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1958-07-03 第29回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月三日(木曜日)     午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君    理事 小平 久雄君 理事 中垣 國男君    理事 中村 幸八君 理事 加藤 鐐造君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       新井 京太君    岡部 得三君       岡本  茂君    奧村又十郎君       菅野和太郎君    木倉和一郎君       關谷 勝利君    田中 榮一君       中井 一夫君    西村 直己君       野原 正勝君    濱田 正信君       渡邊 本治君    伊藤卯四郎君       板川 正吾君    今村  等君       内海  清君    大矢 省三君       勝澤 芳雄君    小林 正美君       鈴木  一君    永井勝次郎君       水谷長三郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  高碕達之助君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  坂根 哲夫君         通商産業政務次         官       大島 秀一君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         通商産業事務官         (企業局長)  川上 金藏君         中小企業庁長官 川上 為治君  委員外出席者         通商産業事務官         (重工業局長) 岩城 照彦君         通商産業事務官         (鉱山局長)  福井 政男君         通商産業事務官         (石炭局長)  村田  恒君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      小出 栄一君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 七月三日  委員岡部得三君、高橋等君、渡邊本治君、伊藤  卯四郎君及び多賀谷真稔辞任につき、その補  欠として大倉三郎君、黒金泰美君、正力松太郎  君、水谷長三郎君及び今村等君が議長指名で  委員に選任された。 同日  委員大倉三郎君及び正力松太郎辞任につき、  その補欠として岡部得三君及び渡邊本治君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 七月二日  同(板川正吾紹介)(第三五二号)  同外一件(鈴木茂三郎紹介)(第三五三号)  同(田中武夫紹介)(第三五四号)  東北地方開発具体策確立に関する請願石山  權作君紹介)(第三四九号)  東北開発促進計画早期作成に関する請願(石  山權作君紹介)(第三五〇号)  特定地域開発事業促進に関する請願石山權作  君紹介)(第三五一号)  バナナ輸入行政措置適正化に関する請願(高  橋英吉紹介)(第三五五号)  百貨店及びその傍系別会社規制強化等に関する  請願神近市子紹介)(第三一三号)  同(島上善五郎紹介)(第三一四号)  同外三件(原彪紹介)(第三一五号)  発明者表彰に関する請願原健三郎紹介)(  第三五六号)  速度調節機生産援助に関する請願原健三郎  君紹介)(第三五七号)  江川ダム建設反対に関する請願永山忠則君紹  介)(第三六四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  通商産業基本施策に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  まず閉会審査に関する件についてお諮りをいたします。  先刻の理事会におきまして協議いたしました結果、今国会が閉会となりました後も、本委員会活動を円滑ならしめるために  一、日本経済総合的基本政策に関する件  二、電気及びガスに関する件  三、鉱業鉄鋼業繊維工業化学工業機械工業その他一般鉱工業及び特許に関する件  四、通商に関する件  五、中小企業に関する件  六、私的独占禁止及び公正取引に関する件以上の各件につきまして、議長閉会審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  4. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に、閉会中の委員派遣承認申請の件についてお諮りをいたします。  閉会審査案件が付託されました際、審査の必要上、現地調査を行わなければならない場合もあろうと存じます。この場合の委員派遣承認申請の諸手続に関しましては、あらかじめすべて委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  6. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に、現在当委員会に設置されております繊維不況対策に関する小委員会は、閉会中もこれを引き続き設置することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  なおこの小委員会の小委員辞任許可及び欠員を生じた場合の補欠選任に関しましては、あらかじめ委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認め、さよう決定をいたしました。     —————————————
  9. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に、通商産業基本施策に関する件、日本経済総合的基本施策に関する件、私的独占禁止及び公正取引に関する件並びに鉱業一般公益との調整等に関する件につきまして、質疑の通告がありますので、順次これを許可をいたします、田中武夫君。
  10. 田中武夫

    田中(武)委員 きょうは、大臣初めその他政府委員の方に、中小企業政策、ことに商業関係について若干のお伺いをいたしったい、このように考えます。  まず最初にお伺いいたたいのですが、百貨店法が成立実施せられましてからちょうど二年たっております。この間この百貨店法が、百貨店法に定められた目的に従ってどのような効果をあげたか、実施の状況について、これは政府委員でけっこうですから、簡単に御報告願いたいと思います。
  11. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 御承知のように百貨店法が施行されまして、しばらくの間附則第三条による経過期間があったのであります。この経過期間におきましては、すでに百貨店の建築、あるいは売場面積拡張等に手をつけておるものにつきましては、いわゆる経過的な扱いをいたしたのであります。この間におきまして、その床面積売場面積等増加が相当大幅にふえたことは御承知通りでありまして、この間われわれの方の計算で見ましても、約三割程度売場面積増加を示したようであります。そういうこともございまして、この経過期間が過ぎましてから後におきましては、私ども法律運営に当っても、百貨店売場面積増加その他をできるだけ厳重にやって審査をしていくべきだということで、その後の審査は、前よりも相当厳重にいたしておるわけでありますが、現在までにそのような扱いをいたしまして、その処理件数の中で、その申請に対して不許可扱いをいたしたものも十件近くありますし、また不許可扱いになりそうだというので、事実上申請者の方で取り下げたものも数件ほどございますが、これらの点は、別途資料としてお手元に差し上げたいと思います。しかし全体といたしまして、やはり経過期間後においても、絶対に売場面積増加あるいは百貨店許可をしないということにいたしますと、これは、いわゆる経過期間に、よくかけ込みというような言葉が使われておりましたが、そのようなことをやったものが事実上得をして、その後においては絶対に許可その他ができないということでは、かえって不公平になるのではないかというような意見もありますし、そういうことも考えまして、ケース・バイ・ケースに厳重な審査を進めて参っておるというような実情でございます。
  12. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまの局長の御答弁によると、それでは、百貨店法は大体所期の目的を達しつつある、このように御了解になっておりますか。
  13. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 法律に掲げられております目的、あるいは営業の許可売場面積増加許可、不許可というような点に関します限りは、法律運用は、私どものつもりではその趣旨に十分のっとって運用して参っておるつもりでございます。
  14. 田中武夫

    田中(武)委員 ところが、それは売場面積許可、不許可というような問題だけでなく、百貨店法目的は、第一条に示された通り百貨店業事業活動調整することにより、中小商業事業活動の機会を確保し、商業の正常な発達を図り、もって国民経済の健全な進展に資することを目的とする。」こう明記せられておりますが、この二年間の経過状態を見ておりましたら、必ずしもこの百貨店法の第一条に定める目的が達成せられていない、むしろこの百貨店法脱法行為ともいうべき事態が各所に起りつつある、こういう点について、局長御存じと思うのですが、知っておられても知らぬ顔をしているのではないかと思われるのです。あと一つ一つそういう事例をあげて御質問いたしたいと思いますが、まず第一番にお伺いいたしたいことはこの百貨店法に定められるところによって百貨店審議会が設置されております。この構成メンバーは、六月十五日に任期が満了することになっておると思いますが、この任期満了後、百貨店審議会メンバーについてどのような構成をもって新たに発足せられようと考えておられるのか、そのままメンバーを置くつもりか、あるいは二年間の経過考えられた上に立って、このメンバーの若干の変更を考えられておるかどうか、お伺いたいします。
  15. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 百貨店審議会委員をお願いしております方々は、従来百貨店審議会運営状況等を私どもの目から見ましても、いずれも学識達識の方である、また公正な方であると確信をいたしております。従来審議会の答申の結果によりまして、行政処分をいたして参っておるのでありまして、いずれも私どもは、百貨店法運営について公正な運営をしてきたつもりでございまして、審議会委員について、私どもの方で特別の不満とか、そういう考えは持っていないつもりでございます。
  16. 田中武夫

    田中(武)委員 ところが大いにあるんですよ。この百貨店法の円滑な運用のためには、百貨店審議会の果す役割は大きいと思う。百貨店審議会の果す役割が大きいということは、結局それを構成するメンバーが大きな責任を持っていると思う。だがしかし、これらのメンバーの中に、その人選を誤まるならば、百貨店法を円滑に運用するということでなくそれをいかにしてもぐるか、あるいはそういうことに疑問があることに対して、いかにこれを寛大に取り扱うか、こういうような方向にのみ考えておる人たちが多い。百貨店審議会メンバーに、これによって実際の生活をささえられておる中小、ことに小売商業人たちが、大きな不信を持っておる。そういう人がおるとするならば、この審議会できめられたことによって百貨店法運用せられるとするならば、この百貨店法それ自体に大きな疑惑を持つ、こういうことが考えられるのです。名前を言えというならば、あげて事実を指摘したいと思いますが、この委員会においては、名前はあげたくないと思う。しかしながら、だれを指しておるかということは、局長御存じと思うが、いかがでしょう。
  17. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 私ども承知しております限りでは、従来の委員会運営について、格委員の公正なお立場なり、また達識の御見解なりについて、私どもは何らそういうことはないというふうに確信いたしております。
  18. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、ここで名前指摘して申し上げてよろしいのですか。私は、そういうことををやるのを好まないのですが、その人の経歴審議会における行動、そういう点について大きな不信が出ておる。名前を申し上げましょうか。大臣とはあとでよく御相談したいと思いますが、そのメンバーについてお考えになりますか、いかがでしょう。名前を言えと言うなら、名前を申し上げます。そして、その人の経歴及びその人のとった行動について詳細にわたって——委員長にも申し上げておきますが、それをやり出すと三十分ではだめですから、午前中の時間を私にいただかななければなりません。大臣、いかがですか。
  19. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答えいたします。もしそういう事実がありとすれば、私は大いに考慮したいと思いますが、今名曲をあげて質問されることは、一般にもはなはだ迷惑でございましょうから、簡単にお話を願いますれば、非常にいい参考になると思います。
  20. 田中武夫

    田中(武)委員 やはり大臣の方が政治的な発言をせられると思う。それでは、名前をあげることはよしましょう。しかしあとで、私関係者からいろいろ聞いておりますので、大臣局長に、名前をこっそり耳打ちをいたしますから、よくお考えを願いたいと思います。  次に、同じく百貨店法によって作られておる商業活動調整協議会についてでありますが、これは、法によりますと、商工会議所に諮問するということになっておりまして、商工会議所に諮問せられたときに、答中を出す必要上から、その商工会議所内商業活動調整協議会というのを設けて活動しておるようであります。しかし、これは法律制定のときにも、議事録を見ていただけばわかると思いますが、私は、こういう点について強く申し上げておいたと思いますが、大体商工会議所構成メンバーはどういう人たちによって構成せられており、実際に商工会議所を支配しておるというか、牛耳っておるかというと、それが大都会であればあるほど大きな企業、大きな資本をもってバックする人たちである。それが地方の小都市であれば、やはりそれにふさわしいような地方的な資本家、その地方でも比較的大きい企業家によって握られておる。従って、そういう人たちの牛耳っておるところの商工会議所が、大体の行き方として、大企業中心的な考え方に立っておるということは、いなめない事実であろうと思うのです。ところが、この規定によって作られておる商業活動調整協議会もやはりそれを反映するような構成メンバーになっておる。言いわけ的に、この商業活動調整協議会メンバー小売商代表が二、三入っているにすぎない、十数名のメンバーのうち二、三人の代表者がおったとしても、これらの人たち意見は、ほんの蚊の鳴く程度にしか響かない。従って、その商業活動調整協議会の答申なるものは、その地方における小売商業意見は、抹殺されて答申せられておることが多いと思う。そういう事実は、局長もよく御存じだと思う。そこで、特に大臣にお伺いいたしたいのですが、そういう事実を認められるかどうか。認められるとするならば、百貨店法の円滑な運営、法の目的達成のために、この商業活動調整協議会構成メンバーについて、一考を願わねばならないその一つの方法として、これは労働問題になりますが、中央労働委員会あるいは地方労働委員会は、争議の調整あっせん等をするために設けられておる委員会でありますが、これの構成が、御承知のように三者構成になっておる。十五名あるいは二十一名等のメンバーによって、労働者を代表する者五名、使用者側を代走する者五名、そして公益を代表する者五名というような三者構成になっております。従ってこの商業活動調整協議会メンバーも、こういった委員会と同じような三者構成、すなわち小売商業を代表する者、それから大企業を代表する者、そして公益ないし消費者を代表する者、こういうものを三者同率にして発足せしめるならば、公正なる結論が出るのではないかと考えますが、これについての御所見を伺いたい。こういうことは、別に法の改正を待たなくても、行政的な措置でやれることでありますから、大臣に、そういった点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  21. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 審議会メンバーにいたしましても、また商業活動調整協業議会メンバーにいたしましても、小売業者発言力を相当強くすべきであるということは私は痛感いたしております。これをどんな割合にするかということはよく審議をいたしますが、しかしえてすると小売業者の個人々々の力が弱いために、その発言力がこういうふうな会議において、はきわめて薄弱だということはあり得ることだと私は存じております。できるだけそういうことのないように、今後十分注意してメンバー調整なりあるいは今の数を幾らにするかというふうな問題等もよく検討いたしたいと存じております。趣旨におきましては小売業者発言力を相当強くし得るように持っていきたい、こう私は思っております。
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣の御答弁によると、趣旨は尊重していきたい、こういうことであるのでこれ以上私申し上げませんが、でき得ればそういった委員会は三者構成、しかもほんとうに人数においても三者が平等である、こういうことがいいのじゃないか。これは労働委員会等が比較的円滑に運営せられておるという点から見てもいいと思います。そこで局長にお願いしておきたいのですが、実際各地商業活動調整協議会実情がどういうものであるか、もう十分御存じたと思いますが、十分調査をしていただいて今申し上げましたような事実がありますので、これの対策について十分な配慮を願いたい、このように思うわけであります。  次に先ほど申しましたように百貨店法が実施せられたが、実際は百貨店目的としているようなことが事実上において行われずして、いわば百質店法脱法行為といいますか、これをもぐる行為としていろいろな事態が起っておることについて、私一、二の事例をあげて御質問いたしたいと思うのであります。まず第一の点は、日本信用販売株式会社、これは御承知と思いますが、最近まで星島議長が社長か、会長かをしておられた株式会社です。これが昭和二十六年に発足いたしまして東京に設立せられたわけですが、それがいわゆるチケット販売、こういうにとでどどんと進出いたしております。このチケット販売がいわゆる一般労働著に対して、物を買う上において便利であるということは私は認めます。ところが最近この日本信用販売株式会社各地に出張所、支店を出す、あるいは傍系会社を作る。そういうことで、そのチケットの相手方というか、買い得る範囲百貨店を入れておる、そうして百円程度のものまでもそのチケットで買えるようりにする、こういうことでこのチケット利用がほとんど百貨店に集中していく、こういうところから百貨店がどんどん物が売れるが、それに反して中小企業のいわゆる小売商の方は物が売れない、こういうような事態が起きておる。これを裏面から見ますならば、百貨店月賦販売と同じ効果をあげておる、こういうことになるわけなんです。この点につきまして日本信用販売株式会社の実際の状況等について、企業局長調査をしておられるなら、お伺いしたいと思うわけであります。
  23. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 信用販売の問題につきましては、全体の問題として今御指摘のございました日信販のほか、いろいな信用販売の形が事実上発生して、今いろいろな形で利用されておることは私もよく承知いたしておりますが、ただその信用販売の形がどういう形で、どの程度まで、どの範囲利用されておるかという実態調査は、まだ必ずしも十分できておりませんが、実は先般この問題の調査商工会議所の方にもお願いいたしまして、ある程々の調査はできております。御承知のように信用販売利用東京では今御指摘のございましたように、百貨店全部ではございませんけれども、現在大部分の百貨店について日信販利用されております。しかし同時にまた小売商の側に信用販売制度日信販の形なり、あるいはそれ以外の形でまたいろいろ利用されておるようであります。いずれにいたしましても、信用販売制度運用といいますか、動かし方について、どういうふうに考えるかという根本問題が、実は私ども商業政策と申しますか、そういう角度からだんだん重大な問題として出て参りましたので、先ほど申しましたものはまだ調査段階でございますが、今後この問題について信用販売制度そのものに、ある程度政策的な配慮が必要であろうと思います。ただ今御指摘のございました百貨店が、信用販売利用することによって、一体どれくらい売り上げを上げておるかというような、その角度からの調査は実はまだ私ども手元にはございませんが、私どもの概略承知いたしておりますところでは、百貨店売り上げ総高の中に占める信販収売による売上というものは、きわめて微々たるものである、現状ではまだ非常に少い率であるというふうに承知いたしておりますが、今御指摘のございましたような点に問題もいろいろございますが、今後早急に実態調査等を進めて参りたいというふうに考えております。
  24. 田中武夫

    田中(武)委員 信用販売株式会社の実際の状況については、私は資料を持っておるのです。読み上げてもよいのですが、私の質問時間が三十分程度ということですから、これを一々やっておるとあと質問ができませんので省略いたしますが、実際相当な発展ぶりを示しておる、いわゆる月賦販売界におけるマンモスであるというような新聞の批評等もある、こういうことによって十分その状態御存じだろうと思いますので、またそういうことについてどういう状態であるかということであれば、あとでこの資料を見せて御相談いたしたいと思います。  そこでお伺いいたしたいことは、そいったように日本信用販売株式会社百貨店の提携によるこのクーポン制度が、中小小売商に対して大きな圧迫となっておる、こういう事実はいなめないのであります。そこで百貨店法の第九条の中には、「百貨店業事業活動を通じて中小商業事業活動に影響を及ぼすおそれがある場合において」云々と、こういうことになっておって、大臣からそういうにとについて勧告ができる、こういう規定があるわけです。現にそういった事態があって、しかもそれが百貨店月賦販売割賦販売の変った手として現実において小売商を圧迫し、そのためにはっきりと二割、三割の減収、売上高が減っており、中には倒産を来たすといったような状況にある。そうするならば、百貨店法、第一条の目的から見て、第九条の勧告をすべき事項に該当するのではないか、このように考えますので、大臣がこういうことを十分調査せられて、今私が申し上げているような事実ありとするならば勧告せられる意思があるかどうか、この点をお伺いいたします。と同時に、この百貨店法審議いたしました際に、わが社会党から提出いたしました——これは残念ながら政府案が通って、われわれのやつは廃案になりましたが、そのわれわれの提出した百貨店法では、百貨店の行う直接または間接の月賦販売行為許可制度ということにいたしておりました。従ってわが社会党案が通っておれば、こういう問題は初めからなかったと思う。いわゆる百貨店の間接的な割賦販売行為だ、従って大臣許可制度である。そこでわれわれのは通っていないのだから、今の百貨店法とすれば九条を発動する、九条の勧告発動ずる、こういうことよりこれを救済する道はないと思うのです。そこで大臣にそういうことについて勧告の意思ありやいなやお伺いいたします。
  25. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 はなはだ申しわけないですけれども、私はほんとう日本信用販売株式会社が現在どういう活動をしておるかということをよく調べておりません。これをよく調査いたしまして、その弊害が田中委員のおっしゃるごとくあるものとすれば、第九条をもって発動いたしたいと存じております。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣は実際の状況十分御存じない、これは一応わかるが、局長はわかっていると思うのです。だから、私はここでこれも時間をいただけるなら全部状況を読みますが、時間がないのであとでお話しいたしますから、それをよく大臣に話をせられて、九条勧告の時期であると私考えますので、御配慮を願いたいと思う。  なおまた同じくこの百貨店の、デパートの手を変えた百貨店法脱法行為ともいうべき問題がもう一つある。それは今問題になっておるスーパー・マーケットの件ですが、これは去る二月十二日の当委員会において八木昇君が一応事態をあげて質問をいたしておりますので、時間の関係上その事態につきましては私申し上げませんが、東横百貨店がその傍系である東光マーケットというのを作り、その資本金の二千万円のうち一千万円は東横が持ち、一千万円は白木屋が持ち、その白木屋と東横は吸収合併をする、こういう事態、こういう点についてもよく御承知と思いますが、全東京都内各地にこの東光マーケットは営業店を持つ、こういうことを言っておるわけなんです。この計画は都内に二百カ所を計画しているそうであります。そうするなら、一区当り八営業所になる。そういうことであるならば、これが地元小売商に及ぼす影響がどれだけ重要なものであり、重大なものがあるか、こういうことも十分うかがわれるわけなんです。そこでまず公正取引委員会にお伺いいたしたいのですが、こういう事態に対しまして、まず百貨店がこの傍系によってそういうことをやるということが独禁法の一条違反、また株主権を取得し、これを支配するということが九条違反である、こういうことによって二月十一日に提訴がなされておるわけであります。私ただいま審理進行中の事件に対して、その内容に立ち至ってとやかく申すわけではございませんが、この審理がその後いかなる経過をたどっておるのか、まずお伺いいたします。
  27. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ただいま御質問の東光ストアの件は二月十一日公正取引委員会に申告がございました。その申告の趣旨は、第一点は、東光ストアが東急の傍系会社でございます東横百貨店及び白木屋の資本によって設立されて、目黒ほか六店の営業所を有しておりますが、同ストアは昭和三十二年九月文京区駕籠町にも店を開設した、そこでその駕籠町付近の零細小売業者売り上げの激減を来たした、これは小売商の立場からいえば非常に憂慮すべき事態であって、これは独占禁止法第三条の私的独占、すなわち東急が巨大資本の支配力によって零細小売業者を排除せんとしているのではないかということが第一点の問題になっているわけであります。それから第二点は、先ほどお話の中にございましたように、東急が、東横百貨店と当時競争関係にございました白木屋の株を取得いたしまして、そうして東急が白木屋の株主を辞任さした、これは独禁法の不公正な取引方法に該当するということが第二点であります。それから第三点は、東急が傍系会社十数社の株式を所有しておる、これが第九条の持株会社禁止の違反ではないかというような点で提訴がございまして、いずれもかなりデリケートな問題でございます、デリケートというのは、これは私どもまだ審理中でございますから、もちろんどうとも申しませんが、法の解釈上かなり困難な点を縫ったやり方が行われておる、従ってこの調べには非常に慎重な調べが要る。たとえば第一点の、周辺の零細な小売業者の小売の激減を来たしておるというのは一体どの程度かということは、これも周辺の小売店に当りまして、ただいまその東光ストア開設以後の売上高状況調査しているような状況でございまして、こういうようなかなりこまかい問題をただいま予備審査と申しますか、そういうことを行なっている段階でございまして、いずれ結論が出ましたならば、これははっきりまた当委員会にも報告できることと思います。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 私は独立機関としての公正取引委員会がやられることに対して、この段階においてとやかく申し上げるつもりはありません。しかしながら二月十一日に提訴せられたのが、今日七月になって予備審査ということのようですが、相当期間がたっていると思う。私は公正取引委員会へ提訴をしてその結審が出るのは何カ月くらいかかるものかよく知らないが、少しおそ過ぎるのではないかと思う。  時間がないという委員長からの催促ですので急ぎたいと思いますが、公正取引委員会は経済憲法ともいうべき独占禁止法を守って、独占禁止の上に立って、大資本の圧力から中小企業を守るのが公正取引委員会の本来の務めだと思う。ところが今日ではどうもそうではなさそうな気がしてきている。しかも私ひがみかは知らないが、大臣の今回の所信表明にもありましたが、独禁法緩和の気分が大臣からも言われておる。また去る二月ですか、独禁法改正審議会の結論も出たようであります。そこであなた方はこれに対する結論を延ばしておいて、独禁法が改正せられるまで逃げ込むのではないか、こういったような気持すら持っておる。あなた方は公正取引委員会本来の任務として独占禁止法をどのように守り、これをたてとして、いかなる態度において大資本からの中小企業に対する圧迫に対しその防波堤となる心組みを持っておられるのか、その心組みのほどを一つお伺いいたします。
  29. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ただいま田中委員から独占禁止法の運営について十分厳正を期せという、われわれにとっては非常にあたたかい御注意がございました。ただいまのお話のように、私どもも独占禁止法の運用については現行法の解釈を何も情勢によって曲げる、そういうことは全然考えておりません。かつまた先ほどのお話にありましたように、答申が出ておったから、現行法の解釈がこれに左右されておるというようなことは、私ども全然考えておりませんが、ただいまの問題は要するに社会的に非常にいかぬのだという一つの社会正義に立っての問題と、法律でまかなうところの独占であるとか、カルテルの問題であるとか、やはりこれは法律の解釈の範囲内でやっていかなければならない、こう考えておりまして、その事実の関係と法律の解釈をどうするかということが非常に問題である、こう考えております。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 公正取引委員会としては周囲の政治的な情勢によってよろめくことなく、公正取引委員会本来の使命を果すよう努めてもらいたいことを要望いたしておきます。  そこで大臣にお伺いいたしますが、今私、日本信用販売株式会社の問題、あるいは東光マーケットの問題等々一、二の例をあげましたが、こうして見ればまたいろいろとほかにも資料もあり、事例もあるわけなんです。そういたしますと、百貨店法の制定のときに考えておった目的が十分達せられていない、こういうことはよく御納得していただけると思う。どうやら百貨店法を再検討し、改正を考えるべき時期が二年の経過を見た上において来ているのではないかと思う。ことに政府は法を改悪する場合において、実施の経過にかんがみ、こういうことをよく使われますが、まさに実施の経過にかんがみて百貨店法を改正すべき時期に来ておると考えておりますが、大臣はこの点についてどのようにお考えになるのか、お伺いいたします。
  31. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 百貨店法が最初制定されましたその目的達成のために間違っておることがあるとすれば、もうすでに二カ年の経験を経ておりますから、これを改正することには断じてやぶさかでありません。なお独禁法の改正につきましても、先ほど田中さんが指摘されたように、独禁法の改正が大企業を擁護するためであるというふうなことがあれば、これは根本において間違いでありまして、私ども趣旨は、むしろ中小企業をいかにして力を強くさせるかということがその改正をいたす際の目的でありますから、その目的は根本的にあなたのおっしゃっていることと違っているということを弁明いたしておきます。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣のただいまの御答弁、言葉通り受け取っておきます。  この際ついでにちょっと公正取引委員会にお尋ねいたしたいのですが、先日来当委員会におきまして、繊維の不況対策の問題についていろいろと参考人の意見を聞き、いろいろと論議を重ねたわけですが、その際に、今日繊維業界の不況に、こういう一つ事例があるのです。いわゆる繊維の親会社の下請会社、子会社の系列がますます強化せられて、いわゆる大企業から下請企業へ賃加工する場合に、だんだんと加工賃が千円のものが七百円に、あるいは二割、三割と引き下げられて、あるいはまた比較的楽な仕事をもらえば必ず頭から損がいく、こういうことがわかり切っている仕事と抱き合して持ってくる。しかし弱い立場であるところの下請会社としては、これに対していやとも言えない、言えば将来仕事ができない、こういうことで泣く泣く不利な仕事もしておる。それがますますしわ寄せられて不況になってきて、中小企業ことに繊維業界の中小企業は経営者と言わず、ことに労働者等はほんとうに塗炭の苦しみにある、こういう事実なんです。こういう事実について公正正取引委員会としては調査せられた事実があるか。あるいは調査せられた事実があれば、私は不公正な取引と見るべきではないかと思うのですが、お伺いいたします。
  33. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ただいまの御質問は、私が承知しておる限りでは、私どもの方の下請のセクションで調査は現にしておらないと思います。しかし御指摘のような点は、はなはだおもしろくない事例であろうかと思いますから、あるいは田中先生から資料をいただいてもけっこうと思いますが、さっそく研究しまして、たとえば下請法の中に直接ぶつかる規定があるかどうかは存じませんが、責めなくして下請代金の額を減ずるというようなことも、解釈いかんによって入るかどうかというような問題もあろうかと思いますから、調べてみたいと考えております。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 下晴代金支払遅延等防止法には、私も調べましたが直接該当しない。しかし不公正な取引だという面からは問題になると思います。よく御調査の上善処していただきたいと思います。  まだ尋ねたい点はたくさんあるのですが、時間を急がれるので、もうちょっとだけ最後に公益事業局長にお伺いいたします。これも簡単にお伺いいたしますが、前の二十八国会の四月三日であったと記憶いたしておりますが、私と当時の横錢委員とが、干栗県茂原市における大多喜天然瓦斯会社のガス値上げの問題を取り上げて、その値上げの行き方あるいは値上げの根拠等について質問をし、いろいろと論議をした。その後通産省公益事業局としては東次長を現地へ視察に出されたようでありまして、その現地視察の結果と、それからその後会社は一立方メートル一円九十銭という値上げを五銭下げ、一円八十五銭にするということできておる。ああいうことがあって、値上げといっているうちから五銭だけを切り下げる、こういうような態度で臨んできておる。従って地元茂原市におきましてはこの会社の出方に対して大きな不満を現在持っており、まだこの天然ガス値上げ問題をめぐって紛争が続けられておるようでありますが、この大多喜天然瓦斯会社のガス料金値上げの問題についてその後の公益事業局としてのお考えなり経過等について、簡単にお伺いいたします。
  35. 小出栄一

    ○小出説明員 田中委員指摘通り、四月三日の委員会におきまして、田中委員及び横錢委員から私どもの東次長に御質問がございました、大多喜天然瓦斯のガス料金値上げの問題につきましては、そのときにも次長から申し上げたかと思いますが、当初の会社側の地元茂原市あるいは工場方面の需要家の方々に対する説明なりPRがきわめて不十分でございました関係もございまして、地元の需要家の方々との間に、感情的にもまた内容の説明等につきましてもきわめて不備な点がございましたことは、私どもとしてきわめて遺憾に思っております。従いましてその後非常に時日が経過いたしましたが、次長を現地に派遣いたしまして、今お話しの通り実情の視察もいたさせましたし、ただいま会社側から申請が出ております申請案、さらに今お話しの一円九十銭を五銭下げるというお話は、一円九十五銭が申請案でございますが、それを一応下げるという案を出しておりますけれども、われわれといたしましてはさらに現下の各要素につきまして厳重に査定をいたしております。圧縮できる分はできるだけ圧縮するという方針で、ただいま審査をいたしておりますが、まだ実は事務的には結論を出しておりません。従いまして近くわれわれの事務的な査定案ができました場合におきましては、さらに地元の方々にもよく御説明をいたしまして、また内部におきましても上司と相談いたしまして、慎重に決定いたしたい、こういう段階であります。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 あの際にいろいろと地元の事情なり、あるいは値上げの根拠がないというようなことについては申し上げたはずであります。そこで十分善処していただきたい。またことにこういう問題は地元との間に紛争がある限り——地元は御承知のように値上げは絶対反対でありますので、紛争のままに値上げが決定せられることのないように善処していただきたいことを望んでおきます。  ほかにいろいろとありますが、だいぶ急がれておるので、自後の質問は保留をいたしておきます。
  37. 長谷川四郎

    長谷川委員長 田中榮一君。
  38. 田中榮一

    田中(榮)委員 私は現在の政府のとられております鉄鋼政策に関しまして若干の質問をいたしたいと思います。現在鉄鋼業界は非常に不況に悩んでおりまして、その不況の原因と申しますものは、昨年大きなメーカーが大体設備機構等を近代化いたしまして三、四割の操短を実施いたしたのであります。しかしながら、操短を実施いたしましたけれども、一方におきまして、メーカーの生産設備の近代化あるいは合理化ということのために生産の率が逆に上りまして、生産数量においては少しも落ちない。しかしながら大きなメーカーは相当高い建値を堅持いたしておりまして、その建値をくずすわけにもいかない。そこで鉄鋼問屋並びに鉄屋等はさっぱり鋼材が売れない、かような関係からいたしまして、中小企業の鉄屋、鉄鋼問屋等に対しましては非常に大きな恐慌が来たされておるのであります。現在御承知のように製鉄事業、鋼材等は日本の産業の基幹をなすものでありまして、この製鉄事業の不況であるということは日本の基幹産業の不況ということになりまして、日本の産業全体に非常に大きな影響を及ぼすものであります。従って製鉄事業のかような不況ということは勢い他の産業にも影響いたしまして、大体において現在の不況というものが同じような形態で出現をしておるような状況であります。そこで最近の鉄鋼不況の実態というものはどういうものであるか、重工業局長に一応御説明願いたいと思います。
  39. 岩城照彦

    ○岩城説明員 鉄の現在の状況は、供給に対しまして需要が減っておるということに尽きるようでありますが、これをもう少し立ち入って申し上げますると、御承知のように一昨年、昭和三十一年の夏ごろから鉄の需要が相当ふえて参りまして、当時普通の棒鋼あたりの市中の問屋の気配値といったものが、三月ごろには四万円ちょっと上回っておりましたものが、秋になりますると九万円をこすというふうに非常に暴騰いたしました。これは当時輸出が好調であったという問題もございましょうが、それよりもさらに一般の投資需要、これに応じまして土建関係の需要でありますとか、あるいは機械関係の需要でありますとかが非常にふえまして、需要家の関係で早急に材料の手配をするということのために、需要が供給をはるかに越えるような様相を呈したのであります。そこで当時通産省といたしましては、これはやはり国内の供給力にはおのずから限度がありますので、生産設備をフルに稼働いたしましても、とてもその需要はまかない切れないということでありましたから、早急に輸入の手配をいたしまして、大体年末から昨年の上期にかけまして通計百万トン近い鋼材を輸入したのであります。その気配もありまして値段の方はかなり下って参りました。昨年の夏ごろになりますと、大体元の価格に近づいて参ったという状況であります。この関係をもう少し量的に申しますれば、時期的に御承知のように鉄の関係の生産設備をフル稼働いたしましても、出てくる鋼材が急には間に合わないという問題、輸入手配をいたしましてもすぐ翌月からものが入るというわけではありませんので、当時政府の政策転換によりまして投資需要が押えられたというときに、前に手当いたしました鋼材の一部が入って参った、これが買い持ちになってきたというような悪条件が重なりまして、急速に価格関係が軟化して参った、こういう状況であります。もう少し数字的に申し上げますと、三十一年度と三十二年度の二年間で三十年度に比べまして国内需要として四百五十万トン近くふえております。これに対しまして生産は三百五十万トンばかりふえて参っております。他方輸出の方も抑制いたしまして約五十万トンばかり輸出を減らしております。そして百万トン程度輸入いたしましたので、これが結果的には在庫の増加になっているという状況でありますが、時期的にずれました関係で、非常に市況を圧迫しているという状況であります。  それで建値のお話がございましたが、建値の方は八幡製鉄と富士製鉄と日本鋼管の売値、これのコストを基準としてやっておりましたが、なかなか建値では売れないということで、実際の販売価格は下って参っております。他方市中価格もかなり下って参りました。これはひとり需給関係だけではございません。スクラップの価格が下って参りました。従ってスクラップを使っております単圧メーカー、あるいは平炉メーカー、転炉メーカー等のコストも下ったということも言えると思います。いずれにいたしましても、全体の需要が減って参っている、それから輸入手当をいたしました鋼材が政府の政策転換後におくれて入っているということが、今日の需給関係のアンバランスあるいは価格関係の低迷を米たしている一番大きな原因かと思うのでございます。
  40. 田中榮一

    田中(榮)委員 ただいま不況の点につきまして大体お話がございましたが、私はわが国の鉄鋼市況のように景気変動の激しい国はほかにあまり例を見ないのであります。今たまたま棒鋼についてお話がございましたが、私どもの調べたものによりますと、三十一年九月に、棒鋼に例をとりますと九万七千円、三十二年三月におきましては六万一千円、三十三年六月におきましては三万五百円、このように棒鋼だけにつきましても過去三カ年間におきまして、値段におきまして非常に暴落を示しておるのであります。このような変動というものは、あくまでこの三年にきまったことではないので、日本の製鉄業の大きな一つの不安な原因がここにあるのであろうと思うのであります。これを外国の例にとってみますと、一九五〇年から一九五四年にかけまして棒鋼の値段の暴落がアメリカでは二五%、イギリスでは四五%、フランスは五二%、ベルギーは七六%、西ドイツにおきましては八二%、日本におきましては一七〇%という大きな数字を示しておるのであります。何ゆえにこのようにわが国の鉄鋼価格の変動が激しいのかということにつきましては、私ども非常に疑問に思うのであります。  そこで一つお伺いいたしたいのは、鉄鋼需給計画について政府はどのようなはっきりしたお見通しをお持ちになり、またその見通しによってどういう計画を立てられておるのか、この点につきまして一応お伺いしておきたいと思うのですが、先ほど申し述べましたように、鉄鋼は基礎物資中の基礎物資でございまして、政府におきましても計画的な生産を指導していく必要があろうかと存じておりますが、現在政府が立てておられます計画というものが、何となく数字の点についても見通しの点についても、何だか当てにならないような気がするのでありまするが、政府は鉄鋼需要の測定をどのようにおやりになっておるのであるか、その点につきまして一応伺ってみたいと思います。
  41. 岩城照彦

    ○岩城説明員 御指摘のありましたように、基礎資材の鉄鋼の値段が非常に変動いたしますことは、これを利用いたしまする機械工業あるいは土建関係その他にとりまして、はなはだ困ったことでありますので、できるだけ長期に安定した価格を需給関係で推移させるようにということがわれわれの念願でございましたが、この両三年米の事態は、実はその念願に反しましてはなはだ遺憾な状態でございます。そこでこの需要の実態を的確につかめるかどうかという問題が一つございます。これにつきましては実は日本でも各種の方法を講じまして、官庁関係あるいは民間関係ともに努力しておりますが、なかなか的確な方法がございません。どうしたらいいかということにつきまして従来いろいろ考えておりますが、たとえばドイツのごときは鉄の需要家から先物の三カ月間の需要を集めて、それに応じてロールを調整して供給して参っておる。三カ月ですから長期というわけではありませんが、先行きの事情を的確につかんで生産を調整しそおるということでございます。それほどのりっぱな仕事もできませんが、何とかそういう形で先の需要家のほんとうに要りまする需要を知る方法はないかということで、現在われわれの方と鉄鋼連盟と共同主催によりまして、ある程度先行きの需要をドイツの例にならいまして調べるやり方を、やっとこの四月から手をつけたのでございますが、どうもこれは発足早々でなかなか的確に参らないようでございます。  それかその次に考えられますことは、いろいろな原材料の輸入で調整するという問題がございますが、これも需要が多くて生産が追いつかないというときには、原材料輸入を多くいたしますればこれはある程度供給がふえまするから、若干おくればせながらではありますが調整できますけれども、現在のような需要が落ちて参っておりますときは、むしろよけいな原材料在庫を持っておりますのでなかなか調整しにくいということで、実は非常に苦労をしております。結局考えましたのが政府の指導によりまして、直接生産を、需要と思われまする数字に合せまするように減産をするということで、昨年の十二月以来鋼塊につきまして、割減産を行わせております。それからこの三月から棒鋼と型鋼と厚中板と線材につきまして、それぞれ三割ないし四割の操短を勧告してやっております。ところがこの目標となります操短の率あるいは数字が的確に把握されておるかどうかということにつきまして若干の疑念があります。つまりわれわれが見ております数字がほんとうの需要であるか、若干多過ぎはせぬかというような気持もありまするし、またその操短の勧告が適切に行われておるかどうかという点もいろいろ疑念もありますので、御承知のように先月の終りから各社の売りものを同時に行わせまして、その結果でどういうように売れ残るかということをはっきりつかむような仕組みを考えた次第でございます。これによりましても的確な数字はなかなかむずかしいと存じますが、現在のやり方よりは一歩進捗いたしまして、何とか現実の需要に対しましてやや近い供給ができるのではないかと思っております。御参考にわれわれが見ておるところを申し上げれば、大体昨年の需要よりも一割以上ことしは減るのではないだろうかというような気持を持っておりますが、あるいは二割以上も減るというような見方もございまして、その辺に実はわれわれも苦慮しております。結局今申しましたように現実の売りの数量に対しまして、どの程度さばけるかという数字をにらんでから善処して参りたいと考えております。
  42. 田中榮一

    田中(榮)委員 ただいまの需要の実態を的確につかむために西ドイツでやっております三カ月の先行きの需要を調べるということはけっこうだろうと思うのでありますが、現状から申しますと、機械業者等の鉄鋼需要者は、鉄鋼需要の不安定な中に自分を防衛するために、極度の買い控えをやったりあるいは思惑発注を盛んにやっている面も相当あるのであります。それからまた今お話の操短の数字が的確につかめないというような点から見まして、この数字を基礎にして政府の計画を立てられる場合におきましても、こうした数字を基礎にしっての計画は何だか当てにならぬというような気持がするのでありまして、今後こうした数字の把握につきましては、十分慎重に御調査の上で的確なる数字の上に計画を立ててもらいたいということを要望いたしておきます。  次に製鉄事業の設備能力のあり方について質問してみたいと思うのであります。需給計画と生産設備との関係でございます。政府におかれましては鉄鋼生産五カ年計画を樹立しておられるのでありますが、大体一千万トンの需要に対しては生産設備能力はどの程度を計画されておるのであるかということをお伺いしてみたいと思うのであります。一千万トンの需要に対して生産能力も一千万トンにとどまるというならば、若干の需要が上回った場合におきましては、直ちに需要の逼迫を招きまして価格の暴騰を招くことになるのであります。要するに現在の鉄鋼界におきまして常に価格が変動して市場が不安定である。このことがあらゆる面において関係業者が不安な気持を持っておるところであります。私は設備能力がかりに一千万トンあるという場合におきましは、需要が上回る場合を若干考慮しまして、この設備能力におきましても若干の余裕を持たせて需要に弾力性を持たせる必要があるのじゃないかということも考えておるのでありますが、この点についていかようにお考えでございましょうか。
  43. 岩城照彦

    ○岩城説明員 鉄鋼の長期の設備計画につきしては、そのもとになりまする長期の需要の数字との関係が、御指摘のように、問題になると思います。昨年できました長期経済計画におきましては、昭和三十七年度の鉄鋼の需要を普通鋼の鋼塊にいたしまして千七百三十万トン、これに特殊鋼、鍛鋳鋼を合せますと大体二千万トンというふうに押えております。昭和三十一年度の実績が千六十万トンでございますから、年率にいたしまして大体八%強の増加率でございます。これはその経済計画にありまする鉱工業の増加の趨勢からはじき出した数字でございます。これに応じますためには、実は銑鉄の関係、それから製鋼設備の関係、なお圧延設備につきまして、かなりの増設が要するわけであります。一例をあげますと、銑鉄におきましては、現在ありまする溶鉱炉に加えまして、現在二十六基でございますが、さらに大体千トン溶鉱炉程度のものを十基ふやす必要がある、あるいは転炉につきましても五十トン平均の転炉を十八基は少くともふやさざるを忍ない、つまり端的に申しますと、鉄の原料の関係で、スクラップが海外からも国内からもこれ以上あまり期待できませんので、やはり鉄のもとは鉱石を輸入して、溶鉱炉と転炉でこれを製鋼するわけでありますから、そういうふうな製鉄、製鋼設備がよけい要る。ところが現在までに各製鉄メーカーで自分のところの資金力——これはもちろん政府の財政資金あるいは世銀借款、輸出入銀行の借款等を加えまして、調達できまするぎりぎりのところを考えて、これらの設備を作るというふうに計画を進めておりますが、なお溶鉱炉におきましては、もう二基ほど実は足りないのでございます。それから転炉におきましても、もう三、四基不足のようだということでございまして、実はこのギャップをどうするかということで、一応この長期の経済計画はこれ以上政府が力を入れましても、結局金の問題で行き詰まる、あるいはいろいろな工期の関係、立地の関係等で、なかなか短期間には非常な無理がございますので、やむを得ずこの際は若干の銑鉄を輸入せざるを行ないだろうということで、一応輸入銑鉄を考えましてバランスを合わしております。従いまして、どうも御指摘の点とは逆になっておりまして、はなはだまずい計画かもしれませんが、そういたしましても、やはり将来の日本の経済の発展を考えますと、どうしても鉄鋼の基礎産業の需要増加あるいは生産の増加ということは、これは国といたしましても何とかして参らなければなりませんので、先ほど申しましたように、足らないところの計画も、希望者が出、かつそれをする能力があれば、これは国としても取り上げてみようということで、その後一、二の計画があるようでありますが、諸般の関係で、今申しましたように、輸入銑鉄をはずしてしまうほどまでの計画はなかなかむずかしいように考えます。ただ最近の鉄の需要増加を見ますと、どうも少し数字の点が、あるいは需要増加のテンポが早過ぎたという点も考えられますので、まあ本年、明年あたりの調子から考えますと、この辺の設備の建設の計画を予定通り行いますれば、あるいは需要に不足は来たさぬでも済むのじゃないだろうかという面もございまして、現在のところは、今考えられておりまする建設計画を予定通り進めるように、極力力を入れて参りたいと思います。
  44. 田中榮一

    田中(榮)委員 時間が切迫しておりますので、御答弁はなるべく簡単にお願いいたします。私の方もなるべく簡単にいたします。  最近市場不安定の状況を何とか安定させたいという一策といたしまして、需給調節のための買上機関を作る必要があるのではないかということも考えられるのであります。昨年でありましたか、鋼材の市場安定のための法案を通産省においては出される予定で、この中にも何か買上機関を設置するというような御構想があったやに聞いておりますが、法案そのものを国会に提案せられるのを見合せられたために、これはお流れになったのでありますが、鋼材あるいは原料が過剰なときにはこの機関で買い上げて、不足するときは放出するというやり方、すなわち市況のバッフアーの役目を果す機関を設置する必要があるのではないかと思うのであります。銅の地金について買上機関があるようでありますが、鉄鋼についても銅の地金の買上機関と同じようなことを考える必要があるのではないか、これも一つ意見を聞いてみたいと思います。  それから最近——きょうの新聞にも載っておりますが、鉄鋼問屋に大あらしがある、それには問屋の指定や公開販売制度について通産省としても行政措置として大いに公開販売制度を進めておる。去る四月の二十六日に大手三社の公開販売が実際行われたのでありますが、それにつきまして実際公開販売制度というのはどの程度効果があるものであるか、また今後もさらにこれをどしどし実施していくお見込みであるかどうかその点についてお見通しを一つ伺いたい。
  45. 長谷川四郎

    長谷川委員長 時間の都合もありますので、御答弁を簡潔にお願いいたします。
  46. 岩城照彦

    ○岩城説明員 公開販売制度は先ほど申し上げましたように、ガラス張りで商売をして、幾ら需要があるかということを見きわめた上でございまして、現在のところでは円滑に行われておるかと思います。またこれで各社の減産の態勢がはっきりしてくると思っております、効果はあると思っております。問屋の方は別段整理する考えはありません。現在あります百三十社をそのまま利用する考えであります。  それから一手買取機関に対する問題でございますが、これは一応そういう構想も考えられるかと思っております。しかし何せ量の多い問題でございますし、金高も張ります、一万トン扱いますれば大体三億という金が要るわけであります。でございますから、とりあえずわれわれ考えておりますのは、公開販売によりまして売れ残ったものを金融方のある問屋に引き取ってもらう、そうしてその売れ残った数量を翌月におきまして全体の販売数量から差し引いてそれだけ減産する、こういうふうにしたいと考えます。とりあえずばその辺で調節をして参りたいと思っております。
  47. 田中榮一

    田中(榮)委員 ただいまの公開販売制度というのは要するに市場安定のための政府としての行政措置としてやるわけでありますので、法的な裏打ちがないわけであります。従って強力なる命令もしくは措置というものができないのでありますが、将来鉄鋼界の安定を期するためには、法律の根拠に基くところの、いわゆる市場安定の法案というようなものを勘案しまして、これを国会に提案されて、そうして法によって業界の安定というものをはかる。それによって日本の経済界全体が安定する一つの機関でございますので、さようなことを一つ御考慮願うことを希望いたしまして、鉄鋼に関する質問は一応打ち切りたいと思います。  それからもう一つ質問したいと思いますが、時間がありませんからあすにいたします。
  48. 長谷川四郎

  49. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 三つの問題について、きわめて重要な点のみを簡潔に大臣にお尋ねしたいと思います。第一は鉄鋼の対策の問題、第二は国内石油油田の開発の問題、第三は大臣も就任されると同時に発表されまた本委員会でも基本審議事項として公報に載せられておるようでありますが、鉱業権と地上の公共施設との調整の問題、これに伴う鉱害等の問題についてお尋ねしようと思うのであります。  鉄鋼の問題ば今田中委員からも質問をされていたのでありますが、御存じのように昨年の夏ごろから日本の鉄鋼生産というものは操短、制限が相次ぐ状態であります。それから価格も底なし沼に落ちていく、これをどうすることもできないというのが、今日の鉄鋼界の現状であると申し上げなければなりません。しからばこういう大きな原因はどこから出てきたかといえば、これは岸内閣の鉄鋼対策に対する大きな過ちを犯している点から、この原因ができておるということは否定できません。というのは今重工業局長からいろいろ話をされておりましたけれども、それは枝葉の問題であります。根本の問題は昨年一年間に外国の鉄鋼等を二百十八万トンも輸入しておるじゃありませんか。しかも昨年の四月から九月までの間に外国鉄鋼輸入については輸入関税免税の特例を設けて輸入しておる。そして今度九月になって、これはえらいことになったというのでこの特例を廃止しておる。私は二年も三年も長いことは言いません。少くとも役所が行政上の処置をしていく場合、あるいは政府がその対策を立てていく場合には、五カ月や六カ月の先のことが見えないで、国民は政治に対する信頼と期待をいたしません。またそれでは政治をやる資格がありません。この二百万トン以上の輸入というものが、今日の在庫の土台を作っておるのであります。それを今度昨年の夏以後は御存じのような状態で、鉄鋼界はどうすることもできないという今日の不況に陥ってしまっておるのではございませんか。こういうようなことを平然としてしらばっくれて、そして一面今日ではどうかというと、出血輸出をやっておるじゃありませんか。現に出血輸出をやっておる状態であります。外国の高い鉄鋼を輸入関税まで免除してたくさん入れて、今度国内鉄鋼が余ったら、出血輸出をする。これは何事ですか。一体これで政府は鉄鋼対策を立てて、それで責任を持ってやっておると言えますか。この点について一つ高碕通産大臣はどのようにお考えであるか。その点を一つお聞かせ下さい。
  50. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先刻の田中委員の御質問、並びにただいまの伊藤委員の御質問に対しまして、日本の基礎産業の根本になる鉄というものは、御指摘のごとく時には九万円、それがわずか二年のうちに三分の一になるというふうなことは、この鉄鋼政策がいかに誤まっておったかということについては、私は全く同感でございます。しかるに最近における状況は、鉄鋼というものの生産はそう一年、二年、三年で簡単に増加することができなかったのであります。そこに急速な需要が出たものでありますから、政府はあわてふためいて輸入をする。これもその当時としてはやむを得なかったことと私は存ずるのであります。その結果今日一方では不況になる。鉄鋼の需要は減る。そこへ持ってきて生産は従前よりもふえてくるというふうなことのために、今日の不況を来たしておるということは事実であります。こういう点から考えまして鉄鋼政策は一年、二年、三年の先でなくて、少くとも五カ年くらいの計画を堅持して、それに合うように、やはり、時には輸出もし、時には輸入もするということもしなければならぬかと存じておりますが、そういうふうな意味からしまして、現在の不況になったということは、一般の需要が予想外に減じたということが、おもなる理由でございますから、ここで価格をどうしても安定せしむるために、非常に価格が下落して、生産原価を割ったというときには、これは生産をある程度調節し、同時に輸出の価格を安定せしむるために買い取り機関を作るというふうなことも考えなければならぬと存ずるわけでありますが、ただいたずらに現在持っております生産を減産して、高い価格を維持するというふうな考え方をさせても間違いであると私は考えるわけであります。そういうふうな意味から、全体的に総合的に考慮いたしまして、十分鉄鋼政策は長期にわたって今後講じていきたいと存じております。
  51. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 今大臣の御意見を伺っておると、需要が急激にふえたとおっしゃる。それはまさにその通りです。ところがこの需要というものが長期間の需要であるか、きわめて一時的なものであるかということは、これはおそらく高碕大臣も経済専門家としておわかりになっていたと思うのであります。御承知のようにむちゃくちゃに設備投資をして、あれもやればこれもやる、あれではまるで投機的な一時の熱が急激に出たというようなものでありまして、決して日本経済の計画安定の上に立ったものではない。それから国際経済の安定の上に、わが国が世界市場の上において打ち勝っていくという、そういう一つの見通しの上に立ったものでもない。全くあれは俗にいわれておる神武景気から神武不景気という、こういうにわかなものであったのであります。それに先ほど私が申し上げたように、そういう点に非常に消費がふえてきたからというので、一年間に外国鉄鋼を二百万トン以上も入れる。五カ月たたないうちに、あわててそれを取り消す。そういうことをやるようなことで、一体それで五カ年計画であるとか、長期計画であるとか一体何をもって政府は言えるかと言わざるを得ない。こういう点についておそらく高碕さんが通産大臣をおやりになってからは、こういうばかなことはおれは絶対やらぬぞというお考えを持っておられるだろうと私は思うのであるが、今日の鉄鋼界の大きな在庫がどうす錢こともできないという問題はここにあるのです。それから設備も同じような設備をもって、同じ品物を競争して作っていく。そして今度はお互いに市場を奪い合おうというので、外国市場に対しては安売り競争をする。そういうところから、外国商人から足元を見すかされて、とことんまでたたかれる。こういうやり方も、私は国策の上から断じて許されないと思う。また通産省の指導的立場からも、こんなばかなことをほっておくことはなかろうと思う。そういう同じ設備をむちゃくちゃに競争して作らすとか、同じ品物をお互いに競争して作って、外国市場へ投げ売り競争をする、そしてお互いに出血輸出をやっておる、こういうことは国家経済から見て許されることじゃないのです。これが今日平然としてやられておるじゃないですか。これについて大臣はどのような対策を立てて、こういうむちゃなことをやらせないようにしようというお考えであるか。今までお考えを持たれなかったかもしれないが、今私が申し上げたことについて、一体どのようにやったらいいのかということについて所見もあろうと思いますから、その点を一つお聞かせ願いたい。
  52. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 大体鉄鋼の設備は先ほど申しましたごとく急速に増加することはできないのでありますから、先の見通しをつけまして、三十七年には約二千万トンの消費があるということを考えまして——設備は二千万トンでは足りないわけなんです。数字はもっとふえるかもしれない。御承知のアメリカのごときは、鉄鋼政策を安定せしむるために、好況時といえどもその稼働能率は八〇%である。超過すれば非常な好況になっておる。不況のときは四〇%に下っておりますが、現在六八%くらいの稼働能率を持っておるわけです。その稼働能率からすれば、大体八〇%くらいに行くべきものだ、それくらいの設備をすべきものだろうと思っております。これは私一個の考えであります。ところが現在の日本の製鉄の設備というものは、現在外国と競争するためには、ある種の設備はもう旧式なんですから、その旧式のものを合理化することも一緒にからんでおるわけであります。  それじゃ現在の日本の設備をもって幾らできるのだ、これで何%働かせばいいかという問題になりますと、これは相当問題となるわけでございますが、政策の根本といたしますれば、日本の製鉄価格を国際市場の価格に持っていくことが大事でありますから、逐次この設備を改良して、最新の設備に持っていきたい、こう存じておるわけでございます。そしてその設備は、消費より相当多い設備をもってやっていきたい。そうすれば、急速に需要が出たからといって、あわてふためいて外国のものを買う必要もなければ、また一方において価格をむやみに暴騰せしむることもないと存じております。
  53. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 さっき田中委員からも質問をされていたようでありますが、今まで大臣答弁等を伺っておりましても、やはり鉄鋼生産設備というものは長期を要さなければ作り得ない、また多額の設備資金も要るというのはその通りであります。そこでそういう余剰設備というものを持っておりますと同時に、やはり国際関係に幾らかの変動、あるいは国内的にもこの自由主義経済機構においては、ある変動が起ってくることはまた当然である。その場合書においてやはりある在庫が出てくる。その在庫に対して政府がどのようにこれらを、融資の面でというか、何らかの形でこういうものを保障するということがなければ、今大臣がおっしゃるようなことを安定化していくことはできない。今業界では非常に政府の生産数量命令というか、方針に疑惑を持っておる。また協力ができぬと言っておるのは、鉄鋼にしても石炭にしてもその他の生産会社も、経済企画庁あるいは政府の方で年度の計画生産数量というものを発表するけれど、しかしながら消費について政府は責任を持ってくれぬ。その消費について責任を持たない政府の生産数量というのに協力はできないじゃないか。鉄にしても石炭その他にしても、在庫ができた場合にどうすることもできない。自分らのみが非常な打撃を受けなければならぬ。命令をした政府は知らぬ顔をしておる。そういうことで政府の命令というのは聞かれぬというのが業界一般の声です。これはおそらく高碕大臣の耳にもしばしば入っておることと私は思う。だから政府は少くとも年度計画において、生産数量命令を出して協力を求めてその生産をやったならば、それが国の内外の経済変動等によってあるいは鉄鋼が在庫をした、あるいは石炭が貯炭をした、あるいはその他の製品が在庫をしたという場合において、政府が在庫消費についてどこまで責任を持つかということを明らかにしない限りにおいては、業界は政府の生産命令を信用して協力をしないと私は思う。また政府の生産命令というものは全く無責任きわまるといわざるを得ない。そういう点において大臣はそういう保障についてどういうようなお考えを持たれるかということについてお伺いをしたい。  それから生産、消費、輸出という点等においての一つ調整あるいは計画というものについて、どのようにして扱っていったならば、こういうような急激なる変動に次ぐ変動というものを防止していくことができるか、そして業界をある安定の上に立たして、日本の産業界を健全に発達させることができるか、こういう点についての一つ大臣の所見を聞かしていただきたい。
  54. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 まず行政指導といたしまして、設備を拡張いたします場合は、各社てんでにやられておったときには一般の整備ができませんから、行政指導によって各社の設備は一々通産省においてこれをよく認めて了解を与えておるわけであります。  それから在庫につきまして、今日問題になっておりますのは価格でありまして、その価格の変動のひどかった理由はどこにあるかと申しますと、これはむしろ大きな製鉄メーカーというよりも、ごく小規模のメーカーがスクラップを思惑することによって、あるいは安いスクラップをもってやれは三万円で上るとかいうふうなこと、あるいはそのかわり利益が上ればこれをうんと高くするとかいうふうな工合で、三万円のものが九万円になったり、九万円のものが三万円になったり、これは大きなメーカーがいわゆる犬の小さなしっぽによって——犬によってしっぽが動くのでなく、しっぽによって犬が動かされるというふうな形勢があるから、生産原価を割るような安いものが市場にはんらんして、その結果価格の不安を米たすということになると困りますから、そういうものはできるだけ取扱い業者の方をもって買い上げ機関を作るし、これに政府はできるだけ援助を与えていくという方針をとりたいと思っておりまして、政府自身がこれをすぐ買い上げてどうこうということは、ただいま考えておりません。
  55. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 今の答弁でもう少し伺っておきたいのは、政府が年度計画ごとに生産数量を出して、それで業界に協力を求めて、業界はこれを信用して忠実にその生産数量を生産していく。そして今度いろいろな変動によって、また政府のあやまちによって、この非常な在庫あるいは非常な貯炭ができた、こういう場合に政府はそれらに対して少しも責任を持たないというのか、それらに対しては政府としてもとにかく何らかの責任を持ってそれらの苦しみを解決してやる。これがない限りにおいては、業界は経済企画庁あたり、あるいは閣議決定されて発表されてもこれに協力はいたしません。だから政府の方針に協力させるためには、やはり消費の方面においても政府が何らかの形で責任をもって処置をしてやる、これがなければ政府の出す生旅命令というのは、三文の価値もありませんし、また信用しません。その点についてあなたのお考えはどうですか。
  56. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在におきましては生産の計画につきまして政府はその目途を示しておりますが、その目途に命令的にやるのではありません。これは業者の人たちとよく協議し合って、それで落ちついた数字を認めておるわけでありますから、そういう意味から申しますと、これは市場の状況等によって非常に過剰になったからといって、政府が直ちに責任を持つということはできません、と言えば、いかにも無責任のようでありますけれども、そういったふうなことは業者とよく話をし合った上で、業者の同意、業者の納得、業者がこれがいいということ等をよくしんしゃくして生産をいたすわけであります。今日もまた減産のことにつきましては、政府は指示しております。こうやったらいいということはやっております。命令でないから責任がないかというとそうではありません。そういうふうに進んで来た、計画を立てたということには政府も一面の責任を負わなければなりまりせんから、先ほど申しました通りに、できるだけ業者の人たちがこれに対する対策を講じ、これに対し政府はできるだけの援助を与えへ金融の道につきましても、いろいろ援助を与えるという方針で進めていきたいと思います。
  57. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 今のあなたの御答弁では私、どうも納得もできないし了解もできませんが、これはどうも自由民主党と社会党との経済政策に対する見解の相違でもあろうと思うから、あなたとここで押問答してものれんに腕押しみたいな時間つぶしになるから、この程度で終ることにしておきます。  それから最後に鉄鋼問題でいま一点伺いたいのは、中国との関係について昨日本委員会に日本の鉄鋼界の代表をお呼びになって意見を聴取されておるようでありますが、私は残念ながらその機会を得ることができませんでした。しかし日中貿易の問題あるいは日本と中国との鉄鋼取引の問題等については、あなたの方も非常に専門家で十分研究されておることであるから、よけいなことを申し上げる必要もないと思うが、御存じのようにせっかく日本の鉄鋼界を代表して稲山団長一行が行って、あのような協定を結んで来たんです。これは日本の鉄鋼界にとっては明るい喜びというか、将来に対する希望であった。そしてさっそく向うからの注文を受けて御存じのように三万トンの製品を作った。その金額は大体十四、五億円くらいになるということでありますが、第四次協定がああいう中絶の状態となり、従って鉄鋼の注文品も停止の状態になってしまった。これは全くそのままストックというか、在庫にならざるを得なくなった。ところがこの製品は中国の特殊な軌条というか、ボイラーというか、そういういわば幼稚といってもいいような製品のようで、従ってこれは他に売る先はありません。中国との再開ができない限りにおいては、そのまま在庫として置かざるを得ない。同時にまたあの協定が五カ年間予定通りに進行いたしますならば、大体一千億円くらいの鉄鋼の中国輸出が協定されているそうであります。そのかわりとして戦前に日本が買っておりました鉄鉱石あるいは開らん炭等の原料炭を輸入するということになれば、鉄鉱石も原料炭も非常に安く、アメリカその他から買う原料炭からすると想像もつかぬほど安いのであります。こういうものが輸入されてきて日本の製鉄が行われ、世界市場においても日本の鉄製品が競争が十分できる基盤にもなると思うのです。こういうまことに喜ばしい状態が今次の第四次協定の破棄状態に伴って大きな打撃を受けるということは、おそらく高碕大臣もはなはだ遺憾であるとお考えになっていると思う。私はこの日中関係の調整、第四次貿易協定の再開、民間が非常に熱望しておるこれらの問題の解決は、岸内閣の中において高碕通産大臣だけがその任であって、使命を果される人であろうと、私は心から信頼と期待をしておる。ほかの諸君はどうも問題にならぬと私は思っておる。あなたもおそらく、わしならやれると思っておられると思う。そこでこの妥結についてあなたはどういうお考えを持っておられるか。あるいはみずから乗り込んでいってでも、いろいろな問題——経済問題以外の問題がいろいろこんがらがって発生しているので、そういう問題をみずから乗り込んでいって解決しようというような御決意があるかどうか。  それからアメリカにおきましても、最近はアメリカの識者あるいは政治家の諸君の中においても、その大勢は、日本の中国貿易というものは認めてやるべきだということが、少数の人を除く大勢となっていることを、われわれは聞いているのであります。従ってもうそうよそへ気がねをされる必要もなかろうと思うから、ここで国民を明るくするために、あるいは業界に大きな希望を持たすために、あなたが通産大臣になられてこの使命を果されることが、私はあなたの唯一の大きな仕事じゃないかと思う。これをあなたがなし遂げられるならば、さすがに高碕さんは民間から抜擢して出られただけにえらいということになるだろうと思う。率直にこの妥結についてのあなたの信念をお聞かせ願いたい。
  58. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私は日本の鉄鋼政策の上から申しまして、中国と日本との間に、かつて欧州におきましてドイツとフランスの間にシューマン・プランが行われたと同じような方法で行われることを私は心から希望するものであります。その意味から申しまして、去る三月鉄鋼使節団と中国との間に締結されましたこの協定を心から喜んでおった一員でございます。御指摘のごとく日本の鉄鋼政策を達成する上において、遠方から石炭や鉱石を持ってくるよりも、あり余るりっぱな石炭、鉄鋼を持っている国からわれわれの原料を得れば、そこで初めて世界の競争に打ち勝つこともできる。先般来締結されましたあの協定も、その段階における第一といたしまして、日本といたしましては十数万トンの今日あり余っておる鉄を先方に引き取ってもらい、また日本が今後買わんとする鉱石なり、石炭を向うから持ってくるということは、これは両国のために最も喜ばしく、一番うれしかったニュースだと思う。私は今日こういうふうな状態になっておるということは、心から悲しむ一員でありまして、一日も早く両国の国交の回復されんことを希望し、この貿易取引が完全に履行されんことを希望する一員でございます。  それで、お前は行くのかどうか、こういうお話がございましたが、私は率直に申しますと、これは選挙において私が公約いたしましたごとく、当時経済外交を推進し、中国との貿易を再開するということについては自分は努力したいということを言っておったようなわけでありますから、私が民間におりますれば、あるいは自分の自由の立場において自由の議論ができますが、不幸にして、今日政府の一員となった以上は、私は党なり、政府の方針に従っていきたいと存じます。その打開策等につきましては、私の意見は党なり政府にはよろしく申し上げておりますが、今後の行き方につきましては、私から御答弁するということは、はなはだまずいと思いますから、どうかごかんべんを願いたいと思います。
  59. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 大体あなたの気持は私はよくわかっておるつもりです。岸内閣の中共対策に対してこんなよらなやり方をしておったら、これはえらいことになってしまうということについて憂慮しておられることは、もう何かわかるような気も私にはするわけだけれども、これはあまりここで追及をするのも、またそういう追及をすべき問題でもないと思いますが、私ども社会党としても、さきに鳩山さんが総理大臣の折にソビエトとの国交回復にあの病躯をおして立たれ、われわれはこれに非常に協力と激励をして成功された。従って今度あなたがこの中国との問題について一はだ脱いでやり、少々閣内においていろいろな問題等があっても、とにかく自分は国家国民全体的見地からやるということで、あなたが踏み切って努力されるなら、社会党は大いにあなたに対する協力と鞭撻を惜しまないものでありまして、勇気を出して私は一つやっていただきたい。こういうことは、やはり一政府、一自民党、一社会党の問題として政略や党略的に考えるべきものではないと思う。この妥結、再開こそは、やはり国家国民全体的見地から、私はこれを促進すべきであると思う。この点については一つ大いに元気を出して、あなたの選挙中の公約を果す意味でやってもらうように、私は強くあなたに熱望をいたしておきます。  それから、鉄の問題はその程度にいたしまして、国内石田油油の開発の問題ですが、これはすでに大臣御存じと思うが、日本の国内におけると石油の生産というものは百分の二、三くらいにしかすぎない。てんで問題にならぬ。膨大な外貨をこれに使っておるわけである。そこで何とか三十万トンくらいのものを年間百万トンくらいまで持っていきたいというところから、石油資源開発株式会社という国策会社を作ってやったのであります。もうこの五カ年間の計画事業として始めたものが三年近くになっているのであるが、これについてどういうような成果というか、あるいは今後に対する希望というか、そういう見通しについて、ごく簡単でよろしいからその大略を鉱山局長からでもお聞かせ願いたい。
  60. 福井政男

    ○福井説明員 ただいまお話のように、現在石油資源開発株式会社で五カ年計画を推進いたしておりますが、すでに二年半程度経過いたしておるわけであります。その間政府出資と民間の出資によりまして探鉱を続けて参りまして、最近ようやく成果が上りつつあります。新潟県の田麦山の油田、それから、山形県の吹浦の油田、こういった地区が逐次発見されつつございます。なおこういった地区が果してどの程度埋蔵是を持っているかという調査は現在まだ調査中でございまして、ただ徴候といたしまして非常に有望であるというような状況でございます。本年度におきましては、さらに五カ年計画の最も重要な年次になるわけでございまして、地上の調査並びに試掘に並行いたしまして、主として海洋の掘さくを実施いたしたいということで、本年度石油資源開発株式会社の事業計画といたしましては最も大きい事業計画の一つになっております。この海洋掘さくは秋田沖でございまして、現在帝国石油が採掘いたしております八橋油田にちょうど平行いたしておる地帯でございまして、アメリカのルトーノーという会社の海洋掘さく設備を賢い入れまして、約八億の予算をもって海洋掘さくを実施する予定にいたしております。現在まで油の出ておりますのは、先ほど申し上げました田麦山の油田、これはほんとうに出油を見たという程度でございまして、一月から油が出始めておりますが、五月まで全体で約二千キロ程度でございまして、生産量という段階ではまだございません。政府の本年度出資金が十八億でございますが、民間から八億弱でございまして、約二十六億の本年度出資金で探鉱調査をやることにいたしております。これと平行いたしまして、ただいま申し上げました川麦田の開発は約八億程度の資金でこの開発をいたしたい、かような概況でございます。
  61. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 大臣一つ考えをいただき、さらにこの扱いについて十分これが御努力を願わなければならぬであろうと思うので、大臣意見を伺っておかなければならぬと思いますが、開発会社は、今鉱山局長が申しましたように、国策会社として政府と民間石油会社とが共同出資をしてやっているわけであります。そこで絶えず問題になるのは民間が出資を渋るのであります。そうすると、大蔵省の方では、民間が出さなければ政府は出したくない、こういうことで、大蔵省は出したくないから民間の出さないにとを理由にして大蔵省も出さないようにしようということを絶えずやっているわけであります。ところが私が憂慮するのは、来年度のこの開発会社の事業予算です。というのは、なぜ心配するかというと、民間は御存じのように、各石油会社とも近年にない不況に今陥っておる。こういう状態であるから、従って来年度の開発会社の民間の分担投資を、あるいは十億出せというようなことを持ちかけた場合に、私はなかなかこれに応じないだろうという気がするのです。というのは御存じのようにこの開発会社はほとんど無配である。そういうものに対して自分の手持ちがないからといって高い金利の金を借りて、これを投資するというようなことも考えられぬ。さらにまた政府の金融引き締め等も相当たたってくるわけであるから、なかなかこの民間分担出資というものが問題になる。そういう場合において従来の大蔵省のような考え方であると、開発会社の来年度の事業計画というものは非常な困難に陥ってしまうのっではないか。そういう場合大臣は、国策会社であるしするから、当然これは民間が出し得ないなら、その分と合せて国家が持って、そうして国の計画事業としてこれを完遂してやらなければならぬ。こういうことについての大臣の決意というかお考えを、今から伺っておかぬというと、時おそしということになるのじゃないかと思うので、一つお聞かせ願いたい。
  62. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 石油資源開発会社は日本の石油の開発をするということ以外に、私はほかの一つの使命を持っておると思います。それは日本の石油開発に従事する優秀なる技術者をいかにして養成するかということの使命を持っておるのでありますから、これは日本が石油を消費する以上、どうしてもこの事業は当然継続していくべきものと存するわけでありますが、今伊藤委員の御懸念のごとく、来年度の資金が果して民間から得られるかということは、私も非常に疑問に思っております。従いましてそういった場合には別途の方法を考えていきたい、こう存じております。
  63. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 今大臣がおっしゃった別途の考えをお持ちになるということについては、あの会社の創立を本委員会で議決をいたしますときに、当時石橋さんが通産大臣をしておられたのでありますが、こういうことを石橋さんがはっきりここで言っております。というのは、この開発会社に今後必要なる資金、開発五カ年計画の完全実施のためには、閣議決定をしてこの資金確保には万全を期しますということを言われた。それから本委員会の当時の決議といたしましても、政府は今後開発会社の出資については万全を期するとともに、債務補賞についても必要に応じて可及すみやかに所要の措置を講ずること、こういうことが全会一致で議決された。それから当時の所管大臣である石橋通産大臣もそういうことを言明されて、あの会社が成立をしておるものであるから、従ってこの先行きの見通しがよろしいということであれば、当然通産大臣が主役となって、積極的にこれはおやりにならなければならぬところの法律上の建前になっておるわけであります。この点は一つぜひそういうことで、秋ごろ来年度予算のころになってごたごたが起ってきて、それでせっかくの開発事業が、三年近くもやったのに事業予算が半分に縮小されたから、思うようにやれないというようなことのないように、私は十分お含みおきを願いたいと思います。  それからさっき鉱山局長がと言われておった海底を掘る——何というのこですか、名前はまだついておらぬとか聞くのですが、海底を掘る浮き船みたようなものを一台作るのに全部で十四、五億円かかるということを聞いておる。大きなビルディング一つ作るだけのものを、とにかく海の中に井戸一本掘るのに使う。もちろんこれは船であるからどこにでも持っていって使えるようであるけれども、そういう膨大なものをアメリカとの契約で五カ年問の計画でやっておる。こういうものを通産省も大蔵省も認められてやらせたのた。そうすれば従ってこの開発会社の事業完遂には十分責任を持ってやられないと、こういう問題もまた起ってくると思うのであります。こういう点についても一つ十分お含みを願っておきたいと思うのであります。  委員長からだいぶ時間の問題を言われておりますから端折って申し上げることにいたしますが、この資金確保の問題について一つの御参考というような意味で申し上げてみたいと思いますのは、たとえばフランスでもイタリアでも、油の消費税というか、それに相当するようなものを、またドイツのごときも保護関税で国産原油の開発資金を調達するというようなこともやっておるようです。従ってこういうことなども思い合せてみますと、わが国においても外国油を非常にたくさん入れておりますから、たとえば消費税関係というか、そういう点には一つ——通産省の所要計画の数量より税金を算出すると、三十二年度において揮発油税において六百三十九億円、軽油引取税において七十八億円、合計七百十七億円というものを国は外国油からのそういう形で収入を得ておるわけです。従って三十三年度の関係においてはさらに多くなるのじゃないかという気もいたします。そうするとこの七百余億円の三%か五%のものをその方面に回すということになれば、開発会社の年度資金というものは国だけで十分できるということになるわけです。こういう点も一つお含みおき願いたい。さらにこのことは、たとえば道路なども同じような意味でございます。その一部を国産原油の開発に結びつけるというようなこと等も、私はしごく当然なことじゃないか、もし大蔵省が従来のごとく国策会社の国の資金の出し方について——ども考えからすれば、国策会社である以上は、民間がどうであろうと国がその主役になってやるのが当りまえだ。大蔵省の考えは、民間が出さなければ国は出さない、それじゃ国策会社の意味はないと私は思うのです。こういう点も大蔵省の考え方との相違点もありますから、一つ私が今御参考に申し上げたことなども、来年のこの計画事業遂行に対して、あとでとかくの問題が引き起らないように、事前に一つお含みの上で御努力を願いたいということだけを申し上げておきます。答弁は要りません。  もう一、二点よ委員長にお許しを得たいと思いますが、それは私から要点だけを申し上げるから、鉱山局長からごく簡単でよろしいから御答弁を願って、最後に大臣にお尋ねしなければならぬこともありますから、大臣もお聞き置きを願いたいと思うわけです。というのは石炭局長御存じのように昨年一般鉱害法の改正をいたしました折に、鉱業権者の行方不明の鉱害地、鉱業権者がおるけれども資力がなくなって無資格者になっておる、これらの鉱害地がおそらく炭鉱地区に何千町歩というものがあると私は想像します。今一反の耕地でもほしいというときに、鉱業権者が鉱害だけ与えて行方不明になってしまう、鉱業権者がおるけれども資力がない、従ってそういうものは国としてはやれないというのでほってあるわけであります。そういう耕地がおそらく両千町歩とあると思います。これはまことに国家的見地から遺憾であります。従ってこれらについては十分調査をして、その事業計画を立てて、これがやるということに一応なっておるわけでありますが、こういうことについてどのような調査と、これらの復旧事業に対する計画を進められておるか、これを石炭局長、ごく数字のところだけでよろしいから御答弁願います。
  64. 村田恒

    ○村田説明員 ただいま伊藤委員指摘通り確かに管理者不明のもの、あるいは何年か前にその鉱害をおっぽり出して逃げてしまったもの、それらに対しまする復旧は、きわめて重要な問題であります。その意味におきまして、大きな地域といたしましては、国で調査いたしました地域として、福岡県の西川地区、それから木屋瀬地区、長崎県の福島町、この三つの地域につきまして調査を完了いたしました。現在国及び地方団体の手によって西川地区と長崎県の福島町につきまして復旧工事が進行中でございます。なお木屋瀬につきましては追ってその復旧工事に着手する、こういう予定でございます。
  65. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 大臣も今お聞きになったように、これは国の問題として非常に重大な問題だと思うのです。これらの膨大な耕地の復旧については石炭局の方で調査し、復旧工事計画なども立ててやろうとしておるようでありますが、これは業者がその能力がなくなってしまっておりますから、国がやらざる限りにおいては、この耕地は復旧できないのであります。これは予算等も伴うことでありますから、十分一つお含みの上で、これらの耕地がすみやかに復旧されて、農産物が生産されるようにお願いをいたしたいと思います。  それからこういう状態のところにさらに、たとえば家屋の復旧予算などを、これは石炭局長のところで、あるいは事業団の方で、本年度一億四千万円の工事をやると事業計画を立てさして、そして実はその半分にぶった切っておるので、これでは困る。これでは住宅がますます破壊されていくし、人心は動揺するし、また非常に不安も与えておるし、生命にも危険を感じておるから、ぜひ住宅の年度計画の分だけは、復旧工事をやらしてもらいたいというので、近く国の機関である事業団の方から補正予算の要求等も出てくる、こう思うのです。これらについては一つ秋の臨時国会の折に、せっかく政府から年度計画を立てさしたのでありますから、人心に与える影響も重大でありますから、秋の臨時国会には補正予算を組んで、すみやかにこういう復旧をやってもらうよう、一つ大臣に強く要望いたしておきます。  それから今も私が申し上げましたように、石炭を掘って掘りっぱなしで逃げていった、それから掘って事業をやったけれども、今は無資格になっている、こういうことではその地上に住んでいる住民が困るのであるから、鉱業法を改正するか、もしくは鉱業法を改正しなくても鉱害復旧法でもいいのじゃないかと思うのですが、たとえば政府が炭鉱経営者に施業許可を与えて、いよいよ採掘を始めるというときに、石炭が掘り出されれば陥落することが明らかなんですから、トン当り幾らということをきめて、石炭を掘り出したその月々に分担金を取り上げておく、そしてそれを業者に積み立てろといってもなかなかいたしませんから、復旧事業団が徴収して、あるいはまた強制徴収をしてでもこれを積み立てておく、そうすると今度は炭鉱経営者がどこかへ逃げても無資格になっても、鉱害復旧の分担金だけは残っているから、それに国が補助金を与えてやるならば復旧はできると思う。これは私は当然やるべきではないかと思う。これはわれわれが年来主張し、被害者が熱望していることでありますが、こういう点についても、鉱業法の改正というと時間がかかりましょうから、一般鉱害法の改正の中においてでもぜひ取り上げて、すみやかに鉱害復旧ができるように被害者に不安を除去してやるように十分お考えを願いたいと思いますが、この点について大臣はどういうふうにお考えになっているか、ごく簡単にお間かせ願いたい。
  66. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 石炭鉱業の関係法令の調査会というものを今設けておりまして、そういう点について検討さしているわけであります。鉱業権と使用権との調整ということは、いたずらに外国の例だけではいかぬ、日本のような狭いところはやはり独特な考え方から、今伊藤委員の御指摘のごとく、家がたくさんあるところでどうしてもやらなければならぬというのが、日本の現状でありまして、外国のような工合に何もないところでやる鉱業法とは多少変えなければならぬと思っております。そういう意味からいたしまして、実際実行する人たちから災害復旧ということについてのある程度の賦課金を取っておくというようなことも考えられる一案だと存じておりまして、その点はよく考慮いたしたいと思います。
  67. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 最後に大臣に伺っておきたいのは、大臣が就任された折に、たしか富士製鉄の永野重雄さんとの対談会ではなかったかと思うのですが、そこで大臣鉱業権と地上の公共施設とにおいてはその調整をぜひやらなければならぬというようなことを言われておったのを見たような気がいたします。それは昨年からしばしばこの委員会でも問題になりました。それから地元の福岡通産局長の名をもってもその必要性を非常に力説した書類が本省にも出されてあるはずであります。従って炭鉱であるとか、公団であるとか、あるいは油であるとか、そういうように限定したものでなく全体的な見地から——地下を採掘いたしますと必ず鉱害というか、地上の陥落というものが出てくるのであります。ところがその地上に水道がある、あるいは貯水池がある、あるいは工業の大用水池がある、あるいは何階建という膨大な鉄筋コンクリートが林立しておる、重工業がある、こういうところの下を掘る採掘については、従来の山の下を掘るとか、あるいは平原の耕地の下を掘るとかいうのと同じわけにはいかぬと思う、掘れば必ず陥落するのですから。そうすると地上にやはり一メートルとか二メートルとか、そういう陥落が出てくる。これは非常に大きな問題になるわけです。そこでそういう地区においては、これをどういうように調整するか、たとえばそういうところをどうしても掘らした方がいいというのならば、完全充填の方式をとって掘らすとか、いやしかし完全充填でもまだ地上に与える被害が大きいという場合には、そういうところを掘らせないようにするか、もしくは掘らさなければならぬというのならば、その上に建てる建物を耐久力のあるような建物にさせる、あるいはそういう上には水道であるとか、貯水池であるとか工業用水とか重工業を作らせないようにするとか、そういう調整の必要があると私は思うのです。この議論が出ると、炭鉱経営者などの中では、無害の地区もそれによって制約を加えられるというようなことがありはせぬかと危惧しておる方があるようですが、それは私はほんとうの杞憂だと思います。鉱業権をそのために圧迫したり何とかするということは私は考えておりません。その辺の調整をどうするか、これは西ドイツなどでもやっております。ほかでも近代工業都市におきましてはやっておるようであります。日本においても私は当然この調整の必要はあると思うのです。従ってこれは鉱業法を改正してやるということになりますと、あの膨大な鉱業法でありますから、これはなかなかあれもやらなくてはならぬ、これもやらなくてはならぬというと容易にできないと思う。従って後日は鉱業法を改正して、その中にそれらを適当に入れるといたしましても、当面緊急立法というか特別立法の措置をもってやっておる。そして今度後日鉱業法との関係において、これらをあんばいするということをやればいいのじゃないか、それから炭鉱などが心配する問題については、特別の学識経験者の機関などを作っておいて調整させたらいいのじゃないか、こういうことも考えられますので、おそらく大臣もああいうことをおっしゃっておるというのは、その必要性を私どもと同じように感じられておられるので発表されるのだろう、こう思うので、そういう点についてどういうように政治上の扱いとしてそれを扱ったらよろしいかということをお考えになっているかを一つお聞かせ願いたい。
  68. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいままでの鉱業法におきましては、既存の重要なる物件のあるところに対しては許可をしないという方針をとっておりますけれども、だんだん将来都市の発達につれてあるいは水源地が起るとかなんとかいう結果になると思いますから、この間の調整伊藤委員のおっしゃるのと全く同感でございまして、これは法律を改正するということになれば時間もかかるから、これは起ったたびごとに委員会を開きまして、たとえば先般来のあの九州における日本炭砿とそれから水源地の問題のごとく、そのつど調整をいたしまして解決をするという方針でやっておりますが、詳細なことは政府委員からお答えいたします。
  69. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 ちょっと石炭局長答弁される前に大臣にもう一つ伺いたい。今大臣のおっしゃった許可をせぬというのは、鉱業権を持っております者を施業許可をせぬということになりますと、これは憲法上の問題も出てくると思いますから、鉱業権のないところを新たな鉱業権を許可しないということはできると思うのです。現にある者を施業許可を出さぬということになってくると、これはまた問題があると思うが、そういう場合において今大臣のおっしゃったような現に重要施設のあるものについては、これはある地区を限定するということになれば、やはり国家賠償の問題ということはある。今も法律に賠償の問題ということはあるのですけれども、それが現に実行をされないような程度のことになっておるので、こういう点をやはりもっと明確にしておく必要があるということ。それから委員会をもってそういう調節をするという場合においても、やはり委員会が判定をしていくところの一つの基礎的な法律がなければなりません。特別立法というか時限立法というか、何かそういう形で法に基いて権威ある結論が出せるというものがなければ、委員会があっちから押されこっちからも圧力をかけられるというのでは全く権威あるものは出てこないと思います。やはり委員会の権威をあらしめ錢意味において、そういう基礎的な一つの時限立法か特別立法を作る必要がある。そういうことについても十分お考え願いたいのでありますが、そういうことについて大臣のお考えを承わり、それから石炭局長の御答弁を伺って私の質問は終ることにいたします。
  70. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 すでに許可している鉱業権について制限を加えるのではなくて、新しく鉱業権を付加する場合に制限を加えておるということでありますから、さよう御了承願います。この委員会構成等につきましては十分伊藤委員の御趣旨に沿うごとくやりたいと思っております。
  71. 村田恒

    ○村田説明員 ただいまの問題は前々の国会から何回となくいろいろ御指摘を受けておりまして、通産省の中におきまして、特別に法制上の問題を研究する特別調査会を設けまして昨年来引き続いて研究いたしております。その結果、これも伊藤委員からお話がありました、たとえば一九三九年の西ドイツの地下資源の採掘を保護するための建築制限令でありますとか、また東ドイツ、英国、それらのあらゆる法規をずっと調査して参りました。現在その法文の調査は一応終りましたけれども、その法文の背後にあります現実にどういう形のもので、たとえば国家が賠償するような場合にどういうところからやったらいいか、あるいはその法規を現実に運用する場合にどういう運用方法をやっておるかについて、それぞれ各国の実情紹介する紹介の原案を作りました段階に進んでおります。  それから単独立法というお話でありますが、これを単独立法でいくか、あるいは臨時石炭鉱害復旧法が施行後すでに五年を経たので、施行後五年を経て法律が実際どうなっておるか、反省すべきときが来ておるので、これの関連、あるいは鉱業法の若手の部分の修正、それらの点でいくか、お示しのように単独立法でいくかについてまだ最終的な結論は出ておりませんが、目下検討中でございます。しかしかりにそういう新しい一つ法律の体系あるいは新しい法律の改正が生まれ出る時期が参るといたしましても、それ以前に、現在毎日々々石炭の採掘が進んでおり、毎日鉱害が起っておるわけでありますから、その意味におきまして、現行法の範囲内において現行法の運用の中において、極力今お話しの趣旨を生かすにとが必要だと思います。その意味におきまして、近いうちに現在やっております施業案の認可基準を決定いたしまして大臣名をもって各通産局に通達をしたい、その原案を作っておる段階であります。  それからなおお話の中に鉱害の賠償担保金制度をもっと強化しろということがありましたが、これも研究中であります。さらに根本となります鉱害の理論が、いつもいつも問題が起ります場合、そのつどそれに客観的に当てはめていきます方式が確立してない。すなわち鉱害理論が日本に確立されていないのが最大の弱点であると思います。その意味におきまして、ドイツのレーマンの理論あるいは水に関しますヴアルスの理論、そういったものを今技術者あるいは学者に研究してもらっておりまして、同時に通産省といたしましては、いただきました予算の範囲内において多数の鉱害の測点を定めまして、昨年からずっと実施いたしております。これによって、どういう場合にこれが鉱害であるか、またその鉱害がどの程度範囲になるか、また同時に採掘をいたしました場合に、地上にどういうふうな引っぱりの影響を与えるか、そういうふうな一つの根本的な方式が確立され、そういう方式が確立された場合には、今起っておりますもろもろの紛争の解決に、あるいはその紛争の解決を早く片づけるという意味において、非常に役立つのではないかと考えられますので、そういう方向において現在の政策を実施しておる段階でございます。
  72. 長谷川四郎

  73. 板川正吾

    板川委員 私は通商政策について高碕通産大臣に若干の質問をいたしたいと存じます。  まず第一に、大臣は「今後における通商産業政策について」という所信表明の中で、「特に輸出の増進は、今後におけるわが国経済発展のため最大の要件と考えられますので、今後あらゆる国の施策をこれに結集し、こう言われておりまして、輸出増進を第一に重要視されておるのであります。     〔委員長退席、中垣委員長代理着席〕  そこで私がお伺いいたしたいことは、政府の今年度における輸出の目標額、それと最近のその目標額に対する実施の見通しについて、大臣としての最近の見通しについてお伺いをいたしたいと存じます。これは通商政策上重要なことでございまして、商工委員会として初めて正式に聞くものであろうと思いますので、この点をまずお伺いいたします。
  74. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 輸出目標は三十一億五千万ドルということを目標といたしております。本年度におきまして、最近二カ月間の実績から検討いたしまして、各業種別で省内においていろいろ検討いたしますと、現在のところ見通しといたしましては二十九億八千万ドルという数字が最近出ております。
  75. 板川正吾

    板川委員 二十九億八千万ドルが最近の輸出の実施見通しだそうであります。これは昨年度の二十八億五千八百万ドル、こういう実績に比較をいたしますと、経済の自然成長率という点から見ますと、非常に伸びが少いように思われます。そこでお聞きいたしたいことでありますが、この目標額をどうして達成していくか、さらにこの経済の発展を、拡大をはかるかということについて、大臣の所見を承わりたいと存じます。
  76. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 大体今の見通しからいたしますと、昨年よりも幾らかふえておりますが、予定の目標を下回っておるということは事実でございます。これは一つは現在の日本の物価というものが、予定いたしましたときと比較いたしまして、かれこれ一割近く安くなっております。そういうふうなことも考慮いたしますと、数量的に考えて予定よりもそんなにひどく悪くなっていると思いませんが、しかしこの価格が安くなっているということは、国際的の競争にだんだん打ち勝っていく一つの要素ができたということが一方から考えられます。同時に御承知のごとく、国内の在庫もふえております。こういうふうなことから考えますれば、一面からいうと、大体輸出にはいい態勢になってきておるようでありますが、問題は要するに買手の問題であります。買手の国々はどれもこれもドルが不足しておる。かりにドルを持っておっても、そういうところはいろいろな圧迫がありますから、対米貿易につきましてもさらに一段の考慮を払って、昨年よりももっとふやしたい。ドル、外貨を持っていないところに向っては相当長期における貸付をするというふうな方針で進んでいって、予定の目標額を達成いたしたいと思っております。
  77. 板川正吾

    板川委員 経済の拡大をはかるには輸出の拡大をはかることが先決だ、これはもう当然の常識であろうと存じますが、昨年の、日本貿易の現状という資料によりますると、昨年日本はアメリカから十七億八千万ドルという膨大な物資を輸入したのであります。しかしアメリカは日本の品物を六億六千万ドルしか買ってくれなかったということがこの報告に出ております。十一億ドルの片貿易という現状ではないか、このほかに特需収入があろうかと思いまするが、十一億ドルかの片貿易をなしている。この対米片貿易のことが日本の輸出不振の最大の原因ではないか、この対米片貿易を大臣はどうして是正されようとするか。所信表明の中では、「米国市場の動向把握に努め、適時適切な市場対策を講ずるとともに、強力な経済外交を展開したいと考えております。」と言っておられますが、どういうような経済外交を行なって、この片貿易を是正しようとされるのか、大体の方針でも承わりたいと存じます。
  78. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この対米貿易につきましては、昨年は実際これは異常にたくさんの輸入をしたのでありまして、あるいは鉄材を輸入するとか、鉄鉱石を輸入するとか、そのほか国内の景気のために、御説のごとく十七億ドルという大きな輸入をいたしましたことは事実であります。昨年だけは、特需関係を入れましてもなおかつアメリカに対する支払額は四億八千万ドル近くなっております。そのほかの年においては、貿易からいえば支払い勘定になっておりますが、特需を入れますと大てい二億ドルから三億ドルばかりのプラスの勘定になっております。日本の方にプラスになっております。それで、本年におきましては輸入はノーマルな状態に減ってくると思います。貿易から申しますれば大体四億ドルから五億ドルの支払い勘定になりますが、それに相当するくらいの特需を持って、参りますから、大体バランスがとれると思っております。しかしアメリカの片貿易ということにつきましては、これは私どももよほど慎重に考えておりまして、先方から持ってくるもので簡単に市場を転換し、市場を転換することによってまた日本のものが輸出できるというようなことはよく検討いたしたいと思っておりますが、ただいまのところなかなかそういうふうなものがないのであります。大ていアメリカから買うよりほかはないと思っております。また対米輸出の方におきましても、この品物はちょっとほかへ向けられないものでありますから、対米輸出は現在六億何千万ドルになっておりますが、あらゆる方法をもちまして、これをもっと力強く増進していきたいと存じております。
  79. 板川正吾

    板川委員 輸入市場の転換をはかる、しかしそれはなかなか困難だ、こういう大臣答弁がございましたが、この日本貿易の現状によりましても、日本貿易の第一はアジア地方であります。東南アジアあるいは東アジア、西アジア、これは輸出入とも第一位を占めておりますが、しかしこの地域は現在非常なドル不足でありまして、購買力かないと思います。日本の輸出を伸ばすためには、どうしても輸入市場を中国に求めて、そうして輸出を中国に求める、こういう日中貿易再開ということが緊急の問題であろうと私は思います。この点は異論のないところと思いますが、昨日当委員会において日中貿易関係の参考人を呼びましたときに、山本さんからこういう意見が申されたのであります。第四次貿易協定を政府がすみやかに認めること、そして国旗事件に対して政府が誠意を示す、こういうことに対する日本政府の腹がきまれば、日中貿易問題は打開の道がある、こういうことを申されました。この点に対して大臣の見解はいかがでありましょうか、お伺いをいたします。
  80. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私は日中貿易については、一日も早くこれを従前通りに回復することを希望する一人でございまして、それが方法として、どうやったらいいか、こうやったらいいかということは、これは党なり内閣全体の問題になりますから、事外交に関するものでありますから、本日私はこの方法につきまして、国旗がどうだとか何とかいうことについては、私の意見を述べることを遠慮させていただきたいと存じます。
  81. 板川正吾

    板川委員 いろいろ大臣答弁で、個人としてと、閣僚としてということもございますから、これ以上申し上げませんが、要望として……。世界経済は、東西の貿易が盛んになる傾向にあろうと思います。藤山外交はそういう面ではどうもあまりにもこういう世界経済の現状から目をふさいで、アメリカの方を向き過ぎておるのじゃないかと私は思う。大臣は先ほども言われましたが、経済外交を強力に展開いたしたい、これは所信表明の中でも繰り返して申されておりますから、私は経済外交というのは米国ばかりに行うのではなくて、日中関係にも大いに一つ経済外交を展開していただいて、大臣の努力によって、この日中貿易問題が解決の曙光が見出せるように、一そうの努力をお願いいたしたいと思います。幸い本日の新聞によりますると、政府におきましても経済閣僚懇談会を持って、最近取り上げたいというようなことが報道されておりますので、今後大臣の一そうの活躍を期待をいたします。以上をもって私の質問を終ります。
  82. 中垣國男

    ○中垣委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後一時四分散会