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1958-03-27 第28回国会 参議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十七日(木曜日)    午前十時四十七分開会   —————————————   委員の異動 三月二十六日委員市川房枝君辞任につ き、その補欠として八木幸吉君を議長 において指名した。 本日委員横山フク君及び高良とみ君辞 任につき、その補欠として塩見俊二君 及び田村文吉君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     泉山 三六君    理事            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            高橋進太郎君            佐多 忠隆君            中田 吉雄君            森 八三一君    委員            石坂 豊一君            大川 光三君            木島 虎藏君            古池 信三君            小山邦太郎君            後藤 義隆君            佐藤清一郎君            塩見 俊二君            下條 康麿君            館  哲二君            鶴見 祐輔君            苫米地義三君            苫米地英俊君            一松 定吉君            本多 市郎君            三浦 義男君            安部キミ子君           小笠原二三男君            亀田 得治君            坂本  昭君            鈴木  強君            曾祢  益君            高田なほ子君            戸叶  武君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            吉田 法晴君            加賀山之雄君            田村 文吉君            豊田 雅孝君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松永  東君    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君    農林大臣臨時代    理       石井光次郎君    運 輸 大 臣 中村三之丞君    郵 政 大 臣 田中 角榮君    労 働 大 臣 石田 博英君    建 設 大 臣 根本龍太郎君    国 務 大 臣 郡  祐一君    国 務 大 臣 津島 壽一君   政府委員    内閣官房長官 田中 龍夫君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    人事院総裁   淺井  清君    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    総理府総務長官 今松 治郎君    警察庁長官   石井 榮三君    自治庁財政局長 小林與三次君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁教育局長    心得      小幡 久男君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省国際協力    局長      宮崎  章君    外務省移住局長 内田 藤雄君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    文部省初等中等    教育局長    内藤譽三郎君    文部省社会教育    局長      福田  繁君    文部省管理局長 小林 行雄君    厚生省保険局長 高田 正巳君    労働省労政局長 亀井  光君   —————————————   本日の会議に付した案件昭和三十二年度一般会計予算補正  (第3号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十二年度特別会計予算補正  (特第5号)(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員の変更について報告いたします  三月二十六日、市川房枝君が辞任せられ、その補欠として八木幸吉君。三月二十七日、高良とみ君及び横山フク君がそれぞれ辞任せられ、その補欠として田村文吉君及び塩見俊二君がそれぞれ選任せられました。   —————————————
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) この際、委員長から報告いたします。  去る二十四日、委員長理事打合会において左の通り協議決定と相なりました。本二十七日は補正一案を一括上程し、提案理由説明から、質疑応答、討論、採決までこれを行い、質疑時間は自民党なし、社会党百二十分、緑風会四十分、無所属クラブ、十七控室各十分、合計百八十分とし、明二十八日から総予算総括質疑に入り、各派の持ち時間は自民党八十分、社会党百五十分、緑風会五十分、無所属クラブ、十七控室各十分、合計三百分とし、割当時間はこれを厳守する。  以上であります。委員長は、右理事会決定に基き、本委員会運営をはかりたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 御異議ないと認めます。それでは、さようにいたします。   —————————————
  5. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これより昭和三十二年度一般会計予算補正第3号及び特第5号を一括議題といたします。  政府提案理由趣旨説明を求めます。
  6. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 政府は今回昭和三十二年度一般会計予算補正(第三号)及び特別会計予算補正(特第五号)を国会に提出いたしました。ここに予算委員会の御審議をお願いするに当りまして、その概要を御説明いたします。  一般会計予算補正(第三号)は、三十二年度の予算作成後に生じました事由により当面必要とされる最小限度措置を講ずるためのものでありまして、歳入歳出とも約七七億円の追加を行うこととしております。これにより、さきに成立いたしました予算補正(第二号)による追加分も合せまして、三十二年度一般会計予算総額は、一兆一、八四六億円となる計画であります。  歳出のうち、義務教育費国庫負担金は、三十一年度の精算の結果、明らかとなりました教職員給与費国庫負担金不足額と、昨年十一月に成立いたしました。一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律の施行に関連する期末手当引き上げ等による三十二年度の教職員給与費国庫負担金不足見込額とを補うために必要な経費追加であります。国民健康保険療養給付費補助金、旧軍人遺族等恩給費等はいずれも当初予算で予定いたしました経費不足を生ずる見込みでありますので、この不足見込み額追加計上するものであります。  以上はいずれも義務的経費追加でありますが、このほか東京国際空港敷地買収費牛乳乳製品学校給食費補助金その他最近までの事情に基きましてぜひとも本年度内に支出することを必要とする若干の経費計上することといたしております。  歳入につきましては、物品税増収見込み額のほか、日本銀行納付金その他租税以外の歳入における収納済増収額計上することといたしております。  特別会計予算補正(特第五号)は特別会計予算総則のみにかかわるものであります。すなわち中小企業信用保険特別会計において国が締結する保険契約のうち、信用保証協会を相手方とする普通保険につきまして、三十二年度特別会計予算総則で規定されております契約限度額が、最近の実績に照らして不足を生ずるものと見込まれるに至りましたので、この限度額引き上げることといたしておるものであります。  以上、三十二年度予算補正につき概略を申し述べましたが、なお、政府委員をして補足説明いたさせます。
  7. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 次に、大蔵省主計局長補足説明を求めます。
  8. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) ただいま大臣から御説明のございました昭和三十二年度の一般会計の第三号及び特別会計第五号の補正予算につきまして補足して御説明申し上げます。  お手元に御配付申し上げてあります予算補正説明がございますので、それをごらんになりながら私が説明を申し上げることといたしたいと思います。全体の姿は一ページの終りから二ページにかけて出ておりますように、歳入歳出ともに七十七億二千二百七十二万三千円という数字に相なっておるわけであります。  この七十七億を歳入歳出、どういうふうに分っておるかということにつきましては、まず歳入の方から申し上げますると、三ページに歳入の内訳がございます。七十七億のうち租税及び印紙収入におきまして三十億円、専売益金及び官業収入におきまして一億七千九百万円、雑収入におきまして四十五億四千三百万円という数字に相なるわけであります。租税及び印紙収入につきましては、四ページにごらんのように物品税をもちまして三十億の収入の見積りをいたしたわけであります。官業益金及び官業収入雑収入におきましては、このうちごらんになりますように、大きいのは日本銀行納付金三十四億二百七十六万五千円という数字がございまするが、全体といたしましては、今日までに徴収済みに相なりました歳入で、当初の予算計上いたしました額を超過いたしました。それを集めましてこの収入額に相なるわけであります。  歳出の方につきましては、二ページから三ページにかけまして、概略説明がございます。第一が、国民健康保険におきまする三十一年度の療養給付費補助金、これが精算をいたしました結果十六億三百万円という額が出て参りましたので、これを計上いたしましたのが社会保険費計上であります。第二が義務教育費国庫負担金でございまするが、この四十二億四千五百万円は二つの部分に別れておりまして、一つは三十一年度の精算不足分三十億五千七百万円、それと三十二年度におきましては、期末手当の〇・一五ヵ月分の増額並びに暫定手当不足分これを合せまして十一億八千九百万円でございます。第三が、国立学校運営費二億二百万円でございますが、これは国立大学附属病院におきまする保存血液、これが不足をいたしましたので、これを補てんをいたしまする関係と、もう一つ国立学校におきます退官退職手当不足分、その合計で二億二百万円に相なるわけであります。四番目が、旧軍人遺族等恩給費でございまして、これは公務扶助料におきまして、新規裁定見込みが当初と実行と異なりまして不足をいたすことに相なりました関係と、それから特例扶助料と申します三十一年の法律をもちまして、内地の営内居住職務に関連をいたしまして死亡いたしましたいわゆる特例扶助料、その系統の分におきまする裁定が遅延をいたした、その関係のプラス・マイすス差引が六億七百万円ということに相なったわけであります。雑件がここに三件ほどあげてありますが、一つ国際連合の分損金及び国連警察軍スエズ派遣費負担金、これはいずれも国際連合の方からこういうような額にきまったということに相なりまして、その決定額に基きまして現在の計上予算額との差額、これを二億六千五十万千円という額に相なっておるわけであります。牛乳乳製品学校給食費補助金でありますが、これが二億九千九百万円、これは学校給食用牛乳乳製品特別価格で供給をいたしますそのための経費でございまして、これは予備費とあわせますると三億五千万円ということに相なりまして、十万石の生乳に相当いたすわけであります。その次に羽田におきます敷地買収費であります。これは最近地主との間に賃貸借契約を続けて参りますことが困難になりまして、買い取り請求がございまして、そのうちで買収価格のきまりましたものにつきまして所要額計上いたしました。それが三億三千四百七十万円、なおこのほかに四件ほどの一億円以下のこまかい雑件がございまして、その合計が一億七千万円ほどでございます。以上合計いたしまして七十七億二千二百万円という数字に相なるわけであります。  次は、特別会計で、これはごく簡単でございますが、五ページでございます。中小企業信用保険特別会計におきまして、信用保証協会に対します保険契約保険価額総額、これは御承知のように予算総則できめておるわけであります。現在百八十億円という総額をきめているわけでありますが、最近までの状況で不足を告げる見込みでございますので、二百四十億円に増加をいたしたい。これは予算総則だけの補正に相なっております。  以上をもちまして補正の御説明を終ります。
  9. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 以上をもちまして提案理由趣旨説明は終りました。  これより質疑に入ります。
  10. 鈴木強

    鈴木強君 私は最初に岸総理大臣にお尋ねをいたしますが、昨年の十二月二十五日、公共企業体審議会会長右坂泰三氏よりあなたに宛てた公共企業体審議会改善要項が出ておるのでありますが、この中を拝見しますと、非常にわれわれが重大な関心を持つ点が二、三ございます。まず、国鉄経営についてでございますが、少くとも将来民営化方向を打ち出しておりまして、とりあえず公社制度を強化する。こういう点でありますが、これがます第一点であります。  それから第二点は、専売公社については、国鉄以上に積極的に民営移管を示唆しておるのでありますが、この問題、それと電々公社につきましては、電話料金の引き下げをやるべきだ。こういうふうな答申になっておりますが、総理はこれに対してどういうお考えをお持ちでございましょうか。それからこの答申案全体としてどういうふうに措置されて参るのでございましょうか。この点を簡単にお答え願いたいと思います。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 昨年末公共企業体に関して、石坂会長から私に対して答申がございました。この中には非常に私ども公共企業体の将来のあり方について示唆する非常に幾多の問題があるように考えております。つきましては、これにつきまして、それぞれの公社を担当しております主管大臣に命じて、これが検討と、これに対する対策を立てるように命じてありまして、それを審議検討中でございます。政府としてはその検討を待って適当に措置して参りたいと考えております。
  12. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、この答申岸内閣総理大臣になされておるわけですが、総理として、これに対する所信というものはあるべきだと思うのです。その点は今ここで言えませんか。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げましたように、具体的に私まだ、結論としては、やはり主管大臣がございまして、それぞれの公社実情事務を責任をもってこれを管理しておりますので、十分この答申を、私は権威あるものであり、またその内容には、先ほど申しましたように、私は将来の公企業体あり方について、非常に多くの有益な示唆を含んでおると思います。一々これを民営方向にするかどうかということを先ほど御質問がありましたが、結論は、私として出すのには、前もって各主管大臣の十分な検討によって具体的な一つ意見をまとめてくるように命じてありまして、それによって措置したい、かように思っております。総理として今各項目についての意見を申すことは、私としては差し控えたい。主管大臣に十分検討させた上で、その上で政府としての意見をきめたい、かように思っております。
  14. 鈴木強

    鈴木強君 それでは私も、まだあなた具体的な見解が発表できないと言われますから、いろいろと意見を聞かれると思いますが、私は少くとも国鉄にいたしましても専売にいたしましても、民営に移管するということは、これは非常に重大な問題でありまして、しかし簡単に私はいかないと思う。ですからやはり現状の公社制度の中で、できるだけ機動的にしかも能率的に動けるような、そういう形にしていくべきでありまして、どうも民営移管ということは非常に私はまずいことだと思いますので、意見として申し上げておきます。  それから次に、当面する労働行政についてお尋ねいたしますが、私ども現在民間労働組合、さらに官公庁労働組合がそれぞれ賃金引き上げ要求を掲げて戦っておるのでありますが、これに対する政府労働政策というものは、この労働者要求を百パーセントといわなくても、ほんとうに真剣にいれてやろうという考え方が従になりまして、そうして何かしら法律によってこれを弾圧する、こういうような傾向に私はあると思うのです。非常に痛心にたえないのでありまして、そこでます少くとも民主的な労働組合の育成を念願し、労使間のよき慣行をいつも主張されておる岸総理が、昨年の五月でございましたか、この予算委員会において総評に対するあなたの見解は、総評は不健全な労働組合である、こういうような見解をあなたがとっておられる、そうして願わくは労働方針運動方針をかえてもらいたいというところまであなたはおっしゃいました。それから一年間たっておりますが、今もあなたはその総評に対する不健全であるという考え方と、運動方針をかえなければならないという考え方は変っておりませんか。
  15. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は労働組合の健全な発達、またこれによって労使の間によき労使慣行ができることを心から念願いたしております。また労組の力によって労働者の生活が安定し、向上され、労働条件改善されていくということは、これは望ましいことであると思っております。しかし言うまでもなく、産業、国民経済全体の動向であるとか、あるいは各種の客観情勢というものを十分労組としても考えて、私はいろいろな闘争なりあるいは労使の間の話し合いなりすべてのことが進んでいくことが望ましいと思っております。たとえば御承知通り、今日は一般経済情勢は不況でありまして、しかも国民経済基礎を安定せしめ、将来の堅実な発展を考えていかなければならない大事な時期だと思います。もちろん各民営事業におきまして、各企業なりあるいは事業について労働条件なり賃金というものが妥当であり、適正であるかどうかということは、これは一概に言えませんけれども、今回の春季闘争において、相当こういう経済情勢一般情勢を私どもは十分に理解してかかるならば、こういう大幅な賃上げをこの際要求するということは適当でないのじゃないかと思われるような大幅の賃金値上げ闘争がやられ、さらに官公庁労組との間にスケジュールを設けて闘争を展開しておるという総評やり方は、昨年私が総評あり方として、はなはだ遺憾であり、是正をしてもらいたいと言ったことがやはり改まっておらないように私としては思うのでありまして、この点は大へん遺憾と考えております。
  16. 鈴木強

    鈴木強君 やはり私たちが非常に心配しておった岸総理労働行政に対する考え方が昨年来一貫して変っておらない、私はこのことはきわめて残念に思います。しからば今日この総評という労働組合が歩んで参りました歴史というものをあなたに私はもう一回考えてもらいたいと思うのです。総評労働運動方針は、あなたは御存じでございましょうか。
  17. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は戦後における日本労働組合運動が非常に活発になり、同時にこれが労働者労働条件改善に非常に資したということにつきましては、十分にその労働組合運動というものの意義を承知いたしております。しかし先ほど申し上げましたように、一体年中行事のようにスケジュールを設けて、そうして各傘下の労働組合を一律にそのスケジュールの中に入れて、そうして闘争をするということは、私は健全な民主的な労働組合あり方としては、従来からもそう思っておりますが、総評やり方というものについては、私としては納得できないものを感じております。
  18. 鈴木強

    鈴木強君 あなたが総評を非常に不健全な労組だというふうに断定しているわけですから、それにはそれなりの理屈もあるでしょう。今お尋ねいたしますと、どうも日本経済実情を知らずにスケジュール闘争を続けて年中行事闘争をやっている。こういうようなことがあなたの言われている不健全だと断定された基礎になっていると私は思うのであります。そういうことでなしに、もっと本質的に日本の国を再建し、ほんとうに発展さしていくために、労働者の一致協力したかたまりというものが、ほんとうに国を発展するために立ち上るということが大事だと思う。そのために戦後労働組合が結成され、そして終戦直後のあの激しい中で、確かにかつて日本共産党労働運動を牛耳って指導したこともあります。しかしそういう中で労働組合自主性を獲得し、真に民主的な組合を作ろうということで、少くとも今の総評というものが私はでき上ったと思うのです。私はあなたに説教するつもりでないのです。要するにその後の総評に対する政府考え方、あるいは資本家側考え方というものが非常に誤っておったと思うのです。なぜならば、それでは今の公労協なりあるいは国家公務員自体が、こういった職場大会とかあるいは賜暇戦術だとか、あるいは超過勤務拒否闘争、こういったような戦術をどうして使わなければならなくなったのでしょうか。あなたはその点をどう考えておられますか。
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 昨年の何におきましても、私の内閣になりましてから、労働争議に対する所信政府考えとしては、民間争議に対しては政府が直接介入する意思は毛頭もっておらない。これは労使の間に、平和的に民主的に解決されるということをわれわれは念願して、行き過ぎて何かの法規に触れるような何かの行動が出れば、これは政府として当然それに対する措置考えなければなりませんけれども争議そのものに介入してはなりませんが、しかし公務員のこの組合につきましては、御承知通りそれぞれの法規がありまして、それを公務員として逸脱し、それに違反するということに対しては、これは厳重に政府として公務員に対して取締りをし、支障ないように厳にやっていかなければならない。同時に公務員につきましては、それぞれ仲裁裁定制度が設けられておりますから、これに対しては政府自身誠意をもってその裁定に対してこれを履行する。一方においては政府はそういうことに対してはあくまでも政府誠心誠意をもってこれを実現するとともに、公務員はやはり公務員に課せら打ておるところの当然の職務公務員法において履行するように、それを逸脱するような行為に対しては厳に取締りをする、こういう立場を堅持して参っております。私はこの考え方は、お互いが法治国であり、民主政治というものを前提としている以上は、この根本が成り立たなければよき労使慣行というものはできないし、その点については政府としては今言ったように一貫して今日まで参っております。私はこれは政府のとっている態度が正しい態度である、かように考えます。
  20. 鈴木強

    鈴木強君 あなたは、私の総評運動史を知っておりますかということに対しては、何にも知らないのですね。それからなぜ現在のように公労協国家公務員超勤拒否やあるいは賜暇闘争職場大会をやらなければならなかったか、このことに対しても一つもよって来たった原因を答えてくれない。私は少くとも昭和二十三年の十二月二十日公労法ができ、それから昭和二十三年十二月三日に国家公務員法が改悪されて、この国鉄その他すべての国家公務員からストライキ権が奪われたわけです。その代償として少くとも仲裁制度調停制度ができ、また人事院制度というものが生まれて、ストライキ権にかわるものとして、これは保護機関として作られたことは事実であります。ところが今日まで仲裁制度が実施されましてから出された仲裁裁定というものがたくさんあります。その中で基本的に賃上げをやるべきだということで出された案件が三十件あります。この三十件の中で、昨年岸総理完全実施だといって私たちにたんかを切ったのでありますが、私たち完全実施だとは考えておりませんが、いずれにしても、三十回の中でやややったのは昨年の一部実施だけでありましょう。あとほんとうに完全にこの仲裁裁定自体が実施されておらない。それから人事院勧告が出されたのがちょうど十二回ありますが、これもただの一度も完全実施されたことはありません。こういうふうに政府自体が、もちろんこれは公労法とかあるいは人事院勧告の逃げ道はあります。国会において予算的に、資金的に——こういう逃げ道はありますが、仲裁裁定制度あるいは調停制度というものができた趣意、人事院勧告というものの趣意は少くともストライキ権にかわるものでありますから、出されたものはこれを尊重して実施するというのが建前だと思うわけです。ところが逃げ道を作って、そこで国会において予算が承認できないからということにかこつけて実施されておらないのが実情であります。その趣旨をじゅうりんして今日まできたのはこれは明らかに政府であります。ストライキ権のない労働組合がどうしてこれに対して反省を求めるのでありましょうか。結局そこに今いういろいろな戦術が出てきたのであります。ですからこういう点を考えますときに、やはりみずからも歩んできた十年間の労働運動政府自体も考えていただいて、なぜこういう原因があったのかということを検討して、そうしてこれに対する対策を考えなければ——ただ労働組合が不健全だ、いつも年中行事でさわいでいる、こういうことであってはいけないと思うほんとう労使がいい慣行を作るにはあなたがたの方でも率直に過去のことも反省していって、ほんとうの腹を割って話ができるというような気持になってくれなければだめだと思う。そういう意味からいきまして、私はあなたのおっしゃっておるような考えであっては、とても労働組合は黙っておらないと思う。ですからそういう点をほんとうに反省をしてみたことがあるでしょうか。
  21. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 仲裁裁定制度、調停の制度あるいは人事院の勧告というようなものは、一方から公労法で公務員につきましてストライキ権が禁止されておる、それにかわるものとしてできておる、従って政府としてこれを尊重していかなければならないという御趣旨につきましては、私もそう思います。過去におきましても、政府もこれに対して相当な、その趣旨に沿うて措置してきたと思います。しかしながら、あるいは遺憾の点もあったかと思いますが、私は私がこの内閣の責任を負うに至りましてから、そのことをはっきりと国民にもあるいは労働組合の諸君にもあるいは公務員の諸君にも言明をいたし、そうしてこれらの人事院勧告あるいは仲裁裁定については、政府としては十分誠意をもってこれが実現を期するということを誓約もいたしておりますし、またそれを実行いたしてきておるのであります。従いまして過去における何についていろいろなそれは何もあったろうと思いますが、しかし歴代の政府が今お話のようにただ一回だけしかないというようなことにつきましては、私が聞いているのはそういう何じゃなしに、やはり歴代の内閣もその趣旨を、制度の趣旨というものに対してはこれを尊重して参ったと思います。しかし、いろんな批判もありましょうし、不十分な点もありましょうから、私としては昨年来今申しましたような趣旨において、それを十分に公務員の諸君にも徹底するように努力をいたしておるわけでありまして、過去におけるいろんな発達の歴史をお互いに振り返ってお互いに反省すべきところは反省するという鈴木君の考え方は、私は正しい考え方だ、決して過去に私がなずんでどうするという……私の労働行政に対する根本的の考えは、先ほど来申し上げているように、やはり民主的に健全な発達をするということであれば、法律制度というものはお互いがこれを尊重し、これに基いて、それを基正礎として考えるということでなければ成り立たない、こういう考えに立っておるわけであります。
  22. 鈴木強

    鈴木強君 総理は二十五分に何か御用事があるそうでして、この質問は非常に大事であります。私はずっと続けていきたいと思うのでありますが、国際的な所用であるそうですから、一応中途で打ち切らざるを得ないのですが、ただ言っておきたいことは、あなたは確かにそうおっしゃるが、たとえば岸内閣全体としてのここ一年間の労働政策を見ておりますと、なるほど石田労働大臣も言っておるように、できるだけ正しい要求はいれてやろう、そして実現してやろうという、その考え方は私は賛成なんです。ただそれに名をかりて、どうかすると、こうおれの方でやるから、そのかわりこうやらぬといかぬということで、おどかしてくるわけですね。しかし今申し上げたように、長い歴史の中で歴代内閣がやってきた政治というもの、なるほど一部実施、不完全実施はあります。しかしながら、完全に実施されたというためしは、国家公務員の人事院勧告においてもたった一回しかないのです。必らず時期をずらすとか、勧告額の三分の二を実施するとか、こういうことでやっておりまするから信頼ができないというところになってきておるわけですね。ですからそういう点を考えたときに、そういう歴史の中で、いろんなやはり労働者が抵抗をしなければならない。その抵抗がいろんな形になって現われてきている。それをそれじゃ平年か一年間の間に政府の方でこうやるから——これが完全にいくなら別でございますが、まだまだ努力はしつつあっても、完全なところまでいかない段階において、過去のいろんな実績というもの、慣行というものをぶち破って、職場集会もいけない、労働組合を置くこともいけないということで、次から次と慣行を破っていくということが、そういう考え方が私は問題があると思うのです。ですから先般の一般質問における私の質問に対する石田労働大臣のお考え方も、私はほんとうに残念に思いました。たとえば五人以上の代表者には絶対に会わないのが私の信念だとおっしゃる。それから五人以上来るのは、これは集団の威力をかりてやるのであって、これは強訴だと、こういう考え方が私には残念なんです。機会があれば、たとえ七人であっても十人であっても、法と秩序の中でやってくるならお会いになってもいいじゃないですか。それを、そういうふうなことをこの国会の中でもって答弁する、そういうセンスが私たちはどうしても、何かしらうまいことは言ってるんだが、陰で権力、自分の力によって何かしら弾圧していこうという、こういう考え方があるわけです。これはゆゆしい問題だと私は思うわけですね。  そこで、これはまたいずれあなたがお帰りになってから続けますが、一つだけ行く前にお尋ねしておきたいのは、三月二十日の早朝行いました全逓の職場大会一つありますが、この東京中央郵便局の支部でやりました職場大会に対して、警視庁の公安第二課長と東京郵政監察局の部長との話し合いの結果、郵便法第七十九条違反の容疑で取り調べをする、要するに刑事罰にしようということで、二十数名の方が任意出頭の形で召喚されております。私は七十九条違反だという根拠をこの際に明確に総理から承わって、あと石井長官の方からと、石田労働大臣の方から考え方を承わりたいと思いますが、その点だけ先にお答え願いたいと思います。
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私まだその具体的事実について報告を受けておりませんので、何の方から、主管大臣からお答えいたします。
  24. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それじゃまたあとで総理に……。
  25. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 公労法の規定の示すように、公共企業体の従業員は、業務の正当な運営を妨げる行為をなすことは禁ぜられているのであります。またそれをそそのかす行為も禁ぜられております。労働組合運動が刑法あるいは民法上の免責規定を適用されますと、その法規に従って行われる範囲にとどまるのでありまして、その法規を逸脱した場合におきましては、これは免責規定を受けるわけには参りません。ただいま御指摘の事件は、これはそれぞれの立場でおやりになったことでありますから、法律上の規定あるいは当該事項等については郵政大臣からお答え申すのが適当だろうと思いますが、労働法をあずかっているものの見解としてはただいま申し上げた通りであります。
  26. 鈴木強

    鈴木強君 これは労働大臣に答弁を求めるのがちょっと無理だったと思います。むしろ石井警察庁長官が見えておられますのでお尋ねいたしますが、この警視庁の原田という公安第二課長と峯下という東京郵政監察局第一部長との打ち合せのときには、今申し上げましたように全逓の職場大会が郵便法七十九条の違反であると断定をしたのでありますが、その根拠をこの際明確に示していただきたいと思います。
  27. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) お答えいたします。去る二十日に中央郵便局の夜間勤務の約四百名の方が、午前二時半ごろから職場を離脱されまして、たしか本郷方面の宿屋において休憩され、当日朝予定されておりました職場大会の方に参加をされて、おおむね午前十一時ごろに郵便局の方に入った、こういうふうに警視庁の方にきておるのであります。この事案はいろいろ問題が含まれておるのではないかと思うのです。聞くところによりますと、当時管理者側からはあらかじめ警告も発せられておったようであります。今申し上げましたような長時間職場を離脱するということは、御承知の郵便法七十九条におきます郵便業務に従う者がことさらに郵便の取扱いをせず、またはこれを遅滞させた場合には処罰をされるという、この規定に触れる疑いがあるのではないか、こういう見地から警視庁関係当局のもの並びに郵政監察官の方におきまして、この事案の真相を究明する必要があるのではないかということで、関係者の方々に事情をお聞きしておるという段階であるというふうに私は報告に接しております。
  28. 鈴木強

    鈴木強君 職場を離脱した、従って七十九条違反だ、こういうことでありますが、この行動が労働運動であるということは御存じないのですか。
  29. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 労働運動の一環であることはそうであろうと思います。申すまでもなく、労働運動は合法な運動である限りにおいてはこれは当然許されておることでございます。私どもの立場におきましても何らこれに干渉し、介入しようという意図はございません。不幸にして合法のワクを逸脱するということになりますならば、労働運動のゆえをもってすべてこれを容認するというわけにはいかない、かように考えるのでありまして、先ほど申し上げましたように、郵便法七十九条に触れるのではないかという疑いがあるので、この実情を確かめる必要があるということで、関係者に事情をお聞きしておる、こういう段階であります。
  30. 鈴木強

    鈴木強君 第七十九条違反の疑いがあるからということで、少くとも人権を無視するような召喚をして、そうして供述書を書かせているということは、これはもってのほかだと思います。これはあとで伺いますが、田中郵政大臣は、東京郵政監察局の部長がそういう決定をしたのでありますがどういう見解に立って法的にはお考えでございましょうか。
  31. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 鈴木君にちょっと申し上げます。去る二十五日の第三分科会におきましてあなたの御質問に対し、答弁が保留されております。それでこの際田中郵政大臣から答弁いたしたい、かような申し出でありますから……。  それではただいまの答弁から。
  32. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。去る三月二十日の中央郵便局における職場離脱の問題は、今までの、戦後相当な労働運動もありましたが、非常に例が少いのであります。職場離脱というよりも職場放棄ということに該当するように報告を受けております。それは午前三時ごろから職場を放棄しまして、仮眠時間を除いても相当長い間職場が放棄せられたために、四百数十名の夜間勤務員のほとんどすべてが局外に退去したために、局は空っぽになってしまったというような状況でありますので、現在の状況では郵便法第七十九条違反の疑いが非常に濃厚であります。
  33. 鈴木強

    鈴木強君 そういうことでただ単に職場を離れた、郵便法第七十九条違反だ、こういうふうに断定するところに私は問題があろうかと思うのであります。石井長官労働運動の一環であるということは認めておられる。それであるならば、郵便法第七十九条が昭和二十二年の十二月にこれは改正になりました。その節、参議院の当時通信委員長であった深水六郎委員長が、この改正法案の本会議の報告の際に、こういうことを言っておるわけです。七十九条の、「郵便物の業務に従事する者がことさらに」、ここが変ったのであります。従来は正当な事由なくしてとあるのですが、「ことさらに」と変りました。「ことさらに郵便の取扱をせず、又はこれを遅延させたときは、これを一年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。」、こういうふうに変ったのでありますが、この「ことさらに」という言葉に、非常に意味があいまいであるので、この意味について質問をしておる。そのことについては当時の政府委員が、「ことさら」ということは故意にかつ犯意をもってという意味である。当時東京中央郵便局に山ネコ争議といわれた争議がありました当時であります。その直後にこの法律が改正になっておる。それに対してこの法律が適用するのかどうか、こういう質問をしておりますが、その際政府委員は明確に、争議行為であるかどうかということは詳細に検討しなければわからないが、一般争議行為であるならば、これはその郵便物の取扱いをしない場合にも労働組合法の定めるところによって本条は適用しない。こういうふうになっているのです。私はさらに考えてみたのでありますが、この郵便法七十九条が昭和二十二年の十三月六日に改正になって、そのあといわゆる公労法ができ、これは二十三年の十二月二十日でありますから、当然労働運動を律する基本的な法律として公労法が出てきた。その公労法の十七条には明確に争議行為を禁止しております。そしてこの争議行為をやった場合には十八条で馘首する、こういうはっきりした明文があるのでありますが、私は法律は後法優先だと思います。従って当時一般労働法においてストライキ権を行使できる段階における郵便法七十九条の解釈はこういうふうに明確になっております。従ってその後できたこの公労法というものが優先するし、その精神がもしかりに労働組合運動としてやって、労働大臣のおっしゃる通りこれが不当である、不法行為であるということになるならば、十七条、十八条によって処分すべきで、少くとも七十九条の適用によって刑事罰を課し、そして四百何名かの人を任意出頭とはいうものの、半強制的に召喚をして、そして何か供述書をとっているということは、これは明らかに法律違反であるし、そういう見解をとることは私は迷惑千万だと思う。この七十九条が、労働運動の一環であるという石井長官の判断であるならば、なぜ七十九条を適用したのでありますか。そういう解釈であるならば当然この法規は適用除外になって、もし不当行為であるならば、これは第十七条によって処罰すべきである。しかもこの職場大会は全逓の中央指令によって明確に行われているところであって、一部に伝えられているように共産党の人たちが指導したとか——とんでもないことだ。あるいは山ネコ争議ということは絶対にない。明らかにこれは中央の指示、指令によってやっているのですから、もしそれが不当であるなら、それをあふりそそのかしたという十七条の規定によって、その指令を出した人たちを処分すればよいのであって、どうして七十九条を適用したのか。それはおかしいじゃないか。石井長官どうですか。
  34. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 先ほど来お答えいたしております通り七十九条連反の疑いがあるので、その真相を確かめようというのが現在の段階でございます。七十九条違反であると断定をいたしておるのではなくして、そういう疑いがあるので、真相はどうであったかということを目下追及中であります。その真相を究明しました結果どう出るかという結論については、今直ちに申し上げるわけには参りません。
  35. 鈴木強

    鈴木強君 少くとも労働運動の一環であるならば、常識的に考えても、七十九条を適用するということはないのです。そうでしょう。それを先般の羽田空港における宮良君の話ではないのだが、疑いがあるということでもって人権じゅうりんを勝手にやってみたり、少くとも労働運動の一環としてやられている問題を、この法律解釈は明らかに衆参両院における当時の質問に対する政府の答弁から言っても、労働運動には適用しないということがはっきりあるじゃないですか。そうであるならばなぜ七十九条を適用して、疑いがあるとしても、こういう七十九条の適用によって召喚しているのですか。まことに私はもってのほかだと思う。警察当局はどういうふうに法律を解釈しているのか。今の答弁では納得できないのです。これははっきりこの法律でそういう解釈になっている。
  36. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 同じことを繰返してお答えすることになって恐縮でございますが、先ほど来申します通り、七十九条違反の疑いがあるので真相を明らかにして、果して七十九条違反であるかどうかという結論につきまして目下その真相を究明中でございます。今断定的なことを申し上げることはできないのでございます。
  37. 鈴木強

    鈴木強君 今春闘のさなかに労働者が団結をしてそれぞれの要求を獲得するために戦っている。その団結を乱し、そして闘争に水をさすような、そういう誤った弾圧政策というものを、法を守る立場にあり、社会の秩序を保つ立場にある警察庁当局が何のことですか。普通の場合とは違いますよ。少くとも労働運動が今総評を中心として戦われている。そのさなかにその一環としてやられるということを認めておきながらこういう法律違反を犯して取り締るということはもってのほかだと私は思う。しかもその疑いがあるという判断をするからには、あなたの方では相当の調査もしたことだと思う。しからば、この決定をするまでに、中央郵便局で起きた事態に対してどういうあなたは見解を持っておりますか。労働運動の一環としてやられたとするならば、それがどういう経過によってどういう形によってやられどういう結果になったということを御存じだと思います。そのことを一つお聞かせ願いたい。
  38. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 労働運動の一環としてなされる行為は、すべて正当なものであるとは言えないのであります。この行為を具体的に検討して参らなければならぬと思うのでありまして、今回の事案は、先ほども申しました通り、その事実の客観的な様相から見ましても、七十九条違反の疑いがあるというふうに警察側といたしましては認めましたので、果してそうであるか、どうか、この真相を究明する必要があるということから、関係者の方々に目下いろいろ事情を聴取しておる、こういう段階でございまして、決して人権をじゅうりんするような無理な聞き方をするというようなことは決してしておらないのであります。
  39. 鈴木強

    鈴木強君 私の聞いている点に明確にお答えいただきたいと思います。私はかりにほんとうに不当な労働行為であったとしても、その場合もあるかしれません。あるかもしれませんが、そういう場合には、公労法を適用すべきであって、少くとも公労法というのを無視して、労働運動の一環であるということを認めながら、なおかつ七十九条を適用したという、その事由はあなたの言われていることだけじゃないと思うのです。私はそれでは七十九条の疑いがあるというふうに断定をしたのはどういう根拠か、要するに労働運動の一環であるが、その運動がどういうような形でやられて、ここに問題があるから、これは労働運動とは別だ、こう言うなら話は別ですが、労働運動の一環であるならば、疑いがかりにあったとしても、公労法の罰則規定でいくのであって、七十九条を適用するのはおかしいじゃないですか、そういうことを私は石井さんにお伺いしておるのです。もし正当な、あなたが言うように、労働運動でないというなら、それでもいいのです。ないならばないで公労法十七条、十八条というのがあるのですから、それによってやったらいいじゃないですか、七十九条を適用するということそれ自体がすでにおかしい、私はそういうことをお聞きしておるのです。
  40. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 二十日の事案につきまして、郵便物も相当に処理が停滞をしたという客観的の事実があるので、そういうことからいきまして、七十九条違反の疑いがあるのではないかということで、真相をさらに明らかにする必要がある、その結果果て七十九条違反であるかどうかという決定的な結論に到達するわけでございまして、現在はいろいろその問の事槽を関係者から聴取しておる段階でざいますから、断定的なことは申し上げられないのであります。(「関連々々」と呼ぶ者あり)
  41. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 鈴木君に発言を許しました。どうぞ後ほど……。(「関連々々」と呼ぶ者あり)この次に許します。
  42. 鈴木強

    鈴木強君 関連質問を許さぬと委員長はきめたのですか、あなたの権限ですか。
  43. 泉山三六

    委員長泉山三六君) あなたに指名いたしました。(亀田得治君「関連しておるのに、中に質問が入ったのではちょっとおかしいですから、同じ許すなら早く許して下さい」と述ぶ)せっかく指名したから……。
  44. 鈴木強

    鈴木強君 委員長は関連質問をお許しにならないのですが、時間的には確かに急いでおるかもしれません、審議はきょう一日ですから……。しかしながら一つや二つの関連質問を許さぬということは、これは民主主義じゃないですよ。その点は委員長の権限ではあるかもしれませんが、うまくやって下さい。
  45. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 鈴木君に申し上げます。委員長は関連質問を許さぬと、かようなことを申しておるのではありません、あなたに指名いたしました。
  46. 鈴木強

    鈴木強君 それでは、私は何回も同じことを質問しておるのですが、同じことを答えておって一つも私の質問に対してまともな答弁をしてくれない。ですから、少くともこういうむずかしい問題ですから、石井長官、あなたはその七十九条を適用するに際して、まあ公労法も一年あとに出ておりますし、後法優先ということもあるでしょう、そういう点で非常にむずかしい問題である、こうお考えにならなかったですか。そうしてせめてこれは法制局にちょっと聞いてみようという気持は起きなかったですか。あなたの方できめたなら、疑いがあるとしてもどうもそれは労働運動であるなら適用しないという立法の精神がはっきりしておるのに、それを承知していながら七十九条を適用したということはおかしいでしょう。あなたが労働運動はこれに適用してもよろしいのだという解釈であるならば別ですけれども、そういうことでないということがはっきりしておるわけですから、そのことを知っておりながら、労働運動の一環であるということを認めておいてこれを適用したわけですから、そこのところがどうしても明確にならぬ。そこをぜひ一つはっきりしてもらいたい。
  47. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 御承知のように、現在の警察制度の建前からいたしまして、この事件は警視庁で扱っておるのでございます。私が直接タッチしておる問題ではないのであります。警視庁は聞くところによりますと、東京地検とも十分打ち合せをして、問題の処理に当っておるというふうに聞いております。法律的な見解等につきましては、検察庁当局とも十分打ち合せしておるというふうに聞いております。
  48. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は先ほどから石井長官の郵便法七十九条に関する解釈、若干聞いていたわけですが、あのような自信のない答弁であれば、現状においては郵便法七十九条に基くを前提とした捜査ですね、こういうことは当然一般の捜査の原則からして打ち切るべきだということをお聞きしたいのです。現在一方では問題になっておるこの労働問題があるわけですね。そういうさなかに、あまり自信のないような根拠で、そうして調べを始める。これははなはだ不適当だと思うのです。だからその点に対する見解一つ聞きたい。果してそういう自信のないようなことで、問題の起きている渦中で調べをやつておるかどうか、一般的に……。一般的にはそういうことはありませんよ。どういう問題についてもそういう法の運用をやっておるか、ないです、そんなことは。だからそういう態度を改めるべきではないか、その点が一つ聞きたい点。  それからもう一つは、七十九条は、これはやはり公労法以前にできた問題であり、制定の経過から見ても、ことさらに個別的にこの郵便物の取扱いを拒絶する、やはりそういうふうにこれは読まなければいけないと思う。七十九条の第二項には、重大な過失の場合を規定しております。これだってやはりすなおに読めば、そういうふうに解釈ができる。だれか郵便物を持って、きた、どうもこれは石田労働大臣のものだと、これは気に食わぬやつだから、ちょっとこっちへやっておけといったような、やっぱり個別的な意味が強い、ことさらに……。(笑声)まあちょうど前におられたから、たまたま出たわけですが、そういう意味で、何か郵便物がたまったからそれを調べる。そんなばかなことはない。そんなことを言ったら、たとえば何か鉄道の事故があった、風が吹いた、そのために郵便物がたまる。ストライキの影響を受けているのですから、たまるのはこれは当りまえなのです、言うてみれば。問題の重点は、このストライキと言っていいかどうかわかりませんが、ともかくそういう一つの社会的な現象のあおりなんです、これは。あおりなんですよ。ことさらに、という文意とは明らかにこれは矛盾しているんです、この現象は。だから私は疑いがあるかないかという立場から考えるのであれば、これは疑いがない方がこれは強いのです。先ほどの御答弁でも大体これは行きがかり上ああいうふうな答弁をされているように思うのですが、疑いのない方が強いのです。だからそういう意味で、私はこれは当然捜査などは打ち切るべきだというふうに考えるのです。それでもなおかつ若干でも疑いがあるのであれば、そんなり程度のものは、これはもう問題が片ずいた後にゆっくり一つおやりになって差しつかえないものだと思う。それが石井長官が平素いろんな事件を取り扱っておるときの私は態度であると思う。法律の運用はあくまでも問題によって二、三にしてもらっちゃ困る。いやどんな場合でもそんなふうにやっていると言うんなら、私はまたその点についてお聞きしたいのですが、石井長官の平素の良識からいうならば、当然私はこれは打ち切るべきものであるというふうに考える。この点どうでしょう、私の七十九条に対する見解、それが正しいかどうか、それに対するお答えと、同時にその点の見解は多少お互いに一致しなくとも、この段階ではそういう捜査は打ち切っておくべきものだ、この二つの点についてはっきりお答えを願いたい。
  49. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 法の運用をときによって二、三にするということはしてはならないという点は、お説の通りでございまして、絶えず正しく法を運用していかなきゃならぬことは申すまでもないところでございます。七十九条の解釈をめぐってのいろいろお尋ねでございますが、私、法律は必ずしも得意でないのでございまして、十分御満足のいくようなお答えのできないことをはなはだ遺憾といたしますが、この件につきましては、先ほどもお答えしました通り、警視庁、東京地検とも、さらにまた郵政当局とも十分話し合いをして問題の処理に当っておるようでありまして、従いまして、先ほど来たびたび申し上げます通り、七十九条の違反の疑いがあるということで、ますその真実を究明する必要があるということで、目下その実情を確かめておる段階である、かように聞いておるのでありまして、今後その真相の究明の結果がどうなるということは、今直ちにお答えをするわけには参らないのでございます。もし法の解釈を著しく誤まっているというようなことでありますならば、それは仰せまでもなく、あやまちは改むるにはばかることなく善処しなければならぬと考えておりますが、今まで私の聞いておる範囲におきましては、七十九条違反の疑いがあるということで、ます真実を究明する必要があるということで進めておる、こういうふうに聞いておるのであります。
  50. 亀田得治

    ○亀田得治君 も一回。私の聞いておるところによれば、と……はなはだこれは頼りない態度である。こういう重大なことが、人から聞いたのであろうがなかろうが、ともかくはっきりと自信の持てるものでなきゃ私はいかぬと思うのです。しかし問題はともかくそういう頼りない状態で始められたようでありますから、私はそういう解釈を出しておる根本のところを、その責任者に来てもらいたいと思う。従って検察庁でありますから法務大臣一つ午後出てもらって、この点についての見解をもっと明らかにしてほしい。その際は私も若干もう少し具体的にお聞きをしてみたいと思います。委員長にお願いをしておきます。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  51. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまの亀田君の御要望は、委員長におきまして適当に処理いたします。(「委員長、関連」と呼ぶ者あり)ちょっと余り関連が長過ぎますから……。鈴木君……。(「委員長、今の答弁がなくてできるのですか」と呼ぶ者あり)後ほどまた法務大臣になるべく出ていただきますから、その節にお願いいたします。
  52. 鈴木強

    鈴木強君 それでは長官に対するのは、これは私非常に納得できませんので、私の考え方はもう七十九条を適用したことはあやまちである、労働運動の一環だということを認めておきながら、七十九条の適用は誤まりだ、法律違反だ、だから捜査は即刻やめるべきだ、こういうのが私の考え方である。この点を明確に申し上げておきます。  それから郵政大臣に伺いたいのは、少くとも郵政監察局というものがございまして、部内で起きたいろいろな問題については、まずここがいろいろな調査をし、その上に立って検察当局にお願いする場合はお願いするのが建前であります。ところがこの問題については、何かしら意識的に警視庁と連絡をとつて、そうして無理な法律解釈して、七十九条違反だということで捜査をやっている、こう私は思うのです。あなたはどういう見解に立ってやられたのか。それからもう一つは、この行動が労働組合運動石井さんは一環だと認めておられるのだが、あなたはどうお考えになりますか。
  53. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。御承知通り、郵政監察官制度は業務犯罪を主にして作られておるものでありまして、労働運動に対してはできるだけ介入しないという方針をとって過去は参ったことは御承知通りであります。なお不法行為、違法行為に対しても、できるだけ部内のものは監察官がこれを行なって、刑事訴追の必要がある場合は関係官庁と打ち合せてやるという線を堅持して参っておるわけであります。でありますから、この問題に対しても郵政監察局及び警視庁との連絡をとりながら、行政処分をやる場合、及び刑事訴追を招くようなおそれのあるような場合ということが想定されますので、いろいろの面に対して協力もし、かつ連絡を緊密にしておるということでございます。  もう一つ、先ほど郵便法第七十九条の適用は違法であるということでございましたが、これは郵政監察官と警視庁との連絡によって話し合いを進めておりますから、私の方にもこの取扱いに対する明確な根拠がなければいけないわけでありますから、その意味で申し上げますと、郵便法七十九条の適用が不法であるとは考えておりません。もちろん一般的通念として、労働運動に対する不当干渉にならないように、できるだけ労働関係法規で処理することが望ましいことでありますが、少くとも不法行為、違法行為があった場合他の法律を適用せられるという場合は免責規定はないのであります。特に今の問題につきましては、郵便法七十九条は二十二年でありますし、それから労働関係法規は二十三年でありますから、一年間のズレがあるわけであります。でありますから、郵便法七十九条を当時発動しなかったのは、組合員にストライキ権が認められておったためでございますが、今度二十三年公労法ができましてから、組合員のストライキ権は認めなくなったわけであります。でありますから、不法行為、違法行為があった場合行政処分で足りる者は別でありますが、行政処分以外に他の法律で違法行為を指摘せられるというような場合、官公庁の職員に対しては免責の適用がないわけであります。でありますから、公労法による処分も考えられると同時に、郵便法が七十九条の違反が当無そういう事実があると認定をせられる場合は、捜査を進めることはこれは法律上当然であります。でありますから、これは例をあげて申し上げますとよくわかるのです。同じような法律——鉄道営業法の場合、労働組合運動の一環として乗務拒否を行なったり、そのために駅と駅との中間において乗務員が下車をしたというような場合は、別な法律をもって処罰を受けることは当然でありまして、現在の郵便法七十九条の適用が違法であり、今捜査をやめなければならぬという段階では全然ないわけであります。特にこの事情は私が先ほど申した通り非常に例のないことでありまして、三時から職場離脱を行なったのでありますが、離脱というよりも全くの放棄である。仮眠時間を除いて、おそい人は午前十一時にようやく職場に復帰をしたというのでありますから、その問四百数十名おらなければならない最小限の人たちのうち、四百名が職場を放棄したということでありますので、そういう現実を考えまして、特に指令に基いてやったのではないということをいわれましたが、もうすでに旅館も予約され、車も準備されており、しかも十五人や二十人の要請によって四百人の諸君が拉致されるということはないので、相当自発的に職場を放棄したという疑いも濃いのであります。そういう意味で労働関係法規の適用があることはもちろん、郵便法第七十九条の違反事実がある疑いがあれば、捜査を進めるという段階でございます。
  54. 鈴木強

    鈴木強君 あなたの解釈はやはり石井さんよりやや具体的には答えられておりますけれども、やはり公労法と郵便法七十九条の解釈は私と違う。ただそれは解釈の相違ですから一応置くとして、あなたが拉致されたという言葉を使ったのですがしかも指令に基いたものでないということは私は言ってないのです。組合運動であり、指令に基、いてやった行為である。しかも非常に、この起きた現象に対して、今あなたが触れましたから、明確にこれは誤解があってはいけませんから、私は申し上げておきますが、少くとも職場大会を指令したのは本部であるし、その指令に基いて行動するいろんな具体的問題について、たとえば現場でいろいろな問題が起きて参ります。そういうときにはどういう措置をするのか、その責任はだれがとるのか、こういうところまで明確にしてやった行動であります。ところがたまたま中央郵便局では、管理者側が挑戦をしてきた、その事実がある。それはまず第一番に、二十日の午前一時十五分ごろに、中央郵便局長から組合の書記長に対して、一時半までに、すでに今まで合法的に貸しておった組合事務室を返してよこせ、組合事務室は認めない。こういうのが第一点。それから勤務者以外のものは全部三時までに退去しなさい。こういう二つの局長から命令が出た。そこで組合の方でも今まで貸しておった組合事務室を返せというようなことは、これはけしからぬじゃないか。だから団体交渉をしましょうじゃありませんか、ところが向うは団体交渉を拒否した。そこで団体交渉がおきらいなら話し合いでもけっこうですから話し合いをしましょう。そういうことで話し合いをしようという申し入れをしたにもかかわらず、それも拒否して、とにかく命令通りやらなければ実力を行使するぞ、こういう威嚇をしてきたのは事実であります。そういう事態に立って、指令に基き現地の責任者が行動したわけです。だから拉致されたのでもないし何でもない。問題は公労法上の問題として問題にされるなら、私たちは別でありますが、そういう経過の中でやってきている。しかもあらかじめ旅館を準備していたと言いますが、これは別に離脱をするためにとっておいたのじゃないのです。しかし、あなたたちは六時半に警察官を動員しておいて、六時半になったから、もう入れない、こういうことを私は聞いておる。これはあなた方が今度の闘争に対して当初からとっておる戦術なんです。ときには各郵政局に陳情するのに、こっちから三百名行くのに、警官の方が五百名も先に来ておる。こういうことは、今度の闘争で郵政大臣のずっととってきた方針なんです。六時半には警察官を相当動員するという情報が入ってきた。そういうことであれば、早く組合員が行って職場大会に参加しなければならないというので、二十日の朝に当日参加する組合員を二ヵ所に分けておいた。ですから職場離脱を予定してやったのではない。二十日の職場大会に参加する人たちも朝早いからそこへ泊めておいた。こういうことでありまして、旅館を十日前に予約しておったということは全くのデマでありますから、誤解のないようにしてもらいたい。しかもバスを用意したなどということはとんでもない話で、それぞれタクシーや何かで行ってるわけです。そういうことを所管大臣が言うということはもってのほかであって、これは間違った報告をどこから聞いたか知らぬが、反省を求めておきたいと思いますが、いずれにしてもこういう事態が起る大きなきっかけを作ったのは、明らかに労働運動に対する不当干渉であった。組合事務室を返せ、全員組合員以外のものは、勤務員以外のものは出ていけ、こういうことを言って挑戦をかけたのは、明らかに省の側にあるのです。管理者側にあるのです。ですから明らかにこれは労働運動の一環としてやられたのであって、もしそれならばこれは公労法の十七条、十八条によって処罰すればいいじゃないか。それをなぜ七十九条にかけて、一人々々の組合員を、指令に基いてやったその組合員まで七十九条によって任意出頭を求めているということは、明らかに違法じゃないですか。そういう経過がありますから、もう少し私は冷静にものを考えて、こういう重大な問題は所管大臣がやってもらわなければ困ると思うのです。向うが、検察庁が強引にやるならいざ知らず、合意の上に、七十九条の違反の疑いがあるということを認めてかかっておる。これも郵政大臣としてうかつな行為じゃなかったかと思う。軽率な行為じゃなかったかというふうに私は思うのです。ですからあなたの言われたことは間違っておりますから、その点ははっきに訂正しておいて下さい。
  55. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。こういう問題は重要な問題でありますから、軽率であってはならない。慎重でなければならないという原則は私も同感であります。でありますから、慎重の上にも慎重を重ねておるわけであります。特に私は当面の責任者であります。しかし私と組合は全く利害相対立しておるというような考えを持っておるのではございませんから、私もその職場の責任者として非常に深刻にものを考えております。でありますから、今度の問題は管理者が挑発したので自動的に起きたというふうに鈴木さん言われましたけれども、そこはよく調べてみなければわからないことだと思います。これは第三者が見るとそういうふうには考えられないのです。とにかく中闘は八時半から十時半までの二時間の職場大会はしましたが、山ネコ争議を指令しておりません。だからあれは中央郵便局だけに起った特殊な現状であります。しかも一時半に第三者を含めた人たちが局内に侵入をしましたので、このままにしておくと、職場を不法占拠される。場合によっては居宅侵入という不祥事件が起きてはならないので、退去を勧告したわけであります。でありますが、なかなか退去もしないので、できるだけ早く退去をしてもらうようにということを管理者が勧告しただけでありまして、それにちょうど乗っかったような格好で、じゃ退去する。場所も貸せないなら、おじやまでしょうから出ていきましょうということですが、組合の指令は御承知通り八時半から十時半までで、それを職場放棄しておるのは、午前三時ごろから五時間も六時間も前から全部出ておるのです。中央郵便局を空つぽにしてしまったのです。そういう点で相当な問題があることは認めなければなりません。もう一つは公労法だけで処分すればいいじゃないか。もちろん私は公労法の適用があるものと認めておりますから、私たち郵政部内のものとして公労法の適用で処分を考えなければならぬ。またしかし処分の対象になるかならぬかは十分個々のケースによって、個人心々によって調べなければ、そう簡単にきめられるべきものじゃないと思います。思いますが、公労法の適用を受けたからといって、その他の法令の適用を受けられないとは限らないのであります。でありますから、現在はいずれにしても郵政部内において公労法の適用ということを慎重に今考え、郵政監察官をして捜査を進めておりますが、警視庁その他が、郵便法七十九条の違反があり、しかもその容疑が濃いということで捜査を初められ、私たちに協力を求められれば、私たちもそれは拒むというようなことは全然考えないのであります。
  56. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 伺っておりますと、郵政大臣は、郵便法第七十九条を適用することに不法があったわけではない、合法的に適用されておるということで、あたかも郵便法七十九条の適用を郵政大臣として認められておるかのごとくでありますが、果してそうでございましょうか、伺いたい。  それから七十九条を読んで見ますと、先ほど亀田委員が引用いたしましたように、「ことさらに郵便の取扱をせず、又はこれを遅延させたときは」云々ということの明らかに濃い違反であります。しかも「一年以下の懲役又は二万円以下の罰金」ということで、刑事罰でございますから、刑法の一般原則が適用されて、郵便物の取扱いをしない、あるいは遅延をさせるという故意がはっきりしなければ、第七十九条の適用は私はないものだと思う。石井警察庁長官は、警視庁が七十九条違反の疑いがあるとして捜査をしている、こういうことでありましたが、具体的なことは鈴木委員が出てこられて質問をするとしても、七十九条を適用しようとすることについて、あるいは該当するかどうかについて捜査をしていくことを認められる以上、警察当局として、この取扱いをせず、あるいは遅延させるについて故意があったということを証明せられなければ、七十九条違反の疑いがある云々ということで捜査を認めるわけには参らぬと思うのです。郵政大臣、それから石井警察庁長官は、結果として郵便物が遅延したのではなくて、郵便物を遅延させる故意があったということがはっきり論証できますか、伺っておきます。
  57. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。現在捜査段階でございますから、明確なことは申し上げられませんが、いずれにいたしましても、警視庁と私の部内にある郵政監察官との打ち合せの結果、なお現在まで郵政監察官から私に報告があったことを根拠として判断をしますと、郵政省としても、郵便法七十九条の違反の容疑が濃厚である、こういう報告であります。それから故意犯罪かどうかという問題に対しては、その七十九条が故意に郵便物を配達せざる罪でありますから、偶発的な事情によって配達をしなかった場合は、もちろんその対象にならないわけでありますが、鈴木さんは先ほどいろいろなことを言われましたが、実際バスもちゃんと東京駅前に用意してありましたし、それからなお、旅館まで全部用意せられてあって、八時半からの職場大会に対して、午前二時から職場を放棄するというようないろいろな事実を考えますと、どうしても郵政監察当局の私に対する報告の段階においても、故意に郵便物遅配の状況を作ったというふうに認定せられるような状況でございます。
  58. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 御指摘の通り、故意があったのではないかという疑いがあるので、その真実を確かめるために、事実を確かめる、そういうことでございます。
  59. 鈴木強

    鈴木強君 郵政大臣は非常に慎重に労働運動に対してはやられてきたことも私は認めるのですが、それにしても、ほんとうに今度のこの事件については、事警察ですよ。あなたはおっしゃるのだが、監察制度というものがあるのですから、そこで十分に実情を調査をして、そうしてその上でおやりになるならまだいざしらず、少くともこれは二十五日の朝に、すでに警視庁の方と連絡をとって、そうして七十九条違反の疑いがあるという断定をしてかかられたわけですが、こういう点は非常に問題があるのであって、あなたはどうですか、慎重居士でもあるのだから、警視庁の方と話し合いをして、そうして郵政監察局の方で、いずれにしてもこれは労働運動の一環であるということは間違いないのです。そうであるならば、その上に立って、郵政当局が責任をもって調査をする。その上に立ってもし問題があるならば、警察庁の方にも協力を得なければならぬと思いますが、そういうふうに話を進めて、今の警視庁でやっている取調べはやめてもらって、必要があるならば、あなたの方で監察官が調べる、こういうことにできませんか。おやりになったらいいと私は思う
  60. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えをいたします。先ほど申し上げましたように、非常に慎重に構えておりまするし、将来とも慎重にやろうということは変りはございません。この問題に対しては、七十九条適用という問題は、初めてのケースでございますし、郵政監察局といたしましても、それに対しての取扱いについては慎重なのであります。しかしこれは、郵政監察局は警視庁に相談して頼み込んだというのではなく、警察は警察当局独自の立場で、この問題についての捜査を開始しているようであります。今までこれらの問題に対しては、警視庁とも緊密な連絡をとって、おおむね事件になるような問題に対しては、事情は監察局で調べたり、また警察で調べて、それを突き合せて事件の処理に当っておるという、非常に慎重な態度をとっておりますが、今度の場合は、今まであったような、非常に明確に労働運動としてわれわれが予期をし、また指令に基いてというようなものではなく、相当激しいものでありますし、ケースがありません。ありませんので、われわれ自身も慎重にやっておるとともに、警視庁は警察庁とも連絡をとって、独自な見解捜査を進められるということになりますと、われわれも話し合いをしながら協力をせざるを得ないという状態でございます。
  61. 鈴木強

    鈴木強君 食い違いがあるのは、あなたは指令でないと、こう言っておる。われわれはさっきの経過からして、少くとも指令その他の関連する連絡、通達によりまして、事態の起きた場合の措置というのは、その責任者にまかされておる、しかもその事態というのが、こちらから起したのではなくして、むしろ局部側の方から挑発をしてきた、けんかを売ってきた、こういう中で起きた事態でありますから、その辺の食い違いがはっきりあります。いずれこれは、ここでやってもこれ以上あなたは答えられないと思いますし、いずれまた法務大臣の都合もありますので、午後に譲っておきましょう。  次は、それじゃ労働大臣にお尋ねいたしますが、今度の春闘は御承知通り経済的な要求を掲げて戦っております。で、民間単産も公労協関係組合も、国家公務員も、まず二千円か二千五百円くらいの賃上げ要求しております。それから最低賃金制の問題にしても、あるいは教員の勤務評定反対の問題にいたしましても、ILOの批准の問題にしても、あるいは臨時者が非常に多くなっている。これを本工にしてもらいたい、あるいは本丁にしてもらいたい、こういうまことにもっともな要求を掲げておると思うのです。  そこで二千五百円の賃上げについては、民間はそれぞれ今やっておりますが、特にきょう私がお聞きしたいのは、労公委において、昨晩から今朝にかけてやりました公労委の調停事案の審議の問題でありますが、これは不幸にしてけさほど調停不能になりまして、あなたは六時ごろに緊急仲裁の手続をとったようでありますが、しかしここでお聞きしたいのは、組合員の方からみると、どうも従来から仲裁なり調停なりを審議する過程で、もちろん組合の方でも、組合を代表する委員の方に一つがんばってもらいたいということはあるでしょう。しかしまた、これに輪をかけて、公益委員あるいは経営者側の委員に対して、資本家の方面あるいは政府の方面からいろんな働きかけがある、こういうことでその働きかけが非常に度を越すものですから、調停なり仲裁が出た場合に、何かしら割り切れない気持を組合員が持ってきておる、そういう不満がずっと蓄積してきていると思うのです。私は、きのうからけさにかけての調停の審議に、実は徹夜でずっと夕べからけさまでやったのですが、聞いておると、これは情報ですから、もし間違っておれば訂正していただきたいと思いますが、たとえば最初にこの調停の申請をしたときに、組合側が行ったら、公益側の委員が、ああ、ゼロ調停を持ってきたのかと、こういうような言葉を不用意にも発している、その言葉自体が、かりに冗談に言ったとしても、非常に厳正中立、ストライキ権にかわるべき公益側の委員が不用意に発したということは、これは非常に問題だと思うのです。そういうことがあるわけです。それから、たとえば夕べでも、賃上げは絶対にやらないのだ、もう今は、上は総理大臣から、下は一労働者に至るまで、日本の国民や労働者の生活は安定してきているのだ、ベースも相当よくなっているのだ、だから賃上げをする必要はない、もし面子があるならば、十円くらいの賃上げをしたらよかろう、こういうようなことも言っておると私どもは聞いておる。こういうことも、非常に重大な影響を組合側に与える。しかも、田中郵政大臣もおられますが、調停が一方進んでおる過程において、私、朝日新聞の記事を見たのでありますから、これは間違いないと思うのでありますが、全逓労組との話し合いですか、折衝の中で、二百五十円ぐらい一つというような話が、ここに——まあ新聞に出たままを読んでみますと、二十六日未明の全逓労組田中郵政大臣との折衝で、同相が、二百五十円程度に考慮したいということを言明されたといわれると、こういうように書いてあるわけです。こういうことは、私は、少くとも、調停委員会は神聖であり、その良識によって厳正な調停をするのが任務でありますから、その調停の作業が進んでおる過程において、特に大臣であり、しかも主管大臣になっている方が、こういうことを言われるということは、私は、非常に問題があると思うのです。ですから、何か政府は、もう二百五十円なら二百五十円以上げちゃいかんぞということで、経営者側の委員の方は百円でやれとか十円でやれとか、こういうようなことを言っておるのじゃないかという憶測を裏づけることになってしまう。これで、果して調停委員会が公正な作業を進めたと判断できますか。こういうところに、非常に、この調停委員会、公労委に対する組合員の不満があると思う。ですから、筋を立てた要求に対して、これこれこうだということであれば別だと思いますが、そうでないことがあるように私は思うそれで、組合員が職場大会を開けば、これに対しては警察官を動員して弾圧するという、こういうことであっては私は困ると思う。この点、労働大臣としてはどういうようにお考えでありましょうか。
  62. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 公共企業体等労働委員会の調停及び仲裁について、いろいろ利害関係者が、これに外部から圧力を加える行為というものは、私は、絶対に避けなければならぬことだと思っております。政府あるいは公社側が特殊な工作をするなどということは、避けなければならぬことだと思っておりまするし、私は、常々、この委員会の公正さを保っために、厳正な態度をとって参っておるつもりでもありますし、私自身も、たといほかの用事でも、公益委員に会うようなことは、調停、仲裁の過程においてはしておりません。求められて説明をしなければならないときはもちろんでありますが、それと同時に、調停が進行中にこれに圧力をかける——他の方法の圧力も、やはりこれは好ましくない。調停が進行しておりましたならば、その調停の結果を静かに待つというのが公労法の精神だと私は思っております。従って、そういうわけでございますから、私は、その委員会に出たわけでもないし、話を聞いたわけでもございませんから、ただいままでの御指摘のような、委員の人たちの個々の発言については、私は何とも申し上げられません。聞いてもおりませんし……。しかし、政府としましては、やはり公労法の精神を尊重いたしまして、あくまでその決定に——仲裁裁定がおりましたならば、その決定に忠実に従うという方針は変えていないのであります。残念ながら、調停は不能に陥りました。できれば、調停案が出ましてそれを双方が、円満に早期に受諾する形が望ましいと思っておったのでありまするが、それができなかったのは非常に残念であります。しかし、仲裁裁定を私の方から申請いたしておりまして、その仲裁裁定は、政府としては完全に実施するつもりであります。その内容等について、先ほどから申しております通り、注文等をつけた事実は全くございません。  郵政大臣の御発言については、郵政大臣からお答えがあると思います。私は関知いたしておりません。
  63. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 議事進行。総理はどうしたのですか。総理は三十分という約束でした。十二時五分過ぎには来ると言っていたでしょう。今の問題は総理にも関連する問題です。
  64. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 承知しました。さっそく督促いたします。
  65. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。労使双方の意見が合わないので、第三者の公正な裁定にまかすということにきめた以上は、お互いとも圧力をかけたり不謹慎な言動をなすべきでないことは当然であります。まさに心静かに待たなければならぬということに考えております。私も今まで裁定が出たら、腹づもりとしてはできるだけ努力をし迅速にこれをのもうという考えを持っておりましたが、金額等に対して、全逓の諸君と話し合ったことはございません。けさも、私が二百五十円か三百円案を出すというような腹を見せたというようなことを聞きましたが、組合に対しても、一体、いつどこで聞いたのだということを申し入れましたら、そういう事実は全然ない。ただ、組合側から、私にどうしても三百円以内では折り合えないから、何とか三百円が出た場合にのんでもらいたいという申し出がありましたので、出れば、三百円が五百円だろうが、私は誠意をもってこれを実施するということを明確に言っておるんだからということが、誤まり伝えられたということを組合自体が私に釈明をいたしておりますから、ただいまお説にあったように、公労委の皆さんに迷惑をかけたような、事前に幾ら出す用意があるなどというようなことは全然発言しておらないということを明確に申し上げておきます。
  66. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 議事進行。岸総理ももうしばらくしたらおいでになるでしょうし、法務大臣にも出席を求められておりますし、若干時間が残っているようですが、午後やるような議事進行をしていただくといいと思うのですが……。
  67. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 中田君に申し上げますが、総理総理公邸ですからすぐ参ります。
  68. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 十二時に来ると言っているんだ、それを便々として……。
  69. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 時間はあとほんの七、八分ですから、まあぜひ一つ
  70. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、だめだだめだ。それでさっき許したのだから。ほんとうはだめだと言ったのだけれども、時間を厳守しますからというので許したのだから……。
  71. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 委員長から弁明をいたします。鈴木君の質疑は、ただいまの中央郵便局の問題でだいぶ時間が経過いたしておりましたので、その間は向うから連絡ありまして、ちょうどいい時間を私の方から申し上げる、かような打ち合せになっておりました。これは委員長の責任であります。どうぞ御協力をお願いします。  それじゃさっきの、田中さんのいかがですか。
  72. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 答弁だけしてもらいましょう。
  73. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先日、第三分科会において鈴木さんから御質問がございまして、きょうお答えをするという約束でございましたので、台湾、ベトナムの調査設計に対しまして、調査の結果を申し上げます。  電々公社が、台湾、ベトナムの無線設備の調査設計を行いました経緯につきまして御説明申し上げます。本件は、三十二年六月十九日、在日米軍調達局において協議入札が行われ、公社が落札したものでありまして、その内容は、台湾につきましては、台北—高雄間約四百キロに極超短波による電話回線を、ベトナムにつきましては、サイゴン—クワントリ間約九百五十キロに極超短波による電話回線をそれぞれ開設するために現地調査を行い、回線設計等施工に必要な一切の事項を百八十日以内に調査するものであります。公社は、台湾につきましては約九百四十八万円、ベトナムにつきましては約千五百四十万円をもって落札をし、台湾につきましては八月十一日から十一月二十二日、ベトナムに対しましては八月三十日から十二月二十一日まで調査を行いまして、それぞれ三十二年十二月四日、及び三十三年二月四日をもって調査報告書を提出いたしております。  本件の入札参加につきましては、事前に電々公社より郵政省に連絡がありまして、郵政省といたしましては、東南アジアに対するわが国通信技術進出上きわめて有意義なものと考え、また公社法上も、かかる調査を公社が受諾することを特に制限するものでないと認めましたので、了解を与えた次第であります。  なお、公社が外国において受諾作業を行う場合には、今後慎重に検討を加えて参りたいという考えでございます。  なお、協議入札に参加をしました業者は、電々公社を含めて十数社でございます。
  74. 鈴木強

    鈴木強君 私はもうこれ以上質問するつもりはないんですが、非常に大事な問題ですから、ちょっと政府に反省を求めておきたいんですが、これは南ベトナムの独立国に米軍が通信施設をするために、在日米軍の調達部から電々公社に対して直接計画書を作ってくれないか、こういう要請があって、それに応じたという経緯でありますが、私は現行の電々公社法からいきましても、これはできないという解釈なんです、電々公社法は外国の電気通信建設をやるということは一つも規定してないですから。行政協定第三条に基いて在日米軍に対しては電々公社はサービス契約を結んでおるのであります。その契約に基いて日本の領土におる米軍に対しては、通信を提供する義務があるわけです。ですからそういう点からいきましても、私は事ベトナムの独立国に米軍が引くということに対しては問題があるでしょうが、そういうことは別として、それがお引きになるなら、ベトナムの国から、外務省を通じて正規のルートで話があって、それを郵政省で検討した結果、電々公社に対してOKを出すか出さないかを決定するならば話は別です。そういうルートによらざる限りやれないということです。私はそういう解釈をしているのです。しかもこれに対する監督の立場にある郵政省の取扱い方については、非常に軽率の点があったと思うのです。ですからどうかこれらの問題については、さらに今後本件について、要するに公社が向うへ直接行って建設するということもあり得ると思うのです。そういう場合には非常に問題が波及してきますから、慎重の上にも慎重な態度をとっていただくようにお願いしておきます。もちろん私は東南アジアに対して通信技術を提供し、また日本のすぐれた通信機器を輸出するということに対しては、これは私は正規のルートを経てくるならば喜んで日本はこたえるべきであろうと、こういうことは思っておりますが、法的に非常にこれは問題があると思いますのでどうぞ一つ慎重に善処していただくようにお願いしておきます。
  75. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 労働大臣に対する御質疑はいかがですか。
  76. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行があったでしょう。
  77. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 議事進行通り真剣に努力中で、ただいま途中であります。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  78. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 速記をつけて。  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十九分休憩    —————・—————    午後二時一分開会
  79. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を続行いたします。  鈴木君にちょっと申し上げます。あなたの御質疑に対しまして、亀田君から関連の御質疑がございました。先に亀田君に許可してよろしゅうございますか——亀田君。
  80. 亀田得治

    ○亀田得治君 午前中、郵便法七十九条と公労法の十七条、関連して、労働組合法第一条等の関連について、警察庁長官からの答弁がありましたが、はなはだあいまいな点があります。せんだっての、二十日の中央郵便局における事態についてのこの法の適用上の解釈の問題でありまするが、法務大臣も問題点はお聞きになっておるだろうと思いますが、時間を省略する意味で、私からあらためて申し上げませんが、警察当局に対しては、検察当局の意見も取り入れてそうして動いておる、こういうことでありましたので、一つ法務大臣の方からどういう解釈をとっておるのか、ここでお答えを願いたいと思います。
  81. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 午前中の御質疑の点につきましては、私、間接ながら承わりましたのですが、そのお考えによりますと、過般の郵政職員の行為を郵便法七十九条で処罰できるかどうかというお尋ねであったように思いますが、私は過般の郵政職員の行為は、まさしくこの郵便法七十九条一項に該当すると考えております。  なお、御質疑の趣きをだんだん承わってみますと、争議行為であるからして犯罪の成立を阻却するのではないかというお尋ねもあったように承わりましたのですが、御承知のように、郵便法ができましたのは二十三年でございます。その当時は公労法がまだ成立しておりません。(「郵便法は二十二年だよ、二十三年が公労法だよ」と呼ぶ者あり)二十三年一月一日から施行になっているようでございます。その当時といたしましては、争議行為は認められておりましたから、犯罪を阻却する原因になったと解釈すべきであると存じます。その後公労法ができまして、ただいま御指摘の十七条によりまして、争議行為が禁止されておりまするから、これは郵便法七十九条の適用によりまして、犯罪の成立を阻却する原因にはならないと考えます。従いまして、過般の郵政職員の行為は、この七十九条一項に該当すると考えております。
  82. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは非常に平面的な、結果的には間違った解釈だと思いますが、こういう観点はどういうふうにあなたはお受け取りでございますか。それはですね、郵便法ができた当時には、公労法がなかった、そして郵便法の七十九条を作るときには、これは明確に国会においても、争議行為には適用しないのだ、これははっきりして作られたものです。だから、その時点における解釈はまあ明確ですね。ところが、その翌年に公労法ができた、こういうわけですね。ところが、公労法十七条ができましても、そういう行為に対してどの程度に違法性を与えるのかという問題になりますと、公労法としては、刑事罰まで持っていっておらないわけです、そうでしょう。だから、ある一定の行為を今までは許されていたが、これからは悪いといっても、その悪いということの内容はですね、幾通りにも出るわけです。公労法自体としては、十七条でいわば私ども考えから言うならば、普通にいう違法行為というものに対する違法性の与え方というものは、まあ二分の一とか三分の一程度しかこれは与えられておらないわけです、公労法自体の考えは。従ってですね、これは刑事罰を避けておるものなんですね。だから、そういう精神で公労法ができたからといって、その前の年には、これは刑事罰を労働組合関係には適用しないのだという立場で郵便法七十九条を作った、それが一変して適用される、こういうことには私は絶対これはならぬと思う、公労法の立場からいって。むしろ逆にですね、そういう三分の一か二分の一程度の違法性しか考えておらない。公労法ができたからこそ、むしろ七十九条というものは適用されないのだという根拠にこそなれ、そういうものができたからといって、すぐ前に争議行為等を画然と分離されて立法された七十九条が完全に生きてくる、こういうばかな解釈は私は絶対にあり得ないと思う。それはどういうふうに法務大臣としてお考えになりますか。
  83. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) お答えいたします。御意見ではございますけれども、私は全く反対に考えております。公労法で争議行為を禁止いたしますれば、従いまして、争議行為をやった場合に、それが犯罪である規定がその当時の法律にございますれば、犯罪の成立を阻却する原因をなくす規定を新たに作るわけでございまするから、当時の立案者、また立法府等におきましても、各般の法律を参照して、そして組み合せば御考慮の上でこれを可決されたことと思います。今日の法律の解釈といたしますれば、一方においては公労法に規定があり、一方においては郵便法の規定があり、ともに生きておるのでございますから、これとの組み合せの解釈におきまして、これが郵便法の七十九条に該当するかしないかということは、犯罪を阻却する原因が他にあるかどうかということを研究すれば足りるのでありまして、公労法の十七条を立案し規定する当時にすでにこの郵便法との関係も当然考慮に入れてそして作られたものと私は考えます。そして今日の二つの条文を並べて考えてみますれば、過般の郵政職員の行為は、明らかに郵便法七十九条に該当しておると考えております。
  84. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 亀田君、簡単にお願いいたします。
  85. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連ですから簡単に申し上げますが、そういう解釈を勝手に法務大臣がされることは、はなはだこれは迷惑です。これは特にこの刑罰法規に関しては、解釈上きわめて厳格に解釈されるのが通例なんです。立法当時に適用されないという説明をしておりながら、それが中途半端な公労法ができたからといって、それだけで一変してしまう、こんな解釈はもう非常な間違いですよ。あなたはここで、私が時間がないものだから、そういう答弁で突っぱられるかもしれませんが、これはもう絶対に納得できません。もっとそれは検討してもらわないと困る。  それからもう一つは、これはあの両方の法規との関係の問題でありますが、事柄自体はあくまでも警察庁長官も認めているように、労働問題としてああいう行動が起きておるわけです。言葉をかえていえば、あるいはストライキですね、そういう立場で問題が起きておるのです。そのあおりとしてこの郵便の停滞というものは出ておるわけですね。しかし、七十九条の条文自体は、やはり特定の郵便物と、まあ必ずしも何の何がしというような特定の郵便物でなくてもいいかもしれぬが、ともかくある程度こう限定されたもの、これに対してことさらにこの郵便物を停滞さしていく、そういうことが私は原則だと思うのです。何かのついでにそういう状態が起るかもしれない、そんなことまでをここへ含ませてくるのは、かりにその七十九条の適用があるとしても、その解釈自体に私は相当に無理があるという感じを持っておるのです。この点は第二の点。第一の点はまあ見解の相違、見解の相違ですが、これははなはだしく納得できない見解の相違ですから、一つ検討をこれは要求をしておきますが、第二の点ですね、適用があるとしても何かのあおりでそういう状態が起きてくる。これが一体「ことさらに」ということに入るかどうか、そんなにはっきりしたことが言えるのか、この点だけを一つ説明をしていただきたいと思います。
  86. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 第一の点はよく研究をしろという仰せでございますが、これは私はきわめて明瞭だと存じておりますが、われわれの日常の活動は、各種の法規によって規律されております。その意味におきまして、現行法はどの規定といえども全部やはり組み合せで考えてみなければなりません。その意味におきまして、一方において郵便法の七十九条があって、これこれの行為はしてはならないということがありますれば、一応その罪に触れます。ただ、それを犯罪の成立を阻却するかりに条件があるかどうかどいうことを探してみますと、今日はそれがないのでありますから、私はもう明らかに七十九条の違反行為と思います。もっともこの郵政職員のとった行動、私は現場におって見たわけではございませんで、ただ報告を受けておりますが、あるいは勤務時間中に職場を離れたとか、あるいは夜勤を予定されておる者が他へ行って泊ったというような事実でございまするから、これは明らかにことさらに郵便を取扱わなかったという事実に該当すると思いますので、私は七十九条の違反と考えておる次第であります。
  87. 亀田得治

    ○亀田得治君 もう一点。
  88. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 別の問題でございますか。
  89. 亀田得治

    ○亀田得治君 この問題です。これは法務大臣、はなはだ、そういうふうに断定されましたが、これは私ども労働法学者でも非常な疑問を持っておるのです。あなたのような解釈は、おそらく私はそんな解釈はもう通らぬと思うのです。立法の経過からいっても、そういうことをことさらにおっしゃるのは、普通の法務大臣の良識からするならば、そういう世間の専門家がそういう疑問を持っておるのなら相当検討するという私は言葉は若干あると思うのです。それがない。それがつまり私は弾圧だと思います。今こういう問題が起きておるから、そういうやはり見解が必然的に出てきて、この午前中の警官本庁長官見解を聞いておっても、はなはだあいまいである、あいまいのままに結論だけは断定される、そういうところに私は無理があると思います。だから、そういう一つのとらわれた考えを持ってここに法務大臣が来られている以上は、私はこれ以上は聞きません。そのかわり答弁自体から非常に無理なことをされておるというふうに、むしろ逆に語るに落ちているような印象を受けますから、この点は一つ御注意申し上げておきます。
  90. 鈴木強

    鈴木強君 午前中の石井長官のお話ですと、七十九条違反の疑いがあるので任意出頭の形で取り調べておる、こういう御答弁であります。いろいろと質疑の中で、これは検察庁とも連絡をしてやっておる、こういうことから法務大臣の御出席をお願いしたのでありますが、そのあなたがます答弁に立って七十九条の違反でありますと、こう断定することは、これはどういうことですか。そうしてみると、私たちは邪推するわけじゃないし、憶測するわけじゃないのだが、今亀田委員がおっしゃったように、語るに落ちるということはこのことであって、おそらく法務大臣がある程度のさしがねをして、これはもう違反だと断定をして検察庁を動かしているのじゃないか、そういうようにわれわれがとってもやむを得ませんよ。しかも、あなたは間接的に話を聞いてきて、そうしてその違反だと断定するということは、これはどういうことですか。少くともあなた、午前中おらなかったのですが、七十九条を改正するときに「ことさらに」ということの中に、質問があったときに、労働運動にはこれは適用しないのだとはっきり言い切っておるではないですか。そうしてその翌年公労法ができて、その争議権がなくなった、従って、違法行為をやったときは十八条によって解雇する、こういう峻厳な法文があります。これは刑事罰ではございません、亀田委員のおっしゃったように。だから、労働運動の一環としてこれがやられたことを石井長官、認めておられる。そうであるならば、七十九条を適用するということは、これは間違いなんだ。しかし、違反の疑いがあるということで検察庁はやられておる。それでも私たちはけしからぬと言ったのですが、少くとも断定をするということは、これはどういうことでございますか。私たちは、今もおっしゃっているように、労働法学者に聞いてもいろいろなこれは見解が分れておる。もう少しあなたがこの問題について真剣に私は検討してみるということであれば話がわかるのだが、断定したということはまことに私はもってのほかだと思う。話を途中から聞いただけでそんなこと言えますか、あんた。
  91. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) いろいろとおしかりをいただきまして、なるほど私も午前中の会議にはおりませんでしたから、私のお答えのうちに行き違いがあるかもしれません。私は法律の解釈をはっきり申し上げた方がよかろうと思いまして、七十九条の解釈を申し上げたのでございます。先ほど亀田委員からのお話もあったようでございまして、一部の学者にはこの法律の解釈について鰻(論があるということも承わっておりまするが、私ども法務部内におきましては、すでにもう解釈が一定しておるようでございまして、七十九条の争議行為は、もしあればそれに阻却原因がないからしてやはり処罰される対象になるという明瞭なる解釈を法務省としてはとっておりまするから、その点をはっきり言い切ったわけでございます。  さらに今度は検察の側から申し上げますれば、さような法律違反事実があるかどうかということは、これは裁判できめることでございまするから、私が言い切れることでもなし、もし言い切っておったとすれば、それは私の言い過ぎでございますから快く取り消します。もちろん捜査、検察の段階におきましては、七十九条の違反の疑いがあるからこれをその手続に乗せたわけでございます。ただ、私の申し上げた心持は、七十九条違反のような行為があれば、それは法律の解釈としてはもう犯罪を阻却する原因は他にないからして、この処罰規定の適用を受けることが明らかだということを言い切ったつもりでございます。どうぞ御了承を願います。
  92. 鈴木強

    鈴木強君 時間がありませんので、これ以上法務大臣に申し上げることができないのでありますが、幸い総理も見えておりますので、私は率直にお尋ねしたいのでありますが、この問題は、時あたかも総評を中心とする春の戦いが行われております。あなたは、総評を不健全な組合であるし、運動方針は書きかえなければならないという立場に立って見られておる。そこで、諸般の労働行政というものが、そういう形の中から相手方を見ておるために、ほんとうに正常な労使慣行をやろうという気持に立って、むしろ岸総理政府関係者諸君が胸を開いて相手側と率直に話し合って、そうして労使慣行を立て、日本の再建を一緒になってやるという、その態勢を作る気魄に私は欠けていると思うのです。あなたは一年前に、総評は不健全だと断定したが、今日においても変っていないということで、不健全な組合に対して、こちらから協調する必要はないという態度でありましょう。しかし、そうであっては、ほんとう日本のいい労使慣行が作られるでしょうか。私は、この総評の盛り上りに対して、自民党なり、あるいは現在の岸内閣が、あえてこの運動に対して先手を打って、公労法の疑いがあるならば、それを指令した幹部を解雇しなさい。それであるならば私たち承知する。しかしながら、七十九条に名をかりて、そうして一人々々の組合員を呼んで、詳細にこれを調査している。いわば七十九条に名をかりて、合法的に労働組合運動の内部をあなた方は偵察しているのだ。そうとっても過言では私はないと思うのであります。そんなことをして、ほんとう労働者政府を信頼するでしょうか、経営者の諸君が信頼するでしょうか。私は、とるべき道ではないと思います。おそらく選挙も近くなっている自民党としても、外交、経済、内政その他の問題についてなかなかうまくいかない、なんとかしてここらで一つ問題を起そうということがないでしょうか。そうしてここに事をかまえて、一つの問題点にして、労働者を騒がせ、それに名をかりて、解放でもやろうとするつもりでしょうか。大へん僣越でございますが、私は、そこまで考えなければならないのであります。岸さんがMRA運動に対しても非常に熱心にやられておる。私は、昨年あなたの声をマイクで聞きました。ブックマンと二人で話をする話も聞きました。ほんとうにあなたが民主政治家として、日本労働者と手を握って、日本を繁栄させていくという気持を持ってくれていると思うのです。そうであるならばどうしてこういう手を打つのでございましょうか。私は、もう少しあなたもほんとうに融合し、もっと正直になって、愛情を持って、純潔な生活をし、そうして自分というものをなくしていこうという、この気持に政治家がなることです。そういう気持を私は率直に持っていただきたいと思う。今回の七十九条の適用なるものは、全く残念でたまりません。なぜもっと労働者の中に飛び込んでいくだけの気持がないのですか。私は、今の問題に対しても、もっと慎重に考えていただいて、そうして今一人々々の組合員を呼んで、いろいろな誘導作戦をして、供述を書かしております。どうぞこれをおやめになって下さい。郵政省には監督機関があります。監察局があります。そして内部のいろいろな事犯に対しましては、郵政省が責任をもって調査し、手に負えない場合には、これを検察庁にお願いする場合もあるでしょう。それをやらして、そうしてその上に立って、問題があるならばおやりになったっらどうですか。それだけの私は心持、思いやりをもってもらいたいと思いますが、この点、岸総理はどうお考えですか。
  93. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、日本の再建のために、産業の平和と、そうして労使の健全な、しかも民主的な慣行が樹立されるということは、何よりも望ましいことと思い、これを念願いたしております。ただ、それの前提としては、私はしばしば申し上げるように、お互いがやはりその時の法律の定めというものを守る、これが私は、スタートにならなければならないと思うのです。その上に、われわれが幾らでも話し合う機会もありますし、また、お互い協力しなければならない点もたくさんありますし、また、そういうことについて語り合って協力するということは、これは当然のことであり、また、そうしなければならぬことであると思います。しかし問題は、あるいはいろいろな議論も出ておりますが、悪法は法にあらずというような考え方も一部にはあるようでありますが、私は、民主政治のもとにおきましては、法律が悪法であるならば、それは、国会を通じて改正すべきものである。一応ともかくある法律の秩序の上に立って、お互いが胸襟を開いて話し合う、そこには何ら、権力であるとか、あるいは優越な地位においてどうするとか、あるいは集団の力をもってどうするということじゃなしに、ほんとうに産業の繁栄、国民の福祉を考え、そのスタートのラインであるところの法律を守って、そこをスタートにするということは、私は、これは民主政治あるいは法治国として当然のことであると思います。今の事態につきまして、果して七十九条の事実があるのかどうかということは、これは今、取り調べているようでありますが、法律の解釈としては、やはり法務大臣がお答えしたように私も解釈すべきものだと思います。そこに立って、お互いが将来のよき慣行を作っていくという、その基盤としての考え方は、今言うような私は考えを持っております。決して断圧しようとか、いわんや、何らかこれが解散の一つの何にする、選挙の一つの何にしようというような不純な考えを私は毛頭持っておりませんということを申し上げておきます。
  94. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 鈴木君に申し上げます。時間が来ておりますから、どうぞお含みの上御発言を願います。
  95. 鈴木強

    鈴木強君 総理のお話を承わっておりますというと、後段の点は、私もよくわかります。法律を守るということについても、私はその通りだと思います。法治国の国民は、法律を守ることは当然であります。ですから私は、今の問題も、当然労働運動としてそういうものが行われておるということが認められておるのですから、それならば、現に七十九条によって、そういう職場を離れ、あるいは郵便物をおくらせた、こういう正常な業務を阻害する行為があった場合には、明確に第十八条によって解雇をするということが定まっております。ですから私は、それをやめてくれと言っているわけじゃございません。むしろ、労働運動として不当に法に違反する者があるならば、公労法によって処断すべきである。こういう立場に立って私はものを言っているのであります。法律論を申し上げますならば、それはいろいろあるでしょう。政府といたしましても、きめられた超過勤務手当すら従来払わなかったのじゃないですか。政府みずからが労働基準法を違反している。石田さんになってから、それを払うということにして、幾らか予算を組んだようでありますが、これはなかなかむずかしい問題でありまして、われわれお互い、法律を守るという立場に立っても、若干問題はあると思います。ですから、そういう点をお互い反省しつつ法律を守るということは、私は賛成です。ですけれども労働運動は、いろいろ慣行もございます。ですから、法律がこうなっているから、直ちにぶち込むということは、無理なことでありまして、これは、お互い話し合って、漸次改正していく、こういうことにならなければいけないと私は思うのであります。ですから、この七十九条の適用については、ほんとうに慎重に考えていただきたい。あなたの方では電電には百十条によってこういう刑事罰があるが、国鉄にはないというので、刑事罰を設けて、入れようという段階であります。ですから私たちは、何かしらぬ意識的に、労働運動というものを正常な公労法によって律することなしに、逆な、刑事罰によってやろう、こういう誤まったいき方があるのじゃないか、そういう点も、私は非常にこの問題については不満を抱くし、岸さん、どうぞあなたは内閣総理大臣として、この問題についてはもう少し実情を御調査になって、そうして慎重の上にも慎重な態度をとり、労働運動の一環としてどういう形でやられておるのか、その点ももう少し事態を調査されて、その上に立って、一つこの問題は善処していただくように、特にあなたにお願いしたいわけでありますが、その点、いかがでございますか。
  96. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、この事態そのもの、具体的の事件そのものをどういうふうに処断し、措置するかということにつきましては今、検察当局、警察当局におきましても、事情を、事実を取り調べておるということでありますから、それに基いて考えられると思います。お話の通り労働運動そのものに対して、政府として、十分慎重に、あらゆる面を検討するということは、これは、私も当然であると思います。また、鈴木委員自身がお話のように、実は今、ここで御意見が述べられましたが、私は、それは正しい御意見であり、お互いに法律の何については、根本において法律は守る、法律の何はする。しかし、いろいろな点において、事情が許さぬような場合においても、お互いが反省しながら、その精神の方向としては、あくまでも法律を実現していこうと努力を続けていくという気持でもって、すべていろいろな、争議の場合とか、あるいは問題の起ったときにおいて、われわれが行動していくような心がけを、政府も、あるいは労働組合においても、お互いに持たなければならぬ、こういうお気持については、私も全然同感であります。過去において、政府がそれではことごとく法律は守っており、それに違反するものは労働組合だけだというふうに私は断ずることができない事情にあることも、よく承知しております。しかしお互いが、さっき申しましたように、ほんとうに民主的な平和な、しかも、労使の健全な関係慣行を作っていこうというのには、民主政治、法治国として、法律のベースをとにかくお互いが守ろうというところにルールを作っていくことが必要であり、それが事態に合わないとか、あるいは時勢に合わないというならば、よろしく改正していくように努力するということを考えておるわけでありまして、今の鈴木委員のお話自体につきましては私としても、その趣旨には同感でございます。
  97. 森八三一

    ○森八三一君 最初に岸総理にお伺いいたしたいと思います。と申し上げますのは、この二十八国会が一月の下旬に再開をせられましてから今日まで、衆参両院のこの予算委員会では、実に多岐多様にわたる各般の問題が取り上げられまして、論議がされました。相当明確になったこともありまするが、政府の御答弁が必ずしも明確になっておりませんために、いろいろ混迷を巻き起しているようなことがあるのではないか。また総理のお考えと、関係主管大臣のお答えの間に、聞き方が悪いのかもしれませんが、やや食い違っておるというようなことがありまするために、受ける方から見ますると、自分の都合のいい方へ解釈することは、これはもう情の当然であろうと思うのです。そういうことからして、ここにまたいろいろの問題をかもし出しているというようなことがある。そういうことを通しまして、国にも国民にもいろいろな不利を与えてくるというような危険がないわけではないと思うのでありまして、この機会に、私の記憶に上って参りまする二、三を申し上げまして総理の明確なお答えをいただきたいと思います。  その第一は、これも、もうすでに再三再四論議をされたことであり、衆議院では決議案まで出ました問題でありまして、もう耳にタコの問題でありまするが、衆議院の解散の問題であります。このことは、終始一貫総理は、世論に聞く、民意に聞いてやるのだ、こうおっしゃっておりました。私も、その考えには全く同感であります。そうしてその民意を聞く具体的な姿として、世論は、最近の経済情勢に即応いたしまして、昭和三十三年度の予算の成立を強く期待をしている。これなくしては、国に非常な損害が巻き起る。だから、三十三年度の予算の成立ということは、岸内閣としては、是が非でも完成をいたしたい。そういうことに頭一ぱいだから、今解散の問題なんかを考えている時期ではない、こういうように終始一貫御答弁がございました。私も、まさにそうであったと、同感の意を表するにやぶさかではございません。ところが、そのねらいでありました昭和三十三年度の予算は、すでに衆議院を通過し、本院におきましても、この情勢で参りますれば、年度内成立は必須の情勢にあろうと思うのであります。(「わかりませんよ」と呼ぶ者あり)
  98. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 私語を禁じます。
  99. 森八三一

    ○森八三一君 さらに、その予算に関連いたしまする諸般の法律案につきましても、今後のことでございまするから、今、私がここで結論をつけるわけには参りませんが、大体そう遠からざる時期に、それぞれ適切な結論が与えられるだろうと私は思うのであります。そういたしますると、総理が世論に聞いて、今日まで堅持せられてこられました目途というものは、おおむねここで完成をされてきているというように思いますし、世論も、と申しましても、私は世論調査、そういうことを言うのではございませんが、まず世論を代表すると思われまする有力な新聞紙の論調も、これを最近は強く要求をしてきているというようにも感ずるのでありますが、そういうようなことを全部ひっくるめまして、もうこの辺で問題に終止符を打つ、明確な決意をすることが、政局の混迷を防止いたしまして、国の利益を守っていくゆえんに通ずるものであると考えるのでありますが、御所見はいかがでございましょうか。
  100. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国会開会以来相当な審議期間を経て参りまして、政府がこの国全本において成立を期しております予算案その他の案件の御審議も、それぞれ進歩を見つつある状況でございます。これは非常にけっこうなことであり、政府として最初に期待いたしておりました事柄がそういうふうに進行しているのでありますから、大へんけっこうなことと思っております。私としては、もちろん、ただ単に予算だけを今回の国会において成立せしめるということではございませんで、これらの重要なものにつきましても、それぞれ成立をさせなければならないと思って、努力をいたしているわけであります。しかし、解散の問題に関しまして、いろいろ世論あるいは輿論というものの動向につきましても、私も非常な関心をもってこれらの推移を見ているというのが私の現在の心境でございます。まだ予算も、年度内に成立なかなかむずかしいという有力な御発言もございますので、年度内に成立するように、この上とも精進するのが現在の、本日の私の心境としては、努力をしなければならぬと思っております。
  101. 森八三一

    ○森八三一君 まああと三日、四日ございますので、そういう御答弁は、形式的なお答えとして、私も否定するわけではございませんが、そういうようにおっしゃっておりましても、新聞記事のことでございまするから、これをもって直ちに断定をするというわけには参りませんが、総理の片腕であるべき副総理がどこかへ御旅行の際に、最近の世論の趨勢その他から勘案をして、四月の下旬解散の必須の情勢である、これを延ばすということは、国のために害はあっても益がないように思われるから、もう情勢はまさに熟しているということを談話しておられるのであります。といたしますると、総理は今お答えのようなことでございましても、副総理である有力な閣僚はそういうことをおっしゃいますると、私の申し上げましたように世間ではやっぱり期待を持ち、そうして今まで総理のとってこられた態度が、当面の目標として昭和三十三年度の予算、ならびにそれに伴う重要法律案の通過だけは、とこうおっしゃっておるのであって、国会法その他の関連からいたしまして、年度内に解散があるということは大体肯定をされておる、ただ時期の問題だけであった、その時期の問題は、第一目標がおおむね見通しがついた、そこで副総理もそういう発言をしておられると思うのでありますが、今日これ以上お聞きをいたしましても、答弁は繰り返されるだけであろうと思うのでありますが、しかしそういうような態度をとられますることがいろいろと混迷を巻き起す、あるいは事前連動いろいろなことがことが巻き起って、選挙の公明を害するというようなことにもつながるわけでありまするので、私はもうこの辺で一つおおむねの方向というものを明確にされるべきであると思うのでめりまするが、いかがでございましょうか、重ねて聞きましても御答弁は一しょだと思うのでありますが、副総理のそういうような発言等がございますると、世間では総理のお気持を全部のものとして受けとるという態度が薄れてきておると、こう思うのでありますが、いかがなものでございましょうか。    〔委員長退席、理事劔木亭弘君着席〕
  102. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いろいろ新聞に閣僚その他いろいろな方面の、また野党の有力な人々の御発言もございますし、いろいろございますが、今の状況としての私としては、先ほどお答え申し上げましたことを繰り返す以外にはないのであります。
  103. 森八三一

    ○森八三一君 次にこれは私の年来の主張でありまして、だんだん経済が、こういうように安定をして参りますると、射幸的なものは一切やめていくべきだと、私の考えだけではなくて衆参両院の意思としても、そういうものは禁止もしくは廃止すべきである、という方向を明確に打ち出しておることは御承知通りでございます。昨年も総理は、その方向については、民主政治家として、当然満場一致両院において議決されておる方向というものは、堅持をしていくが、一ぺんにそういうものをやめてしまうというわけにも実際いけない、だから当面の対策としては、できるだけその事項について健全化する方向考えていくのだ、という御説明がございました。私もそのことには別段異議を言うものではございません。方向をはっきりつかんでおるその結論に到達する間、いろいろな問題の巻き起らぬように十分心得ていく、これでいいと思います。ところが先日この問題を取り上げまして私が伺いますると、通産大臣は、競輪については新規のものについては全然認めないのだ、という方向をはっきり答えられております。がしかし運輸大臣は、競艇についてどうするのだとこう質問いたしますると、現在申請がござませんから考えておらぬが、申請が出てくれば考えると、こういうような御答弁なんでありますが、何べん繰り返して聞いてもそうなんであります。そういたしますると、やっぱり申請してくれば認めてもらえるのだ、そういたしますると、やっぱり廃止をし、禁止をするという方向が堅持をされるのではなくて必要に応じては、また条件がかなえば、新しいものも認めてもらえるのだという期待を持つ、そこにつまらぬ策動が行われましたり、要らぬ手数がかかる。こうなりまするのでありまするので、こんなことくらいは私ははっきりしておいた方がいいと思うのでありますが、総理はいかがでございましょうか。
  104. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私も森委員と同様に、戦後における日本の射幸的ないろいろな施設というものは、やはり健全な安定した基礎の上に、堅実に経済の繁栄を考え、国民生活の安定向上を考える上からいうと、望ましくない一つの何である。これができましたことについてはいろいろな理由がありましたし、それがまた行われておる状況ということを見ますると、すべて百パーセントことごとく改悪だけじゃない状況もございます。そこでしかし射幸的な風潮なり、そういう施設を将来に向ってこれを奨励し、これを増加していくというようなことは、私は考えるべきものじゃないのであります。従って新設はいずれのものについても、これは私は認むべきものじゃないと思う。そうして現在あるものにつきましては、できるだけそれを健全化していくということに、われわれは努力をすべきである。その健全化していく結果として、あるいは成り立たないものができるかもしれませんが、それで淘汰されるということはこれはむしろ当然の結果でありまして、われわれとしてはあるものについては、これを健全化していくという方向を進めてゆき、新たには認めないという方針を堅持したいと思います。
  105. 坂本昭

    ○坂本昭君 関連。先般運輸大臣は申請があった場合には考えると申されたのですが、実は申請が出ているのであります。でこれは運輸大臣として非常な私は手落ちのある返事だったと思いますが、総理はモーターボートについて、特にこの前申し上げたのは、若干今度の総選挙に関連して、その競艇の申請が出ているのであります。それは非常に私は重大であると思いますので、運輸大臣は明確な答弁をされませんでしたが、総理としてはこれを許可されるというようなことは、万々ないと信じますが、そう信じてよろしゅうございますか。
  106. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私その具体的な事実は承知いたしませんけれども政府の方針としては今新設は認めないという方針で参っております。
  107. 森八三一

    ○森八三一君 その次に、これも本会議なり委員会を通して総理はきわめて明確に御答弁があった案件であります、すなわち農地補償の問題であります。これはしないということが明確になっておりまするが、予算にはこういうことをも含めての調査費というものが計上されておる、というようなことが世間には言われまして、やはり何とはなしに、適当な時期にはこの問題の処置がしていただけるのではないか、しかもこの問題に関連して団体ができ、その団体の責任者が与党のうちから出ていらっしゃる。これは別にその総理の承認を受けたのではありませんから御存じないかもしれませんが、そういった姿になっておると承知をいたしております。そういうことからして、やはり総理はああおっしゃっておるけれども、ちょうど今度の予算の編成についても、いろいの圧力団体の運動というようなこともございましたようなことででございましたので、そこで他日やはりこれは適当な政治力を加えていけば解決されるのだ、という期待を与えておるというのが現実であります。これはもう何と申しましてもそういう事実はございます。われわれのところにもしょっちゅうそういうような陳情はあるのです。でございますから、今までの御答弁で、総理の気持は明確に私は承知しておりまして、当然そうなければならぬと思うのでありますが、この際に、そういうようなよからぬ策動というものが封殺せられることを期待いたしますが故に、もう一ぺんこの問題についてはっきりした御所信を伺いたいのであります。
  108. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 予算の上に何かそれに関する調査費が計上されておる、というようなお言葉でありましたが、そういうことはございません。私がしばしば申し上げておるように、農地補償については、旧地主のうちにおきましては、相当に強く要望のあることは事実でございます。これは戦後におけるああいう異常な急激な変革から生じた一つの状態に対する是正とか、あるいはそれの償いを求めるような気持からきておると思います。しかしこのことは戦後に行われました土地改革の正当に行われたことの結果でありまして、そういう意味において、国家としてこれに対して補償する考えはないということを従来申し上げておる。ただ、今申し上げましたような急激な変革のために、いろいろ社会的に生じておる事態というものに対して、あるいはこの生活上の非常な問題であるとか、あるいは子弟の教育の問題であるとか、いろいろな意味におきまして、いわゆる社会保障的な見的から、国として考えるできものがあるかないかということは、これはおのずから別の問題であると考えます。
  109. 森八三一

    ○森八三一君 総理に対する質問は私は以上でありますので、私の質問の時間の限り総理は御退席願ってもけっこうです。  引き続きまして、大蔵大臣にお伺いをいたしたいのですが、今回補正三号が提出をされ審議をされておるわけであります。過般は補正の二号が提出され、両院を通過いたしました。こういうようにぽつりぽつりと補正が出て来るのですが、予算補正をするというときの基本的な心がまえというのは、一体どこにおいていらっしゃるのか。予算不足を生じ、その不足をまかなう財源があるから、その財源の範囲内で補正をするのだという感覚であるのか。そういうことも含めて法律その他で義務づけられておるものだけを処理しようということなのか。この補正予算というものを、別に財政法上どうという規定はないのでありますが、時の政府考えなり大蔵大臣の気持で、主観で、適当に補正ということで処理するということはおかしいと思うのですが、何か補正をするということについての基本的な考え方というものがあろうと思うのですが、その辺を一つお教えをいただきたい。
  110. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 補正を組みますのは、真に必要やむを得ない不足の補てんのために組むのでありますが、むろん仰せのように、これを幾つにも刻んで出すということは、これは私は好ましくない。また、財政当局からいっても好むところではないのでありますが、ただしかし、事柄の内容によりまして、非常に急いで御審議を願わなくてはならぬとか、あるいはまた、ちょうど三十三年度の予算となるべく時を同じくして御審議を願うことが審議の上で便宜である、こういう見地から、今回第二号は急いで真にやむを得ない範囲内で出したのであります。第三号もなるべくやはり早い方がいいと思うのでありますが、これもやむを得ない不足経費の補てんでありまするが、これはまあ予備費その他の流用等によってまかなえるかどうかということもよく見きわめまして、最終的に補正をした、かようなことになっておりまして、原則的には、私はなるべくこれをまとめて、そうして真にやむを得ない範囲内で出すのが適当と考えております。
  111. 森八三一

    ○森八三一君 お話の、真にやむを得ないということの感覚なんですが、昭和三十二年は進行中でありますから、ここで私は想像することができませんけれども、今回の補正に出していらっしゃいますような種類のもので、やはり昭和三十二年度の予算不足を生じておるものもあるのではないかというように想像をいたしておるのであります。これがなければ、私の想像が誤まりでありますけれども、年々の決算を見ますれば、そういうようなふうに相なるべきものも他にあるように思うのであります。ただ、ここにその一部だけをお取り上げになっておるということなんですが、緊急やむを得ないというものであるのか、これがほんとうに緊急やむを得ないということで、予備費では処置ができないという姿のものであるのか、その辺の感覚をもう一ぺんお伺いをいたしたい。関連をして、現在の予備費はどういうように数字的に相なっておりますのか。その予備費を、必要やむを得ないものにあてがうことについて、すでにそれぞれ約束がせられておると申しまするか、御考慮になっておって、予備費にはもう残額がないということで、これだけのものを追加補正せざるを得ないという結果に相なったのか、その辺の数字的の問題も、私あわせてお伺いをいたしたいと思うのであります。
  112. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今回の補正第三号、これで三十二年度の補正はすべて終ったつもりでいたしております。従いまして、他にさらに補正を必要とするものはないと考えております。  なお、予備費につきましては、もうほとんどないと思いますが、これは主計局長から答弁をさしたいと思います。
  113. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 本日現在におきまして、三十二年度の予備費八十億のうち、七十九億九千四百万円使用済みであります。そのうち災害関係の分が五十九億六千九百万でございます。
  114. 森八三一

    ○森八三一君 そこで、予算の具体的な内容にわたって二、三お伺いをいたしますが、まず第一に、牛乳乳製品学校給食費補助であります。これが今回二億九千万円ほどが追加されまして、トータルで三億五千万円ということで製乳約十万石に相当する処理をしようということでありまするが、事が学校給食のことでございまするので、十万石という数量に限界を置きましたのでは、事がスムーズに運ぶということには、非常に支障が生まれてくると思うのであります。このことに協力をしている学校に対しまして、予算がもうなくなったから、何月何日限りこのことはやめろというようなことでは、学校給食ということが乳価の低落の対策の何かこの当て馬に使われているというようなことになりまして、学校給食本来のこととは、非常に問題がこんがらがってくるように思うのでありますが、この予算は、学童の栄養を高めていくという見地から、予算不足を生じましても、この制度というものは通年的に措置をすべきであると思いますが、そういうふうにお考えになりませんですかどうか。今私の申し上げましたように、ただ冬場の牛乳が安かったときに学校給食にこれをあてがう、そうでないときはもうやめたというようなことでは、受ける学校側から見れば、非常に私は迷惑な問題もあろうかと思うのでございますが、いかがなものでございましょうか。    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕
  115. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは、あくまで学童に対する牛乳のこの給与でありまして、別にこの牛乳が、余っているからその需給関係を調整するというような意味ではありません。これは、学童が約二百万人だから、一合としまして五十日分というようなことになっております。それが十万石、そういうことになっております。
  116. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますというと、施策に取り上げられました基本的な態度というものははっきりしたのですが、このことに協力をする、あるいはこれを希望する学校が漸次増加をして参りますれば、十万石というこの限界を突破する結果になろうかと思います。その場合に、生乳の場合であれば一合四円ということでありまするのでそれを減らすか、あるいは予算をさらに増加をするか、いずれかの措置を講じません限りは、その希望にはこたえられないという結果に相なると思いますが、そういう場合には、いかなる措置をおとりになる御所信かを承わりたいのであります。
  117. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今回の分は三十二年度の分でありまして、三十二年度分としてはこれで足ると考えております。三十三年につきましては、三十三年度の予算計上いたして——、諸般の情勢を勘案して計上いたしたいと思います。
  118. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、三十二年度はもう三月三十一日で日がはっきりしておりますから、これで始末ができる。三十三年度になりますと、当初大蔵大臣お答えの通り、この施策を取り上げられましたその基本的な考えによって処置をされるというように了解をしてよろしいでしょうかどうか。これは、これを受け入れます学校側なりあるいは府県当局から見れば、きわめて重大な問題であります。予算がなくなったからもう打ち切りだなんということでは困る、そういう点を明確にしておいていただきたいと思います。
  119. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十三年度のこの予算につきましては、これのこの積算の基礎となる要件等について主計局長から答弁をさせます。
  120. 森八三一

    ○森八三一君 私はそういう予算の積算の見通しがどうかこうかというのではなしに、方針上の問題として、予算が余れば余ってもいいのです。政府の奨励方針というものにのっとりまして、協力をしてくる度合いが漸次増加をしていくということのために、予算額に不足をもし生ずるようなことありせば、その場合に車価を切り下げなさるのか、あるいは単価を切り下げるわけにはいきませんから、予算補正してでも、それにこたえていくという態度をおとりになるかということであって、数字的な問題を伺っておるのじゃございません。
  121. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私はこの牛乳を児童に給食する、こういう制度を用いました以上は、これは持続していくという考えでおります。
  122. 森八三一

    ○森八三一君 その次にお伺いいたしたいことは、移民問題を中心として数点をお伺いいたしたいのであります。まず第一に、外務大臣にお伺いしたいのですが、今日ブラジルに対する移民は、民間の方がブラジル政府の了解を得て移民を取り進めておるというような姿でありまして、まだ本格的なこれは移民形態ということになっておらぬように、私は承知をいたしておるのであります。そこでどうしても日本の国といたしまして、移民問題を推進していかなきゃならぬ、政府もこのことを国の政策として重要なものとしてお取り上げになっている限りにおいては、ブラジル政府との間に国家間協定が結ばれなければほんとうのものにはならぬと、こう思うのでありますが、そういう点について、今日まで外務当局としてブラジル政府との間にどういうような交渉を進められておりまするのか。そうしてまた、今後そういう方向を妥結させるために、どんなお見通しを持っていらっしゃるのか、その辺をまずもってお伺いをいたします。
  123. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ブラジルの移民を送出するにつきまして、国家間の協定をやりますことは、外務省としてもかねて関心を持って状態を注視して参ったわけであります。過去におきましては、ブラジル議会等におきましていろいろな問題がございましたし、そういうことで適当な機会を見て、そうしてブラジルと移民の協定をしようという考え方でおったわけであります。しかしながら、残念ながら今日までまだできておりません。ただ、御承知のように、本年はブラジル移民の五十年祭が行われることであります。日本政府としましても、相当な力を入れて参りたいと思うのであります。こういうようなことで本年あたりは、だんだん日本側から申し出るチャンスが来たのではないかというふうに考えております。また、ブラジル側の方でも空気が大へんよくなってきておりますので、本年あたりには、こちらから申し入れて、そうして適当な協定ができるように努力をしてみたいと、こう考えております。
  124. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、両国間における国家協定を取り結ぶことのために、今日までもいろいろなチャンスをつかみつつ努力してたきが、結論を得るに至っておらぬ、今後その方向に向ってさらに一そう推進をしていこうということであると承わりました。私はそのことが急速に成果を上げますように、さらに一段と御努力をいただきますることを強く希望いたすのであります。そこで、そういうような協定ができて本格的に進みますれば、非常にけっこうなことであり、仕合せでありまするし、そういうような協定ができませんまでも、現に移民は漸次進められておるわけでありまするが、その移民を送出するに当りましていろいろな問題が巻き起っておる。その一つは、移民をする諸君が現に国内において保有しておる農地を初めとして財産の処分をしていかなきゃならぬ、そういう場合にその処分に対する引き受け者の金繰りというものがうまくいきませんために、せっかく志を抱いて行こうとする、諸君に非常に過酷な仕打ちをしておる。端的に申しますれば、その地方の農地は一反歩が五十万円なら五十万円に時価売買されておるといっても、ぐずぐずやっておれば三十万円、二十万円と押しつけられましても、行く人は行く日がさまっているのですから、処分をして行かざるを得ない、幾らでもつかんでいかなきゃならぬということで、不自然な処分が行われて、せっかく雄図を抱いて行く人に対して、気の毒な仕打ちになっておるという事実を、あちらこちらで聞くのであります。こういうことに対して、大蔵大臣は特別な金融措置というものをお考えになるお気持がないのかどうか。私は一般銀行にこれを求めるということはむずかしいと思います。いずれも資金が長期にわたらなきゃならぬのでございますから、そこで、政府機関として存在している農林漁業金融公庫等の法律を改正するならば、運用なりにおきまして、はっきりとそういう資金を貸し出しするという道を開くことが、政府が移民の問題を強く取り上げて推進しようという限りにおいては、当然の措置ではあるまいか。今日それが欠けておるために、非常に難儀をしているという事実がある。これはどうお考えでありますか、大蔵大臣の御所見を伺いたいのであります。
  125. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 移民をなさる方の国内を出発する前に、いろいろお持ちになっている財産を処分しなくちゃならぬ、これに政府としても金融上何らかの措置を講ずべきではないかという御趣旨だと思いますが、全くさようでありまして、ただいま政府といたしましても不動産につきましては、土地等の不動産につきましては、農林漁業金融公庫からその不動産の買主に融資をいたすことにいたしております。そうしていわゆる買いたたきのないようにいたす、動産につきましては融資をする便が適当な道がありませんが、しかし、行政指導によりましてやるかたわら、財産の処分に都合がいいように措置をとっております。問題はこういうふうなことが、移民者によく徹底をして十分御便宜がはからえるようにすることにあるのじゃないかと思っております。その面についても、さらにそういうふうな道があることが徹底いたしますようにいたしたい、かように考えております。
  126. 森八三一

    ○森八三一君 今、大蔵大臣のお答えを聞きますと、すでに私のお聞きしようとすることの半分の不動産の問題については、農林漁業金融公庫をして解決せしめるように手配ができておるようにおっしゃいますが、農林漁業金融公庫の融資のワクについては、必ずしも私はそうなっていないように思うのであります。また、公庫法からいたしましても、まっ正面からそういうことに取り組んでいけるという姿にはなっていないように、私は理解しております。もし、私の理解が誤まりであれば、お教えいただきたいのでありますが、もし、私の理解通りだといたしますれば、農林漁業金融公庫法を改正して、この問題を当然のものとして取り組んでいけるようにすべきであると思いますが、大蔵大臣のお考えはいかがでありますか。
  127. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいま農林漁業金融公庫に、この種の資金ワクとして一億あります。このまあ一億のワクが適当なワクかどうか、これは情勢によりまして、とくと相談をしてもよろしいと思っておりますが、一億あります。
  128. 森八三一

    ○森八三一君 ただいまお伺いいたしました後段の方の農林漁業金融公庫法を改正して積極的にこういう資金の取扱いを公庫がいたす、それにはお話しのありました後段の方の動産等については、適当な方法もないということでありますが、この移住をする、移民をする諸君の所有財産の措置に関する限りは、公庫法を改正して措置ができるというようにいたしますことが、当面の対策としては一番好ましい姿であると私は考えるのでありますが、そういうふうな措置をするお気持があるのかないのか。
  129. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私、御質疑の趣旨がよく捕捉しかねたのでありますが、今日農林漁業金融公庫法を改正しなくても、農林漁業金融公庫におきましては、こういう海外渡航者に対して、その所有する不動産に対して融資をするという道が開かれております。ワクも一億円あると、こういうことであります。
  130. 森八三一

    ○森八三一君 現行法で十分に、積極的に農林漁業金融公庫がこの種の資金を取り扱うということには、かなり無理があると私は考えておるのであります。ただいま大蔵大臣の御答弁で、何も支障はないのだということでございますれば、公庫法の運営をそうやればよろしいことでございますから、当然公庫の管理者はそういう措置をしていくと思いますが、そう理解してよろしいかどうか。くどいようでありますが、もう一ぺんはっきりお答えいただきたいと思います。
  131. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいまその所要資金は、公庫の自作農維持資金のうちから出しておるわけであります。
  132. 森八三一

    ○森八三一君 そこに問題があるのです。自作農維持資金でこれを解決しようとお考えになっているところに、問題があるのです。自作農維持資金は、これは非常に希望が多くて、現在でも足りなくて困っておる。そこで、公庫におきましては、政府との相談でありましょう、府県別に自作農維持創設資金を大体の見当をつけて割当をする。割り当ていたしますと、もうひもつきになって、資金というものは大体消化されるのです。そういたしますと、移住者、移民者が申し入れましても、そのときにはもうワクがなくなってしまっておるとかいろいろな問題が起きる。現実に起きておるのです。形式的な問題をお答えいただくのでは困りますので、私は、むしろ、積極的に公庫の業務として、自作農創設維資金の陰に隠れてこの重大な国策を遂行するのではなくて、農林漁業金融公庫の業務として、移民者に対する所有財産の処分に対する貸し出しを行わしめるのだということを、明確に規定した方がいいのじゃないか。どうせやっているのなら、その方がはっきりしていいのじゃないか。だから、公庫法の改正をすべきであって、改正すれば、それに伴う資金ワクというものは、陰に隠れる格好でなくて、堂々と設定する、こうなるのですから、そういう措置をしなければいけないと申し上げておるのですが、いかがでございましょうか。
  133. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 仰せごもっともでありますが、これは農林省の考えも聞かなくてはなりません。今のところでは、自作農維持資金のうちに移民の分をふやしまして、そのうちにワクがあるというふうにして、自作農維持資金に特に食い込むというのではありません。しかしながら、今後移民は大いに奨励をしなければなりませんことでもありますので、必要がありますれば、よく私も調べまして、今のやり方で支障があるようでありますれば、これは私は変えてもいいと思っております。しかし、農林省の関係もありますから、よく相談した上でいたしたいと思っております。
  134. 森八三一

    ○森八三一君 石井農林大臣臨時代理にお聞きでございますが、私は建前としては、自作農維持創設資金の運営によってできるということにはなっておることを承知いたしております。しかし、それでは実際の問題の解決にはなっておらぬ。だから、今しつこく大蔵大臣にお伺いしておる。そこで、大蔵大臣の御答弁は、支障あるとすれば、両省協議の結果私の申し上げるような方向措置することにはやぶさかでない、こういう御答弁なのですが、担当の主管農林大臣としてどうお考えになりますか。私はやっぱりどうせ資金を出すのであれば、陰に隠れたというような日陰の扱いではなくて、堂堂と、移民をする諸君に対する金融措置は、かくかくの方法によって行われるのだということを明確にしてあげることが親切であって、しかも、事を運ぶのには大切な行き方であると思いますが、どうお考えになりますか。
  135. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) ただいまのところ、三十二年度に、実際ただいま大蔵大臣が申しましたように、自作農維持創設資金の方から回してもらった。それが約二千万円だったと思うのでありますが、三十三年度は、それをまたもっと増額するということで、土地を買い上げる問題としては、実際的にはこれがだんだんと有効に働いておりまして、行く人たちが、急いで行くためにたたかれるというような問題がだいぶこれでよくなりつつある。今度は金額が増せば、さらにそれがよくなるということが考えられるのでありますが、もう一歩進んで、自作農維持創設資金などということによって回りくどくやらずに、直接的に扱うという問題、同じ農林漁業金融公庫から出すにしても、はっきりした方がいいじゃないかという問題は、これは、大蔵当局も別に異議がないということでありますれば、さらにこの問題は、より効果的になるような方法はどうしたらいいかという問題として取り上げて相談をいたしたいと思います。
  136. 森八三一

    ○森八三一君 そこで、もう一つ大蔵大臣にお伺いいたしたいのはそういう場合に、これは当然なことかもしれませんけれども、処分財産というものを引き受ける側におきまして、税法上各種の課税のあることは、現行法からは当然でありますが、それだけは、やっぱり出て行く諸君が、結局はかぶっておる。こういうことに実質的にはなるわけでありまするので、そういうような国策に準じて海外に移民をし、新天地を切り開いていく、それがまた、先方の国に対しましては、技術的な協力という重大な仕事をも果していくということでございますれば、そういう部分に関する限りは、税法上の特典を与えるということがあってしかるべきように私は思うのでありますが、金額としちやきわめてわずかなもので、気分的な問題になりますが、そういうような配慮をされるお気持ちがございませんかどうか。
  137. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 事柄はきわめて、何と申しますか、なるほどもっともということでありまするが、税法上の特典を、どうもそういうふうな気持ちからけっこうと言っておると、いろいろな影響が特に税には多いのであります。従いまして、問題は研究はいたしますが、今すぐこれはいいというわけにも参らぬと思います。
  138. 森八三一

    ○森八三一君 外務大臣に同じ資金の問題でお伺いしたいのでありますが、移住先、移入先におきまして、営農に入り用な資金、あるいは土地を取得するために入り用な資金というものなんかについては、当然私は移住会社がその責に任ずべき性格を持っておるように思うものでありますが、移住会社をしてそういうようなことに対する資金の手当をせしめるということについて、積極的に措置されるお気持ちはないのかどうか。
  139. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 移住先における金融というものを移住会社、振興会社がやりますことは当然なことであります。これが円滑な実施が行われるように、今後とも資金上なり、あるいはその運営の方法なりについて十分検討していかなければならぬ、こう考えております。
  140. 森八三一

    ○森八三一君 非常にこまかい問題をお伺いいたしますが、これは非常に重要な政府の施策として推進されておることであり、国内における農村の次三男対策として、きわめて重要な問題でございますので、こまかい問題をお伺いするわけですが、そういう移民の諸君の送出の選考その他がきまりまして、現地に行きまするまでの間のいろいろな問題が巻き起っておりますることは、お聞きだと思う。そこで船待ちをする期間、一定の場所に集めて訓練をする、これは向うへ行ってからの習慣その他についての訓練もありましょうし、あるいは向うへ行ってからの営農に関する技術的な訓練もありましょうし、あるいは集団生活等に関する訓練もありましょうし、各般にわたる訓練が私は必要であろうと思う。向うへ一たん出しました限りは、日本人として恥かしくない行動をとってもらうような基礎を作ってあげることが非常に大切である。同時に、今度は、到着地点におきましても、それが直ちに配置されるというようにはうまくいかない場合が、多々あるように現地からは報道されておるのであります。そうなりますと、そこでもやはり一定期間、一定の場所に集めて訓練することが非常に大切である、そのことが結局移民の成果を上げ、実を結ばせていく大きな要因になっておるように思うのであります。今日まで移民の問題を取り上げていらっしゃいましても、そういうようなことについての施策を欠いておりまするために、いろいろなトラブルを巻き起しておる、あるいは、移民が成功しておらぬというような事態がある。こういうことに関して、外務省として何らかの措置をお考えになる気持があるかどうか。  もう一つは、そういう諸君が向うへ行きましてから、病気その他のために、どうしても現地に定着するわけにいかないという事態が発生する。これは人間であるからやむを得ない結果であると思います。そういう諸君が、内地に帰還しようにも帰還する旅費がないために、悲惨な生活に追い込まれておるという事実も、数多くはございませんが、存在しておる。これは、すでに外務省にはきておると思います。そういう諸君をどうするといっても、現地における同僚諸君は、その日の生活に困っておる連中も多いわけでありますから、お互いに助け合うということにもいきかねるわけです。自然、野良犬ではありませんが、他国の地に放置されてしまう。そういう多くの諸君は、病気に冒されている諸君が多いのですから、療養できないということで、実に悲惨な生活をしておるということを聞くのであります。そこで、そういうような医療その他につきましても、現地に何がしかの施設をいたしますことが、日本の移民を効果つけていく有力な一つの拠点となると思いますが、そういう点について、何か配慮していく気持がありますかどうか。御研究がございますれば、御研究と同時に、将来の気持をはっきりお答えいただきたい。
  141. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 移民を撲り出す前に、国内でもって訓練をするということは必要だと思うのであります。現在、独身者についてはある程度送出地等におきましても集団生活をさせて、そうして訓練をするというようなことをやっておりますが、これとて十分ではないと思います。従って、これらのことにつきましては、もっと今後とも力を入れて参らなければならぬ。現地におきます訓練は、今日までほとんどできておらぬのであります。これは経費等の関係によりまして、相当金額を要することかと思うのでありまして、十分検討をしてみませんければ、今直ちに現地において集団的にある期間訓練するということができるかどうか、むずかしい問題だと思います。しかしながら、内地において訓練し、あるいは現地においても訓練する。そうして十分移住地の人たちに適応するような教育といいますか、身についたたしなみを持たせる。あるいはまた農業上の現地の知識を教え込むということも必要なことなんでありまして、そういう面については、できるだけ力を尽して参りたいと思っております。  なお、現地に移住しまして病気等になりました場合に、それをそのまま放置しておくのは、何かの救済方法がないだろうか、あるいは現地に病院等を作って、そして、それらのものを適当に収容する方法は将来考えられないだろうかという御質問でありまするが、第一には、できるだけ健康診断、その他によりまして、十分、現地に行ってから病気が起る、あるいは移住地において不適格の人ができたということのないように、日本において選考を厳重にすることがまず第一に必要だと思うのです。しかし、いかに内地におきまして十分な選出をいたしましても、人間のことでありますから、現地に行って必ずしも現地の気候に適応しない、あるいは現地の生活にも適応しないという場合があり得るわけでありまして、そういう場合には、何らかの処置を考えなければならぬわけです。しかしながら、この問題はなかなかそういう場合はむずかしい問題ではありまするけれども、将来そういう人たちが適当に故国に帰還できるような方法を考えてみたいと思います。移住問題につきましては、全般的にまだ十分な政府としても施策が行き届いておらぬことを、私感じますので、そういう問題を含めて、今後とも十分いろいろな点で研究もし、立案もしてみたいと、こう思っております。
  142. 森八三一

    ○森八三一君 移民問題の最後に、文部大臣にお伺いしますが、移民の問題が日本のこれから行うべき施策の重要なことであることは申すまでもございませんが、そういう趣旨を一般国民に広く理解をせしめる。正しく理解せしめる。そうしてまた、そういう意欲をかき立てていくということのためには、教育に待たなければならぬと思うのであります。そこで、移民のことにつきまして、義務教育の課程の中に何らかとり入れていくということができませんものでしょうか。また、高等専門教育の場合には、選択科目の中に、これはひとり農業だけではありません、商業的なこともありましょう。そういうような、学校等におきましても、そういう教科を新設をして、何らか教育を施していく。それが及んで、移民の問題について国民的な情勢を高めていくということになりますれば、このことを進めていくのには非常にけっこうな結果になるのではないかと思うのでありますが、ただいま文部当局としての御構想をお伺いをいたしたいのであります。
  143. 松永東

    国務大臣(松永東君) 森委員の御指摘の海外移民の問題は、われわれ民族にとってはまことに重要な問題であることは論を待ちません。だがしかし、今日まで小中学校等の義務教育におきましては、それに即応するような教育は施しておりませんけれども、しかし、学習指導要領には、そうした面も相当織り込んでやはり教えてはおるのであります。ただ、御指摘になりました高等学校方面におきましては、海外の事情や移民の実情等につきましても、それを教え込んで、そうして理解をさせるというようなことを、選択科目として採用していい、教えていいということに、今まではなっております。しかしながら、御指摘のように、これから先、相当移民の数もふえましょうし、また、ふやしていかなければならぬと存じます。従って、これに対する教育につきましては、今後ますます充実した教育を施して、御指摘のように、向うへ行きますときのりっぱな人格者としての移民を作り上げ、さらに、向うへ行きましても、他の民族からうしろ指を指されぬようなりっぱな行動をやるように、あらかじめ教育をしなければならぬので、そういう点についても研究を今重ねつつある次第でございます。
  144. 森八三一

    ○森八三一君 最後に、この特別会計の信用保険の限度と申しますか、十八条におきまして、百八十億を二百四十億に拡大をするという案でありますが、このことにつきまして私は異議があるわけではありませんが、この年度末が押し詰まってこれが議決せられて発効して、あと二日三日というこの押し詰まったときに、六十億も限度を拡大いたしましても、それは本年度のものにはならぬような気がいたすのでありますが、ここでこの総則十八条の限度を更改いたしますることが、直ちにこの目的を達成するゆえんになるということでありますれば、どういうわけでそうなりますのか。これは会計年度の締め切りのように五月まで持っていくという筋合いのものではなくて、三月三十一日までのことであろうと思うのですが、どういうことになりますのか。
  145. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 中小企業信用保険特別会計におきまして、十二月末現在におきまする信用保証協会の保険引き受け額が百六十億であります、従いまして、その後大体限度に近づいておりまするので、今のところは限度一ぱいということになっております。ただ、その後にも引き続き中小企業関係の信用保証の仕事があるわけでございまするが、これは、それ以外の包括保証という道もございまするし、自己保険で引き受けるべき問題もございます。そこら辺は、予算の成立が年度内にございますれば、それに伴いまして、今まで引き受けておりまするものをこちらに振りかえいたすという関係がございまするので、成立後の期間が短うございましても、その間にこの程度の金額は消化しできるんじゃないかというふうに考えておるわけであります。
  146. 千田正

    ○千田正君 きわめて重大なお尋ねをいたしますので、総理大臣から特にはっきりした答弁を聞きたい。
  147. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ちょっと済みませんがお待ち下さい——。
  148. 千田正

    ○千田正君 私は、この際、特に総理大臣にお答えをいただかなくちゃならないという問題は、先般来、しばしば日ソ間の問題については、この委員会においても論議されておりましたけれども、わが国から代表として赤城農相、高碕代表等が行かれてから、ちっとも進んでおらない、交渉が。しかも、十八日に、ソ連側からは、日本との間には平和条約を締結しない限り、ソ連側としては安全操業問題に応じない、二点としましては、領土問題は、日ソ共同宣言によってすでに解決済みである。であるから、この切り離し方式によるところの日本側の要請には応ずるわけにはいかないという意味で拒否の回答をもたらしてきたということは、私があえて言わなくても、すでに政府当局においては御承知のところだと思う。そうしますと、先般、赤城、高碕両代表が日本を出発するに際しまして、当委員会並びに国会等において声明しましたところの、今度の代表として行く場合においては、単なる漁獲量の交渉である、政治折衝はやらないんだ、また、そういう権限も付与しておらない、こういうのでこの間立っていったのでありますが、その後、交渉の段階に入っても、ついに今日に至ってもその解決の糸口さえも見出し得ない。そうしますと、いつまでたったならば、一体これは解決するか。一方においては、もうすでに漁期が近づいてきておりますので、出漁の準備をしなければならない。国内行政としましては、先ほど各同僚委員からお尋ねしておるように、あるいは衆議院を解散しなければならないんじゃないかという情勢に迫られているときに、このような重大なる国際の関係の問題が解決せずに、じんぜんとして延びておるということは、われわれはとうてい了承し得ないところであります。漁獲量のみの権限を与えた代表において解決できないとするなら、それにかわるべきところの、政治折衝するところの立場、権限を付与されたところの外務大臣、あるいは石井総理なりその他の方々が行けないとするならば、むしろ、岸総理がみずから乗り込んでこの問題の解決をしなければならない段階に追い込まれる点が多々あるとり考えられるのでありますが、岸総理としましては、どういうふうにこの現段階の交渉を進められるという御意向でありますか、お伺いしたいと思います。
  149. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 千田委員も御承知通り、ソ連との間におきまして、今特に懸案となり論議されておる現実の問題が漁業条約に基くところの本年度の漁獲量を定めるべき問題と、それから第二は、昨年われわれが提案をいたしております安全操業の問題と、それから日ソ共同宣言によって継続審議になっておる平和条約の締結の問題——これは当然領土問題を解決する内容を組み入れたこの平和条約の締結の問題、こう三つの問題があるわけで、そうして三月十八日にきた回答というのは、いわゆる安全操業等の問題について、私どもは、領土問題を含む平和条約の締結の問題は、従来の共同宣言を発するまでの間の両国の交渉の経緯にかんがみても、今日なおまだ解決を見る段階でないから、いわゆる領土問題を含む平和条約が締結されるまでの暫定措置として北洋の安全操業の問題を提議いたしてきておったのであります。しかし、年々の漁獲量の問題は、これは言うまでもなく、漁業条約に基いて両国が、科学的根拠によってそうして本年度漁獲量を定める委員会において定めることなんで、両国がそれぞれ委員を任命し、代表を任命して、そうして折衝しておる問題でございます。今回の三月十八日の向うからの回答というものは、要するに領土問題とそれから安全操業の問題に関しての向う側の回答でありまして、今、千田委員があげられましたような二つの事項をその主眼としておるものでございます。赤城農相、高碕代表等を送りましたのは、漁業条約に基く年々両国が定めるべき漁獲量の——それは、条約によれば、科学的根拠によってこれをきめるということになっておりますが——この問題でございます。この問題は、あくまで漁業条約の精神にのっとって科学的基礎においてその漁獲量を定めるべきものでありますが、不幸にして今日まで共同調査ということができておりませんために、両国が持っております科学的根拠というものが、それぞれ一方に偏したものであり、なかなかこれが致を見ないのが今までの段階であります。こうして、赤城農相が参りましたのは、この問題をきめるという使命を持って行っているわけでありまして、平和条約やあるいは安全操業の問題について交渉をするという権限を與えてないわけでございます。こうして、赤城農相が参りましてから、数回イシコフ漁業相とも会っております。そうしてまだ解決の具体的の見通しというものはっきかねる状況でありますけれども、私どもの報告を受けておるところによれば、今私が申しましたように、漁業条約に基く漁獲量の決定の問題は、領土問題やその他安全操業の問題等とは全然関係ない問題としてあくまでも審議しようという根本が、両方の言が一致しているということが報ぜられております。またその後オホーツク海における漁獲の問題等について両者の間に会見が持たれたようでありますが、いまだ、お話しの通り具体的に解決するという見通しには達しておりません。しかし、私は、日本の一部において懸念されておるように、ソ連がこの年々漁業条約に基く漁獲量というものをきめるについて、他の平和条約の問題等を含めた政治問題とからましてこれを審議するとか、あるいはそれの審議をおくらせるというような意図のないことが明らかにされておりますので、昨年の実例から見ましても、漁獲量に対する科学的データというものが一方的であり、なかなか一致することがむずかしい点もございますけれども、十分にそういう立場で両方が話すならば私は解決のことは必ずできる、またそれをやるように目下鋭意努力をいたしておるわけでございまして、お話の通り、漁期も迫ることでありますから、これはなるべく早くその結論を得なければならぬ問題としてせっかく努力をいたしておるわけでございます。
  150. 千田正

    ○千田正君 総理大臣のお答えは、まあ私ども同じように考えて、早く解決するようにと望んでおりまするが、日本側の考えておる、総理大臣のお考えになっておるような考え方と、ソ連側が考えておる考え方とはおのずがらそのベースにおいて違っておるという点がしばしば向うからも指摘されてきております。しかし、このまま政治問題とからみ合せないで漁獲量だけの問題、先般も八万トンという線を先方は出して参りましたが、これはわが方においては、それを了承するわけにはいかないということで、あくまで、それ以上のことを要求しておるのですが、これで話し合いがつかないという場合においては、日本側としましては、やむを得ないから、とにかく漁期が近づいてきた場合において、また漁期に入った場合においてはソ連との交渉のいかんにかかわらず強行出漁するという決意を持っておるのかどうか、これは石井農林大臣代理並びに岸総理から特にその決意のほどを伺っておきたいと思うのであります。
  151. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これはせっかく交渉中でございまして、私どもはあくまでもこれを妥結するという強い決意と熱心な努力をいたしておるさなかでございますので、これができなかった場合にどうするということをあらかじめ予定して論議することは私は適当でないと、かように考えております。
  152. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 私どもはいつでも出漁のできるように業者をして準備をせしめつつあるのでございますが、話がつかない場合にはどうするかというような問題は、私どもそこから先のことは考えていないのでございまして、話がっくものとして準備をやらしております。それから先の問題はただいま総理大臣が述べたと同じ考えを持っております。
  153. 千田正

    ○千田正君 今度お伺いするのはほんとう日本の立場にとって重大な問題でありますので、はっきりした御答弁をいただきたいと思うのであります。それは、岸総理大臣総理大臣に御就任以来、日本のいわゆる悲願と申しますか、日本国民の総意でありますところの原子爆弾及び核実験の禁止に対しましては、従来しばしば国会においても声明をされ、また各国に対しましても特使を送り、あるいは国連においても、そういう問題については、あくまで日本民族の悲願を達成するために努力を続けてこられたことにはわれわれも敬意も払うし、われわれ自身としてもこの達成に今後とも努力するのでありますが、この二十四日ジュネーヴにおいて行われました国際海洋法会議におきまして、ソ連側から公海における核実験の禁止を提案したのに対して、日本側は、これに対してイエスもノーも言えない。しかも十一日の日には大江代表が第二委員会において、公海の原水爆実験に触れまして、公海の核実験は公海の自由な使用を大幅に制限するもので、二十七条の侵害であるから、日本は二十七条の注釈を支持する。あくまで核実験を禁止するという意味の発言をしておったのにもかかわらず、二十四日のソ連の提案に対してはイエスもノーも言えない。しかもこれに対して、外務当局に対して、あるいは岸総理大臣に対して大江代表から、いかにすべきかという請訓を求めてきておられるということを新聞に発表されておりますが、この問題はどう解決するか。しかも国連の招集しましたところの国際海洋法会議において長年の問われわれが叫んできましたところの原子力のこの核実験の禁止というこの大スローガンに対してわが国の代表がこれを拒否するというような態度に出るとするならば、今までの岸総理大臣の努力というものは、また国民の悲願というものは水泡に帰するというふうにわれわれは考えますが、これに対していかなるお答えを大江代表に対してなされるのか、またなさんとするのか、その辺のことをはっきりお答えを願いたいと思うのであります。
  154. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまジュネーヴにおいて行われております海洋法典の会議でありますが、先般ソ連が二十七条の公海自由の条項について御承知のように航行の自由でありますとか、漁業の自由でありますとか、上空飛行の自由でありますとか、あるいは海底電線布敷の自由でありますとかというようなものが原案にあったわけであります。それに対してソ連が公海における原爆の禁止という条項を出して参りました。従って日本はそれを議題にすることに賛成の投票をすることにいたしております。議題になりましてよく論議を聞きました上で日本態度決定することにいたしたいと思うのでありまして、現在のところまだそれに対して何ら決定いたしておりません。
  155. 千田正

    ○千田正君 私は、これはかりにソ連側の提案がどうも好ましからざる相手の提案であるからというようなことでこういう問題にちゅうちょする必要はないじゃないか、しかも日本としましては、相手国が共産圏の国であろうが、あるいは自由国家群の提案であろうが、日本としての要求はあくまで貫ぬかなければならない、そういう意味においてこういう公的の立場において日本の将来を決するような重大な問題がこの国際法に盛られるというような場合においては、断固として日本の主張を通すべきである。私はさよう考えますが、岸総理大臣はいかに考えられますか。
  156. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 公海でこの原爆の実験が行われて、それがいわゆる公海自由の、原則に対する大きな制限となり、これを妨げるものであるということにつきましては、私も同様に考えておりますが、ただまだ私ども論議がはっきりいたさないのであります、言うまでもなく公海でやることだけがいけないのであって、陸地でやるのは勝手にやってよろしいということを認めることには私どもの従来の主張からいかぬと思います。従いまして、そういう提案の趣旨並びにその内容を検討してみなければ、私どもの最後の態度はきまらぬと思います。私は、これは公海で行われることは、公海自由の原則に反するし、陸地で行われてもこれはいけない、これを禁止しようということを強く主張してきておる日本の立場、日本のわれわれの念願というものを、公海だけがいけないのであって、あとは勝手だというふうにも、もしも逆にそれを合法づけるような論議なり根拠なりという提案ならば、私はこれはいけない、こう思っております。その辺のことを十分一つ検討して、日本の最後の態度をきめたいと思います。
  157. 千田正

    ○千田正君 今の総理の御決意はわかりましたが、しからばソ連側が幸いにしてこのたび国際海洋法典に対して公海の自由という問題を表面に掲げて、そうして提案してきた。一方においては日ソ漁業の問題、しかも安全操業に対してはわれわれは公海自由の原則を表面に立てて主張してきている。このソ連側の矛盾に対してある一面においては、日本の公海の自由の原則に対しては日本との折衝においてはちゅうちょ逡巡しており、一方においては、国際会議においてはこれを主張しておるという、この矛盾に対して日本政府としては堂々とソ連の主張がもし公海の自由の原則を主張するならば、日本要求しておるところの公海安全の主張に対して同意を与えさせるべく、この問題に対して突き進んでソ連と交渉する必要があるのじゃないか、私はそう思いますが、総理はどう思われますか。
  158. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お説の通りだろうと思います。この海洋法の条約二十七条の公海の自由に含まれるものとして、公海の自由、漁業の自由、海底電線布敷の自由、公海上空の航行の自由というものがあげられておりまして、漁業の自由というような点において、北洋漁業に対する従来の日本の主張とソ連側の主張というものを十分に見ますというと、ここにまだ今度の原爆禁止の内容がはっきりわかりませんけれども、これらのいわゆる公海の自由というものをあくまで貫こうとする理論と、従来の日ソの問の折衝から見ますと、矛盾をしている点は、これは掘り下げて十分論議をして、日本の主張を貫くように努力したいと思います。
  159. 千田正

    ○千田正君 もう一つ国際海洋法会議におきまして、第四委員会においていわゆる大陸だなの定義がせられ、しかも残念ながら日本側は反対の投票をしたけれども、五十一対九票でついに日本は負けてしまった。この大陸だなの定義につきまして、私は非常に今後の日本の水産業、その他に及ぼす影響は大きいと思う。今度は定義につきましては、御承知通り、領海外における二百メートルの深度に達するまでその権限をその国が持てる。なおまたさらに天然資源がある場合は、それをこえてもまたこれを制限もしくは禁止することができるというような定義であるとするならば、これは言いかえれば、領海に準じたところの一つの大きな禁止区域をしかれるおそれがある。今度の国際海洋法会議におけるところの大陸だなの定義につきまして、私は非常に残念に思うのでありますが、これが本式に国際公法のうちにきめられる場合、日本の国内の産業に及ぼす影響は非常に大きいと思いますが、これに対する対処方針があるかどうかという点を、これは外務大臣及び農林大臣にお伺いしたいのであります。  それからもう一点、今まで豪州との間のアラフラ海の問題につきまして、一応ヘーグの国際裁判所に提訴することになっていたことは御承知通りだろうと思います。それがわが国の主張に対して相手国もこれに同意している。これの権限がどうなるか、今度のこの法案がかりに決定されて、はっきり国際公法の一つの条文として決定された場合には、過去におけるところのわれわれが提訴し権利を有しておったところの豪州との間のこの問題をどういうふうな解決に持っていかれるか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  160. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ジュネーヴの国際海洋法会議におきまして、大陸だなの問題についての日本意見が少数意見で破れたことは御承知通りであります。しかしこの問題につきましては、なお、論議される余地があるわけでありまして、大陸だなにおける表面のあるいは魚族、あるいは表面に付着しております海草と申しますか、そういうものの採取までの権利があるか、あるいは地下鉱物資源というような問題は、これからこの会議でいろいろ論議されるわけであります。そうゆう点については、日本の立場から言いまして、海中にありますもの、地下でないものに対して自由にできるという論議を、これからできるだけ続けて参りたいと、こう思っております。またその主張を貫いていくように努力して参りたいと思います。なおこの法典ができました後におけるただいまの司法裁判権の問題は条約局長から御答弁いたします。
  161. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ちょっと補足させてお答えさせていただきます。大陸だなの問題につきましては、ただいま大臣からのお話の通りでございます。そこでこの問題が果して成立するか成立しないかという問題は、これからわれわれ重大な関心をもってながめている次第でございますが、やはり豪州とわれわれの裁判の問題についてば、相当の影響があると考えております。しかし、大陸だなの問題は原則的の問題として採択はなりましても、われわれの既得権という問題もございます。従来あそこで漁擁しておったという既得権の問題、大陸だなに含まれるところの魚種と申しますか資源の問題、そういう問題ではなお争うべき余地があるかと考えております。
  162. 千田正

    ○千田正君 今のに付随して、ただいま日ソ交渉の漁業問題が出ておりますが、ただいまのところサケ、マスという問題でありますけれども、将来これと同じような問題としまして、海草をとっておりますところの日本の漁民にとってはこれまた重大な問題である千島列島周辺におけるところの海草の採取その他に対しての問題は、今後これと同時に起きてくるところの国際問題であると思いますが、その観点についてはどうお考えになりますか。
  163. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、この海洋法の会議でもって大陸だなの問題が一応委員会決定したわけでございます。これは本会議に持っていきまして三分の二の同意でもって決定するわけであります。本会議においても決定する必要があろうかと思います。また今申し上げましたような水中に、陸上と申しますか、海草その他の問題につきましてもこれから委員会等で問題になりますので、そういう点について日本の主張を十分唱えて参りたいと思います。ただお話のこの法典がことごとく日本に不利にきまったという場合には、やはり日本の周辺の諸国といろいろな問題が起ると思います。そういう意味においては、将来の問題でありますから、これをどう扱うかということを今申し上げかねるわけでありますけれども、しかし日本の漁民が平和裏に漁業をしてその生計を維持するというようなことでありますれば、友好親善関係を打ち立てておる国については何らかそういう話し合いでいく必要もあるのじゃないかと思っております。
  164. 千田正

    ○千田正君 時間がきわめて少いので、最後に厚生大臣に重要な点を三点だけお伺いして私の質問を終りたいと思います。第一点は、昨年国会を通過し引揚者に対する五百億の給付の問題が決定しまして、その後の進捗状態が十分じゃないようにわれわれは考えられる、またそういう訴えをしばしば引揚者の諸君から承わっておるのであります。それは、非常に末端における手数の繁雑さ、あるいはいろいろな証拠物件、これに関しても厳重に報告するので容易じゃない、その進歩状況があまりはかばかしくないが、これに対してはどういう方策を今後とられるかという一点。  もう一つは、終戦直前に日本軍の命令によって、かつて日本の統治圏内にありましたところの南洋の諸島におられたところの日本国民が強制疎開を命ぜられて男子は軍隊に徴用され、女子子供はこれは内地に送還を命ぜられて強制送還をされた、これらの人たちに対しても私は引揚者と同様の、終戦時における引揚者と同様の給付をなすべきであると思うが、この点について厚生大臣はどう考えられているか、この一点。  もう一点は、先般来大体引き揚げが迅速に進んで、留守家族も次第に数が少くなって参ったのでありますが、なおかついまだ所在不明の主人なり、あるいは子供なりを待っているところの留守家族の悲願としましては、一体今後、終戦後十三年を迎えた今日、なおいわゆる生きているものとして政府が留守家族に対する処置を考えるのか、あるいは推定死亡というような問題を一応のケリをつけて、この問題の解決の方法とするのか、その点において留守家族の要望と、また政府考えとの間に多少の隔たりがあるやのごとく感ぜられますのでこの点を明確にされて、この処置を進めていただきたい、かように思いますので、厚生大臣から以上の三点について御所信を承わっておきたいとい思ます。
  165. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) お答えいたします。引揚者給付金の問題が非常に認定がおくれておるということは私もしばしば耳にいたしております。まあ率直にいえば、御承知通り五月に法律が制定されて、同月の末にやっと省令を制定しまして、六月、七月等は、結局広範囲にわたっているものですから、各府県の職員に趣旨の徹底を期し、さらに市町村までこれを下したというところから大体事務ほんとうに進捗し出しましたのは九月、十月、十一月ごろになっております。ただいままで大体四五%の認定は終った、今後はまあ五〇%くらいいきたいと思っておったのですが、初めてのことでありますので、法律制定後趣旨の徹底に相当かかったということから、相当遅延の非難があったということは事実でございますが、今後は順調にいくのではなかろうか、その認定に対して、おっしゃる通り十三年もたっているものですから、引揚者であるということの証明に本人たちも非常にいろいろ困難を来たすというので相当このごろは便宜的に、断片的な資料も活用いたしまして、本人の申し出とにらみ合せて総合的に判断する、そう画一的にやかましく手続の上でかかることのないように配慮をいたしております。今後は予期の通りに参るのではなかろうか、こう考えているような次第でございます。何しろ対象が約三百万人近いことですから……、今後は順調に参る、こういうふうに考えております。  それから南洋の諸島から確かに強制送還されました方々、これもいろいろな事情があって、ほんとうにお気の毒だと思うのでありますが、この問題も引揚者給付金の制定の際に種々論議されたところなのであります。個々の場合に当ってみますと、非常にお気の毒な方もあるということは感じておりますが、この法律制定のときから、終戦前と終戦後の引揚者とにやはり区別を引いておりますので、この点は現状のように参りたい、こういうように考えておるような次第でございます。  なお、留守家族の問題でございますが、実は留守家族の方の一部に御承知通り、来年の八月でございますが、この法律が期限が参ります。三十四年の八月に期限が参りますので、その間にいろいろな法律関係が実に複雑しておる、今から研究しなければ、法律の効力が切れるときに備えて、実は各種の法律関係を想定しながら、何らかの救済処置を講じたいということで、実は法律の準備にかかりました。かかったところが、殺人立法だという非難を受けた、まことに私としては心外なんです。実は留守家族のために、今から準備をしなければ間に合わないじゃなかろうか、かかる複雑なる法律関係一つ法律にまとめ、そうして適当な救済方策を講ずるとすれば、各般の準備を今からいたしたい、こういう関係でいたしておったのですが、私としてはむろん留守家族の御意向を十分くんで、これらについて政府として、手を尽すべきだけは尽して、その上で遺族の希望等をもくみ入れた法律関係というもので、何らかの留守家族のための法律を作りたい、こうして準備をいたしている最中であります。
  166. 千田正

    ○千田正君 これで終りますが、一点だけ希望を申し上げます。今の厚生大臣のお答えで大体よくわかりますが、留守家族の問題は、やはり一方においては法的な研究をやられると同時に、一方においてはこの留守家族の悲願であるところの所在を十分に確かめて、帰還できる者があれば、あくまで帰還の方途をとってもらいたいというようなこと。先ほどの南洋諸島からの強制疎開に対しては、実にこれまたみじめな生活をされている方は相当おられますので、何らかの方途をこれをまた別個な問題として考えていただきたい。以上の要望を申し上げまして私は終ります。
  167. 八木幸吉

    八木幸吉君 岸内閣の中国問題に対する態度を反共主義の容共政策と評した者がございますが、この両者の関係が外交を進める上においてきわめて微妙なものがあるということはよく承知いたしております。私は第四次日中貿易協定について伺うのでありますが、その要点はいわゆる外交特権を有する大、公使と一般の外国人との間には待遇上相当幅のあることは御承知通りでありますが、通商代表部はどの程度の待遇を与えるかということにつきまして、以下数項目にわたって具体的に総理並びに補足的に関係閣僚にお伺いしたい。かように存ずるのであります。  第一点は、協定に民間代表部とありますが、貿易が国家統制になっておりまする中共としては、純然たる民間通商代表部というようなものはありえないのじゃないか。これは国家の出先難関ではないか、また代表部員は政府が任命するのではないかというふうに考えるのでありますが、いかがでございましょう。
  168. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の民間協定の締結は、日本民間三団体と中国における中国貿易促進委員会との間に締結された協定だと考えております。従って中国貿易促進委員会というものは政府の機関でなくて、民間の団体だとこう了承しております。
  169. 八木幸吉

    八木幸吉君 次に、この覚書の一の4に、建物に本国の国旗を掲げる権利を認める、こういうことがありますが、この権利とはどういう意味でありましようか。
  170. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 三団体からの政府に対する所見は、一昨日の晩文書をもって、一件書類を揃えて提出されたわけでありまして、私どもといたしましては、ただいまそれを検討することにいたしておりますので、詳しい内容等につきましては、検討をいたした上でないと申し上げかねると思います。覚書等の上において旗国を掲揚する権利があるということがうたわれておるようでありますが、われわれは中国の政府を承認いたしておりません。従って国旗というものを認めないことにはなっておりますので、従って国旗を掲揚する権利というものが認められるかどうかということは非常に疑問だと思います。
  171. 八木幸吉

    八木幸吉君 了解事項の一番あとに、国旗掲揚の権利を与えるなどということは、これは承認してない国家間では意味がないからということが書いてあるんです。意味がなければ覚書に書く必要はないと思うのに、覚書には特に権利として認める、こういうことが書いてございますし、先般ここで私が総理に伺いましたときには、国旗の問題はそのままでは非常に承認が困難であると再三仰せになりましたので、総理に、この点は文書ででもはっきり政府として認めることができない、こういうことをおそらく解答になると思うのですが、総理いかがでございましょう。
  172. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げましたように目下検討いたしておりまして、政府がどういうふうな文書で解答を出すかということにつきましては、関係各省におきまして審議をいたしております。しかし今外務大臣が申しましたし、また私が過去におきましてしばしばお答をいたしておりますように、この協定なり覚書というものは、民間の団体と向うの民間の団体との問に結ばれた一つの協定であり、その間にかわされたところの覚書でありまして、政府が、直ちにこれに対して責任が出るというものでないことは言うを待ちません。従って私ども態度としては、あくまでもこれは民間の協定として、覚書なりその他の協定として、政府としては日中の貿易を促進するという見地から、また日中の間においては国交を正常化すことはまだその段階でないという従来とってきている外交方針を堅持しなから、貿易は増進するという立場におきましてできるだけその趣旨の実現に協力したいというのが政府考え根本でございます。  しこうして国旗掲揚の権利というのは、言うまでもなく、国と国との間におきましてば、独立国家間における国際儀礼であり、国際慣行であり、またそれについてのいろいろ国際法上の関係ができておりますけれども、この申し合せば先ほど申しましたような民間の申し合せでありまして、政府としては今申しました外交方針の基本に基いて、権利として国が、政府がこれを認めるという意思は持っておりません。そのことはしばしば私ども明瞭にいたしておるのでありまして、文書でどういう形において解答するかということは今目下検討中でございます。
  173. 八木幸吉

    八木幸吉君 国旗掲揚の権利を政府としては認めない、こういうことでありますれば、この覚書のこの条項に関しては政府は認めないということをはっきり文書で御解答になりますか。
  174. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げましたように、政府がこれに対しての解答をいかにして、どういう形でやるかということにつきましては検討中でございますから、今御質問ではありましたけれども、必ず文書でそういうことを明瞭にするかどうかはなお検討をいたしてみたいと思います。
  175. 八木幸吉

    八木幸吉君 この問題はやはり口頭ではいろいろな誤解を生じますから、ぜひ一つ文書で解答をしていただきたいと思うのであります。  それからむろん今のお言葉でありますと、たとえ国旗が掲揚されましても、そのものには不可侵権はむろん認めない、あるいは刑法上の九十二条は発動しないのだ、こう了解してよろしゅうございますか。
  176. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) ただいま総理からお答えのありました通りでございまして、従いまして今のお言葉の通り刑法九十二条の適用はございません。ある意味における国旗国章の損壊罪というものは成立しないと思っております。
  177. 八木幸吉

    八木幸吉君 不可侵権はいかがでございますか。
  178. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 不可侵権と申しますか、要するにわが国が承認した政府を代表する意味において、公けの機関において国旗を掲げる、そのときにはその国を代表するものといたしまして、これを汚穢した、汚したり、損壊したり、引きちぎったりしますれば、その意味における九十二条の犯罪になるのでございまするけれども、今度の場合はその規定が適用ないのでございまして、不可侵権と仰せられまするのは……。
  179. 八木幸吉

    八木幸吉君 治外法権……。
  180. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 国旗……。
  181. 八木幸吉

    八木幸吉君 建物……。
  182. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) つまり建物につきましては、これまた国旗と違っておりまして、これは別の点から申し上げたいと思いますが、やはり先ほど総理大臣、外務大臣からだんだんお答えのある通りでございまして、目下政府がどういう方針をとるかということは検討中で最後の結論に達しておりませんけれども、私の了解いたしておるところによりますると、日中貿易はどこまでも促進して参らなければならないという見地に立ちまして、この貿易協定に基いて将来日本に設けられまする通商代表部またはその所属員のたとえば安全保障等につきましては、政府といたしましては万全の努力をいたしまして遺憾なきを期さなければならぬと考えておりますけれども、しかしこれはどこまでも事実上の問題でございまして、外交特権というような法律上の特権を認めるということにはならないどこまでもこれは事実問題としまして、国内法の範囲内におきまして事上実の安全保障の策をいたしていくというふうに了解をいたしておりますが、しかしまだ最後的決定には到達しておりません。ただ私の了解しておるところでは、そういうことになるのではないかと、かように考えておる次第でございます。
  183. 安部キミ子

    安部キミ子君 関連質問。ただいま日中貿易の国旗の問題なんでございますが、今度代表部ができまして、それで中国の国旗を掲げることに、向うの方では当然掲げられるという考え方に立っておられると思います。すなわち、当然掲げられると思いますが、この国旗の安全保障はそれでは日本政府はしない、こういう考え方ですか、極端に言いますと。
  184. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) この国旗の安全の保障ということがいろいろに了解できるわけでございますが、将来まあ通商代表部が参ります、ある建物にその代表部ができます、そうして国旗を掲揚する、これは商社でも個人でも掲揚するということはこれは妨げるわけにはいかないので、自由でございます。ただそれに対していろいろの意味合いから、この国旗を攻撃するような者が現われそうな疑いがありますれば、これは政府といたしましてはどこまでも事実問題といたしまして、そういうような間違いの起きないように事実上の処置をしなければならぬと考えております。これが事実上の問題でございますが、万々一、そういうことはなかろうと思いますが、万々一誤まって何か国旗に対して事故を起す者がありますと、この法律上の問題といたしましては、これは刑法九十二条の罪にはならない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  185. 安部キミ子

    安部キミ子君 もう一ぺん、あやふやなんですが、すみませんが、そうすると、事実上の処置としては、たとえばまあこれは悪い例なんですけれども、今度の日中貿易の協定につきましても、台湾政府から抗議が出たりあるいはいろいろな妨害が事実あっておるのですね。それに対して岸総理も大へん苦心をしておられるようですし、何とかこれは中国との貿易は成功させたいし、また一方台湾の方へも悪く思われまい、こういうふうな考え方でおられると思うのです。しかし実際は台湾政府が、これは大へん好ましくない考え方でありますが、万一そういうふうな妨害があったときに、国旗に危害を加えたというふうな事実ができたときには、やはり日本政府としては当然この国旗の安全については万全を期されなければならない、何といいますか、お互いの信頼の上に立ってね。善隣関係をますますよくするためにも、そうすることが日本の将来にとってもいいことだと、私はこういうふうに考えるのですが、それで今法律上から言えば義務はない、こういうふうには言われましてもですね。これは事実上の問題として万全の措置をとる、こう言われますことは、事実上の問題として安全の保障をするように努力するといいますか、そういう措置をとる、こういうふうに解釈していいわけなんですね。
  186. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 大体お言葉の通りでございまして、代表部ができまして、そこに国旗が掲揚されたと想像いたします。それに対してこれを攻撃するような力が動いているというようなことでもございますれば、これは政府といたしまして、当然これを保護しなければなりません。またこれが刑法九十二条の国旗、国章の損壊に関する罪の成立、罪が成立いたしませんでも、普通の私人の住居に侵入いたしましても、これは住居侵入の罪を構成いたします。またその他いろいろと他の刑法法令に触れるかもしれませんから、犯罪の未然防止の意味からいたしましても、警察といたしましては、当然それを防がなければなりませんし、ことに日中貿易はどこまでも促進しなければならぬという見地に立ちますれば、そういう間違いがあってはならないことでございますから、事実上の問題といたしましてはどこまでもそういうような間違いの起きないような万全の対策を講じなければならぬ、さように考えているわけでございます。
  187. 安部キミ子

    安部キミ子君 了承いたしました。
  188. 八木幸吉

    八木幸吉君 九十二条を離れまして、一般的な犯罪未然防止の見地から国旗を保護されるのか、覚書に権利を認めるということが書いてあるので、その点も若干考慮に入れて、一般とは違った取り扱いをされるという意味でございますか、その辺はっきりさしていただきたいと思います。
  189. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 覚書に権利云々とあるからということではございませんで、日中貿易はどこまでも円滑に運ばなければならないのでございますから、それに支障を起すようなことがあってはいけないと存じまして、そういう間違いを起さないようにしなければならぬ。ことに場合によりましては、今申し上げましたような住居侵入という罪にもなります。また器物の損壊というような罪にもなります。しかし根本におきましてはどこまでも日中貿易は促進していかなければならぬ、円滑に進めなければならぬという見地に立ちまして、そうして十分な安全保障の道を講じていかなければならぬ、こういうふうに考えております。しかし冒頭にも申し上げました通り、今、一昨々日、二十四日でございましたか、民間代表から関係文書を受領して、そうして関係各省で政府の方針を検討中でございまして、まだ最後的の決定を見ておりません。以上申し上げましたのは、私の大体考え方で、こういうところへ落ちつくのではないかというふうに私の意見を申し上げている、これは冒頭に申し上げた通りでございますから御了解を願いたいと思います。
  190. 八木幸吉

    八木幸吉君 今法務大臣も若干お触れになりましたけれども、覚書の1の前段に、代表部員の安全保障に適切な措置をとる、これは一体具体的にどういう意味でございますか、一般の外国人とどの程度の違いがありますか。
  191. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 民間協定や、それから覚書、これらをどういうふうに解釈をいたしますか、そうしてこれに対して政府はどういう形で協力をいたしますか、それらは今研究いたしているところでございまして、最後決定は見ておりませんけれども、いずれにいたしましても、事実問題としては、どこまでも安全保障の実をあげるような万全の注意を払う、しかしながらそれは法律上、いわゆる外交特権のような法律上の特権を認めるものではない、こういうように大体において結末が出るのではないかと、かように考えておるわけであります。
  192. 八木幸吉

    八木幸吉君 領事と、一般の外国人と、この代表部員と、この三つを比べまして取扱い上においては何らかの相違がございますか。
  193. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) これは国内法の問題でもございますけれども、また国際法にもわたりますから、あるいは外務省からお答えをいただいた方がよろしいかと思いますが、私の承知いたしおりまする限りを申し上げてみますると、御承知のように、いわゆる外交官と総称されているうちに、大公使と領事がございまして、大公使につきましては、国際法規が確定いたしておりまして、いわゆる外交特権、刑事、民事についての治外法権があることは御承知通りでございます。刑事につきましては、もう刑事訴追を受けません。民事につきましても、民事訴訟が提起されてもこれは却下されますし、また大公使の財産は差し押え処分の目的ともなりませず、そのほか課税処分からは免れるとか、警察の強制処分を受けないとか、いろいろの特権がございまして、これは今日国際法で確定いたしておりますが、同じく外交官と総称されているうちでも、通常外交官とよく言われておりますが、総領事、領事、副領事というこの領事の特権につきましては、まだはっきりと国際法規は確定しておらないように承わっております。国々の間にはあるいは領事条約というものができておる場合も相当あるようでございます。その場合には、領事の享有する特権は領事条約の内容によってきまるのでございまして、これによってある条約に見ますると、短期一年以上の自由刑、これに該当する場合でないと逮捕訴追をしないとかいうような規定を置いてある領事条約もあるようでございます。その他いろいろの特権的の規定があるようでございますが、これは一切領事条約がある場合には、その条約の内容によってきまります。この領事条約のない場合には、それではどうなるかと申しますと、これはやはり国際礼譲と申しますか、相当事実上の特権を与えているようでございますけれども、そういう場合の国際法規はまだ確定したとはいっておらないようでございます。それで大公使、それから領事、次には一般の外国人でございます。これは国内法規の支配を受けるわけでございます。先ほど申し上げました通り、純粋に法律上の立場だけから申し上げますれば、別に今度の代表部の所属部員というものは法律上の特権、いわゆる治外法権的の特権というものを認めることにはならぬだろう。しかし事実問題といたしましては、日中貿易促進の見地に立って万全の策を講じて、私ども遺憾なきを期さなければならぬ、こういうふうな結論になろうかと考えております。
  194. 八木幸吉

    八木幸吉君 外務省の見解を。
  195. 板垣修

    政府委員(板垣修君) お答えいたします。外交官、領事官等の関係につきましては、ただいま法務大臣からお答えのあった通りであります。今度の日中貿易協定によりまする民間通商代表部員に対しまする待遇につきましては、政府考えといたしましては、一般外人以上の特別の待遇を与える考えはございません。ただ事実上の問題といたしまして非常に特殊の地域から初めて常駐の形で参りますわけでありますから、ただいま法務大臣申し上げましたように、ある面におきましては事実上の待遇を与えることはあろうかと思います。もともとこういう規定が民間協定に入りましたことは、何か中国側で日本に来て不安があるからこういう規定を出したと思います。しかし日本は文明国といたしまして通常の外国人に対すると同様な待遇を与えれば何ら心配はないと思いますので、その点事実上困難な問題は起らないというふうに考えております。
  196. 八木幸吉

    八木幸吉君 予想される事実上の特別の待遇を与えるのを例示的に伺いたいと思います。
  197. 板垣修

    政府委員(板垣修君) この安全保障に関する限りにおきましては特に考えてはおりませんが、多少警察官の配置をふやすとかというようなことくらいのことではないかと思います。それもしかしその場におきまして特にそういう必要がないということになりますれば、全然そういう待遇も与える必要がないのではなかろうというふうに考えております。
  198. 八木幸吉

    八木幸吉君 次に、覚書の一の2に「出入国の便宜」とありますが、これは在留を無期限かつ無登録にみとめる、こういう意味でありますか。やはり一般外人と同じように一年以上在留には指紋をとるというようなこともあるのですか。
  199. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 今度参りまする民間通商部の部員は、少くとも半年ないし一年以上多少なり長期にわたって滞在いたしますので、これに対しましてはやはり無期限というわけではありませんが、不定期な無登録、無期限という査証を与えることになろうと思います。
  200. 八木幸吉

    八木幸吉君 そういたしますと、先ほど外務当局から御答弁のありました一般外人とは何ら区別をしない、こうおつしゃいましたけれども、無期限、無登録は、外交使節と申しますか、外交官の一つのやはり特権になっているように思います。そうするとそこにやはり差別が出ると思いますが、いかがでございますか。
  201. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 確かに多少一、二の点につきまして建前といたしましてはこの民間通商代表部に対しましては、これはあくまで民間ベースのものでございますからして、特にこれに公的資格を与えたり特権的地位を与えるという考えはないわけでございますが、そういう今の在留資格という点につきましては、これは六ヵ月なり一年ということになれば、やはり業務は執行できない、そうしますと貿易拡大のためにせっかく民間通商代表部を設置したという意味が失われるのであります。一、二の点においてあるいは理論的な問題ではなくて、事実上の問題といたしまして、便宜の問題といたしまして多少例外的措置は当然起り得るというふうに考えております。
  202. 八木幸吉

    八木幸吉君 登録をさして一年以上になれば指紋を取っても別に貿易上には差しつかえないのであって、これは一種のやはり特権だと思いますが、いかがですか。
  203. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 指紋の問題につきましては、確かに御指摘のような点があるわけでございますが、その点につきましては、実は民間通商貿易協定が交渉されている経緯におきまして、最も大きな問題の一つになったわけでございます。中共側がどうしても代表部員に対しては指紋は免除してほしいという強い要請がありましたために、ただいま申し上げましたように非常に特殊な例外的な措置として、事実上免除をするという措置を講じたいというふうに考えておるような次第でございます。
  204. 八木幸吉

    八木幸吉君 次に覚書の一の1に、もし法律上の紛争を起したときは双方の同意した方法で処理をする、とありますが、もし中共が同意しなかった場合には、日本の裁判権には服さないということになりますか。
  205. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) これも先ほど申し上げました通り日本の裁判権には服さない、こういうことになりますれば、これはもう明らかに治外法権であり、法律上の特権でございまして、今だんだん各省の間で相談いたしておりまする考え方では、さような法律的の特権的の地位は認めない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  206. 八木幸吉

    八木幸吉君 それは民事も刑事も両方でありますか。
  207. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 民事も刑事も同様でございます。
  208. 八木幸吉

    八木幸吉君 次に、覚書の一の3に暗号電報の使用を認めるという意味がございますが、これは官報と同様な電信には発信資格を認める、電話については官報電話の呼び出し及び通話の利用資格を認める、こういう意味でありますか。
  209. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 暗号電報の件につきましては、政府といたしましてはこれを権利として、あるいは官用ということで認めるわけではございません。ただ現在の日本の国内法の関係で暗号の使用を禁止する根拠がございません。従って事実上暗号の使用を許す、認めるということは——根拠はございませんから、そういう結果にはなろうかと考えております。
  210. 八木幸吉

    八木幸吉君 私は国際電気通信法にはその根拠があるように思うのですが、郵政大臣、いかがですか。
  211. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。現在は私人たると外交官たるとを問わず、暗号は幾らでも使えるようになっておりまして、制限条文はございません。
  212. 八木幸吉

    八木幸吉君 その他の通商特権は全部お認めになりますか。どの程度お認めになりますか。外務省当局……
  213. 板垣修

    政府委員(板垣修君) いかなる通商特権があるか、私ちょっとわかりませんが、いわゆる特権として認めることはございません。
  214. 八木幸吉

    八木幸吉君 暗号電報の問題でありますが、日ソ通商条約の付属覚書の第二条には、暗号電報を認めると明らかに付属文書に書いてありますが、そういう制限がなければ、こういうものは必要ないと思うのですが、いかがですか。
  215. 板垣修

    政府委員(板垣修君) まあその点は国旗の問題同様でございまして、あるいは場合によっては無意味なものが書かれておるということもございます。しかし、これは政府関係でない、民間同士の協定で書かれたものですから、これはあるかないかということは、ちょっと幾らか……、また削除するという必要もないと存じます。
  216. 八木幸吉

    八木幸吉君 次に代表部の中に無線の発信送置をした場合には、取締りをなさいますか。
  217. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。現在の電波法では、外国政府及び外国人に対しては免許をしないことになっておりますので、現在のところは免許できません。でありますから、外国の政府から日本に対して電波の使用の申請があった場合には、現行では、電波法上の規定では免許ができない状態になっております。
  218. 八木幸吉

    八木幸吉君 私の伺うのは、もし代表部の中にそういう装置があるということを発見した場合には、臨検してこれを撤去させるというだけの手段をおとりになるかどうか、これはむしろ法務大臣だと思いますが。
  219. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私の方ですから。日本国内にある在外公館でも同じでありますが、無線局を作り無線機を設置することは、これは不法電波になりますので、取りのけるかどうかはなかなかまだ慎重に調べなければわかりませんが、不法な電波であると思います。
  220. 八木幸吉

    八木幸吉君 私の伺うのは、大公使館であれば外交折衝でそれを交渉すると、通商代表部が外交特権を持たなければ警察力でこれを踏み込めると、こう思うのですが、そこの違いを聞いているわけです。
  221. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) この純粋の法律論だけを申し上げます回ば、無電局を開設するについて、免許を得ないで無電局を開設する、そしてそれを使っておりますれば、電波法第四条にございますから、違法の行為になります。従いまして、そういうような犯罪の容疑がありますれば、今お言葉のような場合が生ずるということになるのでありまするけれども、ただ、それは純粋の法律解釈だけでございまして、事実問題としまして、そういうような場合が果して起きるかどうか、起きた場合にどう処置するかというようなことは、おのずから、まあ別個の問題になるかと存じております。
  222. 八木幸吉

    八木幸吉君 覚書一の前文に政府の同意のことがございますが、今、総理並びに関係閣僚から伺いますと、国旗、裁判権等については多少難色の点もありますので、一括同意というわけには参らぬと思います。ところが、この覚書の中には、覚書の三に、「日中貿易協定と同等の効力を持ち、貿易協定の不可分の一部をなす」と、こういうふうになりますと、一部否認されたときには、この協定の効力というものは同意の面においてどういうふうになりますか。
  223. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 覚書は政府の同意を条件といたしておりまするが、先ほどからお話し申し上げましたように、確かに覚書の条項の中には、政府といたしましてそのままのめないものもございます。あるいは解釈によって何か事実上の措置を講じ得るものもあります。いろいろなものを含んでおりまするので、政府の方針といたしましては、この日中貿易協定、覚書を含みまする日中貿易協定そのものに対して同意を与えるということは不可能と考えております。しかしながら、先ほど総理大臣もお話申し上げましたように、日中貿易協定の精神といたしておりまするこの貿易拡大、こういう趣旨に賛同する意味におきまして、これにできるだけ協力を与えていきたいというのが政府の方針でございます。
  224. 八木幸吉

    八木幸吉君 もうちょっと法律的なことを……。
  225. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 従いまして、もしそういうような態度でこの覚書の中で一、二認められないものがあるという場合にどうなるかという点につきましては、これはむしろ日本政府よりは中共側の態度にかかるわけでございます。
  226. 八木幸吉

    八木幸吉君 一部否認した場合の効力をもう少し親切にといいますか、わかりやすく説明してもらいたいですね。
  227. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 委員長から参考のために政府側に申し上げます。理事会におきましての申し合せでも、質疑時間に対して大体倍の答弁時間を予定した建前のもとに理事会の申し合せ、この申し合せに従って本委員会運営委員長はいたしております。右、御了承の上御答弁を願います。
  228. 板垣修

    政府委員(板垣修君) ただいまの点につきましては、これは民間同士の協定でございますので、その一部を否認した場合にどうなるかということにつきましては、実は政府といたしましては、措置できない次第でございます。
  229. 八木幸吉

    八木幸吉君 最後に総理に大体の問題について伺って、私の質問を終りたいと思いますが、今の関係閣僚並びに政府委員の御答弁を伺っていますと、一般外国人と法律的には同じような取扱いをするとは一応言われますけれども、若干そこに領事に近いような特権を与えたいような気持があるというふうに察せられるのであります。政府としては、「貿易」と「承認」とは別個の問題であるというふうな建前をおとりになりまして、そうしてずっとこの問題を進められておるようでありますけれども、しかし、やはり何と申しても、通商代表部の設置を認めるということは承認に一歩近づいた感を与えたということは、これは否むことができないのでありまして、国旗掲揚の問題が国民政府を非常に刺激しておるということは御承知通りでありますが、この問題に対してどういう打開策をお持ちになって、またその経済的な影響はどうであるか、この問題が一つ。  それから今回の日中貿易協定の結果、東南アジアあるいは韓国、あるいは米国等の一連の自由主義国に対して相当のやはりショックを与えている、また経済的にも影響を与えている、こう思うのでありますが、この点はどうお考えになるか。  それから次には、外交はどうしても信義を重んじなければならぬ。道義に立脚しなければならぬということは、これは申すまでもないことでございますが、終戦当時に蒋介石総統が「暴に報いるに徳をもってす」と、こう言って日本の引揚者を遇したことは、われわれが銘記しなければならぬと思うところであります。この蒋総統の考えについて、総理並びに外務大臣はいかようにお考えになるか、これが一つ。  それから最後に、今後中共とは貿易を通じて友好関係を深めていく、他方また、国民政府を初め日米との協力関係もますます緊密にしていく、こういう外交の方針であれば、勢いこれは二面外交と申しますか、その面が深いわけであります。これを一体どういうふうに円滑にお進めになるかという、その確信と見通し、これらの点についての総理並びに外相の御意見を伺いまして、私の質問を終りたいと思います。
  230. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日中貿易を促進するということは、これは日本の国民の一致した要望でございますし、また日本の経済といたしましては、この貿易を増進することが必要であると思います。ただこの中共政府を承認するか、あるいはこれとの間に国交を正常化して政治関係を作るか、外交関係を作るかという問題に関しましては、国内におきましても意見が分れておりまして、政党の間におきましても、私どもはその段階でないという、そこに一線を引いて、貿易関係はあくまでもこれを増進するという立場をとっております。この根本につきましては、すでに日本があらゆる国に対しましても、その趣旨は十分述べておりますし、また私が昨年東南アジアの諸国、またアメリカ等を歴訪いたしました際にも、至る所においてこの趣旨を述べて、日本の立場というものを理解せしめて参っております。私はこの考えは、日本の置かれておる立場から見ますと、最も現実に即し、しかも適当な外交政策であると確信いたしております。  そこで今回の第四次貿易協定の問題に関連をいたしまして、いろいろな問題が起っておりますことは、今、八木委員のおあげになりました通り、私は国民政府等におきまして、非常にこの点に関して刺激されておるという事実も承知いたしておりますし、また正式に国民政府から、そういう国旗を認めるというようなことであれば、これは非友好的の態度であるというような、そして日本にぜひ考えてもらいたいというようなことの申し入れがある、これも事実であります。しかし、私はこの日本根本の外交方針並びに経済政策でわれわれのとっている考え方というものの根本については、先ほど申しましたように、従来も十分に徹底せしめるように努力をいたしており、これについては理解があるものと私は信じております。しかし第四次貿易協定に関連いたしまして、いろいろな論議なり、あるいは表面的に表われておる字句等、あるいはその協定の本質及び日本政府がこれを扱うところの態度等について、まだ政府も一切の何を明らかにいたしておるわけでもありませんし、いろいろな危惧や、いろいろな懸念や想像というものをまじえて、私から見れば、われわれの態度、われわれの考えというものがまだ十分にこの問題に関して正当に理解されておらない点があり、いろいろな懸念がこれに付帯して起されておるというのが実際の実情じゃないかと思います。そこで、われわれといたしましては、あくまでも日本考えにつきまして、十分に誠意をもってこれらの国々に誤解を生じたり、あるいは理解の十分ならざるところから起ってくるところの友好関係の支障というものを除くことに、全力をあげて努力をいたすつもりでありますし、今努力しつつある現状でございます。  しこうして、このことがすでに台湾との貿易の一部におきまして、あるいはその他、東南アジア方面の華僑等を刺激して、一部の経済的影響が現われておるということも、これも事実であります。十分に、今、私どものやりますところの努力が徹底をいたし、これについて了解をするならば、これらの事態というものは進展し、私は改善されてくるだろうと思いますし、またそういうふうにしなければならぬと思っております。この日本の外交方針の根本というものについては、われわれがしばしば申し上げておるように、一方、日本は自由主義の立場、日本の国の建前からいって、自由主義の立場を堅持し、自由主義国との間にも十分の協調を保っていくという考えを述べておりますが、しかし共産圏の国々との間にも、この世界の緊張を緩和し、世界の恒久平和を念願する上から申しまして、私どもはできるだけ友好の関係を取り結んでいくように努力をすべきものである。従ってこのソ連との間にも国交を正常化してきておることも御承知通りであります。しこうして中共の承認問題に関しましては、いろいろな国際情勢なり、国連における情勢なり、いろいろな点がまだ調整をされておらない現状においては、これを認めることはできないということでございまして、私はそういう共産国と正当なる関係、友好関係を結ぶということが直ちに自由主義の国々の立場を捨てるものでもなければ、それが日本考えておる平和外交なり、大きな国際関係を悪くするものであるとは私は考えておりません。さらに道義に基く外交、さらに蒋介石総統が終戦の際にとられた措置に対してお話がございました。私はこの点は、日本国民の忘れ得ない、深く心に銘記しておるところであろうと思います。あのときにああいう措置をとられたために、数百万の日本人が無事に日本に帰還したということは、日本人が忘れることのできないことである。またわれわれがそれによっていち早く国交を正常化し、友好関係を結んでおるということ、その後における両国の関係というものがきわめて友好的に行われておるというような事柄に関しまして、また私はこの見地から、日本が現在中共政府を承認する段階でないと、この国民政府と中共との関係が調整されておらない現状において、われわれはあくまで従来の友好関係を結んでおる国民政府との関係を頭に置かなければならぬということも、従来申し上げておる点でありまして、この点に関しましては、私はあくまでも日本国民が銘記しておるところであり、また政府といたしましても、その道義を無視することはするつもりはございませんし、不幸にして今回の第四次協定に関連して、国民政府に対して非常な刺激が与えられており、いろいろな疑惑なり、いろいろなこの日本に対してあるいは友好関係を阻害するものじゃないかというような考えがあるということは、非常に私は遺憾であります。それは決してわれわれが道義を失い、捨て、また終戦当時のわれわれ国民に与えられたあの銘記すべき寛大な措置というものに対して、われわれが忘恩的な考えを持っておるものではない。あくまでも今申しましたような趣旨において、第四次協定というものを扱う政府考え方なり態度について、不十分な点についてはなお十分に努力して、理解を深めて、私はこの正常な関係を取り戻すように努力をしていきたい、かように考えております。
  231. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま総理の述べられた御趣旨にのっとりまして、私としては最善の努力をいたしたい、こう考えております。
  232. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 憲法を初め、法律総理大臣の権限というものはきわめて大きく、従って責任もまた重大でありますが、今岸総理の置かれておる立場として、決断すべき幾多の問題がわが国にはあると思います。一国の総理はその決断のタイミングをはずさないということが私は最も大切なことかと考える次第です。その若干について伺って参りたいと思いますが、ジュネーブの国際海洋法会議については、他の同僚が触れましたので、重複を避けますが、ただ一言この点について承わりたいことは、クリスマス並びにエニウェトクにおいて核実験を予定しておるところの米英は、この海洋法会議を盾にしての実験禁止に賛成するはずはないと思うのです。  そこで、あなたの答弁を承わっておりますと、海洋だけでなくて、大陸でも禁止というのじゃなくちゃ困るのだ、こういうことですが、それでは、私は、一歩も問題は進まないのではないかと思うのです。願わくば、海洋も大陸もともに禁止できる、この形でいけば一番よろしいと思います。その最善が尽せない場合は、ステップ・ハイ・ステップ、海洋だけでも処理していく、こういう態度を私は日本総理としてはとるべきではないか。そこで、公海の自由の原則という、この一本で、南太平洋においても、オホーツク海においても、全国民の世論というものを背景に、強力に私は邁進すべきではないかと、かように考えますが、総理見解を伺います。
  233. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 公海自由の原則をあくまでも貫くようにすべできめるという、いずれの国に対してもこれを貫くべきであるという矢嶋委員のお考えには全然同感であります。私はこの公海上におけるところの核実験の禁止の問題に関しましては、先ほど私の意見を申し上げましたが、現在の世界の大勢を考え、従来といえども、私は、これの禁止ということは非常にむずかしいことであるけれども、何とかして実現しようという熱意を持っておりますので、十分にこのソ連の今回の提案の内容、論議等を通じ、その真意ないしその影響するところ等も十分に考えまして、この私自身が、また日本国民の念願であるこの実験禁止の実現のためになることであるとするならば、私はもちろん、ソ連の提案であるからどうの、英米の提案であるからどうの、ということにとらわれず、われわれとしても態度をきめたいと考えております。
  234. 千田正

    ○千田正君 関連して。  先ほど私の質問、並びにただいま矢嶋議員のお尋ねに対して、総理はきわめて明快なお答えをいたしたのでありますが、ただいま各種の夕刊を見まするというと、ジュネーブの国際海洋法会議の中でも、ただいま問題になりましたところの、海洋におけるところの公海自由の原則に基いて核実験を禁止するという、ソ連並びに外四ヵ国の提案に対して、日本の河崎代表が棄権をしたという国際電報を各紙が報じております。わずか五分か三分の間に、首相のお考えと出先の代表の行なった行動とが一致しないということは、私は、はなはだ遺憾に思いますが、その点について、将来日本は、しからばこの公海の自由の原則に基く、いわゆる核実験禁止ということを棄権したとするならば、日本としては、公海において核実験を再びほかの国にも許すという考えのもとに、代表をして指示せられたものでありますかどうですか、その点を明快にお答えいただきたいと思います。重大な問題ですよ。(「そう訓令を出しておったのでしょう」と呼ぶ者あり)
  235. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 議題に出すことに対して賛成するという訓令を出しておりますけれども、棄権するという訓令は出しておりません。
  236. 千田正

    ○千田正君 若し誤まりがなかったとするならば、各東京のこういう新聞社の諸君もおりますが、各新聞紙上には、ただいまの夕刊では、あなた方が派遣しておるところの河崎代表は棄権しておるであります。そうしますというと、ただいまの総理大臣及び外務大臣のこの場でお答えしたお言葉と、出先の、あなた方の派遣した代表との間に食い違いがあるのじゃないか。その点を明瞭にしていただきたい。
  237. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まだ公報が入っておりませんから、いずれ公報の入り次第……。
  238. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ソビエトの提案は禁止でなくて、また、私は日本の新聞を読んだところでは、自制をすると翻訳してあるのですね。私はいい翻訳だと思うのです。これにちゅうちょするということはどうも納得できません。おそらく外務大臣から受けた印象として、出先機関は棄権すればいいようにとるようなあなたは書面を送ったのじゃないですか。送っていませんか。
  239. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 議題といたすことに対しては棄権するようには言ってやっておりません。
  240. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 重複を避けまして、もう一点重複した問題として一言だけ伺いたい点は、第四次日中貿易協定の問題でありますが、この点について総理に伺いたい点は、三団体から実施に対し支持と協力を与えてほしいという要請があっているわけです。これに対してあなたは、いつを目途に与えるつもりでございますか。おそらく、国際関係考えて冷却期間を置いているのだと思いますが、ものには私はタイミングというものがあると思います。余分のことですが、三月二十六日の朝日新聞に横山泰三氏の筆になる社会戯評、「対日断交もあり得る」というのが、政治漫画が出ておりますが、お買いになった人は見ていただきたい。この紙背には国民のまなこが、岸総理のまなこと、それから、その足取りっと見ておる。これは非常に私はよくできていると思う。一体あなたは今の状態をいつまで続けるつもりですか。いつを目途にしているか。それをお答え願いたい。
  241. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど他の関係大臣からお答えを申し上げましたように、目下関係省——先ほど来いろいろ論議がありましたような内容を持っておりますので、関係省におきましてまだ検討中でございます。できるだけ早くすべきものである、結論を出すべきものと私は考えておりますけれども、何分にも、出ましたのが両三日前でありまして、関係省も非常に広いものでありますから、関係省において検討をいたしておるのが現状であります。
  242. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一点。  国際問題といたしまして、西ドイツは最近いろいろの動きをしておりましたが、ついに先日キリスト教民主同盟の提案になる核武装の決議案を可決いたしました。これにつきまして、総理はどういう所見を持っておられるか。またこのことが今の国際情勢にどういう影響をもたらすであろうと総理は見通しを立てておられるか。なお外務大臣からもあとでお答え願いたいと思います。
  243. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ドイツその他NATO諸国との会議等におきまして、いろいろな論議が行われ、その結果として、これに加盟しておる国々がそれぞれの態度をきめて参っておりますが、私が施政方針にも申しました通り、いかにもこの現在の国際情勢というものは、何分最近のこの進歩した科学兵器、核兵器でもって武装して、その力のバランスによって平和を維持しようという努力のこれは現われであることは言うを待ちませんが、それが同時に、恒久的平和を念願している世界の大多数の人々には一つの不安を与えているというのが現実であろうと思います。私は核兵器の問題につきましては、他国がどういう態度をとろうとも、一貫して、日本は核兵器をもって武装する意思はございませんし、また、そういうものの持ち込みを拒否するという態度をあらゆる場合において声明をいたしておりますが、日本としてはその方針が何ら変えるべきものでないし、これはますます厳守すべきものであると考えております。
  244. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 国際情勢の影響はどうとられておりますか。
  245. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申しました通り、一方から言うと、この両陣営の対立の緊張というものは、非常に現実的に何と言いますか、非常に緊張の度が高くあって、そうしてあのNATO加盟諸国は、これをもって、核兵器でもって武装しなければ、とてもヨーロッパの平和は保てない。ひいては世界の平和を保てないという見地から、ドイツの中にもずいぶん議論があったけれども、ああいうことができ上ったのであろうと思います。しかし、同時にそれが国際的には世界の人類の恒久平和を念願し、また核兵器というものの惨害を考えて、これを兵器に用いてはならぬという国際人類の良心からみますると、これはああいうものは遺憾な状況であるという感じを与えておると思います。
  246. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ドイツが核武装を決定したことは、世界政治の上において、国際政治の上においては相当大きいことだと思います。むろん、NATO加入後の情勢から見まして、ドイツにもそういう動きがあり、あるいはいろいろな意味でそういうことが考えられないという情勢でもなかったわけでありますが、今後の国際情勢の動きについては大へん大きいのでございますが、国際間の動きについてはいろいろなタクティックスもあることでありまして、ドイツは巨頭会談において、東独と西独との問題を解決したいという非常に強い念願も持っております。そういうような意味から言いますと、一つの政策的な問題としてこれを投げかけたというふうにも考えられるわけでありまして、必ずしも、ドイツが全面的に核武装をやろうというのは、あのときの総理の立場から言いますと、必ずしもきまっておらなかったのではないかと思うのであります。従って国際間のそういう動きについては、しばらく冷静によく見て判断をいたさないといけないと思うのでありますが、しかしながら、何といたしましても、ドイツが核武装をきめたということ自体は、相当大きな今後の国際問題に影響を与えることだと、こう考えております。
  247. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理は東西両巨頭会談の成立に今後とも努力されますか。
  248. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ぜひこれは成立させたいと思います。これは、ただ私一個が考えておるだけでなしに、世界のあらゆる恒久平和を願う者からいえば、そういう考えを同じくしておると思う。幸いに、両国におきましても、それに関するいろいろな話し合いなり、交渉、準備等が進められておるように考えられますが、ぜひともこの実現を期したいと考えております。
  249. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ドイツ、西欧におけるところの起った情勢は、一定週期をもって極東、日本周辺に現われるのが過去の私は例であったと思う。従ってこの際非核武装決議案とか、あるいはそういう意味の宣言を中外に出す用意は総理はございませんか。
  250. 岸信介

    国務大臣岸信介君) アジアにおける非核武装地帯を設けるようなことをしたらどうだという御意見は、すでに本会議等におきましても、社会党の方からそういう御質問にも接したのでありますが、その際に私は申し上げたのであります。それは、今日の国際情勢を見ると、そういうことが、要するに、東西両陣営の巨頭——核武装をしておるそういう何は、現在実際現実に持っておるものはソ連とアメリカだろうと思うのです。そうすると、それ自体の間に話し合がつかずして、そういう何がある。ただそれを除いてやってみても、われわれ実際持っておるわけではございませんし、それを与えておるわけでございませんし、また方針としては、われわれは日本の何は核武装をしないということを中外に声明をいたしているのでありますが、そういう状態のもとにおいて、ほんとうに安全な非核武装地帯ができるような状態であるならば、私は世界の核武装なり、核兵器というものに対するいろいろ国際連合その他の話し合いというものが、今のような状態ではないはずだと、こういう国際の現実を見るというと、そういうことを提案をいたしても、それは今の状況では実現性がないんじゃないかということが、当時私がお答えしたことでありました。やはり私はこの問題については、根本的にこの両陣営の巨頭が会って、話し合って、そうしてこういう兵器の問題に関して世界の人類が推しているような線に、すなわち禁止され、あるいは軍縮の問題等が取り上げられて、その結論を見るに至る以外には方法がない、こう思っております。
  251. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 議事進行について……。  先ほど公海における核実験制御の提案に対して、総理はこれに反対するあれはないというはっきりした御答弁をされましたが、しかるに今論議がありましたように、出先では棄権をしているという状態、これはなぜかという追及であって、外務大臣はそういう指示をしたことはないと言う。これは非常に大きな、国内と出先との非常に大きな食い違いがあると思います。ただ今もお話しのように、公報がついてないからということで、この問題の解決は出されておりませんが、これは非常に重要な問題でありますから、矢嶋委員の質問として留保をしておきまして、公報のつき次第、今日の今から、今後にでも、あるいはもし今日つかなければ明日でも……。矢嶋委員の質問を留保しておきたいと思いますから、次の機会に冒頭にでも取り上げて、はっきりさせるようにお取り計らいを願います。
  252. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 委員長承知をいたしました。
  253. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大蔵大臣に伺いますが、昭和三十二年度の財政投融資計画、当初の四千九十一億円のうち、解除されたのは二百八十億円だけですか。
  254. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) さようでございます。
  255. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 未解除分は今後解除されますか。
  256. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十二年度はこれきりであります。
  257. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そうだとしますと、このたびの補正一般会計は一兆一千八百四十六億何がし、財政投融資計画は実行額三千八百三億五千万円、こういう巨額に達します。そこで大蔵大臣は、よく富士山のミルク八合論を聞かしてくれたものです。それからまたときどきお医者さんになられたのですが、私は今日は逆に、私からあなたにお伺いいたしたいのです。それは昭和三十二年度の予算を組むときに、ミルクをたくさん飲ましたのですね。ことに一部の人はたくさんミルクを飲んだ。それでまた一部の人は飲もうと思ったが、十分飲めないうちに、うんと飲んだ人が下痢を起した。そうしたところが、あなたがもうミルクを飲んじゃいかんぞと、ここで苦い薬を飲みなさいと言って、薬を太った人にも、やせた人にも飲ませた、それが昨年の六月ごろです。ところがミルクの補給をとめても、一度太った人は依然として太っているわけです。ミルクにありつかなかった人はだんだん細って行くわけです。ところがあなたの方では、もう少ししばらくがまんしろと言ったのが、九月から十二月の予算編成方針を閣議決定したときの状況です。そうしてしばらくしておったところが、大きい人を見て、もう君の胃腸は大丈夫だから、ミルクを飲んでいいよと言うて、あなたが処置されたのが、今予算に出ている一兆三千百二十一億三千云々の一般会計予算と、三千九百九十五億に上る財政投融資計画、さらには法人税の二%引き下げだと思う法人税を二%引き下げれば、大法人も中小法人も、ともに恵まれる、こう言われるかもしれませんが、中小法人を二%引き下げたのは、それはやっとそれで食っていくだけなんですよ。ところが、大法人の二%というのは、その金が蓄積できるわけですから、これは複利計算で雪だるまのごとくなっていくわけですから、そういうふうに経済機構ができているわけなんですから、だから、法人税の二%引き下げというのは、大法人と中小法人に対して、同じ影響を私はしていないと思うのです。そこで、今置かれている状況はどういう立場かといいますと、ミルクをたくさん飲んで一ぺん下痢して、また、飲まされた人は、がっちりしているのです。ところが、やせて、とうとうミルクにありつかぬものは、にがい薬を飲まされて、もうしばらくがまんせよというときに、友だちが、ミルクを飲まされているのを口に手を入れて見ている連中は、全く気力がなくなってしまっているのです。こういう、いわば中小企業サラリーマン、こういう人ですが、こういう人々は今、質のいいミルクを飲ませるか、あるいはカンフル注射をしなきゃならぬと思うのです。そのカンフルは量が多過ぎると、興奮していけません。それから、その時期を失すると、カンフルはきかない。だから、ちょうど適当なときに、適当なカンフルをするということは、私はあなたの責務であり、あなたの腕だと思うのです。私はその時期がきていると思うのですが、いつ、どの程度の濃度のミルクを、どの程度のカンフルを、あなたは、先ほど私が言ったやせこけて、今までやっと生き延びてきている人に与えようとするのか、一萬田医者のお答えを願いたいと思います。
  258. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申します。私はミルクよりも少しこわ飯を食べ過ぎたと思っておるのですが、これは、むしろ食べ過ぎたのは、おっしゃるような中小企業ではなく、主として設備の拡大ということにあるので、これはむしろ大企業である。従いまして、今度の特別措置の一番影響を受けるのは、やはり大企業で、大企業を押えたわけであります。中小企業は別にこういうことがなくても、いろいろとやはり今日の経済構造の上では、私は弱い地位にあると思う。これはふだんから気をつけなければならない。今回は大企業が大きくなり過ぎて、そして、それに対して対策を講じた。ところが、やはり経済構造の上から、力の関係から、それが中小企業にやはりしわが寄っていくというような方向である。それで、当初から政府は、中小企業に対しては、金融その他の措置によりまして、初めから手をつける。初めから中小企業にはミルクを出しておるのであります。さように御了承願いたいのであります。  それから法人税のいわゆる二%引き下げですが、これは昨年度において、一千億に上る所得税引き下げをしまして、当時、税制調査会におきまして、余裕があれば、一つ二%程度の法人税の引き下げをするがいいという専門家の意見もありまして、そういう調査会の答申を尊重しまして、今回引き下げたのであります。同時に、今度は、法人税の軽減をします。その軽減の適用範囲を広げまして、そういう意味からは、ある程度中小企業にも恩典がいく、こういうことにもなっているわけであります。そうして、それで今、勤労者はどうかといえば、勤労者は今年も、来年にいきましても二百億くらい平年度化しまして、減税が平年度化しますので、二百億くらい三十三年度にはやる、こういうことになります。大体私は、処方せんとしてはあやまちがない、かように考えております。
  259. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ものの見方というものはいろいろあるものだと思います。まあ比較すると、はるかにあなたは、こういうものに専門ですけれども、しかし、私は納得できません。中小企業関係は、財政投融資九百八億でしょう。ところが、予算は惨たんたるものになった。また、失業者にしましても、アメリカは一月二月と急増して、三月の上旬にどうなったかというのを、私は労働省に伺ったところが、また五十八万失業者がふえたというのです。これはわが国に影響してきますよ。ところが、その対策としては、二万五千人ふやして二十五万人にしただけです。就労日数にしても、二十一日を二十五日にしてほしいという労働省の強力なる要望があったにもかかわらず、これもいれられていない。これは、まあ一、二の例ですが、大臣のようなことを考えられていたら、去年当初から、体力があまりなくて、よちよちついてきた人は、ついていけないと私は思う。今後、十分検討して、御善処願いたいと思う。  次に、具体的に伺って参りますが、今度の補正に当って、所得税、法人税、酒税、この三税を歳入に見積らなかったのは、どういうわけですか。新規歳入に見積らなかったのは。
  260. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今の三税は、どういうふうな……。
  261. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 所得税と法人税と酒税ですね。
  262. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これはまた三税をとりますと、また所作がいろいろと各方面に影響を持ちます。これは地方交付税にすぐ影響します。いろいろあります。そういう財源をとらなくても、収納済みの財源におきまして、財源になるのがあります。そうしてまた、その三税について、すでに第二号の補正のときに、財源にいたしておりますので、あまりとれない、こういういろいろな事情がございます。
  263. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 確かに補正二号のときには、法人税三百億を入れておるわけですね。これを見ると、相当三税の自然増収を見込んでおるのじゃないかと思いますが、どのくらい予定しておるのですか。
  264. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今、三税だけについて、どれだけの自然増収があるかということは、私は、数字的に覚えておりませんが、大体、自然増収は三十二年度におきましてやはり千億、こういうように見ております。
  265. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次に、大蔵大臣予算書を見ますと、どの省も全部繰り越し明許費というのがあるが、説明を見ると、天候の工合云々というが、それは四季の変化はどの国でもあるのです。あれでいったら、すべての国が繰り越し明許費になると思うのだが、ああいう今の予算の編成の仕方は、どういうお考えでいらっしゃるのですか。
  266. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 繰り越し明許費につきましては、費用の現実の支出に当りまして、今、矢嶋委員のお話しになりましたような、天候の関係でございますとか、相手方があります関係、あるいは、たとえば土地の取得という関係、そういうようなものがございまして、その経費の支出が当年度内に終らない可能性が高いというもの、そういうものにつきましては、従来から繰り越し明許費という制度がございまして、それを特別に予算の一部として御議決を願っておるわけであります。ただ最近におきましては、相当、明許費が多いのじゃないかという御批判もございまして、最近におきましては、できるだけその範囲を狭めるように努力いたしておるわけであります。しかしながら、明許費を非常に制限をいたしますると、そのために、かえって予算の運用に適当でないという場合もあります。これは従来から会計検査院あたりが指摘されておるところでございますが、あまり繰り越しの制度を非常に窮屈にいたしますると、年度末に至りまして、いろいろ経理上無理を生ずることになりますので、そこら辺もあわせ考えまして、適当の範囲内においてやっていくことが必要じゃないかと考えております。
  267. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 予算の執行上から、歳出面の組みかえ等によって、この補正の財源を捻出することはできなかったのですか。そういうことは努力してみなかったのですか。
  268. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) お答えを申し上げます。予算は御承知のように、一定の場合におきまして流用を許されておりますので、事柄の合理的な範囲内におきましては、相当程度の流用を費目の間においていたしておるわけであります。その上で、補正の姿をしぼってきたわけであります。
  269. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 義務教育費国庫負担金、それから社会保険費、これらはもう年々歳々、補正予算に出てくるわけなんですがね、これは地方財政でもウエートの大きい部分ですが、一年も経過してこの交付を受けたのでは、その間、利子でも大へんだと思う。また、行政にも支障を来たしているのじゃないかと思うこれは当初の見積りが適正でないのか、年々歳々同じことを繰り返しているのですが、これは私は地方自治体としては非常に迷惑しているのじゃないかと思うのですが、そういう立場から、自治庁長官としてどういう御見解を持っていらっしゃるのか。また、当該の厚生大臣並びに文部大臣はどういうふうにお考えになっているか。たとえば社会保険の場合は、お医者さんへの支払いがおくれていると思うのです。こういう点が、私は非常に保険行政の進展のために障害になると思うのですが、各所管大臣、どういう御見解におられるか、お答え願いたいと思います。
  270. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 過去の実績に照らしまして適切な予算を組まれまして、そうして地方財政に影響のないようにしてもらいたいということは、かねがね関係各省にも要望いたしております。早くそのようになることを期待しておる次第であります。しかしながら、なかなかそのようにも参りませんため、地方自治体で一時借り入れ等の措置をいたしておる現状でございます。これらの現状を早く解消したいと思っております。
  271. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 確かにこの決算によって払うという制度でありますと、各市町村で出納閉鎖期日以後清算することで初めて判明する、それから府県へきて、こちらへ参りますために相当おくれて参る、こういう点は確かに私は、非常に保険者としては運用がしにくいものである。しかし、私どもとしては、現金がないためにというふうな事柄が起りませんように、歳入の繰り上げ流用というふうな点を慫慂してこの欠陥を防ぎたいと思っております。今回の補正に当りましては、やはり被保険者数が予想以外に伸びましたのと、受診率や医療費が向上いたしましたために十六億余の不足を生じた、こういう状況でございます。
  272. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました義務教育費の国庫負担は、決算がないとわかりません。決算がありまして初めて負担金がわかるのですから、従って、やはり補正予算でなけりゃわからぬことになっております。  それから国立大学の病院医療費ですが、これは大体過去三年度の予算を平均して計上する、そして予算を取るのですが、しかし、新しい薬品がどんどん出てきます、そうして患者にそういうのをやはり施薬した方がよろしいという考え方からやりますので、多少どうしてもその予算では足らぬ、上回るというふうになります。従って、補正予算計上せなければならぬようになるということであります。
  273. 坂本昭

    ○坂本昭君 関連。今の文部大臣のお答えは、だいぶ見当違いのお答えで、この補正に組まれているのは医療費じゃなくて、保存血の使用の増加に伴う医療費なんですね、保存血なんです。そこで一つ伺いたいことは、ちょうど厚生大臣と文部大臣おられますが、保存血を国がつまり買っているわけなんです。これはアメリカの血液銀行の組織では、血液というものは特別な人が奉仕的にそれを提供するいわゆる預血返血の組織ができている。日本の場合は国が国民の血液を買う、その買う代金がこうして補正予算に組まれておる。こういう日本の血液銀行の組織は、これはどうも根本的に間違っているのではないか、つまりこういう補正予算を組まなくちゃいかぬということは、これは日本の血液銀行の組織が誤まりではないか、私はこの点一点だけ指摘して、これは厚生大臣の方が所管だろうと思います。厚生大臣の御答弁をお願いしたいと思う。
  274. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) どうも専門家の坂本さんでよく御説明願って、研究してみたいと思います。
  275. 松永東

    国務大臣(松永東君) 今の仰せの血液の問題ですね。それはやはり医療費のうちに包含されております。
  276. 坂本昭

    ○坂本昭君 その通りだけれども、血を国で買うのですね、アメリカあたりでは基本的にそうやっていない。
  277. 松永東

    国務大臣(松永東君) その点あまり私はよく知りません。
  278. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは総理、あなたは提出責任者ですが、義務教育費国庫負担にしましても、ことに、牛乳のごときは、これは九月からわかっておるのです。これは十分十一月ごろ出せる内容であります。どんなにおそくても、補正第二号と一緒に出せる内容です。もう三月ですよ。今まで出せない内容では絶対ありません。総理大臣、提出責任者ですよ。提出責任者として、私は責任を問いますよ。怠慢ですよ。いかがですか。
  279. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは私からお答え申し上げますが、むろんなるべく急いで、先ほどもそう言いましたが、急いでだす、そして御審議願う、本予算と関連の深いのを早く同時に出すと、こういうふうに心がけておるのでありますが、同時にまた、正確にして出したい、また、出すべきであるというものもありますので、そういうのが自然おくれております。これはまあ正確になるべく早くやればそれに越したことはありませんが、それはそういうふうに今後努めますが今回さようなことで、かようになっております。
  280. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 遺憾の意を表しておきます。私は総理に聞くのですから、総理一つお答え願いたい。この七十七億の歳入のうち、物品税が三十億で懲罰、没収が六億七千万が歳入になっておるのです。ことしの予算を見ますと、罰金及び科料は九億九千万から二十億一千万と約二倍半にふえておるのですよ。ところが、罰金が少くなるような対策というのは予算にはなくて、罰金を二倍半も予想するような予算を組むということはどうも私はおかしいと思うのですよ。  それからもう一つは、この物品税の中に運動具を取り上げたいのですが、総理は非常にスポーツが好きでいらっしゃる。まあ今度オリンピックでも招致するとすれば、スポーツ人口は大へんふやさなくちゃならぬと思う、調べてみたところが、運動具の物品税は四百四十億の中でわずか六千万円ですよ。物品税四百四十億の中のわずか九牛の一毛ですよ。わずかに六千万円です、予算書を見ますと。ところが、バット五百円、ラケツト七百円以上は税金がつくのです。従って、私はこの六千万円程度ですから、運動具の物品税というのは全廃した方がいいと思うのですが、総理の御見解を伺いたい。これは総理の方がいいですよ。
  281. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 総理よりも私がお答えします。  罰金のことですが、これは非常にふえているのじゃないか、かようにおっしゃるのでありますが、これは毎承知のように、交通事故違反なんです。これは自動車が何さま御存じのように、ふえましたので、今後この交通事故については、非常に関係方面で御検討なさっておるのですが、何さま自動車というのは神風タクシーというのが出まして、非常にこういう意味から——しかしそれは決していいことじゃありません。いいことじゃありませんが、それだけ実収——実際収納済みなんです。あれは見込みでありません。収納済みであれだけ増加しておる、こういうことであります。  それから物品税でありますが、物品税につきましては、ただいま税制調査会に付議になっております。全般の物品税をどうするかということを今調査を願っておりまして、その答申を待ちたいと思います。物品税は御承知のように、ある一つの物品をとって、これを負けてやるとかどうするということは不適当なのでして、全体を総合的にしないと、たとえばスポーツのそういうふうなラケットとか何とかというのはそれ自体は何でもないようでありますが、なかなかこれは波及していきますから、物品税というのはそれですから、総合的にしなくちゃなりませんので、今せっかく調査会にかけておりますから、その結果において、御意見のような点は十分考慮に入れまして税制の改正に当りたいと、かように考えております。
  282. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 税のことですが、これは地方税に属するものですが、一つ要望しておきたいと思います。私ども、空気だけは心配なく吸わしてもらっているのですが、水を飲んでも税金だし、御飯食べれば三百円から税金がかかる。従来百分の五だったのが百分の十になったわけで、せめて五百円ぐらいまでは、税金を払わんで御飯食べられるようにしてもらいたいと思う。大蔵大臣は、それでは税収が少くなると心配されるかもしれませんが、それは、高級料飲店の税金を正確に取ってごらんなさい。取ればこんなものは片づきますよ。あなたは「負ケラレマセン勝ツマデハ」という映画を見たことがありますか、ございませんか。
  283. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 最近時間がありませんので、映画は見たことがございません。
  284. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時間がないからまあ触れませんが、確かに、私は、ついでですが、大衆課税の多いのは不満なんですよ。これは五百円ぐらいにしても、高級料飲店の税金の方を正確に取ったら、大丈夫できますよ。お忙しいよう、ですが、ときどき映画は見た方がいいですよ。あの「負ケラレマセン勝ツマデハ」というのは、あなた方を諷刺してありますので、機会があったら一つ見ていただきたいと思う。先ほど大蔵大臣は、千億ぐらいと言ったが、三百億ぐらい隠しておると思う。千三百億ぐらいあると、しろうとながら思っている。補正に当っては、災害復旧の補正をわれわれはずいぶん要望しておったわけです。これが出なかったのは非常に不満です。ことに、昨年長崎県の諌早を中心としての西九州の災害は、非常にひどかったわけです。しかも、農林省、建設省関係の小災害が多くて、これに補助をしてもらいたいという声があるわけなんですが、最近、道路とか電力に非常に重点が向っていった関係か、災害対策をおろそかにする傾向があるようです。従って、私は、最もこれに関係が深い建設並びに農林両大臣から、過年度災害の復旧状況はどうなっておるのか、それから、昨年の、西日本におけるところの災害における小災害の復旧状況はどうであるのか、所管大臣としてお答え願いたいと思います。
  285. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。  まず第一に、昭和三十二年度の、発生いたしました公共土木費における災害の総額、並びにこれに対する国費の充てるべき費用、それから、これを実施するために、補正予算を組まなければならなかったじゃないかという御質問でありまするが、昭和三十二年度の公共土木の災害の復旧総費用は、百八十八億三千四百五十三万一千円と査定されております。このうち、国費が百三十二億三千二百五十三万一千円となっております。この内訳は、直轄河川分は、事業費十六億一千二百五十三万一千円であります。これに対しましては、内地は二カ年間、北海道は三カ年をもって復旧する方針でございます。すでに、昭和三十二年度の予備費から七億六千九十二万三千円を支出いたしまして、四七%程度の工事が促進されております。それから補助災害分は、事業費が百七十二億二千二百万円でありまして、このうち、国費が百十六億二千万円となっております。これらに対しましては、昭和三十二年度中におきまして、二十八億七千七百三十余万円の予備費を支出いたしまして、二五%程度の進捗になる予定であります。従いまして、御承知のように、こういう緊急の工事につきましては、三カ年でこれが実施されるということになりますと、緊急工事が全体の工事費のうち七〇%を占めておりまするので、第一年度目は二一%やることが一応の標準になっております。その他の工事は三〇%でありますから、初年度は四%、従いまして、総計して二五%実施することができる予定になっております。これが予備費で支出しておりまするので、補正予算を組まなくても措置できた。こういう関係になっております。   その次に、昭和三十二年度の災害に対しまして、どういうような措置をとったかということでありまするが、これは御承知のように、総理自身も現地に行かれたし、私は引き続き災害地区は全部回って、そうしてなお地建の職員を、災害を受けたところの地区に派遣いたしまして、これの促進をはかっております。その結果、御承知のように、従来にないスピードをもちまして、対策を現地において処置するとともに、特別融資の措置を講じ、引き続いて、査定が終った後は漸次予算を配賦いたしまして、現在のところは順調に進んでおる状況でございます。従いまして、これも先ほど申し上げましたように、予算措置は、補正予算を組まずに全部できた、こういうふうな状況にあります。なおまた、工事につきましては、本名川、あるいは六角川等、従来直轄河川でなかったものも、実質上直轄河川と同じような工事をやるとともに、三十三年度予算には、これは正式に直轄工事の河川に指定したい。なおまた、筑後川その他若干の被害を受けた所におきましては、それぞれ手当をするとともに、将来の対策を考えましてダムを築造することが計画されて、大体四つ程度のダムを築造しまして、根本的な対策をも考えていると、こういう状況でございます。
  286. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 三十二年度に残っておりまする過年度災害の状況を申し上げます。大体三十二年度で全体の九一%まで復旧が進捗いたしております。これを年度別に見ますると、二十六年度の災害は九九%、二十七年度災害は同じく九九%、二十八年席災害は八七%、二十九年度災害は九一%、三十年度災害は八九%、三十一年度災害は六三%でありまするが、来年度の予算案に四十億四千余万円の要求をいたしておりまするので、これによりまして、二十六年と二十七年、二十九年、三十年の各年の災害は一〇〇%に完了いたします。二十八年の災害は、災害が御承知のように大きかったのでございます。まだ来年度ではよくなりません。再来年度までわたるわけでございますが、来年度で九三%まで済みます。三十一年度の災害は八五%まで復旧させるつもりでございます。  三十二年度の災害は、国庫の負担に属するものが四十七億七千余万円あるわけでございまするが、十二億八千余万円をすでに予備費から支出いたしておりまして、緊急なものは三〇%、全体として二五%の復旧ができるように実施中でございます。   それから、昨年、三十二年に発生した農地関係の小災害の問題はどうなっているかというお尋ねでございましたが、三十二年度の農地関係の被害の総額は百二十億でございますが、いわゆる小災害として、現行法においては補助の対象となっていない小災害が、すなわち十万円以下の災害と見積られたものが、金額にいたしまして六億六千万円あるのでございます。これはどういうふうにしたかと申しますると、この復旧につきましては、融資によりまして三億一千万円、県単事業によるものが六千万円、起債によるものが一億二千万円、その他、主として自己復旧によるものが、大体一億七千万円見当でありまして、これで目下それぞれ小災害の復旧が進行中でございます。
  287. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理が飛行機でおいで下さってビラをまいていただいたことはありがたいわけなんですが、措置は決して十分でないということです。それはたとえば、公共土木災害は二十八年災がまだ二〇%残っているでしょう。二十九年災が五六%残っています。こういう調子で残っているわけです。まあ農林関係は幾らかよろしい。しかし、農林の方は小災害で痛めつけられている。だから補正予算を組んでほしいという強い要望があったわけです。最近の岸内閣やり方を見ていると河川をなめていますよ。本名川のようなものはあんなことをされておったら忘れたころ、ことしの夏あたりにやられますよ、三年計画、四年計画といっていれば。熊本の井匠川とか坪井川、それから二十七年災の白川は、どれだけ一体復旧されていますか。非常に住宅も大事です、道路も大事です。だからといって、最近わが国においては河川行政というものが非常に大事だと思うのですが、非常になめてかかっている。これは大蔵大臣よく聞いておいていただきたいと思う。建設大臣は最もこれに関係深い所管大臣ですが、どういうお感じをもっておられますか。
  288. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。治水関係が非常に重要な事業であるということは、これは国民のひとしく要望しておる程度からしてもその通りでございます。  政府は、昭和二十四、五年から特に治水関係については重点を入れて参っておるわけであります。本年に比べまして昭和三十三年度予算においては、従いまして、九億程度の増加をいたしておるのでございます。しかしながら、これは必ずしも現状の河川のあり方、これから見れば満足ではございません。概括して申し上げますというと、日本の河川におきましてどうしても改修いたさなければならない河川が大体三千三百本あると想定されております。しかもこれの事業を実施するためには、約一兆八千億円の経費が必要である。かように想定されておりまするが、財政上の理由をもって直ちにこれを全面的にやるこがとできないので、年次計画を立てまして実施しておる状況であります。そういう点からいたしますれば、治山治水に関するところの経費が必ずしも十分でないということは御指摘の通りでありますけれども、しかし、国全体の諸般の政策を実施するためには、河川のみに予算を充てることができないので、漸次年々これが増額しておると、こういう状況でございます。  なお、九州地方の災害の復旧の状況については、これは御指摘のように、まだ十分でない点はございまするけれども、先ほど申し上げましたように、単に河川の改修のみならず、ダム等構築しまして、一面におきましては洪水調整等多目的、ダムをもちまして、そうして治水の目的を達成するためでき得るあらゆる方法をもちまして、漸次その実現をはかりたいと考えておる次第であります。
  289. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この項について、最後に岸総理に伺いたいのですが、小澤さんがあなたの党の特別委員長になられて九州に何度も行かれて、大会を開かれて、九州、山口を含む開発計画をやるのだ、それができない場合は、台風常襲地帯における災害防除に関する特別措置法を作るのだということで、山口その他九州の各県は一県七百万円の負担金を出して、これらの作業をされているわけなんですが、自由民主党は本気で九州、山口の開発三立法あるいは台風常襲地帯における災害防除に関する特別措置法というものをやられるお考えかどうか。私は、純真なる地方の人の期対にそむくようなことをしてもらいたくない。これはよく汚職が起るから、起ないらようにして、一県七百万円の負担をしているわけですが——総理であり、自民党総裁としての岸さんのお答えをいただきたいと思います。
  290. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いわゆる台風常襲地帯における年々繰り返される災害に対しまして、根本的に対策を立てていかなければならぬということは、これらの地帯にいる人のことごとく痛感しているところでございます。ただこの問題につきましては、いろいろな観点からこれを考究し、これに対する対策を考えなければならぬ問題でございますので、私の属している党におきましてもそのことについて、特別審議会を設けて検討いたしておるのでございます。十分に一つ審議いたしまして、強力な対策を立てて、年々繰り返されておる災害に対する処置を十分にやっていきたい。かように考えておるわけであります。
  291. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 今にもできるように聞えますが、いつを目途とされているのですか。
  292. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私もまだ審議の進捗状況は詳しくいたしておりませんが、今申しましたように、この問題に関しては、いろいろな方面から検討すべき問題がありますので、従来も慎重にやっておるわけでありますが、できるだけ早く、その結論を得たい。こういうことでせっかく審議しております。
  293. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総裁、総理に要望しておきますが、災害なんかは党略の具に供することのないように、やるならほんとう誠心誠意やられるということを切に要望しておきます。  ここでちょっと横にそれて、私は建設大臣に伺いたいが、今度関門トンネルが開通したわけですが、その料金を幾らにするということが問題です。高くしたからといって人が通らなかったらだめです。安くしては経営が、道路公団が成り立たんでしょうし、開通後はどういう状況にあるのか、また、どういう反省をもっておられるのか、ともかくあれでは高くて問題にならぬと思いますが、どういうお考えでいらっしゃるのか、参考に承わっておきたいと思います。
  294. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 関門隧道の料金の問題につきましては、すでに私の前任者のときに認可を与えておりましたが、いろいろと地方の事情も考慮し、また、諸般の状況も調査の上、公団の方におきまして、暫定料金を申請して参りましたので、適当と認め、そのような措置をとった次第であります。現状の交通量それからこの料金の収入の状況を見ますと、去る十日に供用開始しましたが、その後、三月二十一日までの十二日間の実績は次のようであります。一日平均の交通量は、車道におきまして三輪車以上の車両が一千百七十八台、二輪車が一千百台、計二千二百七十八台になります。人道におきまして、自転車が四百六十一台、人が一万一千二百九人、そこで平均の一日の収入は、車道におきまして七十六万八千三百六十九円、人道において十一万五千三百六十四円、合計八十八万三千七百三十三円でございます。なお、道路公団におきまして推定いたしました開通初年度の交通量は、三輪車以上の車両が一日平均一千八百八十三台程度、こういうふうに計算しておりましたが、ただいま申し上げたようにそれよりは少いのであります。
  295. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 高いからです。
  296. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 開通初年度一日平均収入が、車道において百二十四万五千円、人道において六千円を大体想定しておりましたが、これを合計しますと、一日百二十五万一千円を予定しておったのが、それより下回りまして、八十八万三千七百三十三円、こういうような状態であります。ただし、これは御承知のように、現在の関門隧道に連絡する山口県並びに福岡県の関連道路がいまだ未開通のために、使うべき相当交通量が増すであろうにもかかわらず、そのために制約されている点もありますので、もうしばらく推移を見なければ、関門隧道の交通量を今ここではっきりと断定することは困難であろうと、しばらく推移を見たいと思っておる次第であります。
  297. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 日本人の国民経済からいって、ハイヤー九百円、自転車三十円なんか高いですよ。それは高いですよ。国の力でもう少し安くしなければ、とてもそれは高過ぎて成り立たないと思います。一体、暫定期間というのは三カ月ですか、一年にするつもりですか、建設大臣はどういう考えを持っておられますか。
  298. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。  本来、ああいう幹線の国道は全部公共事業費でやることが理想でございまするが、これが諸般の事情のために有料道路になっておるのであります。ところで、九百円ないしそれ以上の料金は高いという御議論でございまするが、それ自身としてはそういう議論も成り立ちますが、従来あそこがフェリー・ボートでやられておる、このフェリー・ボートに比べると相当程度これは安くなっております。そういう観点から、公団が、これは一応独立採算制をとっておる限りにおいて、相当程度勉強した料金でございまするので、これは現在のところやむを得ないものだと考えております。  しからば、暫定料金三ヵ月にきめておるが、これを半年、あるいはそれ以上に延長する意思があるかないかということのお尋ねのようでございまするが、これは三ヵ月間の実績を見て、なおまた、道路公団の現地におけるいろいろの諸条件を考慮の上申請して参った場合に、これに基いて最後の裁定を下したいと考えておる次第であります。
  299. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 話を変えまして、「国連警察軍スエズ派遣」云々というのは、まあ望ましき呼称はどうだとお考えになっていらっしゃるのか、結果だけを承わりたい。
  300. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) スエズ派遣軍につきましては、警察軍につきましては、国連の総会で出しますときに、緊急軍というような形になっております、言葉は、英語の言葉で言えば。しかし、警察軍というのが、内容を表わした適当な言葉というふうに考えて、外務省としてはこれを採用しておるわけであります。
  301. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この点は聞き置く程度にして議論しません。  次に伺いたい点は、国連軍は今どこどこに派遣されておって、その兵力は幾らですか。
  302. 宮崎章

    政府委員(宮崎章君) 国連軍はスエズのガザ地域に派遣せられております。そのほかに韓国にもおりますけれども、韓国とスエズ運河地帯というのが、国連軍の行っておりまする二つの地域であります。  韓国に行っておりまするものは、大体われわれの知っておる限りでは、これははっきり公表はされておりませんけれども、アメリカ軍が三万、それからトルコが一旅団、それからタイが若干おりまして、その他の国は連絡将校を出しておる程度であります。それからスエズに行っておりまするものは、これは九カ国でございまして、この九カ国から派遣せられておる総人員が五千九百九十七名でございます。
  303. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 スエズ派遣軍は、寄付と分担金でまかなうと、韓国の派遣軍は全部自国持ちであると、そうしてスエズの場合ですね、インドネシアは財政上困るからといって一応派遣したのを帰られて、それからまたスエズ運河の清掃費、その借り入れを日本政府に申し入れた場合、これは日本政府は拒否しているんですね。また日本政府は一万ドル寄付金を出しているということを聞いておるんですが、安保理事会できめられるのでしょうけれども、あのスエズヘの英仏軍の出動というのは、日本政府として反対しておったんだから、こういう負担金は拒否できるんじゃないかと思うんですが、どういうお考えですか、外務大臣お答えを願います。
  304. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) スエズの問題でありますけれども、英仏軍が出ましたことに対して休戦的な措置をとると、そうしてエジプトとの間に問題を起さないようにすると、従って国連警察軍が参りまして、そうして英仏軍が撤退をするという処置をとるために行なった、国連の決議による警察軍であります。
  305. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この補正予算に出ている一億八百万円、それから三十三年度の当初予算に—われわれ審議している当初予算計上されている二千万円、これはいつからいつまでの分ですか。
  306. 宮崎章

    政府委員(宮崎章君) この分担金につきましては、三千二百三十五万六千九百五円というものが、これが一九五六年の分でございます。それから三億一千二百四十二万千七百七十二円というのが一九五七年——昭和三十二年分であります。それから、そのほかに運転資金と申しまして、新しく加盟した国が出しまする国連の運転経費、これが一億五千二百四十万一千九百二十、円、こういうことになっております。  それから国連軍の経費として出しまする醵出金が、これが一九五七年、すなわち昭和三十二年分といたしまして一億四百四十一万四百六十九円ということになっておりまして、それから特別に出しまする基金——スぺシャル・アシスタントと申しますが、これが三百六十万八千円ということになっております。
  307. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この補正をもう少し早く出せるんじゃなかったんですか、大蔵大臣お答えを願います。    〔理事劔木享弘君退席、委員長着席〕
  308. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 先ほど申し上げましたように、年度の終りに至りまして、流用の関係でありますとか、あるいは予備費関係でありますとかというような関係をよく念査をいたしまして、補正予算で組みましたものが当該年度に使い切れない、不用になるというようなことに相なりませんように念査をいたしましたので、この時期になったわけであります。
  309. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 韓国の国連軍にはどういう形で協力をしておるんですか、外務大臣
  310. 森治樹

    政府委員(森治樹君) お答えいたします。国連軍協定によって、主として物資の調達等に対して便宜を供与いたしております。
  311. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 外務大臣に伺いますが、スエズの派遣軍の撤退、それから韓国の派遣軍の撤退等をわが外務省としては出先機関をして主張さすべきだと思うのですが、そういうことをやつてますか、やってませんか。あなたのお考えを承わりたいと思います。
  312. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国連の決議でやっておることでありまして、われわれはまだ現在においてその必要があると認めておりますので、そういう点ではいたしております。
  313. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 じゃ伺いますが、北鮮は軍隊は撤退するということを公表されておりますが、その後の状況はどういう情報が入っておりますか。
  314. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 北鮮におきます中共軍は逐次撤退をする予定のように考えております。
  315. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それでは、アジアの平和のためにも安保理事会にも席を持ってるんですから、だから日本代表としては、この撤退すべきだと主張するのが当然だと思うのです。わが国に負相がかかるわけなんですからね。そういう主張をしてもらいたい。  それから総理に伺いますが、国連にわが国は入ったんですが、今後、望ましくないけれども、こういう国連軍としての行動というのは折々あるかと思うのですが、日本のそれに対する協力の限度というものを岸総理はどういうふうにお考えになっておられますか。
  316. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本のこの外交の方針といたしましても、国連憲章の趣旨にのっとって、忠実なそのメンバーとしての国際的の義務は果していかなきゃならぬと思います。ただ、この国連警察軍といいますか、あるいは国連軍、いろんな目的で国連において海外に派兵するような場合がございますが、これに対しては、具体的に日本みずからが自衛隊を出して協力するということは、憲法の上から申しましても、自衛隊の本質から申しましても、これは私は許せないことだと思っております。しかし、国際連合において世界の平和を樹立するために必要な派兵、いろんな目的における派兵が必要であるか、必要でないか、そういう目的で出すことがいいか悪いかというようなことは、国連の会議で十分に検討されるわけでありますが、その会議において派兵するということが、ある目的でもって派兵するということが決定されれば、日本もこれに対して応分の義務の分担をすべきことは、これは国際連合の一員としては当然であるとは思っております。今申しましたように、日本の憲法や自衛隊の本質というものと相いれないようなことはできないことは言うを待たないのでありますが、その他におけるところの協力は、適当な協力は、忠実なるメンバーとして、やはり出していくべきものである。かように考えております。
  317. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 防衛庁長官に伺いますが、いかなる場合にもわが自衛隊は相手国の了解なく、その領土、領海、領空には入ることはない、これは確認してよろしゅうございますか。
  318. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 防衛庁長官といたしましては、自衛隊の行動は、現在の自衛隊法、防衛庁設置法に基いてやるわけでございます。この法律においては、外部からの直接間接侵略に対して、自衛隊というものは出動をする、こういうことになっております。従って現在の法規のもとにおいては、海外派兵ということは、これらの目的に沿わないというような場合には実行できぬわけでございます。
  319. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私の伺ってる点をお答えいただきたいと思う。いかなる場合でも自衛隊は相手国の了解なくその領土、領海、領空には入ることはないということを確認してよろしゅうございますか。
  320. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) これは参議院においてもり海外派兵に対する御決議もございます。こういったような御決議の趣旨を尊重して善処したいと思う次第でございます。
  321. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次に、話を変えまして、自治庁長官と文部大臣に伺うのですが、いわゆるすし詰め解消法案が出ておりますね。あれで教員の数を算定する型がきまっておると、あれだけ、現在十県も上回っておるという県がありますね。基準財政需要額から計算する、あの法律で計算するということを趣旨説明で書いてあります。そうなると、基準財政需要額が低いから、そのまま教員を雇っておくと、実支出額が多くなるから、その二分の一を国で負担することになると、補正予算が必要になるという事態が起るが、文部大臣は、この前の総括質問で、その基準財政需要額が実際と非常に差がついた場合には、特別交付金で処理するように自治庁と話し合いがついていると私に答弁しているのですが、両大臣からその点明確にしておいていただきたいと思います。
  322. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 教員全体で五千人の増加を見ておりますことは、御承知通りであります。そのうちもとが減ってきて、実際ふえるのが幾らという計算は別になって参ると思いますが、去年を標準といたしまして、そして激減を緩和するという措置で、特交で見るという意味で、文部大臣が言われた御趣旨と自治庁は同じ意見を持っております。
  323. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっと違うのですが、ちょっと時間外にして下さい。ここで説明しますから……。ある県の基準が今のように高い、今度法律が出ておりますね、これで基準財政需要額を計算するでしょう。そうすると実際こうなるのですから、下げぬ限りは差が出てくるわけです。あなた方の財政計画では、この基準の半分しかいかぬわけですから、だから足りなくなるわけでしょう。そうすると実支出が二分の一となると、毎年補正予算を組まなければならぬことになる。その点、文部大臣は特交で調整するように自治庁と話し合いがついておるということをこの間答弁している。だからこれは大事なところですから、今の郡大臣のはそこをちょっと取り違えて答弁されておりますから、もう一ぺん答弁願います。
  324. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 国費の問題は、国庫負担金の問題は別問題といたしまして、これはあるいは状況によりまして補正という問題が起って参ります。地方の負担につきましては漸減の措置をとって参ります。交付税の操作でまかなう部分が起って参るわけであります。
  325. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 教員の減員ということが起ってきますね。
  326. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) これは文部大臣からお答えいただいた方がいいと思いますが、場所によりましては、これは起るのは当然のことだろうと思います。
  327. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 とんでもない答弁ですよ。あの法案は、この前も総理が質問に答えて、今のわが国の教育の水準を上げるための法律だということを言っている。これはアンバランスになっているのに、低いところに義務教育の水準を下げるというような、知識を下げる政策というものはないです、重大ですよ。
  328. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) この前、大臣がお答え申し上げましたのは、この定数基準ではじいた場合に、義務教育の国庫負担金は、御承知通り実績の二分の一です。ですから、あとでかりに不足が出れば、精算負担をするわけでございます、補正予算等で。ところが地方負担分につきましては、一応あの定数基準ではじいたものを基礎に、地方負担金は財源措置をしていただくのです。そこで、もし前年度よりもその財源措置が低かった場合には、特別交付金で補うように自治庁と話し合いをしております、こういうことでございます。
  329. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 了解点に達しておりますか。
  330. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 了解点に達しております。
  331. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 不満な点がありますが、八割くらいはっきりしましたから、時間がありませんから次に参ります。  文部、自治両当局に伺いますが、当然都道府県給与負担の教職員でなければならないのに、市町村がまかなっている教職員、PTAの費用でまかなっている教職員の員数を、それぞれの大臣からお答え願います。
  332. 泉山三六

    委員長泉山三六君) お早く願います。
  333. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました市町村においてその給与を負担しております教員は、三十二年度の調べでは、小中学校あわせて約千六百人となっております。このほか養護教員の資格を有する者で、学校看護婦というような身分で市町村によって採用されている職員が約三千人程度おるのではないかと推定されますが、これらの教職員については、目下国会に提出しておりまする公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律案が可決せられました場合には、かかることのないように指導を行いたいと考えております。  なお、前述の職員をすべて府県負担に改めます場合は、その給与費は年間約十億円程度と推算されますので、国庫負担金は約五億円程度になろうかと存じます。  PTA負担の教員につきましては、的確な資料がございませんが、給与のすべてをPTAが負担しながら、しかも教員としての正規の身分を有する者があるということは、法制上はもちろんのこと、実際上もないものと考えております。
  334. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 自治庁の方……。
  335. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 個々の市町村で負担の小学校、中学校の教員の数の資料は、私の方は文部省から受け取っておりますので、ただいま合計しました九千六百人、大体小学校と中学校とがその半々。それからPTAについては資料がございませんけれども、さして多い数ではないだろうという考えを持っております。
  336. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは市町村自治財政を圧迫するでしょうね。
  337. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) これは市町村が本来負担すべきものじゃございませんから、市町村はそれだけの負担をしておりますので、これは早く筋道通りにして参らなければいかぬことだと思っております。
  338. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 行政管理庁は三十二年五月二十一日、この点について文部省に勧告を出されておりますが、今の答弁を聞いて管理庁長官、どういう所感でおられますか。
  339. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 政府委員の方はおられませんか。
  340. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは通告していなかったから……、ちょうどおられたからいいと思ってしましたが、失礼しました。通告してなかったが、おられたものだから……。  岸総理は、いわゆる国家保障制度というのをずいぶん演説されて歩いたわけなんですが、今お聞きになったように、惨たんたるものなんです。このたび教材費がふえたというのですが、計算してみますと、小中学校の生徒一人につき四円二十銭ふえただけですよ、四円二十銭。それから生徒の実験費を、文部省から数字をとったのですが、小学校の生徒一年間に一人三十円という実験費……、理科の実験費一人三十円、試験管は卸で一本八円十銭しますよ、だから実験なんか何もできないわけなんですよ。ところが、あなたは文教政策に重点を置くと全国を演説されて、大きな政策として打ち立てられたのでありますから、将来の日本のため、さらに日本の子供のために、文教政策の伸展にさらに努力していただきたいと思うのですが、御所見いかがでございましょうか。
  341. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は国民にも公約いたしておりますように、非常な、また日本の将来にとって重大な青少年の教育の充実につきましては、特に重点を置いて考えて参りたいと考えておりますから、不十分な点等もございましょうが、将来におきましては、十分に一つ意を用いていきたいと思います。
  342. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 人事院来ているでしょうか。
  343. 泉山三六

    委員長泉山三六君) おられます。
  344. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 給与はこの補正予算と非常に関係ありますので、人事院に、管理職とはどんなものかということを承わりたいと思います。
  345. 淺井清

    政府委員(淺井清君) お答えを申し上げます。管理職という言葉は、管理職手当という言葉になって地方自治法の中にございます。これに該当するものは、国家公務員につきましては、俸給の特別調整額ということになりまして、これは管理監督の地位にある者に対し、その特殊性に基いて支給されるものでございまするから、それによりまして見ますると、管理職と申せば管理監督の地位にある者と、まあ大体こういう定義になると思います。
  346. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 支給状況……、どういう比率で支給しているか。
  347. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 管理職手当のお尋ねでございますが、これは給与法の第十条の二に百分の二十五以下において人事院が定めて支給いたしておりまするが、現在のところ百分の二十五を支給いたしまする者、百分の十八を支給いたしまする者、百分の十二を支給する者と、三段階に分れております。
  348. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 岸内閣は、公立学校の校長の一部に管理職手当を出すとして、百分の七とされたんですが、その根拠はどういうことですか。これは岸総理から承わりたい。特別扱いしているのです。
  349. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 百分の七といたしましたのは、主として財政的な理由で……。
  350. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あなたの言うことはわっかている……。
  351. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) それで、ちょっとお待ちいただきたいのですが、実は前に特定郵便局のときに百分の七というかつての実績がございましたので、財政上の理由等を勘案しまして百分の七となったわけでございます。
  352. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いい加減なことはやってもらいたくないと思う。特定郵便局の局員と公立学校の校長は全く違いますよ。そういうことでこういうものを扱ってもらっては困ります。  そこで、私はもう少し伺いますが、これは条例で地方はきめることと思うのですが、もし都道府県が条例で国家公務員に準じて百分の二十五、百分の十八、百分の十二と、かように支給するとすれば、自治庁は地方財政計画を、それに即応するように財政計画を組むかどうか。文部省はその二分の一を負担するかどうか、お答え願います。これは大きな政策を聞いているのですから、両大臣からお答えを願います。
  353. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 条例できめることではございまするけれども、これをただいまの財政計画にそのまま入っているとは私は考えておりません。
  354. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 将来入れますか。
  355. 松永東

    国務大臣(松永東君) 地方庁の方でその管理費を上げられれば、これはもう二分の一もやむを得ません、こっちが負担しなければなりません。しかし、今の基準は七%でありますから、それによるほかないというふうに考えております。
  356. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 自治庁長官に伺いますが、教育公務員でない地方公務員に対して管理職手当を出している自治体の状況を承わりたいと思います。
  357. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 県にいたしますと、ただいま十九県出ております。
  358. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 内容は……。
  359. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) これらにつきましては、国と同じような二五%ないし一二%当てはめておるところもございますれば、市町村等にいきますれば、非常にまちまちでございまして、低いところは四、五%というようなところもありまして、かなり実情はまちまちになっております。
  360. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 人事院総裁に伺いますが、一つの役所で、ある人は管理職手当をもらうが、あとの者は超勤をもらわぬというような役所がありますか。管理職手当というのは、超勤をもらわないかわりに管理職手当を出すという歴史的な過程があるわけです。だから、一部の人は管理職手当をもらって、他の者は超勤をもらっていないというような役所があったら教えて下さい。
  361. 淺井清

    政府委員(淺井清君) ちょっと御質疑の点がわかりかねるのでございますけれども、もし御質疑の点が、管理職手当をもらっている者に超勤を支払っているかどうかということならば、それはもらっていないと、かようなことでございます。それ以外の者につきましては、超勤の実績に基いて支給いたしておると思っております。
  362. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 結論として、総理にお伺いと要望をいたします。突如として地方教育公務員の管理職手当が出たのでありますが、一体、管理職手当というのは、さっき言ったように二五%、一八%、一二%ずつ支給することがきまっておる。これは歴史的に、超勤をもらわない人が管理職手当を管理職としてもらい、あとの人には起動を出すという制度になっているわけです。だから、教員の場合に管理職手当を一部に出せば、あとの教員には超勤を出さなければ、他の公務員とつり合いがとれない。また学校長だけを何がゆえに七%にしたかということ、これは私は、教育を重要視する岸内閣としてはおかしな点があると思う。さらに掘り下げると、大学の教授は管理職手当をもらっているのですが、東大の総長は一二%もらうのに、東大の事務局長は——たとえば一番小さい大学である小樽大学の事務局長も一八%もらう。小樽大学は定員は百七人です。ここの事務局長は一八%もらう。ところが東大の理学部の事務長、工学都の事務長は全然もらわない。それから、文部省のこの案では幼稚園が五学級あっても、これはいただけない。小学校は四学級なら校長はもらうというのです。ところが、それが分校であったらもらわないという。それからまた、人事院総裁は知っているはずですが、国立高等学校校長、主事は管理職手当をもらっております。かように全くばらばらなんです。これは一つの党略的に出てきたものです。こういうことは、私は総理はおわかりになっていないと思うのです。従ってこれは十分検討してもらいたい。教師を遇する道ではないと思うのですよ。そういうことでは、私は人は使えないと思うのです。教育は振興しないと思うのです。一つ十分不平を起さないように、筋が通るように、一つ事務当局に十分検討させていただきたいということを要望してお伺いするわけなのです。
  363. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 管理職手当の何につきまして、いろいろまちまちになっている事情等につきましては、私案は十分に従来承知いたしておらなかったのでありますが、今矢嶋委員のお話で、だいぶ明らかになりました。これらの問題につきましては、いろいろな沿革もあり、いろいろなそれには理由もあると思いますが、しかし十分に検討して筋道の立つようにすべきものだと思います。十分に検討いたさせようと思います。
  364. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 話を変えまして、総理に伺いますが、あなたの諮問機関であるスポーツ振興審議会はごく最近総会を開いて答申をされました。これを見ておいていただきたいということをお願いしておきましたが、この答申ごらんになって、どうお感じでございますか。
  365. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 実は、はなはだ何ですが、私まだ読んでおりません。
  366. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 読んでおいて答弁を………。
  367. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 総理はお読みになっておりませんから、どうぞ。
  368. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっと委員長、僕はきのう内閣の人に、総理に読んでいただいて、答弁できるように御用意しておいていただきたいとお願いしておいたのですが。
  369. 泉山三六

    委員長泉山三六君) そうですか。はなはば連絡が不十分でどうも……。
  370. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理に対するこの点の質疑は、明日に留保いたしまして、文部大臣に伺いますが、あなたの諮問機関である体育保健審議会がごく最近、あなたに国民体育デーについて答申がなされたはずです。それをいかようにお取り扱いになりますか。それも通知してあるはずですよ、読んでおいて答弁できるようにしておいて下さいと。あなたの諮問に答えたわけです。
  371. 松永東

    国務大臣(松永東君) これは拝見しました。従って、これによって十分検討しまして、そうしてこれは全国体育デーのことですから、それでぜひ一つこれを実施したいというふうに考えております。ただ、いっごろがいいかということ、そうしてそれを年に何回とするかというようなことについてもみっちり研究したい、そうして実施をしたいというふうに考えております。
  372. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは具体的に四月二十九日から五月五日の間の日を選んで祝日としてほしいということを答申されておりますね。いかがですか。  あなた読んでいないのでしょう。事務当局に言っておいたのですがね。
  373. 松永東

    国務大臣(松永東君) なるほど御指摘の通り、それはそうなっております。しかし、これは祝日にした方がいいか、あるいは祝日外がいいかというようなことについて相当議論があるのであります。ですから、そういう議論を調整いたしまして、早急にきめたいというふうに考えております。
  374. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 オリンピック招致の決意は、日本国民としてきめておるわけなんですが、あのオリンピック標識が盗用されるので、これは盗用されぬように法的措置を講ずるというこの前約束だったのですが、作業は終りましたか
  375. 松永東

    国務大臣(松永東君) この間から研究を続けております。
  376. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 どういう点を研究されておるのですか。
  377. 福田繁

    政府委員(福田繁君) お答えいたします。オリンピック・マーク、オリンピック標識の制限禁止の問題につきましては、いろいろ研究いたしておりますが、これは登録との関係等におきまして非常にむずかしい問題がありますので、まだ結論を得ておりません。従って、早急に研究をいたしまして結論を出したいと考えております。
  378. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理に伺いますが、昨年あなたは静岡の国民体育大会においでになって、非常に愉快そうにごらんになっておるのを私横からひそかに見ておったのでありますが、あの大会は七百万円の補助であれだけのことをやったわけですが、あれを見てどうお感じになりましたか。それから国民体育大会の地方持ち回りですが、これについては総理は、地方持ち回りを堅持する御方針のようですが、いかがお考えになりますか。
  379. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はスポーツの奨励振興ということは、若い青年や若い人たちに非常にいい影響があり、またいろいろの意味におきまして、これの振興をあらゆる面からはかりたいと従来から念願いたしております。国民体育大会の状況を見まするというと、各都道府県からそれぞれ選ばれた青年男女がきわめて元気に、おのおのがスポーツを競っておるという状況を見まして、私のような老人でもあの若さに動かされて、非常に頼もしく感じたわけであります。この体育大会が年々各県を持ち回りされておるということは、このスポーツの面からだけ申しますというと、地方の、開催される府県におけるスポーツ熱を高揚し、いろいろな意味におきまして効果が大きいと思います。ただこれが各地方の、地方公共団体の負担する財政上の問題であるとか、その他の問題等もございますので、趣旨としては、今申しますように、持ち回ることは、非常にスポーツ熱を振興する上において適当なことであると思いますけれども、そういう点等も十分ににらみ合せて考えたいと思います。
  380. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 話を変えまして……。  南極観測船が帰ったわけですが、日本態度をきめる時期がきたと思います。先般の国際会議は保留して帰ったわけですが、まあいずれは学術会議の結論を待つんでしょうが、文部大臣は隊員の方とお目にかかったのでありますが、本部長としての決意はどうですか、やれそうですが、やれそうでないですか。
  381. 松永東

    国務大臣(松永東君) 先日来、越冬隊の西堀隊長並びに永田隊長あたりと何回もお目にかかりまして、そうしていろいろ話は承わりました。しかしまだあの人あたりも、具体的にこうした方がいいとか、こうすべきであるとかいうような意見の開陳はございません。それはお説の通り、学術会議あたりに御報告の上で確固たる計画が立てられるであろうと思います。しかし、昨晩もいろいろ越冬隊長に聞いた話ですが、要するに、いろいろ考えておかなければならぬことは、これは私は考えさせられたのです。冗談みたいな話ですけれども、一番困難なところを相手にして、そうして氷を割って行く。ところが下を行けば、潜水艦で下を行けば、何の障害もなくて行ける。上を行けば、空気、風は多少あるけれども何でもない。であるから、こういう点も一つ研究せなけりゃならぬ。一番むずかしいところの、氷が厚く張っているところを砕氷して、そうして行くということは、これは今日までやっておったことだけれども、無抵抗なところを一つ利用して行くということも考えなけりゃならぬというようなことを越冬隊の人々は言っておりましたが、これもなるほど考えるべきことだとは考えております。いずれは具体的に確固たる今日までの報告並びに計画等があると存じます。それによって、われわれも一つ決心したいと存ずる次第であります。
  382. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は時間がございませんから、結論だけ言って意見を承わりますが、英国があの南極大陸を横断したのは四十数年かかったのです。男子志を立てて挫折してはならないと思う。今、日本に船がなければ、私見としては、外国の船を借りてでも断行すべしというのが私の私見です。本部長の見解いかん。
  383. 松永東

    国務大臣(松永東君) 文部省と申しますよりは、私自身の気持としては、御説の通りです。それはもうあしたからでもすぐ着手して、次の機会に備えたいというふうに考えております。しかし、それは今も申し上げた通り、一年有半越冬隊として苦しんできた人並びに未開の地に非常な苦心をせられた方々の実験談を承わり、そうしてわれわれはどうするかということをはっきり一つきめたいというふうに考えております。
  384. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 給食の問題を伺いたかったのでありますが、これは戸叶委員から質疑をされるでしょうから私は割愛いたします。ただ一言承わりたい点は、文部省の僻地教育の実態という調査に、こういうことを書いてあるんですよ。僻地の児童生徒は一般にやせて、背が低いといわれる。これは文部省の昭和三十年度学校衛生統計報告書にも、僻地の児童、生徒の発育は、身長、体重、坐高において全国平均に比べて劣っている。ことに上級の年となるにつれて一そうその差が激しくなっている。そうして動物性蛋白質や脂肪が足りないということを書いてある。私は脱脂粉乳等一日一食でよろしい。全国僻地の七十万の生徒に昼食ミルク一合でいいのだが、私は与えてはどうか。計算してみたら大した予算ではございません。ぜひこれはやっていただきたいと思うのですが、文部大臣のお考えはいかがですか、予算は微々たるものです。
  385. 松永東

    国務大臣(松永東君) 矢嶋委員の御説の通りほんとうにそれはミルク一合でも僻地の人々にただで飲ませたい、そういう気持はございますけれども、やまやまですけれども、やはりそうしますというと、大体十億ばかり金がかかります。その十億ばかりの金をはじき出す余裕がありません。そこで、これは何とかせなければならぬとつ思っておりますけれども、今日のこの予算の面ではどうにもできません。しかし、これはこの僻地教育は、こればかりではありません。この一合のミルクばかりではありません。そのほかにも、何とか一つ研究をしまして、完璧をはかりたいというふうに考えております。
  386. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは国家の義務教育として基正本的な問題です。総理に伺います。  教育は機会均等でなくてはならぬ。彼らはみんな家族そろって貧困です。だからやせこけているわけなんです。十億かかるというのですが、総理のお考えはいかがですか。
  387. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 僻地のこの問題につきましては、教育の面からだけ見ましても、今、矢嶋委員のお話しの通り政府としては、これに対する措置を将来において考えなければならぬと思っております。さらに医者の面におきまして、医療の面において、あるいはその他あらゆる産業の面におきまして、こういう地域にある人々の間に、非常に全体から見ても差別ができておるという状況につきましては、国政全面としてやはりよほど意を用いて考えていかなければならぬ、かように思っております。
  388. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後に、総理に伺いますが、総理、最近衆参の議員は確かに私は動揺していると思う。それから各委員会とも定数は不足いたしております。審議ができない実情です。よかれあしかれ、これは現実なんです。これは解散権を持っていらっしゃる総理が、その解散のタイミングをうまく合せなかったところに私はあると思う。そういう意味においては、あなたに若干の私は責任があると思うのです。そしてまた、与党、第一党の総裁であり総理として、与党の諸君を十分委員会に動員できないところにも、私は総理の責任があるかと思うのですが、これらの点についてどういう御所見を持っていらっしゃいますか。
  389. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国会の審議につきまして、いろいろな関係から、あるいは審議がおくれるような、出席率が思い等のことにつきましても、実は衆議院におきましても、議運等におきましていろいろ論議され、私も出席を求められて、私の所信を述べたのでありますが、政府並びに与党の首脳といたしまして、これは非常に責任を感じておるわけです。従いまして、党をあげてそういうことのないように、今極力、力を尽して、審議に遅滞を起すようなことがないように努力をいたしておる最中でございます。
  390. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 数多い法案、条約、予算案の中で、早急にこれはぜひ上げなくちゃならぬと思っていらっしゃるものは何件くらいございますか。
  391. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、実は提案いたしておりまして御審議中のものは、全部私としては成立をさせていただきたいと、こう思っております。件数、そのうちからどういうものを選ぶかというようなことは、今私は頭にないのであります。ぜひ全部通していただきたい、かように思っております。
  392. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私、本日現在で調べたところによりますと、議員立法は別としまして、内閣提出百四十九件、そのうち成立が二十三件です。それから条約は九件中、成立五件、承認案件が三件中、成立一件、予算案が九件中、成立五件と、こういう状況です。非常に芳しくない結果だと思うのです。それから、たとえ法案が上っても、国会としては、それが否決され、可決されることも大事ですけれども、それ以上に、その可決、否決に至るまでの過程ですね。そのことを私は国会は非常に大切だと思うのです。そういうことを考える場合、今の衆参の実情というものは、私どもは国民に対して感ずるところがあるわけなんです。従って、私は総理としては、この段階に参りましては、私は相当な決意がすでに固まっているものと思いますが、いかがですか。
  393. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今おあげになりましたような数字であろうと思いますが、これは実は、例年の審議状況から見まするというと、本年が今日の日にちにおいて特に悪いという状況ではないと私は思います。ただ、矢嶋議員のお話しの通り、法案は可決され、否決されるというだけではなしに、その審議の過程において十分に意見のあるところが尽され、もしくは、二大政党の主張の違うところを明らかにするような審議が尽されるということが、こ回は必要であること言うを待ちません。それで、今、矢嶋委員の御指摘のありますように、私は最近の状況は、これは好ましい状況だとは絶対に考えておりません。そうしてそれについては、先ほど申し上げましたように、政府として、また与党の総裁といたしましては、重大な責任を感じておりますので、その審議を十分に尽すような状態を作り出すために、全力をあげて努力をいたしておりますし、なお、その努力を十分にやるつもりでおります。
  394. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 終ります。
  395. 戸叶武

    戸叶武君 予算成立後に直ちに行われるであろうところの解散問題に関して、総理大臣からもっと明確な答弁を求めます。  それは、去る三月八日、この席上で、私と総理大臣で解散問題をめぐっての論議を行いましたが、このことが専門学者の人たちからも非常な注意を寄せられました。それは何かというと、今回行われる解散及び総選挙のあり方を通じて、政権移動の民主的なルールが確立されるのではないかという期待によるものだと思うのであります。解散と総選挙と政権の移動、これは密接な結びつきを持っておるのでありまして、今度の解散は、民主憲法下における二大政党の対立が実現してからの最初の解散であり、総選挙であります。これに対して、形式的な憲法解釈でなく、われわれが憲法の中に精神を入れるのだという、そういう歩み方、正しい民主的なルールというものが確立される必要があると思うのであります。あの論議を行なってからすでに二十日間を経過しております。この間に、九月解散説を強硬に主張した河野さんや大野さんも九月説を断念してきました。解散は早期解散の必至の方向に向っております。岸首相は、この歴史的な意義を持つ解散及び総選挙をどういう形で行おうとしているか、このことは歴史に残ることでありますから、明確な回答を求めます。
  396. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 解散につきましては、しばしば論議がかわされておりまして、私は、まだ三十三年度の予算案も成立をしない今日におきまして、別に解散というものに対して、いつこれをやるとか、どういう形式でやるとかいうことを実際は考えておりませんし、また考えることは適当でないと、こう考えております。
  397. 戸叶武

    戸叶武君 申すまでもなく、日本の国家性格は人民主権の国であります。そして、主権者である人民が選んだ代表者たる国会議員によって、国の最高機関としての国会が構成されております。内閣は行政の最高機関にすぎないのであります。国会は、国会議員の中から国会の議決で内閣総理大臣を指名しているのであります。従って、議院内閣制のもとにおきましては、内閣の行動ないしその存立は、実際上国会の強いコントロールのもとに置かるべき性質のものであります。私は、この見解に対して、岸首相も、議院内閣制度のもとにおける内閣と国会との関係、その基本的なものは現行の憲法に幾多規定せられ、明示されているという率直な態度で答えましたが、問題は、憲法の上にしるされているところのその文句の形式的な解釈でなく、総理大臣の良識において、これをいかに実践するかということにかかっているのでありますが、総理大臣は、その前提として、議院内閣制度の発達したヨーロッパのイギリスその他の国の発達の沿革、または、これを日本の憲法が受け入れる場合において、日本の国情というものを考慮してこれを取り入れた経緯にかんがみて、これの運営については十分注意しなければならない、こういう抽象的な答弁で終っておりますけれども、この運営について注意しなければならない、日本の国情を考慮してとは、何を意味するものか、具体的に御答弁を願いたい。
  398. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 議院内閣制のもとにおける政府が持っておりまする解散権というものにつきましては、これは今、戸叶委員もお話しのように、長い沿革を持って、イギリス等において発達してきた、これを日本が取り入れているわけであります。従いまして、これが運営につきましては、こういう沿革的な発達した議院内閣制度の本質というものをやはり頭に置いて考えなければならぬことは当然であろうと思います。また、私は解散の問題については、かねがね民主政治あり方として、やはり世論の動向というものに対して深い注意と、これを正確に把握していくべきものであって、ただ、今の内閣制度の上から、内閣に解散権がありといたしましても、それを実現するという場合におきましては、何といっても民意の動向というものを十分に考えていかなければならない、かように存じて、今日までいろいろの御議論は御議論として聞いて参りましたけれども、あるいは一月解散というようなことが強くいわれ、社会党から解散決議が出ましたけれども、私は、やはり現在置かれている日本国民経済上の事情からいうと、三十三年度の予算を成立せしめることが、何よりもわれわれに課せられたる一番大きなことであり、これが適当であるという考えのもとに、一月解散をしないということを当時私が声明をいたしたのもそういうわけであります。十分そういう、あらゆる点からこれは考慮をいたしていかなければならぬ問題でありまして、今後におきましても、そういう点を十分に一つ考えて、措置を誤まらないようにいたしたい、こう思っております。
  399. 戸叶武

    戸叶武君 今、岸総理の言う民意の動向の取り上げ方が、私は重大だと思うのです。政権の移動の民主的のルールを確立するのには、解散の仕方、総選挙のあり方、こういうことを軽視してはならないのであります。総選挙後に国会で内閣の首班指名が行われて、内閣が組織されたとき以外の場合におきましては、内閣の政治性格に変化が生じ、政権の移動を行なった場合、あるいは内外の情勢の変化に対応して政策の重大な変更が行われた場合等においては、政府は必ず解散を行なって、総選挙を通じて民意を問うべきであります。民意とはかかるものであります。かかる態度こそ、人民主権の国における政府のとるべき正しい態度であります。主権者は人民です。いやしくも国の重大なる問題は、最終的には国の主権者たる人民に相談すべきであって、国会内の政治勢力の変動によって、主権者を無視した政権移動は断じて許さるべきではありません。しかるに、今日の衆議院は、第一次鳩山内閣の手で、三十年一月に解散せられ、同年二月二十七日の総選挙で選出されたままであります。あれから三年有余の歳月を経ておりますが、その間に保守合同によって第三次鳩山内閣、石橋内閣、岸内閣、三たびにわたって政権の移動が行われております。これこそ、まさしく国の主権者である人民の承認を得ることなしに、国会内の保守勢力によって政権たらい回しが行われたことを物語るものでありまして、立憲政治というものは、こういう面から崩壊する危険性があるのでありますが、これに対して、岸首相はいかなる見解を持っておられるか。
  400. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ただいま戸叶委員の御意見は、国会において、私が内閣を作りましてから、しばしば繰り返されておる議論でございます。私はその御議論に対して、根本的に反対の意見を持っておるものではもちろんございません。しかし、実際の政治の運営として、これは私が申し上げるまでもなく、今、議院内閣制度の、沿革的に言って、日本制度一つの受け入れの模範になっておるイギリスの状況を見ましても、同じ政党に属しておる人が政権を担当しておるという場合に、それが内閣の首班が変ったから、いわゆる政権の移動であるとして、形式上の理論から、いつでもこれが行われておるかと言えば、そうでない実例も多々あることは御承知通りであります。これは、やはり解散ということが非常な国民にとって、また国民経済にとっても重大な響影を持つものであります。理論的に国民が主権者であり、従って、それの判断によってすべてがきめられなければならぬというこの考え方は、民主主義の根本としては当然であります。しかし同時に、それが運営されて行く上におきまして、私はそういう公式論だけで実際の政治が運営されるものでもないということの実例も多々あると思います。この世界の情勢を見ましても、解散という、今のお話しのように、首班が変われば必ず解散して問うとか、あるいは何かの問題があれば必ずそれに対して聞くというようなことが、一国の進運のために望ましいことであるかどうか。大体の面から言えば、やはり四年の任期をもって政権を担当しておって、そうして、それに対する批判は四年ごとに国民が行うというのが原則である。それ以外の解散ということは、やはり何から言えば、一種の非常の場合であり、従って、それに対しては先ほども言っているように、国民の民意の動向というものを十分に察し、責任をもって国政を担当して行く必要から、これを考えて行くべきである、こういうふうに考えております。
  401. 戸叶武

    戸叶武君 総理大臣は、首班が変れば必ず解散せよというような形式論ではいけないということを言っておりますが、私はそんな議論はどこにもやっておりません。具体的な事例をあげても、第三次鳩山内閣の成立した際に、あなたは私と同じ見解のもとにおいて、あのときに解散すべきであったという意見を発表している。それをあなたは認めているのです。あのときに解散すべきであったものが、その次の石橋さんが、病気で倒れたということはやむを得ないことでありましょう。これは解散する意思を持ちながら、それを行うことができなかったので、やむを得なかったことでありましょう。しかし第三次鳩山内閣のときにおいて、その内閣の政治性格が異なり、その支えている政治基盤が異なったゆえに解散すべしという議論を展開した岸首相が、それから政権を受け継ぎながら、今日に至るまで何ら解散を行なって民意を問わないということは、憲法解釈に対する旧憲法的な解釈が、依然として上杉憲法の亜流が残っていると認めなければならないのであって、私は津さんの憲法解釈にこそ、権力者が勝手な解釈をするところの独断を含んでいると思うのであります。この点に対し、深くあなたは考え直さなければいけない。イギリスの議会政治には、あなたのような筋を立てないところのルールというものはないのです。政治家の生命は見識であり、経倫であります。そういう筋を私は十分、総理大臣には立ててもらいたい。岸さんは、在野政治家として、解散問題に対しては明快な態度を示しながら、一たび権力をにぎって総理大臣になると、この民主的ルールというものを踏まない。そういうことはあなたの政治の歴史において決して名誉ある私は歴史とは思わないのであります。それに対する明快な御答弁をお願いしたい。
  402. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は今、戸叶委員も言われるように、われわれが歩んで来た道を考えて見ますと、今お話しのような御議論によりますというと、第三次鳩山内閣ができたときが一番その理由が明確であると思います。その後におけるいわゆる首班の変動は、同じ基盤において同じ政策を持っているものが、ただいろいろな理由で、不慮の病気等の理由で、それが変更していったというだけでありまして、私はその後の変動につきましては、遺憾ながら戸叶委員とは意見を異にするのであります。
  403. 戸叶武

    戸叶武君 これは、岸総理は総明な人で、これ以上議論する必要はなくて、結局、解散のチャンスを失なった、解散のチャンスをねらいながら、ついに解散のチャンスを逸したということによって、その結論は出ていると思うのであります。しかし、過ちを改めるとすれば、私は早い方がいいと思うのです。議論にこだわっていてはいけないと思うのです。今日においては、もはや早期解散をしなければならない絶対絶命の時期に追いやられていると思うのであります。国会の生命は、立法機関であると同時に、予算及び重要法案に対する審議権の遂行ということが、きわめて重大でありますが、国会が、今日ごらんなさい。もしも予算案でも通った後において、あなたの権力をもってしても、衆議院におけるところの審議というものが十分なされないというときに、一体その責任はだれが持つのですか。国会は世間から非難されます。しかしながら、内閣は国会に対して予算案の提出をおくれさせ、十分な審議をもなさしめず、しかも解散すべきところのチャンスを失なって、つい、だらだらに解散というものに国会の人たちをおびえさせる、こういうことは、あげてその責任が総理大臣にありと思うのでありまするが、そういう責任に対して、どういうお感じをお持ちですか。
  404. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来お答えを申し上げておりますように、私は最近の国会における審議の状況につきましては、はなはだ遺憾に感じているものである。これについては、政府の首班とし、与党の総裁としては責任を感じているということを申し、極力この審議を進行するように、あらゆる努力をいたすということを申し上げているわけであります。
  405. 戸叶武

    戸叶武君 もう解散の時期の問題は、閣議においても、具体的に内々は論議されているのではないかと思うのでありますが、予算成立後に、野党の社会党内閣不信任案を提出する前後が解散の時期の山だと思います。野党の不信任案をいつ出すかということによって、ほとんどこの解散問題は決すると思うのでありまして、今日、衆議院で与党が多数の力をもってこれを否決しても、国民世論を沈黙させることはできないのであります。政府及び与党は、四月上旬に解散しなければならないという腹をきめたようでありますが、その選挙の最中に、五月一日のメーデーがはさまれると、全日本の勤労階級の圧力のもとに、保守党が選挙に不利に追い込まれる。だから、これを何とかそらそうなどということに、苦心惨たんしているということでありまして、新聞あたりでは、すでにこういうことを計算の中に入れて、五月十八日か、二十五日の日曜あたりが総選挙ではないかといって、解散の時期を逆算して推定しておりますが、大体そのようなところでございますか。
  406. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来、解散の問題につきましては、いろいろと御議論、御意見を承わっておりますが、私としては、現在のところ考えておらないということを、明瞭に申し上げておるのであります。
  407. 戸叶武

    戸叶武君 これは非常に重大な問題ですが、これ以上議論をやっていても、のれんに腕押しであって、意味をなさないと思うのですが、この解散権というものは内閣にありますが、それは旧憲法の解釈のように、総理大臣の必ずしも絶対権ではないのです。ルールの上に乗らなければならないのです。私はそういう権力者の民主主義のルールというものの上に乗って、自分の進退を善処しなければならぬというその良識が、一日も早く指導者に出てくることを望んで、そしてまあこの問題は残念ながら打ち切ります。しかし最後に、岸ざんにこの問題に関連して、新聞では予告解散ということまで、このごろは表現方式がなくなったので、考え出したようですが、これは天下の大事であります。やはり伝家の宝刀的、かけ引き的な抜き打ち解散とか何かではなくて、両党の首脳者か堂堂と話し合って、そうして堂々と、解散問題においても、総選挙の問題においても、政策の問題においても、今回対決をするということが、日本の憲政史上において私は大きな歴史的なできごと、記録になると思うのでありますが、これに対して総理大臣は何らかの腹案なり、構想を持っておられますか。
  408. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 二大政党になって、私はこの国政の運営を民主的かつ円滑ならしめるために、両党の党首におきまして、重要な外交、内政の諸問題に関して意見を交換し、いろいろと協力できるものは協力して行く、立場を異にするものについては、その主張の異なるゆえんを明瞭ならしめて、そして政治上の両党の意見の相違というものを国民の前に明らかにし、協力すべきところは協力して行くという態度でいくことは、私は非常に望ましいと思います。ただ、解散の問題に関しまして、これは実は昨年の末であったと思いますが、社会党委員長である鈴木氏が、病気回復されて、あいさつに私のところへこられまして、いろいろと時事問題を雑談的に話しました際に、いわゆる一月解散の議論がいろいろ論議されておる、十二月のことでございますから、何かこの解散というような問題について、両党で話し合って、あらかじめそういうものをきめたらどうだというような話も実は出たのです。鈴木委員長においても、従来そういうことを自分も考えたこともあり、党内にはかったこともあるが、そういうことをすると、いよいよもって抜きさしならぬ状況になる、それはすぐもう解散をするということであれば別だけれども、それをある一定の先に置いて、そういうことをきめるということは、非常に理論的にいうとフェアで正しいようであるが、それは結局むしろ事前運動を激しくならしめ、収拾のつかぬことになるだろうということで、実は思いとどまったのだが、何かいい、そういうことについて方法はないだろうかというようなことを二人で話したこともございます。私は決してこういうことを、何か抜き打ち的にやり、そうして非常に一般を驚かすというような意図は毛頭ございませんで、先ほども申しているように、国民の意向というもの、民主政治においては国民世論の動向というものに従うことが、民主政治家の根本でなければならぬと思っておるわけでありますから、国民の世論の動向に対しましては、私は深甚なる注意をもって、その把握を誤まらないように努めておるのでございます。
  409. 戸叶武

    戸叶武君 今私は西ドイツのことを考えたときに、岸さんの顔を見て、すぐに私はやはり日本のことに憂いが移るのであります。西ドイツでもって、アデナウアー首相が国民の反対を押し切って、核装置を拒絶すればNATOは崩壊するとの見解のもとに、二十五日に核兵器装備を決定しました。このことは二十五年前、三月二十三日、ワイマール共和国政府がヒトラーに全権を与えた決議と同じように、不吉な影を宿しているということを新聞も報じております。ちょうど昨年の六月、アメリカにはアデナウアーさん、それから岸さん、それからサウジアラビアの王様、これらの人たちが、はなやかにお客さんとして迎えられたのでありますが、中近東のあの動き、西ドイツの今日の動きというものを見たときに、これは人ごとではなく、日本の中にも、何か暗い影がのしかかってきているのではないかという心配すらわくのであります。当時、ヘラルドトリビューン紙は、在日米軍の撤退という決定は、戦争抑制力としての核兵器依存強化と、日米両国間の努力増加という二つの重要な発展を示すものだと、ワシントンで報じております。また、西ドイツのディー・ヴェルト紙は六月十九日付で、岸首相の訪米は、その政治的意義において、先般のアデナウアー首相の訪米と驚くべき類似性を示していると報じております。このことを回想して見るときに、何か核武装について、岸首相とアメリカとの間に黙約でもなかったかということが心配なのでありますが、それに対して御答弁を願います。
  410. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 絶対にそういう黙約はございませんし、私はその後におきましても、日本は核装備はしない、また、これの持ち込みは拒否するということを明瞭に申しておるわけでございます。
  411. 戸叶武

    戸叶武君 最近、台湾では米空軍がマタドールの無人誘導機を公開しました。これは台湾から上海や杭州にも届くものであります。また同じ日に、韓国の李承晩はオネスト・ジョンを公開しております。アメリカの在郷軍人会の関係の機関紙の中には、核兵器を台湾、沖縄に持ち込み、その次には韓国、日本、西ドイツに持ち込むべきだというような記事が載っておったことを記憶しております。私はこういうふうに、この世界が不気味な形でもって、核兵器によるところの戦争の方向に向って前進しているような感じが強いので、岸首相にもそのことを聞いたのでありますが、もしも岸首相が、ほんとうに核兵器を持ち込むようなことはしないというならば、現在、社会党が提唱しているように、核武装禁止宣言を国会に提出するような場合には、与野党一致してこれに賛成し、そうして日本政府のぐらつきを支えて行くというようなこともしなければならぬと思うのですが、こういうことに対して、岸さんはどういう考えをお持ちですか。
  412. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今のお言葉でありますが、これは与党として、政府のぐらつきを防ぐようなことを云々するということは、私が与党の政府を率いておる与党の総裁であり、また、その上に政権を担当しておる私としては、与党の考え方というものははっきりしている。また、政府の首班としての私の考えははっきりしておって、別にこれのふらふらするとか、よろめきを何かの決議でもって補強しなければ、政府並びにわが党の主張がぐらぐらするということは絶対に御懸念には及ばぬと思う。そして、私は核兵器については、きわめて明瞭に、幾たびかこの国会を通じて国民の前に、また世界の前に明らかにしております。
  413. 戸叶武

    戸叶武君 最近の防衛庁の動きを見ましても、防衛兵器の研究というよりは、攻撃兵器の方に研究が向っているような感が強いのでありまして、アメリカ側の援助を見込んでのMWDPとの結びつきにおいて、自走一〇五ミリ無反動砲車、あるいはC装置、潜水中の潜水艦を飛行機上から発見するレーダー装置、あるいは迎撃シミレーダー、こういうものが取り上げられておっても、そういうものよりも、むしろ飛行機だとか、ミサイルだとか、それから潜水艦だとか、そういう方向に力が入っているように見られるのでありますが、日本の今の防衛体制というものが、自国防衛という形から多少逸脱する方向に向っている傾向はないかどうか、このことを総理大臣並びに防衛庁長官から承わりたいと思います。
  414. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは憲法の規定の精神から申しまして、また、自衛隊法のこの明文から申しましても、絶対に自衛のための防衛以上に逸脱するようなことは考えておりませんし、また、絶対にそういうことはございません。
  415. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) ただいま総理からお答え申した通りでございます。自衛隊の装備の改善ということは、極力これを努めて行かなければならぬということは当然のことでございます。しかしながら、その基本的の考え方は、いずれも防御的のものであり、たとえば飛行機につきましても、また戦艦につきましても、ことに潜水艦をこれから強化するということでありまするが、そういった計画は今ございません。現に一隻建造中のものがございまして、全体として二隻という程度のものでございます。なお、ミサイルの研究という言葉は、ある意味においては核兵器に通じるように受け取られる言葉でございまするが、これは基本的の方針に基いて、単純なる防御的の弾道弾の研究ということはやっております。また装備においても、その趣旨を徹底させるつもりでございます。
  416. 戸叶武

    戸叶武君 きょうの夕刊を見ますると、ソ連との漁業交渉も最悪な事態に入っておるようでありまするが、ソ連側は、オホーツク海では母船による大規模な漁業は困るという点を強く主張しておるようであります。こういう点を見ましても、現在この太平洋におきまして、アメリカがアラスカ及びハワイ島に潜水艦基地を持つとすると、ソ連はやはり樺太、千島、オホーツク海方面に潜水艦基地を持っている、そういう軍事的な関係から、漁業問題にもそういう圧力が加わっているのじゃないかと思うのでありますが、政府側の測定というものはどうでありますか。
  417. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来、オホーツク海のこのサケ・マスの漁携につきましては、漁業条約にも、このオホーツク海におけるところのサケ・マスの漁業については、これを規制するという何があります。私ども今まで聞いておりますソ連側の主張は、要するに、ソ連の沿岸民から見るというと、ソ連の側でもって産卵し、それが大洋で大きくなって、そうして日本は沖取りをしておる。それがさらに沖取りをのがれて、自分の産卵された、生まれたところの沖合いに帰って、そこでもう一ぺん取られるということは、沿岸漁民の感情として、どうしてもこれは承服できないことだという理由を強く主張しておる。これに対して赤城農相は、そういう国民感情の方から言うというと、われわれが全然オホーツク海で漁携できないというような、これから締め出されたという感じは、日本国民の絶対にやはり承服できないことである。そういう国民感情云々を議論とせずして、もう少し科学的の根拠でもって、それがどういうふうにサケ・マスの漁業に影響を及ぼし、従って、これをどういう程度に規制すべきかということを、もう少し科学的根拠で話し合おうじゃないかというように交渉をいたしておるように、私どもは報告を聞いておるわけであります。
  418. 戸叶武

    戸叶武君 防衛庁で力を入れているP2V対潜哨戒機は、三百億もの金を使って、これを国内で生産に入るということでありますが、これは専門家から見れば、もうすでにクラシックな兵器というような評価までされておるのですが、こういう、いつでも防衛庁はもう時代おくれのものに力こぶを入れては、役に立たないような浪費をやっている傾向があるのですが、これに対してはどういうお考えですか。
  419. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。P2V対潜哨戒機がクラシックというか、すでに時代おくれのものであると、こういったような御所見のようでございます。これはわれわれの見ておるところとは大へん違っておりまして、現にP2Vというものは、対潜哨戒機としては最も優秀なものだということで、来年度からこれを国内で生産しようということでございまして、潜水艦に対する哨戒の作用といたしましては、機能のまことにすぐれたものだということに、われわれは見ておるのでありまして、この製作については、米国も協力して、分担の名においてやるわけでございまして、来年度から着手するわけでございます。決して今おっしゃったようなものとは私どもは見ておりません。
  420. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連して。
  421. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 亀田君、簡単にお願いいたします。
  422. 亀田得治

    ○亀田得治君 P2Vの一機の製作費ですか、これは幾らで、そうして来年から始めて、合計何機一応完成する予定を持っておるのか。それから第三には、これはソ連のウラジオを根拠にしておる潜水艦、これを目標にしておるものだと私たちは聞いておるのですが、その点の夏相。三点お聞きします。
  423. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。第一点はP2Vの生産の経費でございます。四十二機の生産計画でございまして、大体、来年から五カ年の計画でございます。経費総額で大体仰せのように三百億ということでございます。大体八億ぐらい一機かかるということでございます。このP2Vの何と言いますか、装備というか、この計画は、大体わが国の沿岸その他近海における内外出入の妨害になるような潜水艦の哨戒をするというだけでございまして、それを通じて潜水艦に対する防御の措置を講じよう、こういうわけでございまして、全体にわが国の防衛は、たびたび申し上げまするが、そういったような海外からの侵略、あるいは攻撃が起ったのに対処するためでございます。そういった意味において、たびたび申し上げますが、仮想の敵国をもってこれにどうしようと、こういう趣旨ではございません。
  424. 亀田得治

    ○亀田得治君 もう一つ。P2Vは潜水艦に対して哨戒するだけですと、非常に言葉を何かぼやかしておられるのですが、哨戒して、そして発見すれば、これは当然爆撃をして沈める、そこまでの性能も持つ、これは当然そうなんで、ところが特に哨戒をするものですといったようなことをおっしゃるわけですが、哨戒だけなのか、哨戒して見つかれば沈めるのは当然だと思うのです。これはどうなのですか。それからもう一つは、私は日本の近海と言えば、問題になるのは、現実にはソ連の潜水艦しかないわけです。だから、やはり事実上はソ連の潜水艦を目標にしたものだと、こういうふうに解釈ができると思うのです。真相はどうなんですか。
  425. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 先ほど申しましたのにちょっと補足いたしておきます。  三百億というのには、多少スペアの部分品とか、そういうものを含んでおります。純粋に飛行機だけの一機の生産費は六億ぐらいでございます。それに幾分そのスペアのものを、二割見当余りのものをこれにプラスした経費を申し上げたわけでございます。なお、このP2Vは、足りないところは専門の方から申し上げますが、それ自体が爆撃するということを主能とする、その装備もあり得るわけでございまするが、上から見まして潜水艦の所在を探るということを主要な役目としております。この装置によって潜水艦を発見いたしまして、これを軍艦、警備艦に伝える。それからこれを攻撃なり、また、いわゆる防御の措置を講ずる、こういう任務を持ったものでございまして、いわゆる爆撃機というような性能を主体としたものではございません。  それからもう一つの問題は、ソ連の潜水艦を目標として、そういうような装備をするのじゃないか、こういう質問でありますが、全体に、たびたび申し上げますように、日本の陸あるいは海室、すべてわが国を防衛するという立場で、外国から侵略がなければやらない、その意味において、いかなる国たるとを問わず、もし国家に外部からの侵略があれば、これを防御して行くという任務があるのでございます。
  426. 戸叶武

    戸叶武君 アメリカ海軍のバーク軍令部長は、日本地域の海上防衛に関する見解として、対機雷、潜水艦戦に重点を置けと言っております。そういう方向に私は日本の防衛態勢も来ておるのかと思いますが、しかしアメリカ側が太平洋戦争におきましても、日本海にもぐり込んだときも、日本側がこの潜水艦を新潟沖で発見をし、そして能登半島でキャッチして爆撃したのは、電波関係において、C装置においてやったということは、これは明らかなんでありまして、金のかからない電波関係の研究によって防衛の態勢を作るというならいざ知らず、三十億も使って、そうして潜水艦を作る。三百億を使って、そしてまた今のようなものを作るというような形じゃ、非常にべらぼうな金が使われることになる。外務省の予算を見ると、日本の人口は九千万あるのに、中南米に出すところの移民のために、一万人の金を貸し出すことしかできないというみじめさです。イダリヤでは、貧乏であるけれども、三十万の移民計画を立てております。イタリアの三十万と日本の外務省の一万人、これに反して防衛庁というものは、そのような、とにかくむだづかいをやっている。津島防衛庁長官みずからが、与党の代議士諸君を招待したときに、予想外の予算をとれたのでというように招待状に書いたということでありますが、そういうところに、今日の予想外の防衛庁のでたらめな予算の使い方があるのじゃないかと思うのですが、防衛庁長官のお答えを願いたい。
  427. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 個々の潜水艦あるいは航空機が、どのくらい経費がかかるかということについてのお話もありましたが、全体の防衛庁費と申しますか、防衛費については、一言お答えをいたしておきたいと思います。来年度の予算は防衛庁費は千二百億でございます。なお、それ以外に、これは広く防衛費ということに入れてありまするが、施設提供費七十五億、また、日米分担金百八十六億円、大体千四百六十一億円が全体の防衛費でございます。これは私どもは、どうしても民生を安定し、また財政の需要に応じて、国力に応じて、最小限度の防衛として行こうという基本方針を、ずっと守ってきているわけでございます。その意味においては、来年度の御審議中の全体の総予算一般会計でございまするが、これに対して大体一割一分一厘ということになっております。これは全体の防衛費でございます。防衛庁費はそのうちでございます。これは昨年度、昨年度といっても現年度のことですが、それよりもパーセンテージにおいては減っているわけであります。一昨年よりはさらに減っている。その前よりはさらに減らして、全体の総額に対しては、防衛庁費は一定の限界をもって、今日の防衛態勢を築き上げて行こうという趣旨は、予算の計数においては貫いております。ただいまイタリアのことをお話がございましたが、イタリアはいろいろな問題について、いろいろな経費もありましょう。しかし防衛関係費は相当多額のもので、われわれのパーセンテージにおいても比較にならぬようなものがあると思う。これは他国のことで、われわれは、ほかの国がこうだからこうせいということは言いません。大体、国民所得に対して今日は一・七%くらいになっている。これは大体の標準をそこらに置いて、また、総予算に対する割合においても、むしろ漸減の方向をたどっているというのが現状でございます。そういった意味において、防衛庁の経費の経理についてはいろいろ御批判もあります。これは私は非常に熱心にやって参っております。そういった意味において、むだのないようにということも、ずいぶん注意いたしますが、いろいろまた御批判もあると思いますが、ずいぶん反省いたしまして、全体の総予算における地位と申しますか、そういった問題については、こういう状況になっておるということを申し上げる次第でございます。
  428. 戸叶武

    戸叶武君 外務大臣に、この問題に関連してお尋ねしますが、藤山さんは、金持ちの豊かな生活からきたので、外務省の貧乏世帯を理解できないと思うのですが、国家予算のとにかく一%にもならないような、非常なまずしい世帯で、諸外国を回ってみても日本の大公使館、総領事館ほど貧弱なものはないし、また、自動車なんかでも、外国の人たちが驚くような旧式なものが使われているし、また自動車がなければ活動ができないにもかかわらず、そういう外交官たちに、自動車を買うためのいろいろなめんどうを見るような、金を貸すなり、何なりの措置ということも講ぜられていないようなところも随所にあるので、形式だけは整えて経済外交なんと言いながらも、経済の裏づけがないのだから、動けないような立ちぐされ状態になっているところが随所にあるのです。これは主として外務官僚というものは、外国に多く行ったり来たりしておって、それに非常に総明で、ばかげたような骨折りをやるような人は、そうあまりいないのだと思うのです。そういう関係から、大蔵省でいつもひねられて、予算がつぶされているのだと思いますが、しかも、予算委員会においては、いつも外交問題はとうとうとして論ぜられておるけれども、外務省の予算獲得に関しては、あまり外務委員の人たちもめんどうを見ておらぬようで、与党側においてもしておらぬようでありますが、こういう状態で、あなたや岸さんが言う経済外交というのができるのですか。岸さんやあなたはいいかもしれぬけれども、前線で動いているところの人たちというものは、非常に不自由な状態であると思うのです。これに対し、あなたでもやらなければ、外務省の予算の裏づけなんというものはできないのにもかかわらず、今日はひどい状況であります。私はこれを外務大臣と、それからこれをひねったところの大蔵大臣と両方からお聞きしたいと思います。
  429. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外務省の予算につきまして、御同情ある意見をいただきましてありがたいわけでありますが、現在の外務省の予算が十分だとは私ども考えておりません。国家財政とにらみ合せながらこれをふやして参って、そうして在外公館も充実して参り、あるいはその他の外交関係の活動も進めて参らなければならぬと思うのであります。私といたしましては、大体在外公館——独立国も大体それぞれ国を立ててきましたし、将来の日本の外交上の関連を持ちますこともできてきましたので、この際、少くとも外務省の外交機能を充実するための三カ年計画というものを立てて、そうして常時大蔵省とも相談しながら、大体この程度までは外務省の機能を充実してもらいたい、また活動するようにしてもらいたいというような考え方を現在持っております。それを毎年の財政事情を勘案しながら相談して参りたい、こういうようなことで、できるだけ外交機能の充実については今後ともそういう方針のもとにはかって参りたい、こう思っております。
  430. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 外務省の予算の話が出ましたが、私もこの在外公館等の費用について十分であるとは考えておりません。できるだけ外務省の予算についても考えていかはくてはならぬと思っております。特に藤山外務大臣は、今回の予算でもその点を非常に心配なさって、非常に努力をなさっこておられます。従いまして、三十三年度は、ともかく庁費系統にしても、施設にしても、あるいは旅費等にしても、相当従来に比べて増加いたしております。ただ、財政のことでありますので、一挙になかなか思うように予算をふやすことができないような情勢にあります。なお、今後については、外務大臣とも相談いたしまして、日本の外交にふさわしいように一つ考えていきたいと思います。
  431. 戸叶武

    戸叶武君 文部大臣が約束した時間にまだ現われてこないので、それをお待ちしているのですが、とにかく学校給食の問題に関連しての質問を文部大臣と農林大臣にしたいと思うのですが、まあ待っていられませんから始めます。文部大臣にはあとで来たらすることにしますがなるたけ急いで呼んで下さい。  それでは、その関連した事項に入る前に、農林大臣一つ御質問いたしますが、赤城さんがいないので、赤城さんに関連したことなんで、質問が非常にしづらいのですが、この前の予算委員会において、赤城さんの赤城構想なる利根川総合開発の問題、すなぬち調査費二億三千万円を要求して、七百五十万円使われたが、その使い道が非常にあいまいなので、この大ダムを作るという選挙対策に打ち上げられたと思われる地帯の鬼怒川中部の人たちというものは、それによって今市付近の三百町歩の田畑がつぶされ、人家が五百七十戸も立ちのかなければならないというので、いまだ動揺が去らないのであります。これは選挙の前によくあることで、自民党の担当部会というものと呼応してでっち上げた構想なので大蔵省によってこの七百五十万円まで切り取られたのですが、この使い道をどういうふうにしているか、この点をもう少し明確にしてもらいたいと思います。
  432. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 鬼怒川は御承知のように非常な荒れ川でございまして、その付近の人たちが水不足に悩むことが多く、いろいろな施策が施されてあるのでございますが、この際利根川下流部を含めての鬼怒川の全水域について総合的な水の利用方法を考えて、そうして安全な農業経営のできるようにしたいということで、鬼怒川の水位、流量、各用水取り入れ口の状況、または地域内の用水不足の状況等を長期にわたってこれは調べて、これを土台といたしましてどういうふうにやっていったらよいかということをきめなくてはならぬと思うておるわけであります。三十三年度においては、いろいろ調査をしたい項目があるのでございますが、それは、第一は、河川流量の調査、第二は、用水の反復利用の状況、第三には年間における地下水の変化、第四番目には受益地の土質の調査、第五には早期栽培の導入並びに畑地灌漑または田畑輪換を行うための水の調査、なおこういう調査のためには、さしあたり若干の調査費を来年度計上いたしておるのでございまするが、これはただいまも申しましたように、長期にわたる調査の予定でありますので、その結果を待たなければ、この水利用の方式はきまらないのであります。ダムのことがちらっと出ましたけれども、まだそういうことをやるかやらぬかも、今のような調査がだんだん積み重ねられて、しかる後に研究の結果が到達するというつもりでございます。
  433. 戸叶武

    戸叶武君 これはアメリカの工兵大佐のジョン・ブラント案に呼応するような大規模なダムだという打ち出し方なので、びっくりしたのですが、今の大臣の御答弁だと、雲散霧消しちゃったので、まあ心配はないと思うのでありますが、これがために、利根川中部土地改良の事業費は一億六千万円のやつが五千万円に削られた被害を受けておるので、農林省としては、十分こういうことにも今度は注意してもらいたいと思うのです。   それと関連して、最近愛知用水の浜口総裁のことに関して、衆議院でも問題になりましたが、その後河野経済企画庁長官は公然と、名古屋あたりで浜口さんにはよしてもらうのだいうことを放言しておるということでありますが、選挙対策として、藤山さんを生かすためにいろいろな人事を動かそうというような企てのように取りざたされておりますが、人事の関係はどうも岸内閣は最近不手ぎわが多いと思うのです。政治がくずれるときは、いつも人事の問題の不明朗から来ると思うのでありますが、やはり選挙関係でもって群馬あたりの知事上りの人を何かの総裁にしてみたり、やはり横浜の地盤割の関係で浜口さんをどっかへ押し出すというようなことは、これは私は世間一般が見ても何だかえげつない感じを受けると思うのです。こういうことに対して、岸総理と農林大臣から御答弁を願います。
  434. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 浜口愛知用水総裁の問題に対しましては、衆議院でこの人事について質問がありました際にも明瞭に申し上げておいたのでありますが、決して選挙等に関連して考えたわけじゃございませんで、これは藤山外相からお答えした方がいいかと思いますが、藤山外相は、財界出身に広く人材を登用するという考えのもとに、財界あるいは新聞界等あらゆる面から適当な人を探して、適当な地位についてもらうという考えのもとに進めておったことは事実であります。ところが浜口総裁は、私の聞いているとこころでは、これを自分の現在の地位を去ってそういう地位につくことを受諾いたしませんので、そのままになっておるというのが現状でございます。
  435. 戸叶武

    戸叶武君 三十二年度第三次補正の問題に関連いたしまして、牛乳乳製品学校給食費補助金の問題をめぐって文部大臣並びに農林大臣に質問したいと思いますが、今学校給食の状態はどうなっているのか、どうなっているというよりは、どういうふうにして学校給食を拡大しようと考えているか、そうしてそれの障害となっているのはどういう点にあるかということを文部大臣から承わりたい。
  436. 松永東

    国務大臣(松永東君) 学校給食は児童及び生徒の心身の健全な発達に資するために、何とかして健全に発達させようと思いまして努力を続けて参っておるのでございます。昭和三十二年の十一月三十日の現在におきまして、小学校において六百九十四万人、中学校において二十六万人が完全給食を受けているのでありますが、文部省といたしましては、今後ともこれが普及充実に一そうの努力をいたす考えでおるのであります。今仰せになりました学校給食費の問題で一番困っておりますのは、準要保獲児童生従の給食費の問題でありますが、すなわち昭和三十二年度におきましては次の補助をして参りました。すなわち予算額が大体一億一千万円、それで人員といたしまして大体十万二千八百人、それが大体の数でございますが、それから昭和三十三年度におきましては、この予算に一億六千万円が計上せられておりまして、児童生徒を合せますというとざっと十六万人程度を補助の対象となし得る見込みでございます。そのほかに何とか私どもがしなければならぬと存じておりますのは、定時制では御承知通り昼間一生懸命汗あぶらを流して働いて、そうして夜間のひまを利用して頭をみがき腕を練ろうとするこの青年たちを何とかせぬけりやならぬと存じまして、そうしていろいろ努力を続けて参ったのでございまするが、これは完全給食が四十校、大体七千人余でございます。補給給食が三十五校、これがざっと、これも七千人余りでございます。合計七十五校で一万四千人余りでございます。夜間の定時制の高等学校の完全給食は三十二年度から開始いたしましたので、今後はますます増加するものと期待しております。なお、夜間定時制高等学校の学校給食の推進に資するために、三十二年度においては、その開設に要する調理上等の施設設備補助として、九十二校に対し一千三百万円余を補助いたしておるます。三十三年度におきましては、百十七校に対し一千二百六十万円を補助するようになっております。これはしかし、何とかしてもう少し補助をしまして、昼間稼いでいる青年たちが夜学に来ましても、せめて冬の寒いときでに暖かいものを食べて、そして朗らかな気持で勉強することができるようにさせたいと思って、今後ますます努力を続けていくつもりであります。(「大蔵大臣よく聞いていらっしゃい」と呼ぶ者あり)
  437. 戸叶武

    戸叶武君 日教組の方の発表した統計によりますと、この学校給食のための職員数が六万二千六十七人です。しかも、栄養士の有資格者というものは九十八人にすぎないという状態だといわれておりますが、今、苦労人の松永さんはこういうのをどんどんふやすと言っておりましたが、松永さんは苦学力行して非常に苦労人で、そういう点に力を入れようとしても大蔵大臣を説きつける能力がなければ、やはりその実現は果せないのですが、大蔵大臣は学校給食に対してどういうふうなお考えを持っておりますか。
  438. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私も非常にこれはやらなくちゃならぬことだと思いまして、今後努力するつもりであります。
  439. 戸叶武

    戸叶武君 どうもそっけない話でありますが、この学校給食の問題に関連して、これは牛乳乳製品の処理の問題でありますが、学校給食費補助金の問題、それから酪農振興基金法の問題、こういうふうに今日における乳製品の処理の問題に対するいろいろの手が打たれておりますが、これと非常に類似した形で今問題になっているのは、繭糸価格安定法と糸価安定特別会計法の一部改正、こういうものの関連において私らがながめたときに、この滞貨処理の方式というものは非常にでこぼこがあるのじゃないかと思います。この繭糸価格安定のために金を使わなければならないのもわかりますけれども、今日においては、原資がたしか三十億、借入限度三十億、これを政府原案においては当初二十億の借入限度を拡大している、そして五十億として、さらに政府修正で二十億をふやし、七十億に拡大しておるというようなことと対比しまして、もう一つ輸出生糸保管会社というものをでっち上げて、これに基いて政府出資が、たしか三千万円をやって法人化して買い入れをやるというような手が打たれておりますが、酪農関係に対する打ち方は、学校給食との関連においてみても、それから酪農振興基金についてもわずか五億を投げ出して、問題を起しているのですが、非常にでこぼこになっていると思いますが、農林大臣から御答弁願いたい。
  440. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 価格安定の占用からいたしまして、この二つの問題をながめますと、いかにも、一見非常にでこぼこがあるように見えるのであります。繭糸価格安定のためには、今お話のように資金と融資合せて百億が今予定されておりますが、また一方の方では、酪農の振興という基金として、わずかに五億、五億と百億というと、いかにも安定線に力の入れ方が違うようでございまするが、これはどうも物そのものの流通、消費の状態が違うというようなこと、それからまた、業極の発展段階がいろいろ違うというようなことが考えられると思うのであります。生糸は御承知のごとく、日本で非常な吾というか、外国と貿易を始めて以来、一番大きな輸出品であった。今日はその段階が下って参りましたけ回ども、相当大きなこれは日本の仕事として、輸出の面でも大事な商品でございます。そしてこれはまあ保存ができる、価格も高いというようなこと等からいたしまして、この価格を安定線に相当多額の金が要る、牛乳の方になりますると、これはなまものでございまするから、貯蔵がなかなかできない、早く処理しなくてはならない、それで資金の回転も早いというようなこと等で、まあ、今度の案ではわずかに五億円でございますけれども、これで今日の牛乳の生産状況から見ていきますると、価格の安定の線の大きな力になるのではないか、この酪農振興基金と、それから乳製品の売れ残りと申しまするか、残っておりまする品物のたな上げに対する補助、また今の酪農振興資金、こういうものによりまして牛乳の方の、また乳製品の方の安定を保つことができるだろう。これがだんだんこの仕事が盛んになりまする傾向を持っており、この数年来の非常な牛乳並びに乳製品の進出、今後ともまた、新経済五ヵ年計画においても特に牛乳の点においては大きな発展をするつもりでやっておりますから、これに対してのいろいろな今の安定資金、その他の問題は考慮して、そしてその実を上げていきたい、こういうふうに思っております。
  441. 戸叶武

    戸叶武君 まだ石井さんは農林大臣のピンチヒッターだから、なれていないのでしょうが、今の農家収入を見ますと、米作収入が四九%、それからこの畜産の方の収入が一三%、養蚕は五%になっているのです。斜陽産業であって今日では五%に落ち込んでいる。その五%に落ち込んでいるものに対して、政府は百億の金を三投げ与えた、一三%まで政府の奨励で伸びた畜産には、五億の金しか出さない。このアンバランスをどうするのですか。それは私は極端な例だと思うのです。しかも、養蚕農家は八十万戸あると言いますが、酪農の方もどんどん伸びて参りまして、乳牛だけでも三十二年度において六十万頭をこえております。そうして牛乳はなまものだからと言うが、なまものだから学校給食でも職場給食でもいいからやれば消化できるのであります。そういう方のことはやらないで、そうして牛乳の値段は一合五円二十銭、去年は四円九十銭にたたき、さらに四円六十銭にまでたたきつぶしている、生産者をいじめている。そうして都会において十三円で明治や森永に売らせている。こういう問題に対しても根本的改革をやらない。だからこの酪農振興の五億の問題をめぐっても、あるいは繭糸価格安定の方式をまねて、業者が間接補助によって、われわれの金を業者の方によこして、そうして間接補助によって生産者を救うという方式をとらせようというので、今、もめていて、農林省はまとまらない。また、繭糸価格の方でも、業者を通じて価格の安定によって農家を救うということで、直接に救われているのは業者であります。こういう形は、今根本的に改められなければ、生産者というものは、どっちもいためつけられているのです。私は農林省でもってこの段階においてもっと考えていかなければならないことだと思いますが、どういう考えをこれに対して持っているか。単に酪農振興基金のごたごたを片づけるという問題じゃなくて、両者の関連性において問題を片づけなければ、私は、酪農関係においては業者は引っ込まないじゃないか。
  442. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 畜産関係予算等を見ますと、ことしの予算におきましても、酪農振興基金を除きましても約二十七億円、蚕糸局の関係一般会計を見ますと十一億、こういうもののほかに肥料の需給安定対策費あるいは普及事業、試験研究に関する経費というようなものをずっとあげますると、相当大きな割合で一般会計へ盛られておるのでございます。これらを見ましても、私は大体バランスのとれたものではないかと、従って価格の安定の線だけ申しますと、さっきのようなわけでございまするけれども政府といたしましてはそういういろいろな予算をもちまして、いろいろな畜産の発展のための技術の振興の面、あるいは生産対策の面とか、あるいは消費、流通の面とかいうようなものについて、できるだけ多くの、多角的にいろいろこれを計画をいたしまして、その費用によって日本の畜産をだんだん盛んにしていく。牛乳も盛んにして牛乳をよけい飲んでもらって、そしてそれが価格の安定には、さっき申したような方法で、だんだんこれからふえればふえるに従って、それが乱れないようにやっていく。学校給食の話が出ましたが、三十二年度においては牛乳を十万石、来年度においては二十万石というものをそういう方面に使っていただこうと、さらに今お話しの集団的な工場の大きいところには、やはりこの牛乳の消費というものの面で、いろいろ話を続けていくようにしたい、こういうふうに思っております。
  443. 戸叶武

    戸叶武君 私は学校給食の問題に対しては、松永文部大臣が非常に熱意を傾けられたので、時間もありませんから、もう質問はいたしませんけれども、やはり日本の食生活を変えなきゃならないというのは、だれもわかっていながら、変えることのできないのは、長い習慣の惰性であります。これをやはり変えていくのは、学校給食面のからとっぱなを作っていくよりは仕方がないので、そういう点において学校給食には重点を置いてもらいたい。それにもかかわらず、今度のこの予算の組み方なんかを見ましても、昨年九月二十七日の閣議で補助制度決定したにもかかわらず、一月補助分は予備費より支出済みであり、二月三月分の支出は、当然そのときに予見されたにもかかわらず、第二次補正計上しなければならない、こういうやり方がすべてこそくな怠慢ぶりを発揮しているのでありますが、私はこの日本の児童の体位の向上、日本の立場から二〇%の食糧が足りないで、外国から二千億もの金で買うなんという外貨の不足しているときに、この余剰農作物に頼ってやっていくような方式というものは、やはり打ち砕いていかなければならない。それには米麦ばかりじゃなくて、食生活を変えて、食生活を変えるためには、学校給食を強化していくということが一番大切なんで、この問題に対しては、これは農林大臣、文部大臣が熱心なだけじゃなくて、一番大切なのは、やはり前の外務省の予算じゃないけれども、やはり大蔵大臣の一萬田さんだと思うのです。一萬田さんは、あまり渋い役割ばかりをしているが、たまには子供たちに喜ばれるようなことをしていかないと、あの世へ行ってから困ると思うのです。そういう意味におきまして、ほんとうに全国の児童たちが将来に希望を持てるような、私は一萬田さんから回答をお願いしたい。
  444. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私も畜産の振興、これは今お話しのように、従来の米麦中心の農業の経営から、土地を最も有効に使う農業経営の多角化というような見地から、大いに賛成であります。そういう意味において、先ほど農林大臣からもお話がありましたように、三十三年度の予算については、農林大臣が相当満足するように予算も私は増加しておるつもりであります。なお、こういう点については、私ども実は相当な熱意を傾けております。また、今のお話しの、食生活を改善していく、これは私も考えは賛成なのであります。食生活の改善というようなところから、住宅の改善という、やっぱりそれがまた日本国民の社会活動に影響を与えてくる、こういうふうに私は考えておるのであります。従いまして、その食生活改善には、やはり小さい子供のときに一つの習慣を与えるということが、私はとるべき方法である、こういう点にも異存がありません。そういうふうなことについて今後考えていこうと思っておるのでありますが、何さま三十三年度は、御承知のような歳出のワクがありまして、これは大きな見地からやむを得なかったのであります。そういう意味において、十分に思うようにいきませんが、今後は、私の考えは今申したところにあるということを御了承願いたいと思います。
  445. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 以上をもちまして、質疑通告者の発言は全部終了いたしました。  質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。高田なほ子君。
  446. 高田なほ子

    高田なほ子君 昭和三十二年度一般会計予算補正(第3号)、同じく特別会計予算補正(特第5号)に対し、日本社会党を代表して反対の意を表したいと存じます。「人人みなよろし」予算として、大いに神武景気をあおった前年度予算は、昨年十一月一日第一次補正以来、第二次、第三次と、こま切れ補正の結果、次第に変貌し、ここに一兆一千八百四十六億となり、さきにわが党が、大資本擁護を基礎としたインフレ要因をはらむ放漫予算として反対し、かつ、警告を発した杞憂は、今日単なる相愛としてではなく、現実問題として浮び上ってきたことに、まず遺憾の意を表したいと思うのです。   アメリカ一辺倒外交による防衛六カ年計画の影響を受けたとは言いながら、第二次補正予算が可決したそのときに、第三次補正予算はもう組むまいという予想を裏切って、三次にわたる補正をしたこの不手ぎわは、明らかに政府の無定見と無計画を示したものとして指摘しなければなりません。(拍手)   本補正の財源措置として、一千億の自然増収を見込んで、第二次補正とともに、租税収入にその財源を求めていますが、増収の見通しは、アメリカの不況経済の影響を受けて下回る傾向にあり、今次補正により、戦時中の遺物としてわが党が全廃を主張する物品税三十億、ほかに官業収入一億七千余万円、雑収入四十五億等、計四百七十余億円を先食いする結果、今後税金や罰金の取り立てに弱い者いじめの現実が起らないとは、だれも断言できないと存じます。むしろ、昭和三十二年度の未歳出使い残り約二百億、特に、例年問題になる防衛費の繰り延べおよそ三十億等をこれに充てることが当を得た措置ではないかと考えられるわけであります。これらの財源には全く手をつけず、この六月には、ほとんどまる裸の状態で、ちまたに放り出される七万の駐留軍労務者の離職対策を放棄したことは、まことに遺憾と言わなければなりません。健康で明るい生活の実現を公約した岸内閣の緊急措置として、少くとも一人当り五万円の措置が今次の補正でされることが私は当然ではないかと思うのでございますが、これらの措置が全然されなかったということは繰り返し遺憾の意を表したいのであります。常に、大資本擁護に奉仕し、民衆の悲しみにいつくしみを持たない冷酷政治の本体をこの補正によって暴露したものとして、予算提出の方法内谷ともに、まずわれわれとしては賛意を表しがたい理由をここに申し上げたいのであります。かつて政府は、一千億減税、一千億施策で、健康で明るい生活を打ち立てると公約したが、結局三十二年度投融資計画は、三千二百四十六億の巨額に達し、前年度よりは六百七十三億の増になったわけですが、との内容は、電力、開銀等大資本擁護に集中し、一千億減税も、またわが国総人口九千三十万人の約三分の二に当る六千五百余万人は、全く減税の恩典に浴さないのみか、国鉄運賃の値上げ、自動車賃の値上げ、日常品の値上げ等、むしろ四百億の間接税がのしかかり、連日親子心中、殺人、強盗という陰惨な日々の連続であります。まさに政府の言う一千億減税の被害者こそ国民大衆と言わなければなりません。このような中で、民衆のための予算のかおりをわずかに残した社会保障費実質七十一億増は、数字的には大いに政村の言う福祉国家建設という名調子の太鼓をたたかせはしたものの、結核対策費の不足と、建保の赤字の悪循環が貧乏をより今日深刻にしています。あまつさえ六十万被保険者、十六万の医療担当者の激しい憤怒を押えて、前回においては健保の改悪を断行し、千分の六十を千分の六十五に引き上げ、一カ年一人当りの平均保険料金を九千八百八十四円も取り上げ、このような改悪を行い、のどから手の出るように療養を望む患者の出足をこういう方法で鈍らせる暴挙に出たことは、まことに許されない無作為の殺人行為と断ぜざるを得ないのでありますが、今日の補正には、国民健康保険療養給付に対する補助金の積弊分十六億を計上して、そもそもかくのごとき補助金不足を見なければならないのは、現政府の方針のもとでは当然のことであって、療養給付費の補助額を二割に押えて、多大の赤字を市町村に強制しておるのみならず、市町村役所、役場の事務補助金もきわめて少額のため、三十一年度分において事務費はすでに赤字十億円をこえている実情であります。国民皆保険を四カ年で完了するという大看板で、昭和三十一年度分についてもかくのごとき補正を行わなければならない実情でありながら、三十三年度についてもわずかに調整交付金を五分増したにすぎないということは、依然として従来の失敗を繰り返すにすぎないことは明々白々のことであります。真に通正な国民皆保険を完成する意思があるならば国保、医療の内容を高めるとともに、当然増大する医療費に対する国の負担を少くとも三割以上、四割の程度に押えるべきではないでしょうか。昭和三十三年度には国保新規加入は約五百万人であり、国民生活の窮乏化とともに、結核などの長期疾患はふえこそすれ決して減少しないのであって、三十二年度、三十三年度と、さらに追加補正を行わなければならないことは火を見るよりも明らかでありまして、かかる追加補正政府としての失態を明らかに暴露したものと言わなければなりません。私どもは、こうした面の予算の増額を強調するものであり、さらにその額の少な過ぎることを指摘するものでございますが、最も重大なことは政府の無計画性であり、政治の貧困を国民の上に押しかぶせて、岸内閣が国民のふんどしで相撲をとりながら、社会保障だ、皆保険だと、国民を偽わっているこの事実に対して、われわれは強く批判をしなければなりません。(拍手)  次に、義務教育国庫負担金の必要経費として四十二億四千五百八十九万円が計上されていますが、これは当然過ぎるほど当然のことであって、むしろその額の過小に過ぎるきらいがあることを感じさせます。すなわち前年度の教員の適正配置には最低一万二千人を要すべきであるものを、わずかに千四百六十七名の定員増きりせず、このために給与費の市町村負担において行われているものが、先ほどの政府答弁によっても小中千六百人、養護教諭三千人という、まことに変則な配置の状態にあることはまことに嘆かわしいことであります。このために現在法律に規定されている女子教員の産前産後の休養期間の代替教員の補充がほとんど満足に行い得ないという状態であります。加えて小、中学校における不足坪数八十二万坪に及んでおるのに、これが計画的整備を行わないために、逐年的にすし詰め教育が増加、ついに今日その限界に達しておるわけであります。教員の給与にしても、本来法律に基いて定期の昇給昇格が行われるべきでありますものを、地方の財政難を理由に一方的に無理にこれをストップさせ、今日までこのストップが重なり重なって参っておるのでありますが、このことは明らかに公務員の正当な権利を剥奪する暴挙であって、しかもわずかの予算を全体の教員に分配するためにはどうしても教員に段階をつけて、一部のものの昇給を許す以外にないという、この非合法的なやり方を合法化するために行われたのが今回の勤務評定の実施であります。しかも、この勤務評定実施のために、先ほど矢嶋委員によって指摘された、まことに陰謀きわまる管理職手当を予算化しておるということは、きわめて教育の民主化の上に大きな阻害になることを指摘しなければなりません。また教員定数のみならず、今日の地公法において教員の身分は確保されておりますが、夫が校長であるからやめなさい、あなたは共かせぎだからやめなさい、四十才以上はやめて下さい、こういうような一方的な退職勧告が特に婦人教師の間に強く行われておるということは、まことに法律によらない不適格条項をでっち上げて不当な首切り勧告をするということは、まことに当を得ないことであり、皆さんも御承知の朝日新聞の小説「人間の壁」にも、こうした不当な首切り勧告の実情が訴えられています。このような為政者の不当な行為に対して、黙っていれば問題はないのですが、当然身分上の不利益処分を排除しようとする場合に、地方権力との好まざる抗争が展開されるのでありますが、かかる混乱の元凶こそ政府の無責任な施策であり、この無策を糊塗するための弾圧なのであります。かかる事態を未然に防がんために、わが党は前国会においてすし詰め教育を抜本的に解決するために公立学校の施設費国庫負担法の一部改正案を提出いたしましたが、与党の御協力を得られなかった。その根本的な解決方法を残したことはまことに残念にたえないところであります。今回の補正には、当面の過剰乳処理対策として、学校給食に牛乳を供給するための二億九千九百万円の予算計上されてありますが、もとより学童給食の充実をはかるこの措置には何ら私どもは反対の意思を持つものではありませんが、昭和二十八年度給食を実施以来、小学校約七百万、中学校二十六万のこの大きな普及は次第に高まって参りますが、常に政府の給食に対する方針は一貫性、計画性を欠いてきたわけであります。MSAの見返り物資としての小麦を消化するクッションとして学童給食が使われ、MSA体制強化の一助として学童給食を利用したり、牛乳の価格調整のために牛乳を給食に回したりするようなこういう便宜主義では真実の学童給食を実施することはできないと存じます。今日の学童給食の実情について詳しく申し述べる時間もありませんが、栄養士九十八人、給食従事員はほとんど配置せず、わずかに延べ二百二十人、予算として五万三千九百円が予算化されているにすぎません。こうした人員不足の穴埋めのためにPTAの経費は逐年的にふえ、教育に専念しなければならない教師の一・四%が給食作業に従事しているということが現状なのであります。貧困児童七十六万の半数は給食の対象外に放置されているような、このような学童給食の対策であっては、子供の仕合せを口にする岸政府のなさることではないと考えるわけであります。なお本補正予算には、国連警察軍のスイス派遣費負担金二億六千万円が見込まれていますが、政府の国連中心の外交方針には何ら異議を差しはさむ理由はありませんが、今日スイスにあるものは、U・Nポリス・フォースという独立したものではなく、各国からの正規の兵力によって編成された各国軍隊の共同駐屯の緊急部隊であります。一体国連憲章の指し示す方向は世界平和への大道であります今、世界八十カ国の加盟国のみならず、近代の二大世界戦争にしいたげられ、破壊の苦しみに坤吟した二十四億の民衆が、その苦悩の洗礼の中からあげた熱烈な平和への願いが、国連の高い理想を支えておるのです。しかし現状は、平和を口にしながら必死に戦争準備に狂奔する大国間の今日の横暴は国連内部に次第に流血の危機を内包しております。このような時期に新たに加入した日本の責任と使命はきわめて重大であります。世界の情勢から見ても、兵力の増強結集のために、わが国が国連加盟以前の決議にさかのぼってこれらの負担金を負うことについては、わが国平和憲法の趣旨から考えても違法の疑いなきを得ないのであります。このような支援の方法よりは、むしろアジアの民衆とともに手を握り、思い切った平和提唱こそがわが国の果すべき国連への使命ではないでしょうか。(拍手)来たる四月五日には重ねてエニウエトク島で原爆の実験が行われると聞いております。エニウエトクは国連信託統治第八十二条、八十三条に規定されておる戦略地区として指定された場合であり、当然信託統治協定の適用範囲に属するものでありますから、安全保障理事会が人間の生命の安全保障のために、原爆実験の即時停止を要請すべきでありましょう。しかも今日の日本の立場は、これが提唱の権能を有するものでありまするがゆえに、一刻も早くこうした措置をとることこそ、最大の平和に対する日本の義務ではないかと存ずる次第であります。  国民のために常に平和と幸福を願うわが日本社会党は、その場限りの大衆収奪の上に組み上げられた本案に対しましては、遺憾ながら断固反対の意思を表明せざるを得ません。  以上で討論を終ります。(拍手)
  447. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 以上をもちまして討論は終りました。討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。昭和三十二年度一般会計予算補正第三号及び昭和三十二年度特別会計予算補正特第五号を一括して問題に供します。右二案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  448. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 起立多数と認めます。(拍手)よって右二案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告の内容及び報告書の作成等につきましては、慣例により委員長に御一任願いたいと存じます。  本案に賛成せられた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名    伊能 芳雄  館  哲二      小幡 治和  鶴見 祐輔      剱木 亨弘  苫米地英俊      迫水 久常  苫米地義三      高橋進太郎  一松 定吉      石坂 豊一  本多 市郎      大川 光三  三浦 義男      木島 虎藏  森 八三一      古池 信三  加賀山之雄      小山邦太郎  後藤 義隆      田村 文吉  佐藤清一郎      塩見 俊二  下條 康麿
  449. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 明日は正午に  委員長及び理事打合会を、午後一時か  ら委員会を開きます。   本日は、これにて散会いたします。    午後八時三十二分散会