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1958-06-25 第29回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十五日(水曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 早川  崇君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 夏堀源三郎君 理事 福田  一君    理事 坊  秀男君 理事 石野 久男君    理事 佐藤觀次郎君 理事 平岡忠次郎君       荒木萬壽夫君    内田 常雄君       押谷 富三君    鴨田 宗一君       小山 長規君    田中 角榮君       竹下  登君    南條 徳男君       西村 英一君    福永 一臣君       古川 丈吉君    細田 義安君       毛利 松平君    山下 春江君       山村庄之助君    山本 勝市君       春日 一幸君    久保田鶴松君       田万 廣文君    竹谷源太郎君       廣瀬 勝邦君    松尾トシ子君       山下 榮二君    山花 秀雄君       山本 幸一君    横路 節雄君       横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         通商産業大臣  高碕達之助君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    大堀  弘君         大蔵政務次官  山中 貞則君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    谷村  裕君         大蔵事務官         (主計局法規課 小熊 孝次君         長)         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 六月二十四日  委員廣瀬勝邦辞任につき、その補欠として森  三樹二君が議長指名委員に選任された。 同日  委員森三樹二君辞任につき、その補欠として廣  瀬勝邦君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月二十四日  たばこ小売手数料の引上げに関する請願(猪俣  浩三君紹介)(第七号)  同(田中彰治紹介)(第二六号)  同(重政誠之君外二名紹介)(第七二号)  同(小林かなえ紹介)(第九九号)  身体障害者に対する税法上の用語改正に関する  請願菅野和太郎紹介)(第七一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基  金に関する法律案内閣提出第一号)  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二号)      ————◇—————
  2. 早川崇

    早川委員長 これより会議を開きます。  経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案及び外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 私は、経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案につきまして質問をいたします。  質問の順序として大蔵大臣にお尋ねをしたいのですが、大臣は非常に時間の都合が悪いそうですから、高碕通産相に関連のことについて聞きたいと思います。  本法律案は、立案の根拠になっているのが、昨年からの引き締めの政策をしなければならなかった日本経済の実態に基いて、三十三年度予算編成に当っては、三十一年度財政の中から出てきた剰余金の処分についての処置に当って、一部をたな上げしなければならないという、そういう構想に基いておるといわれております。その間、政府説明によりますると、特に輸出増強ということが非常に強調されておるわけでありますし、またわれわれもこの問題については輸出増強ということが非常に大事だというふうに考えている。本法案を立案する当時、特に三十三年度予算編成当時におけるところの経済見通しについては、先国会におきまして一萬田蔵相からもいろいろ事情を聞いておりますし、また、一昨日の予算委員会におきましては、大蔵大臣は、当時の見通しとあまり変らないのだというような説明もされております。われわれの見解では、当時と非常に情勢も変っておるし、また、こういう法案、たな上げ資金というものを作るということについても、基本的には考え方が全然違っておりまして、むしろ、今日の経済事情のもとでは、こういう金はできるだけ予算に組んで使うべきである、あるいはまた減税に回すべきであるという考え方を持っておるのであります。それらの問題については、あとでまた大蔵大臣が参りましてからお尋ねするといたしまして、特に輸出増強の問題についてでございますが、通産相は、昨日の商工委員会の席上でも、予算委員会の席上でも、大体輸出についての見通しを申されて、八、九月ごろになりますとはね上ってくるだろうという見解を述べておられるように聞いておりますが、それらの点についていま少しく御所見を承わりたいと思います。この外為収支の問題については、五月も確かに好調であって、約三千七百万ドルの黒字が出たということを述べられております。しかし、一方では、輸出信用状は六月も依然として二億ドルを割っておるということも聞いているわけです。しかも、この輸出信用状は三カ月にわたって二億ドルを割っておりまするから、おそらく三十一億五千万ドルの輸出は本年度は非常に困難ではなかろうかという見解がますます強くなってきているというふうに、われわれは見ているのであります。また、諸外国における輸入制限の問題も非常に強くなってきているように見受けられますが、通産相は本年度輸出計画三十一億五千万ドルというものの達成について、どういうような見通しを持っておられるか、それらについてこまかく一つ所見を承わりたいと思います。
  4. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 石野委員の御質問にお答え申し上げます。  お説のごとく、当初計画いたしておりました本年度輸出が三十一億五千万ドルを持続し得るかどうかということは、非常に大きな問題でございまして、現在までの状況におきますと、はなはだ困難性があるということは、ますます濃厚になっておるようであります。特に、中共貿易等におきましても、現在の状況でありますれば、われわれが最初見込んでおりました一億ドルというものが望み薄になったことも事実でございます。また、世界景気から申しましても、必ずしも将来非常に好転するということは認められません。しかしながら、最近のアメリカ情勢は、鉱工生産も相当ふえ、失業者の数も減って参りましたから、幾らか好転するような曙光もあるようでありまして、その前途につきましては、これまたにわかにきめるわけにはいかないわけなのであります。一方、世界全体の景気につきましても、必ずしも楽観を許しません。しかしながら、現在わずか二カ月の間の結果をもってこの一年を想定することは、はなはだ危際だと存ずるわけなのでありまして、われわれは少くとも三十一億五千万ドルという目標に向って努力する決心でおるわけなのでございます。これがゆえに、三十一億五千万ドルの数字を今変えるという考え政府は持っておりません。この努力目標に向って邁進いたしたいと考えております。  しからば、どういう方法輸出振興するかということに相なりまするが、現在における日本情勢から申しまして、輸出振興がいかなる方面から申しましても絶対必要であることは皆さん考えを一にするわけであります。その方法といたしましては、従前もやっておりました輸出振興策というものはもちろん継続いたしまして、さらにこれを強く推進いたします。たとえばジェトロの機構をもっと改良して、そしてさらに強力にするということも必要でありましょう。しかし、そんななまぬるいことだけでは、私は困難だと思います。それにつきましては、今後の輸出品目等につきましてもさらに一そう考慮いたしまして、簡単な例で申しますと、たとえば、ある程度日本消費を犠牲にしても、ぜいたく品のごときは輸出する。ここにウィスキーがある。われわれは、イギリスのウィスキーを、りっぱな高いウィスキーを飲んでおりますが、日本にもりっぱなウィスキーがある。サントリーならサントリーでも、この名前が売れておれば、こういうものは日本で飲まなくても、ある程度輸出するというふうな方針一つとる必要があるだろうということも考えられると同時に、一方、大きな問題になりますと、今後東南アジアに対しましては、彼らの国は持てる国でありまして、今現金は持っておりませんけれども、材料を持っております。日本が希望するものを持っております。そうういう方に向うにつきましては、プラント輸出等につきましても相当な期間延べ取引をやっていこう。従前、御承知通りプラント輸出については、二割五分の頭金をとって、そして五カ年の延べ取引であったが、この頭金をもう少し減らし、同時に延べ取引条件をもっと長くするというようなことにしていけば、これまた相当好転するだろうと思います。幸いに、現在の国際収支は、お話のごとくわれわれは一億五千万ドルの黒字ということを見ておりましたが、これが、前内閣以来の緊縮方針によって、国際収支は、今の見通しでは、内輪に見ても二億五千万ドルくらいは黒字になるだろう、こういう観測がありますから、この国際収支黒字の出る状況におきまして、プラント輸出等につきましても延べ取引をやる。もちろんこれには相手方の国の政情及び経済状況等もありますから、こういう点を考慮いたしまして、十分検討していきますれば、これは相当伸びることだと思います。その他あらゆる方面について努力いたしますれば、ある程度の目的は達するだろう、かように存じております。
  5. 石野久男

    石野委員 輸出振興は絶対にやらなくちゃいけないから、三十一億五千万ドルの目標は変えないつもりだ。そのために、いろいろな方法があるが、特に東南アジア等において延べ取引方法どもとっていきたいというようなことも言われておるし、またいろいろなことを言われておりますが、ただ、ここで私ども考えなくちゃならないのは、今日本輸出が伸びてないということは、ひとり日本国内事情の問題だけではないということ、世界経済が非常な不況段階に入っているということだと思うのです。特にアメリカ経済における不況深刻化というものは、私たちの想像以上のものがあるように思われます。そういうことがいろいろ影響して、日本の対処すべき対策というものが出ていないのだ、こういうように私は思う。東南アジアもちろんけっこうでございます。しかし、東南アジアがわが国の輸出のすべてになるということは絶対にあり得ないのでありまして、比率の上からいきましても、ごく微少なものであるというようにわれわれは考えて参っております。そういうときに、もっと大きな立場から、特に世界経済の全般的な立場において、アメリカ経済中心とする場で、日本輸出振興という問題を真剣に考えなくちゃいけないのじゃないか。私は、東南アジアにおける問題も非常に大事だと思いますが、もっと高い立場から輸出振興考えていくべきだろうと思います。ことに、最近では、プラント輸出につきまして、南米あたり輸出になりますると、御承知のように従来はアメリカ製品とも若干の競合がありましたけれども、最近になりますと、特にアメリカ製品との競合があって、重電機部門などでは、ほとんどアメリカ製品と太刀打ちできないという状勢になっておる。われわれはアメリカとの世界市場におけるところの競合という問題を今まではそう考えていなかったけれども、今後は相当考えなければいかぬという状況になってきておると思うそういう意味で、今申された延べ取引の問題などもそうでございますが、大体延べ取引というけれども、その延べ取引というものはどういうふうな条件を内容として考えておられるのか。それらの問題についても一つ意見を承わりたいし、今申しましたように、アメリカ経済中心とする世界不況の中で、日本輸出をどういうふうに伸ばしていくかということを、もう少し突っ込んで一つお話を承わりたいと思います。
  6. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 御趣旨のごとく、アメリカ経済が今日どういうふうになるかということにつきましては、まだにわかに決定するわけにはいきませんが、不況であるということは事実であります。それがために、彼らは彼らの輸出を増進せんがために、勢い日本との競合になることも事実でございます。また、アメリカだけでなく、欧州各国におきましても、輸出増進につきましては非常に熱心にやっておるわけでございます。それに対抗いたしまして、日本が現在におきましてどういうふうな方法でやるかと申しますれば、まず、プラント輸出につきましては、最初注文をされたときに、大体は五分なりあるいは一割の手金をもらって製造に着手するわけであります。それをデリヴアリいたしましたときに、あとの一割五分、つまり二割五分というものにつきましては、受け渡しと同時に現金をとるわけであります。それはメーカーの手に入るわけであります。あとの七割五分につきましては、日本輸出入銀行が主となってそのメーカーに金融してやる。そのうちの二割は関係の市中銀行がこれを保証するというようなことで、実際は輸出入銀行は八割を金融しておるということになっておるわけであります。ただいまのところ、輸出入銀行におきましてはまだ相当の余力があるわけでございますから、それを十分に使ってやるということでありますが、ただ、競争相手国が、現在におきましては、二割五分の頭金を二割でいいとかあるいは一割五分でいいとかいうような競争をして参るわけであります。それに対抗いたしまして、相手方があるわけでありますから、これはあまりかたいことを言っていると注文を取られてしまうというわけであります。そういうふうな点につきましては、よほど相手国状態、また競争状態等によって、そのときどきの手を打っていかなければならぬ。これは東南アジアだけではありません。御承知のごとく中南米それから中近東ないしはアフリカ等においてもその申し出があるわけでありますから、それはケース・バイ・ケースにおいてよく検討して、そういうふうに相手方との競争に打ち勝つような方法をとっていかなければならぬ、こう存ずるわけであります。
  7. 石野久男

    石野委員 今大臣はいろいろと輸出振興についての専門的な技術的な問題のようなことに触れられましたけれども、しかし、輸出は御承知のように世界各国お互い競争する場がきつくなってきているのですから、今言うように頭金の二割五分を一割でいいとかなんとかいうようにその条件を下げていきますと、ますます競争力のない。日本などはとても太刀打ちができないと思うのです。先ほど、東南アジアでは現金は持っていないけれども物資は持っているのだ、だからそういう形でもそういう国とも延べ払いをやりたい、こういうふうなことを言っておりました。だけれども、御承知のように、東南アジアにおいては、それぞれの国々がほとんど輸入超過状態になっておりまして、実際には輸入をできるだけシャット・アウトしようかという状態になっております。ですから、これは合弁の形か何かでもしなければ、資本投下そのものを持っていかなければ、とても輸出の場は作ることができないだろうというふうにわれわれは考えるわけです。ここで最も大切なことは、われわれが輸出を伸ばすためにその市場をどこに選択するかということではないか、こういうように思います。私は、今の世界市場の中で、日本が伸ばしていくところの市場を高碕大臣はどういうふうなところに目をつけておるのか、そういう点についてはっきりあなたのお考えを聞きたい。
  8. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは商品によってみな市場が違いますが、現在アメリカ輸出いたしております商品は、洋食器にいたしましても、合板にいたしましても、カン詰にいたしましても、大体は日本中小工業製品が多いと思います。それが、たまたまアメリカにおきましても、その製造をやっておるのはアメリカ中小工業者が多いのであります。それで、アメリカ全体から考えますれば、これは、そういう消費物資はできるだけ安くていいものが来ればいいということはアメリカ全体の考えでありますが、しかし、これによって直接損害をこうむる相手方中小工業者は非常に声が高いのであります。その声が各議員に伝えられ、それが国会の問題となって、実際以上にやかましくいわれておるわけでありますが、これに対して、アメリカ政府は、日本立場もよく了解しておりますから、できるだけ、これに対しては、大統領の拒否権をもって、関税の引き上げだとかあるいは生産割当ということにつきましては拒否してくれているのであります。けれども、私が考えておりますことは、こういう種類のアメリカ向け輸出は、まだまだ日本商品が倍になっても消費は問題がないと思うのです。ただ方法いかんであります。今まで輸入しておりました数量は、一〇のものが一ぺんに一〇〇になるというふうなことになると、これは向うの同業者も心配するわけでありますから、そこで、私の考えといたしましては、急速に日本生産業者代表者アメリカに送りまして、政府と、政府とが交渉する以外に、アメリカの同業者に呼びかけて、日本現状を訴え、向う現状をよく聞いて、そうしてお互い話し合いをつけて、そうして一緒に共同広告をやろうじゃないか、共同で宣伝をして、もっと消費をふやしていこうじゃないか、こういう話し合いをつけていけば、私は現在の対米輸出数量はさらにふやしていっても問題はない、こうかたく信じております。また、そのほかの未開発国に対しましては、先ほど申し上げましたごとくに、プラント輸出なり、あるいは御指摘のごとくプラント輸出だけでいかぬ場合には、日本の財力の許す範囲におきまして経済協力をやるとか、あるいは円クレジットを設定するとか、こういうようなあらゆる手を打っていかなければならぬ。手を打って初めて目的が達成できると思います。
  9. 石野久男

    石野委員 私が今お尋ねしたのは、日本国際収支を改善するために貿易をどういうふうに展開していくかということについて、世界市場の中で、どこもみな大事ですけれども、特にこの際われわれが収支の改善をし貿易を拡大していくときに、市場をどういうところに大きく目を向けていくかということをお尋ねしたのです。今大臣説明によりますと、非常にアメリカ貿易を強調されております。しかし、大臣も御承知のように、アメリカ日本との貿易収支計算からいえば、われわれはものすごい輸入超過です。もちろん、やはり日本中小工業者輸出場をそこに持とうとすることはよくわかるし、またこれは考えなくちゃいけないと思います。考えなくちゃいけないが、これは、日本貿易全体から見れば、ものすごいアンバランスになっておる。しかも、それは、わずかに一割か二割の超過ならよろしいですけれども、それが二倍にもなるような輸入超過になっておるのだというときに、これはもっと方向を考えないと、全体としての貿易のバランスを正常化させるということはできないのじゃないかというふうに、われわれは考えておる。大臣の今のような考え方だったら、いつまでたっても日本アンバランスを是正することはできないのじゃないですか。アメリカ日本の間における貿易アンバランスをどこで補っていこうとするか。依然としてあなたは特需でこれをまかなっていこうというような考え方であるのかどうか。そういう点にも触れて、もう一ぺんよく説明していただきたいと思う。
  10. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 御説のごとく、対米貿易につきましては、日本側から見ると、輸出に対し輸入が非常に超過しております。これは事実でありますが、私どもは、これは市場転換ができると思う。つまり買い入れ先転換のできるところは順次転換していきたい。転換することによって新しく販路が拡張できるわけです。一例をもって申し上げますれば、アメリカから従前米輸入しておった。その米を東南アジア地域から買うことによって、日本商品が出るということになるのでありますから、これはそのつど欠かさず実行いたしておったのであります。しかるに、現在におきまして、日本が現在アメリカから輸入しておりますものをどこかほかに転換することになりますれば、たとえば小麦のごときはカナダに転換することができる。濠洲転換することができる。これは可能な分だけはやっておりますが、しかし、今五億ドル近く輸入超過になっておると思っておりますが、これを一ぺんに転換するということは、なかなか困難でありまして、商品ごとに当ってみますと、なかなか考えている通りに簡単にいかないのでございます。これは、しかし、根本の方針といたしますれば、御説のごとく逐次可能な方面に対して市場転換をするということを考えていきたいと思っております。
  11. 石野久男

    石野委員 五億ドルの輸入超過になっておるものは、市場転換がなかなかできない品物における条件がある。そこで、逐次とこう言っておられますが、しかし、今日日本の直面しておる経済事情というものは、そういう逐次などということでなくて、大胆に切りかえをしなければならないような貿易事情になっておると思うのです。それはもう大臣もお認めなんだろうと思いますが、これはまだだらだらとやっていけばいいというふうに考えているのでしょうか。皆さんは、特に第一次の岸内閣から今日にかけまして、この貿易伸張のために、国内ではものすごい緊縮政策をやって、そうして実際問題からいって国民に対して非常な大きな迷惑をかけておるのです。そういう事情を勘案しますと、もっと政府貿易政策の上で大胆な政策を打ち出さなくちゃいけないと思う。私は、その場合に、今市場転換をするときに、また全般的な角度から考えて、市場転換の場というものは、ただ自由主義諸国だけではないのだと思う。やはり共産国貿易というものが非常に大事だと思います。特に中共貿易の場というものは非常に重要ですが、中共貿易については、あなたは予算委員会あるいは商工委員会でも意見を述べておられますけれども、私はもっと突っ込んだ大臣意見担当大臣としてお聞きしたいのですが、共産圏貿易についてはどういうようなお考えを持っておられますか。
  12. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは、中共といわず、ソ連といわず、経済的に考えまして可能なものは、できるだけ輸入もふやし、また輸出もふやしていきたい、こう存じておりますが、現在中共に対しましてはああいう状態になっておるということは、はなはだ遺憾千万でございまして、これは一日も早く正常に返していきたいことを希望しております。それは、一例を申しますれば、アメリカから現在買っております大豆のごときものも、市場転換からいえば、当然中共から買いたいという所存でございます。今の状態にあるときは、これは解決することができないことはまことに残念に存じておるのであります。その意味におきまして、私ども中共との間の貿易が一日も早く再開されんことを希望いたしておりますが、この手段方法等につきましては、外務大臣によく考えてもらわなければならぬと思っております。
  13. 石野久男

    石野委員 共産圏貿易、特に中共貿易については外務大臣意見によるのだということですが、それでは通産大臣としての貿易政策というものはほとんど持たないことになってくる。私は、まだその問題に触れる前に先ほど質問しましたアメリカ貿易についての態度の問題でございますが、御承知のようにものすごい輸入超過をしておる日本は、アメリカの中小企業者日本の中小企業者との競合点において、特にアメリカでは日本の品物を排斥しておるという情勢があるときに、これには強い態度で当らなくちゃいけないと考える。こういう問題についてあなたの決意はどういうものであるか、この際一つ聞かしてもらいたい。
  14. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 対米貿易につきましては、先ほど申しましたごとく、アメリカ政府といたしますれば、日本の現在の立場をよく了解して、好意的にやってくれております。私は、商売のことは、いたずらに強く言ったからといって、よくなるわけじゃないと思います。商売というものは買手も売手もお互いが満足して初めてできるのであります。従いまして、私は、アメリカの同業者話し合いをつければ必ずできる。私は決して空論を申しません。実際上におきまして、マグロのカン詰のごときは、過去におきましてあれだけの数量輸出し得るようになったということは、過去においてカリフォルニアのカン詰業者日本カン詰業者がいろいろ折衝を加えてきて、一緒にこれを取り扱おうじゃないか、一つのブランドで売ろうじゃないかという話し合いまでつけて、今日まで進んできたのであります。その方法いかんによって、強硬に出たからといって、決してふえるわけじゃありません。よく協調することが大事だと思っております。
  15. 石野久男

    石野委員 私がアメリカ貿易の点をいろいろお尋ねするのは、これはやはり特に中共貿易の問題との関連があるからなのです。輸出の品物それ自体については問題は少いかと思いますけれども、全般としての貿易政策の上で、中共貿易に対するアメリカ考え方というものが非常に影響していることは、あなたもよく知っておるはずなのです。それで、私が今ここでお尋ねしたいのは、中共貿易についての態度というものが、今明確に出ないというと、おそらく日本貿易というものはとても今のアンバランスを是正することはできないだろうと思うこういう点について、私は、中共貿易に対するあなたの考え方——あとで私は外務大臣に来てもらおうと思いますが、外務大臣意見もありますけれども、あなたはあなたの立場から明確な線を出さなければいけないんじゃないか。中共貿易の停止はこれを打開することは簡単にできるものだとは私は思っておりません。今の岸内閣方針ではとてもできない。この基本的な問題について一番障害になっているのは何であるかということを、私は、この際、大臣はどういうように考えているかということについて聞きたいのですが、一つ大臣の明快な御答弁を承わりたい。
  16. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく、この中共貿易につきましては、過去におきまして、すでに輸出だけで六千万ドルに達しております。本年は一億ドルやりたい。これはうまくいけば一億五千万ドルくらいいくだろうという初めの考えだったのです。ということは、一カ月にやはり一千万ドル以上の輸出をしたわけであります。こういう意味から申しまして、中共貿易日本輸出貿易に対する重要なウェートであるということは、私ははっきり認めております。また、一部分の意見では、この貿易途絶によって困るのは中共であるというふうなことを考え考え方が流行しておるようでありますけれども、これは間違いだと思います。中共日本貿易をしなくても困らない。また日本から輸出するというようなものはほかからも買えるわけです。中共も多少は問題になりましょうが、日本ほど困らないだろうと私は思っております。むしろ日本の方が輸出を早くやりたい。ということは、経済的に考えて、特に私は通産大臣としてこの問題は強く打ち出したいと考えておるわけなんでございますけれども、事いやしくも外交に関する問題でございますから、これは、私は、私の意見として、閣議なり、あるいは総理なり、あるいは外務大臣に自由に申しますが、この席上で私の意見を発表せよということは、これだけはごかんべん願いたい。海外の問題でありますから、この問題は外務大臣がこれをしんしゃくして、日本立場から考えて、いい方向に持っていくということもおありだろうと思いますから、私個人の意見をここで申し上げるということは、一つごかんべん願いたいと存じます。
  17. 石野久男

    石野委員 私は、この際、委員長に、この席で、できるだけ一つ外務大臣においで願うようにお願いしておきます。  本日の新聞によりますと、中共との貿易の問題につきまして、東方貿易は、塘沽港へ持っていった品物を、そこへ荷揚げもできないで、逆送されてきているという事態になってきております。中共日本との間の貿易問題は、事ほどさほどに深刻な問題になってきておりまして、おそらくこれはもう希望やなんかだけではだめだ。ここで積極的に一つ方途を見出さないと、全面的に途絶するという形になってきているというふうに思います。この際外務大臣所見もありましょうけれども、あなたも、やはり岸内閣の一員として、外務大臣としての責任だけでなく、あなた自身の責任もあるわけです。私はあなたの所見の発表は非常にむずかしかろうと思いますが、しかし、ここでただいま提案になっております本案を審議しようとしますると、どうしても輸出入の問題に関連してくるわけです。輸出入計画がどういうふうになるか、貿易の基盤がどういうふうになっていくかということを真剣に考えなければ、実際問題として本法案を審議することができないのです。そういう意味での貿易見通し、特に今アメリカ中心とする日本貿易が非常なアンバランスの中にあるという実態、こういうところから、日本貿易を拡大するという方途をどういうふうに見出すかということは、肝要な問題だと考えております。従って、私は、外務大臣の範囲に属することはともかくとして、あなた自身が、実務の上からいっても、またこういうようになってきているところの全面的の途絶の状態に対して、打開する考え方があるのかどうかという問題についての所見ぐらいはお開きできるだろうと思いますが、その点について一つあなたの御所見を伺いたい。
  18. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく、これは、議論をしておるときではなくて、一日も早く実行に移さなければならぬことだと存じております。今の塘沽における陸揚げの問題はもちろんのこと、現在すでに見本品として持っていっておりました品物が、まだあそこに停滞しておるというふうなわけでございますから、これは一日も早く実行いたしたいという所存はちっとも変りありません。ただ、方法につきましては、ただいま申しましたごとく、これは外務大臣考えてもらうということより方法はないと思っております。
  19. 石野久男

    石野委員 特に通産業務の担当大臣であり、輸出入に関しては直接その責任をとっておられる高碕大臣が、外務大臣意見に従うのだということだけで、いわゆる貿易の実態に対する責任をとれるだろうかどうであろうか。むしろ、この際、外務大臣はどうあろうとも、この国が生きていかなくちゃいけない、日本国が生きていかなくちゃならないという所見の上に立てば、あなた自身に一つの決意がなければならない。もしあなたにその決意がないとするならば、内閣から引くべきです。そのくらいの決意がなくて、どうして国民の信頼を得ることができるでしょうか。私たちが今日このような苦しみを受けているのは、一にかかってやはり対外貿易が伸びないということなのです。しかも、貿易の伸びが悪いということは、世界でもその類例のないほど非常に悪く、下位にあるわけなのです。そういうときに、その担当の大臣外務大臣にお預けをしてしまったのでは、あなたの仕事はなくなっちまうじゃないですか。それを打開しなければ、大臣としての仕事はないじゃないですか。それでもまだ外務大臣にお預けしておくんですか。それともほかに何か方法があるんですか。
  20. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 輸出費易の振興につきまして、通産大臣としての責任は十分感じております。これを実行するように早くしなければならぬということは感じております。これを実行に移ための方法といたしましては、私の意見は私の意見として外務大臣によく申し上げます。そうして閣内の思想を統一いたしまして、その方法をきめるわけでございますが、今私がここでこういの方法であるとか、ああいう方法であるとかいう自分の具体案を持ち出すことは、ごかんべん願いたいと存じます。
  21. 石野久男

    石野委員 私がきょう質問をしておりますのは、実際は、やはり関係諸大臣が一緒においでになって、その席上で実は質問したかった。しかし、委員長の切なる願いがありまして、私は通産大臣に対する質問をしているわけなんです。しかし、これを大臣がもう私の答えの範囲外だということになってしまうと、実際問題として質問はできないのです。通産大臣はその責任をとり得るような答弁ができるという自信を持ってここへお立ちになっておると思うので、質問しているわけです。もしできないなら、これはやはり関係の方がおいでになるまで委員会をちょっと休んでもらいたいのですが、委員長どうでしょうか。外務大臣大蔵大臣を呼んで下さい。
  22. 早川崇

    早川委員長 石野君、中共貿易以外のことで通産大臣に御質問がございますか。
  23. 石野久男

    石野委員 私は別にほかの大臣が来なくても質問をするという意味じゃなしに、今高碕大臣中共の問題については答弁が自分では勝手にできないと言われた。ただ、しかし、私たちの今聞いておるのは、全般としての貿易をどういうふうにしてバランスをとらせ、より伸張させるかという立場で私は聞いておるわけです。その中で、それでは中共のほかに伸ばし得る市場というものをどういうように見ておるか。それで、特にあなたは、先ほど、三十一億五十万ドルの貿易は達成できる見通しだ、こう言われたが、そういう見通しをどこで立てておられるのか、その点をまずほかの大臣が来られるまでに聞いておきましょう。
  24. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 少くとも、私は三十一億五千万ドルという目標は現在は変える時期ではない、この目標に向って努力すべきだ、こう存じておりますが、必ず三十一億五千万ドルを達成するというふうなことは私は言明できません。
  25. 石野久男

    石野委員 必ず達成できるとは言明できないということを言われたのだが、それは、あなたの方で自信がなければ——大体一般には、とても三十一億なんかはできない、もう三十億台を割るだろうという見通しが常識なんです。だから何も大臣にそんなことを聞く必要はないのですから、私はこの際一つ他の大臣が来るまでやはりちょっと待ってもらいたい。     〔「休憩心々」と呼び、その他発言する者あり〕
  26. 早川崇

    早川委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。     午前十一時四十九分休憩      ————◇—————     午後一時四十一分開議
  27. 早川崇

    早川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石野久男君。
  28. 石野久男

    石野委員 佐藤大蔵大臣にお尋ねしますが、経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案の提案の説明の際に、財政が国内経済に過度の刺激を与えることを避け、輸出の伸長に対してあらゆる努力を傾注することが要請されておる、従って、三十一年度の一般会計の決算に出た剰余金の使途については、一般の歳出財源に充てることなく、しかも今後におけるわが国の経済基盤の強化に資するために本法案を提出した、こういうふうに言われております。本法案の審議に当って私たちが一番大切に思わなければならないことは、この法案の立案された当時の第一次岸内閣見通し経済情勢、第二次岸内閣において見られる日本経済の実勢についての観点でございますが、この点について、佐藤大蔵大臣は、先般、予算委員会の席上で、大体当時の見通しとあまり違ってないのだ、こういうような趣旨の御答弁をなさっております。私どもは、三十一年度の決算に出ました余剰金を使うに当りましては、この法案がいっているような、こういう使い方をすべきでないという考え方を実は持っておるわけであります。しかし、われわれの意見は一応差し控えましても、政府がこの法案を立案されるに当って見通された経済情勢と、その上に立って本法案が予定しております資金の使い方、あるいはたな上げのやり方というものにつきましては、非常に問題があると思うのであります。私は、佐藤大蔵大臣が言われているように、経済情勢はこの法案を立案する当時と今日と変っていないという見方については、非常に違った観点を持っております。大蔵大臣情勢が変ってないのだという、その実態についていま少し見解をお聞かせ願いたい。大蔵大臣が言われるいわゆる経済の正常化という問題についても、またどういう観点から日本経済の正常化というものを見ておるのか、その内容についてもこの際お聞かせ願いたいと思います。
  29. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  ただいまの石野さんの御主張とまた私のかねてから申しております点との相違については、違っておる点を明確にされておられますが、御指摘の通りのような相違があるのでございます。私どもは今日経済基盤強化法律案を提案いたしまして御審議を願っておりますが、この法律案は、ただいまお話しになりましたように、もともと十三三年度予算編成の際にその一環の法律案として御審議を願っていたもので、その当時この法律案が成立を見ましたならば、おそらくただいまのような御疑問も生じなかったのではないかと思うのであります。問題は、予算審議の際と今日の経済基盤強化法律案審議の間相当の期間の経過があるために、いろいろの誤解を生じておるのではないかと私は考えておるのであります。私どもは今日この法律案を出して御審議願っておりますが、これは、三十三年度予算が成立いたしました際に、その一環の施策であるから、今日ぜひともこれを成立さしていただいて、そうして予算の完全実施の方向に御協力願いたい。このねらいが一つあります。と同時に、この三十三年度予算案の御審議を願った際に想定した経済の動向というものと、今日当面しておる経済の動向、趨勢がっ違っておるからという点でありますが、これは、ただいま御指摘になった通り、私どもはその情勢は予想した通りのものがある、こういう感じがいたしておるのであります。どういう点でさようなことが言われるか。三十三年度予算編成するに当りまして、一面で緊急対策をとると同時に、経済の面で本年度に入りまして必ず重圧の状況が出てくるだろう、その出てくる面が、たとえば中小企業の面であるとか、あるいは農林漁業の面であるとか、それがまた失業者という形において必ず出てくるだろう、いわゆる社会面における摩擦というものが必ず生じてくるだろう、その場合に、この予算に対しましては、そういう想定のできる事態に対しての対策を立てる、従いまして、失業対策に対しても、従前に見ないような金額の増加を見たり、あるいは中小企業対策についても金融のワクを拡大するような方法をとったり、あるいはまた、資金の運用の面についても、金利等においても考えていかなければならぬだろうという意味から、いわゆる信用供与の措置を講じていくとか、あるいは農林漁業の面におきましては、三十三年度予算では初めて一千億をこす一千八億という膨大な農林予算を計上いたしたのでございますが、これなども、金額増加というだけではなく、特に増加項目、特に百十七億ですかふえたと思いますが、ふえた面においては、いわゆる営農であるとかあるいは価格安定であるとか、こういうような項目の予算をふやして、必ず三十三年度において予算を実行するに当って当面する経済、その変動に対応するような予算を計上して参っておるのであります。これらの点はこの予算編成の際に予測した状況でございまして、ただいまの中小企業に対する圧迫であるとか、あるいは失業者の数が非常にふえておるとか、こういうような観測もありますが、私どもは、三十三年度予算成立に立っては、こういうような経済情勢向うだろうということを実は考えて参っておるのであります。同時に、この経済を脱却するためには、何と申しましても国際収支の制限を受けるんだ、この意味において国際収支黒字に向けていかなければならぬ。これは幸いにして昨年来の緊急対策の措置が黒字の方向に向ってきた。大体上半期においては一億五千万ドル程度の黒字向うだろうということがいわれておる。あるいは輸出振興の観点なり経済の正常化という観点に立ちまして、緊急措置としてとりました公定歩合の引き下げをまず手始めに実施した、こういう状況に置かれておるのであります。  そこで、それならば、もうすでにこれから経済を上向きさすことができるのだ、その方向においてもう少し支柱になるような財政施策をしたらどうだ、これが予算委員会を通じての社会党諸君の御主張であったと思いますが、私どもは、今緊急措置としてとったことが一応ある程度の成績はおさめてきた。私どもが予想したような効果は上げてはおりますが、何と申しましても経済の鋭敏なこの働きから見まして、今日積極的な財政政策をとって経済に対する上向きのような支柱を与えるということ、これこそはあるいは国内需要を喚起するという面においての効果はあろうかと思いますが、経済の実態から申せば、やはり国際経済の一環としてわが国経済もあるわけでございますので、こういう一時的な便法は避けたい。そういう意味で、今日は、この三十三年度予算編成の際に御審議を願いました経済基盤強化法律案、これの御審議をいただいて、そしてまずこれを成立をしておいて、今後生ずるであろう情勢に対応してこれを使い得るような措置を一つやらしていただきたい、これが今日この法律案を出しておるゆえんであります。この点は今まで詳しく御説明を申し上げて参っております。  問題は、この予算編成の際と、今日おくれてこの法律案を審議するその期間のギャップによって、経済的な情勢が非常な変化があるのか、こういうお尋ねだと思いますが、私どもは、大した変りはないということ、大体想定したような状況のもとに置かれている、今後の経済の動向なり、また経済を発展さすという意味においてやはり資金の確保もしたい、文字だけでなくて、真に経済基盤強化資金として、今日国会の承認を得たい、こういう考え方をいたしておるのであります。いかにも私どもが財政政策の面で支柱になるようなことを絶対に反対しておるかのように解されまして、次々のお尋ねをいただいておりますが、私ども必ずしも財政政策の面においての積極的な考え方を全面的に反対し、否定しておるものではございません。ございませんが、積極的な措置をとるには、その時期的な問題がある。その時期的な問題から申しますと、今日はさような積極的財政政策をとるべきではない。今公定歩合の引き下げを実施したばかりでございますから、いましばらく模様を見て、そして経済情勢の今後の動向に対処していきたい、かような考え方をいたしておるのでございます。
  30. 石野久男

    石野委員 佐藤大蔵大臣の御意見は、大体予算編成当時見通された経済情勢と今日の情勢とはあまり変っていない、こういう御意見のようでございます。予算編成の当時、内閣経済情勢に対する見通しを立てて、三十三年度予算にはその見通しに基く目一ぱいの予算を組んだものと思いますが、そういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  31. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 当時の情勢考えまして、そでに対応する予算を組んだ。これはもちろん財政の面から許される予算を組んだという状態でございます。
  32. 石野久男

    石野委員 予算の中には、そういう情勢を見込んで、ほとんど余すところなく予算を組んだものという御答弁でございますが、それであるならば、各般の問題についていろいろお尋ねすることはたくさんありますが、たとえば、失業の問題一つを取り上げましても、予算の中で組まれておるところの失業対策の費用は、二十二万五千人に対して二万五千人をふやすだけの、そういう失業委対策の予算を組んでいるわけであります。当時の見通される失業者というものは、皆さんが言われておるところでは五、六十万、こういうように言っておりましたが、その後の失業者は非常にふえております。三月の失業者はすでに八十万をこえております。その後若干の減りはありましても、相当やはり失業者は町にたくさんあるわけであります。こういう事情は、当時の政府が見通されたものとは、だいぶん情勢が変っておるわけであります。中小企業者の倒産は、事態も非常に違っておりまする、今おそらく当時見通された以上のものがあると思います。また、外貨の収支の問題につきましても、当時予算編成方針を出されたり、あるいは予算編成に対する基本構想を述べられたときの情勢から見ますと、三十三年度において、最初は七千五百万ドルとかいろいろ言っておりましたが、あとのころには一億五千万ドル、こう言われておる。しかし、今の情勢から見ると、大体本年度は二億五千万ドルの黒字を出すだろうというようなことも通産大臣は先般言っておりました。こういう情勢も非常に違っておるわけです。しかも外貨収支の問題に関連しての国際収支は確かによくなっておるが、しかし、一方において、外貨収支がよくなっておる反面、大蔵省が発行しておる信用状は決してよくなっておりません。これは累月予定よりも下っておるわけでございます。そういうような事情を見通されますと、大蔵大臣の言われる見通しに変りはなかったということは、ただ言葉の上では非常に強いのでありますが、経済の実勢から言いますと、決してそうではないという事実があるわけでございます。こういう事実に目をおおって、なお当時の見通しに対して予測した姿とあまり隔たっていないんだという見方は甘いのではないか、こういうふうに考えます。そういう点について大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  33. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いま一つは、貿易の面から申しますと、国際収支黒字に転向したことだけは、これは数字の上ではっきり示しておりますから、別に御説明申し上げる必要はないだろうと思います。昨年の九月以降大体三千万ドル、場合によっては四千万ドル近い黒字を出しておる。また本年度になりましてから同様の傾向をたどっております。ただ、心配なのは、貿易の規模が当時予想したほどの目標を達成するのにはなかなか困難ではないかということが今日いわれておる。国際収支状況は、バランスはただいま申すように黒字になってきております。しかし貿易自体はなかなか思うような計画が達成されておらないのではないか。その点では貿易は縮小の傾向をたどっているのではないか。ここに一つの問題があることはもちろんでございます。しかし、何と申しましても国際収支状況黒字に転向してきた、この点は日本経済としては強味といわなければならない。通産大臣は、三億にもなるのじゃないかというようなことを一部の人が言っておるというお話をしておられるので、通産大臣所見というのには、これは言い過ぎると思います。私ども経済を担当する面からどうしても今後努力を要するものは、貿易を計画の線に近づけていく。輸出において三十一億五千万ドル、輸入において三十二億ドルというもの、この目標達成にあらゆる努力を注いで参りたい、これが私どもの念願であることには間違いはございません。これは少し弁解がましくなるかもしれませんが、この機会に御理解をいただきたいのは、この貿易額がなるほど初期の三十二億ドルの輸入あるいは三十一億五千万ドルの輸出に達しないと申しましても、数量的には私どもが想定しておる数量にほぼ近い。金額の面においてはそこに上っておらないというのは、最近世界共通に物価が下った。その結果から貿易目標の金額に合っておらない。この点では金額は減ってきておるけれども数量は大体予想したように、減っておらない。この一事を特に御理解をいただきたいのであります。  さらに、ただいま引用なさいました失業対策の問題でございますが、失業の直接対策費としての失対事業費といたしましては、これは二万五千人分をふやしたということをもうすでに申し上げております。あるいはまた公共事業費自身が、前年に比べて相当多額のものが計上され実施されておるということ、これなどは、明らかに、一般経済から生ずる失業に対してもそういう面で吸収するということを一応想定したものであることは、申すまでもないのであります。同時に、ただいま問題になりました完全失業者の数の予算でありますが、当時三十三年度予算編成の際におきましては、完全失業者予算は六十五万人を想定してこの予算を組んでおる。ただいま御指摘になりましたように、完全失業者がふえた、かようには申されますが、四月の実績は、まだ予算編成のときに想定した数字よりも下回って五十五万人程度でございます。ただ、この失業者の問題は、私ども非常に気をつけなければならないのは、経済の動向とは少しおくれてその失業の重圧が加わってきておる。だから、経済不況に進む場合でも、なかなか失業者がふえないということがある。しかし、ある程度今度は経済そのものとしては上向きの気配を示しておるが、そういう時期に失業者が出てくる。この時期のズレのあること、これに対しましては私どもとしては十分注意して参る考え方でございます。これはただいま一例を申し上げたのですが、大体三十三年度に想定した数字、それから御判断願いましても、あまりかけ離れた数字ではないということが御理解いただけるかと思います。
  34. 石野久男

    石野委員 国際収支が改善されてきておるということは事実であります。ただ、しかし、その中で数量は減っていないのだ、金額は減っているが、大体予定通りいっておるのだというようなことでは、それは国際収支の上では答弁にならないと思うのです、当時、私たちの見通しでは、世界不況は非常に深刻になってくるという見方をしておった。その当時の一萬田大蔵大臣は、そういう中においても日本経済は行き過ぎである、だからそれをためる時期であるのだ、そんなに不況の段階まで入っていないじゃないかということを強く言われておったのです。世界不況状態に対してあまり考慮を払っていなかった。だから、大蔵大臣は、四、五、六、七月は地ならしをやって、八月からはアメリカ景気の上向きと同時に日本景気も上向いてくるのだという見方をしておられた。しかしそれはあまりにも間違っておった。こういうような考え方の基底に立ってものことを考えて参りましたから——われわれの考えておるように、輸出物資あるいは輸入物資にしましても同じですが、世界的な物価の低落というものは、当然、情勢の読み方からすれば、実際問題として読んでいなければならないと思うのです。ところが政府では読んでいなかった。そういうところに政府の誤まりが予算編成の当時にすでにあったということを考えなければいけないと思います。だから、今大蔵大臣数量が伸びておるということだけでそれを言われるのであるならば、なぜその当時三十一億五千万ドルというようないわゆる貿易の規模というものを考えたか。そうして、物価の低落を考えて、なぜもう少し金額の面で下げなかったか。そういうところに政府見通しの中での不安定さがあったのであり、正確な見通しがなかったということが言えるのであって、決してこれは大臣の答弁のようにわれわれは受け取ることができないのです。いずれにしましても、現在の規模というものは、大蔵大臣が言われるように、そういうふうにのんびり考える時期ではない。むしろわれわれが予想した情勢よりももっと悪い事態になっておるし、それらの問題は、いろいろ工業生産の指数の問題やあるいはまた受注量の問題、現に事業家が持っておる受注量がどういうふうになっておるか、受注残がどういうふうになっておるか、あるいは在庫指数がどういうふうに減っておるか、どういうふうであるかという問題、需要をどのように関知されておるか、またその中で失業者がどういうふうになっていくかというような問題との関連の中で答弁をいただかなければ、私は簡単に今大蔵大臣の言われるようなことで納得することができないのです。事実問題としまして、在庫指数は、若干原材料において減っております。けれども製品在庫はものすごくふえておるのです。これは指数によって見ればよくわかるはずです。そういうような事態は、ただ在庫指数を原材料から製品在庫へ置きかえただけである、これをどのようにこなすかということは需要の問題になってくる、そういうような問題の見通しの上に立って、果して、今大蔵大臣の言われるように、日本経済が一応やはり皆さんの見通されたようになっておるのかどうかという点について、いま一度明確な御答弁をしただきたい。
  35. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今日の経済が絶対に楽な経済だとか、あるいは将来先行き非常に明るいとか、こういうことを申し上げる段階ではもちろんないと思います。けれども、一面において非常な悲観すべき状況だ、さらに経済に二重底があって、第一段の底がついたが、もう一つの底に行くのではないか。それほど悲観する状態でも実はないと思う。経済で楽観することも禁物ですが、非常な悲観をすることも非常に禁物なんです。問題は国内経済が上昇するという非常な強気を示しておるが、そこにまた非常な弱含みがあるから、そこでそのときどきにとっていく政策も変ってくるのだ、これだけはもちろん私ども考えていい点です。どこまでも消極政策をとるのだ、あるいは積極政策をとるのだ、こういうことは実は申し上げておるわけじゃありません。私が申し上げておりますのは、昨年一応想定した経済の縮小と申しますか、あるいは非常な苦しい状況が現出するだろう、そういう事態がとにかく今日出てきておる。こういう事態については予測のできた事柄であり、予算編成の際にも、そういうものに対する対策は一応盛られております。今日当面しておる経済が、当時の状況と非常な格段の相違があって、何らかの措置をとらなければならないものが次々と起るか、こういうように考えますと、実はそうは思わない。いましばらく模様を見たい。一つの例で、私どもが予想しないような事態が起きたのが最近の繭糸価の問題だと思いますが、こういうような事態が起れば、それに対しては当然対策を立てていかなければならぬ。あるいは災害につきましても、予測しないような事態に対しては、もちろん対策は立てる。しかし、どこまでも楽観しておるわけじゃございません。また何もしないというわけじゃございません。その点を重ねて御説明申し上げます。
  36. 石野久男

    石野委員 私はお尋ねしますが、それならば、これから見通される本年度内におけるところの、いわゆる需給の関係についてでありますが、需給関係でどういうふうに本年の経済をこなしていくという見通しを立てておられるか。供給過剰の事態はもう明らかに日本経済をおおっていると思うのです。これをどういう形で需要面を喚起していくかという点について、相当政府としては考えなければならないのじゃないかと思いますが、そういう点について三木さんはどういうふうに考えておりますか。
  37. 三木武夫

    ○三木国務大臣 政府は、なべ底である、こういう見解を持っておる。その根拠になるものは、製品在庫のごときは毎月相当な減少を見せておる。たとえば製造業における製品在庫を三月、四月を比較して見ても、昭和三十年を一〇〇とした統計でありますが、一六一が一四六・一、こういうことで、一〇%程度の在庫の減少というものがある。一方において有効需要というものが減少しておるかというと、御承知のように消費水準は強含みの横ばいである。また設備投資の面においても、これは将来においては問題があると認めます。しかし、大体一二%程度は継続工事であって、継続工事は御承知のように新規事業のような景気の変動による影響が少い。こういうことで、大体設備投資も横ばいである。こういう点で有効需要が減少したという傾向はない。有効需要というものは減少はしておらない。そこで、製品在庫というものがそれだけ毎月減少していく傾向というものは、生産調整というものが一面において行われておる。今ここに有効需要が一〇〇とすれば、九五というものが生産、あとの五というものはやはり製品在庫を整理しておる段階である。そこで、その在庫というものが企業によって違うのでありますが、通産省とも連絡をとって、各産業における状態を、なかなかむずかしい調査でありますが、調査をしておるのであります。それによると、七月ごろ、あるいは九月ごろにかかることもあるが、大体需要と一つの生産というものとが、そういうころになってくると見合ってくる。しかも、下半期になってくると、輸出の面でも大体年々下半期の方が上半期に比べてふえていく傾向があり、国民の消費もやはり下半期になっていくと年々統計上もふえる傾向がある。財政の面においても、いろいろな公共事業的なものは、その財政支出もやはり下半期になっていく傾向が多い。こういうふうなプラスの、これから有効需要というものをある程度増していく条件というものも下半期にはある。ここで生産の調整が終り、在庫が適正の在庫に整理された後においては、やはり日本経済の、そのなべ底がある程度少し上向いてくるような傾向が出てくる、こういうふうに大きく日本経済の動向を推定しておるわけでありますが、ただ、われわれは、日本景気が上向いていくということで、秋口になればよくなるというふうな、そういう非常な楽観論をしておるものではないのです。その間には、輸出の増進などに対しては相当積極的な努力もしなければならぬし、また必要があれば、いろいろ——たな上げ資金だって永久にたな上げするという性質のものではない。やはりこういう財政資金ども弾力的な運営をすることが、たな上げをしておる目的でありますから、景気の動向に対してただ自然にほうっておくというのではなくして、政府はこの動向に対して機動的な措置をしなければならぬ。そういうことを前提に置いて、日本経済というものは、次第心々に景気が悪化して、底知れぬなべ底であるというふうには政府は見ていないのだ、これが大体の景気に対する政府見通しであります。
  38. 石野久男

    石野委員 有効需要はまだそう減退していないし、それでなべ底もそんなに底は深くない、大体上向いていくだろうというような御見解でありますが、昨年来といいますか、この数年来日本経済が異常な膨張をしまして、その間非常な大きな設備投資が行われておる。その設備投資から出てくる生産力というものは、おそらく想像以上に大きいものだろうと思います。今三木さんあるいは佐藤さんから言われましたような、そういう情勢での上向きの態勢ができるころには、それではこの生産設備というものは大体どの程度の操業度を持つ段階で、そういう想定ができるのでしょうか。
  39. 三木武夫

    ○三木国務大臣 予算総会でも操業度のことでいろいろ御質問があったのですが、私も企画庁へ行ってみて、実際の産業面における統計というものは、もう少しやはり統計を充実したいと今思っておるわけです。そこで、今の過剰設備と言われますけれども、電力とか石炭、鉄鋼、海運、こういう基礎部門については、これはやはり日本経済というものは絶えず人口の圧力を持っておるのですから、拡大の方向に行かなければ、これだけの人口の圧力を持った国として経済の安定をはかることはできないのですから、やはり縮少均衡という形では日本の問題の解決にならない。やはり一つの拡大する方向である。それに対して一つのバランスのとれた成長をするというところに、これからの日本経済政策一つ目標があろうと思うのです。そういう点から見て、基礎的な部門、そればかりじゃなくして、道路とか港湾とか、生産の一つの基盤になるような点については、これはよほどまだ基礎的な産業の基盤をなすような問題に対して、新しい五カ年計画のもとにおいては、ますます拡充整備していかなければならぬものがある。また、新規の産業についてはり、これは今はいろいろ問題もございましょうけれども、将来の世界の動向などを見て——現在の考え方ばかりでもいけない。将来の世界の産業の動向等も見て、これは考えていかなければならぬ面もある。ただ、御指摘のような、過剰設備といわれるようなものが繊維などには確かにあることは事実です。こういうものに対しては、やはり老朽設備と新規の設備とを取りかえていく。日本が新しい設備をしても、老朽設備がそのまま残っておるというところに、私は問題点があると思う。そういうことになってくると、国際競争力も落ちて参りますしこれをどういう形で政府がそういう指導をしていくかということは、通産省で考えなければならぬでしょうが、とにかく新しいいろいろな設備が古い設備に置きかえられていくということでなければ、古い設備をそのまま存置しておいて、次々に設備を拡大していくということであっては、なかなか過剰設備の問題は解決できない。だから、そういうふうな明らかに過剰設備であるというものに対しては、老朽施設を取りかえていくという産業行政が行われなければならぬ。こういう見地に立って考えたときに、日本の現在は非常に救いがたい過剰設備であるとはわれわれは考えていない。ものによってはそういうものはある。それは老朽施設をかえていくべきであって、まだ伸ばさなければならない部門もあるし、全体を過剰設備であるということで、過剰設備の恐慌が起るというような、そう石野君のように日本の産業の将来を悲観的には見ていないのです。
  40. 石野久男

    石野委員 三木さんがそう言われると、非常によく理を尽しているようですが、大体私たちの見ておるところでは、本年度持っておる購買力の上局でございますが、これは大体財政面から中央、地方を通じて千五百億くらい出てくるだろう。輸出の面で当初、その後ずっと幾らか違いが出てきても、七百億くらい出てくるのではないか。ことしは設備があまり出ないから、それらのものを含めてみても大体二千二百億くらいのものが出てくる、こういう見方をしっておるわけであります。これは、所得効果を考えてみても、大体二千五百億くらいになるのじゃなかろうか、こういう見方をしております。ところが、設備の方では、昨年度から今年へかけましてのものを見ますると、大体一兆六千億くらいのものが設備の供給能力として出てくるのではなかろうか、こういうように見ている。今言われるように、老朽設備を更改することを考えてみても、大体二、三千億程度じゃなかろうか、こういうふうに考えますと、供給力は一兆三千億ないしは四千億程度のものになるのじゃなかろうか。従って、需給の関係からいうと、約一兆程度の不足が出てくるのだというような計算まで持っております。しかし、こういう見方が間違っているのかどうか、政府の方ではどういうふうに考えておりますか。
  41. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いろいろこまかい数字は政府委員から答弁をさせますが、大体、われわれの考え方としては、相当輸出の規模もあまり大きく——あらゆる場合を考えなければならぬから、そう大きく見ないが、あなたが計算されるような、そういうふうな供給過剰とは考えていない。こまかい数字は政府委員から説明させます。やはり私はこういうふうに考えるのでありますが、日本の場合は、いろいろ石野君も責められますが、日本くらい世界景気の影響を受ける国は非常に珍しい。こういうことで、第一輸出の増進といったところで、これはやはりアメリカ景気あるいはその他欧州、東南アジア等景気にも影響するわけでありますが、そういう点で、今後輸出の問題にいたしましても、最近アメリカからIMFの連中が来て、私も会ったことがあるのですが、今のような傾向でいくならば、世界貿易というものは縮小均衡の形になっていかざるを得ない。     〔委員長退席、足立委員長代理着席〕 そこで、私が連中に言ったことは、もう少し貿易を拡大するために、アメリカの新聞紙上などにおいては、IMFの増資であるとか、あるいはまた第二の世界銀行の設置の案であるとか、こういうふうな案が報ぜられておるが、われわれは非常にけっこうなことだと思う。日本輸出考えてみても、東南アジアは全く輸入力を失っておるし、アメリカもヨーロッパも景気が停滞する、そうしてみんな国際収支中心になってきた、こういう形でいけば、非常な縮小均衡という時代に入ってきて、これは自由世界全体のためにも好ましい傾向であるとは思わない。そこで、IMFの増資などの新聞の報道というものは、非常にわれわれは歓迎するんだ、そういうことで、短期の貿易資金というものが、これが今度のIMFの資金の増資などによって、そういう決済の方法というものの道が見出され、そうして貿易が拡大され、また後進国にひものつかない——いろいろ軍事的なひものつくことはいやがるんですから、第二世界銀行のようなことで、コマーシャル・ベースでない後進国開発資金を出して、そうして後進国の経済水準を高めていくという案が出ることを非常に期待するということを言ったんですが、そういう点で、経済外交という面においても、政府は特に力を入れていかなければいかぬのですが、単に現在の状態、現在の数字だけでなしに、そういう世界経済に対しても日本日本としての影響力もあるわけでありますから、そういうことで日本経済世界とともに拡大していくという政策も伴われなければならない。現在の数字だけでやっていきますと、日本の将来の景気というものに対して悲観論の出ることもやむを得ない、そういうことも考えておるのであります。数字については政府委員の方から答弁をさせます。
  42. 大堀弘

    ○大堀政府委員 ただいまの大臣の御説明に補足して数字的に申し上げたいと思いますが、民間の資本形成につきましては、設備投資が昨年、三十二年度が一兆五千八百億、私ども経済計画におきましては、本年度、三十三年度は三十二年度に比べまして当初から二千億程度低いところにいくだろう、こういうふうに見ております。ただし、その程度の設備投資は行われるのじゃないか。現在通産省の産業合理化審議会等におきまして検討しておりますのを見ましても、またわれわれの投資予測によりましても、かなりまだ本年は高い水準にいっておりまして、その程度の計画の達成といいますか、これだけの設備投資は行われるであろうと考えております。  なお、消費の面につきましては、当初の計画で約三千億程度本年は昨年に比べてふえるだろう。五%の増で、かなり低く見ております。が、最近までの消費の水準の状況を見ますると、大体これよりも強いような数字が出ております。消費の増加につきましては当初の期待程度までいくんじゃないか、かように考えられます。その他先生御指摘の通りでございまして、全体といたしましては、最終の有効需要については大きな食い違いはない、かように考えております。
  43. 石野久男

    石野委員 大きな食い違いはないということは、需給はバランスがとれるというのですか。
  44. 大堀弘

    ○大堀政府委員 最終の有効需要についてはバランスがとれると考えます。
  45. 石野久男

    石野委員 大臣にお尋ねしますが、大体有効需要がそういう形でバランスがとれるということになると、そういう形から考える限りにおいては、経済は大体ノーマルな形に乗っかってくる、経済は正常化するということになるだろうと思うのですが、政府は大体そういうように考えておるのですか。
  46. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今申したように、一つ経済の行き過ぎたことに対するアジャストメントは一応終ってくる、そういう形でノーマルだと言うならばノーマルだと言えましょうが、日本経済は御承知のようにやはりこれだけの人口の圧力があるのですから、健全な発展をしていかなければならぬ。そういうためには、輸出の動向などというものは、日本経済の成長率の上において非常に大きな影響力がありますから、ノーマルということは、行き過ぎたものが一応正常な形に返るということでは、ノーマルと言いたい。しかし、さらに発展する要請を持っておる日本経済として、これでいいのだとは私は思っていない。あらゆる努力は傾けなければならない、こう考えております。
  47. 石野久男

    石野委員 数字の点にあまりこだわっていると時間をとってしまいますから、あまり論じませんが、今のような話であると、もう政策はそんなに必要がない。それでもうけっこう経済界は常態化して、操業も一〇〇%近くまでやれるという形が出るわけです。しかし、経済の実勢というものはそうでないので、今の数字は、私から言わせれば、これは非常にごまかしだ、こう言わざるを得ないのです。いずれにしても、先ほど三木長官から言われたように、日本経済世界経済の影響を非常に強く受ける。輸出入の問題、特に輸出の問題については問題点が多いと思うのです。そこで、そういう観点に立って、それじゃ輸出増強というものを見通される限りにおいて、どういうような増強策があるかという点についての企画庁長官の御意見一つ伺いたい。
  48. 三木武夫

    ○三木国務大臣 特別輸出に対して奇抜なことを考えておるわけではないのですが、今まで専門家が寄って、こうすれば輸出の増進策になるという結論は出ておるわけです。これをわれわれは実行していきたい。これはいろいろ知恵をしぼったところで、特効薬のようなことはないのですが、輸出は総合対策でしょう。そこで、輸出の増進になるようなことは、可能なことは思い切ってやっていきたい。今まで出ておるいろいろな案があるわけです。それとまた、一方においてはやはりある程度のプラント輸出ども考えるべきでしょう。この延べ払いの条件において、これも程度の問題でありますから、黒字があるからといって、その黒字を全部食いつぶしていくようなことはできないにしても、単にコマーシャル・べースということでなくして、東南アジア経済開発というものに日本が協力するということは、やはりアジアとの経済協力というものを非常に大きな国策の方向としておる政府としては、当然なことである。それから、今度ジェトロ等も強化して、ああいう海外における一つ市場調査あるいは見本市等における商品の宣伝、そういう点で、今までいわれておることでも一そう拡大しなければ日本経済の健全な発展はないのだということで、一段とみながその気になってやれば、奇想天外なことをしなくても、やはり輸出の増進というものははかられるような面があるのではないか。ことに、経済外交の面についても、これはどういうことになりますか、まださしずめどうということはないのだけれどもアメリカなどに対して一番影響力が多いのでありますから、今言ったIMFとか、第二世界銀行とか、あるいは輸入制限の問題とか、こういう面でもやはり話し合う問題点は多いと思います。こういう外交、海外における調査、宣伝、国内における輸出の増進に対しての民間の協力、こういうものを通じて輸出の増進をはかる、方向としてはそういうことを考えておるということです。
  49. 石野久男

    石野委員 輸出増強をはかる方法としてはいろいろいわれておりまするが、しかし実際面においてはなかなかそうはいかない。先ほども言いましたように、外貨の収支経過は非常によくなっておるけれども、これは輸入が少くて黒字か出ておるのであって、やはり信用状の問題からいえば非常に萎縮形態になっておるわけです。そういう状態の中で三十一億五千万ドルの輸出をはかろうとしますると、非常な努力をしなければならない。午前中に高碕通産大臣からいろいろお伺いしましたが、しかし、自由主義諸国におけるところの貿易の量あるいは全体の姿から見ますと、早急にそういうようなめどが立ちにくいということは大体わかっているのです。そして、この際、当然市場転換というようなものが出てくるわけであって、その間、共産圏貿易などは非常に大きなファクターとして出てきていることも、高碕通産大臣は言われております。そういう問題にわれわれかもっと積極的にならない限り、日本貿易を増大させることは困難です。従って、いわゆる貿易国内需要との面を考えますと、国外に対する輸出における需要量というものは、そう急速に伸びないということが現実の姿であるし、三木さん自身世界経済は縮小形態に入っていくだろうということも言われている通りなのです。そういう事情の中で当然問題になってくるのは、国内需要の問題になってくると思います。国内需要の面では、今の政府政策では、そう簡単に需要の喚起というものは出てこないのではないか。私はやはりこの際需要喚起をするための施策をとらなければいけないのではないかと考える。先ほど、大蔵大臣通産大臣も、たとえば、ただいま問題になっている経済基盤強化のためのたな上げ資金については、いつまでもそうしておくのではないのだ、これはやはり取りくずす時期が来ればやるのだと言われる。しかし、この取りくずす時期というものは、おそらく二年先、三年先ではなかろうと思います。これは早晩、少くとも本年くらいにそれをやらなければならぬ事態に逼迫しているのではなかろうかと思います。そういう点については、大臣はどういうふうにお考えですか。
  50. 三木武夫

    ○三木国務大臣 お説の通りだと思います。こういうたな上げ資金というものは、いつまでもたな上げしておくのなら意味のないことで、やはり、ある程度の、今申し上げたような道路であるとか港湾であるとか、そういう基礎的な産業の基盤になるようなものは弱体である、民間産業の大きさに比べて非常にアンバランスの形になっておるから、一段と力を入れるべきであって、一面において景気の動向ともにらみ合せて、景気政策の一面も持つわけであります。また産業自身の基盤強化という意味も持つわけでありますから、そういう法案に列記されたような用途にこの金を有効に使うということは、当然のことであります。石野さんとの考えの違いは、今使えと言われるのでありますが、政府は、経済の調整の段階である現在、使うということは好ましくない。しかし何年も先までたな上げしておこうという意思はない。たな上げ資金とか、そのほかいろいろ政府としてそういう必要があったならば、政府のなし得べき最善を尽して、日本景気が非常に下降状態をたどらない経済政策をする責任を政府は持っていると思っております。
  51. 石野久男

    石野委員 問題は時期の問題だということなのです。時期の問題でも、二年先、三年先であるならば、われわれは法案として出てくる問題の中には、いろいろ考えなければならぬ問題が出てくるかもしれませんが、おそらく、考え方の違いは時期の問題だという政府の腹の中には、本年度内にこの問題に手をつけなければならぬ事態になっているのではないか、私はそう思う。それは違いますか、どうですか。
  52. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これはやはり、今申しましたように、石野さんも肯定されたように、日本景気世界景気の動向によって影響いたしますし、日本経済のアジャストメントの様子も見たいし、ここでいつかという時期は石野さんの想像におまかせして、政府の方からいつだということを申し上げることはむずかしい。この法案を御審議願っているときに、これをいつ取りくずすのだということを言えということは、質問者に多少無理があるのではないかと思います。しかし、この金は、今申しましたように、その必要があるのでありますから、われわれがそのときには臨時国会等も開いて皆さんの御承認を受けるわけでありますから、日本景気維持に対して責任を持っている政府が、適当と思われるときに臨時国会を開くことになると思うのであります。
  53. 石野久男

    石野委員 だいぶん期間が煮詰まってきておるのです。しかも、そういう煮詰まってきているような問題であれば、この際いさぎよく、わが党の出しておるように、補正予算を組むためにこの金を使うべきである。皆さんが選挙のときに国民に対して約束している中にも、あなた方が出しておるところのいわゆる自民党の選挙公約としての政策大綱の中でも、この問題には触れておられます。それを読んでみますと、これは「経済の安定的発展と景気対策」の中に出ているわけですが、「昨年度国際収支の危機は緊急政策の実施により一応克服されたと見られるので、」云々と書いて、「経済の正常化と安定的発展のため次ぎの施策を講ずる。」として、その三のところに、「経済情勢の推移に応じ、タナ上げされた経済基盤強化資金を活用して、失業対策と経済基盤の強化に努力するとともに、」こういうふうにいわれておるのです。実を言うと、この法案の中には失業対策などということは書いてないのです。しかし自民党の政策にはこの問題ははっきりうたっているわけです。しかもこれは三木さんが政調会長として書かれたものでございます。しかも、事態は、先ほど言うように、臨時国会になればこの問題を論議するであろうというところまできている。そうすると、おそらくこの法案についてはここで審議する必要はないのではないか。もっと淡々として政府考え方を述べていただきたい。こういう法案なんか作る利益というものはどこにあるんだということについて、われわれは疑わざるを得ない。なぜこういうふうな法案を出すのですか。
  54. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今読み上げられましたのは、私も政調会長として責任を持っていささかも変更しようとも思いません。これはやはりそういう考えをもって公約は貫きたい。これは公党の信義に関することであります。ただ、この中にも、よくお読みになればわかるように、これは、石野さんの言われるように、すぐに使うんだというようなことはいってない。用心深く、経済の推移に応じて、こういうことをいっておるのであります。経済の推移ということは、今申したように、こういう経済の調整期に——ここにそういう道路とか港湾というのも予算を計上されておるのでありますから、新しい有効需要を呼び起すことが社会党の諸君は適当だと言うんだが、われわれとしてはもう少しこの経済の推移を見てみたい、こういうのでありますから、非常に大きな本質的な食い違いはない。ただ、われわれとして、ある程度こういう経済の調整を終えて、日本経済がある程度アク抜きをすることが必要だ。問題を先に繰り越しては日本経済の正常な発展はないと言われるかもしれませんが、しばらくわれわれはそういう調整期間を経てから、そのときの日本経済の推移にかんがみて選挙の公約を実行したい、こういうのでございますから、選挙公約に違反しておるとは思いません。     〔足立委員長代理退席、委員長着席〕
  55. 石野久男

    石野委員 私は、この時期の問題ということについて、特に国会が問題を提起していろいろ論議をするに当っての時期というものは、大体一年間を一転の時期と考えていると思うのです。従って、政府にして正しい見通しを持ち、目を持っているならば、この一年間に起り得ることは、すでにこの際に処理しておくべきである。見通されるものがここで処理されないで、また秋のころにでも臨時国会を開けば、それだけ金を使うのですよ。われわれ国会は国民の金をむだに使うべきではない。だから、もし政府がまじめに国民にこたえようとするならば、今日見通される問題は今日論議すべきです。それを論議しないで、公約をあとへずらしていく。その時期が三年先という時期ならば、私はわかる。だけれども、本年度内にその時期を考えなくちゃならぬような事態にあるのに、なぜこのような処置をするのか。私はそこに政府のふまじめさがあると思うのです。しかも、また、第一次岸内閣でとったその態度に依然としてしがみついておらなければならぬという面子の問題を考えておるのじゃないか。そんな面子なんか捨てちゃって、この際いっそこれを補正予算とか何かに組むべきである。しかも、この金は、三十一年度においてわれわれが国民から取り上げた税金の取り過ごしの分なんです。もともとこれは返すべきものなんです。なぜそういう問題をまじめな取り組み方をしないのか。私はまじめな三木さんや佐藤さんに対してその真意を疑わざるを得ない。これは早くやるべきです。
  56. 三木武夫

    ○三木国務大臣 まじめというお話でありますが、しごくまじめに考えておるわけです。御承知のように昨年度内に日本経済が行き過ぎたことは事実で、そのために、滞貨のごときも御承知のように一月には前年同期に比べて五割もふえたような状態です。この異常な状態というものをある程度ノーマルな状態に返さなければ、国民からいえば、有効需要を喚起するようなことによって、今はちょっとよろしいでしょう。けれども、まじめに考えてみたならば、そういう形で日本経済というものが安易に推移するということが、将来のためにいいであろうかどうか。しばらく経済の推移を見るということの方が、かえってまじめな態度ではなかろうか。これは石野さんと見解の相違になるかもしれませんが、まじめであるという論拠からするならば、われわれの態度の方がやはり日本経済の責任を持つ者の態度としてはまじめではなかろうか、こう考えるのであります。
  57. 石野久男

    石野委員 とにかく、今回出されておるたな上げ資金という問題は、どうもやはり問題があるのですから、皆さんとしてももう少し真剣に考えてもらいたい。これは国民の金なんです。  そこで、一つ聞きますが、きのうの新聞によりますると、戦後初の外債募集ということが出ておるわけです。政府アメリカとの関係でいろいろ外債の問題を論議しておるように聞いております。これは政府としても当然今までずっとやってきたことだろうと思うのですが、そういうような考え方をお持ちになっておられるのかどうか。この際一つお聞きしたい。
  58. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どういう記事が新聞に出ておるか、私は見落したのでございます。
  59. 石野久男

    石野委員 ちょっと読みます。きのうの新聞には、各新聞ごとに、佐藤蔵相は、一萬田前蔵相の考えを受け継いで、外貨借款を積極的に受ける方針を明らかにしているが、というふうに書いて、本年度世界銀行から約三億五千二百万ドルの外貨借り入れの契約を結んで、うち三千万ドル程度を世銀を通ずる道路公団の外債募集で調達する方針で、世銀当局といろいろ折衝してきた。ところが、これが、道路公団では約三千万ドルをニューヨーク市場で募集することは不可能だということがはっきりしてきたので、そこで、政府は、これにかわるものとして、政府発行の外債か、電力、鉄鋼会社による外債募集に切りかえて成功させたい方針だ、こういうふうに書いているのです。
  60. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまのところ、まだ具体的な計画はございません。しかし、一部におきまして、外債を募集したらどうだろう、こういうような意見のあることは、これはもう新聞その他に出ておる通りであります。しかし、ただいまのところ、政府部内ないし大蔵省内にそこまでの意見は出ておりません。
  61. 石野久男

    石野委員 お尋ねしますが、政府の中にも外債を募集したらどうだろうという意見は出ている。そういう意見はどういう意味で出てきておるのでしょう。
  62. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 まだ政府の中にはない。部外においてそういう意見があるということであります。
  63. 石野久男

    石野委員 外債の問題が出てきた場合に、大蔵大臣としてはそれじゃどういうふうにお考えになりますか。
  64. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは大蔵大臣といたしましてもまことに重要な問題でございます。今この記事にも出ておりますように、戦後いまだかつてやったことがないものでございます。こういうことでございますので、十分慎重な研究の上、態度を決定したいと思います。
  65. 石野久男

    石野委員 慎重に考えなくてもいいと思うのですよ。そんな必要はない。今ここでいわゆるたな上げ資金法律を出しておる。政府考えでは、金が余ってしかたがない。そういう金が余ってしかたがないときに、外債なんか考えなくてもいいということをはっきり言えばいい。そうすれば、たな上げ資金の問題も、われわれちょっと考えなければならぬかもしれない。ところが、片方ではそれを考えているが、慎重審議するというのはおかしい。
  66. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまのようなお話もありまして、国内の円が十分なら、もうそれでいいではないかという議論があるかもしれません。しかしながら私どもは必ずしもそうは思わない。これはやはり資金を十分持つということ、円並びにドルとして持つべきこと、これはあらゆる機会におそらく考えられるだろうと思います。これは理論の上ですよ。ただいま私がやるというわけじゃございませんが、そういうことが考えられるだろうしかし、そういうことをやった際における影響度というものを考えなければならない。ただいま石野さんの言われるように、簡単に、円が十分あるんだから外債なんか必要ないじゃないかという議論には、私は賛成しないということでございます。
  67. 石野久男

    石野委員 円が十分あるから外債は考えなくてもいいんだ、こういうお話ですが……。
  68. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 そうじゃない。そういう議論に賛成しないのです。
  69. 石野久男

    石野委員 それでは、円が十分あるから外債を考える、考えてもいいじゃないか、そういうような考え方であるとするならば……。
  70. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どうも語尾がはっきりしないので、あるいはお聞きとりにくかったかと思います。これは今やるとかやらぬとかいう問題じゃございません。議論としてあるいは意見として申し上げておるのですが、国内の円資金とまた国際的なドル資金、こういうものを豊富に持つという考え方から見まして、国内に円が十分ある、たな上げ資金まであるんだから、外債など考える必要はないじゃないか、こういう議論には私は賛成いたしません、こういうことを申したのであります。
  71. 石野久男

    石野委員 ドル資金を持つという意味でも、もちろん外債はそういうことになると思いますけれども、しかしそれの使途の問題があるわけですね。使途の問題としてたとえば国内におけるドルはそんなに要るわけじゃないのです。そうなると、外債を考える場合にはどういうときに考えるのですか。
  72. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは議論として申し上げておりますので、実際にただいまどうこうするという問題じゃないということを一応はっきり申し上げておきます。ただいま申すように、技術的な導入の場合もありましょう。あるいは特殊資材の導入の場合もありましょう。あるいはまた資金そのものを他の貿易その他の面で使うことを予定する場合もあるだろう。いろいろあるだろうと考えます。
  73. 石野久男

    石野委員 それでは、最後に一つだけお聞きしておきたいのですが、本法において基金の設定が行われて、いろいろな公庫へ基金が出されます。特にその中で農林漁業金融公庫、あるいは中小企業金融公庫に対しては取りくずし可能だというふうに考えていられるようでございます。それで、その場合、特に中小企業金融公庫に対して、今問題になっている中小企業に対する施策の問題があるわけです。これは三木さんにお尋ねしたいのですが、今中小企業は非常に破産、倒産が続いておると思うのです。おそらく、政府の見通されておる経済情勢というものから見ますと、大体皆さんの目には大企業が多く目にとまっておって、中小企業の側は案外に見過ごされておるというふうにわれわれは見ておる。そういう見方から、今日の政府の施策の中でもっと大胆に中小企業に対する手当をしなければいけないのじゃないか、こういうようにわれわれは思うわけなんです。この手当をする場合に、中小企業対策としてももっと積極的な対策というものが出てこなければいけないのではないかということが一つ考えられます。それから、きょうは通産大臣がおられませんが、行政指導の面からどうしても中小企業が大企業に圧迫されておる。いわゆる下請代金の問題等は非常に圧迫を受けておるわけでありまして、これは目に余るものがあります。こういう問題に対して今大臣はどういう手を打とうとしておられるかということを、この際聞かしていただきたい。
  74. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは通産大臣がお答えすることが適当でしょうが、私として言えることは、中小企業について、大企業の方に目を向けて中小企業のことは考えていないのではないかということですが、むしろ大企業よりもわれわれは中小企業に関心を持っておるということを申し上げておきたいと思います。やはりこういうような調整期におけるしわ寄せが中小企業にいきはしないか。これはおくれていくということになるから、そういう点で中小企業の動向に対しては統計上においても非常な関心を払っておるわけであります。今石野さんの言われたことは、われわれの意図と全然間違っておるから申し上げておきますが、やはり中小企業当面の問題もありますけれども、しかし、選挙の公約などにおいてわれわれが言ったことは、やはり中小企業の設備を近代化して、日本の産業の二重構造というものを是正していきたいということが、石野さんがお持ちになっておる選挙公約にうたってある大きな題目であります。個々の現在困っておる人々に対してどういう手を打つかということは、これは通産大臣として考えておられると思いますが、われわれ岸内閣の大きな方向としては、中小企業の設備近代化によって、あるいは技術の向上などによって、この二重構造を是正していきたいということが、大きな中小企業対策の方向であります。
  75. 石野久男

    石野委員 私はまだいろいろと質問がございますが、こまかいことにわたりますし、持ち時間もだいぶ超過しておりまするので、あとでまたこまかいことについての質問をいたします。ただ、きょうの御答弁で明らかなように、たな上げ資金は早晩取りくずさなければならないという考え方を両大臣とも持っておられる。しかもそれはあまり遠い時期ではないということもはっきりしておる。そういうことからいたしますると、立案の当初に考えられたような基金あるいはまた資金の意図というものは、むしろ、もうその本来の目的を果す前に、これをくずして予算化すという時期がくるのであるから、私は、むしろ、これはもう大胆なものの考え方をして、この法案は別途予算化するような方向で使用するようにした方がいいじゃないかというふうに考えております。そういう点からもう一度われわれも論議したいし、両大臣の方でも淡々とその点は考えて処置をしてもらいたいと思います。  私のきょうの質問はこれで終ります。
  76. 早川崇

    早川委員長 春日一幸君に質疑を許します。春日一幸君。
  77. 春日一幸

    ○春日委員 私は経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案について質問をいたしまするが、まず、この法律案の中で、なかんずく資金に関係する部分のみについてお伺いをいたしたいと思います。  国の予算の立て方につきましては、これは財政法によらなければならぬ。これは論議の余地のないところであろうと思いまするが、ここに経済基盤を強化する資金というような、言うならばえたいの知れない資金を設けるということは、これは、予算委員会の審議についても私は傍聴いたしましたし、本委員会のすでに三日間にわたります質疑応答を注意深く傾聴いたしておりましたが、なおわれわれにはこれが正当に理解できないのであります。こういうような資金を設けることは、財政法では決してこれを許してはいない。さらにこれを詳細に研究するならば、むしろ積極的にこれを禁止しておるのではないかと考えるのでありまするが、一体政府はいかなる理解をもってこのような法律案を提出したのであるか。その法律的な根拠についてまず大蔵大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  78. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お尋ねの点は大へん法律的な御議論のようでありますので、その点は専門家の事務当局から説明さしたいと思います。
  79. 石原周夫

    ○石原政府委員 今回の経済基盤強化資金法律案を提案をいたしました財政法上の根拠といたしましては、財政法第四十四条「国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。」この法律に基きまして、従来多くの資金が作られ、多くの場合特別会計でありまするが、作られておるということは、春日委員承知通りであります。
  80. 春日一幸

    ○春日委員 法律的な根拠は、この財政法第四十四条だけでありまするか。ほかに法律的な根拠はありませんか。なお、ただいま三木国務大臣から、当時政調会長として確信を持ってこの法案提出に同意を与えたということでありまするが、果して第四十四条だけの根拠の上に立って本案の提出をされたのでありますか。三木国務大臣からあらためて伺います。
  81. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは財政法の上から十分な検討を加えた結論でございます。
  82. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、財政法第四十四条にいいますところのこの資金というもののその定義、正確なる法意、これはどういう工合に理解されておりますか。この際この法案を作成された責任者から御答弁を願います。
  83. 石原周夫

    ○石原政府委員 財政法第四十四条に申しまする資金と申しますのは、御承知のように、会計年度ということに対しまする例外なのであります。特定の経費は、特定の年度の歳入をもって充てるという原則がございまして、その意味の原則からはずれるものではございませんが、一定の金額に当りまするものをいわゆる資金という形で保有をいたしまして、これが年度をわたりまして、必要な時期に特定の目的に使用せられる、こういうようなものが資金の性質になるわけであります。
  84. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、主計局長にお伺いをいたしますが、一体、このたな上げ資金なるものは、財政法上にいう歳出を理解されておるのでありまするか、いかがでありますか。
  85. 石原周夫

    ○石原政府委員 歳出というのは、いわゆる経費という言葉をもって財政法上いわれておるわけでございまするが、この法律がございまして、この法律に基きまして、こういうような性質の資金を作るということが規定をせられております。それに基きまして、本年度の歳出予算に計上いたす。その限りにおきまして、本年度の経費であるというふうに解釈をいたすわけであります。
  86. 春日一幸

    ○春日委員 さすれば、ただいまの御答弁をもっていったしますると、これはまさしく本年度の経費である、こういう工合に述べられまして、またその理解の上に立って、本案の立案をされたとのことであります。申し上げるまでもなく、この歳出という言葉は、国の需要を満たすための現金の支出ということに帰するであろうと思うのであります。しかも、会計年度の、これは限定が第十二条でありまするか、財政法の第十二条には、会計年度の独立の原則が厳粛に規定されておると思うのであります。そういたしますると、このたな上げされるような資金というものは、これはこの財政法にいうところの国の年度間における需要を満たすための支出ではないわけで、すなわち支弁することができないからたな上げをするのでありまするから、財政法がいうところの歳出というものは、これはその国の需要を満たすための支出であって、しかもそれは十二条によって、ただいま申し上げましたように、これは会計年度独立の原則によって制約をされておるわけでありまするから、すなわちその年度間における国の需要を満たすための支出とは、これは断じがたいと思う。また実体はそうではないわけなんで、それは、ただいま三木国務大臣から御答弁がありました通り、これはいつ取りくずすか、その時期については、今何ら明確な見通しが立てられてはいない。だから年度内の支出でないことは明らかである。だとすれば、これは明らかに財政法上重大な疑義があると思うが、この点について大蔵大臣はどう理解されておりますか、御答弁を願います。
  87. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま法律案制定の当時の経過並びにその根拠を明示いたしました。私はこれでよろしいんだと思います。
  88. 春日一幸

    ○春日委員 それはまるきりめくらめつぽうな御答弁で、何にも聞いていない答弁とも称すべきであって、これは答弁にはなっていないわけです。それならば、もう一つわかりやすく、もっと砕けてしろうとの大蔵大臣でもわかるように申し上げようと思うんだが、たとえば、資金というものは、別の用語をもってすれば資本ともいい得ると思うのです。主計局長にお伺いをしますが、この資金法律用語では資金、たまには資本という言葉も使われておるが、資本と同義語と解して差しつかえありませんか。
  89. 石原周夫

    ○石原政府委員 資本という言葉はいろいろな意味に使われますので、今お尋ねの意味の資本がどういう意味かということは簡単に申し上げられないかと思うのでありますが、会計法規の関係におきまして資本ということを申します場合には、これは従来から据置運転資本というような考え方がございまして、貸借対照表上における負債勘定におきまする資本、こういうような整理をいたしておりますものが、現在事業会計にたくさんあることは御承知通りであります。この財政法四十四条におきまする資金というのは、そういう貸借対照表上の負債という観念ではございませんで、先ほど申し上げましたように、毎年度歳入歳出というものはその年度に出払うという建前でございますが、そのうち特に法律をもちまして一定の金額を残しまして、その金額を年度をわたりまして翌年度以降にもその金が使えるようにいたす。先ほど御質問のございました年度別の原則はどうであるかという御質問でございますが、法律によりましてそういうような規定を設け、財政法四十四条のあります前提におきましては、それは当該年度のいわゆる経費である。先ほどお尋ねの財政法第二条の「各般の需要」というものは、そういうような法律によりまして資金として設定することが一つの需要である、それが一つの経費の観念であるというふうに観念をいたしまして、会計年度別の関係はそういうように考えております。
  90. 春日一幸

    ○春日委員 たとえば資本とか資金とか、かりにこれを資金と限定してもよろしいが、第四十四条によって定められた特別資金なるものは、その前例を見るならば、造幣局特別会計、あるいは資金運用部特別会計、あるいは国債整理基金特別会計、みなこのような機関によりましてその資金を自主的に運用し、これを活用することによって経済効果なりあるいは政策効果なりを自主的にもたらしてくる、こういう機能を持つものを四十四条にいう資金と称しておる。私は伺いますが、かつてそういう使えないような資金を設けたことがありますか。今までの前例についてお伺いをいたしたい。
  91. 石原周夫

    ○石原政府委員 ごく最近の例といたしましては、三十一年度の補正予算をもちまして設定をいたしました産業投資特別会計におきまする資金であります。これは、当該年度におきまして資金として積みまして、翌年度産業投資特別会計の所定の使途に向って使えることになっておりますが、特定の使途のためにリザーヴしておくというのが、産業投資特別会計の資金であります。なお、一般的に春日委員がおあげになりました特別会計の例につきましては、これは特別会計におのおの目的がございまして、その目的と相表裏いたしまして資金があるわけでございます。この場合には、一般会計に資金を作りまして、一般会計におきまする将来の特定の目的のために充てるということでございまするから、その間には多少違いがあるかというふうに考えます。
  92. 春日一幸

    ○春日委員 明確なる意味でこの種の資金というものがかって設定されたものが厳格な意味においてないと理解してよろしいか、それともこういうような機能において資金が設定されたことがあったかどうか、この点を一つありのままに御答弁願います。
  93. 石原周夫

    ○石原政府委員 先ほどお答えを申し上げました産業投資特別会計におきます資金がさようでございまするし、これはもう少し古くなりまするが、大学及び学校資金というものが、同じく一般会計にございまして、将来におきまする学校の経費のための資金として現在一般会計に残っております。
  94. 春日一幸

    ○春日委員 その一般会計によって設定された大学の資金なるものは、一般会計から支出された資金でありまするか、あるいはまたこれは寄付その他の面によってプールされた資金でありまするか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  95. 石原周夫

    ○石原政府委員 御承知のように、学校及び図書館につきましては、学校及び図書館特別会計というものが戦前からございます。これが戦後に廃止になりまして、そのときに残存いたしておりました資金をもちまして、大学及び学校の特別資金を設定いたしたわけであります。
  96. 春日一幸

    ○春日委員 その大学の資金なるものは、今回のような景気調整のためのたな上げ資金的意図を有するところの経済基盤強化資金とは、本質的に異なるものであることは申し上げるまでもございません。ただ、私が大臣に申し上げたいことは、この財政法が正当に守られておるかどうか、問題はこれであると思うのであります。今主計局長が、反間苦肉の答弁と申しましょうか、少数異例の例をひっさげて、あたかもこの種の資金が財政法上設置し得るがごとき答弁をされたのでございまするが、これは私は非常に重大な事柄であろうと思う。申し上げるまでもなく、四十四条によって設定されたところの特別資金というものに、これはことごとくその資金の自主的な運用、それからその活用によりまして、それぞれ政策効果というもの期待され、現にこれが上げ得る機能を持っておると思うのです。ところが、この資金は、予算の補正を行うにあらざれば、これは運用することもできないし、活用することもできないから、そこからは何ら直接の政策効果も現われてこない。具体的に言うならば、たとえば鉄道法か軌道法か知りませんが、鉄道を敷くことができる。これはその法律がある。ところがこれはただ鉄道が敷いてあるだけで、汽車は走らせないようなものである。これは言うならば純粋の鉄道とは言いがたいと思うのです。それと同じように、この法律四十四条にきめておりまする資金は、私はこんな内容の資金の設定を許したものではないと思うし、また当初考えたものではないと思うんです。この点はどうでありまするか。この四十四条を法文通り読んで理解を公正にいたしますならば、やはり政策的に当該年度において支出、消費してしまうことを予定しないところの特別の性格を有する資金を設置するということであって、予算の補正を行わなければ使用することができない、こういうような事柄を予想して作った条文ではないと思うが、この点大臣は政治家的見識においていかにこれを理解されますか。
  97. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今回の資金設定が異例と申せば言葉が行き過ぎるかわかりませんが、なかなか理解しがたい制度であるというお話はよくわかります。よくわかりますが、財政法四十四条で書いております通り法律によって資金を設定することができるというのでございますので、私は、ただいま言われるように、この種の資金は予想しなかったんだという議論はいかがかと思います。問題は、四十四条の規定による法律の手続によりまして御審議を経るならば、この種の資金設定もまた可能なりということを私は考えております。
  98. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、私は別の角度から伺いたいと思うのでありますが、ならば、この財政法が制定されましたのは昭和二十二年であろうと思う。この景気調節のために余裕財源をたな上げするというような財政理論あるいはまた経済政策、こういうものは私は全く新しい一つの提唱であろうと思う。財政理論の中にかってあったこともないし、そんな政策もかつて行われたこともない。従いまして、そういう全く新しくて、そうしてこの立法の当時予想だにされなかったものが今回行われようとしておる。そういたしますれば、この財政法の四十四条というものは、かつて予想しなかったんだから、そういうような事態を救済することのためにこの四十四条というものは何ら考慮されてはいないと断ずべきであると思うが、この点はいかがでありますか。
  99. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 立法の当時予想しなかったということだから、これは明らかに考え方がない、そういうものは考えてないということは、私は法律学者ではございませんが、法律の解釋とかあるいは運用の面から見まして、必ずしも一律に適用される理論ではないんじゃないか、かように思います。問題は、なるほどこの財政法制定の当時においては予想しなかった事態かわかりません。また全然予想しない、今回初めて全然類例のないことをしたということはあるいは行き過ぎではないかと思うのは、先ほど主計局長から一、二の特異な例を出しておりまして、そうして法律によるならば資金を設定することが可能だ、こういう条項、その本来の趣旨に応じた説明をいたしておると思います。この意味からは、今回のいわゆるたな上げ資金を設定することも四十四条で可能なんではないか、かように考えます。立法当時の問題と、その法律の運用解釈の問題、これはおのずから違っていいのだ、こういうように私は思います。
  100. 春日一幸

    ○春日委員 ただ、問題は、このようなものを資金といえるかどうかというところに問題の焦点があるのです。現実の問題といたしまして、資金の定義というものが、これまた厳格に解明されなければならぬと思いまするけれども、これは説をなす者によってさまざま変るではありましょうが、この四十四条が規定しておるところの資金は、あくまでそのもの自体によって政策効果が上り得るものでなければならぬと思う、現実の問題といたしまして。鉄道を敷いたら、汽車が走って、旅客の輸送なり荷物の輸送なり、そういう機能が果し得るものでなければならぬと思う。これを資金といったところで、この法律で設定されたところの他の資金とは全然違って、これはもう一ぺんこれを使おうとすれば、あらためて予算補正を行うにあらざればこれを使うことはできない。これは完全に実質的にたな上げされ、封殺されておるものなのです。だから、これは果して財政法四十四条にいう資金であり得るかどうかというところに疑義があると思うのです。その疑義はどうしてあり得るかというと、これは本質的に、この法律ができた二十二年当時は、この景気を調節することのために余裕財源をたな上げするというような経済政策も財政理論も当時はなかった。これは当時あり得た、予測し得たかもしれないとおっしゃるけれども、現実に、そういう問題は去年の秋ごろから一萬田大蔵大臣が唐突に反間苦肉の施策として考え出してきたことなんです。一方国際収支が逆調にあったので、これを克服することのためには予算に組むことができない。組めば海外収支を悪くするから組めない。だからこの問題を使わないでたな上げせざるを得ないというような一萬田さんの考え方から、新しくこういうような財政理論というか、あるいは経済政策というものが唱えられ出したわけなんです。私も第十六国会以来この大蔵委員会でいろいろと御説を拝聴しておるけれども、かつてこのような理論がなされたことはない。でありまするから、この四十四条というものは、現実の問題としまして、このような政策を消化することのためにこれは十分なるものとはいえないと私は思う。これは資金とはいえないと思う。これは明らかに剰余金を封殺、たな上げしておるだけのことでやはり資金というものは、これを活用して、そのことによって経済効果というものが直接に期待されるものでなければ、資金とはいえないと私は思うのです。だから、経済政策、財政理論の可否というものは別問題として、もしそれをなさんとするならば、そのことをなす大前提として、財政法の四十四条あるいは財政法の十二条、六条、十四条、こういうような関係を調整しなければ、こういうような立法は行い得ないものと思うが、この点についていかがでありますか。
  101. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私法律的にはまことに不案内でございますが、ただいまいろいろ御指摘になったような点について十分研究をした結果、この法案を出しておることだけは間違いないのであります。
  102. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、この問題は、後ほど法制局長官でもおでかけいただいて、さらに別な角度からなお精査をいたさなければならぬので……。
  103. 早川崇

    早川委員長 ちょっと、春日さん、政府委員から補足説明をしたいというんですが……。
  104. 春日一幸

    ○春日委員 質問にだいぶ入ってからではだめです。——財政法第十四条は、ただいま申し上げましたように「歳入歳出は、すべて、これを予算に編入しなければならない。」として、予算総計主義の原則を厳格に規定いたしております。それから、十二条は、「各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない。」として、これはただいま申し上げました会計年度独立の原則をこれまた打ち立てておる。それから、第六条では、決算上の剰余金の一部を公債等の償還財源に充当することを義務づけた規定でありまするけれども、その半面決算上の剰余金の残余は、これを減税財源に充てるか、あるいは、そうしないならば、これは一般財源に充当すべきことを規定しておると解すべきである。そういたしますると、この第六条においてもすでに疑義があると思うのです。すなわち、剰余金の一部は公債の償還財源へ充当して、それから残余の処理については、この六条には明文はないけれども、この注意は、これを減税財源に充てるか、もしくは一般会計の中で予算に組む、こういうことであろうと思う。だから、この第六条の規定から考えてみても、これは重大な疑義があると思うけれども、しかし、この三つの財政法上の制約を総合して判断いたしますれば、この資金は、一会計年度の歳入を保留して、これを他の会計年度の歳出に充当しようとするという事柄ですね。こういうことは、現実問題として、十三条にいうところの会計年度独立の原則というものとまっ正面に衝突すると思うのです。第六条の中には、余裕財源は減税に充てろ、あるいは特別会計に組め、こういうことが明確に明文化されていないから、これは法意によって判断するよりほかに道はないと思うけれども、しかし、この法意の判断によっても、これは第六条違反であると思う。違反でなければ、脱法行為であると思う。ところが、第十二条の関係においては、一会計年度の歳入をもって他の会計年度の歳出に充てるということは、これはもう明らかに会計年度独立の原則をじゅうりんするものであって、ただし書きの救済にはこれは当てはまるものではないと思う。この点について三木国務大臣いかがでありますか。あなた熟睡されておるので、一ぺん眠けざましにお答え願いたい。
  105. 三木武夫

    ○三木国務大臣 聞いておりませんでした。(笑声)
  106. 石原周夫

    ○石原政府委員 財政法第六条の、剰余金の半分は公債または借入金の償還財源に充てるという点につきまして、その半面の残りの半分は減税ないし一般財源に充てるという意味ではないであろうかというお尋ねであります。第六条は、今も春日委員からお話がありましたように、剰余金の半分をもちまして、公債の償還に充てるという一つの健全財政と申しますか、一つのある考え方を規定したものでございまして、残りの半分につきましてこれをどういたすかということは、毎年々々の予算をきめます政策に従いまして処置をいたすということになろうかと思います。  それから、会計年度独立の原則につきましてのお尋ねでございますが、これは、先ほど来お答えを申し上げましたように、四十四条に資金の規定がございまして、その規定に従いまして法律をもちまして資金を作る。従いまして、その資金を作ります金が十二条の経費になるということにつきましては、先ほど来申し上げた通りであります。従いまして、四十四条が十二条の例外になるという申し上げ方はあるいは不適当かと思うのでありますが、四十四条によりまして、特定の目的のために資金を保留いたすということに相なりますれば、その限りで、十二条につきましては、その資金を作りますことが十二条の経費であるということに読みます。これは産業投資特別会計に過般資金を設置したときに同じような御議論がありまして、そういうように政府側としては一貫した答弁をいたしております。  なお、立ち上りましたついでに、先ほど申し上げられなかった点を申し上げさせていただきますが、それは、この資金の規定で、景気調整のための資金を予定しておったかどうかという点でございますが、これは、外国の例について申し上げますと、一九三七、八年ごろに、北欧におきまして、景気の調節のために、ある特別会計でありますが、それを作りまして、あるいは借入金をしたりあるいは剰余金を積んだりして、そういうような調節をいたすという考え方があります。その点は財政法律上いろいろ検討いたした点でございますが、それとまた別に、会計法は明治以来この四十四条に当る規定があるわけでございますが、金が余りまして、いわば不測の歳入のようなものをリザーヴいたしまして、将来の使途に充てるという点につきましては、明治の三十二年でありますが、日清戦争の償金が入りまして、この償金をもちまして三つの特別会計を作りまして、軍艦、水雷艇の補充基金、災害の準備基金、教育費という三つの基金を作りまして、その後、相当の期間にわたりまして、歳出の状況を見ながらこの金を使用した。非常に古い例でありますので、先ほど申し上げなかったのでありますが、あるいは今の金がある程度当該年度で臨時に入りましたときに、その金をリザーヴいたして将来の財政危機に使うということにおきましては、古い例でありますが、そういう考え方もございますし、この資金を作りましたのは、その当時の会計法にありましたこの資金の規定に準じまして作ったものと承知しております。
  107. 春日一幸

    ○春日委員 北欧の例について述べられました。なお、私たちは、昨年ヨーロッパ、アメリカ諸国をずっと回って、諸国の財政の状況も調査して参ったのでありますが、なるほど西ドイツは、再軍備の準備のためにできるだけ余裕財源を作って、これをリザーヴしておる実態等をいろいろ見て参りました。けれども、今わが国の財政法がいいか悪いか、これは別問題といたしまして、とにかく立憲法治国である限りは、政府はこの法律に基いて行政を行わなければならぬことを義務づけられておる。従いまして、この法律がある限りは、この法律に従ってあなた方は運営しなければならぬのです。それ以外の執行は許されていないわけであります。幾多の面においてその疑義があると思う。四十四条にいうこれが資金であり得るかどうかというところに、ほんとうにあなた方は良心的にごうまつも疑義を感じていないかどうか。問題はここなんです。さらにまた、実体論を申しますると、この法律ができた昭和二十二年当初には、財政は全く不足であって、その余裕財源というようなことは現実の問題としてなかった。しかも、その余裕財源があったときにはどうするかというような場合に、昨年一萬田さんがこの構想を立てたのは、当時対外収支の逆調という、日本経済においてはどうにもこうにも自主的な処理では処理のできぬところの問題がある。せっかくの限界輸入性向の制約があって、従いまして、円を使えば結局それだけドルを減らしてくるから、使うことができない、こういう意味で使うに使えなくて、余儀なく、あの去年の九月から十一月ころの経済基盤の上においては、これをたな上げせざるを得ないという必然の帰結というか、反間苦肉の策としてこのような構想を立てられた。従いまして、政策理論としても、また財政理論としても、この法律ができるときには、そんなことは現実の問題として考えられてもいなかった。事態がないから考えようがないわけだ。だから、今この四十四条にいうところの資金というものは、こんな封鎖してたな上げをして実際的には使用できないというようなものを資金と称し得るかどうか。この問題は私は重大な問題だと思うのです。だから、私は、この問題については当然財政学者の意見を聞いて、そうして、いうならばこれは後刻お諮りをいただくべき問題だろうと思うのだが、これでは、それぞれ権威者の意見を聞いてあやまたざる執行をされなければ、後日これは明らかに違反であるという形になれば、憲法に違反をしたような法律は全部無効になってしまう。むだ骨になるから、これは十分事前に精査を遂げなければならぬと思うので、これは公聴会なんかをやってもらわなければならぬと思う。それにしても、今私が申し上げておるこの十二条の一会計年度の歳入でもって他年度の歳出に充てるという事柄が四十四条で救済されるというような、こんなこじつけ理論でもって、こんな立法措置というようなものは、現実の問題としてなし得るものではないと思う。この点いかがでありますか。
  108. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほどからいろいろ教えてもいただきましたが、同時にまた、事務当局といいますか、政府として法案を提出するまでに種々研究いたしましたその研究の結果の結論も、関係者からお話しをいたしておるのでございます。この点で、この種の資金一つの恒例とでも申しますか、必ずこういうものを一度できたからまた次に作るとか、こういう筋のものでないことは、先ほど冒頭に申し上げましように異例の扱い方である、こういうことは私ども考えております。しかしながら、法律に全然よらないというか、法律に違反してこの資金制度が設けられた、かようには実は考えておらないのであります。ことに、この資金の第七条に書いておりますように、これの使い方と申しますか、それは特定の事情、これは「将来における」という表現をいたしております。この将来という言葉にもいろいろ疑念を生じておるのではないかと思いますが、特別な使途目標を明示し、そうしてそれをその使途に充当する際には、さらにその手続も法律によるということが明示されており、その意味から考えますと、この種のたな上げ資金を作ることは違法だ、こういう理論には必ずしも賛成できない。先ほど来事務当局が法案提出に至ります前に種々研究をいたした点をるる御説明をいたしたのでございます。どうか御了承をいただきたい。
  109. 春日一幸

    ○春日委員 そうすると、主計局長にもう一ぺん伺いますが、四十四条によってすでに設けられております特別の資金の中で、あらためて予算措置を講ずるにあらざればその資金を使用することのできないというような形の資金というものは、どのくらいありますか。
  110. 石原周夫

    ○石原政府委員 とりあえず最近の例について申し上げますれば、先ほど申し上げました三十一年度の補正予算をもって作りました産業投資特別会計の資金が据え置きであります。これは、この資金を作りますのに、資金を取りくずして、産業投資特別会計の歳入、これに伴う歳出を計上する、こういう仕組みに相なっております。なお、先ほど申し上げました大学特別資金についても同様であります。
  111. 春日一幸

    ○春日委員 その産業投資特別会計というものは、一つ政策目的というものがはっきりあるわけなんです。これは明確にあるわけなんです。それとこれとは全然異質のものだと思うのですよ。これはただ単に漫然と経済基盤を強化するというだけのことなんですね。産業投資特別会計というものは、この法律によってうたわれておるちゃんとした一つの事業目的というものがあるわけなんです。これには何も事業目的がないのですね。私はこの際に三木国務大臣にお伺いをいたしますが、一体、この法律は、経済基盤を強化せんとするところにウェートがあるのか、あるいはまた景気を調節せんとするところにその目的があるのか、一体そのウェートはいずれに置いておるのでありますか。この点をお伺いいたします。
  112. 三木武夫

    ○三木国務大臣 両方にかかっております。
  113. 春日一幸

    ○春日委員 大体そのパーセンテージはフィフティ・フィフティですか。
  114. 三木武夫

    ○三木国務大臣 割合を申し上げることは困難でありますが、しかし、財政の弾力的運営という面もあり、またその運営の用途が経済基盤を強化するためのものである。この割合を何割かということは、ちょっとお答えが困難でございます。
  115. 春日一幸

    ○春日委員 まあそこがこの四十四条との関係のあるところだと思うのですが、大体これはどっちも同じくらいだというならば、これは明確になかなか断じがたいということなんですね。私は主計局長に伺いますが、経済基盤を強化するということであれば、一応一つ経済目的というか、何かそういうようなものがあると思うのだが、景気を調節するためのたな上げ資金という場合と四十四条の関係において、何ら矛盾を生じて参りませんか。
  116. 石原周夫

    ○石原政府委員 今の経済基盤強化資金法律でごらんになりまするように、この資金目的を定めておりまして、道路の整備、港湾の整備、科学技術の振興、非常災害及び産業投資特別会計への繰り入れというふうに目的を定めております。それらの目的に限定をいたしまして、この資金が設定をされたのであります。従いまして、全般的な景気調節というような言い方でできておるのではございませんで、この四十四条の資金法律との関係におきましては、今申しました五つの目的をもちまして、特定せられた目的に将来充てるということで、でき上っておるわけであります。
  117. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、私はもう一つつまびらかにしておきたいと思うのだが、こういうような特別の資金が設けられるといたしますね。そういたしますと、今までの慣例では、その資金の設けられた事業種目、款項目はそれによって処理されるものか、それともそれによっても処理され、また一般会計の歳出の中にも並行して支出がなし得られるものか、この点の取扱いはどうなっておりますか。
  118. 石原周夫

    ○石原政府委員 ただいまのお尋ねは、たとえば道路整備というような場合に、一般財源をもちましても道路整備の歳出が立つ、あるいはこの資金を取りくずしても道路整備の財源が立つ、そういうような意味のお尋ねでございましょうか。
  119. 春日一幸

    ○春日委員 その資金の本質を明らかに理解したいと思うのです。それで、この法律で設けられた資金の性格からいろいろと考えてみますると、こういうことになりませんか。資金運用部資金の特別会計にしても、造幣局特別会計法にしても、国債整理基金特別会計法にいたしましても、造幣局の事業を行うとか、あるいは資金運用部の事業であるとかいうものは、一般会計からはまず一括してこの特別資金の中に歳出が行われる。そうして他に款項目で直接この事業に対して支出は行われないと思うのだが、そうではありません
  120. 石原周夫

    ○石原政府委員 造幣局の場合は、資金からの払い出しが歳出の唯一の財源ではなかったか——私、今ちょっと正確に覚えませんが、一般論として申し上げますと、事業に特別会計を作りまして、それに関連いたしまする資金を作りまする場合、これは当然当該事業の用に充てられるということが明らかになると思います。今回御審議をお願いしておりまするのは、一般会計の資金でございまするから、特別会計のように特定の事業のワクというものがございません。従いまして、今回法律目的を限定いたしまして、その目的に充てるということであります。従いまして、各特別会計におきまして資金を作りましても、当該資金を使って支出をいたしまするのが唯一の歳出の財源でない場合が多いと思います。しかしながら、資金を一括して作ってしまいまして、資金以外には歳出の財源がないという経緯もあったかと思いまするが、そこは必ずしもどちらかにきまっておるのではないというふうに考えます。
  121. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、一般会計からこの特別会計の支出を行なって、それから他の款項目でも、その事業種目に対して一般会計からの歳出がなし得るのでありますか。
  122. 石原周夫

    ○石原政府委員 一番典型的な例の産業投資特別会計について申し上げますれば、産業投資特別会計の歳出はもちろん一般会計から繰り入れまして、資金を通じませんで、まっすぐに歳出をすることもできると思います。同時に、現在ございまする資金を取りくずしまして、それを当該特別会計の歳入に立てて歳出いたす、これも当然できることであります。従いまして、両者ともでき得るわけだというふうにお考え願いたいと思います。
  123. 春日一幸

    ○春日委員 その点はなお研究を進めてみることにいたします。  そこで、お伺いをいたしまするが、この資金景気変動に応じて機動的にこれを予算化する、こういうところに特質があろうと思うわけであります。大臣は、この政策が構想されたのはたしか昨年の十月前後のころだと思うのでありまするが、そのころと、今のこの経済現象に何ら異動はないと考えられるか、あるいはまた相当変っておると考えられるか、この点、三木経審長官から伺います。
  124. 三木武夫

    ○三木国務大臣 大きな実際の生産調整なんかの段階において、多少の時期的なズレもある。輸出の伸びなどについても多少当初の予定との間には伸び悩みの状態もあって、個々の現象については、必ずしも予定通りに行っていない点もあるけれども、大きな経済の基調というものに重大な変化があったとは思っていない。
  125. 春日一幸

    ○春日委員 ならば、私は伺いまするが、われわれの調査によりますると、本年度輸出計画というものは三十一億五千万ドル、ところが、この四月、五月における輸出為替の取りきめ実績その他等を勘案いたしますると、これはまことに悲観すべき状態にあると思う。まずこの貿易計画について伺いますれば、果してこの三十一億五千万ドルの輸出実績が達成し得るという確信をお持ちでありまするかどうか、この点を一つお伺いいたしたい。
  126. 三木武夫

    ○三木国務大臣 率直に申して、三十一億五千万ドルの達成はなかなか困難だと思っております。これはできるだけその数字に近づける努力をしたいと思いますが、お前が確信をもって答えられるかというと、さようには答えられない、なかなか困難な数字である、これに近づけたい、こう思います。
  127. 春日一幸

    ○春日委員 経済政策の基調はこの貿易計画にあると思います。現在の一切のあなたの方の財政計画というものは、まずその基盤をなすものはこの輸出の伸びにあるわけなんです。三十一億五千万ドル輸出ができるという想定のもとに、一切の施策が組み立てられてきておるわけなんですね。だから、その基盤というものがくずれてくるというか、変ってくれば、従って、それをもととしたところの一切の政策というものは、やはりそれに即応したところの手直しというものが必要であろうと考える。これは当然の帰結であるわけなんですね。この点いかがでありますか。
  128. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今年度年度計画に対して一応の目標を定めたのでありますが、その目標にいつまでもこだわるわけではないのであります。必要があれば、その目標がどうしても達成できないという見通しのときには、再検討することは当然なことでありますが、今御指摘の輸出ども、とにかく、四、五と会計年度としては二カ月を経過したばかりであります。そういう点で、困難ではあるけれども、いろいろ今後貿易振興の施策、あるいは中共貿易もこれに関連しましょう。いろいろな点でまだ不確定な要素もたくさんあるから、もう少し見通しがつけば、見通しのついたところで、検討を加える必要があれば検討を加える、こう考えておるのであります。
  129. 春日一幸

    ○春日委員 もう少し見通しをつけてというのは、今大臣からも御意見がありましたが、二カ月の実績では、一年の想定を立てるということはなお資料に欠けるという御説もありました。そういたしますると、四カ月ぐらいの実績ならば想定は立つのでありますか。具体的には、あなたの腹づもりは、どの程度の実績をもって大体の見通しを立てられようとするのでありますか。これをちょっと伺っておきます。
  130. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは一つの大体幾らという見当があるわけではございませんが、まあ三、四カ月の——これは世界景気にも影響いたしますから、そういうことともにらみ合せて見当をつけたい。あるいはもう少し、とにかく確かな見通しというものがつくころが来れば、一つの数字をあげたからといって、その数字にこだわるという気持はない。こだわったところで、実績が示すのでありますから、こだわれるものではない。しかし、まだ二カ月くらい経過したところで一年全体の計画を検討して変えるということは、少し早いじゃないか、まあ三、四カ月というか、そのくらいの期間は様子を見てみたい、こう考えておるのであります。
  131. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、これは一つの仮定のことになるかもしれませんけれども、かりに七月、八月の輸出為替の取り組み実績を見られて、これでは二十八億ドル台、昨年の実績以上こえることはできないであろう、こういうような想定が立てられましたときには、あなたは、他のこれに関連するところの経済政策景気調整政策というものは、これは機動的にとられなければならぬと思うが、そういうお心がまえであられますか、いかがでありますか。
  132. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それが春日君が言われるような八月かどうかという、時期的なことは別として、一応確かな見通しを加えたならば、そのときには、こういう本年度経済計画というものは再検討を加えますし、必要があるならば、そのときに適宜の経済政策政府はとることが当然のことだろう、こう考えております。
  133. 春日一幸

    ○春日委員 私はこの点にこの法案の取扱いと関連して非常に微妙なものがあると思うのです。と申しますのは、この資金景気変動に応じて機動的に予算化するのが特質である。そこで問題になってくるのは、今まで予算委員会やどこかで長官が述べられて、大臣も述べられておったのだが、去年の予算編成期当時と現状、今の特別国会のこのときと比べて、経済基盤にはそんなに変化はない、だからこれは楽観もしないし悲観もしないで、静観してもう少し事態の推移をながめる、まあこういうことであったのでありますが、しかし、今三木長官の御見解をもってすれば、少くとも三十一億五千万ドルの輸出計画というものは非常に困難である。長官の腹の底では、これは二十八億ドル台くらいしか達成できないのではないかというきっと御不安等もあるであろうと思うのです。私は、率直に申し上げまして、経済情勢が変ってきておる。去年の予算編成期と今とそんなに変りはないという今までの御答弁は、これはほんとうの真意ではなく、また実態に合わないものである、こういう工合に私はこの際理解をしたいと思うのでありますが、そのように理解して差しつかえありませんか。
  134. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私どもの腹の底を見通されたようなお話でございますが、二十八億ドル、そういうふうに悲観的にも見ておりません。これは、努力をいたしますならば、困難な情勢の中でもよほど計画に接近していくことは不可能とは思っておらない。春日君のような、そういうふうな悲観的にも見ておりませんが、とにかく容易ではない。そこで、世界景気もございますが、一方において輸出振興の努力というものもよほどやらなければならぬというふうに考えておるので、今春日君のお考えのように、輸出の前途というものをその程度に悲観的には見ていないのであります。
  135. 春日一幸

    ○春日委員 どうも非常に困難ではないかと言われたり、そうでないように言われたり、二様の御答弁をされては、質疑が堂々めぐりするばかりで困るのでありますが、これは、私たちが一つの勘で意見を申し上げておるのではなくて、いろいろの経済雑誌やいろいろの政府の諸データの上に立って、また現在の輸出為替取り組みの実績やあるいは世界経済の動向等の上に立って、このような心配をいたしておるわけなのであります。でありますから、私が読んだものも、また大臣がお調べになっておるものも、資料は同じであろうと思う。でありますから、私は率直に申し述べまして、昨年の十月ごろと、また今と経済基盤が同じであるというようなことは、これは言うたところで通らないと思うのです。そしてまた計画を立てられたものが実現できるかどうか。去年の十月でことしの七、八月を予測することは困難でありましょうけれども、四月、五月、六月の実績を見てこの七、八、九月の大体の成績を予測するということは、私はそんなに不可能ではないと思う。輸出為替の取り組みが上半期の計画に対してかれこれ三割何分も減っておるということは、大臣もお認めのことであろうと思うのです。私は、こういう意味で、輸出の伸びというものが計画のごとくに伸び得ないとするならば、これは、そういう結果が生じた後において手直しをするというのではなくして、たとえば早期診断ということもあるのだけれども、病気の徴候が現われたときにこれを治療していく。こういうことで、病気になってしまってから治療にかかるというのではなくて、これはやはりその予防的な措置を講ずるということが、聡明な政治家であり、ことに国民に大きな責任を負うておられるあなた方の任務だと思うのでありますが、現段階においてその必要はお認めになりませんか。私は特に日本銀行があのような大幅な公定歩合の引き上げを三十二年度のたしか三月と五月の二回にわたってやりました。最初には一厘上げて、五月には二厘というような、外から見るならば、全くだらしのない、先見の明も何もないような公定歩合の引き上げの措置を講じたのだが、現経済の実情に即していち早く二厘の公定歩合の引き下げ、すなわち景気手直しの策に出たということは、私は、今回は、この前の失敗にかんがみて、相当英断をもってなされた良心的な措置ではなかろうかと、むしろ賞賛したい気持でこれをながめておるわけであります。私があなたに申し上げたいことは、国際収支は現実の結果として改善されつつあると思う。こういうような情勢下において、諸般の情勢をも勘案加味して、日銀は公定歩合の二厘の引き下げを行なった。財政と金融とは一体ということが自民党内閣の特質とされておるのだから、金融の面においてこういう手直しが行われたら、財政政策の面においても相呼応して何らかの措置が講ぜられてしかるべきものであると私は考える。でなければ、日銀が、昨年と今と同じ情勢にあるというならば、何も上げたものを下げる必要はない。下げたということは、経済の現象の中に相当の変化が生じたから、即応してそういうような措置を必要と認めたからであろうと思う。財政金融一体化の形において日本の行財政が行われておるのだから、この日銀の政策と見合った政府の財政政策というものが今こそとられなければならぬのではないかと考えるが、この点大蔵大臣いかがでありますか。
  136. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来他のお尋ねに対してお答えいたしましたように、私ども経済に対する見方は、ただいま財政的な積極的な施策をとるという時期ではないというのが結論でございますが、ただいま御指摘になりましたように、財政並びに金融の一体的構想と申しますか、これはぜひ必要じゃないかという御意見に対しましては、御指摘の通りに私ども考えております。しかし、今日の経済段階に対しましては、緊急対策としてとりましたその一つの公定歩合の引き上げに対するもの、これを引き下げて正常化する、まず第一段の処置をとったばかりでございます。総体から申しまして、今日当面しておる経済の段階は、まだ金融の面でとるべき措置があるのではないか、財政的な措置をとるのは、時期をもう少し見きわめた上で、しかる後にすべきではないか、かように考えております。
  137. 春日一幸

    ○春日委員 それではお伺いいたしまするが、金融の面においてなお一歩進んでとり得る措置を期待されておるようでございまするが、それは具体的には何を差し示しておりますか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  138. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今日日銀の貸出残高と申しますか、それにいたしましても、今なお五千億の状況でございます。こういうものがもう少し模様が変ってくる事態、これを想定いたしておるのでありまして、今日の状態は、正常にきつつあるとは申しましても、まだ、いわゆる平常化の状況という点から見れば、なるほど遠いものがあるように思います。
  139. 春日一幸

    ○春日委員 そうではなくて、二厘引き下げたんだが、なおかつ金融政策としてなし得る面があるようにちょっとおっしゃったのだが、それは具体的には何をおっしゃっておるのか、それを伺っておるのです。
  140. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 市中銀行の金利も、大体公定歩合の引き下げに順応して参りました。しかしながら、さらに短期、長期等の資金の関係におきましては、まだまだ考えていくべきものがあるように思います。こういう点が順次考えられていかれるだろうと思います。
  141. 春日一幸

    ○春日委員 そこで、私はさらに別の角度からお伺いしたいのでありまするが、私ども予算委員会や本委員会において口をそろえて強く政府に迫っておりますものは、今や対外収支の逆調が克服されたのだから、少くとも本年度内において一億五千万ドルないし三億ドルの黒字が予想される事態になってきたのだから、従って、これは、対外収支の関係を気がねすることなく、このたな上げ資金を取りくずしてもよかろうというのが、われわれの側の意見であります。私はこれは両大臣に伺いまするが、少くともこれを予算化する、このたな上げ資金を取りくずすと、現状においてどういうような弊害がもたらされてくるのか、何をおそれられてその措置をとられないのか、その点を一つ伺いたいと思います。
  142. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今のたな上げ資金の二百二十一億三千万円は、金額として非常に大きいものだとは考えません。しかし、この予算の規模というものは、やはり経済の規模に対応して考えられるべきことは当然だと思います。この観点に立ちまして、今日三十三年度予算を作っておりますものは、当時予想をされる——ことに三十三年度に予想されるような事態に対応して一応組まれた予算でございます。これを特に変更しなければならないような事情を私どもは実は考えておらないというのが、過日来の予算委員会等における説明で、これは一貫しておるのでございます。今日までお話を伺っておりますのは、大へんな経済不況じゃないか、この不況に対するてこ入れを必要とするのじゃないか、金融の面の話もさることながら、財政の面でもやれというのが、社会党側の御意見の大要のように私理解いたしておるのであります。私どもは、今日の経済情勢に対して、そういう積極的なてこ入れをすることは、他にいろいろな弊害をも生じてくるのじゃないか、金額の問題にあらず、これは心理的ないろいろな影響をもたらすのであって、従って、今日の状況は、公定歩合を引き下げることによって経済正常化の第一歩を踏み出しました。そうして経済状態の推移をしばらく見たい。その推移によりまして、皆さんの御指摘になるような財政的なてこ入れを必要とする、かように政府考えますれば、この資金を取りくずすことに別にやぶさかではございません。ただ、不幸にいたしまして、今日の段階では、私どもはさような見解を持っておらない。だから、この法律による資金だけはぜひとも皆さん方の御協賛を得て成立させて、将来に備えるためにも、これを一つこの法律でねらっておりますような資金としてこれを確定させておいていただきたいのであります。そういたしますならば、将来の事態に対しまして必要があれば、これを取りくずすことももちろん考え得る、かように思っております。
  143. 春日一幸

    ○春日委員 それは、現状の認識が相当——組閣でお忙しかったのかもしれませんけれども、どうも的確性を欠いておられるのではないかと思う。これは私は両大臣に切実に申し上げたいのでありますが、この経済情勢を直射反映するものは、労働事情であろうと思うのであります。これは私どもで企業整備状況をいろいろと調べてみたのでありまするが、特に整理人員が増加の傾向にあることがまことに著しいのです。まず整備件数を申し上げますと、三十一年は月平均二百四十一件であった。これは神武景気の当時であります。ところが、三十二年は月平均三百四十六件に増加しておった。そこで問題は本年一月からどうなっておるかということですが、本年一月は八百十件、二月は五百八十六件、三月は六百二十一件、四月は五百八十一件と、著しいテンポで激増しておる。次に、整理人員でありまするが、三十一年は月平均一万四百九十人、三十二年は一万五千百二十三人、ところが、本年一月になりますると、これがハイ・ジャンプして四万千七百三人、二月は一万九千八百二十九人、三月は二万三千七百七十五人、四月が二万六千二百三十一人となりまして、失業保険受給件数は本年三月には実に五十万四千人、これは雇用と失業情勢の悪化を歴然と示しておると思う。それからもう一つは、特に中小企業の関係についても御留意を願わなければならぬと思うのでありまするが、一番象徴的にその実態を示しておるのは、東京手形交換所における手形不渡り件数であろうと思うのです。これは、本年五月の不渡り手形の届出総数は六万五千三百三十三枚、そうしてその一枚平均の額は七万六千円と減ってきておるので、これは明らかに中小企業発行手形というものが大部分を占めておることが、これによって証明されると思う。こういうように手形はむちゃくちゃ、わが国手形交換制度始まって以来といってもいいほどの最悪のレコードを示し、失業保険を受けておる者は五十万人をこえておる。こういうような状態は、これはおそるべき事態といわなければならぬと思う。私たちが、景気に手直しというか、このような不況事態に対して、何らかの救済的な施策を講じろという主張の根源は実にここにあるのです。今大臣の御答弁によると、そんなことをやらぬでも何とかやっていけそうだ、こういうのでありますけれども、私は、財政法上の疑義をそのまま無視して、ほおかむりで、そうしてこういう立法を行うような冒険をあえて避けて、できることなら、このような労働情勢、それから中小企業窮乏の実情等をそのままこれを参酌して、ここに適切な施策、なるほど二百二十何億というような金は大した金ではございませんでしょうけれども、しかし、これを活用することによって、それはそれだけの実際の効果が上ろうと思うのです。あえてそのことをなされない理由は、私はあまりにこれは没理論のえこじではないかと思う。一体この事態を何ともお考えにならないのでありますか、何も対策を講じなくてもいいとお考えになりますか、この点一点。  それから、もう一つは、あまり経済を刺激しない方がいいというお説ですけれども経済を刺激しないでこういう労働対策、失対事業というものを行い得る道はたくさんありましょう。すなわち、わが党の補正予算の動議の中にもうたっておりまするように、たとえばまたこの経済基盤強化資金の用途、目的が、これまた明記してありまする道路だとか、港湾だとか、その他の事業、これは生産にあまり関係がないから、こういう方向への資金を取りくずして活用していっても、これは生産増強にならないから、生産調整の政府の既定方針に逆行するものではない。弊害というものは何も出てこないと思うのです。それをおやりにならない理由について御答弁を願いたい。
  144. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来石野委員のお尋ねに対しましてもお答えいたしましたように、現状に対して私ども楽観をしておるわけではもちろんございません。私どもは今日の経済はまことに深刻なものもあると思う。従いまして、これについて警戒を怠らない。これがまず第一です。今財政的な積極的施策を講じないと申しますのも、言いかえますなら、病後である、そういうものに対して非常な滋養摂取をしいることが果して可能かどうか、こういうことを実は心配いたしておるのであります。従いまして、ただいま御指摘になりましたような社会面における摩擦、これはもちろんできるだけ避けて参らなければならないことは当然でございます。三十三年度予算編成の際に際しましても、失業者が相当出てくるのではないか、こういう面から失業対策費も五十億程度ふやしたと思います。さらに失対の常時人員に対しましても二万五千人をふやしておる、あるいはまた公共事業費を増額したとか、こういうこと自体が、すでにこの失業対策に対しても意を用いて参ってきておるのでございます。ただいま御指摘になりました数字、その面から見ますと、時期的のズレもありますが、もっとあるいは深刻なものが出てくるかもわかなない。これに対しましては、政府といたしまして当然十分意を注いでこれが対策を講じなければならない、このことは申すまでもないことであります。失業保険が実際に給付されておる人員等につきましても、絶えず実は注意をいたしておるのであります。これらの予算もあるいは不足するのではないか、こういうようなお話もございますが、これは大体百五十億の予備金があるようでございますので、この点は一応まかない得るのではないか。私どもは、失業の問題につきましては、失業給付という問題が一つの柱であることはもちろんでございますが、何を申しましても就職させること、完全失業というような事態はあらゆる努力をいたしまして避けることにしなければならぬ。そのためには、やはり経済を強化していく。経済を強化していく場合に、これに非常に滋養摂取をしいることは、場合によりましては全体に対して立ち直りをおくらす結果にもなるのではないか。刺激することは一時の効果はあるでございましょうが、失業対策の基本的な解決方法として完全就労ということを考えます以上、やはり経済基盤を強化していく、そういう方向で物事を考えていきたい。今日当面しておる社会的な摩擦の面に対しての注意並びに応急的な措置は、もちろん講ずることを怠ってはならないと思います。これは少し議論が違うかわかりませんが、繭糸価の下落に伴い収入に非常な不安定を来たしたものに対しましては、今回特に資金を投入いたしまして、農村の経済の安定並びに農民所得の確保を期しておりますが、事態の推移によりましてはさらに特別な措置を講ずることは、私どももちろん考えて参りたい。ただ今日直ちにさような措置をとることが総体の経済を一そう健全にするという上千において効果があるかどうか、これはやはり考えて参りたい。だから、これは、別に失業対策についておろそかにするということではなくて、完全就労という方向において経済を健全にする、強固にする、このためには時期的にもう少し模様を見るべきではないか、これが私どもの議論であります。これは先ほど来いろいろ申し上げておりますが、お立場並びに御主張と相当かけ隔たっておることを遺憾に思います。
  145. 早川崇

    早川委員長 ちょっと春日君に申し上げますが、三木国務大臣は四時半にアメリカ大使館に呼ばれておるそうでありますから、三木国務大臣に対する御質問を差しつかえなければ先にやっていただきたいと思います。
  146. 春日一幸

    ○春日委員 大体私は観点がある点においてちょっと狂っておると思うのです。と申しますのは、経済基盤を強化しなければならぬというのは、これは、大臣も論議の余地のないところで、御同感の意を表されたわけでありますが、この資金経済基盤を強化することのためにたな上げをせんとしておる。すなわち、経済基盤を強化することのためのこれは財政措置ではないんですよ。後日強化することあるべし、しかしそのときはいつかわからぬ、そのときにはこの金を取りくずして使うということであって、今強化するというのではない。今日本経済は非常に弱体化しておるわです。輸出は伸び悩んでおる。それから失業は増大をしておる。中小企業の不渡り手形というものは激増して、まさにおそるべき事態である。あなたのところに北陸三県から繊維業者が陳情に参られて、全く三割操短で泣いて訴えておった。一昨日は綿スフの全国大会があって、これはみなつぶれてしまうのだ、経済恐慌の前夜にあるから救済しろと、これまた全国大会がなされておる。いろいろなデータもさることながら、民衆運動も今やかくのごとく激発しつつあるんですよ。だから、このような現状にかんがみて、今こそ必要なる施策を講じろ、あなたの言うところの経済基盤を強化したいのなら、なすって下さい、それを今やって下さいというんですよ。だが、この法律は、ここに二百何十億という財源がありながら、将来これを強化しましょう、いつするかわからない、こういう法律なんですね。そんな法律を出しておる余裕もないし、そんなところでたな上げをしておるような余裕があるのならば、戦争は今まさに激甚なんだから、従って、弾薬倉庫にかぎをかけてしまって、その弾薬をしまい込んでしまうというのではなしに、今その弾薬を使って、この憂うべき事態を克服するための有効な措置をとれ、こういうことを言っておる。だから、経済基盤強化のためにたな上げをする時期ではなしに、経済基盤強化のためにこの金を使うのは今なり、これがわれわれの主張なんです。私があなたにお伺いしたいのは、今申し上げたような症状です。データでは今言ったような完全失業者が八十五万、失業保際を受けておる数は五十万、潜在失業者は何十万、それからあの綿スフの問題、北陸三県の陳情、それから蚕繭糸の窮乏状態、それから鉄鋼関係の操業短縮も何もかも御承知通りなんです。だから、そういうような事態に即応して、今こそこの症状を治療しなければならぬ段階、あなたの言われる経済基盤を強化しなければならぬ段階だと私は思うのだが、この事態をこのままずっと見通していった方がいい、これを見過ごしていった方がいい、さりげなくこれは見過ごしていった方がいい、こういう工合に確信されておるとするならば、その根拠は何かということです。それは国民も私もわからない。国民の納得できるように、少くとも私の理解できるように説明を願いたい。
  147. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 昨年当面した経済状態、これはもう御承知通りで、これが正常な経済状態でないことは、もうすでに御了承の通りであります。従いまして、当時の予算編成いたしますについても、これをたらふく食べさせるといいますか、健康をそこねておる人に対して十分食を与えるという考え方では、その病気はなかなかなおってこない、健康回復はしない、こういう考え方で、歳入の面における財源を一応たな上げしておく、たらふく食べさせない、健康維持のためにそういうような必要があるという措置をとってきた。それが時期的におくれて、今日この法律を出しておる。大体、健康状態は、いわゆる下痢症状から少しは落ちついてきたが、それではこの際さらに一つもっと活動させるようにもっと食わしたらどうか、こういうお話のようにもとれるのですが、やはりその状況は、まだ急激にかたいものは食べさせないで、やわらかい状態でもう少し推移すべきじゃないか、これが私どもの見方なんです。今日たな上げするということは、それは回復期に臨んでいるわけでありますから、のどから手が出るような、ちょうど腸チフスのあとにおけるようなことがあるかもしれません。しかし、それをいきなり食べるということは、私は経済を健全にするという面から見まして賛成ができかねる。この点は、ただいま引例した例があるいは合わないかわかりませんが、からだの健康状態にとって話をするのが一番わかりいいのじゃないかと思って、ただいまのような話をしたわけであります。
  148. 春日一幸

    ○春日委員 それではまたかみ砕いて質問しなければならぬと思う。それでは、たとえば、経済に有機的な、さらにいろいろな効果を波及的に及ぼしていくような手術は、今おっしゃるような工合であるいは弊害があるかもしれない。ところが、道路の整備だとか、あるいは港湾の整備だとか、科学技術の振興というようなものは、これは言うなれば公共事業なんです。すなわち失業対策そのもので終って、生産の増強にも何にもなっていかないと思う。大体間接的、消極的にはあるかもしれませんが、直接的にはそういう影響が比較的少いと思う。だとすれば、この際二百二十何億という資金については財政法上の疑義があるから、この際道路整備の公共事業費、あるいは港湾修築のための公共事業費、あるいは科学振興のために必要な費用、そういうことで予算を組んでしまったらどうなんですか。そうすれば、これは経済に刺激を与えるというようなことにはならないでしょう。それからまた、全般的な広い視野から考えまして、これはもう、問題としましても、国際収支に対してももはや解決済みのような問題だから、そういう方面の考慮を払う必要もないであろう、こういうことだが、公共事業だけにこれを活用されたらどうなんですか。それは心配がないじゃないですか。
  149. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 公共事業はもちろん不況対策としてしばしばとられて参っております。これが経済に影響がないとはもちろん言える筋のものではない。いな、不況時におきましては、公共事業費などは大きな働きをなすものでございます。従って、今日そういうような事業をふやすことが適当かどうか、そういうことになるのでございます。この点は先ほど来申し上げた通りで、ただいまその時期ではない、これが私どもの結論であります。
  150. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、三木さんがお帰りになるようでありますから、私は経企長官にお尋ねいたしますが、ただいまの石野君に対する御答弁では、これを予算化する時期について非常に含蓄豊かな御答弁がございました。時期的にはわかっておるではないかというような御説等もあったように拝聴いたしました。これをさらに具体的に伺いますと、言うなれば年度内に予算化する可能性もあるのでありますか、この点を一つお伺いたしたいと思います。少くとも年度内にこれを予算化される可能性があるのかどうか、あるいはそういうような可能性は絶対にないのかどうか、この点を一つ御答弁願いたいのであります。
  151. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは時期をいつだということは申し上げることは困難だと思いますが、これは必要があれば年内という場合もあり得るであろうし、それを今から予測することはできない。しかし、そのところにこのたな上げ資金の妙味があり機動的な運用があるわけであります。
  152. 春日一幸

    ○春日委員 それは妙味がないんですよ。インチキ性があるということなんですよ。実際これは、財政法からいえば、本年度においてそういうような予算化するということであるならば、これは当然当初予算におて組むべきものであり、そういう妙ちくりんな財政法的の疑義を侵してまで、こういうたな上げ措置を講ずる必要はないと思います。また、年度内に予算化するということならば、今会期においてこんな法案というものは成立しなくてもよいという形になると思います。たとえていうならば、この法案が流れてもたな上げになっておるし、通ってもたな上げになっておる。だから、年度内に補正するということがあり得るならば、今会期においてこの法案が通らなくとも、少くとも資金に関する限りは結果は同じことになるのですね。法案が流れたってこの金はたな上げだし、通ったってたな上げだし、しかも年度内においてこれを予算化する可能性もあり得るということならば、これは、大蔵大臣もおっしゃるように、このままの事態でしばらく静観したらどうなんですか。実際の話が、国会の側においてもこれを静観して、本年度内においてこれを予算化することがあり得る、というようも、むしろ積極的に予算化しなければならないような事態も予測される。こういうことであるならば、財政法上の疑義をほおかぶりするような冒険をあえてする必要はないと思います。このままにしておいて、そうしてたとえば災害状況もこの八月の台風期を過ぎればよくわかる。臨時国会にはすぐ出てくる。あるいは、通常国会においても、三月までの間に、さらに経済状態についても相当の推移があろうと思われる。貿易実績も実態が現われてくる。そのときにこの二百何十億円を予算化すれば、私は財政上の疑義も払拭されると思います。冒険をすることがなくて済むのじゃないかと思うのでありますが、この点もう一度明確に願っておきたい。本年度内において予算化することがあり得るのかどうか、あるいは絶対にそのようなことは法の建前上あり得ないのか、この点どうも法案審議のわれわれの心がまえとして理解ができませんので、この点を一つ明確に経企長官から御答弁願いたい。
  153. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように、これを取りくずす時期については、経済の推移を見てその必要性を判断するということで、今年中とか来年とか、そういう時期を今から予定することは困難であります。ただ経済の推移によって景気の弾力的な運用をやって参りたいということでございますので、どうか、そういうことを前提として、この法案の審議に対していろいろ御配慮賜わらんことをお願いいたします。
  154. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 三木君の答弁でいいかと思いますが、今回提案いたしておりますのは資金基金の二つがございまして、この二つを結びつけたところに、初めて経済基盤強化という一つの大きな目的物が出て参るわけであります。従いまして、資金についていつ予算化するかというお話でございますが、この法律案はぜひとも皆様の御協賛を得て成立を期さないと、この基金の面におきまして非常な支障を来たす。これはすでにおわかりだと思います。同時にまた、資金の面におきましては、将来の情勢に応じまして、これを取りくずすと申しますか、事態に応じた扱い方をすることはもちろんでございます。
  155. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、少くともこういう事態が明らかになってきたと思うのです。資金については、この法案が通らなくても、年度内においては結局たな上げされておることにかわりはないから、どうでもいい。けれども基金については、他の法律との関係があって障害を来たすから、基金については通してもらいたい、こういうことだと思うのです。  そこで、私は主計局長にお伺いをしたいのでありますが、この資金基金とは全然異質のものである。これを一つ法律の中で取り扱っておるのでありまするが、異質のものを一つの単独法で扱うというようなことはかって前例がありますか。資金基金は全然異質のものだ。これは基金なら基金法律資金なら資金法律として分離して提案さるべきものである。異質のものを同じカテゴリーの中で論ずるということは間違いだと思う。私はかって前例がないと思うのだ。私はまるでハマグリとスズメみたいなものだと思うのです。全然似て非なるもの——似て非なるものじゃない。全然異質なものである。ただ、ともに焼き鳥になり焼きハマグリになるくらいで、そんなものは全然別なものだと思う。全然別のものをここに一つ法律で取り扱うというところに問題がある。今佐藤大蔵大臣は、資金なんかはどうでもいい、ほうっておいてもらっても、通してもらっても、たな上げになるのだから結果は同じだ、だから基金の方はあくまでも通せというような話だ。現にこういうような問題が出てくるのですよ。こういう異質のものを、ハマグリとスズメを一緒に扱う。実際こういった立法例がありますか。
  156. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私の発言について御理解をいただいておらないようでございますから、私もう少し申し上げてみたいと思います。この基金資金を一緒にいたしまして、そうして経済基盤強化目的を達成するのでございます。これはなるほど基金資金の性質は違っておるという議論があるかもしれません。これはいずれ後ほど主計局長からこの基金資金の相違についてはよく説明させますが、ただいま春日委員が言われますように、基金はぜひ通せ、資金は通さぬでもいいということを申すのではありません。ただいまハマグリのお話が出ておりましたが、ずいぶん異質のものを二つ一緒にして一皿になっているのも、私どもしばしば経験するところであります。
  157. 石原周夫

    ○石原政府委員 先般内田委員の御質問がございまして、そのときにもお答えを申し上げておいたのでありますが、この資金基金とは、同じく昭和三十一年度剰余金を財源といたしまして、同じいわゆるたな上げと申しまするか、一つの財政政策上の観点からとられた措置である。しかも、その資金並びに基金の管理並びに運用につきましては非常に共通の部分がございまするので、これを一括いたしまして、一つ法律として御審議を願っているわけであります。この措置自身が非常に異例のものでございまするので、これにぴったりはまった前例があるかどうかにつきましては即答をいたしかねるのでございますが、今申し上げましたような幾つかの事柄で非常に共通な面の多いものにつきまして、これを一本の法律にするという立法例は相当あるのですが、必要でございますれば、取り調べましてまたお答え申し上げますが、立法技術上しばしばそういうことをやっておると思います。
  158. 春日一幸

    ○春日委員 立法技術上はあり得るかもしれない。何でもやろうと思えばそれはやれるでしょうけれども、いまだかつてそういったことがないということは、特に御留意を願わなければならぬ。非常に異様なことをやっておるのですよ。だから、われわれ審議する側においても、資金の概念でこれをいろいろと研究していくと、今度は基金の面になると、もうてんで考え方が変ってしまうのです。だから、こういう異質の法案は、みんなそれぞれの特質に基いて、これを区分願って、そうして提出を願うのでないと、一つ法律に疑義があるから、必要な他の法律が結局通らないというような重大な事態が起きてくる。現に中小企業の信用保険の問題とか、その他必要かもしれないと思われるような施策が、この基金の問題にからまって重大な難航を続けておるというようなことは、これは一にかかって主計局長の責任であると断ぜざるを得ない。これは辞表提出に値するくらいなことだということを大いに痛感されて、十分御留意願いたい。  そこで、私はさらにお伺いをいたすのでありますが、経企長官はあしたまた出ていただきますから、どうぞお引き取り下さい。十一条の一の三ですな。この「輸出入銀行にあっては、東南アジア開発協力のための国際的機構に対する出資及び当該機構が設置されるまでの間において、」云々とある。一体こんな機関はあるのでありますか。一体東南アジア開発協力のための国際的機構とは何ぞや。なお当該機構が設置されるまでの間というのは、設置の機運にあるのでありますか。現在の経過はどういう状況にあるのか。何をさしておるか。こういう突拍子もないことを言ってもらってもわからない。
  159. 石原周夫

    ○石原政府委員 東南アジアの開発をいたしまするために、ある国際的な機構を考えまして、それに各国が出資をいたしまして、協力して東南アジアの開発に当るという構想が前からありますことは、御承知通りであります。それらの構想が実現をいたします場合におきましては、そういうようなものに対しまする出資をいたす。なお、それができます前にも、そういった国際的な協力関係に基きまする開発が当初はございました。それに対しまして日本が出資をする、参加をするというようなことがありました場合、その機構ができませんでも、その基金から出資するというのが、この考え方でございます。
  160. 春日一幸

    ○春日委員 だから、それが今あるのかというのです。たとえばこんな大きな金を出さんとするのでありますから、それがあり得るとは思う。ところが、その法的な根拠というものも必要であろうし、あるいはその実現の可能性というようなものについてもわれわれは承知しなければ、その可否を断じがたい。東南アジア開発機構というようなものは、一体だれが提唱して、だれに呼びかけて、いかなる資金量でもって、どういう機能を持つのか、そうしてそれはいつごろできるのか、そういうようなことをわれわれは承知することなくしては、国民の税金の六十五億というような巨大な支出に賛否を表しがたい。一体そういうものはあるのですか。実際はないと思うが、そういう話はだれとだれがどこでやっておるのですか、その点を伺いたい。
  161. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりましたような機構のないことは、御承知通りであります。ただ、政府といたしましては、この種の機構を将来進めまして、そうして東南アジアの開発に協力したい、こういう考え方を持っておるのであります。将来できるであろうことを予測してのただいまの処置であります。
  162. 春日一幸

    ○春日委員 これは現実にありはしないのです。あなたのお兄さんが、南方を回られたときに、えらいだぼらを吹きまくって、それからアメリカへ行かれて、その構想に基いてアイゼンハワーに話をされた。さりげなくふられて帰ってこられたことは、新聞で明らかな通りである。大体アメリカの資本、日本の技術、それから若干の出資によってこういう機構を設けようというような話があったことは、われわれも新聞で知りましたが、一体それをさしておるのでありますか。これはあの話の続きなんですか、どうでありますか。
  163. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろんあの話の続きであります。
  164. 春日一幸

    ○春日委員 私があなたに申し上げたいことは、とにかく実在もしない、いでつきるかわからない、しかも、この問題については、昨日の新聞である報道が行われてはおったけれども、現実には、アメリカの同調を得られなくて、かつはまた東南アジア自体の抵抗等もあって、これは実現が危ぶまれておるものなんです。できるかできないかわからない。またできるような場合においては、それは国会であらためて議決しなければならぬ問題でございましょう。そういうようなところへこれを基金として出し得るかどうか。これは現実の問題として重大な問題でありますよ。これは立法論として重大な疑義があるが、政策論としてもこんなむちゃをやっていいと思いますか。たとえば国内においては実在するところの多くの問題がある。国内においては、今申し上げましたような労働者の失業の増大、中小企業者の不渡りの激増、それから北陸三県においても、あるいは関東一帯においても、蚕繭糸をめぐりまして、また全国のすず業者その他鉄鋼業者、もうことごとくまるで恐慌前夜の姿を思わせるような、ほんとうに深刻な不況事態がある。それらの諸君が何とかしてくれ、何とかしてくれという実在するところの窮乏状態、国の施策にすがらなければならぬところの、また国としても救済をせなければならぬところの、自分の子供が病気になって、飢えに泣いておる。そいつをほっぽっておいて、三百里も向うの子供に、ごちそうを持っていったり、着物を持っていったりするようなものじゃありませんか。しかも、泣いておるか、飢えておるかわからぬやつに、郵便でこういうものがあるからといって送ってやるようなものじゃありませんか。東南アジア開発機構とかなんとかいうものは現存していない。実在していない。いつできるともわからぬ。できるときは国会の議決をあらためて必要とする。だとすれば、断じてこれは基金ではない。しいて言うならば、これは資金だ。実際の話二百二十何億の中に繰り入れなければならぬ性格のものだ。それはもう資金的性格のものなんですよ。他の基金というものは、労働協会にしても、あるいは農林漁業金融公庫にしても、その他ジェトロにしても、それは実在しておるものに対して出資をしていくのです。ところが、これは出資の形になるんだけれども、出資しょうと思ったって、相手がいないのです。ちょうどそれは資金と同じように、港湾あるいは道路の修築、災害復旧の問題に備えるんだから、これは資金的性格のものだ。だから、これは基金の方からはずして、そうして資金の方へこれを加えて、そういうような事態が起きたときに、あらためて国会において論議するという、そういう手続を踏むべき性格のものであると思う。もしこういうような取扱いが許されるならば、この資金だって——これは五つ用途目的が書いてある。道路の整備、港湾の整備、科学技術の振興、異常災害の復旧、産業投資特別会計の問題、こんな問題も、輸出入銀行に対する基金措置が、架空機関に対する架空出資がなし得るものならば、実際の話、資金の方だって、この五つの政策目的に対して、基金としての取扱いができないはずはない。この辺首尾一貫しないし、論理も筋が通っていないと思う。この点はどうですか。
  165. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 春日委員ですから、法文はお読みになったことだと思います。なるほど、御指摘になりましたように機構そのものはございませんが、「日本輸出入銀行にあっては、」ということで、現存する日本輸出入銀行に対する出資であることは間違いございません。その出資であるが、このものは、将来、ただいま考えられるような協力機構ができた後に対する引き当てとして、今日これを出資しようとするものであります。全然架空なものに対して基金設定、こういうことでは論理的にまだ少しギャップがあるように私は考まえすが、今日現存する日本輸出入銀行に対しまして、ただいま申すような性格を持って出資をしようというのでございます。
  166. 春日一幸

    ○春日委員 本来現在の輸出入銀行はそのような機能、権限を付与されていない。大体この輸出入銀行の使命、性格は、日本輸出入銀行法の第一条を読んでみればわかる。われわれはこの法律を作ったのだから……。そういう危険なことをやらせることの可否ということは、また深く論議をしなければならぬ。これは立法上どういう手続になりますか。これはあらためて国会において議決を要する事柄ではないかと考える。そこで、日本輸出入銀行がそういうことをなし得るか、できないか。今きまっておりますか。きまっておりませんでしょう。日本輸出入銀行がやろうと思っても、相手のないものはできないではありませんか。相手の受け入れ態勢もきっておらないし、また国際ということになりますと、第三国とのいろいろな話し合いが必要でしょうけれども、そういうことは実際話し合いが行われていない。そういうものが締結されて、その事業計画というものが確立して、そうして法的措置がことごとく完了した後に、これは基金としての必要性を生じてくる。基金というものを出資する必要性が生じてくる。今何にもわからないじゃありませんか。今できてもいないのですから、輸出入銀行がやろうとしてもやれないですよ。できていないものを輸出入銀行にその権限を与えてやろうとしてもやれない。だから、これは言うならば、今あなたの言われるように、「あっては」という文字の解釈からいくと、そういうような牽強付会の理論も成り立つかもしれないけれども、実際的には日本輸出入銀行がそれをやろうと思ってもやれないところに金を出して、それを基金と称することは間違いだと思う。だから、百尺退いて判断してみるならば、あなた方のそういう意図を是としても、これは少くとも資金的性格を持つものである。だからこういうような法というものは組みかえなければならない。だから、この六十五億は資金の中に入れて、そうして後日そういうようなことがやれる場合においては、またそうなった場合においては、これはやはり資金として国会であらためて予算の補正を講ずる、こういうことでなければ——そんなばかな立法措置がありますか。そんなことは許されません。
  167. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 だんだん話が詰まって参ったようでありますが、これはただいまお手元に差し上げてある法律案の六ページ十一行目の3を受けまして、——「日本輸出入銀行は、東南アジア開発協力基金に係る経理については、一般の業務に係る経理と区分し、特別の勘定を設けて整理しなければならない。」従いまして、ただいまは日本輸出入銀行ではこういう仕事のないことははっきりいたしておりますが、この法が制定されましたときには、御協賛を経ますれば、これによって授権もされ、はっきり日本輸出入銀行の扱い方もきまるわけであります。御了承願います。
  168. 春日一幸

    ○春日委員 そういうことは全く言いのがれの詭弁です。たとえばこの資金の問題でもそういう架空の支出なんです。よく言うてもこれは予測した支出なんです。だとすれば、この法律の第七条による「資金の使用」、それと同じことになるのですね。たとえば、将来における——これは実際において将来の問題なんです。たとえば、日本輸出入銀行が、将来において東南アジア開発機構ができて、それに協力のために出資を行うという場合において、出資を行うための財源措置をするというのだから、それはあたかも第七条と同じことなんだ。第七条、すなわち将来における道路の整備、将来における港湾の整備、それと同じことなんです。だとすれば、道路の整備だったら道路公団その他いろいろありまするけれども、たとえば、これだって、道路公団に基金として出してやって——道路の修理その他いろいろの道路の整備に当る機関はたくさんあるから、これは一がいには断じがたいとは思うけれども、そういうような意味合いにおいて、将来におけるということが問題になると思うので、この問題も私は基金的性格を持つものではあり得ないと思うのです。これは立法論。政策論としては、国内において問題が山積しておるときに、六十五億というような巨額の金をこんな方向へ——今使わねばならぬとするならばこれはわかる。これはやらなければならぬかもしれぬけれども国内問題ことごとくほうっておいて、いつ使うかもわからぬような、しかも外国への対策、そんなところへこんな金を出すというようなことは、何人が聞いたって納得できませんよ。法理論として疑義があるし、政策論としては了承いたしかねる。いかがでありますか。
  169. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この十一条の三に一応ただいま疑念を持たれた点は明文化してあるのでございます。これは主計局長をして説明させたいと思います。
  170. 石原周夫

    ○石原政府委員 先ほど大蔵大臣からお答えがございましたように、東南アジア開発基金という構想がございますので、その構想が実現をいたした際におきましては、これを輸出入銀行のこの基金から出資をいたすということがねらいであります。しかしながら、その前におきましても、国際的な規模における協力のいろいろな考え方があります。それに対して、これは何分にも相手のあることでありますので、そういう話が起りましたときにまたあらためて国会の議決を経るというような手続をとっておりますると、時間的に間に合いかねる点もございます。従いまして、ある金額のワク内において、これは開発協力基金という形におきまして輸出入銀行基金を作っておきますれば、それに対するこちら側の対策が立てられるということでございまするので、この際基金の形で輸出入銀行にその備えをしておくということが今日において必要だという点におきまして、将来資金から引き出して道路に充てる、港湾に充てるというのと違う意味におきまして、この基金を今日必要といたすという考え方であります。
  171. 春日一幸

    ○春日委員 そんなばかなことがありますか。そういう東南アジア開発機構の話し合いが行われておるだけなんです。それはできたときにその基金を必要とするのであって、それが何十億という大きな支出である限り、話ができたらすぐ出すなんというような筋合いのものじゃない。ことに国際的な問題じゃありませんか。日本国だけが出したところで、各国ともこういうような基金の支出をあらかじめ準備しておる国が現実の問題としてどこにありますか。そういうむちゃな話をされてはいけない。あるいは、最近の新聞では、アメリカ等において第二世界銀行についての話が進められておるというけれども、これも話し合いが進められておるというだけのことなんです。日本がこれに参加するか、参加する場合においてはいかなる機関がこれに当るか、こういうような問題についても論議を尽さなければならぬ。と同時に、また相手方東南アジアがそれを応諾するかどうか。特に今あそこでは内乱をやっておるのだから、そういうような事態において適切であるかどうか。そういうような問題についても十分国会において論議しなければならぬ問題である。そういうようなときに、将来できるというようなことを予測して、これも一つの仮定のことなんだ。仮定のものに対して、国の財政があり余っておるというのではない。そもそも、たな上げしたのは、これは限界輸入性向というものを顧慮して、これをナーヴアスに考えて、こういうものを予算に組んでしまったならば、予算が膨張して、そこで対外収支がさらに逆調を来たしたら大へんだというので上げたんだ。余っておるのではない。使おうとしても使えないからなんだ。だからそういうような財政技術上からたな上げしてあるのであって、使いたいところはあなたの方にだって山のごとくにある。金がないからできないというのではない。金があるけれども、それをやったら財政が膨張して対外収支に悪影響を与えるから、使うに使えないでたな上げしておる。だから、そうだとすれば、その金の使い方というものは、おのずから限界というものがあるわけなんだ。ほんとうにたな上げするんなら、純粋にたな上げすべきなんだ。そんなところに出してしまうということは、これは厳に慎しまなければならぬ問題だと思うが、この点いかがでありますか。
  172. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま私が申し上げようと思っている点を春日委員が御指摘になりましたので、先ほど来は、このたな上げ資金二百二十一億三千万円についての資金的な問題について、なぜ予算化しないかというお話がございましたが、予算化しない理由を当時るる申し上げたはずであります。残っておる基金につきましても、同様に、これを直ちに予算化することを実は不適当と考えて、これを使うということは不適当だと考えて、そこで基金として、これをくずさないことを考えておるのでございます。これは、ただいま御指摘になりました通り、四百三十六億三千万円全体をたな上げする。しかし、たな上げと申しましても、何ら目的なしにたな上げはしない。これを一部は基金としてそれぞれの運用の面を考える。また他の二百二十一億三千万円にいたしましても、将来くずす場合にはどういう方向に使うかという、この目的をはっきりいたして、そうして今日法律案を出しておるのでございます。先ほど来、基金だとか資金だとかいう点について、いろいろ御疑念もあるかと思いますが、この点は私はあまり法律家ではございませんから、言葉の問題よりも、その目的並びにその運用等、これがて出きている財源なり運用等が同一であるというこの点に特に重点を置いて、この基金資金を一緒の法律にすることも、これまた一つ方法ではないかと思います。この点はあまり法律的な議論ではないかもしれませんが、政治的に考えましてかように思う次第でございます。
  173. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 議事進行。  本法案につきましては財政法にも疑義がありますので、暫時休憩して、理事会を開いていろいろ協議さしていただきたいと思います。
  174. 早川崇

    早川委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  175. 早川崇

    早川委員長 速記を始めて。会議を開きます。本案に関する質疑は後日に譲ります。     —————————————
  176. 早川崇

    早川委員長 連合審査会開会の件についてお諮りいたします。本委員会において審査いたしておりまする経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案に対して農林水産委員会及び商工委員会より、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案に対しては外務委員会より、それぞれ連合審査会を開会いたしたいとの申し入れがあります。これを受諾し、それぞれ連合審査会を開会するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  177. 早川崇

    早川委員長 御異議なしと認めます。よって、連合審査会を開会することに決しました。なお、開会の日時並びに審査方法等につきましては、各委員長と打ち合せの上決定するということで、委員長に御一任を願いたいと存じます。大体明日の午前中をこれに充てることに予定しておりますので、御了承下さい。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時九分散会