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1958-06-27 第29回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十七日(金曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 小林  進君    理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君       小川 半次君    加藤鐐五郎君       藏内 修治君    河野 孝子君       齋藤 邦吉君    田邉 國男君       谷川 和穗君    中村三之丞君       中山 マサ君    藤本 捨助君       柳谷清三郎君    亘  四郎君       赤松  勇君    伊藤よし子君       大原  亨君    岡本 隆一君       河野  正君    多賀谷真稔君       堤 ツルヨ君    山口シヅエ君       吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 橋本 龍伍君  出席政府委員         厚生政務次官  池田 清志君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 六月二十六日  委員鈴木一君辞任につき、その補欠として吉川  兼光君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生行政に関する件      ————◇—————
  2. 園田直

    園田委員長 これより会議を開きます。  前会に引き続き厚生行政に関する大臣説明に対する質疑を行います。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 昨日、新しい医療報酬支払い方について政府甲乙二表というものを作られておられるようであるが、一体その甲乙二表というものはいかなる基本的な原則に基いて作られたものであるのか、それを説明していただきたいという質問に対しまして、大臣の方は、それはすでに前の大臣のやっておることであるので自分はその通りにやります、こういうことから問題はもつれておったのでございますが、昨日政府の方より、甲乙二表についてその内容を御説明いたすという御返答がありましたので、われわれ社会党といたしましても再度本日の委員会におきましてその内容の御説明をいただいて質問をいたしたい、こういうことに相なったわけでございます。  そこで一応われわれの手元には健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法という書類が配付されております。従ってでき得べくんばこの書類の要点を簡単に事務当局にでも御説明いただいて、その上で質問をさせていただきたいと思いますが、委員長、できれば短時間にしろうとわかりのするように、まず骨子の説明だけは願いたいと思います。
  4. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 昨日私のお答えが不十分でございまして、まことに恐縮でございました。事務当局から、ただいまお話のありました点について御説明いたさせますが、その前に概略の方針だけは——これは配付の資料等で御承知だと思いますが、簡単に私から申し上げることにいたしたいと思います。  今回の診療報酬の改訂は社会保険医療の適正な内容を維持いたしまして、来たるべき国民皆保険の円滑な実施をはかるとともに、医療担当者の待遇の改善をはかることを目途といたしまして新医療報酬を八・五%程度引き上げ、かつ点数及び単価を同時に改訂することを内容とするものでございます。現行点数表は物と技術を混同して組み立てられておりますために、不合理な点が多くありました。医療担当者所得は、その提供した医療の価値に相当したものでなく、これがまたわが国の社会医療内容のゆがみを招来しているゆえんとなっているのであります。従って今回の診療報酬改善点数表改正によって行うことといたしまして、この場合医療技術を特に尊重して評価いたしますとともに、あわせて社会保険医療の取扱い上、事務簡素化をはかりますために、点数表全面的改正を行うことにいたしたのであります。こうした方針のもとに、その方法といたしまして甲表乙表というものを作りまして提案をいたした次第でございます。これにつきましての説明政府委員の方からいたさせます。
  5. 高田正巳

    高田政府委員 御説明を申し上げます。お手元にお配りをしてあります詳細な点数表よりも少し小さい版で「新点数表内容」というものがむしろ御説明のために便宜かと存じますので、これに従って御説明申し上げます。(「まだ配付されてない」と呼ぶ者あり)まことに恐縮でございますが、部数が足りないそうでありますから、すぐ追加、取り寄せて御配付申し上げます。  これに大体の中身が書いてあるわけでございますが、そこの二というところから実質的な問題が書いてあるわけでございますが、「甲表医療技術に重点をおいて点数が定められており、この点数表によると現行より医療機関収入は平均して八・五%の収入増になるようになっている。」これは、個個の医療機関は八・五%になりませんけれども、全医療機関を平均して、その受け取りの増加は八・五%になる、こういう意味でございます。  それから「乙表点数組み立て現行点数と全く変りがなく、これによれば、どの医療機関も大体八・五%の増収となるようになっている。」これはあとの方で御説明を申し上げますが、この「どの医療機関も」という表現は少し不正確でございます。甲表のように個々医療機関増収程度が違うということはございませんが、甲地医療機関乙地医療機関とでは差があるのでございます。終りの方に書いてございますが、乙地医療機関は大体どの医療機関も九・五%増くらいになります。それから甲地医療機関は六%弱であったかと思いますが増になります。それで甲地乙地加重平均いたしますと全体で八・五%の増になる、こういうことでございます。しかし、甲地医療機関相互乙地医療機関のそれぞれにつきましては、ばらつきはないということになるわけでございます。その中身あとの方で御説明申し上上げます。  それから三に参りまして、単価事務簡素化のために十円といたしました。  それから四に参りまして、甲地乙地地域差現行では十二円五十銭、十一円五十銭でございますので、その差が大体八・五%でございますが、これを圧縮いたしまして、甲地乙地で算出した診療報酬に五%をプラスする。従って地域差現行の八・五%が五%に圧縮されたという格好になるわけでございます。従ってそれだけ乙地値上りの幅が広いということになるわけでございます。従ってこれを単価に直して考えますると、乙地においては現行単価を約一円十銭程度引き上げた結果となります。  大体これらの点が総括的な問題でございまして、次に昨年の九月に中央医療協議会に諮問をいたしました際に、事務当局試案として添付をいたしました案、これはすでに当委員会でも御説明を申し上げ、いろいろ御論議のあったところでございますが、その九月の事務当局試案と今回私どもが告示しようとしておりまする案との相違点をその次の五番のところにあげております。まず甲表についてその相違点を申し上げてみますれば、甲表においては八・五%という検定に使用した昭和三十年三月の社会医療調査基礎といたしましたが、その後の診療行為頻度変化を考慮いたしまして修正する必要を認めました。すなわちこの点は医療協議会におきましても双方から疑義が持たれたと指摘された点でございまして、私どもが九月に出しました試案が全国的に八・五%の増収になるかならぬかということについては双方から疑義が持たれたわけでございます。双方というのは、もう少しふえるんじゃないかという疑義もありまするし、いや八・五%にならぬぞという疑義両方から表明されたわけでございます。それでその点をいろいろ検討いたしまして現実の当てはめ作業等をやりましたり、あるいはまた新しい最近の資料を用いて補正をいたしましたり、いろいろ考慮いたしまして、大体一般医科においては二・九%、歯科においては二・二%程度どうも足りないという見当をつけたのでございます。それでそういうものを増額の目標といたしまして、九月の事務当局試案修正をいたしたわけでございます。その修正点の第一ページの五というところのイを今御説明いたしておるわけでございます。それでその修正点中味はどんな点を修正したかということにつきましては、一ページの終りの二行目から二ページ、三ページにかけて、ずっとその修正点のおもなるものを掲げてございます。このほかにもこまかいものはいろいろあるわけでございますが、ずっと並べて記載してございます。それから三ページの終りの二行目から、ロといたしまして、乙表について修正をいたしました点を記載してございます。  これを要するに甲表におきましては、その点数表の立て方というものにつきましては、九月の案をそのまま踏襲をいたしておりますが、ただもう少し増さなければいけないという結論に到達をいたしまして、そうしてそこに書いてあるような方法によりまして増収を来たすようにしたということでございます。乙表につきましては、九月の案よりは考え方基本は変っておりませんけれども、若干単純化したと申しますか、非常に明快に、だれにもわかるようにいたしたわけでございます。「乙表においてはすべての項目で現行診療報酬より少なくならないようにした。そのために点数の端数を小数点以下一位までのものとした。」それで中味といたしまして、「(一)すべての診療行為について、甲地乙地を平均して現行より八・五%の引き上げとなるようにし、甲地乙地地域差を五%とした。従って、乙地においては現行点数に一二円五九銭を乗じたもの(甲地は一三円二二銭を乗じたもの)とした。(二)投薬注射処置歯科処置を除く。)、補綴の項については前項方式によらず、甲地においては現行のままの額とし、乙地はそれより五%少い額とした。従って乙地においては現行点数に一一円九〇銭を乗じたもの(甲地は一二円五〇銭を乗じたもの)とした。この結果は乙地現行より三・五%の引き上げとなっている。(三)初診料及び入院料前項によって生ずる差額をもって特に引き上げることとし、初診料を一〇〇円(現行四六円の一一七・四%増)、入院料を一八〇円(現行一六一円の一一・八%増)とし基準看護加算額甲表と同様九十円、六十円、四十円とした。」これをわかりやすくお話しを申し上げますと、こういうことになるわけでございます。今回の乙表点数表は、現行点数表そのままでございます。そうしてそれを一円ずつ引き上げますと、大体八・五%増に全般的になるわけでございます。それと同じ結果を来たすように、しかも地域差を五%に縮めますと、乙地単価は一円上げた場合には十二円五十銭になるのであります。それか十二円五十九銭、九銭よけいになる。それから甲地は一円上げれば十三円五十銭になるところでありますが、それが十三円二十二銭になる。すなわち乙地においては、一円上げたのよりは九銭値上りの幅が大きい。甲地においては、一円上げたのよりは二十八銭値上りの幅が少い、こういうことになるわけでございます。これはなぜそうなりますかと申しますと、甲地医療の量は、いわゆる総点数は、全体の大体二四%でございます。簡単に申し上げれば、乙地が三で甲地が一の割合でございます。従って、甲地では十三円五十銭から比べますと二十八銭のマイナスになり、乙地は三倍ございますので九銭の引き上げということになる。加重平均をしますと、そういうことになるわけでございます。それで、そういうことになりますので、現行点数にすべて、乙地におきましては十二円五十九銭をぶっかけ、甲地におきましては十三円二十二銭をぶっかけて、そうして金額を出したということになるわけでございます。ただその際に注射投薬、それから簡単な処置というふうなものにつきましては、それだけの単価引き上げをいたしませんで、甲地現行単価十二円五十銭に据え置いた。今日でもここには非常にもうけが入っておりますので、それは現行よりは引き上げないで、そのまま甲地現行くぎづけにした。そうして乙地はそれより五%ダウンの、十一円九十銭にした。こういう注射投薬処置につきましては、第一段に申しました原則をはずした単価をぶっかけておるわけでございます。この点は、九月の事務当局試案によりますと、注射投薬処置というふうなものは乙地現行単価十一円五十銭にくぎづけをしたわけでございます。それで甲地はそれにプラス九%をいたしましたので、甲地医療機関は、注射投薬の部面につきましては三・五%現行より安くなるということに、九月の試案はなっておったのでございます。ところが、今回の告示案はそれを直しまして、先ほど申し上りたように、甲地を十二円五十銭というところに据え置いて、乙地をそれから五%下げたので、言葉をかえて申しますと、甲地注射投薬については現行収入と同じ、乙地においては現行より三・五%増額になる、こういう結果になるわけでございます。この点が九月の試案と若干異なっているところでございます。注射投薬処置でかような措置をいたしましたので、従って、先ほどの乙地十二円五十九銭、用地十三円二十二銭の単価と比較いたしますと、ここに余裕財源が出て参るわけでございます。その余裕財源を全部初診に持っていった。そうして初診は百円にした。初診と、入院のときには入院料でございますが、同じような意味でございまして、それを全部初診料入院料に持っていった、こういう操作をいたしたわけでございます。従って、この方法によりますと、医療行為頻度がどう変っておりましても、増収になることに影響はないわけでございます。それから、どの医療行為を取り上げてみましても、現行より安くなったものは一つもないということになるわけでございます。用地注射投薬処置現行にとめ置かれて、乙地は三・五%上ったということになるわけでございまして、現行のものより下るものは一つもない、こういうことになるわけでございます。  その具体的な算式が七ページのところに、ワクの中に入れて書いてあるわけでございますが、上のワクに、初診料百円、入院料、食事なし、百八十円。これは先ほど御説明をいたしましたように、投薬注射処置補綴、そこに書いてありますところから出て来た財源をかき集めて、その金額を出したわけでございまして、その下の投薬料注射料処置料補綴料というものにつきましては、現行点数かける十一円九十銭という算式金額を出したわけでございます。従って、右に書いてありますように、これらは乙地におきましては現行の三・五%になる。ところが、甲地はその五%増し、すなわち十二円五十銭を乗じたもの、現行単価据え置きということでございます。そうして、その他のすべての医療行為につきましては、その下の囲いにございますように、現行点数に十二円五十九銭を乗じた。甲地は五%増でございますので、十三円二十二銭を乗じたものと同じ結果になる。そういたしますと現行金額よりは、乙地におきましては、右に書いてございますように九・五%の増になる。甲地におきましては、十二円五十銭と十三円二十二銭の開きでございますので、約七十二銭の値上げということになりますので、大体六%弱の増になる、こういうことに相なるわけでございます。  乙表につきましては、以上申し上げたような点が、昨年の九月の試案と変ったところでございます。これは、考え方基本は変っておりませんが、やり方が若干変っておりますので、少し詳細に御説明を申し上げたわけでございます。  それから、四ページの六というところから、「新点数表の特長及び主な内容」というものが、ずっと記載してございます。このことにつきましては、イ、甲表といたしまして記載してございますが、この甲表におきましては、九月の試案と思想的には、またその組み立て方も、全く同様でございます。それで、おもな費目につきまして、(二)以下に四ページの終りから六ページにかけて、例を列挙してあるわけでございます。乙表中身は、先ほど九月の試案とこう違っておりますということに関連をいたしまして御説明をいたしました通りのことでございます。そのことが七ページ以下に書いてあるわけでございます。  事柄が非常に専門的と申しますか、わかりにくいことでございますし、なおまた説明も上手でございませんので、御理解をいただきにくいかと思いましたけれども、以上御説明を申し上げまして、さらに御質問によってお答えをいたしたい、かように考えます。
  6. 滝井義高

    滝井委員 新点数内容については、今大臣並びに保険局長から御説明をいただきました。この内容のこまかい専門的な点につきましては、いずれ機会を改めてゆっくり検討さしていただきます。本日は新しい点数表の中における、どうも理解しにくい二、三の重要な点について大臣並びに大臣の御答弁のできかねるところは事務当局でけっこうだと思いますが、質問をしてみたいと思います。  そのまず第一の点は、昨日以来御質問を申し上げております甲、乙二表の新しい点数表作成に当ってこの基本的な原則というものは、一体どういうところに置いて立てられたのか、これをまず私は御説明を願いたいと思います。これは大臣一つお願いしたい。
  7. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 物と医術を混同している点を是正いたしまして、できるだけ医療担当者医術を高く評価して参りたいというのを基本原則として立てたのであります。
  8. 滝井義高

    滝井委員 基本的な原則は、物と技術とを分ける、こういうことでございます。それが一番の大きな柱であろう、こう思うわけですが、大臣、そのほかには何もないのでしょうか。
  9. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 政府委員から答弁いたします。
  10. 高田正巳

    高田政府委員 ただいま大臣が御答弁になりましたように、できるだけ物と技術を分けて評価をして、そうしていわゆる医師の専門技術というものはできるだけ尊重をして高く評価をし、物は、その物の値段そのものを払うというふうにいたそうということが一つ基本原則でございます。これが全体を通じます基本原則でございます。ただそのことは、甲表乙表によりまして性格が違いますので、十分に達成されております表とそうでない表とがございますけれども、できるだけそういう方向に向っておるということが一つであります。  それからいま一つは、この際できるだけ社会保険医療関係者事務的な負担を軽くいたそうということをねらっております。しかしこの点は、乙表現行点数の組み方と全く同様でございますので、大してその点が達成されておりませんけれども、ただ単価を十円にまるめたというところでややその趣きを出しておりますが、甲表につきましては、これによりまして相当事務簡素化される、こういうふうになっておるわけでございます。  それからさらに地域差、これはいろいろ御議論のあるところだと思いますが、私どもはまず今日の地域差というものはどうも意義が薄れてきているのじゃないかというふうに考えてきておりますし、また関係者、ことに医療担当者の中からそういう御意見を正式に、あるいは非公式にいろいろ拝聴をしておりますので、できるだけこれをなくしたいという気持を持っておるわけであります。これを一挙になくしますことは非常に無理でございますので、これを圧縮をして五%程度にする。これを全体を貫いた一つ基本原則といいますか、柱といいますか、そういうふうなものとして考えておるわけでございます。  大体以上のようなものがおもなるものであろうと存じます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 この医療費体系というものが具体的に問題にされ始めたのは二十九年からでございます。二十九年以来政府医療費体系基礎として、日本医療診療報酬形態をなしておる点数単価のこの方式というものを再検討するに当って一貫してとったものは、今大臣から御説明のあった通り、物と技術とを分けるというこの基本原則に貫かれて参りました。同時にその基本原則を貫くに当って、第二にとった原則というものは、各医療機関所得変動を与えないというこの原則をとってきたわけであります。で、それは二十九年十一月における医薬分業の前段階として現われてきた医療費体系のもとにおいても、まず新体系への移行に当っては総医療費変化を与えないのだ、しかも総医療費変化を与えないばかりでなく、各種の医療機関所得に著しい変動を来たさない、こういう原則を貫いてきた。これは同時に三十年の、高田さんが保険局長になって担当するようになったいわゆる十二月における医療費体系に基く新点数においても、その方針をとってきた。たとえば当時の新点数表作成基本原則を見てみましても、現行点数から新点数へ移行する時点においては、総医療費並びに社会保険等種類別及び医療機関種類別医療費に著しい増減を来たさないようにする、これが物と技術とを分けるという第一原則に次ぐ第二の原則になっておるわけです。ところが今回の三十三年六月の案によりますと、甲表においては、その甲表をおそらく採用するであろう医療機関の総和においては変化はないという、こういう形になってきている。乙表においてはおそらく今と変らないだろうという、こういう二つのものに分れてきておるということなんですね。従って私たちは日本医療診療報酬支払い形態というものを改める場合には、それが甲表乙表という二つのものをとる限りにおいては、甲乙両方においてやはり一貫した原則というものがその底に流れておらなければならぬと思う。そうすると、物と技術とを分けるという原則というものは、甲表においては非常にシビアーに貫かれてきたが、乙表においては不完全だという形が出てきておる。これはあと質問します。それから、大事な第二の原則である所得変化を与えないという点については、甲表においては形式的にそういうことかもしれないけれども個々医療機関を見るならば、非常なアンバランスが出てくるということなんです。たとえば具体的に言ってみますと、結核療養所なんかを見てみますと、今まで手術をやらずに、具体的なたとえばパスとかマイシンという化学療法中心とした結核療養所と、それから外科的な手術をどんどんやる療養所を比べてみますと、化学療法中心としてやっておった病院、もし甲表をとるとすれば、その化学療法パスマイシンを使ったら損になります。病院は破産してしまって、昔の大気安静療法に返ることは必至です。ところが一方外科手術をどんどんやる病院というものはうんともうかってくる。こういうアンバランスはもう目に見えてできてくるのです。それから診療報酬平均治療日数と申しますか、診療報酬を請求する場合に、乙表の平均的な治療日数がまずまず五日くらいのものは非常にもうかります。ところがちょっと長引くものは損をしてきます。こういう形がはっきり現われてきているわけなんです。従ってこの医療機関それぞれの状態を見ると非常なアンバランスが出てきて、二十九年なり三十年の医博費体系基本的な原則として貫かれておった第二の原則というものは、今度のものでは非常に薄らいでくる。従って今の原則の中には局長さんは御説明にならなかったと思う。ところがこれは曽田さんが粒々辛苦して医療費体系を作ってきて以来、それは一貫してとってきたところなんです。私どもは、総医療費ワクを縮めておったのではいけないのでお破りなさいといって、どうにか破ってきたが、医療機関所得変動を与えるということはやはり問題が出てくると思う現在米価審議会米価の問題が非常に論議をされております。ところがあのパリティ方式というものだけでは、もはや現在の農村の要求を満たすことができないというので、新しく登場してきたのは何かというと、生産費・所得補償方式というものが出てきている。これは単に生産費を償うだけではない。すなわち農家の経済を安定するためにはやはりそこに所得を補償するという米価を作らなければならぬというのが新しい問題として米価審議会の問題になってきていることは局長も御存じの通りです。医療費の問題においても同じです。単に医療というものが拡大再生産をされずに再生産をされる姿でおるならば、医療機関というものは日進月歩の医学の進歩に耐え得ないことになってしまう。そうすると、当然点数単価改正する場合においては、単に医療機関が再生産をするばかりでなく、拡大再生産をするといわなくても、少くとも生活安定ができるという米価における所得補償の方式というものがある程度考えられなければならぬわけです。そういう見地から考えてみると、物と技術とを分けるというその大原則の底流には、現在の所得というものに大きな変動を与えないという二十九年以来一貫して貫いてきたその原則というものは守らなければならぬと思う。しかも八・五%を引き上げるならば、その八・五%の引き上げの恩恵というものが全医療機関に均霑する前提というものが貫かれなければならぬと思う。これが貫かれておるかどうかということです。これは今の内容説明では貫かれていないことになる。この点きわめてわかりやすく私は質問をしておるのですが、その点は大臣どうお考えになりますか。
  12. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 基本方針としてはもう仰せの通り、各医療機関所得に大きな変化を与えないし、それからまた引き上げをいたしまするときには、引き上げの恩典が均等に行き渡るように配慮するのが当然でございまして、そういう趣旨で本案も考えた次第でございます。
  13. 高田正巳

    高田政府委員 補足をして御説明を申し上げます。滝井先生御指摘のように、物と技術を、現在は簡単に言ってしまえば一緒にして支払いをしておるわけでございますが、それをできるだけ分けて、しかも技術を尊重して評価をいたすということは、点数表改正するということでそういうふうなことをやりますれば、必ず総医療費変動を与えるか、あるいは個々医療機関所得変動を与えるか、どっちかになるわけであります。それを個々医療機関変動を与えることを避けようといたしまするならば、点数改正というものができぬわけであります。従って二十九年、三十年に出しました厚生省の点数改正案というものは、総医療費ワクは変えない。それから個個の医療機関について、ふえるものもあり減るものもあるということはやむを得ないけれども、せめて内科なら内科、外科なら外科、産婦人科なら産婦人科、そういうふうに各科別あるいは病院、診療所別、そういうふうな大くくりでは変動を与えないように、それをねらおうということでやって参ったわけでございます。その点は滝井先生が御指摘の通りであります。しかしあれでも個々医療機関ということになりますれば、これは当然点数改正をいたしまするならば、必ず変動がくるべきものでございまして、しかもそれを総医療費ワクを変えないで、医療費の値上げをしないでやろうとしますならば、必ず減るものが出てくるというわけでございます。私ども二十九年、三十年の点数改正を企図いたしまして、なるほど理屈の上ではそういう方向が正しくても、総医療費ワクを変えないで、言葉をかえて言えば、医療費の値上げをしないでやるということは、必ず減るものが出てくるから非常に至難な技であるということをしみじみと痛感をいたしたのであります。従って今回の案は、医療費の値上げを八・五%の幅だけいたすわけでございます。従ってその第一の、総医療費ワク内でやるということは、今回の案は二十九年、三十年と違うわけでございます。それから第二番目に、点数改正をすえばどうしても一律ベース・アップよりは、個々医療機関については、ばらつきが出てくるということは避けられない。しかし、ばらつきは出て参りますけれども、二十九年、三十年当時考えましたと同じように、病院、診療所別あるいは各科別そういうふうなものを大くくりにしたような場合には、できるだけばらつかぬようにということをやはり配慮をいたしておるわけでございます。ところが物と技術を分けて、しかも技術を非常に優遇して評価いたしますると、点数改正の幅も、この甲表のような非常に大幅になるわけでございます。そういたしますと、必ず個々医療機関につきましては、ばらつきがよりひどくなってくる、こういうことは避けら回ないわけであります。従ってそれを救いまするために乙表というものを設けまして、乙表では甲地乙地の差は五%に縮めましたから、その点は違いますけれども甲地医療機関乙地医療機関を考えました場合には、どの個々医療機関にもばらつきのないように、しかもそれが乙地では九・五%程度甲地では六%弱が上るようにしよう、そういうふうになる表を一つ用意したわけでございます。従って点数改正を大幅にやろうとしますれば、個々医療機関についてのばらつきが出てくることはやむを得ない。従って、それを救うために乙表というものを用意したわけでございます。そのことは、幾ら理屈でいいということでございましても、大きな改革をいたしまする際には、それによって困る人が出て参ります場合には、なお従前の例によるとか何とかという経過規定が必ずつくのでございます。その理屈からいえば、乙表現行単価現行点数、すなわち値上げをしないということでも、その理屈からいえばいいわけです。しかしいやしくも平均して八・五%上げるんだということを私どもはねらっておりまするので、乙表でもやはり一率にそこまで上るようにという操作を加えまして、乙表というものを準備いたしたわけでございます。さようなわけ合いでございまして、二十九年、三十年のときには、総医療費ワクをかえない、すなわち医療費の値段の引き上げをやらないという前提であったものが、今回は変っております。その点が第一点。それから病院、診療所別、各科別、これがなるべくばらつきが少いようにということは、あの当時の考え方も今回の考え方も同じでございます。それから個々の診療機関がばらつきがあるということは、二十九年、三十年の場合にも今回の場合にも同様でございます。しかし今回の点数改正の幅は、甲表におきましては非常に大きゅうございますので、ばらつきがひどくなるから、乙表というものを設けてそれを補完した、こういうことになるわけでございます。
  14. 滝井義高

    滝井委員 いろいろいうどくど御説明をいただきましたが、とにかく昭和二十九年以来努力して総医療費ワクを変えないという原則は破れてきたわけです。従って総医療費ワクがようやく八・五%だけ拡大をされたら、その恩典というものを大体一般に浴せしめるという考え方基本原則のはずなんです。だとすると、真理は簡単な方がわりかりやすいということになれば、単価を一円上げることが一番簡単だ。これくらい簡単で、大衆にわかりやすくて、医療担当者の協力を得て、そうして被保険者も上げるということに大して文句はないと思う。それじゃ点数というものを過去において変えてなかったかというと、二十六年以来何回にもわたって変えてきた。点数をちょこちょこ手直しすることによって、医療機関にある程度所得変動が起る、これはある程度であって、著しい変化ではない。従って今回厚生省が乙表でやった程度のものならば、何も目の色を変えて乙表という裏返しのものを作らなくても、今の点数で一円上げただけでもけっこうだと思う。これは大して変らぬ。五十歩百歩だ。今言ったように、なお従前の例によるということだったら、大して変っていない。それをいたずらに厚生省の面子とか、前の堀木厚生大臣の面子を立てるために、日本の九千万国民の医療と十万の医師、歯科医師、薬剤師等の療養担当者の憤激と混乱を起さしめることは、愚の骨頂だと思う。これくらい八・五%が均霑できる形はない。そしてしかも所得変動を与えないという原則を貫けることはないと思う。そういう点は、総医療費ワク一つ破れたならば、その次にまた改革をやらなければならぬ。なお従前の例によって、乙表というもので裏返しにしなくても、おもてのまま残しておく方がわかりやすい。そういうこまかい技術上の問題はいずれゆっくり高田さんと議論をすることとして、そこで大臣にお尋ねしたいのは、原則として物と技術を分離していくという原則を貫くことになりましたというが、そうすると昨日大臣が御説明下さいました政府方針としては、現在の厚生省の作っている案で関係団体と修正の要否と修正点を話し合う、こうなっているが、修正を必要とするか必要としないかについて大臣の譲り得る幅というものは一体どの程度のものなのかということなんです。現在の告示案基礎にして修正の要否及び修正点を関係団体と話し合うということになっておる。まあ修正点修正の要否がきまれば出てくると思うが、一体修正を要する、要しないのその幅というものは、前の大臣からどの程度大臣は白紙委任を受けているのか、これを一つ説明願いたい。
  15. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私は厚生省のただいま御説明を申しました原案を基礎にしてお話をいたしますが、関係団体の方の御要望の向きというのは、幅を設けずにどんな案でも承わるつもりで承わって参りました。それをただいまの基本原則に照らしながら善処いたしたいと思って、なお交渉を続けておるのであります。
  16. 滝井義高

    滝井委員 六役会議だそうですが、与党内部のことは一つあとにしてもらって国会を優先します。ぜひそうお願いしたい。  そこで今幅を設けずに聞くとおっしゃいますし、前の大臣通りだという御答弁も昨日ございましたが、そうだとしますと大臣は、修正の要否というものは幅を設けずに聞くということになれば、甲乙両表というものが悪い、あるいは甲表なり乙表に悪い点があれば、それは一つ率直に聞いて、国民医療の進展のために改めるのはやぶさかでない、こういうように解釈して差しつかえございませんか。
  17. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私はもう御意見の向きは十分承わりますけれども、当面の問題としましては、ただいまお話を申し上げました基本原則に沿いまして、できるだけその建前の上で善処いたしたいと考えておるわけであります。なおこの問題につきましては、重大な問題でもあり、それから今後もやはり医学の進歩等に応じて考えなければならぬ問題はあるわけでありますから、これは今回きめましても、引き続きいろいろな御意見を承わって善処いたして参らなければなりません。今回の問題は、ただいま申し上げました基本原則の範囲内で善処いたして参りたいと思って、交渉いたしておるわけであります。
  18. 滝井義高

    滝井委員 基本原則は物と技術を分けるということはよくわかっております。その物と技術を分けるという基本原則によって今まで出てきておった案は、昭和二十九年十一月にも全部点数表が出てきました。これは一体で出てきている。ところが今回突如として二本になってきている。基本原則で二本のものは出てこないはずなんです。乙表というものはなお従前の例によって出ておるもので、基本原則を貫いていないわけなんです。だとすると、修正の要否というものは、大臣が厚生大臣になられて、自主的な立場で修正するところは自由に修正するし、甲乙二表が複雑で不合理であるならば、これを一体にでもやっていくという、こういうことが基本的な原則に照らして当然じゃないか、そういうことに解していいかどうかということなのです。あくまでも甲乙二表で、単価が十円でいかなければならないかということなのです。
  19. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私は今回の問題はただいまの基本原則に照らしまして、六月中にまとまる範囲内でできるだけまとめたいと思って目下話し合いを進めておる次第でございます。将来またいろいろな点で考えて参りたいと思います。
  20. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうすると大臣の六月中にまとめるというのは、単価は十円、そして甲乙二表という基本線はくずせない、これが大臣の意思のようでございます。そうしますと、そういうことが日本医療の進展に役立つか役立たないか、科学的な基礎があるかないかということです。一、二のおもな点を尋ねてみますが、まず物と技術を分けることによって技術料を尊重するという形が出てきておらなければなりません。そうしますと、現在の初診料というものは四点でございます。これが昭和二十九年の十一月の医療費体系においては、科学的な検討を経て六点と出て参りました。これはきわめて科学的な検討を経たものです。それが三十年の十二月では十二点と出て参りました。ところが今回はさらにそれが三転をして乙表では十点と出、甲表では十八点と出てきたのです。これは一番大事な技術料ですが、まず医師に診断を受ける場合には何といってもこの初診、あるいは初診時の基本診療料というようなものが一番大事なものになっているのですが、これは何か科学的な根拠をもって十点とか十八点というものがきまったのかどうか。これは簡単に一つ科学的根拠があったかないかでけっこうです。もうこまかいことをぐたぐたすると時間がありませんから……。二十九年十一月の六点というものは高田保険局長も御存じの通り、科学的な基礎できちっと出てきました数字を基礎にして出てきた。今度の十点とか十八点がそういう数字の根拠があるかないか、科学的な基礎があるかないかだけでけっこうです。これだけ一つ……。
  21. 高田正巳

    高田政府委員 二十九年の六点二分五厘でありましたか、これは時間計算をいたしまして積み上げたコストといいますか、そういうものでございます。三十年の十二点というものは初診技術を少しでも重く見ようという思想が入って、しかも各科の初診料をそろえて、先ほど申し上げました各科を区分した場合の取り分に影響をなるべく少くしよう、こういう配慮から出てきて十二点になったわけでございます。今回の十八点は、これらのものと基本的に性格が異なっております。今回のものはいわゆる初診基本診療料ということで、そのときに普通行われます投薬とか注射とかあるいは簡単な処置とか、およそ初診時には大てい行われるしようないろいろなそういう医療行為技術料といいますか、そういうふうなものも含めて初診基本診療料、こういうことで払うということになっておりまするので、その点は思想上の変化がございます。
  22. 滝井義高

    滝井委員 数字上の基礎的な根拠がないということですね。そうしますと初診だけ受けた、投薬注射も何もなかったというときに患者は十八点を払うことは、技術料を医者によけいに払うことになってしまう。注射投薬もなくて診察だけを受けただけでは、甲地でも十点でよろしいか。
  23. 高田正巳

    高田政府委員 お答えいたします。およそまるめて払うということになりますると、個々のケース、ケースによってそういう場合が出てくることは当然でございます。しかしまず普通に初診のあった場合には投薬注射というようなものは一般の場合には伴うものでございます。その場合には初診料初診基本診療料としては百八十円として非常に上りますけれども、かわりに薬代や注射代というものは非常に低く払う、甲表ではこういうことになるわけであります。
  24. 滝井義高

    滝井委員 語るに落ちたわけで、まず診察という技術と、注射投薬をやる技術とは全然別個の技術なんです。物と技術とを分けるという段階で、初診のときに注射技術料も投薬技術料も一緒に入れる国というのはどこにありますか。そんな技術の尊重の姿というものはない。だからまず診察は診察の技術というものを確立しなければいかぬ。それは甲表であろうと乙表であろうと、初診という技術は一定でなければならぬ。だからまず初診は十点ならば十点ということを確立したならば、それにプラスの注射技術料が何点で、投薬技術料が何点、処置技術料が何点、こうついたから十八点になるんだ、これがわからなければ患者は大へんです。注射もしてもらわぬに、あるいは処置もしてもらわぬに、先に医者に払う、こういう不合理なこと、これをあなた方は合理的という。このくらい不合理なものはない。まるっきり患者の金を先取りするようなものです。これをもってあなた方の、われが作ったものが天上天下唯我独尊的なものの考え方というものは、私は納得ができない。だからまず初診料というものは甲表であろうと乙表であろうと、一貫をしておらなければならぬ。注射したから注射技術料を払ってどうして悪いのですか。これくらい合理的なものはない。事務簡素化しようとするならば、もっとほかにやることは幾らもある。  それから甲表を見ると、全部まるくしております。乙表を見ると、端数がついておる。一番世間わかりのするのは、盲腸炎、いわゆる虫様突起の手術、切除を見ると、これは甲表で四百点、きわめてまるくなっております。ところが乙表を見ると、三百十四・七点、一体この忙しい世の中でコンマ以下のものを日々の金銭の授受が行われるのにつけるということがありますか。今だって二百五十点です。もちろんこれは十一円五十銭なり十二円五十銭をかけるから、お金を払うときは端数が出ます。合理化しよう、合理化がまかり通るならば、三百十四・七点なんていう、こういう端数をつけちゃいけない。なぜ三百点なら三百点にしないのですか。事務簡素化をやろうといって、これくらい複雑にしておるものはないと思うこの点はもう答弁を求める必要はありません。告示案ではそういう不合理というものが行われておるということです。  そこで次に、これは大臣にお尋ねしたいのですが、大臣事務当局にどういう工合にお聞きになっておるかどうか知りませんが、今度の案を見ますと、甲地乙地地域差は、現行より少くとも甲地乙地の算出した診療報酬に五%の地域手当を加算する、こうなっておる。大臣、この点事務当局よりどういう工合に聞いておりますか。たとえば医者に行って診察をしてもらいます。そうすると、これはたとえば乙地甲地と考えてみますと、初診乙地ならば、乙表でいくならば百円になっておる。百円のときに、乙表でいった場合には、乙地は五十円払えばいいのです。国民保険で家族は半額払うのですから、百円の初診料の半額、五十円払えばいい。そうすると、甲地はどういうことになるのですか。甲地は五十二円五十銭を払うことになるのですか。甲地は五%増しだから、初診料を患者が五十二円五十銭払うのです。大臣、そのあたりが一番大事な問題ですが、五%の地域手当は初診のときに払うのですか、どうなんです。
  25. 高田正巳

    高田政府委員 五十二円五十銭を払うことになります。その計算をどのくらいで四捨五入するかということは告示の総則にきめてありますが、私はそれを何円何銭でやるかということを覚えておりませんが、その点の簡略化はいたしております。
  26. 滝井義高

    滝井委員 百円の初診料で、結局甲地は五%増しになるので、五十二円五十銭払うことになるそうであります。私もそれは疑問に思っていたのですが、そうしますと、大臣こういうことになるのです。大臣単価というものは十円が原則だと言っておられるが、何ということはない、甲地は負担が十円五十銭じゃないですか。そうなるでしょう。結局大阪なんか国民健康保険ができて、この表が実施されると、患者さんは大阪の乙地区では乙表を採用すれば五十円、甲地区は五十二円五十銭を払う、単価は十円五十銭じゃないですか。
  27. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 これはお考えになり方でいろいろ言えると思います。立て方は単価は十円ということで、ただいま申しました五分増しというのは、そういうことをするというきめをしてやっておるわけです。単価は十円であります。
  28. 滝井義高

    滝井委員 とにかく単価が十円五十銭であることは間違いない計算です。基礎が簡単になるとかなんとかではなくて、やはり患者さんは十円五十銭払わなければならぬ。それならばもっと簡単な方法がございます。十円にする方法を私が教えましょう。今の十一円五十銭とか十二円五十銭とかをやめちゃって、単価を十円にしちゃう。今の点数でよろしい。まあ点数はかえてもよろしいが、十円にしちゃう。そして基金で地域手当を甲地には、今のままでいけば二割五分つけましょう。二円五十円つけたらいい。乙地は一割五分つけましょう。これでいいのです。そのかわりこれは患者さんは払う必要はない、基金で払うことにいたします。あとで一万点請求すれば、その一割五分を医者につけてやればいい。これくらい簡単で、これくらい単価をまるくした、世の中のみんなが喜ぶものはない。そのかわり、これは別にその一割五分について患者からとらなければ、別の操作であとからとってもいいし、やる方法はいくらもあると思う。あなた方がどうしても十円でやりたい、お医者さんの事務簡素化する、患者さんの事務簡素化するというのは同じことなのです。今言ったように、とにかく十円五十銭になることは変らないので、何といっても十円五十銭を患者が払わなければならない、医者も十円五十銭を受け取らなければならないということです。私はこれは地域手当がついているから、五%増しと書いてあるから、基金がお医者さんに五%払ってくれるのだと思っておったのです。これは私はある医者と議論しまして、地域手当と書いてあるから十円五十銭窓口で医者がもらうのだと思ったと言うので、いやそうじゃない、窓口で十円五十銭とるのだから十円五十銭が単価だと言ったのです。そうするとあなた方は十円々々と書いているけれども、今度甲地区の乙表を採用すれば十円五十銭の単価ということになるのです。大臣、そう思いませんか。
  29. 高田正巳

    高田政府委員 今の御質問お答えする前に、先ほどのお答えがちょっと間違っておりました。五十二円五十銭になりますけれども、五十銭は切り捨てます。  それから滝井先生が今御提案になりました単価を十円にする方法は負担区分がくずれます。それはあとで何とかしてとるようにすればいいではないかとおっしゃいますけれども、これはとるわけには参りません。どうしてとるか、これは大へんなことでございます。  それから単価を十円にして五%増にすれば、甲地においては十円五十銭の単価にしたのと同じことになるではないかという御質問、これは実質的にはその通りです。
  30. 滝井義高

    滝井委員 単価を十円五十銭にしたのと同じだということをお認めになれば、それでいいのです。私はそれだけを聞いておるのです。あとのことは、今の単価でもこういう方法をとれば十円ですぐできるという一つ考え方を述べただけです。十円五十銭、御名答でございます。それだけでけっこうです。  そうすると次は薬価です。薬価は今までは〇・七点ですよ。これに十一円五十銭なり、十二円五十銭掛けたらいい。乙地は八円何がしかになる。今まで〇・七というのは平均薬価でいっておったものが、今度の改正案では十三円になって、そうして今度また四円上って十七円になっておる。一体物が横ばいをしておる時代に、何で薬価だけがちょろちょろと八円のものが十七円にまでならなければならないかということです。私たちは少くとも日本医療を合理化しようとするならば、合理化するところのポイントがどこにあるかといったら、医者の技術料を合理化しなければならないことはもちろんであるが、薬価なんです。薬価を合理化しなければならない。ところが今度の案を見ると、薬価がいつの間にか十七円になっておる。これは一体いかなる根拠によって十七円になったか。二倍になっておる。こういう状態が平然と行われておる。合理化の名のもとに十円にしますといって十円五十銭にし、そうして〇・七点の平均薬価で今まで患者に金をもらっておったものが、いつの間にか十七円になる。こんなばかげたことはありません。原価主義で貫くということは——一貫して物と技術と分けるという原則が貫かれておらないではないですか。十七円という基礎は、どういう理由で十七円になったのですか。昨日の米価審議会で、政府パリティ方式を見ると、あまりもののとり方が片寄っておる、胃腸薬がパリティの中の品物に入っていないではないかということが言われておった。こういうように、いつの間にか八円のものが十七円に上るということになると、ますます農村がそういうことを言うということは当然だと思います。昨日の米価審議会の議論というものは当然だと思う。一体今まで八円であったものが一挙に十七円になぜ上らなければならないか。物というものは原価でいくということは、あなたここで口をすっぱくして言ってきたではありませんか。物を原価で払って技術料を上げるのだというなら、今まで通り〇・七にして、十円というものは薬剤師の調剤技術料なり医師の技術料につけるべきである。ところが物というものはいつの間にか二倍になるような世の中で物と技術との原則が貫かれますか、大臣、どうですか。
  31. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 政府委員答弁いたさせます。
  32. 高田正巳

    高田政府委員 滝井先生は、あるいはどこかで若干誤解をしておられるのではないかと思います。八円というのは十五円までの平均薬価は幾ら、十五円から三十円までは幾ら、こういうふうに刻んで、現在のものは点数をきめておるわけですから、そのどこかの刻みの平均点数が〇・七で八円だと思います。今回りの十七円とか十三円というのは、六十円以下の薬を平均してみると、使用頻度加重平均してみると、そういう値段が出る、こういうことでございまして、それは八円を十三円に増したり、十七円に増したわけではありません。それから十三円を十七円にしたのはどういうわけで——一剤投与の場合だけ増したのはどういうわけかと申しますと、これは私ども昨年秋に出しましたときには加重平均の数字が十三円だということで、そういう資料でやったわけでございます。ところがその後いろいろ調査をいたしてみますと、どうも無理がある。従って現実の平均価格というものを少し上げなければならない。しかも一剤投与の場合の方が二剤投与の場合よりも平均価格が高いから、そういうことを実態に合わせるために、すなわちあやまちといいますか、それを補正するためにそういうふうにしたためであります。従ってそれは何も薬を高く評価しようということでやったわけではございません。
  33. 滝井義高

    滝井委員 その点は私もよく知っておるのです。ところが現実の医療で一番多いのは何かといったら、今までので十五円以下が一番多いのです。保険診療でそんなに高い、六十円に近いくらいの薬をどんどん使ったら、あなた方がすぐ監査でにらんで使わせない。だからこそ物と技術と分けて、日本では高い薬を使えばその薬の中に技術料が入るんだということが今までの主張だった。そうすると、今になってわざわざ十七円というふうに上げる必要はない。それはそのまま技術料に持っていったらいい。そして今までと同じように、八円くらいのものが原価で一般に行われておる。それで病気は治るのです。ところがわざわざ六十円以下のものを十七円ということになると、どういう弊害が起るかというと、六十円というものをわなにして、たった一本の平均単価の十七円にしておりますから、医者はどういう心理になるかというと、もはや六十円近くの薬は使いません。使うのは十七円以下の薬です。そうするとこれは二つの面に大きな影響が出てくる。一つ日本の製薬企業がもはや高級の薬を作りません。なぜならば七十円、五十五円くらいの原価の薬を作ったって、保険には十七円にしかならないんだから医者は買いませんよ。買わないと、まず製薬企業というものがそういう高貴な薬を作らないという一つの弊害が出てくる。だからこれは製薬界に大恐慌を来たしておると私は見ています。  それからいま一つは、医者ももう五十五円の薬を買ったって、十七円しか払ってくれないのだから、何も五十五円の薬を使う必要はない、十七円か十六円でいいじゃないか、こういうことになってしまう。日本医療内容というものは、こういう大きざみによって急激に低下する。その被害を受けるのはだれかといえば患者大衆なのだ。あなた方は木は見ておるけれども、その林なり森は見ていないのです。こういう大きなあやまちが日本医療の、この甲乙二本の中にはあるということなのです。これをもしあなた方が強行していくということになれば、一体だれが一番迷惑をこうむるか。これは日本の患者大衆です。合理化々々々といって保険経済ばかり頭に置いて、日本の医学技術の進歩と日本の大衆の状態というものを厚生省は考えていない。あなた方現実に医療をやってごらんなさい。たとえば乙表で少数点以下のついているような請求書をやらしてごらんなさい。ある人が現行の請求点数と今度の新しい請求点数を二人の事務員でやらしてみた。ところが今度の新しい乙表の請求点数をやったところが、時間がかかって間違いが多くて実に困ったということを言っておる。こういう実態なのだ。こういう実態があるにもかかわらず、なおこれを、前の大臣がやったのだから強行するということになれば、もはや日本医療日本の保守党の政治というものは、もうこれできわまれりと言わなければならぬ。間違っておるものを改めるのに何のはばかりがありますか。自分たちの作ったものが最上のものなのだという、こういうばかなことはない。甲乙二表のものをまず撤回して、何も今月中に告示をやらなければ日本医療がくずれるわけでもない。それならばもっとゆっくり国会の意見も聞くし、関係団体の意見も聞くし、そして患者大衆の意見も聞いて、ざっくばらんな気持になってやってほしい。ほんとうにやろうと思ったら一カ月でできる。みんなが力を合せて、あたたかい気持で寄り合ってやれば一カ月でできる。あなた方が案を作るのだって、もうここまで作ってきておるんだから、もう議論の分れるところはそんなに多くはない。大きなポイントさえ一致すれば、あとはみんなで協力できる。だから大臣は党の六役だけに意見を聞いて左右されるのじゃなくて、日本の九千万の声を聞いて、日本医療橋本厚生大臣が守るという、こういう歴史的な岐路に今あなた方は立っておると思うのです。  私は今大ざっぱな点だけを指摘いたしましたが、最後に大臣にお尋ねしておきたい。一体大臣は今後日本の将来の医療の未来像を、どういうふうに考えておるのかということです。目標がなければ日本医療の推進というものはできないと思う。あなたは厚生大臣に就任されて、甲乙二表を前の大臣から受け継いで、これを推進していこうとするからには、少くとも将来の見取図というか、将来の方向というものを考えておるはずだと思うもう時間がありませんから、まず三つだけ聞いてみたいと思う。  まず最初に、日本医療機関の報酬の形態というものが、今度の甲乙二表によってばらばらになってくると思うのです。医療機関の体系的な整備を今厚生省はやろうとしておるのだが、大臣は体系的な整備というものを、この甲乙二表の実施に当ってどういうふうに考えておられるか。二つには、一体こういう甲乙二表を実施して、皆保険をやった場合に、日本保険医師、保険歯科医師、保険薬剤師の姿をどういう姿にしようとするのであるか。同時にまたそれらの者の所属をする医師団体なり歯科医師団体なり薬剤師の団体というものは、いかなる権利と義務を持つような団体に作っていこうとするのか。こういう甲乙二表というものは、具体的には一つの大きな推進力であり、基盤になる。従ってこういうちりちりばらばらな診料報酬の形態ができてくれば非常に変るのですが、一体この三つについてどういうふうに大臣はお考えになっておるか。もう私はくどくどしたことは申しませんが、大臣は将来の大きな見取図というものをどういうふうに考えておられるか。これがなければ厚生行政の振興の方向はわからないと思う。
  34. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 ただいまお話のありましたことにつきましては、私前にも申し上げたのでありますが、今後十分に考えて参りたいと思います。新点数表の告示をいたしましてから、その後の推移というものは、ただいま御指摘の問題に関連いたしまして、特に十分心してながめて参りたいと思います。
  35. 滝井義高

    滝井委員 今の大臣答弁では満足ができません。少くともこれは一つの大変革です。今まで甲乙二表が、日本診療報酬支払いの中でやられたことはない。こういう二つのものが実施されるということになれば、どういう結果が出てくるかと申しますと、必然的に医療機関の中で違ったものの考え方が出てくる。たとえば現在国民健康保険が実施されておる地区と、実施されていない地区との医者のものの考え方というものが、非常に違っておると同じように、甲表乙表が実施されるならば、甲表をとる医者と乙表をとる医者の考え方が違って参ります。この甲乙二表が発表されたときに、すでにこういう傾向が地方に出て来始めました。もし甲乙二表が出ると、乙表を選んだ医者は厚生省にマークされるかもしれない。こういう杞憂が出て来始めております。なぜかというと、この新点数表内容のところを見ると、乙表を選ぶ場合には、今後九月一日から十日までの間に申し出るということになっておる。甲表を選んだ場合には申し出なくてもいい。乙表は申し出る。すでに甲表乙表と差別待遇が出ておる。従って乙表を選んだものは厚生省にマークされて、監査の対象になるかもしれないという杞憂が地方に出ておる。それは保険課長の談話の中にこういうことがすでに出ておる。もしその県で甲表を志願するという人が少いと、保険課長の成績が悪いというので、保険課長は中央からにらまれるかもしれないということが、すでに言われております。これは実際に言われておるからこの際言っておく。むしろ今度の甲乙二表は、どちらを自由に選ぶかということではなくて、どちらかを選ばされる、こういう形が強い。むしろ甲表を選べという形が強い。こういう傾向が出てきておる。これは十分大臣は注意をしておかなければならぬ点です。私はころばぬ先のつえで言っておく。それから乙表をとると審査がきつくなるともすでに言われておる。なぜならば、甲表は審査は簡単です。ところが乙表は小数点以下がついているので、審査員は非常に苦労する。それだから念を入れて見るわけではないが、そういう審査まで乙表では厳重になってくる。さらに全国の公立病院会議で、もし病院長が甲表を選ばぬと、融資の面や予算の面でチェックされるという意見が出ております。(「杞憂だ」と呼ぶ者あり)政治は杞憂を起さしてはいけません。大衆に杞憂を起させない政治というものがいい政治なんです。それから、今言った平均薬価というものが上った理由というものがわからないとみんな言っております。これはもしかすると、製薬会社が運動したからこうなったのじゃないかという宣伝が世間に飛んでおります。私も今言ったように、十七円になった理論的根拠がはっきりしません。従ってこういうような点が世間の疑いとして、まだ実施をせられない前に起っておるということです。それだけにこの表の実施に当っては、もう大臣基本方針を貫くと言われておりますので、私はこれ以上の御忠告と私の意見の開陳は申し上げませんが、一つ大臣、十分考慮をしなければならぬ点だと思います。大臣は昨日、七月以降になればということを言いましたが、私は念のために最後に一つだけ聞いておきたいのですが、とりあえず今回、甲乙両表を告示をする、しかし十月までには三カ月期間がある、その間に、告示をした案について大きなあやまちがあるならば、十月実施の前にその告示案というものが再修正ができるものかどうか、この点だけ一つ忠告とともに大臣の見解をお聞きしておきたい。
  36. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 ただいまお話のありました御忠告はまことにありがとうございました。私、真剣な意味でよく承わっております。ただお話のございました点は全くの杞憂でございまして、私の眼の黒い間は、そんなことは絶対にいたさせません。甲乙二表を作るということについてはいろいろ御意見はあると思いますが、今日全く医療機関の任意として、随意の御採用を願うのでございます。  それからお話のございました六月一ぱいに告示をするつもりでございます。これは十月一日実施においてこれを直すつもりはございません。
  37. 滝井義高

    滝井委員 どうもいろいろ御質問しましたが、大臣もこの点数の本質的な内容について一つ十分御検討になって、十月一日実施前にこれを変える意思はないということでございますが、実はきょうは財政上の問題をお尋ねいたしませんでしたけれども、これによって患者負担も相当ふえて参ります。当初厚生省が言っておった二百十七億、一円上げれば二百十七億ということになる。それを政府が当初八十億ぐらい持ちたい、こう言っておった。そうすると百二、三十億ばかりが保険経済と患者負担になってくるわけですが、そういう点、財政上の問題もいずれ機会を改めてゆっくりやりたいと思いますけれども、そういう患者負担の問題も出て参ります。ことに国民健康保険にもう半分はかぶっていかなければならぬという実態がある。しかも国保は今後皆保険政策で、国保の進展を残りの二千数百万の国民にやらなければならぬというやさきでもございますので、国は依然としてもう負担をやらないという、こういう中でこういう大きな改革をやろうとするのですから、一つ大臣には今後十分御検討をお願いして、きょうは私の質問を終らせていただきます。
  38. 園田直

    園田委員長 休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     午後二時三十七分開議
  39. 田中正巳

    ○田中(正)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生行政に関する大臣説明に対する質疑を継続いたします。大原亨君。
  40. 大原亨

    ○大原委員 たしか昭和三十二年の三月二十五日だと思うのですが、本院の委員会におきまして、超党派的な努力で原爆被害者の医療法が可決されたと思うのであります。その後の実施状況をいろいろと見てみますと、私どもいろいろ現地や被害者団体等において実施状況について聞くところなのですが、広島、長崎を中心といたしまして、約四十万人くらいの原爆の被害者が全国にちらばっております。しかし昭和三十二年度の予算の使用状況、特に三十三年度に入りましてからのその状況というものが、一億六千万余りの予算の中で、非常に消化の状況がよくない、こういうふうにいわれておるのですが、予算のそういう実施状況について御報告いただきたいと思うのであります。
  41. 山口正義

    山口説明員 原爆医療法に基きましての予算の実施状況につきましてのお尋ねでございますが、御承知のように、この原爆医療法はただいま大原先生御指摘になりましたように、三十二年度から実施するということになりまして開始したわけでございます。最初これのやり方といたしましては、法律にございますように、まず患者の把握ということ、これは疾病の特殊性にかんがみまして、無理にこちらから全部探し出すという方法でなしに、むしろ申し出た方に対し健康診断並びに医療を施すというような建前をとっております。従ってまず申請に基いて健康診断の健康手帳を渡す、それからその健康手帳を受け取った方が一応この法律にいう被爆者であるというような考えのもとに、それらの方々に対して健康診断を実施し——最初一般の健康診断をやって、さらに精密な健康診断を実施し、必要な方に対しては医療を行うという建前になっておるのでございます。従って、予算も一応大きく分けますと健康診断に要する費用、それから医療に要する費用、それからこの疾病につきましてはまだ未解の点がたくさんございますので調査研究するということになっておりますから、調査研究費というふうに大きく分けられているのでございます。それで昭和三十二年度といたしましては、健康診断に要します予算といたしましては七千九十四万五千円、それから医療費としまして一億七十八万二千円、調査研究費として百八十万円という予算が計上されたのでございます。しかしながらただいま申し上げましたように、申し出に基いて健康手帳を交付し、それから健康診断を実施するというような手はずになっておりましたので、年度当初からのすべり出しが必ずしも順調でなかったというような点もございまして、従いまして予算の額につきしては後ほど申し上げますが、人数から申しますと、三十二年度の予算は、健康手帳を交付いたします予定といたしまして一応考えましたのは、十四万九千九十六人という数字を考えたのでございます。健康手帳の交付の状況は非常に良好でございまして、予定より上回りまして、十九万九千六百五十人というのが健康手帳の交付の状況でございます。しかしながら、その健康手帳を受けた方は全部健康診断を受けてもらうという建前でおったのでありますが、実際はその健康診断を受けられる方が予定よりも非常に少くなりまして、一応健康手帳の交付の予算十四万九千九十六人につきまして一般検診を受けてもらうという考えでおりましたが、実際に健康診断を受けられましたのは八万五千五百八十人という数字になっております。それからさらに精密検診につきましては、予算上は三万七千二百七十四人受けてもらうという予定になっておりましたが、実際に受けられましたのは一万一千五百二十七人という数字であります。従いまして、健康診断の予算は先ほど申し上げましたように七千九十四万五千円でございましたが、実際に三十二年度に執行されましたのは三千九百八十万六千六百十円ということになっているわけでございます。それから医療の方は、一応予算上は三千三百五十五人というふうに計算をしておったのでございましたが、実際に受けられましたのは、三十二年度末までには約一千人というようなことでございまして、しかも期間が比較的年度の終りに近くなっての認定がかなりたくさんありましたために、医療費といったしましては非常に大きな不用額が出てきたわけでございます。先ほど申し上げましたように、医療費一億七十八万二千円に対しまして、実際に三十二年度中に医療費として使われましたのは千六百十二万九千円という非常に大きな差のある数字になったのでございますが、これは先ほど申し上げましたように、健康診断の受療状況、それから時期がずっとおくれましたということで、そういうふうになっているのでございます。その後三十三年度に入りましてから、医療の認定も増加して参っております。健康診断の数字はまだ全部わかっておりませんが、健康診断の受療状況がふえてきておりますので、三十三年度の実績がはっきりまだわかっておりませんでしたので、一応三十三年度の予算は三十二年度とほぼ同じような程度の予算を計上していただいておりますが、健康診断費にいたしましても、医療費にいたしましても、三十二年度のようなことなしに、もっとこれが有効に使用されるようになるものというふうに考えております。私どももそういうふうに努力していかなければならないというふうに考えておるわけでございます。  調査研究費の方は、これは内科、外科、眼科という三つの項目に分けまして、それぞれ研究の班を作って、これらの特殊な疾病についての研究を実施していただくという手はずになっております。  一応予算に計上されました額を御報告した次第でございます。
  42. 大原亨

    ○大原委員 この原爆医療法の制定当時、関係団体やあるいは各党の方において非常に熱心に、この医療法自体が持っておる法律上の欠陥なり、あるいは将来起る運営上の問題等につきまして付帯決議その他等においても示してありますように、非常に問題が多かったと思うのでありますが、私いろいろと関係団体や中央官庁のお話を聞いておりますと、今のままで、やはり十分な実績を積まないでこの事態が進歩いたしましたら、実際に原爆被害者はたくさんおって、そうして根治療法のない原爆の障害で苦しんでおり、生きる不安におののいておるのに、実際上この法が十分活用されない。そういう結果、予算が削減されたりあるいは将来の原爆障害者の治療上、重大な支障が起きるのじゃないか。こういう問題について、関係者は真剣に心配をいたしておると思うのでございます。その点につきましては、今局長の方からお話がございましたけれども、やはりその不安は解消していないと思うのです。そこで法を実際に運営してこられまして、どういう点が、この法自体が持っておる欠陥なりあるいは運営上反省を要する点だ、こういう点についてお気づきの点があったら、それを一つ明確にしていただいて、私ども意見を持っておりますので、それとあわせて、一つ将来原爆障害者が安心して生きていけるような措置を考えていきたいと思うのですが、そういう点について、局長の方で、どういう理由でこれが十全の運営ができない、実施ができない、こういう点について御意見があればお聞かせ願いたいと思うのです。
  43. 山口正義

    山口説明員 数字的なことは先ほどお答え申し上げた通りでございますが、実際にこの法が運営されましてから、所期の目的通りになかなか順調にそれが行われていないという点、先ほど数字でも出ました通り、私どもも非常に遺憾に感じているわけでございますが、それはいろいろ理由はあると思うのでございます。先生の方からも後ほどまた御指摘があるというふうにただいま御発言がございましたが、私どもが私どもなりに考えておりますことは、やはりこの法律を実施して参りますのに、新しい法律でございましたので、ある程度の準備期間が必要である、完全に運営されまするには、ある程度の期間が必要であるということは、これは考えられることだろうと思うのでございます。     〔田中(正)委員長代理退席、委員長   着席〕  第一に、先ほど申し上げましたように、健康手帳の交付状況は比較的いいのでございます。予定よりも上回っているわけでございますが、実際の健康診断の実施状況が予定通りに行われていない。これはやはり健康診断を実施する側にも、いろいろまだ準備の足りない点もあったかと思うのでございます。たとえば、健康診断を受けられる方の便宜というようなことを考えての健康診断を実施する機関の整備、あるいは時間的な問題もあるということを私承知しているのでございます。これはそれを直接担当しております市当局ともたびたび折衝しているわけでございますが、できるだけ受診される方の便宜をはかるようにというようなことを、行政当局としてはさらに積極的にやっていかなければならぬと思うのでございます。それからその受診をされる際に、これは後ほどまた問題になると思うのでございますが、せっかく健康診断を受けに行こうと思っても、やはりうちが手不足で出られない、あるいは遠くまで出かけるので、いろいろ不便があるという点もあるかと思うのでございます。  それから医療の面につきましては、医療を行う機関でございますが、これは指定医療機関で実施するというようなことでございますが、それは法の建前になっているのでございます。その指定医療機関の指定の仕方がまだ十分でないということがあるわけでございます。これはこの法律を御審議の最中に滝井先生からも御指摘がございました。受療者の便をはかるならばすべての医療機関を指定医療機関にすればいいじゃないかという御意見も出ておったのでございます。しかし特殊な治療というような点も考えまして、総合的な医療のできる病院を指定していくというような建前をとって参りました。その指定の仕方が、最初は四十カ所くらいでございましたが、それではとうてい医療を受けるのに不便だというので、次から次にやはり申請が出て参りまして、現在八十七カ所指定いたしております。そういうことで、医療を受けに行くというのについての地理的な不便さというものもあったかというふうに考えているわけでございます。  それからもう一つは、これが広島、長崎というような、この二つの県並びに市が大きな部分を占めているわけでございます。他の府県ではこの法の趣旨の徹底とかあるいはそれらの実施ということが非常に立ちおくれているというようなことも、これがまだ全般的に行われていないという一つの理由かと考えるわけでございます。  それからもう一つ、これは必ずお話が出ると思うのでございますが、医療を受けるという際に、通院の場合に、その交通費の問題、それから入院されるというような場合にはそのあとの問題、働き手の方が入院されるというような場合には、あとの生活費の問題というようなこともある程度からんでくるというふうにも考えられるのでございます。しかしそれがどの程度まだこの法律が十分に運用されない原因の部分を占めているかということにつきましては、具体的なデータをまだ持ち合せておりません。率直に申し上げまして三十三年度の予算を編成してお願いしようというようなときにも、交通費の問題なども事務的にはいろいろ考えてみたのでございますが、実際的にはその積算基礎など的確なものをなかなかつかむということができません。もう少しこれらの点は実績を見てから実施していかなければならぬと思うのでございます6なおほかにもいろいろ理由があるかと思いますが、ただいま私ども大きく考えましてそういう点がおもな理由ではないかというふうに考えております。
  44. 大原亨

    ○大原委員 ただいま局長の方からは趣旨の徹底、宣伝啓蒙の面と、それから指定医療機関の面についてはっきり原因を指摘されて、予算の実施状況があまり芳ばしくない、その原因としてあげられたと思うのでございますが、しかし今局長も指摘されましたように、私ども現地におりまして、あるいは東京や全国的にいろいろと関係被害者の声を聞いてみますのに、やはり一番大きなこの法案の欠陥は、世帯主に対する更生資金の貸付について遺憾なきを期せられたい、こういうような附帯決議がついておりまして、世帯主については一千円、構成員は五百円で、総計三千円をこえない、こういう範囲で実際上便宜が払われておるわけですが、これもほとんど活用されていない。そういう点の原因を考えてみますと、やはりこういうふうな金を借りましても返すめどがない、つまり被害者が非常に生活力が弱くて、そうしていろいろな係累をかかえている、あるいは自分の職業その他の関係で、やはり生活費の問題が一番大きな問題であるというふうに関係者の声が上っておるわけであります。たとえば広島では病院に通っている人々を含めますと、約一千人以上おるというのですが、そのうち原爆病院等に入院している者は百人、残りの九百人はやはり不安を持ちながらも、今は放任されたような状況でほとんど手が施されていない、こういう状況であると思うのでございます。いろいろ関係法案を調べてみますと、たとえば健康保険の際にも、入院をいたしましたら休業補償が出ておる。それから、らいを強制隔離いたします際には、これは無拠出でありますが、やはり遺族の補償がある。そういうふうに考えてみますと、やはり原爆被害者に対してもそういう傷病手当というふうな遺族に対する生活の援助——遺族といいますか扶養家族に対する援助、そういう問題について法律上の配慮をしない限りは、この法案が十全に運営できないのではないか、そういう点について私どももそういう意見を持っておるわけでございますけれども、そういう法自体を改正するなり新しく立法するなり、そういう点について政府の方ではどういう意見を持っておられるか、その点についても一つお聞かせいただきたいと思うのであります。
  45. 山口正義

    山口説明員 先ほどお答え申し上げましたようにいろいろの理由があるのでございますが、そのうちにやはり生活苦の問題があることは否定できないと思うのでございます。それで三十二年度の本法の施行に伴う予算をお願いします際にも、一応私どもはただいま御指摘の点も検討したわけでございますが、結論的には、この医療ということは、特殊な疾病でございますので国がめんどうを見る。ただその医療を生活費のために受けられないというような方があってはこの法律のほんとうの趣旨が生かされてこないという点から、何かそれに対して手を考えてあげなければいけないではないかというふうに考えまして、それでとりあえずそういう方に対しては、全部無差別平等に生活費を見てあげるということは理論的になかなかむずかしい問題もございますので、そうすればやはり生活に困られる方だけということになります。そうすると、どこかで一応線を引くということになりますと、生活保護法というようなことになってくるわけでございます。私どもはそういう道をとらないで、一応生活費の貸付ということを考えて予算の折衝をやりました。究極的には世帯更生資金を貸し付けるということになったわけでございます。しかしそれではまだ額も十分でございませんし、また返さなければならぬというような状況がありますために、それを活用されるのが非常に少い。これは御指摘の通りでございまして、現在の実情はなかなか十分活用されていない。厚生省当局といたしましては府県に対して世帯更生資金の特別の額を見ておるわけでございますが、それはなかなか十分消化されていないというのも実情でございます。そこでそれ以外に、今御指摘のような保険の問題、これは相互扶助の建前からやっておりますものについての傷病手当金という制度はあるのでございますが、原爆医療者についても傷病手当金のようなものを出すかどうかということについては、これはそう簡単には参らないのじゃないかというふうにも考えます。それからもう一つ御指摘になりました、らいの患者の生活援護という点でございますが、これはいきさつがございまして、らい患者の家族に対して、やはり生活に困っておる者は生活を見てやらなければ、らい患者か進んで療養所に入りたがらない。療養所への入所を促進させますためには、やはり生活に後顧の憂いのないようにしてやらなければならないということは当然考えなければならぬことでございます。それを生活保護法でやるということは——先ほど私、原爆医療法についても申し上げましたように、生活保護法ということが考えられるわけでございますが、それを生活保護法の対象者にいたしますと、民生委員なり、あるいは福祉事務所、いろいろな人がその家族の家庭に出入りをして調査をいたしますために、どうしても患者の方で、秘密保持という点からそれをいやがりますので、額とか認定は大体生活保護法と同じでございますが、らい患者の家族の生活援護だけは生活保護法からはずして、そしてらい予防法で実施するというような建前にしたわけでございます。これは全く生活保護法と同じような形で行われておるのでありまして、らいという疾患の特殊事情によりまして、これは患者家族の秘密保持という建前から行われているのであります。らいを例にとって議論になりますと、やはりこの原爆被爆者の医療についても、生活に困っている人の生活を見るということになりますと、生活保護法の適用ということになってくるのではないかというふうに考えるわけでございます。  それでその生活保護ということについて、現在政府としてこの法の改正を意図しているかどうかというお尋ねでございますが、ただいまのところはいろいろ問題点があるということは承知いたしておりますが、もう少しよく実態を調べて、どの程度どういうふうな理由で医療を受けられないかどうかということを調べた上で検討したい、そういうふうに考えているわけでございます。
  46. 大原亨

    ○大原委員 今までの御答弁で、大体今日までの医療費の実施状況の経過と問題点がはっきりいたしたと思うのですが、しかしこの際はっきりしたことを局長さんからお聞きすることはできないと思うのですけれども、ぜひともこれは傷病手当というふうな、治療を受ける人々に対する生活上の保障を何らかの方法でしない限りは、やはりたくさんの原爆障害者の問題は解決されないだけでなしに、国連の科学委員会におきましても、たとえば現在実験場の中から五万人のそういうふうな原爆障害者が出てくるとか、あるいは遺伝等に関係があるというようなことも言っておるときでありますので、この問題についてはさらに十分研究をしていただきまして、法自体が持っておる欠陥を克服できるような、そういう措置についてお考えいただきたいと思うのであります。  それからもう一つは、附帯決議を私読んでみますと、やはり広島や長崎には非常に原爆の障害者が多いから普通の常識になるわけですけれども、たとえば東京などでは六百人ぐらい登録されているというのですが、ほとんど自分で名乗って原爆の障害者ということを言うことを好まない、こういう傾向にあるといわれておるのであります。それはやはり遺伝説等があって、遺伝の問題が結婚やその他いろいろな障害になる、そういうことが伴うておると思うのですが、それにいたしましても附帯決議にございますように、原爆の障害者に対する根本的な治療の研究、そういう研究面を積極的にやるように、こういう決議もあるのでございます。このことは各方面で言われておるのでございますけれども、当局としましてはこういう問題についてどういうふうに研究を具体的に進めてこられたか、こういう点について簡単にお答えいただきたいと思います。
  47. 山口正義

    山口説明員 研究につきましては、予算につきまして先ほど申し上げました通り、主として三十二年度並びに三十三年度に計上されておりますこの法の施行に必要な経費としての予算は、治療の研究ということになっているわけでございます。先ほど申し上げましたようにこの障害の現われ方が、大きく分けまして内科的な疾患、外科的な疾患、それから眼科的な疾患というふうに分れますので、その三つの大きなカテゴリーに分けまして専門家に集まってもらって、そして内科的な疾患、外科的な疾患、眼科的な疾患の治療をさらにどういうふうに進めたらいいか、未解の点を解明してもらうということを班を作ってやっていただいているわけでございまして、三十二年度に引き続いて三十三年度もやっていただいているわけでございます。しかしまだどういうデータが出たというところまで参らないのでございます。ただいま御指摘の遺伝の問題、これは非常に大きな問題でありまして、単に被爆者ということだけでなしに、御指摘のように原子力の平和利用に伴っての放射能の影響ということも考えなければなりません。これは単にこの法律の施行ということだけでなしに、もっと大きな問題になって参りますので、すでに御承知のように国立の放射線医学総合研究所というものが設立されておりまして、そちらの部面でこれは非常に大きな研究所になり、それぞれの専門家が集まって研究するということになっているのでありまして、単に被爆者だけでなしに、生物学者あるいは物理学者、いろいろな人が集まって研究を続けるということになっているわけでございます。遺伝の問題は部分的には、その研究所からではございませんが、いろいろな専門家が報告しておられますが、系統的には今後それらの放射線医学総合研究所が中心になって研究が行われていくもの、そういうふうに考えているわけでございます。
  48. 大原亨

    ○大原委員 今の研究についてなんですが、これはほとんど原爆被害者やその関係者が信頼するに足るような、期待できるような研究が進んでいないのが実情ではないかと私は思うのであります。最近広島の地方におきましても大学の物理学者やお医者さんなどで二十名、三十名のグループを作りまして自主的な研究活動をやっておられます。御承知のように広島や長崎にはABCCという研究機関があるのですが、そういうようなところでなしに、実際に原爆の被害者の必要に応じた、住民の要求に従った中から自主的に出てきた研究機関がそれぞれあると思うのです。そういう研究機関が行き詰まるのはやはり研究費の問題でありますが、そういう研究機関に対する政府といたしましての財政的な援助、協力、こういう面においてこの研究を促進されるお考え、あるいは方法がないかどうか、この点について一つ伺いたい。
  49. 山口正義

    山口説明員 民間の研究機関に対する助成の方法といたしましては、現在のところ三十三年度の予算というようなところでは表に現われてはいないわけであります。御指摘の広島のABCCの研究に対しまして、国といたしましては国立予防衛生研究所の支所を広島と長崎に置きまして、一緒になって研究しているわけでございます。ただ先ほど申し上げました原爆医療法施行に伴っての予算としての研究費の使い方ということにつきましては、単に国の機関だけでなしに、それぞれの専門家に集まっていただいて班を編成していただいておりますので、その中には、国立機関の学者も入っておられ、大学の先生方も入っておられます。また民間の方も入っていただくということでやっているわけでございますので、関係しておられる方ができるだけたくさん参加していただいて、班長になっていただく先生と相談しながらやっておりますが、必要に応じて新しい方も入っていただくという方法を講じているわけでございます。それから御指摘のように、新しくあちこちで作られます民間の研究機関に対してどう助成していくかということはこれから考えていかなければならぬ、そういうふうに思っております。
  50. 大原亨

    ○大原委員 それで原爆被害の治療の問題につきましては、根本の治療法が見つかっていないとか、あるいは生活費の問題、その他たくさんの問題があると思うのです。たとえば広島を例にとってみますと、約六千名の労働者が失業対策の日雇いにおりますが、他の地域と違って、その半数が未亡人で、女の人が多い。これはほとんどが原爆被害者あるいは遺族関係である。そういうように失業者が全国の都市に比べても非常に多いし、また生活もみじめな中で原爆の被害で苦しんでおる。その中で治療の問題や生活の問題等、たくさんの問題がからまっておるので、こういう点について十分御理解をいただいて——もちろん全国に被害者は四十万以上五十万近くも散らばっておるといわれておりますので、そういう人人の問題を含んで——予算の使用状況はあまり芳ばしくないのです。しかし、これにはやはり法の欠陥や運営上の問題について反省すべき点があるので、こういう点を明らかにされて、そしてこの立法されました趣旨が貫徹できますように、きょうは大臣がおられませんが、どうぞ関係当局において将来とも十分御努力いただきたいという点を要望いたしたいと思うのです。  それから、もう一つ原爆被害者の問題について、戦傷病者戦没者遺族等援護法に関係いたしましたことがあるのです。たとえば義勇隊など、空襲警報中は公務になる、こういうふうな判定をされておる場合があるのですが、御承知のように、広島に原爆が落ちたのは警戒警報が解除されて三十分後でありました。そういうことから警戒警報解除後三十分で、しかも無警報で原爆の被害を受けた。そして原爆症というのが非常に特殊な形態でABCC等も最初はあまり原因がわからぬ、白血症は原爆症でないというくらい極端なことを言って理解を示さなかった。そういうことも非常に影響いたしまして、原爆被害者に対する考え方が、全く新しいものだから、勤労学徒や準軍属等に対するそういう問題の適用状況が非常に事実に反しておる、そのために事務が渋滞しましたり、あるいは却下されたり、保留されたりいたしまして、非常にたくさん問題が残っていると思うのです。また相当保留になっておる文書等が多いということを方々から聞くのですが、関係局長からお伺いいたしたいと思います。
  51. 河野鎭雄

    河野説明員 ただいま御質問のありました戦傷病者戦没者遺族等援護法の関係でありますが、同法は原爆というふうな観点から特別の規定は設けてないわけであります。原爆は申すまでもなく戦時災害でございますので、その被害を受けました人たちにつきまして、軍人、軍属、準軍属にわたりまして、それぞれの規定によって援護措置がとられているわけであります。広島におきまして、その事務が円滑でないではないかというふうなお尋ねでございますが、私ども承知いたしておりますところでは、県の方で保留になっているものがなおあるかと思いますが、本省まで出てきておりますものにつきましては、そう保留になったり渋滞したケースは多くないと考えているわけであります。個々のケースにつきましてはあるいは問題になる点があろうかと思いますが、全般的に申しまして、そう多くないのではないか。私参りますときちょっと調べて参りましたが、約一万件近い申請がございまして、すでに九千六百件余り可決になっております。却下になったものが三十数件ございます。私どもの手持が二十数件程度で、あるいは県の方でさらに調べたりなんかして手持になっているものがあるのではないかと思いますが、そういう点につきましては、今後も極力督促いたしまして、事務が円滑にいくようにいたしたいと思っております。  先ほど空襲警報云々のお話でございましたが、出動中でございますれば、別に空襲警報が出たから、あるいは解除になったからというふうなことには関係なしに、やはり原爆という一つの戦時災害を受けたということで法の適用ができるものと考えております。
  52. 大原亨

    ○大原委員 簡単に申し上げますが、警戒警報のサイレンを鳴らした警防団員はその後であっても適用になっている。しかし、実際動員を受けて行っても、一旦警報が解除されて帰る途中でやられた場合は採択をしてもらえない、こういう意見があるのです。そういうのは当時の調査やあるいは客観的事実の認定にむずかしい点もあると思うのですが、十分留意して、内科的症状、外科的な症状、いろいろな問題がありますから、法の運営について遺憾なきを期していただきたい。  最後に一言申し上げておきたい。来年からいよいよ年金制度をやられて、癈疾年金なんかが出るというお話ですが、その際、原爆被害者は特殊な生活の不安を持っている。白血病と認定された場合は命がないと同じです。そういう特殊な条件があるので、年金制度を確立する際には、十分原爆被掛者の実情を考えた上で、今までの不備をこういう方面についても補強するようお願いして質問終ります。
  53. 園田直

    園田委員長 休憩いたします。     午後三時十八分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕