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国務大臣(一
萬田尚登君) ただいまの御
質疑で、私が
衆議院の
予算委員会で
答弁したことと、その後
新聞記者に何か話したということと、その
関連についての御
質疑については、この
委員会においても、私しばしば御
答弁を申し上げたはずであります。他の
機会でも話しました。それは詳しく、そういうことでないということを御
答弁申し上げたのでありますが、しかし、せっかくの御
質疑でありますから、さらに申し上げますが、第一に、今日の
世界の
景気というものをいつ幾日によくなるとか、そういうことを言い得る人は、私はだれもないと思います。そういうことを要請するとすれば、それは非常に私は無理な要請である。ただ、
政治をする者としては、
政策として、いつごろこういうふうに持っていきたいという
意欲を持っている、こういうふうに言わざるを私は得ないと思います。特に、今日のこの
世界の
経済というものは、今
お話がありましたように、総じて
世界的なまあ好
景気の
あとを受けまして、
景気が
下降をしております。ですから、
世界の
経済に対して最も大きな
影響力を持っている
アメリカが
中心になって、今度は
政策的にこの
景気の
下降を防ぐ、言いかえれば、さらに
景気をよくする
政策をとる。この
経済の本来のまあ自律的といいますか、自律的な
経済の
動き、それに対して立ち向おうとしている
政策というものが、どういうふうにクロスして、
世界の
景気がなっていくであろうかということが私は問題であると思います。従いまして、
アメリカの
政策の出方が
タイミングであるか、あるいはむろん
アメリカが
政策をやる場合におきましても、多くの場合において、
国会の
承認も受けなければいけない。どこの国でも、
国会の
承認を受けるというような施策というものは、どちらかというと、やはり私は、結果においてはその
タイミングにいかない
傾向を多分に持っている、まあかように
考えております。私が大体こういうふうに
日本の
経済を持っていこうと言っているのは、それは、私が
政策として、大体
自分たちはこういうふうな
政策をしている。しかしながら、その
政策の結果として、
日本の
経済がぴしぴし
自分の
政策通りいくかというと、これは私はいかないと思います。そこにやはり具体的には
ズレがあるというふうに言っても、これは少しも私は矛盾をしたものの
見方、言い方ではないと確信をいたしております。特にまた、
一つこういうときにお互いに
考えなくてはならぬこと、特にまた、
アメリカの
経済について今日一番心配しているのは何かといえば、私が
承知している限りにおいては、この不
景気ということに対する
人心なんです。
アメリカの
人心、これは
心理的に、いかにも不
景気であるというように
アメリカの
国民が思い込んでいる
心理、この
心理が実際の
経済の
実態を必要以上に悪くする
傾向を持っておる。これはもう、
アメリカの人が口をそろえて言うています。このことが、同時に私は、
日本においてもやはり言い得ることじゃないか。
日本においても、何でもただ悪い悪いというような
行き方、それをもとにして、いかにも悪いぞ悪いぞということは、これは私は、
日本の
経済を決してよくする道でもなかろう、かように
考えて、こういうような
前提において話を進めるのでありますが、そういうような
前提におきまして、私がこの
予算編成当時、それから
衆議院の
大蔵委員会で話しましたのは、一応やはり私は、
生産調整は三月ごろをもって終りたい、そういう
考えを持っておるということはしばしば申しました。ただ私は、三月に終りたいと言うが、しかし、それにしても四、五、六は……やはりこれは、私は、
調整——調整という内容がどんなことかというと、いろいろありまするが、そのときはすべて
生産調整が終
つておるというのでもないのです。なぜかというと、私が三月に終るように持っていこうと思っても、三月はもう幾ばくもありませんが、これは、私がしばしば
説明しますように、
生産の
調整ということは、
事業家にとって致命的なのです。今まで、命をかけて
自分の
事業を育てて大きくしようというのが、これが
事業家として絶対なのです。それをいろいろな
政策から、特に
政府の
政策から、いやお前、こういうことをやっちゃいかぬぞ、ここのところは切り下げなさい、こういうことは、あらゆる可能な限りにおいて抵抗することがある。従いまして、
政府がやろうとしても、実際にはずれる。それで私は、大体そういう
ズレを
考えて、まあ
政策としては、私がもしも六月に
生産調整を終ると言ったら、これは終りませんね、これは、この秋まで行ってしまう。私が三月ころまでに終りたいという
意欲を示すことによって、それに抵抗しつつ、実際は六月ごろまでに終ればいい。これは、
政策をする者としては常に考慮に入ることなのです。そういうことをお
考えを願わなければいけないと思います。従いまして、それなら七月からよくなるというのではない。なぜかと言うと、今、
世界の
景気を言う場合に、この
世界の
景気をよくするであろうと思われる一番大きな原動力は、
アメリカの
景気に対する
対策なのです。そうすれば、
アメリカの
景気に対する
対策というものは、いわゆる七月から始まる来
年度の
予算によってこれは多く示されている。もう今まで
金融的な
措置をと
つています。さらにまた、いわゆる
公共事業についても
考えているとか、あるいはまた、必要があれば
減税、これはどうなるか、今私が確実に申し上げかねますが、
減税についても
考えておるという
情勢もありますが、大体において、実際に
予算の裏付けをもってやるのは、やはり私は七月以降の来
年度の
予算です。
アメリカが
ほんとうに
景気に対して働きかけるのは七月以降になるから、一応私は、七月というところをとりました。七月からすく
景気がよくなるというのではなくて、
アメリカの
景気対策は七月からであるから、一応どこかに区切りをつけてものを
考えるとすれば、やはり七月くらいからは一応悪くはならないだろう、その辺を一応けじめに
考えて、そうして
景気というものを
考えたらよかろう、こういうことから、まあ私はそういう期限を一応わかりやすくとっただけなので、もう七月から
日本の
景気がよくなる、そんな私は独断的なことを言うておるのでは決してないのです。そこのところを何かといえば問題にするだけなので、私の
考えというものはそういうふうなものではない、そういうふうな
考え方は、払いまだ変
つていないのです。先般何か
新聞記者にそういうことを私が言ったが、あのときは断わっておりますが、
世界の
景気に対しまして、今
世界の
学者が、あるいは
政治家がどういうふうな
考えを持って、どういうふうにこれに対処しておるかということを
説明したわけです。そのときにも、くれぐれも、たとえば今度の
景気は、ソ連の
学者とか、ヴァルガという
学者ですが、私の知っている限りにおいては、大体において、これはやはり第一次
大戦の後と同じ、第一次
大戦後二十年にして
世界の
不況が起ったが、今度は十三、四年に起った。これはやはり、
自由主義の
経済にと
つては致命的だ、なかなかそういうふうに回復せぬぞという
見解をと
つておるのが、
共産諸国の大体において
学者の一致した
見解であるように
考えておるのでありますが、これは、だんだんしさいに調べれば、違った
見解もあるかもしれませんが、しかし、
自由国家の
学者はさような
考えでいませんので、これは、大体において
アメリカの
景気対策、今日やはり
アメリカの
景気をなおすことは、国際的な
規模において行われつつある、ですから、そういうふうな
行き方からすれば、徐々によくなるだろう、そういう点においては一致しておると思います。ただ、いつからかというのが非常な問題で、いつからかということと、どういうふうな根拠に基いて、原因に基いてよくなるかということについて
意見の相違がある。ことに今、時期の問題があるのですが、時期の問題については、何といっても一番早いのは
アイゼンハワーの話です。
アイゼンハワーは、あれほど
アメリカの
経済についても
影響力を持ち、同時にまた、
アメリカの
経済が
世界の
経済に大きな
影響力を持っている。その首脳である
アイゼンハワーが、責任を持ってやはり
経済報告をして、そうして三月ごろということで一番早い。
アイゼンハワーは
政治家でありますから、いろいろと意図するところはありましょう。こういうふうな
意見に対して、
アメリカの
経済学の、私
どもも幾らも勉強しておりませんが、
経済学のたとえば
ハーバード大学の教授なんかは、どちらかというと早い。
アイゼンハワーのように、幾らか早く
景気がよくなるだろうと言っておる。そのほかにしても、知っておる限りにおいては、秋口とか、あるいはおそくとも来年の春になる。しかし、
景気が徐々によくなるだろうという
見解については、だれも私は異論はないと思う。それから、ものの
景気の
見方については、いつ幾日だとか、一カ月がどうというのは、私はそれほど問題にすべきでない。
景気が徐々によくなるのか、いやもうよくならぬ、むしろだんだん悪くなるというのか、その
見方がどちらかというと問題になるので、むしろ一カ月を、お前は早くなると言うた、あるいは二カ月おくれておるじゃないかということを、それは私は、そこまではっきり言えということは、だれも言い得る人は、
世界中にはっきり言える人はないと思います。これは無理じゃないか。どちらが当るか、やってみなければわかりません。特に
政策的にものをやるのですから、たとえば、
アメリカの
アイゼンハワーが一カ月早く大
規模の
減税をやるということを実現すれば、またそれは違ってくる。しかし、二カ月おくれてくるとすれば、同じものの
景気の
見方において間違ってないが、時期の
ズレが生ずる。こういう
状況から、そういうものの
見方が必要である。従って、いつ幾日ということは、それはやはり私は、言葉をもてあそぶ
意味で、その点において次に保留する、私はそういうことにして、
政策的にはこういうふうに
自分としては、いやおれは知らぬぞ、やはり
大蔵大臣として、こういう時期までに
日本の
経済をこう持っていこうとしている、しているが、実際はずれるかもしれぬよということを私はつけ加えておるのでありまして、その点は、
一つ十分御了承を得たいと思う。
それで、今大体私が御
答弁をかねつつ申し上げたことで、どういうふうに内外の
経済の
動きを見ておるかということは、一応御了解を願えたと思います。