまして、おおむね大蔵省とも意見の合致を見つつある次第でございます。  以上でございます。
  28. 早川崇

    早川委員長 石田委員に申し上げますが、あと一問で質疑を終って下さい。ほかの委員質疑ができなくなりますから。あと一問許可いたします。
  29. 石田宥全

    石田(宥)委員 それでは、この答弁の方も時間の関係があるから簡単にやって下さい。  そうすると、小団地ということは二十町歩以下のものも含めるということが今明らかにされたのでありますが、それはそれでよろしいかどうか。  それから、これは主計局長の方へ尋ねますが、運用益は利子補給の方に回すのか、あるいはどうするのか。それから利子の軽減策を非補助団地土地改良事業に限定をした理由はどういうことか。農業の他の項目、つまり林業や漁業のためにこれを利用しなかったところの理由。それから次に、この基金法律に基いてたな上げされるわけだが、これを取りくずすところの時期と方法はどういうふうにお考えであるか。これを一つ明らかにしていただきたい。  それから、農地局長に伺いますが、農地集団化の問題についてであります。農業近代化と合理化をはかる上においては、今後これを集団化方向に持っていき、集団経営の方向に持っていくことが、日本農業方向として最も正しい方向であると思うのであるが、土地改良というものは、農地等の集団化を促進する役割が大きいのであるけれども農地等の集団化は、主として農業委員会によってこれが実施されておるので、土地改良とあわせて行われることがほとんどない。それがためにきわめてこれが渋滞をいたしております。しかし、土地条件の完全な整備をはかるには、土地改良集団化との総合調整をはかり、あるいは両者を組み合せた事業を実施することが重要であると考えるが、今では、先刻申し上げまするように、土地改良土地改良法に基いて行われ、集団化の交換分合等は農業委員会がこれに当るというような状態になっておるが、これを推進するための立法、または予算措置を講ずる意思があるかないか。次に、農地以外の土地の交換分合については、法律上においても実務上においても付随的にしか取り扱われていないが、これらの土地も含めて、農業地一般について広く交換分合が行われるように措置することが、農業経営の安定、合理化と土地利用高度化ために必要であると思うが、そのような法律の改正または立法等の意図があるかないか。一問ということでありますから、一問といたしまして答弁内容はしかるべくお願いしたい。
  30. 安田善一郎

    ○安田政府委員 私に対します御質問をまとめて申し上げます。  繰り返しての御質問でありますが、小団地開発事業に三分五厘の非補助融資事業が適用になるかということでございますが、お答え申し上げ通りであります。内地、北海道を通じ対象とする。理想的にいけば一年間に二十億の事業ぐらいはいくのではないかという想像をいたしております。ただし、これは二億の補助予算もございますので、補助を受けるようなところは避けた方がいいのじゃないかと思うのであります。  最後の農地集団化関係でございますが、農地集団化事業の目的といたしまするところ、その効果は、石田委員のお述べになりました通りであります。これに対する態度も、私どもは別の意見を持っておりません。二十五年から始めまして百四十七万町歩をやりました経験にかんがみまして、集団化事業土地改良事業とを結び合せてするのが、最も農業近代化機械化、水、土地の利用の総合共同利用化等に資するのでございますので、過般町長にもその趣旨を通達いたしまして、予算施行上、あるいは事業採択上の妙味を発揮して、総合効果を発揮するように採択しようというようにいたしております。これに対します土地改良区と農業委員会との関係法律関係でございますが、これはそれをも含めて、さらにそれを越えた内容でもちまして適当なる事項も研究したいと思っております。地目の違う農地とその他の農業地との間の集団化事業、土地の利用度の関係などでもちまして、なかなかむずかしいのでありまして、今の関係法規では、石田委員が仰せになりましたように、まだ十分にはできませんので、研究をいたしたいと思います。
  31. 石原周夫

    石原政府委員 私にお尋ねの点は三点ございまして、第一の運用益を利子補給に回すのかという点でございますが、これは法文をごらん願いますると、第十三条によりまして、運用益から利子補給に充てました額を差し引きました額は基金に加わる。そこへ加わりました基金がどうなるかということになりますると、第十三条の第二項にございまして、その金額の不足の場合に、基金に組み入れました額を限度として利子補給に充てる。ですから、余る時期には積んでおきまして、足りなくなればそれを取りくずす、こういう規定でございます。  従いまして、第三点のお尋ねでありました基金はどういう場合に取りくずすのかということにつきましては、第十五条に今の規定を受けました規定がございまして、農林漁業金融公庫が第十三条第二項の規定によりこの助成基金に属する現金を使用する場合とありまして、今申しましたような剰余がございまして、六十五億に積み重ねました範囲内におきまして取りくずすことができる、こういうことでございます。  お尋ねの第二点の林業、漁業についてはどうかという点でございまするが、これは、金額にも限度がございますし、当面土地改良の達成ということに重点を置きまして、農業関係土地改良に集中して金を使うことが一番適当であろうということで、林業、漁業にはこれを及ぼしてないという状況であります。
  32. 石田宥全

    石田(宥)委員 はなはだ不十分ですけれども、時間の関係がありますので、これで終ります。
  33. 早川崇

    早川委員長 久保田豊君に質疑を許します。
  34. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間がほとんどありませんし、特に農林大臣も出ておりませんから、私は特に重要な大きな問題についてだけ大蔵大臣にお伺いをいたしたい。  第一点は、さっき同僚石田委員も触れましたけれども、御承知通り、鉱工業部面については、最近投資の面でも非常に積極的な投資が行われ、従って、生産性といいますか、生産力の内容においても非常に急速な進歩が行われておるわけであります。ところが、農業面については、なるほど戦前に比べればある程度の進歩は見ておりますけれども、鉱工業の進歩というものに比べるとほとんど問題にならない。従って、ここに、日本経済全体の二重構造といいますか、そういうものの基本が私は横たわっておるように思うのであります。この問題をやはり解決する——もちろん中小企業の問題もありますけれども、特に農業生産力といいますか、生産性の後退というものが、日本経済の大きな意味で見た場合の一番大きな欠陥ではないかと私は考える。しかも、今のような零細農業日本の場合においては、農民自体がこれを自力で解決するという力はほとんでないわけであります。どうしても国がよほど積極的な施策を講じなければ、生産力のアンバランスは年一年強くなるだけであります。しかも、そのアンバランスによって、いろいろの意味において非常な困窮をしてくる農民の数というものは、御承知通り国民の四割以上を占めておる、こういうわけであります。そこで、私は、どうしても国全体の均衡のとれた経済発展をはかるという意味から言うならば、農業後進性といいますか、生産力の発展というものをよほど国が本格的に取り上げてやらなければならぬ、こう思うのであります。その一番基盤になるのは、何といっても土地改良事業であります。その土地改良事業に対して、さっきからお話がありましたように、一つにおいては、ざっくばらんに言いますと、大蔵省の非常に消極的な態度によって、きわめて土地改良事業が進んでおらない。しかも、始めても、ほんとうの経済効果の出るまでには、十年、十五年というのはざらであります。その間農民はどうかというと、負担をしいられるだけで効果はないむしろ土地改良事業が、まかり間違いますと、農民経済的困窮の一つの原因になっているというのが今日の実情ではないかというふうに思うわけです。しかも、土地改良事業は、年々予算のワクに縛られて、ほとんど計画通りにいかない。これを、やはり十年なり十五年の間に、日本の少くとも既成の土地についての土地改良事業を、計画的に、国営県営あるいは団体営その他を含めて、誠実に実行するような態勢をとるということが、私は、この段階では、日本農業生産力の発展——工業ほどではないにしても、これに追いつく一つ基盤を作るためにどうしても必要だと思うのですが、それには今のような土地改良についてのやり方では不十分ではないか。追っつかないじゃないか。年々の予算の事情によりまして、予算がよけいついたり、少くついたり、こういうことでは安定をするはずはないのであります。そこで、どうしても日本の全体の土地改良をやるために必要な資金の大ワクというものをきめて、何かの大きな意味においての基金制度というものを作って、その基金の中で計画的に問題が解決していくようにしなければ、とうてい日本土地改良事業というものは円滑にはいかないというふうに思うのです。そういう構想については、御承知通り農林省としては、国営灌漑排水事業その他干拓事業等については、特別会計資金をもって小規模ながら始めたわけでありますが、あれには非常な欠点があるわけであります。ありますが、ああいう欠点を除いて、土地改良事業全体についての大きな特別会計制度を作るべき段階に今日私は来ているのではないかと思う。その原資をどういうふうにしてやるかということは、これは大きな問題でありますが、そういうふうな段階をとらない限り、問題は片づかないと思うのですが、こういう点については大蔵大臣としてはどんなふうにお考えになっているか、お考えをお聞きしたいと思うのです。
  35. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 久保田委員承知のように、土地改良につきましては、特別会計制度を設けて、今後は、年次計画と申しますか、その計画の年次を短縮する、こういう方向で実施したい、かように考えていることはすでに御承知通りであります。そこで、ただいま基金制度を設けて云々のお話がございましたが、基金制度自体はなかなか意見の存するところでございましょう。従って、直ちに私ここで賛否の態度を明確にはできかねますが、ただ、お話のうちに、補助事業に対して、補助一つ特別会計対象にしろ、こういうお話ではないか、かようにも聞き取ったのでありますが、補助そのもの特別会計の中に取り入れることはどうも不適当ではないか、かように考えておりますので、御意見は伺ってはおきますが、ただいまのところ御指摘になりました方向では考えておりません。
  36. 久保田豊

    久保田(豊)委員 もう一ぺんその点で詳しく少し申し上げてみたいと思うのです。もちろん、基金制度を作り、あるいは特別会計制度にいたしましても、国の援助がなければできないことですから、補助率等についても相当再検討すべき時期に来ていると思うのです。また補助の出し方等についても再検討すべき時期に来ていると思うのです。ただ、私は、補助事業とか、あるいは非補助事業あるいは国営の干拓事業その他の、たとえば愛知用水のような格好におけるああいうものとかいう個々の場合でなく、全体を含んで大きなワクの基金といいますか、特別会計といいますか、こういうものをやはり作って、その中で資金面はどうする、あるいは補助面はどうする、利子の面はどうするという調整を全体としてとって参らないと、うまく進まないじゃないか、大体こういう考えです。ですから、こういう点については、農林大臣はきょうお出になっておりませんから、なお詳しくは別の機会にやりたいと思いますが、いずれにしても、私の申し上げたいのは、そういう段階にきておるのではないか。今のような補助率を少しふやしてみたり、予算を少しふやしてみたり、今度のように六十五億くらいの基金を設けて、小団地だけ少し手を加えて利子を安くしてみた。これもむだなことではありません。むだなことではありませんけれども、そういう小手先細工で、今の日本農業生産基盤の、少くとも工業と見合ったといいますか、工業の進歩に合したような、そういうことはできない段階にきている。こういう点を一つ大蔵省は特に私は深刻に考えて研究をしてもらいたいと思う。農林省とすればいろいろの意見もありましょうし、そういう安定した基礎の上に土地改良を進めていく。これは効率的にいくのはさまっています。しかし、いつも、その問題を持ち出してだめになるのは大蔵省で、大蔵大臣が金を出すのがいやだからということで、首を縦に振らなければ何もできないわけです。こういう態勢では困りますので、特に日本全体の経済の均衡な発展という立場から、一つ真剣にといいますか、私は新しい段階に処する土地改良の基本方策を特にお考えをいただきたい、こういう意味であります。どうか一つ……。
  37. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お話はよくわかりました。国営あるいは県営、あるいは団体営、さらにまた補助対象になるもの、あるいは非補助、そういうものを一括して、土地改良について総合的な計画性のある方策を樹立し、これを遂行する、それが鉱工業等に対応して均衡のとれた政策になるだろう、こういう御意見だと思います。私はその構想自身はまことにけっこうだと思いますが、今日までの大蔵省理解を欠いておるとかいうわけではないのでありまして、農業自体も非常に弱いし、やるべき仕事は国内には幾つもある。そういう場合に、国の財政そのものが非常に弱い。そういう意味でいろいろな制約を受け、そこで土地改良などが計画性を阻害される、こういうような事態が過去において起きた。これはまことに遺憾であります。記画性を持続する、こういうようなことについては、今の国の財政から見て、これが非常に小規模になれば継続ができるでしょうが、これでは今の要請にこたえられるものではない。そのときどきの予算制約を受けることは、これまたやむを得ないことかと思いますが、特に大蔵当局といたしましても、この土地改良についての久保田さんの御意見、また御趣旨のあるところ、これを十分実は拝聴して参りたいと思います。
  38. 久保田豊

    久保田(豊)委員 戦後、農林省土地改良計画を立てたのは何回か立てたのです。何年計画、何年計画、それが実行されたためしがない。立てても一、二年たてばもう計画大蔵省からくずされてくる、こういったそのしわ寄せが最後は全部農民にくるわけです。こういう行き方では仕事そのものもうまくいかないということですから、この点も十分一つ考えをいただきたい。  その次に私が特にお伺いしておきたいのは、大蔵省としては、農民土地改良に関しまする経費の償還能力、特にそのうちの利子負担能力というものを、どういうふうな根拠から、どの程度に見ておるかということであります。と申しますのは、今度のこの案によりますと、非補助のものについては、従来の五分のものを、一分五厘の利子補給をして、とにかく大体三分五厘にした。いろいろ補助のあるものについてもそれぞれの補助があり、また五分程度資金についてはそれぞれの利子負担をしておるのであります。しかし、最近の傾向で見ますとどうかというと、やはり全体の農業の発展に応じて土地改良そのものが非常に金がかかるようになって参ってきておるのであります。たとえば、従来なら普通のあぜでよかったのが、このごろはコンクリートのあぜでなければ意味をなさぬというふうになり、あるいはその他のいろいろの施設も非常に金がかかってきておるのであります。しかも、ものによりましては、団体営等は、団体営だけならば、一反歩当りの経費が大体において二万五、六千円から多いところで四、五万円だろうと思います。多くの場合においては団体営団体営で独立しておるものでないのであります。県営と結びつく、国営と結びつく、こういうことになって参りますと、負担をするものは最後は一人であります。国の勘定でやる場合は、これは国営だ、これが団体営だ、県営だといって区別しますけれども、最後に負担する者はみな農民である。一反歩当り幾らになるということが結局問題であります。たとえば最近いろいろ問題になっておりますような新潟県の亀田郷あたりは、最高時においては一反歩四千円以上の負担なり経費がかかる。場合によりますと、もっとよけいにかかりはせぬかと思うのであります。元利を合せまして、こういう負担ができるかというと、今の農業の全般の置かれた条件の中では、負担はできないのであります。しかもこういう傾向は今後ますます強くなろう。これの調整はいろいろ方法があろうと思います。この点、特に農林省はそういう点については商売柄相当研究しておられるのでしょうが、大体において土地改良を進めていき、生産力を発展さしていく場合の大蔵省のこれらについての考えというものが、いつも相当大きく影響するわけであります。特に一番大きな矛盾をしておる事例は愛知用水であります。愛知用水のあれだけ近代的な施設はりっぱであります。しかし、この前私が調べたときには、あれによって末端の団体その他の土地改良事業を加えず、末端の水利費を加えずに、愛知用水公団の負担金だけで水田地帯は一反歩大体九千二百円くらいかかります。畑作地帯は六千円かかります。こういう負担では、土地改良をやったって百姓は楽になりません。土地改良をやって土地を売るより仕方がない、こういう傾向が全般に非常に強くなっておるのであります。農林省はもちろんこの研究はされておると思うが、ここでぜひ大蔵省は心を平らかにして、何といいますか、もっと謙虚な気持になって——鉱工業を見るのと同じような採算主義で見られるとやりきれない。だから、こういうところについて利子負担の能力がどのくらいか、あるいは元金の償還能力はどのくらいか、そういう点から見て、利子負担能力はいろいろな場合がありましょうけれども、それらを通じてどういうふうに調整したらいいのか、あるいは補助金についてもうそうであります。あるいはさらにも一歩、償還元利等についても再検討すべき時期が来ているのではないか。過去に比較的安い時代にやったのはいいのですが、最近の土地改良ではどこでもこの問題が大きな問題になってきている。この点からも、これはどうしても再検討の時期にきていると思うが、再検討する意思があるのかないのか。そういう事態を大蔵省は率直に謙虚に認めて、農林省からのいろいろな相談に応ずるようにやってもらいたいと思いますが、そういう用意があるのかどうか、お聞きいたしたいと思います。
  39. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 農民負担という点から見まして、この種の資金は長期であると同時にまた低金利である。こういう資金融資することを、もちろん基本的な原則として考えております。問題は、具体的な場合におきまして、生産効果と申しますか、これとにらみ合した事業を遂行していただくようにならなければ、今の御指摘のようにずいぶん無理なことが生ずると思います。また、農林当局と大蔵当局と事務当局におきまして、特に大蔵事務当局が農村問題について理解を欠いて処置するような考え方はいたさないつもりであります。十分よく相談をいたします。
  40. 久保田豊

    久保田(豊)委員 もちろん、経済効果という点は、農民の方だって土地改良をやって銭かけて、何も効果のないようなものは、百姓がみずからやるはずはありません。効果があるからこそやるわけです。ですから、そこらについての経済効果は、農林省としてももちろん考えますが、だれよりも一番真剣に考えるのは農民であります。しかし、農民は、現実に全部の計算ができるわけじゃないのです。そういうところで、今のような点をもう一度基本的に再検討すべき時期にきておる。補助率についても、その他利子についても、こういう六十五億のこれだけで、一切——ごまかすというわけじゃございませんでしょうが、この程度でいいというふうな考えでなく、全般について、この点を一つ大蔵省としては特に謙虚に取り上げていただきたいということを申し上げます。
  41. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大体私のお答えで御了承いただいたかと思いますが、地区等の問題について特に考えなければならないようなことがあれば、よく事務当局をして話し合いを進めさして参りたいと思います。
  42. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それからもう一点、今の問題に連関いたしまして、これは農産物の価格のきめ方に非常に大きな影響を持ってくるわけであります。今のやり方は、御承知通りパリティ計算、しかもそのパリティ計算の内容というのは、ざっくばらんに言って、政治的なつかみパリティです。パりティという名に値しないような、いいかげんなやり方をやっております。そこで、どうしてもこういう土地改良その他を進めて、しかも農民がこれによって安定をするということについては——今の、特に米と麦のごときは御承知通りほとんど政府がこれを実質上買い上げるわけです。しかも、日本農業所得のほとんど半分ないし六割は米麦によっておるわけであります。ところが、政府農業の価格政策の中には、この土地改良なりあるいは土地の生産力増強に要した経費をどういうふうに見るか。正確に組み入れるという点はほとんどないように思う。やはりこの点でも調整を——これは価格の決定の方式、決定の基準を改める必要がどうしてもあると思うのであります。今ではなるほど格好だけはパリティという格好をしておりますが、パリティでは、今申しましたような生産力の鉱工業との発展の相違であるとか、あるいは、たとえば土地改良についても、どんどん経費がよけいかかってくるとか、利子がよけいになってくるとか、こういう要素はあれではほとんど入りません。あるいは農薬等も、今農林省が出している、たとえば今二化メイ虫あたりの防除をやっておりますけれども、もう虫の方が強くなりましたから、農林省の基準の農薬では死なないのであります。少くとも二倍以上のものを使わなければ死なない、こういう状態であります。そのほか、いろいろの農薬についても、御承知通り人間でさえこれは適応性ができてきておるのですから、虫の方はなおそれ以上になっておるから、農薬等をどんどん使う、肥料もどんどん使う、こういうのがほとんど今の価格決定の方式の中に入ってこない。私は、この際、農産物、特に米麦の価格決定の方式というものを、私どもが言っておるような生産所得補償方式というような格好に、どうしても切り改める必要がある。そうして、そういう中で、土地改良の経費なりあるいはいろいろの農業の資材費等、あるいは労賃等が十分にペイされるような態勢をとらなければ、土地改良をやった結果農民が楽になるということにはなりません。こういう点についても、農林省は非常に消極的でありましたが、せんだっての言明では、農林大臣も研究すると言うのです。それから、総理大臣も、一応農林省をして研究させる、こう言っておったのですが、これをやると、結果においては米価が上る。米麦価が上るということになると、これで一番反対の多いのはまた大蔵省であります。これは農民の無理な要求でも何でもないと思うのです。原則的に、原価計算をしてかかったものを払えというんで、もうけさせろというのではないのですから、こういう点も改めていかないと、土地改良農業政策全体のバランスのある発展ということは困難であろうと思う。これについては大蔵大臣としてはどう考えておりますか、一つお聞かせをいただきたい。
  43. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 時期的な問題について、米価審議会で麦価並びに米価がちょうど審議を開始されたばかりでございます。いずれこの審議会の答申を経て、政府は米価なり麦価を決定することになるだろうと思いますが、久保田さんの御発言になりました、生産費及び所得の点から適正米価を決定しようという御議論も、おそらく審議会で十分研究されることだろうと思います。今日これについての私個人の批判は控えさしていただきたいと思います。
  44. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうも、大蔵大臣は、ここの段階で逃げるのはよくわかるのですが、あまり——そう言っちゃ非常に言葉が失礼になりますが、詳しいことはわからぬで、しかも金を出す方はいやだという立場から、あまり強力に反対をしないでもらいたい。ざっくばらんの話を言えば、そういうことであります。出すのがいやで、一般会計の立場からだけで食管会計に対して反対をし、農林省のいろいろなことに対して反対をする。これは大蔵省として、金庫を預かる佐藤さんとしては無理のないところだろうと思いますが、どうも、最近の傾向は、少し大蔵省の方の力が強過ぎる。国民の四割を占めておる農民の立場というものを、もう少しすなおに考えてやってもらいたい。選挙のときにうまいこと言って、あれだこれだと言って公約をして、内閣をとると、とたんに財布の口を締めて、農林省の連中がいろいろなことを考えても、これを言ってもだめ、あれを言ってもだめ——今の話と少し別になりますけれども、たとえば畜産政策のごときも、大体普通ならば、この七月には奨励金のつく時期です。それが、この時期に下げようとしておる。これも、私どもの勘定では、政府負担になる金というものは七億もあれば——この七月の受乳拒否だとか、乳牛制限だとか、乳価の値下げなどというようなことが、七億そこらの金さえあれば、政府が全部予算支出をしなくても済むと思う。それさえやらないものですから、きのう、おとといあたり農林省を呼んでやっても、何ら対策がない。来年の予算に載るか載らないかわからないような、先のことをうだうだやっておる。乳価の値下げということは、七月の初旬に迫った問題です。しかも、これがこの段階でだめになれば、酪農振興なんて政府は言わない方がいい。与党の諸君も言わない方がいい。酪農振興によって日本農業の骨格を変えるというようなでかいことばかりいって、七億、八億の金さえ出せない、心配のできないようなことでは困る。農林省に聞いてみますと、はっきりは言いませんけれども大蔵省に言っても、向うが相手にならない。——繭だってそうでしょう。百五十億円が手切金だというようなでたらめなことをほざいておる。こういうことになると思いますから、どうか、そういう点については、国民の四割を占めておる、特に日本経済的にも社会的にも大きくこれを何とか保護して、工業以上に早く背伸びをさせなければならぬ農民ですから、こういう点については、特に佐藤さんは大いに御理解があろうと思う。そういう点では、銀行その他を出てきた実業家出身の海千山千の人よりも、かえって佐藤さんの方がいいと思う。どうか一つそういう点で謙虚にやっていただきたいと思うのであります。  それから、もう一つだけお聞きしますが、この六十五億という金は、これはこのままでずっといくつもりですか、あるいは、必要によってはほかの方からも回すというのですか。六十五億ぐらいでは足らないことは明らかでございます。明らかですが、これはどういうお考えですか。もしこの基金なり資金全体をとりつぶすというような場合に、小団地の標準事業のみならず、あるいはもう少しワクを広げて利子補給をして、そうして土地改良農民利子の軽減をする場合には、これは伸ばし得る御意図を持っておるのですか、それとも、これきりだ、こういう御意図ですか、どっちですか。
  45. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまのところ、六十五億を減らす考え方もございませんし、また直ちにふやす考え方もございません。しかし、先ほど来お話がありましたように、大へん効果の上る制度であるならば、これを増額することにやぶさかではございません。そのときの財政状態とよく見比べた上で、そういうようなことも考えて参りたいと思います。
  46. 久保田豊

    久保田(豊)委員 もう一点お伺いしますが、それは、四百三十六億のワクの中でなくとも、必要があり効果があるというならば、ほかから持ってくるという御意図ですか、この四百三十六億の取りくずしの際に、六十五億をさらにふやしていくというのですかどっちですか。
  47. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 四百三十六億の中で六十五億をちゃんと予定いたしておるのでございます。これをただいま取りくずす考え方はない。この四百二十六億というものは一部のたな上げ資金でございますから、将来また必要があれば資金の面では取りくずすことがあるわけであります。ただ基金の方はこの六十五億を維持していきたいということを申しておるのであります。
  48. 早川崇

    早川委員長 松平忠久君に質疑を許します。
  49. 松平忠久

    松平委員 ちょっと委員長に申し上げたいのでありますが、われわれの要望としては、連合審査をきょうの午後開いてもらいたい。つまり委員会とかち合うわけですよ。われわれ理事が参考人を呼んでいるのに、この委員会と十時にかち合っちゃって困る。ですから、この委員会を開くなら、連合審査をいわゆるわれわれの要望通り午後なら午後にしてかち合わないようにしてもらいたい。このことを委員長に御要望しておきたい。どういうわけで今開いているのか、これを聞きたい。
  50. 早川崇

    早川委員長 連合審査会は、午前中各委員長と打ち合せを了しておりますので、御了承願いたいと思います。——松平君、質疑を始めて下さい。
  51. 松平忠久

    松平委員 それでは、質疑を続けることにいたします。主として大蔵大臣と外務大臣に承わりたいのですが、最近の日本貿易が縮小均衡になってきたということは政府も認められておるし、ことに大蔵事務当局の見解ではどうしても縮小均衡にならざるを得ない、従って、長期の貿易計画、本年度貿易計画も、国会が終ったら早々にこれを練り直すということを言われておる。そういう状況でありますが、その輸出の伸び、輸入との関係というものは初めの計画とだいぶ食い違ってきておる。そこで、これに関連して議題となっておりますところの日本輸出入銀行の五十億円の出資のことについて関連してお伺いしたいのですが、この出資金は、政府の構想によると、何か東南アジアに新しい機構を作る、それに出資をする、また将来そういう機構を作って出資するというわけなんですが、岸総理が東南アジアに行ったりあるいはアメリカに行ってきたその会談の過程におきまして、初当の考え方とはアメリカ等の考え方が違っておるということでもって、今日行き悩んでおる実情であろうと思うのであります。そこで、お伺いしたいのは、東南アジア貿易を振興するためのドル不足、これを補うため日本貿易を伸張するため経済協力というものは、従来からいろいろな構想がありました。吉田総理が行かれてプレス・クラブで演説をしてきた、ああいう構想もあります。それからソ連のような、ああいう構想でありましょう。日本東南アジアに対して新しい経済協力機構を作って、そこに五十億出資するというのだけれども、一体どういう構想を今日お考えになっておるのか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  52. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 総理が東南アジアに回られ、またアメリカに行かれましたときの初期の構想は、御承知通りだと思います。そういう意味において、われわれとしてはこの考え方をできるだけ実行に移せるように考えておりまして、各国の意向等もそれぞれ打診もいたして、今日まで参っております。しかしながら、現実には、必ずしも初期のような構想で進むがいいかどうか、そういう問題については、さらに検討を要するかと思います。ただ、こういう問題について、ただいま御指摘のありましたように、東南アジアのドル不足、そういう問題を解消しなければ、世界の平和は確保できないし、あるいはまた、東南アジア経済建設、それぞれ独立した国の政治的独立というものも確保できない。そういう総理の構想は、漸次世界に一つの大きな響きを与えたと思います。従いまして、最近、アメリカ等におきましても、やはりこれらの問題についていろいろな構想が発表されておりまして、たとえば第二世界銀行というような問題もございます。やはり臨時的な金融を何とかしなければならぬというような問題でありまして、イタリア等におきましても、あるいは中近東におきましても、そういうようなものをやるというような考え方であります。でありますから、今後、これらの進め方につきましては、そういう問題ともにらみ合せながら、十分慎重に考慮して進めて参りたい、こう考えております。
  53. 松平忠久

    松平委員 最近マクミランの訪米によりまして、いろいろそういうことが世界的にも流布されておることは、われわれも承知しておりますが、そこで、日本は、やはりアメリカのドルをこの中へ入れてきて、そうしてインドもしくはその他の東南アジアの国の資金と一緒の一つのフアンドのようなものを作ろう、こういう考えを持っておるのかどうか。言いかえれば、ドル不足ということであるから、何らか形を変えてアメリカの資金をこの開発基金の中へ相当部分持ってきて、日本もそれに五十億出して、そうしてフアンドを作るという考え方をずっと進めようというお考え方であるかどうか、その点をお伺いしたい。
  54. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、東南アジア方面のいわゆる経済問題を十分に解決していくためには、御承知のように、ドルの偏在という問題もございます。従いまして、硬貨がアメリカ、西独その他一、二の国に固まっておるというものを、世界的になるべく分散していくということが一つの大きな考え方に今日なってきております。そういう面からいいましても、アメリカのドルを、いわれておりますような、いわゆるひもつきでないような形において、国際機関を通じて何らかの形で出していきますことは、これはやはり東南アジア経済建設に非常に大きな力になるのではないかと思います。そういう意味において、構想の中に、アメリカの金も使うということが可能であれば、それも一つの大きな方法であろう、こう考えております。
  55. 松平忠久

    松平委員 世界銀行の日本側の円の出資分百億円のうち、今日その円は東南アジアにどの程度使われておりますか。
  56. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 世界銀行におきましてのアジア向けの資金というものは大体世界銀行の資金が三十四、五億あると思うのでありますが、そのうち、大体現在八億ドル程度、二五%程度東南アジア向けに使用されておると推定しております。
  57. 松平忠久

    松平委員 私の聞いているのは、そのドルのほかに円の出資分があるはずでありますが、その円の出資分が今日世界銀行の手を通じてどういうふうに使われておるかということをお聞きしておる。
  58. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 政府委員から答弁させます。
  59. 石田正

    石田政府委員 ただいまの世銀の数字でありますが、私はっきりしたことは覚えておりませんけれども、御承知通り初め五百万ドル、次にまた千万ドルやるというふうな工合に、逐次解除いたしておるわけでありまして、すなわちそれに相当するものをインドとかタイとかいうものに出しておるわけであります。現実に使われました数字が現在どうなっておるか、円で幾らになっておるかということは、さっそく取り調べまして御報告いたしたいと思います。
  60. 松平忠久

    松平委員 これは東南アジアに円資金をある程度持ったところのフアンドを作るという、この考え方審議する場合には、世界銀行に出資した日本の円の部分がどういうふうに使われておるのか、また、その円の部分を使う上において、日本はどの程度の発言権があるのかということを明らかにしなければなりません。従ってこれは私は重大な問題であると思う。今日私ども聞いておるのは、百億の中で十五億程度しか使われないという話だが、そうすればあと八十五億というものが残っておるはずだ。そうすると、これをどういうふうにうまく使わせるかということが私は一つの方法ではなかろうかと思うが、今日まで、政府は、この世界銀行に対する円の出資というものに対して、一体どの程度の発言権があり、またそれをどういうふうに使おうとしてこの円の出資をしたのか、この点を聞きたい。
  61. 石田正

    石田政府委員 御承知通りに、世界銀行に入りますところの地方通貨によりますところの出資というものはこれは向うの要求がありましたならば、各出資国におきまして相談を受けて解除する、こういうふうな工合になっておるわけでございます。日本態度といたしましては、これは為替収支関係がどうなっておるかということに関係があるのでございまして、この円をレリースするということは、また一面におきましてそれだけ外貨の取得が減るという面もあるわけであります。従いまして、日本の為替状況が弱いときにおきましては、普通でありますならば、外貨の獲得できるような輸出が円のレリースによりまして減っていくということでは困るという場合も想像されるわけであります。そこで、そういうふうな関係考えまして、世界銀行との関係におきましては、初めのうちは日本側が弱い間につきましてはやかましいことを言っておったのでありますが、だんだんと日本経済もある程度まで伸びるようになって参りました。また、お話がありましたような工合に、そういうものを利用して、そうして日本のものが出ていくということも望ましい面もあるだろう、こういうふうに考えますので、その両面を考えまして、逐次この円を出すことにいたしております。この問題につきましては、世界銀行の方から、一々事前に、こういうふうなところに円をレリースしたいと思うがどうかということの相談がありまして、その相談によりましてやっておるというのが実情であろうと思います。
  62. 松平忠久

    松平委員 この世界銀行に対する円出資ですね、これを、今の話によると、世界銀行から日本側に一々指示があってどうだ、こういうわけだけれども日本側に何らかの発言権があって、その円資金をあっちに回したい、こっちに回したいということができるのか。また、それができないとするならば、できるように改めることが必要だと思うのであるが、今日まで大蔵省なり外務省というものはこの世界銀行の円出資について一体どの程度の発言権を持っておるのか、また持たんとしておるのか。これを大臣からお聞きしたい。
  63. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 出資金につきましては、政府はもちろん発言権を持っておるわけでございます。ただいま銀行の総務という立場において、わが国の主張を十分確保いたしております。
  64. 松平忠久

    松平委員 銀行の総務という立場において日本としての主張を確保しておるということですが、まことにたよりない御答弁であります。総務であろうが、何であろうが、それはかまいませんが、日本が、どの程度の発言権を持って、その円を希望するがごときところに投資できるかどうか、こういうことを聞いておるわけなんです。
  65. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 出資の一八%についてわが国が権利を持っております。
  66. 松平忠久

    松平委員 その一八%というのは、円資金について一八%なんですか、あるいはドルについて一八%なんですか。
  67. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 一八%と申しますのは、日本の出資金の一八%でございます。
  68. 松平忠久

    松平委員 そこで、この一つ八%を今日日本政府はどの程度活用しておりますか。これはドルでも円でも両方、その中で、東南アジア向けに、日本が、みずからのイニシアチブを持ってて、そうして世界銀行にあっせんして貸してやれというようなことというようなことを言ったことがあるかどうか、そのことを伺いたい。
  69. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 出資円の解除につきましては、世銀の方から、相当要求がございまして、現在までのところ、昨年までで千三百万、本年度は千七百五十万ドル大体解除する予定でございます。これの大体の貸付先は、ほとんどと申しますか、みんな東南アジアというふうに心得ていただいてけっこうだと思います。
  70. 松平忠久

    松平委員 その東南アジア向けの貸付ですね、それは、私の聞かんとするところは、世界銀行が世界銀行の観点からそれを貸せる、こういうわけであるか、あるいは、日本政府が何らかのイニシアチブを持ってそれをやっているかということを私は聞いておるわけです。つまり向うの言いなりになって、そこにぱっと出すということになるのか、あるいは、もっと日本が、みずからの考え方において、こういうところに出してくれということを言って出すようにしているのか、その辺のものの考え方態度を聞きます。
  71. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 お答え申し上げます。  その世銀に対する出資円は世銀の資産になっております。しかし、これは勝手に使っていいということではございませんで、各国とも世銀がその各国の自国通貨を使う場合に協議をいたしまして、どういうものに幾ら使うという場合は持って参ります。しかしながら、これは世銀の金でございますので、そういう具体的な相談の際に、日本の希望は十分申し上げております。
  72. 松平忠久

    松平委員 今のお話のようだとすると、世銀のイニシアチブによってすべてやっていることであって、日本は出資した以上は一八%に対しても何らのイニシアチブをとることはできない、こういうことに理解していいですか。
  73. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 イニシアチブをとるかどうかという点でございますが、これは日本の同意がなければ世銀は引き出しをいたしません。そういう意味で、日本がいけないと言えば世銀は使えないわけでございます。従って、そういう場合に、日本政府としてこういうものは困るということはもちろん言うことはできるわけであります。ただ出資円のうちの一八%は世銀の金である。世銀の金であるけれども日本の円でございますから、それが日本経済に与える影響あるいは貸付先というようなものについて問題が起りますので、そのつど先方から、こういうものに貸したいが許してくれるか、こういうようなことを相談してくるわけでございます。従って日本が全然イニシアチブがないというわけではございません。
  74. 松平忠久

    松平委員 その点は明快になりましたが、積極的ではなくて、消極的な同意権が日本にあるということであるが、円に対して積極的な発言権というものが日本にあるかどうか。つまり日本がこういうところに貸してやりたいのだがどうだといってあっせんすることができるかどうかということ、その権限はどうですか。あるいは実際上の取扱いは……。
  75. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 そういう点につきましては、さっきも申し上げましたように、これは世銀の持っておる資産です。ただそれが円になっておりまして、日本が為替管理をとっておりますから、自由には向うは出せない。どこに貸してやりたいというようなことは大体世銀の理事会のようなところできまると思いますが、そこには日本理事が入っておりますので、そういう意見は十分理事会に反映できると思っております。
  76. 松平忠久

    松平委員 それでは、ちょっと角度を変えてお伺いしたいのですが、現在まで、日本理事の発言によってもしくは日本政府考え方によって、世銀にそれが通じてこの円資金を貸し出したという例がありますか。
  77. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 従来は、御存じのような国際収支でもございましたし、それから、輸出と申しましても、円資金の解除で、向うが円で日本からものを買って輸入するということでございますので、従来の国際収支の関係から申しまして、こちらから積極的に世銀にどういう方面にこれを解除しろといって申し入れたことはございません。しかし、先方が申し入れて参りましたについて同意するかどうかについてはこちらの意思にかかっているわけであります。
  78. 松平忠久

    松平委員 従って、この世銀というものは日本にとってはあまりおもしろくないわけです。そこで第二世銀というものが出てきた。それはイギリスもそういうように考えたからでしょう。だから、アメリカが非常に発言権を持っておる世銀ではなくて、違った構想というものを世界的にも考えてこなくちゃならぬ工合にだんだんなってくるのは当然だと思います。そこで、大きく分けまして、大体英米が中に入ってきて国際的な低開発地域の開発をするという構想が、世界にはあると思います。もう一つは、そうではなくて、それを排除して、そうして小さいながらも自分たちだけでもってやっていきたいという考え方もあると思います。中近東における開発等のアラブ諸国の考え方がその後者に属すると私は思うが、一体、日本考え方というものは、その点についてどういう構想を持っておるのか。よく岸首相は東西のかけ橋なんということを言っておるけれども、その開発基金の構想についても、東西のかけ橋式な考え方をもってやろうとしておるのか。そうではなくて、具体的に言うならば、東南アジアの人々の考え方というものを多く取り入れて、このフアンドを作るということであるか。もしくは、そうでなくて、ドルの不足があるからというのでもって、ドル諸国の発言権を大きくしてやるようなものを作るのであるか。その辺の大まかな考えをちょっと聞かしてもらいたい。
  79. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 東南アジア開発につきましては、むろん東南アジア各国の意思を十分尊重いたさなければならぬことは当然でありまして、これらの国の間にお互いに意見の一致を見るような機構を作っていく必要があると思います。ただ、お話のように、アラブ等の諸国は石油等で相当外貨、財政事情等もいいようでありますが、東南アジアは一般にそういう点がありませんので、何かそういう基金でも設定するような場合には、やはり東南アジアみずからも資金的な充実をすることが、そういう機能をほんとうに東南アジア開発の目的に沿うように力強くさせるのではないか。われわれは、ひもつきというような考え方でなしに、そういう意味で考えております。
  80. 松平忠久

    松平委員 本案にあります五十億というものは、新しくそういう機構を作ってそこへ出資するというわけでありますが、その機構は大体来年の三月三十一日までに作る予定でございますか。
  81. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれとしてはできるだけ東南アジアの各国とよく話し合いをしまして、小規模ながらもそういうスタートが切れれば、現在の東南アジア経済事情から見まして適当じゃないだろうかというような考慮のもとに、努力をいたしていきたい、こう考えておるわけであります。
  82. 早川崇

    早川委員長 松平委員に申し上げますが、申し合せの時間が来ておりますから、簡単にお願いいたします。
  83. 松平忠久

    松平委員 今の藤山外務大臣のお答えは希望的な答弁でありましたが、それは、大体のテンポとしまして、いつごろそういう機構を作るという見通しをお持ちなんですか。あるいはまだ全然わからぬというのであるか。その辺のところをお聞かせ願いたい。
  84. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 こういう問題を進めて参るのに、何月何日までというようなわけにはいかぬのでありますけれども、しかし、これに五十億を計上しましたのは、まあそういう問題が進んでいけば、日本としては少くとも第一回に出すというような決意を東南アジアの各国に示すことが必要だろうというようなことでございます。
  85. 松平忠久

    松平委員 そうしますと、大蔵大臣、これがことしになっても来年になってもできないということになると、この五十億はどういうことになりますか。
  86. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この法案にはっきり書いてありますように、日本輸出入銀行へ基金として出資いたしておるのであります。そのままでございます。
  87. 松平忠久

    松平委員 それは法律的にはそうでありましょうけれども、しかし、政治的な考え方としてはそうではなくて、東南アジアにそういうものを作るということのために出資したわけである。ですから、当然その点は政治的な責任が出てくると私は思う。その点については、そういった法律的な見解だけでもって政府はほおかむりしておこう、こういうおつもりですか。
  88. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 総体に今回の四百三十六億につきましてはたな上げ資金ということをいわれておりまして、このたな上げ資金の性格において処理されるのでございます。ただいま基金として出資するものにつきましても、これをとりくずすことはいたさないつもりでございます。
  89. 松平忠久

    松平委員 外務大臣にお伺いしたいのですが、ジェトロの今後の運営について外務省から通産省に対して覚書だか了解事項というものを求めて、了解事項ができておるそうでありますが、その了解事項というものはどういう内容のものでありますか。
  90. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 外務省と通産省との間に話し合いをしまして、ジェトロの運営に対する覚書を交換いたしました。それにつきましては政府委員から詳しく申し上げます。
  91. 牛場信彦

    牛場政府委員 今回、日本貿易振興会改組に際しまして、主として外務省と通産省との間の関係につきまして相互に了解ができました。それに基きまして、外務、通産両大臣との間に覚書の交換をいたしております。その覚書の内容のおもなるものは、たとえば、事業計画の策定、日本貿易振興会の海外市場調査員の派遣個所の選定及び選考、それから貿易振興会設置個所の選定及び選考、または見本市の開催または参加というような振興会の行いますおもな海外活動につきまして、あらかじめ通産省、外務省で協議するということになっておりまして、また、海外におきまする振興会の機関の活動につきましては、在外公館の指導監督を受けるということにいたしております。それがおもな内容でございます。
  92. 松平忠久

    松平委員 その覚書についてお伺いしたいのですが、在外公館の指導監督を受けるということでありましたが、その場合に、かりにそれに服さなかったというような場合には、身分上の問題が出てくると思うのだけれども、そういうケースを想定して考えられておりますか。たとえば、これは不適任だという場合にはどうなりますか。そこに駐在させておくことが不都合の場合には、やめさせることができるようになっていますか。
  93. 牛場信彦

    牛場政府委員 これはもちろん法律上の効果をはっきり持った覚書というわけではございません。従いまして、身分等につきましてはもちろん貿易振興会の方において取り計らうのでありまして、外務省がその任免等についてはっきりした権限を持っておるというわけではございません。しかしながら、現状におきまして、通産省と外務省の間ないしは貿易振興会と外務省の間が非常に円滑にいっておりまして、これは、戦前と違いまして、在外公館にはほとんど漏れなく通産省出身の人が配属されておる関係もございます。従いまして、人事の交流等がうまくいっておりますので、ただいま御懸念のような摩擦は起る余地がないと思っております。
  94. 松平忠久

    松平委員 もう一点、藤山外務大臣にお伺いします。ただいまの覚書にもありましたが、藤山外務大臣は外からこられて経済外交を主としてやる、こういう考え方なんですが、今度できたようなジェトロとかあるいは今の外務省の機構とかというものを見てみますと、一体日本人に貿易を振興することのできるような素質のある人間がいますか。私は、役人の中にもそういう人間ははなはだ少いと思うし、またこれは商売人の中にも少いと思うのですよ。だからなかなか効果が上らない。従って、これはどうしても相当の海外要員というものを養成しなければならぬと思うのです。これはどこへいっても帯に短かしたすきに長しなんだ。だから、日本貿易を振興していくというなら、人間から徹底的に作っていかなければならない。今日、日本人の中には国際人が少いのです。また、知識のある者は外国語ができない、外国語のできる者は知識がない、こういうような状態なんだ。これは私は根本的に考え直したらどうかと思う。貿易というものを通産省も外務省も打って一丸となって考え直したらどうかと思う。だから、そういう人間を養成することを根本的に考えてもらいたい。ことにジェトロの拡大強化ということをあわせ考えると、これは、むしろそういう方面に予算をよけいに使って、根本的にそういう人間を作っていくということにしなければならぬのだが、御所見があったら伺いたい。
  95. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現在外務省なりあるいは通産省、民間におります者が、全部そうした仕事に不適格だとは思っておりません。しかしながら、ただいまお話のありましたように、国際的に広く仕事をしますことに日本もなって参りましたので、国際人をできるだけ養成していくということは、われわれもやって参らなければならぬことだと考えております。そういう人が活動することによって、さらに大きなプラスが出てくるかと思うのであります。どうか予算等につきまして十分御協力をいただきたいと思います。
  96. 早川崇

    早川委員長 田中武夫君。
  97. 田中武夫

    田中(武)委員 本案に関連いたしまして、商工委員として大蔵大臣に若干の質問をいたしたいと思います。  まず、今日日本は大へんな不況であるといわれております。これは繊維、造船、あらゆる産業を通じてそうでございます。そこで、大臣は、この日本の不況の原因をどのように把握しておられるのか、あるいはまたこの不況を克服していくためにはどういうようにやるべきだと考えておられるかをお聞きいたしたいと思います。
  98. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 現在当面しております経済をどう見るかということでございます。いろいろの説明は省きまして、簡単に、見ておりますところ、結論だけを申しますが、いわゆるなべ底状態にある、こういうような表現をいたしております。この状態が一体今後どうなるか。しがし、昨年来とりました緊急措置の対策がそれぞれ効果をおさめて参つりましたので、正常的な方向で、この経済をしばらく見ていきたい。その意味でまず金融の公定歩合を引き下げました。また市中金融もこれに即応して安くいたしております。この日本経済、申すまでもなく非常な人口を擁しておりますので、やはり伸びようとする底力を持っており、また国内だけで日本経済がブームを現出するというわけにはいかない。言いかえまするならば、世界経済の非常な影響下にある日本経済ということもいわなければなりませんし、同時にまた、世界経済と同じような制約を受けておる日本経済ということもいえるのでありまして、日本の国だけでこの経済を直ちに立て直すということは、まことに至難なことだろうと思います。そこで、この国の経済をどうしたらいいかということでございますが、今日まで政府のとっております政策輸出第一主義とでも申しますか、輸出増強に特に重点を置いて、そうして国内生産、需給の調整をはかり、さらにそれを進めていく、拡大していく、そしてそれを主として国内需要の喚起よつりも、輸出貿易に重点を置いた施策をとっていく、こういう考え方でただいま対処いたしておるわけであります。
  99. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵大臣、去年政府がとった緊急政策が成功して、逐次よくなってきておる、こうおっしゃっておるが、実際の状態はそういうものではないということは、御承知と思います。それから輸出が大事だということは、言うまでもありません。だが、輸出第一主義とかなんとかいうことによって、内政の面の失敗をごまかそうとしておられる、こういうようにわれわれ思うわけなんです。この経済の不況はいわゆる神武景気とかなんとかいわれた昨年来のあのから景気に、この際もうけようと、こういった企業家がじゃんじゃんと投資をする。そうして設備を作り、見込み生産をやっていた。すなわち、過剰投資、過剰設備、その結果の過剰生産、こういうところから来ていると思うのです、それじゃ、これを克服していくためには、滞貨になっておる、いわゆるでき過ぎた製品を吐かしていかなければならぬ。それは、海外に対しては市場を回復する。貿易を拡大していく。同時に内需に対して力を入れなければならぬ。それには、国民の大多数を占めるいわゆる勤労者階級といいますか、こういった人たちの生活の安定と収入の確保といいますか、こういうことが必要だ。すなわち、大衆購買力を高めていくことによって、内需がふえていく、このように思うのです。そういったいわゆる内需をふやしていく、国民大衆の購買力を上げていくという点において、どういうようなお考えを持っておられるか。
  100. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今経済を維持し、さらにそれを上昇さしていくという面において、もちろん国内消費並びに貿易、この二つの要素を考えていかなければならないことは、申すまでもないところであります。問題は、ただいま貯蓄奨励あるいは輸出を特に増進すると申しておりますが、今日までの経済の経過を見ますと、国内におきましては、需給調整という方向で、昨年来の経済事情に対処して参っておるのであります。この需給調整ということそれ自体は、経済の健全な発達の過程においては、あるいは必要であるかもわからない。しかしながら、将来の問題といたしましては、ただいま御指摘になりましたように、国内需要も当然ふえていかなければならないものだと思います。ただ、問題は、そういうような政策転換の時期が、果して今日がその時期であるかどうか、こういうことについて、私ども田中さんの御意見との間には食い違いがあるんではないか。私ども、今日の経済を病気にたとえてみますれば、非常に健康を害して病気にかかる、そこで応急の措置をとる、またそれの療養措置をとって、大体健康を回復しようとしておる。健康を回復しておるのだから、この際に滋養をとらしたら、あるいは運動したらどうか、こういうことでございますが、これはやはり非常に消耗した今日でありますから、急激にさらにこれに滋養をとらしたり、あるいは積極的運動をしいるということは、むしろ健康の回復をおくらすことにはなっても、これを早めることには実はならない。この意味において国内需要をふやすという考え方、これは将来もちろん必要だ。消費を高めていく、これはもちろん必要だと思いますが、今の時期はさような政策をとるべき時期ではないというのが、私ども考え方でございます。
  101. 田中武夫

    田中(武)委員 この時期ではそういう政策をとるべき時期ではない、こう言っているうちに、たとえば繊維の一例をとっても、最近伊勢崎ですか、どこかで問屋が倒れた。それがために伊勢崎の繊維業界はほとんど倒産にひとしいような状態になっておる、こういう状態なんです。そう言っているうちに、どんどんと中小企業あたりが倒れていっている。ことに繊維の苦境状態、中小企業関係の繊維業者の苦しい状態というものは、大臣承知と思うのです。これらに対して特別にどういったような措置を考えられておりますか。
  102. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 すでに最近繭糸価格の下落に対応する一つの措置をとって参りました。また、こういう事柄はいわゆる今日の経済を回復していく場合において生じた一つの社会的摩擦といわなければならないでしょう。ただいま御指摘になりました中小企業あるいは造船、ことに下請の工業自体の中小企業が困る、あるいは繊維関係が困るとか、あるいは失業者がふえてくる、こういういわゆる社会的な摩擦面、こういうものに対する絶えざる注意を払い、そうしてこれに対するそのときどきの時宜を得た対策は、ある程度講じていかなければならないと思います。ただしかし、田中さんのお話のように、総体が非常に不況だ。この際に積極的に国内消費を進めるような政策がとれない、こういうことになりますと、一般的の傾向といたしましては先ほど来申すような健康を害した直後において、適当な措置と申しますか、たとえばいきなりかたいものを食べないで、やわらかいものを食べていく、そういうときがただいまの時期ではないかと実は考えておるのであります。御指摘になりましたような面につきましては、もちろんそれぞれ十分考えていかなければならないところでございます。
  103. 田中武夫

    田中(武)委員 だいぶ大蔵大臣考え方が違うように思うのですが、そういうようなことをいっているうちに、だんだんと中小企業はつぶれていっておる。しかも、造船を見ましても、繊維を見ましても、下請に対する加工賃といいますか、こういうものをだんだん下げていっておる。それがまたその下請企業、中小企業に働く労働者の賃金にしわ寄せをしておる。こういった状態なのです。それを、かたいものを食わしたらいけないとかどうとかいうような例を今述べられましたが、そういうことを言っておっていいだろうかと思うのですがね。もっと積極的に——病後だから滋養をとらすのも必要だろうが、かたいものを食わしちゃいかぬといったような、たとえのごまかしはきかないと思うのです。もっと積極的に、どうしていくのだ、それを聞かしていただきたいと思います。
  104. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほどの一番最初のお話では一般的なお話だったので、一般的なお答えにいたしたわけであります。すでに御承知のように、たとえば昨年来人絹、スフで非常に困った、かように考えられれば、あるいは滞貨金融の措置をとる。あるいは特別な輸出ために確保するような保有外資を作る。それぞれの対策は講じて、そうして先ほど申すような社会的な摩擦面に対処して参っておるのであります。その第一段階といたしまして、ある程度生産制限と申しますか、自粛制限と申しますか、そういうことはやらざるを得ない。これが今日の段階ではないかと思います。綿糸等につきましても、業界自身も自粛的な生産の方法をとっておりますが、この自粛制限を長くやっていくことは考えられない。ことに日本国内機械設備等も非常におくれておるのでございますから、私どもが積極的な政策をとるべき時期が到来いたしますれば、そういう面につきましても、やはり設備の近代化であるとか、あるいはその他の面も考えてしかるべきだと思います。問題はただ時期の問題として、御指摘になりますように、非常に苦境にあえいでいるのだ、今日がその最も必要なところなのだ、こういうお考え方と、私どものように、今日は一応昨年来とってきた緊急対策がそれぞれ効果をおさめて、ただいまその効果の後といいますか、調整の時期に入っているので、ここは非常に大事なときなのです。この見方の相違から結論もまた変ってきておるのではないか、かように考えております。
  105. 田中武夫

    田中(武)委員 そういう政策をとる時期の問題だ、こういうようにおっしゃるのですが、それでは、大臣は、どういうときが時期と考えておられるか。今繊維の自粛という話が出ましたが、繊維の操短の例をとってみましたら、現在人絹で五〇%、スフで四〇%、それから綿で三〇%、羊毛で同じく三〇%の操短をやっておるわけです。それでなお不況だ、こういっておるのです。それでまだ時期じゃない、こういうことだったら、五十を六十にし、七十にしゼロにしていくのが時期なんですか。しかもそのためにもう相当な失業者が出ておる。労働者には犠牲が押しつけられておる。こういう状態なんです。これは北陸三県ですが、富山、石川、福井ですか、これに対して、前の国会で、商工委員会で、金融の措置を講じろという決議をしたわけなんですが、たしか一億四千万円だったか、二千万円かの出資というようなことがとられたと思うのです。ところが、実際は四百万円程度しか借り入れがなされていない。そういうようなところも、そういう困っておる中小企業が、なぜ、一億二千万円のワクの出資というような面が打ち出されたにかかわらず、四百万円程度しか借りられなかったかというと、借りたとてどうせ払わなければいけない。それよりも、今大臣がおっしゃったように当分じっとしておる方がいい、そうして労働者に賃金を払わない。これらの労働者は大体が請負制になっておりますから、操短といっても、今まで十台なら十台持っておった機械を五台に減らすことによって、自分らは幾らも損をしないのです。そうすると、請負制ですから、十台持っておったのが五台持てば収入は半分になる、働いておっても食えない、こういうような状態なんです。それに対して、今は時期でない、こういうふうにおっしゃるのですが、それならば時期をどういうように見ておるのですか。
  106. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは、景気の見通しと申しますか、景気を上昇さす、これにつきましては、よほど時期と方法を考えなければならぬことは申すまでもないのであります。まず私ども考えておりますところ、大体国際収支の状況も黒字に好転してきた。ただいま生産制限のお話が出ております。生産制限をしておることは好ましい状態でないことは、私が申し上げるまでもないのでございます。そこで、国際収支が黒字になり、また日本国内においても、この生産制限というか、調整の時期を順次はずしていくといいますか、いわゆるカンフル注射によって消費を進めるのではなくて、もう少し落ちついた形で消費が進んでいく、こういう形が望ましいのではないかと思います。先ほど特に国内において非常に多数の人口を擁しておるということを申しましたが、その点それは日本経済一つの特異性とでも申しますか、上昇しようという一つの底力を持っておるということはいえると思います。最近の生産調整の趨勢を見ますと、在庫それ自身の調整はすでに終っておるようであります。消費の面においてもやや伸びてきておるのではないか。もちろん、特殊の産業につきましては、なお消費が非常に弱い面がございます。かようなことを考えて参りますると、こういう時期で経過することは比較的短かくて済むのではないか、また短かくて済むようにすべきではないか、こういう考え方が生まれて参るわけであります。私どもが、この際この国会にこの法案を提出しててこ入れをしたらどうか、こういう御意見に対して非常に慎重な態度をとっておりますゆえんのものは、最近ようやく公定歩合も二厘引き下げたばかりである。ここで二、三カ月というか、しばらく模様を見るべき状況ではないか、その後に、とるべき対策も講ずべきではないかということであります。そこで、今御指摘になりましたような、それぞれの部門において起ってくる——これは一つのそれぞれ特異的な性格から起ってくると思いますが、ただいま御指摘になりました福井、石川、富山、こういう三県において薄物の人絹が非常に参っておる。こういうことは、おそらく東南アジア向けの輸出がほとんどとまってしまったというようなことも影響しておるだろうと思います。こういうことに対しては、その原因がはっきりしておるだけに、対策も講じやすい。最近この数日来私ども織物業者の総決起大会等の陳情なども伺っておりますが、これなども、各地方々々にそれぞれ特異性のあることでございます。その原因をやはり十分究明して、それに対する対策を立てていかないと、ただ一がいにこの際景気を上昇さす政策をとれということには賛成しかねる。かように実は申しておるのでございます。
  107. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣は、先ほどから、公定歩合を二厘引き下げしたということを鬼の首でもとったようにおっしゃっておる。なるほど、去年逆に引き上げたときは、直ちに中小企業の金融にこれが響いて、中小企業は塗炭の苦しみをなめた。ところが今度引き上げたからといって、直ちにそれが、現在ではまだ中小企業は潤っていない。潤ってくるのを待つ間がないんじゃないか。そこで、今度のこの法案ですが、経済基盤強化だ、こうおっしゃておる。私は、経済基盤の強化については、言うまでもなくいわゆる国民生活を安定さすということ、これが経済基盤の一番の目的じゃないかと思う。そのためには、やはり労働者には一定の収入を保証する。すなわちち、一律な線へということは別としても、一律方式によるところの最低賃金が必要である。また、農業あるいは中小企業に対しては、近代化といいますか、設備の近代化、そういったことが必要であろうと思うし、その他いろいろの政策が必要だと思う。この法律経済基盤を強化して将来の経済の健全な発展を期するのだと目的でうたってあるのですが、それ以前にもっと経済基盤強化ため考えなくちゃならない問題があると思うのです。それは、言うまでもなく、先ほど申しました国民生活の安定と大衆の収入の確保が必要だと思いますので、それに対しては政府はどのように考えておられるか、伺いたい。
  108. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今日提案いたしております法律案をこれだけ引き抜いて、そうして経済基盤強化のり基本的な考え方で御批判をいただくと、ただいまのような結論になるだろうと思います。問題は、この法案は三十三年度予算編成のその一環の法律案でございまして、従って、三十三年度予算の性格とあわせてお考え願うと、十分御理解がいただけるのではないか。三十三年度予算は、言うまでもなく、三十二年度経済状態に対応するという立場から予算を組んで参った。従って、この予算編成後において生ずるであろう経済の諸情勢、あるいは失業対策であるとか、あるいは中小企業対策であるとか、あるいは農業対策であるとか、こういうようなことを前提基礎条件として三十三年度予算を組んだ。その際に、やはりこの経済基盤強化法律案基金並びに資金を設定するということも、構想の一つとしてあわせて御提案いたして御審議を願っておるのであります。不幸にしてこの法律案だけがおくれて参りました。問題は、三十三年度予算審議の時期とここにズレがある。そのズレと、経済が今日当面しておるズレが一体どういうことになっておるか。私どもの見るところでは、一応予測した大体の線で今日の経済にあるように思う。従って、三十三年度予算編成の際の構想とその考え方は、変える考えを実は持たないで、重ねて経済基盤強化法律案を出しておるのでございます。この点御了承いただきたいと思います。
  109. 田中武夫

    田中(武)委員 大体予測した線で現在の経済状態がある、こういうことですが、たとえば、この問題一つとらえても、政府が本年度予算考えられておった失業対策費、これに対する失業人口、これがもううんと違ってきておるということを申し上げたわけです。これでも、大臣は、われわれの予測しておったように動いておる、こうおっしゃるのはおかしいと思うのです。  時間がないようですから、次に申し上げたいと思うのですが、私は、何といっても、経済基盤の強化を大きく打ち出される前に、もっと考えなくちゃならぬ問題がある。それは、言うまでもなく、先ほど来言っておる国民生活の安定、収入の確保である、このように考えるわけです。  これを申し上げて、次に外務大臣にちょっと御質問したいのです。繊維で先ほど質問したのですが、綿布を例にとりましたら、日本の綿製品の戦前における貿易輸出品と内需とは、五七・七%が輸出であって、あとが内需である。ところが、三十二年度では、逆に輸出が三七・六%、戦前に比べて綿布の輸出がうんと減っておる。また、人絹を例にとれば、戦前は六六・二%だった輸出が、三十二年度では四二・八%、これもうんと減っておるわけです。そこで輸出の振興ということを取り上げられておるわですが、たとえば綿製品に例をとりましても、アメリカ等が日本の綿製品の輸入禁止ないし制限をやっておる。これはとうから問題になっておるわけですが、外務大臣として、こういうようなことに対して、アメリカに対してどのような交渉といいますか、あるいは抗議といいますか、申し入れられたか、あるいは今後どのような措置をとって、そういったことに対して打開の道を開いていこうとしておられるのか、お伺いいたします。
  110. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカと日本貿易に関しましては、日本貿易によって国を立てておる、経済の基本をそこに置いておるということを常時言っておりますと同時に、アメリカと日本との貿易のバランスというものは日本に不利であるという立場からも、常時、そうした問題について、アメリカにもっと輸入を増進してもらいたいという点を強く言っております。同時にまた、問題が起りましたような際にはそれぞれの業者の方と一緒になって、できるだけアメリカの国会等にも働きかけまして、そうして公聴会等の際には、専門弁護士を公述人として出しますとか、あるいは専門家を頼みまして、各方面の啓発宣伝をやるというようなこともやっておるわけであります。むろんこれらの仕事を活発に十分にやって参らなければなりませんし、ことに政府に対しましては、日本の対米輸出貿易の大半が中小企業からなっておるという点を特に強調いたしまして、それが日本経済に非常な大きな影響を与えるということを常時申しておるようなわけであります。そういうことを常に外務省としては、在外公館を通じ、あるいはまた機会あるごとに、われわれもそうした問題について強くアメリカの反省を促しておるわけであります。
  111. 田中武夫

    田中(武)委員 若干数字は違うかもわかりませんが、アメリカと日本貿易関係ですが、アメリカから日本が買っておる輸入は十二億六千万ドルほどだと思います。それから反対にアメリカが日本のものを買ってくれておるのは、いわゆる輸出は五億五千万ドル、そうすると日本は倍以上のものを買っておるわけです。にかかわらず、何とかかんとか理屈をつけて日本の製品をボイコットしてきておる。これに対して、一対一の取引として、なぜこちらが買うだけのものはお前さんの方も買ってくれと、こう言えないのか。そして、買ってくれなければ、こちらがそちらから買っておる鉄鉱石とかあるいは石炭、そういうものは近くから買うぞ、こういうような交渉はできないのかどうか、そういうことをやるお気持があるか、お伺いいたします。
  112. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカに対して一対一の輸出入の状態に持っていくことが日本として必要であるということは、強くアメリカに申しております。なお、輸出振興の見地から見まして、またただいまお話のありましたような対米外交の見地からいいまして、日本の原材料の輸入仕入地というものに対して、国内産業ベースを十分に御検討願いますことは、私は必要なことだと思います。
  113. 田中武夫

    田中(武)委員 もう一つ具体的にわからないのですが、一対一の商売ができるように強く申し入れられたことがありますか。あるいは申し入れられたことに対して、向うはどんな態度をとっておりますか。まだ申し入れてなければ、申し入れるお気持があるかどうか。具体的に一つ……。
  114. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この問題については常時話し合いをいたしておりまして、日本がこういう対米アンバランスの貿易状態は困るということを常時強く言っております。
  115. 田中武夫

    田中(武)委員 強く言っておるのだが、聞いてくれないわけなんですか。聞いてくれないので、どうしようとしておるのか。
  116. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ワシントンの政府におきましては、日本のそういう立場を相当理解し、また日本の要求が決して無理であるとは考えておらぬと思います。ただ、御承知のように、日本から輸出されるものにつきましても、アメリカの国内にもやはり中小企業的立場で同種の物を製造するというような人もありまして、従って、議会等に、ことに本年など中間選挙の時期でもありますので、いろいろそういう声が反映もしていく場合があるわけであります。それらに対しては、先ほど申し上げましたように、民間有識者に対してわれわれ十分言うと同時に、議会の公聴会等におきましても、それぞれ専門家を雇い入れ、その他公述人として出席する人たちを通じて、そういう主張をいたさせておるわけでございます。
  117. 田中武夫

    田中(武)委員 アメリカは日本の立場を理解してくれておる。こういうことだが、言うことを聞いてくれない、こういう結果じゃないかと思う。現に数字の上において相当の開きがある。その上に制限というような態度をゆるめていないところはそうだと思う。これはもっと強く腰を入れて言ってもらわなければいけない。買ってくれなければ、こちらは何もアメリカから物を買わなくたって、近くから買えるんだと思うのです。なぜそれが買えないのか、それをもう一つお伺いしたいと思う。  それと、もう一つは、時間がないそうですから、話が飛んだことになりますが、在外公館等に、商務官といいますか、そういった貿易というか商売の専門的な人を置いて、そういうような人によって輸出の増進をはかる、こういうような措置、商務官の設置、こういうようなことは考えられないかどうか。
  118. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいまお話がございましたように、前段の問題につきましては、私どもといたしましても、できるだけアメリカ側のそういう点における理解を深めるように強く言っておるわけであります。お話のありましたように、アメリカから買っておるものを他の地域に転換するというような問題については、外務省が、総合的に、貿易振興の立場からいって、アンバランスの、むしろ日本輸出超過の国からできるだけ原料を買うというようなことが望ましいことであります。ただ、国内機械設備の関係その他からいって、必ずしも適当りな原料が選択できないというようないろいろな事情もあろうかと思いますが、そういうふうに原料仕入地の転換ということは、やはり国内情勢の上で私は考えていただく必要があろうかと考えております。  第二の、外務省に商務官的なものを置かないかというお話であります。現在においては、各省から経済専門のそれぞれの方が来ておられます。しかしながら、同時に、おそらく、ただいまの商務官的というのは、民間の有能な、そういう経験のある人を採用するような制度という意味も含めてのお話だと考えます。私も、そういうことは好ましいことでありまして、将来そういうことを考えて参りたい。また現在もそういう考え方で、ただ民間のエキスパートの人をそういうように採用いたすためには、民間と役所との給与の関係その他もありまして、有能な人をでるだけとらなければ意味がないわけでありまして、なかなか有能な人が得がたいというようなことが考えられるので、現在各省からそれぞれ専門の方々をお願いして、在外公館の強化もいたしております。しかし、ただいま御指摘のような、純粋な商務官的な民間人を取り入れるということは、さらに一そう考えて参らなければならない、こう思っております。
  119. 田中武夫

    田中(武)委員 時間がないそうでありますから、一点だけ。これはどなたに質問したらいいのか、所管ですと大蔵大臣になるかと思いますが、この経済基盤強化ための云々という法律で、その中に日本労働協会に十五億出す。経済基盤の強化の前提ということについては、私が先ほど申し上げたように、国民生活の安定、収入の確保だ、こう言っている。日本労働協会法は前国会で通りましたが、日本労働協会については、われわれは大きな疑問を持っておる。経済基盤強化云々という中に、日本労働協会というものを指定し、この法人を作って十五億円出すということを考えてみると、何だか労働者の労働組合運動を押えるというか、抑圧していくというか、何かかっての産報的な行き方をとって、労働運動に水をさす、そのことが経済基盤強化一つの大きな柱であるということを考えておられるというように、これでは受け取れるのですが、いかがでしょうか。
  120. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 経済基盤強化は、特に基金である性格に実は重点を置いておるのでありまして、基金を設定するのに格好なもの、と言うと言葉が不適当であるかわかりませんが、必要だと考えられるものとして、五つばかりそこに出ておりますが、その中に労働協会というものが出ておるのであります。労働協会自体については、前国会で法律が制定されましたので、これは重ねて御説明申し上げません。私どもも、どこまでも組合の健全な発達あるいは正当な活動ということについて、弾圧するような考え方は毛頭持っておりません。この一事だけは明確に申し上げることができます。これを申し上げましてお答えといたします。
  121. 田中武夫

    田中(武)委員 弾圧する考えは持っておらないというのですが、現に起っている事態が、公正に見ればどっちへ軍配が上るかということは、国民はよく知っておる。ここで農林漁業、中小企業、貿易という、こういうものが一応経済基盤強化ために必要だと思われる。これ自体がいいとは思いませんが、そういう項目を掲げておられる。そこへ労働協会とこうくると、労働協会というものを作って、先ほど言ったように、われわれは、これは運営にもかかっておりますが、下手をやると、かつて産報的な、労働組合運動に水をさすような動きをするのではないか、このようにすら考えております。そういうことが経済基盤一つの柱だというように考えておられたら大へんだ、こういうように思うわけであります。
  122. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまお答えしたように、基金という点に特に重点を置いて、これを取り上げておるのであります。どうか、労働協会の今後の育成、活動については、色めがねをおかけにならないで、私ども皆さん方と一緒になって、りっぱな労働協会を作りたいと思っております。どうかよろしくお願いいたします。
  123. 早川崇

    早川委員長 岡田春夫君の質疑を許可いたします。
  124. 岡田春夫

    ○岡田委員 二、三お伺いをしたいのですが、先ほど松平君の質問については、私も伺いたいと思っておった点がだいぶありまして、その点は重複を避けますけれども、藤山外務大臣答弁を伺っていると、東南アジア開発基金の使い道については、年度内に何か見通しがないような感じがする。見通しがないのに予算に計上したとするならば、これは財政法上疑義が起ってくると思うのだが、年度内にこの五十億円の金を使う東南アジア開発に対するめどというものがないことが明らかになっているのか、あるいは、あるという点がはっきりしておらない限りにおいて、財政法上問題があると思うのですが、この点はいかがですか。
  125. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれ年度内にできるだけそういうものを使えるような立場にやるようにという見通しのもとにやっておるわけです。
  126. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは何か具体的な準備が進んでおりますでしょうか。
  127. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現在、それらにつきまして、常時いろいろな構造をめぐらしながら折衝をしております。
  128. 岡田春夫

    ○岡田委員 構想がいろいろあって、初め岸さんの考えられた構想と現在の構想とだいぶ変ってきているようです。そういう構想が変ってきているならば変っているということをはっきりされて、どういう構想で進められておるのだということをはっきりされないと、われわれ予算を通じ、今この法案を審議するにおいて、財政法上の観点からいきましても、だいぶこれは問題があると思うんですが、具体的に構想をもう少しお伺いをいたしたい。
  129. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どもは、総理が初め打ち出された構想に沿うていろいろ案を作って参りました。しかし、先ほどから御議論もありましたように、東南アジアを中心にしてこれらのものができて参りますれば、小規模でもそういう形のものを作って参りたい。必ずしも初めから大構想を必要としないと思います。また、内容等につきましても、必ずしも大きな融資をするような機関でなくとも、あの構想の中にありますような技術援助方面の問題に対して、資金面にもいろいろな考慮を払うという問題も考えられます。そういう面に具体的な設定方法ができる可能性があるということを考えながら進めております。
  130. 岡田春夫

    ○岡田委員 先ほど答弁の中で、アメリカのひものつかないという、こういうことを言われましたが、そのひものつかないというのは、具体的にどういうことを意味していますか。
  131. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ひものつかないという言葉はしょっちゅう岡田さんから言われておりますので、あるいはそういう意味で使ったのかもしれませんが、東南アジアの方面のお方がよくそういう言葉を一面では使われるわけであります。これは、いろいろな意味において、軍事援助的なものを別にしましても、相当こまかくいろいろな点を注意してくるというのが、バイラテラルの場合にあり得るのであります。マルティラテラルでありますれば、そういう問題は避けられるのじゃないかと思います。
  132. 岡田春夫

    ○岡田委員 今御答弁を伺っていると、ひものつかないという意味では社会党の主張に完全に同調する、こういうようにわれわれは藤山さんの御意見を解釈して参りたいと思いますが、そこで、ひものつかないということは、単に軍事的な意味でひもと言われるような問題だけでなくして、今これから東南アジア、その他のアジア、アフリカ諸国に重要なことは、経済的な支配のもとに屈させられるような状態にならない、こういう関係を作るということ、こういう点が私は重要だと思うんですが、東南アジア開発基金が現在思うように進んでおらないということは、今藤山さんの言われたように、今度の岸構想なり藤山構想というものは、何かそのうしろにアメリカがいるんじゃないか、アメリカの金を使って、ひもをつけていくんじゃないか、これは、軍事的な点はもちろんのこと、経済的なそういう支配関係ができてくるんじゃないか、こういった点を懸念しているんだと思うんです。そこで、先ほど第二世銀の話も出たのでありますけれども、私は今日本の国が非常に考えなければならないことは、日中関係の問題からも出ておりますように、日本の資本主義が戦後において急速に復活をして、アジア、アフリカの地域において帝国主義的な支配をするのではないか、こういう点に対する警戒が非常に強いと私は思う。これはアメリカのひもつきであって、そういう支配の関係を懸念すると同時に、日本の国自身のそういう帝国主義的な支配ということを懸念しておる。そういう点が東南アジア開発基金を前進させないような原因になっておるのではないかと私は考えるのですが、こういう点についてどういうような御配慮が行われておるか、こういう点を伺って参りたいと思います。
  133. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 こうした基金的な構想をやります場合に、日本だけが基金の運営に当るというようなことは、私ども初めから考えておりません。やはり加盟しておりますアジアの諸国から役員も出、その役員会と申しますか、理事会と申しますか、そうしたようなことで運営全体を相談をしていくという立場で考えておるわけでありまして、必ずしも日本だけが基金の運営に当るというようなことを考えておるわけではありません。
  134. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで、そういうような構想でほんとうに進められるという御意思ならば、日本が中心になって東南アジア開発基金制度というものを提唱しなくても、従来アジア・アフリカ諸国間において構想をされておるものに対して、この五十億円の金を使っていく、こういう点についても考慮してみてよろしいのではないか。何か、こういう点については、日本考えている東南アジア開発基金制度以外にはこの金は使わないのだ、そういうようなお考えでいっているのですか。それとも、もっと具体的なそういう構想があるならば、この金を使ってもいい、こういうようにお考えになっておるのですか。その点をお伺いしたい。
  135. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本がそういう問題を提唱いたしまして、そうして何らかの形でもって東南アジアに十分な資金が活用されるということが、一番の大きなねらいであります。従いまして、日本が作ったものでなければこれは出さないというような考え方はいたしておらないのでありまして、もし日本が出資し得るような適当な機関ができますれば、私はそれに出資金を振りかえるということも適当ではないかと考えております。
  136. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで伺いますが、藤山さんもまだ大臣になられる前に御出席になったのですが、バンドン会議で具体的な案が出ておるわけです。バンドン会議で決定されたのは、時間がありませんから簡単に申しますが、いわゆるSUNFEDの構想なのです。このSUNFEDの構想に対してこの金を使っていく、これをきっかけにしてSUNFEDを確立するという形ならば、これは、東南アジアあるいはアジア・アフリカ諸国から、日本の帝国主義的な進出の意図を持ったものではない、そういうことをはっきりと向う側も受け取ることができると思う。こういうものに対してそれを出資するというお考えがありますか、どうですか。
  137. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、日本東南アジア開発基金を提出いたしましても、日本だけがそれをコントロールするというようなことは、総理も考えておられませんし、最初からの提案もそうなっております。従って、アジア・アフリカ会議あるいはその他のどの国がそういう種類の問題を提案しましても、大きな目で見てりこういう構想に合うものならば、出資してもさしつかえないのではないか、私はこういうように考えてます。
  138. 岡田春夫

    ○岡田委員 バンドン会議には日本の代表も賛成しておるわけですね。従って、SUNFEDという構想に対して出資してもかまわないというように藤山さんの御意思があるように、私今受け取ったのです。そこで、国連において日本代表のとっている態度を藤山さんはどういうようにお考えになりますか。SUNFEDに対してアジア・アフリカ諸国が提案をした、これに対して日本代表はまさか反対をするわけにはいかないというので棄権をして、あいまいな態度でごまかしているということは、今藤山さんのお考えになっているということとだいぶ趣旨が反しているということが第一点。  第二の点は、本気でSUNEFDをやろうとしておらないし、そういう点からいくとアジア・アフリカ諸国の熱望とは相反する行動をとりつつある、こういうようにわれわれは見ざるを得ないと思うのですが、国連における日本代表の態度、この点について、先ほどからの御答弁に関連して、一つはっきりした御見解を伺いたいと思います。
  139. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 SUNFEDの問題につきまして、これが国連でできることを日本が希望いたしておりますことは当然であります。ただ、これがなかなか成立いたしませんので、昨年は一億ドルのいわゆる基金をもって、少くも小規模にでも始める。一日も早くそういう問題に取りついていく。そうして将来それを拡大することによって、またSUNFEDの趣旨にも沿うようになるわけでありまして、そうした問題について、できるだけ現実的な立場をとりながら進めて参る考えであります。
  140. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、今の御答弁はちょっと筋が通らないと思うのです。積極的にやるならばSUNFEDの提案があった場合に、日本代表がそれに賛成すればいいのに、賛成しないで棄権をしている。それはどういう意味ですか。
  141. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、われわれはそれに対してできるだけできるように努力をして参りたいと思っておりますが、しかしながら、なかなか困難で、できない以上は、なるべくそれに近い何らかの形において後進国の経済開発ができることを望んでおるわけであります。
  142. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは話にならない。それではなぜSUNFEDが国連において決議されないか。この点をお調べになったでしょうか。アメリカが反対しているからなんです。アメリカが反対しているから日本もこのSUNFEDの案に賛成するわけにいかないし、一方アジア・アフリカの方にも悪く思われたくないから棄権した。これが真相なんです。それは、積極的にやろうという態度ではなくして、常にアメリカさんの方向に顔を向けている。これを立証していると思うのです。そういう根本問題を解決しない限りにおいては、SUNFEDの問題は解決しないと思うのですが、この点はいかがですか。     〔「委員長質問者に注意してもらいたい。そんな質問は予算委員会でやってくれ」と呼ぶ者あり〕
  143. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これは、単にアメリカの問題ばかりでなく、共産圏の方においても金を出すということについてはちゅうちょいたしておるのでありまして、そういう状況下においては、なかなか困難ではないかと思っております。
  144. 岡田春夫

    ○岡田委員 今与党の方の理事から雑音が入りましたけれども、やはり経済基盤強化基金の問題を進めるには、こういう点から始めなければ論議になりませんので、一つお聞きを願いたい。  私は外務委員会の連合審査できょう出ているので、経済基盤強化基金の問題よりも、外為関係の方が主として質問をしたい主要点なのであります。外為特別会計法の一部改正法案が出ておりますが、これは、言うまでもなく、インドネシアの賠償に関連をしてこの問題が出てきたのであります。  まず第一点として伺いたいのはインドネシアの焦げつき債権の問題はインドネシアの賠償協定との間においてきめられた。これが原因になって特別会計の一部改正が出されていると思う。そうなってくると、賠償協定の中に何らかの明文上の規定があるかと思って調べてみたが、協定には何ら明文上の規定がないわけなんですが、これはどういうわけなんですか。
  145. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この前のインドネシアの賠償協定を御審議願いましたときに、十分説明をいたしたと思うのでありますが、これは賠償協定ができますと同時に、日本とインドネシアとの関係を正常化する上において、またインドネシアの今日の経済建設その他の意欲、また国内事情等を見まして、われわれとしては将来両国のためにこれらのものを清算することが必要であろうということでこの問題を取り上げたことは、前の委員会でも御説明申し上げ通りであります。
  146. 岡田春夫

    ○岡田委員 賠償との関係においてこれは解決されたのであろうと思うのです。それならば、賠償協定の明文上において、焦げつき債権の問題をどうするかということの明文上の規定がなければならないはずなんだ。それがないということを私は伺っているのです。私ここに賠償協定を持ってきておりますが……。
  147. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これは、たびたび前の委員会でも御説明申し上げましたように、賠償協定とは別でありまして、賠償が解決いたしました時期にこの問題を解決した、こういうことであります。
  148. 岡田春夫

    ○岡田委員 時期に解決したというお話ですが、そうすると、岸さんがインドネシアに参りましたあのときに話をつけたのですが、実際問題として賠償額からこれを差し引いているわけですね。そういう関係ではないのですか。
  149. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 インドネシアと日本との賠償関係の話し合いというものは、紆余曲折いたしております。従いまして、過程におきましていろいろな議論は出たと思いますが、最終的には今私が申し上げましたような方法によって解決されたと思います。
  150. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると、少くとも条約上全然別個のものとして扱うべきである、このような解釈ですか。
  151. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 さようでございます。
  152. 岡田春夫

    ○岡田委員 賠償問題としてこれは別個なものという御答弁でありますけれども、しかし、事実問題としては、一緒の交渉の中でこれが一つの条件のような形で出ておったことは事実なんであります。実際問題としては不可分の関係にあるということは、お認めにならざるを得ないと思うのですが、この点はどうなんですか。
  153. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、賠償協定の交渉の経緯において、いろいろな経緯がございました。また、この問題についての最終的解決は、賠償協定と並行して行われたわけでありますが、その趣旨はただいま申し上げましたように、賠償問題も解決し、そうして両国のこれからの正常関係を打ち立てて参りますために、インドネシアの諸般の経済事情その他をあわせて親善関係を保つという上において、過去のそうした問題について一つ清算する方がいいという立場であります。
  154. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は、先ほど、経済基盤強化基金のときにも、ちょっとそういう考え方について申し上げたのですが、特に日本の賠償は、フィリピン賠償以来、賠償の本質というものは変ってきていると思うのです。こういう点がアジア・アフリカ諸国からも帝国主義的な支配ということを懸念されている大きな原因になってきている。というのは、従来平和条約十四条に基く賠償というものは役務賠償に限られている。それにもかかわらず、フィリピン賠償以降において資本財賠償という概念が入ってきている。このインドネシアの焦げつき債権に関連する賠償は、やはり資本財の賠償というものが入っているという点において、私は非常に問題があると思う。大体平和条約第十四条の違反じゃないかと私思うのですが、ちょうど条約局長も見えておられるので、解釈上この点を明らかにしていただきたい。
  155. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の点は、まことに当初より非常に問題点であったことは御承知通りでございます。そこで、御指摘通り、第十四条の第一項におきまして、「生産、沈船引揚げその他の作業における日本人の役務を」云々ということがありますので、役務というのを厳格に解釈すれば、あるいは御指摘通りのサービス役務だけに限るという解釈も、一つの解釈の仕方として成り立つと思う次第であります。しかし、これをそれほど厳格に解するよりも、むしろ役務が、やはり生産物に役務を加えまして出てきたもの、すなわち生産物と申しますか、役務がそれに加わったというふうに考えますと、生産における役務というふうに考えますと、やはり生産財を入れることも、その程度の拡張解釈と申しますか、その程度の解釈もあるいは可能ではないかというふうに考えている次第でございます。なかんずくその末項に「外国為替上の負担日本国に課さないために、原材料は、当該連合国が供給しなければならない。」こういうふうに、ここに一つの条件、制限が加えられておりますが、これから考えましても、もしも外国為替上の負担、すなわち原材料が外国から来るという場合には、やはりそれにサービスを加えまして、そこにでき上りました生産物、資本財というのは、これに含まれるというふうに解釈しても、決して不当ではないというふうに考える次第であります。
  156. 岡田春夫

    ○岡田委員 今の解釈は私は非常に不当だと思うのです。不当だと思うことは、平和条約が出されたときに、当時の西村条約局長が解釈をはっきり出しているわけです。その当時の条約局長の言っていることによって私は説明したいと思うのだが、西村条約局長ははっきり言っている。その当時の解釈は、「役務の内容が原材料に対して加工をする賠償、いわゆる生産加工賠償でありました場合には、日本に外貨の負担を課さないように、原材料は賠償要請国が供給しなければならない、こういうことになっております。」云々ということで、この役務を拡張解釈してはならないという点を、西村条約局長はあらゆる面において表わしていると私は思う。特にわれわれが注意しなければならないことは、日本文の条文では不明確に見える点があります。しかし、英文の面を見ると、これは非常にはっきり出ている。すなわち「ザ・サービセズ・オブ・ザ・ジャパニーズ・ピープル・イン・プロダクション」となっております。生産の中の役務ということがはっきり出ているわけであります。生産物それ自体の賠償ということはありっこないわけであります。こういう点は藤山さんも十分一つはっきりしてもらわないと、条約上から見ても、平和条約に違反している行為が行われている。こういう点はやはりはっきりしておいていただかなければならないという点が一点。これは大臣に伺っておきたい。  それから、先ほど、高橋条約局長が、生産物の中における役務の関係という点を考慮してという意味で答弁をされているのですが、それならば、そういうやり方が実はあるわけなんです。イタリアの賠償の実施方針を見ると、これがはっきりしている。イタリアの方式というのはこういうようになっている。イタリアの方式は、生産物に含まれた役務を生産物として相手国に出す、そのかわり、いわゆる勘定の項目の中に原材料の分を経費として換算して差し引いているのですよ。外国から入っている原材料の分をいわゆる勘定の項目から差し引いている。そうなってくると、役務の分だけが賠償額になるということがはっきり出てくる。ところが、日本の場合には、賠償に関する条約の規定があるにもかかわらず、生産物の賠償をこの中に含めようというようなことは、私は十四条に対して明らかに違反していると思う。先ほどの高橋条約局長のようなやり方を含むのだというお考えだとするならば、イタリアのとっているようなこういう方式をはっきりとすべきであると私は思うのですが、こういう点はいかがですか。
  157. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 法律論は非常にむずかしい問題だと思いますが、私は必ずしも生産物を賠償に出しますことが平和条約違反だとは考えておりません。ことに生産物というのは役務の集積であるとも考えられるわけであります。そういう意味で言いましても、現状に適した措置をとることが必要だと思います。
  158. 岡田春夫

    ○岡田委員 藤山さん、そういうことを言うとますますうまくないのですよ。あなたはますますわなに陥ってしまうことになりますから、おやめになった方がいい。というのは、うしろの方に、ただし書きで、高橋さんが言っているように、原材料について「連合国が供給しなければならない。」という明文の規定があるのであります。そういう原材料も、もとをただせば役務であるということを言うと、これは明らかにあなた自身条約違反をしているということになりますから、これは十分御注意になった方がいいということを、私は注意を喚起しておきます。  続いて佐藤さんにお伺いしたいのですが、まず第一に、焦げつき債権、これはこの間の国会でも問題になったのですが、特別会計の原資を切り捨てるという方式をとった理由、これはどういう意味なのですか。
  159. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 技術的なことでございますので、事務当局から申し述べさせます。
  160. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 お答え申し上げます。  この点は、前の国会でも申し上げましたように、現在の外為資金特別会計法によりますと、これは三条に明らかであります。一般会計から出資をもって成り立っておる。つまり一般会計から区分計算しておる会計だ、こういうふうに規定しております。なお、そのあとに、たしか外為法の五条だったと思いますが、外為会計においては、外貨を保有、運用するということになっております。そこで、次に考えてみますと、外為における歳入歳出の損益計算、これはさっき申し上げました売買に伴う損失であります。経費であります。結局、今申し上げましたように、資金を歳入歳出として減らすという道は、今の特別会計にはないのであります。その成り立ちが、第三条によりまして一般会計から繰り入れられておりますので、それを減額すれば結局資産勘定の方の債権が協定によって落ちましたので、それに見合いますところの資金を減額整理するということで、こういう処置をとったのであります。
  161. 早川崇

    早川委員長 岡田君に申しますが、農林委員の方で一時間半時間を食っていますので、調整上……。
  162. 岡田春夫

    ○岡田委員 議事の進行について。  委員長そんな勝手なことをしてもらっちゃ困りますよ。あなたは外務委員会委員長にその了解を求めて下さい。われわれは、外務委員会は一時間もらっておるからやりますよ。
  163. 早川崇

    早川委員長 外務委員長の了解を得ております。発言を続けて下さい。
  164. 岡田春夫

    ○岡田委員 外務委員長いないじゃありませんか。どういう了解があるんですか。
  165. 早川崇

    早川委員長 発言を続けて下さい。
  166. 岡田春夫

    ○岡田委員 だめですよ。外務委員会は一時間ということははっきりしているでしょう。それを……。     〔「それは社会党内部の問題だよ」「そんなことはない」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  167. 早川崇

    早川委員長 十五分まで一つ
  168. 岡田春夫

    ○岡田委員 ともかくやります。  酒井さんもだいぶつらい答弁があったので、私はあまり追及しませんが、三条で原資を切らないでこれだけの焦げつき債権があったら、三条の規定に基いて一般会計から繰り入れたらいいじゃないですか。それをなぜやらなかったんですか。これはむしろ政治的な問題だと思いますから、大蔵大臣から一つ答弁願いたい。
  169. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは別に政治的な問題じゃございません。事務的な問題でもできることであります。
  170. 岡田春夫

    ○岡田委員 私の政治的な意味という理解がまだ大臣にはわかっていない。政治的なというのは、予算提出のときに非常に混乱をした意味、そういう政治的な意味を含んでおる。私はそれを言っているのですよ。こういうことが行われたということは、多分に政治的であったということだから、大蔵大臣からお答えして下さい、こう言っているのですよ。
  171. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 そういうことと関係なしに、この法案の御審議をいただいております。前国会で問題になりました、政治的な問題でありましたか、その跡始末として事務的な処理をいたしております。
  172. 岡田春夫

    ○岡田委員 時間もだんだん制限されておりますので、非常に因ったのですが、インドネシアの焦げつき債権もありますが、まだ焦げつきがだいぶあるようです。たとえば台湾に対する焦げつきもあるようです。韓国に対する焦げつきもあるようです。その数字をこの機会に明らかにしていただきたいと思います。
  173. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 焦げつきと申しますと何でございますが、御承知のアルゼンチンに対する債権でございますが、これは九年間の分割払いということで、債務償還の協定がつい最近できました。それによりますと、現在のバランスは四千九百九十万ドル残っております。それから、韓国につきましては、現在百六十三億三千七百万、台湾は焦げつきではございませんが、この間の日台交渉におきましても、今後スイングを超過した場合には必ず払うという約束ができております。これは現在のところ五月末一千六十万、これはスイングが一千万についております。エジプトにつきましては、四百三十万七千円ございましたが、これは焦げついておりません。将来を見ますと、大体バランスにいくだろうと思っております。それから、ブラジルにつきましても、これは将来のバランスからいえば大体とんとんと申しますか、いける状態であります。
  174. 岡田春夫

    ○岡田委員 今、必ずしも焦げつきと見られないというような御趣旨の答弁もあったのですが、われわれの見方では、焦げつきが大半ではないかという感じがする。そうでないものもありますし、そういう点に関連して藤山外務大臣にお伺いをしたいのです。最近、外務省では、対日請求権の清算について整理を進めておる、こういうことを聞いておるのでありますが、この対日請求権の処理についてどういう方針で進められておりますか。しかも、ただいまお話のあった焦げつき債権との関係が、インドネシアの賠償問題と同じような形で、やはり処理を進められていくというようなお考えでもあるのですか。
  175. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 戦後十数年もたっております。そしてイタリアでありますとか、あるいはイギリスでありますとか、いろいろ戦時中の問題の残っておるものがあるようであります。そういうものを一ぺんすっかり洗いざらいしで検討してみたいということを、ただいま考えておるわけであります。
  176. 岡田春夫

    ○岡田委員 ヴェトナム賠償の問題なんかもその中に入るんだろうと思いますが、きょうはやりません。いずれやりますから準備をしておいてもらいたいのですが、そこで外国為替資金特別会計法というものの制定の趣旨は、いわゆる外国為替の売買の管理をする、こういうことが趣旨だろうと思うのです。こういう趣旨をあくまでも進めていくために、実際日本の現在の外国為替上にいろいろな支障が実は起っておる。これは、佐藤さんがまだ大蔵大臣になられる前に、一萬田大蔵大臣が、私の予算委員会での質問に答えて、その事実については認められまして、厳に直さなければならないということの趣旨の一萬田大蔵大臣答弁もあった問題なんですが、外国の映画の割当の問題なんです。きょうはたしか酒井さんはその審議会の方に出ておられたんだろうと思うのでありますが、外国映画の輸入において、アメリカの映画が非常に日本の外国為替を撹乱しておるような事実がたくさん上っておるわけです。たとえば、例をあげて申し上げますと、アメリカ以外の国々から日本の国がフィルムを輸入する場合には、大体買い切り制といって三万ドルくらいで買っておるわけです。ところが、アメリカの映画の場合には、大半が日本輸入されて営業成績によっていわゆる支払いをする、決済をするということになって、大体平均して一本につき十万ドルから十五万ドルくらいになっている。そうすると、三万ドルを基準にして、この外国為替特別会計法の中の外国為替の映画の分としては八百万ドルだったと思いますが、八百万ドルのワクがあるのに、こういう映画の入れ方をしているために、アメリカの分だけでも、去年の実績を見ると千二百万ドル以上になるのです。そうすると、日本の外国為替管理というものはアメリカの映画によって混乱させられておる。こういう点はやはり根本的に解決をしなければならないことになってきていると思うのです。この点を、この前の一萬田大蔵大臣は、事実を率直に認められて、この三十三年度においてはこの点を一つ抜本的に解決したいという御意思を答弁されております。新大臣になられまして、佐藤大蔵大臣はこの点についてはどのようにお考えになっておられるか、この点をまず伺いたいと思います。
  177. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 引き継ぎ事項の一つに外国映画の問題がございます。前予算委員会でいろいろ論議されたということも伺っております。また今回民間の方も加えてこの扱い方をただいま審議中でございます。この点を御披露しておきます。
  178. 岡田春夫

    ○岡田委員 審議中とお話しになりますが、すでに新年度になってから四、五、六と三カ月たっているわけです。大体いつごろまで審議されるのですか。そういう見通しなんかはっきりしていただかないと、これはいつまでも審議しているのじゃ話になりません。それから、新大臣になられてあまり御存じがないから私申し上げておきますが、民間の方の参加してやられるというのは、何も今度初めてやっているのじゃない。前からやっているのです。ただ民間の人を使ってやっているというのだけれども大蔵省の単なる諮問機関であって、そこに発言権なんかありっこないのです。それから、もう一つは、出ている民間の人というのはそういう映画の関係や為替の割当なんかについて、あまり詳しくわからないために、ごく一部の人の考えているような方向に、これがきめられようとしている。民間の人の中のある一部の人、必要があれば名前を言ってもいいのですが、そういうようなことによって事実上アメリカの映画によって混乱されている、日本の外国為替の問題が依然として解決ができないというのが、今日の状態なんです。というのは、民間の人というのは、アメリカ筋と結びついて、そういう混乱を続けさせようとしている意図があるからだ、客観的に言うと。名前を言ってもいいのですが、ある大映画会社の社長であります。その社長によって混乱させられておる。佐藤さん、だいぶその人と関係が深いのじゃないかと思うので、その人の言うなりになるのじゃないかと思って、私は心配しているのですが、こういう点はどうでございますか。
  179. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま外国映画のお話がございました。これはただいま為替局長が担当いたしておりますから、為替局長が話すがいいかと思います。私が指示いたしておりますことは、対アメリカとの関係、またもう一つは業者間におきましていろいろの問題があるやに伺いますので、こういう点が公正に扱われる、そういう意味で為替局長に問題を扱わせております。従って為替局長から説明させます。
  180. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 ただいまの点につきまして補足して御説明申し上げます。先国会でいろいろ問題が提起されました。私ども、こういう問題点を十分尊重いたしまして、委員会のメンバーに諮りまして、その上で成案を得たいと思っております。もう近日中にきまるのじゃないかと思います。それから、先ほどお話のありました新メンバーはあまり御存じない方じゃないかというお話でございますが、これはいずれもりっぱな方でありまして、前後三、四回、従来の経過、それから映画の問題その他をよく聞いていただきまして、みんな非常にごりっぱな方でありますから、そういう方がある一、二の人の意見によって動かされるということは私はあり得ないと思っております。いずれにいたしましても、その後、国会の御意見のほかにも、各方面からいろいろ御意見がございますので、それらを参酌して、できるだけ早い機会に適当な解決をはかりたいと考えております。
  181. 岡田春夫

    ○岡田委員 先ほど焦げつき債権に関係がないというような意見も出ているようでありますが、そうじゃないので、やはり外国為替全体を管理する方式として、こういう混乱が起っていることについて指摘をしておかなきゃならぬと思うのです。ということは、もう一つここで問題があるのですが、外務省の経済局長が見えておられますけれども、日ソの通商条約に基いて、映画を輸入するためのいろいろな協定が文章上明文化されておるのであります。ところが、条文上明文化されているのに、為替の関係においてこれを押えて実行させないようにしておる。そうすると、これは佐藤さんと藤山さんによく覚えていただかなきゃならないんだが、為替上においてこれをさせないことによって、条約に違反することになるわけです。そうならば、やはりこういう条約上の明文上の問題については、為替上においても何らかの考慮が行われなければならないと思う。そういうことがいけないならば、条文上明文化することをやめたらいいので、やはり条文上明文化して両国間にはっきり合意されたものがある限りにおいては、為替の操作においてもそういう点にやはり余地を与えていくように私はしなくちゃいけないと思うが、この点は佐藤さんどうでございますか。
  182. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 ただいまのお話でありますが、条約、協定等に基いてきめられておることにつきましては、為替の割当ももちろんその方針に沿ってやらなければいかぬと思います。たとえば、さっきアメリカ映画の話がありましたが、日米通商航海条約では、アメリカ人が日本で活動いたしますと、内国人待遇になります。これは条約上の規定でございますから、それに違反するようなことはできない。それは為替の管理でございますから、いろいろ管理の態様がございまして、条約上たとえば無差別にするというような場合はもちろんそれは尊重して差別待遇はできないということになっております。
  183. 岡田春夫

    ○岡田委員 私の伺ったのはもう少し具体的な問題んで、ソビエトの場合は条文上の問題がはっきりしておるわけです。経済局長そうでしょう。はっきりしておるのならば、そこの点をはっきりしてもらわないと困るのです。
  184. 牛場信彦

    牛場政府委員 ソビエトの協定に映画という項目があることは事実でありますが、これは国別のシングル・クォータを与えておるわけじゃありません。これは協定のときにはっきり向う側に説明したわけでありますが、これは要するに、ほかのイギリスとかドイツとかフランスとか、そういう国の映画と平等の立場でもって日本のマーケットで競争するというチャンスを与えただけであります。これは大蔵省の割当のシステムにドルと非ドルとあるわけですが、その非ドルの範囲内におきましては、ソビエトの映画は十分競争する余地が与えられておるわけです。この点は十分向う側も了解してくれているものと私たちも思っております。
  185. 岡田春夫

    ○岡田委員 競争の余地を与えるために明文化したなんていう、そんな話はないですよ。明文がなくても競争の余地は幾らだってあるでしょう。あれは特別の条約に基いて両国間の映画を交流させる目的によって、ああいう明文上の規定をしたのであって、それを全然排除するようなことが事実上為替管理上行われているから、こういう点については大蔵大臣からはっきり答弁して下さい。大蔵大臣、条約違反になるかどうかの問題は、やはり局長ではなくて、大臣から政治的にはっきり答弁してもらいたい。
  186. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ソ連映画は、支払います際には、具体的にはポンドで決済しておると思うのです。従って、今支障を来たしておるとは私考えておりません。具体的な問題につきましてはよく研究してみます。
  187. 早川崇

    早川委員長 これにて本連合審査会を終了いたします。     午後二時二十一分散会