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1958-03-28 第28回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十八日(金曜日)    午後一時四十分開会   —————————————   委員の異動 本日委員松村秀逸君、館哲二君及び千 田正君辞任につき、その補欠として青 木一男君、大谷贇雄君及び竹中恒夫君 を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     泉山 三六君    理事            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            高橋進太郎君            佐多 忠隆君            松澤 兼人君            森 八三一君    委員            青木 一男君            石坂 豊一君            大川 光三君            木島 虎藏君            小山邦太郎君            後藤 義隆君            佐藤清一郎君            塩見 俊二君            下條 康麿君            鶴見 祐輔君            苫米地義三君            苫米地英俊君            一松 定吉君            本多 市郎君            三浦 義男君            安部キミ子君            亀田 得治君            坂本  昭君            鈴木  強君            曾祢  益君            高田なほ子君            戸叶  武君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            吉田 法晴君            加賀山之雄君            竹中 恒夫君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松永  東君    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君    農林大臣臨時代    理       石井光次郎君    運 輸 大 臣 中村三之丞君    郵 政 大 臣 田中 角榮君    建 設 大 臣 根本龍太郎君    国 務 大 臣 河野 一郎君    国 務 大 臣 津島 壽一君   政務委員    法制局長官   林  修三君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    経済企画庁長官    官房長     宮川新一郎君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主計局次    長       佐藤 一郎君    大蔵省主税局長 原  純夫君    国税庁長官   北島 武雄君    文部大臣官房総    務参事官    齋藤  正君    文部省初等中等    教育局長    内藤譽三郎君    文部省大学学術    局長      緒方 信一君    厚生省保険局長 高田 正巳君    水産庁長官   奥原日出男君    運輸省観光局長 細田 吉藏君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。  まず委員の変更について報告いたします。本日、松村秀逸君、千田正君、及び館哲二君が辞任せられ、その補欠として青木一男君、竹中恒夫君及び大谷贇雄君が選任せられました。   —————————————
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 次に本日の委員長及び理事打合会において協議決定いたしました事項について御報告いたします。  一、昭和三十三年度総予算最終総括質疑は明二十九日中に終了する。  一、明後三十日の日曜日は休み、三月三十一日午前中に討論採決を行う。討論各派割当時間は、社会党四十分、自民党三十分、緑風会三十分、無所属クラブ、第十七控室はそれぞれ十分以内とする。  一、討論採決に当り、総理大臣を初め各閣僚において、本会議関係上やむを得ざる支障ある場合は、副総理または政務次官をもってそれぞれかわって出席することとする。  以上理事会の決定に基き、委員長は本委員会運営をはかりたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 御異議ないと認めます。ではさよう決定いたしました。   —————————————
  5. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これより本日の議事に入るわけでありますが、その前に、昨日の委員会保留されました佐多君並びに矢嶋君の発言にかかる国際海洋法会議に関する件、及びスポーツ振興審議会答申に関する件について政府から発言を求められておりますので、この際これを許します。
  6. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 昨日海洋法会議における河崎代表演説につきまして御質問がありました。御答弁を申し上げると同時に、経緯を申し上げたいと存じます。  河崎代表から公電が入りまして、二十七日の委員会におきまして、ソ連提案が上程されたそうであります。河崎氏の公電によりますると、ソ連の案に対する意見表明機会がその場限りであるように信じられたので、その場において発言をした。そして、さきに日本ユーゴの案を支持しているということで、支持する訓令を受けて、そうして支持表明を二十五日にいたしておるわけであります。従ってそういう状態である限りにおいて、とっさの間ではあるけれどもソ連に対しては不満足な案であるとして棄権するようになるだろうということを発表したということを言って参りましたのです。  そこで今日までの経過を申し上げて御説明をいたしておきたいのであります。ユーゴの案につきましては、現地からの報告は二十二日に来ておるのでありますが、御承知のように、ユーゴの案は、公海自由に関する第二十七条のコンメンタリーを本条約文に載せるという修正案でございます。このユーゴの案の内容は、公海自由の基本原則は、諸国家が他国の国民による公海使用に不利な影響を及ぼす行為慎しまなければならないということを意味する、こういうコンメンタリー本文に条文として載せる、こういうことなのであります。これができましたいきさつは、一九五六年、二年前の海洋法会議草案作成会議におきまして、核実験の問題が取り上げられまして、インドあるいはソ連等から論議が出たわけであります。その時分には、日本はまだ国連に加盟しておりませんし、日本委員として出ておりません。当時この問題が論議されましたが、終局においてはコンメンタリーに採用されましたこの文句注釈として採用されたわけであります。従ってこの文句は、十分原爆使用または——原爆だけではありません。原爆実験ばかりではないのでありますが、もっと広く包含し、そうして公海使用に不利な影響を及ぼさないようにというはっきりした決議になっております。コンメンタリーもまたその意味において、原爆実験禁止という意味においてこれを採用いたしているわけであります。従って日本としてはジュネーブから指令を仰いで来ました際に、これに対しては、当然ユーゴの案は支持すべきであるということを申してやったわけであります。それからソ連の案は、御承知のように諸国家公海における核実験を抑制しなければならぬ、こういうことなんであります。ただソ連の案では、公海における核実験ということになっておりまして、沿岸、島嶼領海等における実験は含んでおらないような不備な点もあるわけであります。従ってこれについては議題にのせることには賛成であるが、よくそれらの事情を検討した上でなければということで、その前にソ連案内容を示して来ましたときに、またジュネーブ側からもそういう不備な点がたくさんあるということを言って参りましたので、そういう点については十分検討しなければならぬということを言ってやったわけであります。それらのことが訓令内容になっているわけであります。従いまして、河崎代表がとりましたのは、ユーゴ案が完全な、まず満足すべき案であるからそれを支持する。そうしてそれが最終的に決議になることを希望する。従ってソ連案について再び意見を発表する機会がないとすれば、それに対して日本ソ連案に対する考えを述べておかなければならぬという趣旨から、そういう言い方をしたのだ、こう考えております。以上の経緯を申し上げることによりまして、日本公海上における原爆使用禁止というものに対して、決して消極的でなかった、積極的に一番ベストな案を支持するという立場をとって今日まで参ったということを御了解をいただけるのではないかと思うのであります。今後ともわれわれとしましては、この会議もなお進行しておりますので、そういう意味において最善を尽して、海洋法典におけるこういう問題の十分なりっぱな成果を期待するように努力をして参りたいと思うのであります。以上御報告申し上げます。
  7. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただいまの外務大臣答弁は、相当重大な内容を持っていると思います。若干伺いたいと思います。まず第一番に、重要な問題について表決をやる前には、私は出先機関としては訓令を仰いで、しかる後にやるべきが原則と思いますが、どう思いますか。
  8. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国際会議におきます代表団行動につきましては、訓令を仰ぐことが必要であると考えております。しかしながらこういう国際会議運営におきましては、その日直前に議事運営委員会が開かれまして、いろいろと問題の取り上げ方が変って参ります。従って適宜その場で代表としては処置しなければならぬような事情もあるわけでありまして、そういう意味においては、ある程度の権限は付与しなければならぬ、こう考えております。
  9. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 請訓の来たのはいつですか。
  10. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 二十三日に来ております。
  11. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 訓令を出したのは何日で、その内容はどういうものですか。
  12. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、二十三日に向うからソ連案内容について、またソ連案に対かる代表部見解等を申してきたわけであります。その代表部見解等には、ただいま申し上げましたように、領海島嶼、そういう面が抜けておるし、そういう意味において必ずしも完璧とは思わないということを言ってきておりまして、われわれもそれは適当である、そういう点については十分今後研究をしなければならぬということを申しております。
  13. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 代表部発言は途中から変っております。三月二十六日の毎日新聞記事によりますと、十一日の日に第二委員会において大江代表は、「公海核実験公海の自由な使用を大幅に制限するもので二十七条の侵害である。日本は第二十七条の注釈支持する」ということを明確に演説をいたしております。一体、出先機関はこういう重要な問題について確たる訓令を受けることなく、ソビエトの提案議案とすることに賛成する、ディスカッションだけはやろう、しかしその結論については反対あるいは棄権をするというような態度をきめるというようなことはできるのですか、あり得るのですか。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま大江代表のは、そこにありますように二十七条の注釈、すなわちユーゴ案を採用をしようという、案の基本の問題かと思います。それは支持するということを言っているわけであります。むろん代表部としては十分考慮をいたしたと思います。しかしわれわれにいたしましても、ソ連柴が不備であるということは認めておりますので、そういう点については現地に申し送っております。従ってソ連案反対はいたさないけれども棄権をするのはやむを得ないかと思います。
  15. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理に伺いますが、総理は昨日私ども質問に対して、日本国民念願であるこの実験禁止実現のためになることであるとするならば、私はもちろんソ連提案であるからどうの、米英提案であるからどうのということにとらわれず、われわれとしても態度をきめたいと考えております、岸内閣態度はきまっていない。あなたの態度はきまっていない。外交公文によってこれからきめようとするときに、出先機関でこれとずれたところの態度国際会議において表明すとるいうことはけしからぬことじゃないですか、どう思いますか。
  16. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ただいま外務大臣からも御説明申し上げましたように、公海の自由をあくまでも確保するということと、それから核実験禁止というこの二つの問題につきましては、私ども一貫して考えております。そうして今説明で明らかにされましたように、日本ユーゴ提案支持することによってその目的が達せられると考えて、これに賛意を表する、支持をするというふうな態度に出ておるわけであります。昨日も私はお答え申し上げたと思いますが、核実験禁止公海の自由の原則という方面からいえば、言うまでもなく規定としてユーゴ案の方がすぐれておることは言うを待たないのであります。核実験禁止ということだけを取り上げて論議すれば、これは言うまでもなく公海で行われるものだけを禁止するというのではなしに、いかなる所においてもこの地球上において行われることを禁止しようというのが私ども念願であります。従ってソ連案を検討する場合においては、そういう論議を十分に一つ検討をしてからしないと、ただ公海だけを禁止し、陸地の方の自由を認めるような結果になることは好ましくないということを申し上げているのであります。従いまして、私は日本代表部がとりました行動は、会議の実情から見てやむを得ないことであり、政府根本方針には反しておらない、かように考えております。
  17. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 どうもそういう点がおかしいと思うのですよ。藤山外相はきのうですね、明確にここで棄権するという訓令は出しておりませんということを答弁しております。このことは当院の外務委員会における岡田委員質疑に対しても、あなたはそういう答弁をしております。ところが出先代表の言動と、さらに私はここに新聞切り抜きを持って参りましたが、三月二十六日付の朝日、読売、毎日等々の各新聞は、こぞってソ連案には同調できぬ。議案として取り上げることだけには賛成をする、その限りにおいては英国の議案にすることに反対であることに対しては同調しない、議案として取り上げることだけは賛成する。しかしこの案そのものには同調できないので、棄権するようにという結論を出して訓令を出したということを、各紙こぞって出しているじゃないか、二十六日にそうして二十七日に河崎代表ジュネーブにおいて意思表示をしているのです。時期的に明確じゃないですか。なぜそういうことを国会でしらばくれたことを言われるのですか。私はこの点はけしからぬと思います。きょうのジャパン・タイムスでもジュネーブAP電として報ずるところを見ますというと、明確に河崎代表はそれを裏ずけすることを申しております。この新聞は全部これはでたらめな記事ですか、どうですか、外務大臣
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ソ連案に対してそのまま同調できないということはむろん申してやったわけであります。従ってそのまま同調できない場合は、やむを得ず、棄権をするということもあり得ることだと思います。
  19. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は総理に伺いますが、この公海の自由の原則を貫くということは、今まで一貫して主張し行動してきたことだと思うのですね。で、しかもこの問題はきのうも指摘されましたように、北洋漁業等に重大な影響を持つ問題であり、日本国民の生活に影響甚大な問題なんです。何がゆえに政府代表をしてこの一点を支持させないのですか。
  20. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどもお答え申し上げましたように、この公海自由の原則に関する問題といたしましては、ユーゴの案が出ておりまして、それは核兵器実験も含んだもう少し広い意味において公海の自由をより支持しよう、これの自由を確保するためにその案が適当であると考えて、これを支持するように訓令を出していることから見ましても、日本公海自由の原則というものに対する意見はきわめてはっきりしており、終始一貫していると思います。
  21. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは総理おかしいですよ。二十七条本文に入っただけでしょう。で、ここ二、三年その南太平洋における核実験をやめてほしい。松下さんを特使として派遣して世界に呼びかけたのも、あなた二十七条のあれで、注釈にあるこの「公海使用に不利な影響を与えることのあるいかなる」云々という、これを根拠として世界に叫び続けて参ったのじゃございませんか。従ってこの問題が具体的に出たならば、公海の自由という立場から核実験はやめなくちゃならぬという、この点に対しては、今までの日本国民の主張並びにそれを背景に国際社会に叫び続けて参りました政府としては、当然代表には筋のある私は行動をとらすべきだと思うのです。そうすることによってインドを初めアジア諸国等のを共鳴を得て、一致団結することによって、そうしてこの核実験があるいは海洋からさらには大陸と、こういうふうに日本国民悲願が達成されるように私は推し進めるべきだと思うのです。今のあなたのような態度では、とてもそれはだめですよ。核実験禁止国民悲願だということを、あなたは本会議でも委員会でも再三再四述べられました。また松下特使を派遣されたのですが、そうしてこういう行動をとったのでは、国民はこれは信頼することはできませんよ。この前から議論になっておりまするように、核兵器日本には入れさせない。また日本みずから持たないということを言われておりますが、こういうことをやられますと、それに対して国民は不安を持ちますよ。きのうも私申し上げたように、西ドイツはNATOの要請に基いて核装備をするようになったのです。そういうこともあわせ考えるときに、言われることと行うことと首尾一貫しない岸内閣のこういう外交政策について、出先機関行動について、国民は大きな不満と不安を持つと思うのですが、いかがでございますか。
  22. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 同じことを結局はお答えすることになるのでありますが、私は核兵器実験禁止については、これが公海であろうと陸地を問わず、これをやめることつきまして、あらゆる従来努力をしてきており、今後もそれは努力を続けていかなきゃならぬ問題であると思っております。公海自由の原則に関する海洋法会議における問題といたしましては、私どもの、この海洋自由というものを確保するという見地から申しますというと、この海洋の自由を妨たげるような一切の行為を、それは核実験禁止ももちろん含まれておりますが、包括して、そういう行為をさせないユーゴ提案の方がより適当であるということで、これに対して支持を与えるように訓令をいたしましたわけであります。核実験禁止そのもの目的とするところの事柄に関しましては、私はあらゆる努力をするということをお誓いをしておりますし、努力をしていくつもりでおります。
  23. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 非常に私は不満でありますが、私の質疑保留質問に対する質疑でございますから、この問題についてはこれで打ち切ります。  で、先ほど委員長から宣言されましたように、昨日の総理答弁保留の分を答弁していただきたいと思います。
  24. 岸信介

    国務大臣岸信介君) スポーツ振興審議会からの答申を私拝見いたしました。要するにスポーツ振興を目途として、スポーツ振興法というような法制を整備して、これをやる必要があるという御意見でございました。私はその趣旨には賛成でございます。具体的の方法等につきましては、今主管庁におきまして検討させまして、その趣旨を到達するように努めたいと思います。
  25. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 一問させていただきます。一問だけです。その法的措置についての総理答弁はそれで了解いたします。今後御検討いただきたいと思います。答弁のございません部分の一つ重要な問題としてお伺いいたしたい点は、スポーツ団体に対する補助金交付というのをさらに答申しているわけです。このことについては、第一号答申藤山外務大臣審議会の会長当時になされているわけです。第二号答申がなされ、三月二十四日になされたのが最終答申になっているわけでございますが、この藤山さんの時代の答申にも、国際競技の交歓が非常に大事である。さらにそういう国際競技についての経費は二分の一以上助成してでもやるべきであるということを答申されているわけです。それが具現しないので、この最終答申にさらに出てきているわけですが、あなたが諮問機関としてお作りになったスポーツ振興審議会としては、相当これを重要視しておるであろうと私推察しているわけです。この点について総理意見の開陳がございませんでしたので、この点について意見を承わっておきたいと思います。
  26. 岸信介

    国務大臣岸信介君) スポーツ振興をはかりますためには、一方において法制の整備というようなことも必要でありますと同時に、これに対して国家が適当な補助を、援助を与えるということは必要であろうと思います。それにはこの国際競技とかいうようなものが開催されるというような場合においては、これに対して、政府としても適当な補助を考えていかなければならぬ。また適当なスポーツ団体としてこれをどうしても育成したいというようなものに対しても、やはり政府としてはある程度の助成の手段を考える必要があろうと思います。そういうことにつきましても、具体的の事例に即して政府としては具体的の助成方法を考えていきたい、かように思います。
  27. 矢嶋三義

  28. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これより昭和三十三年度一般会計予算ほか二件の総括質疑に入ります。
  29. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は外交問題の重点につきまして、特に、総理並びに所要に応じまして外務大臣防衛庁長官、法務大臣、大蔵大臣に御質問申し上げたいと思います。  最初に、東西巨頭会談問題に対する政府の準備並びに施策についてお伺いしたいと思います。私が申し上げるまでもなく、総理はその施政方針演説の中におかれまして、現在の力の均衡によると平和というものが非常に不満足なものである。そして真の平和はもっと安定した恒久的な基礎の上に築くことが一体できるかどうか。これは今日全人類が当面している最大の課題である。わが国にとっても国家安危にかかわる政治眼目である。きわめて強い表現をもってこの問題を述べられております。それならば、どうしてこの政治眼目国家安危の問題を解決するか、という点については遺憾ながらきわめて微温的といいまするか、無策であって、単に核実験禁止を依然として訴えていくとか、あるいは、安保理事会における拒否権の発動の制限の訴えをするとか、あるいは最後に東西最高首悩会談実現機運を進める、こういうことを言われております。  そこで東西巨頭会談といいますか、あるいは東西巨頭会談のことでありまするが、その後の事態の推移を見ていけば、私が今さら申し上げるまでもなく、今や米ソともにこの巨頭会談をどうしても開かなければならぬ。そしてまたこれは成功させなければならない、こういうそれぞれの国民の希望もございましょうし、全世界人類のいわば悲願に支えられ、促がされて、どうしてもこの機運はまさに醸成されてきたと思うのです。昨日ソ連において行われました最高会議におけるフルシチョフ第一書記が首相を兼任した。そしてこれは内政的にいえばフルシチョフ独裁政権の確立でありましょうが、同時にその意味は、何といってもみずからがこの最高会議に備えるという積極的な意欲の表われとして、われわれもその点を強化していく必要があろうと思います。これはもちろんソ連だけのことではございまするが、アメリカにおいても、この問題に対する備えをしていかなければならない。こういう情勢を考えて参りますると、この機運に対しまして、どうしてもこの巨頭会談を開かせるように、また成功させるように、日本としても総理のその言明、施政方針に即応した何らかの積極的、具体的な施策がなければならぬと思うのですが、いかなる具体的施策をおやりになったか、あるいはおやりになるお考えであるか、伺わしていただきたいと思うのであります。単なる口頭禅であってはならないということであります。
  30. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは言うまでもなく、東西両巨頭の会談でございまして、われわれがその当事者になるのではございません。私どもはこれを念願する意味において、そういう機運を醸成し、それが具体的に実現して、しかも成功するということを強く望んでいるわけであります。私はこの意味において、目下そういう方向に世界機運も醸成されてきているし、また両巨頭も、それの準備を具体的に進めているということを、非常にけっこうなことであると、関心を持って私どもは見ているのが現状でございます。私は特に具体的にこれに対して、この機運が起っておらないとか、あるいはそれが停滞するというようなことであれば、われわれとしては念願するその機運を醸成することに、積極的にまたいろいろなことを働かなければならぬと思いますが、幸いにそういう情勢になっているというふうに私は見ているのであります。
  31. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうも総理の今の御答弁は、施政方針の演説の中に書いてあることと、それからまた、あらゆる機会をとらえて十分に積極的に努力したいという、積極面が全然ないと思うのです。あなたまかせだ。もちろんそれは両巨頭が、米ソが中心でございましょうが、しかし必ずしも両巨頭だけの会談になるのか、東西巨頭会談と言いますから、もう少し幅が広くなる場合もありましょう。いずれにいたしましても、積極的な機運が醸成しつつあるということはいいことである、それと、日本が積極的に何もしないということとは、これは私は別だと思う。それならば、何も外交なり、国家安危にかかる大問題だなんと言う必要はどこにもない。もとより日本のやり得ることに限界のあることは、お互いにわかっていることでございまするが、巨頭会談の成功というものは、具体的に一つでもいいから、国際緊張を一つ一つ緩和していく、これは失敗させてはならないという意味は、国際緊張のあらゆる問題をとらえて、全部そこで解決するということを期待するならば、これはかえって危険である。もし失敗するならば、国際緊張は一そう激化するというおそれがありまするからこそ、具体的な問題をとらえて、一つ一つ平和への橋頭堡を作っていくということが必要なんです。そういう意味から言えば、小国といえどもこれは貢献ができることなんです。日本の関連する問題についても、国際緊張緩和への日本としての提案があってしかるべきだ、ただあなたまかせということは私は許されないと思う。すなわち具体的提案を持ってこそ——その中には、岸さんがよく言われているいわゆる原水爆実験禁止もそうでありましょうし、あるいはその他極東における国際緊張緩和についての提案でもけっこうであります。何ら具体的の提案、また努力をせずに、ただ待っているということでは、私は総理の言行は不一致だと言わざるを得ない。その点をもう一ぺん伺いたい。
  32. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御意見にもありましたように、この問題に関する私どもの願い、それが成立するという、これを実現し、かつ成功せしめようということは、世界の恒久的平和を願っておるからであります。また私は、その会談の内容が、それを目標として行われるというところにおいて、初めて意味があることである、これは当然のことであり、またそういうことが取り上げられるためにやられることは、これは言うを待たないところであります。  なおまた、これについて、原水爆禁止や、核兵器禁止や、あるいは軍縮問題というようなものが当然含まれることも、これも今の情勢から判断いたしまして、私は当然なことであると思います。これらのことに対するわれわれの主張というものは、すでに国連総会や安保理事会等において、十分にわれわれとしては、一方において主張もしておりますし、また国連そのものの機構の運営というものも、東西の緊張緩和に役立つようにいろいろな努力をしているということも、これは曾祢委員の御承知の通りであります。
  33. 曾禰益

    ○曾祢益君 これでは全くのれんに腕押しみたいなことで、はなはだ私は不満であります。各国の議会において、最近特に、たとえば西ドイツの議会において、これは直接にはあるいは逆な方向とみられるような核武装の問題等に結局はなったようでありまするけれども、いずれにいたしましても、四日間、三十八時間にわたって、与野党があれだけ熱心に、東西首脳会談に関連する重大な問題を論議している。わが国の議会において、総理のただいまの答弁では、これはわれわれは国民として納得できない。そこで抽象論ではしようがありませんので、私自身が——こういう問題については、総理としてはどうお考えであるか、つまり東西巨頭会談でこういう問題を取り上げて論じてほしいというような具体的提案をなさるべきではないかという意味において、以下数件をあげまするので、一々御見解を伺いたいと思います。  第一には、核非武装地帯を東西両陣営の勢力範囲にまたがって、これを特定の緊張の焦点に設ける、これは私が一々申し上げるまでもなく、ヨーロッパの心臓部に関してはポーランドのラパッキー提案がございます。また日本を中心として、日本、中国、それからシベリアの東、極東部面を含めての、いわゆる北太平洋地域については、わが党の鈴木委員長の具体的提案がございます。こういう両陣営にまたがった核非武装地帯を、あるいは試験的ということになるかもしれませんが、緊張の焦点に設ける、こういう具体的提案をどうお考えであるか。総理は衆議院の鈴木委員長のこの提案に対して、現在の国際情勢の現実からみると、実現はとうてい考えられない、こういうふりに簡単に片づけておられますが、その後いかがお考えであるか、伺いたいと思います。
  34. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、核非武装地帯をある地域に作るという議論に対しましては、根本的にはあまり賛成意見を持っておらないのであります。というのは、私は核武装というもの自体をなくするということを従来も主張をしてきており、それを実現することがいいのであります。ことに最近のようなミサイル武器の非常な発達が日進月歩で行われているような際に、一定の地域にそういうものを置くということは、私は、その効果につきましても、多くのことを期待することはむずかしいのじゃないか、むしろそれができるほどの何であるならば、本体である核武装をやめるということが当然議題にされることを、私はむしろ望むものであります。
  35. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは総理のお考えとも思えない非常に不思議なお説だと思うのです。あなたは、核非武装地帯を作ってみても、はっきりいえば、米ソあるいはイギリスを含めたこの大国で核武装を持っておる国自身がこの武装の禁止まで行かないから無意味だと、こう言われますが、これは私もアメリカの諸君、特にダレス氏の意見などにはそういうものがあることを知っておりますけれども、これは全く一つの詭弁だと思うのです。それならば、核兵器の全面的禁止が望ましいけれども、その第一歩としてまず実験禁止をしようではないかという日本提案は、これはナンセンスだということと同じだ、オール・オア・ナッシングという議論は私は非常におかしいと思う。だからこれはどれほどの効果があるか、米ソが直ちに核非武装を断行すればこれは一番いいのですが、それができないのです、お互いにどんどんと。たとえばヨーロッパの場合でもそうでありますが、どんどんとドイツがIRBMを、あるいは今度はポーランドに持っていくということになれば、現状よりも緊張が激化することは間違いない。もちろん米ソがお互いにICBMでにらみ合っている事情もありましょう。しかし、そういう意味から言いまして、部分的なことであるけれども、緊張を今後さらに激化する方法をとるよりも、IRBM等の持ち込み禁止地帯を設けて、これを端緒としてそうして軍縮なりあるいは核武装の全面禁止の方の第一歩にしようどいうのが、こういう提案であって、オール・オア・ナッシングという議論は、私はまじめな議論とは受け取れないのです。もう一ぺん総理のお考えを伺いたい。
  36. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の申し上げたことは、われわれの究極の目標と、それからそういう今提案されておるところの核兵器の非武装地帯を作るという考えが、実際核兵器の発達の現状からみてくるならば、そういう地域にも非常に大きな広い地域を包含せしめるということであるならば、ほとんど私が言っておることと同じになるわけでありまして、地域の広さにも関係するでしょうけれども、今まで言われておるような、この緊張の非常にある地域にだけにそういうものを設けるという考え方は、私は非常にこの核兵器の最近の発達から見るというと、意義が少いのじゃないかという意味において、むしろこの根本的な何が、オール・オア・ナッシングということを言うのは非常に現実から離れているのじゃないかというお話でありますが、しかし、最近のいろいろの米ソ両方の議論、またこの巨頭会談において取り上げられようとしておる空気を見ますというと、むしろ本体に関して話し合いが行われようとしておるし、また行われることが望ましいという私の考えを述べたわけであります。
  37. 曾禰益

    ○曾祢益君 この問題については、またあとで両陣営の兵力引き離しの問題に関連してさらに伺いますが、私は、この核非武装地帯を少くとも日本の付近に設けろということを提案するのは正しいと思う。それをやる前に、日本がどうしてもみずからでなし得ることとして、日本みずからは核武装並びにミサイル武装をしない。日本にミサイル、核兵器を持ち込まない、この点に関する明確な日本独自の宣言を発すべきではないか。これは絶対に心要だと思う。これは総理のしばしばの言明はありますが、この提案との私は関連を考えますが、かりにその関連はないとしても、さような核ミサイル非武装宣言をされるお気持があるかどうか、これを伺っておきたいと思います。
  38. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、この核武装については、従来しばしば私の所信を明らかに、政府として明らかにいたしております。今お話になりました宣言というふうな、どういうものになるかしりませんが、私自身は政府の全責任をもって、こうした責任がある場所においてはっきりと申しておることは、やはり日本の非武装に対する一つの宣言であると私は解釈します。
  39. 曾禰益

    ○曾祢益君 この問題についての国際法的な問題については、さらに後に触れるつもりですが、念のために伺っておきます。しからば、かりに両院が日本は核武装しない、ミサイル武装しないという宣言を発するということは、これは総理のしばしばの言明に沿うゆえんであって、その趣旨賛成であるかどうか、伺っておきたいと思います。
  40. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国会においてそういう決議がされるということは、私の従来言明をいたしておるところの事柄と同一でありまして、趣旨において賛成であります。
  41. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこでもう一ぺん国際緊張緩和への具体的問題に返りまして、私が非核武装地帯等を作れということが、総理はあまり役に立たないと言われるのですが、私はそうではないと思うのです。何となれば、そういうことと東西の兵力が現に相対峙して非常に危険な地帯、これはもうドイツにもあります。それからベトナムにもあります。朝鮮にもございます。こういういわゆる相対立する両陣営の武装対峙の状態から、これは国際緊張の結果でもあるけれども、これを引き離して、ディス・エンゲージという言葉を使っているのですが、そういう軍隊を引き離すということと関連して、そういう地帯に核非武装地帯を設けるということに意味がある。それは議論でありまするからその程度にしますが、そういったような特定の地帯から相対峙する両陣営の軍隊を引き離す、これはやっぱりラパッキー提案にもあるわけです。こういう点について、総理はどうお考えであるか、御意見を伺いたい。
  42. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は国連の趣旨から、兵力を出すという、いろいろな目的で兵力を出すということがリクエストされて行われておることもあるように思いますが、そういう場合は、それぞれの目的があることでありますから別として、一体、一国が他の国に兵力を出して、それを、特別にその国との条約やその他の何があることは場合によっては別ですけれども、そういう事態がなくなるような状態が望ましいことはこれは言うを待たないと思うのです。おのおのの国が他から侵略されず、また、他を侵略しないというふうな関係ができ上るということが望ましいのでありまして、今お話にありました地域に出ているところのいろんな軍隊の問題につきましては、その性質がいろいろありましょうから、一概に申すわけに参りませんけれども、そういう、他国に駐在するということは望ましい状態でないということにつきましては、私も同様の意見を持っております。
  43. 曾禰益

    ○曾祢益君 この問題は、後に日本にもっと直接関連する朝鮮のところでさらに御質問申し上げたいと思いますので、次に移ります。ただ、この点だけ申し上げておきたいのは、こういう両陣営の軍隊を、つまり外国軍隊、アメリカの軍隊あるいはソ連の軍隊を引き離し、あるいは中共の軍隊の場合もございますが、そうしてそこに軍縮の監視班を置くというようなことから、軍縮の問題に非常に厄介な査察制度に関する一つの実験をやっていくというところに、一つの大きな意味があると思うので申し上げたわけです。  そこで最近核兵器実験禁止だけを、あるいは停止と言ってもよろしいのでございますが、核兵器の製造、貯蔵、使用等々と一応切り離して、そうして、これだけはやろうではないか、この機運は非常に醸成して参ったと思うのです。これは日本国民悲願であり、政府基本的にはこの方向に進んでおられるものと私たちは信じたいのでありますが、これは単に日本悲願だけでなくて、今やヨーロッパにおいて、特にイギリスにおいて、あるいはドイツにおいて非常に大きなそういう機運が盛り上っております。さらにアメリカにおいても御承知のスタッセンの提案があり、いろいろな意味におきましてあるいは学者の提案、あるいは民間団体の動きもございますし、一方ソ連におきましては、多分今ごろあるいはやっておるかと思うのですが、ソ連は先般来数回にわたって核実験をやりましたが、これを急いでやったことも、実は最高会議において、今度はソ連だけでも、あるいは単独にでも核実験をストップする、こういうことへの一つの仕上げであったかもしれないと思われる節もある。いずれにいたしましても、今や核実験を切り離していくということは、アメリカのダレスあるいはアイゼンハワーの人たちもこれをむげに拒否できない。むしろできないとすれば、今後核実験をやりたいというフランスのせいだと、言わんばかりに態度が緩和されてきた、こういう状態になっていることは総理も御承知の通りだと思うのです。そこでこういったような意味で、今や核実験だけはストップする、そうして所要の地点には実験が現実に行われたかどうかだけを探知する国連の監視班を置く。こういうような具体的な提案を、何もその国連の総会を待っているなんかという間の抜けたことをどうも藤山外相なんか言っておられるようだが、そんな問題ではなくて、これを取り上げて成功させるかどうかということが、これが巨頭会談の成功か不成功かの別れ道にきている。この意味で、この核実験を切り離して停止することについての明確な政府態度を伺いたいと思います。
  44. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 核爆発実験禁止機運が、今曾祢委員の御意見もありましたように最近非常にこれが促進をされて行ったことは、非常に私どもから見ましていいことだと思っております。さらにそれを現実に実現するために私は努力をすることは曾祢委員の御意見の通り賛成でありますし、それはやるべきことであると、かように考えております。
  45. 曾禰益

    ○曾祢益君 この問題に関連して矢嶋君からも海洋法会議等における政府態度についての御質問がありましたが、今一つ私が問題にしたいのは、きょうのジャパン・タイムスに出ておる記事でございますが、近く四月ごろに行われるであろうアメリカのエニウエトクにおけるいわゆるきれいな爆弾の実験をするから見せてやろうというので、国連の委員会のメンバーをお呼びするということが書いてあります。この問題について外務省筋では、かつてネバダの実験においてはアメリカから日本へという招待があったが、核兵器実験反対日本としてオブザーバーを送るわけにいかないというのでお断りをしたが、今度は日本側もこの問題に日本のオブザーバーを送ってもいいのだ、という意向を漏らしているということが出ておりますから、この真相について外務大臣から御説明を願いたい。
  46. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まだその問題につきましては、正式に話も参っておりませんし、正式に何らの態度もきめておりません。
  47. 曾禰益

    ○曾祢益君 正式に入っておるかいないか知らぬけれども日本新聞記事に出ているのです。外務省のソースでこういうことが問題になっていることは事実でしょう。これに対して正式に来ておろうがおるまいが、アメリカの大統領も招待するということを言っておるのです。これに対する外務省の考えがないはずはないのです。そういう形式的な御答弁では困ります。
  48. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まだ何らの意味においてもその連絡がございません。従いまして、われわれとしてはその問題については今後考えて参ります。
  49. 曾禰益

    ○曾祢益君 この問題ぐらいの態度がきまらないはずがないと思う国連の科学的な委員会が呼ばれた場合に、科学的な委員会のメンバーである日本人がたまたま行く場合があると言うのか、そういう機会日本のいわば政府の役人が絶対に反対している実験に、きれいな爆弾の実験だから見せてやろうじゃないか、じゃ行きましょうということが政治的にいいか悪いか、そのくらいのことについて右か左かの方針がきまらないということはありません。
  50. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 個人的にはいろいろ意見は持っておりますけれども、正式に外務省としての考えがきまっているわけじゃございません。
  51. 曾禰益

    ○曾祢益君 総理に伺います。
  52. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは結論としてきめることにつきましては、いろいろな点を考えなければならぬと思います。今曾祢委員のお話のように、政治的にそれが及ぼすところの影響も頭において考えたい。ただ今国連が招待され、国連のメンバーとしてその地位にあるところの者が行くということは、一応形式的には理論が成り立つと思います。私はまたある程度科学的な立場から、そういうことを実際に行って見るということも、いろいろな意味において私は意義があると思います。しかし、それが及ぼすところの政治的な影響もありますから、十分に一つ検討いたします。
  53. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は科学的にあらゆる調査ができるような場合に、一科学者として行くということならば、一つの意味がある——現実的にそこまで軍事的な秘密を許すことはないと思う。そうすると、結局政治的な大きなマイナスになりはしないか、かように考えるので、私個人としては、この招待は受けない方がいいと思いますが、これは政府に対する要望として意見だけを申し上げておきます。  それから次に、相対立する軍事同盟、つまりNATOとワルシャワ条約体制あるいは日本の付近におきましては、日米安全保障条約と中ソ友好同盟条約、こういう二つの対立した軍事同盟の間に、とりあえず緊張緩和への一つの足がかりとしてともかく不侵略の約束を取りかわすということについてどうお考えになっておりますか。私が申し上げたいのは、これはきわめて明確にむしろ総理は鈴木委員長質問に対して、もしも四カ国、つまり日米中ソの間に不可侵条約ができるような状態があれば、今日軍縮がああ行き違いをすることは絶対にない、自分はもっと現実的な政策で進む。非常に現実性がないということを言っておられますが、実は非常に現実性があるのです。軍事同盟がなくなった方がいいのだけれども、いきなりなくなれないから、少くともその軍事同盟が相手を侵略することはないのだということをお互い言い合おうということで、これはやっぱり緊張緩和への一つの努力だと思います。だからマクミランも、そういうこともよかろうと言ったわけです。これを単に現実性がないとか、これができるくらいなら軍縮ができるということは、これは本気で言っておられるとは思えない。そう簡単に片づけないで、もっとまじめに考えるべきではないか、どうお考えですか。
  54. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 不侵略条約がそういう国の間に結ばれるということは、理論的に言いまして、それを拒否する理由はないと思います。しかし、これも政治的ないろいろな関係があると思います。ことに日本国民が不可侵条約というようなものに相当な信頼を置くかどうかということは、日本人の体験から申して私はこれはなかなか日本立場としてこういうことが果して理論的に言われているように効果のあるものかどうかは、これは非常に疑問である、かように考えます。
  55. 曾禰益

    ○曾祢益君 不侵略条約だけでは足りないから、そこで全ヨーロッパ安全保障条約、あるいは日米中ソ四カ国を中心とするアジア極東の全面的な安全保障条約を両陣営にまたがって作る。これはなるほど理想論というあれがあるでしょう。しかしこういう問題も、だんだん積み上げることによって、さっきから羅列しましたような比較的実現可能性のある問題から積み上げていくならば、そこに到達するわけです。そういう意味で、こういう点についても、やはり巨頭会談の一つの題目として要求するのは正しいのではないか。そこまで一つ研究してほしい、こういうことをお言いになる気持が、あるかどうか、これを伺いたい。
  56. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 巨頭会談における議題という問題につきましては、抽象的にはわれわれも想像もいたしておりますし、それから非常なこれはいまだないある意味の画期的な問題でありますので、これが成功するということをわれわれが非常に念願して、また日米両国においてもそれを念願しておると思うのです。そういうことから、どういうふうにこの議題を取り上げていくかということにつきましても、おそらく両国においてもいろいろと検討をいたしておることであると思います。私は今曾祢委員がお話しのように、そういうとにかく大きな目的からいい、東西両陣営の間の緊張を緩和するという大目的をとにかく達する意味においての話し合いでありますから、そういうことに役立つようなこと、またそういうことにわれわれは望ましいと考えるようなことをいろいろと提唱するという事柄につきましては、私自身はそういう努力はすべきものである、こう思います。それで先ほどからいろいろな具体的の問題をおあげになりまして御意見も聞きましたし、また私も私の考えを率直に申し上げておりますが、趣旨はそういう意味でありますので、十分今の安全保障、東西両陣営を含めて相当広範囲の間におけるところの安全保障に関する話し合いであるとか、あるいは侵略をしないということについての話し合いというような機運が盛り上ることは、これは私は望ましいことであると思います。
  57. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうも私の考えばっかり申し上げているようで恐縮なんですが、やはり議題としてあと二つだけぜひこれを考えてほしいと思うのは、やはり分裂した国が統一しなければ——統一したといっても、外国軍隊のもとにおける統一なんかということはナンセンスですから、外国軍隊がいなくなるとか、あるいは統一は、自由選挙による、そうしてそういう国については、先ほど核非武装の問題もございましたが、やはりどっちの陣営にもつかない、こういったような三つの原則によって、朝鮮もヴェトナムも東西ドイツも統一して、そこで緊張を緩和していくということがもう一つの議題。最後にもう一つの議題は、いうまでもなく、ICBM、IRBMといういわゆるこういう宇宙兵器を禁止していく方向をとらなければばならぬ、そうして特に宇宙に関する国際連合の管理権を確立していく、それと見合って、これは米ソいろいろなかけ引きがあるでしょうが、外国軍隊の撤退、外国の軍事基地を撤退するとか、こういうものをからめてやっていくべきではないか。これらについても、ぜひ政府でもっと真剣に御考慮願いたいのですが、時間の関係で、次に、これらの問題は、いろいろ申し上げましたが、これは要するに野党の一個人の意見であって、一つの私は建設的な提案と思いまするが、これらの問題は党を代表するといったらいいかどうかと思いまして、遠慮して言ったんですが、(「いいよ」と呼ぶ者あり)遠慮は要らないそうですから、党を代表した意見でございまするが、これらの問題を実際問題として進めるには、やはり外交の方法がなければならない。先ほど申した通り、総理の外交は、これは全くあなたまかせであって、何ら積極的にやっていない。そんなことでなくして、藤山さんは、アジア外相会議ということを少くとも口にはした、そういう意味で、多角的な外交を展開していく最も必要な時期ではないか。たとえば国連における活動もございましょう、それから日本インドとの両国の提携で、なし得る限りもっとこういう問題を推進していく、あるいはAA会議を開く、AA会議といってはあまりに話が大きいから、いわゆるAAグループの中心の諸国との間にすなわちアジア外相会議ということをヒントしたけれども、何にもしないのでなくて、今日こそ、こういう問題をやっていくべきではないかと思うのですが、こういう意味で、この緊張緩和、巨頭会談への積極的な貢献をする意味においての日本の多角的な外交についてどう考えるか。これは外務大臣から伺います。
  58. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、やはり日本がいろいろな場合に関係諸国と十分な話し合いをし、お互いの立場を理解しながら同一の問題を論議してみるということは必要だと思うのであります。従いまして、先般インドネシアに参りましたとき、スバンドリオ外相とこの問題について話をしました。その後インド大使を通じて、インド外務大臣、ビルマの大使が帰りますときに、ビルマの外務大臣にその旨を伝えたのであります。こういう問題はなかなか一気には動いて参りませんし、しかしながら、私としてはそういう意味の外交を適当な機会に開くことが必要だと思っております。最近の情報によりますれば、もしインドネシアの条約が批准されますと、批准書の交換にはスバンドリオ外相も日本に来たいという希望を持っておるようでありますから、そういう機会がありますれば、さらにそういう問題について話をしていこうという心がけをいたしております。
  59. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはこの個別的な話し合いから、いわゆる会議、いわゆる何といいますか、多角的な国際会議ということになるわけですから、そういう個別的な話もできないでしょう、これ否定しません。いきなりただ日本がスポンサーして実際上できないじゃあしょうがないのですけれども、ただ何かやります、やりますといっているけれども、事実は何にもしないで、巨頭会談を見送っているのでなくて、これは巨頭会談へのアジアの貢献というような意味で期待をいたしまして、これは日本はスポンサーしなくても、インドでも何でもアジアの指導国を大いに顔を立てていいのだから、そういうものを開催するということをぜひお考え願いたいと思う。これは総理からも一つこの点に関する所見を伺っておきたい。
  60. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は先ほど、この国際情勢が私どもの希望しているような両巨頭会談ができ上る方向に強く進んでおる、これは非常にいいことであるという意味において、これを見守っておるということを申し上げましたが、何もせずにいつまでもおるという意味ではもちろんございません。従いまして、いろいろな意味において、あるいはアジア外相会議提案も一つの考え方の一つの何でありましょうが、アジアとしてこれにどう貢献するか、あるいはさらに国連としてどういうふうにこの機運を進めていくか、いろいろな点を日本として考えていかねばならぬことは言うを待ちません。そういう意味におきましては、いわゆる積極的にいろいろな具体的な問題についての活動を、努力をいたすように、私としても今後心がけていきたいと考えております。
  61. 曾禰益

    ○曾祢益君 次に日米関係について、特に安全保障条約の問題に関連して御質問いたしたいと思います。岸総理は、渡米前には安全保障条約が根本的に改訂する時期に来ている、こういうようなお考えをしばしば述べておられましたが、どうもアメリカから帰って来られると、安保条約の改正は事実上断念している。これについて特に私どもが納得できかねるのは、保守党の立場からしても安保条約の一つの大きな危険といいますか、日本から見ての危険は、日本の安全のためにだけアメリカがいるのではなくて、まあそれも安全のためになるかならぬかという議論はあるでしょうけれども日本防衛のためのみではなくて、極東の平和と安全のために日本にいるのだ、すなわち極東の安全のためという名目で日本から外国に敵対行為が起った場合に出動し得る、これが安全保障条約の一つの、これは保守党から見ても、これはどうも危険だ、この点はなおしたい、こういうお考えだったことは明瞭なんです。ところが事実は、帰ってこられてから、九月だったと思いまするが、安全保障条約と国際連合憲章の関係に関する交換公文がなされましたが、これは安全保障条約が国連憲章に反していないということを確認するという意味でやられたようでありまするが、その一つのお考えとして、あるいは結果として日本から出撃していくようなアメリカの一種の自衛権を行使した場合には、国連憲章第五十一条に従うべき場合には、これに従わなきゃならない、これは当り前のようなことですが、これを言いかえるならば、極東平和と安全のためにという理由で、アメリカ軍が、たとえば台湾等で武力攻撃にあった場合には、アメリカはとりあえず自衛権を行使する、そうしてそのあとでじゃどうするかということについては、これは安保理事会の決定に待つ、つまり出撃権を再確認しているのですね。このことによってなおすべきどころじゃなくて、逆に出撃権を明確に与えて、これを国連憲章五十一条の基礎において確認しているというのが、この安保条約と国連憲章の関係に関する交換公文、こういうふうに考えます。ところが藤山外相は当時のことですけれども、これによって安全保障条約を相当実質的に変えたのだ、変えたどころじゃなくて、これを再確認して出撃権を確認したじゃありませんか、こう考えるが、その点を外務大臣はどうお考えですか。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国連の憲章につきまして、各国のこういう協定が皆国連憲章を引いておるわけで、日本においては引いておらぬのでありまして、その意味において日米安保条約には欠陥があったことは事実であります。従ってそれを確認し合いますことは安保条約を確定的によいものにしたと、こう考えております。
  63. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはまるで話が通じないのですけれども、一括してあとでさらに論議したいと思います。  いま一つ、最近防衛庁の非常に空軍を整備された結果だと思うのですが、領空侵犯に対してはもうアメリカ側のみにまかせないで、日本の自衛隊が出動してやる、なるべく一つ国外に追っ払うとか、あるいは着陸させるというような手荒いことはしない、いきなり実砲を打ったりなんかしないということを防衛庁長官が言っておられるようですが、また岡崎・マーフィ交換公文、領空侵犯排除に関する交換公文があるのですね。この領空侵犯の排除については有効適切な措置をアメリカに一任している。有効適切な措置といえば場合によっては核弾頭がついている空対空のあれが爆発しないとも限らない、これはしよっ中朝鮮あたりではこの間うちあった。こういう危険な状態をそのままにしておくのか、これは防衛庁長官はこういう日本に自衛隊ができたので、こういうことはアメリカに少くともまかせない、この岡崎・マーフィ交換公文はこれをやめてしまう、こういうお考えであるかどうか、これは防衛庁長官外務大臣から伺いたい。
  64. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。足らないところは外務大臣からお答え願いたいと思います。領空侵犯につきましては、仰せのごとく昭和二十八年一月にマーフイ・岡崎外相の交換公文、往復書簡と言っておりますがございます。これによりまして、当時はわが航空自衛隊というものがないのでございます。そのために領空侵犯があった場合の措置として、こういったような往復書簡が出てきたわけでございます。しかしその後特に最近それが航空自衛隊の育成が進みまして、当然にわが領空における侵犯という問題に対しては、当然に自衛隊が担当すべきものだと思っております。従ってまず可能な限度においてこの領空侵犯の措置を防衛庁長官は部隊に措置を命ずるという態勢に今日なってきたわけでございます。実施の時期はまだやはり一ヵ月かかると思います。しかし一般命令において所要の命令を部隊には出しております。しかしながら現在の段階においては、それが全領空にわたってこういう措置をとることは部隊の今日の段階においては実行が可能ではございません。その意味においては、この往復書簡によってなお駐留米軍において領空侵犯の措置をとってもらいたいということの必要を感じております。これらにつきましては出動するような具体的の命令を出すときにこれらの打ち合せを全部いたしたいと思います。従ってさしあたりにおいて、この往復書簡を全部廃棄するという段階には至っておりません。そういう事情でございます。
  65. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この点はただいま津島長官の言われました通り、日本自身が防空侵犯のことをやることができません。当然岡崎・マーフィ書簡というものは廃されるべきものだと思いますが、その点につきましては、防衛庁長官と十分協議し、その要求によって私どもは考えていきたいと思います。
  66. 曾禰益

    ○曾祢益君 昭和二十九年当時と非常に武器の発達が革命的に変化があったことは御承知の通りであります。従って、当時実際の有効な措置というものは、まあ場合によって実砲を発砲するくらいで、機関砲ぐらいで済んだかもしれません。しかしこれは核弾頭も使わないと限らない。こういうことを考えれば、まああなたのお説によると、まだ防空は完全でないからアメリカに依存するということがあるようですが、かりにそういうことを前提といたしましても、実際の有効な措置というようなことについて、防衛庁の今の訓令と、アメリカのやり方と、あるいはこの書簡によるところの全権委任との間の食い違いはどうされる。
  67. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。防空侵犯に対する措置というものは、大体、国際的の慣例もあるのでございます。駐留米軍においての領空侵犯に対する措置についても、今お尋ねのように武器の使用というようなことはわれわれは想像いたしておりません。一定の規定があるわけでございます。で、自衛隊の場合においても、大体そういったものに準拠して独自の措置を命ずるということになっております。これは御承知のように、いわゆる自衛隊の直接間接侵略による実力行使の防衛出動ではないのでございます。防衛出動と違った単純なる領空侵犯に対する措置ということで領空上から着陸させる、またその外に退去さすという措置に限っております。そういった意味において私は駐留米軍においてもこの措置に関する限りは仰せのようなことは全然ないと、こういうことを申し上げて差しつかえないと思います。
  68. 曾禰益

    ○曾祢益君 次に、特にこれは総理にお伺いしたいのですが、実はけさも衆議院の内閣委員会において石橋議員の御質問があって、要するに核兵器等を日本に持ち込まない、あるいは持ち込ませないための理論的根拠、あるいは逆に言うなら、アメリカがそういう装備等について、日本に駐留する権利を持っている以上は、これはこの権利はあるのであります。これを縛るのは行政協定もしくはそういったようなものでやる以外にない、安全保障委員会で協議してもまとまらない場合には、やはり権利はあるのであるから、行政協定あるいは政府間の約束で縛る以外にないじゃないか、だから安保条約を実質的に改訂すべきだ、こういう議論に対する応酬があったのですが、私はその議論に入る前に、どうしても私がわからないのは、一体安全保障条約に言うところの日本におけるアメリカ軍の配備、いわゆるディスポジションということは、これは軍隊をどこに置くか、こういうことが目的であって、安全保障条約を作ったときから今日までアメリカ軍の装備をどうするかということを行政協定でやるなんというためしがない。それをどこに法的根拠を置かれるかといわれるその質問に対して、総理は、これは岸・アイク共同声明に、この配備について安保委員会で協議することができる、その配備というものは、これは当然に装備も含むのだ、装備のない軍隊ということは考えられないというような形式的ロジックで言っておられる。これはあえて私は形式的ロジックと思います。同僚亀田委員が非常にするどい質問を本会議でもやられたのですが、時間がないために、それまでになっているように私は見るのですが、もしこれが、配備というものに装備が全部入るというならば、これは安全保障条約の第一条に軍隊を「配備する」というのを、軍隊を装備するというふうに読みかえることもできるわけです。これはへ理屈です。また安全保障条約第三条に日本におけるアメリカ軍の配備の条件については行政協定に譲る、配備の条件について行政協定によるのならば、その配備の中に装備が入っているなら、装備の問題について、その行政協定の何条に装備の規定がございますか。これは私は全くこの石橋君の議論も、この配備の中には当然装備が入るという、率直に言えば岸ペースに巻き込まれたような感じがする。私はこれは間違っている、配備というのは装備じゃない、全然別なことです。配備というのは、軍隊を防衛もしくは攻撃のためにこれを置くことを言うのです。それは装備とは全然観念が違う、こう考えるが総理はどうお考えになりますか。
  69. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 曾祢委員のお言葉でありますが、私はこの安保条約の上における配備におきましても、陸上部隊をどう置くか、あるいは空軍をどう置くか、あるいは砲兵隊をどう置くかというようなことは、当然内容をなすのでありまして、ただ何か配置だけということでは私は軍隊の性質上意味をなさぬことだと思う。従って私が従来お答えしておることについては、私は間違いじゃないと思います。
  70. 曾禰益

    ○曾祢益君 この岸・アイク声明についての配備というものは、装備をも含むのだというなら、まだこれは政治論ですから、ああいう共同コミニュケは法律的なものじゃないと思いますからまだわかる。この安保条約についてそう言われるならば、一体行政協定はその配備の条件をきめるために作ったのですよ。どこに装備のことが書いてありますか、これをお教え下さい。一つでもございませんよ、装備のことは……。
  71. 岸信介

    国務大臣岸信介君) こまかい議論は法制局長からお答えしますけれども、私は行政協定にそういう私の申したような装備に関する規定は私もないように思います。しかし私は今この配備という考え方をどういうふうにするかという、どういうふうに解釈するかという問題については、先ほど申しましたように、この軍隊を配備するということはやはりその装備を含めて、その性質がはっきりしなければ意味をなさないものであって、空軍を何部隊どこに置く、海軍を、海上部隊をどう置くかというふうなことの内容がきまってこそ、初めてわかるのであって、そういう意味で申し上げておる。行政協定の上に装備だけに関する規定は私も見当らないように思いますが、なお専門家からお答えいたします。
  72. 林修三

    政府委員(林修三君) 配備という観念として軍隊の性質上、陸上部隊あるいは海上部隊、あるいは陸上部隊でもどういう性質のものということが配備という観応で含まれるだろうと、当然私は考えられると思います。ただ行政協定に現在そういう規定があるかとおっしゃれば、これは現在はございません。ただ安保条約の三条で「配備」といっている言葉には、そういうものも含めて規定し得ることだと実は私どもも思っております。行政協定を作る当時においてそこまで規定されておらない、そこに多少空白がある、そういうことだと思うわけであります。  それからもう一つは、これは言葉のニュアンスの問題になりますが、そういうことになった一つの理由としましては、去年の日米共同宣言では配備についてと、「配備および使用について」と直接にそれをうたっております。それから安保条約は御承知のように「配備を規律する条件」だといっておりまして、いわゆるおかれる軍隊の、それらのステータスというようなものを主として当時頭において、そういうところから多少の違いが出てくるのじゃないかと思うわけです。しかし配備という観念には、先ほども申しましたが、当然軍隊の性質上装備も含まれる、従って私は行政協定で、あるいは行政協定にかわるようなもので規定しようと思えば規定できないものではない、かように考えております。
  73. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは苦しい御答弁だと思って同情はしますけれども、そういう不明確なことで、非常に政治的な岸・アイク共同コミュニケに配備を相談するということがあるから、まあ装備も含むのだというようなことでいくと、それじゃこの核兵器みたいな重大な問題で行政協定をなぜ作らなかったか。行政協定といっても、特定の今の行政協定という意味でなくて、これは条約でなくて、行政府間で協定する。だから、高碕・アリソンが当時に核兵器は持ち込まないということも、これは正式の文書を交換すれば一種の行政協定と言えるわけです。そのことをなぜやらないか。装備を含んでおるなら、私は石橋君の言った通りだと思う。もし含むのだというなら、当然に政府間の取りきめで最も重大な問題を取りきめてないということはおかしいじゃないか。これは単に信頼の問題とかいうことじゃなくて、お互いに信頼できていても、先ほど外務大臣は、日米安全保障条約が国際連合憲章と反しないということを、あれだけ仲のいいはずの岸内閣とアイク政権の間にわざわざ交換公文しておるのですね。あんなことは、私たちに言わせれば、日米安保条約がこの国連憲章を逸脱するなんということはあり得ない。あった場合には、安全保障条約よりも国連憲章が優先することはわかり切っております。そういうことを何のためにやったのですか。それならば核兵器等を持ち込まないということを行政協定できめるべきであって、配備の中に入るということならなぜこういうことを行政協定なり政府間の協定でおきめにならないのですか。これは私はどう考えても、このときになると信頼の問題だからいいということは理屈にならないと思うのですが、総理からはっきり承わりたい。
  74. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろんそういうことについて、いわゆる広い意味の行政協定といいますか、現在ある行政協定というだけじゃなくて、政府間において取りきめなどをなすことは差しつかえない問題であり、またそういう要望が一部にあることも私承知いたしております。しかし私はしばしばこの私の所信を明らかにいたしておりますように、アイゼンハワーと私との間の共同コミュニケによって設置されておる安保委員会におきまして、そういう問題は両国において協議してきめるという一項に入っておるものと私は考えておりますし、またそういうふうに扱っていくことによって、今いろいろな疑惑というか、御懸念の点が除かれると私は考えております。
  75. 曾禰益

    ○曾祢益君 いかに仲のいい同盟国であっても、米英の問でも、御承知のように、アメリカのIRBM基地をイギリスに置く場合には、核弾頭はアメリカ持ち。しかし、それを発射する基地はもちろんイギリス。その発射については、両国それぞれヴィートを持っております。それくらいのことは明確にすることは当りまえです。これは、あなたとアイゼンハワーとの政治的の気持ということは、これはわかっても、そういうことによってこういう問題をあいまいにしておくことは、これは、そんな条約は要らないということになる。ですから、これは明確に、あなたは信頼をされるだろうけれども、やはり国家国家の約束で、あなたの意思を裏づけさせる。  私は先ほど、日本だけの非核武装宣言ということを申しました。これは、国民に対して、岸政権は自衛隊の核武装をしないということをより明確にする意味と、国際的には、アメリカに対してこれをおごそかに宣言をして、これを先方に通告し、このプロクラメーションかデクラレーションに対して、向うから、確認いたしましたという一つの外交文書を取りかわすべきじゃないか、こういう意味で宣言ということを申し上げた。しかし、それくらいの、行政協定そのものをいじった形でやるよりも、そういう明確な協定をお作りになることが正しいのではないか、当然やるべきではないか。いま一つ、アメリカの安全保障条約と国連憲章との関連についての交換公文で足りない点、アメリカの極東の平和維持のため日本から出撃することについても勝手にやらないという、この二点だけくらいは、当然に国際間の約束の形でお取りきめになるのが……。話し合いは安保委員会でおやりになってけっこうです。安保委員会は、言うまでもなく、これは協議機関であります。決定機関じゃありません。そのくらいのことをおやりになるのは当然じゃないかと思いますが、これは真剣にお考えの上お答え願いたい。
  76. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、しばしばお答えを申し上げておりますように、この安保条約の精神——きょう衆議院の内閣委員会におきまして、石橋委員質問に対しましても同様の所信を明らかにしたのでありますが、この安保条約のできておるこの趣旨から見て、一体今、日本にそういう核武装——われわれは自衛隊は核武装をしないということは、はっきりと申しておるのであります。また、これを拒否する、持ち込みを拒否するということを申しておるのでありますが、安保条約の精神からいって、そういうものを一体アメリカが何ゆえに持ち込むか、これは何かアメリカが特殊の軍事的目的からそういうものをかりに持ち込むとしましても、これはただ、日本岸内閣が言っている、岸総理が言っているだげじゃなしに、私の言っておることは、日本国民の絶対的な願望である。核武装を日本はしない、兵器を持ち込ませない、これは、日本人の、他の民族とは違ったこの点に対する強い一つの信念と申しますか、願いといいますか、そういうものを持っておると私は思うのです。これに反して、これの承諾を得ずして一体持ってきて、安保条約の目的が達せられるものかどうか。いかなる利益があってそういうことをするかということを考えてみるというと、私は、こういうことが非常に論議されておりますけれども、これは日本の安全を保障するために、もしくは極東の平和を維持する、安全を保障するために、日本に駐とんしておるのであって、それに対して、日本国民支持協力なくして、その活動なりその目的というものは絶対に達せられるものじゃないと思う。  従って、そういう意味において、私とアイゼンハワーとの話し合いの結論として現われておるところの安保理事会とか、安保委員会というものは、私はそういう意味において非常に意義あることである。また、その目的として、両国の国民の利益や願望に沿うようにこれを運営していくということの目的を入れておるのも、その趣旨でありまして、従って、いろいろな御議論や御意見はもちろんあることでありますし、また、それは私も承わっておりますけれども、私としては、そういう必要はないということを従来申し上げておる所信は変らないわけでございます。
  77. 曾禰益

    ○曾祢益君 石橋議員との質疑応答は私も傍聴しておりましたが、総理が、日本の防衛のためには、いかなる場合においても、核兵器を使って、あるいは持ち込んでまで防衛してもらうのはむしろごめんだ。非常に悲壮な決意をされたことは、国民支持することと思う。しかし、言うまでもなく、アメリカは、日本における、日本にあるアメリカ軍といえども日本の防衛のためにのみいるのではないですから、その点については総理も明快な答弁をされていないと思うのです。それから、移動性のある第七艦隊なり、あるいはグヮム島なり沖縄、台湾等におけるアメリカの空軍ということを考えた場合に、私は、日本にある、日本防衛のための軍隊だけでない部面がある。そう考えるならば、あなたのアイクに対する信頼ということとは別に、やはり国家の約束としては明確な約束を取りつけておくのが正しい。その点においてはどうしてもわれわれと意見が違う。違うならば違うで、どっちが正しいということを国民に問いたいというのが私の気持ですが、これは、御答弁は承わっておるので、これは対決の問題だと私は考える。  そこで、条約を作る、あるいは取りきめを正式にするということは、意見が合わないようですので、しかし、少くとも安保委員会でこういう問題を論議して、そうして信頼の上に立っても、念には念を入れということは、これは正しいと思う。  そこで、先般当院における外務委員会質問で、同僚森委員から、安保委員会において、いわゆる核兵器持ち込みをやめる、しないということを一つ議題にしたらどうかという御意見に対して、外相は、十三日、それは近くそういうことを論議するつもりですということを言われ、二十日、今度は、同じ森委員の同じ問に対して、総理はこれを否定されておる。そういう考えはない。これは森委員から直接に聞いたのです、私は。議事録は持っておりませんが、そういう事実があった。従って、その食い違いを私は問題にするのじゃなくて、せめて安保委員会においてこういう問題を明らかにし、その議事を、結果を発表するぐらいなことかお考えになっておるのかどうか、この点を外務大臣から伺い、あわせて総理からも伺いたい。
  78. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般の御質問に対しまして、私は、安保委員会としては、むろん軍の問題だけでなしに、最高レベルの会議でありますから、いろいろな政治的な問題も話し合える。従って、将来そういう問題も話し合うことがあり得るということを申し上げた次第であります。
  79. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。簡単にお聞きしますが、例の岸・アイク共同声明の中の配備の問題です。本会議で私もこの点尋ねたのですが、時間等に制約されて十分な質問ができておりませんが、この際ちょうど話題になっておるので、さらに確かめたいわけですが、私は、総理の、共同声明の中の配備、ディスポジションという文字に対する解釈は、非常に無理だと思うのです。これは、私は内輪のことを言っちゃ何ですが、外務省の専門家の諸君にも若干聞いてみた。やはり私の考え方です。これは、私の聞いた人のでも、どんなにこれは検討したって、あなたのおっしゃる解釈そのものは非常に無理だ。無理だが、しかし岸さんとしては、私はこう考えるということで突っぱっておられるわけですが、そこでお聞きしたいのは、あなたのような解釈をすると、つまり、配備という中に、装備、従って当然核装備などを含めてこれは解釈するのだ、そういう解釈のし方をするということについて、この共同声明を作成するときに、アイゼンハワーに、あなたが念を押してあるのかどうか。そういうことは全然念を押してないので、あなただけがそういうふうにどうも考えておられるように、私は説明を聞くととれるわけです。あるいはアイゼンハワーに直接念を押さなくとも、あるいはこの共同声明を起草したあなたの部下なり、あるいはアイクの部下との間にでも、そういう話し合いがあったのかないのか、解釈上。なければないでよろしいわけですが、その点の事実関係はどうなっておりますか、一点お聞きしておきたいと思います。
  80. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、アイゼンハワー大統領との間にそういうことの念を押した事実はございませ。ただ、しかし、この声明を作ります道程におて、核装備の問題も、日本の意向を述べた、そういう論議が行われたことは事実でございます。
  81. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういうことであれば、これはやはり共同声明の配備に対する総理大臣の解釈は、非常に権威がない、これは。本来、趣旨としては無理があるし、しかも、それを作り上げるときに、その点の念押しがしてないというわけですから、はなはだ私はこれは権威がないと思うのです。で、ともかく国民としてはその点についての非常な疑惑も持ち、心配をしておるわです。かたがた今お聞きしてみるというと、それは念を押してないというわけですから、それならば何もあなたの方でこだわる必要は、私はなかろうと思う。国民が心配しないように、これは共同声明作成のときには念を押さなかったが、装備も含む意味だ、核装備も含む意味だということを、日米安保委員会であらためて議題にして、そうしてそれを確認すれば、こんな議論はもう繰り返さないで済むわけですね。そんな必要はないとあなたはおっしゃるかもしれぬが、国民の方は心配しているのですから、必要があるのですよ。あなたは常に世論とか、そういうものの動向を見きわめるとか、あらゆる問題についてあなたそうおっしゃるわけですね。だから、少くとも相当多数の国民が心配している点ですから、そういう手続上の欠陥も今私はやはりあると思うのです、今お聞きしたところによっても。だから、次の安保委員会であなたの考え方が通るように、議題にして、そうして簡単な一つの了解事項を作ればいいわけですから、そういうふうになさるべきだと思うのですが、どうなんでしょうか。
  82. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどの曾祢委員の私に対する御質問も、今の亀田委員の御質問も、同じ点に触れておると思いますので、御両君に対して一括してお答え申し上げます。  もちろん、安保委員会は非常に、趣旨から申しますというと、政治的な意味を持っておるわけでありますから、法律的に見ますというと、いわゆる法律の厳格なる用語とか、あるいは正確なる用語を使っているような点において欠けておる点が私はあると思います。しかし、ああいうものは非常な政治的の意味を持っておることであり、両方の信頼と理解の上に立っての問題でありますから、従って、安保委員会のこの権限といいますか、そこで協議されることも、やかましく、何か権限とか、その職務とかいうことを、他の法律のように明確にいたしておらない。大きく三つあげておるわけでありまして、従って、そういう問題につきましても疑問が起り、論議が起るということであれば、当然そこの問題にされることと思うのであります。従来もはやそういうことは私の頭では問題にならぬというようなつもりで、安保委員会も今取り上げてそれを問題にする意思はございませんということをお答えをしたと思うのであります。  しかし、委員会の構成である外務大臣、あるいは防衛庁長官等の実際上の会議運営、もしくは議題をどういうふうにするかというような順序もございましょうが、私は委員会で問題にしてちっとも差しつかえない問題だ。また、そういう必要があれば、ここで明らかにするということも、それは考えるべきことである。私は絶対にこれをしないということを言ったわけじゃないのだ。私自身の頭から言うと、そういうことはそう問題にならない、明確なことであるから、今安保委員会において取り上げてそういうことを話し合う必要はないのじゃないかということを、詳しく私としてはお答えをしたのであるというわけであります。
  83. 亀田得治

    ○亀田得治君 最後にもう一つ……。
  84. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 亀田君、簡単にお願いします。
  85. 亀田得治

    ○亀田得治君 外務大臣に確かめておきたいのですが、ともかく総理は、必ずしも安保委員会でそういうことが議題にされることを拒否しておることはないと、今お答えになった通りです。私は、安保委員会に正規に防衛庁長官と二人出ておるわけですから、相手方の意向等も多少打診をして、政治的に多少考慮しなければならぬ手続上のこともあるかもしれませんが、やはり積極的に議題にするようにしてもらいたいと思うのですが、外務大臣の率直な御意見を聞いておきたい。両方聞いておきます、二人とも正規の委員ですから。
  86. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保委員会運営に対しましては、先ほど申し上げましたように、いろいろな角度から安保条約の問題を政治的にハイ・レベルで話し合いを行うのでありますから、結論の出るものもあり、出ないものもあります。いろいろな問題を取り上げて差しつかえない問題だろうと思います。また、話し合いをして差しつかえない問題だろうと思います。この問題につきましては、私は、現在においても配備の問題が含まれるということを思っておりますので、今にわかに取り上げる意思はございませんけれども、将来にわたってそういう問題も話し合ってみて一向差しつかえない、こう考えております。
  87. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。ただいま外務大臣のお答えした通りであります。全然変っておりません。
  88. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは総理に申し上げますし、また外務大臣にも申し上げますが、やはり専門的に見れば、どうも不明確な点があるのです。だから、政治的なハイ・レベルの会談の場所ですけれども、こういう問題は、私はおそらく条約の専門家にお聞きになれば明瞭だと思うのです。私は専門家じゃありませんけれども、半しろうとの見地から申し上げれば、こういうものは明確にしておくべきなんです。  そこで、沖縄の問題について簡単に御質問いたしますが、最近の引き続き行われた沖縄の選挙等から見て、アメリカの沖縄に対する政施の誤まり、基本的には日本に対する復帰、ミサイル基地反対、こういうことは明瞭に世論に現われておると思うので、こういうような動向に即応して、よく総理も、場合によってはそれこそハイ・レベルの会談をしてもいいということを言っておられましたが、少くとも施政権返還の交渉をされる御意向はないのか。  それから、それとからめて言うと、非常に弱くとられるといけないのですが、少くとも土地の強制取り上げ等をとめるだけのそのくらいのことは、何とかやるというような気持を披瀝していただけないものであろうか。これも総理から御答弁願います。
  89. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 沖縄の施政権や、あるいは沖縄に行われておる施政が適当でないと思うようなことに対して、その是正を求めるということは、日本政府として当然やっていいことであり、またやるべきことであると私は考えております。従って、従来もやっておりますけれども、今後におきましてもこれはやるべきことである、こう思います。
  90. 曾禰益

    ○曾祢益君 ソ連関係について、これまた簡単に時間の関係で御質問いたしますが、われわれ、基本的には岸内閣が対米外交、追随的な対米外交、特に沖縄問題等に対する明確な態度がない。南方の領土に対する明確な態度なくして、そうして北方領土に対する進展は、これはあり得ない。そういうところから、平和条約については、実際こちらから逃げ回っておるというところにおいて、外交の転換が根本だと思います。しかし、同時に、ことに北洋漁業等について一々平和条約の問題、あるいはソ連の領土に対する主張を認めさせるようにからめてくるならば、これはソ連の大国主義として批判していかなければならぬ。  そこで、北洋問題にしぼって申し上げまするが、私は、元来漁業資本代表日本代表にしたことは間違いだ。これはうまくいかなければ、自分の責任としてはこれは負い切れない。だから、初めから適当なときにバッターを交代してほしい、大物を送ってくれ、こういうようなことを内外に言っておった。これでは、ほんとうに腰のすわった交渉ができるはずがないと思う。そういうところの誤まりもございました。また、平塚代表から赤城代表にかわるまでの間のごたごたは、これはまことに岸内閣の人事上の弱体ぶりの露呈であり、派閥抗争の現われだと思うのです。また、外に対しては非常に交渉も停頓したと思います。しかし、今や最終段階に入ったのでございまするが、最近伝うるところによれば、オホーツク海に対しては、ソ連側で、船団母船式は困る、しかし零細漁業といいますか、独航船のものについてはやや態度をゆるめたように言ってきておりまするが、その間の実情等について、これは副総理から農林大臣代理としてお答え願います。
  91. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) ただいま赤城農相がイシコフと三回にわたって折衝いたしました。その第一回、第二回目におきましての公電は、私ども拝見したのでありますが、これは基本的な立場について両方話し合いを盛んに進めたわけですが、どうにも話が進まなかったようであります。  オホーツク海の漁業については、先方は全面的に禁止してもらいたいという、こちらはそうはいかないという線で、対立の状態であったわけでございます。これについて第三回目の折衝で話は出ておるようでございますが、これは日本側で漁業の最盛期において休日を設けるというようなことはどうだというようなことを話をし、これに対しては、向うはまだ賛成の意を何ら表してない。一歩も向うは初めから変っていないという状態でございまして、この休日という案も、どういうことでありまするか、詳細な電報をあとでよこすというままで、まだよくわかっていないのでございまして、それから先のことは承知しておりません。
  92. 曾禰益

    ○曾祢益君 このオホーツク海を含めての問題が、公海の漁業自由、双方が納得する科学的根拠によって妥結する、あくまで妥結を目途として最後まで交渉を粘っていただくように、いわゆる自由出漁ということを言うことは非常に誤まりだと思うのですが、そういう場合には、最後の妥結の線と国内の出漁の準備とのずれというものがあり得るわけです。そういう場合に、いよいよ船団の組み方、あるいは独航船の隻数等において、妥結したために準備したものが入り切らない場合には、国内的な措置ということが考えられなければならない。私は、その大漁業資本に対する補償なんかということは、絶対いけないと思うのですが、独航船その他のものに対して何らかの補償をしても、最後まで粘りぬく、そういう補償を覚悟で粘り抜くということが必要ではなかろうか。この外交交渉と国内的な措置との関係について、農林大臣代理としてどう考えますか。
  93. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お話のように、ただいま話がまとまらぬときは自由出漁をするということも、考えるものではないと思っております。私どもは、必ず赤城農相が妥結点を見出してくれると思っております。それがどういう程度になりますか、漁獲量についても、向うから一応話の出ておるものを、こちらからも出ておるものとの間に相当差があります。あなたの言われますように、あるいは出漁の隻数を減らすというような問題が起らぬとは言えないわけでありますが、これを今どうしようということを特に計画はいたしておりません。これは私ども代表が話をつけてきた上でしかるべくやるのであって、その間におけるいろいろな出漁の準備、年々の、状況、今年の折衝状況を見て、両者間において十分注意してやってもらう、そのあとの問題はそのあとの問題というように考えておりまして、国内的な措置については相当、必要なときは考えることがあるだろうと思います。
  94. 曾禰益

    ○曾祢益君 次に、中国問題について簡単に御質問いたします。私は、基本的には岸内閣が中国北京政府は承認しない、貿易だけでやりたい、この問題がもはやそういう二元性では行けなくなったというのが、最近の実情だと思います。しかし、それはそれといたしまして、この第四次民間貿易協定に対する台湾側の最近の交渉は、これは元来は与党内部あるいは政府与党間の意見の不統一、代表団が出る前から、国旗問題がどうのこうの、外交特権がどうのこうのということを、与党内からだいぶ騒ぎ立てたところに、実は火元があった。そういう不統一に対する政治的責任を総理はどう考えられるか、その点伺いたい。
  95. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日中貿易の問題については、昨年の秋、御承知の通り、これが調印を見なかったのは覚書の問題であります。それで、覚書の内容につきましては、その当時から政府としては、この代表部というものを貿易を促進するために置くけれども、これに公的性格を与えるものじゃないということは、前から申してきておりました。  今、台湾政府のこの意向が、与党内における意見の不一致ということ、それに基因しておるところが大きいという御意見でありましたが、私ども政府及び党といたしまして、意見は初めから今日までちっとも変っておらないのでありまして、私はそういう不統一なために云々というような事実はないと思います。もちろん、党員の一人一人の意見を聞きますと、それはいろいろな意見を持っている人があるかもしれません。党としていやしくもずっと終始一貫、政府としても終始一貫しておる。方針はちっとも動いておらないのであります。
  96. 曾禰益

    ○曾祢益君 不統一であったことは事実なんです。しかし、それは過去のことですが、大切なことはこれからの問題だと思います。ですから、政府がいわゆるよろめけばよろめくほど、かえって火の手を大くするのではないか。かえって内外に対する信を失することを、非常に国民は憂える。でありますから、政府が一貫した方針を持っておられるなら、その一貫した方針が社会党の考えと違っておっても、少くとも民間貿易協定はこれを支持し、これに協力するという基本線は曲げないで、そうかといってまたあまり冷却期間なんといっておると、かえって火の手が回ることがあるので、すみやかに協定を支持し、これを承認し、協力するという方向に進まれるお考えであるかどうか、その点だけ伺いたい。
  97. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは、私も、なるべく急いで政府態度を三団体に返事することが必要であると思って、関係の各省に命じて、急いで、その意見の統一をするように検討をさしております。
  98. 曾禰益

    ○曾祢益君 法務大臣に伺い、またあわせて総理外務大臣にも意見を伺いたいのですが、国旗問題ですが。これはわれわれとしても、台湾政府を不必要に刺激するということは得策でないと思います。しかし、同時に、台湾政府に対する気がねのあまり、また、この国旗問題は、両方とも非常に感情がからまるような、国家の威信の問題です。従って、あまりに台湾政府に対する顧慮をやり過ぎて、今度は北京側にはね返るということの危険は、これは当然に考えておかなけりゃならぬ。しかも、この点について、三木政調会長あるいは法務大臣が、刑法第九十二条による、国旗の、何といいますか、棄損したといいますか、そういう取扱いはしないというようなことを、これを公言することは、これはまさに、私が言ったような心配の線を必ず飛び越して、非常なる危険な事態をやっているわけなんです。一体、そういう不必要な刺激をまた北京側にすべきではないと考えるが、この点をどうお考えですか。まず、法務大臣からお答え願いたい。
  99. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) お答えいたします。ただいま国旗の問題についてのお尋ねでございますけれども、先ほど総理大臣からお答えのありました通り、日中の貿易はどこまでもこれを伸張していかなければならぬと、こういう立場からいたしまして、この貿易協定に基いて、将来わが国内に設けられることのあるべき代表部またはその所属員の安全保障に関しましては、どこまでも政府としては万全の努力を払って、遺憾なきを期していかなければいけない、かように今考えておるわけでございますけれども、しかし、先ほど総理からのお答えにもありました通り、純粋の法律上の問題ということになりますと、これは国内法において公けの性質を与えるものではないと、かように了解をいたしておるのでございます。もっとも、民間代表から関係文書を受領したのが数日前でございまして、その後関係各省で、これに対してどういう方針で進むかということについて協議中でございまして、まだ最後の結論が出ておりませんけれども、大体の考え方として、私が了解しておるところでは、公けの法律上の特権を与えるものではない、こういう考え方で進んでおるように信ぜられるのでございます。  そういう意味合いで、お尋ねがありまして、どこまでも法律上の性質を究明いたしますれば、法律的な公けの性質がないということから、刑法九十二条の場合をとってお尋ねになりますれば、私は、さようなケースは万々起きないと、かように考えておりますけれども、純法律の立場からいえば、公けの性質がない場合には九十二条の適用はないということを、お答えしておく次第でございます。
  100. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 法務大臣の言われました通り、法律的な問題については考えるのでありますが、常識的に考えましても、承認をしておらない国の方というものに九十二条が適用されることはないのではないかというふうに考えております。今研究の成果を待ちました上で、最終的には決定したいと思っております。
  101. 岸信介

    国務大臣岸信介君) それは、法律問題と事実問題と、二つあると思うのですよ。法律問題で解釈をするならば、今法務大臣がお答えした通りであります。しかし、私どもはこの問題を非常に慎重な態度で扱っていきたいと思うのは、一つは、今、中共政府と台湾政府との間の感情をいたずらに刺激するようなことをしてはならぬということが一つと、それからもう一つは、実際問題として、事実上そういう今いろいろなことを、法律問題を生ずるよりなことのないように、この代表部ができました場合において、これに対してその掲げている国旗を損壊したり、汚辱したりするような事実を起らせないように、十分に警察その他の方法によって取締りをし、こういうことを未然に防ぐという努力をうんとやるという問題。で、そういう法律論を起させないようにすることが、政治としても、またこの日中貿易の促進の趣旨からいっても、必要だろう、こう思っております。
  102. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 曾祢君に申し上げます。時間が経過しておりますから……。
  103. 曾禰益

    ○曾祢益君 私、時間がなくなりましたのでまだ質問することがありますけれども、これで終ります。
  104. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 大蔵大臣が出ておりますから……。
  105. 曾禰益

    ○曾祢益君 それじゃ、これだけはワク外で願います。(「委員長、親切だ」「親切だよ」「非常にいい」と呼ぶ者あり)  大蔵大臣に伺いたいのは、この東南アジア開発協力基金の出資金です。どうも私はこれはわからないのです。東南アジア開発協力のための国際的な機構に対する出資等のために必要な投融資の財源、これは出資なら出資で、投資になるのじゃないのですか、融資ということは。大体この五十億で何をするのかということについては、いろいろと同僚議員から御質問がありましたが、どだいまだ出資すべき国際機構ができていないのですね。だからこそ、輸出入銀行に預けておくのだ。これはまあ、話はわかるとして、そういうできたときに出資するのであるか。それとも、バイラテラルな場合に出してもいいという、非常に不明確なみたいな、最も厳格なる大蔵大臣にあるまじききわめて不明確なる御答弁です。一体どういう意味でおやりになる。金額は少いけれども、こういうでたらめな私は予算というものはないと思う。どういう場合に出資なり融資をするのか。また、日本の方の経済協力が賠償に関連して、ビルマ、インドネシアもできますが、フィリピン等がございます。こういうものと競合するのか、それともコロンボ計画みたいなときだけ出すのか。何らかの構想なくして、こういう不明確なことをしては困る。非常に私は危険だと思います。
  106. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この構想は、また、その構想が明らかになれば自然その性格も明瞭になると思うのですが、開発のおくれている東南アジア、これを開発いたしますのには、どうしても国際的な資力もできれば集めて、そうしてそういうふうな国際的な機構でもってやることが最も適当である。そこで、そういうふうに国際的な機構のできることを希望するのでありますが、しかし、それはなかなかそう急にいかない事情もあるが、しかし、日本としては、この東南アジア諸国に対しては、国交の上においても、また経済的な関係においても、きわめて密接な関係なのでありまして、これらの国々の未開発の資源がすみやかに開発されることが熱望されている。その点、日本としてはまず率先をして、そうしてそういうふうな国際的な開発機構のできるように、まず自分から範を示してゆくわけですね。そういうふうな機構ができることを促す必要がある。  そういう意味において、まず日本として東南アジア開発の基金を設けて、そうしてそういうふうな国際的な機構のできることを、それで促進しつつ、できたそれに出資をする。その機構を通じて投資ということにもなり、しかもまた、それにひまがかかれば、その間はただ遊んでおるというわけではないのでありまして、その間は、将来そういうふうな国際機構ができたときに、その機構が肩がわりし得るような性質の投資をする、言いかえればそういうような国際機構がまだできないときには、それができたときにするであろうような投資を、まずやっておく、こういうわけでありまして、これはむろん他の経済協力というようなことと、未開発の東南アジア諸国の資源を開発するのですから、結果的には私はそれほど相違はないと思うけれども、しかし国際的な機構をうながすためにこういうような基金を置くという点において、私は重大な意義がある、かりに日本だけ独立にあの国に貸してやろう、あの国に貸してやろうというのではないのでありまして、そこに重大な意味があると考えておるわけであります。むろん五十億というのは、そういう意味においては、直接に東南アジアの経済を開発するには五十億はむろん小さい、相当大きなものを持って行かなければならないがそういう機構をうながす原動力になる、そういう意味におきまして、私は必ずしも金額の多いことを必要としない、かように考えております。
  107. 曾禰益

    ○曾祢益君 せっかくの御答弁ですが、非常に私は苦しいと思う。誘いの水とすれば、貧者の一灯でお五十億円は非常にひど過ぎる、ドルというものがいるのです。しかし貧者の一灯でもいいですから、先に誘いの水で出すならば、これはむろん明確に国際機構ができるまでは使わない、それなら話は通る。そうでなくて、国際機構ができた場合に、そちらから出すであろうところのものを予定して出資する、これはバンカーのあなたにも似合わないことで、先に日本が出資したあとで肩がわりしてくる、そんなものに賛成するものじゃございません、どっちなのか、明確にすべきです。見せ金でもいい、使わなければ使わぬでもいい、むしろ対外的な効果をねらって筋の通った国際機構に対するあくまで出資金だ、これならわかる、そうでなければ、とうてい、国際機構ができもしないのに、できた場合に国際機構が投融資するであろうところに、あらかじめ肩がわりして出しておく、こういうことはバンカーとしてすべきことではない。それは結局岸さんが東南アジア開発機構ということに触れましたので、大まかに、金が余ったから、こういうところに入れておいて、何に使うかわけがわからないという、最も典型的な不まじめな予算の組み方だと思うのです。
  108. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 決してそういう、何だかしっかりした目的もなくしてやっているようなことはないので、具体的に申し上げれば、この金は主として、私はやはり他の国と、そういう機構は、たとえば国際東南アジア開発基金というようなものは、まだできないのでありますが、しかし他の国と共同の形において東南アジアのある国に金を投資をする、そういうことはあり得る、そういうような形をなるべくとって行こう、こういうことを考えておるのであります。そうすると、こういうふうなものがだんだん重なっていくと、ここにやはり国際的な機構を形成するであろう、こういうふうなねらいを持っておるのであります。そう 私は何だかわけのわからぬと言って捨ててしまうのは、少しあなたは割り切り過ぎておる、これを、東南アジアの開発には、しかも国際協力をやって行こうというのには、私はそんな単純なものではない。やはり重み積ね積み重ねしまして、日本としてはあらゆる努力を払う、こういう見地に立っております。なお、この基金の運用については、内閣に東南アジア経済技術開発審議会というものを置いて、そしてここで、今後どういうふうに東南アジアについて、日本は経済的に資源の開発をするかというような点が考究されて方針が定まって行くだろう、かように考えております。(「委員長委員長」と呼ぶ者あり)
  109. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 関連ですか、ごく簡単に。建設大臣は建設委員会の途中を参っておりますから、どうぞお含みの上で。
  110. 戸叶武

    戸叶武君 総理大臣に関連質問いたします。  曾祢君の不可侵条約に対する建設的な提案に対して、総理大臣は不可侵条約に対しては、これを信頼してよいかどうかについて、日本人の心理から疑問があるとの答弁をなさいました。その不可侵条約に対する国民の不信感とは、具体的に意味するものか、第二次世界大戦末期における日ソ関係意味するのかどうか、その御答弁を願いたい。
  111. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本人の中には、私は第二次戦争末期におけるところの不可侵条約があったが、ソ連行動に対しては、やはり不信の念を持っておる者も少くないと思います。かように思っております。
  112. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 戸叶君、きわめて簡単にお願いします。
  113. 戸叶武

    戸叶武君 あの問題における国民の不信感というのは、あのときにソ連がとった態度というものは、米英ソ三国の首脳者であるルーズヴェルト、スターリン、チャーチル間において、ヤルタ秘密協定が結ばれ、その戦時中とった軍事秘密協定に基いてソ連がとった態度であって、ソ連だけの私は不信感でないのであって、あの不可侵条約が結ばれていることは天下公然のことであるのを知りながら、アメリカ、イギリス、ソ連の首脳者がヤルタにおいて秘密協定を結んで、あのようなことをしでかしたのであって、その不信感というものがあるならば、日米間におきましても、日米安全保障条約というものが当然結ばれるはずはないのであります。日米間においては不信感がなく、ソ連との間にだけ不信感を継続するという考え方の基礎はどこにあるか、その点を明確にしてもらいたい。
  114. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は決してソ連だけに対して不信感を継続するということを言った覚えはございませんし、そういう意味で申しておるわけじゃございません。不可侵条約というものに対して、日本人の感じは、あの第二次戦争の末期におけるソ連のとった行動に現われているように、不可侵条約を結んでおっても、これが必ず守れるというような、これに対して非常な強い信頼感を、日本人はそういう経験もあるので、持っておらないだろう、おらない人が相当あるという私は事実を申したのであって、ソ連に対して、ソ連日本との関係におきましては、しばしば言っているように、共同宣言による友好関係を何しておるわけでありまして、われわれはその友好関係を増進するように努力しておるのでありまして、私はソ連に対する不信感を国民の問に長く植えつけて置こうという意味で申したのではないのでありまして、私はそのことを申し上げたわけであります。
  115. 青木一男

    青木一男君 根本建設大臣にお伺いいたします。  国土開発縦貫自動車道建設法が昨年通過したのでございますが、この法律が通過すると、ただちにその一部である小牧—吹田線の建設に着手することになりましたのは、建設大臣の非常な努力のいたすところでありまして、私は敬意を表するものであります。この大事業が今後予定の通り成功するかどうかの一つの問題は、資金計画がうまく行くかどうかということにあると思うのでございます。そこでこの小牧—吹田線の建設についての資金の調達でありますが、建設省の案によりますれば、昭和三十五年まで四ヵ年間にこれを完成するということになっておるのございますが、その資金の量と、これに対する調達の具体的の計画がおありになれば、また、なくちゃならないはずでございますが、大要を御説明いただきたいと思います。
  116. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。小牧—吹田間の縦貫高速自動車道路につきましては、大体七百九十三億円を予定しておるのでありまするが、利子等も含めますると、大体九百億程度になるだろうと予定しております。このうち三百六十億は外資に仰ぐ予定でございまして、残りは資金運用部資金並びに国内資金をこれに当てる方針で、これについては概括的に大蔵当局とも意見を同じゅうしておるのでございます。なお、昭和三十三年度につきましては、この高速自動車道路に対する資金としては、百億を予定しておりまして、そのうち四十六億を外資に仰ぐ予定で、目下、大蔵省を通じまして、外資関係の受け入れ態勢を交渉しておる、こういう状況でございます。
  117. 青木一男

    青木一男君 政府は、特別会計を設けまして、道路整備五ヵ年計画に着手しておるのでございます。わが国の道路の現状から見まして、これは、まことに時宜に適した策であると、国民も喜んでおるわけでございますが、この計画は、昨年、国土開発縦貫自動車道建設法の通過後に立てられた計画であるわけでございますが、この両者の関係、ことに新しい整備計画における縦貫自動車道の使命、役割ということについて、簡単にお話をいただきたいのであります。私は、大体この縦貫自動車道というものは、人のからだでたとえれば、背骨のごときものでございまして、これが一本まん中を通りまして、それに助骨のような支線がたくさんできて、将来の日本の交通網が完成する、こういう機構のもとに、今後計画が進められることと思うのでございますが、この点を建設大臣から御説明をいただきたいと思います。
  118. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。お示しの通り、縦貫自動車道路の法律的に設定されたゆえんのものは、従来の日本の道路は、いわば人道、車道を中心としたものでございまするが、最近におきましては、自動車を十分に通行せしめ得る規格のものであるということが第一点と、もう一つは、経済の発展に伴いまして、長距離重量輸送が盛んに行われまするので、そういう意味におきまして、お示しの通り、長距離間を貫いて、しかも、反面におきまして、国の全体の経済発展の基盤をなすということに寄与しなければならぬと存ずるのであります。その意味におきましては、お示しの通り、からだにたとえるならば、縦貫は、その通り、国の背骨をなすというような構想のもとに立てられるのが、この法律の建前であると信じております。
  119. 青木一男

    青木一男君 小牧—吹田間が完成いたしましても、それが東京にまでつながらないというと、この道路の建設の意義が大半達成しないのでござまいす。そこで、この小牧—吹田線の完成に引き続いて、小牧以東、東京までの建設に着手されることが当然の順序であり、また、その用意がなければならないと思いますが、建設大臣の御所見を伺いたいと思います。
  120. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お示しの通りでございまして、その意味におきまして、本年度も相当額の調査費をもちまして、航空調査をいたしております。三十三年度におきましては、引き続き五千万円の予算を計上いたしまして、航空写真のほか、これを図面化する、さらにまた、実地について調査する、かようにいたしまして、漸次、東京と大阪間を結ぶ構想のもとに、調査準備を進めておる次第でございます。
  121. 青木一男

    青木一男君 三十三年度予算に計上された五千万円の調査費でございますが、これは国土開発縦貫自動車道建設法別表に掲げる東京—小牧間の予定路線、すなわち山梨県、長野県、岐阜県東部を通る予定路線の実施調査と解してよろしいかどうか。それから、その調査の計画については、昨年の審議会に御説明になったところによるというと、三十三年度には計画線調査、実測調査、経済調査の三つを行うというふうに御説明がありましたが、今のお話のように、金額が減っておりまするので、その全部の調査はあるいはできないかと思いますが、その具体的な内容をお伺いしたいと思います。
  122. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。お示しの通り、この調査費は、いわゆる中央道といわれます、法律上、一応規定されておりますあの別表の線に沿うて調査する目的のために、予算を計上したものでございます。なお、五千万円でありまするので、設計、実施調査までは困難でありますが、実地調査は含まれております。経済調査は、そこまでちょっと手が伸びないと考えておりまするが、できるだけ経済調査も、この予算の範囲内でやり得る程度までは実施いたしたいと考えております。
  123. 青木一男

    青木一男君 国土開発縦貫自動車道建設法三条第二項によりますれば、「政府は、すみやかに、前項の法律で定めるべき国土開発縦貫自動車道の予定路線に関する法律案を別表に定める路線を基準として作成し、これを国会に提出しなければならない。」と、こういうふうに規定してあります。これは参議院の修正に関する法文でありますが、修正の経緯から見ましても、予定路線の法律をすみやかに制定する必要があることは、明らかであります。また、この法律第十条の規定によりますれば、この予定路線を定める法律の施行後、すみやかに建設線の基本計画の立案のために必要な基礎調査を行うことになっております。すなわち、具体的な基礎調査を行う前に、予定路線の法律というものを制定することを命じておるのであります。いずれにいたしましても、この法律の制定は早急を要するのでありますが、政府は、この第三条第二項の法律案をいつ国会に提出する考えであるかをお示しいただきたい。
  124. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。先ほど申し上げましたように、現在実施、または明年引き続いてやりますのは、この予定線をきめるための予備調査と申し上げていいと存じます。これに基きまして、法律で定められておるところの経過地を細密に図面化いたしまして、これに基いて、法律上の命ずるところの予定線を国会に報告いたしまして、それから後は、今度は実施計画でございます。隧道とか、あるいは橋梁、その主要なる面の、今度は実地に工事を実施するための整備計画が、それによって行われるのでありますが、今の現状からいたしますれば、本年と明年まで、この調査はかかるのではないかと思いますが、そういう状況からいたしますれば、早ければ明年ごろには国会に提出することができるのではないかと考えておりますが、今のところ、はっきりと、いつということは言えませんけれども、でき得るだけすみやかに予備調査ができ、それに基いて経過路線を明らかにいたしまして、国会に提示申し上げたいと存じます。
  125. 青木一男

    青木一男君 ただいまの建設大臣のお考えは、この法律のできた経緯、ことに小牧—吹田間については、あの衆議院で付せられた原案の予定路線そのままで着手しておるというような点から考えましても、予定路線をきめる法律の前に、そんな詳しい調査をするということは、法律の意味ではないと思います。なるべくすみやかに、やはり大体の路線をきめるというのが、法の精神であると思いますからして、来年と言われましたけれども、この法律の経過、ことに参議院における修正の経過等と照らし合せ、また、現在の法律の表現をよくお読みいただいて、なるべくすみやかにこの法律提出に至らんことを私は希望しておきます。  次に、河野経済企画庁長官にお尋ねいたします。本月二十一日の新聞に、次のような記事があるのであります。河野経済企画庁長官は二十日、大阪商工会議所で開かれた関西財界との懇談会で、東京—名古屋間の高速自動車道路は、東海道案が有力であるとの示唆を行い、さらに次のように語った、自動車道については、中央道、東海道の二案があるが、長期経済計画遂行に有利な方になるだろう、きまり次第、外資を導入して工事に着手する考えだ、というのでありまして、さらに新聞は、河野長官の東海道案は、岸首相も根本建設相も意見が一致しているといわれておると解説を加えておるのであります。私は、河野長官がかような意見を述べられるはずはないと信ずるものでありますけれども経済企画庁長官という責任の地位にあられる方の談話として新聞に出ましたために、その反響はすこぶる大きいのでありまして、世間に驚きと不安とを与え、また、国法の権威を疑うものすらも出ておるのであります。これは今後国策遂行上の障害となるおそれもありますので、私は河野長官から、そのときの談話の真相についてお話をいただきたい。そうして、もし新聞報道に誤まりがあるならば、この際これをただして世間の疑惑を解いていただきたいと思うものであります。
  126. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 今政府が作っております長期経済計画によりますと、この五年間に横浜、神戸、名古屋、大阪と申しますか、これらの貿易港を通じて相当の荷物が動くことになるわけであります。少くとも現在の物資の七割程度の輸出物資がここに集まるわけであります。そういうふうなものを想定いたしますと、現在の港湾の設備、もしくは背後の道路、鉄道というような運輸の機関が現状のままをもっていたしましては困難をきわめるというようなことからいたしまして、これらの交通運輸の整備が必要であるということに相なっておるわけであります。そういう意味からいたしまして、政府におきましては、先般閣議にそのお諮りがございまして、交通運輸関係の閣僚の懇談会をもちまして、そこでそういうふうな交通運輸関係の整備にはどういう手段を講ずるのがよろしいかということをよく相談しようということになっておったのでございます。  そこで私が今青木さんがお示しになりましたような話を、関西の財界の懇談会の際に出したことは間違いないのでございまして、そこで具体的には、実は一昨日でございましたか、その第一回の交通運輸に関する閣僚の懇談会がございまして、その際に、今お話の中央道と東海道、ないしは鉄道によるところの広軌の路線、これらが経済上交通上、どれがどういうふうな経済的な効果が出てくるか、ないしはまた、これが施行に当っては、どういうふうな経費がかかっていくかというようなことをまず調査してみる必要があるということに一応取りきめをいたしまして、事務当局におきましてそれぞれ調査をすることに相なりましたような次第でございまして、これが今お話の、こういうことのために中央道をやめるとかやめないとかいう話とは関係がないのでございまして、中央道につきましては、今お話の通り、法律によって規定がございますから、それはそれ自身として進むのでございますが、今私の申しますことは、長期経済計画の線に沿いまして、これらの物資の動きをどういうふうに扱うかということを、主として考えていかなければならぬという必要から、われわれ研究しておるのでございます。こういうことでございますから御了承いただきたいと思います。
  127. 青木一男

    青木一男君 ただいまの河野長官のお話でよく了解いたしました。長官は、法律できまっておる中央自動車道のことをどうしようという意味ではないのだ、全体的の交通運輸の計画について話し合ったのだ、こういう趣旨でございますから了承いたしました。  この中央道の問題について、東海道を通るか、あるいは中部山岳地帯を通るかということは、もう多年の論争の経過であったのでございますが、御承知の通り、昨年の法律によって国家意思として、最後の断が下されておるわけでございます。それでございますから、この法律の現存する限りこれに対する案というものはあり得ないわけでございます。この法律は、衆議院の四百三十人の提案になるものであり、衆議院においても全会一致で可決した法律である。参議院においても、共産党の野坂、岩間両議員が起立しなかっただけでありまして、他の全員の賛成になる法律であります。従いまして、この法律を直して後でなければ、この中央道をほかへ持っていくということにはできないわけでございます。もちろん一般国民は、この法律に対して批判を加えることは自由でございます。しかしながら、政府は、国法の命ずるところを忠実に実施するのがその任務であります。従って、国務大臣はもとより、各省の公務員、あるいは道路公団等の国家機関の職員が、法律の定めたところに反対したり、あるいはこれに非協力の態度をとるというようなことがあってはならないことは当然でございます。衆議院の決算委員会におきましては、道路公団の首脳部が、業者から資金を集めて、高速道路調査会という財団法人を作ったということが問題になったようでありますが、国家機関の外郭団体が国策に協力する、活動するということでありますれば話の筋が通るのであります。ところが最近、昨日私が得た情報によると、ある国立大学の教授で、この道路調査会の理事をやっておる人が、最近に中央道に反対し、東海道案促進の講演をして回っておるということであります。私はその事実の真偽を知りませんが、もし事実といたしまするというと、国家機関というものが、間接ではあるけれども、国策反対運動に支援を与えるというようなことになりかねないのでありまして、これは非常に不都合な結果になるのでございまして、この点は建設大臣において十分御注意をいただきたいということを申し上げておきたい。  それから最後に、先ほど根本建設大臣は、この国土開発縦貫自動車道建設の資金の一部を外資に求める計画のお話でありました。これは従来政府の考えがここにあることも承知しておりますが、私はこの縦貫自動車道の建設資金を、程度にもよりますけれども、その多くの部分を外資に依存するという考案に対しては多大の疑問を初めから持っておるものでございます。  第一に、外資依存では、この大事業は外国の意向に支配されるのでありまして、非常に不確実、不安定のものになるのであります。第二に、われわれが子孫に残すべき大事業としては、われわれの汗と貯蓄による資金をもってまかなうべきでありまして、外国からの借金をあとに残したのでは、子孫はかえって迷惑することがあり得るのであります。    〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕 第三は、外債は、国として外貨需要の存するとき初めてその意義をなすのであります。経済企画庁の長期経済計画の目標は、貿易と貿易外収支で国際収支の均衡を維持することにあるのでありますから、借金を必要としないのであります。従って、外債募集はこの計画と矛盾する点ができてくるのであります。第四に、自動車道の建設費の大部分は労銀であり、資材としてはセメントが主要なものであります。すなわち円資金をもって間に合うものでありますから、外債の必要が理論上ないわけであります。  第五に、国内蓄積資金で支弁いたしますれば、インフレーションは起らないのでありますが、外債によって円資金を調達すれば、それだけ通貨の増発の原因となるのであります。もしこれを避けようとするならば、外債によって得た外貨を物資に変えて輸入し、これを国内で売って円貨を回収するほかはないのでありますが、これは不必要な物資を輸入するという点で不健全な政策であり、また、それだけ商品の入超となるのでありますから、貿易と貿易外収支で国際収支の均衡をはかるという国の基本計画に背馳するのであります。  第六に、国内の貯蓄増加高が毎年数千億に上る現状から見て、毎年三百億円程度の資金調達は不可能なことではございません。これらの点につきまして、大蔵当局及び経済企画庁当局に所見を伺うことは、時間の関係上、今日は遠慮いたしまして、他日の機会に譲ることといたしますが、十分御研究願いたいと思います。  ただ最後に、建設大臣に伺いたいのは、建設審議会の資金部会をなぜ開かないかという点であります。審議会は法律第十二条によって、資金の調達に関し、調査、審議することとなっておるのでありす。昨年一度この資金部会を開くとの通知がありましたけれども、何ゆえか、これが取消されておりまして、今日に至っても一回もこの資金部会が開かれておりませんが、建設大臣のお考えを伺っておきたい。
  128. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。資金部会を昨年準備をいたしましたが、当時、委員の方々から、総理大蔵大臣経済企画庁長官にぜひ出るように、会長代理である建設大臣の君だけでは話にならない、ぜひみなそろってくるようにというような御要望でありまして、その手配をいたしたのでありまするが、ちょうど予算の編成のまっただ中でありまするので、どうしても大蔵大臣並びに経済企画庁長官も手放し得ない状況のために、当日は準備をいたしましたが、延期をいたして、それ以来、ほとんど国会の状況がこういう状況でありまするので、今日になっておりまするが、できるだけすみやかに資金部会を開いていただいて、御審議を願いたいと思っております。  なおまた、先ほどいろいろと、縦貫道路なり、高速自動車道路に対して、外資を導入するということについての、いろいろのうんちくのある御意見を承わりまして、今後十分注意いたすのでありまするが、何しろこういう相当大きな工事を、しかもなるべく急速にという観点からいたしまして、国家全体の経済並びに外貨事情等をも考えまして、これは決定しなければならぬと思いまするが、一応現在予定しておりまするのは、先ほど申し上げた通りの三百六十億程度、これは円で、そういうわけであります。  それからもう一つ、御注意いただきました高速自動車道調査会という問題について、御注意がございましたが、これは政府の外部機関でもなければ、また道路公団の外郭機関でもございません。これは、もう一つ類似の財団法人があるわけでありまするが、それと同様に純然たる民間機関でございます。たまたま先般問題になりましたのは、この事務所を道路公団の事務所の一部を貸しておるということで、いろいろな疑問が出て、また批判があったので、これは道路公団並びにそれぞれ関係方面に注意を勧告いたしております。それからこの委員の一人が、いろいろと不都合な言動をしているという御指摘でありますが、私の方でまだ聞いておりませんので、実際を調べて、もし万一不都合なことがありますれば、そういう財団法人の人々についても、十分に政府の意図に御協力を願うように、御指導と申しますか、御協力を願いたいと思います。
  129. 青木一男

    青木一男君 私の質問はこれで終りますが、審議会の資金部会をすみやかに開かれんことを希望いたします。また、今の調査会の話でございますが、衆議院で問題になったのは、単に事務所を公団の中に置くということだけではなしに、この調査会の資金を公団の首脳部が集めたということに非難の点があるようでございますから、その点もあわせて一つ御検討を願いたいと思います。
  130. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 本予算委員会も、日を重ねて政府の見解のただし、一部の関係を除きましては、だんだん政府の考えがわかって参りましたので、私は本日は主として総理大臣に対してお考えを承わりたいと思うのであります。  わが国の政治におきまして、民主政治を育てなければならぬ、これだけだということは、これは申すまでもないことでございまして、その民主政治の発達には二大政党ということが一番いい、これも私は納得できる、これは確かなことだと考えるのであります。そこで、かねがねわれわれの会派といたしても、二大政党の確立を心から望んでおりまして、自由民主党と社会党がそれぞれ一本になって誕生しましたときは、手をたたいて喜んだものでございます。しかるに、その後、二大政党になっての主として国会運営等を中心として見ますると、まだ一本になって、それで日も浅いせいもあると思いますが、必ずしも国会運営について、これあるかなと思う面ばかりではないのであります。人によっては、わが国はまだ二大政党は早かったのじゃないかというようなことを言う人すらある、私は必ずしもそうは思わない。先ほど申しましたように、二大政党が一番いいのだということを信じておりますが、先ほど申しましたように、国会運営の現状を見ますると、必ずしも満足すべき状態とは言えないと私は思う。これは何がゆえにそうなのであるかということでありますが、    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕 もちろん政治でございますから、一人が、一党だけでできるものではなくて、大きな政党がほんとうにお互いにしのぎを削ってやられる、こういう場面で摩擦や衝突がある場合の起きるということは、これはやむを得ない、しかし、そういうことだけでなくて、何となく、国会運営を初めとして、全般的な日本政治のあり方を見た場合に、何かそこに物足りないものがある。特に私が一番残念に思いますことは、これは外交に関しまして、特に私ども緑風会といたしましては、今回の問題について、超党派外交がぜひとも望ましいということを申し上げた、これは、すでに森同僚委員からも本委員会で申し上げたわけでございますが、まだその時期じゃない、向うが言ってくれば何とか考えようというようなことで、進んで腹を打ち割って、超党派外交をやろうというお心組みが両党ともにない。外交というような日本に一番大事な問題が、むしろ一番対立が多いような感じを受ける。また、教育の問題にいたしましても、これは教育の目的というものは一つあって二つはないと思う。その手段や、あるいは方法になりますと、それはテクニック等の差はあり得ると思いますけれども、しかし、教育の場で一番両党の対立が激しく見られるような感じを受けるのでございまして、これは私どもとしては、まことに遺憾にたえない。これはどういうことから、こういうことになるのか。これは相手が悪いから仕方がないのだ、これはイデオロギーの相違だ、自分のところは全く完璧だ、こう言って済むのか済まぬのか、その点について、まず総理大臣のお考えをお聞かせ願いたい。
  131. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 民主政治の円満な運営を考えて参る上からしまして、いろいろな御議論ありますが、私も加賀山委員と同じように、二大政党が望ましいことである。ただ、両院制度のこの性質から見まして、また、両院というものをどういうふうに考えて行くかという、両院制度の問題はありますけれども、それはここでは論じませんが、この二大政党が、お互いに意見をはっきり国会の運営の場合において明らかにし、そして国民の前にその所信を十分に明らかにし、審議を尽し、また、審議の道程において、そういう意見がかわされる場合におきまして、私はやはり二大政党ではあるけれども、数だけでもって、最後は数できめることは、これは民主政治のルールでありますから当然でありますが、数だけで多数党が考えていることを、いつまでもいかなる点においても少数党に押しつけるというべきものではない。少数党の意見のうちにおきましても、とるべきことがあり、この審議の道程において、いろいろ論議が尽されるという場合におきましては、やはり審議を通じて、一面においては国民にその所信を明らかにするとともに、お互いがお互いの考え方を批判し、反省して見るということは、これは必要であると思うのです。こういうことが、すべて民主的に行われて行くということができるようになれば、二大政党というものが十分にその機能を発揮するわけであります。国会の運営等におきましても、私は当然そういうふうな心がまえで進んで行かなければならぬと、かねがね思っておるわけであります。ただ、現状を見まして、それではそういうふうになっているかということにつきましては、これは二大政党になってから、まだ日も浅いことでありますし、十分に効果をあげてない点もあろうかと思いますが、私は漸次、両党ともそういうふうな考え方の方向に動いて行っており国会の議事運営等につきましても漸次改善を見つつあることは喜ばしいと思っております。そこで、今お話の外交というようなものは、超党派的に考えるべぎじゃないか、あるいは外交だけじゃなしに、国内の問題においても、あるいは教育の問題であるとか、防衛の問題であるとかいうような根本的な重大な問題については、両党で今のように意見が非常に対立しておる、両党の考えが根本的に違うというようなことは、非常に国として望ましい状態でないというお考えも、私はまたその憂いを同じくするものであります。しかし、それならば、すぐ超党派外交、これが望ましいじゃないかということでありますが、現在、外交の何について、どうしてこういうふうに意見が違っておるかということを考えて見まするというと、これはまあ、ただ単にイデオロギーの相違と言うて片づけるのは非常に形式的でありまして、やはりわれわれが国際情勢の分析や、あるいは国際情勢の見通し、また、これに対する実情の把握というようなものに関しても、両党派の間におきましては相当に見解を異にしておる。その結果、ある意味から言えば、世界観と言いますか、そういうものをまた異にしておるというような点が私はあると思うのでございます。こういう点を考えて、あるいは両党の首脳部において、いろんな重要な問題について、腹を打ちあけて一つ話し合って、国会の対峙については、協力すべきものは協力し、意見の違うものは違うとして、何とかもう少しお互いが反省し、お互いが協力する場面を広くして行くべきじゃないかという、この根本的な考え方については、私もそれは同感であります。そういうふうに考えて行かなければならぬ。しかし、先ほど申しますような現在の二大政党の状態であり、それが発達の段階にありますので、現在のところにおいては、なお未熟な点もありますし、不十分な点もあるし、思うように行っていないところも多々あると思います。心がまえとしては、そういうようなつもりで、私はやはり両党の首脳部というようなものが話し合いの場面を多くすることが望ましい、それでもって協力のできる問題、また、できるだけ国際情勢等に対する認識等におきましても、お互いが持っておる情報なり、片析なりを、お互いが話し合って反省しながら、なるべく近づけて行くというような努力をすべきものであるということにつきましては、私の考えも、今、加賀山君のお話しのように考えでおるわけであります。
  132. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 世界観の違いということは、これは何もわが国に限ったことではないので、ヨーロッパにおきましても、どこにおいても、これはあり得ることです。世界観の違いを持った政党が存在していることも事実なんでありますが、たとえばイギリスの例を見ましても、これはいわゆる民主政治の非常に長くかかって発達した国でございましょうが、私どもよくは知りませんけれども、イギリスの国会に招かれて、イギリスの国会のあり方を見できたときに、やはりこれはわが国として非常に学ぶべき点がたくさんあるように思うし、また、イギリスの議会史を読んでみましても、たとえばば与党が野党を、むしろ十分活動できるようにいろいろな思いやりをやる。また、野党は野党で、組閣の日が浅ければ質問戦に入る日をわざわざ延ばしても、十分に政府に準備させるといった工合で、非常にそこに、何と言いますか、お互いの思いやりというか、東洋では宋襄の仁といったことかもしれませんけれども、そういうことが行われておる。総理は、日もまだ浅いと言われましたけれども、スプートニクの時代に、イギリスのように百年あるいは百何十年と民主政治の発達のために日をかけておるひまはないと思う。そういう点について、私は政党の総裁として深く考えられる点はなかろうか。そこで、総理は非常に反省もすると言っておられる。この反省ということは非常に私は大切なことだと思うのでございます。総理は、そういうお気持であられても、私は党の運営において必ずしも今日まで、多数を頼む、あるいは最後は採決できめればいいんだという安易な考えが、与党の中になかったとは言えない。私はみずから国会の運営に当って、さような感じをいたしたこともあったのでございます。まあ、そういうことであってはいけないじゃないか、そこに一つのフェア・プレーというか、ルールを守る精神というか、これは総理もごらんになられたというお話ですが、あのオール・ブラックスというラグビー・チームは、これは強いのも強いのでありますけれども、その名声は、むしろその強さよりもいわゆるラガー精神からくるフェア・プレーの精神、これが非常に私は世界に声価を上げているゆえんだろうと思う。で、こういったそのフェア・プレイの精神というものが、また少数党の意見も十分耳を傾けるという雅量が、私は与党にもう少しあってしかるべきじゃないかというような感じを、これは私の感じだけかもしれませんが、持つわけでございますので、もう一度、総理大臣に、その点について、政党の総裁としての御所見を承わりたいと思います。
  133. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほども申しましたように、私はこの論議を通じて、お互いの所信を国民の前に明らかにすると同時に、その論議の過程において、お互いに反省するということが、やはり国会政治の上からいって必要であるということを、かねがね考えておるわけであります。それは、与党はどうしても多数党でございますから、最後のこの決定は数できめるということが民主主義のルールでありますから、これできめるということになると思いますので、それで、自分の意見が通らない、少数党の意見が通らないという場合が、大体、多数の場合であろうかと思います。しかし、そこは私はその審議の過程において、十分に論議が尽されて、それで国民がそれを聞いておる。そうすれば、国民支持する議論であって、もしも多数党で、多数党ということは、それが選挙されるときにおいて国民の多数が支持をしたということでありますけれども、それがもしも理不尽に、自分たちの主張をただ押しつけているということを繰り返しておるならば、その事態に対する国民の正当なる審判が、次の選挙において必ず現われてくるわけでありますから、そこに私はこの国会の審議というものは、やはり最後には数できまるのであるけれども、この過程においては十分に議論を尽して行くこと、そうして国民がこれに対する正当な判断と審判を下し得る材料をあげるということを、私は考えておるわけであります。多数党におきまして、数の多数をもって少数党の意見を封ずるということはいけないと同時に、私はやはりこの国会政治は、これはどこの国会政治の歴史を見ましても、そういう弊害に対して、今度は少数党の方においては、いろいろな方法で審議を妨げる、審議をさせないという、この戦術が行われております。これも私は今申したように、あくまでもわれわれは審議においてフェア・プレイを演じ、できるだけの所信を明らかにし、そうしてお互いも反省するし、国民にも十分その判断の資料を与えるという、この審議の過程を尊重する意味からいうと、数で、多数でもって押しつけることもいかないし、少数の人が審議を妨げて、そういう議論を発表し、議論を戦わすことの時間をなくするということは、これはフェア・プレイでないと思います。お互いにそういうことについては反省しあって、そうして民主政治の完成に、この上とも努力して行かなければならぬと思っております。
  134. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 問題は、私はその両者の場合のことを申し上げて、私はよけいなことを言うようになるかもしれませんが、与野党の中に、信頼感というか、これが足りないのが一番いけないのではないかという感じを持つわけであります。これは、労働問題、今非常に問題になっておりますが、労働問題におきましても、この面が非常に大事になって参ることでございまして、いわゆる経営者側と、働く組合のこの信頼感、これがあるところは、私はどんなに問題が起きても、これはいい結論をお互いに自主的に得ていく、かように考えておりますが、政治におきましても、両党内の信頼感というものが、きわめて大事だと思うのでありまして、これは野党でございますれば、これは政府を批判し、攻撃し、そうして国政の運用を誤まらせないために全力を注ぐということは、野党のこれは光栄ある仕事になる、これは当然のことでございますが、そこで、攻撃いたしましても、これを受ける政治にいたしましても、そこにお互いに対する信頼感というものが足りないと、これがいわゆる猜疑になり、あるいは憎悪になり、対立になっていく、こういうことになっていくのじゃないか。要は、お互いの信頼感というものが非常に大切な問題になってくるのじゃないか。これは一つ日教組の問題を例にとって見ましても、いわゆる教育、文教政策というものにとって見ましても、かつて、今はなくなられた大達文相が在職された時分、「日教組と大達文政の対決」という冊子が世の中に現われた。その当時、いわゆる教育二法律というものを、われわれは審議をいたしたわけであります。それ以来、あるいはもちろんその以前からでございましょうが、人によっては、日教組はほんとうに困った存在だと顔をしかめる。しかし、人によってはまた、政府の文教政策は、すべて日教組対策に集中されて、やること、やることが全部これは日教組をぶっつぶす、叩きふせる政策ではないか、こういうことを非難する人もある。それで、これは私はどっちも間違っていると思うのでございまして、もちろん日教組は、これは確たる労働組合ではございますまい。ございませんが、一つの職員の団体であることは事実であって、そうして、これが教育というものに深い関係と関心を持っている団体であることは事実です。しかし、その日教組が、日本の教育権を自分たちの手だけでやると考えたら、これはまことに僭越と申しますか、これは間違ったことだと思います。それと同時に、政府としても、政府の思うままに教育を引っぱって行くことが誤まっていたことは、これは歴史にすでに経験済みのところ、そこで、どうしたらこのいわゆる対決というような、この国民のために不幸これよりはなはだしきはない、この教育の場における対立というものが、うまく解消できるか、これは非常に私は日本の将来にとって、刻下の一番重要な問題ではなかろうかと、実は愚考するわけであります。だれが悪い、彼が悪いと言っていたのでは、これはとうてい解決すまい。これは総理も御存じでございましょうが、MRAの精神と申しますか、何が正しいか、どう行くのがよいのか、こういった観点に立って、そうしてお互いの手を取り合って、一つの目的に進むということが唯一の解決方策と私は考えるのでありますが、これは一にかかって双方に対する信頼感、これが私は骨子になる。かように考えますが、総理はいかがお考えでございますか。
  135. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御意見のように、この労働問題、よきわれわれは労使の間の慣行を作ろうということを心がけておるのでありますが、それは言うまでもなく、両者においての信頼感というものが基礎をなすものであると思います。ことにいわんや、この教育の問題に関しましては、お話の通り、対立や、一方が一方に対して弾圧を加える、一方がそれに反抗するというような状態を激成することは、決して望ましいことじゃない。お互いにその職分を十分に考えて、そうしてこの大事な文教政策というものを進めて行かなきゃならぬ。それには、そういうふうな、従来ありますところの、対立関係にあるものの間の信頼関係というものを樹立し、それを育てて行くように、あらゆる面から努力すべきであると思います。
  136. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 次に、外交の問題について総理にお伺いしたいと思いますが、一点。この世界が二つの陣営に分れまして、その面から内政といい、外交といい、非常に複雑で、むずかしい面のあることはよくわかるのでございまして、その面から、政府とされましても非常に苦労をされることも、われわれはよくわかるのであります。ただこれは、この際私は一つのことを思いますので、それは私の友人に、これは外交官でございましたが、今はこれもなき人であります、寺崎英成君というのがございました。今、この夫人が、「太陽にかける橋」というのを書いて、これを出版いたしております、アメリカ人であります。これは、日米開戦当時ワシントンに駐在しておりまして、非常に日米間の調整に苦心をした男でございますが、これが常に言っておった。おれはアメリカ人を家内にしておる。従って、人からは親米一辺倒だと思われ、また、面と向ってもそういうふうに悪口を言われる、しかし、おれは親米でもなければ、まして親独でもないんだ、親日だ、こういう言葉を述べておったのであります。で、親日と、まことに妙な言葉でございますが、今日の国内の様子を見てみますと、全く私は、なくなった寺崎君の言葉がしみじみと思い出されるのでございまして、親日が少し足りない、かような考えを持つわけであります。  そこで、外交の問題につきまして二、三お伺いしたいと思いますが、岸首相は、外交と政治の一体化ということを、国会冒頭の外相としての演説で述べられた。これは、私は全くけっこうなことだと考えるのでございますが、この四つの島の中に押し込められて、しかも軍備というものは持てない日本の現状でありますから、防衛という言葉はもちろんのこと、魚をとりに行くにいたしましても、繊維製品を売る、あるいは鉄鉱石を買う、こういう、政治経済の全分野が外交につながって、これと不可分であるということは、これは申すまでもないのでございます。そこで、かつて満州が日本の生命線であるというように言われておった。で、今日の状態を見ますると、私は全く外交が日本の生命線、こういうことが言えるんじゃないかと、かように思うのであります。日本をささえるものは外交以外にない。もちろん、軍備を持って侵略するというようなことは、今考えられるものでもありませんし、また、兵力をバツクにしてのし歩くということはとうていできない。今日は、外交あるのみと、こう言っても差しつかえない。ところで、外務省の予算を拝見しますと、全く百億円足らずということになっておって、総予算の一%にも足りない、こういう現状になってる。これでは、生命線である外交というものの重要性に対して、十分な御認識がないんじゃないか、御認識が足りないんじゃないかと、かように考えるのでございますが、総理大臣の御所見を伺いたい。
  137. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の繁栄を期し、国民の福祉を考えていく上におきまして、外交ということ、その外交というものは言うまでもなく平和外交でございますが、その外交が非常に重要な意義を持っておるものであり、従って、これが強化といいますか、その活動を積極的かつ効力的にしなきゃならぬということは、加賀山君の御論議と私全然同感でございます。そして、それの見地から見るというと、外務省の予算が非常に貧弱じゃないか、また、海外における在外公館等の活動にも支障を来たしてるような実情じゃないかという御意見に対しましても、私もまたその感じを同じくするものでございます。近年これが拡充のために、年々ある程度ずつ予算が増加されてきておることは御承知の通りでありますが、これをもってもわれわれは決して満足の状態である、本三十三年度の予算がこれでもって十分であるということは、私ども毛頭考えておりません。もちろん、財政全般の問題もにらみ合していかなきゃならぬ問題がありますけれども、同時に、外交関係予算の拡充につきましては、特に今後も力を用いたいと思います。  ただ、これは加賀山委員も役人の経験がありますので、この予算の折衝なり予算を作っていく上におきまして、外務省の予算というものはほとんど人件費を中心としたものにならざるを得ないのです。ほかの農林省であるとか、建設省であるとかいうような役所は、大きな事業費を中心としての人間の何ですが、外交の問題は何しろ、もちろん人件費だけではございませんけれども、人件費を中心にしておるような予算の編成になっておりますので、なかなかこの予算を確定する場合の、その省の予算を取る上からいいまするというと、なかなか困難が伴っておるのでありまして、従って、こういうことに対しては、やはり政治と外交の一体ではありませんが、政治家において十分その事情を一つ御認識いただいて、この上とも一つ御鞭撻を願いたい。
  138. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 もちろん外務省の予算に工事費が要るとは考えておらぬです。過日の本委員会藤山外相に経済外交について質問申し上げた、外国の事情把握とか、あるいは国の事情を紹介するのに万全であるかということを伺ったところが、いろいろやってはいるが、やっぱり肝心のものが足りないので十分でないというお話があった。で私は、これは非常に残念なことだと思うのでございまして、人件費でも、これは非常に重要な人件費になっております。先ほどの生命線、これがどういうことになるかというと、先ほどの経済外交にいたしましても、アメリカで食器類の輸入制限問題が起きる、そうすると、新潟の燕市の連中があわてて飛んでいく、市長さん以下が飛んでいくということが起るんです。これはある程度の効果を上げてきたかもしれませんが、こういうような交渉団が臨時に出かけたとしましても、私はそれは十分な効果があるものじゃない、これは金を、かなり日本の円を持ち出し、金を使うことにおいては相当の莫大なものだと思うんですが、その金の使い方の割には効果が上らぬのじゃないか。外交というものは不断の折衝接触、これが非常に大事だと思うのでございまして、いわゆる外交官の充実を、新しい日本立場を考えて、新しい角度から根本的に考える必要があると思うのであります。  次に、外交官の人事の問題について伺いたいのでございますが、これはむしろ外務大臣からお答え願った方がいいかもしれません。最近この外交官に専門家以外の方をあてることが相当行われておる、これは一応けっこうだと思う。その御経歴とか、あるいは特殊の国、その国に対するコネクション、いろいろのものを考えて、任国に対するコネクションというものを考えて、最も適当な方があればこれは非常にいいのでございますが、やはり原則としては大使というようなものは、私はキャリアを持っている出身の方が本則ではあるまいか。現にイギリスやフランスは、このキャリア中心の人事をやっておるのでございますが、そういう点についてのお答えと、それから最近こういったポリティカル・アポインティーの場合に、何と言いますか、事前に漏れる、で、新聞に出てしまう、アグレマンがつく前に新聞に漏れてしまう、そのために相手国、任国ではこれはどうもアグレマンを出さざるを得ない。これは感情上思わしくない、かように思うわけでございますが、この絶対にアグレマンがあるまでは公表しないというのが国際的に確立された慣行ではなかったかと思うのでございますが、この点について、外務大臣の御所見を承わりたい。
  139. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お答えいたします。外務省の仕事をやりますためにキャリアが中心でなければならぬのではないかというお考えでありますが、私もやはり、外務省の人たちが、長年いろいろな立場に立ちまして経験を積んできた人たちが中心になりますことは、一番根幹なことだと考えております。しかしながら、特にただいまお話しのように、任国の事情なりあるいは外務省のキャリアの人たちの刺激のためにも、もし優秀な人が、あるいは適当な人があるならば、それを採用することも、また外務省のキャリアの人と両々相待って有効な活動をすると思うのであります。特に、大公使は別といたしまして、専門的な立場に立つような人たちにつきましては、そういうような人材を採用していくことが必要ではないかと考えております。ただいま、近ごろ多くキャリア以外の人を採用しておるように御指摘のようでありますが、大使としましては三十七名おりまして、全然キャリア以外の者は三名でございます。それから公使が十五名おりまして、キャリア以外の者は三名でございます。それほど多くの人が出ておるわけではないわけでございます。従って私どもとしまして、キャリアの経験を尊重いたしますとともに、新風を吹き込みますためにも、民間の有能な人がありますれば、民間のそういう人を起用することは必要であると考えております。なお、人事をやります場合に、アグレマンを求めます前に新聞に漏れる、そういうことは任国に対して礼を欠くことではないかというお話であります。これは全くその通りなのでありまして、私としては極力漏れないように考えてやっておるのでありますが、どうも日本においては人事問題というのは一番興味のある一つの話題であるようでありまして、とかく漏れがちなのでありまして、今後は十分そういうことについては注意をしまして、任国に対する礼儀はもちろんのこと、人事異動については国内におきましても慎重にやらなければならぬ、こう考えております。
  140. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 ほかに外交問題がございますが、総理がちょっとあれだそうでございますから、私はあとから主管大臣にいろいろ伺う問題があるのでございますが、その問題の項目について総理の御見解を一、二ただしておきたい。  それは、予算はもちろん、一年々々のものでございますが、根本的な政策というようなものは、いわゆる計画性、総合性あるいは継続性がきわめて大事なのじゃないか。そのために、いろいろな項目について五ヵ年計画あるいは長期計画の策定がされていると思うのでございますが、私はそのうちで、特に長期計画としてぜひこれを、いろいろのやり方や方式はあると思うのでございますが、青年対策というものについてはっきりとした一つ計画を、総合的、計画的な対策を打ち立てていただきたい。これはともすると、先ほどの信頼感からいうと、自民党がまた選挙のために青年対策を始めたのじゃないか、こういうようなことになるかもしれませんが、私は御遠慮は要らない。国の次代をになう青年のためにこれを自分はやっておるぞ、特に総理施政方針演説では必ず、青年よ奮起せよということを唱えられるのでありますから、これはぜひともそれに対応して、青年のために、これは学徒といい勤労青年といい、何か新しい施策あってしかるべきである。青年の家、あるいはごくわずかな人に対する奨学いわゆる進学制度、進学の保障制度を作る、この程度であっては私はなるまい、かように考えるのであります。で、私の考え方につきましては、後ほど主管大臣から御意見を承わっておきたい、かように考えます。  次に交通政策でございますが、これは私不敏にして今日までいわゆる交通政策と銘打って、交通五ヵ年計画、政策というようなことを聞いたことはない。国有鉄道の五ヵ年計画はあります。港湾の計画も、あるいは道路についても本年はおもに力こぶを入れて五ヵ年計画を立てておる。しかし交通というものは、そういうふうに鉄道は鉄道、港湾は港湾、道路は道路であっていいわけではない。これには航空も含めて旅客貨物が一体五年後にはどうなるか。そうして各交通機関がそれをどういうふうに分担をし、これをどういうふうに引き受けていくか、こういう総合的な計画がなければならぬと思うのでございまして、私は歴代の運輸大臣にもそういうことを申し上げておる。しかし、これは運輸大臣だけではどうにもならないことになっておる。現に一番大きい陸上交通の道路と鉄道が別の所管大臣になっておる。かようなことも手手伝っておりましょうが、さようなことでございます。  さらに私は、都市計画と申しますか、東京でいえば首都圏でございますが、そのはかの大都市についても整備計画というのがございますが、これに対する私は根本的な考えがまだ十分ではない。作文がありますが、根本的な計画がどうもまだしっかりしておるとは言えない、かように考えるのであります。この点。  それから、次には災害防除でございますが、来年度の予算でようやく二十六年災、二十七年災が大体仕上る。その後の大きな災害の二十八年災は残る。毎年々々災害を追っかけ追っかけ、多いときには一千億を越し、あるいは数百億といったものを中央、地方を通じてこれにかけておる。これはいわゆる建設省所管の河川とか海岸といったものでございますが、そのほか合せて受ける損害がこの十年間を見てみましても、たとえば農地その他家屋設備、そういうものを一切を含めば、年間においては二千四百億を下らない、かような損害を受けておる。そのほか、これは人命の損傷、死傷者も非常にたくさん出ておる。これだけではございません。金額的にいえば、この災害から受ける鉄道あるいはその他の交通機関の復旧費、たとえば国鉄を例にとってみましても、国鉄だけで昭和二十八年の大災害のあとでも九十億近い災害復旧費をかけておる。かようなことは全くさいの河原と申しますか、完成しないうちにまた次の災害が来るといったことで、これは本委員会において同僚議員からも質問された問題でございますけれども、これに対して、私は一体その根本的防除——台風はこれは必ず来る、これは日本はもう必ず台風が来ないことはないのであります。これに対して、来ても、損害を少く済ませるという方法があってしかるべきだ。これは災害のほとんど八〇%くらいまでは河川のはんらん等による災害でございましょうから、河川の修復ということが、改修ということが一番問題でございます。そのために多目的ダムを作り、年間やはりこれに対しては三百億程度のものは予算に盛られておるようであります。しかし私は、これでは足りないのではないか。先ほどのさいの河原になってしまうのではないか、かように考えるのでございまして、一方、その受ける損害をカバーするためには思い切った計画をしなければならぬ。河川にいたしましても、建設大臣は、これから改修する河川が三千三百ある。一兆八千億からの予算がこれから要るのだ、こう言っておられる。それに対して年々見込まれる予算は三百億そこそこである。これでは一体、何年かかったらいわゆる防災対策ができ上るのか、私はその点を非常に憂えるのでございまして、これこそ総合的に勘案をされて、そして、あるとき思い切った計画を立てられて、災害が来ても損害が少く済むような施策をおとり願えないものかどうか、この点について総理大臣に伺いたい。
  141. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国家の重要政策については、これは持続性を持ち、従って計画性を持ち、さらに総合性を持ったものでなければならぬというお考えは、その通りであります。おあげになりました交通政策のごときものも、港湾、道路あるいは鉄道、みな関連して今後計画を立てなければならぬことは言うを待ちません。ただ産業経済、そういう意味において、日本の、われわれが基本的に考えているのは、産業経済の計画についてはいわゆる五ヵ年計画というものがあるし、経済に関連するものをすべて網羅して、今の交通の問題等につきましても網羅して、これを計画的に他のものとつり合いのとれた形に持っていっているわけであります。あるいは、おあげになりませんでしたけれども、たとえば石炭、電力というようなものも、やはり動力の一つの方策として、石油の問題、そういうもの、あるいは新たに出る原子力の平和利用の問題等を、みな総合して一つの計画を立てていって、これに対する対策をやらなければいかぬ、こういうふうに、私は重要な問題については、それぞれ今おあげになりましたような点を十分に考えなければならぬ。特に、最初におあげになりました青年対策につきましては、今お話しの通り、次代をになう大事な人々に対する対策というものについて、私は決して本年あげております進学制度やあるいは青年の家をもって、それがすべてだなんという、そういう単純な問題でもなければ、そういう簡単な問題ではもちろんないと思います。しかし、これに対するあらゆる施設というものは、みんな関連して考えていかなければならぬと思います。  また、災害防止の点について御意見がございましたが、まことに日本は災害、ことに戦後においてああいう風水害の被害が非常に大きい、その原因はどこにあるかということは、いろいろな見方はありましょうが、何といっても、川が荒れている。従って河川の改修ということになりますが、そのもとはやはり山が荒れている。従って治山の方策についても、これは防災の問題としては特に考えなければならぬ問題であると思うのであります。われわれが特に、政策のうち重要視してこの問題に特に力を入れようという場合におきまして、たとえば三十三年度の予算における道路について、特別のわれわれは計画と特別の力の入れ方をいたしております。しかし、一般的には、今申しましたような産業経済に関する五カ年計画に、大体経済に関連を持っているところのものは、それぞれ検討して、これに一定の計画性と総合性を与えております。しかし、それに直接含まれておらない、あるいは災害の問題であるとか、あるいは首都圏の問題であるとか、あるはい青年対策とか、いろいろな問題も他にあると思います。できるだけ大事な問題についてしっかりした計画を立て、持続的に強力に、しかも効果的に上げるのには、計画性と総合性を与えなければならぬ、こういう御意見に対しましては、私も同感でございます。
  142. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 ただいまの総理大臣の御答弁は、いささか迫力に欠けておっ私、実はもっと御意見を伺いたいのでございますが、御用があるようでございますから、この程度にしておきまして、次に外交の問題に戻りたいと思います。  韓国との交渉について、本日の新聞では、四月から再開できるようになるだろうというふうに出ておりますが、この問正題について、予定の三月一日から交渉再開ができなかったのはどういうわけであったろう、こちらのだめ押しがあるいは不十分であったのではなかろうか、かように考えるのであります。つまり、大村を出た朝鮮人のうち、どうしても北鮮に帰りたいという人に対してこれをどうするかという点は、これは韓国政府としてはかなり重大な問題になるでございましょうから、あらかじめこの点についてだめ押しをしておくべきではなかったかと思うのでありますが、これが一点。  それから、サンフランシスコ条約の第四条に関しまするところのアメリカ国務省の覚書、これがジャパン・ダイムスか何かに出ておったというようなことで、韓国政府を非常に刺激しているようであります。一体これはどういういきさつで、そうしてその覚書の内容なるものは果して秘密で、どうしても発表してはいけないものなんでございますかどうか、その点について外務大臣からお答え願いたい。
  143. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 不法入国者の送還の問題につきましこの問題は、それぞれ今日まで日本が韓国に引き取り方を要請しておりましたときに、韓国は引き取らぬ、こういっておったのであります。従って、今度の予備会談におきましては、韓国側が、こちらから渡す人につきましては、引き取りの義務を認めたわけであります。しかし、不法入国者が韓国に帰るか、どこに行くかということは、その人個々の自由な選択になるわけであります。ただ、韓国に帰りたいといった人を送り返した場合に韓国が受け取らぬということが言えぬ、それは迷惑な人だから受け取らぬということはできないという約束をしたのであります。従って、この問題について特に問題が起ろうとは私ども実は考えておりません。そういう意味においてこれを実施したわけであります。    〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕  それから、何か新聞に出たというのは、財産請求権に関する米国の解釈であります。これは、サンフランシスコ条約四条によって放棄しました財産権につきまして、そのサンフランシスコ条約の解釈をアメリカが十二月三十一日に出した。これは発表して一向われわれとして差しつかえないのでありますが、韓国側からの要求で、しばらくの間発表しないでおいてもらいたいという、そうして、するときにはお互いに通知し合おうじゃないかということであったわけであります。従って、今日まで発表はいたしておりませんが、そうした際に、たまたま日本のある雑誌にその部分が出たわけであります。それについて韓国側は、約束が違うじゃないかということを申したわけでありますが、それぞれの事由を説明して、政府側から出たのでないということを申した結果、了承していると考えております。
  144. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 これはあるいは同僚議員がすでに伺っており、また、本委員会でも論議されたところでございますが、日ソ交渉の問題について、プラウダ紙が、安全操業問題については日本政府の発表がミス・リーディングだというようなことも述べているようであります。あれは北海道近海での漁獲だけでなくて、千島列島の領海内ではコンブ採取などに関するので、これは当然領海から領土問題がからんでくる、こういうことで、だから平和条約を結ばない限りはこの問題は片ずかないのだ。これはソ連政府が言っているのだと、こういう趣旨だと思うのでございますが、安全操業問題を強く要望すれば、二平和条約に引きずり込まれるようなことになりゃしないか。で、またこの問題に引きずり込まれると、これが碁でいうと、花見劫にかかるようなもので、それをきらえば、安全操業問題は見送らねばいかぬのだ、こういうようなことになろうと思うのでありますが、この点について、今ここで外相の所見を伺うのもあるいはどうかと思いますが、伺えたら伺わしていただきたいと思います。
  145. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安全操業の問題につきましては、北海道の零細漁業者の方々の生活の問題もございます。従って、日ソ間において何らか話し合いをするという希望を持っております。平和条約ができませんので、われわれとしては、暫定的にそういう取りきめをして、そうして友好関係を結んでいく。それがまた、平和条約を締結するための通商協定その他にも関連して、将来両国のために非常に有効になってくるのじゃないかという見地から、安全操業問題、暫定的な安全操業の問題について、ソ連側に話をいたしたのでありますが、ソ連側も話はしてみてもいいというような空気も今までありましたので、日本も案を付しまして、ソ連側に提示したわけであります。それが、御承知のように、今回、領土問題が解決すればこういう問題は解決するし、また解決した後に、そういう問題についても領海権、領水の問題等についての問題もありますから、そういう問題をその見地から審議した方がいいのじゃないかという、最近に回答もきておるわけであります。この問題につきましては、われわれの考え方は、将来平和条約を作るまで友好関係を進めるためにも、北海道の零細漁業者の方々の立場を救っていくことが必要であり、またそれが日ソの関係にも友好な関係が起るだろうという意味において、話をしてきたものでありますから、今後ともそういう立場ソ連側に話をしてみたい、こう思っております。
  146. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 次に、労働問題について伺おうと思いましたが、労働大臣が御病気だそうでございますので、省略いたしまして、青年対策について伺いたいのでございます。  第一点は、この青年対策でございますが、その根本は、何と申しましても青年に希望を与えることだと思うのでございます。そのためには、青年に適切な修養の機会あるいは適当な娯楽施設を与える、娯楽の施設と機会を与える、これが非常に私は肝要だと思うのでございます。青年が果して明るい希望で日々の学習や勤労に従事しておるといえるでありましょうか。ただいま、この間の本委員会におきましても、文部大臣にも御所見を伺ったのでございますが、受験地獄に呻吟する、あるいは就職の機会にめぐまれない、あるいは、勤労青年で申しますと、大工場等におきましては、自分の手であるいは健全なリクリエーションの施設を作り、またこれを奨励しているところもありますけれども、組織されざる中小企業に働く青年たちは、これはもうそういった機会がほとんどない。従ってつい、二面からいうと、過剰な享楽施設、過剰と思われるような享楽施設、健全でない享楽施設に走るのではないかと、かように考えるのでございまして、文部大臣、いま一度御所見を伺いたいと思います。
  147. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました、わが国の将来をになっておりますところの青年は、まことに重要な階層と言わなければなりません。従って、これに対するいろいろな教育、いろいろな娯楽、まことに必要なことと考えております。従って、政府といたしましては、青年学級の振興、仰せになりましたスポーツ、リクリエーンョンあるいは健全な映画、かうした方面を奨励いたしますとともに、青年団等につきましては、やはり適当な指導者を教育しまして、そうしてその指導者を派遣いたします等の方法を講じております。従って、今日まで相当の成績を上げておるつもりでございますが、しかしながら、これではなかなかまだ完全とはいきませんので、仰せになりました中小企業あたりで働いておりまする青年の人々には、やはり青年学級に今後ますます入ってもらうとか、あるいは定時制の学校に入ってもらうとかいうようなことを奨励いたしまして、そうして一面においては、やはり学びながら健全な体育の奨励をしたい。そうして、その方の指導をするようにしたいというふうに心がけておる次第でございます。
  148. 高田なほ子

    高田なほ子君 文部大臣にちょっと関連して伺いますが、青年のこの教育、明るい教育のために、青年学級をどんどん強化していきたいというお話であった。ところが、本年度の予算を拝見いたしますと、前年度五千百万円の青年学級費が組まれておりました。今度は、ことしの予算は、それよりも二百万減らしておるようです。そういたしますと、おっしゃるように、青年学級は今でも施設が足りないのです。しかるに本年度は、大臣の仰せにもかかわらず、二百万の減少をきたしているのであります。これでは、仰せのように、青年学級を振興していくということにはなりませんが、どういうふうな形で、こういう施設を減らしながら振興していくかということに、はなはだ私は疑問を持っておるのであります。この点の一つ御説明を願いたいことが一つ。  もう一つ。定時制高校の内容というものを高めていくように今お話がありました。当然働きながら学ぶ青年たちに対して、政府が手を伸べるということは、これは当然のことだろうと思うのです。ところが、前にも私は指摘したように、定時制高校の場合は、大へんに教員が足りないのです。教員が足りない。そうして当然県で負担しなければならない教員の給与費というものが、市町村の負担になっている場合があるのです。具体的に例を申し上げますと、愛媛県の中島分校というところでは、十四名の教員がありますが、十四名の教員のうち五名が県費負担です。あとの九名が、これが市町村負担です。この中には、もちろん時間講師も含まれておりますが、元来この高等学校の教員の給与は、県が負担すべき性格のものを、このようにたくさん市町村負担にまかせてあるわけです。でありますから、この九名の、すなわち市町村費によって負担される先生方は、健康保険も入らない、共済組合の対象員にも入らない、こういうような状態の中で、私どもとしては、この実情を憂いまして、どうか県費負担になるようにということで、たびたび政府にお願いをするような御質問を申し上げてきたのであります。どういう方法で定時制高校の教育を振興させるのか、この点について、とくと私はお承わりしたいと思うのです。以上、二つの点についてお伺いします。
  149. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 第一点の予算の問題でございますが、御指摘のように、社会教育関係で、項目として減額になっている予算がございます。ただ、全正体といたしましては、増額を見ているわけでございまして、全体のバランスの関係からいたしまして、一部減額になっておるものもございますが、全体の増額によりましバランスをとりまして進めていきたいと、かように考えておる次第でございます。  それから第二点の、定時制高等学校の教員の問題でございますけれども、これは、今具体的に例をお示しになりましたが、その具体的の事例につきましては、私どももよくつまびらかにいたしませんけれども、いろいろ事情もあって、従来の経緯等もございまして、そういうことになっておるのかとも思いますが、これは、御指摘の通り、正規な軌道に乗せて運営すべき問題でございまして、教員給与の補助金の問題等につきましても、従来から検討いたしておるわけでございまし三十三年度はまだ実現を見ておりませんが、今後一つ十分検討いたしまして、定時制教育の支障のないような推進のために努力いたしたいと考えております。
  150. 高田なほ子

    高田なほ子君 ただいまの御答弁は、ちょっと納得いかないのです。今、社会教育の面で、全体的にふえていると、こういう御答弁でありましたが、今私は、社会教育の問題を問題にしているわけじゃない。ただ、青年学級という具体的な問題が出たから、なぜ昨年度よりも二百万円予算を減じて、青年学級振興のためにブレーキをかけているかということに対して質問をしておる。従いまして、これには納得が参りませんから、全体としてふえるというようなあやふやな御答弁ではなくて、なぜ青年学級を減らしたのか、減らした上で、どういうふうにして振興するのか、この点について答弁してもらいたいということが一つ。もう一つは定時制高校の問題について、三十三年度にはこれはどうすることもできなかったから、研究をして処置するという御答弁でありました。定時制高校の問題はお聞きになっておりますか、質問しておりますから、話さないで下さい。定時制高校の問題については、これは去年出た問題ではないのです。すでに三、四年前から、この問題は国会でも論議されてきた問題です。それをなぜ、ことしになってこの問題の解決の緒をつかまなかったということ、それでは大臣の御答弁とは全く違うようなやり方をしているじゃないかというようなところに疑問を持つので、一体何年度から教員の県費負担という緯線を確実に守るのかということ、いつからやるのかということ。もう一つ、関連して、定時制高校の問題が出ましたが、同じく通信教育、これは、働く青年の唯一のやはり教育機関であります。この通信教育の職員費の費用でありますが、四割国庫負担、これは、国会でもって決議された問題、四割国庫負担の問題について、本年度も何ら前進していない。これでは、口で、働く青年の明るい教育をと言いながら、実際問題としては、全く野放しの状態にあるのではないのか。いつからこの問題が実施されるのか。もし計画があるのならば、この際明らかにしてもらいたいのであります。
  151. 松永東

    国務大臣(松永東君) 定時制の問題は、少し減っておると仰せになりましたが、これは、全般的にたしか一割か二割か、大蔵省で減らせということで、減らされたのであります。ですから、去年通りにはなっておるのです。ところが、今の通信教育の問題は去年通りなんです。そうしてこれは減らされないで行っておるわけなんです。そこで、全般的にいっちっとも進歩の跡を見せないじゃないかという仰せでありますけれども、しかし、青年の家では、御承知の通り、六千万だけ前進いたしております。これは何とかして、いつも私が言っておりますように、定時制と通信教育だけはぜひ増額してもらわなければならぬと、いろいろ骨折ってみたんですけれども、なかなか予算関係上それがうまくいかなかったのです。しかし、だんだん、本年、三十三年度あたりから通信教育あたりも、相当通信教育を受ける人々もふえるようでありますから、いやでも応でも三十四年度あたりから、相当増額せられんければやっていけないことになる。また、増額できるという確信を持っております。
  152. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一つ簡単に。  幸いに大蔵大臣もお見えになっておりますから、国会で決議されたものを予算に組まないというのは、私は怠慢じゃないかと思うのですね。通信教育の問題については、今文部大臣から切々の御答弁がありましたから、私は、これはこれ以上文部大臣を追究しようとは思いません。国会で決議されるということは、これはよくよくの問題なんです。この決議に伴って、定時制高校の職員費を四割までは国庫負担にせいという決議なんでありますから、この決議は、当然今回の予算の編成に際しては、大蔵大臣としてもお考えにならなければならないところなんです。大体働く青年の教育機関に対する冷遇というのは、この岸内閣の私は非常な盲点だと思うのです。幾ら青年の家を六千万出して作っても、六千万の、たった一つの青年の家に、働いている多くの青年たちが、通信教育を受けなければならないような青年が、どうしてこの一つの施設に飛んでいくことができますか。それよりも、むしろ通信教育あるいは定時制高校というようなものにもう少しお金を出して、国会の決議というものが尊重されるような方向にいかなければならないと思うのです。これは大蔵大臣に、特にこの際、国会の決議がなぜ尊重されなかったかという理由についてお尋ねをしたい。全体に何%削ったなんていうことは理屈にならない。三%削ったくらいのことはわかっています。事務費の節約ということならばまだしかりであります。国会の決議を、こういうようなことが無視されるということはけしからぬことなんです。いかがでしょうか。働く青年に対する教育施設、教育費をふやすということ、決議に対してどういう措置をとろうとなさるのか、この点をお尋ねしたい。
  153. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この定時制高校等の国庫負担をしろという御意見は、承知いたしております。(高田なほ子君、「国庫負担じゃない」と述ぶ)これは、ただいまのところ、地方財政計画に入って、交付税交付金になっておると思いますが、その後地方財政も、御承知のように、よほど好転を見て参っておりますので、今のところ、国庫の負担というのはいたさなくてもよかろう、こういうような見地から予算に計上しておりません。
  154. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連質問で時間をとって、ほんとうに済みませんが、ちょっと大蔵大臣違うのです。これは、県費負担なんですからね。市町村に無理に教員の給与費を負担させるということはまことになんでありますから、これは、地方財政法四条四項違反じゃないかと思うのですが、これは地方財政の中に組まなければならないのです。  それからもう一つは、通信教育と、定時制高校とちょっと違う。国会で決議したのは、通信教育の職員費の四割国庫負担、これを国会で決議した。定時制の方は県費負担でありますから、県でまかなえというような財政計画をしてもらわなければなりません。今大臣がおっしゃったように、これは県費の中に完全に、町村負担分が、これが繰り入れられているとは考えられない。非常に今の御答弁は私の意に沿わない御答弁であった。今御答弁を要求いたしませんから、内容が十分おわかりになっていないと思いますから、よく研究をされて、研究した結果について正確な御答弁を明日でもいただければけっこうです。おわかりにならないちんぶんかんぶんの御答弁じゃ何にもならない。よろしゅうございますか、大臣。
  155. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 定時制の教員の給与の負担は、これは県費でございます。お話しの通りでございます。ただ、先ほど具体的に三重県の事例をおあげになりましたが、この具体的な事例につきましては、私はまだ事情をつまびらかにいたしませんが、これは異例でございます。これは法律でも県費負担になっておりますから、さようにすべきものだと存じます。具体的な問題はさらに取り調べたいと存じます。
  156. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣、あした答弁して下さいね。
  157. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 十分研究いたしまして、答弁する機会もありましょう。
  158. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 今、高田委員からもいろいろ御指摘がありましたが、私はこの教育費というものが国の予算においても、また、地方費中にも非常な大きな率を占めていることもよく知っているのでございまして、あれもやらなければいかぬ、これもやらなければいかぬ、これではなかなか手が回らぬじゃないか、あるいは大蔵大臣はそう考えられ、言われるかもしれないのでございますが、しかしいわゆる先進国等と比べてまだ何といっても日本の、特に青年を取り上げた場合、青年に対する施策としての教育費は、私はまだまだとても不十分である、かように考えるのであります。今お話のあった定時制の給食補助にいたしましても、青年学級運営費の補助にいたしましても、さらに社会教育特別助成金等、一連の青年対策とおぼしき経費が、本来もともとでも非常に少いのに、それがさらに来年度予算において減額をされているというのが現状すである、私はこれであっては、いわゆる勤労青年に対する対策を、青年を奮起せしめると言っている政府として、はなはだ片手落ちの措置と言わなけりゃならぬ、かように断定せざるを得ない。で、ここで一つ私は伺いたいのは、レクリエーションという問題がございます。青年のレクリェーション、これは一体どの大臣の主管でございますか、その点一つ伺わせていただきたい。
  159. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) レクリエーションは社会教育局といたしまして文部省の所管でございます。
  160. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 レクリエーションというのは、これは日本語にすると、いろいろむずかしい、訳がどうしてもできないのでありまして、中には厚生といった面もあるので、そこに厚生大臣が出ておられるが、あるいはこれは厚生大臣の所管でもあるまいかと思ったのでございますが、この青年のレクリエーションに対する考え方が、きわめて、私はほとんどやってない、こう申し上げても間違いない、かように思うのであります。で、ここにいただいた資料に、いわゆる社会教育というものに対するいろいろな諸団体の名前が出ておる。社会教育法第十三条には、国及び地方公共団体は、社会教育関係団体に対し、補助金を与えてはいかぬ、こういう規定があるわけであります。しかし、このうち体育については、体育協会等につきましてはこれは除外されまして、これは法律改正になっておる。私は常々体育協会——これは、もう大事な日本の体育に携わる青年対策の非常に大事な本家であるということは、私は間違いないと思いますけれども、一般大衆はこの体育協会というものと私はそれほど関係があるまい。一般大衆が関係がある、特に勤労青年に関係のあるといえば、これは私はレクリエーションという範囲に入ってやると思う。これは登山であれ、ハイキングであれ、コース・ホステルもそうでありましょうし、そのほかピンポンであれ、あるいはバレー・ボールであれ、あるいはフォーク・ダンスといったようなものも出てくる。魚釣もあれば、これは非常に広範囲のいわゆる健全娯楽というものが含まれるわけでありまして、ここに私の名前も出ているので、大へん恐縮なんでありますが、日本レクリエーション協会というのがございます。これはそういったいわば日本体育協会に私は対立する——対立はしておりませんけれども、一般大衆のそういったスポーツというようなものを考えると、私は非常に重要な機関である。事実この協会の指導によりまして地方に支部があり、で、これらは農村あるいは職場あるいは学校と、全部を通じましてこのグループを作り、そしてそこに健全なレクリエーションの指導をしておる実態であります。これのレクリエーション活動の盛んな農村はもうはっきりと収獲がふえておる。それはもう実例がある。それからこれを取り入れた工場は生産能率が上っておる。非常に明るくていざこざとした労働問題なんかも起きない。これははっきりとした実績があるのでありまして、これらのような健全な団体に対して私は国はやはり積極的に補助をする。たとえば新生活運動協会というようなのもございますが、これはかなりの予算を持っております。しかし日本レクリエーション協会というものは、ちょうどレクリエーションは空気や水のようにどこでも得られるというような考え方から、なかなかこれはだれも援助してくれない。しかし事柄は非常に重要な事柄をやっておる。そういうものに対して、私は国は積極的に援助をする方がよい。これは新しい村作り、新しい社会を作ることに役立ち、生産が上っていくということで、生活改善もおのずから進んでいくということであるならば、私は積極的にこういうものを使って政府が音頭をとり、新生活運動協会というのもけっこうでございましょうけれども、こういうものを積極的に使われたらいいと思う。そのためには社会教育法第十三条は改正されなければいかぬと、かように考えますが、いかがお考えになりますか。これは文部大臣から御答弁願いたいと思います。
  161. 松永東

    国務大臣(松永東君) ただいま加賀山委員の御指摘になりました通り、最近レクリエーションが非常に各地に流行いたしております。そうしてまた御説のように、これは青年の健全な気風を培養いたすことに非常に役立っております。従ってそれに対してはやはりいろいろな仕事をやりますのには一文なしではできませんので、何とかこれはせんけりゃならぬのじゃなかろうかというような声が、すなわち今、加賀山委員と同じような声が起っております。従って、文部省といたしましても、これを研究して、今の御指摘になりました十三条、これを一つ削除してもらわんけりゃいかんのじゃあるまいかということを今研究を重ねております。その声は、国会議員の諸賢からもそういう声が上っております。私どもは、これはどうしてもやはり是正してもらって、そうしてほんとうに明朗にして闊達な動活が全国各地に巻き上るようにしなければならぬというように考えております。
  162. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 ただいまの文部大臣の御決意を聞いて私も大いに意を強うする次第でありますが、何分にもこの健全なレクリエーションをする機会を与えるためには、施設というものがどうしても必要になって参るのでありまして、たとえば青年の集まる場所、青年会館といったようなものとか、あるいは公民館施設といったようなものもさらに充実して、こういうところをクラブのようにして青年が出入りして、お互いの議論もし合う、あるいはお茶くらいは飲み合って国の将来を語る、こういうことは非常に私は適切だと思うのです。また、これは学生についてでございますが、学生寮というものについて国が補助をするということを以前にちょっと文部省で考えられたのでありますが、いつの間にかこの予算が引っ込んでおる。私は、どうもその結果がうまくなかった、あるいは国の補助が微温的だったためにうまくいかなかったのじゃないかと思いますが、そういったせっかくの若人のためのそういった施策が、ちょっと顔を出したかと思うとすぐ引っ込む、私はそういう感覚が非常にいけない、腹をすえて青年対策というものにもっと文部省が中心になっててやってもらう、それに対してはレクリエーションの見地からは厚生大臣ももちろん応援してもらうし、特に大蔵大臣はこういう問題については深い御理解と熱情を一つ持っていただきたい、かように考えるのであります。学生寮についての問題が一点、それから学徒の問題に入りましたので申し上げますが、学徒が高等学校との間においていわゆる浪人生活をする、で中には精根尽きてみずから死を選ぶ青年があるというようなことをこの前の委員会でも申し上げまして、これは対策を至急考えられなければなるまいということをお願いしたのでありますが、それに対する文部大臣のお答えは、私といたしましてどうしても満足できない。私はこの学校のやはり差をなくすということ、収容力を増すと同時に学校差をなくすということでないとなかなかいけない、これが就職に響くとかそういうような関係があって特定の学校に集まる、これはもう事実なのです。もともと大学偏重をやめるとか、いろいろ根本的な施策はありましょう。あるいは就職、その大学卒業者を使う会社等でもっと大学卒業ということを昔のように考えないで、もっとどんどん採用する、知識のレベルがそれだけ上ったのだから、そう大学出を特別扱いをする必要もなかろう、そういうようなことから改めていけばなおいいと思うのでありますけれども、しかし現在の状態といたしましては、どうしても施策として考えられることは、私立の学校というものがせっかく、ある、これは非常に格差がある、これは学力、講師とか教授とかいう問題じゃなくて、いわゆる父兄の立場からいたしますと、いわゆる学費、いわゆる授業料等に非常に大きな差があるわけです。これはどういうことかというと、私立学校に対する国のめんどうの見方が足りないということから起るのじゃないかと、かようにも考えられるのでございまして、もちろん私立学校振興費として、あるいはその共済組合に対して国はめんどうを見ておられますが、これをさらにもっと考え直すというお考えはないかどうか、文部大臣から承わりたい。    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕
  163. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました点は、毎年叫ばれておりまするいわゆる試験地獄の問題、これはまことに子を持っておる父兄御本人はもちろんのこと、毎年々々この試験地獄のために心痛しておる状況でございます。これをどうして解消することができるかということを、もう明け暮れ相談をいたしておるのでございますが、この問題は加賀山委員も御承知の通り、特に私どもは五十年も前からこういうことをやっぱり経験いたしております。しかし、このごろは非常にこれがひどい問題になって参りました。お説の通り、学校差がやはり大きな原因であろうと存じております。従って学校差をなくするようにどうすればよろしいか、こういうのを研究いたしておりますが、しかしいずれも御承知の通り、学校にはそれぞれのやはり歴史と伝統を持っております。校風をおのずから形作っております。従ってそうしたりっぱな学校、羨望の的になっておるような学校と、あまり評判のよくない学校とを一年や二年の短日月の間にこの格差をなくしてしまうということはとうていこれは至難なことでございます。従って私どもといたしましては、何とかしてそうした学校に行かぬでもいいようにし向けていけばいいじゃないかというふうに考えまして、ちょうどこのごろ御承知の通り、科学技術系統の学校が非常に叫ばれております。それが非常な魅力を持ってくるようになっておりますので、その方面に応募者や、学生たちを振り向けていくというように努めまして、三十三年度予算にもそれを相当数計上してもらうようになっております。さらにまたこうした問題の起る原因は、やはり高等学校時代から上の大学にいく学生に対する指導、それもやはり必要なことだと考えまして、そういう点も留意しなければならぬということに私どもは考えております。それと、さらにまた大学を卒業してからその卒業生を実業界——あるいは会社とか、あるいは金融界で採用するときに、差別待遇をされることがやはり大きな原因と、学校差の原因となりますので、そういうことを解消するようにやはり努めなければならぬ。さらにまた私どもに課せられた大きな問題といたしましては、特に国立の方面では学校差をなくするようなその施設、設備、それから教員組織、そういうのも是正していかなければならぬというので、一生懸命に努めておるような次第でございます。おかげさまで本年度は地方と都会と、東京でございますね、との入学志願数がずっと地方の方に昨年度から見ますというと多くなりました。そうして東京の方がずっと減って参りました。これは今の格差を相当是正していく第一歩を踏み出したものだというふうにも喜んでおる次第でございます。さらに御指摘になりました私立学校、私立大学でございますが、これもやはり国立とは違って経営難とか、いろいろな問題からその設備、施設あるいは教員組織等がやはり完全とは言えません向きもあるようでございます。従ってそういう方面には何とか公立と同じような程度にしなければいかぬと存じまして、毎年々々多少の補助金は出しておるんでございますけれども、特に三十三年度はちょうど科学技術の振興が叫ばれておる折柄でございますから、私立大学方面も協力をしてもらうという建前から、これに対する研究施設費と申しますか、さらにあれは何と言いましたか……、名前は忘れましたが、両面からざっと四億何千万円か出すことにいたしました。そうしてざっと昨年度から見ますと三倍の金を補助として出すようにしております。それで大体やはり私立大学の方も相当やっていけるのじゃなかろうか、すなわち公立学校に遜色のないようにやっていけるのじゃなかろうかと存じております。年を追うてそうした方面も是正されていくであろうと考えておる次第でございます。
  164. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して。先ほど社会教育の問題で加賀山委員から御質問がありましたが、十三条の改正について非常に重要な御発言がございました。社会教育の第十三条の改正は社会教育法のほんとうに抜本的な私は改正じゃないかと思うのですが、一体この十三条を改正する意思を持つということは、青年の活動に便ならしむるために公民館等に対する国の負担というものをふやしていこうとするのか、別個に青年施設に対する補助をふやしていこうとするのか、青年の活動そのものに対する補助を与えようとするのか、これは社会教育法の性格に作用する問題でありますので、この十三条改正についての具体的な方針というものをお持ち合せでしたならば、この際その点を明確にしていただきたい。  もう一つの質問は、この青年対策でありますが、先ほど加賀山委員からは、文部省が中心となってこの青年の健康な活動のためにがんばってほしい、こういう御意見がございましたが、私もまたそのような意見には同感でございます。しかし、今日国の予算の中では、青年に対する対策と思れるものがまことにこま切れになっております。文部省関係では青年対策と思われるものに六十四万、運輸省関係では四千万、総理関係では二千二百万、農林省関係では千六百四十万、さらに農林省関係の中では、農村建設青年隊補助、農村青年建設隊中隊といって、これに七百五十万組んでおる。さらにこの農村青年実践活動促進費の補助として六千三百万組まれております。さらに農村青壮年海外派遣費補助として九百万、さらに農業講習費の補助として五千八百万、その上に建設省関係として産業開発青年隊に三千八百万というような膨大な予算が組まれておりますが、この中で最も青年対策費の予算の少いのは、先ほど中心になってやるべきだという文部省の青年対策費が一番少い。一体この青年対策というものの主になるところはどこなのか、文部省として中心になるためにはこんなばかげた予算でいいか——文部省は六千万でした、大へん失礼いたしました。これでも大へん少い。従って、この予算はどういうふうに統合されて運用されるものなのか、ぜひ一つここらの連絡、それから青年対策の基本的な性格というものを伺わしていただきたい。  第三点は、学校差をなくさなければ今日の試験地獄を解消できないということから、たまたま私立大学の問題に触れられました。これは先般文教委員会でも御質問申し上げたのでありますが、今の大臣の御答弁は非常に重要であります。すなわち、私立大学を国立大学並みに引き上げるために、本年度は前年度に比べて約三倍の予算を計上したと仰せられた。果してこれだけの予算をもって今日の私立大学が国立大学並みに一体りっぱになるものか、非常に疑問であります。前に御指摘申し上げた通りに、私立大学は今般全国的に授業料の値上げを考えられているのであって、この授業料値上げの原因は、次第に増加する入学学生に対する施設費というもの、内容の費用が足りないために、肩がわりして学生の授業料の値上げということになってきているので、決して大臣の仰せになるように、今年度の予算で国立大学並みになるとは私には考えられない。しかとこの三点について御答弁を賜わりたい。
  165. 松永東

    国務大臣(松永東君) 高田さんのお尋ねの十三条の問題ですが、その十三条の問題がまだ現存しておる折柄、これがなくなったらどうするかということの計画までまだ立ちません。ですから、これをやめて、これを削除しそうして新たな構想でいこうということを、先ほども申し上げた通り、今研究いたしておるわけであります。あなたの御説もごもっともだと思いますので、その方針に向って研究を続けていきたいと思います。  それから、最後の、今の私立大学に三倍出したというが、それで国立大学と同じような、格差をなくするかと、こういうようなお話ですが、それはあなた一ぺんに国立大学と同じようになろうはずがございません。まず一歩一歩前進させていくということにせんけりゃなりませんので、まあないよりある方がましで、だんだんだんだんこれからいくということを一つ御了承おきを願います。
  166. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 建設大臣が見えましたので、青年対策として、いわゆる産業開発青年隊、これは過日の委員会でもちょっと御質問申し上げその実情は伺ったのでございますが、これはやはりニュー・ディールでルーズベルトが作ったアメリカのC・C・Cというものがおそらく見本になっているのじゃないかと思うのであります。これは規模も非常に違って、すでに三百万以上の養成をして、十年間やった。この効果は非常に大きくて、これはただ青年の失業を救済するとか、あるいは職業を覚えさせるとかという、非常にそういった大事な意味もありまするけれども、しかしさらに大事なことは、そういった物質的な利益と申しますものよりは、精神的な面、つまり国土を愛し、国民を愛する気風を持つ一つの非常に大きな契機になる、これが非常に大きな収穫であったということが言われておるのであります。御承知のように、この問題については、ナチス時代にアルバイト・ディンストということをやったということは、御承知の通りと思います。あれは青年対策として、K・D・F——クラフト・デュルヒ・フロイドというような運動もやったのでありますが、これらの運動はそれぞれいいところをねらっておったと思うのでございますけれども、ナチスのやったのは多分に政治的過ぎた。いわゆるナチスの政策としてやったというところに、私は欠陥があったのではないかと思います。そこで、この青年隊を考えられる場合には、ぜひとも政治というものからはずしていかなければならぬ。しかし、今申しましたように、青年の失業対策ともなり、また青年に職業を与えるいわゆる社会教育の一助ともなる。さらには、青年にそういったほんとうの意味の国土を愛し、国民を愛する気持を植えつける意味において、もっともっとこの青年隊というものをほんとうに考えて、青年によって指導されるこの青年隊の拡充が私は望ましい、青年対策として最も国家の大切な任務であると思うのであります。農村建設青年隊は、また次男、三男の方策ともなるし、さらに海外移住に適する人を養成するという、一得も一得も三得もある。こういうような点から、これを本気に取り上げ現在やっておられるような何か申しわけ的な予算ではなくて、本格的にこれを一つやられる気はないか。これはどうも、政府がみずから金を出されると、先ほど社会教育費についてお話が出たように、疑ぐられがちになるのでありますが、私は、国のために、青年のためによいことをしようというのに、ちゅうちょされることは要らぬ。ただ、その方式とか、どういう人によって指導させるかということについては、十分な検討が要るし、また青年をどういうふうに指導していくかという指導方法に一そう大事な意味があると思うのでありますが、これをぜひ農林大臣等とも相談され、あるいは文部大臣も参画されて、この問題を検討願って、大いに一つやっていただきたい、こういうふうに思うのでございますが、御見解をお聞きしたいと思います。
  167. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。  加賀山さんが御指摘の通り、アメリカにおけるC・C・Cの成果は非常にりっぱなものがあるのでありまし日本におきましても、お示しのように、建設省における建設青年隊あるいは新農村建設青年隊と、建設省、農林省おのおのやっておりまするが、この規模は非常にまあ小さい。これを大いに拡大すべきであるとの御意見でありまするが、これは、財政の許す限り漸次拡大して参るという政府の方針でございます。従いまして、昨年度に比しまして、三十三年度におきましては、約千六百万ばかり予算をふやしまして、中央キャンプ三つをふやすつもりでありますが、これは、もとより御指摘の通り、必ずしも十分ではございません。なお、総理府には現在青少年問題協議会がございまするので、こちらの方面において、今お示しになったような問題を含めて、協議検討されておりまするので、それらの御方針ともあわせまして、今後、漸次拡大して参りたいと思っております。    〔高田なほ子君「議事進行」と述ぶ〕
  168. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ちょっとお待ち下さい。    〔高田なほ子君「議事進行」と述ぶ〕
  169. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ちょっとお待ち下さい。  松永文部大臣に申し上げます。高田君の御質疑に対して、答弁漏れがあるようでございますので、御答弁を願います。(「名委員長」「議事進行と言ったら発言を許したらいいじゃないか」と呼ぶ者あり)
  170. 泉山三六

    委員長泉山三六君) まずこれが済みましてから……。
  171. 松永東

    国務大臣(松永東君) 高田さんの御質問は、各所に相当の予算が散らばっておる、しかも、肝心の文部省は少いじゃないか、一体これをどう統一し、肝心の青年の教育をどう処理していくか、こういうお尋ねでございます。文部省といたしましては、事、教育に関する限りは、これは文部省が中堅となって、そうしてやっていきたいというふうに考えております。しかしながら、まあ三十三年度予算はあのくらいな程度で所期の目的を達成することができるであろうと存じております。
  172. 泉山三六

    委員長泉山三六君) よろしゅうございますか。——加賀山君。
  173. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 文部大臣に伺いたいと思うのでございますが、これは簡単なようでなかなか複雑な問題を含んでおると思うのでございます。で、これは、わが国の青年の対策ではございません。ただいま東南アジア等から東京外語大学という所へ留学生を招いておるはずでございます。文部省にもこの関係予算があるわけでありますが、この問、岸総理大臣が向うへ行かれたときも、向うの人から、大学だけでなしに、高校程度でも一つ呼んでくれ、じゃ呼ぼう、こういう話も出たとか伺っております。ところで、これらの学生は、日本へ来て非常に困っておる。で、向うで聞いた話と、こちらへ来てからの話では大へん違うので、これはちょうど外務大臣もおいでになったから聞いていただきたいと思うのでありますが、まるでだまされたようなものだということで、こちらのせっかく金を出しての好意が全くあだになる。で、これらの青年はおそらく向うでは優秀な青年が選ばれて来るのだろうと思うのです。これらの青年が日本へ来て、日本語を勉強し、日本の技術、学術を学んで帰る。これは向うの国々の今後の発展に大いに寄与することになるわけでございますが、ちょうどわが国も維新当時から外国へ青年を派遣し、そうして勉強させた、これと事柄はきわめて似ておると思うのでありますが、それらの青年がほんとうに満足して帰ってくれれはよろしいのですが、非常に不満を述べている。こういう現状を御存じかどうかと思うのであります。で、どういうことが不満かといえば、大体向うで十分な選考をされていない。こちらへ来ているはのいの字も知らないのが、一年間でとにかく大学の講義を聞くまでにしなくちゃならない。それだけでも大へんなことでありますが、ただ一ヵ月に二万円の支給は受けるそうでありますが、あとはすべて来たらほったらかしに近い。こういうような状態で、非常に神経衰弱ぎみになる人さえある。それで、非常に不快の念を持っているというのが現状だそうでありますが、これらについては、向うでいわゆる人事交流をする場合に、東南アジア等との場合、特にこの問題は、私は非常な重要な問題を示唆すると思うのでございましこの出先は、おそらく外務省の公館が当られるのではなかろうかと思うのでありますが、それらの事情につい文部大臣から御答弁を願いたい。
  174. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 加賀山君に申し上げます。御質疑がまだ続きますようでしたら、引き続き御発言願えますか。
  175. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 もう少しです。
  176. 泉山三六

    委員長泉山三六君) もう少しでございますか。  それでは、松永文部大臣。
  177. 松永東

    国務大臣(松永東君) ただいま御指摘になりました留学生の問題につきましては、戦後は、出先の役人が選考しております。こっちへ参りましてからは、日本国際教育協会に対しまして補助をいたしまして、そうして留学生会館を建設してお世話をしている、こういう現状でございます。
  178. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 今の問題は、一つ文部大臣、さらによく調査、検討されて、そして向うから来た学生が、どういうふうにして勉強をしているか、どういう効果を上げて向うへ帰るようになるか。これは、私は、やはり学問のことでございますから、外務省も当然関係があると思いますけれども、やはり文教の主務大臣としては、十分これは調べておかれなきゃいかぬ、かように考えるのであります。で、その結果、もしますいところがあれば、これは直していただかなきゃならぬ、かようにお願いしたいと思います。  次に、観光の問題について、時間がなくなりましたので、きわめて簡単にお伺いいたします。  観光事業審議会というのがあって、観光の事業について建議をいたすことになっておりますが、その実績——建議のうち、これはもうすでに二十数件あるいは三十数件建議されていると思うのでありますが、そのうち、実現したものは何件ですか。運輸大臣からお伺いしたいと思います。
  179. 中村三之丞

    国務大臣中村三之丞君) 審議会答申につきましては、遺憾ながら、十分まだ実現の域に達しておりません。まあ今のところ、先日も申し上げました通り、観光宣伝のために、観光国際協会ですか、こういう所に、政府の資金を予算によって支出しておる、こういう状態でござりまして、今後、ただ計画といたしましては、いわゆる十カ年計画はござりまするが、これを、徐々に実行いたして参りたいという考えでござります。
  180. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 観光の問題につきましては、一松委員から、これはもう余すところなく述べられておるのでございまして、その大事なことは、もう繰り返す必要もないのでありますが、私は、そのうち特にこの平和政策というものについて、観光事業というものはきわめて大である。この国際収支の改善というような意味は、だれにも考えられるところでありますが、この問題はきわめて大事なことで、平和政策、つまり旅行をお互いにすることによって、その国を知り合う、国民と接触する、こういう意味からいっても、観光事業はほうっておけない。ところが、この間の運輸委員会で、私の質問に対して、五カ年計画がある。ところで、これで少いが、これで五カ年計画で目標は達成できるつもりであるというふうに、運輸大臣は言っておられる。私はとんでもないことだ。最初の年が一〇%とか、一五%というような予算しかなくて、この五年後に三十万人といったようなお客を受け入れる設備がどうしてできるか、あるいは道路は少しよくなるかもしれないけれども、そのほか国立公園の整備にしろ、厚正大臣は、広域も考えなければいかぬと言っておられる。現に日光と丸沼との間を抜くトンネルというようなものとか、あるいは箱根のバイ・パスというようなものは、私は非常に観光上大事なものであると思うのでございますが、そういうものにすらなかなか手がついていない、これで一体五カ年計画が達成されて、五年後に三十万人のお客のほんとうに受入れ態勢ができるか、新長期経済計画には、観光ということはほとんど書いてない、ただ、貿易外収入の改善ということで、大いにこれをふやすのだ、観光収入をふやすのだということだけは書いてある、総理大臣は、どうもばらばらでやっておるよりしょうがない、ばらばらでやっているうちに、それぞれ担当の省が何とかいくだろうというような答弁をしておられる、私は、観光についてはきわめて心細い感じを持つので、もう一度、各大臣から御答弁いただきたいと思います。
  181. 中村三之丞

    国務大臣中村三之丞君) 観光事業の施設は、何と申しましても低利で長期の資金を獲得することが必要であります。従いまして、今、開銀等を通じ、将来私は生命保険団と一応懇談して、こういうところから低利にして長期の資金を観光事業に供給をしてもらうように、近く私は準備をいたしておるのであります。話をまとめたいと思うのでございます。それから旅館でございますが、ホテルでございます、これは一挙にはできません。一挙にはできませんが五カ年計画におきましてホテルの完成、千以上の部屋がまだ足らないそうでありますから、こういうものの完成、それには日本のスタイルと申しますか、日本の旅館に外国人が泊れるようにこれを改造せしめる、そういうものは、ホテル整備法によって登録旅館として融資のあっせんもしますし、また、固定資産税の軽減をはかっていきたい、こういうふうに考えておるのでありまして、何分、日本の限られたる資金におきまして、一気にできぬことは、私は告白せざるを得ません。しかしながら、観光施設というものは、政府も民間も協力してこういう方向にいきますならば、宿泊施設の整備、あるいは観光道路を充実していくということも、私は次第にできてくると思うのでございまして、かくして、日本への認識が高まってくる、あるいは日本に対して、旅行者が船その他航空機によってやって来るということになりまするならば、三十六年における三十万の人たち、これが日本に来て下さる、それによって一億ドル程度の観光収入が得られるという見込み、また、この方向に努力をいたしておる次第でございまして、一挙にできぬことは、これは事実でございます。しかし、漸次にこれをやっていく、この間総理も言われましたように、外国の資本もこのホテルの建設に役に立つというのでございますから、そういう意味におきまして、私は、一定の計画のもとに努力をしていけば目的は達し得られると信じておるのであります。
  182. 泉山三六

    委員長泉山三六君) だいぶ経過しておりますから……。
  183. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 厚生大臣から、一つ国立公園の問題について……。
  184. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 御引用になりました一松委員のときに、詳しくお答えいたしたのでありますが、これは専門家である加賀山さんも、なかなかむずかしいことはよく御承知だと思います。しかし、三十三年度は経済の調整過程を考えておる、予算につきましても、ともかく従来より約五割近いものを国立公園のために増額いたしました。しかし、お説の通り、これでもって五カ年計画と対比いたしますと、まだ四分の一くらいにしかなっていないというのが現状でございます。私は、観光事業についてはいろいろ意見を持っておりますが、根本的に、観光事業は、単に自然がいいということに対して、観光々々といっても観光にならないのであって、やはり相当の投資をしなければいかぬ、どこの外国の例を見ても、相当観光事業に資金、資材が投ぜられておるようでございまして、私も、今後一そう努力いたすつもりでございます。ただ、一番今問題になるのは、建設省の道路関係を整備することが一番私は大切じゃないかと、ひそかに思っておりますが、これらについても建設大臣とお打合せをいたして、そのほか、各省にわたりますことでございますので、これらにつきましても各省とお互いに相談しつつ、総合的に前進いたしたい、こう考えておる次第でございます。
  185. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 最後に建設大臣に、時間が切れましたので、ごく簡単に、治水事業の基本計画と治水事業五カ年計画というものがありますが、今日までの達成率をおっしゃっていただいて、これをいかなる方法で、どんなにして達成されるか、御所信を承りたい。
  186. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 災害復旧の伸長の状況は、過年度災害につきましては、本年度までで相当進んでおりますが、三十三年度予算におきまして、二十六年、二十七年度は全部完了し、二十八年、二十九年度について残額の約六〇%を完了する予定でございます。それから三十年度以降につきましては、国庫負担法の方針に基きまして、おおむね三カ年間でこれは完成するように、その予算措置は進んでおります。二十八年、二十九年度は非常に膨大な事業量でありましたので、やむを得ず残額の六〇%にいたしておりますが、三十四年にはこれは全部完了いたしたい、こういう計画で進んでおります、なお、治山治水の全般の問題につきましては、先般も関連質問についてお答え申し上げましたが、本格的に日本の河川を全面的に改修するには、大体三千三百本を対象にしなければならないと思います。完全にいたすためには。しかも、これには一兆八千億もかかるというような状況でありますので、にわかにこれができませんけれども、漸次これの改修に進んでおります。しかもまた、今までのように提防を作っていくというだけでは、とうていこれは経費がかかる割合にその目的が達成できませんので、治山治水の方は、砂防のおくれを、これをやることによって、相当これは経済的に、しかも有効にやる、それから多目的ダム、それから一般の河川の改修、この三本立で進んで参りたいと考えます。  なお、先ほど観光の問題について、私に関するところの問題もありましたので、ついでに申し上げますけれども、お示しの日光道は、宇都宮—日光間は完成いたしました。問題は、日光から小山間の従来の鋪装道路は、非常にいたんでおりますので、本年から改修に着手する予定でございます。それから箱根のバイ・パスの問題でありまするが、これは本年から有料道路として着工する予定になっております。なおまた、軽井沢方面の道路も、これは観光をかねまして、昨年来進んでおりまして、本年も相当程度進んで参る予定でございます。なお、有料道路につきましても、従来着工しておりましたのを進めるほか、新たに本年十数カ所、これはおおむね観光に関連するところの道路でありまするが、進めて参りたいと存じております。
  187. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと関連、簡単に。
  188. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それじゃ矢嶋君、簡単にお願いいたします。
  189. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理に一言お伺いいたしたい。申すまでもなく、世界でも有名な日本は災害国でありますので、応急災害対策はもちろんのこと、恒久災害対策はわが国としてもきわめて重要なことだと思うのです。現在は三カ年間に災害を復旧するという建前になっているわけでありますが、今建設大臣が答弁されましたように、三カ年間でなかなか終らない。ことに二十八年災のごときは昭和三十四年に終りましても、実に七カ年間かかるわけでございます。従って現実は、災害復旧のできないうちに次の災害が襲ってくるという実情でございますが、私は三カ年計画すら不十分だと思うのでございますけれども、そう理想論ばかり言ってもしようがありませんので、ぜひとも三年間に災害を復旧するという、これだけ完全に行えるように、今後私は行政を強力に推し進めるべきだと思うのでございますが、総理大臣の御見解いかがでございましょう
  190. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の郷里も災害地でございまして、今矢嶋委員の御意見は、私自身も従来そのとりを痛感しておることでございます。政府の首班に立ちまして、私もこの災害の復旧の問題に関しましては、従来三ヵ年でやるという方針を今後ぜひ貫いて少くともこの間には完成するという方針を貫いていきたいということは、かねて考えておったことでありますし、その方面に努力をいたしたいと思います。
  191. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 総理にお伺いいたしたいのですが、先般いろいろと私大蔵大臣に、厚生保険特別会計のことにつきまして質問申し上げたのですが、大蔵大臣立場での御答弁は一応わかるわけですけれども、私としては問題はぎわめて重大なので、総理に明確な御答弁をいただきたい、かように存ずるわけでございます。総理が常におっしゃっておられるように、社会保障制度の二大支柱は、国民皆保険と国民年金制度だと、こういうふうにおっしゃっておられる。その通りでございますが、さてそこで国民皆保険を完全実施するという場合において、基礎的な諸条件というものの整備が、まず肝要だろうと思うその中には結核対策その他いろんな問題がございますが、きょうはそのうちの厚生保険特別会計につきましてのお考えを承わりたいと思うわけなんです。それはどういうことかと申しますと第二十二国会におきまして、二十九年度の赤字が四十億円ばかり出ました。そうして三十年度の赤字見込みが三十億円ということで、合計七十億ばかりの赤字が出る。そこでこの七十億円については、特に臨時に一般会計において負担することとし、取りあえず十億円は三十年度歳出予算に計上する、残る六十億円は資金部からの貸付によって処分なさった、その借入金の返債財源としては、毎年度十億円以内を一般会計から厚生保険特別会計に繰り入れることとして、厚生保険特別会計法に所要の改正をお加えになったわけであります。従いましこの二十二国会におきましての御決定事項が、そのままずっと実行されておれば問題ないわけですが、二十四国会におきましては、当然三十一年度の赤字見込み額六十七億円に対しまし二十二国会の決議通り十億円を繰り入れることをしなければならぬのを、これを一カ年繰り延べた。そうしてまた二十六国会も同様でありますし、二十八国会におきましても先日同様の処置がとられておるわけなんですが、一体こういうふうなことは二十二国会における決定の経緯から考えましても、当然これは早急に解決すべき問題だろうと思う。特に国民皆保険をするという今日において、そういう厚生保険特別会計に未処理の問題があるということは、決して国民の信を問うものでもありませんし、一体この繰り延べ作業をいつまで続けられるのか、そういうことが皆保険に対しましてきわめて悪影響を及ぼすと思うのですが、御所信を承わりたいと思います。
  192. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 予算並びにこの経理の問題でございまするので大蔵大臣からお答えいたすことにいたします。
  193. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 大蔵大臣答弁は聞いておるわけなのですが、考え方をお聞かせ下さい。
  194. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 政府としては、言うまでもなくこの国民皆保険をやるにつきまして、その基礎的なものについてはぜひこれを整えて、そうして予定通り四年の計画によってこれを実現するということで進んで参っております。その基礎的な何といたしまして、そういう特別会計、この保険財政の基礎を確立するということは最も必要なことだと思います。これにつきましては、今具体的の問題につきましては、先ほど申しておりますように、大蔵大臣からお答えをすることが適当だと私は考えますが、方針としてはそういう方針で進んでおります。
  195. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 政府としても、今お話のように国民年金制度、一方には医療保険、従って国民皆保険を進めていく、こういうふうに考えておるのでありますが、今お話の政府管掌の健康保険におきまして、六十億の赤字が借りたまま残っている、これもその通りであります。ただこの政府管掌の健康保険では、御承知のように現に関係者の努力によりまして、財政状態が好転をして参りました三十二年度において、大よそ六十億程度の黒字が予想される、こういうような状況にありますので、ところが他の保険会計はやはりいずれも相当の赤字も出ておる。従いまして今回は、社会保険全体としての財政を一応整えることがいいという見地に立ちまして、三十三年度の予算におきまして、国民健康保険あるいは日雇い健康保険、その他の保険について、事務費とかあるいは国庫の補助並びに特別な交付金制度を作る、こういうふうにして一応社会保険全体の財政状況をよくする、そうして国民皆保険の基礎を作っていく。かように考えておるわけでありまして、私どもとして、予算的にも健康保険について、今後十分な配慮を加えていくという考えにあるのであります。
  196. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 私は、ただいまの答弁は前回も見られたのでございましてこの考え方で果していいのかどうかということを、実は総理にお伺いしたいわけなんです。今答弁にございましたように、政府の所管の健康保険の会計が今黒字である、従って六十億の二十二国会の決議は繰り延べしないのだ、こういうことなんですが、私が考えますのに、少くとも健康保険法は、改正されますその背景には、国が六十億円の金を一般会計から繰り入れるのだということによって、昨年健康保険法が改正されたわけなんです。これは国民も、そういうふうに六十億円というものは国の責任でやってもらえるのだ、というように実は考えておるわけなんです。それが今のように、黒字になったから出さないのだということでありますると、これは非常に約束が違う、公約違反じゃないか、こういうように国民が受取るわけなのです。その点が一点。  その次は、政府の責任において二十九年、三十年の赤字は政府がやはりみずから経営なさって、健康保険の指導、監督、監査、審査等をなさって、そうして出てきた赤字でございます。従って二十二国会当時は当然国が負担すべきだということで、あの処置をなされたのにもかかわりませず、それをしないということは責任の明確を欠くわけなんです。やはり当然これは二十二国会の決議通りになされるべきであろうと私は考えるわけなんですが、大蔵大臣は先ほどお聞きのような御答弁しかなさらないわけです。  もう一つの私のお聞きしたい点は、少くとも二十九年、三十年にできた赤字というものは、その当時の被保険者に関係のある赤字なんです。今日の被保険者には全然関係がない赤字なんです。被保険者というものは新陳代謝するわけなんですから、昔の赤字に対しまして何だかいつまでももやもやしたような、責任を新しい被保険者で持つような形で皆保険に持っていくというようなことは、これまたつじつまの合わない話でございまして、昔の借金は昔の決議によって処理されるということでなければ、これは決していい方向に皆保険というものは進まない、こういうように考えるわけなんです。  もう一つの問題は、一萬田蔵相は社会保険全体を考えて、六十億の問題は考えるべきであるということなんですが、社会保険の全体を考えるということは当然でありまするが政府所管の健康保険を基準にして、これは右へならえをすべきであって、政府所管がたまたま今黒字になったということによって、前の決議を繰り延べばかりするということでは、これまた非常に国民感情の上からも割り切れませんし、また当然日雇い、船員、組合、その他の社会保険は、政府所管のところまで持っていかなければならない。一番進んでおるとおっしゃっておるわけなんですが、その進んでおる政府所管のところまでレベル・アップすることが、国民皆保険の前提であろうと思うのですが、蔵相の先般の御答弁でも、やはり社会保険というものは頭をそろえなければいかぬというので、進んだものをちょん切って、おくれたものに出した頭をそろえるということでは、これは岸総理の皆保険ということの遠大な理想なり、お考えにも私はそぐわないと思う。そうした点を総理からお伺いしたい。(「羊頭を掲げて狗肉を売っているんだ」と呼ぶ者あり)
  197. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国民皆保険を実現いたしますのには、お話の通りいろいろ基礎的な問題としてこれを調整し、基礎固めをしなければならない、いろいろな条件が私はあると思いますが、それと同時に健康保険、広い意味における健康保険というものには、いわゆる使用関係に基くところの健康保険というものと、それから地域的の国民健康保険の二つが、大きなものとしてあるわけであります。この両者を直ちに一本にするということも、これはなかなかいろいろな事情があって、むずかしい点もありますから、まずこの二本で整備していくということは、とりあえずの出発から言えば当然そうなると思うのです。そうしてこの両方の給付内容を見ますと、必ずしも同様ではない。これはいうまでもなく国民皆保険ということは、保険の恩恵に浴せない国民を一人もなくすると、全部の国民がこの保険の恩恵を受けるということにすべきことが一つであり、第二は、その給付内容をよくしていくということを当然考えなければならぬ、第三は、さらにこのいろいろな負担というものを公平ならしめるようなことも考えていかなければならぬ、ということであろうと思うのでありますが、一時にすべてのものが、同時にこれがすべて実現できるというわけでもありませんので、そこに私どもとしては、まずこの健康保険の恩恵を受けない二千万に余るところの国民というものを、とにかく地域保険である国民保険に一応皆入れていくという努力で、年次計画を立て、そうしてさらに給付内容を改善するというふうに、続いて努力いたしていきたいと思います。決しいいものと悪いものがあって、悪い方へ右へならえをするということは、これは私は望ましいことじゃない、いい方へ右へならえしそれでは足りないからさらに上げていくという、この努力をしなければならぬことは言うを待たぬと思います。  それから先ほどいろいろあれがありました、保険財政の強化を考えなければならぬ、それに国家がその当時の資金運用部からの借入金六十億を、年々十億ずつ一般の会計から償還するだけ、これは繰り入れていくということが一応きまつそういうふうにやったんですが、その後、私の承知しているところでは、政府管掌のこの健康保険の財政を建て直すために、一時に繰り入れをいたしましたために、この年年の十億の繰り入れというものは、初めにきめられたとは方針が変ってきておるように思います。  それから本年度の十億の繰り入れの趣旨は、先ほど蔵相が述べましたように、全体の社会保険を見て弱いところへ、これはまあ全体の財政の規模等から、そういうことが出てくるわけでありますが、それを考慮したわけであります。私どもとしては、今私が申し述べたような方針で将来とも努力をしていきたい、かように考えております。
  198. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 よく御存じないようなんですが、厚生保険特別会計への繰り入れば方針が変っておらない。本日参議院の会議でこれが上程されて通過したのでありまして、毎年々々繰り延べしていっておる。この方針は変っておりません。そういうことをいつまで続けていいのかということを私は聞いておる。(「返答が明確でありません」と呼ぶ者あり)おわかりにならぬでしょうか。厚生保険特別会計に六十億円だけ資金運用部から借りて、昭和三十一年度から毎年十億円ずつ返すということを決定なさっておるわけですね。それが実行されずに、三十一年も二年も、厚生保険特別会計法を改正なさって、三十一年に繰り入れるというのを、三十二年に延ばすんだという決議をして延ばされた。また三十二年の国会でも同じように延ばされた。次々と延ばしておられるんですから、一体これはいつまで続くのかということを聞いておるわけです。
  199. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この六十億が、資金部から金を借りて借入金になって、そのまま今繰り越して残っておることは先ほど申した通りであります。私どもの考えましたのは、一応その政府管掌の健康保険が財政状況がよくなりましたから……。ところが一方においては先ほどから話がありますように、二千数百万の人がまだ保険の恩恵を受けていない。そうしてこの国民皆保険をやります場合におきましては、何としてもやはり、地域的である国民健康保険を推進していくことが適当だ、こういうふうな見地に至っております。ところがこめ国民健康保険は財政の状況もよくない、そこで十三億八千万程度ですが、こういう特別な調整交付金をやる、あるいはまた事務費の補助を上げるというようにして、この国民健康保険の方の財政状態をよくすることによって、これらの多数のまだ保険に加入していない人の保険加入を推進していく。その他日雇い保険、負担力の少い人が加入する日雇い健康保険、この財政状態もよくしたい、こういうふうにしまして、一応そういうような、保険に入る国民の全体の立場を考えて、多くの人が入りやすいように、一応して、そうしてその次に今度はまた政府管掌というような健康保険にかえりまして、そうして六十億の借金が今あるが、これを国庫から出す必要があれば、その財政状態も考えなくてはならぬ、また将来においては保険料の引き上げということも考える、そういうことをあわせてそういうふつうな借入金の返済について、さらに国庫が負担をしていくと、こういうことを今考えております。ただ、一つの政府管掌の健康保険だけの財政状態が、ほかの健康保険、たとえば国民健康保険というようなものは悪くてもほっておくというわけではない。それならどれもいいように国庫負担をふやせばいいじゃないかと、こういうことになりますが、そうなりますと、今の財政状況からしてなかなかそうはいかない。財政にゆとりがあって、そういうふうに保険に思うように国庫が負担できれば、そういうことをやることに、たれも異存がないのですが、今の財政状態では、やはりそこまでいかない。やはり漸を追うそして全体の社会保険の均衡を得るようにしつつ、さらにまた、次の改善をはかっていく、かように考えております。
  200. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 そうすると、その六十億円という二十二国会の決議は、これから国民保険その他のものがすべて内容がよくなるまでは、繰り返し繰り返しこういう決議を毎年続けていかれるお考えなんですか。
  201. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) それは今後の財政の状況によることでありまして、財政にゆとりができますれば、そういうふうな従来からの一種の債務みたいなものですが、そういうものについては私ははっきりと清算をした方がよかろうと、かように考えておるわけであります。
  202. 坂本昭

    ○坂本昭君 関連して。どうも竹中委員質問をよく理解しておられませんね。これは私は非常に大事なことだと思う。というのは、岸内閣にとって国民皆保険というのは、いわば一つの生命です。国民岸内閣を信頼するかしないかという非常に大事な点なんで、もう少し明らかにこれは一つしていきたいと思います。竹中委員が繰り返し説明されるように、厚生保険特別会計の六十億円の繰り入れの問題は、これは政府管掌についてなんです。政府管掌というものについての問題であって、それを大蔵大臣国民健康保険とごちゃごちゃに取りまぜて説明しようとした。この赤字の問題は、繰り返して言われるように、政府管掌の対象となっている人たちが、国が責任をもって経営している間に赤字が出てきた。その赤字を国は六十億入れて、そして解消しようと、ただし、それはあとあと千億ずつ入れて、一般会計から金を繰り入れてこれをなしくずしにしていこうと、確かにこういうやり方は、一般市町村の国民健康保険については現在行われているのです。一般の市町村における国保では、市町村の一般会計から繰り入れてこの赤字を埋める、これはいいことではないけれども、やむを得すやっている。それは国保については市町村が責任を持っているからそれをやっている。しかし、政府管掌については、これは政府が責任を持っているのだから、その赤字を政府がやはり繰り入れて消していかなくてはな円ない。そのためにちゃんと前に法律を作って、そして十億ずつ繰り入れていくということをきめておきながら、それを実行していない。しかも、先ほどだんだん黒字になってきたと、その黒字になってきたことについては関係の人たちの努力によってなったという。その努力というのは、政府努力というよりも、被保険者の保険の料率を上げたんです。上げて、被保険者に金を出させて、それを黒字にしていった。そしてまた、監査や審査を厳しくして、場合によれば、医者が当然もらわなければいけない診療報酬を削って、そして黒字にしてきた。しかも、その赤字は数年前に出ておるものである。だから、それを今になって新しい政府管掌の保険の、その対象になっている人たちからその赤字を消すようなことをしてはいかぬと、それを竹中委員は何度も繰り返して説明しているわけなんです。ですから、結局この問題は、よい保険をつぶして悪い皆保険を岸内閣がされようとするから、それではいけません、そういうことでは国民を偽わるものだから、よい保険制度をつぶさないで、そうして悪いものを上に上げるようにしなさい。これは非常にこの竹中委員の指摘は、私はむしろこの今の岸内閣の皆保険をやろうとするその熱意を何とかして支持し、そうしてこれをりっぱに国民の期待する方向に向けようという、ほんとうに誠意のこもった私は指摘だと思うのです。それについての御返答がはなはだ不十分であります。これはどうか誠意を尽して一つ御返答していただきたい。
  203. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私はあなたの主張に何も異存を言うのではありません。これは私もそういうふうに認めていいと思うのですが、政府管掌の健康保険に国庫が負担をする場合に、これはあの保険勘定に歳入補てんの必要があるときは、政府はこれをすると、こういうふうになっておるのであります。そこで、この政府管掌の健康保険の財政状態からして、特に歳入の政府が補てんをしなくてもいいという状況があるならば、これは私は法律から見てもいいじゃないか。ただ問題は、今あなたが御指摘のように、財政状態がよくなったからといっても、それは保険料なんか上げているじゃないか、被保険者の負担もふえたからと、こうおっしゃる。その点は私も全くそう思うのですが、しかし、同時にあの当時政府が三十億の負担をしましたときは、実はその被保険者の負担もまたあれとは違った形であったのでございます。ところが、これはまあいろいろないきさつから、最終的にはほとんど被保険者の負担というものは小さいものになった。私はこういうことは今言うべきじゃない。言いたくないのですけれども、まあそういうこともあるので、それでこの政府管掌の健康保険がこの程度、たとえば六十億黒字が出るという状況にあるのだから、そんなら他の保険にその金を回した方がいいじゃないかという見地で、これは何せ貧乏な国ですから、どこもここもというわけにいきませんから、それで特に皆保険ということにすれば、国民健康保険というものに、これに力を入れたらよかろう、こういうふうにいたしたのであります。これは考え方としては私は何も異存がない。私もさように考えるのでありますが、しかし、実際のこの財政の処理の上からやむを得ない情勢であるということを、御了承いただきたいと思います。
  204. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 今必要があれば繰り入れるのだとおっしゃったのですが、私は今の政府所管の健保勘定は必要があると思う。と申し上げますることは、三十一年と三十二年ですね、蔵相の言われるように三十一年は四十八億の黒字が出ておる。三十二年も六十億ばかり出るという見込みだとおっしゃっておられまするが、それは国庫から補助が三十億円あって初めて出る黒字なんです。ところが、明年度はこれは十億円になっておりますね。決して私は今の健保財政がゆとりがある、あるいは必要がないからというような状況でない。そこはまあ見解の相違でしょうが、そう考えまするので、私はこの問題についてはやかましく言うわけなんです。  それからもう一つ、これは総理にもお聞き願いたいのですが、この黒字が出ましたのは、今坂本委員が言われましたように、自然な姿の黒字じゃないと私は思う。やはり制限診療というものはございまするし、それからまた保険料率の変更、あるいはまた、一部負担の増額等、いろいろな赤字処理に対する考え方等の積算の結果の黒字でございまして、決して好ましい政府管掌の健康保険の正しい姿の上の黒字ではないのであり、なおそこに三十億円の負担があって、初めての黒字だということを御認識願いたいのです。  それからもう一つ総理に、大へんこれは失礼な質問をするわけなんですが、昨年の三月め九日に健康保険法の改正のときに、やはり三十億円の問題が衆議院で議論が出たときに、時の池田蔵相が、私速記録を持っておりまするが、もし黒字になったらどうなるかという質問に対しまして、池田蔵相は、今日健康保険において国が負担をせぬというような、そういうことは考えておらない。当然負担すべきである、従ってこの三十億円を今云々しておられるが、三十億円を云々するよりは、黒字になれば保険料を下げるとか、あるいは医療内容の向上をすべきであって、三十億円を減すというような、そういう時代錯誤のことは考えておらぬということが、議事録に載っておるわけなんです。そうして同席の岸総理が語を継がれまして、総理としても、健康保険に対しまして、国が負担をしないとか、補助しないとかいうようなことは考えておらないということを明確にしておくということをおっしゃっておられるわけなんです。そのときの前後の事情からいって、少くとも三十億円というものは、一つの基準であろうと思うのです。ことし十億円を出したのだから、総理としては、いやおれはやはり国庫の負担をしているじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、法律改正のあのときのけんけんごうごう、いろいろな非難があり、甲論乙駁があったときのあの発言としては、国も三十億円出すのだと、被保険者も一部負担で二十五億円なにがし出せ、保険料率も上げるんだ、医者の単価は今のところ据え置きで気の毒だが、三者共泣きでやれということを背景として健康保険法が通った限りは、あのときの三十億円というものは、池田蔵相が言われた通りに、あるいは、われわれが理解しておるように、当然これは国の負担としてあるべきだろうと思う。それがなぜ減ったかということを聞きましたら、保険財政がよくなったから、とおっしゃるわけですが、そうすると、昨年の三月九日におっしゃったことと、今年の考え方とは、非常に違うわけなんです。そういう点、私は非常に遺憾に思うわけです。その点を岸総理にお聞きしたいことと、もう一つ、時間がないので、立ったついでにお伺いしておきたいと思うんですが、今、皆保険をするのに、その前提条件として医療報酬金の問題が出ております。これは、御承知の通り、日本医師会それから医系議員の間に必ずしもうまくいっておりませんし、厚生省と医師会の間もうまくいっておりません。医師の心からなる協力を求めるためには、どちらの主張をいれるとしても、やはり十二分な理解と納得と得心のいくような方法を講じなければ、皆保険できんと思う。これについては厚生大臣がずいぶん御心配しておられます。しておられますが、今日の段階では、厚生大臣あるいは厚生省と日本医師会との間は、感情的にも決してうまくいっておりません。今日の段階では、どうしても、総理がお出ましになって、何とかこの間のことをあっせんなさらんというと、十月一日から報酬金を上げるんだとおっしゃっておられますが、八・五%上げるとおっしゃっておられましても、点数改正だけで、果して八・五%になるやならんやわかりませんし、もし、点数改正の結果、これが一五%、二〇%になった場合に、国の予算としてどういうことを考えておられるか、という点をも合せてお聞きしたいと思います。
  205. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 最初の御質問でありますが、私は、言うまでもなく、この保険財政の健全ということは、円満に皆保険の使命を達するためには、財政が健全にならなきゃならない。そして、それには、国、被保険者等がこれを適当に分担して健全財政を作っていくということは、これは当然であろうと思う。今御質問の、三十億を十億に減したことに対しては、昨年の国会における当時の状況においては、大体、三十億というものを国は入れる、もしもそれで黒字が相当出てくるということになれば、むしろ料率の引き下げ等の処置を講ずるか、あるいは医療給付をよくするというような、内容の改善にいくべきであって、それがために国庫の負担を一番先に少くするというような意思がないという意味に、確かに昨年においては、そういう趣旨でお答えをしたと思います。決して、十億にしてそして去年と少しも変ってないということは、私は申しません。従いまして、これは本年の財政予算全体の上から見て、われわれとしては、政府管掌の健康保険の財政状態が、もうこれでいいんだとは私は考えておりません。たまたま六十億というような黒字が出たといっても、これが、安定した基礎において、健全なる状況において財政の基礎がこれで固まったということは、私は言えないだろうと思います。まだ。そんな、たまたま一年か二年かの状況だけを見て、直ちにこれを言えないことは、こういう財政の性質から言えば当然だろうただ、本年度の社会保険全体に対して、われわれが限られたところの財政資金を、どういうふうに使うかということで、そういうふうな差し繰りをしたというのが、実情であると申し上げるほかないと思います。  それから次に、医療報酬の問題につきましての問題でありまして、これは、もちろん、国民皆保険を実施するについて、医療担当者の十分な協力を得なければ、これが実施がうまくいかないことは、言うを待たないのであります。医療報酬の問題は、相当長い間論議されておる問題であり、また、この問題に関して日本医師会と政府当局との間に、意見の快い一致をまだ見ておらないということも、御指摘の通りであります。私どもといたしましては、極力この実施までに間に合うように、十分な納得のいく結論を得るように、主管庁において今せっかく努力をいたしておるところでございます。しかし、それがどうしてもいかないということであるならば、これはもちろん、政府として非常に重大なことでありますから、総理大臣も責任のある問題でありまして、これが円満な解決を見るように、あらゆるところから、総理といたしましても責任をもって処すべきものである。点数の改正の結果、八五%にならなかったらどうかというなんですけれども、私どもも今努力をいたしておるのは、八五%の……
  206. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 八・五です。八五ならけっこうなんですよ。(笑声)
  207. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 八・五%です。八・五%の値上げになるのを目標にして単価の修正、点数の改正等をそこを標準にしてやっておるわけでございまして、そこに大きな違いができるとは実は考えておりません。
  208. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最初に大蔵大臣に。  中共通商代表部員に関税、直接税、揮発油税、その他物品税の免除をされるかどうか。また、されるなら、その程度を具体的に伺っておきたい。
  209. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは、特別な、特に外交官扱いというような待遇はいたしません。
  210. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 昨日の政府の御答弁では、中共通商代表部員は無期限、無登録で在留を許すということでありましたが、その法的根拠を伺いたいと思います。と申しますのは、外交官は憲法第九十八条第二項の国際法規遵守の条項に準拠して、国際儀礼として外国人登録法の除外取扱いをしておると、こう思うのですが、民間人に対しては同様に取り扱えないと思いますが、いかがですか。
  211. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般指紋の登録法も改正されましたし、さしあたり入国される分には、特に問題はないだろうと思いますが、将来一年先の問題になるわけでありますが、今そういう問題については、研究をいたしておりますので、ここで正確なお答えをするわけに参りません。
  212. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、水産庁長官に。  ソ連に拿捕された北洋近海でのわが国の漁船の数、それから人の数、死亡者、国交回復後の同様の数及び損害推定額、これを伺いたい。
  213. 奥原日出男

    政府委員奥原日出男君) ソ連関係におきまして拿捕されました船数は、三月十日現在におきまして、総数におきまして六百六十一隻、漁夫が五千士百二十人でございます。そのうち、帰還いたしましたものが五百三十六隻、五千九百四人でございます。十隻は、ソ連の側の海岸におきまして沈没、擱座いたしたのでございまして、また、ソ連に抑留中に十二名死亡いたしております。今日なお帰還いたしておりませんものは、隻数にいたしまして百十五隻、人員は四名でございます。この損害額は、一応推定をいたすほかはないのでございますが、大体未帰還船百十五隻について三億五千万円見当と推算をいたしております。ただし、未帰還船及び沈没船の百二十五隻の中で七十九隻は、拿捕その他の事故を保険事故といたします特殊保険に加入いたしておりまして、大体残存価格の八割見当の保険金の交付を受けておる次第でございます。  なお、国交回復後の拿捕の数字をお尋ねでございますが、三十二年及び三十三年の数字をお答え申しますれば、両年を合せまして、三月十五日現在におきまして、拿捕の隻数におきまして百二隻でございます。関係人員は九百九十二名、この中でなお帰還いたしません船及び人員は、隻数にいたしまして三十一隻、人員にいたしまして四名でございます。
  214. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 漁獲の空白の損害は幾らぐらいになりますか。
  215. 奥原日出男

    政府委員奥原日出男君) いろいろな仮定を置いて計算をしなければなりませんので、まだ手元にその数字を準備いたしておりません。取り調べましてまた御連絡申し上げます。
  216. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、安全操業の問題についてお伺いいたしますが、最初に南千島は日本の領土であるというわが国の見解を明らかにして、同時に、領土問題を離れて零細漁民保護のために暫定協定を結ぶ、こういうことを交渉の当初において文書でソ連に明示をされましたかどうか、外務大臣
  217. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 暫定操業の問題でありますので、領水、領海の問題について双方の意見が違っております。そういう点については指摘いたしておりまするし、また四十八度線以南の水域ということを明示しておるわけでございます。南千島につきましては、当然日本の領土であると考えておりますので、特に明示してありません。
  218. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 南千島を日本領土であるということを明示していらっしゃらないのがこの問題を相当紛糾さしておると思います。といいますのは、去年の八月十六日のソ連の回答では、ソ連領域内の漁業について云々、また二月五日の回答では、日本が平和条約締結の準備を怠っているから交渉の時期でない、さらに三月十八日に至りましては、領土問題はすでに解決済みである、こう正式に向うが言っておりますのは、これはソ連のこれに対する気持を端的に表わしていると思います。そこで、この問題の打開、交渉は相当困難であるということを考えなければならぬのでありますが、この対策を国内と国外とに分けて私はお尋ねをいたしたい。第一は、国内の零細漁民の損害救済の問題でありますが、昨年の十二月に根室の漁民大会で、領土のことはともかく、われわれの生活を救ってくれと、こういう叫びがあげられたというようなことは、これは為政者としてよほど考えなければならぬ。これをソ連と強硬に交渉をやるのであるならば、日本の国内からさような声の出ないように、まず零細漁民の生活保護のことを先に解決して、そして国内の統一をしてからソ連に当る、これが必要であると思うのでありますが、この救済問題について、総理はいかようにお考えになりますか。
  219. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 私から一応お答えいたします。政府は根室を中心といたしまして、あそこらに大体千島の方から引き揚げた人が多いのでありますが、これらの人たちに対しまして住宅の施設をしてやったり、また漁船を建造する場合の補助融資等も今日までやって、仕事ができるようにだんだんしてあげておるのでございますが、なお、今後水産の増殖といいますか、これらの人たちの仕事のしやすいようなことに総合的に一つ力を入れてやろうじゃないかということで、これらの人たちが生業と申しますか、仕事を得て、そうして生活がだんだん立っていくような方向に私ども指導していきたい、また援助していきたい、こういうふうに思っております。
  220. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 ソ連相手の交渉でありますから、国内で不平の出ないように、金の十億やそこいらのもので済むことなら、これを一応おさめておいて交渉を開始する、これが本筋だと私は思いますが、総理はいかがですか。
  221. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん外交交渉に当る場合におきまして、国内において国論が分れるようなまた今現実に生活に困るというようなものがないように、政府として対策を立てていくべきことは私当然であろうと思います。
  222. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次は、ソ連に対する交渉の問題について申し上げます。ソ連が南千島を不法に占拠いたしまして、ここに軍事基地を設けて、これを背景として沿岸及び公海上で操業する漁民を反復継続をして不法に拿捕する、こういうことは国際法に認められた公海自由の原則に対する侵犯事犯であり、同時に国際の平和と安全に対する重大なる脅威でありますから、紛争の平和的解決を規定いたしておりまする国連憲章第六章三十五条によって安全保障理事会にこれを持ち込む、提訴をする、幸い日本は非常任理事国になっておるわけでありますから、そうして世界の世論によって問題を解決する、これが国連中心の外交の方針を堅持せられておりまする岸内閣としては当然の行き方ではないか、かように考えるので、ぜひこの点に踏み切っていただきたい、こう思うのでありますが、総理はいかようにお考えになりますか。
  223. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来の私の考えといたしましては、せっかく共同声明で日ソの正常なる国交が回復され、友好関係が樹立されたわけでありますから、いろいろな点においてこの友好関係を進めていき、両国の間の理解を深め、特にこの共同宣言の中に明らかにされておる平和条約、これは領土問題を含む平和条約は、今後継続して審議しようという、この継続審議になっておる平和条約の問題を解決するためには、日本の領土に対する国民の強い要望、これは正当なる日本国民の要求であるということをソ連をして理解せしめるように友好関係を進めていきたい、こういう考えのもとに、この領土問題について、まだなかなかソ連の方は日本のこの正当なる要求をいれるという段階になっておらぬから、少くとも暫定措置として、こういう安全操業の問題を両国の友好関係に基いて処理していき、両国の間にこれを話し合って処理することは、友好関係を増すゆえんでもあり、理解を深めるゆえんでもあるから、そういう暫定措置としてやりたいというのが、昨年夏以来の日本態度であったわけで、しかるに、それが不幸にしてこういうふうになっておるということは非常に残念でありまして、その後においても、いろいろとソ連側と交渉しておりますが、一向らちがあかないのみならず、今おあげになりましたように、だんだんむしろ私どもが願っておるような方向と逆の方向に行くような状態になっております。従いまして、これを解決するのには、私はやはり法律的の問題については法律的の手段によることも必要である。国際司法裁判所に提訴するとか、これにおいてきめるとかいうような問題もありましょうし、あるいは国連の組織を利用して、そうして国際的の世論に訴えるとかいうような方法も考えなければならぬと思います。それらのことについては、せっかく研究し、準備を進めておるような実情でございます。
  224. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 ソ連の従来の外交のやり方から見れば、こういうふうになるということは、大体共同宣言が批准されましたときから私は予想されておったことだと思います。その後のソ連のやり方を見まするならば、日ソ共同宣言には、一応継続交渉ということにはありますけれども、それは領土問題を含むというような参議院の付帯決議もあるし、鳩山総理等もそういうような御説明をなさいましたけれども、私はそれを信じておりませんでした。ところが、今度は三月十八日に、これは明らかにソ連の最高首脳部は、領土問題は解決済みであるという、こういう継続交渉の政府の声明と反対のことを公けに言っているこのやり方、今度の安全操業の問題にいたしましても、国交の回復の後に千人近い漁夫が拿捕されておる、こういうことは、日ソ共同宣言の前文にある、極東の平和と安全の利益に合致し、また、善隣友好のために、なんというのとおよそ反対の私は傾向にあると思います。そこで総理は、今積み上げの方式で友好関係を保持していくと、こういうような甘いことをおっしゃいますけれどもソ連を相手にさようなことを言うことは、ただ希望的観察にすぎなくて、とうていそういうことは望み得ないことである。これはどうしてもそういうなまぬるいことでなしに、積極的に日本ソ連に対して外交の交渉を進めていくということが、私はぜひ必要ではないかと思うのであります。その方法としては、幸い日本は国連に加入し、安全保障理事会の非常任理事国となっているのでありますから、この国連憲章第三十五条の条項によって、国連にこれを提訴する、そうしてアメリカの協力を積極的に求めるということが私は必要じゃないかと思うのです。アメリカは南千島の領有問題につきましては、一九五六年の九月の覚書によりましても、日本の固有の領土であるということを言っておるし、また、サンフランシスコ条約の上院の批准のときにも、これは付帯決議で明らかにソ連には何ら特別の利益を与えないという意思表示をいたしておるわけでありますから、これはむしろ総理なり、あるいは外務大臣なりがアメリカにおいでになって、そうして積極的にこの問題を国連を中心として解決するように努力をされなければ、あるいは積み上げ方式とか、あるいは日本の南千島の領有を彼がのむならば交渉を開始する——ソ連の領土であるということを言っておるのに、のむならばと言っても、これはただ痴人に夢を説くたぐいでありまして、とうていそれは妥結しない、やはりどうしても国連中心という世界の舞台で日本が雌雄を決するという決意をなされて、積極的にアメリカに協力を求める、そうして世界の世論に訴えるという方針でなければならないと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  225. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御趣旨の点につきましては、先ほど私がお答えをいたしましたように、私はただ積み上げ方式だけでもって永久にやっていくということを申しておるわけではございません。今日までそういう意味において、暫定措置としての安全操業というものをわれわれは提案したのだということを申しておるのでありますが、その後のこの経緯を見まして、われわれとしていかにこれを扱うかという問題については慎重に今考慮し、調査、準備を進めておる。今、八木委員のお考えは私は趣旨としてごもっともだと考えております。十分一つ検討いたしまして準備を進めて参りたいと思います。
  226. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 なお、アメリカにおいでになりましたときは、同時に、もう一つの問題としては北千島、南樺太の問題がございます。この北千島、南樺太はサンフランシスコ条約では日本は放棄しておる、しかし、その最後の帰属は国際会議できめると、これもきまっております。ところが、サンフランシスコ条約の第二十五条では、これは署名国でないソ連にはその条文の精神からいっても渡すことはできない。(「その通り」と呼ぶ者あり)また太平洋憲章におきましても、カイロ宣言におきましても、領土不拡大の原則が確立されております。太平洋憲章に対しては連合国共同宣言、カイロ宣言に対してはポツダム宣言においておのおのソ連が署名いたしておりますから、この領土不拡大の原則に対しましては、これはソ連は当然制約されなければならぬ、かように考えまするがゆえに、今は日本の領土権はございませんけれども、アメリカ、すなわちサンフランシスコ条約の起草国たるアメリカを中心として、この北千島なり南樺太を将来国際会議でその帰属を決定するときに、再び日本にこれを引き渡す、あるいは返還するということを強くアメリカに要望していただきたい、かように考えますが、この点はいかがでありましょうか。
  227. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御趣旨につきましては、私ども従来主張してきておるところと一致しておりまして、御趣旨の通りに考えます。
  228. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に先ほど国際司法裁判所のことを甲されましたけれどもソ連は選択条項の受諾宣言をしておりませんから、これはソ連相手にソ連が同意せぬ限りは問題にならぬと思うのです。ところが、過日の朝日新聞に国際司法裁判所規定第三十六条二項の選択条項の受諾宣言を日本はやろうとする気持があるということが出ておりましたが、そういうことを御検討になっているかどうか。また、その際には留保条項をおつけになるか、期限をおつけになるか、その点が一つ。それからもう一つ、この宣言をされました場合に、太平洋における原爆実験のことを国際司法裁判所に提訴することを前に私申し上げたことがありまするが、現在のアメリカは受諾宣言に留保条項をつけております。その留保条項によっては、日本の提訴に応訴するだけの向うに義務がないかどうか、この点を一つ伺ってみたいと思います。
  229. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そのことにつきましては、政府におきまして研究し、準備を進めております。詳細につきましては、条約局長からお答えいたします。
  230. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) この際、私から補足してお答え申し上げます。ただいま事務当局といたしましても受諾の方向に向って準備中でございます。この受諾している国家といたしましては、現在御承知の通り三十四カ国ございます。それからいろいろな留保条項がここに付してございます。たとえば御承知の通り、国内事項に関する紛争であるとか、多数国間条約に関する紛争、それから自国が交戦状態にあるときに生じた紛争というふうに、いろいろな紛争について特定の留保があることも御承知の通りでございます。期限につきましても五年、六年あるいは十年、あるいは無期限というふうに、いろいろな期限がついておりますが、現在のところ、われわれ事務当局といたしまして、いかなる期限にするか、いかなる留保条項を付すべきであるか、目下検討中でございますが、できるだけ早いうちに結論を得まして、関係当局とも相談の上受諾の方向に向っていきたいと思っております。  それからただいまのアメリカの留保条項でございますが、これも御承知の通り、これは非常にむずかしい問題であろうと考えております。これもよく検討してみたいと考えております。すなわちアメリカは、自国が国内事項であると判定する事項については、裁判から除外される、すなわちアメリカが自分みずから判定する問題については、みずから国内事項であると判定する問題については、除外されるということになっておりますので、果してこれがいかなる意味を持っているものか、われわれよく検討してみたいと思っております。
  231. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最後に一点お伺いしまして私の質問を終りたいと思います。それは行政改革のことであります。御承知の通り戦後非常に行政機構が膨大になりまして、国民の負担は、国民所得において、戦前が一二%九のものが、最近は一九%九になっております。そこで、国税、地方税を通じまして三十三年度予算で一人当り租税負担額が一万八千三百八十六円、こういうことになっておりまして、公務員一人当りの給与、旅費は三十一万六千円、物件費が十九万円、つまり、両方合わせますと、公務員一人当りの国費が五十万円かかるという状態になっております。そこで、私はこの重税にあえいでおる国民立場から申しまして、また現在相当に官紀が弛緩いたしておる実情からいたしまして、この複雑膨大化した行政機構を合理化、簡素化いたして、国民の負担を軽減すると同時に、責任体制を明確にするというために、どうしてもこれは行政機構の改革をやらなければならぬ。先般内閣委員会におきまして、石井副総理にこの問題を申し上げました。現在開店休業の状態におりまする行政審議会委員を新しく任命をして、そうしてその活動を促す方針である、こういう大へん頼もしい実は御答弁を得たのであります。そこで、私が総理にお願いをいたしたいことは、最近に解散があるというのは、これはまず常識になっております。そこで、現内閣、ことに保守党内閣でありまする現内閣といたしましては、この行政機構を改革して国民負担を軽減し、同時に、責任体制を明確にするというこの題目を、選挙題目の一つに掲げるということを強く総理に私はお願いをいたしたい、かように考えるのでありますが、この点についての総理の御見解を承わりたいと思います。
  232. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 行政費の負担をなるべく軽減するということは、これはきわめて必要なことでありそのために行政の簡素化、機構の改革、そういう意味においてこれをやらなければならないというこの御趣旨につきましては、私、全然同感であります。のみならず、これは非常な決意をもってやらなければ龍頭蛇尾に終るおそれのあるきわめてむずかしい問題でありますが、しかし、私は従来、これは私の一身のことを申してはなはだ恐縮でありますが、かつて役人を長くいたしておりまして、この行政組織につきましても、多少のそういう体験から考えておることもありますので、中央地方を通じてぜひともこれはやりたいという私の強い決意でおります。従いまして、できるだけ早い機会にこれを実現するようにいたしたい。  ただいま、将来行わるべきこの解散、総選挙の場合におけるスローガンの一つとして、ぜひそういうことを掲げるという御意見に対しましても、私は今申しましたような意味において、これを掲げるか掲げないかは別として、ぜひとも実行をしたいと思いますし、そういうことはまた国民に公約してぜひとも強く実現していくということは適当なことであると思いますから、そういうような場合におきましては、十分一つ御趣旨に対しましては、りっぱな御忠告でありますから、ありがたく考えて参りたいと思います。
  233. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 勇猛果敢に御断行を切望いたしまして私の質問を終ります。
  234. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 明日は、午前十時から委員会を開きます。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時三十四分散会