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1958-08-30 第29回国会 衆議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年八月三十日(土曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君    理事 佐々木盛雄君 理事 床次 徳二君    理事 山村新治郎君 理事 岡田 春夫君    理事 松本 七郎君       川崎 秀二君    小林 絹治君       福家 俊一君    大西 正道君       田中 稔男君    戸叶 里子君       帆足  計君    穗積 七郎君       八百板 正君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  委員外出席者         外務政務次官  竹内 俊吉君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (国際連合局         長)      宮崎  章君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 七月三十一日  委員高田富之辞任につき、その補欠として久  保田豊君が議長指名委員に選任された。 同日  委員久保田豊辞任につき、その補欠として高  田富之君が議長指名委員に選任された。 八月二十七日  委員高田富之辞任につき、その補欠として松  浦定義君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員松浦定義辞任につき、その補欠として小  松幹君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員小松幹辞任につき、その補欠として高田  富之君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員石田博英辞任につき、その補欠として川  崎秀二君が議長指名委員に選任された。 同日  委員川崎秀二辞任につき、その補欠として石  田博英君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢等に関する件      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件について調査を進めます。この際外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。藤山外務大臣
  3. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般第三回の国連緊急総会が開かれましたので、私は十三日に立ちまして、十四日から総会に出席して参りました。二十四日に帰国いたして参りました。以下御報告を申し上げたいと思います。  今回の緊急総会は、さきに行われました安保理事会におきますレバノンヨルダン問題の審議が何らの成果をあげられなかった事態に応じまして、国連第五総会において採択されました平和への結集決議に基きまして召集されたものでありまして、議題といたしましてはもちろんレバノンヨルダンよりの提訴に関する件となっておりますが、事実的審議内容米英軍撤退に関し、円満かつ実際的な解決方式を見出すとともに、あわせてレバノンヨルダンをめぐる中近東問題全般にわたる検討を行うことになったのであります。  ハマーショールド事務総長は、開会初日会議におきまして特に発言をいたし、国連事務当局として中近東問題解決基本的要件として一、レバノンヨルダンにおける国連活動の強化、二、アラブ諸国間における内政不干渉、主権及び領土尊重の原則の再確認、三、中東における経済開発必要性、四、難民問題の解決諸点を示唆いたしたのであります。一般討論は八月十三日より開始されましたが、劈頭アイゼンハワー大統領中近東平和計画として左の六項目を演説いたしたのであります。  一、レバノンに対し国連が適当な措置をとること、二、ヨルダンに対し、その政治的独立及び領土の保全を保障するため国連が適当な措置をとること、三、国外からの内紛の助長、すなわち間接侵略を阻止すること、四、国連平和軍の設立、五、アラブ諸国生活水準向上のための経済開発、六、中近東における諸国間の軍備競争の激化を回避するための措置等提案いたしたであります。  次いで、グロムイコ・ソ連代表は、米英軍中近東における事態が安定するまで駐留すべきであるとの議論は排撃すべきであり、中近東経済開発構想には原則的には反対ではないが、今次緊急総会撤兵問題より逸脱すべきではない旨強調いたしました。英国をはじめとする西欧諸国代表は、いずれも大国の脅威にさらされた小国の正統政府の要請のあった場合には右正統政府を救援するための出兵は正当であるとの立場より、米国政府の提唱せる事態収拾策を支持いたしました。特にアイルランド代表は、中近東諸国中立化及び非武装化提案を行い、注目を引いたのであります。  共産圏諸国及びA・Aグループ諸国アラブ連合インドインドネシア等米英介入を非難し、米英軍即時撤退を要求し、その他のA・A諸国中イランパキスタン等中近東におきまする政治的安定が国連措置により回復せられ、それによりまして米英軍撤退が実現し得ることが、望ましいとの趣旨の演説を行ったのであります。  日本代表団としては本件安保理事会における審議以来のわが方の立場にのっとりまして中近東問題が世界平和につながる重要なる課題であるにかんがみ、国連としては、今回の緊急総会において、単なる過渡的弥縫策としての解決をはかるにとどまらず、問題のよって来たるゆえんを探求かつ分析し、将来における恒久的解決策を可能ならしめる契機とすべきであるとの立場より、中近東問題の長期的解決策に関しては引き続き、第十三総会におきまして審議を行うこととし、今回の緊急総会においては将来における問題の解決を容易ならしめるため、最も望ましい形においてすみやかりに米英軍撤退を可能ならしめるための方式を案出することをその任務かつ目的といたした次第であります。  一般討論開始ノルウエー代表は、米英代表とも協議の上、ノルウエー案と称する決議案を作成いたしまして、十六日右案をわが方にも提示してよこしました。とともに、でき得れば共同提案されたい旨要請して参ったのであります。わが方からは同案によれば撤兵の時期を明示することはたとえ困難なりとするも今次緊急総会において多数の代表より表明された米英軍早期撤退に対する強い希望は何らかの形において決議案に明示せられる必要あること、米英軍駐留が当然正当化されおるがごとき字句は削除または修正せらるべきこと、等の諸点につき当方の所見を述べたのであります。ノルウエー代表におきましても右意見を了とせられまして関係諸国代表協議の結果、撤兵の時期を明示することないしは早期撤兵が望ましいとの趣旨を明示することの点を除いては当方希望は大体受諾されたのであります。  私といたしましては、緊急総会一般討論における所信表明の際にも明らかにいたしました通り中近東問題の解決に当りましては、当該地方における正当なる民族的願望に対し、正当なる理解と同情をもってしなければ、問題の永続的解決は困難であるとの考えから、右の立場より今次緊急総会において成立すべき決議案アラブ諸国側よりの正当なる希望はこれをいれる必要もあり、従って、決議案はでき得る限り全会一致のものにすべき旨各国代表に力説をいたしておった次第であります。  私といたしましては、十四日国連到着以来、米、英、ソ、アラブ連合を始め主要関係国外務大臣、諸代表ともでき得る限り密接に連絡をいたしまして各国意向を聴取するとともに右申し上げましたようなわが代表団立場説明いたしたのであります。特に米国ダレス長官とは二回、アラブ連合ファウジ外務大臣とは三回にわたり意見の交換を行い、アラブ連合側の主張とノルウエー案との調整に極力努力いたした次第でありますが、右努力が結実いたしません間に、インド代表団よりノルウエー案に対する修正案及びインド独自の案が非公式に提出され事態はますます紛糾いたしました。私といたしましては、終始アラブ諸国側が同調し得る決議を成立せしめることが、今後における事務総長任務を達成せしむることができるかぎと考えまして、関係各国間の意見調整努力いたしたのでございます。十八日夕刻、アラブ連合外相と会談いたしましたる際、アラブ諸国による決議案提出の動きとその内容につき説明を聴取いたしましたが、右構想が翌十九日朝アラブ諸国代表間において一応決議案の形にて合意せられ、右決議案に対する各本国政府よりの正式受諾の訓電を待ちました後かつまた米英その他関係諸国受諾意向を確認いたしました上右決議案は正式に提出されたのであります。  右アラブ諸国による共同提案は、その提案に至る経緯を見ますとまたその内容より見ましても、わが方の基本的立場と符を一にするものでありまして、わが代表団といたしましてはこれに賛成の意を表した次第であります。  私といたしましては、アラブ諸国代表が、現存する諸種の困難を乗り越えまして、本決議案提出にまでこぎつけましたことを実にうれしく思いますとともに、米英両国政府が、アラブ諸国のイニシアチブを歓迎し、その共同決議案を支持いたしましたこと、さらにノルウエー代表右アラブ共同決議案提出にかんがみまして、ノルウエー案の表決を特に求めない態度に出ましたことに対し、深い尊敬の念を払った次第であります。  かくいたしまして緊急総会は満場一致のもとにアラブ決議案を採択いたしたのでありますが、今日すでに事務総長中近東において、その使命達成のため努力のさ中であります。いずれその報告に基き、中近東問題は来たるべき第十三総会におきましても審議される可能性もあると思われます。問題の恒久的解決は今後に残されている次第でありますが、今後とも問題解決のためじみなる努力を続けて参りますことは国連加盟国、特に安保理事国としてのわが国の義務であると考えておる次第であります。  以上簡単ではございますが、緊急総会報告といたします。
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。大西正道君。
  5. 大西正道

    大西委員 この間の緊急総会には藤山外務大臣みずから出席されましていろいろ御奮闘の結果、最悪事態の回避がなったことは御同慶にたえぬところであります。しかしあの解決までの過程を見ますると、新聞藤山外交けが功名なんということを書いておりまするが、途中では大へんよろめいたということも事実である。藤山外相自身かなりの統一した考えを持っておられたようでもありまするけれども岸総理大臣との間に若干のズレがあるし、それに加えて与党がくちばしを入れるというようなことで、完全に国内における外交の基本的な態度というものが二元、三元全くよろめきよろめいたというような印象を与えておるのであります。けが功名でも最後は一応最悪事態を回避できたということに対しまして私は喜びをともにするものでありまするが、しかしそういうふうな方針では、今後まだ問題は山積いたしておりまするから、今後の処理の面についてかなりの疑念を持つわけであります。私どもはやはりアジアの一員として日本アジアアラブ諸国の利益を中心に守っていくという、この自主的な態度を堅持されることが望ましいのであります。これは時間があればこの辺のいきさつを少し聞いておきたいと思うのでありまするが、私は次に台湾海峡をめぐる問題について若干質問をいたしたいと思います。  きのうの参議院の外務委員会答弁なんかも間接的に聞きますと、台湾海峡をめぐる情勢見通しについては、外務大臣かなり楽観をしておられるように思うのでありまするが、この点いかがでございましょうか。どういう理由であまり心配をされないで今静観の態度をとっておられるのか、この点を簡単に一つ聞いておきたいと思います。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 金門周辺をめぐります台湾海峡事態につきましては、私は当面楽観も悲観もまだいたしておらないのであります。事態の状況を注意深く見守っておるというところに私の現在の立場があるわけであります。御承知のように、現在この事態が拡大いたしますことは、やはり地域的な動乱でありましても、世界動乱に波及すべき要因を持つ場合があるわけであります。そういう意味におきまして、ソ連におきましてもあるいは米国におきましても、今回の中近東問題の経緯を見ましても相当自重的な立場両国ともとっております。世界を動かします大きな二つの国が相当自重的な立場をとっておりますことは、やはり今後の推移の上においても、楽観ばかしはいたしませんけれども、しかし事態発展という問題についてやはり相当われわれは考慮し得る両国立場だと思います。そういう意味において、決してこの事態が非常に簡単な事態だとは考えておりませんけれども、同時に何か第三次世界大戦の誘因になるような事態であると今日すでに即断いたしますことは、あるいは早計であるというふうに考えております。
  7. 大西正道

    大西委員 私どももそういうふうに見たいのでありまするが、台湾海峡に面する大陸の中共軍の総司令官は、近く金門局を解放する、やがてこの解放は台湾にも及ぶものである、こういうことをかなり明確に言い切っております。それに対しまして米国ダレスは、この問題が局地的に解決するというふうに見ることはできないのだ、こういうふうに、まだ態度は鮮明にいたしておりませんけれどもかなり強腰であります。こういうことを見ますると、私どもかなりの危険がはらんでおるものだ、個々の点に私は若干外務大臣とは違った見通しを持ち、憂慮を持つのであります。それで、将来の最悪事態発展するというようなことも考えて、政府はいろいろの場合に対処する用意がなければならぬと思うのでありますけれども、私はこの紛争がさらに大きく発展するかしないかは、一にかかって米国出力いかんにあるのではないか、こういうふうに考えます。すでに英国の有力な新聞などは、金門島のごときは、これは当然地理的な条件から見てもこれに台湾政府が固執しさらにまたこれに米国武力をもって介入するというようなことは、これは愚かなことである、こういうふうな見解をとっておるのでありますが、外務大臣はそういうような見解というものが正しいと見られますかどうですか。そういう見解に対しての態度はいかがでしょう。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 世界のどこに起ります局地的戦争につきましても、あるいは紛争につきましても、それぞれ過去におきます歴史的な経緯もあるわけであります。そういう点から見ますと、やはりそれぞれの国の立場というものは歴史的にあると思います。従って今にわかに、局地的な戦争が起りましたときに、どの国だけの立場が悪い、どの国だけの立場がいいというわけには、私は歴史的な経過から見て、にわかに軽率に判断いたしてはならぬと思います。しかし第三次世界大戦が起るということは、日本は好んでおりません。おそらく世界の何人も好んでおらぬと思います。そういう意味において、事態が進展する場合には、十分われわれとしても平和的な努力に向って、関係各国互譲妥協の精神で問題の平和的解決をはかるように努力すべきが必要なことであろう、こう考えておるのであります。現在私の立場といたしまして、そういう考え方のもとに事態推移を見守っておるわけであります。
  9. 大西正道

    大西委員 もしここに米国金門島のこの紛争に対して武力をもって介入する、こういうことになりますれば、日米安保条約の定めるところによって当然駐留米軍出動することになると思うのでありますが、これについては外務大臣は異議はないでしょうね。そういうふうな安保条約規定によって米車出動考えられるということについては、これは当然お考えになると思うのでありますが、いかがですか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 何か極東事件が起りましたときに米軍がどういう行動をするか、それに関連して日本がどういう事態に置かれるかという問題については、今後の発展を見なければ私として何も今断定的なことを申し上げる段階にはないと思います。
  11. 大西正道

    大西委員 この間の安保委員会におきまして、新聞の報ずるところによりますと、いやさらにまたあなた方の出された共同声明によりますと、台湾海峡をめぐる情勢について検討を加えた、こういうことが報ぜられておるのでありますが、それは情勢の分析を米軍から聞いただけでありますか、それとも、この問題について安保条約に基くところのいろいろな場合を想定しての話があったのであろうと私は思うのでありますが、いかがですか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般の安保委員会におきましては、金門周辺事態につきましてアメリカ側見解を聞いたのでありまして、それ以上の何らの討議をいたしておりません。
  13. 大西正道

    大西委員 これは安保委員会の運営の問題もあるけれども、当然日本政府といたしましては、現実台湾海峡にそういうふうな問題が起きておるのであるから、わが国安保条約によるいろいろな規定によっていろいろな場合を考えて、この問題についての討議がなされなければならぬと私は思うのでありますが、一方的な向うの説明だけを聞かれたわけですね。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 一方的なというお言葉はちょっとあれだと思いますが、金門周辺に対する事態に対してアメリカ側見解を聞いたわけであります。
  15. 大西正道

    大西委員 どういう事態になるか、そのときに一つ考えるということでありますけれども、明らかに安保条約の第一条によりますと、駐留米軍を使用する場合には極東における安全と維持に寄与するため、こういうように規定されてあるのであります。現実に今起っておりますこの台湾海峡をめぐる問題は、これは極東の安全と維持に大きな影響を持つもので、この問題に対して事件が起きれば、当然在日米軍出動するということは、これは明らかなことであって、これをそのときによってまた考えるというようなことでなしに、そういう想定をして今から対処することがなければならぬと私は思う。安保条約に基いて、もし米軍がこの紛争介入すれば駐留米軍出動する、こういうように考えてよろしいですね。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在の段階におきまして、この金門周辺事件がいかに拡大していくか、あるいはごく局地的な紛争にとどまるかということについては、まだ完全に、どちらにとどまるかということを断定的に申し上げる段階ではないと私は思います。従いまして、そういうことの予想の上にいろいろ前途に対して今私の考えを申し上げることは不適当だと私は思います。
  17. 大西正道

    大西委員 当然きまったことを、考えを申し述べるのが不適当だと言われるけれども、それはまあ条約解釈論として聞いてもよろしいのですが、その前に二十六日の在日米海兵隊のスポークスマンが明らかにしたところによりますと、すでに在日米飛行隊台湾移動しておるのであります。移動という表現がよいか、出動という表現がよろしいか、出動しておるのであります。これは私は容易ならぬ問題だと思うのでありまするが、これは安保条約第一条によるところの極東における安全と平和の維持のために出動したものだと考えてよろしいですか。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今軽々にそういう点について判断を下しますことは適当ではいと思います。
  19. 大西正道

    大西委員 適当でないとかあるとかいうのじゃなしに、すでに海兵隊飛行隊——日本駐留しているところの飛行隊台湾出動しておるのです。このことを明らかにしておるのです。これはいわゆる安保条約第一条の規定に従って出動しておるのか、該当しておるのか、こういうことであります。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカ軍の一々の移動につきまして、現在の事態においてそれがどういう立場から移動しているかということを判断するのは、まだ早いのじゃないかと私は考えております。
  21. 大西正道

    大西委員 そうしますと、これは今の段階においては、その判断は早いと言われるが、いよいよ紛争が拡大して、米軍武力介入したときには、米軍出動する場合には、日本政府の何らかの了解を求めるというようなことができますか。私はできないと思うのであります。その点はいかがですか。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 極東の平和の事態に対して、日本は相当大きな責任を私は持っておると思います。従いまして極東事態に対して、率直にアメリカ側に対して日本考え方を申すことは当然だと思います。また当然しなければならぬことだと思います。そういう意味において、われわれとしては今後の事態を見守りながら、どういうふうな事態発展に対してアメリカ側にも注意するというようなことが起り得るか、そういう問題は先ほどから申し上げております通り、今後の問題だと思います。
  23. 大西正道

    大西委員 しかし現実にこの米軍武力介入はないといたしましても、日本におるところの米飛行隊台湾移動しておる、出動しておるということは、ダレスの言うところの間接侵略じゃないけれども、これは明らかに間接的な武力介入なんですよ。こういうことに対してどのような判断をしておるかということに対しての外相見解がないということは、まことに不見識なことだと私は思います。法律の上からいいますと、米軍出動させることについての判断は、米軍独自であって、日本政府は何らそれに対してくちばしを入れるところの余地はないのであります。これはまことに残念なことであります。けれどもあなたのおっしゃるところによれば、そういう場合にもわれわれは十分意見を述べるということを言っておられるのだが、そういたしますと、今日すでに米軍が、飛行隊出動しておるというような段階についてあなたは何らかの意思表示をされ、これについての交渉をされる必要が、私はあると思うのでありますが、いかがでありますか。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもは現在の事態の真相、あるいはむろん先ほど申し上げましたように、現在の段階において、いずれの国といえども不拡大の方針のもとに、できるだけ紛争局地にとどめるように努力いたしていることは、私は当然のことだと思います。今後の起ります事態について、われわれは先ほど申し上げました通り、その事態推移と、やはり問題の核心を正確につかみながら、その判断のもとにアメリカに対しても忠告すべきことは忠告し、また拒否すべきことは拒否することは、日本極東における立場からいって私は当然だと思います。
  25. 大西正道

    大西委員 答弁がどうもはずれてしまっているのですが、それでは私は、この安保条約の第一条の解釈について聞きますけれども台湾海峡をめぐるこの紛争に対して米軍武力介入をすれば、これは極東の安全と平和の維持という建前から米軍出動するということが当然あり得ると私は考えまするが、そういうことを否定する何か根拠がございますか。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私のただいま申しておりますのは、法律的論拠によっていかんということではないのでありまして、今日の日米の間の緊密な連絡の上からいいましても、友好親善関係の上からいいましても、極東事態に対する日本発言というものを私は相当に重要視していると思います。また日本としても当然言うべきことは言うわけでございまして、政治的な意味において、私は御答弁申し上げておるわけでございます。
  27. 大西正道

    大西委員 これはどうも台湾の問題が激化すれば、当然駐留米軍がこれに巻き込まれるということはもう明らかなことである。それをことさらにその場合を回避されるということは、これは外務大臣としてまことに納得のしかねる態度であります。  そこで私は一方的に論を進めまするけれども、もし米軍介入すれば、米軍飛行基地であり、あるいは海軍基地であるところのわが本土に対して、反対側中共側報復爆撃があるということはもう当然であります。こういう意味におきまして、私どもはこの際日本戦争に巻き込まれないためにも、どうしてもこの米軍武力介入ということを、この際全力をあげて阻止する、思いとどまってもらうということのために外務大臣は最善の努力を払わなければならぬと思うのでありまするが、いかがでしょう。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、極東の平和の維持ということは、私は現在の日本立場からいって当然日本の大きな外交方針でもあり、また課題でもあると思っております。従ってこれがいたずらに拡大していくということについて、われわれとしてはやはり憂慮せざるを得ない。それはいずれ側からの強力な武力行為にいたしましても、ともにやはり自制をしてもらう必要があり、おのずから平和的な解決の方途を見出していくべきだと考えております。そういう意味におきまして、やはり事態推移に応じて、私どもは言うべきことははっきり言っていくことが、かりにアメリカと友好関係を深めて参ります上においても、私は必要なることだと思うのでありまして、私としては今日までそういう態度をとってきておりますので、そういう問題について、できるだけ不拡大になるように努力をすることは当然だと思います。
  29. 大西正道

    大西委員 この問題でごしゃごしゃ言ってもしようがない。もう一回言います。あなたが友好的な関係において十分意見を述べて聞いてくれるはずだといいましても、米国米国自体の対ソ戦略上、対中共戦略上、この問題について駐留米軍を使わなければならぬという判断を下したときに、これに対して何ら法的に日本政府が異議を申し立てる、あるいは日本政府の意思を聞くというところの根拠がないじゃありませんか。この点をついているのです。友好的な雰囲気と申しましても、米国自体の戦略体制から米軍を使うということに対してこれを阻止する、思いとどまらせる、日本の意思をしんしゃくさせるという根拠がどこにもないじゃないですか。米軍金門島の事件に対して派兵するという場合には、ダレスも言っておるように、かなりの決意をもって入るわけである。そういうような場合に、日本駐留しておるところの軍隊が使われないで、そのまま日本の意思を聞いて、そうしてあそこで戦闘が行われるということは、これは容易に考えられないことです。そうじゃないですか。当然中共側は、金門島を解放する、台湾を解放するということを一連の形において考えているときに、これに対応して、危険を冒しても、米国がここに派兵をしよう、介入しようというときには、これはもう第三次世界大戦を覚悟しての態勢でなければならぬ。そういうときに、最も有利な地位にある日本駐留しておるところの米軍を使わないというような見通し、根拠はどこにあるのです。その点を続いて聞きます。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 少くも現在の段階におきまして、アメリカにしましても、あるいはソ連、中共にしても、必ず事態の拡大を、世界戦争台に持っていくという考え方はないと私は思っております。むろん局地的戦争でありましても、紛争が始まります以上は、勢いというものもありますから、いろいろな問題が起って、拡大される可能性はないと楽観するわけにはいかぬということは先ほど申し上げた通りであります。そういう場合に、法律的には、むろん安保条約の条項において、日本立場というものを無視する場合もありましょう。しかしながら同時に、現在日本の置かれております極東における位置、そういうものから見まして、またアメリカ日本との友好親善関係から見まして、大きな政治的な意味において、現在の段階では、日米間に協力して話し合いをする余地は、私は十分あると思っております。
  31. 大西正道

    大西委員 そういう甘い考えでこの問題に対処されるということは、私どもは非常に危険を感ずる。国民も危険を感じておるのであります。明らかに日本の意思がどうであろうがこうであろうが、金門島の事件武力をもって介入するという場合には、日本駐留米軍が使われる、その報復爆撃として、日本は中共の爆撃を受ける、こういうことはもう明らかなことであります。この明らかな予見を、あなたがことさらに回避さるということは、まことにもって責任回避であると私は思います。そういう意味から申しまして、それでは事を平和的に解決するということになれば、私の判断からいたしますれば、金門島に対する米軍介入ということを思いとどまらせるということが、事件を平和的に解決するゆえんであると考える。この世論は、今申しました英国の有力新聞でもいっておりまするし、米国内の世論もそういうふうにかなり強いのであります。この際外務大臣といたしましては、友邦の米国に対して、不拡大の方針のもとに、この金門島に対しての武力介入を思いどまらせる、こういうことのために努力を続けられるべきではないかと思うのですが、最後にその点についての見解だけを聞いておきます。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもといたしまして、当然極東が原因となりまして、大きな大戦に入るような状況については、できるだけこれを阻止する。そうして地域的な地方的な紛争として、それをとどめるように努力して参らなければならぬことは当然であります。そういう見地から、関係各国にそれぞれわれわれの意思を率直に申すことは、これまた当然なことであります。
  33. 大西正道

    大西委員 関係各国じゃなしに、特にこの際は米国に対しての自重を促すということが、私は必要であろうと思うのです。  時間がありませんから問題を次に移します。日韓会談の問題でありまするけれども、あなたはたびたびこの問題については、努力をする、こういうふうに言っておられる。漁業委員会も近く開かれる、こういうことであったのでありますが、私どもはこれに対しては、諸般の情勢から考えまして、かなり悲観的であったわけです。果せるかな、張けい根漁業代表が参りましたが、いまだにもって漁業委員会が開かれておりません。この理由はどこにあるのです。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般私の立ちます前に張代表と会いましたときに、漁業代表としての張氏の来訪を確約されました。同時に二十日を期して漁業委員会を開くというような話も当時あったわけです。従いましてわれわれとしてはこれを期待しておったわけであります。張代表日本に来られたわけでありまして、それから漁業委員会を開くことをわれわれとしては督促いたし、また期待もいたしておったわけであります。しかしながら、今日韓国側から漁業委員会を開く前に抑留不法入国者の問題についていろいろな意思表示をして参っております。私ども日本の今日まで持っております原則から申しまして、にわかにそれに応ずるわけにいかぬので、そういう経緯のもとに漁業委員会がまだ開かれておりませんことは残念だと思います。
  35. 大西正道

    大西委員 韓国側の申し入れというのはまことに無理な話である。こういうことは国民ひとしく感じておるところでありますが、聞くところによりますと漁業委員会を開かせるために大村収容所におるところの抑留者を本人の意思に従って北鮮に送還させるということについて、何か妥協的な措置に出て、そうして何とかその問題をまとめていこう、こういうふうなこともちらほら聞いておるのでありますが、そういう考えがございますか。私はこの問題はあくまで人道的な立場という点を堅持しておるところの政府立場が正しいと考えますから、いやしくも人道的な立場という以上、こういうふうなこそくな妥協をして、将来のほんとうの解決というものはないと考えるのであって、この問題とこの問題は別であるというふうに考えておるのでありますが、政府態度はいかん。 「藤山国務大臣 政府態度は従来と少しも変っておりません。われわれとしてはその態度を堅持しております関係上、漁業委員会も開かれないという残念な事態にあるわけであります。
  36. 大西正道

    大西委員 それから本年の一月一日以降、向うでまだ刑に服しておった者、これは刑を終了した者もあると思うのであります。またその後この前問題になりました第二星丸の拿捕事件があります。こういうように百二十数名の者がいまだに向うに抑留されておるのでありますが、政府はこれの帰国のために何ら努力をした跡が見えないではありませんか。これは人道的という立場に立って非常な犠牲を払って、第一次の釈放送還を実施した、その建前から申しまして、まことに私は残念だと思います。この人々に私は同情を禁じ得ないのでありますが、なぜ政府はこの問題に対してもっと積極的にこれを帰してもらうための努力をしないか。
  37. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府としましてもこの問題は遺憾の問題でありますし、ことに会談の過程において、いろいろ抑留等が新たに起って参りますことは遺憾のきわみであります。従ってわれわれとしてもそういう問題については絶えず韓国代表団の連中等と、日本代表団の連中が話合いをいたしております。われわれとしてむろん円満に日韓会談が進むものならできるだけ進めていくという立場をとって、そうして一日も早く日韓会談の成立を期待する努力をするのが当面においては必要なことでありまして、そういうことを考え合せながらわれわれとしては事態の進行を見守っておるわけでありまして、今後日韓会談の行方いかんによってわれわれはさらに考えていかなければならぬ、こう思っております。
  38. 櫻内義雄

    櫻内委員長 大西君、申し合せの時間が……。
  39. 大西正道

    大西委員 これで終ります。とにかくもう少し抑留者の帰国の問題について熱意を傾けていただきたいと思う。  それからこの前問題になりましたが、やはり日韓会談の中心の問題である請求権の問題でありますけれども、請求権の放棄をいたしましたが、これはアメリカのメモランダムによってこういうふうな措置をしたといわれるのでありますが、この財産請求権を放棄された対象は、韓国に限りますか。あるいは朝鮮全部の財産請求権を放棄したということになるのでありますか。この点だけ一つ聞いておきます。
  40. 板垣修

    ○板垣説明員 日本政府といたしましては、平和条約に基きまして、米国の南鮮における日本財産の処理の効力を承認したわけでございまするから、当然請求権に関する日本の主張の撤回というのも、いわゆる南鮮地域に限られるものと考えます。
  41. 大西正道

    大西委員 それからもう一つ、この日韓会談の問題につきまして、私はこの前申し上げましたように、七年かかって一向らちがあかない。そこで私は聞きたいのですけれども、一体どういう基本線で日韓会談を進めておるのかという問題です。私どもはサンフランシスコの平和条約の第二条に基いて、そうしてそこに残されたところのいろいろな問題の処理のために日韓会談が進められていると思う。ところがこれと何ら関係のないところの李承晩ラインあるいは平和ラインというようなものを持ち込んでおる。これを同じ委員会の中の議題にしておるというところに私は問題の困難性があると思うのです。ここまで問題が紛糾して、平和ラインの問題、李承晩ラインの問題がガンになって一向らちがあかないとすれば、当然この二つの問題は本質的に違うのであるから、切り離して、そうして李承晩ラインの問題はすべからくこれを国連に提訴して、三十三条によるところの平和的な紛争解決というこの条項に適合するのであるから、ここに提訴してこの問題を解決すべし、とりあえずこの李ラインの問題はそういうふうに解決すべきが当然である。こういうことを私は申し上げておる。ところでこれに対しては、友好的な雰囲気がまだあるとか、お互いに相手を信頼しているということばかり言っている。だれも日韓間の今の雰囲気が友好的であるなんていうことは考えておりません。韓国における李承晩の発表、声明、新聞論調などを見ましても、あげて責任は日本側にあるというようなまことに不法なことを言っておる。こういう雰囲気の中で問題の解決はできないと考えるのであって、すべからくこの際李ラインの問題だけは切り離して、国連の場においてこれを解決すべき時期に来ているのではないかと私は考えるのであるが、これを最後にお聞きして私は質問を終ります。
  42. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、二国間の関係を正常化する場合には、両国間にありますいろいろな懸案の問題を可能な限り解決して、そうして両国ともさっぱりした形において友好状態を回復することが当然なことだと思います。従いまして、両国間にあります懸案を解決する上において、李ラインの問題というのはやはり非常に大きな問題でありますから、日韓会談の主要議題のうちに李ラインの問題が含まれていることは当然だと思うのであります。今日までそういう形においてわれわれとしては努力をして参ったわけであります。日韓会談は、むろん韓国側の態度についていろいろの批評もあろうと思います。しかしわれわれはわれわれができる限りの好意的な立場をもって解決して、それでもなお解決しない場合には、われわれとしてもとるべき方策を考えていくというのが私ども考えであります。
  43. 櫻内義雄

  44. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 先般来国連総会に御出席願いまして、御奮闘いただきましたかいもありまして、幸いにして中東動乱も大戦の危険を招くことなく収拾策を得ましたことは、日本もその一翼を担当されておるわけでありまして、その点につきましては、私たち国民としても、特に与党の立場からも深甚な故意を表したいと思います。ただ私はその間にありまして、少し経過について一、二承わっておきたいと思うのであります。  あのノルウエー案が出ましたときに、日本新聞には、岸総理大臣は条件付な賛成を表明されておりました。またわが党の内部におきましては、無条件の全面的な賛成の意向を表明された有力な方もございました。また現地から参りまするところの、藤山さんも含めた国連代表部の御意見では、栗権をするのだというふうなお考えもあったように、私たちは新聞を通して考えたのでありますが、こういう間におきまして、日本の昨今の新聞は、しきりに、与党が外務省の外交方針にいろいろと口ばしを入れることが非常にじゃまになる、もってのほかだというようなことを書いておる新聞が多々あるようでありますが、現地におかれまして、実際国連で活躍なさっておられましたときに、そういったことが現実に何か非常な支障を来たしたことがありますかどうか。これを一つ率直にお答えを願いたいと思いまするし、先ほど申しました総理大臣と外務省というのが、このノルウエーの一つの決議案に対して三つの態度を表明しておったというようなことについては、どういうふうな事情であったかということも少し承わりたい。  また独自の決議案を出される。——そのときの現地からの電報によりますと、たとい日本一国になっても独自の決議案を出すというようなお話でございましたが、まことにこれは特攻隊精神のようで、理論は通るかもわかりませんが、国連の場において、日本一国だけが我を張って、だれも賛成をしないというものを提出するということは、私は外交方針としてとるべき態度ではないと思うのでありますが、それらのことをも含めて少し御説明を願いたいと思います。
  45. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私が国連に今回参りますときに、私の心づもりとして考えておりましたのは、安保理事会の際において日本案を提出して、何か主役らしいものを演じたというような形になりまして——むろん今回の緊急総会発展過程から見まして、安保理事会におきます日本案というものが十カ国の賛成を得ておりますので、ある程度問題解決の基調をなすことは当然だと思います。しかし主役というものがいつも演じられるものではないのでありまして、われわれとしてはやはり演じなければならぬような状況下に入ったときにやむを得ず主役を演ずるぐらいの立場が当然だと思います。従って、今回われわれはできるだけ英米なりソ連なりの考えも聞き、またアラブ方面の考えも聞いて、その間に何らかの意思の疏通をはかるわき役的なことができれば、それがわれわれの最大の任務であろう、こう考えていったわけであります。従いまして、終始そういう態度で参ったわけでありますが、最後の段階におきまして、私は月曜日の晩と火曜日の晩にアラブ連合のファウジ外務大臣と一時間余話をいたしたのでありますが、当時のファウジ外相の気持からいいますれば、ソ連案のような案では問題解決が困難である。少くともこの総会においては、ソ連案の線だけでは解決が困難である。またインド提案しましたようなソ連案と若干ノルウエー案とまぜたようなものでは、これまた事態を紛糾させていくのであって、総会決議になり得ない。そういう意味からいって、混乱しましたときに、私は翌日アラブ連合提出するある程度の考え方を聞いたわけであります。そういう意味において、何らか日本がその段階でもう少し強力に各国の間にアラブ連合考え方を進行させることが必要じゃないか。従って、火曜日の晩に日本がそうした話をする場合に、私がファウジ外務大臣と話をしてきましたところをある程度文章化して見せることが必要であろうということを私は考えて、それらのものを成文にいたしたわけであります。しかしそれは決して日本案を独自で出そうというようなところまでまだその段階において踏み切っておったわけでも何でもないのでありまして、そういうような若干の作業をいたしたことが、何か単独にでも日本案をいきなり提出するかのごとき予想を与えたことがあろうと思います。  また表決の問題につきましても、私といたしましては、やはりただいま申し上げたような立場で、国連の内でできるだけ活動をいたすためには、各国がそれぞれできるだけ同調し、総会が少くも満場一致で決定できるような案にするための努力をいたして参るという立場をとっておりますれば、いずれの案に対しましても賛否その他の意思の、態度の表明をいたしませんことが、それらの約束をいたします上に非常に必要なことだと思うのであります。たとえばソ連案には反対だということになりますと、ソ連グロムイコ外相とたびたび会う、そうしてソ連を通じて選ぶべきニュース、ソ連のみならずソ連以外の共産圏もしくはインド等の考え方ソ連を通じて聞くという道もふさがれるわけであります。そういう意味からいって、私は何らの態度の表明はいたしておらなかったわけであります。むろんそれぞれの経過については、本国政府代表団として当然過程を報告して参るわけであります。その過程においていろいろ判断された点もあろうかと思いますが、しかし私は現地におりまして、本国政府からそういう問題について何らの訓令を受けておらぬのでありまして、そういう意味において、日本における政府与党とそれから代表団との間が食い違ったという事実は私はないと存じております。
  46. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は多分そうであろうと期待をいたしておったのでありまするが、外務省の事務当局におきましては、しきりに党が介入しているというようなことを言っている向きがある。そういうことはまことにけしからぬ話でありまして、主権在民の今日、新憲法下の政治のもとにおきましては、政党内閣におきまして党がいろいろなことについて発言をするし、また重大な日本態度を決定しなければならぬ問題について、党の意向を聞くということは当然のことであります。私はその新聞の論調自身も少し間違っておるのじゃないかと考えておるのであります。(「間違っていない」と呼ぶ者あり)そういうような役人たちがたくさんおりますならば、一つ御注意をしていただきたいと思う。社会党の人たちですらもこれは間違っていないというようなことを言っておる人がありますが、口を開くとすぐ秘密独善を叫んでおった社会党が、党が少し外交問題に発言をするからそれはけしからぬというようなことは、全く民主主義の何たるかをわきまえない議論でありまして、それはとるに足らない。今後も党と緊密な連絡をとってやるようにしていただきたいと思います。特に外務省の事務当局に注意をしていただきたいと思います。  それからもう一点申し上げたいことは、日本がさきに決議案を出しましたときに、現地へ監視団を派遣するということを日本提案をいたしております。ところが、いざ国連のハマーショルド事務総長から、じゃ日本に監視団を出す用意があるかと聞かれると、それはごめんだといって、日本みずからが監視団を現地に派遣して事態の円満な解決をはかろうと提案しておきながら、しかし日本はその当事者にならないんだというようなものの考え方に、私は大きな矛盾があると思うのであります。そこには申すまでもなく日本の憲法であるとか、あるいは自衛隊法であるとかいった国内法の問題もあるのでありましょうが、戦争にいく軍隊ではないのであって、単にオブザベーション・グループと書いてありますが、そういうようにまる腰の人間が行くことすらできないというのでは、今後日本が国際社会において国連中心の外交をやっていく上におきましても、不具者同様の状態になります。これらにつきましては、すみやかにそういう平和な監視団くらいは派遣できるような何らかの方法を講ずるというふうなお考えはございませんでしょうか。
  47. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連におきましてそれぞれの提案をいたした場合に、お話のように監視団というような問題を取り上げるとすれば、ある場合にはそれに日本が出し得るだけの態勢を持たなければ、そういう提案をすべきでないという御意見もあろうと思います。しかしながらこうした国連の機構の中で諸般の処置をとりますのは、やはりそれぞれの当該国のそのときの事情もありますので、必ずしもそれ自体提案したからそれに応じなければならぬという立場は、各国ともとっておらぬ場合もあるわけであります。今回の場合は、自衛隊法の関係もございますし、またその他の点につきましてもわれわれ考慮する必要がありますが、いろいろのこまかいむずかしい条件がたくさんついておりますそうした人を適当に選ぶことも非常に困難であります。それぞれ検討をいたしました上で、今回の場合においてはそういう適当な人を出すことができない、同時にまた将来の問題として、これらの問題は十分な討議の末に決定をしていく問題だと私は考えて、先般の処置をとったわけであります。
  48. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 最後に一つ確かめておきたいのですが、今のお話だというと、適材がなかったので派遣をしなかったというのか、あるいはこれは出したいのだけれども法律上いろいろな制約を受けておるからという趣旨なんでありますか。どちらの立場から今回は派遣をしなかったのか、将来の派遣を留保しながら今回はそういう態度をとられたのか、その点を一つ明らかにしてもらいたい。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、条件としても、相当語学の問題でありますとか、年令の問題でありますとか、むずかしい条件がついております。それもむろん一つの理由でありますが、同時に、現在私は必ずしも今回の国連監視団のような場合においては、憲法に抵触するとも考えておりません。しかしながらこれらのものを現在の自衛隊法その他から見まして、ある場合には職務転換等をいたして出すようなことも必要な措置でないかと思います。それらの措置をとり、あるいは諸般のそういう条件等の問題も考え——あのときにはわずか一週間ぐらいな余裕で、八月十日までに出してくれということでありまして、事態が困難でありましたので、この際はお断わりした次第であります。
  50. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もうちょっとそれについて承わっておくのですが、そうすると今の現行法規のもとにおいても、ただいまおっしゃったような措置をとるならば、監視団ぐらい派遣することは適法なことである、決して違法なことではない、可能なことである、やり得ることであるとのお考えに立たれているわけでありますか。従って将来はそういう現行法規のもとにおいて監視団を派遣することもあり得るというお考えでございますか。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連が出しておりますいろいろなそうした機関については、性格がいろいろございます。今回のレバノンの監視団の場合には、全く軍の行動をしないし、あるいは軍人としての活動をしない、戦闘行為にも参加しない、銃砲、武器等も携帯しない、そういう場合において、日本が監視団を出すということについて、必ずしも私は現在の憲法に抵触するとは考えておりません。ただそういう出す場合に、今の自衛隊法等をもう少し研究いたさなければなりませんけれども、あるいは外務省の職員として出すというような方法はあるわけであります。隊として出すわけではございません。そういうことは考えられると思うのであります。これらの問題につきましては、さらに十分研究をいたして最終的な問題の解決をいたしたい、こう思っております。
  52. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に議題を転換いたしまして、少しく中共問題について承わっておきたいのですが、本日の新聞によりますと、社会党の佐多氏が中国訪問の報告書を発表されて、日中関係打解の問題について具体的な解決策を発表されております。私はこれとは見解を異にするのでありますが、立場も異なっておりまするが、ただしかし天下の社会党が世に問うた解決策でありますから、また同時に国民にもこれと同じようなことを考えておる人もたくさんありますので、この際外務当局のこれらに対する明確な意思表示をしていただきたい、そういう考え方から申し上げるのでありますが、時間がございませんから簡単に申し上げます。  この日中関係を中絶しておる関係を打開する方策として、次の六項目ぐらいを政府はすみやかにとるべきであるといっておることの中で、私が読み上げますから、一々について簡単な意思表示をしていただきたい。直ちに中共を敵視する言論や行動を停止して、再びこういうことを繰り返さないこと、こういうことが書いてありますが、これに対する所見を簡単でけっこうでありますから、まず承わりたいと思います。
  53. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本政府として、現在中共を敵視するような言動をしているとは考えておりません。
  54. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に、二つの中国を作る陰謀を日本がやっているから、その陰謀をすみやかに停止しろ、その陰謀を停止する具体的な措置として、日本政府が中華人民共和国と正常な関係の回復を念願し、そのために努力したいというような政府声明を出せ、こういうことを言っておりますが、これに対しては御所見はいかがでありますか。
  55. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本は、現在二つの中国を作るというような陰謀を計画し、またはそれに加担いたしておらないわけであります。はっきり申し上げます。
  56. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それに対して政府声明を出せということに対しては、どういうふうにお考えですか。
  57. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 やっておらないことでありますから、ことさら声明を出す必要もないかと思います。
  58. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に、中日両国の正常関係の回復を妨げないこと、これはもとより当然のことであると考えるのでありますが、この際ことさらに日本政府が正常関係の回復を妨げているかのごとくに世に問われているわけでありますから、外務省の見解を明らかにしていただきたいと思います。
  59. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本は、現在中共を承認する意思を持っていないことは明らかであります。しかしながら、貿易その他の部面において、両国の友好関係を阻害するということを考えておる点はございません。
  60. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に長崎の国旗事件に関して、岸政府がこういう措置をとったらいいということが書いてありますが、それは正式に政府代表を現地に派遣をして、再び中共の国旗をここに掲げることだ。もうすでに見本市はなくなっておりますから、なくなった原っぱかどうか知りませんが、そこに中共の国旗を掲げたらよろしい、たとえ一分間でもいいから掲げてくれということが書いてありますが、これに対してはどういうふうにお考えですか。
  61. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 長崎の国旗事件というものは、非常に大きな誤解があると思うのでありまして、事態は、何らかの意図を持った、そしてまたそんな大きな事件だと今日までわれわれは考えておらぬわけであります。従いまして、もしそういう言い方がありますれば、どういうことでその事態を誤解されておるのか、われわれはむしろ不思議に思うわけであります。
  62. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そのような見本市もないところに、もう一回中共の国旗を立てるというような意思はないということだと私は了承いたします。それがどうかということを、次のときに一緒に答弁していただきたいと思います。  それから国旗事件関係者関何がしを、国旗侮辱罪で処罰することが必要だというのでありますが、国際慣例からいって、こういう場合において国旗侮辱罪というのはどういうことになっておるかということを含めて、関某に対する政府態度を明らかにしていただきたい。
  63. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、長崎の国旗事件というものは、何か非常に大きな誤解を生んでいると思うのでありますが、事態はそれほどの大きな問題——何か日本が中共を侮辱するために、ことさらに国旗を軽視したという状況ではなかったと思います。従いまして、日本としてその実情を説明して了解を求める以外に、それに対して特段の措置を講ずる気持はありません。同時に、当時の関何がしに対しての処置もそれぞれとられておるのでありまして、それ以上のことを考えておりません。
  64. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 国旗侮辱罪というようなことで、処罰する意向はないというような御意向に受け取りました。  次に、そういう今までの外務当局の方針から結論をつけますならば、中共に謝罪するために正式代表を北京に派遣するということは、当然一つのナンセンスだと思うのでありますが、これが事件解決のかぎであるというふうに社会党当局では言っておりますので、あらためてこの点をも明らかにしていただきたいと思います。
  65. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、中共に対する日本政府態度というものは、決して中共を誹謗し、もしくは中共と特に事を構えるような言動をいたして参ったわけではないのであります。また態度もそうであります。従って、特にこの際謝罪をするということはないと私は思っております。
  66. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 わが意を得て私は非常に満足に思うのでありますが、どうもこの佐多氏の報告を読みますと、一体どういう立場からか、これは中共側立場からおっしゃっているのか、日本立場からおっしゃっているのか、失礼な話ですが、私は国家に対する忠誠心を疑いたいくらいな気持であります。  もう大して時間がございませんが、あと十分間ほど私の時間がありますね。さて、藤山さんは御苦労様でありますが、またすぐさま御出発のようであります。今度向うへ行かれますことに関して、私少し承わっておきたいのですが、その問題は日米安保条約検討の問題であります。藤山さんは最近答弁が非常にうまくなられまして、いわゆる国会答弁の技術はなかなか上手になられました。私が見ておりますと、あなたの答弁はかっての岡崎外務大臣をほうふつさせるものがあります。しかし、私たちは与党でありましても、私たちの背後には国民がいるのでありますから、なるべく国民の気持をお考えになって、そして国民感情の上に立って外交をやるのだ、外務省の属僚だけが外交をやっているのじゃないというものの考え方に立って、一つ率直にお答え願いたいと思います。あなたは非常に秘密的でありますけれども、どちらかというと、岸さんはどんどん思い切ったことをおっしゃっている。ここへこられましても、岸さんは割合積極的に日本政府方針をおっしゃいますが、あなたは答弁がうまくて、禅問答を繰り返すようなことが非常に多い。一つ率直に御答弁願いたいと思います。ここで答弁がうまいことが、外務大臣として有能とか無能とかいうことじゃなくして、国民に対していかに忠実であるかということが、外務大臣として有能か無能かということになるのでありますから、そういう点から承わりたいのであります。  実は安保条約も、日本の防衛力が全然なかった当時に結ばれたものであって、これは時代おくれのものであるということは、総理初め何回も言われたことであります。そこで当然この問題の改廃といいますか、これを再検討すべき段階にあることは申すまでもないことでありますが、それはどういうふうなことをお考えになっているかという、そのアウトラインを私は知りたいのであります。たとえば、昨年の六月でありましたか、岸さんが向うへ行かれまして、安保条約の不備な点について、これは政治的に解決をはかろうということで、日米共同声明を発表されまして、日米の合同委員会を作って、政治的な話し合いにおいて解決しよう、こういう方策をとっておられた。従って、その方針を踏襲するならば、今度藤山さんが向うへ行かれまして打ち合せをして、あるいは時によったら共同声明を発表するとか何とかいうような、そういう政治的な方法でこの問題の解決をはかろうとお考えになっているのか。あるいはそうではなくして、条約そのものを改訂しよう、条約そのものをやり直していこう、改造しょう、こういうふうなお考えであるのか。そうだとするならば、アメリカでは条約の改訂には決して反対ではないが、日本に案があるなら案を出せということを、向うから何回も言われているのでありますから、そういう改訂をしようということなら、私はもう具体案ができたろうと思う。ドイツあたりは戦後二年もすると、すぐさま条約改訂の問題を持ち出して、あれだけやってきたことなどを考えますと、戦後十三年たっても条約改訂の世論が起らないから、それに対して外務大臣は口を緘して語らないということは、実際国民感情の上からいっても許すことのできないことであります。でありますから、しかりとするならば、改訂の具体案でもすでにお作りになっているのかどうか、あるいはそうではなくして、今度は古い条約を幾ら改訂しても事態には即応しない、日本の防衛力が全然なかった時代に作ったものを、どのように改訂してもそれでは間に合わないから、根本的に構想を新たにして対等の立場で新しい条約を締結していこう、こういう考え方に立つべきことも考えられるわけであります。つまり政治的なそういう解決をはかるのか、あるいは条約そのものを改正していくのか、新条約を締結するのか、どういうふうな方法によって安保条約の問題を解決しようとされておるのか、一つ構想を承わりたいと思います。
  67. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回ワシントンに参りますのは、先般来も申し上げておりはすように、岸内閣が長期政権を担当するという立場に立ちまして、日本外交を今後展開していく場合に、基本的な関係を持っておりますアメリカと、世界情勢なり、あるいは日米間の問題なりについて十分基本的な話し合いをしていきますことが、今後諸般の問題を片づけて参ります上において必要な基盤であろうかと考えます。従って私の参ります一番主要な目的はそれであります。しかしながらそれらの問題、特に二国間の問題を論じます場合に、安保条約その他を例として取り上げてこれを説明し、日本立場をはっきりさせるということも、当然起ってくるかと思います。私は過去一年外務大臣として仕事をしておりまして、ただいまお話のように安保条約ができました当時と現在の環境というものは日本自体においても相当変っております。日本の国力の増進、あるいは経済力の発展、あるいは自衛隊等のある程度充実というような段階も進んできております。当時の状況とは変っております。従って安保条約というものをいかに現在の段階に適応させるかということは、当然将来にわたる私の大きな任務の一つでなければならぬかと考えております。この問題はただいまお話のように、新条約を作るか、現行条約を改訂するか、あるいは現行条約のままに置いておいて何らかの補足的取りきめをするかというような、方法論としては御指摘のように三つあることは事実でありまして、そのいずれをとるかということは、相当大きな問題であります。従って私の考え方といたしましては今回十分な話し合いをしてきた上で、そうしてわれわれの考え方を述べた上で向うにも相当程度考えてもらわなければ、いきなりこの問題が解決できるとは、私もそう甘くは考えておりません。従って基本的な話し合いをしてみるということがまず第一だと、私は実は考えておるわけであります。がしかしながら、そういう話し合いをする場合に、具体的にある程度われわれの考え方を言わなければならぬということは、当然のことでありますから、そういう面について、かりに改訂条約を作るにしても新条約を作るにしても、条文を整理して向うに見せるというような段階までは、時間的にむろんいけないと思います。アメリカ側の理解も今回の話の上に立って、さらにそういう問題に進むべきではないかと思います。ただ御承知のようにまだ議会においても委員会等を通じて論議されておりますように、日本が当然他国に出兵できなついことは、現在の憲法下におきましてこれは当然のことであります。その前提に立ちながらなおかつ片務的でない双務的な条約を作る、たとえばあらゆる場合に、日本アメリカとが協議するような状態に持っていくということをすることが、現在の段階において改正する必要がある点であろうかと私は思います。そういうような点につきまして、十分な話し合いをして、そして一つの目途を得た上で、そうした問題、ただいまお話のように新条約を作るか、あるいは旧条約に訂正を加えるか、あるいは旧条約のままで何らかの別途のそれに対する補強方法を講じるかということを考えていくべき段階だと思います。
  68. 櫻内義雄

    櫻内委員長 佐々木君、時間が参りました。
  69. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はこれで打ち切りますが、しかしアメリカ側からも、しばしば日本の具体的な構想を提示するようなことを要請されておると私は思います。戦後十三年たって民族的な感情からいっても、こういう片務的なもの、これは当時の事情からいってやりむを得ないことであります。一内閣の責任の問題ではございませんけれども、この期に及んで、もう具体的な対策を携えていらっしゃるものだと思っておったのですが、簡単に私の趣旨を述べられませんけれども、どうですか、今度いらっしゃるときにはしからばそういう具体的な対策というものを全然お持ちでなくて、ただ基礎的な両者の了解を得るために行くというのでありますか。先ほど私が申しました三つの考え方のいずれか、あるいは他に具体的な方法があるならそういう具体的な方法を持っていって、向うで、実はこういう構想を持っているのだという日本構想を土台として交渉に臨まれるものだと私は期待しておったのです。また国民もそう思っております。岸さんもそのようにおっしゃっておるのであります。国民はそれを要望しているのですから、あまり隠すようなことでなくて、率直にほんとうのことをおっしゃっていただきたいと思います。  なお最後に一点、今あなたのおっしゃった言葉の中に、日本の海外派兵の問題は現行憲法のもとにおいてできないことでもあるし、そういう場合においても困難な問題であるというお話でありましたが、やはり海外派兵の問題は、条約改訂であるとか新条約を締結するというような場合におきましても一つのネックになる問題でありますから、非常な難関になる問題であると思いますが、たとえばアメリカと韓国との防衛条約のごとく海外派兵の問題には触れないで、ほかの方法において防衛態勢を整えるような方法はないものかどうか、この海外派兵の問題がやはり重要な問題になるが、そういうような点を含めて具体的な考えがあるなら、この際アウトラインでも示して国民に活気を与えて下さい。
  70. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、またお説のように安保条約ができました当時と今日の事情が変っております。従ってこれを何らかの形でもって改訂するということは、当然努力してやっていかなければならぬわけであります。でありますから、その問題について日米間の基本的な話し合いをする場合に必ずそれが出てくるし、また私としてもそれに対する考え方を持っていくことは当然なことであります。がしかし、すぐにこの際解決できるかできないかということは今申し上げかねると思います。そこで今のお話のようにわれわれとしては片務的なものを双務的に直すということは当然のことであります。ただ双務的と申しましても、日本の憲法は海外派兵ということを許しておりませんから、その点については双務的になり得ないと思います。がしかしながら、それを除きまして双務的に問題の解決をはかっていくということがやはりわれわれの考えておかなければならぬところではないかと思うのであります。ただいまお話のように新条約を作ればこう、あるいは旧条約を訂正すればこう、あるいは旧条約をそのままにしておいて、そしてそれに若干の——若干と申しますか、訂正するような何らかの処置をとる、交換公文等でやるかというような問題につきましては、私ども今すぐにアメリカ側事態を予測できません。従ってそれは向うに行って十分に話して参らなければなりませんが、たとえば新条約を作るとか、あるいは旧条約を改正するとかいうようなことについて具体的問題をもしすぐに進めることができるような状態にワシントン側における受け方がありますれば、それについては私は若干の構想を持っております。がしかしながら、今回参りまして果してそういうところまで行き得るか行き得ないか、むしろ基本的な話し合いで終るかという問題については今にわかに申し上げかねるわけであります。
  71. 櫻内義雄

    櫻内委員長 帆足計君。
  72. 帆足計

    ○帆足委員 今日の時代は原爆はすでに水爆の時代に移り、ジェット機はミサイル、人工衛星の時代ですから、人類の歴史で有史未曽有の大転換期、そして時代の流れの早いことも振古未曽有の時代だと思います。従いまして今武力をもって、また力をもって国際問題を解決しようとする風潮や、大国が自己の威圧をもって問題を処理しようこする方向に対して、平和と論理をもって問題を解決し、小国の発言も回しようにこれを認めていくという風潮が強くなってきたことは、まことに慶賀にたえぬことでありまして、特に今次の国際連合におけるレバノンヨルダン問題の平和的解決、並びに原水爆実験のしばらくの間の停止ということにすべての大国が同意を与えましたこては、私は人類の平和への意思の勝利として、党派を離れて諸兄とともに慶祝せねばならぬことであって、こういう重大問題が解決しましたときには、人類の平和外交の前進として相ともに一夕祝賀会を持ってよいくらいの事件であったと思うのでございます。外務大臣国連に親しく出席せられて、小国の間からも堂々たる発言が行われて、そして小国のみずから作った決議案が勝利を占めたという事実をまのあたり見られて、大いに心動かされた点もあったであろうと思います。これらのことがまた今日の保守党の外交の大脳皮質に反映して、そして多少国民が喜ぶような傾向を示されておりますことに対して、われわれは非常に期待しておるわけでありますが、特に外務大臣ノルウエー案——西ヨーロッパの新聞報道によりますと、アメリカのひもつきといわれたノルウエー案に対して、慎重な態度を示されまして、あっせんに努め、そうして幸いにしてよろめくことなく——そのひまがなかったのかもしれませんけれどもアジアアラブ決議案に満場一致賛成というところへ持ってきて、それに対して日本外務大臣の見識が多少の影響を与えたということをわれわれは見まして、非常にうれしく思いました。しかるに御帰国になったときの新聞記事を見ますると、飛行場の出迎えも多少さびしかったし、また外交調査会の多少目の暗いお歴々が、外務大臣に対して苦言を呈したということを読みまして、私は人生というものを深く考えさせられました。人類がまだ進化の過程にあるということを痛感いたしまして、社会科の書物を読むような思いがいたしました。深く外務大臣に同情と理解を示さざるを得ないような思いがしたのでございます。もしこの目の暗い人たちの意見外務大臣がよろめいていて、ノルウエー案に対して積極的賛成の態度を表明していたとするならば、今度のインドヘの訪問はしばらく遠慮せねばならぬというようなことにも立ち至ったであろうに、この点についてはわれわれも日本民族の一員としてまことにうれしく思った次第でございまして、このことについてはあとから同僚委員各位からもそれぞれ意見の開陳があろうと存じます。  そこで、そのあとの結末として、ハマーショルド事務総長に大きな権限をゆだねたわけでありますけれども、この事態解決、すなわち米英撤兵措置がその後どういうふうに進んでおるか、十六日から再び国連総会が開かれますから、そのときに再び紛糾のないように中間措置が進められつつあると思いますけれども、外務省としてはどういう情報を得られておりますか、その点を承わっておきたい。
  73. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 米英撤兵の問題でありますが、レバノンに関しては比較的問題は簡単と申しますか、ある程度の話し合いが国連の舞台裏でも若干進められておったと思います。御承知のようにレバノンの大統領の就任式が九月の二十三日になるだろうと思います。バマーショルドの第一回の報告というものを三十日ということにいたしたのも、その含みがあったと思います。従ってこの問題につきましてはある程度舞台裏の空気からいたしまして、そうむずかしい問題ではないのではないかと考えておりますが、しかし今事態は絶えず変化しておりますから、ただ簡単に楽観をするわけにも参らぬかと思います。私がおりましたときの舞台裏の空気からいえば、大体そういうような見通しができるのではないか、こう思っております。ただヨルダンの問題につきましては、これは相当困難な問題が多分に伏在いたしております。従って今回の緊急総会におきましても、レバノン撤兵というよりもヨルダンからの撤兵ということが実際的にはやはり一番大きな問題だと思います。その大きな責任をある程度ハマーショルド事務総長の肩にかけまして、そうして総会は問題の核心に触れなかったというのが、まず総会を混乱させないで終結させるために必要だったというのがみなの見方であったと思います。そこでハマーショルド事務総長がすぐにレバノンに行きまして、どういう状況下にどういうふうな仕事をするかということでございますが、むろんハマーショルド事務総長としては、現地に参りましてUAR並びにヨルダン側及びイギリス側といろいろ話し合いをいたしておるのでございます。そこでまず、ハマーショルド事務総長自身が若干の期間ヨルダンを中心とした中近東に滞在するわけにいかぬ事情も御承知の通りでございますので、何らかの形で国連自身のあるいはハマーショルド事務総長自身の代理者というようなもの、いわゆるバイ・コミッショナーのような形で国連が出しまして、そしてその三者の話し合いを進めていくというのが、一応私どもがおりましたときの舞台裏の一つの動きで、そうしてまたハマーショルド事務総長考え方ではないかと思います。従ってこの問題については相当解決は困難かと思います。ただ私がおりましたときに、たとえばUARにいたしましても非常に実際的な解決方法を、今日まで比較的ゆとりのある立場考えておりましたので、従ってたとえば自分たちの考えておるような案がある程度ノルウエー案にいれられるとすれば、たとえば表決において自分たちはこれに反対の投票をするけれども、自分たちの考え方がある程度いれられれば三分の二をとった、その三分の二の多数というものには服して、そうしてハマーショルド事務総長の今後の行動に協力をする、しかし自分たちの考え方がいれられなければ、反対投票をした上にハマーショルド事務総長の現地における活動に対しても協力をしないということを、私どもに話し合いの上言っておりました。今回はさらにそれよりも進んだアラブ案がいれられたことでありますから、UARその他はハマーショルド事務総長の行動に相当協力をするだろうと思います。従ってどういうふうにこれが解決されるかということを今日申し上げることは、私どもとしてもできませんけれども、何らかの形で若干の時間はかかりましても、円満な解決方法に到達するのではないかという予想をいたしております。
  74. 帆足計

    ○帆足委員 国際連合の決議というものは厳粛なものであらねばならぬのでありますから、これが一片の空文になるようなことが一度でもあるならば、今後の人類の将来に暗雲を残すことになりますから、日本政府といたしましては、日本国民の期待と支持を背負って、この決議案がそのまま確実に誠実に実行に移されるように今後の御活躍をわれわれも期待する次第でございます。それからそれに関連いたしまして、今後とも国連監視団というものはいろいろ機能を果す機会があろうと思いますが、それに対して日本の自衛隊を出すということについては、外務大臣からは先般否定的な御意見がありまして、シビリアンならばいいけれども、自衛隊をやることは不賛成である、私はこれはごもっともなことであって、日本の自衛隊というものは歴史の矛盾の産物であって、明らかに軍隊は新日本憲法によって禁止されているわけでありまして、これはいわば日陰の子というか、歴史の矛盾の生んだ子でありますので、いろいろ矛盾を持っているものでございます。貧富の差がなく格式正しい人間ならば、自衛隊などに入る人間は私はないと思うのです。こういうあいまいな軍隊で命を捨てる青年などというものはおるはずがない。従いましてそういうところで育った人が平和の人類の将来をになう国際舞台で活躍するのには学識、経験、語学、教養、気魄その他において多少足らないところがあるのではないか。もちろんこれは批評家的な一つの象徴的な言い方であって、外務大臣としては私の言うことをそうだというわけにはいかぬでしょうけれども、私が文芸春秋か何かにこういう論文を書いたとしたならば、世の多くの人たちは苦笑いしながら確かにそういう矛盾を持っておる、こう感ぜられるに違いないと思います。そういう日陰者の軍隊の代表を国際監視団というような厳粛な場所に出すことは私は反対であって、むしろやはり最初のシビリアンに限ると言われたように、そのシビリアンの中から誠実なるよき人を派遣するという方針の方が正しかったと思う。それが総理大臣の言葉によってよろめかれて、自衛隊は、隊は出さない。個人ならば適当な人がおるときには出してもいいというようなことにもとれる発言をなされたことは、これはよろめき外交の一つであると言われても返す言葉がないと思いますから、一つそういうことのないようにしていただきたいと思います。  第二には、最近の金門、馬租の問題につきまして、モスクワ放送によりますと、戦争のせとぎわまで問題がきている。きわめて重大であるというふうにいっております。またこれに対してヨーロッパの世論はどうであるかといいますと、御承知のように、マンチェスター・ガーディアンによりますと、中共は大陸沿岸諸島に対しては疑いのない権利を持っておる。金門、馬租防衛で、アメリカとともに戦う国は世界中で李承晩政府だけであろう。アメリカとしては、国府が両群島から撤退するように圧力をかけるかわりに、あいまいな態度をとって国府の両群島増援をはかったことはまことに不幸なことといわねばならぬ。イギリスのマンチェスター・ガーディアン、これは百年にわたる自由の伝統を持っている新聞でありますから、自由党の諸君は、この新聞を赤であるとか桃色であるとかいうことはできないだろうと思いますが、そういう自由のよき友は英国でこのように叫んでおりますし、ダイハーズといわれる、英国で保守の一番右の方の、日本でいえば外交調査会のお歴々のような、それのもっと大きいもの、もちろん頭脳が一回り大きいのですけれども、その人たちは、金門、馬租は台湾防衛に不可欠ではない、これを放棄しない唯一の根拠は国府の士気を失う懸念があるからにすぎない。アメリカは敵だけでなく、味方の連邦の動きをよく見守らねばならぬという重大なる忠言を発しております。こういう国際的背景のもとにこの問題が今起っておりますが、たしか藤山さんは高碕さんと一緒にアジア諸国政府会議、バンドン会議に出席されたことと記憶しておりますが、日本政府は、バンドンの十原則に対しては、アジアの友の一員としてこれを承認する。すなわち民族の独立、内政不干渉ということに対しては賛成であるという立場をとられておると思います。しかりとするならばマンチェスター・ガーディアンがいっておるように、金門、馬租の問題は、ちょうど明治御維新のときに、新撰組、新徴組の諸君が函館の五稜郭にたてこもって、そうして勤皇軍、官軍がそれを包囲した。そのときに、英国は勤皇軍を助けようとし、フランスは新撰組の幕府の残党を助けようとしたけれども、一方に勝海舟がおり、他方に西郷隆盛がおったがゆえに、他国の内政干渉を断わって、三十八度線を日本国内に作ることなく、江戸城を明け渡し、五稜郭血書、そして榎本武揚があとで海軍大臣になりましたけれども政府の方の人と合流した。この事件と私は何ら変りはないと思う。内政不干渉のバンドン十原則を支持するというならば、この問題については、私はマンチェスター・ガーディアンと同じ立場をとるべきであると思う。しかもその保守的な英国は中国政府を承認しておる。そうしてこの事態が広がったときには、李承晩以外にはこれを支持する者はあるまい。こういう事態を前にしておりますが、一体金門、馬租の問題に対して、これを内政の問題とお考えになっておられるのか。すなわちバンドン原則から見てどのようにお考えになっておられるか。あまりあいまいにせずに、バンドン原則に賛成ならば、白ならばこちらは黒、黒なら白と言うべきである。立場を明らかにしておって調整をはかるということとは別問題で、それは必要なことでしょうけれども外務大臣は、この重大な世界注視の的の事件に対してどういう政治的見解を持っておられるか。バンドン会議を支持せられておる同じくアジア民族の一員としての藤山外相の御見解を伺っておきたい。
  75. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 金門周辺事件につきましては、われわれはできるだけこの問題が拡大しないことを希望いたしておるわけであります。私どもとしては、もちろん先ほど答弁申し上げましたように、二つの中国というものを認めておりません。従ってそういう立場でわれわれはこの問題に善処はいたしておらず、そういう立場でもって問題の拡大を希望はいたしておりません。
  76. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの言葉は、裏を返せば、これは中国の内政問題であるというふうに私はバンドン精神から外務大臣答弁を理解することの方が論理的であろう、こう感ずるのですが、外務大臣の言われることは私は明確を欠いていると思うのです。それではお尋ねしますが、それじゃこれは、二つの中国を認めていないということは、中国の内政問題だ、こういう意味でしょうか、それを一つはっきり伺いたいと思います。
  77. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国府と中共との間には、いろいろな歴史的な関係がございます。従ってこれらの問題について、われわれとしては、できるだけ側面的な立場で、もちろんお話のように二つの中国というような考え方を持たないで見ておるわけであります。でありますから、内政問題といえば内政問題であろう、いずれかの立場において中国が一つになるということがやはり基本的な考え方であると思います。
  78. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの御答弁でわかりましたが、それはやはり五稜郭と同じようにお考えである。五稜郭と同じ問題ならば、私は、これはバンドン会議に参加している国としては他国が干渉すべき問題でなかろうと思うのですが、この問題に対して先ほど外務大臣は、日本政府は中国に対して敵視政策もとっていなければ二つの中国という陰謀に加担する意思もない、こういうお話でしたが、ところがアメリカはどうかといえば、善悪は別ですが、アメリカの現政府自身の考えからいえば、中国に対して敵視政策をとっております。アメリカは二つの中国という政策に対してあらゆる努力を傾注しておる。アメリカが中国に対して敵視政策をとり、二つの中国という観念に対してあらゆる努力をし、それを基本戦略としてアジアに対して膨大なる軍事基地を作っている。そうすると、日本は中国に対して敵視政策をとらず、二つの中国という観点をとらないとするならば、アメリカ極東政策と日本極東政策とは天地雲泥の相違がある。どうしてこれが同盟し得るか。このままの状況をほったらかしておいて、どうしてよき関係を結び得るか、私はまことにこれは懸念にたえないことであると思う。従いまして、日本立場アジアの一員であり、そして植民地の解放、民族の独立、内政不干渉、そして大国主義によらず力を基礎とせずして、論理と友愛で解決していこうというアジア諸国と歩みをともにして、そしてまたそれが国際連合の精神に沿うものとし——国際連合がとうといのは、今日国際連合が大きな役割を果しておるからではなくて、アジアの人類にとって国際連合の歩みが正しい方向を示しておる、そしてそれがアジア諸国の歩みとも矛盾せず合致する。矛盾するのは、従来膨大な植民地を支配していた米英帝国主義の国々は、これは歴史の伝統によって、過去の世界においてよき生活をしておった国々ですから、私は矛盾を感ずることはやむを得ないことであろうと思います。その日本が、中国に対して敵視政策をとっておるアメリカと無条件的な安保条約を結んで、そして金門、馬祖の問題が拡大したときには、日本からアメリカの飛行機が爆弾を載せて飛び立ったところでどうすることもできないというようなことでは、これはまことに危険なことであると思う。今原爆や水爆の時代になり、人工衛生の時代になり、安保条約を結んだときとは、戦術的にいえば千年の隔たりがあるような変化を来たし、また東南アジア諸国の民族感情においても百年以上の進歩を示し、またヨーロッパの多くの国々も、原子力のもとに生きる諸国民のあり方について深い反省が今行われておるときでありますから、私はもう十年一昔前に結んだアメリカとの関係はこの辺で明らかに再検討する必要があると思う。すなわち、ほうはいとして今興りつつある東南アジア諸国と肝胆相照らして話し合うこと、中国と日本との間にいろいろ断層がありますけれども、やはり話し合いをしてみること、それからヨーロッパの多くの小さな国々が持っておる平和への意思を大いに確かめてみること、そしてその基礎のもとに日本と中国との関係日本と東南アジア関係調整し、また貿易の道を発見して、同時にその新しい事態に基いて、民族的気魄をもって、また論理をもってアメリカとの関係を再調整することが、保守政党の立場にとってもいよいよ必要になってきたのでないかと思います。二大政党ということは、一応論理としていいことですけれども、今日国政を担当しているのは保守政党ですから、そして今日この困難な事態のもとでは同じ保守政党の中でも三つ四つ意見の流れが分れることは真実に即しているものだと思うのです。ですから、大いに論争せられて、そしてこの重大な転換期に対して新しい方針で進むこと、すなわち岸内閣の外交政策の一大転換を行うことが、私は日本民族のために必要であるから、社会党としては岸内閣の政策転換を要望したい、こう思って質問しているわけです。従いまして金門、馬祖の問題に対して、第一には日本から自動的、機械的にいつでも飛行機が飛び立つような態勢を、一体外務大臣は危険とお考えにならないのか。将来安保条約改訂のときには、日本が承認した場合にそういうものが使い得るのであって、承認しないときには、日本の基地からそういうことに勝手に武力を行使することはやはり制約せねばならぬと思いますが、その意思があるかどうか。たとえば今度金門、馬祖の問題が不幸にしてもし拡大したようなときがあるとしたならば、英国の世論の示しているように、このとき賛成するのは李承晩だけである。英国が賛成せず、フランスも賛成せず、インドも賛成していないのに、日本がこれに力をかさねばならぬとしたならば、これは安全保障条約でなくて、今や不安全保障条約といわねばならぬ。不安全保障条約に対してわれわれが協力する——これは私は過去をとがめるものでないけれども、やはり歴史の舞台が変ってきたと思うのです。今保守党の中の同僚議員からも、やはりこの安保条約については民族独立の立場から話し合う必要があるということの御発言があったのですが、私は一般の日本国民は一そうそれを期待しておると思うのです。不安全保障条約になっておるということは、一定のものが他の条件になると反対物に転化するということは社会科の歴史でよく習うことですが、情勢、環境の変化のためにこういう状況が明らかに起っておる。従って、昨日も佐多忠隆君が中国側の意見をいろいろ伝えております。この問題については理解しやすいところもありますし、理解しがたい点もあろうと思いますが、これは他国のことです。しかしこれを総じてわれわれが考え得ることは、中国と日本との間に大きな断層ができておるということです。この断層は客観的条件の変化からきておることは明らかです。せめて日本インドやナセルなどと肝胆相照らすような立場に立つならば、私は中国の問題も話し得る条件には来得るものと思います。インドは御承知のように、貧しいけれどもその精神的気魄においてはだれからも軽べつされておりません、尊敬されております。しかしそのインドはやはり英国と適当に国交の調整をはかっておりますから、イギリスと国交の調整はできておるわけです。しからば日本アジアの一員としてネールと相匹敵するほどの平和の意思と気魂を持って立ち上ったとしても、アメリカと話し合えないはずはない。私は保守政党の限界のもとにおいてもそれができないはずはなかろうと思うのです。そういう点から言いますと、われわれも大いに努力しますけれども、一体保守政党の諸君に民族独立の気魄ありやということを私は疑いたくなる。保守政党も日本の保守政党であるから、保守政党の恥は一面からいえば社会党の恥、国民の恥ともいえる場合が往々あるわけです。従いまして今度の国連の問題は私は大いに国民を啓発し、刺激したことと思います。またこの機会に藤山外相が実業界並びに文化人出身の大臣として大いに努力された、その跡は私は国民からよく理解されておると思いますが、しかしここでとどまったならば結局両岸外交、よろめき外交に終ってしまうのであって、一歩進んで、どうしても岸内閣に外交政策の転換をわれわれは要求せねばならぬ。その転換ができないならば、社会党は国民とともに全力をあげて保守政党と全面的に戦う以外に道がない、こういう決意をせざるを得ないところに来ておるわけであって、これは社会党がただ高い姿勢とか、低い姿勢とか、そういうはね上りで言うことでなくて、国際情勢の大きな変化をまのあたりに見て、この大きな国際情勢の変化、宇宙の世紀始まるといわれておる時代の外交に対処しておくれをとらないようにするのには、どうしても一大転換の必要に迫られておるということを痛感する次第でございます。  従いましてお尋ねしたいことは、第一に日本からアメリカの飛行機が金門、馬祖の問題などで飛び立つということに対して英国反対し、フランスも反対しておるような事態に対して、そういう軽率なことをされることには反対であるという申し入れをする意思があるかどうか。それからアメリカ介入自体に対してやはり英国と同じような態度をとって、アメリカをいさめる気持があるかどうか。それから日本政府に、この問題がもし拡大する場合に協力を求めるときには、われわれはそれに積極的に協力するわけにいかないというような態度を今から示される必要が私はあると思います。さらに第四には、従ってこういう矛盾をはらんでおりますから、どうしても安保条約を、保守政党の立場から見ても、日本国民の幸福のために、不安保条約にならないように——不安全保障条約を結ぶことはばかなことである。保守政党の立場からでけっこうでありますから、日本民族の安全のためにこれを再検討する意思があられるかどうか、この四点を伺いたい。
  79. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いろいろお話がございましたが、先ほどお話のありました、たとえばアメリカにいたしましても、必ずしも二つの中国を相争わせておるというのではなくて、アメリカの歴史的なあれからいえば、やはりアメリカは国府を中心にした一つの中国ということを考えておると思います。その点のよしあしは別といたしまして。従ってお説のように必ずしも二つの中国を相争わせて、あるいはその一方に加担しておるというような現在の段階ではないと思います。同時に、そうした結論に達するための歴史的ないろいろな過程があるわけでありまして、そういう実際の問題については、われわれも正しい歴史の認識をして問題をとらえて参らなければならぬと思っております。今回金門島の周辺におきまして起っております問題が拡大されることは、極東の一員のわれわれとして、まことに遺憾に思うわけであります。そういう状態において、われわれとしては、できるだけ平和的解決ができることを希望しつつ進み、またその線に沿って努力をいたすわけであります。事態がどういうふうな形において今後拡大していくかという問題については、やはり事態の拡大するにつれての当事者のそれぞれ、あるいは関係国それぞれの立場を見なければ、その正邪を判断するわけにはいかぬのでありまして、公正な判断をした上で、たとえばアメリカの軍を用いる行き方が正しいのであるか正しいのでないかということは、それぞれ今後の段階を見て判断すべきものだと思うのでありまして、今にわかに全面論としてだけでその問題を論ずるのは、私としてはまだ軽率ではないかと考えております。お話しのように、日本アメリカとの基本的な友好関係を増進していくという保守党の立場におきましても、その基本関係の根幹をなしております安保条約というものは、成立当初のいきさつから見ましても、またその環境から見ましても、これをできるだけ国民の願望に沿うように、また現在の実情に沿うように改訂していくことは、当然やらなければならぬことでありまして、そういう意味におきまして、われわれとしては安保条約の問題を現在の事態に即応するようにどうしていくかということは、さっき佐々木委員にもお答え申し上げましたように、新しい条約を作るのか、あるいは旧条約の中の訂正をするのか、あるいは旧条約をそのままにしておいて、何らかの形でそれを補足するような措置を講じていって、現在の事情に合うようにするのかということは、昨年岸総理が行かれましたときにもワシントンで話をされており、政権を担当する岸外交の出発点として、それらの問題をワシントンで論議して参りますことは当然なことでありまして、そして適当にそれらの問題を解決する方途をわれわれは見つけて参りたい、こう思っております。
  80. 櫻内義雄

    櫻内委員長 帆足君に申し上げますが、申し合せの時間が過ぎましたから簡単にお願いいたします。
  81. 帆足計

    ○帆足委員 一つお尋ねいたしたいのは、十六日から国連総会がございますが、これに対して日本政府は核兵器の禁止のための大きな国の国際協定、並びに軍縮問題の討議を促進するための決議案を準備されておるということが新聞に出ておりました。私はかくのごきと御努力はまことに崇高なる努力として満幅の敬意を惜しまぬものでありますが、そういう御準備をされておられるのか、その他いかなる点に議案を準備しておられるか。  それからもう一つは、ただいまアメリカが中国に対して国府中心の一つの中国を考えていたのであるから、二つの中国でないというお話であったのですが、まことにそうだと思います。そうだとすれば、今の中華人民共和国に対してアメリカは敵対政策をとり、そして国府を中心とした一つの中国ということですから、今中華人民共和国に対して何ら敵意を持たぬ日本政府の政策、並びに二つの中国の分裂について、これに策動しようという意思を持たぬ日本政府としては、遺憾ながらアメリカ極東政策とま正面から違う政策を持っているといわなければならぬ。しかるに一面そのように言われながら、他面ではアメリカ極東政策に従属しておる。しかも自分の安全を第一義とせず、他国の軍備に身をゆだねておるということは、これは植民地とはいえないでしょうが、近代的のいわゆる従属国という学者の規定に匹敵するといわれても、私は反駁の余地がない不幸な事実であると思います。従って藤山外相は今日遺憾ながらアメリカの政策と日本政府の政策は違うということをこの席で今言われたわけである。アメリカは中華人民共和国に対して終始一貫した敵対政策をとっておる。日本政府はこれに対して敵対政策をとる意思は根本においてはないと言われるのであるならば、アメリカ極東政策と日本の対アジア政策との間には非常に大きな隔たりがあるということを確認されたものとわれわれは理解し、そして今後どうあるべきかということを考えねばならぬ、こう思うのですが、大臣の御所見を伺いたい。
  82. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連総会に参りまして何をするかということは、今回の国連総会においてどういう議題が重要な議題になるだろうかということとも関連してくると存じます。おそらく、先般の緊急総会におきまして、中近東の問題というものは、直接の当時の事態を収拾するだけにとどめて、そして全般の問題、恒久的な問題については、通常総会にその検討を譲ったわけでありまして、日本もその立場をとったわけでありますから、従ってこの総会を通じてやはり中近東問題は大きな問題だと思います。同時に今お話しのように、核実験禁止の問題というものは、昨年以来の情勢が急角度に変化をいたしております。そうして日本希望いたしております核実験の禁止というものがテーブルの上に乗って参ったわけでありますから、日本としても、さらにそれを一歩でも半歩でも前進させていくということに努力をいたさなければならぬと思うのであります。すなわち、それを恒久化していくという問題だと思います。ただ問題は、世界内の話し合いがつくのか、あるいはさしあたり当時国三国だけの話し合いにまず一歩を踏み出すのか、そこらの問題は、国連全般の空気から見まして善処して参らなければならぬところだと思います。日本といたしましても、一定の考え方を持ちまして、核実験の禁止なりあるいは軍縮問題について出席いたしますが、なお国連内の空気等も見まして、直接提案いたしますか、あるいは同志の国々と相ともに語らいながら話し合いをして善処して参りますか、そこらのところは国連に参りました上で最終的には検討をしてみたいと考えております。ただ核実験の禁止というのが御承知のように十月三十一日以後一年間というのを、これをどうして恒久化するかということをまず一番の問題として問題の進め方を考えていきたい、こう思っております。  それから、アメリカ日本とが、その置かれている地位によりまして、たとえば中近東の問題でありますとか、あるいは東南アジアの問題でありますとかいうような問題について、意見の相違がある場合は非常に多いのでありまして、それは私ども率直に日本考えておるところを申したいと思います。それはアメリカの地理的位置にもよりましょうし、日本の置かれております地理的位置あるいは歴史的な人種的な立場からいって、日本の感じておることが、身につまされてアジア人の考え方をつけておるという立場からいえば、若干のそうした相違は当然起ると思います。それらについて、友人であればあるだけ率直にアメリカに言って、そうしてアメリカが間違わないようにしていくことが、私はやはり日本外交のとるべき道だと考えております。
  83. 櫻内義雄

    櫻内委員長 床次徳二君。
  84. 床次徳二

    ○床次委員 過般の緊急総会におきまして、わが国は本来の目的といたしますところの三原則、国連中心主義、また自由主義諸国との協調、またアジアの一員たる立場を堅持すること、この三方針をとって終始一貫されました。いろいろと外部からはよろめきを懸念せられたようでありますが、結果におきましては、この三原則を十分に円満に調和発展させまして、平和に貢献せられたということに対しましては、まことに御同慶にたえないと思うのであります。しかし来たるべき臨時国会におきましても、われわれは、日本外交のあり方というものを十分に国民にも理解を求めまして、そうして国民の支持と理解のもとに、今後の国連の舞台におきましてわが国民の主張をぜひ貫徹していただきたいと思う次第なんであります。ただいま、さきの質問者から質問がありましたが、原水爆林禁止の問題、これはわが国民の悲願でありますし、また今日の世界の趨勢が次第々々にわが国民の要望に近づいてきておる、まことに喜ばしい傾向であるので、ぜひこれに対しましては、わが代表といたしまして、国民の熱望を一つ何らかの形において実現していただきたいと思うのであります。なお、この原水爆の問題につきましてはもちろんでありますが、なお考えられますのは、過般の中近東の問題におきましても、中近東におきますところの各国の経済協力によるところの開発というものが、中近東の平和に大きく寄与するということが指摘せられておるのでありますが、アジアの問題に関しましても、アジア経済開発ということに対しましては、長年わが国が強い要望をしてその主張をいたしておるのであります。一部におきましてはわが国のかかる主張に対しまして大東亜共栄圏の思想の再現であるといってことさらに批判をする者もありますが、私はこの真意というものはやはり世界各国で十分理解せられるものと考えておるのでありますが、来たるべき国連総会におきましても、この東南アジア経済開発に関するわが国考え方は十分に主張せらるべきであり、また各国の協調を得るように努力すべきものと思うのでありますが、これに対する代表としての心がまえを承わりたいのであります。
  85. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 東南アジア経済開発というものが、東南アジア各国政治的独立の裏づけをなしますことは申すまでもないことであります。これがございませんければ、政治的独立をいたしましても、その独立を完全に全うする状態になり得ないと思います。同時に、お話のように後進国でありまして、植民地経済の形のままから独立国の経済に転移するわけでありますから、それらの調整整備の関係というものは、相当やはり外部からの力をかりなければ困難な事態もあると思います。しかしやはり東南アジアの問題については東南アジアが一体になっ  て、そうして先進国英米その他の十分な経済的援助を得るということが必要であります。ことに今回の中近東の結末においても見られましたように、中近東自体の問題については、中近東自体がある程度イニシアチブをとって、それを西欧側が援助するという形の原則がぼつぼつ認められてきておるのでありまして、これはまことに喜ばしいことだと思います。従って国連におきましても、私どもは昨年もドル不足による後進国の問題について研究をいたしておりますが、今回もそういう問題についてやはり世界の平和を庶幾する上からいえば、国連もそういう経済問題についてもっと熱心になる必要があろうかと存じます。同時にまた国連以外のそれぞれの国の立場におきまして、特に有力な国として、また有力な財政的な力を持っておりますアメリカ等が、アジア人の一体になった考え方に対して十分な協力と援助を与えることは私はアジアに対する安定のためにアメ男の政策として好ましいことであると思うのであります。そういう点も率直に申していきたいと考えております。
  86. 床次徳二

    ○床次委員 なおわれわれ日本国といたしまして、国連の舞台において各国際社会の協力によって解決をしなければならぬという問題を従来からいろいろ持っておるのでありますが、なおおもなものがやはり、二、三点ばかり残されておる、かように考えます。そのもう一つは人口問題だと思う。世界におけるところの人口問題は、その資源の配置と比べますと、その分布状態におきましても、きわめて不自然なものがあります。この不安定な状態というものも、世界平和に対しましてはやはり大きな妨害になると思うのでありまして、この点に対しましては、やはり各国が強い寛容のもとに、また協力のもとに漸次解決することがよろしいと思うのであります。この問題もかねがねわが国民といたしましては国連舞台において要望しておるものだと思いますが、来たるべき総会におきましても、機会がありますならば、ぜひ取り上げてもらいたいものと考えておりますが、これに対する外務大臣の御意向を伺いたいと思います。
  87. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題につきましては、昨年の私の冒頭演説で触れておりますので、やはり国連として当然将来人口問題と申しますか、やはりお互いに協力をして、そうして未開発地を開発する、そういうような問題ともあわせ考えて、稠密な人口地域というようなことを念頭に置きながら国連が一つの何かの方策を立てて行くことが必要だと思うのであります。昨年は冒頭演説にその点だけを触れておったのでありますが、将来とも日本代表団としては当然これらの問題が何らかの形で国連のうちで実際的な方途を見出していくように引き続き努力をして参りたい、こう考えております。
  88. 床次徳二

    ○床次委員 毎年の国連総会におきまして絶えずわが国民の要望を推進していくという努力をぜひ今回も続けていただきたいと思います。なお今日の日本情勢からいいますと、いわゆる貿易促進ということはきわめて重大な事柄であるのであります。またそればかりでなしに、世界各国情勢から見ましても、貿易の自由ということが円満に行われるということが、やはり平和を維持するところの大きな理由でありまして、この点に関しましては、かねがね藤山国務大臣努力しておられるのでありますが、さらに来たるべき国連総会におきましても、この自由貿易に対する各種の障害を打破いたしまして、円滑化を期するということが必要かと思いますが、この点に関しましても御努力があることと思うのでありますが、右に対する外務大臣の御意向を伺いたいと思うのであります。なおこれらの問題につきまして一応数点触れたのでありますが、外務大臣が活躍せられるに当りまして、何と申しましても国内において国民に十分な理解を求め、そうしてその支持のもとに活躍せられるということが効果を上げる大きなゆえんだと存じます。ぜひとも出発前後に当りましては、かかることに対しまして各方面の認識を深めて、そうしてその手厚い支持援護のもとに御活動あらんことをお願いする次第であります。
  89. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 世界の貿易ができるだけ自由に、そうして交流をはかっていきますことが経済の発展の上からいきましても、またそれぞれの国の発展の上からいきましても望ましいことであります。戦後世界の経済が混乱しておりますので、それぞれの国が自国の産業の立て直しその他のためにいろいろ保護的な措置を講じ、あるいは一方共産主義国というようなものもありますので、それらに対応するためにいろいろな措置をとったこともありますが、しかし大きな流れはやはり経済の回復とともに、できるだけ自由な立場でもって貿易が促進されることを希望しておる、また国連の精神もそこにあると思います。従ってそういう意味において日本代表団としても国連の精神と、また世界の自由な貿易、経済交流という線に沿って、当然今後とも努力して参りたいと思います。  なお私が国連に参りまして、あるいはワシントンに参りまして、交渉する、話し合いをする等の際に、できるだけ国民の支持を得るために、各方面の理解を深めるようにという御忠言をいただきました。私としても、できるだけそういう意味において御理解をいただくように努力し、その背景の上に立って仕事をすることは、当然過ぎるほど当然でありますから、そういうつもりでおる次第でございます。
  90. 櫻内義雄

    櫻内委員長 戸叶里子君。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 私は先ごろの国連総会におきましての中東をめぐる決議案について、いろいろ伺いたいことがございますが、あれは結論としては、大へん藤山外務大臣もお手柄を上げられたわけですけれども、その段階におきまして、与党の方から、あるいは岸首相の方からいろいろな意見が出て、ずいぶんお苦しみになったのではないかというような気がいたします。その問題につきましては、いずれ岸首相が来られましたときに、詳しく伺うことにいたしまして、きょうは一点だけお伺いいたしたいことがあるわけでございます。  それはこの七月二十八日の外務委員会で、私は国際地球観測年の巡視船「さつま」、「拓洋」、あの両船が、危険区域以外でアメリカの原水爆実験によって放射能をこうむったために、その目的を果さずして帰ってきたというふうなことについて、一体補償要求はどういうふうにするかということを質問いたしました。それに対しまして、幸いにして帰ってこられたときには放射能の被害は何らこうむっておらなかったようでございますけれども、けさのラジオかによりますと、たしか六名くらい放射能の被害をこうむった人が出たというので、これから一年間ずっと注意をして、その乗組員の方々をよく見てあげなければいけないということが伝えられたわけでございます。  そこで私お伺いいたしたいのは、あのときに質問をいたしまして間もなく、私と藤山外務大臣あてに、ここにハワイから手紙が来ております。藤山外務大臣のところへ持っていこうと思いましたけれども、大臣がちょうどお留守でございましたので、私だけが見ました、そしてあとから大臣に御報告しようと思いましたけれども、ついお目にかかる機会がなかったので、大体のことを申し上げますと、ともかくこの間の外務委員会で、私が「さつま」、「拓洋」の問題に対して、一体補償を要求するのかどうかということを質問したのに対して、当然それは要求すべきだということを藤山外務大臣は答えている。しかしそれは大へんけしからぬことだ、そして日本がちょうどパールハーバーを攻撃したときの例を出しまして、日曜日にああやって攻撃してきておきながら、補償を要求するなどということは、言えた義理ではないというようなことが、非常にきつい言葉をもってここに書いてあるわけでございます。私は詳しいことは申し上げませんけれども、そういうふうなことをここに書いてありまして、それはホノルル・アドヴァタイザーのエジターとして書いてあるわけでございます。私はこれを読みましたときに、戦争の問題とこの問題とは当然別であるにもかかわらず、こういうことを一タックス・ペイヤーとして自分は強く日本に抗議をするというふうなことを言っているわけでございますけれども、こういうことを言っている人たちがまだあるわけでございます。従ってこれに対しての返事はほしいと書いてございましたけれども、私個人での返事は、とても出せませんので、やはり藤山外務大臣と相談をした上の返事でなければいけないと思って、そのままとっておいたわけでございますけれども藤山外務大臣は、これに対してどういうふうなお考えをお持ちになりますか、伺いたいと思います。
  92. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは海洋の自由を主張いたしておるのであります。従って海洋のいずこにおいても、適当な漁業その他、航行の自由というふうなものが確保されることを希望いたしております。アメリカが核実験をやることは、むろん大きな人道上の意味で難点がありますが、実験をやるということだけについては、アメリカ自身の意思でありますから、けっこうだと思います。ただそのために海洋の自由を制限するということは好ましいことではないと思うのでありまして、しかもその中あるいはその外において、何らかそれからこうむる被害があるということであれば、これは当然私は補償を要求する理由があると思っておるのでありまして、被害がなければ別でございますが、あれば当然要求すべきではないか、こう考えております。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 それで外務大臣のお考えもよくわかったわけでございまして、私はそういう意味のことをぜひ、大臣みずからでなくてけっこうでございますから、外務省の方に手紙で書いていただきたいと思います。私と大臣と二人あてで手紙が来ておりますから、二人の名前で出したい、こういうふうに考えますから、よろしく御了承願いたいと思います。 そこで「さつま」、「拓洋」の補償の問題につきましては、その後どうなっておるかを伺いたいと思います。
  94. 森治樹

    ○森説明員 「拓洋」、「さつま」につきましては、本委員会で申し上げました通りに、私どもといたしましては、まず両船の船員あるいは船体に対する被害を防止することに重点を置きまして、当時豪州政府に援助を求め、アメリカ側から、当時エニウエトクにおりました核放射能の専門家をラバウルに飛んでもらいまして、手当をしていただいたわけでございます。これら両船は帰国差しつかえないということになりまして、帰国されまして、そうして綿密なる身体検査を船員が受けられましたことは、御承知の通りであります。その当時の日本側からの判定によりますと、身体の障害はないという幸いな結果になったわけでございます。それと前後いたしまして、アメリカ側から現地で取り調べました結果を入手いたしましたところ、日本側の結果と大体同じであったのであります。従いまして、この「拓洋」「さつま」につきましては、人体に対する被害というものは今日までない。船体に対する被害も大したことはないということになっております。ただ御承知の通りに、今回のアメリカ側の実験に対しましては、昨年の九月にこの実験の計画が発表されましたときに、その中止を求めまして、本年のたしか二月だったと思いますが、危険区域の設定の際に再応中止を申し入れ、しかも不幸にして実験がある場合には、損害の補償を要求すべき旨を留保しておるわけでございます。果してこのわれわれの調査すべき対象が「拓洋」「さつま」だけに限られますか、あるいはその他商船や漁船等に対しましても被害があったかとも思われますので、これらは今回の実験が早晩終ると思いますが、その終ったあとにおきまして、従来の例もそうでございましたが、全般的に調査をいたしまして、全般的な今回の実験の際に対する損害の補償ということを検討いたしたいと思います。ただいまではすでにジョンストン付近の実験は停止されることに発表がありましたが、エニウエトク付近の危険区域がまだ解除になっておりませんので、その解除を待って全般的な検討をいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 先ごろの原水爆実験禁止大会に参りまして、医者の立場から聞きましたところが、一応危険区域を指定されておっても、危険区域外でも放射能の被害をこうむる場合が非常に多いということも聞いておりますし、実験を停止したあとでもその放射能の海流が流れてくるということさえも実験されておるわけでありまして、今回はその一つの大きな区域外での被害であり、犠牲者を出したわけでございますので、これはあいまいにすべき問題ではないと思います。ただいまの御答弁によりますと、実験が済んでからアメリカと話し合うということでございましたので、ぜひともこの点をはっきりさせておく必要があるのではないかと思いますから、藤山外務大臣のこれに対してのはっきりした態度をもう一度伺っておきたいと思います。
  96. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題につきましては、当然あいまいにすべきじゃないのでありまして、調査の上もしその結論が出ますれば、当然われわれとしてはアメリカに対してはっきり要求いたします。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで先ほどから各委員が質問しておりますように、今度の国連総会へ出られまして、ぜひとも原水爆は禁止すべきである、停止でなくて禁止すべきである、そのためには関係国の間で禁止協定をも結ぶようにしてほしいというような意見が出ていたと思うのでございます。それに対しまして外務大臣は、はっきりと禁止協定を結ぶ方向へ持っていくというような御答弁でなくて、何か恒久的な措置考えられなければならない、こういうふうな御答弁でございましたけれども、これは当然禁止協定の方へ持っていく努力が今度の国連総会でなされるというふうに了解したいと思いますが、いかがでございましょうか。
  98. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回の停止措置というものが恒久化されて禁止措置になりますようにわれわれも努力して参りたいと思っておりますが、ただ方法論として、先ほど私が申したのは言葉が足りなかったかもしれませんが、現在停止を声明しております三国間の協定をまず先にするか、あるいは国連全体としてそういうところに持っていけるかということについては、なお現在まで原水爆実験をやっておりません国もありまして、あるいはそういうことをやりたいという希望の国もある場合もあろうかと思います。でありますから、そこらの問題になりますと、国連に参りまして、われわれは実際問題としてどういう案が一番半歩でも前進するかということを考えて参りたい、こういうことを申し上げたつもりでございます。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 きょうの外電によりますと、米英の停止というようなことに呼応して、ソ連も一緒に米英とともに禁止の方向へ持っていってもいいかのような発言をしているやに私は聞いておるわけでございまして、そうなってきますと大へんに好都合で、どこの国が言い出してもこのことは非常に重要なことでございますから、アメリカなりイギリスが先に言わなくても、ソ連が言ったことであっても、いいことであるならば当然日本がこれをバック・アップするというふうな態度をもってお臨みになっていただきたいと思いますけれども、ほかの問題の場合には、どうかするといい案であってもソ連が言い出すと同意しないというような今日の日本外交方針を見ましたときに、そういう態度をあらためて、どこの国が言ってもいいことはそれをバック・アップしていって、それの成果を結ばせるというふうな態度をもって今度の国連総会に臨んでいただきたいと思いますが、この点はいかがでございましょうか。
  100. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 こうした問題について、どこの国が言い出したからという考慮を私どもがしているのではなくて、どういう方法でもってやれば一番半歩でも一歩でもそういう問題に近づけるかということを考えるわけです。従いましてそういう実際的な見地から考えますと、やはりみんなが承服するような形において問題が取り上げられてこないといけないのでありまして、今の国際社会においてやはり若干不信の感もあります。従ってどこかの国が言った場合に、あの国が言うのでは必ずしも賛成できないというような問題も、実際問題としてはあるわけであります。でありますから、そういうところを考慮して参りますれば、やはりわれわれといたしましても、まとまる方法を考えていくという立場からいって行動を展開していくのが一番実際的に進める道だ、こう思っているわけであります。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、私ほかの質問は月曜日に回したいと思いますが、もう一点伺いたいことは、きょうの新聞で国際司法裁判所の管轄権の受諾宣言書を日本がハマーショルド国連事務総長に寄託するということが発表されているわけでございます。こうなってみますと、結局今まで国際司法裁判所に訴える場合に、相手国の承諾がなければできなかったのが、それに受諾宣言を発している国があるとするならば、その間の問題は別にそうした手続をしないでもいいということがきめられているわけでございます。そうなってみますと、ここで二つ伺っておきたいことは、それではこの宣言を受諾している国にはどういう国があるかということと、それからもしも受諾していない国との間に紛争が起った場合にはどういう手続をしなければならないか、この二点だけを伺って、私の質疑を打ち切りたいと思います。
  102. 高橋通敏

    ○高橋説明員 受諾している国は三十三年の七月三十一日現在で三十六万国ございます。ただそのおのおのの国で留保がございますので、相互主義でございますから、その国との関係では日本もその留保を援用していくということになると思います。それから受諾していない国でこの裁判所規定の当事国でございますれば、そこに新しく裁判所に持っていこうという合意をいたしまして、その合意に従って裁判所に持ち出すということでございます。
  103. 櫻内義雄

    櫻内委員長 田中稔男君。
  104. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私は昨日発表されました佐多忠隆君の中国訪問報告書の内容に関連いたしまして、二、三お尋ねいたしたいと思います。  先ほど帆足委員がお尋ねいたしましたことに対する御答弁の中で、アメリカの中国政策は、二つの中国というのではなく、あくまで台湾政府を唯一の正統政府考える、こういう立場だという御答弁がありました。私も現在アメリカの中国政策に関するオーソライズされた見解はまさにその通りだと思うのであります。しかしながら他面、台湾台湾として置くが、しかし中国大陸を事実上支配して今やアジアにおける押しも押されもせぬ大国となった中華人民共和国を何か承認しなければならぬだろう、こういう意見がある、こういうことは外務大臣御承知の通りであります。ところで日本にもそれがあって、日本アメリカよりももっとその意見が強いわけです。自由民主党の議員の諸君の中にも、国民政府だけを相手にするという一つの中国論から、二つの中国論、これを支持する方は非常に多いと思うのです。そこで、せんだって赤城官房長官が一見不用意のうちに、中華人民共和国と台湾とは二つの国だ、こう言われた。しかしこれを私は、不用意な発言である、あるいは失言であるというのでなく、むしろこれは赤城さんの本心を吐露されたのじゃないかと思うのです。そこで藤山外務大臣の今の御意見として承わりたいところは、二つの中国というのはいかぬ、中国は一つである、その場合いずれかの立場で統一されることを希望する、こういうふうな御答弁であったように思う。そうすると、いずれかの立場というと、中華人民共和国によって統一されることも考えられますし、また逆に大陸反攻が成功して台湾政府によって統一中国が実現することも考えられる、これは両様に理解できるわけでありますが、外務大臣が二つの中国は認めない、そして中国は一つに統一されなければならぬと言われたのは、一体中華人民共和国によって統一が行われるのか、あるいは台湾政府によって統一が行われるのか、どちらをお考えになっておるか御答弁願いたいと思います。
  105. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は、先ほど佐多氏の報告書を中心にして、日本が何か二つの中国を作るような陰謀に加担しているということの御質問があったので、そういう事態日本にないということをはっきり申し上げたわけであります。むしろ中国の問題は、日本としては国民党政府正統政府として今日まで承認をいたしております。しかしながら国民党政府が中国本土に事実上の施政権を持っておらぬという現実立場もわれわれは認めておるわけであります。大きく言えばこれはやはり一つの国内紛争であって、どちらが統一するとかしないとかいうことでなしに、話し合いによって解決されることが一番望ましい国内問題の解決方法だと私は思います。現在の日本としてはいずれが統一するとかしないとかいうことでなしに、中国自体の問題は中国で円満なうちに解決することが一番望ましいことだと考えております。
  106. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 話し合いで平和のうちに中国の統一が実現するということは、わが社会党も心から希望するところであります。現在台湾海峡アメリカの第七艦隊がおる、台湾にもまたアメリカの軍隊がおり、蒋介石の軍隊と一緒になりまして大陸反攻の機会をうかがっておるという姿である。こういう条件がなくなりまして、中華人民共和国の政府台湾政府台湾政府というよりもむしろ台湾に住んでおる人々、台湾人、それとの間に話し合いが行われるならば、台湾の帰属は明らかであります。あすにも問題は解決する、それができないのは今言ったような事情だと思う。藤山外務大臣が隣邦中国のために台湾問題が内政問題として平和的に解決されることを本心から希望されるならば、アメリカ政府に対して、台湾にあるアメリカの軍隊を撤収し、台湾海峡に遊よくしております第七艦隊を撤収することについて、一つあなたから、さっきからよく言われる友人としての忠告をなさってはどうでしょうか。一つ御答弁を願いたい。
  107. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お話のように中国問題は中国自体の問題であることは当然でありますけれども、第二次世界大戦以後の世界情勢から言いますれば、世界は二つの陣容に分裂しておるということでありまして、その影響がいずれの地方にも及んでいることを申すまでもないのであります。今回の中近東の問題等を扱ってみましてもやはりそういう影響下にあるわけであります。従ってこの問題を扱います台場に、私は率直に申してアメリカだけに罪があるのでなく、ソ連もやっぱり考えるべきじゃないかということを考えております。むろん日本のわれわれはよきアメリカの友人としてアメリカにもそういうことを言いますが、大きな世界の二つの陣営、流れについてもそういう問題についてはもっと両国の影響が問題として考えられるべきことがあろうと思います。そうした大きな世界の流れの中でこの問題が動いておるという現実事態だけは私ども実際政治をやっております者としては、直視して参らなければならぬと考えておるわけであります。むろん私として極東の平和を確保するために、今日まででもあるいは今後といえどもアメリカのよき友人として忠告すべきことはできるだけ忠告いたして参りたいということは当然に考えております。
  108. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 台湾の問題が東西緊張、東西対立の一つの所産であるというお話でありますが、少くとも台湾に関する限りはソ連というものは問題にならぬ。ソ連の軍隊が福建省の沿岸におるわけでも何でもない。問題は一方的にアメリカの問題である。一体、根本的な話になりますが、アメリカは何の権限があって、何の必要があって台湾に軍隊を置き台湾海峡にその艦隊を置いておるのですか。
  109. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現象をとらえましてその場でもって断定をすることは、問題の把握を非常に困難にすると思うのであります。今日の現象が起るのは先ほど来申しておりますようにいろいろ歴史的な過程があるのであります。歴史的な紛争の所産の結果が、今日の現象に現われておるわけであります。従ってそれぞれの国からすればそれぞれの立場で過去の歴史的な現象に対処してきたその意味があること、これまた当然のことであります。しかし、そうかといいまして過去の歴史的な問題にばかりこだわっておりましては、将来の平和な建設的な問題にも寄与することができないのは当然でありますから、そういう点については関係各国がそれぞれ反省をし協調をし、そうして問題の解決を平和裏にはかっていく謙虚な気持になることが必要だと思うのでありまして、私はそういう立場からアメリカが現在の立場をとらざるを得なかったやむを得ない歴史的事実というものも認めなければ不公平になるのじゃないかと考えております。
  110. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 アメリカにとってどういう歴史的事情であるか、もう少し詳細に伺いたい。
  111. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第二次大戦が終りまして以後、同盟国と申しますか連合軍でありましたソ連アメリカの間が、世界の各地においていろいろな衝突をいたしたということは現実事態であります。また東洋においてもそういう事態発展したことがあります。また中共政府が今日のような力を得ますまでにそのバックにおいてソ連考え方アメリカ考え方とがぶつかったという点もあろうと思います。そうした歴史的事実をいろいろ考えてみなければ、今日の事態だけで問題の正邪をきめることは私は困難だと思います。しかし、そうかといって今日の事態をそのまま放置して、お互いに過去の歴史的な事実だけにとらわれて将来の平和的な問題に進み得ないのでは世界の平和はなかなか希求できないのでありますから、お互いに謙虚な気持でもって過去の問題にとらわれることなしに事態の改善をはかっていくということが、やはり事態推移に応じて必要ではないか、こう思っております。
  112. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 過去の歴史的事情はそれとして、現在の事態において過去の歴史的な事情だけにとらわれて考えないで、現実事態を改めるように考えたい、あるいは努力したい、こういうふうな趣旨の御答弁であったかと思う、その外務大臣の御意思は非常に私はけっこうだと思う。そこで今度アメリカにおいでになってダレス国務長官と中国問題でお話になるわけでありますが、その場合に外務大臣のお心持として、アメリカが中国の一部である台湾、そこに現在軍隊を駐留さしておる、艦隊を遊よくさしておるということが中国あるいは極東の平和と安全の立場から好ましいことではない、一つその撤退なり撤収をはかりたい、こういうふうにお考えになると私どもそんたくしていいでしょうか。
  113. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私今回参りまして、率直に一体アメリカ極東の問題についてどういうふうに考えているか——先ほど申し上げましたように、アメリカとしては過去の経緯から見まして当然主張すべき立場があると思います。そういう立場もむろん率直に聞く必要があると思います。またアメリカとしても、そういうような経緯があっても、流動しておる現在の段階について自分の現在の考え方はこういうものだということもあろうと思います。まずそこいらをやはりわれわれも率直に聞きまして、同時に日本としましても、日本が東アに地理的に位置しており、この日本の島をアメリカの沿岸まで持っていくわけにいかぬ、どうしてもここにあるわけである。そういう厳とした事実の上に立って、また人種的にも、これは台湾であろうと本土であろうと中国人に対する日本人の考え方というものは非常に深い愛惜を持っておる、むしろ他国の人と違った意味の深い考え方を持っておるので、そういう社場から率直にアメリカ意見を聞いた上で、われわれの言うべきことなり、アメリカ考え方に、こういう点で考えを直してもらわなければアメリカアジアに対する政策というものはかえって間違うのじゃないかという点がありますれば、私は率直にその意見を申し述べてみたい、こういうふうなつもりで参るわけであります。
  114. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 もう一ぺん要約してお尋ねしますが、アメリカ台湾に軍隊を置いておること、軍艦を置いておることは、極東の平和と安全という見地から好ましくない、こういうふうにお考えになっているかどうか、ごく簡単にお伺いいたします。
  115. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これは先ほどから申し上げておりますように、必ずしも歴史的に見て極東の平和に好ましくないものであったかどうかということは、これは相当議論の余地があるところだと私は思います。ただ、今後の事態発展の場合に、果してこういう問題についてアメリカ武力介入をするかしないかという問題は、そのときの事態に照らして判断しなければならぬのでありまして、アメリカけが一方的に悪いといってきめつけた判断のもとに、すべてのアメリカの行動というものをまず否定してかかるということは、必ずしも日本立場としてとるべきではないと思います。しかしながら日本立場から見て当然極東の平和ということを念願する上において、そういうことが適当でないと考えますれば、アメリカに対してそういうことを忠告すべきことは当然な日本立場だと思います。
  116. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 佐多報告の中にも台湾独立同盟蓼文毅に対する日本政府の援助、こういうことが二つの中国を作る陰謀の一つの証拠になっているわけでありますが、この蓼文毅という人物なりこれに対する日本政府の取扱い方等について御説明願いたいと思います。
  117. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 台湾の独立運動というものに対して日本政府としては何らの関係も持っておりません。むろん政治的な亡命者がいるというような場合が今後とも起り得るかと思いますが、それを日本が援助するとか何とかいうような問題はあり得ないのでありまして、そういうことについて今蓼文毅をどうとかしているというようなことは政府としてございません。
  118. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 中国側としてやはり問題にしておりますのは、二つの中国を作る陰謀ということと、もう一つは日本の中国敵視政策であるわけでありますが、その敵視政策の中に、具体的にいろいろなことがあげられております。しかし一番根本はやっぱり日本が中国あるいはソ連を対象として核ミサイル装備を準備しておる。平和憲法が禁止しております再軍備はすでに事実上行われておるのでありますが、それをさらに核ミサイルによって装備しようとしておる。しかもこれがまた韓国なり台湾などとの連関において中国を非常に不安に陥れておるのでありますが、私ども国会でたびたびこのことについて質問をいたしました。そうしますと岸総理なりあなたは、日本自体が核装備を考えていないばかりでなく、アメリカ日本に核兵器を持ち込むことについても絶対に反対である。こういうふうなことをたびたび言明されているわけであります。しかし国民はなおその言明について不安を感じておる。そこで今度アメリカにおいでになるのでありますが、その機会にわれわれがたびたび御要望申し上げておるように、アメリカ日本に核兵器は持ち込まないということについての単独の日米間の協定というようなものをとりきめていただければけっこうだと思いますが、そういうことについて何か折衝なさるお考えはないかお尋ねしたいと思います。
  119. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 たびたび申し上げておりますように、私が今度参りますのは、特定の問題を解決するために折衝に参るわけではございませんので、今回参りました基礎の上に立って、将来それらの問題の折衝をする基盤を作っていきたい、こういう考えで参るわけであります。しかし先ほど佐々木委員の御質問にも答えましたように、それではそういう基本的な話し合いをする場合に、安保条約の問題なりを持ち出すについても、ただいまお話のような核兵器に対する日本の国民の考え方というようなものを例示として持ち出す場合が起きて参ると思います。またそれを持ち出して日本考え方を示すことが、基本的な話し合いをする上においても大へん必要だと思うのであります。でありますから、そういう意味においてそういう問題を取り上げていろいろ話し合いを率直に私はしてみたいと思います。しかし先ほどのように安保条約の問題につきましても、あるいは今御指摘のような問題につきましても、すぐ結論——何か書いたものにならぬかというようなことを目的にして参るのではありませんから、たまたまあるいはそういう結果が話し合いの過程のうちにおいて出てくる場合がないとは申し上げかねますけれども、まずそういう話し合いをして、そしてその上に立って今後私がもう一ぺん行くなり、あるいは外交のルートを通じてそうした基本的な話し合いの上に立って問題の解決をいろいろはかっていきたい、こういうために行くつもりておるわけです。
  120. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 日米安保条約を改訂したいというお考えもあるようであります。またそれにかわる何か相互防衛協定というものをお考えになっているようなことも新聞に載っております。われわれはそういう方向には反対でありますが、アメリカが現在の国際協定においては、日本政府に何も通告しないで、自由に核兵器を日本アメリカ軍基地に持ち込めるようになっているわけで、すでに持ち込まれているのじゃないかというような説もあるくらいであります。ソ連政府のそれについての抗議的な覚書みたいなものがこの間来ておったようでありますが、そしてこの間開かれた第四回の原水爆禁止世界大会においていろいろなことが問題になりましたが、この問題も国民的な関心事であります。さらにまたむしろ世界的な関心事の一つとして極東における日本の戦略的地位から伺いまして、たびたび論議された。これほどの国民の強い要望があることでありますから、ダレス長官といろいろお話しになるときに、ただ例示的にでなく、やはりこの問題を具体的に取り上げて何か日米間に協定を結びたい、こういうふうにお話しいただくことは国家、国民の要望にこたえるゆえんだろうと思う。藤山外務大臣に対する与党の風当りもだいぶ強いようでありますけれども、しかし国民はまだ全然見捨てたわけじゃない。岸さんよりもいいくらいの評判であります。ことにまた核兵器の問題などについては、人道的な立場から非常に御熱心なようでありますから、どうですか、単に漠然たる話をするというのでなく、また話の中にただ一つの例としてこの問題を持ち出すのではなく、やはりこの問題に正面から取り組りんで、このことだけについて何か日米間で話し合いをしないと、国民は非常に心配だということで、真剣な交渉をおやりになってはどうかと思います。もちろん一度話したからそれですぐこのことが協定になり実を結ぶというものじゃないと思います。あるいはもう一度おいでになってその機会に実を結ぶかもしれぬが、しかしながら交渉は直ちに始める、そして国民に対してその交渉の経過を公表されるということが、私は切に望ましいことではないかと思いますが、どうでしょうか。
  121. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 個々の問題について問題の解決をはかりますことは当然のことでありますが、しかし何と申しましてもただいま御指摘のような問題にいたしましても、経済問題は別として、こうした問題はやはり安保条約というものが基本的な根幹であることは間違いないのであります。従いまして安保条約の問題についてできるだけ集中的にいろいろな話をして参るということが一番必要なんじゃないかと思う。話し合いのときにあまりいろいろなものを出しまして——例示としてはいいのでありますけれども、あまりいろいろなものを出していきますと、焦点がぼけてくる感じもあるわけであります。そういうような意味において、今回参りますときにはなるべく基本的な話し合いというものにしぼって進めていきたい、こういうのが私の考え方であります。しかし、こういう考え方についてはいろいろ御批判もありましょうし、私としても先ほどお話のありましたように、広く世論の動向を伺った上で、なお現地に行きましてそれらを体してダレス氏との会見についても十分な考えをきめて努力をしていく必要がありますから、そういう意味において私の今日までの考え方は、たとえば経済問題ならば東南アジア関係の問題、あるいは日米間の政治問題ならやはり基本的には安保条約を中心に一つの問題というようなことに話の焦点をなるべく合わしていくということが最初の会談としては一番適当ではなかろうか、こういうように考えておるもので、今日までそういうふうに申し上げ  ておるわけであります。
  122. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 政府アメリカの資本、日本の技術、それから東南アジア現地の資源と労力、そういうものを結びつけて開発をやりたい、こういう構想を持っておられるのでありますが、最近特に強くこのことについてアメリカ側に要望をされておるようであります。アメリカも今日国際的ないろいろの事情からこの話に乗りそうな形勢があるように私は見るのであります。しかしこの東南アジア開発構想というものは、日本の帝国主義の再現というふうに中国あたりでは批評されておる。私も岸総理のどこかの記者会見の談話などで読んだのでありますが、東南アジア開発構想について、ソ連や中国等の共産圏諸国の東府アジアに対する進出、これと対抗してやるというような考えのようであります。何か初めから政治的な意図を持ち、しかも反共的な意図を持ってこの構想を実現したい、こういうことを露骨に話されておるようであります。私はここに問題があると思う。御承知の通り中国との貿易が全面的に途絶しました。そうするとその影響は東南アジアまで及んで、二千万の東南アジアに対して華僑の人々が日本品のボイコットをする、こういうことをしております。それだけではありません。中国は外貨を獲得する必要があって、東南アジアに対して盛んに貿易をやっておるわけであります。きょうの新聞を見ましても、インドネシアあたりに対しましては繊維製品その他あたりで中国側が圧倒的な勢いを示しておる、こういうことであります。こういう際に、中国との間に緊急事態の打開をはかるというようなことは全然やらない、ただ静観々々といって何も努力をしないで、そうして今度は東南アジアに対して反共的な立場アメリカと組んで経済進出をはかろうというようなことになりますと、国際的な摩擦をますます激化するということになりはしないか、そこで私はこういう構想はやめて、多年国連で問題になっておりますサンフェド、つまり国連アジア開発のためのやはり何か特別の基金を設定いたしまして、それにはアメリカも、ソ連も、日本も、中国もみな金を出し合いまして、そうしてほんとうにひものつかない、ほんとうに東南アジアの諸民族のために経済開発をやり、その福祉の増進をはかるというような構想をもってこれにかえるということの方が、私は日本としてはフェアだと思う。岸構想のごときは全く大東亜共栄圏の第二版、戦後新版であって、しかもそれが今度はアメリカを主役として、日本がそのわき役みたいな形になっておる、そこにもどうも対米一辺倒の立場が現われておるわけでありますが、こういうことをやっていきますことは日本にとって非常に危険な政策だと思う。あなたはそういうことについても非常に御理解豊かだろうと思いますが、藤山外務大臣のこの東南アジア開発構想についての御意見を一つ承わりたい。
  123. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 岸構想アジア開発基金が何か反共のためにできたようなお話でありましたけれども、ただいま御指摘のような中共の商品がはんらんしてきたというのは本年でありまして、あるいは昨年の秋からとでも申しますか——岸構想のできましたのは昨年の春でありまして、そういうような商品のはんらんに対処するというような意味から岸構想ができたとは考えておりませんし、また総理自身もそういう気持ではなく、東南アジアの経済の建設というものが非常に重要だ、しかもそれに対して資金と技術が必要である、技術の面は日本が提供できるけれども、資金面については必ずしも日本が現在の状況で十分でないから、何らかの形で先進国からその資金の援助を仰ぎたい、こういうことであったと思います。むろん岸構想が打ち出されましたときに各国においていろいろな反響があったことは事実でありまして、若干一部では御指摘のような、何か大東亜共栄圏の再版ではないかというような説をなした人もあることは決して否定できません。しかしながら大部分が必ずしもそういうアジア開発基金の構想がそれだというふうに断定してきめつけたわけでもないと私は考えております。現在の事態は、私は東南アジアの経済状態というものは非常に重大な危機にさらされておると思うのでありまして、御承知のようにインドの今日の経済事情から見ますれば、緊急にインドに対して資金的な援助を与えなければならぬような、またインドもそれを要請しなければならぬような状況下にあることは御承知の通りであります。その他ビルマにいたしましても、あるいはインドネシアにしても、それぞれの国における経済事情というものは相当に悪化いたしておるのであります。このままに推移して参りますと、私はやはり東南アジアのそれぞれ独立いたしました国が経済建設面から破綻をいたして参るというようなことがあってはならぬのではないかと思うのであります。でありますから、日本としてはこの際やはり何らかそういう問題について力を合せていくことができますれば、これはアジアに国をなしております日本のやらなければならぬ一つの仕事だと思います。またむろんアメリカのひもつきというような問題も考えられますが、最近南米もしくはラテン・アメリカ、もしくは中近東に対しますアメリカの政策等から見ましても、それぞれの地域における人たちのイニシアチブを尊重して、そうして問題の解決をはかっていこうという考え方アメリカもなってきつつあるわけでありまして、今回もアイゼンハワー大統領が総会の冒頭に言われました演説にもその片りんが現われてきておると思うのであります。そういう意味において、やはり東南アジアの経済の今日の事態をスムーズに改善するために日本が何らかの力を貸し、またアメリカに対して今言ったような立場から、また東南アジアの人たちの心持あるいはナショナリズムの気持というものを了解しながら、何らかの方法で現地の人も喜び、またアメリカも、自分の行為が感謝されながらいける方法があり得るような段階に来つつあるのではないかという若干の楽観的予想を実はいたしておるのでありまして、少し甘過ぎるかもしれませんがそういう意味で、こういう事態に対してできるだけワシントンで話をしてみたい、果してそれがうまくいきますかどうかわかりませんけれども、そういうような考え方でおるわけであります。
  124. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 東南アジアの開発が必要であることはお説の通りであります。またアメリカの経済援助というものの性格が軍事的なものから幾らか変りつつあるということも、これは私もわかっております。これは要するにむしろ余儀なくされた結果だと思うのです。しかしSEATOグループの諸国はともかくとして、むしろ中立主義をとるような東南アジア諸国というものは、やはりアメリカから直接金を出してもらうというようなことよりも、国連というようなものからプールした資金が流れてくる方を喜ぶことははっきりしておる。たしかバンドン会議でもいわゆるサンフェドの法則というものができたと思うし、私たちアジア社会党会議等に出ましても、これがいつも大きな議題になるわけであります。そこで藤山外務大臣は砂糖屋だから甘いというわけじゃないのだけれどもアメリカの経済援助の性格なんかについての御見解はやはり少し甘い。それで日本がほんとうに東南アジアのためによかれと思って構想する計画でありながら、さらに一歩進めてやはり東南アジア諸国自体が希望するように、何か国連を通してそういう資金も流れてくるという、日本の技術もそういう場を通して協力が行われるという、こういう構想が私は望ましいと思う。もちろんこの東南アジア開発は、ただ最近の中国の東南アジアに対する貿易攻勢というものだけでなく、ずっと前からビルマに対してあるいはインドなんかに対しましても、大きな製鉄所の建設に対してソ連も出て援助しておるのであります。インドの場合は西ドイツ、イギリスと競争してやっておるわけでありますが、そういうのを個々にやらずに、ソ連アメリカも全部やはり関係国が集まって、東南アジアのためにほんとうにひものつかないフェアな経済援助というふうにだんだん構想を切りかえていくということが私は必要であり、しかもその仲立ちをする役割を演じることができれば、日本としては大へんな成功でありますし、藤山外務大臣の大へんな功績であると思う。それはおやりになっても、アメリカがそんな新しい構想にはなかなか耳を傾けないかもしれないけれども、しかし一つそういう方向に向って努力をするということであってほしいと思うのであります。あらためて一つそういうサンフェド的な構想について藤山外務大臣の御答弁を願います。
  125. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、東南アジアの経済状態が非常に悪いのでありまして、これに対していろいろな意味で援助の手と申しますか、協力の手が差し伸べられることは非常に好ましいことであります。国連のかねてから問題にしておりますサンフェドの方向においてこういう問題が貢献していくことももちろん反対すべき理由もございませんし、こういうことができてきますことは喜ばしいことだと思います。またあるいは現在若干の問題になっております第二世界銀行の構想のごときも、これまた一つの構想だと思います。でありますから、要は岸総理は東南アジア経済開発について何らかの手を打たなければならぬという心持からしてああいう構想を持ち出されたわけでありまして、岸総理自身も私自身も、ただ総理が最初に言われた形のままのものができなければならないのじゃなくて、いろいろな形においてそういうものができてくれば、それは結局岸総理が火をつけ役になり推進役になりあるいは発案者であるということになるわけで、その形はみんなが喜んで一緒になってやるべきものであってしかるべきものだと思うのであります。同時にそうしたものが必ずしも一つでなく、二つも三つもできても、現在のアジアの経済状態においては、私は多過ぎるということはないと思うのです。でありますから、一方で国連のサンフェドの問題をできるだけすみやかに解決しっていく。サンフェドに対する国連としてのそれぞれの問題もございますが、それらのものを解決して問題を進めていくということも必要であります。あるいは第二世界銀行式なものの案というようなものが中心になって一つできていくことも必要であるし、また小さいながらも、場合によっては岸構想というようなものがある程度生かされた形で出てくることもよろしいし、あるいはまったそういうものが一つになって大きな形で出ていくということも望ましいでございましょう。要は現実に現在のアジアの経済状態に対して何らか貢献するような機関が、われわれも主張しておるのでありますから、できることが一番望ましい。しかもそのできることは、みんなが喜びながら、できるだけ早い時期にできませんと、これはだんだん意味がなくなってくるので、やはり早いほどいいのでありますから、若干のいろいろな過程の議論はありましょうとも、できるだけ早く、完全なものができなくとも、不満足ながらも若干のものができていくことが望ましいのだ、こういう態度であります。
  126. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時三十三分散会