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1958-03-25 第28回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十五日(火曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————   委員異動 本日委員塩見俊二君辞任につき、その 補欠として横山フク君を予算委員長に おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    主査      松澤 兼人君    副主査     剱木 亨弘君    委員            大谷 贇雄君            館  哲二君            苫米地英俊君            横山 フク君            高田なほ子君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            高良 とみ君            市川 房枝君   担当委員外委員            佐多 忠隆君            坂本  昭君   国務大臣    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君   政府委員    大蔵政務次官  白井  勇君    大蔵大臣官房長 石野 信一君    大蔵大臣官房会    計課長     牧野 誠一君    日本専売公社監    理官      村上孝太郎君    大蔵省管財局長 賀屋 正雄君    大蔵省銀行局長 石田  正君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    国税庁長官   北島 武雄君    文部省初等中等    教育局長    内藤譽三郎君    厚生政務次官  米田 吉盛君    厚生大臣官房長 太宰 博邦君    厚生大臣官房会    計課長     山本 正淑君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  尾村 偉久君    厚生省医務局長 小澤  龍君    厚生省薬務局長 森本  潔君    厚生省社会局長 安田  巖君    厚生省児童局長 高田 浩運君    厚生省保険局長 高田 正巳君    厚生省引揚援護    局長      河野 鎭雄君   説明員    大蔵省理財局次    長       磯田 好佑君    大蔵省主計局主    計官      鳩山威一郎君    厚生省大臣官房    国立公園部長  大山  正君   参考人    日本銀行総裁  山際 正道君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ただいまから第四分科会を開会いたします。  委員異動がございますので報告いたします。塩見俊二君が辞任され、その補欠として横山フク君が選任されました。   —————————————
  3. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 本日は、午前中、日銀及び大蔵省所管について審査を願うことになっております。大蔵省からは政務次官白井勇君、日銀からは総裁が出席されております。日銀総裁は午前十時三十分から正午までということで出席されておりますから、あらかじめ御了承を願います。  まず大蔵省より説明を求めます。
  4. 白井勇

    政府委員白井勇君) ただいまから昭和三十三年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について、去る一月二十九日内閣提出いたしました予算書に基きまして御説明申し上げます。なるべく簡潔に御説明いたしたいと存じますので、詳細につきましてはお手元にお配りしております書類によりましてごらんを願いたいと存じます。  まず、一般会計歳入予算額は、一兆三千百二十一億三千百十六万四千円でありまして、これを前年度予算額一兆一千三百七十四億六千四百八十八万円に比較いたしますと、千七百四十六億六千六百二十八万四千円の増加となっております。  以下、各部について簡単に申し上げますと、第一に租税及印紙収入総額は、一兆二百五十九億一千三百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、七百八十九億九千八百万円の増加となっております。これは、現行税法によって算出いたしました収入見込総額一兆五百二十億六百万円から、今国会に提出税制改正案による相続税法人税等減収額二百六十億九千三百万円を差し引いた収入見込額であります。  次に、各税目別内訳を申し上げます。  まず、所得税につきましては、現行税法による収入見込額は、二千四百九十八億七千八百万円となりますところ、新たに貯蓄控除制度を設けることによりまして、五十億五千二百万円の減収額を見込み、これを差し引いた収入見込額として二千四百四十八億二千六百万円を計上いたしました。  法人税につきましては、現行税法による収入見込額は、三千四百四十五億七千百万円となりますところ、同税の税率を一律に二%軽減し、さらに軽減税率適用範囲を拡張し、科学技術振興のための措置を拡充することによる減収額、合せまして百三十四億六千七百万円を差し引きました収入見込額として、三千三百十一億四百万円を計上いたしました。  相続税につきましては、現行税法による収入見込額九十六億五千四百万円から課税体系を合理化し、課税最低限を引き上げ、中小財産階層負担を緩和することによる減収額二十億一千九百万円を差し引いた収入見込額として、七十六億三千五百万円を計上いたしました。  酒税につきましては、現行税法による収入見込額、二千十三億七百万円から、しょうちゅう等下級酒類を一割程度軽減することによる減収額五十五億五千五百万円を差し引いた収入見込額千九百五十七億五千二百万円を計上いたしました。  以上申し述べました税目以外におきまして、三十三年度に計上いたしました収入見積額は、再評価税四十二億円、砂糖消費税五百三十億八千四百万円、揮発油税五百五十六億一千八百万円、物品税四百四十億五百万円、トランプ類税二億九千九百万円、取引所税五億六千三百万円、有価証券取引税十八億八千七百万円、通行税三十二億八百万円、関税四百四十三億六千二百万円、とん税五億九千八百万円、印紙収入三百八十七億七千二百万円であります。  以上租税及印紙収入合計額は、一兆二百五十九億一千三百万円となっております。  第二に、専売納付金は千百七十億一千六百九十九万六千円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、十二億四千九百九十九万円の減少となっております。このうち、日本専売公社納付金は、三十二年度に比べ、市町村たばこ消費税税率を二%引き上げたことに伴う四十六億五千三百二十五万九千円の支出増等により、十二億六千五百三十八万二千円の減少となっております。  第三に、官業益金及び官業収入は、百五十三億六百三十八万七千円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、七億八千七百九十五万三千円の増加となっております。  第四に、政府資産整理収入は、百五億二千三百三十七万八千円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、十八億三千六百七十二万二千円の増加となっております。  そのおもなる内訳について申し上げますと、国有財産売払収入四十六億二千七百五十七万二千円、地方債証券償還収入四十四億九千七百二十九万二千円等となっております。  第五に、雑収入は、四百三十一億九千四百九十九万一千円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、百三十二億四千八百六十四万六千円の増加となっております。  そのおもなる内訳について申し上げますと、国有財産貸付収入二十億三千九百九万七千円、日本銀行納付金百六十四億九千四百万円、恩給法納金及び文官恩給費特別会計負担金七十四億五千五十六万五千円、懲罰及び没収金三十五億八千八百四万六千円、刑務作業収入二十一億八千七百十九万四千円、物品売払収入二十三億四千八百六十七万四千円等となっております。  最後に、前年度剰余金受入におきましては、昭和三十一年度の決算によって同年度に新たに生じた純剰余金千一億七千六百四十一万二千円を計上いたした次第であります。  次に、昭和三十三年度大蔵省所管一般会計歳出予算額は、二千四十八億三千九百九十一万五千円でありまして、これを前年度予算額千三百六十七億三千百四十六万三千円に比較いたしますと、六百八十一億八百四十五万二千円の増加となっております。  この歳出予算額を、まず、組織に大別いたしますと、大蔵本省千七百八十三億二千二百九十二万七千円、財務局二十六億一千五百三十一万一千円、税関二十一億六千五百五十五万円、国税庁二百十七億三千六百十二万七千円となっておりますが、これを、おもなる事項について御説明いたしますと、次の通りであります。  国債償還国債利子及び大蔵省証券発行割引差額支払に充てる財源並びにそれらの事務取扱費を、国債整理基金特別会計へ繰り入れるため必要な経費として、国債費の項に六百七十二億六十九万三千円、日米安全保障条約に基く合衆国軍の駐留及び日米相互防衛援助協定の実施に関連し、わが方で支出を必要とする経費として、防衛支出金の項に二百六十一億五百万円、旧連合国に対する賠償支払、旧連合国もしくは旧連合国人本邦内財産戦争損害の補償、その他戦争の遂行もしくは連合国の軍隊による占領の結果、またはこれらに関連して負担する対外債務処理財源に充てるため、賠償等特殊債務処理特別会計へ繰り入れるに必要な経費として、賠償等特殊債務処理特別会計へ繰入の項に二百六十一億九千三百万円、科学技術振興のため、株式会社科学研究所並びに同研究所が改組された場合の特殊法人科学技術研究所に対して国が出資するため必要な経費として、政府出資令の項に三億三千万円中小企業信用保険特別会計を吸収いたしまして、新たに発足する予定の中小企業信用保険公庫信用保証協会へ貸し付けるため必要とする資金を、同公庫に対して、国が出資するに必要な経費として、政府出資金の項に二十億円、以上御説明いたしましたほかに、将来におけるわが国経済基盤強化に資するため、昭和三十一年度の剰余金のうち、法定の使途に充てるものを除く四百三十六億三千万円に相当する金額をもって一般会計経済基盤強化資金を設けるほか特別の五法人基金に充てるための出資をすることといたしまして、日本輸出入銀行東南アジア開発協力基金として五十億円、中小企業信用保険公庫保険準備基金として六十五億円、日本貿易振興会基金として二十億円、農林漁業金融公庫小団地等土地改良事業基金として六十五億円、日本労働協会基金として十五億円、計二百十五億円を政府出資金の項に計上し、二百二十一億三千万円を経済基盤強化資金へ繰入の項に計上いたしております。  なお予見しがたい予算の不足に充てるための経費として、予備費の項に八十億円を計上いたしております。  次に財務局税関及び国税庁につきましては、お手元にお配りいたしてありまする書類によりましてごらんをいただきたいと考えます。  次に昭和三十三年度大蔵省所管の各特別会計歳入歳出予算につきまして、その概要を申し上げますと、造幣局特別会計におきましては、歳入歳出とも三十一億七千二百七十三万二千円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、歳入歳出とも八億一千百八十万六千円の増加となっております。  増加いたしました主なる理由は、歳入におきましては製造経費増加に伴う補助貨幣回収準備資金より受け入れの増加によるものであり、歳出におきましては原材料地金購入に必要な経費等増加によるものであります。  印刷局特別会計におきましては、歳入五十七億三千五百七十一万三千円歳出五十二億一千三百十八万四千円差引五億二千二百五十二万九千円の歳入超過となっておりまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、歳入において三億五百で二十六万三千円歳出において三億三千八百六十万六千円をそれぞれ増加いたしております。  増加いたしました主なる理由は、歳入におきましては日本銀行券切手類及び各種証券等の製品売り払い収入増加によるものであり、歳出におきましてはこれに伴う製造経費増加によるものであります。  次に資金運用部国債整理基金、貴金属、外国為替資金産業投資経済援助資金余剰農産物資金融通賠償等特殊債務処理及び国有財産特殊整理資金の各特別会計につきましては、お手元にお配りしてある書類によりましてごらんいただきたいと存じます。  最後に、昭和三十三年度大蔵省関係の各政府関係機関収入支出予算につきまして、その概要を御説明いたします。  日本専売公社におきましては、収入二千六百二十一億四百八十一万五千円支出千五百三十五億八千四百六十二万七千円差し引き収入超過額千八十五億二千十八万八千円となり、これに昭和三十三年度における減価償却額差し引き後の資産増加額八十二億四千五百九十七万七千円を加算した千百六十七億六千六百十六万五千円が事業益金となるのでありますが、これより固定資産増加額千六百十六万二千円を控除いたしまして、専売納付金は千百六十七億五千万三千円となるのであります。これを前年度予算額に比較いたしますと、収入において九十九億二千六百三十一万五千円支出において百二十一億八百七十七万二千円をそれぞれ増加し、差し引き収入超過額において二十一億八千二百四十五万七千円専売納付金として十二億六千五百三十四万二千円をそれぞれ減少しております。  以下、たばこ、塩及びしょう脳の各事業につき主な事項概略を申し上げますと、たばこ事業におきましては、三十三年度における製造数量は千九十八億本販売数量は千九十六億本でありまして、これを前年度に比べますと、製造において一億本を増加し、販売において一億本を減少しております。  たばこ事業予算額収入が二千三百五十七億七百二万二千円支出が千三百十九億三千四百七十万四千円差し引き収入超過額千百三十七億七千二百三十一万八千円となっておりまして、これを前年度予算額に比較いたしますと収入において百五億三千四百七十七万八千円支出において百一億四千二百十四万円をそれぞれ増加しております。  次に塩事業予算額におきましては、収入二百五十三億九千四百二十一万六千円支出二百八十七億四千八十六万二千円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、収入において六億六百三十六万四千円を減少支出において十八億八千六百四十二万七千円を増加しております。  なお、しょう脳事業予算額におきましては、収入十億三百五十七万七千円支出九億六千二百八十一万二千円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと収入において二百九万九千円支出において千三百五十万七千円とそれぞれ減少しております。  次に国民金融公庫、住宅金融公庫農林漁業金融公庫北海道東北開発公庫公営企業金融公庫日本開発銀行、日本輸出入銀行収入支出及び前年度予算額に対する増減の理由につきましては、お手元にお配りいたしてありまする書類によりましてごらんいただきたいと存じます。  次に中小企業信用保険公庫におきましては収入十二億五千三百四十万八千円支出十二億一千二百二十四万一千円を計上いたしておりますが、この公庫中小企業金融に関する信用補完に当る政府関係機関といたしまして、信用保証協会に対する保証基金貸付及び中小企業金融に関する保険業務を行うこととしまして、従来の中小企業信用保険特別会計を吸収いたしまして本年度新たに設置いたすものでありまして、収入におきましては保険料収入回収金及び利子収入等を計上し、支出におきましては人件費事務費、並びに支払保険金及び商工中金に対する委託費等経費を計上したものであります。  以上、昭和三十三年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び行政府関係機関収入支出予算につきまして、その概要を御説明いたしました次第であります。
  5. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ほかに補足的な説明はございませんか。それではこの際、分科担当委員外委員の発言の通告がございます。これを許します。
  6. 佐多忠隆

    担当委員外委員佐多忠隆君) 日銀総裁にお尋ねしたい。先日おいでを願って、現在の日本経済状態、特に景気観測、不景気の局面、不況の見通しというような問題を一般的に御説明を願ったのでありますが、その場合に、やはり意見が完全に一致しているようでもあり、あるいは違っているようでもあり、というのは、総裁考え方大蔵大臣考え方との間に、若干の相違なり、あるいは大まかには一致しているかと思いますが、そこらではっきりしない点がありますので、その点特にもう少し明瞭にしていただきたいと思うのです。ということは、一番の問題はやはり今後の国際収支見通しをどういうふうに考えるかという点が、一つの見方の相違の因子になるのじゃないかと思いますので、あらためて国際収支をどういうふうにお考えになるか、そこからまず御説明願いたいと思います。
  7. 山際正道

    参考人山際正道君) 国際収支の今後の推移についてのお尋ねでございますが、御承知のように、昨年来国際収支改善を中心といたしまして各種の対策がとられて参りました。その結果、昨年の九月以来実質的には黒字に転じ、また十月以来形式的にも黒字に転じまして、依然その情勢のまま今日に及んでおります。ごく概略数字を申し上げますと、形式的には二月末までに一億三千二百万ドルを回復いたしましたし、実質的に申しますと約二億ドルを回復いたしているのであります。今後の情勢がしからばどういうふうに移るであろうかという点でございますが、それを決定いたします要因は、要するに輸出及び輸入、むろんその他の貿易外収支もございますけれども、主としてこの貿易関係がどういうふうに今後推移するかということが大きな因子になろうかと思うのであります。今日、今申しましたような昨秋来の国際収支改善を見るに至りました主たる原因は、前途を卜する上に有力な判断材料になろうかと考えますが、この情勢は遺憾ながら、輸出増進によってこの黒字を実現し得たと申しますよりも、輸入減少によりまして差引黒字が浮かんできているというのが大まかな推移であるように思うのでございます。輸出はむろん減少はいたしませんで、ある程度の水準を続けつつありますけれども、なかなか上昇の気配はむずかしいのであります。これに対しまして輸入の方は、種々の原因によりまして減少を来たしておるのであります。その原因のおもなるものは、要するに引き締め政策その他の政策によりまして輸入原材料消費が相当押えられて参りました。自然、輸入原材料在庫停滞気味であり、その結果として追加輸入を必要とせざる情勢と相なりましたために、輸入の方が減少を来たしておる、こういう結果になっておるわけでございます。輸出増進に関しましては、これはむろん国内態勢において輸出競争力を十分に涵養し、国際的に貿易戦に乗り出していくという態勢を整えることは必要でありまするが、同時にまた反面において、海外情勢自体購買力を増し、海外からの輸入増加し得るという状態改善されることがさらに一つの要件であろうと思うのであります。しかるところ御承知のごとく、ほとんど今日は、主要各国は申すに及ばず、後進諸国に至るまでも大体はおいて投資行き過ぎ外貨の喪失、国際収支改善ということから、世界貿易は縮小の態勢を示しておるのでございます。従いまして、今後のわが国輸出がいかに相なるであろうかということは、海外の事情がいかに好転して参るかというところに関連するところが非常に多いと思うのであります。この点において決定的な要素をなしますものは、何と申しましてもアメリカ経済であろうかと考えます。アメリカは御承知通り目下景気後退現象が続いておりまして、これを挽回させるべく各種の施策がとられておるのであります。ただその後の情勢を注意深く観察いたして参りますると、投資行き過ぎ等原因する景気後退生産の過剰、従って操業率の低下といったような現象は深いように思うのでありまして、自然その結果として世界の人々が初め考えておったよりは回復に時間を要するのではないかということが考えられておるのであります。むろんこれに対しまして、さような情勢が深ければ深いほど、米国政府その他のこれを挽回しようとする努力もまた大きくなって参りつつありますから、私はアメリカ経済自身の基本的な状態については何ら悲観的な見解をとっておりませんけれども、多少そこに時間的な余裕を見込まねばならぬということについては、遺憾ながらそういう観察をせざるを得ないかと思うのであります。  一面、この輸入の問題でございまするけれども、御承知のように国内では目下生産過剰の問題に悩みまして、いわゆる生産調整が非常に力強く進められておるのでございます。実際に経済の安定を得ますためには、この生産情勢と、それに必要な輸入原材料情勢とが均衡を回復するということが、重大な要点であろうと思いまするが、見ておりますると、わずかながら今日では輸入原材料在庫が少しづつ食いつぶされつつある情勢がうかがえるわけでございます。むろんその速度は操業短縮等によりましてそれほど大きいとは考えておりませんけれども、しかしながらその意味において現在の輸入規模が必ずしも今日の生産水準となおまだ適合していないのではないかという気がいたすのであります。すなわち申しかえまするならば、いずれ在庫が非常に減りますると、再び輸入増加しなければ、今の生産水準の維持ができない懸念があるのではないかという点をおそれておるのでございます。私はこの生産調整が、どうしましても国際収支改善のために基礎的に必要な段階であると考えておりまするから、いま少しこの生産調整段階を推し進めらるべきものであろうと考えております。従ってそこに輸入規模生産水準との均衡ということが安定的な見通しができまして、そうして特に将来内需その他の増加によって輸入原材料増加をしなければならぬというような心配がないときに国際収支は安定の域に達するかと思うのであります。  むろんこの黒字情勢は、現在の趨勢をもっていたしますると、おそらくなおしばらくの間続け得るものと考えます。しかしながら一面まず考えねばなりませんことは、今日の日本輸出輸入をまかないます外貨運転資金として、現在の外貨保有量がどの程度に達しているかということを判断するのが、これまた国際収支の一応の見通しを立てます上において重要な判断材料になろうかと考えます。御承知のように今日発表されてきた数字によりますと、外貨は約十億ドルということになっておりますけれども、そのうちには例のインドネシア関係その他、俗にいう焦げつき債権も含まれているわけでありますから、必要な際に直ちに動員し得る部分というものはその十億ドルのうちのその非常に多額のものがあるとは考えられないわけであります。で、私の見解をもっていたしますると、今日動員をし得ると考えられる数字は、この日本の数十億に達するところの貿易を——むろん数十億ドルでありますが、貿易規模をまかなって参りまする運転資金といたしましては、まだまだ過小であるという気がいたすのでございます。それは、欧米諸国その他がその貿易量に対して保有いたしておりまする外貨量とも関連を持って考えますると、まさにその感が深いのでありまして、わが国のこの変化しやすい国際情勢国内情勢等推移から申しまして、日本経済を安定的に回転して参りまするためには、いま少しく外貨の蓄積についてわれわれは努力する必要があろうかと考えているのであります。国際収支前途は、申し上げましたように、国内的の条件ばかりでなく国際的の条件が非常にからみ合っておりまするしいたしますので、なかなか的確な見通しを申し上げることは困難かと考えます。今申しましたように、今幸いに順調に推移いたしておりまする国際収支情勢はなおしばらくの間はこれを継続し得るものであると期待いたしておりまするし、またしばらくの間はさらに外貨の蓄積に努力する必要がある状態であろう、かように判断をいたしております。
  8. 佐多忠隆

    担当委員外委員佐多忠隆君) 今の御説明によって、輸出は現在政府が考えている三十一億五千万ドル確保ということが相当むずかしいのじゃないかという考え方、同時に輸入は非常に減っているが、来年度一年じゅうを考えると今後は相当ふえることも考えなければならぬから、三十二億四千万トルという輸入予想はこれでは少な過ぎるのではないか、そういうことから、国際収支は必ずしも楽観を許さないというような御判断のようですが、この点については、私は輸出に対しても輸入に対しても、いろいろもう少し論議をしてみたい点がありますけれども、先を急ぎますから、これはまあ一応総裁の御意見を聞いておくだけにしまして、今最後の方でお触れになった、それじゃ外貨保有高を、どういうふうに考えればいいかという問題、今総裁がおっしゃったように三月末大体十億ドル程度、しかし焦げつき債権その他があるから、正味使えるのはそんなにないだろう、一体正味使えるのをどのくらいとお考えになっているのか。おそらく半分程度じゃないかと思いますが、その点をどういうふうにお考えになるかという問題と、それから国際収支をバランスさせることが非常に必要なんだと言って、今後の日本経済の動き、それから景気政策、不況対策を皆そこにかけておられるように思いますが、そこで、これは来年度は一億五千万ドル黒字になるんでしょうが、もう少し長期的に見て、一体現在の日本貿易規模からいって、どれくらいの外貨保有高を持った場合に大体安心だということになると思われるのか。従って、そのことは、少し長期的に見て、やはり毎年一億五千万ドル程度のものを蓄積していって、将来十四、五億というか、あるいはもっと高く、そこいらまで来たときに、初めてそういう国際収支黒字にする政策から純粋なバランスだけでいいのだ。今年度あるいは来年度いっぱいだけを黒字にしておいて、あとはその程度までたまったら、そこを出発点にしてバランスしておきさえすればいいのだとか、そこいらの、かなり長期的な手持外貨保有高との関連をどういうふうに考えるか、その点をもう少し御説明を願いたい。
  9. 山際正道

    参考人山際正道君) 御承知のように日本経済は、俗にいう貿易依存度、外貨に左右されることの非常に多い国柄でございます。領土せまく、人口多く、しかも食糧も相当部分自給ができず、また主要工業原材料はその主要部分を輸入にあおがなければ仕事ができないという国柄でありまして、私は国際収支の問題は、運命的に日本経済を左右する最も重大な要素であると考えておるのであります。先日来も、いわゆる国内均衡の問題と、国際均衡との問題についていろいろ御質問もございましたが、私は国際均衡を確保し得てこそ、初めて国内均衡が保持される基盤が確立すると思うのでありまして、この両者は絶対に不可分の関係にあると考えなければならぬことと思うのであります。  そこで、ただいまのお尋ねは、しからば長期的に考えて外貨保有高はどの程度あったらいいか、ないしは現在動員し得る外貨は、一体どのくらいを考えておるか、というお尋ねがございましたが、私は、先ほど申し上げましたように、現在蓄積されておる外貨約十億ドル、直ちに動員し得る外貨は、的確な数字は申し上げられませんが、半ばを超えること、あまり多くはないと考えております。しかもその数字は、ことに年によって豊凶がございます食糧事情等を考えますと、なかなかこれは安心のできない数字でございます。この意味から申しましても、最低限度においてなおかつ充足する必要があるということは容易にうかがえるのではないかと思うのであります。で、どの程度の外貨があったらいいかということは、これは前回も大蔵大臣からお話のございました通りその時代における外貨の伸び方がどうであるかという問題に非常に関連をすると思うのであります。もし先行き外貨が減りそうな場合におきましては、適正保有外貨は、おそらく相当高額でなくてはならないと思います。将来非常な伸びが期待されております場合におきましては、それほどのものは要らぬという理論も成り立つかと思うのであります。過去において、つい一両年前に、最も外貨が多く保有されました時期は、十四億何がしか、十五億トルに近かったと思うのであります。その当時と今日の状態とを比較いたして考えますると、私は具体的に数字をもってお示しすることは非常に困難であると思いますので、避けたいと思いまするけれども、まだまだ相当量の外貨を保有しなければ、この六十億ドルもしくはそれ以上の輸出入をまかなう外貨としては足らないと思うのであります。非常にこの点は具体的な数字をもって、何億ドルならまずよかろうというものをお答えしにくいものでございますので、あるいは御期待に沿わぬかもしれませんけれども、お答えといたしましては一応さようにお答えをするほかないかと考えております。
  10. 佐多忠隆

    担当委員外委員佐多忠隆君) そうしますと、今お話の通りに、過去において一番大きかったとき、たとえば三十一年の十二月、十四億二千万ドルくらいだったと思いますが、その程度、そうすると十四、五億はなければならぬ。しかもそのうちに今のお話で五億ドル程度のものば実際に動員できないのだから、正味十億ドル程度にしかならない。このくらいが、かなり長期的に見ては必要な額じゃないか。しかも安定的な生長を日本がやるためには、というような結論になるのではないかと思うのです、今のお考えだと。そうすると四、五年の問は毎年々々やはり一億ドル程度の国際収支黒字ということで、日本経済計画なり何なりを組まなければならぬというようなことになるようにも思うのですが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  11. 山際正道

    参考人山際正道君) 今後なお毎年経済計画において黒字をかなりやらなければならぬという点、これは御承知のように相当最近短期の借入金がふえております。昨年も現に国際通貨基金から一億二千五百万ドルを借りておりまするが、そのほかにも、あるいは輸出入銀行、あるいは世界銀行等から借入金がだんだんふえておることによって、経済の拡大をはかりつつあるわけでありますが、すでにこの返済期もだんだんと迫ってくるわけであります。その返済に充当し得るだけの余裕というものは積み立てていかなければならぬということも考えられるわけであります。かれこれ考えますると、ここしばらくの間は、日本経済計画といたしましては、やはり若干の黒字を重ねていく方針をとらざるを得ないかと考えております。
  12. 佐多忠隆

    担当委員外委員佐多忠隆君) そこで国際収支の問題は、今の政策その他方針からなされば、そういうことが結論的に出ると思うのです。そこは相当論議したい点でありますが、これも時間の関係で論議はやめておきます。それでは一体、国内資金収支、国庫と対民間の収支をどういうふうに考えるかという問題が、次の問題になると思うのです。そこでお尋ねをしたいのは、さしあたりは来年度の第一・四半期がどうなるか、来年度一ぱいがどうなるかという問題が重点になります。その前にまずお尋ねをしたいのは、一体、国内収支という問題は、これまで毎年々々予算に即応していろいろな予測が出ている。ところが必ず実績は非常に違ってきている。その実績がたとえば外為資金みたようなもので食い違うのは、これは国際収支その他の関係だからやむをえないと思うのですが、一般会計特別会計において大きくすでに狂ってくる。それは形式的にきめた予算と、実行された予算との間に、非常なアンバランスがあるということだと思うのです。たとえば昨年度でも、当初われわれが予算を審議しましたときには、三百五十億の散布超過だという予定で出発をした。ところが、二千四百億の揚超になってしまった。その前の三十一年度でも九百八十億の揚超だ、こういって予算のときには説明をして、それで金融政策その他が考えられているのだと政府は言っていた。それは非常な見込みじゃないかといろいろ追及したが、いやそれでいくのだと言う。ところが、実際に締めてみると、一千六百億の揚超になった。散超を予定しながら、結果においては非常に大きな揚超になった、今度はまあ一千二百億の散超だといい、今度こそは散超だといっているのですが、そこらが非常にアンバランス、見通しの誤まりというか何というか、これでは金融をあずかっているあなたとしては非常にやりにくい、あとのしわ寄せその他を全部あなたの方においかぶせてきて、それで財政のあと始末を金融がしなければいかぬ。そこに、これからいろいろお尋ねしようとするいろいろな貸し出し超過の問題等々が入っております。そこで、こういう資金収支見通しを作り、あるいは予測をするときに、もう少し計画的にもう少し正確なものにまず変えていく必要があるのじゃないか、その点を過去数年の経験から見て、日銀総裁としてはそれらの問題をどう考えておるか、まずその点から。
  13. 山際正道

    参考人山際正道君) ただいまのお尋ねの半分は大蔵当局から御説明願うのが適当かと実は思います。歳入の見積りと実績がどうして狂うかというような点は、やはり大蔵当局からも御説明があろうと思います。  御指摘のように、この政府資金の散布超過あるいは引き揚げ超過の問題が大きく見込みが狂うということは、金融政策の遂行上実は非常にやりにくいことでございます。それは御指摘の通りでございます。まあ、その根本の原因は、やはり過去一両年来における経済情勢推移があまりにもはなはだしかったということから、歳入の問題にいたしましても、あるいは外為の問題にいたしましても、大きく狂ってきた根本の原因となっておろうかと思うのであります。従って、これは政府においてもすでにそういう御方針のように承わっておりますが、私どもといたしましても、なるべく経済情勢推移に関しまして、その分析、観測を、各種の統計調査等を完全にいたすことによりましてなるべく的確につかんでいく。自然その結果といたしまして、計画と実績との間にそう違いがないという状態にもっていく。これが私は官民ともにぜひとも必要とする努力であろうと思うのであります。ただ、これに加うるに海外情勢の変化ということもございますので、かように世界経済が大きく動いておりますときには、国内推移だけでも判断いたしかねる点もございまするし、海外の資料を十分に使うとは申しながら、なかなかこれも意にまかせないところもあるのでございますしいたしますので、なかなか的確を期することは困難かと思いますが、極力、各方面の努力を集合いたしまして、その間の狂いを少くする、これは当然今後努力すべきところと考えております。
  14. 佐多忠隆

    担当委員外委員佐多忠隆君) これは、大蔵省にちょっと聞きますが、この間から資料を出していただきたいと言っておる。国内収支の当初の見込みと実績との食い違いがどうなったかということを、前から、二十七年度くらいからの資料を出してほしいといっているのですが、出てきていないので、今出てきている数字では三十一年度以降しかわからない。この資料と、それらの数字はどうなっておりますか。大蔵省の方から御説明を願いたい。実績は私の方でわかっておりますから、当初の予測をどう立てておられたかを二十七年度から三十年度まで言って下さい。……要求した資料は早目に一つ出して下さい。  それで、今総裁のお話のように、もう少しこれらの点を計画的にしなければいけないと思う。  次にお尋ねしたいのは、来年度第一・四半期をどういうふうに今予測をされるか。それから、それを出発点として、各四半期別に平準化しあるいは計画化するということをどういうふうにやればそれができるか、それを日本銀行総裁としてはどういうふうにお考えになるか。ということは、今、日本銀行総裁は、景気の変動なりあるいは経済の動きが、振幅が非常に大きかったのでこういう結果になったと言われますが、それは結果であると同時に原因でもあると思う。そういうことをもう少し総合的に計画的にやらないから、こういう日本経済の変動の振幅が大きいという問題にもなる。で、政府は安定的な成長を今後は考えるのだということを言っているので、その上からも、これを平準化する、計画化するということは非常に重要なことだと思います。それらの点をどうお考えになるか、特に来年度の第一・四半期の予測との関連において、それらをどういうふうにお考えになるか、その点の御説明を願いたい。
  15. 山際正道

    参考人山際正道君) 全体といたしまして、経済観測をなるべく的確になし得るように各般の調査資料等の完全を期して参るということは、これは御指摘の通り必要のことと考えております。  しからば第一・四半期についての見通しいかんということでございまするが、ただいま各般の資料を集めました上の現在の判断といたしましては、政府資金は差し引き結局五億円くらいの散布超過になろうかと考えております。これが経済界にどういう影響を持つであろうか、それに対してどういう対策をとらねばならぬかという点は、職責上当然私どもの方で研究をいたしておるところでございます。もし資金の出回りの関係上、そこに何らか安易な考え方を生じたり、あるいは各種の企業努力を鈍らせるようなことがうかがわれる際には、当然日本銀行としては、その散布された資金の回収をはかる必要が出て参ると思います。原則といたしまして、第一・四半期は、経済推移はそれほど膨張過程には向わぬし、また向わすべきでもないと考えまするから、当然この第一・四半期の金繰りから申しますと、ある程度の資金を回収いたしまして、現在六千億をすでにこえておりまする日本銀行の貸し出しというものを、幾分でも正常な形に引き戻すということは、当然第一・四半期でも行わねばならぬのではなかろうかと考えておるわけでございます。いつ、いかなる方法でどういう経過において実行するかというようなことは、そのつどの具体的の情勢に応じて最も目的を達するのに効果的な方法によって実行すべきものであるということで、今後十分注意深くこの辺の推移を観察して参りたいと考えておるわけでございます。
  16. 佐多忠隆

    担当委員外委員佐多忠隆君) 今のお話で、第一・四半期大体五百億程度の撤超という見通しが出ました。では大蔵省にお聞きしたいのですが、年間千三百億の撤超という計画を予測しておられるときに、これは形式的な予測だと思う。実際は私は相当違ってくるのじゃないかと思うが、その実際の違いを考慮に入れながら、各四半期別にはどういうふうに大体なるというふうに予測を立てておられるか、その点の御説明を願いたい。
  17. 磯田好佑

    説明員(磯田好佑君) ただいまの御質問では、年間の対民間収支の見込みと各四半期別の収支の見込みとどういうふうに作っておるかというお話かと拝聴したのでございます。  御承知のように来年度の対民間収支におきましては、年間を通じまして約千二百億程度の散布超過を見込んでおるのでございます。年間の見通しを立てまして、あとは各四半期別に、その直前の四半期になりまして、たとえば現在におきましては、第一・四半期において、どの程度の対民間収支になるかということを四半期別に作るということにいたしておるのでございまして、具体的には直前の四半期にならないとなかなか的確な収支見通しができないというようなことによりまして、ただいまのところでは第一・四半期におきまする対民間収支を立てておるわけでございます。先ほど来お話に出ましたように、第一・四半期におきましては、おおむね五百億程度の対民間におきまする散布超過になるのではなかろうかという見通しを立てておるような次第でございます。
  18. 佐多忠隆

    担当委員外委員佐多忠隆君) 直前に計画をお立てになる、これは非常に正確なものとしてはそれが必要だと思いますが、私が特に大蔵省にお聞きをしたいのは、直前の今の第一・四半期の五百億の問題等は、日銀ですでに実施の問題としてとり上げておられる時期、段階であって、私はさっきから言っているように、もっと対民間収支の問題を計画的に、しかも各四半期にも少し平準化しなければならぬ。この問題を私は前から、繰り返しやかましく言っておる。それで大蔵大臣は、何とか考慮しましょう、措置しましょうということを言いながら言い放しになっておる。ことしぐらいは、この転換の時期にそういうことを真剣にとり上げて、考えられてしかるべき時期、段階だと思うのです。それにもかかわらず、まだそういうことがなされてないというのは、非常に私は不満です。が、この点はむしろ大蔵大臣にお尋ねをし、大蔵大臣とお話をした方がいいと思いますから、そっちの方に譲ります。  そこで、それじゃ今お話が出たのですが、第一・四半期に金融の正常化の問題の一つとして、まあ日銀への返済計画の問題まで考慮をしなければならぬと思うというようなお話がありました。この点をもう少し、後ほどもっと具体的にお尋ねをしたいと思うのです。が、その前に今後の資金の需給の、年間の総体的な資金の需給の問題についてもう少しお尋ねをしてみたい。と申しますのは、経済企画庁で出しております総合資金需給見込試算、あるいは産業資金供給見込試算等が経済計画として出て参っております。これによりますと、大体散布超過千二百億を見合いにとって年間としては一千億だけ返さすのだ、従って一千億だけ減らすのだという考え方をとっております。その場合に総合資金需給の見込みからいいますと、資金の吸収の問題は一兆三千三百九十億、この吸収は昨年の一兆二千八百二十億に比べますと相当吸収がふえている。それから放出の方は三十三年度は一兆二千三百九十億という計画を立てておるわけです。これは昨年度が一兆五千億以上であったわけですから放出の方は非常にしぶくなっている。吸収の方は去年より多いというようなことになり、さらに今お話の一千億返済というような計算を立てるとすれば、これはもう資金の需給としては非常に大きな縮小均衡だと思うのですが、今後の資金の総合的な計画その他は大体この方針でいいとお考えになるか。これでやるというふうにお考えになって、大体これに即応してやってしかるべきだというふうにお考えになるか。その辺の感じを一つはっきり出していただきたい。というのは、さらに申し上げれば、今後の資金需要というのを日銀総裁はどういうふうにお考えになっておるか。資金需要は今後は相当落ちるのだという見方もあるし、あるいはそれほど落ちないのだ、従って警戒的でなければならぬという考え方もあるようだし、その辺を総裁はどういうふうにお考えになるか。それとの関連において、今の総合計画を、資金の需給の方針なりその他をどういうふうにお考えになるか。御説明を願いたい。
  19. 山際正道

    参考人山際正道君) まず最後資金需要の見込みの問題からお答えを申し上げたいと存じます。今回の国際収支の危機が、投資行き過ぎ投資には設備の投資及び在庫投資を含む考え方でありまするが、これが行きすぎておるので、これを引き締めることによって抑制させねばならぬ、財政投融資等もこれにならって繰り延べをするというような施策がとられたわけでございまして、私はだんだんに投資需要というものは、一ころに比べますれば減退しつつあると考えます。ことに最近の生産過剰等の現象を控えまして、投資意欲は相当程度沈静はしつつあると考えております。しかしながら、一面において、すでにやりかけた事業でなお完成を急ぐという事情のものもございまするし、またいわゆる重点産業におきましては、ちょうど来年くらいがピークにさしかかるものもあるように考えますので、かれこれ考えますると、なかなか投資需要はこのまま放置しておいて減退をするというふうにも考えがたいと思うのであります。ことに御承知のように数多くの企業の中には、いまだに、やればやった方が得だという、必らずしも採算の精密な根拠を持たずに投資意欲を旺盛にしている両きもまだ絶無とは申せません。かたがたこの点は今後もなお注目を要するところと思うのであります。二月でありましたか、通産省の方から、通産省所管の各企業が一体三十三年度にどれだけ投資を希望するかという希望的数字をおとりになったものを参考としてお示しがあったと思うのでありますが、これによりますと三十二年度を上回る数字が出ておる。八千億をちょっとこえる数字が出ておったと思うのであります。むろんこれは希望の数字でありますので、本人自身もそれが全部実現できるとは思っておらぬと思いまするけれども、一面やはり投資意欲というものは、相当程度根強いものが残っておるという証左にもなろうかと思います。そこで来年度のこの資金需給計画における最重要点は、このいろいろな投資計画、財政投融資を含めての基幹産業並びに一般産業の投資をどの程度に押えるかということが、非常に重要な問題になろうと思うのであります。この点につきましては、御承知のように現在通産省の産業合理化審議会、あるいは大蔵省の金融機関資金審議会等で目下しきりに調節を急いでおられます。私はどうか蓄積の範囲にこの投資意欲というものがおさまるように、そうして堅実なる投資が実現して参るように、これら諸委員会の成果に実は期待をいたしておるようなわけでございます。で、総体として企画庁で立てられておりまする総合資金需給計画は、あれでいいですかというお尋ねでございます。私はその後、企画庁においては各般の資料をお取りまとめになり、日本銀行からも相当の資料を提供いたしまして作られました結果と承知いたしておりまするので、まず現在のところあれを基本に考えていくよりいたし方ないものと考えておるのでございます。ただ御承知のように、資金の供給から申しますると、国民の貯蓄意欲、貯蓄の増進ということがどの程度達成できるか、一方において資金需要側から申しますると、ただいま申しましたように設備投資計画というものがどの程度に調整をとれるか、その他国際収支その他の情勢の変化等もございましょうので、計画は計画でありますけれども、その実施に入りました上は、常時それらの諸要素を勘案いたしまして、必要あらばその計画の御修正を願うということがぜひとも今後配意せらるべきではないかと考えております。
  20. 佐多忠隆

    担当委員外委員佐多忠隆君) 先ほど日銀への市中銀行からの返済計画の問題が出たんですが、この資金総合需給計画によると、大体一千億という数字が出ておるんですが、日銀としても大体これをめどに今後の返済計画なり何なりを立てられるというおつもりですか。従ってそれに関連すると、まあ第一・四半期あたりは、さっき言ったように、すぐ五百億の散超その他が出てくる、特に四月はもっと多いし、それらに関連してその返済計画あたりを具体的にはどういうふうにお考えになっておりますか。
  21. 山際正道

    参考人山際正道君) 御承知のように、金融の情勢には、季節的変化その他そのときどきの事情に応じまして、必ずしも一定の数字の計画通りに参らぬ情勢もあると考えます。ことに最近におきましては、資金の回転率いかんということが所要通貨量に非常に大きな影響を持つというのは、各国が経験しておる事実であると思うのであります。私どもの今の見解といたしましては、大体において銀行券の発行高の水準というものは三十三年度はそう多くあってはならぬという考え方——おそらくこの企画庁の数字も大体それはまあ二百億くらいの平均増発があれば、三十三年度の経済循環はうまくいくだろうというお考えで自然千億程度の回収は、はかり得る、こういう結論に相なったかと思うのでございまするが、私どもといたしましては、何億ということは申し上げかねますけれども、少くとも企画庁が考えておられる千億円程度の回収というものは、三十三年度において実現いたしましても、所要通貨量に支障を来たすという状態ではなかろう、かように考えております。なお六千億円から出ておりまする日本銀行の貸し出しを、その情勢に応じてどの程度詰めていくのがいいかということは、この年度を通じての計画のみならず、その時期その時期において適当に考えていくものと思っておるのであります。一応ただいま御指摘の企画庁の計画については、ただいまのところさように考えておることを申し上げるのにとどめたいと思います。
  22. 佐多忠隆

    担当委員外委員佐多忠隆君) 先ほどからのお話を聞いておると、大体資金総合計画その他では、少くとも三十三年度は縮小均衡の方向が不可避なんです。しかも日本銀行で総裁初め皆さんがしばしば言われておることは、今は金融引き締めの政策がようやく具体的に結果を現わし始めたので、そういう意味では緒についただけだ、従って金融引き締めをさらに継続をしていかなければならないし、最後の仕上げをしなければならない、というようなことがしばしば言われておる。その金融引き締めの最後の仕上げというか、どこがどういう形になったら大体あなた方が希望されるような状況に到達する、それはいつごろ到達する、どういう状況になったときが最後の仕上げができたのだというふうにお考えになるか、その辺の事情を御説明願いたい。
  23. 山際正道

    参考人山際正道君) 非常にむずかしいお尋ねでございますが、大体私は、昨年来始めておりますが、金融引き締め政策は相当御承知のように各方面の御努力によりまして効果をあげて参りまして、いわゆる仕上げ段階と申しまするか、結末をつける段階に近づきつつあると思うのであります。最後になお今努力いたしておりますることは、俗に言ういわゆる生産の調整でございます。物価の関係等もいろいろございまするが、大体好ましい方向に変って参っております。国際比価の関係から申しましても、過去において最も日本に都合のよろしゅうございましたのは、昭和三十年の六月であったかと思いまするが、大体においてその水準まで返ってきておる。そこで今やっております生産調整がうまく参りまして、相当物資間に過剰生産の心配がなくなるという情勢が完成されまするならば、私はやはりそれは金融引き締め政策一つ段階であると考えております。ちょうど先ほど申し上げましたように、輸出増進と、それから輸入の安定ということとも関連を持つわけでありまするが、これらが満足すべき状態に落ちつきますならば、私はそれで金融引き締め政策は効果を達したというふうに考えておるわけであります。ただその事態がなおさらに何ヵ月かかる、こういうことは、これは非常に変化の多い条件と関連をいたしておりますから、的確に申し上げるということもむずかしいと考えますが、前回のお尋ねの際に、私は、大体その効果は第一・四半期中に実現をさせたいし、また努力次第で実現できると思うということを申し上げたのでありまして、くれぐれもそういう見込みで参ることができまするためには、ここで中途半端な一種の金融緩和観とか、あるいは不況底入れ観ということで、安易な企業態度、安易な貸し出し態度というものが起りまするならば、私はいわゆる引き締め政策の仕上げの期間はそれだけ延びるというふうに考えておるわけであります。ここで今最後の大事な段階でありまするので、それらの状況によく注意いたしまして、なるべく早い期間に実現をいたしたいと考えております。
  24. 佐多忠隆

    担当委員外委員佐多忠隆君) ところが現在の政府の計画によりますと、資金の面からする計画は、さっき言ったように非常に縮小均衡、少くとも三十三年度は縮小均衡だという形でいっておられる。ところが産業計画あるいは投資計画等の長期計画、特に基本産業、いわゆる四大基本産業といいますか、電力なり造船なりあるいは鉄あるいは化学その他新規産業等から見れば、むしろ資金需要は、さっきもちょっとお話がありましたが、今年、来年にかけてピークになってくる。そういうものは確保をしなければならぬというような計画にもなっておる。そうだとすれば、今おっしゃったような投資計画自体に対しても、引き締めということがなかなか十分にいけないのでございます。そこで、それならば、投資計画その他の引き締めをやろうとされれば、あの長期計画で考えておるいろんな設備計画その他を、ここでもう少し縮小しなければならぬという問題になる。それを縮小しないで、そのままやろうとするならば、金融の面も、少くともそういう面には相当ゆるめて考えられなければならないという問題にもなる。差し当りは、すぐ造船の問題をどうするか、あるいは鉄の不足資金の問題をどうするか、等の問題が出てくる。さらに、今年度は解決したかもしれませんが、来年度には電力の資金の問題が出てくる。それらの問題を、今のあなたの感じとかみ合せながら、どういうふうにあなたはお考えになっておりますか。
  25. 山際正道

    参考人山際正道君) ただいまちょうど御指摘の問題は、先ほど来申し上げましたように、政府関係の諸機関が中心となりまして、むろん民間でも、あるいは経団連であるとか、あるいは銀行協会であるとか、それぞれ特殊の委員会等を設けまして、いかにこの蓄積資金の予想の範囲内で重点産業の建設計画を実行するための資金を確保するか、そのためには、その他の産業の需要をどの程度圧縮しなければならぬか、ことに、いわゆる不急不要産業に対する融資をどの程度詰めていかなければならぬかということが、ちょうど今盛んに検討されておる最中でございます。私は、この問題は、先ほど申し上げましたように、来年度の資金需給計画を決定する基本的な意義を持つ問題だと思いまするので、どうかこれが実情に合った、そして現在の段階においてなし得る最善の結論を得られますことを実は非常に期待しておるわけでございます。困難な作業でありますけれども、鋭意それに努力する一面において、申し上げましたように、本年も貯蓄増強運動等を通じまして、資金の蓄積にできるだけ努力する、かような考え方をとっておるわけでございます。
  26. 佐多忠隆

    担当委員外委員佐多忠隆君) 今の問題は、いわば設備投資の問題であり、長期資金の問題でありますから、あるいは日銀総裁にはむしろ間接的な問題で、大蔵大臣その他にもっとお尋ねをした方がいいかと思いますので、そちらの方に問題は譲ります。それじゃもっと直接あなたの方に御関係になる問題だと思いますが、運転資金の需要増の問題、これをどういうふうにお考えになるか、この産業資金計画なり、あるいは総合需給見込みなりから見れば、運転資金はやっぱり相当縮小をする計画になっているのじゃないか。ところが、一般的にはそうかもしれませんが、今お話のあった、滞貨が相当出てきている、あるいは生産調整が行われて、減産が行われている、そういうものには滞貨融資の問題が具体的な問題になってきている。それに対して、繊維その他に対しては、市中銀行が協調融資で何とかこれに手当をしようという方向がすでに出てきている。これを、単に繊維だけでなくて、今の不況状態、恐慌状態から見れば、さらにもっと全面的に、鉄だとか、化学製品だとか、非鉄だとか、あるいは紙パルプ等にも押し及ぼさなければならぬじゃないかというような問題が出てきている。同時に、そういう、単に滞貨融資、減産融資だけでなくて、もっと不況が進むと、必ず赤字あるいは倒産、破産、そういう問題が相当出てくる。これらに対する赤字融資なり救済融資の問題等も出てくる。実際には、たとえば、大きな商社がメーカーの在庫の肩がわりをするとか、あるいは大きなメーカーが中小のメーカーの滞貨融資をするというような問題が出てくる。そのためには、大企業への融資をやらなければならぬというような形で、相当そういう面から、系列化というか、集中化というか、不況、恐慌のときにつきものの、そういう問題も出てくるし、それに関連しての融資の問題が出てくると思います。そういう点に対して日銀総裁はどういう態度をとられますか。
  27. 山際正道

    参考人山際正道君) 原則的に申しますと、今は生産水準が低下することを考えられておる段階でありますから、正常の運転資金需要というものは、それに伴って減少すべきが自然の成り行きだと思うのであります。しかるに、御指摘のような事実において、なかなかそうばかりも行かぬ理由は、切りかえの過渡期における、いわゆる生産調整に伴う、俗に言う滞貨金融でありますとか、あるいは減産資金と申しますか、といったような性質の資金の需要が非常にかさんで参る結果といたしまして、なかなか運転資金需要が衰えないということになっておると思う。この問題はどこまつでも、金融の対象となるかならぬかということが、この運転資金が供給されるかどうかの分れ道だと思うのであります。慢然と手をこまぬいて、いつ売れるか、いつさばかれるかわからぬものをデッド・ストックとしてかかえているということは、金融の対象にはならぬし、それでは経済の正常化は期待できない。たとえば、ここに業者相寄りまして、前途を予測し、減産をいたしまして、その結果といたしまして、ストックを減少する、また大体需給の均衡が保持できるということに相なりますならば、それに必要な資金というものは、いわば比較的長期にわたる運転資金といたしまして金融機関はこれに対して応諾をするであろうと思いまするし、また現に、さような厳密な生産計画に基いて将来が見通されるものについては、融資は行われつつあるであろうと考えております。この線は、金融ベースで金融機関が対処いたしておりまする関係上、これは越えることのできない限界であろうと思う。むろん、できるだけ工夫をこらし、できるだけ協力をいたしまして、さような事態に対処する資金は金融機関も放出をするであろうと考えておりまするが、かような資金の需要がございまする関係上、なかなか資金の需給がうまく適応しない。その結果、日本銀行の貸し出しがなかなか減らないし、コール・レートその他も減らないという現象が現実の事態であろうと思う。しかし私は、今業界で熱心にその調整を進められつつありまするから、ある程度の時をかしますれば、だんだん経過的な問題として措置できるのではないか、そういたしますれば、新しい生産過程における運転資金所要量というものは、今日ほどではなくて済むのではないか、かように考えておるのであります。
  28. 佐多忠隆

    担当委員外委員佐多忠隆君) 今のお話で、どうも大メーカーとか大商社、大企業、そういうものには、適当な融資の緩和が行われるというような感じを持つのですが、むしろ、もっと運転資金、特に設備資金等を締めて、その結果として、そのしわ寄せが来るのは、よく言われる中小企業であって、大企業その他は、過去二、三年の間に合理化なり何なりをやって、設備更新をやっておりますが、むしろ中小企業その他の合理化なり、近代化、設備更新というものが、今後に残された問題、ここからやらなければならない問題じゃないかと思うのですが、そのときに全体として、金融面における縮小均衡の方式がとられると、必ずしわ寄せがこちらに負わされてくる、それに対してどういう対処の仕方をしようとされるかという問題が第一点。  それから、時間を急ぎますので、もう一つ、これをもう少し詳しくいろいろお話を聞こうと思っておったのですが、公定歩合の問題、あるいはコール・レート引き下げの問題等なんですが、これは大体今までの総裁のお話によると、縮小均衡を続けなければならないという意味で、金融緩和措置になるような意味での公定歩合の引き下げなり、あるいはコール・レートの引き下げということはあまり考えておられないのじゃないかと思うのですが、しかし同時に翻ってみれば、申し上げるまでもなく、日本の高金利という問題は、これは日本の一番のガンじゃないか、この問題を解決して、金融のひずみというか、金融の体制をここであらためて作りかえなければならない。ほかの面においては、たとえば物価の引き下げだとか、合理化だとかを非常にやかましく、金融面なり、銀行面からはおっしゃるが、自分たち自身の金融体系なりの面は、そういう意味では、日銀と市中銀行との関係なり、市中銀行同士の関係なり等は、これは非合理的なものの最たるものじゃないか。で、過剰投資その他が、現在の過剰生産恐慌というか、不況の基本的な原因だと言われている、これは産業計画その他においてずさんな問題があったのも、さることながら、それに輪をかけたのは、銀行自体の貸出競争の問題じゃないか、そういう貸出競争というか、銀行自体のそういう過当競争の問題をどうするかという問題。それから今の日銀のそういう問題に対する、いい意味での統制力をもっと確立する方途をどういうふうにお考えになるか。それと関連して、今のコール・レートあるいは公定歩合の引き下げの問題等をどういうふうに考えられるか、非常にこの相反する要求が、その中には混在をしているので、なかなかむずかしいデリケートな問題だと思いますが、しかしやはりこの際に、そういう長期的な見通しというか、何んというか、そういう問題の解決があわせて考えられなければならない時期であり、段階でもあると思う。これはもっと根本的には、大蔵大臣の問題かもしれませんが、幸いにして非常にそういう面で広く経験をし、お考えになっているから、日銀総裁の御意見を聞いておきたいと思います。
  29. 山際正道

    参考人山際正道君) 第一の御指摘の引き締め政策中小企業金融の問題でございますが、この問題につきましては、先日も、ある程度お答えを申し上げた次第でございまするが、私は実際のところ、引き締め政策を昨年とりました当初から、この問題と雇用問題とは最も苦心をいたして考えて参っている中心的課題であるのでございます。中小企業が、普通の状態におきますると、経済上の変化がある際に、ややもすれば、しわを寄せられがちであるという事実については、私はこれは肯定せざるを得ないと思います。従って今回の引き締めの際には、極力あらかじめ方策を講じて、そのしわ寄せを防止するということについてのできるだけの努力を払いたい、という考えで出発をいたしました。そのためには、ひっきょうこれは、やはり各金融機関の協力を得ることが絶対に必要でありまするので、そもそもの当初から、都市銀行はむろんのこと、地方銀行その他、中小金融機関に対しましても、協力この点を力説いたしまして、その疎通に最善を尽すように指導をいたして参ったのであります。で、銀行自身といたしましても、一種の非常の通報態勢をとりまして、常時全国にわたって中小企業の動静については注意深く連絡をし、また通報を受け、指令を出すことによりまして、中小企業が中小なるがゆえに不当にしわを寄せられる、あるいはいわゆる連鎖反応的に健全なる中小企業までも巻き添えを食う——当時ちょっと言われておった言葉に、黒字倒産という言葉がございましたが、ああいうような事態というものは絶対に起してはならぬということで、極力こまかく金融機関に配意を促したのであります。その結果といたしまして、むろん中小企業の方面に相当犠牲を生じましたけれども、当初出発の際に考えておりましたのに比べまするならば、よほどその摩擦も防止し得たのではないかと、実は私は考えているのでございます。しかしこの問題は、なかなか今後も注意を要する問題でありまするから、あるいは大企業と下請産業との関係等につきましても、十分にできるだけの配慮をいたしまして、融通しました資金が当然それらの中小企業の方に渡りまするように、関係者にあるいはそういう条件をつけるなり、あるいはそういうことを勧奨するなりいたしまして、さらに遺憾なき措置をとって参りたいと考えております。  第二のお尋ねは、今回の引き締め政策を余儀なくせられました事態にかんがみまして、市中銀行その他の金融機関の態度について反省を要するところなきやというお尋ねであったと了承いたすのでありまするが、私は、今回の引き締め政策を余儀なくせられました背景には、むろん企業自体の過当競争等に基く原因は多かったと思いまするが、同時にまた、金融機関の側においても、過当競争等から由来する点において遺憾がなかったとは言い切れないと思っております。御承知通り昭和二十七年、二十八年のころにやはり行き過ぎがございまして、自来引き締め政策を実行せざるを得なかった、その後二、三年を経ずして再び同様な経験を繰り返すということは、これはいかにも愚な話であります。今回こそは、私はこの機会に、企業の側においても、金融機関の側においても、その他関係方面一般が深く反省をいたしまして、かような大きな動揺が将来は防止できまするように、各般の研究、施策を講ずべきものと考えております。日本銀行といたしましても、金融機関の間におきましては十分にこのことを研究し合い、話し合いまして、今後着着その態勢を整えていきたいと考えております。  ところで、しからば公定歩合、コール・レート等の問題はどういうふうにこれを考えていくかというお尋ねであったと思うのであります。御承知のように日本は大体が高金利国であります。遺憾ながらっ資本の蓄積がその需要に伴わず、金利が高い情勢にありますことは、今後われわれが極力蓄積をふやしまして、金利の引き下げを講じていかねばならぬことは当然のことと思うのであります。で、昨年来、公定歩合を引き上げ、資金の雲給関係が逼迫いたしまして、コール・レート等が高騰いたして参りましたというのも、実は国内に起りました非常な不均衡が是正されねばならぬという見地から、かような手段がとられて参ったわけでございます。従って先ほど来申し上げておりますように、引き締め政策が、だんだん流通過程から投資の抑制、それから生産の調整という段階に進んで参りまして、そうして国内的には均衡状態を回復しようとしていると思うのであります。で、この均衡状態が安定的に回復いたしますれば、私はその事態を招来すべくとりました公定歩合等の問題は、おのずからそこに復元するチャンスが生まれるものと考えております。要するに、資金の需給関係にいたしましても、あるいは生産の、商品の需給関係にいたしましても、その他投資と蓄積資金との関係にいたしましても、安定した均衡を回復するかどうか、これが今後の実体的な問題でありまして、その徴候が認められまするならば、もちろん金利等も当然元に復すべきものでありますし、また一般的問題といたしましては、先ほど申し上げましたよう、将来蓄積を増加いたしますことによりまして、金利を、なるべくその水準を下げていくということは、当然今後行わるべき努力であろうと考えております。
  30. 佐多忠隆

    担当委員外委員佐多忠隆君) 時期的には、そういう時期なり何なりは、いつごろか、いつごろには、そういうふうにしなければならないというふうにお考えですか。
  31. 山際正道

    参考人山際正道君) これは非常にお答えしにくい問題だと思います。私は、大体この引き締め政策が正常に復するというためには、引き締め政策は公定歩合ばかりではございませんことは御承知通り、まあ各般の総合施策で、できておるのであります。たとえば一つの建物を作りますために、非常に複雑な足場を組んでいるようなものでありまして、しからば大体完成に近づいたから、その足場のどの部分からどの程度に、はずしていくかということが非常にむずかしい問題であります。でありますが、これは私は一に事態の推移に応じて一つ々々差しつかえのないものから、はずしていくべきものと考えておるのであります。しからばその最も大きな支柱であるところの公定歩合の問題はどうなるかということでございまするが、私は実体的に今申し上げました均衡回復ということを非常に重視しておるということだけを申し上げるのが適当であって、何月ごろどうということを申し上げますることは、かえって正常な均衡回復に支障を生ずる問題かと考えまするし、またこれは当然予断し得べきことでもございませんから、むしろこの際は時間的問題は発言を差し控えさしていただきたいものと考えます。
  32. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 高良さん、発言を許しますけれども、お約束の十二時という時間がきております。五分ぐらいで一つ……。
  33. 高良とみ

    高良とみ君 お急ぎのようでありますが、ちょっと一、二貯蓄面についての日銀総裁の御意見を伺っておきたいと思います。  まあ生産、金融それぞれ重要な問題がありますが、貯蓄奨励については大勢の職員を持ちになっておると思うのでありまして、よほど昔話では、よくこの婦人消費者の面に対して貯蓄運動がかなり組織的にいっていたのでありますが、最近の、昨年度なども貯蓄のスローガンについて募集されて、大蔵省でしょうか、日銀でしょうか、だいぶそのスローガンをおきめになった。端的に申しますると、本年貯蓄のスローガンは、大蔵省の屋上などにも書いてありますが、どうも語呂が悪くて国民にぴんと来ないのです。で、ああいう点でもう少し国民がみんな参加しやすいような、わかりいい……、裏店のおかみさんたちにもわかるようなスローガンを選ばれて、そうしてこの貯蓄の重要性と、またそれへの簡単な道をお開きになったらいかがかしらんということを常に思っておるわけであります。まあ具体的には、どのスローガンか、このスローガンとは申し上げませんが、その点に本年度は少し御尽力を願いたい。PRももう少し広くしていただいて、銀行にのみおまかせにならないで、銀行からくる紙類にはたくさん書いてありますけれども、銀行ではない面があると思います。  そこで第二には何か大蔵省が減税貯蓄の法案について今お出しになっておるようでありますが、婦人層からもずいぶん民主化された証券への投資が多いのであります。それの指導が適当であるかということが、しばしば疑問になるのであります。というのは健全投資というようなことが、なかなか不なれな小さな多数の投資者にはむずかしくございまして、そのためにしばしば証券会社の窓口に依存する、で、その窓口はまた、自分の証券会社がただこれを売り、あれを空売りすればというような傾向がありまして、最近も東証でしばしば逆日歩五十銭までも付けて警告をしておりますような証券を窓口では相当に売りつけておる。そのために家庭の零細な貯蓄をここに投資したものが百万、二百万と損失をしてただ泣いておる。これに対して何ら方途がないというようなことをいろいろ聞きますと、この点も一つ御考慮願ったらどうかと思うのでありますが、今主婦たちの投資意欲というものは相当にあるのでありまして、銀行にただ定期預金をすることやあるいはただ据え置くことでなく、もっと活発な投資に興味を持っております。それだけ、ひまもあるのだろうと思いますし、手にも入っておる。ボーナスも入るでしょうし、これは何も洋服にばかりかえませんでも、これは何らか将来に対して考えておる人たちがあるのでありますが、この点いかがにお考えでございましょうか。直接の御関係でないかもしれませんが、この二つの点について伺います。
  34. 山際正道

    参考人山際正道君) 貯蓄の問題につきまして、これはむろん私ども各種の金融政策ないし経済政策の最も根本的な問題として重要視をいたしております。それにつきまして日本銀行が考えておりまする第一の問題は、貯蓄推進にはどうしても通貨価値の安定という確信を国民に持ってもらうということが根本だと考えております。絶対的にお金の値打は下らないという安心のもとに貯蓄をお勧めするということでなくては、これは勧める側の方もその責任を果し得ない。この点につきましてはかたくその重要性を認識いたして努力しておるわけでございます。それにつきまして、宣伝の技術方法についてまだまだ改善の余地が多いではないかというお尋ねでございまするが、実はこれは私どももそう考えております。なかなか、ずいぶん長くやっておるわけでございまするけれども、また御承知のように貯蓄推進中央委員会というのがありまして、都会はむろん、地方全国を通じてその道の練達の方々に御助力を仰いでおりますけれども、なかなかどうもぎこちなくて、円滑にいかぬという点は、私ども自身も十分反省をいたしております。これからは一そう皆様方の御意見も承わり、努力をいたしまして、単に都会と地方ではむろん事情も相当違います。都会に向くスローガンは必ずしも地方へは向きません。それらのこともございますので、全国一つ手分けをいたしまして、最も効果的なPR運動に努力を傾けたいと考えておる次第でございます。  それから証券投資の問題でございますが、実はちょうど御指摘のございまする通り、私もこの問題は今後大いに推進すべきであると同時に、またそれだけに十分にこれは大蔵省その他の御監督をお願いいたしまして、投資者に失望を与えるというようなことのないように……。どうしましても、日本では貯蓄と申しますと、とかく金銭形態の貯蓄が多うございまして、証券投資の方まではなかなか及んでおりません。これは当然伸ばす必要があると私も考えております。ただそのやり方につきまして十分注意をいたしながら、今後はその方面についても一そう努力をいたしたいと考えております。
  35. 高良とみ

    高良とみ君 時間がおありにならないようですから、総裁に対してはこれでけっこうでございます。大蔵省がおられましたら……。
  36. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) それでは山際日銀総裁に対する質疑は以上で一応終了いたしまして、大蔵省の関係の質疑がございましたら、お願いいたしたいと思います。  なお衆議院の補正予算の審議等で、大蔵大臣、それから参議院の大蔵委員会、地方行政委員会等に白井政務次官が出席しているというような関係でございまして、どうしても大蔵大臣、政務次官に対する質疑が必要であるとお考えでしたら、また別の機会にやっていただくことにいたしまして、事務的な答弁は、それぞれ関係の係官が来ておりますから、質問していただきたいと思います。
  37. 高良とみ

    高良とみ君 この次に、大蔵省全体についての質問の機会があると思いますから、そのときにいたします。
  38. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 速記をやめて。    〔速記中止〕
  39. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 速記を始めて。  以上で、大体大蔵省所管予算の問題に対する質疑は、一応終了いたしたことにいたしまして、特に大臣等に質疑がある方は、また適当な機会にこれを許すことにいたしまして、これにて、大蔵省関係は終了することにいたします。  暫時休憩いたします。    午後零時二十三分休憩    —————・—————    午後一時五十五分間会
  40. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ただいまから第四分科会を再開いたします。  午後は厚生省所管について御審議願うことにいたしております。  まず、厚生省から説明を求めます。
  41. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 昭和三十三年度の厚生省所管予定経費要求額の概要について、御説明申し上げます。  昭和三十三年度厚生省所管一般会計予算要求額は一千七十二億五千七百五十四万五千円でありまして、これを昭和三十二年度の予算一千十四億三千九百五十五万三千円に比較いたしますと五十八億一千七百九十九万二千円の増加と相なっております。昭和三十三年度の予算編成に当りましては、社会保障の確立強化のため、特に国民皆保険の推進、医療機関の整備、結核対策の充実及び診療報酬の合理化を総合的に検討して、これが実現をはかることを目途として参ったのであります。もちろん一定の財政規模の中ですべてが十分なる伸展を見たとは言いがたいのでありますが、以下御説明申し上げます通り、国民皆保険計画を初めとして、社会保障施策の前進をはかり得るものと確信いたしております。  右予算のうち、特に重要な事項についてその概要を御説明申し上げます。  まづ第一は国民皆保険の推進と、その基礎的条件の整備に必要な経費であります。昭和三十三年度におきましては、本年度から着手しました国民皆保険四ヵ年計画の第二年目として、国民健康保険及び日雇労働者健康保険等の財政の健全化をはかるとともに、社会保険診療報酬の合理化並びに医療機関の整備等本計画推進上の基礎的諸条件をもあわせて総合的に検討し、それぞれの配慮をいたしております。  以下その具体的な諸施策について申し述べますと、  (一) まづ国民健康保険におきましては、特に大都市を含む市部に普及の重点をおき、被保険者数を三十三年度中に約四百万人の増加をはかることとし、三十三年度末の被保険者数を三千八百三十万人と見込み、年間平均三千六百万人として算定いたしております。一方国民健康保険の財政力を強化するとともに、給付内容の改善等をはかるため、従来の療養給付費に対する二割の国庫補助のほかに、新たに財政調整交付金を交付することとし、療養給付費の五分に相当する金額を算定して、三十三年度においてはその半年分、十三億八千二百万円を計上いたしました。これに伴い国民健康保険の助成に要する経費は百五十六億五千八百余万円となり前年度に比較して、三十四億七千三百余万円の増加と相なっております。なお、事務費の一人当り単価は、前年度の八十五円を九十円に引き上げることとして、積算いたしております。(二) 次に日雇労働者健康保険につきましては、その医療給付面における財政収支の不均衡を是正するため、従来の国庫負担率一割五分を二割五分に引き上げるとともに、多年の要望であった傷病手当金制度を創設し、三分の一の国庫負担を行うことといたしました。このため、一般会計から前年度より五億二千八百余万円増加した十一億八千四百余万円を繰り入れることとなっております。  また組合管掌健康保険につきましても、診療報酬の改訂その他に伴い、収支の悪化の見込まれる財政的に脆弱な組合に対して、その健全化をはかるため、新たに二億円の給付費臨時補助金を計上いたしました。さらに政府管掌健康保険に十億円、船員保険に一億円をそれぞれ、給付費財源として、繰り入れることといたしております。  (三) 次に国民皆保険の基礎的条件整備の一翼をにないます、医療機関の整備拡充に必要な経費でありますが、まず、国立病院施設の整備改善のため、十二億一千二百余万円を国立病院特別会計に繰り入れ、国立東京第一病院ほか四ヵ所の国立病院を整備するとともに、その他の老朽不良施設の改善をはかることといたしております。  また公的医療機関については、前年度に引き続き僻遠の地で、経済的に民間診療所の開設を期待できない無医地区に対して、公的病院の出張診療所、二十六ヵ所を開設せしめるとともに、都道府県単位に、医療サービスの基幹となるべき病院の、施設、機能の整備を行うこととし、これらに対する補助七千三百余万円を計上いたしております。  (四) さらにまた、国民皆保険計画と密接な関連を持っております社会保険医療の報酬の合理化に必要な経費につきましては、診療報酬が平均八・五%程度引き上げられるものとして、それぞれ社会保険、生活保護費に所要の財政処置を講じております。  第二は結核対策に必要な経費であります。  結核は早期に発見し、早期に治療を行うことが、その対策の要諦であることにかんがみまして、三十三年度におきましては、健康診断の実施に当って、その内容を改善充実するとともに、新規に百九十八班の検診班に対する補助を行うこととし、一般住民に対する健康診断の実施を一段と強化徹底することといたしております。  また、医療費につきましても、新規に外来治療におけるX線検査、培養検査等を、公費負担の対象として取り上げる等の措置を講じております。  右のほか、国立結核療養所百八十一ヵ所の経営のための経費を加えまして、結核対策費は、百五十八億二千三百余万円と相なり、前年度に比較しまして十億一千三百余万円の増加となっております。  また、別途結核実態調査費として七百余万円の経費を新規に計上いたしておりますが、これは二十八年度に実施して以来、部分的調査により、補足して参りました結核の実態を、総合的に調査検討し、今後の結核対策の基礎資料を作成せんとするものであります。  次に、第三は生活保護及び社会福祉の増進に必要な経費であります。  今後、なお、金融引き締め等による調整過程の影響が引き続き予想されますので、昭和三十三年度の生活保護費の所要見込みは、生活扶助人員については、過去の実績と人口増加に伴う自然増等を勘案いたしまして、三十二年度の実績人員より、おおむね、三六%の増加を予定して、月平均百五十万人余と推定し、扶助内容についても若干の改善をはかり、生活保護費総額では、前年度に比較して、十五億二千六百六十余万円を増加した三百八十二億二千二百余万円を計上いたしております。  一方社会福祉関係費では身体障害者の更生、再起のため、四億六百余万円を計上いたしておりますが、この中には、新たに社会福祉法人の設置した更生援護施設に対する運営費の補助並びに、盲人の職業活動の便益をはかるための、盲人ホームの設置助成費等が含まれております。  次に、婦人保護に関しましては、前年度予算において婦人相談所の設置、保護施設の増設等一応緊急所要の措置は講じましたが、三十三年度においては、さらに十二ヵ所の保護施設の増設をはかるとともに、新規に更生資金貸付、被服の支給等の制度を設けて、転落婦人の更生保護の強化をはかることとし、二億三千三百余万円を計上いたしております。  また低所得階層に対しては、その自立更生を促進するため、前年度に引き続き、世帯更生資金貸付補助金として三億円、医療費貸付補助金として二億円をそれぞれ、計上いたしております。  次に第四は児童保護に必要な経費であります。  まず、児童福祉施設に収容している児童の生活を保障する児童措置につきましては、施設の増加に伴う児童数の増加を見込みますとともに、保育所における給食費の増額、養護施設等に収容している児童の教育費の増額及びこれらの施設に勤務する職員の待遇の改善等を行うこととし、七十億七百余万円を計上いたしております。  また、児童に健全な遊び場を与えるために、新たに全国主要都市に二百十ヵ所の児童遊園を設置助成することといたしております。  さらに、母子保健対策といたしまして、新規に妊産婦、乳幼児の健康指導、助産、栄養、受胎調節に関する指導等を行うため、総合施設を設けます町村に対しその設置補助を行うことといたしましたほか、未熟児の養育のため、保健婦による家庭訪問指導及び経済的に困窮している家庭の未熟児を、入院養育させるために必要な経費を新規に計上し、母子保健対策の強化向上をはかることといたしております。  以上、児童保護に要する経費総額は、七十六億三千五百余万円で、前年度に比較して、五億八千六百余万円の増加と相なっております。  次に、第五は戦傷病者戦没者遺族等援護法、本選者留守家族援護法の改正に伴う経費であります。  恩給法の改正と併行して、近く御審議を願うこととなっております、戦傷病者戦没者遺族等援護法及び未帰還者留守家族援護法の改正により、従前の積算による金額のほかに、新たに本改正による増額分を計上いたしております。  これは、遺族年金及び留守家族手当を現行三万五千二百四十五万円から五万一千円に、障害年金を最低七千円から最高七万九千円増加するのほか、多年の懸案でありました動員学徒等、準軍属及びその遺族に対しても、今回新たに、障害給与金、遺族給与金の制度を設けて、遺族年金、障害年金の五割に相当する金額を支給することを内容とするものでありまして、その所要額を、平年度二十八億七千万円とし、三十三年度はその一部三億五千八百余万円を計上いたしております。  次に、第六は国民年金創設の準備に必要な経費であります。全国民を対象とする国民年金制度を早急に創設するため、本年度に引き続き、五人の委員を置いて、その具体的方策の調査、企画に当らせるとともに、基礎的資料となる諸調査を更に整備するために必要な経費として一千百余万円を計上いたしております。  このほか、環境衛生対策の推進に要する経費として、簡易水道、清掃施設及び下水道終末処理施設の整備拡充等のため十七億五千三百余万円を、また、国立公園国定公園の施設の整備を要する経費一億四千五百万円を計上するのほか医薬品の輸出振興対策として、八百余万円を通産省に計上いたしておるのであります。  以上昭和三十三年度厚生省所管の一般会計予算について、その概要を御説明申し上げたのでありますが、次に昭和三十三年度厚生省所管の特別会計予算の大要について、御説明申し上げます。  先づ第一は厚生保険特別会計についてであります。さきに申し述べましたように、一般会計より健康保険給付費財源の繰り入れ十億円、日雇健康保険給付費財源の繰り入れ十一億八千四百万円を見込みまして、健康勘定におきましては、歳入歳出ともに七百六十八億八千八百四十四万九千円、日雇健康勘定におきましては、歳入歳出とも五十億三千三十一万円年金勘定におきましては、歳入六百一億七千百三十二万一千円、歳出百十五億七千九百八十九万三千円、業務勘定におきましては、歳入歳出とも四十億六千六百六十万八千円をそれぞれ計上いたしております。  第二は船員保険特別会計についてでありますが、疾病部門その他について、三億二千五百余万円の一般会計よりの繰り入れを行い、これに要する経費といたしまして歳入六十六億八百二十九万五千円、歳出五十億六千七百五十六万九千円を計上いたしております。  第三は国立病院特別会計についてであります。  さきに述べましたように、国立病院の施設改善のため、所要財源一般会計より繰り入れするのほか、三億円の国庫債務負担行為を計上いたしております。  また新たに、アレルギー、ヴイルス等の治療センターをそれぞれ若干個所整備する予定であります。  右に要する経費として、歳入歳出共九十一億九百十一万七千円を計上いたしておるのであります。  最後に、あへん特別会計についてであります。  本年度のあへん買入れ予定量は、輸入四十七トン、国内産三トンでありまして、一方製薬原料としての売り渡しは四十五トンを予定いたしております。  右に要する経費として、歳入歳出とも二億八千二百九十一万五千円を計上いたしております。  以上昭和三十三年度の厚生省所管一般会計及び各特別会計予算につきまして概略説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算案の成立につきましては格別の御協力をお願いいたします。
  42. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 厚生省関係では補足説明がないそうでございますので、これより直ちに質疑に入ります。  まず、分科担当委員外委員の発言の通告がございますので、これを許します。
  43. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 本分科会で私は主として保育問題と結核問題についてお伺いしたいと思います。  かなり細部にわたりますので、大臣にはその中間において、あるいは結論において、御返事をいただく機会が再々あると思います。  御承知通り、ことしの一月に全国の保育園関係の人が集団的に陳情されて、非常に社会的な問題となりましたけれども、幸いにして今年の二十四億八千万が来年度二十五億三千三百万に組みかえられました。特にその内訳でみますと、職員の期末手当がわずかながらでも、〇・五ヵ月分、一億二千五百万、それから給食費が一人一日七円十銭であったのが八円十銭になって六千二百万円計上され、あるいは乳児の加算が増額になる、こういうふうにして保育関係の人は非常に安心したのであります。ところが三月初めに至りまして、新しい措置費に対する厚生省の案が出ました。それを見ますというと、せっかく確保された保育所の予算が、    〔主査退席、副主査着席〕 期末手当はおろか、職員の出血も予想される、そうして最低基準すら憂慮されるというような、今まで多年にわたってつちかわれた児童福祉法が空文になるような、そういうような状態に至っているのです。三月の一日に厚生省としては、来年度の計画として保育所措置費改善案というものを出しておられますが、これをよく見ますと、どうも改善というよりもむしろ改悪であるといった印象を受けるのであります。まず第一に、この案の内容について御説明をいただきたい。
  44. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 保育所の問題につきましては、かねて御承知のようにいろんな意味において関心を持たれ、一面においては非常にその効用を賞賛され、一面においてはまた運営上の問題についていろいろな面からの批判が出ておったことは十分御承知通りでございます。会計検査院でありますとかあるいは大蔵省あるいは行政管理庁等から、費用の徴収でありますとかあるいは児童の措置の問題について、いろいろ批判が出ておったことは十分御承知通りでございます。これらの内容につきましては、厚生省としてはもちろん別の意見を持っている点がこれは多々ございますけれども、それらの点を一応抜きにいたしまして、端的に御質問の点にお答えを申し上げたいと思います。お話のように、保育所の措置が三十二年度二十四億八千万円から三十三年度二十五億三千万円ということで御審議をいただいておる状況でございます。このように金額においては約五千万円増という形になっておりますけれども、内容をごらんいただけば、結局その中で給食費の値上げあるいは期末手当の支給、そういうようなことを行わなければならないことにもなりますし、それからこれらを抜きにいたしますと、金額的にいえば相当やはり前年度よりも減額になっている、こういう実情になっているわけでございます。御承知のように、保育所の運営というのは、結局公けの補助とそれから保護者から徴収いたします保育料と、この二本建で運営をいたしておるわけでございます。従いまして公けの補助がふえれば保護者からの徴収は少くて経営ができるし、公けの補助が少くなれば、その分は保護者からの徴収を増加することによってまかなわなければならない、そういう問題になってくるわけでございます。もちろんこれは保育所にかかります費用の増大と関連がございますので、その費用がかかればかかるほど両方の負担も大きくなる、そういうことになるわけでございます。従いまして実質的に、端的に申し上げれば、三十三年度は三十二年度に比べますというと、実質的な意味では徴収をふやさなければ運営できない、そういうようなことになるわけでございます。大体二割見当は徴収増加をやらなければならない、そういうような内容になることをまず一つ承知を願いたいと思います。  第二次に、徴収の問題でございますが、従来御承知のように徴収の基準というものがございまして、これによって父兄からの徴収をいたしておったわけでございます。これらの点詳細に申し上げれば大へん時間も取りましてどうかと思いますが、なるべく簡略に申し上げたいと思います。この徴収基準は御承知のように六つの表に分れておりまして、これがたとえば東京で申し上げますと、三人世帯で一万六百円の収入がありますというと、保育料として五百円納めてもらう。それから一万二千四百円収入がありまして三人世帯でありますと、八百円を納めてもらう。そういうふうなこまかい表が定めてあるのでございます。これは非常にこまかにできておりますが、この一つの問題は、結局各世帯について収入の調査をやらなければならない。全国の役場の吏員が各世帯について収入の内容調査をやって、それによってこの表に当てはめて金額をきめなければならない、そういうような仕組みになっております。ところが現実にこの収入の調査をやることは非常に困難を伴うのが実情でございまして、従ってたとえば会計検査院の報告等にもありますように、ほとんど行われていない、そこまで言い切れるかどうかということについてはもちろん別問題として、そういうような話も、意見も出ているような状況でございます。従って現実には、これはもう率直に申し上げますと、この徴収基準は今申し上げましたようにかなりきつい基準でございますが、現実にはこれはそのままの形において行われていないのが実情でございます。そういう意味において、予算的に申し上げれば、従来相当これと食い違いが出てきたことはこれは事実でございます。従いまして今後の問題としてこういうふうな収入認定をやっていくという建前でいく以上は、これはなかなかうまくいかない。もっと機械的な基準によって区分をし、その額をきめていく、そういうような考え方を、しなければ、実際問題として実施できない。現実この表を建前にとりまして、このままの形において、少くとも八〇%、九〇%の徹底的な実施をやるということは、これは現実の姿においてはとうてい見込みが立たないような状況でございます。従いましてもっと簡略な、端的ないき方によってこれを実施したい、これが第一の眼目でございます。その意味におきまして、結局その分け方としましては、第一には生活保護を受けておるかどうか。それから第二には税金を——生活保護は受けていないけれども税金は何にも納めていない、これを第二のクラスといたします。第三には、市町村民税は納めておるけれども所得税は納めていない。第四には、所得税を納めておる、こういうような機械的な区分によってやっていくというふうな建前にいたしたいということが第一点でございます。そうしておのおのにつきまして、たとえば生活保護のクラスであれば、これは全部公けの費用で持つ。その上のクラスであれば、それに応じて適当に徴収の額をきめていくというような考え方でいく。  それからもう一つは、今まではこういう、一面においては徴収とそれから一面においては非常に数多くのいわゆる補助交付の基準と申しますか、そういったものがございまして、端的に申し上げれば、約九千の保育所がございますが、その保育所ごとに違った立て方をいたしておると言っても差しつかえないような状況でございます。従って結局金が足るか足らぬかということは、年度末になって精算をしてみなければわからない、出たとこ勝負とまではいきませんけれどもそういったような仕組みになっておったのでございます。従いましていわゆる法律には最低基準を維持するに必要な費用を補助をするというような仕組みになっておりますけれども、その金額というものは、上と下との間には相当な開きがあるのがこれは実情でございます。その結果、ところによっては非常にたくさん要るし、ところによっては非常に少くいくというようなことになっておったのでございます。その点は一つやはり改正すべき点ではないか。今申し上げましたように、たとえば生活保護のクラスをたくさん入れれば、これはよけい国の補助が要る。それからたとえば上の方の所得のたくさんあるクラスをたくさん入れれば、おのずから国の補助は少くいく、そういうふうな仕組みにこれはすべきではないか。そういうふうな、いわば連係と申しますか、形をこれはとるべきだというふうな考え方でございます。そこで結局この補助のやり方としまして、むしろこれをならしまして、今まで非常に補助の基準がばらついておりましたのを集約をいたしまして、子供一人当り、たとえば生活保護のクラスを入れましたならば幾ら、それから所得税を納めておる世帯であれば幾ら、そういうようなきめ方をして、それに応じて子供一人頭幾らの費用がかかり、従って予算を幾ら徴収し幾らを国から補助をする、こういうような仕組みにしなければ、とうてい今後これは実施できないというような状況に考えまして計画を出したのでございます。もちろんこれとても卒然としてこういうふうになってきたわけではございませんで、昨年あるいは一昨年来、種々世上の問題ともなり、これに基いて、保育の関係者あるいは全社協の関係者といろいろ打ち合せをして参りまして、特に三十三年度の予算編成の近まりました昨年の秋以降につきましては、全社協を中心といたしまして、ひんぱんにこの民間の保育所の関係者その他にお集まりをいただきまして研究を遂げてきたわけでございます。それによりましても、大体今私どもが考え、かつ申し上げた方向を指向して、そういうふうな変え方にしてもらいたいという要望が出て参って、もちろんこまかい点についてはいろいろ意見の相違する点はございますけれども、そういうような大体の方向に従いまして私ども事務的に検討しまして、これを進めて参ったような状況でございます。  そこで数字上の問題につきましては今だんだんお話がございましたが、根本的な考え方としましては今申し上げましたように、いわば世帯を四区分に分けまして、これに応じて補助額ないし保育料をきめていくという考え方でございますが、これの具体的な数字につきましては一応私ども既存のデータに基いて計算をいたしまして、この問題は非常に及ぼすところの範囲、影響が大きい問題でもございますし、具体的に十分地方の実情に当てはめてみて、どういうふうな姿になるか、その辺のところの結果もとり、かつまた意見も十分しんしゃくをして、最後数字等も出したいというような考え方で現在目下地方の意見も聴取し、あるいは地方のデータ等も、ところによっては参っておるところもございますが、とりつつある状況でございます。従って関係省との話もまだ終結をいたしていない、折衝途中の問題でございますが、基本的な考え方は今申し上げたようなことでございますけれども、具体的な数字等につきましては、このような状況でございますので、これらを十分検討いたしまして、今後の具体的な筋道を立てて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  45. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 事務の簡素化という点においてはおそらくだれも異議ないと思うのですね、しかし事務を簡素化したために今度は保育所の経営が財政的に成り立たないということになると、これは本末転倒であると思うのです。それで今いろいろお述べになったことで、たとえば四つに分けて、生活保護の適用を受けている人は、これは一文も取らない。あとの段階についていろいろな案のあることは、私も承わっております。たとえば百円、四百五十円、九百円と、そういう三段階で取られていることも承わっていますが、従来までは事務費事業費とを合せて一つの計算をしておられましたですね、それを今度は事務費、それから事業費、まあ事業費の方は八円十銭の給食費とそれから二円五十六銭の、これは運営費というのですか、合計十円六十六銭の二十五日分、約二百五十円ぐらいの事業費というものが算定されますが、事務費の方ですね、事務費の方の計算の基礎になる、たとえば庁費だとか修繕料、あるいは旅費、こういったものはおそらく算定をしておられると思うのですが、そのの内容はどうなっておりますか。
  46. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 御承知のように従来人件費的なものといいましては、俸給とそれから超勤のごくわずかな分、その他旅費でありますとか、修繕費、これは人件費でございませんけれども、各種の修繕費でございますとか、そういったようないろいろな費用が入っておったわけでございます。今後それに期末手当がプラスをされたということでございます。まあ実際問題としましては、俸給の高低が相当ございましたので、それで保育所によって経費のかかり工合が非常に違っておったということが一つの実情であるというふうにいえるのではないかと思います。
  47. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) しかしこれは今の修繕料なども従来は坪三百円程度で算定されていると思うのですね。子供を預る場所ですし、それから保育所の統計を見ましても、私立の保育所が半分くらいある。私立のものの中にはお寺だとか、いろいろな古い建物などを使っているきわめて危険なものが多いと思うのです。ですから普通の学校でもそうですけれども、特に保育の対象になる乳幼児の場合は、修繕料などももっとふやして算定をしておくべきではなかったか。そういうように従来の厚生省の保育所に対する指導が不徹底であったために、この予算の確保も不十分な点があったのではないか。そういうことを非常に憂うるものなんです。たとえば九千の施設に対して従来の経理の状況の調査などおやりになったことあるのですか。
  48. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 修繕費の引き上げの問題につきましては、これは私どもいろいろな機会に要望も承わっておりましたし、従って予算のたびごとにこれの増額を要求しておったような実情でございます。そのほかの人件費のいろいろな費用につきましても、御承知のように私ども非常な努力を傾けてこれが増加を推進して参ってきたのでございます。この点は一つ御了承いただきたいと思います。それから一方指導の点につきましてのお話でございますが、御案内のように保育所が非常に急速に増加をいたしまして、昭和二十三年当時に比べますと、その数においてすでに六倍くらいにもなっているという状況でございます。一方これが指導監督に当る陣容としましては、たとえば児童局についてみますというと、設立当時の三分の二の陣容でやっている、地方も多かれ少なかれこういうかうな状況であるというのが実情でございまして、ここ非常に急速にこれがふえました割合には指導の手が十分届いてなかったということは、これは事実であろうと思うのです。そういう意味におきまして、あるいは徴収の問題とか、あるいは措置児童の問題についていろいろな批判が行われるということも、まあそれに一つ原因があることはいなめないことだと思うのでございます。私どももそういうような実情にかんがみまして、先年来この保育料の徴収の適正化、措置の適正化についてはいわば中央地方全機能をあげて、これが努力をして参ったのでございます。また三十二年度からは、特に全額国庫負担の、このために委託職員を全国に配置をしてやって参っておるのでございますが、その結果もちろんそれ相当の成果は上げてきたつもりでございますけれども、しかし全体としてみればこの徴収の適正化、措置の適正化という問題は、これは私ども機会あるごとに関係者にも申し、あるいはその他の行政関係者にも申しておるのでございますけれども、予期しただけの成果は上らなかったということも事実でございます。そういうようなことでこれが指導監督の適正強化ということについては、今後私ども努めて参りたいと思いますが、一面におきまして、これはこういうところで申し上げるのもいかがかと思うのでございますけれども、その結果が結局費用の面にどういうふうに響いてくるかということになりますというと、従来措置が少ない少ないと言われながらも相当な額というものがそのために現実に支出されておったということは、指導監督の問題とも実は非常に関連のある問題でございまして、むしろ指導監督が行き届いておったならばもっと徴収は強化をされ、措置も従ってもっと厳密になるという面もこれは一面においては考えなければならない問題でございます。それからまた費用の問題につきましても、先ほど申し上げましたように、私ども中央地方を通じて指導に当っているわけでございますが、結局仕組みというものが、取る方につきましてもそれからやる方につきましても、両方てんでんばらばらでございますので、最後の締めくくり、年度が越してしまわなければ一体合っているのか合っていないのかわからないような仕組みに実はなっておったわけでございます。この辺に一つの重大な問題点があるわけでございまして、この辺を今後是正をして参りたいということに考えておる次第でございます。
  49. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 先ほどのお話では、三十三年度に実質的には予算が減る、従って徴収増二割程度を見込まなければならないという御意見ですが、今度この改訂でですね、保育料の父兄から取る徴収の見込みの総額、大体どれくらい国民から保育料として新たに徴収されようとしておるか、どの程度を見込んでおられますか。
  50. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 結局国の費用はこれはきまっておるわけでございまして、これをいかに運営するかという問題、結局これは徴収と費用とのにらみ合せになるわけでございます。従って費用をたくさんかけようと思えばそれだけ結局徴収を強化しなければならない、徴収を低めようと思えばそれだけ費用を削らなければいけない、そういういわばジレンマに立っているような状況でございます。従って私どもとしては、なるべく総体としては現状に変更をきたさないで、いわゆる従来の費用の使い方の立て方というものをくずさないでやっていくということを一つのめどにして、これは考えていかなければならぬと思うのでございます。総体としては、これは推算でございますが、大体徴収すべき金額としては約三十八億を予定をいたしております。
  51. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) それはどれくらいふえますか。
  52. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 約八億ふえます。
  53. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 従来その措置費として国がかなり負担しておりますが、実際のところ国の援護率というのは平均三六%というように聞いておりますが、その幅ですね、たとえば財政の悪いところは五〇%も六〇%も援護率があるし、都会などだというと、ずっと低いところもある、どの程度の幅があるかということを一つ承わりたい。
  54. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 従来の予算の立て方としまして、いわゆる援護率と称するものは三六%、すなわち全体の三六%を公けの費用でまかなう。その場合の八割を国で持つ、そういうふうな仕組みになっておったわけであります。その八割分がすなわち二十四億八千万円、三十二年度で。そういう仕組になっておったのであります。まあ予算はさようでございますけれども、実施の実情としましては、実は相当三六%を上回っておるのが実情でございます。しかもその徴収の点につきましては、各県非常に径庭がございまして、徴収の成績の悪いところは三十何%という県もございますし、徴収の成績のどちらかといえばいいところは六十何%もある、そういうような非常なばらつきがあることは事実でございます。
  55. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 少しこまかい話になりまするが、そうした援護率の中で、厚生省としては運営上の一つの指導方針はもちろん持っておられたことと思いますし、ぞのための最低基準というものもおありだったと思うのです。たとえば現実に保育児三十人について保母は一人は置かなければならない、それから乳児については十人に一人は置かなければならぬという一つの最低基準はあるわけですね。そういう基準の面で、たとえば専任の園長、保母、調理士、小使、こういうふうなものはどの程度置くべきである、それからまたその人の給与は大体どの程度でやるべきである、何かそういうような基準というものは厚生省として示されたことはないのですか。
  56. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 今お話しの最低基準につきましては、最低基準という省令がございまして、その五十三条に職員のことを規定をいたしてございます。そこには「保育所には、保母及び嘱託医を置かなければならない。保母の数は、乳児又は満二才に満たない幼児おおむね十人につき一人以上、満二才以上の幼児おおむね三十人につき一人以上とする。但し、保育所一につき二人を下ることはできない。」、そういうふうに保母の数について規定がございます。その他の職員の問題については、この最低基準には規定はいたしてございません。予算としては、もちろん予算の基礎として交付いたしておったような状況でございます。この保母等の給与の点につきましては、これは実情が先ほど申し上げましたように非常にばらついておりましたので、結局いわゆる最低賃金というようなものは従来きめていなかったわけでございます。
  57. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) これは非常に大事な保育所について厚生省の指導監督がきわめて不十分であったと指摘せざるを得ないのです。ただ承わるというと、昭和二十三年以来膨大にふえてきた、これに対応するだけの人員を厚生省としては定員化することができなかった、そういう点の悩みを担当の局長としてはるる訴えられたので、この点はわれわれとしても今後定員をふやして、この重大な保育所の対策を解決していきたいと思うのです。しかしきょうここに資料としていただいた保育所職員の現員現給を見ますと、全国平均で七千三百七十七円になっております。少くとも保母については、これは各県の保育専門学校を出たり、あるいは検定試験を受けるという非常にはっきりした資格があるので、保母の初任給といったようなものは、これは当然私はきめるべきだと思うのです。この初任給についての厚生省はどういうふうなきめ方をしておられますか。
  58. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) この七千三日七十七円というのは、すべての職員を平均してのものでございまして、保母についてはおのずから多少の違いはありますけれども、大体少しこれよりも上にあるかと思います。保母の給与の最低基準につきましては、実は今まで、きめたものはございません。
  59. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) なかなかどうも措置児六十名を預かるところの保育所について、いかにその人手が足りないといっても、少し僕はルーズだと思いますね。それから今度給食費の七円十銭が八円十銭になりましたが、この今までの変遷を調べてみると、三十一年度まではおやっとそれから昼食の副食代等を含めておったのが、三十二年度からはお昼の副食代に限られるようになってきたのですが、現在このきめられた八円十銭という中には燃料費というのは一体入っておるのですか。
  60. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 今初めの段階で御指摘のありました保母の給与の問題について、実情としては今申し上げましたように、これは非常に低いところとそれから相当な額になっているところ、その間非常にばらついておる状況でございます。従ってそれに応じた補助の出し方をしておりました関係上、いわゆる職員費の補助も非常にところによって、施設によってばらついておった、その結果低いものは低いなりにまあいわば置かれ、高いものは高いなりに置かれておった、これが今までの制度のある意味においては一つの欠陥であったということも、これは言えると思うのでございます。従って児童一人当りの限度についてみますと、従来一月五百円以下のところが相当あるかと思えば、千円以上のところも相当ある、これをひとしく最低基準云々ということで補助をしておったというところにやはり一つの問題点がある、それらを一つ改善をして低いものは——あまり低くてはこれは児童の保育に欠けるところなきを保しがたいので、ある程度上げる。そういうことにして平均化する、平衡化するということによって、いわゆる待遇の問題についても一歩前進をし、補助のやり方においても、一面においては国としてやる場合に一つのこれはまあ公平を期する、そういうような意味も実は今度の改正の一つの重要なポイントになっておるのでございまして、御趣旨の線にはむしろ今度の新しい制度が、いろいろまあほかの御要望はあるにしましても、一歩前進か二歩前進であることは、これは間違いないと、私どもかように存じておるのでございます。  それから第二点の給食費につきましては、燃料費は含んで考えております。
  61. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) これは実際乏しい金でしかもこの重大な保育にかける、しかも年々ふえていくであろう子供にかけるのに、八円十銭の中に燃料費まで入っているということでは、これはやはり非常に私は問題だと思います。大体厚生省で給食費をいろいろな面で組まれますけれども、たとえば国立結核療養所の給食費、これなどは燃料費は入っていないのです。ところが保育所の場合は燃料費は入っているのです。こういうふうな予算の組み方、そうして乏しい予算で保育所の経営が困っているようなやり方、これは私は担当の局長さんとしては、この点はもっと明確に大蔵省に交渉すべきだと思いますが、いかがですか。なるほど事務費の中に光熱費というのがあるのですね、あるけれども、これは給食のための燃料費は含んでいないはずなんです。だから今あなたの言われた説明通りだと思うのですが、そこだけにどうも予算の獲得の仕方がまずいと思うのです、いかがですか。
  62. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) これは保育所の給食は御承知のように、病院、療養所における給食と実際問題として違いまして、お昼の主食を除いたおかずと申しますか、そういった補食でございます。それにしましても、七円十銭にしましても八円十銭にしましても、額が少いことはこれはだれしも認めるところであろうと思います。その関係で従来これが増額については、先ほど来いろいろな修繕費その他の経費と同じように努力をして参ったのでありますが、今年やっと一円という非常にわずかな金額でございますが、増額になったようなわけでございます。
  63. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) どうもわずかなことで大へん満足しておられるのでほんとうにお気の毒にたえない次第なんですが、大事な責任を持つ保母の初任給をきめること、それから保育児に危険のないように修繕費を十分出す、それからまた給食費の中に当然燃料費といったものは分けて、給食費を確保すること、こういうことは、私は厚生省当局のこれからの任務だと思います。なお先ほど来この保育所の問題について今度の改革案は一歩あるいは二歩前進だということでありますが、従来の方式と、それから今度出された厚生省の案の中で——百円、四百五十円、九百円、そういう案ですね、一応そういう皆さんの方のたぶん原案と思われるもの等について比較してみますというと、高知について、今度は六十人、九十人、百二十人というふうに区分されましたが、定員六十人の保育所では、従来は事務費の最高限度は千百九円、それから医療費を加えると千三百八十四円、それに期末手当を四十七円一銭を加えると合計千四百三十一円、六十人の場合には千四百三十一円で経営している。今度は、今度の示された案によると、千二百円になるのです。差し引き二百三十一円足りない。九十人の定員のところでは、途中省略して、従来の方式でいくと千二百二十三円、それが今度の方式になりますと、千八十円で一人百四十三円不足する、百二十人の定員のところでは、従来の方式でやると千八十四円、今度の改革案によると九百八十円、差し引き百四円足りない。じゃ全部足りないかと言いますと、ずっと計算していきますと、ちょうど定員百八十人のところにいきますと、今の計算で従来のものは九百四十六円、今度は九百八十円、つまり三十四円余るわけです。言いかえれば、今度の案で参りますと、百八十人以上の措置児を預かるというと黒字だけれども、そうでないものは小さくなればなるほど一人当り二百円から四百円という負担が、今までと違った赤字が出てくるという事実があるのです。これはさらにもう少し広い範囲で、高知県は御承知通り保育所は一番盛んなところでありますが、高知県の高知市の場合、公立七と私立三十一あります。これを全部トータルを計算いたしますと、現行方式でやると一ヵ月合計三百七十八万八千百三十二円、ところが厚生省の今度の方式でやりますと三百六万六千八百八十円、すなわちこの統計で、こまかいのを省きますが、措置児を四百九十名を持っている愛育会という大きな保育園があります。これは、わずかに増額になるのですが、あとは全部減額、大体一つ一つ平均して、約二万円減額になるのです。そうすると、一ヵ月七十二万何がし減額、年間高知市だけで八百六十五万円、高知県だけで三千万円以上の減額の見込みになるのです。これは、高知県だけなんですよ。これは、非常に私は大きな事実であって、その今までの保育所の経理について、今度の案は一歩なり二歩なり前進であると言われておるけれども、これでは前進にならない。保育所がつぶれていくということなんです。さらに今のは、経営者の側の立場からですが、保護者の、親の面になったらどうかということを、これを計算してみますと、これは東京の、百二十五名の措置児のある保育所の、これは、認定されたのは百七十名ですが、そこで計算してみると、従来は全免の子供が五十五名あった。ところが今度の方式で分類しますと、五十五名がAに三十三、Bに十九、Cに五十七、Dに十六、これは私ども少しおかしいと思うのです。今さら、所得税を払っておって、それを今まで全免だったという事実は、これはおかしいです。ですけれども、父兄の側から言いますと、そういうふうに格づけが変ってくるのです。そうしますと、今まで五十五名が全免であったのが今度はBが十名、Cが十名、Dが二人というふうに変って、この全免五十五名の負担額は七千三百円ふえてくるのです。それでさらに、従来まあ四百円負担であった人、これを実際に当って調べてみると、今度の改革案では、四百五十円に変りますが、つまり四人で五十円ふえますから、二百円増になるわけですね。それから、従来九百三十四円、これはこの保育所の最高限度額でありますが、従来九百三十四円を負担していた五人は、五人とも九百円に減る、百七十円減額になる。これを統計を見ますというと、従来の——大体が措置児ですから、みんな貧乏な、極貧層なんですが、その中でも最低の所得層の子供たちの負担強化されてくる、ふえてくる。そして同じ低所得層であるけれども、まだ比較的歩のいい方の人たちは少し楽になるということは、これは、いよいよ措置をほんとうに要する子供たちが入所しにくくなるということです。これは私は、非常に重大なことだと思うのです。決して今度の改革案というのは、一歩、二歩前進になるかどうか、非常に怪しい。この点について、いかがでございますか。
  64. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 各収容人数に応じました費用の計算、従来との比較についてお話がございましたが、従来、御承知のように、補助の基準というのが、九千保育所がありますというと、九千別々のようなことで、その相違するおもな原因というものは、職員の給与の高低ということでございますので、今お話しのような比較の仕方では、必ずしもその増減の関係というものについて的確な判断は下せないと思いますけれども、しかし、いずれにいたしましても、高知のお話がございましたが、ずっと従来の状況を調べて参りますというと、保育所一ヵ所当り平均どのくらい経費が交付されておったかということについて見ますと、多いところの県につきましては、年額三十四、五万以上になる。少いところにつきましては、十五万あるいは二十万というところもざらにある。そういうふうな状況でございまして、従って相当高く、たくさんの国の費用が行っておったところにつきましては、従来よりもある程度金額が減るという現象になるということになるわけでございます。そういうものに高知県がたまたま該当するということにこれはなるというふうにお考えをいただきたいと思うのでございます。なおこれらの問題につきましては、一番初めに申し上げましたように、地方の具体的な数字ないし意見を聴取して、これに基いてさらに検討する所存にいたしておりますので、今までのいろいろな数字等についてのまあ立ち入った話は、この席上では差しひかえさしていただきたいと思います。  なお、徴収の方の問題につきまして、先ほどいろいろお話がございましたが、一番初めに申し上げましたように、徴収の適正化ということについては、私どももずいぶん努力をして参りましたけれども、本質的に言って、現在の仕組みというものがなかなかむずかしい状況になっておりますので、現在の徴収せられておる姿が一応正しいものとして、それを前提として判断することについては、いろいろこれは問題もあろうと思います。しかし、それらの点につきましても、なお私ども実情に当ってよく調べたいと思います。ただ、低いところが、いわゆるロー・クラスが徴収が強化され、ハイ・クラスがむしろ少くなるということについては多少誤解……前者につきましては、今申し上げましたように、はっきりした基準を設けて徴収する仕組みにいたしております。従って、まあいわば中クラスで、相当低く納めておった人が今度はある程度納めなければならない、こういうふうな現象はある程度起きるんじゃないかと思います。上の方の、たとえば、所得税を納めておった者につきましては、これは、かかりました費用の全額を徴収する仕組みでございますので、従来よりもいわゆる経費が減らない限りにおきましては、従って徴収額も減らない、そういう仕組みになるわけでございまして、九百円という数字をおとりになりましたけれども、これはまあ、いわばおそらく仮定の数字であろうと思います。その辺は、私どもそういうことがないようにして参りたいと思います。
  65. 剱木亨弘

    ○副主査(剱木亨弘君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  66. 剱木亨弘

    ○副主査(剱木亨弘君) 速記を始めて。
  67. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) これは厚生大臣に伺いたいのですが、今検討を加えてきたことで、おおよそ現在厚生省の所管している保育所の実態というものが浮び上ってきたと思うのです。私は、この保育所の重大性にもかかわらず、保育所に対する従来の指導、またその財政的な面の指導が、私は十分でなかったと思います。その点は、おそらく大臣も認められると思う。なお、特に今度の改革案によって、なるほどその基準の低いところのものを上に上げ、また事務を簡素化するという点で、一つのいい考えではあります。あるけれども、同時に、今まで厚生省の指導に従って比較的高い水準を保ってきたところは、今度レベル・ダウンされるわけです。場合によれば、経営が困難になるので、首切りも、人員整理も起るかもしれない。そういうことに対して、厚生大臣としてはどういう処置をとられるか。
  68. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 率直に言って、児童関係の経費というものは、新しい社会のいわゆる観念から、児童憲章に即応して、急速に民衆の自覚と相待って私は発展させたい。しかも、当面の保育所の問題は、地方の要請に応じて、数をふやすということに非常に急速であったのではなかろうか。従いまして、今政府委員との御質疑を通じまして見ますように、きめるべきことがきめてなかったり、また、各個おのおのの発生の沿革があって、地方々々に割合まかしている姿が強かった。そういうふうな点から、いろいろこまかいことに実際に当っての計算をしてみますと、私は、ここら辺で、各般にわたって相当指導の方針を、基準を少くともきっかりきめていくべきじゃなかろうか。新しくふやすということの非常に要請が強いたために、そういう方面がおろそかになっていたということは認めざるを得ません。  これはよけいなことですから、速記から削除していただいてもいいですが、私は、最近娘を保育所にほうり込んだのです。ところが、保育所は、実際から言うと、今のもらっている金ではだめなので、ボランテイアがほんとうに入ってやってくれなければ、やっていけないというのが実態なのではないかと思います。この経費で保育所本来の目的を達成するためには、おのずから。一万近くになってきているのに、二十五億である。それを考えても、さっきおっしゃった給食費なり、その他の乳児に対する手当なりを見たってわかることなのです。ただ、ほんとうにやっているかどうかということよりも、まず収容施設を作って、そして保母さんを置いてという気配が強かったのではないだろうか。それから、措置費につきましては……、と同時に、経営の内容を見たって、今坂本さん自身が高知県の例をおあげになって、たとえば五十五人の例をおあげになりました。そうすると、率直に言って、取るべきものも取ってなかったことも確かなのであります。やはりあまりこまかい措置費については、基準をきめて、しかも実際には励行をしていないということが、会計検査院なりあるいは行政管理庁なりその他に批難された。むしろ実態に即応して、しかも非常に簡明にきめる標準としては、私は、生活保護でありますとか、全然税金を納めていない者、あるいは市民税だけ納めておる者、さらに所得税を納めている者、あるいは双方納めている者というふうな簡明な基準で標準を示すことならそう間違いはないと思いますが、実際に当てはめてみて、一体せっかくこうなってきた保育所が成り立たぬようなことをしては、むしろ充実こそしなければならぬというふうなときに、成り立たぬような状態に持っていっては困る。むしろそういうようならば、新設するよりも、現在あるのを充実するということを重点に置いて物を考えていきたいというふうにも考えております。今、措置費の問題は、率直に言って、大体方向がいいから、現実に当てはめてみる、その上でさらに再検討してみたらいいじゃないか、ということを実は事務当局に話しております。それができましたら、当てはめて実際を見ていただこうと思ったことがあります。あたかもそっくりそのままで物事がきまったような誤解を招いたのではなかろうかというふうに考えますので、新年度においては、さらに検討の結果、適正なものを期したいというふうに考えております。しかし要は、今おっしゃったように、またここで、会計検査院の方でも、無理なことを言うつもりはない、基準をきめておきながら取っていないのだ、だからそれを指摘したのだと言われることも事実であろうと思います。そういう点をかみ合せまして、適正なものをきめて参りたい。三十三年度におきまして、個々のいろいろな問題を今全部再検討しております。ですから、そういう上で適正なものをきめて参りたい、こう考えております。    〔副主査退席、主査着席〕
  69. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連して。逆の角度から見ました場合、保育所にすると国から補助があるからというので、公立の場合は必ずそういうのがあると思うのですが、保育所にして、基準をきめて、何ら負担はしない。実質は、幼稚園と同じような運用をしておる。一方では、ほんとうの保育所が予算が足りないので運営ができない、こういう事態は、僕はかなりあると思う。これを厚生省当局はどういうふうに把握しているのか、行政指導と行政監督をいかように考えているのか、さらには幼稚園は文部省の所管になっているわけであるが、幼稚園と保育所の関連をいかように取り運んだ方がいいと厚生大臣は考えておられるのか。実際末端に行って見ますと、最近町村立で作る場合はみなそうです。厚生省の補助におんぶしようというので、内容は幼稚園と何ら変らない運営をしている、そうして保育所として、県の衛生部を通じて補助金を受けている、かような事態というものは、僕は行政指導によって是正さるべきだと思う。そうして困っている保育所に補助金をやるべきだと思う。そういうものを放置したままで、保育所の予算云々と言っても、主計局にけっとばされますよ。そういう点をどういうふうに把握して、どういう指導をしているのか、または、今のままでいいのか、将来どうするのか、そういう点、違った角度から伺いたいと思います。
  70. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 今お話がございましたように、保育所は幼稚園と違いまして、児童福祉法によって、保護者が労働または疾病等のために子供の看護ができない、そういう保育に欠ける児童を市町村長の行政権限によって入所せしめるというのがその仕組みでございます。従って、どういう児童を保育に欠けるものとして措置をするかということは、市町村長の権限になっているわけでございます。これが、先ほど来お話を申し上げましたように、措置の適正ということについて、私たちが苦慮もし、また指導もして、努力をして参りました点でございます。実情といたしましては、ただいま御指摘のありましたように、客観的に見れば、必ずしもこの保育に欠けると認められないものもある程度入っているということも、私ども率直にこれは認めざるを得ないのでございます。従って、先年来これが適正化について地方を督励をし、また監督を厳重にして、それが指導監督に努めてきたのでございます。その結果、もちろんあまりきびし過ぎるといういろいろな批判もございますけれども、一応これを行政的なルートに乗っけたいというので、私ども努力をして参りました。しかし、今までの制度の建前では、その辺の徹底を期するということがなかなか困難な点もございますので、むしろやはり今度の新しい考え方のように、たとえば、生活保護の世帯ということになれば、これは、相当部分というものは保育に欠ける児童になると思います。これらについては全部公けに見る、それから税金を何も納めていないクラス、いわゆるボーダーライン・クラスも、やはり生活保護のクラスに準じて、保護に欠ける可能性が非常に強いわけでございますし、従って、一面経費負担も非常に困難である、これについては相当大幅な公けの負担をする。半面、上の方の、いわゆる相当家計の豊かな世帯につきましては、これは保育に欠けるケースというものは少いと思いますけれども、しかし、これはないとはいえないので、それについての経費負担というものは、これは、たとえば、所得税を納めているクラスは、全部一つ持ってもらう、そういうような建前にいたすことによって、一面においては今お話の出ましたような措置の適正、いわゆる保育所の幼稚園化というものを防ぐ一つの施策にもなるのじゃないか、そういうふうな感じもいたしておるのであります。今お話のありました点は、これは、保育所の本質問題として非常に重要な問題でございますし、これを今お話のありました線に乗っけて、行政的なルートに乗っけることに一番苦慮をして参りました点でございますので、今後とも気をつけて、運営の万全を期して参りたい思います。
  71. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) いや、私自身も、実は地方へ行きますと、保育所と幼稚園とを区別する観念すらもないというような形がある。しかし、私どもといたしましては、やはり保育所というものは、重点は、何といったって、今法律の趣旨に従って、保育に欠ける者に重点を置くべきであって、ただ、施設その他で許せば、そういう者は入ることを許すにしても、正当にやはり徴収だけははっきりさせるということでなければいけないと思うその点は、はっきりさして参りたい、こう思っております。
  72. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) だんだん保育所の本論にこれから入りたいと思うのですが、ただいま御指摘されている福祉法の三十九条の「保育に欠ける」という考え方ですね、これが私は、昭和二十三年の立法されたときの社会情勢と今ではだいぶ変ってきていると思う。もちろん、変らない面もあります。それから同時に、幼児教育についての考えも、私は相当変ってきていると思う。そういうことの変りの基礎になるための統計を私は実は要求しておったのですが、今までのこういう統計じゃなくて、今後保育所に入ってくるであろう措置児の数はどういうふうな見込みになるか。まず乳幼児の数の変化ですね、それからそういう中の措置児の数の変化、そういう御研究は、もうすでにしてあると思うのです。たしか昭和三十一年から、厚生科学研究費で委託研究をやっておられます「保育に欠ける児童の類型及び比重に関する研究」、こういうものを通して、それからまた、例の低消費水準層の千百十三万の調査を通して、措置児の見通しというものが、統計的に当然これは皆さんの方で押えられていると思う。それについての一つ事実と、皆さんの見通しとを説明して下さい。
  73. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 保育所の措置児につきましては、第一に、「保育に欠ける」とは何であるか、どういう者を「保育に欠ける」というのかと、その辺の問題が根本問題として一つあるわけなのです。従って、これを非常に厳格に解釈すれば、措置児に該当する者が減るし、ゆるく解釈すればふえてくる、そういうような現象になるかと思うのです。しかし、これはやはり非常に個々の場合で違うわけでございますから、常識的にこれを判断せざるを得ないし、もちろんその人その人の立場によって、それぞれの立場から、この辺の解釈については、見解の違いというものはあろうと思いますけれども、常識的にこれは判断していくべきものだと思うのでございます。常識的にと申しますのは、やはり児童福祉法という法律に規定をされ、しかも、これには八割の国庫負担という裏づけがされておるのであります。その辺のところもにらみ合せて判断をしていくべきものだろうと思うのです。  次に、措置児の問題でございますが、全般問題としては、児童の数が、御承知のように、出生数の減少に伴いまして、だんだん減ってくることは、これは事実でございます。一面において、社会経済の状況の変化というものも考えなければなりませんが、同時に、母親なり父親なりの社会的な活動の状況の変化ということもございますし、これは非常に複雑なコースをたどるわけでございますから、従って、にわかにこの措置児の増減というものを推定することは、非常に因雑なことでございます。今後私ども考えておりますのに、A、B、C、D、四つの段階に分けてこれを実施するということになりますと、結局、これの見通しにつきましては、あるいは生活保護における見通しと似たような格好の、すなわち景気の変動というものを相当要素に入れて、それらの振り分けについては考えていく道が開けてくると思うのでございますが、具体的に増減の問題については、ここで申し上げることを差し控えさしていただきたいと思います。
  74. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) どうも児童局は、それくらいのデータはもうつかんでおらなければいかぬと思うのですが、先ほど厚生大臣は、場合によれば保育所の新設はしないで、現状維持のままで内容改善をしよう。ずいぶんそれは、私はいいかげんな考え方だと思う一方においては、どんどんと生活保護の対象者の数が、来年度あたりは現実にふえておる。そうしてこの統計を見ましても、措置児童は三十年度から、五十九万、三十二年度六十万と、少し横ばいの状態です。横ばいの状態だけれども、三十三年度においては、政府の生活保護の人員も、予算もふやしておるところから見れば、当然措置児童もふえるはずです。そのふえるという見込みの中で、人口の減少ということは、これははっきりいつでも調べてみればわかるのですから、保育所をさらにふやさなければいかぬかどうかということは、当然結論が出ていなければいかぬ。それが、厚生省が怠慢をしておるために、労働省あたり、日雇いのために保育所を作ろうと言われた。今年度あたり予算を出して削られてしまいましたが、厚生省と労働省がお互いに競争することはいいのですけれども行政庁としては、私は一本にまとめていくべきだ。厚生省としては、措置児のことだけしか考えておられないようだけれども、これはもちろん、法の建前からいえば当然しかるべきでしょうが、これは、現実の保育所には、措置児童とそうでない人と、平均してどのくらいになりますかわかりませんが、半々ぐらい入っておると思う。そうして保育所というものは、措置児のために、保育に欠ける子供のための保育をするだけじゃなくて、乳幼児の保育所という考え方がかなり強い。どうもこれ以上追及しても、厚生省いささか不勉強だと思うので、文部省の初等教育局長がおいでになっておられますので、文部省は一体、この幼児教育の対策についてどういうふうな考えを持っておられるかということを承わりたい。その前に、各国の保育の事情と、それから幼児教育について、厚生省並びに文部省でまず事実を知っておられる方があるならば、簡単に御説明いただいて、それから、今の文部省の方から説明をいただきたいと思います。
  75. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 私の申し上げ方がはなはだ足りなかったかと思いますが、大体措置費の見込みは、次年度におきまする保育所の増加見込み数に対応して見込む。すなわち措置児も、それに対応して見込むということにいたしております。増加見込み数と申しますのは、結局国の補助金を出す施設費の金額によってきまってくるわけでございます。そのほかに、私立及び市町村立等で、いわゆる自前で作って、保育所として認可してもらいたいと言ってくるのがございます。その数字の三、四百個所は、これらを合計して見込んでおるのでございます。もちろん、全体としては保育所がまだ足りないことは、これは言うまでもないことでございます。先年、保育所に入れなければならない児童がどのくらいあるかということを調査をいたしたのでございます。これは、一応の数字はもちろんそれに基いておりますけれども、調査の仕方でありますとかその他について、これは相当慎重に考えなければならない点も含まれておりますので、直ちにそれを用いて将来の推算をすることが果して適正であるかどうか、これについては、多少いささかの疑問を持っております。一応そういったような考慮はいたしておるのでございますけれども、とにかく全体としては、これは保育所のみならず、児童福祉全般がそうでございますけれども、対象児童数に比べまして非常に少いということでございまして、これが増加については、鋭意努力をしておるような状況でございます。
  76. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 入るべくして入ってない保育所の児童の数を一応言って下さい。
  77. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 先年実施をいたしました調査の結果によりますと、約二十五万人であります。
  78. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) ちょっと坂本さんに申し上げておきますが、今のやつをつぶしてまで新設しなければならぬという考え方はないということのために私申し上げたのでありまして、必要性を軽く考えて申し上げたのではないということだけは御了承願いたいと思います。
  79. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) それでは、最初私がお尋ねしました各国の保育の事情、それから幼児教育の実情、各国の保育の事情については児童局長から、それから、幼児教育の事情については、文部省の初等教育局長から御説明願います。それじゃ、外国の保育の事情について簡単に話して下さい。
  80. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 外国の保育所の実態等についての資料をここに持ち合しておりませんので、詳細に申し上げることはできないのでございますが、御承知のようにこれも児童福祉の立場から、イギリスにいたしましても、あるいは北欧諸国にいたしましても、もちろん日本の保育所に相当するいわゆるデーリー・ナースリーというものが設けられておることは、これは御承知通りでございます。それで、ただこれが運営につきましては、これは日本の児童福祉のやり方と違っておりまして、むしろ向うの方では、経営主体が金額、親から徴収いたしますものを除きましては負担をするというようなことで、国、府県、市町村というふうに、きちんとした段階に応じてその費用を負担をするという制度になっておる所は、私の存じておる限りにおいては見当らないのでございます。それらの人数が、どのくらい入っておるということについては、数字を持ち合せませんので、お答えできないのが残念でございまするが、いずれにいたしましても、やはり日本の保育所と同じような趣旨において保育所的な施設が実施されておることは、御承知通りでございます。
  81. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) お尋ねの、各国の幼児教育の実情でございますが、これは、教育制度が各国まちまちでございますので、一概に申し上げることができませんが、たとえば、英国の場合は、満五才から八才までが大体キンダー・ガーテンで教育しております。あるいはアメリカの場合におきましても、大体最近の傾向としては、義務教育の年令を下げるという方向が世界の共通のように思っております。
  82. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) それで、文部省の日本の幼児教育の対策はどうか。
  83. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 私の方といたしましては、満三才以上の幼児に対しまして、学校教育の一環として、特に就学前教育の万全を期するために、幼稚園教育を奨励しておるわけでございまして、学校教育法の第一条にも規定されておりますので、現在の就学率は、大体二五%程度になっておると思います。
  84. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) もう一ぺん文部省の局長にお伺いしたいのですが、あなたの幼児教育に対する立場から見て、今の厚生省のやっておる保育所における、これは当然、個々の中では幼児教育が行われておりますけれども、保育所についてどういうお考えを持っておられますか。
  85. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 厚生省がおやりになっていらっしゃる保育所は、先ほど高田児童局長からもお話がございましたように、主たる対象は、幼児の保育にこと欠くる者を対象にしていらっしゃるのであります。それからもう一つは、これは、保育所としては、乳幼児が対象になると思います。文部省の幼稚園の教育は、満三才以上の幼児に対してですから、乳児は入っておりません。それからもう一つは、先ほど申しましたように、厚生省が御指導になっていらっしゃいますところの保育所は、保育にこと欠くる、これが中心でございまして、たまたまそうでない方々が入られるわけでございますので、このへんのところは、一そう両省提携いたしまして、幼稚園教育、保育所、それぞれの使命を果すように、十分に連絡を密にして参りたいと思っております。
  86. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 今のような考えでは、日本の子供たちの将来は、非常に憂慮すべきものが多いですね。実際に保育所の実情というものは、保育に欠ける児童の単なる保育の段階じゃないのですよ。もっと大きな段階に私は立ち至っていると思う。そうして先ほど来厚生省の説明を聞くというと、厚生省まことに怠慢であります。実にいいかげんの指導監督をして、そうして手数が足りないからといって、今までの監督もきわめて私は不十分だと思う。その結果、大蔵省や会計検査院に突っ込まれて、欠点を是正させられて、なるほど是正すべき欠点はあるけれども、なおそれを乗りこえて、この保育所を伸ばさなければいけない面が、今日この際、非常な重要性を帯びてきているのです。あなたも言われた通り、最近義務教育の年限が下ってきているということ、たとえば、特に社会主義の国では、ピオニールというような制度は、どんどんと下の方へ下ってきています。そうしてこのことが科学技術振興などと直接結びついているわけです。だから、今厚生省と文部省と手をつないでやろうというような、そんななまぬるいことじゃなくて、厚生省でいいかげんなことをやっているならば、文部省で引き受けますよと、そのくらい強い教育の信念を私は持っていただきたいと思う。もう一ぺんそういう面で、もう少し将来下げようと思っている、義務教育として急には下げられないでしょうけれども、さしあたって保育所について、その教科の内容とか、あるいは教育の指導とか、そういう面について、具体的にどうされるか、御意見承わりたい。
  87. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 先ほど来お尋ねの義務教育の年令低下の問題ですが、私どもは、今急に年令を低下するということは考えておりませんが、将来の方向としては、少くとも満五才程度にこれは下げるべきではないかと、私どもも、この点は将来検討したいと考えております。なお、幼稚園は、先ほど申しましたように、就学前の教育でございますので、小学校の教育の目標なり目的というものと十分連関を持ちながら教育するところに、幼稚園教育の意義と目的があるのでございますので、小学校との関連を十分とった内容にいたしたいと考えております。
  88. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 幼稚園教育の問題について、これは、きょうは時間もありませんから、また改めてお伺いいたすことにして、保育所の問題の当面の最後の結論について、大臣に承わりたい。それは、今日保育所の重要性が昔よりもずっと高くなったこと、さらに、八割といいますけれども、援護率三六%の八割ですから、これはきわめて不十分だと思うのです。しかし、とにかく国が認定するところの保育所で、国が責任を負って措置児童を保育していこうという、こういう建前で、保母なども、お嬢さんも保母さんにしておられるそうですが、ちゃんと一つの資格を与えて、そういう事情ならば、私は、この保育所の職員給与国庫負担法と申しますか、もっと積極的に保育所に対する国の責任を明らかにする意味合いで、保育所の職員給与国庫負担法といった法律を制定して、この際すっきりしたらどうか、いかがでございますか。
  89. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 私は、保育所というものが新しいやっぱり国家を作り上げていく基本観念から来ていると思います。ことに、乳幼児時代に対して国が責任を負うことは、将来の民族形成の上から非常に大切なことで、また、個人の人権を尊重するという意味からも、ここに重点が注がれることは当然である。それがただ、率直に言えば、坂本さんと矢嶋さんのお話になったように、そういう基本的観念に立って、そしてしっかりした基礎の上にでき上っていくより先に、地方々々の実情に応じて異常に発達してきた。現に保育所の、最初坂本さんのお話にもあったように、予算がどうだというと、大へんな問題になる。この際にでも、新しく保育所の充実をはからなければならない。給食費も保母さんの手当も無視されているというふうな点から、できるだけ私は解決しようと思いますが、将来今おっしゃったような点まで発展するのは当然じゃないかというふうに考えております。保育所の問題については、なお検討すべき問題が新しい観念から私はたくさんあると思う。今後その確立に努力いたしたい、こう思っております。
  90. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連して、私も最後に伺っておきたいのですが、文部省もおられるから、幼児教育ですね、これは、実情は、戦後急に児童がふえたときに、ともかくあまり能がなくてもうけるのは、幼稚園を作るのに限るということで、お寺の坊さんが盛んにお堂を利用して幼稚園開いて、そうして保育所に太刀打ちしながらもうけていったわけですね。産児制限がきいてきて、少くなったら、最近はその方で減るのと、保育所へ食われるので、戦後タケノコのようにできた幼稚園は、今やよろめいている格好なんですね。こういう事態だから、あなたの方で幼稚園の設置基準なんか設けたのだろうが、その点は了としますけれども、先進国に比べて、日本の幼児教育というものはお話にならぬですよ。大体子供を食いものにするような気持で、幼稚園を作るということそれ自体が問題だと思うのですよ。事実そうなんだから、最近よろめいている姿なんですね。これは、厚生省と文部省と協議して云々ということなんですが、伺いたい点は、今のように、先進国に見られるように、幼児教育という立場から幼稚園は、年令を下げなくても、今の年令でも充実していく。保育所は、先ほど説明がありましたが、社会保障政策的な立場から、保育所として二本立で充実していくのか、それとも、さらに一次限高い立場から幼児を扱うという立場から、保育所と幼稚園というものを何らかの形で一本化して、一つの社会の動向として、国策として推し進めていくような方向に進めようとするのか、そういう基本的な方針というものを、厚生省においても、文部省においても、要するに、内閣においてしっかりしたものを持ってスタートしていかなければならぬと思う。でなければならぬと思う。でなければ、今のわが国の保育所の実情にしても、それから、幼稚園を主とする幼児教育にしても、確たるものがないと思う。従って、それに対する見解をまず国務大臣としての堀木さんに伺って、そして初中局長に伺いたい。
  91. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 実は、驚くべきことは、保育所をつかまえて、幼稚園じゃないかという人がある。そういう点が、社会的にそれくらい混淆した観念があると同時に、その根底には乳幼児から始まって、子供に対する国家の責任というものがほんとうにまだできていないという状況もあったのじゃなかろうかと思います。私は、今おっしゃったように、ただ観念的に、保育に欠けるもの、あるいは幼稚園の法律によりますと、保育と単純に書いてあります。そういう点について、幼稚園と保育所の両方の使命をはっきりさせながら、乳幼児から始まって学令までの間に、国家がどういうふうにしていくかという方針をはっきり立てる必要は、私は十分認めております。
  92. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 現在の法体系のもとにおきましても、この点は、私どもはある程度はっきりしておるのではないかと思うのです。と申しますのは、文部省で行なっております幼稚園は、学校教育の一環として、特に小学校との目的、目標を十分に考慮しながら、就学前教育の実をはかっておるわけでございます。厚生省でおやりになっていらっしゃる保育所は、先ほどからお話がございましたように、保育に欠ける幼児を中心に、また乳児を中心におやりになるのでありまして、その点、目的の上からは、私どもはっきりしておると思うのであります。ただ、実際の運用の面において、往々混淆しておる面もありますので、この点は、両省十分協議いたしまして、それぞれその目的を果すように、今後十分な指導をして参りたいと考えております。
  93. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、幼児教育の面で幼稚園をやっておるということはわかり切っておりますが、そこで、厚生大臣に伺いたいのですが、保育に欠ける子供には、幼児教育は要らないのですか。この子供たちも、将来はやはり学校に上るのですが、この保育に欠ける子供たちにこそ、やはり幼児教育が必要になってくるのではないですか。小さいときからすでに差別的な扱いを受けておる。こういう点について、大臣はどういうふうにお考えになりますか。  さらに続いてお伺いいたしますが、保育に欠ける子供で、措置費が非常に厳格になってきたために、入りたくても入れない子供がたくさんある。今まで行ったけれども、お母さんがこれだけ収入があるから金を入れろと、とても入れられない、やむを得ずやめざるを得ないかわいそうな子供が随所に見られておりますが、これらに対して、どういうふうにお考えになりますか。  さらに、基準がきびしいために、基準に沿わないところで、もぐりといいましょうか、認可を受けない保育所が雨後のタケノコのように各所に出ておりますが、これらは将来、今必要なだけの保育所ができないのだから、あなた方がやり得ないのだから、従って、二年なら二年、三年なら三年のうちに基準に達するようにというようなことでも指導して、これを育成していくというようなお考えはないのか。この間、ある所で聞きましたら、基準に合ってやっている保育所が、そういう人たちのために非常にやりにくいと、かえって認可を受けない方がこの状態ならばいいじゃないかというような議まで寄り寄り言われておるということでございますが、これらに対してどういうお考えを持たれるか。  それから、保育所の措置費の徴収状況でございますが、十五段階もあって不便だから、これを改正するということは、総括質問でも御答弁いただいておるわけです。けれども、検討するだの、考慮するだのということでは納得がいきませんので、いつごろこれが明確にされるものかということもあわせて伺います。
  94. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) さっき文部省の方から、それはもう目的ははっきりしておるという、そういう言い方もあると思いますが、対象になる人間、年令層も、違うところと一緒のところとがある。私どもとしては、やはりこれについて、もう少し的確に、国家から見て、どうしていくかという問題がきまってくべきものだというので、これは、文部大臣と私、もう少し構想を練ってみたいと思っておるところであります。  それから第二段は、措置費の問題が、さっき坂本さんにも申し上げたのですが、実際今は、ごらん願っても、現在の基準というものは、(藤原道子君「ばかばかしいですよ」と述ぶ)ばかばかしい、ばかばかしいとあなたがおっしゃるから、私もそれに同意しちゃったのですが、(笑声)作ったやつがばかばかしいと言っては申しわけないので、もっと簡明な、しかも、実情に合った方法というものでもって考えらるべきである。ですから、私は、措置費の基準は直したいと思います。しかも、そういうふうにこまかくきめながら、実際の運用はどうなっているかというと、結局乱れておって、地方々々によって相当実情を異にしている。また、保育所々々々によって、実情を異にしているという状況が行政管理庁その他から指摘されている。そういうふうな点は、直して参りたいと思います。今現に一つの案を現場に示して、それを批判してもらっているわけであります。これは簡明にして、これでやるのだということは、先ほど坂本さんからお話のあるように、現在の保育所が成り立たないような状況になっては大へんなのでございますから、具体的には、私は、現在どういうふうに当てはめてどうなりますかということを諮問して、そしてその結果を得たら、できるだけ早く、新年度にでも間に合せたいというのが私どもの考え方であります。しかし、非常に問題はたくさんあるようであります。現実には、そういう点についてできるだけ考慮をいたしたい。私どもとしては、新年度を目標にいたしたいが、しかし、それかといって、拙速でもって、目標はそこにおきますが、現実に保育所が倒れるような状況ということはできるだけ避けなければならぬ。それから、もぐりの保育所というのは、これはどういう保育所か存じませんが、よく調べますが、要するに、こういう面の指導監督と申しますか、率直に申して、国家意識からスタートした適正な指導ですね。新らしい理念に基いた、新らしい指導というものをこれから徹底さして参らなければならぬ。そうすれば、もぐりの方がいいと——ともかくも国家の補助率というものは、現在の補助率からいえば、これは非常に大きな、八割というものでありますから、この補助率というものは最高補助率だ、それすらもらわないでやっていく方がいいのだというものはないようにいたしたい、こう考えております。
  95. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 最後にそれでは締めくくりに、もう一言御質問いたします。全部イエスという御返事をいただけるつもりです。一つは、保育所は目下やはりふやさなければならないということ、それから一つは、今度の措置によって、経営困難のためにつぶすというようなことは絶対にしない、三番目に、せっかく期末手当〇・五、一億二千五百万円、これは直接手に渡るように措置をする、この三つ、多分イエスという返事がいただけると思いますが、それで終ります。
  96. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 新しくは、現に予算に計上いたしております。それから、既設保育所も、今度は相当大幅に出しております。ですから、ふやして参ります。イエスです。第二段の問題は、つぶすことはいたしませんが、はなはだしく不穏当なところがあれば、結果的には相当現実より重いものができるだろう。しかし、経営については、私どもはつぶすつもりはありません。第三段は、これは出します。これは、出さないなんて、坂本さん、そんなところまで疑われては困ります。
  97. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) では、私は保育は終ります。
  98. 横山フク

    横山フク君 公衆衛生局長、大臣もいらしていただきたい。大蔵省の厚生省関係の予算の人もいらして下さい。  まず伺いますことは、この間予算委員会で、人口問題の御質問があったし、また、ある大学教授は、やがて小学校は養老院に転化するだろうというお話があったのであります。その問題はあとにいたしまして、厚生省人口問題研究所で発表している人口の見通しですね。これで見ますと、千人に対して七人というようなところが出てくるのですね。昭和八十年ぐらいになりますか。しかし、その七人というのは、どこから計算されて七人——産児制限等を百年以上前から推進しているヨーロッパの国々を見ましても、現在最低にあるところでさえも千人に十五人というのに、日本では七人というところにいく。これはどういう観点からそういう見通しになるのですか。経済計画や何か推進するのでも、この問題が基本線になっておる。それが七人という形ですと、非常にいろいろな将来の計画にズレがくると思うのですが、これはどういうところから来たのか、教えていただきたい。非常にずさんだと思うですね。それから、ここでいただいたんでは、死亡率にしても、三十二年は、同じこの冊子の中で、一つは、千人でもって八・三になっているのです。一つの方は、その年には七・八四になっておる。千人で七・八四と八・三では、非常にズレがあるんですね。これを将来千人に対して年間幾つに置くかということは、一年の狂いは二年、三年累加いたしまして、相当の狂いがくるのですね。そうして、昭和五十年において人口の構造図はこうなる、そのための経済はどうするかなんということは、根本的に私は狂いがくると思うのですが、その点に対して、どういう考えでこの線をお出しになったのか、それを最初に承わりたいと思います。
  99. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 実は、私もその統計は見ておるのでありますが、詳しく存じませんので、お必要がございましたら、後刻申し上げたいと思います。ただ、率直に言って、昭和八十年を予想することが果していいのか悪いのか自体に疑問を持っておるのであります。それをごらん願っても、昭和五十年ぐらいまでは、相当たしかふえる状況になっておると思います。五十年ぐらいから、相当人口増加工合が減って参るというふうに私は考えておりますが、ともかくも非常に先のことでございまして、私自身も、それについて責任ある御答弁はできかねるような状況でございます。
  100. 横山フク

    横山フク君 それは、私は昭和八十年と申し上げましたけれども、これは、八十年を見ませんでも、四十年、五十年がすでに減っているんです。しかし、ヨーロッパで、百年も前に人口の制限、産児制限が行われたフランス、あるいは北欧の諸国におきましても、これよりも減ってないですね。七十年、八十年でなくて、昭和五十年がすでに非常な減り方になっておる。これは、八十年先のことを考えるということは、非常に遠い将来だという大臣のお話はわかるのです。しかし、八十年を考えぬでも、六十年を考えても、三十年後なんです。三十年後ぐらいは少くともお考えになって、そうして現実に、わが国の場合に、今度人口に対しての制限をゆるめよう、そうして人口の手直しをしようというような意見がぼつぼつ出るに至っては……、この問題の基本となるところの千人でもっての増加率をいかに置くべきかということは、根本問題だと思うのです。それだけに、私はここで伺うのでございます。しかし、今ここでもらったので、不意打ちで大へんお気の毒だと思います。ですから、この問題はやめます。しかし、こういった人口問題を、少くとも国の予算で人口問題の研究所を作っておるからにおいては、八十年をそろばんに置かない、置かないならば、こういう表をお出しにならなければいいです。お出しになる限りにおいては、私は、根拠のあるところを、千人に対して何人という形を出していただかないと、私たちいろいろの観点から将来を推定する場合において誤まりをきたしますのでこの点について御考究を願いたいと思うわけです。  そうして、次に私が承わりたいことは、その人口の増加率の非常に減っていく、ただいまからこの問題に対して、人口の制限等に対して考えなければならぬ、こういう御意見がぼつぼつ出ておることはわかります。ところが、この問題で家族計画あるいは人工中絶、断種という問題がありますが、大体大臣あるいは山口局長の御答弁になったことはいい御答弁だったと思うのでございますけれども、家族計画をそのために差しひかえるというべき問題ではない。その前に断種の問題を考えるべきじゃないか。断種が現在において母体保護の形で四万というのは非常に大きな数、かくて、十年の間にかつての百人くらいが四万になる。それが母体保護という形で進むべき問題ではないと思う。人口問題からきたなら別でございますが、母体保護からきたならこれは別で、中絶においても同様の形が言えることも、中絶なり断種なりに対してのある規制を加えるという段階があったとしても、家族計画に対しては規制を加える段階にはまだ至っていないと思いますけれども、この問題について大臣はいかがお考えになるでしょうか。
  101. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 私は、家族計画つまり現在でもなお妊娠中絶によるケースというものは非常に多いと考えられます。それから国民の一人々々が自分の経済能力、子供に対する責任、こういうような面から考えますと、家族計画はやはり推進することがいいのであるというふうに考えまして、今後も家族計画については適正な指導を加えて参りたい。こう考えておるような次第でございます。
  102. 横山フク

    横山フク君 家族計画を推進していきます場合には、当然知識人は人工中絶なり断種なり、あるいは家族計画は人の指示を受けないで推進して参りますし、むしろ行き過ぎるぐらいの形が現在すでに出ていると思います。であって、逆淘汰という形も懸念されます。その場合、家族計画、受胎調節を推進するのは、低所得者あるいは生活保護階級だと思う。これは法の保護あるいは予算的裏づけというものがなくては推進できないと思うのでございます。ところが、この問題において予算が余ったというような形は、補助率が低いために、現在地方ではまだそういう点に対してのよき良識が芽ばえていないために、予算が完全に消化されないと思うのでございますけれども、この面において補助率を将来においてお変えになるというお気持はおありですか。
  103. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 率直に申して、国でやりたいことはたくさんあるのでありますが、この問題をもう少し現状よりも、私は、われわれ自身が積極的に国家において考えていくべきものであろうということは考えております。仰せの通り、どこの国の実例を見ましても、結局問題は、先ほども自分の経済能力と見合せてと申し上げたのも、あまり特定の階層を支持することを遠慮したのでありますが、率直に言って知識階級は自分でそういう点について自分自身を守る考え方が強い。一方においてそうでない階層にふえる傾向がある。どうしてもそういう点から見ますると、よほど考えていかなければいけないものがある。国家全体として考えた場合にも、それが将来、健全な民族、りっぱな民族を作り上げるように、また、国家の財政計画から見ましても、その点はもっと考えていいのじゃないか、こういうふうに考えております。
  104. 横山フク

    横山フク君 その家族計画を推進する場合に、いわゆる低所得者あるいは生活保護階級を指導する場合には、日本段階には実地指導員が活躍する以外にないと思いますが、実地指導員においては百人を指導して千円というのが今度の予算だと思います。百人指導して千円ということになりますと、一人を指導して十円という単価になるのですが、これはどういうお考えから一人が十円なのか、現在の電車賃が幾らになっておるか、大臣、大体この予算は二千円としても一人指導して二十円ですから、これは十円単位の電車賃しかならぬわけです。都電だったら二十五円で、足りぬわけです。二十円でも足りぬものを十円に減らされたのは、これは大蔵省の査定によるということでありますが、大蔵省においても一人単価十円というのはどういうところから出たのですか、お教えいただきたいと思うのです。現在大蔵省の印刷局で指導員が活躍されております場合に、その印刷局では一人の指導員に一回二百円の指導料を払っている。大蔵省の印刷局で二百円払っておりながら、大蔵省が生活保護者や低額所得者に対しては一回十円が妥当だというのは、どういうそろばんからお出しになったのか、ここで御説明願たいと思います。
  105. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 大蔵省への御尋ねでございますが、大蔵省当局から後ほどお答えがあるかと思いますが、指導料に対する国庫補助ということを、最初この家族計画を普及させるという際には、この実地指導料というようなものは、いわゆる受益者負担というふうな考えで進みたいということで、最初国の予算には計上されておらなかったのでございますが、しかし、実際経済的に非常に困っておられる方々が、自分から指導料を出して指導を受けるというようなことがなかなかむずかしいというので、どうしても公けの費用でこれを見なければならないというような考えが強くなって参りましたので、この指導料を予算に計上して運用していくということになったことになったのでございまして、最初は横山先生も御存じかと存じますが、月額五百円というようなことで始めました。それが月額千円、三十二年度から増額されたのでございます。さらにこれを増加していかなければならないということは、私ども考えているわけでございまして、それならば、その月額二千円なら二千円という単価の基礎はどこににあるかということが、先ほどの御質問にからんで出てくるかと思うのでございますが、これは別に単価をどういうことで積算したということでなしに、百人受け持っていただいて月額大体千円あるいは二千円、というようなことでこの指導に当っていただきたいという考えで現在進んでおるわけでございまして、私ども率直に考えまして、現在、百人受け持っていただいて月額千円というのは、非常に僅少の額であるということは承知いたしておりますので、将来はその金額の増額について続けてやはり努力していきたい、そういうふうに考えております。
  106. 横山フク

    横山フク君 今のお話ですけれども、月額五百円が千円になったというお話、ところが五百円が千円になったときには、一人当りが、五十人が百人になったのです。ですから、月額五百円が千円になったということは、決して単価の値上げにはなっていない。でありまして、今度の千円が二千円になるときに初めて単価の値上げになる。しかも百人で千円ということですから、もしこれが七十人という場合でしたらその起算はもとに戻して、千円百人の比率をとつて、七十人なりに対してのこまかい計算で割り出された報酬を受けている。結局一人指導して十円ということは、昔の五百円のときも現在も変りないわけです。決して増額されていない。これを大蔵省はそのまま認めておられるけれども、私はこの百人千円、一人十円、電車賃にもならないし、一人を指導するためにどれだけの時間がかかるかおわかりにならぬかと思うけれども、知識層のような指導する必要のない人に対しては、これは時間かかりません。しかし低所得者、生活保護り階級を指導する場合には、指導するのに一時間から二時間もかからなければならない。そして一回では済まないであくる日も三時間くらい行く。しかもあくる日行ってもいない。夜仕事のあとで行く。遠くですと、部落へ行くときにはばらばらに行かなければならぬ。そういう形で一人十円頭で、あるいは二十円で一日つぶれるという形が再三出てくる。その実情をもっても大蔵省が、予算が余っている全額の七千万円の中で、内部措置ができる形にありながら、なおかつ百人で千円ということを内示されて、そしてこちらへ回されたということを聞いて私は非常に解せない。お金持の皆さん方だってもちろんでしょうけれども、皆さん方の気持から割り出しても、一人頭二時間も三時間もかかって十円だ、これが妥当だといって査定されたところの大蔵省の方々に、一つどういう考えでなさったのか。この昔の十円を考えてなさったのか、今日の十円でなさったのか。私どものいただくのは今日の十円なんです。それを伺いたいと思うのでございます。大蔵省の御答弁を願います。
  107. 鳩山威一郎

    説明員鳩山威一郎君) おくれて参りまして……。ただいまお伺いしたのでございますが、どうも問題は一人当り十円にしか当らなくて、何もできないというお話かと存じますが、私どもとしては、いろいろ皆さん大ぜいお集まりになって指導するというような場合には、指導を受けた者に一人当りどのくらい実費がかかるかということは、あるいは電車賃にも足りない場合があるかもしれませんが、そういうつもりで積算はされておりませんので、そういった指導をするのについて、ある程度の予算上そういう計算をしておるというのでございまして、予算を実際消化いたします場合に、こまかく一人当り幾らというようなことで、おそらくこれは公衆衛生局の方からお話があったと思いますが、そういう厳密な意味で単価をきめてあるということではない。こう存じております。それは予算の積算上一応そういうことを想定して組み立ててある、というふうに御了解願いたいと思います。
  108. 横山フク

    横山フク君 今の大蔵省の御答弁おかしいですよ。この百人千円というのは集団指導じゃないのです。個別指導なんです。一人々々の指導なんです。ですから一人の所に行った場合には一人であって、これは違いない。そこに現実に何人いて、その自動車賃、電車賃はどうなんだとおっしゃるかもしれませんけれども、指導するのには電車賃が要るのです。五人そこに一緒にいたって、大蔵省の主計官はお子さんお生みになったかどうか知らぬけれども、こういう五人並べておいて指導することができるかどうか、これは常識でおわかりになるわけです。一人一人個別でお宅へあがって指導するのです。その場合に一人十円なんです。一回十円、一回じゃないのですよ、一件十円で三回かかるのです。どうしても三回お教えする。それが妥当であるかどうかあくる日見なければならぬ。それからのち一週間か十日後にそのやり方をしているかどうか、ここまで見なければそれが実地にできない。低所得者、ボーダー・ライン層あるいは生活保護層なんです。そういうことを教えないで済む人はけっこうお金持になっているのです。問題は、私たちお金持を指導しておりません。おおむね困窮者、ボーダー・ライン、この人たちにはどんなに簡単に教えてもわからない。近所の手前、はばかる。そこで夜こそこそっと二時間、三時間行ってたった十円なんです。実際の計算の基礎が不明確だとおっしゃるのは私にはわからない。実地指導なんですよ。集団指導でない。個別指導なんです。そこに問題があるのです。
  109. 山口正義

    政府委員(山口正義君) この指導料は横山先生御指摘のように、実地指導料でございますが、私ども一応積算の基礎といたしましたのは、実地指導を要する人が二十七万六千人いるといううことで、そうしてそれを二人の助産婦さんが百人受け持っていただくという積算基礎でやっているわけでございます。そしてその一人の助産婦さんが百人受け持っていただいて、月額千円でございますから、年に一万二千円ということになるわけでございまして、その一人の方について年に何回指導していただくかということは、そのけース、ケースによっていろいろ違うかと思うのでありますが、必ずしも横山先生のおっしゃいますように、一回十円というようなことになりますかどうか、それはその指導のやり方によっていろいろ変ってくると思うのでございます。一応一人の方が年に百人引き受けていただいて、そして助産婦さん、指導員の方に月額千円、年一万二千円というような計算の仕方をしております。
  110. 横山フク

    横山フク君 横山の言う線と同じかどうかわからないとおっしゃるが、局長、おわかりにならぬのですか。実際問題といたしまして一人で百人やるのだから年額一万二千円。そうして百人について一年間だから、一ヵ月に八人ということであればいいわけです。ところが指導員が一回行って指導すればそれでいいというものではありません。行った日にその人がいなければあくる日またゼリーとペッサリーを持って配りに行かなければならない。そのときにその後の様子を聞かなければならない。だからのべつに百パーセントにやらなければならない。もしそのときに行って指導してわかったからそれでいいということで、さようならしてその後そこへ行かなければ八人で一人あたま百円近いものになります。それだったら指導したってそれはだめです。もとに戻ってくる。病気ならそれで治ったということになるが、これは永久持続で繰り返すのです。そうなった場合にこれは結局一回十円という以外計算のしようがない。それはお話のように毎回一時間、二時間かかるとはいわない。ある場合には三十分で済むかもしれない。あるいは十円で済むかもしれない。しかし毎回々々、毎月毎月繰り返す努力をしていかなければならぬ。一ぺんでも怠ってそのとき妊娠したらどうなるか。そうなれば、お前の指導の熱意が足りないからそうなるのだとしかられる。そこまで責任をもつということになると効果判定ということになってくる。百パーセントの効果を求めようとすれば毎月行かなければならぬ。そのときの時間が一時間かかるか、二時間かかるか、三十分かかるかわかりませんが、また同時にこういう品物上、その人がいない場合、これをちょっと渡しておいてくれといっては片づけられない。お子さんに、お母さんが来たら、これを渡して下さいといって渡して帰ってくるわけにいかない。やはり奥さんがいるときに行かなければならぬ。行って留守だったらまた行かなければならぬ。結局は何回か行かなければならぬ。一件十円ということには変りはない。私はこれは非常に不合理だと思うのです。まあ最初のうちは初めてできた問題だから、国の方でもそれに対しての認識の足らないのも無理ないと思う。助産婦といったってこれには保健婦さんも看護婦さんも入っておる。これを指導員の人にまかせて、仕事の公共性を考えてこれはしなさい、そのかわり一面において有識者を指導してそれでプラスマイナス差っ引いて奉仕しなさい、こういうのですね。こういう指導員だけどうして奉仕をしなければならないのでしょうか。なぜ予算がありながら相変らず千円でやれ、二千円だって足りないのに千円ならなお足りないわけです。国にお金がないなら私どもは泣きます。国にあるじゃないですか、残っておるじゃないですか。それをなぜ切らなければならぬかということをここで承わりたい。どういうわけでしょう。それを一つ伺っておきます。
  111. 山口正義

    政府委員(山口正義君) ただいま横山先生から予算が余っているというお言葉がございましたが、先ほど横山先生からお触れになりましたが、この仕事が新しく、ことに生活貧窮者に対するいろいろな施策が新しく発足いたしておりますので、一方におきましてはまだ地方で十分理解が行き届いていない、地方の行政当局あるいは県当局の方にそれほど行き届いていないという点もございます。また一方におきましては新規事業でございますので、財政の関係でなかなか予算が組まれにくいというようなことで、不用額がここ一両年相当出たのでありまして、この点は指導が十分でないという点まことに遺憾に存じておりますが、そういう点からして、先ほどお触れになりました地方財政ともにらみ合せて、国庫補助率を引き上げるということも考えたのでございますが、今年は地方交付税率の引き上げもございまして、全般的な問題として見送ったわけでございますが、予算が余っているのにこれに回されないという意味ではございせんので、予算が余っておりますのは、そういうことでせっかく予算化いたしましても、現在地方で十分それを消化し切れないというのがまことに遺憾ながら実情でございます。それはその面で別に解決していかなければならないのじゃないか、そういうふうに考えております。
  112. 横山フク

    横山フク君 新規事業とおっしゃいますけれども、これはもう四年もたっておるのです。新規事業が四年たったのなら、古い事業というのは何年たったら古い事業と言えるのでしょうか。四年たったらもう大がいレールに乗っていいと思うのです。それが一つと、それから私は予算が余っているからこちらへ回せというのではなくて、総額七千万円で今年はまた消化し切れぬと思うのです。全額は七千万円だけれども、実際に一件十円で泣かせるというのでは、全体の家族計画としては七千万円だけれども、指導料としては増額するということにあんばいができていいはずだと思うのです。これは今の機構であったら今年も消化し切れないかもしれぬと思う。問題はあるいは市町村に流したら、今度交付税交付金が一・五%ふえたからこれで市町村の方が消化し切れる。し切っただけでも私たちの対象はよけい多くなるからよけい泣くのです。実際問題からいうと結局働くのがよけいになる。一件十円の単価はいつになったってこれは変らない。すでから、この十円の単価をどうなさるかという問題です。今年度においても私は内部的にやりくりしてできると思う。というのは、二百五十円のが内部で五百円に変ったときがあったのですから、今度も、内部操作でなったように、千円が二千円になる余地があると思うのです。それができるかできないかを伺いたいのです。
  113. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 最初の新規事業、四年もたっているのを新規事業と言うのではおかしいじゃないか。この仕事は昭和二十六年から始めていますので、決して新規事業ではございませんが、予算として組みましたのは三十一年からでございますので、そういう意味では比較的新しいということを申し上げたのでございます。  ただいま御指摘の指導料の点は、一応私どもの方で交付基準というものを定めて、補助をしていくというような考えでやっております。この指導料が、過去の問題でございますが、正式に予算化されておりませんときに、保健所の嘱託費を使って、実地指導に当られる方々に、いろいろ謝礼を出したことがあることは御指摘の通りでございます。そういうときも大蔵当局と十分打ち合せて処していたわけでございますが、一応私どもの方では現在交付基準を考えておりますが、ここではっきりどういたしますということを今三十三年度の分についてまだ申し上げられません。御指摘の点十分検討して参りたいと思います。
  114. 横山フク

    横山フク君 大臣いかがお考え下さるのでしょうか。つまりこれは内部操作として大蔵省と折衝して、総額においては変りないけれども、内部的なこの点に対してもう一ぺん考えてみようという御意思があるかどうか。
  115. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 横山さんのおっしゃる通りだと思うのですが、率直に言えば、これは私は割合に熱心なんですが、その今おっしゃる通りに千円が二千円でも少いことは確かなんです。それからまあここで大蔵省はどう考えるのか知りませんが、大蔵大臣とも話してみなければならない。また単純な金計算からいっても、露骨に言えば大蔵省が金計算が上手だったら、この金は惜しむべきじゃないのです。しかし私はこの問題を金計算だけでは考えておりません。率直に言えば、基本的なものは、金額のいかんにかかわらず、実際いい子供を生んで、そしてそれがみんな大きくなることを希望することが国家社会としていいことだという観点には立っておりますが、単純な金計算でも、指導が活発にいく方がいいのだと思います。これは今横山さんのおっしゃるようなことは、できるだけ御希望に沿うような努力はしなければいかぬということだけは確かだと、こう思っております。幾らにするといったことは、今ここではちょっとかんべんしていただきたいと思います。
  116. 横山フク

    横山フク君 それはごかんべん申し上げますが、ただしこの席で御発言になった言葉に対して十分責任を持っていただきたいと思います。  なお大蔵省の方にお尋ねいたしますけれども、今堀木大臣のおっしゃった、金計算が上手ならということはおわかりいただいたと思いますが、大蔵省の印刷局においては一件二百円の指導料を払ってもなおかつやるというのは、この問題を推進していけば、指導員に対して、たとえば石川島造船所にしろ、労組にしても、使用者側にしても、両方が五百円という旅費を払って七百円、一件二百円というような形にまでいったのは、そうした結果で人工妊娠中絶が減る、あるいは病気が減る、こういう形から反面健保の支出が減ってくる、差し引き勘定して、金計算からいくと得だというだけで、あるいはまして生活保護法ボーダー・ライン層からいえば、この問題は十分推進すべき問題だと思いますので、大臣は額はおっしゃらないけれども、基本的には私の方に御協力下さる、その線に進んで下さるということなので、これで了承いたします。  それから次の問題でございますが、保健所のことでございます。保健所の保健婦の問題でございます。
  117. 藤原道子

    ○藤原道子君 ちょっと関連して伺いたい。今度の家族計画を見ますと、今度初めて民間団体に活動助成費が計上されておるのですね、それを見ますと、中小企業事業所の家族計画の指導を民間団体に行わせることにした、金額は百万円ですかそういうものが計上されておる。それで補助率三分の一で百五十ヵ所を指導する。この団体はどういう団体ですか、その内容を伺いたい。
  118. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 現在国がやっております家族計画と同じような考えで、家族計画の運動を推進していただいておる民間の団体が幾つかございます。私どもは、こういう仕事は非常にデリケートな問題もたくさん含んでおりますので、従来から、政府みずからがやるだけでなしに、こういう同じような考えで進んでおられる民間団体の仕事を助成して一緒にやっていく、政府も民間と一緒になってやっていくということがいいことではないか、というふうに考えておったわけでございます。そこで三十三年度は新しく、現在職域社会と地域社会を大きな対象として、この家族計画の仕事が行われておりますが、中小企業の職域と申しますか、地域社会に混入したような所は、なかなか実際問題としてやりにくい点がたくさんございますので、そういう所を民間団体でやってもらったらどうだろうかということでございますので、こういう仕事をしておられる団体が幾つかございますので、現在のところ、特定にどこというふうに考えておりません。私どもの方でいろいろ計画を立て、また三分の一補助ですので、三分の二の自己負担のできる団体でないと困りますので、そういう点、予算をお認めいただけますれば、早急に実施計画を立てて相談していきたいと、こういうふうに考えます。
  119. 藤原道子

    ○藤原道子君 私が納得がいかないのは、長い間圧迫されながらも、ずいぶん苦労して家族計画運動をしてきた団体は幾つもある。ところが今日聞きなれないものがここへぽつんと一つ出てきた。中小企業事業所指導費となって、これは与える団体も今ちょっと書類を探したのですが、見えないけれども詳しいのがあるのですけれども、いろいろ聞いてみたならば、そこに百万円を差し上げるのだというふうに私は聞いている、で従ってその団体の責任者の名前を聞きたい。
  120. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 予算面でごらんいただきますように、決して特定の団体を今ここで予算で計上したというようなものではございませんで、藤原先生のお耳にどういうふうに入っておるか存じませんが、熱心にやっておられる団体、幾つもございます。そのうちから百万円を一ヵ所にやる、やるという言葉は適当でないのでございますが、一ヵ所に助成するといういき方も考えられますし、それは全体の計画の希望の状況を見まして……、しかし私どもはできれば数ヵ所に分けて、同じようなことをやっていただく団体に目的が合えば助成していきたい、そういうふうに考えております。
  121. 藤原道子

    ○藤原道子君 今の山口さんの言うことが、もしほんとうならよろしゅうございます。ところが今これら関係者間にいわれていることは違うのです。そこに問題がある。だけどあなたがここで大臣の御同席の所ではっきり特定の一つ事業者に出すものではない、それで熱心にやって下さるということならば、これは公平に委託するという言葉を確かに、しかと承わっておきまして、それであるなら私はこれ以上追及いたしません。ここで私最後まで一つやろうと思ったんですが、それだけは後に残しておきます。
  122. 横山フク

    横山フク君 次に保健所の保健婦の問題ですけれども、保健婦の定員が定めてない、省令の第七条か何かに左の職種を置くことができるという、その職種には入っている、ただ予算措置としてA級、B級、C級になっているのですけれども、A級、B級、C級にいたしましても、現在において非常に遠くなったのですね、受持ち点が。たとえていえば人口が年々八十万ふえているのに、昨年三十二年度においても人口八十六、七、八万増加しておる。ところが新設五ヵ所、本年度も八十何万推定人口はふえておるのですけれども、やはり五ヵ所、そうすると人口十万単位一ヵ所ということが目標なら、年々八ヵ所くらい新設すべきなのに、やっぱり五ヵ所くらい年々。そうすると依然として人口十万でなくて、人口十五万ないし二十万も、ひどい所は地域的に無理があるから、人口三十万というふうな形もあるわけですね。しかもそこで保健婦さんの仕事となると、結核の撲滅推進運動として保健婦の仕事が倍加される、あるいは未熟児の問題がくると、ここでもまた仕事が過重されてくるわけですね。こうして多くなるのに定員においては確たる定員をきめる根拠がない。看護婦においては守られている守られていないは別問題として、医療法においてきまっておるけれども、保健婦においてはきまっていないと思うのですね。そうして仕事が年々ふえていくという形である。定員が満たされているならいいけれども、その定員すらが満たされていない。学校を出た人たちも、それなら学校が足りないのか、事実学校は足りません、足りませんけれども、保健婦の学校を出まして看護婦として勤めている人も相当ある。それは最初の賃金が低いわけですが、看護婦も保健婦も助産婦も同一基準で勤める、という形になるからここにくる、こういうものをどういうふうにお考えになるでしょうかね。日本の予防医学を推進していこうと思ったら、保健婦が中心になって働いていかなければならないのに、保健婦という名前はいつも大事にしているけれども、実質はちっとも大事にされていないので、産休というのは遠いことです。その手前でオーバーロードになっている。これを毎年々々ちっとも改善しようという御意思が、予算をとれるとれないはあとの問題ですが、しかしとろうとするようなところの、予算に盛り上ったところを私たちは見られないのですがね。
  123. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 横山先生、保健所の現在の数の問題、それからその中における保健婦の数の問題等いろいろお触れになったのでございますが、御指摘の通り人口十万を目標としての現在の保健所の数を人口から割り出しますと、本年度末七百八十八ヵ所になりますが、それでもまだ不十分だということは御指摘の通り、現在人口平均いたしますと、一保健所当りの人口の数が十一万三千というような数になるわけでございます。私どもはとりあえず現在考えております目標として、八百九十一ヵ所まで持っていきたいということを考えております。一挙になかなか整備するということはできません。一時新設を見送った年もございましたが、三十二年度、三十三年度はそれぞれ五ヵ所ずつを増設して普及させていきたいというふうに考えているわけでございます。その中における職員の定数の問題は御指摘の通り、医療法等で看護婦の数が医療機関にきめられておりますようには、保健所ではさまっておりません。一応国がこれくらいの保健所にはこれだけの職員が必要だ、これは単に保健婦だけの問題でなしに、医師、薬剤師、歯科医師、保健婦、看護婦皆同じでございますが、一応このようにあってほしいという数字を出して、そうしてそれを基礎にして予算を計上してやっているわけでございます。現在実情からいたしまして、国が考えております人数に対して実在の人員が非常に不足しているということは、御指摘の通りでございまして、それに対して増加させようという努力がちっとも見えないではないかという御指摘でございますが、これは地方財政とからんで地方で予算化がなかなかむずかしいという点から考えまして、過去数年来、保健所の運営費に対する国庫補助率の引き上げというようなことを、財政当局と折衝して参ったのでございます。今年三十三年度は、先ほども申し上げましたような地方交付税率との関係もあって見送ったわけでございますが、この点は保健所の保健婦の仕事が、だんだん公衆衛生の仕事が進歩して参りますのに伴いまして、ふえていく一方、人員がなかなかふえていかない。一人当りの仕事がふえて参りますので、何とかしてこれはやはり私どもとしては、保健所の人員が増強されるように、措置を講じていかなければならないというふうに考えているわけでございます。現実の問題としまして、三十三年度国が一応考えました数に対して、七一・五%の充足率を考えて予算を計上してございますが、現実には六七・五%でございますが、その差はこれは国の予算措置、この三十三年度のままで地方が予算化しさえすれば、それだけ増強でき得るというような、状況でございますので、そういう点自治庁あるいは府県当局とも連絡して、保健所の人員増強に必要な予算を地方で組んでもらうように、われわれこれから折衝して参りたいと、そういうふうに考えております。
  124. 横山フク

    横山フク君 保健所の五ヵ所新設ですが、お話の通り二、三年前には新設ゼロのときがありましたが、五ヵ所ずつですか、今年度も最初から五ヵ所だったのですか、十ヵ所要求して五カ所に削られたのですか、何ヵ所要求して五ヵ所になったのでしょうか。
  125. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 予算の折衝過程、最初私どもの一応の案といたしましては十ヵ所を考えたのでございますが、そのほかに改築の予算の都合もございまして、一応五ヵ所で本年はいこうというふうに大蔵省との間に話をきめたわけでございます。
  126. 横山フク

    横山フク君 毎年々々人口の増加率はどのくらいであるか御存じであって、減ったりといえども八十万であるし、人口問題研究所の千人に対する比率が足らぬといっても、それは三十五年度でも七十何方ということです。そうすると今まででもすでに窮屈なんですから、これはその間ずっとやっぱり五ヵ所だったらば相当窮屈なことはおわかりになっていらっしゃるのですね。で、将来においても、これは大蔵省との査定でもってこうなるのでしょうが、仕事も多くなれば、前には十万単位でもって一ヵ所のところが、今度は七万単位で一ヵ所にしがなかったら、ほんとうの公衆衛生はできないわけですね。そういうことに対して強く大蔵省の方に対して、来年度においては、本年度も足らぬのは、もうきまったものは仕方がないのですけれども、やっぱり強く折衝なさるのですか。
  127. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 御指摘の通り、人口増加の割合に比べて保健所の個所数の増加が追いついていないということは御指摘の通りでございます。これはただいま御指摘がございましたが、保健所の数をふやすと同時に、内部の人員の増強をはかるということはぜひとも必要でございますので、三十三年度は五ヵ所でございますが、三十四年度以降はできるだけ、これは一挙にということはなかなか困難な点もあるかと思いますが、全体のバランスを見て、できるだけ数をたくさん増加できるように折衝して参りたいと、そういうふうに考えております。
  128. 横山フク

    横山フク君 現在保健所の保健婦あるいは医者の人数は、A級、B級、C級になっておりますけれども、これが仕事が多くなる、あるいは人口の増加に合わさって保健所ができていない、そういう形からいったら、この市町村でもってそれだけの線に持っていく持っていかないはあとの問題にして、基本的に国でもってA級に保健婦の数を改定するという御意思はあるでしょうか。やっぱりこのままお置きになるのでしょうか。
  129. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 保健所の仕事の中心が保健婦にあるということは確かに御指摘の通りでございます。しかしながら、保健所は医師、薬剤師、歯科医師、保健婦、看護婦あるいはその他の環境衛生の関係の仕事をしておる人たち一体となって仕事をしていかなければならない機関でございます。その中の、全体のうちで、A級五十九人のうちで、保健婦の数十五人というのが足りないというお考えもおありかと存じますが、やはり全体のバランスを考えてやっていかなければならないと存じます。かりに五十九人のうちで、保健婦さんの数だけをふやしてみましても、全体の充足率が十分に参りませんときには、どうしても仕事のアンバランスができて参りまして、保健婦さんに他の事務の仕事をしていただかなければならぬというような事態も起りかねないということも考えられます。従いまして、保健婦さんの数をふやすということは、すなわち全体の数を先にふやすということが先決問題でございますので、そちらに努力を払って、そうして全体バランスのとれた保健所になって仕事をしていってもらえるようにしたいと、そういうふうに現在では考えております。
  130. 横山フク

    横山フク君 そうすると、今のお話ですと全体がもうきまっておる、ワクがきまっておる、だから、保健婦をよけいとったらアンバランスになる、これはわかります。全体を努力しますというお話ですが、全体を努力したって、実現するかしないかは市町村なんですから、国で補助して地方市町村はそれに沿っていくわけでありますね。まあこれは一応あとの問題にしますけれども、全体の数をふやして改定するという御意思があるのでしょうか、全体の数はこのまま置いておおきになるのですか。
  131. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 全体の数をふやすということも必要でございますが、充足率がまだ非常に低うございますので、全体の一応国で考えておりますワクを幾ら広げてみましても、充足率が低いときにはそれだけ充足されませんので、私どもまず考えますことは、国で全体の数を一応の基準を考えますと同時に、その基準は現存のままにいたしておきましても、充足率が上るような措置を講じていく、それは結局は現在員の数をふやすということになるかと思いますが、第一段階としては、それに重点を注いで参りたいと、そういうふうに考えております。
  132. 横山フク

    横山フク君 今のお話の充足率を上げていくということは私わかります。ところが、充足率を過去において努力なさったと思う。今初めて御努力になるのではなくて過去においても御努力なさっておると思う。しかし、過去において充足率が努力されたかどうかしらぬけれども、一向充足されていない、むしろ年々保健婦の数が減っていく、医者の数が減っていくというのが現在の状況だと思うのです。これはどこに問題があるのかと思うのです。そうすると、保健婦や医者の保健所におけるところの給与ベースが初任給が低いということがあると思うのです。実際問題としてみると、お医者さんになってインターンを出て、国家試験を経てそうしてすぐ開業できるのが、保健所へ行った場合においては、公衆衛生院で一年間勉強する、しかも、公衆衛生院で一年間勉強しても大学を出たお医者さんと同じ形、あるいは開業の医者よりも低い収入でもってやるという形だったら、それは充足できませんわ。そうして今度は国でもって補助金をあるいは出して、そうして保健所の医者を充足するという形ですけれども、この人たちも大学を出ても、すぐ保健所へ行っても、将来を考えたならば、やっぱり公衆衛生院で一年間勉強しなければならぬわけです。ずいぶん私は国でもってお金が足りない、予算が足りないと言いながら、そういう面では非常なむだだ、私は優秀な医員となり、医者となるためにたくさん勉強をしなければいけないのはわかっております。わかっておりますけれども、同時に大学を出てそうして研究しながら開業医として優秀な人になられるのに、保健所の医者になる場合には、公衆衛生院で一年間勉強しなかったらいけない、そこに私はむだがあると思うそれでもよく勉強した人がいいに違いないけれども、それでは勉強した人たちに対して給与基準を、初任給を改訂して高い水準に置いたらいいと思うけれども、やっぱり同じなんですね。そうして充足率を上げようといっても無理だと思うのです。もっと給与べースを、初任給なりをいろいろと、そういった実際に即して変えていくべきだ。さらに、保健婦だけでなく、あとで助産婦の問題に対しても触れたいと思いますけれども、もう少しこういう点に対して、実際に即したい。もう一つは、充足率が悪いというわけですけれども、定員がこれだけときまっていれば、充足率がそれだけ低くなれば、A級やB級として高くなっていくというならば、能力のある所はふやしていくというところも出ていくわけです。一面でなく両面作戦でいくべきだと思うし、A級で負担が多くなったら、人数のワクをふやし、同時に充足率が減るのはどういう欠陥があるか考えて、両方からいかなかったら何年たったって充足できないと思うのです。それは私は資料をいただいたとして、五年前にいただいた資料と保健婦あるいは医者の充足率は、同じかあるいは下っていると思うのですね。これは私、いけないと思う。委員会では充足率をふやすことに努力いたしております、結果においてはさっぱりふえておりません。それだったら、私たちの言うのは、これはこだましたら返事があるけれども、これはこだまするよりも悪い形になると思うのです。もっとこういう点に対して適正妥当な措置をしていただきたいと思うのです。現在私たちのところへ来る人は、もう産休お産をした場合においてこれは休むということは仕方がない、当然認められた権利です。ところが、産休をとろうとしても産休とれないのですね。そうしてなおかつ働かなければならぬわけですね。そういう形に追い込んで、そうして充足率が悪いのでありまして、これを考えようと思いますという形だけでもっていかれたのでは、私も保健婦さんたちに対して、まあ今に充足率が満てるからがまんしなさいという形では済まぬと思っておるのです。そうしてこれをどういうふうにしてか、もう少しこれを具体的にお話ししていただきたいと思うのです。
  133. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 確かに保健所に十分の職員が充足できないという点に、特に医者については、先ほど御指摘になりましたような待遇の問題があると存じます。しかし、まあこれは公衆衛生修学資金の法律を御審議いただきましたときにも、たびたび御指摘いただきまして、給与体系の改正に伴って地方公務員の給与を考える際に、保健所に勤務する医者は、現在はもちろんのこと、将来に希望を持たせるような給与体系を作るように、というような御指摘がありましたので、自治庁あるいは保健所の方に連絡折衝して、初任給もできるだけ高く取れるように、それから一等級まで行けるような措置を講じてもらうようにやつて、すべてのところで現在そうできているとは申し上げませんが、そういう措置が講ぜられつつあるわけでございます。それからもう一つ、先ほどちょっとお触れになりました大学を出て保健所の医者になるのには、必ず公衆衛生院に一年間というお話がございました。これは現在必ずしもそういう制度にはなっておりません。保健所に勤務している医者が公衆衛生院に三ヵ月、短期コースなり、あるいは場合によっては一年間勉強に来ることもございます。必須条件にはなっておりませんので、その点触れさしていただきたいと思います。  それから保健所で非常に仕事が多くなって人員をふやしたい、しかし、一応国が定員を考えておるのでなかなかふやすことができないのではないかというような御指摘でございますが、これは県単位にプールしてこちらが流しますので、必要に応じては、たとえばAクラスは五十九人というふうに一応国が考えておりますのに、場所によっては五十九人以上置いている所がございます。そのかわり充足の悪い所ではそれだけ別に減っている所もございます。そういう措置は講ぜられております。  それから保健婦の充足状況でございますが、これは都会のいわるゆ政令市の保健所の保健婦さんの充足率は比較的いいのでございます。悪い所で六割、いい所は百パーセントをこしている。一応国が考えました数の百パーセントをこえているという所もございますので、必ずしも一律ではないのでございますが、しかし、保健婦さんが勤務したくても地方で予算が十分組まれていないために勤務できないという所もございますので、それは先ほど申し上げましたように、地方で予算を組んでもらう、そうして充足していくということが必要だというふうに考えております。まあ私ども従来は保健所の職員の充足ということについては、地方が予算化してくれるように、ということを主たる目的で、主たる手段としてやって参ったのでございます。職員の待遇改善ということ、これは当然考えていかなければならぬのでございますが、現在の待遇でも入りたい、しかし、地方が予算化していないから入れないという方も相当ございますので、地方の予算化を積極的にやってもらいたいというふうに考えておるわけでございます。
  134. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  135. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 速記を始めて。    〔主査退席、副主査着席〕
  136. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 保健所職員充足の非常に低いことの原因と対策はたったそれだけですか。もし、たったそれだけとするならば、みな保健も結核対策も、大臣が先に言ったことも全部これは絶対できっこありませんが、たったそれだけですか。
  137. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 保健所職員の充足対策、特に医師の充足対策……
  138. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 原因とその対策です。
  139. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 原因と対策、現状は保健所の医師が、職員が充足されない原因でございますか。
  140. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) そうです。横山さんもそれを聞いたのですけれども、あなたの原因に対する説明が不足です。原因が何々で、その対策が何々、今言われたことで尽きるかということです。
  141. 山口正義

    政府委員(山口正義君) これは原因は単一ではないと思います。一つには、保健所の職員の待遇の問題、それから仕事の内容の問題、これは職種によるかと思います。それから保健所の施設あるいはそのほかに保健所に付随したいろいろな施設がございますが、そういう点も保健所になかなか医師が、職員が充足されない原因だと思うのでございます。ただ、保健所の職員が充足されないと申しましても、職種によって、予算化さえ行われれば十分人がある、入ってくるという職種、これは保健所に勤めたい、勤めたいという人が相当たくさんございます。保健所の職員に対する予算化さえ行われれば、待遇の問題はともかくとして、とにかく入ってきたという人は相当ございます。しかしながら、職種によりましては、ここに予算化が行われましても現在の待遇とか施設、そのほかの点、特に医師などは研究の意欲とか、あるいは仕事に対する意欲というような点から入ってこないというのもございます。それからレントゲン技師なんかにつきましては、予算がありましても、絶対数がなかなか足りない、ことに臨床方面の病院なんかに多く希望して、保健所のような公衆衛生面に入ってこないというような部面もございます。職種によって、必ずしも原因は一律ではないと思うのでございまして、従いまして、私どもは医師に対しては、保健所の医師の充足対策、それからそのほかの職員に対しては、その充足対策を別途で講じていかなければならない、そういうふうに考えているわけでございまして、従って、その一つの現われとして、医師につきましては、待遇改善の問題と、それから研究意欲を、あるいは仕事に対する意欲を増強させるということ、あるいは住宅の問題等考えて一連の医師充足対策というものを考えて、数年来進んできているのでございますが、そのうちには一部実現しているものもございます。まだ実現していないのもございます。それからそのほかの職種につきましては、それぞれエキス線技師については別途医務局と相談をするというようなことも進めているのでございます。必ずしも原因が単一でございませんので、その対策も多方面に多角的にわたらなければならないと存じます。そういう考え方で進んでいるのでございます。地方財政の関係もございますから地方財政の点は先ほどからたびたび申し上げたわけでございます。一つそういうふうにお考え願いたいと思います。
  142. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 大臣にちょっと。
  143. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 坂本さんはもうしばしば保健所の関係についてお聞きになっているのですが、これは横山さんの御質問にも関連いたしますが、私、厚生省へ参りまして、現場機構の整備拡充、こういうことが厚生行政に一番必要だ、もう必要な一つであるということを考えておりまして、今度の三十三年度予算で、その点は事実まあ率直にいえば、ほとんどつぶれちまったという点は、はなはだ遺憾に思っております。まあ横山さんもまた来年もそうなるだろうとおっしゃるのですが、私のいる限り必ず実現するつもりで考えております。
  144. 藤原道子

    ○藤原道子君 ちょっと関連して。いつのあれでも、こんな医療職の人たちの非常に給与が悪い、このことが充足率に影響しているということはいつも答弁している、ところが、どうしても直らないのですね。これはどういうところに問題があるのでしょうか。人事院の勧告が出ていますがね。それから同じ国立であって厚生省の所管にあるお医者さんの初任給は一万八百円ですか、同じ国立である文部省所管の医師の初任給は一万二千六百円なんです。同じ国立でこういうふうにどうして差がつくかということが私にもわからない。それといま一つは、国家公務員の場合の看護婦さんなど見ましても、この電電公社だとか、専売公社だとかいう病院と比べてずいぶん大きな開きがある。同じ国立の中でどうしてこういう開きがあるのか、こういうことが民間に比べればもっとひどいでしょう、お医者さんの場合。それがわかっていながら、なぜこれが是正できないでしょうか、ちょっとその点だけ聞かして下さい。
  145. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 保健所の職員の俸給につきましては、これは地方に対する補助金が全部の職員と平均してなっておりますので、単価が一応決定されております。三十二年度は三十一年度に比べて単価増をいたしました。三十三年度は単価はできなかったのでございますが、従来、これはすでに、地方でもやっておったかと思いますが、通勤手当を国の予算として計上して、それから従来期末、勤勉手当なんかも国として見ていなかったのを、二、三年前から計上したというようなことがございます。問題はやはり平均しての単価を今後上げていかなければならぬというふうに考えております。
  146. 藤原道子

    ○藤原道子君 だから、それがなぜできないかということです、同じ国家公務員でありながら。
  147. 山口正義

    政府委員(山口正義君) ただいまの国家公務員、国の医療機関の、国立の厚生省関係の医療機関の職員の俸給と、それからそのほかの国立の機関の職員の違いにつきましては、医務局長から答弁があると思います。
  148. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) ただいま御指摘のごとくに、大学病院と国立病院とに俸給の差がございます。これは給与表の建前が変っておりまして、大学病院は教育職の給与表を使います。国立病院はそうでない医療職の給与表を使っておるわけでございます。ただし、教育職におきましては超過勤務手当等が考慮されておりませんので、収入額としては両者の間にさしたる差はないはずでございます。次に、電電公社その他の三公社五現業の直営病院でございますが、これは建前といたしまして、実は別の給与表を作ることができることになっております。国立病院におきましては別の給与表を作ることができない、人事院の給与表の適用を受けるということになっているために、現在の規定下におきましてはそういう開きが出てきておる次第でございます。
  149. 藤原道子

    ○藤原道子君 現在の規定下でできないと言いながら、何年たったらできるんですか。そのために国立病院にも保健所にも、結局欠員ができて困っているじゃありませんか、まことに不満足でございます。
  150. 横山フク

    横山フク君 私はまだ質問始めて三十分しかたっていないんです。ところが、社会党の主査から、自民党の委員の発言は簡単にしてくれと言うのです。非常に愉快だと思うので、私もなるべく簡単にしようと思います。しかし、質問したいことだけは質問しなければならぬので、その点は御了承願いたいと思います。  それで、まあ保健所の問題はその次にいたしまして、今度助産婦の問題になりますが、助産婦が非常に足りない——医務局長おられますけれども、実際の実情から見たらば需給が合わないということでもって、教育低下によって助産婦を充足するということを非常に医師会側から言われておるようでございますけれども、現在入院分べんがふえて家庭分べんが非常に少くなったといっても、農山村全部を通じて七割は家庭分べんです。そのうちの三割というものは、臨時応急の措置として医療行為を助産婦がしておる。医師もなく、みずからの責任において医療行為をしておる、そういう助産婦の教育程度を現在下げるという段階ではないと思うんですけれども、この問題についてどういうふうにお考えになるんでしょうか。
  151. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 御指摘の通りに、こういう技術者の学問、技術の程度は下げたくないと思います。
  152. 横山フク

    横山フク君 現在学校数が足りないということが、年々三百五、六十人しか卒業生が出ていない、これは事実です。しかし、大蔵省の今度の予算査定でも准看護婦から看護婦になるコース、進学コースですけれども、この進学コースも、最初に医務局で進学コースを幾つ希望されて、それが最後に幾つに減ったかということをここでお教え願いたいと思う。
  153. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 来年度は進学コースの補助は大体三ヵ所をする予定でございます。ただし、新設ではなくして、旧来の施設を、たとえば准看護婦養成所を進学コースに転活用することもございます。そういたしますと、工事費というものもそうかさみませんので、従って、新設であれば三ヵ所でございますが、転活用として取扱う場合にはもっと個所数がふえると考えます。
  154. 横山フク

    横山フク君 それで准看から看護婦に進学する人たちの全員をそこで充足されるのでしょうか。
  155. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 御承知のごとくに、准看護婦が進学コースに入る資格を獲得したのは、実は昨年からでございます。ごく初期において、第一年次においては非常に有資格者が少いわけでございます。今後だんだん年々増加すると思います。その数と見合いまして、ことしは前年よりかも二倍以上進学コースをふやしたいという考え方で進めている次第でございます。
  156. 横山フク

    横山フク君 現在それで昨年よりも倍にしたいというお話ですけれども、昨年の倍にしたのでもって全部の希望者をそれで満されますかしら。
  157. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 大体希望者に対する入学者は、たしか三対一くらいであったかと思います。つまり希望者三に対して、競争試験の結果入学を許された者が一の割合であったかと思います。これは、入学希望者全員を収容するということは、いろいろな建前上困難でございます。やはり質のいい者、確かに就学に耐え、効果を上げる者を選択していくという建前で今後とも進めていきたいと存じております。
  158. 横山フク

    横山フク君 今のお話は非常におかしいのです。質のいいのだけを進学させる、わかるのです。質の悪い人が看護婦になれない、これは仕方がない。しかし、三人のうち一人しか進学する資格がないという、そんなべらぼうな話はないと思うのです。それは進学するに妥当でないという人はそんなに多くいるはずはないと思います。しかも、准看じゃなくて正規な看護婦の方がいいに違いないし、また正規看護婦が足りないことは事実です。それで正規看護婦になりたいという人がいる、それがなれないのは、進学コースに道が開かれてないからです。これの方はそんなに多く予算がかかるわけじゃないし、当然道を講ずべきだと思うのです。その結果が助産婦の方にもしわ寄せが来るわけです。だから、この道を開くということは当然必要な問題だと思うのですがね。
  159. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 御指摘の点、まことにごもっともと存じます。私どもは非常に試験をむずかしくして、希望者の非常に多数を振り落すという考え方はございません。何しろ准看護婦制度から進学コースに行く、その資格が、実はことしは第一年次でございますので、ことしの成績を見て、かつ、来年の成績を見て、それに順応したところの計画を今後立てていきたいと、かように考えておるのであります。
  160. 横山フク

    横山フク君 准看はそれでいいです。それじゃ看護婦のその現在定員を満されてないことは事実です。必要数を。従って、助産婦の必要数も満されてないことは事実ですけれども、看護婦の需給態勢が現在の養成で合っているのでしょうか。
  161. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 最近准看護婦制度ができましてからかなり、看護婦の充足率はよくなって参っております。ただ問題は、地域的偏在が非常に多いのでございまして、都会地におきましては容易に看護婦は求められる。しかし、いなかにおきましては看護婦が求めにくいという状態が残っておるのでございます。現在の養成速度でやりますと、全国平均を見た場合におきまして、もう数年でもって大体充足できるのじゃないか。今度はあまり看護婦を養成し過ぎますというと、将来看護婦の就職対策をどうするかというふうな問題もあるかに考えておりまするが、まだまだそこまでいっておりません。従いまして、今日はなお看護婦養成の速度をゆるめよう、低くしよう、少くしようという考え方は毛頭ございませんけれども、大体この速度でいくならば、当分見合った状態でいくのじゃないか。大体地域的偏在という点について、私どもは頭を悩ますという現状でございます。
  162. 横山フク

    横山フク君 じゃ、看護婦の問題は——助産婦の問題から看護婦の問題に行きましたけれども、助産婦の学校です、現在学校がありながら、そこでもって応募者数ゼロという学校が北海道において三校あるわけです。ほかの学校においても、定員が満たされていない、准看から看護婦に行く人たちが三倍ある、あるいは看護婦の養成所にしても入学希望者に対して五人に一人、七、八人に一人といったような形でもって入学が許されているのにかかわらず、助産婦に関する限りにおいては、二十人の定員のところに志望者一人もなしという学校があるわけですね。これは教育程度の問題ではなくて、私は助産婦の将来の見通しが暗いということであって、決して教育程度が高いからではないと思うのです。しかし、その将来が暗いということは開業助産婦だけでなく、病院においても、国立病院においても、あるいは保健所においても助産婦——先ほど保健婦の問題が出ましたけれども、助産婦としても何ら特別な待遇がない、看護婦と同じ。しかも、病院においては助産婦の定員がない。助産婦の定員がないけれども、助産婦の仕事をしなきゃならぬわけです。しかし、助産婦の定員がないから助産婦を置かないでもいいわけです。しかし、看護婦が、将来助産婦になる見通しのない看護婦は、夜自分の勉強どころではない、そして夜何回も、四度となく五度となく起されて、徹夜でもって出産の手伝いをするということは、助産婦ではない看護婦にはできないわけです。どうしてもこれは助産婦を充足しなければできない。助産婦を充足するのには、私は教育程度の問題ではなくして、定員を置くことであり、そして待遇を考えることであり、将来に対しての明るい見通しをつけるという以外に解決策はないと思うのです。この問題に対してどういうような御努力を過去においてしていただいたのでしょうか。
  163. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) まことに御指摘の通りでございまして、助産婦養成所の入学希望者は、二、三年前まではかなりたくさんあったわけでございます。ところが、昨年あたりから急激に減少してきて、それで学生の、定員に満たない程度の、ごくわずかの入学志望者しかないという事実に当面いたしまして、私ども実は驚いているような次第でございます。これは看護婦養成所の卒業生が助産婦の仕事を正しく理解し、助産婦たらんとする熱意、熱情というものの沸かし方が足りないのじゃないか。言いかえるならば、われわれのPR運動に対する努力が足りないのじゃないかということを反省いたしまして、特に助産婦養成所を中核といたしまして、周辺の看護婦養成所に呼びかけをいたしまして、助産婦の方が将来というものに対して理解を徹底させまして、そうしてまずもって助産婦養成所に入学志望者をふやすことに努力することが第一過程ではないかと存じまして、先般来事務的にその方面の仕事を進めておる次第でございます。
  164. 横山フク

    横山フク君 PR活動だけで問題を片ずけるのでは困るのです。PRの問題じゃないです。皆さん方がPR活動をして下さらないでも、年々の定員の三百人ぐらいは助産婦として将来の明るい見通しが立てばだれでもなります、日本じゅうで三百人ぐらいは。そうでなくて、将来の明るい見通しだと思う。国立病院においても定員が入ってない。あるいは保健所においても助産婦としての活動分野は相当あるはずです、しかも、定員がない。この問題をどういうふうにして定員をふやそうとなさるか、定員を持とうとなさるのか。定員を持とうとしないのか、今まで通りでやっていらっしゃるのか。それでPRだけよくやっていけばふえるとお考えになる見通しか、その辺をお聞きしたいのです。
  165. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 仰せのごとく年々施設内における出産がふえてきております。そういたしますというと取り扱う出産数に応じた助産婦というものが当然必要になってくるのではないかと思います。過去におきましては、施設内出産が非常に少なかったのであります。この点はあまり大して考えなくてもいいのでございましたけれども、最近は考えなきゃならない段階に参っておると思います。病院等における助産婦を定員化するということについても検討をいたしまして、必要あればその施設を設定いたしたいと考えている次第でございます。
  166. 横山フク

    横山フク君 検討いたしまして、必要があれば定員を作るというお話なんですけれども、検討して必要があれば、という段階は過ぎていると思うのです。実際に今お話の通り、病院分べんがふえていることは事実です。都会においては七割、八割というような入院分べんなんです。ところが、助産婦の定員が一つもないという現実です。そうして助産婦としての待遇は一つもない、看護婦と同じ待遇なんです。そうして超勤手当——夜勤といっても夜夜中起き通しでもって三つ、四つお産しても、全然お産をしないでも同じ待遇です。それだったらだれも助産婦にならない、そうして開業してから後に明るい見通しがなかったらだれがなりますか。私はそれは定員をふやしていただいて、定員を認めていただいて、そうしてその待遇を考えていただく段階だと思うのです。これに対して、今まですでに御努力を私はほんとうはしていただいておるべきだと思いますけれども、今、そういう検討いたしまして、というようなお話ですから、今まで御努力していただいておりません。残念だと思います。しかし、これから後においてこういう点に対して努力して下さるのかどうか、そこを伺いたい。
  167. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 努力いたしたいと考えております。
  168. 横山フク

    横山フク君 これは大臣にも伺いたいのですが……。
  169. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 質疑応答をお聞きしておって、これはどうしても努力しなければならないと考えております。
  170. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 まず厚生大臣に伺いますが、厚生省に参りますというと、建物の構造もそうであるが、管理も不十分で文化国家の厚生省のお役所として非常に私は異様な感じを受けるわけですが、必ずしも官庁がりっぱになるということが能ではないとは思いますけれども、農林省のような合同庁舎あるいは防衛庁のこともありますが、一体厚生大臣としてはどういうお考えを持っていらっしゃるのか、承わりたいと思います。
  171. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 私も同感です。私もせめて環境衛生を扱っている省としてあんなに悪くても困るから、ともかく何とか直そうじゃないかといって、今事務当局に新しい庁舎の計画は御承知通りですが、それらを待っているよりは、少くとも現在の庁舎自身を環境衛生の観点から見て今の点は非常に欠くるところがあるといって、事務当局に命じて直しておるような次第であります。
  172. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 外国の人等を御案内した場合、私は恥かしいことだと思います。必ずしも維持管理が十分でないようですから御善処願いたい。  次に伺いたい点は、この予算書を拝見しまして、厚生行政というものは地方財政計画ときわめて密接な関係にあると思うのであります。それはどの省庁にいたしましても関係がありますが、厚生行政は特にそうだと思います。しかも、国立病院はございますけれども、地方自治体と直接接触する出先機関というものはお宅の方では割に少いわけです。従って、厚生大臣としては、厚生行政の進展のためには地方財政計画、それから地方自治体との接触の点について何らか配慮されておるところがあろうと思いますが、御見解を承わりたいと思います。
  173. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) この点も参りましてからすぐ気がつきまして、私としては、率直に言って厚生行政の末端の事業は地方自治体に待っているところが非常に大きいと思います。われわれの所期の通りにいかなければ、すべての施策は完全にいかないということが一つであります。  それからもう一つは、これはお触れになりませんが、心配しておりますことは、末端の行政を扱った経験のある人は、今度逆に厚生省に言われる、そうして実際の末端の実情とあわせて中央の方の行政をやる、こういうことが一番大切じゃないかというふうに考えるのでありまして、その点は自治庁へ参りましたならば、すぐ自治庁長官と打ち合せして、できるだけそういうふうな方向に持っていこうじゃないかということを相談しておりますが、まだ私の所期の目的を達成するまではむろん行っておりません。今後その点は強力に推進いたしたい、こう考えております。
  174. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 予算の増額をはかることは基本ではございますが、と同時に、時間的、経済的ロスのないよう、限られた予算の合理的運用ができるよう格段の御善処を要望いたす次第です。  それから次に承わりたいのは、私、先般総括質問をやらせていただいたのでございますが、質問時間に制約がございましたので、反問することができなかったわけです。従って、事を明確にするために、速記録に基いて伺いたいと思います。その第一点は、自然公園法では国立と都道府県立公園とは重なって設けることはできない、しかしながら、町村立の公園等は二重になることができるとなっている、そういう盲点があるのです、法の盲点が。その結果として、具体的な例をあげるならば、阿蘇の国立公園の問題が起っているわけですね。あなたの答弁を見ますと、法の盲点を突かれた形であるから、「法律自身も制限的に励行できるような法律を設定しなければならぬのではなかろうか、」云々と答弁されておりますが、明確なお答えを願いたいと思います。
  175. 大山正

    説明員(大山正君) 現行法の上におきまして、ただいま御指摘のように、都道府県立自然公園と国立公園、国定公園とは併存できない。市町村立自然公園は一応併存できるような形になっておるという点につきまして私からお答え申し上げます。現在都道府県立自然公園につきましては、自然公園法に規定をしておりますが、市町村立公園については自然公園法に規定がございません。その理由は、これらの都道府県立自然公園につきましては、国立公園あるいは国定公園と同じように公用制限、公けの制限を府県の条例で設け得ることになっておりますので、これは都道府県立自然公園については、やはり自然公園法に規定しますと同時に、同じ規制が国からと都道府県からと二重にならないようにという意味合いにおきまして、両方の併存は禁ずるという法律上の建前にいたしたのであります。ところが、市町村立自然公園につきまして同じような公用制限の権能を与えるということは、実際問題として市町村立の自然公園は非常に数多くなることでありましょうし、また、市町村が条例でもってそのような公用制限を行うということは必ずしも適当でありませんので、自然公園法上におきましては、市町村立自然公園については現在規定をしておらないという形になっております。従いまして国立公園あるいは国定公園の中におきまして、市町村立自然公園を市町村が作ることは一応随意である。法律上は何ら排除しておらない。それは都道府県立自然公園と違って、二重規制の排除がないという意味で規制しておらないのであります。御指摘のありました阿蘇の問題につきましては、以上の理由から自然公園法には直接触れないことでございますが、国立公園を設定いたしました趣旨から適当でないと、かように考えまして、私どもは行政指導で何とかこれを解決して参りたいと、かように考えまして、目下、県当局を通じまして、当該町に対しまして指導いたしております。で、入園料を取る問題が起りましたときに、すでに私どももこのような指導をして参りましたが、とうとう私どもの言うことを聞きませんで、阿蘇町が条例を設けて入園料を取ることになってしまったわけでございますが、そののちにおきましても、さらに強力に指導するように県を通じてやっておりますが、なお、これにつきましては阿蘇の、国立公園の現在問題になっております噴火口の付近が国有地であるか、町有地であるかという点につきまして、大蔵省と町との間に争いがございますので、それらの推移をにらみ合せました上で善処したい、かように考えております。
  176. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 阿蘇の場合は、公園事業を行う主体は厚生省ですか、熊本県ですか。どちらでしょうか。
  177. 大山正

    説明員(大山正君) 国立公園につきましては、公園事業は建前として国が行うわけでございますが、さらに県がこれを行います場合には、県が国の承認を受けて行う。私人が事業を行う場合には厚生大臣の特許を受けまして事業を行う。こういうことになっておりますので、現在阿蘇におきましては、国が直轄でやっておる事業もございますし、それから県が国の補助を受けてやっております事業もあります。あるいは私人、会社が厚生大臣の許可を受けまして、特許を受けましてやっておる面もございます。
  178. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 管理が不十分だと思うのです。厚生大臣の答弁では、「厚生省としても地方庁を通じまして、厳に反省を求めておるような次第であります。」と答弁していますが、厳に反省を求めた反応は、どうなっておりますか。
  179. 大山正

    説明員(大山正君) 知事が町長を呼びまして反省を促がしましたところ、町当局といたしましては、所有権の問題があるので、自分の方としてはそれを主張するために、目下このような条例を設けて入園料を取っておるのである。国立公園の趣旨につきましては、自分らも十分了解しているというようなことでありまして、まだこれを撤回するという段階にまでは至っておりません。
  180. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 所有権を法廷において町と国と争うとあれば、それは法廷に持ち込まれているのだから、従って条例によって入園料を取るというようなことは、一応やめてしかるべきではないかと思うのですが、そういう指導はできないのですか。
  181. 大山正

    説明員(大山正君) 私ども承知いたしておりますところでは、大蔵省財務局が入園料を取ることを中止する仮処分の訴えを起すというように承わっております。
  182. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 一般論といたしまして、国立公園等に観光客が参りますと、そうして一、二具体的に言うならば、ビールびん等を投げて、そのために牧草地を荒す、家畜がけがをする。従って地元としては何らか補償をいただかなければ、ああいうような入園料を取りたいという気持になるのも、私は気持はわかると思うのですね。従ってその点について厚生大臣にただしましたところ、厚生大臣は答弁として「地方産業にいろいろ迷惑をかけるような場合がありましたら、そういうことはむしろ禁止する方向に持っていくべきではなかろうかというふうに考えております。」このように答弁されております。かような損害を住民に与える、産業に与えたような場合には、国立公園であるならば、その事業をやっている主体者について、何らかの形で補償さるべきであると思うのですが、厚生大臣はどう考えておりますか。
  183. 大山正

    説明員(大山正君) 自然公園法には、御指摘の損失補償の規定が設けられておりますので、その規定の条件に合致するものにつきましては、関係各庁とも打ち合わせまして、補償の道を講ずるというように考えておるわけでございますが、それぞれの具体的の事案について検討すべき問題と考えます。
  184. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は現行法における、法のワク内における答弁を、事務当局に求めているのではなくて、担当大臣としての政治的答弁を求めます。
  185. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 私はまあ、その御引用になった答弁の通りに、国立公園を利用するものは、それが地方団体であろうが、国民であろうが、ともにその国立公園設定の趣旨を尊重してやるべきことが第一議だと思うのです。その指導がなくて国立公園法ができるのは、おかしいとすら考えております。しかし、現実にどういう事実か、私調査いたしておりませんが、政治的答弁とおっしゃっても、事実自身の十分認識の上に立たなくちゃいけないと思いますが、むろん、私は政治的にいえば国民に損害を、産業に損害を加えるようなことは、国家として処置をしなくちゃいけない問題だ。責任を免がれることはできまい、こう考えております。しかし、本来そういうこと自身を容認すること自身が、根本的に間違いじゃなかろうか、こういうふうに考えております。
  186. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 観光立国を唱うべきわが国の観光政策としては、たくましさが足らない、弱さがこういうことをもたらしていると思う。しっかり努力いたしてやっていただきたいと思う  それに関連してあの公園の皇居外苑ですね。あれは厚生省の大きな立て札が立っている。芝生に入るべからずという立て札が立っていますが、御承知のごとく広い通りを境に、皇居側と東京駅側では、その態様というものは全く相違しておりますね。あれは厚生省所管でありますが、ああいう状況をあなた方は満足されているのですか。私はあの光景を見て、ロンドンのハイドパークを想起するわけです。他の公園も、グリーンパークなどはりっぱなものです。東京の玄関である皇居外苑の国民公園は、あなたの所管になっているわけですが、どういう考えでいらっしゃるのか。あの程度でよろしいという考えなのか。それとももう少し正常な皇居外苑とされようとするのか。あの事態ならば、あの立て札は取った方がよくはないかと思う。どういうお考えですか。ついでに伺っておきます。
  187. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) この点は、私は現在の状況は非常に遺憾であると思います。やはり公園設定の趣旨に従ってこれが利用されなければならないし、国民もその気持でなくちゃならない。われわれ自身も、その点について遠慮する必要はないのだというふうに考えております。ことに率直にいって、外国人が必ずあそこに来るから、そのときにああいう状況が目につくことは、日本政府として非常に恥であって、今後直していく所もたくさんあります。ああいうふうに芝生に入るべからずといって、雑草だけのような所は、よその国には私はないと思います。と同時に、国民自身もああいう芝生を愛するということの観念が非常に薄い。しかも、公共のものを汚すことについての反省心が非常に足りないということを考えますので、今後は改善をいたすつもりであります。
  188. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 具体的対策並びに構想を伺います。
  189. 大山正

    説明員(大山正君) 皇居外苑の整備につきましては、大臣の御就任以来、私どもしばしば大臣からお話を伺いまして、いろいろな計画を立てました。全体的には、あそこの緑化整備の問題、それからお濠の水をきれいにする。それからいろいろな建物等の施設を完備する。さらにあそこの街燈でありますとか、あるいは便所でありますとか、その他につきましての総合的な整備計画を立てまして、今回の予算編成に際しましても、かなりの額の予算を、大蔵省に対しまして折衝したわけでございますが、遺憾ながら当初の目的を達することができませんで、従来の予算額の約二倍程度でございますが、総額としては一千万円程度でございますが、現在の予算原案に盛られておりますので、芝生の整備でありますとか、あるいは補植の問題でありますとか、その他のことをさらにきれいにして参りたいと思っております。なお、将来は、御指摘のありました外苑の中央の道路につきましても、さらに何らかの対策を考える必要があろうかと思いますが、現在まだその時期に至っておらないように考えますので、将来適当な時期に、またあらためて検討したい、かように考えております。
  190. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次に、このたびの予算に、児童遊園地を設けられるということが出ておりますが、まことに私はけっこうだと思う。そこで、具体的に考えて、私は、今の皇居は広すぎると思っております。陛下のお住居としては、吹上御苑、賢所から一部があれば……。あまりにも広すぎて私は管理に困っていると思うのです。それで所かまわず開放するわけにもいきませんが、皇居の中の一部には、開放しても少しも差しつかえない、ある地区があると私は判断しております。このたび児童遊園地を作るならば、その一部を開放していただいて、そこに私は児童センターを作られれば、次代の日本を背負う子供にも非常に幸いするし、私は陛下みずから非常に喜ばれると思いまするが、大臣、そういう御努力をされるお考えはありませんか。
  191. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 今のお話は、私は初めて承わった御意見ですが、児童遊園地を作るのに、率直にいえば都市計画とあわせて考えなければならない。もう一つは、あそこが適当かどうかということは、私はすこぶる疑うんです。何とならば、自分の住居地近くに持つということが、本来の趣旨であります。それから場所的に適当かどうか、実は私上野公園にはそういうことを考えたことがあるのです。しかし皇居について、外苑については私考えたことはございませんので、何ともここで具体的にそうするとかしないとか、お返事することができません。これは矢嶋さんも方々においでになっておるでしょうが、全体のスケールとして、一体大きすぎるかどうかという問題も再検討を要すると思います。それから皇居の外苑の問題につきましては、私いろいろ考え方を持っておりますが、今の児童センターは、私の考え方のうちには、今ありません。なお、御意見等を十分考えてみたいと思います。
  192. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時間がないから、繰り返して質疑応答をやりませんが、私はおとなに公会堂があり、演劇場があるように、子供だけがそこに行けば、教育映画も見られるし、楽しまれるという子供センダーですね。はねて飛ぶこともできるというような所、そういう子供センターといいますか、そういうような所を私は作りたいという気持です。厚生省の考えられているのはどういうものか、わかりませんけれども、願わくば国民の税金を使って児童のためにそういう施設をされるならば、教育的な立場に立つ文部省とも十分連絡をとられて、構想を練っていただきたい。その構想次第では、私はあの皇居の中の馬場の向う側、塩見坂の端の方とか、あるいは坂を上った上の畑の一部ですね。ああいう付近は、私は子供に開放して少しも支障ないのではないか。そうして子供も喜ぶし、陛下みずから喜ばれるのではないか。純真な子供だけが入るのですから、それで安全な地域でもあるから、そういうことを私は常に考えているわけですが、これは御検討いただきたいと思います。  次に、先般の私の質疑に対してこういうことをそれは人命尊重の立場から、僻地の方々の人命尊重と、それから医療確保のために、国立病院等公的医療機関から短期間に医師を派遣して、輪番制で派遣してやればうまくいくのじゃないかという質問に対して、あなたはこういうことを答弁されております。「結局おっしゃる通りこういうところには、国立病院、都道府県病院等公的医療機関から短期間に派遣するよりしようがない、こういうふうに考えております。」と、答弁されていますが、具体的に、来年度どの程度やられるつもりか、数字をもってお答え願いたい。
  193. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 僻地については、来年度二十六ヵ所やる予定になっております。
  194. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その二十六ヵ所の選定に当っては、御承知のごとく経済企画庁の総合開発局の方に離島振興室という部屋もありますので、ここで予算を一本化して、各省庁連絡して、いかにその離島の後進性を取り返すかという対策を講じられているわけですから、そういう専門家と十分連絡を取られまして、最もその予算が効率的に使われるよう御善処願うとともに、さらに、本年度予算がきまればいたし方ございませんが、来年度はさらにこの前進がなされるよう、大臣において格別政治力を発揮していただきたいと思いますが、お約束できるでしょうか。
  195. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) お約束します。
  196. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次に伺った点は、例の学徒動員等準軍属の取扱いが不均衡であり、気の毒だという立場から伺ったわけです。あなたはそれに対して全く同感の意を表されたわけですが、私はほんとうにあのときちょっと触れましたけれども、戦争を指導して戦争に負けた大将が三十万近くの恩給をもらって、それでそういう将官が五千人もいるに至っては驚かざるを得ないわけです。こういう方々の私は費用を半額にしても、今度の改正で平年度三百億ふえるのですから、これは重大な数字です。だからそういう方々は減額しても、生活に困っている人は、食っていけるぐらいは差し上げなければならないですけれども、私はこの学徒動員、準軍属等は、恩給法とそれから援護法の適用についても、あまり差がつかないようにすべきであるという立場から伺ったわけですが、あなたはこれに検討されると答弁されていますが、その中でちょっと確かめたい点は、こういうことを答弁されているのです。なお、厚生医療の給付、補装具の支給、国立療養所への収容というようなことを行うことになったのであります、とありますが、念のために伺いますが、これは恩給法を適用される人には従来あったわけですが、学徒動員で負傷された方ですね。大臣の答弁の通りに恩給法適用者と同様に適用されますかどうですか。
  197. 河野鎭雄

    政府委員(河野鎭雄君) 従来は援護法上の軍人軍属だけに限られておったわけでございます。今回の提案されております援護法の改正法におきましては、それと同じような取扱いをするようにしたいと、かように考えております。
  198. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 全く同じですか。
  199. 河野鎭雄

    政府委員(河野鎭雄君) 全く同一に取り扱うわけであります。
  200. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次に、先ほどのに関連して伺いたい点は、国立病院においては、宿直医師は一人で何人くらいの患者を担当しているのか、実状を答えられたい。
  201. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 病院の大きさによっていろいろでございますが、小さい病院でありまするというと、その数が少くて、内科系統、外科系統を通じまして宿直医一人しか残しません。従いまして全患者を一人がめんどうを見ると。大きい病院でありますと、必ず、内科系統、外科系統にそれぞれ宿直主任者がおりまして、その下に補助者といたしまして、束一のような大きな病院でありますと一、二名宿直させておるわけであります。
  202. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 地方の国立病院に入院して、夜病気が急変すれば助からぬというのが、これは定評になっているのです。宿直がいないのです。これでよろしいのですか。
  203. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) これは医療法の建前から申しましても、病院であれば、必ず宿直医がいなければならぬということになっています。もしも、おらぬとすれば、これは非常にけしからぬことでありまして、実情をさっそく調べました上でそういうことのないようにしていきたいと考えております。
  204. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 何百人も入院患者をかかえて一人しか宿直していないところが多い。それは生理的現象もありましょうし、そんなことで、夕方の五、六時ごろから翌朝の八、九時まで一体患者の看護ができるのですか。
  205. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 多分今のお話は結核療養所方面じゃないかと思うのですが、御承知のように、療養所であれば、患者の数に比べて医者の数が少いので、相対的に宿直医の数が少くなる。国立病院ではさようなことがないはずだと考えておりますので、今のような事実は、さっそく取り調べまして善処いたしたいと考えております。
  206. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最近の病院は施設設備もあまり近代的でなく不十分ですが、同時にサービスもあまりよろしくないということが定評です。そういうことが耳に入っておりますが、今後いかように指導、善処されるおつもりですか。
  207. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 私どもの方にも、そういう話がときどき耳に入り、非常に恐縮した場合もございます。特に病院の規模が大きくなりまして、職員が多数になればなるほど、その仕事が機械的、事務的になりがちでありまして、その点は絶えず心を入れてサービス第一に努めなきゃならぬ、そういうふうに指導しなきゃならぬと私ども常々心がけておりまするけれども、まだ推算が十分に達成していない点がありますので、その点十分に反省して、院長以下その方面における指導をしていきたいと考えております。
  208. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時間がないから、あと二点だけ伺います。一つは、盲人ですね、あんまさん、あれ、免許状を持たない人があんま業をやって、さらにインチキ養成所があって、盲人の生活権を脅かしているのでありますが、これは厚生省と都道府県の衛生部等で管理する責任があるわけですが、これをいかように把握され、いかように善処されようとしているのか。明確に答えるとともに、具体的方策をお答え願いたい。
  209. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 従来、あんまに対しての厚生省の指導なり監督なりが、いいかげんだったということを、実は率直に告白せざるを得ないのであります。で、その結果、いろいろな弊害が出て参りますので、これはその方面の審議会が厚生大臣の諮問機関が厚生省にございますので、審議会の委員の方々と相談いたしまして、第一は養成所のレベルを上げる。従来は非常に簡単に、もう教室を作って、あんまさんを何人か置けば養成所ができるというようなそういう仕組みであったのでありまして、それを厳重に、建物につきましても、先生の資本要件等につきましても、厳重にいたしまして、そうして、今後やたらにあんまの養成所はできないのだ、またできない限りにおいては、しっかりしたほんとうのあんまさんを養成してもらうのだというふうに省令を改正することになりまして、これは実は四月一日から実施することになっております。  それから第二点の無免許あんまの取締りでございます。これは昨年国家警察の方と打ち合せいたしまして、具体的にやり方等を検討いたしまして、両者がそれぞれ地方に通牒を流しまして、現に昨年来相当の取り締りをいたしまして実績が上っている。だんだん参って実績が上っております。今後ともいろいろな問題とも関連をいたす問題でありますので、この方面には俊厳な立場をもって臨みたい、かように考えております。
  210. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連。あんまの問題、そんなことを言ってごまかしたってだめですよ。てんでやってないじゃないですか。告白せざるを得ないなんて、済みませんよ。東京の一つのあんまさんの親方のところ調べてごらんなさい。六割も七割も無免許ですよ。しかも、目あきのあんまで、きれいな若い女で、これが夜中に派遣されているのですよ。これが、温泉場の目に余るのは申し上げるまでもございませんが、東京都内だってそれをやっている。━━━━━━━━━少し調べて下さい。
  211. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 実はこの取締りは、私どもはもっとしっかりやらなきゃいかぬと思っております。(藤原道子君「思っただけじゃだめなのよ」と述ぶ)取締りそれ自体が非常にむずかしいのでございまして、たとえば……。
  212. 藤原道子

    ○藤原道子君 ちょっと答弁中ですけれどもね。むずかしいたってね。免許を持っているかどうかくらいのことは調べられるでしょう。それすらやっていないじゃないですか。
  213. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) たとえば、旅館等にそういう人間が入って、そうしてそういうあんま行為を業としてやると、警察がその現場に踏み込んで行くということはなかなかできにくいのです。それからお客様などに聞いても、お客様が一々そういうことをしさいに言ってくれるわけでもない。本人に聞いても、いやそんなことをしているのじゃない、ほかの用事で来ましたと言われれば、それまでなんです。また一面に、旅館業者といたしましても、めくらだと一々手を引いて部屋まで案内してやらなければならぬ。目のあいている人だと、簡単に言うだけでやってくれるものですから、実は需要者の方でも重宝がる。目あきの人を重宝がるということが、実はあるわけでございまして、そこでこの取締りはほかのいろいろな犯罪その他の取締りに比べて非常にむずかしいのであるということは、国家警察も、われわれも認識しております。それだけに地方の警察と保健所が一体になりまして、特に東京のごとき大都会、あるいは熱海のごとき温泉場、こういうところを重点としてやらなきゃならぬ。実は昨年からやって、部分的には成果を上げておりまするが、なおわれわれはゆるがせにせずやりたいと考えております。
  214. 藤原道子

    ○藤原道子君 温泉場の取締りはやかましいのです。そんなことしたかしないかなんて、売春問題まではなかなかむずかしいけれども、もぐりあんまがね、生業を脅かしているのだ。だから、免許を持っているあんまかどうかくらい調べるのは、大してむずかしいことでないと思うのですが、この点は特にお願いします。めくらの人たちの生業を圧迫しております。
  215. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 盲学校を視察したとき、生徒さんが、売春防止法が完全に施行されると、心配だから、パンマを征伐して下さい、こういう陳情を受けた。涙なくして聞かれない。これは十分胸に入れておいていただきたい。  最後に伺いたいのは、厚生省は来年度常勤職員を何人使う予定ですか。予算は九百四十七万四千円です。答弁のためにさらに申し上げますが、大がいの省は常勤労務者の給与は減額になっている。ところが、厚生省、おたくだけは十五万八千円ふえまして九百四十七万四千円が計上されている、要求されているわけです。従って何人採用なさるという目算があると思われますが、その数字を伺いたい。その数字を検討されるまでに大臣に伺います。大臣、あなたの省では昭和三十二年に常勤労務者を五千五百十二人使われているのですが、この五千五百十二人は必要な人ですか、いなくても厚生行政はやれる部類に属する人でございますか、いずれでございますか。
  216. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 数字は今、私正確に覚えておりませんので、政府委員に調べさせておりますが、厚生省に常勤労務者は相当多いのです。この点については、やはり常勤である以上は、必要なのでございます。と同時に、中には非常にこれを定員化しなければいけない部分も、ずいぶん定員化していないというところから、これらについてやかましく言っているわけですが、むろん、必要なものであるから、予算上要求をしているわけであります。
  217. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 資料に基きますと、五年以上勤めている常勤労務者が、百四人おたくにおられる、これはあなたが厚生行政をやられるのに必要な人だと言われるのですね。そうすると、五年以上も経過している人が百四人もいるわけですが、この人たちは質が悪いというわけですか、それで定員に入れられないというのですか、どういうことなんですか。中央労働委員までやられた堀木厚生大臣が、こういう点を黙過されているというのは、不思議でしようがないのですが、どういう御見解ですか。
  218. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 数字はよく記憶しておりませんが、実は一ぺん調べまして、ことに、中には大学を出て、そうして五年以上たしか常勤労務者だというふうな人間がおります。ことに、そういう点では、国立公園関係に相当たくさんおります。そういうふうな情勢で、今回の予算提出に当りましても、これを定員化するということには、相当努力いたしたつもりであります。しかし、一挙にこれを全部解決することができなくて、御承知通り、たしか三ヵ年計画ということで、行政管理庁の方針で大蔵省と折衝いたしまして、今回定員化したうちでは、厚生省が一番多いというふうに私は考えております。
  219. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 厚生省が一番多くないですよ、定員化で一番多いのは、農林省の七千五百九十人……。
  220. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) これは全体が多い……。
  221. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 おたくは五千五百十二人のうちに千二人しているわけです。だから大体二〇%です。御承知のごとく六万のうち二万出したのですから、平均は約三三%、だから標準よりおたくは低いのですよ。それで私は、あなたに伺いたい点は、こういうものについてはあなたはエキスパートですから、五千五百十二人のうちから千二人をピック・アップした基準を御説明願いたい。
  222. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) これはほんとうに私自身、過去の経歴から見て、こういうものを長く常勤の姿で置いておくことは、私の良心からいっても非常に困ることであるわけです。で、今回の問題のときにも、私は非常に強くこの点定員化を主張いたしました。しかし、定員化し得たのは、結局、予算上先ほど申し上げたように、行政管理庁の三ヵ年計画に従ってやるということになりましたので、その範囲においてものことを定員化をして参るということになっておるわけであります。で、その点は私、そういうふうに命じてあるのでありますが、具体的にどうなっておりますか、これは政府委員の方からでも説明させていただきたいと思います。
  223. 山本正淑

    政府委員(山本正淑君) 今、御質問のございました常勤の定員化の問題でございますが、これは、厚生省は、実は厚生本省、各研究機関、療養所、社会保険特別会計、それぞれ基準が異なっておりまして、個々についての基準を持ち合せておりません。従いまして、常勤労務者が百パーセント定員化したところ、たとえば国立公園の管理員、あるいは教護院等の社会厚生施設におけるいわゆる本来技術的な系統の常勤労務者、これは百パーセント定員化いたしております。それから一番多い療養所の看護婦の定員等につきまして、それからその他の社会保険特別会計における厚生年金のカードを処理している職員とかというものにつきまして、それぞれ基準が異なっておりますので、それぞれにつきましての基準を今持ち合せておりません。
  224. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは答弁できないですよ、この問題は……。行政管理庁から出した資料でも、お話しになりません。同じ交換手で、定員内に入るのと入らぬのがある、運転手でも、入るのと入らぬのがある。重要度というけれども、定員に入らぬ運転手は重要でない、責任がないというのでは、そんな車に乗せられたらかなわぬわけですよ。で、説明がつかぬわけです。で、おたくのを見ますと、三十二年に五千五百二十人あったのに、今度予算を十五万八千円ふやして九百四十七万四千円常勤労務者の給与として予算を要求されているわけです。従って千二人定員化したけれども、依然として五千五百人程度の常勤労務者が、堀木厚生行政を進展するのに必要なわけですね。それで、そういう必要なお方で国民にサービスしているのならば、サーバントであるならば、当然これは定員に入れるべきだと思う。これは行政をやるのに必要でないのならば、常勤労務者から戻すべきだと思うのですが、私は、こういうことは許されることじゃないと思うのです。それで厚生大臣は、こういう点には特に権威者であるわけですから、単に厚生省に限定することなく、国務大臣として、閣議において強力なる発言をして、この問題を解決していただきたいと思うのです。行政管理庁の三ヵ年計画なんて、これは怪しいです。これは国家公務員法改正とにらみ合して、別のことを考えているわけです。三ヵ年計画は、三年たてば何も全部定員に入るというようなものではないと思う、私はそこに非常に重大なものがひそんでいると思う。せめてもと中央労働委員会の委員をされた方が大臣になっているこの省だけでも、これはもう少し飛躍的に進まなければならぬと思うが、むしろあなたの省は、他の省に比較して定員率が低いのです。二〇%ですから……。今後いかが努力されますか、お考えを承わっておきたい。
  225. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) この定員化の問題は、私は厚生大臣としてだけ発言して推進したつもりはございません。この問題も長くそのままになっておりました関係で、私はどうしてもこの際に、三十三年度の予算編成に当っては定員化すべしという主張をいたしたわけでございます。従いまして、これは矢島さん御非難なさることもよくわかりますが、一挙に全部解決をするということは、数の上から見て長くこういうふうなものがきている。そう一挙に解決できるものじゃない。ともかくも、しかしある程度の目標をきめて解決の緒についたということは、一進歩だと私は思っております。今後において、この点については十分努力をしていくつもりであります。
  226. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時間の関係で、私、他に伺いたい点がありますが、ここで質問を終りますがね、私は、こういうこの常勤労務者を無条件に全部直ちに定員にしろというようなことは申しません。おそらくあなた方採用される場合に、テストして採用されていると思うのですが、その中で、これは国家公務員としてあまり適当でないというような人は、一人か二人あれば、そういう人をふるいにかけて、定員化さないことも私は認めます。しかし、大体、並みに勤務をして、国家公務員としての資格はあるような方々が大部分だと思うのです、仕事の内容からいえば。そういう方の定員化は、これ三ヵ年計画で、三年待てば全部定員化されることができるというのなら、私は追及しないのです。そういうものでないところに……。一体、国が国民の公僕として人を使う場合に、国の責任においてそういうことは許されないと思うのです、今の労働法からいいまして。従って、結論としては、大臣はよくおわかりになっていらっしゃるわけですから、今後、閣内においてこの解決に格段の努力をしていただきたいと要望しまして、私の質問を終ります。
  227. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 結核の基本的の問題のみについてお尋ねをいたします。  最初に厚生大臣に。皆保険との関連において、結核対策十ヵ年計画の具体的な内容を持っておられるかどうか。
  228. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 結核対策につきましては、これはしばしば坂本さんにお答えした通りでありますが……。
  229. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 皆保険との関係。
  230. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 皆保険との関係においても、御承知通り社会保障制度審議会でのはっきり皆保険との関係においての御答申は受けておるわけであります。私どもとしては、少しでもこの点について進歩したい。ただ、皆保険との関係においてとおっしゃることが、要するに、保険勘定から抜くかどうかという問題に限定される問題ではないだろう、こう私は考えておりますが、社会保障制度審議会の御答申の方向で物事を考えて参りたい、こう考えております。
  231. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 結核療養費が幾らになっておるか、公衆衛生局長、社会局長、保険局長、それぞれ所管の立場の具体的な数字だけあげて下さい。
  232. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 三十一年度の数字はまだまとまっておりません。三十年度総結核医療費六百三十四億一千九百万円、そのうちで、私から一応便宜上お答え申し上げますが、公費負担分が百八十六億九千二百万円、そのうち生活保護法が百五十一億八千百万円、結核予防法によるものが三十億六千五百万円、未帰還者留守家族援護法等が四億四千六百万円、それから保険者負担分といたしまして三百九十三億四千百万円、その内訳はいろいろございますが省略させていただきます。必要があればまたあとで保険局長の方からお答えがあると思います。患者負担分として百三十三億八千六百万円。以上でございます。
  233. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 保険局長さん、社会局長さんから、今の統計は昭和三十年度ですが、三十三年度についての大体の見通しを持っておられるはずですから、保険局長、社会局長説明を願いたいと思います。
  234. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 結核の費用が三十三年度に幾らかというお尋ねでございますけれども、三十三年度に幾らかという見積りは、いたしておりません。ただ、従来の例から申しますというと、大体医療扶助費の六五%が結核の費用に当りますから、大体今度の医療費の六五%ぐらいがそれに当るものだろうと、こういうふうに思っております。
  235. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 保険の方の医療費の見積りにつきましては、結核が幾らというふうなやり方の見積りはいたしておりません。ただ、従来のあれから申しまして、政府管掌健康保険等におきましては三割を少し切るぐらいになっておりゃせぬかという感じを持っております。それからここに国保の資料がございますが、これは三十一年九月の調査でございます。国保におきましては、結核医療費が非常に少くなっておりまして、一五・四%、大体そういうふうな見当であります。
  236. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 社会局長さんに伺います。最近の傾向では、組合管掌の結核が非常に減ってきております。清瀬地区などでは組合関係のベッドがあいているというような現象が出てきておる。ところが生活保護の方は、それと逆な現象が起っている。そこで、このふえていっている医療扶助の層の人たち、これは一体将来国保の中に入る層、それから被用者保険、健保の方に入る層、どういうふうに局長判断しておられますか。
  237. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 大へんむずかしい御質問でございまして、先ほど申しましたように、医療扶助の中で、人数から申しますと結核が四六%ぐらい、ところが経費にいたしますと六五%だ。そこに問題があるわけでございまして、結核にかかりまして入院をいたしますと、普通長くかかる、入院の費用が高いということで、普通の生活だけは何とかやっていける人が、今度は医療費も払えないというようなことになってきます。そこで、今の国保に入るかあるいは健保に入るかということでございますが、大体保険に入っておりますものは、国民保険も合せまして、大体一八%ぐらいしか医療扶助では受けていないのです。ということは、何の保険にも入っていないものが、医療扶助を受けておるものである。それが八二%、こういうことになりますというと、国民皆保険が進むに従って、この数字は減るだろうということは予想できるわけであります。大体そういうことで御勘弁願いたいのですが。
  238. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) そこでこれは局長さんでないとわからないことで、一番これはまた社会局長さんの任務だと思うのですが、その何にも入っていない八二%は、これはどういう層か、その把握ですね。
  239. 安田巖

    政府委員(安田巖君) つまりこの現在の医療保険、国民保険を入れましての普及率というものが大体六五%か六六%ぐらいですから、普通でありますというと、保険に入っていないのは三三、四%、こういうことなんでございますね。ところが、現実に医療扶助を受けておりますものを見ますと、まあ八二%が入っていないということでありますから、それだけ保険というものが御利益がある。こういうことになるわけであります。ですからこれから医療費がどの程度上るかということもありますけれども、結局、国民保険がある程度普及いたしまして、しかも、それは給付の内容というものが相当充実されておる、そうして二部負担が少くなるということであれば、必ずこれは生活保護の方は減るわけでありますけれども、しかし新しくできますところの国民保険の普及の状態あるいはその内容等が、それほど期待されたものでないということになれば、また数字が変ってくるということでございます。そういう御答弁しかできないのですが。
  240. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) そうしたら、これはお調べを願って、また御答弁いただきたい。それは、今の何にも入ってない八二%の人たちがどういう事業をしているか、それからどういう経済状態か、これは私は調べたらすぐ結果が出ると思います。その人たちが将来被用者保険に入る層か、あるいは健康保険に入る層か、これは一人一人当っていけば無限の数でありませんから、できると思うのです。これはぜひ一つ御調査願いたいのです。お約束できるでしょうか。
  241. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 工夫をしてみまして、できるかどうか一つ努力してみます。
  242. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 保険局長に伺いますが、保険財政の面で、結核問題について、所管の局長としてどういうふうなお考えを持っておられますか。
  243. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 御質問の御趣旨を若干はかりかねております。保険財政に重圧を加えておるか加えていないかという御質問であるとすれば、これはやはり加えておりますというお答えになります。
  244. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 保険局長はこのごろあまり答弁ずれがしてしまって……(笑声)、もっと率直に……。つまり、私が結核問題について今お尋ねしましても、公衆衛生局長は、昭和三十年くらいの統計しか持ってこないのですよ。こういうところに、時代のズレと感覚のズレがあるのです。だから保健所なんかちっとも伸びっこないのです。この点についても、保険局長もきょうは非常に慎重に、なかなか言わなかったのですけれども、ある程度の数はもちろん皆さん作っておられるのです。それで、局長さんもやはり結核の大家ですよ、今日結核の大家は、公衆衛生局でないのです、むしろ保険局長がこの結核のかぎをにぎっているのです。ですから、あなたのお考えを聞かしてもらいたい。それだけのことです。
  245. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 結核を何とか撲滅といいますか、そういうことを手っとり早くやれるものならやって、保険の負担しております襲用というものを、一日も早く軽減したい。かように考えております。  それから今日結核については、私の方がよく知っているだろうという仰せでございますが、実は、私どもの方では、ある一定時期おきましてこれこれの管掌で結核医療費がどのくらい占めているかという調査はいたしたことがございます。しかし、常時にそういう実は調査をしておりません。今日、結核が保険の医療費にどのくらい占めているかという数字につきましては、あまり新しいものを持っておりません。ただ、私の感じでは、三、四年前に調べました数字よりは、結核の治療費も変って参っております。少し減ってきておる。こういうような見方をしております。
  246. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) それでは、今度は公衆衛生局長さんに、結核予防法の拡充についてのお考え、三十三年度についても厚生省は原案を持っておられましたが、これは通りませんでしたが、結核予防法を拡充するについてのお考えを一つ聞かして下さい。
  247. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 結核予防法で拡充しなければならない医療費の面でございますが、これは、予防の面では健康診断それから予防接種の実施率を上げていく対策を講じていくのが第一でございます。その点は、今回の予算でもある程度実現できるように努力したつもりでございます。  医療の面では、現在の結核予防法による医療費の公費負担の対象が、ごく限定されたものになっております。それをずっと広げて、そしてやっていくということでございますが、終局的には、先ほど大臣がお話ございましたように、社会保障制度審議会の勧告の線に沿っていくということでございます。とりあえず、私ども三十三年度で計画いたしましたのは、非保険者——保険の恩恵を受けてないいわゆる、ギャップになっている人たちに対して、保険と同じような医療が受けられるように、国庫負担の対象を広げたいというのが、私の考えでございます。
  248. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) ただいまの公衆衛生局長のお考えは、財政的にすっかり大蔵省にけられてしまったが、厚生大臣に伺いますが、予防の方はうまくいったが、医療費の方をどうしてけられてしまったか。その最大の理由はどこにありますか。
  249. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) この主たる問題は、率直に申して、本年度の予算というものの編成方針から見ますと、厚生省の重要な施策というものについて、相当の金額を盛らなければならない。私どもとしては、まあ私の考え方を率直に申せば、結核対策を、今は坂本さんの御指摘のように、組合管掌の健康保険では、事実会社によっては結核対策が十分であるために、保険財政自身にも余裕ができてくるというところが相当あったわけです。国家も、率直にいえば、同じような結果を来たすべきはずです。そういう観点から、これは一時の金ではあるが、国家百年の計からいうならば、この金はかえって非常にいい結果をもたらすものである。そうして将来医療費の減少を来たすものである、こういうような考え方から、ぜひ結核対策をやりたいという考え方であったのであります。しかし、財政上の理由一つでありますが、ただ、幾分私どもの方の調査研究でも、今、三十年度の統計しかないじゃないかとおっしゃるように、率直にいうと、結核の実態調査をいたしましたのが二十八年であります。こういう問題は、もっと的確につかむべきはずのものだと思うのであります。そういう点は、今度の予算にも実態調査をさらにやろうということにで、そうすると三十八年の実態調査と今回の実態調査で、各種の問題が非常に判明するだろうということも考えております。しかし、一日も早く結核対策をするという考え方でございましたが、全体の経済の調整過程と厚生省の予算要求との間に、これは相当の食い違いができて、かえって財政上の理由から現在御審議を願っておるような予算にとどめ、ざるを得なかったと申し上げるよりほかないと思います。
  250. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) それでは最後に一点だけお伺いいたします。あと、しさいにわたって、また別の機会に大臣と討論をしていきたいと思います。  最後の点は、たびたび総理も社会保障制度審議会の勧告を尊重するということを、特に年金問題については、言っておられる。それからまた厚生大臣も、この社会保障制度審議会の勧告の重要性をたびたび強調しておられる。そうして、すでに審議会の勧告は、昭和三十一年に出されて、その中には非常に示唆に富むものが多いのです。そうしてまた、その勧告に従うところの準備もぜひしなければならないと思う。ところが、実際の面では、もちろんこの初年度三百億円を出せといっても、これはなかなか出しにくいと思いますが、この勧告の中で、たとえば保険料の一部をプールさせて、結核医療費のために一種の再保険基金を作ってはどうかというような考え方、あるいは厚生年金保険の積立金や共済組合、健康保険組合などの稿立金などから一時的に資金を借り入れて、利子分を国庫が見るというようなこと、こういうような面は、三十二年度にこういう計画というのがすでに始められておるべきであったと思うのです。もしそういう努力ができておるならば、私も、大臣の言う皆保険あるいは結核対策ということを、これは与野党をこえて支持したいのです。しかし、そういうことを何にもしておられない、しておられないで、結核対策だとか社会保障だとか皆保険だとか、口だけで言っておられる、そういう点で、私は、大臣もどうもちっとも責任をとられた厚生大臣でなかったと言わざるを得ないのです。これは何度聞いても同じ返事をいただくだけなので、私はこの点をきょうの最後の言葉として、これからはこの勧告の最後のところから出発して、もう少し社会労働委員会などで掘り下げて検討していきたいと思います。これで終ります。
  251. 市川房枝

    ○市川房枝君 簡単に一つだけ保健所の問正題で伺いたいのですが、御承知通り、昨年の国会で、旅館業法が改正になりまして、従来は公衆衛生の立場に立ってだけ監督しておられたのですが、あの改正によって、善良なる風俗という言葉が加えられたので、これは売春防止法の実施に関連しての改正であったと了解しております。ところがその保健所で、たとえば東京で聞きますと、保健所で旅館の方の監督をしておる方は一人しかいらっしゃらない、それで、実際問題としては、ほとんど旅館なんかを回っては歩けない、実際上は何にも監督していないのだということを聞いたのですが、この法律の実施以来、何か保健所としてそれに対する対策を、人あるいはその他において、お立てになっているかどうかということを一つ。  それから善良なる風俗ということが目的に加って参りましたあと、保健所としてのそういう旅館の取り締りについて、従来とどういう点が違ってきたのか、結果として、何らか具体的な事実が伺えましたら伺いたいと思います。その二つをお伺いします。
  252. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 昨年の旅館業法の改正によりまして、風俗のいろいろな違反も営業取り消しという原因になるようになっております。ただし、これはあくまで、昨年の改正では、勅令九号違反の罪を犯した者を調べまして、これを営業の取り消しないしは停止をする、こういうことになっておりますので、風俗関係といたしましては、結局、警察によるこれらの犯罪の摘発が先行いたしまして、それがさらに営業を今後続ける際に、いろいろまた不適当になるというような場合に、これを取り締るようになっております。今までのところ、もうすでにわれわれの方にはっきりと報告がありました事例は、営業停止になりましたものがございます。これにつきましては、保健所の方がこれらの風俗事犯を直接監視して取り締るということにはなっておりませんので、このために人を増加するということは不可能でございまして、今までに特別にこのための人の増加は行なっておりません。従いまして、今度の国会で勅令九号の罪が三月でなくなりまして、売春防止法に変るものでございますから、この改正を今御審議をお願いしておりますが、先般参議院の方だけが済んだわけでございます。
  253. 市川房枝

    ○市川房枝君 今、警察とおっしゃいましたけれども、しかし、旅館に対して警察が入って、そうして取り締ることはできないのでございましょう。保健所の担当の方ならば、つまり中に入って、公衆衛生に関する件、それから今度の善良の風俗ですから、それを取り調べになることができるのだと私は了解しておりましたけれども、そうじゃありませんか。
  254. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 旅館に立ち入りますのは、旅館業の許可の条件になっております衛生の諸措置を監視するということになっております。今の風俗の中の違反事犯ということは、むしろこの保健所の方は触れないということになっております。ただ、一般的には、旅館に健全な営業をせしめるようにという一般的な指導はいたしておりますけれども、個々の事犯の監督、監視ということは、あくまで勅令九号違反あるいは売春防止法の違反容疑ということで、これは警察関係で取り締る、こういうふうに実は割り切っておるわけであります。これは、先般旅館業法の改正をいたしましたあと、通牒でも、臨検のごとき、あるいはこれらの旅館に対して保健所の方から、事件の摘発というような形で立ち入ることは、むしろしないという形になっております。ただし、風俗の問題といいましても、例の学校の周辺百メートル以内にいかがわしい旅館を作るというような場合には、これは直接の事犯というよりも、法律に昨年の改正で入りましたので、これを旅館として許すか許さぬかというための判断ということは、これは保健所の方で判断をいたしておるわけであります。
  255. 市川房枝

    ○市川房枝君 今のお話を伺いますと、それでは風俗関係については、保健所は何もタッチをしておいでにならないということでございますね。
  256. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 旅館の健全なという中には、いろいろ違法行為とか、また社会上不適当な旅館の営業はしちゃいかぬということでの一般的指導は、これはもう当然やっております。ただ、今の具体的な風俗の違反事件、すなわち売春的な事件が起るかどうかということについての個々の取締りは、これはタッチしておらぬ、こういう意味でございます。
  257. 市川房枝

    ○市川房枝君 これは警察がしていると今おっしゃったのですが、警察がどうしてできるのですか、警察は入れないのですね。
  258. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 結局これは単に旅館と限りませんで、売春事犯の問題であろうかと思いますが、やはりある程度の聞き込み、その他の容疑がかかれば、これは捜査をするわけであります。これも一般的な犯罪の容疑に対する捜査という形以上には、これは困難であろうかと思います。
  259. 剱木亨弘

    ○副主査(剱木亨弘君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  260. 剱木亨弘

    ○副主査(剱木亨弘君) 速記をつけて下さい。  藤原委員の発言につきまして、主査におきまして速記録を調査の上、もし不適当な個所があれば取り消し、善処いたします。
  261. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はちょっと厚生大臣に簡潔にお伺いしたいと思うのでございますので、ぜひとも誠意ある御答弁をお願いしたいと思います。  実は小児結核の問題でございますが、これ非常に重大だと思うのですけれども、きょうは時間がなくて、細部にわたって質問のできないことが残念でございますが、病院へ参りましたときに、小児結核で入院している子供たちのみじめさというものは、見ていられないような実情に置かれております。厚生省では、いろいろ努力されているのでございましょうが、この子供たちの教育の面でございます。これらは、文部省とどのような御連携のもとにやられておられるかということについて、一つ私の安心のできるような御答弁を伺いたい。教師の派遣の方法などがどうなっておるか、児童病棟の設置と教育設備の問題についてどうなってるか、児童患者の医療費に特別の措置を講ずるお考えがあるかどうか、さらにまた、やられておるかどうかというような問題、児童患者に対して特別の食費を与えられるというような熱意、考慮がなされておるかどうかということについてお伺いしたと思います。
  262. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 児童の結核患者につきましては、一般のおとなと同じ病室に混在をしておるということは好しい姿ではありませんので、なるべくまとまった形において小児病棟または小児病室という形において収容をするように、国立の療養所あるいは小児結核の保養所その他において努めていただいております。厚生省全体としてそういう形でやっておるのでございます。そういう所につきましては、やはり児童の結核に対しましては、治療と生活指導と、それから学習指導とが、まあそれらがそろって行われることが望ましい姿でございますし、従いまして、小児病棟等できました所につきましては、教育委員会から教員の派遣及び教育をやっていただくように、地方に十分話し合って進めていくように努めておる次第でございますし、現実そういうような姿において運営されてる所が相当多くございます。ただ、実際問題としてそうなりますというと、教育委員会の予算の問題、経費の問題にからんでくるわけでございますから、その辺にひっかかってどじを踏んでいる所も、私は耳にいたしておるのでございますが、そういうことで推進をして参りたいと思います。  それから費用の問題につきましては、これはその保護者が保険に入っておりますれば、家族として保険の対象になるわけでございますが、それからまた結核予防法によります医療費の補助等につきましても、これも同じように取り扱われているわけでございます。医療費の問題について一つ考えなければならない点は、おとなでありますというと、全部保険で見てもらうという種類の人が相当多いわけでございますけれども、児童については、多くて家族としての給付を受けるだけでございますから、その点は、おとなの場合と相当違うわけでございます。そういうような事情も考え、また、現実児童をなるべくおとなと混在せしめないで、今申し上げましたように、治療と生活指導あるいは学習指導、それらがあわせ行われるようなことにするためには、やはり相当経費的にも考えなければならないというふうな考慮のもとに、予算的にも一応計画をし、あるいは努力をいたしましたけれども、三十三年度においては、十分それらが実を結ばなかったことは残念でございますが、今後努力いたしたいと思います。
  263. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、昨年第一国立に入院しましたが、子供さんたちが寝巻がない、それで看護婦さんたちが廃物になった敷布を休みの時に努力してこれを寝巻に縫って、そして入院した子供に着せておるのです。ところが、廃物になった敷布でございますから、洗濯すればすぐ破れる、とっても苦労しております。私はちょうど入院して、いろいろ見舞をいただいたが、床上げというものをやめて、何か患者さんに病院で役に立つものをしたいが、何がいいだろうと看護婦さんに聞いたのです。そうしたら、実はこういうわけでございますから、子供に寝巻がいただけたら何よりありがたい、看護婦がそう言う、それで、私は若干差し上げましたら、とっても喜ばれたということを、私も一緒に泣いたんです、看護婦さんと。そういう実情のもとに子供が療養をしておるということをお考えいただきまして、ぜひ何とか善処方をお願いしたい。おやつ代もないのです。それで、子供がおひなさんの時になると、看護婦さんたちがお互いに小づかいを出し合って、ひなあられを買ってきて、子供を喜ばしている、とかくの批判をされながら、過重な勤務をしておる看護婦さんたちが、みずから子供たちにそういうサービスをしておる、こういう点をお考えいただいて、ぜひ大臣一度小児結核病棟をごらんいただいて、強く大蔵省に要望して、来年度はあたたかいお心やりが実を結ぶうな御努力をお願いしたいと存じます。  それから次にお伺いしたいのですが、これはもうこの間来ていただいて、医務局長、公衆衛生局長と話したので、深く追及する気持はございませんが、看護婦さんたちが、あるいは保健婦さんたちがお産をしたときの産前産後の休養がないために、無理をしておる、厚生省ではいろいろ努力をしていると言っておられますが、出先の病院では、これが実を結んでおりません。そういう意味で、非常に事実とこの間の厚生当局とのお答えの間には、相違をしておるのです。従って、看護婦さんたちを雇うときに、いろんな制限をつけておる、そういう指令をしたことはございませんという御答弁でございましたが、実際には指示が出ておる、看護婦さんを雇うときに、結婚したらやめるということで、それから年令に対しましても幾つから幾つまでを何人にするというようなことの基準をお示しになっておる、資料が出ておりますけれども、そういうことで、果して看護婦さんの人権を尊重した態度と言えるでございましょうか、そういうことがあるから、私どもが産休問題になると非常に心配いたしますのは、そこにあるのです。口で私どもにはお答えいただいても、実際的には指令が出ておるというようなことでは、私は安心していられないのでございますが、そういうことはいかがでございますか。まず、看護婦は三十歳以下を九五%とする、現在は八〇%、主任看護婦は二十五才から三十五才までを九〇%、現在は八〇%。看護婦長が二十六才から三十五才までを九〇%とする、現在は七〇%。総婦長さんにしても現在七〇%のものを、三十五才から五十五才までを九〇%とするというようなこと。それから雇用の場合に、通勤の制限をしてもよろしい、こういうふうなことの指令が出ておりますが、これで住居の自由とか結婚の自由に制約を加えていないというようなことが言えるでしょうか。
  264. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 実はその話を承わりましたのですが、率直に申し上げまして、私どもからさような指令を出したことはないのでございます。(藤原道子君「それじゃどこから」と述ぶ)私、ちょっと今の質問のお話で思い浮かべたのでございますが、婦長さん方を集めまして、いろんな研究会などをやりまして、そのときに、あるいはそういう問題が問題として取り上げられたのではなかろうか、しかし、それにしても、そういった研究会あたりで結論を出して、それが厚生省の方針としてやるということは、ちょっと考えられないのでございまして、その問、誤解があるのではないか、こんなふうに思うのでございます。
  265. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでは厚生省からは断じてそういう指令は出ていない、こうした基準をお示しになったこともないということをはっきり言えるわけですか。
  266. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 厚生省からさような指示をしたことはないということは、はっきり申し上げることができると思います。
  267. 藤原道子

    ○藤原道子君 これはこの程度にいたしまして、またの機会に譲りますが、ここで大臣にお伺いいたしたいのですが、この問の私総括質問で、生活保護費の最低基準があまりにひど過ぎる、これに対して一つ引き上げる意思があるかどうかというようなことをお伺いいたしまして、まあ御質問したのでございますが、考慮しますというようなことであったと思う。これに対してどうお考えでしょうか、これが第一点。  それから収入控除の面ですね、内職等によって収入があった場合に差し引かれてしまう、まあ四百五十円から千二百円まで認められておりますが、これらに対して働いても働かなくても同じだということになれば、惰民を養うばかりになると思うのです、やはり将来に希望を持たせるためには、ここにあたたかい何かの心づかいがあってしかるべしだと思うので、結局今の生活保護法の最低基準には、いつも言うので私は言いたくないのですが、労働の再生産費は入っていないわけなんですが、一般の家庭に比べまして、四〇%ぐらいで生活しておるわけです。これでは社会に復帰は望めない。これを、どういうふうにお考えになっておるか、大臣のお心がまえを聞かしてほしい。
  268. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 私もあの生活基準の内容はよく調べておるのでありますが、率直にいっていわゆる国民の平均の生活水準に対して四〇%というのは、これはほんとうにちょっと心としては私はほんとうにお気の毒のような気がいたします。これでもってしていくと、労働の再生産どころじゃなくて、もっとそこまでいかないということが考えられるのであります。しかし、藤原さんの方も、私はだから今後この生活基準が上ること自体について努力することはしたいと思います。しかし、これは藤原さんもお考え願いたいと思うのは、ただ空にそういうものが出てくる、金が出てくるわけじゃないので、お互いに国民がやはりそういうところへ分配ができるように持っていかなくちゃならぬということも事実だと思う。両々相待ちまして……、しかし、ともかくも私は厚生大臣でございますから、そういう生活被保護世帯に対しては十分今後機会あるごとに、しかも国民の生活水準とにらみ合せながら努力して参るということだけはお答えできると思います。
  269. 藤原道子

    ○藤原道子君 収入控除の問題は……
  270. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 収入控除の点、お答えしなくて申しわけないのでありますが、これも事実ごらん願うと、今も藤原さん御指摘のように、収入控除についても初めから見ますと、ずいぶん何と申しますか、幅のできるやり方をしてきておるわけでございます。ことにさらに年末のこと……、いろいろ考えてみますと、そう一律にくぎつけにしておる、厚生省としてもくぎつけにしてきたとは思えないのであります。これは結局働く意欲というものの一面と、片一方何といいますか、働く者と働かない者の差は当然考えて、働く者の意欲を助長するということも必要でありますが、私はその点決して看過するつもりはございません。しかし一方においては、やはり生活の何と申しますか、自分の生活自身について他人の税金から、率直にいえば富の公平な分配からくるのだということについても本人自身も考えなくちゃいけないのじゃなかろうか、二つをよくかみ合しながら、しかしながら現状に対して少しでもいい方に考えていくというのが私どもの考え方である、調和を求めつつもしかも改善をして参るというのが私の厚生行政としての考え方で、その点も私はそういう方向として藤原さんから御叱責をいただくような方向ではないと考えております。
  271. 藤原道子

    ○藤原道子君 そういう考え方が困るのですよ。私何もあなたを叱責しているのじゃない、あなたを応援しているつもりなんですよ。生活の四〇%というのは、基準の規定が四〇%、実際に受けているのは二五%から三〇%しか受けていないのですよ。ここに厚生大臣に考えていただきたい点があるのです。私はぜひ……、こういう点について安田さんどう思いますか、あなたはまたもっと締める方だけれども…。それと去年の暮のもち代の差っ引き、こういうことはあっていいと思いますか。
  272. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 大臣のお答えの通りだと思っております。
  273. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 私から一つ言わしていただきたいと思います。いや御叱責というのは、私は御叱責をちょうだいすることはありがたくちょうだいしているわけです、率直にいえば。私どもが指向しておるところのこの国民の健康と幸福を守るという点から御叱責をちょうだいするのは、これは決して変な意味で申し上げたわけでなしに、私はありがたい気持で受けておるわけです。で、なお努力をいたして参りたいという気持から御叱責と申し上げたのであります。言葉が悪うございましたら、幾らでもこの点は……、今は真意を申し上げましたから、それでお許しを願いたいと思います。
  274. 藤原道子

    ○藤原道子君 いずれこうした問題は社会労働委員会でやりますが、しかし、そういうお考え方で上の方はあっても、地方に行けばどういうことがなされているか私は申し上げたい。一つの例ですけれども、これは安田さんや山口さんをこの間わずらわしてやっと解決つきましたが、うまくいっていると思ってうまくいっていないので、この間伝染病で、チフスで入院した人がある。雑貨の行商なんですよ。本人がチフスで入院して、腸出血している。それで、つき添い人をつけたわけです。つけるときにいろいろ言われたときに、何とかしますからと言って頼んだ。ところが、病院は完全看護となっている。ましてや法定伝染病なんです。ところが、何とかすると言ったんだからつき添いの費用を払えと、こういうことになった。ところが……、細君の方が、ほかのある人から聞いたら、病院に私が電話をかけたら、細君も薄情です、病院へも出かけてこないと言われた。私は、細君に亭主が入院しているときにお前なんだと言いましたら、あそこまで行くには四十円の電車賃がかかる。電話をかけるには十円の電話料がありません。いよいよ仕方がなくて親子心中をしようと思いましたが、今死んだら入院している亭主がどうなるかと思って死ぬにも死なれない、こう言って私のところへ泣いて来たんです。法定伝染病で入院して、家族が生活保護を受けていても、何とかすると言ったんだからお前払え、こういうふうなやり方で、果して生活保護法の精神が生かされているだろうか。こういうことが、随所に起っている。ですから、厚生大臣に十分目を光らせていただいて、こういうことが起らないように……、まあ私のところに来たからいいようなものの、もし来なかったら彼女は死んでおります。それは何とかしますと言っても、腸出血をして生きるか死ぬかの亭主の顔を見れば、それは夫婦の愛情として、何とかしますから助けて下さいと言うのは当りまえだと思う。ところが、そう言ったんだから払え、こうことが現実に起っておりますので、この間幸いにも安田さんや山口さんたちに私は泣きついたのですよ、あのときに。それで、東京都で何とかしましょうということにこぎつけていただいた。法定伝染病なんだから当りまえだと思うことが当りまえに行われていないということを大臣に申し上げまして、御参考にしてもらいたい。  それからもう一つ、この間の質問で確約を得られなかった問題ですが、高等学校に行けば生活保護はとめられるのです。これはどうしますか。貧乏人の子は高等学校に行くのはぜいたくですか。生活保護法にはそういうことは書いてない。法律を守るのですか、守らないのですか。勝手に基準をきめちゃってね、法律を曲げて運営されちゃ困る。
  275. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 生活保護法は、四条に、自分の資力なり能力なりはまず使ってから、それから足りない場合にこれを補うのであるという原則があるわけです。そこでどうも一つ一つのケースを聞きますと、私どもほんとうにこれは藤原先生のおっしゃることはごもっともだと思うのでございまして、ことに戦争未亡人なんかで子供一人を頼りにして生きておるような人がせっかくその子供を大学まで入れたいという気持はよくわかります。しかし、今は義務教育というのは一応中学で終りになっております。(藤原道子君「そんなことはわかっている」と述ぶ)でありますから、生活保護を受けていながら高等学校に行くというようなことになりますというと、片一方の方ではこれは私がいつも申し上げて恐縮な例でございますけれども、日雇いでありますとか、あるいは大工、左官屋であるとか、あるいは植木職でありますとかいう人は、自分の子供が中学を出ますと、もうすぐこれは働きに出すのです。そういう人たちは生活保護法にはかかっていない。そういうボーダー・ライン層というものがたくさん日本にあるのです。そういう者をほうっておいて、生活保護にかかっているけれども、親が高等学校に入れたいということを認めなければならないということは、今の生活保護法の、法律の建前から言っても無理ではないか。もしそういうことであるならば、それは国の育英の制度として取り上げたらどうか。それは生活保護法つまり公的扶助の制度に全部おんぶしていくということは、気持はわかるのですが、実際問題としてはちょっと無理ではないか、こういうふうに考えるのです。
  276. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、育英でやってくれというのとはまた違うのです。そうではないのです。子供が昼間働いて、これで一人前の任務を果しているのですよ。それでさらに夜学に行く場合に削られるのです。これはどうなんです。能力のある子供が、親がやりたいというのでやるのではないのです。子供が行きたくてならないから昼間働いて夜夜学に行く……。
  277. 安田巖

    政府委員(安田巖君) それはやはり生活保護というのが世帯単位の原則をとっておりますから、そして子供が中学を出たならば一応そういった面で働かなければならないという建前はとっている。子供が、自分が昼働いて夜学に行くという面がありますというと、これは法律上から言いますと違法な取扱いではありまするけれども、そういう場合に世帯を分離いたしまして認めておるというような状況もあるわけであります。その程度が精一ぱいではないか、こういうふうに考えます。
  278. 藤原道子

    ○藤原道子君 厚生大臣に……。世帯を分離すると言ったって、そんな見せかけのことをしないでも、昼間働いて夜夜学に行くというその子供の努力だけも日本の法律は認めてやれないのでしょうか。私は自分自身が家が貧乏で尋常五年までしか行ってないのです。それがいまだに悔いになっています。自分が昼間働いて夜夜学に行く場合にでもそのことによって世帯全体が生活保護の適用からはずされる、こんなばかげたことは通らないと思うのです。安田さんは自分が貧乏でないからそんなのんきなことを言っているんです。
  279. 安田巖

    政府委員(安田巖君) お気に入らないかもしれませんけれども、私から答弁申し上げます。  大体高等学校に行くのは、国民のうちで大体四十何パーセントかであります。(藤原道子君「そんなことは聞かなくても知ってます」と述ぶ)そして、今のボーター・ライン層という者は一千万と、称しておりますが、その中でやはり昼間働いて夜学に行っておる子供たちもおるわけです。それは生活保護は受けていないわけです。でありますから、生活保護は受け、同時に夜は高等学校に行くのだということになりますというと、先ほど申しました生活保護の一般原則にはどうしても反してくる、こう言わざるを得ないのであります。いろいろ研究はしてみますけれども、現状においてはそういうことであります。
  280. 藤原道子

    ○藤原道子君 簡単に済まそうと思ったのが済まなくなってごめんなさい。だけれども、ボーダー・ラインの子供さえも、今の高等学校には能力がなければ行けないのです。たまたま生活保護を受けている子供でも、能力があって、しかも昼間働いて一人前の責任は果しているのです、夜学に行くのは、その子がどうしても将来お父さん、お母さんのようなみじめな状態でなくて、何とかして社会人として立ち上りたいと思う気持が夜学へかり立てていくのですよ。入学試験はボーダー・ライン層の子供も、あるいは生活保護を受けている子供も同じように行われていると思う。そういう場合でも切るということは私は納得できません。しかし、これはこの程度にしておきます。押し問答をしても仕方がない。  さらにお伺いします。母子寮の子供の健康状態を調査されたことがありますか。これは児童局長から。
  281. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 特に母子寮の子供の健康状態を調べたことはございませんが、一般的に申し上げまして、児童福祉施設に入っております児童の身長、体重等につきまして調べてみますと、相当一般よりも低いことはこれは事実でございます。そういう意味において、これらの栄養上の問題、あるいは給食管理の問題その他体位の向上につきましては特に意を用いて、たとえば給食費の値上げの問題でありますとか、それから実際にそれを実施する場合の給食栄養の問題については特に気をつけて専門的な指導を受けてやりますように、いわば会議のたびごとにほかのことはおいても申しておるような状況でございます。
  282. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は押し問答をしても仕方がありませんが、そういうことではだめだと思うのです。費用がなくて幾らやれと言ったってできないのです。児童福祉施設にいる子供よりも母子寮にいる子供の方がさらに悪いはずです。従って、これは至急に全国の母子家庭の子供たちの健康状態、学校の成績、これをお調べになっていただきたい。沼津の母子寮を一年間かかって調べてみたのによりますと、成績がぐっと悪い。これでは次代の主人公になる子供たちのことを思うと、将来が暗い気持がいたしますので、特にお願いいたします。  さらに精薄児童のことも聞きたいけれどもやめます。時間がございませんから……。  ただ、最後一つお伺いしたいのは、今国会に出ております衛生検査技師法案というのですが、衛生検査技師の受験資格でございますけれども、今度は短大を出た者でなければ受験する資格がないというようになっておるようでございますが、現在中野と北里研究所などにこの学校があると思うのですね。衛生検査技師になる学校が……。  ところが、もしこの法律が通るといたしますならば、現在アフター・ケアで勉強して受験して衛生検査技師になっておる人たちの将来はどうなるか。しかも試験を受けた成績を見ますと、むしろアフター・ケアで勉強して、技術を修得して国家試験を受けた人の方が合格率は非常に高いのでございます。私は、乏しい国の財政でございますから、いろいろ欠陥だらけです。その欠陥だらけ、乏しい中の、アフター・ケアで、結核回復者の将来のために職業を補導して、しかも十分これが生かされているのに、もしこれができたとするならば、将来このアフター・ケアの人々の問題は一体どうなるのか。こういうことについてお伺いしたい。さらに法律を見ますと、経過措置として二年以上就職している人は認められるわけなんです、ところがそれならば、今度入った人は一体どうなるのか。さらに今後の結核患者の問題は一体どうなるのか。どういうふうにお考えになってこういう法律をお出しになっておるのか。ちょっとお伺いしたい。
  283. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 本法は議員提案の法律でございます。
  284. 藤原道子

    ○藤原道子君 だから、政府はそれをどういうふうに考えるか……。
  285. 山口正義

    政府委員(山口正義君) ただいま御指摘の点は、第十五条に受験資格が出ておりますが、その際に「大学に入学することができる者で、文部大臣が指定した学校又は厚生大臣が指定した衛生検査技師養成所において」云々ということがございますので、ただいま御指摘のような施設、それを厚生大臣が指定することになると思いますが、その指定基準を事務的に考え、またそれに合致するような今のアフター・ケアの施設なんかで、そういう点が足りない点があれば、ある程度それは補充していただかなければならないと思いますが、今後入る人についてはそういう点を事務的によく打ち合せて、そういうところでいろいろ勉強している方ができるだけ将来こういう方面に進まれるように努力したいと思います。それから、現在の経過規定は今まですでにやっておられる方でございます。これからの方は先ほど最初に申し上げたような方法で事務的にやって参りたいと思っております。
  286. 藤原道子

    ○藤原道子君 それじゃ、さらに念を押しておきたいのですが、もしこの法律が通ったとしても、今ある清瀬とか、あっちこっちございますね、五、六カ所。そこでやっておるところの内容を整備して、その資格に合致するような配慮はしていただけるのですか。
  287. 山口正義

    政府委員(山口正義君) これは、厚生省内部所管の局が私の方と違っておりますが、そういう点基準は私の方で作りますし、また施設の整備というようなことになりますと、所管の医務局の方になりますので、十分連絡してできるだけ御趣旨に沿うようにしたいと思います。
  288. 藤原道子

    ○藤原道子君 最後に大臣の腹を聞きたいのです。厚生行政は大臣の腹一つですよ。みんな局長課長にしてもやりたくてたまらないのですよ。私は各省の官僚諸君を見て、厚生省の人くらい人命尊重ということに対して熱心なところはない。ところが、予算が取れないから、児童局だって子供のことをしてやりたいし、厚生省だってやりたいと思うのです。みんな予算に制約されてできないのです。どうぞ大臣はこういうことに——厚生省職員の平均を見ましても、ほかの省に比べて平均給与は低いようでございます。そういう中で一生懸命努力しているのですから、一つ予算を取るときには大いに努力していただきまして、せめてはささやかな希望を持たしていただきたい。そして社会の人にも、その政治の力がぜひ幸いな面に与えられるように御配慮願いたいと思います。特に私はどうも納得いかないのは、結核対策費が百五十七億だなんて大きなことを言っておるけれども、療養所から収入となって上る八十億というものは知らん顔をして、与党の諸君が演説するとき、結核に対しましては百五十七億を計上いたしましたなんて言う。だけれども、こっそり裏から八十億という金が入ってきておる。だから国家が結核対策に出している金は八十億差し引いたあとであろうと、私はこうばかなりに考えておる。どうなんです。そういうことですから、もっと真剣にやっていただきたいということを最後にお願いしまして、私はきょうはこれで終ります。
  289. 剱木亨弘

    ○副主査(剱木亨弘君) ほかに御質疑もございませんようでしたら、厚生省所管についての御質疑は一応終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  290. 剱木亨弘

    ○副主査(剱木亨弘君) 御異議ないと認めます。それでは厚生省所管の分科会はこれにて終了いたします。次回は明二十六日午前十時より労働省所管について御審査願います。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時五分散会