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1958-03-18 第28回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十八日(火曜日)    午前十一時十五分開会   —————————————   委員の異動 本日委員鹿島守之助君、加藤正人君及 び加賀山之雄君辞任につき、その補欠 として苫米地英俊君、豊田雅孝君及び 田村文吉君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     泉山 三六君    理事            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            高橋進太郎君            佐多 忠隆君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            大谷 贇雄君            木島 虎藏君            古池 信三君            小山邦太郎君            後藤 義隆君            佐藤清一郎君            塩見 俊二君            館  哲二君            鶴見 祐輔君            苫米地義三君            苫米地英俊君            本多 市郎君            三浦 義男君            安部キミ子君           小笠原二三男君            岡田 宗司君            亀田 得治君            坂本  昭君            鈴木  強君            曾祢  益君            高田なほ子君            戸叶  武君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            岸  良一君            千田  正君            市川 房枝君   国務大臣    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松永  東君    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君    農林大臣臨時代    理       石井光次郎君    通商産業大臣  前尾繁三郎君    運 輸 大 臣 中村三之丞君    建 設 大 臣 根本龍太郎君    国 務 大 臣 郡  祐一君    国 務 大 臣 正力松太郎君    国 務 大 臣 津島 壽一君   政府委員    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    法務省入国管理    局長      伊関佑二郎君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    文部省大学学術    局長      緒方 信一君    厚生大臣官房長 太宰 博邦君    厚生大臣官房会    計課長     山本 正淑君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省医務局長 小澤  龍君    厚生省社会局長 安田  巖君    厚生省児童局長 高田 浩運君    厚生省保険局長 高田 正巳君    厚生省引揚援護    局長      河野 鎭雄君    農林省農地局長 安田善一郎君    農林省畜産局長 谷垣 專一君    農林省蚕糸局長 須賀 賢二君    建設省住宅局長 植田 俊雄君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員の変更について報告いたします。  本日、加藤正人君、加賀山之雄君及び鹿島守之助君が辞任せられ、その補欠として豊田雅孝君、田村文吉君及び苫米地英俊君がそれぞれ選任されました。   —————————————
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これより昭和三十三年度一般会計予算外二件を議題といたします。昨日に引き続き質疑を続行いたします。
  4. 坂本昭

    坂本昭君 まず、厚生大臣にお伺いいたします。長期経済計画の中で社会保障政策を具体的にどのように実施するおつもりか、また昭和三十三年度はどのようなスケジュールをその中に盛っておられるか。
  5. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 長期経済計画をごらん願いますと国民保険に対し、あるいは将来の年金問題に対して備えるということを言っておるのでありますが、国民保険の問題につきましては計画通り織り込み済みになっておる、こう御承知おき願っていいのじゃなかろうか、こう考えております。年金につきましては織り込む用意を持つことは書いてありますが、具体的にまだ案ができておりませんので、はっきり長期経済計画の中に計数をあげて織り込むまでに至っておりません。
  6. 坂本昭

    坂本昭君 きわめて内容の粗略だということを大臣みずから告白されたようなことになりましたが、そこでどうも今のような内容の充実していないことで大蔵大臣にお問いするのは私としてもきわめて不満であります。しかしながら今厚生大臣説明され、また与党で立てておられる社会保障政策を、財政責任者として大蔵大臣として就任される限り、おそらくはこれまた大いに厚生予算というものをぶった切ってわれわれの不満をお加えになられるかもしれませんし、あるいはまた仏心を起されて予算をどんどん通されるということになるかもしれませんけれども財政責任者としていかなる基準でこの社会保障というものを財政的に支持されるか。その考えと、特に私のお聞きしたいところは、私の見るところでは、大蔵大臣社会保障というものに対して理解がないと思うのです。で、昭和三十三年度はその結果失敗であったと私は見ておるのですが、財政責任者として社会保障をどのように一体大蔵大臣理解しておられるのか、お尋ねいたしたい。
  7. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいまの御質問予算から見た社会保障に対する財政負担ということでございますが、かりに予算という、あるいは財政的な負担ということをしばらくおけば、何人も社会保障の充実ということは念願するところでございます。ただいま御質問のように財政負担ということをもう考えない社会保障というものは実効性がないということもこれも明瞭であります。そこで何人も欲する社会保障財政負担というものをどういうふうに調和していくかということが実際的な問題であろうと思います。  御承知のように日本財政というものはこの一、二年やや財政的ゆとりをもってきたのでございますが、しかし財政終戦以来非常に苦しい、しかも敗戦ということによって日本経済なり、あるいは国民生活なり、すべての面において建て直しを緊急とするものが非常に多かった。財政需要が非常に多かった。で、やはりそういうところからいたしたいと思いまして、社会保障も思うにまかせなかったということも御了承を得たいと思うのであります。私どもとしては、今日できるだけ他の歳出も、むろん均衡を得なければなりませんが、社会保障ということに意を用いたい、かように考えているわけでありまして、むろん総理大臣もしばしばお話がありましたように、一方において国民年金というものに真剣に取り組んで、なるべく早い機会にこの実現の緒につくようにしなくてはならぬ。他面また健康保険、これもいわゆる医療保険というものを国民普及していくということもやっていかなくてはならぬ、かようなことだろうと思うのであります。  ただ財政的見地から言えば、私は当面健康保険、言いかえれば国民医療の皆保険、この上に私はまず進んでいくのが今の財政的見地から適当ではないか。むろんなるべく早い機会国民年金にも踏み切っていかなくてはなりませんが、まあ財政的見地から言えば、この点についてはよほど慎重な考慮を要するのじゃないかと、かように考えております。従ってさらに具体的には、一体この財政支出——予算ですね、この予算歳出に対して、全体との均衡もあるが、社会保障というものはどういうような程度にあるのがいいのかというようなことも考えていかなくてはなりませんが、今わが国の財政の上からいけば、まあいろいろとせなければならぬこともありまするので、今ここで恒久的なこの社会保障の、予算に占める割合というものはなかなか私はきめかねる、かように考えているのでありまして、今当面の目標国民保険ということを一そう推進していって、他面この国民年金になるべく早く踏み切る、こういうことを目標にいたしている次第でございます。
  8. 坂本昭

    坂本昭君 どうも大蔵大臣説明を聞きましても、社会保障に対する理解のないことと、特に財政責任者として明確な考えを持っていないということをみずから暴露したようなことで、まことにわれわれとしてはなはだ不満であります。私は今も国民所得が非常にふえたことを大蔵大臣は指摘しておられましたが、この社会保障の大事な点は国民所得の再分配にある。私はそういう点で、財政責任者がこの社会保障というものをよくつかんでいただかなければ、保守党の社会保障というものもこれは発展しない、そういうことを考えるものであります。  次に厚生大臣に、ただいま大蔵大臣国民保険の方が先だと言われましたが、しからば皆保険完成のそのプログラムはどういうふうになっているか、日程はどういうふうになっているか、さらにもう完成される日も近いのですが、完成された場合に、その内容はどうなるか、その総経費はどうなるか、それに対する国庫負担額はどういうふうになっているか、そのプログラム一つお見せいただきたい。
  9. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 今大蔵大臣がお述べになるのを私も聞いておりますと、少し私とも方向が違う。しかし……(「しっかりしなさい」「それはおかしいね」と呼ぶ者あり)それは、財政当局と、実際に社会保障推進に当る者との程度の差はそれくらいあってもいいのじゃなかろうか。(「いや、それじゃできませんよ」と呼ぶ者あり)と申しますのは、私自身——両方調整というものは当然起って参る問題であります。これは現実の政治としては私は当然であろうと思います。(「そんなことを言うから予算が取れないのだ」と呼ぶ者あり)これは御承知通りに、国民保険は四カ年計画をもってスタートしている。これはあらためて申し上げるまでもないと思います。私どもそれに対して財政負担も相当多くなることは当然である。現に二割なり、二割五分の調整交付金だけでも相当の額になるということは、被保険者の数がふえて参りますに応じてふえて参ることは、当然だと思っております。ただ社会情勢全体を考えますと、いわゆる医療保障のほかに、生活保障の面、ことに経済が安定した上に立って、この生活保障の面を考えるのがこれまた諸外国の通例であります。私どもとしては、完成を待ってその問題を考えるつもりはございません。現に政府といたしましては、社会保障審議会にこの生活保障の問題を御答申を願っております。そうすれば、全体の政府として、私ども生活保障についてこれから三十五年を待ってという気持は全然ないはずであるというふうに考えておるのであります。具体的な数字につきましては、政府委員から答弁させていただければ答弁させていただきたいと思います。
  10. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 皆保険計画数字的な問題についてお答えをいたします。国民健康保険がこの中核でございますが、四カ年計画でその普及に当っております。二年目でございまする三十三年度予算では、三十三年度の末におきまして、被保険者数が三千八百四十万、被保険者一人当りの医療費は千六百三十八円と見込んでおります。その総医療費は五百八十九億八千万円でございます。で、これに対する療養給付費国庫の持ち分は百十九億三千万円、二割五分ということでございます。普及計画最終年度でありまする三十五年度では、現在の条件で推移いたしました場合には、この療養給付費に対する国庫負担額は約二百億円程度となるものと推計されております。その際におきまする国民健康保険の被保険者数は四千九百万人余りになるものと推計をいたしております。
  11. 坂本昭

    坂本昭君 どうも厚生大臣も私の質問を十分理解していない。私が聞いているのは、社会保障完成されたときにはどうなるか。その中で国民保険完成されたときはどうなるかということを聞いている。つまり私は国民健康保険だけのことを聞いているのじゃありません。国民健康保険健康保険と、それらでこの九千万の国民に網をかけて、そしてでき上ったときに健康保険はどうなる、国民健康保険はどうなる、そしてその全体の経費はどうなる、その中で国庫負担はどうなる、もうそれくらいのプログラムがなければ、今日、皆さんでさえも、三十五年までに仕上げようというのは私は可能性ははなはだおぼつかないと思うのであります。あらためて私はもう一ぺん厚生大臣に、国民保険が実施されたときのそのプログラムはどうなっているか。それから大事なことは、これは当然年金一緒考えなくちゃいけないのですが、それだけの御検討がされているかどうか。もう一度御返事いただきたい。
  12. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 数字がありませんので、政府委員から答弁いたさせます。(「政策問題だよ」「保険局長まかせじゃだめだよ」と呼ぶ者あり)
  13. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) お答えを申し上げます。国民健康保険数字はただいま申し上げた通りでございますが、御指摘のように、片方で健康保険を初めといたしまする被用者保険の問題もございます。これにつきましてもだんだんとその範囲は適用人員はふえて参る。被用者保険国民健康保険は、彼此相まって国民保険が実現いたす、かような私ども考え方をいたし、またその計画を進めております。被用者保険の方の数字でございますが、三十三年度末で三千八百四十万人、これは被扶養者を含めまして、いわゆる家族を含めまして、さような数字推計いたしております。三十四年度で四千五十万人、三十五年度で四千二百八十万人、この四千二百八十万人と国民健康保険の先ほど申し上げました四千九百二十人、これで国民保険達成できる、まあさような数字的な推計をいたしております。
  14. 坂本昭

    坂本昭君 ただいまの、この完成時のプログラムをはっきりつかむということは非常に私は大事だと思うのです。実は私の予想では国保の数がもっと多いと思っておる。ところが今承わりますと、国保が少くて健康保険の方の数が多い。ということは、当然政府管掌がこれは非常にふえてくるということですね。ということは、三十三年度の予算において、大蔵大臣政府管掌三十億を十億に減らしたということは、いかに大きな失政であったかということが、このプログラムの中でいよいよ明白になってくると思うのです。この点あとで聞きます。  ところで厚生大臣にお伺いしたいのですが、近代的なこの社会保障というものは、国が財政的な責任を負うべきであります。ところが岸内閣はきわめて冷淡であります。今も保険局長政府委員から説明がありましたが、この三千八百四十万の国民健康保険予算五百八十九億と言っておられましたね、その中で事務費補助は三十一億四千万、それから療養給付補助が百五億五千四百万円、財政調整交付金が十三億八千二百万、それで私の計算では百五十億になりますが、ただいまの保険局長は百十九億と言っておられましたね、そうしますと、私の計算でも約二六・七%、四分の一くらいしか国庫負担はしていない、今の政府委員説明だというと、この四分の一はさらにもっと減って参ります。で、公営住宅の場合でも二分の一から三分の二負担をして、それで国が一つ住宅政策をやっているということを宣言している。ところが国民保険というものは、国の責任でこれは追及しているのでありますが、その中で、こういう少いことで責任を果してのがれていいのであるかどうか、私は厚生大臣一つ忌憚のない御意見を承わりたい。
  15. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 今岸内閣社会保障に冷淡だとおっしゃいましたが、少くともこれらの問題は、そんなにきのうきょうの問題じゃないのであります。坂本さん御承知通り、過去何年間に、わたっての問題もその中にはある。それらの問題を岸内閣として何とか解決しようと努力をいたしておることは事実であって、今おっしゃいましたように、むろん社会保障であめる以上は、国の責任というものを当然考えるべきであります。私どもとしても、国の責任が負えるだけ負うということをできるだけするのが私どもの務めである、こういうように考えてはおります。しかしながら、それだから一挙に理想達成するということも相当困難である。今回の三十三年度予算におきましては、ともかくも従来よりは少くとも私は進歩したものがあるというふうに考えておるのでありますが、われわれの理想達成の上から見ますれば、その金額はなお少いということはこれは否定すべからざる問題である、今後とも私どもはそれに対して努力をいたして参りたい、こういうように考えておる次第でございます。
  16. 坂本昭

    坂本昭君 私は今まで歴代の内閣社会保障推進のために厚生行政を非常にりっぱに築き上げてきた功績を否定するものでは決してありません。特に昭和二十六年に結核予防法が制定され、また昭和三十年に国民健康保険療養給付費補助国庫負担率二割ときめたということ、この二つ終戦後の厚生行政の中で大きな金字塔である、私はこれは非常に高く評価するものであります。そうしてこの二つこそが国民保険の基盤であり、出発になるものだ、ただしいつまでもここにとどまっておってはいけないのであります。同時に現在国民の世論になっている皆保険というもののこの推進は、当然同時に国民年金国民年金推進に私は進まなければならぬということを銘記しなければならぬ、そう思うのであります。その点について、先ほど来どうも社会保障について私はお尋ねしますと、皆保険年金とばらばらにして大臣自身考えておられることは非常に私は誤まりだと思う。また財政的にも二つを切り離して、与党長期経済政策の中で事を進ませようとしておられる、これは大きな欠点だと思う。少くとも今厚生省にある国民保険推進本部ですか、これは当然国民年金推進本部と同じものでなくちゃいかぬ、この点についての御意見を承わりたい。
  17. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 私坂本さんの御意見と全く同じであります。で、私ども国民年金と、つまりこの医療保障生活保障というものを何とか完成いたしたい。従って社会保障はこの二つの柱を中心にして物事が考えられていくべきであるということは、私ども坂本さんのおっしゃることと全然変りはございません。その達成に向って全力をあげて努力いたしたいと、こう考えている次第であります。
  18. 坂本昭

    坂本昭君 ただいまの厚生大臣の御答弁は、これは社会保障一年生の言葉であって、もう今日の日本状態社会保障一年生の状態ではないのであります。もうそろそろ卒業期に近づこうとしているのであります。そういう点で私はもう少しお伺いいたしたい。まず問題の、この皆保険の中の国保普及の進展の隘路がどこにあると大臣はお考えになっておられか。今も遅々として進んでいるこの国保隘路はどこにあるとお考えであるか。
  19. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 私は国民保険推進していく隘路の一番大きな問題は、一つ医療保障の問題であるということを考えております。医療保障のうちに主要な部分と申しますよりおもな部分を占めますところの診療報酬の問題、これは六年間そのままになっております。現に、従いましてあの診療報酬では、国民保険をそのまま進められることは困るというのは診療担当者の私は同じ御意見でなかろうかと、こういうことが考えられますし、私もその点については御同感の意を表している次第であります。  で、もう一つの問題は、これはどうしても地方財政との調整で、国民保険を進められますために市町村一般会計負担が多くなってくる、国民保険しわ寄せ市町村財政に及ぶということは、これはやはり避けませんと、保険者自身がそういう感じであっては、私は皆保険が進んで参りませんというふうに考えられるのであります。しかしまずそれらの大きな問題がございますと同時に、医療機関自身が実際の皆保険を進めるのに適正な配置及び機能的な整備というふうなものが必要であろうと思うのであります。さらに問題を突き進めて参りますと、今地方財政負担及び診療報酬の問題もそうでありますが、結局今の診療報酬の非常な大きな部分を占めております結核問題というものが解決されることによって相当大きな部分が解決されるだろうということは、これはまあ私が申し上げるまでもなく、一年生とおっしゃるかもしれませんが、一ページだと思いますが、あえて御答弁申し上げます。
  20. 坂本昭

    坂本昭君 それではですね、一つ一ページを開きまして一緒に読んでみたいと思うのであります。まず、自治庁長官厚生大臣、お二人にお尋ねしたいのです。今いろいろの隘路についての問題が上りましたが、その中で三点ほど。まず第一に皆保険というこの国の方針で進んでいる際に、市町村がそれぞれ一般会計繰り入れをやるのはおかしいではないかということであります。一体一般会計繰り入れをすすめているのか、これをおとめになっているのか、これが第一点。  それから次は市町村や、さらに都道府県にも財政的な責任を持たすというならば、現在はその責任率を私は明示すべき段階ではないかということが第二点。  三番目は、国の事務費補助が役所や役場の実際の事務費をはるかに下回っている事実があります。この事実は国保事務処理簡素化やあるいは人員配置がえを必要とする、そういう点で十分に事務費補助を国としてやってやれないのだ、また地方の方がやり方がまずいのだというふうにお考えになっておられるのか、この三つの点を自治庁長官厚生大臣にお伺いいたします。
  21. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) 国保がその建前といたしまして、国庫負担と、保険料ないし保険税でまかなうべきことは、これは私は当然だと思います。そういう建前で事柄を進めております。しかしながら同時に直営診療所でありますとか、保健婦でありますとか、これは一般会計で見るべきものでございます。従いまして昭和三十三年度の財政計画でも十二億をこれに充てております。そのようにいたしまして、区分をはっきりして参りたいと存じます。  事務費の点については、昭和三十一年度の決算を見ますと、十三億ばかり不足をいたしております。これは御承知通り。しかし三十二年で事務費の単価が上り、三十三年度でまた若干改善されております。私は一方事務費はできる限り合理的な運営をいたさなければ相なりませんけれども、同時に国が次第に実情に合いまするように上げてきてくれております。これはそのような点でもだんだんと改善されてくることと思っております。
  22. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 大体今の自治庁長官お話と同じでございます。ただ、今お話になりましたような方針のもとに具体的に今後進めていかなければならぬというふうな点で考えております、ことによく問題になります事務費の問題、これが実際内容を調べてみますと、事務費が実費を負担していないために、非常に地方財政しわ寄せをされるという傾向が強い。現に他の委員にもお答えいたしましたが、事務費は実際に調査してみますと、全部についてでございません、二百数十カ所についてでありますが、調べてみますと、百四円かかっておるというふうな統計も出ているわけであります。むろんその数字自体は現実の数字でございますから、いろいろ批判の余地はあるというふうに考えますが、これらの点につきましても、できるだけ合理化を進めますとともに、実際の全額を国庫負担の原則に従ってやって参りたい、こういうふうにいたしたい、こう考えておる次第であります。
  23. 坂本昭

    坂本昭君 今の厚生大臣自治庁長官の御答弁を全日本の各市町村長がお聞きになったら、みんなおそらく落胆すると思います。ことに国保を始めておられない人たちは、とてもこれでは危いぞと、おそらくしり込みをせられるだろう、そのことを申し上げて次に進みたいと思います。  厚生大臣にお伺いしたいのですけれども、このきわめて推進困難な国保の被保険者の収入状態、生活状態厚生大臣はどのようにお考えになっておられるか。
  24. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 政府委員から答弁を申し上げます。
  25. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) お答えいたします。国民健康保険の対象でありまする方々の所得の状況でございますが、これはいろいろ地方によって違いまするけれども、概論いたしますとあまりよくございません。被用者保険の被保険者と総体的に比較をいたしまして、それまでに至っておらない、こういうふうな実情でございます。
  26. 坂本昭

    坂本昭君 今私の大臣に聞いていることは、こまかい事務的の問題ではないのであります。つまり国民保険推進するに当って、この国保の対象になる人たちがどういう実生活をしており、どういう収入であるかということは、これをつかんでおかなければ、皆保険を進めることはできない。今の政府委員説明だと、なるほど政府管掌や組合管掌に比べると、実際実生活は低い、これはわれわれもよく知っているのです。どの程度に低いか、それを一体厚生大臣はどうつかんでいるか、そのつかみ方によって国保推進のやり方が違ってくる。私はその点をお伺いしているのであって、厚生大臣はこれについてお答えがないというのは、少し認識不足で困るのですが、お答えいただけませんか。
  27. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 実は各保険勘定の被保険者一人当りの所得の数字を申し上げさせようと思って政府委員から答弁させたのであります。お話通り国民健康保険の被保険者というものの所得水準が非常に低いということは、私どもも痛感いたしております。現にその収納率等についても、所によってそれが顕著に現われているということであって、その点についての認識は私どもも持っているつもりでございます。
  28. 坂本昭

    坂本昭君 私はこの点についてもう少し明らかにしておきたい。というのは、年所得六万あるいは十万以下の方、一般の基準をずっと下回った最低生活の人たち、こういう人たちが、今国保の行われておりまする市町村で、世帯の数で私は二割程度をこえるのではないかと思います。そしてこの人たちが納付するところの保険税というものは五%にも達しない。つまり病気になって受ける給付費、言いかえればこの配分される分、一番低い人たちに配分される分は三〇%以上をこえている。つまり五%くらいしか出していないで、三〇%くらい給付を受けている。そういう点で、所得の再配分というものは、国保ではきわめて有効に行われている。ところがその内容を見るというと、一番低い人たちを守っているのはどの層かというと、最低所得層のその上の低所得層の人たちが財政的に守っている。むしろ国保というものは医療の面では、国の行うべきところの公的扶助、つまり生活保護の医療扶助の肩がわりをしている。私の言いたいことはこのことです。こういう点を厚生大臣がつかんでおられないというと、私は国保の問題は解決できないと思う。特に国保が最低所得層の長期疾患をカバーして、そしてカバーし切れないものがどんどん医療扶助に落ちてきている。従って国保がカバーしているところの金額というものは、なかなか大きいものだということです。大蔵大臣にも聞いていただいて、なるほどそれほど国民はお互いに助け合っているのか、私も一はだ脱ごうということになれば、まことにけっこうな大蔵大臣としてわれわれも感激いたすのです。こういう事実を厚生大臣はつかんでおられないように思う。国保がこういう国民相互扶助の名において、国の行うべきところの生活保護をカバーしている事実をお認めになりますか。もしお認めになるのであったならば、私は国庫負担の大きな一つのよりかかりが大臣としてもできると思うのです。
  29. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 坂本さんのお話は原則的に私認めます。それだからこそ、よけい私は国民保険を進めなくちゃいけないのだ、こういう考え方なんであります。そこですぐ問題になりますことは、おそらくそこを質問されておるのだろうと思ったのでありますが、従って富の再配分が国庫負担額の増加という形において行われていくべきものじゃないか、一つそこで考えたらいいじゃないかという点が第一段階として起ってくる、こういうふうな点であります。この保険の問題が常に問題になりますことは、これはもうあらためて申し上げるまでもない。保険経費と、それから国庫負担経費との一つの国の責任という問題との組み合せであるということは私十分考えておるのであります。そういうふうな考え方もただ空に考えられる問題じゃございません。御承知通り国民経済負担力とあわせて考えなければならぬことも、諸外国の例から徴しまして当然だと思うのです。ただ私としては、立場上そういうものの最大限度の国の責任というものに向って進んで参るのが私の職責であろうというふうに痛感いたしておる次第でございます。
  30. 坂本昭

    坂本昭君 どうも厚生大臣ははなはだのんきだと思うのですね。実際この国保の実情はさらに悪化しつつあるのですよ。で、低所得層の人たちが国保を利用している率というのは私は減少しつつあると思う。すなわち国保から生活保護への転落は特に結核の場合などはもう非常に著明なのです。で、私は結核は現在の皆さんの皆保険の制度では解決は絶対にできない、私はそう考えております。  そこで、もう一ぺん今度は厚生大臣から先にお伺いしましょう。厚生大臣と自治庁の長官にむしろこの際私は次の四つのことを考えていただきたい。一つは県や市町村にも定率の負担をきめられたらどうか。次に国の事務費補助をもっと明確に増額をさせるということ。それから三番目に、療養費に対する補助率も四割程度に引き上げたらどうか。四番目に四割も思い切って引き上げますが、それによって市町村保険料というものは引き下げない。そのかわり給付内容の向上、たとえば給付率を七割に上げるというような指導をしてはどうであるか。この四つの点を厚生大臣から一つ御答弁願いたいと思います。
  31. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 第一に市町村の大体どの程度負担するかということを今きめるべき時期じゃないか、おっしゃるのは私もある程度そう思っております。現に自治庁の方でもその点について考えるべきじゃなかろうか、市町村がどういうように国保推進に当って市町村財政で、一般会計でまかなうべきものはどの程度かということはある程度の基準ができることが、よりどころができるわけでありますから、これは望ましい事柄であります。  それから第二に、国の国庫負担率はもっと上げるべきじゃないか、これは二割とか三割五分で満足すべきでなく、まあ国保連合会自身も三割、あるいはその他のいろいろな委員会の御議論も三割が適当じゃないか。  それから第三段として、給付の内容を低下しないで上げていくべきだ。これはもう今の国保の率直に言えば、普及率の一つの大きな被保険者の——まあそういっちゃ悪いのでありますが、給付内容がもう少し上げることが国保にみずから入りたいという気持を非常に起すのである。今坂本さん自身がおあげになったように、保険料と実際の給付を受けている点から言えば、給付の方がはるかに上回っておるものを受けておるにしても、しかし他の保険と比べまして、内容が低下しているということは、確かに魅力を損じるということは事実だと思う。給付の範囲等につきましても、今回の法律改正では大体健保を標準にいたすというようなことも、そういうようなところに根ざしておるわけであります。と同時にまあ保険料の問題は実際の財政情勢とにらみ合せて決定していただくよりしようがないのじゃないか。そういうふうにその実際の財政上何と申しますか、国民の生活の水準及び市町村財政状況、それから実際の給付の内容、そういう三つからこれはどうしたってかみ合せなければならぬ問題です。それからものを考えて参るということが当然でなかろうか、こういうふうに考えております。
  32. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) 負担区分の問題につきましては、先ほど申しました通りに私は考えております。一般会計負担すべき性格のものを負担する。それによる純繰り入れ等が行われますが、これは当然でございます。負担区分は私はそのように考えるべきものと思っております。事務費につきましては実情に合うようになってくることが望ましい。それから給付率の向上は、その事柄自身は私は非常に期待することでございます。ただ、ただいまの全部を見渡しました財政状態から考えますならば、私は現在の給付率の状態でも早く普及をいたす。その方に現在は重点を向けるべきものだと考えております。
  33. 坂本昭

    坂本昭君 同じく厚生大臣自治庁長官に。  現在も赤字の市町村が非常に多いのです。これに対して財政的にどのような措置を今までしてきたか。今後またどういうふうなつもりを持っておられるか。たとえば赤字に対して長期資金の利子負担をする、あるいは診療報酬の未払い額も非常に多いんです。こういうものの原因を十分につきつめておられるか。その対策をどうしておられるか。
  34. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) 確かに未払い額が多いのであります。これは何とかして整理をして参らなければならない。しかし、これがどのくらいになっておりますか。私は二、三十億になっていやせんかと思います。これはなかなか解決のつかない部分もございます。従いまして、昭和三十一年度でも三十三億というものを一般会計から繰り入れまして、赤字を補填いたしました。それでこれは再建債等その他によりまして、始末はつけております。それでいろいろなことを考えまするけれども、貸しつけるような形で、なかなか特別会計それ自身で埋めていくという状態は困難な状態でございます。でありまするから、今後私は穴埋めをいたさずに経理ができるように進めて参らなければならないと思いますけれども、すでに発生いたしました赤字等につきましては、これは一般会計から借入れいたしまして、そうして事柄が動いていくようにいたしていかなければ相ならぬと思います。その点につきましては、ものが動くように指導をいたして参っております。
  35. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) これらについても非常にむつかしいいろいろな問題があるのでありますが、今自治庁長官から申されたように、両省でもってこの国民保険推進するという見地から物事をきめ、具体的に相談して参りたい、こう考えております。
  36. 坂本昭

    坂本昭君 それでは次に年金問題に移りたいと思います。厚生大臣にお伺いしたいんですが、もうすでに社会保障制度審議会の国民年金特別委員会も三月十一日でしたか、それから厚生省国民年金委員会は三月の四日にそれぞれまあ一時発表と申しますか、ある案を出されました。それで責任厚生大臣として、国民皆保に並ぶところの国民年金について、一つその構想、二つ予算のワク、三つ、年金による所得保障のいわゆる所得の基準を幾らに置くか、この三つをお伺いいたしたい。
  37. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 今おあげになりました二つの場合も、すべて私はその委員にお目にかかっております。そうして内容も承わっております。しかし新聞紙に伝うるように固まった案ではないのであります、率直に申して。なお検討を要する状態である。社会保障制度審議会のあの小委員会で一応発表されましたもののうちにもずいぶん重要な分が抜けておることは、お考えになって御承知通りであります。それから厚生省年金委員の長沼君の中にも、まだ重要な分で未解決の分があることは事実であります。そういう段階でありますから、実は私に年金の構想をここで話をしろということをおっしゃることは、私は段階的に見ますと、適当な段階ではない。ただできるだけ私は急いでいただく、と同時に、私の方はできましたときにやはり事務はそれに照応して進んでおりませんと、事柄がおそくなりがちでございますので、両者の案が固まりますにつれて私どもの方の事務的段階を進めて参りたい、そうして両々相待って実施の見込みが立つようにいたしたい、こういうふうに考えております。従いまして、御答申が予定よりも早く出ることを希望いたしておりますし、また事実そういう情勢になりましたので、この際に私どもが勝手に自分たちはこう考えるということを言うべきときではなかろうと、こう考えておるような次第でございます。
  38. 坂本昭

    坂本昭君 どうもこのごろはえらい学者の株が上りましたから、何もかも学者に押しつけてしまって、政治家というものの影がだいぶ薄くなったようにまで感じます。少くとも厚生大臣厚生大臣としての、一番の社会保障担当の大臣として自分の構想、特に政治家としては、また来年度再来年の予算の折衝もあるのだから、予算のワクくらいちゃんとしていただきたいと思います。どうもきょうは、国民保険国民年金の全部の経費のワクくらい私はつかんで岸内閣国民に見せ、そうしてことしの選挙をやられるかと思ったのですけれども、何も準備がないということがよくわかりました。  私は大蔵大臣にも聞いていただきたいのですけれども、皆保険と皆年金財政的なワクというものは、大ワクは早くから決定すべきだと思います。あっちやこっちからいろいろな圧力が加わってきて、いびつにされてしまってはならぬのであります。近代国家の国民医療、この総医療費というものはほぼ国民所得の三ないし四%くらい、日本の場合は。ほかのものはあまりパーセントが高くないのですが、医療は日本の医学の進歩に伴ったと申しますか、日本の場合も昭和二十九年四%、三十年が四%、三十三年度は私は八兆四千七百五十億の国民所得に対してほぼ三千億の国民総医療を考えて、やっぱり三・五%程度、こういう一つのワクができてくるのであります。国民保険国民年金財政的なワクというものも私は当然国民所得に応じて、これは先ほど大蔵大臣も言われました国民所得に応じて、社会保障というものはこれは財政的に見ていかなければならぬ、まさにその通りです。まさにその通り財政的なワクを決定すべきである。一般に社会保障の総費用というものは国民所得に対して近代的な一つのバランスがございます。日本の場合だと、昭和三十二年並びに三十三年で、社会保障費の総費用を五千八百億、六千億程度計算したのですが、そうして見ますというと、昭和二十五年度に比べて三倍以上になっております。ところが同じ期間に国民所得は二・四倍になっております。つまり国民所得よりも社会保障の総費用の伸びの方が上回っているわけです。この点はまことにお互いに慶賀すべきだと思うのです。しかし国民所得に対するところの社会保障総費用のパーセントは五・七%ないし七%、七%以下でありますか、これは西欧の先進国に比べますと非常に少い、ほとんど先進諸国は一〇%をこえております。西ドイツの場合は一・二四%、それで厚生大臣大蔵大臣にお伺いしたいのは、こういうふうに社会保障の費用というものが国民所得の一〇%になるような、そういうふうな財政的規模において社会保障のプランを立てることはいかがでございますか。一体こういう考えはどう御批判になりますか。
  39. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私の立場からすれば、全体の均衡考えていかなければいけませんが、つまりどういうふうに社会保障を実施していくか、あるいはまたそのいくテンポだとか、あるいは順序、こういうようなことによって医療負担の実際も変ってくるだろう、かように考えます。しかし財政力が増すにつれて私は社会保障国民所得に対する割合が国際的な水準に近寄るということは、努力すべきことだろうと考えております。
  40. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) この点は大蔵大臣と私と変りませんが、数字になると、いろいろ二人の間に問題が起ってくるのだろうということは考えられます。ただ社会保障を、つまり単純に社会保障のカテゴリーに入るものはどうかという問題であります。お認め願った意見国民所得の割合に対して社会保障関係経費の方が上回って参ったという点があるのでありますが、しかし私どもは現状でもって近代国家としてはいいと思っておりません。ますますこの点については努力しなければ近代国家としての態様からいいまして、欠陥があるのだ、私の考えをさらに突き詰めて言えば、デモクラシーとか何とか言う前に、こういう社会的基盤的なものが、ほんとうにデモクラシーの基礎にしつかり立たなければいけないという考え方で進めて参りたいと思っております。
  41. 坂本昭

    坂本昭君 もう少しわかりやすい統計でお伺いします。それは今社会保障のワクの内容の問題でも言っておりましたけれども、社会保険と公的扶助、これを昭和三十二年にとってみましょう。三十二年の社会保険が三千六百七十七億、公的扶助が四百六十三億、合計四千百三十億、このうちで国庫負担は社会保険が三百二億、公的扶助が三百六十七億、合計六百六十九億、言いかえれば四千百三十億のうち六百六十九億しか国庫負担していない。これは一六%、約七分の一にすぎないということです。このパーセントは先進国ではほぼ五〇%をこえております。国庫負担が五〇%あって初めて資本主義社会における所得の再分配というものが行われる。私はこれについてはどうも両大臣ともきわめて無関心なので、もう御返事はいただきません。ただ年金の問題の最後に、一言厚生大臣に、国民年金と軍人恩給について申し上げます。  私も十年ほど戦地をさまよって復員してから後、遺族の人と生活を共にしたこともあって、平均年齢六十八歳のおじいさん、おばあさん百万人の人たちの気持というものはよくわかるのです。もちろん遺族会の中には旧軍人や軍国主義者もたくさんおります。しかし年取ったおじいさん、ばあさんや、あるいは未亡人の二十五万の人たちが、初めていわば言あげすることを覚えたのです。お上にたてつくことを覚えたのです。そして老齢の保障、母子家庭の保障を要求して、これが今日の全国の大きな問題になってきたわけです。この人たちの命がけの声が皆保険と皆年金制の私は最大の推進力たらしめるということが、いわば二百万英霊の志に報いるところの正しい道である、私はそう信じています。われわれ社会党は兵を中尉の線まで上げ、また傷病者には階級的な差をつけないということで主張してきました。まだ十分に与党にも採用されておりません。しかしながら、さらに最近一部の独善家が民主的な皆年金制度を妨げようとしている、私はあえて大臣に、責任厚生大臣に申し上げたい。厚生大臣責任においてこの盛り上った世論を皆保険と皆年金制の完成推進していただきたい。そして厚生大臣の立場をあくまで守り抜いていたきたい。その御決意がありますか。
  42. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 軍人恩給の例をおあげになったのでありますが、確かに軍人恩給の対象になります——これ議論をすればいろいろ議論がありますが、ともかく対象になる人は老齢者が非常に多い。そして一家の生計を支持していた者をなくした未亡人、母子家庭が多い。それから身体傷害者、これらの人、そして国民年金の対象になって考えなければならぬ人もさしあたり醵出能力がない。醵出制だけで国民年金考えられないということは一致した意見じゃなかろうかというふうに考えますので、私はもう一つ、おあげになりませんが、近代社会の構造がよほど戦後変って参りました。御承知通りにたまたま今回は恩給問題に端を発した傾向がありますが、本質的にいえば近代社会というものが非常に変ってきた、そしてやはり昔のような家族制度が存続するような状態ではあり得ないというふうな点から本質的に私は変ってきておる。従いまして、この際ここへ言あげする人はともかくも、声なき、しかも今国民保険でもって御指摘になりましたような比較的低所得者階層であるとか、言あげすることすらできない人の生活、そういうものを守るのが私の職務であるということだけは深く決心いたしまして、できるだけ御期待に沿うように努力いたすつもりで、ひそかに決心はいたしております。
  43. 坂本昭

    坂本昭君 現在は皆保険と皆年金制の重大な段階で、特に昨年の春健康保険法の一部改正しまして、国庫負担を法制化いたしました。ところがそのやさきに三十三年度の予算健康保険への三十億の負担を十億に削減したということは、これは皆保険への推進の過程においてこれを妨げるのであり、特にあの一部改正のときの、改正の当時の公約にも反するところの行為であって、当然これは道義的責任を負うべきじゃないか、また同時に国民保険をみずから抑制しようとするところの政治的な責任も負うべきではないか。大蔵大臣厚生大臣にこの三十億を十億に減らしたことについてお伺いいたします。
  44. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 御質疑の点につきましては、すでにたびたび御説明、御答弁申し上げておると思うのでありますが、これは御承知のように政府管掌健康保険が、むろんこれはいろいろな関係者の努力によるところがありますが、とにかくこの財政状態が好転をいたしまして、御承知のように三十一年には四十八億の黒字が出ております。それから三十二年度も大よそ六十億円の黒字が出る予定になっております。それから三十三年を考えましても、診療報酬医療費の引き上げがありましても、なお収支は十分立っていくという見通しにもあります。政府管掌健康保険はかようでございますが、他面他の社会保険を見ますと、財政状態はいずれもよろしくないのでありまして、特に先ほどからいろいろとお話のありました国民健康保険等においては、どうしても国庫負担をふやしていく必要がある。それから日雇い保険においても同様な状態。さらにまた組合管掌にいたしましても、弱体の組合がありますので、これにも国庫負担を増さなければならぬ。かように考えまして、私どもとしましては、なるほど三十億入れるところを十億にしましたが、しかし社会保険全体を均衡を得て発展させ、そうしてこの国民保険になるべく進んでいくようにしたい。こういう見地から、一面二千数百万のまだ保険に入っていない、この医療保険の恩典に浴せない人も顧みまして、かような措置をとった次第でありまして、社会保険全体としては国庫負担も増しておるのでありまして、そういうような見地からやったわけであります。
  45. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) これは坂本委員がおっしゃる通り、過去の経緯から見ると、まことに何と申しますか、申しわけないことだと私は思います。しかし、今大蔵大臣が申し述べましたほかに、今回の予算が現在の経済調整の過程において組まれたものでありまして、やむを得ざる処置ではなかろうか、こういうふうに考えておる次第であります。
  46. 坂本昭

    坂本昭君 厚生大臣に、こまかい数字はもう一切省きまして、大臣の政治的な意見をちょっと伺いたい。それは皆保険完成の現段階において、今問題になっております八・五%という数字には特別な意味があるのか、何かおましないにでもなっておるのかということ。それから大蔵大臣は皆保険の中で健康保険は黒字であるが、ほかの方はうまくいっていないと言うが、三十三年度の保険財政の全般的な見通しは大田はどう考えておられるか。これが二番目。そのことをお聞きして次に……。
  47. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 第一段の八・五%の問題でありますが、これは坂本委員のようによく研究しておられる力が、これはおまじないだとおっしゃるのははなはだ遺憾であります。中央医療協議会の何に私ども何ゆえ八・五%をきめたかということは詳細に書いてありまして、これはもう坂本委員は私はお読みになっておると思う。当然お読むになって皮肉をおっしゃるのだろうと思います。私どもは今回六年間の医療費自身が据え置かれましたことに対して、どうしてもこの際われわれとしては国民保険を進める上においてのみならず、全体としてこの療養担当者自身の処遇というものが適正でなければならない、前にきめましたことかりあれをごらん願えれば、単純な物価の引き直しでございません。最近の医学の進歩及び資産に対する償却、機械設備等に対しても考慮いたしまして、そうして八・五%が妥当だ。結論で申し上げますれば、私もあまりこまかい数字は正確に記憶いたしておりませんか、少くとも物価は六割弱上っておりますのに、たしかお医者さんの診療所得につきましては、大体倍ちょっと上回る程度のものを適当であると考えまして、いたしたような次第でございます。
  48. 坂本昭

    坂本昭君 重ねて厚生大臣に伺いたい。現在単価問題が行き詰まっておりますが、この行き詰まりというものは、計数的あるいは財政的な行き詰まりではなくて、政治的な解決によって打開されるというふうに大臣はお考えになっておられるか。もし、そう考えられるとするならば、その政治的な交渉というものは、従来とは一新することが必要とお考えになられるか。
  49. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) この診療報酬の決定は、率直にいって、私は政治的にきめるべき問題ではない。もっと科学的な根拠と実際の調査に基いてきめるべきものである。往々にしてこれが政治的にきまりましたために、かえって何と申しますか、非常に多くの疑問を残さざるを得ないというのが従来の経緯であったのではなかろうか、こういうふうに考えます。私の性格上もなるべく合理的に、そうしてそういうふうな立場でものをきめて参りたい、こういうふうに考えておるのであります。税金の問題は、理屈以外に、私に別個に、あるいは政治的とおっしゃるなら政治的かもしれません、こういうふうに考えておりますが、決して政治的に考えるべき問題でない。従って、特別に何と申しますか、後段の御質問のように、飛躍的にとか、いろいろな問題を考慮するのでなしに、まじめに考えていくべきだ、合理的に、事務的にあくまでも現実に忠実にものを考えていくべき問題だ、こういうふうに考えております。
  50. 坂本昭

    坂本昭君 今厚生大臣は、皆保険、皆年金という大きな任務を持っておられるのですけれども、実はなかなか金も持っておられるのです。例の郵便貯金と郵便振替貯金に次ぐところの厚生年金会計という大きな資金運用部資金の大親方なんであります。御承知通りもう現在でも二千億近く、二十年後には積立金は一兆二千億になろうとしておる。ただこれは資金運用部資金法に基いて大蔵省が管理運用しておりますが、厚生大臣は、この運用についてどういうふうにお考えになられるか。なるほど還元融資といったようなものがあります。もちろんその内容方針についてもお伺いしたいのですけれども、この資金で社会保障の大政策、いわば堀木プランをやってみるというような、そういうおつもりはないんですか。
  51. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 確かにこの厚生年金の特別会計の資金は年々ふえて参っております。すでに膨大な額になっておって、それが資金運用部の資金として運用されております。しかも還元融資はごくわずかだという点は問題があると思うのであります。ただこれが国民年金まで発展しますと、この運用がまた非常に大きな問題になるというふうな情勢でありますので、これらについても、まあ先ほどおあげになった長沼試案においてもすでに一部指摘しておるところであります。これらにつきまして、国民年金制度を創設する場合には、この資金運用が非常に大きな要素を占むることは各国の例から見ましても明らかであります。従来の情勢は大体坂本さんの知っておられる通りでありますが、これらについては、私はさらに検討を加えなければ確たる御返事をする段階にはなっておりません。しかし、あえて国民年金制度を創設する場合には、この問題を重要な問題として取り上げたい、こう考えておる次第でございます。
  52. 坂本昭

    坂本昭君 皆保険と皆年金の問題は、当然今の厚生年金会計も含めて非常に重大な問題であると思います。そうしてもうこれは今明日の日程として取り上げるべきだと思います。たとえば先般も社会保障省に対する創設の意思ありやという質問がありまして、岸総理はあまり熱意を示したように見えませんでしたが、私はこの皆保険と皆年金の会計面を担当するだけでも、一つにまとめる必要がどうしてもある。それから大蔵省が去年あたりから公務員年金制を考えておりますが、これはどうも厚生年金で甘い汁を吸ったからたろうと私は思うのです。全国民にもし統一され、拡充された年金制をしくようになれば、これは莫大な資金が入って、これはまた運用部資金はほくほくになるだろうと思います。しかし私は今のように社会保障理解のない一萬田さんにこの金は渡したくない。私はこのやり方についてはソ連のやり方をまねるべきではないかと思います。ソビエトではプール制にして、そうして労働組合の中央評議会でこれを運営しております。こういう格好にもっていくためには、やはり厚生大臣としては社会保障省というものを作らなければ私はならない段階だと思う。厚生大臣の答弁を願います。
  53. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 率直に申して、今の厚生省の私は機構だけでは、国民年金制度がしかれたとき十分だとは思っておりません。何らかの行政上の機構を変えなければならぬ、その点について社会保障省とするという考え方も一部にあることは存じておりますが、それらにつきましても今後の検討に待つべきものである。ただ何と申しますか、すぐしっぽの方を先に考える。ただ今のところ率直に言ってこれを施行するまでの間自身だけでも大へんな仕事でございます。そういう点に即応するように厚生省の内部分掌を変えて参りたい、そうしてできるだけ実施を遅滞なくやりたい、そういうのが現段階における私の考え方でございます。
  54. 坂本昭

    坂本昭君 どうも厚生大臣の御意見は少しおくれかかっておると思います。少し年金の問題に触れて、所得保障の所得高をどういうふうにしてきめるかということについて大臣と少し論じてみたいのです。厚生年金は現在本人分のみを見ますと月二千五百三十九円です。厚生年金の老令年金としての定額部分というのは月二千円なんです。たった二千円なんです。非常に安過ぎると思います。大臣は、所得基準、これは年金だけの問題じゃないんですよ。生活保護にもくる、最低賃金にもくる、全部引っかかってくるのです。だからこれは政府委員にかわって答弁さすようなことは私は許しません。一番大事なこの点をいかにしてきめられるか、基本的な構想、アイデアを一つ伺います。
  55. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 政府委員には数字、現実の数字だけを御答弁さしております。方針だけは私は坂本さんにお答えする態度できておるつもりであります。確かに私率直に申し上げまして、まあ最近何と申しますか、厚生年金ではまだ満足できないという考え方が強いんじゃなかろうか。それは現実にほかの共済組合でもって年金制度をしたいという希望の強いことを見ましても、ただ、今厚生年金、この制度が国民年金の基礎であるから、だからこれをもって脱退してはいけないのだ、あるいはこれに右にならえでやると言ったって実際はできないから、そういう点から見まして、実は厚生年金自身が現実に魅力を失っておりますし、現状でもって満足すべきでない、こういう考えに基きまして、今事務当局に厚生年金制度も、国民年金制度と合せて、現在の厚生年金制度を再検討を命じておる最中でございます。今の年金の問題の二千数百円という問題も、これはもう私は現実に重要な問題の一つであって、再検討しなくちゃならぬと、こう考えております。
  56. 坂本昭

    坂本昭君 今さら検討じゃ少し遅すぎると思う。最低賃金の問題から、年金、それから生活保護、これはもう全部厚生大臣のところに一番直接くっついておると思います。そうしてこの最低生活費をきめるということが、これは生活の保護の場合などは一番端的に表われますが、年金の場合に当っても、いわゆる所得の再分配政策の基準の基礎になる問題であります。だからこの最低生活費を上げる努力というものが、これは私は貧乏追放の具体的な行動になる、私はそういうふうに考えておる。これはたしかに厚生白書の冒頭においても、厚生大臣みずからがこの所得の再分配ということを一番強調しておられるのですよ。そうして大蔵大臣などはこういう点についてはほほかぶりをしておるのですが、厚生大臣が一番強調している点が具体的には再分配されていない。特に生活保護の基準というものは、これは厚生省では非常にこまかく検討しておられる、私はその検討については敬意を表します。しかしマーケット・バスケット方式ではどうも現段階ではもう基準にはならないと思います。ということは、あのやり方は生存——生きるということについての基準なんです。ところが今日われわれはもう終戦後十二年、生存ということと生活というものとは別に考えております。生存は生活ではないという考えである。従って最低生存水準、あるいは最低健康体裁水準——健康と体裁を保つという水準、こういったものが今日では新しいわれわれの生活水準である、生活保護の水準である、私はそういう考え方がどうしても必要になってくると思う。何かこれについて保護基準をかえるについて、大臣のお考えはありませんか。
  57. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 生活保護法によります生活基準というものが、国民年金を定める場合にも考えなければならぬ問題であるということは、私も考えております。今のマーケット・バスケット方式と申しますが、これでやりました……私も戦後中央労働委員をいたしまして、その時分には、労働組合はマーケット・バスケット方式でもって、これだけが要るのだということが非常にはやったことがございます。私もあの生活基準について問題点はあると思います。しかし理論生計費自身で一応考えられるにしても、一体あんなにこまかくまできめなければならないのかどうかということも私は非常に問題であると思う。ことに理論生計費できめていくのだったら、まず飲食費はある程度きまります。要するにその飲食費の問題が生計費の中で何パーセントを占めるか、いわゆるエンゲル系数とのにらみ合せの問題でもきめ方はあると思います。しかし今の生活保護法の建前から見まして限度がある。私はその一つ一つ率直に言うと、非常にこれは再検討を要する問題はたくさん含んでおりますが、あの状態でもって財政上御承知通り非常に大きな経費が、もうすでに三百六十億でございますか、程度まで参っておるわけでございます。しかし国民の生活の水準、国民生活全体の水準の向上ということを一方に考えますときに、今おっしゃった富の再配分という観点から、社会保障的な、社会保障として物事を考えて参りますときに、国民の消費水準の向上というものと、不可分に理論生計費を維持しているという考え方自身がこれはやや固定しすぎている、むしろ富の再配分の観念からいえば、国民生活の水準に伴って、生活保護基準というものをある程度考えなくちゃならぬ、現実的に必ずしも理論生計費だけでいっていると言えない分が現実にございます。これらの国民生活水準の向上ににらみ合せて、私は修正して参るのが、私どものとるべき態度ではなかろうか、こういうふうに考えている次第であります。
  58. 坂本昭

    坂本昭君 大蔵大臣に今のことに関連して伺いたいのですが、現在の生活保護基準の考え方と、それからまた現実の予算にとらわれている限りは、私は貧乏追放というものは日本からできないと思うのであります。貧乏をほんとうに追放することが、私は内需を育成して、日本の景気を復活させる一番近道だと思うのであります。大臣何かそういうふうに思われないような顔をしておりますけれども厚生大臣こそは実は私は景気の神様だと思うのであります。大蔵大臣どう思われますか。
  59. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 社会保障についての非常に基本的な点になってきたように思うのでありますが、私は総論的に申しますと、大体の考えは、日本経済力というものに、すべてのことがこれを基礎にして成り立つのでありますが、これは私は何と言っても貿易に依存する経済、こういう見地に立っております。従いまして何としても国際競争に打ちかって、そうしてうんともうけてもらうという態勢が、日本経済の本質であると思うのであります。ただ私の考えは、そのためにもうけがどういうふうに分配されるのかが、今後政治的にも考えていかなければならぬという見地をとっております。言いかえれば、そういうふうな経済の態勢というものは、他面においてやはり犠牲になる階層が生ずることは当然であります。従いましてそういうふうな大きな、国としての利潤といいますか、それがそういうふうな犠牲になる方面に、十分に分配される私は社会制度というものを考えていかなくちゃならぬ、そのときにおいて初めて社会保障というものが、私は思い切った、かつまた充実したものになるであろう、かように考えて、そういうようなことができるまでに何としても手段を考えて、経済力のあるいはまた財政の許す範囲内において、社会保障というものを充実していく、そういうような見地に立って、たとえば生活保護のいわゆる基準についても、あるいは最低賃金の点についても、いわゆるそのときの経済力に応じた均衡ある状況におく以外に方法はないだろうと、かように考えております。
  60. 坂本昭

    坂本昭君 生活保護の問題が出まして、実は生活保護というのは現段階では結核保護であります。一言、厚生大臣に、大臣が皆保険との関連において、結核というものをどういうふうにお考えになっておられるか、厚生省の次官の方は、もう結核は済んだのだとというようなことを放言される方があって非常に困るのですけれども大臣のお考え一つ承わっておきたいと思います。
  61. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) これは結核専門家の坂本さんがおっしゃるのでありますが、私は終始一貫結核自身が、成るほど死亡率から言いますと最近非常に下っておりますが、罹病率からいえば、まだ七十万ぐらいの人が新しく患者に発生するというふうな情勢でございまして、それに、これはもう御承知通りに、現在の医療費の二九%以上が結核であるというふうな点からいいますと、結核自身については、私は何としてもこの問題を解決いたしたい。解決いたしたいというのは、もうあえていろいろ従来申し上げておる通りな方法は依然としてやって参りたい。結核を五カ年後に半減するような達成に向って、私自身が努力すべきであるというふうに、これは終始一貫変らざる考え方を持っております。まあ余計なことかもしれませんが、事実健康管理のうまくいっている会社は、その組合の経費は相当余ってきておる、黒字になってきておる、国だって私は同じだと思います。いつも均衡々々という話しが起りますが、何が均衡だかわからなくて、率直にいえば、こういう結核のほんとうの対策ができて参りますれば、先ほど坂本さんがおっしゃったように、国の繁栄にも逆に寄与する、現に健康管理が結核についてうまくいきましたところの会社自身等においては、その実績が表われて参っております。そういうふうな考え方で今後も進みたい、こう思っておる次第であります。
  62. 坂本昭

    坂本昭君 結核対策について、厚生大臣に一言御注意申し上げておきたいことがあるのです。それは、厚生省の中にはなかなか優秀なスタッフがたくさんそろっておると思う。しかしどうも省内が不統一だと思うのです。特に結核対策と皆保険と、この二つの問題は、一つも統一されていない。いわば、厚生省交響楽団があるとしますと、第一バイオリン、第二バイオリン、なかなかいい音楽をひくのです。それからフルートもある、ところがドラムばっかり大きくなりすぎてしまう、そういう点でどうも大臣はあまり名指揮者だと言えないのです。もっと上手な調節をしなければ、どんなに技術的にりっぱな結核対策を持っていても行われない、一つ大臣意見を……。
  63. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 坂本さんのお説までもなく、今御質問の最中の結核問題だけをあげましても、率直にいいますと、厚生省で約五局関係いたしております。生活保護世帯の結核の問題、これは社会局でございます。それから児童の結核の問題になりますと、これは児童局、それから保険局の関係でむろん入っております。そのほか当然に医務局、薬務局等が入っておりますから、五局入って参ります。私は下手なコンダクターでございますが、そういう認識において、過去の経験を生かしまして何とか官僚にいい交響楽を奏さしたいものと毎日努力いたしております。
  64. 坂本昭

    坂本昭君 今省内不統一のことを言ったのですけれども、省内だけじゃないのです。省外との連絡もあまりよくない。いろんな各種年金統合の問題もあれば、各種官公立病院の統合の問題もあれば、こういう医療制度の面、年金制度の面、多くの負担が私は大臣の肩にになわされておると思う。そこで一つ住宅問題について建設省との連関事項についてお尋ねしたい。実はこの昭和三十二年度に厚生省は社会局で低消費水準、ボーダー・ラインの人たち、特にその中の十万世帯の人に対して十ヵ年計画住宅政策を提案せられ、三十二年度の予算に五千戸に対して十四億五千六百万円を要求し、同時に引揚援護局からは引揚者の疎開住宅に対して二千戸の要求を三十二年度いたしましたが全部削られました。そうしてこれは昨年の三月十六日の建設委員会における南條建設大臣の答弁でありますけれども、その中で特に「在外資産の問題が解決いたしまして、引揚者に対し優先的に五カ年間に二万戸の建設を」やる。「三十二年度にはとりあえず千戸」やるということを実は言明されたのです。きのうのこの委員会において、建設大臣が三十三年度の計画について、引揚者に対して一千戸の計画があるということを申されて、これが公営住宅法に触れるか触れないかということで少し議論になりました。私はそもそも厚生省が不熱心だと思うのです。厚生省がもっとこの低所得層の住宅政策に対して建設省自身を押すような熱意が必要であるのではないか。それから特にこの引揚者に対しては一体厚生省は何をしているのかというのです。閣議決定もし、それから一千戸の割当があったはずだけれども、これは入っておりますか。三十三年度にはまた一千戸ということになりましたけれども、これに引揚者をはっきり一千戸入れるだけの準備をしておられますか。まず、厚生大臣
  65. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) お話のように低所得者の住居、住まいの問題は非常に国民の間から緊要に叫ばれております。それで今のお話のように引揚者の問題、それから母子家庭の問題等について低所得の家賃、第二種公営住宅並びにむしろそれ以下くらいの住宅が必要であるというふうな希望が強いことも存じております。しかし同時に、この住宅問題は一つの重要な都市計画、その他国土計画と合わして私は考えるべき問題だ、そういうふうな点につきまして、厚生省自身の要求はむろん建設省に対して強くその利益を代表して申し上げなければならぬと思いますが、同時に全体的にはそれについて考えるべきである。建設省自身が考えられるべきであるというふうに考えるのであります。今回の第二種公営住宅自身がふえましたのも、そういう方法で物事が進んでいるということは言い得ると思うのでありますが、この住宅確保ということについては、なお今後の努力に待つべきものが私は相当あることは否定いたしません。現状で足りないことは否定いたしませんが、全体との総合調整の上に立って、一応こういう方法で物事は進められるべきものである、こう考えておるような次第であります。
  66. 坂本昭

    坂本昭君 低所得層の住宅問題と、引揚者の住宅問題については、これは当然建設大臣責任を負うべきものであると思いますが、今までの経過をみますというと、きわめて連絡不十分のために十分な効果をあげていない。特に来年度については公営住宅第二種をやっと二千戸ふやした。それに対してその中へ引揚者の住宅を千戸割り込まそうというようなことで問題を解決しようとしている。私は建設大臣がこの低所得者住宅、引揚者住宅には厚生省とどのような連絡をどのようにやっておられるか、そのお考えを承わりたい。
  67. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。まず第一に、堀木厚生大臣に対する御質問を私がちょっと私の関係から御説明した方がいい点もありますので、それから申し上げます。先ほど引揚者住宅に対して昭和三十二年度に一千戸を確保するように前南條大臣が言った。しかしこれの受け入れ態勢が果してできているのかどうかわからないが、その実績はどうかということであります。昭和三十二年度におきましては、新規引揚者住宅が五十六、それから引揚者疎開住宅、これは兵舎とか、そういうふうな集団的に応急に入れておりましたところの方々を公営住宅に疎開させるといいますか、公営住宅に入れたわけでございますが、これが九百七十八戸でございます。合計一千三十四戸でございまして、これは大体厚生省の要請に応じてやったわけでございます。  それから昨日関連質問で私に公営住宅法において付則第五号において、当分の間引揚者を公営住宅に入れないというような方法になっているが、これはどうかというお話でございました。これは御承知のように昭和二十八年までは厚生省が引き揚げ関係のお世話をしておりました。その住宅をやっておりましたが、その場合には応急の住宅を提供をしております。従って、個々の公営住宅には対象にいたしておりませんで、兵舎とかあるいは旧来国家が持っておりました施設にこれを入れている、そういう関係でこれは公営住宅の対象にはしない。しかし昭和二十九年から厚生省と建設省と協議の上、そういうふうな住宅に入っている方々が、今度は非常に不良住宅になった、あるいは崩壊する危険がある、非常に不衛生だということで、これを撤去する場合は、これは公営住宅で引き受ける、こういうふうになっているのであります。従いましてあの規定は、公営住宅に入れてはならないということではございませんので、応急引き揚げの対象にはしない、こういうことになっておりまして、これは法律上何ら差しつかえない、こういう解釈をとっておるのであります。御了承願います。  その次にただいま坂本さんの御質問で、引揚者住宅について、厚生省とどういうふうな連係並びに今後措置をとるのかということでございますが、これはもう引揚者が毎年々々引き揚げることが少くなったのでありまして、むしろ引揚者が現在、集団のただいま申し上げましたような兵舎等におられまして、この方々が非常に生活が不安定である、しかも一面には住宅を欲している。こういう関係から、これは全体の低額所得者の住宅需要の一つの一環としてわれわれはみているわけであります。それを含めまして、ただいま国会の御承認を求めている公営住宅三カ年計画の中に、これを包含してわれわれが計画をいたしているわけでございます。ところで御承知のように、一般的な低額所得者とともに、引揚者は特に生活が困難な方が多いのでございます。そういう関係から実は厚生省の方から、私が建設省を受け持つに至ったときからの、普通の第二種公営住宅でこれをまかなうにいたしましても、収入の面からすれば、どうしても今までの家賃ではこれは困難である。でありまするから何とかその面を打開しなければいけないということで、実は厚生省としては第三種公営住宅のようなものを考えたこともあるそうでございます。ところがこれは住宅政策からみますというと、非常に満足し得ないところでございます。家賃を引き下げるために現在ですら第二種公営の規模は非常に小さい、しかもその上に程度が悪い、さらに引き下げるためにこれを程度を悪くするというと、建てて間もなくこれはスラム化してしまう。これは住宅政策としては非常に不満足でありまするので、われわれの方としては、規格を下げずにしかも低額所得者を入居せしめ得るような措置を講ずることが至当ではないかということで、三十三年度予算編成に当りまして、実はそういうようなボーダー・ラインの方々に対しては、家賃補助の形式をとるべきだというふうに、実は厚生省とも協議して、予算要求したのでありますが、そういう制度を今までやっておらないということ、財政上でなかなかそこまでに財政当局との意見の一致をみません。従いましてこの方策がとれなかったことは遺憾でございまするが、財政も漸次豊かになりますれば、そうした方面も考えていかなければならないのじゃないかというふうに考えておりますが、なかなかこれは厚生省とわれわれの方は意見が一致しても、大蔵省はなかなか……、ここに大蔵大臣もおられますが、議論があるのでございまして、今後とも努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  68. 坂本昭

    坂本昭君 時間が参りましたから一言、厚生大臣社会保障の一ページを開いてからいろいろと議論をして参りましたが、とにかく、きわめて重大な地位を厚生大臣が持たれるに至った。厚生大臣の株は私はずいぶん上ったと思うのです。おそらく厚生大臣になったら次回から選挙に落選することはないという世の中になると思う。大蔵大臣などはいかん、やっぱり次には落ちる。(笑声)私はそれだけに非常に重大な責任があると思う。きょういろいろなことを話しましたが、まだきょう話さなかった中で、国際的に非常に大事な問題は原水爆の問題です。特に原水爆の放射能の処理の問題、死の灰の問題、これは一応だれが所管するか。防衛庁はそんなこと考えてやしませんから、これは環境衛生の面で当然厚生省がもっと積極性を持たなければいかぬ。今だって死の灰は落ちているのですし、あのマグロのカウントをはかったのは、厚生省の一時の気まぐれじゃないと思う。もうすっかりやめてしまった。現在東海村の原子力研究所は、少し作業を始めていますが、あそこにも絶対に危険がないという保証はできますが。あそこにも、まだわれわれがよく知らない稀元素の中で放射性を持つたものが煙の中から出ているのじゃないかという、そういった話も私は聞いている。また、各病院や大学などでいろいろな実験をやっているが、その処理はどうなさるのだろうか。いわゆる廃棄処分、こういうところに環境衛生の面で非常に大事な面もある。国際的に日本厚生省がやらなくちゃいけない大きな問題だと思う。そこでこんなに大きな問題が出てきましたから、私は社会労働委員会というものはなかなか大へんだと思う。この際、社会労働委員会を分離して、労働委員会と厚生委員会、そういうものにはっきり分ける御意思は厚生大臣は持たれるか。そのための努力をされるかお聞きいたした
  69. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 放射線の問題につきましてはお説の通りでありまして、われわれ自身が身近にある上下水道の問題あるいは米を初め各種の野菜、その他の飲食物等の問題、そういう問題等にたくさんわれわれの生活の全般にわたっておりまするので、これらにつきましては鋭意努力して参りたい、こう考えております。社会労働をどうするかという問題は、私が答弁することは潜越であって、議会の皆さんがおきめになることだと考えております。
  70. 坂本昭

    坂本昭君 それは決して潜越じやなくて、そういう努力をわれわれ国会の中で一つやっていただきたいのです。われわれは喜んで応じます。そしてそのために議運とも諮り、努力いたしますが、あなたの方で労働問題と、厚生問題と一緒にやってお茶を濁してもらう方がいいのだという態度でははなはだ残念だと思うのです。こういうことを申し上げては、堀木さんが御迷惑じゃなくて、イギリスの人が御迷惑かもしれないのです。それはベヴァンのような、かつて保健相をやったときに、入れ歯とめがねを半額にされるというので、辞表をたたきつけてやめたでしょう。今度あたり来年度の予算でずいぶんひどい目にあって唯々諾々としてその地位におられる私は厚生大臣は、まことにふがいないと思うのであります。辞表をたたきつけて、日本社会保障のために憤然として戦っていただきたい。厚生大臣をわれわれは期待しております。  これで終ります。
  71. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十九分休憩    —————・—————    午後二時三十一分開会
  72. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を、再開いたします。  午前に引き続き、質疑を続行いたします。
  73. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 私は、まず石井農林大臣代理、とりわけ大蔵大臣にお尋ねを申し上げたいと思うのでございますが、現在発動いたしておりまする糸価安定法について、その実力を疑うものがあるのでございまするが、この糸価安定法の実力及びその買い入れ能力、すなわち安定に対する威力等というものについて、どんな御意見を持っておりまするか。思うに、蚕糸業は戦時中残念ながら全く萎靡沈滞いたしたのでございまするけれども、幸いにして戦後累年その産額も増して参りまして、輸出の金額におきましても、生糸及び絹織物を通算いたしまするならば、まさに一億ドル、すなわち三百五、六十億円を産するに至りましたことは、わが国の蚕糸業が再び国際貸借改善の上に裨益することができるということで、喜びにたえません。しかるに、昨年末からの世界的な不景気と、及び年々見舞われて参りまする季節的な需要減退期とが重なりまして、昨年の暮れから著しく糸価は低落をいたしまして、遂に政府の保証いたしておりまする最低値、すなわち十九万円と相なったのでございまするために、政府は、この糸価安定法に基いて買収を始めたのでございます。しかるに、その後政府の買い入れの数量が著しく増して参りまして、それがために、予想されておりまする八十億円の買い入れ資金のうち、すでにその大半は買い入れに使われてしまった。従って、このままで押し進むならば、三十二年度の生糸はどうやら維持し得るでありましょうけれども、やがて新繭の出たときに、春繭、夏繭、秋ごはどうなるであろうか、これがために、一般蚕糸業界はもちろん、養蚕農家の心配も少からざるものがありまする。これがために農林大臣は、幾たびか声明を発しまして、あるときは蚕糸振興審議会において、またあるときは蚕糸関係団体もこれを憂うるのあまり政府に訴えて参りましたとき等に、あくまで政府はこの価格を支持するのである、堅持するということを声明せられているにもかかわらず、なお漸次その糸価は漸落いたして参りまして、過般、三月の初めと思いまするが、先物すなわち六月、七月というようなものは、十七万五千円というみじめな相場さえも出すようになりました。これがため農林大臣は、閣議においてこの問題を御発言になったとのことが新聞に伝わりまして、そのときでさえも、一般に非常な好感と安心感を与えたためか、直ちにこの相場は相当額見返して参りましたけれども、今なお、政府の最低価格と支持されました十九万を下回る傾向にあります。これをこのままに放置しておくということは、これはゆゆしき問題であると存ずるのでございます。説をなす者は、あるいは、化繊が非常な過剰生産に悩みつつあるのだ、従って、この世界不景気を前にしては、生糸も相当値下げをするのが当然だという声も一部にはないではないようでありますが、これは非常な間違いであって、今日十九万の政府が下値保証をするという法律までをもってこれに臨んでおりながら、一万もしくは二万下げるということになれば、政府に対する信頼感というものはなくなる。そうすると、どこまで下るかわからぬということで、現に相当の実需を持っている人さえも、いつ下るかわからぬということから、ほんの目先手当で一口々々とその仕事を食い延ばしていくにすぎない状態であるようでありまする。こういう関係をもちまして、業界の全部の人々が、ほとんどあげてこの価格を維持することを要望している。あくまで維持するならば、内地における織物屋さえもこれに同意をいたしているのでございまする。現に、先般農林大臣の諮問機関である糸価安定委員会において、三十三年度の繭糸価をいかように維持すべきか、その下値はどうかというときに、ひとしくやはり十九万円及びこれに見合う繭価を維持すべしという答申になっておりますのを見ましても明らかである。加うるに、アメリカ方面からも、今にして下げるようなことがあるならば、現在の持ち荷に莫大な損害を生ずる。政府の十九万声明を信頼して商売をしておった輸入業者にも、またアメリカの機屋にも、莫大な損害を与えるということを警告して参っております。また先般は、イタリア上院議員のタウトウーフォーリという人から、わが蚕糸中央会に向いまして、一九五八年の生糸価格は、十九万から二十万にすべきではないかという相談さえもあったような次第で、これは、この人の言うことをもってするならば、今世界における絹織物市場は、糸価の安定こそ望んでいるので、この価格がかりに二十二万と相なりましても、絹織物市場はこの生糸を欲求するのであろうというほどでございます。それは別といたしまして、すでに諸般の情勢が先刻申し上げましたような次第であり、また、生糸はどうにか十九万を維持し得るとしても、三十三年度における繭価が、これが維持できないということになりまするならば、多数養蚕農民の生活は全く安定することができない。先刻来坂本議員のお話によりましても、社会保障制度をもっと充実しなければならぬという御主張がありまして、われわれも全然同感いたしまするが、これに先行し、もしくはそれと並行していかなければならないのは、働ける国民に仕事を与えることである。仕事を与えて生活を豊かにすることこそ最も望ましいことであって、しかも、蚕糸関係の人々は、この政府の制定せられました繭糸価格安定法を唯一のたよりとして働いておるのに、政府がすでにその買い入れ資金の元が切れたということで手をあげることになりましたならば、その惨禍は実におそろしいものであろうと、こう考えるのであります。農林大臣はしばしば、すでに声明しておる。そうして農林大臣がまた閣議に訴えられたというだけで市況に好影響を与えておるのでありまするから、それを代理する石井大臣において同感であることは当然でございまするが、近時大臣の言明、言葉なるものが、残念ながら往年のような信頼を国民から受けておらない。これはどういうわけか。私は昔であるならば、一つ大臣が国策に沿って声明したことは、これは内閣全体の責任として閣僚が協力するのであるのに、どうもその点にはっきりしないものがあるというようなためであろうか、最近はアメリカあたりからも農林大臣の声明にあわせて大蔵大臣の決意を聞いてもらいたいというような電報が飛び込んできておることをもってしても、はなはだ遺憾であります。しかしながら、事実はそれを要望しておるので、大蔵大臣はこれに対していかがなお考えを持っておりますか。商売のことでございまするから、よしそれじゃあ二十億増したらよかろう、三十億増したらよかろうという要望もあるいはあるかもしれないが、私の考えをもってするならば、それはきわめて拙策でありまして、商売は相手のあることで、しかも、数量はどんどん出てくる。二十億増したとしても、それは何カ月もたてば消えてしまうんだ、それじゃそのあとはどうなる。また下りはしないかという心配のために実需を停頓せしむるおそれがあるのでありますが、むしろ、これらの従的なことはどういうふうにしてでも属僚におまかせになりまして、政治家としては、腹を据えて政府がこれだけの法律をもって国民に臨んでおる以上は、必要な数量はあくまで——予算処置はもとより議会の協賛を経べきであるが、適当な方法を講じて、どのようにでもしてその目的を達するという腹を見せることが最も大事ではないかと、こう考えるので、この点特に大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  74. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申します。この糸価の最低価格は、先ほどお話のありましたように、来年度におきましても十九万円にすることに、過般繭糸価格安定審議会においてきまりましたのでありまするが、政府におきましても、最近の蚕糸業の状況にかんがみまして、糸価安定資金の確保に万全を期したいと考えております。さらにまた糸価維持をはかるために、もしも必要がありますれば、適当な機関をして一時生糸の買い入れ保管をせしむる等、これまた万全の措置を講じまして、そうしまして、内外の生糸価格に対します不安を除きまして、生糸の輸出の不振と農家経済の安定をはかる方針であります。なお同時にまた、私どもとしましては、政府もこういうふうな決意をもちまして、最低の価格十九万円というようなところに安定せしむるとの決意であります。またそれに所要する措置もとるということは、今申し上げた通りでありますので、業界におかれましても、一そうこの生糸の販売が増加いたしますように努力を願い、また一時的には生産の調整ということも御考慮願って、そうして政府、民間ともども協力しまして、糸価安定を一日も早くはかりたいと、かように考えております。
  75. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 ただいま大蔵大臣から、さきに繭糸価格安定審議会の答申に基いて、すでに三十三年度の糸価も十九万、これに見合う繭価も当然維持すべきである、従って、それに要する資金的処置はもちろん講ずべきであり、また時として、いろいろの手続上間に合わないときは、買い入れの適当な処置をも融資によって講ずるという腹のすわったお話がありましたので、これ以上お尋ねをする必要はありません。とかく答弁が冗長にわたり、あるいは巧みであっても実の少いことがありますが、今度こそはきわめて簡潔明瞭で、非常に愉快であります。石井大臣の御答弁をわずらわすはずでありましたが、石井大臣も赤城農林大臣の代理をされている。赤城農林大臣がしばしば声明されたことに大蔵大臣もあげてこれに協力するというのでありまするから、大臣代理としても御満足であるばかりでなく、副総理の資格においても、この国策遂行にさような有力なる協力者が、閣内にともに協力をするということになったことは、まことに御満足のことであろうと思うので、私はその答弁は求めません。  次に、今度は農林大臣代理並びに通産大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、今大蔵大臣が決意を示されたように、何ぼでも買うんだ、必要であればまた融資もしようというので、ほぼ安心ではあるが、ただそれだけにたよるということはいかぬ。末尾にお話のあった通り、業者もこれに大いに協力をすべきだ、当然でありまするが、農林大臣としても、ただ買っておけばいいというのではいかにもばかの一つ覚えのように思うので、買った生糸をこの機会に出して新販路を拡張するか、新用途を切り開いていくかということに官民こぞって努力すべきではないかと思うのです。やむを得ずんば、消極的な生産制限も、ときとして若干やむを得ないかもしれませんが、進むところはあくまで積極的に——今ようやく生糸及び絹織物を合せて一億万ドルの輸出と相なりましたが、道をもって臨むならば、一億五千万ドル、すなわち大蔵大臣の求むる来年度の黒字全体をほとんど生糸及び絹織物でまかなうこともできはしないかと思うので、この際、積極的に買い上げた生糸をもって新販路の拡張、新用途の開拓に向うべきではないか、先年、多分昭和四年ごろであると思います。当時まだ政府が直接金を出す準備がなくて、民間において政府の融資によって生糸の非常に惨落した時、価格維持に当りましたが、業者の力だけではとうてい足りないので、ついに融資によって買い上げた生糸を——糸価安定融資保証法によって買い上げた生糸を、糸価安定融資担保生糸買収法というものをこしらえて、そうして政府が肩がわりして、あるいは数字に間違いがあるかもしれないが、十一万俵の大量のものを買ったことがございます。しかも、その当時の政治家はさらに度胸がすわっておったか、十一万俵を四年間も抱いておったのであります、糸価の上るまで。ところが、なかなか上らない。そこで、これはというのでインドを目ざして——従来の得意であるアメリカへ売ればアメリカの生糸業者が迷惑をする、再輸出をしないという保証のもとにインドに一万何千俵かを売って、それが継続いたしております。さらにまたメリヤスであるとか、あるいは絹の洋服であるとか、いろいろの開拓の面をいたしました。それがため消費しました生糸はおそらく五万俵になんなんとすると思うのでございます。そうしてその結果は、残った生糸で相当の利益を上げて政府に対して莫大の税金を納めたという、また政府みずからやったのだから、政府が莫大の利益を収めたということもあるのでございます。従って私は、農林大臣はこの方面にお力を尽すべきであると思いまするが、それには、現在の法律で、新用途の開拓と新販路の拡張に向うだけのゆとりがどこかであるのかどうか。私の見るところをもってすれば、この生糸の売り渡しはできるが、その売り渡しは、新版路、新用途に振り向けられるけれども、その価格は、市場価格に準拠して農林大臣が定めるとある。準拠と言うのだから、その市場価格ということではないので、どのくらいか下げてでも、どういうふうにでも農林大臣はできましようが、その準拠というようなことが、他日会計検査院等の解釈と非常な相違があっては、農林大臣の働く幅も狭いであろうと思う。これらをどのように解釈されるか。もしそれが足りないならば、これまた適当な方法を講じまして、新版路、新用途の拡張に当り得る方途を講ぜられることが大事であろうと思いまするが、いかがでございますか。
  76. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 生糸の値段がだんだん下りまして、さっきお話のように、十七万円台までも行ったのでございましたが、幸いに政府努力が買われまして、また市場の情勢もよくなった点もありまするが、まずまあ十八万円台までは返って参りました。さっき大蔵大臣が申しましたような線で、政府が力を入れて業者とともに進むという覚悟を示すことができるようになりましたので、さらにこれは十九万円台というものに、私は、返って行き得るのじゃないかと、こういうふうに思っておりまするが、いずれにいたしましても、昨年あたりから需要がずっと減っております。世の中の不景気というものも当然その原因をなしておるわけでございまするが、もっと、私どもといたしましては、生糸を買うような方面に向っての宣伝というものが不足じゃないか。ちょっとこのごろ普通状態で進んで参りましたので、昨年の予算におきましても九千万円、今度の予算においても九千万円という、ほとんど動かない宣伝費と申しますか、販路拡張という線が政府には盛られております。一方また民間では、三十万ドル余りの金が宣伝費に使われておるということでございまするが、商売が割に順に行きますると、同じ金を使いながらも、その宣伝効果というものに非常な努力を払うということがいつの間にか抜けていくという傾向もあり得ると思うのです。これは、政府といたしましても、金の問題ももちろんございまするが、その効果的な利用により、また一方新販路をどうやって開くかということについて各方面の注意を促すような努力を私どもしていかなくてはならぬと思っております。また、一時政府に保有いたしまする生糸の新用途に使うような場合には、今お話のように、時価に準拠して売ってもいいというような問題でありまするが、かりに時価が十七万円に下ったら、あわててそこいらで、ここいらがいいところだろう、いつまで持っておっても大へんだというようなことで、売り払うようなことがありますと、さっきお話のありましたように、アメリカあたりの大きな需要地において、日本の生糸の価格不安定という問題が日本の商品の信用の問題になりまして、まあこれだけに限らない問題でありまして、海外における日本の商品に対する批判が、いつも価格の安定という点をよく言われるのでございまして、この点は、十分私ども注意いたさなきゃならない。さっきお話のありましたように、何年間か持ってでもその価格を維持するという方法もあります。情勢を考えまして、できるだけ広く売らなくちゃなりませんが、あわてて価格をくずすようなことはしないで販路を開いていくというふうに努力をいたしたいと思っております。
  77. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 農林大臣代理の御決意は、まことに妥当であると存ぜられますが、なお御質問を申し上げたいのは、その新版路の拡張なり、新用途の開拓というには、相当の犠牲を払わなければならない。今仰せの通り、維持価格に準拠しなければほかの相場をくずすということは当然のことで、いたずらに安く売ってはならない。しかしながら、それに影響のない新販路を拡張する、あるいは新用途を開拓するという場合には、相当にそこに犠牲がなければなかなかできないものであろう。これに対しましては、その当時は、生糸の需要増進調査会というものをこさえて、そうして政府諮問で、研究のもとに、妥当な相場で新しい消費の道を開いたという例もありまするので、これらも御研究をわずらわしたい。  そこで私は、なお当時のことを考えて、絹のメリヤスであるとか、あるいは洋服であるとか、いろいろありましょう。それにしても、これは加工技術の面で非常な研究を要するものであろう。ところが、これに対しての研究は、どうも農林省は、繭を作り糸を作るまではよろしいが、それから先のことについては研究が足りない。しからば、どこでこの研究をやっているか。これは、通産省でやっていただくであろうと思うけれども、通産省御自身が持っておりまする織物なり染色なりあるいは加工の試験研究所、もしくは都道府県の繊維試験研究所を見ましても、大かたは化繊によってぱくられております。絹のほんとうの研究に対する費用及び人材というものはまことに乏しい。これではいかんじゃないか。もとより化繊も、国策上大いに研究し、その生産コストを引き下げて、海外に輸出することは当然でございまするが、生糸に対しても、これは農林省の関係だというようなセクトな考えを持ちませず、進んで、農林省も通産省も、かかる非常の場合こそ、また新しい打開の道を購ずるのときであろうと思いまするので、両省協力いたしまして、その技術の改善発達に、試験研究に相当の決意を示されることを切望いたすのでございまするが、これに対して御両所はいかがでございますか。
  78. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 先ほどお話のありましたように、海外に新用途あるいは新販路を開拓しなければならぬということにつきましては、通産省も認識をいたしておりまして、御承知のことだと思いますが、メリヤス製品の試作を向うにやらせましたり、あるいは合成繊維等の混合織をやらせたり、いろいろやっておりまして、予算的にいいますと、昨年の千七百五十万円を一千万円ふやして、二千七百五十万円を三十三年度で要求いたしておるのであります。また、アメリカにおきまして絹製品の展示会を開きますについて、これは、昭和三十年度から始まっているのでありまするが、毎年こういうものに六百万円ほどの経費を出しております。来年度ももちろん同額を出しておりますが、非常に効果を上げているというふうに考えているのであります。  さらに、ただいまお尋ねの、国内において技術の研究その他について、どうも農林省との連絡その他が不十分ではないかというような御質問であります。これは、率直に申し上げますると、どうしても、通産省としましては、輸出に力を入れるものでありますから、輸出の方面では、先ほど申しましたような点で、いろいろ予算上も要求をいたしております。繊維工業になりますと、繊維工業試験所におきまして、かなり広い範囲の試験研究をやっておりますために、あるいは化繊等の新規製品について力を入れますが、多少そういう従来からの繊維について、力の入れ方が足りないようなことは、私も仄聞いたしておるのでありますが、この点は、全く考えなければならぬ重要な問題だと思っております。私のごときも、絹織物その他に非常に関係を持っております。今後大いに力を入れなければならぬと思っておりますが、農林省との連絡におきましては、製糸及び絹織物研究連絡会という連絡会議を開いて、常に緊密に連絡はいたしておるようであります。さらに御趣旨の点もわれわれ体しまして、今後一そう努力をいたしたいと、かように考えております。
  79. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 ただいま通産大臣から、きわめて率直にお話をいただいて、満足でございまするが、まさに研究すべきであるが、研究がややもすれば手が伸びなかった、今後大いにやろう。そこで、わずかではあるけれども、アメリカにおける展示会が相当の成績を示しておるということがお話がありました。日本の技術をもってして、その展示会がそれだけの成績を上げたということは、私は非常にうれしいことだと思います。しかしながら、これをフランス及びイタリーの技術をもってするならば、まだまだ学ぶべきことが非常に残っておる。この点は、今まだ足りなかったが、これからやろうという気持の中に織り込んで、しかも、農林省との連絡をとっておるというような、連絡をとっても、何ものも実を結ばないようではだめです。連絡をとったが、連絡をとった結果がこういうものが生まれたというのでなければいかんと思うのです。そこで、フランスの例をもってすれば、日本の生糸を持って行って、これに加工をして、染色をして出すときには六倍になっておる。イタリーは四倍になっておる。わが国にあり余る労力があり、これを一つ十二分に利用されて、そうしてもっともっとフランス、イタリーに負けない製品を出すならば、決して、わが国の絹織物がどんどん出たからといって、アメリカから排斥を受けるはずのものでもないと思うのでございまするが、そこで問題は、先ほど残されたものとして、宣伝が足りないという石井大臣お話はもっともでございます。また、それなるがゆえに、このたびは予算の上にも増額をしていただいてある。また通産省も、これに見るところがあって増額をしておる。まことにけっこうでございまするが、これは、政府がそれだけ考えた以上は、政府がやはり関係当業者を鞭撻いたしまして、当業者にももっともっと十分に腹を据えてやらせる方途を講ずるように御指導あらんことを願います。  続いて残された問題として、この日本の絹織物が、昨年は一昨年より七割五分も多く出たということで、昨年のアメリカにおける綿業大会においては、日本であまり織物を出してくれるから、生糸が買えなくなったという生糸業者及びアメリカの機屋が文句を言っておる、ややもすれば輸入制限なり関税引き上げの声さえもあったとのことでございまするが、これはなかなかゆゆしきことで、一日もゆるがせにできないではないかと思うのです。現に燕市におけるあの金属食器に対してアメリカが打ってきた手、あるいは体温器に対して輸入関税の引き上げなり制限をする。これは、幸いにして大統領の勧告によって一時とまってはおりまするものの、もう問題になってはおそいと思う。幸いまだ一部の業者の間に起って——議会の問題ともなっておらない。関税委員会の問題ともなっておらない。この際に、いわれるところの経済外交を一枚看板に奮闘しておられますることに、経済人として最もその点は適当だろうと思いまする藤山外務大臣は、今日本の急速に発展しようとしておる織物に対して、アメリカも業者の一部にややもすれば手を打とうとすることを見ておる手はない。すみやかに移動大使をして、むしろ、蚕糸業一点張りでもよろしい、大きく蚕糸業の問題左解決して、日本の輸出振興に寄与するために、大きな手をもって、有力な在野の人材をアメリカに送って、そうして経済外交を試みるべきときではないか。そうして向うの大政治家及びこれに関係、興味を持っておる代議士並びに実業家とひざを交えて懇談解決をして、もっともっと線の太いわが国の輸出の進路を開くべきときであると、こう思いまするが、外務大臣はいかがでありますか。
  80. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 生糸並びに絹織物製品の輸出がわが国の産業経済生活に非常に大きな意味を持っておることは、十分われわれも考えて参らなければならぬ。ことに、過去において日本の輸出の大宗でありましたこれらのものが一時非常に悪くなりまして、再び、ただいまお話のように、数量も伸びてきたというような状況でありまするから、この際、外務当局といたしましても、そういうような情勢において、いろいろ価格的において問題が起らないように、平素から考えて参らなければいかんと思うのでございます。ただいま御指摘のありましたように、昨年十月ニューヨークにおきます国際絹糸業大会におきまして、絹織物の輸出制限というような問題が提起されまして、本年五月のウィーンの理事会において、再びこれが論議されることになろうと思うのであります。それらに対しまして、農林省なり通産省なりとともども十分対策を講じて参りたいと、こう考えておるわけであります。アメリカに対しまして、生糸あるいは絹織物の重要な輸出国でありますことは、申すまでもないことでありますが、従って、それらに対して常時外交方面からもPR活動をいたす必要もあります。また、先ほど来通産大臣から言われましたように、絹織物に関する展示会等に対しては、外務省としても極力協力をいたしまして、その円滑な運営を庶幾し、また、効果の上るように御尽力を申し上げているわけであります。こういう実際問題と、それから、今後起ります問題については、十分注意して参るつもりでありますが、なお、生糸等の問題につきまして、特別な何か使節を出したらどうかというお話もありました。有力な御意見として承わっておきまして、また今後は、生糸のみならず、いろいろな業種についても、本年は相当にアメリカにおいて輸入制限の問題が、あるいは関税の問題が取り上げられると思いますので、それらとあわせて、一つ考慮して参りたいと思います。
  81. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 外務大臣のお言葉によって、現在までも多少手を打っておる。今後は一段と手を打とう。お言葉に信頼を申し上げまして、その実現のすみやかならんことを希望いたします。  そこで、その際、なおその外交の手を打つときに、宣伝にしてもそうでございまするが、農林省は農林省、通産省、外務省というようでなしに、何とか一つそこは一本になって、大きく出るように、これはこの間、幸いに石井副総参理もこれにタッチせられるような関係になりましたので、この点は、一つ画一的に、協調の上にも協調をして、大きく踏み出せるようにお願いいたしたい。  最後に、蚕糸に関する限りの最後でございまするが、とかく新聞あたりで、政府も力を入れるが、生産の制限を繭に及ぼせ、これは非常な大きな間違いで、私は工業生産は生産制限はまあどうにかなる、労務者に対する手当も、方法を用いればよろしい。しかし、百姓の仕事は非常に不器用なもので、そう手先の器用なことはできません。資本の力やなんかで解決なかなかできない。桑一つ考えてみましても、三年間もかかるものを、急にふやせといってもふえもしないし、急に減せといわれても、それほどばからしい減らし方はありません。まあ何か鶏かヤギにでもくれれば、葉はいいかもしれない。まあただにはならないが、これはやはり、養蚕として出た以上は、養蚕に最高度に利用すべきであろう。そこで、ことしの心配は、生糸はどうにかいったが、これは、繭糸価格安定法が適正に動けば、決して繭との開きはあるはずはありません。けれども、金融機関はそういっておらない。大蔵大臣のおっしゃる通り財政投融資は、ことしは多くなっておるので、他の一般金融についても、大いに注意を加えなければならぬということになっておる。生糸が正常の場合ならいいけれども政府買い上げによって価格を維持しておる。これは、金融業者から見れば、非常な病的なものと一面見なければならない。そうすると、繭の買い入れ資金というものを、金融業者は往年のように出さぬだろうと思う。そうすれば、生糸は幸いに価格が維持できましても、繭価格と生糸価格の間にアンバランスが出てくるということは当然であろうと思う。この点に対して、この法律は幸いに、従来は生糸という呼称であったが、それが今度は繭糸価格安定法となっておるのだから、看板に偽わりがないならば、繭に対しても当然の安定の方途を講じなければならない、これは、聞くところ、乾繭をもって臨むということでありますが、その乾繭が、わずか百万貫ぐらいのちっぽけなことではだめで、先ほど私は、農林委員会に行っておりましたが、社会党の清澤君からその質問がありまして、これも強い要望でございます。この問題は、政党政派を超越していくべきことで、どんな方法をもってしても、蚕糸業の振興に役立つことであるならば、決して社会党からも石を投げたような私は質問をされるはずがないと思う。勇敢に一つ繭糸価、繭の安定に対しまして道を講ぜられんことを望みます。これに対して、農林大臣お出かけになったばかりだから、これは技術的なことですから、局長でもけっこうです。一つしっかりお願いします。
  82. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 繭の生産調整につきましてお尋ねでございましたが、われわれ、繭につきまして、長期的にはもちろん増産をして参るつもりでありますし、五カ年計画におきましても、その線によりまして考えておるわけでございます。しかしながら、この商品は、その性質からいたしまして、景気、不景気の波をかぶりまする度合いも非常に大きいわけでございまして、生糸の需要の動向によりましては、一時ある程度調整をするというようなことも必要であると考えるわけでございます。農家の立場になって考えましても、最も有利な形において繭を作るという考え方はもちろん必要でございまして、私どもも、日常に合いましたような生産指導を続けて参りたい。  なお、ただいまお話もございましたように、基本的には、繭糸価格安定法によりまして、価格の変動を安定さしていく建前になっておりますので、その面につきましては、法律の裏づけによりまして、私どもも十分努力をして参るつもりでございます。
  83. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 どうも少しわかったようなわからないようなことですが、一つ繭糸価格安定法がうそでないように、繭に対しても安心ができるように、そうして今のお話によると、五カ年増産計画というものもあるのだから、私の聞き方が間違ったが、そう繭の方には生産制限というようなことはあまりやらない、そうでないと、これは全く計画がよろめいて、あるいは増産だ、あるいは制限だ、どうにもしようがない。このくらいのものは政府が肚をすえて、その繭を抱いて、繭を買う、ここに私はこの法律の精神があろうと思うので、石井副総理はいかがでございましょう。そういうふうにこれを運用すべきものだと私は思いますか、いかがでしよう。
  84. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 繭の値段が下りまして、支持価格を割るような状態に相なるような場合でありますると、これは、保管をする機関において、これを先ず第一番には、一定期間保管をして、その費用等も政府が出していくというようなことにすべきだと思っております。それは、指定の農協連合会がやるだろうと思っております。もしそれ以上の時がたちまして、保管している時がたった繭につきましては、生繭の貫当り支持価格千四百円でございますか、それで政府が買い上げるという方法によって農家の立場を支持していきたい、こういうふうに思っております。
  85. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 関連質問。今私も、実は分科会で御質問しようと思ったんですが、最後に小山さんが質問されました、この糸価の安定が繭価の安定に果して通ずるかどうか。ただいまの政府委員の答弁では、養蚕繭を作る農家の立場からすれば、非常に問題だと思うわけであります。今回の政府のてこ入れによりまして、糸価がある程度安定されたことは、まことにけっこうだと思うわけであります。しかし、春蚕の掃き立てもだん迫ってくるわけですが、ただいまのような、農林省の蚕糸局で立てているような蚕糸業対策では、たとえば、アメリカの実勢価格とこの支持価格をどうするか、化繊との関係、中共生糸の関係等、広範な総合的な長期の対策の一環としての今回の措置でなければ、たくさんの買い上げをして、それが持っていることが、春の繭が出るときに、必ずその在庫が繭価協定の大きな支障になって、製糸家は、今回の暴落を繭価協定に必ず利用いたしまして、繭を安く買いたたくことになってしまう。いつでも今ごろから、繭価協定をやるころに繭が下って、生糸が下って、繭価協定が済んだら上ってしまうというのが、私の多年の養蚕業に関係する立場からいってもそうなんですが、これは、小山さんが申されたように、やはり今回の糸価のてこ入れと同様な強力な措置を伴いませんと、なるほど製糸業の安定にはなっても、それが養蚕業の安定には私は通じないというふうに思うのですが、もっと具体的な、差し迫ったこの春蚕の掃き立てを目前に控えてとにかく今回の措置が、糸価の安定が繭価の安定に直結するかどうかという点について、その具体的な方途をもう少し詳しく述べていただきたい。
  86. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) お答えいたします。生糸の価格を安定いたしますことが、繭の価格を安定いたすことにつきましても最も有効な方法であると私ども考えております。申し上げるまでもなく、繭そのものは、そのままの形では非常に扱いにくいものでございまして、価格安定の支えといたしましては、生糸の価格を安定することを根幹といたしましてやって参るということに考えておるわけでございます。従いまして、今回いろいろ措置を進めておりまするのも、生糸価格の安定を主体といたしまして、繭の価格の安定にも通ずるような効果が出るように考えておるわけであります。しかしながら、ただいま御指摘もありまするように、実際の取引の実情から考えますると、糸の価格を安定させますことが繭の価格を完全にささえるということと通じておるということも申し上げかねる点もございます。その点につきましては、三十年に繭糸価格安定法を改正いたしまして、乾繭共同保管という制度を設けたわけであります。この制度は、幸いにして今日までは発動をいたす機会がなかったわけでございます。ことしあたりは、状況によりまして、繭が相当豊作であり、一方繊維一般の景気の立ち直りもある程度時間的にずれるというようなことになりますると、繭の需給関係が大幅に変って参ることも一応予想をいたしておかなければいけないわけでございます。それで、過般来生産者団体にいろいろ協議をいたしまして、さような事態に備えまして、乾繭共同保管の制度を活用いたしまして、生産者団体の自主的な体制といたしまして、繭の価格を少くとも最低原価の線に支持いたしますように、ただいまから準備を進めておるわけでございます。
  87. 森八三一

    ○森八三一君 ただいまの中田委員質問に対して蚕糸局長からお答えがあったのですが、これは根本さんが農林大臣の時にできた法律なんです、安定法は。その当時政府の見解は、これはあくまで糸価安定法であったのです。それをわれわれが、それではいけない、今御答弁のように、糸価が安定すれば逆に繭値は安定するのだと、こうおっしゃったのです。それではいけない、これは鶏、卵の議論とは違うのだ。繭があって初めて糸があるのだ。結論が一緒になるならば繭値を安定したらどうだ、そうすれば糸値も安定するのじゃないかということから議論をいたしまして、政府の当初構想であった糸価安定法というものが繭糸価格安定法に変ったのです。そのいきさつを十分理解されないで、相変らず当初の感心覚を持っていらっしゃる点に私は非常に疑問と不満を持つのであります。でございますから、糸値を安定して繭値の安定に及ぶことが可能であるならば、繭があって糸があるのですから、繭値を安定さしても糸値が安定することに通ずるはずなんです。最近の情勢から申しますれば、繭値を安定させる政策に精魂を打ち込むべきであると、それなくしては蚕糸業の進展は期するわけにはいかぬと私は思うのでありますが、石井副総理であり、農林大臣はどうお考えになるか、これをはっきりしてもらいたい。(「これは製糸業の救済ですよ、養蚕農家の救済に通じないですよ」と呼ぶ者あり)
  88. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) それに対して私まだはっきりしたものを持っておりませんが、よく御趣旨を考えまして善処いたします。
  89. 森八三一

    ○森八三一君 これは農林大臣という職についたのがまだきょうなんだから十分研究しておらぬという問題ではなくて、政治を行う者の当然の心がまえでなければならぬと私は思う。だから、研究するという筋合いの問題じゃないと思う。副総理は副総理の立場でもいい、糸値を安定することによって繭値を安定させるのだとおっしゃっておる、それではいかぬから法律を直したのです。政府は直して提案したのだ。ところが、その大元の繭という問題はちっとも進行しないで、相変らず当初の構想で進んでおるところに問題がある。だから、本筋に戻しなさいと申し上げているのです。この点、これ以上申し上げても、研究するとおっしゃられれば、研究してはいかぬと申し上げるわけにはいきませんので、この趣旨に沿って結論が出るように、すみやかに研究を完了せられたいという希望を申し上げます。
  90. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 私はさらに繭糸価格安定法にからみまして、玉糸の取扱いについてもお尋ねをいたしたいのでございまするが、これはいずれ分科会に譲りまして、もはや私の時間は与えられただけが切れましたので、皆様のお許しを得て五分だけ延ばしていただきたいと存じますが、委員長、異議ないですか。
  91. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 適当にどうぞ。
  92. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 お尋ねを申し上げたいのは、食肉機構の改善と食肉輸入の問題と、いま一つは、この国際特別都市建設法によりまして、全国に国際観光都市が七つできておりまするが、これが名のみで一向その実があがってくるに足るだけの財政措置がない。これを一つ一つお尋ねしたいが、時間がありません。しぼりまして、養鶏の問題について一言だけお尋ねいたします。それは、米麦中心から食糧の総合増産の政策に移りまして、その一環として、畜産政策を大きく取り上げてきたことは非常にけっこうなことと思うのであります。ところが、その行うところの畜産政策の主なるものは大家畜でありまして、これは決して悪くない、けっこうでございます。そうして、それもまだ十分とは言えませんから、この線にまだ乗せるべきであるけれども、まだ足りないといっても、その大家畜は中農以上の農家が救われるので、面積も相当持たなければならない。ところが、小家畜に至りましてはきわめてわずかな資本ときわめてわすかな面積、いわゆる弱小農家に対してはこの道をもって臨むことかやはり大切である。一方では、要らぬではありませんよ、今の糸価安定が必要であるのと同様に繭価安定が必要のように、やっぱり酪農政策は大いに充実させるべきであるけれども、養鶏のように小資本で、資本がひっくり返って早く現金化して、面積は狭くて、年寄りでも子供でもその労力を現金化することのできる仕事、しかも、それがその産額を合せますると一千億円で、米麦に次ぐ大きな生産額を持っておるにもかかわらず、政府はこれに対してろくろく施策を講じておらぬ。これははなはだいかぬ。そうだから、わが国の農政は三割農政だというような皮肉な言葉さえも出るので、この大多数の関係のある、そうしてだれにも手の伸びまするところの小家畜、その中のせめて養鶏だけでも当面は取り上げていただきたいと思って、政府にもかれこれ要望しておる。政府がもし間に合わなければ、議員立法の法律案としてでもこの点に頭を持ち上げなければならぬと思いますが、政府はこの点に対してどんな用意を持っておりますか、お伺いしたい。
  93. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お答えします。鶏のような小さい動物を飼うことは、これは農家の仕事といたしまして、現金化しやすい動物でございます。こういうふうなものがだんだんどこでも養われるようになることは、非常に農家の経営が楽になる道だと思って、私ども、これを盛んになるように政府も援助していかなくちゃならぬと思っております。来年度の予算におきましても、大宮の種畜場でこの養鶏、特にいい種鶏をこしらえるために二千万円の予算を計上いたしております。そうしていい種、そうしてそれが全国的に広く行き渡るような努力をいたしております。また、引き続きましては、この種になりまする種鶏の良種が全国的に広がりますように、またその経営がうまくいきますように、さらにはこの流通形態もよく改善されまするようにというような方向に、だんだんわれわれの方の力を注いでいかなければならぬと、こういうふうに思って全面的にこの仕事に努力をしたいと思います。ただ、この養鶏業法と申しまするか、これを政府は独立のものとして法律を出すかどうかという問題は、まだ私どもとしては決心はついていないのでございまして、このごろ議員の方方の中でいろいろな論議もあるようでございまするが、政府としては、ただいまそれを法案として出すということの用意はまだないということだけ申し上げる。この仕事が進んでいくことには賛成であります。
  94. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 ただいま石井農林大臣代理のお言葉によりまして、今までは全然手の触れておらなかった養鶏事業に、少くとも当年度の予算において二千万円を計上してその資質の改善に充てる、引き続いて全面的に方途を講じたい、こういうお話だ。その全面的方途を講ずるためには、あたかも酪農に対して幾多の法案をもってそれを裏づけして、法律をもってこれを奨励助長するように、養鶏に対してもする必要があろうと思う。その準備や研究はされておるようだが、もし間に合ったら出していただき、間に合わないならば、議員提出で出したいとも思いますので、これに相こたえ得るの用意あられんことを望みまして私の質問を終ります。
  95. 森八三一

    ○森八三一君 私は関係大臣の御答弁を十分理解するように私なりに努力をいたしますが、きょうは不幸にしてかぜを引きまして、熱が三十八度近くございますので、あまり回りくどい説明をされまするというと、理解することが困難である、いわゆる答弁上手ということになりまするというと、つかみ得ないために何べんも繰り返して質問をしなければならぬということになりますると、私に与えられた時間がたくさんございませんので、せっかくの質疑の趣旨を達成するわけに参りかねると思いますから、答弁は一つ簡潔にわかりやすいようにお答えいただきますることを前もってお願いを申し上げておきます。  そこで、最初に大蔵大臣にお伺いしたいのですが、もちろん予算は閣議で御決定になるのでありまするが、常識的には大蔵省で査定をし、編成をされる、まあ平たい言葉で申しますれば、大蔵大臣予算に対する生殺の権をお持ちになっておる、まさに一萬田さんは予算に関連いたしましては法王様の立場にお立ちになっておると世間では見ておるのであります。そこで、そういう立場に立っていらっしゃる一萬田さんが予算を編成なさるときの心がまえというものを聞きたい。私は、組まれた予算が不正不当に使われるというようなことがあってはいけません。これはもう当然なことなんで、国民の血と汗の結晶がむだづかいされるということはいけませんから、かつて小笠原三九郎さんが大蔵大臣の当時に、この席で私はそういうことを心配するの余り、予算の不正不当使用防止に関する決議案というものを提案いたしました。幸いに全会の御賛同を得て、これが決定され、大蔵省はその趣旨をくみ入れられまして、自来諸般の施策をとってきておられまするが、まだ十分その成果を上げておる状態ではございません。はなはだ残念でございますが、このことについては、今後とも十分努力をしてもらわなければならぬ。しかし、それはその組まれた予算の使い方についての問題なんです。組む当初にむだづかいをするような組まれ方がしておるというと、これは問題なんです。今申し上げたのは、消極的に国民の血税を適切有効に使う法律でありまして、後段に申し上げておるのは、積極的に国民の血税というものが有効適切に使用されるということを意味いたしておるのであります。大蔵大臣はこういう感覚で各省の提出する予算というものを吟味し、あんばいをされておると思いますが、どういう心がまえでおやりになっておるのか、そのお気持をまず最初に聞いておきたいと思います。
  96. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私が何としても、経済計画性を与える意味から、政府においていわゆる五カ年計画というものを組んでおりますが、これを予算的裏づけをしたいというのが一つ、これが大きな大体なものになりますが、さらにそのうちにおいて、どういうものからまずやるべきかというこの重点的な施策というものがここに選ばれなくてはならない。この重点的施策は党の従来の公約でもありますので、また政府方針もあります。その辺の十分な調整を加えて、政府としての重点施策というものを確立すべきであると思います。かようにして、こういうふうな方針がきまったところで大蔵大臣予算の原案を作る、さらにそれを関議に提出して政府原案と、かようにいたしてよかろうと思う。経済五カ年計画計画の関係が自然予算の規模、こういうことに相なろうと思うのであります。
  97. 森八三一

    ○森八三一君 そういうような感覚で臨まれる場合の具体的な態度としてかりに現政府が重点施策として取り上げられておる食糧の国内における自給度を向上していくということを達成するためにも、配分される予算というものが有効にその目的を達成するように使われなければならぬと私は思うのです。そういう感覚で組まれないと、せっかくの国民の血税というものがむだになるという危険を感ずるのであります。そういう感覚で重点施策に取り組んでいらっしゃる、こう了解してよろしいのかどうか。
  98. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) さようでございます。
  99. 森八三一

    ○森八三一君 そういたしますると、そういう感覚で今年度提出されておる三十三年度の一般会計予算を見まして、大蔵大臣はこれが最善のものであると御了解になっておるのか、ああもしたかった、こうもしたかったという点がございまするのか、もうこれ以上の——今の感覚で、国民の血税というものを一銭たりともむだにはしない方針に向って最高にその効率を発揮するように組んだ、これがもう最善のものであると、こういうようにお考えになっておるのか、まだそこには多少でもこうしたかったという点がございまするのか、もしありとすれば、その点を御指摘いただきたい。
  100. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私といたしましては、今日における諸条件から見まして最善と考えておるわけであります。
  101. 森八三一

    ○森八三一君 それでは、小さなことでありまするが、二、三の例を申し上げる。今度の予算の中には、昨年の春から秋にかけまして、九州方面に主として豪雨がございまして、幾多の災害を発生した。その発生した災害のうちに、地すべりの災害がございました。これはもう大へんなことなんで、今後そういうことが起らないように始末をするということから、建設、農林等が話し合いをされまして、地すべり対策の法律が出ましたか、出るのか、そういう方向に向っておる。それに対応して大蔵省では何がしかの予算というものを新規に計上されておる。私はあの現地を見まして、地すべりというものがどうして発生するのか、それを人為的に防ぐのには、山の横っ腹に穴をあけて水を抜くということでは、本格的な私は地すべり防止対策にならない、これは三年か五年地すべりの期間を延長することは可能でありましょう、けれども、根本的には対策にならぬ、そうすると、なけなしの金を使ってせっかくやったが、それは何年か後にはむだづかいなってしまう、こういうことに私はなると思うのです。もっと根本的にどうしたらいいかということを研究しなければ、今私が申し上げ、大蔵大臣もそういう感覚でやっておるという趣旨にはちっとも沿わないことになるじゃありませんか。そういうような例はたくさんある。私は今までこの予算委員会でしばしば論議を繰り返して参りましたが、研究する、研究するとおっしゃっているが、ちっともその実があがっておらぬ。一例を申し上げますと、農薬の問題であります。今日国内では、おそらく一府県平均二億程度で、百億程度使っておると思うのです。がしかし、これが大蔵省の感覚でいくというと、受益者が当然負担すべきだという感覚に立っていらっしゃいますから、投げやりになっておる。農民は経営が困難であるから、苦しいから、病気が発生し、虫が発生しなければ農薬を買って防除にいそしむということになりかねる。これをもし全額国庫負担でやるといたしますれば、半分の五十億円程度で私は問題が解決すると思う。しかも、それによってもし一部増産すると、病気にかかってから手当をするということになりますと、非常に金がかかる。ちょうど私のきょうのかぜみたいに、三十八度も熱が出ると医務室に行かなければなりませんけれども、きのう、おとといに気がついておれば、売薬で十分済んでしまっておる。それと同じように、病気が重くなってからやったのでは非常に金がかかる。そういうことだから、百億も農薬代を使っておると私は推定しておるのです。早期防除をやっておれば、そういう結果が生まれる。そういう方面に積極的に予算を組み込むということが、私は予算を編成する心がまえが今申したようなことであれば、当然の措置ではないかと思います。そういう点に頭をお使いになるお気持がございませんか。もっと申し上げますれば、大蔵省的な感覚は、災害が起きたら、災害の跡始末をすることには勇敢です。しぶしぶかもしれませんが、おやりになる。しかし、その災害を未然に防ぐということには、ちっとも頭をお使いにならない。災害が起きて、跡始末をすることは、国の責任だと思う。災害がっ起きて、災害の跡始末をするようなことは、つまらぬことなのです。今年の災害でも、佐賀県の伊万里の災害の査定をお聞きになっていらっしゃると思いますが、わずかに十二町歩の山すべりに対して、一億二千万円の災害復旧費を出しておるのです、一反歩一千万円。未然に防止する措置をしておったら、これは半分か三分の一くらいで済んでおったはずです。そういう感覚がずれておる。もっと積極的にそういうことについて、国利民福を増すために予算を使うべきである、災害を未然に防止する方向に編成すべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  102. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大体において私も御意見に賛成をいたします。特に公共事業なんかにおきまして、予防ということを中心に考えるべきであるということも、私もこれも賛成である。かつまた、予防というためには、重点的な思い切った施策を、すべての、特に災害が予想されるような個所に、非常に強固な予防措置を講ずるのがいいと私は思うのであります。ただ不幸にしまして、これは大蔵大臣もはなはだ悪いのでありまするが、どうもこの公共事業につきまして、そういう重点的な施策をすることが、政治情勢からしてどうも立法がむずかしい。どうも総花になるような状態、これは一つお互いにみんなで考えまして、公共事業はごく重点的に、一番災害の多い所へ持っていって、自分の方へ来なくてもやむを得ないというふうに、そうしないと、総花になるというと、どうしても各省が不完全で、薄い防壁を作っておる、大きな風雨があればすぐこわれる、そうすると、大蔵省としてはどうしても復旧に追われる、一そう破壊していくということは、とうてい避け得ないことでありますから、復旧しなくてはならない、こういうことになりますから、それで私も今後仰せのような考え方で進みたいと、かように考えております。
  103. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、どうも話がわからなくなるのです。今提出して審議を求めておるものは、私が基本的な態度としてこうでなければならないと思いますが、いかがですかと言ったら、その通りだと、その通りの精神で組んだものであって、これにはどこも問題点はございません、最善のものであるとおっしゃっているが、そういうように具体的に質問をいたしますると、いろいろの政治情勢その他によってそうはいかなかったのだとおっしゃるというと、今出ておる予算は、大蔵大臣の感覚からいけば満足なものではないはずだと、こういうことになると思うのですが、いかがですか。
  104. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は先ほど答弁した場合に、今日のいろいろな、もろもろの条件のもとにおきましては最善をいたしたと、もろもろの条件のうちに今日のいろいろな政情も含まれておる。これは理屈ばかりでは政治はいけませんから、政治は実際であり、また一つの勢力関係でありますから、そういうものをもろもろ考えた上で最善、従って、これはどうしても妥協的なものにならざるを得ない。
  105. 森八三一

    ○森八三一君 この問題は、これ以上いたしましても、私は満足な御答弁はいただけませんと思いますから、打ち切りまするが、政治情勢がそうだからというて、国民の血と汗の結晶の血税が不満足な方向に使われることに同意をせざるを得ないということは、私にはどうしてもわかりません。そういう場合には、これは敢然とした態度で処すべきである。それが今の日本にはどうしてもなければならぬ政治家の態度であると私は思うのでありまして、いたずらにその職に恋々としておるというようなことでは、この国難と言ってはいけませんかもしれませんが、非常に困難に逢着しておる日本経済再建をやることはできぬと思います。
  106. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は、私だけの考えですが、決して、たとえば大蔵大臣というものに恋々とはいたしておりません。これは自分独自の主張が通らなくて進退を決すべきときには決していいです。何もこれは恋々とする必要はありません。ただしかし、それは程度の問題でありまして、それだからといって、単に自分の意見が通らぬからといって進退を決するというのは、おのれはいさぎよしとするかもしれませんが、それは必ずしも政治にはならない。それはやはり程度考えていかなければならぬ。世の中というものはそういうものだと思う。
  107. 森八三一

    ○森八三一君 その職に恋々とするような態度というものはとらないと、こうおっしゃるのです。私は、そのお気持はわかります。わかりまするが、非常に困難をして汗水流した金を出しておる税金のことを考えれば、もう少しそういうことについて、真摯な態度があってしかるべきである。妥協というようなことは、それは厳に慎しんでいただきたいということの希望を申し上げておきます。  その次に申し上げたいことは、今まで再三再四減税の措置がとられました。そういうことが政策として発表されまするというと、国民は拍手かっさいで非常に喜んだ。喜んだと思うと、大ていそのときには、裏の方から鉄道運賃の値上げがくっついてくるとか、消費者米価の値上げかくっついてくる。現に昨年も、一千億減税がいたされた。これはけっこうなことであると喜んでおるというと、三百八十一億円の鉄道運賃の値上げという施策がちゃんとくっついてくる。秋には消費者米価の値上げというものがくっついてくる。そこで、これはおかしいじゃないかと、こういう議論が国会の各方面で行われました。そうすると、それは食管会計の問題であるとか、鉄道の建設をやって国民に愉快な旅行をしてもらうためには、どうしてもそうせざるを得ないと、しかし、そういうことによって国民負担の増大する部分は今度の減税でちゃんと穴埋めをしてやるのだから、これ以上国民負担をかけることを考えておるのではないから、御了承いただきたいというような御説明があったのであります。そのことは、私どもはトータルではわかりますが、減税の恩典に浴し得る階層というものは国民の三〇%前後であることは、これは大蔵大臣も御承知通りであります。あとの七〇%の階層は、直接所得税には関係がございませんから、納めておらぬのですから、減税してやると言ったって、恩典に浴さない。そういう連中は鉄道運賃は旧運賃で乗るかというと、そうはいかない、やはり新運賃で乗らなければならぬ。米も新米価で買わなければならぬ。そういたしますというと、大なり小なり減税の恩典に浴さない階層というものは、負担というものが政府の施策によって増される。これを一つ解決することが近代政治の考えなければならぬことではございますまいかということが各方面で論議をされたのです。そこで、当時は一萬田さんは大蔵大臣でないから御答弁をなすっておらぬが、当時の大蔵大臣、それから一萬田さんも前には大蔵大臣であったこともございますが、その当時御質問申し上げて、非常に大切なことなんだと、それだから、そのことについては十分一つ研究いたしたいと、去年も私の質問に対して池田大蔵大臣は、よくわかった、わかったから一つ研究をしようと、こうおっしゃっておるのです。一萬田さんもずっと前にそういうことをおっしゃっておる。研究の結果はどうなったのでしょう。私は所得税の減税という方途をもってしてはこの問題の解決はできないと思います。それは、税金を納めておらぬ者に、減税をするときにはどうすると言ったって、所得税の減税という方途をもってしてはこの恵まれざる階級に恩典を与えることは不可能だと、他の方法によってやる以外に手はないと思うのです。私はその当時具体的な方策を提案いたしておりますが、政府は研究いたしましょうということでしたから、その研究に期待を持ち、信頼をいたしまして今日に及んでおるのでございますが、今年は法人税を中心として二百六十何億かの減税をおやりになるのですから、このことをお取り上げになったときには、今までの公約に基いて、恵まれざる七〇%の、減税の恩典には昨年浴し得なかった、鉄道運賃の値上げはかぶったと、こういう連中に報いる道として何ものかをお考えになったはずであると思いますが、そのお考えになったいきさつ、結論というものをお聞かせ願いたい。
  108. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 御質問の点は、非常に重大であり、かつ、しかし非常に複雑なこれは私は問題を含んでおると思うのでございまするが、もし一方で減税はすると、それに国鉄も上るじゃないか、消費者米価も上ったじゃないかと、これではかりに税金が下っている者はいいが、そうでない者は一そう生活が苦しくなるじゃないかというお話、これも私、ごもっともと思うのであります。がしかしながら、これはやはり国の状況がそういう状態にあるのでありまして、まあ、そういう場合におきましては、一面において社会政策をできるだけ拡充していく、常に問題になっておる社会保障というようなものを拡充していくということ以外には、私はなかなかこれに対する対策はないと思います。ただ私どもが国鉄の運賃を上げ、消費者米価が上った場合に、それが一体ほんとうにどういうふうに消費者の生活指数等に影響するだろうか、消費者物価がどういうふうな傾向をとるだろうか、あるいはまた勤労者あたりの世帯の消費支出というものが増加するであろうかどうかということをたんねんに研究いたしておるのでありますが、ただ今回の場合におきましては、こういうふうな指数に現われたところでは、それほど影響は現われておりません。大体横ばいの状況を呈しておると思うのでありますが、むろんそれだからというてそれでいいというわけじゃありませんが、まあ大体そういうふうな状況であります。ですから、今回の法人税の減税を考える場合、これは昨年の一千億の所得税等の減税をした場合に、余裕があれば法人税二%は一つ減税した方がいいという専門家の、特に調査会の答申でもありますので、これを今回実行することにいたした、その場合にやはり本年における所得税の負担ということも考慮に入れまして、これは昨年の減税の平年度化において、今年はなお二百億程度の減税はある、こういうことも考え、さらにしかし税を納めぬ人もあるという意味合いにおきまして、まあ全体の減税が小さいのですから、そう大きなこともできませんが、たとえば自転車税とか荷車税というようなものの減免税をはかる、かような次第でありまして、私といたしましてはできる範囲にわたりまして、考慮を加えたつもりでおる次第でございます。
  109. 森八三一

    ○森八三一君 あれやこれやおっしゃいますが、その恵まれざる階級に対して、何がしかの措置をしたいという気持は大蔵大臣も御同感であるという表示なんです。そこで、今回行われまする法人税の減税を私、いかぬというのじゃありません、できれば二%でなくて、一割も二割も減税をしてほしいと私は思いますが、それは全体の経理の都合から現状の問題としてできぬことは了解いたします。が、一律に上から下まで全部三%というところに私は問題があると思うのです。そういう所得税の減税の恩典をこうむることのできなかった階層のあることはお認めになった、そういう連中に何かしてあげたいという気持はおありになる、社会保障とおっしゃいますが、社会保障にはひっかからぬ連中が相当なんですよ、大部分なんです。だからそれに報いるの道として、小法人等に手厚き態度を示すこと、要すればあるいはそういう階層が主として構成員となっておる中小企業等協同組合、農業協同組合、漁業協同組合など、そういうような特殊法人の年度末における計算上生まれたる剰余金に対して、税金をかけるということをやめる、やめたところで、せいぜい二十億か三十億なんです。それで私の言う目的を達するわけではございませんが、せめてあたたかい親心ありとすれば、それくらいのことは踏み切っていただいて何も問題はないのじゃないか、それがどこかに過当競争を誘発するとかいういろいろな問題が起れば考えなければなりませんよ。なりませんが、そういう特殊法人に対して減税や免税をいたしましても、税額としては三十億ぐらいなんだ、そうしてそういうものに集まっておる大部分の労働金庫にしても何にしても、そういう特殊法人に集まっておる組合員の大部分は、今私のいう所得税の減税によっては恩典に浴せず、鉄道運賃、米価の値上げのかぶっておるという連中なんですから、そういう連中の組織している協同組合に対する法人税というものを、全部免除するということがなぜ考えられないのか、ただ口先だけで幾ら考え考えるとおっしゃっても、具体的にそういうことを提案いたしましても取り上げられないというところに私は問題があると思うのです。恵まれざる階級に何らかの処置をしたいということは、池田大蔵大臣もかつておっしゃっておるのです。その問題は、世界の政治家が税の問題を取り扱うときに一番悩みとしておる問題でありまして名案がございません。名案があればそれを実行するにやぶさかでございません、こういう答弁までされておる、今の大蔵大臣もそうであろうと思う。そこで私は具体的なそういう問題を、この法人税の改正に関連して申し上げておるのであります。一律にやるということではこれは理解しかねる、さらにまた特殊法人に対する免税をすべきであるということを私は主張する、これに対するお考えを承わりたい、どこに欠陥があるのか、なぜいかぬのか。
  110. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 特殊法人について免税したらどうかという御意見でありますが、特殊法人でもいろいろやはり収益をあげている関係もありますし、他との均衡考えなくてはなりません。それで、今ここで特殊法人について免税するということは申し上げかねます。ただ、今のお説等を拝聴していると、考えておりますことはもう少し広い見地から、たとえばヨーロッパでは今度共同市場ができまして、これは税制が非常に変化するだろうというふうに思っております。それからアメリカ等においてもこれに対応して税制に変化があるだろう、国際的にまあ何だか大きな税というものについても動く雰囲気が今あるように思うのであります。それで何も大きなことを言うわけじゃありませんが、やはり日本は貿易という関係が強いから、そういう見地から考えまして、私は近いうちに間接税、直接税について、また税一般について、そういう大勢の推移も考えつつ日本の税制についてこの辺でまあ一ぺん検討を加えたらどうかという今決意を固めつつありますので、そういう際に今お話のようなもろもろの御意見も十分参酌いたしまして善処いたしたいと考えます。
  111. 森八三一

    ○森八三一君 大ていそういう答弁だろうと思っておりましたが、今後税一般について研究するように心がけているので、その中に入れて考えてみよう、その際に特に私は申し上げておきたいのは、一体特殊法人の年度末における剰余金というものを一般の営利を目的としている会社等の経済行為に基く利益と同じであるという感覚にお立ちになっているところに私は問題があると思う。それであればこそ資本に対する配当は現に法律で禁止し、制限しているということもありますが、そういうことは百も御承知のことだと思いますが、そういうことを考えますると、特殊法人の年度末における行為そのものは確かに経済的な働きをするのでしよう、けれどもその成果として得られた結論の余剰が、つまり利益という感覚に立つことに私は異議があります。それであればこそ、戦前においては、こういうものに対してはそれぞれ免税の措置がとられてきた、ただ戦争中に非常に金がかかる、それだから本来のものとしては、本質としてはそういうものに課税すべきでないが、戦争遂行のためにしばらくがまんをしてくれ、戦争が済めばまたもとに戻しましょうというのが、課税に至った当時の速記録をお読みになればはっきりしている。しかし、戦後直ちにこれをやめるということはいろいろ混乱もございますからわれわれも主張しなかった。しかし、今日になってくると、戦後という一早業はもうなくなるときでございますから、この辺で一ぺんかつての約束を守られ、三悪追放、三悪追放と言われますが、うそを言わないことがもとだ、約束したことを履行するということか一番もとだと私は思います。そういう意味において明治憲法以来の国会といえども、そういうことが明らかになっているのですから、それをやるべきだ、それをやることにして私は何ら支障がないと思います。そのために予算を組むことができなくなるほどの大きな金額じゃありません。せいぜい三十億前後と思います。それによって組合間に過当競争が起きたりいろいろな問題が起きるということは断じてないと私は確信を持っております。でありますから、実現する方向に向って御努力願いたいと思います。いつまでも何べん聞いてもまだ研究中研究中では、これは残念なんです。これでは怠慢と言わざるを得ないと思いますので、一つこれは魂をこめてやっていただきたいということを特に申し上げておきます。  それから、いま一つ聞きたいことは、三十三年度の予算を見ますと、私はかつて農林委員会説明を聞いたことがありますが、これは私の故郷にも関連することであります。しかも日本の工事としては非常に画期的なものであり、これは成功せしめなければならないということで、非常に論議がございました愛知用水の問題であります。この工事費はいろいろ紆余曲折はございましたが、三百三十一億ということに決定になりました。これは大蔵大臣も御承知のはずです。それから総額に基きまして年度別の工事を計画し、そうして政府は幾ばくを負担するということも年度別に大体の目安をきめて、それであれば世界銀行から金を借りる、そうしてその金を返すのにも支障がないという見通しが立ちましたので世銀は融資をいたしたと思うのであります。ところが、金を借りてしまうというと、今度は説明したときのことはからりと忘れてしまって、まるっきり政府が約束した負担というものをしていらっしやらない。これじゃおかしいじゃありませんか。国内の問題でもいけませんか、まして対外的に、世銀へ行って、大蔵省も外務省も農林省も公団も行って、こうなります、日本政府はこう了解しております、ということを事こまかに話をして、それならばこの貸した金の償還については心配がないと思われるから貸してあげましょう、こういって、借りてきて、その翌年度には説明したことをまるっきり変えてしまうというのであっては国際的に考えてもおかしいと思う。そのことを今ここで追及してもいかがかと思いますが、そういうことによっていろいろな問題が巻き起る。農民の角担が増すという心配もございますが、いかなることがあってもこの工事というものは計画年次に完了せしめるという御確信がございまするのかどうか。同時に、それから生ずる農民の負担は、三百三十一億計画当時の負担を絶対に増すことはないという措置をすると断言ができまするか。その二点を財政の見地からお答え願いたい。
  112. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この愛知用水の工事がおくれましたこと、これは何も私は責任問題をかれこれ言うのじゃありません。これはお互いに考えなければなりませんが、主としてこれはこのダムの地点の補償問題がなかなか解決しなくて長時日を要したということに一番原因があると思います。がしかし、そういうことはさておきまして、今の御質問に対して要点的にお答えしますが、私は完了の期間、完了の期日並びに国及び地元負担に何ら変更を加えずに予定通りやる。それは、今後の予算並びに財政投融資においてあんばいをしていく。かように考えます。
  113. 森八三一

    ○森八三一君 ただいまの御言明は速記にも明確に残りました。計画の予定年次に完了するということと、それから地元負担は増高せしめない。これは一つ大臣おかわりになりましても忘れぬように引き続いてやっていただきたいと思います。  その次に、先刻小山委員から御質問がありましたが、糸価安定の問題について私はお伺いしたいのです。繭糸価格安定法というものがあって、何とかやってきた。今後これをさらに拡充いたしてやっていくと、こういうのですが、そういう法律が現存し、政府の買い入れ余裕というものが残っておったにかかわらず、小山委員お話通り、十七万円とか、何万円とかいうような価格を出してしまったのです。農林大臣、これは一体どこに原因があるのか。法律はあるのですよ。予算も残っておるのですよ。それにもかかわらず、糸価というものが下っていって、非常な問題を今惹起している。こういう事実は何から発生したとお考えになっているのか。その点お伺いしたい。農林大臣新しくて何でしたら、専門の蚕糸局長からお答えいただきたい。
  114. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 今月の初めに、横浜、神戸の両取引所におきまして六月切り以降の先物の相場が政府の支持価格をある程度割ったのでございます。これは昨年の暮以来、一般繊維の不況の影響をわれわれ生糸の面におきましても受けまして、政府に対する売り込みが非常に増加をいたしました。十二月、一月、二月と非常な勢いでふえて参ったわけであります。それで先月の終りごろに、こういう情勢で参ると政府の糸価安定資金も将来相当減って参るのではなかろうかというような予想が出まして、六月切り以降において支持価格を割ったというような相場が出たわけであります。
  115. 森八三一

    ○森八三一君 今私の聞いたのは、そういうことになったのはどこに原因があったかと考えておるかと、こういうのですよ。なりましたというのじゃない、そういうことになったのは一体どういうところからそうなったのだと、これを聞いている。
  116. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 一口に申し上げますれば、政府の糸価安定の買い入れ資金の買い入れワクの余裕というものを市場が市場なりに判断をいたしたということであろうと考えております。
  117. 森八三一

    ○森八三一君 農林大臣に——これは副総理の立場でよく聞いておいてもらいたいのですが、確かにそれは予算額には現額がありますから残金だけを見るとそういうことも想像できると思うのです。しかも大蔵大臣のおっしゃり、農林大臣のおっしゃったように、底をついてしまえばもう追加してもどうしてもやるのだという熱情を持っていらっしゃる。そのことに関しては私は解明されると思うのです。一番問題は、普通糸については十九万円という底値を政府は審議会にはかってきめたのです。それから玉糸については十六万五千円という価格をきめておったのです。ところが、相場が下ってきたからといって安定帯の十六万五千円を年末に十五万円に変えたんですよ。これが問題なんです。一体日本政府は安定する気持があるのか。実勢にくっついて、いつでも簡単に安定価格を変えていくということなのか。一体どうなのかというところに疑問が生じたことが私は最大のガンだと思う。予算の問題もそれは関連するでしょう。が、そんな問題じゃない。日本政府に糸価安定法、繭糸価格安定法というものを守り抜いていく決意があるかどうかということについて疑いを持たれた。これが問題なんですよ。その当時は繭は十九万余だったんです。ところが、玉糸については下げてやれば十九万円も変える。十八万円、十七万円の安定帯価格を作ってくれるだろう。うっかりついていったら損をしてしまう、こういう心配をされたところに問題がある。もっとはらを据えて、安定をやるなら安定をやるということをしっかりやってもらわなければ、実勢にくっつくなら安定法をやめた方がいいと思うのです。安定法をやめる。  もう一つそれに関連してお伺いしたいことは、一般糸について政府直接買い入れの道が開かれておる。玉糸については九十%近くの対米輸出をされておるのに、これは直接買いの制度がございません。これは非常に片手落ちと思いますが、石井大臣、どういうふうにお考えになりますか。今後は同等の待遇をするとお考えになりますか。
  118. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 生糸がそう下りました原因は、いろいろお話のような筋だと思います。これはやはり政府の金がだんだんなくなっていく。それがなくなったらまた下げられるのじゃないかというような非難があったのに、先ごろ農林大臣がてこ入れをすると申しますか、必ず十九万円というものを維持するということに力を入れることを宣言いたしまして、そのほかの事情もありましたが、だんだん値が戻ってきたというような情勢を考えましても、これは政府の決意のいかんということが非常に大きな問題だと私ども思います。それで今度は、先ほど大蔵大臣も申しましたように、はっきりした態度でこれを把握していくということにいたしましたので、これによって糸価はだんだんと安定をする方向に向っていく。そこに乗じてこの商品の販売を盛んにならしめるという方面に努力するという考えでございます。  玉糸の問題でございますが、これは先ごろ玉糸の特別買い入れのワクを昨年十二月末に千五百俵増加する対策を講じたのでございましたが、現在国会に出してありまする繭糸価格安定法の一部の改正が成立いたしますと、日本輸出生糸保管株式会社を通じての特別の買い入れの対象に玉糸を加えることなっておるわけでございます。そうして業界の生産調節と相待って価格の支持に大いに効果があるだろうと思うのでありますが、それが出るまでの間をどうするかという問題があると思います。これにつきましては応急の措置を講じて、特別の買い入れ制度が発足するまでの間には業者に迷惑をかけないようなことをいたしたいと思って、目下準備中でございます。
  119. 森八三一

    ○森八三一君 私の聞いておるのは、会社の問題じゃないのです。繭糸価格安定法に関連して、普通糸については政府が直接買う道を開いていらっしゃる。玉糸についてはその制度をお持ちにならぬと、これはおかしいじゃないか。同じ生糸ですから、一緒にやったらどうか、同じ待遇をしたらどうだということを申し上げておるのです。それができぬというのなら、どういう理由でできないのか、はっきりしてもらいたい。差別待遇はいけない、こう言っておるのです。
  120. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 政府委員から答弁いたさせます。
  121. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 玉糸につきましては、昨年以来輸出が不振になりましたようなことによりまして、価格が非常に低下をいたしておるわけでございます。この対策につきましては、先ほども大臣から申し上げましたように、昨年の暮れ以来措置を講じて参ったのでございまするが、これを、政府直接買い入れにするようにというお話が前々からございました。私どもの方でも、十分検討をいたして参ったわけでございます。この問題に関しましては、玉糸の値段の動き等も考えてみまするというと、政府に直接買い入れましたものは、現在の繭糸価格安定法の制度によりまして二十三万円になりまするまで政府で保有をいたしております制度になっておるわけでございます。玉糸の現在の相場は、いろいろ事情がありまするが、いわゆる玉糸の価格といたしましては、私どもといたしましても非常に低過ぎる位置にあるということを考えまするので、むしろ、政府直接買い入れによりまするよりも、保管会社を通して買い入れまするいわゆる一時買い戻し条件の残っておりまするような買い入れ方の方が、玉糸の実情にも合っておるように考えまして、近く新しい保管会社が発足いたしました場合、玉糸をこの制度の中に入れまして運営をして参るような用意をいたしておるわけでございます。それは、本日繭糸価格安定法の改正が参議院の農林委員会でも御採決を得ましたので、近く成立をすることと考えておるわけでございますが、成立いたしますると、すみやかに準備をいたしまして、おそくも五月の初めころには新会社を発足せしめるようにいたしたい。そうなりますと、玉糸につきましても、そちらの方で十分手当をしていけるつもりでございますが、その間、現在の玉糸の状況を見ますると、一日も早く手当を要する状況になっておりまするので、その間、応急措置といたしまして、いま一つの方法を目下政府でそれぞれの所と相談をいたしまして、検討をいたしておる段階でございます。検討いたしておるという申し上げ方では、非常に時間的に間延びをいたしまするので、一日も早く玉糸の手当を進めるようにしたいと考えております。
  122. 森八三一

    ○森八三一君 私の聞いておるのは、差別待遇をしておるのがいけない、なぜやっておるのだとこう聞いておるのだ。今ちっとも答えておらぬ。そういうことの方がいいと思うからやっておる。いい悪いじゃない、普通糸と玉糸と差別待遇をしておるのはどういうことか、それはおかしい。そんなことをやっておるから、玉糸については十六万五千円という価格をぱっと年度の途中で十五万円に変えてみたり、変なことをやるのです。同等の待遇をすべし、こう言っておるのです。それはどうしてできないか、はっきりしてもらいたい。
  123. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 重ねてお答えを申し上げますが、私ども考え方といたしましては、玉糸は政府直接買い入れをいたしまするよりも、特別買い入れ制度によって価格支持をいたしますことの方が、玉糸のためにも実情に合ったいき方ではないかと考えておるわけでございます。
  124. 森八三一

    ○森八三一君 さっぱりわからぬです。そういう実情にあったということは、あなたが判断するので、普通糸と玉糸を区別する必要はないじゃないか。区別しておるところのその理由を聞きたい、こう言っておるのです。
  125. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 繭糸価格安定制度ができました当時の経過を考えてみましても、これは先ほど森委員からお話がありましたように、糸並びに繭の価格を支持する制度でございます。従いまして、本糸につきましては十九万円を支持するということは、いわゆる上繭の価格支持と通じておるわけでございますが、玉糸につきましては、玉糸の原料そのものが、主として玉繭及び二等繭等を主原料にいたしまするような関係もありまして、繭の価格支持の面におきまして、本糸と玉糸とは、いささか様子が変っておるわけであります。そのような経過もありまして、玉糸は政府直接買い入れの対象に初めからいたしておらないわけであります。
  126. 森八三一

    ○森八三一君 どうもなかなか質問にちっとも答えておらぬのです。その原料が違うということはわかる。わかるが、その原料が違うならば違うなりに、生産費調査というものはできるはずなんで、同じ方法でできるはずなんです。それができぬというところに問題があるということなんです。なぜそういう差別待遇をおやりになるのか、はっきりしてもらいたい。国内用じゃありません。ほとんど大部分輸出向けなんでありますから、輸出振興を非常に強力に推進されようとする現政府の態度としては、私は理解できない。なぜ差別待遇をするか。こうすれば、その方が利益、不利益を言っているのじゃないのです。なぜ同等の待遇をなさらぬのか、そこにどういう障害があるのかということを聞いておるのです。もし原料の算定がむずかしいというのならば、怠慢ですよ。そんなことは幾らでもできる。
  127. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 玉糸の価格支持は、ただいまもお話がありましたように、主として輸出振興の見地から、生糸の価格を安定するという建前からやっておるわけでございます。農家に対する繭価格支持という面は、本糸の方の価格支持を通じまして、その目的を達成するようにいたしておるわけであります。従いまして、価格支持の方法に、ある程度の違いが出て参りますことは、取引の実情等から考えましても、私は当然であると考えておるわけでございまして、王系につきましては、重ねて申し上げますように、保管会社を通じまする価格支持の方が、業界の実態から考えましても、また、値段の動きの実情等から考えましても適当ではないかと考えております。
  128. 森八三一

    ○森八三一君 本糸についてはそういうこともやるし、直接買い入れもやる。玉糸については半分だけやってやるが、直接買い入れの方はやらない。こういう差別待遇はいけない。こう言っておる。その理由を聞いておるのです。ちっとも今の御答弁では、私の質問に答えていません。私は案じまするのに、これは一萬田さんの方で、それをやるというと、どうも予算的にしよい込みになる危険が多分にあるから、まあやめろと、こういうことで押えていらっしゃるというのが原因のように思うのですが、大蔵大臣そうじゃございませんか。
  129. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。法律でやれることを、別に大蔵省で押えることもありません。
  130. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、差別待遇をする理由なしということになります。大蔵省は繭糸価格安定法によって、限られた予算の中で運営するということに異存なしと、こう了解してよろしいかどうか、重ねてお伺いします。
  131. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) おそらくこれは玉糸の買い入れのことを言っておると——これはまあ数量もそう多くないですから、これを買い入れるということにしたらば、すぐ安定するだろうと私は思っております。
  132. 森八三一

    ○森八三一君 それでは、ただいまの問題は、大蔵大臣の方ははっきりしましたので、農林省の方で明確に一つ答えを出していただくように希望いたします。  その次に、農林大臣にお伺いするのですが、畑作の振興とか、食糧の自給態勢を確立するということに関連して、畜産問題が非常に取り上げられておる。そこで、牛乳がだんだんこう増産された。ところが反面に、値段が下っていってしまって、経済的にやりきれぬということなんです。問題は、私は、絶対消費量を増加する一点を解決しなければいかぬと思うのです。それに対して具体的な構想いかん、お答えをいただきたい。
  133. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) だんだんと牛乳の生産がふえ、乳製品がふえて参ります。これは、国民の体位を向上させるに十分利用させることが望ましいことでございます。ところが、冬場になりますと値段が下ってくる、生産も下るし値段も下るというような、いろいろな問題があるのでありますが、われわれといたしまして、今取り上げた問題は、学校給食の問題でございます。本年度は十万石、三十三年度は二十万石を、学校給食という面に使っていくということでありますが、これでもまだ需要の方が少いと思います。これは学校給食にヒントを得まして、工場その他の集団的な所に、牛乳の需要の道を開いていくように、政府の方は推進していくということで解決していきたい、こういうふうに思っております。
  134. 森八三一

    ○森八三一君 学童給食けっこう、それから集団飲用の奨励けっこうです。しかし、それでは数量的になかなか伸びないと私は思うのです。そこで、先日も一松委員質問中に、私は知らなかったのですが、全国の観光の旅客数が三億八千万人あるということをお述べになったのです。そこで、この旅館に泊る連中に、朝一合ずつつけるというふうに考えると、ただちに四十万石これは消費ができるのです。千円の宿泊料のうちに十円ということは、業者に聞きましても、それは問題でありませんと、こう言っているので、そういうことを一つ考えになったらどうか。そういたしますと、これは奨励ですから強制はできませんから、そういうことに協力した旅館には、大蔵大臣は事業税とかそういうものでかげんをしてやる、こういうことをすれば、予算で八億、十二億という金を出さぬでも、問題はきわめて簡単に解決すると思うのです。そういう話をするというと、旅館業者の一部には、朝牛乳を一合飲ませると、朝酒を飲む連中がなくなって困る、こういうことを言うが、朝酒を飲むことを奨励するのはおかしいので、外国の米や麦を買わないで済み、牛乳で自活ができるということなら、これはまさに一石二鳥だと思いますから、お考えになったらどうですか。(「委員長もよく聞いていらっしゃい」と呼ぶ者あり)
  135. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私、御質問の趣旨を十分聞きませんでしたが、牛乳を安く飲ませるということですか。
  136. 森八三一

    ○森八三一君 今、全国の観光客が、私は知りませんが、一松委員の話では、三億八千万人あるそうです。すると、それに朝一合ずつ飲ませれば、四十万石になるのです。そういうことに旅館業者が協力するとなれば、牛乳を  一合飲めば米を食う量は減るのですから、それで、なけなしの外貨を使って外国から米や麦を輸入せんでもいいのではないか。法律でそういうことを輪制することはできませんから、協力を求める、その協力を求めるには幾らか角をつけなければならぬ、色をつけるには旅館の税金の方でかげんをしてやれば、業者は喜んで協力するだろうと言うのです。
  137. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今の御説明のように、牛乳を飲ませればお米を食べないというふうにうまくいけばいいのですけれども、両方やられては大へんです。(笑声)そういうことはよく考えまして……。
  138. 森八三一

    ○森八三一君 両方やられては大へんだとおっしゃいますが、あなたも牛乳をお上りになっていると思うのですが、牛乳を飲めば、これはどうしても他の食物の量が減ることは間違いない、私自身の経験もそうです。ですから、いいかげんに、両方やられては困るという笑い話をされては困るのです。もっと真剣に一つ考えてもらいたい。
  139. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お考えの次第としては私は異論ないのです。だから、先ほど申しましたように、うまくそういうふうにいけばいいと思いますが、その点については、なお慎重に検討を加えなくてはなるまい、かように申したのであります。
  140. 森八三一

    ○森八三一君 これは農林大臣とも御連絡なさって、真剣に一つ考えてもらいたい。政府が一枚看板で畑作振興をお唱えになっても、そういうことから牛乳が下ってしまって、百姓はもう乳牛は飼わない、こういう状況が生まれたのでは大へんです。それをやめさせるには、どこにも影響なしにやる方法は、私は四億の旅行者に飲ませる、これが一番いいと思うのです。簡単なんです。これは是非お考えをいただきたい。それに関連して、最近における食肉の価格を見ておりますと、これも肉畜の問題は、政府が力を入れているが、小売価格はちっとも下らぬ。そうして生産者価格はべらぼうに下っている。これは一体どうしたことなんですか。生産者は豚や牛を飼うことをやめた。現に放棄し始まっている、奨励をしているか放棄し始まっている。そんなに安くなっても、今度われわれが食うときには高くなっている。これは統計にはっきり出ている、これはどうしたことですか。それをだんだん考えていきますと、私は、海外からの輸入が無計画に行われておるというところにあると思うのであります。でございますから、国内生産を奨励するために、この際、海外からの肉畜、食肉の輸入は当分禁止すべきであると考えまするか、いかがでございましょう。
  141. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 事情はおっしゃる通りでございます。外国からの食肉輸入が、無計画に、野放図に今入っているような状況であります。そうして一方には、たくさん入ってきながら、小売りの値段は下らないという非常におかしな情勢にあることもその通りでございます。これは流通機構の悪いということも、小売価格の安くならぬ原因でもあるわけでございますけれども、一番は、外国からくる食肉を少くも調整して、そうして輸入量を制限をしていくということにしなければならないだろうと思っております。これは全然なくなりますと、国内の肉の調整がうまくいかないという点もあるのでございますが、この輸入の量につきまして、十分調整したい、また流通の面においてももう少しうまくやっていきたいというようなことで、これは通産省と、今しきりに話をいたしております。そういう心持ちでやっていきたいと思います。
  142. 森八三一

    ○森八三一君 畜産の振興という本質にそれないように十分打ち合せを願いまして、完全な施策の推進を希望いたしまして、この問題はもっと議論したいのですが、この程度にいたします。  最後に、時間がございませんから通産大臣にお伺いいたしますが、昭和三十年五月三十日、本院の全員一致の決議をもって、競輪とかボート・レースなんかというものは、現下の社会情勢にかんがみ、すみやかに禁止もしくは制限せらるべきである、こういう決議をいたしておりますが、通産大臣は、所管のうちの競輪について、この決議をどう受け取っておられますか、お伺いいたします。
  143. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 決議のありましたことも承知いたしております。そうして、それは改廃を含めて審議し、検討すべし、こういうことであったと思います。それにつきましていろいろ検討をし、また運営審議会等にもいろいろ諮問をして検討しました結果は、現状としては存置して、そうして明朗、健全化をはかるというような結果に相なりまして、昨年御承知のように自転車競技法の改正をいたしまして、昨年十月一日から実施をしておる、こういうようなことであります。
  144. 森八三一

    ○森八三一君 「すみやかに禁止もしくは制限せらるべきであり、」ということと、健全化して育成するということとは違うのですよ。受け取り方が違うじやありませんか。禁止もしくは制限をして、将来禁止へ持っていけ、これが院の決議なんです。あなたの属しておられる自民党の諸君も賛成しておられる。それを御実行にならぬということは、私は院議を無視しておるということになると思うのであります。しかも、先日文部大臣がいらっしゃいまして、文部大臣は、不用意のうちに、競輪はスポーツであるとおっしゃった。それで私が、それはおかしいじゃないか、文部行政をつかさどる大将が、競輪をスポーツなんと言うのはおかしいと言ったところが、そういうことを言っておる人もありますが、私はばくちと思います。こうおっしゃった。はっきりしたのです。ばくちということになると、国法で禁じている、それほどのものを今までこういう決議をしているのに……。私は一ぺんにやめろとは申しません。地方自治団体も困りますから、一ぺんにやめろとは申しませんけれども、これを将来続けていこうという方向に向っておられる態度が気に入らない。廃止するという方向に向って、漸次整理していく態度でなければならぬと思います。そういうふうにお進めになる心がまえがありますかどうか、院議を無視する態度かどうか、はっきりしてもらいたい。
  145. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私としましては、その決議がありました後におきまして、昨年この改正がなされたわけであります。その改正の要旨は、御承知通りに、健全化をはかっていく、これは、私は今後の問題として、別にあくまで永久に存置するという考えでも何でもありません。しかし、一応その院議の検討の結果、あの改正がなされたものである、かように考えておるわけであります。
  146. 森八三一

    ○森八三一君 それはおかしいと思うのですよ。院議は、そういうような終局の目的を達成する過程においては、ばくちめいた行動にしないで、まあやむを得ず健全的な方向でやりなさいと、こういっておるのです。健全化すれば、持続性を持たせるという意味じゃ私はないと思います。その点の受け取り方が非常に違っておるのです。こんなことを一体健全化してやっていいと理解される根拠はどこにあるのですか。これがスポーツということはないはずなんです。これによって相当の利益があって、学校を建てるとかいっておりますが、こんなテラ銭を取って学校が建って、そこで教育を受けるということは悲惨だと思うのです。こんなことは一つやめてもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。これは一つやめて、またこれによって生ずる利益で、何か軽工業の発展をはかるというのですが、けちですよ、そんなことは。もっと勇敢に堂々と国費を投じてそういうようなことをやるべきであって、こういうような社会悪の累積によって生ずるテラ銭で、日本の正しい貿易の振興のかてにするということは、私はどうしても了解できません。それによって道路を作り、学校を作るということは、やはり了解できません。でありますから、すみやかに私は、廃止する方向に踏み切ってもらいたいと思う。今すぐやめろと言うのじゃありません。年月がかかるでしょうが、そういう方向に持っていくべきであると思うが、所信をはっきり、イエスかノーか承わりたい。
  147. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 先ほども申し上げておりますように、私は、永久に存置しなければならぬという考えは、毛頭持っておりません。また、おっしゃるように、これを自転車振興あるいはその他の機械工業の振興費に使っておる、あるいは地方財政に寄与さしておるということが邪道であることも、よく承知いたしております。これはまあ将来としては、廃止の方向に向っていくべきものだと思っております。しかし、現段階におきましては、ただいま申し上げたような理由で、直ちに廃止するというわけには参らないと思います。
  148. 坂本昭

    坂本昭君 次の総選挙に当って、新しく競艇場を新設するというようなことを持ち出して運動しておる一部の人が現にあるようであります。これは、通産省の担当の方はすでによく知っておると思いますが、私は、今の森委員の御質問と関連して、両院の決議が明確に行われておるにもかかわらず、こういうようなことがまだ徹底していないということは、担当の通産大臣として、両院の決議を十分に実施する御意思がないのではないかということを、はなはだ疑うものであります。ただいまの森委員質問で、おおむね尽きたと思いますが、この際、国民に対して明確にこの点をしておいていただきたい。
  149. 中村三之丞

    国務大臣(中村三之丞君) モーター・ボートのことだと思いますが、これは選挙目当てで何かするということを、私は聞いておりません。しかし、これは今廃止はいたしておりませんが、十分監督をいたしまして、そういう弊害のないようにいたしたいと思いますが、今繰り返して申し上げますが、選挙目当てということは、私は聞いておりません。もしそういうことがありましたら、私どもは、これは阻止をいたします。
  150. 森八三一

    ○森八三一君 今のお話は、運輸大臣おかしいじゃありませんか。通産大臣は大体院の決議というものの方向に沿っていく、これはいかぬから考えましょう、それは、一応私は了承しましょう。あなたの話は、選挙に関係がなければ認めるというに至っては、言語道断ですよ。禁止もしくは制限さるベきものを、新設されるということは、まるっきり方向が逆ですよ、それじゃ。院の決議というものは無視されるということを非難されても、弁解の余地がないじゃありませんか。
  151. 中村三之丞

    国務大臣(中村三之丞君) 私の言葉が足らなかったのでございましょうが、ただいまは選挙目当てとおっしゃいましたから、さようなことは私は考えておらない。しかし、モーター・ボートはこれはあるので、これを一挙に廃止してしまうということは、私もなかなか困難だと思います。これは通産大臣が、競輪を一挙にやめることは、理想として、将来と言っている、私もそれは同じことであります。ただ選挙云々とおっしゃいましたから、さようなことは考えておらぬと申したのでありまして、どうぞこの点は御了承願いたいと思います。
  152. 森八三一

    ○森八三一君 この問題に関連して、当時の大蔵省は、すぐ割り切って、例の何か富くじ的なもの、何ですか券を売り出すことは、すぐやめたのです。これは大蔵省の態度は、私はいいと思っている。ところが、今のお話じゃ、選挙に関係なければ、競艇を認める場合もあるというように受け取れるのですが、新設は一切しないと、はっきり言って下さい。できませんか。もしそうでないと言うならば、院の決議を無視するということになりますよ。
  153. 中村三之丞

    国務大臣(中村三之丞君) 今私の方に、新設のどうのという申請はございません。従いまして、私は、そのときにあなたのおっしゃる、また、院議の趣旨によって考えます。今そういうことは、私の手元にございません。
  154. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 関連して。この点は、はっきり自転車競技の問題につきましても、新設をやらないという方針なんです。だったら、モーター・ボートも、これは新設は絶対にやらないという態度を、はっきりここで表示すべきだと思う。なるほど申請は出てない、出たときにどうするかという問題、これは、やはり先ほどから森君が言っているように、もう新設、拡張ということは一切やらないのだという政府方針を、あるいは運輸大臣方針を、明確にすべきだと思う。どうです。
  155. 中村三之丞

    国務大臣(中村三之丞君) 私は、今お話しのように、別にモーター競走、それを奨励するというような考えは持っておりません。しかし、まだ新設のことは、私の方に……、何も私は知りません。そのときに、私は公正な判断をいたしたいと思います。
  156. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 これは院議はきまっているのです。だから、もし国会の意見を尊重するということであれば、その方針を尊重して、この新設または拡張は一切やらない、これが政府方針ですということを、はっきり言明しなければならない。何か将来選挙目当てでなければ、そういうこともあり得ると、あるいは申請があったときには検討するということではだめなんです、この段階としては。この点をはっきりしなければいけません。それは政府方針じゃないですか。
  157. 中村三之丞

    国務大臣(中村三之丞君) 私は申請の場合は、私の独自の判断をいたします。これは私の言明の通りであります。
  158. 森八三一

    ○森八三一君 判断なさるのは、私はあなたの権利として認めます。認めますが、方針として、認めるということもあり得ると、あなたはお考えになりますか。認めないということで、検討するということでありますか、いかがでございますか。
  159. 中村三之丞

    国務大臣(中村三之丞君) 私は、この問題は、慎重にそのときに弊害のないように、私は判断いたします。決して御心配のないように、また、弊害を起すようなことは、私はいたさぬつもりであります。しかし、今私の手元に申請も何もきておりません。それは、皆さんの御趣旨によって、それを判断することは、これはここに申し上げておきます。
  160. 森八三一

    ○森八三一君 それはおかしいですよ。私は、今こういう申請があるからどうだということを、具体的に聞いているのじゃない、方針として聞いているのです。ですから、こんなことは、あったら考えるという筋合いのものじゃないのです。これは副総理、どうですか。内閣の感覚はどうですか。運輸大臣通りでいいですか。出たら考えるという、そんないいかげんなものであってはいけないのです。
  161. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) これを許可するか許可せぬかは、今日の制度においては、運輸大臣あるいは通産大臣の御意思だと思いますが、院議を尊重して、その実際の場合にあったら行動されるということを、私はかたく信じております。
  162. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 これは通産大臣にお伺いしたい。新設または拡張ということは、少くとも自転車競技法に関しましては、あるいは小型自動車、そういうことをおやりになる意思があるのかないのか。
  163. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 通産省としては方針がきまっておりまして、そういうことは認めないと、こういう方針で一貫しております。
  164. 坂本昭

    坂本昭君 どうも通産大臣の方は明確だけれども、運輸大臣は明確でないということは、一つ私触れたいことは、申請がなければというのですが、多分、たしか申請ではないけれども、運輸大臣のところに相談のあった例はあると思うのであります。そのときに運輸大臣が明確な御答弁をせぬために、非常な迷惑を受けている事例がある。私はそのことを心配するから、森委員の今の質問に関連して明確にしていただきたい。そうしなければ多くの人が迷う。その点を重ねてお尋ねしているわけです。明確な御返答をお願いします。
  165. 中村三之丞

    国務大臣(中村三之丞君) 私にはござりません。あるいは船舶局にあるかもしれませんから、それを取り調べましょうが、私はそういうことは聞いておりません。
  166. 森八三一

    ○森八三一君 まあこの問題は、これ以上私は究明いたしませんが、通産大臣はきわめて明確にされましたから、これははっきりしました。しかし、運輸大臣は明確にされておりませんから、申請すれば許可が下りる場合もあり得ると理解する国民が出てくると思います。そうして院議を尊重するという建前をとられると、せっかくずっと計画をして出したものが、全部ぺけになってしまう、そんな騒ぎをやらせる必要はないと思うのです。お出しになってもそういうものは認めませんぞと、こうおっしゃっておけば、そういうまごまごした動きというものを封殺していけると思うのであります。この点はそんな煮え切らぬ態度を一つやめて、しっかりしてもらいたいということを私は強く要請いたします。  最後に、私は運輸大臣に一点だけお伺いしてこれで引き下りまするが、昨年三百八十一億の鉄道運賃値上げをやったのです。その当時の説明では、これをやらなければ国民の期待にこたえるような建設事業はできないからやるのだと、こうおっしゃっておる。が、一体その三百八十一億の鉄道運賃値上げというものは、おっしゃった通りに使われましたか。私が聞いておるところでは、運営の不手際の穴埋めに使われてしまったので、当初御説明をなすったような方向には、多少使われたであろうけれども、使われておらぬ。そうすると、われわれは食い逃げされたような感じになっちまうのですが、真相を一つお話をいただきたい。
  167. 中村三之丞

    国務大臣(中村三之丞君) 昨年値上げされました三百数十億円は、国鉄五カ年計画を完遂するために資金はむだに使っておりません。従いまして、三十二年度の実施計画と三十三年度の予算計画を合せまして、大体五カ年計画は六一%の進捗率を見せておるのでありまして、値上げによる資金をむだにすることはやりませず、またやっておらないのであります。
  168. 安部キミ子

    安部キミ子君 私は日中貿易協定について副総理、外務、通産、法務各大臣にお尋ねいたします。  このたび第四次日中貿易協定が結ばれまして、長い間の貿易の麻痺状態が解け、今後飛躍的な日中貿易の発展を見ることと思いますが、この貿易協定を成功させるために、直接その関係にある業者はもちろんでありますが、間接的にも今後のこの協定の積極的な協力をされる立場にある各大臣は、いかなる心がまえを持っておられますか、決意のほどを伺いたいと思います。
  169. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 中共と日本との間の貿易問題でございますが、これは中共の現在の国際的な立場上、ココム・リストなどというもので制約はあるのでございますが、そのもとにおいて日本との間に貿易をやっていくと、ずっと今日まで続けてやってきたのでありますが、今回第四次の協定が民間の間で、民間から日本から行きましてできたようでございます。これに対しまして、政府はこの中共との間の貿易の伸展することを望ましいことだと思っておりますので、これについて政府は協力をする態度を示しておるのでございます。
  170. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま副総理から言われましたように、今回の日中貿易協定に対しましては、実は今おくれましたのも、一行、三団体の方と、それとお目にかかる席に立ち会っておったものですから、そのお話を承わりまして、いずれ政府といたしましては、できるだけスムーズにいきますように、支持と協力を与える点で相談をして参りたい、こう考えております。
  171. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 日中貿易につきましては、従来からわれわれ熱意を持って、極力貿易の促進に努力をいたしたのでありますが、せっかく今回の協定もできまして、今後におきましてもさらに一段と両国の輸出入の円滑にいきますように努力いたしたい。また、いろいろすでに三千五百万ポンドの輸出入ということがきまっておりますので、それに対しても極力その目的が達成せられますように努力いたしたいと思います。
  172. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) だんだん各大臣からお答えのあった通り、私も考えております。
  173. 安部キミ子

    安部キミ子君 政府は一致して協力するということをお誓いになったと思います。私もこの点ではまず安心いたしました。ところが、御承知のように、この協定の締結に当っては、幾たびか紆余曲折がありまして長引いたことは、まことに遺憾なことでありましてそれは御承知通りであります。その理由にはいろいろありましょうけれども、一番根本的な問題として考えられるのは、日本の国、いわゆる日本が中国を信じない、あるいは中国が日本の国を信じないという形と申しましょうか、いわゆる相互信頼と友好の念が足らなかったからだと思います。戦後、日本は海も陸も非常に狭くなった上に、人口はまたけたはずれで多くなり、九千万の同胞が狭い土地にひしめき合って、資源の少い、貧しい土地に生きていかなければなりません。過去のあやまちはあやまちといたしましても、今後は善隣関係を早急に回復しまして、せめても向う三軒両隣りという国とは手を取り合って、平和共存の立場に立って、仲好く暮していくことこそが、切めて九千万人の生きる道も見出され、また、隣国の人たちも安心して仕合せに暮していけるものだと考えまして、そういう意味で今度の日中貿易協定が、六億を有する新中国の復興と相待って、日本経済の今後の発展に意義あるものとして祝福されるのであります。しかしながら、こうした国民の念願にもかかわらず、両国の友好関係を妨害するような事実があるのであります。それは最近塩化ビニールの会社で、新中国政府に向けて取引の相談の手紙を出しました。しばらくして返事が来た中に、自分が出した覚えのないビラが入っておりまして、その返事の理由に、このような宣伝ビラを用いられては、御相談に乗るわけには参りませんとあったのであります。びっくりしてそのビラを調べてみますと、台湾政府の旗とアメリカの旗が書いてあるその店の広告であったのであります。これはまさしく自分に覚えのないことでありますし、だれかいつどこでこのような妨害をしたのかと、当人は当惑している状態であります。このようなケースは、現在中国で開かれている見本市にもあったのでありますが、所管の大臣はこういう事実を御承知でございましょうか。また、このような不都合な問題に対して、どういう処置をされようというお考えがあるのでしょうか。外務、法務、通産、各大臣にお尋ねいたします。
  174. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまお話しのような塩化ビニールの見本の送り返された中にそういう事実があったということは、私は承知いたしておりません。しかし、何らかの形でそういうことが行われたということがありますれば、不適当なことだと思います。しかし、そういうことが行われるような状況にはないのではないかというように私は考えております。
  175. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私も実は全然そういう事実を聞いておりません。
  176. 安部キミ子

    安部キミ子君 それでそれに対する処置は……。
  177. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 通産省としては、それに対する特別の処置ということは、もし事実を調べ、もし要するならば、もちろん適当な当局に交渉するつもりであります。
  178. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 私はまだそのことについては何も承わっておりませんし、今承わった程度では、まだ法務省の関係にまで来ておらないように思います。
  179. 安部キミ子

    安部キミ子君 お三人の答弁を聞きまして、外務大臣が一番誠意がなさそうな答弁でありました。私は遺憾と思います。こういう問題でも真心を込めて処置しようという熱意がなければ、両国の友好関係は進展しないと思うのです。そうか、知らなかったということだけでは、その衝に当る責任ある大臣の言葉ではないのじゃないか。えてして外務省は、何事においても誠意がないということを、これからも順々にその証明をすることになると思いますが、大へん遺憾であります。何とか早く善処してもらいたいと思います。次に、日韓問題についてお尋ねいたしますが、去る二月六日、アーサーG・トルードー米陸軍在韓第一師団長は、米陸軍研究開発本部長官に転任するために、帰国する途中日本に立ち寄りまして、在日米商業会議所の昼食会に出て演説を行いました。外相はこの席に参加しましたですか。あるいはトルードー中将の演説趣旨について何か知っておられますか。
  180. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私はその席に出ておりません。
  181. 安部キミ子

    安部キミ子君 それでは副総理にお尋ねしますが、岸総理は出られたのでしょうか。
  182. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 一向に承知しておりません。
  183. 安部キミ子

    安部キミ子君 それでは副総理と外務大臣にお願いしておきますが、その点確めて下さいませ。トルードー中将はその演説で、アジアの将来の安全のために、日韓関係の正常化は、最も重要なことだと述べています。また、中将は、アジアの自由諸国民は、必要とあらば武力によっても、この地域の自由防衛に備えねばならぬと語りました。この演説記事は日本字の新聞には出ていなくてわずかに二月七日のジャパン・タイムズ紙か報じておるだけであります。こうした演説に対して外相はトルードー中将の見解に同意されますかどうか、御返事いただきたい。
  184. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アジアが平和な状態になっていくことは好ましいことでありまして、従って日韓間における問題も、平和的にすべて解決されることを私としては念願するわけであります。今後の世界において武力でもって問題を解決するというようなことにつきましては、私としてはできるだけ避けていかなければならず、また、好ましいことだとは思っておりません。
  185. 安部キミ子

    安部キミ子君 いずれにいたしましても、トルードー中将の見解は、米国が日韓の国交修復に熱意を持っておるということを示しております。米国筋が一様にその見解を持っておることは、ニューヨーク・タイムス社説、ワシントン・ポスト社説にも証明されておるところであります。外相は米国の日韓問題に対するこうした熱意をどう考えておられますか、お答え願います。
  186. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アメリカにおいてもおそらく同様で、できるだけ平和が来ることを希望しておると思うのでありまして、特に心あるアメリカ人は、そういう考え方をしておると思います。従いましてアメリカにしても、申し上げたように、日韓間にもやはり平和が来ることを希望しておるのではないかと考えております。
  187. 安部キミ子

    安部キミ子君 外相は大へんお人がいいので、今私が質問しましたことに対して、表面だけの御答弁をしておられると思うのです。私はアメリカがこの問題に熱意を持っておるということは、ただ平和ということのための熱意ではなくて、その平和というものも、力の平和をかちとろうとしておるというこのあり方について、私は外務大臣の所見を聞いたわけなんです。米国の日韓交渉に対する働きかけを、それではお尋ねしますが、特に昨年の十二月三十一日付の米国書簡というのは、いつ韓国から問い合せ、またいつ米国から手交されたものですが。また、だれとだれとの間に手交されたものか、お尋ねいたします。
  188. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 財産請求権の問題に対するアメリカの解釈だろうと存じますけれども、その問題はすでに昨年六月十四日のときに示されておるわけでありまして、両国政府に対してそれが手交されております。なお、こまかいことにつきましては政府委員から…。    〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕
  189. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 財産請求権に関しまする米国の解釈につきましては、昨年の六月ごろ、内意としましては、アメリカがこういうような解釈を下したというような話がありました。しかし、その後日韓間の話し合いがまとまりませんでしたので、実際にアメリカ側が正式に解釈を出しましたのは昨年の十二月、日韓間の協定か調印される寸前、十二月三十一日の午前でございます。
  190. 安部キミ子

    安部キミ子君 答弁が漏れておりますが、だれとだれとの間に手交されたか、それからお名前を聞いておるのです。
  191. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 米国政府の見解といたしまして、東京にありまするアメリカ大使館から外務省に手交されたものでございます。
  192. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうして名は、だれとだれですか。
  193. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 名前はございません。向う、アメリカ政府の見解としまして大使館から外務省へ手交されたものでございます。
  194. 安部キミ子

    安部キミ子君 その席でだれが立ち会われたか、そのことを聞いておるのです。
  195. 板垣修

    政府委員(板垣修君) アメリカ大使館のモルガン参事官からアジア局長に手交されました。
  196. 安部キミ子

    安部キミ子君 アジア局長というと、あなたですね。(笑声)  次に二月十日、台湾の総督府で蒋介石が日本人記者団に語った日、韓、台の同盟に外相は同意されますかどうか。その内容は次のようなことであります。ちょっとここで簡単に読んでみますが、これは記者団の問「中、日、韓三国関係についての御意見は」、答「三国は絶対に離れることのできない事情にある。三国は互いに提携し、団結して共産主義を消滅させねばならない。日本政府の韓国に対する政策は正しいと思う。しかし日本は韓国に誤解を与えてはならない。韓国は日本が中立、容共政策をとっていると疑っている。このさいます韓国のもっている疑いがとけ、ついで両国が互いに譲歩して行けば、韓国は日本をだんだん理解するようになると思う。私はわれわれ三国の提携を何よりも願っており、もし日本かソ連に接近すれば、三国の関係は破壊されてしまうだろう」、こういうふうに言っておりますが、それとも今のところ日、韓、台の同盟というべきものを受け入れる考えはないと外務大臣考えておられるのか。今日のアジア諸国民は日、韓、台のこの動きは、アジアの分裂支配であり、破壊の策であると断定するでしょうし、日本が、中国との国交の修復をも、さらに遠くに引き延ばしたと見るに違いありません。日本の外交の根本的なあり方として、日韓国交、日台国交がどのような利点があるのか、あったら言っていただきたい。
  197. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の国家として、ただいまお話のありましたように、隣国とできるだけ友好関係を結び、親善関係を結んでいくということについては、日本は当然それを願っております。しかしながら日本が容共的な国だと、日本自身、私ども考えておりませんし、また自由主義陣営の一員としてやっておるわけでありまして、あるいは隣国のうちにいろいろ誤解があろうかと思います。しかしながらそういう意味において、日本の立場を考えながら日本としては進んで参るわけであります。現在の段階におきまして、日本と韓国と台湾政府とが、ともに同盟条約を結ぶ、というようなことは考えておりません。
  198. 安部キミ子

    安部キミ子君 今の言葉で同盟条約を結ぶ考えはないと言われましたので、一応私はこの問題については了承します。  しかし台湾ということだけを考えて新中国を忘れたり、あるいは朝鮮は韓国だけだという考えに立たれておる外務大臣考え方、日本政府考え方には異議がありますし、これは後の問題に譲ります。  聞くところによりますと、日韓国交のため、韓国の焦げつきの債権を、韓国側の対日請求権と引きかえに相殺すると言われますが、そのような事実があるのですか。また焦げつき債権処理とともに、韓国から米国のひもつき、ICA資金による買い付けが保証されると言われますが、事実でありますか。韓国は明らかに日本に対して請求権を保留していますが、それはどの程度の額であり、日本はこれにどう対処されるお考えであるか。
  199. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ICAのひもつきが、何か特需がなくなるかどうか、私どもとしてはそういうものはないと考えております。  なおただいまお話のありましたような、韓国に対する四千七百万ドルの焦げつき債権、あるいは韓国の請求権をどのくらいのものであるかという問題につきましては、日韓正式会談を開きましてからわれわれは検討をして参るわけでありまして、焦げつき債権を現在そのまま引きかえる、というだけの考え方ではないことを申し上げておきます。
  200. 安部キミ子

    安部キミ子君 今後の日韓会談のあり方についても、私はいろいろ意見を持っておりますが、今時間がありませんので深入りをいたしません。  話を本筋に返しまして、政治的目的を持つ日韓国交に、人質問題をからませている韓国側は、まず非難すべきでありますけれども、その条約をのんだかに見える日本政府もまた同罪であると思う。抑留者の相互釈放は人道上当然のことでありますし、大臣はこういう考え方をどう考えておられますか。
  201. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日韓の正常関係を打ち立てますための日韓会談を前提として、相互に抑留している者を釈放しなければならぬというのが私ども考え方であります。従いまして昨年十二月三十一日にも相互釈放の協定をまずやったのであります。従って日本側としては、それに対する責任を逐次果して今日参ってきております。まだ韓国側において、そういう点について第一次、第二次の抑留漁夫の送還をいたしましたけれども、第三次の送還をいたしておりませんし、その時期もはっきりさせておりませんので、会談をただいま中止しておるようなわけでございます。
  202. 安部キミ子

    安部キミ子君 それでは重ねて聞きますが、相互釈放が完全に終るまでは、日韓会談には入らないという態度でありますか。そういう基本方針でありますか。
  203. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 抑留されました日本人漁夫が帰ってくることが前提でありますことは、私どもただいま申し上げた通りであります。日本側の不法入国者のそれぞれ送還でありますけれども、これは御承知通りあの協定におきましても、もし韓国に帰る人を送還したら、韓国側がこれを引き受けなければならぬという義務があるのでありまして、その日本に不法入国した人の問題につきましてはそれだけのことでありまして、日本がこれをどういうふうに今後考えていくのかということについての義務は負っておらないのでありますから、その点を御了解いただきたい。
  204. 安部キミ子

    安部キミ子君 それでは少くとも日本人漁夫が釈放されるまでは日韓会談には入らない、というこの基本線は間違いないのですね。
  205. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんその基本線は今でもそれは堅持しております。
  206. 安部キミ子

    安部キミ子君 それでは引続きお尋ねしますが、日本からの強制送還について、外務大臣とこれは法務大臣にお尋ねします。  去る二月二十八日四谷にあります主婦会館で、台湾独立共和国政府、これは亡命政府でありますが、大会が開かれておったことを御承知でありますか。その主張には問題があるといたしましても、これらの人は一面亡命者として認めらるべき権利を持っておる者だと思うのです。亡命者が駐日する権利は一般に存在すると思いますが、お二方はどう考えられますか。もしそうだとすれば、韓国からの亡命者も在日する権利を持っているのではありませんか。なぜ韓国にだけその取扱いができないのか、政府は人道的な立場に立たないだけでなくて、国際法上の人権擁護の立場にも立っていないと思われるのですが、御見解はどうなんですか。
  207. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 台湾の方一方がここにいる、そうしていろいろ政治活動をしておられるということについて、政府として何らの干渉をいたしておりません。  ただいまお話のありました韓国の不法入国者の送還問題でありますけれども、これは先ほど申し上げましたように、これを韓国に帰した場合に、韓国側としては受け入れなければならぬ義務がある。日本としては、その方々がどこに行くか、どう身の振り方をするかという御本人の意思を聞いて処置するわけでありまして、人道上に反していない取りきめをしておるつもりでございます。
  208. 安部キミ子

    安部キミ子君 質問の核心に触れて下さい。
  209. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) ただいまの御指摘の事実、私は詳上くは存じておりませんけれども、多分独立運動等の政治犯罪者ではないかと思います。政一治犯罪者でございますれば、従来から各国の慣例で、大体居住を許しておるような例になっております。ただ、これが果して政治犯罪者であるかどうかということにつきましては、個々のケースについて調べなければわからないと思っております。
  210. 安部キミ子

    安部キミ子君 外務大臣は、私が一番聞きたい亡命政府、政治犯罪者の扱いについて聞いておって、しかも主婦会館で開かれた大会を御存じですかと、こう聞いたのですが、御存じないのですか。
  211. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 台湾から「来ておられる方々で、いろいろ政治活動をしておられることがあることは私も承知しておりますし、日付ははっきり存じておりませんけれども、そういう方々の集会があったということも存じております。
  212. 安部キミ子

    安部キミ子君 私はこの問題は非常に重大な問題だと思うのです。ですから念を押して、日本の国内にいろいろな形の政治活動なり、また、いろいろな複雑な国際運動がなされているということを、外務大臣や法務大臣には特によう知っておってもらいたいと思って質問したわけなんです。  それでは、一応韓国問題はそれぐらいにします。  次に、防衛問題に移っていきたいと思いますが、近く四月ごろに、青山会館で軍用機の域外調達に関する日米合同会議が開かれると聞いておりますが、ほんとうでしょうか。それはどういう構想になっておるものか。外務大臣と防衛庁長官にお尋ねいたします。
  213. 剱木亨弘

    ○理事(剱木亨弘君) もう一回言って一下さい。
  214. 安部キミ子

    安部キミ子君 だめじゃないですか、大事なときに逃げちゃ。近く四月ごろに、青山会館で、ちゃんと場所もわかっているのですよ、軍用機の域外調達に関する日米合同会議が開かれると聞いておる。それはほんとうかということです。それはどういう構想になるものですか、お尋ねしたい。これは外務大臣にも重ねてお尋ねいたします。
  215. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私ども聞いておりません。
  216. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 私は、その話はまだ聞いておりません。
  217. 安部キミ子

    安部キミ子君 聞いておらないと言われますけれども、私には実はふに落ちない点がある。私の調査したところでは、昨年の末に、昨年来、在日米第一五空軍司令部があっせして、米国の太平洋地域補給司令部、これはハワイでありますが、同じく北太平洋補給所立川、南太平洋補給所マニラの代表と通産省、経団連の防衛生産委員会が加わって開かれるようですが、その内容’は何であるか、この点はいよいよ日本がアジアの兵器廠になる、なろうとしている事実であります。国民も大へん心配しているし、また、非難もしているわけです。三月五日の日経新聞は、こうも報道しております。日本の兵器業界は、米国に対して新兵器の下請生産を行わせてほしい旨を申し入れて、これに伴って日本の業者は直接米業者の下請になるわけであります。また、週刊新聞紙に、サイドワインダーも、ラドフォード元統合本部長が就任したフェルコ社の製品であって、日米安倶、委員会の前日、ラドフォードは来日し大磯を訪問している、こういうことが書いてある。日本政府もまた、米用一兵器大メーカーの下請に甘んじている、わけです。年間五百億円の生産能力を持っているといわれる日本の兵器生産能力を、政府はどう処置しようとしておられるのか、これは外務、通産、防衛各大臣にお尋ねしたい。
  218. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 防衛庁の関する限りについて、ただいまの御質問お答えいたします。米国側の域外調達、日本で調達する場合を域外調達と申しますが、それは自衛隊でこれを供与物資として受け入れるといったものだけについて、防衛庁は間接直接に関係があるわけでございます。その他一般に米側が諸外国に、あるいはこれか送るとかいったようなものを日本で調達する場合の域外調達というのは、一般の民間と、あるいは米国側の、こちらにいる代表かあるいは本国にいるものかは別といたしまして、それの交渉になりまして、防衛庁といたしましては全然関与いたさないのでございます。防衛庁の仕事外のものになるのでございます。これは通産省でありまして、その他の関係省でありまして、この点については、通産大臣その他からお答えがあると思います。防衛庁の関する限りは、域外調達としては、昨年、つまり三十二年度において、警備二隻の域外調達による交渉を受けまして、これは国会の承認を得ましてすでに発注したわけでございます。それ以外には、車両の関係で防衛庁の持っておりまする車両、それの古くなったのを新しいものど交換すべく国内のメーカーに米国側が発注し、でき上ればこれを古いものと交換するというものがございます。そういった意味におきまして、防衛庁の直接の域外調達によるものは、きわめてそういったような意味で品目その他においても特殊のものに限っている次第でございます。先ほどの青山会館のことは、直接防衛庁の関係の域外調達といったものではないように私はうかがえるのでございます。
  219. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 通産省として軍事援助によってただいままでやっておりますことは、車両修理が二千万ドル、あるいは車両の部分品が六百万ドル、航空機の修理が四百六十万ドルとか、こういうようなものを軍事援助で買っているわけであります。兵器生産全般の問題としましては、御承知のように、大体はアメリカ軍のいろいろ修理と、兵器の修理というようなところから出発しております。しかし、たとえば銃砲弾というようなものになりますと、かなり大量生産もできるようになっておりますが、その他の飛行機等につきましては、まだまだ幼稚な状況であります。今後、全体としてバランスのとれたものにしていかなければならぬと私は思っておりますが、ただいまのところ、早急にそういうことができるわけではありません。今後いろいろ検討して参りたいと考えておるわけであります。
  220. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 域外調達の問題は、私の直接の所管事項ではございませんが、従って、今の青山会館の問題も私は直接存じておりませんし、また、日本の兵器生産業というものについて、通産大臣が言われたような方法で考えられるということであります。ただ外国から、たとえばラオスでありますとか、南仏印でありますとか、そういうふうな仏印諸国でありますとか、そういうところからきます問題については、外務省が窓口になっておりますので、そういう関係においては扱っております。
  221. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうしますと、三大臣は、ラドフォード氏に会われたことがないし、そういう会合にも出たことはない。こういうふうにおっしゃるのでしょうか。  それともう一つは、日本の兵器業者がいろいろな動きをしておる。その動きに対しても何の知るところはない。関せずえんというお考え方ですか。
  222. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 答弁を補足いたします。ラドフオード元の海軍大将が日本を訪問された場合に、防衛庁に訪問を受けたことはございます。これは儀礼的の訪問であったと思います。その他の会合で一回お目にかかったこともございます。しかし、先ほどお話しというか、御質問中にありましたサイドワィンダーと関係あるじゃないかということは、私どもは全然その事実を知らなかった。われわれは航空機の装備の改善というその観点からサイドワインダーが最も適切である。すなわち、価格において、性能においてあらゆる観点からこれが適当なものであるというだけのことを考えたわけでございまして、ただいま、先ほどのお話しのような点は全然私は承知いたさないで、こういったものについての話し合いが行われた、こういうことでございます。
  223. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私もラドフォードさんとは儀礼的にお目にかかっております。ただ、兵器生産の問題で話しをした、あるいはそういう種類の会合に出たということはございません。
  224. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私は会っておりません。また、現在やっておりますのは修理でありまして、向うから何らの申し込みも何も受けておりません。
  225. 安部キミ子

    安部キミ子君 三大臣の答弁は正直でないと思うのです。こういうふうに雑誌や新聞ではっきり書いておるし、しかもラドフォードが大磯へ行ったということまで書いてあるのですからね。そうすると、この報道はうそだということになるのでありますが、どうですか、その点。
  226. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいま申し上げましたように、ラドフォード氏には会っておりませんし、向うから何らの申し入れも何も受けておりません。これはもう事実であります。
  227. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。ラドフォード大将が大磯を訪問したかどうかということは、私はその当時も知りませんでした。ただそれだけの事実でございます。なおまた、ラドフォード氏がどういった向うで仕事をされておるかということについても、その当時は知識もなく、ある新聞等で、あとでそういうことを書いたというものを見た記憶はございますけれども、事実それだけの知識でございます。
  228. 安部キミ子

    安部キミ子君 私は防衛庁長官が、このような大きな仕事をし、また日本の運命を支配するかぎを握っているこれほどのことをする人物が、国内でこういういろいろな動きをしていることについて、知らないで済むと私は思われないのです。この人は、日本をどういうふうにしようという目的で来ているか。この人の来た目的は何であるかということぐらいあなたは十分知っていなければいけないし、何をするのですか。こういうおそろしい人が来ているのに、あなた方知らんで、儀礼的に会ったというふうなことで、知らないうちに日本は、アジアの兵器産業の補給地になって、おそろしい戦争をまき起す原動力になる可能性もある動きをしているのです。こういう、日本にとっては好ましくない動きをする人を、私は法務大臣にも言いたいのですが、何でもない人が平和のために日本に来ようというたときには入れないでおって、平和をかき乱すような、こういうおそろしい人が日本でいろいろな動きをしているのに、知らないでは私は済まされぬと思う。しかもいろいろな仕事をしている。  それでは引き続いて質問しますが、これは過日、岡田宗司先生が質問されましたので、もう一度私は、防衛庁長官にお尋ねします。今度防衛庁では、次期戦闘機としてアメリカ・グラマン社のF11—F11Fスーパー・タイガー機に決定したといわれている。これは周知の通りでありますし、長い間、F100かF104かでもみぬいたわけであります。二十日過ぎの国防会議できめられるタイガーに落ちつくという公算が大きいのであります。そこで伺いたいことは、タイガー機は米国でどういう地位を占めておるか。タイガー機は試作二機、このことについては、この前、防衛庁長官が説明されましたのですが、二機で、しかもアメリカ内の競争に破れて軍の採用にならなかったと聞いているわけです。こうしたタイガー機を受け入れるとしましても、かなり高価になるのではないですか。また、秘密保護法が、先に兵器下請産業化とともに要請されるのではないだろうかという心配があるわけなんですね。秘密保護法が必要ないような飛行機が二年後に作られても、タイガー機はそのときにでもまた役に立つ。二年先にそれよりももっと優秀な飛行機ができても、そうしてその秘密保護法も要らぬような優秀な飛行機ができてもタィガー機が役に立つと、防衛庁長官は真剣に考えておられるかどうか、お答えいただきたい。
  229. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。F86Fの目下国産中の飛行機のあとで、どういったような戦闘機がいいかということについては、昨年以来慎重に研究をいたしております。新しい機種によってわが防空の体制をここに整えるということからいけば非常に重要な問題でございます。そのためにあらゆる角度から、防衛の見地からこれを検討しているわけでございます。ただいまの御質問中にありましたように、防衛庁でこれを決定したというまだ事実はございません。また、もしこれを決定する場合には、国防会議に付議して御審議を仰ぐというのが手続上の順序でございます。今御質問にありましたF11F、こういうのもなかなか優秀な飛行機であるということも調査の結果判明いたしております。しかし、この問題はまだ決定を見ていない、内定を見ていないのでございまするから、これは二年後に着手すべき飛行機で、その後三年間ぐらい製造にかかるようなものでございます。準備期間が要るものですから、途中で急に来年作るとかいっても、これは飛行機はできないのでございます。従って、将来を見通し、その機能、安全性、またいわゆる持続性ということも考慮に入れるところに、この問題が非常にむずかしい問題がございます。ドイツにおいても、新機種の問題について非常な研究もし、調査もし、慎重に検討も加えておるということもまたそういった事情に基くものであります。要するに、この問題はまだ決定をしておる問題ではございませんということをお答えするのでございます。
  230. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうすると長官は、このタイガーは日本には作らせぬ、決定しない、こういうお考えでしょうか。
  231. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) この飛行機も、ただいま申し上げましたように、きわめて優秀な性能を持ったものでございます。従って新機種の選定に当って慎重に考慮するといった場合に、あらゆる種類の飛行機の性能、また日本の事情に沿うかどうかといったような点を考慮に加えて決定すべきものでございまして、ここにF11のみが日本では生産しないということを申し上げることは、時期尚早であろうと思うのであります。
  232. 安部キミ子

    安部キミ子君 長官の答弁おかしいじゃないですか、今秋は、アメリカではタイガー機は役に立たないのだという定評があるわけですね。それでアメリカの会社は日本に売りつけて、そしてそれをまたアジアの後進国にも売りつけよう。今、インドネシアで戦争をやっておりますが、日本の業者が反乱軍の方に武器を売りつけようとして失敗したということが、放送にも新聞記事にも出ているわけです。日本の兵器業者は何をするかわからぬのですよ、実際。それをあなたは、何の管理といいますか、そういう——これは通産大臣にも言いたいのでありますが、ほっちらかしにして、しかもアメリカのもう役にも立たないようなものを売りつけられて、そうしてそれをまた、日本を中心にして戦争が起るような機運を作って行く、こういうことの可能性のある動きをあなたはどういうふうに考えておられるか。私は、防衛庁長官の平和に対する感覚というものを疑うわけなんですよ。これじゃ日本国民はたまったものじゃないですね。こういう長官が日本の最高機関で、しかも平和か戦争かという大事なポストにおられるということは、私は大へん心外です。はっきり、自分は平和を守るなら守るという信念を持って、自民党の政策としては、防衛隊は必要だ、防衛のためには軍備は必要だという考えであるかもしれませんけれども、しかし、世界の動きはだんだんと巨頭会談まで持ち込んで、世界をいかに平和にするか、人類をいかに守るかということを真剣に考えているのですよ。それに時代おくれな、こんな役にも立たない、もう気違いの刃物以上のことじゃありませんか。こういうふうなものを一体、あなたが腹をきめて、こういうものは日本には作らせない、契約はしない、新機種としては使わない、こういうふうにあなたは今こそ決意をされなければならないときだろうと思うのですが、その決意を聞きたいのです。
  233. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 今の具体的の機種について、F11というものがあるいは時代おくれの非常に性能の悪いものである、そういうような機種であるということでございますが、われわれも、あらゆる角度、また実際にそれを現物も見て、性能のいかんも判断しているわけでございます。そういった意味で、性能の悪いものを決定しよう、そういうようなことは全然考えておりません。その意味において、この問題はまだ決定した問題ではございませんということで御了承を願いたいと思います。    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕
  234. 安部キミ子

    安部キミ子君 私は今の答弁には満足できませんが、具体的な例を引いて、私は、国民がいかに今年度の予算においても、また将来の予算においても迷惑するかということを、事実をあげて証明したいと思うのです。これは、日本航空工業界の三十二年十一月二十一日の調査によりますと、新三菱のF86Fと川崎航空のT33Aで次のような営業面の悪化現象が出ています。設備未償却の合計四十一億円以上、関係メーカー十八社、合せて六十一億円、タイガー機でこの現象からでない、特別の補償があるのかどうか、そのそのお答えを願います。
  235. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 今、日本で国産されておりまする飛行機は、F86というのでございます。これは米側と、いわゆる日米防衛の援助協定、相互協定に基きまして、アメリカ側が一定の金額というものを負担し、わが国と持ち寄りで作っておるわけでございます。またもう一つはP2Vという、これは海上自衛隊の使用する航空機でございます。これは来年度、この三十三年の予算を待ってこれの国内生産に着手しよう、こういうことでございます。防衛庁に関する限りにおいては、今の航空産業に対して、これらの国産ということによって、わが国の防衛産業というものに育成の道を講ずるとともに、わが国のこの技術の進歩というものに貢献いたしたいと、こういうことでやっておるわけでございます。これらのいわゆる航空機産業は、たくさんの下請を持ちまして、そうして広範な範囲にわたっての産業と相なっておりまして、これらに対しても、その航空機製造によって大きな仕事がそこにあると、こういうことに相なっておるわけでございます。
  236. 安部キミ子

    安部キミ子君 私は長官の御答弁は詭弁だと思うのですよ。科学技術の振興は後に私がお尋ねしますが、タイガー機が新三菱七、川崎三の比率で作られようとする限り、T33Aなどで出た赤字はタイガー機の生産で処理されることになるのでありますか、この帳じりは国家財政に出てくるのではありませんか。すでにF86Fで二百四十一億九千万円、T33Aで八十一億二千万円を費しておるわけです。P2Vについては百五十一億四千八百万円の支出が予定されているわけでありますが、国民の税金のむだ使いはこれほど大きいものはないと思うのです。F86FもT33ももう古くなり、タイガー機も、生産されるときは古くさいものになっているのです。これと関連して、東南アジアヘの飛行機輸出がもくろまれて、そのための会議が青山会館で行われるという定評があるわけですね。私は、先ほど長官がいろいろ弁解なさいますけれども、そのような会議が、最初申しました四月に青山会館が開かれるということだと私は考えますが、正直に御答弁いただきたいと思います。
  237. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。この根本は、わが国の防衛の整備をどうするかということに関連を持つ問題だろうと思います。で、航空機に関する限りはある一定の目標、すなわち、千三百機というものを、各種の種類を通じて大体三十七年までに完成しようという目標のもとに、逐次これを生産しこれを配備していこう、こういうことになっているのでございます。その意味において、これらの飛行機を作るのに当りまして、極力国産化しようという方針で今日までやってきたわけでございます。防衛庁、いわゆる航空自衛隊の、または海上自衛隊等の使用します飛行機の問題につきましては、これは航空機産業の問題でございまして、防衛庁としては間接、関係の深いことはもとよりでございまするが、仕事の上においてこれに直接関係していくという建前はないのでございます。先ほど申し上げましたように、青山会館ですか、そこで何か会議を開かれるという問題は、これは防衛庁の使用する飛行機をどうしようかということについての会議ではないという私は想像をいたしております。そういった趣旨でございまして、われわれの作っておる飛行機は、これはわが国の防衛、防空のために必要なるものを最小限度に、また国力に応じてやっていこうという建前のもとに、毎年予算を計上いたしまして、御承認を得たものについて実行していく、こういうことでございます。
  238. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうしますと、防衛庁の知つたところではないというような御答弁ですが、通産大臣ないしは外務大臣、あなた方は関係がないとおっしゃるのですか、知らぬとおっしゃるのですか。
  239. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 全然私は聞いておりません。
  240. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 青山会館の会議のことについては私ども存じません。なお、防衛産業育成維持その他の問題につきましては、通産大臣の所管でございます。
  241. 安部キミ子

    安部キミ子君 私はおかしいと思うんですよ。三大臣ともこういう大事な問題を知らぬ知らぬとおっしゃるが、一体だれがこういう問題の所管ですか。(「通産大臣、どうしたのですか」と呼ぶ者あり)今のような御答弁は重大な問題だと思いますから、私の方でも、社会党で、この問題は党へ帰って私はよく皆さんに相談をして……。これほど膨大な予算を知らないと言われるようなことで、今年度の予算審議はできないのですよ。そうでしょう。それで、この問題に時間を費やしますと、あとの質問で困りますから、私は後ほど委員長の計らいで時間をいただいて、あらためて質問したいと思いますが、御配慮いただけますでしょうか。
  242. 泉山三六

    委員長泉山三六君) また分科会に十分時間がございますから……。
  243. 安部キミ子

    安部キミ子君 それでは、総理、副総理がお出になりませんので、防衛庁長官にお尋ねするのですが、日本からアメリカ軍が撤退した方がいいか、あるいはおった方がいいか、一体どう考えておられますか。
  244. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。非常に簡単な御質問で、どういう点が要点であるか、ちょつと御想像申し上げることが困難ですが、端的に申しまして、今日は日米安保条約というものがございます。この前文等にも書いてありますように、日本が将来自分の国を守るべきところの自衛の体制を作っていく、そういうものが現にないのですから、ここに日米安保条約を作る、こういうことで、日本はこれをだんだん漸増していくということがその方針である、こういうことが日米安保条約にもうたわれておるわけでございます。従って、一時的な、暫定的な措置として、米駐留軍は日本に駐留するのだという建前になっております。その意味からいけば、日本国は自分の独立安全のために、みずから自衛の体制ができるということが望ましいのでございます。日米安保条約もそういった事態を想定しているようにうかがわれるのであります。従って、結論といたしましては、わが国を守る力を自分で作るということに伴って、駐留米軍の撤退ということは私は望ましいことであると思います。
  245. 安部キミ子

    安部キミ子君 それでは重ねてお尋ねしますが、本年の二月にアメリカのチェース・マンハッタン銀行の、これはロックフェラーの財団の人でありますが、このマックロイ氏という、これは人の名なんですが、マックロイ氏が、軍事問題で相談に来ているわけであります。この人が日本に来るに当りましては、米国から日本政府に、最上の待遇をしてくれという要請があった。そうして天皇に会い、首相初め財界有名人にも会っております。米軍が陸海空全部を日本から撤退したときには、日本政府はどう対処されるか、マックロイ氏は何の目的で来たのか。今名前をあげた人は会っておられると思いますが、関係の大臣の答弁をお願いします。
  246. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 関係はどなたでございますか。
  247. 安部キミ子

    安部キミ子君 それは、首相初め、もちろん藤山外相も防衛庁長官も会っておられるでしよう。
  248. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) マックロイ氏が来たのは、私の知っている限りにおいては、観光的の視察でありまして、私もあいさつのために会って、何らの特別の話はいたしておりません。
  249. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) マックロイが、チェース・ナショナル・バンクの頭取、前のドイツの弁務官であったマックロイが来ましたのは、私昨年秋にアメリカへ行きましたときには、アメリカの銀行協会の会長をしておりました。日本に来ぬかと申しましたが、実は来ることを知りまして、そういうこともあって、今度も来たときに言っておりました。私も会いましたのですが、今度来たのは、これは私の知る限りでは、まあ来たとき、日本経済の情勢、アメリカの経済の状況も、お互いに話してみようという程度であると、私の会った感じではそういうことであります。
  250. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。マックロイ氏とは私は会う機会ございませんでした。ニューヨークにおった時代に、友人の友人として知っているわけであります。今回の訪日中は私は会う機会はございませんでした。
  251. 安部キミ子

    安部キミ子君 それでは、以前に一度でも会われたことがございますか。
  252. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 直接お目にかかったことはございません。直接会ったことはございません。私の友だちがよく知った人で、いろいろ話は知っている、こういう程度の人であります。
  253. 安部キミ子

    安部キミ子君 マックロイ氏が、これほどの人が何の意味なしに遊びに来たとは思われない。それから大蔵大臣が話されたように、一度日本に来ないか。しかも、大蔵大臣がアメリカへ行かれたときに会っておられる。当然私は、軍事問題について、いろいろ話をされたと思うのです。また、ある新聞でもそういうふうに書いておりまして、私が心配するのは、今まで軍事関係について質問しましたことも、このマックロイ氏がやはり関係があるというふうに考えているのです。一体日本は、アメリカが全部引き揚げたとき、あとどういうふうに対処されるのか、その構想について長官からお伺いいたします。
  254. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。マックロイ氏は私を訪問するというような希望はなかったらしいのです。従って、他の方とどういう話をされたか、また聞いたこともございません。軍事問題について話したかどうかそれも存じないわけでありまして、どうかと申されても、日本へ来たということだけは知っておる、こういうことだけをお答えいたします。
  255. 安部キミ子

    安部キミ子君 撤退したときにはどうなさるのですか。米軍が、陸、海、空全部日本から撤退したときにはどうなさるのですか。
  256. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) その問題は、日米安保条約の関係において、日本の安全を十分保障し得るような機構かあるかどうかというようなことで、基本的に日米安保条約が当然に廃棄になる、こういうことを書いてあるのでありまして、今日はまだ、いわゆる陸の部隊はもう撤退いたしました、戦闘部隊は。空軍については、まだわが国の態勢が整備の段階にありまして、これは急に全部が撤退するという時期に至らぬと思います。この問題は、将来の国際情勢その他と関連をする問題でございまして、私から、その全部の撤退を見た場合にどうなるかという問題は、まだお答えをするのは時期が早い、こう思う次第でございます。
  257. 安部キミ子

    安部キミ子君 政府は、防衛五カ年計画というものができているでしよう、その構想はどうですか。
  258. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 防衛整備目標は、御承知のように昨年六月国防会議で決定を見た一応の自衛体制の整備をする目標を掲げたものでございます。内容的に申しますれば、大体、陸は十八万人、海は十二万四千トンの艦船、また空は飛行機千三百機というものを昭和三十五年ないし三十七年の間に整備していこう、こういうのが目標でございます。これは一種の最終的目標でございまして、これによって、まずわが国の最小限度の防衛の骨幹を作ろう、こういうことに相なっておるわけでございまして、目下、来年がいわゆる初年度に当るわけでございまして、必要なる初年度分の経費を今回の三十三年度予算に計上しておる。今後どういう順序でやるかという問題は、これは財政の事情、民生安定その他の事情を考慮して、個々の各年度についてどの程度これを実行するかということを検討する、こういうことに相なっておる次第でございます。
  259. 安部キミ子

    安部キミ子君 昭和十一年の日本の兵力は、陸軍が二十四万でありました。実際はそのときの兵器の能力というものは、今日の兵器とは雲泥の差なんですね。ですから、現在が十八万、十九万だいいましても、大へんな違いなんですよ。世界の情勢は、先ほども申しましたように、非常に平和へ平和へと、軍縮へ軍縮へと、なだれを打つような傾向が起きているわけです。そういう世界の情勢を無視して、背を向けて、日本だけが役に立たない軍艦を作ってみたり、あるいは飛行機を作ってみたり、血の出るような税金をむだに使うということは、先ほど委員会厚生大臣のいろいろなお話しがありましたが、実際矛盾したことなんです。ですから、私はこの際、日本の防衛計画も根本的に変えていかなければならない段階にきておると思うのです。そこで私は、長官のそういうものの考え方にまず不信の念を表します。私ども考え方からすれば、あなたのような方は、全くもう何といいますか、どうして表現していいかわからない存在だろうと思います。何か言いますと懲罰にもなりましょうから遠慮はしますけれども、人殺しを奨励するような軍艦を作ってみたり、戦争というものは一体何ですか、人殺しでしょう。結局は人殺しということになるじゃありませんか。たった一人の人が人を殺したというたら、警視総監は大へんですよ。なぜこの間の殺人犯を早うつかまえなかったといって、もうどこでも騒いでいる。たった一人の人を殺すのに今日では問題になる。人命は尊重されなければならない。それを、このようなおそろしい兵器を、しかも国民の税金を惜しげもなく使って、そうして、その兵器を作る話合いをするところも、それから兵器を作る業者が何をしているかわからない。しかも、外国からそういうおそろしい兵器を売り込んだり、あるいは日本の税金をそういう兵器につぎ込ましたりするようなおそろしい人が来ても、何をしにきているかわからない。ただ儀礼的なあいさつをしたというような無責任なことで、私は今日の大臣は勤まらぬと思います。そういう大臣は皆さんやめてもらいたい。ほんとうに、あなた方は愛国心々々々と言われますけれども、学校の先生や小学校の子供に愛国心を唱えられるより、あなた方自身の良心に愛国心を呼び起してもらいたいのです。それが愛国心じゃないですか。日本人が再び戦争に巻き込まれるような、そういうおそろしい兵器を作る防衛計画をするというようなことが、愛国心がある人のすることと言われましょうか。私は、今のような政府のいわゆる防衛計画とか、あるいは兵器生産だとか、こういうふうな目的をもって貴重な予算が使われることには反対です。この問題は、とうてい討論をしましても、私の気持を十分伝えることができません。  そこで、次に伺います……。
  260. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連。大蔵大臣にちょっと念のためにお尋ねしておきたいのですが、日米共同コミュニケというものはどういうような、アメリカと日本の場合にこの共同コミュニケというものは、日本に対してどれだけの拘束力を持つものかという点なんです。それは、三十一年度の予算編成のときに、日米共同声明を出したと思うのですが、昭和三十二年度以降打ち続く年間において、わが国の資力のより十分な部分を防衛力の増強に充てることが、日本政府の意思であり政策であると、共同声明の中に多分盛られていると思う。従って、昭和三十二年以降打ち続く年間において、日米安保条約の、あるいは行政協定のその趣旨に沿って、わが国の資力の最も重要な部分を防衛力の増強に充てることが日本政府の意思である、政策であるというこの共同声明というものは、ある程度日本財政方針に強い拘束力を持っているのではないか。今の安部さんの御質問は、非常にこれと関連を持つものですが、どういう拘束力を持つものか、共同声明というものは。大蔵大臣
  261. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は、日本の防衛力と、この経済力の関係では、これは安保条約等にも書いてありますように、日本の国力に応じて、その範囲内で防衛力というものは漸増していくというこの基本方針は、何ら変っていないと考えております。
  262. 高田なほ子

    高田なほ子君 私の質問の趣旨が十分おわかりになっておらないような、大へんお粗末な御答弁であったと思います。それ以上御答弁ができませんですか。何ら変っておらないということは、今後打ち続く年間においてわが国の資力のより十分な部分を防衛力の増強に充てるのかと聞いている。従って、民生安定とか、わが国のいろいろな事情に均衡した予算を組むということとは、多少内容が違うのではないか。民生の安定は第二次の問題で、わが国の資力のより十分な部分を防衛力の増強に充てるというこの方針が変っていないのだと、あなたは確認されて答弁されたのですか、もう一度お答え下さい。
  263. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は、民生の安定というものがない防衛力というものは考えていないのでありまして、従いまして、いわゆる武力的な防衛力の強化と民生の安定というものは、常に均衡を保っていかなければならない。従いまして、民生安定を犠牲にして防衛費の強化をするということは考えておりません。一応今のところでは、この防衛力の五カ年計画というものがありますが、これにいたしましても、やはり今後における日本経済力というものを考え財政力の許す範囲内においてこの五カ年計画を遂行していこうとかように考えておる次第でありまして、何でもかでも、一つ国力の大きな部分を防衛力につぎ込まさせるということは全然考えておりません。
  264. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 簡単にどうぞ。
  265. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、わが国の資力のより十分なる部分は、民生安定のために使うという結論になりますか。従来この委員会で討論されてきたところは、民生安定のために、はなはだしく貧弱な予算であった、こういうような御議論が非常に強かったわけです。そしてまた、あなた自体も、今度の予算はかなり総花的な予算で、重点施策ができない、こういう慨嘆を漏らされた一幕もあったはずなのです。それはやはり、わが国の資力のより十分なる部分を防衛力の増強に充てるという、この日米共同声明に沿ったわが国の財政方針が、こういう状態をかもしているのではないか、私はこう思う。従ってあなたの御答弁は、はなはだ、何といいますかね、まあ一萬田式御答弁と申しましょうか、はなはだどうもつまらぬです(笑声)一口に言うと、今度の予算は、民生安定のために最もよい予算で、再軍備予算とこの民生安定の予算というものが均衡のとれている予算であると、あなたが鼻高々と国民に誇示し得る予算であるのか、はなはだ私はそれと違うのじゃないかという気がするのです。重ねて……。
  266. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは一つには防衛力というものに対する価値判断の基本的な相違が私はあると思います。一つには。従いまして、これは結局議論になると思うのでありますが、同時にまたこの民生安定の諸施策、特に社会保障というようなものと防衛との関連でありますが、その場合はやはり、この防衛というものがどういう程度日本においてすでに進んでおるのか、一方また、社会保障というものは少くともどの程度まできているか、こういう両方の基盤をまず私は考える必要があると思う。日本の防衛力、防衛力といいますけれども、おそらく今の日本の防衛力というものは、やはり早急にある程度のところまではいく必要がある。そこで五カ年計画というものを立てておるのであります。従いまして、この五カ年計画を実現する、これはむろん国力の範囲内において、国力の増加に応じて立てておるのでありますが、これをまずやる、こういう考え方にあると思う。むろん、それだからといって、社会保障等の民生安定を決して怠っているのではありません。これは、この今回の予算歳出においてきびしい制限を受けております。そのうちにおいて、やはり社会保障についてはできるだけの施策をいたしたつもりでありまして、これは単に、私はそういう面は、一回の予算において批判をいたすべきでないのでありまして、今後の方針としてどういうふうに向っていくか、こういうふうに考えると、私はこの防衛については、一定の期間がくれば、それから先はそれほど増加せぬでもいい。しかし、社会保障というものは、これは国力に応じて、今後ある意味において、まあ際限がないというわけにもいきませんが、ますます大きくなっていくべき性格を持っておる、かように考えておるので、ある中間期間だけを取って批判されることには、私は必ずしも賛成いたしません。
  267. 安部キミ子

    安部キミ子君 次に、科学技術の振興についてお尋ねします。昨年ソ連がICBMの実験に成功し、引き続いて人工衛星の打ち上げの成功は、世界の歴史に新しい転機をもたらしたものと思います。この厳粛な事実を正視して、人類は新たな歴史を平和のために創造しなければならないと思います。一部の国に、この科学の進歩を戦争に利用し拍車をかけるかのような動きもありますけれども、これは断じて許すべきものではなく、人類は永久平和をかち取るために、最大の英知を傾けて、戦争防止に努力しなければならないと思うのであります。政治家は、国の東西を問わず、国民の血税を、民生安定のための平和予算に組まねばならない義務を負うているものであると思うわけです。こういう観点から、今年度の科学振興の予算は、昨年より文部省では三十五億三千余万円、科学技術庁では二十二億六千五百余万円がふえておりますが、この膨大な予算が、果して平和のための科学技術の振興に使われている予算であるかどうか、これは平和予算だということが言い切れるかどうか、文部大臣科学技術庁長官にお尋ねいたします。
  268. 松永東

    国務大臣(松永東君) 仰せの通り、科学技術振興を強く主張いたしておりまする文部当局といたしましては、現在の予算の範囲内ではこのくらいで仕方がないと思ってあきらめておるような次第でありますが、しかし、これがやはりわれわれの計画いたしておりまする科学技術教育振興の第一歩を踏み出したものと心得ておる次第であります。しかし、年を追うてこれを充実していきたいというふうに考えております。
  269. 安部キミ子

    安部キミ子君 平和のために使われる予算だと言い切れますか。
  270. 松永東

    国務大臣(松永東君) もちろん、平和のために使わなければならぬ。これはもう当然のことでございます。
  271. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 科学技術庁の予算は、むろん平和のために使われておる。ことに原子力においては、法律でも明らかな通り一つも戦力には使いません。
  272. 安部キミ子

    安部キミ子君 私は、平和の科学技術であるか、あるいは兵器戦争技術のためであるかということは、大学程度の過程においてはまだはっきりしない点もある。しかし正力国務大臣の所管に至ってはぽつぽつ角を出しておるわけです。その点、非常に私は心配します。世界の科学の進歩は、今後飛躍的な発展を見ると思うのですけれども、そうした世界の情勢にマッチして、日本の学校教育制度も再検討しなきゃならぬ段階にきておると思いますが、文相にはどういう構想がありますか。
  273. 松永東

    国務大臣(松永東君) お説の通り科学技術振興につきましては、欧米先進国、さらにソビエトあたりの著しい進展にわれわれはやはりかんがみまして、そうして画期的な科学技術教育の振興をはからなければならぬということを念願にいたしておる次第でございます。
  274. 安部キミ子

    安部キミ子君 私は昨年欧州に旅行しまして各国の技術教育について調査研究して参りました。で、その代表的な国として、今、米国とソ連を科学教育の実情の例として比較してみたいと思います。そもそも、その国の科学技術教育の深さは、基礎教育の実情を見れば一目瞭然とするものでありまして、その例を米ソ両国の科学教育の比較をしてみますと、アメリカの大会社の研究所で新しい技術、これはロケット技術、レーダー計算技術を研究している所員の数は次の通りであります。会社名はベンジクス・アビエーション、それが研究所員の数が三千四百四十六人、数学者が三十八人、これは一・一%に当っています。物理学者が六十四人で一・九%になるピューズ・エアークラット会社が三千三百四十五人で、数学者が三十二人、一%、物理学者が百九十人で五・七%。ベル・テレフォン会社が五千三百三十五人で、数学者が五十人、〇・九%、物理学者は四百七十五名で八・九%。ライテオンマニュフアクチュアリング会社が二千三百七十四名で、数学者は三十六名、一・五%、物理学者が八十人で三・四%、インターナショナル・ビジネス・マシンズ、これが二千六百三十一人で、数学者が四十一人、一・八%、それから物理学者が九十一人で三・五%、この表によってみますと、研究所員から数学者といわれる者は全体の二%弱でありますが、ソ連の計算技術研究所では、数学者が全体の一〇・六%を占めている。現在ソ連には七百六十七の大学があり、学生数は二百万人であります。中等専門学校の学生数も二百万人をこえております。ソ連で養成される技師の数はアメリカの二・五倍になっている。ソ連の科学者の養成はアメリカをしのいでいるが、量よりも質が問題だと言う人がおります。たとえばマサチュセッツ工科大学総長、ジェームズ・キリアン博士は次のように述べております。科学教育または職業的資源を判断する場合には、量は大きな意義を持っていない。そこでマサチュセッツ大学ともモスクワ物理技術大学の講義時間数の数を調べてみますと、次のような実情であります。ここには理論工学、応用工学、物質の抵抗、その他専門技術の講義時間数は含まれていません。アメリカですが、数学は五言四十時間、これは二五三%になっております。ソ連は八百九十四時間で四一・九%、物理学はアメリカでは六百三十時間、これは二九・六%になっております。ソ連では七百四十四時間で三四・八%、社会科学が、これがアメリカでは九百六十時間で四五・一%、ソ連では四百九十六時間で二三・三%、計算しますと、アメリカでは二千百三十時間、これが一〇〇%になるわけですが、ソ連では二千百三十四時間、計算ですね、総数が。そういう比較になって、これも一〇〇%、この表で見ますと、講義時間数は大体同じでありますが、物理、数学の講義時間数はソ連の方が多く、ソ連は七六・七%、アメリカは五四・九%。社会科学の講義時間数はアメリカの方が多い。その他講義内容の点では、マサチュセッツ工科大学の数学の講義は、解析のエレメント、解析幾何学、微分方程式理論となっておりますが、モスクワ物理技術大学では、このほかに、常微分方程式理論、複素変動の函数論、偏微分方程式論、線型代数学、確率論などが講義されている、そのほかにいろいろ例がありますが、この一例を見ましても、そのほかにいろいろ加えたい例がありますので、私はこのあとの数字は速記にこのまま写していきたいと思います。時間を省略いたしますために。このようにアメリカとソ連との時間なり、教育編成というものが全然違うわけですね。ですから、今後アメリカとソ連がどのように伸びていくか、競争していくかということを考えましても、この実際のデータを見て答ははっきりと出ていると思うのです。こういうふうな世の中の移り変りに対して、日本も当然考えなければならない、こういうふうに考えるわけであります。  その問題に関連しまして、私は見てきた、見てきたということでなしに、一つの例を簡単に申したいと思う。私もモスクワに一月以上おりましたし、各方面を歩きましたが、原子力発電所ももちろん見ました。一番心を打たれたのは、血液研究所を視察したわけです。私はその所長のという医学博士に会いましたところが、玄関に現われた博士は、せっかくきょう御訪問下さって視察に来られたんだけれども、あなたにはこういう専門的なことはわからないだろう、私は全くそうだとかぶとを脱いだわけですが、しかし、外形だけでも見ていきたいということを言いましたら、向うでは大へん丁寧に御案内して下さいました。サナトリウム、サナトリウムという話がありまして、私は結核のことかと思いましたら、向うではそうじゃなくて、非常に高血圧とか、あるいは脳溢血とか、そういうふうな病気でもサナトリウムが向うではできているわけです。その研究所は、私の感じでは、昔貴族の大邸宅ではなかったかと思われるほど大きな木があって、景色のいいところでありましたか、こういうところで研究する大学の先生方なり、そういった方たちがまずうらやましかった。というのは、日本の国立大学、東京大学を初めとして各大学を見ましても、実に貧弱なものです。私がサナトリウムというのはそれほど効果がありますかと言うと、現に病人はどんどんそこで静養して、病気がなおって元気で働いている。医学の面でもすばらしい前進をしているわけですね。こういうふうな話を長くしますと時間がかかりますけれども、こういうふうに科学が進んだ国となぜ早く日本は文化協定を結ばないかということなんです。科学には国境はないはずです。私はこの点、自民党の皆さんにもはっきり考えてもらいたい。科学とか、スポーツとかには国境がないはずです。そういうものに国境を作ろうとすることが、すでにその国からおくれることなんですね。ですから、早急に文化協定を結んでもらいたい。アメリカは大へん赤ぎらいで、ソ連がきらいなんですけれども、一月二十七日にはすでに協定を結びました。その内容もここにありますが、時間のために省きます。  こういう状態でありますから、早く文化協定を結んで、学生の交換だとかいろいろな文化面で、日本からも学生はもちろんでありますが、芝居も歌舞伎も行きたいという願いがありますし、どうでしょう。ここまできますと、私は外務大臣にお願いという立場に立っても、私は文化協定を早く締結してもらいたいと思うのでありますが、その文化協定を結ばれる御意思があるか、それに対して用意しておられるかどうか。このソ連の教育に対して、文部大臣はどういうふうに見ておられるか。そして文化協定を結ぶについて大臣の所感をお尋ねしたい。
  275. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ソ連との関係は、共同宣言以来、平和なうちに親善関係を求めていこうということで進めてきているのでありまして、それが通商条約を締結したゆえんでもあります。将来文化協定をやりますことは、私としてはそういう考え方、やるという考え方でおるわけであります。
  276. 松永東

    国務大臣(松永東君) 安部さんの該博な御研究の結果を承わり、まことにアメリカ並びにソ連の非常に進歩した科学技術教育について、文部当局といたしましては、流汗りんりたるを覚えます。実際考えますというと、日本もそうまでもとは立ちおくれていなかったのです。ですけれども、ああしたつまらぬ戦争をやった。つまらぬということを言っていいか悪いかわかりませんが、戦争をやってしまって、そうして破壊を続けた。しこうして、その破壊の跡始末、戦争の跡始末に従事して、今日まで来ました。従って、非常に今ではおくれてしまいました。これに反して、ソビエトあたり、今御指摘になりました通り、まことに、私は行ったことはありませんけれども、非常にもう目まぐるしい発展をいたしております。そうして現に、申すまでもなく、去年の十一月ですか、人工衛星が、ぐるぐる、ソ連製の人工衛星が飛び回る。まことに話を聞いただけでも、じだんだ踏んで、どうすれば追いつけるだろうかということを苦慮するくらいなんです。しかし、日本でも、おくればせながら、何とか科学技術の振興をやらなくちゃならぬ、次の時代をになう青少年にうんと科学技術を身につけて、そうして世界のいずれの国にもおくれをとらぬようにせぬければいかぬと思いまして、文部当局といたしましては一生懸命努力したのであります。ただ、残念なことには、どうも予算がうまい工合に取れない。しかし、初年度としてはこれで何とかやりくりはやっていけるだろうと思うのであります。そうして中学校、小学校というあたりにも、まず基礎学を相当、理科、数学、算術、そういうものを教えていって、そうしてだんだん、一ぺんにはいきませんので、順次一つその充実をはかっていきたいと考えております。  さらに、仰せになりました文化には国境がない。まことに文化の交流には国境のないことは、またあってはならぬと思います。これはもうスポーツと同じことだと私は考えております。従って、ぜひ一つこうした文化協定をいたしまして、もうすでに、たしか十カ国は協定をしております。そこで、ソビエトあたりとも協定を結んで、向うのすぐれた技術、すぐれた文化を取り入れて、それと同時に、日本でもやはりすぐれた技術、すぐれた文化を向うに送り出して、お互い親善の道をはかると同時に、文化の交流に一つ努めぬければならぬと存じます。しかし、このことは私一人じゃできません。うしろにおられる藤山外務大臣あたりにぜひお骨折りを願って、大いに一つ御説のように振興していきたいと念願いたしております。
  277. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連。ただいま文部大臣はこの予算の関係で云々ということを述べられましたが、予算を伴わない問題でも、重大な誤謬を犯さんとしていることがありますので、私はめったにあなたにお願いをしないわけなんですが、願望を込めて伺いたいと思う。それは、日本のこの科学技術の振興の一つの方策として、中学校三年生を進学組と就職組とに分けて、そうして欧米あるいはソビエト、ドイツに比較して劣っている数学、理科等を進学組に特に教育をして、そうすることによって日本の科学技術の推進の基盤をつちかおう、これはまた大きな理由になっておると思うのでありますが、そういう方針を打ち出されたということを承知いたしております。私は、これは予算を伴わない一つの政策なんですが、場当り的な便利主義的な考え方では、絶対科学技術は振興しないと思う。あなたは御承知と思いますが、旧制中学校時代、私はその当時旧制中学校の教員をやっておったのでありますが、一種生と二種生というのがありました。一種は直ちに就職する、二種は進学組という、選ばれた旧制中学校の生徒の指導に当っても、この一種生徒と二種生徒では大失敗したのであります。私は数学の教員でしたから、もっぱら一種を扱っておったのですが、一種の生徒は手に負えないことになった。新制中学校は義務教育なんですね。しかも、進学しない生徒に、それに適応した教育をしようといっても、タイプライターがあるわけじゃございません。旋盤があるわけじゃございません。施設、設備もないのです。何をやろうとするのか。かりに施設設備があっても、義務教育である中学校三年生を進学組と就職組とに分けて教育するということは、私は大きな誤謬だと思うのです。これは必ずや、将来振り返った場合に、大失敗だったという結論になると思う。私はめったにあなたにお願いしないわけなんですが、このことだけは私は改めていただきたい。  そうして、この中学校三年の英語の教育とか、あるいは理科、数学の教育を充実させる方法がある。確かに今の中学校の理科、特に数学等の内容というものは、マンマンデーで、まとまりがなくて、ああいう内容の教育では、今の日進月歩の世界の水準に追いついていけないということは、私は認めます。従って、最近の科学技術の振興という立場から、理科、数学の教育をもう少し体系化して、これを充実していくという文部省の方針に、私は全面的に賛成している。しかし、それを便宜的に、場当り主義で中学校の三年を二つに分けるということ、これはもう絶対やめなければならぬと私は確信いたしているわけです。将来必ず振り返って大失敗だったということはわかると思うのですが、これは願望を込めてあなたにお願いいたします。あの方針はやめていただきたいと思う。お願いいたします。
  278. 松永東

    国務大臣(松永東君) こうした計画をいろいろ立てますときに、中央教育審議会あたりの専門家の意見も十分確かめました。そうして答申を得たのです。しこうして、仰せのような議論も耳にいたしております。しかし、大体中学の三年、すなわち義務教育の三年になって、上級の学校に進もうという子供たちとざらに、中学三年でやめて、職業につこうという青年とがある。これには、上にずっと進む、大学院まで進む、高等学校に進むという人には、もっとその進学に必要な学問を施した方かよろしい。それから中学校を出たらすぐ、あるいは工場に、あるいは農業に従事するような子供たちに対しては、それに即応するやはり基礎学を——基礎学というか、実地の学問を教えた力がいいという議論が強くなり、そうして、もちろんこれは選択科目。親ごさんあたりは、いやおれの子供は上に進学させるのではないからというような希望があれば、その希望に従って選択科目としてそういう道をとろうということになって、今の答申が出たわけなんです。  しかしながら、今のあなたの非常な力強い御主張もありますので、これは一つ私もゆっくり研究していきたい。ゆっくり研究すれば、時間はもうこの四月一日からやればありませんけれども、しかし大体もうこれは聞いておることですから、私ももう一ぺん検討いたしてみます。
  279. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は、教育課程審議会の方々には、権威者ですから、一応敬意を表します。しかし、問題は、ちゃんと一つ考え方を持っておって、あなた方の考え方と相通ずるような方々を教育課程審議会の委員に任命して、そうしてちゃんと腹案を持っておって諮問して、そうして答申を受けてやっている、こういう点は断じて改めなくちゃ。それで、この問題ほど場当り主義的な、便宜的な典型的なものは私はないと思う。  それから、あなたが言われるように、進学する人と就職する人に、本人並びに父兄の期待に沿うような教育をやるとすれば、これもできるのです。今あなたが努力しつつありますが、優秀な教師を配当するとか、それから教科書の内容を適切にするとか、そういう方向で、進学にも就職にもいずれにも満足できるような中学校三年の教育というものをやれる方法は十分ある。そのことに努力し研究すべきであって、それをあずけておいて、二つに分けて云々という、これほどの便宜主義的な場当り主義的な私は科学技術振興方策はないと思うのです。それで、検討されるだけでは私は満足いたしません。断じて矢嶋の主張は間違っていないのだから、これは歴史的に時間が、あなたの主張が正しいか、矢嶋の主張が正しいかを証明するでございましょう。従って、もう少しあなたの所信を表明していただきたい。
  280. 松永東

    国務大臣(松永東君) 矢嶋委員の仰せられる通り、決して場当りや思いつきでやっているのではないのです。それはいやしくも、あなた、これから伸びていく青年たち、これに対してどうすれば一番万全の教育ができるかというふうに、いろいろエキスパートの人人が研究に研究を重ねられた結果、答申があったわけです。しかし、専門家のあなた方からるるお話しになりますので、もう一ぺん私は一つ考えてみたいというふうに存じております。
  281. 安部キミ子

    安部キミ子君 時間がありませんので私はこれでやめますが、ちょっと最後に。そこで、さっきのお話に連関しますが、一昨年茅学術会議長、今の東大総長ですが、ソ連を訪問されましたときに、一団の方、たくさんの方が訪問されたわけですが、そのときに、日本もソ連の学者を招きましょうという約束をして帰られたわけですね。それで、その後幾たびか文部省へ、予算を組んでもらってソ連の学者を呼びたいという要請があったけれども、文部省は予算を組まれなかったし、それから聞くところによると、外務省がじゃまをしたということを聞いておるのですが、その真相はどうでしょうか。
  282. 松永東

    国務大臣(松永東君) それは、今仰せのことはごもっともで、茅学術会議長もそういう話をせられたやに承わっております。しかし、この問題はなかなか文部省だけではいけません。それで外務省とも、いろいろ関係当局とも打ち合せをせんければなりません。検討をずっと続けておるうちに今日になってきたのですが、しかし、お説の点は相当重要な問題だと思いますので、これから私も積極的に一つ学術会議長あたりとも相談いたしまして、そうして一つ何とか実現するようにしたいと思います。
  283. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外務省がじゃまをしたということは私はないと思うのでありますが、よく文部大臣と相談いたしまして、進めて参りたいと思います。
  284. 安部キミ子

    安部キミ子君 大蔵大臣も今のお話お聞きになりましたと思うのですが、問題は予算のことですから、どうぞ御協力下さいますように、御意見をちょっと承わりたいと思います。
  285. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今のお話は私も聞いております。多分昨年の四月ごろ、春ごろのことでございます。その後実はこのことで各省で検討を加えておって、なかなか一致しない点もありましたので、三十三年度の予算には計上しておりません。
  286. 安部キミ子

    安部キミ子君 それでは、ぜひ早急に予算を組んで実現してもらいたいと思います。大蔵大臣にお願いします。  それから最後に、文化協定に関連しまして外務大臣にお尋ねするのでありますが、最初私が冒頭に日中貿易協定のことを申しまして、皆さんはこぞって御協力なさるということでございまして、大へんうれしいと思います。それに関連して、今度代表部が双方の国それぞれに設置されるわけですが、当然今後は報道部員、報道するその人方も、それぞれの国から交換されなければならないと思いますが大臣はこの報道部員の交換に対して早急に御努力をされる御意思があるかどうか。
  287. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 報道部員の交換につきましては、レシプロカルに問題を考えないといけないのでありまして、そういう点が解決しますれば、考えられると思います。
  288. 安部キミ子

    安部キミ子君 私は、そういう理屈っぽいことは抜きだして、あなたの決意一つだと思うのですよ。だって、両方の国が代表部を置いて、報道部員がいないと、どっちの国の商売もうまくいかないのですよ。ですから、当然これは、代表部員が設置されると同時に、これはその交換はなされなければならないと思うのです。どうですか、その決意を聞いておるのです。
  289. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ソ連との関係においても同じようで、人数の関係が両方にあるものですから、そういう問題が調整されなければということを申し上げたのです。
  290. 安部キミ子

    安部キミ子君 ありがとうございました。大へん時間を超過して恐縮しました。ことに正力国務大臣には急ぎの御用があったということを聞きましたけれども、順序を立てて質問するには、やはり大臣にそこにおってもらわなければ片がつきませんので、大へん恐縮でございました。私の質問はこれで終ります。
  291. 剱木亨弘

    ○剱木亨弘君 関連して。私は分科会で実は文部大臣質問申し上げようと思ったのですが、矢嶋議員からのただいまの御発言がございましたが、これはきわめて私は日本の学校制度の基本に関する問題だと思いますので、この問題は、教育課程審議会が答申して、そのままこれを文部省が採用されるという方針のように承わりますが、これは長年の教育の面から申しまして、非常に教育制度の重大な点に関する問題だと思いますので、この際私からも文部大臣に、この問題については私は矢嶋議員と全く同じ意見を持っておりますから、慎重に御考慮いただけるかどうか、もう一ぺん御答弁をお伺いしたいと思います。
  292. 松永東

    国務大臣(松永東君) 剱木さんの仰せごもっともだと存じます。しかし、お説の通り、これはいろいろな面にやはり折衝をしなければなりませんので、私の方からも何とかして実現するように一つ相談をしてみたいというふうに存じております。
  293. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 関連。今、矢嶋議員からの御発言がございましたが、過日矢嶋議員が文部大臣に対しまして、社会教育法第十三条を訂正をしたらどうかという矢嶋議員の御意見がありました。すなわち、昨年国際的なオリンピック大会等には補助はできるのだということの改正があったわけです。そこで、この間の矢嶋議員のお話は、アジアのそうした形の会合等に補助するようにしたらどうかということから、社会教育法の改正についてお話があったわけであります。なお、府県等でやみで補助金を出しておる。そういうようなやみをやっているから、ひもつきになったり何かしてはいけないじゃないか、もっとフェア・プレーにやったらどうか、こういう御意向でありまして、この点私も全く同感であります。これまた超党派的に賛成をいたすわけでありまして、ところが、文部大臣のそのときの御答弁は、ただ単に研究をするというようなことでございまして、私はちょっと大臣にしては熱意が足らぬじゃないか、かように思ったわけでございましたが、従いまして、積極的に御研究をして改正をなさる御意思があるやいなや、伺っておきたいと思います。(小笠原二三男君「関連々々」と述ぶ)
  294. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 小笠原君に申し上げます。同じような御質問でございますか。
  295. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 劔木さんの質問にまた関連してです。
  296. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それでは文部大臣、ただいまの大谷さんの御答弁を願います。
  297. 松永東

    国務大臣(松永東君) この間矢嶋さんのお尋ねに対して私の申し上げた答弁は、あれは各県々々で選手なんかに対する費用の負担をなるべくさせないようにしようというのでまあ切符の前売りといいますか、一円、二、円、三円というような僅少な金でありますけれども、それを集めておるというようなことを聞きました。しかし、それは強制的にそういうことをすることは、これはもう絶対禁止せんければなりませんけれども、しかし、その土地々々でやはりスポーツを奨励するために多少の寄付があるとか何とかいうことは、これはやむを得ぬことだと思います。しかし、それを強制的とか、いやがるのに出すようなことは、これは絶対やめてもらわなければならぬというふうに考えております。
  298. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 それは大臣、答弁がちょっと違うのです。今のお話は、それは何ですが、そうじゃなくて、社会教育法にそういうような団体に対して補助ができると、こういう規定があるわけですよ。これを取ったらどうか、そして明朗にしたらどうか、こういう矢嶋委員お話だったのです。それを矢嶋委員が尋ねましたら、私もよく研究すると、こういうお話だったわけです。ただ単に研究では困るので、積極的に、おざなりでなしに、積極的に研究をして、その処置をする御意思があるかどうかということを伺っておるわけです。
  299. 松永東

    国務大臣(松永東君) わかりました。それはちょうど時期も来ておりますので、緊急に一つ研究しまして、そして一つ、方法をとるつもりであります。
  300. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 剱木さんの質疑内容と大谷さんのあれとは、関連がずいぶん飛んだわけですけれども、その中で、今、文部大臣が、この前の答弁と関連して、小学校一円、中学は二円、高等学校一人五円づつ、アジア・オリンピック開催のために募金していることについて、強制的でもいいが、そうでない自発的なものは云々というぼけた答弁は、もってのほかです。ということは、確かにアジア・オリンピックに対しては六千万円の補助をやっている。今度の予算にも出ている。これが少いから、小学校、中学校、高等学校に天下ってきている。これは確かに強制的なんです。教育の場合、具体的に示しましょう、どうなるかといえば、各県教育委員会の体育課長という人は、その地域の体育協会の中心的人物なんです。そこできめて、その体育課長は、各学校の体育主任ににらみがきくのです。そこで、体育課長から各地方事務所の教育行政担当者に流して、そうして各学校の体育主任、校長会へずっと流れていくのです。だから、末端では明らかに、小学校一円、中学校二円、高等学校五円というのは、強制的になっているのですよ、実質上。従って、今、文部大臣の態度は、かようなものは好ましくないからやめろ、やめるのが望ましいという通牒を、各都道府県教育委員会に助言と指導を与える立場において出すべきである。と同時に、アジア・オリンピック大会は国家的な行事です。これは大きな意義があるのですから、六千万円で足りなければ、あと二千万、三千万なり閣議で決定して補助するくらいは、松永文部大臣の腕一つだ。そういうことを努力すべきだ。とりあえず、各都道府県教育委員会に対して、望ましくないというところの通牒を出して、助言、指導を一つ与えなさい。私はそういうことを要望いたします。お答えを願います。
  301. 松永東

    国務大臣(松永東君) どうも私がそういう場面にぶつかった体験がないものですから、御質問の要旨をはき違えておりました。しかし、この前からお話のありました点は、十分一つ局長とも相談いたしまして、御趣旨のように善処いたしたいというふうに考えております。
  302. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 先ほど矢嶋委員並びに剱木委員からお話のありました、中学高学年におけるコース制と申しますか、そのやり方については、私も、矢嶋委員並びに剱木委員同様、体験を持つものとして、断じてこれは慎重なる扱いをすべきであろうということを申し上げたい。学校制度の沿革からいっても重大でありますが、今日の中学校は義務教育であれば、やはり教育の機会均等の理念が貫かれなければならないと思います。それを、産業界の要請等によって、そういうコース別に分けて、一つの将来を規定するような、青年前期の諸君の将来を規定するような、そういう片寄った教育をするということは、私は遺憾にたえません。旧制の小学制度におきましても、高等小学校になりますと、職業教育がそれぞれあったのでありますが、しかし、その中でもなおかつ、この進学組というものを持たなければならなかった。学校の実情としては、階層別に将来の子供の方向が分れる教育をするということは、教師の立場に立って、非常に苦しい。体験上苦しんでおった問題でふります。また、教育方法論の上からいっても、そういう産業界の要請というようなことで問題を処理する前に、労働尊重、勤労教育なり、労作教育なり、体験教育という理念の中に、いかに進学しようとも、大学課程を終ろうとも、職業的な基礎的な陶冶ということは、義務教育においては断じて必要なのであってそれが、将来の国民階層を学校教育の中で分けていくような、そういう前提になる教育は、これは誤まっておる。  従って私は、今日の必須科目なり選択科目なりの関係で、選択自由の科目を豊富にすることによって、この種の問題が処理されるということが望ましいし、また、学校教育の弊害である一般的な教育のために個性が伸長されない、天稟が伸びないという、そういう欠陥を救済するという措置は、別途これは講じなければならぬ問題である。初めから型にはめて、その将来、青年の一生を規定するような教育を、青年前期において義務制で与えるということは、これは非常に慎重に考えなければならぬ問題であると私は思います。将来の可能性を持つ、どういう方向に向くか、可能性をはらんでおる、そういう将来の国家を背負って立つ青年教育、しかも、これが前期の教育です、まだ未発達の段階にある青年前期の教育に、そういうことがあることは望ましいとは思われません。従って、文部大臣は慎重に研究をせられるということで、まことにこの点は感謝にたえないと思うのでありますが、四月一日から実施するというようなことでありますけれども、この予算委員会は月末まで開かれておるのでありますから、あなたの緊急な研究の成果については、ぜひ特段に当委員会で発言を求めて、これこれ、これこれの理由によって、こういうふうに措置する、あるいはこういう方向に進むということを、必ずあなたから積極的な御答弁を期待したいと思います。十分これは御検討を願っておきたいと存じて、あえて関連的に要望申し上げておきます。
  303. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました問題につきましては、私もしろうとながら、いろいろな研究もしましたし、多少の考え方も持っております。しかし、まだ日もありますことでありますから、慎重に一つ検討いたしまして、仰せの通り、この委員会で研究の結果を申し上げるということにいたしたいと存じます。
  304. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 剱木君、簡単にお願いいたします。
  305. 剱木亨弘

    ○剱木亨弘君 事は非常に重大ですから、重ねて申し上げるわけでありますが、これは岸内閣で今回の予算のときに、一番一つの大きな政策として、その人の能力のあるものについては、その経済的理由によらないで進学をさせるという大きな一つの政策を立てたわけであります。それを、義務教育の中学校において、進学コースと、それからそうでないものとの二つに分けてやります場合におきましては、その進学コースをとる者については、だれが進学コースに行くのか、当然これは経済的に余裕のある人だけが進学コースに行き、学校に行けない者は、進学しないコースに行くであろうと思います。そういう場合において、その経済的理由だけで進学コースに行けない者は、素質においては十分な伸びていく素質を持っておる者が相当おるわけでございますが、進学コースとそうでないものに分けた場合におきましては、おそらく進学しないコースの者については、そういう基礎的な学科についての教授は全くスポイルされて、伸びるべき素質もそこでとめられてしまうのです。ここに私は、岸内閣のわが党の内閣においてすら、この政策に反するようなこのものが今日文部省できめられようとする状態においては、私どももこれは反対せざるを得ぬのです。だから、もちろん文部省の行政に国会がタッチすることがいかぬということがあるかもしれませんが、刻下の義務教育の重大問題でありますので、十分、先に矢嶋及び小笠原議員からありましたように、われわれ予算委員会としても納得のいく線で、一つこの審議中に十分なる御答弁をお願いしたいと、これは要望だけでございますが、申し上げておきます。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  306. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 委員長から一言、松永文部大臣に申し上げます。本委員会の空気を十分察知されまして、先刻の御答弁の通りに、本委員会の審議中に再度御発言願います。  明日は正午から理事会を、午後一時から委員会を開催することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十一分散会