運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-07-01 第29回国会 衆議院 商工委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月一日(火曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君    理事 小平 久雄君 理事 中垣 國男君    理事 中村 幸八君 理事 加藤 鐐造君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       新井 京太君    岡部 得三君       岡本  茂君    加藤 高藏君       木倉和一郎君    坂田 英一君       關谷 勝利君    中井 一夫君       西村 直己君    濱田 正信君       本間 俊一君    松田竹千代君       渡邊 本治君    伊藤卯四郎君       板川 正吾君    今村  等君       内海  清君    大矢 省三君       勝澤 芳雄君    小林 正美君       鈴木  一君    多賀谷真稔君       堂森 芳夫君    永井勝次郎君       水谷長三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       大島 秀一君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁税務局         市町村税課長) 鎌田 要人君         総理府事務官         (自治庁税務局         固定資産税管理         官)      荻原 幸雄君         大蔵事務官         (主計官)   海堀 洋平君         通商産業事務官         (通商局輸出課         長)      鶴我 七蔵君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         通商産業事務官         (繊維局絹毛化 高橋 淑郎君         繊課長)         参  考  人         (福井絹人絹         織物工業組合理         事長)     長谷川 清君         参  考  人         (日本絹人繊織         物工業会副会         長)      茂木 富二君         参  考  人         (桐生輸出織物         協同組合理事         長)      金子友三郎君         参  考  人         (日本綿スフ織         物工業連合会会         長)      藤原楠之助君         参  考  人         (遠州織物工業         協同組合理事) 寺田 忠治君         参  考  人         (日本綿糸布輸         出組合理事長) 鈴木 重光君         参  考  人         (三州織物工業         協同組合理事         長)      おおえ貞治君         参  考  人         (全国繊維産業         労働組合同盟福         井支部書記局         長)      中島 優治君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 六月二十六日  委員吉川兼光辞任につき、その補欠として鈴  木一君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員川野芳滿辞任につき、その補欠として生  田宏一君が議長指名委員に選任された。 七月一日  委員菅野和太郎君、今村等君及び水谷長三郎君  辞任につき、その補欠として松田竹千代君、多  賀谷真稔君及び伊藤卯四郎君が議長指名で委  員に選任された。 同日  委員松田竹千代辞任につき、その補欠として  菅野和太郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 六月二十八日  繊維産業不況打開に関する請願  (西村榮一紹介)(第一二六号)  東北地方開発具体策確立に関する請願飯塚  定輔紹介)(第一三三号)  東北開発促進計画早期作成に関する請願(飯  塚定輔紹介)(第一三四号)  特定地域開発計画事業に対する国庫負担特例  措置に関する請願飯塚定輔紹介)(第一三  五号)  特定地域開発事業促進に関する請願飯塚定輔  君紹介)(第一三六号)  第四次日中貿易協定実施促進に関する請願  (春日一幸紹介)(第一五五号)  同(菅野和太郎紹介)(第一五六号)  同(加藤鐐五郎紹介)(第一七二号)  同(小枝一雄紹介)(第一九七号) 同月三十日  特定地域開発計画事業に対する国庫負担特例  措置に関する請願石山權作君紹介)(第二五  九号)  第四次日中貿易協定実施促進に関する請願  (天野公義紹介)(第二八九号)  部落問題解決のため部落内商工業者技術改良  等に関する請願(田中織之進君紹介)(第二九  〇号)  バナナ輸入行政措置適正化に関する請願(武  知勇記紹介)(第二九一号)  同(長谷川四郎紹介)(第二九九号) の審査を本委員会に付託された。 六月三十日  信用保証協会に対する貸付金増額等に関する  陳情書(第一  二号)  第四次日中貿易協定実施促進に関する陳情書  外二件  (第二八号)  同外三件  (第八六号)  産業公害防止対策強化に関する陳情書  (第三四号)  特定地域総合開発促進に関する陳情書  (第四四号)  四国地区開発促進のため法律制定に関する陳情  書(第四五  号)  米軍占用中の旧第一海軍火薬廠跡総合開発事  業に活用の陳情書  (第五四号)  東南ア諸国との貿易並びに経済協力促進に関す  る陳情書(第  八七号)  経済政策に関する陳情書外一件  (第八八号) を本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  繊維不況対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  繊維不況対策に関する件について調査を進めます。本日は、本件につきまして各業界代表方々労働組合代表の方が参考人として出席されておりますので、まず参考人方々より御意見を承わることといたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多忙中にもかかわらず本委員会に御出席下さいましてまことにありがとう存じます。申すまでもなく、今日の繊維界はきわめて重大な局面に当っており、本委員会といたしましても、特に小委員会を設けて調査に万全を期しておるのでありますが、この際、実地に仕事に携わっておられる方々の御意見を承わるべく、御多忙中お暑い中をわざわざと御出席願った次第であります。何とぞ忌憚のない御意見をお述べ下さいますようお願い申し上げます。ただ、時間の都合もありますので、最初に御意見をお述べいただく時間は、大体お一人十五分程度にしていただきたいと思います。なお、その後委員から質疑がありますが、その際に十分お答え下さいますようお願い申し上げます。  念のために申し添えておきますが、規則の定めるところによりまして、参考人方々が発言なさいます際は委員長の許可が必要でありますし、委員に対して質疑をすることはできないことになっておりまするから、あらかじめお含みおき願いたいと思います。  それではこれより参考人方々に御意見をお述べ願いたいと思います。福井人絹織物工業組合理事長谷川清君にお願い申し上げます。
  3. 長谷川清

    長谷川参考人 ただいま御指名をいただきました長谷川であります。福井県の不況の実況をこの際述べさしていただきたいと存ずるのであります。  御承知の通り、われわれ絹人絹業界は、昨年以来不況に次ぐ不況でありまして、しかも、いまだに前途に光明を見出し得ない状態であるのであります。昨年、次第に下降を続けて参った人絹糸不況は、月とともに悪化をたどりまして、昨年四月末にはすでに二百円の関門を割りまして、日とともに深刻化して参ったのであります。この戦後初めて見る人絹糸在庫の増大といい、あるいは人絹織物在庫の増加といい、非常に莫大なる数に達したのであります。人絹糸のメーカーは増産態勢を整えたが、一方において、最大の仕向地でありますインドネシアの国内事情あるいはその他の政情によりまして、輸出が振わないということが原因をいたしまして、われわれ人絹業界は極度の不況に次ぐ不況をたどってきたのであります。この間、通産省当局の御指示によりまして、関係団体と協力してあらゆる自衛策を講じて参ったのでありますが、深刻な不況に対してはいまだにその効果をてきぱきと発揮できないような事情にあります。ゆえにわれわれは今にして何とか抜本的対策を講じていただきたいと存じまして、日夜この不況打開に努力しておるような次第でありますが、今日の状態ではとうていわれわれの力のみにてはこういう不況打開できない。どうしても政治的に、政治のお力を借らなければならない現況に来ておりますので、ここにつぶさに陳情いたす次第であります。  あらゆる人為策を講じて参ったのでありますが、しかし今日のこの緊迫せる状態におきましては、われわれはもはや倒産あるいは脱落の一歩手前に直面しておるのでありまして、一時も猶予を許さない状態であります。ゆえにわれわれはどうかこの緊迫せる状態を脱却するためには、抜本的な対策一つお願いしたい、こういう工合に存じておりますので、この際われわれの思いついた抜本的対策を御要望申し上げたいと存ずるのであります。  あらゆる繊維総合対策を早急に樹立せられたいのでありますが、しかも積極的な一つ輸出振興対策を講じていただきたい。それには人絹織物一つ賠償物資に取り上げていただきたい。われわれ人絹織物はその原料は全部国内でまかなわれるのでありまして、とうとい外貨を獲得する上におきまして、輸入ドルを使わなくてもいい、ほかの綿織物あるいは毛織物のごとく、原料をとうとい輸入ドルに仰がなくてもよい、外貨の獲得の上におきましては非常な一大貢献をしておる、百パーセント貢献をしておるということを一つお考え下さいまして、この際あらゆる人絹織物賠償物資に優先的に一つ取り上げていただきたい。  さらにまた先ほど申しました原綿原毛のようにとうとい輸入ドルを使う繊維を、どうか内地の方には規制して、輸入の規制を一つはかっていただきまして、今日合繊化繊振興しているこの事態に対処して、国内ではぜひともとうとい輸入ドルを使わない化繊合繊を奨励していただきまして、そうして原毛原綿輸入を制限していただきたいということを考えておる次第であります。  なおあらゆる人為策よりも、これは尋常科の一年生の算術を習った人ならば、わかるはずでありますが、余る織機一つ処理していただきたい。これは現在通産省の御指導でやっておるのでありますが、毎年々々こうやくばり的に五千台、六千台を五年計画でやっておるのでありますが、しかし今日の不況におきましては、残り三年分をぜひとも一ぺんにやっていただいた方が効果が上ると存ずるので、ぜひとも三年分一ぺんにこの際過剰織機処理をやっていただきたい。その場合に疲弊こんぱいしておりますわれわれ業者負担は、とうてい三年分一ぺんにできませんので、どうかこれも国家において御心配していただきたい。こういう工合に虫のいいことを考えておるのでありますが、しかしどうか長期で低利の金を一つお立てかえ、融資の道を講じていただきたいと存ずるのであります。その他価格増額等一つお願いしたいということをつけ加えておきたいのであります。  またこの生糸市価対策でありますが、最近生糸は十九万円から十六万円に暴落したかと思えば、また一夜にして暴騰するという非常な不安定な状態を繰り返しておりますので、今日いたずらに面子にとらわれて、国際価格といって十九万円を堅持するということは、生糸価格だけがほかの繊維に比べまして置いてきぼりになるのじゃないか、実勢に伴わない無理な価格をこの際維持しようというところに無理が生じてきて、置いてきぼりを食うのじゃないか。その証拠に、先般十六万円台のときには非常に活発な引き合いがありまして、活発な織物取引契約をされたような次第でありますので、生糸価格通産省管轄ではなく農林省管轄かもしれませんが、織物通産省管轄になっておると思いますので、これもつけ加えてお願いする次第であります。  以上簡単ですが、かいつまんで要望だけ申し述べまして御参考に供したいと思います。
  4. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に日本絹人繊織物工業会会長茂木富二君にお願いいたします。
  5. 茂木富二

    茂木参考人 御指名をいただきました茂木富二でございます。私は内地向け絹人絹織物不況状況を申し上げるとともに、業界要望につきまして申し述べさせていただきたいと思うのでございます。  内地織物不況はいまだかつてない不況である。実は生産調整をいたしておりますが、その調整の割当以上に産地では生産を十分に調整いたしておりますけれども、なおかつ売れ行き不振のために、問屋あるいは小売屋等に渡りましたものが、返品あるいは値引き等の問題も起るような次第でございまして、ただいま産地におきましては半休あるいは一部には全休のやむなきに至るというような状況になっておる次第でございます。実は大企業でありますと、倒産破産の場合にはこれが大きく取り上げられ、また新聞紙上にも出るのでありますが、絹人絹織物業者中小企業中でもきわめて微細な形態でございまして、倒産破産をいたしましても多くそうした紙上には現われません。自己の力すべてを使い果してなべのつゆが煮つまるごとく、全く織機のみを持ちまして、その原料の購入にも差しつかえるというような状況のものがたくさんにできつつあるのであります。家内工業式なわずかなところはそれによって休業もできますが、勤労者を幾人もかかえておるところではなかなか簡単に半休あるいは全休等はできません。そうしてこの勤労者のことも考え、また既発行手形等やりくり等から非常な苦労をいたしておるというのが現状でございます。  さてこの実情につきましてはまだ深刻な例もありますが、時間がございませんからこの程度にいたしまして要望一つ申し上げたいと思います。まず内地立場にいたしましても、輸出振興ということはきわめて重要なことでありまして、これは糸価の維持の上からもまた輸出が不振なるがゆえに、その輸出機場内地機場が競合するというような心配もありますが、輸出振興策については積極的なる手を打っていただくことを内地立場からも要望いたす次第でございます。  第二には糸価の安定であります。これについては繭の買い上げとかあるいは海外の市場等を御考慮なさって——当局の御苦心のほどはよく私どもお察しはいたしておりますが、現在とられている状態では、業界にとってはまことに困る処置でございます。この生糸糸価の真の安定には、何といっても需要を盛んにすることが第一でありまして、いわゆる適正な価格、他の繊維あるいはその環境等を見合せまして、消費者の買いよい価格に引き下げることを第一と考えております。次には、もしこの価格を維持するならば、生産の大調節をして稀少性価値によって価格を維持するということも考えられるのでございます。さらにまた一大宣伝をしてこの需要を喚起するということも考えられるのであります。この三つのうち、いずれを重点に取り上げるか、あるいはこの三つを併用するか、いずれかの方法なくして、ただ単に一部の糸の買い上げだけで、この需要その他を考えずして糸価の安定はないのではないか、ことに昨年の総生産量である三十一万四千俵のうち、内地消費するのは二十四万一千俵、七六・六%を織物関係で使っております。純内地だけでも六二%を消費しておるのでありまして、この内地織物関係の方を考慮せずして、糸価の安定ということはなかなか困難ではないかということを痛感いたしておるのでございます。どうかこの点にも御考慮をしていただきたい。また大宣伝につきましても、従来多少の業者負担はやっておりまするけれども、今日の状態では業者だけではなかなかできない。そうしてここに生糸一俵に対して一万円の宣伝費を使うならば三十二億円、またさらに繭一貫目について五十円使うならば十五億の宣伝費が出る、これを合せてこの研究費に使い、あるいはこれを宣伝費に使って内外の需要を喚起するならば、これも多少でも役立つのではないか、とにかくこうしたような打つべき手がまだ残されておるようにも考えておるのでございまして、いずれにしても消費を伴うような施策を望んでやまないのでございます。  さて第三には、ただいまお買い上げになる滞貨生糸特別放出を願って、そうして内地織物技術輸出化する。ただいま内地不況にあえいでおりますが、従来の生地関係中心でなく、いわゆる内地織物技術輸出化するということも一つ方法ではないか。この滞貨がますます多くなりますると、将来のガンになる。かっては人絹におきましても一業者がわずか九百万ポンドの思惑をしただけでも市場を圧して百七十円を割って、あの当時の値段を現わしたというごとく、もしこの滞貨生糸が大きな数字になりますると将来のガンになるおそれがありまするので、これをぜひとも生糸で固めるばかりでなく、こうした内地技術輸出一つ役立つような方途を御考慮願いたい。そして研究宣伝に努めるならば、これまた消費の道が開けるではないかと考えておる次第でございます。  さらに第四には、内地織物取引改善を何とか御考慮を願いたい。実は日本絹人繊織物工業会におきましても、三十年から三年余にわたって全国織物産地から手形済度状況調査いたしました。各四大集産地から集まるところの手形をつぶさに調査いたしますると、その当時は百日以上の済度のものが二一%なり二二%程度でありましたが、つい最近には六〇%をこえるというような長い手形が発行されておるような状況でありまして、集産地の金融の困難のしわ寄せが生産地に及ぼしておるというようなことが、すでにそうした数字でも明らかであるのであります。この手形済度の問題もさることながら、この取引不振の結果、値引き返品等の問題が起きまして、某産地のごときはその返品によって再び売るときには半値である、さらに二度これが繰り返されると四分の一になるというような悲惨な状況であるということを、その当該の理事長から報告されておるのでございます。そうした例が幾多あるということにつきまして、どうかこの取引改善についても一つ何らかの御配慮を願いたいと思うのでございます。  次に第五には、商工中金の、これはわれわれの業界にとっては頼みの綱でありまするが、遺憾ながら金利が高い。これをぜひ引き下げてほしいのでありまして、ぜひ安い金利であるところのこの財政投融資等をもっと大増額を願いまして、私ども低利で利用のできますよう、商工中金への御配慮を願いたいと思うのでございます。  第六には、内地織物検査機関に対する助成金を御配慮願いたい。実は、内地におきましても、ただいま生産調整関係もありまして数量検査はいたしておりまするけれども、ぜひとも品質検査に及びたい。これは、品質の向上、技術の進歩をはかり、消費者のためにもいたしたいのでございますが、先ほども申し上げたような不況のために、この検査の励行すらなかなか苦労いたしておりまするので、この検査機関への助成金等を賜われば、まことに仕合せに思う次第でございます。  第七には、税の軽減を願いたいのでありまして、中小企業に対する事業税の撤廃、これはしばしば出ている問題でありまするが、ぜひとも早急にこれをお願いしたい。なお固定資産税軽減、これは地方の税ではありまするが、ただいまのような半休あるいは全休に近い非常なる苦しみをしているときでも、固定資産税だけは相変らず納めねばならない。その納税には非常な苦心をしている折柄でございまするので、どうかこの固定資産税に対する軽減を願いたい。さらに機械耐用命数の問題でございます。機械償却の問題です。織機は現行では二十三年間にこれを償却することになっているのでありますが、あまり長過ぎる、欧米の方では、二年ないし三年で償却をする、そうして償却いたしまして設備の近代化をはかっている、こういう点からいたしましても、この耐用命数をもっと縮めていただきまして、少くも五年ぐらいに詰めていただいて近代化のできますようどうか御配慮を願いたい。  さらにまた第八には、地方税交付金増額方をお願いしたい。農村における霜害、風水害等、そうした場合には直ちに救援の手が伸びるが、われわれ織物産地は目に見えざる大あらしで、ただいま困難に沈淪いたしておる次第であります。この際どうか機場に対しての御配慮を願いたい。いつぞやこの委員会におきまして、加藤先生と思いましたが、この点に触れられたとき、私どもほんとうに涙を流して拝聴をいたしておったような次第でございます。こうした事態にも何とか御考慮をいただきまして、機場の救済のため地方庁の手の十分伸びるような御後援、御援助方をお願い申し上げる次第であります。  さらにまた第九には、過剰織機処理でございますが、先ほど輸出側からも申し出がありましたように、内地におきましてもこの際大量に一挙に買い上げを願いたい。ただいま予定されているところの三万七千台をぜひ早急に御処理をいただきたい。しかしながら、業者負担ということが今日の状態ではなかなか容易でないのであります。できれば何とか国家補償においてこれが御処理が願えればまことに仕合せに存ずる次第でございます。  以上九つの御要望を申し上げた次第でございますが、今回商工委員会でわれわれの実情をお聞き取り下さり、いろいろ御配慮をいただくことにつきましてほんとうに心から感謝をいたしておる次第でございます。ただいま申し上げたことを何とぞお取り上げ下さらんことをひとえにお願いいたしまして、私のお願いを終りたいと思います。
  6. 松田竹千代

    松田(竹)委員 議事進行。この際政府委員かどなたか見えておりますか。この業者陳情について、実情政府担当当局に聞いてもらいたいと思います。
  7. 長谷川四郎

    長谷川委員長 政務次官、担当局長も来ております。  次に、桐生輸出織物協同組合理事長金子友三郎君。
  8. 金子友三郎

    金子参考人 ただいま御指名にあずかりました金子でございます。先日長谷川商工委員長の秘書から電話がございまして、私の方は輸出織物をやっている関係上、輸出織物振興対策について、商工委員会で何か意見があったらば申し述べろという話がございましたので、さっそく桐生産地輸出織物関係業者を集めまして協議いたしまして、大体十ばかりを箇条書に本日まとめて参りましたので、参考までに朗読しながら説明を申し上げます。  繊維不況打開は、まず輸出織物振興にあると思うのであります。私はこれについて意見を述べたいと思います。  中小企業輸出織物昭和三十一年の統計より見て五億三千三百万ドル輸出の総額が二十五億六十三万六千ドル、この二〇%をこえる重要輸出品であります。施策のいかんによりましてはまだまだ大きな伸展をすることは確実であるのであります。しかるにますますジリ貧に落ち込んでいかなければならないということの理由は一言にしていえば、割合中小企業は政治的に保護育成をされておらないということであると私は思うのであります。中小企業施策の不適当が多額の外貨を損をしております。国家的の大きな損害になっております。私はここに輸出不振の要因を分析し、これが対策について桐生織物業者意見を率直に申し上げたいと思います。  一つ輸出織物用原糸に対して特別の措置を講ぜられたい。絹織物はああいう安定法に基いて割合に順調でありますが、ほかの繊維は、輸出織物消費するところの原料糸は対内的に、対外的に考えてみましても非常に高価な原料を買って、しかも織機まで対外的に安く売っておって、それでわれわれの輸出振興しろということは非常に無理ではないかと私は思うのであります。桐生の方の先染めの絹織物はほとんど安定価格がきまっていて、非常に順調でございます。最近十九番の買い上げのワクを非常に縮めた関係上一応暴落をいたしましたが、先ほど長谷川さんがおっしゃいましたが、すぐまた暴騰いたしまして、ほとんど安定線をたどって、ただいま九月から十月までは先染め織物糸は受注されておるという状態でございます。ところが人絹織物先ほど長谷川さんが言った二百五十円からただの百五十円まで惨落いたしまして、ほとんど注文のとれる形がなくなったというようなことであります。輸出織物消費するところの原料糸の量は、原糸の輸出する量の数倍でございます。しかも輸出織物は日本輸出貿易の本質的の姿であって、加工貿易の原則に従って、労働賃金、加工賃等をより多く国内に蓄積して、外貨の獲得に大きな使命を果しております。生産コストの七〇%を占める原料糸に対する安定措置は、ほとんどただいまのところは講じてございません。すなわち輸出織物に充当する原糸は国内価格であって、生糸を除いて原糸輸出価格に比し非常に高価であります。ここに大きな矛盾があると私は思うのであります。さらに原糸は投機の対象となっておりまして、特に絹のごときも非常に大きな清算屋がおりまして、買った、売ったのために、非常に高かったり安かったり、とてもこれではわれわれ業者がこの糸を買って商売するというような段取りにはならないような状態であります。これでは輸出織物の受注、生産計画は絶対に立ちません。常に大きな不安のうちにわれわれは商売をやっておるという形であります。しばしば、これを買うならばすぐ暴落をいたしまして、注文品等はキャンセルを受けるという状態であるのであります。輸出の不振の一大要素となっている現況にかんがみまして、先日人絹会社とわれわれとは私的に——これは公的ではなく業者が集まりまして、安定価格等をつけたのでありますが、生糸のように法的な裏づけがないために、なかなかその安定価格によってわれわれが買付をすることができない状態であるのであります。ぜひともこれらに向って政府は生糸と同様とは申しませんが、大体生糸と同じような工合に安定価格を設定していただきたいということを要望するものであります。  それから生糸の問題に触れますが、これは生糸業者から持ち出された問題でありますが、基準価格が設定されてあるが、これを堅持することは絹織物振興に絶対必要である。政府買上資金の確保、生糸生産計画等の総合対策を打ち立てて万全を期していただきたい。民間諸団体のただいま申し上げましたところの人絹糸等の安定価格は非常に不安定でございまして、しかもわれわれがなかなか信ずることができない。そのためになかなかうまく売買ができないというわけで、どうかこれを制度化していただきたいということを要望するものであります。  二番に輸出商社及び産地相互間、産地の内部の過当競争による安売り防止について、強力なるところの措置を講ぜられたいことをお願いします。輸出不振の要因の一つに過当競争がある。中小企業織物はマス・プロではないために、一品種ごとに少量生産の変物で、註文品であるから、生産調整のみでは、この過当競争の防止は絶対はかれない。特に両毛地方代表的の中小企業織物産地として、常に新規商品の輸出を目標として、適正価格の維持に腐心をしておる次第でありますが、他産地の模倣により、たちまち値くずれを来たして大きな損失を招くことがたまたまあるのであります。一つ輸出商社の乱立による過当競争、安売りが、かえって海外市場輸入制限を非常に激化いたしまして、われわれ業者を非常に悩ましておるという現状であります。さらに市場性のある新規優良商品は全国的の品種別調整を実施いたしまして保護するとともに、適正輸出価格審議会を設けて、安売りを絶対防止し、また販売の窓口を制約する等、生産から販売までの一貫した制度を確立していただきたいということを要望いたします。  第三番目に輸出織物生産者に輸出振興前貸金制度を設けていただきたいということを要望いたします。これは大正九年当時輸出織物をやった方からの提案でありまして、参考までにあげたのでありますが、これは現在はわれわれ業者の貿手金融という施策があるのでありますが、これはほとんどの商社が融通金融という形で貿手をとって金融をし、われわれ業者には手形で払うという二重金融というような形で現在は行われておって、われわれはほとんどLCというものをとって金融をしたことはございません。そのために大正九年に直輸商との売買契約の証憑書類をつけて生産者販売価格の七割を政府機関が前貸しする制度があったそうでございますが、どうかそれ等を復活させて、われわれの金融をはかっていただきたいということを特に要望いたします。  四番は海外の市場調査、新規織物研究補助金制度を確立していただきたい。中小企業織物は新規変物が主体でありまして、絶えず新規織物のサンプルを海外に頒布して、市場開拓を続けていかなければなりません。生産者自体の海外市場調査が緊急必要ではありますが、なかなか中小企業等の実態は資金面で壁にぶつかっておるという状態で、われわれが、今アフリカヘマフラーというものを売っておりますが、マフラーという名称だから多分頭にかぶるのだろう、これがふんどしになるのか、さるまたになるのかわからないというような状況が、われわれ輸出織物業者のめくら貿易実情であります。以上の事項に対して絶対一つ本年は補助金を設けていただきたいということをお願いするものであります。  五番は租税特別措置法を輸出織物業者事業税に及ぼし、大幅に軽減をしていただきたいということであります。ほかに前者の言葉で、税金の問題は省略いたします。  次に六番は、損害保険制度を確立されたい。輸出商社の倒産、契約のキャンセル、クレーム等についてそのしわ寄せが全部輸出織物業者生産者の負うところでありますが、これに対する損害保険制度をぜひ作っていただきたいということをお願いするものであります。  七番は、輸出貨物運賃の軽減をはかっていただきたい。  八番は、輸出織物に使用するところの染料、資材等の特別価格を制定していただきたい。  九番は、輸出織物の海外宣伝を積極的に実施していただきたい。  十番は、輸出褒賞金制度を確立されたいこと。中小企業織物振興のために輸出奨励制度を設けて輸出量に応じて産地組合に褒賞金を交付して、奨励と組合強化の対策について考慮をされたいということでございます。  そのほか前二者から申し上げたのでありますが、繊維不況打開総合対策として、ただいま過剰織機買い上げ問題がありますが、前者がおっしゃった通り、現在の五千台くらいじゃなく、一気に三万台なり四万台の大量の買い上げをぜひともやっていただいて、しかも現在の二万円の政府交付金を五万円程度に引き上げるならば、今業者は相当に弱っておりますが、五万円程度ならば、少くとも二万、三万は楽に供出ができるという状況であると思いますので、ぜひその線に向って政府当局も御考慮願いたいということをお願いいたしまして、簡単でありますが、私の意見を終ります。
  9. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に日本綿スフ織物工業連合会会藤原楠之助君にお願いします。
  10. 藤原楠之助

    ○藤原参考人 私は御紹介をいただきました全国の綿スフ織物の専業者の団体の会長をいたしておる藤原でございます。ただいまからわれわれ業界の概要と、現在の非常に深刻な不況打開のために必要なる対策に対する要望、この点を簡単に申し上げたいと思うのでございます。なお要望事項の具体的な内容につきましては後刻おおえ、寺田の両君から説明があると思いますので、概要について私から申し上げたいと存ずる次第であります。  私どもの機業者全国で一万六千余あるのでございまして、台数は昨年と本年の二カ年、合計約一万五千台の買い上げを行なったのでございまして、そのうちの一万一千台はわれわれ専業者からの買い上げを行なったのでございます。従いまして現在の総台数は三十四万台となっておるのでございまして、大は三千台、小は五台というような非常に格差の多い企業の統合体でございます。そうしてこの設備に先年安定法によって設備の制限令が実施されまして、現在では新増設がストップされておるのでございます。そうしてこれらの設備によって一カ年約四十億ヤードの生産を行なっております。その内容は綿織物とスフ織物とになっておるのでございます。この全生産数量及び総輸出量のいずれも約七〇%以上を、われわれ専業者生産で止めておるというのが現状でございます。  それから価格の面でございますが、これは大体皆さん御承知のように、昨年の引き締め以後、だんだんと業界状態が悪くなって参ったのでございまして、これは世界の景気がだんだん下降してきた、あるいはまた内需につきましても金融の引き締め等によりまして、景気がだんだん下降したために国民の購買力が非常に減退をしてきた、こういうことが原因でございまするが、特に昨年末から赤字の状態が非常にだんだんと多くなってきたのでございまして、それに基きまして昨年末から相当パーセントの生産制限を行なって参ったのでございます。特に今年の四月以降は、もちろん年初からは二割操短をやっておりましたが、四月以降は三割操短の実施をいたしておるのでございまするが、価格はそういうことで、どうもだんだんと安くなって参りましたのでございまして、一昨年の価格の水準を一〇〇といたしますると、本年の五月の現在では糸は九四%程度になり、布が七二%程度に下った、こういう現状でございます。それから一面現在の在庫はどういう状態であるかと申しますと、六月末の在庫でございまするが、綿布におきましては五億二千万ヤードでございます。それからスフの織物は一億九千万ヤードということで、従いまして綿布の適当なる在庫の量はどれくらいが必要であるか、大体正常な在庫量はどのくらいであるかと申しますると、三億七、八千万ヤードでございまして、差し引き綿布におきましては一億五千万ヤードの過剰であるということがいえるのでございまして、一方またスフ織物におきましては適正な在庫の数量は一億四、五千万ヤードであるのでございまして、従いまして現在の在庫から申しまして約五千万ヤードの過剰である、こういうことがはっきりいえると思うのでございます。これに対しまする生産状態といたしましては、今年の四月の生産量は、昨年の八月に比べまして綿布で約五千万ヤード、スフで約一千五百万ヤードの減になっておるのでございまするが、先ほど申し上げましたように需要状態が内外ともに非常に悪化して参りましたために、在庫がさほど減らないというのが現状であるのでございまして、それがために四月より五月、五月より六月というふうに月を追うてだんだんと採算の状態が悪化して参ったのでございまして、これによりまして業者全体としましても相当の減産を行なっておるのにもかかわらず、かような状態であるということで、いろいろ金の工面をやったり、これに対する適当な対策を考えまして操業を続けておるのでございまするが、最近の状態におきましては、この長期の赤字採算の継続によりまして、だんだんと各地におきまして倒産状態が現われて参ったのでございます。しかもその倒産の内容たるや最近までの状態としましては、その負債が、借り入れ先はほとんど商社であって糸代の借金であったものが、だんだんと借り入れ先が地方に移ってきた、というのは、信用状態が非常に悪くなって参りましたために、糸屋の方も糸を売ってくれないというような状態が続きましたために、自然自分の知己だとか、親戚だとか、友人だとかいうような方面から借り入れなければならぬ。しかもその利息は最高二十銭の日歩であるというような高利な金を借り入れることによりまして最後のあがきを続け、そうしてやむなく倒産をする。こういうふうなことになりまするがために、いろいろな社会問題が起ってくる、あるいは妻を帰し、あるいは家を売らなければならぬ。その借り入れ状態先ほど申しましたようにだんだん地方に移ってきたために、やむなくそういうことになって参ったのでございます。大きな社会問題に変ってきたというのが現状であるのでございます。また地方的に申しましても、あるいは静岡県であるとか、あるいは愛知県でるあとか、大阪府であるとか、兵庫県であるとかというような府県の一部の都市、あるいは部落におきましては、その部落あるいは都市のほとんど全部がこの織物に関連したところの仕事をやっておる。青物屋にしましても小間物屋にしましても、みんな織物を目当てにした仕事をやっておる。こういうために、今申し上げましたような深刻な不況であり、倒産者がどんどん現われてくるということによりまして、その部落なりその都市は非常な疲弊困憊に陥っておるというところが、だんだんとふえて参ったと私は思うのであります。かような状況でございまして、最近では業者の一部にはどうもわれわれのこの窮状を打開するためにわれわれも努力するけれども、政府あるいはその他の役所におかれまして、これに対して適当な対策を講じていただかないということであれば、やむなく全面休止をやろう、しかも全面休止によって糸代が払われない、糸代の不払い同盟をやろうじゃないか、こういうことを私、会長に対して決意をせよ、指令をせよ、こういう非常に熱心な要請があるのでございますが、私としましては不払い同盟をするというような指示をすることは適当ではないと考えるのでございまするが、事態先ほど申し上げましたような深刻な状態になってきましたために、これもまたやむを得ないことではないかというような感じに、最近はなって参ったのでございます。こういうふうな非常に深刻な状態打開いたしまするために、しからばどういう手を打っていただきたいか。もちろん先ほど申し上げましたようにわれわれ自体といたしましても、われわれのなし得る限度におきましては、この難局を打開するためにあらゆる努力を払わなければならぬということはもちろんでありまするが、反面また政府におかれましても、これの安定のために適切なる手を打っていただきたい。その内容につきましてはあとのおおえ、寺田両君から具体的に話を願えるかと思いまするが、一口に申しますると一番必要な問題は現在操短の強化ということでございまして、先般来三割封縅のほかにさらに二割の増強をするということを決定したのでございます。その裏づけといたしましては何といっても金融の必要があるのでございまするが、現在の金融機関の貸付のべースから申しますると、せっかく中金の方でかりに何億円というワクを作っていただいても、これに対する適当な担保の裏づけがないということによりまして、この設定したところのワクを十分貸付をしていただくことができない。たとえば先般大阪におきまして、この三月、四月でございましたか、約五億円のワクを決定してもらったにもかかわらず、実際に借り入れた額はわずかに一億円であるのでございまして、これは全く中小企業が担保の裏づけがないということがその原因であるのでございます。そういうことでございますので、できるだけ簡易な方法によりましてお願いできれば政府の補償、国家の補償あるいは府県の損失補償というような考えを特にお願い申し上げまして、たやすく各組合の役員の保証のもとに貸付が行われるように特別の措置をしていただきたい。  それから一番大事な問題は、われわれは安定操業を続けるためにはまず第一に輸出の面におきまする輸出リンク制を改めていただきまして、紡績と同じ立場に立って安心して輸出ができるようにお考えを願いたいということ、それから内地の原糸につきましても、紡績の方には設備に対する原綿の割当があるのでございまして、従って内地綿糸製造の操業につきましても非常に安定された状態である、しかるにわれわれの方は正常な価格による原糸の購入ということが行われておらないのでございます。紡績に対する綿花の割当と同じような意味におきまして、われわれには必要なるところの原糸の割当を、設備に対して行なっていただきたいということでございます。  その次には、先ほども各業界の方の御希望にもございました設備の買い上げでございます。この設備の買い上げにつきましては、われわれの段階では、昨年紡績といろいろ相談をいたしました結果、紡績の方では今年をもって一応設備の買い上げを打ち切ってもらいたいという要請があったのでございます。それといま一つは、価格の点におきまして非常に安いということでございまして、当時政府といろいろ折衝いたしまして、来年打ち切るなら今年の価格は、補助金は若干上げてもいい、こういうような大蔵省の御意見があったというようなことのために、それならば本年の供出をスムーズにやるために、来年は打ち切るということにしてもけっこうだということを申し上げたのでございますが、翻って現在の深刻な不況状態をよく考えてみますのに、その原因は過剰設備である。まず抜本塞源的な方法としては、現在の過剰の設備を買い上げていただくということが一番適当なすっきりした方法であるということで、過般来われわれの方で大会を開きまして、その後それぞれ分科会を作り、小委員会を作りましていろいろ検討した結果、現在の台数は現在の需給状態から考えまして、約六万台過剰であるという結論が出たのでございまして、そのうちの五%程度は一応将来に備えまして保留をするということにして、差引四万台の織機を直ちに買い上げていただきたい。しかしてその価格は、これは考え方によりますと非常にあつかましいかもしれませんけれども、一台約十万円、これは現在の時価といたしましては、織機そのものは八万円か九万円くらいでございますが、それに対しまして大量の買い上げということになりますと、これに対する付属品があるのでございます。あるいは余剰の建物ができてくるというようなことによりまして、大体十万円くらいに買い上げていただきたい、そのうちの五分の一はわれわれ業界負担にする。あとははなはだ恐縮であるが国の方の助成にしていただきたい、こういう要望であるのでございます。  そのほか凍結の問題、織物の現在の在庫先ほど申し上げましたように、綿織物につきましては一億五千万ヤール、スフ織物につきましては五千万ヤールという絶対過剰の在庫がございますので、この在庫の数量をなるべく早い時期に、先ほどもどなたかから御意見がありましたように、外国に対するところの賠償に引き当てていただきたいということ、これはいろいろの事情が国としても政府としてもおありになると思いますけれども、一応現在のこの不況を救う、打開するというのには、この綿織物を賠償に振り向けるということは非常に適当な措置ではないかと考えておるのでございまして、もしもそれがおくれるということであれば、その他の完全なる凍結の方法によりまして過剰のこの綿布を凍結していただきたい、こういうことを特にお願い申し上げたいと思うのでございます。  大体重点的にお願いを申し上げるのはさようなことでございまして、そのほかわれわれの借入金の、短期借入金を長期化するというような問題、あるいは税金の問題、いわゆる遊休設備に対する固定資産税の免除とか、そういうような問題もたくさんあるのでございますが、これらの具体的な問題につきましては、あとから両君より御説明があると思うのでございます。私から業界の概要につきまして以上申し上げ、さらにこれに対する対策につきまして心から要望を申し上げる次第であります。長時間ありがとうございました。
  11. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に日本綿糸布輸組合理事長鈴木重光君に願います。
  12. 鈴木重光

    鈴木参考人 私ただいま御指名にあずかりました鈴木でございます。私は貿易業者立場からお願いなり御説明を申し上げたいと思います。  貿易業者といたしまして、いろいろ陳情説明等は過去数年にわたりまして、あらゆる機会に皆様にもお願いし、政府御当局にも嘆願して参ったのでありまして、終戦後GHQの指示によってあらゆる産業が相当保護政策的手段が講じられた中で、いわゆる財界の孤児、商社だけは放擲されているとまでいわれたのでありますが、それでもどうやら雑草のごとく生き延びて参りまして、今日ではともかく輸出入七十億ドルの目標を達成するための一つの機関として存在するところまでは参ったのでございまするが、どうもまだ商社活動というものは戦前に比べてはなはだ不満足である。あるいはお前たちは何をしておるか、いたずらに競争をのみ繰り返しておるではないかと、いろいろ批判がございまして、はなはだ申しわけない次第でございまするが、ただいまこのお席を拝借しまして皆様にお願いしますことは貿易振興のための、つまり輸出振興のための手段といたしましての輸出金融の緩和、金利の引き下げ、あるいは業者の協定ができるように輸出取引法を改正していただきたいとか、あるいは海外の調査機関あるいは経済外交を十分に展開していただきたいとか、いろいろございまするが、これはすでに皆様は耳にタコがおできになるほどお聞きになっていると存じますので、今日は持ち時間もはなはだ短かいことでありまするので、ほんとうに重点的にただいまわれわれが最も痛感しておることだけ申し上げたいと思います。  貿易を伸ばし、買手にも安心して買ってもらうためには、何といたしましても秩序ある商売、いわゆるオーダリー・ビジネスが最も要求されるわけであります。ただいまあらゆる日本の工業が操短というふうな線に追い込まれておるという実情の間にあって、商社だけは操短がないじゃないか、お前たちはけっこうなことだな、お前たちの天下だなといって冷かされるのでありますが、どういたしましてすでに操短はやっておるわけであります。と申しますのは、ただいま申し上げたオーダリー・ビジネスをやりまするために、皆様御承知の対米の輸出規制、繊維で申しますと綿布あるいは二次製品のブラウスとか、御承知のああいうものに至りますまで割当制をしきまして、りっぱに操短をしておるわけでございます。あるいはヨーロッパの各地あるいは最近では豪州、シンガポール、香港、バンコック等々に対する綿布あるいはスフ織物等のPQS、パーセンテージ・クォーター・システム、これは弾力性を持たせた割当制でございますが、そういうことをやっております。これはりっぱな操業短縮です。自由自在に幾らでもやるというわけにいかないのでございますが、その結果おかげをもちまして、どうやら商社はその商品に関する限り、今日では一脈の活路を見出したと申しまするか、明るさを感じておる次第でございます。と申しまするのは、今までは血みどろの競争をいたしまして一分の口銭もない、場合によっては赤字でも商売をするということを繰り返しておったのでありますが、ただいま申し上げました商品のそれらの地域に関する限りは一分なり、二分なりの口銭をもらえる、そこで製造家の方々はどうかと申しますると、商社ですらそれだけ口銭をいただけるのでありますので、売値はもとよりLCをメーカーに明示いたしますわけで、売値を隠すわけにもいきませんので、もちろん商社がメーカーを振り回すというものではございません。メーカーの方々も血みどろの競争が減りまして、従来に比べまして相当の利潤を得て、これらの商品を製造なさっておる実情でございます。ところが先ほど桐生金子さんがおっしゃいましたように、商品によりましてはそういう秩序ある商売がしたいと思いながらもなかなかその運びに至らない。例にあげられました絹織物あるいは人絹織物等の特殊のもの、柄のある特殊品、こういうものは通産省繊維局で非常に御研究、御心配いただいておりますけれども、なかなか割当が困難だといいまするのは、この取扱い業者が非常にこまかく分れておりまして、窓口を制限しろということでございましたが、まことにけっこうでありますが、ただいまの日本の憲法下におきましては簡単に制限ができない、相当の大手筋に分れて集中しておる分量の、ボリュームのパーセンテージの多い商品はよかったのでありますが、悲しいかな桐生の製品のような品種の物は、いわゆる神戸筋あるいは横浜筋もありましょうが、そういうふうな小さな外人、その他にばらばらに分れまして数千軒の商社が輸出をやっておる。こういうものをどう割り当てるか、はなはだ困難性がございまして、中小商社の保護といいますと、言葉ははなはだ美しいのでありますが、実際面に当りますと、実現性がなかなか見出しにくいのでございます。そこでやむを得ずこういうものはあと回しになっている現状でございます。オーダーリー・ビジネスの行われておりますものは、この席上ではいささかはずれまするが、アメリカ向きのマグロであるとか、やれサケであるとか、いろいろのものが割当性その他をやりまして、りっぱに向うの買い手にも安心してもらえ、こちらも相当の利潤を上げつつありまして、たいへん喜んでいるのでありますが、これは一種の半統制経済と申しますか、自由経済ではないのでございまするけれども、世界が、以前のアウタルキー経済でもございませんけれども、それぞれの国々が個別にトレード・バランスを合せていくという、今の世界の情勢に適合するためにはやむを得ざる措置でありまして、しかもその結果は大へんよいのであります。そこで、それならそれでやっていけば商社もよいではないか、税金の軽減等も考えてやろう、大いにもうけろということでございましょうけれども、悲しいかなほんとうに競争するのは商社でなく、ここに列席のメーカーの方々でございます。商社というものは、口銭一分か二分の範囲内での競争でございますが、メーカーは赤字を覚悟なされば、極端に切り下げれば一割、二割、三割でも切り下げ得る、これは将来のためにやっておこう、商品売り込みのためだと思えばよいわけであります。ところがメーカーの競争はどういうところからくるかと申しますと、やはり供給過剰というものが一番ものを言っておると存ずるのでございます。ただいま皆様がお述べになりましたように、たとえば綿織機であるならば、綿スフ織物工業会の皆様の織機が六万台余るというお話でございますが、紡績の保有織機をあわせますともっと余るようであります。これらのものが自由奔放に生産に従事したならば、絶対に供給過剰になりまして、いわゆる余るものに相場なし、でたらめの安値が現出するのでございます。  そこで皆さんのちょうちんを持つようでありますが、適当の措置をとり、製品の買い上げ、凍結も要りましょうし、これは目先のレメディといたしてでございますが、根本策といたしましては、設備の制限、余るものは買い上げていただく、あるいは今後の設備に対しての設備制限を完全にする。これは政府御当局におかれまして全体をバランスのとれた線に持っていく、たとえば綿スフ工連の織機は押える、あるいは買い上げをするが、合成繊維織機は大いに作れ、これではいけません。これは融通性があるのでございます。綿の織機でスフが織れると同じように、合成繊維織機あるいは毛の織機で混紡の糸が織れます。合成繊維は助成すべき産業でございましょうから、これの一連の産業であるところのその織布は大いに助成すべきでありましょうけれども、片方で綿織機を、こういうふうな大へん大事な国帑を犠牲にし、あるいは皆様自身が犠牲を払いながら、片方でこれをむやみにふやせば全体としてはやはりオーバーになります。こういうことをよく把握して押えていただくということが絶対に必要だと思うのでございます。同時にこれは織布業者の皆様にお願いしたいのでございますが、お歴々はそんなことはなさいますまいが、中には無籍織機というものがたくさんあるのでございます。その上に籍があるものですら無標のものをお作りになる、検査のない綿スフのごときものが出てくるというふうなのが実情でありますので、これはそういうことが絶対にないように、それぞれのサークルの中で自粛なさることが絶対に必要であろうかと思うのでございます。無籍の織機を作る、あるいは籍のあるなしにかかわらず、その織機の無検査のものを夜の夜中に運び出す、買うわれわれも悪いのであります。われわれも大いに戒めなければならないのでございますが、そういうことで国家の方針を裏から破るというようなことのないようにお願いをいたします。そういうふうなことを規制して国として乗り出すというふうにいきますならば相当の成果が期待し得る。ただいま国民をあげて貿易ノイローゼにかかっておると思うのでございます。輸出がふるわぬそうだ、どうなるだろうと、そんなに御心配になるほど貿易は今減ってはおりません。多少は減っておりますが、そう御心配になることは要りませんが、しかし国家十年、百年の計のためには、今皆様方を初めいろいろな手を打つことをお互いに研究し、善処しなければならぬことは事実でありますから、こういうふうな御会合もお開きいただきたいと存じますが、むやみにノイローゼにかかってしまう必要はございません。大体輸出は昨年程度はいくと思います。数量において昨年よりちょっと伸びるかと思いますが、悲しいかな世界的に値段が下っておりますので、二十八億何千万ドルというところはあやしいのではないかと推定されますが、それで国が滅びてしまうわけでもありませんし、こういう不況のときに国家百年の計を立てる——いいときはお互いのぼせておりますので、なかなかこういう会合も開かれません。神武景気のときはこういう会合はなかったと思います。この際非常にいい機会だと思いますので、お互い内省をして、立て直すということをしていきたいと存ずるのでございます。  そこで肝心の商社の所見について言わぬじゃないかということでありますが、先ほど申し上げましたように、長年にわたってお願いしておる件がございます。これは通産大臣なり大蔵大臣なりあるいは企画庁長官なりに、各組合等の名におきまして、理事長名をもちまして嘆願書を常々出しておる。われわれ日本銀行総裁に出したこともございます。いろいろございますが、これらが着々と実現しておれば問題ないのでありますが、なかなかそうもいかぬということでありますので、立法府におかれましても、どうかそういう点をお心にとどめられまして、よろしくお願いしたいのであります。  それから蛇足かもしれませんが、設備を減らすと労働者が失業するぞ、こういうふうな懸念を抱かれる方があるかもしれませんが、これは簡単なことでございまして、輸出、内需を合計して百しか要らないものに百二十の設備を持っておる、それでぐずぐずして百十くらいのものを作る。その十が災いをして全体の産業が瀕死の状態に陥って、工場閉鎖あるいは倒産——今も藤原さんがわれわれ商社に金を払ってやらぬとおっしゃいましたが、そうなりますとわれわれは不売同盟を結成しなければならぬことになりますが、そうすると国家の産業がつぶれてしまう。全体がつぶれます。そういうばかなことはいけませんので、やはり百しか要らないものは百の設備をする、あるいは設備に余裕あるものはレザーブすることもありましょう。人間だけでなく設備の予備軍も要りますので、その線までスクラップにしてしまうということはいけません。ある程度の封緘によるレザーブも要りますが、そうすると、どちらにしても失業者がどんどん出るというおしかりを受けるかもしれませんが、金も払わぬ、糸も売らぬぞというようなことで、共倒れになってお互いに餓死するような状態に追い込むよりは、十のあるいは二十の労働者は一応他の生活の面を考えるということで、百の労働者を温存する。われわれも一種の労働者でありますが、やはり百でいく。国が今あちらを向いてもこちらを向いても百しか売れないときに、どうしても百十作る、おれはこの職場を去らないのだ、こういうことは間違っておると私は存ずるのでありますが、そこは良識を備えた皆様方におかれまして、よろしく御判断願いたいと存ずる次第でございます。  なお最近中共のものが非常に出てくるそうでございます。きょうは商社は一人しかおりませんので、私からいろいろ申し上げますが、中共貿易は即座に開けることは何よりけっこうでございますが、なかなか国と国との話はいろいろな政府的関係もございましょうし、われわれ商売人の考えだけで簡単にこれを割り切るわけにいきませんので、静かに再開の日を待っておる次第でございますが、もとより日本全体の貿易の九%前後でありますので、今あれがなければ貿易がつぶれてしまうというものではないのであります。貿易はできるのであります。だから静かにしんぼうしておるという状態であります。  それでは中共貿易はそれでいいのだが、中共品が東南アその他でだいぶあばれておる、こういうお話が出ているそうであります。これは実は困るのであります。たとえば綿布は昨年から、もうちょっと前からでありますが、二億数千万ヤード、これを五億ヤードくらいに持っていこう、ああいう国体でありますので出そうと思えば幾らでも出せるでありましょう。幾らでも安売りはできましょう。これははなはだ厄介でございます。世界の綿布を見てみますと、綿布の貿易量が昨年は六十億ヤードということは皆さん御承知の通りでありますが、これに対して五億、今は二億で、数億出てくる。しかもそれが香港、シンガポール、インドネシア等の市場へ集中して出てくる。これははなはだ厄介であります。たとえばこれは綿布ではありませんが、板ガラスは、日本が四ドルで売っているものを、その七掛の二ドル八十セントくらいで売り出しておる。これは中共のレベルでもりっぱに間に合うわけであります。はなはだやっかいでありますが、事自転車くらいになりますとそうはいきません。向うの自転車は一月くらい乗ったらつぶれてしまうそうでありますが、これはそう言って安心しておるわけにいかぬのであります。綿布はそう高級品はできやせぬだろう。合成繊維はできやせぬだろう、今はそうでありますが、非常な急ピッチをもって向上しつつある向うの産業は、そんなのんきなことは言っておれぬということで、貿易業者あるいは生産業者は大いにふんどしを締めていかなければならぬというふうに考えておる次第でございます。皆様におかれましても、この点も十分御記憶いただきまして、日本が世界の貿易競争場裏から敗退するということがございませんよう、よろしく御指導なり御援助をいただきたいと存ずる次第でございます。  はなはだ蕪雑な話でございましたが、以上をもちまして私の陳述を終ります。
  13. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に遠州織物工業協同組合理事寺田忠治君。
  14. 寺田忠治

    ○寺田参考人 重複することを避けまして、簡単にお願いしたいことを申し上げたい、かように考えます。  日本の輸出額がおおむね三十一億五千万ドルということを言われております。昨年度におきまして繊維製品が輸出されましたのが十億一千五百余万ドルでございます。おおむね全輸出額の三分の一を繊維製品が占めているというわけでございます。そこで先ほど絹人絹の方からお話しがございましたが、原綿は外国に仰いでいる、であるからこれを減らしたらどうかというようなお話もいただいたわけでございますが、原綿をいただいている金額は千五百八十六億円でございます。私どもが織っております純綿製品というものは、日本の全部の需要を満たしまして、なおかつその上に輸出しておりますのが千六百億円でございます。それでございますので、はなはだ失礼な申し上げ方かもしれませんが、私どもはアメリカから綿を買いまして、それで日本の国内消費を全部満たしまして、そして輸出をいたしましたその差額が、なお十四億円利益を得ているということになるのでございます。先ほどどもの会長が申し上げましたように、その中の三分の二が私ども中小企業者の手にかかったものでございます。そこでもって先ほど来会長が申し上げましたように、非常な不況に立っておるわけでございます。今までどうしてそんな不況になるまでほったらかしておいたのだ、君たちは何をしておったのだというふうに諸先生方はお考えになる、かように考えますが、私どもはいやしくも国家の中堅をもってみずから任じておるといううぬぼれがございました。それでありますので、とにかくできる限りしんぼうをいたしまして、そしてもうどうにもならないという折になりましたので、現在お願いに上った次第でございます。  そこで先ほど輸出組合の方からもお話しいただいたわけでございますが、インドネシアが昨年輸入しました綿布は、中共から輸入しましたのは一億八百万ヤードというふうに記憶しております。日本から行きましたのは九千五百万ヤードでございまして、日本は中共に百三十万ヤード負けてしもうたわけでございます。これは何がゆえにそういうことになっているか。私はいわゆる原糸が高いからだということを言い得ると思います。私どもがこういうことに非常に悲惨な気持になりましたことにつきまして、繊維局へも常々お願いいたしまして、今の紡績会社は大へん恵まれている。何となれば原料をアメリカから買うのにつきましてドルを特別割当をしていただいている。それによって安い綿花を買い得る。そうしてしかもそれを販売なさいますには、自由な価格でもって販売しております。それを私どもが営々としてつぶさに加工をいたしまして輸出に向けるのでございますので、商社からはたたかれ、常に紡績からは高い糸をつかまされるというようなことから、輸出に出しましても値段が見合わないということは自明の理でございます。そこで私どもは何とか原綿を私どもにもお願いいたしたいということをいろいろいたしたのでございますが、もともとこの原綿の割当は輸出の報奨の意味のものと紡績の基礎割当というものの二つに分れているわけでございます。そこで輸出のリンクにつきましては大体——あるいは多少違うかもわかりませんが、昨年度六十三万コリ出ているというふうに記憶しております。基礎割当につきましては百一万四千何がし俵というものが出ているというふうに考えております。そこで線糸あるいは原綿からの加工におきまして、紡績が綿から糸にするまでの工程と綿糸から私どもが綿布にするまでの工程、これにおきましておおむね一俵一万円ないし一万二、三千円のものは要するでございましょうが、綿糸を作る工賃と綿布を作る工賃とは毫も違わないわけでございます。そこで綿糸は、われわれが自由に買いますので、現在の価格はおおむね二割くらい高くなっているというふうに考えられますが、そのいわゆる適正価格で私どもに基礎割当をなすっていただいたならば、必ずや今の中共の輸出に対しましても別にそう大して恐れる必要はないじゃないだろうか、かように考えるわけであります。国内におきましてはいろいろ需要の減退等もあるわけでございますが、そういったことを言い得る、かように考えます。そこで私がお願いしたいことは、輸出のありましたものにつきます紡績の報奨リンク、この紡績に出しております高の半分をお願いしたならばどうだろうか。なお紡績におきましては、先ほど申しました紡機への基礎割当がございますので、少くとも同じ率だけを私どもがいただいたならばいいではないだろうか、これが公平な行き方ではないだろうか。ことに御承知のように中小企業者は全国に一万七千数百ございまして、まことに統制のとりにくい団体でございます。紡績会社は百七十数社ということを承わっておりますが、これは一応綿花の割当協定に違背したものがあれば綿花の割当をとめるぞよということを一言言ったならば、すべて協定に従うことができるのでございます。ところが私ども中小企業者におきましては、はなはだ遺憾でございますが、先ほど会長が申し上げました通り、三割の操短をせいということを言って、日夜その幹部になっている者は地区々々におきましてお正互いに見回り合っておりましても、なおなかなか違反が出るというような始末でございます。これを私どもにいただくことができましたならば、すべての私どもの協定、こういったことも守り得る最大の武器になり得る、かように考えるわけでございます。今まさに倒れんとする私どもでございます。どうか輸出に対する報奨と、私ども織機に対する基礎割当、この二つを何とか皆様のお力によりまして私どもにいただくことができ得ますようにお願いいたしたい、かように考えるわけでございます。ところが第二の基礎割当の原綿をいただくということにつきましては、なかなかこれはでき得ないことだろう、かように考えます。それでございますので、基礎割当に対しましては、綿糸を最低価格で基礎割当をしていただいたならどうだろうか、こういうことなのです。ところがそれもでき得なかったならば綿工連で一括購入をいたしまして、おのおの機屋に配分するというようなことも考え得られるわけでございます。これにもなおいろいろ措置のために工合の悪いといった点がございましたならば、綿工連からチケットを配給さしていただきまして、そのチケットを紡績へ持っていったならば最低価格の綿糸が手に入れ得るというようなことになすっていただきたい、かように考えるわけでございます。こういうようにしてどうぞ私ども中小企業者を——今申し上げましたように繊維輸出の大半は私どもが握っているわけでございます。そして今まさに倒れんとしているところでございます。倒れてしまったならば日本の国の貿易上、産業上あるいは国家の形成上まことに遺憾になるというふうに考えられますので、今のうちに何とかお助けなすっていただきたい、かように考えるわけであります。終ります。
  15. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に三州織物工業協同組合理事長おおえ貞治君に願います。
  16. おおえ貞治

    ○おおえ参考人 ただいま御紹介をいただきましたおおえでございます。先ほど会長からわれわれの綿スフ織物業界の苦境についていろいろお話がございまして、またそれに対する対策のお話がございましたが、私は特にただいまから、現在私たちがこの不況を克服するためにわれわれ自身においてどうしてもしなければならないという問題、それはいわゆる操短の強化と、それに伴う操短融資の問題が目下の焦眉の問題でございまして、この操短融資の問題が実現しなければ、われわれの業界はまさに倒産をするという事態になっておりますので、この操短融資の問題について皆様方に特にお願いを申し上げたいと思うのでございます。  私たちの綿スフ業界は、スフの織物で約九割、綿織物で七割を織っておるきわめて重要な産業であることは皆様方御承知の通りでございます。昨年の秋以来、輸出の不振並びに金融の圧迫と申しますか、その他いろいろな事情によって、われわれの綿スフ織物業界がいわゆる神武以来の不景気というような段階に実は入って参りまして、われわれの業界は昨年の暮れにこの不況を克服するために、三割の操短を実は決議したわけでございます。そうして今年の一月以来三割の操短を全国にわたって実施して参りまして、大体私たちの予想では、この四月ごろから立ち直るのではないかという考え方で操短に入ってきたわけでございますが、その間私たちがこうむって参りましたる損害を、生地の織物について各地の採算をとって参りますると、一月から三月までにわたりまして、大体四十四インチの織機一台当りに対して月に三千三百円くらいの赤字が出ているのでございます。それから四月からこの六月までにかけまして、特にこの四月、五月に至りましては一台当り四千円から四千百円くらいの赤字になって、この六カ月間というものは、一台当り平均三千五、六百円の赤字の連続になっておりまして、この金は、先ほど会長からもお話がありました通り、各方面からのいわゆる借り入れ、あるいはその返済の延期であるとか、あるいは在庫品の処分、あるいは支払いの停止というようなことによって、今日までやって参ったのでありますが、いよいよ最後のどたんばに実は入ったわけでございます。そこでわれわれは、この七月以降五割の操短を実施いたしまして、これに要する資金として一台当り一カ月四千円、十月までやりますので、この期間の緊急裏づけ資金として一台当り一万六千円の計算を出して、七月から十月まで自主的に操短を強化することにして、ただいま商工中金並びに公庫に対して運動をしておるわけでございます。半面において、政府並びに皆様方に御要望申し上げて、輸出の増進、賠償の問題、あるいは凍結であるとか、いろいろな手を打っていただく。この間、先ほど会長からもお話がありまりしたが、この不況に直面して、われわれ業者の中に、もはやこの段階に至っては不払いをしなければいかぬ、一切休業をして不払いをやってもらいたいという声もあるのでございますが、われわれ組合の幹部といたしましては、まずその前にわれわれの打つべき手を打って、資金の面、あらゆる面について努力をしてみて、しかもそれがどうしてもいけないという段階においてそういうことは行うべきである、今の段階においてはまだ努力が足らぬ、各方面に早急に働きかけようという考え方で、操短資金の問題につきまして全国的に立ち上っておるわけであります。そうして今の段階におきましては、われわれ個人の資産というものは非常に減って参っております。それがために個人々々が金融することは非常に困難になっておりますので、全国の協同組合が共同で借りて、それを転貸する、いわゆる組合融資という方面に踏み切って交渉しております関係上、金融機関、特に中小企業金融公庫、あるいは商工中金等におきまして、われわれの考え方を非常に多とされ、この融資の問題については好意的な応援をいただいております。それで、努力いかんによっては、やや実現ができることになっております。お手元にあると思いますが、大体われわれ綿スフ業界が今日五割操短を強行して、この危機を突破するに必要な最小限度のお金は三十七億七千万円という数字が出ておるのでございます。これは先ほど申し上げました一月以来の赤字を最近の四月、五月まで累積した数字でございまして、この数字についてはある程度の了解を得ているのでございますが、金融御当局に参ってお話を承わりますと、綿織物業界というものは一地方の産業ではない、一つの県としての大産業でもあるし、日本全体の産業でもあるのだからして、ただ単に金融機関だけに依存をするという考え方でなしに、政府の方面や県庁の各方面にもやはりその必要性を説いて応援してもらえ、そういう態度も必要だ、われわれ金融機関だけにたよって解決するという態度はどうも困るから、政府方面にもよくお話し申し上げて、自分たちの努力もすると同時に、政府の方からも適切な手を打ってもらうような措置もやってもらいたい、そしてわれわれもこれに応じて金融しよう、こういう段階に実はなっておるわけでございます。その意味におきまして、本日私が皆様方に特にお願いいたしますことは、われわれの今度踏み切りました組合で共同一括してやるという熱意に対して、金融方面は非常に好意的な考えを寄せておられるのでありますから、ぜひとも皆さんのお力によって、われわれが要求しております三十七億七千万円のこの危機突破資金に一押ししていただきたいということであります。そうすれば、われわれはこの十月までに、その資金をもちまして完全なる操短を強化するとともに、政府また皆様方にお願いをいたしましていろいろな手を打っていただいてこの困難な時局を乗り切りたい、かように存じておるわけであります。大体われわれがお話申し上げているのは一年の据え置きで、あと二年払いということになっております。私たちの希望するところは、公庫の資金によらず、政府の資金運用部資金と申しますか、比較的低利の長期資金を出していただくことであります。今われわれは、中小企業金融公庫の金と商工中金の金を両用するような形になっておりますが、要望といたしましては、資金運用部の低利長期の資金を出していただくことであります。その意味におきまして、この危機に直面しておりますわれわれ業界が立ち直る立ち直らないは、まずこの金の問題の解決で、これが最も重要な問題でございます。いろいろな問題がございますが、この金に見捨てられますとわれわれ業界は総倒れになり、その及ぼす影響は甚大な結果になろうと思いますので、われわれも全力をあげてこの金融の実現に努力をしております。どうか皆様方、この点について十分御理解と御援助を賜わりまして、ぜひとも今月の半ばごろまでにその金が流れますよう格別の御高配をお願いいたしたい、かように存ずるわけであります。  それからもう一つお願い申し上げたいのは、先ほど鈴木さんからもお話がありました織機の問題でございます。ただいまお話がございましたように、われわれ業界は、合成繊維織機という名前でもって、織機の製造が禁止されていないのでございます。われわれの織物業界織機の登録は、綿スフにもございますし、絹人絹みな登録がございます。しかしながら、現在われわれの手元でわかっておりますいわゆる無籍織機であって、合成繊維として登録を申し込んでいる織機が約六千五百台ばかりございますが、そのほかに合成繊維の登録をしない無籍と思われるような織機が五、六千台あるように思うのでございます。一方におきまして織機買い上げをするということの必要があるにかかわらず、一方において合成繊維を織る織機であるというようなことのためにこの製造がそのままになっております。ということは、先ほどお話がありましたように、非常にまずい結果が起きてくると思うのであります。いろいろ繊維織機全体としての過不足はあろうと思いますが、綿糸織機でも他の織機でも、現在合成繊維が織れるということは業界の通説でございますので、政府御当局におきましても、この過不足ということをよく御研究になって、不必要な織機は新しく製造しない。ただし、設備の現代化であるとかそういった点における製造はけっこうでございますが、織機の面についてこれをそのままに置いておくというようなことになると、またまた半年、一年先になってこれがわざわいになり、あのとき押えておけばよかったというような結果になるのではないかと思いますので、合成繊維の方につきましても需給の関係を十分に御研究になりまして、現在の過剰織機で充当できるものはそれに当て、総合計画の上から過剰と思われる織機は、今後絶対に製造しないことをば特にお願い申し上げておきたいと思います。  いろいろ申し上げたいことがありますが、差し当ってこの二点につきまして皆様方にお願い申し上げる次第であります。
  17. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に、全国繊維産業労働組合同盟福井県支部書記長中島優治君。
  18. 中島優治

    ○中島参考人 私はただいま御指名いただきました福井県の中島でございます。私ども絹人絹業種に従事する労働者の今日置かれておる立場から、この不況打開に関します私どもの考え方を申し上げたいと思うわけでございます。  まず、その前に、北陸地方の主産業であります絹人絹業種に従事する労働者の労働条件を申し上げます。賃金等を見ますと、現在男子では二十八才が平均でございますが、わずか九千円でございます。女子は二十才半でありまして、六千円という低額でございます。男子の二十八才は家族が一・二人という状態で、総合いたしまして月七千円というのが今日絹人絹の私ども労働者の平均賃金でございます。また労働時間にいたしますると、今日労働基準法に示されておりますところの八時間労働ということは非常に遠い話でございまして、十時間ないし十二時間というような長時間労働が今日の実態でございます。また週休にいたしましても、月四回あるという週休も、今日では月二回の休みというような状態になりつつありますのが福井県の今日の実態であるわけでございます。私ども労働組合がちょうど時期的に夏季一時金の要求をいたしましていろいろ交渉をいたしておりますけれども、その結果はわずか二千円、三千円のそば代ですら出ないというよな実態が今日の福井県の姿であるわけであります。このようなことからいたしまして、遠くは青森県、あるいは九州宮崎県の方から集団就職をいたしております者は、家に帰ることもできないがために、またおしろい代もないというようなことになりまするがためは、やむにやまれず町の女に転落していくという姿も近ごろぼつぼつふえてきたようでございます。また、このまま放置しておきますと、男子の方の生活に困る人たちは、どのようなことをするかということは皆さんの御想像におまかせをいたします。ちょうど戦前の工場法当時の労働条件以上に悪い事態になりつつありますのが、今日私ども中小企業である絹人絹業種に従事いたしておりますところの労働者の労働条件でございます。このまま放置しておきますると、私ども労働者は言うに及ばず、中小企業経営者自体におきましても生存権、生活権すらわれわれは奪われてしまうような状態に相なりまするので、私ども労働者は福井県下の全労働者が相寄りまして、六月十五日に労働者の不況突破大会を開催いたしました。そしてさらに私ども不況突破対策委員会を設置いたしまして、専門委員を決定し、専門委員が、県下の工場をいろいろ調査をいたしまするために、今日まで約二百五十工場の調査をいたしたわけでございます。そして何がために、どのようなことから私どもにこのようにしわ寄せされているのか、何が原因で私どもがこのように非常に苦しくなっているのかといことを探究をいたしました。今から申し上げますることは、その探究をいたしました結果、しからばどのようにしたら私ども労働者はよくなるだろうかということを頭に置きながら、労働者として素朴な考え方を五つの点にしぼりまして申し上げて御協力をお願いいたす次第でございます。  まず福井県といたしまして、私ども労働者のやはり過半数を占めておりますのが系列工場の問題でございます。福井県におきましては、現在三百工場がメーカーの系列工場に入っておりまして、台数は二万二千五百八十七台というのが福井県の、系列に入っております実態でございます。そこで今日この系列におきまするところの工賃の問題でありますが、昨年の年末からことしの三月にかけまして、メーカーからいただきますところの工費は一番軽いもので約二割、最高五割の工費の値引きを余儀なくされて参りました。そのために系列工場におきますところの企業自体の採算はとれなくなりまして、その結果賃金の遅欠配をやらなければならないというような事態に直面いたしたような次第でございます。どのようなものに下ったかと申しますと、一つの例を申し上げますならば、——今資料を探しましてから、またあとで申し上げることにいたしますが、まず東レの系列にいたしましても千円くらい工費のかかるものが平均七百円くらいに三月から一斉に値引きいたしまして、これを断行するように相なりました。また旭化成にいたしましても、平均二割の工費の値下げをいたしております。同時に、特に旭化成の場合にはっきり申し上上げることができますことは、二割の工費を値引きいたしますると同時に、さらに原糸の割当数量、支給する数量を減らす、あるいはまた非常に安いものとの抱き合せ受注をやりまして、実質的には四割以上の減収を来たすというような事態が旭化成の系列に出て参っているわけであります。そのために東レの系列にいたしましても、現在東レの系列のところの賃金は男子で平均一万一千九百六十円で、女子は六千百六十二円というような低賃金であり、夏季一時金も支給できないというような状態に追い込まれました。また、今申し上げた旭化成においては、男子は驚くなかれ八千七百二円という低賃金に相なっておるような次第であります。このようなことからいたしまして、私ども労働者といたしましては、少くともこの福井県におけるところの、あるいは絹、人絹の北陸地方におきまするところの系列工場における工費は、その子会社の企業採算の持てる範囲の工費を一つ設定していただいて、それを支給していただくように御配慮をお願いしたいと思うわけであります。御承知の通り、福井県のこの系列の関係は、親企業、メーカーの必要によって子会社ができたというよりも、むしろ子会社の当場をしのぐために、原糸高の製品安という現象を、過去における不況を乗り切りますがために子会社の必要性から親会社にお願いをいたしまして系列に入り込んだ立場がある関係から、その弱い立場を利用されて、今申し上げたような事態が出てきたのではないかというふうに考えられるわけであります。  次に、第二点といたしまして、中小企業に対する融資の問題でございますが、この問題につきましては非常に大きな問題があろうかと思います。それは、先般私どもこの商工委員会で申し上げたときに問題になりましたが、さきに操短資金が福井県におきましては一億二千万円ということで決定をされました。一億二千万円のわずかな金では焼石に水だということで、私どもは少いという考えを持っておりましたが、ところがそれが決定されてとっくに貸付は終ってしまったと思っておりましたところ、あにはからんや今日福井県におきましてはいまだ一銭の貸付もなされていないのが現実でございます。それで、再三お願いをしてやっと聞いてもらった一億二千万円の融資であるけれども、その融資が一銭も借り手がない、一銭も貸付がされていないということにつきましては、この原因というものを私どもが考えまするときに、これはやはり政策の失敗であったということがはっきり言えるのだと思います。中小企業の実態をよく考えずに、無視して、ただ単に表面上中小企業を救ってやっているのだということだけで、一億二千万円の融資をきめたじゃないかというようなことだけで、うわべだけの決定をいたしましたがために、一億二千万円が、ほんとうに貸してもらいたいという中小企業には借りられない、また貸してもらっていないという現実の結果に相なったものと私どもは考えるわけでございます。そこで私どもは各機屋を回りましてその原因をいろいろ聞いて歩いておるわけでありますが、あの問題にいたしましても、原因としましてはまず一台の割当が百五十円であるというような非常に金額が少いわけです。百台にしましても一万五千円というようなことでありますから、そのワクで貸付をするということでありますと何ら恩典に浴せないし、また貸してもらうところの値打ちもない、このようなこともあったろうと思いますし、また貸付をいたしますところの保証方法等におきましても一考を要する問題があったのではなかろうかと思うわけであります。このようなことで、現在中小企業といたしましては、ただ単に名目だけの融資救済をいたしたということにとどまっておるのであろうと思うわけでございます。私どもはこの融資の問題とからんで、さらに過剰織機買い上げの問題も考えてみました。過剰織機買い上げの問題は私どもも賛成をいたしております。ぜひとも多くの金を出して買い上げをしていただきたいという考え方に立っておるわけでありますが、この場合特に注意を要しますことは、生産調節にいたしましても過剰織機買い上げにいたしましても、整理をするということが一つの目的であるということであれば、ただ単に設備の近代化資金というような実質的な効果の方に回されないような形の、ほんとう過剰織機買い上げになるようなことを、十分考えた過剰織機買い上げ方法をとっていただくことが適切ではなかろうか。しかもほんとう過剰織機を整理するのだということに厳格な規定を作って、そうしてその金額につきましては現在の機業家から買えるだけの金を十分与えてやるべきであるというふうに考えるわけであります。その場合に特に労働者としてお願いをしておきたいことは、廃業者から重点的に買い上げをされるということになりますけれども、今日福井県におきますところの機屋さんの借金状態を見ますと、一台あたり約五万五千円の借金を抱えております。そのようなことから、たとえ五万円の買い上げ資金を与えてみましたところで、ちょうど借金払いをいたして責任が軽くなって、これで廃業をしたのだということになるだけであります。そこで廃業をしまして最後におっぽり出されますのは、労働者であるわけです。廃業をしました際には労働者が少くとも退職金を少々いただけるだけの余裕を持ったところの買い上げ資金を十分御考慮願いますことが、私ども特にお願いを申し上げる問題点ではないかと思うわけであります。  三番目の問題としましては、人絹糸価格の問題を検討してみました。人絹糸の問題につきましてはいろいろ検討をしました結果、私ども労働者といたしまして、建値制を実施をしていただきたいと思うわけであります。今日福井県におきましても人絹糸人絹取引所で取引をされておりますけれども、その取引所の実態を見ましても、昨年の高低を見ますと、最低が百五十七円で最高は二百五十円という、約百円の格差をもって取引がなされておったのが実態でございます。今日三銘品の買い上げにありますところのあの百八十円の金額にいたしましても、相当問題を起しております矢先に、二百五十円もの値が出てくるような取引がなされているという現実は、やはりこの絹、人絹業界不況をもたらすところの、混乱をもたらすところの大きな要因ではなかろうかと思います。従いまして私ども国際価格、それから企業におけるところの採算を十分考えた上、適正価格を設定をしていただいて、建値制を実施をしていただきたいと考えるわけであります、  次に、これは本委員会が所轄かどうか知りませんけれども、労働者に対しまして今般一つ融資をやっていただきたいと考えております。それは、先ほども申し上げました一億二千万円の操短資金の融資にいたしましても、これには労働者の資金も加わっているというのが趣旨でございました。しかし労働者の生活資金等に充当さるべき性格の金を、経営者みずからが今日困っておるときに借りてこれを支給するというような奇篤な経営者はございません。そこで私どもが、経営者が支給してくれなくとも、せめて労働者自体が、私どもが貸してほしい、貸してもらえるなら私ども借りようではないか、そうしてこの場を何とかしのごうではないか、不況に耐え抜こうではないか、このような気持を持っておるわけであります。私どもさき申し上げたような低賃金の実態におきまして生活に困っておりますときに、どこの銀行に行きましても貸してくれるところはございません。あるいは私どもの作りました労働金庫におきましても、それらに対する貸付のワクというものはございません。従いまして今度の不況対策をいろいろ講ぜられます場合に、それに関係しております労働者に対しまして、一応その不況を乗り切るまでの生活補給の面を、当委員会におきましても並行して樹立していただきたいことを特にお願いを申し上げる次第であります。  次に操短の問題でございます。絹、人絹におきましては一月から三月までは三割の封印によるところの操短を実施をいたしました。それからまた四月からは二割五分の数量制限によるところの操短を実施をしておるということでございます。しかし悲しいかな今日の実態におきましては、すべてがしり抜け操短となって実効は上っておりません。実効の上っておらない部分のその責任は業者自体にもあろうかとも思いますけれども、またそのしり抜けをやらなければならぬという今日の事態そのものもやはり考えなければならぬとも思います。しかし今日までなされたこの操短方法から、私ども労働者のみに犠牲がしわ寄せされている現実には納得ができません。そのことはどういうことかと申しますと、三割の封印をいたしたといたします。そうすると三割の労働者が首になるか、あるいは首切りがなかった場合におきましては持ち台数を少くして、全部の職工さんを首を切らないで、少い台数に割当をいたしまして仕事をさせるかということになります。首にならぬわけでありますからまことにけっこうではございますけれども、御承知のごとく絹、人絹業界における賃金状態は、賃織り、いわゆる出来高制、出来高給が非常にその多くを占めておるわけであります。従いまして五台持ちであったものを四台持ちないしは三台持ちにいたしますと、自動的に収入が減ってきて、賃下げにあらざるところの賃下げが結果的になされることに相なります。そういうような一つのしわ寄せがされておる。そこで労働者としては、今月までもらっておった賃金というもので一応生活のめどを立てておりましたところが、自動的に収入減になって参りますと、それをカバーいたしますために労働者みずから長時間労働をやってもこの賃金を埋めようとする動きが労働者の中に出てくる悲しい現象もあるわけでございます。そうして三割操短だ、やれ二割五分の操短だといいましても、その結果は決して操短にはならずに、実効も何もなかったというようなことに相なっておるわけであります。私ども労働者といたしましては操短の必要性は認めます。操短に反対はいたしません。しばらくのしんぼうである、しばらく操短をやることによって、いつかは私ども労働者も、経営者も立ち上れるのだ、仕合せになれるのだというところのその日を私どもは願い、その日のくることに希望を持って今日まで操短にも賛成をして参ったわけでありますが、その結果が操短の効果は一向上らずいたしまして、ただ単に私ども労働者のみにしわ寄せがなされているというような実態に相なっておりまするのが福井県の実態であり、北陸地方における絹人絹業界の共通した実態ではなかろうかと考えるわけであります。そこで私ども今後操短をやりまする場合におきましては、数量制限等、あるいは織機の封印等を考えますると同時に、それに並行をして稼働時間の制限をつけ加える操短の方法一つ考えていただきたいと思うわけであります。参考のために申し上げますが、北陸地方におきまして、今かりに基準法を完全に実施いたしますると、自動的に約四割の操短に相なるわけであります。封印をしなくとも、数量制限をしなくとも、労働基準法を完全に守るという線を徹底的にやりました場合には、自動的にその結果は四割の操短に相なるんだということを、特に各委員さんには頭に入れておいていただきたいと思います。そして私どもは、個々に一個々々の企業場で基準法完全実施だということでやりますと、その企業場は倒産をするという現実から、少くとも操短をやるという場合には、全業者が一致して基準法を完全に実施させるんだという方向の強い統制を打ち出していただきますように、特にお願いを申し上げる次第でございます。  さらに以上の五点につけ加えまして、他の参考人が申しておられるようなことと共通いたしておりまするけれども、今絹人絹調整をやる、その調整のやりくりの結果が合成繊維にいったり、あるいははんぱものになったりオッパものになったりするということで、業者は切り抜けをやっておるような事態であります。そうなりますと、今は合成繊維がよろしかろうけれども、来年の今ごろになったら今度は合成繊維生産調整ということにも相なろうかと思いますから、私ども絹人絹も合成繊維もその他の産業もすべてを一貫した総合対策を立てて、その総合対策の上にいろいろな計画的な操短あるいは生産等の調節等もおやり願うように特にお願いを申し上げまして、先ほど申し上げた労働者としての素朴な考え方の陳述を終るわけでございます。
  19. 長谷川四郎

    長谷川委員長 以上で一応の参考人方々意見の開陳は終りました。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので順次これを許可いたします。委員の方にお願い申し上げますが、午後引き続いてこの委員会を開きますので、一応参考人方々に重点を置いて御質疑を願いたいと思います。堂森芳夫君。
  20. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま私はそれぞれ参考人方々から貴重なる陳述を拝聴いたしまして、繊維産業界のきわめて重大な危機というものがよくわかったわけであります。もっとも、私は午後の委員会にただいま参考人が述べられました事柄を中心として、政府当局にいろいろ質問をしたいと思っておるわけであります。そこで私は一、二の点参考人の方にお尋ねをしたいと思います。  政府が買い上げ織機に対しましては一台三万円といたしまして、国庫補助が二万円、そして業者負担が一万円、こういうふうなことが本年あるいは昨年度は行われることに相なっておるわけでありますが、たとえば先刻おおえさんでございましたか、あるいは福井県の長谷川さんでございますか、そうした買い上げ織機の値段は一台十万円ぐらいの金を出すべきである、こういうお話でございました。ただいま実際には業者負担も加えて三万円で買い上げておる。こういう三万円の数字と十万円の数字は非常に大きな開きがあるわけでございます。もちろん買い上げられる側にすれば、多い方がいいのはわかるわけでありますが、十万円にしろという根拠を数字的にもう少し詳しく御説明を願いたい、こういうことであります。  もう一つ長谷川さんにお尋ねしたいのでありますが、昨年暮れに福井県あるいは石川県の方面に絹人絹産地に対する操短資金として、たとえば福井県では一億二千万円の貸付が決定された。しかるに今日になってもびた一文の借り手がない。これは私非常に重大なことだと思うのであります。国会の尽力によって、あるいは政府の特別考慮によって大切なお金が一億円以上も回された。しかるに一文も借りない。これは非常に大きな問題でありまして、どこに原因があるのかということをさっき中島さんが申されましたが、業者としての長谷川さんから少しく御説明を願いたい、こう思うのでございます。  以上二点であります。
  21. 藤原楠之助

    ○藤原参考人 第一の問題の昨年、一昨年の分は約三万円であった、ことしはなぜ十万円を要求するかということなのでございますが、昨年、一昨年のこの買い上げは、先ほどちょっと私の説明で申し上げましたように、数は二年間を合計しまして紡績と合せまして一万五千台、初めは九千台であとが六千台ということでございまして、従ってそのパーセントから言いますと非常に少いということのために、価格が非常に安いということで、自由買い上げ、任意買い上げということができなかったのでございまして、自然われわれの方で強制買い上げという線に持っていったのであります。一つ業者の犠牲といいますか、価格の上においては非常な不満があったのでございますけれども、これはわれわれ業界安全のためだということで無理に割当をしまして、強制買い上げをやったわけなのでございます。従ってその数の上から申しましてもきわめてパーセントが低かったということで、あまり価格が安くて大きな影響がなかったというのが現実であったわけであります。本年全部で四万台の買い上げということになりますと、相当な数量になるわけでございまして、しかも業者としましては、それぞれ相当の借金があるわけなのでございまして、どうしてもこの買い上げが完全に実行されるということになりますと、借り入れ先の了解も得なければならぬ、場合によれば若干の借金も払わなければならぬというような現実が起ってくるのでございまして、われわれはでき得れば、ことしは任意買い上げという形をとりたい、それには先ほど申しましたような実際の今の時価というものは、捨て値にしましても八万円くらいの価値があるということで、しかも去年、おととしの分は比較的老朽な非常に古びたものが多かったのですが、本年からは相当性能のよいものを出さなければならぬということで、織機そのものの価値もだいぶ変ってきたということで、先ほど申しましたように、大体織機の価値は八万円くらいで、そのほか、大量に出すということになりますと、自然付属設備が、たとえばシャフトであるとかその他の電動装置、いろいろな付属設備が余ってくるということになりまして、それも売らなければならぬということで、この場合には余りました建物をかりに売るにしましても、付属品を売るにしましても、これは実際の価格の二割くらいにしか売れないということになりますので、かれこれ総合しまして十万円ということで適当であるという結論になったのでございます。
  22. 長谷川清

    長谷川参考人 十万円の過剰織機価格の資料をはっきり説明しろという御意見のように承わりましたが、はっきりした資料はまだ持っておらないのであります。今年並びに昨年度は、ようやく政府負担二万円、われわれ負黒万円、合計三万円にスクラップ代と三万四、五千円台で買い上げてもらうわけでございますが、しかし十万円という価格は決して高い価格ではないのでありまして、今日新しい織機を作るといたしますれば、どんなまずい織機でもほとんど十万円はするわけであります。特に近代的な織機になると一台数十万円するわけであります。  さらにまた、十万円と申しますのは、営業権を含めてこの際十万円に引き上げていただきたい。と申しますのは、われわれは過去におきまして政府の方へ貸しがあるのであります。あの戦時中に、われわれは先祖代々伝わったこの機業を、企業整備によりまして紙一枚で供出しているわけであります。そのときにたった紙一枚で国家に御協力申し上げました一つの貸しがありますので、この際この深刻な不況にわれわれを助けてやろうということも、一つ営業権で含めていただきたい、かように考えておるのであります。なおまた過去におきまして、価格の差益金、いわゆるマル公価格等が引き上げられた場合に政府はそのたびごとにわれわれ業者から引き上げられておるのであります。こういうふうに何べんも政府に貸しがありますので、この際完全に廃業する者には営業権を含めて一つ十万円で買い上げていただきたいということをお願いするわけであります。  なおまた先般福井県において一億二千万円の融資のワクをもらいながら、これを利用する者がなかったということは、いかなる理由かという御質問のように伺いましたが、実は今年春通産省当局へわれわれ北陸三県が猛運動いたしまして、そして融資のワクを作っていただいたのでありますが、その条件は、われわれ中小企業にはすでに物的担保はない、ただ人的担保しかない、それで組合の役員が連帯保証して、さらに県がこれの半額を保証する、その上で各業者に貸していただくという特別の形式になっておったので、われわれ地元へ帰りまして県当局並びに県議会へ熱心に要望いたしまして、ようやく県の保証について御了解を得たのであります。そこでいよいよ申し込みの受付を開始しました結果、わずかに四十四件で、四百五十万七千円というほんとうに寡少の金額の申し込みしかないのであります。  ところでその原因をいろいろつぶさに検討いたしました結果、福井県の場合は中小企業公庫からのを商工中金が代理貸しをする、ところが代理貸しをする商工中金は八〇%この貸付に対して責任を持たねばならぬので、ここで非常に強い関所ができたわけであります。この関所の条件が非常に強いものでありまして、保証人二人をつけろ、この二人の保証人とも何万円かの国税を納めていなければいかぬというような非常につらい条件を出してきたのであります。さらにまた本人にいたしますと、その申し込みをされると一々組合で審査するのであります。組合で審査するために、外部へ漏れると本人の信用がなくなるということで、非常に条件が悪い。また金額が、中島さんの言われた通り、一台につき一日百五十円という非常にわずかなもので、しかも一カ月休機をした、あるいは封緘をしたという証拠がなければ貸せないというのであります。さらにまた福井県の場合は石川県と趣きを異にしております。石川県の場合は系列の商社が実権を握っておりまして、ただ末端の機屋は判を預けておく。この金を共同融資の格好で、機屋が預けた判で借りて業者が引き受けて利用する。ところが福井県の場合は金をこの景気に借りるということは、あたかもざるで水をくむがごとく、この金をどういう工合にして返済したらいいかということを考えますときに、この深刻な不況に返済計画が立たない。補償でもらってしまう金ならいいけれども、このきつい保証人あるいは担保力でもって、しかもこういう厳重な関所の網をくぐって金を借りても、休機あるいは操短をしているということで、どこから返済の金が出てくるのか。事業を拡張し、あるいは増設する場合ならば、千匹織っているところを千二百匹に能率を上げる、その二百匹能率の上った金で返済されるけれども、千を八百、七百に縮めて、金を借りて、どこで返済計画が立つかということを慎重に考えますと、もう借りることはこりこりだ。たまたま福井県は震災、戦災等によりまして旧借金がありまして、その借金の催促を受けておったのとちょうど時を同じゅうしておりましたので、さらに申込者がなかったので、わずか四十四件の四百万円では組合の事業としては不適当であり、県当局にせっかく六千万円の保証をお願いした、それに対しても不適当であるということで、組合事業としては扱えないということで中止をしたようなわけでありますので御了承をお願いします。
  23. 堂森芳夫

    堂森委員 もう一点だけ。今度は中島さんにお尋ねいたします。昭和三十一年に繊維工業設備臨時措置法の施行によりまして、五年間に過剰織機処理して参る、こういうふうな構想が作られて実施せられておるわけであります。そこで絹人絹織機だけでも、四万数千台の過剰織機処理するという構想が持たれておるわけです。そこで買い上げ織機を一台十万円にしろ、金額はともかくとしまして、四万数千台の織機買い上げられるということになりますと——私は一昨日石川県で業者方々にいろいろお尋ねしましたが、準備から一切、織物ができ上るまでの人数と織機台数とを合せますと、大体一台一人の労働者の方が必要だそうであります。そうすると五万台の織機買い上げられる場合は五万人の失業者が出る、大ざっぱに言ってそういうことになります。そこで絹人絹業界においては五万人の失業者が出るという目の子勘定になるだろうと思うのであります。これは一つの大きな社会問題を惹起する。こういうことに対して労働組合の責任者の一人として、どういうふうな状態になっているのかということをいろいろお考えになっておるならば御答弁を願いたい、こう思うわけです。現在三割操短をやっておるという状態で、労働者のことはよくおわかりとも思うし、これがさらに福井県において何千台も減ってくる場合に、失業者がどうなるかということは非常に重大なことだと思うのであります。
  24. 中島優治

    ○中島参考人 今の過剰織機の問題、いわゆる整理の問題についての労働者に及ぼす影響ということであろうと思いますが、私ども労働組合が今度の過剰織機買い上げの問題に反対をしていない。賛成というよりも反対をしていないという考え方、これは生産調節そのものにも反対をしないという考え方と共通するものでありますが、今日の姿を見ますと、やはり多過ぎるのだということについては否定できないわけです。ですからこれについては反対はできない。そこで買い上げをされて、大体今までの場合は、最終的には今言われた四万何千台ということでありますが、一年に五千台あるいは六千台ずつ整理をされていくことになりますが、これで労働者の方に首切り、その他がくるであろうかということを考えました場合に、そうでもなかろうということを考えたわけです。それはどういうことかと申しますと、今日の絹人絹の労働者の労働状態は、もう三割くらい労働条件を緩和しなければならぬ状態だ。これが絹人絹の労働者に共通していえることです。従いまして今日置かれている労働条件が非常に過重なんだ。だから三割方この過重を取ることが、私どもの願っておる最終的な労働条件なんだということで、いわゆる過剰織機の整理をされた段階ずつ、われわれは適正な労働条件にしていくような形に持っていきたいというふうに考えるわけです。その場合の賃金等の問題は、これは操短等をやりまするのは、やはり相場直しというようなことから考えられるわけですから、生産の数量が少くなったということで利潤が少くなるということには決してならなくて、少い数量で多くの利潤が得られるものであるということを私どもは信じておりまするがゆえに、そのことはそれで解明できるではないかという考え方に立っております。以上です。
  25. 長谷川四郎

    長谷川委員長 小林正美君。
  26. 小林正美

    ○小林(正)委員 どうも先ほど来いろいろと皆さん方のお話を承わっておりますと、私は非常に不況状態が深刻であるということを痛切に感じるのであります。ところがどうもがてんがいかぬことは、こういう不況が非常に深刻であるにかかわらず、皆さん方の間でほんとうに一致した態勢がしかれておらぬ、そういう感じを深くいたすのであります。たとえば人絹のメーカーは相当もうけておる。ところが皆さん方の工場に参ります仕事に対する工賃というものは非常に安くなっている。それをむしろ皆さん方は喜んで受けていらっしゃる。少しも団結して、現在の不況を克服しようということで、いわゆるメーカーとそこに団体交渉をなさろうとするところの統一ある行動がこれまで見られないような感じが私はいたすのでありますが、一体その点はどういうわけか、私は非常に不思議に思うのであります。不況の要件は完全にそろっている。そうすると当然中小企業団体組織に関する法律でもって、皆さん方は団体交渉を持つことができるのでありますから、この際こそあの法律を生かして、なぜ織物業者方々はメーカーの諸君にぶつからないのか、その点を私はお尋ねをいたしたいと思うのであります。  それから、たとえば操短の問題にいたしましても、どうもお話を聞いておりますと、操短をすることになっておりますが、実際は操短をやっておらぬ、むしろ逆に業者を出し抜いて、自分のところだけは一時間でも多く仕事をして、少しでもよけいもうけたいというガリガリ根性が現われておる結果、みずからがみずからの首を絞めておるのではないかという感じがいたします。またこうしたいわゆる織屋の業者が商工組合を作って人絹なら人絹のメーカーと団体交渉を持つということに対して、労働組合側はなぜもう少し自分たちの使用者を突き上げないのか。以上の点につきまして長谷川さんと中島さんからお答えを願いたいと思います。
  27. 長谷川清

    長谷川参考人 せっかく団体法ができたのに、なぜ団結してメーカーと団体交渉をしないのかという御質問のように存じますが、実はわれわれ従来は調整組合で、御存じの通りただいまは工業組合に移行しておるのであります。もちろん団体交渉権は今度の団体法の制定によって付与されたのでありますが、しかし今日われわれ機屋とメーカーとでは、ちょうど横綱とふんどし持ちにもならぬ力の差があるのであります。そのために団体交渉ということになりますと——団体交渉はできるのでありますが、どうしても力の相違がありまして、また団体交渉をした場合にわれわれは、今の法律でいきますと中労委と申しすまか、あっせんしてくれる機関がないのであります。これは今の法律の欠陥と申しますか盲点と申しますか、われわれが交渉いたしまして、たえば現在までの工賃を二割上げてくれぬと絶対やらぬぞ、と言った場合に、お前らは上げてくれと言うても、片方で安くやる者があるぞと言われて、どうもわれわれは若乃花にちょうどいなか相撲が向うような格好になりまして、力の相違で何ともねじ伏せられてしまうという実情であります。また団体交渉をしてもあっせんする機関がないのであります。お前らは五百円に上げてくれ、メーカーの方では相変らず二百円の声、中に入って、では三百五十円で落ちつけてやろうという一つの機関もないし、力の相違で、ただいま正宗の銘刀をもらいながらこれを抜き上げられなかったという状態であります。中小企業は弱いから、団体法で正宗の銘刀をやったのにとおっしゃられても、抜くに抜かれぬ状態でありますことを一つ御了承をお願いします。
  28. 中島優治

    ○中島参考人 今の御質問の点は非常にむずかしい問題でありますが、若干考え方を申し上げますと、経営者の方々のもの足らぬ点を申し上げるようなことになろうかと思いますが、率直に申し上げたいと思います。私どもは、今長谷川参考人が言われましたように団体交渉権は認められた。けれどもあっせん機関がないからという考え方につきましては、わからぬわけでもありませんが、もの足りないわけです。それはどういうことかと申しますと、今中労委ということを言われましたけれども、私ども労働問題につきましてのあっせんをやります際にそのあっせん委員がきめるというのではなくてその当事者同士の団結、あるいはそのあり方、姿というものが最終的に決定するものです。そういう点を経営者の方々は十分お知り願いたいのです。決してあっせん機関がこれをきめるのじゃなくて、当事者同士のあり方がどうにでもきめるのだということを考えていただきたい。そこで私ども労働組合としましてはその点を十分に考え、また経営者に対しましても、私ども一本になりましてこれに協力しなければならぬということで、先ほど申し上げたような全労働者大会に、あたかも経営者が言うような問題をとらえまして、労働者が決起大会を開催し、東京までわざわざ二十数名の者が陳情に来ているような状態であります。それでいろいろな機会を通じまして今申し上げたような考え方を経営者の方々に言っておりますけれども、何しろ経営者の立場におきましては、理屈はわかるけれども先ほど長谷川さんからいろいろ言われておりましたような他に及ぼすいろいろな弱点、弱みのために、目に見えない勢力が横から押し寄せておるものですから、それに支配されて私どもの純真な気持が受け取っていただけないのだと考えます。私ども全繊同盟の者といたしましては、御承知の通り全繊同盟には今かたきのようにしておりますところのメーカーの労働者も、われわれ三十二万の中に入っているわけです。それですから、私どもはこの組織を通じまして、この中小企業の問題、私どもの問題をメーカーの労働者の問題として、今そのメーカーの労働者が私どものこの問題をとらえて経営者と話し合いをしてやろうというところまで話が行っているわけです。そういうような立場に今日来ておりますから、経営者の方々にも十分その点を一つ理解願って、少くともここ半年や一年の間にはりっぱな商工組合となり、りっぱに団体交渉ができるように、しかもその背後にはいつも労働組合と話し合いをして、労働組合と手をとって、人絹会社、メーカー等と話し合いのできるようにしたいというふうに努力していきたいと考えるわけであります。
  29. 小林正美

    ○小林(正)委員 とにかく五大メーカーですか、六大メーカーですか、ああいう大きな人絹会社なんかは依然としてもうけているのですから、あなた方は、首をくくらなければならぬところに追い詰められているというときに、そういうような一つの小さい考え方をやめて、ぜひとも大きな団結の力でこの危機を突破するようにやっていただきたいとわれわれは思います。  もう少し言いたいこともありますが、時間もありませんので、あとは政府に質問いたします。
  30. 長谷川四郎

    長谷川委員長 松平君。
  31. 松平忠久

    ○松平委員 藤原さんにお尋ねしたいのですが、大体繊維不況について先ほどからいろいろお述べになったので、そのきわめて深刻である様相は非常によくわかっておるわけでありますが、御質問申し上げたい点は、こういう不況の原因について、需給のアンバランスという表現でどなたも言われておるわけなんだが、需給のアンバランスの中で一体どっちがおもなる原因をなすか。すなわち、言いかえるならば、供給が過度に過剰であるのか、需要が減退しておるのかということについての御解明をいただきたいと思うのです。私ども資料を見てみますと、大体昭和二十七年から昭和三十二年までの五年間において、日本人全体の繊維の使用量というものは確実に伸びてきております。すなわち、昭和二十七年を一〇〇といたしますと、一三五という数字が日本の内需には出てきておるわけであります。従って三割五分繊維製品は伸びてきておる。しかもその中で綿は一人当りの消費量が昭和二十七年が五ポンド、それが六ポンド以上に昭和三十二年にはふえております。それからスフにいたしましてもふえておるし、人絹もふえておる。合成繊維もふえております。そういう工合に、内需はこの五年間において三割五分国民全体の消費量としてはふえておる。そういう状態であると同時に、他方輸出においてもこれは着実にふえてきておる。先ほど金子さんでありましたか、鈴木さんでありましたかのお話によっても、本年度の輸出は決して悲観すべきではない。昨年並み、もしくは昨年よりちょっと上回りはせぬか、こういうお話もあった。そういうところからいきますと、需要というものは着実にふえてきておる。そうすると、需要の減退ということじゃなくて、供給の過剰ということにならざるを得ないと思うのですが、その辺のところは、需要も内需についてはかなり今年度になって減退してきておるのかどうか。それと供給が過剰だとすれば、一体どこにその原因があるのか、そのことをお聞かせ願いたい。
  32. 藤原楠之助

    ○藤原参考人 今の御質問に対しましてお答え申し上げたいと思います。  大体から申しまして需給のバランスがとれておらない。それは一体供給過多であるか、需要が激減したのか、こういう御質問でありました。ただいまのところは両方の面からそういうふうな結果になったともいえるのでありまして、大体織機の数から申しますと、ここ三年ほど前に総合対策委員会がございましたが、そのときにすでに三十五年度の需給推定から考えまして、そのときお説のように、漸次需要輸出、内需とも若干ずつふえていくんだろう、こういうことで一応過剰織機の数をきめたのでございます。さらに本年の一月か、二月でございましたか、最後的にこの繊維工業設備の審議会におきまして、これはかなり甘い考え方であったと思うのでございますが、そのときは二万五千台くらいの過剰である。こういう結論を得たのでございますが、それも大体輸出、内需ともに三十五年までには若干ふえていくんだろう、こういうふうな見通しであったと思うのでございます。先ほどもちょっと申し上げましたように、本年の五月には昨年の八月と比較しまして、綿織物が約五千万ヤード、スフ織物にいたしまして一千五百万ヤードという生産減になっておるのです。しかるに採算が少しもよくならないということは、やはり最近の需要状態が非常に悪いということにあると思うのでありまして、これは鈴木さんが先ほど輸出の面であまり減らないというようなお説であったと思いますが、私の感じでは去年より相当減っているんじゃないかというふうに考えるのでございます。特に最近中共の東南アジア進出によりまして日本の輸出先を相当荒されているというようなことによりまして、実は全部の本年の輸出会議における輸出目標を立てますときに、去年より約一億ヤード少く専門委員会で決定をしたのでございますが、私どもはそういう少い目標じゃいけない、少くとも日本の全体の輸出目標に達するのには積極的な方針を立てなければいかぬということで、その輸出目標も去年くらいの目標にしなければならぬということを力説したのでございます。それには相当の努力が要る。たとえばアメリカの輸入制限であるとか、関税の引き上げだとかいうようなことも、PRによってできるだけ抑えていく、あるいはその他の輸出先についても、販路の拡張その他についていろいろな機構を設けてこれの促進に当らなければならぬ。こういうふうに努力すれば、少くとも去年くらいの輸出はできるだろう。従って去年より一億ヤード少いというような目標を作るのは非常に不当であるということを盛んに言うたのです。その結果、ようやく十四億七千万ヤードですか、その中間をとりました数字にきめてもらったのですが、それさえも最近はどうも紡績の方じゃ売れないということで、若干安売りをしているというような傾向なんで、特に内地需要につきましては、景気下降によって購買力が非常に減ってきた、そこへもってきて、さしずめ買わないし、仮需要がほとんど起らないというのが現状でございまして、先ほど申し上げましたように、去年の八月から相当減退しているにもかかわらずなおかつちっとも芽が伸びないというような現状でありますので、過剰織機の数にしましても、現在大体三割封緘をやっても、なおかつ採算がよくならないというような現状から見ますと——三割というと約十万台くらいになりますか、それだけは直ちに過剰であるということになるのですけれども、将来幾らか好転するであろうというようないろいろな推定を入れまして、大体六万台ということを申し上げたのでございます。  需給の関係は大体以上のようなことであります。
  33. 松平忠久

    ○松平委員 もう一つ伺いたいのは、繊維工業設備臨時措置法を実施したときに、いわゆるかけ込み増設というのが非常に多くて、九月一日かなんかにいよいよ施行しようといったときにはかなりの数がふえておった。だから、三割制限といってみたところで、実際は二割くらいよけいになったかもしれない、こういうようなことまで言われるくらいなんですが、その実際の状況は一体どうか。繊維工業設備臨時措置法を出そうとして準備をやっておった年の二月ごろの実情と、それを実施した九月の実情を比べると、九月は織機の数は予想外にかなりふえてしまったように思うのですが、一体予想外にふえた部分というものは何割くらいか、御記憶になっておったら聞かせてもらいたい。
  34. 藤原楠之助

    ○藤原参考人 その点はおっしゃる通りでございまして、どうもああいう法律をきめられましても、即日実施という——即日でなくとも、十日なら十日くらいしてからの実施というようなことになりますと、今のお話のようなかけ込み増設ということは起らないのでございますけれども、この織機の増設のみならず、例のデパートにしましても、一応ああいうふうな制限を作った、そこへかけ込み新設というやつがどんどんできたということで非常な膨張の仕方をやったのでございますが、あれと同じように、大体その当時かなりな猶予期間がありましたので、その期間中に新設の準備をやりまして増設しました数は、大体一割ないし一割半くらい増設したというふうに考えております。
  35. 松平忠久

    ○松平委員 それからもう一つおおえさんにちょっとお伺いしたいのですが、三十七億七千万円のいわゆる操短融資ということをただいま交渉しておるという御発言があったわけですが、これは先ほど長谷川さんの答弁にもありましたが、滞貨融資ということになると非常にきちきちな条件がつきまして、ついに金を出したけれども一文も借り手がない、こういうことになるわけなんです。従ってこの操短融資というものは何にお使いになる金であるか。それは一体滞貨融資というようなものであるのか。あるいは操短するときにどういうところに必要なのか。それからまたそれを返すあてがあるのかどうか。それがなければ、ただ申し込んでみても、ワクだけはくれるけれども、実際は借りられないということになると思うのですが、そこのところのお考えをお聞かせ願いたい。
  36. 茂木富二

    茂木参考人 松平先生の先ほどの御質問の中に、内需の減退の状況につきまして、綿ばかりでなく、他の絹人絹織物も含まれると解しましたので、私、絹人絹立場一つ申し上げたいと存ずるのでございます。  実は絹人絹におきましては生産の割当を制限いたしまして、すでにその実行に移しておりますと同時に、産地によりましては中央の元の調整組合連合会が割り当てた数字より、さらに自主的に組合自体が生産調整をいたしましても、なおかつその製品の販売に苦労し、余るというような状況にあるのでありまして、大体絹関係におきまして、ただいま集まった資料によりますと、上半期においても一割八分ほどその使用量が減じておるところを見ましても、生産が減りつつあることを十分にここに現わしておる次第でございます。一方原糸の方は、聞くところによりますと、本年は三十五万俵もできるであろう、原糸はさらに供給が多くなって、使用の方が減るということで、ますますアンバランスになることをおそれておるのでありまして、ことにこれは御質問の要旨にあるいは合わないかもしれませんが、生糸の方は現在のような価格で参りますと、その消費はますます減るばかりである、そうして有力な絹織物を主体とした産地が、本年はやむなく化学繊維を半分まぜて織らなければなるまいといって、すでにそういうような状況に追い込まれているということは、いわゆる価格が適正なる価格でないがゆえにそういうところまで追い込まれておる、実需は減っていく、そういうような事態で非常に苦境に立っておる次第でございますので、内需が減りつつある状況をおくみとり願いたい意味で、松平先生にお答え申し上げる次第でございます。
  37. 鈴木重光

    鈴木参考人 先ほど私が申し述べました中で多少お聞きとりにくかった点あるいは間違った点があったと思いますので、ちょっと訂正いたします。繊維輸出はそんなに減りませんよと申し上げましたのは、綿布に限ったわけではないのでありまして、スフ織物輸出が昨年までぐいぐい伸びたのは、これは多少頭打ちの傾向でありますが、やはり多少ずつは伸びておるように思います。綿布は昨年の十五億二千万ヤードがまず十四億二、三千万ヤードと、一億くらい減る可能性があると思います。しかし繊維全体としてあわてるほどの減り方ではないということを申し上げたわけでありますが、何と申しましても、全体としまして需給のアンバランスはやはり設備の過度ということからきておるのでありますが、そういう設備等の増設による需給のアンバランス、それから何より機屋さんが一番お困りなのは、織機と紡機と申しますか、原糸の生産設備とのアンバランスがいろいろございますが、このアンバランスが一番ものを言っておるのだろうと思います。それから紡績あるいは人絹会社の力と機屋さんとのアンバランス。戦前は御承知のように機屋さんが、自己の勘定で大体生産をしておられた。もとより遠州であるとかあるいは播州であるとか、ああいうところに産元というのがありまして、多少賃金を回して商品を作らして集める、柄をそろえるというようなことがあったのでありますが、今はそういうような存在はほとんどございません。あるいは商社も自分の力である程度機屋さんに注文を出しておったのでありますが、このごろでは先ほど来申し述べられました紡績あるいは人絹会社との連携と申しますか、下請工場という性格のものが伸びた。それが最近の不況で、ぐいぐい注文を減らされた。そういう戦後の新しい産業形態と申しますか、動かし方と申しますか、これがつまり力のアンバランスからきておるわけでございまして、昔はいなかの方が金ができたら一つ織機の三十台も置こうかということでありましたが、今は銀行から金が借りられたら織機を置こうか、自分の金でないのが多いようでございます。そこにも力の非常な弱体化したことが現われておるわけでありまして、いろいろのアンバランスが今日のこういう状態を現出しておるというふうに考えます。やはり織機があまりにわずかな——わずかと申しては失礼でありますが、百万あるいは二百万でも機屋はやれるというところに弱味があるわけでございまして、これからアンバランスが出てくる、やみの織機も置かれるということでありますので、この際は御当局もあるいは業者自身もここに着眼して、買い上げもする、あるいは新しい設備は抑える、あるいはやみ織機は作らないというふうにする必要があろうかと存ずるわけでございます。一言訂正いたします。
  38. おおえ貞治

    ○おおえ参考人 私が先ほど申し上げました三十七億の問題でございますが、大体一台当り一カ月四千円の赤字、これは要するに経営費の食い込みでございます。差引赤字がそれだけできるということでございます。それで大体私たちの組合では、われわれとしてこの十月まで、七、八、九、十の四カ月間を短期決戦期間と申しますか、この期間極度に操短を強化していく、そういうことによって需給の関係を直していくということと同時に、一つは政府の方にお願いして、いろいろ当面の問題——考えられる問題は滞貨綿布の凍結ですが、こういった面も手を打っていただく、こういうようなことをお願いして、そして十月ごろまでに何とかこの赤字の状態を克服したいという目標を持ったわけです。それで先般も私たちは政府当局にお願いいたし、凍結の問題も特にお願いいたしまして、二、三日前に紡績の方もああいう手を打たれたようなことがありますが、そのほかいろいろわれわれの方も操短を強化していく。そしてもうぎりぎりでお金の出場がございませんから、立ち上るまでの期間、十月までの間にいろいろ政府の方でも輸出の増進をはかり、賠償の問題も考えていただく、それから凍結もやっていただく。そしてわれわれは十月までを決戦期間にして、少くとも十月までにどうにか元の財産の状態に返りたい、こういう考え方で、一応この四カ月間を見まして一万六千円という数字を見たわけです。  それから据え置きの大体一年ということは、実際はもっとお願いしたいのが本心でありますけれども、やはり普通の金融の問題でございますから、あまり筋の通らない大きな話をしてもいけないので、われわれがちょうど現実に赤字に入って参りましたのは、早いものはもう去年の九月ごろから赤字に入っておりますけれども、大体の傾向として、まず去年の十二月、一月ごろからだんだんに一台当り毎月千円から二千円あるいは三千円くらいずつの赤字が累積されて、六月で今度はいよいよ新しい借りをするということを考えまして、この七月から十月までの四カ月間、それから今まで赤字を累積してきました十一月あるいは十二月以降の六カ月あるいは七カ月というものをそこに入れましてまず十カ月と見たのです。そこへもう少し余裕を見ていただいて二カ月を加えた一年くらいのうちにはわれわれも努力するけれども、これだけ重要な産業であるから政府もうっちゃってはおかないだろう、多分に政府当局あるいは皆さんのお力にもすがって、こういう資金計画を立てて実は当局に当っておるわけでございます。大体そういうような意味で一応考え方としてはある程度納得していただいておるのでありますが、先ほど申し上げました通り、業態が非常に弱体でございますから、やはりこの資金の手当については極力出してやれというお力添えをお願いしたい、こういうつもりで計画をしております。
  39. 松平忠久

    ○松平委員 あと二問だけお伺いしたいのです。それは一つはスフ人絹の方の茂太さんに、もう一つ繊維局長の方にお伺いしたいのですが、茂木さんにお伺いしたい点はこういうことなんです。ただいまお話がありましたが、生糸の十九万円というものをはずさなければならぬ、これをフリーにするということが絹、人絹全般の繊維産業としては必要ではなかろうか、こういう意味の御発言があった。またほかの繊維関係織物の機屋さんからの陳情の中にもそういうような要望がございます。ことしの三月でありましたか、やはりこの委員会におきまして絹人絹等の不況に関する参考人意見を徴しましたときには、生糸の安定帯価格というものは繊維産業全般の一つの防波堤である、この防波堤をはずしてしまったら他の繊維価格に非常な影響を与える、だからむしろこれははずさないでもらいたい、はずせば人絹が百五十円のものが百二十円になるかもしれぬ、百円になるかもしれぬ、スフも綿も同様に下ってしまう、であるからこの安定帯価格というものは何としても十九万円を維持してもらわなければほかの繊維産業に重大な影響を及ぼすというのが、大方の皆さん方の御意見であったように私は記憶しております。ところが今日の段階になりますと、皆さん方はこれをはずせという御議論に変ってきておる。一体これはどういうわけでそういうふうに変ったのかということを私は若干疑いを持ちます。それはこの前の委員会に御列席になった方と今日は違っておりますから、考え方も違っておりましょうし、情勢の変化もありましょう。しかし私ども考えますのは、今日アメリカに対して十九万円の生糸ではなかなか売れない、これは事実であります。なかなか買わない。しかしながらその反面において絹織物はどんどん売れておる。絹織物は昨年も一昨年の五割増しくらいに売れておる。本年も御承知のように絹織物はアメリカに対しては決して売れ行きが悪いことはない。おそらくことしの統計では昨年を上回るでしょう。絹織物がどんどん売れておって生糸は売れないという理屈は私どもわからない。従ってこの十九万円を維持するのがいいのか悪いのかという観点を、織物業者の皆さん方から率直な御意見を伺っておく必要があると私は思うのです。三月のころにはこれは防波堤であるから動かすなという御議論が圧倒的にあった。しかし今日はこれを動かせという議論が多いように思うが、この点に対して、個人的な見解でもいいからお伺いしたい。  それから藤原さんに対して質問を申し上げた点について繊維局長にお伺いしたいのですが、先ほど申しました繊維の危機に根本的な理由というものは一体需要がどの程度減退したのか、供給がどの程度増したのかということを把握しなければ政策が立たぬと思うのです。だから最近のことに三十一年、三十二年、本年度に入りましてからの輸出及び内需というものは一体どの程度減退しているのか、それに反して供給というものはどの程度織機として多いのか、こういうことをごく簡単でいいから、ここでちょっと御答弁を願いたい。
  40. 茂木富二

    茂木参考人 ただいま松山平先生から御指摘いただきました生糸価格の問題でございますが、三月ごろに十九万維持をする、そうしてこの安定帯をしっかり守っていただきたいということについては、私も当時同感であったのでございます。しかるところその後におきましてその十九万維持ができませんで、御承知のように十六万というような暴落をいたしてしまった。これはまさにその防波堤たる価格維持ができない現われを国内にも国外にも示した次第でございます。その結果こうした暴落をした値段を、今度また急に値上げをしてみても、海外ではそれを承知いたしません。信用いたしません。十九万というものが将来ともほんとうにこの維持が必ずできるかどうかについては疑問を抱きます関係上、今海外におきましても注文を見送っておるというようなことで、ただいまこの商談が進まないのでございます。ことに純内地にありましては、他の繊維との比較上、十九万では割高である。ことに合成繊維その他のものがどんどん進んでおるときにこの価格では消費が困難でありまして、絹を専門に織っておった産地ですら、先ほどもちょっと触れましたように半分は化学繊維に進むというような状況にありますので、このまま放置しておきますると、内外ともに絹というものは他の繊維に食われて、ほんとう消費者から忘れられたときに気がついて、われわれが手を打ったのではおそい、こう思いまするので、適正な価格にして輸出振興もはかり、内地需要も大いに活発にしていただきたい。先ほども申し上げたように、内地需要は大体三分の二も消費しておる、この内地実情をよくおくみ取りいただきませんと、ただ単に海外にわずかの生糸輸出だけを標準にお考えになると、この根本的な糸価対策を間違うのではないかということを心配いたしておる次第でございまして、春ころの考えと、十六万という相場を出してこうしたことを海外に示した今日では、考えを改めなくちゃなるまいと考えておる次第でございます。
  41. 金子友三郎

    金子参考人 先ほど私申し上げました内需の考え方と輸出の考え方は違うのでございまして、それを申し上げたのでございますが、桐生の方の現在の輸出織物は大体絹織物の先染めのものでございまして、羽二重とかそういうものではございませんで、相当に長期な注文で、注文されてから大体三カ月、長いのは四カ月間くらいの注文契約をいたすのでありますが、先日の糸価の暴落で、たまたま日本の生糸がこれほど下ったから、貿易商社等も注文が来たものの一応自分の手元に持って、色分けや色柄の注文を控えるという関係がありましたが、とうとう政府の方の方針が十九万で押えたということが発表になると同時に反発をいたしまして、大体十九万にバックをいたした関係上、最近は八月、九月の色柄まで注文契約のものが全部参って、桐生輸出織物界では何といいましても安定価格を得ておるところの生糸織物が一番安定感があるということが今定則になっております。どうかそういう立場から、もしもほかの繊維に比較して割高だと申しましても、なるべくだんだんに下げるように、たとえば内地業者の言われるには、一気に十二万にしろとか、あるいは十三万にしろとかいうようなかけ声もありますが、昔の生糸は政府が、農林省が買い上げた二十万コリの生糸のために非常に糸価が暴落いたしまして、ほとんど業界の者が全滅をするかというようなうき目にも会ったのでございますが、これをもしも下げる場合におきましても政府が徐々にほんとうにわずかずつ下げるような手段を講じていただきたいということをお願いするのであります。
  42. 小室恒夫

    ○小室説明員 簡単にお答えいたします。今日の不況は、結論から申せば需要の不振でなく供給の過剰が原因であろうと思います。需要については、まず輸出の面では、昨年は繊維が非常に不況でありましたけれども輸出の面では終戦後のレコードの輸出量、また輸出価格の面でも最高の記録でありました。前年も輸出はそう悪くなかったのでありますが、前年に比べて繊維の総輸出額で一六%の増加ということは、単価が下っている点を考慮に入れますと、もっと数量的に伸びたと思われます。本年に入ってから輸出がやや不振という声がございますが、一—四月の積み出しというような現実に輸出されているという点で見れば、大体昨年の高水準の輸出の横ばいであります。ただし五月に入ってからあるいはその一、二カ月前から輸出の契約の出来高あるいは信用状の接受高、つまり将来の輸出の積み出しをきめる要素は不振の色がだんだん出て参りました。まだ数カ月でありますし、ちょうど東南アジアその他が不需要期になって参ります時期でありますから、これでもって直ちに総体が悪いというふうに判断はできませんし、また鈴木参考人が言われたように綿布はやや悪いが、スフ織物におきましてはややいいというような凹凸がありますから、まだ輸出が不振であると言い切るわけには参りまん。一方内需につきましても、これはなかなか数字がつかみにくい点がございますけれども、人口増を上回る需要の増というものはあると思います。ただし終戦後十年間くらいは非常な衣料不足ということがありまして、作れば飛ぶように売れたという時代が、これは日本のみならず各国にあったのでありますが、そういう時代はもうおしまいになって、相当競争して売り込んで、需要を開拓していくような時代になって参りました。本年に入ってから内需取引が非常に不振であるという声がありますが、私ども一—三月の織物の流通統計あるいは百貨店の売上統計というもので見ております感触では絶対量が減っているということはありません。ずっとふえております。最近も非常に暑い夏でありますので、こういう段階では非常に物が売れております。しかるにもかかわらず需給が非常に不均衡になりましたのは、特に神武景気といわれた昭和三十一年において、非常に活発な生産設備の拡張が行われたためでありまして、その直前の三十年の十二月と本年の五月とを比較いたしますと、一番はなはだしいものはスフ綿でありまして、その間二年半足らずの間に六四・七%拡張をされております。それから人絹糸でありますが、四三・一%、スフ紡績は三七・五%、梳毛紡績は二七・七%、それから綿糸は一〇・五%、その他のものもありますけれども、そういうふうに非常に急激な拡張が行われて、それが皮肉なことに不況になってからフル稼動になって参るというような状態でありまして、三十一年の最高の生産と三十二年の最高の生産の月を比べますと、むしろ三十二年の方が生産量が多い、こういうような事態になったために需要は相当伸びたにもかかわらず、供給の方がそれをはるかに上回って伸びたということのために、こういう不況が参ったということが大勢観察では言い得ると思うのであります。個々の品物について申し上げることは、これは凹凸がありまして、いろいろな事情もありますのでそれは避けたいと思います。
  43. 長谷川四郎

    長谷川委員長 田中武夫君。
  44. 田中武夫

    ○田中(武)委員 参考人方々意見政府委員の御意見を合せて聞いた方が問題をはっきりさす上において適当であろうと思うのですが、時間の関係政府委員に対しては午後、こういうことですから、断片的になりますが参考人の方だけに一、二の質問をいたしたいと思います。  まず長谷川さんにお伺いしたいのですが、前の二十八国会の当委員会で、北陸三県の不況対策、これを取り上げましていろいろ御意見を聞いて決議をいたしました。その決議は大体融資と操短であったと思うのです。ところがただいま中島参考人の御意見によると一億二千万円の融資のワクが出た、だが借り入れは皆無であった。また藤原参考人でしたかの御意見では、大阪において五億円のワクがあった、それを実際に借り入れを申し入れたのは一億足らずである。従って融資の点においても、決議をしワクが出たが、借り入れがなかったのはどういうわけであったのか。  それからもう一つ、操短の点におきましても何割かの操短をきめた、(「もう質問した」と呼ぶ者あり)答弁が済んだものはよろしいです。今の私が聞く分も、もし済んでいたらあとで会議録を見ますが、たとえば四割なら四割の操短ということにして、機械は四割使わないことにした。だが残りの六割をフルに使う。そういうことによって実際は操短の効果が上っていない、逆に労働者に労働過剰といいますか、労働強化がきておる。これは中島参考人から労働基準法が守られていないというような意見があったと思います。また大体この地方の賃金は出来高制で、従って一人で何台か持っておる、ところが操短のために、たとえば十台持っておったのが六台になる、従って賃金の面においては何ら事業主には関係をしない、そのしわ寄せが全部労働者にくるという結果になる、こういうことにも聞いておるのだが、融資のワクが出たが借りなかったということ。それから操短の効果が上らなかった、こういうことについてはどういうことであったのかお伺いしたいと思います。もうお答えになっておるなら要点だけでけっこうです。
  45. 長谷川清

    長谷川参考人 一億二千万円のワクをもらいながら使わなかったということは、先ほど堂森さんにお答えいたしてあります。  操短をやらなかったじゃないかという御質問は、実際操短はやっております。昨年、一昨年あたりですと、操短はかけ声だけに終った時代がありますけれども、本年の不況は、われわれがかけ声だけに終らせようと思ってもそういう状況ではないのであります。注文ももちろんなくて、むしろわれわれが三割、三割調整ときめましても、それ以上に調整をやっているわけです。自然にとまっております。百台の機屋でもって二〇%、二五%はすでに休業しております。今日の状態ではわれわれが声をからして呼びかけなくても、だれも調整を破るにも破られない悲惨な状態でありまして、二割や三割の機はとまっておる状態であります。何どき実地調査に来られても、実地にお見せすることができることをここに確言いたす次第であります。
  46. 田中武夫

    ○田中(武)委員 私は操短をやらなかったと言うのじゃないのです。操短ということで機械の何割かは使わないようにした、だが残った機械をフルに使って、そういうことによって結果的に生産の面から見れば操短をやらなかったと同じような結果になっておる、こういうことを聞いておるのです。しかもそれがフルに機械を使うために、労働者に労働強化という面になって現われてくる、そういう状態が実際にあるのかどうかということと。もう一つは、二十八国会にああいう決議をして、融資、操短ということをきめて出ていったのですが、それが少しも効果が出ていないというのは、どういうところにその原因があるのか、こういう点です。
  47. 長谷川清

    長谷川参考人 すでに御承知の通り、人絹メーカーはことしの五月から五〇%の大幅な操短をやっております。実際われわれ機屋においそも今まで通り糸をつむいでおったならば、すでに現物は先物よりもはるかに高くなければいかぬ。ところが先ほど申します通りすでにわれわれの仲間が全部休業している、あるいは平均二〇%から三〇%やめておるがために原糸の消費が減っておるのに糸は依然として高い。現物の方が、生地の値の方が安い。生地の方がダブって余っておる、在庫が減っていないという証拠であります。しかも数字はここへはっきり持ってきませんが、生産高ははっきりと統計上減っております。  それから労働者の賃金でありますが、われわれ福井県は、半農半労でありまして、農家の過剰労働力を使っておる工場が大半を占めております。景気の悪いときは農家の手伝いをするし、機屋の景気のいいときは機場へ勤めるというところがたくさんありますので、実際面としては、労働問題としてそういうことは浮び上っていないのであります。
  48. 田中武夫

    ○田中(武)委員 あとは政府委員への質問として保留しておきます。  それから茂木さんに一言だけお伺いしたいのですが、茂木さんは参考意見を述べられた際に、消費を伴う施策を希望する、こういうふうに述べておられるわけです。今日の不況の原因が、いわゆる生産過剰、滞貨こういうところにあるというならば、もちろんこの生産過剰を乗り越えるためには、内に対しては内需を上げて消費振興させる、外に対しては貿易振興させる、それより手はないと思います。そこで消費を伴う、すなわち内需を上げるというためには大衆購買力を上げていかなければならないと思います。そうしなければならない。そういう点から考えていろいろと大衆購買力を上げる方法はあると思いますが、その一つは労働者の収入の確保といいますか、そういうことが必要だと思います。そういう面からわれわれは最低賃金ということを唱えておるわけなんですが、中小企業方々はこの点についていろいろと疑問なり意見を持っておられると思うのですが、こういう内需を上げていく、いわゆる消費を伴う政策ということと、最低賃金の問題について業者方々はどういうふうに考えておられるか、一つ茂木さんにお伺いいたしたい。  同時に長谷川さんにもお伺いいたしたいのですが、先ほど中島参考人の御意見によると、いわゆる系列化の強化、こういうことによって工賃がだんだんと二割—五割といったように押えられてきておる。たとえば東洋レーヨンの関係では千円のやつが七百円になった、こういうような話もあったようであります。従ってだんだんと下へ下へとしわが寄ってくる。あなた方工場主は大きな東洋レーヨンなら東洋レーヨン、あるいは旭化成といったようなところから押えられてくる。押えられたやつをまた下の労働者を押えていく、結局は労働者にそのしわがきている、こういうふうにわれわれは見ておるわけであります。そういうことを避けるためにも最低賃金ということで、まず賃金に底板を入れるということによって、皆さん方自体が、そう安い工賃に無理に押えられずに済むのではないか。そういうことからもいわゆる過当競争を排除していくということが考えられますが、こういう面からお考えになって最低賃金というものについて福井地方業者方々はどういうふうな見解を持っておられるかお伺いいたします。
  49. 茂木富二

    茂木参考人 私が先ほど申し上げました消費需要の伴う施策を望む、これはことに生糸糸価があまりにも現在では他の繊維と比較して内需の場合には高い。そして先般これが暴落した当時のあの価格がむしろ自然の価格ではなかったか、こういうようにも思われますので、私どもは幾らの線がいいということを申し上げるのでなくて、他の繊維とも見合い、他の物価と見合った適正な価格に安定せしめて需要の喚起をいたしたい、こういうことを希望して消費者のついてくるのを望んで申し上げた次第でございます。それにはいろいろ製品の研究、あるいは宣伝も伴いますが、その意味も含めて申し上げた次第であります。  なお大衆に需要を増加せしめるためには最低賃金の件、これは非常にむずかしい問題でありまして、この点については、桐生とかあるいは八王子とか、あるいは私どもの方は足利でありますけれども、その土地々々で、その土地にふさわしい適正な業者間でお話し合いをして、ある程度の申し合せでもって、すでに実施しておるのでございます。これはなかなかむずかしいことで、私がここで簡単に表現もできないのでありますが、われわれの考えとしてはもちろんそういう点についてもできるだけの協力をしていきたい気持でおります。しかし今の織物界の不況は容易ならざるものがありまして、なかなか経営困難である折柄でありますので、十分にそういう点を参酌してきめなければならぬと考えている次第であります。
  50. 長谷川清

    長谷川参考人 労働者の最低賃金もけっこうでありますが、その前にわれわれの最低工賃をきめてもらって、それから最低賃金ということでないと、労務者の最低賃金だけ下で線を引かれると、上は大企業から下は労働者から板ばさみになって浮び上る瀬がありませんので、その前に最低工賃をきめて確保してもらって、それから最低賃金をやっていただけば非常にけっこうと思います。
  51. 田中武夫

    ○田中(武)委員 私ども参考人の方と議論はしませんが、どうなんです、中小企業団体組織法による不況対策としての商工組合なんかの結成というようなことをお考えになっておりませんか。そういうことによって親企業に対して工賃の団体交渉、組合交渉ができるようになる、そういう点において私は工賃の無理な下げ方に対しては交渉できると思いますが、いかがでしょう。
  52. 長谷川四郎

    長谷川委員長 先ほどそういう御質問がありまして、答えられておりますので、参考人に対する質疑はまだたくさんあると思いますが、ちょうど時間も経過しておりますので、この辺で打ち切りたいと思います。  参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多忙中長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとう存じました。当委員会調査にきわめて資するところが大であると考えております。厚くお礼を申し上げる次第であります。今後とも当委員会が本問題を調査し、対策を練ります上に必要ある場合は、格段の御協力をお願いいたす次第でございます。それでは本日はありがとうございました。  二時半まで休憩をいたします。     午後一時三十八分休憩      ————◇—————     午後三時四十三分開議
  53. 長谷川四郎

    長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  参考人出頭要求に関する件についてお諮りをいたします。日中貿易に関する件について明日出席を願っております参考人に追加し、日中貿易再開推進委員会委員長の白水実君を参考人として出席願うことといたしたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認めます。そのように決定をいたします。     —————————————
  55. 長谷川四郎

    長谷川委員長 繊維不況対策に関する件についての質疑を続行いたします。堂森芳夫君。
  56. 堂森芳夫

    堂森委員 先日繊維局長を中心にしまして私若干の質問を試みたのでありますが、実は土曜日と日曜日の両日、石川、福井業者並びに労働者の諸君と二日間にわたっていろいろ懇談をいたしました。現地の状況も幾らか調べて参ったわけであります。また本日も参考人の諸君から、繊維全般にわたっての業者のいろいろな陳述がございました。それらを総合いたしますと、繊維不況打開するためには、特に絹人絹のごときは、何といってもまず輸出振興することが根本である、こういうことに相なっていると思うのであります。それからもう一つは、過剰織機買い上げについての金額といいますか、一台当りの買い上げ価格をもっと引き上げてくれ、またここの計画でも昭和三十五年までに四万何千台でございますか、買い上げる予定になっておるが、これを期目的に繰り上げて、早く買い上げてもらいたい、こういう要望もございます。そこで私は局長あるいは大蔵当局にお尋ねいたしたいのでありますが、従来昭和三十一年には一台につき二万円でございましたか、三十二年度から三万円、こういうふうになってきたと思うのでありますが、きょうの陳述を聞いておりますと、三万円ではあまりにも過酷な価格である、こう言っておられるようでありますが、その点政府当局としてはどういうふうにお考えになっておりますか。価格の点について妥当と思っておられるのか、あるいは安いと思っておられるのか、一つ御答弁願いたいと思います。
  57. 小室恒夫

    ○小室説明員 輸出の点のお尋ねもあったかと思いますけれども過剰織機の現在の買上価格の点について主としてお尋ねがあったようでありますから、その点からお答え申し上げます。  昨年来北陸三県を中心といたします絹人絹機業地が非常な苦境に陥って、これに対する対策といたしまして生産調整にも役に立ち、つまり過剰生産を防止することにも役に立ち、また金融をつけるというような役割も果す、まあ一挙両得のやり方として過剰絹人絹織機買い上げということを重点的に実施して参ったわけであります。その際不況における業者負担の能力が減少しておる、またくず鉄の価格が前年度に比べて暴落しておるというような状況考慮に入れて、従来一台当り一万円の国庫補助金を一躍二倍にいたしたわけであります。その結果として織機を提供した業者は手取り平均約三万四、五千円のものが手に入ることとなりまして、三十二年度の織機買い上げにつきましては従来計上しておりました一億二千万円の補助金予算に加えて三千万円の予備金支出も行い、その中の一億円を絹人絹織機買い上げに充当いたしまして、広幅換算で五千台買い上げをすでに終了したわけであります。この三万四、五千円の価格が高過ぎるのか低過ぎるのか、どう思うというお尋ねでありますが、これはいろいろな見方からこの価格の水準をどこにきめるべきかという御意見があり得ることだと思いますけれども、私どもは三万五千円の手取りという線で三十二年度の買い上げを実施いたしました際に、買い上げ得る五千台の数に比べますと申し込みがその約倍あったわけでありまして、これは価格が安いのだけれども、背に腹はかえられぬからまあ供出したのだという面もむろんあるとは思いますけれども、しかしながら新品価格は常識的に七万円くらいといわれておったものを半額くらいで買い上げるということは、相当使ったあとの中古の織機でありますから、ほかの点を特に考慮に入れなければ中古織機買い上げ価格としては十分妥当な価格であったのじゃないか。ほかの点というのは、つまり業界に対してこの際もっと手厚い保護を加えるべきじゃないか。いろいろな考え方がいろいろな立場であり得ると思いますが、私どもは中古織機買い上げる当時の価格としては、この価格でもっておおむね妥当であったというふうに考えておるわけであります。
  58. 堂森芳夫

    堂森委員 しかしこれは業者立場に立ちますならば、三万円というのは必ずしも高くないということは、いろいろな事情を調べてみれば一目瞭然たるものがあると思うのであります。しかも局長の午前中の答弁によりますと、繊維産業不況の根本はやはり生産過剰である。簡単に言えばそういうことが言えると思います。また輸出も必ずしもそう楽観はできないにしても、極端に悲観すべき状態ではない。簡単に言うならばこういう答弁であったと思うのです。そして生産過剰であるということは織機が過剰である、こういうところにもあると思います。やはり繊維産業の健全な発展を期するためには、どうしても買い上げというようなものが——一日延ばせばそこに生産の過剰がくるということは当然であります。業者が言っておるように一日も早く、しかもそうした五年間に買い上げていくというのではなしに、やはりこれを繰り上げてやっていくということが、根本的に私は必要であろうと思うのであります。現地でもそう言っておるわけであります。そしてこの値段の問題につきましては今後またいろいろわれわれは折衝して参りたいと思うわけでありますが、一つ大いに努力してもらいたい、こう思うわけであります。そこでまた現地で言っておる希望をいろいろ考えますると、合成繊維織機につきましては登録が行われていない。そしてしかも合成繊維方面については織機の登録がないから、こうした無登録で行い得ることを政府は奨励しておる。こういうふうな格好になって、これが悪循環となり、今度は絹人絹というものの生産過剰を刺激しておる、こういうふうなことを現地では言っておるわけでありますが、これに対して局長はいかがでありますか、お考えを伺いたいと思います。
  59. 小室恒夫

    ○小室説明員 現在綿スフ織物絹人絹織物、毛織物を織ります織機につきましては、それぞれ中小企業安定法——今日では団体法に切りかわっておりますが、この強制命令によりまして新増設の禁止を実施しております。それに対して合成繊維織物だけは、いわばそのワク外になっておるわけでありますが、合成繊維織物を織ります場合には、織機としても多少形式の違ったものが必要になり、あるいは精度の高いものが必要になり、あるいはまた工場の設備、建屋とかその他についても特別の配慮が必要になるわけであります。従いまして今後合成繊維が増産されていくのに伴いまして、ある程度そういう設備を作っていくことは必要かと思いますけれども、野放しの状態に置いておくということは午前中において参考人の各位が述べられたような弊害、つまり合成繊維以外のもの、ことに過剰生産の弊害の著しいものを一時やるとか、そういうような弊害もたしかに認められますので、これは当然規制すべき時期にきておるのではなかろうかと私どもも考えております。規制するやり方として、従来他の織機を規制した場合と同じように、団体法の規定を適用するということも考えられるのでありますが、現在の合成繊維の織布業者状況等から申しますと、むしろ繊維工業設備等臨時措置法という新しい法律の直接の改正で規制した方がいいのじゃなかろうかというふうに考えて、目下検討中でございます。
  60. 堂森芳夫

    堂森委員 私が調査したところでは、合成繊維製品を織るために使われておる、そういう名目で無登録でどんどん拡張されておる織機というものは、これは簡単な設備の変更といいますか、そういうものでどちらでもいくものだ。そういう意味でそうした絹人絹あるいはスフ、こういう方面の生産過剰に非常に大きな役割を果しておる、こういうふうに業者は言っておられますし、そういう状態が非常にあると思います。これはやはり今後そうした規制というものはどうしても必要になってくるであろう、こうわれわれは考えるわけであります。  そこで一つ方面を変えて申し上げたいのですが、人絹の場合をとりましても、糸が高くて製品が安い、こういうことが機屋さんの方からは強い声として絶えずあったわけであります。そしてもう今日はそういうふうな段階を通り越えまして、もっと深刻な状態になっておるわけであります。そこで人絹の場合を取り上げますと、六大メーカーですか、一体今日機屋さんが実際買っておる人絹糸の相場を考えますと、果して繊維局長が考えられまして妥当な——内地の機屋の買う値段の方が輸出価格よりも高い、こういう非常な強い声があるわけですが、一体国内で織る機屋さんたちに売っておる人絹糸の値段というものは、果して妥当なものろうか。いろいろ計算しまして、あるいは輸出の値段というものが過当に安くなっておるじゃないか。そうして国内で機屋さんが買う原糸の値段は、それが大体普通の値段であるとかいうことは、これは非常に重要なことでございます。現在輸出価格国内価格に大きな差があるのですが、国内価格が普通であって輸出価格が過当に安くなっておるのか。あるいは輸出価格が大体普通の、人絹会社としてはバランスのとれる値段であるのか、その辺一つ御答弁を願いたいと思います。
  61. 小室恒夫

    ○小室説明員 人絹糸を糸のままで輸出する場合の価格、これは相当低い水準であります。それに対して国内で売っておる価格が、これを相当上回っておるところであることは御承知の通りであります。いずれが適当な価格であるかというようなお尋ねでありますが、人絹糸輸出価格につきましては、イタリアとか、西独とか、あるいは英国とか、そういう競争国といわば売り込み競争をやって、そうしてマーケットを開拓していく、そういう性質を持っておるわけでありますが、大体これらの競争国のオファーしている価格と申しますか、それは大体ポンド当り百四、五十円というような低い水準でありますので、これと対抗して参りますためには、どうしてもその価格が妥当である、妥当でないは別にして、競争可能な価格でもって、人絹糸輸出して参らなければならぬ、こういう状況になっております。他方において国内取引されておる輸出用の原糸、これはいわゆる三銘品向けのものとそうでないものと多少の差がありますけれども、百七十五円とか百八十五円とか、大体そういう見当の価格であるかと思います。ところで人絹糸のメーカーの立場で採算をとってみますると、この価格で明らかに採算割れであります。ただいまのコスト計算をすれば採算割れであることは、これははっきりいたしております。人絹糸価格は相当上下のはなはだしいものでありまして、一昨年の一番高い相場は二百八十三円というようなところまで出たことがあります。また昨年でいえば二百五十三円というような価格が出たこともあります。平常の状態でありますと、百七十五円とか百八十五円とかいう相場は、操短なしの状態であれば、かなりいいところだと思います。五割操短をやっている現状では、これははっきりと採算割れであります。これは私、役所の立場としてもそういうふうに言える相場であります。しかしながらこの百七十五円ないし百八十五円の原糸を輸出用に提供しても、なおかつ織物としては採算が困難だという面は確かにございます。これは輸出入絹織物が、昨年の暮れからことしに入った一、二カ月は、インドネシア向けを中心としてかなり活況を呈したのでありますが、そのうちインドネシアの内乱等の事情も手伝って、最大の市場であるインドネシア向けの人絹織物輸出が停滞いたして参りました関係で、輸出のマーケットが非常に狭くなった、そういうような関係、また一般の繊維不況の影響等もあって、織物価格がやや通りにくいという点がありますたに、このような価格でもかなり織物の採算には影響があるということも事実であろうかと思いまするけれども、現在の操短下の状態において、この価格が不当な価格だというふうに簡単に言い切ることはできないと思います。
  62. 堂森芳夫

    堂森委員 私はいろいろと調査してみておるのですが、実際においては人絹糸の原糸の輸出価格で採算割れしていないのではないか、こういうふうにも考えていいと思う。これは数字の立て方によっていろいろあるでしょう。しかし必ずしも採算割れであるかどうかということは言い切ることができないのではないか、こういうような節も私は考えておるのであります。そこでそうした採算割れであるかどうかという議論を今しても仕方がないのですが、たとえば東南アジアの市場で中共の安い人絹糸が売り出された、あるいはまたイタリアの人絹糸がくる、ヨーロッパの他の人絹糸が入ってくる、こうします。そうして東南アジアの市場における人絹織物の強い競争相手として、中共なら中共の商品がどんどん出てくる、こういう事態を考えるときに、私どもが今後の繊維製品の輸出の見通しはそうお先まっ暗ではない、こういうことをもって楽観することはできないのじゃないかという一つの考え方があるわけであります。今後日本の機屋さんといいますか、業者立場はますます苦しくなってくるのではないかということがいえるわけでございます。そこで今後の人絹——主として人絹をとりましょう。人絹織物界の前途というものは、いろいろ繊維全体の量としての輸出はどうこうということは言えても、人絹織物輸出というものについては、非常に悲観すべき材料しか今後ないのではないか、こういうふうに思えるのですが、局長はどう考えていますか。もう一度朝の御答弁をもう少し詳しく答弁してもらいたいと思います。
  63. 小室恒夫

    ○小室説明員 最近の世界の繊維消費状況から見ても、また特に日本の国内繊維消費構造の状態から申しましても、天然繊維に対して化学繊維の方が伸びておる。消費が伸び、需要が伸びておるような態勢でありますけれども、その化学繊維の中でもいろいろと各品種ごとに消長があるわけでございます。ところで国内消費状況を見ましても、実は人絹織物消費の伸びというものは最近停滞しているきらいがあります。また輸出の面では、インドネシアが何と申しましても従来の輸出の最大のマーケットであります。インドネシアに直行するもの、また香港なりシンガポールなりを経由して間接に輸出されるもの、そういうものを合計いたしますと、推定が若干入っておりますけれども、一昨年あたりあるいは昨年あたりでも四割くらいインドネシアに輸出が向っておるのではないかというふうな推算もできるわけであります。そのインドネシア市場がいろいろ政治的な情勢、特に内乱の問題あるいはまた外貨の不足している問題等のために非常に行きにくい。全然行っていないとは申しません、また最近でも消長があります。しかしそのマーケットが非常に狭くなってきているということは、やはり輸出の面にも相当むずかしい局面をもたらしているわけであります。繊維は世界全体としても生産がどっちかといえば過剰な傾向であります。あらゆる繊維がお互いに競合し合い、また競争して売り込み合う。これは内需についても輸出についても世界各国同じであります。そういう際に人絹糸人絹織物というものはもう少し新たな工夫を加えて、内地市場でも海外の市場でも、もう少し新しい需要を喚起し、市場を開拓していく努力を積極的に払っていかなければならぬのではないか、そういう点は私ども痛感しておりますけれども、これは安い繊維でもありますし、そういう条件のもとに相当加工の方法ども考慮を加え、市場の開拓に努力していくならば、そう前途を悲観するには当らないのではないか、そういう努力が少し足りないのではないか、こういう感じを持っております。
  64. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、繊維局長のさっきの答弁でございましたが、今後の人絹織物輸出については適当な努力を払っていけば活路もある、こういうふうな答弁のようであったと思うのです。そこで通商局の輸出課長が来ておられますが、従来どのような工作といいますか努力をしてこられたか、今後どういうふうなことをやっていくのか、少し詳しく御答弁を願いたいと思います。
  65. 小室恒夫

    ○小室説明員 繊維局に繊維輸出課というのがありまして、直接にはそっちの担当であります。直接の売り込みを担当しているのは業者なりあるいは関係のメーカーであります。一昨年まで比較的に好調に人絹織物輸出が伸びて参りました。海外の需要が伸びて参って輸出が伸長したということが、実は人絹の景気といいますか、それを支えてきた要素でございまして、かなり増産が続いて参りましたのも、輸出が伸びてきたということが背景になっておるような状況であります。昨年から、先ほど来申したようなインドネシアの特殊事情などがあって頭打ちになっております。特に関係商社、あるいは最近では機屋さんの代表まで、実は東南アジア各地を回って各地における人絹織物の売れ行き、競争商品との関係その他も現地で調べて帰ってきたりしております。また人絹メーカーも最近では非常に積極的に輸出に乗り出すということで、一々例をあげると少し差しさわりがあるかもしれませんが、現地に行ってそれぞれ市場の開拓に努力しております。こういうものは視察団が行ってすぐに翌日から売れ行きが出るというものではございませんけれども、そういう努力を積み重ねて参りますと、一方加工方法その他の研究、工夫、宣伝と相待って相当の成績を上げるのではないか、こういうふうに期待しておるわけであります。
  66. 堂森芳夫

    堂森委員 繊維局長のせっかくの答弁ですが、私もこれは別に繊維のことを見て歩いたわけじゃないのですが、東南アジア方面ではもうすでに、第二次大戦後どこの国でもそうですが、新興国としてやはり工業国としての発展を考えておると思います。そして現地で見ましても、日本なりあるいはヨーロッパなりから織機輸入いたしまして、特に安い賃金というものにも恵まれておりますし、また労力がきわめて豊富でありますし、いろいろな点から人絹などの織物については目ざましい発展をぐんぐん遂げつつあるということは否定できないのです。そうしてこういうような後進国、東南アジア方面各国においてそうした状況が次々と勃興しておることは否定できないのです。そういうふうな実情にあるときに——もちろんわれわれがそうした諸外国の繊維製品を見ておりまして、やはり日本は繊維王国だ、こういうプライドは持つわけです。また東南アジアなどを見まして、特に日本の繊維産業の古い歴史というものを考えますと、そう追っつけないだろうと思うわけです。しかしまた一方で、そうした後進国では織機輸入、安い賃金、余った労力、こういうものでどんどん発展してきているということも事実であります。そういうわけでありまして、ただいま局長の答弁しておられるようなことで、果して人絹織物の前途に希望があるだろうかと思うわけです。くどいようですが、一つそうした東南アジア諸国における事情などを勘案して、今後の見通しを御答弁願いたいと思うわけです。
  67. 小室恒夫

    ○小室説明員 こういうことを申していいかどうか存じませんが、やはり国内需要を開拓できるような人絹織物でないと、海外に出しても非常に需要を喚起できるかどうかということは問題じゃないか。大体今まで人絹織物は日本より民度の低い国に出てはおりますけれども、これらの国でもだんだん戦後時を経るに従って、もっといいものがほしい、変ったものがほしいというような傾向が顕著に見えております。従って相当工夫を加えて国内需要を喚起できるものが出ていくならば、これはまた海外にも新しく出ていく。そういうふうな関係をもっと考慮して、魅力のある人絹織物を作る必要があるだろうと考えております。これは答弁になりますか、どうですか……。
  68. 田中武夫

    ○田中(武)委員 堂森委員の質問に関連して、ちょっとお伺いいたしたい。繊維生産量のうち、それは品物によって異なりますが、輸出と内需の割合をどういうふうにお考えになっておるか。私の調べたところでは、綿布では戦前には輸出が全生産製品に対して七五・七%、内需が二四・三%、ところが、三十二年度になると、輸出が三七・六%、内需が六二・四%、人絹は戦前が輸出が六六・二%で、内需が三三・八%、それから三十二年度は輸出が四二・八%で、内需が五七・二%、こういう表を見ました場合、言い得ることは、戦前では生産量の多くが輸出に向けられていた、内需の方が少かった。ところが、三十二年といいますか、最近では内需の方が多くなって輸出が少くなっている。そこでこれは綿布と人絹について申し上げたのですが、繊維全般について輸出と内需のバランスをどのように置く方がいいのか、こういうような点について何か計画がありますか。繊維工業臨時特別措置法による台数制限についても、やはりそういった点を計画して内需をどのくらいにし、輸出をどれくらいにする、そういうところから設備をどのくらいに押える、こういうことになってくると思うのです。そういうことについてはどういうようにお考えになっておるか。それから機械の台数をかりに限定いたしましても機械の稼動率といいますか、言いかえるならば、労働者の労働時間ですね、これをやはり幾らくらい押えるか、こういうことと関連があると思います。従いまして機械何台、こういうように計画をせられる場合、その労働時間はどのように考えられておるのか、たとえば先ほど参考人意見等を聞いておりましても、労働基準法等はほとんど守られていない、こういう意見も出ておりました。たとえば二割操短という点を考えました場合、十時間労働が普通である場合に、労働基準法の八時間労働を厳格に守るとすれば、それだけで台数は同じであっても二割操短という結果が出てくる、そういったような関連的な点について計画をどのようにお考えになっておるか、ちょっとお伺いいたします。
  69. 小室恒夫

    ○小室説明員 戦前と戦後と、輸出と内需との比率がお示しの二つの品目について、はっきり変っているということは事実であります。どうしてそういうことになったかと申しますると、一番大きな要素は世界の繊維貿易量が長期的にいうと縮小傾向にあるということであろうかと思います。大体今お示しになった綿布が七割五分というのは少し私は大きいように思われますけれども、それに近い数字をあげた年はおそらく昭和十一年か、この辺だろうと思います。このときには日本はたしか二十七億ヤールの輸出をいたしまして世界第一の輸出国になり、第二位が英国で二十五億ヤールくらいだろうと想像しております。このときには三分の二以上が輸出に回っていたことは明らかであります。ところがその当時の世界の綿布の貿易量というものは、私は正確に覚えておりませんけれども、七十億ヤール前後ではなかっただろうか、あるいはもう少し上だったかもしれません。今日世界の貿易量は、多い年では五十億ヤールを少し上回ったところ、少い年になりますと、五十億ヤールを少し割ったところであります。そうして日本は昨年戦後最高の十五億ヤールというような輸出をいたしましたが、大体いうと四分の一強でありまして、圧倒的に第一位であります。第二位は、半分、八億ヤールくらいのインドの輸出がそれに次いでいるかと思います。第三位、第四位以下は申しませんけれども、そういうふうに世界の綿布の貿易量自身が、後進国の綿業の発達とか、その他いろいろな事情でずっと縮小していく傾向になっておりますので、日本としては非常に大きな分野をやはり持っておる。それから人絹織物についても同じことが言えると思います。これもおそらく昭和十一年、十二年ごろの統計だろうと思いますけれども、五億ヤールの人絹織物輸出をやったのが最高でございますが、そのころがおそらくお示しのような比率だったろうと想像されます。この五億ヤールの戦前のレコードに戦後はどうしても到達しておりません。昨年は四億ヤール、その前は三億二千万ヤールという数字でございましたが、それでも全世界の人絹貿易量からいうと、日本がほとんど半分を占めておるような計算になっております。一つの国で半分の貿易量を占めているということは、綿以上に圧倒的な数字であります。それからスフ織物については、昨年の九億何千万ヤールという輸出は、日本においては開闢以来の大きな輸出であります。世界の貿易量に対する比率は六割ないし七割の間だろうと思います。非常に正確な統計はとりにくいのでありますが、六、七割を日本で独占しているような形になっておるわけであります。  こういうふうに綿織物人絹織物、スフ織物という主力の普通繊維品につきましては、世界の貿易量に対する比率からいうと、非常に大きなものをすでに日本が占めておって、これ以上数量だけで伸ばしていくという考えに立つことは非常に危険であるという感じのする程度まで行っておるわけでありまして、戦前の輸出と内需との関係が、輸出の方が圧倒的に高くて、戦後は逆転しているから、これは輸出振興の努力が足りないのじゃないか、もしそういうお尋ねであれば、やはり世界の大勢で、そう貿易量だけを伸ばしていくことは困難だ、第一位といっても相当飛び抜けた第一位の輸出国になっておるので、安売りをして数量だけを伸ばす——いいか悪いか知りませんが、過去の日本の繊維輸出は実際にそういうことをやってきたのでありますが、こういうことをやる余地がもうない、むしろ数量はあまり急に伸ばさないで、できるだけ取引条件をよくしていくという方向において輸出を伸ばしていくような時期に一般的には来ておる、そういうふうに考えられるわけであります。  今後の繊維の需給計画を立て、それに従って設備を調整していくという場合の計算につきましては、こういうただいまの現状から将来の輸出の伸びの可能性を市場別、商品別に検討いたしまして、それを輸出需要として計算し、また内需の方は消費購買力の伸び、生活水準の上り方、そして購買力の中でどれだけ繊維品の方に振り向けられるだろうかということを過去の実績から割り出して線を伸ばしていきまして、三十五年はこの程度になるだろうという数値を出して、その輸出需要と内需の需要とを合計いたしまして、それから必要な設備数を割り出す、こういう計算を、新しい法律に基いて設置された審議会で実施しておるわけでございます。  ところでその場合に所要機械台数が何台であるか、あるいは何錘であるかということを決定する要素として、稼働率がどうだとか稼働時間がどうであるとか、あるいはこまかいことを言えば紡績のスピンドルの回転数が幾らであるというようなことが、それぞれ重要な要素になって参るわけでございます。これは実を申しますと、各部門別に専門委員会を設けまして、関係業界の方また労働組合の方にも参加していただいて、いろいろな角度から検討してこれらの数字はきめておるのでありまして、現状においてはこういうやり方をするより仕方がないのじゃないかと考えております。  また操短のやり方いかんにもよることでありますが、操業時間を操短の規制の重要な内容にしております場合には、操業時間を守ってもらうということについて、非常に厳重な監視も実施いたしております。絹人絹織物の場合は、実を申しますと生産限度量というものをきめまして、その生産限度量を守っているかどうかということを、織物数量検査でもって確認していくというやり方をとっておりますので、綿紡の操短の場合のごとくに、二交代十六時間なら二交代十六時間ということで、はっきり時間の規制をしておる場合とやや趣きが異なりますけれども、しかしながらできるだけ正常操業でいってもらうことが、こういう操短の必要な際には一般的に望ましいというふうには考えております。
  70. 田中武夫

    ○田中(武)委員 三十五年度において、これた各種別によって違うが、機械を幾らにして、そうしてそのときの生産を幾ら、うち何%が輸出、何%が内需、こういうふうな計画はないのですか。  それからこれは違っているかどうかわかりませんが、三十五年度の計画で絹、スフ等の機械は十四・一時間稼働、人絹は十・九時間ですか、そういうことで計算されているのですか。
  71. 小室恒夫

    ○小室説明員 数字は全部ございます。ただし今お尋ねの点は私ちょっと記憶にありませんので、あらためて資料に基いて……。
  72. 田中武夫

    ○田中(武)委員 それでは資料を出して下さい。
  73. 堂森芳夫

    堂森委員 午前中の参考人意見にも、ほとんどの人から出ておりましたが、たとえば今日の機屋というものは、大メーカーあるいは大商社というものから賃織をさせられている、こういう状態であるわけであります。     〔委員長退席、中村(幸)委員長代理着席〕 そこで今日そうした産地業者が訴えることは、非常な過酷な条件をもって、それに対して抗議をすれば、お前の家でやらなくても他の工場へ行けば幾らでもやってくれる、こういうようないわばどうかつといいますか、大資本による圧迫が非常に強いということを訴えるわけであります。そうしてそれにもし抗議を申し込めば、もう仕事をくれないという状態になります。それでやむを得ないからたくさんの労働者をかかえ、またいろいろの事情もあって、泣き寝入りで、大メーカーあるいは大商社の思いのままになっておる。ひどいのになると、欠損が明らかであるようなものと幾らか利益があるものと抱き合せでもって賃織を強要する、こういう事態が次々と起っておるわけであります。これは事実だと思います。そこで現地では中小企業団体組織法でございますか、それによって組合を作って、今後団体によって交渉しようということになっておるわけでありますが、きょうどこの業者代表でありましたか、まるで大相撲とやせたいなか者との相撲のようで、どうも話にならぬという陳述がございました。こういうふうな実情に対して、政府はもっと組合の団結について指導といいますか、そうした相談相手になって、もっと強く発言していく必要がある。もちろんこれは業者の自覚から生まれてくるわけでありますが、現在そういうふうな弱い組合であるということに対して、政府は今後どういうふうな方策をとっていくつもりであるか、御所見を承わりたいと思います。
  74. 小室恒夫

    ○小室説明員 一昨年の夏、人件費等の関係で非常に高騰いたしまして、ただいまとは逆に高値で困った時代がございました。そのときに、この高値を抑制するという問題を中心にいたしまして、私どももあっせん役になって五者会談というものを開催いたしました。これは人絹メーカー、機屋輸出商それから糸商それから卸商というようなものの代表が集まりまして、いかにして糸価を安定させるかということを話し合い、また安い人絹糸を直接に流すというような方途もその際きめたのでありますが、そのうち市況は変って参りましたけれども、役所が関与した上で、関係者が寄り集まって大事な事項を相談するということは一つの慣例と申しますか、そういう行き方をとっております。最近また産別について買上機関を作りまして、買上機関の運用というものは、これは糸の出し値をきめ、また織物輸出値段をきめるという非常に大事な点が含まれておりますが、この買上機関には普通の理事会のほかに、つまり出資者の代表である理事者のほかに運営委員会というものを設けまして、その運営委員会の中にただいまあげたような機屋を含めた各方面の代表者を網羅いたしまして、そこで十分討議して、話し合いのまとまった線で糸値でもあるいは織物の出し値をきめていく、こういうようなことになっておりますので、私どもの見解としては午前中に団体交渉というようなお話もございましたが、実際上団体を代表して十分組合の代表者が意見を述べられ、またそれをわれわれも参加して討議も行なっております。ただ欠損のある加工賃を押しつけるというお話もありましたけれども先ほど来申しておりますように人絹糸メーカーの方も、実は糸一ポンド作れば一ポンド幾らという欠損を計上しているような状態でもありますから、やはりそういう状態での話し合いでありますので、どうしてもお互いに深刻な形になるということは、これは種々の情勢で、ある程度はやむを得ないというふうに考えている次第であります。
  75. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、繊維局長の答弁によりますと、原糸のメーカーも赤字だ、機屋さんも赤字だ、そういうことでは日本の、たとえば人絹なら人絹繊維産業はもう成り立たないのじゃないか、どうですか。現地の諸君はもし九月までそのままであるならば、ほとんどの人絹の機屋はつぶれるだろう、倒産するだろう、こう言っておるわけなのです。そうしますと、局長の答弁を要約すると、メーカーも赤字なのです。それから糸のメーカーも赤字だし、機屋さんも赤字というなら、繊維産業は成り立たない、こういうことになるのじゃないでしょうか。政府はそれをただ将来よくなるだろう、こう言って見ておられる、傍観しておられる、こういうことになるのじゃないですか。見通しはどうなるのですか。
  76. 小室恒夫

    ○小室説明員 原糸の変動はもうかるときもあれば損することもあるということは、ある程度はやむを得ない。ただ非常に重要な輸出産業でもありますし、非常にたくさんの従業員もおることでありますから、私どもとして別に傍観しているわけではないのでありまして、ただ、いかにも微力で対策がまだ効果を上げておらないということで頭を下げる以外にありません。
  77. 堂森芳夫

    堂森委員 今繊維局長と議論するわけじゃないのですが、そこで人絹の機屋さんなんというのは、そんなきのうは景気がよくて、きょうは景気が悪い——そうなまやさしいものじゃないと思うのです。非常な惨たんたる状態で、戦後いいときもあったでしょう。しかし戦後の歴史を見ておると大部分やはりよくないと思う。しかもこれは借金を借りておる。すでに戦時中の職業の転廃業、その後また借金をして、仕事を始める、こういうところもあるでしょう。また私の県の福井のように戦災があったり、あるいは震災があって、戦争を契機として二度の災害を受けた。これは特殊な事情でありますが、そうして借金を借りておる。それは商売であるからもうかるときもあるだろう、損するときもあるだろう、これではまるで繊維行政はないと言っても過言ではない、こう思うわけです。それは自由経済の日本は、特に世界でも珍しい古典的な自由主義経済を主張される、そうした性格の御答弁だからやむを得ぬといえばそうですが、しかしそうした惨たんたる姿は放置できないと思うのであります。繊維局長をそういうことで責めてみたところでどうにもならぬと思いますが、それからさっき話がありました買上機関、輸出振興株式会社ですか、これはある人たちに言わせれば、たとえば人絹糸の場合をとりますと、人絹織物の買上機関ですが、ある意味では人絹の原糸のストックによる資金の負担ですか、これをいわば振興株式会社の方に肩がわりして、そうして人絹糸のメーカーの方で助かっておるのだというような批評をする向きもあるくらいでありますが、この買上機関というものもおそらく七月から九月、この時期になってくると、買い上げの資金にも困ってくるのではないか、こういうことも心配しておる向きも、私がおととい、きのうあたり調べたところで、そういう心配が出るわけですが、こういう点は心配はありませんですか。
  78. 小室恒夫

    ○小室説明員 七—九月の業務計画もすでに立てておりますし、それについての資金の手当も十分見込みがあってやっておることだと思います。買上機関が資金難から行き詰まりになるということはないと思います。また人絹糸のストックを人絹織物のストックに切りかえたのではないかというような批評もあるというようなお話でありますが、この買上機関についても、実際は人絹糸メーカーが保証して、人絹糸メーカーの信用で金融しておるという面もありますので、そういう批評はあまり当らないじゃないか、ただ実際問題として人絹織物輸出が最近あまり回復しておりませんので、結果的に見て人絹糸のストックが減って人絹織物のストックがふえたという感じであるかもしれませんが、そういう批評は当らないじゃないかと考えております。
  79. 堂森芳夫

    堂森委員 私の時間の割当がそうありませんので終りたいと思いますが、先日の委員会で、私が政務次官にもお尋ねしたインドネシアの賠償としての人絹織物の問題であります。     〔中村(幸)委員長代理退席、委員長着席〕  これは北陸においては非常に強く要望しているわけです。もっともこの賠償という問題はもちろん相手があるのであります。また複雑な国際的な微妙な問題もあると思うのです。たとえば日本の業者が早く賠償をきめてくれ、きめてくれというような声をどんどんあげるということは、結局向うに足元を見すかされる、こういう問題もあるでしょう。でありますから、今政府としてそういうことが実現すると、そういうことは答弁しにくい点もあるかと思いますが、この間はよく相談をして答弁するという、当の政務次官は来ておられませんが、繊維局長、その後何か話し合いといいますか、そのことについてきょう答弁を願えるならば、一つ御答弁を願いたいと思います。
  80. 小室恒夫

    ○小室説明員 御質問の御趣旨はよくわかっております。答弁は、慎重にやれということでございますから……。
  81. 長谷川四郎

    長谷川委員長 松平君。
  82. 松平忠久

    ○松平委員 時間がありませんのでごく簡単に二つだけお尋ねしたいと思います。  午前中の繊維局長の答弁で、供給過剰が非常に多くなっておる、こういうわけでありました。そこで繊維産業設備等臨時措置法の規定によりますと、登録制をとって、それ以後は織機についても許可制度をしくのではないか、そう理解しておるのでありますが、そうすると業者からいろいろと——昭和三十年度、三十一年度、いわゆる神武景気のあのころ、増設のあれがあったというので、さっきあなたの説明によると、三十何パーセントから六十何パーセントに設備がふえてしまった、こういうわけで人ごとみたいに言っているわけですが、これはやはり繊維局長の責任じゃなかろうかと思う。それをどうしてやたらと許可してふやしたのか、この点の手続はどういうふうにやって、許可の標準というのはどういうところにあるか、需給の関係はどういうふうににらみ合せて許可するのか、その方針なり、今までやってきたことを承わりたい。
  83. 小室恒夫

    ○小室説明員 昭和三十一年に成立いたしました繊維工業設備臨時措置法は紡績設備と繊維加工設備を規制する法律でありまして、化学繊維織機は、実はこの法律で許可制にしたというわけじゃございません。実はスフ、綿につきましては非常な勢いで増設が行われる見込みでございましたから、昭和三十一年の春に私ども関係業界に呼びかけまして、ぜひ増設のテンポをゆるめてもらいたいということを社長全員集まっていただいてお話して、当時新聞記事になったこともございます。好景気のときに増設ということは、やはり事業としてはぜひやりたいということで、遺憾ながら勧告を聞いていただけなかった事実もございます。それから織機につきましては、先ほど藤原参考人が記憶違いで間違った印象をお与えしたと思いますけれども、すでに昭和三十年に綿、スフ織機については新増設制限の中小企業安定法による規制が実現しておりまして、あの法律のかけ込みという意味で綿、スフ織機がふえたということはございません。あの法律のいわゆるかけ込みと申しますものは、主として紡績設備についてあったのでございまして、私どもそのかけ込みをできるだけ少くしたいという意味で、あの法律の施行期日をできるだけ早くしたいというような希望もあったのでありますが、繊維機械工業その他に及ぼす影響というような面もございまして、結局施行期日が相当延びたようないきさつもありまして、まことにやむを得ないことだと考えておる次第でございます。
  84. 松平忠久

    ○松平委員 それでは織機その他について、今度はあの法律を手直しするというような考えを持っておられますか。このままにしておけば、ただ業者が増設をしてきて、困ったら国民の税金でもって買ってくれ、こういうことを言っているわけなんだ。これじゃどうもたまらないじゃないかと思うし、そこのところは規制をするか、計画生産をするか、繊維は相当計画性を持たせなければならないということになれば、何かそこに計画ある施策をしなければならぬ、こう思いますが、その点はどういうふうにお考えですか。
  85. 小室恒夫

    ○小室説明員 綿スフ織機絹人絹織機、毛織の織機、この三種類のものが現在の織機の大部分でありますが、これについてはすでに新増設禁止になっております。ただ先ほど来お尋ねがありますのは、合成繊維の糸を使って織物を作るという特殊の織機、これも野放しの状態に置くべきじゃないじゃないかというお尋ねでありまして、私どももただいまではこれを規制する方向へ法律の改正を検討しておる、そういうふうに御答弁したわけであります。
  86. 松平忠久

    ○松平委員 その点はあとの機会に譲りたいと思います。時間がありませんから次の問題に移りたいと思いますが、それは人絹においては五割五分の操短をしている。織機人絹は三割、今度は二割をやろうというようなことを言っておったのだが、これに対する税金、ことに固定資産税は一体どういうふうになっているか。自治庁の固定資産税の方の課長が見えているらしいですが、その方に、この固定資産税をそのままとっていくのか、あるいはこれを減免することになるのか、その辺のことをちょっとお聞きしたいと思います。
  87. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 自治庁市町村税課長の鎌田でございます。ただいまお尋ねになられました点でございますが、ただいま御指摘になられましたような場合に市町村がどういう税の徴収についての取扱いをするかということでございますが、これは御承知の通り市町村の自主的な決定にゆだねておるわけでございます。今私どもの方へ市町村の方から具体的に、こういう問題があってこういうふうにしたい、あるいはどういうふうにしたらいいだろうか、こういう具体的な相談もまだ全然受けていないのでございます。従いまして私どもの方でこの問題について積極的にどうこうということを内部的に定める段階になっていない実情でございます。ただ、今お話を伺っておりまして考えられますのは、ただいまのような場合でございますと、地方税法の第十六条二の規定で徴収猶予という制度がございます。これは納税者がたとえば事業の休止をいたしましたり、あるいは事業について重大な損失を受けたりいたしました場合には、一年以内の期間を限りまして徴収の猶予をすることができることになっておりまして、ただいまのような場合にはまさにそういう制度が発動せられてしかるべきじゃないかというふうに存じておる次第でございます。
  88. 松平忠久

    ○松平委員 猶予じゃちょっと違うわけなんだ。その固定資産を使わないんだから、その部分だけはとらないということにしなければ意味をなさないのであって、一年猶予してあと払えというのであったら、これは全然別の問題だろうと思う。今お聞きすれば、市町村の方から、こういう案件があってそれで減免もやむを得ぬだろうというふうに、自治庁に伺いを立てたという場合には、自治庁は大体これを認めるという御方針ですな。
  89. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 今の第一の点でございますが、この減免か徴収猶予かという点につきましては、実際問題といたしまして非常にむずかしい問題があろうかと思うのでございます。ちょっと議論になって恐縮でございますが、固定資産税の現在の成り立ちから申しまして、その固定資産を所有しておるという事実に担税力を見出しまして課税をする。従いまして、その資産が収益を生む生まないということを直接の課税の基礎に置いて考えるといった税でないものでございますから、今おっしゃいましたような問題が出て参りますと、たとえば造船の経費が非常に多くなる、造船機械が遊休状態になる、それをまけるか。あるいはまた倉庫等で遊休面積が多くある場合にはどうするかといったように、非常にほかに波及する問題もございまして、減免の問題につきましては私ども慎重に考えなければいけないと考えておる次第でございます。  それから現実に市町村の方から問い合せがあった場合にはどうするかという点につきましても、ただいま申し上げましたように市町村の方の実情を私どもまだ知悉しておりませんので、そのときの状況によりまして判断をいたさざるを得ない、こういうふうに考えておる次第でございまして、今一般的にそういう場合には許可するかどうか、こういう点につきましては、ちょっと御返答をいたしかねる状況でございます。
  90. 松平忠久

    ○松平委員 そういたしますと、これは今あなたの御答弁で伺いましたが、船の問題とか、あるいは倉庫の問題ということで、それとこれと同じケースとして御答弁になったわけでありますが、これは各業界が全部一致して、しかも政府の公布した法律に基いて調整規程というものを発動して、そうしてその許可を得て三割ふいならふいにする、こういうわけであるから、ただ漫然と倉庫があいておるから、それには税金をかけないという問題とは私は性質が違うと思う。これは自分たちが勝手に使わないというのではなくて、全部の業界が一致して使わない。しかもそれは法律に基いてその規定を発動してそういう結果になったわけであるから、この点については、自治庁としては考える必要がある。これが第一点であります。  それから第二点として、それがもしつぶれたらどうするか。つぶれたら固定資産税は払えないでしょう。だから自治庁としてはそういう場合に、当初の予定のごとく市町村税が入らないから、そういうために特別交付金制度があるんじゃないですか。特別交付税というものはそういうときにこそ使って——予定のごとく固定資産税が入らなかった分に対しては、政府が一割くらいの特別交付税というものを持っておって、それを当該市町村に交付するという制度ができておるはずなんです。そういうことから言ってもあなたの今の答弁は納得できない。これは今申しました二つの例からこれを類推してみても、当然減免措置を講ずるのが私は当然であると思う。その辺はあなたは担当課長だから政治的な発言をすることはできないかもしれませんけれども、しかし事態はそういう事態であるからお考えおき願わなければならぬと思うんだが、あなたのお覚悟のほどを伺いたい。
  91. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 今おっしゃいました点、だんだんに了解できるのでございますが、ただ先ほどから申し上げておりますように私どもの方で市町村のそういう実態をいまだ知悉しておらない状態でございますし、私ども今話を伺っておりまして、徴収猶予をもって足りるのではないかという気持を持っておりますものでありますから、なお通産省の方なり市町村の実情も調べさせていただきまして、一つ部内の方で方針をきめさせていただきたいと考えます、
  92. 松平忠久

    ○松平委員 この問題については業界からもずいぶん陳情があると思うんだが、繊維局長固定資産税の問題について、自治庁との間に折衝を開始したことがあるのかどうか、その点を伺いたい。
  93. 小室恒夫

    ○小室説明員 私どもの方から自治庁の方に、こういう問題があるので困っておるという話を通じてございます。まだそれ以上こまかく検討しているというふうにも申し上げかねます。
  94. 松平忠久

    ○松平委員 最後に、税金問題については市町村もまだよくわからぬと思う。市町村がそういう手続をやればあなたの方も何とか減免——猶予くらいのことは考えてもいいというようなことで考えているし、猶予したと思うんだが、私は猶予でなくて何とかそこらのところは減免を考えてやるというような親心をもってやらぬと危機はなかなか突破できないと思う。この際そういうことを特に希望として申し上げると同時に、地方からそういうことが出てきた場合には、繊維局においても自治庁においてもよく事態を見て、市町村の言うこともよく聞いてやり、親心をもってやるというようなことにしてもらいたい。船があいている、倉庫があいているというような問題とこれを混同しないようにやってもらいたい。少くとも国政の一つとして発動した結果生じたものであるから、その点の考慮を払っていただきたいということを、私は特に要望して終ります。
  95. 長谷川四郎

  96. 松田竹千代

    松田(竹)委員 せっかく繊維局長がおられますから……。繊維の国として古くから私の方では繊維産業が非常に発達したところでありますので、機業も盛んでありますが、紡織あり、染色あり、これに関連して木管業者なりシャットルなりいろいろの繊維関係の産業も多い土地柄でありますので、繊維産業の不振は直ちに国全体、地方全体の不振になっておる。私ども数十年そこにおって、いやでもおうでも繊維事業に関心を払わざるを得ないのでありますが、今回の繊維業者の不振の実態は相当深刻なものがあって、今朝来の参考人の説明を聞くまでもなく、われわれ特に身に感ずるわけであります。繊維局長の方では、担当の通産の当局として今度の機業の不振を一時的の現象と見ておられるか、どういうふうに見ておられるかということを、ちょっとお聞きしたいと思います。
  97. 小室恒夫

    ○小室説明員 昨年来もうすでに一年半ぐらい繊維不況が続いております。私どもとしては本年一—三月に何とか安定させたいと考えておったんですが、これはインドネシア向けの輸出が不振であること、あるいは暖冬であるというようなこと、それに操短が十分守られなかったというようなことがありまして、市場の安定ができませんでした。四—六月に何とか底入れさせてみたいと思って、いわゆる繊維の総合需給対策を打ち出し、原綿原毛の圧縮というようなことまで加えて全体としての繊維のバランスをとりたいと思ったのであります。これはだいぶ一時きき目があって、好転したかに見えたのでありますが、五月の半ばごろに中共貿易がとまるようなことが起ったので、そういうことが動機になってまた少し低迷して参りました。ちょうどそのころ輸出の方が少し契約が落ちてしまいました。この輸出のウエートが非常に繊維産業については大きいものでありますから、輸出が今後どうなるかということで、実は七—九月で安定できるかどうかが——輸出が正常の状態で伸びて参れば七—九月でおおむね繊維市場は安定するのじゃなかろうかというふうにも私は思っております。ただ輸出の面については非常に重大な関心を持って注視しておりますけれども、今のところまだはっきり確信を持って好転するということもなかなか言い切れない。大勢として非常に悪いわけではありませんが、やはり綿布等については悪いように思う。そういうことでありますので九月、十月ごろには安定することを期待しておりますが、はっきり言い切ることも困難だと思います。
  98. 松田竹千代

    松田(竹)委員 先刻の繊維局長のお言葉のうちに、日本の繊維輸出、諸外国と比べて圧倒的の分量を占めておる。従ってこの量を多々ますます増進していくという施策は危険であるというようなお言葉があったように思いますが、それも確かに一つの見方であるかもしれませんが、われわれ繊維の多い国柄としては、そういうお言葉はまことに気にならざるを得ない。そこで私はずいぶんこれまででも繊維関係のいろいろの政府の施策、統制その他の状態を見てきておりますが、繊維関係の大きな部門は、小さい部門もそうでありますが、かつては染色は織屋にいじめられておった、今は染色がかわって織屋をいじめるというようなことで、いい品物が外国に出ないというようなことがしばしば行われたのであります。今日は検査の面も非常に厳重になっていて、そういう点は、だいぶ少くなったようでありまするが、少くとも機業家の立場として、全国三十数万の織機、一万七千の業者というものは、わが国繊維界の大きな一翼をになっているわけであって、これは輸出貿易にも多大の貢献をしてきておるものであると見なければならぬ。そういう見地からしてどうしてもこの産業をますます発達せしめていくためには、関係部門いずれもできる限り公平なと申しますか、いずれも採算がとれていく行き方で政府の施策はやっていただかなければならぬと思うのであります。今日は紡績界必ずしもよくはないと言われるものでありますけれども、中にも今度の問題となっておりますように機業家の立場というものは、特に歩の悪い状悪になっておりはしないか。それで果してこの繊維産業全体の伸展を期することができるかどうか、その点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  99. 小室恒夫

    ○小室説明員 今日ただいまの不況に際して、最も深刻な状態になっておるのが織布部門、特に綿スフの織布部門と絹人絹の織布部門であるというふうに考えております。
  100. 松田竹千代

    松田(竹)委員 それに対して通産当局として直ちにとってやれる施策があるのじゃないか、そういうことはありませんか。
  101. 小室恒夫

    ○小室説明員 いろいろなことをやっておるわけでありますが、特に最近の例で申しますると、綿スフの織物の部門の不況というものは、何と申しましても、綿織物在庫が非常に多いという状態でありますので、その在庫の相当部分をかかえております紡績業者に対して、そういうものを手持ちで塩づけというか凍結しておいてしばらく市場に出さないでもらいたいということで行政指導をいたしております。これは近く具体的にこういうやり方でこれだけの数量を凍結するということがきまる運びになると思います。それは一例でありますが、危機突破対策なりその他の形で、いろいろきょうの参考人の御意見、御要望などいずれも当業者としてはごもっともな要望であろうと思いますので、そのうちで即刻にできるものは即刻にも実施していきたい、こういうように考えておるわけであります。
  102. 松田竹千代

    松田(竹)委員 いろいろと当然お考え下さっておることと存じますが、たとえば紡績においてはいろいろの恩典と申しますか借款綿といい、あるいは設備割当であるとか、その他のいろいろの特典を持っているように思うのでありますが、これと対比して、むろん織屋でありますから綿花は必要とするのでありますが、それに関連して少くとも糸を公正な値段で割り当ててもらうというようなことはお考えになりませんか。
  103. 小室恒夫

    ○小室説明員 主要原料である綿糸、あるいは広くいえば原糸が適正な値段で機屋さんの手元にいくということは非常に大事なことだと思いますので、先ほど絹人絹の例について申しますと、人絹糸価格についてたびたび関係業者と会合を持って役所も参加して、いろいろと意見調整をしておるということを申しましたが、綿糸についてもむろんそういうような考え方で善処していきたいと思っております。
  104. 松田竹千代

    松田(竹)委員 紡績屋さんでもやはり七万台という織機を持っておるんだが、同じように織機を持って織物を織る場合、機業専業者と非常なコストに開きがあるという状況になっておる。片や巨大な資本を持ってあらゆる恩典を持ってやっておる。片や、小資本で、かつて持っておった特典も今日は剥奪されておるような状況が今日の不振の一つの大きな原因になっておるのではないか。少くとも彼らの今朝来叫んだようなあの苦境に立ち至った一つの原因は、そこにあるのじゃないかと思うのでありますが、そういうことに対してどうお考えになりますか。
  105. 小室恒夫

    ○小室説明員 紡績の兼営織布部門と専業者の織布部門とコストの比較をする場合に、簡単に紡績の方が安いというふうにも割り切れないのではないか。専業者にはやはり専業者でなければできないような、一例をあげれば糸染のものだとか特殊のものがずいぶんございます。賃金水準から言えば、専業者の従業員の方が低いということもございます。能率の点でも、専業者の方は最近ずいぶん新しい機械も入っておりますから、簡単にどっちが優でどっちが劣とも言いかねると思いますが、ただ金融力と申しますか、お金を借りる能力というものは、非常に大事なものでありますけれども、そういう点で紡績各社と専業者の間に非常に差があるだろうと思いますので、そういうことで不況を乗り切る際に、大きな差異が現われやしないかということは懸念しておるわけであります。
  106. 松田竹千代

    松田(竹)委員 紡績となると大きな産業として経営の面においてもそれぞれ大きな経営方針を立ててやっていくことができるのだが、織屋さんの場合は多くはワンマンであります。そこに一つの強味もあるが、そこにまた経営面において不十分な面もあるやに思う。近年はしきりに設備の近代化と言われておりまするが、私は経営といいますか、マネージメントの高度化といいますか、そういう面においても、相当——相当じゃない、これからはますますその方面に意を用いていかなければならぬと思いまするが、通産省としてはこの方面にどういう指導をしておられまするか、伺いたい。
  107. 小室恒夫

    ○小室説明員 これは広く言えば、生産性向上の問題あるいは合理化の一環の問題として経営の態勢をできるだけ合理化していかなければならぬ問題であると思いますが、これは私どもの方で言いますと、企業局の方でそういう問題を担当しておるわけでありまして、生産性向上本部の仕事の一環として、繊維産業としても、アメリカあたりに実っは人を派遣いたしまして、向うの経営ぶりなども見て帰ってきて参考にしております。おっしゃるように中小企業の経営の面にはまだまだ改善しなければならぬ余地が相当あって、やはりその辺の経営の不備な点が不況に対して抵抗力のない結果になっておるということは、やはり相当あるんじゃないかと思います。繊維局としても、そうい点もう少し勉強してみたいと思っております。
  108. 松田竹千代

    松田(竹)委員 繊維の海外市場の問題でありますが、今年はジェトロを初めその他、貿易振興のために相当の金を用意してかかっておるわけであります。ジェトロ過去の実績から見ても、相当の仕事ができているように思いまするが、しかし私どもこの仕事を見ていて、なおはなはだしく不十分に思うことがある。それは商社なども特別の市場開拓であるとかいうことで、綿花の割当をもらっておるやに承知いたしておりまするが、日本の商社が市場の開拓をやっておらぬとは申しませんけれども、それが果してどれだけの犠牲を払っておるか、私は商社の悪口を言うわけではありませんけれども、日本の商社としてははなはだしく私は外国の商社と比べてみて、その市場開拓に対する熱意なり努力なりやり方が足らないと痛切に感ずる。たとえばプライウッドのベニヤ板の問題のごときも、私はアメリカへ行くたびごとに外国の商社から非常な苦情を聞く。これは名前をあげるのは遠慮したいと思いますけれども、日本に幾つも支店を持っておるアメリカのゲッズ商会のごときものからも、日本のやり方について痛烈な非難を受けたわけであります。それはこの市場の開拓は自分らがやった、日本の商社のどこか一軒でもプライウッドの問題について国会にロビー・ウォークをやったことがあるか。われわれがみなそれをやって、そうしてこの市場を開拓したんだ、そうしてこれが相当もうかる仕事であると、日本の商社がやってきてシシの分け前を取ろうとして、どんどん値段を下げてやっておる。こういうことをやられてはわれわれは立つ瀬がないではないか。しかも日本の商品ばかりわれわれは売っているのではなはだ困る、こういうような苦情を聞くわけでありますが、これは日本の商社に対しても私は時々その直接の商社に注意を与えたわけであります。そんなことでやはりそれをやめてくれという商社はありません。これらに対してもやはり特に通産省はそういうことに対して意を用いて適当なる指導を与えてもらわなければ困る。これはジェトロも、たとえば一例をあげましても相当の人間を使っているけれども、まだ国内に金をよけい使い過ぎていやしないか。それからいろいろ考えられること、ニューヨークという大きなところに、中心にみんな集まっておる。ほかへ出ていくことはあまりやらない。そうして出ていく場合でもたとえばイタリア、ドイツあたりの商社の出先のやり方は——つまりジェトロのやり方は役所みたいなやり方をしておる。もっと市場に出てほんとうの開拓をやったらどうか。ただ様子を見に行く、情勢を視察し報告をするということではなしに、イタリア人あたりは大いに行商のまねのようなことをやっている。出張員は品物を現実に持っていって見せる。そうして直ちにこれを売る。日本でなぜそれをやらぬかとジェトロに聞いて見ると、商社に文句が出る。商社から文句が出るほどどんどん売れていけばいい。売れていけばジェトロは何も商行為をやる必要はないのだから、商社に渡してやればいい。そういうことを主張するゆえんのものは、向うの買う方の側はそれを要求しているのにそれに応じないようなやり方をやっておる。こういうことはよほどあなたの方で御注意をなさって、一つ海外市場の発展にほんとうに力を入れてもらわなければならぬと私は思います。  これは一、二の例にとどまりませんで、幾多こういうことがたくさんありますが、私は時間を多くとるのを避けますからこの辺でやめておきますが、この点についても今後ジェトロの仕事をして、ますます日本の市場開拓のため、発展のために有用に用いていかなければならぬと思います。  それからどこの国でも海外輸出というものに対しては相当の広告——日本は広告を使っていないとは申しませんが、どこの国でも売金の五%くらいのものはみんな使っておる。宣伝広告、PRのためにもっと政府といわず、業者といわず、この方面に力を入れてやらなければならない。  それから常に外国の人々から、何だ日本はみんなまねばかりである。商品でも何でもすべてまね、オリジナリティのないことははなはだしいということが始終言われる。この間豪州の人々とも会ってきましたが同じ話。これはあなたの御心配なさるように日本の繊維がどんどんと大量に行くことは心配だという点から考えてみましても、これからの日本の製品はますます高級化していかなければならない。そうして他の追従を許さぬ日本独得のオリジナリティを持っておるものにしていかなければならない。簡単なものであるが、日本の市場研究ということは実に幼稚千万な話であって、かりにネクタイ一つとってみても、向うに行くものは二インチか三インチ長くしなければならないのですが、そういうものは行っていない。イタリアでは日本のシルクを使ってネクタイを出しておるが、それがみな非常な高価で売れておる。日本の商品にはりっぱなものがある、おもちゃにしてもりっぱなものがあるが、一見して向うの最高級のものよりちょっと遜色がある。必ずちょっと遜色がある。向うのものよりちょっとでもいいということになると、向うの値段より相当高く売れる。日本の品物であるから買うというのではなく、いいものならば高く買うのです。そういう方面に対してジェトロを十分にこれからと使って、実績をあげてやるようにしてもらいたいということをお願いいたしたいと考えるのであります。繊維の問題に関して特に私はその欠陥を抱かざるを得ない。  それからむろん日本の外交面で、日本の大使館なりあるいは向うの国務省といろいろ関税問題などで渡り合って話を進めておりますけれども、しかし一面もう一つどうしてもアメリカにおきましては特に国会に対するPRをよくやらなければならない。ところがこれはほとんどやっていないといっていい程度であります。たとえば食器の問題でもあれだけ問題になってアメリカの業者から関税委員会の方への働きかけが強かった。国会への働きかけが強かった。しかし日本からあの業者がみずから行ったことが非常にセンセイションを巻き起して、アメリカの業者要望するよりははるかに緩和された点で、大統領が裁可したというようなことを見るにつけても、こうしたことがいかに効力を発するかということは容易に考えられる問題であると考えるので、その点一つ特に希望を申し上げ、お願いを申し上げて私の質問を終ります。
  109. 長谷川四郎

    長谷川委員長 明七月二日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時十六分散会