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1958-07-02 第29回国会 衆議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月二日(水曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 中垣 國男君 理事 中村 幸八君    理事 加藤 鐐造君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       新井 京太君    岡部 得三君       岡本  茂君    奧村又十郎君       加藤 高藏君    菅野和太郎君       木倉和一郎君    坂田 英一君       關谷 勝利君    田中 榮一君       中井 一夫君    西村 直己君       野原 正勝君    濱田 正信君       渡邊 本治君    伊藤卯四郎君       板川 正吾君    今村  等君       内海  清君    大矢 省三君       勝澤 芳雄君    小林 正美君       鈴木  一君    多賀谷真稔君       堂森 芳夫君    永井勝次郎君       水谷長三郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  高碕達之助君  出席政府委員         通商産業政務次         官       大島 秀一君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君  委員外出席者         議     員 池田正之輔君         議     員 亘  四郎君         議     員 黒田 寿男君         議     員 田中 稔男君         議     員 帆足  計君         議     員 三宅 正一君         通商産業事務官         (石炭局長)  村田  恒君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      小岩井康朔君         参  考  人         (日中輸出入組         合専務理事)  高見 重義君         参  考  人         (国際貿易促進         協会会長)   山本 熊一君         参  考  人         (日中貿易促進         会専務理事)  鈴木 一雄君         参  考  人         (八幡製鉄株式         会社常務取締         役)      稲山 嘉寛君         参  考  人         (日本硫安輸出         株式会社専務理         事)      大仲斎太郎君         参  考  人         (日中貿易再開         推進委員会委員         長)      白水  実君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 七月二日  委員大野市郎君、伊藤卯四郎君及び多賀谷真稔  君辞任につき、その補欠として中村寅太君、水  谷長三郎君及び今村等君が議長指名委員に  選任された。 同 日  委員今村等書及び水谷長三郎辞任につき、そ  の補欠として多賀谷真稔君及び伊藤卯四郎君が  議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日中貿易に関する件  鉱山災害に関する件      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  日中貿易に関する件について調査を進めます。本日は本件につきまして各種推進団体並びに業界代表方々参考人として御出席を願っておりますので、まず参考人方々より御意見を承わることといたします。  参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。本日はきわめて御多忙中にもかかわらず、本委員会に御出席下さいまして、まことにありがとう存じます。申すまでもなく、本問題につきましては、国民のすべてが等しく重大なる関心を寄せております現状であり、当委員会調査事項の中でもきわめて重いウエートを持っている問題であり、政府に対しましても回を重ねていろいろな角度から質疑を行い、あるいは要望をいたしておるような次第でありますが、この際、直接その仕事に当っておられます方々の御意見を承わるべく、御多忙中のところをわざわざ御出席願ったようなわけでございます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べ下さいますようお願い申し上げます。ただ時間の都合もありますので、最初に御意見をお述べいただく時間は一人大体十五分程度にしていただきたいのであります。後刻委員から質疑もありますので、その際十分お答え下さいますようお願いを申し上げます。  なお、念のために申し添えておきますが、規則の定めるところによりまして、参考人方々が御発言なさいます際は委員長の許可が必要であります。委員に対しまして質疑することはできないようになっておりますから、あらかじめお含みおきを願いたいと思うのであります。  それではこれより参考人の方の御発言をお願い申し上げます。  まず日中輸出入組合専務理事高見重義君より御意見を承わることにいたします。
  3. 高見重義

    高見参考人 ただいま御紹介にあずかりました高見であります。今回の中共側取引中断によりまして最も被害を受ましたのは、われわれの貿易関係業者であり、また団体であります。きょうは政治的なお話は一切省きまして、貿易に関してわれわれの受けた損害あるいはその他の件につきまして皆さんの御協力を得たい、こう考えまして発言いたしたいわけであります。  中共貿易も第三次貿易協定が第四次貿易協定に移行する間におきまして、非常な混乱があったために、昨年などは予想外貿易額は減少いたしたわけでありまして、第三次貿易協定の延長の切れます昨年の九月以来、特に日本輸出貿易西ヨーロッパに比して相当減ってきた。数字では申し上げませんが、昨年の上半期と昨年の下半期における日本輸出貿易の減り方は、約三割減っております。それに反しましてイギリスなどは約七割ふえております。ドイツが約四割ふえております。そういうような関係で、この第四次貿易協定が実施されないために、非常な輸出貿易の減退が見られをたわけでありますが、本年に至りましてからやや第四次協定の曙光が見えてきた。従って中共側も第二次五カ年計画の発足と同時に、相当の日本の物資を期待したのであります。従って統計は本年の一月から四月までの間でありますが、日本銀行の為替統計によりますと、日本中共輸出というものは相当大幅に伸びております。これを具体的に述べてみますと、たとえば鉄鋼では、いろいろの鉄鋼製品金属製品、これは約千五百万ドル、すなわちアメリカに次ぐ第二位の輸出出額を得ておるのであります。それから化学肥料を含む化学製品、これは十四百万ドルと申しまして、中共が第一位であります。二位は台湾でありますが、全体から見ますと、一月—四月の実績は全部で三千八百万ドル、すなわち日本の円にしますと、約百三十億に近い輸出実績を示しておるのでありまして、この間における日本輸出の地位というものは、大体中共貿易は第四位になっております。かっては中共貿易がわずかに二%、三%、日本輸出額の一コンマ以下という実績もあったのでありますが、本年の一月から四月におきましてはとにかく世界貿易における中共への輸出山量というものは日本にとっては第四位だったのであります。従ってこれから伸びる貿易というものが、この五月十日以後停屯いたしまして、それによって大きな被害を受けたわけでありまして、この被害額は、皆さん新聞紙上で御承知のごとく約三百五十億円の既契約キャンセル——キャンセルと申していいかわからぬのでありますけれども、一応この契約が中断されたわけであります。この三百五十億円の中で、輸出が約百六十億円、輸入が百九十億円となっております。この輸出の中で最も大きなものが鉄鋼であります。かってここに見えております稲山さんが契約されました鉄鋼既契約が、相当キャンセルとなって現われたのであります。現在では鉄鋼既契約キャンセルは大体二十一万トンと見ておりますが、これは約八十二億円であります。それから肥料も昨年暮れに約五十万トンの輸出契約をやったのでありますが、そのうち約二十二万トン程度残っておると思います。それが大体四十二億円、その他繊維品とか、いろいろのものがありますが、一応合計いたしまして百六十億円の契約というものがいわゆる宙ぶらりんになりまして、この被害は相当のものであり、私どもとしては大へん残念に思っておるわけであります。輸入の面におきましても、一番大きなものが大豆の二十六万五千トン、これは約七十七億円になりますが、残っている。塩が大体三十四万トン残っております。これは金額は約六億五千万くらいでありますが、少い。その他石炭が約六十万トン残っております。あるいは鉄鉱石が四十万トン残っております。多角的に非常にいろいろの商品を含んでおりますので、これに対する関係業界被害は非常に大きい。特に大企業のみならず、中小関係企業もこれがために非常に大きな迷惑をこうむっておることは、おそらく皆さんも十分御納得のいけることと思うのでありまして、何とかしてこの事態を急転回さしていただきたいということを、われわれは歯を食いしばって大いに叫びたい、こういうふうに考えるのでありまして、何分皆さんの御協力をお願いしたい。  さらにもう一つお願いいたしたいのは、かかる経済断交に伴う既契約キャンセル、これに伴うところの被害というものの一応の救済措置でありますが、これだけの大きな契約キャンセルとそれに伴う予想利益の損失、あるいはまた非常な生産面におけるところの被害、あるいは生産者貿易業者との関連に伴うところのたとえて申しますとアドヴアンスとか、いろいろ金融面の大きな穴が実はできてきたのでありまして、どうしてもこの問題を一日も早く解決したいというのがわれわれの念願であります。  それから貿易業者にとりましては、単にこの契約被害のみならず、これからいつ再開されるかわからないところの空白期間経営の困難であります。これは大水害とかあるいは大きな火事の被害と同列に考えるべきものであると思うのでありますが、何分にもこれによって生活しておる国民の一部の中に、こういう大きな被害者があるのだということを、皆さんに十分納得していただきたいと思うのであります。現在中共貿易関係者は、昨年の統計によりますと、一応商売している人は大体百五十九軒あります。これを百六十社といたしますが、その中で区分けをいたしたいのでありますが、中共貿易を本拠といたしまして、ほとんど全部の力をこの中共貿易にそそいでいる商社、たとえて申しますと、自分貿易額の九〇%以上という商社が二十四社あります。それから五〇%以上の商社が十六社、三〇%以上の商社が三十二社、あとの八十七社というものは大体自分貿易額の三〇%以下、計百五十九社となっておりますが、この半数に近い商社がとても大きな被害を受けておるわけであります。そしてこの中共貿易に従事する商社従業員の数は、設員、職員を合せて、われわれはこれを大体二千人と見ておりますが、この経費をある会社は一人当り十万円あるいは五万円、いろいろありまするが、一応われわれは平均をとりまして六万五千円を二人当り経営維持費と見て計算してみますと、大体一カ月一億三千万円の経費が要るわけであります。この経費は御承知のごとく既契約による予想利益、あるいは今後の商売によりましてかせぐのでございますが、今後は何カ月続くかわからないところの貿易再開空白期間を、とにかく無為にしてこの経費を捻出しなければならぬという大きな事態に直面しておるわけでありまして、これに対しましては組合は何とかこの救済方法をとっていただきたいと政府にも嘆願いたしておりますし、また業者自体も真剣にこの問題を取り上げておるわけであります。すなわちある場合には補償の形、またある場合にはつなぎ資金の形で、この空白下に要るところの経費の増大というものを補てんしていかなければならぬ。毎日われわれはこの会に列席いたしましてその案をいろいろ検討しておるわけであります。どうか議員諸君もわれわれの苦衷を察していただきまして、何とか貿易再開まで、どんな方法でもいいのでありますから、つなぎ融資とか、あるいはある程度救済を考えていただきたいということをお願いする次第であります。  それから最後に、日中輸出入組合自体の問題でありますが、御承知のごとく組合は現在三百九十社くらいありますが、全くこれは被害者組合で、従って商社の方の銀行の借り入れも相当ふえております。従って組合自身大へんな困難を実は感じておるのでありまして、一部はもちろん組合言商社が負担するということははっきりしておるのでありますけれども、なおかつ組合自身を維持していくために、どうしても不足の金額が起るわけでありまして、全くわれわれはとほうにくれておるわけであります。この点に関しましては関係指導当局の通産省の各位、あるいはまた大蔵省の方にもいろいろ嘆願いたしておりますが、何とか一つこの問題を考えていただきませんと、組合としてはとうていこの長期間の空白に耐え得ないわけであります。と申しますのは、この組合経費というものは御承知のごとく商売による手数料と申しまするか、賦課金、それから平等割と申しまして一組合平均月に出す金額、あるいはまたさらに部会と申しまして業種別の会があるわけでありますが、それによる醵出金、一応それをたよりにいたしまして今までは経営をいたしたのでありますが、それがどうしても困難である。平常でありますと、組合員協力によりましてこの問題は簡単に片ずくと思うのでありますけれども、現在組合員自体も非常に大きな被害者でありますので、この問題を幾ら言いましてもこれはなかなか困難である。そこでこういう場合は行政監督機関政府にどうしても救いを求めなければならぬということになるわけでありまして、われわれは別にこじき根性を持つわけではないのでありますが、こういう非常事態におきましては何とかして組合を維持し、そうして何とかこの空白期間を埋めたい、こう考えておりますので、どうか一つその気持を察していただきまして、皆さんの御協力を得たいと思います。  大体以上でございます。
  4. 長谷川四郎

  5. 山本熊一

    山本参考人 私は貿易協定調印の一団体といたしまして、今回のごとく日中間関係が、悪化いたしましたことにつきまして、深く責任を痛感いたしておる者の一人であります。何とかして一刻も早くこの難局を打開したいと思っていろいろ骨を折っておるような次第であります。私はこの機会に、簡単に、第四次貿易協定の本質ということについて申し上土げると同時に、どういう環境のもとにこの協定が締結されたかということについてお話し申し上げたいと存じます。  御承知のごとく日中間貿易協定は一九五二年以来、今回で四回にわたって締結されております。初めの二回は日本側では貿易協定と申しておりますが、中国側では貿易協議といって、覚書程度取扱いしかしなかった。それが第三次協定以来中国側もこれを貿易協定として、政府も非常に力を入れて締結いたしておるのであります。そうして今度の第四次協定はどういう特色を持っておるかと申しますれば、両国関係は法律上においては今なお戦争状態が継続しておるというような不安な状態の中にあります。この間において何らか安定した貿易を進めていくためには、政府保証もあるところのしっかりした協定でなくてはいかぬ、それによって初めて貿易に関するあらゆる不安を除くことができる、こういうような見地からして第四次協定は締結されたのであります。そうしてその中におきまして、第四次貿易協定を第三次等の以前の協定に比べまして特色と認められる点は、今この段階におきましては両国間の貿易の量も質もきわめて大きな発展を遂げておるのであります。こういう点が第一点であります。もう一点は、現在における国際経済のあり方と申しますのは、数年前東西貿易再開という点から発足いたしまして、いろいろと各国において進められてきたのでありまするが、現在の国際経済は互いに経済協力というところにまで進んできておるのであります。日中間経済関係においても、ただ単に売ったり買ったりするということでなくて、お互い建設協力し合うという趣旨のもとに、経済協力が進められてきておるのであります。そのために今度の第四次協定の中においては、第九条におきまして、互いに将来は技術の交流及び提携協力をするという事項がきめられております。もう一つ第八条で、あったと思いまするが、その条項において、保証のある長期安定した取引契約を締結するという規定が設けられておるのであります。それからこういう点から申せば、いずれも従来の段階を越えて、現在においては技術を通じ、あるいは重要資材を長期安定して互いに供給し合うことによって、その国の建設協力する、というような協力態勢を主とした協定になっておることが一つの特徴であります。こういう複雑な情勢のもとに経済協力を進めていく上においては、どうしても常駐した人がおって互いに助け合うということでなければ目的を達成することができない。こういう関係から、民間の通商代表部相互に設置するということが、いよいよ具体化してきたのであります。この点に関しては、法律的に申せば、まだ戦争状態も継続しておるというような、政治的に見ても不安な状況の中において貿易を進め、経済協力をやるのでありますから、常駐した人がおって連絡を密にして、相手国に対しても十分なことをして、そうして円満に貿易を進める、こういう見地から通商代表部を置くことになったのであります。ところが通商代表部の人は、不安な状態の中、複雑な日本の国情の中においては、その任務遂行についても、安全工保障について十分なる取扱いを受けなければその目的を達成することができないということから、国旗掲揚その他に関する条項も生まれてきたのであります。そういう重大意義を有する貿易協定が三月五日に調印されたのであります。そこで、従来の日中間経済関係を申しますれば、政治上はいまだ正常化していない中に、何と経済問題だけでも国民の間で手を取り合おうということを、初め向うからも言ってきて、国民もこれに応じていろいろ努力の結果、今日まで貿易も発展してきたのであります。しかし、法律的にはまだ国交は正常化していない。その上に、今までの貿易協定が互恵平等の貿易をやるとうたっておるにもかかわらず、実際においては不平等取扱いをしてきたのであります。チンコム及びココムのごとき敵国に対すると同様の禁止制限日本側は課し、名目は互恵平等の貿易と言ってやってきたのであります。中国側から言えば、こういうように貿易協定においてもわれわれは不平等の待遇を今日まで受けておる、それにもかかわらず何とかしてこれを増進しようとやってきたのだ、こういうのが現在までの両国関係の偽わらざる実情であります。こういう中におきまして今度の貿易協定が締結され、しかもこの貿易協定については、皆さんすでに御承知のごとく、日本側でいろいろ論議されました点について、了解事項においておおむね双方の意見が一致を見ておるのです。すなわち、国旗を掲げる権利を有するということは、決して承認するとかせぬとか、そういう意味ではない。あたかも展覧会において相互国旗を掲揚したと同じような意味である。ただし、国旗は国を象徴するものであるから、それに対しては十分尊重し保護も加えるという話し合いのもとに、国旗掲揚はその政府を承認するにあらずという話し会合いもついておるのであります。それからいろいろ心配された通商代表部の人についても二十名を出す、それ以上はふやさないという了解もついておるのであります。それから安全保障等につきましても、やたらに外交特権を与えるということでなく、その任務遂行及び身体生命安全保障につき十分な取扱いをするという規定がありますが、それがあまり行き過ぎになってはいかぬというので、両方の了解事項の中で、バンドン会議精神を尊重し、決議を尊重し、通商代表部の部員はお互い相手国の国法を順守し、風俗、習慣を尊重するという話し合いもついておるのであります。  こういうような協定を締結してきたのでありまして、われわれは、政府の万全の措置協力を得ることを期対しておったのでありますが、その後の事情によりまして、今日までこれが実施されていないのははなはだ遺憾なことでありますが、しかし、この問題を、今日においてはわれわれどうしても解決していくということに全力をあぐべきであると思うのでありまして、これは私責任を持って申し上げたいのでありますが、これが解決の唯一の方法は、第四次協定を率直にそのまま政府において承認してもらいたい、こういうことであります。第二は国旗問題について、外国の国旗を尊重するという国際礼譲及び国際慣行を十分身につけて、誠意をもってこの問題を解決してもらう、こういうことであります。そのもとになりますことは、何につけても友好精神に基いてやるべきことであります。今度の協定を真に承認していくということになりますれば、それこそ友好関係を如実に作り上げることでありまして、こういうことによってこの問題の解決はできると思うのであります。  どうかそういうような方針のもとにおきまして、皆さんの絶大なる御支援と御努力によって、日中間の今日の関係が一日もすみやかに打開されることを希望いたしまして、またお願い申し上げまして、私のごあいさつといたす次第であります。
  6. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に日中貿易促進会専務鈴木一雄君より御意見を承わります。
  7. 鈴木一雄

    鈴木参考人 私は、日中貿易促進会仕事をやっております。昭和二十四年から日中貿易を促進するために約八年間この運動をしてきたものであります。今の長谷川委員長もその当時からいろいろと御尽力いただいております。そういう立場から御報告を申し上げたいと思うのです。  皆様承知のように、すでに日本からフィリピン、ビルマインドネシア、こういった諸国に対しまして戦争による損害賠償支払いが始まっております。言ってみますと、戦後十年にしてわが国アジアの平和な一国として再出発しようとしているわけでありまして、昭和三十年の春のバンドンアジアアフリカ会議政府代表が派遣されましたのも、やはりこのような再出発の一歩を印そうとされたためではないかと思うのであります。このようなときに当りまして、日本中国との間に皆様承知のような緊急事態が生じましたことは、これは容易ならないことでございます。これは単に日本中国だけの問題でございません。アジア諸国は、わが国がこのアジアにおきまして平和に生きようとする国として、この緊急事態をどういうふうに解決するか見守っているわけでございます。この辺が非常に重要な点ではないかと思うのであります。単に日中関係だけの問題でなく、この中国問題の解決は、アジアにおきます語問題の解決に直結していると思うのであります。ことに最近のインドネシアにおきます新しい変化、あるいはビルマにおきます新しい政治的な変化、こういうことを考えますと、ますますこの感を深くするわけでございます。また同時に、この日中問題は東南アジア貿易問題と関係がないわけではございません。そのことはすでに、綿布でありますとかミシンでありますとか、セメントでありますとか、わが国東南アジアにおきますところの輸出商品諸国商品との非常な激烈な競争にさらされていることをお考えになりましても、この日中問題は決して日中だけの問題ではなくてわれわれの目ざしておりますところの東南アジア貿易にも直結している問題であるということを考えねばならないのであります。従いまして、この日中問題の解決には日本中国との具体的な事情に応じなければならないのはこれは当然でございますが、また同時にアジアの問題として、アジア事情にもやはり立脚する必要があると思うのであります。すなわち具体的に申しますならば、今までこの国会で政府皆様方がたびたび言及されておりますところの、先ほど山本さんからもお話がございましたところの、昭和三十年のバンドン会議話し合いを守りまして、この会議精神に立脚することが必要でございます。顧みますと、この隣国の六億五千万の人口が、豊富な資源の上に、十年ないし十五年にして米国の工業力に追いつこうとしております。この第一・四半期の実績を見ますとすでにスタートをしているようでございます。これを見ますと、日中貿易の発展の可能性は、従来われわれが考えました以上に非常に大きな、むしろその想像をはるかに越えるものがあるようでございます。この可能性はすでにわれわれ業界の方でもこれを感知しておりまして、すでに昨年の秋から具体的にこの可能性を日中貿易の中にものにするために大きな準備が開始されております。たとえば鉄鋼の長期のバーターの協議もそれでございます。あるいは大量の化学肥料契約もそれでございます。あるいは大豆の二十六万五千トンの長期契約もやはりそれでございます。これらもすでに契約があり、すでに一郎は実行されてきたのでございます。あるいは水力電源開発の協力の問題も了解に達しました。あるいは化学肥料あるいは化学繊維の技術輸出の問題につきましても、もうかなり具体的に準備ができております。あるいは中国の鉄道電化計画に対しますところのわが国の参加につきましても、すでに電気機関車七台の契約をスタートにいたしましてこれも始まっております。こういうようなことを並べてみますと、さすがのヨーロッパの諸国をも実にぼう然たらしめるものがあったわけであります。日本中国市場に対する進出につきまして非常に驚いていたわけでございます。ところがこの五月九日を中心にいたしまして、日中貿易が全面的に停止になりましたので、まずヨーロッパ諸国が非常に喜んだのでございます。これはまことに理由があるわけでございます。最近ヨーロッパから帰りました人の話を聞きますと、ちょうど五月十日前後にイタリアのミラノにおりまして、そのときに、イタリアの社会主義諸国貿易の窓口になっておりますドニフレールに行きましたところが、この停止のあと二、三日のうちに大体五百万ドルぽかりの契約がまたたく間にできてしまったと非常に喜んでいたそうであります。その製品を見ますと、これはモンティカティニの塩化ビニール、あるいはフィアットのトラックでございます。こういうことはやはり日本でもやっていた問題でありますが、日本の問題はすでにイタリアにスイッチされてしまいました。このようにむしろヨーロッパの方では漁夫の利を得たことで非常に喜んでいたわけであります。  このような状況にあります日中貿易再開するにはどうしたらいいか、この原因につきましては、たとえば北京におります西園寺公一君が手紙でで書いてきましたように、これは端的に言っていると思うのでありますが、片方の手でそろばんを持ち、片方の手であいくちを持った格好では貿易はできない、こういうことを端的に言ってきております。これはいろいろな背景があると思うのでありますが、そういうことも考えながら、この日中貿易再開するにはどうしたらいいか、やはりこれはあまり長く置きますと、工合が悪いいろいろな問題の生ずるおそれがありますので、早い機会にこの再開をする段取りをつけねばならぬと思うのであります。簡単に申しますと答えは非常に簡単であると思うのであります。すなわち、先ほど申したようなバンドン会議に集まりましたアジアの大きな新興国、インド、インドネシアビルマ、こういった諸国と同じように中国と交渉をするということが、どうもきめ手であるようでございます。このようなことでありますならば、これはアジア諸国からも支持されますし、また日中貿易ばかりではございませんで、中国の参加しますところのアジアの域外貿易の発展を保証する方途がこの関係から出てくることでございます。日中貿易問題は日中だけの視点で見ることなく、もっと大きな大局的観点に立つ必要があると思うのであります。この点が非常に重要ではないかと思います。御承知のようにインドネシアとの平和条約の中には明らかにこのバンドン会議が参照されてございます。実際わが国は、一歩々々このバンドン会議話し合いを実行に移してきているのではないかと思うのであります。これは明らかにその証左であると思うのであります。従いまして、このバンドン会議の重要な参加国の一つでございます中国につきましても、同様な方向があることを予期いたしますことは、やはりこれは根拠のあることと思うのであります。従いまして、この路線の上に、この方向の上に具体的措置政府が講ぜられます限りにおきましては、日中貿易再開は確実な糸口を見出すことができると思うのであります。この方向が非常に重要であります。この方向がなければいろいろな諸般の措置もこれは意味をなさなくなるのでありまして、この方向の確定がまず第一に非常に重要だろうと思うのであります。この方向をきめた上で、この具体的処置につきましては、まず思い当りますのは、先ほど山本さんからお話がありました第四次の日中貿易協定を調印通りに全三面的に政府保証することでございます。しかしながら、中国の今の進行しております第二次五カ年計画の実情からいたしますと、その貿易の規模と内容はもうすでに民間協定のらち外に入っております。これはどこまでも政府間の協定が要請されると見られるような状態になってきております。従いまして、今からまっとうに考えますならば、おそらくは民間協定ということではなくて、やはり貿易の規模と内容からいたしますならば、それはどこまでも政府が直接な協定を結ぶべき状態になっているのでございますが、しかしながら、今までの日中問の経過から考えますならば、この状態を百歩譲ることも可能であろうと思うのであります。そうなりますと、この四次協定保証ということが重要な糸口になってくると思うのでございます。もちろんこれは調印通りということでございまして、いろいろな政治的なまぎれが多い四月の政府の御回答のようなことでは、進展は非常に困難ではないかと思います。この日中間の緊急状態を、まず一億ドルの輸出がなくなっただけぐらいに見ておりますことは、これは実際に合わないと思うのであります。日中の現在の緊急状態の問題は、そのような小さな規模のものではないと思うのであります。貿易だけで見ましても、この四、五年のうちには輸出十億ドルというくらいのことはおそらくは至難でないと思うのであります。でありましても、まだこの貿易だけの問題ではないと思います。六億の国民と長い間戦争をいたしまして、そのあと始末がまだついていない、そのままの状態でこのような不幸な緊急状態を招いているのでございまして、この事実から目をそらすことは絶対許されないというのが実際でございまして、この点、やはりわれわれは率直にこの事実に目を聞く必要があると思うのであります。この認識の上に立って、ハンドンの会議精神に立脚いたしまして、はっきり申しまするならば、国交回復の方向の上に、国交を正常化するという方向の上に、非友好的でない、エビデンスを、やはり具体的の措置によって漸次明らかにしていくことによりまして、初めて日中貿易両開の糸口が確実に見出されると思うのであります。この問題はなかなか容易ならぬ問題でございまして、日本経済の総力をあげて解決する問題であろうと思うのであります。これは日本自身がやはり自主独立をもって決定すべき、日本の戦後独立の最初の大きな事件ではないかと思うのであります。それだけの大きな規模と覚悟で、これにぶつからない限りにおきましては、これは解決が非常に困難である、そこまで考える大きな問題であろうと思うのであります。どうぞ皆様の御尽力を、業界といたしましてもあわせてお願いする次第であります。
  8. 長谷川四郎

  9. 稲山嘉寛

    稲山参考人 私八幡製鉄の稲山と申す者でございます。  中共との関係につきましては、これは地理的に見ましても歴史的に見ましても、もう当然、相携えて世界の発展に寄与しなければならぬ立場にあることは周知の事実でございます。ところが不幸にいたしまして戦争という事態が起きまして、その後冷い戦争段階に入りまして、依然として日中門は平常を取り戻すことができない状態であったわけであります。私どもといたしましては、早く本然の姿で日中の友好を結びたいと考えておったことは、これはもう日本国民全体の問題だろうと思うのであります。しかし日本としてもいろいろな世界情勢の中の日本でございます関関係上、世界情勢がそういうことを許さない間は、これは不可能な問題であります。しかし幸いに、私どもといたしましては去年の募れから世界の情勢も非常な変化をしているんではないかとひそかに考えておったわけでありますが、いろいろ中国側の状況その他を皆様方からお聞きいたしまして、もう鉄についてお話し合いをする時期がきたのではないかと実は思いまして、ことしになりまして皆様鉄鋼業界で御相談いたしまして、数人の者が向うへ御相談に行ったわけであります。非常にタイムリーに行われたと見えまして、私どもが考えております考え方と、中国の首脳部がお考えになっていられることと全く一致したように私には見えたのであります。そこでこういう環境ならば、りっぱに、鉄鋼を橋渡しに両国関係を結ぶことができる、かように考えましていろいろ御相談しました結果、非常に異例な向う側のお取扱いもありましたし、われわれも率直に事情を述べました関係もございまして、わずか十日を要しない会議で、とにかく今年一千万ポンド、それから五年間にわたって一億ポンドの貿易をしようじゃないかということで実は調印されたことは、皆様すでに御存じのところでございます。そういたしまして、お約束に従いまして調印後二カ月以内に具体的な契約を運ぼうということになりまして、向うから今度は代表が来るということで代表をお迎えしまして、約四十日にわたって具体的な交渉の取り進めをいたしたわけであります。そういたしまして大体非常に鋼材を急いでおられまして、何とか早くやってくれぬかということで、私どもは一年間十五万トンというつもりでおったのでありますが、六月まつでに十五万トン全部くれないかというお話がございました。われわれも何とかしなければいかぬということで非常に納期を、急ぎまして、大体先方の御希望の通りに着手することにいたしたのであります。そのときに、しかし、ライセンスが下りないのに、作っておいて、もし万が一のことがあったらわれわれとしては非常に困るのだということをお話いたしたのでありますか、そういうことは絶対にないというお話がございました。また私どもも日中協定ができ上りました状況から判断いたしまして、よもそういうことはないだろうと存じまして非常に契約を急いだのであります。そうして大体四月に、三万トンないし三万五千トンくらいになると思いますが、それだけばすでに発送をいたしてしまったわけであります。ところがいろいろな状況が発生いたしまして、どうも怪しくなった。怪しくなったが、われわれの方はもう作らないわけにいきませんので、五月の分として大体三万トンをすでに各メーカーに手配をお願いしまして、無理をさせて三万トンだけ作ってしまったわけであります。そこへ日中協定の妥結ができない関係で、鉄鋼協定もどうもうまくいかぬという状況になったわけであります。そこで輸入の見返りのお話し合い鉄鉱石石炭を両方で約八十万トン買うことになっておったのでありますが、この方の契約は私ども自体が買うものでありますからスムーズに参りまして、この八十万トシは契約をすでに完了いたしました。しかしこの分はやはり今このような状況で、これも契約したまはになっておりまして、まだ入荷はいたしておりません。それからこのほかに、その他の鉱産物というのが入っておるわけでありまして、その他の鉱産物というのはマンガン鉱石とかその値いろいろなものがありまして、私どもたけではどうにもいかないものがございますものですから、若干意見の相違のまままだ未解決になったままのものもございまして、それからその残余の過半に上るものは、とりあえず将来は鉱石資源でいこうと思うが、今は急に間に合わない、また日本もそれを取るだけの準備ができておりませんので、暫定的に農産物でいこうということで、向うから米を買ってくれないかということでお話がございました。そこで米の問題になりますと、私どもは全く関係のない問題でございますので、いろいろ手分けをいたしまして促進方をはかったのでありますが、これは大綱においては全部でき上がってよかろうということまでいったのでありますが、具体的な値段の問題その他若干の問題を残しまして、意見の食い違いのまま実は決裂してしまっておるのが今日の状況でございます。  さて、このあとではどうしたらよいかということでございます。私どもといたしましては率直に申し上げますれば、何のためにこういうことになったのかが理由がつかめないのであります。もともと鉄鋼協定ができ上りますときには、第四次日中協定は締結されておらなかったのであります。そこで日中協定が締結されないでも、鉄鋼協定はよろしいのかということが私どもとしては問題になったのでありますが、大体あちらの空気は、日中協定はできないかもしれない、できなくても鉄鋼協定はやりましょうということであったわけであります。そこで日中協定の最後の交渉に入る寸前に鉄鋼助走は調印がされまして、私ども帰ってきてしまったわけであります。従ってすなおに考えれば日中協定とは関係かないというように私ども一応考えられるわけであります。従いましてどうも風雲怪しくなりましたときに、向うの代表の方々からいろいろどうもむずかしくなってきたんだ、北京から非常に強硬な意見が出てきたんだというお話もプライベートにはいろいろお聞きいたしました。いたしましたが、私どもとしては、日中協定とは関係なしにこういうものが結ばれたんだから、日中協定の破棄自体とは直接関係がないんだなと思ったところへ、実は国旗事件が起きたわけでございます。そこで私どもとしては、長崎の国旗の問題はそれはもうまことに申しわけがない、国民として申しわけないと思います。しかしこれは政府にそういう悪意があって、政府の命令でそういうことをしたとは思えないので、そうお考えにならないで、一つその点を御処理願えぬかということを、もちろんそういう意味の代表でございませんので、そういうことを申し上げたって両方とも権限がないということでありますが、そのときの御答弁はこういうことでございました。もちろん長崎だけではない、つまり日中協定以来からの日本政府のやり方が一連の関係を持っている、その一連の関係において私どもはどうも敵意があると考える、その敵意がなくならなければ貿易というものはできるものではない、こういうことを言われておるわけであります。そこでどういうことであるか、私どもそれからいろいろ判断はしておりますが、いずれにいたしましても、そういう状況で鉄鋼協定の破棄を御通知になるまでの間は、先方も非常に慎重でございまして、何回も北京との交渉をやり、もういけないという段階まで相当いろいろお考えになったことと思うのでありまして、急激に破棄したのではない、その間相当いろいろ考えたとは思うわけであります。あるいは想像かもしれませんが、鉄鋼協定だけは残しておいたらいかがでしょうか、これは今後何もほんとうに戦争をするんじゃないのだから残しておいた方が将来便宜になるんじゃないかということまで、実は申し上げたんでありますが、それに対してはやはり向うもそういうお考えがあったんじゃないかと私思うのでありますが、最後まで非常に含みのある言葉でおつき合いをしておったわけであります。しかしいろいろな事情から、鉄鋼協定も含まれて全部解約に——停止という言葉を使われておりました。商談の停止をするやむなきに至った、こういうことでございましたので、また解約にはなっておらないのです。  それでその停止というのは、じゃどういうわけで停止になったのかというと、岸政府中国の人民を屈辱するから、こういうことでございまして、私どもとしては、かりにどんな政府であろうとも、選挙をして日有人民が全部で選んだ政府中国人民を屈辱するなどということを意識的にやるということは、私はないと思うのですが、ということは、るる申し上げましたが、理由としてはそういう理由を取り上げて私どもにはお話がございました。そこで、私どもはもとよりただ業界人でございますので、政治のこと、ことに中国の閉ざされた環境におきましての政治の動きというものは、さっぱりわかるわけでもございませんので、私どもの意見で国家が動くということは非常に危険なことでございます。むしろわれわれどもの意見一つの参考としてお聞き下さればけっこうだと思うのでありますが、そういう意味からいいますと、私どもは熟慮断行をしなければならぬ、こういうように考えております。決して一部で言われておりますように静観をするのではない、熟慮をすべきである。ということは、要するに原因が那辺にあるかということがつかめないで行動を起すということは、私は最も間違ったことだと思うのでありまして、そういう意味で、原因がはっきりつかめているのならば即座に断行すべきだ、しかしそうでないのならもう少し考えて、どこに原因があるかをゆっくり各般の状況から御判断になるのが至当ではないか、こういうように考えます。  もう一つは、その熟慮断行をする場合に、政府が幾ら熟慮断行しても、民間人が今回の行動によりまして心配をし始めたということは、幾ら政府が言ってもだめなことだろうと思うのであります。ということは、とにかく一方的なことによって、だれが悪いのか何が悪いのつかわかりませんが、契約というものがほかの理由で解除されるならよろしいのでありますけれども、わけがわからないかとにかくいけないのだといわれることによって無用な損害がかかる取引であるということになりますと、業界は非常に正不安を感ずるわけであります。ことに私といたしましては、あるいは見方によって少し出しゃばり過ぎた関係中国へ行きました。そしてこれは時期はちょうどよかったのだと思って契約はして参ったのでありますけれども、しかし残念なことにやはりそれがうまくいかなかったということでございまして、業界の方々を引きずってここまで来たようなことに対して、現在損害を与えておりますことに対して非常な遺憾の考えを持っておるわけであります。幸い業界の方々によくお話しいたしまして、これもどうも不可抗力だと思うので私ども至らなかったが少しがまんしていただきたい、そして必ず将来再開をされるのが当然なことなんだからそれまで待って下さいということで、今お持ちを願っておるわけであります、従いましてみんな騒がずに私どもと行動をともにして下さっておるので、この点感謝しておりますが、そういう事情がございますので、今後熟慮し、かつ断行した場合には、業界の信用、信頼というのですか、契約に対する安心感が得られるようなやり方でないと、貿易というものは実際問題でありますからついていかないのではないか、かように考えまして、今後の処理についてはこの点をあわせて鋭意お考えを願いたい、かように考えるものでございます。  いずれにいたしましても、周恩来総理も、世界には戦争はなくなるのだ、お互いに幸福のために工業をどんどん発展させていかなければならぬ、中国の工業が発展することは、お隣に裕福な国ができたということになるので日本との貿易も従って拡大するのだから、日本の方にも喜んでもらわなければいけないはすである、それで工業をどんどん発展させて回民を幸福にするためには、鉄が必要なんだ、だからぜひ鉄を作らなければいけないが、作れば作るほど鉄というものは必要になってくるので、日本の鉄をぜひもらいたいということを重ね重ね言っておられました。それともう一つ、非常に自分たちがほしいものは肥料なんだ、この肥料を何とか持ってきて、そして中国の米の生産を日本の生産に及ぶなんということはとてもできないけれども、しかし何とか日本技術を導入して、そして農業の発展をはからなければならないのだということも重ね重ね言っておりました。結局中途におけるいろいろな冷い戦争とか、あるいは感情とかいろいろしなものはやむを得ないといたしましても、終局においては、私は戦争なき世界が目の前に実現しようとしているのが今世界の大勢だと思うのであります。そのときに隣の国とけんかをするというようなことがいいことであるなんということは、これはどなたも考えないことだろうと思いますので、私どもとしてはぜひあらゆる努力を傾倒いたしまして、中国貿易再開を祈念するものでございます。  ただ一部には間違った考えがあられるのではないか。間違ったというと語弊がありますが、要するに今こまでの中国日本が依存していた鉄鉱石石炭というようなものが、戦後になってもまだ同じウエートであるかということであります。これは非常な違いがございまして、日本はどんどん発展いたしてきておりますので、中国が出す原料ではとうてい今のところ日本鉄鋼業をささえるということはできないので、ウエートが非常に変わってきておる。たとえば戦前におきまして石炭中国炭しかなかったわけであります。日本の国内炭を除いては中田炭だけしかなかったわけであります。戦後になりまして米国の優良炭が入ることになって、この面は値段だけの問題であるということ、それから最近では豪州の石炭を非常に格安に日本へ入手する可能性について今議論をしておりまするので、そのウェートは戦前開らん炭にわれわれ製鉄業がたよっていたときとは違う。また鉄鉱石におきましても、五、六年後にはおそらく日本は千六百万トンくらいの輸入をしなければならない立場でございますが、今中国とお話ししておりました五カ年の協定は最高が一年間二百三十万トン、ということになっておりますので、昔の大治鉄鉱石によりまして八幡製鉄かささえられておったという状況とは違うということだけりは御認識願いたいと思うのであります、しかしそんなウエートは問題ではない。要するに中国日本との貿易は、それ自体が非常に大事であると同時に、先ほど御説明がありましたように、アジア諸国との関係、あるいは大きく言えば世界の安定ということに関係するわけでございまするので、ぜひ私どもとしてはいたずらなる静観は許されない、それは熟慮でなければならない、かように考えるものであります。
  10. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に日本硫安輸出株式会社専務理大仲斎太郎君にお願いを申し上げます。     〔委員長退席、中垣委員長代理着席〕
  11. 大仲斎太郎

    ○大仲参考人 本日、長谷川委員長より参考人の御指名を受けまして参上いたしました硫安輸出株式会社の大仲でございます。  日中貿易に関しましては、去る二月十九日に、当時の小平委員長よりも御指名をいただきまして、大体の状況を申し上げた次第でありますが、昨年暮れ、十二月三十一日の真夜中に、中国進出言公司の代表者とわれわれとの問に、硫安四十万トン、尿素三万五千トンの契約をいたしたのでございますが、ほかに過燐酸石灰三万トン、塩安肥料三万五千トン、熔成燐肥三百トン、石炭窒素二百五十トンと、金額にして約千百万ポンド、すなわち約百十億円に上る大量の契約を調印いたしたのであります。そうして各肥料ともそれぞれ契約に定めた積み月によって円滑に船積みを履行して参ったのでありますが、その後御承知のような事態が発生しまして、対日経済断交の声明が出されたのであります。私どもとしては一日もすみやかに事態が円満に解決されるよう念願しておりましたが、五月十三日に中国進出日公司より電信が参りまして、肥料についても今後LCの発行を停止するという通告を受けたのであります。その結果硫安十九万七千五百トン、尿素一万一千三百トン、塩安肥料一万二千トン、すなわち硫安は約五〇%、尿素は約三〇%、塩安肥料は約三四%分、総金額にして約四百二千五万ポンドに相当する分の船積みができない状態になったのであります。  もともとわが国肥料にとりましては、中共は台湾、韓国と並んで広大な市場であることはいまさら申すまでもないことであります。われわれ硫安業界としても、この広大な輸出市場に対して多大の期待を持ちまして生産に励んできたのであります。従いましてこの市場の開拓に対しましては幾多の困難を排除して努力して参ったのであります。  ここにその足取りを見ますと、昭和二十九肥料年度には、硫安九万二千トン、尿素七千トン、昭和三十肥料年度には、硫安九万二千トン、尿素一万一千三百トン、昭和三十一肥料年度には、硫安三万七千トン、尿素五万二千百トンを輸出しております。さらに一昨年十一月に肥料業界より使節団を派遣し、肥料取引の友好新着をはかって参ったのであります。これらの努力が実を結んだとでも申しましょうか、昨年の末硫安四十万トンを初め、各肥料とも大量の輸出契約に成功しましたことは前述の通りであります。われわれとしましては、経済外の理由により、LCの未開設を中共より一方的に申し入れられたことをまことに遺憾に思っておりますが、一方政府のこれが打開に期符を持ちながら、また現在中共において最も必要としている肥料に対しては、LC再開が近くあるものと期待をかけておりましたが、最近商社筋の情報によりますと、西ドイツより硫安五万トンを九月末まで積み出しとして買い付け契約ができ、しかもわれわれの契約価格よりも高い価格できめられているようであります。引続き、さらに高い値段にて新契約の商談を進められておると聞いております。ここでわれわれは未積み出し分の再開について大きな不安を感じておるのみならず、将来の中共向け肥料輸出に対してもいささか危惧を持たせられるのであります。それというのもわれわれ肥料業界といたしまして、関係各方面の御援助、御指導により、たゆまず生産に努力して参り、今日では生産量の四割以上も輸出しなくてはならない、いわば今や輸出産業としての使命をになわされておる現状であります。この観点よりしても、中共に対する輸出に多大の期持をかけておるものでありますから、日中経済打開についてすみやかなる善処方を、なお一そう希望する次第であります。以上。
  12. 中垣國男

    ○中垣委員長代理 次に日中買易再開推進委員会委員長白水実事より御意見を承わることといたします。白水実君。
  13. 白水実

    ○白水参考人 御紹介にあずかりました白水であります。日中貿易両開推進委員会は、中国貿易が中絶されました直後、直接関係にある有力な業者が寄り寄り集まりまして、この再開のためにどういうように努力すべきであるか、再開のためにはどういうような方法をとらなければいかぬかということをいろいろ協議を重ねてきました結果、ともかく業界の再開への熱情が非情に強いということと、またこのまま中絶状態に置いたならば日本の産業に及ぼす影響が非常に甚大であるというような点で、すべての皆さん意見も一致し、ここに百二、三十社の人が全部委員となりましてこの再開の推進委員会を結成した次第であります。  そうしましてその後「日中貿易中断に際し広く業界各位に訴える」という趣意書を発送いたしまして、これに対する同意書を求めましたところが、けさすでに四千数十通の同意書を寄せられてきました。これは宮崎県を除く日本の各都道府県全体からの同意書であります。私たちはこの同意書が業界の直接のなまの声として、中国貿易再開を非常に熱望しておるということ、その熱望は決してむずかしい問題を政府の方に要求していることではなしに、ただ中国との間の友好的な関係を進めて、その基礎の土に貿易再開、すなわち貿易協定政府が支持と協力を与えて、通商代表部相互に設置され、その通商代表都の業務が実際的に安全に遂行できるように政府措置を願うことによって、この貿易再開は必ず実現されるとの意見の一致を見ており、また業界もそういう認識の上に貿易再開政府の方に早くやってもらうように措置を願ってその運動を進めて参り、また今後とも進めていくつもりであります。  私は過去六、七年の間実際に中国との貿易を身をもってやって参りましたし、そういう点からいいましても、またこの委員会に集まっている各商社が実際に貿易に携わり、あるいは貿易のためのいろいろな業務上関係の深い方である、こういう点におきでまして、現在この推進委員会に寄せられた四千数十通の同意書に対して、一そうの注意をいただきたいと思う次第であります。  私たちが日中貿易の上において感じておることを、少し申し上げますと、過去の日中貿易の歴史を振り返ってみますときに、こういうことが言えるのじゃないかと思うのです。両国の間は国交が回復されていないばかりでなしに、非常に複雑な関係にあることは私たちもわかります。単純に国交が回復されていないだけではなしに、あるいは南朝鮮の問題あるいは台湾の問題、その値いろいろ複雑な要素があるので、中国との関係はほかの国と違いまして、国家間の問題は非常に複雑である。しかしながらその複雑な状態下において取引がどういうように発展し、どういうようにして推し進められてきたか、これは一言にしていえばこういう複雑な関係にあればあるほど双方の民間側の協力がありましても、一つ協定というものが基礎になっておる。中国側との取引は協定に始まって協定に終ろうということを、私たちはまざまざと体験してきておるわけです。協定がないときあるいは協定というものに非常に不安を感じているときは、取引というものは常に少くなってきっておる。その協定ができまして、その協定に対する信頼感がある期間内の取引というものは常に上昇してきておる。これは過去六、七年にわたる歴史がはっきりこれを示していると私は思うのであります。  もう一つ中国の五カ年計画が終り、第二次五カ年計画が進められておりますが、その第二次五カ年計画が進むにつれまして、中国の工業力は飛躍的な発展をしているということも事実であると思うのであります。こういうような状態になって中国がだんだん工業化への基礎ができてくる、国内の産業の大飛躍をするところの見通しがついてくる、国内の社会主義的な体制がだんだん固まってくると同時に、中国の対外貿易はいつも長期安定の取引ということを考えておるというような——これは中国の計画経済がしからしめるところでもありましょうが、もう一つはやはり中国が広く日本だけじゃなしに、ソビエト圏内あるいは社会主義欄内だけじゃなしに、西欧諸国の多くの資本主義国家との間に取引の道を持っておるがために、彼らは自分たちの計画に合せて長期安定の取引を考えるようになってきておる。この現象はここにいらっしゃった稲山先生やあるいは大仲先生のお話をお聞きになりましてもわかりますように、昨年ごろからそういうような現象が非常に顕著になって現われてきているわけなんです。ことしになりましてから、私も北京に数カ月行っておりましたけれども、去年とは打って変って大規模な取引、長期安定の取引、しかもそれが中国の五カ年計画に非常な基本的な産業に直結したところの取引、こういうものが私たちの商談に上ってきておる、こういうように中国との今度の貿易協定は、三月五日に調印されるまでは空白時代ではございましたけれども、この貿易協定は実現するだろうという予想と、その前の貿易協定は延長されつつあるというような考え方によりまして、日本との間の安定した長期にわたる契約、しかもそれも重要産業に及ぼすところの取引、こういうことを彼らの課題にのっけておる、日本との取引はことしの初めごろは非常に飛躍的な発展をするだろうというような徴候が顕著に現われてきておったのも、私はそういう考え方じゃないかと思うのであります。そういうように考えまして、今度の中絶ということがどうして起ったのか、これは一言に言いますならば、貿易協定は実行不可能な状態に陥ったという中国側の断定が、この日中間貿易の一切の取引停止あるいは中絶というような状態を引き起す原因であると私は思うのであります。決してその他の政治的な問題がからんでいるとか、あるいはまた中国の首脳部の中で対日政策が大きな変化をしたとか、そういうようなことは一言も私たちは向うの多くの人たちに接触して感得することはできない、また向うがこの中絶のことについて触れた公けの文書、発言、そういうものをこまかにしさいに検討いたしましても、絶対にそういうような原因を、私たちは見出すことはできないわけです。これは協定というものが全く完全に実行できないようにしたのは日本政府の方からこの協定を破棄したのだということを言っているだけなんです。それで貿易再開への道を開くのにはどうすればいいかということは、はっきりしていることは私たちのこの趣意書にも四つの項目をあげて申し上げておるわけでありますが、これを申し上げますと、(一)わが国の発展が貿易拡大を不可欠の要件とする限り、政府中国に対し友好的態度を保つべきである。(二)中国国旗は、国の承認の有無と関係なく、これを尊重し、敬意と必要な法的な保護を与えること。(三)中国民間通商代表部員とその家族に対し、任務遂行に必要な便宜を与え、その安全を保証すること。(四)第四次日中貿易協定に対し支持と協力を与えること。」このことさえはっきりするならば、貿易再開は必ずできる。私たちは中国側がこの中絶に対して言っているいろいろなものをしさいに検訂して、これ以上のものを中国は要求していないし、またこれ以上のものを理由にしていないということを、確信を持って言えると思うのであります。こういうときに、日本の国会におけるいろいろな質疑あるいは政府の御答弁なんかを見ましても、この四つの項目については何ら反対されていないように思うのでありまして、私たちは貿易再開の道が近いのではないかと非常に喜んでいるわけでありますけれども、どうしても貿易協定を完全に実施して、通商代表部が設置されて、その仕事が安心を持って遂行できるような具体的な措置を、もう一歩踏み切ってとられるということが、再開を来たすところの決定的な条件ではなかろうかと思うのであります。     〔中垣委員長代理退席、委員長着席〕  それから私たちは過去の取引あるいは最近までの取引で、中国問題で非常に頭をいため、また非常に憂慮している問題は、中国の西欧諸国との取引の問題であります。一部では、日本業者が非常な出血輸出あるいは不必要な競争をやって安売り、高買をして、日本に不利な取引を招放しているのだということを、声を高らかに言われる向きもありますけれども、あるいはそういうような現象もあると思うのですが、しかし大事なことは、西欧諸国との取引にどうして日本が打ち勝っていくかということが最大の問題である。私たちは向うの貿易の交渉の中でいつも問題になるのは、常に西欧との取引競争でありまして、もし日本が西欧諸国に手おくれをしまして、あるいはいろいろな情勢からこの中断状態が長く続くというような状態が進んでいくならば、必ず西欧諸国との取引は日本空白を埋めて、再び日本がそこに入り込むというようなためには、非常な時期と時間と努力を要するであろうことは、もうはっきり私たちは目に見えておるわけなんです。  それからもう一つは、こういうような中断状態が長く続く過程において、向うの中国側のいろいろな発言や話を総合して考えました場合に、アメリカが中国との取引を開始しないという保証がない。また向うの人たちはすでに東欧と常に折衝している。ことしの一月に私行きましたときに、向うの要人の一人がそういうことを言っておりました。チンコムといい、あるいは中国に対する貿易の制約といい、そういうようなものがどのような条件によっても中断され、あるいは制約を受けるということは、一方からいうならば西欧諸国中国の市場をまかせるということであり、まかり間違えばアメリカが中国市場を席巻するような下地を日本が作ってやるというような結果に終らぬとも限らない。私たちはそういう不安を持っておるわけです。  この権威ある商工委員会におきまして、業界の強い要望、それから日中貿易が今非常に危険な状態にあるということ、もしこの中断が何カ月もこれから延びるならば、その悪い影響は非常に深く大きいということを認識されて、この再開を一日も早く、むしろ私は今月中にでも再開への糸口がつけられて、通商代表部の設置のための話し合いができるような工合に運んでいただきたいとお願いする次第でございます。
  14. 長谷川四郎

    長谷川委員長 以上で参考人方々の一応の意見の開陳は終りました。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。  なお委員が御質問の場合、相手の御指名首をお願い申し上げます。菅野和太郎君。
  15. 菅野和太郎

    ○菅野委員 先ほどから参考人より日中貿易の中絶した経緯並びにそれによって起ってきたところのいろいろの損失などについては詳細承わったのでありますが、各参考人とも日中貿易再開をすみやかにせよというふうな御意見であったように拝するのであります。そこで日中貿易再開ということは、すなわち第四次協定を承認するということに相なると思うのでありますが、現在のような日本中共との感情上のいろいろの問題が起っておるときに、日本ばかりで第四次の協定を承認するというようなことを言明しても、果して中共がそれに応ずるかどうか、その点を私非常に心配いたしておるのでありますが、その点に関しまして山本さんなりあるいは高見さんからの御意見を承わりたいと思うのであります。
  16. 山本熊一

    山本参考人 今この環境のもとにおいて、日本側から四次協定をすそのまま承認するという意思表示をした場合に、向うが応じてくるかという御質問でありますが、私は日本がはっきりと友好精神に基いて第四次協定保証するということを言明いたし、かつこれを先方にも通告いたしますれば、向うは喜んで応じてくる。ただし今問題になっております国旗問題についても、何らかの誠意をもってこれを解決する意思表示をあわせてすることが必要であると思うのです。ただこの前にも政府からの回答に対して中国側がいろいろの不平を持ち、不安を持っておることを、日本側が政治問題とひっかけてきた、中国を承認しないというようなことをいい、さらに国旗条項に関する条項はこれを否定するというようなことをいうのは、協定を破棄したのだ、こういうことを向うは言うておる。そういうような条件付でなくて、私が最初に申しましたように、あっさりと万全の支持と協力を与えるという態度にはっきり出ますれば、これがほんとうの友好精神の具現でありまして、同時にその問題についても今申しましたようなことを表現いたしますれば、向うは喜んで応じてくると思うのです。私がこの二月に北京に参りましたときに、周総理、陳副総理、葉貿易部大臣、その他立ち会いのもとで話したときにも、日本中国との関係は、何をおいても平和と友好という基礎のもとに貿易も文化も進めていくべきである、われわれはそういう方針を堅持しておるということを言っておられましたので、その精神に基いてわれわれがやりますれば向うも受けてくれる、こういうふうに私は信じております。
  17. 菅野和太郎

    ○菅野委員 ただいまの山本さんのお話では、日本が一方的に第四次協定を承認するということを言明すれば、直ちに中共が応ずるというようなお話であったように思うのでありますが、私はこの日中の感情上の問題はこれ以上に深刻なるものがあると思うのでありまして、その第四次協定を承認する前に何らかもう少し日本として打つべき手があるのではないかと考えておるのでありまして、そういう点について何かあなた方の方で御意見があれば承わりたいと思うのであります。
  18. 高見重義

    高見参考人 われわれ三団体関係者といたしましてはやはり今回の問題は四次協定の完全実施ということにあると、一応私どもは確信を持っておりますが、しかし事態は相当深刻な段階まで来ている。従ってこの問題の解決には単に一片の返事だけでは私はそう簡単にいかぬじゃないかと考えております。やはりお互いにもう一ぺんひざ突き合せて話してみたらどうか。一本の手紙、一本の電報で、そう簡単にまとまるほどのなまやさしいものじゃない。従ってもう一回あるいは二回、とにかくこの感情とそれから協定の内容を検討してみたらどうか。そうしてできるだけ円満な妥結をしていただきたい。それには北京に財界あるいはその他の民間人が行かれるか、あるいは政府その他の、あるいは党の人々が行ってお話をなさるか、いずれにいたしましても、国民の大部分というものは、なぜこんなことが起きたかということに非常に疑問を持っていると私は思います。われわれ関係者は簡単に割り切っておりまするが、大多数の人々というものは、どうしてこんなに悪化したかということを非常に疑問に思っておると思いますので、この疑問をほぐすためにも、やはり両国の代表者がひざ突き合せて話し合いをして円満な解決をしていったらどうか、こう考えております。
  19. 山本熊一

    山本参考人 私の申しましたのは、まず必要なことは、日本側において腹をきめていく。将来中共に対しては、友好精神と申しましたけれども、これは政治的に申しますれば、ごく端的に申しますれば将来仲よくいくのだ、行く行くは承認するところまでいかなくちゃいかぬ、これは今そういうことを実行に移せということではありません。中国側もそういうことは一つも要求していない、直ちに台湾と手を切れ、あるいは直ちに承認してくれとかいうことは言わない。けれども友好精神ということは仲よくいく、平和的にいくのだ、仲よく提携していくのだ、この精神は何かの形において具体化されなければ向うは応じないと思う。それを具体化するためには今懸案となっておる問題についてはっきりと腹をきめて、そうしてその上に立って——手続はいろいろあります。私どもも具体的なことまで考えております。その腹が政府においてきまるということが先決問題であります。その以前に私は、高見さんはそういう御意見でありましたけれども、人を出して両国の誤解を解くということは無用なことである。決して中国側はそれに応じない、日本側がなすべきことをし、腹をきめた上で、特使を出すなりあるいはそれについて懇談をするという段階に入りますれば、これは明らかに目的を達成しますけれども、腹をきめないで向うがいろいろな点において誤解しておるのだろうというような甘い考えで中国側と折衝いたしましても、決して目的を達することはできないと私は確信いたしております。
  20. 菅野和太郎

    ○菅野委員 現在の中共の経済計画などから見て、鉄鋼あるいは肥料はぜひ買わなければならぬ実情にあるというようなことからして、日本側におきましてはこのまま静観しておっても、中共側から何か手を打ってくるだろうというようなことを言っておる人がありますが、そういう点について一つ山本さんなり高見さんの御意見を承わりたいと思うのであります。
  21. 高見重義

    高見参考人 どうも日本人は問題を簡単に推測し、簡単に片づけてしまう。これは私一人でなくて大多数の人はそうであると思うのですが、単に向うが買わなければならぬとか、買うとかいうことは、やはり向うにも利益するし、また日本も利益するのだ、両方の、いわゆるこれは互恵平等と申しておりますが、そういう原因があり、そういう意欲があって初めてこの問題は解決できる。従って向うからたくさん鉄鋼製品を買いに来るだろう、あるいは肥料を買いに来るだろうといいましても、これは別にロビンソン・クルーソーの無人島から来るわけではないのでありまして、やはりこちらの方もそれに応じていく意欲があれば鉄鋼を売り肥料も売るのであります。従って隣近所のうわさというものは非常にまずいのじゃないか。私どもでは売りたいんだ、あなたの方も買ってくれ、これは両方がお互いに平等の立場から話し合えば問題は簡単に解決できると思いますので、これからもわれわれは相当考え直していかなければならないのじゃないかと思っております。向うはほしいんだ、だから買いに来るだろう、それまで待ってやろうというような考えでおりますると、大へんな間違いを起すと私は考えております。
  22. 菅野和太郎

    ○菅野委員 次いで山本さんなり高見さんから率直な御意見を承わりたいと思うのでありますが、今御承知の通りこの国会の中に日中貿易促進議員連盟というものがあるのでありますが、自民党ではこれを解散したいということで、大体一応決議になっておるのであります。自民党以外の各政党では存続せいという考えを持っておられるようでありますが、この日中貿易の議連が、日中貿易再開なりあるいは将来の振興の上において、実際必要であるのかどうかということを、業者側から率直な意見を承わりたいと思うのであります。
  23. 山本熊一

    山本参考人 私どもは貿易協定の三団体一つとして、今日まで日中貿易促進議員連盟が両国関係の改善及び拡大のために尽された功績は非常に高く評価いたしておるのであります。ただ遺憾ながら最近一、二年の間は、その機能が完全に発揮されていなかったのではないかというように考えておりまするが、もし完全に機能を発揮されるにおきましては、やはり——ことに今度の貿易協定の調印団体としての責任が三団体には深くかかってきておるという関係もありまして、議員連盟が存在して、そうしてこの責任を果していただくということがきわめて望ましいことであるように、私どもは考えております。ただし今後これを存続すべきか、あるいはこの際解散されるかというような議連内部のことにつきましては、私は自分意見を申し上げることをこの際差し控えたい。ただ今までの功績に対してわれわれが非常に高く評価しておることと、そうして協定調印の責任者としてこれを完全に実施するようにあくまでも努力をしていただきたい。こういうことを私ども貿促協会としては切にお願いしたいという気持でおります。
  24. 長谷川四郎

    長谷川委員長 ちょっと菅野君に申し上げます。質問者が多いものですから、簡潔にお願いします。
  25. 菅野和太郎

    ○菅野委員 もう一、二問です。今議員連盟のお話がありました。そこで私が考えるのは、現在の協定は、民間協定とはいいながら、この議員連が参加しておることによって、中国側では多少なりとも政治性があるように解釈しておるのではないかということであります。そこで、この議員連が今こ後日中貿易協定について脱退することになりますれば、中共側はこれをどういうように観察するか、その点について皆さん方のお考えを一つお聞きしたいと思います。山本さんなり高見さんでも……。
  26. 山本熊一

    山本参考人 私が周恩来氏に二月に会ったときも、日中間の友好的な団体は幾らできてもいい、多いほど希望する。こういうことを言っておられた。それから過去における貿易協定の締結に当りまして、ことに第三次協定のときには、こういうことがあった。初めにあれは国際賛促協会にまかせるということを議員連盟の総会でおきめになった。その後事国側の代表が東京に参りまして話し合いを始めましたときに、中国側は何とかして議員連盟も一緒にやってくれないかという希望を申し出ておるのであります。中国側においては日本の国情の複雑なことはよく存じております。ことに両国関係は、今なお不安な状態にあるということも知っておる。そのためにいかなることを処理する上においても、やはり政治的な問題にに触れざるを得ないことが多いということも考えておる。そういう意味で、中国側の意向をそんたくすることははなはだ困難でありますけれども、従来のごとき功績の多かった議員連盟が存続することは、一応希望しておるのではないか、こういうように私は考えております。ただし、中国側の従来の態度は、日本国内のことについてはわれわれは差し出がましいことは言わない。それは国内の問題だから日本国内において処理されるのに従う以外方法はないという大きな方針は持っておりましょうから、そういうことについては議員連盟の方から直接何らかの照会をされて結論を得られることが必要ではないかと思います。
  27. 菅野和太郎

    ○菅野委員 先ほど高見参考人から日中貿易の中絶によって輸出組合が非常に困っておるから何とかしてほしいという希望を述べられましたが、この点について松尾局長の意見を承わりたい。
  28. 松尾泰一郎

    ○松尾(泰)政府委員 輸出組合に対しましては、最近の日中貿易の途絶によりまして会費の徴収も非常に困難になっていることは事実であります。そこで何とかわれわれといたしましてもお区手伝いをしたいということで研究をいたしておりますが、何分予算ということになりますと、こういう年度の途中におきましてはいろいろむずかしい問題でもありますので、何か適当な便法がなきやいろいろ研究している段階であります。われわれ事務当局としては、何とかできるものならば若干でも御援助したいということで、鋭意研究をしておるところであります。
  29. 長谷川四郎

  30. 田中武夫

    田中(武)委員 最初に山本参考人にお伺いいたします。  あなたが先ほど参考意見を述べられたときに、第四次協定を調印された当事者の一人として大へん責任感じておる、こういうようにおっしゃいました。今度の第四次協定が実施できない状態になって、日中間貿易が中絶しておることになった原因があると思うのですが、先ほど稲山参考人ですか、よもやそんなことはなかろうと思っておったが、どうも私にはわからない、こういうように言っておられた。実際のところはっきりしたことはわからない、こういうことではないかと思うのですが、私は、何といってもこれは政府が台湾政府に気がねをしたとか、アメリカの圧力に相した、こういった外交的な弱腰から来ておる、いわゆる政治的なことが原因だと思う。そこで、そういったことだけが原因であろうか、それともほかに何らか具体的原因があったのかどうか、どういうふうに見ておりますかお伺いいたします。
  31. 山本熊一

    山本参考人 私が最初に申しました責任を感じておるというのは、三団体として、この問題の判断の仕方において十分でなかったという点を反省しておるというのであります。向う側がこういう態度に出た一番大きな原因はどこにあるか。これは向う側の今日の対日態度はどういうことにあるかということを、一応御説明申し上げたいと思ます。  中国を支配する政府は中華人民共和国だけである、これはもういかなる場合にも常に言っておる。もう一つは、百中関係は平和と友好の基礎の上にあらゆる問題を進めていきたい。こういう二つの原則を常に言っておるのであります、ところが、今度の政府の回答の中に盛られておった文句の第一は、国内法の範囲内、こういう点であります。われわれの貿易協定の中においても、バンドン会議の決議を尊重し、国内法を順守するということがありますので、これはあまり問題にはならない。その次に、中国を承認しないという原則のもとにという言葉があります。これは、中国側から見ますれば、貿易協定の中において中国を承認しないというような政治的な原則を打ち出されるのは困る、これは非常に井友好的である、こういうように考えておるのではないかと思います。それからさらに、国際情勢を考慮のもとに、官房長官の説明の中において台湾とのことをるる述べられておる。これが、どっちかといえば、中国の内部問題であるのに、台湾からいろいろと動かされておるのではないか。その裏には、これは憶測でありますけれども、アメリカもあるのではないか、こういうような疑惑を相当持っておるし、また疑惑ばかりではなく、二つの中国を認めようという傾向である、非友好的な態度であると断定した、これが一つの原因になっている。もう一つは、国旗掲揚を権利としてはこれを認めない。これは覚書第一項の通商代表部の建物の上に国旗を掲ぐる権利を有するという条項日本が否定したことになる。今度の協定は一部分だけを認めたのでなくて、全体として一括あれは調印いたしたのであります。従って、その一条項を承認しないことは全体を認めないという結果になりますので、向うとしては協定を破棄した、言葉使いは荒っぽいのでありますれども、協定を破棄した、こういうことが原因になりまして、むしろ協定を破棄し承認しない。しかも、それに至るまでの動向から見れば、中国側に対して非常に非友好的な態度で出てきておる。こういうことが原因となった。もう一つは、日中の関係は、前から申しますように、法律的には非常な不安状態にある。そして、今度の展覧会等を通じましてわれわれが感じましたことは、武漢、広州においてもしかり、中国全土にわたって日支事変以来日本が与えた被害ということについて、直接その被害をこうむった家族が、たとえば漢口付近においても一家全滅された家族が一万以上に上っておる、こういうことを言われておる。今度の展覧会を通じて、そういうように国民の問に真に日中親善の心が全般的にわき上ってきてはおりますけれども、なお一部には相当過去のことを思い起して、日本に対して反感を持っておる国民も相当多い。それをいろいろと納得のいくように今日まで引っぱってきたというのが現状です。そこで今度の問題も、長崎の国旗事件等を中心といたしまして、いろいろの点から向うの国民の憤激が頂点に達した、そこで政府もこれを抑えることはできない、最後に貿易を中断いたしましたときの先方からの通告は、そういう意味のことをはっきり書いておる。要するに私は貿易協定に関する評価及び認識、並びに国旗問題に対する評価認識がが双方の間に非常に開きがあるということをいわざるを得ないのであります。日本側においては、貿易協定をそれほど重要なものとして考えていない。ところが中国は、こういう不安の中において両国の安定した貿易をやるためには、どうしてもこういうような協定を作るべきだ、先ほど白水さんも言われましたように、協定があることによって貿易も拡大し、協定がなくなることによって貿易も減退しておる、こういうように向うは非常に重要視しておる。その問題に対して、日本側は認識が少くかつ軽視しておるということと、もう一つ国旗問題のごとき、国をあげて、ああいう新興国においては国旗に対する尊敬の念が強い。それを日本側においては、割合に一般国民もそうでありますから、政府においても軽々しく取り扱っておる。こういうような評価認識の差が大きく開きがある。これが今度のような態度に出た大きな原因であると私は信じております。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまの御意見を伺っておりますと、あげて政府の認識不足あるいはその他政府責任に帰すべき原因だと思う。高見さんは先ほど参考意見を述べられたときに、こういうことになったために一番被害を受けたものである、こういうように被害の状況等をあげられておりましたし、そうしてそのためには補償、救済あるいはつなぎ資金、こういうことをしてもらいたいというような意見も出ておりました。そこで中本さんと高見さんにお伺いしたいのですが、その原因が今こ言われたようなものであるとするならば、政府は当然そういうことに対しての補償をなすべきである、むしろ私は損害賠償を請求してもいいのではないか、こういうようにすら思っておるわけなんですが、山本さん、高見さんはどういうようにお考えになっておりますか。
  33. 高見重義

    高見参考人 どうも私らの立場から申し上げますと、常識的に考えますと、この突発事件というものはほんとうに急激にきたもので、全然予想しなかったとはいえ、なるほどそういうヒントそういう要素は考えられることであったのでありますが、全く青天のへきれき、こう私どもは考えていいのじゃないかと思っております。従ってそういう事態国民の二部に大きな被害者が出た、それからそういう貿易の路線において大きな障害が出てきたので、この問題は単にこれが政府責任とか、あるいは中国責任とかいうのではなくて、いやしくも日本国民の一人として皆さんが寄って協力し、これを援助していくということが私は当然じゃなかろうか、こう考えております。何となれば日本の国内においていつも風水害とか大火事とかがあるが、別にこれを例にとるわけではございませんが、いやしくもわれわれの国民のある層が貿易によって大きな受難をしておる、またそれがために今後の生活も非常な危機にさらされているという場合には、その程度いかんを問わず、やはりこれに対しては救済をすべきであろうと私は考えております。従ってこの救済につきましては、こちらの方からいたけだかに要求したり、あるいはこじきのごとく要求するということも、われわれとしては大へん言いにくいのでありまして、皆さんの良識をもって、この問題が円満解決をするまで、この業界をある程度救済していくということをお願いすると同時に、また十分にお考えをいただきたい、こう考えたので私は申し上げたのであります。ただ政府責任とかだれの責任とか言うのではなくて、少くともこういう事件が起ったことに対しましてこういう処置をされていくように、単に国家のみならず、政府のみならず、皆さんに十分考えていただきたいというために私は発言したわけであります。
  34. 山本熊一

    山本参考人 私も高見さんと同様に、この責任がどこにあるとかいうことを論議することは第二議的であると思いますが、いずれにいたしましても、単に商売人ばかりではありませんし、われわれ関係者から申しましても、展覧会開催の六億余の物資というものは全部持ち帰るというようなことになりまして、それが売れなかったばかりでなく、その持ち帰りのためにまたいろいろな費用もかかるというような事態も出ております。さらに大きく申しますれば、北鮮との貿易も六百三十万ポンドだけの契約ができたにもかかわらず、従来中国経由ということになっておったのが一時中絶した、こういうような状態にもなっておりまするし、いずれにしても業界の方から申しますれば、ほとんど不可抗力的な思いがけないこういう事件によって損害をこうむった、こういうことになりますので、その理由いかんにかかわらず、何らかの救済措置を講じてもらいたいという気持で一ぱいであります。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 今後どうすればいいのかということについて、先ほど山本さんは、第四次協定の完全実施の問題や、国旗の問題等寸は国際常識に従って誠意をもって解決すべきであるとおっしゃった、私もそうだと思うのでありますが、現在の政府の状況を見ておれば、いつになればこれは解決するのか見通しがつかぬと思う。先ほど菅野委員さんからも質問がありましたが、たとえば日中議連の問題にいたしましても、今日自民党の方ではこれを解放するとか全員脱退するとか言っておられるのは、考え方によっては、第四次協定の当事者の一方である責任を回避しようという態度とも思われるのであります。そこで、今後この第四次協定の完全実施は一日も早くやらねばならぬと思うし、われわれもそういうことについて努力したいと思っておりますが、具体的に今山本さんがおっしゃったようなことを、今後解決していくためにはどういうことが必要であるか、そういうことについて、ただ第四次協定の完全実施だと言っておっても頑迷回随な政府にはよくわからない。従って、どういうことをすれば完全実施を具体的に早くさすために有効であるか、そういうことについてもしお考えがあったらお伺いしたいと思います。
  36. 山本熊一

    山本参考人 私は、この緊急事態を打開するためには、民間団体とかあるいは議連とかいう機構の問題に触れることは第二義的な問題だ、むしろ日本側においてこの問題をどうしてやるかという腹をきめる、方針をきめる、こういうことが大切である、こういう見地に立って今日まで動いてきております。ただ、それでは具体的にどうかと申しますると、これは相当私見がありますから、私の今日まで考えていることを申し上げますると、何といっても根本の方針は先ほど申しましたような条項でありまするが、それを具体化するためには今の特別国会において質問応答とか何らかの方法において政府の意向がわれわれの考えておるところに落ちつくように何らかの糸口をつけていただきたい。その糸口をつけていただきますれば、われわれはその線に従って全力をあげて政府もお助けいたし、また皆さんとも、御指示に従ってあらゆる運動を続けていきたい、こういうように考えます。それで、今日まで私どもは国会における質疑応答その他のことにつきまして非常に感謝をもってお礼を申し上げたい。今日まで総理以下のお話はだんだんとわれわれの期待しておる方向に向ってきておるように私どもは感じております。もう一歩進めて、何らか決議あるいはその他を通じて、結論的にもう一歩進めた具体的な線線を、この国会において出していただきたい。それを受けて立っていくことにつきましては具体的な方針も考えております。まずこのことが必要だ、これは私見が半ばと思いますが考えております。
  37. 長谷川四郎

    長谷川委員長 田中榮一君。
  38. 田中榮一

    田中(榮)委員 今回日中貿易の第四次協定の成立が停止いたしましたことは、関係業者とされましてはまことに残念なことでございますが、私ども第三者としてこれを見た場合におきまして、今回の日中貿易協定が停止したにつきましては、中共側におきましても何らか日本に対する誤解が若干あるのではないかと考えておるのであります。従来政府中国に対する態度にいたしましても、たとえば中共側の招待外交につきましても、政府としましては中共側の希望する通りの者をどしどし派遣し、また技術の交流につきましても中共側の要望するところの技術交流は、どしどし日本側も積極的にこれを進めておったわけでありますが、そういう際の日本側の態度というものは、私は中共側に対しましても相当好意的にやっておったのではないかと思うのであります。たまたま国旗問題というものが起りまして、選挙中にああした陳副首相の声明ともなったのでありますが、こうした中共側の政治的意図といつうものにつきましても、われわれもまだ真相がはっきりつかめないのでありますが、選挙中のああした中共側の声明は、何らかの政治的意図によって行われたものであるか、その点について一つ
  39. 山本熊一

    山本参考人 中国側の今日までの日本政府に対して示しておる態度と言動、そういうものにつきましては、率直に申しまして、われわれとしても必ずしも全面的に納得はいかない点もありますし、もう少し隠かに話し合いしてもらったらいいという感じもありますが、しかし根本的に中共側が何らかの誤解を抱いておるかという点につきましては、私は誤解に基いた態度ではない。日本側のことはわれわれ以上によく裏の裏まで承知した上で、そうして中国側の持っておる根本の、原則的方針に日本のやり方は反しているというところに向う側が一番強く反発しておるのではないか。それから、ただ誤解は持っておりませんけれども、非常なる疑惑を持っておることは事実であります。これは私に対して、中国におりますときにも向うからいろいろ質問があった点、たとえば日本はアメリカその他と一緒になって東北アジア条約機構でもこさえるのではないか、こういうような不安と疑惑は相当持っております。私はこういう間道の解決のためには、疑惑を持たれるような事実が真にないのであれば、はっきりとその点は説明する必要がある、と同時に向う側が疑惑を持つがごとき行動は、できるだけ避けていくということが必要ではないか、こういうように考えております。
  40. 田中榮一

    田中(榮)委員 もう一つお伺いしたいと思います。これは中共側の過去におきます日本に対するいろいろな声明なりいろいろな外交交渉なりが、本質的に日本側のいろいろな態度というものに対して、今お話のように誤解ではないけれども満足なものではない、こういうお話のようでございます。しかし日本側としましては、現在本質的には平和条約が中共とは締結されてないのでありますから、平和条約を根本に置いたそうした友好関係というものは結べないことは、これは中共側も十分了承しておるものと考えております。そうした過程においての第四次貿易協定でありますから、それはいろいろな点について中共側におきましても満足せられなかったことは多々あると思うのでありますが、われわれから見ますと、今度の国旗問題とかなんとかは一つのアクシデントでありまして、そうしたアクシデントによりまして、日本の生産業者にとっては重大な問題であります。そういうものが突如として停頓したということにつきましては、私どもどうも何らかの政治的な意図があるのではないかというふうに考えられるのでありますが、それについていかがでございましょうか、もう一回。
  41. 山本熊一

    山本参考人 国旗問題等につきましては、先ほども申しましたように両国の間が非常に開きがある。それがもとになりまして、日本側で考えておるように、これは一時的なアクシデントであるというようなことは向うは絶対に考えていない。それからいろいろな疑惑を持っておるということもありますが、こういう点については向う側も、日本にすぐ承認して下さい、あるいは台湾との縁を切れということは今まではっきりと当局者の言としては一度も言っておりませんです。その事情はよく了解しておるということを言っておりますが、ただそういう点について将来も承認しないとかいう言動はよほど慎しむべきことであるというように考えております。
  42. 長谷川四郎

  43. 永井勝次郎

    ○永井委員 第一に山本さんにお尋ねいたしたいと思います。先ほど来の質疑の中にもあります通りに、経済と政治は別なんだ、切り離してそれぞれの立場で進めなければいけない。そういう点で、それじゃ政治と経済とが全く別個なものかといえば、やはりそういうものが潜在しているか、あるいは底辺になっているか、一つのいろいろな条件になってきている。しかし現われているものはそうではないというようないろいろな問題があろうと思うのです。そこでこれらの問題については、日本は向うが誤解していると言い、向うは誤解していないと言う、こういう水かけ論をいつまでやっていても前進しないと思う。そこでこの問題をはっきりさせるためには、中共側が現在の事態に対してどのような見解を持ち、どのような態度で今後これに処しようとしているのか、どのような話をしても絶対だめなのか、あるいは親善友好というような抽象的な言葉で表現されただけでは内容がつかめませんけれども、親善友好というその考え方の具体的な形というものが、どの程度までいけば第四次協定をさらに巻き戻すことができるのかというような、いろいろな具体的な内容の分析が必要であろうと思います。そこで、両国の今後のいろいろな問題を進めていく場合、やはり政治的な折衝の段階ですから、両国ともいろいろな含みのある発言もありいろいろあろうと思いますけれども、やはり中共側がどういうふうな現状にあり、将来どういうふうなことを考えているか、そういう展望を具体的に分析する必要がある。日本の側におけるいろいろ今までやってきたことに対しても正確に分析し、批判し、また行き過ぎがあるならばそれを是正するという態度がなければ、誤解だということだけでは問題は解決しない。そこで今まで両国が第四次協定について折衝した過程におけるあなたの立場における両国の具体的な分析、そして第四次協定を軌道に乗せるために最低限度どういう条件が今必要であるとお考えになっているか、この二点を伺いたいと思います。
  44. 山本熊一

    山本参考人 非常にむずかしい問題と存じまするが、大体私は国際関係というものはやはり正しい認識を持つことが先決問題だ、そうして信頼し協力して友好関係を進めていくということになると思うのです。その意味におきまして、私ども貿促協会といたしまして今起しておりまする運動の一つに、日本国民に対してもう少し新中国事態をはっきりと正しい認識を持ってもらいたい、こういうことを考えております。と同時に、私は私限りといたしまして、日本における日本の立場、日本人の自覚というものも必要ではないか、こういう考えのもとに立ってお互いに正しい認識を持つように協力するということは、これは必要だと思います。  それから中国側が政治とひっからめてきた、あるいは政治的に取り扱ってきたというような意見がありまするが、中岡側においても日本はこの問題を政治にひっかけてきたということを盛んに言っておる。たとえば貿易協定の問題は、われわれは全くコマーシャル・ベースにおいて今日まで進めてきておる。その上においてもやはり通商代表部というものを置く必要がある。通商代表部を置けばその代表部員に対して相当の待遇を与え、そしてその任務遂行にも便益を供与しなければならぬということが出てくる。ところが中国側においては、こういうような両国関係日本の複雑なる状況にあっては、その通商代表部員の安全保障についても、日本が何らかの具体的な誠意を示さなければいかぬ、こういうような関係からして、国旗掲揚に関する問題も、向う側では非常に重要視しておるわけなんです。日本の政治のバロメーターとして見ようというような考えを持っておるわけなんです。そういうような関係で、その点をとらえてみますれば、これがすなわち政治に関係しておるのではないか、こういうこともあります。これはほんとうのことを申しますと、国旗問題に対して中国と調印前にいろいろ話し、調印後に話しましたときに、これは承認するものではない、それならそのことを文書にしようではないかと言ったときに、文書にされて、これはコマーシャル・べースによって貿易協定を作った、その貿易協定の中においてお前の国は承認しないんだとか何とかいう政治問題を持ち出されては困りますということで、これは文書にしなかった。ただしこの了解は十分私の方でも与えるから、日本へ帰られて政府に対してそういうことを言われるのも決して拒否はいたしませんということで了解を取りつけてきた。そういうように、今のような国情、両国関係によりますれば、どの線までが政治である、どの線以下は経済であるというように分けることが、実際においてはむずかしいのです。ただ荒削りの線において、両方の国は将来戦争をしない、平和的にいくんだという線と、経済的には互恵平等寸の立場において、これを拡大していくという線が打ち出されることが、またその線はこれを政治とか経済とか分けて見ずに、両国関係正常化の一つの道程であるというように、あまり法律的に考えずにやっていくことが必要だ。国旗問題についても法律問題としていろいろ論議したものだから、向うとしては非常な不平が出た、こういうように考えております。
  45. 永井勝次郎

    ○永井委員 先ほど来の皆さんのお話で、再開を必要だということは皆さんのお考えです。じゃどうしたら再開ができるかということが、具体的に日程に上ってくると思います。たとえば第四次協定といいましても、協定を結んだときの条件と今日とではいろいろ状況が変っておると思います。たとえば国旗の問題だけを解決すれば、これで第四次協定がすぐできるものではないと思うのです。そういうようなことについて白水さんからこれに対する所見を伺いたいと思います。  それから高見さんに、時間がかかりますから一緒にお伺いしたいと思います。日中貿易関係緊急事態であるから、一日も早く手を打つ方がいい、そういうようなときにたまたまこの特別国会が開かれた、そしてこういうふうに各委員会でも論議をしておるわけですが、この国会活動の集約として何らかの結論を国会の中から出さなければならない、両国貿易を促進することに役立つ大きな条件がここにある、こうわれわれは考えておるのであります。そういう条件の中で今有力な与党からは議連を解散する、それからまた輸出組合であるとか貿促であるとか、あまり与党的でないというようなことで、こういうものも解消しようというような動きがあるようであります。また国会においては、社会党からは本会議日中貿易の問題について決議案を出そうということで、決議案を出しておるわけですが、与党の方からはその必要がないというので、この国会において日中貿易に関する院議としての意思表示ができない、こういうような事態であります。皆さんの希望している一日も早く再開を希望するということと、これらの国会内に起っておる、また政府内及び与党内で行われておるこういうものの考え方、こういう考え方が第四次協定を促進し、あるいは協定を確実に結ぶことの上に前進になる、促進させる役割をするかどうかということを伺いたい。このことは高見さんと稲田さんに伺いたいと思います。  それからもう一つは、日中貿易の第四次協定が行き詰まれば、単に地域は中国区域だけではなしに、ずっと東南アジアから近東、こういうところに所在している華僑と日本との取引の関係にも相当影響が及んでくるのではないか、かように考えるわけでありますが、そういう関係についてこの影響はどうかと言いうことについて高見さんと大仲さんに伺いたいと思います。
  46. 白水実

    ○白水参考人 今の御質問にお答えするのですが、私たち日本の各商社に、ことに貿易中絶に当って中国の方から実際に参った最後の電報を参考に申し上げておきます。こう書いてきております。「岸政府が第四次日中貿易協定を破棄したこと及び長崎における暴徒の中国々旗汚辱事件に対して、中国人民を敵視する態度を堅持していることのため、平等互恵、和平友好の原則を基調とする貿易遂行する諸条件は徹底的に破壊された。よってわが国政府は人民の要求により、対日輸出入ライセンスの発給を停止することになった。従って成約確認済の商談並びに調印済みの契約についても、すでに信用状を開設ないし受理したものを除いては、遂行することが不可能となった」、これは最後の電報で、字句の一部の差はありますけれども、これとほとんど同じような電報が向うの関係の公司から出ております。もう一つ参考に申し上げますと、中国国際貿易促進委員会の副秘書長である都方洲という人が、日本商社が最後に北京を引き揚げた三月十何日かのときに発表した談話があるのです。これはこの人の地位からいい、あるいは国際貿易の立場からいいましても、日中貿易中絶についての中国側の見解を代表しているということは言えると思うのですが、この談話記録を私が編集したのですが、その中にこういうことがあるのです。これは岸政府であるならば貿易再開はできないかという日本側の質問に答えて言ったことなんですが、こういうことを言ております。岸政府が態度を改善したならば、すなわち具体的に申し上げますと、少くとも貿易協定を破壊しないで条件通りに受理されて履行させるならそれでよい。一方で国旗を侮辱しながら、片手を差し伸べて仲よく貿易しましょう、実は経済上の利益にあずかろうという虫のよい態度にはまことに憤激にたえない。貿易協定の約束できる政府なら岸政府でもよい、また他のだれでもよい、中国は受け入れると思う。こういうことを言っておる。私は解決のかぎはここにあると思うのです。いろいろ取りざたされておりますけれども、長崎の国旗問題をああいうように日本政府が扱わなかったならば、ああいう問題が起らなかったならば、全面停止はしなかったであろうということは、その後中国国際貿易促進委員会の副主席である雷住民さんが言っておるということも明らかにされております。少くとも貿易協定日本政府の方から破棄したという向うの見解に立っておることは、この電文を見ましても事実であります。そして全面停止というような非常な事態に持ち込んだのは、国旗に対する日本政府の扱い方、つまるところ、ああいう事件が絶対に起らぬということは日本の国内では保証できないでしょうが、起った場合に、あれを単純な私有物扱いするようなことでは、中国国民を侮辱するのだというような感じ力を中国旧民はするのじゃないか。また通商代表都もそういうような問題にさらされて、なお日本政府の方でそれに対して適切な保護も加えないということになると、安心しておられない。こういうところに問題があって、長崎の国旗事件が中国の六億数千万の人民を侮辱したというような解釈に立ったからこそ、全面停止というような非常手段が生れてきたということは、さっき読み上げましたことによってもはっきりすると思います。私たちもいろいろ折衝しまして結論はそこにあると思うのです。だから貿易協定を完全に実行できるように政府保証するということがはっきりすれば、そうして中国側はそれを率直にその通り日本政府はそういう方針を持っておる、そういうような方法をもって貿易協定の今後の実行に、政府は支持と協力を与えるのだということを政府側が納得さえすれば、私は再開の道はできると思うのです。もちろん山本先生のおっしゃいましたように、長崎の国旗問題は中国国民を侮辱したというような解釈にありますので、これに対しては適当な方法によって、侮辱したのではないとか、あるいはそういう問題が起ったのは非常に遺憾であるというような問題が長崎の国旗事件を解決することになるだろうと思うのです。この二つの問題さえ解決すれば、私は確実にこの再開の道は開ける、こう思っております。
  47. 高見重義

    高見参考人 永井さんの御質問は、党も、政府も、あるいはまた民間団体も、要はいかにして日中貿易を打開するかということに尽きる、従ってその一員の日中輸出入組合はどうすればよいかというような御質問でありまするが、要は結局その方法論であると思う。皆が異口同音にこの問題を早く解決したいという念願には燃えているのですが、その方法論といたしましては、先ほどお話のありましたような自民党、社会党両党の院議で日中貿易の打開決議案とか、あるいはまた議連の解消とか、あるいは国際貿促協の改組問題とかいろいろ間正題が出てくる。これは要するにいかにして日中関係を円満に打開するかということに尽きるのでありまして、従って私自身といたしましては、最もその効果を発揮するにはいかなる方法をとったらいいか、いかなる方法論によってやったらいいかということに尽きると思うのであります。ただその方法論につきましてはおそらく皆さんの間には意見がいろいろ違っていると思いますので、どうも私個人からこういう大きな問題を取り上げて御説明することは私にはちょっと不向きじゃなかろうか、こう考えております。ただわれわれといたしましては、どういう方法をすれば一番いい結果が出るかというところに焦点を置いて……。
  48. 永井勝次郎

    ○永井委員 あなたに方法を聞いているのじゃない。こういう議連を解消したり、組合を改組したり、議会の決議をしないというようなやり方が、日中貿易を促進することになるかどうか、あなたの意思見を聞いている。
  49. 高見重義

    高見参考人 その意見たるや、簡単に一言では言いにくいので……。
  50. 永井勝次郎

    ○永井委員 いや、イエスか、ノー……。
  51. 高見重義

    高見参考人 イエスか、ノーか、それは即答でなければできますが、私といたしましてはやはりこれは原因結果というものを考えなければいけませんし、単にこれはめくらめっぽうにいいのだ、悪いのだという判断はできかねると思います。むしろ永井さんがこういう御質問を私にお尋ねになるということは、どうも私には不向きじゃないかと思うのです。  それから華僑の問題ですが、今華僑と申しますと、おそらく東南アジアの華僑と私は考えておりまするが、今東南アジアに約一億の華人がおります。そうしてその商社単位といたしましたら、業を営むものとして一千万の華僑がおりまするが、この華僑はわれわれが聞いた話によりますると、ある場合には台湾系、ある場合には中共系そして台湾と中共との間でいさかいがある場合にはおのおの分裂するようでありますが、日本に対しましては一緒になってやっておる。これは昔からの華僑の対日工作であります。従って、もし中共側の方で華僑が相談しますと、おそらく台湾系の華僑も一緒になって来るのじゃないか、それから逆に台湾の華僑が相談しますと、また中共糸の華僑も一緒になって日本に対抗してくるということは大体想像し得られますので、できるだけこういう報復手段をやらせないように、今直ちに手を打つべきだ、こう考えております。
  52. 長谷川四郎

    長谷川委員長 参考人の方にお願いしますが、時間がだいぶたって参りましたので、ごく簡潔に御都弁をお願いします。
  53. 稲山嘉寛

    稲山参考人 私もこういう具体的な問題についてお答言えする立場になっておりません。特に私ども鉄鋼業界といたしましては、日中第四次協定というものを背景にして向うと用談しようというのでなく、その前に行って協定いたしたものでありまして、その四次協定自体が直接鉄鋼協定関係があるとは考えないうちに締結されたわけでありますから、こういう日中協定をどうしたらいいか、それを推進するものとして議連あるいは組合はどうすべきかということについて、もう一ぺんよく考えなければいけない問題でありますので、お答えできないと思うのです。  ただ私考えておりますのは、これを平たく考えますと、中国の方ともお話し合いしたのでありますが、今度の鉄鋼協定は、ちょうど中国のいいむすこがいたものだから、私ども娘が結婚したいというので、自由恋愛のつもりで、実は親の許しを得ないでいきなり飛び込んだのであります。行ってみたところが、向うはおやじさんとむすこさんと非常によく連絡がとれております。これは、体のものだった。で、私どもは、私のおやじはこういうおやじだと自分でいろいろお話したのでありますが、いや、それはかまわぬということで、私ども実は結納をかわして帰ってきたわけなんであります。(笑声)そうすると、どういうわけか、あとから仲人が飛び込んできまして、日中協定をやろうということになって、仲人があとへ出てきたような形になっておるのですが、ともかくもう結納までかわしてしまったわけなんです。  そこへ突然、お前のおやじが悪い、こう言われたような状態になっておるので、娘といたしましては、おやじのどこが悪いのかさっぱりわからない。(笑声)おやじの商売が悪いというのか、何が悪いというのか、わからぬというのが、ただいまの状況であります。私ども娘といたしましては、結納までしたのですから、何とかして添い遂げたいと思うことについては人後に落ちないのであります。(笑声)ところがどうも親が悪いと言うし、今さら親と縁を切るわけにいかない。そこまでの自由結婚はできないので、今非常に困っておる。  そこでこれをほぐしますために、だれか適当な人を仲人に出してもらって、どことが悪かったのか、一つ向うの親子もろともに納得させたいという気持でわります。その役割に議連が立つか、あるは日中組合とかいうものが立つのかどうかは存じません。それは親の方でと申しますか、政府の方でよくお考え願いたいと思うわけでございます。ただ、この議連や日中紹介というものは、私どもの方に直接関係はございませんが、将来やはり中国貿易を拡大していきますのには、まだ私ども、長女か次女か知りませんが、娘がたくさんおるわけなんで、その娘をとつがせますために、こういうものが必要であれば、どうしたってやらなければならぬわけでございます。どういう組織か知りませんが、ぜひ御研究願いたいと思うわけでございます。
  54. 大仲斎太郎

    ○大仲参考人 この問題については稲山さんから非常にいいお話をしていただいたので、私がそれをとやかく言うことはない。その通りであります。硫安というか、肥料業界においてもその通りでありますが、この電報を受け取ったときに迷ったのです。一体何とあいさつをすべきものであるか、それともこのままにしておくべきものかということについて迷ったのでありますが、向うの言うことは、やはり岸政府が敵対行為をしている以上はというような冒頭の書き出しで、LCは聞けないという。こういうことになってくると、私の方からどうのこうの言う筋合いのものではないし、また言えないということで、しばらく静観をしようということでおったのですが、その静観がまだ今日まで延びて、どう言っていいのかわからないというのが現状でありますが、話し合いを進めに行ったときには、お互いに政治は政治である、経済は経済である、肥料肥料であると言いうことで、非常になごやかに契約ができただけに、私どもは実は驚いたのでありますが、今さら何と言ってもしようがない。稲山さんがその辺のところはよくお話をして下さったわけであります。しかしこれはこれとして、来年度も永井さんはまた肥料審議会委員に任命せられたように新聞で拝見いたしましたし、またお世話になると思います。近いうちに需給関係のお話も出るだろうと思いますが、日中貿易が一体いくのかいかないのかということが、非常に大きなポイントになってきておるのであります。私どもとしては簡単にはいかないけれども、しかしこれを、ゼロに見るなどということはとうてい忍びない。昨年われわれが意気込んだように、それを倍加するとかあるいは、五割増すとかいうことはむずかしいのじゃないか。しかし少くとも去年並みの、硫安に換算しても五十万トンくらいのものは買っていただけるのだろうかというようなことで、生産その他についても考えなければならないというようなことになっているので、まだその点については決着に至っておりません。審議会が開かれるまでの間には何とかその辺の数字は出ると思いますが、これがほんとうに今のような形で、もう日本からは当分というか、しばらくこの期間には買わないのだということになれば、われわれとしては一大決心をもって何らかの方法を講じなければならないという、肥料界としては最悪の事態に来ているように思われるのであります。その点はまだ数字も固まらぬことでありますから、永井さん、その席上でよく御判断をいただきたい。  それから華僑の問題ですが、今までのところは華僑から何という影響はありません。今までもその国の政府なりを相手にし、あるいはその国の商人を相手にしておったので、華僑というものの中には入っていなかった。しかしこれからはマラヤ、シンガポール、あの辺に発展をどうしてもしていかなければなつらぬとなれば、自然この華僑というものの相手を、見つけなければ大きな商売はできないと思います。これからの問題と思いますが、今のところはそういう影響がないということを御了承願いたいと思います。
  55. 奧村又十郎

    ○奧村委員 先ほどのお話によると、大体この中絶した中日貿易再開するには、第四次貿易協定を実施することだ、こういうことですが、私はその通りに思います。第四次協定を実施するということになれば、これは政府の立場で実施するわけにいかぬ。やはり今までのように中日議連のようなものがなければいくまい。これが解消すれば、これに似たようなものをまたこしらえなければならぬ。そうして考えてみると、それでは第四次協定を調印してきた三団体の代表者がこの第四次貿易協定を実行すべくなぜもっと誠意を持って努力せなかったかということです。これを反省しなければ、これは何においてもこれからやっていこうということが意味をなさぬと思う。今相手方である中共が、今の法律上非常に不安定であるから、第四次貿易協定というものを向うが結ぶ。ところが結んだ協定を代表者が実施しようという努力をしなかった。それでは今後またやりますと言たって、第一、中共がそんなものを認めやせぬ。そうなるとこの間せっかく調印してこられた調印者の方々がせっかく調印してきたことを実現させるべくなぜ努力しなかったかということです。これはしかし私ども議員の立場、中日議員連盟の一員の立場で、私どももこれを明らかにしなければならぬことでありますが、三団体のうちの一団体山本さんに、その点の反省をあなた方もどうしてしなかったか。これを反省してかからなければ出直していけぬと思う。その点を伺いたい。
  56. 山本熊一

    山本参考人 私が最初に調印団体として責任を痛感しておるということを申し上げましたのは、その点であります。顧みますれば、われわれ三団体のこれに対する努力が不十分であったということは、私も認めて大いに反省しておる次第であります。ただ事実上におきまして、私ども貿促協会としても、その後できるだけのことは今日までいたしてきておりまするが、ちょうど国会の解散等がありまして、議連は一時機能停止の状態に陥った、こういうような関係もありまして、三団体として共同の動作が今日までうまくとれなかったということは、われわれが万全の措置を講じ得なかったという大きな原因となっております。しかしせっかく議連の再編成等の問題もありまするようですから、私どもといたしましては、できるだけ早くこういうような機構の問題だけでも早く解決して、もっと原則的な日本側の腹をきめるということに全力をそそぐ機会が一刻もすみやかに来ることを期待いたして、そうしてわれわれは過去を反省して、この上とも国民の意思に沿うように全力を尽したい、こういうように考えております。
  57. 奧村又十郎

    ○奧村委員 国旗掲揚については協定の中に入っておる。中共の側とすれば、代表者として与党の議員も調印しておる。そうすればあらかじめ岸内閣とも裏面においてはある程度意思疎通した上で判こを押しておる、としたなら、ば、これは当然実施はするものだというふうに中共政府としては考えておられるのです。また調印してきた使節団の代表者としては、調印した以上は、これはいかに民間使節団とはいえ、一方国会議員でもあるし、与党でもあるしということであれば、これは帰ってきて、多少難色があっても、あくまでも政府を説得して実施させるべきである、また三団体としてもそのように努力すべきである。ところがその努力をしたように私らには思えぬのですが、その努力をしたのですか。あなた方もさせたでしょう。そのポイントがはずれておると、どうもかゆいところがみなはずれておるように思うのですが、それがはっきりしなければ、これから出直すということもできまいと思う。どうです。
  58. 山本熊一

    山本参考人 その努力はいたしました。貿促協会といたしましてはさっそく決定をいたしまして、私が申しましたような線で今日まで終始一貫、政府に対しても国会に対しても、あるいは国民に対してもこれを要請し、中国側に対しても日本側の、実情はよく伝えて、暗黙のうちに日本の実情も了解してもらうようにあらゆる努力を傾倒いたしております。さらに関係業者団体とも一緒になりまして業者協議会というものを組織しまして、私もその会長になって、その団体は八団体、漁業関係団体及び輸出組合、私の方、それから日中貿易促進会あるいは機械輸出連合会、そういうようなもの、地方議員通則も一緒になっておりますが、八団体による業者協議会をこしらえて、これは今日中関係の白書をこしらえておりますが、それと同時に政府に対しても国会に対して、数日前にも働きかけておりますし、かつては日中関係打開促進委員会というものがありましたが、その団体と一緒になりまして、国民大会も開きまして、政府に対して要望し、また民間に対してもできるだけのことはいたしてこれを促進いたしております。ただそのやり方その他においてあきたらないことがあったことはわれわれも認めておりますが、ことに三団体が一致の歩調をとることが困難な実情にあった時間もありまして、ようやく国会も総選挙が終って、新しく議員連盟も発足されようとするような段階に来ておりますので、この機会にこれを促進いたしたいと思っております。
  59. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そうすると第四次協定の調印のときは、三団体一致の共一同歩調はとれなんで、それでうまくいかなんだというような御答弁ですが、北京で調印なさったときは、三団体は十分連絡協調の上で調印なさったんではないですか、調印は議員だけであったのですか。
  60. 山本熊一

    山本参考人 調印の主体は三団体、そこで三団体がそれぞれ責任を持って調印いたしました。その調印前には三団体がしばしば会合して、意見の一致を見たところによって初めて調印いたしたのであります。従って三団体は調印団体として全責任をこれが実施に関して帯びておるわけであります。事前には一つ意見の分離というようなことはありませんでした。一致いたした上で、こういう手段をとったんであります。
  61. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そうすれば今後とも四次協定を実施していくことが貿易再開するもとであるということであれば、三団体は今まで通り力を合せていく以外に方法はないはずです。政府がまともに調印するわけにいかぬですから、三団体の方でいかなければならぬ、ただしかし、中日議員連盟の今までのあり方については、われわれも反省しなければならぬ。あとの二団体と十分な協調がとれなんだということについては十分反省しなければならぬから、われわれの中日議連は出直さなければならぬ。しかしこれは要らぬということは言うべきではない、こういうように思うのですが、そのようにお考えですか。
  62. 山本熊一

    山本参考人 議員連盟に対する私の見解は、最初に申し上げました通りでありまして、ただいまの御意見と同様です。
  63. 長谷川四郎

    長谷川委員長 松平忠久君。
  64. 松平忠久

    ○松平委員 山本さんにお伺いしたいのですが、今の点なんですが、三団体ですね、共同の責任を持ったということになっておりますか、それとも当時伝えられるところによると、政府の承認並びに保証というものは、主として議員連盟がこれに当って、そうして同意を取りつけ並びに保証を取りつけるという責任の分担ですか、そういうものがあったやに聞いておるのですけれども、三団体は共通の責任を負うという、そういう立場にあったのか。あるいは政府に対する同意並びに承認の取りつけというものは、主として議員連盟がこれに当るという了解があったのか。その点をちょっと明らかにしていただきたいと思うのです。
  65. 山本熊一

    山本参考人 三団体が共通の責任で調印し、責任を負うておるわけで、それで政府保証を取りつける件につきましては、今度の協定調印後こういう話したんです。あれは協定の条文にありまする通りに調印と同時に効力を発生する。ただしこれが実施のためには双方がそれぞれの政府から同意を取りつけて、その文書を交換したときから実施する、こういう話し合いをつけた。そのときに、これは内輪の話でありまするから、同意の取りつけ方までについて話し合いをした。それは第三次協定のときの例もありまするので、完全なる文書で同意するとかいうことは相当むずかしい事情もあるように考えましたので、政府が支持と協力を与えるという文書をわれわれ三団体にくれれば、その程度中国側も納得するかという話し合いもつけて、その程度でよろしゅうございます、こういう話し合いもつけて帰ってきたのでありまして、その政府保証を取りつけることについては、議員連盟が責任を負うというような偏重した責任の分損の仕方ではありません。共通の責任でこれを取りつけるということになっております。
  66. 松平忠久

    ○松平委員 もう一点白水さんと山本さんにお伺いしたいのですが、白水さんから出されたものの中に第一項、第二項というものがありますけれども、現在の問題を打開する上におきまして、世間では二つの違った考え方があるように思うのです。第一には静観をしておればいい、つまり静観をしておるうちに向うが困ってきやせぬかというふうに考えておる者もまだあるように思います。それから第二は、いや向うはもっと強くなっているんだ、今までのような協定の内容ではだめであって、さらに向うに有利な内容に改めなければならぬくらいまでに向うは強くなっているんだということを言っておる者がある。こういう二つの議論、観測が朝野にあるように思います。  そこで私どもの考え方としては、両方ともいけないのであって、この調印がとにかく三団体の代表と向うの代表との間によって行われてきたのであるから、これをまず履行することによって問題は解決するのではないかと思います。ただしその場合において長崎の問題があるので、長崎の問題を別個に扱って、これを外交的な解決方法をとっていかなければならぬだろう。付随してこの二つの解決をすればいい、こういうふうに思いますけれども、ただ少しつ私たちつが疑問に思います点は、こういうふうにこじれてしまった、従って初めの政府の同意並びに保証の形式をもってしては、もはや向うは信用しないのではなかろうか、こういう疑念も若干あるわけでございます。従って問題を解決するに当っては、ただ単に今までの通りに協定を実行するのだという実行の形式に関しまして、今山本さんがおっしゃったような文書による形式だけでいいのかどうかということについては、若干私は疑問を持っておるのであります。すなわち日本政府の信用をどうやって一体向うに表現していくかという形式の問題になりますけれども、それは今までよりもっと重い形式をとらなければ向うは信用しないのではないか、こういうふうに私個人は考えておるのであります。ですからその点に関する限りは、形式の問題になりますけれども、これは今までのような形式ではなくて、もっと向うが信用するような形式を日本自体が考えて、その信用するような方式を編み出して実行していく、こういうことでなければ私は問題の解決にはならぬというふうに思っておりますが、白水さんの見方はどうかということと、もう一つは、私が今申しました意見に対して、山本さんは率直にどういうふうに考えておられるかということを伺いたいと思います。
  67. 白水実

    ○白水参考人 今の御質問の静観した方がいいという意見は、全くナンセンスだと思うのです。中国日本と取引することは西欧と取引するよりも確かに船賃は安いし、あるいは向うの今の産業の技術程度その他から見ましても、従来の長い取引のあれから見ましても、日本との取引の方が有利だと思うのです。しかし、ただ幾分有利だというようなことによって、中国が単純にコマーシャル・ベースだけで国の方針を左右するというふうなことはあり得ない。それで中国日本との取引はあくまでも友好的な関係ということが基礎になってのみ貿易は発展し得るのだ。それでありますから日本友好関係が基礎にならないで、右手に剣、左手にコーランというような方法では絶対にやらない。あるいは国を侮辱されながらでも、少し安いから買おうというようなことはしない。だから静観しておれば、向うの方が困って取引を頼んでくるというふうなことは、全くナンセンスであって、中国日本との取引を埋める道を幾らも知っておとるいうこと、あるいはソ連圏内の各国を通じての貿易協定をやっております。しかもそれはバーターの方式でやっております。しかしさっきも申し上げましたように重要な商品については昨年あたりから西欧諸国と非常に積極的にやっておる。それで日本から出せないものは西欧諸国から十二分に補い得るということは、今までの日本中国との長い貿易制限の間においても、西欧との取引の中で、日本が出せないものを西欧諸国から得てきておりますし、そのルートもついておる。また西欧諸国中国に対して積極的に取引をしようとして活動しておりますので、実は中国は困らないと思うのです。それで静観するということは中国の実情を全く知らないということ、及び中国日本との貿易の実態を把握されない方の言だと思うのです。  もう一つの点について、中国協定問題では、単純に貿易問題だけじゃなしに、非常に中国の強がった言葉を通して見ると、何かほかに別なあれがあるのじゃないかというような意見は確かにありますけれども、これも中国は非常に現実的な政策といいますか、政治あるいは貿易政策をやるところなんです。決して突拍子もないようなことはやらない。これは私たちが長い間向うと折衝をしておって、確かにその基本的な方針の上に理屈を一つずつ積み重ねていって、一つの言葉にしろ、ちょっとした方法にしろ、とるには突拍子もないようなことをとろうとは、私たちには想像もできないわけです。だから今度の問題も向うが公式に言っていることを率直にそのまま受け取っていいのではないかと思うのです。いたずらに向うの腹の中を探り合う必要はないのであって、向うで日本側協定を破棄したというふうに解釈しておるのが果して妥当か、あるいは不当か知りませんが、それは別にしまして、日本側貿易協定を果して破棄したかどうかという問題をよく突っ込んで考えていきますと、なるほど日本側の方で貿易協定を実行できないようなことに持っていっているという結論が出てくると思う。だから実行できないようなことに持っていかないで、今までやったことはそうかもしれないけれども、貿易協定を実行しているのだという友好的な関係を一歩々々増進しながらやるのだ。右手に決して剣を振りかざしてやらないのだということさえ出れば、私は解決すると思うのです。
  68. 山本熊一

    山本参考人 ただいま事態は非常に深刻になっておるので、単に協定の完全なる実施及び国旗問題に関する誠意ある解決、これだけでは話し合いを進めることがむずかしいのではないかという御意見でありまするが、私も事態は相当深刻なところまで来ておることは認めます。しかしその話し合いの糸口をつけるためには、今の二つの点を誠意を持って解決していく、つまり完全なる承認を与えるということと、もう一つは誠意ある国旗問題の解決ということについて、政府も方針を確定し、腹をきめるということが必要であります。それを向うに持ち出す形式としましては、具体的な考えも持っておりまするが、要するにそれだけでは向うが応じてこないだろうかという点につきましては、誠意を持ってその二つの点を解決していけば、向うは応じてくると私は信じております。ただしその持っていき方は、先ほども申しましたように、向うの方としてはいろいろ日本の態度について疑惑を持っておる点もありまするし、また現にそういうことが次々と行われておる実情にありまするので、こういう点に対するほんとうの日本の真意を説明し、向うをして納得させる、また向うに対しても日本の真意を十分理解してもろうために特使を派遣するとか、その他政府の最も信頼し、向う側も信頼するような人によって道を開くということが、この際の取扱い方としては必要ではないか、私はこういうように考えております。
  69. 長谷川四郎

    長谷川委員長 西村直己君。
  70. 西村直己

    ○西村(直)委員 時間がありませんから、簡単にちょっと伺います。この中共貿易の扱いは非常に御苦労だと思いますし、またただいまの御意見も非常に私もよく参考になりましたが、ただ現実の問題として御存じの通り、先ほど山本さんからもお話がありました通り、四次協定の裏に絶えず流れておる根本原則というものがある。ところが日本の置かれた立場というものがあります。はっきり申しますれば、中華民国政府との関係はあちらでは一つの国内問題となっておる。日本としては外交問題、この前提がある以上、なかなか竹を割ったような形にいかない。もう一つは議連というものを考えなければならぬ、われわれも議連に参加しておった時代もありますが、共産圏における国会議員と、自由圏における国会議員とはかなり違うのです。国会議員が向うにおいてはほとんど全員が政治的なはっきりした立場がとれる。ここ数年議連を相手にしてきた新中国としても、そういうことがおわかりになってきたと思うのです。ここでも議連のあり方の問題がはっきりしていると私は思うのです。この議連というものを介在させて、そして今の国民政府を正面の友好関係にしておる日本との間で、こうやっておっても、こういう事態にぶつかりやすいと私は思う。たとえばきょういただいた書類の中にも、長崎の事件も台湾政府の問題から始まっております。ですから私がここで一つお伺いしたいことは、今後四次協定ができる、あるいはできないにしても、今後皆さんなり、民間有志の方のおカで貿易打開をはかっていかれても、ときどきこういう形ができ上っても事件にぶつかりやすい。  それからもう一つは、共産圏の貿易は何と申しましても政治が非常に優位だ。こちらは自由主義体制で経済信用が主体であり、向うは政治がからまっておる。自由恋愛でいっても向うとしては親というものがきちんとその裏にはついておる。ここが違うのです。  そこで一つ結論的に御意見を伺いたいのは、今損害が発生されておると高見さんが言われましたが、確かに今発生しているでしょう。こういうような事態になったら、業界としては、損害が発生したら全部政府側が何とかしろという御態度であるのか、こういう政治を優位とした管理貿易からくる、いろいろな状況の変化からくる損害は、将来とも何らかの予測をして業界内部で、表でも裏でもよろしゅうございますが、国家の裏付というものをお求めになるのであるか、その貿易の経理上のいわゆる受入れ態勢ですね、これについて一つお伺いしたいと思います。
  71. 山本熊一

    山本参考人 政治体制を異にする国との間の貿易については、ややもすれば先方は政治を先行させるために常に不要が伴う、これをどういうように考えるかという御質問と承わりましたのですが、私はこういうような政治体制をもっておる共産主義の国が、十億以上の人口を持って世界に厳然として存在しておる。このことはどうしても避けようとしても避けることのできない厳存する事実であります。それで私は根本問題を申しますれば、世界経済の正常化ということは、どういうことを考えなくちゃならぬかというと、こういう政治体系を持っておる国が相当広く強く存在しておる。これとの関係を調整していくことが世界の平和のためにもなるし、また国民の経済の発展のためにもなる、こういう厳存する事実を前提に、今後貿易政策なり経済政策をどう立てるかということが、私は日本としては今後の問題になると思う。ところがさしあたり日本中国のごとく国交も正常化していない国との間には、私は先ほども申したように、日本措置としては貿易協定のごときものを作って、それで縦の安定した貿易を進めていく以外に方法はない。今の貿易協定は一カ年間の有効期間の貿易協定になっておる、しかもその内容の、ある一部分は一カ年でなくて一数年間続けていかなければならぬ内容を持っておる。そういうような関係で私は私なりの今こまで国際貿促として考えておったことは、第四次協定は今まで数年の間、がらがらから回りしておってやっとできた、そうして一カ年の有効期間でありましりたけれども、この次の期間満了後に作る協定は少くともある条項については、数年間これが有効期間がある、少くとも五年ぐらいな有効期間を有する貿易協定を作ることが必要ではないかという考えで、今いろいろ準備をいたしております。そういうような意味から申しまして、少くとも貿易協定の締結実施ということにおいて、ある程度の不安を除きつつそれによって貿易を進めていきますれば、経済提携及び経済協力の基礎も固まって参りますし、一つの事業、たとえば電気事業についても協力体制が固まりかけて今日の破綻を見ておる、こういう事実がありますので、こういう問題から、経済提携の実が上って参りますれば、政治にひっかけて貿易を破壊するというようなことは、将来これを防ぎ得るというように私は考えておるのであります。西欧諸国の対共産圏貿易に対する根本の考え方は、みんなそういう方針で進めてきておるように私は伺っておるのであります。そういう考えで進めていきたいと思っております。
  72. 西村直己

    ○西村(直)委員 時間がありませんからやめますが、私はそれも貴重な根本論だと思います。またわれわれは共産圏貿易の拡大ということは念願しておる、ただ現実の問題として今山本さんのおっしゃったような観念的な行き方だけで果して現実の場面に対処できるか、現実に損害が生じておるのですから、その場合に、自由結婚を許したおやじが悪いんだと、こちら側だけの責任で、それを政府が跡始末をしろ、こういうような形だけで行けるのか、これに参加される業界自体でも、その点については対共産圏貿易に対する一つの扱い方、言いかえればこれは向うは管理貿易です、こちらは自由貿易で行く、そこの違いというものは、私は非常に考えて用意されていかなければいかぬのじゃないかと思う。これは意見でございますが……。
  73. 長谷川四郎

    ○長谷川委員 長堂森芳夫君。
  74. 堂森芳夫

    堂森委員 寺門がおそうございますから、ただ一点だけ山本さんにお尋ねしたいと思います。  山本さんは武漢と広州の見本市の会長でもあられます。この武漢と広州の見本市は二万以上の品種が出品せられ、点数で七万点近いものだ、こう聞いております。金額では六億数千万に達する。それからまた即売品が一億数千万でありますか、合計十億近い金額の出品がなされた。そうしていろいろな方々の出張旅費あるいはまた宣伝費というものを加えるとおそらく十億を優に突破するでさあろう、こういうふうな費用がかけられた、こう聞いております。そうして五月十日でございますか、この悲劇の決定がなされるまでに、すでにその大部分は売約が契約されておった。そうして実は五年くらい前から、私が医者であるという関係から、零細企業で作られておる医療機械の輸出を少しく世話をしてきたのでありますが、それで先般の武漢、広州における見本市への出品について、島津さんというような大会社は別であります。しかし普通の医療機械というものはかなり零細な企業で作っておるのが大部分であります。そうして私も向うの大学のほとんど各地の教授は知っておりますし、無理に出品を勧めて歩いたような責任もあるのであります。これは医療機械だけではありませんが、そうして売約の契約もほとんどできた、こういうことで非常に感謝をしておったわけです。しかしああした決定がなさこれまして、全部破約になった。そうしてこれが戻ってくる。しかもいろいろな業者からの訴えを聞いておりますと、品物は戻ってくるが、おそらく倉庫の設備が悪くて、さびておるものがうんと出るだろう、こういうお話も聞いております。また、返ってきてもとても使いものにもならぬ、こういう事態が起きてきて、おそらく向うにまだ借財もできておるのではないか。これは見本市全体として借財ができておるのではないか。これはいわば向うがああいう決定をしたからといえば、そういう理屈も立つかもしれませんが、とにかく借財ができておる。そうして引き揚げについてもいろいろと出費が要る、こういう状態で、おそらく一億以上の、何か今後のしりぬぐいですか、そういうものの現金も要るであろう、こういうふうにも開いておるわけでありますが、これは今後の貿易の影響だとか、そういうことは別にしまして、現実の問題としてどういうふうな状態に今なっておるのか。そうりしてそうした経理の面というものは、一体どういうふうになっていくであろうかというふうなことも——政府責任があるとかないとか、これはまた問題は別にしまして、このたびの見本市には政府は六千万円の補助をしておる、こう聞いております。この前の見本市にはバナナの差益金の特別措置ですか、業者から一億数千万円がさらっに助成されました。今度は六千万円、こういうことです。会長としての山本さんにはいろいろ御苦労になっておるのじゃないかと思いますが、どういうような現状で、今後どういうふうなことにしていかれようとするのか、あるいは政府にどういう運動をしておいでになるのか、簡単でようございますから、われわれ今後政府に向っていろいろやっていく上について参考にもなると思いますので、御説明を願いたいと思います。
  75. 山本熊一

    山本参考人 ただいまお話しになりましたごとく、武漢、広州における日商展は、最後の段階まで非常に優秀な成績をあげたのであります。出品物は金額にいたしまして約六億四、五千万円に上っておった。それ以外に即売として一億八千万円ばかり実際に売れたのであります。そして六億数千万円のうちで約四割程度のものは、今度の事態が起ります直前までに売置契約ができておった。ところがああいう事件が起りましたために、中国側国民の方から日本品は買いたくないというて破約するようになってきた、政府としてはもはや押えることができないから、これは商談を中止するという通告を受けましたので、これを日本に持ち帰らざるを得ない、こういう状態になりまして、今大袖の倉庫まで持ってきまして、たしか四千何百トンの重量の品物でありますが、それが毎日倉庫料だけでも十三万五千円かを払っておる、こういう状態であります。  それから今度の展覧会につきましては、政府の非常な御協力によりまして六千万円だけの補助をいただいておる。ところが実際に展覧会を開催してみましたところが、北京、上海の展覧会に比べまして、地方が中心になってこの展覧会協力してくれた。そこでいろんな経費等も北京、上海等に比べまして、地方財政の困難なところから、予定以上の相当多額の費用を要したわけであります。それが全部合せますと、たとえば運搬費とか、あるいは土地の借入費とか場所の借入費とかいうものがかさみまして、六千万円の補助では六千万内外の不足を来しておったわけなんであります。そこへもってきて、品物を全部日本に持ち帰るということになりましたために、四千数百万円の新たなる経費を要することになったわけであります。そういうようなことを合せまして、約一億円内外の不足金を生じておるのであります。われわれといたしましては、今回の事態が発生いたしましたその責任を、政府責任であるというふうに簡単に考えておりません。これは政府ばかりではない、いろんな不可抗力的な事態の発生によってこういうことになったと思っておりますが、しかしこの際これが救済策といたしましては、われわれとしては第一にこの問題を解決することが先決問題であり、それと合して、この一億円に対しては何らかの方法政府から補助を仰ぎたい、こういうことにいたしまして、詳細な理由をつけて政府筋に対しましても今申請いたしておる、こういう事実でございます。  いかにいたしましても、この展覧会の開催によって、日本の対中国貿易の拡大の基盤が非常に固まった、同時にあれだけの何百人という人が半年以上にわたって実除中国において国民との間に日々仕事を一緒にした、このことがいかに友好関係の増進に寄与したかということは、この前の展覧会を通じても、また今度の展覧会を通じても、はっきりとわれわれは認めることができるのです。そうしてできるだけこういうものは再三開きたいという考えのもとでおりましたところが、こういうことになりましてはなはだ遺憾に存じておりまするが、実情は今このような通りであります。
  76. 長谷川四郎

    長谷川委員長 質疑は以上をもって打ち切ります。  参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べ下さいまして、まことにありがとうございました。本委員会が対策を練ります上に非常に参考になりましたことを厚く御礼申し上げます。各参考人におかれましては、今後とも本委員会調査を進めて参ります上に、適時一そうの御協力をお願い申し上げる次第であります。本日はありがとうございました。  暫時休憩いたします。     午後一時五十一分休憩      ————◇—————     午後二時四十二分開議
  77. 長谷川四郎

    長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  鉱山災害に関する件について質疑の通告がありますので、これを許可いたします。伊藤卯四郎君。
  78. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 委員長から、あとでこの会議室を使う都合、大臣の御都合とで、一時間だけに質問の時間を制限してくれということでございます。従いまして、私が鉱山災害の問題等で三十分ほど質問をいたします。あと同僚多賀谷委合員から、さらに三十分質問することになると思います。  私がまず先にお尋ねしようと思いますのは、最近になりまして、特に鉱山水没による災害がおびただしくなって参っております。これについて、大臣も所見を発表されておりますが、具体的に一つ、どういう報告がされ、どういう対策を立てようとしておられるか、この点についてお伺いいたします。私も要点だけお尋ねいたしますから、大臣の方でも、重要な要点のみを一つ御答弁を願いたいと思います。
  79. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく、最近にいろいろ災害事件が発生いたしました。特に最近の傾向は、坑内出水が多いというわけでありまして、これを一月以来調べてみますと、今日まで十七回の災害を出しておるのであります。その間に十一回目、五月七日までは、大体がガス爆発だとか落盤だとかいうことが主体でございました。ところが五月七日の江口の斜坑におけるあの災害、これには非常に大きな犠牲を払い、二十九人の犠牲者を出しておる、こういうわけでありまして、これが旧坑からの出水によるということが報告されております。引き続きまして第十二回目の災害、これは平の日曹赤井でありますが、これは翌日の五月八日でありますが、これまた同様に大きな災害でございまして、五人の死亡者を出しております。その後落盤だとか、ガス爆発等がありまして、最近におきましては、六月二十七日の福岡の本添田、これの本坑におきまして、すでに御承知の三人の死亡者を出しております。こういうような工合でありまして、最近の情勢を見ますと、坑内の出水ということが非常に多いということでございます。しからば、これはどうしてそういうことが起るかと申しますと、これは、たまたまそういう場合に際会したのかと私は思いますけれども、大体が中小炭鉱、ないし鉱区の試掘をやっておるのは、中小炭鉱業者が多いのでありまして、それがいろいろ監督の不十分、あるいは鉱区図面が完成していないということが原因いたしまして、無理をしてやっているということがもとになっておるように感じまして、これは、将来とも相当古い鉱区においては、こういう事実が起るだろうと思いまして、さらにそうこのことにつきまして対策を講じたいと存じておる次第でございます。
  80. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 そこに石炭局長もおりますが、各炭鉱とも掘進もしくは採炭というか、あるいは掘ったあとの古洞というか、そういうところについては、それぞれの炭鉱の正確なる図面、これが石炭局なり鉱山保安局の方にはそれぞれあるのでありまして、これに基いて保安局の監督官が十分調査をすれば、必ずこういう古い掘ったあとのたまり水を受けて、こういう水没をするというような災害等は起らないはずですが、こういう点については、どういうふうにお考えになっておりますか。
  81. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは、ごもっともの点でございまして、その炭鉱に属する範囲においては、採炭図面等の詳細なものがなければならぬわけでございます。それが完全であれば、古洞等の存在もはっきりしておりますから、それによってやればいいわけでありますが、不幸にして通産省が従前持っておりましたところの福岡の図画は、戦災のために焼かれてしまって、自来事業者からそれを集めて、鋭意この完成を期しておるわけでございますけれども、これは、御承知のごとく鉱区が転々として売られるというときには、ときどき売手は、自分の鉱区をよくするために、買手にごまかして古洞等は抜いておる、こういう点がありますから、必ずしも私は、これは信用できないと思う。ですから、これはどうしても根本的に地震探鉱なり地質探鉱なり、最近の科学を応用したものをもって、一応ほんとうの図面を作る必要があるだろう。これは、私は今後急速に予算の許す範囲において実行いたしたい、こう存じておる次第であります。
  82. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 福岡通産局が焼けて、役所が持っておったそれぞれの炭鉱図面というものはなくなったということでありますが、通産局が焼けて、もうたしか十年以上たつと私は思います。十年以上たっても、なお各炭鉱とも正確なる図画というものを役所が持っておらぬそうですが、そうすると、あと何十年くらいたったら一体できるものですか、おそらく今の調子であれば、五十年、百年くらいたたなければ私は正確なるものが得られないのじゃないか。そのうちには、おそらく筑豊炭田の炭鉱は大部分なくなると思いますが、そういう怠慢なことで、通産省が焼けたからということに事を寄せて、その怠慢は断じて許されません。同時にまた私どもの知る範囲では、保安監督官が炭鉱の坑内に入ったことを、あまり聞きません。あるいは一つの炭鉱に何年も入ったこともございません。事件が起ると行ってみるようですけれども、その後何年も行ったことはございません。そのようにして、一体どうして図面ができますか。これは、まさに保安監督官の重大なる怠慢といわなければならぬ。こういうことについて、責任をどうとろうとお考えになっていますか。
  83. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 十年間こういうものが等閑に付せられておったということにつきましては、これは、いろいろな言いわけもありましょうが、伊藤委員の御指摘になったごとく、これが怠慢であったということは、私どもはその責任を負わなければならぬと存じておりますが、しかし、いろいろその間に予算関係その他の事情があって、できるだけの努力は、係の人たちは実行しておったわけであります。今、後御注意に基きまして、十年、二十年先にそれが完成しても、これは、飛んでしまった鳥のあとの絵を描くようなもので、鳥のおる間にちゃんとりっぱにせねばならぬ、こういうことは、私ども痛感いたしておりますから、御希望に沿うように、予算のできるだけの範囲におきまして実行いたしたいと存じております。
  84. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 高碕通産大臣を締めてみたところで、はなはだ気の毒と私も思うわけであるが、しかし、そうい怠慢正であるということを、深く大臣の肝に銘じておいてもらいたいという意味で私は申し上げた。経営者も、ほんとうに労働者の人命を尊重する意味で保安対策を十分立てる、あるいはまた役所側でも、監督を厳重にするということであれば、落盤程度はやむを得ないということがしばしばありますけれども、あるいはガス爆発であるとか、あるいは隣の鉱区の古洞の出水による水没災害であるとか、こういうことは、保安上完全上にやれることなんです。こういうことを、やはり経営者の方でも、自分の方で掘進をし、たとえば五百メートル伸びたものを、役所側には二百メートルしか伸びておらぬということを言いましょう。あるいはまた採炭などで、もう危険区域を掘っておっても、それをやはり役所側にごまかしておるということもあり得ます。従って、そういうものに対する十分な保安対策も立てないでやっておるということもあります。これは私ども知っています。これを監督するのが、監督部の使命なのであります。ところが、これらを、監督部から、自然の形でそういうことを監督されたことを私はあまり聞いたことはありません。事件が起って、初めて行ってみるというようなことである、これではいけません。これでは、役所が何のために鉱山保安局というものを作っておるのであるか、全く疑わざるを得ません。そこで、こういうことがありました。大臣御存じでもなかろうと思うが、終戦直後、片山内閣で、ちょうど私が鉱工業の委員長をいたしておるころでありましたが、今の保安行政を労働省にするか、通産省にするかということで、非常にもめて、解決ができなかったことがありました。そこで労働省側は、保安行政というものは、やはり人命を尊重する意味において、労働省がやるべきであるという非常に強い意見を持っておりました。通内省側では、生産と保安とは一体であるから、そういう意味において、通産省側で持たしてもらいたい。そのときにおいては、労働省の人命尊重以上のこの保安対策を、生産保安一体の立場から立てることが最も合理的である、その方が成果が上る、こういうところから、労働省にいくべき保安行政を、通産省にとったのであります。ところが、とるにはとったが、その後において、われわれは、通産省側が保安行政をとったから特別に成果が上っておるということを聞くことができないのであります。いわんや、こういう監督を十分にやれば、必ずこういう災害を防止できるということについて怠っておるということになれば、なおさらわれわれは、非常に疑問に思わざるを得ない。この点は、何といっても私は許すことができないと思うのであります。そこで大臣は、この保安行政というものを、やはり通産省は生産保安一体の方がよろしいとお考えであるか、いやこれは、人命重重の上から、むしろ労働省にやって、そうして専門家をもってやらした方が、人命尊重の目的を達する上によろしいと考えられるか、この点は、われわれも国会議員として非常に重大に考えなきゃなりません。そういう点について、大臣は、こういう続出する事件に伴って、どういうお考えを持っておられるか、私は、そういう歴史的な経過を述べて、大臣の所見を伺っておきたい。
  85. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 実は、初めてその歴史を承わったようなわけでありますが、私の考えを率直に申しますと、やはり通産省の行政の機構の中に保安対策を講ずるのが当然でありまして、生産と保安とは並行していくべきものだと信じております。またこれが労働省にいったから生命を尊重するとか、通産省にあるから生命を、軽んずるということは、間違ったことでありまして、通産政策、産業政策におきましても、何としても生命は一番大事でありますから、この問題は、どこにいこうと一番重要な要点として考えていくべきものだと存じております。
  86. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 たとえば、炭鉱経営者側が人命尊重の対策を怠っておる、あるいはごまかして重大な災害を特に引き起しておる、こういうことが調査の上できわめて明らかな事実がたくさん出ております。そういう場合において、そういう怠った、あるいはごまかして人命をおびただしりく傷つけた、そういう経営者が処罰されたという例がありますか、これを一つ伺いたい。  それから保安監督官が全く怠慢であったというような点から事件が起ったということもございます。何なら、私ここで申し上げてもよろしい事実がある。そういう場合に、そういう保安監督官が、行政上何らかの処分を受けたという例がありますか、これを一つお聞かせ願いたい。
  87. 小岩井康朔

    ○小岩井説明員 従来災害を起しまして、経営者が処罰されたという例は非常に少いのであります。しかし、私の、方で、もちろん送致いたしましたり告発いたしましたりした者はございます。しかし、大災害はどうしても大きい炭鉱に多いのであります。そういう大きい炭鉱に起りました場合には、機構が非常に大きくありまして、責任者は社長、鉱業権者は何々会社になっておりますし、現地の所長は、鉱業代理人になっておりまして、鉱業代理人は、法的には何ら処置を受けられない、実質的な鉱業代理人のやる範囲はきめられてございます。そこで、どうしても坑長あるいは保安管理者、そういった地位の方々が大体送致告発の対象になっておりまして、もちろん処罰を受けた実例もございますし、逆数告発いたした例もかなりございます。しかし、全体の私どもの送致の件数からいいますと、数は割合に少いのではないか、かように考えております。
  88. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今あなたがおっしゃった処罰というのは、経営責任者が処罰になった例を、私は聞いたことがないのであります。おそらくは、その係長というか、その程度のものの処罰のあったことは、私も聞いております。しかし、それではあまりにかわいそうであります。経営者の経営上の立場から怠慢を犯して、重大なそういう事件を引き起しておるのに、一係長であるとか係員がそのために処罰されるという程度でお茶を濁しておるということは、断じて許されるこではありません。それから大臣、御答弁がありませんでしたが、そういう怠慢なるところの行政官、いわゆる保安監督管も行政処分を受けたというか、処罰を受けたということはあまり聞いたことがありませんが、そういう例がありますか。
  89. 小岩井康朔

    ○小岩井説明員 監督官が処罰を受けた例はございません。
  90. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 そういうことで、どうして監督ができますか。それで、監督の完全を期していると言えますか。経営者も処罰にならぬ、保安監督官も、どんな怠慢をしておっても処罰にならぬ。一係長とか一係員がその事件について処罰になるという程度で、一体通産省、あるいは鉱山保安局、あるいはその係の人たちは何をしているのですか。ただそのときだけ何とかお茶を濁しておけば、それでとにかく事足れりとするなら、これは断じて許されません。大臣は、そういう過去の例であるが、そういうことについて、どのようにお考えになりますか、一つ大臣の御信念をお伺いしておきたい。
  91. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私は、今の伊藤委員のっおっしゃることは、ごもっともだと思います。一体係員というものは、上の命令によって動くのでありますから、経営の方針において、少し無理してもやれ、こういうことがあると、十分ボーリングでもやって水の出るところを見るという手数を省くというように、つい怠りがちであると存じますから、そういうことについては、その係員だけでなく、その経営の根本を握っている人たちが責任を負うべきであると存じます。また監督におきましても、監督怠慢のために起った責任というものは、当然あるべきであると思いますから、そういう面につきましては、厳に監督官を処罰するということをやっていかなければならないと存じますので、今までこれがルーズになっておるということなら、この際大いに粛正していきたいと存じております。
  92. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣の非常に強い決意を伺いまして、私は、その点に大いに期待をいたしますが、今後でなくて、現にそういう事実のあるものについても、一つ大臣の任期中に、この事件のほとぼりのさめないうちに、処置をしておいていただきたい。そうすることが、通産大臣あるいは通産本省というものが、人命尊重の見地から、こうした問題に対していかに真剣に行政をやろうとしておるかを、この事実をもって知らすことになると思いますから、これらに対してどのように高碕大臣がおやりになるか、一つお手並みを拝見しますから、そのつもりでやってみて下さい。  まだいろいろこの問題等についてもお尋ねしたいことがたくさんございますけれども、あとで同僚多賀谷委員からもっと突っ込んで議論してくれると思いますから、最後に一点だけ伺っておきたいのは、これは、結局帰することろは、炭田が古くなっておるということに大きな原因があります。それは、災害の統計の上からもきわめて明らかになっておりますが、北海道のように新しい炭田と比べると、特に福岡県の最近事件が続発しております筑豊炭田、そういうところはてんで問題にならぬのであります。もっとも、こういう事件がなぜ炭田の古いところに起るかというと、結局は、鉱区があまりに入り乱れておるからであります。たとえば石炭の層が二つ三つもある。ある上の層は何々鉱業権者が持っておる、その下のは何々鉱業者が持っておる、同じ鉱区の中で、その炭層によって鉱業権の所有者が違うというほど複雑です。いわんや鉱区が、隣同士が非常に入り乱れておる。従って、そういうところから、鉱害の問題も、どの炭鉱によって起った鉱害であるかという認定がなかなかつかないというころで、問題があるわけてありますが、これは本日は時間の関係でどうかと思いますし、明日石油開発の問題と鉄鋼の問題で質問をやるようにしておりますから、そのときに、重要な何点かだけをしぼって申し上げようと思っておりますが、結局、そういう老朽炭田のそのような鉱区の現状から、いかんともすることのできない災害が起ってくるのである。従って、そういう点から、鉱区の整理統合をやることが最も緊急なことである。ということは、石炭をむだにしないで採掘する意味においてと、そういう災害を大きく防止することができるということと、よって起る地上の鉱害の原因の所在を明確にして、その復旧事業が早く責任を持ってやれるということ、こういう意味において、老朽炭田になればなるほど、鉱区の整理統合ということが非常に大きな先決問題であります。私は、先般もこの問題について申し上げたのであるが、それらの点は、まだ取り上げられていないようであります。この問題こそ、国家的見地からやるべききわめて重要な問題であると思うのであります。この点について、高碕通産大臣はどのようにお考えになっておるか、これを一つお聞かせ願いたい。
  93. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私は、実はあまり詳しくありませんが、筑豊炭田につきましては、戦争中生産の方面から考えまして、あの炭田を整理統合しなければならぬというふうなことについて、多少研究したのでございます。それ以来実は遠ざかっておりますが、今のお悦のごとく、炭田が古くなければなるほど、いろいろな問題が起るのでありますから、簡単に言えば、一応あれを休鉱にしてしまっておいて、その人たちはほかへ行って、もっといい所でやってもらうということが一番いいかと思いますけれども、かくすることによって、労働問題とか、あるいは天然の資源がそのまま捨て去られるということになったら困りますから、お説のごとく、これを大きく考えて整理統合をして、いかにしたら危険なくこの天然資源を完全に採掘できるかという方法を、もっと大きな立場から考える必要があると存じまして、ただいまの御意見には、私は全く同感でございます。そういうふうな方向で進みたいと存じております。
  94. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 あとは多賀谷委員にお譲りすることにして、残った問題は、明日あわせてちょっと要点だけお尋ねすることにいたします。私は、この程度にしておきます。
  95. 長谷川四郎

  96. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣にますお尋ねしたいのは、大臣は、先ほど千五月からの統計をお話しになりましたが、実は、昨年の十一月の二十五日に、福岡県の東中鶴炭鉱において、十八名が同じく坑内出水によって死亡いたしました。その遺体の収容がまだできておりません。また大臣が言われました中興江口炭鉱の二十九名も、痛いの収容ができていないわけであります。一体まだ遺体の収容の見通しのないこれらの炭鉱については、どういうようにお考えであるのか。これは人命の問題であり、しかも遺体の収容がまだできていないといううことは、人道上からも許し得ざる問題でありますので、一体その見通しはいつごろなのか、これをお聞かせ願いたい。
  97. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 昨年の十一月から今日まで、十八名という多数の人たちの遺体がまだ収容されていないということは、これは人道上の問題であり、感情というたしましても、まことに嘆かわしいことであります。何をおいても、まず遺体を収容するということは絶対必要だ、こう存ずるわけであります。しかし、これにもおのずから技術的の問題もありましょうし今日までどういうふうになって捨てられておったかということにつきましては、詳細なる報告は私はまだ聞いていないのです。非常に困難であるということだけしか聞いておりませんですから、政府委員からお答えすることにいたします。
  98. 小岩井康朔

    ○小岩井説明員 東中鶴と江口の死体は、いずれもただいまお話しのように、一名も収容されておりません。東中鶴は、昨年の十一月でありまして、もう半年以たっております。私の方の考え方といたしましては、鉱業権者に、やはり建前といたしましては、全責任を持って災害の跡始末をやっていただく。またぜひそうしていただきたいという考え方でおります。ただその線に沿いまして、私の方では万全の努力をいたしたい、かように考えております。東中鶴の場合におきましては、災害後もう二カ月あまりで、経営者は手を上げかかっておったのであります。当方で中に入りまして、親鉱区の大正鉱業の方に、同じ鉱区の中にありますほかの炭層を掘れるように話し合いをつけまして、災害前の半分くらいな出炭を現在いたしております。その出炭によりまして、死体の収容作業を縦けておるような次第でございます。特に東中鶴は、非常に崩壊が激しくありまして、進み方はまさしく遅々といたしております。しかし私の方といたしましては、現地の監督部におきましても、全力を尽して収容は進めさせております。現在ももちろんやめる意思はございません。  江口炭鉱におきましては、ごく最近のことでもありますし、当初非常に排水に困難をいたしましたが、現在かなり鉄ワクの区域に入りまして、相当進展いたしまして、ぼつぼつ死体の遺留品も出かかっておるという報告を受けておりますので、まず数人は、ごく近いうちに収容できでるのではないかという考え方でおります。しかし、いずれも死体が、各所にばらばらに逃げ込んでおりますので、全部の死体が収容されますまでには、相当長期間かかるのではないかというふうに考えております。東中鶴におきましても、今までの進み方ですと、まだまだもう一年以上もかかるのではないかというふうに非常に憂慮しております。江口の方は、ただいまお話しのように、かなり早く出るのではないかというふうに考えておりますが、いずれの場合にも、全力を尽しまして死体の収容作業は継続いたしたい、かように考えております。
  99. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もし死体を収容する資力がなくなった場合は、一体どういうようにお考えですか。これは、抽象的な問題として私はお尋ねいたしたいと思うのですが、鉱業権者の責任であるとはいっても、あげる資力がないといった場合には、一体政府はどういうおつもりですか。
  100. 小岩井康朔

    ○小岩井説明員 先ほどもちょっと触れましたように、災害の跡始末につきましては、鉱業権者に一切責任を持ってもらう、全責任をもって跡始末をつけていただくという考え方でございます。ただその間に、いろいろ問題が出てきました場合には、でき得る限り政府といたしましても、問題の解決に万全主の努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  101. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 全責任を持ってもらう、しかし政府努力する、でき得る限り政府努力するというのは、政府が金を出すという意味ですか。
  102. 小岩井康朔

    ○小岩井説明員 いろいろのケースがあると思いますが、政府が金を出すというところまでは現在考えておりません。
  103. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、これはやはり制度的に考える必要があると思うのです。実は、この前籾井鉱業において、これは施業案を出さないで、採掘をして、四名水没したという例がある。これもなかなか死体があがらなかった。これは、資力がないもんですから、金の貸し手がない。それで、あれよあれよと言ってみるけれども、ポンプはなかなか来ない、そうしてポンプでやっておるけれども、間に合わない、こういううちにだんだん日がたってきたのです。そこで、全責任を持ってやってもらうと言いますけれども、施業案を出さないでやるくらいの業者ですから、これは資力があまりない。そこで、どういう苦肉の策がされたかといいますと、この鉱業権を今度整備事業団が買ったのです。整備事業団の買い上げの対策になった。買い上げの対象というのは、少くとも現在の石炭事情においては、これは採算がとれないとして、買い上げの対象になった。買い上げの対象となった鉱区の一部を、坑口を再開して鉱業権を認めておるのです。それはおかしいじゃないか、いやしくも今事業団が買い上げの対象としておるその鉱区の一部を鉱業権を認めて、そうして、今坑口の開設は簡単でありませんけれども、その抗口開設の許可を与えておる。これはどういう理由かと言いましたところが、実は死体を収容するのに金がない、金がないから、その買い上げの一部を譲って金を融資してもらって、その抗口の開設が許可になったという事件があった。現実は、こういう無理が行われておるのですよ。でありますから、その炭鉱は、水没の問題が起っておる。その鉱区の一部を譲渡したら、その鉱区はどういう危険があるかわからない。それを細糊塗するために、ますます災害を惹起するような方向がとられておるのじゃないか。これは、現地の監督部並びに石炭部では、非常に苦労をなさっている仕事であります。でありますから、私は、あえてその責任を追究しようとしませんけれども、制度ができ上っておりませんからこういうことになるのですね。これに対して、大臣は率直にどういうようにお考えですか。とにかく全責任を持たすというけれども、資力がないから、今申しましたような非常手段をとらなければならぬ。しかしつ危険を包蔵して、初めから危険を招くような手段がとられる、これは、私はゆゆきし問題であると考えるが、大臣、どういうようにお考えですか。
  104. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 一体これは、いろいろな政策上、その炭鉱をやめるという前提で買い上げたというものを採鉱するということは、大いに間違った考えだと思います。従いまして、そういうものを買い上げたときには、それぞれ相当な金がその炭鉱者に入るわけだと思いますから、その金は、まずもってそういう場合であれば、何をおいても優先的に死体の収容とか、そういうようなものに、あるいはそれが余裕があれば、再び災害を起さないように充填をするとかという方向に使うということが至当だと思います。その残ったものを炭鉱の所有者に渡すべきものだ、私はそう考えております。
  105. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 買い上げの申請をした者と、被害を起した責任者とは同じてすか、違うのですか。
  106. 村田恒

    ○村田説明員 籾井の場合におきましては、まだ買い上げの申込みだけでございまして、具体的な契約はまだできておらない。そのあとで、坑口の開設をやっておりますのは、これは一平米以下の小さい坑口でございまして、これは、現在、災害を起しました籾井とは別な人間が、別の坑口を開設したということであります。
  107. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 籾井鉱業の芳の谷の災害の責任者は、だれですか。要するに施業案を出さないでやっておるのですから、鉱業権者ですか、それとも、その責任者というのだれですか。
  108. 村田恒

    ○村田説明員 当然これは、旅業案違反の問題がございますけれども、これは、当然鉱業権者の責任でございます。
  109. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 炭鉱をやっておる、そこで利潤を得ておるのは別の人ですね、鉱業権者じゃありませんね。ですから、鉱業権者の法律違反というのは起るのだけれども、死体の収容をする責任はだれにあるか、こう言っておるわけですよ。鉱業権者が炭鉱をしておるわけじゃない。炭鉱をしておった人は、別の人が暗黙に話し合いをして、別の第三者が炭鉱をして、第三者が利益を得て、そうして第三者が水没をさせた。ですから、そういう場合の死体の収容の責任者はだれですか。
  110. 村田恒

    ○村田説明員 籾井の場合におきましては、現実にその資本を出してやらしておりました者と、それから現実に炭鉱をやっておりました者とは、正式の書面による契約があったかなかったかは別といたしまして、暗黙の問において、自分の手足として、自分の機関としてこれを掘らせておったということは明白であると思います。その場合におきましては、第一次的には御指摘の通り、鉱業権者のものでありますから、そういう暗黙の了解のもとに、一種の斤先のような形で掘らせておる者も、もとの金を出しておる者も、当然責任が追及されるもの、こういうふうに解釈いたします。
  111. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、必ずしも鉱業法における、死体の収容者という場合と、刑事責任の場合とおのすから若干違うのじゃないかと思うのです。しかしそのことは、大臣の時間で制約されておりますから、あとから伺いますが、要は、とにかく水害あるいは坑内出水、落盤、ガス爆発でも同じでありますが、遺体の収容の資力のない場合が十分予想される。そういう場合には、死体の収容ということがきわめて困難だ、応援者がない、この山口県の水没炭鉱でもそういう事件が起ったのです。そこで、何かこの救済策というものを制度的に考える必要があるんじゃないか。緊急の場合ですね、やむを得ざる事態の場合。こういうように考えるのですが、これについて御所見を承わりたい。
  112. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま多賀谷委員のおっしゃったような場合は、私は、今後相当起り得べきものだと想像いたします。実際は国としては、その事態をそういうふうに置いておくことはいかぬ、一日も早くやりたい、こういう気分でおっても、それを持っておった経営者が金がなくなって、逃げてしまった、これは捨てておくか、こういう問題はかなり起ると思いますが、そういうことを防ぐためには、やはり全体の保険のような制度を置くとか、あるいは共同的にそういうふうなものを救済するとかいうふうなことを、一応考えておく必要があると私は存じております。その点につきまして、一応検討いたしたいと思います。
  113. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣の御研究にお願いすることにいたしまして、次の質問をいたします。  次は、先ほど大臣がおっしゃいましたように、昭和二十年の戦災で福岡鉱山局管内の図面がないわけであります。坑内実測図がないので、非常に現地では困っておるわけでありまして、この坑内実測図を整備するようにという決議を衆議院ではしておるわけであります。それは、昨年の十二月二十四日に、本院の商工委員会において、鉱山災害防止に関する件として、その一項目に、旧採掘図の整備を早急に行うこと、そして予算もつけろ、こういうことをいっております。現地の通産局も、その予算を要求しておったわけでありますが、前尾前通産大臣は、これに対して特段の努力をいたします、こういうことを約したにもかかわらず、昭和三十三年度の予算にも一銭も出ていない、こういうことで一体行政が勤まると思いますか。このことは常に言われておる、そして早くから問題になっておる、そしてこのことのために、次から次に災害が起っておる、一体大臣は、どういうふうにお考えですか。
  114. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私は、そういうことが決議されておるにもかかわらず、まだ今日まで履行されていないことははなはだ遺憾でありますが、これは、相当予算を伴うことだと存じまして、まず予算を獲得するということが一番大事だと思っておりますから、そういうふうなことが今日まで進んでいなかったことはまことに残念でありますが、そのいきさつ等につきましては、責任者から一応お答えいたすことにいたします。
  115. 村田恒

    ○村田説明員 当委員会におきまして、御決議いただきまして、そのときすでに予算がある程度固まってきたときでありまして、私どもの方としましては、前年度におきます七十万円の鉱業監督の予算にわずかふやしてもらいまして、百十万円にいたしたわけであります。百十万円の中で、この古洞の調査のために十三万円を充てる。これは、従来なかったものを古洞調査のために特に別に十三万円を大蔵省から取ったわけであります。われわれの要求は二百万円でございました。二百万円の要求をいたしましたが、これに対して与えられたのは十三万円でございました。その後引き続き大蔵省ともやっておりますが、今後におきます予算の場合におきまして、先般の御決議の趣旨も加えまして、極力予算をふやしたい、こう考えております。
  116. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 局長は、坑内監督のっための図面を整備するために十三万円計上した。十三万円で一体できますか、人間だって雇われませんよ、五千円くらいの女の子に事務費その他をつければ女の子一人雇うだけでも十三万円要りますよ。これで古洞の図面の整備ができますか、どうしてやるのですか、私は、こういうじみな仕事を早くやっていただきたいと思う。そうして予算といいましても、これは何億もかかるわけじゃないのですから、一つ大臣の力で、これは一年間でもって整備してもらいたいと思う。一つ大臣、どういうようにお考えですか。三十四年度の予算、あるいは補正予算にも入れてもらいたい。
  117. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ごもっともだと思います。しかし十三万円という金が計上されたということは、当事者としてはどんなに苦心したかと思いまして、われわれも大いに同情するわけであります。その点、そういうふうに行き詰まっておる財政の中で、この問題は重大問題であると考えまして、実際皆さんの御意見を承わるだけでなく、私自身も現地に行ってよく実情を調べて、そうしてできるだけ早い機会にこの予算獲得に努力いたすことにいたします。
  118. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に、今度の坑内出水が起りましたどの炭鉱も、先進ボーリングをしていない。すなわち鉱山保安法においてきめられておる先進ボーリングを全然やっていない。しかも鉱山保安監督部は、出水指定もしていない。水が出そうであるということで、その炭鉱は特に危険であるという推定をしなければならない、その指定をしていない、これは明らかに鉱山保安監督部の責任です。監督行政の責任です。これは、鉱山保安法に違反しておるとかなんとかいうことを新聞に書いておるけれども、違反しておるのはむしろ監督部でしょう。監督部が出水炭鉱の指定をしていないのですから、大丈夫、掘ってもよろしゅうございます、こういうわけで掘らせておる。そうして出水になっておる。こういったことで、一体監督行政が勤まりますか、これを大臣はどういうようにお考えです、お開かせ願いたい。
  119. 小岩井康朔

    ○小岩井説明員 災害を起しました炭鉱か指定がされていないというお言葉でありますが、出水の指定の場合には、もちろん出水のおそれがあるというふうに認定しました場合に指定をいたしておるのであります。たとえて申し上げますと、東中鶴の場合は、これは鉱区外に出ましてぶつかっておるので、鉱区内に入っておる間は出水指定の必要かなかったのであります。もちろん鉱区外進出ということは、私の方では考えておりません。当然鉱業法でとめらるべきものであるという認定のもとに指定がしてなかったのであります。江口の場合におきましては、これは図画か不正確だ、こういうふうにおっしゃられればそれまででありますけれども、旧坑までには百八十メートル前後図面の上ではあったのであります。距離が百八十メートル、これが事実でありますれば、出水の指定はする必要がないということは、技術的にもはっきり申し上げられるのであります。問題は、出水の指定ではなくて、図面の不正確というような点にあるのではないか、かように考えておるわけであります。
  120. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 本添田炭鉱の場合はどれくらいですか、七十メートルでしょう。
  121. 小岩井康朔

    ○小岩井説明員 本添田の場合は、私どもの受けております報告では、上部の方が採掘あとで、水がたまっておりまして、約七十メートル隔てて下方を採掘しておった、こういうふうに報告を受けております。
  122. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、保安監督上の責任はどちらかにあると思うのです。どちらかにあるというのは、第一、五十メートルというのが正しいかどうかに大きな疑問がある。これは、あなたの方で作られたのでしょう。これは法律ではありませんよ。通産省令で作ったのですし五十メートルまでは大丈夫だというが、現実に七十メートルでも水害が起ったじゃないですか。これは正しいのだ、オールマイティであると考えておるところが、少し頭がどうかしておるのです。これは、あなたの方で自由に作ることができる、自由に改正することができる。そして五十メートルまでは大丈夫ですといって、実際には七十メートルで坑内出水が起っておる。それから江口の炭鉱の問題も、百七、八十メートルある、こうおっしゃるわけですが、この問題も、坑内保安図ができていない、あるいは坑内の実測図が完成されていないからそうなのです。これも、単に業者だけの問題じゃないと思う。そして、この炭鉱にはあなたの方でいつ行ったかというと、少くとも昭和三十三年に入ってから一回も行っていない。事件は五月七日に起っておるのに一度も行っていないのです。炭鉱の職場というものは、工場と違って、刻一刻と条件が変ってきておるのですよ。刻一刻条件が変るのに、一年に一回も行かないで、一体監督行政が勤まりますか。さらに私が言いたいのは、今新掘があった、これは盗掘じゃないか、監督部の責任じゃない業者が勝手に鉱区外に出たというけれども、鉱区外に出たということを、現地に行った監督官がすでに現実に知っておるのです。知っておって、連絡不十分で、実はこの問題が起ったのです。監督官がたまたま坑内に入って、そして歩いてみて、これは鉱区外であるということに気がついておるわけです。その連絡が十分できておれば、当然それは停止をされまして、この災害は起っていない、十八名は死んでいない。この十八名の死の責任というものは、私はあえて言うならば、鉱山保安監督員の責任であるといっても過言でないくらい責任が重大なのです。これを鉱山保安監督部の責任でないというのは、一体どういうわけですか。
  123. 小岩井康朔

    ○小岩井説明員 ただいまの監督の経費は、全国の炭鉱を年に一回回るだけいただいておりません。私どもの方では、でき得る限り限られた予算を有効に使いますために、現在坑口の格づけ制度というものを内々作っております。これはブラック・リストでありまして、各監督部長の認定によりまして、たとえばガス爆発の危険のおそれのごく強いものをA、B、Cのランクに分けまして、爆発あるいは坑内出水、それぞれの災害の種目によりまして、坑口の格づけをいたしております。最も危険を内包した坑口を持っておる炭鉱には、もちろん毎月予算の許す限り重点的に方向を向けております。ですから、炭鉱によりましては、もちろん毎月監督官を派遣しておる炭鉱がございます。たまたま江口は、最後は十二月に行きましてから、ちょうど半年近く監督官が行っていないというような状態がありましたけれども、もちろん年に一回も行かれない山があるわけであります。重点施策をとっておる限り、年に一回も行かれない山がございますが、しかし以上の炭鉱で、年に一度も行かぬという山はまず私はないと見ております。もしありましたら、ぜひ御連絡をいただきたいと思っております。今後でき得る限り、予算が限られておりますので、やはりこの重点の方向をとりまして、危ないと認定される山には毎月行く、そのかわり、多少安全性の確保できるような山は省いていく、こういう重点施策はとらざるを得ないのではないか、かように考えております。
  124. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 旧坑道採掘跡の図面も整備されていない、しかも監督予算は、年一回回るだけの予算がついていない、こういうことは、歴代の政府責任であります。私は、人命軽視の端的な現われであると思うのです。年に一回炭鉱を見るだけの監督費が出ていないということを、局長は得々とお話しになりましたけれども、これは通産省全般の責任ですよ。しかも工場は、比較的条件が刻々と変らない、ところが炭鉱の場合は、作業の個所というものは刻々と条件が変っていく、きょうはガスが出ていなくても、あすはまたそのところからガスが発生するといった場合がある。こういった場合において、年一回炭鉱が回れないということでは、一体保安行政が勤まりますか、大臣はどういうふうにお考えですか。
  125. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 その問題につきましては、いろいろ検討いたしたのでありますが、無理をして前回監督官の数をふやしたということと、予算をとれば、今度は旅費予算が出ないというようなことで、とても苦労に苦労を重ねておりまして、ようやくこういうわけでありますが、どういたしましても、人命の問題から論じましても、大炭鉱、中炭鉱については、むしろこれは一年一回でもいいと思いますけれども、小さな危険性の多いものほど、できるだけこの監督というものを厳重にやっていきたい、こう存じまして、できるだけこの予算を獲得することに努力しておりますから、どうかよろしく御支援をお願いいたします。
  126. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは、一つ大臣の政治力にお願いいたしたいと思うわけです。  それからさらに、私は時間もありませんから、根本的な問題に触れてゆきたいと思いますが、それは、鉱業権のものの考え方だと思うのです。鉱業権というのは、何かきわめて私有財産のように考えられておるところに、私は問題があると思うのです。明治五年の鉱山心得とか、あるいは明治六年の日本坑法あたりは、これは、鉱物は国の所有とするとありました。その後旧鉱業法でも、未採掘の鉱物は国の所有とすると明記しております。その思想は、私は変っていないと思う。やはり基本的原理は、鉱物は国民のものだ、国民のために開発され使用されるのだ、こういう考え方は、依然として現在の鉱業法も貫いておると思う。ところがこれが私的の財産、私有財産のように考えられて、自由に売買がきれておる。そうして事鉱区の問題、あるいは地下の問題は全部秘密主義である。ですから、坑内実測につきましても、秘密主義がとられておる。それを公開せよと迫るならば、これは財産権の侵害であるといわれておる。大体地下のことですから、相当正確にやったつもりでも間違いがあるかもしれない。ましてや秘密主義をとるならば、ますます私は不正確になってくると思うのです。ですから、鉱業権というようなものをどういうふうにお考えであるか、もう少し考え方を変えるべきではないだろうか、こう思うのですが、大臣、その点はどういうようにお考えですか。
  127. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 鉱業権というものは、御承知のごとく、国家の所有であるということでありますから、鉱業権を行使いたします場合には、鉱業権については、これを公表すべきものだ、こう存じております。一たんこの鉱業権をとった人の私有になりますれば、私有財産ということも考慮いたしますが、しかしもっと公的の意味からいって、関係業者関係の社から要求のあった場合には、これは通産省としては、その一部分について公開せしめることはできると思っておりますから、そういうふうにいたしたいと思います。しかし、今のお話のごとく、今日の状態といたしましては、お説は傾聴に値すると思いますので、この問題は、一応よく検討いたしたいと存じております。
  128. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 隣の鉱区が正確にわからないで作業をするということは、きわめて危険だと思うのです。隣接鉱区もはっきりしないというようなことでは、私は、今後鉱業を営む面において非常な危険を冒さなければならぬと思う。また地上物権の所有者、家屋とか田畑の所有者も、これはどうも鉱害であると考えましても、いや掘っておらぬというならば、なかなかその立証もむずかしい。これも、やはり私は公開すべきであると思う。工場のように、技術に秘密があるというような場合には、あるいは秘密主義でもいいかもしれません。事坑内の問題は、なるほど私有林産的にはなっておりますけれども、幾ら掘ったかということを正確に報告する義務もあるし、また国も、自分の財産を幾ら掘られているのか、これも知る必要があると思うのです。でありますから、この点は、やはり十分公開をしていかなければ、今後災害というものは撲滅できないと思うのです。それからもう一つ大きな問題は、やはり鉱業権の問題ですが、現在日本には、可採炭量二百億トン以上もあるといわれている。ですから、資源はなるほど貴重であります。一かけらの石炭もむだにすることはできませんけれども、初めから危険であるという個所に採炭をしなければならないと覚悟しなければならないほど、日本石炭資源について乏しくないのです。ですから、私はもう少しこの点について考える必要があるのではないかと思う。ところが、現在こういうように危険を冒してあえて確保しなければならないというのは、結局独占的な鉱山会社がほとんど鉱区の大半を占めておる。でありますから、残った炭鉱は、鉱区を争って買わなければ、操業が続けていかれないというような状態なんです。一方は百年、二百年の鉱区を持っておる。隣は一年しか寿命がないという状態は、幾らも見受けることができるわけであります。でありますから、その鉱区が希少価値を生んでおる。経営者は、その高い鉱業権の代価を償うために、低賃金と労働保安のサボをする、こういうように考えるわけですが、私は、やはりこの問題の根本は、鉱区というものに対する考え方をもう少し政府として考え直さなければならないのじゃないかと思うのです。英国の国有だって、あれは単に社会化の問題じゃありません。結局小さな鉱区が幾つもあると非常に危険である、こういう面から、鉱区を整理しなければならぬというところに公有の問題が起ってきておる。フランスだって、やはり鉱区を一本化したために、災害が少くなっている。ドイツの鉱区だって、ほとんど正方形か矩形ですよ。日本のように錯綜した鉱区というのはない。ですから、休眠鉱区の開放とか、あるいは鉱区の交換分合、こういうことはぜひ必要なことであると思うのです。農地には農地改革ができておるけれども、鉱区には鉱区の改革ができていない。このことは先般日本に参りましたフランスのソフレミンの調査団が明白に言っておる。でありますから、これを行わなければ、日本の炭鉱政策もできませんし、さらに危険の防止もできないと考えるのですが、大臣はどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  129. 村田恒

    ○村田説明員 先般この国会で若干御審議願いました結果、通過をいたしました法律の改正にも関連いたしますので、私からお答え申し上げます。ただいまお話しのように、確かに可採埋蔵炭量といたしまして三十二億トンを持っております。理論埋蔵炭量として二百億トンでございますが、可採炭量としては三十二億トンでございます。これらの膨大な埋蔵炭量を今後どういうふうに合理的に開発していくかというためには、今直ちに企業形態その他の問題に触れることなくして、現在の法律におきましても、先般改正いたしました合理化法の中においてもこれから新しく地域を指定いたしまして総合的な開発を行なっていくという地域に対しましては、従来の鉱業法よりさらに一歩進みまして、通商産業大臣が必要な場合には鉱区の調整を命ずることができる、決定していくことができるというふうに進歩をいたしております。しかも過去におきますいろいろの災害の関係、あるいは鉱害の問題等において非常に問題を起しやすい、相当条件の悪くなっております地域でなくして、新しい地域、すなわち北海道の天北とか石狩とか、あるいは釧路、九州の有名地域、宇部の東洋鉱区、これらの新しい炭田地域にまだまだ有望なる将来の処女地が存在しておるわけであります。それに対しまして、国家の金をもってボーリングを実施いたし、さらに必要な場合には、通商産業大臣が鉱区の調整を行うことができるというように一歩々々進んでおりますので、多賀谷委員のお示しのような理想に次第に近づいていくのではないか、こういうように考えております。
  130. 長谷川四郎

    長谷川委員長 多賀谷君に申し上げます。申し合せの時間が過ぎておりますので、あと一問簡単に御質問願います。
  131. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 問題は、新しい鉱区についてはできるでしょう。しかし、災害の起るのは古い鉱区なのです。古い炭田において起っている。でありますから、私は保安を中心に聞いておるのでありまして、局長の答弁は、今後の開発計画としては十分傾聴に値しますけれども、私は保安を中心として、既成の炭田において鉱区の整理をやらなければ、やはりだめではないかということを申し上げておるわけであります。そういう点についても、率直に言って、大臣は産業人でありますから、今度再びではありますけれども、通産大臣は初めてですから、こういう点も一つ勉強していただきたいと思います。  次に、施業案の認可がきわめてルーズだということです。今度起りました災害は、ほとんど長くて五年です。短かければ一、二年前に施業案の認可をしております。ですから、その施業案の認可をした当時と、あまり条件は変っていないと思うのです。そういう意味において、突然全然違った要素が飛んできたというようなことはない。でありますから、施業案の認可をもう少し厳格にやる必要があるのではないか、こういう点も、法律の改正をお願いいたしたいと思います。  それからもう一つ、鉱山保安法ですが、鉱山保安法のうちで、法律もそうですけれども、施行規則も、やはり十分検討をする必要があるのではないか。先ほど申しましたように、五十メートルなら大丈夫というのに、七十メートルならばやはり出水になるというようなことですから、規則もやはり検討する必要があるし、もう一つは、この鉱山保安規則をながめてみますと、あまりに人間の注意力喚起第一主義です。人間を神様のように扱うている。ですから、こういうことに注意しろ、こういうことに注意しろと書いてある。労働者だって二日酔いのときもありますから、当然、若干労働者の注意力がゆるんでも、あるいは緊張度がゆるんでも、けがのないような職場にしてもらわなければ、全部注意力喚起第一主義では、私は実際の災害は防止できないのではないかと思います。こういった点も一つ大臣は頭に入れて、今度の法律並びに規則の改正をお願いいたしたい、かように考えるわけですから、最後に一つ御答弁願いたいと思います。
  132. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 施業案の許可については、いろいろ今日まで保安の方の人間も入れて、よく検討いたしておりますと申しますが、しかしこの検討の仕方につきましては、さらに十分厳重に行う必要があると思いますことは、委員と全く同感でございます。従いまして、保安法の問題、その施行規則等におきましては、今五十メートルといっておりますが、これは二百メートルにするとか、百七十メートルのものがあったとすれば、二百メートルにするとかというふうなこともよく考慮して、この改正等も十分検討の上、改正いたしたいと存じております。
  133. 長谷川四郎

    長谷川委員長 加藤鐐造君。
  134. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 私は、きわめて短かい時間に要領を得たいと思いますので、御答弁の方も、そのおつもりで、できるだけ明確にお願いしたいと思います。  現在臨時石炭鉱害復旧法の中に「亜炭を含む。」という言葉がございます。これは、その当時この法律ができます際に、岐阜県御嵩地方に非常に鉱害が頻発いたしましたので、特に御嵩地方の鉱害を復旧するために加えられた言葉でございます。ただいま伊藤、多賀谷両委員から、現在北九州地方に残っておりまする、きわめて深刻な鉱害問題について御質問がありましたが、私もこの際、岐阜県御嵩地方に最近さらに深刻の度を加えて頻発いたしております鉱害問題について、御意見を承わりたいと考えるわけでございます。  この法律ができました当時、今申し上げましたように、御嵩地方には、戦争中の乱掘から原因しますところの鉱害が頻発しておりまして、そこで地元の多くの居住者たちも、何とか鉱害を防止してもらいたいという強い要望があって、特に亜炭を含むという事項が加えられたわけでございまするが、ところがその後五年、六年を経過いたしましても、あの地方には復旧事業団ができません。これは、その原因を調べてみますると、簡単にいえば、鉱業権者が誠意がなかったということ、それから地元の町村当局が無関心であったということ、それからさらに加害鉱業権者の所在が多く不明であると称せられておった、事実相当不明であったようでございます。そういう点と、復旧団を作れば、当然地元が負担しなければならない。地元関係者が財政的に、いわゆる力が弱かったというようなところから、相当地元居住民としては強く要望せられたにかかわらず、最近まで放置されたのでございます。ところが最近、一昨年には一挙に八名の生き埋めが生ずる、これは、幸いに生命は失われなかったのでございますが、さらに昨年は十数名の者が、廃坑の内部における出水によって生き埋めになり、ついに生命を失われるという結果が生じまして、重大な社会問題となって、ようやくそれぞれ関係者も、もう放置できないという気持を持つに至ったのでございます。そこで、最近地元の御嵩町を中心といたしまして、相当の熱意を持って復旧団を作りたい。そうして通産省に、できるだけの御支援を願いたいということで、たびたび出向いておるということを私は承知いたしておりまするが、そこで、この問題について通産省はどういう考えを持っておいでになるか、地元の要請にどの程度まで応じようとしておられるかということを、要約して明確に御答弁願いたい。事務当局でけっこうです。
  135. 村田恒

    ○村田説明員 ただいまお示しの通り、最近岐阜県及び愛知県におきまする亜炭の山の鉱害並びに災害の問題について、非常に問題が起って参りました。これを契機といたしまして、通産省としては、特別な調査団を今年の一月に現地に派遣いたしまして、名古屋通産局の局長を団長として全部現地に、中央から本省からも人を派遣して、徹底的な調査をいたしました。その報告書も完成いたしておるわけでございます。それに関連いたしまして、ただいまお話しのように、従来地元の方では、特に鉱業権者の資力が足りないというふうな観点から鉱害復旧の地域指定をいたしますることについて、地元の方もなかなか踏み切っていらっしゃらなかったのでございますが、つい最近、地元の関係者の方もお見えになりまして、ぜひこれは臨鉱法の適用をしていただきたいというお言葉もございまして、われわれの方としては、地元の方がそういった費用負担というものをおやりになる覚悟であるならば、喜んでいつでもこれをいたしましょうということになっております。それで、現在の見通しといたしましては、この八月一日を目標にして、政令を改正して、臨鉱法の地域指定をいたす予定にいたしております。地域指定が行われますと、直ちに発起人会が開かれ、現地に鉱害復旧の事業団が設立される運びとなるというように予想しております。
  136. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 そこで、その内容について、二、三私が疑問に思っておりまする点を伺いたいのですが、まず第一に、この臨鉱法を見ますると、打ち切り賠償をした鉱害については、この法律を適用されない、こういうことになっておると思います。しかし御嵩地方には打ち切り賠償をした、すなわち被害者が非常に弱いために、ほんのわずかな賠償金で片づけられて、やむなく打ち切られておる事件がたくさんあるのです。こういうものは、今回の鉱害復旧の対象とならないのか、もしこれが対象とならないとすれば、相当な問題があとに残るわけですが、その点について伺いたい。
  137. 村田恒

    ○村田説明員 打ち切り補償をいたしましたものにつきましても、鉱害復旧は、事情によりまして可能でございます。ただ問題は、その費用負担がどうか、費用の負担がどうなるかということでございますが、今回のように、地元の方も相当金を出すという建前で新しく復旧事業団を設立しようという機運でございまするから、そういう御心配も、一つ一つのケースに当りまして解決されていく、こう考えております。
  138. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 その点については、いろいろまだ疑問を持つ点があるわけですが、時間の関係で、また後日に譲りますが、さらに加害鉱業権者の不明な場合も、やはりそういうお考えで処理されるか。
  139. 村田恒

    ○村田説明員 これは、石炭の場合も同様でございまして、加害鉱業権者が不明な場合には、国と地方公共団体との費用によってこれを復旧するという建前になっております。
  140. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 それからもう一つの問題は、これは、予防措置並びに災害が起った場合の応急措置の問題ですが、御嵩地方の最近の、特に人命を失うというような重大な災害の場合に、急速に救助処置が行われておらない。それは、要するに設備が足りない、個個の経営者にもこういう設備はないし、協同組合あるいは鉱業会というような団体があっても、そうした処置を講ずる設備は何らないという場合に、そうした機械設備その他の設備があれば助かる人命も、助からないというような実例がしばしばあった、こういうことについては、どういうようにお考えになるか。
  141. 村田恒

    ○村田説明員 特に緊急の場合におきます救護設備、これは、従来仰せの通り現地には非常に不足しております。ほとんどなかったわけであります。今回の七福炭坑の災害を機会といたしまして、現地の鉱業会といたしましても、急速にこれらの機械設備を購入するという申し出を聞いております。また同時に、御嵩の町長さんもお見えになりまして、救急設備の備付というものについてもめどがついたので、今後これを極力活用していく方針であるというようなお話を承わっております。
  142. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 最後に、これは大臣にお答え願いたいのですが、御嵩地方のように、特に鉱業権者が非常に微力である、そうして地元の町村といたしましても、財政的に微力であるというようなところでありますると、今私が申しましたように、せっかく適用を受けられる法律ができておるにかかわらず、そうして一方において災害が頻発して、地元民はその復旧を要望しておるにもかかわらず、五年も六年も放置されておるというような事態が生じたのであります。こういう場合に、私は地元に自発的な意思がなければやむを得ないといって放置するのが、今の法の精神なのです、臨鉱法の建前だと思うのですが、私は、それでは、こうした特に中小炭坑の多いところに災害が頻発いたしましても、地元の良心が、鉱業権者あるいは町村の良心が麻痺しておって無関心であったならば、何らの復旧対策を講ずることはできない、こういうことになるわけです。御嵩地方の例をとってみましても、一昨年は一挙に八名埋没したのでございまするが、幸いにもこれは助かった。そこで一たびは非常な関心を起したのでございまするけれども全員助かったということでほっとして、そのほっとした気持ですっかり忘れてしまった。そうして昨年になって、十数名が一挙にして生命を失うということになって、初めて大問題として騒ぎ出したということですが、私は、こういう事例を考えまするときに、鉱害復旧のような問題、特に戦時中の乱掘がやはり原因になっておりますような問題については、もっと国が積極的に復旧対策を講ずべきだ。場合によっては、強制的に地元関係者にやらせるというような方法もあるでございましょうし、そういう場合には、いわゆる財政的な援助を積極的に国が考えるというようなことも一応考えなければならないと思うわけであります。そういたしますると、法律の改正というようなことも伴うと思いまするが、北九州に頻発しておりまする問題、また御嵩あるいは小牧地方に最近頻発いたしておりまするところのこうした問題を考えまするときに、この法律を改正してでも、もっと積極的に災害復旧をやるべきである、予防対策を講ずべきではないかと考えるのですが、この点について、大臣のお考えを伺いたい。
  143. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 日本全体のエネルギー対策といたしましては、亜炭の占むる地位というものは相当大きなものであります。のみならず、この賦存状態から申しましても、採掘状態から申しましても、これに従事する人は中小の方々が多く、またこの亜炭を利用する人たちも、中小工業者が多いわけでありますから、この問題はよほど深刻に取り上げていきたい、こう存じております。特にただいま承わりますれば、御嵩、小牧等において、北九州に起ったと同じような災害が起っておるということ、これは、一面から非常に重要視すべき点だと存じまして、十分今後ともこの問題を検討いたしまして、御要望に沿うように努力いたしたいと思います。
  144. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 質問はこれでやめまするが、なおこまかい点について、今の御答弁の中にも、多少の疑問を残しておる問題もあると思いまするが、要は私は、すでに幸いにも、重大な多数の犠牲を払ったあとではございまするけれども、地元の町当局、あるいは鉱業権者も熱意を持ってこの問題に対処しておりまするから、通産省としても、ただ法律の精神に従ってということだけでなく、地元の関係各町村にいたしましても、鉱業権者にいたしましても、非常に財政的に貧弱な地区であるということを念頭に置いて、親切に、そうしてできるだけこの際一挙に災害を復旧する、そして将来できるだけこの災害が起らないように防止するということまで含めて考えていただきたい、それを要望いたしまして、質問を終ります。
  145. 長谷川四郎

    長谷川委員長 委員各位に申し上げます。会期末になっておりますので、明日は午前十時定刻より開会をすることにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五分散会