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1958-09-01 第29回国会 衆議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年九月一日(月曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君   理事 佐々木盛雄君  理事 床次 徳二君    理事 山村新治郎君 理事 岡田 春夫君    理事 松本 七郎君       小林 絹治君    椎熊 三郎君       千葉 三郎君    福 家俊一君       大西 正道君    田中 稔男君       戸叶 里子君    帆足  計君       穗積 七郎君    八百板 正君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  委員外出席者         外務政務次官  竹内 俊吉君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (国際連合局         長)      宮崎  章君         外務事務官         (移住局長)  伊関佑二郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢等に関する件      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。小林絹治君。
  3. 小林絹治

    小林(絹)委員 移民国策の問題につきまして、現に進行中であるように聞いております。パラグアイ国との船舶借款について、従来のいきさつはどうなっておるか、現状はどうか。またこれに対する政府のお見込みが承われれば好都合であります。  かってパラグアイ政府からわが国に対して一千二百万ドルの船舶借款申し込みがあったのであります。その内容は、内航船五隻、家畜運搬船一隻、油送船が一隻、冷凍船、それから外航船三隻、それにドックを含んでおるのであります。これに対してわが国杉道助氏を団長とする十数人の視察団が参りまして、これの報告があったはずであります。その後またさらに大蔵省、農林省、運輸省等の役人が詳細の調査に参ったのであります。この千二百万ドルの借款内容は今申し上げた通りでありますが、それの対象といたしまして、日本移民を三十カ年間に十五万人入れる、年間五千人であります。移民に必要なる土地を百五十万町歩、これは向う国有地もありましょうし、民間から買い上げるものもありましょうが、これを日本人移住に充てるという内容のものでありますが、その後だんだん時日が経過いたしまして、最近八月十一日にパラグアイ政府は閣議を開いてこの受け入れをきめたと聞いております。その後黒田公使を通して政府の折衝されております状況について、外務大臣からお話を伺いたいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 パラグアイの問題につきましては、ただいま小林委員からお話のありました通り状況で、初め話が出て参ったわけであります。その後大蔵当局とも十分いろいろな打ち合せをいたしまして、日本の各方面に対するこれらの援助また移民関係等も考慮いたしまして、同時にこの千二百万ドルという、ただいまお話のありました外航船舶三隻その他全部をやりましても、昨年の造船の原価から申しますと、本年はそれが約八百万ドルでできるのじゃないか、こういうことが一応の目安でございます。従って千二百万ドルに対して八百万ドルないし九百万ドルで、最初向う側考え方は入れられるだろう。しかしそれにつきましても、いろいろ日本財政事情もありますし、またさらに現地実務家調査団を出しまして調べました結果として、ただいま三百八十万ドル程度のもので、そうして外航船を除いた向う側の要求を入れていこう、こういうことになったわけであります。パラグアイ政府におかれましても、当面内洋船舶建造等につきましては、急を要する点がありますので急いでおりますが、外航船の問題につきましては、やはりこの問題を第二段に考えてもいいんじゃないかという向う側考え方もございますし、従ってそれらの点で種々折衝いたしました結果が、結局三百八十万ドルによって、外航船を除くその他の船舶を第一次的には建造する。そしてそれが完了しました暁、さらに日本側において外航船その他の問題を考慮してもらえば、パラグアイ政府としても適当に処置できるんじゃないかという意向もありましたので、大体その線に沿って話は進んでおるわけであります。  なお移民に関しまして、三十カ年にわたりまして十五万人を入れるというのでありますが、そういう事情のもとにおいて、パラグアイ政府としては、最初の十五万人というのは少々あれだから、三十カ年に五万人程度を入れることに了承してもらいたい、こういう意向もありました。日本といたしまして、移民をできるだけ円滑に、そうして多人数出しますことは当然でありますが、御承知のように移民の問題に関しましては、国内における送出規模の問題もございます。送出設備の問題もあります。また同時に送り出す際におきます輸送船舶関係もありまして、現在八千人程度送っておりますが、一万人程度ぐらいまでは、現在の船舶でキャパシティーを持ち得るわけです。しかしながら、パラグアイ以外の方面におきましても漸次伸びておりますので、さらにこれにパラグアイを加えて参りますと、輸送能力というものは今後相当に拡充して参らなければならぬ。それらの設備等も、日本ではまだ十分に計画立案が進んでおりません。従って、私がかねて申しておりますように、移民政策を全面的に再検討する時期に来ておると思うのであります。またそれに伴います輸送能力あるいは国内送出能力、あるいは現地における受け入れ機構問題等を、この際全面的に再検討いたしまして、そうして移民政策全部の立直しをやるということが適当の時期ではないかと思うのであります。それらと見合って参りますと、現状においては、たとえば三十カ年に五万人という数は、現在一年に千五百人ぐらいふえて参るわけであります。まず輸送能力その他から見まして、現在の状態においては手一ぱいのところではないかというふうに考えられますので、一歩々々前進する意味において、その辺からスタートするのが適当じゃないか、政府としては現在こういう考えを持っておるわけであります。
  5. 小林絹治

    小林(絹)委員 五万人ぐらいな移民でしたら、特に借款を要せないのじゃないか。現にブラジルのアマゾン州では、日本計画移民受け入れについて、州が非常な努力をしております。またドミニカでは国有地を提供して、日本移民の輸入に努力をしておる。借款をやるという以上は、大規模日本移民を入れるということでなければ、借款の価値はあまりないと思うのですが、この点について外務大臣はどうお考えになりますか。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 直接移民問題に関連いたしまして、できるだけ多くの人を出していきますことはむろん必要でありますし、ラテンアメリカ方面におけるその後の移民定着状況等も、戦後非常に変っておりますので、よき質の人をよけい出していきますれば、効果的になっていくことももちろんであります。従ってできるだけ多くの者を出し、それにはある程度特別な方法を講じて、多数の人を受け入れられるような方法をとっていくということも、必要なことむろんであります。しかし今回の場合におきまして、五万人では借款をするだけの値打がないのではないかということでありますけれども、私ども考えでは、少くともこういうことを契機にして出ていくことの話し合いがつきますことは、第一歩としては適当なことであろう。特に南米各国というものは日本に政治的にも相当好意を持っております。今後経済的、政治的両面を合せまして、ラテンアメリカ諸国と緊密な連絡をとって参る関係からいたしましても、単に移民との引きかえっこというだけでなしに、やはり借款の問題も意義があるわけでありますから、むろん移民の数は多ければ多いほどいいわけでありますけれども移民の数だけでこの借款を取引しないでも、もう少し全般のラテンアメリカの中のそれぞれの国と経済的関係を持ち、それが政治的にも好影響を与え、同時に移民問題の解決にも役に立つというような、三方面からの見地から見まして、私は日本の今の各方面の要望であります経済援助計画等もにらみ合せまして、この程度のことで進むことが適当ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  7. 小林絹治

    小林(絹)委員 わが国現状といたしましては、大規模移民計画をぜひ立てなければならぬ。移民受け入れるところは世界各地にもございますけれども、現在借款進行中のパラグアイなどは特に目標とすべきところだと思うのであります。そこで先方の申し込みの千二百万ドルというものに対しては、今の大臣お答えでは、外航船については、まあ次の話。そこで現在鉄鋼の値段も下っておりますし、造船単価は非常に下っておるのでありますから、もちろん千二百万ドルは要らない、こう思うのです。ちょっと速記をやめて……。
  8. 櫻内義雄

    櫻内委員長 速記をちょっとやめて下さい。     〔速記中止
  9. 櫻内義雄

    櫻内委員長 速記を始めて下さい。
  10. 小林絹治

    小林(絹)委員 ただいま藤山外務大臣パラグアイ船舶借款に関するお話を伺いまして、まことに満足の至りでございます。わが国移民受け入れる側においては、豊富な広い土地日本の誠実な勤勉な、ことに農業技術の最もすぐれておる移民を入れて、その国の資源を開発するという利益がありますことはもちろんのことであります。わが国においても人口が多いのでありますから、そこで海外に日本移民を送り、日本経済圏平和裏共存共栄向うの国にも非常な利益を与えるという形で出ていきますから、両方ともいいのであります。そこで、日本移民の特によいという点を私ども永年外国におって知っておりますが、日本では郷に入っては郷に従えということを言っておるのです。その土地に行けばその土地風俗習慣、人情その他に同化するというのが日本人の特徴であります。移民政策は重要でありますから、パラグアイ政府におかれても、わが国の優秀な移民を入れるについては十分わが国の意のあるところを了とせられて、両国間においてこの移民がだんだんふえて、両国のためによい結果になりますように、外務大臣の特にこれに関する御努力をお願い申し上げまして、私の質問を終ります。
  11. 櫻内義雄

  12. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣は明後日御出発のようでまことに御苦労様でございます。国際問題が非常に国民の関心を呼んでおりますときに、国際舞台を踏まれるのでございますから、いろいろな意味から国民は期待していると思います。そこで、外務大臣の基本的な態度というものを伺いたいのでございますが、そのためにはどうしても岸首相にもおいでいただきたかったのですが、きょうお見えになりませんで、まことに残念でございます。この次に岸首相にはお尋ねすることにいたしまして、きょうは外務大臣だけにまず基本線をただしておきたいと思うわけでございます。  この前の総会で、中東の問題に対してノルウエー案が出ましたときに、外相現地にあって、アメリカからの懇請にもかかわらずノルウエー案賛成をしませんでした。ところが同じころ岸首相北海道にありまして、それに対して修正案を出せとか棄権をするとかいろいろなことを言っていられたのでございますけれども、幸いにしてアラブ十カ国の決議案が出されましたので、ほっと救われたような気がされたと思うのでございます。そこであのときは結果的には大へんうまくいったわけでございますけれども、今後もいろいろな場合に出あうわけでございまして、やはりはっきりとした考え方をお持ちになっていなければならないと思うのですが、そこで二点だけ私はただしておきたいと思います。  その一点は、こうした国際的な舞台に出られますには外交基本方針というものは政府と与党との間でお話になっていらっしゃるのですから、当然現地にあっては外務大臣がそのお考えにおいてその態度を決せられていいのではないかと思いますけれども、今回の例にも見られますように、そうした基本線をきめていきながら、なおかつ北海道あたりまで電話をかけたりしていろいろ連絡をされなければならないかどうか、この点をまず伺いたいと思うのです。なぜそれを伺うかといいますと、この間の場合におきまして当然基本線をきめてあるとするならば、藤山外務大臣のお考え岸首相のお考えも同じであるべきであるにもかかわらず、岸首相の場合には、また自民党の内部の一部の方々は、むしろアメリカ中心主義外交方針を持って臨めというような考え方を持たれておる方も非常に多い。藤山外務大臣現地様子を見て、やはりアジアアラブ陣営に立ってやらなければならないというふうな考え方に到達される。そうなりますと、どうしても一致したところにいかないような結果も出てくるわけでございますが、そうした場合には一体御自分の信念を曲げずにいかれるのか、あるいはまた国内からのいろいろな命令に従われるのか、どちらをとられるかということをお伺いしたいと思うのでございます。
  13. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本政府代表いたしまして国際会議等に出ます場合に、私といたしましては、十分国内の各方面方々意見を伺いまして、そうしてそれを承知の上で出て参りますこと、あるいは私が考えておりますことを申し上げて、そして大きな線でまとまって出ていきますことは当然だと思います。そういう意味において、われわれも国を代表して出て参ります際には、できるだけ今後そういう点については心づかいをいたして参らなければならぬので、私自身だけの判断ですべてを決定いたしますことは、当然危険だと思います。がしかしながら、一ぺん出て参りました以上、特に国連等の二国間の交渉の場合は、若干のゆとりもございますがしかしながら、国連等八十カ国の連中が集まりまして、問題をいろいろ討議して参ります際、また舞台裏におきますいろいろな工作、動き等がありまして、それに対応して参るのには、代表として参ります私には、それだけのやはりその場に対処しております責任もあることでありますから、従ってそれだけの裁量の余地と申しますか、あるいは権限を持って参りますことは、また当然のことだと思います。ただ国連というようなところで、刻々動いておりますところでありますから、時差等関係もございまして、時間的に現状を刻々に本国政府報告するということは、努めてやっておりましても、相当に困難があります。従って、それらの点については状況報告して参らなければならぬのは当然でありまして、総理とも連絡をいたしまして、それらの状況のもとに、なお国内における判断も聞きますことは、私は当然代表としてやらなければならぬことだと思っております。がしかしながら、たまたま新聞電報その他が、非常に早く事態の推移を、あるいは時に間違いますこともありますけれども、キャッチして国内に伝える。それらに対して何らか総理として、あるいは総裁として意思表示をせざるを得ないような立場もあろうかと思うのであります。そういうときに、刻々動いております事態に対して、必ずしも正確な判断ができにくい場合もあることは、私は御了承いただかなければならぬと思うのであります。で、究極におきまして、私としては本国のいろいろな情勢、または意見等も聞きながら、刻々動いております事態に対処して参る。私も外務大臣をいたし、また国を代表して使いをいたしております以上、私一個の責任というものも感じておりますし、日本のために現場においてどう対処したらいいかという私の判断も、やはり私は相当責任を持ってやるべきであると思います。従って、そういう点で将来とも私自身代表して出ております以上は、できるだけ私自身の正確な判断によって、そうして情報が必ずしも十分に、刻々動いている現状が故国においてキャッチされない場合には、当然私の判断で問題を処置して参ると思うのであります。その責任は非常に重大でありますけれども、私としては当然その責任は、国を代表して出て参ります以上甘んじて受けまして、その結果の責任は持つつもりであります。そういう態度で、今日までもそうでありますが、今後とも私の責任においてある程度現場の問題については対処して参りたい、こういう考えでおります。
  14. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この間のような場合には、結局アラブ十カ国からの決議案が出ましたから非常によかったわけですけれども、今後におきましても、たとえば国内意見と、国内意見といいましても岸首相意見外務大臣意見が違ったような場合でも、外務大臣は、日本情報キャッチがおそいような場合もあり得るから、国内様子をもにらみ合せるけれども自分責任解決する、こういうふうにおっしゃったように思うわけでございます。この間十九日に、今の外務大臣お答えによりますと、日本国内での情報キャッチがおそかったかどうか知りませんけれども北海道での岸首相は、日本ノルウエー案に対して修正案を出すべきだとか、もし三分の二以上でノルウエー案が通るならば、それに賛成をしてもいいとか、あるいはまた、これに対して通らないような場合には棄権をするとかいうふうなことを言っておられる。それと同じころにアラブ十カ国の決議案というものが大体まとまったようでございます。そのときに日本アラブ連合側に終始好意を示していられた、こういうふうに藤山外務大臣の先ごろの報告の中にもあったわけでございますけれども、そういうふうな立場アラブ連合に対してとっていられた割合には、何か非常に情報キャッチというものがおそかったように思うのでございまして、私は、もしもそれほどアラブ連合側に立っての努力藤山外務大臣がなされていたならば、もっとアラブ連合自分たち考え方を率直に早く話していたのではないか。結局日本外交が、まだアジア一員としての外交方針の上に立っているという信頼感というものがアラブ連合国に徹底しておらなかったので、日本情報キャッチもおそかったのではないか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  15. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 UARフアウジ外務大臣以下日本代表団と緊密な連絡をとっておりまして、それらの点について、特に日本を信頼しないから、何か腹の中にある考えを打ち明けておらなかったということはないんじゃないか、これは私自身のうぬぼれになるかもしれませんけれども、私自身が直接数回会った結果としてそう考えております。むろんUAR立場からいたしましても、ああいう案を出しまして、レバノンなりヨルダンなりがすぐに同調するというふうに初めから考えておりませんでしたことも事実であったと思います。ただ御報告にも申し上げたかと思いますが、インド案が出まして、AAグループがある程度態度をきめなければならぬ、その際アラブ委員連中が集まりましてその態度の決定を早急に迫られざるを得なかった。フアウジ外務大臣としては、その席でもって私と前の晩に話をしておりましたことをアラブ八カ国の会議に提案して、それがすらすらっとレバノンヨルダン同意を得たということは非常にあの際における大きな変化であったと思います。従ってフアウジ外相自身も、果してエジプトの提案したあの案そのものがすぐにレバノンヨルダン同意を得るかどうかということについては、私は若干の疑問があったんではないかと思っております。しかし、今申したように、すぐに一時間後にはAAグループ会議でもってアラブ側態度をきめなければならぬというような差し迫ったところにいっております。でありますから、私が前の晩に話しましたときには、ある程度何らかの修正案的なものが出て、その修正案ノルウエー案とがさらに突きまぜたものが形から出てくる、こういう引き出し方がいいのではないかということをフアウジ外務大臣考えていた節が多いのでありまして、そういう点について、あのときの一晩の事態の急変というものは相当激しい動きであったように私考えております。従ってUAR日本代表団を信じておったか信じておらなかったか、信じておらなかったからそういう動きを詳細に突き得なかったのではないかということまで、私はうぬぼれかもしれませんけれども考えておらぬようなわけであります。
  16. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私どもからするならば、やはりもう少し早くああいうふうな態度というものがキャッチできてよかったのではないかというふうに考えるわけでございます。  そこで第二の点としてただしておきたいことは、先ごろから問題になっております政府外交の三原則でございます。今回の総会の例を見ましても、アジア一員としての外交、それから自由主義陣営との協調というようなこの外交の二点というものは、どう考えましても、やはり同時に行われるものではないということを藤山外務大臣みずから身をもって今回体験されたと思うのでございます。従って国連におきましては、こういうふうな立場にたびたび出っくわされるだろうと思いますが、こうしたターニング・ポイントに立った場合に、一体どちらにプラヨリティを置くかというその考え方は、やはりお持ちになっておらなければならないと思いますけれども外務大臣はどういうふうにお考えになるでしょうか。
  17. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 自由主義陣営一員としての日本と、それからアジア一員としての日本、この立場が何か矛盾をするのではないかというお話もしきりに出るのでありますが、私は自由主義陣営一員としての立場と、アジア一員としての立場というものは、両方十分お互いの立場理解し合っていきますれば、必ずしも私はそう矛盾撞着するとは思わないのであります。従ってどちらにプラヨリティをもって問題を決するよりも、その問題に対する両方判断がどちらが適当であるのかという立場で問題の判断をしていくのが適当だと思うのであります。今日までたとえばナショナリズムの問題につきましては、私は率直に言ってアメリカが必ずしも十分な理解をいたしておるとは思っておりません。従ってアメリカアラブナショナリズムにつきましてもっと理解を深めて参りますれば、アラブアメリカとの立場というものはそう相剋摩擦をするものではないと思います。そういう意味において、日本はできるだけアラブナショナリズムの本質あるいはその性格、あるいはその動き等についてアメリカ理解を得ることに努め、それが理解に達してきますれば、おそらく私はそんなに大きな、この二つの間に問題の矛盾があって、そうして日本立場に困るというようなことはないんじゃないか。その努力がなければ私は矛盾が起ると思いますけれどもアメリカに対してその理解を十分深めていくという努力日本がしますれば——これはちょうど今度のアラブ決議案ができまして、アメリカも喜んで賛成したのは、おそらくアメリカとしても最終的にはアラブ立場理解し得たから、そういう立場をとって矛盾なく解決し得たと思う。そういう意味からいって、やはり東南アジアの民族にしましても、中近東の人たちにしましても、ただ概念的にアメリカはけしからぬというだけでなしに、アメリカがこういう態度をとってくるには若干の理由もある、あるいは経済援助というようなこともずいぶんやっておりながら、アラブの人心をつかむことができないという場合もあるわけであります。そういう点については、ただアメリカはけしからぬと言わないで、やはりアメリカも大きな意図でこういうことをやっておるのだという理解を、東南アジアナショナリズム立場に立つ人も理解していけば、おのずから問題の解決矛盾相剋なく最終的には解決し得るのではないか。アラブ諸国といいましても、必ずしも共産主義陣営に立っておるのではないのでありまして、今日のUAR現状を見ましても、シリアの現状を見ましても、共産党活動というものはほとんど弾圧されておる状況であります。そういう状況から申しましても、必ずしも共産主義を信奉しておりません。大きな意味における自由主義陣営の一環とも見られるわけでございます。ただお互いに相手方の立場を十分理解し得ずあるいは過去の惰性からいろいろな問題が摘出されておりますので、それらの問題の上に立ってみますと、あるいは矛盾相剋があるという場合もあり得ると思う。でありますから、そういう意味において必ずしも矛盾がそうあるわけではなく、日本はその間に立って、その問題の起ってきました事態をつかまえて、どちら側にも公正な注意を申して参りますれば、結局は矛盾なしに問題が解決する場面に到達し得るのではないか、こういうような信念のもとに私は行動しておるわけであります。
  18. 戸叶里子

    ○戸叶委員 藤山外務大臣お話を伺っておりますと、いかにももっともらしいようにも伺えるのでございますけれども、やはり問題が出まして、そうしてその問題に対してイエスかノーか——むろんその場に直面いたしました場合には、そういうふうなのんびりしたことを言っていられないような場面が私は出てくるのではないかと思うのです。ことに国内の自民党内部にあっては、今度の藤山外務大臣態度に対してさえも、アメリカとの経済協力というものを日本が望んでいくという立場から見るならば、快しとしないというようなことさえ言っていられる人が多分にあるというようなことも伝えられているわけでございまして、そういうふうなことから考えましても、やはりどちらの立場を尊重していくかというふうなことは、はっきり基本的な態度としてお持ちになっていかなければ、私は今後おそらく国連外交においては矛盾を感じられるのではないか、こういうふうに考えられますのでこの点に対しましても、なおはっきりとした信念なりをお示し願いたいと思うのでございます。  さらについでですからお伺いしたいと思いますけれども、おとといの外務委員会でもはっきり言われましたけれどもアメリカに行かれましても、アメリカのわからない点というものはどしどし日本立場に立って話を進めていくのが自分考え方である、こういうふうなことを述べられております。従っておそらく中共の問題なんかについても触れられると思いますけれども、中共に対する日本側態度というようなものを説明されますときに、一体どういうふうな形で論じられるのでございましょうか。まあ私どもといたしましたならば、おそらく外務大臣が、アメリカは中共といいますと非常にかたくなな気持で心を閉ざしてしまいますけれども、そのかたくなな気持を打ち砕くような態度になるような形の話し合い、そうした中共に対する考え方というものの意思表示をされるであろうということを信じておりますけれども、これに対してどういうふうな態度で中共問題を論じられるかお伺いしたいと思います。
  19. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 前段のことを申し上げますれば、現在の東南アジアなり中近東なりに流れております大きな思想的な立場と申しますか、社会的な背景というものに対するアメリカ理解が薄いということはこれは確かであります。従って私どもはその点について、アメリカにこの段階においては十分反省してもらい、考えてもらう必要があると思いますが、しかしながら今後起って参ります個々の問題について、必ずしも中近東側の言い方が正しいと判断できないところもあるわけであります。そういう場合にはやはり大きな筋はアメリカ理解してもらいますけれども、また小さい問題の処理については、中近東側あるいは東南アジア側も反省しなければならぬ点があるかと思います。  第二の御質問でありますが、アメリカに行きまして極東の情勢を話します場合に、中共との関係日本としては重大であるということは申すまでもないわけであります。これは歴史的に見ましてもあるいは地理的に見ましても、日本と中国との人民の間の感情というものは、同じ共産圏の人たちに対する中にいても、特にお互に非常な友愛感と申しますか親近感というものを持っておるわけであります。それこれ合せましても、日本の中共に対する考え方、感触というものはアメリカのそれと必ずしも同じではないと思います。従ってそういう点を十分私は説明もし、話し合いもしアメリカ考え方も聞きたいと思うのであります。むろん言葉を激しく言うことだけがアメリカを説得するゆえんでないと思います。円満な話し合いの中にも強くそれを印象づけることもできるわけでありますし、かえって激烈な言葉だけで問題は解決しないと思います。しかし同時にやはり強く言うべきことは筋を強く通して話をすることも必要だと思います。そういう意味において現在日本の置かれております立場というものを十分説明して、アメリカ側の理解を得たいと考えております。
  20. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もっと深く伺いたいのですけれども、もう時間がないので、その次に移ります。核実験の停止協定の交渉開始を呼びかけました米英の提案に対しまして、ソ連が正式に回答、覚書を送りました。そしてジュネーヴで核実験の恒久的停止の協定を結ぼうというような提案を出してきているわけでございます。このことは日本にとりましてもまことに喜ばしいことでございまして、その成果を結ぶように日本もあらゆる角度からこれをバック・アップしていかなければならないと思いますけれども日本政府といたしましては、当然この恒久的な禁止協定を結ばせるような方向に持っていかなければならないとお考えになって、いろいろ御努力なさると思いますが、それについてどんなふうなことをお考えになっていられるかを伺いたいと思います。
  21. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話がありましたような情勢下で、日本の核実験の禁止の希望が漸次具体化して参ったことは喜ばしいことであります。しかしながらまだ十月三十一日以後におきます相談の大綱というものはどうなって参りますか、一年だけになりますか、あるいは恒久的になりますか、はっきりいたしておりません。しかし日本として恒久的な措置が少くも三国間にできるということだけでも喜ばしいことだと思うのです。理想論からいえば国連八十カ国がみんなそういうような一つの形がとれればけっこうでありますけれども、現在の段階では必ずしもそうもいかぬとすれば、半歩、一歩前進という意味で三国間の話し合いができることも好ましいことであり、それが基礎になってやはり世界全体の問題は移っていくと思います。またそういうことが一歩前進して参ることによって、軍縮会議等の将来の成果にも一つの大きな光明を与えるわけであります。でありますから、そういう意味でただ単に理想論だけを申しておらぬで、一歩でも半歩でも前進する、何も国連全部のものが加盟する条約ができなくても、三国だけでも少くとも話し合いが妥結に到達するような線が望ましいのではないかと思うのでありまして、ただそういう点につきましてはやはり国連総会に参りまして、それらの空気をも見ながら、われわれ代表団としては半歩でも一歩でも前進するように進めるように努力したいということを考えております。
  22. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで今お話を聞きますと、やはり日本としても恒久的な協定を結んでもらうことが望ましいということでございますので、そういうふうな内容の、国連におきましてはすっきりした決議案を出そうとするようなお考えがございますかどうですか。
  23. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連現場におきまして決議案を出すか出さぬかということは、国連現場の問題でありますので、そこに行った判断のもとに私はやりたいと思っております。すっきりした線で問題が半歩でも一歩でも前進するように——ただ若干のすっきりしない点がありましても半歩でも一歩でも前進するなら前進させるというのが私は国連におけるやはり一つの政治の場としてのゆえんだと思います。
  24. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ダレス長官とお会いになるようで、その内容については日米安保条約の問題とか、いろいろありますが、その問題をもう少し突っ込んで聞きたかったのですが、時間がありませんのでほかの点だけを伺いたいと思います。  米英が原水爆の禁止協定に応じる前に十月三十一日までには十回も小型核爆発を繰り返すというようなことが伝えられておるわけでありまして、こういうような問題に対しても二カ月後には禁止協定をするのだからいいのだというふうな形でそのまま黙っておくという手はないと思うのであります。従ってこの問題につきましてもダレスさんとの会談でお話になるような御用意があるかどうかということが一点と、時間を省く意味でもう一つ続けて伺いたいと思いますことは、沖縄の問題についても今までと同じようなお考えでお臨みになるかどうかということを確かめておきたいと思います。それはきょうの新聞でもはっきりしておりますように沖縄のB円をドルにかえるというので、大へん沖縄では混乱しておるわけでございまして、アメリカの経済と直接結ぶというようなことからみるならば非常にそのことは楽かもしれませんが、日本の行政権を取り戻したいという希望からみますと、何かそういうことは非常に遠いように考えられるわけでございます。さらにまた先ごろ松野総務長官が沖縄に行こうとされたのに対して、突如として取りやめというようなことも出ておるわけでございまして、一体今後台湾の問題等のあの問題ともからみまして、沖縄の今後というものは日本国民の望む方向から非常に遠ざかっていくのではないかというようなことさえも感じるのでありまして、こういう問題に対しまして藤山外務大臣はどういう態度をもって臨まれるかを確かめておきたいと思うのであります。
  25. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 原水爆の実験禁止の問題にいく過程に若干の実験をするということは、必ずしも好ましいことではないわけであります。しかし同時にそういう問題について十分話し合いをいたしますけれども、また実際的に禁止の過程としてそういうことがあれば、さっき申しましたようにやや理想論的ではないけれども、一日も早くいくためにそういうことも一つの方法ではないかということは、それは考えられないことはないと思います。  沖縄の問題につきましては政府として態度を変えておるわけではないのでありまして、沖縄の将来の問題につきましては、われわれ施政権の返還を最終目的としていろいろな考えを今後ともアメリカに申し出るわけであります。松野総務長官の行かれることは何もアメリカ側が抗議したわけではなく、総務長官自身の都合のために延期されておるわけでありまして、その点ははっきり申し上げておきたいと思います。
  26. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今申し上げましたような実例から見ますと、何か沖縄に対する日本の悲願というものからだんだん遠ざかるように思いますけれども藤山外務大臣の見通しはどうですかということと、もう一つは防衛分担金を三十三年度並みの三十億円以上の特別減額を要請してほしいというようなことを大蔵大臣から外務大臣がお頼まれになったということが報道されておりますが、こういうことに対しても話し合いになる御意思があるかどうか、この点を確めまして、まことに残念でございますが、私の質問を打ち切りたいと思います。
  27. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 沖縄の問題につきましては政府としては変っておりませんので御了承を願いたいと思います。なおアメリカに行きます場合に、各省からいろいろこういう点について、話をしてくれということはたくさんございます。一々申し述べましたら何十とあるわけですが、それらの点についてはむろん各省の大臣からそれぞれ希望がありますから伝えては参ります。しかしながら今回は具体的問題を解決するというよりも、むしろ基本的な話し合いをするということが私の立場でありますからそれらの問題に触れておきますけれども、あとは通常外交ルート等で交渉もできる問題でありますから、必ずしも私自身解決するつもりではございません。
  28. 櫻内義雄

    櫻内委員長 この際外務大臣渡米に際し、特に両党よりそれぞれ発言を求められておりますので、これを許します。岩本信行君。
  29. 岩本信行

    ○岩本委員 私は自由民主党を代表いたしまして、藤山外務大臣国連へ重ねて出発せらるるに際しまして、一言申し上げまして、積極的なる御活躍を期待したいと存ずる次第でございます。  私は元来超党派外交の推進論者でございまして、その意味は、申し上げるまでもなく、与党、政府というものが野党の言い分に謙虚に耳を傾けることであり、しこうして野党の諸君も反対のための反対ということは打ち切っていただきたい、そして少くとも重大外交につきましては超党派外交で推進してもらいたいという切なる念願でございますが、幸いにして本日は両党協調において、今やまさに重大時局に立っておる国連の場で大活躍をされようという藤山外相に対して、両党から激励の辞を述べる、これはわが外務委員会においても画期的なことでございまして、いわゆる私の考えておりまする超党派外交に一歩踏み出したものである、こういうことで、きわめて痛快に存ずる次第でございます。  そこで最近の岸内閣における藤山外交というものは、特に国連の場における藤山外交というものは、おおむね成功をしておると考えます。これは客観的な立場から見ても、完全にそう言い得ると存じます。たとえば先般安保理事会におきまする日本態度、もちろん米ソは自国本位の決議案でありましたから、これが否決せられたことは当然であり、さらにスエーデン案といたしましても、連合国が認める意味ではなかったと存じますから、これが否決せられたのは当然である。しこうしてわが日本代表が提案いたしました決議案というものは、ソ連の拒否権には会いましたけれども、その他絶対の支持を得たというこの一事でもまず成功だといえまするし、そのこと自体が次の緊急総会において相当な効果をもたらしたということは事実でございまして、きわめて愉快に存ずる次第でございます。しこうしてまた、去る緊急総会におきましては、藤山外相みずからが出席いたしまして、いわゆる自由主義陣営との提携という大原則はありまするけれども、是は是とし、非は非とする、こういう建前におきまして、米英中心の案であるノールウェー決議案というものに、軽々に賛同しなかったというところに結果的にはアラブ決議案というものが成り立ったのであって、日本のこの間に処したる活躍というものは世界列国がことごとく認めたと、かように存ずる次第でございまして、きわめて御同慶にたえないと存じます。しかもハマーショルド事務総長が日本決議案をそんたくして、監視団を派遣せいというこの要請に対しましても、  のとりました態度、すなわち憲法上、自衛隊法上からそれは拒否した、このこと自体も当を得た措置だと考えるわけでございまして、かような方向を推進いたして参りますについては、日本の信用度というものも着々として世界列国に認めらるることであろうと考えまして、この点はきわめて愉快なことであり、めでたきことであると、かように存じております。  そこで藤山外相も当委員会において仰せらるる通り日本そのものが主役の立場に立つということは、あらかじめ計画的に意識的にいたしたのでは成功度はおぼつかない、その通りだと私も考えております。現在の日本立場という面から見ますと、意識的に計画的に事をする、こういう主役は成り立ちませんけれども、正しい主張、そしてはからざる努力というものが、この間の決議案提案のときのようなひとりでに主役になるということは、きわめてけっこうなことでございます。今後もそういう方向で臨んでいただくのでありますが、今回の出発に際しまして特に申し上げたいことは、積極的に主役を果してもらいたいという事柄があるわけでございます。それは、たびたび論議もされておりまするけれども、とにかく核実験の停止、そして行く行くは禁止、この問題に関する限りはこれは八十数カ国ありといえども日本自体が積極的な発言をし得るいわゆる苦い体験者であるという点において、他のどの国にも譲らない立場にあり、この国の主張というものが一番通過する可能性を持つことであり、しこうしてこれが成功した場合において、世界外交中における最も重要なる事件でありまするからして、このことに対しましては日本の世論というものをもちろんまじめに取り上げていただくのでありまするけれども国内の雑音というものは排除いたしまして、あくまでこの信念貫徹のために、出発に際してこの点については強い決意のもとに臨まれることを要望してやみません。(拍手)  しこうしてまた一般的な問題といたしましては、もちろん床次君のすでに申されましたように、人口の問題とか、自由貿易の問題とか、あるいは東南アジア経済開発の問題等々、これまた積極的に御尽力を願わなければならぬわけでございます。  さらに国連総会に出席する前に出発せられまして、カナダとの善隣あるいはまたアメリカに対する片務的な安保条約の改訂等御尽力になることであろうと存じますが、外務委員会において数万言費やされておりまする両党の意見というものは、大よそ外務大臣としてすべてを理得され会得されておると存じますので、こういう面に向って積極的なる御奮起をお願いしてやまぬのであります。李ラインの問題等につきましても、日韓間において非常な努力をされておるのだが、しかしながら隠忍自重にも程度があるのでございまして、私は李ライン問題等につきましては、今やこれは国連提訴の覚悟をきめられていいのではないか。要するに私は、あの事件のごときは国辱問題であるとさえ考えておる次第でございまして、今回の会議に出席される上においては、そうした面についても積極的な御活動を願いたい、かように存ずる次第でございます。  しこうしてまた、基本的な考え方といたしましては、中東問題というそうした事柄に苦労することは、もとより当然でございますが、何といたしましても、日本といたしましては、極東問題こそきわめて直接的な重大な事件でございまするが、わが極東において、今日不祥な事態が目の先にぶら下っているというこの事実を深く体せられまして、アメリカに対し、イギリスに対し、その他国連全体に対しまして、それらを総合して積極的なる御活躍を期待してやまぬ次第でございます。さような御労苦、まことにお骨折りのことではございますけれども、どうか今日の日本の置かれておる立場というものを、間違いなく世界の壇上において発言せられ、活動せられて、成果を上げられることを、出発に際し特に要望申し上げまして、わが党の意見といたします。(拍手)
  30. 櫻内義雄

    櫻内委員長 田中稔男君。
  31. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 今回藤山外務大臣国連通常総会に出席されるために、またアメリカ政府と広範な諸問題について会談されるために、渡米されることになりましたので、社会党を代表して一言申し上げたいと思います。  申すまでもなく、藤山外務大臣は国を代表し、国民代表して行かれるのであります。断じて自由民主党を代表して行かれるのではありません。従って私はここに国民的要望を代弁して、一言壮行の辞にかえたいと思う次第であります。  しかしながら、私は岩本委員の言われる超党派外交立場に立って申し上げるものではないのであります。わが社会党の、いずれの陣営にも属しない、自主中立の平和外交政策と、自由民主党のアメリカ一辺倒の外交政策とは、天地の開きがあるのであります。日本外交の三原則、すなわち国連中心主義、自由主義諸国との協調及びアジア一員たること、この三原則は、具体的な外交問題の処理に当りましては、しばしば重大な矛盾に陥るのであります。その最もいい事例が、今回の中東問題でありました。通常総会においては中東問題の継続討議が行われると予想されるのでありますが、私は外務大臣アラブ民族主義を支持する立場に立って、アラブ十カ国の共同提案のすみやかなる実現のために努力していただきたいと考えるものであります。その場合、あなたが日本外交の三原則である自由主義諸国との協調という原則と、アジア一員たることという原則との間に矛盾を感じられる場合には、ちゅうちょするところなく、アジア一員たる原則に立って行動していただきたいということを強く要望いたします。  アジアの中心は中国であります。ところがアジア一員たることを原則とする岸内閣の外交は、中国問題においては全くブランクであります。人口六億を擁し、安定した政権のもとにその偉大なる建設を進めておりまする中華人民共和国を空白にして、アジア外交というものは日本にとって考えられないのであります。今度の通常総会においてはおそらく中国の代表権が再び問題となるであろうと考えられるのでありますが、私はその場合には、中華人民共和国の代表国連においてその席を当然に占めなければならないということを主張していただきたいと考えるものであります。(拍手)また実際問題として考えましても、核実験の中止のための監視所を八カ所中国の領土内に設けなければこの中止の実行は不可能であるというのが、ジュネーヴにおける先般来の専門家会議の結論であります。だから核実験の中止を実現いたしますためにも、中華人民共和国を承認することが絶対に必要であるのであります。さらにまた一般的な軍縮の協定を実現いたしますためにも、三百万の軍隊を有しておる中華人民共和国を度外視してその協定が成立しないことも明らかであります。さらにまたアジアの平和という観点に立ちましても、中華人民共和国を国連にその当然の地位を認めてやり、そうしてこの中華人民共和国との協力によらなければアジアの平和は実現できないのであります。現在台湾海峡には重大な軍事的緊張が存在いたしておるのであります。その軍事的緊張の根因は、蒋介石軍が金門、馬祖両島に駐屯しておる。さらにまたアメリカの第七艦隊が台湾海峡に蟠踞しておるということであります。こういう台湾問題は、どうしてもアメリカとの間の折衝の問題ともなると思うのでありますから、どうか一つ当面の軍事的緊張の緩和のために、さらに中国問題の全面的な解決によりまして、アジアの真の平和を実現するために、外務大臣の御努力を切に要望するものであります。さらにアメリカ政府との折衝におきましては、広範な問題が問題となると思うのでありますが、たとえば現在の日米安全保障条約を廃しまして、これにかわって双務的な日米相互防衛条約というようなものを作りたいという考え政府の一部にあり、そのための予備的ないろいろな交渉も行われるのではないかと思うのでありますが、日本国民はそういうことに対しましては、決して賛成はいたしません。日本国民の率直な気持は現在の日米安全保障条約そのものを全然廃棄して、そうして日本にあるアメリカの軍隊の撤退とアメリカの軍事基地の撤去をこそ要望しておるのであります。そうすることによって日本の独立は真に達成することができると国民考えておるのであります。またこの間の第四回原水爆禁止世界大会においても問題となりましたが、核兵器をアメリカ日本に無断で持ち込む、こういうことについて日本国民、世界の人類は非常に不安に考えておりますから、この核兵器をアメリカが無断で日本に持ち込まない、こういうことについての単独の日米間の協定を結ぶというようなことは、当面私はぜひしなければならぬことだと思うのであります。こういうことについて外務大臣の御努力をお願い申し上げるものであります。また沖縄、小笠原の返還も国民多年の要望であります。どうかその方向に向って御努力をお願いしたいと思うのであります。  まだいろいろ申し上げたいこともありますけれども、時間もありませんからこの程度にいたしますが、私は藤山外務大臣のものの考え方における流動性と弾力性に期待をいたしまして、日本の独立と平和のために御健闘いただきますことを切にお願い申し上げまして、壮行の辞とするものであります。(拍手)
  32. 櫻内義雄

  33. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま、私が明後三日に立ちましてワシントンに参りまして、同時に国連総会に出席するに当りまして、自民党岩本委員より、また社会党田中委員より激励のお言葉をいただきまして、まことにありがたくお礼を申し上げます。  私は外務大臣として、長期政権を担当いたします岸内閣の今後の政策の基本的な話し合い、また国連におきまする日本のその線に沿った今後の立場を主張するために参るわけでありますが、私は就任以来一年、外務委員会の皆様から委員会の席上を通じていろいろな質疑応答の中に国民的願望というものを聞かしていただいております。従ってそれらを十分身につけて今後日本外交をやって参りますということについては、私はかたい信念を持って進んで参るつもりであります。むろん日本が置かれております今日の地位また国力から申しまして、一気にいろいろ問題の解決をはかる、あるいは理想の境地に達することはとうていできないと思いますが、しかしながら半歩でも一歩でも国民の願望に沿って前進する道だけは進めて参りたいと思います。それが日本外交の主軸である対米協調の上にも一番重要な点であり、また東南アジア一員としての日本立場を今後強からしめていく上においても必要だと考えております。そうしてそれらの問題を取り扱います場が国連であるということも私十分承知いたしておるのであります。そういう意味において今後できるだけの努力を払って参りたいと思います。むろん私自身非常に微力でありまして、果して努力をいたしましても十分御期待に沿うような結果を得られるかどうかはわからないのでありまして、その点については期待を寄せられるだけに私として非常に重要な責任を持つかと思いますが、しかしながら外務大臣として日本代表して対米交渉をいたし、あるいは国連において日本代表して、国連内の種々の問題に対処いたして参ります以上、私自身の信念と、一年間を通じて両党からそれぞれ得られました国民の願望の最大公約数だけは守っていくつもりでありますので、どうぞ御協力願いたいと思います。まことにありがとうございました。(拍手)
  34. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午前十一時四十七分散会