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小山邦太郎君 私は、まず石井農林
大臣代理、とりわけ
大蔵大臣にお尋ねを申し上げたいと思うのでございますが、現在発動いたしておりまする糸価安定法について、その実力を疑うものがあるのでございまするが、この糸価安定法の実力及びその買い入れ能力、すなわち安定に対する威力等というものについて、どんな御
意見を持っておりまするか。思うに、蚕糸業は戦時中残念ながら全く萎靡沈滞いたしたのでございまするけれ
ども、幸いにして戦後累年その産額も増して参りまして、輸出の金額におきましても、生糸及び絹織物を通算いたしまするならば、まさに一億ドル、すなわち三百五、六十億円を産するに至りましたことは、わが国の蚕糸業が再び国際貸借改善の上に裨益することができるということで、喜びにたえません。しかるに、昨年末からの世界的な不景気と、及び年々見舞われて参りまする季節的な需要減退期とが重なりまして、昨年の暮れから著しく糸価は低落をいたしまして、遂に
政府の保証いたしておりまする最低値、すなわち十九万円と相なったのでございまするために、
政府は、この糸価安定法に基いて買収を始めたのでございます。しかるに、その後
政府の買い入れの数量が著しく増して参りまして、それがために、予想されておりまする八十億円の買い入れ資金のうち、すでにその大半は買い入れに使われてしまった。従って、このままで押し進むならば、三十二年度の生糸はどうやら維持し得るでありましょうけれ
ども、やがて新繭の出たときに、春繭、夏繭、秋ごはどうなるであろうか、これがために、一般蚕糸業界はもちろん、養蚕農家の心配も少からざるものがありまする。これがために農林
大臣は、幾たびか声明を発しまして、あるときは蚕糸振興審議会において、またあるときは蚕糸関係団体もこれを憂うるのあまり
政府に訴えて参りましたとき等に、あくまで
政府はこの価格を支持するのである、堅持するということを声明せられているにもかかわらず、なお漸次その糸価は漸落いたして参りまして、過般、三月の初めと思いまするが、先物すなわち六月、七月というようなものは、十七万五千円というみじめな相場さえも出すようになりました。これがため農林
大臣は、閣議においてこの問題を御発言になったとのことが新聞に伝わりまして、そのときでさえも、一般に非常な好感と安心感を与えたためか、直ちにこの相場は相当額見返して参りましたけれ
ども、今なお、
政府の最低価格と支持されました十九万を下回る傾向にあります。これをこのままに放置しておくということは、これはゆゆしき問題であると存ずるのでございます。説をなす者は、あるいは、化繊が非常な過剰生産に悩みつつあるのだ、従って、この世界不景気を前にしては、生糸も相当値下げをするのが当然だという声も一部にはないではないようでありますが、これは非常な間違いであって、今日十九万の
政府が下値保証をするという法律までをもってこれに臨んでおりながら、一万もしくは二万下げるということになれば、
政府に対する信頼感というものはなくなる。そうすると、どこまで下るかわからぬということで、現に相当の実需を持っている人さえも、いつ下るかわからぬということから、ほんの目先手当で一口々々とその仕事を食い延ばしていくにすぎない
状態であるようでありまする。こういう関係をもちまして、業界の全部の人々が、ほとんどあげてこの価格を維持することを要望している。あくまで維持するならば、内地における織物屋さえもこれに同意をいたしているのでございまする。現に、先般農林
大臣の諮問機関である糸価安定
委員会において、三十三年度の繭糸価をいかように維持すべきか、その下値はどうかというときに、ひとしくやはり十九万円及びこれに見合う繭価を維持すべしという答申になっておりますのを見ましても明らかである。加うるに、アメリカ方面からも、今にして下げるようなことがあるならば、現在の持ち荷に莫大な損害を生ずる。
政府の十九万声明を信頼して商売をしておった輸入業者にも、またアメリカの機屋にも、莫大な損害を与えるということを警告して参っております。また先般は、イタリア上院議員のタウトウーフォーリという人から、わが蚕糸中央会に向いまして、一九五八年の生糸価格は、十九万から二十万にすべきではないかという相談さえもあったような次第で、これは、この人の言うことをもってするならば、今世界における絹織物市場は、糸価の安定こそ望んでいるので、この価格がかりに二十二万と相なりましても、絹織物市場はこの生糸を欲求するのであろうというほどでございます。それは別といたしまして、すでに諸般の情勢が先刻申し上げましたような次第であり、また、生糸はどうにか十九万を維持し得るとしても、三十三年度における繭価が、これが維持できないということになりまするならば、多数養蚕農民の生活は全く安定することができない。先刻来
坂本議員の
お話によりましても、
社会保障制度をもっと充実しなければならぬという御主張がありまして、われわれも全然同感いたしまするが、これに先行し、もしくはそれと並行していかなければならないのは、働ける
国民に仕事を与えることである。仕事を与えて生活を豊かにすることこそ最も望ましいことであって、しかも、蚕糸関係の人々は、この
政府の制定せられました繭糸価格安定法を唯一のたよりとして働いておるのに、
政府がすでにその買い入れ資金の元が切れたということで手をあげることになりましたならば、その惨禍は実におそろしいものであろうと、こう
考えるのであります。農林
大臣はしばしば、すでに声明しておる。そうして農林
大臣がまた閣議に訴えられたというだけで市況に好影響を与えておるのでありまするから、それを代理する石井
大臣において同感であることは当然でございまするが、近時
大臣の言明、言葉なるものが、残念ながら往年のような信頼を
国民から受けておらない。これはどういうわけか。私は昔であるならば、
一つの
大臣が国策に沿って声明したことは、これは
内閣全体の
責任として閣僚が協力するのであるのに、どうもその点にはっきりしないものがあるというようなためであろうか、最近はアメリカあたりからも農林
大臣の声明にあわせて
大蔵大臣の決意を聞いてもらいたいというような電報が飛び込んできておることをもってしても、はなはだ遺憾であります。しかしながら、事実はそれを要望しておるので、
大蔵大臣はこれに対していかがなお
考えを持っておりますか。商売のことでございまするから、よしそれじゃあ二十億増したらよかろう、三十億増したらよかろうという要望もあるいはあるかもしれないが、私の
考えをもってするならば、それはきわめて拙策でありまして、商売は相手のあることで、しかも、数量はどんどん出てくる。二十億増したとしても、それは何カ月もたてば消えてしまうんだ、それじゃそのあとはどうなる。また下りはしないかという心配のために実需を停頓せしむるおそれがあるのでありますが、むしろ、これらの従的なことはどういうふうにしてでも属僚におまかせになりまして、政治家としては、腹を据えて
政府がこれだけの法律をもって
国民に臨んでおる以上は、必要な数量はあくまで
——予算処置はもとより議会の協賛を経べきであるが、適当な方法を講じて、どのようにでもしてその目的を達するという腹を見せることが最も大事ではないかと、こう
考えるので、この点特に
大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。