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高田なほ子君
昭和三十二年度
一般会計予算補正(第3号)、同じく
特別会計予算補正(特第5号)に対し、
日本社会党を代表して反対の意を表したいと存じます。「人人みなよろし」
予算として、大いに神武景気をあおった前年度
予算は、昨年十一月一日第一次
補正以来、第二次、第三次と、こま切れ
補正の結果、次第に変貌し、ここに一兆一千八百四十六億となり、さきにわが党が、大資本擁護を
基礎としたインフレ要因をはらむ放漫
予算として反対し、かつ、警告を発した杞憂は、今日単なる相愛としてではなく、現実問題として浮び上ってきたことに、まず遺憾の意を表したいと思うのです。
アメリカ一辺倒外交による防衛六カ年計画の影響を受けたとは言いながら、第二次
補正予算が可決したそのときに、第三次
補正予算はもう組むまいという予想を裏切って、三次にわたる
補正をしたこの不手ぎわは、明らかに
政府の無定見と無計画を示したものとして指摘しなければなりません。(拍手)
本
補正の財源
措置として、一千億の自然増収を見込んで、第二次
補正とともに、
租税収入にその財源を求めていますが、増収の見通しは、アメリカの不況経済の影響を受けて下回る傾向にあり、今次
補正により、戦時中の遺物としてわが党が全廃を主張する
物品税三十億、ほかに
官業収入一億七千余万円、
雑収入四十五億等、計四百七十余億円を先食いする結果、今後税金や罰金の取り立てに弱い者いじめの現実が起らないとは、だれも断言できないと存じます。むしろ、
昭和三十二年度の未
歳出使い残り約二百億、特に、例年問題になる防衛費の繰り延べおよそ三十億等をこれに充てることが当を得た
措置ではないかと
考えられるわけであります。これらの財源には全く手をつけず、この六月には、ほとんどまる裸の状態で、ちまたに放り出される七万の駐留軍労務者の離職対策を放棄したことは、まことに遺憾と言わなければなりません。健康で明るい生活の実現を公約した岸
内閣の緊急
措置として、少くとも一人当り五万円の
措置が今次の
補正でされることが私は当然ではないかと思うのでございますが、これらの
措置が全然されなかったということは繰り返し遺憾の意を表したいのであります。常に、大資本擁護に奉仕し、民衆の悲しみにいつくしみを持たない冷酷政治の本体をこの
補正によって暴露したものとして、
予算提出の方法内谷ともに、まずわれわれとしては賛意を表しがたい理由をここに申し上げたいのであります。かつて
政府は、一千億減税、一千億施策で、健康で明るい生活を打ち立てると公約したが、結局三十二年度投融資計画は、三千二百四十六億の巨額に達し、前年度よりは六百七十三億の増になったわけですが、との内容は、電力、開銀等大資本擁護に集中し、一千億減税も、またわが国総人口九千三十万人の約三分の二に当る六千五百余万人は、全く減税の恩典に浴さないのみか、
国鉄運賃の値上げ、自動車賃の値上げ、日常品の値上げ等、むしろ四百億の間接税がのしかかり、連日親子心中、殺人、強盗という陰惨な日々の連続であります。まさに
政府の言う一千億減税の被害者こそ国民大衆と言わなければなりません。このような中で、民衆のための
予算のかおりをわずかに残した社会保障費実質七十一億増は、
数字的には大いに政村の言う福祉国家建設という名調子の太鼓をたたかせはしたものの、結核対策費の
不足と、建保の赤字の悪循環が貧乏をより今日深刻にしています。あまつさえ六十万被保険者、十六万の医療担当者の激しい憤怒を押えて、前回においては健保の改悪を断行し、千分の六十を千分の六十五に
引き上げ、一カ年一人当りの平均保険料金を九千八百八十四円も取り上げ、このような改悪を行い、のどから手の出るように療養を望む患者の出足をこういう方法で鈍らせる暴挙に出たことは、まことに許されない無作為の殺人行為と断ぜざるを得ないのでありますが、今日の
補正には、
国民健康保険療養給付に対する
補助金の積弊分十六億を
計上して、そもそもかくのごとき
補助金の
不足を見なければならないのは、現
政府の方針のもとでは当然のことであって、療養給付費の補助額を二割に押えて、多大の赤字を市町村に強制しておるのみならず、市町村役所、役場の
事務費
補助金もきわめて少額のため、三十一年度分において
事務費はすでに赤字十億円をこえている
実情であります。国民皆保険を四カ年で完了するという大看板で、
昭和三十一年度分についてもかくのごとき
補正を行わなければならない
実情でありながら、三十三年度についてもわずかに調整交付金を五分増したにすぎないということは、依然として従来の失敗を繰り返すにすぎないことは明々白々のことであります。真に通正な国民皆保険を完成する意思があるならば国保、医療の内容を高めるとともに、当然増大する医療費に対する国の負担を少くとも三割以上、四割の程度に押えるべきではないでしょうか。
昭和三十三年度には国保新規加入は約五百万人であり、国民生活の窮乏化とともに、結核などの長期疾患はふえこそすれ決して減少しないのであって、三十二年度、三十三年度と、さらに
追加補正を行わなければならないことは火を見るよりも明らかでありまして、かかる
追加補正は
政府としての失態を明らかに暴露したものと言わなければなりません。私
どもは、こうした面の
予算の増額を強調するものであり、さらにその額の少な過ぎることを指摘するものでございますが、最も重大なことは
政府の無計画性であり、政治の貧困を国民の上に押しかぶせて、岸
内閣が国民のふんどしで相撲をとりながら、社会保障だ、皆保険だと、国民を偽わっているこの事実に対して、われわれは強く批判をしなければなりません。(拍手)
次に、義務教育
国庫負担金の必要
経費として四十二億四千五百八十九万円が
計上されていますが、これは当然過ぎるほど当然のことであって、むしろその額の過小に過ぎるきらいがあることを感じさせます。すなわち前年度の教員の適正配置には最低一万二千人を要すべきであるものを、わずかに千四百六十七名の定員増きりせず、このために
給与費の市町村負担において行われているものが、先ほどの
政府答弁によっても小中千六百人、養護教諭三千人という、まことに変則な配置の状態にあることはまことに嘆かわしいことであります。このために現在
法律に規定されている女子教員の産前産後の休養期間の代替教員の補充がほとんど満足に行い得ないという状態であります。加えて小、中学校における
不足坪数八十二万坪に及んでおるのに、これが計画的整備を行わないために、逐年的にすし詰め教育が増加、ついに今日その限界に達しておるわけであります。教員の
給与にしても、本来
法律に基いて定期の昇給昇格が行われるべきでありますものを、地方の財政難を理由に一方的に無理にこれをストップさせ、今日までこのストップが重なり重なって参っておるのでありますが、このことは明らかに
公務員の正当な権利を剥奪する暴挙であって、しかもわずかの
予算を全体の教員に分配するためにはどうしても教員に段階をつけて、一部のものの昇給を許す以外にないという、この非合法的な
やり方を合法化するために行われたのが今回の勤務評定の実施であります。しかも、この勤務評定実施のために、先ほど矢嶋
委員によって指摘された、まことに陰謀きわまる管理職手当を
予算化しておるということは、きわめて教育の民主化の上に大きな阻害になることを指摘しなければなりません。また教員定数のみならず、今日の地公法において教員の身分は確保されておりますが、夫が校長であるからやめなさい、あなたは共かせぎだからやめなさい、四十才以上はやめて下さい、こういうような一方的な退職勧告が特に婦人教師の間に強く行われておるということは、まことに
法律によらない不適格条項をでっち上げて不当な首切り勧告をするということは、まことに当を得ないことであり、皆さんも御
承知の朝日新聞の小説「人間の壁」にも、こうした不当な首切り勧告の
実情が訴えられています。このような為政者の不当な行為に対して、黙っていれば問題はないのですが、当然身分上の不利益処分を排除しようとする場合に、地方権力との好まざる抗争が展開されるのでありますが、かかる混乱の元凶こそ
政府の無責任な施策であり、この無策を糊塗するための弾圧なのであります。かかる事態を未然に防がんために、わが党は前国会においてすし詰め教育を抜本的に解決するために公立学校の施設費国庫負担法の一部改正案を提出いたしましたが、与党の御協力を得られなかった。その
根本的な解決方法を残したことはまことに残念にたえないところであります。今回の
補正には、当面の過剰乳処理対策として、学校給食に牛乳を供給するための二億九千九百万円の
予算が
計上されてありますが、もとより学童給食の充実をはかるこの
措置には何ら私
どもは反対の意思を持つものではありませんが、
昭和二十八年度給食を実施以来、小学校約七百万、中学校二十六万のこの大きな普及は次第に高まって参りますが、常に
政府の給食に対する方針は一貫性、計画性を欠いてきたわけであります。MSAの見返り物資としての小麦を消化するクッションとして学童給食が使われ、MSA体制強化の一助として学童給食を利用したり、牛乳の価格調整のために牛乳を給食に回したりするようなこういう便宜主義では真実の学童給食を実施することはできないと存じます。今日の学童給食の
実情について詳しく申し述べる時間もありませんが、栄養士九十八人、給食従事員はほとんど配置せず、わずかに延べ二百二十人、
予算として五万三千九百円が
予算化されているにすぎません。こうした人員
不足の穴埋めのためにPTAの
経費は逐年的にふえ、教育に専念しなければならない教師の一・四%が給食作業に従事しているということが現状なのであります。貧困児童七十六万の半数は給食の対象外に放置されているような、このような学童給食の対策であっては、子供の仕合せを口にする岸
政府のなさることではないと
考えるわけであります。なお本
補正予算には、
国連警察軍のスイス派遣費
負担金二億六千万円が見込まれていますが、
政府の国連中心の外交方針には何ら
異議を差しはさむ理由はありませんが、今日スイスにあるものは、U・Nポリス・フォースという独立したものではなく、各国からの正規の兵力によって編成された各国軍隊の共同駐屯の緊急部隊であります。一体国連憲章の指し示す
方向は世界平和への大道であります今、世界八十カ国の加盟国のみならず、近代の二大世界戦争にしいたげられ、破壊の苦しみに坤吟した二十四億の民衆が、その苦悩の洗礼の中からあげた熱烈な平和への願いが、国連の高い理想を支えておるのです。しかし現状は、平和を口にしながら必死に戦争準備に狂奔する大国間の今日の横暴は国連内部に次第に流血の危機を内包しております。このような時期に新たに加入した
日本の責任と使命はきわめて重大であります。世界の
情勢から見ても、兵力の増強結集のために、わが国が国連加盟以前の決議にさかのぼってこれらの
負担金を負うことについては、わが国平和憲法の趣旨から
考えても違法の疑いなきを得ないのであります。このような支援の方法よりは、むしろアジアの民衆とともに手を握り、思い切った平和提唱こそがわが国の果すべき国連への使命ではないでしょうか。(拍手)来たる四月五日には重ねてエニウエトク島で原爆の実験が行われると聞いております。エニウエトクは国連信託統治第八十二条、八十三条に規定されておる戦略地区として指定された場合であり、当然信託統治協定の適用範囲に属するものでありますから、安全保障
理事会が人間の生命の安全保障のために、原爆実験の即時停止を要請すべきでありましょう。しかも今日の
日本の立場は、これが提唱の権能を有するものでありまするがゆえに、一刻も早くこうした
措置をとることこそ、最大の平和に対する
日本の義務ではないかと存ずる次第であります。
国民のために常に平和と幸福を願うわが
日本社会党は、その場限りの大衆収奪の上に組み上げられた本案に対しましては、遺憾ながら断固反対の意思を表明せざるを得ません。
以上で討論を終ります。(拍手)